(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050419
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】インプラント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/04 20130101AFI20240403BHJP
【FI】
A61F2/04
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023126461
(22)【出願日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】63/411,241
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510320416
【氏名又は名称】オリンパス・ウィンター・アンド・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ホルン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ブロックマン
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA14
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC05
4C097CC08
4C097DD01
4C097DD09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】異なるサイズの前立腺を治療することができるインプラントを形成する。
【解決手段】展開されたインプラント(10)の長さを様々に変更することを可能にすることによって達成される。インプラントの伸張したワイヤ構造(11)の長さを変更することによって、インプラントを、患者の解剖学的構造に個別に適合させることができ、これにより治療の成功を高めることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2本のワイヤ(12)を有するワイヤ構造(11)を通して、泌尿器官、とりわけ尿道の組織に局所的虚血性圧力を加えることによって人の尿路を治療するための取り外し可能インプラント(10)であって、前記インプラント(10)は、折り畳まれた状態で最初に遠位端(13)から前記尿道に挿入可能であり、前記組織の治療のために前記尿道内で前記ワイヤ構造(11)へと広がり、前記広がったインプラント(10)の長さは、様々に変更可能であることを特徴とする、取り外し可能インプラント(10)。
【請求項2】
スリーブ(19)は、前記少なくとも2本のワイヤ(12)の近位端領域にわたって摺動可能であり、前記スリーブ(19)は、前記ワイヤ(12)の前記近位端領域にわたって自由に摺動可能であることを特徴とする、請求項1に記載の取り外し可能インプラント(10)。
【請求項3】
前記スリーブ(19)は、前記少なくとも2本のワイヤ(12)に固定接続可能であり、前記固定接続は、前記ワイヤ(12)と前記スリーブ(19)との間の相対運動を阻止することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の取り外し可能インプラント(10)。
【請求項4】
前記スリーブ(19)は、ねじスリーブ、圧着スリーブ、クリックスリーブ、スナップインスリーブ、または直径が前記ワイヤ(12)の直径の合計にちょうど等しい内部通路(22)を備えたスリーブ(19)であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の取り外し可能インプラント(10)。
【請求項5】
前記少なくとも2本のワイヤ(12)上での前記スリーブ(19)の位置決めは、前記インプラント(10)の前記長さを調節し、前記ワイヤ(12)上での前記スリーブ(19)の固定は、前記ワイヤ(12)の広がった部分の長さを固定することを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の取り外し可能インプラント(10)。
【請求項6】
前記ねじスリーブ(19)は、第1の部分(20)および第2の部分(21)から組み立てることができ、前記第1の部分(20)は、雌ねじ山(23)を有し、前記第2の部分(21)は雄ねじ山(24)を備えたスリーブを有し、前記第2の部分(21)は、前記第1の部分(20)にねじ込み可能であり、弾性リング(25)が、前記2つの部分(20、21)の間に挟持可能であることを特徴とする、請求項4に記載の取り外し可能インプラント(10)。
