(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050303
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】制御装置、天井クレーンシステム及び天井クレーンの制御方法
(51)【国際特許分類】
B66C 13/06 20060101AFI20240403BHJP
B66C 13/32 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B66C13/06 M
B66C13/32 K
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157103
(22)【出願日】2022-09-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】504005781
【氏名又は名称】株式会社日立プラントメカニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】本間 清忠
(72)【発明者】
【氏名】野口 峻介
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA02
3F204BA06
3F204CA03
3F204DA03
3F204EA06
3F204FD03
(57)【要約】
【課題】効率的な天井クレーンによる搬送を行うことを課題とする。
【解決手段】吊荷を懸吊しているガーダが搬送開始位置から加速する期間である期間T1と、ガーダが搬送目的位置まで減速する期間である期間T6と、期間T1の後、かつ、期間T6の前の期間で、搬送装置が等速度運動する期間である期間T2,T5と、を有し、期間T2,T5の間に、ガーダの減速を行う期間であるとともに、期間T6以外の期間である期間T3と、期間T3の後に、ガーダの加速を行う期間であるとともに、期間T1以外の期間である期間T4と、を有するようガーダを制御する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊荷を懸吊している天井クレーンの搬送装置が搬送開始位置から加速する期間である第1の加速期間と、
前記搬送装置が搬送目的位置まで減速する期間である第1の減速期間と、
前記第1の加速期間の後、かつ、前記第1の減速期間の前の期間で、前記搬送装置が等速度運動する期間である第1の等速度運動期間と、
を有するよう制御する制御装置であって、
前記第1の等速度運動期間の間に、前記搬送装置の減速を行う期間であるとともに、前記第1の減速期間以外の期間である第2の減速期間と、
前記第2の減速期間の後に、前記搬送装置の加速を行う期間であるとともに、前記第1の加速期間以外の期間である第2の加速期間と、
を有するよう前記搬送装置の制御パターンを生成する制御パターン生成部を
有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記制御パターン生成部は、
前記第1の減速期間の終了時に前記吊荷の振れ角及び振れ角速度が0となるよう、前記第1の減速期間の終了時から前記振れ角及び前記振れ角速度を逆算することで前記第2の減速期間及び前記第2の加速期間が行われる時間を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御パターン生成部は、
前記第1の減速期間が開始される際の前記吊荷の前記振れ角及び前記振れ角速度を、前記第1の減速期間の終了時に前記振れ角及び前記振れ角速度が0となるよう逆算し、前記第1の減速期間の開始時の前記振れ角及び前記振れ角速度を基に、前記第2の減速期間及び前記第2の加速期間が行われる時間を前記振れ角及び前記振れ角速度を逆算することによって決定する
ことを特徴とする請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御パターン生成部は、
前記第1の加速期間と、前記第1の等速度運動期間との間に、前記搬送装置の減速を行う期間であり、前記第1の減速期間以外の期間であるとともに、前記第2の減速期間以外の期間である第3の減速期間と、
前記第3の減速期間の後、前記搬送装置の加速を行う期間であり、前記第1の加速期間以外の期間であるとともに、前記第2の加速期間以外の期間である第3の加速期間と
を有するよう前記制御パターンを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御パターン生成部は、
前記第1の等速度運動期間と、前記第1の減速期間との間に、前記搬送装置の減速を行う期間であり、前記第1の減速期間以外の期間であるとともに、前記第2の減速期間以外の期間である第4の減速期間と、
前記第4の減速期間の後、前記搬送装置の加速が行われる期間であり、前記第1の加速期間以外の期間であるとともに、前記第2の加速期間以外の期間である第4の加速期間と、
を有するよう前記制御パターンを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御パターン生成部は、
前記第1の減速期間中において、前記搬送装置の等速度運動を行う期間であり、前記第1の等速度運動期間以外の期間である第2の等速度運動期間を
有するよう前記制御パターンを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
吊荷を懸吊し、搬送する天井クレーンを有し、
前記天井クレーンの搬送装置が搬送開始位置から加速する期間である第1の加速期間と、
前記搬送装置が搬送目的位置まで減速する期間である第1の減速期間と、
前記第1の加速期間の後、かつ、前記第1の減速期間の前の期間で、前記搬送装置が等速度運動する期間である第1の等速度運動期間と、
を有するよう制御する制御装置と、
を有する天井クレーンシステムであって、
前記制御装置は、
前記第1の等速度運動期間の間に、前記搬送装置の減速を行う期間であるとともに、前記第1の減速期間以外の期間である第2の減速期間と、
前記第2の減速期間の後に、前記搬送装置の加速を行う期間であるとともに、前記第1の加速期間以外の期間である第2の加速期間と、
を有するよう前記搬送装置の制御パターンを生成する
ことを特徴とする天井クレーンシステム。
【請求項8】
吊荷を懸吊している天井クレーンの搬送装置の制御する制御装置によって、
搬送開始位置から加速する期間である第1の加速期間と、
前記搬送装置が搬送目的位置まで減速する期間である第1の減速期間と、
前記第1の加速期間の後、かつ、前記第1の減速期間の前の期間で、前記搬送装置が等速度運動する期間である第1の等速度運動期間と、
を有し、
さらに、
前記第1の等速度運動期間の間に、前記搬送装置の減速を行う期間であるとともに、前記第1の減速期間以外の期間である第2の減速期間と、
前記第2の減速期間の後に、前記搬送装置の加速を行う期間であるとともに、前記第1の加速期間以外の期間である第2の加速期間と、
を有するよう前記搬送装置の制御パターンが生成され、
前記制御パターンを基に前記搬送装置が制御される
ことを特徴とする天井クレーンの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、天井クレーンシステム及び天井クレーンの制御方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
天井クレーン装置によって懸吊され、搬送される吊荷の揺れを防止するための振れ止め制御の技術が開示されている。例えば、非特許文献1には、天井クレーン装置が吊荷を懸吊して搬送中に加減速を複数回行って、吊荷の揺れを低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“クレーンのリアルタイムバンバン制御”、吉田靖夫,十河拓也、総合工学 第22巻(2010)1頁-6 頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
天井クレーン装置が吊荷を懸吊して搬送する際、特に加速中及び減速中に大きな荷振れが発生するため、従来の振れ止め制御では加速及び減速の途中で、吊荷の速度を一旦一定速にして荷振れを抑えている。そのため、加速と減速とが完了するまでの平均加速度が小さくなるため、ある距離を搬送するために要する搬送時間が振れ止め制御しない場合に比べ増加するという課題がある。
【0005】
このような背景に鑑みて本発明がなされたのであり、本発明は、効率的な天井クレーンによる搬送を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するため、本発明は、吊荷を懸吊している天井クレーンの搬送装置が搬送開始位置から加速する期間である第1の加速期間と、前記搬送装置が搬送目的位置まで減速する期間である第1の減速期間と、前記第1の加速期間の後、かつ、前記第1の減速期間の前の期間で、前記搬送装置が等速度運動する期間である第1の等速度運動期間と、を有するよう制御する制御装置であって、前記第1の等速度運動期間の間に、前記搬送装置の減速を行う期間であるとともに、前記第1の減速期間以外の期間である第2の減速期間と、前記第2の減速期間の後に、前記搬送装置の加速を行う期間であるとともに、前記第1の加速期間以外の期間である第2の加速期間と、を有するよう前記搬送装置の制御パターンを生成する制御パターン生成部を有することを特徴とする。
その他の解決手段は実施形態中において適宜記載する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、効率的な天井クレーンによる搬送を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る天井クレーン装置の概略図である。
【
図2】本実施形態に係る制御システムの構成例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る制御システムの詳細を示す機能ブロック図である。
【
図4】天井クレーン装置の駆動機構を示す機能ブロック図である。
【
図5】振り子長及び移動距離を説明するための図である。
【
図6】振れ角及び振れ中心傾き角の定義を示す図である。
【
図7】本実施形態で行われる振れ制御における走行速度、振れ角及び振れ角速度とガーダの移動時間との関係を示す図である。
【
図8】本実施形態におけるガーダの走行中における吊荷の状態を示す図である。
【
図9】本実施形態で行われる振れ制御を位相面における位相面軌跡で示す図である。
【
図10】本実施形態における速度制御の変形例を示す図(その1)である。
【
図11】本実施形態における速度制御の変形例を示す図(その2)である。
【
図12】本実施形態における速度制御の変形例を示す図(その3)である。
【
図13】第1比較例で行われる振れ制御における走行速度、振れ角及び振れ角速度とガーダの移動時間との関係を示す図である。
【
図14】第1比較例におけるガーダの移動中における吊荷の状態を示す図である。
【
図15】第1比較例で行われる振れ制御を位相面における位相面軌跡で示す図である。
【
図16】第2比較例で行われる振れ制御における走行速度、振れ角及び振れ角速度とガーダの移動時間との関係を示す図である。
【
図17】第2比較例におけるガーダの移動中における吊荷の状態を示す図である。
【
図18】第2比較例で行われる振れ制御を位相面における位相面軌跡で示す図である。
【
図19】第3比較例で行われる振れ制御における走行速度、振れ角及び振れ角速度とガーダの移動時間との関係を示す図である。
【
図20】第3比較例におけるガーダの移動中における吊荷の状態を示す図である。
【
図21】第3比較例で行われる振れ制御を位相面における位相面軌跡で示す図である。
【
図22】本実施形態で用いられるPCのハードウェア構成を示す図である。
【
図23】本実施形態で用いられるPLCのハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
(天井クレーン装置6)
図1は、本実施形態に係る天井クレーン装置6の概略図である。
天井クレーン装置(天井クレーン)6は、吊荷Sを懸吊して搬送する装置であり、搬送装置であるクラブトロリ601及びガーダ602を有している。
クラブトロリ601は、ガーダ602上を横行するための横行車輪612、ワイヤ605を巻き上げる又は巻き下げるための巻取装置611を有している。ワイヤ605の先端には吊荷Sを懸吊するための吊具606が備えられている。なお、吊荷Sは鉄板をロール状に巻いたコイルである。
【0011】
ガーダ602には、クラブトロリ601が横行する横行レール603が備えられるとともに、走行レール604上をガーダ602が走行するための走行車輪613が備えられている。
クラブトロリ601の横行車輪612によって、クラブトロリ601がガーダ602の長手方向に横行する。また、ガーダ602の走行車輪613によって、ガーダ602が走行レール604の長手方向に走行する。
【0012】
ここで、ガーダ602の長手方向の移動を「横行」と称し、走行レール604の長手方向の移動を「走行」と称する。なお、「横行」、「走行」をあわせて「移動」と適宜称する。
