(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050337
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】外壁の構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/70 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
E04B1/70 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157155
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄介
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DB02
2E001FA04
2E001GA45
2E001HD02
2E001HD03
2E001ND12
2E001ND14
2E001ND16
(57)【要約】
【課題】防水性を向上できる外壁の構造を提供する。
【解決手段】上下方向に延びた通気層50を有する外壁100の構造であって、長手方向を上下方向に向けて、並列するように複数設けられ、前記外壁100の屋内側部分と屋外側部分との間に前記通気層50を形成する下地胴縁10と、互いに隣接する前記下地胴縁10間に亘って設けられ、通気層50の下側を閉塞する閉塞部材40と、を具備し、閉塞部材40は、内側に空気層空間46を有すると共に、空気層空間46と通気層50とを連通する第一連通孔44と、空気層空間46と屋外空間とを連通する第二連通孔45と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びた通気層を有する外壁の構造であって、
長手方向を上下方向に向けて、並列するように複数設けられ、前記外壁の屋内側部分と屋外側部分との間に前記通気層を形成する下地胴縁と、
互いに隣接する前記下地胴縁間に亘って設けられ、前記通気層の下側を閉塞する閉塞部材と、
を具備し、
前記閉塞部材は、
内側に空気層空間を有すると共に、前記空気層空間と前記通気層とを連通する第一連通孔と、前記空気層空間と屋外空間とを連通する第二連通孔と、を有する、
外壁の構造。
【請求項2】
前記第二連通孔の開口面積は、前記第一連通孔よりも大きく形成される、
請求項1に記載の外壁の構造。
【請求項3】
前記第二連通孔の前記第一連通孔に対する開口面積比は、3以上に設定される、
請求項2に記載の外壁の構造。
【請求項4】
前記閉塞部材は、
前記空気層空間における前記第一連通孔と前記第二連通孔との間の幅を絞る規制部を有する、
請求項1に記載の外壁の構造。
【請求項5】
前記閉塞部材は、
1枚の金属製の平板状の部材を折り曲げて形成されている、
請求項1から請求項4までの何れか一項に記載の外壁の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気層を有する外壁の構造の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通気層を有する外壁の構造の技術は公知となっている。例えば特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、内装材や断熱材等が設けられる屋内側の部材と、外装材や防水シート等が設けられる屋外側の部材との間に、通気層を有した壁の構造が記載される。このように構成された前記壁においては、通気層の空気の流れにより屋内側の湿気を屋外へ排出できる。また前記壁においては、通気層の下端部に水切り(雨仕舞い)が設けられる。
【0004】
しかしながら、水切りでは防水性に限界があるため、防水性の更なる向上が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、防水性を向上できる外壁の構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、上下方向に延びた通気層を有する外壁の構造であって、長手方向を上下方向に向けて、並列するように複数設けられ、前記外壁の屋内側部分と屋外側部分との間に前記通気層を形成する下地胴縁と、互いに隣接する前記下地胴縁間に亘って設けられ、前記通気層の下側を閉塞する閉塞部材と、を具備し、前記閉塞部材は、内側に空気層空間を有すると共に、前記空気層空間と前記通気層とを連通する第一連通孔と、前記空気層空間と屋外空間とを連通する第二連通孔と、を有するものである。
