(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050430
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】取付工具および取付方法
(51)【国際特許分類】
B60M 1/28 20060101AFI20240403BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20240403BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20240403BHJP
B60L 13/00 20060101ALI20240403BHJP
H02G 1/06 20060101ALI20240403BHJP
B65G 49/07 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B60M1/28 K
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L13/00 E
H02G1/06
B65G49/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136580
(22)【出願日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2022156698
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】川東 達也
(72)【発明者】
【氏名】戎 慶輔
【テーマコード(参考)】
5G352
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5G352CE05
5G352CK08
5H105BA01
5H105BB07
5H105CC02
5H105DD10
5H105EE15
5H125AA11
5H125AC04
5H125FF15
(57)【要約】
【課題】給電線の取付作業を効率的に行う。
【解決手段】取付工具(101)は、搬送車が走行するための軌道(301)に付随し、搬送車へ非接触で給電する給電線(306)を保持する給電線ホルダ(305)に給電線(306)を取り付ける。取付工具(101)は、軌道(301)に沿って移動可能な本体部(1)と、本体部(1)とともに軌道(301)に沿って移動し、一部が開放された保持部(305a)を有する給電線ホルダ(305)に、本体部(1)の移動に伴って連続的に保持部(305a)に給電線(306)を押し込む押込部(2)とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送車が走行するための軌道に付随し、前記搬送車へ非接触で給電する給電線を保持する給電線ホルダに前記給電線を取り付ける取付工具であって、
前記軌道に沿って移動可能な本体部と、
前記本体部とともに前記軌道に沿って移動し、一部が開放された保持部を有する前記給電線ホルダに、前記本体部の移動に伴って連続的に前記保持部に前記給電線を押し込む押込部とを備える、取付工具。
【請求項2】
前記保持部は、上部が開放され、
前記押込部は、前記給電線ホルダの上方近傍に配置されることにより、前記押込部の移動に伴って前記押込部に導入される前記給電線に上方から当接する当接部を有する、請求項1に記載の取付工具。
【請求項3】
前記本体部とともに前記軌道に沿って移動し、前記本体部の移動方向について前記押込部よりも前方に配置されるとともに、前記押込部よりも高い位置に配置され、前記押込部に導入される前記給電線を支持する支持部をさらに備える、請求項2に記載の取付工具。
【請求項4】
前記支持部は、前記給電線をガイドする溝を有している、請求項3に記載の取付工具。
【請求項5】
前記本体部とともに前記軌道に沿って移動し、前記本体部の移動方向について前記押込部よりも前方に配置される副押込部であって、前記給電線の過熱状態を検知する検知線を前記給電線ホルダにおいて前記給電線に接する位置に保持し、かつ前記保持部と連続するように設けられた副保持部に、前記本体部の移動に伴って連続的に前記検知線を押し込む副押込部をさらに備える、請求項1記載の取付工具。
【請求項6】
前記副押込部は、前記保持部内を移動し、前記検知線を前記副保持部に導入する先端部を有し、
前記取付工具は、前記先端部が前記保持部内を移動するように、前記副押込部を前記本体部に着脱可能に支持する押込支持部をさらに備える、請求項5記載の取付工具。
【請求項7】
前記本体部は、前記本体部の基本構造を成す基体部を有し、
前記押込支持部は、
前記基体部に取り付けられる取付部と、
前記取付部とともに前記保持部を覆い、かつ前記取付部から前記給電線ホルダの上下に突出するように配される一対の突出部と、を有し、
前記一対の突出部は、前記一対の突出部の間隔が、前記本体部の移動方向について、前記検知線を導入する側の導入端部より後方側に狭くなるように傾斜する傾斜部を有する、請求項6に記載の取付工具。
【請求項8】
前記本体部は、前記副押込部の下端より低い位置でロープを掛ける掛け構造を有する、請求項5に記載の取付工具。
【請求項9】
前記押込部は、前記本体部の移動方向について前記本体部の後端部に配置されている、請求項1から8のいずれか1項に記載の取付工具。
【請求項10】
前記本体部は、前記本体部の移動方向に沿って伸びるように形成された切欠きを有し、
押込部は、前記切欠きに係合する鉤状の係合部を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の取付工具。
【請求項11】
一部の前記軌道の上方に設けられた、前記搬送車をガイドするための上方軌道に当接することにより前記本体部の姿勢を維持する維持部をさらに備える、請求項1から8のいずれか1項に記載の取付工具。
【請求項12】
前記軌道上で転動することにより前記本体部を移動させる転動部をさらに備える、請求項1から7のいずれか1項に記載の取付工具。
【請求項13】
前記転動部は、前記本体部の移動方向について前記本体部の前端部および後端部に設けられ、
前記本体部は、ロープを掛ける掛け構造を有し、
前記掛け構造は、前記本体部の前端部の前記転動部と前記本体部の後端部の前記転動部との間で規定される範囲に設けられる、請求項12に記載の取付工具。
【請求項14】
搬送車が走行するための軌道に付随し、前記搬送車へ非接触で給電する給電線を保持する給電線ホルダに前記給電線を取り付ける取付方法であって、
一部が開放された保持部を有する前記給電線ホルダに、移動に伴って前記保持部に前記給電線を押し込む押込部を前記給電線ホルダに装着する装着工程と、
前記押込部を前記軌道に沿って移動させる移動工程と、を含む、取付方法。
【請求項15】
前記移動工程に先立って、前記軌道に沿って移動可能な本体部を前記軌道に配置するとともに、前記給電線ホルダに装着された前記押込部を前記本体部に取り付ける取付工程をさらに含む、請求項14に記載の取付方法。
【請求項16】
前記給電線の過熱状態を検知する検知線を前記給電線ホルダにおいて前記給電線に接する位置に保持し、かつ前記保持部と連続するように設けられた副保持部に、移動に伴って前記検知線を押し込む副押込部を前記給電線ホルダに装着する後装着工程をさらに含み、
前記移動工程において、前記副押込部を前記押込部とともに移動させる、請求項14に記載の取付方法。
【請求項17】
前記移動工程において、前記押込部をロープの引っ張りにより移動させる、請求項14から16のいずれか1項に記載の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電線を取り付ける取付工具および取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
OHT(Over Head Hoist Transport)、OHS(Over Head Shuttle)などの搬送車は、天井に設置された軌道上を走行する台車によって被搬送物を所定の場所に搬送する装置として半導体製造、液晶製造などの分野において好適に用いられている。台車への電力供給は、軌道に敷設された給電線を介して非接触で行われる。このような給電線は、例えば、特許文献1に記載されているように、軌道に支持された給電線ホルダにおける給電線保持部に保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような給電線の敷設については、通常、作業者が高所作業車に乗って高所に配置されている給電線ホルダに給電線を取り付けることで行われている。このような作業は、手間がかかり、効率的ではなかった。
