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特開2024-50390アミド系エラストマー発泡粒子、アミド系エラストマー発泡成形体、及び当該発泡成形体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050390
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】アミド系エラストマー発泡粒子、アミド系エラストマー発泡成形体、及び当該発泡成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/18 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
C08J9/18 CFG
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053118
(22)【出願日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2022155999
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】景山 大地
(72)【発明者】
【氏名】権藤 裕一
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA71
4F074BA32
4F074BA37
4F074CA34
4F074CB52
4F074DA02
4F074DA15
4F074DA24
4F074DA33
4F074DA35
4F074DA36
4F074DA37
4F074DA40
4F074DA53
4F074DA58
(57)【要約】
【課題】軽量、高い反発性、軟質性の少なくとも一つを有するアミド系エラストマー発泡成形体と、当該発泡成形体を製造するためのアミド系エラストマー発泡粒子の提供。
【解決手段】アミド系エラストマー樹脂を基材樹脂として含む、アミド系エラストマー発泡粒子であって、前記アミド系エラストマー樹脂を50~100質量%含有し、前記アミド系エラストマー樹脂は40以下のショアD硬度を有し、前記アミド系エラストマー樹脂は、温度分散条件での動的粘弾性測定において得られる複素粘度値を一次微分処理し、得られる微分値から極小値を特定し、その極小値の絶対値が1.0E+05以下であり、その極小値における温度が134℃以下である、発泡粒子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミド系エラストマー樹脂を基材樹脂として含む、アミド系エラストマー発泡粒子であって、
前記アミド系エラストマー樹脂を50~100質量%含有し、
前記アミド系エラストマー樹脂は40以下のショアD硬度を有し、
前記アミド系エラストマー樹脂は、温度分散条件での動的粘弾性測定において得られる複素粘度値を一次微分処理し、得られる微分値から極小値を特定し、その極小値の絶対値が1.0E+05以下であり、その極小値における温度が134℃以下である、
発泡粒子。
【請求項2】
前記アミド系エラストマー樹脂は、ハードセグメントとしてのポリアミドブロックとソフトセグメントとしてのポリエーテルブロックとを有する、請求項1に記載の発泡粒子。
【請求項3】
前記アミド系エラストマー樹脂が38以下のショアD硬度を有する、請求項1又は2に記載の発泡粒子。
【請求項4】
前記極小値における絶対値が8.0E+04以下である、請求項1又は2に記載の発泡粒子。
【請求項5】
前記極小値における温度が133℃以下である、請求項1又は2に記載の発泡粒子。
【請求項6】
アミド系エラストマー樹脂を基材樹脂としたアミド系エラストマー発泡成形体であって、前記アミド系エラストマー樹脂を50~100質量%含有し、
前記アミド系エラストマー樹脂は40以下のショアD硬度を有し、
前記アミド系エラストマー樹脂は、温度分散条件での動的粘弾性測定において得られる複素粘度値を一次微分処理し、得られる微分値から極小値を特定し、その極小値の絶対値が1.0E+05以下であり、その極小値における温度が134℃以下である、
発泡成形体。
【請求項7】
前記アミド系エラストマー樹脂は、ハードセグメントとしてのポリアミドブロックとソフトセグメントとしてのポリエーテルブロックとを有する、請求項6に記載の発泡成形体。
【請求項8】
前記アミド系エラストマー樹脂が38以下のショアD硬度を有する、請求項6又は7に載の発泡成形体。
【請求項9】
前記極小値における絶対値が8.0E+04以下である、請求項6又は7に記載の発泡成形体。
【請求項10】
前記極小値における温度が133℃以下である、請求項6又は7に記載の発泡成形体。
【請求項11】
反発弾性率が70%以上である、請求項6又は7に記載の発泡成形体。
【請求項12】
密度が0.20g/cm以下である、請求項6又は7に記載の発泡成形体。
【請求項13】
アスカーC硬度が38以下である、請求項6又は7に記載の発泡成形体。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の発泡粒子を、型に充填し、加熱し、及び発泡させる、発泡成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミド系エラストマー樹脂を基材樹脂として含む、アミド系エラストマー発泡粒子、アミド系エラストマー樹脂を基材樹脂とした軽量で反発性の高いアミド系エラストマー発泡成形体、及び当該発泡成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝材や梱包材として樹脂発泡成形体が汎用されている。ここで、発泡成形体は、樹脂製の発泡性粒子を加熱して発泡(予備発泡)させて発泡粒子(予備発泡粒子)を得、得られた発泡粒子を金型のキャビティ内に充填した後、二次発泡させて発泡粒子同士を熱融着により一体化させることで製造されている。
【0003】
エラストマーは反発弾性に優れており、また、機械的強度も高いため、エンジニアリングエラストマーとして位置付けられ、生活用品、電化製品部品、スポーツ用品、自動車用部品、建築土木部材等の様々な用途での使用が検討されている。このエラストマーを発泡させた成形体は、軽量且つエラストマーの本来有する高い反発弾性を有することが期待されるため、エラストマー樹脂から調製された発泡粒子を型内で融着及び発泡させて成形する方法等が報告されている(例えば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2019-510840号公報
【特許文献2】特表2019-518859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に記載された発泡成形体の密度は0.2g/cm程度であることから、発泡成形体として軽いものとはいえず、より軽量なエラストマー発泡成形体が要望されていた。
【0006】
特許文献1に記載された発泡成形体の反発弾性率は最大で66%であり、エラストマーが本来有している反発性が十分に発揮されているとはいえず、より反発性の高いエラストマー発泡成形体が要望されていた。
【0007】
また、発泡成形体が硬いとクッション性を求められる用途において使用し難くなるため、より軟質な発泡成形体が要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題の少なくとも一つを解決すべく、鋭意検討した結果、軟質であって、かつ動的粘弾性測定において特性の性質を示すアミド系エラストマーを基材樹脂として含む発泡粒子を型内発泡することによって、硬すぎず、軽量で、高い反発弾性率を有するアミド系エラストマー発泡成形体が得られることを見出した。本発明はかかる知見に基づくものであり、代表的な本発明は以下の通りである。
【0009】
項1.
