(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050416
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】束ねばね
(51)【国際特許分類】
F16F 3/04 20060101AFI20240403BHJP
F16F 1/02 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
F16F3/04 C
F16F1/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118036
(22)【出願日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2022156660
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】508129953
【氏名又は名称】飛松 康夫
(71)【出願人】
【識別番号】515239009
【氏名又は名称】飛松 眞實
(71)【出願人】
【識別番号】515239010
【氏名又は名称】飛松 眞
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】飛松 康夫
(72)【発明者】
【氏名】飛松 眞實
(72)【発明者】
【氏名】飛松 眞
【テーマコード(参考)】
3J059
【Fターム(参考)】
3J059AA09
3J059AB13
3J059AC03
3J059AD04
3J059BA01
3J059BB04
3J059BC01
3J059CA05
3J059DA41
(57)【要約】
【課題】 ばねのひずみを分散させ、ばねの特定箇所にひずみが集中しにくく、ばねが破損したり割れたりしにくいばねユニットを提供する。
【解決手段】 個々の独立した完品の圧縮コイルばね110を複数個束ねた、束ねばね体100を形成する「束ねばね体形成工程」と、当該工程を用いて形成した「束ねばね体」である。個々の圧縮コイルばね110が、両端の座巻部111と、それら両端の座巻部111に挟まれている有効巻部112を備えており、それぞれの有効巻部112の螺旋形状が同形状である。束ねばね体100における個々の圧縮コイルばね110同士の有効巻部112の螺旋形状同士を沿わせて重ねることにより束ねられ、座巻同士111を上下方向に沿わせて重ねることにより、多重螺旋構造を備えた構造とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立した個々の圧縮コイルばねを複数本束ねた多重螺旋体の束ねばね体を製造する束ねばね体形成工程であって、
コイリング処理およびテンパー処理が完了している独立した圧縮コイルばねであって、少なくともコイル径、巻数、ピッチ、高さの仕様が揃っている圧縮コイルばねを必要な複数本取り揃える圧縮コイルばね用意工程と、
前記圧縮コイルばね用意工程により準備した複数本の前記圧縮コイルばねを重ね合わせる工程であって、各々の上座巻部同士と、中央の螺旋形状の有効巻部同士と、下座巻部同士とを重ねて束ねた多重螺旋体を得る多重螺旋体形成工程と、
前記多重螺旋体形成工程により形成された前記多重螺旋体の重なりが解けないように前記多重螺旋体の表面を帯体で巻き張りするか合成樹脂で被覆する多重螺旋体安定化工程を備えた束ねばね体形成工程。
【請求項2】
複数本の前記圧縮コイルばねの線材径がすべて同一であることを特徴とする請求項1に記載の束ねばね体形成工程。
【請求項3】
複数本の前記圧縮コイルばねのコイルピッチがすべて同一であり、前記コイルピッチが前記線材径よりも10倍以上であることを特徴とする請求項2に記載の束ねばね体形成工程。
【請求項4】
複数本の前記圧縮コイルばねの線材径が、少なくとも複数種類あることを特徴とする請求項1に記載の束ねばね体形成工程。
【請求項5】
複数本の前記圧縮コイルばねのコイルピッチがすべて同一であり、前記コイルピッチが複数種類ある前記線材径のうち最も太い線材径よりも10倍以上であることを特徴とする請求項4に記載の束ねばね体形成工程。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の束ねばね体形成工程により製造された多重螺旋体の束ねばね体。
【請求項7】
内部に圧縮コイルばねを使用している機械装置において、
前記圧縮コイルばねに代えて請求項6に記載の束ねばね体を適用したことを特徴とする機械装置。
【請求項8】
内部に圧縮コイルばねを使用している構造物において、
前記圧縮コイルばねに代えて請求項6に記載の束ねばね体を適用したことを特徴とする構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立した個々の圧縮コイルばねを複数本束ねた多重螺旋体の束ねばね体を製造する束ねばね体形成工程、および、その形成工程により製作された束ねばね体に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性体の機械的要素として、「ばね」は様々な用途で幅広く使用されている。弾性体とは、外力が加わると変形して外力を取り除くと元に戻るという性質を有する物体である。
ばねの形状や材質は様々で、各種機械、健康運動器具、自動車、電車、電気製品、建築物、橋梁に至るまで、非常に多岐にわたって使用される。ばねの種類も多様にあり、圧縮コイルばね、板ばね、つる巻ばね、トーションバー、皿ばねがある。ばねの材料には金属、特に鉄鋼が広く用いられているが、用途に応じてゴム、プラスチック、セラミックスといった非金属材料も用いられている。また空気の圧縮と反発復元力を利用した空気ばねなどもある。
【0003】
このように多様な分野、多様な用途で用いられるばねであるが、シンプルな圧縮コイルばねは古くから用いられている。
圧縮コイルばねはシンプルな構造であり、形状において、両端部に座巻部があり、その座巻部の間に中心要素である螺旋状の有効巻部がある。
圧縮コイルばねの弾性力の強さを制御する要素(変数)としては、ばねの材料(横弾性係数)、ばねの線材径、コイル(有効巻部)の径、有効巻部の巻き数、有効巻部の螺旋長さなどがある。
【0004】
このように、圧縮コイルばねの弾性力を細かく調整することは可能であるが、細かい圧縮コイルばねの設計、細かい製造上の制約、製造時に生じる圧縮コイルばねの個体差などが影響するため、理想的な圧縮コイルばねを製作することは困難である。
他の種類のばねにおいても、弾性力の強さを制御する要素(変数)は様々あり、それらの要素を制御して適切な弾性力をもつばねを製造、調達することは難しい。
【0005】
また、単体のばねでは繰り返し使用していると線材の一部が破断したり、割れたりすることもあり得る。単体のばねが破断したり、割れたりすれば、修理交換が必要となりその手間やコストが発生する上、場合によってはばね破断や割れにより機械装置全体の不具合が発生したり、安全性に問題が生じたりする場合があり得る。
【0006】
そこで、従来技術において、複数のばねを組み合わせて適切な弾性力を持つ「ばねユニット」を製造する工夫がなされてきた。
以下、従来技術における特許文献1から特許文献8、さらに、特許文献9のものについて示す。
図17の特許文献1(特開2009-138893号公報)に示すシンプルな圧縮コイルばねを複数個上下に並べて直列に組み合わせたばねユニットが知られている。
図17の例では、単体のばね50が上下に3セット直列に組み合わされたばねユニットが示されている。