【請求項7】
前記スリーブ(19)は、治療前は前記人の外側で、または治療中は前記人の内部で、前記ワイヤ(12)に固定可能であることを特徴とする、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の取り外し可能インプラント(10)。
【請求項8】
前記スリーブ(19)は、前記ワイヤ(12)に解放可能に装着可能であることを特徴とする、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の取り外し可能インプラント(10)。
【請求項9】
前記スリーブ(19)は、3mm未満の外径を有することを特徴とする、請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の取り外し可能インプラント(10)。
【請求項10】
前記インプラント(10)の前記ワイヤ(12)または保持手段(16)のうちの少なくとも一方が、前記インプラント(10)の前記長さまたは前記スリーブ(19)の位置を調節することができるマーキングを有することを特徴とする、請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の取り外し可能インプラント(10)。
【請求項11】
少なくとも2本のワイヤ(12)を有するワイヤ構造(11)を通して、泌尿器官、とりわけ尿道の組織に局所的虚血性圧力を加えることによって人の尿路を治療するための取り外し可能インプラント(10)であって、前記インプラント(10)は、折り畳まれた状態で最初に遠位端(13)から前記尿道に挿入可能であり、前記組織の治療のために前記尿道内で前記ワイヤ構造(11)へと広がり、前記インプラント(10)は保持要素(17)を有し、前記インプラント(10)の前記尿路内の位置は前記保持要素(17)によって固定可能であり、前記保持要素(17)の長さは様々に変更可能であることを特徴とする、取り外し可能インプラント(10)。
【請求項12】
請求項2ないし請求項10の少なくとも一項に記載のスリーブ(19)は、前記維持要素(17)の近位端領域にわたって摺動可能であることを特徴とする、請求項11に記載の取り外し可能インプラント(10)。
【請求項13】
前記維持要素(17)は、遠位端において所定の切断点を有し、これを利用して、前記維持要素(17)の前記長さを選択式に変更することができることを特徴とする、請求項11に記載の取り外し可能インプラント(10)。
【請求項14】
少なくとも2本のワイヤ(12)を有するワイヤ構造(11)を通して、泌尿器官、とりわけ尿道の組織に局所的虚血性圧力を加えることによって人の尿路を治療するための取り外し可能インプラント(10)であって、前記インプラント(10)は、折り畳まれた状態で前方の遠位端(13)から前記尿道に挿入可能であり、前記組織の治療のために前記尿道内で前記ワイヤ構造(11)へと広がり、前記インプラント(10)は保持要素(17)を有し、前記尿路内での前記インプラント(10)の位置は前記保持要素(17)によって固定可能であり、請求項1から13の記載により、前記インプラント(10)の長さおよび前記保持要素(17)の長さは、様々に変更可能であることを特徴とする、取り外し可能インプラント(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1、11および14に記載のインプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な方法または技術が、尿路の治療、とりわけ良性前立腺過形成(BPH)の治療のために知られている。最低限の侵襲において、特にBPH症状の人体温存治療において、取り外し可能インプラントが、尿道内にまたは患者の尿道の前立腺部分に一時的に配置される。そのようなインプラントは、形状記憶合金、例えばニチノールなどで作製されたワイヤ構造である。ワイヤ構造は、つぶれた/折り畳まれた状態でカテーテルを通して尿路に挿入され、所定の位置に押し込まれてその所定の基本構造になるように広がる。舌状の維持要素または保持要素は、インプラントの一部である場合もあり、これらは、膀胱頸部に噛み合ってワイヤ構造を所定の場所に固定する。ワイヤ構造は、3本または4本のワイヤから形成されてよく、バスケット構造である。このバスケット構造が尿道を拡張する。ワイヤ構造が尿道の組織に当たって拡張することにより、尿道の組織は、数日間の間に変性される。組織のこのような変性は、組織の細胞に対する個々のワイヤの虚血性圧力によって起こり、結果として血流が減少する、または血流が完全になくなる。結果として、血流の不足は、細胞内の酸素の欠乏につながり、最終的に細胞死につながる。数日以内に、尿流がほぼ正常に戻る程度まで組織を減少させることができる。この治療が完了した後、インプラントは、カテーテルを利用して尿道から回収することができる。
