(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050438
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】分散剤、分散体及びインク組成物、並びにこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 23/52 20220101AFI20240403BHJP
C09K 23/42 20220101ALI20240403BHJP
C09K 23/38 20220101ALI20240403BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20240403BHJP
C09D 11/02 20140101ALI20240403BHJP
【FI】
C09K23/52
C09K23/42
C09K23/38
C09D17/00
C09D11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023142040
(22)【出願日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2022155738
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226666
【氏名又は名称】日信化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 史夏
(72)【発明者】
【氏名】川畑 成吾
(72)【発明者】
【氏名】西川 知志
【テーマコード(参考)】
4D077
4J037
4J039
【Fターム(参考)】
4D077AA08
4D077AB03
4D077AC05
4D077BA02
4D077BA03
4D077BA07
4D077BA15
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4D077DC02Y
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4D077DE10Y
4J037AA30
4J037CC16
4J037EE28
4J037FF23
4J039BE01
4J039BE08
4J039BE22
4J039CA06
4J039EA44
(57)【要約】
【課題】本発明は、少ない添加量でも分散染料や顔料を分散させることができ、更には、濡れ性を発揮できる分散剤、再分散性を発揮できる分散体及びこれらを用いたインク組成物、並びにこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、(A)重量平均分子量1,000~50,000のスチレン-エチレンオキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体であって、スチレンの含有量が1~40質量%である共重合体50~99質量%と、(B)特定の化学式で表されるアセチレングリコールまたはアセチレングリコールのエトキシル化体であるアセチレン系界面活性剤1~50質量%とを含有することを特徴とする分散剤、分散体及びインク組成物、並びにこれらの製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)及び(B)成分、
(A)重量平均分子量1,000~50,000のスチレン-エチレンオキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体であって、(a1)スチレンの含有量が1~40質量%である共重合体:50~99質量%、
(B)下記式(1)
【化1】
(式中、R
1は炭素数3~5のアルキル基、R
2は炭素数1~5のアルキル基を示す。)
で表されるアセチレングリコール及び下記式(2)
【化2】
(式中、R
3及びR
4はそれぞれ炭素数1~5のアルキル基を示し、m及びnはそれぞれ0.5~25の正数であり、m+nは1~40である。)
で表されるアセチレングリコールのエトキシル化体から選ばれる少なくとも1種の化合物であるアセチレン系界面活性剤:1~50質量%
を含有することを特徴とする分散剤。
【請求項2】
上記(A)成分が、下記(a1)~(a3)、
(a1)スチレン:1~40質量%
(a2)エチレンオキシ基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体:1~59質量%
(a3)(a1)~(a2)以外の単量体:1~98質量%
の重合物である請求項1記載の分散剤。
【請求項3】
上記(a3)成分の単量体が、少なくとも1個の官能基を含有するラジカル重合性単量体を含む請求項2記載の分散剤。
【請求項4】
上記(A)及び(B)成分のみからなる請求項1又は2記載の分散剤。
【請求項5】
分散染料又は顔料の水性溶媒分散用である請求項1又は2記載の分散剤。
【請求項6】
分散剤と、分散染料及び/又は顔料と、水性溶媒とを含有し、上記分散剤が請求項1又は2記載の分散剤であることを特徴とする分散体。
【請求項7】
請求項6記載の分散体を含有することを特徴とするインク組成物。
【請求項8】
請求項1又は2記載の分散剤と、分散染料及び/又は顔料と、水性溶媒とを混合分散する工程とを含むことを特徴とする分散体の製造方法。
【請求項9】
下記の工程(a)及び(b)
(a)請求項1又は2記載の分散剤と、分散染料及び/又は顔料と、水性溶媒とを混合分散して分散体を得る工程と、
(b)上記分散体と、水、水溶性有機溶媒、樹脂、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、防腐剤及び粘度調整剤の群から選ばれる少なくとも1種の物質とを混合する工程
を含むことを特徴とするインク組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散染料や顔料を分散させるために用いられる分散剤、分散体及びインク組成物、並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、分散染料や顔料はインクの着色剤として使用されている。分散染料や顔料をインクに使用する場合は、微粒子化した分散染料や顔料を水に分散させる必要がある。しかしながら、分散染料や顔料は水に不溶であるため、分散染料や顔料を分散状態にして、長期間安定に保つことが重要となる。
【0003】
さらに、分散染料や顔料のように水に不溶な着色剤を含有するインクは、何らかの要因により含有する水分を失って乾燥状態になると顔料の分散状態が壊れ、顔料の凝集が生じるという欠点があった。このように一度凝集したインク中の分散染料や顔料は、水等の液媒体を加えても再び分散状態に戻すことができない状態となる(再分散性が悪い)ため、その改善が強く求められている。
【0004】
インクの分散剤としては、従来よりノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、高分子界面活性剤等が提案されている。例えば、特許文献1や特許文献2には、アセチレン基を含有するノニオン系界面活性剤は顔料分散剤として有用であることが開示されている。しかしながら、アセチレン基を含有するノニオン系界面活性剤は、インクの浸透性と抑泡性には優れているものの、他の分散剤と比較して分散に時間を要するなど分散能力は劣り、再分散効果も期待できない。
【0005】
顔料の再分散を容易にする方法としては、例えば、特許文献3では顔料の粒子表面をシランカップリング剤や特定の分散剤で被覆することで、顔料同士の直接的な接触や、強い凝集・密着を抑制する方法が提案されている。
【0006】
