(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050333
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
H01C 1/084 20060101AFI20240403BHJP
H01C 1/028 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H01C1/084
H01C1/028
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157150
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176692
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 ▲廣▼志
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】宮下 恭平
(72)【発明者】
【氏名】青木 洋稔
(72)【発明者】
【氏名】山下 祥文
【テーマコード(参考)】
5E028
【Fターム(参考)】
5E028BA04
5E028BB01
5E028CA03
5E028CA12
5E028CA16
5E028DA02
5E028EA03
5E028EA13
5E028EB01
5E028GA01
5E028JB01
(57)【要約】
【課題】回路基板への熱影響を抑制する電子部品を提供する。
【解決手段】抵抗器10は絶縁基板2の第1の表面の中央部領域6に形成された抵抗体7、中央部領域6を挟んで対向する端部領域9a,9bに形成された内部電極8a~8d等が外装部材5で覆われ、外装部材5の上面部において絶縁基板2の第2の表面が外部の金属部材14へ密着可能に露出した構成を有する。また、外装部材5の下面部のうちリード端子3a~3dの導出部分と外装部材の厚さ方向において対応する部位を含む箇所に、抵抗器10を回路基板12から離間する突出部5a,5bが形成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に実装される電子部品であって、
絶縁基板の第1の表面に抵抗体とその抵抗体に接続された少なくとも一対の内部電極とを形成してなる抵抗基板と、
前記抵抗基板の少なくとも前記第1の表面側と側面を覆う絶縁性の外装部材と、
一方端部が前記一対の内部電極それぞれに接続され、他方端部が前記外装部材を貫通して外部に導出された少なくとも一対のリード端子と、
を備え、
前記外装部材の上面部において前記絶縁基板の前記第1の表面の反対側の面である第2の表面が外部に露出しており、前記外装部材の底面部は、前記リード端子の前記導出部分と該外装部材の厚さ方向において対応する部位を含んで形成された突出部を有することを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記絶縁基板の前記第2の表面は放熱面として外部の部材へ密着可能に露出していることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記外部の部材は熱伝導性の部材であることを特徴とする請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記突出部は、前記外装部材の底面部の周縁部分のうち対向する周縁部分において前記リード端子の前記導出方向と同一方向、あるいは該導出方向と直交する方向に該外装部材の一方端部から他方端部間の全幅に亘って延びる一対の土手状突起であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項5】
前記突出部は、前記外装部材の平面視矩形状の底面部の四隅に形成した柱状突起であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項6】
前記突出部は、前記絶縁基板を平面視したとき該絶縁基板の外側に位置することを特徴とする請求項4または5に記載の電子部品。
【請求項7】
前記絶縁基板の前記第2の表面を前記外部の部材に密着させながら前記突出部によって前記回路基板から離間させた状態で該回路基板に実装されることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項8】
