(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050282
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】カニューレポート、クレードル装置及び薬液投与装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
A61M5/142 522
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157059
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】内山 城司
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD11
4C066FF04
(57)【要約】
【課題】カニューレのカニューレハウジングに対する位置固定性を向上可能な、カニューレポート、クレードル装置及び薬液投与装置、を提供する。
【解決手段】本開示に係るカニューレポートは、樹脂製のカニューレを備えるカニューレポートであって、前記カニューレを支持するカニューレハウジングと、前記カニューレハウジングに対する前記カニューレの位置を固定する固定部材と、を備え、前記カニューレは、管本体部と、前記管本体部から前記管本体部の径方向の外側に向かって延設されている、漏斗状又はフランジ状の延設部と、を備え、前記カニューレハウジングは、前記カニューレの前記延設部を、前記管本体部の抜去方向に支持する支持部と、前記カニューレの前記延設部を、前記固定部材を介して、前記管本体部の挿入方向に押圧し、前記カニューレの前記延設部を、前記固定部材と前記支持部との間で挟持させる押圧部と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体表面から生体に挿入可能な樹脂製のカニューレを備えるカニューレポートであって、
前記カニューレを支持するカニューレハウジングと、
前記カニューレハウジングに対する前記カニューレの位置を固定する固定部材と、を備え、
前記カニューレは、
前記生体に穿刺可能な先端部を含む管本体部と、
前記管本体部の基端部から前記管本体部の径方向の外側に向かって延設されている、漏斗状又はフランジ状の延設部と、を備え、
前記カニューレハウジングは、
前記カニューレの前記延設部を、前記管本体部の軸方向のうち先端側から基端側に向かう方向である、前記管本体部の抜去方向、に支持する支持部と、
前記カニューレの前記延設部を、前記固定部材を介して、前記軸方向のうち前記基端側から前記先端側に向かう方向である、前記管本体部の挿入方向、に押圧し、前記カニューレの前記延設部を、前記固定部材と前記支持部との間で挟持させる押圧部と、を備える、カニューレポート。
【請求項2】
前記カニューレハウジングは、
前記カニューレの前記延設部を収容する収容空間と、
前記収容空間と連通し、前記カニューレの前記管本体部が挿通されている挿通孔と、を区画しており、
前記カニューレハウジングの前記支持部及び前記押圧部は、前記収容空間を区画する、前記カニューレハウジングの内面により構成されている、請求項1に記載のカニューレポート。
【請求項3】
前記カニューレの前記延設部は漏斗状であり、
前記カニューレハウジングの前記支持部は、前記収容空間を区画する、前記カニューレハウジングの前記内面において、前記挿入方向に内径が縮径する漏斗状の内面縮径部により構成されている、請求項2に記載のカニューレポート。
【請求項4】
前記固定部材は、前記挿入方向に縮径する漏斗状のテーパー管部を備え、
前記カニューレの漏斗状の前記延設部は、前記固定部材の前記テーパー管部と、前記カニューレハウジングの前記内面の前記内面縮径部と、の間で挟持されている、請求項3に記載のカニューレポート。
【請求項5】
前記固定部材は樹脂製であり、
前記固定部材は、前記テーパー管部の前記挿入方向に連なり、前記カニューレの前記管本体部に内挿されており、外面が前記カニューレの前記管本体部の内面に接触している、内挿管部を備える、請求項4に記載のカニューレポート。
【請求項6】
前記カニューレの前記管本体部は、
前記先端部を含む遠位側部と、
前記基端部を含み、前記遠位側部に対して前記抜去方向に位置する近位側部と、を備え、
前記管本体部の前記近位側部の最小内径は、前記管本体部の前記遠位側部の最大内径以上であり、
前記管本体部の前記近位側部の最大内径は、前記管本体部の前記遠位側部の前記最大内径より大きく、
前記固定部材の前記内挿管部は、前記カニューレの前記管本体部の前記近位側部に内挿されており、前記カニューレの前記管本体部の前記遠位側部に内挿されていない、請求項5に記載のカニューレポート。
【請求項7】
前記カニューレの前記管本体部は、前記固定部材の前記内挿管部と、前記挿通孔を区画する、前記カニューレハウジングの内面と、の間に挟み込まれている、被挟持部を備える、請求項5又は6に記載のカニューレポート。
【請求項8】
前記カニューレハウジングの前記押圧部は、
前記収容空間を区画する、前記カニューレハウジングの前記内面、において突出する突起部、又は、
前記収容空間を区画する、前記カニューレハウジングの前記内面、に形成されている凹部、により構成されている、請求項2から6のいずれか1つに記載のカニューレポート。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか1つに記載のカニューレポートと、
前記カニューレポートが装着可能であると共に、前記生体表面に貼着可能な、ベース体と、を備えるクレードル装置。
【請求項10】
請求項9に記載のクレードル装置と、
