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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050348
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】測量システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20240403BHJP
   G01C 15/06 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G01C15/00 103E
G01C15/06 T
G01C15/00 102C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157179
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】西田 信幸
(57)【要約】
【課題】 簡便な作業でターゲットを迅速にロックすることができる新たな測量システムを提供する。
【解決手段】 望遠鏡の前方の画像を取得する撮像部40を備える測量機10と、GNSS装置85を備え、測量機10を遠隔操作するコントローラ80と、ターゲット72および送光器73を備えるターゲットユニット70とを備え、ターゲットユニット70近傍でGNSS装置85が取得した位置情報に基いて、測量機10を、GNSS装置85の方向へ回転し、撮像部40で送光器73の発光器と消灯時の画像を取得して、その差分画像に基いて、測量機40を送光器73の方向へ回転し、追尾部24で周辺を走査して、ターゲット72をロックする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距光をターゲットに送光し、反射した前記測距光を受光してターゲットを測距、測角する測量部と、
追尾光をターゲットに送光し、反射した前記追尾光を受光してターゲットの位置を検出し、前記ターゲットを自動追尾する追尾部と、前記測量部および前記追尾部の光学系を格納する望遠鏡と、前記望遠鏡を水平方向に回転する水平回転駆動部および鉛直方向に回転する鉛直回転駆動部と、前記望遠鏡の前方の風景の画像を取得する撮像部と、前記測量部、前記追尾部、前記水平回転駆動部、前記鉛直回転駆動部、および前記撮像部を制御する測量機制御部を有する測量機;
航法信号に基いて自装置の位置情報を取得するGNSS装置と、前記測量機を遠隔操作するように構成されたコントローラ制御部とを有するコントローラ;および
前記ターゲットと、光を射出する送光器とを有するターゲットユニット;を備える測量システムにおいて、
前記測量機制御部と、前記コントローラ制御部は相互に通信可能であり、システム制御部として機能し、
前記システム制御部が、前記GNSS装置が第1の点である前記測量機の設置点で取得した位置情報と、前記GNSS装置が前記第1の点から離隔した第2の点で取得した位置情報と、前記測量機が、前記第2の点に設置された前記ターゲットを測角して取得した前記測量機から前記第2の点への方位角に基いて、任意の点における前記測量機に対する前記GNSS装置の方位角を算出可能とし、
前記システム制御部が、前記GNSS装置が現在位置で取得した位置情報から算出された前記現在位置における前記測量機に対する前記GNSS装置の方位角と、前記望遠鏡の現在の視準方向の方位角との差に基いて、前記望遠鏡を前記GNSS装置の方向に水平方向に回転させ、
前記測量機制御部は、前記撮像部に前記送光器の消灯時および点灯時の画像を取得させ、両画像の差分画像から、前記追尾ガイド光の到来方向を算出し、前記望遠鏡を前記到来方向に回転させ、
前記測量機制御部は、前記追尾部で周辺を走査させて、前記ターゲットを捕捉して前記ターゲットをロックすることを特徴とする測量システム。
【請求項2】
測距光をターゲットに送光し、反射した前記測距光を受光してターゲットを測距、測角する測量部と、
追尾光をターゲットに送光し、反射した前記追尾光を受光してターゲットの位置を検出し、前記ターゲットを自動追尾する追尾部と、前記測量部および前記追尾部の光学系を格納する望遠鏡と、前記望遠鏡を水平方向に回転する水平回転駆動部および鉛直方向に回転する鉛直回転駆動部と、前記望遠鏡の前方の風景の画像を取得する撮像部と、前記測量部、前記追尾部、前記水平回転駆動部、前記鉛直回転駆動部、および前記撮像部を制御する測量機制御部を有する測量機;
航法信号に基いて自装置の位置情報を取得するGNSS装置と、前記測量機を遠隔操作するように構成されたコントローラ制御部とを有するコントローラ;および
前記ターゲットと、光を射出する送光器とを有するターゲットユニット;を備える測量システムにおいて、
前記測量機制御部と、前記コントローラ制御部は相互に通信可能であり、システム制御部として機能し、
前記システム制御部が、前記GNSS装置が前記測量機の設置点から離隔した第1の点で取得した位置情報と、前記GNSS装置が前記第1の点から離隔した第2の点で取得した位置情報と、前記測量機が前記第1の点および第2の点に設置された前記ターゲットをそれぞれ測角して取得した前記測量機に対する前記第1の点と前記第2の点の間の角度に基いて、任意の点における前記測量機に対する前記GNSS装置の方位角を算出可能とし、
前記システム制御部が、前記GNSS装置が現在位置で取得した位置情報から算出された前記現在位置における前記測量機に対する前記GNSS装置の方位角と、前記望遠鏡の現在の視準方向の方位角との差に基いて、前記望遠鏡を前記GNSS装置の方向に水平方向に回転させ、
前記測量機制御部は、前記撮像部に前記送光器の消灯時および点灯時の画像を取得させ、両画像の差分画像から、前記追尾ガイド光の到来方向を算出し、前記望遠鏡を前記到来方向に回転させ、
前記測量機制御部は、前記追尾部で周辺を走査させて、前記ターゲットを捕捉して前記ターゲットをロックすることを特徴とする測量システム。
【請求項3】
前記送光器は、前記ターゲットを支持するターゲット支持部材の中心軸と直交する平面に沿って前記中心軸周りに全周に光を射出することを特徴とする請求項1または2に記載の測量システム。
【請求項4】
前記撮像部は、予め定められた撮像間隔で画像の取得を繰り返し、
前記送光器は、前記撮像間隔のn倍の間隔で点滅を繰り返し、ここで、nは2以上の自然数であり、
前記差分画像は、撮像した画像から、そのnフレーム前に撮像した画像を減算した差分画像であることを特徴とする請求項1または2に記載の測量システム。
【請求項5】
前記測量機制御部は、前記差分画像のうち、前記ある時点で撮像した画像が前記消灯時の画像であり、nフレーム後に撮像した画像が前記点灯時の画像となるタイミングを同期ポイントとして監視し、連続する複数の同期ポイントにおける前記差分画像の平均画像から、前記送光器の方向を算出することを特徴とする請求項4に記載の測量システム。
【請求項6】
前記nは2であることを特徴とする請求項4に記載の測量システム。
【請求項7】
前記追尾部による走査は、前記差分画像から求めた前記追尾ガイド光の到来方向から把握される鉛直方向の位置を優先して実行されることを特徴とする請求項1または2に記載の測量システム。
【請求項8】
前記測量機は、
前記水平回転駆動部を備える回転台座と、
前記回転台座に立設され、前記望遠鏡を鉛直回転可能に支持する托架部と,
前記回転台座との間に画成される空間に、前記望遠鏡、前記托架部および
前記支持部の上端に配置された前記撮像部を格納するカバー部材とをさらに備え、
