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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050353
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】印刷物
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/06 20060101AFI20240403BHJP
   B42D 25/382 20140101ALI20240403BHJP
【FI】
G06K19/06 140
G06K19/06 131
G06K19/06 037
B42D25/382
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157188
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000186566
【氏名又は名称】小林クリエイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 まり
(72)【発明者】
【氏名】垣ヶ原 円美
【テーマコード(参考)】
2C005
【Fターム(参考)】
2C005HB13
2C005JA16
2C005JB12
2C005LB03
(57)【要約】
【課題】シンボルの読取りが赤外光の反射率では容易で、可視光の反射率では困難であり、かつ低廉に製造可能な印刷物を提供する。
【解決手段】基材2の表面に、明色部と暗色部とからなる隠蔽パターン8を赤外光非吸収材によって形成し、さらに、隠蔽パターン8の上に重なるように、赤外光を吸収しない明色部と、赤外光を吸収する暗色部とからなるシンボル7を赤外光吸収材によって形成する。そして、シンボル7の位置検出パターン10を構成する明色部の一部に、隠蔽パターン8の暗色部を重ねるよう構成する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に形成された隠蔽パターンの上に重なるように、シンボルが形成された印刷物であって、
前記シンボルは、
赤外光吸収材によって形成された、赤外光を吸収しない明色部と、赤外光を吸収する暗色部からなるパターンであり、
前記明色部と前記暗色部のパターンによってデータを記録するデータ記録部と、前記シンボルの位置を特定するために、前記明色部と前記暗色部が所定のパターンで形成される位置検出パターンとを備え、
前記隠蔽パターンは、赤外光非吸収材によって形成された、赤外光を吸収しない明色部と、赤外光を吸収しない暗色部からなるパターンであり、
前記位置検出パターンを構成する前記シンボルの前記明色部の一部に、前記隠蔽パターンの前記暗色部が重なっていることを特徴とする印刷物。
【請求項2】
前記シンボルは、マトリクス型の二次元シンボルであって、
前記シンボルの前記位置検出パターンは、前記明色部からなる明色矩形部と、当該明色矩形部の内外に同心状に隣接する、前記暗色部からなる暗色矩形部とを含み、
前記隠蔽パターンの暗色部が、前記明色矩形部の少なくとも一辺を横切るように重なっていることを特徴とする請求項1に記載の印刷物。
【請求項3】
前記隠蔽パターンは、ドットパターン及び/又はチェッカーパターンを含み、
前記シンボルの少なくとも前記データ記録部に、前記ドットパターン及び/又はチェッカーパターンが重なっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷物。
【請求項4】
少なくとも前記シンボル及び前記隠蔽パターンの形成部位が、赤外光を透過する透明なラミネートフィルムによって表面被覆されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷物。
【請求項5】
前記隠蔽パターンの明色部に、明色又は透明の赤外光非吸収材からなる層が形成され、
前記隠蔽パターンの暗色部に、暗色の赤外光非吸収材からなる層が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷物。
【請求項6】
前記隠蔽パターンは、透明な赤外光非吸収材からなる透明被覆層によって覆われており、
前記シンボルの全体が、前記透明被覆層の上に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を記録するシンボルが印刷された印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
バーコードやQRコード(登録商標)などのシンボルは、様々な印刷物に印刷されている。一般的なシンボルは、読取プログラムが広く流通しており、読取プログラムをインストールした携帯端末を用いれば、シンボルの記録情報を読み取ることができる。これに対して、シンボルの秘匿性を高めるために、赤外光吸収材で形成したシンボルを、赤外光非吸収材で形成した黒塗りパターン(黒色の塗り潰しパターン)で隠蔽した印刷物が提案されている(例えば、特許文献1,2)。これらの印刷物では、黒塗りパターンによってシンボル全体が黒色を呈するため、可視光の反射強度に基づいてシンボルを識別する携帯端末のシンボル読取プログラムでは、シンボルを読み取りづらくなる。一方で、赤外光の反射強度に基づいてシンボルを識別する専用装置であれば、黒塗りパターンに阻害されることなく、シンボルの記録情報を確実に読み取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平04-026922号公報
