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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050290
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/02 20060101AFI20240403BHJP
   A47C 3/02 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A47C7/02 A
A47C3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157088
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖教
(72)【発明者】
【氏名】市川 智昭
(72)【発明者】
【氏名】横松 由佳
【テーマコード(参考)】
3B091
【Fターム(参考)】
3B091AA04
3B091AB03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】座の前部に生じ得るクッションからの空気抜け音の発生を好適に抑制し得るとともに座の前部に対する好適なクッション性を付与し得る椅子を提供する。
【解決手段】座Cを備えた椅子であり、支持部材1が合成樹脂製のものであり前部領域に左右方向に延びた第一、第二、第三、第四貫通孔h1、h2、h3、h4を備えている。座クッション2における各貫通孔h1、h2、h3、h4を臨む箇所に、凹み空間が形成され下向きに開放された第一、第二、第三前凹部m1、m2、m3、中間凹部msが設けられたものであり、各凹部m1、m2、m3、msが、着座者の荷重を受けた場合に、凹み空間が小さくなるように変形し得るものとした。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座クッションとこの座クッションの下面に取り付けられたクッション支持用の支持部材とを有した座を備えてなる椅子であって、
前記支持部材が合成樹脂製のものであり前部に所定方向に延びた貫通孔を備えたものであり、
前記座クッションにおける前記貫通孔を臨む箇所に、凹み空間が形成され下向に開放された凹部が設けられたものであり、
前記凹部が、着座者の荷重を受けた場合に、前記凹み空間が小さくなるように変形し得るものである椅子。
【請求項2】
前記貫通孔及び前記凹部が、それぞれ左右方向に延びてなるものである請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記前部が、前記支持部材を前部領域、前後方向中間領域、及び、後部領域に三等分した場合の前部領域である請求項1記載の椅子。
【請求項4】
前記貫通孔が、少なくとも、前記前部領域の左右方向中央部に配設された第一貫通孔を含んだものであり、
前記第一貫通孔が、前後方向に所定の間隔を空けて複数並設されている請求項3記載の椅子。
【請求項5】
前記貫通孔が、前記第一貫通孔よりも前に設けられた第二貫通孔を含んだものであり、
前記第二貫通孔が、底面視において前記座クッションを被覆する張地によって被覆されている請求項4記載の椅子。
【請求項6】
前記支持部材における前記第二貫通孔を臨む位置に、前記張地の端縁部に係止して当該端縁部の下方への移動を規制し得る係止突起が設けられている請求項5記載の椅子。
【請求項7】
前記貫通孔が、前記第一貫通孔よりも左右両外側に設けられた第三、第四貫通孔を含んだものであり、
前記第三貫通孔における前後方向の位置が、複数の前記第一貫通孔における最前のものと合致したものであり、
前記第四貫通孔が、前記第三貫通孔よりも左右両外側に設けられている請求項4記載の椅子。
【請求項8】
前記前部領域の上面側に、前記貫通孔を避けるようにして、互いに略平行をなし左右方向にレール状に延びてなる複数の凸レール部が突設されている請求項4記載の椅子。
【請求項9】
脚と、この脚の上に配設された前記座と、この座の後に配設された背凭れとを備えたものであり、
