(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050395
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】光学粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240403BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072007
(22)【出願日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2022156799
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝端 駿
(72)【発明者】
【氏名】下栗 大器
(72)【発明者】
【氏名】小原 裕貴
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004AB07
4J004BA02
4J004DB02
4J004DB03
4J004FA01
4J040DF041
4J040DF051
4J040FA131
4J040JA09
4J040JB08
4J040JB09
4J040KA13
4J040LA01
4J040MA05
4J040MB05
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】環境負荷の低減に適するとともに、ディスプレイパネル用途に適した、光学粘着シートを提供する。
【解決手段】本発明の粘着シート10は、光重合物としてのベースポリマーを含み且つ光硬化性を有する光学粘着シートである。粘着シート10は、照射積算光量3000mJ/cm
2の条件での光硬化処理による硬化後に75質量%以上のゲル分率を有する。粘着シート10は、当該粘着シート10に対する照射積算光量3000mJ/cm
2の条件での光硬化処理と、その後の、フロート法で作製されたアルカリガラス板に対する粘着シート10の貼り合わせと、その後の、50℃、0.5MPaおよび15分の条件での、アルカリガラス板上の粘着シート10に対する加熱加圧処理との後、85℃、剥離角度180°および引張速度300mm/分の条件でアルカリガラス板から粘着シート10を剥離する剥離試験において、2.5N/10mm以上の粘着力を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合物としてのベースポリマーを含み且つ光硬化性を有する、光学粘着シートであって、
照射積算光量3000mJ/cm2の条件での光硬化処理による硬化後に75質量%以上のゲル分率を有し、
前記光学粘着シートに対する前記条件での光硬化処理と、その後の、フロート法で作製されたアルカリガラス板に対する前記光学粘着シートの貼り合わせと、その後の、50℃、0.5MPaおよび15分の条件での、前記アルカリガラス板上の前記光学粘着シートに対する加熱加圧処理との後、85℃、剥離角度180°および引張速度300mm/分の条件で前記アルカリガラス板から前記光学粘着シートを剥離する剥離試験において、2.5N/10mm以上の粘着力を有する、光学粘着シート。
【請求項2】
光重合性多官能化合物と光重合開始剤とを更に含む、請求項1に記載の光学粘着シート。
【請求項3】
前記ベースポリマーの重量平均分子量が800000以上である、請求項1に記載の光学粘着シート。
【請求項4】
照射積算光量3000mJ/cm2の条件での光硬化処理による硬化後の前記光学粘着シートを、23℃および引張速度200mm/分の条件で6倍長さまで伸長してから5分経過後に、当該光学粘着シートの残存応力が65N/m2以下である、請求項1に記載の光学粘着シート。
【請求項5】
照射積算光量3000mJ/cm2の条件での、前記光学粘着シートに対する光硬化処理と、その後の、フロート法で作製されたアルカリガラス板に対する前記光学粘着シートの貼り合わせと、その後の、50℃、0.5MPaおよび15分の条件での、前記アルカリガラス板上の前記光学粘着シートに対する加熱加圧処理との後、23℃、剥離角度90°および引張荷重2.5N/10mmの条件で前記アルカリガラス板から前記光学粘着シートを剥離する定荷重剥離試験において、剥離速度が35μm/秒以下である、請求項1から4のいずれか一つに記載の光学粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイパネルは、例えば、画素パネル、偏光フィルムおよびカバーガラスなどの要素を含む積層構造を有する。ディスプレイパネルの製造過程では、積層構造に含まれる要素どうしの接合のために、例えば、透明な粘着シート(光学粘着シート)が用いられる。ディスプレイパネル用途の粘着シートについては、例えば下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の光学粘着シートは、次のようにして製造される。まず、アクリルベースポリマーを形成するためのモノマー成分と、熱重合開始剤と、溶媒とを含む反応溶液が調製された後、反応溶液中の溶液重合によってアクリルベースポリマーが形成される。次に、当該反応溶液に溶媒が加えられてポリマー濃度が調整されたポリマー溶液が調製される。次に、ポリマー溶液に熱架橋剤が加えられて粘着剤組成物(溶剤型の粘着剤組成物)が調製される。次に、基材上に粘着剤組成物が塗布されて塗膜が形成される。次に、基材上の塗膜が加熱によって乾燥されて、粘着剤層が形成される(乾燥工程)。次に、エージング処理により、粘着剤層内において、熱架橋剤によるベースポリマーの架橋反応が進行される。以上のようにして、光学粘着シートが基材上に形成される。このように、特許文献1には、溶剤型の粘着剤組成物から形成された光学粘着シートが記載されている。
【0005】
しかしながら、上記乾燥工程では、塗膜中の比較的多量の溶剤が塗膜外に揮発する。製造過程にこのような工程を含む光学粘着シートは、環境負荷の低減の観点から好ましくない。
【0006】
一方、ディスプレイパネルの積層構造中には、表面段差を有する要素が含まれる。例えば、カバーガラスにおける画素パネル側表面の端縁には、装飾用または遮光用の印刷層が設けられ、カバーガラス表面と印刷層表面との段差(印刷段差)がある。例えば、偏光フィルム付き画素パネルにおける偏光フィルム側表面には、画素パネル上の偏光フィルムの周端縁の一部に沿った所定の樹脂層が設けられ、偏光フィルム端縁の表面と樹脂層表面との段差(レジン段差)がある。このような偏光フィルム付き画素パネルと上述のカバーガラスとは、ディスプレイパネルの製造過程において、光学粘着シートを介して接合される。そのため、ディスプレイパネル用途の光学粘着シートには、印刷段差に追従できる程度の柔らかさ(段差追従性)が求められる。光学粘着シートの段差追従性が不十分であることは、表面段差を有する被着体(例えば、印刷段差を有するカバーガラス、および、レジン段差を有する偏光フィルム付き画素パネル)における段差付き表面に光学粘着シートが貼り合わされた場合に、段差に沿って気泡が形成される原因となり、好ましくない。
【0007】
また、ディスプレイパネルの積層構造中には、カバーガラスおよび偏光フィルムなど、表面平滑性の高い要素が含まれる。そのため、ディスプレイパネル用途の光学粘着シートには、高粘着性も求められる。
【0008】
本発明は、環境負荷の低減に適するとともに、ディスプレイパネル用途に適した、光学粘着シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、光重合物としてのベースポリマーを含み且つ光硬化性を有する、光学粘着シートであって、照射積算光量3000mJ/cm2の条件での光硬化処理による硬化後に75質量%以上のゲル分率を有し、前記光学粘着シートに対する前記条件での光硬化処理と、その後の、フロート法で作製されたアルカリガラス板に対する前記光学粘着シートの貼り合わせと、その後の、50℃、0.5MPaおよび15分の条件での、前記アルカリガラス板上の前記光学粘着シートに対する加熱加圧処理との後、85℃、剥離角度180°および引張速度300mm/分の条件で前記アルカリガラス板から前記光学粘着シートを剥離する剥離試験において、2.5N/10mm以上の粘着力を有する、光学粘着シートを含む。
【0010】
本発明[2]は、光重合性多官能化合物と光重合開始剤とを更に含む、上記[1]に記載の光学粘着シートを含む。
【0011】
本発明[3]は、前記ベースポリマーの重量平均分子量が800000以上である、上記[1]または[2]に記載の光学粘着シートを含む。
【0012】
本発明[4]は、照射積算光量3000mJ/cm2の条件での光硬化処理による硬化後の前記光学粘着シートを、23℃および引張速度200mm/分の条件で6倍長さまで伸長してから5分経過後に、当該光学粘着シートの残存応力が65N/m2以下である、上記[1]から[3]のいずれか一つに記載の光学粘着シートを含む。
【0013】
本発明[5]は、照射積算光量3000mJ/cm2の条件での、前記光学粘着シートに対する光硬化処理と、その後の、フロート法で作製されたアルカリガラス板に対する前記光学粘着シートの貼り合わせと、その後の、50℃、0.5MPaおよび15分の条件での、前記アルカリガラス板上の前記光学粘着シートに対する加熱加圧処理との後、23℃、剥離角度90°および引張荷重2.5N/10mmの条件で前記アルカリガラス板から前記光学粘着シートを剥離する定荷重剥離試験において、剥離速度が35μm/秒以下である、上記[1]から[4]のいずれか一つに記載の光学粘着シートを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光学粘着シートは、上記のように、ベースポリマーが光重合物である。このような粘着シートは、無溶剤型の粘着剤組成物から製造するのに適する。そして、無溶剤型の粘着剤組成物は、当該組成物から粘着シートを製造する過程において、組成物の塗膜から溶剤を揮発させて除去する乾燥工程が必要なく、従って、環境負荷の低減に適する。
【0015】
また、本発明の光学粘着シートは、上記のように、光硬化性を有する。このような光学粘着シートは、光硬化前の柔らかい状態で被着体の段差付き表面に貼り合わせることができる。そして、当該光学粘着シートは、被着体への貼合わせ後に光硬化させて高弾性化させることができる。このような光学粘着シートは、段差付き表面を有する被着体に対する貼り合わせにおいて、良好な段差追従性を実現するのに適する。そのため、本発明の光学粘着シートは、ディスプレイパネルの製造過程において、表面段差を有する要素(カバーガラスなど)を含む要素どうしの接合に用いるのに適する。
【0016】
加えて、本発明の光学粘着シートは、上記のように、所定条件での光硬化後において、フロート法で作製されたアルカリガラス板に対し、高温(85℃)の条件にて2.5N/10mm以上の粘着力を有する。フロート法で作製されたアルカリガラス板は、表面平滑性が高いために粘着剤が貼着しにくいけれども、本発明の光学粘着シートは、同ガラス板に対して優れた粘着性を有する。このような光学粘着シートは、ディスプレイパネルにおけるカバーガラスおよび偏光フィルムなどの表面平滑性の高い被着体を接合するのに適する。そのため、本発明の光学粘着シートは、ディスプレイパネル用途に適する。
【0017】