図17の例は免震装置における積層コイルの例であるが、
図17の例のように、複数のばねを上下直列に並べるものは免震装置に限らず、多様な製品の多様な用途で用いられている。
【0007】
次に、
図18の特許文献2(特開2007-46723号公報)に示すように、橋梁を左右対称に持たせた特殊な圧縮コイルばねを複数個上下に並べて直列に組み合わせたばねユニットが知られている。
図18の例では、単体のばね2aが上下に2セット直列に組み合わされたばねユニット2が示されている。
図18の例は医療用試薬分析装置における積層コイルの例であるが、
図18の例のように、複数のばねを上下直列に並べるものは、医療用試薬分析装置に限らず、多様な製品の多様な用途で用いられている。
【0008】
次に、
図19の特許文献3(特開平7-243464号公報)に示すように、シンプルな圧縮コイルばね(弦巻ばね)を複数個並列に並べて組み合わせたばねユニットが知られている。
図19の例では、単体の弦巻ばね3が1つの台座1上に4セット並列に組み合わされたばねユニットが示されている。
図19の例は寝具ベッドにおけるクッションの例であるが、
図19の例のように、複数のばねを並列に並べるものは寝具ベッドに限らず、多様な製品の多様な用途で用いられている。
【0009】
次に、
図20の特許文献4(特開2009-510354号公報)に示すように、シンプルな引張コイルばねを複数個並列に並べて組み合わせたばねユニットが知られている。
図20の例では、単体の引張コイルばね840が台座810の中に4セット並列に組み合わされたばねユニットが示されている。
図20の例は携帯電話内の部材における弾性体の例であるが、
図20の例のように、複数の引張ばねを並列に並べるものは多様な製品の多様な用途で用いられている。
【0010】
次に、圧縮コイルばねや引張コイルばね以外のばねでも複数個組み合わせて使用する「ばねユニット」は知られている。
図21の特許文献5(実用新案登録第3157352号公報)に示すように、シンプルな楕円板ばねを上下複数個直列に並べて組み合わせたばねユニットが知られている。
図21の例では、単体の楕円板ばね1が台座22の上に4セット直列に組み合わされたばねユニットが示されている。
図21の例は制振装置における弾性体の例であるが、制振装置に限られず、
図21の例のように、複数の楕円板ばねを直列に並べるものは多様な製品の多様な用途で用いられている。
【0011】
次に、
図22の特許文献6(特開2010-38228号公報)に示すように、シンプルな皿ばねを上下複数個直列に並べて組み合わせたばねユニットが知られている。
図22の例では、単体の皿ばね2が台座5と支柱6の間に複数セットが直列に組み合わされたばねユニットが示されている。
図22の例はボルトの緩み防止部材としての弾性体の例である。ボルト又はボルトに螺合されたナットの下面と被接合部材の上面との間に、複数枚(例えば5~10枚程度)の皿ばねを重ねて介装することが有効であるとされている。ボルトの緩み防止部材に限られず、
図22の例のように、複数の皿ばねを直列に並べるものは多様な製品の多様な用途で用いられている。
【0012】
次に、
図23の特許文献7(特開2001-173698号公報)に示すように、シンプルな板ばねを上下複数個直列に組み合わせ並べたばねユニットが知られている。
図23の例では、単体の板ばね2が上下方向に直列に重なり合うことで組み合わされた積層板ばねのばねユニットが示されている。
図23の例は半導体ウエハの製造装置に用いられる部材としての弾性体の例である。半導体ウエハ製造装置に限られず、
図23の例のように、複数の板ばねを直列に並べるものは多様な製品の多様な用途で用いられている。
まだ他にも様々なばねを複数組み合わせた「ばねユニット」はあり得るが、ここでは以上にとどめておく。
【0013】
なお、念のために示しておくが、
図24の特許文献8(特開2017-227241号公報)は、複数のばねを組み合わせた「ばねユニット」ではなく、
図24に示す形状でウエーブスプリングと呼ばれる単体の特殊な圧縮コイルばねの例である。それ自体が単体のバネである。
図24に示すように、一つながりの帯状のばね部材を複数層巻きにして、周回させてコイル状にしているが、マクロに全体を波型に位相シフトさせた圧縮コイルばねが開示されている。
図24の特許文献8には、一本の帯状のばね材3をコイル状に複数層巻回するものでことが明確に説明されており、あくまでも単体の圧縮コイルばねである。また、ばねピッチに相当する部分は、一部にみられる波型に位相シフトさせた箇所のみであり、他の部分は単に積層された帯体になっており、圧縮コイルばねのばねピッチではなく、弾性力は生じない。
【0014】
次に、特殊なバネとして、実願昭49-38400号公報が知られている。この特許文献9は相当古い文献であり、その開示内容が極端に少ない。明細書の記載も少なく、図面も
図25に示したようなものしか存在しない。当業者が示唆を受け得る範囲としては、当時の技術水準を加味して考えざるを得ないものであるところ、同文献によると「細い銅線数本を引き揃えるか又はこれに弱い撚りをかけその外側をゴムまたは軟質の合成樹脂で被覆して成る弾条」との記載があるのみで、そのフレーズが複数回出てくるのみである。この文献を当時の技術的水準で合理的に解釈するに、いわゆるプロダクトバイプロセスのように工程を読み取ることが合理的であり、第1工程が「細い銅線数本を引き揃えるか又はこれに弱い撚りをかけ」の工程、第2工程が「その外側をゴムまたは軟質の合成樹脂で被覆」する工程、第3工程が「弾条」としてコイリングする工程の3つの工程で製作されるバネと考えざるを得ないものである。
特許文献9の第1工程は「細い銅線数本を引き揃えるか又はこれに弱い撚りをかけ」と択一的表現の工程になっているので、前者方法は複数本(例えば4本)の細い銅線を並行に並べた1まとめの集合体の状態であり(いわゆるそうめんの束のような状態)、後者方法はそれら複数の細い銅線に捻じって撚りをかけて1まとめの集合体の状態とする(例えばしめ縄のような状態)ことを意味するとしか解釈できない。なおこの状態ではまだ弾条としてコイリングがなされていないとしか解釈できない。つまり前者方法と後者方法を択一的な方法と開示しており、弾条としてコイリング済みの状態の銅線をさらに捻じって撚りをかけてしめ縄状の弾条とすることはできないので、やはりコイリング工程は第3工程とならざるを得ない。
特許文献9の第2工程は「その外側をゴムまたは軟質の合成樹脂で被覆」する工程であり、素直に解釈すれば、細い銅線の単線1を並行に並べた1まとめの集合体の状態(そうめん束のような真っすぐな状態)か、複数の細い銅線の単線1を捻じって撚りをかけた1まとめの集合体の状態(例えばしめ縄のような状態)のものに、ゴムまたは軟質の合成樹脂で被覆する工程となる。
特許文献9の第3工程は、第2工程で製作した被覆済みの直線状の線材または撚り加工した線材を用いて、それを「弾条」としてコイリングする工程である。
これら第1工程→第2工程→第3工程の3つの工程により弾条を製造することが開示されていたと解釈され当業者はそのように知見を得るのみである。
【0015】
【特許文献1】特開2009-138893号公報
【特許文献2】特開2007-046723号公報
【特許文献3】特開平7-243464号公報
【特許文献4】特開2009-510354号公報
【特許文献5】実用新案登録第3157352号公報
【特許文献6】特開2010-38228号公報
【特許文献7】特開2001-173698号公報
【特許文献8】特開2017-227241号公報