前記背凭れの後傾動作に伴わせて前記座の前部が上方に持ち上げられる構成をなす体重感知式のロッキング機構が設けられている請求項1記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィス等において使用される椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、オフィス等において好適に使用される種々の椅子が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この種の椅子においては、座が、座クッションと、当該座クッションの下面に取り付けられた支持部材とを有してなるものがある。座クッションには、長期間の使用に耐え得る一定の剛性とともに着座者に対して快適な座り心地を提供し得る所定のクッション性が求められている。
【0004】
ところが、従来から、座の前後方向中央部に対するクッション性については種々の探求がなされてきているが、座の前部に対するクッション性については殆ど研究されていなかった。
【0005】
本願に係る発明者等は、座の前部におけるクッション性を向上させるための種々の探求をしたところ、座クッションから排出される空気に起因して不快な音(いわゆる空気抜け音)が発生しやすくなる、という好ましくない現象を発見した。
【0006】
なお、この現象は、特に、背凭れの後傾動作に伴わせて座の前部が上方に持ち上げられる構成をなす体重感知式のロッキング機構が設けられている椅子の座において顕著である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08-105415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたものであり、少なくとも、座の前部に生じ得るクッションからの空気抜け音の発生を好適に抑制し得るとともに座の前部に対する好適なクッション性を付与し得る椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の椅子は次の構成をなしている。
【0010】
請求項1に記載の発明は、座クッションとこの座クッションの下面に取り付けられたクッション支持用の支持部材とを有した座を備えてなる椅子であって、前記支持部材が合成樹脂製のものであり前部に所定方向に延びた貫通孔を備えたものであり、前記座クッションにおける前記貫通孔を臨む箇所に、凹み空間が形成され下向に開放された凹部が設けられたものであり、前記凹部が、着座者の荷重を受けた場合に、前記凹み空間が小さくなるように変形し得るものである椅子である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記貫通孔及び前記凹部が、それぞれ左右方向に延びてなるものである請求項1記載の椅子である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記前部が、前記支持部材を前部領域、前後方向中間領域、及び、後部領域に三等分した場合の前部領域である請求項1記載の椅子である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記貫通孔が、少なくとも、前記前部領域の左右方向中央部に配設された第一貫通孔を含んだものであり、前記第一貫通孔が、前後方向に所定の間隔を空けて複数並設されている請求項3記載の椅子である。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記貫通孔が、前記第一貫通孔よりも前に設けられた第二貫通孔を含んだものであり、前記第二貫通孔が、底面視において前記座クッションを被覆する張地によって被覆されている請求項4記載の椅子である。
【0015】
請求項6に記載の発明は、前記支持部材における前記第二貫通孔を臨む位置に、前記張地の端縁部に係止して当該端縁部の下方への移動を規制し得る係止突起が設けられている請求項5記載の椅子である。
【0016】
請求項7に記載の発明は、前記貫通孔が、前記第一貫通孔よりも左右両外側に設けられた第三、第四貫通孔を含んだものであり、前記第三貫通孔における前後方向の位置が、複数の前記第一貫通孔における最前のものと合致したものであり、前記第四貫通孔が、前記第三貫通孔よりも左右両外側に設けられている請求項4記載の椅子である。