アミド系エラストマー樹脂を基材樹脂として含む、アミド系エラストマー発泡粒子であって、
前記アミド系エラストマー樹脂を50~100質量%含有し、
前記アミド系エラストマー樹脂は40以下のショアD硬度を有し、
前記アミド系エラストマー樹脂は、温度分散条件での動的粘弾性測定において得られる複素粘度値を一次微分処理し、得られる微分値から極小値を特定し、その極小値の絶対値が1.0E+05以下であり、その極小値における温度が134℃以下である、
発泡粒子。
項2.
前記アミド系エラストマー樹脂は、ハードセグメントとしてのポリアミドブロックとソフトセグメントとしてのポリエーテルブロックとを有する、項1に記載の発泡粒子。
項3.
前記アミド系エラストマー樹脂が38以下のショアD硬度を有する、項1又は2に記載の発泡粒子。
項4.
前記極小値における絶対値が8.0E+04以下である、項1~3のいずれか一項に記載の発泡粒子。
項5.
前記極小値における温度が133℃以下である、項1~4のいずれか一項に記載の発泡粒子。
項6.
アミド系エラストマー樹脂を基材樹脂としたアミド系エラストマー発泡成形体であって、前記アミド系エラストマー樹脂を50~100質量%含有し、
前記アミド系エラストマー樹脂は40以下のショアD硬度を有し、
前記アミド系エラストマー樹脂は、温度分散条件での動的粘弾性測定において得られる複素粘度値を一次微分処理し、得られる微分値から極小値を特定し、その極小値の絶対値が1.0E+05以下であり、その極小値における温度が134℃以下である、
発泡成形体。
項7.
前記アミド系エラストマー樹脂は、ハードセグメントとしてのポリアミドブロックとソフトセグメントとしてのポリエーテルブロックとを有する、項6に記載の発泡成形体。
項8.
前記アミド系エラストマー樹脂が38以下のショアD硬度を有する、項6又は7に載の発泡成形体。
項9.
前記極小値における絶対値が8.0E+04以下である、項6~8のいずれか一項に記載の発泡成形体。
項10.
前記極小値における温度が133℃以下である、項6~9のいずれか一項に記載の発泡成形体。
項11.
反発弾性率が70%以上である、項6~10のいずれか一項に記載の発泡成形体。
項12.
密度が0.20g/cm以下である、項6~11のいずれか一項に記載の発泡成形体。
項13.
アスカーC硬度が38以下である、項6~12のいずれか一項に記載の発泡成形体。
項14.
請求項1~5のいずれか一項に記載の発泡粒子を、型に充填し、加熱し、及び発泡させる、発泡成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硬すぎず、軽量で、反発弾性率の高い、アミド系エラストマー発泡成形体、この発泡成形体の製造に有用な発泡粒子、この発泡粒子を使用したアミド系エラストマー発泡成形体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、基材樹脂を温度分散条件での動的粘弾性測定に供した結果を示す。横軸は温度(℃)、縦軸は複素粘度(Pa・s)を示す。
図2図2は、図1に示した複素粘度値と複素粘度値を一次微分した値を示す。横軸は温度(℃)、左縦軸は複素粘度(Pa・s)、右縦軸は一次微分した値を示す。
図3図3は、実施例及び比較例にて確認された一次微分値の極小値における温度(横軸(℃))及び複素粘度値を一次微分値した時の極小値の絶対値(縦軸)とに基づく散布図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)アミド系エラストマー発泡粒子
アミド系エラストマー発泡粒子(本明細書において、単に「発泡粒子」と称することがある。)は、アミド系エラストマー樹脂を基材樹脂として含む。発泡粒子におけるアミド系エラストマー樹脂の含有量は発泡粒子の質量に対し、例えば50~100質量%、70~100質量%とでき、80~100質量%が好ましく、90~100質量%がより好ましい。アミド系エラストマー樹脂は、1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
アミド系エラストマー樹脂は、ハードセグメントとしてのポリアミドブロックとソフトセグメントとしてのポリエーテルブロックとを有する共重合体樹脂であることが好ましい。
【0014】
ハードセグメントを構成するポリアミドブロックとしては、ε-カプロラクタム、11-アミノウンデカン酸、12-アミノラウリン酸などの重縮合ポリアミド、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などのジカルボン酸とヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、メチルペンタジアミンなどのジアミンとの共縮重合ポリアミドなどに由来するポリアミド構造が挙げられる。ポリアミドブロックは、これらポリアミド構造を構成する単位の組み合わせでもよい。
【0015】
ソフトセグメントを構成するポリエーテルブロックとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに由来するポリエーテル構造が挙げられる。ポリエーテルブロックは、これらポリエーテル構造を構成する単位の組み合わせでもよい。
【0016】
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックはランダムに分散していてもよい。
【0017】