更に加えて、本発明の光学粘着シートは、上記のように、所定条件での光硬化後に、75質量%以上のゲル分率を有する。このように高ゲル分率化した光学粘着シートは、同粘着シートの硬化(高弾性化)前に貼り合わされた被着体からも、同粘着シートの硬化(高弾性化)後に貼り合わされた被着体からも、剥離が生じにくい。このような高ゲル分率化が可能な光学粘着シートは、表面段差を有する第1被着体への貼合わせ(同粘着シートの光硬化前の柔らかい状態での貼合わせ)と、同粘着シートの光硬化と、同粘着シートを介した第1被着体と第2被着体との接合とにより、第1・第2被着体間において良好な接合信頼性を確保するのに適する。そのため、本発明の光学粘着シートは、ディスプレイパネル用途に適する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の光学粘着シートの一実施形態の断面模式図である。
【
図2】
図1に示す光学粘着シートの製造方法の一例を表す。
図2Aは、粘着剤組成物の塗膜の形成工程を表し、
図2Bは、ベース粘着シート形成工程を表し、
図2Cは、軽はく離ライナーの剥離工程を表し、
図2Dは、ベース粘着シートに後添加成分を供給する工程を表し、
図2Eは、軽はく離ライナーをシートに貼り合わせる工程を表す。
【
図3】
図1に示す光学粘着シートの使用方法の一例を表す。
図3Aは、光学粘着シートを第1被着体に貼り合わせる工程(貼合せ工程)を表し、
図3Bは、第1被着体上で光学粘着シートを光硬化させる工程(光硬化工程)を表し、
図3Cは、第1被着体上の光学粘着シートを介して当該第1被着体と第2被着体とを接合する工程(接合工程)を表す。
【
図4】実施例および比較例についての段差追従性(光硬化前)の評価に用いた積層体における、ガラスプレートと粘着シートとの位置関係を表す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態としての粘着シート10は、
図1に示すように、所定の厚さのシート形状を有し、厚さ方向Hと直交する方向(面方向)に広がる。粘着シート10は、粘着面11と、当該粘着面11とは反対側の粘着面12とを有する。
図1は、粘着シート10の粘着面11,12にはく離ライナー21,22が貼り合わされている状態を、例示的に示す。はく離ライナー21は、粘着面11上に配置されている。はく離ライナー22は、粘着面12上に配置されている。また、粘着シート10は、ディスプレイパネルにおける光通過箇所に配置される光学粘着シートである。ディスプレイパネルとしては、例えば、液晶パネルおよび有機ELパネルが挙げられる。ディスプレイパネルは、例えば、画素パネル、偏光フィルム、タッチパネル、およびカバーガラスなどの要素を含む積層構造を有する。粘着シート10は、例えば、ディスプレイパネルの製造過程において、積層構造に含まれる要素どうしの接合に、用いられる。
【0020】
粘着シート10は、シート状の感圧接着剤である。粘着シート10は、光重合物としてのベースポリマーを含有し、本実施形態では更に光重合性多官能化合物および光重合開始剤を含有し、光硬化性を有する。光硬化性とは、紫外線などの活性エネルギー線の照射を受けて高弾性化する性質をいうものとする。粘着シート10は、照射積算光量3000mJ/cm2の条件での光硬化処理による硬化後に75質量%以上のゲル分率を有し、且つ、下記の剥離試験において、2.5N/10mm以上の粘着力Fを有する。ゲル分率の測定方法は、実施例に関して後述するとおりである。粘着力Fは、アルカリガラス板に対して光硬化後に貼り合わされた粘着シート10が当該ガラス板に対して有する粘着力である。アルカリガラス板に対する粘着シートの粘着力の強さは、例えば、偏光フィルムに対する粘着シートの粘着力の強さの指標となる。
【0021】
剥離試験では、粘着シート10に対する照射積算光量3000mJ/cm2の条件での光硬化処理と、その後の、フロート法で作製されたアルカリガラス板に対する粘着シート10の貼り合わせと、その後の、50℃、0.5MPaおよび15分の条件での、アルカリガラス板上の粘着シート10に対する加熱加圧処理との後、85℃、剥離角度180°および引張速度300mm/分の条件でアルカリガラス板から粘着シート10を剥離して粘着力Fを測定する。剥離試験は、より具体的には、実施例に関して後述するとおりである。
【0022】
粘着シート10は、上述のように、ベースポリマーが光重合物である。このような粘着シート10は、無溶剤型の粘着剤組成物から製造するのに適する。そして、無溶剤型の粘着剤組成物は、当該組成物から粘着シートを製造する過程において、組成物の塗膜から溶剤を揮発させて除去する乾燥工程が必要なく、従って、環境負荷の低減に適する。
【0023】
また、粘着シート10は、上述のように、光硬化性を有する。このような粘着シート10は、光硬化前の柔らかい状態で被着体の段差付き表面に貼り合わせることができる。そして、粘着シート10は、被着体への貼合わせ後に光硬化させて高弾性化させることができる。このような粘着シート10は、段差付き表面を有する被着体に対する貼り合わせにおいて、良好な段差追従性を実現するのに適する。そのため、粘着シート10は、ディスプレイパネルの製造過程において、表面段差を有する要素(カバーガラスなど)を含む要素どうしの接合に用いるのに適する。
【0024】
加えて、粘着シート10は、上述のように、所定条件での光硬化後において、フロート法で作製されたアルカリガラス板に対し、高温(85℃)の条件にて2.5N/10mm以上の粘着力Fを有する。フロート法で作製されたアルカリガラス板は、表面平滑性が高いために粘着剤が貼着しにくいけれども、粘着シート10は、同ガラス板に対して優れた粘着性を有する。このような粘着シート10は、ディスプレイパネルにおけるガラス基板および偏光フィルムなどの表面平滑性の高い被着体を接合するのに適する。そのため、粘着シート10は、ディスプレイパネル用途に適する。
【0025】
更に加えて、粘着シート10は、上述のように、所定条件での光硬化後に、75質量%以上のゲル分率を有する。このように高ゲル分率化した粘着シート10は、粘着シート10の硬化(高弾性化)前に貼り合わされた被着体からも、粘着シート10の硬化(高弾性化)後に貼り合わされた被着体からも、剥離が生じにくい。このような高ゲル分率化が可能な粘着シート10は、表面段差を有する第1被着体への貼合わせ(粘着シート10の光硬化前の柔らかい状態での貼合わせ)と、粘着シート10の光硬化と、硬化後の粘着シート10を介した第1被着体と第2被着体との接合とにより、第1・第2被着体間において良好な接合信頼性を確保するのに適する。そのため、粘着シート10は、ディスプレイパネル用途に適する。
【0026】
以上のように、粘着シート10は、環境負荷の低減に適するとともに、ディスプレイパネル用途に適する。
【0027】
粘着力Fは、表面平滑性の高い被着体に対する良好な接合性の観点から、好ましくは2.7N/10mm以上、より好ましくは2.9N/10mm以上、更に好ましくは3.1N/10mm以上である。粘着力Fは、例えば、4N/10mm以下、7N/10mm以下、または10N/10mm以下である。粘着力Fの調整方法としては、例えば、粘着シート10におけるベースポリマーの種類の選択、分子量の調整、および配合量の調整が挙げられる。ベースポリマーの種類の選択には、ベースポリマーを形成するモノマーの組成の調整が含まれる。粘着力Fの調整方法としては、粘着シート10におけるベースポリマー以外の成分の種類の選択、および、当該成分の配合量の調整も挙げられる。当該成分としては、光重合性多官能化合物、光重合開始剤、シランカップリング剤、およびオリゴマーが挙げられる。
【0028】
粘着シート10において、ベースポリマーの重量平均分子量(Mw)は、粘着シート10による被着体間の接合の信頼性を確保する観点から、好ましくは800000以上、より好ましくは850000以上、更に好ましくは900000以上である。ベースポリマーの重量平均分子量は、粘着シート10による被着体間の接合の信頼性を確保するの観点から、好ましくは1500000以下、より好ましくは1200000以下、更に好ましくは1000000以下である。重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)によって測定してポリスチレン換算により算出される。
【0029】
粘着シート10の光硬化後の上記ゲル分率は、硬化後の粘着シート10の柔軟性を確保する観点から、好ましくは76%以上、より好ましくは77%以上、更に好ましくは78%以上である。粘着シート10の光硬化後のゲル分率は、硬化後の粘着シート10の柔軟性を確保する観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、更に好ましくは80%以下である。粘着シート10の光硬化後のゲル分率の調整方法としては、例えば、粘着シート10におけるベースポリマーの種類の選択、分子量の調整、および配合量の調整が挙げられる。光硬化後のゲル分率の調整方法としては、粘着シート10における光重合性多官能化合物の種類の選択、分子量の調整、および配合量の調整も挙げられる。また、ゲル分率の測定方法は、実施例に関して後述するとおりである。
【0030】
粘着シート10(光硬化前)のゲル分率は、粘着シート10の取り扱い性を確保する観点から、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、更に好ましくは30%以上であり、また、好ましくは65%以下、より好ましくは60%以下、更に好ましくは55%以下である。粘着シート10の光硬化前のゲル分率の調整方法としては、例えば、粘着シート10におけるベースポリマーの種類の選択、分子量の調整、および配合量の調整が挙げられる。
【0031】
粘着シート10は、照射積算光量3000mJ/cm2の条件での光硬化処理による硬化後に、23℃および引張速度200mm/分の条件で6倍長さまで伸長してから5分経過後の残存応力Sが、好ましくは65N/m2以下、より好ましくは55N/m2以下、更に好ましくは50N/m2以下、一層好ましくは40N/m2以下である。残存応力Sは、好ましくは10N/m2以上、より好ましくは20N/m2以上、更に好ましくは30N/m2以上である。残存応力Sに関するこれら構成は、光硬化後の粘着シート10の段差追従性を確保するのに好ましい。残存応力Sの調整方法としては、例えば、粘着シート10におけるベースポリマーのモノマー組成の調整、分子量の調整、配合量の調整、および架橋度の調整が挙げられる。残存応力Sの測定方法は、具体的には、実施例に関して後述するとおりである。
【0032】
粘着シート10は、下記の定荷重剥離試験における剥離速度が、好ましくは35μm/秒以下、より好ましくは30μm/秒以下、好ましくは25μm/秒以下である。当該剥離速度は、例えば、0.1μm/秒以上、0.5μm/秒以上、または1μm/秒以上である。
剥離速度に関するこのような構成は、光硬化後の粘着シート10が表面段差付き被着体の表面段差箇所に貼り合わされた場合の、当該被着体に対する粘着シート10の接合信頼性を確保するのに好ましい。
【0033】
定荷重剥離試験では、粘着シート10に対する照射積算光量3000mJ/cm2の条件での光硬化処理と、その後の、フロート法で作製されたアルカリガラス板に対する粘着シート10の貼り合わせと、その後の、50℃、0.5MPaおよび15分の条件での、アルカリガラス板上の粘着シート10に対する加熱加圧処理との後、23℃、剥離角度90°および引張荷重2.5N/10mmの条件でアルカリガラス板から光学粘着シートを剥離して剥離速度を測定する。定荷重剥離試験は、より具体的には、実施例に関して後述するとおりである。剥離速度の調整方法としては、例えば、粘着シート10における後記の第1光重合性多官能化合物の種類の選択、分子量の調整、および配合量の調整が挙げられる。剥離速度の調整方法としては、粘着シート10におけるベースポリマーのモノマー組成の調整、分子量の調整、配合量の調整、および架橋度の調整も、挙げられる。