ガーダ602が走行レール604上を走行し、かつ、クラブトロリ601がガーダ602上を横行することにより、吊荷Sが目的の位置まで運ばれる。そして、クラブトロリ601に備えられている巻取装置611がワイヤ605を巻き上げたり、巻き下げたりすることで、吊荷Sの上げ下げが行われる。
【0013】
クラブトロリ601の速度制御や、巻取装置611によるワイヤ605の巻取制御は、制御システムZ1によって行われる。
【0014】
(システム構成)
図2は、本実施形態に係る制御システムZ1の構成例を示す図である。
図2において、
図1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
管理制御PC3、PLC(Programmable Logic Controller)1、制御装置であるPC(Personal Computer:制御装置)4、速度制御装置5を有する。
管理制御PC3は、上位システム2から横行目標位置122及び走行目標位置127を取得する。上位システム2には、搬送目的位置である横行目標位置122及び走行目標位置127が手入力等によって入力される。
【0015】
PLC1は、横行位置検出器622からクラブトロリ601の現在の横行位置や、走行位置検出器623からクラブトロリ601の現在の走行位置を取得する。ちなみに、横行位置検出器622はレーザ測距によって横行現在位置123を計測する。同様に、走行位置検出器623はレーザ測距によって走行現在位置126を計測する。
【0016】
また、PLC1は、振れ角検出器624から吊荷Sの振れ角を取得する。振れ角検出器624は、傾斜角度計によって、吊荷Sの横行方向に対する現在の振れ角を横行振れ角124(
図3参照)として検出するとともに、吊荷Sの走行方向に対する現在の振れ角を走行振れ角125(
図3参照)として検出する。さらに、PLC1は、巻上位置検出器621から現在の巻上位置を取得する。巻上位置検出器621はエンコーダによって現在の巻上位置を検出する。
【0017】
PLC1は、取得した各情報を基に、振れ周期139、横行移動距離133、横行移動速度134、横行振れ角124、横行振れ角速度135、走行移動距離138、走行移動速度137、走行振れ角125、走行振れ角速度136(それぞれ
図3参照)を算出する。そして、算出した各情報をPC4に出力する。PC4は、PLC1から取得した各情報を基に、機械学習によって横行速度パターン431、及び、走行速度パターン432(それぞれ
図3参照)を生成する。横行速度パターン431、及び、走行速度パターン432については後記する。そして、PC4は生成した横行速度パターン431、及び、走行速度パターン432をPLC1に入力する。
【0018】
そして、PLC1は、取得した横行速度パターン431や、走行速度パターン432等を基に、横行速度指令143、走行速度指令144(
図3参照)を生成し、速度制御装置5に出力する。速度制御装置5は、クラブトロリ601や、ガーダ602の速度制御を行うことで、クラブトロリ601の移動を行う。
【0019】
なお、本実施形態では、横行現在位置123、走行現在位置126はレーザ測距によって計測され、現在の振れ角は傾斜角度計によって計測され、巻上現在位置121はエンコーダによって計測されるものとしているが、これらの計測方法に限られない。
【0020】
(制御システムZ1)
図3は、本実施形態に係る制御システムZ1の詳細を示す機能ブロック図である。なお、
図3において、
図1及び
図2で説明済みの構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0021】
(PLC1及びPC4)
PLC1は、振り子長演算部101、振れ周期演算部102、横行移動距離演算部103、横行移動速度演算部104を有する。さらに、PLC1は、横行振れ角速度演算部105、走行振れ角速度演算部106、走行移動速度演算部107、走行移動距離演算部108を有する。また、PLC1は、横行最大振れ幅演算部111、走行最大振れ幅演算部112、自動運転制御部113を有する。
【0022】
振り子長演算部101は、予めPLC1に格納されている巻上基準位置の振り子長131と、巻上位置検出器621から入力された巻上現在位置121とを基に現在の振り子長132を算出する。また、巻上基準位置の振り子長132は、現在の振り子長132を算出する際の基準となる振り子長である。巻上基準値の振り子長131は、初期設定値として予めPLC1に設定されている。
【0023】
振れ周期演算部102は、振り子長演算部101によって算出された現在の振り子長132を基に吊荷Sの振れ周期139を算出する。
【0024】
横行移動距離演算部103は、管理制御PC3から入力された横行目標位置122と、前回の横行位置検出器622から入力された横行現在位置123とを基に、現在の横行移動距離133を算出する。
また、横行移動速度演算部104は、横行位置検出器622から入力された横行現在位置123と、所定時間前の横行現在位置123(不図示)とを基に、現在の横行移動速度134を算出する。
【0025】
横行振れ角速度演算部105は、振れ角検出器624から入力された横行振れ角124と、所定時間前の横行振れ角124(不図示)とを基に、横行方向の振れ角速度である横行振れ角速度135を算出する。
また、走行振れ角速度演算部106は、振れ角検出器624から入力された走行振れ角125と、所定時間前の走行振れ角125(不図示)とを基に、走行方向の振れ角速度である走行振れ角速度136を算出する。
【0026】
走行移動速度演算部107は、走行位置検出器623から入力された走行現在位置126と、所定時間前の走行現在位置126とを基に、現在の走行移動速度137を算出する。
そして、走行移動距離演算部108は、管理制御PC3から入力された走行目標位置127と、前回の走行位置検出器623から入力された走行現在位置126とを基に、現在の走行移動距離138を算出する。
【0027】
横行最大振れ幅演算部111は、振り子長132、横行振れ角124、及び、横行振れ角速度135を基に、横行方向の最大振れ幅である横行最大振れ幅141を算出する。振れ幅とは吊荷Sの中心と、支点を通る鉛直方向の線(鉛直線)との幅である。支点とは、吊荷Sとワイヤ605と構成される振り子の支点のことである。
走行最大振れ幅演算部112は、振り子長132、走行振れ角125、及び、走行振れ角速度136を基に、走行方向の最大振れ幅である走行最大振れ幅142を算出する。
【0028】
一方、制御パターン生成部であるPC4の横行速度パターン生成部411が制御パターンである横行速度パターン431を生成する。横行速度パターン431の生成は、PC4に格納されている横行用初期設定値421と、振れ周期139と、横行移動距離133と、横行移動速度134と、横行振れ角速度135と、横行振れ角124とを基に行われる。また、横行速度パターン生成部411は、機械学習によって横行速度パターン431を生成する。横行速度パターン431は、具体的には、クラブトロリ601の横行速度の時間変化である。横行速度パターン生成部411は、生成した横行速度パターン431をPLC1の自動運転制御部113に入力する。
【0029】
なお、横行用初期設定値421は、第1横行運転速度~第n横行運転速度、クラブトロリ601の加速度時加速度、減速時加速度、停止精度、許容振れ幅である。第1横行運転速度~第n横行運転速度は、クラブトロリ601において可能な横行運転速度が数段階に、つまり離散的に分けられているものである。停止精度とは、クラブトロリ601が停止する際における、目標地点に対するずれに関する指標である。
【0030】
また、制御パターン生成部であるPC4の走行速度パターン生成部412が、制御パターンである走行速度パターン432を生成する。走行速度パターン432は、PC4に格納されている走行用初期設定値422と、振れ周期139と、走行移動距離138と、走行移動速度137、走行振れ角速度136、走行振れ角125とを基に生成される。また、走行速度パターン生成部412は機械学習によって走行速度パターン432を生成する。走行速度パターン432は、具体的には、ガーダ602の走行速度の時間変化である。走行速度パターン生成部412は、生成した走行速度パターン432をPLC1の自動運転制御部113に入力する。
【0031】
なお、走行用初期設定値422は、第1走行運転速度~第n走行運転速度、クラブトロリ601の加速度時加速度、減速時加速度、停止精度、許容振れ幅である。第1走行運転速度~第n走行運転速度は、ガーダ602において可能な走行運転速度が数段階に、つまり離散的に分けられているものである。
【0032】
そして、PLC1の自動運転制御部113は、横行速度パターン431、横行現在位置123、横行最大振れ幅141を基に横行速度指令143を生成する。同様に、PLC1の自動運転制御部113は、走行速度パターン432、走行現在位置126、走行最大振れ幅142を基に走行速度指令144を生成する。横行速度指令143は、クラブトロリ601の現在の横行方向の速度に関する指令である。同様に、走行速度指令144は、ガーダ602の現在の走行方向の速度に関する指令である。
【0033】
(天井クレーン装置6)
図4は、天井クレーン装置6の駆動機構を示す機能ブロック図である。
天井クレーン装置6は、電源631、横行駆動モータ632、ブレーキである横行減速機633を有する。さらに、天井クレーン装置6は、走行駆動モータ635、ブレーキである走行減速機636を有する。
【0034】
電源631は、横行駆動モータ632、横行減速機633、走行駆動モータ635、及び、走行減速機636に電力を供給する。なお、
図4において、一点鎖線は電力供給を示している。
【0035】
そして、速度制御装置5は、PLC1の自動運転制御部113から横行速度指令143をうけとると、横行速度指令143に基づいた横行速度とするよう横行駆動モータ632と横行減速機633とを制御する。これにより、横行駆動モータ632と、横行減速機633とによる横行車輪612の回転速度が制御される。
【0036】
同様に、速度制御装置5は、PLC1の自動運転制御部113から走行速度指令144をうけとると、走行速度指令144に基づいた走行速度とするよう走行駆動モータ635と走行減速機636とを制御する。これにより、走行駆動モータ635と、走行減速機636とによる走行車輪613の回転速度が制御される。
【0037】
(振り子長132及び移動距離)
図5は、振り子長132及び移動距離を説明するための図である。
図5において、
図1、
図3で説明済みの構成については同一の符号を付して説明を省略する。
まず、振り子長132から説明する。
振り子長132は、巻上基準位置LW1の振り子長131に、巻上現在位置121と巻上基準位置LW1との距離LP0を加算したものである。なお、
図5に示すように巻上基準位置LW1の振り子長131、及び、振り子長132は吊荷Sの中心と、支点との距離で定義される。前記したように、支点は、吊荷Sとワイヤ605で構成される振り子の支点である。なお、巻上基準位置LW1は、クラブトロリ601に対して鉛直方向であれば、どの地点が選ばれてもよい。
【0038】
また、横行移動距離133は、横行目標位置122と、横行現在位置123との差分で示される。なお、本実施形態では、
図5に示されるように、横行現在位置123、横行目標位置122は、ワイヤ605の位置で定義されているが、これに限らない。なお、横行移動距離133は、クラブトロリ601の横行移動開始位置と、横行現在位置123との差分で示されてもよい。
【0039】
図5では、横行移動距離133について説明しているが、走行移動距離138も同様の方法で算出される。
【0040】
(振れ角及び振れ中心傾き角の定義)
図6は、振れ角及び振れ中心傾き角の定義を示す図である。
図6において、白抜き矢印はクラブトロリ601の進行方向を示す。なお、以下の図では、
図6では吊具606の形状が
図1に示す吊具606の形状とは異なっている。
そして、ワイヤ605と、鉛直方向とがなす角を振れ角(θ2)と定義し、振れ角の1/2を振れ中心傾き角(θ1)と定義する。また、本実施形態では、振れ角、振れ中心傾き角ともに、クラブトロリ601の進行方向を正とし、進行方向とは逆方向を負とする。また、振れ中心傾き角(θ1)を中心とする吊荷S(
図1参照)の周期を振れ周期139(
図3参照)とする。
【0041】
また、
図6に示すように、吊荷Sの中心と、支点を通る鉛直方向の線(鉛直線)との幅が振れ幅(W)となる。
【0042】
(走行速度、振れ角及び振れ角速度の時間変化)
図7は、本実施形態で行われる振れ制御における走行速度、振れ角及び振れ角速度とガーダ602の移動時間との関係(時間変化)を示す図である。
図7の上段はガーダ602の走行速度の時間変化を示している。つまり、
図7の上段は、ガーダ602の速度制御を示す図である。また、
図7の下段において実線は振れ角(θ2)の時間変化を示し、破線は振れ角速度(ω)の時間変化を示している。振れ角、振れ角速度は走行方向の振れ角、振れ角速度である。
なお、
図7以降では、走行について説明しているが、横行についても同様の制御が行われる。
【0043】
また、
