(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005036
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】移動栽培システム
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20240110BHJP
A01G 9/00 20180101ALI20240110BHJP
【FI】
A01G7/00 601C
A01G9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105013
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 章夫
(72)【発明者】
【氏名】永田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】藤原 正幸
(72)【発明者】
【氏名】兼崎 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】川口 哲平
(72)【発明者】
【氏名】大谷 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸明
【テーマコード(参考)】
2B022
2B327
【Fターム(参考)】
2B022DA05
2B022DA08
2B327NA10
2B327NB01
2B327ND01
2B327NE01
2B327QA02
2B327TA02
2B327TA22
2B327TC04
2B327TC15
2B327UA21
2B327UB05
2B327VA20
(57)【要約】
【課題】移動する作物に対して適切な紫外光照射を行うことができる移動栽培システムを提供する。
【解決手段】移動栽培システムは、横方向において互いに逆向きの搬送方向を有し、かつ、縦方向に間隔を隔てて配置された搬送コンベヤ装置20A,20Bと、縦方向において互いに逆向きの搬送方向を有し、かつ、搬送コンベヤ装置20A,20Bの間を繋ぐように配置された案内装置30A,30Bと、作物が植えられたプランタPを載置可能であり、搬送コンベヤ装置20A,20Bと案内装置30A,30Bとによって循環移動させられる複数の栽培ベンチ10と、を備える。さらに、移動栽培システムは、栽培ベンチ10およびプランタPの移動を阻害せず、かつ、プランタPに植えられた作物の葉裏に、紫外線を含む紫外光の照射を可能とする紫外光照射機構(例えば、光源60および光路変更部材70)を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物の移動栽培を行う移動栽培システムであって、
平面視において直交する2方向を横方向および縦方向とする場合、
横方向において互いに逆向きの搬送方向を有し、かつ、縦方向に間隔を隔てて配置された一対の横搬送装置と、
縦方向において互いに逆向きの搬送方向を有し、かつ、一方の横搬送装置の下流側箇所と他方の横搬送装置の上流側箇所とを繋ぐように配置されたものと、前記他方の横搬送装置の下流側箇所と前記一方の横搬送装置の上流側箇所とを繋ぐように配置されたものとからなる一対の縦搬送装置と、
作物が植えられたプランタを載置可能であり、前記一対の横搬送装置と前記一対の縦搬送装置とによって循環移動させられる複数の栽培ベンチと、を備え、
前記栽培ベンチおよび前記プランタの移動を阻害せず、かつ、前記プランタに植えられた作物の葉裏に、紫外線を含む紫外光の照射を可能とする紫外光照射機構を備えることを特徴とする移動栽培システム。
【請求項2】
請求項1に記載の移動栽培システムであって、
前記紫外光照射機構は、前記縦搬送装置の上方に配置され、紫外光を照射する光源と、前記光源から照射される紫外光の光路を変更して、作物の葉裏に誘導可能な光路変更部材と、を備えることを特徴とする移動栽培システム。
【請求項3】
請求項1に記載の移動栽培システムであって、
前記紫外光照射機構は、前記横搬送装置によって搬送される前記栽培ベンチに対して、ゲート状に配置されるフレームと、前記フレームに取り付けられ、紫外光を照射する複数の光源と、を備えており、
前記複数の光源は、作物に対してそれぞれ異なる方向から紫外光を照射可能であり、少なくとも一部の光源は、作物の葉裏に対して紫外光を照射可能であることを特徴とする移動栽培システム。
【請求項4】
請求項1に記載の移動栽培システムであって、
前記紫外光照射機構は、前記縦搬送装置の上方に配置され、紫外光を照射する光源と、前記光源が下端に取り付けられ、前記光源を上下移動させる可動部材と、を備えており、
前記光源は、上昇時には、前記栽培ベンチおよび前記プランタの移動を阻害しない位置まで退避可能であり、下降時には、作物の葉裏に対して紫外光を照射可能であることを特徴とする移動栽培システム。
【請求項5】
請求項1に記載の移動栽培システムであって、
前記紫外光照射機構は、前記縦搬送装置の上方に配置され、紫外光を照射する光源と、前記縦搬送装置の上方に配置され、上下移動が可能な光路変更部材と、を備え、
