(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050349
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】送光器および測量システム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20240403BHJP
G01C 15/06 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G01C15/00 103C
G01C15/00 103E
G01C15/06 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157180
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】西田 信幸
(72)【発明者】
【氏名】桐生 徳康
(57)【要約】
【課題】 測量機による自動視準を容易にする送光器、および測量システムに関する。
【解決手段】 自身の方向を知らせるための追尾ガイド光を送光する送光器であって、前記追尾ガイド光が送光される複数の送光口と、隣り合う前記送光口の間に立てられて配置される複数のフィンと、を備え、複数の前記送光口が上面視円環状に略等間隔に配置されることで、前記追尾ガイド光は上面視放射状に送光され、複数の前記フィンは上面視して、前記追尾ガイド光の送光方向である外周方向に延在して、略等角度に放射状に配置される送光器を提供する。複数の追尾ガイド光が周方向に等角度で照射されるうえ、フィンにより、映り込みや反射を抑制して、より自身の方向をみつけやすいものとした。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方向を知らせるための追尾ガイド光を送光する送光器であって、
前記追尾ガイド光が送光される複数の送光口と、隣り合う前記送光口の間に立てられて配置される複数のフィンと、
を備え、
複数の前記送光口が上面視円環状に略等間隔に配置されることで、前記追尾ガイド光は上面視放射状に送光され、
複数の前記フィンは上面視して、前記追尾ガイド光の送光方向である外周方向に延在して、略等角度に放射状に配置される、
ことを特徴とする送光器。
【請求項2】
少なくとも周側面の一部が透明部材で構成される、略円筒状の筐体を有し、
前記複数の送光口は、前記筐体の内部に設けられて、複数の前記送光口から前記筐体の前記透明部材に向かって前記追尾ガイド光が送光され、
前記送光口は、前記筐体の前記周側面から所定距離だけ離間して配置され、前記フィンは、前記筐体の内側に、前記送光口と前記筐体の前記周側面の間に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の送光器。
【請求項3】
前記フィン、前記筐体の底面、および前記筐体の上面は、光を吸収する吸収材を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の送光器。
【請求項4】
複数の前記送光口は上下方向に分けて配置され、複数の前記送光口は、上面視円環状に等間隔となるように配置されることで、前記追尾ガイド光は上面視放射状に送光される、
ことを特報とする請求項1に記載の送光器。
【請求項5】
追尾ガイド光を送光する送光器と、
鉛直軸回りに回転される托架部に支持されて水平軸回りに回動される鏡筒部と、前記鏡筒部の前方の風景を撮像する撮像部と、前記托架部を回転駆動させる駆動部と、前記撮像部が前記送光器から送光される前記追尾ガイド光を含んだ画像を取得すると、前記画像を解析して前記追尾ガイド光の到来方向を演算し、前記鏡筒部の視準軸が前記追尾ガイド光の前記到来方向に向けられるように、前記駆動部を制御する制御部とを有する測量機と、
を備え、
前記送光器は、前記追尾ガイド光が送光される複数の送光口と、隣り合う前記送光口の間に立てられて配置される複数のフィンとを有し、複数の前記送光口が上面視円環状に略等間隔に配置されることで、前記追尾ガイド光は上面視放射状に送光され、
複数の前記フィンは上面視して、前記追尾ガイド光の送光方向である外周方向に延在して、略等角度に放射状に配置される、
ことを特徴とする測量システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、測量機による追尾継続を容易にする送光器、および測量システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動追尾装置を備えている測量機がある(例えば特許文献1)。追尾が外れた場合、特許文献1では、プリズムが装着されたポールを把持している作業者が光送信器を持ち、光送信器で測量機に向けて光で送信信号(追尾ガイド光)を送る。そして測量機は送信信号を受光して、送信信号の到来方向を検知して、望遠鏡を到来方向へ向ける。これにより迅速に測量機にプリズムをロックさせ、再び追尾させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記方法では、追尾が外れてしまったときに、作業者が測量作業の手を止めて、測量機にリモコンの送光口を向けてスイッチを押して送信信号を送らねばならず、作業者には手間がかかり煩わしかった。
【0005】
本件は、このような問題に鑑みてなされたものであり、測量機による追尾継続を容易にする送光器、および測量システムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するため、本開示のある態様においては、方向を知らせるための追尾ガイド光を送光する送光器であって、前記追尾ガイド光が送光される複数の送光口と、隣り合う前記送光口の間に立てられて配置される複数のフィンとを備え、複数の前記送光口が上面視円環状に略等間隔に配置されることで、前記追尾ガイド光は上面視放射状に送光され、複数の前記フィンは上面視して、前記追尾ガイド光の送光方向である外周方向に延在して、略等角度に放射状に配置されるように送光器を構成した。