図7の上段に示す速度制御のパターンは、
図3に示す走行速度パターン432である。ちなみに、走行速度パターン432は、ガーダ602の移動前に生成されるものである。横行速度パターン431も同様である。そして、
図3に示す走行位置検出器623による走行現在位置126の検出や、横行位置検出器622による横行現在位置123の検出は、走行速度パターン432や、横行速度パターン431に基づく、次の時間における移動制御のために行われる。
【0044】
まず、
図7の上段を参照して、ガーダ602の速度制御について説明する。
図7の上段に示すように、速度制御装置5(
図2、
図3参照)は、走行開始の時刻t0(搬送開始位置)でガーダ602の走行を開始した後、期間T1でガーダ602を加速する、期間T1は、ガーダ602が時刻t0(搬送開始位置)から加速する期間であり、第1の加速期間である。
【0045】
そして、速度制御装置5は、期間T2で速度(vc)による等速度運動となるようガーダ602の速度制御を行う。期間T2は、期間T1の後、かつ、後記する期間T6の前の期間であり、ガーダ602が等速度運動する期間である第1の等速度運動期間である。
【0046】
その後、速度制御装置5は、期間T3で一時的にガーダ602の減速を行った後、期間T4で一時的に加速を行う。期間T3は第1の等速度運動期間である期間T2,T5の間に、ガーダ602の減速を行う期間であるとともに、期間T1以外の期間である第2の減速期間である。
【0047】
期間T4の終了時刻には、期間T2での速度と同じ速度となるよう速度制御装置5はガーダ602の速度制御を行う。期間T4は、期間T3の後に、ガーダ602の加速を行う期間であるとともに、期間T1以外の期間である第2の加速期間である。
【0048】
期間T4の後、速度制御装置5は、ガーダ602が等速度運動を行うよう制御する期間T5が設けられる。期間T5は第1の等速度運動期間である。期間T5におけるガーダ602の速度は、期間T4と同じvcとなるよう制御される。期間T5の後、速度制御装置5は走行目標位置127(
図3参照)に向けて減速を行う。そして、期間T6で減速制御が行われることで、走行終了の時刻t8でガーダ602の速度制御を終了する。期間T6は、ガーダ602が走行終了の時刻t8(搬送目的位置)まで減速する期間である第1の減速期間である。
【0049】
このように、走行速度パターン生成部412は、ガーダ602が等速度運動を行っている間(期間T2、T4)に、期間T6以外の減速を期間T3で所定時間行った後、期間T1の加速以外の加速を期間T4で所定時間行う走行速度パターン432を生成する。即ち、走行速度パターン生成部412は、期間T1~T6を有するよう走行速度パターン432を生成する。このようにして天井クレーン装置6の制御が行われる。
【0050】
なお、期間T1のように、ガーダ602が等加速度運動を行うように制御されることを加速制御と適宜記載する。また、ガーダ602が等速度運動を行うように制御されることを、等速度制御と適宜記載する。さらに、期間T5のようにガーダ602が等加速で減速するよう制御されることを、減速制御と適宜記載する。
【0051】
本実施形態の特徴は、期間T1の加速度が終了する時刻と、期間T6の減速が開始する時刻との間で、一時的に加減速が行われる期間T3,T4が設けられる点が特徴である。期間T3,T4が設けられる意味については後記する。
【0052】
また、線L1は期間T3,T4における制御が行われなかった場合の減速区間を示す。線L1に示すように、期間T3,T4が設けられない場合は、期間T3,T4が設けられた場合よりもΔtLだけ早く終了する。ここで、ΔtL=(Δta2/ta+Δtb2/tb)/2である。詳細は後記するが、ΔtLは、後記する比較例よりも短い時間である。
【0053】
次に、
図7の下段を参照して、ガーダ602が走行している際における振れ角と、振れ角速度との時間変化を説明する。
走行開始の時刻t0でガーダ602の走行(等加速度運動)が開始されると、慣性の法則により振れ角及び振れ角速度は負側に振れる。その後、期間T1中において、重力の影響を受けて振れ角速度は減速していき、時刻t1で振れ角速度は0となる。この時(時刻t1)、振れ角は最小振れ角(θ11)となる。なお、θ11=-2×tan
-1(αa/g))である。ここで、αaは期間T1における加速度の絶対値であり、gは重力加速度である。
【0054】
時刻t1の後も、走行速度は増加していき、時刻t2で、走行加速度が停止し、ガーダ602は速度(vc)による等速度運動となる(
図7上段の期間T2)。時刻t2において、ガーダ602が等加速度運動から等速度運動へ変化することに伴い、振れ角速度も若干変化する。
【0055】
そして、時刻t3でガーダ602が減速を開始し(期間T3)、時刻t4でガーダ602が加速を開始し(期間T4)、時刻t5でガーダ602は速度(vc)による等速度運動が開始される。期間T3,T4において振れ角速度は、
図7の下段、破線で示すように変化する。
【0056】
そして、時刻t6でガーダ602は減速し(期間T6)、時刻t8でガーダ602は停止する。時刻t6において、ガーダ602が等速度運動から減速に転じる際に、
図7の下段の破線に示すように振れ角速度が変化する。また、(A1)時刻t6の時点での振れ角速度が時刻t2における振れ角速度と同じ振れ角速度である。(A2)時刻t6の時点での振れ角の絶対値が時刻t2での振れ角の絶対値と同じである。期間T3及び期間T4における減速及び加速度は、上記(A1)、(A2)の条件を満たすよう行われる。期間T3,T4の制御が行われることにより、期間T6の減速によって生じる慣性の法則に従って、時刻t8で吊荷Sの振れが停止する。
【0057】
また、
図7の下段の破線に示すように、期間T6中において、振れ角速度は小さくなっていき、時刻t7において振れ角速度は0となる。この時(時刻t7)で、振れ角は最大振れ角(θ12)となる。なお、θ12=2×tan-1(αb/g)となる。ここで、αbは期間T6における減速度の絶対値である。
【0058】
前記したように、時刻t8において振れ角及び振れ角速度ともに0となっている。これは、期間T3及び期間T4でガーダ602の減速及び加速度が行われているためである。具体的には、上記(A1)及び(A2)の条件が満たされるよう、期間T3及び期間T4でガーダ602の加減速が行われる。これにより、時刻t8においてガーダ602が停止するとともに、吊荷Sの振れ角及び振れ角速度を0にすることができる。このように、期間T3,T4における一時的な加速制御及び減速制御によって、走行目標位置における吊荷Sの振れ角及び振れ角速度を0にすることができる。期間T3,T4における一時的な加速制御及び減速制御のように、走行目標位置における吊荷Sの振れ角及び振れ角速度を0にするための制御を振れ制御と称する。
【0059】
ちなみに、ガーダ602の総移動時間(t8-t1)は、(d/vc)+{(ta+tb)/2}+{(Δta2/ta)+(Δtb2/tb)}/2である。ここで、dはガーダ602の移動距離であり、taはガーダ602の加速度時間(即ち期間T1の時間)である。また、tbはガーダ602の減速時間(即ち期間T6の時間)である。また、Δtbは期間T3の時間であり、Δtaは期間T4の時間である。ちなみに、ガーダ602の移動距離dは、vc×[(ta/2)+tc1+tc2+(tb/2)+Δta+Δtb-{(Δta2/ta)+(Δtb2/tb)}/2]である。ここで、tc1は期間T2の時間であり、tc2は期間T5の時間である。
【0060】
ちなみに、
図7の上段に示す走行速度の時間変化パターンが、
図3に示す走行速度パターン生成部412によって生成される走行速度パターン432である。
【0061】
(吊荷Sの状態)
図8は、本実施形態におけるガーダ602の走行中における吊荷S(コイル)の状態を示す図である。
図8において、矢印A1はガーダ602の加速度を示し、矢印A2はガーダ602の速度を示す。ガーダ602の加速度及び減速が行われていない場合、矢印A1は黒丸となる。同様に、ガーダ602が停止している場合、矢印A2は黒丸となる。
【0062】
また、
図8において、矢印A3は吊荷Sの振れ角速度を示している。吊荷Sの振れが停止している場合、矢印A3は黒丸となる。また、
図8において、期間T1~T6は
図7及び
図9に示す期間T1~T6と同じものである。同様に、
図8において時刻t0、t2、t6、t8は、
図7及び
図9に示す時刻t0、t2、t6、t8と同じものである。
時刻t0では、吊荷Sの振れ角及び振れ角速度はともに0である。
そして、期間T1を通してガーダ602は等加速度運動によって加速度していく。つまり、期間T1において、ガーダ602の加速度を示す矢印A1は一定の大きさであり、ガーダ602の速度を示す矢印A2は徐々に大きくなっていく。
【0063】
前記したように、期間T1中における時刻t1において吊荷Sの振れ角は最小振れ角(θ11)となる(
図7参照)。
図8において、θa1は振れ角が最小振れ角(θ11)となった時における振れ中心傾き角であり、θa1=-tan
-1(αa/g)である。ここで、αaはガーダ602の加速度の絶対値であり、gは重力加速度である。
【0064】
そして、時刻t2でガーダ602の加速度が完了する。その後、期間T2でガーダ602は等速度運動を行うが、期間T3で短時間の減速及び期間T4で一時的な加速を行う。この際、
図8の符号701に示すように、吊荷Sは左右に振れる。これにより、減速開始時(時刻t6)での振れ角及び振れ角速度が調整される。
【0065】
そして、時刻t6でガーダ602の減速が開始されるが、時刻t6における吊荷Sの振れ角及び振れ角速度は、走行終了時に振れ角及び振れ角速度が0となるよう、期間T3及び期間T4で調整されている。
【0066】
そして、期間T6では減速度が一定となるガーダ602の等加速度運動が行われる。これにより、ガーダ602は徐々に減速していき、時刻t8で停止する。前記したように、時刻t6における吊荷Sの振れ角及び振れ角速度は、異動終了時に振れ角及び振れ角速度が0となるよう、期間T3及び期間T4で調整されている。このような調整が行われることにより、移動終了時(時刻t8)において、吊荷Sの振れ角及び振れ角速度は0となる。
【0067】
なお、前記したように、期間T6中における時刻t7において吊荷Sの振れ角は最大振れ角(θ12)となる(
図7参照)。
図8において、θa2は振れ角が最大振れ角(θ12)となった時における振れ中心傾き角であり、θa2=tan
-1(αb/g)である。
【0068】
(位相面)
次に、
図9を参照して、本実施形態で行われる振れ制御を位相面で説明する。適宜、
図7を参照する。
図9は、本実施形態で行われる振れ制御を位相面における位相面軌跡で示す図である。
位相面は、横軸がω/(τ/2π)であり、縦軸が吊荷Sであるコイルの振れ角(θ2)である。ωは振れ角速度であり、τは振れ周期139(
図3参照)である。例えば、単振り子における位相面での振り子の運動の軌跡(位相面軌跡)は、位相面中心P0を中心とし、半径が最大の振れ角となる円を描く。
【0069】
本実施形態による振れ制御(
図7に示す振れ制御)では、吊荷Sであるコイルは太実線矢印に示すような位相面軌跡を描く。なお、
図9に示す期間T1~T6は、
図7に示す期間T1~T6に対応している。また、
図9において二点鎖線で示される、複数の同心円は位相面中心P0、位相点P1,P2のそれぞれを中心とする同心円である。位相点P1は、振れ角が最小振れ角(θ11)(
図7参照)となった時における振れ中心傾き角(θa1:
図8参照)を示す。また、位相点P2は、振れ角が最大振れ角(θ12:
図7参照)となった時における振れ中心傾き角(θa2:
図8参照)を示している。
【0070】
位相面中心P0を中心とした同心円上に位相面軌跡がある場合、吊荷Sであるコイルは、重力が働く方向である鉛直方向を中心とした振り子運動を行う。また、位相点P1を中心とする同心円上に位相面軌跡がある場合、コイルは、振れ中心傾き角(θa1)を中心とする振り子運動を行う。同様に、位相点P2を中心とする同心円上に位相面軌跡がある場合、コイルは、振れ中心傾き角(θa2)を中心とする振り子運動を行う。
【0071】
まず、期間T1において、位相面軌跡は、位相面中心P0から位相点P11まで、位相点P1を中心とした円弧で示される。続いて、期間T2において、位相面軌跡は、位相点P11から位相点P12まで位相面中心P0を中心とした円弧で示される。そして、期間T3において、位相面軌跡は、位相点P12からω/(τ/2π)=0、即ち、ω=0となる位相点P13まで位相点P2を中心とした円弧で示される。なお、
図9では、位相点P13がω=0となる点となっているが、必ずしもω=0となる点を位相点P13しなくてもよい。さらに、期間T4において、位相面軌跡は、位相点P13から位相点P14まで位相点P1を中心とする円弧で示される。なお、位相点P12と、位相点P14とでは、横軸の値が同じであり、かつ、縦軸の値の絶対値が同じである。つまり、位相点P12と、位相点P14とでは、振れ角の絶対値及び振れ角速度が同じ値となる。その後、期間T5において、位相面軌跡は、位相点P14から位相点P15まで位相面中心P0を中心とする円弧で示される。そして、期間T6において、位相点P15から位相面中心P0まで位相点P2を中心とした円弧を描き、位相面中心P0に到達する。これは、移動終了時において振れ角及び振れ角速度が0であることを示す。このようにして、