【0034】
粘着シート10は、波長420nmでの透過率R1が85%以上であり、且つ、波長380nmでの透過率R2が15%以下である。このような構成は、粘着シート10において、ディスプレイパネル用途に求められる透明性を確保しつつ、紫外線カットによるディスプレイパネルの保護機能を確保するのに好ましい。透明性の観点から、透過率R1は、好ましくは87%以上、より好ましくは89%以上、更に好ましくは90%以上である。透過率R1は、例えば99%以下である。保護機能の観点から、透過率R2は、好ましくは14%以下、より好ましくは13%以下、より好ましくは12%以下、より好ましくは11%以下、より好ましくは10%以下、より好ましくは9%以下、より好ましくは8%以下、より好ましくは7%以下、より好ましくは6%以下、より好ましくは5%以下である。透過率R2は、例えば0.1%以上である。波長380nmでの光透過率および波長420nmでの光透過率の測定方法は、具体的には、実施例に関して後述するとおりである。
【0035】
粘着シート10は、ベースポリマー(光重合物)と、光重合性多官能化合物(第1光重合性多官能化合物)と、光重合開始剤とを含有し、光硬化性を有する。粘着シート10は、重合性成分として、光重合性多官能化合物に加えて単官能モノマーを含んでもよい。光重合物とは、光重合によって生じた重合物である。光重合とは、紫外線などの活性エネルギー線の照射によって重合性成分の重合反応を進行させる重合方法である。
【0036】
ベースポリマーは、単官能モノマーと光重合性多官能化合物(第2光重合性多官能化合物)とを含む重合性成分の、光重合による重合物である。ベースポリマーは、例えば、単官能モノマーの光重合による部分重合物(単官能モノマーの重合物と、未反応の単官能モノマーとの混合物)と、第2光重合性多官能化合物との光重合による重合物である。単官能モノマーは、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。第2光重合性多官能化合物は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
【0037】
このようなベースポリマーは、光架橋構造を有する光重合ポリマー(第1光重合ポリマー)を含む。光架橋構造は、単官能モノマーに由来するユニットによる直鎖構造の間が第2光重合性多官能化合物に由来するユニットよって架橋されている構造である。ベースポリマーは、そのような光架橋構造を有しない光重合ポリマー(第2光重合ポリマー)を含んでもよい。第2光重合ポリマーは、単官能モノマーの重合物である。また、ベースポリマーは、好ましくはアクリルポリマーである。アクリルポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルを50質量%以上の割合で含む重合性成分の共重合体である。「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0038】
単官能モノマーとしては、好ましくは、単官能の(メタ)アクリル酸エステルが用いられる。単官能の(メタ)アクリル酸エステルとしては、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられ、より好ましくは、アルキル基の炭素数が1~20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、直鎖状または分岐状のアルキル基を有してもよく、脂環式アルキル基など環状のアルキル基を有してもよい。
【0039】
直鎖状または分岐状の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソトリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル、および(メタ)アクリル酸ノナデシルが挙げられる。
【0040】
脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、二環式の脂肪族炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル、および、三環以上の脂肪族炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、および(メタ)アクリル酸シクロオクチルが挙げられる。二環式の脂肪族炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸イソボルニルが挙げられる。三環以上の脂肪族炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、および、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0041】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、好ましくは、炭素数3~15のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルが用いられ、より好ましくは、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、およびアクリル酸ドデシルからなる群から選択される少なくとも一つが用いられる。
【0042】
ベースポリマーを形成する重合性成分における単官能モノマーの割合は、粘着シート10において粘着性等の基本特性を適切に発現させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。同割合は、例えば99質量%以下である。
【0043】
重合性成分は、単官能の(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な共重合性モノマーを、単官能モノマーとして含んでもよい。共重合性モノマーとしては、例えば、極性基含有モノマーが挙げられる。極性基含有モノマーとしては、例えば、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、および窒素原子含有環を有するモノマーが挙げられる。極性基含有モノマーは、アクリルポリマーの凝集力の確保など、アクリルポリマーの改質に役立つ。
【0044】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、および(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリルが挙げられる。ヒドロキシ基含有モノマーとしては、好ましくは、アクリル酸2-ヒドロキシエチルおよびアクリル酸4-ヒドロキシブチルからなる群から選択される少なくとも一つが用いられる。
【0045】
重合性成分におけるヒドロキシ基含有モノマーの割合は、粘着シート10における凝集力の確保の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。同割合は、アクリルポリマーの極性(粘着シート10における各種添加剤成分とアクリルポリマーとの相溶性に関わる)の調整の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0046】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、およびイソクロトン酸が挙げられる。
【0047】
重合性成分におけるカルボキシ基含有モノマーの割合は、粘着シート10における凝集力の確保、および、粘着シート10における対被着体密着力の確保の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。同割合は、アクリルポリマーのガラス転移温度の調整、および、酸による被着体の腐食リスクの回避の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0048】
窒素原子含有環を有するモノマーとしては、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-(メタ)アクリロイル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-ビニルモルホリン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン、N-ビニルピラゾール、N-ビニルイソオキサゾール、N-ビニルチアゾール、N-ビニルイソチアゾール、およびアクリロイルモルフォリンが挙げられる。窒素原子含有環を有するモノマーは、好ましくは、N-ビニル-2-ピロリドンおよびアクリロイルモルフォリンからなる群から選択される少なくとも一つである。
【0049】
重合性成分における、窒素原子含有環を有するモノマーの割合は、粘着シートにおける凝集力の確保、および、粘着シートにおける対被着体密着力の確保の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。同割合は、アクリルポリマーのガラス転移温度の調整、および、アクリルポリマーの極性(粘着シートにおける各種添加剤成分とアクリルポリマーとの相溶性に関わる)の調整の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0050】
第2光重合性多官能化合物としては、例えば、多官能モノマーおよび多官能オリゴマーが挙げられ、好ましくは多官能オリゴマーが用いられる。
【0051】
多官能モノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和二重結合を1分子中に2個以上含有する多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。多官能モノマーとしては、光重合(活性エネルギー線重合)によって架橋構造を導入しやすい観点から、多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
【0052】
多官能(メタ)アクリレートとしては、二官能(メタ)アクリレート、三官能(メタ)アクリレート、および、四官能以上の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0053】
二官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチエレングルコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジアクリレート、ジ(メタ)アクリロイルイソシアヌレート、および、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(BPAEODE)が挙げられる。
【0054】
三官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、および、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0055】
四官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、および、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0056】
多官能モノマーの分子量は、好ましくは5000以下、より好ましくは3000以下、更に好ましくは2000以下、特に好ましくは1000以下であり、また、好ましくは200以上である。このような構成は、ベースポリマーの粘弾性(例えば、せん断貯蔵弾性率および損失正接)を適切に調整する観点から好ましい。