【0009】
請求項2においては、前記第二連通孔の開口面積は、前記第一連通孔よりも大きく形成されるものである。
【0010】
請求項3においては、前記第二連通孔の前記第一連通孔に対する開口面積比は、3以上に設定されるものである。
【0011】
請求項4においては、前記閉塞部材は、前記空気層空間における前記第一連通孔と前記第二連通孔との間の幅を絞る規制部を有するものである。
【0012】
請求項5においては、前記閉塞部材は、1枚の金属製の平板状の部材を折り曲げて形成されているものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
本願発明においては、防水性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る外壁の構造を示した分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、
図1から
図4を用いて、本発明の一実施形態に係る外壁100の構造について説明する。なお以下の説明においては、図中に記した矢印に従って、上下及び屋内外方向をそれぞれ定義する。また屋内外方向に対して直行する水平方向を、単に横方向と称する場合がある。
【0017】
外壁100は、例えば戸建住宅のような建物において、屋内空間と屋外空間を隔てるものである。外壁100は、後述する下地胴縁10を含む複数の部材が組み合わされることにより形成される。外壁100は、大別すると、下地胴縁10と、屋内側部分20と、屋外側部分30と、閉塞部材40と、を具備する。また、外壁100には、下地胴縁10等により区画された通気層50が形成される。
【0018】
下地胴縁10は、長手方向を上下方向へ向けて、並列するように複数設けられる。下地胴縁10は、屋内外方向に所定の厚みを有するように形成される。こうして、互いに隣接する下地胴縁10の間には、上下方向に延びる空間が形成される。また互いに隣接する下地胴縁10の間の上端部には、桟11が設けられる。なお桟11が設けられず、上方が開放されていてもよい。
【0019】
屋内側部分20は、外壁100において下地胴縁10よりも屋内側に設けられる部分である。屋内側部分20は、屋内側から屋外側へと順番に、石膏ボード等の板材、気密シート、木桟及び断熱材、板材、透湿防水シート等が配置される。屋内側部分20の屋外側面には、下地胴縁10及び桟11がビス等を介して取り付けられる。
【0020】
屋外側部分30は、外壁100において下地胴縁10よりも屋外側に設けられる部分である。屋外側部分30は、屋内側から屋外側へと順番に、ウレタンやフェノール等の硬質系断熱材、タイルやサイディング等の外壁仕上げ材が配置される。屋外側部分30は、下地胴縁10や屋内側部分20の木桟にビス等を介して取り付けられる。
【0021】
こうして、外壁100においては、下地胴縁10、屋内側部分20及び屋外側部分30により区画された空間(通気層50)が形成される。すなわち、通気層50は、上下方向に延びるように形成される。通気層50の下側の開口部は、後述する閉塞部材40により閉塞される。なお閉塞部材40は上下に連通する孔(第一連通孔44及び第二連通孔45)を有するため、通気層50は閉塞部材40を介して屋外空間と連通される。こうして、通気層50を形成することにより、屋内側の湿気を屋外空間へと排出できる。
【0022】
また上述の如く、例えば桟11が設けられない場合には、通気層50は、上方に開放され、所定の空気の流通経路から小屋裏空間を介して屋外空間に連通される。
【0023】
ここで、屋内側と屋外側との圧力差は、一般的に屋内側の圧力が屋外側の圧力に対して相対的に低くなる。そのため、例えば通気層50に水分がある場合には、当該水分が屋内空間へと引き込まれる場合がある。また通気層50と屋外側とに圧力差がある場合には、屋外空間の雨水等(雨水や雨水等等)が当該通気層50に引き込まれる場合がある。そこで、本実施形態に係る外壁100においては、このような問題を回避するため、通気層50の下端部に閉塞部材40が設けられる。
【0024】
以下では、
図1から
図4を用いて、閉塞部材40について詳細に説明する。
【0025】
閉塞部材40は、通気層50の下端部において長手方向を横方向へ向けて設けられる。具体的には、閉塞部材40は複数設けられ、各閉塞部材40が、それぞれ互いに隣接する下地胴縁10の間に亘るように設けられる。すなわち、閉塞部材40は、通気層50の下端部を概ね閉塞するように設けられる。閉塞部材40は、金属製の部材により構成され、1枚の平板状の部材が適宜折り曲げられて形成されている。
