(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005033
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/308 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
H01L21/308 B
H01L21/308 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105007
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホー リンダ
(72)【発明者】
【氏名】鰍場 真樹
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA02
5F043AA03
5F043AA04
5F043AA05
5F043AA31
5F043BB01
5F043BB06
5F043BB12
5F043BB21
5F043DD02
5F043DD12
(57)【要約】
【課題】金属汚染のリスクを低減し、かつコストを低減しながら、半導体基板をエッチングできる基板処理方法を提供する。
【解決手段】この基板処理方法は、酸化還元反応を促進するための有機触媒を半導体基板の表面のエッチングを施すべき領域に選択的に配置する有機触媒の配置工程と、有機触媒が配置された半導体基板の表面に腐食剤及び酸化剤を含むエッチング液を供給する工程と、半導体基板に所望のエッチング処理を行った後に、有機触媒を除去する工程と、を含む。有機触媒は、半導体基板の還元電位をE
S、有機触媒の還元電位をE
A、酸化剤の還元電位をE
Oとすると、E
O>E
A>E
Sの条件を満たすことが好ましい。有機触媒は、レドックス有機化合物及びレドックス有機ポリマーの一種又は二種以上を含むことが好ましい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板にエッチング処理を行う基板処理方法であって、
酸化還元反応を促進するための有機触媒を前記半導体基板の表面のエッチングを施すべき領域に選択的に配置する有機触媒の配置工程と、
前記有機触媒が配置された前記半導体基板の表面に腐食剤及び酸化剤を含むエッチング液を供給する工程と、
前記半導体基板に所望のエッチング処理を行った後に、前記半導体基板から前記有機触媒を除去する工程と、を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記有機触媒は、前記半導体基板の還元電位をES、前記有機触媒の還元電位をEA、前記酸化剤の還元電位をEOとすると、
EO>EA>ES
の条件を満たす、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記有機触媒は、レドックス有機化合物及びレドックス有機ポリマーの一種又は二種以上を含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記レドックス有機化合物は、2,2,6,6-tetramethylpiperidinyloxyl(TEMPO)、2,5-di-tert-butyl-1,4-bis(2-methoxyethoxy)benzene(DBBB)、N-ethylphenothiazine(EPT)、及び3,7-bis(trifluoromethyl)-N-ethylphenothiazine(BCF3EPT)、並びにそれらの誘導体からなるレドックス有機化合物群からから選ばれる一種又は二種以上の組み合わせを含み、
前記レドックス有機ポリマーは、
TEMPOポリマー、Poly(2,2,6,6-tetramethylpiperidinyloxy-4-vinylmethacrylate)(PTMA)、Poly(3,4-ethylenedioxythiophene)(PEDOT)、及びPoly(3-vinyl-N-methylphenothiazine)(PVMPT)、並びにそれらの誘導体からなるレドックス有機ポリマー群から選ばれる一種又は二種以上の組み合わせを含む、請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記有機触媒は、下記の化学式で表されるTEMPO誘導体を含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【化1】
【請求項6】
前記エッチング液は、
前記酸化剤として、溶存酸素(O2)、オゾン(O3)、過酸化水素(H2O2)、硝酸(HNO3)、過硫酸ナトリウム(Na2S2O8)、及び過硫酸カリウム(K2S2O8)のうちの一種以上を含み、
前記腐食剤として、フッ化水素(HF)、バッファードフッ酸(BHF)、アンモニア、硫酸、塩酸、及びクエン酸のうちの一種以上を含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記半導体基板は、シリコン基板、炭化シリコン基板、ゲルマニウム基板、又はIII-V族化合物半導体基板である、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記有機触媒の配置工程は、
前記半導体基板の表面に、フォトリソグラフィ用樹脂組成物を塗布して塗布膜を形成する塗布工程と、
前記半導体基板の表面に塗布された塗布膜を、前記有機触媒を配置すべき位置に応じて、選択的に露光する露光工程と、
露光後の前記塗布膜を現像することにより、前記有機触媒を配置すべき位置に開口部を有する、パターン化された膜を前記半導体基板の表面に得る現像工程と、
前記開口部に前記有機触媒を配置する工程と、
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記有機触媒の配置工程は、
前記半導体基板の表面に、感光性有機触媒を塗布して感光性有機触媒の塗布膜を形成する塗布工程と、