カバー部材の前面には、中央に上下方向に延びる窓が設けられ、上部には前記撮像部の視野を妨げない撮像用窓が設けられており、
前記撮像部は、広角レンズを備える広角カメラであることを特徴とする請求項1または2に記載の測量システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量システムに関し、より詳細には自動追尾機能を備える測量機を用いた測量システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測量機として、プリズムなどのターゲットを自動的に追尾する追尾機能を備えるものが知られている。追尾部は、送光部と、イメージセンサなどの受光部とを有する。送光部が、測距光とは異なる波長の追尾光を送光し、受光部が追尾光点灯時の風景画像と、追尾光消灯時の風景画像を取得し、両画像の差分を画像解析して、プリズムの中心を検出する。そして、ターゲットの中心と望遠鏡の視準軸との隔たりが一定値以内となるように望遠鏡の回転を制御する。この結果、望遠鏡が常にターゲットの方向を向くように、ターゲットを自動追尾できる。
【0003】
ターゲットの追尾を開始する際、測量機は、まず、ターゲットを検出し、ターゲットをロックする必要がある。また、ターゲットが急激に移動したり、ターゲットと測量機との間を車両等が横切って遮ったりして、追尾が外れたときも、再度ターゲットをロックしなければならない。
【0004】
このような場合、追尾部が、追尾光を発光しながら望遠鏡を水平方向および鉛直方向に回転走査し、ターゲットを検出して、ロックするが、時間がかかる。
【0005】
また、特許文献1は、ターゲットをロックするための、測量機と、ターゲット付ポールと、光送信器を備えるシステムを開示している。特許文献1では、追尾が外れた場合、ターゲット付きポールを把持する作業者が、光送信器で測量機に向けて光信号を送る。測量機は光信号を複数の受光部で受光して、受光量の差から光信号の到来方向を検出して、望遠鏡を光の到来方向へ向ける。ついで望遠鏡を鉛直方向に走査することで、ターゲットを迅速にロックすることできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-214854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のシステムでは、追尾が外れたときに、作業者が測量作業をいったん中断して、光送信器を測量機に向けたうえで、光送信器のスイッチを入れ、さらに測量機にターゲット探索の指示を出す必要があった。このため、より簡便な作業で、ターゲットをロックできる技術が求められていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡便な作業でターゲットを迅速にロックすることができる新たな測量システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の1つの態様に係る測量システムは、以下の構成を有する。
【0010】
1.測量システムは、測距光をターゲットに送光し、反射した前記測距光を受光してターゲットを測距、測角する測量部と、追尾光をターゲットに送光し、反射した前記追尾光を受光してターゲットの位置を検出し、前記ターゲットを自動追尾する追尾部と、前記測量部および前記追尾部の光学系を格納する望遠鏡と、前記望遠鏡を水平方向に回転する水平回転駆動部および鉛直方向に回転する鉛直回転駆動部と、前記望遠鏡の前方の風景の画像を取得する撮像部と、前記測量部、前記追尾部、前記水平回転駆動部、前記鉛直回転駆動部、および前記撮像部を制御する測量機制御部を有する測量機;航法信号に基いて自装置の位置情報を取得するGNSS装置と、前記測量機を遠隔操作するように構成されたコントローラ制御部とを有するコントローラ;および前記ターゲットと、光を射出する送光器とを有するターゲットユニット;を備える測量システムにおいて、前記測量機制御部と、前記コントローラ制御部は相互に通信可能であり、システム制御部として機能し、前記システム制御部が、前記GNSS装置が第1の点である前記測量機の設置点で取得した位置情報と、前記GNSS装置が前記第1の点から離隔した第2の点で取得した位置情報と、前記測量機が、前記第2の点に設置された前記ターゲットを測角して取得した前記測量機から前記第2の点への方位角に基いて、任意の点における前記測量機に対する前記GNSS装置の方位角を算出可能とし、前記システム制御部が、前記GNSS装置が現在位置で取得した位置情報から算出された前記現在位置における前記測量機に対する前記GNSS装置の方位角と、前記望遠鏡の現在の視準方向の方位角との差に基いて、前記望遠鏡を前記GNSS装置の方向に水平方向に回転させ、前記測量機制御部は、前記撮像部に前記送光器の消灯時および点灯時の画像を取得させ、両画像の差分画像から、前記追尾ガイド光の到来方向を算出し、前記望遠鏡を前記到来方向に回転させ、前記測量機制御部は、前記追尾部で周辺を走査させて、前記ターゲットを捕捉して前記ターゲットをロックする。
【0011】
また、本発明の別の態様に係る測量システムは、以下の構成を有する。
【0012】
2.測量システムは、測距光をターゲットに送光し、反射した前記測距光を受光してターゲットを測距、測角する測量部と、追尾光をターゲットに送光し、反射した前記追尾光を受光してターゲットの位置を検出し、前記ターゲットを自動追尾する追尾部と、前記測量部および前記追尾部の光学系を格納する望遠鏡と、前記望遠鏡を水平方向に回転する水平回転駆動部および鉛直方向に回転する鉛直回転駆動部と、前記望遠鏡の前方の風景の画像を取得する撮像部と、前記測量部、前記追尾部、前記水平回転駆動部、前記鉛直回転駆動部、および前記撮像部を制御する測量機制御部を有する測量機;航法信号に基いて自装置の位置情報を取得するGNSS装置と、前記測量機を遠隔操作するように構成されたコントローラ制御部とを有するコントローラ;および前記ターゲットと、光を射出する送光器とを有するターゲットユニット;を備える測量システムにおいて、前記測量機制御部と、前記コントローラ制御部は相互に通信可能であり、システム制御部として機能し、前記システム制御部が、前記GNSS装置が前記測量機の設置点から離隔した第1の点で取得した位置情報と、前記GNSS装置が前記第1の点から離隔した第2の点で取得した位置情報と、前記測量機が前記第1の点および第2の点に設置された前記ターゲットをそれぞれ測角して取得した前記測量機に対する前記第1の点と前記第2の点の間の角度に基いて、任意の点における前記測量機に対する前記GNSS装置の方位角を算出可能とし、前記システム制御部が、前記GNSS装置が現在位置で取得した位置情報から算出された前記現在位置における前記測量機に対する前記GNSS装置の方位角と、前記望遠鏡の現在の視準方向の方位角との差に基いて、前記望遠鏡を前記GNSS装置の方向に水平方向に回転させ、前記測量機制御部は、前記撮像部に前記送光器の消灯時および点灯時の画像を取得させ、両画像の差分画像から、前記追尾ガイド光の到来方向を算出し、前記望遠鏡を前記到来方向に回転させ、前記測量機制御部は、前記追尾部で周辺を走査させて、前記ターゲットを捕捉して前記ターゲットをロックする。
【0013】
3.上記1および2の構成において、前記送光器は、前記ターゲットを支持するターゲット支持部材の中心軸と直交する平面に沿って前記中心軸周りに全周に光を射出することも好ましい。
【0014】
4.上記1~3の構成において、前記撮像部は、予め定められた撮像間隔で画像の取得を繰り返し、前記送光器は、前記撮像間隔のn倍の間隔で点滅を繰り返し、ここで、nは2以上の自然数であり、前記差分画像は、撮像した画像から、そのnフレーム前に撮像した画像を減算した差分画像であることも好ましい。
