(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005044
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物、および抗菌印刷物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/101 20140101AFI20240110BHJP
C09D 11/104 20140101ALI20240110BHJP
【FI】
C09D11/101
C09D11/104
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105025
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000219912
【氏名又は名称】東京インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長幡 大輔
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD21
4J039AE06
4J039BA16
4J039BA21
4J039BA30
4J039BA39
4J039BC13
4J039BC20
4J039BC33
4J039BC37
4J039BC47
4J039BC59
4J039BE19
4J039CA07
4J039EA06
4J039EA48
4J039GA02
(57)【要約】
【課題】本発明は、抗菌性に優れると共に、活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物としての流動性、耐ミスチング性、沈降抑制性、および印刷による作製が可能で、当該印刷により得られる抗菌印刷層と基材との密着性に優れる活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】エチレン性不飽和化合物と、ジアリルフタレート樹脂と、無機系抗菌剤と、水不溶性ウレア結合を有する化合物と、体質顔料と、を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和化合物と、ジアリルフタレート樹脂と、無機系抗菌剤と、水不溶性ウレア結合を有する化合物と、体質顔料と、を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物。
【請求項2】
前記無機抗菌剤が、銀、銅、亜鉛、銀イオン、銅イオンおよび亜鉛イオンから選択される少なくとも一つの成分を含む無機抗菌剤であることを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物。
【請求項3】
前記無機抗菌剤が、無機化合物に担持させた無機抗菌剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物。
【請求項4】
前記水不溶性ウレア結合を有する化合物が、分子量が100以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物。
【請求項5】
前記水不溶性ウレア結合を有する化合物が、分子量が100以上であることを特徴とする請求項3に記載の活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物。
【請求項6】
請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物を基材に印刷してなることを特徴とする抗菌印刷物。
【請求項7】
請求項3に記載の活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物を基材に印刷してなることを特徴とする抗菌印刷物。
【請求項8】
請求項6に記載の活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物を基材に印刷してなることを特徴とする抗菌印刷物。
【請求項9】
請求項7に記載の活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物を基材に印刷してなることを特徴とする抗菌印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷は、用紙を用いて黄・紅・藍・墨の4色のオフセット印刷インキを紙に印刷する印刷方式で、商業印刷物に多く利用されている。さらに、印刷物の表面保護や、光沢向上あるいは艶消しなどを付与する目的で、上記印刷物の表面にオーバープリントニス層を付与することがある。
【0003】
一方、近年人々の衛生意識の高まりから、医療分野のみならず、さまざまな分野において、物品に抗菌性、抗ウイルス性、防カビ性などの機能を付与することが求められ、内装建材や家具類、タッチパネル基材、なかでも、不特定多数の人が手に触れる可能性が高い雑誌、チラシ、冊子、カタログ、カレンダー、ガイドブックなどの印刷物について、抗菌性や抗ウイルス性を付与したいという要望が高まってきている。
【0004】
特許文献1には、内装建材や家具類に抗アレルゲン性を付与する目的として、抗アレルゲン剤が担持された無機化合物、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する活性エネルギー線硬化型樹脂、1~3個の(メタ)アクリロイル基を有するTg100℃以上のモノマー、および1~2個の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族炭化水素系モノマーを含有し、塗工環境温度における粘度が1500mPa・s以下であることを特徴とする抗アレルゲン塗膜形成用樹脂組成物が開示され、ダニや花粉などのアレルゲンを抑制することができ、かつ耐汚染性、耐擦傷性、耐クラック性も有する塗膜が形成できるものが提案されている。
【0005】
しかし、内装建材や家具類に用いる木質板への塗工であり、当該抗アレルゲン塗膜形成用樹脂組成物は上塗り塗料として用いるものであって、その塗工方法としても、フローコーター、ロールコーター、吹き付け法、エアレススプレー法、エアスプレー法、刷毛塗り、コテ塗り、浸漬法、引き上げ法、ノズル法、巻き取り法、流し法、盛り付け、パッチング法、グラビアコート法などであり、印刷による印刷方法の記載も示唆もなく、印刷に供される印刷ニス組成物の記載も示唆もない。また、抗アレルゲン剤が担持された無機化合物が沈降するおそれがある。
【0006】
特許文献2には、銀を含有する抗菌剤と、親水性基を含有するモノマーと、水不溶性の含窒素化合物とを含有する抗菌組成物を硬化して得られる抗菌膜を備える抗菌膜付き基材が開示され、得られる抗菌膜が、所定の期間にわたって抗菌作用を持続的に発揮し、かつ、優れた安定性を有するものが提案されている。
【0007】
しかし、バインダーとして作用する親水性基を有するモノマーは、重合して親水性ポリマーを形成し、抗菌組成物を含有することにより得られる抗菌膜は親水性を示し、水などを用いて洗浄することで、抗菌膜上に付着した汚染物質を容易に除去するためのものであるので、基材(または物品)としては、金属、ガラス、セラミックス、およびプラスチック(樹脂)などが挙げられ、なかでも、取り扱い性の点で、プラスチック(樹脂基材)が好ましく、その基材の表面への塗布方法としても、スプレー法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、インクジェット法、およびダイコーティング法などであり、印刷による印刷方法の記載も示唆もなく、印刷に供される印刷ニス組成物の記載も示唆もない。
【0008】
特許文献3には、トリメチロールプロパントリアクリレートを実質的に含まず、銀含有リン酸ジルコニウム粒子、ポリオールのアルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレートを含む光硬化型抗菌ニス組成物が開示され、紫外線硬化性への影響と、塗膜の物性とのバランスを考慮したものが提案されている。
【0009】
特許文献4には、トリメチロールプロパントリアクリレートを実質的に含まず、銀含有リン酸ジルコニウム粒子を含み、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを、全重合性成分中に5.0~90.0質量%含有し、ポリオールのアルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレートを、全重合性成分中に50.0~90.0質量%含有し、光重合開始剤、平均粒子径10μm以下のワックス及び、ジアリルフタレート系樹脂及び/又はアクリル樹脂を含有する紙用光硬化型抗菌ニス組成物が開示され、紫外線硬化性への影響と、塗膜の物性とのバランスを考慮したものが提案されている。
【0010】
しかし、上記光硬化型抗菌ニス組成物および紙用光硬化型抗菌ニス組成物は、体質顔料を含むことの記載も示唆もないため、流動性や耐ミスチング性が劣るおそれがあり、また、印刷皮膜の柔軟性が損なわれ、硬化収縮が起きやすく、密着性が低下するおそれがあり、これらの評価についての記載も示唆もない。
【0011】
