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特開2024-50434イソプレノイドの製造方法、空気入りタイヤの製造方法及びゴム製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050434
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】イソプレノイドの製造方法、空気入りタイヤの製造方法及びゴム製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 5/00 20060101AFI20240403BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240403BHJP
   C12N 15/29 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
C12P5/00 ZNA
C12P21/02 C
C12N15/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023139447
(22)【出願日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2022156572
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】山口 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】井之上(宮城) ゆき乃
(72)【発明者】
【氏名】戸澤 譲
(72)【発明者】
【氏名】高橋 征司
(72)【発明者】
【氏名】中山 亨
(72)【発明者】
【氏名】山下 哲
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AB01
4B064AD85
4B064AH01
(57)【要約】
【課題】 生成物への夾雑物の混入を減少させることが可能なイソプレノイドの酵素反応的製造方法を提供する。
【解決手段】 イソプレノイドを内包する脂質一重膜に結合させたプレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質を用いたイソプレノイドの製造方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレノイドを内包する脂質一重膜に結合させたプレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質を用いたイソプレノイドの製造方法。
【請求項2】
前記脂質一重膜が人工合成された脂質一重膜である請求項1記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項3】
前記プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質が、炭素数60以上の生成物を合成することができるプレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質である請求項1又は2記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項4】
前記プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質が、
以下のアミノ酸配列(A):
DGNXRXA (A) (アミノ酸配列(A)中、X及びXは同一又は異なって任意のアミノ酸残基を表す)
を有するシス型プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質、
又は
以下のアミノ酸配列(B-1)若しくは(B-2):
DDXD (B-1) (アミノ酸配列(B-1)中、X1、は任意のアミノ酸残基を表す)
DDXD (B-2)(アミノ酸配列(B-2)中、X1、、X及びXは同一又は異なって任意のアミノ酸残基を表す)
を有するトランス型プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質である請求項1又は2記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項5】
前記プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質が、ポリイソプレノイド産生植物由来である請求項1又は2記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項6】
前記ポリイソプレノイド産生植物が、Hevea属、Taraxacum属、Parthenium属、又はManilkara属に属する植物である請求項5記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項7】
前記ポリイソプレノイド産生植物が、Hevea brasiliensis(パラゴムノキ)、Taraxacum kok-saghyz(ロシアンタンポポ)、Parthenium argentatum(グアユール)、又はManilkara zapota(サポジラ)である請求項5記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項8】
前記脂質一重膜に内包されるイソプレノイドがスクアレン及びカロテノイドからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項9】
前記脂質一重膜に内包されるイソプレノイドがスクアレンである請求項1又は2記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項10】
前記脂質一重膜に内包されるイソプレノイドがスクアレン及びカロテノイドである請求項1又は2記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項11】
前記プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質を、生体外で、前記脂質一重膜に結合させる結合工程を含む請求項1又は2記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項12】
前記結合工程が、前記プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む無細胞蛋白合成溶液と、前記脂質一重膜とを共存させて蛋白質合成を行い、前記脂質一重膜に、プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質を結合させる工程である請求項10記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項13】
請求項1又は2に記載のイソプレノイドの製造方法によりイソプレノイドを製造する工程、得られたイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程、及び前記生タイヤを加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法。
【請求項14】
請求項1又は2に記載のイソプレノイドの製造方法によりイソプレノイドを製造する工程、得られたイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生ゴム製品を成形する生ゴム製品成形工程、及び前記生ゴム製品を加硫する加硫工程を含むゴム製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソプレノイドの製造方法、空気入りタイヤの製造方法及びゴム製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、工業用ゴム製品に用いられている天然ゴム(ポリイソプレノイドの1種)は、トウダイグサ科のパラゴムノキ(Hevea brasiliensis)やクワ科植物のインドゴムノキ(Ficus elastica)などのゴム産生植物を栽培することで得られるが、このような天然ゴムは、イソプレン単位がシス型に結合したポリイソプレノイド(シス型の天然ゴム)である。他方、天然には、イソプレン単位がトランス型に結合したポリイソプレノイドであるトランス型ポリイソプレノイドも存在する。
【0003】
これらイソプレノイドを試験管内で合成する試みが行われている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-099100号公報
【特許文献2】特開2021-013365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、以下の知見が明らかとなった。
従来の膜粒子を利用したポリイソプレノイド合成方法で利用される膜としては、ゴム産生植物から採取したゴム粒子や藻や植物から採取された油滴といった生物から採取した天然由来の膜粒子が利用されていた。
ゴム粒子や油滴は、天然物由来であるため、もともと膜上に酵素が存在する。それにより、膜粒子上に反応させたい酵素を結合させた後に酵素反応を行った際に、もともと膜上に存在する酵素が別反応を起こし、望む生成物以外の副反応物が生成してしまう可能性が高い。
本発明は、前記課題を解決し、生成物への夾雑物の混入を減少させることが可能なイソプレノイドの酵素反応的製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の知見が明らかとなった。
【0007】
本発明者らは、ゴム粒子や油滴等の天然物由来の膜粒子に代えて、人工膜粒子を使用することを考えた。酵素反応に利用される人工膜粒子としては、リポソームが一般的である。しかしながら、リポソームは一般的に脂質二重膜構造で、水溶液を内包していることが多い。また、ナノディスクといったリポソームよりも小さく、内包物を含まない人工膜も存在する。更に油滴のような油(トリアシルグリセロール(TAG))を含む人工一重膜の作製方法やそれを用いた酵素アッセイなどの報告例がある。
【0008】
広く利用されているリポソームは水溶液を内包しているため、リポソームの中は親水性であり疎水性の化合物を蓄積する場としては最適ではない。また、疎水性化合物であるトリアシルグリセロールを含む人工一重膜が存在するがイソプレノイドを蓄積する場として最適かどうかが不明である。このように、公知の人工膜粒子は、疎水性の化合物であるイソプレノイドの合成を行う上で、反応場として最適であるのか不明な状況である。
【0009】
特開2022-73233号公報には、人工膜粒子として、ダイズ由来リン脂質を使用した脂質二重膜が使用されているが、脂質二重膜内に含まれる化合物については何ら言及がない。
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、人工膜粒子として、脂質一重膜が好適なこと、脂質一重膜に内包する物質は、イソプレノイドが好ましいことを見出して、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、イソプレノイドを内包する脂質一重膜に結合させたプレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質を用いたイソプレノイドの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、イソプレノイドを内包する脂質一重膜に結合させたプレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質を用いたイソプレノイドの製造方法であるので、生成物への夾雑物の混入を減少させることが可能な、イソプレノイドを酵素反応的に生体外で製造する方法を提供することが可能となる。
【0013】
本発明の空気入りタイヤの製造方法は、前記イソプレノイドの製造方法によりイソプレノイドを製造する工程、得られたイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程、及び前記生タイヤを加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法であるので、夾雑物量が減少したイソプレノイドから空気入りタイヤを製造するため、イソプレノイドを用いた空気入りタイヤを生産性よく製造することができる。
【0014】
本発明のゴム製品の製造方法は、前記イソプレノイドの製造方法によりイソプレノイドを製造する工程、得られたイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生ゴム製品を成形する生ゴム製品成形工程、及び前記生ゴム製品を加硫する加硫工程を含むゴム製品の製造方法であるので、夾雑物量が減少したイソプレノイドからゴム製品を製造するため、イソプレノイドを用いたゴム製品を生産性よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ゴム粒子、油滴の構造を模式的に示す図である。
図2】脂質一重膜の構造を模式的に示す図である。
図3】ポリイソプレノイドの生合成経路の一部を示す模式図である。
図4】種々の生物由来のCPTファミリー蛋白質のマルチプルシーケンスアライメントを行った様子を示す概略図である。
図5】種々の生物由来のtPTファミリー蛋白質のマルチプルシーケンスアライメントを行った様子を示す概略図である。
図6】SDS-PAGEの結果の一例を示す図である。
図7】SDS-PAGEの結果の一例を示す図である。
図8】活性測定結果の一例を示す図である。
図9】GPCの結果の一例を示す図である。
図10】GPCの結果の一例を示す図である。
図11】活性測定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のイソプレノイドの製造方法は、イソプレノイドを内包する脂質一重膜に結合させたプレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質を用いる。具体的には、本発明のイソプレノイドの製造方法は、イソプレノイドを内包する脂質一重膜に結合させたプレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質を用いてイソプレノイドを製造(酵素反応的に製造)するイソプレノイド製造工程を含む。
なお、本発明の製造方法は、前記イソプレノイド製造工程を含む限りその他の工程を含んでいてもよく、また、各工程は1回行われてもよいし、複数回繰り返し行われてもよい。
本発明において、前記効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推測される。
【0017】
(膜粒子の種類について)
前記の通り、従来の膜粒子を利用したポリイソプレノイド合成方法において利用される膜粒子であるゴム粒子や油滴は、天然物由来であるため、もともと膜上に酵素(例えば、図1で示す膜タンパク質)が存在するため、膜粒子上に反応させたい酵素を結合させた後に酵素反応を行った際に、もともと膜上に存在する酵素が別反応を起こし、望む生成物以外の副反応物が生成してしまう可能性が高い。
一方、本発明では、反応場であり、その内部に生成物を蓄積する人工膜粒子として、脂質一重膜(人工合成された脂質一重膜)を使用する。脂質一重膜(人工合成された脂質一重膜)上には反応に利用したい蛋白質以外の蛋白質が存在しない(例えば、図2)ため、天然物由来の膜粒子を用いた場合に懸念される、反応に利用したい蛋白質以外の蛋白質によって別反応が進行し、望む生成物以外の副反応物が生成してしまうことを抑制でき、生成物への夾雑物の混入を減少させることが可能となる。
【0018】
以下において、より詳細に説明する。脂質一重膜(人工合成された脂質一重膜)上には反応に利用したい蛋白質以外の蛋白質が存在しないため、以下(1)~(3)の効果が得られ、夾雑物を減少させることが可能となる。
(1)生成物への夾雑物の混入量の減少
(2)意図しない副反応の減少
(3)(1)による生成物の物性評価・解析の簡易化
【0019】
(1)については、天然物由来の膜粒子を利用する以上、膜には多くの不要な蛋白質が付着している。それにより、反応後の生成物はこれらの不要な蛋白質が混合している状態になる。蛋白質の中にはアレルギー反応を引き起こす原因(アレルゲン)になるものが存在しており、こういった不要な蛋白質の混入は生成物の安全性に良くない影響を及ぼすこともある。例えば、ゴム粒子であればゴムアレルギーの原因とされるREFやSRPPといった蛋白質が生成物中に混入することになる。人工膜を使用することで、生成物中のアレルゲン量を減少させる(無くす)ことができる。
【0020】