【0015】
5.上記4の構成において、前記測量機制御部は、前記差分画像のうち、前記ある時点で撮像した画像が前記消灯時の画像であり、nフレーム後に撮像した画像が前記点灯時の画像となるタイミングを同期ポイントとして監視し、連続する複数の同期ポイントにおける前記差分画像の平均画像から、前記送光器の方向を算出することも好ましい。
【0016】
6.上記4において、前記nは2であることも好ましい。
【0017】
7.上記1および2において、前記追尾部による走査は、前記差分画像から求めた前記追尾ガイド光の到来方向から把握される鉛直方向の位置を優先して実行されることも好ましい。
【0018】
8.上記1~7において、前記測量機は、前記水平回転駆動部を備える回転台座と、前記回転台座に立設され、前記望遠鏡を鉛直回転可能に支持する托架部と、前記回転台座との間に画成される空間に、前記望遠鏡、前記托架部および、前記支持部の上端に配置された前記撮像部を格納するカバー部材とをさらに備え、カバー部材の前面には、中央に上下方向に延びる窓が設けられ、上部には前記撮像部の視野を妨げない撮像用窓が設けられており、前記撮像部は、広角レンズを備える広角カメラであることも好ましい。
【発明の効果】
【0019】
上記態様に係る測量システムによれば、新たな方法により、簡便な作業でターゲットを迅速にロックすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の好適な実施形態に係る測量システムの概略構成図である。
図2】同測量システムを構成する測量機の正面図である。
図3】同測量機の内部構造を模式的に示す概略図である。
図4】同測量機のブロック図である。
図5】同測量機が備える撮像部の構成を模式的に示す概略図である。
図6】(A)~(C)は、追尾ガイド光の方向算出のための画像を説明する図である。
図7】(A)は、上記システムを構成するターゲットユニットの側面図であり、(B)は、前記ターゲットユニットの平面図である。
図8】上記システムを構成するコントローラのブロック図である。
図9】プリズムロック機能の処理のフローの一例である。
図10】プリズムロック機能の前工程のイメージ図である。
図11】プリズムロック機能の本工程のイメージ図である。
図12】上記プリズムロック機能における撮像および方向検出工程のフローである。
図13】同撮像工程での撮像と送光器の発光の制御を説明する図である。
図14】同撮像工程での撮像と送光器の発光の制御を説明する図である。
図15】上記実施の形態の変形例に係る測量システムを構成する測量機のブロック図である。
図16】別の変形例に係る測量システムのプリズムロック機能の処理のフローの一例である。
図17】上記プリズムロック機能の前工程のイメージ図である。
図18】さらに別の変形例に係る測量システムを構成する測量機の外観斜視図である。
図19】同測量機の構成ブロック図である。
図20】同測量機を用いたプリズムロック機能の本工程のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。また、以下の実施形態および変形例の説明において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0022】
1.測量システム
図1は、本発明の好適な実施の形態にかかる測量システム1の概要構成を示す図である。測量システム1は、測量機10、ターゲットユニット70、およびコントローラ80を備える。図示の例において、測量機10は、自動追尾機能を有するモータドライブトータルステーションであり、コントローラ80はスマートフォンに測量機10のコントローラ機能を実装したものである。測量機10は、任意の点、好ましくはP0に設置される。本明細書において、「測量機を既知点に設置する」とは、既知点に設置することだけではなく、任意の点に、測量機を設置した後、後方交会法等により座標既知とすることを含む。
【0023】
測量システム1はワンマン作業に適しており、作業者は、プリズム72を備えるターゲットユニット70を鉛直に保持するとともに、コントローラ80をホルダで腕に装着する等して持ち歩き、移動しながら各測定点を測定する。
【0024】
また、測量機10は撮像部40を、ターゲットユニット70は送光器73を、コントローラ80はGNSS装置85を備える。遠隔でターゲットの追尾を開始する際、または追尾が外れた際に、以下の動作を実行することで、ターゲットの迅速なロックを可能とする。
【0025】
具体的には、まず、GNSS装置85の位置情報に基づいて、測量機10を水平回転して、視準軸をGNSS装置85の方向に向ける。ここで、GNSS装置85を有するコントローラ80を携帯する作業者は、ターゲットユニット70を保持しているため、GNSS装置85の方向が、プリズム72の概略方向(以下、「プリズム72の粗方向」という。)となる。
【0026】
次に、送光器73から追尾ガイド光Lcを射出させ、追尾ガイド光Lcの発光時と消灯時の画像を撮像部40で撮像して、両画像の差分から追尾ガイド光Lcの到来方向を算出し、視準軸を追尾ガイド光Lcの到来方向に向けるように、測量機10を回転する。
【0027】
送光器73とプリズム72は水平方向の位置が合致しており、追尾ガイド光Lcの到来方向は、プリズム72の正確な方向(以下、「プリズム72の精方向」という。)を示す。その後、追尾機能により周辺を走査することにより、プリズム72を捕捉して、迅速にロックすることを可能とする。本明細書において、この一連の動作を実行する機能をプリズムロック機能と称する。
【0028】
以下、測量システム1の各構成要素およびプリズムロック機能の詳細を説明する。
【0029】
2.測量機10
測量機10について、図2図4を参照して説明する。図2は測量機10の正面図、図3は測量機10の内部構造を模式的に示す概略図である。測量機10は、基盤部13と、基盤部13に対して水平方向に回転される回転台座14と、上面を有する略円筒形状を有し、内部に測量機本体15を格納するカバー部材16とを備える。測量機本体15は、托架部17、望遠鏡18、撮像部40、およびガイド光照射部50を備える。
【0030】
基盤部13は、三脚2に固定される固定座13aと、整準ネジ(図示せず)を有する整準台13bと、回転台座14を軸V回りに水平回転する回転軸13cと、回転軸13cを回転駆動する水平回転駆動部M1等の駆動機構を内蔵するケース13dを備える。回転軸13cには、図3では図示しない水平角検出器21が設けられている。
【0031】
回転台座14上には、一対の支持部材17aで構成される托架部17が立設されている。一対の支持部材17aの間には、望遠鏡18が、回転軸18Aにより回転可能に支持されている。回転軸18Aの一方の端部には、望遠鏡18を垂直方向に回転駆動する鉛直回転駆動部M2が固定され、他方の端部には、望遠鏡18の回転角度を検出する鉛直角検出器22が設けられている。
【0032】
托架部17の上端部には、一対の支持部材17aにまたがって水平に配置される水平板19が固定されている。水平板19の上面には、測量機制御部29、ガイド光照射部50、および撮像部40が取付けられている。右方の支持部材17aの上部には、制御回路基板に実装された測量機制御部29が配置されている。
【0033】
ガイド光照射部50は、作業者を誘導する作業者ガイド光を照射する。ガイド光照射部50は、左方の支持部材17aの上部に配置される。ガイド光照射部50の光軸と、望遠鏡18の光軸は、平面視で略平行となるよう構成されている。
【0034】