【0003】
また、治療中に膀胱頸部も治療するために、インプラントのワイヤは膀胱の中に突出する。インプラントの舌状の保持要素は、膀胱頸部の背後に引っ張られ、インプラントを前立腺の内部に動かないように固定する。ここで、あいにく患者の解剖学的構造は異なるため、その前立腺もまた、様々な範囲まで拡大される可能性がある。前立腺が比較的短い場合、インプラントまたはワイヤが膀胱頸部内の外括約筋の方に深く配置され過ぎるというリスクがある。これは、患者に一時的またはさらには永久的な失禁を引き起こさせる可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
これを基にして、本発明は、異なるサイズの前立腺を治療することができるインプラントを生み出す課題に基づいている。
【0005】
この問題に対する解決策が、請求項1の特徴によって記載されている。したがって、展開されたインプラントの長さを様々に変更することができることが規定される。広げられたワイヤ構造の長さを変更することによって、インプラントを患者の解剖学的構造に個別に適合させることができ、これにより治療の成功を高めることができる。患者の失禁などの副作用は、個別の長さの調節によって回避することができる。インプラントまたはワイヤ構造の長さを具体的に調節することを可能にするために、患者を治療する前に肥大した前立腺の長さが測定される。これは、例えば、超音波などの撮像処置、または何らかの他の処置によって行うことができる。
【0006】
好ましくは、本発明は、スリーブがワイヤ構造の少なくとも2本のワイヤの近位端領域にわたって摺動可能であり、前記スリーブは、ワイヤの近位端領域にわたって最初は自由に摺動可能であることを規定する。少なくとも2本または3本のワイヤがワイヤ構造を形成し、これはインプラントの主要な構成要素を形成する。遠位端で、ワイヤは、近接しており、または接触して相互に接続されている。ワイヤの近位端もまた、互いに接続され、必要であれば、カテーテルを通して尿道に押し込まれ、治療後に構造を尿道から引っ張り出すために保持手段に接続される。最初に折り畳まれたワイヤ構造がカテーテルから押し出された直後、折り畳まれた状態で平行であるワイヤは、その事前定義されたバスケット構造になるように拡張する。事前定義されたバスケット形状へのこのような移行は、ワイヤに使用される形状記憶材料によって達成される。治療の完了後、ワイヤ構造は、小さな軸引張力をワイヤの近位端に加えることによって、つぶれた構造に戻る。本発明は、スリーブがつぶれたワイヤの近位端部分と対応付けられることを規定しており、これは、長さが数ミリメートルから数センチメートルまでの範囲であり得る。このようなケースでは、中空の円筒形スリーブは、2本または3本のワイヤを備える。前立腺の事前に測定したサイズに応じて、スリーブは、ワイヤ上の特有の位置まで摺動させることができる。
【0007】
さらに、スリーブは、定義された位置で少なくとも2本または3本のワイヤに固定接続可能であることがとりわけ規定され、この固定接続は、ワイヤとスリーブとの間の相対運動を阻止する。スリーブは、ワイヤ構造がカテーテルの外側で事前定義された形状に広がるのを阻止する。実際、ワイヤの遠位端からスリーブまでの領域のみが広がる、すなわち縮小された長さを有する。したがって、スリーブが、ワイヤ上で遠位方向に位置決めされるほど、ワイヤは少ししか広がらず、インプラントが外括約筋近くの近位領域に悪影響を与えることが少なくなる。保持要素の位置は、これによって影響を受けないままであるため、ワイヤまたはワイヤ構造は常に、同じ距離だけ膀胱内に突出し、このことは、療法の成功のために必須である。
【0008】
本発明の特定の実施形態は、スリーブがねじスリーブ、圧着スリーブ、クリックスリーブ、スナップインスリーブまたは直径がワイヤの直径の合計にちょうど等しい内部通路を備えたスリーブであることをとりわけ規定してもよい。スリーブのこのような実施形態では、スリーブが、簡素な方式で、かつ軽い機械的引張力をものともせずに、スリーブがその位置を維持するような方法で、スリーブをワイヤに固定することができることが必須である。スリーブは、1つの部品で、または2つ以上の部品で作製することができる。
【0009】