【0005】
本発明の一態様は、給電線の取付作業を効率的に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る取付工具は、搬送車が走行するための軌道に付随し、前記搬送車へ非接触で給電する給電線を保持する給電線ホルダに前記給電線を取り付ける取付工具であって、前記軌道に沿って移動可能な本体部と、前記本体部とともに前記軌道に沿って移動し、一部が開放された保持部を有する前記給電線ホルダに、前記本体部の移動に伴って連続的に前記保持部に前記給電線を押し込む押込部とを備える。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る取付方法は、搬送車が走行するための軌道に付随し、前記搬送車へ非接触で給電する給電線を保持する給電線ホルダに前記給電線を取り付ける取付方法であって、一部が開放された保持部を有する前記給電線ホルダに、移動に伴って前記保持部に前記給電線を押し込む押込部を前記給電線ホルダに装着する装着工程と、前記押込部を前記軌道に沿って移動させる移動工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、給電線の取付作業を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態1,2および3に係る取付工具により給電線が取り付けられる搬送システムの構成を示す正面図である。
【
図2】上記実施形態1に係る取付工具が上記搬送システムにおける軌道上に配置されている状態を示す正面図である。
【
図6】上記取付工具に取り付けられる押込部が上記軌道に付設される給電線ホルダに装着された状態を示す斜視図である。
【
図7】上記実施形態2に係る取付工具が上記搬送システムにおける軌道上に配置されている状態を示す正面図である。
【
図10】
図7の取付工具における基体部の押込部および支持部が取り付けられた状態を示す平面図である。
【
図11】上記基体部の上記押込部および上記支持部が取り付けられた状態を示す側面図である。
【
図12】
図7の取付工具の構成を示す斜視図である。
【
図16】
図7の取付工具による上記給電線ホルダへの給電線の取り付けの各工程を示す図である。
【
図17】上記実施形態3に係る取付工具が上記搬送システムにおける軌道上に配置されている状態を示す正面図である。
【
図20】
図17の取付工具における基体部の構成を示す側面図である。
【
図21】
図17の取付工具に装着される導入部の構成を示す平面図である。
【
図24】上記導入部に嵌め込まれる押込部の構成を示す平面図である。
【
図27】
図17の取付工具による上記給電線ホルダへの上記給電線および感熱線の取り付けの各工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔搬送システムの構成〕
本発明の実施形態1,2に係る取付工具により給電線が取り付けられる搬送システムについて、
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態1,2に係る取付工具により給電線が取り付けられる搬送システムの構成を示す正面図である。
【0011】
図1に示すように、搬送システムは、天井200に吊り下げられるように設けられている。搬送システムは、搬送車300と、軌道301と、上方軌道302と、保持枠303と、吊下金具304と、給電線ホルダ305と、給電線306とを備えている。
【0012】
軌道301は、搬送車300が走行するために設けられており、搬送車300の移動経路に互いに平行となるように一対配置されている。軌道301は、移動経路において間隔をおいて配される複数の保持枠303の下部に設けられている。保持枠303は、複数の吊下金具304によって天井200に吊り下げられるように支持されている。
【0013】
軌道301は、上面301aと、側面301bとを有している。上面301aは、搬送車300の後述する車輪330が転動する水平面である。側面301bは、搬送車300の後述する従動ローラ360が当接する鉛直面である。軌道301の形状や内部構造は、特に限定されず、軽量化の観点から中空構造に形成されていることが好ましい。
【0014】
上方軌道302は、軌道301の合流部および分岐部において、軌道301の一方が存在しない箇所において設けられている。上方軌道302は、搬送車300を搬送車300の上部で支持するとともに、軌道301に沿った搬送車300の移動をガイドする。上方軌道302は、複数の保持枠303の上部における下端面に取り付けられており、後述するスライドローラ370が当接するように垂下する垂下部302aを有している。
【0015】
給電線ホルダ305は、搬送車300へ非接触で給電する給電線306を保持するために軌道301に付随するように設けられている。給電線ホルダ305は、軌道301の側面301bに軌道301に沿うように取り付けられている。また、給電線ホルダ305は、軌道301の側面301bから水平方向に搬送車300の後述する支持軸340の付近まで達する幅を有している。
【0016】
給電線ホルダ305は、支持軸340に近接した端縁部に一部、具体的には上部で開放された保持部305aを有している。保持部305aの上部が開放されることにより、上方から保持部305aに給電線306を押し込むことができる。保持部305aは、押し込まれた給電線306を保持する。
【0017】
搬送車300は、軌道301上を搬送方向に走行することにより、容器(図示せず)を搬送先に搬送する。容器内には、例えば、半導体製造に用いられるウェハ、レチクルなどを収容する。搬送車300は、箱体310と、駆動部320と、車輪330と、支持軸340と、支持体350と、従動ローラ360と、スライドローラ370と、スライド機構380とを有している。
【0018】
箱体310は、容器を収納するとともに、上部に移載機構(図示せず)が配置されている。箱体310は、容器の出し入れが可能となるように、箱体310の一側面側が開放されている。
【0019】
駆動部320は、車輪330を駆動する動力の発生源であり、モータなどにより構成されている。駆動部320は、搬送方向に少なくとも2つ設けられており、それぞれが図示しない連結機構によって連結されている。車輪330は、軌道301のそれぞれ対応する上面301a上を転動しうる位置に一対配置されている。
【0020】
支持軸340は、箱体310を駆動部320に吊り下げるように支持する軸部材である。支持軸340は、駆動部320の下端面と箱体310の上端面とを接続するように設けられている。図示はしないが、支持軸340の内部には、給電線ホルダ305とほぼ対向する位置に受電部が設けられている。受電部は、給電線ホルダ305に保持された給電線306によって供給される電力を非接触で受けて、搬送車300の各部へ供給する。
【0021】
支持体350は、支持軸340に設けられており、水平面を有している。支持体350は、当該水平面上に従動ローラ360を回転可能に支持している。
【0022】
従動ローラ360は、支持軸340の両側に二対配置されており、軌道301の側面301bに当接する。従動ローラ360は、側面301b上を転動することにより、駆動部320の姿勢を水平方向の規定範囲内に維持する。
【0023】
スライドローラ370は、上方軌道302の垂下部302aに当接して転動するローラである。スライドローラ370は、
図1において矢印にて示す一対の軌道301の幅方向にスライドすることにより、垂下部302aに対する位置を変更して、垂下部302aの両側の面に当接することが可能である。スライドローラ370は、上述した軌道301の一方が存在しない箇所において、他方の軌道301側にある垂下部302aの面に当接することにより、当該他方の軌道301とともに搬送車300の水平方向の姿勢を維持する。
【0024】