図7の時刻t8における吊荷Sの振れ角及び振れ角速度は移動終了時に振れ角及び振れ角速度が0となるよう調整される。そして、そのような調整は、期間T3及び期間T4でのガーダ602の減速及び加速度によって行われる。
【0072】
ちなみに、位相点P11は
図7の時刻t2に相当し、位相点P12は
図7の時刻t3に相当し、位相点P13は
図7の時刻t4に相当する。そして、位相点P14は
図7の時刻t5に相当し、位相点P15は
図7の時刻t6に相当する。また、位相面中心P0は、
図7の時刻t0及び時刻t8に相当する。
【0073】
期間T3及び期間T4におけるガーダ602の減速及び加速度の度合い及び時間は、移動終了時に位相面軌跡が位相面中心となるよう、位相面軌跡(振れ角及び振れ角速度)を逆算することで決定される。すなわち、期間T6が開始される際に、吊荷Sの振れ角及び振れ角速度が位相点P15の振れ角(θA)及び振れ角速度(ωA)となるよう、期間T3,T4の時間、及び、ガーダ602の加減速度が決定される。
【0074】
つまり、走行速度パターン生成部412は、期間T6における減速が開始される際の吊荷Sの振れ角及び振れ角速度が、期間T6による減速の終了時に振れ角及び振れ角速度が0となるよう位相面における逆算によって計算する。具体的には、期間T6の減速終了時の振れ角及び振れ角速度を基に、期間T3の減速及び期間T4の減速が行われる時間が位相面の位相軌跡(振れ角及び振れ角速度)を逆算することによって決定される。
【0075】
このように、制御パターン生成部412は、期間T6の終了時(時刻t8)に吊荷Sの振れ角及び振れ角速度が0となるよう、期間T6の終了時(時刻t8)から振れ角及び振れ角速度(位相面軌跡)を逆算することで期間T3及び期間T4が行われる時間を決定する。具体的には、制御パターン生成部412は、期間T6が開始される際(時刻t6)の吊荷Sの振れ角及び振れ角速度を、期間T6の終了時(時刻t8)に振れ角及び振れ角速度が0となるよう逆算し(位相面軌跡を逆算し)、期間T6の開始時(時刻t6)の振れ角及び振れ角速度を基に、期間T3及び期間T4が行われる時間を振れ角及び振れ角速度(位相面)を逆算することによって決定する。期間T3が行われる時間は
図7のΔtbを示し、期間T4が行われる時間は
図7のΔtaを示す。
【0076】
図9に示す図では、一見、期間T3,T4がなくても、位相点P15に到達可能にみえる。しかしながら、移動距離の調整が必要であり期間T3,T4の制御は必要である。ちなみに、移動距離は、位相面軌跡と位相面軌跡の中心となる位相点とによって形成される扇型の角度に比例する時間と走行速度の積で示される。例えば、0から加速する期間T1におけるガーダ602の移動距離は、期間T1で示される円弧と位相点P1を中心とした扇型の角度に比例する時間で加速する走行速度の積の1/2で示される。
【0077】
つまり、期間T3,T4における制御が行われない場合、P0→P11,P11→P15,P15→P0で形成される、それぞれの扇型の角度に比例する時間で算出される移動距離は、予定される移動距離より長くなる。予定される移動距離は、走行開始位置と走行目標位置127(
図3参照)との差分である。従って、移動距離が、予定される移動距離と同じになるよう、期間T3,T4による加減速が必要になる。
【0078】
以下に、
図3及び
図7、
図9を参照して、本実施形態の速度制御についてまとめる。
図7に示す速度制御は、ガーダ602あるいはクラブトロリ601における水平移動が最高速度(vc)となるまでの加速を横行用初期設定値421あるいは走行用初期設定値422に設定した最短時間で行われる。その後、水平移動の目標停止地点(横行目標位置122、走行目標位置127)に至る減速(期間T6)を横行用初期設定値421あるいは走行用初期設定値422に設定した最短時間で速度制御が行われる。この際、減速終了停止時(時刻t8)で荷振れが解消されるよう、最高速度で移動中(期間T2,T5)に短時間の減速(期間T3)と加速(期間T4)とが行われる。前記したように、具体的には、減速開始地点(時刻t6、位相点P15)での振れ角度及び振れ角速度が、
図9に示す位相面を基に停止地点(時刻t8、位相面中心P:第1の減速期間の終了時)から逆算して求められる。そして、ガーダ602あるいはクラブトロリ601が減速開始地点(時刻t6、位相点P15)に到達したIDに、求められている振れ角度及び振れ角速度になるようガーダ602あるいはクラブトロリ601が制御される。
【0079】
ちなみに、
図9に示す位相点P11は
図7に示す時刻t2に対応し、位相点P12は時刻t3に対応する。そして、位相点P13は時刻t4に対応し、位相点P14は時刻t5に対応し、位相点P15は時刻t6に対応する。
【0080】
本実施形態では、ガーダ602(あるいはクラブトロリ601)加速中及び減速中では振れ制御が行われず、加速完了後の一定速中(期間T2,T5)に短時間の減速及び加速(期間T3,T4)が行われる。これにより、停止に至る減速開始時点(時刻t6)における振れ角度及び振れ角速度が制御される。この結果、減速が完了し停止した時点(時刻t8)における吊荷Sの振れが止められる。
【0081】
本実施形態では加速完了(時刻t2)から停止に至る減速開始(時刻t6)までの平均速度の低下は、本実施形態の振れ制御が行われない場合と比較して僅かである。本実施形態の振れ制御が行われない場合とは期間T3,T4が行われない場合である。従って、本実施形態の速度制御による総移動時間は振れ制御しない場合に対し僅かな増加で済む。また、後記する第1比較例と比較しても、本実施形態の速度制御は振れ周期の1/3近い時間を短縮できる(例:荷振れ周期が6秒の場合、1.9秒程度)。1回の搬送について1.9秒程度の時間短縮であっても、実際には1日に何百回と搬送が行われるため、全体の時間短縮は大きなものとなる。
【0082】
[変形例]
次に、本実施形態における振れ制御の変形例を示す。
図10~
図12は、本実施形態における振れ制御の変形例を示す図である。
図10~
図12では、ガーダ602の走行速度の時間制御に関する図が示されている。
例えば、
図10では、期間T1と期間T2との間に一時的な加減速(期間T1a,T2a)が行われている。期間T1aは期間T1と、期間T2との間に、ガーダ602の減速を行う期間であり、期間T6以外の期間であるとともに、期間T3以外の期間である第3の減速期間である。また、期間T2aは、期間T1aの後、ガーダ602の加速を行う期間であり、期間T1以外の期間であるとともに、期間T4以外の期間である第3の加速期間である。つまり、
図10では、
図7の上段に示す速度制御に加えて、期間T1の加速と、期間T2の等速度運動との間に、期間T3以外の加速である期間T1aの減速が所定時間行われ、期間T1aの減速が行われた後、期間T4以外の加速である期間T2aの加速が所定時間行われている。
【0083】
走行速度パターン生成部412は、期間T1,T1a,T2a,T2~T4を有するよう、走行速度パターン432を生成する。
【0084】
図10に示す制御は以下のような条件の場合に行うとよい。(X1)
図7に示す制御では最高速度での移動時間(期間T2,T5)が短い。(X1)のため、最高速度で移動中に短時間の減速制御と加速制御を行っても減速開始地点(時刻t6、位相点P15)到達時に求めた荷振れ角度および角速度にすることができない。
【0085】
また、
図11では、期間T1と期間T2との間、及び、期間T5と期間T6との間で一時的な加減速(期間T1a,T2a,T5a,T6a)が行われている。期間T5aは期間T5と、期間T6との間に、ガーダ602の減速を行う期間であり、期間T6以外の期間であるとともに、期間T3以外の期間である第4の減速期間である。また、期間T6aは、期間T6aの後、ガーダ602の加速が行われる期間であり、期間T1以外の期間であるとともに、期間T4以外の期間である第4の加速期間である。つまり、
図11では、
図10における速度制御に加えて、減速制御中(期間T6)に短時間の加速制御及び減速制御(期間T5a,T6a)が行われている。要するに、
図11では、期間T5の等速度運動と、期間T6の減速との間に、期間T3の減速以外の減速である期間T5aの減速が行われている。そして、期間T5aの減速が行われた後、期間T4の加速以外の加速である期間T6aの加速が所定時間行われている。
【0086】
走行速度パターン生成部412は、期間T1,T1a,T2a,T2~T5,T5a,T6a,T6を有するよう走行速度パターン432を生成する。
【0087】
図11に示す速度制御は、
図10に示す速度制御でも、減速開始地点(時刻t6、位相点P15)到達時に荷振れ角度および角速度が求めた値とズレが生じている場合に行われるとよい。
【0088】
そして、
図12では、
図11のような制御が行われた後、期間T6において減速が行われた後、期間T7で等速度制御(第2の等速度運動)が行われた後、期間T8で減速している。即ち、期間T6の減速中において、期間T2,T5の等速度運動以外の等速度運動である第2の等速度運が期間T7で所定時間行われる。期間T7は期間T6中において、ガーダ602の等速度運動を行う期間であり、期間T3,T5以外の期間である第2の等速度運動期間である。
【0089】
図12に示す速度制御は、最高速度(vc:
図7参照)から、所定速度まで最短時間で減速制御(期間T6)が行われた後、当該所定の速度で目標停止地点(横行目標位置122、走行目標位置127)の手前まで等速度制御(期間T7)が行われる。その後、減速制御(期間T8)が行われることでガーダ602あるいはクラブトロリ601が停止する。これによって、減速終了地点(期間T8の終点)で荷振れを解消させるよう、減速開始地点(期間T6aの終点)での振れ角度及び振れ角速度が減速終了地点(期間T8の終点)から逆算によって求められる。
図12に示す制御は、
図11の制御において、減速終了停止時(期間T6の終点)で、ガーダ602あるいはクラブトロリ601の位置が、横行目標位置122や、走行目標位置127からずれるが、そのずれが、要求される許容範囲より小さい場合に行われるとよい。
【0090】
ちなみに、前記したように
図7の上段に示す速度制御のパターンは、
図3に示す走行速度パターン432である。走行速度パターン生成部412は、
図7、
図10~
図12に示すような走行速度パターン432を複数生成し、最も適切な走行速度パターン432を選択する。最も適切な走行速度パターン432とは、総移動時間が最も短く、移動距離が目的地までの距離に最も近い走行速度パターン432である。横行速度パターン431も同様である。
【0091】
なお、
図7の上段に示す速度制御に、
図11に示す期間T5a,T6aが行われてもよい。つまり、
図11に示す速度制御において、期間T1a,T2aの速度制御が省略されてもよい。また、
図12に示す速度制御において、期間T1a,T2aの速度制御及び期間T5a,T6aの速度制御のいずれかが省略されてもよい。
【0092】
また、期間T3,T4の速度制御は連続して行われなくてもよい。同様に、期間T1a,T2aの速度制御は連続して行われなくてもよいし、期間T5a,T6aの速度制御は連続して行われなくてもよい。また、
図10~
図12における期間T1aが2回以上の複数回行われてもよい。同10様に、
図10~
図12における期間T2aが2回以上の複数回行われてもよい。また、
図10~
図12における期間T3,T4,T5a,T6aのそれぞれが2回以上の複数回行われてもよい。
【0093】
<比較例>
次に、
図13~
図15を参照して、本実施形態に対する比較例を説明する。
【0094】
[第1比較例]
まず、
図13~
図15を参照して、第1比較例について説明する。第1比較例は、一般的に行われている吊荷Sの振止制御である。
【0095】
(速度制御、振れ角及び振れ角速度の時間変化)
図13は、第1比較例で行われる振れ制御における走行速度、振れ角及び振れ角速度とガーダ602の移動時間との関係(時間変化)を示す図である。
図13の上段はガーダ602の走行速度を示している。また、
図13の下段において太実線は振れ角(θ2)の時間変化を示し、破線は振れ角速度(ω)の時間変化を示している。
なお、
図13では、走行について説明しているが、横行についても同様の制御が行われる。また、以下の記載において、τは吊荷Sの振れ周期139(
図3参照)である。
【0096】
まず、
図13の上段を参照して、ガーダ602の速度制御について説明する。
図13の上段に示すように、速度制御装置5(
図2、
図3参照)は、走行開始の時刻t100でガーダ602の走行を開始した後、ガーダ602は、期間T101でτ/6の間、加速度し、期間T102でτ/6の間、等速度運動を行う。その後、ガーダ602は、期間T103でtd1-τ/3の間、等加速度運動を行った後、期間T104でτ/6の間、等加速度運動を行い、その後、期間T105でτ/6の間、等加速度運動を行う。なお、td1は加速度時間である。つまり、td1は、期間T101,T103,T105の時間を合計したものである。