薬液を収容可能な薬液容器を備え、前記クレードル装置に着脱可能な装置本体と、を備える、薬液投与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はカニューレポート、クレードル装置及び薬液投与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、皮下注射や静脈内注射などによって、患者の体内に薬液を持続的に投与する治療法が行われている。例えば、糖尿病患者に対する治療法として、患者の体内に微量のインスリンを持続的に注入する治療が実施されている。この治療法では、一日中患者に薬液としてのインスリンを投与するために、患者の身体又は衣服に固定して持ち運び可能な携帯型の薬液投与装置としてのインスリンポンプが用いられている。特許文献1には、この種のインスリンポンプが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の薬液投与装置としてのインスリンポンプは、カニューレ部を備えている。特許文献1のカニューレ部は、可撓性を有する樹脂材料により形成されている挿入チューブを備えている。また、特許文献1のカニューレ部は、挿入チューブを保持する保持部材を備えている。特許文献1の保持部材は、保持ブロック及びカバーを含む。カニューレ部は、保持部材の保持ブロックとカバーで覆われた内部に、パッキン及びかしめピンを収容している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の薬液投与装置としてのインスリンポンプのカニューレ部において、挿入チューブは、その上端部が保持ブロックとかしめピンとに挟まれることで強固に保持されている。より具体的に、特許文献1に記載のカニューレポートとしてのカニューレ部において、挿入チューブは、保持ブロックの挿通孔に挿通されている。この状態で、挿入チューブの上端部は、挿通孔を区画する保持ブロックの内面と、挿入チューブの内側に挿入されているかしめピンの外面と、の間に挟み込まれて保持されている。このようにすることで、挿入チューブを保持部材に対して固定できる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のカニューレポートとしてのカニューレ部は、カニューレとしての挿入チューブの、カニューレハウジングとしての保持部材に対する位置固定性の観点で、依然として改善の余地がある。
【0007】
本開示は、カニューレのカニューレハウジングに対する位置固定性を向上可能な、カニューレポート、クレードル装置及び薬液投与装置、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様としてのカニューレポートは、
(1)
生体表面から生体に挿入可能な樹脂製のカニューレを備えるカニューレポートであって、
前記カニューレを支持するカニューレハウジングと、
前記カニューレハウジングに対する前記カニューレの位置を固定する固定部材と、を備え、
前記カニューレは、
前記生体に穿刺可能な先端部を含む管本体部と、
前記管本体部の基端部から前記管本体部の径方向の外側に向かって延設されている、漏斗状又はフランジ状の延設部と、を備え、
前記カニューレハウジングは、
前記カニューレの前記延設部を、前記管本体部の軸方向のうち先端側から基端側に向かう方向である、前記管本体部の抜去方向、に支持する支持部と、
前記カニューレの前記延設部を、前記固定部材を介して、前記軸方向のうち前記基端側から前記先端側に向かう方向である、前記管本体部の挿入方向、に押圧し、前記カニューレの前記延設部を、前記固定部材と前記支持部との間で挟持させる押圧部と、を備える、カニューレポート、である。
【0009】
本開示の1つの実施形態としてのカニューレポートは、
(2)
前記カニューレハウジングは、
前記カニューレの前記延設部を収容する収容空間と、
前記収容空間と連通し、前記カニューレの前記管本体部が挿通されている挿通孔と、を区画しており、
前記カニューレハウジングの前記支持部及び前記押圧部は、前記収容空間を区画する、前記カニューレハウジングの内面により構成されている、上記(1)に記載のカニューレポート、である。
【0010】
本開示の1つの実施形態としてのカニューレポートは、
(3)
前記カニューレの前記延設部は漏斗状であり、
前記カニューレハウジングの前記支持部は、前記収容空間を区画する、前記カニューレハウジングの前記内面において、前記挿入方向に内径が縮径する漏斗状の内面縮径部により構成されている、上記(2)に記載のカニューレポート、である。
【0011】
本開示の1つの実施形態としてのカニューレポートは、
(4)
前記固定部材は、前記挿入方向に縮径する漏斗状のテーパー管部を備え、
前記カニューレの漏斗状の前記延設部は、前記固定部材の前記テーパー管部と、前記カニューレハウジングの前記内面の前記内面縮径部と、の間で挟持されている、上記(3)に記載のカニューレポート、である。
【0012】
本開示の1つの実施形態としてのカニューレポートは、
(5)
前記固定部材は樹脂製であり、
前記固定部材は、前記テーパー管部の前記挿入方向に連なり、前記カニューレの前記管本体部に内挿されており、外面が前記カニューレの前記管本体部の内面に接触している、内挿管部を備える、上記(4)に記載のカニューレポート、である。
【0013】
本開示の1つの実施形態としてのカニューレポートは、
(6)
前記カニューレの前記管本体部は、
前記先端部を含む遠位側部と、
前記基端部を含み、前記遠位側部に対して前記抜去方向に位置する近位側部と、を備え、
前記管本体部の前記近位側部の最小内径は、前記管本体部の前記遠位側部の最大内径以上であり、
前記管本体部の前記近位側部の最大内径は、前記管本体部の前記遠位側部の前記最大内径より大きく、
前記固定部材の前記内挿管部は、前記カニューレの前記管本体部の前記近位側部に内挿されており、前記カニューレの前記管本体部の前記遠位側部に内挿されていない、上記(5)に記載のカニューレポート、である。
【0014】
本開示の1つの実施形態としてのカニューレポートは、
(7)
前記カニューレの前記管本体部は、前記固定部材の前記内挿管部と、前記挿通孔を区画する、前記カニューレハウジングの内面と、の間に挟み込まれている、被挟持部を備える、上記(5)又は(6)に記載のカニューレポート、である。
【0015】
本開示の1つの実施形態としてのカニューレポートは、
(8)
前記カニューレハウジングの前記押圧部は、
前記収容空間を区画する、前記カニューレハウジングの前記内面、において突出する突起部、又は、
前記収容空間を区画する、前記カニューレハウジングの前記内面、に形成されている凹部、により構成されている、上記(2)から(7)のいずれか1つに記載のカニューレポート、である。
【0016】
本開示の第2の態様としてのクレードル装置は、
(9)
上記(1)から(8)のいずれか1つに記載のカニューレポートと、
前記カニューレポートが装着可能であると共に、前記生体表面に貼着可能な、ベース体と、を備えるクレードル装置、である。
【0017】
本開示の第3の態様としての薬液投与装置は、
(10)
上記(9)に記載のクレードル装置と、
