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  • 特開-ブッシュ構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050291
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】ブッシュ構造
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/08 20060101AFI20240403BHJP
   F16F 1/38 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
F16F15/08 K
F16F1/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157089
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 僚介
(72)【発明者】
【氏名】小畠 勲
(72)【発明者】
【氏名】石松 久嗣
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048BA19
3J048CB01
3J048EA17
3J059AD05
3J059BA42
3J059BC01
3J059BC06
3J059BD01
3J059BD02
3J059BD05
3J059BD09
3J059DA12
3J059GA04
(57)【要約】
【課題】製造コストを軽減しつつ、軸方向のバネレートを向上させる。
【解決手段】ブッシュ10は、ブッシュ装着部3に内嵌する外筒11と、外筒11の内側に配置される内筒12と、外筒11および内筒12の間に設けられたゴムブッシュ13と、外筒11および内筒12の間に配置されて外筒11及びゴムブッシュ13と当接する二つのリング部材14,14と、を備える。内筒12は、外周面12aの一部に他の部分より外径D1の大きい膨出部15を有し、最外径D1は、それぞれのリング部材14の最内径D2よりも大きく(D1>D2)形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、
前記外筒の内側に配置された内筒と、
前記外筒および前記内筒の間に設けられたゴムブッシュと、
前記外筒および前記内筒の間に配置され前記外筒及び前記ゴムブッシュと当接する少なくとも一つのリング部材と、を備える、ことを特徴とするブッシュ構造。
【請求項2】
前記内筒は、外周面の一部に他の部分より外径の大きい膨出部を有し、
前記膨出部の最外径は、前記リング部材の最内径よりも大きい、ことを特徴とする請求項1に記載のブッシュ構造。
【請求項3】
前記外筒は、軸方向に対し垂直に開く穴部を有し、
前記リング部材は、径方向外側に爪部を有し、
前記穴部と、前記爪部と、が軸方向に当接している、ことを特徴とする請求項1または2に記載のブッシュ構造。
【請求項4】
前記リング部材は、軸方向で前記膨出部側ほど内径が大きくなる斜面部を有する、ことを特徴とする請求項2に記載のブッシュ構造。
【請求項5】
前記内筒は、外周面の一部に他の部分より外径の大きい膨出部を有し、
前記リング部材は、軸方向で前記膨出部側ほど内径が大きくなる斜面部を有する、ことを特徴とする請求項3に記載のブッシュ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブッシュ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブッシュ構造としては、外筒と内筒との間のゴム層の上下両端部位置にフランジ状の止め部を備えているものがある(例えば特許文献1等参照)。このようなブッシュ構造では、ゴム層の上下中間位置にリング形状の凹部を設けている。そして、外筒の周囲を覆う樹脂層を介して外筒をゴム層に連結固定して軸方向のバネレートを増大させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-210409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のブッシュ構造は、複数素材を使用しているため加工工数が多く製造コストが増大してしまう。また、樹脂層で外筒の周囲を覆うため、ブッシュ全体の径が大きくなり製品の大型化・重量増につながるという問題があった。このため、更なる改良の余地がある。
