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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050374
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20240403BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20240403BHJP
   H01L 21/8238 20060101ALI20240403BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20240403BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H01L27/04 H
H01L29/78 618B
H01L29/78 613Z
H01L27/092 A
H01L27/088 E
H01L27/088 331E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210337
(22)【出願日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2022156545
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 勉
(72)【発明者】
【氏名】原田 博文
【テーマコード(参考)】
5F038
5F048
5F110
【Fターム(参考)】
5F038AZ08
5F038BH16
5F038CA16
5F038EZ20
5F048AC01
5F048AC03
5F048BA01
5F048BA16
5F048BD10
5F048CB01
5F048CB03
5F048CB04
5F048CB10
5F110AA23
5F110BB09
5F110BB11
5F110CC07
5F110GG01
5F110NN02
5F110NN74
5F110QQ19
(57)【要約】
【課題】チップ面積の増加を抑制し、かつ出力トランジスタの温度上昇による誤動作の発生を抑制することができる半導体装置の提供。
【解決手段】
半導体装置10は、P型半導体基板101と、P型半導体基板101の表面に形成された出力トランジスタ140と、出力トランジスタ140よりも上層に形成された第1の絶縁膜103と、第1の絶縁膜103の上に形成された金属配線膜146、147と、第1の絶縁膜103及び前記金属配線膜146、147の上に形成された第2の絶縁膜104と、第2の絶縁膜104の上に形成された感熱素子110aとを有し、感熱素子110aは、酸化物半導体膜を用いた薄膜トランジスタとした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の表面に形成された出力トランジスタと、
前記出力トランジスタよりも上層に形成された第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜の上に形成された金属配線膜と、
前記第1の絶縁膜及び前記金属配線膜の上に形成された第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜の上に形成された感熱素子と、
を有し、
前記感熱素子は、酸化物半導体膜を用いた薄膜トランジスタであることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記感熱素子は、並列に接続された前記薄膜トランジスタを複数個備え、平面視において、前記出力トランジスタの面積よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記感熱素子は、平面視において前記出力トランジスタの少なくとも一部が重なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LDOやDC-DCコンバータなど、電子機器へ数100mA以上の大電流を供給する半導体装置は、その電流を制御するための出力トランジスタを備えている。出力トランジスタにそのような大電流が流れると、その電流量とチャネル抵抗の積に基づくジュール熱が発生する場合がある。このような場合には、出力トランジスタの温度が上昇し、半導体装置は意図しない誤動作が発生するときがある。
この出力トランジスタの温度上昇による半導体装置の誤動作の発生を抑制するため、大電流を供給する半導体装置は、一定の温度上昇を検知する感熱素子を備えることが多い。そして、この感熱素子の検出信号を元に出力トランジスタの動作を制御する過熱保護回路によって出力トランジスタの誤動作の発生を抑制する。
【0003】