【0017】
請求項8に記載の発明は、前記前部領域の上面側に、前記貫通孔を避けるようにして、互いに略平行をなし左右方向にレール状に延びてなる複数の凸レール部が突設されている請求項4記載の椅子である。
【0018】
請求項9に記載の発明は、脚と、この脚の上に配設された前記座と、この座の後に配設された背凭れとを備えたものであり、前記背凭れの後傾動作に伴わせて前記座の前部が上方に持ち上げられる構成をなす体重感知式のロッキング機構が設けられている請求項1記載の椅子である。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、少なくとも、座の前部に生じ得るクッションからの空気抜け音の発生を好適に抑制し得るとともに座の前部に対する好適なクッション性を付与し得る椅子を提供することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第一実施形態を示す斜視図。
図2】同実施形態における正面図。
図3】同実施形態における右側面図。
図4】同実施形態における右側面図。
図5】同実施形態における座本体の底面図。
図6】同実施形態における座本体の分解斜視図。
図7】同実施形態における支持部材の底面図。
図8】同実施形態における座クッションの底面図。
図9】同実施形態における支持部材の斜視図。
図10図5におけるA-A線断面図。
図11図5におけるB-B線断面図。
図12図5におけるC-C線断面図。
図13図5におけるD-D線断面図。
図14図5におけるE-E線断面図。
図15図5におけるF-F線断面図。
図16図5におけるG-G線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態を、図1~16を参照して説明する。
【0022】
この実施形態は、本発明を、オフィス等において好適に使用される事務用の回転椅子である椅子に適用したものである。
【0023】
椅子は、脚Aと、脚Aの上端に水平旋回可能に取り付けられた支持基部Bと、支持基部Bの上に配設された座Cと、下端部が支持基部Bに回転可能に支持された背支持体Dと、背支持体Dに取り付けられた背凭れEを備えてなる。
【0024】
この実施形態の椅子には、標準姿勢(S)と後傾姿勢(K)との間でロッキング動作可能に構成され、背凭れEの後傾動作に伴わせて座Cを上動及び後方移動させるいわゆる体重感知式のロッキング機構Rが設けられている。
【0025】
体重感知式のロッキング機構Rは、図4に示されるように、背凭れEに連動した背支持体Dの後傾動作に伴わせて座Cの前部及び前後方向中央部を上方に持ち上げ得るとともに座Cの後端部を下方に移動させ得るように構成されたものである。
【0026】
以下、この椅子について詳述する。
【0027】
脚Aは、下端にキャスタを備えた複数本の脚羽根a1と、脚羽根a1の上端部が集合する部位から起立する脚支柱a2とを備えている。脚支柱a2は上下方向に伸縮可能に構成されている。
【0028】
支持基部Bは、脚Aの上端部に取り付けられている。支持基部Bの内部には、座C及び背凭れEをロッキング動作可能に支持するための図示しない支持機構が設けられている。
【0029】
続いて、本実施形態の座Cについて詳述する。
【0030】
<<座C>>
座Cは、支持基部Bの上に配されている。座Cは、合成樹脂によりシェル状に形成されたアウターシェルとも称される座受Fと、座面を有し座受Fに対して前後方向にスライド移動可能に支持された座本体Gとを備えたものである。
【0031】
座受Fと座本体Gとの間には、座本体Gに対して上下動可能に構成され上位置にあるときに座本体Gを前後方向にスライド移動可能な状態にさせ得る操作部材Hが設けられている。
【0032】
<座受F>
座受Fは、上部において座本体Gを支持し得る大きさを有したものである。座受Fには、支持部材1に形成された四つの案内スリットs2に係わり合う図示しない四本の抜止突起が突設されている。
【0033】
図示しない四つの抜止突起は、座本体Gを座受Fに対して離脱不能に係止し得るとともに座本体Gを座受Fに対して前後スライド可能に位置決めし得るものとなっている。
【0034】
<座本体G>