カバー部材16は、上面に突出する突出部16aを有し、突出部16aの前面は、カバー部材16の前面と面一となっている。撮像部40は、水平板19の中央に配置され、突出部16aに格納されている。
【0035】
カバー部材16の前面には、突出部16aの前面に設けられた撮像用窓16d、中央に上下方向に延びる望遠鏡用窓16b、および前面の上隅にガイド光用窓16cの、合計3つの窓が設けられている。
【0036】
望遠鏡用窓16bは望遠鏡18の光軸(視準軸)上に形成され、測距部23および追尾部24が射出する測距光および追尾光を透過する。ガイド光用窓16cは、ガイド光照射部50の光軸上に形成されており、作業者ガイド光を透過する。撮像用窓16dは、撮像部40の前方に形成されており、可視光および追尾ガイド光Lcを透過する。
【0037】
望遠鏡用窓16bは、僅かに水平方向に傾けられている。望遠鏡用窓16bが視準軸と直交していると、出射された測距光または追尾光が望遠鏡用窓16bの裏面で反射して、望遠鏡に入射して測距・測角に悪影響を与えてしまうのを回避するためである。
【0038】
回転台座14のカバー部材16との接続部には、雨水などの侵入を防止するシール部材(図示せず)が設けられている。
【0039】
カバー部材16と測量機本体15との間には隙間が設けられている。これにより、カバー部材16の取付け、取り外しの際に、カバー部材16が測量機本体15に接触するのを防止できる。カバー部材16を外しても、望遠鏡18、撮像部40、およびガイド光照射部50の光軸を調整する必要がない。
【0040】
図4は、測量機10のブロック図である。図4に示すように、測量機10では、水平角検出器21、鉛直角検出器22、水平回転駆動部M1、鉛直回転駆動部M2、測距部23、追尾部24、測量機通信部25、記憶部26、ガイド光照射部50、撮像部40は、それぞれ測量機制御部29に接続されている。
【0041】
水平角検出器21と鉛直角検出器22は、アブソリュートエンコーダまたはインクリメンタルエンコーダである。水平角検出器21は回転台座14の水平角、すなわち望遠鏡18の水平角を検出する。鉛直角検出器22は、望遠鏡18の鉛直角を検出する。
【0042】
水平回転駆動部M1と鉛直回転駆動部M2はモータである。測量機制御部29に制御され、水平回転駆動部M1は回転軸13cを駆動し、鉛直回転駆動部M2は、回転軸18Aを駆動する。両駆動部の協働により、望遠鏡18は水平方向および鉛直方向に回転される。
【0043】
測距部23は、レーザダイオード等の発光素子を有する送光部、測距光学系、および、アバランシェフォトダイオード等の受光素子を有する受光部を備える(図示せず)。測距部23は、例えば赤外レーザ光等である測距光を、測距光学系を介してプリズム72に射出して、その反射光を受光部で受光し、測距光と内部参照光の位相差または時間差からプリズム72の中心までの距離を測定する。
【0044】
追尾部24は、レーザダイオード等の発光素子を有する追尾光送光部、追尾光学系、および、CCD(Charge-Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)等の撮像素子を有する追尾光受光部を備える(図示せず)。追尾部24は、測距光とは異なる波長の赤外レーザ光を追尾光として射出して、追尾光発光時および追尾光消灯時の視準方向の風景画像を取得し、両画像を測量機制御部29に出力する。測量機制御部29は、両画像の差分からターゲットであるプリズム72の像の中心を求め、ターゲットの位置を算出する。測量機制御部29は、ターゲット位置の検出結果に基づいて、ターゲットの中心と、望遠鏡18の視軸中心からの隔たりが一定値以内に収まるように、水平回転駆動部M1および鉛直回転駆動部M2を駆動して、望遠鏡18が常にターゲットの方向を向くようにする。
【0045】
測量機通信部25は、ターゲットユニット70およびコントローラ80と情報の送受信を可能にする通信インタフェイスである。通信手段としては、Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信、携帯電話通信網等を用いてよい。通信手段はこれに制限されず、既知の有線および無線通信規格を使用してもよい。測量機10は、測定結果および撮像部40で取得した画像を、測量機通信部25を介してコントローラ80へ送信する。コントローラ80から入力された種々の命令は、測量機通信部25を介して測量機制御部29に入力される。また、プリズムロック機能を実行するための種々の情報が測量機通信部25を介して、測量機10、ターゲットユニット70およびコントローラ80との間で送受信可能である。
【0046】
記憶部26は、例えばHDD(Hard Disc Drive)、フラッシュメモリ等のコンピュータ読取可能な記憶媒体である。プリズムロック機能を含む測量機制御部29の種々の機能を実行するためのプログラムが格納されている。また、記憶部26は、測量機10が取得する測定データ等種々のデータを記憶する。
【0047】
測量機制御部29は、少なくとも1つのプロセッサ(例えばCPU(Central Processing Unit))と少なくとも1つのメモリ(例えばSRAM(Static Random Access Memory),DRAM(Dynamic Random Access Memory)等)を備える制御演算ユニットである。測量機制御部29は、プロセッサが、機能を実行するためのプログラムをメモリに読み出して実行することにより測量機10の機能を実行する。
【0048】
測量機制御部29は、水平角検出器21、鉛直角検出器22、水平回転駆動部M1、鉛直回転駆動部M2、測距部23、追尾部24、測量機通信部25、記憶部26、ガイド光照射部50を制御する。具体的には、各要素が測距測角機能、自動追尾機能を実行するために必要な制御を行う。
【0049】
測量機制御部29は、追尾が外れた際に、その旨を報知する信号(以下、ロスト信号という。)を、コントローラ80およびターゲットユニット70に送信する。また、測量機制御部29は、現在位置で取得したGNSS装置85の位置情報から検出された、現在位置における測量機10に対するGNSS装置85の方位角に基いて、視準方向との差を算出し、望遠鏡18を水平方向に回転させてGNSS装置85の方向に向ける。また、測量機制御部29は、撮像部40に送光器73の消灯時および発光時の画像を取得させる。両画像の取得時の、送光器73とのタイミング制御については後述する。両画像の差分画像から送光器73の方向を算出し、望遠鏡18を水平方向に回転させて送光器73の方向に向ける。そして、測量機制御部29は、追尾部24で鉛直方向に走査して、プリズム72をロックする。
【0050】
なお、測量機制御部29の機能の少なくとも一部は、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等でハードウェア的に構成されてもよい。CPLDやFPGAを用いた場合、素子上に構成された回路などがその機能を実現する。すなわち、測量機制御部29は、ソフトウェア的に機能を実現するプロセッサと、ハードウェア的に機能を実現する回路を含む処理回路を含んでよい。
【0051】
ガイド光照射部50は、図示しない一対の発光ダイオードと、一対の絞り、直角ミラー、コリメートレンズ等を備えるガイド光光学系とを備える。一対の発光ダイオードの一方は赤色の発光ダイオードであり、他方は緑色の発光ダイオードである。本実施の形態では、ガイド光照射部50は、測量機10の視準軸を中心として右側が赤色の光、左側が緑色の光となる水平方向に扇状に伸びる作業者ガイド光が照射されるように構成されている。
【0052】