スライド機構380は、スライドローラ370の位置をスライドローラ370の移動方向にスライドさせる機構であり、駆動部320上に設けられている。スライド機構380は、駆動部320上に固定される固定部380aと、固定部380a上で移動する移動部380bとを有している。固定部380aは、移動部380bをスライドするように駆動する。
【0025】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る取付工具について、
図2~
図6を参照して説明する。
【0026】
〈取付工具の構成〉
図2は、本発明の実施形態1に係る取付工具101が上記搬送システムにおける軌道上に配置されている状態を示す正面図である。
図3は、取付工具101の構成を示す側面図である。
図4は、取付工具101の構成を示す平面図である。
図5は、取付工具101の構成を示す斜視図である。
【0027】
図2~
図5に示すように、取付工具101は、本体部1と、押込部2と、支持部3と、複数の移動転動部4(転動部)と、複数の規制転動部5(転動部)とを有している。取付工具101は、後述するように、作業者がロープを引っ張ることにより軌道301上を移動する。それゆえ、取付工具101は、軽量であることが好ましく、例えば、樹脂によって形成されている。
【0028】
本体部1は、軌道301に沿って移動可能となるように構成されている。本体部1は、移動支持部11と、基体部12と、転動脚部13とを有している。
【0029】
移動支持部11は、長方形を成す板状の部材であり、2つ設けられている。移動支持部11は、一対の軌道301の幅方向に移動支持部11の長手方向が向くように配置されている。また、一対の移動支持部11は、取付工具101の移動方向に所定の間隔をおいて配置されている。
【0030】
基体部12は、板状の部材であり、その両端部の上端面において一対の移動支持部11の下面に固定されている。このように、基体部12は、本体部1の基本構造を構成している。基体部12は、移動支持部11に対して垂下するように配置されている。
【0031】
基体部12は、その両端部から中央よりの2箇所に孔12a(掛け構造)がそれぞれ設けられている。孔12aは、給電線306の給電線ホルダ305への取り付け時に本体部1を移動させるためのロープを通して掛けるために設けられている。孔12aは、基体部12において、本体部1の移動方向についての前端部に設けられた移動転動部4と本体部1の後端部に設けられた移動転動部4との間で規定される範囲に設けられている。より具体的には、孔12aは、基体部12において、前端部または後端部の移動転動部4と支持部3との間に1つずつ設けられている。移動転動部4については、後に詳しく説明する。
【0032】
なお、掛け構造としては、孔12aに限らず、ロープを掛けることができる構造であれば、フックのような構造物であってもよい。
【0033】
転動脚部13は、規制転動部5を固定するために設けられている。転動脚部13は、移動支持部11の下面における基体部12の両面と間隔をおいた位置に固定されている。転動脚部13は、移動支持部11の下面から垂下するように配置されている。
【0034】
押込部2は、本体部1とともに軌道301に沿って移動し、本体部1の移動に伴って連続的に、給電線ホルダ305の保持部305aに給電線306を押し込むように構成されている。押込部2は、基体部12の両面における両端部の下部にボルトおよびナットの締結によって着脱可能に取り付けられる。押込部2は、給電線306と強く接触するため、摩擦により給電線306に損傷を与えないように摩擦係数の小さい材料によって形成されている。このような材料としては、超高分子量ポリエチレン(Ultra High Molecular Weight - Poly Ethylene)が好適である。
【0035】
給電線306の取付作業において、押込部2は、基体部12の両面における少なくとも一方の端部、具体的には本体部1の移動方向についての後端部に取り付けられる。このため、取付工具101の移動方向に応じて、押込部2の取付位置を2箇所の取付位置から選択することができる。
【0036】
押込部2は、下部2aと、上部2b(当接部)と、取付部2cとを有している。下部2aは、取付工具101が軌道301上に配置された状態で給電線ホルダ305の下面と平行になるように形成されている。上部2bは、給電線ホルダ305の厚みよりもやや広い間隔をおいて下部2aと平行になるように形成されている。上部2bは、取付工具101が軌道301上に配置された状態で、給電線ホルダ305の上方近傍に配置される。これにより、上部2bは、押込部2の移動に伴って押込部2に導入される給電線306に上方から当接する。取付部2cは、基体部12に取り付けられる部分であり、下部2aの一端縁と上部2bの一端縁とつながっている。
【0037】
支持部3は、押込部2に導入される給電線306を支持する。支持部3は、本体部1とともに軌道301に沿って移動するように、基体部12における押込部2が取り付けられる面に固定されている。支持部3は、本体部1の移動方向について押込部2よりも前方に位置するように基体部12の中央に配置されている。支持部3は、押込部2よりも高い位置に配置されている。また、支持部3は、基体部12の長手方向に伸びるように貫通し、給電線306の直径よりも大きい直径を有する貫通孔3aを有している。
【0038】
移動転動部4は、軌道301上で転動することにより本体部1を移動させる転動機構である。移動転動部4は、移動支持部11の両端部にそれぞれ設けられている。移動転動部4は、ホルダ41と、球体42とを有している。ホルダ41は、移動支持部11の両端における下面に固定されており、球体42を回転可能に、かつ抜け出ないように保持する。球体42は、取付工具101が軌道301上に配置された状態で、軌道301の上面301a上に位置する。
【0039】
規制転動部5は、移動転動部4と同じく、軌道301上で転動することにより本体部1を移動させる転動機構である。また、規制転動部5は、本体部1が軌道301上を移動するときに、一対の軌道301の幅方向の位置を規制する機能を有しており、転動脚部13にそれぞれ設けられている。規制転動部5は、ホルダ51と、球体52とを有している。ホルダ51は、転動脚部13の軌道301と対向する面に固定されており、球体52を回転可能に、かつ抜け出ないように保持する。球体52は、取付工具101が軌道301上に配置された状態で、軌道301の側面301b上を転動する。
【0040】
〈取付工具による給電線の取付方法〉
図6は、取付工具101に取り付けられる押込部2が軌道301に付設される給電線ホルダ305に装着された状態を示す斜視図である。
【0041】
まず、作業者は、押込部2を給電線ホルダ305に装着する。このため、作業者は、高所での作業が可能となるように作業台に乗り、給電線306が引き出される引出部(図示せず)から引き出された給電線306の一部を、給電線ホルダ305の保持部305aに手により押し込んで嵌め入れる。
図6に示すように、作業者は、給電線ホルダ305の給電線306が嵌め入れられた端の部位に、押込部2を給電線ホルダ305に差し込むように装着する(装着工程)。
【0042】
次に、作業者は、取付工具101の移動に先立って、
図2に示すように、本体部1を軌道301上に配置する(配置工程)。配置工程において、作業者は、給電線ホルダ305に装着された押込部2を本体部1に取り付ける(取付工程)。また、配置工程において、作業者は、
図3に示すように、押込部2からの給電線306を持ち上げて支持部3の貫通孔3aに通すとともに、ロープを基体部12の孔12aに引っ掛けておく。
【0043】
このように取付工具101の配置が完了すると、下に待機している作業者は、取付工具101の移動方向の前方の斜め下方からロープを引っ張ることにより、取付工具101を軌道301に沿って移動させる(移動工程)。これに伴い、
図6に示すように、押込部2が矢印の方向に移動するにしたがって、上部2bが押込部2に導入される給電線306に上方から当接する。この結果、給電線306は、上部が開放された保持部305aに下方へと押し込まれていく。
【0044】
取付工具101の移動時には、
