(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050346
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】フラッシング装置及び建設機械
(51)【国際特許分類】
F15B 21/041 20190101AFI20240403BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20240403BHJP
B01F 21/00 20220101ALI20240403BHJP
【FI】
F15B21/041
E02F9/00 Z
B01F21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157176
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】川崎 健司
(72)【発明者】
【氏名】南 亘
【テーマコード(参考)】
3H082
4G035
【Fターム(参考)】
3H082AA12
3H082CC02
3H082EE02
4G035AA01
4G035AE13
(57)【要約】
【課題】油圧回路の機器又は配管内に付着した異物を容易に除去することができるフラッシング装置及び建設機械を提供する。
【解決手段】フラッシング装置24は、油圧ショベル1の作動油タンク17に供給する作動油が投入される耐圧容器25と、耐圧容器25に供給される炭酸ガスを貯える炭酸ガスボンベ26と、炭酸ガスボンベ26から耐圧容器25への炭酸ガスの供給量を調整するレギュレータ28とを備える。レギュレータ28は、炭酸ガスボンベ26から供給された炭酸ガスが耐圧容器25内で作動油に溶解する圧力となるように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の作動油タンクと油圧アクチュエータの間で作動油を給排する油圧回路をフラッシングするフラッシング装置であって、
前記作動油タンク内の作動油又は前記作動油タンクに供給する作動油が投入される耐圧容器と、
前記耐圧容器に供給される炭酸ガスを貯える炭酸ガスボンベと、
前記炭酸ガスボンベから前記耐圧容器への炭酸ガスの供給量を調整するレギュレータとを備え、
前記レギュレータは、前記炭酸ガスボンベから供給された炭酸ガスが前記耐圧容器内で作動油に溶解する圧力となるように構成されていることを特徴とするフラッシング装置。
【請求項2】
建設機械の作動油タンクと油圧アクチュエータの間で作動油を給排する油圧回路をフラッシングするフラッシング装置であって、
炭酸ガスを貯える炭酸ガスボンベと、
前記炭酸ガスボンベと、前記油圧回路における前記作動油タンクから前記油圧アクチュエータへの作動油の供給路と、を接続するように構成された配管と、
前記炭酸ガスボンベから前記油圧回路への炭酸ガスの供給量を調整するレギュレータとを備え、
前記配管には、前記作動油タンクから前記油圧アクチュエータに作動油が供給されている際において前記供給路から前記炭酸ガスボンベへの炭酸ガスの逆流を防止する逆止弁が設けられていることを特徴とするフラッシング装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフラッシング装置において、
作動油から異物を取り除く循環フィルタと前記作動油タンクとの間で作動油を循環する循環回路を備えたことを特徴とするフラッシング装置。
【請求項4】
作動油タンク、油圧アクチュエータ及び前記作動油タンクからの作動油を加圧して供給する油圧ポンプを有して前記作動油タンクと前記油圧アクチュエータとの間で作動油を給排する油圧回路と、前記油圧回路をフラッシングするフラッシング装置とを備えた建設機械であって、
前記フラッシング装置は、炭酸ガスを貯える炭酸ガスボンベと、前記炭酸ガスボンベと前記油圧回路を接続する配管と、前記炭酸ガスボンベから前記油圧回路への炭酸ガスの供給量を調整するレギュレータとを備え、前記油圧回路に対して作動油に炭酸ガスを溶解させて供給するように構成されたことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項4に記載の建設機械において、
前記油圧ポンプは、前記作動油タンクから前記油圧アクチュエータに作動油を供給する際において、前記炭酸ガスボンベから供給された炭酸ガスが亜臨界又は超臨界の状態となるような圧力まで作動油を加圧するように構成され、
前記フラッシング装置の前記配管は、前記炭酸ガスボンベと、前記油圧回路における前記作動油タンクから前記油圧アクチュエータへの作動油の供給路と、を接続するように設けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項4に記載の建設機械において、