【0057】
多官能オリゴマーとしては、例えば、ウレタンアクリレートオリゴマー(ウレタン骨格と2以上のアクリロイル基とを有するオリゴマー)、エポキシアクリレートオリゴマー(エポキシ骨格と2以上のアクリロイル基とを有するオリゴマー)、および、シリコーンアクリレートオリゴマー(シロキサン骨格と2以上のアクリロイル基とを有するオリゴマー)が挙げられる。多官能オリゴマーとしては、好ましくは、ウレタンアクリレートオリゴマーが用いられる。ウレタンアクリレートオリゴマーの市販品としては、例えば、根上工業社製のアートレジンUN-333、UN-350、UN-353、UN-5500、およびUN-5590が挙げられる。
【0058】
多官能オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは20000以下、より好ましくは15000以下であり、また、好ましくは5000以上である。このような構成は、ベースポリマーの粘弾性(例えば、せん断貯蔵弾性率および損失正接)を適切に調整する観点から好ましい。重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)によって測定してポリスチレン換算により算出される。
【0059】
重合性成分における第2光重合性多官能化合物の割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上である。このような構成は、光硬化前の粘着シート10のシート形状を保持するのに好ましく、従って、粘着シート10の取り扱い性を確保するのに好ましい。重合性成分における第2光重合性多官能化合物の割合は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。このような構成は、光硬化前の粘着シート10において、高度の柔らかさを確保して、良好な段差追従性を実現するのに好ましい。
【0060】
重合性成分は、他の共重合性モノマーを含んでいてもよい。他の共重合性モノマーとしては、例えば、酸無水物モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、アルコキシ基含有モノマー、および芳香族ビニル化合物が挙げられる。これら他の共重合性モノマーは、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
【0061】
第1光重合性多官能化合物としては、例えば、多官能モノマーおよび多官能オリゴマーが挙げられ、好ましくは多官能モノマーが用いられる。多官能モノマーとしては、例えば、第2光重合性多官能化合物に関して上記した多官能モノマーが挙げられる。多官能オリゴマーとしては、例えば、第2光重合性多官能化合物に関して上記した多官能オリゴマーが挙げられる。第1光重合性多官能化合物は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。第1光重合性多官能化合物としては、好ましくは、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(BPAEODE)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)からなる群から選択される少なくとも一つが用いられる。
【0062】
粘着シート10における第1光重合性多官能化合物の含有量は、ベースポリマー100質量部あたり、好ましくは2.5質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは3.5質量部以上であり、また、好ましくは8質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。このような構成は、粘着シート10において、光硬化後に良好な接合信頼性を確保するのに適する。
【0063】
光重合開始剤としては、例えば、ラジカル系光重合開始剤、カチオン系光重合開始剤、およびアニオン系光重合開始剤が挙げられる。
【0064】
ラジカル系光重合開始剤としては、例えば、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、およびチオキサントン系光重合開始剤が挙げられる。
【0065】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4-ジ-n-ブトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、および、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイドが含まれる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、および2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、および4-(t-ブチル)ジクロロアセトフェノンが挙げられる。α-ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、および1-[4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オンが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば2-ナフタレンスルホニルクロリドが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば1-フェニル-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)-オキシムが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えばベンゾインが挙げられる。ベンジル系光重合開始剤としては、例えばベンジルが挙げられる。ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、およびポリビニルベンゾフェノンが挙げられる。ケタール系光重合開始剤としては、例えばベンジルジメチルケタールが挙げられる。チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、およびドデシルチオキサントンが挙げられる。
【0066】
カチオン系光重合開始剤(光酸発生剤)としては、例えば、紫外線照射によって酸を発生するオニウム化合物が挙げられる。当該オニウム化合物は、例えば、オニウムカチオンとアニオンとのオニウム塩の形態で提供される。オニウムカチオンとしては、例えば、スルホニウムおよびヨードニウムが挙げられる。アニオンとしては、例えば、Cl-,Br-,I-,ZnCl3
-,HSO3
-,BF4
-,PF6
-,AsF6
-,SbF6
-,CH3SO3
-,CF3SO3
-,C4F9HSO3
-,(C6F5)4B-,および(C4H9)4B-が挙げられる。カチオン系光重合開始剤の市販品としては、例えば、サンアプロ社製のCPI-100、CPI-100P、CPI-101A、CPI-200K、CPI-210S、IK-1、IK-2、CPI-310B、およびCPI-410Sが挙げられる。カチオン系光重合開始剤の市販品としては、例えば、ADEKA社製のSP-056、SP-066、SP-130、SP-140、SP-150、SP-170、SP-171、およびSP-172も挙げられる。
【0067】
アニオン系光重合開始剤(光塩基発生剤)としては、例えば、α-アミノアセトフェノン化合物、オキシムエステル化合物、および、ビグアニド型カチオンを有する化合物が挙げられる。ビグアニド型カチオンとしては、例えば、アルキルビグアニジウム、シクロアルキルビグアジニウム、および、シクロアルキル-アルキルビグアジニウムが挙げられる。ビグアニド型カチオンと対になるアニオンとしては、例えばボレート系アニオンが挙げられる。アニオン系光重合開始剤の市販品としては、例えば、富士フイルム社製のWPBG-018(9-アントラメチルN,N'-ジエチルカーバメート)、WPBG-027((E)-1-[3-(2-ヒドロキシフェニル)-2-プロペノイル]ピペリジン)、WPBG-082(グアニジウム2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオネート)、WPBG-140(1-(アントラキノン-2-イル)エチルイミダゾールカルボキシレート)、WPBG-266(1,2-ジイソプロピル-3-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]グアニジウム2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオナート)、WPBG-300(1,2-ジシクロヘキシル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウムn-ブチルトリフェニルボラート)、および、WPBG-345(1,2-ジシクロヘキシル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウムテトラキス(3-フルオロフェニル)ボラート)が挙げられる。
【0068】
粘着シート10における光重合開始剤の含有量は、ベースポリマー100質量部あたり、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.02質量部以上、更に好ましくは0.03質量部以上、一層好ましくは0.05質量部以上、より一層好ましくは0.07質量部以上、殊更に好ましくは0.1質量部以上、特に好ましくは0.2質量部以上である。このような構成は、粘着シート10に対する光照射時の光重合反応により、粘着シート10内に十分な架橋密度の架橋ネットワークを形成して、粘着シート10の粘弾性を有意に変化させるのに好ましい。粘着シート10における光重合開始剤の含有量は、ベースポリマー100質量部あたり、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。このような構成は、粘着シート10に対する光照射時に重合開始剤の多発生を抑制して、光重合反応によって長距離かつ連続的な架橋ネットワークを形成するのに好ましい。
【0069】
粘着シート10は、他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、オリゴマー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、防錆剤、リワーク向上剤、イソシアネート系架橋剤、および金属不活性化剤が挙げられる。
【0070】
ベースポリマーがアクリルポリマーである場合、オリゴマーとしては、好ましくはアクリルオリゴマーが用いられる。アクリルオリゴマーは、(メタ)アクリル酸エステルを50質量%以上の割合で含むモノマー成分の共重合体であり、重量平均分子量が例えば1000以上30000以下である。
【0071】
アクリルオリゴマーは、好ましくは、鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(鎖状アルキル(メタ)アクリレート)と、脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(脂環式アルキル(メタ)アクリレート)とを含むモノマー成分の重合体である。これら(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、例えば、アクリルポリマーの重合性成分として上記した(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0072】