前記半導体基板の表面に塗布された感光性有機触媒の塗布膜を、前記有機触媒を配置すべき位置に応じて、選択的に露光する露光工程と、
露光後の前記感光性有機触媒の塗布膜を現像することにより、前記有機触媒を配置すべき位置だけに前記感光性有機触媒の膜が残ったパターン化された有機触媒膜を得る現像工程と、
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記有機触媒を除去する工程は、溶剤を用いて前記有機触媒を溶解する工程を含み、
前記溶剤は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、モノエタノールアミン(MEA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル(MeCN)、ジクロロメタン(DCM)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)から選択した一種又は二種以上を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記有機触媒を除去する工程は、剥離液を用いて前記有機触媒を剥離する工程を含み、
前記剥離液は、硫酸過酸化水素水混合液(SPM)、及びオゾン水のうちの一種以上を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記有機触媒を除去する工程の後に、前記半導体基板の表面に酸化液を供給して酸化膜を形成する酸化工程と、
前記酸化工程で形成した酸化膜をエッチング液を用いて除去する酸化膜エッチング工程と、
をさらに含む請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記酸化液は、過酸化水素水(H2O2)、アンモニア過酸化水素水混合液、塩酸過酸化水素水混合液、及び硫酸過酸化水素水混合液(SPM)のうちのいずれか一種又は二種以上を含む、請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記酸化膜を除去するための前記エッチング液は、希フッ酸(dHF)を含む、請求項12に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理方法に関する。
【0002】
本発明において、処理の対象となる基板は半導体基板であり、処理の内容はエッチング処理である。
【背景技術】
【0003】
下記特許文献1には、半導体基板に孔や溝を形成する方法として、形成する孔や溝の形状に応じたパターン形状の保護膜を形成し、これをマスクとして使用して、エッチング液を用いてMacEtch(Metal-assisted Chemical Etching)法により半導体基板をエッチングする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたMacEtch法は、触媒として貴金属を用いるため、半導体基板の金属汚染のリスクがある。加えて、貴金属の使用に伴ってコストが嵩むうえに、貴金属のパターニング処理及びエッチング後の貴金属の除去処理も高コストのプロセスである。
【0006】
そこで、本発明の1つの目的は、金属汚染のリスクを低減し、かつコストを低減しながら、半導体基板をエッチングできる基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一実施形態は、酸化還元反応を促進するための有機触媒を半導体基板の表面のエッチングを施すべき領域に選択的に配置する有機触媒の配置工程と、前記有機触媒が配置された前記半導体基板の表面に腐食剤及び酸化剤を含むエッチング液を供給する工程と、前記半導体基板に所望のエッチング処理を行った後に、前記半導体基板から前記有機触媒を除去する工程と、を含む、基板処理方法を提供する。
【0008】
有機触媒が配置された領域にエッチング液が供給されると、有機触媒を介してエッチング液と半導体基板との間の電子のやり取りが促進され、それによって、酸化還元反応が速やかに進行する。その結果、半導体基板の表面が酸化されて酸化膜が形成され、その酸化膜が腐食剤によって腐食されるエッチング反応が速やかに進行する。この速やかなエッチング反応が、有機触媒が配置された領域において選択的に生じるので、有機触媒の配置パターンに従って半導体基板を表面から加工することができる。
【0009】
有機触媒は、有機化合物触媒とも呼ばれ、金属元素を含まずに触媒作用を生じるものである。したがって、金属汚染のリスクを低減できるうえに、貴金属触媒を使用する場合に比較して、コストを低減することができる。よって、金属汚染のリスクを低減し、かつコストを低減しながら、半導体基板をエッチングできる基板処理方法を提供できる。
【0010】
(2)本発明の一実施形態において、前記有機触媒は、前記半導体基板の還元電位をES、前記有機触媒の還元電位をEA、前記酸化剤の還元電位をEOとすると、EO>EA>ESの条件を満たす。
【0011】
この基板処理方法によれば、半導体基板の表面に配置された有機触媒が、貴金属触媒(Ag,Au等)に匹敵する電子授受機能を有するので、エッチング反応によって、半導体基板を速やかに加工できる。
【0012】
(3)本発明の一実施形態において、前記有機触媒は、レドックス有機化合物及びレドックス有機ポリマーの一種又は二種以上を含む。レドックス有機化合物及びレドックス有機ポリマーは、可逆的かつ速い電子授受能を有するので、貴金属触媒に匹敵する触媒作用を有する。
【0013】