特許文献5には、(a)官能基数が2~6である多官能(メタ)アクリレート化合物を5~70質量%と、(b)アリール(メタ)アクリレート化合物を0.1~50質量%と(c)スチレン化合物を5~40質量%と(d)親水性基を有する重合性不飽和結合含有化合物を0.1~10質量%と(e)窒素を含有する複素環基を持つ(メタ)アクリレート化合物を 0.1~10質量%と、(f)アルキルアミノ基を持つ(メタ)アクリレート化合物を0.1~ 10質量%とを必須の重合成分として含有する重合物(但し(a)~(f)の総量は100質量%である)からなる共重合体(A)と、(メタ)アクリレート化合物(B)として植物油変性(メタ)アクリレート化合物(B2)と、体質顔料(D)と、極性基含有顔料分散剤(E)とを含有する平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキが開示され、インキの流動性、相溶性、および粘弾性に優れるものが提案されている。
【0012】
しかし、無機抗菌剤を含有しないため、抗菌効果はまったくない。また、体質顔料を含んでいるため、流動性や耐ミスチング性などは一定の効果を有すると思われるが、当該体質顔料や無機抗菌剤が沈降するおそれがあり、この評価についての記載も示唆もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2010-174075号公報
【特許文献2】WO2018/016207号
【特許文献3】WO2022/018958号
【特許文献4】特開2022-020540号公報
【特許文献5】特開2022-029119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明は、抗菌性に優れると共に、活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物としての流動性、耐ミスチング性、沈降抑制性、および印刷による作製が可能で、当該印刷により得られる抗菌印刷層と基材との密着性に優れる活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、鋭意検討した結果、エチレン性不飽和化合物と、ジアリルフタレート樹脂と、無機系抗菌剤と、水不溶性ウレア結合を有する化合物と、体質顔料と、を含むことにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明によれば、エチレン性不飽和化合物と、ジアリルフタレート樹脂と、無機系抗菌剤と、水不溶性ウレア結合を有する化合物と、体質顔料と、を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、抗菌性に優れると共に、活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物としての流動性、耐ミスチング性、沈降抑制性、および印刷による作製が可能で、当該印刷により得られる抗菌印刷層と基材との密着性に優れる活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更実施の形態が可能である。
【0019】
本発明の活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物(以下、「ニス組成物」ともいう)は、エチレン性不飽和化合物と、ジアリルフタレート樹脂と、無機系抗菌剤と、水不溶性ウレア結合を有する化合物と、体質顔料と、を含むことが好ましい。
【0020】
本発明の活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物は、エチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。
前記エチレン性不飽和化合物は、活性エネルギー線を照射することによって重合されるモノマーまたはオリゴマーであって、好ましくは(メタ)アクリル基を有する化合物(以下、(メタ)アクリレートともいう)である。エチレン性不飽和化合物は、単官能性(メタ)アクリレートであっても、多官能性(メタ)アクリレートであってもよい。また、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートであってもよい。さらに、後記するジアリルフタレート樹脂と相溶するものがより好ましい。
なお、本明細書中、「(メタ)アクリレート」はアクリレートとメタクリレートの両者を示すものとして使用される。
【0021】
単官能性(メタ)アクリレートの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノメチロール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。多官能性(メタ)アクリレートの例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、 ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレンジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラプロピレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリアルキレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラプロピレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリアルキレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSポリアルキレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールAテトラプロピレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールAポリアルキレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールFテトラプロピレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールFポリアルキレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノーAジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジヒドロキシベンゼン(カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン等)ポリアルキレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、アルキルジヒドロキシベンゼンポリアルキレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレートなどの2官能性(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリ(2~20)アルキレン(C2~C20)オキサイド付加体(アルキレンオキサイドとして、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド)トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリ(2~20)アルキレン(C2~C20)オキサイド付加体(アルキレンオキサイドとして、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド)トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンポリ(2~20)アルキレン(C2~C20)オキサイド付加体(アルキレンオキサイドとして、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド)トリ(メタ)アクリレートなどの3官能性(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドヘプタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリ(2~20)アルキレン(C2~C20)オキサイド付加体(アルキレンオキサイドとして、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド)テトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンポリ(2~20)アルキレン(C2~C20)オキサイド付加体(アルキレンオキサイドとして、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド)テトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンポリ(2~20)アルキレンオキサイド(例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加体テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンポリ(2~20)アルキレン(C2~C20)オキサイド付加体(アルキレンオキサイドとして、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド)テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンポリ(2~20)アルキレンオキサイド(例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネート、テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールエタンポリ(2~20)アルキレン(C2~C20)オキサイド付加体(アルキレンオキサイドとして、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド)テトラ(メタ)アクリレートなどの4官能以上の多官能性(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0022】