図3に示すように、支持部3が、押込部2に導入される給電線306を押込部2よりも高い位置で支持する。これにより、下方に垂れた給電線306が押込部2に直接導入される構造と比べて、押込部2にかかる負荷を軽減することができる。これにより、給電線306を押込部2に導入しやすくなる。
【0045】
従来、給電線306の敷設は、作業者が高所作業車に乗って高所に配置されている給電線ホルダ305の保持部305aに給電線306を手作業で押し込んで嵌め入れていくことで行われている。このような作業は、高所作業車上に乗ったまま移動しながら行うことは法令上で認められていない。したがって、作業者は、手の届く範囲での作業が終了すると、高所作業車から下りて、次の作業箇所へ移動すると再び高所作業車へ昇って作業をするということを繰り返す。このため、作業に手間がかかり、効率的ではなかった。
【0046】
これに対し、本実施形態では、取付工具101を移動させることにより、給電線ホルダ305に給電線306を取り付けることができる。それゆえ、作業者は、取付工具101を軌道301上に配置するときや、取付工具101を軌道301から撤去するときに高所に昇り降りすればよいので、その昇り降りの回数を大幅に削減することができる。したがって、作業者が給電線306を給電線ホルダ305に押し込む作業を削減して、作業の効率を向上させることができる。これは、後述する実施形態2についても同様である。
【0047】
ところで、取付工具101は、上述したように、作業者がロープを引っ張ることにより軌道301上を移動する。しかしながら、取付工具101は、自身で駆動源を備えることにより、自力で軌道301上を走行するように構成されていてもよい。ただし、取付工具101を自走式に構成する場合、取付工具101の軌道301上への配置や撤去が比較的頻繁に行われる箇所では、その箇所を検知して移動を停止するなどの制御が必要である。さらには、取付工具101の重量化のため、取付工具101の取り扱いが難しくなる。これに対し、本実施形態の取付工具101は、作業者の力で移動することにより、移動や停止を自由に行うことができる。さらに、本実施形態の取付工具101は、軽量で取り扱いが容易であるので、給電線306の取付作業を効率的に行うことができる。これは、後述する実施形態2の取付工具102(
図7参照)および実施形態3の取付工具103(
図17参照)でも同様である。
【0048】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る取付工具について、
図7~
図16を参照して説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0049】
〈取付工具の構成〉
図7は、本発明の実施形態2に係る取付工具102が搬送システムにおける軌道301上に配置されている状態を示す正面図である。
図8は、取付工具102の構成を示す側面図である。
図9は、取付工具102の構成を示す平面図である。
図10は、取付工具における基体部14の押込部7および支持部8が取り付けられた状態を示す平面図である。
図11は、基体部14の押込部7および支持部8が取り付けられた状態を示す側面図である。
図12は、取付工具102の構成を示す斜視図である。
図13は、押込部7の構成を示す平面図である。
図14は、押込部7の構成を示す側面図である。
図15は、押込部7の構成を示す正面図である。
【0050】
図7~
図12に示すように、取付工具102は、本体部1Aと、複数の移動転動部4と、複数の規制転動部5と、押込部7と、支持部8と、一対の変位規制部9(維持部)とを有している。取付工具102は、後述するように、作業者がロープによって引っ張られることにより軌道301上を移動することから、取付工具101と同じく軽量であることが好ましく、このために樹脂によって形成されている。
【0051】
本体部1Aは、軌道301に沿って移動可能となるように構成されている。本体部1Aは、移動支持部11と、転動脚部13と、基体部14とを有している。
【0052】
基体部14は、その両端部の上端面において一対の移動支持部11の下面に固定されている。このように、基体部14は、本体部1Aの基本構造を構成している。基体部14は、移動支持部11に対して垂下するように配置されている。基体部14は、後述する押込部7の取付箇所が1箇所に限定されるため、実施形態1における取付工具101の基体部12よりも短く形成されている。
【0053】
基体部14は、ほぼ中央部に孔14a(掛け構造)がそれぞれ設けられている。孔14aは、給電線306の給電線ホルダ305への取り付け時に本体部1Aを移動させるためのロープを通して掛けるために設けられている。孔14aは、本体部1Aの移動方向についての前端部に設けられた移動転動部4と、本体部1Aの後端部に設けられた移動転動部4との間で規定される範囲に設けられる。より具体的には、孔14aは、基体部14において前端部または後端部の移動転動部4の間の中間位置付近に設けられている。または、孔14aは、基体部14において支持部8よりやや後方の位置に設けられていてもよい。
【0054】
なお、掛け構造としては、孔14aに限らず、ロープを掛けることができる構造であれば、フックのような構造物であってもよい。
【0055】
図10および
図11に示すように、基体部14は、2つの切欠き14bを有している。切欠き14bは、基体部14における押込部7が取り付けられる端部、具体的には本体部1Aの移動方向についての後端部における下部に設けられる。切欠き14bは、基体部14の下端から上方に伸びる部分と、本体部1Aの移動方向に沿って後端部へと伸びる部分とを有するように形成されている。
【0056】
押込部7は、本体部1Aとともに軌道301に沿って移動し、本体部1Aの移動に伴って連続的に、給電線ホルダ305の保持部305aに給電線306を押し込むように構成されている。押込部7は、基体部14の両面における一端部、具体的には本体部1Aの移動方向についての基体部14の後端部に配置される。押込部7は、基体部14の後端部における下部に、切欠き14bとの係合構造によって着脱可能に取り付けられる。押込部7は、実施形態1の取付工具102における押込部2と同じく摩擦係数の小さい材料によって形成されている。
【0057】
図13~
図15に示すように、押込部7は、下部7aと、上部7b(当接部)と、取付部7cと、係合部7dとを有している。下部7a、上部7bおよび取付部7cは、上述した取付工具101における押込部2の下部2a、上部2bおよび取付部2cとほぼ同等の構造を有している。
【0058】
係合部7dは、取付部7cに2つ設けられており、間隔をおいて配置されている。基体部14の切欠き14bに係合するように鉤状に形成されている。係合部7dは、取付部7cから垂直に突出する突出部と、当該突出部の端から
図13における平面視で左側に屈曲する屈曲部とを有している。
【0059】
支持部8は、押込部7に導入される給電線306を支持する。支持部8は、本体部1Aとともに軌道301に沿って移動するように、基体部14における押込部7が取り付けられる面に固定されている。支持部8は、本体部1Aの移動方向について押込部7よりも前方に位置するように基体部14の中央よりやや前寄りの位置に配置されている。支持部8は、押込部7よりも高い位置に配置されている。また、支持部8は、基体部14の長手方向に伸びるように形成されており、給電線306をガイドする溝8aを有している。
【0060】
変位規制部9は、上方軌道302の垂下部302aに当接することにより、本体部1Aの一対の軌道301の幅方向の変位を規制し、本体部1Aの姿勢を維持する。変位規制部9は、支持部材91と、転動部92とを有している。
【0061】
支持部材91は、移動支持部11の上面におけるほぼ中央部に立ち上がるように設けられている。支持部材91は、底板と、底板上に立ち上がる立上板と、強度を確保するために立上板の両側に設けられた補強板とを有している。
【0062】
転動部92は、支持部材91の上端部に設けられている。転動部92は、ホルダ92aと、球体92bとを有している。ホルダ92aは、支持部材91の上端部における一方の面に固定されており、球体92bを回転可能に、かつ抜け出ないように保持する。球体92bは、取付工具102が軌道301上に配置された状態で、上方軌道302の垂下部302a上を転動する。
【0063】