鎖状アルキル(メタ)アクリレートとしては、ガラス転移温度が高く、ベースポリマーとの相溶性に優れることから、メタクリル酸メチルが好ましい。脂環式アルキル(メタ)アクリレートとしては、アクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸シクロヘキシル、およびメタクリル酸シクロヘキシルが好ましい。すなわち、アクリルオリゴマーは、アクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸シクロヘキシル、およびメタクリル酸シクロヘキシルからなる群より選択される1種以上と、メタクリル酸メチルとを含むモノマー成分の重合体であるのが好ましい。
【0073】
アクリルオリゴマーのモノマー成分における脂環式アルキル(メタ)アクリレートの割合は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。同割合は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。アクリルオリゴマーのモノマー成分における鎖状アルキル(メタ)アクリレートの割合は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。同割合は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。
【0074】
アクリルオリゴマーは、当該アクリルオリゴマーのモノマー成分を重合することによって得られる。重合方法としては、例えば、溶液重合、塊状重合、および乳化重合が挙げられる。アクリルオリゴマーは、好ましくは、溶液重合によって形成される。溶液重合における溶媒としては、例えば、トルエンおよび酢酸エチルが挙げられる。アクリルオリゴマーの重合においては、熱重合開始剤を用いてもよく、分子量の調整を目的として連鎖移動剤を用いてもよい。また、本実施形態では、アクリルオリゴマーの形成後、加熱により、反応溶液など反応系から低分子成分および溶媒を揮発させて除去する。低分子成分としては、例えば、未反応モノマー、連鎖移動剤、熱重合開始剤およびその分解物(残渣)が挙げられる。
【0075】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾ重合開始剤および過酸化物重合開始剤が挙げられる。アゾ重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2'-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、および、2,2'-アゾビス(N,N'-ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドが挙げられる。過酸化物重合開始剤としては、例えば、ジベンゾイルペルオキサイド、t-ブチルペルマレエ-ト、および過酸化ラウロイルが挙げられる。
【0076】
連鎖移動剤としては、α-チオグリセロール、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2-メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2-エチルヘキシル、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、およびα-メチルスチレン二量体が挙げられる。
【0077】
オリゴマーの重量平均分子量は、好ましくは1000以上、より好ましくは1500以上、更に好ましくは2000以上である。同分子量は、好ましくは30000以下、より好ましくは10000以下、更に好ましくは8000以下である。このようなオリゴマーの分子量範囲は、粘着シート10の接着力を確保するのに好ましい。
【0078】
粘着シート10におけるオリゴマーの含有量は、粘着シート10の接着力を充分に高めるためには、ベースポリマー100質量部あたり、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。粘着シート10におけるオリゴマーの含有量は、粘着シート10の透明性の確保の観点からは、ベースポリマー100質量部あたり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、一層好ましくは4質量部以下、特に好ましくは3質量部以下である。
【0079】
紫外線吸収剤としては、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、および、シアノアクリレート系紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤としては、波長320~370nmの範囲の紫外線の吸収性が高く、且つアクリルポリマーとの相溶性に優れることから、トリアジン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。紫外線吸収剤は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
【0080】
トリアジン系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(品名「Tinosorb S」,BASF製)、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニルと[(アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物(品名「TINUVIN 400」,BASF製)、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチルヘキシル)-グリシド酸エステルとの反応生成物(品名「TINUVIN 405」,BASF製)、(2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(品名「TINUVIN 460」,BASF製)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(品名「TINUVIN 577」,BASF製)、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(品名「TINUVIN 479」,BASF製)、および、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]-フェノール(「ADK STAB LA-46」,ADEKA製)が挙げられる。
【0081】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(品名「TINUVIN 928」,BASF製)、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(品名「TINUVIN PS」,BASF製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(品名「TINUVIN 900」,BASF製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール(品名「TINUVIN571」,BASF製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール(品名「TINUVIN P」,BASF製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(品名「TINUVIN 234」,BASF製)、2-〔5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル〕-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール(品名「TINUVIN 326」,BASF製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール(品名「TINUVIN 328」,BASF製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(品名「TINUVIN 329」,BASF製)、および、2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドーメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(品名「Sumisorb250」,住友化学製)が挙げられる。
【0082】
粘着シート10においては、光重合開始剤の波長405nmでの比吸光度(第1比吸光度)が、好ましくは10以上、より好ましくは15以上であり、且つ、紫外線吸収剤の波長405nmでの比吸光度(第2比吸光度)が、好ましくは5以下、より好ましくは3以下である。このような構成は、粘着シート10における、デバイス保護のための紫外線カット機能と、光硬化性との両立の観点から好ましい。上記光重合開始剤のうち、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、および、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドは、第1比吸光度が15以上である。上記紫外線吸収剤のうち、例えば、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、および、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールは、第2比吸光度が3以下である。
【0083】
粘着シート10における紫外線吸収剤の含有量は、ベースポリマー100質量部あたり、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、また、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。このような構成は、粘着シート10における、デバイス保護のための紫外線カット機能と、光硬化性との両立の観点から好ましい。
【0084】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、およびアミン系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
【0085】
酸化防止剤としては、好ましくは、フェノール系酸化防止剤が用いられ、より好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤が用いられる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトール・テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](品名「イルガノックス1010」,BASF製)、および、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(品名「イルガノックス1076」,BASF製)が挙げられる。
【0086】
