IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大和ハウス工業株式会社の特許一覧 ▶ 宇都宮工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-固定金物及び建物 図1
  • 特開-固定金物及び建物 図2
  • 特開-固定金物及び建物 図3
  • 特開-固定金物及び建物 図4
  • 特開-固定金物及び建物 図5
  • 特開-固定金物及び建物 図6
  • 特開-固定金物及び建物 図7
  • 特開-固定金物及び建物 図8
  • 特開-固定金物及び建物 図9
  • 特開-固定金物及び建物 図10
  • 特開-固定金物及び建物 図11
  • 特開-固定金物及び建物 図12
  • 特開-固定金物及び建物 図13
  • 特開-固定金物及び建物 図14
  • 特開-固定金物及び建物 図15
  • 特開-固定金物及び建物 図16
  • 特開-固定金物及び建物 図17
  • 特開-固定金物及び建物 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050409
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】固定金物及び建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20240403BHJP
   E04B 2/82 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
E04B1/58 602
E04B2/82 501K
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107253
(22)【出願日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2022156642
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596066530
【氏名又は名称】宇都宮工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】尾山 誠
(72)【発明者】
【氏名】土井 昌司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 克典
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA13
2E125AA53
2E125AB01
2E125AC15
2E125AD01
2E125AE16
2E125BB16
2E125BB22
2E125BB35
2E125BC02
2E125BD01
2E125BE08
2E125BF01
2E125CA01
(57)【要約】
【課題】内壁の剛性を建物の構造躯体の剛性に寄与させることが可能な固定金物及びその固定金物を備えた建物を提供する。
【解決手段】固定金物40は、下部にフランジ部21を有する梁20に対して、梁20の下方に配置される内壁30を固定する固定金物であって、梁20に対してボルト16aにて固定される第1固定部41と、内壁30又は内壁30を保持するランナー11に対してボルト16bにて固定される第2固定部42と、第1固定部41と第2固定部42とを連結する連結部43と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部にフランジ部を有する梁に対して、前記梁の下方に配置される内壁を固定する固定金物であって、
前記フランジ部に対してボルトにて固定される第1固定部と、
前記内壁又は前記内壁を保持するランナーに対してボルトにて固定される第2固定部と、
前記第1固定部と前記第2固定部とを連結する連結部と、を備える固定金物。
【請求項2】
一対の前記連結部を更に備え、
前記一対の連結部は、前記固定金物の上下方向に対して傾斜する方向であって、前記上下方向と交差する方向において互いに反対側に向かってそれぞれ延びている、請求項1に記載の固定金物。
【請求項3】
前記連結部には、前記連結部の延出方向に沿って延びている補強部が設けられている、請求項2に記載の固定金物。
【請求項4】
前記補強部は、
前記連結部から前記第1固定部にわたって設けられた上補強部分と、
前記連結部から前記第2固定部にわたって設けられた下補強部分と、を有する、請求項3に記載の固定金物。
【請求項5】
前記連結部の前記延出方向において、前記上補強部分の下端は、前記下補強部分の上端よりも下方に位置する、請求項4に記載の固定金物。
【請求項6】
前記上補強部分は、前記連結部の表側及び裏側のうちの一方に突出しており、
前記下補強部分は、前記連結部の表側及び裏側のうち、前記上補強部分とは反対側に突出している、請求項4に記載の固定金物。
【請求項7】
前記上補強部分は、前記延出方向と交差する前記連結部の幅方向における中央部及び端部のいずれか一方に設けられており、
前記下補強部分は、前記幅方向における前記中央部及び端部のうち、前記上補強部分とは異なる側に設けられている、請求項4に記載の固定金物。
【請求項8】
前記上補強部分及び前記下補強部分は、それぞれ、前記連結部の一部を曲げ起こして形成されたリブ、又は前記連結部の一部を隆起させて形成されたビードのいずれかである、請求項4に記載の固定金物。
【請求項9】
前記連結部の延出方向に沿って延びており前記連結部の上端部分から下端部分にわたって設けられた第1補強リブと、
前記第2固定部に設けられた第2補強リブと、を更に備え、
前記第1補強リブと前記第2補強リブとは、互いに繋がっている、請求項2に記載の固定金物。
【請求項10】
前記第1補強リブの上端は、前記第1固定部の上面と同じ高さ、又は前記上面より上に位置する、請求項9に記載の固定金物。
【請求項11】
前記第1補強リブは、前記第1補強リブが設けられた前記連結部と連続する前記第2固定部が位置する側に設けられており、
前記第2補強リブは、前記第2固定部の上側に設けられている、請求項9に記載の固定金物。
【請求項12】
前記第1補強リブは、前記延出方向と交差する前記連結部の幅方向における前記連結部の端部に設けられており、
前記第2補強リブは、前記幅方向における前記第2固定部の端部のうち、前記第1補強リブと同じ側の端部に設けられている、請求項9に記載の固定金物。
【請求項13】
前記第1補強リブは、前記連結部の端部を曲げ起こして形成されたリブであり、
前記第2補強リブは、前記第2固定部の端部を曲げ起こして形成されたリブである、請求項12に記載の固定金物。
【請求項14】
前記連結部の延出方向に沿って延びており前記連結部の上端部分から下端部分にわたって設けられた第3補強リブを更に備え、
前記第3補強リブの上端は、前記第1固定部の上面と同じ高さ、又は該上面より上に位置し、
前記第3補強リブの下端は、前記第2固定部の下面と同じ高さ、又は該下面より下に位置する、請求項2に記載の固定金物。
【請求項15】
下部にフランジ部を有する梁と、
前記梁の下方に配置された内壁と、
前記フランジ部と前記内壁との間に配置された請求項1乃至14のいずれか一項に記載の固定金物と、を備える建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定金物及び建物に係り、特に、建物の構造躯体である梁に対して内壁を固定する際に用いられる固定金物及びその固定金物を備えた建物に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物の構造躯体を構成する梁に対して内壁を固定する機器としては、従来、クリップ状の係止部分を有する固定金物が用いられていた。特許文献1には、H型鋼等からなる梁材のフランジに係止されるクリップ状の係止部と、内壁に取り付けられたランナー材にビス止めされる固定面部と、係止部と固定面部とをつなぐ空間形成立面部と、を備える係止具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-7355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の係止具では、地震等による入力荷重が発生した際に、フランジに対する係止部の滑りが生じる。つまり、特許文献1に記載の係止具で梁に固定された内壁は、梁に対して移動可能であり、換言すると、梁と一体化した状態を維持し難い。そのため、内壁の剛性が建物の構造躯体の剛性に寄与せず、その結果、建物の構造躯体の剛性を向上させることができない。