(2)については、例えばトランス型天然ゴムを合成しようとトランスプレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質を膜上に結合させて反応を行う際に、膜粒子として、パラゴムノキ由来のゴム粒子を使用した場合、パラゴムノキ由来のゴム粒子上にはシス型天然ゴムを合成するシスプレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質が存在するため、モノマーであるイソペンテニル二リン酸(IPP)がトランス型天然ゴムの合成以外にもシス型天然ゴムの合成にも消費されてしまう。一方で、人工膜上であれば他酵素が存在しないためトランス型天然ゴム合成以外の反応が起こらなくなる。
【0021】
(3)については、生成物の分析を行いたい場合に、夾雑物が分析の障害になることがある。夾雑物の量を減らすことでより正確な分析が可能となる。
【0022】
また、特開2022-73233号公報に記載のような人工合成された脂質二重膜に比べて、本発明のように、人工合成された脂質一重膜の方が、膜の内側に脂質の疎水性尾部が向くような構造をとり、膜内に疎水性の溶媒・化合物を内包できるという理由から、より疎水性の高い高分子の物質を安定して蓄積できるという点で優れている。
【0023】
(膜粒子に内包される物質について)
前述の通り、酵素反応に利用される人工膜粒子としては、リポソームが一般的である。しかしながら、リポソームは一般的に脂質二重膜構造で、水溶液を内包していることが多い。そのため、リポソームは、疎水性の化合物を蓄積する場としては最適ではない。
【0024】
また、公知の人工膜粒子は、疎水性化合物であるトリアシルグリセロール(TAG)を内包する。しかしながら、本発明者らの検討の結果、疎水性の化合物であるイソプレノイドの合成を行う上で、膜粒子に内包される物質としては、トリアシルグリセロールよりもイソプレノイドが優れていることが判明した。この理由は、明らかではないが、本発明では、膜粒子に結合する蛋白質としてプレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質を使用していることから、酵素反応による生成物はイソプレン骨格を有するイソプレノイドである。よって、膜粒子に内包されるイソプレノイドと生成物の親和性が高く、従来の内包物であったトリアシルグリセロールよりも生成物を安定して溶解させることができると考えられ、生成物と蓄積場(膜粒子の内部)の親和性が向上するためと推測される。また、天然に存在するゴム粒子では、イソプレン骨格を有するゴムを内包しており、ゴム粒子と類似している条件を再現するためには、従来のトリアシルグリセロールよりもイソプレノイドの方が適しているものと考えられる。
【0025】
(イソプレノイドの製造方法)
本発明は、イソプレノイドを内包する脂質一重膜に結合させたプレニルトランスフェラーゼ(PT)ファミリー蛋白質を用いたイソプレノイドの製造方法に関する。
前記イソプレノイドの製造方法は、イソプレノイドを内包する脂質一重膜に結合させたプレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質を用いる限り特に限定されないが、イソプレノイドを内包する脂質一重膜に結合させたプレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質は、前記プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質を、生体外で(例えば、反応槽(試験管、プラントなど)内で)、前記脂質一重膜に結合させる結合工程により得られた蛋白質であることが好ましく、前記イソプレノイドの製造方法は、前記プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質を、生体外で、前記脂質一重膜に結合させる結合工程を含むことがより好ましい。
なお、前記脂質膜に結合するPTファミリー蛋白質の量は特に限定されない。
【0026】
本明細書において、脂質膜にPTファミリー蛋白質が結合するとは、PTファミリー蛋白質の全部又は一部が脂質膜中に取り込まれる又は脂質膜の膜構造に挿入される、といったことを意味するが、これに限らず、脂質膜表面又は内部に局在する等の場合をも意味する。また更には、脂質膜に結合している他の蛋白質とPTファミリー蛋白質が複合体を形成し、複合体として脂質膜上に存在する場合も脂質膜に結合しているとの概念範囲に含まれる。
【0027】
((イソプレノイドを内包する脂質一重膜))
イソプレノイドを内包する脂質一重膜(人工合成された脂質一重膜)としてはイソプレノイドを内包する脂質一重膜であれば特に限定されない。イソプレノイドを内包する脂質一重膜は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
脂質一重膜(PMP)を構成する脂質としては、脂質一重膜を構成できる脂質であれば特に限定されず、例えば、リン脂質、糖脂質、中性脂質等が挙げられる。天然由来の脂質であっても、合成脂質であってもよい。また、水素添加されていてもよい。また、脂質は、単純脂質(例えば、グリセロルモノオレエート)であっても誘導脂質であってもよい。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、リン脂質、糖脂質が好ましく、リン脂質がより好ましい。リン脂質、糖脂質が好ましく、リン脂質がより好ましい理由は、ゴム粒子を構成する脂質は、リン脂質が主成分(80%以上)、糖脂質が15%以上の組成のためと推測される。
【0029】
リン脂質としては、例えば、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質が挙げられる。なかでも、グリセロリン脂質が好ましく、ホスファチジルコリン(レシチン)がより好ましく、大豆由来ホスファチジルコリン(アゾレクチン)やゴム粒子由来のホスファチジルコリンが更に好ましい。
【0030】
グリセロリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ジフィタノイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン等が挙げられる。なかでも、ホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルコリンが好ましく、ホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトールがより好ましく、ホスファチジルコリン(レシチン)が更に好ましい。
【0031】
ホスファチジルコリンとしては、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルフォスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン等が挙げられる。
ホスファチジルエタノールアミンとしては、ジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン等が挙げられる。
ホスファチジルセリンとしては、ジラウロイルホスファチジルセリン、ジミリストイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、ジステアロイルホスファチジルセリン等が挙げられる。
ホスファチジルグリセロールとしては、ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール等が挙げられる。
ホスファチジルイノシトールとしては、ジラウロイルホスファチジルイノシトール、ジミリストイルホスファチジルイノシトール、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール、ジステアロイルホスファチジルイノシトール等が挙げられる。
【0032】
スフィンゴリン脂質としては、例えば、スフィンゴミエリン等が挙げられる。
【0033】
糖脂質としては、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質等が挙げられる。
【0034】
グリセロ糖脂質としては、例えば、スルホキシリボシルグリセロール、ジグリコシルジグリセロール、ジガラクトシルジグリセロール、ガラクトシルジグリセロール、ジアシルグリセロール及びグリコシルジグリセロール等が挙げられる。また、スフィンゴ糖脂質としては、例えば、ガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド、及びガングリオシド等が挙げられる。
【0035】
脂質一重膜に内包されるイソプレノイドとしては、例えば、スクアレン;フィトエン、リコペン、カロテン、ゼアキサンチン、ルテイン、カンタキサンチン、フコキキサンチン、アスタキサンチン、アンテラキサンチン、ビオラキサンチン等のカロテノイド;レチノール;ステロール脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、スクアレン、カロテノイドが好ましく、スクアレンがより好ましい。カロテノイドとしては、フィトエン、リコペン、カロテンが好ましく、カロテンがより好ましい。カロテンとしては、αカロテン、βカロテン、γカロテン、δカロテンのいずれでもよいが、βカロテンが好ましい。脂質一重膜に内包されるイソプレノイドとしては、前記の通り、スクアレンがより好ましいが、スクアレン及びカロテノイドが更に好ましい。スクアレンと共にカロテノイドを脂質一重膜に内包することにより、生成物鎖長をより長くすることができ、また酵素の活性もより向上できる傾向がある。
脂質一重膜に内包されるイソプレノイドの炭素数は、好ましくは25以上、より好ましくは30以上であり、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、更に好ましくは40以下である。
【0036】
イソプレノイドを内包する脂質一重膜の製造方法は、イソプレノイドを内包する脂質一重膜を製造できる限り特に限定されないが、例えば、Construction of Nanodroplet/Adiposome and Artificial Lipid Droplets(ACS Nano 2016,10,3312-3322)、Validating an artificial organelle: Studies of lipid droplet-specific proteins on adiposome platform(iScience,24,August 20,2021)に記載の方法など公知の方法により製造すればよい。当業者であれば、使用する脂質、イソプレノイドを決定すれば、本願実施例における例及び公知の方法を参考に、イソプレノイドを内包する脂質一重膜を容易に製造できる。
【0037】
以下において、イソプレノイドを内包する脂質一重膜の製造方法の一例について説明する。
脂質をクロロホルムに溶解した後、溶媒を窒素流下で揮発させることで乾燥した脂質の薄膜を形成する。この薄膜形成は、エバポレーターを用いた減圧乾固によって行ってもよい。乾燥した脂質に、適当な緩衝液と内封されるイソプレノイドを添加する。そして、この混合液を超音波等により撹拌した後、遠心分離を行うことにより、最上層から脂質一重膜を回収できる。また、遠心分離は、多段階に行ってもよい。また、必要に応じて脂質一重膜を洗浄してもよい。
【0038】
遠心分離処理では、例えば、1,000~20,000×g、1分~10分の処理を行えばよい。また、遠心分離処理は、多段階の処理としてもよく、例えば、10,000~20,000×g、1分~10分の処理を行った後に、1,000~3,000×g、1分~10分の処理を行ってもよい。
また、遠心分離処理の処理温度としては、0~10℃が好ましく、2~8℃がより好ましく、4℃が特に好ましい。
【0039】
イソプレノイドの添加量が少ない場合は、脂質一重膜ではなく、脂質二重膜が形成される傾向があるため、脂質二重膜が形成された場合は、イソプレノイドの添加量を増量すればよい。反対に、遠心分離を行った際にイソプレノイドが上澄みとして現れる場合は、イソプレノイドの添加量が過剰であるため、それを減量すればよい。
【0040】
((プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質))
次に、プレニルトランスフェラーゼ(PT)ファミリー蛋白質について説明する。
PTファミリー蛋白質としては、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質、トランス型プレニルトランスフェラーゼ(TPT)ファミリー蛋白質が挙げられる。これらの蛋白質は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
PTファミリー蛋白質は、ゴムを産生するゴム産生植物等のポリイソプレノイド産生植物の他、ポリイソプレノイド産生植物以外の植物、動物、微生物等も有しており、これら由来のPTファミリー蛋白質は当然、自然状態ではゴム合成に関与していない。にもかかわらず、本発明においては、PTファミリー蛋白質であれば、その由来、種類等に関わらず、前記脂質膜に結合させることで、前記脂質膜中にイソプレノイドを合成することができる。すなわち、PTファミリー蛋白質がゴムを産生する植物由来であるか、それ以外の生物由来であるか、又は、自然状態でゴム合成に関与しているかなどに関わらず、本発明においては、PTファミリー蛋白質でありさえすれば、前記脂質膜中にイソプレノイドを合成することができる。このことは、本発明者らが既にPCT/JP2016/069172において示唆しているメカニズム(シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質の由来や種類よりも、どのような宿主に導入したのか、すなわち、CPTファミリー蛋白質をどのような環境下に発現させたのかが、ゴム合成活性において重要である、ことを示すメカニズム)から、強く示唆される。
【0042】
プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質は、その由来は特に制限されず、微生物由来であっても、動物由来であっても、植物由来であってもよいが、植物由来であることが好ましく、ポリイソプレノイド産生植物由来であることがより好ましい。ポリイソプレノイド産生植物由来のプレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質(好ましくはゴム合成酵素)を用いることにより、高分子量のゴム(ポリイソプレノイド)を好適に製造できる。
プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質は、Hevea属、Taraxacum属、Parthenium属、又はManilkara属に属する植物由来であることが更に好ましく、Hevea brasiliensis(パラゴムノキ)、Taraxacum kok-saghyz(ロシアンタンポポ)、Parthenium argentatum(グアユール)、又はManilkara zapota(サポジラ)由来であることが特に好ましく、Hevea brasiliensis(パラゴムノキ)、Taraxacum kok-saghyz(ロシアンタンポポ)、又はManilkara zapota(サポジラ)由来であることが最も好ましく、Hevea brasiliensis(パラゴムノキ)、又はManilkara zapota(サポジラ)由来であることがより最も好ましい。
【0043】