前記抵抗体で発生した熱を前記絶縁基板の前記第2の表面を放熱面として前記外部の部材に放熱するとともに、前記突出部と、前記離間により前記外装部材の底面部と前記回路基板との間に形成された空間とにより該回路基板への熱伝導を抑制することを特徴とする請求項7に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に実装して使用される電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器等に搭載される電子部品としての抵抗器は、電流制限、電流検出等に使用され、抵抗体おける電力消費に伴い発熱するが、高電圧・大電流の環境下で使用されるパワー抵抗器(電力抵抗器)の場合、通常の小型抵抗器に比べて発熱量が大きく、発熱温度が100℃を超えることもある。そのため、抵抗器としての機能を維持するには、発生した熱を効率的に外部へ逃がすことが重要になる。
【0003】
抵抗器で発生した熱の放熱方法として、例えば特許文献1に記載の抵抗器では、抵抗器をねじにより外部筐体へ締結、密着させ、発生した熱を筐体側へ逃がす方法を採っている。また、特許文献2のチップ抵抗器のように、部品内部で発生した熱を実装基板へ逃がす方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-190470号公報
【特許文献2】特開2018-50017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
抵抗器で発生した熱を筐体側へ逃がす方法を採用する場合、特許文献1の抵抗器のように筐体への固定には、ねじによる締結が必要となる。その際、ねじを強固に締め付けると、ねじ締めの回転に伴う外力により抵抗器自身が回転し、抵抗器の固定の信頼性が低下することになる。そのため、特許文献1では筐体側に回転を規制する手段として回転規制壁を設けているが、例えば、多種類の電子部品を実装する筐体側に所定高の回転規制壁を設けることは、製造上の困難を伴うことが想定される。また、ねじ締結には実装後における振動、衝撃等により、ねじが緩むことも想定される。
【0006】
また、筐体へ固定した抵抗器との電気的な接続を確保するには、抵抗器の端子へ直接、ハーネスを接続することになり、抵抗器の実装作業に時間を要するので作業性が悪く、煩雑であるという問題がある。さらに、筐体と抵抗器間の電気的な絶縁を確保する必要があり、作業工程が複雑化するという問題もある。
【0007】
一方、抵抗器で発生した熱を回路基板へ逃がす場合、基板上に実装された他の電子部品に熱が伝導し、それらの電子部品に対して熱の影響を回避することが難しく、特に高密度で部品が実装されている回路基板においては影響が顕著となり得る。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、回路基板にはんだ実装された電子部品による回路基板への熱影響を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成し、上述した課題を解決する一手段として以下の構成を備える。すなわち、本発明は回路基板に実装される電子部品であって、絶縁基板の第1の表面に抵抗体とその抵抗体に接続された少なくとも一対の内部電極とを形成してなる抵抗基板と、前記抵抗基板の少なくとも前記第1の表面側と側面を覆う絶縁性の外装部材と、一方端部が前記一対の内部電極それぞれに接続され、他方端部が前記外装部材を貫通して外部に導出された少なくとも一対のリード端子とを備え、前記外装部材の上面部において前記絶縁基板の前記第1の表面の反対側の面である第2の表面が外部に露出しており、前記外装部材の底面部は、前記リード端子の前記導出部分と該外装部材の厚さ方向において対応する部位を含んで形成された突出部を有することを特徴とする。
【0010】
例えば、前記絶縁基板の前記第2の表面は放熱面として外部の部材へ密着可能に露出していることを特徴とする。例えば、前記外部の部材は熱伝導性の部材であることを特徴とする。また、例えば、前記突出部は、前記外装部材の底面部の周縁部分のうち対向する周縁部分において前記リード端子の前記導出方向と同一方向、あるいは該導出方向と直交する方向に該外装部材の一方端部から他方端部間の全幅に亘って延びる一対の土手状突起であることを特徴とする。例えば、前記突出部は、前記外装部材の平面視矩形状の底面部の四隅に形成した柱状突起であることを特徴とする。さらに例えば、前記突出部は、前記絶縁基板を平面視したとき該絶縁基板の外側に位置することを特徴とする。
【0011】
