(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050435
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】オイル循環装置
(51)【国際特許分類】
F01M 1/10 20060101AFI20240403BHJP
F01M 1/06 20060101ALI20240403BHJP
F01M 1/02 20060101ALI20240403BHJP
F02F 7/00 20060101ALI20240403BHJP
F01M 1/16 20060101ALI20240403BHJP
F01M 11/03 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
F01M1/10 A
F01M1/06 Q
F01M1/02 A
F02F7/00 301Z
F01M1/16 A
F01M11/03 D
F01M11/03 C
F01M1/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023140473
(22)【出願日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】17/955,672
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】森永 龍太
(72)【発明者】
【氏名】池田 秀樹
【テーマコード(参考)】
3G015
3G024
3G313
【Fターム(参考)】
3G015AA03
3G015AB01
3G015BA05
3G015BG06
3G015BG14
3G015CA06
3G015DA04
3G015DA11
3G015EA38
3G015FA04
3G024AA44
3G024BA23
3G024DA23
3G024EA11
3G024FA07
3G313AA03
3G313AB14
3G313BB02
3G313BB14
3G313BD24
3G313CA01
3G313CA05
3G313EA09
3G313FA01
3G313FA02
3G313FA10
(57)【要約】
【課題】装置の大型化、及び製造コストの増大を抑制できるとともに、オイルフィルタ交換時のオイルの溢れ出しを効果的に防止でき、エネルギーの効率化に寄与できるオイル循環装置を提供する。
【解決手段】オイル循環装置5は、可動部が収納されたクランクケース7と、クランクケース7に設けられ、可動部にオイルを導くオイル流路15と、オイル流路15を介して可動部へとオイルを送るオイルポンプと、オイル流路15の途中に設けられ、上下方向に沿って形成されたメインギャラリ19と、メインギャラリ19の途中に設けられ、メインギャラリ19を流れるオイルを濾過するオイルフィルタ22と、メインギャラリ19におけるオイルフィルタ22よりもオイルの流れ方向の下流側に設けられ、メインギャラリ19とクランクケース7内とを連通するオイル排出口33と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部が収納されたクランクケースと、
前記クランクケースに設けられ、前記可動部にオイルを導くオイル流路と、
前記オイル流路を介して前記可動部へと前記オイルを送るオイルポンプと、
前記オイル流路の途中に設けられ、上下方向に沿って形成されたメインギャラリと、
前記メインギャラリの途中に設けられ、前記メインギャラリを流れる前記オイルを濾過するオイルフィルタと、
前記メインギャラリにおける前記オイルフィルタよりも前記オイルの流れ方向の下流側に設けられ、前記メインギャラリと前記クランクケース内とを連通するオイル排出口と、
を備える
オイル循環装置。
【請求項2】
前記メインギャラリの途中に設けられ、前記オイルフィルタを取りつけるオイルフィルタベースと、
前記オイルフィルタベースに形成され、前記オイルフィルタの前記下流側と前記オイル排出口とを連通するオイル排出流路と、
を備える
請求項1に記載のオイル循環装置。
【請求項3】
前記オイル排出流路に設けられ、前記オイル排出流路の流路断面積よりも流路断面積の小さいオリフィスを備える
請求項2に記載のオイル循環装置。
【請求項4】
前記オイル排出流路は前記オイル排出口に連結された戻し流路を含み、
前記戻し流路は、前記オイル排出口に向かって下り勾配に形成されている
請求項2に記載のオイル循環装置。
【請求項5】
前記オイル排出流路に設けられ、前記オイル排出流路を介して前記メインギャラリから前記オイル排出口への前記オイルの流れを許容、遮断する栓を備える
請求項2に記載のオイル循環装置。
【請求項6】
前記オイル排出流路と前記メインギャラリとを連通する第1連通路及び第2連通路と、
前記第1連通路に設けられ、前記第1連通路の流路断面積よりも流路断面積の小さいオリフィスと、