【特許文献2】特開2013-001077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の印刷物では、可視光の反射強度に基づくシンボルの読取りを十分に防止できないという問題がある。具体的には、特許文献1の印刷物では、赤外光吸収材からなるシンボルが、赤外光非吸収材からなる黒塗りパターンの上に形成されるため、シンボルの明色部と暗色部は、同じ黒色でも、材質の違いによって、色味や光沢がわずかに相違している。このため、上記特許文献1の印刷物では、携帯端末などによって、可視光の反射強度に基づいてシンボルの読取りを試みた場合に、色味や光沢度のわずかな違いから生じる反射強度の差に基づいて、シンボルの明暗パターンが識別される場合がある。
【0005】
一方、上記特許文献2の印刷物は、特許文献1の印刷物に比べて製造コストが高くなりがちである。具体的には、シンボルの記録情報が一枚ずつ相違する印刷物の場合、上記特許文献1の構成では、黒塗りパターンを印刷機で形成した後に、シンボルのみをプリンタで個別に形成できるが、上記特許文献2の構成は、黒塗りパターンは、基本的にシンボルのプリント後に形成する必要があるため、印刷機で形成しづらいためである。黒塗りパターンの下に感熱発色層を配設すれば、黒塗りパターンを印刷機で形成した後に、シンボルを個別にサーマルプリント可能となるが、かかる構成では、感熱発色層の分だけ用紙が高額となる。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、可視光の反射強度に基づくシンボルの読取りを確実に防止でき、かつ低廉に製造可能な印刷物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基材の表面に形成された隠蔽パターンの上に重なるように、シンボルが形成された印刷物であって、前記シンボルは、赤外光吸収材によって形成された、赤外光を吸収しない明色部と、赤外光を吸収する暗色部からなるパターンであり、前記明色部と前記暗色部のパターンによってデータを記録するデータ記録部と、前記シンボルの位置を特定するために、前記明色部と前記暗色部が所定のパターンで形成される位置検出パターンとを備え、前記隠蔽パターンは、赤外光非吸収材によって形成された、赤外光を吸収しない明色部と、赤外光を吸収しない暗色部からなるパターンであり、前記位置検出パターンを構成する前記シンボルの前記明色部の一部に、前記隠蔽パターンの前記暗色部が重なっていることを特徴とする印刷物である。ここで、本発明に係る位置検出パターンを構成する明色部には、位置検出パターンを分離するために、位置検出パターンを囲繞するよう設けられる1セル分の明色部を含む。
【0008】
発明者の研究によれば、かかる構成とすれば、携帯端末などによる、可視光の反射強度に基づくシンボルの読取りを、上記特許文献1の構成よりも確実に防止できる。これは、本発明では、シンボルの位置検出パターンにおいて、シンボルの明色部と隠蔽パターンの明色部が重なる部分が明色を呈するため、シンボルの可視光の反射強度を測定したときに、明色を呈する部分と暗色を呈する部分との反射光のコントラストが高くなり、シンボルの暗色部と隠蔽パターンの暗色部との反射光の微差が軽視されて、シンボルの暗色部と隠蔽パターンの暗色部が区別されなくなるため、シンボルの位置検出パターンが従来構成よりも検出困難となり、シンボルを検出困難となるためと考えられる。
また、本発明の印刷物は、シンボルが隠蔽パターンの上に形成されるため、隠蔽パターンを印刷機で形成した後に、プリンタを用いてシンボルを隠蔽パターンの上に形成する方法により製造できる。このため、本発明は、上記特許文献2の構成に比べて、低廉に製造できるという利点もある。
【0009】
本発明に係る隠蔽パターンの明色部と暗色部は、シンボルの暗色セルと重ならない部分において、夫々明色と暗色を呈するものであれば足りる。ただし、明色部の色と暗色部の色は、コントラストが高くなる色にすることが望ましい。このため、本発明に係る明色部は、白色または白色の近似色であることが望ましく、暗色部は、黒色または黒色の近似色であることが望ましい。また、本発明に係る赤外光吸収材と赤外光非吸収材は、赤外光の特定帯域において吸収特性と非吸収特性を具備するものであれば足り、赤外領域全般に亘る吸収特性と非吸収特性を具備するものでなくても構わない。
【0010】
位置検出パターンにおいて、シンボルの明色部に対して、隠蔽パターンの暗色部が重なる割合は特に限定されないが、発明者は、少なくとも位置検出パターンの明色部の8%~67%に対して、隠蔽パターンの暗色部を重ねた場合に、位置検出パターン全体に黒塗りパターンを重ねた場合よりも、可視光の反射強度に基づくシンボルの読取りを確実に防止できることを確認している。
【0011】
本発明は、シンボルの位置を光学的に検出可能な位置検出パターンを含むシンボル全般に適用可能であり、QRコード等のマトリクス型シンボルにも好適に適用できる。具体的には、本発明にあって、前記シンボルは、マトリクス型シンボルであって、前記シンボルの前記位置検出パターンは、前記明色部からなる明色矩形部と、当該明色矩形部の内外に同心状に隣接する、前記暗色部からなる暗色矩形部とを含み、前記隠蔽パターンの暗色部が、前記明色矩形部の少なくとも一辺を横切るように重なっている構成が提案される。
【0012】
発明者の研究によれば、かかる構成とすれば、携帯端末などによる、可視光の反射強度に基づくシンボルの読取りを、より確実に防止できる。これは、かかる位置検出パターンが、任意の方向から走査した時に、明暗が所定比率で表れるよう構成されるところ、隠蔽パターンの暗色部が、明色矩形部の一辺を横切って、内外の暗色矩形部が繋がることにより、可視光の反射強度で走査した時に、明暗が前記所定比率とは大きく相違する比率で表れるためと考えられる。