さらには、例えば、前記絶縁基板の前記第2の表面を前記外部の部材に密着させながら前記突出部によって前記回路基板から離間させた状態で該回路基板に実装されることを特徴とする。また、例えば、前記抵抗体で発生した熱を前記絶縁基板の前記第2の表面を放熱面として前記外部の部材に放熱するとともに、前記突出部と、前記離間により前記外装部材の底面部と前記回路基板との間に形成された空間とにより該回路基板への熱伝導を抑制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ヒートシンク等の熱伝導性の部材へねじ止め等による固定が不要になるとともに、回路基板へはんだ付け実装した状態で、電子部品の外装体上面部において絶縁基板の露出部分に密着させた熱伝導性の部材へ効率的に放熱でき、同時に回路基板への放熱を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(a)は本発明の第1の実施形態に係る抵抗器をz軸方向上側から見たときの外観斜視図、
図1(b)は抵抗器をz軸方向下側から見たときの外観斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、第1の実施形態に係る抵抗器をz軸方向上側から見たときの平面図、
図2(b)は抵抗器をz軸方向下側から見たときの底面図、
図2(c)は抵抗器のy軸方向における正面図および背面図、
図2(d)は抵抗器のx軸方向における左側面図および右側面図である。
【
図3】
図1(a)のX-X’矢視線に沿って抵抗器を切断したときの断面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る抵抗器の内部構造の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る抵抗器の回路基板への実装状態をx軸方向から見た図である。
【
図6】
図6(a)は本発明の第2の実施形態に係る抵抗器をz軸方向上側から見たときの外観斜視図、
図6(b)は抵抗器をz軸方向下側から見たときの外観斜視図である。
【
図7】
図7(a)は、第2の実施形態に係る抵抗器をz軸方向上側から見たときの平面図、
図7(b)は抵抗器をz軸方向下側から見たときの底面図、
図7(c)は抵抗器のy軸方向における正面図および背面図、
図7(d)は抵抗器のx軸方向における左側面図および右側面図である。
【
図8】
図8(a)は本発明の第3の実施形態に係る抵抗器をz軸方向上側から見たときの外観斜視図、
図8(b)は抵抗器をz軸方向下側から見たときの外観斜視図である。
【
図9】
図9(a)は、第3の実施形態に係る抵抗器をz軸方向上側から見たときの平面図、
図9(b)は抵抗器をz軸方向下側から見たときの底面図、
図9(c)は抵抗器のy軸方向における正面図および背面図、
図9(d)は抵抗器のx軸方向における左側面図および右側面図である。
【
図10】抵抗器底面の四隅に形成した突出部の変形例であり、
図10(a)はz軸方向下側から見たときの外観斜視図、
図10(b)は底面図である。
【
図11】抵抗器底面の四隅に形成した突出部の他の変形例であり、
図11(a)はz軸方向下側から見たときの外観斜視図、
図11(b)は底面図である。
【
図12】変形例1に係る抵抗器の構造を示す図である。
【
図13】変形例2に係る抵抗器の構造を示す図である。
【
図14】変形例3に係る抵抗器の構造を示す図である。
【
図15】変形例4に係る抵抗器の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電子部品である抵抗器10の外観斜視図であり、
図1(a)は抵抗器10をz軸方向上側から見たときの外観斜視図、
図1(b)はz軸方向下側から見たときの外観斜視図である。
【0016】
図2(a)~(d)は、抵抗器10の六面図である。
図2(a)は、
図1(a)に示す抵抗器10をz軸方向上側から見たときの平面図、
図2(b)はz軸方向下側から見たときの底面図、
図2(c)はy軸方向における正面図および背面図、
図2(d)はx軸方向における左側面図および右側面図である。
【0017】
抵抗器10は、絶縁基板2に抵抗体等を形成した本体部(抵抗基板ともいう)全体が絶縁性のモールド樹脂体からなる外装部材5で覆われた構成を有する。抵抗器10は、定格電力が例えば5W以上の高電力抵抗器である。
【0018】
抵抗器10は、
図1(a)等に示すように平面視矩形であって、z軸方向に所定の厚さを有する。外装部材5の一方側面より一対のリード端子(電極端子ともいう)3a,3bが外部へ引き出され、その一方側面に対向する他方側面からも一対のリード端子3c,3dが外部へ引き出されている。