また、特許文献4や特許文献5では、アクリル系のポリマーを用いた顔料分散体がインクの再分散性を高めることが開示されているが、顔料水分散液中のポリマーを架橋する必要や、リビングラジカル重合をする必要があるなどその工程は複雑であった。そのため、より容易に再分散効果が期待できる分散剤の開発が望まれている。
【0007】
さらに、特許文献6では、疎水性単量体とアクリル系単量体、スルホン酸基を有する親水性ビニル単量体を有する分散樹脂を開示しているが、疎水性単量体の割合が高いため、水系インクでは分散効果を発揮できない場合もある。
【0008】
特許文献7では、スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合体と特定のアセチレングリコール系化合物とを併用したインクジェットインクが高品位で安定した記録性能があり、インクの保存安定性を維持しつつ、布帛表面への印字濃度を高くすることができることを開示しているが、乾燥後の再分散性については明示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000-290578号公報
【特許文献2】特開2002-020673号公報
【特許文献3】国際公開第2013/008691号
【特許文献4】特開2019-210389号公報
【特許文献5】特開2019-014879号公報
【特許文献6】特開2022-052994号公報
【特許文献7】国際公開第2014/129323号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、少ない添加量でも分散染料や顔料を分散させることができ、更には、濡れ性を発揮できる分散剤、再分散性を発揮できる分散体及びこれらを用いたインク組成物、並びにこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、スチレン-エチレンオキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体とアセチレン系界面活性剤とを併用した分散剤を用いると、少量の添加で分散性、濡れ性を発揮し、分散染料や顔料の微粒子化に優れ、さらに再分散性を発揮できることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0012】
従って、本発明は、下記の分散剤、分散体及びインク組成物、並びにこれらの製造方法を提供する。
1.下記の(A)及び(B)成分、
(A)重量平均分子量1,000~50,000のスチレン-エチレンオキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体であって、(a1)スチレンの含有量が1~40質量%である共重合体:50~99質量%、
(B)下記式(1)
【化1】
(式中、R
1は炭素数3~5のアルキル基、R
2は炭素数1~5のアルキル基を示す。)
で表されるアセチレングリコール及び下記式(2)
【化2】
(式中、R
3及びR
4はそれぞれ炭素数1~5のアルキル基を示し、m及びnはそれぞれ0.5~25の正数であり、m+nは1~40である。)
で表されるアセチレングリコールのエトキシル化体から選ばれる少なくとも1種の化合物であるアセチレン系界面活性剤:1~50質量%
を含有することを特徴とする分散剤。
2.上記(A)成分が、下記(a1)~(a3)、
(a1)スチレン:1~40質量%
(a2)エチレンオキシ基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体:1~59質量%
(a3)(a1)~(a2)以外の単量体:1~98質量%
の重合物である上記1記載の分散剤。
3.上記(a3)成分の単量体が、少なくとも1個の官能基を含有するラジカル重合性単量体を含む上記2記載の分散剤。
4.上記(A)及び(B)成分のみからなる上記1又は2記載の分散剤。
5.分散染料又は顔料の水性溶媒分散用である上記1又は2記載の分散剤。
6.分散剤と、分散染料及び/又は顔料と、水性溶媒とを含有し、上記分散剤が上記1又は2記載の分散剤であることを特徴とする分散体。
7.上記6記載の分散体を含有することを特徴とするインク組成物。
8.上記1又は2記載の分散剤と、分散染料及び/又は顔料と、水性溶媒とを混合分散する工程とを含むことを特徴とする分散体の製造方法。
9.下記の工程(a)及び(b)
(a)上記1又は2記載の分散剤と、分散染料及び/又は顔料と、水性溶媒とを混合分散して分散体を得る工程と、
(b)上記分散体と、水、水溶性有機溶媒、樹脂、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、防腐剤及び粘度調整剤の群から選ばれる少なくとも1種の物質とを混合する工程
を含むことを特徴とするインク組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の分散剤によれば、分散染料や顔料の種類に拘わらず、少ない添加量で分散染料や顔料を分散させることができる。また、この分散剤を用いた分散体及びインク組成物は、濡れ性、分散安定性を発揮し、さらに再分散性を発揮できるものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の分散剤は、(A)重量平均分子量1,000~50,000のスチレン-エチレンオキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体(以下(A)成分とする)と、アセチレングリコール及びアセチレングリコールのエトキシル化体から選ばれる少なくとも1種の化合物(以下(B)成分とする)とを含有する。
【0015】
(A)成分の重量平均分子量1,000~50,000のスチレン-エチレンオキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体は、
(a1)スチレン:1~40質量%
(a2)エチレンオキシ基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体:1~59質量%
(a3)(a1)~(a2)以外の単量体:1~98質量%
の重合物であることが好ましい。(A)成分はランダム共重合体であってよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0016】
上記(a1)成分であるスチレンの含有量は、上記(a1)~(a3)成分の単量体100質量%に対して1~40質量%であり、好ましくは10~30質量%である。この含有量を1~40質量%の範囲内とすることで、分散体に再分散性の効果が得られる。
【0017】
上記(a2)成分であるエチレンオキシ基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、エチレンオキシ基付加モル数が1~100モルであることが好ましく、さらに好ましくは5~90モル、さらには10~90モルであることが好ましい。
【0018】
上記(a2)成分であるエチレンオキシ基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の重量平均分子量は、好ましくは100~5,000である。
【0019】
上記(a2)成分として具体的には、ポリエチレングリコールによって変性されたアクリル酸アルキルエステル単量体が挙げられる。具体例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール変性の2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-プロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。特に好ましくはポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートである。
【0020】