粘着シート10における酸化防止剤の含有量は、ベースポリマー100質量部あたり、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、また、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。このような構成は、粘着シート10の酸化劣化の抑制と光硬化性との両立の観点から好ましい。
【0087】
シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ基を含有するシランカップリング剤が挙げられる。エポキシ基含有のシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシジアルキルジアルコキシシラン、および3-グリシドキシアルキルトリアルコキシシランが挙げられる。3-グリシドキシジアルキルジアルコキシシランとしては、例えば、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、および3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。3-グリシドキシアルキルトリアルコキシシランとしては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、および3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。シランカップリング剤としては、好ましくは、3-グリシドキシアルキルトリアルコキシシランが用いられ、より好ましくは、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが用いられる。シランカップリング剤は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。粘着シート10におけるシランカップリング剤の含有量は、ベースポリマー100質量部あたり、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、また、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
【0088】
粘着シート10は、熱重合開始剤の残渣を実質的に含まない。熱重合開始剤の残渣には、熱重合開始剤の分解物が含まれる。粘着シート10における熱重合開始剤の残渣の割合は、好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、特に好ましくは0である。
【0089】
粘着シート10の厚さは、被着体に対する充分な粘着性を確保する観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上である。粘着シート10のハンドリング性およびレーザー加工性の観点から、粘着シート10の厚さは、好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下、より好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、より好ましくは135μm以下、より好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下、より好ましくは50μm以下である。
【0090】
粘着シート10の全光線透過率は、好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上である。このような構成は、ディスプレイパネル用途の粘着シート10に求められる透明性を確保するのに好ましい。粘着シート10の全光線透過率は、例えば100%以下である。全光線透過率は、JIS K 7375(2008年)に準拠して、測定できる。
【0091】
粘着シート10は、例えば以下のようにして、製造できる。
【0092】
まず、プレポリマー組成物を調製する(プレポリマー組成物調製工程)。具体的には、まず、ベースポリマー形成用の上述の単官能モノマーと、光重合開始剤とを含む混合物(液状)を調製する。この混合物は、溶媒を含まない。次に、混合物に対して紫外線を照射することにより、混合物中の単官能モノマーの一部を光重合させてプレポリマー組成物(無溶剤型プレポリマー組成物)を得る。紫外線照射用の光源としては、例えば、紫外線LEDライト、ブラックライト、高圧水銀ランプ、およびメタルハライドランプが挙げられる。また、紫外線照射では、光源から出射される光の一部の波長領域をカットするための波長カットフィルターを、必要に応じて用いてもよい。紫外線照射において、照度は例えば5~200mW/cm2mであり、照射積算光量は例えば100~5000mJ/cm2である。紫外線照射は、組成物の粘度が15~25Pa・s程度になるまで続けるのが好ましい。この粘度は、B型粘度計により、ローターNo.5、ローター回転数10rpm、および温度30℃の条件で測定した値とする。プレポリマー組成物は、単官能モノマーの光重合物(上記第2光重合ポリマー)と、重合反応を経ていない単官能モノマー(残存モノマー)とを含有する。また、プレポリマー組成物は溶剤を含まない。
【0093】
次に、プレポリマー組成物に対し、第2光重合性多官能化合物と、光重合開始剤と、必要に応じて他の成分とを加えて、粘着剤組成物を調製する(粘着剤組成物調製工程)。他の成分としては、例えば、酸化防止剤およびシランカップリング剤が挙げられる。粘着剤組成物は、溶剤を含まないので、無溶剤型の粘着剤組成物である。
【0094】
次に、
図2Aに示すように、はく離ライナー21,22’間に塗膜10Aを形成する(塗膜形成工程)。具体的には、はく離ライナー21上に粘着剤組成物を塗布して塗膜10Aを形成し、その後、はく離ライナー21上の塗膜10Aの上にはく離ライナー22’を貼り合わせる。
【0095】
はく離ライナー21,22’は、それぞれ、例えば、可撓性を有するプラスチックフィルムである。当該プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、およびポリプロピレンフィルムが挙げられる。はく離ライナーの厚さは、例えば3μm以上であり、また、例えば200μm以下である。はく離ライナーの表面は、好ましくは剥離処理されている。
【0096】
粘着剤組成物の塗布方法としては、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、およびダイコートが挙げられる。
【0097】
次に、
図2Bに示すように、はく離ライナー21,22’間の塗膜10Aに対して紫外線を照射して光硬化させ、ベース粘着シート10Bを形成する(ベース粘着シート形成工程)。紫外線照時に、塗膜において、上述の残存モノマーと第2光重合性多官能化合物とを含む系での光重合反応が進行し、光架橋構造を有する第1光重合ポリマーが形成される。
【0098】
次に、
図2Cに示すように、ベース粘着シート10Bからはく離ライナー22’を剥離する(剥離工程)。
【0099】
次に、
図2Dに示すように、ベース粘着シート10Bに対して後添加成分を供給する(後添加成分供給工程)。例えば、後添加成分と溶媒とを含む後添加成分溶液(図示略)を、ベース粘着シート10Bの露出面に塗布する。後添加成分は、第1光重合性多官能化合物および光重合開始剤を含み、紫外線吸収剤や酸化防止剤などの添加物を含んでもよい。次に、ベース粘着シート10Bの表面からベース粘着シート10Bに後添加成分を浸透させつつ、必要に応じて加熱することによって溶媒を気化させる。本工程の前に、既に、ベースポリマーが架橋構造を有してベース粘着シート10Bは形作られている。そのため、本工程での溶媒の気化によっては、ベース粘着シート10Bにゆず肌表面は形成されにくい(実質的には形成されない)。また、ベース粘着シート10Bと後添加成分とによって光硬化性の粘着シート10が形成される。本工程で添加される第1光重合性多官能化合物の量は、上述のプレポリマー組成物と第2光重合性多官能化合物との合計100質量部あたり、好ましくは2.5質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは3.5質量部以上であり、また、好ましくは8質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。このような構成は、粘着シート10において、光硬化後に良好な接合信頼性を確保するのに適する。
【0100】
次に、
図2Eに示すように、粘着シート10に対してはく離ライナー22を貼り合わせる(貼合せ工程)。はく離ライナー22としては、例えば、はく離ライナー21,22’に関して上記したプラスチックフィルムが挙げられる。
【0101】
以上のようにして、はく離ライナー21,22によって粘着面が被覆保護された粘着シート10を製造できる。無溶剤型の粘着剤組成物から形成される粘着シート10は、環境負荷の低減に適する。また、はく離ライナー21,22は、粘着シート10を使用する際に必要に応じて粘着シート10から剥がされる。
【0102】
図3Aから
図3Cは、粘着シート10の使用方法の一例を表す。粘着シート10の使用方法とは、粘着シート10による被着体間の接合方法である。この方法は、貼合せ工程(
図3A)と、光硬化工程(
図3B)と、接合工程(
図3C)とを含む。
【0103】
まず、貼合せ工程では、
図3Aに示すように、カバーガラス31(第1被着体)に対して粘着シート10を貼り合わせる。カバーガラス31は、第1面31aと、当該第1面31aとは反対側の第2面31bとを有する。第1面31aの端縁には、装飾用または遮光用の印刷層32が形成されている。印刷層32は、例えば、カバーガラス31の端縁の全周にわたって設けられている。カバーガラス31には、第1面31aと印刷層32の表面との段差(印刷段差)がある。すなわち、カバーガラス31は、表面に段差を有する段差付き被着体である。本工程では、具体的には、カバーガラス31の表面31aにおける印刷層32を含む領域に、光硬化前の粘着シート10を貼り合わせる。
図3Aは、カバーガラス31の表面31a全体に光硬化前の粘着シート10を貼り合わせる場合を例示的に示す。
【0104】
次に、光硬化工程では、
図3Bに示すように、カバーガラス31上の粘着シート10を紫外線照射によって光硬化させる。紫外線照射により、粘着シート10において、第1光重合性多官能化合物の光重合反応が進行し、第1光重合性多官能化合物の光重合物が形成される。当該光重合反応は、ベースポリマー(光架橋構造を有する第1光重合ポリマー,第2光重合ポリマー)まわりで進行するので、第1光重合性多官能化合物の光重合物は、ベースポリマーと相互侵入高分子網目構造(IPN)を形成しつつ、形成される。これにより、粘着シート10が高弾性化する。紫外線照射用の光源としては、例えば、紫外線LEDライト、ブラックライト、高圧水銀ランプ、およびメタルハライドランプが挙げられる。また、紫外線照射では、光源から出射される光の一部の波長領域をカットするための波長カットフィルターを用いてもよい。紫外線照射において、照射積算光量は例えば50~10000mJ/cm
2である。
【0105】
次に、接合工程では、
図3Cに示すように、カバーガラス31上の光硬化後の粘着シート10を介して、カバーガラス31と部材33とを接合する。部材33は、例えば、ディスプレイパネル用の画素パネル、偏光フィルム、またはタッチパネルである。部材33は、粘着シート10側の表面(厚さ方向Hの一方面)に上述のレジン段差を有する場合がある。これにより、接合体W(カバーガラス31/粘着シート10/部材33)が得られる。
【0106】
粘着シート10は、上述のように、光硬化性を有する。このような粘着シート10は、貼合せ工程(