【0005】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、内壁の剛性を建物の構造躯体の剛性に寄与させることが可能な固定金物を提供することである。
また、本発明の他の目的は、上記の固定金物によって内壁の剛性を構造躯体の剛性に寄与させた建物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、本発明の固定金物によれば、下部にフランジ部を有する梁に対して、梁の下方に配置される内壁を固定する固定金物であって、フランジ部に対してボルトにて固定される第1固定部と、内壁又は内壁を保持するランナーに対してボルトにて固定される第2固定部と、第1固定部と第2固定部とを連結する連結部と、を備えることにより解決される。
【0007】
上記のように構成された本発明の固定金物では、フランジ部と第1固定部とがボルトにて固定されるので、両者をより強固に締結することができる。同様に、内壁又はランナーと第2固定部とがボルトにて固定されるので、両者をより強固に締結することができる。このため、内壁の剛性を建物の構造躯体の剛性に寄与させることができる。これにより、例えば、地震時において建物の変形を効果的に抑えることができ、結果として、躯体の変形に起因する内装部分の損傷を抑制することができる。
【0008】
また、上記の固定金物において、一対の連結部を更に備え、一対の連結部は、固定金物の上下方向に対して傾斜する方向であって、上下方向と交差する方向において互いに反対側に向かってそれぞれ延びていてもよい。
上記の構成によれば、上下方向と交差する方向、すなわち水平方向の力に対する固定金物の強度が向上するので、固定金物による梁と内壁との固定状態を良好に安定させることができ、結果として、内壁の剛性を建物の構造躯体の剛性に効果的に寄与させることができる。
【0009】
また、上記の固定金物において、連結部には、連結部の延出方向に沿って延びている補強部が設けられていてもよい。
上記の構成によれば、補強部によって、水平方向の力、特に固定金物への剪断力に対する連結部の剛性が向上し、その結果、地震の揺れに対する固定金物の強度が向上する。これにより、内壁の剛性を建物の構造躯体の剛性に効果的に寄与させることができる。
【0010】
また、上記の固定金物において、補強部は、連結部から第1固定部にわたって設けられた上補強部分と、連結部から第2固定部にわたって設けられた下補強部分と、を有してもよい。
上記の構成によれば、連結部と第1固定部との接続部分、及び、連結部と第2固定部との接続部分のそれぞれに補強部分が設けられているため、固定金物における屈曲部分の強度を効果的に高めることができる。これにより、地震の揺れに対する固定金物の剛性が向上し、その結果、内壁の剛性を建物の構造躯体の剛性により効果的に寄与させることができる。
【0011】
また、上記の固定金物において、連結部の延出方向において、上補強部分の下端は、下補強部分の上端よりも下方に位置してもよい。
上記の構成によれば、連結部の延出方向において、連結部の上端から下端まで連続して補強部が設けられているので、連結部の剛性が向上し、その結果、地震の揺れに対する固定金物の強度が向上する。これにより、内壁の剛性を建物の構造躯体の剛性に効果的に寄与させることができる。
【0012】
また、上記の固定金物において、上補強部分は、連結部の表側及び裏側のうちの一方に突出しており、下補強部分は、連結部の表側及び裏側のうち、上補強部分とは反対側に突出してもよい。
上記の構成によれば、上補強部分及び下補強部分と、その周辺に位置する建物の構成要素との干渉が避けられるので、フランジ部と、内壁又はランナーとに対して固定金物を適切に取り付けることができる。
【0013】
また、上記の固定金物において、上補強部分は、延出方向と交差する連結部の幅方向における中央部及び端部のいずれか一方に設けられており、下補強部分は、幅方向における中央部及び端部のうち、上補強部分とは異なる側に設けられてもよい。
上記の構成によれば、上補強部分及び下補強部分が互いに干渉することなく連結部に対して好適に設けられる。
【0014】
また、上記の固定金物において、上補強部分及び下補強部分は、それぞれ、連結部の一部を曲げ起こして形成されたリブ、又は連結部の一部を隆起させて形成されたビードのいずれかでもよい。
上記の構成によれば、簡易な構成により固定金物の強度を向上させることができる。
【0015】
また、連結部の延出方向に沿って延びており連結部の上端部分から下端部分にわたって設けられた第1補強リブと、第2固定部に設けられた第2補強リブと、を更に備え、第1補強リブと第2補強リブとは、互いに繋がっていてもよい。
上記の構成によれば、地震の揺れによって上下方向に固定金物を圧縮する力が加わった場合、第1補強リブの上端がフランジ部に接触することで、第1補強リブ及び第2補強リブが当該圧縮する力に対抗する部位として寄与する。これにより、地震の揺れに対する固定金物の強度が向上し、その結果、内壁の剛性を建物の構造躯体の剛性により効果的に寄与させることができる。
【0016】
また、第1補強リブの上端は、第1固定部の上面と同じ高さ、又は上面より上に位置してもよい。
上記の構成によれば、第1補強リブの上端が地震時に関わらずフランジ部に接触しているので、地震の揺れによって上下方向に固定金物を圧縮する力が加わった場合、第1補強リブ及び第2補強リブが当該圧縮する力に対抗する部位として適切に寄与する。これにより、地震の揺れに対する固定金物の強度が向上し、その結果、内壁の剛性を建物の構造躯体の剛性により効果的に寄与させることができる。
【0017】
また、第1補強リブは、第1補強リブが設けられた連結部と連続する第2固定部が位置する側に設けられており、第2補強リブは、第2固定部の上側に設けられていてもよい。
上記の構成によれば、第1補強リブと第2補強リブとが互いに近しい位置に設けられるので、第1補強リブと第2補強リブとを適切に繋げることができる。これにより、第1補強リブ及び第2補強リブが上下方向の圧縮力に対抗する部位として適切に寄与する。
【0018】
また、第1補強リブは、延出方向と交差する連結部の幅方向における連結部の端部に設けられており、第2補強リブは、幅方向における第2固定部の端部のうち、第1補強リブと同じ側の端部に設けられてもよい。
上記の構成によれば、第2固定部を固定するためのボルト等との干渉を避けつつ、第1補強リブと第2補強リブとを適切に設けることができる。
【0019】
また、第1補強リブは、連結部の端部を曲げ起こして形成されたリブであり、第2補強リブは、第2固定部の端部を曲げ起こして形成されたリブであってもよい。
上記の構成によれば、簡易な構成により、第1補強リブと第2補強リブとを適切に設けることができる。
【0020】
また、連結部の延出方向に沿って延びており連結部の上端部分から下端部分にわたって設けられた第3補強リブを更に備え、第3補強リブの上端は、第1固定部の上面と同じ高さ、又は該上面より上に位置し、第3補強リブの下端は、第2固定部の下面と同じ高さ、又は該下面より下に位置してもよい。