【特許文献9】実願昭49-38400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記したように、単体のばねでは、ばねを組み込む適用箇所における弾性力やばね定数の調整は簡単ではない。
もし、単体のばねにおいて発揮される弾性力やばね定数を調整しようとすると、ばねの設計、ばねの製造加工などを個別に行う必要があり、ばねの製造コストが上がってしまう問題がある。そこで、複数のばねを組み合わせて「ばねユニット」とすれば、単体よりも適切な弾性力を持つものが調達しやすくなる。
また、ばねユニットも繰り返し使用していると、複数のばねのうちの線材の一部が破断したり、割れたりすることは同様に発生し得る。圧縮コイルばねが破損したり割れたりするとばねを搭載している機械装置に不具合が発生することもあり得る。
【0017】
上記した特許文献1から特許文献8の従来技術のばねについてもそれらの問題は存在している。
また、特許文献9の従来技術のばねについても問題が存在している。
特許文献1の圧縮コイルばねを複数個上下に並べて直列に組み合わせたばねユニットは、全体としてばねユニット長が長くなってしまい、ばね部品としては適合しない場合がある。また、直列で接続するとすべてのつなぎ目に台座が必要となってしまいばね部品としては適合しない場合がある。また、圧縮コイルばねを直列に組み合わせたばねユニットでは、ばねの線材の一部が破断したり割れたりする不具合は、単体のばねの場合と同様に発生する可能性があり、破断したり割れたりすると、修理交換が必要となりその手間やコストが発生することは同じであり、ばね破断や割れにより機械装置全体の不具合が発生したり、安全性に問題が生じる場合がある点も同じである。
【0018】
次に、特許文献2に開示された合成樹脂製コイルばねにも問題があった。特許文献2に開示された合成樹脂製コイルばねは、一体成形品であることから、ばねの直径や長さ等のサイズごとに金型を用意しなければならず、コイルばねが高価になるという問題があった。また、全体としてばねユニット長が長くなってしまい、ばね部品としては適合しない場合があった。
【0019】
次に、特許文献3に開示されたシンプルな圧縮コイルばね(弦巻ばね)を複数個並列に並べて組み合わせたばねユニットにも問題があった。それは、適用する箇所が平面的な比較的面積の大きな箇所に限定されることである。また、ばねの線材の一部が破断したり割れたりする不具合は、単体のばねの場合と同様に発生する可能性があり、破断したり割れたりすると、共通した台座を用いているので修理交換が必要となり、台座から取り外し、交換用のばねを台座に取り付ける手間やコストが発生する。ばね破断や割れにより機械装置全体の不具合が発生したり、安全性に問題が生じたりする場合がある点も同じである。
【0020】
次に、特許文献4に開示された単体の引張コイルばねを台座の中に複数並列に組み合わせたばねユニットにも問題があった。それは、適用できる箇所が比較的幅広の箇所に限定されることである。また、引張ばねの線材の一部が破断したり割れたりする不具合が発生すると、共通した台座を用いているので修理交換が必要となり、台座から取り外し、交換用のばねを台座に取り付ける手間やコストが発生する。ばね破断や割れにより左右のバランスが崩れ、機械装置全体の不具合が発生したり、安全性に問題が生じたりする場合がある点も同じである。
【0021】
次に、特許文献5に開示されたシンプルな楕円板ばねを上下複数個直列に並べて組み合わせたばねユニットにも問題があった。楕円板ばねは支柱がないと直列に並べるのが難しく作業に非常に手間がかかるという問題があった。また、楕円板ばねを直列に組み合わせたばねユニットでは、楕円板ばねの一部が破損した場合には、修理交換が必要となりその手間やコストが発生することは同じであり、ばね破断や割れにより機械装置全体の不具合が発生したり、安全性に問題が生じたりする場合がある点も同じである。
【0022】
次に、特許文献6に開示されたシンプルな皿ばねを直列に並べたばねユニットに問題があった。このばねユニットでは、皿ばねを1枚ずつ挿入する作業に非常に手間がかかり、また皿ばねの向きを間違えたり、皿ばねを落として紛失したりする等のトラブルが発生する可能性が高い。そして、現場で紛失した皿ばねが他の装置の作動に影響を及ぼして事故を招く危険性がある。
【0023】
次に、特許文献7に開示されたシンプルな板ばねを上下複数個直列に組み合わせ並べたばねユニットにも問題があった。全体としてばねユニット長が長くなってしまい、ばね部品としては適合しない場合がある。また板ばねは変形に弱く、繰り返し伸縮させるとばね定数が変化することもある。
【0024】
次に、特許文献8に開示された特殊なウエーブスプリングは、複数のばねを組み合わせた「ばねユニット」ではなく、それ自体で1つの単体のばねである。ウエーブスプリングはマクロに波型に変化する加工が難しく製造コストが高いものであった。その波型位相の変化を上下方向に複数個所にわたって設ける必要がありばね定数を調整することも難しいという問題もあった。
【0025】
次に、特許文献9に開示された実願昭49-38400号公報に開示されている特殊なバネにおける問題点を説明する。
この特許文献9は相当古い文献であり、その開示内容が極端に少ないため、当業者が示唆を受け得る範囲としては、当時の技術水準を加味して考えざるを得ないものであり、プロダクトバイプロセスの開示によるものとして第1工程から第3工程までで製作されるバネが開示又は示唆されるものとして読み取ることが合理的である。第1工程が「細い銅線数本を引き揃えるか又はこれに弱い撚りをかけ」の工程、第2工程が「その外側をゴムまたは軟質の合成樹脂で被覆」する工程、第3工程が「弾条」としてコイリングする工程の3つの工程で製作されるバネと考えざるを得ないものである。
第1工程は、複数本の細い銅線の単線1を並行に並べた1まとめの集合体の状態(いわゆるそうめんの束のような状態)とするか、複数の細い銅線の単線1を捻じって撚りをかけて1まとめの集合体の状態(しめ縄のような状態)とする工程である。この第1工程ではまだ弾条としてコイリングする前の状態としか解釈できないものである。なぜならば、第1工程の前に銅線を先に弾条としてコイリングされた状態と仮定してしまうと1つ1つが弾条の状態の銅線を複数本集めてそれらを捻じって撚りをかけて弾条とすることはできないからである。
第2工程は「その外側をゴムまたは軟質の合成樹脂で被覆」する工程であり、素直に解釈すれば、細い銅線を並行に並べた1まとめの集合体の状態(そうめん束のような真っすぐな状態)か複数の細い銅線に捻じって撚りをかけた1まとめの集合体の状態(例えばしめ縄のような状態)のものに、ゴムまたは軟質の合成樹脂で被覆する工程となる。
第3工程は、第2工程で製作した被覆済みの直線状の線材または撚り加工した線材を用いて、それを「弾条」としてコイリングする工程である。
しかし、このようなプロダクトバイプロセスで弾条を製造される場合には以下の問題がある。
第1の問題点は、いわゆる低温焼きなまし処理(テンパー処理)を行うことができないことである。なぜなら第3工程の「弾条」としてコイリングする工程に先立って、第2工程によりゴムまたは軟質の合成樹脂で被覆されてしまうからである。低温焼きなまし処理(テンパー処理)はコイリングされた後に行う処理であり、その前にすでにゴムまたは軟質の合成樹脂で被覆されてしまっており、低温焼きなまし処理(テンパー処理)はできない。
第2の問題点は、コイリング処理が正確にできない可能性があることである。