【0013】
また、本発明にあって、前記隠蔽パターンは、ドットパターン及び/又はチェッカーパターンを含み、前記シンボルの少なくとも前記データ記録部に、前記ドットパターン及び/又はチェッカーパターンが重なっていることが提案される。
【0014】
かかる構成にあっては、シンボル全体を赤外光非吸収材で黒塗りにする従来構成よりも、データ記録部の明色部と暗色部を、可視光の反射強度に基づいて識別困難となる。これは、位置検出パターンと同様に、明色を呈する部分と暗色を呈する部分との反射光のコントラストが高くなり、シンボルの暗色部と隠蔽パターンの暗色部との反射光の微差が軽視されることで、データ記録部において、シンボルの暗色部と隠蔽パターンの暗色部が区別されなくなるためと考えられる。
また、かかる構成のように、データ記録部に、ドットパターンやチェッカーパターンを重ねれば、シンボルの明色部全体が黒色を呈していなくても、マトリクス型シンボルの誤り訂正能力を上回るエラーを容易に発生させることができる。隠蔽パターンを構成するチェッカーパターンの正方形や、ドットパターンのドットは、マトリクス型シンボルを構成するセルと同じ大きさでなくても構わない。発明者は、少なくとも前記正方形や前記ドットの面積が、シンボルのセルの1/2倍~6倍の範囲の隠蔽パターンをデータ記録部に重ねた構成において、可視光の反射強度に基づくマトリクス型シンボルの読取りを、黒塗りパターンよりも確実に防止できることを確認している。
したがって、かかる構成によれば、仮に、シンボルの位置検出パターンが可視光の反射強度に基づいて検出されて、シンボルの位置が特定された場合でも、シンボルの記録情報の読取りを防止できる。
【0015】
また、本発明にあって、少なくとも前記シンボル及び前記隠蔽パターンの形成部位が、赤外光を透過する透明なラミネートフィルムによって表面被覆されていることが提案される。
【0016】
かかる構成にあっては、シンボルと隠蔽パターンを覆うラミネートフィルムの光沢によって、シンボルの暗色部と隠蔽パターンの暗色部との光沢の違いが目立たなくなるため、シンボルの暗色部と隠蔽パターンの暗色部を、可視光の反射強度に基づいて一層区別しづらくなる。
【0017】
また、本発明にあって、前記隠蔽パターンの明色部に、明色又は透明の赤外光非吸収材からなる層が形成され、前記隠蔽パターンの暗色部に、暗色の赤外光非吸収材からなる層が形成されていることが提案される。
【0018】
かかる構成のように、隠蔽パターンの明色部と暗色部の双方に、赤外光非吸収材からなる層を形成すれば、迷彩パターンの表面の凹凸が小さくなるため、隠蔽パターンの上にシンボルを形成し易くなり、シンボル形成時にかすれや欠損が発生し難くなる。
【0019】
また、本発明にあって、前記隠蔽パターンは、透明な赤外光非吸収材からなる透明被覆層によって覆われており、前記シンボルの全体が、前記透明被覆層の上に形成されていることが提案される。
【0020】
かかる構成にあっては、均質な透明被覆層の上にシンボル全体を形成するため、不均質な隠蔽パターンの上にシンボルを直接形成する場合に比べて、シンボルを安定に形成可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、可視光の反射強度に基づくマトリクス型シンボルの読取りを確実に防止できる印刷物を、低廉に製造可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例1の印刷物1の平面図である。
図2】QRコード7の形成態様を示す説明図である。
図3】(A)は、印刷物1に形成されたQRコード7を示す説明図である。(B)、は印刷物1に形成された隠蔽パターン8を示す説明図である。(C)は、QRコード7と隠蔽パターン8を重ね合わせた状態を示す説明図である。
図4】(A)は、QRコード7の機能領域を示す説明図である。(B)は、QRコード7の位置検出パターン10の拡大図である。
図5】(A)は、実施例2に係るQRコード7を示す説明図である。(B)は、実施例2に係る隠蔽パターン8aを示す説明図である。(C)は、QRコード7と隠蔽パターン8aを重ね合わせた状態を示す説明図である。
図6】(A)は、実施例3に係るQRコード7を示す説明図である。(B)は、実施例3に係る隠蔽パターン8bを示す説明図である。(C)は、QRコード7と隠蔽パターン8bを重ね合わせた状態を示す説明図である。
図7】(A)は、実施例4に係る隠蔽パターン8cを示す説明図である。(B)は、実施例5に係る隠蔽パターン8dを示す説明図である。(C)は、変形例の隠蔽パターン8eを示す説明図である。
図8】(A)は、実施例2に係る印刷物1aの断面構造を示す説明図である。(B)は、実施例6に係る印刷物1bの断面構造を示す説明図である。(C)は、実施例7に係る印刷物1cの断面構造を示す説明図である。(D)は、実施例8に係る印刷物1dの断面構造を示す説明図である。
図9】試験1の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明にかかる実施形態を、以下の実施例に従って説明する。
なお、以下の実施例において、QRコード7が、本発明に係るシンボルに相当し、明色セルがシンボルの明色部に、暗色セルがシンボルの暗色部に相当する。また、黒色の赤外光吸収インキが、本発明に係る赤外光吸収材に相当し、黒色の赤外光透過インキが、本発明に係る赤外光非吸収材に相当する。
【実施例0024】