薬液を収容可能な薬液容器を備え、前記クレードル装置に着脱可能な装置本体と、を備える、薬液投与装置、である。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、カニューレのカニューレハウジングに対する位置固定性を向上可能な、カニューレポート、クレードル装置及び薬液投与装置、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】薬液投与装置の装置本体及びクレードル装置が相互に装着される前の状態を示す斜視図である。
【
図4】クレードル装置に装置本体を装着している途中の状態を示す説明図である。
【
図8】カニューレポートのカニューレ単体を示す断面図である。
【
図9】カニューレポートがベース体に装着されている状態のクレードル装置において、カニューレのうちベース体から挿入方向に突出する部分の詳細を示す説明図である。
【
図11A】カニューレポートのカニューレが生体に挿入される前の状態を示す図である。
【
図11B】
図11Aに示す状態から、カニューレ及び内針が生体に挿入される工程を示す図である。
【
図11C】
図11Bに示す状態から、内針がカニューレから抜去される工程を示す図である。
【
図11D】
図11Cに示す状態から、装置本体がベース本体に装着される工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示に係るカニューレポート、クレードル装置及び薬液投与装置の実施形態について図面を参照して例示説明する。各図において同一の構成には同一の符号を付している。
【0021】
まず、
図1~
図4を参照して、本開示に係る薬液投与装置の一実施形態としての薬液投与装置1について説明する。
図1は、薬液投与装置1を示す斜視図である。
図2は、薬液投与装置1の装置本体2及びクレードル装置3が相互に装着される前の状態を示す斜視図である。
図3は、クレードル装置3を示す平面図である。
図4は、クレードル装置3に装置本体2を装着している途中の状態を示す説明図である。
【0022】
図1に示すように、薬液投与装置1は、パッチ式や、チューブ式のインスリンポンプ、さらにその他の携帯型の薬液投与装置のように、患者等の生体の生体内に持続的に薬液投与を行うための携帯型のインスリンポンプである。本開示に係る薬液投与装置は、
図1に示すインスリンポンプに限られないが、本実施形態では、本開示に係る薬液投与装置の一例としてのインスリンポンプについて例示説明する。薬液投与装置1は、装置本体2と、この装置本体2と着脱可能に構成されているクレードル装置3と、を備えている。クレードル装置3は、後述するカニューレポート6を備えている。カニューレポート6は、生体表面から生体内に挿入可能なカニューレ81を備えている。
【0023】
[装置本体2]
図1、
図2、
図4に示すように、装置本体2は中空の筐体11を備えている。また、
図4に示すように、装置本体2は接続針管12を備えている。更に、
図4に示すように、装置本体2は、筐体11内に、送液配管13と、薬液容器14と、駆動部15と、を備えている。薬液容器14には、生体内に投与する薬液が収容されている。薬液容器14には、送液配管13の一端部が接続されている。送液配管13の他端部は、接続針管12に接続されている。駆動部15は、薬液容器14に収容されている薬液を、送液配管13に送り出すことができる。薬液容器14から送液配管13に送り出された薬液は、接続針管12を通じて、装置本体2から排出される。この接続針管12は、装置本体2がクレードル装置3に装着されている状態で、後述するカニューレポート6の接続部82aに穿刺される。これにより、送液配管13と接続部82aが接続針管12を介して接続される。
【0024】
以下、説明の便宜上、装置本体2がクレードル装置3に対して着脱される方向を着脱方向Aと記載する。着脱方向Aのうち、装着時においてクレードル装置3に対して装置本体2を移動させる方向を装着方向A1と記載する。着脱方向Aのうち、取り外し時においてクレードル装置3に対して装置本体2を移動させる方向を取り外し方向A2と記載する。また、着脱方向Aと直交し、装置本体2とクレードル装置3とが重なる方向とも直交する方向を装置幅方向Bと記載する。更に、装置本体2とクレードル装置3とが重なる方向、すなわち、着脱方向A及び装置幅方向Bと直交する方向を装置高さ方向Cと記載する。
【0025】
筐体11は、角部が湾曲した扁平状の略直方体状に形成されてよい。本実施形態の筐体11は、天板部21と、底板部22と、前板部23と、後板部24と、第1側板部25と、第2側板部26と、を備えている。天板部21及び底板部22は、装置高さ方向Cにおいて互いに対向している。天板部21は、角部が湾曲した略矩形状に形成されている。また、天板部21は、中央部が装置高さ方向Cにおいて底板部22とは反対側に向けて膨出している。
【0026】
天板部21の着脱方向Aの一端部には、前板部23が略垂直に連続し、天板部21の着脱方向Aの他端部には、後板部24が略垂直に連続している。前板部23及び後板部24は、着脱方向Aにおいて互いに対向している。また、天板部21の装置幅方向Bの一端部には、第1側板部25が略垂直に連続し、天板部21の装置幅方向Bの他端部には、第2側板部26が略垂直に連続している。
【0027】
底板部22には、クレードル装置3の後述する摺動レール53が収容され、摺動レール53と摺動する摺動溝32が形成されている。また、底板部22には、例えば、装置本体2がクレードル装置3に装着された状態を検出可能な装着検出スイッチが設けられていてもよい。
【0028】
図4に示すように、筐体11は、装置本体2がクレードル装置3に装着された状態で、後述するカニューレポート6を収容可能なポート収容部27を区画している。ポート収容部27は、筐体11における底板部22、第1側板部25及び前板部23が連続する角部に形成されている。ポート収容部27は、底板部22から装置高さ方向Cに沿って天板部21に向けて所定の長さで凹んだ凹部である。
【0029】
ポート収容部27の取り外し方向A2を区画する側壁27aには、筒状の接続口28が形成されている。接続口28は、側壁27aから装着方向A1に向けて突出している。接続口28の筒孔には、接続針管12が配置される。接続針管12は、側壁27aから装着方向A1に向けて突出している。
【0030】
筐体11の第1側板部25及び第2側板部26には、装置本体2がクレードル装置3に装着される際に、クレードル装置3の受け部と係合し、装置本体2及びクレードル装置3の装着状態を維持可能な係止部が設けられてよい。係止部及び受け部は、例えば、係止爪部と、この係止爪部が嵌り込む凹部と、により構成されてよい。係止部及び受け部による装置本体2及びクレードル装置3の係止状態は、操作者の操作によって解除可能に構成されている。これにより、装置本体2は、クレードル装置3に対して着脱可能に構成されている。但し、係止部及び受け部の具体的な構成は特に限定されない。つまり、係止部及び受け部は、上述の係止爪部及び凹部に限られない。