上記のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートは、下記式で表される。
【化3】
(式中、Rは水素原子または炭素数1~20のアルキル基を示し、pは1~100の正数を示す。)
【0021】
上記(a2)成分の市販品としては、例えば、日油株式会社製のブレンマー「PME-400」「PME-1000」「PME-4000」、「PE-200」「PE-350」「AE-200」「AE-400」「AME-400」、共栄社化学株式会社製のライトエステル「130MA」「041MA」、ライトアクリレート「MTG-A」「130A」、昭和電工マテリアルズ社製のファンクリル「FA-400M(100)」、新中村化学工業社製のNKエステル「AM-90G」「AM-130G」「AM-230G」、「M-90G」「M-130G」「M-230G」「M-450G」、エボニック社製のVISIOMER「MPEG 750MA W」「MPEG 1005 MA W」「MPEG 2005 MA W」「MPEG 5005 MA W」等が挙げられる。
【0022】
上記(a2)成分のエチレンオキシ基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、(a1)~(a3)の単量体100質量%に対して、1~59質量%であり、5~55質量%であることが好ましい。(a2)成分の含有量を1~59質量%の範囲内にすることで、分散剤として使用した際に、分散染料や顔料に分散性の効果が得られる。
【0023】
上記(a3)成分である(a1)~(a2)以外の単量体としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体及び/又はカルボキシ基、アミド基、ヒドロキシ基、エポキシ基、スルホン酸基等の官能基を含有するラジカル重合性単量体などが挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができるが、少なくともカルボキシ基、アミド基、ヒドロキシ基、エポキシ基、スルホン酸基等の官能基を含有するラジカル重合性単量体のうちの1種を含有することが好ましい。特に好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体及び/又はカルボキシ基含有ラジカル重合性単量体、ヒドロキシ基含有ラジカル重合性単量体である。
【0024】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、直鎖又は分岐構造を有するもの、脂環基を有するもの、芳香環基を有するものなど特に限定されないが、上記(a2)成分であるエチレンオキシ基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は含まない。
【0025】
直鎖又は分岐構造を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
脂環基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
芳香環基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
カルボキシ基含有ラジカル重合性単量体としては、メタクリル酸、アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、ビニル安息香酸、マレイン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ブチルエステルなどが挙げられる。
【0029】
アミド基含有ラジカル重合性単量体としては、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0030】
ヒドロキシ基含有ラジカル重合性単量体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1-メチル-4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1-メチル-4-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
エポキシ基含有ラジカル重合性単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、メタリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0032】
スルホン酸基含有ラジカル重合性単量体としては、p-スチレンスルホン酸ナトリウム、p-スチレンスルホン酸リチウム、N-t-ブチルアクリルアミドスルホン酸、2-スルホエチルメタクリレートナトリウム、多環フェニルエーテルメタクリレート硫酸エステル塩、N-スルホン酸ポリオキシアルキレンメタクリレートナトリウム、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルスルホン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0033】
スルホン酸基含有ラジカル重合性単量体の市販品としては、例えば、東ソー・ファインケム株式会社製のスピノマー「NaSS」(p-スチレンスルホン酸ナトリウム)、「LiSS」(p-スチレンスルホン酸リチウム)、東亜合成株式会社製「ATBS」(N-t-ブチルアクリルアミドスルホン酸)、日本乳化剤社製のアントックス「MS-2N-D」(2-スルホエチルメタクリレートナトリウム)、「MS-60」(多環フェニルエーテルメタクリレート硫酸エステル塩)、三洋化成社製のエレミノール「JS-20」「RS-3000」(N-スルホン酸ポリオキシアルキレンメタクリレートナトリウム)、花王社製のラテムル「PD-104」「PD-105」(ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルスルホン酸アンモニウム)等が挙げられる。
【0034】
(a1)~(a2)成分以外の単量体の含有量は、(a1)~(a3)の単量体100質量%に対して、1~98質量%であり、10~80質量%であることが好ましい。この含有量が1質量%未満であると、アクリル樹脂の水溶化が難しくなるという不具合があり、98質量%を超えると分散体の再分散性を付与する効果が損なわれる可能性がある。
【0035】
(a1)~(a3)成分の単量体は公知の重合方法によって重合することができ、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合が挙げられる。これらの公知の重合方法のうち、設備並びに操作の簡便性から、溶液重合が好ましく適用される。
【0036】
重合反応を効率よく進行させるためには、公知の重合開始剤を用いることができる。重合開始剤は重合方法、重合条件、及び溶媒への溶解性に応じて適宜選択することができるが、安全性と重合効率の観点から10時間半減温度が70~110℃であることが好ましい。10時間半減温度が70℃未満であると、常温での安定性が低いために発火の危険性が高まる可能性がある。10時間半減温度が110℃以上であると、重合反応に高温・長時間を要するために、製造の効率が低下することがある。具体的には、2,2’-アゾビス-イソブチロニトリルの様なアゾビス化合物、過酸化ベンゾイルの様な有機過酸化物、過硫酸ナトリウムの様な無機過酸化物、及び、この様な酸化剤と重亜硫酸塩の様な還元剤との組み合わせから成るレドックス触媒系が挙げられ、これらを1種類、または2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0037】