【0026】
閉塞部材40は、本体部41、固定部42、規制部43、第一連通孔44及び第二連通孔45を具備する。また、閉塞部材40には、本体部41等により区画された空気層空間46が形成される。
【0027】
本体部41は、閉塞部材40の主たる部分である。本体部41は、側面視(横方向視)で中空の略四角形状に形成される。本体部41の屋内側の一部(上側半分)には、開口41aが形成される。
図4に示すように、本体部41の長手方向両端の開口部は、それぞれ下地胴縁10により閉塞される。また
図3に示すように、本体部41の開口41aは、外壁100の屋内側部分20により閉塞される。こうして、本体部41の内側には略密閉状態の空間(空気層空間46)が形成される(
図3参照)。
【0028】
固定部42は、閉塞部材40の上端部に位置する部分である。固定部42は、本体部41の屋内側の上端部から上方へ延びるように形成される。固定部42は、ビス等を用いて外壁100の屋内側部分20に固定される。こうして、固定部42が固定されることにより、閉塞部材40が屋内側部分20に取り付けられる。
【0029】
規制部43は、本体部41の内側に形成された部分である。規制部43は、本体部41の開口41aの下端部から当該本体部41の内側(屋外側の斜め下方)へ延びるように形成される。規制部43は、側面視で屋内側から屋外側へと下方に傾斜するように形成される。規制部43の屋外側の端部は、本体部41の屋外側面から離れた位置に形成される。こうして、規制部43により、空気層空間46が概ね上下に区画される。すなわち、空気層空間46の上側と下側との間は、規制部43により幅が絞られている。
【0030】
第一連通孔44は、本体部41の上側面に形成される。第一連通孔44は、本体部41の上側画面を上下に貫通するように形成される。本実施形態においては、第一連通孔44は、2つ設けられ、互いに横方向に離間するように設けられる。
【0031】
第二連通孔45は、本体部41の下側面に形成される。第二連通孔45は、本体部41の下側画面を上下に貫通するように形成される。第二連通孔45は、第一連通孔44よりも開口面積が大きくなるように形成される。また本実施形態においては、第二連通孔45は、2つ設けられ、互いに横方向に離間するように設けられる。2つの第二連通孔45は、2つの第一連通孔44と互いに上下方向に重複するように形成される。
【0032】
上述の如く構成された閉塞部材40において、第一連通孔44及び第二連通孔45は、所定の決定方法により開口条件(互いの開口面積比)が設定される。本実施形態においては、第一連通孔44に対する第二連通孔45の開口面積比は、3以上に設定される。以下では、開口条件の決定方法について説明する。
【0033】
まず、ベルヌーイの定理から以下の式(1)を用いて、作用する風自体の基準圧力である速度圧(△P)が求められる。
△Pu=pa×U2/2 ・・・ (1)
ここで、前記式(1)において、△Puは風圧Uに対する速度圧(Pa)、paは空気密度(kg/m3)、Uは風速(m/s)を表す。
【0034】
ここで、paは1.2を用いて、これを上記式(1)に代入すると、以下の式(2)が得られる。
△Pu=1.2×U2/2=0.6U2 ・・・ (2)
【0035】
ここで、Uは30m/sを用いて、これを上記式(2)に代入すると、
△P=0.6×302=540
が得られる。
【0036】
次に、上述の如く得られた速度圧(△P)を用いて、以下の式(3)を用いて、開口面積比が求められる。
なお、ここでは、雨水浸入に関する差圧の限界である50Paが利用される。
n=√((Po-Pi)/(Po-Pc)-1) ・・・ (3)
ここで、Po-Piに540を代入し、Po-Pcに50を代入すると、
n=√((540/50)-1)=√9.8≒3
が得られる。
【0037】
こうして、上記結果に基づいて、第一連通孔44に対する第二連通孔45の開口面積比を3以上に設定した場合には、空気層空間46と屋外空間との圧力差をできるだけ小さくできる。すなわち、空気層空間46と屋外空間とをできるだけ同じ圧力として、差圧に基づく屋外空間から空気層空間46への雨水等の引き込みを抑制できる。
【0038】
また上述の如く設定された開口面積比を満たすように、第二連通孔45の開口面積をできるだけ小さくした場合には、例えば外壁100の下方からの吹き上がりに対して、屋外空間から空気層空間46への雨水等の浸入を抑制できる。
【0039】