とりわけ、ねじスリーブは第1の部分および第2の部分から組み立てることができ、両部分とも中空の円筒形の設計であり、ワイヤは、この中空の円筒形の内径を通してガイドされていることが考えられる。第1の部分は、雌ねじ山を有し、第2の部分は、雄ねじ山を備えたスリーブを有し、そのため、2つの部分を併せてねじ込むことができ、ワイヤは2つの部分を通って移動する。弾性材料で作製されたリングが、2つの部分の間に位置決めされ、これは、2つの部分が併せてねじ込まれる際に拡張して、スリーブとワイヤとの間の厳密な接続部のためにワイヤを包囲する。クリックスリーブおよびスナップインスリーブ設計は、ねじスリーブと技術的に同様である。2つの上記で言及したタイプのスリーブもまた、機械的力を加えることによって併せて結合させることができ、これにより2つの部分の間の弾性リングが結合プロセス中に変形され、これによりスリーブとワイヤとの間の固定接続部を達成する2つの部分から成る。2つの部分の間のこの接続部は可逆性であり、そのためスリーブは、治療後だけでなく治療中も取り外すことができる、または再度位置決めすることができる。例えば、治療中にスリーブを再度位置決めすることによって、治療の進行に応じるようにインプラントの長さを変更できることが考えられる。これは、個人の治療をさらにより効果的にすることを可能にする。
【0010】
圧着スリーブを使用する場合、スリーブは、圧着工具でワイヤに固定される。圧着スリーブの使用は、スリーブとワイヤとの間の接続部に作用する軸方向の力に対して特に抵抗力があるという利点を有する。最後に、別の代替形態は、中空の円筒形スリーブの内径が、ワイヤの直径の合計に匹敵し、ワイヤに対するスリーブの内壁の摩擦は、ワイヤ上の特定の位置でスリーブの固定を保証するのに十分であることを規定する。このようなケースでは、増大した力の量は、摩擦力に対抗してスリーブをワイヤ上の位置に動かすためにスリーブを位置決めするのに必要とされる。有利なことには、しかしながらこの実施形態では、スリーブは、構造的に極めて簡素であることがわかる。さらに、スリーブは、大きな労力なしで締結することができる。加えて、このタイプのスリーブは、とりわけ小さな外径で製造することができる。
【0011】
本発明によると、スリーブは、治療の前はその人の外側で、または治療中はその人の内部でワイヤ上に固定することができることが規定され得る。前立腺のサイズは、治療の前に既に知られているという条件で、スリーブの位置は、治療の前は患者の外側に明確に位置決めされ固定することができるため、インプラントは、事前定義された長さで尿道内で開く。同様に、治療中、スリーブを配置する場所が特定されることで、前立腺をとりわけ効率的に治療することができることが考えられる。この目的のために、位置を特定するためにさらなる撮像器具が患者に挿入されることが考えられる。さらに、別の工具または鉗子が患者に挿入されてスリーブをワイヤ上に固定することも考えられる。この実施形態では、ワイヤ上のスリーブの位置は、治療中に既に起こった可能な治療の成功に対して効率的に反応することを可能にするために、治療中に再度調整することができることも考えられる。
【0012】
本発明は、外装の外径が3mm未満であることを規定してもよい。この直径は、使用されるカテーテルまたはインプラントに基本的に左右される。可能な場合には、2mmまたは1mmなどより小さい外径を有するスリーブが使用され得ることも考えられる。
【0013】
本発明の別の好ましい実施形態は、インプラントのワイヤまたは保持要素のうちの少なくとも一方が、インプラントの長さまたはスリーブの位置を調節することができるマーキングを有することを規定してよい。よって、前立腺のサイズが特定される際に、スリーブをワイヤでそこに固定するために、外科医は特定の印までスリーブを押すだけでよいならば、それは外科医にとって有益であり得る。ワイヤ上のスリーブの位置に応じて、ワイヤ構造は、特定の長さで広がる。前立腺のサイズとマーキングとの関係は、例えば前もって形成された表に見ることができる。
【0014】
上記で言及した問題に対する別の解決策は、請求項11の特徴によって記載されている。したがって、維持要素または保持要素の長さを様々に変更することができることが規定される。このようなケースでは、ワイヤの長さは変わらないままであり、舌状の保持要素の長さのみが変えられる。臨床的な効果は、開かれるようになるワイヤ構造の長さを変更するのと同じである。ここでの基本的なポイントは、3本のワイヤがなおも膀胱に突出していることである。これにより、この実施形態の例では、舌状の保持要素は、長さを変化させることができ、上記に記載したスリーブを利用して固定することができる。この実施形態の例によると、たとえ異なるサイズの前立腺であってもインプラントを最適に位置決めするために、尿道内の保持要素の位置が調節される。