ブロック共重合体樹脂としては、環境負荷低減の観点及び発泡成形体の反発弾性率の向上の観点から、ひまし油由来のブロック共重合体樹脂が好ましく、ひまし油から得られた11-アミノウンデカン酸がポリアミドブロックの形成に用いられている植物由来の樹脂(ひまし油由来ポリアミド11)を採用することがより好ましい。また、ひまし油から得られた11-アミノウンデカン酸をポリアミドブロックの形成に用いるときは、ポリテトラメチレングリコールが、ポリエーテルブロックの形成に用いられることが発泡成形体の反発弾性率の向上の観点から好ましい。
【0018】
基材樹脂として、温度分散条件で特定の粘弾性挙動を有するアミド系エラストマー樹脂を使用することによって、軽量で反発性の高い発泡成形体を製造できる。例えば、温度分散条件での動的粘弾性測定において得られる複素粘度値を一次微分処理し、得られる微分値から極小値を特定し、その極小値の絶対値が1.0E+05以下であり、その極小値を示す温度が134℃以下である、アミド系エラストマー樹脂を使用することができる。
【0019】
(極小値)
極小値の絶対値は、例えば1.0E+05以下(10万以下)であってよく、好ましくは9.0E+04以下(9万以下)、より好ましくは8E+04以下(8万以下)、さらに好ましくは7.5E+04以下(7.5万以下)である。極小値の絶対値は、例えば0.0E+00以上、1.0E+02以上等であってよい。極小値の絶対値は、例えば0.0E+00~1.0E+05、0.0E+00~9.0E+04、0.0E+00~8.0E+04、0.0E+00~7.5E+04、1.0E+02~1.0E+05、1.0E+02~9.0E+04、1.0E+02~8.0E+04、1.0E+02~7.5E+04、等であってよい。
【0020】
極小値における温度は、例えば134℃以下であってよく、好ましくは133℃以下、より好ましくは132℃以下、さらに好ましくは130℃以下であり、最も好ましくは127℃以下である。極小値における温度は、例えば65℃以上、70℃以上、75℃以上等であってよい。極小値における温度は、65℃~134℃、70℃~134℃、75℃~134℃、65℃~133℃、70℃~133℃、75℃~133℃、65℃~132℃、70℃~132℃、75℃~132℃、65℃~130℃、70℃~130℃、75℃~130℃、65℃~127℃、70℃~127℃、75℃~127℃等であってよい。
【0021】
前記範囲内の極小値の絶対値及び極小値における温度を有するアミド系エラストマー樹脂を基材樹脂として使用することによって、前述したように、軽量で反発性の高い発泡成形体を製造できる。
【0022】
極小値は、次のようにして特定できる。アミド系エラストマー樹脂を温度分散条件での動的粘弾性測定に供して複素粘度値を得る。得られた複素粘度値を一次微分して一次微分値を得る。一次微分値を縦軸とし、温度を横軸としてグラフ(例えば図2)を作成したときに最も小さい一次微分値が極小値である。図2において極小値は68541であり、極小値を示す温度は82℃である。
【0023】
(複素粘度の測定)
複素粘度は、JIS K 7244-1に従って測定できる。例えば、次のようにして特定できる。試料となる樹脂を熱プレス機にてプレスし、直径25mm、厚さ3mmの円板状サンプルを作製する。次に、動的粘弾性測定装置(例えば、PHYSICA MCR301(Anton Paar社製))のプレートを220℃に加熱し、加熱されたプレート上にサンプルをセットし、窒素雰囲気下にて5分間加熱し、サンプルを溶融させる。プレート間のギャップを2.0mmに設定し、はみ出した樹脂を除去し、測定温度±1℃に達してから5分後に測定を開始する。測定条件を周波数1Hz、歪み1%、ノーマルフォースON、温度220~50℃または温度220~80℃(いずれも降温速度は2℃/min)として複素粘度を測定する。
【0024】
(複素粘度の一次微分値の算出)
複素粘度の測定により得られた、各温度における複素粘度値を一次微分処理することで、一次微分値の極小値および絶対値を求める。具体的には、5℃間隔における複素粘度値の差分を5℃で割ることで求める。なお、本処理はエクセル上で実行可能である。温度の関数としての複素粘度の一次微分値から、極小値の絶対値とその極小値を示す時の温度を得ることができる。
【0025】
アミド系エラストマー樹脂は、ASTM D6866によって測定される植物度が、例えば30%以上、40%以上、30~80%などとでき、好ましくは40~80%、より好ましくは40~70%とできる。当該植物度が前記範囲内であると、発泡成形体の植物度を高くしつつ、反発弾性率の低下を抑制できる。
【0026】
(アミド系エラストマー樹脂のショアD硬度)
アミド系エラストマー樹脂は、その硬度が低いと、軟質な発泡成形体を製造できる点で好ましい。アミド系エラストマー樹脂のショアD硬度は40以下とでき、38以下が好ましく、37以下がより好ましく、35以下がさらに好ましい。アミド系エラストマー樹脂のショアD硬度は、例えば25~40、25~38、25~37、25~35、30~40、30~38、30~37、30~35等とできる。アミド系エラストマー樹脂のショアD硬度はISO 868に従って特定できる。
【0027】
アミド系エラストマー樹脂の融点(ISO 11357)は、70℃~160℃が好ましく、80℃~150℃がより好ましい。
【0028】
アミド系エラストマー樹脂のメルトマスフローレート(MFR)は、例えば20g/10min~50g/10minとでき、30g/10min~50g/10minが好ましく、35g/10min~45g/10minがより好ましい。
【0029】