座本体Gは、座受Fよりも前後方向及び左右方向の寸法が大きく設定されたクッション支持用のシェル状部材である支持部材1と、支持部材1に支持され当該支持部材1よりも前後方向及び左右方向の寸法が大きく設定された座クッション2と、座クッション2の上部及び周縁部とともに支持部材1の周縁部を外側から被覆する座張地3とを備えたものである。
【0035】
[支持部材1]
支持部材1は、座クッション2の下面に取り付けられたクッション支持用のものである。支持部材1は、シェル状に形成された合成樹脂製のものである。支持部材1は、座クッション2の下面に添着されている。
【0036】
支持部材1は、底面視において後部が後方に凸をなすように湾曲した形状を有しつつ全体として略矩形状をなしたものである。
【0037】
この実施形態では、支持部材1の前部に、座クッション2の前部におけるクッション性・柔軟性・座り心地を向上させるとともに着座者の荷重を受けた座クッション2の圧縮に伴う座クッション2からの空気排出音(空気抜け音)の発生を抑制し得る複数の貫通孔である第一、第二、第三、第四貫通孔h1、h2、h3、h4が設けられている。
【0038】
ここで、「支持部材1の前部」とは、図7に明示するように、支持部材1を前から順に、前部領域r1、前後方向中間領域r2、後部領域r3に三等分した場合の前部領域r1を指している。
【0039】
支持部材1は、前後方向及び左右方向の中央部に配設された支持部材本体11と、支持部材本体11の周縁部に起立壁12を介して外側方に延設され下面が支持部材本体11の下面よりも上側に位置する周縁壁部13と、周縁壁部13における外周端縁の全周に下方に突出するように設けられたサポート壁14とを備えたものである。
【0040】
支持部材本体11は、前後方向中央部において前後方向に延設され座クッション2に凹設された中央凹部pに対応させて左右方向に複数設けられた座中央部スリットs1と、前部すなわち座中央部スリットs1よりも前側に左右方向に延びるように設けられ座クッション2に凹設された凹部である第二前凹部m2、第三前凹部m3、及び、中間凹部msに対応させて左右方向に延びた貫通孔である第一、第三、第四貫通孔h1、h3、h4と、座受Fに設けられた図示しない抜止突起が係合し得る前後方向に延びた案内スリットs2と、上下方向に貫設され操作部材Hを上下動可能且つ下方に抜け出し不能に支持し得る操作部材保持孔s3を備えている。
【0041】
第一貫通孔h1は、前部領域r1内に位置する支持部材本体11の左右方向中央部に配設されたものである。第一貫通孔h1は、前後方向に所定の間隔を空けて同一の形状のものが複数すなわち三つ並設されている。
【0042】
三つの第一貫通孔h1の内、最前の第一貫通孔h1は、座クッション2の第二前凹部m2と上下方向に重なる位置に設けられている。
【0043】
三つの第一貫通孔h1の内、最後の第一貫通孔h1は、座クッション2の第三前凹部m3と上下方向に重なる位置に設けられている。
【0044】
三つの第一貫通孔h1の内、中間の第一貫通孔h1は、第二前凹部m2と第三前凹部m3との間に設けられた浅底の中間凹部msと上下方向に重なる位置に設けられている。
【0045】
第三貫通孔h3は、前部領域r1内に位置する支持部材本体11の左右に対をなして配設されたものである。第三貫通孔h3は、第一貫通孔h1よりも左右両外側に設けられている。第三貫通孔h3における前後方向の位置は、三つの第一貫通孔h1における最前のものと合致したものとなっている。第三貫通孔h3は、第一貫通孔h1よりも短い幅寸法をなしている。
【0046】
左右の第三貫通孔h3は座クッション2の第二前凹部m2と上下方向に重なる位置に設けられている。
【0047】
第四貫通孔h4は、前部領域r1内に位置する支持部材本体11の左右に対をなして配設されたものである。第四貫通孔h4は、第三貫通孔h3よりも左右両外側に設けられている。第四貫通孔h4は、左右のそれぞれに、前後方向に所定の間隔を空けて同一の形状のものが複数すなわち二つ並設されている。第四貫通孔h4における前後方向の位置は、三つの第一貫通孔h1における中間のものと最後のものと合致したものとなっている。第四貫通孔h4は、第一貫通孔h1よりも短い幅寸法をなしており、第三貫通孔h3と略同じ大きさをなしている。
【0048】