【0015】
代替として、保持要素は、セグメント状の設計を有し、いくつかの所定の切断点において短くすることができることも考えられる。必要および前立腺のサイズに応じて、保持要素の個々の遠位要素は、治療のために切断することができる。スリーブは、先に記載された実施形態でのように必要ではない。
【0016】
上記の課題に対する解決策は、請求項14の特徴によってさらに記載されている。したがって、ワイヤおよび舌状の維持要素または保持要素は、その長さが可変であることが規定される。これにより、ワイヤおよび保持要素の長さは、先に記載したように変化させることができる。ワイヤおよび保持要素の長さはこの特有の変化によって、解剖学的状態に応じて、患者のほとんどの任意の解剖学的構造および前立腺のサイズに対してそれぞれ、とりわけ効率的にかつ効果的に反応することが可能であり、ワイヤ構造サイズの調節と保持要素の長さの調節の間で選択することが可能である。同様に2つの上記で言及した構成要素はまた、上記に記載したように治療中にサイズを調節することも可能であるため、患者の治療は、最適に可能な成功を収める結果となる。
【0017】
本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して以下による詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】折り畳まれた状態のインプラントの図である。
【
図4】短くなり折り畳まれた状態のインプラントの図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、インプラント10の可能な一実施形態を示す。この例は、多くの考えられる実施形態のうちの単なる1つであるということが明白に示されるべきである。
【0020】
図1に示される伸張したインプラント10の実施形態は、3本のワイヤ12を備えたワイヤ構造11を有する。しかしながら、2本または4本またはそれ以上のワイヤ12を備えた実施形態も考えられる。しかしながら3本のワイヤ12は尿道の組織を手際よく扱うのにとりわけ適していることが示されている。有利なことには、これらのワイヤ12は、ステンレス鋼、ばね鋼、または形状記憶を有する材料で作製されたワイヤである。代替として、ワイヤ12は、プラスチックロッドとして形成されることも考えられる。よって、とりわけ有利な実施形態の例では、プラスチックは生物分解性であることが規定される。インプラント10はよって、しばらくした後、体内で少なくとも部分的に熔解することで、インプラント10を回収するためのさらなる介入は必要ない。
【0021】
ワイヤ12は、その遠位端13において互いに接続される。ワイヤ12の反対の近位端14は、共通の接続本体15内で一緒にされる。この接続本体15は、図面では、球体として示されるが、任意の他の形状を有する場合もある。保持手段16が、接続本体15上に近位して配置される。この保持手段16は、ねじ山、可撓性ワイヤまたはピンの形態であってよく、とりわけインプラント14を尿道内に配置し、治療の完了後にインプラント10を尿道から引き抜くのに使用される。したがって、保持手段16は、治療中体外にガイドされる。
【0022】
図1はまた、極度に概略化された舌状の保持要素17も示す。この保持要素17は、インプラント10が尿道内に正確に位置決めされた後、組織と噛み合い、治療されるべき領域内にインプラント10を固定するような役割を果たす。この保持要素17は、好ましくはワイヤ12と同じ材料で作製することができ、これもまた保持手段16に接続される。保持要素17の舌状形状のために、それは、インプラント10のためのアンカーのように作用する。インプラント10を近位方向に位置決めした後、短い間引っ張り戻すことによって、保持要素17は組織内に固定される。
【0023】
図1に示される実施形態では、本発明によるスリーブ19もまた概略的に示されている。このスリーブは、近位端14にわたって、またはワイヤ12の近位領域にわたって押される中空の円筒形である。最初、すなわち治療前、このスリーブ19は、ワイヤ12上を自由に移動可能である。インプラント10またはワイヤ構造11の特定の長さの調節のために、スリーブ19は、折り畳まれたワイヤ12に沿って前後に移動され、適切な位置に固定することができる。遠位端13とスリーブ19との間の距離はその後、伸張したインプラント10の長さを定義する。