感熱素子の一例としては、出力トランジスタの上に絶縁膜を形成し、その上に多結晶シリコンダイオードを形成するものが提案されている(例えば、特許文献1など参照)。この感熱素子は、多結晶シリコンダイオードの順方向に一定の電流を流した時の順方向電圧が、温度に依存して変化することを検出して出力トランジスタの動作を制御することで、半導体装置の誤動作の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-236709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一つの側面では、チップ面積の増加を抑制し、かつ出力トランジスタの温度上昇による誤動作の発生を抑制することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態における半導体装置は、
半導体基板と、
前記半導体基板に形成された出力トランジスタと、
前記出力トランジスタの上に形成された第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜の上に形成された金属層と、
前記第1の絶縁膜及び前記金属層の上に形成された第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜の上に形成された感熱素子と、
を有し、
前記感熱素子は、酸化物半導体膜を用いた薄膜トランジスタである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの側面によれば、チップ面積の増加を抑制し、かつ出力トランジスタの温度上昇による誤動作の発生を抑制することができる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態における半導体装置を示す概略回路図である。
図2図2は、第1の実施形態における半導体装置が有する薄膜トランジスタと出力トランジスタの概略断面図である。
図3図3は、第2の実施形態における半導体装置を示す概略回路図である。
図4図4は、第2の実施形態における半導体装置が有する薄膜トランジスタと出力トランジスタの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態における半導体装置は、以下の知見に基づくものである。
特許文献1に記載された感熱素子は、多結晶シリコンダイオードを用いるため、多結晶シリコン膜の形成時の熱により融点が比較的低い金属配線膜に影響を及ぼさないよう、金属配線膜よりも下層に多結晶シリコンダイオードを形成する場合が多い。このような場合には、出力トランジスタを他の半導体素子などと接続する金属配線膜やコンタクトホールの形成予定領域を避けて、多結晶シリコンダイオードを配置するときがある。その結果、平面視において、多結晶シリコンダイオードを出力トランジスタと離間して別の領域に形成すると、出力トランジスタの温度検出精度が低下してしまう。
【0010】
そこで、本発明の一実施形態における半導体装置は、感熱素子形成時の熱が金属配線膜に影響を及ぼさないよう、感熱素子を400℃以下の低温で形成できる酸化物半導体膜を用いた薄膜トランジスタとし、金属配線膜よりも上層に形成するようにした。
これにより、この半導体装置は、平面視において、出力トランジスタと重なる位置に配置でき、出力トランジスタとの距離を近くすることで温度検出精度が向上し、誤動作の発生を抑制することができる。
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための各実施形態について詳細に説明する。
なお、図面においては、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
また、図面に示すX軸、Y軸及びZ軸は互いに直交するものとする。X軸方向を「幅方向」、Y軸方向を「奥行き方向」、Z軸方向を「高さ方向」又は「厚さ方向」と称する場合がある。各膜の+Z方向側の面を「表面」又は「上面」、-Z方向側の面を「裏面」又は「下面」と称する場合がある。
さらに、図面は模式的なものであり、幅、奥行き及び厚さの比率などは示したとおりではない。複数の膜若しくは層、又はこれらを構造的に組み合わせて得られる半導体素子の数量、位置、形状、構造、大きさなどは、以下に示す実施形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数量、位置、形状、構造、大きさなどにすることができる。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における半導体装置を示す概略回路図である。
第1の実施形態における半導体装置10は、大電流を供給するため、一部が発熱するものである。この半導体装置10は、過熱保護回路30と、出力トランジスタであるP型MOSトランジスタ140とを有する。
過熱保護回路30は、電流源150と、薄膜トランジスタ110aと、基準電圧源120と、コンパレータ130とを有する。