上記の構成によれば、第3補強リブの上端が、地震時に関わらずフランジ部に接触している。また、第3補強リブの下端が、地震時に関わらず内壁又はランナーに接触している。これにより、地震の揺れによって上下方向に固定金物を圧縮する力が加わった場合、第3補強リブが当該圧縮する力に対抗する部位として適切に寄与する。この結果、地震の揺れに対する固定金物の強度が向上し、その結果、内壁の剛性を建物の構造躯体の剛性により効果的に寄与させることができる。
【0021】
上記のように構成された本発明の建物では、上記の固定金物を備えることにより内壁の剛性を建物の構造躯体の剛性に寄与させ、建物の耐震性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、内壁の剛性を建物の構造躯体の剛性に寄与させることが可能な固定金物及びその固定金物を備えた建物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る固定金物が梁に取り付けられた状態の建物を示す図である。
図2図1のA-A断面を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る固定金物の正面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る固定金物の平面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る固定金物の側面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る固定金物を備えた建物に対して地震の揺れが作用した状態を示す図である。
図7】比較例における固定金物に対して地震の横揺れが作用した状態を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る固定金物に対して地震の横揺れが作用した状態を示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係る固定金物に対して地震の縦揺れが作用した状態を示す図である。
図10】本発明の一実施形態に係る固定金物の第1の変形例の正面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る固定金物の第2の変形例の正面図である。
図12】本発明の一実施形態に係る固定金物の第3の変形例の正面図である。
図13】本発明の一実施形態に係る固定金物の第4の変形例の正面図である。
図14】本発明の一実施形態に係る固定金物の第4の変形例の平面図である。
図15】本発明の一実施形態に係る固定金物の第4の変形例の側面図である。
図16】実施例1~4における剪断試験の結果を示す図である。
図17】実施例1~4における圧縮試験の結果を示す図である。
図18】本発明の一実施形態に係る固定金物の第5の変形例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る固定金物について、添付の図面を参照しながら説明する。
なお、図面では、説明を分かり易くするために幾分簡略化及び模式化して各部材を図示している。また、図中に示す各部材のサイズ(寸法)及び部材間の間隔等についても、実際のものとは異なっている。
また、以下の説明では、特に断る場合を除き、固定金物の通常の使用状態を想定し、固定金物の位置、並びに固定金物各部の向き及び延出方向等を説明する際には、固定金物が通常の使用状態にあるときの位置、向き及び延出方向を示すこととする。
【0025】
また、本明細書において、互いに直交する3つの方向をX、Y、Z方向とする。X方向及びY方向は、水平方向に相当し、Z方向は、鉛直方向に相当する。X方向は後述する梁20(図1及び2参照)の長手方向(梁20の延出方向ともいう)に相当し、Y方向は梁20の短手方向(梁20のフランジ部21の張出方向ともいう)に相当する。
なお、「直交」及び「水平」は、本発明の技術分野において一般的に許容される誤差の範囲を含み、厳密な直交及び水平に対して数度(例えば2~3°)未満の範囲内でずれている状態も含むものとする。
【0026】
<本実施形態に係る建物>
先ず、図1及び2を参照しながら本実施形態に係る固定金物(以下、固定金物40)を備えた建物(以下、建物1)について概略構造を説明する。
【0027】
建物1は、図1及び2に示すように階層間に梁20を有する。梁20は、鋼材(例えばH形鋼)からなり、下部にフランジ部21を有する。梁20は、その直上にある階(上階)の床パネル(不図示)を上面(より詳しくは上部をなすフランジ部の上面)に載せて支持する。また、梁20の下方には、直下に位置する階の天井12及び内壁30が配置されており、固定金物40を介することにより梁20に対して、天井12及び内壁30が固定される。
【0028】
図2に示すように、内壁30の屋外側(図2のY方向の矢印が向いている側)には、外壁13が内壁30と間隔を空けて配置されている。外壁13は、ブラケット14を介してフランジ部21に取り付けられている。ブラケット14の上面は、ボルト16cによってフランジ部21の下面21aに固定されている。
【0029】
内壁30は、図1に示すように、上枠31及び下枠32を含む格子状の枠体(下地)に不図示の石膏ボード等の面材を取り付けて構成されている。内壁30の下枠32は、同じ階の床材15に固定されている。内壁30の上枠31は、図2に示すように、スペーサ17を介してランナー11に固定されている。ランナー11及びスペーサ17は、梁20の延出方向(X方向)に沿って梁20と平行に延びる部材であって、上枠31の上面は、不図示の釘等でスペーサ17の下面に固定され、スペーサ17の上面は不図示の釘等でランナー11の下面に固定されている。
【0030】
ランナー11は、図1に示すようにX方向に間隔を空けて並べられた複数(図1に示す例では2つ)の固定金物40を介して梁20に固定されている。より具体的には、図2に示すように、ランナー11の上面11aと固定金物40の最下面(裏面42b)とが、互いに接した状態でボルト16bによって固定される。また、フランジ部21の下面21aと固定金物40の最上面(表面41a)とが、互いに接した状態でボルト16aによって固定される。
【0031】
天井12は、図2に示すように、X方向に延びる枠材12aを有し、枠材12aは不図示の釘等でランナー11の側面に固定されている。
【0032】
<本実施形態に係る固定金物>
次に、図3~5を参照しながら固定金物40について説明する。図3は、固定金物40の正面図であり、図4は固定金物40の平面図であり、図5は固定金物40の側面図である。
【0033】
固定金物40は、下部にフランジ部21を有する梁20に対して、梁20の下方に配置される内壁30を固定する。より具体的には、固定金物40は、第1固定部41と、第2固定部42と、連結部43とを備え、図3に示すように、Y方向から見た際に台形状、厳密にはハット曲げの形状をなしている。
【0034】
(第1固定部)
第1固定部41は、固定金物40の上部をなしており、フランジ部21に対してボルト16a(図2参照)にて固定される。なお、ここでいう「ボルト16a」及び後述する「ボルト16b」には、ねじ及びビス等も含まれ、すなわち、2つの部材同士を螺合によって固定する固定具のすべてが含まれる。
【0035】
第1固定部41は、図4に示すように平面視で矩形状の板部であって、図3に示すようにZ方向において互いに反対向きの表面41a及び裏面41bを有する。表面41aは、第1固定部41におけるフランジ部21側の面であって、固定金物40の最上面をなし、前述したようにフランジ部21の下面21aに対して互いに接した状態でボルト16aによって固定される。裏面41bは、固定金物40の内側(すなわち、固定金物40で囲まれた空間側)を向いており、ランナー11の上面11a(図2参照)とZ方向において対面する。本実施形態において、表面41a及び裏面41bは、水平方向に延出する平坦な矩形状の面である。
【0036】
図4に示すように、表面41aの中央位置、より具体的にはX方向に及びY方向に平行な表面41aの中線同士が交わる位置には、表面41aに対して垂直に裏面41bまで貫通する穴41cが設けられている。穴41cには、フランジ部21に設けられた不図示の貫通穴と重なりあった状態でボルト16a(図2参照)が挿入される。