(4)本発明の一実施形態において、前記レドックス有機化合物は、2,2,6,6-tetramethylpiperidinyloxyl(TEMPO)、2,5-di-tert-butyl-1,4-bis(2-methoxyethoxy)benzene(DBBB)、N-ethylphenothiazine(EPT)、及び3,7-bis(trifluoromethyl)-N-ethylphenothiazine(BCF3EPT)、並びにそれらの誘導体からなるレドックス有機化合物群から選ばれる一種又は二種以上の組み合わせを含む。また、前記レドックス有機ポリマーは、TEMPOポリマー、Poly(2,2,6,6-tetramethylpiperidinyloxy-4-vinylmethacrylate)(PTMA)、Poly(3,4-ethylenedioxythiophene)(PEDOT)、及びPoly(3-vinyl-N-methylphenothiazine)(PVMPT)、並びにそれらの誘導体からなるレドックス有機ポリマー群から選ばれる一種又は二種以上の組み合わせを含む。
【0014】
(5)本発明の一実施形態において、前記有機触媒は、下記の化学式で表されるTEMPO誘導体を用いることができる。
【0015】
【0016】
(6)本発明の一実施形態において、前記エッチング液は、前記酸化剤として、溶存酸素(O2)、オゾン(O3)、過酸化水素(H2O2)、硝酸(HNO3)、過硫酸ナトリウム(Na2S2O8)、及び過硫酸カリウム(K2S2O8)のうちの一種以上を含み、前記腐食剤として、フッ化水素(HF)、バッファードフッ酸(BHF)、アンモニア、硫酸、塩酸、及びクエン酸のうちの一種以上を含む。
【0017】
(7)本発明の一実施形態において、前記半導体基板は、シリコン(Si)基板、炭化シリコン(SiC)基板、ゲルマニウム(Ge)基板、又はIII-V族化合物半導体基板である。III-V族化合物半導体基板の例としては、ガリウム砒素(GaAs)化合物半導体基板、インジウム燐(InP)化合物半導体基板、ガリウム燐(GaP)化合物半導体基板などを挙げることができる。
【0018】
(8)本発明の一実施形態において、前記有機触媒の配置工程は、前記半導体基板の表面に、フォトリソグラフィ用樹脂組成物を塗布して塗布膜を形成する塗布工程と、前記半導体基板の表面に塗布された塗布膜を、前記有機触媒を配置すべき位置に応じて、選択的に露光する露光工程と、露光後の前記塗布膜を現像することにより、前記有機触媒を配置すべき位置に開口部を有する、パターン化された膜を前記半導体基板の表面に得る現像工程と、前記開口部に前記有機触媒を配置する工程と、を含む。
【0019】
有機触媒の配置工程において、フォトリソグラフィ技術を用いることにより、有機触媒を配置すべき位置が開口した微細パターンの膜を形成することができる。そして、その微細パターンの膜を利用することで、半導体基板の表面のエッチングを施すべき領域に、正確かつ精密に有機触媒を配置することができる。
【0020】
「開口部に有機触媒を配置する」とは、開口部内で露出する半導体基板の表面に有機触媒が作用するように有機触媒を配置することをいう。端的には、開口部内で半導体基板の表面に接するように有機触媒が配置される。「開口部に有機触媒を配置する」ことは、開口部外に有機触媒が配置されることを妨げない。すなわち、現像工程によってパターン化された膜の開口部外の領域に有機触媒が配置されていてもよい。このような有機触媒は、半導体基板の表面に接しないので、エッチング反応に寄与しない。
【0021】
(9)本発明の一実施形態において、前記有機触媒の配置工程は、前記半導体基板の表面に、感光性有機触媒を塗布して感光性有機触媒の塗布膜を形成する塗布工程と、前記半導体基板の表面に塗布された感光性有機触媒の塗布膜を、前記有機触媒を配置すべき位置に応じて、選択的に露光する露光工程と、露光後の前記感光性有機触媒の塗布膜を現像することにより、前記有機触媒を配置すべき位置だけに前記感光性有機触媒の膜が残ったパターン化された有機触媒膜を得る現像工程と、を含むものでもよい。
【0022】
有機触媒に、感光性有機触媒を用いることにより、フォトリソグラフィ技術により、半導体基板の表面の有機触媒を配置すべき位置にだけ、正確かつ精密に有機触媒を配置することができる。
【0023】
(10)本発明の一実施形態において、前記有機触媒を除去する工程は、溶剤を用いて前記有機触媒を溶解する工程を含む。前記溶剤は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、モノエタノールアミン(MEA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル(MeCN)、ジクロロメタン(DCM)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)から選択した一種であってもよく、又はそれらの二種以上の混合液であってもよい。
【0024】
これらの溶剤を用いれば、有機触媒を溶解して除去することができる。
【0025】
(11)本発明の一実施形態において、前記有機触媒を除去する工程は、剥離液を用いて前記有機触媒を剥離する工程を含む。前記剥離液としては、硫酸過酸化水素水混合液(SPM)、及びオゾン水(O3を溶存させた脱イオン水)のうちの一種以上を用いることができる。オゾン雰囲気中で半導体基板を加熱するオゾンベーク処理を行った後に、半導体基板の表面に剥離液を供給してもよい。
【0026】
(12)本発明の一実施形態において、前記基板処理方法は、前記有機触媒を除去する工程の後に、前記半導体基板の表面に酸化液を供給して酸化膜を形成する酸化工程と、前記酸化工程で形成した酸化膜をエッチング液を用いて除去する酸化膜エッチング工程と、をさらに含んでもよい。
【0027】
この酸化工程及び酸化膜エッチング工程を加えることにより、有機触媒を用いたエッチング反応により形成した構造(孔、溝、凹部等)の表面を滑らかにできるという効果がある。
【0028】
(13)前記の酸化工程で用いる酸化液としては、過酸化水素水(H2O2)、アンモニア過酸化水素水混合液(例えばSC1)、塩酸過酸化水素水混合液(例えばSC2)、硫酸過酸化水素水混合液(SPM)のうちのいずれか一種又は二種以上を用いることができる。
【0029】
(14)前記の酸化膜エッチング工程で用いるエッチング液は、一例として、希フッ酸(dHF)を用いてもよい。
【0030】