前記ポリイソプレノイド産生植物としては、特に限定されず、例えば、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)等のHevea属;ノゲシ(Sonchus oleraceus)、オニノゲシ(Sonchus asper)、ハチジョウナ(Sonchus brachyotus)等のSonchus属;セイタカアワダチソウ(Solidago altissima)、アキノキリンソウ(Solidago virgaurea subsp. asiatica)、ミヤマアキノキリンソウ(Solidago virgaurea subsp. leipcarpa)、キリガミネアキノキリンソウ(Solidago virgaurea subsp. leipcarpa f. paludosa)、オオアキノキリンソウ(Solidago virgaurea subsp. gigantea)、オオアワダチソウ(Solidago gigantea Ait. var. leiophylla Fernald)等のSolidago属;ヒマワリ(Helianthus annuus)、シロタエヒマワリ(Helianthus argophyllus)、ヘリアンサス・アトロルベンス(Helianthus atrorubens)、ヒメヒマワリ(Helianthus debilis)、コヒマワリ(Helianthus decapetalus)、ジャイアントサンフラワー(Helianthus giganteus)等のHelianthus属;タンポポ(Taraxacum)、エゾタンポポ(Taraxacum venustum H.Koidz)、シナノタンポポ(Taraxacum hondoense Nakai)、カントウタンポポ(Taraxacum platycarpum Dahlst)、カンサイタンポポ(Taraxacum japonicum)、セイヨウタンポポ(Taraxacum officinale Weber)、ロシアンタンポポ(Taraxacum koksaghyz)、Taraxacum brevicorniculatum等のTaraxacum属;イチジク(Ficus carica)、インドゴムノキ(Ficus elastica)、オオイタビ(Ficus pumila L.)、イヌビワ(Ficus erecta Thumb.)、ホソバムクイヌビワ(Ficus ampelas Burm.f.)、コウトウイヌビワ(Ficus benguetensis Merr.)、ムクイヌビワ(Ficus irisana Elm.)、ガジュマル(Ficus microcarpa L.f.)、オオバイヌビワ(Ficus septica Burm.f.)、ベンガルボダイジュ(Ficus benghalensis)等のFicus属;グアユール(Parthenium argentatum)、アメリカブクリョウサイ(Parthenium hysterophorus)、ブタクサ(Parthenium hysterophorus)等のParthenium属;サポジラ(Manilkara zapota)等のManilkara属;トチュウ(Eucommia ulmoides)等のEucommia属;レタス(Lactuca sativa)、ベンガルボダイジュ、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)等が挙げられる。
【0044】
なお、本明細書において、プレニルトランスフェラーゼ(PT)ファミリー蛋白質は、イソプレノイド化合物の鎖長を延長する反応を触媒する酵素である。
また、本明細書において、トランス型プレニルトランスフェラーゼ(TPT)ファミリー蛋白質は、イソプレノイド化合物の鎖長をトランス型に延長する反応を触媒する酵素である。
また、本明細書において、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)ファミリー蛋白質は、イソプレノイド化合物の鎖長をシス型に延長する反応を触媒する酵素である。
具体的には、例えば、植物では、図3に示すようなポリイソプレノイド生合成経路によってポリイソプレノイドが生合成されるが、当該経路のうち、CPTファミリー蛋白質は、図3中の点線の枠で囲まれた部分の反応を触媒する酵素と考えられている。CPTファミリー蛋白質の特徴としては、Cis IPPS domain(NCBI Accession No.cd00475)に含まれるアミノ酸配列を有することである。
一方、tPTファミリー蛋白質の特徴としては、trans IPPS HT domain(NCBI Accession No.cd00685)に含まれるアミノ酸配列を有することである。
【0045】
本明細書において、イソプレノイド化合物とは、イソプレン単位(C)を有する化合物を意味する。また、シス型イソプレノイドは、イソプレン単位がシス型に結合したイソプレノイド化合物を有する化合物であり、例えば、ネリル二リン酸、ウンデカプレニル二リン酸、天然ゴム(シス型ポリイソプレノイド)などが挙げられる。また、トランス型イソプレノイドは、イソプレン単位がトランス型に結合したイソプレノイド化合物を有する化合物であり(特に、全結合中のトランス型の結合の割合が、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上が更に好ましい。)、例えば、ファルネシル二リン酸、ゲラニルゲラニル二リン酸、ヘキサプレニル二リン酸、ヘプタプレニル二リン酸、トランス型ポリイソプレノイド(トランスゴム)等が挙げられる。
【0046】
ここで、種々の生物由来のCPTファミリー蛋白質のマルチプルシーケンスアライメントを行った様子を示す概略図を図4に示すが、Shota Endo et.al.,Biochimica et Biophysica Acta,No.1625(2003)p.291-295や、Masahiro Fujihashi et.al.,PNAS,Vol.98,No.8(2001)p.4337-4342等の文献から、図4中の囲みA(配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1においては、41位から49位に相当)、囲みB(配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1においては、81位から97位に相当)が種々の生物由来のCPTファミリー蛋白質で保存性の高い保存領域の一部であり、保存領域とは、同様の配列(構造)を有する部位を意味し、蛋白質において同様の機能を有する部位であると推察される領域である。そして特に、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における41位に相当する位置はアスパラギン酸残基が保存され(図4中の(1))、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における42位に相当する位置はグリシン残基が保存され(図4中の(2))、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における45位に相当する位置はアルギニン残基が保存され(図4中の(3))、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における89位に相当する位置はアスパラギン残基が保存されており(図4中の(4))、これらのアミノ酸が、CPTファミリー蛋白質の酵素反応に必須のアミノ酸であり、当該位置にこれらのアミノ酸を有する蛋白質であればCPTファミリー蛋白質としての機能を有すると考えられる。
なお、前記マルチプルシーケンスアライメントは、WO2017/002818に記載の方法により実施できる。
【0047】
すなわち、前記CPTファミリー蛋白質は、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における41位、及びこれに相当する位置にアスパラギン酸残基を、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における42位、及びこれに相当する位置にグリシン残基を、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における45位、及びこれに相当する位置にアルギニン残基を、並びに、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における89位、及びこれに相当する位置にアスパラギン残基を、有するものであることが好ましい。上述したように、前記CPTファミリー蛋白質がこのような配列を有していれば、CPTファミリー蛋白質としての機能を有すると考えられ、イソプレノイド化合物の鎖長をシス型に延長する反応を触媒する酵素として機能することができる。
【0048】
前記プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質が、以下のアミノ酸配列(A)を有するシス型プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質であることが好ましく、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1における41位から49位、及びこれに相当する位置のアミノ酸配列が、以下のアミノ酸配列(A)を有するシス型プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質であることがより好ましい。
DGNXRXA (A) (アミノ酸配列(A)中、X及びXは同一又は異なって任意のアミノ酸残基を表す)
【0049】
前記アミノ酸配列(A)中、XがH、GもしくはRを表し、また、XがW、F、もしくはYを表すことが好ましい。
【0050】
具体的には、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1において41位から49位に相当する保存領域は、例えば、WO2017/002818に記載の配列番号45で示される大腸菌由来のウンデカプレニルリン酸合成酵素(UPPS)では25位から33位に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号46で示されるマイクロコッカス属菌由来のウンデカプレニル二リン酸合成酵素(UPS)では29位から37位に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号47で示される酵母由来のSRT1では75位から83位に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号44で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT5では79位から87位に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号22で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT8では43位から51位に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号48で示されるタバコ由来のDDPSでは42位から50位に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号32で示されるパラゴムノキ由来のHRT2では41位から49位に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号36で示されるパラゴムノキ由来のCPT3では41位から49位に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号37で示されるパラゴムノキ由来のCPT4では42位から50位に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号41で示されるパラゴムノキ由来のCPT5では41位から49位に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号14で示されるレタス由来のLsCPT3では58位から66位に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号43で示されるTaraxacum brevicorniculatum由来のTbCPT1では58位から66位に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号49で示されるマウス由来のDDPSでは34位から42位に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号50で示されるヒト由来のHDSでは34位から42位に相当する。
【0051】
また、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1において41位に相当するアスパラギン酸残基は、例えば、WO2017/002818に記載の配列番号45で示される大腸菌由来のウンデカプレニルリン酸合成酵素(UPPS)では25位のアスパラギン酸残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号46で示されるマイクロコッカス属菌由来のウンデカプレニル二リン酸合成酵素(UPS)では29位のアスパラギン酸残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号47で示される酵母由来のSRT1では75位のアスパラギン酸残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号44で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT5では79位のアスパラギン酸残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号22で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT8では43位のアスパラギン酸残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号48で示されるタバコ由来のDDPSでは42位のアスパラギン酸残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号32で示されるパラゴムノキ由来のHRT2では41位のアスパラギン酸残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号36で示されるパラゴムノキ由来のCPT3では41位のアスパラギン酸残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号37で示されるパラゴムノキ由来のCPT4では42位のアスパラギン酸残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号41で示されるパラゴムノキ由来のCPT5では41位のアスパラギン酸残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号14で示されるレタス由来のLsCPT3では58位のアスパラギン酸残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号43で示されるTaraxacum brevicorniculatum由来のTbCPT1では58位のアスパラギン酸残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号49で示されるマウス由来のDDPSでは34位のアスパラギン酸残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号50で示されるヒト由来のHDSでは34位のアスパラギン酸残基に相当する。
【0052】
また、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1において42位に相当するグリシン残基は、例えば、WO2017/002818に記載の配列番号45で示される大腸菌由来のウンデカプレニルリン酸合成酵素(UPPS)では26位のグリシン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号46で示されるマイクロコッカス属菌由来のウンデカプレニル二リン酸合成酵素(UPS)では30位のグリシン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号47で示される酵母由来のSRT1では76位のグリシン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号44で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT5では80位のグリシン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号22で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT8では44位のグリシン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号48で示されるタバコ由来のDDPSでは43位のグリシン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号32で示されるパラゴムノキ由来のHRT2では42位のグリシン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号36で示されるパラゴムノキ由来のCPT3では42位のグリシン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号37で示されるパラゴムノキ由来のCPT4では43位のグリシン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号41で示されるパラゴムノキ由来のCPT5では42位のグリシン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号14で示されるレタス由来のLsCPT3では59位のグリシン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号43で示されるTaraxacum brevicorniculatum由来のTbCPT1では59位のグリシン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号49で示されるマウス由来のDDPSでは35位のグリシン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号50で示されるヒト由来のHDSでは35位のグリシン残基に相当する。