前記光路変更部材は、上昇時には、前記栽培ベンチおよび前記プランタの移動を阻害しない位置まで退避可能であり、下降時には、前記光源から照射される紫外光の光路を変更して、作物の葉裏に誘導可能であることを特徴とする移動栽培システム。
【請求項6】
請求項1に記載の移動栽培システムであって、
前記栽培ベンチは、上下方向に光を通過させる隙間を有しており、
前記紫外光照射機構は、前記縦搬送装置の下方に配置され、斜め上方向に紫外光を照射可能な光源を備えることを特徴とする移動栽培システム。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の移動栽培システムであって、
前記栽培ベンチの移動速度が調節可能であることを特徴とする移動栽培システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作物の移動栽培を行う移動栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、環状の支持プレート上に作物が植え付けられたトレイを載置し、その支持プレートに対して上から光を照射する照射具を設け、支持プレートを回転させることによって作物に均一に照射を行う作物栽培装置が記載されている。また、特許文献2には、紫外線を含む光(以下、紫外光)を作物に照射して、病害防除を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-90689号公報
【特許文献2】特許第5162740号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、照射具を支持プレートの上に設けるのは、照射具がトレイ移動の邪魔にならないようにするためである。一方、紫外光によって作物の病害防除を行う場合、その紫外光を作物の上から照射するのみでは、葉の陰などによって照射ムラが発生し、良好な病害防除効果を得ることができない。すなわち、紫外光を用いた病害防除を移動栽培に適用する場合、移動する作物に対して適切な紫外光照射が行えないといった問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、移動する作物に対して適切な紫外光照射を行うことができる移動栽培システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様である移動栽培システムは、作物の移動栽培を行う移動栽培システムであって、平面視において直交する2方向を横方向および縦方向とする場合、横方向において互いに逆向きの搬送方向を有し、かつ、縦方向に間隔を隔てて配置された一対の横搬送装置と、縦方向において互いに逆向きの搬送方向を有し、かつ、一方の横搬送装置の下流側箇所と他方の横搬送装置の上流側箇所とを繋ぐように配置されたものと、前記他方の横搬送装置の下流側箇所と前記一方の横搬送装置の上流側箇所とを繋ぐように配置されたものとからなる一対の縦搬送装置と、作物が植えられたプランタを載置可能であり、前記一対の横搬送装置と前記一対の縦搬送装置とによって循環移動させられる複数の栽培ベンチと、を備え、前記栽培ベンチおよび前記プランタの移動を阻害せず、かつ、前記プランタに植えられた作物の葉裏に、紫外線を含む紫外光の照射を可能とする紫外光照射機構を備えることを特徴としている。
【0007】
上記の構成によれば、栽培ベンチやプランタの移動を阻害することなく、移動する作物に対する適切な紫外光照射(特に、作物の葉裏に対する紫外光照射)を行うことができる。
【0008】
また、上記移動栽培システムでは、前記紫外光照射機構は、前記縦搬送装置の上方に配置され、紫外光を照射する光源と、前記光源から照射される紫外光の光路を変更して、作物の葉裏に誘導可能な光路変更部材と、を備える構成とすることができる。
【0009】
上記の構成によれば、光源を縦搬送装置の上方に配置することで、光源が栽培ベンチやプランタの移動を阻害することなく、また、光路変更部材を設けることで、作物の葉裏に紫外光照射を行うことも可能となる。
【0010】
また、上記移動栽培システムでは、前記紫外光照射機構は、前記横搬送装置によって搬送される前記栽培ベンチに対して、ゲート状に配置されるフレームと、前記フレームに取り付けられ、紫外光を照射する複数の光源と、を備えており、前記複数の光源は、作物に対してそれぞれ異なる方向から紫外光を照射可能であり、少なくとも一部の光源は、作物の葉裏に対して紫外光を照射可能である構成とすることができる。
【0011】
上記の構成によれば、ゲート状に配置されるフレームとこれに取り付けられる光源とが栽培ベンチやプランタの移動を阻害することなく、また、少なくとも一部の光源により作物の葉裏に対して紫外光照射を行うことも可能となる。
【0012】
また、上記移動栽培システムでは、前記紫外光照射機構は、前記縦搬送装置の上方に配置され、紫外光を照射する光源と、前記光源が下端に取り付けられ、前記光源を上下移動させる可動部材と、を備えており、前記光源は、上昇時には、前記栽培ベンチおよび前記プランタの移動を阻害しない位置まで退避可能であり、下降時には、作物の葉裏に対して紫外光を照射可能である構成とすることができる。