コイリングは、フィードローラーによって送り出された鋼線材料を、ピッチ機構により所定のピッチ間隔を開けつつ、コイリングピンによってコイル状に巻いてゆき、コイリング後にカットする工程である。コイリング工程は,ばねに必要な仕様、つまり、コイル径,巻数,自由高さ,荷重,ばね定数などの品質の大部分が決まってしまう重要な工程である。
この特許文献9によれば、第3工程において複数本の銅線をまとめた状態でコイリング処理を行うこととなり、複数本の鋼線材料をまとめてフィードローラーで押し出して供給してピッチ機構により所定のピッチ間隔を開ける必要があるが、複数本の鋼線材料の重なり状態によって所定のピッチ間隔とならない場合があり得るうえ、コイリングピンによってコイル状に巻く処理も内側(下側)の鋼線材料と外側(上側)の鋼線材料ではコイル径は同一にならない場合があり得る。
第3の問題点は、低温焼なまし(テンパー処理)を行うとコイル径が変化するが、複数の鋼線材料同士でコイル径が略同一に揃うとは限らない点である。
上記の第1の問題点で述べたように、この特許文献9では低温焼なまし(テンパー処理)ができないものであるが、被覆処理を無視して無理に低温焼なまし(テンパー処理)を行うと仮定しても、複数本の鋼線材料をまとめて低温焼なまし(テンパー処理)行うこととなってしまい、低温焼なまし(テンパー処理)の結果、鋼線材料のコイル径はそれぞれ独立して個別に発生してしまうため、かならずしもコイル径が一定しているとは言えない状態となってしまう。
【0026】
本発明の発明者は、腰痛緩和を目指したアキレス腱を中心としたストレッチを繰り返すストレッチ健康器具の開発を行う中で、伸縮部材として圧縮コイルばねを適用してきたが、様々なばねを適用して試行してきたが、ばね定数の調整が難しいという課題、および、単体のばねでは破損したり割れたりする不具合が発生しやいという課題を克服する上で、ばねの研究に取り組む中、複数のばねを組み合わせて用いることにより画期的な「ばねユニット」を発明したものである。
【0027】
本発明は、量産される比較的安価な圧縮コイルばねを用いてコストを低減しつつ、バネの各仕様(コイル径,巻数,自由高さ,荷重,ばね定数など)が揃っている複数の圧縮コイルばねを取り揃えて束ねるように組み合わせることにより、適合箇所に求められるばね定数となるよう調整が容易で、かつ、ばねのひずみを分散させ、ばねの特定箇所にひずみが集中しにくく、ばねが破損したり割れたりしにくいばねユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記目的を達成するため、本発明の束ねばね体形成工程は、独立した個々の圧縮コイルばねを複数本束ねた多重螺旋体の束ねばね体を製造する束ねばね体形成工程であり、コイリング処理およびテンパー処理が完了している独立した圧縮コイルばねであって、少なくともコイル径、巻数、ピッチ、高さの仕様が揃っている圧縮コイルばねを必要な複数本取り揃える圧縮コイルばね用意工程と、前記圧縮コイルばね用意工程により準備した複数本の前記圧縮コイルばねを重ね合わせる工程であって、それぞれの上座巻部同士と、中央の螺旋形状の有効巻部同士と、下座巻部同士を重ねて束ねた多重螺旋体を得る多重螺旋体形成工程と、前記多重螺旋体形成工程により形成された前記多重螺旋体の重なりが解けないように前記多重螺旋体の表面を帯体で巻き張りするか合成樹脂で被覆する多重螺旋体安定化工程を備えた束ねばね体形成工程である。
【0029】
上記構成によれば、圧縮コイルばね用意工程で用意する個々の圧縮コイルばねは、素材の線材径は入手・加工しやすいものを集めて採用することができ、コストを低減することができる。つまり、複数本の圧縮コイルばねを束ねて使用することによって、太い線材径で比較的高価で特注品になるような圧縮コイルばねであっても安価な圧縮コイルばねを束ねて疑似することによりコストを低減できる。
ここで、圧縮コイルばね用意工程で用意する圧縮コイルばねの個数であるが、限定はされないが、個々の圧縮コイルばねの線材径の合算が「束ねばね体」の合算線材径となるので、合算線材径に比べてコイルピッチが十分にないと「束ねばね体」が押しばねとして機能しにくくなる。そこで、例えば、個々の圧縮コイルばねのコイルピッチは、個々の圧縮コイルばねの線材径よりも10倍以上あることが好ましい。10倍以上あれば、個々の圧縮コイルばねの線材径が同一径だとすると、例えば5本の個々の圧縮コイルばねを束ねても「束ねばね体」においてコイルピッチは、合算線材径と同幅のものとなり得る。製作しようとする「束ねばね体」の合算線材径に比べて押しばねとして必要な幅のコイルピッチが確保できるコイルピッチのものを採用して用意すれば良い。
【0030】
また、圧縮コイルばね用意工程で用意する圧縮コイルばねのコイルの内径についても、個々の圧縮コイルばねの線材径に比べて10倍以上あることが好ましい。圧縮コイルばねは、引張ばねと違い、コイルの内径が線材径に比べて十分に大きくないと安定した伸縮動作が行えない。個々の圧縮コイルばねのコイルの内径が線材径に比べて十分に大きいものであれば、「束ねばね体」においても、そのコイル内径は個々の圧縮コイルばねのコイルの内径と同程度になると想定できるので、個々の圧縮コイルばねの線材径よりも十分に大きいもの、例えば、10倍以上あれば押しばねとしても良好に機能し得ると期待できる。
【0031】
また、「束ねばね体」で束ねられる個々の圧縮コイルばねの線材径は、1種類の同じ径に揃ったものとすることもでき、また、複数種類の異なった径のものを組み合わせて使用することもできる。
つまり、束ねばね体の各々の個別の圧縮コイルばねにおいて、線材径が複数種類の異なった径のものを組み合わせて使用する場合も、前記有効巻部の螺旋形状同士を沿わせて重ねることにより束ねられ、前記座巻同士を上下方向に沿わせて重ねた、多重螺旋構造を備えたものとすることができる。線材径が複数種類の異なった径のものを組み合わせる場合、「束ねばね体」のばね定数をさらに細かく調整することができる。
【0032】
発明者らは、この「束ねばね体」を用いれば、1つの圧縮コイルばねの座巻径の面積と同じ程度の小さな面積で優秀で適度な大きさのばね定数を持ったばねを得ることができることを確認した。
次に、複数の圧縮コイルばねが束ねられているので、ばねのひずみが分散し、特定のばねの特定箇所にひずみが集中しにくく、ばねが割れて破損することが、減少することを確認した。また、複数の線材径の圧縮コイルばねを組み合わせることができ、ばね定数の細かい調整ができる。
【0033】
なお、本発明の束ねばね体形成工程で製造される多重螺旋構造の「束ねばね体」は、複数本の圧縮コイルばねの有効巻部同士をシンプルに沿わせて束ねた「束ねばね体」である。つまり有効巻部の螺旋形状同士は並行に沿わせられて重ね合わせられた多重螺旋構造を備えた構造である。
そのため、本発明の束ねばね体形成工程で製造される多重螺旋構造の「束ねばね体」の定義からは、複数本の鋼材同士が紙縒り(こより)のように捻じられた紙縒り(こより)構造体は除外される。つまり束ねばね体形成工程で製造される「束ねばね体」は複数本が拠られた1本の紙縒り構造体が有効巻部において螺旋状にコイリングされた多重螺旋構造は本発明の「束ねばね」ではない。
【0034】
前者の本発明の束ねばね体形成工程と、後者の紙縒り構造体の形成工程では、製造工程としても相いれない相違点がある。
例えば、コイリング処理およびテンパー処理が行われる順番が大きく異なる。
本発明の束ねばね体形成工程では、最初の圧縮コイルばね用意工程に先立って個々の圧縮コイルばねは既にコイリング処理およびテンパー処理が終了して、独立した圧縮コイルばねとしては完品の状態である。その完品状態の個々の独立した圧縮コイルばねを用意する手順となる。