を備え、
前記栓は、前記第1連通路と前記第2連通路との間に配置されるとともに、前記第1連通路及び前記オイル排出口を同時に閉塞可能に配置されており、
前記オイル排出流路に設けられ、前記第1連通路及び前記オイル排出口から前記第2連通路に向かって前記栓を弾性的に付勢する弾性部材を備える
請求項5に記載のオイル循環装置。
【請求項7】
前記オイルフィルタは、前記メインギャラリに対して斜め上方に突出するように設けられており、
前記オイルフィルタの下部を覆うオイル受け鍔を備える
請求項1に記載のオイル循環装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オイル循環装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば船外機は、エンジン(内燃機関)を冷却するためにエンジンに供給するオイル(潤滑油)を循環させるオイル潤滑装置を備える。オイル潤滑装置は、船外機に沿って形成されたオイル流路と、オイル流路にオイルを送るオイルポンプと、オイル流路の途中に設けられたオイルフィルタと、を備える。オイル流路は、船外機内にオイルを循環させるとともにエンジンに通じている。オイルフィルタは、エンジンに供給するオイルを濾過する。
【0003】
オイルポンプは、エンジンの駆動力を受けて駆動する。このため、エンジンの駆動中は、オイルポンプによってオイルが循環される。オイルによって、効果的にエンジンが冷却される。エンジンの停止時には、オイルポンプも停止する。エンジンの停止時には、エンジンが積極的に温度上昇することがないので、オイルを循環させる必要もない。オイルポンプの停止することにより、オイル流路内にオイルが滞留する。
【0004】
船外機の構造上、オイル流路は上下方向にオイルが循環するように形成されている。このため、エンジン停止中にオイルフィルタを交換しようとすると、オイルフィルタよりも上方(下流側)のオイル流路内に滞留するオイルが溢れ出す場合があった。このようなオイルフィルタ交換時のオイルの溢れ出しを防止するために、さまざまな技術が提案されている。
【0005】
例えば特許文献1には、オイル流路の下部に、オイルパンにオイルを戻すためのオイル戻し流路を設けた技術が開示されている。これによれば、オイルフィルタを交換する際に溢れ出そうとするオイルがオイル戻し流路を介してオイルパンに戻される。このため、オイルフィルタの交換時に、オイルが溢れ出してしてしまうことを防止できる。
また、特許文献2には、オイルフィルタを交換する際に溢れ出すオイルを受け止める受け皿(フランジ部及び縦壁部)を設けた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特開2009-102993号公報
【特許文献2】日本国特開2015-203326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1では、オイル流路からオイルパンに至る間にオイル戻し流路を設ける必要がある。この分、オイル流路の占有スペースが大きくなってしまう。このため、潤滑装置が大型化するとともに潤滑装置の製造コストが増大してしまう可能性があった。
特許文献2では、オイルの溢れ出しそのものを防止することができない。このため、オイルフィルタ交換時の効果的な解決策とはなりにくいという課題があった。オイルの溢れ出しによって再生可能エネルギーを減少させてしまう可能性があった。
【0008】
そこで、この発明は、装置の大型化、及び製造コストの増大を抑制できるとともに、オイルフィルタ交換時のオイルの溢れ出しを効果的に防止でき、エネルギーの効率化に寄与できるオイル循環装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明に係るオイル循環装置(例えば、実施形態のオイル循環装置5)は、可動部が収納されたクランクケース(例えば、実施形態のクランクケース7)と、前記クランクケースに設けられ、前記可動部にオイルを導くオイル流路(例えば、実施形態のオイル流路15)と、前記オイル流路を介して前記可動部へと前記オイルを送るオイルポンプ(例えば、実施形態のオイルポンプ16)と、前記オイル流路の途中に設けられ、上下方向に沿って形成されたメインギャラリ(例えば、実施形態のメインギャラリ19)と、前記メインギャラリの途中に設けられ、前記メインギャラリを流れる前記オイルを濾過するオイルフィルタ(例えば、実施形態のオイルフィルタ22、フィルタ本体32)と、前記メインギャラリにおける前記オイルフィルタよりも前記オイルの流れ方向の下流側に設けられ、前記メインギャラリと前記クランクケース内とを連通するオイル排出口(例えば、実施形態のオイル排出口33)と、を備える。
【0010】