二つの第四貫通孔h4の内、前の第四貫通孔h4は、座クッション2の中間凹部msと上下方向に重なる位置に設けられている。
【0049】
二つの第四貫通孔h4の内、後の第四貫通孔h4は、座クッション2の第三前凹部m3と上下方向に重なる位置に設けられている。
【0050】
前部領域r1に位置する支持部材本体11の上面側には、第一、第三、第四貫通孔h1、h3、h4を避けるようにして、互いに略平行をなし左右方向に直線レール状に延びてなる複数の凸レール部Lが上方に向かって突設されている。
【0051】
周縁壁部13は、支持部材本体11よりも外側に位置し、当該支持部材本体11よりも上に配設されている。支持部材本体11と周縁壁部13との間に介設された起立壁12は、支持部材本体11よりも周縁壁部13を上に位置させるとともに座張地3の端縁部3eを位置決めするためのものである。
【0052】
周縁壁部13は、底面視において支持部材本体11の外側を囲むように鍔状に配設されている。周縁壁部13の下、すなわち、周縁壁部13の下面側には、座張地3の端縁部3eが配設されるようになっている。つまり、支持部材1には、起立壁12、周縁壁部13、及び、サポート壁14により略下向きコ字状に囲まれてなり、座張地3の端縁部3eを収容し得る下方に開放された空間が形成されている。
【0053】
なお、底面視において四角環状に設けられた起立壁12における四つの角部分、及び、前部及び後部の左右方向中央部には、座張地3の端縁部3eに係止し得る係止突起tが突設されている。
【0054】
第二貫通孔h2は、前部領域r1内に位置する周縁壁部13の左右方向中央部に配設されたものである。第二貫通孔h2は、第一貫通孔h1よりも前に設けられている。第二貫通孔h2は、左右方向に幅広に形成されたものである。第二貫通孔h2は、第一貫通孔h1よりも短い左右方向幅寸法に設定されており、また、第一貫通孔h1よりも長い前後方向幅寸法に設定されている。
【0055】
第二貫通孔h2は、座クッション2の第一前凹部m1と上下方向に重なる位置に設けられている。
【0056】
第二貫通孔h2は、底面視において座クッション2を被覆する座張地3によって被覆されている。すなわち、第二貫通孔h2の下側に座張地3が位置するようになっている。支持部材1は、第二貫通孔h2を臨む位置に、起立壁12から突設され座張地3の端縁部3eに係止して当該端縁部3eの下方への移動を規制し得る係止突起tが設けられている。
【0057】
サポート壁14は、支持部材1における外周端縁の全周に設けられた下方に突出する形状のものである。サポート壁14は、周縁壁部13の外周端縁から下方に向かって延設された垂下壁状をなしている。
【0058】
サポート壁14は、座クッション2の周縁部を座張地3と協働して安定的に保持させる役割を担うものであり、外側面が座クッション2の内面たる垂設部22の内側面に添接し得るものとなっている。
【0059】
[座クッション2]
座クッション2は、発泡材であるウレタンフォーム材を主体に作られたものである。座クッション2の下面には、支持部材1が取り付けられている。底面視において、座クッション2の外縁形状は、支持部材1の外縁形状と近似した形状をなしている。
【0060】
座クッション2は、支持部材1に対して上側から外嵌する形状をなしている。座クッション2は、底面視において、支持部材1よりも大きな形状をなしている。座クッション2における前後方向及び左右方向の寸法は、支持部材1の前後方向及び左右方向の寸法よりも長く設定されている。
【0061】
座クッション2は、中央部に位置し支持部材1と係り合う主要部を構成する座クッション基部21と、座クッション基部21における周縁部に垂設された垂設部22とを備えたものである。
【0062】
座クッション基部21は、下面側の前後方向中央部に、支持部材1に設けられた座中央部スリットs1に対応させて前後方向に延びる複数の中央凹部pが凹設されている。中央凹部pは、下方に開放された凹み空間が形成されたものである。
【0063】
中央凹部pは、着座者の荷重を受けた場合に、凹み空間が小さくなるように圧縮変形されるものである。着座者の荷重を受けた場合に、中央凹部pの凹み空間内の空気は座中央部スリットs1を通じて支持部材1の下方に流出されるものとなっている。