分子量を好ましい範囲に調整するために連鎖移動剤を添加することができる。カテコールなどのアルコール類、n-ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、四塩化炭素などのハロゲン化炭素などが例示され、これらを1種類、または2種類以上組み合わせて使用することができる。連鎖移動定数と安全性を考慮するとメルカプタン類の選択が好ましく、残存したメルカプタン類の臭気を抑制できる点で、n-ドデシルメルカプタンの様な高沸点のメルカプタン類が特に好ましい。
【0038】
溶媒を使用することでポリマーを溶液状態で扱え、簡便な装置で合成できるので好ましい。適用する重合方法、重合条件、原料の溶解性、分散剤を用いた分散体組成物の溶媒組成に応じて適当な溶媒を選択することができるが、水性分散剤を製造する場合は、標準状態における沸点が60~120℃のものを選択するのが好ましい。沸点が60℃未満の場合は、重合を短時間で効率よく進行させることが難しくなる場合がある。一方、沸点が120℃以上の場合は、減圧留去に多量のエネルギーを要する場合がある。好ましく用いられる溶媒としては、水(沸点100℃)や、2-プロパノール(沸点82℃)の様なアルコール類、酢酸エチル(沸点77℃)の様なエステル類、2-ブタノン(沸点80℃)の様なケトン類、トルエン(沸点111℃)の様な芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン(沸点66℃)の様なエーテル類が挙げられ、これらを1種類又は2種類以上組み合わせて使用することができる。水性分散剤を製造する場合は、水混和性のアルコール類、エーテル類およびこれらと他の有機溶剤および、又は、水との混合溶剤が好適に用いられ、安全性と経済性とを考慮すると2-プロパノールおよび、2-プロパノールと他の有機溶剤および、又は、水の混合溶剤が更に好適に用いられる。
【0039】
ポリマーの溶媒への溶解状態、又は分散状態を安定化するために、中和剤を用いてポリマーの有する官能基の一部又は全部を中和することができる。中和剤は、モノマーの状態で添加してから重合しても、酸性官能基を有するモノマーを重合してから添加しても良い。酸性官能基の中和剤としては、塩基性化合物が使用でき、分散系との相性や、分散剤を用いた分散体組成物の組成を考慮して適宜選択することができる。具体的には、アンモニアや、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールの様な有機アミン化合物、水酸化ナトリウムの様なアルカリ金属水酸化物が例示され、安全性、臭気の観点から、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールの様な高沸点の有機アミン化合物が好適に用いられる。
【0040】
上記の重合方法で得られた(A)スチレン-エチレンオキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体は、重量平均分子量(Mw)が1,000~50,000であり、好ましくは3,000~30,000である。この重量平均分子量(Mw)が1,000よりも小さくなると、分散染料や顔料に対する分散安定化力が低下し、50,000より大きくなると、分散染料や顔料を分散する能力が低下し、またインクの粘度が高くなりすぎる場合があり好ましくない。前記重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミッションクロマトグラフ)法で測定することができる。
【0041】
(A)スチレン-エチレンオキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体の酸価は50~300であることが好ましく、さらに好ましくは100~250の範囲にあるものが好ましい。酸価が50未満の場合、水に対する樹脂の溶解性が悪くなり、また分散染料や顔料に対する分散安定化力が劣る傾向にあり、酸価が300を超えると、水性媒体との親和性が強くなり、印字後の画像ににじみが発生し易い傾向があり好ましくない。樹脂の酸価は、樹脂1gを中和するのに要するKOHのmg数を表し、JIS-K 3054に従って測定する。
【0042】
(A)スチレン-エチレンオキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体の含有量は、分散剤中50~99質量%であり、好ましくは60~99質量%であり、さらに好ましくは70~99質量%である。この含有量が50質量%未満であると、分散染料や顔料の分散性が悪化するという不具合があり、99質量%を超えると分散染料及び顔料に対する濡れ性が劣化、また再分散性付与も損なわれる可能性がある。
【0043】
(B)成分のアセチレングリコールは、下記式(1)で表される。
【化4】
【0044】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数3~5のアルキル基を示す。
【0045】
上記式(1)で表されるアセチレングリコールとしては、例えば、2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール、5,8-ジメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、4,7-ジメチル-5-デシン-4,7-ジオール等を挙げることができる。
【0046】
また、アセチレングリコールのエトキシル化体は、下記式(2)で表される。
【化5】
【0047】
上記式(2)中、R3及びR4はそれぞれ炭素数1~5のアルキル基を示し、m及びnはそれぞれ0.5~25の正数であり、m+nは1~40である。
【0048】
上記式(2)のアセチレングリコールのエトキシル化体としては、例えば、2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオールのエトキシル化体(m+nの平均値:6)、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのエトキシル化体(m+nの平均値:10)、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのエトキシル化体(m+nの平均値:4)、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオールのエトキシル化体(m+nの平均値:4)等の上記アセチレングリコールのエチレンオキサイド誘導体を挙げることができる。上記式(2)におけるエチレンオキサイド単位の付加モル数は、それぞれ0.5~25モルであることが好適であり、また、これらの付加モル総数は1~40モルであることが好適である。エチレンオキサイドの付加モル総数が40モルを超えると、水への溶解性が高くなり、起泡性が大きくなるため消泡効果が低下する。
【0049】
(B)成分のアセチレングリコール類の重量平均分子量は1,000以下であることが好ましい。
【0050】
(B)成分のアセチレングリコール類のHLBは特に限定されないが、2~15であることが好ましく、さらに好ましくは2~14、さらには2~12であることが好ましい。ここで、HLB(親水基/疎水基バランス「Hydrophile-Lipophile Barance」)は、下記式(3)(グリフィン法)により定義されるものである。HLBは0~20までの値をとり、0に近づくほど親油性が高く、20に近づくほど親水性が高くなる値である。
【数1】
【0051】
(B)成分のアセチレングリコール類は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。また、(B)成分の配合量は、分散剤全体の1~50質量%であることが必須の要件であり、好ましくは1~40質量%、さらに好ましくは1~30質量%である。(B)成分の配合量が1質量%未満であると、分散染料及び顔料に対する濡れ性が劣化し、50質量%を超えると、分散染料や顔料の分散性が悪化してしまう。
【0052】