なお、変位規制部9は、1つの転動部92を有しているが、球体92bがホルダ92aから突出する向きが異なる2つの転動部92を有していてもよい。図示はしないが、他の転動部92は、
図7に示す転動部92とは、球体92bがホルダ92aから突出する向きが逆であり、支持部材91とは異なる支持部材に固定されている。当該支持部材は、支持部材91のほぼ中央位置から支持部材91に対して垂直に伸びるように形成されている。また、支持部材91は、移動支持部11の上面で回動可能となる回動機構を有している。
【0064】
このように構成された変位規制部9は、支持部材91が回動することにより、転動部92が上方軌道302の垂下部302aの一方の面に当接する位置と、他の転動部92が垂下部302aの他方の面に当接する位置とで姿勢を切り替えることができる。それぞれの転動部92が垂下部302aの面に当接した状態では、支持部材91は回動しないように固定される。このように、2つの転動部92を切り替えて垂下部302aの2つの面のいずれか一方に当接させることができる。これにより、軌道301の合流部および分岐部において軌道301のいずれか一方が存在しなくても、取付工具102の向きを替えて配置し直すことなく、取付工具102の姿勢を維持することができる。
【0065】
〈取付工具による給電線の取付方法〉
図16は、取付工具102による給電線ホルダ305への給電線306の取り付けの各工程を示す図である。
【0066】
図16に示すように、まず、作業者は、作業台上で、給電線306の引出部307から引き出された給電線306の一部を、給電線ホルダ305の保持部305aに押し込んで嵌め入れる(初期敷設工程)。
図16に示すように、作業者は、給電線ホルダ305の給電線306が嵌め入れられた端の部位に、押込部7を給電線ホルダ305に差し込むように装着する(装着工程)。
【0067】
次に、作業者は、本体部1Aを軌道301上に配置する(配置工程)。配置工程において、作業者は、給電線ホルダ305に装着された押込部7を本体部1Aに取り付ける(取付工程)。押込部7を本体部1Aに取り付けることにより、取付工具102が完成する。また、配置工程において、作業者は、押込部7からの給電線306を持ち上げて支持部8の溝に配置するとともに、ロープ30を基体部14の孔14aに引っ掛けておく。
【0068】
取付工程において、作業者は、
図13に示す押込部7の係合部7dの突出部を、
図12に示す基体部14における切欠き14bの下端から上端まで差し込み、
図12の矢印方向、すなわち取付工具102の移動方向についての後方に移動させる。
【0069】
これにより、本体部1Aが軌道301上を移動するときに、押込部7が給電線306との接触による抵抗を受けることで、係合部7dが取付工具102の後方に移動しようとする。このため、係合部7dが切欠き14bから外れることはない。したがって、押込部7の本体部1A(基体部14)への接合を、ネジを用いることなく簡単に行うことができる。
【0070】
このように取付工具102の配置が完了すると、下に待機している作業者は、取付工具102の移動方向の前方からロープ30を引っ張ることにより、取付工具102を軌道301に沿って移動させる(移動工程)。これに伴い、押込部7が移動するにしたがって、上部7bが押込部7に導入される給電線306に上方から当接する。これにより、給電線306は、上部が開放された保持部305aに下方へと押し込まれていく。
【0071】
本体部1Aをロープ30で引っ張るときに、移動転動部4が軌道301から受ける上方向の反力と、孔14aに斜め下方向からロープ30を介して作用する力により、取付工具102全体のモーメントのバランスがとりやすくなる。それゆえ、安定して本体部1Aを引っ張ることができる。
【0072】
取付工具102の移動時には、支持部3が、押込部2に導入される給電線306を押込部2よりも高い位置で支持する。これにより、下方に垂れた給電線306が押込部2に直接導入される構造と比べて、押込部2にかかる負荷を軽減することができる。この結果、給電線306を押込部2に導入しやすくなる。
【0073】
このように、取付工具102を移動させることにより、給電線ホルダ305に給電線306を取り付けることができる。したがって、実施形態1と同様、作業者が給電線306を給電線ホルダ305に押し込む作業を削減することができる。
【0074】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3に係る取付工具について、
図17~
図27を参照して説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1および2にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0075】
〈取付工具の構成〉
図17は、本発明の実施形態3に係る取付工具103が搬送システムにおける軌道301上に配置されている状態を示す正面図である。
図18は、取付工具103の構成を示す側面図である。
図19は、取付工具103の構成を示す平面図である。
図20は、取付工具103における基体部15の構成を示す側面図である。
図21は、取付工具103に装着される押込支持部60の構成を示す平面図である。
図22は、押込支持部60の構成を示す正面図である。
図23は、押込支持部60の構成を示す側面図である。
図24は、押込支持部60に嵌め込まれる副押込部6の構成を示す平面図である。
図25は、副押込部6の構成を示す正面図である。
図26は、副押込部6の構成を示す側面図である。
【0076】
図17~
図19に示すように、取付工具103は、本体部1Bと、複数の移動転動部4と、複数の規制転動部5と、副押込部6と、一対の変位規制部9と、押込部20と、押込支持部60と、支持部80とを有している。取付工具103は、後述するように、作業者がロープを引っ張ることにより軌道301上を移動する。それゆえ、取付工具103は、取付工具101と同じく軽量であることが好ましく、例えば、樹脂によって形成されている。
【0077】
取付工具103は、給電線306を給電線ホルダ305に取り付けるだけでなく、感熱線308(検知線)も給電線ホルダ305に取り付ける。感熱線308は、給電線306の過熱状態を検知する機能を有している。具体的には、感熱線308は、給電線306が所定の温度以上に発熱すると、給電線306の熱により溶断するように銅などにより形成されている。給電線306の配線の誤りなどにより、給電線306が過剰に発熱した場合、感熱線308が断線することにより、給電線306への給電が停止される。
【0078】
なお、実施形態1および2における給電線306は、感熱線308と同じ機能を有する感熱線を被覆内に内蔵していてもよい。
【0079】
給電線ホルダ305は、保持部305aとともに副保持部305bを有している。副保持部305bは、感熱線308を給電線ホルダ305において給電線306に接する位置に保持し、かつ保持部305aと連続するように設けられている。
【0080】
本体部1Bは、軌道301に沿って移動可能となるように、移動支持部11と、転動脚部13と、基体部15とを有している。
【0081】
基体部15は、その両端部の上端面において一対の移動支持部11の下面に固定されることにより、本体部1Bの基本構造を構成している。基体部15は、移動支持部11に対して垂下するように配置されている。基体部15は、後述する押込部20の取付箇所が1箇所に限定されるため、実施形態1における取付工具101の基体部12よりも短く形成されている。
【0082】
図20に示すように、基体部15は、垂下部15aと、孔15b(掛け構造)とを有している。垂下部15aは、ほぼ中央部の下端から下方に垂下するように形成された矩形を成す部分である。
【0083】
孔15bは、垂下部15aに形成されている。給電線306および感熱線308の給電線ホルダ305への取り付け時に本体部1Bを移動させるためのロープを通して掛けるために設けられている。孔15bは、本体部1Bの移動方向(
図18の右方向,以降、単に「移動方向」と称する)についての前端部に設けられた移動転動部4と、本体部1Bの後端部に設けられた移動転動部4との間で規定される範囲に設けられている。また、孔15bは、副押込部6副押込部の下端より低い位置でロープを掛けることができる位置に設けられている。
【0084】