【0031】
[クレードル装置3]
図1~
図4に示すように、本実施形態のクレードル装置3は、ベース体5と、カニューレポート6と、を備えている。
【0032】
ベース体5は、生体表面に貼着可能に構成されている。また、ベース体5は、カニューレポート6が装着可能に構成されている。更に、ベース体5は、装置本体2が着脱可能に構成されている。
【0033】
より具体的に、本実施形態のベース体5は、ベース本体70と、貼着シート71と、剥離紙72と、を備えている。
【0034】
本実施形態のベース本体70は、略平板状の載置部41と、第1側壁部42と、第2側壁部43と、第3側壁部44と、を備えている。
図2~
図4に示すように、本実施形態のベース本体70は、装置本体2を収容可能な収容空間70aを区画している。収容空間70aは、載置部41、第1側壁部42、第2側壁部43及び第3側壁部44に囲まれる空間である。
【0035】
載置部41は、角部が湾曲した略矩形状に形成されている。クレードル装置3に装置本体2が装着されると、載置部41には、装置本体2における筐体11の底板部22が載置される。
【0036】
載置部41の収容空間70a側の上面41aには、装着部51と、摺動レール53と、が設けられている。装着部51は、載置部41における装着方向A1の端部で、かつ、装置幅方向Bの一端部に、形成されている。装着部51は、後述するカニューレポート6が装着可能に構成されている。更に、装着部51には、後述するカニューレポート6のカニューレ81が挿通する挿通孔が設けられている。
【0037】
摺動レール53は、載置部41の上面41aにおける装置幅方向Bの中間部に形成されている。摺動レール53は、載置部41の上面41aにおける着脱方向Aの一端部から他端部にかけて延在している。装置本体2をクレードル装置3に装着する際に、摺動レール53には、装置本体2の摺動溝32が摺動可能に嵌り込む。
【0038】
載置部41の装置幅方向Bの一端部には、第1側壁部42が略垂直に連続し、載置部41の装置幅方向Bの他端部には、第2側壁部43が略垂直に連続している。そして、載置部41の装着方向A1の端部には、第3側壁部44が略垂直に連続している。そのため、載置部41の四辺のうち三辺は、第1側壁部42、第2側壁部43及び第3側壁部44に連なっている。そして、載置部41の取り外し方向A2の端部には、側壁部が連続していない。つまり、収容空間70aの取り外し方向A2の端部は開放されている。装置本体2は、開放されている収容空間70aの取り外し方向A2の端部から収容空間70a内に挿入され、ベース本体70に装着される。
【0039】
貼着シート71は、生体表面としての患者の皮膚に帖着可能に構成されている。貼着シート71は、ベース本体70の載置部41の上面41aとは反対側の下面41b(
図2参照)に取り付けられている。貼着シート71には、後述するカニューレポート6のカニューレ81が貫通する開口部が形成されている。
【0040】
また、貼着シート71は、可撓性を有する部材で形成されており、貼着シート71の載置部41側とは反対側の面は、生体表面に帖着可能な貼着面71aである。貼着シート71の貼着面71aは、生体表面に貼り付ける前の状態では、剥離紙72によって覆われている。つまり、クレードル装置3は、貼着シート71から剥離紙72を剥離し、貼着シート71の貼着面71aを露出させることで、生体表面に帖着可能な状態となる。
【0041】
次に、
図2~
図11Dを参照して、カニューレポート6について説明する。
図5は、カニューレポート6単体の斜視図である。
図6は、カニューレポート6の分解斜視図である。
図7は、カニューレポート6単体の断面図である。
図8は、カニューレ81単体を示す断面図である。
図9は、カニューレポート6がベース体5に装着されている状態のクレードル装置3において、カニューレ81のうち、ベース体5から挿入方向D1に突出する部分の詳細を示す説明図である。
図10は、固定部材83の変形例を示す図である。
図11A~
図11Dは、カニューレポート6のカニューレ81が生体に挿入・留置される工程の概要を示す説明図である。具体的に、
図11Aは、カニューレポート6のカニューレ81が生体に挿入される前の状態を示す図である。
図11Bは、
図11Aに示す状態から、カニューレ81及び内針200が生体に挿入される工程を示す図である。
図11Cは、
図11Bに示す状態から、内針200がカニューレ81から抜去される工程を示す図である。
図11Dは、
図11Cに示す状態から、装置本体2がベース本体70に装着される工程を示す図である。なお、
図11A~
図11Dにおいて穿刺装置は図示省略とする。
【0042】
カニューレポート6は、生体に挿入されるカニューレ81を備えている。まず、
図11A~
図11Dを参照して、カニューレポート6のカニューレ81が生体に挿入・留置される工程の概要を説明する。上述したように、カニューレポート6は、ベース本体70に装着可能に構成されている。
図11A、
図11Bに示すように、カニューレポート6は、ベース本体70の貼着シート71を生体表面BSに帖着した状態で、ベース本体70に装着される。この際に、カニューレポート6のカニューレ81は、ベース本体70を貫通し、生体表面BSから生体内に挿入され、その状態で留置される。カニューレポート6のベース本体70への装着、及び、カニューレ81の生体内への挿入は、例えば、不図示の穿刺装置を用いて実行することができる。穿刺装置は、カニューレ81に挿通されている内針200と共に、カニューレ81を生体内に挿入する。
図11Cに示すように、内針200は、カニューレ81を生体内に挿入・留置した後に、生体外に抜去される。
図11Dに示すように、この状態で、装置本体2は、ベース本体70に装着される。その際に、装置本体2の接続針管12(
図4参照)が、カニューレポート6のカニューレ81に流体連通するように接続される。そのため、装置本体2の薬液容器14(
図4参照)に収容されている薬液は、送液配管13(
図4参照)、接続針管12(
図4参照)、カニューレ81を通じて、生体内に投与可能な状態となる。
【0043】
図6、