図1に示すように、本実施例の印刷物1は、博物館の入場券である。印刷物1には、上質紙からなる白色の基材2の表面に、人間が視認するための文字情報4,5が形成される。文字情報のうち「xxx博物館」は、全ての入場券で共通する固定文字情報4であり、「有効期限……」は、入場券によって相違し得る可変文字情報5である。また、印刷物1の表面には、QRコード7が形成される。図2に示すように、QRコード7は、隠蔽パターン8の上に重なるように形成される。QRコード7には、入場券一枚一枚に個別に割り当てられた固有番号が記録される。すなわち、印刷物1には、一枚一枚に異なるQRコード7が形成されている。かかる印刷物1は、例えば、入場時にQRコード7を入場管理システムに読み取らせて、入場管理システムが、当該QRコード7に記録された固有番号を有効なものと判定した場合に、入場を許可するといった用途で用いられ得る。
【0025】
QRコード7は、図3(A)に示すように、正方形状のセルを縦横に配列してなるものである。セルは、明色セルと暗色セルとからなり、明色セルと暗色セルのパターンによって、情報が記録される。具体的には、図4(A)に示すように、QRコード7は、QRコード7の復号を補助する機能パターン12と、データを記録するデータ記録部9(符号化領域)とを備えてなる。また、QRコード7の周囲には、一定範囲の空白部11(クワイエットゾーン)が設けられる。機能パターン12は、QRコード7の三方の隅に1つずつ形成される位置検出パターン10と、ひずみを補正するための位置合わせパターン13と、セルの位置を特定するためのタイミングパターン14と、形式情報を記録する形式情報記録部15とを備えている。データ記録部9には、明色セルと暗色セルのパターンによって符号化されたデータが記録される。データ記録部9には、復号時にデータの読み誤りを訂正するための誤り訂正コード語も記録される。なお、かかるQRコード7は、本文で言及しない点については、既存の規格(JIS X 0510)に則って作成されている。
【0026】
位置検出パターン10は、明色セルと暗色セルによって形成される目玉状のパターンであり、QRコード7の三方の隅に1つずつ配設される。図4(B)に示すように、位置検出パターン10は、目玉状の位置検出パターン本体17と、位置検出パターン本体17を囲繞する外周枠部18とにより構成される。位置検出パターン本体17は、明色部からなる明色矩形部20と、当該明色矩形部20の内外に同心状に隣接する、暗色部からなる2つの暗色矩形部21,22とにより構成される。外周枠部18は、1セル幅の明色セルによって構成されるものであり、位置検出パターン本体17を周囲から分離するために設けられる。かかる位置検出パターン10は、縦方向、横方向、斜め方向のいずれから走査した場合でも、明暗の比率が1:1:3:1:1の割合で表れるよう構成されており、かかる明暗の比率を検索することにより、撮像した画像の中からQRコード7を容易に検出可能となっている。
【0027】
かかるQRコード7は、黒色の赤外光吸収インキによって形成される。具体的には、QRコード7は、暗色セルの部分にのみ、黒色の赤外光吸収インキをベタ印刷することによって形成される。すなわち、かかるQRコード7を、基材2の表面に直接形成した場合、黒色の赤外光吸収インキがベタ印刷された暗色セルの部分が黒色を呈し、赤外光吸収インキが印刷されない明色セルの部分が基材2の地色により白色を呈して、図3(A)に示すように視認される。ただし、本実施例では、QRコード7が、隠蔽パターン8の上に重ねて形成されるため、可視光照明下においては、QRコード7の視認性が阻害される。
【0028】
隠蔽パターン8は、図3(B)に示すように、3つの黒色の逆L字状暗色部23により構成される。かかる隠蔽パターン8は、黒色の赤外光透過インキによって形成される。具体的には、黒色の逆L字状暗色部23(暗色部)に、黒色の赤外光透過インキがベタ印刷され、逆L字状暗色部23以外の明色部は、赤外光透過インキが印刷されず、白色の基材2の表面が露出している。
【0029】
図3(A),3(B)に示すように、3つの逆L字状暗色部23は、QRコード7の3つの位置検出パターン10と夫々重なり得る位置に形成される。そして、図3(C)に示すように、QRコード7は、各位置検出パターン10の明色矩形部20を、隠蔽パターン8の逆L字状暗色部23と重ね合わせるように、隠蔽パターン8の上に形成される。なお、隠蔽パターン8の暗色部は、図3(B)に示すように、黒色を呈しているが、図3(C)では、QRコード7の暗色セルを識別し易いように、便宜上、隠蔽パターン8の暗色部のうち、暗色セルと重ならない部分を灰色で示している(実際には、図1のように視認される。)。
【0030】
このように、本実施例では、QRコード7が隠蔽パターン8の上に重なることにより、位置検出パターン10の明色矩形部20が、部分的に黒色を呈している。具体的には、各明色矩形部20の上辺と左辺の全体が黒色を呈しており、図3(C)に示すように、各位置検出パターン10の明色矩形部20は、下辺と右辺のみがL字状に白色を呈している。
【0031】
本実施例の印刷物1では、可視光の反射強度に基づいてQRコード7の記録情報を読取り困難となる。これは、上述のように、本実施例では、QRコード7の位置検出パターン10の明色矩形部20が、部分的に黒色を呈しているためと考えられる。具体的には、QRコード7の記録情報の読取りには、3つの位置検出パターン10を検出して、QRコード7の位置を検出する位置検出処理と、QRコード7の個々のセルが明色セルと暗色セルのいずれであるかを判定する明暗判定処理とが必要となるが、本実施例のQRコード7に関しては、位置検出処理を正常に完了させるのは困難である。位置検出処理では、位置検出パターン10が有する1:1:3:1:1の明暗比率を検索して、位置検出パターン10を検出するところ、明色矩形部20の一部が隠蔽パターン8によって黒色を呈することにより、1:1:3:1:1の明暗比率が損なわれているためである。