【0053】
また、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1において45位に相当するアルギニン残基は、例えば、WO2017/002818に記載の配列番号45で示される大腸菌由来のウンデカプレニルリン酸合成酵素(UPPS)では29位のアルギニン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号46で示されるマイクロコッカス属菌由来のウンデカプレニル二リン酸合成酵素(UPS)では33位のアルギニン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号47で示される酵母由来のSRT1では79位のアルギニン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号44で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT5では83位のアルギニン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号22で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT8では47位のアルギニン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号48で示されるタバコ由来のDDPSでは46位のアルギニン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号32で示されるパラゴムノキ由来のHRT2では45位のアルギニン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号36で示されるパラゴムノキ由来のCPT3では45位のアルギニン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号37で示されるパラゴムノキ由来のCPT4では46位のアルギニン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号41で示されるパラゴムノキ由来のCPT5では45位のアルギニン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号14で示されるレタス由来のLsCPT3では62位のアルギニン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号43で示されるTaraxacum brevicorniculatum由来のTbCPT1では62位のアルギニン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号49で示されるマウス由来のDDPSでは38位のアルギニン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号50で示されるヒト由来のHDSでは38位のアルギニン残基に相当する。
【0054】
また、配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHRT1において89位に相当するアスパラギン残基は、例えば、WO2017/002818に記載の配列番号45で示される大腸菌由来のウンデカプレニルリン酸合成酵素(UPPS)では73位のアスパラギン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号46で示されるマイクロコッカス属菌由来のウンデカプレニル二リン酸合成酵素(UPS)では77位のアスパラギン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号47で示される酵母由来のSRT1では123位のアスパラギン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号44で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT5では127位のアスパラギン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号22で示されるシロイヌナズナ由来のAtCPT8では92位のアスパラギン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号48で示されるタバコ由来のDDPSでは90位のアスパラギン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号32で示されるパラゴムノキ由来のHRT2では89位のアスパラギン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号36で示されるパラゴムノキ由来のCPT3では89位のアスパラギン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号37で示されるパラゴムノキ由来のCPT4では90位のアスパラギン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号41で示されるパラゴムノキ由来のCPT5では89位のアスパラギン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号14で示されるレタス由来のLsCPT3では106位のアスパラギン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号43で示されるTaraxacum brevicorniculatum由来のTbCPT1では106位のアスパラギン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号49で示されるマウス由来のDDPSでは82位のアスパラギン残基に相当し、WO2017/002818に記載の配列番号50で示されるヒト由来のHDSでは82位のアスパラギン残基に相当する。
【0055】
前記CPTファミリー蛋白質としては、パラゴムノキ由来のCPT(HRT1、HRT2、CPT3~5)、シロイヌナズナ由来のAtCPT1~9、レタス由来のCPT1~3、Taraxacum brevicorniculatum由来のCPT1~3、大腸菌由来のウンデカプレニルリン酸合成酵素(UPPS)、マイクロコッカス属菌由来のウンデカプレニル二リン酸合成酵素(UPS)、酵母由来のSRT1、タバコ由来のDDPS、マウス由来のDDPS、ヒト由来のHDSなどが挙げられる。
【0056】
前記CPTファミリー蛋白質の具体例としては、下記[1]が挙げられる。
[1]配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質
【0057】
また、蛋白質は、元のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含む場合であっても本来持つ機能を有する場合があることが知られている。従って、前記CPTファミリー蛋白質の具体例としては、下記[2]も挙げられる。
[2]配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含む配列からなり、かつイソプレノイド化合物の鎖長をシス型に延長する反応を触媒する酵素活性を有する蛋白質
【0058】
なお、前記CPTファミリー蛋白質としての機能を維持するためには、配列番号2で表されるアミノ酸配列において、好ましくは1若しくは複数個のアミノ酸、より好ましくは1~58個のアミノ酸、更に好ましくは1~44個のアミノ酸、更により好ましくは1~29個のアミノ酸、特に好ましくは1~15個のアミノ酸、最も好ましくは1~6個のアミノ酸、より最も好ましくは1~3個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含むアミノ酸配列であることが好ましい。
【0059】
本明細書において、アミノ酸置換の例としては、保存的置換が好ましく、具体的には以下のカッコ内のグループ内での置換が挙げられる。例えば、(グリシン、アラニン)(バリン、イソロイシン、ロイシン)(アスパラギン酸、グルタミン酸)(アスパラギン、グルタミン)(セリン、トレオニン)(リジン、アルギニン)(フェニルアラニン、チロシン)である。
【0060】
また、蛋白質は、元のアミノ酸配列と配列同一性の高いアミノ酸配列を有する蛋白質も同様の機能を有する場合があることが知られている。従って、前記CPTファミリー蛋白質の具体例としては、下記[3]も挙げられる。
[3]配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつイソプレノイド化合物の鎖長をシス型に延長する反応を触媒する酵素活性を有する蛋白質
【0061】
なお、前記CPTファミリー蛋白質としての機能を維持するためには、配列番号2で表されるアミノ酸配列との配列同一性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。
【0062】
本明細書において、アミノ酸配列や塩基配列の配列同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro.Natl.Acad.Sci.USA,90,5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol.,183,63(1990)]を用いて決定することができる。
【0063】
前記酵素活性を有する蛋白質であることを確認する方法としては、例えば、従来公知の方法を用いることができ、例えば、大腸菌などを用いて、目的の蛋白質をコードする遺伝子を導入した形質転換体により、目的蛋白質を発現させ、目的蛋白質の機能の有無をそれぞれの活性測定法により、活性測定等を行う方法が挙げられる。
【0064】
前記CPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子は、CPTファミリー蛋白質をコードし、発現させてCPTファミリー蛋白質を産出できるものであれば特に制限されないが、該遺伝子としては、具体的には、下記[4]又は[5]が挙げられる。
[4]配列番号1で表される塩基配列からなるDNA
[5]配列番号1で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつイソプレノイド化合物の鎖長をシス型に延長する反応を触媒する酵素活性を有する蛋白質をコードするDNA
【0065】
本明細書において、「ハイブリダイズする」とは、特定の塩基配列を有するDNAまたは該DNAの一部にDNAがハイブリダイズする工程である。したがって、該特定の塩基配列を有するDNAまたは該DNAの一部の塩基配列は、ノーザンまたはサザンブロット解析のプローブとして有用であるか、またはPCR(Polymerase Chain Reaction)解析のオリゴヌクレオチドプライマーとして使用できる長さのDNAであってもよい。プローブとして用いるDNAとしては、少なくとも100塩基以上、好ましくは200塩基以上、より好ましくは500塩基以上のDNAをあげることができるが、少なくとも10塩基以上、好ましくは15塩基以上のDNAであってもよい。
【0066】
DNAのハイブリダイゼーション実験の方法はよく知られており、例えばモレキュラー・クローニング第2版、第3版(2001年)、Methods for General and Molecular Bacteriology, ASM Press(1994)、Immunology methods manual, Academic press(Molecular)に記載の他、多数の他の標準的な教科書に従ってハイブリダイゼーションの条件を決定し、実験を行うことができる。
【0067】
本明細書において、ストリンジェントな条件とは、例えばDNAを固定化したフィルターとプローブDNAとを50%ホルムアミド、5×SSC(750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、および20μg/lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で42℃で一晩、インキュベートした後、例えば約65℃の0.2×SSC溶液中で該フィルターを洗浄する条件をあげることができるが、より低いストリンジェント条件を用いることもできる。ストリンジェントな条件の変更は、ホルムアミドの濃度調整(ホルムアミドの濃度を下げるほど低ストリンジェントになる)、塩濃度および温度条件の変更により可能である。低ストリンジェント条件としては、例えば6×SSCE(20×SSCEは、3mol/lの塩化ナトリウム、0.2mol/lのリン酸二水素ナトリウム、0.02mol/lのEDTA、pH7.4)、0.5%のSDS、30%のホルムアミド、100μg/lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で、37℃で一晩インキュベートした後、50℃の1×SSC、0.1%SDS溶液を用いて洗浄する条件をあげることができる。また、さらに低いストリンジェントな条件としては、前記した低ストリンジェント条件において、高塩濃度(例えば5×SSC)の溶液を用いてハイブリダイゼーションを行った後、洗浄する条件をあげることができる。
【0068】
前記した様々な条件は、ハイブリダイゼーション実験のバックグラウンドを抑えるために用いるブロッキング試薬を添加、または変更することにより設定することもできる。前記したブロッキング試薬の添加は、条件を適合させるために、ハイブリダイゼーション条件の変更を伴ってもよい。
【0069】
前記したストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとしては、例えばBLASTおよびFASTA等のプログラムを用いて、前記パラメータに基づいて計算したときに、配列番号1で表される塩基配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の配列同一性を有する塩基配列からなるDNAをあげることができる。
【0070】
前記したDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAが、所定の酵素活性を有する蛋白質をコードするDNAであることを確認する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、大腸菌などを用いて、目的の蛋白質をコードする遺伝子を導入した形質転換体により、目的蛋白質を発現させ、目的蛋白質の機能の有無をそれぞれの活性測定法により、活性測定等を行う方法が挙げられる。
【0071】
また、前記蛋白質のアミノ酸配列及び塩基配列を同定する方法は、従来公知の方法を用いることができ、例えば、生育する植物から、Total RNAを抽出し、必要に応じてmRNAを精製し、逆転写反応によりcDNAを合成する。次に目的蛋白質に相当する既知の蛋白質のアミノ酸配列をもとに、縮重プライマーを設計し、RT-PCRを行い、部分的にDNA断片の増幅を行い、部分的に配列を同定する。次いで、RACE法などを行い、全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定する。RACE法(Rapid Amplification of cDNA Ends法)とは、cDNAの塩基配列が部分的に把握されているときに、その既知領域の塩基配列情報を基にPCRを行って、cDNA末端までの未知領域をクローニングする方法で、cDNAライブラリーの作製を経ずに、PCR法によって全長のcDNAをクローニングすることができる方法である。