作動油から異物を取り除く循環フィルタと前記作動油タンクとの間で作動油を循環する循環回路を備えたことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の油圧回路をフラッシングするフラッシング装置、及びこれを搭載した建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械は、作動油タンクと油圧アクチュエータの間で作動油を給排する油圧回路を備える。油圧回路は、例えば、作動油タンクからの作動油を加圧する油圧ポンプと、油圧ポンプから油圧アクチュエータへの作動油の供給と油圧アクチュエータから作動油タンクへの作動油の排出を制御する制御弁とを備える。
【0003】
建設機械の油圧回路は、油圧アクチュエータ等の機器の駆動によって生じる僅かな隙間から粉塵等の異物を取り込む可能性がある。また、機器の駆動によって生じる熱の影響により、粘性の高いスラッジ等の異物が発生する可能性がある。このような異物が多くなると、油圧機器の劣化や固着の要因となる。そのため、油圧回路は、作動油から異物を取り除くフィルタ等を備える(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、スラッジは、油圧回路の機器又は配管に付着する可能性がある。また、粉塵は、油圧回路の機器又は配管内に付着したスラッジに取り込まれる可能性がある。このようにして油圧回路の機器又は配管内に付着した異物は、容易には除去されなくなる。
【0006】
本発明は、上記事柄に鑑みてなされたものであり、その目的は、油圧回路の機器又は配管内に付着した異物を容易に除去することができるフラッシング装置及び建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、建設機械の作動油タンクと油圧アクチュエータの間で作動油を給排する油圧回路をフラッシングするフラッシング装置であって、前記作動油タンク内の作動油又は前記作動油タンクに供給する作動油が投入される耐圧容器と、前記耐圧容器に供給される炭酸ガスを貯える炭酸ガスボンベと、前記炭酸ガスボンベから前記耐圧容器への炭酸ガスの供給量を調整するレギュレータとを備え、前記レギュレータは、前記炭酸ガスボンベから供給された炭酸ガスが前記耐圧容器内で作動油に溶解する圧力となるように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、油圧回路の機器又は配管内に付着した異物を容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態のフラッシング装置が適用される油圧ショベルを表す斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態のフラッシング装置が適用される油圧ショベルの油圧回路を表す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態のフラッシング装置を表す図である。
【
図5】本発明の第1の変形例のフラッシング装置の一部を油圧ショベルの油圧回路と共に表す図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態のフラッシング装置を油圧ショベルの油圧回路と共に表す図である。
【
図7】本発明の第2の変形例のフラッシング装置を油圧ショベルの油圧回路と共に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本発明の第1の実施形態のフラッシング装置が適用される油圧ショベルについて、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、油圧ショベルを表す斜視図である。
図2は、油圧ショベルの油圧回路を表す図である。なお、
図2においては、便宜上、油圧ショベルの油圧回路の構成のうち、ブームシリンダに係わる構成のみを示す。
【0011】
油圧ショベル1は、走行可能な走行体2と、走行体2の上側に旋回可能に設けられた旋回体3と、旋回体3の前側に連結された作業装置4とを備える。走行体2及び旋回体3は車体を構成する。走行体2は、左右の走行モータ5(
図1では左の走行モータ5のみ示す)の回転によって走行し、旋回体3は、旋回モータ6の回転によって旋回する。
【0012】
作業装置4は、旋回体3の前側に回動可能に連結されたブーム7と、ブーム7の先端部に回動可能に連結されたアーム8と、アーム8の先端部に回動可能に連結されたバケット9とを備える。ブーム7は、ブームシリンダ10の伸縮によって回動し、アーム8は、アームシリンダ11の伸縮によって回動し、バケット9は、バケットシリンダ12の伸縮によって回動する。
【0013】