【0037】
(第2固定部)
第2固定部42は、内壁30を保持するランナー11に対してボルト16bにて固定される(図2参照)。本実施形態では、例えば図3に示すように、固定金物40を平面視した際に、第1固定部41の表面41aと平行な方向のうちの所定方向(ここではX方向)において、第1固定部41の両側に一対の第2固定部42のそれぞれが配置されている。
【0038】
第2固定部42は、例えば、図4に示すように平面視で矩形状の板部であって、図3に示すようにZ方向に互いに反対向きの表面42a及び裏面42bを有する。表面42aは、フランジ部21の下面21aと空間を挟んでZ方向において対面する。裏面42bは、固定金物40の最下面をなし、前述したようにランナー11の上面11aに対して互いに接した状態でボルト16b(図2参照)によって固定される。
【0039】
表面42aには、図4に示すように表面42aに対して垂直に裏面42bまで貫通する穴42cが設けられている。穴42cは、X方向と平行な表面42aの中線上に位置し、表面42aにおけるX方向の第1固定部41と反対側の端側に設けられている。穴42cには、ランナー11に設けられた不図示の貫通穴と重なりあった状態でボルト16bが挿入される(図2参照)。
【0040】
(連結部)
連結部43は、第1固定部41と第2固定部42とを連結する。連結部43は、図3に示すように、フランジ部21に接する第1固定部41の表面41aに対して傾斜する方向、言い換えると固定金物40の上下方向(Z方向)に対して傾斜する方向に延びている。本実施形態では、一対の連結部43が、X方向における第1固定部41の両端のそれぞれから、X方向の外側に向かって傾斜しながら下方に延びている。一対の連結部43は、上下方向(Z方向)と交差する方向(X方向)において互いに反対側に向かってそれぞれ傾斜している。
【0041】
連結部43の下端は、X方向における第2固定部42の第1固定部41側の端と接続されている。連結部43は、図5に示すように、連結部43の延出方向(傾斜する方向)を長手方向とし、その延出方向と交差(より具体的には直交)する連結部43の幅方向(Y方向)を短手方向とする平面視で矩形状の板部である。
【0042】
連結部43と第1固定部41との接続箇所である上接続部45は、図3に示すように、固定金物40の外側に向かって突出する角部(屈曲部分)であって、連結部43の幅方向(Y方向)に延びている。連結部43と第2固定部42との接続箇所である下接続部46は、固定金物40の内側に向かって突出する角部であって、第2固定部42の幅方向(Y方向)に延びている。
【0043】
連結部43は、図3に示すように、連結部43の延出方向と平行な面として、連結部43の延出方向と直交する方向において互いに反対向きの表面43a及び裏面43bを有する。表面43aは、固定金物40の外側を向いており、裏面43bは、固定金物40の内側を向いている。
【0044】
(補強部)
連結部43には、連結部43の延出方向に沿って延びている補強部44が設けられている。本実施形態では、図5に示すように、連結部43の幅方向(Y方向)に互いに対向する2つの補強部44が設けられている。固定金物40には、2つの連結部43が設けられており、それぞれの連結部43に対して2つの補強部44が設けられているので、図4に示すように、1つの固定金物40につき、4つの補強部44が設けられている。
【0045】
補強部44は、上補強部分44aと、下補強部分44bとを有する。
【0046】
上補強部分44aは、連結部43の延出方向と交差(ここでは直交)する連結部43の幅方向における中央部及び端部のいずれか一方に設けられており、本実施形態では、図5に示すように連結部43の幅方向の中央部に2つ並べて設けられている。また、上補強部分44aは、補強部44の表側及び裏側のうちの一方に突出しており、本実施形態では、図3に示すように連結部43の裏側(裏面43b側)に突出している。上補強部分44aは、連結部43から上接続部45を経由して第1固定部41にわたって設けられており、より具体的には、連結部43の一部を隆起させて形成されたビードである。上補強部分44aをなすビードは、絞り加工等により、板状の連結部43の表面43aから裏面43bに向かってプレス機により連結部43の所定部位を押圧して変形(隆起)させることにより形成される。
【0047】
上補強部分44aの、連結部43の延出方向と垂直な断面は、半円形状をなしている。上補強部分44aは、第1固定部41のX方向における端部のやや内側から連結部43の延出方向における中央部よりやや上側まで延びており、X方向及び連結部43の延出方向に延びている。2つの上補強部分44aは、図4に示すように、それぞれの連結部43に設けられ、連結部43の幅方向(Y方向)において間隔を空けて配置されている。上補強部分44aは、上接続部45と連結部43の上部とを補強している。
【0048】
下補強部分44bは、連結部43の幅方向における中央部及び端部のうち、上補強部分44aとは異なる側、本実施形態では、例えば、図5に示すように両端部にそれぞれ設けられている。また、下補強部分44bは、連結部43の表側及び裏側のうち、上補強部分44aとは反対側に突出しており、本実施形態では、例えば、図3に示すように連結部43の表側(表面43a側)に突出している。下補強部分44bは、連結部43から下接続部46を経由して第2固定部42にわたって設けられており、より具体的には、連結部43の一部、すなわち連結部43の幅方向における端に設けられたリブである。下補強部分44bをなすリブは、板状の連結部43の幅方向における端部を、連結部43の延出方向と平行な折り曲げ線に沿ってプレス機(あるいはベンダー)により表面43a側に曲げ起こすことにより形成される。
【0049】
2つの下補強部分44b及び連結部43の、連結部43の延出方向と垂直な断面は、表面43a側が解放された略U字形状をなしている。下補強部分44bは、連結部43の上部から第2固定部42のX方向における外側の端(連結部43とは反対側の端)まで延びている。下補強部分44bの上端は、連結部43の延出方向において、上補強部分44aの下端よりも上方に位置している。また、下補強部分44bは、連結部43の延出方向及びX方向に延びており、上補強部分44aに比べて十分に長い。2つの下補強部分44bは、図4に示すように、それぞれの連結部43に設けられ、連結部43の幅方向(Y方向)における両端位置に配置されている。連結部43の幅方向(Y方向)において、2つの下補強部分44bは、2つの上補強部分44aよりも外側に位置する。下補強部分44bは、下接続部46、連結部43の中央部よりやや上方位置から連結部43の下端に亘る範囲、及び第2固定部42を補強している。
【0050】
連結部43の延出方向において、上補強部分44aの下端は、下補強部分44bの上端よりも下方に位置する。より具体的には、図5に示すように、連結部43の表面43aに設けられた上補強部分44a(ビード)の下端が、連結部43の幅方向における端に設けられた下補強部分44b(リブ)の上端よりも下方に位置する。
すなわち、一対の連結部43の各々では、連結部43の延出方向における一端(上端)から他端(下端)に亘って補強部44が連続して設けられている。
【0051】
上記のように構成された固定金物40は、例えば1枚の金属板(ブランク)に対して抜き加工、曲げ加工、及びビード加工を行うことにより作製される。
【0052】
<本実施形態の作用及び効果>
以上までに説明したように、本実施形態に係る固定金物40では、フランジ部21と第1固定部41とがボルト16aにて固定されるので、両者をより強固に締結することができる。これにより、地震が発生して図6に示すように建物1に揺れ(縦揺れV及び横揺れH)が生じた際に、フランジ部21及び第1固定部41の間で滑りが生じない。「滑り」とは、例えば、フランジ部21に係止するクリップ状の係止部を有する従来の固定金物が用いられた建物に水平方向の揺れが生じた際に、係止部を含む固定金物がフランジ部21に対して水平方向にずれることをいう。