なお、縮重プライマーは、前記目的蛋白質と共通性の高い配列部位を有する植物由来の配列から作製することが好ましい。
また、前記蛋白質をコードする塩基配列が既知の場合には、その知られている塩基配列から開始コドンを含むプライマー及び終止コドンを含むプライマーを設計し、合成したcDNAを鋳型にしてRT-PCRを行うことで全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定することができる。
【0072】
次に、種々の生物由来のtPTファミリー蛋白質のマルチプルシーケンスアライメントを行った様子を示す概略図を図5に示すが、Andrew H.-J. Wang et al.、Eur. J. Biochem. 269、3339-3354(2002)等の文献から、図5中の囲みA(配列番号4で示されるサポジラ由来のtPT2(MztPT2)においては、260位から266位に相当)、囲みB(配列番号4で示されるサポジラ由来のtPT2(MztPT2)においては、399位から403位に相当)が種々の生物由来のtPTファミリー蛋白質で保存性の高い保存領域の一部であり、保存領域とは、同様の配列(構造)を有する部位を意味し、蛋白質において同様の機能を有する部位であると推察される領域である。そして特に、配列番号4で示されるサポジラ由来のtPT2(MztPT2)においては、260位から266位に相当する位置のアミノ酸配列、及び、配列番号4で示されるサポジラ由来のtPT2(MztPT2)においては、399位から403位に相当する位置のアミノ酸配列が特定のモチーフとして保存されており、当該位置にこれらのモチーフを有する蛋白質であればtPTファミリー蛋白質としての機能を有すると考えられる。
なお、上記マルチプルシーケンスアライメントは、特開2018-099100に記載の方法により実施できる。
【0073】
すなわち、前記プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質が、以下のアミノ酸配列(B-1)若しくは(B-2)を有するトランス型プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質であることが好ましく、配列番号4で示されるサポジラ由来のtPT2(MztPT2)における260位から266位、及びこれに相当する位置のアミノ酸配列が、以下のアミノ酸配列(B-1)若しくは(B-2)を有するトランス型プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質、又は、配列番号4で示されるサポジラ由来のtPT2(MztPT2)における399位から403位、及びこれに相当する位置のアミノ酸配列が、以下のアミノ酸配列(B-1)を有するトランス型プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質であることがより好ましい。
DDX2D (B-1) (アミノ酸配列(B-1)中、X1、2は任意のアミノ酸残基を表す)
DDXD (B-2)(アミノ酸配列(B-2)中、X1、、X及びXは同一又は異なって任意のアミノ酸残基を表す)
上述したように、上記tPTファミリー蛋白質がこのような配列を有していれば、tPTファミリー蛋白質としての機能を有すると考えられ、イソプレノイド化合物の鎖長をトランス型に延長する反応を触媒する酵素として機能することができ、ゴム粒子に結合させることで、ゴム粒子中にトランスゴムを合成することが可能となる。
【0074】
上記アミノ酸配列(B-1)及び(B-2)中、XがM、I、もしくはVを表し、また、XがM、I、もしくはLを表すことであることが好ましい。
【0075】
具体的には、配列番号4で示されるサポジラ由来のtPT2(MztPT2)における260位から266位に相当する保存領域は、例えば、特開2018-099100に記載の配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHbSDSにおいて183位から187位に相当し、特開2018-099100に記載の配列番号3で示される酵母由来のFPPSでは100位から104位に相当し、特開2018-099100に記載の配列番号4で示されるトチュウ由来のEuFPPSでは99位から103位に相当し、特開2018-099100に記載の配列番号5で示されるパラゴムノキ由来のHbFPPSでは93位から97位に相当し、特開2018-099100に記載の配列番号6で示される酵母由来のTPTでは91位から95位に相当し、特開2018-099100に記載の配列番号7で示されるシロイヌナズナ由来のAtSDS1では171位から175位に相当し、特開2018-099100に記載の配列番号8で示されるヒト由来のHsTPTでは141位から145位に相当し、特開2018-099100に記載の配列番号9で示されるマウス由来のMmTPTでは101位から105位に相当する。
【0076】
また、配列番号4で示されるサポジラ由来のtPT2(MztPT2)における399位から403位に相当する保存領域は、例えば、特開2018-099100に記載の配列番号2で示されるパラゴムノキ由来のHbSDSにおいて310位から314位に相当し、特開2018-099100に記載の配列番号3で示される酵母由来のFPPSでは240位から244位に相当し、特開2018-099100に記載の配列番号4で示されるトチュウ由来のEuFPPSでは238位から242位に相当し、特開2018-099100に記載の配列番号5で示されるパラゴムノキ由来のHbFPPSでは232位から236位に相当し、特開2018-099100に記載の配列番号6で示される酵母由来のTPTでは262位から266位に相当し、特開2018-099100に記載の配列番号7で示されるシロイヌナズナ由来のAtSDS1では298位から302位に相当し、特開2018-099100に記載の配列番号8で示されるヒト由来のHsTPTでは268位から272位に相当し、特開2018-099100に記載の配列番号9で示されるマウス由来のMmTPTでは228位から232位に相当する。
【0077】
上記tPTファミリー蛋白質としては、サポジラ由来のtPT2(MztPT2)、サポジラ由来のtPT1(MztPT1)、酵母由来のtPT(FPPS〔Erg20p[Saccharomyces cerevisiae R103]〕、TPT〔Coq1p[Saccharomyces cerevisiae YJM1342]〕)、トチュウ由来のtPT(EuFPPS〔farnesyl pyrophosphate synthetase[Eucommia ulmoides]〕)、パラゴムノキ由来のtPT(HbFPPS〔farnesyl diphosphate synthase[Hevea brasiliensis]〕、HbSDS〔solanesyl diphosphate synthase[Hevea brasiliensis]〕)、シロイヌナズナ由来のtPT(AtSDS1〔solanesyl diphosphate synthase 1[Arabidopsis thaliana]〕)、ヒト由来のtPT(HsTPT〔trans-prenyltransferase[Homo sapiens]〕)、マウス由来のtPT(MmTPT〔trans-prenyltransferase[Mus musculus]〕)などが挙げられる。
【0078】
前記方法において用いるtPTファミリー蛋白質は脂質一重膜との親和性を上げるためN末端側に膜結合領域を持っていることが望ましく、野生型として持っていない場合はtPTファミリー蛋白質のN末端側に人工的に膜結合領域を融合させても良い。融合させる膜結合領域のアミノ酸配列は特に限定されないが、自然界で本来脂質膜に結合している蛋白質が持つ膜結合領域のアミノ酸配列であることが望ましい。
【0079】
上記tPTファミリー蛋白質の具体例としては、下記[6]が挙げられる。
[6]配列番号4で表されるアミノ酸配列(サポジラ由来のtPT2のアミノ酸配列)からなる蛋白質
【0080】
また、蛋白質は、元のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含む場合であっても本来持つ機能を有する場合があることが知られている。従って、前記tPTファミリー蛋白質の具体例としては、下記[7]も挙げられる。
[7]配列番号4で表されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含む配列からなり、かつイソプレノイド化合物の鎖長をトランス型に延長する反応を触媒する酵素活性を有する蛋白質
【0081】
なお、前記tPTファミリー蛋白質としての機能を維持するためには、配列番号4で表されるアミノ酸配列において、好ましくは1若しくは複数個のアミノ酸、より好ましくは1~95個のアミノ酸、更に好ましくは1~71個のアミノ酸、更により好ましくは1~47個のアミノ酸、特に好ましくは1~24個のアミノ酸、最も好ましくは1~9個のアミノ酸、より最も好ましくは1~5個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含むアミノ酸配列であることが好ましい。
【0082】
アミノ酸置換の例としては、保存的置換が好ましく、具体的には以下のカッコ内のグループ内での置換が挙げられる。例えば、(グリシン、アラニン)(バリン、イソロイシン、ロイシン)(アスパラギン酸、グルタミン酸)(アスパラギン、グルタミン)(セリン、トレオニン)(リジン、アルギニン)(フェニルアラニン、チロシン)である。
【0083】
また、蛋白質は、元のアミノ酸配列と配列同一性の高いアミノ酸配列を有する蛋白質も同様の機能を有する場合があることが知られている。従って、前記tPTファミリー蛋白質の具体例としては、下記[8]も挙げられる。
[8]配列番号4で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつイソプレノイド化合物の鎖長をトランス型に延長する反応を触媒する酵素活性を有する蛋白質
【0084】
なお、前記tPTファミリー蛋白質としての機能を維持するためには、配列番号4で表されるアミノ酸配列との配列同一性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。
【0085】
本明細書において、アミノ酸配列や塩基配列の配列同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol., 183, 63 (1990)]を用いて決定することができる。
【0086】
前記酵素活性を有する蛋白質であることを確認する方法としては、例えば、従来公知の方法を用いることができ、例えば、大腸菌などを用いて、目的の蛋白質をコードする遺伝子を導入した形質転換体により、目的蛋白質を発現させ、イソプレノイド化合物の鎖長をトランス型に延長する反応を触媒する酵素活性を有するか否か判定する方法が挙げられる。
【0087】
前記方法において用いるtPTファミリー蛋白質は脂質膜との親和性を上げるためN末端側に膜結合領域を持っていることが望ましく、野生型として持っていない場合はtPTファミリー蛋白質のN末端側に人工的に膜結合領域を融合させても良い。融合させる膜結合領域のアミノ酸配列は特に限定されないが、自然界で本来脂質膜に結合している蛋白質が持つ膜結合領域のアミノ酸配列であることが望ましい。
【0088】
前記tPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子は、tPTファミリー蛋白質をコードし、発現させて、tPTファミリー蛋白質を産出できるものであれば特に制限されないが、該遺伝子としては、具体的には、下記[9]又は[10]が挙げられる。
[9]配列番号3で表される塩基配列からなるDNA
[10]配列番号3で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつイソプレノイド化合物の鎖長をトランス型に延長する反応を触媒する酵素活性を有する蛋白質をコードするDNA
【0089】
ここでいう「ハイブリダイズする」とは、特定の塩基配列を有するDNA又は該DNAの一部にDNAがハイブリダイズする工程である。従って、該特定の塩基配列を有するDNA又は該DNAの一部の塩基配列は、ノーザン又はサザンブロット解析のプローブとして有用であるか、又はPCR(Polymerase Chain Reaction)解析のオリゴヌクレオチドプライマーとして使用できる長さのDNAであってもよい。プローブとして用いるDNAとしては、少なくとも100塩基以上、好ましくは200塩基以上、より好ましくは500塩基以上のDNAをあげることができるが、少なくとも10塩基以上、好ましくは15塩基以上のDNAであってもよい。
【0090】
DNAのハイブリダイゼーション実験の方法はよく知られており、例えばモレキュラー・クローニング第2版、第3版(2001年)、Methods for General and Molecular Bacteriology, ASM Press(1994)、Immunology methods manual, Academic press(Molecular)に記載の他、多数の他の標準的な教科書に従ってハイブリダイゼーションの条件を決定し、実験を行うことができる。
【0091】
前記のストリンジェントな条件とは、例えばDNAを固定化したフィルターとプローブDNAとを50%ホルムアミド、5×SSC(750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、及び20μg/lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で42℃で一晩、インキュベートした後、例えば約65℃の0.2×SSC溶液中で該フィルターを洗浄する条件をあげることができるが、より低いストリンジェント条件を用いることもできる。ストリンジェントな条件の変更は、ホルムアミドの濃度調整(ホルムアミドの濃度を下げるほど低ストリンジェントになる)、塩濃度及び温度条件の変更により可能である。低ストリンジェント条件としては、例えば6×SSCE(20×SSCEは、3mol/lの塩化ナトリウム、0.2mol/lのリン酸二水素ナトリウム、0.02mol/lのEDTA、pH7.4)、0.5%のSDS、30%のホルムアミド、100μg/lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で、37℃で一晩インキュベートした後、50℃の1×SSC、0.1%SDS溶液を用いて洗浄する条件をあげることができる。また、更に低いストリンジェントな条件としては、前記した低ストリンジェント条件において、高塩濃度(例えば5×SSC)の溶液を用いてハイブリダイゼーションを行った後、洗浄する条件をあげることができる。
【0092】
前記した様々な条件は、ハイブリダイゼーション実験のバックグラウンドを抑えるために用いるブロッキング試薬を添加、又は変更することにより設定することもできる。前記したブロッキング試薬の添加は、条件を適合させるために、ハイブリダイゼーション条件の変更を伴ってもよい。
【0093】
前記したストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとしては、例えばBLAST及びFASTA等のプログラムを用いて、前記パラメータに基づいて計算したときに、配列番号3で表される塩基配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の配列同一性を有する塩基配列からなるDNAをあげることができる。
【0094】
前記したDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAが、所定の酵素活性を有する蛋白質をコードするDNAであることを確認する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、大腸菌などを用いて、目的の蛋白質をコードする遺伝子を導入した形質転換体により、目的蛋白質を発現させ、目的蛋白質の機能の有無をそれぞれの活性測定法により、活性測定等を行う方法が挙げられる。
【0095】
また、前記蛋白質のアミノ酸配列及び塩基配列を同定する方法は、従来公知の方法を用いることができ、例えば、生育する植物から、Total RNAを抽出し、必要に応じてmRNAを精製し、逆転写反応によりcDNAを合成する。次に目的蛋白質に相当する既知の蛋白質のアミノ酸配列をもとに、縮重プライマーを設計し、RT-PCRを行い、部分的にDNA断片の増幅を行い、部分的に配列を同定する。次いで、RACE法などを行い、全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定する。RACE法(Rapid Amplification of cDNA Ends法)とは、cDNAの塩基配列が部分的に把握されているときに、その既知領域の塩基配列情報を基にPCRを行って、cDNA末端までの未知領域をクローニングする方法で、cDNAライブラリーの作製を経ずに、PCR法によって全長のcDNAをクローニングすることができる方法である。