【0019】
モールド樹脂体からなる外装部材5は、
図1(a)に示すように、その上面側において絶縁基板2が露出する構成を有する。また、
図1(b)に示すように、外装部材5の底面側のうちy軸方向の両縁部には、突出部5a,5bが形成されている。突出部5a,5bは、外装部材5の厚さ方向(z軸方向)下側に向けてモールド樹脂体が所定高(例えば、外装部材の全体の厚さの1/10~1/3程度)、突出しながら、外装部材5の底面側の対向する周縁部分に沿ってリード端子3a~3dの導出方向(x軸方向)に一方端部から他方端部の全幅に亘って延びる土手状の部位である。
【0020】
図3は、
図1(a)のX-X’矢視線に沿って抵抗器10を切断したときの断面図である。
図4は、抵抗器10の内部構造の一例を示している。
図3に示すように抵抗器10において、絶縁基板2の上面部2aが外装部材5の上面側外部に放熱面として露出している。また、
図4に示すように絶縁基板2の下面部2bには、実線で囲んで示す中央部領域6に抵抗体7が形成され、その中央部領域6を挟んで対向する端部領域6a,6bに内部電極8a~8dが形成されている。
【0021】
具体的には、絶縁基板2の一方端部である端部領域6aに内部電極8a,8dが形成され、他方端部である端部領域6bに内部電極8b,8cが形成されている。本実施形態では、これらの電極のうち内部電極8a,8cが抵抗体7と電気的に接続され、内部電極8b,8dは、抵抗体7とは電気的に接続されていないダミー電極である。内部電極のうち、どの組み合わせを電気的接続用電極またはダミー電極とするか、ダミー電極を形成するか否かは適宜選択してよい。また、ダミー電極は一対以上(2以上)形成してもよく、奇数でもよい。
【0022】
内部電極8a~8dそれぞれにはリード端子3a~3dが接続されている。上記のように内部電極8a,8cが抵抗体7と電気的に接続されていることから、リード端子3a,3cと抵抗体7とが電気的に接続された状態にあり、ダミー電極である内部電極8b,8dに接続されたリード端子3b,3dはダミー端子である。ここでは、絶縁基板2上への抵抗体7の形成と内部電極8a~8dの形成は、いずれを先に行ってもよい。
【0023】
図3に示すように抵抗器10は、外装部材5の外部に露出している絶縁基板2の上面部2aを除く部位(絶縁基板2の抵抗体7および内部電極8a~8dが形成された部分と、リード端子3a~3dの根本部分を含む絶縁基板2の端部周辺部分)が、外装部材5により覆われている。外装部材5の絶縁基板2の下部における厚さ(突出部を除く)は、例えば、絶縁基板の厚さの少なくとも5倍以内とする。
【0024】
絶縁基板2は、所定厚の矩形状の絶縁性基板であり、例えばアルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)等からなる。また、内部電極8a~8dは、例えば銀(Ag)系、銀-パラジウム(Ag-Pd)系の電極ペーストを絶縁基板2上にスクリーン印刷し、それを焼成して形成する。
【0025】
抵抗体7は、例えば酸化ルテニウム系材料からなる厚膜抵抗体であり、絶縁性基板上に所定パターンの抵抗体ペーストをスクリーン印刷し、焼成して形成する。抵抗体7は、用途、抵抗値要求等に応じて、適宜、直方体パターン、蛇行パターン等を採用する。抵抗体は複数形成してもよい。
【0026】
リード端子3a~3dは、例えば銅からなる平板状の金属端子であり、その表面にはスズ等のめっきが施されている。
図1等に示す抵抗器10では、4本のリード端子が導出されているが、端子数はこれに限定されず、抵抗器10を回路基板上に実装した際の安定性のため、さらにダミー端子を設けた構成としてもよい。一方、リード端子数を4本とし、各リード端子の形状を
図1等に示すよりも太くすることで、実装時における抵抗器の安定性を確保できる。
【0027】
なお、内部電極8a~8dとリード端子3a~3dとの接続部以外の領域(すなわち、抵抗体7の上面および内部電極8a~8dの周囲)は、ガラス等をスクリーン印刷して形成した保護膜により被覆されている。
【0028】
次に、本実施形態に係る抵抗器の実装状態等について説明する。
図5は、本実施形態に係る抵抗器10を回路基板12に実装した状態を、x軸方向から見た図である。抵抗器10は、回路基板12に設けたスルーホール(不図示)にリード端子3a~3dを挿通し、フローまたはリフロー等により、その先端部分をはんだ付けして固定されている。
【0029】