【0007】
また、ある態様においては、少なくとも周側面の一部が透明部材で構成される、略円筒状の筐体を有し、前記複数の送光口は、前記筐体の内部に設けられて、複数の前記送光口から前記筐体の前記透明部材に向かって前記追尾ガイド光が送光され、前記送光口は、前記筐体の前記周側面から所定距離だけ離間して配置され、前記フィンは、前記筐体の内側に、前記送光口と前記筐体の前記周側面の間に配置されるように構成した。
また、ある態様においては、前記フィン、前記筐体の底面、および前記筐体の上面は、光を吸収する吸収材を含むものとした。
【0008】
また、ある態様においては、複数の前記送光口は上下方向に分けて配置され、複数の前記送光口は、上面視円環状に等間隔となるように配置されることで、前記追尾ガイド光は上面視放射状に送光されるものとした。
【0009】
また、ある態様においては、追尾ガイド光を送光する送光器と、鉛直軸回りに回転される托架部に支持されて水平軸回りに回動される鏡筒部と、前記鏡筒部の前方の風景を撮像する撮像部と、前記托架部を回転駆動させる駆動部と、前記撮像部が前記送光器から送光される前記追尾ガイド光を含んだ画像を取得すると、前記画像を解析して前記追尾ガイド光の到来方向を演算し、前記鏡筒部の視準軸が前記追尾ガイド光の前記到来方向に向けられるように、前記駆動部を制御する制御部とを有する測量機と、を備え、前記送光器は、前記追尾ガイド光が送光される複数の送光口と、隣り合う前記送光口の間に立てられて配置される複数のフィンとを有し、複数の前記送光口が上面視円環状に略等間隔に配置されることで、前記追尾ガイド光は上面視放射状に送光され、複数の前記フィンは上面視して、前記追尾ガイド光の送光方向である外周方向に延在して、略等角度に放射状に配置されるように測量システムを構成した。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、測量機による追尾継続が容易な送光器および測量システムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の好適な実施形態に係る送光器を有するターゲットユニット、および測量機を含む測量システムの概略構成を示す図である。
【
図3】測量機の内部構造を模式的に示す概略図である。
【
図9】
図8のIX-IX線で切断した断面図である。主として送光器のフィンと送光口の配置、および送光する追尾ガイド光の方向を示す。
【
図10】筐体およびフィンを取り外した状態の送光器である。主として台座部および台座部に取付けられた発光ユニットを示す。
【
図11】送光器の効果を説明するための説明図である。
【
図13】プリズムロックの前工程のイメージ図である。
【
図14】プリズムロックの本工程のイメージ図である。
【
図18】変形例のプリズムロックの本工程のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。また、以下の実施形態および変形例の説明において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0013】
(測量システム)
図1は、本発明の好適な実施形態にかかる測量システム1の概要構成を示す図である。測量システム1は、測量機10、ターゲットユニット70、およびコントローラ80を含んで構成される。
【0014】
測量機10は、測距・測角機能及び追尾機能を備えたトータルステーションである。さらに、測量機10は測量機10の前方の画像を取得する撮像部40も備える。
【0015】
ターゲットユニット70は、ポール71の上端に測量機10のターゲットである全周反射のプリズム72を有し、ポール71の下端を測定点Pnに概ね鉛直に設置して使用される。
【0016】
ターゲットユニット70は、自身の位置・方向を知らせるための追尾ガイド光Lcを送光する送光器90を有する。送光器90は、測量機10によるプリズム72のロック(追尾)が外れた場合に、水平方向の全周に赤外光の追尾ガイド光Lcを送光する。測量機10の撮像部40で追尾ガイド光Lcを捕えて到来方向を解析し、プリズム72を再びロック(視準)して、迅速に追尾を再開させることができる。
【0017】
コントローラ80は、測量機10の遠隔操作を行うコントローラである。本実施形態においては、ターゲットユニット70の送光器90もコントローラ80で操作される。作業者はコントローラ80を腕に装着する、またはターゲットユニット70に取付けるなどして、ターゲットユニット70とともに、測量作業中は自身とともに持ち運ぶ。
【0018】
コントローラ80にはタッチパネル式の表示部82が設けられており、自身の位置情報や計測点などがリアルタイムに表示される。作業者は、表示部82で情報を確認しながら、適宜命令を入力して、測量機10を操作できる。測量機10で撮像された画像も表示部82に表示させることができる。
【0019】
コントローラ80にはGPS装置85が搭載されており、GPS装置85によりコントローラ80およびプリズム72を持つ作業者と、測量機10との位置関係が概略把握される。測量機10にプリズム72を視準させたい場合、GPS装置85により測量機10はプリズム72のおおまかな方向を把握しているため、迅速に追尾を再開させることができる。
【0020】
(測量機)
測量機10について、
図2~
図4を用いて説明する。
図2は、測量機10の正面図である。
図3は測量機10の内部構造を模式的に示す概略図である。
【0021】
図2及び
図3に示すように、測量機10は、基盤部13および基盤部13に対して水平方向に回転される回転台座14で構成される測量機本体15、およびカバー部材16を含んで構成されている。
【0022】
基盤部13は、三脚台2に固定される固定座13aと、整準ネジ(図示せず)を有する整準台13bと、回転台座14を鉛直軸V回りに水平方向に回転駆動する水平回転駆動部M1等の駆動機構を内蔵するケース13cとから概略構成されている。