基材樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲で、アミド系エラストマー樹脂に加え、他の樹脂、例えば他のアミド系樹脂、ポリエーテル樹脂、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー等を含んでもよい。
【0030】
基材粒子は、基材樹脂の他に、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、展着剤、可塑剤、架橋剤、充填剤、滑剤等を含んでいてもよい。
【0031】
難燃剤としては、ヘキサブロモシクロドデカン、トリアリルイソシアヌレート6臭素化物等が挙げられる。
【0032】
着色剤としては、カーボンブラック、グラファイト、酸化鉄、酸化チタン等の無機顔料、フタロシアニンブルー、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー等の有機顔料、金属粉、パール等の特殊顔料、染料等が挙げられる。
【0033】
帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド等が挙げられる。
【0034】
展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコンオイル等が挙げられる。
【0035】
発泡粒子は、0.015g/cm~0.5g/cmの範囲のかさ密度を有することが好ましい。より好ましいかさ密度は0.02g/cm~0.3g/cmであり、更に好ましいかさ密度は、0.05g/cm~0.2g/cmである。
【0036】
発泡粒子の形状は、特に限定されず、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状、ペレット状又はグラニュラー状等が挙げられる。
【0037】
発泡粒子の平均粒子径は、所望の発泡成形体が得られる限りにおいて得に制限されないが、1mm~10mmが好ましく、2mm~10mmがより好ましい。平均粒子径が前記範囲内にあると、発泡粒子の製造が容易であり、成形時の2次発泡性が低下し難く、加熱発泡により発泡成形体を作製する際に型への充填性が低下し難く、複雑な形状の発泡成形体も製造しやすい。
【0038】
発泡粒子は、軽量で、反発弾性率を備えた発泡成形体の製造原料として有用である。
【0039】
発泡粒子は、型内発泡させるための発泡成形体の原料として使用してもよいし、例えばクッションの充填材としてそのまま使用してもよい。
【0040】
(2)アミド系エラストマー発泡成形体
ポリアミド系エラストマー発泡成形体(本明細書中、単に「発泡成形体」と称することがある。)は、アミド系エラストマー樹脂を、例えば50~100質量%含有する。ポリアミド系エラストマー発泡成形体におけるアミド系エラストマー樹脂の詳細についてはアミド系エラストマー樹脂に関する前記記載を適用できる。アミド系エラストマー樹脂は40以下のショアD硬度を有することが好ましい。アミド系エラストマー樹脂は、温度分散条件での動的粘弾性測定において得られる複素粘度値を一次微分処理し、得られる微分値から極小値を特定し、その極小値の絶対値が1.0E+05以下であり、その極小値における温度が134℃以下であることが好ましい。
【0041】
発泡成形体は、好適には、前記発泡粒子を型内発泡成形させることで形成される複数の発泡粒子の融着体から構成される。
【0042】
発泡成形体は、前記アミド系エラストマー樹脂を、例えば50~100質量%、70~100質量%、好ましくは80%~100質量%、より好ましくは90~100質量%含有する。前記アミド系エラストマー樹脂の含有量が前記の範囲内にあると、発泡成形体が軽量で、反発弾性率が高くなる。アミド系エラストマー樹脂は、1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
発泡成形体は、植物度の異なる2種以上の前記アミド系エラストマー樹脂を含有してもよいし、植物度が0%の樹脂を含有してもよい。
【0044】
発泡成形体は、本発明の効果を阻害しない範囲で、前記アミド系エラストマー樹脂に加え、他の樹脂、例えば他のアミド系樹脂、ポリエーテル樹脂、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー等を含んでもよい。
【0045】
発泡成形体は、発明の効果を阻害しない範囲で、他に、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、展着剤、可塑剤、架橋剤、充填剤、滑剤等を含んでいてもよい。
【0046】
発泡成形体は、前記アミド系エラストマー樹脂を含むことによって、又は、前記発泡粒子から製造されることによって、高い反発弾性率を有する。反発弾性率は、例えば70%以上、71%以上、72%以上、73%以上であり、好ましくは75%以上である。反発弾性率は、例えば70~95%、71~95%、72~95%、73~95%、75~95%等であってよい。
【0047】
発泡成形体は、前記アミド系エラストマー樹脂を含むことによって、又は、前記発泡粒子から製造されることによって、エラストマー発泡成形体としては軽量である。発泡成形体の密度は、例えば0.20g/cm以下であり、0.18g/cm以下が好ましく、0.17g/cm以下がより好ましい。密度は、0.05~0.20g/cm、0.08~0.18g/cm、0.10~0.17g/cm等であってよい。
【0048】