撮像部40は、図5に示すように、CCD、CMOS等の撮像素子41、レンズ42、フィルタ43、およびフィルタ切替装置44を備える、いわゆるデジタルカメラである。撮像部40は、測量機10の前方の画像を、動画像または静止画像でリアルタイムに取得可能である。撮像部40の光軸は、測量機10の視準軸と、水平方向に平行となるように配置されている。撮像素子41は、撮像中心を原点とした直交座標系を有し、各画素のローカル座標が特定可能である。
【0053】
レンズ42は、視野角が60°~100°の広角レンズであり、少なくとも望遠鏡18の視野よりも広い視野の画像を取得可能である。フィルタ43は、第1フィルタ43aおよび第2フィルタ43bを備える。第1フィルタ43aは、可視光の範囲の光を透過させ、それ以外の光を遮蔽する。第2フィルタ43bは、後述する送光器73が送光する追尾ガイド光Lcの波長を中心としてその近傍の範囲の波長の光のみを透過させ、それ以外の波長の光を遮蔽する。第1フィルタ43aと第2フィルタ43bは、フィルタ切替装置44により光路上に出し入れすることにより切替可能である。
【0054】
プリズムロック機能の実行中は、第2フィルタ43bが光路中に配置される。図6(A),(B)は、撮像部40撮像した送光器73の点灯時の画像46aおよび消灯時の画像46bを、図6(C)はその差分画像46cを説明する図である。図6(A),(B)に示すように、第2フィルタ43bの作用により、追尾ガイド光Lcの像47が認識されるように撮像される。測量機制御部29がこの差分画像46cを、公知の手法により画像解析することで、追尾ガイド光47cの像の中心の方向が算出され、すなわち追尾ガイド光Lcの到来方向(プリズム72の精方向)を算出することが可能となっている。
【0055】
一方、追尾中および通常の使用中は、第1フィルタ43aが光路上に配置される。これにより、測量機10の前方の風景が撮像される。撮像部40で撮像された風景は、測量機通信部25を介してコントローラ80へ送信され、表示部82に表示される。
【0056】
測量機制御部29が、プリズム72が追尾から外れたことを感知すると、フィルタ切替装置44により第2フィルタ43bに切り替えられ、プリズム72がロックされたことを感知すると、第1フィルタ43aに切り替えられる。
【0057】
3.ターゲットユニット
図7(A)はターゲットユニット70の側面図、図7(B)は同平面図である。図1のターゲットユニット70も参照のこと。
【0058】
ターゲットユニット70は、ターゲット支持部材であるポール71、プリズム72、および送光器73を備える。プリズム72は、ポール71の中心軸Aがプリズム72の光学中心を通過するように、ポール71の上端に支持されている。プリズム72の光学中心とポール71下端までの距離(取付高)は既知である。作業者の移動中は、ポール71の中心軸Aを鉛直状態に保持しつつ運ばれ、測定点では、ポール71の中心軸Aを鉛直状態に保持しつつポール71の下端を測定点に当接して、測量機10で、プリズム72を測距・測角する。
【0059】
送光器73は、円柱形状の筐体76と、光源74と、送光器制御部77と、送光器通信部78とを備える。送光器73は、プリズム72の上端に、筐体76の中心軸がポール71の中心軸Aと一致するように取付けられている。
【0060】
光源74は、例えば、赤外LED(Light Emitting Diode)であり、追尾ガイド光Lcとして、測距光とも、追尾光とも異なる波長の赤外光を射出する。光源74は、筐体76内部の中心近傍に、ポール71の中心軸A周りの全周に向けて追尾ガイド光Lcを射出するように取り付けられている。筐体76の外周面には、複数の送光口75が、ポール71の中心軸Aと直交する平面上に、周方向に等間隔で配置されている。送光口75の数は、図示の例において6個であるが、これに限定されない。図7(B)に示すように、中心軸A周りの全周方向に放射状に追尾ガイド光Lcが射出されるようになっていることが好ましい。作業者が、意識的に送光口75を測量機10の方向に向ける必要がなく、作業が容易になるからである。しかし、送光方向はこれに限定されず、全周方向の一部、または1方向であってもよい。この場合は、作業者が光のポール71を回転させて射出方向を測量機10に向ければよいからである。送光器73の配置は、プリズム72の上端側に限らず、下端側でもよい。
【0061】
送光器制御部77は、例えば、CPUと、メモリが基板に実装されたマイクロコントローラであり、コントローラ80からの命令に従ってまたは測量機10からの信号に応じて、光源74の作動および停止を制御する。送光器制御部77は、定められた間隔で光源74に点滅を繰り返させる。
【0062】
送光器通信部78は、コントローラ通信部84と同等の通信インタフェイスであり、測量機10およびコントローラ80との通信を可能とする。送光器通信部78を介して、送光器73のコントローラ80からの駆動命令および測量機10からの信号が入力される。
【0063】
本実施の形態において、送光器73は、測量機10からの信号に応じて、またはコントローラ80からの命令に従って、光源74の作動および停止を制御するようになっている。このことは、省電力の観点から有利である。しかし、これは必須ではなく、送光器73は、測定中、常時定められた間隔で点滅するようになっていてもよい。この場合、送光器通信部78は不要であり、単に手動で電源のON/OFFができるようになっていればよい。
【0064】
4.コントローラ80
図8は、コントローラ80のブロック図である。コントローラ80は、測量機10を遠隔操作する操作端末である。コントローラ80は、入力部81、表示部82、記憶部83、コントローラ通信部84、GNSS装置85、方位センサ86、およびコントローラ制御部89を備える。
【0065】
入力部81、表示部82は、コントローラ80のユーザインタフェイスである。作業者は、入力部81から、測量機10の操作指示や情報を入力できる。表示部82は、タッチパネル式の液晶ディスプレイであり、入力部81と一体となっている。
【0066】
コントローラ通信部84は、測量機通信部25と同等の構成を備え、測量機10および送光器73と情報の送受信を可能とする。
【0067】
GNSS(Global Navigation Satellite System)装置85は、航法衛星から発信される航法信号を受信する装置であり、受信した航法信号から、自装置の現在の位置情報(緯度経度)を取得する。GNSS装置85としては、GPS(Global Positioning System)装置が用いられる。これに限らず、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)、GLONASS(GLObal'naya NAvigatsionnaya Sputnikovaya Sistema)、Galileo等の衛星測位システムを利用したものでもよい。GNSS装置85は、相対測位方式の装置でもよいが単独測位方式の装置で十分である。GNSS装置85は、プリズム72の粗方向を得るために用いられるため、高精度な三次元情報の取得による厳密な相対方向の検出を要しないためである。
【0068】
方位センサ86は、半導体を用いた電子コンパスである。南北の地磁気を検出して方角を算出する。MR素子(Magneto Resistive Sensor)を使用したものやGMR素子(Giant Magneto Resistive Sensor)を使用したものなど、公知のものが使用可能であり、種類は問わない。
【0069】
記憶部83は、例えばフラッシュメモリやHDD等のコンピュータ読取可能な記憶媒体である。記憶部83は、測量機10から入力された計測データや、測量現場の設計データを記憶する。