【0023】
回転台座14には、一対の支持部材17aで構成される托架部17が立設している。支持部材17aの間に測距光学系と追尾光学系の鏡筒部18が配置されている。鏡筒部18は、托架部17に設けられた水平軸Hにより、垂直方向に回転可能に支持されている。鏡筒部18には、測距部23および追尾部24が収容される。
【0024】
水平軸Hの一方の端部には、鏡筒部18を垂直方向に回転駆動する鉛直回転駆動部M2が固定され、他方の端部には、鏡筒部18の回転角度を検出するための鉛直角検出器22が設けられている。
【0025】
托架部17の上端部には、一対の支持部材にまたがって水平に配置される薄板の水平板19が固定されている。水平板19の上面には、測量機制御部29、および撮像部40が、取付けられている。
測量機制御部29は、制御回路基板をベースとして托架部17の右上部に配置されている。
【0026】
カバー部材16は、上面に突出する突出部16aを有し、突出部の前面は、カバー部の前面と面一となっている。撮像部40は、水平板19の中央で、突出部16aの内側となるように配置されている。
【0027】
カバー部材16の前面には、突出部16aの前面の設けられた撮像用窓16d、前面の中央に上下方向に伸びる鏡筒用窓16bの、二つの窓が設けられている。
【0028】
鏡筒用窓16bは鏡筒部18の光軸上に形成され、測距部23および追尾部24の光学系の赤外レーザ光を透過する。撮像用窓16dは、撮像部40の前方に形成されており、撮像部40は、撮像用窓16d越しに、測量機10前方の画像を取得する。
【0029】
鏡筒用窓16bが赤外レーザ光の光軸と直交していると、鏡筒用窓16bで反射した赤外レーザ光がそのまま返ってきてしまい、測距・測角に悪影響を与えてしまうため、これを回避するよう、鏡筒用窓16bは赤外レーザ光の光軸とは直交せず、僅かに水平方向に傾けられて、反射による誤差が出ない配置とされている。
【0030】
回転台座14のカバー部材16との接点には、雨水などが侵入するのを防止するシール部材(図示を略す)が設けられている。
【0031】
カバー部材16と、撮像部40、鏡筒部18との間には隙間が設けられている。これにより、カバー部材16の取付け、取り外しの際に、カバー部材16が、撮像部40、鏡筒部18に接触するのを防止できる。カバー部材16は、撮像部40、および鏡筒部18から離間してこれを被覆しており、カバー部材16を外してもそれぞれの光軸を調整する必要がない。
【0032】
(ブロック図)
図4は、測量機10の制御ブロック図である。測量機10は、水平角検出器21、鉛直角検出器22、水平回転駆動部M1、鉛直回転駆動部M2、測距部23、追尾部24、測量機通信部25、記憶部26、撮像部40、およびこれら全てが接続される測量機制御部29を有する。
【0033】
水平角検出器21と鉛直角検出器22は、回転円盤、スリット、発光ダイオード、イメージセンサを有するアブソリュートエンコーダまたはインクリメンタルエンコーダである。水平角検出器21は回転台座14の回転軸に設けられ、回転台座14の水平角を検出する。鉛直角検出器22は、鏡筒部18の水平軸Hに設けられ、鏡筒部18の鉛直角を検出する。
【0034】
水平回転駆動部M1と鉛直回転駆動部M2はモータである。測量機制御部29に制御され、水平回転駆動部M1は回転台座14の回転軸を動かし、鉛直回転駆動部M2は、鏡筒部18の水平軸Hを動かす。両駆動部の協働により、鏡筒部18の向きが変更される。水平角検出器21と鉛直角検出器22とで、測角部を構成する。水平回転駆動部M1および鉛直回転駆動部M2とで、駆動部を構成する。
【0035】
測距部23は、送光部と受光部を備え、ターゲットである全周反射のプリズム72を視準して、例えば赤外レーザ光等の測距光をプリズム72に射出してその反射光を受光部で受光し、測距光と内部参照光の位相から測距する。
【0036】
追尾部24は、測距光とは異なる波長の赤外レーザ光などの追尾光として出射する追尾送光系と、CCDセンサまたはCMOSセンサなどのイメージセンサを有する追尾受光系を有する。追尾部24は、追尾光を含む風景画像と追尾光を除いた風景画像を取得し、両画像を測量機制御部29に送る。測量機制御部29は、両画像の差分からターゲット像の中心を求め、ターゲット位置として検出し、ターゲット像の中心と鏡筒部18の視軸中心からの隔たりが一定値以内に収まるように、常に鏡筒部18がターゲットの方向を向くように、自動追尾する。
【0037】
測量機通信部25は、外部ネットワークとの通信を可能にするものであり、例えば、インターネットプロトコル(TCP/IP)を用いてインターネットに接続し、ターゲットユニット70およびコントローラ80と情報の送受信を行う。無線通信はこれに制限されず、既知の無線通信を使用することができる。測量機10が測定(測距・測角)した測定結果は、測量機通信部25を介してコントローラ80へ送られる。測量機10の入力部はコントローラ80の入力部であるため、コントローラ80から入力された命令も測量機通信部25を介して測量機制御部29に入力される。撮像部40で取得された画像も測量機通信部25を介してコントローラ80へ送られる。
【0038】
測量機制御部29は、例えばCPU,ROM、RAM等を集積回路に実走したマイクロコントローラであり、測量機10の機能がすべて接続され、これらを制御する。例えば、水平回転駆動部M1,鉛直回転駆動部M2の制御、測距部23および追尾部24の発光制御、プリズム72の自動追尾、自動視準、測距および測角、撮像部40の撮像、測量機通信部25を介した測定データや命令の送受信などである。
【0039】
記憶部26は、例えばハードディスクドライブなどの記憶媒体であり、上記演算制御のためのプログラムが格納されている。取得した測定データも記憶される。
【0040】