また、エチレン性不飽和化合物は、エポキシ化植物油(メタ)アクリレートであってもよい。エポキシ化植物油(メタ)アクリレートは、不飽和植物油の二重結合に過酢酸、過安息香酸でエポキシ化したエポキシ化植物油のエポキシ基に、(メタ)アクリル酸を開環付加重合させた化合物である。前記不飽和植物油とは、グリセリンと脂肪酸とのトリグリセライドにおいて、少なくとも1つの脂肪酸が炭素-炭素不飽和結合を少なくとも1つ有する脂肪酸であるトリグリセライドのことであり、代表的な不飽和植物油としては、麻実油、亜麻仁油、荏油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、芥子油、杏仁油、桐油、ククイ油、胡桃油、ケシ油、胡麻油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、椿油、トウモロコシ油、菜種油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、扁桃油、松種子油、綿実油、椰子油、落花生油、脱水ヒマシ油などが挙げられる。エポキシ化植物油(メタ)アクリレートとしては、エポキシ化大豆油(メタ)アクリレート(サートマー社製CN111、ダイセル・オルネクス(株)製EBECRYL860、iGMRESINS社製Photomer3005)などが挙げられる。
【0023】
なかでも、本発明に使用するエチレン性不飽和化合物は、フェノキシエチルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレンジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン3EO変性トリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA4EO変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA10EO変性ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン6EO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン9EO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン3PO変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールEO変性テトラ(メタ)アクリレート、エポキシ化大豆油(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートであることが好ましい。特に環境対応型とする場合には、エポキシ化大豆油(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
【0024】
前記エチレン性不飽和化合物は、ニス組成物中に30~70質量%含有することが好ましく、40~60質量%がより好ましい。エチレン性不飽和化合物の量が30質量%未満では十分な印刷適性が得られず、70質量%を超えると顔料固形分が少なくなり、濃度が低下してしまう。エチレン性不飽和化合物の添加量が、ニス組成物中に前記範囲内であることにより、白濁化が起こらず、硬化性も良好で、かつ印刷適性が良好な活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物が得られる。
【0025】
本発明の活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物は、ジアリルフタレート樹脂を含むことが好ましい。ジアリルフタレート樹脂は、オルソタイプとイソタイプの2種類があり、どちらか一方でも、併用してもよい。
【0026】
前記ジアリルフタレート樹脂は、ニス組成物中に1~60質量%含有することが好ましく、5~40質量%がより好ましく、7~20質量%がより好ましい。ジアリルフタレート樹脂の量が1質量%未満では印刷適性上必要な粘度が得られず、60質量%を超えると流動性が低下してしまう。
【0027】
本発明の活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物は、無機系抗菌剤を含むことが好ましい。
前記無機抗菌剤は、抗菌性金属を主構成成分として含有するものが好ましい。具体的には、抗菌性金属単体、抗菌性金属の酸化物、抗菌性金属イオンと対イオンとの塩、抗菌性金属錯体、あるいはこれらを担体にイオン交換あるいは担持させたものが挙げられる。塩としては、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、炭酸塩などの無機塩が挙げられる。担体としては、シリカアルミナマグネシウム、ケイ酸アルミニウム、リン酸カルシウム、シリカゲル、ガラス、ゼオライト、リン酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウムなどが挙げられる。
公知の担持方法としては、例えば、物理吸着または化学吸着により金属イオンを前記担体に担持させる方法、イオン交換反応により金属イオンを前記担体に担持させる方法、結合剤により金属イオンを前記担体に担持させる方法、金属化合物を前記担体に打ち込むことにより担持させる方法、蒸着、溶解析出反応、スパッタなどの薄膜形成法により前記担体の表面に金属化合物の薄層を形成させることにより担持させる方法などが挙げられる。
なかでも、抗菌性遷移金属を主構成成分として含有するものが好ましく、銀、亜鉛、チタン、銅から選択される抗菌性遷移金属を主構成成分として含有するものがより好ましい。特に、銀、亜鉛から選択される抗菌性遷移金属を主構成成分として含有するものがさらに好ましい。また、これらを混合したものであってもよい。
【0028】
これらの市販品としては、ノバロンAG-300、AG-100、AG-1100、AGC-303、AGZ-010、AGZ-020、AGZ-330、AGT-330、VZF-101、VZ-100、VZF-200、VZN-300、VZ-600、VZ-900、VFA-701、VAG-500(以上、東亞合成(株)製)、ゼオミックAJ10D((株)シナネンゼオミック製)、バクテキラーBM-102GA、BM-102NSC、BM-102MT、BM-102TG、BM-502CD-Z、BM-102SD(以上、富士ケミカル(株)製)、シルウェル(富士シリシア化学)、イオンピュア(石塚硝子(株)製)、アパサイダー((株)サンギ製)、シルバーエース(太平化学産業(株)製)、ラサップ(ラサ工業(株)製)、などが挙げられる。
【0029】
前記無機抗菌剤は、ニス組成物中に0.1~20質量%含有することが好ましく、0.5~15質量%がより好ましく、1~10質量%がさらに好ましい。無機抗菌剤の量が0.1質量%未満では抗菌効果が得られず、20質量%を超えると、沈降しやすくなるおそれがある。
【0030】
本発明の活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物は、水不溶性ウレア結合を有する化合物を含むことが好ましい。
前記水不溶性ウレア結合を有する化合物は、前記無機抗菌剤や後記体質顔料などの水不溶性粒子に沈降防止性を付与する。分子内に、ウレア結合(-NHCONH-)を有する化合物の構造は特に制限されず、ポリマーであってもモノマーであってもよい。ただし、ネットワーク構築の観点から化合物中にウレア結合を二つ以上含むものが好ましく、化合物中にウレア結合を三つ以上含むものがより好ましい。
ウレア結合を有する化合物の好ましい例としては、イソシアネート単量体と有機アミンとの反応物である下記一般式(1)で表されるウレア誘導体、これに脂肪酸および/または脂肪酸との反応で得られる骨格を1つ以上有する脂肪酸変性ウレア誘導体、その他の化合物を共重合させた共重合体、または置換基が導入された変性ウレア誘導体などを挙げることができる。なかでも、水不溶性であるウレア結合を有する化合物がより好ましい。
【0031】
【0032】
式(1)中、Aは、R5、またはR6-Y-[R4-Y-R3-Y]b-R2-NR1-(CH2)2-CO-Z-R7を表す。
Bは、Y-R6、またはNR1-(CH2)2-CO-X-R5を表す。
Yは、それぞれ独立に、COO、OCO、NHCO、CONH、NHCOO、OOCNH、およびNHCONHから選ばれる1種以上の基を表す。
Zは、O、NH、またはNR9基を表す。
R1は、水素原子、(CH2)2-CO-Z-R5、およびCONH-R’から選ばれる1種以上の基を表す。
R’は、R8またはC6H3(CH3)-NHCOOR8を表す。
R2、R3、R4およびR7は、それぞれ独立して、炭素数1~40のアルキレン基、炭素数3~40のアルケニレン基、炭素数5~40のシクロアルキレン基、炭素数5~40のアリーレン基、炭素数7~40のアラルキレン基、炭素数7~40のポリオキシアルキレン基、または脂肪酸残基の炭素数が7~40のポリエステル基を表す。