旋回体3は、運転者が搭乗可能な運転室13を備える。運転室13には、運転者が操作可能な複数の操作部材14が設けられている。旋回体3は、燃料を貯える燃料タンク15と、燃料によって駆動するエンジン16と、作動油を貯える作動油タンク17とを備える。
【0014】
油圧ショベル1は、作動油タンク17と油圧アクチュエータ(詳細には、上述した走行モータ5、旋回モータ6、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、及びバケットシリンダ12)の間で作動油を給排する油圧回路18を備える。
【0015】
油圧ショベル1の油圧回路18は、作動油タンク17と、油圧アクチュエータと、エンジン16によって駆動され、作動油タンク17からの作動油を加圧する油圧ポンプ19と、操作部材14の操作に応じて作動し、油圧ポンプ19から油圧アクチュエータへの作動油の供給と油圧アクチュエータから作動油タンク17への作動油の排出を制御する制御弁20と、制御弁20から作動油タンク17へ作動油を排出する排出路に配置され、作動油を冷却する冷却器21と、油圧ポンプ19の上流側及び冷却器21の下流側に配置され、作動油から異物を取り除くオイルフィルタ22とを備える。作動油タンク17は、タンク内の圧力を調整するエアブリーザ23を有する。
【0016】
作動油タンク17から油圧アクチュエータへ作動油を供給する供給路36は、作動油タンク17と油圧ポンプ19の間の流路37Aと、油圧ポンプ19と制御弁20の間の流路37Bと、制御弁20と油圧アクチュエータの間の流路37C又は37Dとで構成されている。
【0017】
次に、油圧ショベル1の油圧回路18をフラッシングする、本発明の第1の実施形態のフラッシング装置について、
図3を用いて説明する。
図3は、本実施形態のフラッシング装置を表す図である。
【0018】
本実施形態のフラッシング装置24は、耐圧容器25と、炭酸ガスを貯える炭酸ガスボンベ26と、炭酸ガスボンベ26と耐圧容器25を接続する配管27と、炭酸ガスボンベ26から耐圧容器25への炭酸ガスの供給量を調整するレギュレータ28とを備える。耐圧容器25及び配管27は、1MPa程度の耐圧性を有するものである。レギュレータ28は、炭酸ガスの固体化を防止するため、ヒータ付きのものが好ましい。
【0019】
作業者は、耐圧容器25から配管27等を取外し、作動油タンク17から抜き出した作動油又は新規の作動油を耐圧容器25に投入する。その後、配管27及びレギュレータ28を介し、耐圧容器25と炭酸ガスボンベ26を接続する。その後、レギュレータ28を開状態に操作して、炭酸ガスボンベ26から耐圧容器25へ炭酸ガスを供給し、耐圧容器25内の作動油に炭酸ガスを溶解させる。その後、レギュレータ28を閉状態に操作する。このとき、レギュレータ28を閉状態に操作してから1分間以上、耐圧容器25内の圧力が0.5MPa程度となることが好ましい。すなわち、レギュレータ28は、炭酸ガスボンベ26から供給された炭酸ガスが耐圧容器25内で作動油に溶解する圧力となるように構成されている。
【0020】
作業者は、耐圧容器25から配管27等を取外し、耐圧容器25から作動油タンク17へ、炭酸ガスが溶解された作動油を供給する(言い換えれば、作動油を交換するか若しくは追加する)。その後、エンジン16を起動して、油圧ポンプ19を駆動させる。また、運転室13内の操作部材14を操作して、油圧アクチュエータを駆動させる。これにより、炭酸ガスが溶解された作動油を油圧回路18の機器及び配管に流して、油圧回路18の機器及び配管をフラッシング(洗浄)する。
【0021】
油圧ポンプ19は、作動油タンク17から油圧アクチュエータに作動油を供給する際において、炭酸ガスボンベ26から供給された炭酸ガスが亜臨界又は超臨界の状態となるような圧力(例えば5MPa以上)まで作動油を加圧するように構成されている。これにより、炭酸ガスが溶解されて油圧ポンプ19で加圧された作動油は、スラッジ等の有機物を溶解する特性を有する(
図4参照)。したがって、油圧回路18の機器又は配管内に付着した異物を容易に除去することができる。
【0022】
なお、
図5で示す第1の変形例のように、フラッシング装置24は、上述した構成に加え、作動油から異物を取り除く循環フィルタ29と作動油タンク17との間で作動油を循環する循環回路30を備えてもよい。循環回路30は、電動モータ31によって駆動され、作動油タンク17から循環フィルタ29へ作動油を供給する循環ポンプ32を備える。本変形例のフラッシング装置24は、油圧ショベル1に搭載されず、着脱可能に構成されている。
【0023】