なお、縮重プライマーは、前記目的蛋白質と共通性の高い配列部位を有する植物由来の配列から作製することが好ましい。
また、前記蛋白質をコードする塩基配列が既知の場合には、その知られている塩基配列から開始コドンを含むプライマー及び終止コドンを含むプライマーを設計し、合成したcDNAを鋳型にしてRT-PCRを行うことで全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定することができる。
【0096】
PTファミリー蛋白質としては、炭素数60以上の生成物を合成することができるPTファミリー蛋白質が好ましい。これにより、ポリイソプレノイドの製造がより好適に可能となる。炭素数60以上の生成物を合成することができるPTファミリー蛋白質としては、例えば、上述のPTファミリー蛋白質のうち、ポリイソプレノイド産生植物由来のプレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質が挙げられる。具体的には、サポジラ由来のtPT(MztPT1、MztPT2)やトチュウ由来のtPT(EutPT1、EutPT3、EutPT5)である。
【0097】
((結合工程))
前記結合工程においては、PTファミリー蛋白質が、生体外で前記脂質膜に結合される限り、更にその他の蛋白質が結合されてもよい。
【0098】
前記その他の蛋白質の由来は特に制限されないが、上述した植物由来であることが好ましく、ポリイソプレノイド産生植物由来であることがより好ましく、Hevea属、Sonchus属、Taraxacum属、及びParthenium属からなる群より選択される少なくとも1種の属に属する植物由来であることが更に好ましい。なかでも、パラゴムノキ、ノゲシ、グアユール及びロシアンタンポポからなる群より選択される少なくとも1種の植物由来であることがより更に好ましく、特に好ましくは、パラゴムノキ由来であることである。
【0099】
前記その他の蛋白質としては、何ら制限されずいかなる蛋白質であってもよいが、前記脂質膜のゴム合成能力の観点からは、ゴム産生植物体内でもともと脂質膜上に存在する蛋白質であることが好ましい。なお、脂質膜上に存在する蛋白質は、大きく脂質膜の膜表面に結合する蛋白質であってもよいし、脂質膜の膜に挿入されるように結合する蛋白質であってもよいし、前記膜に結合している蛋白質と複合体を形成して膜表面上に存在することになる蛋白質であってもよい。
【0100】
前記ゴム産生植物体内でもともと脂質膜上に存在する蛋白質としては、例えば、Nogo-B receptor(NgBR)、Rubber Elongation Factor(REF)、Small Rubber Particle Protein(SRPP)、β-1,3-グルカナーゼ、Heveinなどが挙げられる。
【0101】
ここで、本発明者らの検討の結果、一部のCPTファミリー蛋白質を使用した場合、十分に酵素活性が得られない場合があることが判明した。
この場合、更に、補助酵素を使用することにより、すなわち、補助酵素を前記脂質膜に結合させることにより、酵素活性を増強できることが判明した。
【0102】
補助酵素としては、特に限定されないが、Nogo-B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質等が挙げられる。
【0103】
Nogo-B receptor(NgBR)ファミリー蛋白質は、N末端側に有する1つ又は複数の膜結合領域で膜に結合し、C末端側でCPTファミリー蛋白質又は他の蛋白質と相互作用する機能を有する蛋白質であり、CPTファミリー蛋白質を膜上に保持することにより機能を補助する。前記NgBRファミリー蛋白質の特徴としては、N末端側に膜結合ドメインを有し、C末端側にCis IPPS superfamily domain(NCBI Accession No.COG0020)に含まれるアミノ酸配列を有することである。
【0104】
NgBRファミリー蛋白質をコードする遺伝子は、その由来は特に制限されず、微生物由来であっても、動物由来であっても、植物由来であってもよいが、植物由来であることが好ましく、Hevea属、Sonchus属、Taraxacum属、及びParthenium属からなる群より選択される少なくとも1種の属に属する植物由来であることがより好ましく、Hevea属又はTaraxacum属に属する植物由来であることが更に好ましく、パラゴムノキ又はロシアンタンポポ由来であることが特に好ましく、最も好ましくは、パラゴムノキ由来であることである。
また、CPTファミリー蛋白質をコードする遺伝子の由来と、NgBRファミリー蛋白質をコードする遺伝子の由来が同種であることが好ましい。
【0105】
前記NgBRファミリー蛋白質としては、パラゴムノキ由来のNgBR(HRBP)、シロイヌナズナ由来のAtLEW1、レタス由来のLsCPTL1~2、タンポポ由来のTbRTAなどが挙げられる。
【0106】
前記NgBRファミリー蛋白質の具体例としては、下記[201]が挙げられる。
[201]配列番号5で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質
【0107】
また、蛋白質は、元のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含む場合であっても本来持つ機能を有する場合があることが知られている。従って、前記NgBRファミリー蛋白質の具体例としては、下記[202]も挙げられる。
[202]配列番号5で表されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含む配列からなり、かつN末端側に有する1つ又は複数の膜結合領域で膜に結合し、C末端側で他の蛋白質と相互作用する機能を有する蛋白質
【0108】
なお、前記NgBRファミリー蛋白質としての機能を維持するためには、配列番号5で表されるアミノ酸配列において、好ましくは1若しくは複数個のアミノ酸、より好ましくは1~52個のアミノ酸、更に好ましくは1~39個のアミノ酸、更により好ましくは1~26個のアミノ酸、特に好ましくは1~13個のアミノ酸、最も好ましくは1~6個のアミノ酸、より最も好ましくは1~3個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含むアミノ酸配列であることが好ましい。
【0109】
また、上述したように、蛋白質は、元のアミノ酸配列と配列同一性の高いアミノ酸配列を有する蛋白質も同様の機能を有する場合があることが知られている。従って、前記NgBRファミリー蛋白質の具体例としては、下記[203]も挙げられる。
[203]配列番号5で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつN末端側に有する1つ又は複数の膜結合領域で膜に結合し、C末端側で他の蛋白質と相互作用する機能を有する蛋白質
【0110】
なお、前記NgBRファミリー蛋白質としての機能を維持するためには、配列番号5で表されるアミノ酸配列との配列同一性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。
【0111】
ここで、補助酵素としては、N末端側に有する1つ又は複数の膜結合領域で膜に結合し、C末端側でCPTファミリー蛋白質又は他の蛋白質と相互作用する機能を有していればよいため、NgBRファミリー蛋白質の全部であってもよく、一部であってもよい。
補助酵素としては、前記脂質膜の酵素活性をより増強できるという理由から、下記[204]~[206]が好ましい。
[204]配列番号5で表されるアミノ酸配列における1位から81位のアミノ酸配列からなる蛋白質
【0112】
[205]配列番号5で表されるアミノ酸配列における1位から81位のアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含む配列からなり、かつN末端側に有する1つ又は複数の膜結合領域で膜に結合し、C末端側で他の蛋白質と相互作用する機能を有する蛋白質
なお、前記機能を維持するためには、配列番号5で表されるアミノ酸配列における1位から81位のアミノ酸配列において、好ましくは1若しくは複数個のアミノ酸、より好ましくは1~16個のアミノ酸、更に好ましくは1~12個のアミノ酸、特に好ましくは1~8個のアミノ酸、最も好ましくは1~4個のアミノ酸、より最も好ましくは1~2個のアミノ酸、更に最も好ましくは1個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含むアミノ酸配列であることが好ましい。
【0113】
[206]配列番号5で表されるアミノ酸配列における1位から81位のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつN末端側に有する1つ又は複数の膜結合領域で膜に結合し、C末端側で他の蛋白質と相互作用する機能を有する蛋白質
なお、前記機能を維持するためには、配列番号5で表されるアミノ酸配列における1位から81位のアミノ酸配列との配列同一性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。
【0114】
前記NgBRファミリー蛋白質であることを確認する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、アミノ酸配列を同定し、Cis IPPS superfamily domain(NCBI Accession No.COG0020)に含まれるアミノ酸配列を有しているかどうかを確認する方法が挙げられる。
【0115】
前記NgBRファミリー蛋白質をコードする遺伝子は、NgBRファミリー蛋白質をコードし、発現させてNgBRファミリー蛋白質を産出できるものであれば特に制限されない。
【0116】
前記結合工程は、生体外で、PTファミリー蛋白質を、前記脂質膜に結合させることができればその手段は特に制限されず、例えば、前記PTファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む無細胞蛋白合成溶液と前記脂質膜とを共存させて蛋白質合成を行い、前記脂質膜にPTファミリー蛋白質を結合させる方法などが挙げられる。
【0117】
前記結合工程としては、なかでも、前記PTファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む無細胞蛋白合成溶液と前記脂質膜とを共存させて蛋白質合成を行い、前記脂質膜にPTファミリー蛋白質を結合させる工程であることが好ましい。
すなわち、PTファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む無細胞蛋白合成溶液と前記脂質膜とを共存させて(より具体的には、前記PTファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む無細胞蛋白合成溶液と前記脂質膜とを混合して)蛋白質合成を行うことで、PTファミリー蛋白質の結合した前記脂質膜を得ることが好ましい。
【0118】
前記PTファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む無細胞蛋白合成溶液と前記脂質膜とを共存させて行われる蛋白質合成は、いわゆる、無細胞蛋白合成法を用いたPTファミリー蛋白質の合成であり、生物学的機能を担持した(native状態の)PTファミリー蛋白質を合成でき、当該無細胞蛋白合成法を前記脂質膜の共存下で行うことにより、合成されるPTファミリー蛋白質をnative状態で前記脂質膜に結合することが可能となる。
【0119】
ここで、前記無細胞蛋白合成溶液と前記脂質膜との共存下、蛋白質合成を行うことで、前記脂質膜にPTファミリー蛋白質が結合するとは、当該蛋白質合成により合成されたPTファミリー蛋白質の各蛋白質の全部又は一部が前記脂質膜中に取り込まれる又は前記脂質膜の膜構造に挿入される、といったことを意味するが、これに限らず、前記脂質膜表面又は内部に局在する等の場合をも意味する。また更には、前記脂質膜に結合している他の蛋白質と複合体を形成し、複合体として前記脂質膜上に存在する場合も前記脂質膜に結合しているとの概念範囲に含まれる。
【0120】
前記PTファミリー蛋白質をコードするmRNAはそれぞれ、翻訳されてPTファミリー蛋白質を合成しうる翻訳鋳型である。
【0121】
前記結合工程については、当業者であれば、適宜実施できる。例えば、WO2021/010101号公報、WO2018/116726号公報に記載の方法等により実施できる。
【0122】
前記結合工程は、PTファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む無細胞蛋白合成溶液と前記脂質膜とを共存させて蛋白質合成を行うことが好ましいものであるが、具体的には蛋白質の合成前又は合成後の適当な時期に、好ましくは蛋白質合成前に、前記無細胞蛋白合成溶液に前記脂質膜を加えることにより行うことができる。
また、無細胞蛋白合成溶液と共存させる前記脂質膜の濃度は、5~50g/Lであることが好ましい。すなわち、無細胞蛋白合成溶液1Lに対して前記脂質膜を5~50g共存させることが好ましい。無細胞蛋白合成溶液と共存させる前記脂質膜の濃度が5g/L未満であると、合成されたPTファミリー蛋白質が結合した前記脂質膜を回収するために、超遠心分離等による分離処理を行った際に、ゴム層が形成されず、合成されたPTファミリー蛋白質が結合した前記脂質膜を回収することが困難になる場合がある。一方、無細胞蛋白合成溶液と共存させる前記脂質膜の濃度が50g/Lを超えると、前記脂質膜同士が凝集し、合成されたPTファミリー蛋白質がうまく前記脂質膜に結合できなくなるおそれがある。前記脂質膜の濃度としてより好ましくは10~40g/L、更に好ましくは15~35g/L、特に好ましくは15~30g/Lである。
【0123】
また、前記無細胞蛋白合成溶液と前記脂質膜との共存下での蛋白質合成は、その反応の進展に伴い、適宜前記脂質膜を追加していってもよい。前記脂質膜を前記無細胞蛋白合成溶液に加えてから例えば3~48時間(好ましくは3~30時間、より好ましくは3~24時間)など無細胞蛋白合成系が活性な間、前記無細胞蛋白合成溶液と前記脂質膜とが共存するようにしておくことが好ましい。
【0124】
前記無細胞蛋白合成における蛋白質合成のための反応システム又は装置としては、バッチ(回分)法(Pratt,J.M.et al.,Transcription and Tranlation,Hames,179-209,B.D.&Higgins,S.J.,eds,IRL Press,Oxford(1984))や、アミノ酸、エネルギー源等を連続的に反応系に供給する連続式無細胞蛋白質合成システム(Spirin,A.S.et al.,Science,242,1162-1164(1988))、透析法(木川等、第21回日本分子生物学会、WID6)、重層法(PROTEIOSTM Wheat germ cell-free protein synthesis core kit取扱説明書:TOYOBO社製)等が挙げられる。その他、蛋白質合成反応系に、鋳型のRNA、アミノ酸、エネルギー源等を必要時に供給し、合成物や分解物を必要時に排出する方法等も用いることができる。
【0125】
なかでも、重層法は操作が簡便であるという利点はあるものの反応溶液中で前記脂質膜が分散してしまい、合成されるPTファミリー蛋白質を前記脂質膜に効率よく結合させることが困難であるのに対して、透析法では、合成されるPTファミリー蛋白質の原料となるアミノ酸は透析膜を透過できるが前記脂質膜は透過しないため、前記脂質膜の分散を防ぐことができ、効率的に前記脂質膜に合成されるPTファミリー蛋白質を結合させることができることから、透析法が好ましい。
【0126】
なお、前記透析法とは、前記無細胞蛋白合成における蛋白質合成の合成反応液を透析内液とし、透析外液と物質移動が可能な透析膜によって隔離される装置を用いて、蛋白質合成を行う方法である。具体的には、例えば、翻訳鋳型を除いた前記合成反応液を必要に応じて適当時間プレインキュベートした後、翻訳鋳型を添加して、適当な透析容器に入れ反応内液とする。透析容器としては、底部に透析膜が付加されている容器(第一化学社製の透析カップ12,000等)や、透析用チューブ(三光純薬社製の12,000等)が挙げられる。透析膜は、10,000ダルトン以上の分子量限界を有するものが用いられるが、12,000ダルトン程度の分子量限界を有するものが好ましい。
【0127】