このように、上述の如く設定された開口面積比を用いることにより、空気層空間46に雨水等が浸入するのを抑制でき、ひいては通気層50への雨水等の浸入を効果的に抑制できる(防水性を向上できる)。
【0040】
また、本実施形態においては、空気層空間46の上側と下側との間に規制部43が設けられる。したがって、仮に空気層空間46(より詳細には、空気層空間46の下側の空間)へと雨水等が浸入した場合でも、規制部43により当該雨水等の上側への移動が規制されることとなる。このように、仮に空気層空間46へと雨水等が浸入した場合でも、通気層50への当該雨水等の浸入を抑制できる。
【0041】
以上の如く、本発明の一実施形態においては、
上下方向に延びた通気層50を有する外壁100の構造であって、
長手方向を上下方向に向けて、並列するように複数設けられ、前記外壁100の屋内側部分と屋外側部分との間に前記通気層50を形成する下地胴縁10と、
互いに隣接する前記下地胴縁10間に亘って設けられ、前記通気層50の下側を閉塞する閉塞部材40と、
を具備し、
前記閉塞部材40は、
内側に空気層空間46を有すると共に、前記空気層空間46と前記通気層50とを連通する第一連通孔44と、前記空気層空間46と屋外空間とを連通する第二連通孔45と、を有するものである。
【0042】
このような構成により、防水性を向上できる。
すなわち、通気層50と屋外空間との間に、空気層空間46を設けるため、屋外空間の雨水等が通気層50に侵入するのを抑制できる。
【0043】
また本発明の一実施形態においては、
前記第二連通孔45の開口面積は、前記第一連通孔44よりも大きく形成されるものである。
【0044】
このような構成により、防水性をより向上できる。
すなわち、空気層空間46と屋外空間との間の圧力差を小さくできるため、屋外空間から空気層空間46に雨水等が引き込まれるのを抑制し、ひいては通気層50に雨水等が浸入するのを抑制できる。
【0045】
また本発明の一実施形態においては、
前記第二連通孔45の前記第一連通孔44に対する開口面積比は、3以上に設定されるものである。
【0046】
このような構成により、防水性をより向上できる。
すなわち、空気層空間46と屋外空間との間の圧力差をできるだけ小さくできるため、通気層50に雨水等が浸入するのを効果的に抑制できる。
【0047】
また本発明の一実施形態においては、
前記閉塞部材40は、
前記空気層空間46における前記第一連通孔44と前記第二連通孔45との間の幅を絞る規制部43を有するものである。
【0048】
このような構成により、防水性をより向上できる。
すなわち、屋外空間から空気層空間46に雨水等が侵入した場合でも、当該雨水等が空気層空間46の内側で通気層50側へと移動するのが規制されるため、通気層50に雨水等が浸入するのを効果的に抑制できる。
【0049】
また本発明の一実施形態においては、
前記閉塞部材40は、
1枚の金属製の平板状の部材を折り曲げて形成されているものである。
【0050】
このような構成により、閉塞部材を簡易に得ることができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0052】
例えば、本実施形態に係る外壁100は、例えば戸建住宅において、1階部分から2階部分までにおいて通気層の縁が切れる場合には、1階部分だけではなく、2階部分にも設けることができる。
【0053】
また閉塞部材40の形状は、本実施形態のもに限定されず、空気層空間を形成するものであれば種々変更可能である。また例えば閉塞部材40は、1枚の金属製の平板状の部材を折り曲げて形成されているものではなく、複数の部材を用いて溶接等により接合されたものでもよい。
【0054】
また第一連通孔44及び第二連通孔45の形状や、数量、配置等は、適宜変更可能である。例えば、第一連通孔44に対する第二連通孔45の開口面積比は、3以上に設定されるが、これに限定されない、また本実施形態では、第一連通孔44及び第二連通孔45は互いに上下方向に重複するように形成されるが、上下方向に重複しないように(横方向にずらして)形成することもできる。これによれば、屋外空間からの通気層50への雨水等の浸入をより効果的に抑制することができる。
【0055】
また本実施形態においては、水切りを設けていないが、閉鎖部材40と共に水切りを設けてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 下地胴縁
40 閉塞部材
44 第一連通孔
45 第二連通孔
46 空気層空間
50 通気層
100 外壁