なお、掛け構造としては、孔15bに限らず、ロープを掛けることができる構造であれば、フックのような構造物であってもよい。
【0085】
基体部15は、支持棒15c,15d,15eを有している。支持棒15c,15d,15eは、押込部20、押込支持部60および支持部80を、それぞれ基体部15に着脱可能に取り付けるために設けられている。
【0086】
支持棒15cは、基体部15における押込部20が取り付けられる端部、具体的には移動方向についての後端における下部に設けられている。支持棒15cは、当該後端から後方に突出しつつ下方に伸びる部分と、当該部分の下端から移動方向に向かって伸びる部分とを有するように形成されている。
【0087】
支持棒15dは、垂下部15aにおける移動方向についての前端の、孔15bよりやや高い位置に設けられている。また、支持棒15dは、支持棒15cと同じ方向に伸びるように形成されている。
【0088】
支持棒15eは、基体部15に形成された長孔15f内に設けられている。長孔15fは、移動方向について、垂下部15aの上記の前端よりも前側に、支持棒15cと同じ方向に伸びるように形成されている。支持棒15eは、長孔15fにおける移動方向についての後端から、支持棒15cと同じ方向に伸びるように形成されている。また、支持棒15eは、長孔15fの長さより短い長さ、例えば長孔15fの半分より短い長さを有している。
【0089】
押込部20は、本体部1Bとともに軌道301に沿って移動し、本体部1Bの移動に伴って連続的に、給電線ホルダ305の保持部305aに給電線306を押し込むように構成されている。押込部20は、基体部15の両面における一端部、具体的には移動方向についての基体部15の後端部に配置される。具体的には、押込部20は、支持棒15cに差し込まれることによって本体部1Bに着脱可能に取り付けられる。押込部20は、実施形態1の取付工具102における押込部2と同じく摩擦係数の小さい材料によって形成されている。
【0090】
押込部20は、下部20aと、上部20b(当接部)と、取付部20cと、差込孔20dとを有している。下部20a、上部20bおよび取付部20cは、それぞれ、上述した取付工具101における押込部2の下部2a、上部2bおよび取付部2cとほぼ同等の構造を有している。
【0091】
差込孔20dは、支持棒15cが差し込まれるために設けられている。差込孔20dは、取付部20cの後端面に開口するとともに、移動方向に、取付部20cのほぼ中央部にまで伸びるように形成されている。取付部20cの後端面は、換言すれば、押込部20が移動するときに下部20aおよび上部20bの間を通る給電線306が押込部20から出て行く側の面である。
【0092】
支持部80は、押込部20に導入される給電線306を支持する。支持部80は、本体部1Bとともに軌道301に沿って移動するように、基体部15に取り付けられている。支持部80は、移動方向について押込部20よりも前方に位置するように基体部15の中央よりやや前寄りの位置に配置されるとともに、押込部20よりも高い位置に配置されている。また、支持部80は、基体部15の長手方向に伸びるように形成されており、給電線306をガイドする溝80aを有している。
【0093】
図19に示すように、支持部80は、取付部80bを有している。取付部80bは、溝80aに沿った、基体部15に面する支持部80の側面に当該側面から突出するように設けられている。図示はしないが、取付部80bは、溝80aが伸びる方向と同じ方向に伸びる差込孔を有している。取付部80bは、長孔15fに貫通するように挿入されるとともに、取付部80bの差込孔に支持棒15eが差し込まれることにより、基体部15に支持される。このように、支持部80は、支持棒15eに差し込まれることによって、本体部1Bに着脱可能に取り付けられる。
【0094】
基体部15は、長孔15gを有している。長孔15gは、長孔15fより高い位置の、基体部15の上端付近に設けられている。また、長孔15gは、基体部15の中央から、移動方向について前方および後方にほぼ同じ長さで伸びるように形成されている。長孔15gは、基体部15の軽量化を図るため、および作業者が本体部1Bを持ちやすくするために設けられている。
【0095】
副押込部6は、本体部1Bとともに軌道301に沿って移動し、移動方向について押込部20よりも前方に配置される。副押込部6は、本体部1Bの移動に伴って連続的に感熱線308を副保持部305bに押し込む。また、
図17に拡大して示すように、副押込部6は、保持部305a内を移動し、感熱線308を副保持部305bに導入する先端部63を有している。副押込部6については、後に詳しく説明する。
【0096】
押込支持部60は、先端部63が保持部305a内を移動するように、副押込部6を本体部1Bに着脱可能に支持する。
図21~
図23に示すように、押込支持部60は、下部601(突出部)と、上部602(突出部)と、取付部603とを有している。
【0097】
下部601は、取付工具103が軌道301上に配置された状態で給電線ホルダ305の下面と対向するように形成されている。上部602は、給電線ホルダ305の厚みよりもやや広い間隔をおいて下部601と対向するように形成されている。下部601および上部602は、それぞれ、感熱線308を導入する側に導入端部601a,602aを有している。
【0098】
なお、下部601および上部602は、押込支持部60が基体部15に取り付けられる向きに応じて位置が入れ替わる。具体的には、
図17に示すように、取付工具103の進行方向の前方から見て、押込支持部60が基体部15の右側に取り付けられる状態と、押込支持部60が基体部15の左側に取り付けられる状態とで、下部601および上部602が入れ替わる。これは、後述する差込孔603aの向きを変えないようにするためである。
【0099】
取付部603は、基体部15に取り付けられる部分であり、下部601の一端縁と上部602の一端縁とつながっている。取付部603は、差込孔603aを有している。差込孔603aは、支持棒15dが差し込まれるために設けられている。差込孔603aは、取付部603の後端面に開口するとともに、移動方向(
図21では右方向)に取付部603のほぼ中央部にまで伸びるように形成されている。取付部603の後端面は、換言すれば、押込支持部60が移動するときに下部601および上部602の間を通る感熱線308が押込支持部60から出て行く側の面である。
【0100】
一対の突出部を構成する下部601および上部602は、上記のような構造を有することにより、取付部603とともに保持部305aを覆い、かつ取付部603から給電線ホルダ305の上下に突出するように配される。また、下部601および上部602は、それぞれ、傾斜部601b,602bを有している。傾斜部601b,602bは、下部601および上部602の間隔が、移動方向について、導入端部601a,602aから下部601および上部602の中央付近まで狭くなるように傾斜している。
【0101】
ところで、給電線ホルダ305は、所定の長さを有する複数の部品により構成され、当該部品が、軌道301に取り付けられるときに、軌道301の長手方向に順次接続されることにより形成される。軌道301への一部の部品の取り付けが適正でない場合、給電線ホルダ305において、部品同士のつなぎ目に段差が生じることがある。このような場合、例えば、押込支持部60の下部601および上部602が当該段差に引っ掛かるという不具合が生じやすい。
【0102】
これに対し、下部601および上部602がそれぞれ傾斜部601b,602bを有することにより、下部601および上部602のそれぞれの導入端部601a,602aでの間隔が広く確保される。これにより、給電線ホルダ305において上記の段差が生じていても、下部601および上部602が段差に引っ掛かりにくくすることができる。したがって、段差の影響を少なくして、感熱線308の導入および押し込みを安定して行なうことができる。
【0103】
なお、上述した押込部20の下部20aおよび上部20bも、それぞれ、傾斜部601b,602bと同じ構造の傾斜部を有していてもよい。また、実施形態1および2における押込部2,7も、それぞれ、傾斜部601b,602bと同じ構造の傾斜部を有していてもよい。
【0104】