本発明の分散剤は、プロペラ式撹拌機などを用いた公知の混合調製方法により、(A)成分と(B)成分とを混合することにより得ることができる。この場合、常温において固体の成分を用いる場合は、必要に応じて加熱混合してもよい。
【0053】
本発明の分散体は、上記の分散剤と、分散染料及び/又は顔料と、水性溶媒とを含むものである。
【0054】
上記分散体の構成成分について以下に説明する。
本発明の分散体において、分散剤の配合量は、分散染料及び顔料の100質量部に対して1~100質量部であることが好ましく、3~80質量部であることがより好ましく、5~50質量部であることが更に好ましい。分散剤の配合量が少なすぎると、分散染料や顔料を十分に分散させることができず、また、分散剤の配合量が多すぎると、分散体中に分散染料や顔料に吸着していない分散剤が多く存在することになり好ましくない。
【0055】
分散染料は、特に限定されず公知のものを使用することができる。分散染料は、ベンゼンアゾ系(モノアゾ、ジスアゾ)、複素環アゾ系(チアゾールアゾ、ベンゾチアゾールアゾ、ピリドンアゾ、ピラゾロンアゾ、チオフェンアゾ等)、アントラキノン系、縮合系(キノフタロン、スチリル、クマリン等)等の化学構造に分類され、水溶性基をもたないため水に難溶で、分子量が2,000以下で他の染料に比べて小さい等の特徴を有するものである。
【0056】
本発明に好ましく使用できる分散染料を以下に例示する。
C.I.Disperse Yellow 3、4、5、7、9、13、24、30、33、34、42、44、49、50、51、54、56、58、60、63、64、66、68、71、74、76、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、160、162、163、164、165、179、180、182、183、186、192、198、199、202、204、210、211、215、216、218、224などの黄色染料;
C.I.Disperse Orange 1、3、5、7、11、13、17、20、21、25、29、30、31、32、33、37、38、42、43、44、45、47、48、49、50、53、54、55、56、57、58、59、61、66、71、73、76、78、80、89、90、91、93、96、97、119、127、130、139、142などの橙色染料;
C.I.Disperse Red 1、4、5、7、11、12、13、15、17、27、43、44、50、52、53、54、55、56、58、59、60、65、72、73、74、75、76、78、81、82、86、88、90、91、92、93、96、103、105、106、107、108、110、111、113、117、118、121、122、126、127、128、131、132、134、135、137、143、145、146、151、152、153、154、157、159、164、167、169、177、179、181、183、184、185、188、189、190、191、192、200、201、202、203、205、206、207、210、221、224、225、227、229、239、240、257、258、277、278、279、281、288、289、298、302、303、310、311、312、320、324、328などの赤色染料;
C.I.Disperse Violet 1、4、8、23、26、27、28、31、33、35、36、38、40、43、46、48、50、51、52、56、57、59、61、63、69、77などの紫色染料;
C.I.Disperse Green 6:1、9などの緑色染料;
C.I.Disperse Brown 1、2、4、9、13、19、21、27などの茶色染料;
C.I.Disperse Blue 3、7、9、14、16、19、20、26、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、71、72、73、75、79、81、82、83、87、91、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、139、141、142、143、146、148、149、153、154、158、165、167、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、267、268、270、284、285、287、288、291、293、295、297、301、315、330、333、359、360などの青色染料;
C.I.Disperse Black 1、3、10、24などの黒色染料等を好ましく使用できる。
【0057】
日本化薬(株)製の染料としては、Kayaset Black K-R、A-N、Kayalon Polyester Black S-200、EX-SF 300、G-SF、BR-SF、2B-SF 200、TA-SF 200、AUL-S、Kayaset Yellow K-CL、Kayalon Polyester Yellow 4G-E、Kayalon Polyester Light Yellow 5G-S、Kayaset Red K-BL、Kayacelon Red E-BF、SMS-5、SMS-12、Kayalon Polyester Red TL-SF、BR-S、BL-E、HL-SF、3BL-S200、AUL-S、Kayalon Polyester Light Red B-S200、Kayalon Polyester Rubine BL-S200、Kayaset Blue N、K-FL、MSB-13、Kayalon Polyester Blue BR-SF、T-S、Kayalon Polyester Light Blue BGL-S200、Kayalon Polyester Turq Blue GL-S200、Kayalon Polyester Blue Green FCT-S等を好ましく使用できる。
オリエント化学工業(株)製の染料としては、Valifast Black 3806、3810、3820、Oil Black BS、BY、B-85、860、Water Yellow 6C、Valifast Yellow 1101、1105、3110、3120、4120、4126、Oplas Yellow 130、140、Oil Yellow GG-S、105、107、129、818、Water Red 27、Valifast Red 1306、1355、2303、3311、3320、Valifast Orange 3210、Valifast Brown 2402、Oil Red 5B、Oil Pink 312、Oil Brown BB、Valifast Blue 1601、1603、1605、2606、3806、3820、Oil Blue #15、#613、613、N14、BOS等を好ましく使用できる。
住友化学(株)製の染料としては、Sumikaron Black S-BL、S-BF extra conc.、S-RPD、S-XE 300%、Sumikaron Yellow SE-4G、SE-5G、SE-3GL conc.、SE-RPD、Sumikaron Brilliant Flavine S-10G、Sumikaron Red E-FBL、E-RPD(E)、S-RPD(S)、Sumikaron Brilliant Red S-BF、S-BLF、SE-BL、SE-BGL、SE-2BF、SE-3BL(N)、Sumikaron Red E-FBL、E-RPD(E)、S-RPD(S)、Sumikaron Brilliant Red S-BF、S-BLF、SE-BL、SE-BGL、SE-2BF、SE-3BL(N)、Sumikaron Brilliant Blue S-BL、Sumikaron Turquoise Blue S-GL、S-GLFgrain等を好ましく使用できる。