【0053】
同様に、ランナー11と第2固定部42とがボルト16bにて固定されるので、両者をより強固に締結することができる。このため、地震が発生し建物1に揺れが生じた際にランナー11及び第2固定部42の間で滑りが生じない。つまり、固定金物40によって内壁30が梁20に対して固定された状態、換言すると、内壁30が梁20と一体化した状態が安定して維持される。
【0054】
以上の構成により、内壁30の剛性を建物1の構造躯体の剛性に寄与させることができる。これにより、地震時において建物1の躯体の変形を効果的に抑えることができ、結果として、躯体の変形に起因する内装部分の損傷を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る固定金物40において、図3に示すように一対の連結部43を更に備える。一対の連結部43は、固定金物40の上下方向(すなわち、鉛直方向)に対して傾斜する方向であって、上下方向と交差する方向(すなわち、水平方向)において互いに反対側に向かってそれぞれ延びている。
上記の構成によれば、水平方向の力(剪断力)に対する固定金物40の強度が向上するので、固定金物40による梁20と内壁30との固定状態を良好に安定させることができ、結果として、内壁30の剛性を建物1の構造躯体の剛性に効果的に寄与させることができる。
【0056】
以下、図7及び8を参照しながら具体的に説明する。
図7に示す比較例の固定金物140の構成では、連結部143が第1固定部141に対して垂直に第2固定部142に向かって延びている(図7の実線を参照)。建物に横揺れHが発生し、例えば図7の右側から左側に向かう水平方向の力(剪断力)が固定金物140に作用すると、図7の仮想線(二点鎖線)で示すように、固定金物140は、平面視で平行四辺形に変形する。この場合、連結部143には、下接続部146を支点(回転軸)として連結部143を反時計回りに回転させようとする力が作用する。この力に対して、下接続部146の剛性と、連結部143の曲げ剛性とが作用する。ただし、このような構成では、固定金物140の横揺れに対する変形が十分に抑制されず、内壁30の剛性を建物1の構造躯体の剛性に効果的に寄与させることができない。
【0057】
これに対して、図8に示す本実施形態に係る固定金物40では、建物1に横揺れHが発生し、水平方向の力(剪断力)が固定金物40に作用した場合、前述の比較例の固定金物140とは異なり、連結部43をその延出方向に圧縮する力又は引っ張る力が作用する。連結部43はその力に対して延出方向における自身の剛性(軸剛性)によって変形を抑制する。その結果、固定金物40の横揺れに対する変形が十分に抑制される。
【0058】
より具体的に説明すると、図8に示すように、建物1に横揺れHが発生し、例えば図8の右側から左側に固定金物40に水平方向の力(剪断力)が作用した場合において、図8の右側に図示された連結部43には、その延出方向に引っ張る力が作用し、図8の左側に図示された連結部43には、その延出方向に圧縮する力が作用する。
【0059】
言い換えると、建物1に横揺れHが発生し、固定金物40に水平方向の力(剪断力)が作用した場合、その力は、連結部43をその延出方向に圧縮する力及び引っ張る力に変換される。これらの力に対して、連結部43の延出方向の剛性(軸剛性)が作用する。一般的に、下接続部の剛性と連結部の曲げ剛性に比べて、連結部の延出方向における軸剛性は十分に大きいので、本実施形態に係る固定金物40では、軸剛性の作用により、横揺れに対する変形が効果的に抑制される。これにより、図7に示す固定金物140に比べて、内壁30の剛性を建物1の構造躯体の剛性に効果的に寄与させることができる。
【0060】
また、本実施形態に係る固定金物40において、連結部43には、連結部43の延出方向に沿って延びている補強部44が設けられている。
上記の構成によれば、補強部44によって、水平方向の力、特に固定金物40への剪断力に対する連結部43の強度が向上し、その結果、地震の揺れに対する固定金物40の剛性が向上する。これにより、内壁30の剛性を建物の構造躯体の剛性に効果的に寄与させることができる。
【0061】
より具体的には、図9に示すように建物1に縦揺れVが発生した場合、連結部43を延出方向(より具体的には圧縮する方向)に変形させようとする力が作用し、連結部43はその力に対して自身の剛性(軸剛性)によって変形を抑制する。縦揺れVが発生すると、内壁30を回転させる力、より具体的には、Y方向と平行な内壁30の中心軸周りに内壁30を回転させる力が内壁30に作用する(図6参照)。これに対して、本実施形態に係る固定金物40によれば、固定金物40の強度によって内壁30の回転を抑制することができる。
また、建物1に横揺れHが発生した場合も、前述したように連結部43を延出方向に変形させようとする力が作用するが、連結部43はその力に対して自身の剛性(軸剛性)によって変形を抑制する。
上記の構成によれば、補強部44によって連結部43の延出方向の剛性(軸剛性)が向上するので、連結部43の延出方向における変形が一層抑制される。これにより、地震の揺れに対する固定金物40の強度が一層向上するので、固定金物40は内壁30の剛性を建物1の構造躯体の剛性に効果的に寄与させることができる。
【0062】
また、本実施形態に係る固定金物40において、補強部44は、連結部43から第1固定部41にわたって設けられた上補強部分44aと、連結部43から第2固定部42にわたって設けられた下補強部分44bと、を有する。
上記の構成によれば、連結部43と第1固定部41との上接続部45、及び、連結部43と第2固定部42との下接続部46のそれぞれに補強部分が設けられているため、固定金物40における屈曲部分の強度を効果的に高めることができる。これにより、地震の揺れに対する固定金物40の強度が向上し、その結果、内壁30の剛性を建物1の構造躯体の剛性により効果的に寄与させることができる。
【0063】
より具体的には、図9に示すように縦揺れVが発生すると、固定金物40には鉛直方向に圧縮力が作用する。このとき、上接続部45及び下接続部46の屈曲部分を屈曲させようとする力が、固定金物40を上下方向(Z方向)に潰すように作用する。すなわち、上接続部45における第1固定部41と連結部43とがなす角度が広がり、下接続部46における第2固定部42と連結部43とがなす角度が広がるように上記の圧縮力が作用する。
これに対して、本実施形態に係る固定金物40では、上接続部45及び下接続部46の強度が向上しているので、屈曲部分の屈曲角度が大きくなるのを抑制することができる。その結果、固定金物40の上下方向(Z方向)における潰れが抑制される。
【0064】
また、図8に示すように横揺れHが発生すると、固定金物40には水平方向に力(剪断力)が作用する。このときも、縦揺れVの場合と同様、上接続部45及び下接続部46の屈曲部分の屈曲角度を大きくさせようとする力が作用し、詳しくは、固定金物40が横倒れする方向に作用する。これに対して、本実施形態に係る固定金物40では、上接続部45及び下接続部46の強度が向上しているので、屈曲部分の屈曲角度が大きくなるのを抑制することができ、その結果、固定金物40の水平方向における横倒れが抑制される。
【0065】
また、本実施形態に係る固定金物40において、連結部43の延出方向において、上補強部分44aの下端は、下補強部分44bの上端よりも下方に位置する。
上記の構成によれば、連結部43の延出方向において、連結部43の上端から下端まで連続して補強部44が設けられているので、連結部43の強度が向上し、その結果、地震の揺れに対する固定金物40の強度が向上する。これにより、内壁30の剛性を建物1の構造躯体の剛性に効果的に寄与させることができる。
【0066】