R5は、水素原子、炭素数1~22のアルキル基、炭素数1~22のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数5~12のシクロアルキル基、炭素数5~12のヒドロキシアルキル基、炭素数5~12のN、N’-ジアルキルアミノ基、ヒドロキシル基、炭素数1~22のアルコキシ基、炭素数5~12のシクロアルコキシ基、炭素数7~12のアラルコキシポリオキシアルキレン基、または炭素数1~22のアルカノール、炭素数5~12のシクロアルカノール、あるいは炭素数7~12のアラルカノールを開始原料とするポリエステル基、または炭素数1~22のアルコキシ基、炭素数5~12のシクロアルコキシ基、あるいは炭素数7~12のアラルコキシポリオキシアルキレン基を有する化合物を開始原料とするポリエステル基を表す。
R6は、炭素数1~30のアルキル基、炭素数3~22のアルケニル基、炭素数3~22のヒドロキシアルキル基、炭素数4~13のシクロアルキル基、炭素数4~13のアリール基、または炭素数7~12のアラルキル基を表す。
R8は、炭素数1~22のアルキル基、炭素数1~22のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基、または炭素数5~12のシクロアルキル基、炭素数1~22のアルコキシ基、炭素数5~12のシクロアルコキシ基、炭素数7~12のアラルコキシポリオキシアルキレン基、または炭素数1~22のアルカノール、炭素数5~12のシクロアルカノール、あるいは炭素数7~12のアラルカノールを開始原料とするポリエステル基、または炭素数1~22のアルコキシ基、炭素数6~12のシクロアルコキシ基、あるいは炭素数7~12のアラルコキシポリオキシアルキレン基を有する化合物を開始原料とするポリエステル基を表す。
Xは、同一または異なるO、NH、またはNR9を表す。
R9は、炭素数1~22のアルキル基、炭素数1~22のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数が7~12のヒドロキシアルキル基、または炭素数5~12 のシクロアルキル基を表す。
aおよびbは、それぞれ独立して1~19の整数を表す。
【0033】
前記式(1)において、R2およびR4は、それぞれ独立して、炭素数2~18のアルキレン基、炭素数7~15のアラルキレン基が好ましく、炭素数2~12のアルキレン基、炭素数7~12のアラルキレン基がより好ましく、炭素数2~8のアルキレン基、炭素数7~9のアラルキレン基が特に好ましい。具体的には、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基またはm-キシレン基が挙げられる。
また、前記式(1)において、R2とR4は同じ基であることが好ましい。
【0034】
R3は、炭素数30~40のアルキレン基、炭素数30~40のアルケニレン基、炭素数30~40のシクロアルキレン基、または炭素数30~40のアリーレン基、炭素数30~40のアラルキレン基が好ましく、前記アラルキレン基は、ダイマー酸から誘導されるものが好ましく、炭素数34のアラルキレン基が特に好ましい。
【0035】
R5は、炭素数1~22のアルキル基、ヒドロキシル基、または炭素数1~22のアルコキシポリオキシアルキレン基が好ましい。
【0036】
R6は、炭素数1~30のアルキル基、または炭素数3~22のアルケニル基が好ましく、炭素数12~30のアルキル基、または炭素数12~22のアルケニル基がより好ましく、炭素数12~20アルキル基、または炭素数12~20のアルケニル基がさらに好ましく、炭素数17のアルキル基、または炭素数17のアルケニル基が特に好ましい。
【0037】
R7は、炭素数1~18のアルキレン基、または炭素数7~18のポリオキシアルキレン基が好ましい。また、R7が炭素数1~18のアルキレン基、または炭素数7~18のポリオキシアルキレン基の場合、R8は炭素数1~22のアルキル基が好ましい。
【0038】
Xは、OまたはNHであることが好ましく、かつYが、NHCO、およびCONHから選ばれる少なくとも1つの基であることが好ましい。
aおよびbは、それぞれ独立して、1~19の整数であり、2~7がより好ましい。また、aおよびbは、同一の整数であることがより好ましい。
【0039】
また、式(1)で表される化合物としては、分子内にさらにウレタン基(-NHCOO-)を有する化合物であることが好ましい。すなわち、前記式(1)で表される化合物において、R’、B、およびYから選ばれる少なくとも1つが、ウレタン基を含む基であることが好ましく、R’、またはYがウレタン基を含む基であることがより好ましい。式(1)で表される化合物が、分子内にウレア基とウレタン基を有する化合物であることで、前記無機抗菌剤や後記体質顔料などの水不溶性粒子に沈降防止性を付与しやすい。
【0040】
前記イソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートや、それらとポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、イソトリデカノール、ヘキシルデカノール、エチルヘキサノール、ブチルテトラグリコールなどのモノオール、ポリオール、モノアミン、ポリアミンなどとの反応により得られるイソシアネート含有プレポリマーが挙げられる。さらに、これらのイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基、アミド基、イミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基またはオキサゾリドン基含有変性物)やポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)などの縮合体(多核体と称されることもある)も含まれる。なかでも、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、イソシアネート含有プレポリマーなどが好ましい。これらは、2つ以上を併用してもよい。
【0041】
前記アミノ化合物としては、特に限定されないが、例えば、アルキルアミン、フェニルエチルアミン、アミノエタノールなどのモノアミン、エチレンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン、2,4’-ジフェニルメタンジアミン、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、1,3-キシリレンジアミン、1,4-キシリレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソホロンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、トリジンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、リジンジアミン、トリフェニルメタントリアミン、テトラメチルキシレンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、ノルボルナンジアミン、リジンエステルトリアミン、1,6,11-ウンデカントリアミン、1,8-ジアミノ-4-アミノメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリアミン、ビシクロヘプタントリアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリオキシアルキレンポリアミンや、それらとイソシアネートとの反応によるアミノ基含有プレポリマーが挙げられる。なかでも、1,6-ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、2,4’-ジフェニルメタンジアミン、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、1,3-キシリレンジアミン、1,4-キシリレンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン、ポリオキシアルキレンポリアミン、アミノ基含有プレポリマーなどが好ましい。これらは、2つ以上を併用してもよい。
【0042】
水不溶性ウレア結合を有する化合物の分子量は、100以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましく、300以上がさらに好ましい。一方、分子量の上限値は、特に限定されず、100,000以下であることが好ましく、70,000以下であることがより好ましい。分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される質量平均分子量である。
【0043】
前記脂肪酸変性ウレア誘導体としては、分子構造中にウレア基を1つ以上有し、脂肪酸および/または脂肪酸との反応で得られる骨格を1つ以上有するものであることが好ましい。脂肪酸変性に用いられる脂肪酸としては、水酸基数や二重結合数、炭素数などは特に限定されず、市販のいずれの脂肪酸も使用することができる。また変性構造は、ウレア誘導体の末端および/または分子内にいずれの構造を有していてもよい。例えば、脂肪酸変性ウレア誘導体としては、下記一般式(2)~(5)から選ばれる少なくとも1つの構造単位を有する化合物が挙げられる。
R10-O-CO-NH-R11- ・・・(2)
-NH-CO-NH-R12- ・・・(3)
-NH-CO-NH-R11- ・・・(4)
-NH-CO-OR10- ・・・(5)
【0044】