(15)前記有機触媒が配置された半導体基板の表面にエッチング液を供給する工程は、半導体基板の表面にエッチング液をノズルから吐出する方法で行ってもよいし、半導体基板をエッチング液に浸漬する方法で行ってもよい。
【0031】
以上の特徴、とくに(1)~(15)の特徴は、任意の2つ以上が組み合わされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における半導体基板のエッチングのメカニズムを説明するための概念図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の第1実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の第1実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【
図2C】
図2Cは、本発明の第1実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【
図2D】
図2Dは、本発明の第1実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【
図2E】
図2Eは、本発明の第1実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【
図2F】
図2Fは、本発明の第1実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【
図2G】
図2Gは、本発明の第1実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【
図3】
図3は、酸化溶解反応によるエッチングを段階的に示す概要図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の第2実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の第2実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【
図4C】
図4Cは、本発明の第2実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【
図4D】
図4Dは、本発明の第2実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【
図4E】
図4Eは、本発明の第2実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【
図4F】
図4Fは、本発明の第2実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の第3実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【
図5B】
図5Bは、本発明の第3実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【
図5C】
図5Cは、本発明の第3実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【
図5D】
図5Dは、本発明の第3実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【
図5E】
図5Eは、本発明の第3実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【
図5F】
図5Fは、本発明の第3実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【
図5G】
図5Gは、本発明の第3実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【
図5H】
図5Hは、本発明の第3実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【
図5I】
図5Iは、本発明の第3実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態における半導体基板のエッチングのメカニズムを説明するための概念図である。
【0035】
半導体基板としてシリコン基板、エッチング液中の腐食剤としてフッ化水素(HF)を用いる場合を例にとると、有機触媒が配置されたシリコン基板の表面において、
図1に示す酸化溶解反応が生じる。
【0036】
図1における酸化溶解反応に関わる化学反応は、次のStep1、Step2及びStep3を含む。ここでは、エッチング液中の酸化剤としては、フッ化水素の水溶液中に溶存する酸素(O
2)、又はフッ化水素の水溶液と混合される過酸化水素水(H
2O
2)を例にとっている。エッチング液中の酸化剤としては、これらの他にも、硝酸(HNO
3)、過硫酸ナトリウム(Na
2S
2O
8)、過硫酸カリウム(K
2S
2O
8)等の他の種類の酸化剤を用いることができる。
【0037】
(Step1)O2+4H++4e-→2H2O+4h+,又は
H2O2+2H++2e-→2H2O+2h+
(Step2)Si+2H2O+4h+→SiO2+4H++4e-
(Step3)SiO2+6HF→SiF6
2-+2H++2H2O
Step1は、有機触媒とエッチング液との界面における酸化剤の還元反応である。エッチング液中の酸化剤、例えば酸素(O2)、過酸化水素(H2O2)等は、液中の水素イオン(H+)と、有機触媒から供給される電子(e-)とを獲得して還元される。それによって、有機触媒中にホール(h+)が生成する。
【0038】
Step2は、有機触媒とシリコン基板との界面における酸化反応である。Step1により有機触媒中に生成したホール(h+)は、シリコン基板との界面に速やかに移動し、シリコン基板の表面のシリコン(Si)を酸化する。すなわち、シリコンは、液中の水から酸素を獲得し、有機触媒からホール(h+)を獲得して(すなわち、有機触媒に電子(e-)を放出して)、酸化される。これにより、酸化シリコン(SiO2)が生成される。