撮像部40は、例えばCCD、CMOS等の撮像素子を有し、静止画および動画像がリアルタイムで取得可能である。本実施形態の撮像部40は、画角の広い、いわゆるワイドカメラである。撮像部40は、鏡筒部18の上方で、水平方向に光軸同士が一致するように配置され、鏡筒部18の前方の風景を撮像する。撮像部40で撮像された風景は、測量機通信部25を介してコントローラ80へ送られ、表示部82に表示される。測量システム1では、作業者一人(ワンマン)で測量作業を行うことを想定しており、測量機10から離れた場所にいる作業者は、測量機10前方の様子を、撮像部40で撮像された画像で、リアルタイムに確認することができる。
【0041】
撮像部40が、送光器90が送光する追尾ガイド光Lcを含む画像を撮像し、画像における追尾ガイド光Lcの位置を測量機制御部29が解析する。そして、追尾ガイド光Lcの中心が画像の水平方向で中心となるように、即ち、鏡筒部18の光軸が追尾ガイド光の到来方向と水平方向に一致するように、測量機制御部29は水平回転駆動部M1を駆動させる。撮像部40は画角が広く、撮像される範囲が広いため、追尾ガイド光Lcを含んだ画像を取得して、追尾ガイド光Lcを検出しやすい構成となっている。画像解析の方法については、例えば、追尾ガイド光Lcを含んだ画像と含まない画像を取得して、差分から追尾ガイド光を検出するなど、公知の方法で構わず、説明は省略する。
【0042】
(コントローラ)
図5は、コントローラ80のブロック図である。コントローラ80は、測量機10を遠隔操作する操作端末である。さらに、コントローラ80は、送光器90へ追尾ガイド光Lcの送光の命令も可能に構成されている。
【0043】
図5に示すように、コントローラ80は、入力部81、表示部82、記憶部83、コントローラ通信部84、GPS装置85、方位センサ86、コントローラ制御部89を備える。
【0044】
入力部81、表示部82は、コントローラ80のインターフェースである。作業者は、入力部81から、測量機10の操作や情報を入力できる。本実施形態においては、表示部82は、タッチパネル式の液晶画面であり、入力部81と一体となっている。
【0045】
コントローラ通信部84は、測量機通信部25と同等の構成を備え、測量機10と情報の送受信が可能となっている。コントローラ通信部84から、送光器90へも命令が送信される。
【0046】
GPS装置85は、GPS衛星から発信されるGPS信号を受信する装置であり、受信したGPS信号から、現在位置が把握される。本実施形態においては、GPS装置85は、単独測位のみ可能な装置でも問題ない。
【0047】
方位センサ86は、半導体を用いた電子コンパスである。南北の地磁気を検出して方角を算出する。MR素子を使用したものやGMR素子を使用したものなど、公知のものを使用し、種類は問わない。
【0048】
本実施形態においては、コントローラ80は、スマートフォンやタブレットなどを想定しており、これらに最初から搭載されているGPS装置や電子コンパス、もしくは3軸ジャイロを用いてよい。
【0049】
コントローラ80に搭載されるGPS装置85により、コントローラ80と測量機10との位置関係が概略把握される(後述)。作業者はコントローラ80とターゲットユニット70を保持して移動しているため、測量機10とプリズム72との位置関係も概略把握される。GPS装置85により測量機10の追尾が外れた際も、測量機10はGPS装置85により、プリズム72のおおまかな方向を把握することができ、鏡筒部18を水平方向にはGPS装置85へ向け、ついで鏡筒部18を鉛直方向に走査することで、迅速に再びプリズム72をロックすることができる。
【0050】
図6に測量作業の説明図、およびコントローラ80の表示画面を示す。記憶部83には、例えば入力された測量データ(設計データ)が収納される。表示部82は計測データに対応する測設地図を表示する機能を有する。コントローラ制御部89は、GPS装置85の位置情報、方位センサ86の方位信号と設計データとに基づいて、表示部82の画面に表示すべき地図を構築する機能を有する。
【0051】
コントローラ制御部89は、測量機10の現在位置と、測定点P1,P2,P3・・・Pnの設計データとを有しているので、各測定点に対する水平方向回動角度を演算できる。コントローラ制御部89は、コントローラ通信部84を介して命令を測量機10に送付し、水平回転駆動部M1を駆動させて鏡筒部18を、測定点Pnの水平方向に回動させる機能を有する。
【0052】
撮像部40が撮像した画像も、表示部82に表示される。表示部82に表示される撮像部40の映像と測設地図とは、自動または手動で切り替え可能に構成される。例えば、作業者の現在位置と測定点Pnとが、一定距離、例えば5m以下になると、表示画像は、測設地図の表示から、撮像部40の撮像する画像に自動で切替えられる。
【0053】
また、撮像部40が撮像する画像の視点を、現在の視点よりも左右のいずれかの方向に移動するように入力部81で命令することもできる。例えば、作業者が現在の画像より右側に視点を移して見たい場合、表示部82を右にフリックすることで、測量機10の水平回転駆動部M1を右に回動させて、回転台座14を右側に向けることで、撮像部40を現在よりも右方向に向けさせ、撮像部40が現在よりも右側を撮像するように構成される。
【0054】
コントローラ制御部89は、方位センサ86の取得する方位データに基づいて、方位をコンパスとして表示部82に表示させる。さらに、測量機10の測距・測角により求められた作業者の現在位置(測定点Pn)から、次の測定点Pn+1までの距離と角度を演算することで、作業者の現在地点から次の測定点までの距離と方向を表示させる機能、および進行方向表示を表示部82に表示させる機能を有する。
【0055】
作業者は、測設データに基づいて、表示部82の表示に従い、測定点P1,P2,P3・・・と、順に測定を行う。
【0056】
(ターゲットユニット)
次にターゲットユニット70について図面と共に説明する。
図7は、ターゲットユニット70の斜視図である。
図8は、ターゲットユニットの側面図である。
図9は
図8のIX-IX線で切断した断面図である。主として送光器の送光する追尾ガイド光Lcの方向を示す。