このように、メインギャラリからクランクケース内にオイルを戻す構造とした。メインギャラリからクランクケース内にオイルを戻すために、オイル排出口を設けるだけでよい。このため、余計なスペースを確保する必要も無く、構造も簡素であるので、オイル循環装置を小型化できるとともに製造コストの増大を抑制できる。オイルフィルタ交換時のオイルの溢れ出しを効果的に防止でき、エネルギーの効率化に寄与できる。
【0011】
(2)上記構成において、前記メインギャラリの途中に設けられ、前記オイルフィルタを取りつけるオイルフィルタベース(例えば、実施形態のオイルフィルタベース21)と、前記オイルフィルタベースに形成され、前記オイルフィルタの前記下流側と前記オイル排出口とを連通するオイル排出流路(例えば、実施形態のオイル排出流路34、上導入路36、下導入路37、戻し流路38、排出流路本体39)と、を備えてもよい。
【0012】
このように構成することで、クランクケース側への加工を極力抑えることができる。オイルフィルタ交換時のオイルの溢れ出しを防止するために、オイルフィルタベースを加工すればよい。このため、メインギャラリからクランクケース内にオイルを戻すための加工を容易にできる。よって、オイル循環装置の製造コストの増大を抑制できる。
【0013】
(3)上記構成において、前記オイル排出流路に設けられ、前記オイル排出流路の流路断面積よりも流路断面積の小さいオリフィス(例えば、実施形態のオリフィス40)を備えてもよい。
【0014】
このように構成することで、可動部の駆動時に無駄にオイル排出流路を介してオイル排出口からクランクケース内へとオイルが戻ってしまうことを防止できる。このため、エネルギーの効率化に寄与できる。
【0015】
(4)上記構成において、前記オイル排出流路は前記オイル排出口に連結された戻し流路(例えば、実施形態の戻し流路38)を含み、前記戻し流路は、前記オイル排出口に向かって下り勾配に形成されてもよい。
【0016】
このように構成することで、オイル排出流路内にオイルを滞留させることなく、クランクケース内に速やかにオイルを戻すことができる。
【0017】
(5)上記構成において、前記オイル排出流路に設けられ、前記オイル排出流路を介して前記メインギャラリから前記オイル排出口への前記オイルの流れを許容、遮断する栓(例えば、実施形態の栓本体42)を備えてもよい。
【0018】
このように構成することで、栓によって、可動部の駆動時に無駄にオイル排出流路を介してオイル排出口からクランクケース内へとオイルが戻ってしまうことをより確実に防止できる。このため、さらにエネルギーの効率化に寄与できる。
【0019】
(6)上記構成において、前記オイル排出流路と前記メインギャラリとを連通する第1連通路(例えば、実施形態の下導入路37)及び第2連通路(例えば、実施形態の上導入路36)と、前記第1連通路に設けられ、前記第1連通路の流路断面積よりも流路断面積の小さいオリフィス(例えば、実施形態のオリフィス40)と、を備え、前記栓は、前記第1連通路と前記第2連通路との間に配置されるとともに、前記第1連通路及び前記オイル排出口を同時に閉塞可能に配置されており、前記オイル排出流路に設けられ、前記第1連通路及び前記オイル排出口から前記第2連通路に向かって前記栓を弾性的に付勢する弾性部材(例えば、実施形態のコイルスプリング43)を備えてもよい。
【0020】
このように構成することで、簡素な構造で確実に栓を機能させることができる。そして、この栓によって可動部の駆動時に無駄にオイル排出流路を介してオイル排出口からクランクケース内へとオイルが戻ってしまうことを確実に防止できる。このため、エネルギーの効率化に寄与できる。
【0021】
(7)上記構成において、前記オイルフィルタは、前記メインギャラリに対して斜め上方に突出するように設けられており、前記オイルフィルタの下部を覆うオイル受け鍔(例えば、実施形態のオイル受け鍔28)を備えてもよい。
【0022】
このように構成することで、オイルフィルタの交換時に万が一オイルが漏れ出た場合であっても、オイル受け鍔によってオイルを受けることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、オイル循環装置の大型化、及び製造コストの増大を抑制できる。また、オイルフィルタ交換時のオイルの溢れ出しを効果的に防止でき、エネルギーの効率化に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態における船外機の要部の概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態におけるオイルフィルタユニットの分解斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態におけるオイルフィルタユニットの周辺の上下方向に沿う断面図である。
【
図4】本発明の実施形態におけるオイル戻し機構の動作説明図である。
【