【0039】
Step3は、酸化シリコンの溶解反応である。シリコン基板の表面に生成した酸化シリコンは、エッチング液中の腐食剤(ここではフッ化水素(HF))によって溶解され、液中に水素イオン(H+)を放出する。この水素イオンは、Step1の反応に用いられる。
【0040】
これらのStep1、Step2及びStep3を繰り返すサイクルエッチングによって、シリコン基板がエッチングされる。
【0041】
Step1におけるエッチング液と有機触媒(以下の化学反応式において「A」と表す。)との界面における化学反応をより詳細に示すと、次のとおりである。
【0042】
酸化剤の反応:O2+4H++4e-→2H2O(還元反応)
有機触媒の反応:4A-4e-→4A++4h+(酸化反応)
すなわち、エッチング液中の酸化剤は、電子を獲得して還元され、その一方で、有機触媒は電子を放出して酸化される。
【0043】
一方、Step2における有機触媒(A)とシリコン基板との界面における化学反応をより詳細に示すと、次のとおりである。
【0044】
シリコン基板の反応:Si+2H2O+4h+→SiO2+4H++4e-
(酸化反応)
有機触媒の反応:4A++4e-→4A(還元反応)
すなわち、シリコン基板は電子を放出して酸化され、有機触媒は電子を獲得して還元される。
【0045】
Step1が起こるためには、酸化剤の還元電位EOが、有機触媒の還元電位EAより高いことが必要である。また、Step2が起こるためには、有機触媒の還元電位EAが、シリコン基板の還元電位ESiより高いことが必要である。
【0046】
そのため、本実施形態では、有機触媒の還元電位EAが、次の条件を満たす有機触媒が用いられる。
【0047】
EO>EA>ESi(=0.67V)
シリコン以外の半導体材料の基板が用いられる場合も同様であるので、半導体材料の還元電位ES(シリコンの場合にはES=ESi)を用いて表す次式の条件を満たす有機触媒が選定される。
【0048】
EO>EA>ES
以下、より具体的な実施形態について説明する。
【0049】
<第1実施形態に係る基板処理方法>
図2A~
図2Gは、本発明の第1実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【0050】
まず、
図2Aを参照して、処理対象である半導体基板10を準備する。半導体基板10としては、シリコン(Si)基板、炭化シリコン(SiC)基板、ゲルマニウム(Ge)基板、III-V族化合物半導体基板などを用いることができる。III-V族化合物半導体基板は、III族元素とV族元素との化合物からなる半導体基板であり、具体的には、ガリウム砒素(GaAs)、インジウム燐(InP)、ガリウム燐(GaP)等のIII-V族化合物からなる半導体基板である。
【0051】
本実施形態では、半導体基板10としてシリコン基板(シリコンウエハ)を用いる場合を例にとって述べる。以下、半導体基板10を「シリコンウエハ10」という場合がある。
【0052】
図2Bを参照して、準備したシリコンウエハ10の表面に、フォトリソグラフィ用樹脂組成物を塗布して塗布膜11を形成する塗布工程を行う。シリコンウエハ10の表面へのフォトリソグラフィ用樹脂組成物(以下「フォトレジスト液」という。)の塗布方法としては、シリコンウエハ10をスピンチャックにより水平に保持し、シリコンウエハ10をその中心を通る鉛直な回転軸線まわりに回転させながら、上方からフォトレジスト液を滴下してフォトレジスト液をシリコンウエハ10の表面に均一に塗布するスピンコート処理が採用されてもよい。
【0053】
そして、一例として、100℃前後でシリコンウエハ10を加熱し、フォトレジスト液中の溶媒を蒸発させて塗布膜11を硬化させるプリベーク処理を行ってもよい。
【0054】
図2Cを参照して、塗布膜11を、位置選択的に露光する露光工程を行う。露光工程では、塗布膜11にフォトマスク(図示せず)を通して光を照射する。ポジ型のフォトレジストを用いる場合、光が照射された部分の塗布膜11aは、現像液に対する溶解性が増大するが、フォトマスクによって光が遮られた部分の塗布膜11bは、溶解性はほとんど変化しない。そこで、シリコンウエハ10の表面におけるエッチングを施すべき領域を覆う塗布膜11aの部分にだけ光が照射されるフォトマスクを用いることにより、塗布膜11の位置選択的な露光を行える。ネガ型のフォトレジストを用いる場合には、その反転パターンのフォトマスクを用いればよい。
【0055】
図2Dを参照して、露光後の塗布膜11を現像することで、パターン化された膜11bを得る現像工程を行う。現像工程では、塗布膜11に現像液が塗布される。現像液としては、一例として、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の水溶液を用いることができる。露光によって溶解性が増大した塗布膜11aは現像液で溶解されて除去される。その結果、後述する有機触媒を配置すべき位置が開口して開口部12が形成された、パターン化された膜11bがシリコンウエハ10の表面に得られる。パターン化された膜11bは、開口部12以外の領域においてシリコンウエハ10の表面をマスクして保護するマスク膜であるので、以下では「マスク膜11b」という。
【0056】
なお、現像後は、シリコンウエハ10の表面を純水でリンスし、現像を停止させてもよい。これら塗布工程、露光工程及び現像工程は、半導体製造工程における公知の処理工程である。
【0057】
図2Eを参照して、マスク膜11bの開口部12に有機触媒20を配置する配置工程を行う。
【0058】
有機触媒20としては、レドックス有機化合物又はレドックス有機ポリマーを使用できる。一種のレドックス有機化合物又は一種のレドックス有機ポリマーを用いてもよいし、二種以上のレドックス有機化合物又は二種以上のレドックス有機ポリマーを用いてもよい。また、一種以上のレドックス有機化合物と一種以上のレドックス有機ポリマーとを混合して用いてもよい。レドックス有機化合物及びレドックス有機ポリマーは、いずれも、可逆的かつ速い電子授受能をもつレドックス(Redox)有機触媒として機能し、酸化還元反応を促進する。