この発明は、製造コストを軽減しつつ、軸方向のバネレートを向上させることが出来る、ブッシュ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明のブッシュ構造は、外筒と、外筒の内側に配置された内筒と、外筒および内筒との間に設けられたゴムブッシュと、外筒および内筒との間に配置され外筒及びゴムブッシュと当接する少なくとも一つのリング部材と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、製造コストを軽減しつつ、軸方向のバネレートを向上させることが出来る、ブッシュ構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態1のブッシュ構造で、車両下部のサスペンションアーム近傍の構成を説明する斜視図である。
図2】実施形態1のブッシュ構造で、ブッシュの内部の構成を説明する図2中II-II線に沿った位置での縦断面図である。
図3】実施形態1のブッシュ構造で、ブッシュの内部の構成を説明する一部断面斜視図である。
図4】本発明の実施形態2のブッシュ構造で、ブッシュの内部の構成を説明する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。説明において、同一の要素には同一の番号を付し、重複する説明は省略する。また、方向を説明する場合は、車両の運転者からみた前後左右上下に基づいて説明する。なお、車幅方向と左右方向は同義である。
【0009】
[実施形態1]
図1は、本発明が適用される実施形態1のブッシュ構造を用いたブッシュ10を示している。車両の下部には、左,右一対のサスペンションアーム1が設けられている。ここでは、車両左側のサスペンションアーム1について説明し、左,右対称形状に形成される車両右側の構成および作用効果については説明を省略する。
サスペンションアーム1は、車幅方向Wに沿って配設されるアーム本体2aと、アーム本体2aの内側から後方へ延設される後アーム2bと、を一体に有して平面視で略r字状となるように構成されている。
【0010】
アーム本体2aのうち、車体側で中央寄りの一端部には、ブッシュ10を装着するブッシュ装着部3が設けられている。また、アーム本体2の外側端部は、車輪を支持する不図示のハブキャリアに連結されている。
このうち、ブッシュ装着部3は、車両前後方向FRに軸方向Lを沿わせて貫通形成される円筒状の貫通穴を有している。
ブッシュ10は、軸方向Lに沿ってブッシュ装着部3の貫通穴に挿入されて、図示しない車体側の取付部にブッシュ10を介して取り付けられることによりサスペンションアーム1を支持している。
また、後アーム2bの後端は、上下方向を中心軸とするコンプライアンスブッシュ2cを介して車体に連結されて車両の下部にサスペンションアーム1が装着されている。
【0011】
図1及び図2に示すように、ブッシュ10は、ブッシュ装着部3の内側に挿入されて内嵌する外筒11と、外筒11の内側に配置されて車体側の取付部に取り付けられる内筒12と、を備えている。また、ブッシュ10は、外筒11および内筒12の間に設けられたゴムブッシュ13を備える。そして、ブッシュ10は、外筒11および内筒12の間に外筒11及びゴムブッシュ13と当接する二つのリング部材14,14を配置している。
【0012】
このうち、外筒11は、金属製の円筒形状を呈し、軸方向Lの一端に設けられた開口部から外方に向けて拡径する環状の外側フランジ11aが形成されている。外筒11は、この一端の反対側に位置する他端からブッシュ装着部3の貫通穴内に挿入されて取り付けられる。外筒11は、内嵌状態で外側フランジ11aを貫通穴の開口周縁に係合させて軸方向Lにて位置決めが行われてブッシュ装着部3に固定される。
【0013】
図3に示すように、実施形態1の外筒11は、外周面11bの一部に軸方向Lに対し垂直に開く穴部16を有している。穴部16は、外筒11の軸方向Lで両端間の中間に位置して、外周面11bの周方向の一部に内外に向けて側面視略方形形状となるように貫通形成されている。
【0014】
また、内筒12は、外筒11に比して肉厚の金属製で円筒形状に形成されている(図1参照)。実施形態1の内筒12は、外周面12aの一部に他の部分より外径の大きい膨出部15を有している。
膨出部15は、内筒12の軸方向Lで両端間の中間の位置に全周に亘り形成されている。膨出部15の外径の寸法D1は、他の外周面12a部分の外径の寸法D3と比べて大きく(D1>D3)、設定されて径方向外方に向けて縦断面略山型に膨らんで形成されている。
さらに膨出部15の最外径D1は、それぞれのリング部材14の最内径D2よりも大きく(D1>D2)、形成されている。