【0070】
コントローラ制御部89は、少なくとも1つのプロセッサ(例えばCPU)と少なくとも1つのメモリ(例えばSRAM,DRAM等)を備える制御演算ユニットである。
【0071】
コントローラ制御部89は、GNSS装置85により、測量機設置点で取得したGNSS装置85の位置情報と、測量機10から離隔した任意の点で取得したGNSS装置85の位置情報とに基づいて、任意の点における測量機10に対するGNSS装置85の方位角を、プリズム72の粗方向として検出可能とする。また、現在位置におけるGNSS装置85の位置情報から、測量機10に対するGNSS装置85の方位角を算出して測量機10に送信する。また、コントローラ制御部89は、送光器73に対して、光源74の作動および停止を命令する。
【0072】
また、コントローラ制御部89は、GNSS装置85の位置情報、方位センサ86の方位信号と設計データとに基づいて、測量作業用の地図を作成し表示部82に表示し、測量作業を補助するための様々な機能を実行する。また、コントローラ制御部89は、測量機10から受信した撮像部40が撮像した画像を、表示部82に表示する。
【0073】
上記の例においては、スマートフォンを用いてコントローラ80を構成したが、これに限らず、コントローラ80は、携帯電話、タブレット、PDA(Personal Digital Assistant)、データコレクタ等の、通信機能を有する携帯コンピュータ端末により実現することができる。しかし、一般的なスマートフォンには、コントローラ80の機械構成が全て含まれているため、スマートフォンを用いるとコストの観点から有利である。
【0074】
なお、コントローラ制御部89と、測量機制御部29は、協働して、測量システム1の制御部として機能する。特許請求の範囲におけるシステム制御部は、コントローラ制御部89と、測量機制御部29により構成される。
【0075】
5.プリズムロック機能
以下、測量システム1におけるプリズムロック機能を図9図11を参照しながら説明する。図9はプリズムロック機能のフローチャートである。図10は、ステップS101~ステップS104のイメージ図である。図11は、ステップS105~S109のイメージ図である。
【0076】
最初に、ステップS101で、前工程として、まず測量機10を既知点P0に設置して、コントローラ80のGNSS装置85と測量機10の位置合わせを行う。具体的には、コントローラ80を、測量機10に近接させ、GNSS装置85で、測量機10の設置点での位置情報(緯度経度)を取得する。この位置合わせの精度を向上させるために、測量機10の上面の、例えば、器械中心と合致する軸V上に、コントローラ80を位置決めするためのガイド表示やガイド溝が設けられていてもよい。コントローラ80の位置情報は、測量機10の位置として、記憶部83に記憶される。
【0077】
次に、ステップS102で、作業者はコントローラ80とターゲットユニット70を保持して、測量機10にターゲットユニット70を追尾させた状態で、測量機10からある程度離れた任意の点P1に移動し、GNSS装置85で点P1での位置情報(緯度経度)を取得して位置合わせする。
【0078】
次に、ステップS103で、測量機10にプリズム72の測距・測角をさせる。(少なくとも測角すればよい。)測量機10と同様に、ターゲットユニット70の送光器73の上面の中心軸A上にも、コントローラ80を位置合わせするためのガイド表示やガイド溝が設けられていてもよい。
【0079】
そして、ステップS104では、コントローラ制御部89は、点P0での位置情報と、点P1での位置情報から、測量機10に対するコントローラ80の方位角を算出し、記憶部83に記憶させる。測量機制御部29は、点P1でのプリズム72の測定結果から測量機10で点P0から点P1の方位角を算出し、測量機の視準方向を取得する。これにより、コントローラ80の方位角と、測量機10の視準方向の基準を一致させる。この後、任意の点P2に移動したときに、GNSS装置85で取得した点P2での位置情報に基づいて、測量機10に対するGNSS装置85の相対角度(方位角)の算出が可能となる。
【0080】
なお、さらに、作業者の持ったターゲットユニット70のプリズム72を追尾させ、作業者が移動しながら、随時測距・測距することで、測量機10に対するコントローラ80の方向を逐次校正を行うように構成してもよい。
【0081】
作業者は、ターゲットユニット70およびコントローラ80を持って移動する。GNSS装置85の航法信号の取得は、移動中も随時行われているため、作業者が移動しても、また移動中であっても、プリズム72の粗方向が把握される。
【0082】
次に、本工程として、ステップS105~S110で、追尾部24による追尾開始の際の、または追尾が外れた際の追尾再開のための作業を説明する。
【0083】
本工程は、作業者のコントローラ80を介する命令により手動で、あるいは、測量機10がロスト信号を送信し、ターゲットユニット70およびコントローラ80が受信することにより自動で開始する。自動で開始する場合には、コントローラ80の表示部82に追尾が外れたために本工程に移行する旨の表示を表示して、作業者に報知するようになっていてもよい。
【0084】
本工程が開始すると、ステップS105で、測量機制御部29が、コントローラ80から、GNSS装置85で取得した現在の位置情報に基づいて、測量機10とGNSS装置85との方位角を算出して、測量機10の視準方向の水平方向角と、前記方位角との差に基づいて、水平回転駆動部M1を駆動させて、望遠鏡18を水平方向に回転し、望遠鏡18の視準軸をGNSS装置方向(プリズム72の粗方向)に向ける。水平回転駆動部M1が停止すると、測量機制御部29は、回転の終了を報知する信号をコントローラ80および送光器73に送信する。
【0085】
回転終了を報知する信号を受信すると、ステップS106で、コントローラ制御部89が、送光器73に光源74を駆動させる。また、測量機制御部29が、フィルタ切替装置44を駆動して、第2フィルタ43bが撮像部40の光路上に配置されるように切り替える。
【0086】
次に、ステップS107で、追尾ガイド光Lcの発光時と消灯時の画像を撮像して、両画像の差分画像を画像解析することにより追尾ガイド光Lcの位置を検出する。具体的には、測量機制御部29の制御により、撮像部40が、送光器73の点灯時と消灯時の測量機10の前方の画像を撮像する。測量機制御部29は、両画像の差分画像を解析して、追尾ガイド光Lcの像を検出する。撮像が終わると、測量機制御部29は、撮像終了の信号を送光器73に送信する。
【0087】
次に、ステップS108で、測量機制御部29は、画像解析の結果に基づいて追尾ガイド光Lcの到来方向を算出し、水平回転駆動部M1を駆動させて望遠鏡18を回転させ、望遠鏡18の視準軸を追尾ガイド光Lcの到来方向(プリズム72の精方向)に向ける。
【0088】
次に、ステップS109で、測量機制御部29は鉛直回転駆動部M2により望遠鏡18を上下方向に駆動させて、追尾部24の追尾光で視準方向周辺を上下に走査させ、プリズム72を検出する。ステップS108で追尾ガイド光Lcの到来方向を算出する際、測量機制御部29は、追尾ガイド光Lcの到来方向のz方向の角度も把握している。また、プリズム72と送光器73の位置関係は既知であるから、この範囲を優先的に操作することで、より迅速にプリズム72を検出することが可能となる。
【0089】
次に、ステップS110で、測量機制御部29は、プリズム72をロックする。同時、に測量機制御部29は、フィルタ切替装置44に、第2フィルタ43bから第1フィルタに切り替えさせる。また送光器73に、プリズムロックの終了を報知する信号を送信する。これにより送光器73は、光源74の作動を停止する。そして、フローは終了し、追尾部24による追尾動作に移行する。