上記のように抵抗器10の底面(外装部材5の底面側であって、回路基板12に対向する面)には、モールド樹脂体からなる外装部材5を所定高、突出させた土手状の突出部5a,5bが形成されており、抵抗器10の実装状態において突出部5a,5bの底面が回路基板12の上面に接触した状態が維持される。その結果、抵抗器10の底面と回路基板12との間に隙間(空隙)11ができる(スタンドオフ構造)。
【0030】
さらに、抵抗器10の上面側(外装部材5の上面側であって、回路基板12と反対の側)において、絶縁基板2のうち外部に露出している部位(上面部2a)が放熱面として、放熱グリス等の熱伝導部材13を介して、放熱性能に優れた金属筐体、ヒートシンク等の金属部材14に密着している。このような構成により、抵抗体7で発生した熱を、抵抗器10の上面側において金属部材14に放熱させる一方、抵抗器10の底面側において、突出部5a,5bおよび隙間11によって回路基板12への放熱を抑制することができる。
【0031】
突出部5a,5bは、抵抗器10の底面において、絶縁基板2よりも平面視外側にある端部領域9a,9b(
図4において一点鎖線で示す領域)のz軸方向下側に位置している。よって、端部領域9a,9bは発熱ポイントとなる抵抗体7の電流密度が高い箇所(本実施形態では中央部)から離れていることに加えて、突出部5a,5bおよび隙間11があることにより、抵抗体7で発生した熱の回路基板12への逃げを防止できる。
【0032】
一方、抵抗器10は、回路基板12に実装後、金属部材14と回路基板12間に挟み込まれる構造となるので、実装状態においてリード端子3a~3dの根本部分(外装部材5からの導出部分)に大きな応力がかかる。
【0033】
そこで、z軸方向において突出部5a,5bとリード端子3a~3dの根本部分とが対応するように、突出部5a,5bを外装部材5のうちリード端子3a~3dの導出部の底面側に設けることで、リード端子3a~3dへの応力を緩和して損傷を防ぐとともに、外装部材5のみならず抵抗体7等の内部素子への亀裂の発生を防止できる。
【0034】
このように第1の実施形態に係る抵抗器は、ヒートシンク等の放熱部材へねじ止め等によって固定する必要がなく、抵抗体等を形成した絶縁基板に放熱板としての機能を持たせ、回路基板へはんだ付け実装した状態で抵抗器の上面側において外部に露出した絶縁基板に密着させた放熱部材へ効率的に放熱できる。同時に、抵抗器の底面に形成した突出部と、その突出部により回路基板との間に形成される隙間(空隙)とによって、回路基板への放熱による他の部品に生じる熱害を抑止できる。
【0035】
<第2の実施形態>
図6は、本発明の第2の実施形態に係る抵抗器20の外観斜視図である。
図6(a)は抵抗器20をz軸方向上側から見たときの外観斜視図、
図6(b)はz軸方向下側から見たときの外観斜視図である。
【0036】
図7(a)~(d)は、抵抗器20の六面図である。
図7(a)は、
図6(a)に示す抵抗器20をz軸方向上側から見たときの平面図、
図7(b)はz軸方向下側から見たときの底面図、
図7(c)はy軸方向における正面図および背面図、
図7(d)はx軸方向における左側面図および右側面図である。
【0037】
なお、
図6(a),(b)、および
図7(a)~(d)において、
図1(a),(b)、および
図2(a)~(d)に示す第1の実施形態に係る抵抗器10と同一構成要素には同一符号を付して、ここでは、それらの説明を省略する。また、抵抗器20を回路基板に実装した状態についても、
図5に示す抵抗器10の回路基板上における実装状態と同じであるため、その説明と図示を省略する。
【0038】
本実施形態に係る抵抗器20は、第1の実施形態に係る抵抗器10と同様、絶縁性のモールド樹脂体からなる外装部材15の上面側において絶縁基板が外部へ露出する構成を有する。
図6(b)に示すように抵抗器20において、外装部材15の底面側のうちx軸方向の両端部に突出部15a,15bが形成されている。
【0039】
突出部15a,15bは、抵抗器20の底面であって絶縁基板2よりも平面視外側にある端部領域9c,9d(
図4において二点鎖線で示す領域)のz軸方向下側に位置している。突出部15a,15bは、外装部材15の厚さ方向(z軸方向)下側に向けてモールド樹脂体が所定高、突出しながら、外装部材15の底面側の対向する周縁部分に沿って、リード端子3a~3dの導出方向と直交する方向(y軸方向)に端部間全幅に亘って延びる土手状の形状を有する。
【0040】
抵抗器20においても、突出部15a,15bは発熱ポイントとなる抵抗体の中央部から離れているので、突出部15a,15bと、これらの突出部によって回路基板との間に形成される隙間とによって、抵抗体で発生した熱が回路基板への逃げるのを防止できる。