【0059】
レドックス有機化合物としては、2,2,6,6-tetramethylpiperidinyloxyl(TEMPO)、2,5-di-tert-butyl-1,4-bis(2-methoxyethoxy)benzene(DBBB)、N-ethylphenothiazine(EPT)、及び3,7-bis(trifluoromethyl)-N-ethylphenothiazine(BCF3EPT)、並びにそれらの誘導体からなるレドックス有機化合物群から選ばれる一種又は二種以上の組み合わせを例示できる。
【0060】
レドックス有機ポリマーとしては、TEMPOポリマー、Poly(2,2,6,6-tetramethylpiperidinyloxy-4-vinylmethacrylate)(PTMA)、Poly(3,4-ethylenedioxythiophene)(PEDOT)、及びPoly(3-vinyl-N-methylphenothiazine)(PVMPT)、並びにそれらの誘導体からなるレドックス有機ポリマー群から選ばれる一種又は二種以上の組み合わせを例示できる。
【0061】
本実施形態では、具体的に、下記の化学式で表されるTEMPO誘導体を用いる例を示す。なお、電子の授受による酸化還元反応及び酸化還元電位EOを併せて示した。
【0062】
【0063】
マスク膜11bの開口部12への有機触媒20の配置は、一例として、スピンコート処理及びスピンドライ処理によって行うことができる。具体的には、スピンチャックにより水平に保持したシリコンウエハ10を水平に回転させながら上方から有機触媒20の液を滴下し、開口部12内に配置する。そして、マスク膜11bの上面等に付着している、必要のない有機触媒20は、シリコンウエハ10を水平に高速度回転させるスピンドライ処理により除去することができる。なお、マスク膜11bの上面に不要な有機触媒20が残されていてもよい。その有機触媒20はシリコンウエハ10の表面に接触しないので、エッチング反応には寄与しないからである。「開口部12への有機触媒20の配置」とは、開口部12において露出するシリコンウエハ10の表面と有機触媒20とが反応可能な状態とすることをいい、典型的には、開口部12において露出するシリコンウエハ10の表面に有機触媒20を接触させることをいう。したがって、開口部12外のマスク膜11b上に有機触媒20が残されていてもよい。
【0064】
図2Fを参照して、マスク膜11bをマスクとして、腐食剤及び酸化剤を含む水溶液をエッチング液として用い、有機触媒20の存在下で、シリコンウエハ10をエッチングして、シリコンウエハ10に孔又は溝を形成するエッチング工程を行う。
【0065】
エッチング工程は、エッチング速度や効率の観点から、ウェットエッチングで行う。
【0066】
エッチング液としては、酸化剤として、溶存酸素(O2)、オゾン(O3)、過酸化水素(H2O2)、硝酸(HNO3)、過硫酸ナトリウム(Na2S2O8)、過硫酸カリウム(K2S2O8)のいずれか一種を含み、腐食剤として、フッ化水素(HF)、バッファードフッ酸(BHF)、アンモニア、硫酸、塩酸、クエン酸のいずれか一種を含む水溶液を用いることができる。
【0067】
金属元素を排除する観点からは、上記酸化剤の群のなかの過硫酸ナトリウム(Na2S2O8)及び過硫酸カリウム(K2S2O8)以外の酸化剤を用いることが好ましい。ただし、貴金属の除去が比較的難しく、かつ高価な薬液を要するのに比較して、貴金属以外の金属(ナトリウム、カリウムなど)は、イオン化しやすく、通常の安価な処理液によって容易に除去できる。したがって、過硫酸ナトリウム(Na2S2O8)又は過硫酸カリウム(K2S2O8)を酸化剤として用いても、金属汚染のリスク及びコストの問題はいずれも生じない。
【0068】
腐食剤は、半導体基板を構成する半導体材料に応じて選択することが好ましい。具体例は次のとおりである。シリコン及び炭化シリコンに対しては、フッ化水素又はバッファードフッ酸が好ましい。ゲルマニウムに対しては、アンモニア、硫酸、塩酸又はフッ化水素が好ましい。III-V族化合物半導体に対しては、硫酸が好ましい。このほか、ガリウム砒素及びガリウム燐に対しては、アンモニア又はクエン酸が用いられてもよい。また、ガリウム燐及びインジウム燐に対しては、塩酸が用いられてもよい。
【0069】
本実施形態では、一例として、酸化剤として過酸化水素(H2O2)、腐食剤としてフッ化水素(HF)を含む水溶液をエッチング液として使用する例を示す。
【0070】
シリコンウエハ10におけるエッチングのメカニズムは、先に
図1を参照して説明した酸化溶解反応により達成される。酸化溶解反応によるエッチングを段階的に図示すれば、
図3の概要図に示すものとなり、(A)→(B)→(C)→(A)→……の順で循環的に反応が生じることによってシリコンウエハ10のエッチングが進む。
【0071】
この酸化溶解反応に関わる化学反応は、次のStep1、Step2及びStep3を含む。
【0072】
(Step1)H
2O
2+2H
++2e
-→2H
2O+2h
+
(Step2)Si+2H
2O+4h
+→SiO
2+4H
++4e
-
(Step3)SiO
2+6HF→SiF
6
2-+2H
++2H
2O
Step1は、酸化剤の還元反応であり、過酸化水素(H
2O
2)が、水溶液(エッチング液)中から水素イオン(H
+)を獲得し、有機触媒20から電子(e
-)を獲得して還元されて水(H
2O)となり、有機触媒20中にはホール(h
+)が生成される。この様子を
図3(A)に示す。
【0073】
Step2は、有機触媒20とシリコンウエハ10との界面においてシリコンウエハ10に生じる酸化反応である。Step1により有機触媒20中に生成したホール(h
+)は、シリコンウエハ10との界面に速やかに移動し、シリコンウエハ10の表面のシリコン(Si)を酸化する。すなわち、シリコンは水溶液(エッチング液)中の水(H