図1に示される実施形態の例では、スリーブ19は、接続本体15の前方に直接位置決めされる、すなわちスリーブ19は、ワイヤ12の近位端14を取り囲む。スリーブ19のこの位置決めは、ワイヤ構造11をその最大の長さまで伸張させる。インプラント10またはワイヤ構造11の長さは、前立腺のサイズに応じて決定することができる。前立腺のこのサイズまたはこの長さが治療の前に決定されることで、スリーブをワイヤ12上で移動させ固定することによって、インプラント10が患者の体内に挿入される前に、ワイヤ構造11の最適な長さを既に設定することができる。
【0024】
BPH症候群の治療に関して、インプラント10が、
図2に概略的に示されるように最初に折り畳まれた状態で管状カテーテル18を通して患者の尿道に挿入される。このプロセスにおいて、スリーブ19は、
図1および
図2に記載の実施形態の例においてワイヤ12の近位端14に配置されており、そのため、ワイヤ構造11は、最大の長さを有する。カテーテル18がひとたび尿道内の正確な位置に動かされると、インプラント10は、カテーテル18から外に押し出され、必要ならば、同時にカテーテル18は、近位方向に尿道から外に引き出される。選択された材料のために、ワイヤ12は、カテーテル18の外側に広がり、
図1に示されるワイヤ構造11を形成する、すなわちスリーブ19まで広がる。代替として、ワイヤ12は、保持手段16を軸方向に引っ張ることによって伸張されてワイヤ構造11を形成することも考えられる。万一インプラント10がワイヤ構造11の挟持中に最適な位置から離れて移動した場合、インプラント10を正確な位置に戻るように移動させることができる。
【0025】
ワイヤ構造11が、組織を治療するために最適な形状または最大伸張に達し、保持要素17が組織内に固定されるとすぐに、カテーテル18は近位方向に尿道から外に引っ張り出される。インプラント10は、保持要素17による固定のおかげで所定の位置に留まり、保持手段16は、尿道から外にガイドされる(
図3)。治療の完了後、カテーテル18は、保持手段16を介して尿道に再度挿入され、ワイヤ12が、カテーテル18の外周の周りで収縮されている状態で、伸張したワイヤ構造11が保持手段16によってカテーテル18の中に引っ込められる。つぶれた状態で、インプラント10をカテーテル18内で再度尿道から外に引っ張り出すことができる。
【0026】
より小さい前立腺の治療に関して、インプラント10の長さを変化させることができる。スリーブ19は、
図1から
図3に記載の実施形態の例と比べて遠位方向に移動されているのを
図4から見ることができる。このようなケースでは、スリーブ19は遠位方向に移動されるのみならず、この位置に固定される。スリーブ19のこの位置決めおよび固定は、前立腺の特定されたサイズに応じて、カテーテル18の外側で既に行われている。ワイヤ12上のスリーブ19の位置は別として、
図1から
図3に記載の実施形態の例と比べて変更は行われていない。インプラント10がカテーテル18の外に出されるとき、ワイヤ12は、先に記載したのと同じ方法で伸張して開くが、但しスリーブ19の範囲までである。スリーブ19は、インプラント10の完全な展開を阻止する。したがって、
図5の実施形態の例によると、インプラント10は、短くなっている。インプラント10のこの縮小された長さが、治療されるべき前立腺のサイズに適合される。ワイヤ構造11の長さのこのような調節により、他の組織または筋肉などが治療中に意図せずに傷つけられなくなる。むしろ、この調節された長さは、治療されるべき領域に正確に圧力を加える。
【0027】
ワイヤ12の長さと正に同じように、舌状の保持要素17の長さも変化させることができる。このようなケースでは、保持要素17は、スリーブ19を通して均等にガイドすることができる。実施形態は、保持要素17のみがスリーブ19を通してガイドされ、ワイヤ12は、その伸張した長さに影響を受けないこと、またはワイヤ12は、保持要素17と一緒にスリーブ19を通してガイドされることが考えられる。保持要素17のみがスリーブ19を通してガイドされ、その長さが縮小されると仮定すると、インプラント10の長さは、変更されないが、インプラント10が膀胱頸部内に固定される位置は変更される。そうする間、インプラント14は、膀胱内に突出し得るが、外括約筋と接触することはない。
【0028】
インプラント10が治療中その設定された長さを維持するために、スリーブ19を、ワイヤ12および/または保持要素17にしっかりと接続することができることが最大に重要である。このしっかりした接続のみを通して、ワイヤ12をスリーブ19から遠位にぴんと張り、スリーブ19は、プロセスにおいて近位方向に移動されることはない。スリーブ19の種々の実施形態が、ワイヤ12に対するスリーブのこのような固定のために提供される。