過熱保護回路30は、P型MOSトランジスタ140の温度上昇を検出すると、P型MOSトランジスタ140をオフにして出力電流を遮断する機能を有する。
【0013】
半導体装置10は、VDD端子-VSS端子間に電源電圧が印加される。
電流源150は、薄膜トランジスタ110aのドレインDに電流を供給する。薄膜トランジスタ110aのゲートG1はドレインDと接続されている。コンパレータ130は、薄膜トランジスタ110aのドレインDの電圧VDと基準電圧Vrefとを比較し、比較結果に応じた検出信号をP型MOSトランジスタ140のゲートG2に入力する。
【0014】
通常は、薄膜トランジスタ110aのドレインDの電圧VDの方が基準電圧Vrefより高いが、P型MOSトランジスタ140が発熱し、薄膜トランジスタ110aが所定の温度になると、ドレインDの電圧VDが基準電圧Vrefより低くなる。それにより、コンパレータ130の出力が反転し、ハイレベルを出力する。コンパレータ130の出力はP型MOSトランジスタ140のゲートG2に接続しているので、P型MOSトランジスタ140をオフにして出力電流を遮断する。
【0015】
図2は、第1の実施形態における半導体装置が有する薄膜トランジスタと出力トランジスタの概略断面図である。
半導体装置10は、P型半導体基板101と、N型ウェル領域102と、P型MOSトランジスタ140と、N型MOSトランジスタ121、151と、絶縁膜103と、金属配線膜146、147と、絶縁膜104と、薄膜トランジスタ110aとを備える。
【0016】
半導体基板としてのP型半導体基板101は、ウエハ状のP型シリコン半導体基板である。
N型ウェル領域102は、P型半導体基板101の表面における所定の範囲にN型不純物を注入して形成されている。
【0017】
出力トランジスタであるP型MOSトランジスタ140は、N型ウェル領域102の表面及びその近傍に形成されている。このP型MOSトランジスタ140は、大電流を供給するため発熱する。
P型MOSトランジスタ140は、P+ソース領域141aと、P+ドレイン領域142aと、ゲート絶縁膜143aと、ゲート電極144aとにより形成されている。
P+ソース領域141a及びP+ドレイン領域142aは、平面視した際にゲート電極144aを挟むように形成されている。
【0018】
N型MOSトランジスタ121、151は、P型半導体基板101の表面に形成されている。このN型MOSトランジスタ121は、過熱保護回路30の基準電圧源120の一部である。また、N型MOSトランジスタ151は、過熱保護回路30の電流源150の一部である。
【0019】
第1の絶縁膜としての絶縁膜103は、P型MOSトランジスタ140の上層に形成されている。絶縁膜103は、N型ウェル領域102、P+ソース領域141a及びP+ドレイン領域142aを含むP型半導体基板101の上面全域を覆うように形成されている。
【0020】
金属配線膜146、147は、絶縁膜103の上にアルミニウム合金で形成されている。この金属配線146、147は、一端がコンタクトホール145を介してP+ソース領域141a及びP+ドレイン領域142aにそれぞれ接続されている。また、金属配線膜146、147の他端は、それぞれP+ソース領域141a及びP+ドレイン領域142aから半導体装置10内の他の図示しない半導体素子などに接続さていれる。
【0021】
第2の絶縁膜としての絶縁膜104は、金属配線膜146、147の上面及び側面を覆うように、絶縁膜103の上面全域に形成されている。この絶縁膜104は、エッチバックやCMP(Chemical Mechanical Polishing)法で平坦化されている。
【0022】
感熱素子である薄膜トランジスタ110aは、第2の絶縁膜104の上に形成されており、P型MOSトランジスタ140の上方に位置する。
薄膜トランジスタ110aは、ゲート電極111a、第3の絶縁膜としての絶縁膜105、酸化物半導体膜112a、ドレイン電極113a及びソース電極114aを備えており、酸化物半導体112aの上にはパッシベーション膜16が設けられている。
【0023】
薄膜トランジスタ110aは、P型MOSトランジスタ140が発熱し、酸化物半導体112aの温度が上昇すると、ソース-ドレイン間に流れる電流が変化するため、発熱を検知することができる。
ここで薄膜トランジスタ110aは、平面視において、P型MOSトランジスタ140のP+ソース領域141a、P+ドレイン領域142a、ゲート電極144aの、少なくとも一部と重なるように配置することで、発熱を検知する温度検出精度を高めることができる。
【0024】
この薄膜トランジスタ110aには400℃以下の低温で形成できる酸化物半導体112aを用いることで、製造時の熱処理の温度を低くすることができるため、その下層に存在するアルミニウム合金(融点660℃程度)の金属配線膜146、147を含む各種回路に対し、熱処理の影響を低減できる。これにより、出力トランジスタであるP型MOSトランジスタ140の上方に薄膜トランジスタ110aの少なくとも一部を重ねるように形成することができるため、チップ面積を削減することができる。