【0090】
なお、コントローラ80と測量機10は、情報の送受信が可能である。従って、本処理のフローにおける、コントローラ制御部89の処理および測量機制御部29の処理を、いずれで行っても同じ機能を奏することが可能である。
【0091】
測量システム1によれば、まず、GNSS装置85の位置情報に基づいて、測量機10にプリズム72の粗方向を向かせ、ついで、撮像部40で追尾ガイド光Lcを検出して、その到来方向、すなわちプリズム72の精方向を向かせる。そして追尾部24の追尾光を上下方向に走査させることで、プリズム72を探索してロックする。
【0092】
このように、粗方向、精方向と順に望遠鏡18をプリズム72の方向に向けることで、やみくもに全方位を走査することが不要となる。また、粗方向、精方向への回転は、走査しながら回転するわけではないので回転速度を速めることも可能である。また、ステップS109において、追尾部24により鉛直方向の走査を行うにあたり、ステップS107の画像解析の結果より、概ね鉛直方向の角度も把握できている。したがって、測量機制御部29は、画像解析の結果より求めた鉛直方向の位置の周辺を優先的に走査することで、鉛直走査の時間も短縮することが可能となる。
【0093】
また、ターゲットの追尾が外れた場合には、測量機10からの信号により、自動的に、粗方向への回転を実行し、その後、送光器73の作動および撮像部40の撮像を自動で開始するように構成したので、作業者は、従来のように、作業を中断して、送光器をターゲットに向けて操作する等の作業を行う必要がなく、作業効率が高くなる。
【0094】
また、ターゲットユニット70から射出する追尾ガイド光Lcを、ターゲットユニット70のターゲット支持部材の中心軸に直交する方向に、中心軸周りの全周に射出するように構成すると、作業者は、測量機10に向けて、送光器73の向きをあわせる必要がないので手間が低減される。
【0095】
本実施の形態において、上記ステップS110において、追尾部24により鉛直方向の走査を行うにあたり、ステップS107の画像解析の結果より、概ね鉛直方向の角度も把握できている。したがって、測量機制御部29は、画像解析の結果より求めた鉛直方向の位置の周辺を優先的に走査することで、鉛直走査の時間も短縮することが可能となる。
【0096】
実施の形態において例示した測量機10は、回転台座14の上に望遠鏡18を支持し、ケーシングを持たない托架部17が立設され、上方から、上面を有する略円筒形状のカバー部材16で覆われ、カバー部材16の前面に設けられた望遠鏡用窓16bから視準するように構成されている。このような構成は、測量機10をコンパクトにし、部品点数を減らすことができ、コスト的に有利であるが、例えば、後述する図16に示すような、カバー部材16を備えず、望遠鏡18Bと、托架部17Bがそれぞれケーシングを有するタイプの測量機1Bに比較して、望遠鏡18の視野が狭くなる。したがって、追尾が外れた際の従来技術による追尾部での探索が困難である。上記の広角カメラを用いてより広い範囲を探索可能としたプリズムロック機能およびこのための構成は、測量機10のようなカバー部材16を有して構成された測量機を用いた場合、特に有利である。
【0097】
6.撮像制御
ところで、本実施の形態ではS107の撮像の際、撮像部40が送光器73の点灯時と消灯時の画像を撮像するときに、非同期で、撮像部40の撮像と、送光器73の発光のタイミングを制御している。図12~14を参照して、この非同期制御について説明する。図12は、ステップS107の詳細なフローチャートであり、図13は、非同期制御のしくみを説明する図である。
【0098】
ステップS105で、測量機10が、GNSS装置85方向への回転が完了し、その旨の信号を送光器73に送信すると、ステップS107が開始する。ステップS107が開始すると、ステップS201で、撮像部40は、予め定められた間隔Tで撮像を開始する。画像は、順次測量機制御部29に出力される。間隔Tは、露光が始まってから、次のフレームの露光が始まるまでの時間である。
【0099】
同時に、ステップS202で、送光器制御部77は、光源74を作動して、所定の間隔Tで発光と消灯(点滅)を繰り返す。具体的には、撮像間隔の2フレーム分の時間2T1の間発光し、同じ時間2Tの間消灯する、を繰り返す。したがって、所定の間隔Tは4Tとなる。
【0100】
次にステップS203で、測量機制御部29は、今回のフレームで撮像した画像から、2フレーム前に撮像した画像を減算した差分画像を、を順次生成する。このようなタイミングで撮像および発光をすることで、差分画像は、消灯時の画像から発光時の画像を減算したON-OFFの差分画像(図11において1,2)、消灯時の画像から発光時の画像を減算したOFF-ONの差分画像(図11において3、4)が2つずつ含まれる4フレーム分が1セットとなる。測量機制御部29は、4フレーム分の画像を1セットとして同期ポイントを常時監視する。
【0101】
次に、ステップS204で、測量機制御部29は、同期ポイントの画像が3セット分生成されたときに、平均画像を生成する。平均するセット数は3に限定されないが、撮像時からの遅延と、算出精度の観点から3であると好ましい。
【0102】
次に、ステップS205で、測量機制御部29は、生成した平均画像から追尾ガイド光Lcの像を検出し、追尾ガイド光Lcの方向を算出し、処理を終了する。
【0103】
ここで、追尾ガイド光Lcの方向を算出するのにあたり、平均画像を用いるのは、算出精度を向上するためである。しかし、平均画像を用いることは必ずしも必要ではない。例えば、ターゲットユニット70を保持する作業者が移動しながら、プリズムロック機能を使用しようとする場合、平均画像を用いず、1セット分の差分画像から追尾ガイド光Lcの方向を算出してもよい。平均画像を用いると、撮像から平均画像の算出までの時間が遅延となり、算出される方向にずれが生じるからである。
【0104】
なお、差分画像が、ON-OFFであるか、OFF-ONであるかは、輝度ピークのレベルから画像解析により把握できる。追尾ガイド光Lcの到来方向の算出にあたっては、ON-OFFの差分画像を用いることが好ましい。撮像に対する遅れを低減することができるからである。
【0105】
後述するように、撮像と発光のタイミングを同期すれば、差分画像の計算は、1度ですむ。一方上記方法では、少なくとも4つの差分画像を生成するため計算量が増大するが、ビニングにより画素数を1/4にすれば、計算量の増大を抑制することができるので問題はない。
【0106】
本実施の形態では、撮像間隔Tの2フレーム分の発光時間と2フレーム分の消灯時間の一周期の間に4回撮像するように構成している。このため、図14に示すように、偶然に、1セットのうちの1つの撮像が発光動作中または消灯動作中に行われたとしても、1セットのうちの必ず1つは確実にON-OFFとなるタイミングで撮像することが可能である。なお、発光時間および消灯時間の長さは、厳密に撮像間隔Tの2倍でなくともよい。発光タイミングはクロック誤差等により必ず遅延が生じるものであるからである。
【0107】
なお、発光時間および消灯時間は、撮像間隔の2倍に限らず、n倍(ここで、nは2以上の自然数,n=2,3,… である。)とし、2×nフレーム分の画像を1セットとして、現在のフレームで撮影した画像と、nフレーム後に取得した画像との差分画像を取得するように構成してもよい。しかし、n=2であると、撮像からの遅延が最小に抑えられるため有利である。