2O)から酸素(O
2)を獲得し、有機触媒20からホール(h
+)を獲得して(すなわち、有機触媒20に電子(e
-)を与えて)、酸化される。これにより、酸化シリコン(SiO
2)が生成される。この様子を
図3(B)に示す。
【0074】
Step3は、酸化シリコンの溶解反応である。シリコンウエハ10の表面に生成した酸化シリコンは、フッ化水素(HF)液によって溶解され、水溶液(エッチング液)中に水素イオン(H
+)を放出する。この水素イオンは、Step1の反応に用いられる。この様子を
図3(C)に示す。例えば、マスク膜11bと有機触媒20との隙間からフッ化水素酸(HF)が浸入し、シリコンウエハ10の表面側に生じているSiO
2を溶解する。これにより、
図3(C)に示すように、有機触媒20は、新たなシリコンウエハ10表面に接触する。
【0075】
これらのStep1、Step2及びStep3を繰り返すサイクルエッチングによって、シリコンウエハ10がエッチングされる。
【0076】
図2Gを参照して、上記エッチング工程を行い、シリコンウエハ10に所望のエッチングを行った後、シリコンウエハ10から有機触媒20及びマスク膜11bを除去する除去工程を行う。
【0077】
除去工程は、一例として、溶剤を用いて有機触媒20を溶解する溶解工程を用いてもよい。使用する溶剤としては、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、モノエタノールアミン(MEA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル(MeCN)、ジクロロメタン(DCM)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)から選択した一種の単液、又はそれらの二種以上を混合した混合液を例示することができる。
【0078】
また、上記溶剤を用いて有機触媒20を溶解する際には、シリコンウエハ10の表面のパターン化されたマスク膜11bも、併せて溶解し、除去することができる。
【0079】
除去工程は、別の方法として、剥離液を用いて有機触媒20を剥離する剥離工程であってもよい。剥離液としては、有機化合物をエッチングする際に使用されるエッチング剤を用いてもよい。使用できる剥離液としては、硫酸過酸化水素水混合液(SPM)、及びオゾン水(O3を溶存させた脱イオン水)のうちの一種以上を用いてもよい。剥離液の供給に先立って、オゾン雰囲気中でシリコンウエハ10を加熱(例えば150℃以上に加熱)するオゾンベーク処理を行ってもよい。すなわち、例えば、オゾンベーク処理の後に硫酸過酸化水素水混合液を供給することにより、有機触媒20を剥離してもよい。オゾンベーク処理を行うことで、硫酸過酸化水素水の消費量を少なくできるので、環境負荷を低減できる。
【0080】
なお、剥離工程において、マスク膜11bを同時に除去できない場合は、マスク膜11bを除去する工程を別に行ってもよい。例えば、有機溶剤などの液体でマスク膜11bを除去してもよいし、酸化プラズマでマスク膜11bを灰化して除去するアッシングを行ってもよい。
【0081】
<第2実施形態に係る基板処理方法>
図4A~
図4Fは、本発明の第2実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【0082】
まず、
図4Aを参照して、処理対象半導体基板としてシリコンウエハ10を準備する。シリコン以外の半導体材料からなる半導体基板が処理対象であってもよいことは、第1実施形態と同様である。
【0083】
図4Bを参照して、準備したシリコンウエハ10の表面に、感光性有機触媒の液体(以下「感光性有機触媒液」という。)を塗布して塗布膜21を形成する塗布工程を行う。感光性有機触媒液は、フォトレジスト液と有機触媒との混合物であってもよい。使用できる有機触媒は、第1実施形態と同様であり、レドックス有機化合物又はレドックス有機ポリマーを使用できる。一種又は複数種の有機触媒が用いられてもよいことも第1実施形態と同様である。
【0084】
シリコンウエハ10の表面への感光性有機触媒液の塗布方法としては、シリコンウエハ10をスピンチャックにより水平に保持し、シリコンウエハ10をその中心を通る鉛直な回転軸線まわりに回転させながら、上方から感光性有機触媒液を滴下して、シリコンウエハ10の表面に均一に塗布するスピンコート処理が用いられてもよい。
【0085】
また、一例として、100℃前後でシリコンウエハ10を加熱し、感光性有機触媒液中の溶媒を蒸発させて塗布膜21を硬化させるプリベーク処理を行ってもよい。
【0086】
図4Cを参照して、塗布膜21を、位置選択的に露光する露光工程を行う。露光工程では、塗布膜21にフォトマスク(図示せず)を通して光を照射する。感光性有機触媒がポジ型の感光性材料である場合(典型的には、ポジ型フォトレジストとの混合物である場合)、光が照射された部分の塗布膜21aは、現像液に対する溶解性が増大するが、フォトマスクによって光が遮られた部分の塗布膜21は、溶解性はほとんど変化しない。そこで、シリコンウエハ10の表面におけるエッチングを施すべき領域以外を覆う塗布膜21aの部分にだけ光が照射されるフォトマスクを用いることにより、塗布膜21の位置選択的な露光が行える。感光性有機触媒がネガ型の感光性材料である場合(典型的には、ネガ型フォトレジストとの混合物である場合)には、その反転パターンのフォトマスクを用いればよい。
【0087】
図4Dを参照して、露光後の塗布膜21を現像することで、パターン化された膜20を得る現像工程を行う。現像工程では、塗布膜21に現像液が塗布される。現像液としては、一例として、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の水溶液を用いることができる。露光によって溶解性が増大した塗布膜21aは現像液で溶解されて除去される。その結果、シリコンウエハ10の表面には、パターン化された膜20が残される。このパターン化された膜20は、有機触媒を含む膜であり、エッチング反応(酸化還元反応)を促進するための有機触媒として用いることができる。そこで、以下では、パターン化された膜20を、「有機触媒20」と言い換えて説明を続ける。