発泡成形体は、前記アミド系エラストマー樹脂を含むことによって、又は、前記発泡粒子から製造されることによって、エラストマー発泡成形体としては軟質である。発泡成形体のアスカーC硬度は、例えば、42以下、41以下、39以下等であり、38以下が好ましく、37以下がより好ましく、35以下がさらに好ましい。アスカーC硬度は、23~42、23~41、23~39、23~38、23~37、23~35、25~42、25~41、25~39、25~38、25~37、25~35、27~35等であってよい。
【0049】
発泡成形体は、例えば、工業分野、スポーツ用品、緩衝材、ベッドの心材、シートクッション(座席シートのクッション等)、自動車部材(自動車内装材等)等に用いることができる。特に環境負荷低減と反発弾性の向上が求められる用途に用いることができる。例えば、シューズのミッドソール部材、インソール部材又はアウトソール部材;ラケット、バット等のスポーツ用品の打具類の芯材;パッド、プロテクター等のスポーツ用品の防具類;パッド、プロテクター等の医療、介護、福祉又はヘルスケア用品;自転車、車椅子等のタイヤ芯材;自動車、鉄道車両、飛行機等の輸送機器の内装材、シート芯材、衝撃吸収部材、振動吸収部材等;防舷材;フロート;玩具;床下地材;壁材;ベッド;クッション;電子部品、各種工業資材、食品等の搬送容器等に用いることができる。
【0050】
発泡成形体は、上記用途に応じて適切な形状を取り得る。
【0051】
(3)ポリアミド系エラストマー発泡粒子の製造方法
【0052】
型に充填される発泡粒子は、前記基材樹脂の粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子を得る工程(含浸工程)、発泡性粒子を発泡させる発泡工程、さらには必要に応じて発泡粒子に無機系ガスを含有させる内圧付与工程を経て得ることができる。
【0053】
(含浸工程)
(a)樹脂粒子
樹脂粒子は、公知の製造方法及び製造設備を使用して得ることができる。例えば、押出機から押し出された基材樹脂の溶融混練物を、水中カット、ストランドカット等により造粒することによって、樹脂粒子を製造できる。溶融混練時の温度、時間、圧力等は、使用原料及び製造設備に合わせて適宜設定できる。
【0054】
溶融混練時の押出機内の溶融混練温度は、基材樹脂が十分に軟化する温度である。このため、使用する樹脂に応じて適宜設定できる。140℃~190℃が好ましく、150℃~180℃がより好ましい。溶融混練温度とは、押出機ヘッド付近の溶融混練物流路の中心部温度を熱伝対式温度計で測定した押出機内部の溶融混練物の温度を意味する。
【0055】
樹脂粒子の形状は、例えば、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状、ペレット状又はグラニュラー状である。
【0056】
樹脂粒子は、その長さをL、平均径をDとした場合のL/Dが0.8~3であることが好ましい。樹脂粒子のL/Dがこの範囲にあると、金型内への充填性が良好である。なお、樹脂粒子の長さLは、押出方向の長さをいい、平均径Dは長さLの方向に実質的に直交する樹脂粒子の切断面の直径をいう。
【0057】
樹脂粒子の平均径Dは0.5mm~1.5mmが好ましい。平均径Dが0.5mm以上であると、発泡剤の保持性が向上し発泡性粒子の発泡性が向上しやすい。平均径Dが1.5mm以下であると、型内への発泡粒子の充填性が向上すると共に、板状の発泡成形体を製造する場合に発泡成形体の厚みを大きくしやすくなる。
【0058】
(b)発泡性粒子
樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子を製造する。なお、樹脂粒子に発泡剤を含浸させる要領としては、公知の要領を用い得る。例えば、オートクレーブ内に、樹脂粒子、分散剤及び水を供給して撹拌することによって、樹脂粒子を水中に分散させて分散液を製造し、この分散液中に発泡剤を圧入し、樹脂粒子中に発泡剤を含浸させる方法が挙げられる。
【0059】
分散剤としては、特に限定されず、例えば、リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸ナトリウム、酸化マグネシウム、ハイドロキシアパタイト等の難水溶性無機物や、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのような界面活性剤が挙げられる。
【0060】
発泡剤としては、汎用のものが用いられ、例えば、空気;窒素、二酸化炭素(炭酸ガス)等の不活性ガス;プロパン、ブタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素;ハロゲン化炭化水素が挙げられ、空気、不活性ガス又は脂肪族炭化水素が好ましい。なお、発泡剤は単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0061】
樹脂粒子に含浸させる発泡剤の量は、樹脂粒子100質量部に対して、1質量部~15質量部であることが好ましい。発泡剤の含有量が1質量部以上であると、発泡力が低くならず、高い発泡倍率でも、良好に発泡させやすい。発泡剤の含有量が15質量部以下であると、気泡膜の破れが抑えられ、可塑化効果が大きくなりすぎないために、発泡時の粘度の過度の低下が抑えられ、かつ収縮が抑えられる。より好ましい発泡剤の量は2質量部~12質量部である。この範囲内であれば、発泡力を十分に高めることができ、高い発泡倍率であっても、より一層良好に発泡させることができる。
【0062】
樹脂粒子への発泡剤の含浸温度は、10℃~120℃が好ましく、20℃~110℃がより好ましい。発泡剤の含浸温度がこの範囲内にあると、樹脂粒子に発泡剤を含浸させるのに要する時間が長くならず生産効率が低下し難く、また、樹脂粒子同士が融着し難く結合粒の発生が抑制される。発泡剤には発泡助剤(可塑剤)を併用してもよい。発泡助剤(可塑剤)としては、アジピン酸ジイソブチル、トルエン、シクロヘキサン、エチルベンゼン等が挙げられる。