【0015】
ゴムブッシュ13は、弾性変形可能なゴム弾性体によって形成されている。図1に示すように、ゴムブッシュ13は、縦断面では、軸方向の両端部が凹状に凹む括れ形状を呈している。
ゴムブッシュ13は、外筒11および内筒12の間に設けられて、外筒11と内筒12との間に加わる軸方向Lの荷重をせん断方向の弾性によって保持している。また、外筒11と内筒12との間に加わる軸方向Lと直交する軸直上下方向(図2に示す上下方向H)または軸直左右方向(車幅方向W)の荷重は、ゴムブッシュ13が径方向の弾性により圧縮および伸長して保持される。
このように、穴部16を外筒11の上側に設けることで、上下方向Hのバネレートを軸方向Lおよび軸直左右方向(車幅方向W)のバネレートよりも下げることができる。
【0016】
リング部材14は、樹脂製で軸方向Lに貫通形成された円形の開口を有して円環状に形成されている。二つのリング部材14は、ゴムブッシュ13に埋め込まれており、軸方向Lに所定の間隔を空けて配置されている。また、二つのリング部材14の間に外筒11の穴部16が配置されている。そして、リング部材14の内側の縁部が穴部16の内周縁16aに沿って配置されている
また、それぞれのリング部材14は、外筒11の内側に内装される際の締め代による反力および接着材を用いた接着により、外筒11の内側壁に沿って固定される。
【0017】
また、リング部材14は、外周面の一部に径方向外側に向けて凸設される爪部17をそれぞれ有しいている。各爪部17は、外筒11の穴部16のうち、軸方向Lに間隔をあけて対向する一対の内周縁16a,16aに対してそれぞれ軸方向L外側に向けて当接して係止される。このため、ブッシュ10の両端部から軸方向Lに加わる荷重がそれぞれのリング部材14により受け止められてバネレートを増大させることができる。
【0018】
図1に示すようにリング部材14は、軸方向Lで膨出部15側ほど内径D2が大きくなる斜面部18を有している。また、リング部材14は、縦断面形状が略直角二等辺三角となるように形成されている。そして、斜辺に位置する斜面部18は、軸方向Lに対して約45度傾斜して形成される。
さらに各リング部材14のそれぞれの斜面部18は、ゴムブッシュ13を介装させて膨出部15の軸方向Lで両側に配置されている。これにより、斜面部18は、同様に軸方向Lに対して約45度で傾斜する膨出部15の各斜壁部15aとそれぞれ正対して配置されている。
【0019】
[実施形態2]
図4は、本発明の実施形態2のブッシュ20を示すものである。なお実施形態1のブッシュ10と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明を省略する。
実施形態2のブッシュ20は、内筒22の外周面22aが略全域で等しい外径寸法の直管状に形成されていて、実施形態1の膨出部15(図1参照)は形成されていない。
実施形態2のゴムブッシュ23の内側壁は、直管状の内筒22の外周面22aに当接して外筒11と内筒12との間に加わる軸方向Lの荷重をせん断方向の弾性によって保持している。
また、実施形態2のリング部材14は、ゴムブッシュ23の軸方向Lで中間側ほど内径が大きくなる斜面部18を有している。
【0020】
このように構成された実施形態2のブッシュ20は、実施形態1のブッシュ10の作用効果に加えてさらに、内筒22に実施形態1の内筒12のような膨出部15を絞り加工等により形成する必要が無い。このため、加工工数を減少させてさらに製造コストを軽減させることができる。
他の構成および作用効果については、実施形態1のブッシュ10と同様であるため、説明を省略する。
【0021】
上述してきたように、本実施形態のブッシュ構造は、ブッシュ10が外筒11と、外筒11の内側に配置された内筒12と、外筒11および内筒12の間に設けられたゴムブッシュ13と、を備える。またブッシュ10は、外筒11および内筒12の間に配置され外筒11及びゴムブッシュ13と当接する一つの以上のリング部材14,14を備える。
【0022】
このように構成された実施形態のブッシュ構造は、ブッシュ10,20全体の径方向の大型化が抑制されて製造コストを軽減しつつ、軸方向Lのバネレートを向上させることが出来る。
詳しくは、図1に示すようにリング部材14が外筒11および内筒12の間に配置されて外筒11及びゴムブッシュ13と当接している。このため、ブッシュ10の内筒12に軸方向Lへ加わる荷重は、ゴムブッシュ13を圧縮しながらリング部材14により保持されて外筒11に伝達される。
したがって、ブッシュ10は、大型化・重量増を招くことなく、軸方向Lのバネレートを向上させることが出来る。