図5】本発明の変形例におけるオイル戻し機構の上下方向に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
<船外機>
図1は、船外機1の要部の概略構成図である。
図1に示すように、図示しない船体に設けられた船外機1は、外殻を形成するトップカウル2及びトップカウル2の下部に設けられたケーシング3内に、エンジン4と、エンジン4の冷却及び潤滑を行うオイル循環装置5と、を備える。以下の説明では、船外機1をチルトダウン位置に配置した状態で上下方向及び水平方向をいうものとする。チルトダウン位置とは、船外機1を一杯に下した状態の位置をいう。換言すれば、チルトダウン位置とは、船外機1が水面とほぼ直角になる位置で、船体を航走させる場合の船外機1の位置をいう。
【0027】
<エンジン>
エンジン4は、クランクケース7と、クランクケース7内に設けられた可動部8と、を備える。可動部8は、シリンダブロック9、クランクケース7及びシリンダブロック9に回転自在に支持された図示しないクランクシャフト、コンロッド10を介してクランクシャフトに接続されたピストン11等を備える。
【0028】
シリンダブロック9には、クランク室12及びシリンダ13が形成されている。クランク室12は、上下方向に延びるように形成されている。クランクシャフトは、上下方向に延びており、クランク室12内に収納されている。シリンダ13は、水平方向に延びるように形成されている。シリンダ13内にピストン11がスライド移動自在に収納されている。シリンダ13内にピストン11が収納されることにより、燃焼室14が形成される。
【0029】
<オイル循環装置>
オイル循環装置5は、クランクケース7に設けられたオイル流路15と、オイル流路15に連結されたオイルポンプ16と、オイル流路15の途中に設けられたオイルフィルタユニット17と、オイルフィルタユニット17に設けられたオイル戻し機構18と、を備える。
【0030】
オイル流路15は、上下方向の全体に渡って図示しないオイルが循環するように形成されている。オイル流路15は、船外機1の水中に水没した箇所から可動部8にオイルを導く。オイル流路15の一部には、クランクケース7の壁面7aに沿って上下方向に延びるメインギャラリ19が形成されている。
【0031】
オイルポンプ16は、クランクシャフトを介して駆動する。オイルポンプ16は、オイル流路15内に溜まっているオイルを上方へと汲み上げる。そして、オイルポンプ16は、クランクケース7内の可動部8にオイルを送り出す(
図1における矢印Y1参照)。
以下の説明では、オイルの流れ方向に対して上流側、下流側と称する場合がある。
【0032】
<オイルフィルタユニット>
図2は、オイルフィルタユニット17の分解斜視図である。
図3は、オイルフィルタユニット17の周辺の上下方向に沿う断面図である。
図3は、
図1を紙面反対側からみている。
オイルフィルタユニット17は、オイル流路15の途中でエンジン4の可動部8に送り出されるオイルを濾過するものである。
【0033】
図1から
図3に示すように、オイルフィルタユニット17は、メインギャラリ19の途中に設けられている。メインギャラリ19の途中に対応するクランクケース7の壁面7aには、メインギャラリ19に連通する開口流路7bが形成されている。開口流路7bを外側から閉塞するように、オイルフィルタユニット17が設けられている。開口流路7bは、水平方向に延びるように形成されている。開口流路7bは、クランクケース7の壁面7aに開口部7cを形成している。開口流路7bは、オイルフィルタユニット17の下流側に位置する。
【0034】
オイルフィルタユニット17は、クランクケース7の開口流路7bを閉塞するように取り付けられるオイルフィルタベース21と、オイルフィルタベース21に支持されるオイルフィルタ22と、オイルフィルタベース21内に設けられたオイル戻し機構18と、を備える。オイルフィルタベース21は、クランクケース7の壁面7aに外側から重なるベースブロック23と、ベースブロック23に一体成形されたフィルタ台座24と、を主構成としている。
【0035】
ベースブロック23は、開口流路7bの開口部7cを閉塞する。ベースブロック23は、クランクケース7における壁面7aのうち、開口部7cの下方と重なっている。ベースブロック23には、クランクケース7にオイルフィルタベース21を取りつけるための固定フランジ27が形成されている。固定フランジ27には、図示しないボルトが挿通される挿通孔27aが形成されている。
【0036】
挿通孔27aは、固定フランジ27の厚さ方向に貫通している。挿通孔27aにボルトを挿通し、ベースブロック23にボルトを締め付けることにより、クランクケース7にオイルフィルタベース21が締結固定される。
また、ベースブロック23の内部には、オイル戻し機構18が設けられている。オイル戻し機構18の詳細については後述する。
【0037】