図6では、可能な実施形態の例が示される。これによると、スリーブは、第1の部分20と、第2の部分21とを備える。これら2つの部分20、21は、中空の円筒形の設計であり、互いに中にねじ込むことができる。さらに、両部分20、21とも、
図6に記載の実施形態の例において例示されるワイヤ12および/または保持要素17を中に通すことができる通路22を有する。第1の部分20は、第2の部分21の雄ねじ山24と対応する雌ねじ山23を有する。これにより、第2の部分21の雄ねじ山24は、第1の部分20にねじ込むことができる縮小された直径を有する領域に配置される。弾性リング25も、第1の部分20と第2の部分21との間に位置決めされる。第1の部分20が第2の部分21にねじ込まれるとき、この弾性リング25が圧縮されることで、自由通路22が縮小される。リング25のこの変形がワイヤ12をスリーブ19内に固定することで、ワイヤ12とスリーブ19との間の相対運動が阻止される。
【0029】
スリーブ19のねじ込みは、治療の前にカテーテル18の外側で実施されることが想定される。スリーブを配置する場所の指示を外科医に与えるために、ワイヤ12上にマーキングが在ることが考えられる。マーキングを使用して、インプラントの特有の長さを設定することができる。同様に、スリーブ19がカテーテルの内部にねじ込まれることも考えられる。例えば、インプラント10が治療中尿道内に配置された後でも、ねじ接続はなおも開くことができ、スリーブは、ワイヤ12上を移動され、再度ねじ込むことができるため、インプラント10の長さを治療中に動的に変えることができる。この目的のために、スリーブ19は、特有の工具を使用して、把持され、尿道内で作動されることが考えられる。
【0030】
スリーブの一代替実施形態は、スリーブがクリックスリーブまたはラッチスリーブなどとして設計されることを規定する場合もある。このようなケースでは、2つの部分は、
図6を参照して先に記載したように、一緒にねじ込まれないが、併せて嵌め込まれる、または係止される。スリーブのさらなる実施形態は、圧着スリーブとして設計されることを規定してもよい。このようなケースでは、圧着スリーブは、治療される前に、体外にワイヤ12の上でガイドされ、圧着工具で圧着される。このタイプの圧着接続は、スリーブのとりわけ確実な固定を提供し、製造するのにとりわけ安価でもある。
【0031】
スリーブ19は、その実施形態にかかわらず、金属、プラスチックまたはセラミックで作製することができる。スリーブ19または2つの部分20、21の直径は基本的に、カテーテル18の内径に基づいているが、一般に3mm未満である。実施形態は、スリーブの直径はまた、1mmから2mmであり得ることも考えられる。
【符号の説明】
【0032】
10 インプラント
11 ワイヤ構造
12 ワイヤ
13 遠位端
14 近位端
15 接続本体
16 保持手段
17 保持要素
18 カテーテル
19 スリーブ
20 第1の部分
21 第2の部分
22 通路
23 雌ねじ山
24 雄ねじ山
25 リング
【手続補正書】
【提出日】2023-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2本のワイヤ(12)を有するワイヤ構造(11)を通して、泌尿器官、とりわけ尿道の組織に局所的虚血性圧力を加えることによって人の尿路を治療するための取り外し可能インプラント(10)であって、前記インプラント(10)は、折り畳まれた状態で最初に遠位端(13)から前記尿道に挿入可能であり、前記組織の治療のために前記尿道内で前記ワイヤ構造(11)へと広がり、前記広がったインプラント(10)の長さは、様々に変更可能であることを特徴とする、取り外し可能インプラント(10)。
【請求項2】
スリーブ(19)は、前記少なくとも2本のワイヤ(12)の近位端領域にわたって摺動可能であり、前記スリーブ(19)は、前記ワイヤ(12)の前記近位端領域にわたって自由に摺動可能であることを特徴とする、請求項1に記載の取り外し可能インプラント(10)。
【請求項3】
前記スリーブ(19)は、前記少なくとも2本のワイヤ(12)に固定接続可能であり、前記固定接続は、前記ワイヤ(12)と前記スリーブ(19)との間の相対運動を阻止することを特徴とする、請求項2に記載の取り外し可能インプラント(10)。
【請求項4】
前記スリーブ(19)は、ねじスリーブ、圧着スリーブ、クリックスリーブ、スナップインスリーブ、または直径が前記ワイヤ(12)の直径の合計にちょうど等しい内部通路(22)を備えたスリーブ(19)であることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の取り外し可能インプラント(10)。