【0013】
上記の構成によれば、縦搬送装置上で栽培ベンチやプランタが移動するときは、光源を上昇させて退避させることができ、栽培ベンチやプランタが停止するときは、光源を下降させて作物の葉裏に対して紫外光照射を行うことができる。
【0014】
また、上記移動栽培システムでは、前記紫外光照射機構は、前記縦搬送装置の上方に配置され、紫外光を照射する光源と、前記縦搬送装置の上方に配置され、上下移動が可能な光路変更部材と、を備え、前記光路変更部材は、上昇時には、前記栽培ベンチおよび前記プランタの移動を阻害しない位置まで退避可能であり、下降時には、前記光源から照射される紫外光の光路を変更して、作物の葉裏に誘導可能である構成とすることができる。
【0015】
上記の構成によれば、縦搬送装置上で栽培ベンチやプランタが移動するときは、光路変更部材を上昇させて退避させることができ、栽培ベンチやプランタが停止するときは、光路変更部材を下降させて作物の葉裏に対して紫外光照射を行うことができる。
【0016】
また、上記移動栽培システムでは、前記栽培ベンチは、上下方向に光を通過させる隙間を有しており、前記紫外光照射機構は、前記縦搬送装置の下方に配置され、斜め上方向に紫外光を照射可能な光源を備える構成とすることができる。
【0017】
上記の構成によれば、光源を縦搬送装置の下方に配置することで、光源が栽培ベンチやプランタの移動を阻害することなく、また、光源は、栽培ベンチに設けられた隙間を通過させて作物の葉裏に紫外光を照射することができる。
【0018】
また、上記移動栽培システムは、前記栽培ベンチの移動速度が調節可能である構成とすることができる。
【0019】
上記の構成によれば、防除における紫外光の照射度合に応じて栽培ベンチの移動速度を変更することで、作物に対して一定の紫外光照射が行える。
【発明の効果】
【0020】
本発明の移動栽培システムは、紫外光照射機構によって、栽培ベンチやプランタの移動を阻害することなく、移動する作物に対する適切な紫外光照射(特に、作物の葉裏に対する紫外光照射)を行うことができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明が適用可能な移動栽培システムの概要を示す平面図である。
【
図2】第1実施形態に係る移動栽培システムを示すものであり、案内装置による搬送領域の一部を示す側面図である。
【
図3】第1実施形態の移動栽培システムにおける光源および光路変更部材の配置を示す平面図である。
【
図4】第1実施形態の移動栽培システムにおける清掃部材の配置を示す側面図である。
【
図5】第2実施形態に係る移動栽培システムを示すものであり、搬送コンベヤ装置による搬送領域を示す側面図である。
【
図6】第3実施形態に係る移動栽培システムを示すものであり、案内装置による搬送領域の一部を示す側面図である。
【
図7】第4実施形態に係る移動栽培システムを示すものであり、案内装置による搬送領域の一部を示す側面図である。
【
図8】第5実施形態に係る移動栽培システムを示すものであり、案内装置による搬送領域の一部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
〔移動栽培システムの基本構成〕
本発明が適用可能な移動栽培システム(以下、本システム)の基本構成を、
図1を参照して説明する。
図1は、本システムの概要を示す平面図である。尚、以下の説明において、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば「左右」「上下」など)を用いる場合は、
図1において紙面に直交する方向を平面視とし、紙面上下方向を縦方向とし、紙面左右方向を横方向とする。これらの用語は説明の便宜のために用いるものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、
図1には、公知技術(例えば、特開2013-90614に開示)を利用した基本構成のみが示されており、本発明の特徴部分は含まれていない。
【0024】
図1に示すように、本システムは、イチゴやホウレンソウといった果菜などを栽培する複数の栽培ベンチ10を循環移動させる閉ループ状のものとされている。栽培ベンチ10には、作物が植えられたプランタPが載置される。栽培ベンチ10に載置されるプランタPの形状および個数は特に限定されるものではない。
【0025】
本システムにおいて、栽培ベンチ10を移動させる手段としては、横方向において互いに逆向きの搬送方向を有し、かつ、縦方向に間隔を隔てて配置された一対の搬送コンベヤ装置(横搬送装置)20A,20Bと、縦方向において互いに逆向きの搬送方向を有する一対の案内装置(縦搬送装置)30A,30Bと、栽培ベンチ10を押し出し移動させる一対の押し出し装置40A,40Bとが設けられている。搬送コンベヤ装置20A,20Bの搬送方向と、案内装置30A,30Bの搬送方向とは、平面視で互いに直交している。
【0026】