【0064】
座クッション2の前部、すなわち、座クッション基部21における下面側の前部には、支持部材1に設けられた第一、第二、第三、第四貫通孔h1、h2、h3、h4を臨む箇所に、左右方向に延びてなる凹部である第一、第二、第三前凹部m1、m2、m3、及び、中間凹部msが設けられている。第一、第二、第三前凹部m1、m2、m3、及び、中間凹部msは、下方に開放された凹み空間が形成されたものである。
【0065】
第一、第二、第三前凹部m1、m2、m3、及び、中間凹部msは、着座者の荷重を受けた場合に、凹み空間が小さくなるように圧縮変形されるものである。着座者の荷重を受けた場合に、第一、第二、第三前凹部m1、m2、m3、及び、中間凹部msの凹み空間内の空気は、第一、第二、第三、第四貫通孔h1、h2、h3、h4を通じて支持部材1の下方に流出されるものとなっている。
【0066】
座クッション基部21に設けられた第一、第二、第三前凹部m1、m2、m3、及び、中間凹部msにおける左右方向中央部の無負荷状態における凹み度合を比較すると、第一、第二前凹部m1、m2の凹み度合が最も大きく設定されており、第三前凹部m3が第一、第二前凹部m1、m2よりも小さく且つ中間凹部msよりも大きく設定されており、中間凹部msが最も小さく設定されている。
【0067】
換言すれば、座クッション2は、前側に行くにしたがって圧縮変形し易い構成が採られている。このため、着座者は、座クッション2の前部における好適なクッション性に基づいて、大腿部の裏側に対する圧迫が低減されやすいものとなっている。
【0068】
第一、第二、第三前凹部m1、m2、m3、及び、中間凹部msは、着座者の荷重を受けた場合に、座クッション基部21が圧縮変形されることに伴って、各凹み空間が小さくなるように変形し得るものとなっている。その際に、第一、第二、第三前凹部m1、m2、m3、及び、中間凹部msの各凹み空間内の空気は、下方に向かって押し出され、第一、第二、第三、第四貫通孔h1、h2、h3、h4を通じて支持部材1の下方に流出されるものとなっている。
【0069】
座クッション基部21の下面側における前後の各左右二箇所には、座受Fに立設された図示しない抜止突起に対応する位置に当該抜止突起を回避するための凹部n1が形成されている。
【0070】
座クッション2の周縁部には、サポート壁14の外側面に添接し得る内面である内側面を有した垂設部22が設けられている。垂設部22は、座クッション2の周縁部において下方に垂下するような形態をなす部位である。垂設部22は、サポート壁14よりも外側に配設されている。
【0071】
[座張地3]
座張地3は、通気性及び伸縮性のある生地を主体に構成されたものである。座張地3は、座クッション2における上面、外側面、及び、周縁部の下面を外側から被覆し得るとともに支持部材1の周端縁に垂下するように設けられたサポート壁14を空間側から被覆し得るものとなっている。
【0072】
座張地3は、座クッション2及び支持部材1における周縁部の下面側をくるんだ状態で、その端縁部3eが図示しない紐状部材により絞り込まれることにより、全体が緊張された状態で座クッション2及び支持部材1に取り付けられている。
【0073】
座張地3の端縁部3eは、略環状をなしており図示しない紐状部材により縮径する方向に絞り込まれるようになっている。作業者による絞り込み作業が終了した後の座張地3の端縁部3eは、起立壁12の外向面に当接した状態で支持部材1の周縁壁部13の下に配設され、起立壁12に突設された係止突起tに係止されるようになっている。
【0074】
<操作部材H>
操作部材Hは、座本体Gに対して上位置と下位置との間で上下動可能に支持されている。操作部材Hは、座クッション2により下位置方向に付勢されている。操作部材Hの操作端である下端部は、座受Fの下に露出したものとなっている。操作部材Hは、その上端部が座クッション2に設けられた係合凹部n2に係合しており、座クッション2の弾性反発力を利用して下位置に付勢されたものとなっている。
【0075】
以上詳述したように本実施形態の椅子は、座クッション2と、座クッション2の下面に取り付けられたクッション支持用の支持部材1とを有した座Cを備えてなるものである。
【0076】