【0041】
また、突出部15a,15bがリード端子3a~3dの導出方向の端部に位置し、z軸方向においてリード端子3a~3dの根本部分に対応する部位を網羅することから、実装状態において、金属筐体、ヒートシンク等の金属部材と回路基板との間に挟まれた抵抗器20に対する押し付け圧力が緩和される。その結果、リード端子3a~3dへの応力を緩和して損傷を防ぐことができる。
【0042】
<第3の実施形態>
図8は、本発明の第3の実施形態に係る抵抗器30の外観斜視図である。
図8(a)は抵抗器30をz軸方向上側から見たときの外観斜視図、
図8(b)はz軸方向下側から見たときの外観斜視図である。
【0043】
図9(a)~(d)は、抵抗器30の六面図である。
図9(a)は、
図8(a)に示す抵抗器30をz軸方向上側から見たときの平面図、
図9(b)はz軸方向下側から見たときの底面図、
図9(c)はy軸方向における正面図および背面図、
図9(d)はx軸方向における左側面図および右側面図である。
【0044】
なお、
図8(a),(b)、および
図9(a)~(d)において、
図1(a),(b)、および
図2(a)~(d)に示す第1の実施形態に係る抵抗器10と同一構成要素には同一符号を付して、ここではそれらの説明を省略する。また、抵抗器30を回路基板に実装した状態も、
図5に示す抵抗器10の回路基板上における実装状態と同じであるため、その説明と図示を省略する。
【0045】
本実施形態に係る抵抗器30は、第1の実施形態に係る抵抗器10と同様、絶縁性のモールド樹脂体からなる外装部材25の上面側において絶縁基板が外部へ露出する構成を有する。
【0046】
抵抗器の抵抗体で発生した熱の回路基板への放熱を抑制するには、抵抗器と回路基板との接触面積を小さくすることが考えられる。そこで、本実施形態に係る抵抗器30は、
図8(a),(b)等に示すように、リード端子3a~3dの導出箇所のz軸方向における近傍領域である抵抗器底面の四隅に、モールド樹脂体からなる外装部材25を所定高、突出させた突出部25a~25dが形成されている。
【0047】
これによって、抵抗器30の実装状態において突出部25a~25dの底面は、接触面積が小さい状態で回路基板に接触するので、突出部25a~25dによって形成される、抵抗器30の底面と回路基板との間の隙間と相俟って、抵抗体で発生した熱の回路基板への逃げをより効果的に抑制できる。
【0048】
なお、突出部25a~25dの全体形状は、
図8(a),(b)等に示す四角柱に限定されず、例えば
図10(a),(b)に示す抵抗器30aの突出部35a~35dように三角柱、あるいは
図11(a),(b)に示す抵抗器30bの突出部45a~45dのように断面形状が4分円の円柱であってもよい。ここでは、抵抗器30a,30bについてz軸方向下側から見た外観斜視図と底面図のみを示すが、平面図、正面図等は
図8,
図9と同じであるため、それらの図示を省略する。
【0049】
柱状体である突出部25a~25d,35a~35d,45a~45dはいずれも、柱状体の側面のうち、外装部材の外側に面していて互いに直交する2つの側面それぞれと、外装部材のx軸方向側面およびy軸方向側面とに段差がなく連続して形成されていることが望ましい。
【0050】
また、突出部25a~25d,35a~35d,45a~45dの先端面(回路基板と接する部位)の形状は、平面に限定されない。例えば、先端面を椀状、あるいは角錐状にして、その頂点が抵抗器の実装時に回路基板と点接触するようにしてもよい。これにより、突出部と回路基板との接触面積が最小になるので、面接触の場合に比べて、抵抗体で発生した熱の回路基板への逃げをさらに抑制できる。
【0051】
第1の実施形態に係る抵抗器10の突出部5a,5b、および第2の実施形態に係る抵抗器20の突出部15a,15bは、土手状に突出した形状であり、その底面は回路基板と面接触している。そこで、突出部と回路基板との接触面積を最小化するという観点から、例えば、これらの突出部を、その短手方向の断面がV字となる形状にしてもよい。これにより、突出部が回路基板と線状に接触することになり、抵抗体で発生した熱の回路基板への逃げを抑制する有効な構造となる。
【0052】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。以下、変形例について説明する。
【0053】
<変形例1>
上述した第1の実施形態~第3の実施形態に係る抵抗器では、外装部材の外部に露出している絶縁基板の上面部(