式(2)~(5)中、R10はCnH2n+1、またはCmH2m+1(CpH2pO)rで表される基を表し、nは4~22の整数、mは1~18の整数、pは2~4の整数、rは1~10の整数である。また、R11は下記式(a-1)~(a-4)でそれぞれ表される基であり、R12は下記式(b-1)~(b-8)でそれぞれ表される基である。
【0045】
【0046】
【0047】
変性ウレア誘導体として、共重合させるその他の化合物としては、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、例えば、アクリル酸、塩化ビニルなどが挙げられる。また、置換基としては、ウレタン基、ポリオキシアルキレン基などが挙げられる。なかでも、前記無機抗菌剤や後記体質顔料などの水不溶性粒子への沈降防止性がより向上しやすい点から、2つ以上のウレア基と、少なくとも1つのウレタン基とを有するウレアウレタン化合物が好ましい。また、ウレア基とウレア基との連結部分にウレタン基が導入され、かつ化合物の末端部分にもウレタン基を有する化合物がより好ましい。さらに、化合物の末端部分のウレタン基の極性が、分子内のウレタン基の極性よりも高いことが好ましい。
【0048】
前記ウレア誘導体はポリマー(高分子ウレア誘導体)であってもよく、ウレア基を1つ以上有し、GPC法によるポリスチレン換算の数平均分子量が1,000~70,000のウレア誘導体であることが好ましく、なかでも、前記無機抗菌剤や後記体質顔料などの水不溶性粒子への沈降防止性がより向上しやすい点から、ウレア基を2つ以上有し、数平均分子量3,000~70,000であることがより好ましい。
【0049】
高分子ウレア誘導体としては、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、例えば、下記一般式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0050】
【0051】
式(6)中、Tは、-C6H4-CH2-C6H4-、-C6H3(-CH3)-、-CH2-C6H4-CH2-、-(CH2)6-、-C6H7(-CH3)3-CH2-などの炭素数1~20のアルキレン基またはアリーレン基、アミド基およびウレタン基から選ばれる少なくとも1つの基、またはウレタン基を有するオリゴマーを表す。
R13およびR17は、分岐鎖を有していてもよい炭素数4~32のアルキル基、炭素数3~18のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数5~12のアリール基またはアルキル置換アリール基、Cm’H2m’+1-(O-Cn’H2n’)p’で表されるポリオキシアルキレンモノアルキル基、Cm’H2m’+1-(O-Cn’H2n’)p’-(O-CH(C6H5)-CH2)u、Q-C6H4-(CH2)s-(O-Cn’H2n’)x-(O-CH(C6H5)-CH2)u-Cm’H2m’-(O-Cn’H2n’)p’-(O-CH(C6H5)-CH2)u-(OOC-CvH2v)x、Q-C6H4-(CH2)s-(O-Cn’H2n’)p’-(O-CH(C6H5)-CH2)u-(OOC-CvH2v)x、炭素数4~32のヒドロキシアルキル基、炭素数4~32のカルボキシアルキル基、Cm’H2m’C(=O)R18、-Cm’H2m’COOR18、-Cm’H2m’C(=O)NR18R19、またはCm’H2m’OC(=O)NR18R19ラジカルを表す。前記ラジカルは置換基を有しても良く、アミノ基、およびカルボキシル基から選択される少なくとも1つの基には、それらの塩や4級構造が含まれていてもよい。
R18およびR19は、水素、分岐鎖を有していてもよい炭素数1~32のアルキル基、炭素数3~18のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数5~12のアリール基またはアルキル置換アリール基、炭素数1~32のアルコキシアルキル基、または炭素数1~32のアシロキシアルキルを表す。
m’は0~32の整数、n’は2~4の整数、xは0~100の整数、uは0~100の整数、vは1~22の整数、p’は0~100の整数、sは0~1の整数である。
上記(O-Cn’H2n’) は、オキシエチレン基とオキシプロピレン基、オキシエチレン基とオキシブチレン基など、2種以上のオキシアルキレン基が組み合わされたものであってもよい。
Qは、水素、炭素数1~12のアルキル基、またはフェニル基を表す。
R14およびR16は、分岐鎖を有していてもよい炭素数4~22のアルキレン基、炭素数3~18のアルケニレン基、炭素数2~20のアルキニレン基、炭素数3~20のシクロアルキレン基、炭素数3~20のシクロアルケニレン基、炭素数5~12のアリーレン基またはアリールアルキレンラジカルを表す。
R15は、分岐鎖を有していてもよいポリエステル基、ポリエーテル基、ポリアミド基、炭素数4~22のアルキレン基、炭素数3~8のアルケニレン基、炭素数2~20のアルキニレン基、炭素数3~20のシクロアルキレン基、炭素数3~20のシクロアルケニレン基、炭素数5~12のアリーレン基はアリールアルキレンラジカルを表す。
A’、X’、Y’、Z’は、-O-または-NR20を表す。
R20は、水素、分岐鎖を有していてもよい炭素数1~32のアルキル基、炭素数3~18のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数5~12のアリール基またはアリールアルキルラジカルを表す。
【0052】
前記水不溶性ウレア結合を有する化合物は、市販品を用いることもできる。市販品としては、BYK-410、BYK-D410、BYK-411、BYK-415、BYK-7410ET(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)などが挙げられる。
【0053】
前記水不溶性ウレア結合を有する化合物は、ニス組成物中に0.01~5質量%含有することが好ましく、0.1~3質量%がより好ましく、0.5~2質量%がさらに好ましいい。水不溶性ウレア結合を有する化合物の量が0.01質量%未満では沈降防止効果が得られず、5質量%を超えると、ニス組成物の粘度が上昇し、良好に印刷ができないおそれがある。
【0054】
本発明の活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物は、体質顔料を含むことが好ましい。
前記体質顔料は、ニス組成物の流動性調整、ミスチング防止、紙などの印刷基材への浸透防止といった効果に加え、低温条件下の印刷時や高速印刷時に発生する紙剥け抑制効果を付与する。体質顔料としては、酸化チタン、グラファイト、亜鉛華などの無機着色顔料や、炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、石膏、クレイ、シリカ、珪藻土、タルク、カオリン、アルミナホワイト、硫酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、バライト粉、との粉などの無機の無機顔料や、シリコーン、ガラスビーズなどが挙げられる。なかでも、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどが好ましい。これらは、2つ以上を併用してもよい。
【0055】
前記体質顔料は、ニス組成物中に1~30質量%含有することが好ましく、5~25質量%がより好ましく、10~20質量%がさらに好ましいい。体質顔料の量が1質量%未満では前記効果を発現しにくくなり、10質量%を超えると、ニス組成物の粘度が上昇し、良好に印刷ができないおそれがある。
【0056】
本発明の活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物は、光重合開始剤を含んでもよい。
前記光重合開始剤は、活性エネルギー線照射によりラジカル重合を開始させる物質を発生させることが可能な化合物であるものが、特に好ましい。
本発明における活性エネルギー線とは、硬化反応の出発物質が基底状態から遷移状態に励起するのに必要なエネルギーのことを表し、紫外線や電子線を指す。
なお、電子線硬化型組成物とする場合は、光重合開始剤を必ずしも配合する必要はない。
【0057】
前記光重合開始剤の種類や含有量は、エチレン性不飽和化合物の種類や、照射する活性エネルギー線に応じて適宜選択することができる。例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(o-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、トリメチルベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、イソプロピルチオキサントン、o-ベンゾイル安息香酸メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4-,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、2,2-ジメチル-2-ヒドロキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ミヒラ-ケトン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、トリメチルベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン混合物、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、L-クロロフォルム-4-プロポキシチオキサントン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、L-フェニル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノン、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、オキシフェニル酢酸、2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物、2-ヒドロキシ-2-メチル-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマーなどが挙げられる。なかでも、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、オキシフェニル酢酸、2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物、2-ヒドロキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンなどがより好ましい。