下部601および上部602は、それぞれスリット601c,602cを有している。スリット601c,602cは、副押込部6を押込支持部60に嵌め込むために設けられている。スリット601cは、導入端部601aから移動方向(
図22では右方向)とは反対の方向にスリット601cの後端付近まで伸びるように形成されている。スリット602cは、導入端部602aから移動方向とは反対の方向にスリット602cの後端付近まで伸びるように形成されている。スリット601c,602cの上下方向の中間部分は、他の部分より幅が広くなるように形成されている。
【0105】
図24~
図26に示すように、副押込部6は、頂部61と、中間部62と、先端部63とを有している。
【0106】
頂部61は、長方形の板形状に形成されている。中間部62は、頂部61の下端面における頂部61の幅方向の中央に、頂部61の長手方向の全体にわたって垂下するように形成されている。中間部62は、幅広部62aを有している。幅広部62aは、中間部62のほぼ中間部位において、他の部位より広い幅の曲面状に形成されている。上述したスリット601c,602cは、中間部62が嵌合するように、中間部62の外形に沿った形状に形成されている。
【0107】
先端部63は、頂部61の長手方向の全体にわたって中間部62の下端に続くように形成されている。先端部63は、先割れ部63aを有している。先割れ部63aは、頂部61の幅方向の一方側に設けられている。先割れ部63aは、先端が2つに分かれるように形成されている。
【0108】
上記のように構成される副押込部6は、頂部61が上端で押込支持部60の上部602の上端面上に乗り、中間部62がスリット602cに差し込まれる。また、副押込部6は、押込支持部60が移動するときに、スリット602cの後端で保持されるとともに、中間部62の幅広部62aがスリット602cに嵌合して保持される。これにより、副押込部6は、取付工具103の移動時にスリット602cから抜け出ることはない。また、
図17に示すように、副押込部6は、先割れ部63aが副保持部305bを塞ぐように配置される。これにより、副押込部6は、押込支持部60とともに移動することにより、先割れ部63aで感熱線308を押さえ込みながら副保持部305bに押し込むことができる。
【0109】
〈取付工具による給電線の取付方法〉
図27は、取付工具103による給電線ホルダへの給電線306および感熱線308の取り付けの各工程を示す図である。
【0110】
図27に示すように、まず、作業者は、作業台上で、給電線306の引出部307から引き出された給電線306および感熱線308の一部を、給電線ホルダ305の保持部305aおよび副保持部305bにそれぞれ押し込んで嵌め入れる(初期敷設工程)。次に、作業者は、本体部1Bを軌道301上に配置する(配置工程)。
【0111】
続いて、作業者は、給電線ホルダ305の給電線306が嵌め入れられた端の部位に、押込部20を給電線ホルダ305に差し込むように装着する(第1装着工程)。第1装着工程において、
図18に示すように、作業者は、押込部20を、給電線ホルダ305に一旦差し込んだ状態から後方に移動させて基体部15の支持棒15cに差し込むことにより、本体部1Bに取り付ける。
【0112】
これにより、本体部1Bが軌道301上を移動するときに、押込部20が、給電線306との接触による抵抗を受けることで、取付工具103の後方に移動しようとしても、支持棒15cが押込部20の移動を阻止する。このため、押込部20が基体部15から外れることはない。したがって、押込部20の本体部1B(基体部15)への取り付けを、ネジを用いることなく簡単に行うことができる。
【0113】
その後、作業者は、押込部20からの給電線306を持ち上げて支持部80の溝に配置する(第1敷設準備工程)。第1敷設準備工程において、
図18に示すように、作業者は、支持部80を、基体部15の支持棒15eに差し込むことにより、本体部1Bに取り付ける。
【0114】
そして、作業者は、副押込部6が本体部1Bに取り付けられる位置まで、感熱線308を副保持部305bに押し込み、感熱線308を押し込んだ位置で、押込支持部60を給電線ホルダ305に差し込むように装着する(第2装着工程)。第2装着工程において、
図18に示すように、作業者は、押込支持部60を、給電線ホルダ305に一旦差し込んだ状態から後方に移動させて基体部15の支持棒15dに差し込むことにより、本体部1Bに取り付ける。
【0115】
さらに、作業者は、副押込部6を、先端部63の先割れ部63aが副保持部305b内の感熱線308を押えるように配置した状態で、押込支持部60のスリット602cに嵌め込んで後方に移動させることにより、押込支持部60に組み込む(第2敷設準備工程(後装着工程))。第2敷設準備工程において、作業者は、押込支持部60より前方の部位で感熱線308をフック70に引っ掛けておく。
【0116】
このようにして、押込部20、支持部80、押込支持部60および副押込部6が本体部1Bに取り付けられると、取付工具103が完成する。作業者は、この状態でロープ30を基体部15の孔15bに引っ掛けると、下に待機している作業者は、取付工具103の移動方向の前方からロープ30を引っ張ることにより、取付工具103を軌道301に沿って移動させる(移動工程)。
【0117】
これに伴い、押込部20が移動するにしたがって、上部20bが押込部20に導入される給電線306に上方から当接する。これにより、給電線306は、上部が開放された保持部305aに下方へと押し込まれていく。
【0118】
また、押込支持部60が移動するにしたがって、副押込部6の先割れ部63aは、給電線ホルダ305の保持部305a内にある感熱線308を押さえ込んで、副保持部305bに導入する。これにより、感熱線308は、保持部305aに連続する副保持部305bに押し込まれていく。
【0119】
取付工具103の移動時には、フック70が、押込支持部60に導入される感熱線308を押込支持部60よりも高い位置で支持する。これにより、下方に垂れた感熱線308が押込支持部60に直接導入される構造と比べて、押込支持部60にかかる負荷を軽減することができる。これにより、感熱線308を押込支持部60に導入しやすくなる。
【0120】
このように、取付工具103を移動させることにより、給電線ホルダ305に給電線306および感熱線308を取り付けることができる。したがって、作業者が給電線306および感熱線308を給電線ホルダ305に押し込む作業を削減することができる。
【0121】
〔まとめ〕
以上のように、本発明の態様1に係る取付工具は、搬送車が走行するための軌道に付随し、前記搬送車へ非接触で給電する給電線を保持する給電線ホルダに前記給電線を取り付ける取付工具であって、前記軌道に沿って移動可能な本体部と、前記本体部とともに前記軌道に沿って移動し、一部が開放された保持部を有する前記給電線ホルダに、前記本体部の移動に伴って連続的に前記保持部に前記給電線を押し込む押込部とを備える。
【0122】
上記構成によれば、本体部を移動させることに伴い、給電線が押込部により給電線ホルダに押し込まれていく。これにより、作業者が給電線を給電線ホルダに押し込む作業を削減することができる。
【0123】
本発明の態様2に係る取付工具は、上記態様1において、前記保持部の上部が開放され、前記押込部が、前記給電線ホルダの上方近傍に配置されることにより、前記押込部の移動に伴って前記押込部に導入される前記給電線に上方から当接する当接部を有する。
【0124】
上記構成によれば、当接部が給電線に上方から当接することにより、上部が開放された保持部に給電線を下方に押し込むことができる。
【0125】
本発明の態様3に係る取付工具は、上記態様1または2において、前記本体部とともに前記軌道に沿って移動し、前記本体部の移動方向について前記押込部よりも前方に配置されるとともに、前記押込部よりも高い位置に配置され、前記押込部に導入される前記給電線を支持する支持部をさらに備える。
【0126】
上記構成によれば、押込部に導入される給電線を押込部よりも高い位置で支持するので、下方に垂れた給電線が押込部に直接導入される構造と比べて、押込部にかかる負荷を軽減することができる。これにより、給電線を押込部に導入しやすくなる。
【0127】
本発明の態様4に係る取付工具は、上記態様3において、支持部が、前記給電線をガイドする溝を有している。