図7に示すように、カニューレポート6は、上述したカニューレ81に加えて、カニューレハウジング82と、固定部材83と、を備えている。詳細は後述するが、カニューレハウジング82は、接続部82aを備えている。装置本体2がベース本体70に装着される際に、装置本体2の接続針管12は、予めベース本体70に装着されている状態のカニューレポート6の接続部82aに穿刺される。これにより、上述したように、装置本体2の接続針管12が、カニューレポート6のカニューレ81に流体連通するために接続する。また、詳細は後述するが、本実施形態のように、カニューレポート6は、第1セプタム142及び第2セプタム143を更に備えてよい。以下、カニューレポート6の各部について説明する。
【0044】
カニューレ81は樹脂製であり、可撓性を有する。上述したように、カニューレ81は、生体表面から生体に挿入可能に構成されている。具体的には、カニューレ81は、カニューレ81内に挿通されている内針200(
図11A~
図11C参照)と共に、穿刺装置により生体内に挿入される。上述したように、内針200は、カニューレ81を生体内に挿入及び留置した後に、生体から抜去される。また、カニューレ81は、例えば数日間など、所定期間に亘る薬液投与が完了した後に、クレードル装置3ごと、生体外に抜去される。
【0045】
カニューレ81は、管本体部84と、延設部85と、を備える。管本体部84は、生体に穿刺可能な先端部84a1を含む部分である。延設部85は、管本体部84の基端部84b1から管本体部84の径方向Eの外側に向かって延設されている、漏斗状又はフランジ状(本実施形態では漏斗状)の部分である。また、延設部85は、カニューレハウジング82に支持及び固定される部分である。ここで「漏斗状の延設部」とは、外周面及び内周面が軸方向Dに対して傾斜し、管本体部84の軸方向Dのうち管本体部84の基端側から先端側に向かう方向である管本体部84の挿入方向D1に向かって外径及び内径が縮径する、テーパー管部を意味する。また、「フランジ状の延設部」とは、管本体部84の基端部84b1から、軸方向Dに対して直交する面が延在する方向において、径方向Eの外側に向かって突出する環状の中空円盤部を意味する。
【0046】
図7に示すように、カニューレハウジング82は、カニューレ81を支持している。より具体的に、カニューレハウジング82は、カニューレ81の延設部85を、管本体部84の軸方向Dのうち管本体部84の先端側から基端側に向かう方向である管本体部84の抜去方向D2に支持する支持部86を備えている。つまり、本実施形態のカニューレ81は、延設部85が支持部86に支持されることで、カニューレハウジング82に支持されている。詳細は後述するが、本実施形態の支持部86は、カニューレハウジング82の収容空間88aを区画する内面に形成されている内面縮径部89により構成されている。但し、支持部86は、本実施形態の内面縮径部89に限られない。
【0047】
図7に示すように、固定部材83は、カニューレハウジング82に対するカニューレ81の位置を固定している。より具体的に、カニューレハウジング82は、押圧部87を備えている。押圧部87は、カニューレ81の延設部85を、固定部材83を介して、挿入方向D1に押圧する。これにより、押圧部87は、カニューレ81の延設部85を、固定部材83と支持部86との間で挟持させる。つまり、カニューレ81は、固定部材83に押圧されることで、カニューレハウジング82に対する位置が固定されている。詳細は後述するが、本実施形態の押圧部87は、カニューレハウジング82の収容空間88aを区画する内面において突出する突起部87aにより構成されている。但し、押圧部87は、本実施形態の突起部87aに限られない。また、詳細は後述するが、本実施形態の固定部材83は、テーパー管部90及び内挿管部91を備える構成である。但し、固定部材83は、テーパー管部90及び内挿管部91を備える本実施形態の構成に限られない。
【0048】
このように、カニューレポート6において、カニューレ81は漏斗状又はフランジ状の延設部85を備えている。そして、この延設部85が、カニューレハウジング82の押圧部87に押圧される固定部材83と、カニューレハウジング82の支持部86と、により軸方向Dで挟持されている。そのため、カニューレ81は、カニューレハウジング82に対して軸方向Dに移動し難くなる。これにより、カニューレ81のカニューレハウジング82に対する位置固定性が向上する。したがって、例えば、患者の体動、上述した内針200の抜去(
図11C参照)、装置本体2のクレードル装置3への装着、等により、カニューレ81がカニューレハウジング82に対して意図せずに軸方向Dに移動することを、抑制できる。その結果、カニューレ81の管本体部84の先端部84a1が、生体内での留置深さが意図せずに変動することを抑制できる。
【0049】
また、
図7に示すように、本実施形態のカニューレハウジング82は、カニューレ81の延設部85を収容する収容空間88aと、挿通孔88bと、を区画している。挿通孔88bは、収容空間88aと連通している。より具体的に、挿通孔88bは、収容空間88aと、カニューレハウジング82の外側の外部空間と、を連通している。挿通孔88bには、収容空間88aに延設部85が収容されている状態で、カニューレ81の管本体部84が挿通される。管本体部84の先端部84a1は、挿通孔88bを通じて、カニューレハウジング82の外側の外部空間に突出している。ここで、本実施形態において、上述したカニューレハウジング82の支持部86及び押圧部87は、収容空間88aを区画する、カニューレハウジング82の内面により構成されている。
【0050】
より具体的に、本実施形態のカニューレハウジング82の支持部86は、収容空間88aを区画する、カニューレハウジング82の内面において、挿入方向D1に内径が縮径する漏斗状の内面縮径部89により構成されている。この内面縮径部89は、カニューレ81の漏斗状の延設部85の外周面に接触することで、延設部85を抜去方向D2に支持することができる。このように、カニューレ81の漏斗状の延設部85を、カニューレハウジング82の支持部86としての漏斗状の内面縮径部89により支持する構成とすることで、漏斗状の延設部85の収容空間88aでの位置決めが容易になる。これにより、固定部材83を用いてカニューレ81をカニューレハウジング82に対して固定する前に、カニューレ81を、カニューレハウジング82に対する固定位置に、容易に位置決めできる。
【0051】