【0058】
前記光重合開始剤は、ニス組成物中に1~25質量%含有することが好ましく、3~20質量%がより好ましく、5~17質量%がさらに好ましいい。光重合開始剤の量が1質量%未満では硬化性が劣り、25質量%を超えると、体質顔料などの固形分が少なくなり、ニス組成物としての性状が保てなくなり、良好に印刷ができないおそれがある。
【0059】
本発明の活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物には、必要に応じて、色材、ブロッキング防止剤、顔料分散剤、静電防止剤、滑剤、架橋剤、消泡剤、乾燥調整剤、可塑剤、粘着付与剤、密着向上剤、レベリング剤、酸化防止剤、硬化剤、光沢向上剤などを添加することができる。
【0060】
前記光沢向上剤を含有することが好ましい。活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物に光沢向上剤を添加することで、光沢が驚異的に向上する。
【0061】
光沢向上剤としては、二塩基酸エステルを含有し、該二塩基酸エステルが炭素数2~18の二塩基酸と、モノアルコールとのエステルであることが好ましい。該二塩基酸エステルは、モノエステルよりもジエステルの方が好ましい。二塩基酸ジエステルの総炭素数が10以下であると、樹脂との溶解性が低く、ニス組成物が白濁し、光沢向上の効果が落ちる。二塩基酸エステルとしては、例えば、しゅう酸エステル、マロン酸エステル、こはく酸エステル、フマル酸エステル、マレイン酸エステル、グルタル酸エステル、アジピン酸エステル、ピメリン酸エステル、フタル酸エステル、アゼライン酸エステル、セバシン酸エステル、ウンデカン二酸エステル、ドデカン二酸エステル、トリデカン二酸エステル、テトラデカン二酸エステル、ペンタデカン二酸エステル、ヘキサデカン二酸エステル、ヘプタデカン二酸エステルおよびオクタデカン二酸エステルが好ましく、しゅう酸ジオクチル、しゅう酸ジ-2-エチルヘキシル、しゅう酸ジイソノニル、しゅう酸ジイソデシル、マレイン酸ジ-n-ブチル、マレイン酸ジペンチル、マレイン酸ジヘキシル、マレイン酸ジヘプチル、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸ジ-2-エチルヘキシル、アジピン酸ジ-n-ブチル、アジピン酸ジペンチル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジヘプチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、アゼライン酸ジ-n-ブチル、アゼライン酸ジペンチル、アゼライン酸ジヘキシル、アゼライン酸ジヘプチル、アゼライン酸ジオクチル、アゼライン酸ジ-2-エチルヘキシル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジ-n-ブチル、セバシン酸ジペンチル、セバシン酸ジヘキシル、セバシン酸ジヘプチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ドデカン二酸ジメチル、ドデカン二酸ジエチル、ドデカン二酸ジ-n-ブチル、ドデカン二酸ジペンチル、ドデカン二酸ジヘキシル、ドデカン二酸ジヘプチル、ドデカン二酸ジオクチル、ドデカン二酸ジ-2-エチルヘキシルが光沢向上の効果が大きく好ましい。特に好ましいのは、アジピン酸ジ-n-ブチル、アジピン酸ジペンチル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジヘプチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジ-n-ブチル、セバシン酸ジペンチル、セバシン酸ジヘキシル、セバシン酸ジヘプチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシルなどである。
【0062】
前記光沢向上剤は、活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物中に添加量が多いほど効果があるが、0.1~6質量%含有することが好ましい。光沢向上剤の量が0.1質量%未満では光沢向上の効果が認められず、6質量%を超えると活性エネルギー線による硬化性が低下し、また、印刷時の汚れが起こり易くなる。さらに好ましくは、光沢向上剤添加量はニス組成物中に0.5~3質量%である。印刷適性が良好なニス組成物が得られ、印刷したときに最上層の光沢が優れた印刷物を得ることができる。
【0063】
本発明の活性エネルギー線硬化型菌ニス組成物は、基材上に、印刷することで抗菌層を形成するために用いることができる。このことにより、抗菌層が、薄膜で、容易に形成できることから、低コスト化も可能となる。
前記基材は、特に制限はなく、活性エネルギー線硬化型菌ニス組成物に供される基材であれば本発明の活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物による効果を得ることができる。
【0064】
本発明の抗菌印刷物は、前記活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物を基材に印刷してなることが好ましい。前記活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物からなる膜厚が0.1~10μmとなるように印刷してなる抗菌ニス層を備えることが好ましく、0.5~5μmとなるように印刷してなることがより好ましく、1~3μmとなるように印刷してなることがさらに好ましい。
【0065】
前記基材は、印刷に適していればよく、紙、プラスチックフィルムまたはシート、各種織布または不織布、建材板(例えば、床材、石材、壁材、屋根材、天井材)、金属板、皮革、各種ガラス板から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0066】
前記紙は、印刷に適していればよく、出版印刷用紙、包装印刷用紙、板紙印刷用紙などが挙げられる。出版印刷用紙としては、上質紙やグラビア紙などの非塗工紙、アート紙やコート紙、微塗工紙などの塗工紙が挙げられる。包装印刷用紙としては、純白ロール紙や晒クラフト紙などが挙げられる。また、板紙印刷用紙としては、塗工または非塗工の白ボール、塗工または非塗工のマニラボール、ポリエチレンを押し出したポリエチレンコート紙などが挙げられる。さらには、ポリエチレン系やポリプロピレン系などの合成紙であってもよい。
【0067】
さらに、合成紙として、例えば、無孔質のプラスチックフィルムの片面または両面にニス組成物受容性の塗料を塗布しその塗布膜を形成して、ニス組成物受容性を改善させたものが利用できる。このようなプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルムなどが例示でき、またニス組成物受容性塗料としては、マット剤を含有するものが使用できる。マット剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどが使用できる。
【0068】
さらに、合成紙として、プラスチックフィルムを発泡させて多数の微細孔を設けることでニス組成物受容性を改善させたものや、溶剤に溶解する微粉末を混合して製膜して得られたプラスチックフィルムから溶剤により微粉末を溶解除去し、こうして溶解除去された微粉末が存在していた部位を微細孔とすることでニス組成物受容性を改善させたもの、あるいは微粉末を混合して製膜して得られたプラスチックフィルムを延伸することで微粉末とプラスチックとの間に微細な亀裂を生じさせ、微細な亀裂とすることでニス組成物受容性を改善させたものなどが適用できる。
【0069】
前記プラスチックフィルムまたはシートは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンとポリプロピレンの混合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、硝化綿樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビリニデン樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。さらに、基材は、熱可塑性樹脂などをドライラミネート、ノンソルベントラミネート、押出ラミネートや共押出ラミネートなどによる方法、接着剤などを介して貼り合せる方法などにより積層したものであってもよく、また、これらを適宜組み合わせたものであってもよい。より詳しくは、熱可塑性樹脂を含む接着剤によりドライラミネート、ノンソルベントラミネート、ウェットラミネートまたは熱ラミネートしたり、溶融した熱可塑性樹脂により押出ラミネートしたり、あるいは接着剤などを介して貼り合せたりすることで、基材上に直接熱可塑性樹脂を塗布する。