案内装置30Aは、一方の搬送コンベヤ装置20Aの下流側箇所と他方の搬送コンベヤ装置20Bの上流側箇所とを繋ぐように配置されている。案内装置30Bは、他方の搬送コンベヤ装置20Bの下流側箇所と一方の搬送コンベヤ装置20Aの上流側箇所とを繋ぐように配置されている。これにより、各栽培ベンチ10は、搬送コンベヤ装置20A、案内装置30A、搬送コンベヤ装置20B、案内装置30Bの順で循環移動することができる。尚、栽培ベンチ10は、平面視で略矩形状であり、案内装置30A,30Bの搬送方向と直交する方向を長手方向、案内装置30A,30Bの搬送方向と平行な方向を短手方向としている。
【0027】
案内装置30A,30Bは、それぞれ2本の案内レール31を備えている。一方、各栽培ベンチ10の下面側には、案内レール31の配置幅に合わせた間隔で、栽培ベンチ10を案内レール31上で摺動させる図示しない摺動体(車輪など)が取り付けられている。あるいは、摺動体は案内装置30A,30Bに設けられていてもよい。これにより、各栽培ベンチ10は、案内装置30A,30B上において縦方向に移動可能となる。また、
図1では図示していないが、栽培ベンチ10は、案内装置30A,30Bによる移動方向(縦方向)に延びる当接体を有していてもよい。案内装置30A,30B上では、この当接体を隣の栽培ベンチ10に当接させることにより、隣り合う栽培ベンチ10の間に適宜間隔を設けることができる。あるいは、案内装置30A,30B上での栽培ベンチ10間隔は、上記当接体を設ける代わりに、栽培ベンチ10の縦方向寸法によっても調節することができる。
【0028】
押し出し装置40A(40B)は、搬送コンベヤ装置20A(20B)の搬送下流側において、当該箇所にある栽培ベンチ10(
図1中では一点鎖線で示す)をこれに対峙する案内装置30A(30B)に向けて押し出し搬送する手段として設けられている。この場合の押し出し装置40A,40Bは、例えば、多段に伸縮動するように構成された電磁ソレノイドやエアシリンダなどの直動アクチュエータとすることができる。押し出し装置40A(40B)による栽培ベンチ10の押し出し移動に伴い、案内装置30A(30B)上では、複数の栽培ベンチ10が玉突き状に搬送される。その結果、案内装置30A(30B)の下流側では、最下流にある栽培ベンチ10が搬送コンベヤ装置20B(20A)の上流側に押し出され、載置される。搬送コンベヤ装置20A,20Bの上流側に載置された栽培ベンチ10は、搬送コンベヤ装置20A,20Bの上流側から下流側へ横方向の搬送を受ける。
【0029】
このように、本システムでは、搬送コンベヤ装置20A,20Bによる栽培ベンチ10の搬送動作と、押し出し装置40A,40Bによる栽培ベンチ10の押し出し搬送動作とが交互に行われることによって、栽培ベンチ10の循環移動が行われる。この循環移動において、搬送コンベヤ装置20A,20Bによる栽培ベンチ10の搬送速度、押し出し装置40A,40Bによる押し出し搬送速度(すなわち、案内装置30A,30B上での栽培ベンチ10の移動速度)、押し出し装置40A,40Bによる押し出し搬送の時間間隔などは任意に設定可能である。これにより、各栽培ベンチ10が1周分の移動に係る時間も任意に設定可能となる。
【0030】
また、本システムでは、搬送コンベヤ装置20A,20Bの一方(
図1では、搬送コンベヤ装置20B)に対し、案内装置30A,30Bと反対側のスペースが作業者の作業スペースとして設定される。作業者は、作業スペースにおいて種々の作業(例えば収穫作業、草取り作業、剪定作業およびプランタPの交換作業など)を行える。
【0031】
また、搬送コンベヤ装置20A,20Bにおいては、搬送される栽培ベンチ10に向けて水を散布する灌水装置50が設けられている。灌水装置50の配置位置は、搬送方向の中央付近、言い換えれば、搬送コンベヤ装置20A,20Bによって搬送される各栽培ベンチ10の全体に散水を行える位置とされる。尚、
図1では、灌水装置50は搬送コンベヤ装置20A,20Bのそれぞれに設けられているが、搬送コンベヤ装置20A,20Bの何れか一方のみ灌水装置50が設けられてもよい。灌水装置50を搬送コンベヤ装置20A,20Bの一方のみに設ける場合は、作業スペースから離れた側とすることが好ましい。
【0032】
続いて、本システムにおける特徴的構成について、以下の第1~第5実施形態に基づいて説明する。第1~第5実施形態に示す本システムは何れも、紫外光を照射する光源60を有し、プランタPに植えられた作物に対する紫外光の照射によって病害防除を行うことを前提としている。紫外光に含まれる紫外線は、UV-A(315nm~400nm)もしくはUV-B(280nm~315nm)の少なくとも一方を含むものとする。また、紫外光には、可視光(400nm~700nm)やUV-C(200nm~280nm)など他波長の光が含まれてもよい。
【0033】
尚、光源60は発光素子としてLED(Laser Emitting Diode)を用いることが好ましく、ここでは、複数のLED群により1つの光源60が構成されるものとする。また、以下の説明では、搬送コンベヤ装置20A,20Bを区別せずに単に搬送コンベヤ装置20と呼ぶこともある。同様に、案内装置30A,30Bを区別せずに単に案内装置30と呼び、押し出し装置40A,40Bを区別せずに単に押し出し装置40と呼ぶこともある。