BASF社製の染料としては、Basacryl Black X-BGW、NaozaponBlack X-51、X-55、Neozapon Yellow 081、Lurafix Yellow 138等、Zapon Blue 807、Neozapon Blue 807、Lurafix Blue590、660、Orasol Black RLI、RL、CN、Oracet Yellow 8GF、GHS、Orasol Red G、Oracet Pink RP、Orasol Blue GL、GN、2R等を好ましく使用できる。
田岡化学工業(株)製の染料としては、Oleosol Fast Black AR、RL、Oleosol Fast Pink FB、Rhodamine A、B、B gran.、Oleosol Fast Yellow 2G、Oleosol Fast Blue ELN等を好ましく使用できる。
保土谷化学工業(株)製の染料としては、Spilon Black BNH、MH special等を好ましく使用できる。
三井化学(株)製の染料としては、PS Yellow GG、MS Yellow HD-180、PS Red G、MS Magenta VP等を好ましく使用できる。
バイエル社製の染料としては、Ceres Blue GN 01等を好ましく使用できる。
住化カラー(株)製の染料としては、TS Yellow 118 cake、ESC Yellow 155、Sumiplast Yellow HLR、GC、TS Turq Blue 618、606、ESC Blue 655、660、Sumiplast BlueS、OA等を好ましく使用できる。
【0058】
顔料は、特に限定されず公知のものを使用することができる。有機顔料としては、例えば、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料等のアゾ顔料、キナクドリン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料、金属錯体顔料、ジケトピロロピロール顔料等の多環式顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられる。また、無機顔料としては、カーボンブラック、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属フェロシアン化物、金属塩化物等が挙げられ、更にカーボンブラックとしては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
【0059】
顔料の具体例としては、C.I.Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、122、123、146、149、168、177、178、179、187、200、202、208、210、215、224、254、255、264などの赤色顔料;
C.I.Pigment Yellow 1、3、5、6、14、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、93、97、98、104、108、110、128、138、139、147、150、151、154、155、166、167、168、170、180、188、193、194、213などの黄色顔料;
C.I.Pigment Orange 36、38、43などの橙色顔料;
C.I.Pigment Blue 15、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60などの青色顔料;
C.I.Pigment Green 7、36、58などの緑色顔料;
C.I.Pigment Violet 19、23、32、50などの紫色顔料;
C.I.Pigment Black 7などの黒色顔料が挙げられる。
これらの中でも、C.I.Pigment Red 122、C.I.Pigment Yellow 74、128、155、C.I.Pigment Blue 15:3、15:4、15:6、C.I.Pigment Green 7、36、C.I.Pigment Violet 19、C.I.Pigment Black 7等を好ましく使用できる。
【0060】
分散体に含まれる分散染料及び/又は顔料は、その目的に応じて、種類、粒子径、処理方法等を適宜選択することができる。また、分散体に含まれる分散染料及び顔料については、1種のみで使用してもよいし、2種以上の複数種類で使用してもよい。
【0061】
分散体における分散染料及び顔料の濃度は、分散体100質量%中、1~50質量%であることが好ましく、5~50質量%であることがより好ましい。分散染料及び顔料の濃度が50質量%を超えると、分散体中において、分散染料及び顔料の密度が高くなり、自由な移動が妨げられることによって凝集してしまう可能性がある。
【0062】
水性溶媒は、水及び/又は水溶性有機溶媒を使用することができ、2種以上を混合して使用してもよい。水は、純水又はイオン交換水(脱イオン水)を用いることが好ましい。また、水溶性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールなどのグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、グリセリンなどの多価アルコール、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどの含窒素化合物類を用いることができる。分散体中の水及び水溶性有機溶媒の割合は、分散体100質量%中、5~95質量%であることが好ましく、30~90質量%であることがより好ましい。
【0063】
本発明の分散体の製造方法については、特に、上述した分散剤と、分散染料及び/又は顔料と、水性溶媒とを混合分散する工程とを含むことが好適である。例えば、分散剤と、分散染料及び/又は顔料と、水性溶媒を、ペイントシェーカー、ビーズミル、ボールミル、ディソルバー、ニーダーなどの混合分散機を用いて混合し、分散体を得ることができる。また、常温において固体の成分を用いる場合は、必要に応じて加熱混合してもよい。
【0064】
分散体の静的表面張力は、60mN/m以下が望ましく、40mN/m以下がより望ましい。
【0065】
分散体の粘度は、50.0mPa・s以下が望ましく、30.0mPa・s以下がより望ましい。また、分散体の粘度の下限値としては、1.0mPa・s以上であることが望ましい。この場合の粘度は、25℃における条件である。
【0066】
分散体中の分散染料及び/又は顔料の平均粒子径については、分散染料及び/又は顔料の種類によるが、500nm以下が望ましく、300nm以下がより望ましい。ここで言う平均粒子径とは、メディアン径(D50)のことを言う。
【0067】
また、本発明の分散体は分散安定性に優れ、界面移動速度は3.0μm/s以下が望ましい。
【0068】
本発明の分散体は再分散性に優れている。即ち、分散染料や顔料のように水に不溶な着色剤を含有するインクは乾燥状態になると分散染料や顔料の分散状態が壊れ凝集が生じる。一般的には、一度凝集したインク中の分散染料や顔料は、水等の液媒体を加えても再び分散状態に戻すことができない状態となり、再分散性が悪くなることが多いが、本発明では、その再分散性に優れる。本発明では、分散体の分散媒への溶出率は40%以上が望ましく、50%以上がより好ましい。分散体の分散媒への溶出率については後述する実施例に記載する。
【0069】
本発明のインク組成物は、上述した本発明の分散体を含有し、更に、樹脂、その他の添加剤を任意に含むものである。即ち、本発明のインク組成物は、下記(i)~(v)
(i)分散剤
(ii)分散染料及び/又は顔料
(iii)水及び/又は水溶性有機溶媒
(iv)樹脂
(v)紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、防腐剤及び粘度調整剤の群から選ばれる1種又は2種以上の添加剤