【0070】
前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンとポリプロピレンの混合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂などが挙げられ、これらのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。また、基材と同種の樹脂でもよいし、異種の樹脂でもよい。
【0071】
前記織布または不織布は、編物、フェルトなども含む。
【0072】
基材の厚さは、印刷適性、巻き取り適性などに支障のない範囲内であれば、特に制限はないが、5~300μmであることが好ましく、6~250μmであることがより好ましい。織布や不織布、建材板、金属板、皮革、各種ガラス板では、1mm~5mm程度であることが好ましい。
【0073】
抗菌印刷物の製造方法は、基材上に、前記活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物からなる膜厚が0.1~10μmとなるように印刷してなる抗菌ニス層を形成する活性エネルギー線硬化オフセット印刷工程からなることが好ましく、0.5~5μmとなるように印刷してなることがより好ましく、1~3μmとなるように印刷してなることがさらに好ましい。
【0074】
前記オフセット印刷工程後に、活性エネルギー線硬化工程を含むことが好ましい。活性エネルギー線硬化工程は、紫外線による硬化工程または電子線による硬化工程のどちらでもよい。
【0075】
前記紫外線による硬化工程は、一般的に有電極高圧水銀ランプ、有電極メタルハライドランプ、無電極高圧水銀ランプ、無電極メタルハライドランプ、オゾンレスメタルハライドランプ、キセノンランプ、LED-UVランプ、低消費電力紫外線蛍光ランプのような紫外線を発光する光源を用いて紫外線を照射する工程であることが好ましく、特に、低エネルギー照射であるLED-UVランプ用いることが好ましい。
【0076】
本発明の抗菌印刷物は、包装用、食品保存用、農業用、土木用、漁業用、自動車内外装用、船舶用、日用品用、建材内外装用、住設機器用、医療・医療機器用、医薬用、家電品用、家具類用、文具類・事務用品用、出版用、衣料用、販売促進用、商業用、電機電子産業用などに使用できる。
【0077】
本発明の活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物は、ジアリルフタレート樹脂、無機系抗菌剤、水不溶性ウレア結合を有する化合物、体質顔料、各種添加剤などをエチレン性不飽和化合物中に均一に溶解または分散することにより公知の方法で製造できる。
【0078】
例えば、常温から100℃の間で、ジアリルフタレート樹脂、光沢向上剤、エチレン性不飽和化合物、水不溶性ウレア結合を有する化合物、体質顔料、重合禁止剤、その他添加剤などを、ニーダー、三本ロール、アトライター、サンドミル、ゲートミキサーなどの練肉、混合、調整機を用いて製造される。
【0079】
活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物としては、粘度が、25℃において、10Pa・s以上50Pa・s以下であるとニス組成物として好ましく使用できる。粘度は、L型粘度計によりJIS K5701-1:2000に準拠して計測した数値である。10Pa・sより低い粘度では、粘度が低すぎて、無機系抗菌剤や体質顔料が沈降しやすい傾向になり、50Pa・sを超える粘度では良好に印刷ができないおそれがある。
【0080】
以下、参考形態の例を付記する。
(1)エチレン性不飽和化合物と、ジアリルフタレート樹脂と、無機系抗菌剤と、水不溶性ウレア結合を有する化合物と、体質顔料と、を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物。
(2)前記無機抗菌剤が、銀、銅、亜鉛、銀イオン、銅イオンおよび亜鉛イオンから選択される少なくとも一つの成分を含む無機抗菌剤であることを特徴とする(1)に記載の活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物。
(3)前記無機抗菌剤が、無機化合物に担持させた無機抗菌剤であることを特徴とする(2)に記載の活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物。
(4)前記水不溶性ウレア結合を有する化合物が、分子量が100以上であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物。
(5)(1)~(4)のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物を基材に印刷してなることを特徴とする抗菌印刷物。
(6)前記基材上に、膜厚が0.1~10μmとなるように印刷してなる抗菌ニス層を備えることを特徴とする(5)に記載の抗菌印刷物。
(7)基材上に、(1)~(4)のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物からなる抗菌ニス層を形成する活性エネルギー線硬化オフセット印刷工程からなることを特徴とする抗菌印刷物の製造方法。
(8)前記基材上に、膜厚が0.1~10μmとなるように抗菌ニス層を形成する活性エネルギー線硬化オフセット印刷工程からなることを特徴とする(7)に記載の抗菌印刷物の製造方法。
【実施例0081】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を示す。
【0082】
[ワニスの作製]
ジアリル(イソ)フタレート樹脂(ダイソーイソダップ、ダイソー(株)製)を30部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートを69.65部、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩(Q-1301、重合禁止剤、富士フイルム和光純薬工業(株)製)を0.05部、アルミキレート剤(ALCH、川研ファインケミカル(株)製)を0.3部配合し、ワニス1を得た。
【0083】
[ニスベースの作製]
ワニス1を43部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートを14.9部、トリメチロールプロパン3EO変性トリアクリレートを5部、炭酸カルシウム(白艶華O、白石カルシウム(株)製)を20部、ワックスコンパンド(パラフィンワックス、固形分25%)を3部、重合禁止剤(Q1301 富士フイルム和光純薬(株)製)を0.1部、Omnirad TPO(IGM Resins B.V.社製)を14部、添加、混合し、ニスベース1を作製した。
【0084】
ワニス1を35部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートを12.9部、トリメチロールプロパン3EO変性トリアクリレートを5部、炭酸カルシウム(白艶華O、白石カルシウム(株)製)を30部、ワックスコンパンド(パラフィンワックス、固形分25%)を3部、重合禁止剤(Q1301 富士フイルム和光純薬(株)製)を0.1部、Omnirad TPO(IGM Resins B.V.社製)を14部、添加、混合し、ニスベース2を作製した。
【0085】
ワニス1を65部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートを7.9部、トリメチロールプロパン3EO変性トリアクリレートを5部、炭酸カルシウム(白艶華O、白石カルシウム(株)製)を5部、ワックスコンパンド(パラフィンワックス、固形分25%)を3部、重合禁止剤(Q1301 富士フイルム和光純薬(株)製)を0.1部、Omnirad TPO(IGM Resins B.V.社製)を14部、添加、混合し、ニスベース3を作製した。
【0086】
[活性エネルギー線硬化型抗菌ニス組成物の作製]
(実施例1)
ニスベース1を98部、無機系抗菌剤(ノバロンAG300、銀系、東亞合成(株)製)を1.3部、水不溶性ウレア結合有する化合物(BYK-7410ET、ビックケミー・ジャパン(株)製)を0.7部を添加し、撹拌して、ニス1を作製した。同様に、表1~表3の処方にしたがって、ニス2~20を作製した。
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
使用した材料は、次のものである。
ノバロンVZF101:無機系抗菌剤、亜鉛系、東亞合成(株)製
AGアルファCF-01:銀イオン水溶液(クレアチニンおよびフマル酸と銀との錯体、水溶性銀化合物13~14%(銀イオン濃度2.5%)、フマル酸1~2%、水84~86%)、MGCウッドケム(株)製
スラモニD100:有機系抗菌剤、第4級アンモニウム塩、大阪ガスケミカル(株)製
U-6LPU:ウレタンアクリレート樹脂、新中村化学工業(株)製
NKエステル9550:ジペンタエリスリトールポリアクリレート、新中村化学工業(株)製