また、本実施形態に係る固定金物40において、上補強部分44aは、連結部43の表側及び裏側のうちの一方に突出しており、下補強部分44bは、連結部43の表側及び裏側のうち、上補強部分44aとは反対側に突出している。
上記の構成によれば、上補強部分44a及び下補強部分44bと、その周辺に位置する建物1の構成要素との干渉が避けられるので、フランジ部21、及びランナー11に対して固定金物40を適切に取り付けることができる。
【0067】
また、本実施形態に係る固定金物40において、上補強部分44aは、連結部43の延出方向と交差する連結部43の幅方向における中央部及び端部のいずれか一方に設けられている。下補強部分44bは、連結部43の幅方向における中央部及び端部のうち、上補強部分44aとは異なる側に設けられている。
上記の構成によれば、上補強部分44a及び下補強部分44bが互いに干渉することなく連結部43に対して好適に設けられる。
本実施形態では、図3に示すように、上補強部分44aが第1固定部41の裏側(Z方向下側)に突出しているので、梁20のフランジ部21との干渉を防止することができる。また、下補強部分44bが第2固定部42の表側(Z方向上側)に突出しているので、ランナー11との干渉を防止することができる。
【0068】
また、本実施形態に係る固定金物40において、下補強部分44b及び下補強部分44bは、それぞれ、連結部43の一部を曲げ起こして形成されたリブ、又は連結部43の一部を隆起させて形成されたビードのいずれかである。
上記の構成によれば、簡易な構成により固定金物40の強度を向上させることができる。
【0069】
<その他の実施形態について>
以上までに、本発明の固定金物及び建物に関する一つの実施形態を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれることは勿論である。
【0070】
上記の実施形態では、上補強部分44aとして連結部43から第1固定部41にわたってビードが形成され、下補強部分44bとして連結部43から第2固定部42にわたってリブが形成されていた。ただし、これに限定されず、図10に示す固定金物240の補強部244のように、リブとビードの位置が反対になってもよい。より具体的には、上補強部分244aとして連結部243から第1固定部241にわたってリブが形成され、下補強部分244bとして連結部243から第2固定部242にわたってビードが形成されてもよい。
すなわち、上補強部分及び下補強部分は、連結部の表側及び裏側の突出方向、連結部の幅方向における中央部及び端部の配置位置、及び、補強部分の種類(リブ又はビード)に関して、いずれの組み合わせであってもよい。
【0071】
また、上記の実施形態では、図4に示すように、1つの連結部43に対して2つの補強部44が設けられていた。ただし、これに限定されず、1つの連結部43に対して1つの補強部44、すなわち、1つの上補強部分44a及び1つの下補強部分44bが設けられていてもよい。
【0072】
また、上記の実施形態では、固定金物40は、例えば1枚の板金(ブランク)に対して抜き加工、曲げ加工、及びビード加工を行うことにより作製されるとしたが、これに限定されず、複数の板金を例えば溶接加工によって接続することにより作製されてもよい。
【0073】
また、上記の実施形態では、図3に示すように、第1固定部41の両側に一対の第2固定部42のそれぞれが配置されているとした。ただし、これに限定されず、1つの第2固定部であってもよく、例えば、図11に示す固定金物340のように、Z方向に離れて配置された第1固定部341及び第2固定部342との間に一対の連結部343が連結されていてもよい。一対の連結部343のそれぞれには、補強部344が設けられていてもよい。
【0074】
また、上記の実施形態では、一対の連結部43は、図3に示すようにX方向における第1固定部41の両端のそれぞれから外側に向かって傾斜しながら下方に延びているとした。ただし、これに限定されず、例えば、図12に示す固定金物440のように、一対の連結部443は、第1固定部441の両端のそれぞれから内側に向かって傾斜しながら下方に延び、第2固定部442に接続されてもよい。一対の連結部443のそれぞれには、補強部444が設けられてもよい。
【0075】
また、上記の実施形態では、図1及び2に示すように、第2固定部42は、ランナー11に対してボルト16bにて固定されるとしたが、これに限定されず、内壁30(より具体的には上枠31)に対してボルト16bにて固定されてもよい。
【0076】
(第1補強リブ及び第2補強リブ)
また、上記実施形態では、固定金物40は補強部44を備えていた。ただし、これに限られず、例えば、図13~15に示す固定金物40Aのように、第1補強リブ51及び第2補強リブ52を備えてもよい。
固定金物40Aは、第1固定部41と、複数(2つ)の第2固定部42と、複数(2つ)の連結部43と、複数(4つ)の第1補強リブ51、及び複数(4つ)の第2補強リブ52を備えている。
第1固定部41、複数(2つ)の第2固定部42、及び複数(2つ)の連結部43については、上記の実施形態と同様の構成であるため説明を省略する。
【0077】
第1補強リブ51は、図13に示すように、連結部43の延出方向に沿って延びている。第1補強リブ51は、連結部43の上端部分から下端部分にわたって設けられている。第2補強リブ52は、図13に示すように、第2固定部42に設けられている。第1補強リブ51と第2補強リブ52とは、互いに繋がっている。互いに繋がった第1補強リブ51及び第2補強リブ52は、連結部43の上端部分から第2固定部42にわたって設けられており、略L字形状をなしている。
【0078】
より詳しくは、第1補強リブ51は、図13に示すように、第1補強リブ51が設けられた連結部43と連続する第2固定部42が位置する側に設けられている。すなわち、第1補強リブ51は、固定金物40Aの外側に設けられている。固定金物40Aの外側は、一対の連結部43が互いに向き合う側(固定金物40Aの内側)とは反対側をいう。第1補強リブ51は、図14に示すように、連結部43の幅方向(Y方向)における連結部43の端部に設けられている。本実施形態では、第1補強リブ51は、幅方向における連結部43の両端部の各々に設けられている。第1補強リブ51は、例えば、連結部43の端部を曲げ起こして形成されたリブである。
【0079】
第2補強リブ52は、図13に示すように、第2固定部42の上側に設けられている。第2補強リブ52は、図14に示すように、連結部43の幅方向(Y方向)における第2固定部42の端部に設けられている。より詳しくは、第2補強リブ52は、第1補強リブ51と同じ側の端部に設けられている。本実施形態では、第2補強リブ52は、幅方向における連結部43の両端部の各々に設けられている。第2補強リブ52は、例えば、第2固定部42の端部を曲げ起こして形成されたリブである。
【0080】
次に、本変形例の特徴部分である第1補強リブ51の上端51aについて説明する。
図13~15は、建物1の所定の配置位置に配置されており、フランジ部21(図2参照)及びランナー11に対してボルト16a,16bによって固定される直前の固定金物40A(以下、「非固定状態の固定金物40A」ともいう)を示す。
非固定状態の固定金物40Aでは、第1補強リブ51の上端51aは、第1固定部41の表面41a(上面)と同じ高さに位置する。あるいは、上端51aは、表面41aより上に位置する。上端51aは、図14に示すように、平面視で矩形状の平坦面である。
【0081】
一方で、フランジ部21(図2参照)及びランナー11に固定された後の固定金物40A(以下、「固定状態の固定金物40A」ともいう)では、上端51aは、第1固定部41の表面41aと同じ高さとなる。より詳しくは、非固定状態の固定金物40Aでは、上端51aが表面41aより上に位置していた場合であっても、固定状態の固定金物40Aでは、上端51aは表面41aと同じ高さとなる。