他方、後者の複数本の鋼材同士が紙縒り構造とする場合は、敢えて想定すると、紙縒り処理の工程の前にコイリング処理およびテンパー処理を行うことはできない。つまりコイリング処理が施された後の状態から紙縒り処理を行うことには物理的に無理があり、また、テンパー処理が施された後の状態から紙縒り処理を行うとばね定数が変化してしまう。そのため、本発明の「束ねばね」の製造工程では、紙縒り状態の構造体は製造に適用することは適切ではない。
【0035】
次に、本発明者らは、束ねばね体の「束ね状態」を維持するため、また、外部衝撃から保護するため、少なくとも有効巻部の螺旋形状同士を沿わせて重ねて束ねている箇所に、粘着テープなどの帯体を巻き張りする構造や、合成樹脂で被覆する構造も想起した。巻き張りする部材は、粘着テープなどの帯体が好適であるが、束ねばね体の螺旋状の有効巻部の軸(長さ方向の軸)の周囲を周回するようにぐるぐる巻けるものであれば良い。例えば、粘着テープやビニール帯や布帯なども帯体として適用できる。また、合成樹脂で被覆する構造もあり得る。
粘着テープなどの帯体を巻き張りしたり合成樹脂で被覆したりする多重螺旋体安定化工程を施せば、束ねばね体の「束ね状態」が良好に維持され、束ねばね体の弾性運動にも影響がないことを確認した。
【0036】
例えば、太い線材径で比較的高価で特注品になるような圧縮コイルばね単体で使用すると、やはり単体ゆえに伸縮に伴うばねの歪みが一部に集中しやすく破損したり割れたりする不具合が発生し得るが、所定の仕様にて完成済で品質の良い複数のばねを束ねた束ねばね体とし、さらにそれらの螺旋状の有効巻部の軸(長さ方向の軸)の周囲を周回するように、多重螺旋体安定化工程を施せば、伸縮に伴うばねの歪みを分散しやすく、仮に一部に亀裂が入っても割れにくく破損しにくくなる技術的効果が得られる。
【0037】
また、念のため、「束ねばね体」の全体を、紙素材やプラスチック素材などの幕体やジャバラ体で覆う工夫も好ましい。幕体やジャバラ体で覆う程度では、「束ねばね体」の弾性運動にも影響がなく、外部から不用意に「束ねばね体」のばねピッチ内に指先や足先や異物が入り込む事故を回避することができる。
さらに、もちろん座巻部分も巻き張りしておくことが好ましい。螺旋状の有効巻部や座巻を帯体で巻き張りしておくことにより、伸縮に伴うばねの歪みを分散しやすく、仮に一部に亀裂が入っても割れにくく破損しにくくなる。
【0038】
本発明にかかる「束ねばね」は多種多様な用途に適用することができる。
従来技術において圧縮コイルばねが弾性要素として採用されている部分に広く代替することが可能である。
例えば、内部に圧縮コイルばねを使用している機械装置において、従来の圧縮コイルばねに代えて本発明の「束ねばね体」を適用することができる。ここで言う機械装置とは、装置全体の用途に限らず、機械的に可動する部分を有する装置類をいい、その中に従来技術の圧縮コイルばねを含んでいるものをいう。
つまり、医療機器であっても機械的稼働部分を有しているものも多種多様にあり得るし、健康器具で機械的稼働部分を有しているものも多種多様にあり得るし、コンピュータ機器や通信機器であっても機械的稼働部分を有している部分があり得る。
また、橋や道路やビルなどの構造物においても圧縮コイルばねが適用されている例であるが、そこについても本発明の束ねばね体を用いることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明にかかる束ねばね体形成工程およびその工程で製造された束ねばね体によれば、1つの圧縮コイルばねの座巻径の面積と同じ程度の小さな面積で優秀で適度な大きさのばね定数を持ったばねを得ることができる。複数の線材径の圧縮コイルばねを組み合わせることができるのでばね定数の細かい調整ができる。
また、複数の圧縮コイルばねが束ねられているので、ばねのひずみが分散し、特定のばねの特定箇所にひずみが集中しにくく、ばねが割れて破損することを減少できる。
複数のばねを束ねた束ねばね体とし、さらにそれらの螺旋状の有効巻部の軸の周囲を周回するように、粘着テープや布帯によって巻き張りを行ったり、合成樹脂により被覆したりすることにより、形状が安定化しやすくなり、伸縮に伴うばねの歪みを分散しやすく、仮に一部に亀裂が入っても割れにくく破損しにくくなる。
また、本発明にかかる束ねばね体形成工程およびその工程で製造された束ねばね体によれば、所定の仕様にていわゆる低温焼きなまし処理(テンパー処理)済で、ばねとして完成された良質なもののみを選抜して束ねて束ねばね体とすることができ、さらに螺旋状の有効巻部の軸(長さ方向の軸)の周囲を周回するように多重螺旋体安定化工程を施すことにより束ねばね全体で伸縮に伴うばねの歪みを分散しやすく、仮に一部に亀裂が入っても割れにくく破損しにくくなる技術的効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の実施例1にかかる「束ねばね体形成工程」の工程フローの例を簡単に示した図である。
【
図2】本発明の実施例1にかかる「束ねばね体形成工程」により「束ねばね体」が形成されて行く様子を簡単に示した図である。
【
図3】本発明にかかる「束ねばね体」100の表面に帯体120を巻き張りにして巻き付けた本発明にかかる「束ねばね体」100Aを示す図である。
【
図4】座板130を取り付けた構成例を簡単に示す図である。
【
図5】束ねばね体100、100Aの一塊りごと被覆部140で覆った構成の束ねばね100D例を示す図である。
【
図6】一般的な自動車のストラット形懸架装置用の圧縮コイルばねの適用箇所に本発明の束ねばね体100を適用したものを簡単に示した図である。
【
図7】一般的なスピンドルモータに使用される四方からの付勢用の圧縮コイルばねの適用箇所に本発明の束ねばね体100を適用したものを簡単に示した図である。
【
図8】一般的なディスクブレーキのアクチュエータ部分に使用される付勢用の圧縮コイルばねの適用箇所に本発明の束ねばね体100を適用したものを簡単に示した図である。
【
図9】一般的な自動閉鎖する可動戸当たりの外付け部分に使用される付勢用の圧縮コイルばねの適用箇所に本発明の束ねばね体100を適用したものを簡単に示した図である。
【
図10】一般的な貨物運搬用パレット台の揺動緩衝用の圧縮コイルばねの適用箇所に本発明の束ねばね体100を適用したものを簡単に示した図である。
【
図11】一般的な冷凍装置・冷蔵装置の圧縮機に搭載されている圧縮コイルばねの適用箇所に本発明の束ねばね体100を適用したものを簡単に示した図である。
【
図12】一般的な電気機器類のオンオフシーソースイッチに搭載されている圧縮コイルばねの適用箇所に本発明の束ねばね体100を適用したものを簡単に示した図である。
【
図13】一般的な電気洗濯機の防振装置に搭載されている圧縮コイルばねの適用箇所に本発明の束ねばね体100を適用したものを簡単に示した図である。
【
図14】一般的な重機クレーントロリー装置の振動吸収用の圧縮コイルばねの適用箇所に本発明の束ねばね体100を適用したものを簡単に示した図である。
【
図15】橋梁の制振装置の振動吸収用の圧縮コイルばねとして、本発明にかかる束ねばね体100を適用したものを簡単に示した図である。
【
図16】健康運動器具の振動支援用の圧縮コイルばねとして、本発明にかかる束ねばね体100を適用した例である。
【
図17】公知技術における特許文献1(特開2009-138893号公報)の圧縮コイルばねを複数個上下に並べて直列に組み合わせたばねユニットを示す図である。
【