NKエステルA-GLY-9E:エトキシ化(9)グリセリントリアクリレート、新中村化学工業(株)製
アロニックスM-215:イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、東亞合成(株)製
L-C9A:1,9-ノナンジオールジアクリレート、第一工業製薬(株)製
アロニックスM-220:トリプロピレングリコールジアクリレート、東亞合成(株)製
サイロホービック200:シリカ、富士シリシア化学(株)製
【0091】
作製したニスについて、沈降抑制性、保存安定性、流動性、ミスチング、抗菌性、抗ウイルス性を評価し、表4に示した。
【0092】
[沈降抑制性]
作製したニスを100g容器に採取し、25℃の暗室に静置し、24時間後の状態を目視にて評価した。抗菌剤、体質顔料が沈降した状態が少ないものほど、沈降抑制性が優れる。沈降状態について、◎:まったく沈降(分離)していない、○:わずかに沈降(分離)している、△:やや沈降(分離)している(実用上問題ない程度)、×:沈降(分離)している、の4段階で評価した。
【0093】
[保存安定性]
作製したニスを100g金属製容器に採取し、40℃の恒温槽内に静置し、24時間後の状態を目視にて評価した。ニスがゲル化していない状態や気泡が浮いていない状態のものほど、保存安定性が優れる。保存安定性について、〇:ゲル化も気泡もまったくない、△:ややゲル化またはやや気泡がみられる(実用上問題ない程度)、×:ゲル化または気泡が多くみられる、の3段階で評価した。
【0094】
[流動性]
作製したニスをインキピペットに一定容量測り取り、水平に置いたガラス板流度計の基準線上に滴下し、直ちにガラス板を垂直に立てる。垂直に立てた時から、10分後にニスが流れた長さを測定し、評価した。測定値の大きいものほど流動性が優れる。流動性の程度について、◎:130mm以上135mm未満、○:120mm以上130mm未満、△:110mm以上120mm未満または135mm以上140mm未満(実用上問題ない程度)、×:110mm未満または140mm以上、の4段階で評価した。
【0095】
[ミスチング]
作製したニスをインコメーター((株)東洋精機製作所製)を使用し、ニス量2.62cc、室温25℃、ローラー温度35℃、回転数2000rpmの条件下で、1分間運転した後のインコメーターロールの背面に設置した白紙へ飛散したニス組成物の飛散状態を目視にて評価した。飛散量が少ないほど、ミスチングが優れる。飛散状態について、○:少ないもの、△:やや多いもの(実用上問題ない程度)、×:多いもの(実用できない)、の3段階で評価した。
【0096】
[密着性]
作製したニスを特菱アート両面N(76.5kg/菊判、三菱製紙社製)にRIテスターで各ニスを1.2cc/m2で展色させ、オゾンレスメタルハライドランプ80Wのランプ下20cmによりコンベア速度90m/分で照射硬化した印刷面に粘着テープを貼り、垂直方向に引き上げて剥離することにより、基材への密着状態を評価した。○:ほとんど剥離しない、△:やや剥離する(実用上問題ない)、×:半分以上が剥離する、の3段階で評価した。なお、ニス19および20は、粘度が低すぎて、印刷適性(流動性過多)が劣るため、展色できず、密着性評価ができなかった。表4中では、「-」とした。
【0097】
[抗菌性]
作製したニスをRIテスター((株)明製作所製)で合成紙(ユポFGS、厚み150μm、(株)ユポ・コーポレーション製)に、1.2cc/m2で展色し、オゾンレスメタルハライドランプ80Wのランプ下20cmによりコンベア速度90m/分で照射硬化させ、試験用印刷物を得た。
試験用印刷物について、JIS Z 2801:2012に準拠して、以下のようにして実施した。
40mm×40mmに切断した試験用印刷物の表面に、大腸菌(Escherichia coli)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)をそれぞれ含む菌液を滴下し、その上から30mm×30mm×0.09mmのポリエチレンフィルムを密着させ、温度35℃、湿度90%の条件下で24時間培養した。培養後、ポリエチレンフィルムおよび試験用印刷物に付着している菌体をSCDLP培地10ml(V)で洗い出した。洗い出した液を1ml取り、リン酸緩衝生理食塩水9mlの入った試験管に加え、混合し、さらに、この試験管から1mlを取り、別の試験管に入ったリン酸緩衝生理食塩水9mlに入れて、混合して、10倍希釈液を作製し、洗い出し液と10倍希釈液それぞれ1ml(1倍希釈:D)をシャーレ2枚に分注した。シャーレ1枚あたり、46~48℃に保温した標準寒天培地15~20mlを加え、よく混合し、温度35℃、湿度90%の条件下で40~48時間培養した後、大腸菌および黄色ブドウ球菌の生菌数をそれぞれカウントした。評価の基準は、無加工の合成紙試験片を用いた。試験はそれぞれ3回行った。なお、密着性評価ができなかったニス19および20は、抗菌性評価は行わなかった。表4中では、「-」とした。
【0098】
生菌数(N)は以下の方法により算出した。
N=(C×D×V)/A
N:生菌数(試験片1cm2あたり)
C:集落数(採用した2枚のシャーレの集落数平均値)
D:希釈倍数(採用したシャーレに分注した希釈液の希釈倍率)
V:洗い出しに用いたSCDLP培地の液量(ml)
A:被覆フィルムの表面積(cm2)
ただし、Cが<1の場合はCを1として生菌数を算出した。例えば、V=10ml、A=9cm2、D=1の場合、N<1.1とした。
抗菌活性値(R)は以下の方法により算出した。
R=log(B/A)-log(C/A)=log(B/C)
A:無加工試験片の接種直後の生菌数の平均値(個)
B:無加工試験片の24時間後の生菌数の平均値(個)
C:抗菌加工試験片の24時間後の生菌数の平均値(個)
ただし、生菌数(N)が<1.1の場合、1.1で計算した。小数点以下2けた目は切り捨て、小数点以下1けたとした。
抗菌活性値(R)が2以上のとき、抗菌効果があると判断でき、○:2以上(抗菌効果がある)、△:2未満、1以上(弱い抗菌効果)、×:1未満(抗菌効果がない)の3段階で評価した。
【0099】
[抗ウイルス性]
前記[抗菌性]と同様に作成した試験用印刷物について、以下のようにして実施した。
50mm×50mmに切断した試験用印刷物の表面に、エンベローブ型ウイルス(バクテリオファージφ6)およびノンエンベローブ型ウイルス(バクテリオファージQβ)をそれぞれ含む懸濁液を0.4mL滴下した。その上から40mm×40mm×0.09mmのポリエチレンフィルムを密着させ、温度25℃、湿度90%以上の条件下で24時間静置した。静置後、ポリエチレンフィルムおよび試験用印刷物に付着しているウイルスをSCDLP培地10mLで洗い出し、洗い出し液から10倍希釈系列を作成した。洗い出し液および各希釈液0.1mL、宿主細菌培養液0.1mL、軟寒天培地5mLを試験管に加え攪拌し、寒天平板培地に重層した後、37℃で18時間培養し、宿主細菌にバクテリオファージを感染させた。培養後、シャーレのプラーク数を測定した。評価の基準は、無加工の合成紙試験片を用いた。試験はそれぞれ3回行った。なお、密着性評価ができなかったニス19および20は、抗ウイルス性評価は行わなかった。表4中では、「-」とした。
【0100】
ウイルス感染価(V)は以下の方法により算出した。
V=(10×C×D×N)/A
V:ウイルス感染価(試験片1cm2あたり)(PFU/cm2)
C:プラーク数
D:希釈倍数(採用したウェルに分注した希釈液の希釈倍率)
N:洗い出しに用いたSCDLP培地の液量(ml)
A:被覆フィルムの表面積(cm2)
ただし、Cが<1の場合はCを1としてプラーク数を算出した。例えば、N=10ml、
A=16cm2、D=1(洗い出し液)の場合、logV<0.80とした。
抗ウイルス活性値(R)は以下の方法により算出した。
R=log(Vb)-log(Vc)
log(Vb):無加工試験片のウイルス感染価の常用対数値
log(Vc):加工試験片のウイルス感染価の常用対数値
ただし、logVが<0.80の場合、0.80で計算した。小数点以下2けた目は切り捨て、小数点以下1けたとした。
抗ウイルス活性値(R)が2以上のとき、抗ウイルス効果があると判断でき、○:2以上(抗ウイルス効果がある)、△:2未満、1以上(弱い抗ウイルス効果)、×:1未満(抗ウイルス効果がない)の3段階で評価した。
【0101】
【0102】
表4より、実施例1~12のニスは、抗菌性および抗ウイルス性について良好で、ニス組成物として印刷に供する適性を有し、また印刷基材への密着も良好であることが明確である。比較例1のニスは従来のニスの例であるが、気泡が発生してしまうことに加え、当然抗菌性能がないことが明確である。比較例2の銀イオン水溶液を含有するもの(有効成分を合わせた)は、抗菌性および抗ウイルス性は良好であるが、ゲル化してしまい、保存安定性が劣ることが明確である。比較例3の有機系の第4級アンモニウム塩からなる抗菌剤を含有したニスでは、抗菌効果が出ないことが明確である。比較例4は、有効成分を実施例11や12ならびに比較例2と同濃度に合わせた有機系の第4級アンモニウム塩からなる抗菌剤を含有したニスであるが、沈降抑制性は良くなるが、印刷適性が劣ることに加え、抗菌効果も出ないことが明確である。比較例5および6の水不溶性ウレア結合を有する化合物を含有しないものは、体質顔料が沈降してしまうことに加え、気泡が発生してしまい、保存安定性も劣ることが明確である。特許文献1に類似の比較例7および特許文献2に類似の比較例8は、粘度が低すぎて、流動性、ミスチングといった印刷適性が劣り、ニスとして印刷に供するものではないことが明確である。