【0097】
期間T105は時刻t101で終了し、その後、期間T106において、ガーダ602は、td2の間、速度(vc)で等速度運動を行う。ここで、td2=d/vc-(td1+td3)/2-τ/3である。本式において、dは移動距離である。また、td3は減速時間であり、後記する期間T107,T108,T111の時間を合計したものである。
【0098】
期間T106は時刻t102で終了し、その後、ガーダ602は、期間T107でτ/6の間、等加速度運動で減速し、期間T108でτ/6の間、等速度運動を行う。その後、ガーダ602は、期間T109でtd3-τ/3の間、等加速度運動で減速した後、期間T110でτ/6の間、等加速度運動で減速し、その後、期間T111でτ/6の間、等加速度運動で減速する。そして、時刻t103でガーダ602は目的地に到達し、移動を終了する。
【0099】
次に、
図13の下段を参照して、ガーダ602が走行している際における振れ角と、振れ角速度との時間変化を説明する。
まず、期間T101の加速度による慣性の法則によって、振れ角速度(破線)は負側に振れる。そして、それに伴い、吊荷Sの振れ角(太実線)も負側に振れる。そして、期間T102における等速度運動により、期間T102の終了時である時刻t111では、吊荷Sの振れ角速度が0となる。一方、振れ角は、時刻t111において、θ111=-tan
-1(αa/g)となる。本式において、αaはガーダ602の加速度の絶対値であり、gは重力加速度である。
【0100】
期間T103における等加速度運動の間、振れ角速度は0であり、振れ角はθ111で推移する。そして、期間T106による等速度運動に入る前に、期間T104における等速度運動と、期間T105における等加速度運動が行われることで、吊荷Sの振れ角速度は正側に振れた後、期間T105が終了するt105において、振れ角速度は0となる。このような振れ角速度のふるまいによって、時刻t101における振れ角は0となる。
【0101】
時刻t101で振れ角速度及び振れ角が0となった後、期間T106では、振れ角速度及び振れ角が0のまま、ガーダ602は等速度運動で移動する。
そして、時刻t102で減速が開始されると、慣性の法則によって、吊荷Sは正側に振れる。期間T107における減速の後、ガーダ602は期間T108で等速度運動を行う。これにより、期間T108が終了する時刻t112において、振れ角速度は0となり、振れ角はθ112となる。時刻t112は、期間T107で振れた吊荷Sが半分ほど戻った時刻にするとよい。このようにすると、期間T109における減速度による慣性の力と、吊荷Sが正側に戻ろうとする力とがつりあい、吊荷Sの振れ角がθ112で安定する。なお、θ112=tan-1(αb/g)である。本式において、αbは、減速時におけるガーダ602の加速度の絶対値である。
【0102】
期間T109における等加速度運動の間、振れ角速度は0であり、振れ角はθ111で推移する。そして、移動終了の前に、期間T110における等速度運動と、期間T111における等加速度運動(減速)が行われることで、吊荷Sの振れ角速度は負側に振れた後、期間T111が終了するt103において、振れ角速度は0となる。このような振れ角速度のふるまいによって、移動終了の時刻である時刻t3における振れ角は0となる。
【0103】
なお、第1比較例における総移動時間は、d/vc+{(td1+td3)/2}+τ/3である。
【0104】
図13において、破線L101,L102は、振れ制御、即ち、期間T102,T104,T108,T110の制御が行われなかった場合におけるガーダ602の走行速度の時間変化を示している。振れ制御が行われた場合(実線)と、振れ制御が行われなかった場合(破線L101,L102)との総移動時間の差はτ/3である。ここで、τは振れ周期である。
【0105】
図7に示す本実施形態について、振れ制御が行われた場合と、振れ制御が行われなかった場合との総移動時間の差をΔ1とする。また、
図13に示す比較例について、振れ制御が行われた場合と、振れ制御が行われなかった場合との総移動時間の差をΔ2とする。すると、Δ1<Δ2となる。つまり、
図7に示す本実施形態の振れ制御の方が、総移動時間のロスを軽減することができる。
【0106】
(吊荷Sの状態)
図14は、第1比較例におけるガーダ602の移動中における吊荷S(コイル)の状態を示す図である。
図14において、
図8と同様、矢印A1はガーダ602の加速度を示し、矢印A2はガーダ602の速度を示す。また、
図14において、矢印A3は吊荷Sの振れ角速度を示している。また、
図14において、期間T101~T111は
図13に示す期間T101~T111と同じものである。同様に、
図14において時刻t100~t103は、
図13に示す時刻t100~t103と同じものである。
【0107】
時刻t100では、吊荷Sの振れ角及び振れ角速度はともに0である。
図14に示すように、期間T101における加速制御、期間T102における等速度制御により、期間T103の加速制御では吊荷Sは、最小の振れ角(θ111)で移動する。
【0108】
そして、期間T104における等速度制御、期間T105における加速制御によって、期間T105が終了するt101では、前記したように、振れ角速度及び振れ角の双方が0となっている。そして、等速度制御が行われる期間T106では、振れ角速度及び振れ角の双方が0のまま、吊荷Sが移動する。
【0109】
そして、期間T107における減速制御、期間T108における等速度制御により、期間T109の減速制御では、吊荷Sは最大の振れ角(θ112)で移動する。
【0110】
そして、期間T109の後、期間T110の等速度制御、期間T111の減速制御が行われることによって、移動終了の時刻t103において、振れ角速度及び振れ角が0となる。
【0111】
(位相面)
次に、
図15を参照して、第1比較例で行われる振れ制御を位相面で説明する。
図15は、第1比較例で行われる振れ制御を位相面における位相面軌跡で示す図である。
位相面は、横軸がω/(τ/2π)であり、縦軸が吊荷Sであるコイルの振れ角(θ2)である。ωは振れ角速度であり、τは振れ周期139である。
【0112】
第1比較例による振れ制御(
図13に示す振れ制御)では、吊荷Sであるコイルは太実線矢印に示すような位相面軌跡を描く。なお、
図15に示す期間T101~T111は、
図13に示す期間T101~T111に対応している。また、
図15において二点鎖線で示される、複数の同心円は位相面中心P0、位相点P1a,P2aのそれぞれを中心とする同心円である。位相点P1aは、最小の振れ角(θ111:
図13参照)が生じる時における振れ中心傾き角(θ111/2)を示す。また、位相点P2aは、最大の振れ角(θ112:
図13参照)が生じる時における振れ中心傾き角(θ112/2)を示す。
【0113】
位相面中心P0を中心とした同心円上に位相面軌跡がある場合、吊荷Sであるコイルは、重力が働く方向である鉛直方向を中心とした振り子運動を行う。また、位相点P1aを中心とする同心円上に位相面軌跡がある場合、コイルは、最小の振れ角(θ111)を中心とする振り子運動を行う。同様に、位相点P2aを中心とする同心円上に位相面軌跡がある場合、コイルは、最大の振れ角(θ112)を中心とする振り子運動を行う。
【0114】
まず、期間T101において、位相面軌跡は、位相面中心P0から位相点P101まで、位相点P1aを中心とした円弧で示される。その後、期間T102において、位相面軌跡は、位相点P101から位相点P102(=位相点P1a)まで位相面中心P0を中心とした円弧で示される。期間T103では、
図13に示すように、吊荷Sの振れ角速度は0であり、振れ角はθ111であるため、
図15に示す位相面では位相点P102にとどまった状態で位相面軌跡は推移する。
【0115】
そして、期間T104において、位相面軌跡は、位相点P102から位相点P103まで位相面中心P0を中心とした円弧で示される。続いて、期間T105において、位相面軌跡は、位相点P103から位相面中心P0まで位相点P1aを中心とした円弧で示される。
【0116】
期間T106では、
図13に示すように、振れ角速度及び振れ角度ともに0で推移する。従って、
図15に示す位相面に示すように、期間T106において位相面軌跡は位相面中心P0にとどまった状態で推移する。
【0117】
続いて、期間T107において、位相面軌跡は、位相面中心P0から位相点P104まで、位相点P2aを中心とした円弧で示される。その後、期間T108において、位相面軌跡は、位相点P104から位相点P105(=位相点P2a)まで位相面中心P0を中心とした円弧で示される。期間T109では、
図13に示すように、吊荷Sの振れ角速度は0であり、振れ角はθ112であるため、
図15に示す位相面では位相点P105(=位相点P2a)にとどまった状態で位相面軌跡は推移する。
【0118】
そして、期間T110において、位相面軌跡は、位相点P105から位相点P106まで位相面中心P0を中心とした円弧で示される。続いて、期間T111において、位相面軌跡は、位相点P106から位相面中心P0まで位相点P2aを中心とした円弧で示される。
【0119】
前記したように、
図13~
図15に示す第1比較例の振れ制御では、
図7~
図9に示す本実施形態の振れ制御より、振れ制御を行わなかった場合と、振れ制御を行った場合における総移動時間の差が大きい。つまり、第1比較例の振れ制御は、本実施形態の振れ制御よりガーダ602の移動時間がかかる。これは、第1比較例では、加速制御を行う期間において一旦加速を停止したり、減速制御を行う期間において一旦減速を停止したりするためである。
【0120】
[第2比較例]
次に、
図16~
図18を参照して、第2比較例について説明する。第2比較例は、非特許文献1に記載されている振止制御であり、加速中に一時的な減速を行い、さらに、減速中に一時的な加速度を行う制御である。
【0121】
(速度制御、振れ角及び振れ角速度の時間変化)
図16は、第2比較例で行われる振れ制御における走行速度、振れ角及び振れ角速度とガーダ602の移動時間との関係(時間変化)を示す図である。
図16の上段はガーダ602の走行速度を示している。また、
図16の下段において実線は振れ角(θ2)の時間変化を示し、破線は振れ角速度(ω)の時間変化を示している。
なお、
図16では、走行について説明しているが、横行についても同様の制御が行われる。
【0122】
まず、
図16の上段を参照して、ガーダ602の速度制御について説明する。
図16の上段に示すように、速度制御装置5(
図2、
図3参照)は、走行開始の時刻t200でガーダ602の走行を開始する。そして、ガーダ602は期間T201で加速制御によって加速度した後、期間T202で減速制御によって減速する。その後、ガーダ602は、期間T203で再び加速する。期間T201における加速度と、期間T202における加速度の絶対値は同じである。また、期間T202の時間tf2は、tf2=tan
-1[{sin(2π×ta/2/τ)/{1-cos(2π×ta/2/τ)}]/π×τ×2である。そして、期間T201及び期間T203それぞれの時間は、(ta/2)+(tf2/2)となる。また、taは加速度αaで速度vcまで加速した場合の加速時間である。
【0123】
そして、期間T204では、等速度制御がおこなわれる。期間T204の後、期間T205でガーダ602の減速制御が行われる。さらに、期間T205の後、期間T206でガーダ602の加速制御が行われる。そして、期間T206の後、期間T207で再びガーダ602の減速制御が行われることで、ガーダ602は走行目標位置127(
図3参照)に到着する。
【0124】
期間T206が行われる時間は期間T202が行われる時間と同じである。そして、期間T205及び期間T207それぞれの時間は、(ta/2)+(tf2/2)となる。そして、
図16において、tbは加速度αaで速度vcから速度0まで減速した場合の加速時間であり、taと同じ時間となる。
【0125】
次に、
図16の下段を参照して、ガーダ602が走行している際における振れ角と、振れ角速度との時間変化を説明する。
まず、期間T201の加速度による慣性の法則によって、振れ角速度は負側に振れる。これにともない、振れ角も負側に振れる。そして、期間T201中の時刻t201において、振れ角速度が最小となる。時刻t201の振れ角速度はω211=-tan
-1(αa/g)である。αa及びgについては前記しているので、ここでの説明を省略する。時刻t201以降、振れ角速度の絶対値は徐々に小さくなる。
【0126】
続いて、期間T202において、ガーダ602は減速するため、慣性の法則によって吊荷Sは正方向(進行方向)に振れる。これにより、振れ角速度は正方向に加速する。また、期間T202中の時刻t202において、振れ角速度が0になるとともに、最小の振れ角となる。
【0127】
その後、期間T203において、ガーダ602は再び加速するため、期間T202で生じた正方向の角加速度を打ち消す方向に吊荷Sが加速する。なお、期間T203中の時刻t203において、振れ角速度は最大となる。時刻t203の振れ角速度はω212=tan-1(αa/g)である。