更に、フラッシング装置24は、油圧回路18の作動油中の異物を検出する異物センサ33と、異物センサ33の検出結果に基づいて電動モータ31を停止させる制御装置34とを備えてもよい。詳しく説明すると、油圧回路18の機器又は配管から異物が剥がされると、作動油中の異物の濃度が増加し、その後、作動油中の異物がフィルタで捕集されると、作動油中の異物の濃度が減少する。制御装置34は、異物センサ33の検出結果に基づいて作動油中の異物の濃度を演算し、作動油中の異物の濃度が所定の閾値まで減少したときに、電動モータ31を停止させる。
【0024】
なお、第1の実施形態においては、耐圧容器25から作動油タンク17へ作動油を供給する場合を例にとって説明したが、これに限られず、例えば耐圧容器25から他の容器へ作動油を供給してもよい。
【0025】
次に、油圧ショベル1の油圧回路18をフラッシングする、本発明の第2の実施形態のフラッシング装置について、
図6を用いて説明する。
図6は、本実施形態のフラッシング装置を油圧ショベルの油圧回路と共に表す図である。なお、第1の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0026】
本実施形態のフラッシング装置24Aは、炭酸ガスを貯える炭酸ガスボンベ26と、炭酸ガスボンベ26と油圧回路18を接続する配管27Aと、炭酸ガスボンベ26から油圧回路18への炭酸ガスの供給量を調整するレギュレータ28とを備える。本実施形態のフラッシング装置24Aは、油圧ショベル1に搭載されず、着脱可能に構成されている。
【0027】
配管27Aは、炭酸ガスボンベ26と、油圧回路18における作動油タンク17から油圧アクチュエータへの作動油の供給路36(本実施形態では、作動油タンク17と油圧ポンプ19の間の流路37A)と、を接続するように構成されている。配管27Aには、作動油タンク17から油圧アクチュエータに作動油が供給されている際において供給路36から炭酸ガスボンベ26への逆流を防止する逆止弁35が設けられている。
【0028】
作業者は、エンジン16を起動して、油圧ポンプ19を駆動させる。その後、レギュレータ28を開状態に操作して、炭酸ガスボンベ26から油圧回路18へ炭酸ガスを供給し、油圧回路18内の作動油に炭酸ガスを溶解させる。その後、運転室13内の操作部材14を操作して、油圧アクチュエータを駆動させる。これにより、炭酸ガスが溶解された作動油を油圧回路18の機器及び配管に流して、油圧回路18の機器及び配管をフラッシング(洗浄)する。
【0029】
油圧ポンプ19は、作動油タンク17から油圧アクチュエータに作動油を供給する際において、炭酸ガスボンベ26から供給された炭酸ガスが亜臨界又は超臨界の状態となるような圧力(例えば5MPa以上)まで作動油を加圧するように構成されている。そのため、炭酸ガスが溶解されて油圧ポンプ19で加圧された作動油は、スラッジ等の有機物を溶解する特性を有する。したがって、油圧回路18の機器又は配管内に付着した異物を容易に除去することができる。
【0030】
なお、第2の実施形態において、配管27Aは、油圧回路18の供給路36のうち、作動油タンク17と油圧ポンプ19の間の流路37Aに接続する場合を例にとって説明したが、これに限られない。例えば、炭酸ガスボンベ26から配管27Aを介し供給された炭酸ガスが亜臨界又は超臨界の状態となるのであれば、配管27Aは、油圧ポンプ19と制御弁20の間の流路37B、又は制御弁20と油圧アクチュエータの間の流路37C,37Dに接続されてもよい。
【0031】
なお、
図7で示す第2の変形例のように、フラッシング装置24Aは、上述した構成に加え、作動油から異物を取り除く循環フィルタ29と作動油タンク17との間で作動油を循環する循環回路30を備えてもよい。更に、フラッシング装置24Aは、油圧回路18の作動油中の異物を検出する異物センサ33と、異物センサ33の検出結果に基づいて電動モータ31を停止させる制御装置34とを備えてもよい。本変形例のフラッシング装置24Aは、油圧ショベル1に搭載されず、着脱可能に構成されている。
【0032】
なお、第2の実施形態及び第2の変形例のフラッシング装置24Aは、油圧ショベル1に搭載されない場合を例にとって説明したが、これに限られず、油圧ショベル1に搭載されてもよい。
【0033】
以上においては、本発明を油圧ショベル1に適用した場合を例にとって説明したが、これに限られず、他の建設機械(例えばホイールローダ等)に適用してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 油圧ショベル
5 走行モータ
6 旋回モータ
10 ブームシリンダ
11 アームシリンダ
12 バケットシリンダ
17 作動油タンク
18 油圧回路
19 油圧ポンプ
20 制御弁
22 オイルフィルタ
24,24A フラッシング装置
25 耐圧容器
26 炭酸ガスボンベ
27,27A 配管
28 レギュレータ
29 循環フィルタ
30 循環回路
35 逆止弁
36 供給路