【請求項5】
前記少なくとも2本のワイヤ(12)上での前記スリーブ(19)の位置決めは、前記インプラント(10)の前記長さを調節し、前記ワイヤ(12)上での前記スリーブ(19)の固定は、前記ワイヤ(12)の広がった部分の長さを固定することを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の取り外し可能インプラント(10)。
【請求項6】
前記ねじスリーブ(19)は、第1の部分(20)および第2の部分(21)から組み立てることができ、前記第1の部分(20)は、雌ねじ山(23)を有し、前記第2の部分(21)は雄ねじ山(24)を備えたスリーブを有し、前記第2の部分(21)は、前記第1の部分(20)にねじ込み可能であり、弾性リング(25)が、前記2つの部分(20、21)の間に挟持可能であることを特徴とする、請求項4に記載の取り外し可能インプラント(10)。
【請求項7】
前記スリーブ(19)は、治療前は前記人の外側で、または治療中は前記人の内部で、前記ワイヤ(12)に固定可能であることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の取り外し可能インプラント(10)。
【請求項8】
前記スリーブ(19)は、前記ワイヤ(12)に解放可能に装着可能であることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の取り外し可能インプラント(10)。
【請求項9】
前記スリーブ(19)は、3mm未満の外径を有することを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の取り外し可能インプラント(10)。
【請求項10】
前記インプラント(10)の前記ワイヤ(12)または保持手段(16)のうちの少なくとも一方が、前記インプラント(10)の前記長さまたは前記スリーブ(19)の位置を調節することができるマーキングを有することを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の取り外し可能インプラント(10)。
【請求項11】
少なくとも2本のワイヤ(12)を有するワイヤ構造(11)を通して、泌尿器官、とりわけ尿道の組織に局所的虚血性圧力を加えることによって人の尿路を治療するための取り外し可能インプラント(10)であって、前記インプラント(10)は、折り畳まれた状態で最初に遠位端(13)から前記尿道に挿入可能であり、前記組織の治療のために前記尿道内で前記ワイヤ構造(11)へと広がり、前記インプラント(10)は保持要素(17)を有し、前記インプラント(10)の前記尿路内の位置は前記保持要素(17)によって固定可能であり、前記保持要素(17)の長さは様々に変更可能であることを特徴とする、取り外し可能インプラント(10)。
【請求項12】
請求項2または請求項3に記載のスリーブ(19)は、前記維持要素(17)の近位端領域にわたって摺動可能であることを特徴とする、請求項11に記載の取り外し可能インプラント(10)。
【請求項13】
前記維持要素(17)は、遠位端において所定の切断点を有し、これを利用して、前記維持要素(17)の前記長さを選択式に変更することができることを特徴とする、請求項11に記載の取り外し可能インプラント(10)。
【請求項14】
少なくとも2本のワイヤ(12)を有するワイヤ構造(11)を通して、泌尿器官、とりわけ尿道の組織に局所的虚血性圧力を加えることによって人の尿路を治療するための取り外し可能インプラント(10)であって、前記インプラント(10)は、折り畳まれた状態で前方の遠位端(13)から前記尿道に挿入可能であり、前記組織の治療のために前記尿道内で前記ワイヤ構造(11)へと広がり、前記インプラント(10)は保持要素(17)を有し、前記尿路内での前記インプラント(10)の位置は前記保持要素(17)によって固定可能であり、請求項1または請求項2により、前記インプラント(10)の長さおよび前記保持要素(17)の長さは、様々に変更可能であることを特徴とする、取り外し可能インプラント(10)。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
【
図2】折り畳まれた状態のインプラントの図である。
【
図4】短くなり折り畳まれた状態のインプラントの図である。
【
図5】
図4に示すインプラントが展開された状態の図である。
【外国語明細書】