フィルタ台座24は、円板状に形成されている。フィルタ台座24は、オイルフィルタ22が載置される台座面24aを有している。フィルタ台座24は、台座面24aの法線方向が上下方向に対して斜めになるように配置されている。台座面24aの径方向中央には、出口流路25が形成されている。出口流路25は、開口流路7bに連通する。
台座面24aにおける出口流路25の周囲には、入口流路26が形成されている。入口流路26は、オイルフィルタ22よりも上流側のメインギャラリ19に連通する。入口流路26の内側面26aに形成された連通孔26bがメインギャラリ19に連通されている。
【0038】
フィルタ台座24の外周面には、オイル受け鍔28が一体成形されている。オイル受け鍔28は、フィルタ台座24の外周面のうち、下半分に設けられている。すなわち、オイル受け鍔28は、台座面24aの法線方向からみてフィルタ台座24の下半分に沿うように半円状に形成されている。オイル受け鍔28の台座面24aとは反対側の端面28aは、台座面24aに対して斜めに形成されており、かつ水平面に沿っている。オイル受け鍔28は、オイルフィルタ22の下部を覆う。
【0039】
オイルフィルタ22は、有底筒状のフィルタケース31と、フィルタケース31に収納されたフィルタ本体32と、を備える。台座面24aに、フィルタケース31の開口部側の端面31aを当接させるようにしてフィルタケース31を固定する。フィルタケース31と台座面24aとにより閉塞された内部空間に、フィルタ本体32が配置される。
【0040】
台座面24aの法線方向は、上下方向に対して斜めである。このため、台座面24a上に配置されたオイルフィルタ22は、台座面24aから上下方向に対して斜め上方に突出された形になる。そして、オイルフィルタ22における台座面24a側の周縁部のうち、下半分の周囲が、これよりも下方に設けられたオイル受け鍔28に覆われる。
【0041】
このような構成のもと、メインギャラリ19の下方からオイルフィルタユニット17の入口流路26を介してフィルタケース31内にオイルが流入される(
図2における矢印Y2参照)。その後、フィルタ本体32を介して出口流路25にオイルが流出される(
図2における矢印Y3参照)。さらに、出口流路25を介して開口流路7bにオイルが流れ込み(
図2における矢印Y4参照)、可動部8に向かってメインギャラリ19にオイルが送り出される(
図2における矢印Y5参照)。
【0042】
<オイル戻し機構>
オイル戻し機構18は、クランクケース7の壁面7aのうち、オイルフィルタベース21が重なっている箇所に形成されたオイル排出口33と、オイル排出口33と開口流路7bとを連通するオイル排出流路34と、オイル排出流路34内に設けられた栓機構35と、を備える。オイル排出口33は、クランクケース7における壁面7aの内外を連通している。オイル排出流路34は、一端が開口流路7bに連通する上導入路36及び下導入路37と、一端がオイル排出口33に連通する戻し流路38と、各導入路36,37の他端、及び戻し流路38の他端とを連通する排出流路本体39と、を備える。
【0043】
各導入路36,37及び戻し流路38は水平方向に延びている。上導入路36は、開口流路7bの開口部7cのうち、上部に配置されている。下導入路37は、開口流路7bの開口部7cのうち、下部に配置されている。戻し流路38は、下導入路37よりも下方に配置されている。各導入路36,37及び戻し流路38の流路断面積は、ほぼ同一である。下導入路37の他端(排出流路本体39側の端部)には、オリフィス40が設けられている。オリフィス40の流路断面積は、下導入路37の流路断面積よりも十分に小さい。
【0044】
排出流路本体39は、ベースブロック23に下方から上方に向かって凹部を形成し、ベースブロック23の下部に形成された開口部23aをプラグ44で閉塞することにより形成される。ベースブロック23とプラグ44との間には、シール部45が設けられている。シール部45によって、ベースブロック23とプラグ44との間がシールされる。シール部45は、例えばパッキンである。これにより、排出流路本体39は、上導入路36から戻し流路38に至る間に上下方向に延びて形成されている。
【0045】
排出流路本体39の上下方向中央よりも下方に、下導入路37が配置された形になる。排出流路本体39の流路断面積は、各導入路36,37及び戻し流路38の流路断面積よりも十分に大きい。排出流路本体39内に、栓機構35が設けられている。排出流路本体39の下部には、段差を介して拡径された拡径部39aが形成されている。
【0046】
排出流路本体39の上部には、段差部41が形成されている。段差部41は、開口流路7bとは反対側に配置されている。段差部41によって、排出流路本体39の上部の流路断面積は、その他の排出流路本体39の流路断面積よりも僅かに小さくなる。段差部41は、栓機構35の後述する栓本体42の移動を制限している。
【0047】