図3A)において、光硬化前の柔らかい状態で被着体の段差付き表面(カバーガラス31の表面31a)に貼り合わせることができる。そのため、粘着シート10は、良好な段差追従性を実現するのに適する。
【0107】
粘着シート10は、上述のように、所定条件での光硬化後において、フロート法で作製されたアルカリガラス板に対し、高温(85℃)の条件にて2.5N/10mm以上の粘着力Fを有する。このような粘着シート10は、ディスプレイパネルにおけるガラス基板および偏光フィルムなどの表面平滑性の高い被着体を接合するのに適する。そのため、粘着シート10は、ディスプレイパネル用途に適する。
【0108】
粘着シート10は、上述のように、所定条件での光硬化後に、75質量%以上のゲル分率を有する。このように高ゲル分率化した粘着シート10は、粘着シート10の硬化前に貼り合わされた被着体からも、粘着シート10の硬化後に貼り合わされた被着体からも、剥離が生じにくい。このような高ゲル分率化が可能な粘着シート10は、表面段差を有するカバーガラス31(第1被着体)への貼合わせ(
図3A)と、粘着シート10の光硬化(
図3B)と、硬化後の粘着シート10を介したカバーガラス31と部材33(第2被着体)との接合とにより、第1・第2被着体間において良好な接合信頼性を確保するのに適する。そのため、粘着シート10は、ディスプレイパネル用途に適する。
【実施例0109】
本発明について、以下に実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。また、以下に記載されている配合量(含有量)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上述の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合量(含有量)、物性値、パラメータなどの上限(「以下」または「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」または「超える」として定義されている数値)に代替できる。
【0110】
〈アクリルオリゴマーの調製〉
まず、撹拌機、温度計、還流冷却器、および窒素ガス導入管を備える反応容器内で、メタクリル酸ジシクロペンタニル(DCPMA)60質量部と、メタクリル酸メチル(MMA)40質量部と、連鎖移動剤としてのα-チオグリセロール3.5質量部と、重合溶媒としてのトルエン100質量部とを含む混合物を、70℃で1時間、窒素雰囲気下にて撹拌した。次に、混合物に、熱重合開始剤としての2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部を加えて反応溶液を調製し、窒素雰囲気下において、70℃で2時間、および、その後に80℃で2時間、反応させた(重合反応)。次に、反応溶液を130℃で加熱することにより、トルエン、連鎖移動剤および未反応モノマーを揮発させて除去した。これにより、アクリルオリゴマー(固形状)を得た。このアクリルオリゴマーの重量平均分子量は5100であった。
【0111】
〈プレポリマー組成物の調製〉
フラスコ内で、アクリル酸n-ブチル(BA)71質量部と、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)13質量部と、アクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA)13質量部と、アクリロイルモルフォリン(ACMO)3質量部とのモノマー混合物に、第1の光重合開始剤(品名「Omnirad184」,1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン,BASF製)0.031質量部と、第2の光重合開始剤(品名「Omnirad651」,2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン,BASF製)0.031質量部とを加えた後、当該混合物に対して窒素雰囲気下で紫外線を照射することにより、混合物中のモノマー成分の一部を重合させてプレポリマー組成物を得た。紫外線照射は、組成物の粘度が約20Pa・sになるまで続けた。この粘度は、B型粘度計により、ローターNo.5、ローター回転数10rpm、および温度30℃の条件で測定した値である。得られたプレポリマー組成物は、光重合物(光重合ポリマーP1a)と、重合反応を経ていないモノマー成分(残存モノマー)とを含有する。
【0112】
〈粘着剤組成物の調製〉
次に、プレポリマー組成物100質量部と、上記アクリルオリゴマー3質量部と、第2光重合性多官能化合物としてのウレタンアクリレートオリゴマー(品名「UN-350」,根上工業社製)0.6質量部と、第3の光重合開始剤(品名「Omnirad819」,ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド,BASF製)0.4質量部と、酸化防止剤(品名「イルガノックス1010」,BASF製)0.5質量部と、防錆剤(品名「BT-120」,城北化学工業社製)0.2質量部と、シランカップリング剤(品名「KBM-403」,信越化学工業社製)0.3質量部とを混合し、粘着剤組成物を得た。
【0113】
〈ベース粘着シートの作製〉
次に、片面に剥離処理面を有する第1はく離ライナー(品名「ダイアホイル MRF」,厚さ75μm,三菱ケミカル社製)の剥離処理面上に、粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成した。次に、第1はく離ライナー上の塗膜の上に、片面に剥離処理面を有する第2はく離ライナー(品名「ダイアホイル MRE」,厚さ75μm,三菱ケミカル社製)の剥離処理面を貼り合わせた。次に、はく離ライナー間の塗膜に第2はく離ライナー側から紫外線を照射し、当該塗膜を光硬化させて厚さ100μmの粘着剤層を形成した(紫外線照射工程)。紫外線照射においては、光源としてブラックライト(波長320nm~400nm,東芝製)を使用し、照度を6.5mW/cm2とし、照射積算光量を1500mJ/cm2とした。紫外線照工程では、塗膜において、上述の残存モノマーと第2光重合性多官能化合物(ウレタンアクリレートオリゴマー)とを含む系での光重合反応が進行し、光架橋構造を有する光重合ポリマーP1bが形成される。また、当該光重合反応は光重合ポリマーP1aまわりで進行するので、光重合ポリマーP1bは光重合ポリマーP1aまわりに形成される。本工程で形成される粘着剤層は、このような光重合ポリマーP1aと光重合ポリマーP1bとを、ベースポリマーP1として含む。以上のようにして、両面はく離ライナー付きのベース粘着シート(第1はく離ライナー/ベース粘着シート(厚さ100μm)/第2はく離ライナー)を作製した。
【0114】
〔実施例1〕
〈後添加成分溶液の調製〉
まず、第1光重合性多官能化合物としての多官能アクリレートモノマー(品名「ビスコート#295」,トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA),大阪有機化学工業社製)4.0質量部と、第3の光重合開始剤(品名「Omnirad819」,BASF製)0.3質量部と、紫外線吸収剤(品名「チノソーブS」,BASF製)7.0質量部と、溶媒としての酢酸エチル88.7質量部とを混合して、後添加成分溶液を調製した(溶液中の溶媒以外は後添加成分である)。後添加成分溶液の配合量を表1に示す。表1に示す配合量の単位は、相対的な“質量部”である。
【0115】
〈光硬化性の光学粘着シートの作製〉
次に、上述の両面はく離ライナー付きベース粘着シートから第2はく離ライナーを剥離した後、これによって露出したベース粘着シートの露出面に、後添加成分溶液を20μmの厚さで塗布した(塗布処理)。塗布には、R.D.SPECIALTIES社製のバーコーターRDS No.10を用いた。次に、110℃の乾燥器内で60秒間、乾燥処理した。塗布処理および乾燥処理により、ベース粘着シートに後添加成分(多官能アクリレートモノマー,第3の光重合開始剤,紫外線吸収剤)を浸透させ、また、溶媒を気化させた。ベース粘着シートは、後添加成分の浸透により、光硬化性の粘着シートへと変化した。本実施例では、上述のプレポリマー組成物と上述の第2光重合性多官能化合物との合計100質量部(即ち、ベースポリマー100質量部)あたり4質量部の第1光重合性多官能化合物(実施例1ではTMPTA)を、ベース粘着シートに添加した(ベースポリマー100質量部あたりの第1光重合性多官能化合物の質量部数を表2に示す)。次に、第1はく離ライナー上の粘着シートの上に、片面に剥離処理面を有する第3はく離ライナー(品名「ダイアホイル MRE」,厚さ75μm,三菱ケミカル社製)の剥離処理面を貼り合わせた。
【0116】
以上のようにして、実施例1の両面はく離ライナー付き光学粘着シート(第1はく離ライナー/光硬化性の光学粘着シート(厚さ100μm)/第3はく離ライナー)を作製した。
【0117】
〔実施例2~8〕
後添加成分溶液の組成を表1に示す組成に変えたこと以外は、実施例1の両面はく離ライナー付き粘着シートと同様にして、実施例2~8の各両面はく離ライナー付き粘着シートを作製した。実施例3~5では、後添加成分溶液の調製において、第1光重合性多官能化合物として、TMPTAに加えて、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(BPAEODE)(品名「ABE-300」,新中村化学工業社製)を用いた。実施例6~8では、後添加成分溶液の調製において、第1光重合性多官能化合物として、TMPTAに加えて、ポリプロピレングリコール#400ジアクリレート(品名「APG-400」,新中村化学工業社製)を用いた。
【0118】
〔比較例1~6〕
次のこと以外は、実施例1の両面はく離ライナー付き粘着シートと同様にして、比較例1~6の各両面はく離ライナー付き粘着シートを作製した。後添加成分溶液の組成を表1に示す組成に変えた。ベース粘着シート作製のための紫外線照射工程において、ブラックライトによる紫外線照射(第1照射)の後、紫外線LEDライト(波長365nm,Quark Technology社製)による紫外線照射(第2照射)を行った。第2照射では、照度を90mW/cm2とし、照射積算光量を1800mJ/cm2とした。このような紫外線照射工程により、上述のベースポリマーP1よりも重量平均分子量(Mw)が小さなベースポリマーP2が形成された。
【0119】
〈重量平均分子量〉
上述のベースポリマーP1,P2の各重量平均分子量(Mw)を求めた。具体的には、ベースポリマーのMwを、下記の測定条件において、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定してポリスチレン換算値で求めた。測定においては、GPC測定装置(品名「Alliance」,Waters製)を使用した。試料溶液は、次のようにして用意した。まず、ベースポリマーを試料として、試料濃度0.15質量%のテトラヒドロフラン(THF)溶液(10mMのリン酸を含有する)を調製した後、そのTHF溶液を20時間放置した。次に、当該THF溶液を、平均孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、ろ液を、分子量測定用の試料溶液として得た。
【0120】
〔GPC測定条件〕
カラム:G7000HXL(上流側)とGMHXLとGMHXL(下流側),各東ソー製
カラム温度:40℃
溶離液:リン酸を含有するテトラヒドロフラン溶液(リン酸濃度10mM)
流速:0.8mL/分
試料注入量:100μL
標準試料:ポリスチレン(PS)