【0088】
図4Eを参照して、エッチング工程が行われる。シリコンウエハ10の表面に形成された有機触媒20は、選択エッチングを促進する膜として働く。つまり、有機触媒20は、その形成領域に対して、有機触媒20が形成されていない領域に比較してエッチングが選択的に進行するエッチング選択性を与える。さらに具体的には、腐食剤及び酸化剤を含む水溶液をエッチング液としてシリコンウエハ10の表面に供給すると、有機触媒20の存在下では(すなわち、有機触媒20が形成された領域では)、シリコンウエハ10のエッチングが速やかに進行し、有機触媒20が存在しない領域では、シリコンウエハ10のエッチングはほとんど進行しない。したがって、有機触媒20を利用して、シリコンウエハ10を選択的にエッチングすることができ、それにより、シリコンウエハ10に孔又は溝を形成する処理を行うことができる。
【0089】
エッチング工程は、エッチング速度や効率の観点から、ウェットエッチングで行う。使用可能なエッチング液の例は、第1実施形態と同様である。
【0090】
シリコンウエハ10におけるエッチングのメカニズムや酸化溶解反応については、既に説明した第1実施形態に係る基板処理方法と同じであるから、重複した説明は省略する。
【0091】
図4Fを参照して、エッチング工程によってシリコンウエハ10に所望のエッチングを行った後、シリコンウエハ10から有機触媒20を除去する除去工程を行う。
【0092】
除去工程の詳細は、既に説明した第1実施形態に係る基板処理方法と同じであるから、重複した説明は省略する。
【0093】
<第3実施形態に係る基板処理方法>
図5A~
図5Iは、本発明の第3実施形態に係る基板処理方法を示す工程図である。
【0094】
この第3実施形態に係る基板処理方法は、
図5A~
図5Gを参照すると、半導体基板(シリコンウエハ10)を準備する工程(
図5A)、塗布膜11を形成する塗布工程(
図5B)、露光工程(
図5C)、現像工程(
図5D)、有機触媒20を配置する配置工程(
図5E)、エッチング工程(
図5F)及び除去工程(
図5G)に関しては、第1実施形態に係る基板処理方法と同じであるから、重複した説明は省略する。
【0095】
第3実施形態に係る基板処理方法の特徴は、
図5Hを参照して、エッチング後のシリコンウエハ10の表面及びエッチング部位を、酸化液を用いて酸化し、酸化膜30を形成する酸化工程を設けたことである。酸化液としては、過酸化水素水(H
2O
2)、アンモニア過酸化水素水混合液(例えばSC1)、塩酸過酸化水素水混合液(例えばSC2)、硫酸過酸化水素水混合液(SPM)のうちのいずれか一種又は二種以上を用いることができる。
【0096】
また、
図5Iを参照して、酸化工程で形成した酸化膜30を、希フッ酸(dHF)等のエッチング液を用いて除去する酸化膜エッチング工程が設けられる。
【0097】
第3実施形態のように、シリコンウエハ10に所望のエッチングを施して、所望の孔又は溝を形成する加工を行った後、シリコンウエハ10の孔や溝を含む加工された表面領域を酸化膜で覆い、その酸化膜を酸化膜エッチングで除去することにより、シリコンウエハ10の加工された表面(孔、溝、凹部等の構造を含む表面)を滑らかにできるという効果を奏する。
【0098】
第1、第2及び第3実施形態の基板処理方法は、半導体デバイスの製造工程に適用することができる。
【0099】
一つの適用例は、Si貫通電極(TSV:Through-Silicon Via)の形成である。TSVは、シリコン基板(典型的には、予め薄型化したシリコン基板)を貫通する貫通孔を形成し、その貫通孔に電極材料を埋め込むことによって形成される。TSVのための貫通孔を形成する工程において、前述の基板処理方法を適用することができる。TSVが形成されるシリコン基板は、アクティブデバイスが形成されたLSI(大規模集積回路)基板であってもよい。この場合、LSI基板の裏面への電極取出のためにTSVが用いられる。TSVが形成されるシリコン基板は、集積回路チップと配線基板との間に介在される再配線用の基板、いわゆるインターポーザであってもよい。
【0100】
他の適用例は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)プロセスでの使用である。例えば、STI(Shallow Trench Isolation)等の領域分離構造を設けるために選択的にシリコン基板をエッチングして溝構造を形成する際に、前述のような基板処理方法を用いることができる。また、FinFET(Fin Field-Effect Transistor)のフィン構造を形成するために選択的にシリコン基板をエッチングする工程において前述のような基板処理方法を用いることができる。
【0101】
これらのほかにも、前述の基板処理方法は、半導体基板に垂直方向(主面に垂直な方向。以下同じ。)の深い孔や溝を形成したり、半導体基板に垂直方向の高いピラーやフィンを形成するためのエッチング加工技術として適用可能である。そして、前述の基板処理方法は、MacEtch法によって行われてきた種々の半導体基板の加工において、MacEtch法に代えて用いることができる。それにより、MacEtch法による課題、すなわち、金属汚染のリスク及び高コストの問題をいずれも克服できる。
【0102】
本発明に係る基板処理方法は、上記説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0103】
10 半導体基板、シリコンウエハ
11 塗布膜
11a 溶解性が増大した塗布膜
11b 溶解性が変化していない塗布膜、パターン化された膜、マスク膜
12 開口部
20 有機触媒、パターン化された有機触媒膜
21 塗布膜
21a 溶解性が増大した塗布膜
30 酸化膜