【0128】
期間T201~T203において、前記したようなガーダ602の加減速制御が行われることにより、期間T204が開始される時刻t204において、振れ角速度及び振れ角は0となる。期間T204ではガーダ602が等速度運動で移動するため、吊荷Sの振れ角速度及び振れ角はともに0のまま推移する。
【0129】
そして、時刻t205において、ガーダ602が減速を始めると、慣性の法則によって、振れ角速度は正側に振れる。これにともない、振れ角も正側に振れる。そして、期間T205中の時刻t206において、振れ角速度が最大となる。時刻t206での振れ角速度はω212である。時刻t206以降、振れ角速度の絶対値は徐々に小さくなる。
【0130】
続いて、期間T206において、ガーダ602は減速するため、慣性の法則によって吊荷Sは負方向(進行方向とは逆側)に振れる。これにより、振れ角速度は負方向に加速する。また、期間T206中の時刻t207において、振れ角速度が0になるとともに、振れ角が最大となる。
【0131】
その後、期間T207において、ガーダ602は再び減速するため、期間T206で生じた負方向の角加速度を打ち消す方向に吊荷Sの加速が生じる。なお、期間T207中の時刻t208において、振れ角速度は最小となる。この時の振れ角速度はω211である。
【0132】
なお、
図16の振れ制御によるガーダ602の総移動時間は、(d/vc)++(tf1+tf3)/2+tf2×2である。ここで、tf1は期間T201~T203の時間である。また、tf3は期間T205~T207の時間である。
【0133】
つまり、期間T205~T207では、期間T201~T203とは逆の加減速制御が行われる。これにより、期間T207が終了する時刻t209において、振れ角速度及び振れ角の双方が0となる。
【0134】
(吊荷Sの状態)
図17は、第2比較例におけるガーダ602の移動中における吊荷Sの状態を示す図である。
図17において、
図8と同様、矢印A1はガーダ602の加速度を示し、矢印A2はガーダ602の速度を示す。また、
図17において、矢印A3は吊荷Sの振れ角速度を示している。また、
図17において、期間T201~T207は
図16に示す期間T201~T207と同じものである。同様に、
図17において時刻t200,t204,t205、t209は、
図16に示す時刻t200,t204,t205、t209と同じものである。
【0135】
時刻t200では、吊荷Sの振れ角及び振れ角速度はともに0である。
そして、期間T201を通してガーダ602は等加速度運動によって加速していく。つまり、期間T201において、ガーダ602の加速度を示す矢印A1は一定の大きさであり、ガーダ602の速度を示す矢印A202は徐々に大きくなっていく。なお、θ201は期間T201による加速中の振れ中心傾き角である。θ201=-tan-1(αa/g)である。
【0136】
そして、期間T202において、ガーダ602は減速するため、ガーダ602の加速度を示す矢印A1は期間T201とは逆向きとなる。そして、期間T202中において、ガーダ602の減速制御により振れ角速度は負方向から正方向へと変化する。なお、θ202はT202における減速中における振れ中心傾き角である。θ202=tan-1(αb/g)である。そして、期間T203において、再びガーダ602は加速制御される。期間T201~期間T203における、加減速制御により、期間T204による等速度制御が開始される時刻t204では、振れ角速度及び振れ角はともに0となっている。期間T204では、吊荷Sの振れ角及び振れ角速度は0のまま推移する。
【0137】
その後、時刻t205において期間T205による減速制御が開始されると、期間T205を通してガーダ602は減速していく。つまり、期間T205において、ガーダ602の加速度を示す矢印A1は、負方向に一定の大きさであり、ガーダ602の速度を示す矢印A2は徐々に小さくなっていく。
【0138】
そして、期間T206において、ガーダ602が加速するため、ガーダ602の加速度を示す矢印A201は期間T205とは逆向きとなる。そして、期間T206中において、振れ角速度は正方向から負方向へと変化する。その後、期間T207において、再びガーダ602は減速制御される。期間T205~期間T207における、加減速制御により、期間T207が終了する時刻t209では、振れ角速度及び振れ角はともに0となっている。
【0139】
(位相面)
次に、
図18を参照して、第2比較例で行われる振れ制御を位相面で説明する。適宜、
図16を参照する。
図18は、第2比較例で行われる振れ制御を位相面における位相面軌跡で示す図である。
第2比較例による振れ制御(
図16に示す振れ制御)では、吊荷Sであるコイルは太実線矢印に示すような位相面軌跡を描く。なお、
図18に示す期間T201~T207は、
図16に示す期間T201~T207に対応している。また、
図18において二点鎖線で示される、複数の同心円は位相面中心P0、位相点P1b,P2bのそれぞれを中心とする同心円である。位相点P1bは、加速中における振れ中心傾き角(
図17のθ201)を示す。また、位相点P2bは、減速中における振れ中心傾き角(
図17のθ202)を示す。
【0140】
まず、期間T201において、位相面軌跡は、位相面中心P0から位相点P201まで、位相点P1bを中心とした円弧で示される。その後、期間T202において、位相面軌跡は、位相点P201から位相点P202まで、位相点P2bを中心とした円弧で示される。その後、期間T203において、位相面軌跡は、位相点P202から位相面中心P0まで位相点P1bを中心とした円弧で示される。
【0141】
期間T204では、
図16に示すように、吊荷Sの振れ角速度は0であり、振れ角は0であるため、
図18に示す位相面では位相面中心P0にとどまった状態で位相面軌跡は推移する。
【0142】
続いて、期間T205において、位相面軌跡は、位相面中心P0から位相点P203まで、位相点P2bを中心とした円弧で示される。その後、期間T205において、位相面軌跡は、位相点P203から位相点P204まで、位相点P1bを中心とした円弧で示される。その後、期間T207において、位相面軌跡は、位相点P204から位相面中心P0まで位相点P2bを中心とした円弧で示される。
【0143】
第2比較例でも、加速期間にガーダ602の減速が行われたり、減速期間にガーダ602の加速が行われたりするため、本実施形態の振れ制御よりも移動時間が長くなる。
【0144】
[第3比較例]
続いて、
図19~
図21を参照して、第3比較例について説明する。第3比較例は、振れ周期139(
図3参照)で加減速する振れ止制御である。
【0145】
(速度制御、振れ角及び振れ角速度の時間変化)
図19は、第3比較例で行われる振れ制御における走行速度、振れ角及び振れ角速度とガーダ602の移動時間との関係(時間変化)を示す図である。
図19の上段はガーダ602の走行速度を示している。また、
図19の下段において実線は振れ角の時間変化を示し、破線は振れ角速度の時間変化を示している。また、以下の記載において、τは吊荷Sの振れ周期139である。
【0146】
まず、
図19の上段を参照して、ガーダ602の速度制御について説明する。
第3比較例において、まず、期間T301ではガーダ602の加速制御が行われる。その後、期間T302において、ガーダ602に対して等速度制御が行われ、期間T303において、ガーダ602の減速制御が行われる。
【0147】
次に、
図19の下段を参照して、ガーダ602が走行している際における振れ角と、振れ角速度との時間変化を説明する。
まず、時刻t300でガーダ602が走行を開始する。期間T301にガーダ602の加速度による慣性の法則によって、振れ角速は負側に振れる。これに伴い、振れ角も負側に振れる。ところで、期間T301が行われる時間tg1は振れ角周期(=τ)で設定されている。従って、
図19の下段に示すように、振れ角速度は期間T301中のt301で最小となり、時刻t303で最大となった後、期間T302が開始される時刻t304では0となる。また、振れ角も期間T301中の時刻t302で最小値(θ311=-2×tan
-1(αa/g)となった後、時刻t304で0となる。
【0148】
期間T302において、ガーダ602に対して等速度制御が行われる。前記したように、期間T302では、振れ角速度及び振れ角の双方が0となっているため、期間T302では、振れ角速度及び振れ角は0のまま推移する(実際には若干の振れが残る)。
【0149】
そして、時刻t305において、期間T303によるガーダ602に対して減速制御が開始される。期間T303におけるガーダ602の減速による慣性の法則によって、振れ角速は正側に振れる。これに伴い、振れ角も正側に振れる。ところで、期間T303が行われる時間tg2は振れ角周期(=τ)で設定されている。従って、
図19の下段に示すように、振れ角速度は期間T303中のt306で最大となり、時刻t308で最大となった後、期間T303が終了する時刻t309では0となる。また、振れ角も期間T303中の時刻t307で最大値(θ312=2×tan
-1(αb/g)となった後、時刻t309で0となる。
【0150】
ちなみに、期間T302が行われる時間は、(d/vc)-(tg1+tg2)/2となる。また、ガーダ602の総移動時間は(d/vc)+τとなる。
【0151】
(吊荷Sの状態)
図20は、第3比較例におけるガーダ602の移動中における吊荷S(コイル)の状態を示す図である。
図20において、
図8と同様、矢印A1はガーダ602の加速度を示し、矢印A2はガーダ602の速度を示す。また、
図20において、矢印A3は吊荷Sの振れ角速度を示している。また、
図20において、期間T301~T303は
図19に示す期間T301~T303と同じものである。同様に、
図20において時刻t300,t304,t305,t309は、
図19に示す時刻t300,t304,t305,t309と同じものである。
【0152】
まず、期間T301において、ガーダ602に対して加速度制御が行われる。この加速度制御による慣性の法則により、
図20に示すように吊荷Sは負側(進行方向と逆側)に振れる。しかし、前記したように期間T301が行われる時間は振れ角周期であるτに設定されている。そのため、
図19に示すように、振れ角速度は、時刻t301で最小になり、時刻t303で最大となる。また、振れ角は
図19に示す時刻t302で最小となる。そして、期間T302が開始される時刻t304では振れ角速度及び振れ角ともに0となる。なお、θ311は
図19に示す最小の振れ角であり、θ321は振れ角が最小となる時の振れ中心傾き角である。θ321=-tan
-1(αa/g)である。
【0153】
そして、期間T302ではガーダ602に対して等速度制御が行われる。従って、吊荷Sには外力が加わらないため、吊荷Sの振れ角速度及び振れ角は0のまま推移する。
【0154】
その後、時刻t305で、期間T303による、ガーダ602の減速制御が開始される。この減速制御による慣性の法則により、
図20に示すように吊荷Sは正側に振れる。しかし、前記したように期間T303が行われる時間は振れ角周期であるτに設定されている。そのため、
図19に示すように、振れ角速度は、時刻t305で最大になり、時刻t307で最小となる。また、振れ角は時刻t306で最大となる。その後、期間T303が終了する時刻t309では振れ角速度及び振れ角ともに0となる。なお、θ312は
図19に示す最大の振れ角であり、θ322は振れ角が最大となる時の振れ中心傾き角である。θ322=tan
-1(αb/g)である。
【0155】
(位相面)
次に、
図21を参照して、第3比較例で行われる振れ制御を位相面で説明する。
図21は、第3比較例で行われる振れ制御を位相面における位相面軌跡で示す図である。
第3比較例による振れ制御(
図19に示す振れ制御)では、吊荷Sであるコイルは太実線矢印に示すような位相面軌跡を描く。なお、
図21に示す期間T301~T303は、
図19に示す期間T301~T303に対応している。また、
図21において二点鎖線で示される、複数の同心円は位相面中心P0、位相点P1c,P2cのそれぞれを中心とする同心円である。位相点P1cは、最小の振れ角(θ311:
図19参照)が生じる時における振れ中心傾き角(
図20のθ321)を示す。また、位相点P2cは、最大の振れ角(θ312:
図19参照)が生じる時における振れ中心傾き角(
図20のθ322)を示す。
【0156】
まず、期間T301において、位相面軌跡は、位相面中心P0から位相面中心P0まで、位相点P1cを中心とした円で示される。続く、期間T302では、
図19に示すように、吊荷Sの振れ角速度は0であり、振れ角は0であるため、
図21に示す位相面では位相面中心P0にとどまった状態で位相面軌跡は推移する。そして、期間T303において、位相面軌跡は、位相面中心P0から位相面中心P0まで、位相点P2cを中心とした円で示される。
【0157】
このように第1比較例~第3比較例では、共通して搬送中において振れをできるだけ止めることを前提にしている。すなわち、第1比較例~第3比較例では、