そして、支持部材1が合成樹脂製のものであり前部領域r1に左右方向に延びた貫通孔である第一、第二、第三、第四貫通孔h1、h2、h3、h4を備えたものである。
【0077】
座クッション2における第一、第二、第三、第四貫通孔h1、h2、h3、h4を臨む箇所には、凹み空間が形成され下向きに開放された凹部である第一、第二、第三前凹部m1、m2、m3、及び、中間凹部msが設けられたものである。
【0078】
第一、第二、第三前凹部m1、m2、m3、及び、中間凹部msは、着座者の荷重を受けた場合に、凹み空間が小さくなるように変形し得るものである。
【0079】
このため、本実施形態であれば、着座者による着座荷重が作用した場合に、座Cの前部に生じ得る座クッション2からの空気抜け音の発生を、第一、第二、第三、第四貫通孔h1、h2、h3、h4を備えた支持部材1によって好適に抑制し得るものとなっている。
【0080】
しかも、本実施形態であれば、座クッション2の前部が着座者の荷重を受けて厚み方向に圧縮変形された場合に、支持部材1の第一、第二、第三、第四貫通孔h1、h2、h3、h4を通じて座クッション2内の空気を外部に円滑に流通させることにより、座Cの前部に座り心地の良さに資する好適なクッション性を付与し得る構成を提供することができるものとなっている。
【0081】
第一、第二、第三、第四貫通孔h1、h2、h3、h4、及び、前凹部である第一、第二、第三前凹部m1、m2、m3、中間凹部msが、それぞれ左右方向に延びてなるものである。
【0082】
このため、支持部材1の前部領域r1に、第一、第二、第三、第四貫通孔h1、h2、h3、h4を好適に配設し得るものとなっている。
【0083】
支持部材1の前部が、支持部材1を、前部領域r1、前後方向中間領域r2、及び、後部領域r3に三等分した場合の前部領域r1である。
【0084】
このため、支持部材1における三分の一前部分、すなわち、前部領域r1に対して、集中的に、座クッション2における前部のクッション性の向上及び空気抜け音の発生の抑制に資する第一、第二、第三、第四貫通孔h1、h2、h3、h4が好適に配設されたものとなっている。
【0085】
第一貫通孔h1が、前部領域r1の左右方向中央部に配設されたものであり、前後方向に所定の間隔を空けて複数すなわち三つ並設されている。
【0086】
このため、前部領域r1の左右方向中央部に設けられた三つの第一貫通孔h1により、座クッション2が着座荷重を受けて圧縮変形された場合に、空気の排出が好適に促されるものとなる。そのため、支持部材1に設けられた三つの第一貫通孔h1は、座クッション2における前部の柔軟な圧縮変形性の向上及び空気抜け音の抑制に資するものとなっている。
【0087】
第二貫通孔h2が、第一貫通孔h1よりも前に設けられたものである。そして、第二貫通孔h2は、底面視において座クッション2を被覆する張地である座張地3によって被覆されている。
【0088】
このため、座クッション2が着座荷重を受けて圧縮変形された場合に、座張地3によって下方から目隠しされた第二貫通孔h2を通じて座クッション2内の空気が好適に外部に排出されるものとなっている。
【0089】
換言すれば、支持部材1において、座張地3の端縁部3eを係止するための係止突起tを形成するために形成された孔形状部分を第二貫通孔h2としている。すなわち、第二貫通孔h2に対応するように、座クッション2の前部に第一前凹部m1が設けられている。そして、着座荷重により座クッション2が圧縮変形された際に、第一前凹部m1の凹み空間からの空気抜け孔として第二貫通孔h2を合理的に利用することができるものとなっている。
【0090】
支持部材1における第二貫通孔h2を臨む位置に、座張地3の端縁部3eに係止して当該端縁部3eの下方への移動を規制し得る係止突起tが設けられている。
【0091】
このため、座クッション2側からの空気の排出力に抗して係止突起tにより座張地3の端縁部3eを安定的に位置決めさせることができるとともに、第二貫通孔h2を臨む座張地3により、座クッション2に起因する外部への埃の排出を好適に抑制し得るものとなっている。
【0092】
第三、第四貫通孔h3、h4が、第一貫通孔h1よりも左右両外側に設けられたものである。第三貫通孔h3における前後方向の位置が、三つの第一貫通孔h1における最前のものと合致したものであり、第四貫通孔h4が、第三貫通孔h3よりも左右両外側に設けられている。