特に、本実施例では、赤外光透過インキで位置検出パターン10全体を黒塗りにするよりも、位置検出パターン10を検出し難くなる。明色矩形部20の一部のみを黒色とし、位置検出パターン10の白色部分を残すことにより、白色を呈する部分と黒色を呈する部分との反射光のコントラストが高くなり、位置検出パターン10において、QRコード7の暗色セルと隠蔽パターン8aの暗色部との反射光の微差が軽視され、両者が区別されなくなるためである。
【0032】
本実施例の印刷物1では、専用装置を用いて赤外光の反射強度を測定すれば、QRコード7の明暗パターンを正確に識別して、QRコード7の記録情報を読み取ることができる。赤外光透過インキで形成される隠蔽パターン8の明暗は、赤外光の反射強度の高低に反映されず、赤外光吸収インキで形成されたQRコード7の明暗のみが、赤外光の反射強度の高低に反映されるためである。具体的には、QRコード7の形成部位について赤外光の反射強度を測定した場合、図3(C)の白色部分では、赤外光が基材2の表面で直接反射し、また、図3(C)の灰色部分では、赤外光が、隠蔽パターン8を形成する赤外光透過インキを透過して、基材2の表面で直接反射するため、図3(C)の白色部分と灰色部分では、赤外光の反射率は高くなる。一方、図3(C)の黒色部分では、赤外光がQRコード7の暗色セルを形成する赤外光吸収インキで吸収されるため、赤外光の反射強度は低くなる。このように、本実施例では、QRコード7の暗色セルにおいてのみ、赤外光の反射強度が低くなるため、赤外光の反射強度を測定すれば、QRコード7の明暗パターンを正確に識別して、QRコード7の記録情報を読み取ることができる。
【0033】
上述のように、本実施例1の印刷物1は、赤外光の反射強度に基づいてQRコード7の記録情報を読取可能であるが、本実施例1の印刷物1の複写物では、赤外光の反射強度に基づいてQRコード7の記録情報を読み取ることはできない。これは、通常の複写機では、複写時に赤外光の反射特性は考慮されないため、複写物では、原本における赤外光の反射特性が複製されないためである。すなわち、本実施例の印刷物1では、複写機による複製を防止することができる。
【0034】
本実施例の印刷物1(入場券)の効率的な製造方法としては、全ての入場券で共通する共通印刷(固定文字情報4や隠蔽パターン8)のみを、印刷会社等において印刷機で基材2に印刷し、その後、入場券によって相違する固有印刷(可変文字情報5やQRコード7)を、チケット発行所においてプリンタで一枚ずつ印刷することが挙げられる。このように、予め共通印刷を印刷機で印刷し、固有印刷をプリンタで追加印刷すれば、印刷物1の発行コストを抑えることができる。本実施例では、固有印刷であるQRコード7が、共通印刷である隠蔽パターン8の上に形成されるため、このような低コストでの製造方法を採用できる。なお、図3中では明示されていないが、隠蔽パターン8の逆L字状暗色部23は、位置検出パターン10の明色矩形部20よりも幅広に形成され、これにより、QRコード7の印刷に多少の位置ずれが生じた場合でも、逆L字状暗色部23が、明色矩形部20の上辺と左辺の全体と重なるよう構成される。すなわち、本実施例の印刷物1の製造工程において、QRコード7と隠蔽パターン8の正確な位置合わせは不要である。
【0035】
以上のように、本実施例の印刷物1では、赤外光の反射強度に基づいて読取容易で、可視光の反射強度に基づいて読取困難なQRコード7を、低廉な方法で製造できる。
【0036】
以下に、実施例2~8について説明する。実施例2~8は、上記実施例1の構成を一部変更した変形例であるため、実施例1と同様の構成については、本文中及び図中で同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【実施例0037】
本実施例は、実施例1から隠蔽パターンの形状を変更したものである。具体的には、実施例1では、隠蔽パターン8が3つの逆L字状暗色部で構成されるのに対して(図3(B)参照)、本実施例に係る隠蔽パターン8aは、図5(B)に示すように、白色の正方形(明色部)と黒色の正方形(暗色部)とが交互に配置されたチェッカーパターンで構成される。図5(A)に示すように、QRコード7は実施例1と同じものである。隠蔽パターン8aを構成する白色の正方形と黒色の正方形の大きさ(面積)は、QRコード7のセルの約半分である。隠蔽パターン8aは、QRコード7よりも一回り大きい正方形状の領域に形成される。具体的には、隠蔽パターン8aは、QRコード7と、その周囲の空白部11がちょうど収まる大きさで形成される。実施例1と同様に、隠蔽パターン8aは、黒色の赤外光透過インキによって形成される。具体的には、暗色部(黒色の正方形部分)に、黒色の赤外光透過インキがベタ印刷され、隠蔽パターン8aの明色部(白色の正方形部分)には、赤外光透過インキが印刷されず、白色の基材2の表面が露出している。
【0038】
図5(C)に示すように、QRコード7は、QRコード7と空白部11の全てが、隠蔽パターン8aと重なり合うように、隠蔽パターン8aの中央部に形成される。かかる構成にあっては、上記実施例1よりも、可視光の反射強度に基づくQRコード7の読取りが一層困難となる。QRコード7全体が、チェッカーパターンからなる隠蔽パターン8aの上に重なることにより、位置検出パターン10の明色部分だけでなく、空白部11やデータ記録部9の明色セルについても、隠蔽パターン8aの暗色部と重なることで、約50%が黒色を呈しているためと考えられる。これは、上述のように、QRコード7の記録情報の読取りには、位置検出処理と明暗判定処理とが必要となるが、本実施例では、明暗判定処理において、QRコード7の明色セルの約半分が暗色セルと誤判定されるため、仮に位置検出処理が正常に完了したとしても、QRコード7の記録情報の復号が困難となるためである。なお、QRコード7は、セルの明暗の誤判定が生じても、誤り訂正機能の訂正可能範囲内であれば記録情報を復号できるが、隠蔽パターン8aによって広範囲で散発的に生じる誤判定は、QRコード7の訂正可能範囲に収まり得るものではない。