【0025】
本実施形態における半導体装置10によれば、感熱素子である薄膜トランジスタ110aをP型MOSトランジスタ140の上に形成しているので、チップ面積の増加を抑制し、かつ大電流を供給する出力トランジスタの発熱を検知する温度検出精度を高めることができる。
【0026】
本実施形態では、酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタを感熱素子とすることで、金属配線および第2の絶縁膜104の上層に配置することを特徴とする。このため、出力トランジスタを他の半導体素子などと接続する金属配線やコンタクトホールと平面視において重なるように感熱素子を配置することが可能となり、チップ面積の増大を抑制することができる。また、平面視において出力トランジスタと重なるように配置することで、出力トランジスタの発熱を検知する温度検出精度を高めることができる。
【0027】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態における半導体装置を示す概略回路図である。
第2の実施形態における半導体装置20は、過熱保護回路40と、出力トランジスタであるP型MOSトランジスタ240とを有する。
【0028】
過熱保護回路40は、薄膜トランジスタ210a、210b及び210cを備えている。
薄膜トランジスタ210a、210b、210cは、並列に接続されており、各薄膜トランジスタに流れる電流の和で、電圧VDが決まる。その他は、第1の実施形態と同様である。
【0029】
図4は、第2の実施形態における半導体装置が有する薄膜トランジスタと出力トランジスタの概略断面図である。
第2の実施形態における半導体装置20は、出力トランジスタであるP型MOSトランジスタ240は、ソース領域241a、ドレイン領域242及びゲート電極243aを複数配置しており、感熱素子である薄膜トランジスタ210a、210b、210cを備えている。
【0030】
薄膜トランジスタ全体の幅Sは、P型MOSトランジスタ240の幅よりも大きく、P型MOSトランジスタ240の奥行きよりも大きい。薄膜トランジスタ全体の面積は、P型MOSトランジスタ240より大きく、P型MOSトランジスタ240の上面全体を覆うように配置されている。その他は、第1の実施形態と同様である。
【0031】
特許文献1に記載された感熱素子は、出力トランジスタと隣接する横方向からの熱拡散のみを元に温度を推定するに過ぎない。
一方、第二の実施形態の感熱素子は、出力トランジスタの上面からの縦方向の熱拡散のみならず、出力トランジスタの全ての方向の辺からの熱拡散を含めて温度を推定する事ができる。従って、第二の実施形態の感熱素子は、いずれの箇所において異常な発熱が発生した場合においても温度変動を高精度に検出できるという効果を有する。
【0032】
以上説明したように、本発明の一実施形態における半導体装置は、半導体基板の表面に形成された出力トランジスタよりも上層に、第1の絶縁膜、金属配線膜、第2の絶縁膜及び感熱素子の順に形成されている。この感熱素子は、酸化物半導体膜を用いた薄膜トランジスタとした。これにより、この半導体装置は、出力トランジスタの上方に感熱素子を配置できるため、チップ面積の増加を抑制し、かつ大電流を供給する出力トランジスタの温度上昇による誤動作の発生を抑制することができる。
【0033】
なお、金属配線膜は、各実施形態では1つの層に形成するようにしたが、これに限ることなく複数の層に形成するようにしてもよい。
また、各実施形態では、熱源として大電流を供給するための出力トランジスタとしたが、これに限ることなく、動作時に発熱するものであればよい。
【符号の説明】
【0034】
10、20 半導体装置
30、40 過熱保護回路
101 P型半導体基板
102 N型ウェル領域
103 絶縁膜(第1の絶縁膜)
104 絶縁膜(第2の絶縁膜)
105 絶縁膜(第3の絶縁膜)
106 パッシベーション膜
110a、210a、210b、210c 薄膜トランジスタ(感熱素子)
111a、211a、211b、211c 薄膜トランジスタのゲート電極
112a、212a、212b、212c 酸化物半導体膜
113a、213a 薄膜トランジスタのドレイン電極
114a、214a、214c 薄膜トランジスタのソース電極
120 基準電圧源
130 コンパレータ
140、240 P型MOSトランジスタ(出力トランジスタ)
141a、241a P型MOSトランジスタのソース領域
142a、242a P型MOSトランジスタのドレイン領域
143a、243a P型MOSトランジスタのゲート絶縁膜
144a、244a P型MOSトランジスタのゲート電極
145 コンタクトホール
146、147 金属配線膜
150 電流源
Vref 基準電圧
図1
図2
図3
図4