【0093】
このため、第三、第四貫通孔h3、h4を通じて、着座荷重を受けた座クッション2からの排出空気を好適に外部に流通させることができるものとなっている。
【0094】
前部領域r1の上面側に、貫通孔を避けるようにして、互いに略平行をなし左右方向にレール状に延びてなる複数の凸レール部Lが突設されている。
【0095】
このため、支持部材1のリブとしても機能し得る凸レール部Lを利用して、支持部材1と座クッション2との間に、着座荷重を受けた際の座クッション2の変形部分が下方に移動し得る空間を好適に設けることができるものとなっている。
【0096】
脚Aと、脚Aの上に配設された座Cと、座Cの後に配設された背凭れEとを備えたものであり、背凭れEの後傾動作に伴わせて座Cの前部が上方に持ち上げられる構成をなす体重感知式のロッキング機構Rが設けられている。
【0097】
このため、背凭れEの後傾動作に伴って生ずる座Cの前部に対する着座者への荷重に対して、第一、第二、第三、第四貫通孔h1、h2、h3、h4を設けた支持部材1、及び、第一、第二、第三前凹部m1、m2、m3、中間凹部msを設けた座クッション2が好適に作用し、座Cの前部に好適なクッション性を付与し得るものとなっている。
【0098】
体重感知式のロッキング機構Rが設けられた椅子の場合、背凭れEの後傾動作に伴って座Cが後傾するだけでなく座Cの前部が上方に持ち上げられることになる。このとき、着座者は、座Cの動きによって大腿部の裏側が圧迫されやすいものとなっている。この実施形態では、着座者の大腿部に対応する箇所である座Cの前部に、支持部材1の第一、第二、第三、第四貫通孔h1、h2、h3、h4、及び、座クッション2の第一、第二、第三前凹部m1、m2、m3、中間凹部msが設けられている。本実施形態に係る椅子であれば、体重感知式のロッキング機構Rを作動させた場合であっても、座Cの前部に備えた好適なクッション性に基づいて、着座者は大腿部の裏側に対して過剰な圧迫感を受け難いものとなり、その結果、座Cに対する快適な座り心地を得られるものとなっている。
【0099】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限定されるものではない。
【0100】
貫通孔は、左右方向に延びたものに限られるものではない。また、貫通孔の形態は直線状に延びたものに限られたものではなく、曲線状のものであってもよい。
【0101】
貫通孔の本数や大きさや形態は適宜のものに設定可能であることは言うまでもない。例えば、貫通孔の幅は、一部分を他の部分よりも狭く構成したり或いは一部分を他の部分よりも広く構成したりしたものであってもよい。
【0102】
また、貫通孔は、単数であってもよいし、複数であってもよい。複数の貫通孔を有する場合は、これらがすべて平行になっている必要はなく、また、各貫通孔の長さが異なったものであってもよい。
【0103】
凹部は、凹み空間が形成され下向に開放されたものであればよく、その具体的な凹み度合や形状は適宜のものに設定可能なものである。
【0104】
クッション支持用の支持部材は、必ずしも支持部材に相応するものに限られるものではない。つまり、支持部材は、座クッションを支持し得るものであればどのようなものであってもよい。
【0105】
支持部材は、当該支持部材を支持する構造体に対して前後動可能な形態を採っていないものであってもよい。
【0106】
座クッションの凹部は、貫通孔に対して少なくとも一部が対応していればよく、完全に上下方向に対応したものでなくてもよいことはもちろんである。換言すれば、座クッションの凹部と貫通孔とは一部が上下方向において重なったものであればよい。
【0107】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0108】
C…座
G…座本体
1…支持部材
2…座クッション
h1…第一貫通孔(貫通孔)
h2…第二貫通孔(貫通孔)
h3…第三貫通孔(貫通孔)
h4…第四貫通孔(貫通孔)
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