【0039】
また、本実施例では、データ記録部9全体を赤外光非吸収材で黒塗りにする場合よりも、データ記録部9の明色セルと暗色セルを、可視光の反射強度に基づいて識別困難となる。これは、チェッカーパターンからなる隠蔽パターン8aをデータ記録部9に重ねて、白色を呈する部分を散在させることにより、白色を呈する部分と黒色を呈する部分との反射光のコントラストが高くなり、QRコード7の暗色セルと隠蔽パターン8aの暗色部の反射光の微差が軽視され、両者が区別されなくなるためである。
【実施例0040】
本実施例は、実施例2から隠蔽パターンの形状を変更したものである。具体的には、実施例2では、隠蔽パターン8aの全体がチェッカーパターンで構成されるのに対して(図5(B)参照)、本実施例では、図6(B)に示すように、隠蔽パターン8bが、チェッカーパターン24と黒塗りパターン25(黒色の塗り潰しパターン)で構成される。黒塗りパターン25は、正方形状の隠蔽パターン8aの外周部に形成される矩形枠状をなしており、チェッカーパターン24は、黒塗りパターン25の内側に形成される。チェッカーパターン24を構成する白色と黒色の正方形の大きさは、実施例1と同様である。図6(A)に示すように、QRコード7は実施例1と同じものであり、チェッカーパターン24は、QRコード7よりも一回り小さい正方形状をなしている。そして、本実施例では、図6(C)に示すように、QRコード7は、QRコード7の外周部及び空白部11が、黒塗りパターン25と重なるように隠蔽パターン8aの上に形成され、位置検出パターン10の明色部分(明色矩形部20及び外周枠部18)の一部が、チェッカーパターン24と黒塗りパターン25により黒色を呈している。
【0041】
本実施例のように、本発明に係る隠蔽パターンは、位置検出パターン10の全体を黒塗りとしない範囲で、黒塗りパターン25を含めることができる。また、本実施例にあっては、QRコード7がチェッカーパターン24と重なる部分と、QRコード7が黒塗りパターン25と重なる部分とで、可視光の反射強度の分布が相違するため、可視光の反射強度に基づくQRコード7の読取りが一層困難となる。また、本実施例では、隠蔽パターン8bの外周部が黒塗りパターン25となっているため、QRコード7が隠蔽パターン8bの中心からずれた位置に形成されていても、形成位置のずれが目立ち難く、美観を保ち易いという利点がある。
【実施例0042】
本実施例は、実施例2から隠蔽パターンの形状を変更したものである。具体的には、実施例2では、隠蔽パターン8aが白色と黒色の正方形からなるチェッカーパターンで構成されるのに対して(図5(B)参照)、本実施例では、図7(A)に示すように、隠蔽パターン8cが、白色と黒色の縦長長方形からなるチェッカーパターンで構成される。このように、隠蔽パターン8cのチェッカーパターンを構成する四角形は、QRコード7を構成するセルと大きさや形状が同じものでも、相違するものであってもよい。
【実施例0043】
本実施例は、実施例2から隠蔽パターンの形状を変更したものである。具体的には、実施例2では、隠蔽パターン8aがチェッカーパターンで構成されるのに対して(図5(B)参照)、本実施例では、図7(B)に示すように、隠蔽パターン8dが、白色背景に黒色ドットのドットパターンで構成される。ドットは円形状をなしており、その直径はQRコード7のセルの一辺の長さと等しくなっている。
【0044】
このように、隠蔽パターン8dがドットパターンである場合でも、位置検出パターン10やデータ記録部9の明色部の一部が、隠蔽パターンと重なって部分的に黒色を呈することで、可視光の反射強度に基づくQRコード7の読取りが困難となる。なお、ドットの大きさは、上記実施例のサイズから、適宜変更可能であり、ドットの形状も円形に限らず、多角形や星形などであってもよい。また、明色の背景に暗色のドットからなるドットパターンに限らず、図7(C)に示す隠蔽パターン8eのように、暗色の背景に明色のドットが配置されるドットパターンであってもよい。また、ドットパターンを構成する個々のドットの大きさ、形状は、不均一であってもよいし、ドットの配置も等間隔のものに限定されず、ドットが不規則に配置されるものであってもよい。
【実施例0045】
本実施例は、実施例2に係るQRコード7及び隠蔽パターン8aを、ラミネートフィルムによって被覆したものである。詳述すると、実施例2に係る印刷物1aは、図8(A)に示すように、赤外光透過インキ30で形成した隠蔽パターン8aの上に、赤外光吸収インキ31でQRコード7を形成しただけのものである。これに対して、本実施例の印刷物1bは、図8(B)に示すように、実施例2の印刷物1aの表裏に透明なラミネートフィルム28を貼り合わせて、パウチ加工したものである。実施例2の印刷物1aでは、図8(A)に示すように、隠蔽パターン8aを形成する赤外光透過インキ30と、QRコード7を形成する赤外光吸収インキ31とが、印刷物1aの表面に露出するため、赤外光透過インキ30と赤外光吸収インキ31の光沢の差が、可視光の反射強度に比較的強めに反映される。これに対して、本実施例のように、印刷物1bがラミネートフィルム28で被覆されたものであれば、ラミネートフィルム28の光沢によって、赤外光透過インキ30と赤外光吸収インキ31の光沢の差が、可視光の反射強度に殆ど反映されなくなるため、可視光の反射強度に基づいて、QRコード7と隠蔽パターン8aを一層区別しづらくなる。