【0063】
(発泡工程)
(c)発泡粒子
発泡工程では、発泡性粒子を発泡させて、発泡粒子を得ることができれば発泡温度、加熱媒体等は特に限定されない。
【0064】
なお、発泡前に、樹脂粒子の表面に、ステアリン酸亜鉛のような粉末状金属石鹸類、炭酸カルシウム及び水酸化アルミニウムを塗布してもよい。この塗布により、発泡工程における樹脂粒子同士の結合を減少できる。また、帯電防止剤、展着剤等の表面処理剤を塗布してもよい。帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル及びステアリン酸モノグリセリド等が挙げられる。展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール及びシリコンオイル等が挙げられる。
【0065】
(4)ポリアミド系エラストマー発泡成形体の製造方法
発泡成形体は、発泡粒子(好適には本発明の発泡粒子)を、型に充填し、加熱し、及び発泡させることで製造できる。発泡成形体は、例えば、蒸気導入口が設けられた第1の型と第2の型とを合わせた1対の型にて形成されるキャビティに、基材樹脂を含む発泡粒子(好適には本発明の発泡粒子)を充填し、加熱媒体で型及び発泡粒子を加熱して発泡粒子を発泡させることによって、発泡粒子間の空隙を埋めると共に、発泡粒子を相互に融着及び一体化させて得ることができる。
【0066】
発泡粒子の充填の際に、例えば、第1の型と第2の型の間のクラッキング率を調節することにより発泡粒子の充填量を調整する等して、発泡成形体の密度を調整できる。クラッキング率は、例えば3%~85%であり、5%~85%が好ましく、10%~80%がより好ましい。クラッキング率をこの範囲内とすると、外観の美麗度合いを調整することができる。なお、クラッキング率の特定方法は次のとおりである。
【0067】
(クラッキング率)
一対の型を完全に閉じた状態の型内体積a(cm)と任意のクラッキングを取った型内体積b(cm)とから次式によって算出する。
クラッキング率(%)=((b-a)/a)×100
【0068】
加熱成形の際は、発泡粒子に無機系ガスを含浸させて、発泡粒子の発泡力を向上させること(内圧付与工程)が好ましい。発泡力を向上させることにより、加熱発泡時に発泡粒子同士の融着性が向上し、発泡成形体は更に優れた機械的強度や長期寸法安定性を有する。無機系ガスは、例えば不活性ガス又は空気である。不活性ガスは、例えば二酸化炭素、窒素、ヘリウム、アルゴン等である。好ましい無機系ガスは空気、窒素又は二酸化炭素である。
【0069】
発泡粒子に無機系ガスを含浸させる方法としては、例えば、常圧以上の圧力を有する無機系ガスの雰囲気下に発泡粒子を置くことによって、発泡粒子中に無機系ガスを含浸させる方法が挙げられ、0.01MPa~2.0MPaの無機系ガス雰囲気中に発泡粒子を1分~24時間に亘って放置することが好ましく、5分~24時間がより好ましく、20分~18時間が特に好ましい。また、発泡粒子は、型内に充填する前に無機系ガスが含浸されることが好ましいが、発泡粒子を型内に充填した後に型ごと無機系ガスの雰囲気下に置くことで含浸されてもよい。
【0070】
発泡粒子に無機系ガスを含浸させた場合、発泡粒子をこのまま、型内にて加熱、発泡させてもよいが、発泡粒子を型内に充填する前に加熱、発泡させて、高発泡倍率の発泡粒子とした上で型内に充填して加熱、発泡させてもよい。このような高発泡倍率の発泡粒子を用いることによって、高発泡倍率の発泡成形体を得ることができる。
【実施例0071】
以下、実施例等によって本発明の一実施態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれら態様に限定されない。
【0072】
測定方法
実施例等に記載の特定は次の方法により特定した。
【0073】
[植物度]
植物度は、ASTM D6866により測定した。
【0074】
[基材樹脂の融点]
基材樹脂の融点は、ISO 11357により測定した。
【0075】
[基材樹脂のショアD硬度]
基材樹脂のショアD硬度は、ISO 868により瞬時値を測定した。
【0076】
[基材樹脂の密度]
基材樹脂の密度は、ISO 1183により測定した。
【0077】
[基材樹脂のメルトマスフローレート(MFR)]
基材樹脂の試験片(形状;ペレット状、大きさ;4.0mm×3.0mm×2.5mm)を、100℃、3時間真空乾燥後、測定直前まで密封してデシケーター中で保存した。JIS K 7210:1999「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」B法記載のb)ピストンが所定の距離を移動する時間を測定する方法により測定した。すなわち(株)安田精機製作所製「メルトフローインデックステスター(自動)120-SAS」を用いて、測定条件は試験片3g~8g、予熱300秒、ロードホールド30秒、試験温度230℃、試験荷重21.18N、ピストン移動距離(インターバル):25mmとした。試験片の試験回数は3回とし、その平均をメルトマスフローレート(g/10min)の値とした。
【0078】
[発泡性粒子の含浸ガス量(発泡剤含有量)]
発泡剤としてのブタンガス含浸後、得られた発泡性粒子の質量W1(g)を直ちに計量し、温度23±2℃、湿度50±5%の環境下で24時間静置した。静置後、発泡性粒子の質量W2(g)を計量し、次式により含浸ガス量を算出した。
発泡性粒子の含浸ガス量(質量%)=((W1-W2)/W1)×100