図18】公知技術における特許文献2(特開2007-46723号公報)の橋梁を左右対称に持たせた特殊な圧縮コイルばねを複数個上下に並べて直列に組み合わせたばねユニットを示す図である。
【
図19】公知技術における特許文献3(特開平7-243464号公報)の圧縮コイルばね(弦巻ばね)を複数個並列に並べて組み合わせたばねユニットを示す図である。
【
図20】公知技術における特許文献4(特開2009-510354号公報)の引張コイルばねを複数個並列に並べて組み合わせたばねユニットを示す図である。
【
図21】公知技術における特許文献5(実用新案登録第3157352号公報)の楕円板ばねを上下複数個直列に並べて組み合わせたばねユニットを示す図である。
【
図22】公知技術における特許文献6(特開2010-38228号公報)の皿ばねを上下複数個直列に並べて組み合わせたばねユニットを示す図である。
【
図23】公知技術における特許文献7(特開2001-173698号公報)の板ばねを上下複数個直列に組み合わせ並べたばねユニットを示す図である。
【
図24】公知技術における特許文献8(特開2017-227241号公報)のウエーブスプリングと呼ばれる単体の特殊な圧縮コイルばねを示す図である。
【
図25】公知技術における特許文献9(実願昭49-38400号公報)の特殊な引張ばねを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明の束ねばねの実施例に基づいて詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下、実施例1として、独立した個々の圧縮コイルばねを複数本束ねた多重螺旋体の束ねばね体を製造する束ねばね体形成工程、および、当該本発明の工程により製造された「束ねばね体」の実施例を説明する。
実施例2として、本発明にかかる「束ねばね体」を一般の機械装置や構造物等への適用例について述べる。
【実施例0042】
本発明の実施例1に係る「束ねばね体形成工程」および製造される「束ねばね体」の実施例を説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る「束ねばね体形成工程」の工程フローを簡単に示したものである。
図2は、
図1の「束ねばね体形成工程」の各工程で形成されて行く「束ねばね体」の様子を簡単に示した図である。
図2において、上段の図が平面図を示している。下段の図が側方の斜視図であるが、立体的構造が理解しやすいような角度で図示されている。
【0043】
図1に示すように、本発明の実施例1に係る「束ねばね体形成工程」の工程フローは「圧縮コイルばね用意工程」「多重螺旋体形成工程」「多重螺旋体安定化工程」の3つの工程を備えている。
【0044】
図1の工程フローにおいて、本発明の「束ねばね体形成工程」のうち第1工程である「圧縮コイルばね用意工程」の説明の前に、この「圧縮コイルばね用意工程」に先立つ調達部材の工程である「圧縮コイルばね製造工程」も併せて図示されている。
図1に示すように、この「圧縮コイルばね製造工程」は本発明の「束ねばね体形成工程」の一環ではなく、先立つ工程である。この「圧縮コイルばね製造工程」は発明の実施者自らが行う必要はなく、発明の実施者自身が行っても良く、市販品や外部の製造委託先で製造された圧縮コイルばねを購入や受発注により調達しても良い。
【0045】
「圧縮コイルばねの製造工程」
上記したように、この「圧縮コイルばね製造工程」は発明の実施者自らが行う必要はないが、先立つ工程として存在するので説明しておく。
「圧縮コイルばねの製造工程」は、(1)鋼線材料のコイリング工程、(2)テンパー(低温焼なまし)処理工程、(3)端面研削(両面研磨)工程、(4)ショットピーニング工程、(5)2度目のテンパー(低温焼なまし)処理工程、(6)セッチング工程、(7)防錆処理工程の7つの工程で行われることが多い。
【0046】
なお、幾つかの工程を省略することも可能とされている。
本発明の「束ねばね体形成工程」に採用する圧縮コイルばねでは、少なくとも(1)鋼線材料のコイリング工程、(2)テンパー(低温焼なまし)処理工程は必須の工程である。(3)~(6)の各工程は、本発明の「束ねばね体形成工程」で製造した「束ねばね」を適用する用途に応じて決まる弾性体としての仕様(ピッチ幅P、圧縮コイルばねの内径Rin、圧縮コイルばねの外形Rout、線材径D、有効巻数n、圧縮負荷がないときのばね長L0)によって省略するか否かを決めれば良い。
【0047】
上記の(1)鋼線材料のコイリング工程は、NCコイリングマシン、カム式コイリングマシン、旋盤式コイリングマシン等で行うことが多いとされている。
上記の(2)テンパー(低温焼なまし)処理工程は、テンパー温度やテンパー時間は、使用する鋼線材料によって適切な範囲が決まるが、これは公知技術や各ばね製造会社のノウハウである。
上記の(3)の端面研削(両面研磨)工程は、使用する線径が大きい場合に行われることが多い。ばね指数(コイル中心径/線径)が10以上の場合には、線径が太くても直角度の精度に影響がないことが多く、工程を省略することが可能である。
上記の(4)のショットピーニング工程は、微細な鋼鉄球を圧縮コイルばねに噴き付けてピーニングするものである。ばねの強度の向上やバリ除去やスケール除去の効果がある。
上記の(5)の2度目のテンパー(低温焼なまし)処理工程は、上記(4)ショットピーニング工程を行った後に行う2度目のテンパー処理である。
上記の(6)のセッチング工程は、圧縮コイルばねに使用想定の荷重以上の荷重を与えて鍛えるもので初期のばねのヘタリを緩和できるとされている。
上記の(7)の防錆処理工程は、ばねに防錆油の塗布やメッキや塗装等を行う処理である。
【0048】
「圧縮コイルばね用意工程」
「圧縮コイルばね用意工程」は、少なくともコイル径、巻数、ピッチ、高さの仕様が揃っている圧縮コイルばね110を必要な複数本取り揃える工程である。なお、取り揃える圧縮コイルばね110は、独立した完品の圧縮コイルばねを想定している。つまり、個別にコイリング処理およびテンパー処理が既に完了している独立した圧縮コイルばね110である。
この「圧縮コイルばね用意工程」に先立って、「圧縮コイルばね製作工程」があっても良いが、市販の圧縮コイルばねを購入して調達しても良い。
図2(a)では、独立した完品の圧縮コイルばね110が1つ示されている。ここでは、この圧縮コイルばね110は「圧縮コイルばね製作工程」で製作されたものとする。
「圧縮コイルばね用意工程」は、少なくともコイル径、巻数、ピッチ、高さの仕様が揃っている独立した完品の圧縮コイルばね110を必要本数である複数本を用意する。
【0049】
図2(a)は、本発明の束ねばね体100を構成するうちの独立した単体の圧縮コイルばね110を示すものであるが、この例では、
図2(a)に示すように、圧縮コイルばね110は、一端(上側)の座巻部111、他端(下側)の座巻部113、それら両端の上座巻部111および下座巻部113に挟まれている中央部分の有効巻部112を備えたシンプルな構造の例となっている。
各部材について本発明を理解する上で必要な構成部分を最小限で示しており、他の付属部分が存在していても良い。
【0050】
上座巻部111および下座巻部113は、弾性体のばねとして弾性力を発揮しないが、圧縮コイルばね110の座りを良くする目的で設けられる端部の巻き部分である。一般的には圧縮コイルばね110の両端に1巻きずつ設けられることが多いが、本発明では、座巻部111は、1巻きでも良く、2巻き以上あっても良い。