検出器:示差屈折率計(RI)
【0121】
〈ゲル分率〉
実施例1~8および比較例1~6の各光学粘着シートについて、光硬化後のゲル分率を測定した。具体的には、次のとおりである。
【0122】
まず、はく離ライナー間の光学粘着シートに対し、はく離ライナー越しに紫外線を照射した。紫外線照射においては、光源としてメタルハライドランプを使用し、照度を300mW/cm2とし、照射積算光量を3000mJ/cm2とした。次に、光学粘着シートから約1gの粘着剤サンプルを採取した。次に、粘着剤サンプルの質量(W1)を測定した。次に、粘着剤サンプルを、容器内の酢酸エチル40gに7日間浸漬した。次に、酢酸エチルに不溶解な成分(不溶解部分)を全て回収した。次に、不溶解部分を130℃で2時間、乾燥した(酢酸エチルの除去)。次に、不溶解部分の質量(W2)を測定した。そして、下記式に基づき、光硬化後の光学粘着シートのゲル分率を算出した。その値を表2,3に示す。
【0123】
ゲル分率(質量%)=(W2/W1)×100
【0124】
〈透過率〉
実施例1~8および比較例1~6の各光学粘着シートについて、次のようにして透過率を測定した。まず、透過率測定用のサンプルを作製した。具体的には、光学粘着シートから一方のはく離ライナーを剥がした後、光学粘着シートの露出面を無アルカリガラス(松浪硝子社製)に貼り合わせ、ガラス上の光学粘着シートからはく離ライナーを剥がした。これにより、測定用のサンプルを得た。次に、分光光度計(品名「U4100」,日立ハイテクノロジーズ製)を使用して、サンプルにおける光学粘着シートの透過率を測定した。また、本測定では、無アルカリガラスのみについて同一条件で測定して得られた測定結果をベースラインとして用いた。光学粘着シートについて測定された波長380nmでの透過率および波長420nmでの透過率を、表1に示す。
【0125】
〈粘着力〉
実施例1~8および比較例1~6における各光学粘着シートについて、下記の剥離試験によって粘着力を測定した。
【0126】
まず、光学粘着シートごとに試験片を作製した。試験片の作製においては、まず、光学粘着シートから第3はく離ライナーを剥離し、これによって露出した光学粘着シートの露出面にPETフィルム(厚さ50μm)を貼り合わせて、積層フィルム(第1はく離ライナー/光学粘着シート/PETフィルム)を得た。次に、積層フィルムから試験片(幅10mm×長さ100mm)を切り出した。次に、試験片における光学粘着シートに対して、第1はく離ライナー側から紫外線を照射した(光硬化処理)。紫外線照射においては、光源としてメタルハライドランプを使用し、照度を300mW/cm2とし、照射積算光量を3000mJ/cm2とした。次に、23℃および相対湿度50%の環境下で、試験片の光学粘着シートから第1はく離ライナーを剥離し、これによって露出した光学粘着シートの露出面を、フロート法で作製されたアルカリガラス板(青板ガラス,松浪硝子工業製)のエア面に貼り合わせて、第1積層体(アルカリガラス板/光学粘着シート/PETフィルム)を得た。エア面とは、アルカリガラス板の製造プロセスにおいてアルカリガラス板が溶融金属上を流れる時の、アルカリガラス板における露出面(溶融金属と接する面とは反対の面)である。貼り合わせでは、2kgのローラーを1往復させる作業により、アルカリガラス板に試験片を圧着させた(後記の貼り合わせにおいても同様である)。次に、第1積層体をオートクレーブ処理(加熱加圧処理)した。オートクレーブ処理では、温度を50℃とし、圧力を0.5MPaとし、処理時間を15分間とした。次に、第1積層体を、23℃および相対湿度50%の環境下で30分間、静置した。
【0127】
この後、85℃、相対湿度50%、剥離角度180°および引張速度300mm/分の条件でアルカリガラス板から試験片を剥離する引張試験を実施して、剥離強度を測定した。本測定には、引張試験機(品名「引張圧縮試験機 TCM-1kNB」,ミネベア社製)を使用した。測定された剥離強度を、フロート法で作製されたアルカリガラス板に対する、光硬化後の粘着力F(N/10mm)として、表2,3に示す。
【0128】
〈残存応力〉
実施例1~8および比較例1~6の各光学粘着シートについて、伸長時(歪み時)の残存応力を調べた。具体的には、次のとおりである。
【0129】
まず、両面はく離ライナー付き光学粘着シートから、幅10mmおよび長さ60mmのサイズのシート片(第1はく離ライナー/光学粘着シート/第3はく離ライナー)を切り出した。次に、当該シート片の光学粘着シートから第1・第3はく離ライナーを剥離して、試験片(光学粘着シート片)を得た。次に、引張試験機(品名「オートグラフAGS-J」,島津製作所製)により、試験片を長さ方向に引っ張り、歪み値600%(6倍長さ)で試験片に生ずる残存応力を測定した。本試験において、初期チャック間距離は100mmであり、温度条件は23℃である。本試験では、試験片に生ずる応力を測定しつつ、試験片を、引張速度200mm/分で6倍長さ(チャック間距離600mm)まで伸長した後、当該長さを維持した。試験片が6倍長さまで伸長されて5分経過後の残存応力Sの値を、表2,3に示す。
【0130】
〈定荷重剥離試験〉
実施例1~8および比較例1~6における各光学粘着シートについて、下記の定荷重剥離試験における剥離速度を測定した。
【0131】
まず、光学粘着シートごとに試験片を作製した。試験片の作製においては、まず、光学粘着シートから第3はく離ライナーを剥離し、これによって露出した光学粘着シートの露出面にPETフィルム(厚さ50μm)を貼り合わせて、積層フィルム(第1はく離ライナー/光学粘着シート/PETフィルム)を得た。次に、積層フィルムから試験片(幅10mm×長さ100mm)を切り出した。次に、試験片における光学粘着シートに対して、第1はく離ライナー側から紫外線を照射した(光硬化処理)。紫外線照射においては、光源としてメタルハライドランプを使用し、照度を300mW/cm2とし、照射積算光量を3000mJ/cm2とした。次に、23℃および相対湿度50%の環境下で、試験片の光学粘着シートから第1はく離ライナーを剥離し、これによって露出した光学粘着シートの露出面を、フロート法で作製されたアルカリガラス板(青板ガラス,松浪硝子工業製)のエア面に貼り合わせて、第2積層体(アルカリガラス板/光学粘着シート/PETフィルム)を得た。次に、第2積層体をオートクレーブ処理(加熱加圧処理)した。オートクレーブ処理では、温度を50℃とし、圧力を0.5MPaとし、処理時間を15分間とした。次に、第2積層体を、23℃および相対湿度50%の環境下で30分間、静置した。
【0132】
この後、23℃、相対湿度50%、剥離角度90°および引張荷重2.5N/10mm(一定)の条件でアルカリガラス板から試験片を剥離する引張試験を実施して、剥離速度を測定した。本測定には、引張試験機(品名「引張圧縮試験機 TCM-1kNB」,ミネベア社製)を使用した。測定された剥離速度(μm/秒)を表2,3に示す。
【0133】
〈光硬化前の段差追従性〉
実施例1~8および比較例1~6の各光学粘着シートの光硬化前の段差追従性を、次のようにして調べた。
【0134】
まず、両面はく離ライナー付き光学粘着シートから、サンプルシート(長さ75mm×幅45mm)を切り出した。次に、サンプルシートにおける光学粘着シートから第3はく離ライナーを剥離し、これによって露出した光学粘着シートの露出面を、PETフィルム(長さ100mm×幅50mm,厚さ125μm)の中央に貼り合わせた。貼り合わせにおいては、ロールラミネータを使用し、ロール間圧力を0.2MPaとし、送り速度を100mm/分とした(後記の貼り合わせでも同様である)。次に、PETフィルム上の光学粘着シートから第1はく離ライナーを剥離し、これによって露出した光学粘着シートの露出面を、印刷層付きのガラスプレート(長さ100mm×幅50mm,厚さ500μm)に真空圧着(面圧0.3MPa,圧力100Pa)によって貼り合わせ、第1接合体を得た。
図4は、この第1接合体におけるガラスプレート41と光学粘着シート42との位置関係を表す。ガラスプレート41の厚さ方向一方面には、印刷層43(厚さ45μm,黒色インク層)がガラスプレート41の端縁全周にわたって形成されている。印刷層43は、長さ方向L1においては、ガラスプレート41の各端から内方15mmの範囲に形成され、幅方向L2においては、ガラスプレート41の各端から内方5mmの範囲に形成されている(
図4では、印刷層を、ハッチングを付して表す)。光学粘着シート42は、このようなガラスプレート41の厚さ方向一方面の中央に貼り合わされて、同シートの端縁全周にわたって印刷層43と接している。すなわち、ガラスプレート41上の印刷層43は、同層の内側端から外方2.5mmの範囲で、ガラスプレート41と光学粘着シート42とに挟まれている。
【0135】
次に、第1接合体を、50℃および0.5MPaの条件で、30分間、オートクレーブ処理した。この後、第1接合体における印刷層の内側端縁の近傍を観察した。具体的には、デジタルマイクロスコープにより、第1接合体のPETフィルム側から印刷層の内側端縁の内側(ガラスプレートに光学粘着シートが密着すべき領域)を、観察倍率20で観察した。そして、光学粘着シートの段差追従性について、観察範囲において気泡が確認されなかった場合を“優”と評価し、気泡が確認された場合を“不良”と評価した。その結果を表2,3に示す。
【0136】
〈光硬化後の段差追従性〉
実施例1~8および比較例1~6の各光学粘着シートの光硬化後の段差追従性を、次のようにして調べた。
【0137】
まず、両面はく離ライナー付き光学粘着シートから、所定サイズのサンプルシートを切り出した。次に、サンプルシートにおける光学粘着シートから第3はく離ライナーを剥離し、これによって露出した光学粘着シートの露出面を、ガラスプレートに貼り合わせた。ガラスプレート上の光学粘着シートに対して、第1はく離ライナー側から紫外線を照射して、光学粘着シートを光硬化させた。紫外線照射においては、光源としてメタルハライドランプを使用し、照度を300mW/cm2とし、照射積算光量を3000mJ/cm2とした。
【0138】
一方、PETフィルム(厚さ75μm)の片面に所定の偏光フィルムを貼り合わせた後、PETフィルム上の偏光フィルムの一部の領域に対し、片面に粘着剤層を有するポリイミド(PI)テープ(厚さ50μm)を貼り合わせた。これにより、PIテープによって表面段差(模擬的なレジン段差)が形成された偏光フィルム付きPETフィルムを得た。
【0139】
次に、ガラスプレート上の光学粘着シートから第1はく離ライナーを剥離した後、当該光学粘着シートを、偏光フィルム付きPETフィルムの偏光フィルム側に貼り合わせて、第2接合体を得た。具体的には、PIテープの端部と光学粘着シートの端部とが180μmオーバーラップする配置で、光学粘着シートと偏光フィルム付きPETフィルムとを貼り合わせた。この貼り合わせには、真空貼り合わせ装置を使用した。貼り合わせ圧力は0.1MPaとした。この貼り合わせの後、第2接合体を、40℃および0.4MPaの加熱加圧条件で、5分間、オートクレーブ処理した。
【0140】
次に、光学顕微鏡により、第2接合体におけるPIテープ端縁を観察し、気泡が生じていないことを確認した。次に、第2接合体を、100時間の高温加湿試験に付した。この試験では、加熱温度を85℃とし、相対湿度を85%とした。高温加湿試験の後、光学顕微鏡により、第2接合体におけるPIテープ端縁を観察した。そして、光学粘着シートの光硬化後の段差追従性について、観察範囲において気泡が確認されなかった場合を“優”と評価し、気泡が確認された場合を“不良”と評価した。その結果を表2,3に示す。
【0141】
【0142】
【0143】