【0034】
〔第1実施形態〕
図2は、第1実施形態に係る本システムを示すものであり、案内装置30による搬送領域の一部を示す側面図である。
図2に示すように、本システムにおいて、光源60は案内装置30の搬送領域、具体的には案内装置30の上方において設けられる。光源60は、図示しないフレームなどを用いて固定的に配置され、下方に向けて紫外光を照射できるようになっている。また、各栽培ベンチ10には、反射部71を備えた光路変更部材70が設けられている。光路変更部材70は、栽培ベンチ10の上面において短手方向の一方の端部(
図2の例では、プランタPの左側)に立設されており、反射部71は光路変更部材70の頂上部に設けられている。尚、栽培ベンチ10において光路変更部材70が設けられるのは、作業スペースにおける作業の邪魔とならないように、作業スペースから離れた側とすることが好ましい。第1実施形態においては、光源60および光路変更部材70が、特許請求の範囲に記載の紫外光照射機構に相当する。
【0035】
光源60を案内装置30の上方に配置することで、本システムでは、光源60がプランタPの移動の邪魔にならないようにすることできる。具体的には、光源60は、プランタPに植えられる作物の茎頂よりも上方に配置されることが好ましい。例えば、作物がイチゴであれば、光源60は、プランタPの上端から上方へ60cm以上離して配置されることが好ましい。
【0036】
作物に対して、上方の光源60から紫外光を直接照射するのみでは、葉の陰などによって照射ムラが発生し、良好な病害防除効果を得ることができない。良好な病害防除効果を得るためには、紫外光は、特に作物の葉裏に十分に照射されることが望ましい。
【0037】
このため、本システムでは、各栽培ベンチ10に光路変更部材70を設け、反射部71によって紫外光の光路を変更し、紫外光を作物の葉裏に誘導するようになっている。このとき、光路変更部材70は、当該部材が設置されている栽培ベンチ10に載っている作物だけでなく、隣にある栽培ベンチ10に載っている作物に向けても紫外光の光路を変更することができる。したがって、各作物は縦方向の両方から光路変更部材70によって光路変更された紫外光の照射を受けることができる。尚、反射部71は、反射面の下端がプランタPの上端よりも上となり、かつ、反射面の上端が作物の茎頂よりも下となるような位置とされることが好ましい。
【0038】
光源60および光路変更部材70は、
図3に示すように、栽培ベンチ10の長手方向に沿って延設される。これにより、光源60および光路変更部材70は、各栽培ベンチ10上の作物全体に対して効率よく紫外光を照射することができる。また、光路変更部材70は各栽培ベンチ10に対して1つずつ備えられるが、光源60は、本システムにおいて少なくとも1つ以上備えられていればよい。但し、光源60を複数備える場合の最大数は、案内装置30A,30B上に存在する栽培ベンチ10の最大数と同数となる。
【0039】
また、光源60を複数箇所に設ける場合には、これらは、案内装置30A,30Bの両方に分散して配置されてもよく、可能であれば一方に集中して配置されてもよい。光源60の配置に自由度がある場合は、作業スペースの作業者に紫外光が届きにくくなるように、作業スペースから離れた箇所に配置することが好ましい。
【0040】
また、光路変更部材70によって紫外光が作物の葉裏に効果的に誘導される状態は、
図2に示すように、光源60が光路変更部材70のほぼ直上に位置しているときに発生する。一方、本システムでは、上述したように、搬送コンベヤ装置20による栽培ベンチ10の搬送動作と、押し出し装置40による栽培ベンチ10の押し出し搬送動作とが交互に行われる。このため、案内装置30上の栽培ベンチ10については、停止状態(搬送コンベヤ装置20による搬送動作時)と移動状態(押し出し装置40による押し出し搬送動作時)とが交互に発生する。
【0041】
本システムにおいて、光源60が光路変更部材70のほぼ直上に位置するのは、栽培ベンチ10が停止状態にあるときでもよく、移動状態であるときでもよい。栽培ベンチ10が停止状態にあるときに光源60が光路変更部材70のほぼ直上に位置する設計とすれば、作物の葉裏に対して紫外光が照射される時間を確保しやすくなる。一方、栽培ベンチ10が移動状態にあるときに光源60が光路変更部材70のほぼ直上に位置する設計とすれば、栽培ベンチ10の移動に伴って作物への紫外光の入射角度が変化し、より照射ムラを抑制することができる。
【0042】
さらに、光源60は、本システムの稼働中、常時点灯されるものであってもよく、間欠点灯されるものであってもよい。光源60を間欠点灯する場合は、光源60が光路変更部材70のほぼ直上(もしくはその近辺の所定範囲内)に位置するときに点灯し、それ以外では消灯とする。
【0043】