【0023】
さらに実施形態のリング部材14,14は、軸方向Lに離し置きされて二つ設けられている。このため、ゴムブッシュ13を圧縮する荷重は、軸方向Lの二か所でそれぞれ個別にリング部材14によって保持される。したがって、ブッシュ10は、軸方向Lのバネレートをさらに向上させることが出来る。
そして、外筒11に絞り加工等を行って括れ形状等を形成する必要がない。このため、加工工数を減少させてブッシュ10の製造コストを軽減させることができる。
【0024】
また、図1に示すように内筒12は、外周面11bに他の部分の外径の寸法D3より外径の寸法D1の大きな膨出部15を形成して径方向で外方へ膨出させている。さらに膨出部15の最外径D1は、それぞれのリング部材14の最内径D2よりも大きく(D1>D2)なるように形成されている。
このため、軸方向Lで膨出部15とリング部材14とが一部重複する。したがって、実施形態1のブッシュ10は、さらに軸方向Lのバネレートを向上させることが出来る。
【0025】
さらに、実施形態1では、リング部材14の斜面部18が軸方向Lで膨出部15の両側に一対形成された各斜壁部15aとそれぞれ正対している。
このため、ゴムブッシュ13は、径方向に等しい厚さ寸法かつ等しい角度で斜面部18および斜壁部15a間に介装される。
これにより、内筒22の耐久性が低下しない範囲で膨出部15の膨出量および斜壁部15aの傾斜角度(例えば45度以内等)を設定してもバネレートが向上し、絞り加工等を容易なものとすることができる。
【0026】
また、外筒11は、軸方向Lに対し垂直に開く穴部16を有し、リング部材14は、径方向外側に爪部17を有し、穴部16と、爪部17と、が軸方向Lにて当接している。
このため、軸方向Lにブッシュ10の両端部から加わる双方向の荷重をそれぞれのリング部材14が保持する。
したがって、さらに軸方向Lのバネレートを向上させることが出来る。
さらに外筒11に形成された穴部16の周方向位置により穴部16とそれ以外の部分との軸直方向(図2に示す上下方向Hまたは車幅方向W)にてそれぞれ異なるバネレートに設定することができる。これにより、使用目的に適応させてブッシュ10の特性を容易に調整することが可能となる。
【0027】
図1に示す実施形態1のリング部材14は、軸方向Lで膨出部15側ほど内径D2が大きくなる斜面部18を有している。
このため、外筒11に固定されたリング部材14により外筒11への加工数を減少させても所望のバネレートを得られる。
また、実施形態1では、図1に示すように内筒12の外周面12aの軸方向L中間に最外径D1を有する膨出部15がそれぞれのリング部材14の最内径D2よりも大きく(D1>D2)なるように形成されている。
このため、軸方向Lにてリング部材14と膨出部15とが一部重複して、さらにバネレートを向上させることができる。
【0028】
さらに、リング部材14は、縦断面形状を直角二等辺三角形として斜面部18を膨出部15に形成された斜壁部15aと正対させる。これにより、介在するゴムブッシュ13は、バネレートを安定させることが出来る。
また、外筒11に小径寸法の括れ部を絞り加工で形成する場合のように外筒11の耐久性を低下させる虞がない。さらに絞り加工による製造コストの増大を抑制することができる、といった実用上有益な作用効果を発揮する。
【0029】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、若しくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。上記実施形態に対して可能な変形は、たとえば、以下のようなものである。
【0030】
実施形態では、外筒11および内筒12の間に配置され外筒11及びゴムブッシュ13と当接する二つのリング部材14,14と、を備える。しかしながら特にこれに限らず、リング部材14は単数また三つ以上の複数であってもよい。すなわち、リング部材14は外筒11および内筒12の間に配置され外筒11及びゴムブッシュ13と当接するものであればよく、リング部材14の形状、数量および材質が実施形態の構成に限定されるものではない。
【0031】
さらに、実施形態1.2では、穴部16を外筒11,21の一部に形成しているが、特にこれに限らず、穴部16を設けなくてもよく、穴部16を二つ以上等、複数形成してもよい。すなわち、穴部16の形状、数量および形成位置が限定されるものではない。
【符号の説明】
【0032】
10 ブッシュ
11 外筒
12 内筒
13 ゴムブッシュ
14 リング部材
図1
図2
図3
図4