【実施例0046】
本実施例は、実施例2から隠蔽パターンの構成を変更したものである。具体的には、本実施例の隠蔽パターン8fは、実施例2の隠蔽パターン8aと同様のチェッカーパターンで構成される(図5(B)参照)。ここで、実施例2の印刷物1aでは、隠蔽パターン8aの明色部(チェッカーパターンの黒色部分)にはインキを印刷せず、基材2の白色地を露出させるのに対して(図8(A)参照)、本実施例の印刷物1bでは、図8(C)に示すように、隠蔽パターン8fの明色部に白色の赤外光透過インキ32を形成する。かかる構成にあっては、明色部の赤外光透過インキ32を、暗色部の赤外光透過インキ30と同様の厚みで形成すれば、隠蔽パターン8fの表面の凹凸が小さくなるため、QRコード7を隠蔽パターン8fの上に比較的容易に形成可能となり、比較的性能の低いプリンタでも、かすれや欠損等の印刷不良を発生させることなくQRコード7を印刷可能となる。なお、本実施例では、隠蔽パターン8fの明色部に、白色の赤外光透過インキ32を形成しているが、白色のインキに替えて、白色以外の明色インキや透明インキを形成するようにしてもよい。
【実施例0047】
本実施例は、実施例2の構成を一部変更したものである。具体的には、実施例2では、赤外光透過インキ30で形成された隠蔽パターン8aの上に、QRコード7が直接形成されるのに対して(図8(A)参照)、本実施例の印刷物1dでは、図8(D)に示すように、隠蔽パターン8aの全体を覆うように、透明な赤外光透過インキからなる透明被覆層35が形成され、透明被覆層35の上に、黒色の赤外光吸収インキ31でQRコード7が形成される。隠蔽パターン8は、黒色の赤外光透過インキ30が形成された暗色部と、基材2が露出する明色部とで構成され、表面が不均質であるため、実施例1のように、隠蔽パターン8の上にQRコード7を直接形成すると、隠蔽パターン8aの明色部と暗色部とで、赤外光吸収インキ31の定着が不安定となるが、本実施例では、かかる構成では、QRコード7の全体が、透明被覆層35の上に形成されるため、赤外光吸収インキ31の定着を安定させることができる。
【0048】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、上記実施例の構成に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述の実施例1~7の構成は、適宜組み合わせて実施することが可能である。また、上記実施例の構成は、以下のように変更することができる。
【0049】
上記実施例は、QRコードが形成された印刷物であるが、本発明に係るシンボルは、QRコードに限られず、位置検出パターンを備えるシンボル全般に適用可能である。例えば、本発明に係るシンボルは、マイクロQRコード、DataMatrix(登録商標)、MaxiCodeなどのシンボルにも適用できる。
【0050】
上記実施例では、赤外光吸収インキと赤外光透過インキが、本発明に係る赤外光吸収材と赤外光非吸収材に相当するが、本発明に係る赤外光吸収材と赤外光非吸収材は、インキに限られずトナーなどであってもよい。また、上記実施例では、QRコード7や隠蔽パターン8を形成するインキが、ベタ印刷で形成されているが、QRコード7や隠蔽パターン8は、インキの網点印刷で形成されるものであってもよい。
【0051】
上記実施例では、QRコード7の明色部(明色セル及び空白部11)が白色で、QRコード7の暗色部(暗色セル)が黒色で形成されているが、QRコード7の明色部を白色以外の明色で、QRコード7の暗色部を黒色以外の暗色で形成してもよい。同様に、上記実施例では、隠蔽パターン8の明色部が白色で、隠蔽パターン8の暗色部が黒色で形成されているが、隠蔽パターン8の明色部を白色以外の明色で、隠蔽パターン8の暗色部を黒色以外の暗色で形成してもよい。また、QRコード7と隠蔽パターン8の明色部の色は、同一の又は近似する明色とすることが望ましいが、相違していても構わない。同様に、QRコード7と隠蔽パターン8の暗色部の色は、同一の又は近似する暗色とすることが望ましいが、相違していても構わない。また、本発明に係る基材の表面の色についても、白色に限らず別の色を採用してもよい。
【0052】
また、上記実施例2では、隠蔽パターン8aのチェッカーパターンの四角形の配列方向と、QRコード7のセルの配列方向が一致するように配置されていたが、チェッカーパターンの配列方向と、QRコード7の配列方向とが傾くように両者を重ねても構わない。同様に、ドットパターンからなる隠蔽パターン8dの場合(図7(B)参照)には、隠蔽パターン8dのドットの配列方向と、QRコード7の配列方向が傾くように両者を重ねても構わない。
【0053】
また、上記実施例1では、隠蔽パターン8が、QRコード7の3つの位置検出パターン10と重なるよう構成されるが、本発明は、隠蔽パターン8が1つ又は2つの位置検出パターン10のみと重なる構成を含む。QRコード7の位置検出処理では、全ての位置検出パターン10の検出が必要であるため、1つの位置検出パターン10を隠蔽するだけでも、効果が得られるためである。また、上記実施例1では、QRコード7の3つの位置検出パターン10に対して、隠蔽パターン8の逆L字状暗色部23が同じ位置に重なっているが、隠蔽パターン8と位置検出パターン10が重なり合う態様は、位置検出パターン10ごとに相違していてもよい。
【0054】
<試験品1>
上記実施例1の構成に則って作製した印刷物を試験品1とした。ここで、QRコード7は、バージョン4、誤り訂正レベルM、セルを一辺0.42mmの正方形とした。
【0055】
<試験品2~9>