図1および
図6も参照のこと。
【0057】
ターゲットユニット70は、ポール71の上端にプリズム72が取付けられている。プリズム72の光学中心は、ポール71の中心軸Xを通過し、プリズム72の光学中心とポール71下端までの距離(取付高)は既知となっている。
【0058】
さらに、プリズム72の上部には、円柱状の筐体96を有する送光器90が、筐体96の中心軸をポール71の中心軸Xに一致させて、取付けられている。
【0059】
送光器90は、追尾ガイド光Lcを送光する。送光器90から送光される追尾ガイド光Lcは、測距光や追尾光とも異なる波長の赤外光となっている。撮像部40が、送光された追尾ガイド光Lcを含む画像を撮像し、測量機制御部29による画像解析で追尾ガイド光Lcの位置が把握され、視準方向が追尾ガイド光Lcの到来方向へ向くように、水平回転駆動部M1、鉛直回転駆動部M2が駆動されて、鏡筒部18の向きが変更される。撮像方法や画像解析方法に関しては、公知の方法で構わず、説明は省略する。
【0060】
筐体96の上面96aおよび底面96bは金属製の円形平板である。筐体96の周側面96cは、ガラスや透明樹脂など、光を透過させる透光性を有する部材で構成される。筒状に構成される周側面96cの開放端部に平板円盤の上面96aおよび底面96bが取付けられることで、内側に円柱状の内部空間が画成される。
【0061】
筐体96の内部には、光源を有する発光ユニット97が複数配置されており、発光ユニット97から出射した光は、周側面96cを通過して、筐体96の外部に照射される。
【0062】
筐体96の内部中央には、略円柱形状の台座部99が、その中心軸を筐体96の中心軸(即ちポール71の中心軸X)に一致して配置されている。台座部99の高さは、筐体96の内部空間の高さと同等であり、台座部99は、その上端部および下端部を筐体96の上面96aおよびに底面96bにねじ止めされ、筐体96の内側に強固に固定される。
【0063】
台座部99の外径は、筐体96の外径の半分程度であり、筐体96の内部に台座部99が配置されると、筐体96の内側には、台座部99の外表面と筐体96の内表面との間に空間が生じる。カバー部材である筐体96が台座部99から離間して配置されるのは、台座部99に配置される発光ユニット97から出射される光が強力であり、作業者の目の安全を確保するためである。発光ユニット97から所定の距離を確保するために、筐体96の周側面96cの径は台座部99よりも所定の長さだけ大きいものとしている。
【0064】
台座部99と周側面96cとの間に、複数のフィン98が垂直に立てられて配置される。フィン98は、その高さが台座部99と略同等な矩形の平板であり、上面視して、中心軸Xを中心とした放射状に略等角度に配置される(
図9参照)。
【0065】
図10は、筐体96およびフィン98を取り外した状態の送光器90であり、主として台座部99および台座部99に配置される発光ユニット97を示す。
【0066】
図10に示すように、台座部99は、上から、逆円錐台形状の上部支持部材99a、三角柱形状の上台座体99b、三角柱形状の下台座体99c、円錐台形状の下部支持部材99dが、中心軸を一致させて上下方向に配置され、一体的に構成されている。台座部99は、金属部材で構成されており、発光ユニット97の点灯による発熱は、台座部99、および上面96aと底面96bに伝熱して外部に放出される。上面96aの外表面にヒートシンクなどの放熱部材が設けられると放熱効率が向上して好ましい。
【0067】
三角柱形状の上台座体99bは、上面視三角形となるように配置される。上台座体99bの三つの側面には、それぞれ発光ユニット97が装着された基板95が取付けられる。発光ユニット97は、光源である複数の発光素子97b(
図8参照)およびその前方に配置されるレンズ97aからなり、複数の発光素子97bから出射された光がレンズ97aで集光されて、追尾ガイド光Lcとして出射される。
【0068】
発光ユニット97においては、レンズ97aから送光されるため、レンズ97aが追尾ガイド光Lcの送光口となる。発光ユニット97の形態はこれに限られず、導光体を用いて入光した光を所定の位置から出射する、光ファイバーやリフレクタを用いるなど、公知の形態を用いることができる。
【0069】
発光ユニット97は上面視して、中心軸Xを中心に等間隔に配置される。三つの発光ユニット97は周方向に等角度(120度毎)に配置されるため、追尾ガイド光Lcは上面視周方向に等角度(120度毎)に放射状に送光される。
【0070】
下台座体99cは、上台座体99bと同等に構成される。下台座体99cの三つの矩形上の側面には、それぞれ発光ユニット97が装着された基板95が取付けられ、上面視して中心軸Xを中心として、周方向に等角度(120度毎)に追尾ガイド光Lcが送光される。
【0071】
ここで、上台座体99bと下台座体99cとは、中心軸を一致させて、かつ上台座体99bの側面と下台座体99cの側面が上面視して互い違いとなるように、周方向に所定角度だけずれて配置されている。上台座体99bは下台座体99cとは60度周方向に回転して配置され、これにより、合計6本の追尾ガイド光Lcが、上面視して中心軸Xを中心として、放射状に、等角度(60度毎)に送光される。
【0072】
本実施形態においては、三角柱状の上台座体99bおよび下台座体99cの二つの台座体を互い違いとなるように周方向にズレて配置させ、全ての追尾ガイド光Lcを上面視等角度に放射状に送光している。上下方向に半分ずつ発光ユニット97を分けて配置することで、筐体96の外形を細くすることができる。送光器90を省サイズ化してターゲットユニット70を持ち運びしやすいものとした。また、送光器90から送光される追尾ガイド光Lcは光が強く、目を保護するために、距離をとり、周側面96cなどにより不用意に目を近づけてしまうことを抑制することが好ましい。台座部99が細くなると、周側面96cの外径が同じ場合、台座部99から周側面96cまでの距離をより長く確保することができる。そのため、安全性をより高めることができる。