上座巻部111および下座巻部113は端部において水平面を供給することができる。後述する有効巻部が螺旋状で斜めに傾斜しているため、上座巻部111および下座巻部113を設けることで水平面が供給され、弾性体を適用する箇所に嵌め込みやすくなる。
【0051】
有効巻部112は、弾性体のばねとして弾性力を発揮する部分である。有効巻部112の巻き数が有効巻数となる。
一般には、圧縮コイルばね110の場合、ばねとして作用する有効巻きが所定ピッチ幅をあけて巻かれている。つまり、有効巻部112は螺旋状に一方向に回転しつつ傾斜して連続しており、所定のピッチ幅を保って複数回の巻き数を備えている。ピッチ幅とは螺旋状に巻かれている線材の巻き間隔であり、線材の中心から中心の距離と言える。
この例では、図中に付記はしないが、ピッチ幅P、圧縮コイルばねの内径Rin、圧縮コイルばねの外形Rout、線材径D、有効巻数n(n=3)、巻方向は上から見て時計回り、圧縮負荷がないときのばね長L0の例とする。
【0052】
組み合わせる各々の圧縮コイルばね110の線材径Dについては、同一のもので揃えても良いし、複数の異なるものを組み合わせても良い。つまり、線材径が同一の複数本の圧縮コイルばね110を組み合わせて束ねばね体100を作成しても良いし、複数の異なる線材径の圧縮コイルばね110同士を組み合わせて束ねばね体100を形成することも可能である。有効巻部の螺旋形状同士が略同一であれば、線材径が異なっていても各々の圧縮コイルばね110の有効巻部112を沿わせて重ねることにより束ねられ、座巻111同士を上下方向に沿わせて重ねれば、多重螺旋構造を備えた束ねばね体100とすることができる。異なる線材径を組み合わせ使用することにより、ばね定数の調整を細かく行いやすくなる。
【0053】
次に、個々の圧縮コイルばね110におけるコイルピッチ幅Pと線材径Dとの関係について述べる。コイルピッチ幅Pは線材径Dよりも10倍以上大きいことが好ましい。複数本を束ねる関係上、線材径よりも十分に大きなコイルピッチを持っていないと、形成された束ねばね体100が十分なコイルピッチを確保できないからである。例えば、個々の圧縮コイルばね110の線材径をDとし、コイルピッチ幅Pが10D程度の長さと仮定すると、5本の圧縮コイルばね110を束ねた場合、その組み合わせの見かけの線材径が5Dとなる。つまり、束ねばね体100の見かけの線材径が5Dで、コイルピッチ幅Pが10Dとなる。圧縮コイルばねとしてはもっと大きなコイルピッチ幅Pが確保されていても良い。例えば、コイルピッチ幅Pとして30Dを確保した場合、5本の圧縮コイルばね110を束ねた場合、その組み合わせの見かけの線材径が5Dでコイルピッチ幅Pが30Dとなり、見かけの線材径とコイルピッチ幅の比1:6となる。コイルピッチ幅Pが30Dであれば、15本の圧縮コイルばね110を束ねてもその組み合わせの見かけの線材径が15Dとなり、見かけの線材径とコイルピッチ幅の比1:2となる。
なお、これらは一例に過ぎず、かならずしも束ねばね体100の見かけの線材径とコイルピッチ幅の比は限定されない。
【0054】
次に、束ねばね体100を形成する個々の圧縮コイルばね110におけるコイル内径Rinと線材径Dとの関係について述べる。コイル内径Rinは線材径Dよりも大きいことが好ましい。圧縮コイルばねの性質上、線材径Dよりもコイル内径Rinが適度に大きい方がその伸縮動作が安定する。例えば、コイル内径Rinは線材径Dよりも10倍以上大きいことが好ましい。つまり、ばね指数(コイル中心径/線径)が10以上であることが好ましい。
【0055】
次に、束ねる本数であるが、2本以上の複数であれば何本でも良い。ただし、線材径Dとコイルピッチ幅Pとの関係などにより、重ねすぎると物理的に組み合わせが難しくなることもあり得るので、組み合わせ可能な本数には上限がある。
この例では、
図2(b)では、
図2(a)に示す独立した単体の圧縮コイルばね111を5本束ねた例となっている。
図2(c)では、
図2(a)に示した独立した単体の圧縮コイルばね111を20本束ねた例となっている。もちろん組み合わせる本数は限定されず、何本の組み合わせでも良い。
【0056】
「多重螺旋体形成工程」
次に、「多重螺旋体形成工程」は、「圧縮コイルばね用意工程」により準備した複数本の圧縮コイルばね110を重ね合わせる工程である。
「圧縮コイルばね用意工程」で取り揃えた圧縮コイルばね110のそれぞれの上座巻部111同士と、中央の螺旋形状の有効巻部112同士と、下座巻部113同士とを重ねて束ねた多重螺旋体を得る工程である。
それぞれの圧縮コイルばね110は、コイル径、巻数、ピッチ、高さの仕様が揃っているので、外形的に同形(相似形でかつ大きさも同じ)であり、有効巻部112の螺旋形状同士を沿わせて重ねることにより物理的に束ねることができ、上座巻111同士も下座巻113同士も上下方向に沿わせて重ねることができ、多重螺旋構造を得ることができる。
【0057】
図2(b)、
図2(c)では、コイル径、巻数、ピッチ、高さが揃っている多重螺旋構造体が得られている。
図2(b)や
図2(c)に示すように、本発明の実施例1にかかる束ねばね体100は、
図2(a)に示す単体の圧縮コイルばね101を複数個束ねたものである。つまり、束ねばね体100は、複数個の圧縮コイルばね110をシンプルに沿わせて束ねた多重螺旋構造をもったばねとしたものである。
図2(b)および
図2(c)に示すように、束ねばね体100は、複数の圧縮コイルばね110同士が、有効巻部112の螺旋形状同士を沿わせて重ねることにより束ねられ、上座巻部111同士および下座巻部113同士を上下方向に沿わせて重ねて多重螺旋構造を備えた構成となっていることが分かる。つまり、複数の圧縮コイルばね110同士が、有効巻部112の螺旋形状同士を沿わせて重ねることにより束ねられて「束ねばね体100」が形成されていることが分かる。
【0058】
また、
図2(a)と、
図2(b)および
図2(c)の平面図から分かるように、「束ねばね体100」の座巻の面積は、1つの圧縮コイルばね110の座巻の面積と同じ程度の小さな面積であることが分かる。その一方、束ねばね体100のばね定数は、1つの圧縮コイルばね110のばね定数よりも大きく調整でき、適度な大きさのばね定数を持ったばねを得ることができる。
【0059】
ここで、「束ねばね体100」において、複数の圧縮コイルばね110を束ねて構成したメリット・効果としては数々のものがある。
第1には、ばね定数の細かい調整が可能となる点である。ばね定数の調整はばね線材径でも調整できるが、ばね線材径Dを細かく調整して調達すること困難であるため、事実上、所望のばね定数に細かく調整することが困難であるところ、本発明の「束ねばね体100」であれば、複数個の圧縮コイルばね110を適度に組み合わせることにより、ばね定数を細かく調整することができる。採用する圧縮コイルばね110は同じ線材径のものに限られず、複数種類の線材径のばねを組み合わせることができ、ばね定数を細かく調整することができる。
【0060】
第2には、ばねのひずみを分散させることができる点である。つまり、複数の圧縮コイルばね110を組み合わせて束ねているため、ひずみを特定の圧縮コイルばね110の特定箇所に集中させることなく、分散させることができる。その結果、ひずみの蓄積によりばねが割れて破損するなどの不具合発生を低減することができる。
【0061】
第3にはコスト低減が可能となる点である。圧縮コイルばね体のばね定数を大きくするためには、ばね線材を高品質なものにしたり、ばね線材径Dを太くしたりすれば良いが、特に太い線材径の圧縮コイルばね体を製作するのは加工が難しくコストが高くなるが、ある程度量産しやすい線材径の圧縮コイルばね110であれば比較的製作が簡単でありコストが安くなる。この低コストの圧縮コイルばね110を用いて束ねることでコストが低減する。