また、漏斗状の延設部85の外周面が軸方向Dに対してなす傾斜角度、及び、内面縮径部89の内面が軸方向Dに対してなす傾斜角度、の差は、1度以下とすることが好ましい。ここで、上記「軸方向Dに対してなす傾斜角度」とは、軸方向Dに対して鋭角の傾斜角度を意味する。このようにすることで、漏斗状の延設部85の外周面、及び、内面縮径部89、の軸方向Dにおける接触領域を大きくできる。そのため、漏斗状の延設部85の収容空間88aでの位置決めが、より容易になる。これにより、固定部材83を用いてカニューレ81をカニューレハウジング82に対して固定する前に、カニューレ81を、カニューレハウジング82に対する固定位置に、より容易に位置決めできる。
【0052】
図6、
図7に示すように、本実施形態のカニューレハウジング82は、保持ブロック138と、第1カバー140と、第2カバー141と、を含む。
【0053】
図7に示すように、保持ブロック138は、上述の収容空間88a及び挿通孔88bを内部に区画している。より具体的に、保持ブロック138は、抜去方向D2に開放されている収容凹部138aを備える。この収容凹部138aにより、上述の収容空間88aが区画されている。また、収容凹部138aの底面が、上述した漏斗状の内面縮径部89により構成されている。更に、保持ブロック138には、収容凹部138aの底面から挿入方向D1に貫通する貫通孔が形成されている。この貫通孔が、上述の挿通孔88bである。
図6に示すように、カニューレ81は、保持ブロック138の収容凹部138aの抜去方向D2の開放端から、収容凹部138a内に収容される。そして、カニューレ81の延設部85が、内面縮径部89により構成される収容凹部138aの底面に接触するまで、カニューレ81の管本体部84を挿通孔88bに挿通される。これにより、カニューレ81を保持ブロック138に対して位置決めする。その後、固定部材83が、保持ブロック138の収容凹部138aの抜去方向D2の開放端から、収容凹部138a内に収容される。固定部材83が挿入方向D1に押し込まれることで、カニューレ81の延設部85が、固定部材83と、内面縮径部89と、の間に挟持される。これにより、カニューレ81が、カニューレハウジング82の保持ブロック138に対して固定される。
【0054】
図7に示すように、保持ブロック138の収容凹部138aの抜去方向D2は、第1セプタム142を介して第1カバー140により覆われている。つまり、上述したように、カニューレ81を、固定部材83を用いて、保持ブロック138に対して固定した後、保持ブロック138の収容凹部138aの抜去方向D2は、第1セプタム142を挟んで、第1カバー140により覆われる。更に、
図7に示すように、保持ブロック138は、収容空間88aと連通し、収容空間88aから軸方向Dと直交する方向に延在する接続流路88cを区画している。接続流路88cの一端部は収容空間88aと連なり、他端部は外部に開放されている。接続流路88cの他端部は、第2セプタム143を介して第2カバー141により覆われている。第1カバー140及び第2カバー141は、保持ブロック138に対して固定されている。第1セプタム142及び第2セプタム143は、シリコーンゴム等の自己封止能を有する可撓性部材から形成される。
【0055】
図5~
図7に示すように、上述した第1カバー140には、上述した内針200(
図11A~
図11C参照)が通過可能な通過孔140aが形成されている。内針200は、第1カバー140の通過孔140a、及び、第1セプタム142を通じて、収容空間88aに挿入される。また、内針200は、第1カバー140の通過孔140a、及び、第1セプタム142を通じて、収容空間88aから抜去される。そのため、内針200が抜去された後は、第1セプタム142が閉じるため、収容空間88aの液密性が確保される。
【0056】
図5~
図7に示すように、上述した第2カバー141には、装置本体2の接続針管12(
図4参照)が通過可能な通過孔141aが形成されている。装置本体2の接続針管12(
図4参照)は、第2カバー141の通過孔141a、及び、第2セプタム143を通じて、接続流路88c内に挿入される。これにより、装置本体2の薬液容器14(
図4参照)に収容されている薬液は、送液配管13(
図4参照)、接続針管12(
図4参照)、保持ブロック138の接続流路88c、保持ブロック138の収容空間88a、及び、カニューレ81、を通じて生体内に投与可能な状態となる。また、装置本体2の接続針管12は、第2カバー141の通過孔141a、及び、第2セプタム143を通じて、接続流路88cから抜去される。そのため、接続針管12が抜去された後は、第2セプタム143が閉じるためで、収容空間88aの液密性が確保される。このように、本実施形態では、第2カバー141が、カニューレハウジング82の接続部82aを構成している。
【0057】
図6、
図7に示すように、本実施形態の固定部材83は、挿入方向D1に縮径する漏斗状のテーパー管部90を備える。そして、
図7に示すように、カニューレ81の漏斗状の延設部85は、固定部材83のテーパー管部90と、カニューレハウジング82の内面縮径部89と、の間で挟持されている。より具体的に、本実施形態の固定部材83のテーパー管部90は、収容空間88aにおいて、カニューレ81の漏斗状の延設部85に内挿された状態で配置される。この状態で、本実施形態の固定部材83のテーパー管部90は、カニューレハウジング82の押圧部87により挿入方向D1に押圧された状態となる。そのため、カニューレ81の漏斗状の延設部85は、固定部材83のテーパー管部90の外周面と、カニューレハウジング82の内面縮径部89と、の間で挟持される。
【0058】
図7に示すように、本実施形態のテーパー管部90は、その挿入方向D1の一部のみがカニューレ81の漏斗状の延設部85に内挿された状態で、収容空間88aに配置される。換言すれば、テーパー管部90のうち抜去方向D2の一部は、収容空間88aにおいて、延設部85に内挿されていない状態で配置されている。本実施形態では、テーパー管部90において抜去方向D2側に位置するテーパー管部90の端部が、カニューレハウジング82の押圧部87としての突起部87aにより、挿入方向D1に押圧されている。突起部87aは、収容空間88aを区画する、カニューレハウジング82の内面、において突出している。より具体的に、本実施形態では、突起部87aは、保持ブロック138の収容凹部138aの内面側壁に形成されている。固定部材83のテーパー管部90は、突起部87aと摺動し、突起部87aを乗り越えるように、収容凹部138a内を挿入方向D1に押し込まれる。これにより、テーパー管部90が、カニューレハウジング82の押圧部87としての突起部87aにより、挿入方向D1に押圧されている状態を実現できる。換言すれば、テーパー管部90が、カニューレハウジング82の押圧部87としての突起部87aに突き当たることで、抜去方向D2に移動しない状態を実現できる。