【0073】
撮像部40は、追尾ガイド光Lcを含んだ画像を撮ると、まず水平方向に回転台座14を回転させて鏡筒部18を水平方向に駆動させ、ついで上下方向に鏡筒部18を駆動させる。追尾ガイド光Lcの送光口であるレンズ75aは、正対するとプリズム72と鉛直方向に略一致となり、上下方向に分けて発光ユニット97が配置されても問題はない。
【0074】
これに限られず、三角柱の台座体を増やして、それぞれ周方向に互い違いとなるように配置して、放射される追尾ガイド光を増やしてもよい。一つの等多角柱状の台座体を用いて、それぞれの側面に基板を配置することで、複数の追尾ガイド光Lcを上面視周方向に等角度に送光するように構成してもよい。
【0075】
図9に示すように、フィン98は発光ユニット97と同数だけ配設される。発光ユニット97およびフィン98はそれぞれ上面視して中心軸Xを中心として、円環状に同角度に配置されている。
【0076】
フィン98は発光ユニット97の円環よりも、より外周方向に配置されている。本実施形態においては、フィン98の全体が発光ユニット97よりも外周方向に配置されているが、放射状に配置されるフィン98の少なくとも一部が発光ユニット97の円環よりもが外周に配置されていればよい。
【0077】
フィン98は、上面視して発光ユニット97同士の周方向の間でその中央に配置され、フィン98と発光ユニット97とが互い違いとなるように、周方向にずれて配置される。追尾ガイド光Lcは、上面視して周方向に所定角度開いて配置された二枚のフィン98間の中央を送光される。筐体96の内側中央に台座部99が配置されているため、フィン98同士は離間して配置される。
【0078】
図11は、送光器90の作用効果を説明する説明図であり、ターゲットユニット70の正面図である。一つの発光ユニット97に正対した状態となっている。効果をわかりやすく示すため、フィン98および上面96a、底面96bを着色している。
【0079】
複数のフィン98は、発光ユニット97と同数であり、周方向に、発光ユニットとは互い違いに配置される。隣り合うフィン98は、隣り合う発光ユニット97の間に立てられる。6つの発光ユニット97が上面視して円環状に等間隔で配置され、6つの追尾ガイド光Lcが、上面視して放射状に送光される。フィン98は、追尾ガイド光の送光方向である周方向外側に延在して配置されており、中心軸Xを中心として等角度に放射状に配置される。
【0080】
これにより、水平方向からみると、隣り合うフィン98同士は発光ユニット97を挟んで配置されており、フィン98の隙間から発光ユニット97が送光しているものとなる。
【0081】
フィン98は、映り込みを抑制して、発光ユニット97同士を離間させて、追尾ガイド光Lcを検知されやすくするために設けられている。フィン98が配置されることで、透明部材で構成される周側面96cに、外部光の映り込みや、反射光の映り込み、隣り合う発光ユニット97が必要以上に入り込むことが抑制される。このため、フィン98および上面96aと底面96bは、黒色塗料などの光吸収材を含んだ塗料で表面を塗装されている。発光ユニット97は隣り合うフィン98の間に配置されており、発光ユニット97に正対すると、即ち、発光ユニット97から送光される追尾ガイド光Lcの送光方向から発光ユニット97を見ると、隣り合うフィン98の隙間に発光ユニット97を見ることができる。反射光を防ぐのは、塗料の塗布に限られず、光を吸収する吸収材を含めばよい。つや消し、浸炭、光吸収部材の貼り付けなどでもよい。
【0082】
図11に示すように、正対する発光ユニット97を囲うように、二枚のフィン98が配置され、上下に上面96a、底面96bが配置される。発光ユニット97を略中央として、周囲を吸収する領域で覆うことで、発光ユニット97から送光される追尾ガイド光Lcを、コントラストにより目立たせている。
【0083】
撮像部40が追尾ガイド光Lcを含む画像を取得し、到来方向を算出して、鏡筒部18の視準方向と到来方向とが、水平方向に一致するように、水平回転駆動部M1が駆動され、ついで鏡筒部18が上下方向に鉛直回転駆動部M2で駆動されることで、追尾光が上下に走査され、プリズム72を見つけてロックする。送光器90は、追尾ガイド光Lcを含む画像の取得に好適な形態となっている。
【0084】
発光ユニット97は、中心軸Xを中心として、上面視等角度に設けられている。複数数の発光ユニット97からは、全て同じ波長の赤外光が、追尾ガイド光Lcとして外側へ出射される。
【0085】
送光器90は、コントローラ80からの命令を受信すると、全ての発光ユニット97の発光素子97bに通電されて光を出射し、出射光がレンズ97aで集光されて出射される。これにより、筐体96から外方面へ、水平方向の全周にわたって、追尾ガイド光Lcが送光される。追尾ガイド光Lcは赤外光であるため、作業者が光を視認することはない。
【0086】
従来は、追尾が外れると、追尾ガイド光を測量機に送光するために、作業者は送光器を測量機に向けてスイッチを押す必要があり、作業者は作業を中断して送光作業をせねばならなかった。これに対し、送光器90は複数の発光ユニット97のレンズ97aから水平方向には全周囲へ向かって追尾ガイド光Lcを送光するうえ、測量機10は画角の広いワイドカメラで追尾ガイド光Lcを受光するため、作業者が送光器を測量機に向ける動作は不要である。
【0087】
送光器90の形態は、撮像部40に撮像されて、到来方向を解析されるのに好適となっている。測量機10による追尾が外れてしまった場合、コントローラ80が自動で、送光器90から追尾ガイド光Lcに送光を命令するよう構成されているため、作業者が追尾ガイド光Lcを送光するため動作も不要となっている。
【0088】
(プリズムロック機能)