尚、上記説明では、光路変更部材70による紫外光の光路変更機能を、反射部71の反射によるものとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、反射部71に代えてプリズムなどの屈折部を設け、屈折光化によって紫外光の光路変更を行うものであってもよい。但し、第1実施形態の構成では、紫外光の光路を大きな角度で変更できる反射部71の使用が好適である。
【0044】
反射部71における反射面は、平滑な鏡面であってもよく、あるいは、反射時において散乱効果が得られるように微小な凹凸を有する反射面であってもよい。反射部71によって散乱効果が得られる場合、作物に対して光強度分布の小さい均一な紫外光の照射が可能となる。また、反射部71の材質は、水や薬剤耐久性の高いものが好ましく、金属や塗装された金属、フッ素系樹脂、ガラスなどが考えられる。
【0045】
反射部71は、経時使用によって反射面が汚れると反射率が低下して、作物への紫外光照射量が低下する虞がある。このため、本システムは、反射部71に対する清掃手段を備えていることが好ましい。この清掃手段としては、
図4に示すように、灌水装置50において清掃部材80を設ける構成が考えられる。灌水装置50は、
図4に示すように、ゲート状に形成されたフレーム51に、複数の散水部52を取り付けた構成である。栽培ベンチ10は、搬送コンベヤ装置20(
図4では図示省略)によってフレーム51の内側を潜るように通過する。散水部52は、フレーム51を通過する栽培ベンチ10の作物に対して散水を行う。
【0046】
清掃部材80は、栽培ベンチ10が搬送コンベヤ装置20によって搬送される際に、反射部71の反射面と接触し、ワイパーのように反射面の汚れを拭き取る。清掃部材80は、灌水装置50におけるフレーム51に取り付けることができる。本システムは、清掃部材80を備えることで稼働中に反射部71の清掃を自動的に行うことができ、作物への紫外光照射量を一定に保つことができる。
【0047】
〔第2実施形態〕
図5は、第2実施形態に係る本システムを示すものであり、搬送コンベヤ装置20による搬送領域を示す側面図である。
図5に示すように、本システムにおいて、光源60は搬送コンベヤ装置20の搬送領域に設けられる。光源60は、ゲート状に形成されたフレーム61に対して複数取り付けられている。すなわち、フレーム61は、搬送コンベヤ装置20によって搬送される栽培ベンチ10に対してゲート状に配置され、栽培ベンチ10はフレーム61の内側を潜るように通過する。第2実施形態においては、光源60およびフレーム61が、特許請求の範囲に記載の紫外光照射機構に相当する。
【0048】
複数の光源60は、フレーム61を通過する栽培ベンチ10上のプランタPの作物に対して、それぞれ異なる方向から紫外光を照射することができる。このとき、複数の光源60の少なくとも一部(
図5では、光源60A)は、作物に対してほぼ側方から(好ましくは、僅かに斜め下から)紫外光を照射できるようにする。
【0049】
本システムでは、搬送コンベヤ装置20の搬送領域において、栽培ベンチ10上のプランタPの周囲を囲むように光源60を配置することで、光源60がプランタPの移動の邪魔にならないようにすることができる。また、複数の光源60は、それぞれ異なる方向から紫外光を照射するものであるため、作物に対して照射ムラを抑制した紫外光の照射が可能となる。特に、光源60Aによって、作物の葉裏に対しても十分な紫外光の照射が行える。
【0050】
また、本システムにおける光源60は、栽培ベンチ10がフレーム61を通過するとき、すなわち、搬送コンベヤ装置20による栽培ベンチ10の搬送動作時において、作物への紫外光照射を行うことができる。このため、光源60は、搬送コンベヤ装置20による搬送動作時に点灯され、押し出し装置40による押し出し搬送動作時には消灯される間欠点灯とされることが好ましい。
【0051】
尚、
図5では、光源60をゲート状に形成されたフレーム61に取り付けているが、フレーム61は、灌水装置50におけるフレーム51と兼用されるものであってもよい。また、光源60は、LEDなどの発光素子に対して出射側に拡散板を備え、作物に対して散乱光を照射するものとされていてもよい。
【0052】
〔第3実施形態〕
図6は、第3実施形態に係る本システムを示すものであり、案内装置30による搬送領域の一部を示す側面図である。
図6に示すように、本システムにおいて、光源60は案内装置30の搬送領域に設けられるが、第1実施形態のように固定的に配置されるものではなく、上下方向に移動可能(昇降可能)に備えられる。具体的には、光源60は、上下移動可能な可動シャフト(可動部材)62の先端(下端)に取り付けられ、可動シャフト62と共に上下動する。第3実施形態においては、光源60および可動シャフト62が、特許請求の範囲に記載の紫外光照射機構に相当する。
【0053】
本システムでは、案内装置30上の栽培ベンチ10が移動状態であるときには、光源60を上昇させ、光源60がプランタPの移動の邪魔にならない位置まで退避させる。そして、案内装置30上の栽培ベンチ10が停止状態であるときに、搬送方向に沿って隣り合う2箇所の作物の間で光源60を下降させ、作物への紫外光照射を行う。