【0079】
[発泡粒子のかさ密度]
内圧付与前の発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させた後、メスシリンダーの底をたたいて試料の見掛け体積(V)cmを一定にし、その重量と体積を測定し、次式に基づいて発泡粒子のかさ密度を算出した。
かさ密度(g/cm)=測定試料の重量(W)/測定試料の体積(V)
【0080】
[発泡粒子の無機系ガス(窒素ガス)量]
密閉容器の体積の70体積%を満たす発泡粒子を計量し、これを密閉容器内に投入し容器を密閉した後、ゲージ圧0.01MPa~2MPaの無機系ガスで任意の時間加圧した。加圧後に無機系ガスを密閉容器内が大気圧になるまでパージし、発泡粒子を取り出して重量を計った。無機系ガス量は次式によって算出した。
無機系ガス量(質量%)=((b-a)/b)×100
a:無機系ガスで加圧前の発泡粒子の重量(g)
b:無機系ガスで加圧後の発泡粒子の重量(g)
【0081】
[発泡粒子の平均粒子径]
発泡粒子約50gをロータップ型篩振とう機(飯田製作所社製)を用いて、篩目開き26.5mm、22.4mm、19.0mm、16.0mm、13.2mm、11.20mm、9.50mm、8.80mm、6.70mm、5.66mm、4.76mm、4.00mm、3.35mm、2.80mm、2.36mm、2.00mm、1.70mm、1.40mm、1.18mm、1.00mm、0.85mm、0.71mm、0.60mm、0.50mm、0.425mm、0.355mm、0.300mm、0.250mm、0.212mm、0.180mmのJIS標準篩で5分間分級した。篩網上の試料重量を測定し、その結果から得られた累積重量分布曲線を元にして累積重量が50%となる粒子径(メディアン径)を平均粒子径とした。
【0082】
[発泡成形体の密度]
成形直後に発泡成形体を温度40℃で12時間乾燥し、乾燥後に温度23±2℃、湿度50±5%の環境下で72時間状態調節した。状態調節した発泡成形体の質量a(g)を小数点2桁まで測定すると共に、外寸をデジマチックキャリパ(ミツトヨ社製)で1/100mmまで測定して、見掛けの体積b(cm)を求めた。発泡成形体の密度を次式により算出した。
発泡成形体密度(g/cm)=a/b
【0083】
[発泡成形体の反発弾性率]
JIS K 6400-3:2011に準拠して測定した。温度23±2℃、湿度50±5%の環境下で72時間以上静置した、同一の発泡体から切り出した50mm×50mm×厚み20mmの試験片を、反発弾性試験機(FR-2、高分子計器社製)に2枚重ねてセットした。500mmの高さ(a)から鋼球(φ5/8インチ、16.3g)を試験片に向けて自由落下させて、その反発最高到達時の高さ(b)mmを読み取り、次式により反発弾性率(%)を算出した。同一試験片を用いて3回測定を行い、平均値を反発弾性率とした。
反発弾性率(%)=((b)/(a))×100
【0084】
[複素粘度の測定]
複素粘度は、JIS K 7244-1に従って測定した。具体的には、試料となる樹脂を熱プレス機にてプレスし、直径25mm、厚さ3mmの円板状サンプルを作製した。次に、動的粘弾性測定装置(PHYSICA MCR301(Anton Paar社製))のプレートを220℃に加熱し、加熱されたプレート上にサンプルをセットし、窒素雰囲気下にて5分間加熱し、サンプルを溶融させた。プレート間のギャップを2.0mmに設定し、はみ出した樹脂を除去し、測定温度±1℃に達してから5分後に測定を開始した。測定条件は周波数1Hz、歪み1%、ノーマルフォースON、温度220~50℃または220~80℃(いずれも降温速度は2℃/min)とした。
【0085】
[複素粘度の一次微分値の算出]
複素粘度の測定により得られた、各温度における複素粘度値を一次微分処理することで、一次微分値の極小値および絶対値を求めた。具体的には、5℃間隔における複素粘度値の差分を5℃で割ることで一次微分値を求めた。なお、本処理はエクセルで実行した。温度の関数としての複素粘度の一次微分値から、極小値の絶対値とその極小値を示す時の温度を得た。
【0086】
[発泡成形体のアスカーC硬度]
アスカーC硬度は、平滑な面を有する厚み10mm以上の試験片を温度23±2℃、湿度50±5%の環境下で72時間以上状態調節後、高分子計器社製「アスカーゴム・プラスチック硬度計C形」硬度計を用いて測定した。押針が試験片の平滑な測定面に垂直になるように加圧面を密着させて、直ちに目盛を読み取った。発泡粒子同士の融着面をさけて、試料の5箇所を測定し、これらの平均値をアスカーC硬度とした。
【0087】
アミド系エラストマー樹脂
実施例及び比較例で基材樹脂として使用したアルケマ社製のPebaxの詳細は次のとおりである。
・Pebax Rnew35R53 SP01;植物度28~32%、融点146℃、ショアD硬度32、密度1.02g/cm
・Pebax Rnew40R53 SP01;植物度44~48%、融点148℃、ショアD硬度38、密度1.03g/cm
・Pebax 4533 SA01;植物度0%、融点148℃、ショアD硬度42、密度1.01g/cm
・Pebax 3533 SA01;植物度0%、融点144℃、ショアD硬度25、密度1.00g/cm
・Pebax 4033 SA01;植物度0%、融点160℃、ショアD硬度37、密度1.00g/cm
・Pebax Rnew55R53 SP01;植物度62~66%、融点167℃、ショアD硬度48、密度1.03g/cm
・Pebax 5533 SA01;植物度0%、融点159℃、ショアD硬度50、密度1.01g/cm
【0088】