図3において符号2aで示す部位)と、外装部材の上面部(
図3において符号4で示す部位)とが、z軸方向にほぼ同じ高さ(ほぼ同一面)にあるが、この構造に限定されない。
【0054】
例えば、
図12に示す抵抗器40のように、z軸方向において絶縁基板2の上面部2aが外装部材5の上面部4の高さを超えるように絶縁基板2の厚さを設定してもよい。こうすることで、抵抗器における放熱部材としての絶縁基板2の体積(熱容量)が増大し、同時に絶縁基板2の上面部と、金属筐体、ヒートシンク等の金属部材14との密着性が向上するので、抵抗体で発生した熱のより効率的な放熱が可能となる。
【0055】
<変形例2>
放熱部材としての絶縁基板による放熱構造は、上述した第1の実施形態~第3の実施形態に係る抵抗器に限定されない。例えば、
図13に示す抵抗器50のように、絶縁基板2の上面部2aを外装部材5の上面部4よりもz軸方向において低くなるように設定し、それにより形成された空間部分(四方が外装部材で囲まれた空間)に熱伝導性の絶縁樹脂17を充填した構成としてもよい。
【0056】
これにより、絶縁基板2と絶縁樹脂17による2層構造の放熱部材が形成され、絶縁樹脂17の上面に、金属筐体、ヒートシンク等の金属部材14が位置するので、それらの密着度が増大する。その結果、上述した実施形態とは異なり、抵抗器と金属部材間に放熱グリス等の熱伝導部材を設けなくても、抵抗体で発生した熱を効率的に放熱できる。
【0057】
<変形例3>
上述した実施形態に係る抵抗器では、z軸方向において絶縁基板の下面に抵抗体等を形成しているが、これに限定されない。例えば、
図14に示す抵抗器60のように、絶縁基板2の上面部2aに抵抗体7、内部電極28a,28b等を形成し、それらを熱伝導性の絶縁樹脂18で覆う構成としてもよい。これにより、金属部材14との密着性が高い絶縁樹脂18より、抵抗体7で発生した熱を効率的に金属部材14へ放熱でき、z軸方向において抵抗体7の下側に位置する絶縁基板2によって外装部材5への熱伝導を抑制できる。
【0058】
なお、
図14に示す構成において、絶縁樹脂18に代えて絶縁基板を配置することで、熱の発生源である抵抗体7をz軸方向において上下方向から2つの絶縁基板で挟み込む構成となり、抵抗体7で発生した熱を効果的に放熱ができる。
【0059】
<変形例4>
抵抗器のリード端子の形状は、上述した実施形態に係るリード端子の形状に限定されない。例えば、
図15に示す抵抗器70のリード端子43a~43dのように、リード端子のうち、z軸方向に延出する部位(実装時、回路基板に対して垂直になる部位)の途中に半円状のクランク45a~45dを設けた構成としてもよい。
【0060】
このようにリード端子にクランク45a~45dを設けることで、ヒートサイクル等におけるリード端子の膨張・伸縮(熱的な変形)に対応できる。例えば、抵抗器のリードリフロー等における加熱に伴う応力を吸収、緩和し、また、実装時における金属部材と回路基板とによる押し付け圧力(機械的応力)を吸収、緩和できる。さらには、抵抗器が車載機器に実装された際における振動の吸収、緩和に対応することができる。その結果、リード端子の外装部材45からの導出部、および回路基板への実装時におけるはんだ付け部分にかかる負荷を軽減できる。
【0061】
さらには、抵抗器を回路基板上へ表面実装する場合に対応して、リード端子をガルウィングタイプ、あるいはJリードタイプにしたり、挿入するリード端子とこれらを組み合わせてもよい。
【0062】
上記の実施形態および変形例に係る抵抗器は、上述したように抵抗器の上面側より外部の金属筐体等へ放熱する構成を備えるので、同一定格電力であっても、大電力用のセメント抵抗器、複数個のチップ抵抗を搭載してなる電力用抵抗器に比べて形状の小型化、コスト低減が可能になる。
【0063】
なお、本発明の実施形態等に係る電子部品は抵抗器に限定されず、上述した放熱構成は、回路基板に実装され、発熱を伴うタイプの電子部品全般に適用できる。
【符号の説明】
【0064】
2 絶縁基板
2a 絶縁基板の上面部
2b 絶縁基板の下面部
3a~3d,43a~43d リード端子(電極端子)
4 外装部材の上面部
5,15、25 外装部材
5a,5b,15a,15b,25a~25d,35a~35d,45a~45d 突出部
7 抵抗体
8a~8d,28a,28b 内部電極
9a~9d 絶縁基板外側の端部領域
10~70,30a,30b 抵抗器
11 隙間(空隙)
12 回路基板
13 熱伝導部材
14 金属部材
17,18 絶縁樹脂
45a~45d クランク