【0062】
第4には座巻部分も丈夫で安定したものにできる。「束ねばね体100」において個々の圧縮コイルばね110の座巻同士を上下方向に沿わせて重ねることにより製作するので、「束ねばね体100」の座巻が丈夫で頑丈な座巻となり、弾性体ユニット140において安定した構造となる。
【0063】
「多重螺旋体安定化工程」
次に、束ねばね体100の表面に施す巻き張りや樹脂被膜により、多重螺旋体安定化工程を施す工夫について述べる。
「束ねばね体100」において個々の圧縮コイルばね110の「束ね姿勢」を安定的に維持するため、少なくとも有効巻部の螺旋形状同士を沿わせて重ねて束ねている箇所に、粘着テープなどの帯体を巻き張りした構成とすることができる。または、樹脂被膜を形成して内部の圧縮コイルばね110を分離しないようにまとめ上げることもできる。
【0064】
図3は、本発明にかかる束ねばね体100の表面に帯体120を巻き張りにして巻き付けた本発明にかかる束ねばね体100Aを示す図である。粘着テープを巻き張りの要領で巻き付けて補強した例となっている。
図3に示すように、螺旋状の有効巻部の軸(長さ方向の軸)の周囲を周回するようにぐるぐる巻けるものであれば良い。この構成例では、有効巻部の全範囲にわたって粘着テープや帯体を巻き張りの要領で巻き付けた例となっている。
【0065】
巻き張りする箇所であるが、有効巻部の全範囲でなくとも良いが強度を考慮すれば、有効巻部の全範囲に巻き張りしておくことが好ましく、さらに、座巻部についても全範囲に巻き張りしておくことが好ましい。
巻き張りの帯体120の素材であるが、巻き張り出来るものであれば良いが、例えば、ビニール粘着テープ、布帯、さらに、耐熱性を考慮すれば、金属薄膜などの金属製素材も適用できる。針金などの金属製素材の場合、全面的に巻く張りするのではなく、所定箇所を締結することでも良い。
図3の例は幅広の帯体120で巻いた例であるが、素材はビニールテープ、布帯、断面が平板状の金属などの場合の例である。
【0066】
束ねばね体100において、帯体120により巻き張りを行うと得られる技術的効果としては、少なくとも下記のような技術的効果がある。
帯体120による巻き張りの第1の技術的効果は、多重螺旋構造をもつように束ねた複数本の圧縮コイルばね110の束の状態を安定した状態に維持する効果である。
粘着テープで巻き張りすると、多重螺旋構造の複数本の圧縮コイルばね110の束を適度なテンションで一体化することができ、あたかも太い径の一体の圧縮コイルばね110のような弾性体が疑似でき、かつ、伸縮弾性運動にも影響が少なくなり、良質な疑似大径の圧縮コイルばねとなる。
【0067】
帯体120による巻き張りの第2の技術的効果は、多重螺旋構造をもつように複数本束ねて作成した疑似圧縮コイルばねのばね定数を調整できる効果である。上術したように、径の異なる複数種類の圧縮コイルばね110を組み合わせて多重螺旋構造をもつように複数本束ねて作成するので、設計上求められるばね定数となるように組み合わせる圧縮コイルばねを選択することにより微調整することができる。
【0068】
帯体120による巻き張りの第3の技術的効果は、多重螺旋構造をもつように束ねた複数本の圧縮コイルばね110のひずみを分散させる効果である。例えば、粘着ビニールで表面を巻き張りすることにより表面から内部にテンションが平均化されて印加され、個々の圧縮コイルばね110に存在するひずみが平坦化、分散化できる。
【0069】
帯体120による巻き張りの第4の技術的効果は、多重螺旋構造をもつように束ねた複数本の圧縮コイルばね110の破損や割れを抑制する効果である。例えば、粘着ビニールで表面を巻き張りすることにより、内部の圧縮コイルばね110の一部に破損や割れが生じても、表面の粘着ビニールの巻き張りにより外部に破片が飛び出たりすることがない。
上記のように様々なメリットが得られる。
【0070】
次に、座板を取り付ける工夫について述べる。
図4は、座板130を取り付けた構成例を簡単に示す図である。
図4(a)は、
図2(b)の状態の束ねばね体100の両端のそれぞれに座板130を取り付けた状態を示している。この座板130が取り付けられた状態は束ねばね体100Bとして示されている。
図4(b)は、
図3の状態の束ねばね体100Aの両端のそれぞれに座板130を取り付けた状態を示している。この座板130が取り付けられた状態は束ねばね体100Cとして示されている。
【0071】
座板130の配設は上側、下側のいずれか一方だけでも良く、上下両側に配設されていても良い。
座板130の素材は限定されないが、金属板、耐熱性硬質樹脂、木板など多様なものがあり得る。上下両側に配設されている場合に、上側の座板130と下側の座板130の素材が異なるものでも良い。
束ねばね体100の座巻部と座板130の接合については、接合手段は限定されないが、溶接、嵌合、接合、締結など多様な方法がある。安定して繰り返しの伸縮動でも外れない強固なものであれば良い。
【0072】
次に、「束ねばね体100」の一塊りごと周囲を幕体やジャバラ体で覆う被覆部140を設ける工夫について述べる。
図5は、束ねばね体100、100Aの一塊りごと紙素材やプラスチック素材などの幕体やジャバラ体の被覆部140で覆った構成の束ねばね100D例を示す図である。
図5(a)は、「束ねばね体100A」の一塊りごと紙素材の幕体の被覆部140で覆った束ねばね体100Dを簡単に示す図である。
図5(b)は、「束ねばね体100A」の一塊りごとプラスチック素材などのジャバラ体の被覆部140で覆った束ねばね体100Dを簡単に示す図である。
【0073】
「束ねばね体100A」の一塊りごと幕体やジャバラ体の被覆部140で覆うことにより、外部から不用意に「束ねばね体100A」のばねピッチ内に指先や足先や異物が入り込む事故を回避することができる。
なお、幕体やジャバラ体の被覆部140で覆っても、「束ねばね体100A」の弾性運動には影響がない。
後述する実施例2における各種の機械装置において、束ねばね体100を適用する例において、この
図4にかかる束ねばね体100Dを適用しても良い。
【0074】
このように、実施例1にかかる束ねばね体100によれば、小さな座巻面積でも十分大きなばね定数を得ることができ、かつ、ばね定数の細かい調整が可能となり、圧縮コイルばねに蓄積されるひずみも効果的に分散できる。
つまり、本発明にかかる束ねばね体形成工程およびその工程で製造された束ねばね体によれば、所定の仕様にていわゆる低温焼きなまし処理(テンパー処理)済で、ばねとして完成された良質なもののみを選抜して束ねて束ねばね体とすることができ、さらに螺旋状の有効巻部の軸(長さ方向の軸)の周囲を周回するように多重螺旋体安定化工程を施すことにより束ねばね全体で伸縮に伴うばねの歪みを分散しやすく、仮に一部に亀裂が入っても割れにくく破損しにくくなる技術的効果が得られる。
この実施例2では、本発明の束ねばね体100の機械装置への適用例として、第1の適用例から第10の適用例まで10個の適用例を示したが、本発明の束ねばね体100の適用例はそれら機械装置には限定されず多種多様な機械装置に対して可能であり、一般に圧縮コイルばねを適用できる機械装置であれば本発明にかかる束ねばね体100が適用できる。
以上、本発明の束ねばねの構成例における好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。