図9(A)に示すように、試験品1から隠蔽パターンの構成を変更して、隠蔽パターンと位置検出パターンの重なり合う態様を変更した印刷物を試験品2~9とした。図9(A)において、灰色で示された部分が、位置検出パターン10の明色部と、隠蔽パターンの暗色部が重なる部分である。具体的には、隠蔽パターンの暗色部を、明色矩形部20の全体と重ねたものを試験品2とした。また、隠蔽パターンの暗色部を、明色矩形部20の左半分と重ねたものを試験品3とした。また、隠蔽パターンの暗色部を、明色矩形部20の左辺全体と重ねたものを試験品4とした。また、隠蔽パターンの暗色部を、明色矩形部20の左辺の左側8割と重ねたものを試験品5とした。また、隠蔽パターンの暗色部を、外周枠部18の上辺と左辺と重ねたものを試験品6とした。また、隠蔽パターンの暗色部を、外周枠部18全体と重ねたものを試験品7とした。また、チェッカーパターンからなる隠蔽パターンを、位置検出パターン10全体と重ねたものを試験品8とした。また、チェッカーパターンからなる隠蔽パターンを、明色矩形部20と重ね、さらに、隠蔽パターンの暗色部を、明色矩形部20の左辺の左側5割と重ねたものを試験品9とした。なお、試験品では、隠蔽パターンの暗色部は、位置検出パターン10のみと重なり、位置検出パターン10以外の部位には重ならない。また、隠蔽パターンの暗色部は、QRコード7の3つの位置検出パターン10パターンに対して、同じ態様で重なるよう構成される。
【0056】
<比較品1,2>
試験品1から隠蔽パターンの構成を変更して、隠蔽パターンの暗色部を、位置検出パターン10の全体と重ねたものを比較品1とした。また、上記試験品1から隠蔽パターンを除去し、基材2の表面にQRコード7を直接形成したものを比較品2とした。図9(A)において、灰色で示された部分が、位置検出パターン10の明色部と、隠蔽パターンの暗色部が重なる部分である。なお、比較品1では、隠蔽パターンの暗色部は、位置検出パターン10のみと重なり、位置検出パターン10以外の部位には重ならない。また、比較品1では、隠蔽パターンの暗色部は、QRコード7の3つの位置検出パターン10パターンに対して、同じ態様で重なるよう構成される。
【0057】
<試験1>
携帯端末(スマートフォン)にQRコードの読取プログラムを2種類インストールし、夫々の読取プログラムで、試験品1~9及び比較品1,2のQRコードの読取りを繰返し試みて、可視光の反射強度に基づく、QRコードの記録情報の読取成功率を測定した。結果を図9(B)に示す。
【0058】
図9(B)に示されるように、試験品1~9では、読取成功率が80%以下となったのに対して、比較品1,2では読取成功率が100%であった。この結果は、隠蔽パターンによって位置検出パターン10を黒塗りパターンにするよりも、隠蔽パターンによって位置検出パターン10の明色部分を部分的に暗色にする方が、可視光の反射強度に基づくQRコードの読取りを確実に防止できることを示している。
【0059】
また、図9(B)に示されるように、隠蔽パターンの暗色部を、外周枠部18とのみ重ねたと重ねた試験品6,7は、隠蔽パターンの暗色部を、明色矩形部20と重ねた試験品1~5と比べて、読取成功率が高くなる傾向が認められた。この結果は、隠蔽パターンの暗色部を明色矩形部20と重ねることで、可視光の反射強度に基づくQRコードの読取りを、より確実に防止可能となることを示している。
特に、隠蔽パターンの暗色部を、明色矩形部20の少なくとも一辺を横切るように重ねた試験品1~4では、比較品1,2や他の試験品と比べて、読取成功率が著しく低下した。この結果は、隠蔽パターンの暗色部によって、内外の暗色矩形部21,22が繋がることで、可視光の反射強度で位置検出パターン10を走査した時に、特有の明暗比率(1:1:3:1:1)と大きく異なる明暗比率が測定されるためと考えられる。すなわち、この結果は、隠蔽パターンの暗色部を、明色矩形部20の少なくとも一辺を横切るように重ねることで、可視光の反射強度に基づくQRコードの読取りを、より確実に防止可能となることを示している。
【0060】
<試験2>
試験品1~9及び比較品1,2について、専用の読取装置を用いて、赤外光の反射強度に基づいてQRコードの読取りを試みた。その結果、試験品1~9及び比較品1,2の全てについて、QRコードに記録された情報を読み取ることができた。この結果は、試験品1~9及び比較品1の隠蔽パターンは、赤外光の反射強度に基づくQRコードの読取りを阻害しないことを示している。
【0061】
<試験3>
試験品1~9及び比較品1,2について、一般的な複写機を用いて複写し、夫々の複写物について、上記試験1と同様にして、QRコードを複写した部分から、QRコードの記録情報の読取りを試みた。その結果、試験品1~9及び比較品1の複写物では、QRコードの読取成功率が0%であった。一方、隠蔽パターンが形成されていない比較品2の複写物では、QRコードの読取成功率が100%となった。この結果は、試験品1~9の隠蔽パターンについても、比較品1の黒塗りパターンと同様に、QRコードの複写を防止できることを示している。
【符号の説明】
【0062】
1,1a~1d 印刷物
2 基材
4 固定文字情報
5 可変文字情報
7 QRコード(シンボル)
8,8a~8f 隠蔽パターン
9 データ記録部
10 位置検出パターン
11 空白部
12 機能パターン
13 位置合わせパターン
14 タイミングパターン
15 形式情報記録部
17 位置検出パターン本体
18 外周枠部
20 明色矩形部
21,22 暗色矩形部
23 逆L字状暗色部
24 チェッカーパターン
25 黒塗りパターン
28 ラミネートフィルム
30,32 赤外光透過インキ(赤外光非吸収材)
31 赤外光吸収インキ(赤外光吸収材)
35 透明被覆層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9