具体的に説明すると、固定金物40Aを非固定状態から固定状態とする手順として、まず、固定金物40Aをフランジ部21(図2参照)の下方位置に設置する。このとき、上端51aをフランジ部21の下面21aに接触させる。一方で、表面41aは、フランジ部21の下面21aとは接触しない。このため、表面41aと下面21aとの間に隙間が空く。その後、ボルト16aを締め込むことにより第1固定部41を変形させながらフランジ部21側に引き寄せる。これにより、表面41aがフランジ部21の下面21aに接触する。この結果、上端51aは、表面41aと同じ高さとなる。
【0082】
非固定状態の固定金物40Aにおいて、表面41aから上端51aまでの距離は、寸法バラツキに応じて設定されてもよい。例えば、表面41aから上端51aまでの距離の寸法バラツキが、±0.5mmと想定される場合、表面41aから上端51aまでの距離は、0mm~1mmの範囲であることが好ましい。
なお、表面41aから上端51aまでの距離は、表面41aと上端51aとが同じ高さの場合を0mmとし、表面41aよりも上端51aが上に位置するほど、+側に大きくなるものとする。
寸法バラツキは、例えば、JIS規格で定められた普通寸法公差及び普通幾何公差等に基づいて設定されてもよい。
非固定状態の固定金物40Aにおいて、表面41aから上端51aまでの距離は、例えば、0mm~3mmの範囲であることが好ましく、0mm~2mmの範囲であることがより好ましく、0mm~1mmの範囲であることが更に好ましい。
【0083】
第1補強リブ51は、上端51a側において、連結部43に対する曲げ起こしの根元に、切欠き51bを有している。切欠き51bは、第1補強リブ51形成用の曲げ加工を好適に実施するために設けられる。なお、切欠き51bは、不要な場合もある。具体的には、固定金物40Aの寸法精度が確保される場合、又は曲げ部分に亀裂が生じるリスク等が低い場合には、切欠き51bを設けなくてもよい。
【0084】
また、固定金物40Aは、第1補強リブ51及び第2補強リブ52の他にも、他のリブ及びビード等を有してもよい。すなわち、固定金物40Aは、補強部44(図3~5参照)に相当する部位を有してもよい。固定金物40Aは、例えば、上補強部分44aを有してもよく、上補強部分44aは、連結部43の一部を隆起させて形成されたビードであってもよい。
【0085】
以上までに説明したように、固定金物40Aでは、連結部43の延出方向に沿って延びており連結部43の上端部分から下端部分にわたって設けられた第1補強リブ51と、第2固定部42に設けられた第2補強リブ52と、を備えている。第1補強リブ51と第2補強リブ52とは、互いに繋がっている。
前述したように、建物に横揺れが発生し、水平方向の力が固定金物に作用した場合、固定金物に対して上下方向に圧縮する力又は引っ張る力が作用する(図8参照)。
また、建物に縦揺れが発生し、鉛直方向の力が固定金物に作用した場合も、固定金物に対して上下方向に圧縮する力又は引っ張る力が作用する(図9参照)。
上記の構成によれば、地震の縦揺れ及び横揺れによって上下方向に固定金物40Aを圧縮する力が加わった場合、第1補強リブ51の上端51aがフランジ部21の下面21aに接触することで、第1補強リブ51及び第2補強リブ52が当該圧縮する力に対抗する部位として寄与する。これにより、地震の揺れ(縦揺れ及び横揺れ)に対する固定金物40Aの強度が向上し、その結果、内壁30の剛性を建物1の構造躯体の剛性により効果的に寄与させることができる。
【0086】
また、第1補強リブ51の上端51aは、第1固定部41の表面41aと同じ高さ、又は表面41aより上に位置する。
上記の構成によれば、第1補強リブ51の上端51aが地震時に関わらずフランジ部21の下面21aに接触しているので、地震の揺れによって上下方向に固定金物40Aを圧縮する力が加わった場合、第1補強リブ51及び第2補強リブ52が当該圧縮する力に対抗する部位として適切に寄与する。これにより、地震の揺れに対する固定金物40Aの強度が向上し、その結果、内壁30の剛性を建物1の構造躯体の剛性により効果的に寄与させることができる。
【0087】
また、第1補強リブ51は、第1補強リブ51が設けられた連結部43と連続する第2固定部42が位置する側に設けられている。第2補強リブ52は、第2固定部42の上側に設けられている。
上記の構成によれば、第1補強リブ51と第2補強リブ52とが互いに近しい位置に設けられるので、第1補強リブ51と第2補強リブ52とを適切に繋げることができる。これにより、第1補強リブ51と第2補強リブ52が上下方向の圧縮力に対抗する部位として適切に寄与する。
【0088】
また、第1補強リブ51は、延出方向と交差する連結部43の幅方向(Y方向)における連結部43の端部に設けられている。また、第2補強リブ52は、連結部43の幅方向における第2固定部42の端部のうち、第1補強リブ51と同じ側の端部に設けられている。
上記の構成によれば、第2固定部42を固定するためのボルト16b(図2参照)等との干渉を避けつつ、第1補強リブ51と第2補強リブ52とを適切に設けることができる。
【0089】
また、第1補強リブ51は、連結部43の端部を曲げ起こして形成されたリブである。第2補強リブ52は、第2固定部42の端部を曲げ起こして形成されたリブである。
上記の構成によれば、簡易な構成により、第1補強リブ51と第2補強リブ52とを適切に設けることができる。
【0090】
次に、図16及び17を参照しつつ、固定金物40Aの有効性をより詳しく説明する。
図16は、実施例1~4における剪断試験の結果を示す図であり、図17は、実施例1~4における圧縮試験の結果を示す図である。図16及び17の各々について、横軸は変位(mm)を示し、縦軸は荷重(N)を示す。
「剪断試験」は、第1固定部41及び第2固定部42の一方又は双方を、水平方向に所定速度で引っ張った際の剪断力に対する固定金物の強度を評価する試験である。
「圧縮試験」は、第1固定部41及び第2固定部42の一方又は双方を、上下方向に押圧した際の圧縮力に対する固定金物の強度を評価する試験である。
【0091】
実施例1~4は、試験対象となる固定金物の条件がそれぞれ異なっている。
具体的には、実施例1及び2は、上記の実施形態で示した固定金物40を用いて実施した。実施例1は、板厚1.6mmの鋼板で作製された固定金物40を用いた。実施例2は、板厚1.2mmの鋼板で作製された固定金物40を用いた。
一方で、実施例3及び4は、本変形例で示した固定金物40Aを用いて実施した。実施例3は、板厚1.6mmの鋼板で作製された固定金物40Aを用いた。実施例4は、板厚1.2mmの鋼板で作製された固定金物40Aを用いた。
【0092】
剪断試験及び圧縮試験には、万能試験機を用いた。万能試験機は、試験片となる固定金物を上下方向に引っ張り又は圧縮することにより、試験片の機械的特性を評価する試験機である。実施例1~4の各々では、万能試験機は、固定金物を上方に引っ張る(又は上方から圧縮する)上可動部と、上可動部の下方に固定金物40を固定する下固定部とを備えたものを用いた。万能試験機の上可動部及び下固定部に固定金物を固定した後、万能試験機を稼働させると、上可動部が、固定金物を上方に引っ張りながら(又は上方から圧縮しながら)所定速度で上下方向に可動する。実施例1~4の各々では、その際の、上可動部の上下方向のストローク量(変位)と、上可動部側に設けられたロードセルによって計測された荷重との相関を計測した。
【0093】
図16に示す剪断試験では、万能試験機に対して2つの固定金物を横向きに設置した。具体的には、互いの第1固定部41同士を向かい合わせて左右対称に設置した。万能試験機の上可動部には、双方の第1固定部41を固定した。万能試験機の下固定部には、双方の第2固定部42を固定した。万能試験機に対する2つの固定金物の設置が完了した後、上可動部を所定速度で上方に可動させた。その際の、上可動部のストローク量(変位)と、ロードセルによって計測された荷重との相関を計測した。その計測結果を図16に示す。