なお、Pebax Rnew35R53 SP01、40R53 SP01、及び55R53 SP01は、ハードセグメントとしてひまし油由来のポリアミド11ブロックを有しソフトセグメントとしてポリエーテルブロックを有するポリアミド系エラストマーであり、Pebax 4533 SA01、3533 SA01、4033 SA01、及び5533 SA01は、ハードセグメントとして石油由来のポリアミド12ブロックを有しソフトセグメントとしてポリエーテルブロックを有するポリアミド系エラストマーである。
【0089】
実施例1
<発泡性粒子の調製>
内容積5Lのオートクレーブに、表1に示したアミド系エラストマー樹脂の粒子1.0kg(100質量部)を投入し、密閉した。発泡剤の二酸化炭素をオートクレーブ内の圧力が4.0MPaになるように圧入し、20℃で72時間静置した。その後、オートクレーブを除圧することで発泡性粒子を得た。発泡性粒子における発泡剤の含浸ガス量は8.5質量%であった。
【0090】
<発泡粒子の調製>
得られた発泡性粒子1.0kg(100質量部)に合着防止剤(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール:「エパン740」、第一工業製薬社製)0.5質量部を塗布した後、内容積50Lの撹拌機付円筒型予備発泡機に投入し、撹拌しながら0.015MPaの水蒸気で加熱して発泡(予備発泡)させ、発泡粒子を得た。かさ密度は0.13g/cmであった。
【0091】
<発泡成形体の製造>
発泡粒子を密閉容器(オートクレーブ)内にいれ、この密閉容器内に窒素ガスを0.5MPaで圧入し、常温にて18時間静置して、発泡粒子内に窒素ガスを含浸(内圧付与)させた。
【0092】
密閉容器から取り出した発泡粒子を直ちに凹型の金型と凸型の金型からなる一対の金型を有する成形装置の成形用キャビティー(150mm×150mm×厚み20mm)内に充填した。充填完了後、型締めし、水蒸気で加熱成形し、発泡成形体を得た。
【0093】
実施例2~7
<発泡性粒子の調製>
表1及び2に示した質量比のアミド系エラストマー樹脂100重量部を単軸押出機に供給し、160℃溶融混練後、220℃まで昇温させながらさらに溶融混練した。溶融状態の基材樹脂を冷却した後、単軸押出機の前端に取り付けたマルチノズル金型(口径1mmのノズルを4穴有する)の各ノズルから樹脂を押出し、20℃~50℃の水中でカットした。得られた樹脂粒子は円柱形で、粒子の平均長さが1.5mm、平均直径が1.5mmであった。
内容積5Lの攪拌翼付きのオートクレーブに、得られた樹脂粒子1.0kg(100質量部)、蒸留水3.0kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ水溶液(25%水溶液)を投入し、密閉した。撹拌しながら発泡剤のブタン(ノルマルブタン:イソブタン=7:3(容量比))18質量部を圧入した。次に、オートクレーブ内を70℃まで昇温させた後、2時間加熱して、25℃まで冷却した。冷却完了後にオートクレーブを除圧し、直ちに蒸留水で界面活性剤を洗浄し、脱水することで発泡性粒子を得た。
得られた発泡性粒子を使用して、実施例1と同様の方法で、発泡粒子及び発泡成形体を製造した。
【0094】
比較例1
表3に示したアミド系エラストマー樹脂100質量部を二軸押出機に供給し、160℃で溶融混練後、220℃まで昇温させながらさらに溶融混練した。溶融状態の基材樹脂を冷却した後、二軸押出機の前端に取り付けたマルチノズル金型(口径1mmのノズルを4穴有する)の各ノズルから樹脂を押出し、20℃~50℃の水中でカットした。得られた樹脂粒子は円柱形で、粒子の平均長さが1.5mm、平均直径が1.5mmであった。
得られた樹脂粒子を使用して、実施例2~7と同様の方法で、発泡性粒子、発泡粒子、及び発泡成形体を製造した。
【0095】
比較例2
基材樹脂を、表3に記載のアミド系エラストマー樹脂及び質量比に代えた他は実施例1と同じ手順で発泡性粒子、発泡粒子、及び発泡成形体を得た。
【0096】
比較例3~4
基材樹脂を、表3に記載のアミド系エラストマー樹脂及び質量比に代えた他は実施例2~7と同じ手順で発泡性粒子、発泡粒子、及び発泡成形体を得た。
【0097】
実施例1及び比較例1~2で使用された基材樹脂の複素粘度挙動を図1に示した。図1は、実施例1で使用されたショアD硬度の低い基材樹脂は、複素粘度が低下し始める温度が、比較例1及び2で使用された基材樹脂よりも低いことを示す。また、実施例で使用された基材樹脂では、複素粘度低下の傾きが緩やかであった。
【0098】
粘度低下を定量的に評価するために、複素粘度チャートの一次微分値を算出し、微分値と温度との関係を図2に示した。図1において複素粘度低下の傾きが急な比較例で使用された基材樹脂の極小値が小さかった(極小値の絶対値が大きかった)。
【0099】
極小値と温度の関係を視覚的に認識しやすくするために、縦軸を極小値の絶対値、横軸を極小値の示す温度としたグラフを作成した(図3)。実施例で使用された基材樹脂は、比較例で使用された基材樹脂よりも、極小値の絶対値が小さく(換言すると、図1における複素粘度低下の傾きが小さく)、極小値を示す温度が低かった。これより、40以下のショアD硬度を有し、極小値の絶対値が1.0E+05以下であり、その極小値を示す温度が134℃以下であるアミド系エラストマー樹脂が、発泡成形体に軽量性と軟質性と高い反発性をもたらすことを確認した。
【0100】
基材樹脂、発泡粒子、発泡成形体の性質を表1~3に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
図1
図2
図3