栓機構35は、排出流路本体39を上下方向にスライド移動可能に設けられた有底筒状の栓本体42と、栓本体42を上方へと弾性的に付勢するコイルスプリング43と、を備える。栓本体42は、有底筒状に形成されている。栓本体42は、開口部42aを下方(プラグ44側)に向けて配置されている。栓本体42の外径は、排出流路本体39の内径とほぼ同一か若干小さい程度である。
【0048】
コイルスプリング43は、栓本体42内に上部の大部分が収納されている。コイルスプリング43の下部は、プラグ44に突出形成された円柱状の固定凸部44aに嵌合されている。これにより、コイルスプリング43の位置決めが行われている。コイルスプリング43は、圧縮された状態で収納されており、栓本体42に上方(プラグ44とは反対側)に向かう付勢力が作用される。
【0049】
コイルスプリング43に押圧された栓本体42は、排出流路本体39の段差部41に底壁42bが突き当たる。このため、栓本体42が最も上方に位置された場合であっても栓本体42によって上導入路36と排出流路本体39との間が遮断されることがない。栓本体42が最も上方に位置された場合であっても、排出流路本体39の上部には、上導入路36に連通する導入スペース39bが形成される。
【0050】
栓本体42の軸方向(上下方向)の長さは、栓本体42が最も上方に位置している状態において、栓本体42によって下導入路37(オリフィス40)が閉塞されない長さである。また、栓本体42の軸方向の長さは、栓本体42が最も上方に位置している状態において、栓本体42によって下導入路37(オリフィス40)が閉塞される長さである(詳細は後述する)。
【0051】
<オイル循環装置の動作>
次に、オイル循環装置5の動作について説明する。
まず、エンジン4が駆動されている場合について説明する。
エンジン4の可動部8が駆動されると、図示しないクランクシャフトを介してオイルポンプ16が駆動される。すると、オイル流路15内のオイルが下方から上方へと汲み上げられ、クランクケース7内の可動部8にオイルが送り出される(
図1における矢印Y1参照)。このとき、オイルは、メインギャラリ19の途中に設けられたオイルフィルタユニット17によって濾過されて可動部8に送り出される。
【0052】
すなわち、オイルフィルタユニット17を通過したオイルは、開口流路7bへと流れ込み、さらにメインギャラリ19を介して上方に送り出される。これと同時に、開口流路7bへと流れ込んだオイルは、オイルフィルタユニット17の上導入路36及び下導入路37に導かれる(
図3における矢印Y6参照)。
【0053】
図4は、オイル戻し機構18の動作説明図である。
図4は、前述の
図3に対応している。
図4に示すように、上導入路36に導かれたオイルは、さらに排出流路本体39の導入スペース39bに充満する。すると、導入スペース39bに充満したオイルの圧力が栓本体42の底壁42bに作用される。
【0054】
下導入路37に導かれたオイルは、オリフィス40によって栓本体42に大きな圧力を作用させない。また、栓本体42の周壁42cにオイルの圧力が多少作用したとしても僅かに径方向に向かう力が作用するだけである。この結果、栓本体42がコイルスプリング43のばね力に抗して下方へとスライド移動する(
図4における矢印Y7参照)。
【0055】
そして、プラグ44の上面44bに栓本体42の開口部42a側の端部が突き当たる。栓本体42によって、戻し流路38と排出流路本体39との間が遮断される。このため、オイルフィルタユニット17を通過したオイルは、戻し流路38に流入されることなく、可動部8に送り出される。
【0056】
次に、エンジン4が停止されている場合について説明する。
エンジン4の可動部8が停止されると、オイルポンプ16も停止する。すると、オイル流路15内のオイルの流れも停止する。オイルポンプ16が停止された時点では、メインギャラリ19のオイルフィルタユニット17(オイルフィルタ22)よりも下流側(以下、メインギャラリ19の下流側と称する)にオイルが滞留(残留)されている。このため、開口流路7bからオイルフィルタユニット17の上導入路36及び下導入路37にオイルが導かれる(
図3における矢印Y6参照)。さらに排出流路本体39の導入スペース39bにもオイルが充満される。
【0057】
このときの導入スペース39bに充満されたオイルの圧力は、オイルポンプ16が駆動されている場合のオイルの圧力と比較して小さい。このため、栓本体42は下方へとスライド移動することがない。栓本体42はは、コイルスプリング43の押圧力によって上方に位置したままになる。すなわち、排出流路本体39の段差部41に、栓本体42の底壁42bが突き当たったままである。
【0058】
この状態では、下導入路37と排出流路本体39とがオリフィス40を介して連通されている。また、排出流路本体39と戻し流路38とが連通されている。このため、オリフィス40を介して排出流路本体39にオイルが流入される。さらに、戻し流路38及びオイル排出口33を介してクランクケース7内にオイルが排出される(