測量機10は、追尾部24によるプリズム72の追尾を開始する場合、もしくは追尾が外れた場合、自動でプリズムを見つけ出してロックし、追尾する機能(プリズムロック機能)を有する。従来のプリズムロック機能においては、鏡筒から視準光を出射し、鏡筒が水平方向に回転しながら上下に回動を繰り返すことで、全方向を視準光で走査し、反射光を受光することでプリズムを見つけ出して視準していた。しかし、まったくプリズムの場所がわからずに走査するため、全方向を走査することもあることから、プリズムを見つけるのに時間がかかった。本実施形態においては、測量機10にまずは粗方向を向け、ついで精方向で走査を行うことで、プリズム72を迅速にロックすることができる。
【0089】
測量システム1におけるプリズムロックのフローを
図12~
図14を用いて説明する。
図12はプリズムロックのフローチャートである。
図13は、ステップS101~ステップS102のイメージ図である。
図15は、ステップS103~S107のイメージ図である。
【0090】
最初に、ステップS101で、前工程として、まず測量機10を任意の点P0(好ましくは既知点)に設置し、ついでコントローラ80と測量機10の位置合わせを行う。測量機10に位置合わせ用のコントローラ80の設置位置を設けてもよい。GPS装置85により、コントローラ80の緯度経度が取得され、測量機10の設置位置の緯度経度も取得される。
【0091】
次に、ステップS102に移行して、測量機10とコントローラ80との相対方向を取得可能にする。作業者はコントローラ80とターゲットユニット70を持ち、ある程度離れた任意の場所NP1に移動し、その場でGPS装置85にて緯度経度を取得するとともに、測量機10にプリズム72の測距・測角をさせる。さらに異なる任意の場所NP2に移動して、再びGPS装置85にて緯度経度を取得するとともに、測量機10にプリズム72の測距・測角をさせる。このとき、ターゲットユニット70の上面にコントローラ80を取付けて、測距・測角を行ってもよい。二つの場所NP1,NP2の方位角から、測量機10からみたコントローラ80の方向(相対方向)が把握される。この方法に限られず、作業者の持ったターゲットユニット70のプリズム72を追尾させ、作業者が移動しながら、随時測距・測距を実施することで、測量機10がコントローラ80の相対方向を検知できるよう校正を行うように構成してもよい。また、測量機10を既知点に設置し、基準点と基準方向を設定する、後方交会法を用いて、絶対三次元座標を取得してもよい。
【0092】
前工程のステップS101~ステップS102は、測量機10に、プリズム72とコントローラ80を持つ作業者の粗方向を把握させるためである。このため、GPS装置85の位置情報の取得は単体測位で構わず、高精度な三次元情報の取得による厳密な相対方向の検出でなくても構わない。
【0093】
作業者は、作業中はターゲットユニット70およびコントローラ80を持って移動する。GPS装置85のGPS信号の取得は、移動中も随時行われているため、作業者が移動しても、また移動中であっても、GPS信号が取得可能である限り、測量機10に対するコントローラ80の方位角は、おおむね把握される。
【0094】
次に、本工程として、ステップS103~S108で、追尾部24による追尾開始、または追尾が外れた場合の追尾再開のためのプリズムロックについて説明する。
【0095】
ステップS103で、まず、GPS装置85の位置情報を基に、測量機10の鏡筒部18をGPS装置85の方向、即ち、ターゲットユニット70およびコントローラ80を持つ作業者の方向へ鏡筒部18を向かせる。現在の水平方向角と算出されたGPS装置85の方位角との差分を角度として算出し、水平回転駆動部M1を駆動させて、回転台座14を水平方向に回動させる。
【0096】
次に、ステップS104に移行して、送光器90に追尾ガイド光Lcを送光させる。水平方向の全周に追尾ガイド光Lcが送光される。
【0097】
次に、ステップS105に移行して、撮像部40により測量機10前方の画像が取得される。測量機制御部29は、取得画像を解析して、追尾ガイド光Lcを検出する。
【0098】
次に、ステップS106に移行して、測量機制御部29は、画像解析により追尾ガイド光Lcの到来方向を算出し、撮像画像の中心と追尾ガイド光Lcの到来方向を水平方向で合わせるために、水平回転駆動部M1を駆動させる。
【0099】
次に、ステップS107に移行して、鉛直回転駆動部M2により鏡筒部18を上下方向に駆動させて、追尾部24の追尾光を上下に走査させ、プリズム72を見つけ出す。このとき、前述の画像解析により、追尾ガイド光Lcの到来方向が、鉛直方向にも把握されており、鉛直方向の走査範囲も絞られ、より見つけやすい構成となっている。
【0100】
次に、ステップS108に移行して、プリズム72をロックし、フローは終了する。
【0101】
ステップS103により測量機10に水平方向に粗精度で向かせ、ついでステップS104の広角の広い撮像部40で追尾ガイド光Lcを検出して水平方向に精精度で向かせる。そして追尾部24の追尾光を上下方向に走査させることで、プリズム72を探してロックする。
【0102】
従来は、全く手掛かりのない状態でも、全方向を追尾光で走査することで、プリズムをロックすることができるが、時間がかかるという問題があった。上記方法により、粗方向、精方向と順に鏡筒部18をプリズム72の方向に向けることができ、プリズム72をロックするまでの時間を短縮させることができる。
【0103】
追尾が外れた際には、表示部82にその旨が表示され、自動で上記のステップS103~ステップS108が行われる。
【0104】
従来の測量機では、追尾部の送光部が追尾光を照射して、反射光を受光部で受光して、走査を行っていた。この場合、受光部が受光するのは反射光であるため、受光量は少ない。測量機10は、ターゲット側から送光される追尾ガイド光Lcを、ワイドカメラである撮像部40で受光するため、受光量も多く検出しやすい。加えて、送光器90の形態により、撮像部40は追尾ガイド光Lcを撮像すると、追尾ガイド光Lcとその周囲とはコントラストが効いており、測量機制御部29は、追尾ガイド光Lcを画像から検出しやすく、追尾ガイド光Lcの到来方向を解析しやすいものとなっている。このため、より迅速にプリズム72をロックすることができる。