前記透析外液としては、アミノ酸を含む緩衝液が用いられる。透析外液は反応速度が低下した時点で、新鮮なものと交換することにより透析効率を上昇させることができる。反応温度及び時間は用いる蛋白質合成系において適宜選択されるが、例えば、小麦由来の胚芽抽出物を用いた系においては、通常10~40℃、好ましくは18~30℃、より好ましくは20~26℃で、10分~48時間(好ましくは10分~30時間、より好ましくは10分~24時間)行うことができる。
【0128】
また、前記無細胞蛋白合成溶液に含まれるPTファミリー蛋白質をコードするmRNAは、分解されやすいことから、前記蛋白質合成反応中に適宜当該mRNAを追加することで、蛋白質の合成をより効率的に行うことができる。すなわち、前記蛋白質合成反応中に、前記PTファミリー蛋白質をコードするmRNAを更に加えることもまた、好適な実施形態の1つである。
なお、前記mRNAの添加時間、添加回数、添加量等は特に制限されず、適宜設定することができる。
【0129】
前記製造方法においては、結合工程を行った後、必要に応じて前記脂質膜を回収する工程を行ってもよい。
【0130】
前記脂質膜回収工程は、前記脂質膜を回収することができればその手法は特に制限されず、前記脂質膜を回収する通常行われる方法により行うことができる。具体的には、例えば、遠心分離により行う方法などが挙げられる。当該遠心分離により前記脂質膜を回収する場合、その遠心力や、遠心分離処理時間、遠心分離処理温度は前記脂質膜を回収できるよう適宜設定することができるが、例えば、遠心分離処理の遠心力としては、15000×g以上が好ましく、20000×g以上がより好ましく、25000×g以上が更に好ましい。一方、遠心力は大きくしすぎてもそれに見合うだけの分離効果が望めないことから、遠心力の上限としては、50000×g以下が好ましく、45000×g以下がより好ましい。遠心分離処理時間としては、20分以上が好ましく、30分以上がより好ましく、40分以上が更に好ましい。一方、遠心分離処理時間を長くしすぎてもそれに見合うだけの分離効果が望めないことから、遠心分離処理時間の上限としては、120分以下が好ましく、90分以下がより好ましい。
また、遠心分離処理温度としては、前記脂質膜に結合したPTファミリー蛋白質のタンパク活性を維持するという観点から、0~10℃が好ましく、2~8℃がより好ましく、4℃が特に好ましい。
【0131】
例えば、前記無細胞蛋白合成を行った場合には、前記遠心分離処理を行うと、前記脂質膜が上層に、無細胞蛋白合成溶液が下層に分離される。その後、下層の無細胞蛋白合成溶液を除去することで、PTファミリー蛋白質を結合させた前記脂質膜を回収することができる。回収した前記脂質膜はpHが中性の適当な緩衝液に再懸濁することで保存することができる。
【0132】
なお、前記脂質膜回収工程を行った後に回収された脂質膜は更なる特別な処理を経ずにイソプレノイド(好ましくはポリイソプレノイド)の製造に用いることができる。
【0133】
イソプレノイド(好ましくはポリイソプレノイド)の製造では、前記脂質膜を懸濁させた溶液に適宜基質を添加して酵素反応を進行させてイソプレノイドを製造すればよい。具体的には、前記脂質膜上で、プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質が有する酵素活性により酵素反応が触媒され、酵素反応により生成した生成物(イソプレノイド(好ましくはポリイソプレノイド))は前記脂質膜内に蓄積される。
添加する基質としては、脂質一重膜に結合させたプレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質が触媒可能な基質を使用すればよい。
【0134】
更に、前記イソプレノイドの製造方法により得られたイソプレノイド(好ましくはポリイソプレノイド)は、前記脂質膜を以下の固化工程に供することで回収することができる。
【0135】
前記固化工程において、固化する方法としては、特に限定されず、エタノール、メタノール、アセトン等のイソプレノイド(好ましくはポリイソプレノイド)を溶解しない溶媒に前記脂質膜を添加する方法や前記脂質膜に酸を添加する方法等が挙げられる。固化工程を行うことにより、前記脂質膜からゴムを固形分として回収できる。得られたゴムは、必要に応じて乾燥してから使用すればよい。
【0136】
(ゴム製品の製造方法)
ゴム製品の製造方法は、前記イソプレノイドの製造方法によりイソプレノイド(好ましくはポリイソプレノイド)を製造する工程、前記イソプレノイドの製造方法により得られたイソプレノイド(好ましくはポリイソプレノイド)と、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生ゴム製品を成形する生ゴム製品成形工程、及び前記生ゴム製品を加硫する加硫工程を含むゴム製品の製造方法である。
【0137】
ゴム製品としては、ゴム(好ましくは天然ゴム)を使用して製造できるゴム製品であれば特に限定されず、例えば、空気入りタイヤ、ゴムローラ、ゴム防舷材、手袋、医療用ゴムチューブ等が挙げられる。
【0138】
ゴム製品が空気入りタイヤの場合、すなわち、前記ゴム製品の製造方法が空気入りタイヤの製造方法の場合、前記生ゴム製品成形工程は、前記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程に、前記加硫工程は、前記生タイヤを加硫する加硫工程に相当する。すなわち、前記空気入りタイヤの製造方法は、前記イソプレノイドの製造方法によりイソプレノイド(好ましくはポリイソプレノイド)を製造する工程、前記イソプレノイドの製造方法により得られたイソプレノイド(好ましくはポリイソプレノイド)と、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程、及び前記生タイヤを加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法である。
【0139】
<混練工程>
混練工程では、前記イソプレノイドの製造方法により得られたイソプレノイド(好ましくはポリイソプレノイド)と、添加剤とを混練して混練物を得る。
【0140】
添加剤としては特に限定されず、ゴム製品の製造に用いられる添加剤を使用できる。例えば、ゴム製品が空気入りタイヤの場合、例えば、前記イソプレノイド(好ましくはポリイソプレノイド)以外のゴム成分、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、クレー、タルクなどの補強用充填剤、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、加工助剤、各種老化防止剤、オイルなどの軟化剤、ワックス、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤等が挙げられる。
【0141】
混練工程における混練は、オープンロール、バンバリーミキサー、密閉式混練機などのゴム混練装置を用いて行えばよい。
【0142】
<生ゴム製品成形工程(タイヤの場合は生タイヤ成形工程)>
生ゴム製品成形工程では、混練工程により得られた混練物から生ゴム製品(タイヤの場合は生タイヤ)を成形する。
生ゴム製品の成形方法としては特に限定されず、生ゴム製品の成形に用いられる方法を適宜適用すればよい。例えば、ゴム製品が空気入りタイヤの場合、混練工程により得られた混練物を、各タイヤ部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、各タイヤ部材を貼り合わせ、生タイヤ(未加硫タイヤ)を成形すればよい。
【0143】
<加硫工程>
加硫工程では、生ゴム製品成形工程により得られた生ゴム製品を加硫することにより、ゴム製品が得られる。
生ゴム製品を加硫する方法としては特に限定されず、生ゴム製品の加硫に用いられる方法を適宜適用すればよい。例えば、ゴム製品が空気入りタイヤの場合、生ゴム製品成形工程により得られた生タイヤ(未加硫タイヤ)を加硫機中で加熱加圧して加硫することにより空気入りタイヤが得られる。
【実施例0144】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0145】
まず、以下において、各実施例、比較例の概要について記載する。
(1)夾雑物(タンパク)の有無の比較
実施例1 サポジラtPT+スクアレン内包PMPのSDS-PAGE
比較例1-1 サポジラtPT+ゴム粒子のSDS-PAGE
比較例1-2 サポジラtPT+油滴のSDS-PAGE
【0146】
実施例2 ゴムノキcPT(HRT)+HRBP+スクアレン内包PMPのSDS-PAGE
比較例2-1 ゴムノキcPT(HRT)+HRBP+ゴム粒子のSDS-PAGE
【0147】
(2)意図しない副反応の有無の比較
実施例3 スクアレン内包PMPのIPP消費活性
比較例3 ゴム粒子のIPPのIPP消費活性
【0148】
(3)PMPの内包物の違いによる生成物鎖長の違い
実施例4 サポジラtPT+スクアレン内包PMP
比較例4 サポジラtPT+TAG内包PMP
実施例5 サポジラtPT+スクアレン及びβカロテン内包PMP
【0149】
(スクアレン、TAG、又は、スクアレン及びβカロテン内包脂質一重膜(PMP)の調製)
クロロホルムに2.5mgのアゾレクチンを溶解させ、チューブ内で乾燥させた。Bufferを添加した後、20μLのスクアレン、20μLのTAG、又は、20μLのスクアレン及び0.5mgのβカロテンを加えた。超音波バスにより溶液を十分攪拌した後、10000×gで遠心分離を行い、遠心後の白いトップ層をPMPとして回収した。
【0150】
(ゴム粒子の調製)
ゴム粒子は、5段階の遠心分離によってHeveaラテックスから調製した。Heveaラテックス900mLに、20mMのジチオスレイトール(DTT)を含む1M Tris緩衝液(pH7.5)100mLを添加し、ラテックス溶液を調製した。得られたラテックス溶液を、1000×g、2000×g、8000×g、20000×g、50000×g、10,000×gの異なる遠心速度で段階的に遠心分離した。遠心分離はいずれも4℃、45分で行った。100000×gでの遠心分離で残ったゴム粒子層に、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアミノ]-プロパンスルホン酸(CHAPS)を終濃度0.1~2.0×CMC(臨界ミセル濃度CMCの0.1~2.0倍)になるように加え、ゴム粒子を洗浄した。洗浄処理後、洗浄されたゴム粒子を超遠心分離(100000×g、4℃、45分)によって回収し、等量の2mMのジチオスレイトール(DTT)を含む100M Tris緩衝液(pH7.5)に再懸濁した。
【0151】
(クラミドモナス由来油滴の調製)
(クラミドモナスの培養)
クラミドモナス sta6株 [CC-4348 sta6-1 mt+ (obtained by Ball lab. but deposited from Zi Teng Wang, Goodenough lab, BAFJ5)] 、及びその親株であるcw15株[CC-4349 cw15 mt+ (deposited by Goodenough, 330A)]は、Chlamydomonas Resource Centerより入手した。TAP液体培地及び寒天培地によって、培養を行った。液体培養の場合は1週間ごとに継代を行い、寒天培地の場合、シャーレであれば1ヵ月、スラントであれば3ヵ月ごとに継代を行った。培養条件は、光量子束密度100μmol m-2 s―1の連続光、22℃で、液体培地の旋回培養は120rpmで行なった。ただし、スラント培養の場合は、光量子束密度6μmol m-2 s―1の連続光照射条件で行なった。
【0152】
無細胞翻訳系で使用する油滴(LD)を精製するためには、窒素欠乏状態で生育する必要がある。その場合は、前記の液体培地で7日間液体培養した培養液5mLを以下のHSM液体培地95mLに添加し、光量子束密度30 μmol m-2 s―1、120rpm、22℃で培養を行った。2、3日後に、サンプル2μLを血球計算盤(サンリード硝子)に乗せ、顕微鏡BX40(OLYMPUS)を用いて観察することで、細胞密度を算出した。密度が2.6 (±1.2)×106個/mLになった時点で、2,000×g、5分間遠心分離することで、クラミドモナス細胞を回収した。続いて、HSM(N free)培地100mLで再懸濁し、再度培養を行った。その2日後に、1.5MのKOAcを1.3mL添加し、更に2日間培養した。その培養液を回収し、2,000×g、5分間の遠心分離によって、培地を除去し、液体窒素で瞬間冷凍したのちに-80℃で保存した。
【0153】
(クラミドモナス由来の油滴の調製)
Buffer 20mLで培養したクラミドモナスを懸濁した。これをアミンコ・フレンチプレス細胞破砕機(Thermo electron corporation)を利用しクラミドモナスを破砕した。セレクターバルブはHigh、圧力コントロールバルブ1250 psiに設定し、20000 psiで破砕を行った。
20,000×g、4℃で30分遠心分離した。Fat padを回収し、Buffer B 3mLを加えて懸濁し、1,000×g、4℃で10分遠心分離した後、シリンジを用いて、下層の溶液を回収した。この溶液を20,000×g、4℃で30分遠心分離し、下層を除去したのち、TD Bufferを60μL添加し再懸濁し、油滴を調製した。
【0154】
<発現ベクターの作製>
(サポジラ由来トランス型プレニルトランスフェラーゼ遺伝子の取得)
高分子トランス-1、4-ポリイソプレンを合成するトランス型プレニルトランスフェラーゼの遺伝子を取得するため、高分子トランス-1、4-ポリイソプレンを合成するサポジラのトランスクリプトームデータベースをde novoアセンブリを行い、シロイヌナズナ由来のトランス型プレニルトランスフェラーゼ遺伝子と類似する遺伝子を探索し、MztPT2を発見し、化学合成した。合成した遺伝子はpEU-E01-His-TEV-MCS-N2(CellFree Science、Matsuyama、Japan)(以降、pEU-N2と記載する)の制限酵素サイトに導入した。
【0155】
(ゴムノキ由来HRT、HRBP遺伝子の取得)
〔HeveaラテックスからのTotal RNA抽出〕
パラゴムノキのラテックスからホットフェノール法により、Total RNAを抽出した。ラテックス6mLに100mM酢酸ナトリウム緩衝液6mL、10%SDS溶液1mLを添加し、さらに65℃で予温しておいた水飽和フェノールを12mL添加した。65℃で5分間インキュベートしたのち、ボルテックスで撹拌し、室温、7000rpmで10分間遠心分離を行った。遠心後、上清を新しいチューブに移し、フェノール:クロロホルム(1:1)溶液12mLを添加し、2分間振盪撹拌した。撹拌後、再度、室温、7000rpmで10分間遠心分離を行った後、上清を新しいチューブに移し、クロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)溶液12mLを添加し、2分間振盪撹拌した。撹拌後、再度、室温、7000rpmで10分間遠心分離を行った後、上清を新しいチューブに移し、3M酢酸ナトリウム溶液1.2mLとイソプロパノール13mLを添加し、ボルテックスで撹拌した。Total RNAを沈殿させるために、-20℃で30分間インキュベートした。インキュベート後、4℃、15000rpmで10分間遠心し、上清を取除くことでTotal RNAの沈殿を回収した。回収したTotal RNAは70%エタノールで2度洗浄したのち、RNase freeの水で溶解させた。
【0156】
〔Total RNAからcDNAの合成〕
回収したTotal RNAをもとに、cDNAを合成した。cDNAの合成はPrimeScript II 1st strand cDNA Synthesis Kit(Takara)の説明書に従って行った。
【0157】
〔cDNAからCPT、及びNgBR遺伝子の取得〕
作製した1st strand cDNAを鋳型にCPT、及びNgBR遺伝子の取得を行った。PCRはKOD-plus-Neo(TOYOBO)を使用し、説明書に従って行った。PCRは、98℃で10秒、58℃で30秒、68℃で1分を1サイクルとして、35サイクル行った。
CPT遺伝子の取得は、プライマーとして、
プライマー1:5’- tttggatccgatggaattatacaacggtgagagg-3’
プライマー2:5’- tttgcggccgcttattttaagtattccttatgtttctcc-3’
を使用した。
NgBR遺伝子の取得は、プライマーとして、
プライマー3:5’- tttctcgagatggatttgaaacctggagctg -3’
プライマー4:5’- tttctcgagtcatgtaccataattttgctgcac -3’
を使用した。
【0158】