図3における矢印Y8参照)。このように、オイル排出口33は、メインギャラリ19の下流側に形成されていることになる。
【0059】
エンジン4が停止されている場合、メインギャラリ19の下流側のオイルがオイル排出口33より排出されることにより、メインギャラリ19の下流側にオイルが滞留されない。このため、例えばオイルフィルタ22のメンテナンス時にオイルが溢れ出すのが防止される。
【0060】
より具体的には、例えばエンジン4の停止時にオイルフィルタ22のフィルタ本体32をメンテナンスする場合、オイルフィルタベース21の台座面24aからフィルタケース31を取り外す。このとき、メインギャラリ19の下流側にオイルが滞留されていないので、フィルタケース31を取り外してもオイルが溢れ出てしまうことがない。
また、オイルフィルタ22における台座面24a側の周縁部のうち、下半分の周囲はオイル受け鍔28に覆われている。このため、仮に僅かにオイルが漏れ出る場合であっても、オイル受け鍔28によってオイルを受けることができる。
【0061】
このように、上述のオイル循環装置5では、メインギャラリ19の途中に設けられたオイルフィルタ22と、メインギャラリ19の下流側に設けられたオイル排出口33と、を備える。このように、エンジン4の停止時にメインギャラリ19内のオイルをクランクケース7内に戻す構造とした。メインギャラリ19からクランクケース7内にオイルを戻すために、オイル排出口33を設けるだけでよい。このため、余計なスペースを確保する必要も無く、オイル循環装置5の構造も簡素かできる。したがって、オイル循環装置5を小型化できるとともに製造コストの増大を抑制できる。オイルフィルタ22(フィルタ本体32)を交換する際に、オイルの溢れ出しを効果的に防止でき、エネルギーの効率化に寄与できる。
【0062】
メインギャラリ19の途中にオイルフィルタ22を設けるために、クランクケース7の壁面7aにオイルフィルタユニット17を設けた。オイルフィルタユニット17のオイルフィルタベース21に、オイルフィルタ22の下流側(開口流路7b)とオイル排出口33とを連通するオイル排出流路34を設けた。このため、クランクケース7側への加工を極力抑えることができる。オイルフィルタ22を交換する際のオイルの溢れ出しを防止するために、オイルフィルタベース21を加工すればよい。したがって、メインギャラリ19からクランクケース7内にオイルを戻すための加工を容易にできる。よって、オイル循環装置5の製造コストの増大を抑制できる。
【0063】
オイル排出流路34のうち、下導入路37にオリフィス40を設けた。このため、可動部8の駆動時に無駄にオイル排出流路34を介してオイル排出口33からクランクケース7内へとオイルが戻ってしまうことを防止できる。このため、エネルギーの効率化に寄与できる。
【0064】
オイル排出流路34のうち、排出流路本体39に栓機構35(栓本体42)を設けた。栓本体42によって、メインギャラリ19からオイル排出口33へのオイルの流れを許容、遮断するようにした。このため、栓本体42によって、可動部8の駆動時に無駄にオイル排出流路34を介してオイル排出口33からクランクケース7内へとオイルが戻ってしまうことを、より確実に防止できる。よって、さらにエネルギーの効率化に寄与できる。
【0065】
栓機構35を機能させるために、オイル排出流路34を、上導入路36と、下導入路37と、連通する戻し流路38と、各導入路36,37、及び戻し流路38とを連通する排出流路本体39と、で構成している。栓本体42は、上導入路36と下導入路37との間に配置されているとともに、下導入路37とオイル排出口33とを同時に閉塞可能に配置されている。下導入路37には、オリフィス40が設けられている。栓本体42は、コイルスプリング43によって常時上導入路36に向かって弾性的に付勢されている。このため、簡素な構造で確実に栓本体42を機能させることができる。そして、栓本体42によって可動部8の駆動時に無駄にオイル排出流路34を介してオイル排出口33からクランクケース7内へとオイルが戻ってしまうことを確実に防止できる。よって、エネルギーの効率化に寄与できる。
【0066】
オイルフィルタ22は、メインギャラリ19に対して斜め上方に突出されている。オイルフィルタ22の下部は、オイル受け鍔28によって覆われている。このため、例えばオイルフィルタ22の交換時に万が一オイルが漏れ出た場合であっても、オイル受け鍔28によってオイルを受けることができる。
【0067】
[変形例]
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【0068】