【0105】
(作業フロー)
測量システム1の作業工程フローの一例を説明する。
図15は、測量システム1を用いた測量作業の工程フローである。
図6も参照のこと。
【0106】
まず、ステップS201で、前処理として、CADデータや測定点データなどを含む測量現場の情報をコントローラ80に入力する。入力された情報は、コントローラ80の記憶部83に収納される。
【0107】
次に、ステップS202に移行して、測量機10を既知点に設置し、後方交会法などにより三次元座標を取得する。
【0108】
次に、ステップS203で、コントローラ80と測量機10の位置合わせを行う。ステップS203は、前述のステップS101に相当する。
【0109】
次に、ステップS204に移行して、コントローラ80に対する測量機10が、コントローラ80の相対方向を取得可能にする。ステップS203は、前述のステップS102に相当する。
【0110】
次に、ステップS205に移行して、測定点P1,P2,P3・・・Pnの位置情報が演算され、表示部82には、入力データに対応する測設地図が表示されるとともに、測定するべき測定点Pnの位置情報が表示部82に表示される。
【0111】
次に、ステップS206に移行して、測量機10は水平回転駆動部M1を駆動させて測定点Pnに鏡筒部18を向ける。作業者は、表示部82の測設地図を確認しながら、測定点Pnの方向へ向かって移動する。測量機10は、その間、鏡筒部18を上下方向に駆動させて追尾光を走査させる。
【0112】
次に、ステップS207に移行して、作業者が測定点Pnと測量機10とを結ぶ直線上に到達すると、追尾部24がプリズム72をロックし、追尾を開始する。
【0113】
次に、ステップS208に移行して、作業者は、追尾による測定点Pnまでの具体的な距離を表示部82で確認しながら、測定点Pnまで移動する。
【0114】
次に、ステップS209に移行して、ステップS107の移動中に追尾が外れてしまった場合、ステップ210として追尾再開フローに移行する。具体的には、プリズムロックの本工程であるステップS103~ステップS108を実施し、プリズム72をロックして追尾を再開する。追尾が再開すると、ステップS208に戻る。追尾されたまま作業者が測定点Pnに到達すると、ステップS210に移行する。
【0115】
次に、ステップS211に移行して、作業者が測定点Pnにまで到達すると、ターゲットユニット70が測定点Pnに略鉛直に立てられ、測量機10は測定点Pnに立てられたプリズム72の測距・測角を行う。
【0116】
次に、ステップS212に移行して、次の測定点Pn+1がある場合、ステップS205に移行し、次の測定点Pn+1に対して、ステップS205~ステップS211を繰り返す。次の測定点がなくなると、測量は終了する。
【0117】
(変形例)
図16は、変形例に係る測量システム1A構成する、測量機10Aの模式的な外観斜視図である。
図17は、測量機10Aの構成ブロック図である。測量システム1Aは、測量機10に代えて測量機10Aを備える点を除いて同じ構成を有するので全体の詳細な説明は省略する。測量機10Aは、機能的には、測量機10と同等の構成であるが、外観上、以下の点で異なる。測量機10Aは、カバー部材16を備えない。また、基盤部13の上に設けられた回転台座14上に固定されて水平方向に回転可能な托架部17Aが、上方に開口するコの字形状を有する独立のケーシングを有して構成されている。
【0118】
托架部17Aの下部17Abは、横長の直方体形状を有し、前面に、測量機10Aを直接操作するための入力部27と表示部28を備える。托架部17Aの上部17Acは左右一対の柱として上方へ延在し、その間に望遠鏡18Aを水平軸H回りに鉛直回転可能に支持する。また、望遠鏡18Aの上部には、撮像部40と同等の構成を有する撮像部40Aが設けられている。
【0119】
すなわち、測量機10と測量機10Aの主な違いは、測量機10では、撮像部40が、托架部17の上端に設けられ、水平方向にのみに回転するのに対して、測量機10Aでは、撮像部40Aが、望遠鏡18Aの上部に設けられ、望遠鏡18Aと共に水平方向および鉛直方向に回転可能である点である。
【0120】
一方、
図17に示す通り、機能的には、測量機10と測量機10Aは、測量機10Aが入力部27、表示部28を備える点を除いて同等の構成を有する。
【0121】
測量システム1Aを用いるプリズムロックのフローは、
図12に示すフローと概ね同じである。上記構成の相違点に基いて、本工程のステップS106,S107における動作が、
図18に示すように異なる。すなわち、ステップS106において、測量機制御部29は、画像解析の結果に基づいて追尾ガイド光Lcの到来方向を算出し、水平回転駆動部M1、および鉛直回転駆動部M12を駆動させて望遠鏡18Aを回転させ、望遠鏡18Aの視準軸を追尾ガイド光Lcの到来方向(プリズム72の精方向)に向ける。追尾ガイド光Lcの到来方向の算出により、回転すべき、水平角だけでなく、鉛直角度も把握できるからである。
【0122】
したがって、ステップS107では、追尾部24の追尾光を走査させ、プリズム72を捕捉する際には、現在の視準方向周辺を、鉛直方向および水平方向にわずかに走査するだけで、プリズム72を捕捉することができる。
【0123】
このように、望遠鏡18Aと共に回転可能な撮像部40をA有する測量機10Aでは、望遠鏡18Aを水平方向および鉛直方向に同時に回転してプリズム72の方向に精精度で向けるので、さらに迅速にプリズムを捕捉することが可能になる。
【0124】
以上、本発明の好ましい実施の形態について述べたが、上記の実施の形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0125】
1 :測量システム
10 :測量機
90 :送光器
96 :筐体
96a :上面
96b :底面
96c :周側面
98 :フィン
Lc :追尾ガイド光