上述の方法により、TPT遺伝子(MztPT2)、CPT遺伝子(HRT1)、及びNgBR遺伝子(HRBP)が得られた。得られた遺伝子について、その配列を同定し、全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定した。パラゴムノキ由来のHRT1をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号1、パラゴムノキ由来のHRT1のアミノ酸配列を配列番号2、サポジラ由来のtPT2(MztPT2)をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号3、サポジラ由来のtPT2(MztPT2)のアミノ酸配列を配列番号4、パラゴムノキ由来のHRBPのアミノ酸配列を配列番号5に示した。
【0159】
〔ベクターの構築〕
上記取得したDNA断片にdA付加を行った後、pGEM-T Easy Vector System(Promega)を利用してpGEM-T Easy Vectorに挿入し、pGEM-HRT1、及びpGEM-HRBPを作製した。
【0160】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて大腸菌DH5αの形質転換を行い、形質転換体はアンピシリンとX-galを含むLB寒天培地上で培養し、青/白スクリーニング法によって目的遺伝子を導入した大腸菌の選別を行った。
【0161】
〔プラスミドの抽出〕
目的遺伝子を含むプラスミドで形質転換された大腸菌は、LB液体培地上で37℃で一晩培養したのち、菌体を回収し、プラスミドの回収を行った。プラスミドの回収はFast Geneプラスミドミニキット(日本ジェネティクス)を使用した。
回収したプラスミドに挿入された遺伝子の塩基配列に変異がないことをシークエンス解析により確認した。
【0162】
〔無細胞蛋白合成法用ベクターの作製〕
上記〔ベクターの構築〕で獲得したpGEM-HRT1を制限酵素Bam HIとNot Iで処理したのち、同様にBam HIとNot Iで制限酵素処理した無細胞発現用ベクターpEU-E01-His-TEV-MCS―N2に挿入し、pEU-His-N2-HRT1を作製した。
同様に、pGEM-HRBPを制限酵素Xho Iで処理したのち、同様にXho Iで制限酵素処理した無細胞発現用ベクターpEU-E01-MCS-TEV-His-C1に挿入し、pEU-C1-HRBPを作製した。
【0163】
〔大腸菌の形質転換〕
上記作製したVectorを用いて大腸菌DH5αの形質転換を行い、形質転換体はアンピシリンとX-galを含むLB寒天培地上で培養し、コロニーPCRによって目的遺伝子を導入した大腸菌の選別を行った。
【0164】
〔プラスミドの抽出〕
目的遺伝子を含むプラスミドで形質転換された大腸菌は、LB液体培地上で37℃で一晩培養したのち、菌体を回収し、プラスミドの回収を行った。プラスミドの回収はFast Geneプラスミドミニキット(日本ジェネティクス)を使用した。
【0165】
(無細胞発現)
(無細胞発現に用いるmRNA合成及び抽出)
WEPRO7240H Expression Kit(CellFree Sciences, Matsuyama, Japan)を用いて、作製したコンストラクトからmRNAを合成した。以下の組成で37℃、3時間反応させた。反応後、エタノール沈殿を行い、得られたペレットを25μLの1×DB Bufferで溶解させた。回収したmRNAは-80℃で保存した。
【表1】
【0166】
(無細胞翻訳系による膜上への蛋白質の導入)
無細胞翻訳系にて翻訳・フォールディングと共役させながら膜へ外来蛋白質を導入した。作製したmRNAを用いて、各蛋白質を精製した膜上で発現させるため、コムギ胚芽由来無細胞蛋白質発現キットWEPRO7240H Expression Kit(CellFree Sciences)を用いて翻訳反応を行った。
7.5μLの作製したmRNAに15μLの1×DB Bufferを加え、mRNA Premixを調製した。その後、以下の組成で翻訳反応溶液を調製した。LDは、LD懸濁液に含まれる総蛋白質量が20μgとなる量を添加した。
【表2】
【0167】
プラスチックチューブ(PP容器、4.5 mL、5-094-02、アズワン)にSDWを650μL加え、その中に透析用カップ(MWCO12000、コスモ・バイオ株式会社)を透析膜に空気が入り込まないように入れ、10分以上静置した。その後、チューブ内のSDWを捨て、外液として1×DB Bufferを650μL、内液として透析カップ内に調製した翻訳反応用液を50μL加え、透析膜に空気が入り込まないように透析カップをプラスチックチューブに入れ、パラフィルムでカップを覆い、26℃で5時間反応させた。反応後、外液を新たな1×DBに入れ替え、内液にmRNA Premix5μL追加し、更に13時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を回収し、そのうち50μLを1.5mL用チューブに移し、TD Buffer(+グリセロール20%(w/v))を50μLを加え、20,000×g、4℃で30分遠心分離した。これにより得られた膜粒子画分、可溶性画分、沈殿画分のうち、膜粒子画分を可溶性画分と一緒に新たなチューブに移し、更に20,000×g、4℃で30分遠心分離した。遠心分離溶液のうち、水層を注射器(注射針、NN-2719S;1mLツベルクリン用シリンジ、SS-01T、Terumo、Tokyo、Jaqpna)で抜き取り、チューブ内に残されたLD層にTD Buffer(+グリセロール10%(w/v))100μLを加え、更に20,000×g、4℃で30分遠心分離した(wash作業)。注射器で水層を抜き取り、プロテアーゼ阻害剤カクテル(cOmpleteTM mini EDTA free Protease Inhibitor Cocktail Tablets,Roche)入りのTD Buffer100μLで懸濁し、これを精製膜粒子画分とした。
【0168】
(酵素活性測定)
プレニル鎖延長酵素の活性を測定するため、反応溶液を調製し反応させたのちに液体シンチレーションカウンターにて放射活性を測定することでIPP取り込み活性を測定した。作製した酵素結合膜粒子溶液を[4-14C]IPP (NEC773、Perkin Elmer)を含む以下に示す反応組成で30℃、18時間浴槽内にて振とうした。精製LD溶液は、含まれる総蛋白質量が2μgとなる量を添加した。

【表3】
なお、実施例5では、反応条件(30℃、18時間)を30℃、15時間に変更し、反応組成を以下の通りとした。
【表4】
【0169】
反応後、飽和食塩水を200μL添加し撹拌することで、反応を停止した。飽和食塩水飽和n-ブタノールを1mL加え、1分間ボルテックスにより撹拌し、15,000rpm、室温で1分間遠心後に上層のブタノール層を回収することで、天然ゴムより短いいドリコールサイズまでの生成物を抽出した。その後、水層にトルエン/ヘキサン(1:1)を500μL加え、ボルテックスで5分間撹拌し、15,000rpm、室温で1分間遠心後に上層(トルエン/ヘキサン層)を回収することで、天然ゴムサイズの生成物を抽出した。このトルエン/ヘキサン抽出を2回行い、計1mLのトルエン/ヘキサン層を抽出した。両抽出液50μLをクリアゾル3mLに加え、液体シンチレーションカウンター(LSC―6100、ALOKA)で放射活性を測定した。測定した値からバックグラウンドの値を引き、1mLのうち50μLを測定したため20倍することで、抽出物全体のカウント数を計算した。
【0170】
(ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による生成物鎖長確認)
抽出したトルエン/ヘキサン抽出物をエバポレーターにより溶媒を留去し、テトラヒドロフラン(THF)を190μL加えた。シリンジに接続したフィルターユニット(MS PTFE Syringe Filter、Pore Size:0.45μm、Membrane Solutions)に通し、遮光瓶に移すことで凝集物等を除去した。このうち、50μLを1260 Infinity II LC Systems(Agilent)で分離、解析を行った。分析条件は以下の通りである。
カラム構成 : ガードカラム TSKguardcolumn MP (XL)(TOSOH社製)
溶媒カラム TSKgel Multipore HXL-M (TOSOH社製)(2本連結)
測定温度 : 40℃
溶出溶媒 : THF(テトラヒドロフラン)
流速 : 1mL/min
検出 : 示差屈折計
分子量標準 : 標準ポリスチレン
インジェクトしてから10~25分の間、カラムから流出したTHFを30秒ごとに回収し、それぞれを0.1mLまで濃縮し、クリアゾル1mL加えた後、液体シンチレーションカウンターにて放射活性を測定した。
【0171】
(1)夾雑物(タンパク)の有無の比較
図6図7より、人工膜を使用した実施例1、2では、目的蛋白質以外の蛋白質がほぼ検出されていない一方で、天然膜を使用した比較例1-1、1-2、2では目的蛋白質以外の夾雑蛋白質も確認された。これにより人工膜を利用することで生成物への夾雑物の混入を減少させることができることが分かった。
【0172】
(2)意図しない副反応の有無の比較
図8より、人工膜を使用している実施例3では膜自体にIPP消費活性はないが、ゴム粒子を利用している比較例3では膜自体にIPP消費活性(特にトルエン/ヘキサンで抽出される生成物ができる反応活性)が確認された。これにより、ゴム粒子では目的生成物以外のイソプレノイドが合成されてしまう一方で、イソプレノイドを内包する脂質一重膜では目的の生成物しか生成しないことが分かった。
【0173】
(3)PMPの内包物違いによる生成物鎖長の違い
図9より、スクアレン内包PMPを使用した場合では、TAG内包PMPを使用した場合と比較して生成物鎖長のピークトップ位置が高分子量側にシフトし、重量平均分子量が大きくなっていた。TAG内包PMPではほとんど観測されていない分子量10^5の生成物がスクアレン内包PMPでは確認された。これにより内包する化合物をスクアレン(イソプレノイド)にすることにより生成物鎖長を長くすることができることが分かった。
図9、10より、スクアレン及びβカロテン内包PMPを使用した場合には、スクアレン内包PMPを使用した場合よりも生成物鎖長を長くすることができることが分かった。
【0174】
図11より、スクアレン及びβカロテン内包PMPを使用した場合には、スクアレン内包PMPを使用した場合よりも酵素の活性(反応量)が上昇することが分かった。
【0175】
本発明(1)は、イソプレノイドを内包する脂質一重膜に結合させたプレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質を用いたイソプレノイドの製造方法に関する。
【0176】
本発明(2)は、前記脂質一重膜が人工合成された脂質一重膜である本発明(1)記載のイソプレノイドの製造方法に関する。
【0177】
本発明(3)は、前記プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質が、炭素数60以上の生成物を合成することができるプレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質である本発明(1)又は(2)記載のイソプレノイドの製造方法に関する。
【0178】
本発明(4)は、前記プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質が、
以下のアミノ酸配列(A):
DGNXRXA (A) (アミノ酸配列(A)中、X及びXは同一又は異なって任意のアミノ酸残基を表す)
を有するシス型プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質、
又は
以下のアミノ酸配列(B-1)若しくは(B-2):
DDXD (B-1) (アミノ酸配列(B-1)中、X1、は任意のアミノ酸残基を表す)
DDXD (B-2)(アミノ酸配列(B-2)中、X1、、X及びXは同一又は異なって任意のアミノ酸残基を表す)
を有するトランス型プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質である本発明(1)~(3)のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法に関する。
【0179】
本発明(5)は、前記プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質が、ポリイソプレノイド産生植物由来である本発明(1)~(4)のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法に関する。
【0180】
本発明(6)は、前記ポリイソプレノイド産生植物が、Hevea属、Taraxacum属、Parthenium属、又はManilkara属に属する植物である本発明(5)記載のイソプレノイドの製造方法に関する。
【0181】
本発明(7)は、前記ポリイソプレノイド産生植物が、Hevea brasiliensis(パラゴムノキ)、Taraxacum kok-saghyz(ロシアンタンポポ)、Parthenium argentatum(グアユール)、又はManilkara zapota(サポジラ)である本発明(5)記載のイソプレノイドの製造方法に関する。
【0182】
本発明(8)は、前記脂質一重膜に内包されるイソプレノイドがスクアレン及びカロテノイドからなる群から選択される少なくとも1種である本発明(1)~(7)のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法に関する。
【0183】
本発明(9)は、前記脂質一重膜に内包されるイソプレノイドがスクアレンである本発明(1)~(8)のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法に関する。
【0184】
本発明(10)は、前記脂質一重膜に内包されるイソプレノイドがスクアレン及びカロテノイドである本発明(1)~(9)のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法に関する。
【0185】
本発明(11)は、前記プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質を、生体外で、前記脂質一重膜に結合させる結合工程を含む本発明(1)~(10)のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法に関する。
【0186】
本発明(12)は、前記結合工程が、前記プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質をコードするmRNAを含む無細胞蛋白合成溶液と、前記脂質一重膜とを共存させて蛋白質合成を行い、前記脂質一重膜に、プレニルトランスフェラーゼファミリー蛋白質を結合させる工程である本発明(1)~(11)のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法に関する。
【0187】
本発明(13)は、本発明(1)~(12)のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法によりイソプレノイドを製造する工程、得られたイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程、及び前記生タイヤを加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法に関する。
【0188】
本発明(14)は、本発明(1)~(12)のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法によりイソプレノイドを製造する工程、得られたイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生ゴム製品を成形する生ゴム製品成形工程、及び前記生ゴム製品を加硫する加硫工程を含むゴム製品の製造方法に関する。
【0189】
(配列表フリーテキスト)
配列番号1:パラゴムノキ由来のHRT1をコードする遺伝子の塩基配列
配列番号2:パラゴムノキ由来のHRT1のアミノ酸配列
配列番号3:サポジラ由来のtPT2(MztPT2)をコードする遺伝子の塩基配列
配列番号4:サポジラ由来のtPT2(MztPT2)のアミノ酸配列
配列番号5:パラゴムノキ由来のHRBPのアミノ酸配列
配列番号6:プライマー1
配列番号7:プライマー2
配列番号8:プライマー3
配列番号9:プライマー4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
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