板厚1.6mmの条件である実施例1及び3を比較すると、剪断力に対する強度について、固定金物40Aの方が固定金物40よりも10%程度高かった。
板厚1.2mmの条件である実施例2及び4を比較すると、剪断力に対する強度について、固定金物40Aは固定金物40と同程度だった。
【0094】
図17に示す圧縮試験では、万能試験機に対して1つの固定金物を縦向きに設置した。具体的には、万能試験機に対して第1固定部41を上側に向けて固定金物を設置した。上可動部に第1固定部41を固定し、万能試験機の下固定部には、第2固定部42を固定した。万能試験機に対する固定金物の設置が完了した後、上可動部を所定速度で下方に可動させ、その際の、上可動部のストローク量(変位)と、ロードセルによって計測された荷重との相関を計測した。その計測結果を図17に示す。
板厚1.6mmの条件である実施例1及び3を比較すると、圧縮力に対する強度について、固定金物40Aの方が固定金物40よりも2倍程度高かった。
板厚1.2mmの条件である実施例2及び4を比較すると、圧縮力に対する強度について、固定金物40Aの方が固定金物40よりも3倍程度高かった。
【0095】
評価の結果、実施例3及び4における固定金物40Aでは、実施例1及び2における固定金物40に比べて、剪断力及び圧縮力に対する強度が高く、特に圧縮力に対する強度が高いことがわかった。
【0096】
(第3補強リブ)
また、上記実施形態では、固定金物40は補強部44を備えていた。ただし、これに限られず、例えば、図18に示す固定金物40Bのように、第3補強リブ53を備えていてもよい。
固定金物40Bは、第1固定部41と、複数(2つ)の第2固定部42と、複数(2つ)の連結部43と、及び複数(4つ)の第3補強リブ53を備えている。
第1固定部41、複数(2つ)の第2固定部42、及び複数(2つ)の連結部43については、上記の実施形態と同様の構成であるため説明を省略する。
【0097】
図18は、建物1の所定の配置位置に配置されており、フランジ部21(図2参照)及びランナー11に対してボルト16a,16bによって固定される直前の固定金物40B(以下、「非固定状態の固定金物40B」ともいう)を示す。
第3補強リブ53は、図18に示すように、連結部43の延出方向に沿って延びている。第3補強リブ53は、連結部43の上端部分から下端部分にわたって設けられている。
より詳しくは、第3補強リブ53は、図18に示すように、第3補強リブ53が設けられた連結部43と連続する第2固定部42が位置する側に設けられている。すなわち、第3補強リブ53は、固定金物40Bの外側に設けられている。第3補強リブ53は、連結部43の幅方向(Y方向)における連結部43の端部に設けられている。本実施形態では、第3補強リブ53は、幅方向における連結部43の両端部の各々に設けられている。第3補強リブ53は、例えば、連結部43の端部を曲げ起こして形成されたリブである。
【0098】
非固定状態の固定金物40Bでは、第3補強リブ53の上端53aは、第1固定部41の表面41aと同じ高さに位置する。あるいは、上端53aは、表面41aより上に位置する。なお、上端53aは、前述した第1補強リブ51の上端51aと同じ構成であるため、詳細な説明は省略する。
第3補強リブ53は、上端53a側において、連結部43に対する曲げ起こしの根元に、切欠き53bを有している。なお、切欠き53bは、前述した第1補強リブ51の切欠き51bと同じ構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0099】
非固定状態の固定金物40Bでは、第1補強リブ51の下端53cは、第2固定部42の裏面42b(下面)と同じ高さに位置する。あるいは、下端53cは、裏面42bより下に位置する。下端53cは、上端53aと同様、平面視で矩形状の平坦面である。
【0100】
一方で、フランジ部21(図2参照)及びランナー11に固定された後の固定金物40B(以下、「固定状態の固定金物40B」ともいう)では、下端53cは、第2固定部42の裏面42bと同じ高さとなる。より詳しくは、非固定状態の固定金物40Bでは、下端53cが裏面42bより下に位置していた場合であっても、固定状態の固定金物40Bでは、下端53cは裏面42bと同じ高さとなる。
具体的に説明すると、固定金物40Bを非固定状態から固定状態とする手順として、まず、固定金物40Bをランナー11(図2参照)の上方位置に設置する。このとき、下端53cをランナー11の上面11aに接触させる。一方で、裏面42bは、ランナー11の上面11aとは接触しない。このため、裏面42bと上面11aとの間に隙間が空く。その後、ボルト16bを締め込むことにより第2固定部42を変形させながらランナー11(内壁30)側に引き寄せる。これにより、裏面42bがランナー11の上面11aに接触する。この結果、下端53cは、裏面42bと同じ高さとなる。
【0101】
非固定状態の固定金物40Bにおいて、裏面42bから下端53cまでの距離は、表面41aから上端53aまでの距離と同様、寸法バラツキに応じて設定されてもよい。
また、非固定状態の固定金物40Bにおいて、裏面42bから下端53cまでの距離は、例えば、0mm~3mmの範囲であることが好ましく、0mm~2mmの範囲であることがより好ましく、0mm~1mmの範囲であることが更に好ましい。
なお、裏面42bから下端53cまでの距離は、裏面42bと下端53cとが同じ高さの場合を0mmとし、裏面42bよりも下端53cが下に位置するほど、+側に大きくなるものとする。
【0102】
第3補強リブ53は、図18に示すように、下端53c側において、連結部43に対する曲げ起こしの根元に、切欠き53dを有している。切欠き53dは、第3補強リブ53形成用の曲げ加工を好適に実施するために設けられる。なお、切欠き53dは、前述した切欠き53bと同じ構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0103】
以上までに説明したように、固定金物40Bでは、第3補強リブ53を備えている。第3補強リブ53の上端53aは、第1固定部41の表面41aと同じ高さ、又は表面41aより上に位置している。第3補強リブ53の下端53cは、第2固定部42の裏面42bと同じ高さ、又は裏面42bより下に位置している。
上記の構成によれば、第3補強リブ53の上端53aが、地震時に関わらずフランジ部21の下面21aに接触している。また、第3補強リブ53の下端53cが、地震時に関わらずランナー11の上面11aに接触している。これにより、地震の揺れによって上下方向に固定金物40Bを圧縮する力が加わった場合、第3補強リブ53が当該圧縮する力に対抗する部位として適切に寄与する。この結果、地震の揺れに対する固定金物40Bの強度が向上し、その結果、内壁30の剛性を建物1の構造躯体の剛性により効果的に寄与させることができる。
【符号の説明】
【0104】
1 建物
11 ランナー
11a 上面
12 天井
12a 枠材
13 外壁
14 ブラケット
15 床材
16a,16b,16c ボルト
17 スペーサ
20 梁
21 フランジ部
21a 下面
30 内壁
31 上枠
32 下枠
40,140,240,340,440,40A,40B 固定金物
41,141,241,341,441 第1固定部
41a,42a,43a 表面
41b,42b,43b 裏面
41c,42c 穴
42,142,242,342,442 第2固定部
43,143,243,343,443 連結部
44,244,344,444 補強部
44a,244a 上補強部分
44b,244b 下補強部分
45 上接続部
46,146 下接続部
51 第1補強リブ
51a 上端
51b 切欠き
52 第2補強リブ
53 第3補強リブ
53a 上端
53b 切欠き
53c 下端
53d 切欠き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18