図13のT106、
図16のT204、
図19のT302のようにガーダ602が最高速度で等速度制御されている時に振れが0となるよう制御が行われている。これに対して、本実施形態では、
図7に示すように、搬送中の振れをできるだけ止める制御は行われていない。
【0158】
(PC4のハードウェア構成)
図22は、本実施形態で用いられるPC4のハードウェア構成を示す図である。
PC4は、メモリ441、CPU(Central Processing Unit)442、HD(Hard Disk)や、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置443を有する。また、PC4は、入力装置444、出力装置445、通信装置446を有する。通信装置446は、PLC1等と通信を行うものである。
【0159】
そして、記憶装置443に格納されているプログラムがメモリ441にロードされ、ロードされたプログラムがCPU442によって実行される。これによって、
図3に示す横行速度パターン生成部411や、走行速度パターン生成部412が具現化する。
【0160】
(PLC1のハードウェア構成)
図23は、本実施形態で用いられるPLC1のハードウェア構成を示す図である。
PLC1は、メモリ151、CPU(Central Processing Unit)152を有する。また、PC4は、入力装置153、出力装置154、通信装置155を有する。通信装置155は、管理制御PC3や、PC4や、速度制御装置5等と通信を行うものである。
【0161】
そして、メモリ151に格納されているプログラムがCPU152によって実行される。これによって、
図3に示す振り子長演算部101、振れ周期演算部102、横行移動距離演算部103、横行移動速度演算部104、横行振れ角速度演算部105、走行移動速度演算部107、走行移動速度演算部107、走行移動距離演算部108が具現化する。
【0162】
本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を有するものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0163】
また、前記した各構成、機能、各部101~108,111~112,113,411,412等は、それらの一部又はすべてを、例えば集積回路で設計すること等によりハードウェアで実現してもよい。また、
図22及び
図23に示すように、前記した各構成、機能等は、CPU442,152等のプロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、HD(Hard Disk)に格納すること以外に、メモリ441,151や、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、IC(Integrated Circuit)カードや、SD(Secure Digital)カード、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に格納することができる。
また、各実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんどすべての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0164】
1 PLC
2 上位システム
3 管理制御PC
4 PC(制御装置)
5 速度制御装置
6 天井クレーン装置(天井クレーン)
411 横行速度パターン生成部
412 走行速度パターン生成部
421 横行用初期設定値
422 走行用初期設定値
431 横行速度パターン
432 走行速度パターン
601 クラブトロリ(搬送装置)
602 ガーダ(搬送装置)
P0 位相面中心
P1,P2,P11~P15 位相点
P1a,P1b,P1c,P2a,P2b,P2c 位相点
P101~P106 位相点
P201~P204 位相点
S 吊荷
T1 期間(第1の加速期間)
T2 期間(第1の等速度運動期間)
T3 期間(第2の減速期間)
T4 期間(第2の加速期間)
T5 期間(第1の等速度運動期間)
T6 期間(第1の減速期間)
T7 期間(第2の等速度運動期間)
T8 期間
T1a 期間(第3の減速期間)
T2a 期間(第3の加速期間)
T5a 期間(第4の減速期間)
T6a 期間(第4の加速期間)
t1 時刻(搬送開始位置)
t2~t7 時刻
t8 時刻(搬送目的位置)
Z1 制御システム
【手続補正書】
【提出日】2023-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊荷を懸吊している天井クレーンの搬送装置が搬送開始位置から加速する期間である第1の加速期間と、
前記搬送装置が搬送目的位置まで減速する期間である第1の減速期間と、
前記第1の加速期間の後、かつ、前記第1の減速期間の前の期間で、前記搬送装置が等速度運動する期間である第1の等速度運動期間と、
を有するよう制御する制御装置であって、
前記第1の等速度運動期間の間に、前記搬送装置の減速を行う期間であるとともに、前記第1の減速期間以外の期間である第2の減速期間と、
前記第2の減速期間の後に、前記搬送装置の加速を行う期間であるとともに、前記第1の加速期間以外の期間である第2の加速期間と、
を有するよう前記搬送装置の制御パターンを生成する制御パターン生成部を
有し、
前記制御パターン生成部は、
位相面に基づいて、前記第1の加速期間の開始から前記第1の減速期間の終了まで、前記吊荷の振れ角が0の状態で持続する期間を設けることなく、かつ、前記第1の等速度運動期間以外の等速度運動期間を設けずに、前記第1の減速期間の終了時に前記吊荷の振れ角及び振れ角速度が0となるよう、前記第1の減速期間の終了時から前記振れ角及び前記振れ角速度を逆算することで前記第2の減速期間及び前記第2の加速期間を決定する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記制御パターン生成部は、
前記第1の減速期間が開始される際の前記吊荷の前記振れ角及び前記振れ角速度を、前記第1の減速期間の終了時に前記振れ角及び前記振れ角速度が0となるよう逆算し、前記第1の減速期間の開始時の前記振れ角及び前記振れ角速度を基に、前記第2の減速期間及び前記第2の加速期間を前記振れ角及び前記振れ角速度を逆算することによって決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御パターン生成部は、
前記第1の加速期間と、前記第1の等速度運動期間との間に、前記搬送装置の減速を行う期間であり、前記第1の減速期間以外の期間であるとともに、前記第2の減速期間以外の期間である第3の減速期間と、
前記第3の減速期間の後、前記搬送装置の加速を行う期間であり、前記第1の加速期間以外の期間であるとともに、前記第2の加速期間以外の期間である第3の加速期間と
を有するよう前記制御パターンを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御パターン生成部は、
前記第1の等速度運動期間と、前記第1の減速期間との間に、前記搬送装置の減速を行う期間であり、前記第1の減速期間以外の期間であるとともに、前記第2の減速期間以外の期間である第4の減速期間と、
前記第4の減速期間の後、前記搬送装置の加速が行われる期間であり、前記第1の加速期間以外の期間であるとともに、前記第2の加速期間以外の期間である第4の加速期間と、
を有するよう前記制御パターンを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
吊荷を懸吊し、搬送する天井クレーンを有し、
前記天井クレーンの搬送装置が搬送開始位置から加速する期間である第1の加速期間と、
前記搬送装置が搬送目的位置まで減速する期間である第1の減速期間と、
前記第1の加速期間の後、かつ、前記第1の減速期間の前の期間で、前記搬送装置が等速度運動する期間である第1の等速度運動期間と、
を有するよう制御する制御装置と、
を有する天井クレーンシステムであって、
前記制御装置は、
前記第1の等速度運動期間の間に、前記搬送装置の減速を行う期間であるとともに、前記第1の減速期間以外の期間である第2の減速期間と、
前記第2の減速期間の後に、前記搬送装置の加速を行う期間であるとともに、前記第1の加速期間以外の期間である第2の加速期間と、
を有するよう前記搬送装置の制御パターンを生成し、
前記制御パターンを生成する際、
位相面に基づいて、前記第1の加速期間の開始から前記第1の減速期間の終了まで、前記吊荷の振れ角が0の状態で持続する期間を設けることなく、かつ、前記第1の等速度運動期間以外の等速度運動期間を設けずに、前記第1の減速期間の終了時に前記吊荷の振れ角及び振れ角速度が0となるよう、前記第1の減速期間の終了時から前記振れ角及び前記振れ角速度を逆算することで前記第2の減速期間及び前記第2の加速期間を決定する
ことを特徴とする天井クレーンシステム。
【請求項6】
吊荷を懸吊している天井クレーンの搬送装置を制御する制御装置によって、
搬送開始位置から加速する期間である第1の加速期間と、
前記搬送装置が搬送目的位置まで減速する期間である第1の減速期間と、
前記第1の加速期間の後、かつ、前記第1の減速期間の前の期間で、前記搬送装置が等速度運動する期間である第1の等速度運動期間と、
を有し、
さらに、
前記第1の等速度運動期間の間に、前記搬送装置の減速を行う期間であるとともに、前記第1の減速期間以外の期間である第2の減速期間と、
前記第2の減速期間の後に、前記搬送装置の加速を行う期間であるとともに、前記第1の加速期間以外の期間である第2の加速期間と、
を有するよう前記搬送装置の制御パターンが生成され、
前記制御パターンを基に前記搬送装置が制御され、
前記制御パターンが生成される際、
位相面に基づいて、前記第1の加速期間の開始から前記第1の減速期間の終了まで、前記吊荷の振れ角が0の状態で持続する期間を設けることなく、かつ、前記第1の等速度運動期間以外の等速度運動期間を設けずに、前記第1の減速期間の終了時に前記吊荷の振れ角及び振れ角速度が0となるよう、前記第1の減速期間の終了時から前記振れ角及び前記振れ角速度を逆算することで前記第2の減速期間及び前記第2の加速期間を決定する
ことを特徴とする天井クレーンの制御方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
前記した課題を解決するため、本発明は、吊荷を懸吊している天井クレーンの搬送装置が搬送開始位置から加速する期間である第1の加速期間と、前記搬送装置が搬送目的位置まで減速する期間である第1の減速期間と、前記第1の加速期間の後、かつ、前記第1の減速期間の前の期間で、前記搬送装置が等速度運動する期間である第1の等速度運動期間と、を有するよう制御する制御装置であって、前記第1の等速度運動期間の間に、前記搬送装置の減速を行う期間であるとともに、前記第1の減速期間以外の期間である第2の減速期間と、前記第2の減速期間の後に、前記搬送装置の加速を行う期間であるとともに、前記第1の加速期間以外の期間である第2の加速期間と、を有するよう前記搬送装置の制御パターンを生成する制御パターン生成部を有し、前記制御パターン生成部は、位相面に基づいて、前記第1の加速期間の開始から前記第1の減速期間の終了まで、前記吊荷の振れ角が0の状態で持続する期間を設けることなく、かつ、前記第1の等速度運動期間以外の等速度運動期間を設けずに、前記第1の減速期間の終了時に前記吊荷の振れ角及び振れ角速度が0となるよう、前記第1の減速期間の終了時から前記振れ角及び前記振れ角速度を逆算することで前記第2の減速期間及び前記第2の加速期間を決定することを特徴とする。
その他の解決手段は実施形態中において適宜記載する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
このように、制御パターン生成部412は、期間T6の終了時(時刻t8)に吊荷Sの振れ角及び振れ角速度が0となるよう、期間T6の終了時(時刻t8)から振れ角及び振れ角速度(位相面軌跡)を逆算することで期間T3及び期間T
4を決定する。具体的には、制御パターン生成部412は、期間T6が開始される際(時刻t6)の吊荷Sの振れ角及び振れ角速度を、期間T6の終了時(時刻t8)に振れ角及び振れ角速度が0となるよう逆算し(位相面軌跡を逆算し)、期間T6の開始時(時刻t6)の振れ角及び振れ角速度を基に、期間T3及び期間T
4を振れ角及び振れ角速度(位相面)を逆算することによって決定する。期間T
3は図7のΔtbを示し、期間T
4は図7のΔtaを示す。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0124
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0124】
期間T20
6は期間T20
2と同じである。そして、期間T205及び期間T207それぞれの時間は、(ta/2)+(tf2/2)となる。そして、