【0108】
7.変形例1
図15は、変形例1に係る測量システム1Aを構成する測量機10Aのブロック図である。測量システム1Aでは、測量システム1が非同期制御により、撮像部40の撮像タイミングと、送光器73の発光タイミングを合わせているのに対して、測量機が同期制御することにより、撮像タイミングと発光タイミングを合わせて、発光時と消灯時の画像を取得する。
【0109】
このために、測量システム1Aでは測量機10Aが測量機10の構成に加えて、同期制御部60を備える。同期制御部60は同期信号を、撮像部40と送光器73に送信して、撮像タイミングと発光タイミングを同期させ、消灯時と発光時に画像を取得するように制御する。このようにすることで、1つの差分画像を取得するためには、消灯時に1度、発光時に1度画像を取得するだけでよい。
【0110】
このように、撮像と発光を同期制御しても、測量システム1と同様に、消灯時と発光時の差分画像を取得して、プリズムロックの機能を奏することが可能である。本変形は、本明細書に記載した別の変形例に係る測量システムにも適用することが可能である。
【0111】
8.変形例2
変形例2として、測量システム1のプリズムロック機能の処理の別の例を説明する。
【0112】
図16は、変形例2に係る、プリズムロック機能の処理のフローである。本フローにおいて、ステップS306~S311は、図9のステップS105~S110と同じであるので説明は省略する。図17は、ステップS301~ステップS305のイメージ図である。
【0113】
前処理を開始すると、ステップS301で、測量機10の設置点である点P0から離隔した点P1で、コントローラ80を、GNSS装置85で、点P1での位置情報(緯度経度)を取得する。点P1での位置情報は、記憶部83に記憶される。
【0114】
次に、ステップS302で、測量機10にプリズム72を測定させる(少なくとも測角させればよい)。点P1で、測量機10にプリズム72を視準させるのは、例えば追尾部24による走査など、自動追尾機能やプリズムロック機能とは別の機能を用いることができる。点P1の測定結果はコントローラ80に送られる。ステップS301とS302の順序は問わない。
【0115】
次に、ステップS303で、作業者は、ターゲットユニット70を保持して、プリズム72を自動追尾させた状態で、点P1からある程度離れた点P2に移動し、点P2にターゲットユニット70を設置して、測量機10にプリズム72を測定させる(測角)。点P2での測定結果は、コントローラ80に送られる。
【0116】
次に、ステップS304で、コントローラ80を測量機10に近接させ、GNSS装置85で、点P2での位置情報(緯度経度)を取得する。点P2での位置情報は、記憶部83に記憶される。S303とS304の順序は問わない。
【0117】
そして、ステップS305では、コントローラ制御部89は、点P1および点P2での位置情報と、測量機10から取得した測量機に対する点P1から点P2の角度に基いて、測量機設置点P0を算出し記憶部83に記憶させる。これにより、コントローラ制御部89は、測量機10に対する点P1または点P2の方向角を把握できる。これを測量機10に送る。測量機制御部29は、これにより、コントローラ80の方位角と、測量機10の視準方向の基準を一致させる。これにより、さらに別の任意の点に移動したときに、GNSS装置85で取得した該任意の点での位置情報に基づいて、測量機10に対するGNSS装置85の相対角度(方位角)の算出が可能となる。
【0118】
本方法では、プリズム72を2回測定する必要があるが、測量機10のところまで戻って、位置合わせをする必要がないという利点がある。図9の方法と、図16の方法は、必要に応じて変更することが可能である。また、本変形は、本明細書に記載した別の変形例に係る測量システムにも適用することが可能である。
【0119】
9.変形例3
図18は、変形例3に係る測量システム1Bを構成する、測量機10Bの模式的な外観斜視図、図19は、構成ブロック図である。測量システム1Bは、測量機10に代えて測量機10Bを備える点を除いて同じ構成を有するので全体の詳細な説明は省略する。測量機10Bは、機能的には、測量機1と同等の構成であるが、外観上、以下の点で異なる。測量機10Bは、カバー部材16を備えない。また、基盤部13の上に設けられた回転台座14上に固定されて水平方向に回転可能な托架部17Bが、上方に開口するコの字形状を有する独立のケーシングを有して構成されている。
【0120】
托架部17Bの下部17Bbは、横長の直方体形状を有し、前面に、測量機1Bを直接操作するための入力部27と表示部28を備える。托架部17Bの上部17Baは左右一対の柱として上方へ延在し、その間に望遠鏡18Bを軸H回りに鉛直回転可能に支持する。また、望遠鏡18Bの上部には、撮像部40と同等の構成を有する撮像部40Bが設けられている。
【0121】
すなわち、測量機10と測量機10Bの主な違いは、測量機10では、撮像部40が、托架部17の上端に設けられ、水平方向にのみに回転するのに対して、測量機10Bでは、撮像部40Bが、望遠鏡18Bの上部に設けられ、望遠鏡18Bと共に水平方向および鉛直方向に回転可能である点である。
【0122】
一方、図19に示す通り、機能的には、測量機10と測量機10Bは、測量機10Bが入力部27、表示部28を備える点を除いて同等の構成を有する。
【0123】
測量システム1Bを用いるプリズムロックのフローは、図9に示す測量システム1のフローと概ね同じである。上記構成の相違点に基いて、本工程のステップS108,S109における動作が、図20に示すように異なる。すなわち、ステップS108において、測量機制御部29は、画像解析の結果に基づいて追尾ガイド光Lcの到来方向を算出し、水平回転駆動部M1、および鉛直回転駆動部M12を駆動させて望遠鏡18を回転させ、望遠鏡18の視準軸を追尾ガイド光Lcの到来方向(プリズム72の精方向)に向ける。追尾ガイド光Lcの到来方向の算出により、回転すべき、水平角だけでなく、鉛直角度も把握できるからである。
【0124】
したがって、ステップS109では、追尾部24の追尾光を走査させ、プリズム72を捕捉する際には、現在の視準方向周辺を、鉛直方向および水平方向にわずかに走査するだけで、プリズム72を捕捉することができる。
【0125】
このように、望遠鏡18Bと共に回転可能な撮像部40を有する測量機10Bでは、望遠鏡18を水平方向および鉛直方向に同時に回転してプリズム72の精方向に向けるので、さらに迅速にプリズムを捕捉することが可能になる。
【0126】
以上、本発明の好ましい実施の形態について述べたが、上記の実施の形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0127】
1,1A :測量システム
10,10A :測量機
14 :回転台座
16 :カバー部材
16d :撮像用窓
17 :托架部
17a :支持部材
18 :望遠鏡
24 :追尾部
28 :望遠鏡
29 :測量機制御部
40 :撮像部
42 :レンズ
46a :画像
46b :画像
46c :差分画像
47 :像
47c :追尾ガイド光
70 :ターゲットユニット
72 :プリズム
73 :送光器
77 :送光器制御部
80 :コントローラ
85 :GNSS装置
89 :コントローラ制御部
91 :回転台座
92 :托架部
93 :望遠鏡
A :中心軸
Lc :追尾ガイド光
M1 :水平回転駆動部
M2 :鉛直回転駆動部
V :軸
図1
図2
図3
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