【0059】
本実施形態のカニューレハウジング82の押圧部87としての突起部87aは、管本体部84の周方向Fの全域に亘って延在する環状突起であるが、この構成に限られない。突起部87aは、例えば、管本体部84の周方向Fに間欠的に配置されている複数の突起により構成されていてもよい。また、カニューレハウジング82の押圧部87は、上述の突起部87aに限られない。カニューレハウジング82の押圧部87は、例えば、収容空間88aを区画する、カニューレハウジング82の内面、に形成されている凹部により構成されていてもよい。収容空間88aを区画するカニューレハウジング82の内面に形成されている凹部とは、例えば、管本体部84の周方向Fの全域に亘って延在する環状溝が挙げられる。つまり、テーパー管部90は、その一部が、収容空間88aを区画するカニューレハウジング82の内面に形成されている環状溝に入り込むように構成される。これにより、テーパー管部90が挿入方向D1に押圧されている状態、及び、テーパー管部90が抜去方向D2に移動しない状態、が実現されてもよい。
【0060】
また、
図6、
図7に示すように、本実施形態の固定部材83は、テーパー管部90の挿入方向D1に連なる内挿管部91を更に備えている。内挿管部91は、カニューレ81の管本体部84に内挿されており、その外面がカニューレ81の管本体部84の内面に接触している。固定部材83が内挿管部91を備えることで、カニューレ81の管本体部84が折れ曲がることを抑制できる。固定部材83は、金属製であってもよく、樹脂製であってもよい。但し、固定部材83は樹脂製であることが好ましい。樹脂製の内挿管部91は、金属製の内挿管部と比較して、例えば、意図せず皮膚に押し当てられた際や体動等によりカニューレ81が皮膚表面付近で曲げ変形した際に、樹脂製の内挿管部91と管本体部84との間に隙間が生じ難い。そのため、樹脂製のカニューレ81の管本体部84に曲げ変形が生じても、カニューレ81の管本体部84の内面及び固定部材83の内挿管部91の外面の間に隙間が生じることを抑制できる。これにより、カニューレ81の管本体部84の内面と、固定部材83の内挿管部91の外面との間に薬液が浸入して滞留してしまうことを抑制できる。特に、微量の薬液を持続的に投与する場合は有益である。また、固定部材83を樹脂製とすることで、例えばX線検査等において固定部材83が邪魔にならない構成とすることができる。
【0061】
特に、上述した薬液浸入を抑制する観点では、内挿管部91のうち少なくとも挿入方向D1の端部が、周方向Fの全域で、カニューレ81の管本体部84の内面に接触していることが好ましい。また、上述した薬液浸入の抑制の観点では、内挿管部91の軸方向Dの全域が、周方向Fの全域で、カニューレ81の管本体部84の内面に接触していることが、より好ましい。
【0062】
図5~
図7に示すように、カニューレ81の中心軸線O1と、固定部材83の中心軸線O2と、は略一致するように配置されている。本実施形態におけるカニューレ81の中心軸線O1とは、管本体部84及び延設部85の中心軸線である。また、本実施形態における固定部材83の中心軸線O2とは、テーパー管部90及び内挿管部91の中心軸線である。また、上述したカニューレハウジング82の第1カバー140の通過孔140aは、中心軸線O1、O2上に位置している。
【0063】
また、
図8に示すように、本実施形態のカニューレ81の管本体部84は、先端部84a1を含む遠位側部84aと、基端部84b1を含み、遠位側部84aに対して抜去方向D2に位置する近位側部84bと、を備える。
図8に示すカニューレ81は、固定部材83の内挿管部91が内挿される前の状態を示している。
図8に示すように、近位側部84bの内径は、遠位側部84aの内径より大きい。より具体的には、
図8に示すように、管本体部84の近位側部84bの最小内径DL1minは、管本体部84の遠位側部84aの最大内径DL2max以上である。また、管本体部84の近位側部84bの最大内径DL1maxは、管本体部84の遠位側部84aの最大内径DL2maxより大きい。
【0064】
そして、固定部材83の内挿管部91が
図8に示すカニューレ81に内挿されることで、
図7に示す状態となる。
図7に示すように、固定部材83の内挿管部91は、管本体部84の近位側部84bに内挿され、管本体部84の遠位側部84aには内挿されない。つまり、本実施形態のカニューレ81の管本体部84は、固定部材83の内挿管部91が内挿される近位側部84bの内径が遠位側部84aの内径より大きくなるように、形成されている。これにより、管本体部84に固定部材83の内挿管部91が内挿されても、管本体部84が、内挿管部91により径方向Eに拡がるように引き延ばされることを抑制できる。そのため、管本体部84が引き延ばされることで発生する強度低下を抑制できる。その結果、管本体部84に折れ曲がりやキンクが発生することを抑制できる。
【0065】
但し、内挿管部91は、その最大外径DL3max(
図6参照)が、管本体部84の近位側部84bの最小内径DL1minより若干大きくなるように、形成されている。このようにすることで、固定部材83の内挿管部91を、管本体部84の近位側部84bに内挿した状態で、管本体部84の近位側部84bが過度に引き延ばされることを抑制しつつ、内挿管部91の外面と、近位側部84bの内面と、を密着させることができる。
【0066】
図8に示すように、本実施形態の管本体部84の遠位側部84aは、内径及び外径が一様であり、軸方向Dに直線状に延在するストレート部94と、このストレート部94の挿入方向D1に連なり、先端に向かって内径及び外径が縮径する先端縮径部95と、を備える。そのため、本実施形態の遠位側部84aの最大内径DL2maxは、遠位側部84aのストレート部94の軸方向Dの任意の位置での内径を意味している。但し、管本体部84の遠位側部84aは、本実施形態の構成に限られない。
【0067】
また、
図8に示すように、本実施形態の管本体部84の近位側部84bは、内径及び外径が一様であり、軸方向Dに直線状に延在するストレート部96により構成されている。そのため、本実施形態の近位側部84bの最小内径DL1min及び最大内径DL1maxは、近位側部84bを構成するストレート部96の軸方向Dの任意の位置での内径を意味している。但し、管本体部84の近位側部84bは、本実施形態の構成に限られない。
【0068】
また、