を含有することが好適である。
【0070】
インク組成物中の分散染料及び/又は顔料の濃度は、インク組成物100質量%中、0.1~20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~10質量%である。
【0071】
インク組成物中の水及び/又は水溶性有機溶媒の割合は、インク組成物100質量%中、50~99質量%であることが好ましく、60~95質量%であることがより好ましい。
【0072】
インク組成物中に含まれる樹脂は、疎水基及び親水基を有しているポリマーであることが好ましい。このポリマーは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基から選ばれる少なくとも1種の官能基を疎水基として有することが好ましい。また、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基及びこれらの官能基から選ばれる少なくとも1種の官能基を親水基として有することが好ましい。このようなポリマーは、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基等の官能基を有するモノマーやオリゴマー類を重合することによって得られる。具体的には、スチレン、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ブチルメタクリレート、(α,2,3又は4)-アルキルスチレン、(α,2,3又は4)-アルコキシスチレン、3,4-ジメチルスチレン、α-フェニルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他のアルキル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基のジエチレングリコール又はポリエチレングリコールの(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、その他含フッ素、含塩素、含珪素(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、(メタ)アクリル酸等の1官能の他に架橋構造を導入する場合は(モノ、ジ、トリ、テトラ、ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール及び1,10-デカンジオール等の(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート、ビスフェノールA又はFのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のアクリル基やメタクリル基を有する化合物を用いることができる。
【0073】
インク組成物中の樹脂の割合は特に限定されないが、インク組成物100質量%中、0~30質量%であることが好ましく、0~20質量%であることがより好ましい。なお、インク組成物中に樹脂を配合する場合は、1質量%以上とすることが好ましい。
【0074】
その他、各種の添加剤をインク組成物に含有させることができる。添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、防腐剤、粘度調整剤等が挙げられ、これらを適宜選択してインク組成物中に配合することができる。これらの添加剤は、分散染料及び/又は顔料、水及び/又は水溶性有機溶媒、樹脂とは別に、分散体及びインク組成物100質量%中における残部、具体的には、インク組成物100質量%中、0~10質量%の割合で配合させることができる。
【0075】
また、インク組成物の製造方法については、特に制限はないが、下記の工程(a)及び(b)、
(a)上述した分散剤と、分散染料及び/又は顔料と、水性溶媒とを混合分散して分散体を得る工程と、
(b)上記分散体と、水、水溶性有機溶媒、樹脂、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、防腐剤及び粘度調整剤の群から選ばれる少なくとも1種の物質とを混合する工程
を含む方法を採用することが好適である。
【0076】
インク組成物は、インクジェット記録方式、ペン等の筆記用具による記録方式、その他の印刷方法によって記録媒体に塗工させる。本発明のインク組成物は、特にインクジェット記録方式に好ましく用いることができる。
【実施例0077】
(A)スチレン-エチレンオキシ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体を、下記の通り、公知慣用の方法で合成した。なお、特に断りの無い限り、本製造例において「質量部」の意味で「部」を、「質量%」の意味で「%」を使用する。
【0078】
<製造例1>
[スチレン20%,メチルメタクリレート27%,ポリエチレングリコールメタクリレート20%,メタクリル酸33%共重合体の合成]
(溶液重合工程)
温度計、攪拌機、還流管を備えた3ツ口フラスコにスチレン(以下、STと表記する)18部、メチルメタクリレート(以下、MMAと表記する)24部、ポリエチレングリコールメタクリレート(平均EO付加モル数23、日油社製の「ブレンマーPME-1000」、以下、「PEG(23)MA」と表記する)18部、メタクリル酸(以下、「MAA」と表記する)30部、連鎖移動剤としてn-ドデシルメルカプタン(以下、「NDM」と表記する)1.8部、重合開始剤として2,2’-アゾビス-イソブチロニトリル(以下、「AIBN」と表記する)0.9部、溶媒として2-プロパノール(以下、「IPA」と表記する)92.7部を仕込んだ後、脱酸素・窒素置換の操作を2回繰返してフラスコ内を窒素雰囲気とした。その後、攪拌を開始し内温が80℃に達するまで加温した。そのまま6時間内温を80℃に保って撹拌を継続した。6時間経過後、IPA123.3部をゆっくりと添加してから、内温を25℃以下まで冷却し、未中和のスチレン-メタクリル酸系共重合体(IPA溶液)を得た。得られた共重合体溶液の乾燥残分は30.4%であった。また、未中和のスチレン―メタクリル酸系共重合体の重量平均分子量は18,275、数平均分子量は6,991であった。
【0079】
なお、本発明における上記重量平均分子量および数平均分子量は、未中和のポリマー溶液を105℃で3時間乾燥させた後、テトラヒドロフランでポリマー分が1%となる様に溶解してから、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過した液を、次の条件下でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定し、標準ポリスチレン換算した値である。
・カラム:Shodex KF-802、Shodex KF806M(昭和電工社製)
・溶出溶媒:テトラヒドロフラン
・流量:1.0mL/min
・注入量:10μL
・カラム温度:40℃
・検出器:RI検出器
【0080】
(水性化工程)
得られた未中和のスチレン-メタクリル酸系共重合体(IPA溶液)150部をビーカーに計量後、攪拌しながら25%アンモニア水12.5部、イオン交換水150部を加えてポリマーを中和してから、ナスフラスコに液を移した。ロータリーエバポレーターを用いて85部留去してから、イオン交換水285部を追加し、更に320部減圧留去することで、溶液からIPAを取り除いた。25%アンモニア水とイオン交換水を用いて、pHを9、乾燥残分を約20%に調整し、アンモニア中和されたスチレン-メタクリル酸系共重合体(水溶液)を得た。
【0081】
<製造例2~7,9、比較製造例1,2>
各成分の含有量(仕込み比率)を表1の通り変更した以外は上記と同様の方法で合成した。
なお、以下の記載及び表1中において、