図6は、光源60が下降している状態を示している。また、下降する光源60の最下点は、作物の茎頂よりも下とされ、下降した光源60は、作物に対してほぼ側方から(好ましくは、僅かに斜め下から)紫外光を照射できるようにする。
【0054】
光源60は、本システムの稼働中、常時点灯されるものであってもよく、間欠点灯されるものであってもよい。光源60を間欠点灯する場合は、光源60が昇降範囲の最下端にあるときのみ点灯されるものであってもよく、昇降動作中を含めて点灯されるものであってもよい(昇降動作中は光源60を点滅させてもよい)。あるいは、光源60は、昇降範囲の最下端付近で小さく上下動しながら点灯されてもよい。光源60を昇降動作中に点灯(もしくは点滅)させる場合、光源60の移動に伴って作物への紫外光の入射角度が変化し、より照射ムラを抑制することができる。
【0055】
尚、本システムにおける光源60は、紫外光の照射方向(照射角度)を変更できる構成であってもよい。この構成では、光源60を昇降動作中に点灯(もしくは点滅)させる場合に、光源60の位置に応じて紫外光の照射方向を変えることで、作物に向けて効率よく紫外光を照射できるようになる。また、光源60は、LEDなどの発光素子に対して出射側に拡散板を備え、作物に対して散乱光を照射するものとされていてもよい。
【0056】
〔第4実施形態〕
図7は、第4実施形態に係る本システムを示すものであり、案内装置30による搬送領域の一部を示す側面図である。
図7に示すように、本システムにおいては、案内装置30の上方に光源60および光路変更部材72が設けられる。光路変更部材72は、両主面に反射面を有する板状部材であり、両主面が搬送方向と直交する鉛直面となるように配置される。また、光路変更部材72は、上下方向に移動可能(昇降可能)に備えられる。さらに、光路変更部材72は、搬送方向においては、2つの光源60の間に挟まれるように位置する。第4実施形態においては、光源60および光路変更部材72が、特許請求の範囲に記載の紫外光照射機構に相当する。
【0057】
本システムでは、案内装置30上の栽培ベンチ10が移動状態であるときには、光路変更部材72を上昇させ、光路変更部材72がプランタPの移動の邪魔にならない位置まで退避させる。そして、案内装置30上の栽培ベンチ10が停止状態であるときに、搬送方向に沿って隣り合う2箇所の作物の間で光路変更部材72を下降させる。
図7は、光路変更部材72が下降している状態を示している。
【0058】
光源60は、本システムに対して固定的に取り付けられるものであってもよく、光路変更部材72と一体的に昇降するものであってもよい。但し、栽培ベンチ10が停止状態であるとき(光路変更部材72が下降するとき)の光源60の位置は作物の上方であるため、光源60が昇降可能とされる場合でも、最下端の位置は作物よりも上方(作物に接触しない位置)とされる。
【0059】
光源60は、光路変更部材72に向かって斜め下方向に紫外光を照射できるものであり、光路変更部材72を下降させた状態で光源60を点灯すると、光源60から照射される紫外光を光路変更部材72によって反射させ、作物に対してほぼ側方から(好ましくは、僅かに斜め下から)照射することができる。また、本システムでは、光源60から照射される紫外光の一部を、作物に対して上方から直接照射することも可能である。
【0060】
光源60は、本システムの稼働中、常時点灯されるものであってもよく、間欠点灯されるものであってもよい。光源60を間欠点灯とする場合、光路変更部材72が昇降範囲の最下端にあるときのみ点灯されるものであってもよく、昇降動作中を含めて点灯されるものであってもよい(昇降動作中は光源60を点滅させてもよい)。また、光源60を昇降可能とし、かつ、昇降動作中に点灯(もしくは点滅)させる場合、光源60の位置に応じて紫外光の照射方向(照射角度)を変更できる構成であってもよい。
【0061】
光路変更部材72における反射面は、平滑な鏡面であってもよく、あるいは、反射時において散乱効果が得られるように微小な凹凸を有する反射面であってもよい。光路変更部材72の反射によって散乱効果が得られる場合、作物に対して光強度分布の小さい均一な紫外光の照射が可能となる。また、光路変更部材72の材質は、水や薬剤耐久性の高いものが好ましく、金属や塗装された金属、フッ素系樹脂、ガラスなどが考えられる。あるいは、光路変更部材72は、布状の基材を用いて、その両面を反射面とするものであってもよい。光路変更部材72において布状の基材を用いる場合、光路変更部材72に揺らぎが生じ、この揺らぎが反射光の変化をもたらすため、作物に対してより照射ムラの少ない紫外光照射が行える。
【0062】
〔第5実施形態〕
図8は、第5実施形態に係る本システムを示すものであり、案内装置30による搬送領域の一部を示す側面図である。、本システムにおいては、栽培ベンチ10が、上下方向に光を通過させる隙間を有する構成とされる。例えば、
図8に示すように、栽培ベンチ10は、栽培ベンチ10の長手方向に延びる複数の支持パイプ11を有し、支持パイプ11上にプランタPを載置する構成とすることができる。また、本システムにおいて、光源60は、案内装置30の下方において設けられる。第5実施形態においては、光源60が、特許請求の範囲に記載の紫外光照射機構に相当する。