上述の実施形態では、オイル戻し機構18は、オイル排出口33と、オイル排出流路34と、栓機構35と、を備える場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、栓機構35を設けなくてもよい。この場合、オイル排出流路34は、上導入路36を設けずに、下導入路37と戻し流路38とを連通させればよい。
【0069】
このような構成のもと、下導入路37にオリフィス40が設けられているので、エンジン4の可動部8が駆動されている場合でも積極的に戻し流路38にオイルが流れることがない。このため、オイルフィルタユニット17を通過したオイルは、戻し流路38に流入されることなく、可動部8に送り出される。
これに対し、エンジン4の可動部8が停止されている場合、オイル流路15内のオイルの流れが停止される。このため、下導入路37に導入されたオイルは、オリフィス40を介して戻し流路38にオイルが流れ込む。さらに、オイル排出口33を介してクランクケース7内にオイルが排出される。
【0070】
図5は、栓機構35を設けないオイル戻し機構18の他の変形例を示す上下方向に沿う断面図である。
図5は、前述の
図3に対応している。
図5に示すように、栓機構35を設けないオイル戻し機構18において、オイル排出流路34は、上導入路36及び下導入路37に代わって1つの導入路47としてよい。導入路37は、開口流路7bの開口部7cのうちの上部と排出流路本体39の上部とを連通している。導入路37の他端(排出流路本体39側の端部)には、オリフィス40が設けられている。
【0071】
戻し流路38は、排出流路本体39の上下方向中央よりも下方寄りからオイル排出口33に向かって下り勾配となるように傾斜形成されている。戻し流路の流路断面積は、導入路37の流路断面積よりも若干小さい。
【0072】
このように構成した場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。また、上述の実施形態(変形例)と比較して導入路を1つにできるので、オイル戻し機構18を簡素化できる。さらに、戻し流路38をオイル排出口33に向かって下り勾配となるように傾斜形成しているので、エンジン4の可動部8が停止されている場合、オイル戻し機構18にオイルが滞留することなく、オイル戻し機構18内のオイルやメインギャラリ19の下流側のオイルを速やかにクランクケース7内に戻すことができる。特に、船外機1をチルトアップした際にも角度をつけてオイルをクランクケース7内に戻すことができる。
【0073】
上述の変形例の場合、戻し流路38は傾斜形成されていなくてもよい。戻し流路38は、オイル排出口33に向かって下り勾配に形成されていればよい。例えば、戻し流路38は多少湾曲形成されていてもよい。
【0074】
上述の実施形態では、栓機構35は、栓本体42と栓本体42を上方へと弾性的に付勢するコイルスプリング43と、を備える場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、コイルスプリング43に代わって栓本体42を弾性的に付勢できるものであればよい。例えばコイルスプリング43に代わってゴムを採用することも可能である。
【0075】
上述の実施形態では、メインギャラリ19の途中にオイルフィルタ22を設けるために、オイルフィルタ22を支持するオイルフィルタベース21を設けた場合について説明した。オイルフィルタベース21に、メインギャラリ19のうちオイルフィルタ22よりも下流側とオイル排出口33とを連通するオイル排出流路34を形成した場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、メインギャラリ19のオイルフィルタ22よりも下流側とクランクケース7内とを連通するようにオイル排出口33が設けられていればよい。オイル排出口33は、クランクケース7の壁面7aのうち、オイルフィルタベース21が重なっている箇所に形成される場合に限られるものではない。
【0076】
メインギャラリ19のオイルフィルタ22よりも下流側とクランクケース7内とを連通するように直接オイル排出口33を設ける場合、オイル排出口33を以下のように設ければよい。すなわち、エンジン4の可動部8が駆動されている場合、オイル排出口33を介してクランクケース7内にオイルが排出されないように、オイル排出口33の流路断面積の大きさを調整すればよい。
【符号の説明】
【0077】
5…オイル循環装置
7…クランクケース
8…可動部
15…オイル流路
16…オイルポンプ
19…メインギャラリ
21…オイルフィルタベース
22…オイルフィルタ
28…オイル受け鍔
32…フィルタ本体(オイルフィルタ)
33…オイル排出口
34…オイル排出流路
35…栓機構
36…上導入路(オイル排出流路、第2連通路)
37…下導入路(オイル排出流路、第1連通路)
38…戻し流路(オイル排出流路)
39…排出流路本体(オイル排出流路)
40…オリフィス
42…栓本体(栓)
43…コイルスプリング(弾性部材)