ポリエチレングリコールメタクリレート(平均EO付加モル数9、日油社製「ブレンマーPME-400」)を「PEG(9)MA」、
ポリエチレングリコールメタクリレート(平均EO付加モル数90、日油社製「ブレンマーPME-4000」)を「PEG(90)MA」、
2-ナトリウムスルホエチルメタクリレート(日本乳化剤社製「アントックスMS-2N-D」、有効分88%)を「NaSEMA」、
2-ヒドロキシエチルメタクリレートを「HEMA」
とそれぞれ表記する。
【0082】
<製造例8>
[ST20%,MMA27%,PEG(23)MA20%,MAA23%,NaSEMA10%共重合体の合成]
(溶液重合工程)
温度計、攪拌機、還流管を備えた3ツ口フラスコにST18部、MMA24部、PEG(23)MA18部、MAA21部、NaSEMA10.2部、NDM1.8部、AIBN0.9部、IPA64.8部、イオン交換水27.9部仕込んだ後、脱酸素・窒素置換の操作を2回繰返してフラスコ内を窒素雰囲気とした。その後、攪拌を開始しNaSEMAとAIBNとを溶解させてから内温が80℃に達するまで加温した。そのまま6時間内温を80℃に保って撹拌を継続した。6時間経過後、イオン交換水276.9部をゆっくりと添加してから、内温を25℃以下まで冷却し、カルボン酸が未中和のスチレン―メタクリル酸系共重合体(IPA-水混合溶媒溶液)を得た。得られた共重合体溶液の乾燥残分は20.5%であった。また、カルボン酸が未中和のスチレン―メタクリル酸系共重合体の重量平均分子量は6,204、数平均分子量は3,997であった。
【0083】
(水性化工程)
得られたカルボン酸が未中和のスチレン-メタクリル酸系共重合体(IPA/水混合溶媒溶液)250部をナスフラスコに移してから、ロータリーエバポレーターを用いて53部留去した。イオン交換水130部を追加し、更に156部減圧留去することで、溶液からIPAを取り除いた。25%アンモニア水とイオン交換水を用いて、pHを9、乾燥残分を約20%に調整し、カルボン酸がアンモニア中和されたスチレン―メタクリル酸系共重合体(水溶液)を得た。
【0084】
<製造例10>
[ST30%,MMA17%,PEG(23)MA20%,MAA33%共重合体の合成]
(溶液重合工程)
温度計、攪拌機、還流管を備えた3ツ口フラスコにST27部、MMA15部、PEG(23)MA18部、MAA30部、NDM1.8部、AIBN0.9部、IPA92.7部仕込んだ後、脱酸素・窒素置換の操作を2回繰返してフラスコ内を窒素雰囲気とした。その後、攪拌を開始しAIBNを溶解させてから内温が80℃に達するまで加温した。そのまま6時間内温を80℃に保って撹拌を継続した。6時間経過後、IPA123.3部をゆっくりと添加してから、内温を25℃以下まで冷却し、カルボン酸が未中和のスチレン―メタクリル酸系共重合体(IPA溶液)を得た。得られた共重合体溶液の乾燥残分は30.5%であった。また、カルボン酸が未中和のスチレン―メタクリル酸系共重合体の重量平均分子量は16,477、数平均分子量は6,058であった。
【0085】
(水性化工程)
得られたカルボン酸が未中和のスチレン-メタクリル酸系共重合体(IPA溶液)150部をビーカーに計量後、攪拌しながら5%NaOH水溶液を110.3部、イオン交換水を45.2部加えてポリマーを中和してから、ナスフラスコに移した。ロータリーエバポレーターを用いて85部留去した。イオン交換水285部を追加し、更に320部減圧留去することで、溶液からIPAを取り除いた。5%NaOH水とイオン交換水を用いて、pHを7、乾燥残分を約16%に調整し、カルボン酸がNaOH中和されたスチレン―メタクリル酸系共重合体(水溶液)を得た。
【0086】
【0087】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、部及び%はそれぞれ質量部、質量%を示す。
【0088】
[実施例1]
製造例1((A)成分20.9%の水溶液)99.0部と、化合物(B-1)1.0部を攪拌し、分散剤を調整した。
青色顔料であるHostaperm Blue BT-617-D(CLARIANT製、Pigment Blue15:4)15部、水性溶媒としてイオン交換水64.3部、前記分散剤20.7部と、ジルコニアビーズ(径0.3mm)300部とを、プラスチック容器(ポリプロピレン製、容量0.5L)に入れて、PAINT SHAKER(浅田鉄工(株)製)を用いて、1時間分散させた。分散後、ジルコニアビーズを濾別して分散体を得た。
【0089】
[実施例2~14、比較例1~12]
実施例1と同様の方法で、下記の表2(実施例)及び表3(比較例)に示す組成の各例の分散体を作製した。
【0090】
下記の表2及び表3に示す(B)成分の詳細は、以下のとおりである。
(B-1):2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオールのエトキシル化体(式(2)におけるm+nの平均値は4である。)(分子量:430,HLB:8.2)
(B-2):2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール(分子量:254,HLB:2.7)
(B-3):2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのエトキシル化体(式(2)におけるm+nの平均値は4である。)(分子量:402,HLB:8.8)
(B-4):2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのエトキシル化体(式(2)におけるm+nの平均値は10である。)(分子量:666,HLB:13.2)
【0091】
各分散体について、その表面張力、粘度、平均粒子径、分散安定性、再分散性(目視)、再分散性・溶出率を下記の方法により測定した。その結果を表2及び表3に示す。
【0092】
<表面張力>
DY-500 高機能表面張力計(協和界面科学(株)製)を使用して、分散直後の分散体の静的表面張力を25℃で測定した。
【0093】
<粘度>
TVE-20 E型粘度計(東機産業(株)製)を使用して、分散直後の分散体の粘度(25℃)を測定した。
【0094】
<平均粒子径>
ELSZ-2000 ゼータ電位・粒径・分子量測定システム(大塚電子(株)製)を使用して、分散直後の分散体の平均粒子径(D50)を測定した。
【0095】
<分散安定性>
分散安定性分析装置LUMiSizer(LUM社製)を使用して分散安定性を評価した。この分析は、分散直後の温度25℃、回転数4,000rpm、分析時間50分の条件で実施し、界面移動速度(粒子の沈降速度)を測定した。界面移動速度が小さい方が、分散安定性が良好である。
【0096】
<再分散性(目視)>
分散直後の分散体をマイクロピペットでシャーレに100μL測り取り、室温(約25℃)で約15時間、静置乾燥させる。乾燥後、イオン交換水を3mL添加し、乾燥した分散体がイオン交換水へ再分散する様子を目視で判定した。再分散性の評価基準を下記に示す。
(評価基準)
◎:乾燥物が消失、再分散した
〇:乾燥物が一部残存したが、概ね再分散した
△:乾燥物の大半が残存、一部再分散した
×:乾燥物の再分散が確認できなかった
【0097】
<再分散性 溶出率>
分散直後の分散体をマイクロピペットでシャーレに100μL測り取り、室温(約25℃)で約15時間、静置乾燥させる。乾燥後、乾燥した分散体の質量(再分散前質量)を電子天秤で測量した後、イオン交換水を3mL添加し、室温(約25℃)条件下で3分間静置させる。静置後、80メッシュ濾布を用いて未溶解物を除去、得られた濾液を60℃で3時間、乾燥機で乾燥させる。乾燥後、室温まで戻した乾燥物(再分散質量)を電子天秤で測量、下記[1]式を用いてイオン交換水への分散体溶出率を算出した。
再分散性 溶出率[%]=(再分散質量)/(再分散前質量)×100 ・・・[1]
【0098】
【0099】