【0063】
光源60は、斜め上方向に紫外光を照射できるものとされる。これにより、光源60から照射される紫外光は、栽培ベンチ10を通過して(支持パイプ11の間を通って)、作物に照射される。このときの紫外光は、作物の葉裏に対して効果的に照射される。
【0064】
本システムでは、光源60がプランタPのほぼ真下にある場合には、作物への紫外光照射は困難であるため、光源60は、2つのプランタPの間に位置するときのみ点灯を行う間欠点灯とされることが好ましい。また、光源60が作物への紫外光照射を行うのは、案内装置30上の栽培ベンチ10が停止状態にあるときでもよく、移動状態であるときでもよい。
【0065】
さらに、本システムでは、案内装置30上方に、水平面である反射面を有する反射板73が設けられてもよい。この反射板73は、作物に照射されずに上に抜けた紫外光を下方に折り返し反射することができ、光源60から照射される紫外光の有効利用を図ることができる。
【0066】
〔その他〕
本システムでは、特に作物の葉裏へ紫外光の照射量(紫外線光量)を増やすことができるが、この紫外線照射によって十分な病害防除効果を得るには、作物の葉裏に届く紫外線光量が1日当たり0.1kJ/m2以上であることが好ましい。また、作物への過剰な紫外線照射は、作物への悪影響を生じる場合もある。このため、作物の茎頂に届く紫外線光量は、1日当たり2.0kJ/m2以下であることが好ましい。
【0067】
ここで、紫外線光量は、
(紫外線光量)=(光源数)×(照度)×(合計照射時間)
の式によって決定される。
【0068】
(光源数)は本システムの設計時に決定されるものであるが、(照度)は設備の経年劣化によって変化する可能性がある。また、(照度)は、(距離)と(光源の照射強度)によって決まる。このため、本システムでは、(照度)や(光源の照射強度)を計測し、その計測値によって(照度)や(光源の照射強度)をフィードバック制御して(紫外線光量)を適正に維持することができる。あるいは、(照度)や(光源の照射強度)の計測値に応じて(合計照射時間)を修正することでも、(紫外線光量)を適正に維持することができる。尚、(合計照射時間)は、(ベンチ移動中照射時間)と(ベンチ停止中照射時間)との和に(光源数)を乗算したものとなる。また、(ベンチ移動中照射時間)および(ベンチ停止中照射時間)は栽培ベンチ10の移動速度の影響もうけるものであり、本システムでは、栽培ベンチ10の移動速度を調整することによって(合計照射時間)を変更することも可能である。光源60の照射機能は本システムの機能の一部として実装されており、(光源の照射強度)や(照射時間)の設定は本システムの制御装置で行うことができる。
【0069】
また、本システムにおける光源60による紫外光照射は、特定の時間帯に行うものであってもよい。この場合の紫外光照射は、日光の照射が無い時間帯、例えば、日没以降から日の出3時間前までの時間帯などに行うことが好ましい。さらに、本システムの稼働中に、何らかのエラーによって栽培ベンチ10の循環移動の停止が検知された場合、光源60による紫外光照射を中止するようにしてもよい。
【0070】
さらには、本システムにおいて、作物の生育状態を監視するカメラシステムを追加し、この監視によって病害のリスクが低いと判断された場合は、紫外光の照射量を低減したり、照射予定をキャンセルしたりすることも考えられる。尚、作物の生育状態は、例えば以下の指標により判断できる。
・葉:長軸の長さ、短軸の長さ、展開角度、色、形(長短比)、展開面積、葉数、病変など
・葉柄:長さ、角度、色、病変など
・草高:高さ
・花:長軸長さ、展開角度、色、花数、病変など
・顎:長軸長さ、色、病変など
・果実:長軸の長さ、短軸の長さ、展開角度、色、形(長短比)、果数、病変など
・果梗:長さ、角度、色、病変など
・クラウン:長軸の長さ、短軸の長さ、展開角度、色、形(長短比)、病変など
作物の生育状態の判断においては、上記個々の項目だけでなく、空間内変動や時間変動について加味してもよい。
【0071】
また、作物の状態だけでなく、地上部環境、地下部環境や栽培環境も加味して作物の生育状態を判断してもよい。尚、これらの環境については、例えば以下の指標により判断できる。
・地上部環境:気温、湿度、日射、二酸化炭素濃度、風向き、風量など
・地下部環境:地温、水分率、粒度分布、硬度、培地量、化学的特性、生物的特性など
・栽培環境:品種、栽培方式、栽培日数など
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0072】
10 栽培ベンチ
11 支持パイプ
20,20A,20B 搬送コンベヤ装置(横搬送装置)
30,30A,30B 案内装置(縦搬送装置)
31 案内レール
40,40A,40B 押し出し装置
50 灌水装置
51 フレーム
52 散水部
60,60A 光源
61 フレーム
62 可動シャフト(可動部材)
70 光路変更部材
71 反射部
72 光路変更部材
73 反射板
80 清掃部材
P プランタ