図8に示すように、本実施形態の遠位側部84a及び近位側部84bは、挿入方向D1に縮径する接続テーパー管部97を介して、軸方向Dに連なっているが、この構成に限られない。遠位側部84a及び近位側部84bは、例えば、軸方向Dに直交して延在する段差部を介して軸方向Dに隣接して配置されていてもよい。接続テーパー管部97が、遠位側部84a及び近位側部84bの間にあることで、遠位側部84aから近位側部84bにかけて、カテーテル81の厚みは、ほぼ一定とすることができる。これにより、装着中に曲げ応力がかかりやすい生体表面直上付近に位置する接続テーパー管部97の強度を確保できる。
【0069】
次に、カニューレポート6がベース体5に装着されている状態(
図2~
図4参照)でのカニューレ81と貼着面71aとの軸方向Dの位置関係を、
図9を参照して説明する。
図9に示すように、カニューレ81の管本体部84の遠位側部84aは、貼着面71aより挿入方向D1に突出している。その一方で、カニューレ81の管本体部84の近位側部84bは、貼着面71aより挿入方向D1に突出していない。特に、カニューレ81において、管本体部84の遠位側部84aのみが、貼着面71aを超えて挿入方向D1に突出していることが好ましい。すなわち、遠位側部84aのみが生体内に留置されることが好ましい。このようにすることで、近位側部84bの外径が遠位側部84aの外径より大きい場合であっても、この外径変化に伴う外面の段差等が生体表面に接触し難くなり、患者が違和感を感じ難くなる。また、管本体部84の遠位側部84aは、貼着面71aから抜去方向D2に少なくとも1mm延設されていることが好ましい。このようにすることで、上述の外面の段差等が生体表面に接触することを、より抑制できる。なお、これにより、近位側部84bの外径が遠位側部84aの外径より大きい構成とできるため、カニューレ81の厚みを保ったまま近位側部84bにおける固定力を維持でき、かつ、遠位側部84aの内径を細いものとすることができる。
【0070】
更に、
図7に示すように、本実施形態のカニューレ81の管本体部84は、固定部材83の内挿管部91と、挿通孔88bを区画する、カニューレハウジング82の内面と、の間に挟み込まれている、被挟持部92を備える。
図7に示すように、本実施形態の被挟持部92は、管本体部84の近位側部84bにより構成されている。換言すれば、本実施形態の固定部材83の内挿管部91は、挿通孔88bを区画する、カニューレハウジング82の内面との間で、管本体部84の近位側部84bを挟持するカシメピン(caulking pin)である。このように、カニューレ81は、上述した延設部85に加えて、管本体部84についても、カニューレハウジング82と固定部材83との間に挟持される構成であってもよい。このようにすることで、カニューレ81のカニューレハウジング82に対する位置固定性を、より高めることができる。
【0071】
より具体的に、本実施形態のカニューレハウジング82は、挿入方向D1に突出する筒部93を備えている。そして、この筒部93の内側に、挿通孔88bが区画されている。したがって、本実施形態では、被挟持部92としての近位側部84bが、固定部材83の内挿管部91の外面と、カニューレハウジング82の筒部93の内面と、により挟持されている。そして、遠位側部84aは、カニューレハウジング82の筒部93から挿入方向D1に突出している。筒部93の遠位端は、貼着面71aから抜去方向D2に少なくとも1mm以上離れた位置に形成された平坦面となっている。これにより、薬液投与装置1が生体表面に押し付けられた際に、筒部93の遠位端が皮膚に当接し難くなり、筒部93の遠位端が皮膚に当接することにより発生する患者の痛みを軽減できる。
【0072】
また、
図10に示すように、内挿管部91は、管部91aと、この管部91aから径方向に突出する突出部91bと、を備える構成であってもよい。内挿管部91が突出部91bを備えることで、被挟持部92としての近位側部84b(
図7参照)を、より強固に挟持できる。
図10に示す突出部91bは、管部91aの周方向全域に亘って延在する環状突起であるが、この構成に限られない。突出部91bは、例えば、管部91aの周方向全域に亘って延在する螺旋状突起であってもよい。また、
図10に示す突出部91bは、管部91aの軸方向の異なる位置に複数(
図10では2つ)配置されているが、突出部91bの数は特に限定されない。突出部91bは、1つのみであってもよく、管部91aの軸方向の異なる位置に3つ以上、配置されていてもよい。
【0073】
本開示に係るカニューレポート、クレードル装置及び薬液投与装置は、上述した実施形態に示す具体的な構成に限られず、特許請求の範囲を逸脱しない限り、種々の変更、変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本開示はカニューレポート、クレードル装置及び薬液投与装置に関する。
【符号の説明】
【0075】
1:薬液投与装置
2:装置本体
3:クレードル装置
5:ベース体
6:カニューレポート
11:筐体
12:接続針管
13:送液配管
14:薬液容器
15:駆動部
21:天板部
22:底板部
23:前板部
24:後板部
25:第1側板部
26:第2側板部
27:ポート収容部
27a:側壁
28:接続口
32:摺動溝
41:載置部
41a:載置部の上面
41b:載置部の下面
42:第1側壁部
43:第2側壁部
51:装着部
53:摺動レール
70:ベース本体
70a:収容空間
71:貼着シート
71a:貼着面
72:剥離紙
81:カニューレ
82:カニューレハウジング
82a:接続部
83:固定部材
84:カニューレの管本体部
84a:遠位側部
84a1:先端部
84b:近位側部
84b1:基端部
85:カニューレの延設部
86:支持部
87:押圧部
87a:突起部(押圧部の一例)
88a:収容空間
88b:挿通孔
88c:接続流路
89:内面縮径部
90:テーパー管部
91:内挿管部
91a:管部
91b:突出部
92:被挟持部
93:筒部
94:ストレート部
95:先端縮径部
96:ストレート部
97:接続テーパー管部
138:保持ブロック
138a:収容凹部
140:第1カバー
140a:通過孔
141:第2カバー
141a:通過孔
142:第1セプタム
143:第2セプタム
200:内針
A:着脱方向
A1:装着方向
A2:取り外し方向
B:装置幅方向
BS:生体表面
C:装置高さ方向
D:管本体部の軸方向
D1:管本体部の挿入方向
D2:管本体部の抜去方向
DL1:管本体部の近位側部の内径
DL2:管本体部の遠位側部の内径
DL3:内挿管部の外径
E:管本体部の径方向
F:管本体部の周方向
O1:カニューレの中心軸線
O2:固定部材の中心軸線