図16において、tbは加速度αaで速度vcから速度0まで減速した場合の加速時間であり、taと同じ時間となる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0147
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0147】
次に、
図19の下段を参照して、ガーダ602が走行している際における振れ角と、振れ角速度との時間変化を説明する。
まず、時刻t300でガーダ602が走行を開始する。期間T301にガーダ602の加速度による慣性の法則によって、振れ角速
度は負側に振れる。これに伴い、振れ角も負側に振れる。ところで、期間T301
(期間tg1
)は振れ角周期(=τ)で設定されている。従って、
図19の下段に示すように、振れ角速度は期間T301中のt301で最小となり、時刻t303で最大となった後、期間T302が開始される時刻t304では0となる。また、振れ角も期間T301中の時刻t302で最小値(θ311=-2×tan
-1(αa/g)となった後、時刻t304で0となる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0149
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0149】
そして、時刻t305において、期間T303によるガーダ602に対して減速制御が開始される。期間T303におけるガーダ602の減速による慣性の法則によって、振れ角速
度は正側に振れる。これに伴い、振れ角も正側に振れる。ところで、期間T303
(期間tg2
)は振れ角周期(=τ)で設定されている。従って、
図19の下段に示すように、振れ角速度は期間T303中のt306で最大となり、時刻t308で最大となった後、期間T303が終了する時刻t309では0となる。また、振れ角も期間T303中の時刻t307で最大値(θ312=2×tan
-1(αb/g)となった後、時刻t309で0となる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0150
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0150】
ちなみに、期間T302は、(d/vc)-(tg1+tg2)/2となる。また、ガーダ602の総移動時間は(d/vc)+τとなる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0152
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0152】
まず、期間T301において、ガーダ602に対して加速度制御が行われる。この加速度制御による慣性の法則により、
図20に示すように吊荷Sは負側(進行方向と逆側)に振れる。しかし、前記したように期間T30
1は振れ角周期であるτに設定されている。そのため、
図19に示すように、振れ角速度は、時刻t301で最小になり、時刻t303で最大となる。また、振れ角は
図19に示す時刻t302で最小となる。そして、期間T302が開始される時刻t304では振れ角速度及び振れ角ともに0となる。なお、θ311は
図19に示す最小の振れ角であり、θ321は振れ角が最小となる時の振れ中心傾き角である。θ321=-tan
-1(αa/g)である。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0154
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0154】
その後、時刻t305で、期間T303による、ガーダ602の減速制御が開始される。この減速制御による慣性の法則により、
図20に示すように吊荷Sは正側に振れる。しかし、前記したように期間T30
3は振れ角周期であるτに設定されている。そのため、
図19に示すように、振れ角速度は、時刻t305で最大になり、時刻t307で最小となる。また、振れ角は時刻t306で最大となる。その後、期間T303が終了する時刻t309では振れ角速度及び振れ角ともに0となる。なお、θ312は
図19に示す最大の振れ角であり、θ322は振れ角が最大となる時の振れ中心傾き角である。θ322=tan
-1(αb/g)である。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊荷を懸吊している天井クレーンの搬送装置が搬送開始位置から加速する期間である第1の加速期間と、
前記搬送装置が搬送目的位置まで減速する期間である第1の減速期間と、
前記第1の加速期間の後、かつ、前記第1の減速期間の前の期間で、前記搬送装置が等速度運動する期間である第1の等速度運動期間と、
を有するよう制御する制御装置であって、
前記第1の等速度運動期間の間に、前記搬送装置の減速を行う期間であるとともに、前記第1の減速期間以外の期間である第2の減速期間と、
前記第2の減速期間の後に、前記搬送装置の加速を行う期間であるとともに、前記第1の加速期間以外の期間である第2の加速期間と、
を有するよう前記搬送装置の制御パターンを生成する制御パターン生成部を
有し、
前記制御パターン生成部は、
前記第1の加速期間の開始から前記第1の減速期間の終了まで、前記吊荷の振れ角が0の状態で持続する期間を設けることなく、かつ、前記第1の等速度運動期間以外の等速度運動期間を設けずに、前記第1の減速期間の終了時に前記吊荷の振れ角及び振れ角速度が0となるよう、前記第1の減速期間の終了時から前記振れ角及び前記振れ角速度を逆算することで前記第2の減速期間及び前記第2の加速期間を決定する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記制御パターン生成部は、
前記第1の減速期間が開始される際の前記吊荷の前記振れ角及び前記振れ角速度を、前記第1の減速期間の終了時に前記振れ角及び前記振れ角速度が0となるよう逆算し、前記第1の減速期間の開始時の前記振れ角及び前記振れ角速度を基に、前記第2の減速期間及び前記第2の加速期間を前記振れ角及び前記振れ角速度を逆算することによって決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御パターン生成部は、
前記第1の加速期間と、前記第1の等速度運動期間との間に、前記搬送装置の減速を行う期間であり、前記第1の減速期間以外の期間であるとともに、前記第2の減速期間以外の期間である第3の減速期間と、
前記第3の減速期間の後、前記搬送装置の加速を行う期間であり、前記第1の加速期間以外の期間であるとともに、前記第2の加速期間以外の期間である第3の加速期間と
を有するよう前記制御パターンを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御パターン生成部は、
前記第1の等速度運動期間と、前記第1の減速期間との間に、前記搬送装置の減速を行う期間であり、前記第1の減速期間以外の期間であるとともに、前記第2の減速期間以外の期間である第4の減速期間と、
前記第4の減速期間の後、前記搬送装置の加速が行われる期間であり、前記第1の加速期間以外の期間であるとともに、前記第2の加速期間以外の期間である第4の加速期間と、
を有するよう前記制御パターンを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
吊荷を懸吊し、搬送する天井クレーンを有し、
前記天井クレーンの搬送装置が搬送開始位置から加速する期間である第1の加速期間と、
前記搬送装置が搬送目的位置まで減速する期間である第1の減速期間と、
前記第1の加速期間の後、かつ、前記第1の減速期間の前の期間で、前記搬送装置が等速度運動する期間である第1の等速度運動期間と、
を有するよう制御する制御装置と、
を有する天井クレーンシステムであって、
前記制御装置は、
前記第1の等速度運動期間の間に、前記搬送装置の減速を行う期間であるとともに、前記第1の減速期間以外の期間である第2の減速期間と、
前記第2の減速期間の後に、前記搬送装置の加速を行う期間であるとともに、前記第1の加速期間以外の期間である第2の加速期間と、
を有するよう前記搬送装置の制御パターンを生成し、
前記制御パターンを生成する際、
前記第1の加速期間の開始から前記第1の減速期間の終了まで、前記吊荷の振れ角が0の状態で持続する期間を設けることなく、かつ、前記第1の等速度運動期間以外の等速度運動期間を設けずに、前記第1の減速期間の終了時に前記吊荷の振れ角及び振れ角速度が0となるよう、前記第1の減速期間の終了時から前記振れ角及び前記振れ角速度を逆算することで前記第2の減速期間及び前記第2の加速期間を決定する
ことを特徴とする天井クレーンシステム。
【請求項6】
吊荷を懸吊している天井クレーンの搬送装置を制御する制御装置によって、
搬送開始位置から加速する期間である第1の加速期間と、
前記搬送装置が搬送目的位置まで減速する期間である第1の減速期間と、
前記第1の加速期間の後、かつ、前記第1の減速期間の前の期間で、前記搬送装置が等速度運動する期間である第1の等速度運動期間と、
を有し、
さらに、
前記第1の等速度運動期間の間に、前記搬送装置の減速を行う期間であるとともに、前
記第1の減速期間以外の期間である第2の減速期間と、
前記第2の減速期間の後に、前記搬送装置の加速を行う期間であるとともに、前記第1の加速期間以外の期間である第2の加速期間と、
を有するよう前記搬送装置の制御パターンが生成され、
前記制御パターンを基に前記搬送装置が制御され、
前記制御パターンが生成される際、
前記第1の加速期間の開始から前記第1の減速期間の終了まで、前記吊荷の振れ角が0の状態で持続する期間を設けることなく、かつ、前記第1の等速度運動期間以外の等速度運動期間を設けずに、前記第1の減速期間の終了時に前記吊荷の振れ角及び振れ角速度が0となるよう、前記第1の減速期間の終了時から前記振れ角及び前記振れ角速度を逆算することで前記第2の減速期間及び前記第2の加速期間を決定する
ことを特徴とする天井クレーンの制御方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
前記した課題を解決するため、本発明は、吊荷を懸吊している天井クレーンの搬送装置が搬送開始位置から加速する期間である第1の加速期間と、前記搬送装置が搬送目的位置まで減速する期間である第1の減速期間と、前記第1の加速期間の後、かつ、前記第1の減速期間の前の期間で、前記搬送装置が等速度運動する期間である第1の等速度運動期間と、を有するよう制御する制御装置であって、前記第1の等速度運動期間の間に、前記搬送装置の減速を行う期間であるとともに、前記第1の減速期間以外の期間である第2の減速期間と、前記第2の減速期間の後に、前記搬送装置の加速を行う期間であるとともに、前記第1の加速期間以外の期間である第2の加速期間と、を有するよう前記搬送装置の制御パターンを生成する制御パターン生成部を有し、前記制御パターン生成部は、前記第1の加速期間の開始から前記第1の減速期間の終了まで、前記吊荷の振れ角が0の状態で持続する期間を設けることなく、かつ、前記第1の等速度運動期間以外の等速度運動期間を設けずに、前記第1の減速期間の終了時に前記吊荷の振れ角及び振れ角速度が0となるよう、前記第1の減速期間の終了時から前記振れ角及び前記振れ角速度を逆算することで前記第2の減速期間及び前記第2の加速期間を決定することを特徴とする。
その他の解決手段は実施形態中において適宜記載する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
期間T4の後、速度制御装置5は、ガーダ602が等速度運動を行うよう制御する期間T5が設けられる。期間T5は第1の等速度運動期間である。期間T5におけるガーダ602の速度は、期間T
2と同じvcとなるよう制御される。期間T5の後、速度制御装置5は走行目標位置127(
図3参照)に向けて減速を行う。そして、期間T6で減速制御が行われることで、走行終了の時刻t8でガーダ602の速度制御を終了する。期間T6は、ガーダ602が走行終了の時刻t8(搬送目的位置)まで減速する期間である第1の減速期間である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
このように、走行速度パターン生成部412は、ガーダ602が等速度運動を行っている間(期間T2、T5)に、期間T6以外の減速を期間T3で所定時間行った後、期間T1の加速以外の加速を期間T4で所定時間行う走行速度パターン432を生成する。即ち、走行速度パターン生成部412は、期間T1~T6を有するよう走行速度パターン432を生成する。このようにして天井クレーン装置6の制御が行われる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
なお、期間T1のように、ガーダ602が等加速度運動を行うように制御されることを加速制御と適宜記載する。また、ガーダ602が等速度運動を行うように制御されることを、等速度制御と適宜記載する。さらに、期間T6のようにガーダ602が等加速で減速するよう制御されることを、減速制御と適宜記載する。