【0128】
上記構成によれば、上記構成によれば、給電線を支持部の溝に載置することで支持することができる。これにより、支持部に給電線を支持させる作業を容易に行うことができる。
【0129】
本発明の態様5に係る取付工具は、上記態様1において、前記本体部とともに前記軌道に沿って移動し、前記本体部の移動方向について前記押込部よりも前方に配置される副押込部であって、前記給電線の過熱状態を検知する検知線を前記給電線ホルダにおいて前記給電線に接する位置に保持し、かつ前記保持部と連続するように設けられた副保持部に、前記本体部の移動に伴って連続的に前記検知線を押し込む副押込部をさらに備える。
【0130】
上記の構成によれば、本体部を移動させることに伴い、給電線が保持部に押し込まれるのに先行して、副押込部により、検知線が副保持部に押し込まれていく。これにより、作業者が検知線を給電線ホルダに押し込む作業を削減することができる。
【0131】
本発明の態様6に係る取付工具は、上記態様5において、前記副押込部が、前記保持部内を移動し、前記検知線を前記副保持部に導入する先端部を有する。また、当該取付工具は、前記先端部が前記保持部内を移動するように、前記副押込部を前記本体部に着脱可能に支持する押込支持部をさらに備える。
【0132】
上記の構成では、一般に給電線よりも細く形成される検知線を、保持部内に引き込まれた状態から、保持部内を移動する先端部により副保持部に導入することにより、検知線が副保持部に押し込まれる。また、副押込部が押込支持部により本体部に着脱可能に支持される。これにより、作業者が検知線を副保持部に押し込む初期作業をしてから、先端部が、押し込まれた検知線を押えるように、副保持部を本体部に取り付けることができる。したがって、上記の初期作業を容易に行なうことができる。
【0133】
本発明の態様7に係る取付工具は、上記態様6において、前記本体部が、前記本体部の基本構造を成す基体部を有し、前記押込支持部が、前記基体部に取り付けられる取付部と、前記取付部とともに前記保持部を覆い、かつ前記取付部から前記給電線ホルダの上下に突出するように配される一対の突出部と、を有し、前記一対の突出部は、前記一対の突出部の間隔が、前記本体部の移動方向について、前記検知線を導入する側の導入端部より後方側に狭くなるように傾斜する傾斜部を有する。
【0134】
上記の構成では、一対の突出部が傾斜部を有することにより、一対の突出部の導入端部での間隔が広く確保される。これにより、給電線ホルダにおいて、給電線ホルダを構成する部品が接合される部分に段差が生じていても、一対の突出部を段差に引っ掛かりにくくすることができる。したがって、段差の影響を少なくして、検知線の導入および押し込みを安定して行なうことができる。
【0135】
本発明の態様8に係る取付工具は、上記態様5または6において、前記本体部が、前記副押込部の下端より低い位置でロープを掛ける掛け構造を有する。
【0136】
上記の構成によれば、副押込部にロープが接触することを回帰できる。これにより、ロープを引っ張ることにより円滑に本体部を移動させることができる。
【0137】
本発明の態様9に係る取付工具は、上記態様1から8のいずれかにおいて、前記押込部が、前記本体部の移動方向について前記本体部の後端部に配置されている。
【0138】
上記の構成によれば、本体部の移動方向の全長を短くすることができる。
【0139】
本発明の態様10に係る取付工具は、上記態様1から4のいずれかにおいて、前記本体部が、前記本体部の移動方向に沿って伸びるように形成された切欠きを有し、押込部が、前記切欠きに係合する鉤状の係合部を有する。
【0140】
上記構成によれば、押込部の本体部への接合を、ネジを用いることなく簡単に行うことができる。また、取付工具を進行方向へ移動させることにより、係合部が切欠きにより深く係合する方向へ力がかかる。これにより、押込部をネジ等で本体部に固定しなくても、押込部を本体部から外れにくくすることができる。
【0141】
本発明の態様11に係る取付工具は、上記態様1から8のいずれかにおいて、一部の前記軌道の上方に設けられた、前記搬送車をガイドするための上方軌道に当接することにより前記本体部の姿勢を維持する維持部をさらに備える。
【0142】
本発明の態様12に係る取付工具は、上記態様1から7のいずれかにおいて、前記軌道上で転動することにより前記本体部を移動させる転動部をさらに備える。
【0143】
上記構成によれば、本体部が軌道上を円滑に移動することができる。
【0144】
本発明の態様13に係る取付工具は、上記態様12において、前記転動部が、前記本体部の移動方向について前記本体部の前端部および後端部に設けられ、前記本体部が、ロープを掛ける掛け構造を有し、前記掛け構造が、前記本体部の前端部の前記転動部と前記本体部の後端部の前記転動部との間で規定される範囲に設けられる。
【0145】
上記構成によれば、ロープにより本体部の下方で移動方向に本体部を引っ張ることにより、本体部を軌道上で移動させることができる。また、転動部が軌道から受ける上方向の反力と、掛け構造に斜め下方向からロープを介して作用する力により、取付工具全体のモーメントのバランスがとりやすくなり、安定して本体部を引っ張ることができる。
【0146】
本発明の態様14に係る取付方法は、搬送車が走行するための軌道に付随し、前記搬送車へ非接触で給電する給電線を保持する給電線ホルダに前記給電線を取り付ける取付方法であって、一部が開放された保持部を有する前記給電線ホルダに、移動に伴って前記保持部に前記給電線を押し込む押込部を前記給電線ホルダに装着する装着工程と、前記押込部を前記軌道に沿って移動させる移動工程と、を含む。
【0147】
上記方法によれば、押込部を移動させることに伴い、給電線が押込部により給電線ホルダに押し込まれていく。これにより、作業者が給電線を給電線ホルダに押し込む作業を削減することができる。
【0148】
本発明の態様15に係る取付方法は、上記態様14の前記移動工程において、前記移動工程に先立って、前記軌道に沿って移動可能な本体部を前記軌道に配置するとともに、前記給電線ホルダに装着された前記押込部を前記本体部に取り付ける取付工程をさらに含む。
【0149】
上記方法によれば、押込部から離れた位置で押込部を移動させることができる。これにより、高所作業を大幅に削減することができる。
【0150】
本発明の態様16に係る取付方法は、上記態様14において、前記給電線の過熱状態を検知する検知線を前記給電線ホルダにおいて前記給電線に接する位置に保持し、かつ前記保持部と連続するように設けられた副保持部に、移動に伴って前記検知線を押し込む副押込部を前記給電線ホルダに装着する後装着工程をさらに含み、前記移動工程において、前記副押込部を前記押込部とともに移動させる。
【0151】
上記方法によれば、本体部を移動させることに伴い、給電線が保持部に押し込まれるのに先行して、副押込部により、検知線が副保持部に押し込まれていく。これにより、作業者が検知線を給電線ホルダに押し込む作業を削減することができる。
【0152】
本発明の態様17に係る取付方法は、上記態様14から16のいずれかの前記移動工程において、前記押込部をロープの引っ張りにより移動させる。
【0153】
上記方法によれば、押込部から離れた位置で押込部を移動させることができる。これにより、高所作業を大幅に削減することができる。
【0154】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。また、本発明は、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0155】
1,1A,1B 本体部
2,7 押込部
6 副押込部
2b,7b,20b 上部(当接部)
7d 係合部
3,8,80 支持部
4 移動転動部(転動部)
5 規制転動部(転動部)
8a,80a 溝
9 変位規制部(維持部)
12a,14a,15b 孔(掛け構造)
14b 切欠き
60 押込支持部
101,102,103 取付工具
301 軌道
305 給電線ホルダ
305a 保持部
305b 副保持部
306 給電線
308 感熱線(検知線)
601 下部(突出部)
601b,602b 導入端部
601c,602c 傾斜部
602 上部(突出部)
603 取付部