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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050441
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】麺状食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20240403BHJP
   A23L 29/262 20160101ALI20240403BHJP
   A23L 33/17 20160101ALI20240403BHJP
   A23L 33/21 20160101ALI20240403BHJP
【FI】
A23L7/109 A
A23L7/109 F
A23L7/109 C
A23L29/262
A23L33/17
A23L33/21
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023143036
(22)【出願日】2023-09-04
(31)【優先権主張番号】P 2022156356
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000190943
【氏名又は名称】新田ゼラチン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間宮 寛之
【テーマコード(参考)】
4B018
4B041
4B046
【Fターム(参考)】
4B018LB02
4B018MD20
4B018MD35
4B018MD47
4B018MD49
4B041LC03
4B041LD01
4B041LE10
4B041LH11
4B041LK14
4B041LK22
4B041LK23
4B041LK33
4B041LP01
4B041LP12
4B041LP16
4B046LA02
4B046LA04
4B046LA05
4B046LB10
4B046LC06
4B046LC07
4B046LG04
4B046LG17
4B046LG20
4B046LG27
4B046LG28
4B046LG29
4B046LG32
4B046LG53
4B046LP03
4B046LP15
4B046LP41
4B046LP69
(57)【要約】
【課題】タンパク質成分を高濃度で含有し、かつ喫食時に麺本来の風味および食感が維持された麺状食品を提供する。
【解決手段】麺状食品は、小麦粉、そば粉、ライ麦粉、大麦粉、オーツ麦粉、米粉、片栗粉、もち粉、きび粉、ひえ粉およびあわ粉からなる群より選ばれる少なくとも1種の穀物粉と、タンパク質分解物と、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、を含み、前記穀物粉の含有量は、50質量%以上であり、前記タンパク質分解物の含有量は、3.7質量%以上8質量%以下であり、前記タンパク質分解物の重量平均分子量は、20000未満である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉、そば粉、ライ麦粉、大麦粉、オーツ麦粉、米粉、片栗粉、もち粉、きび粉、ひえ粉およびあわ粉からなる群より選ばれる少なくとも1種の穀物粉と、
タンパク質分解物と、
ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、を含み、
前記穀物粉の含有量は、50質量%以上であり、
前記タンパク質分解物の含有量は、3.7質量%以上8質量%以下であり、
前記タンパク質分解物の重量平均分子量は、20000未満である、麺状食品。
【請求項2】
前記麺状食品は、ヒドロキシプロピル澱粉をさらに含む、請求項1に記載の麺状食品。
【請求項3】
前記ヒドロキシプロピル澱粉の含有量は、3質量%以上9.6質量%以下である、請求項2に記載の麺状食品。
【請求項4】
前記麺状食品は、喫食時に100gあたりタンパク質成分を6.5g以上含み、
前記タンパク質成分は、前記タンパク質分解物と、前記タンパク質分解物以外のタンパク質とからなる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の麺状食品。
【請求項5】
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量は、0.5質量%以上3.2質量%以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の麺状食品。
【請求項6】
前記麺状食品は、食物繊維をさらに含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の麺状食品。
【請求項7】
前記麺状食品は、中華麺または蕎麦である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の麺状食品。
【請求項8】
前記タンパク質分解物の含有量は、3.7質量%以上7質量%以下であり、
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量は、0.5質量%以上2.8質量%以下である、請求項7に記載の麺状食品。
【請求項9】
前記麺状食品は、うどん、冷や麦またはそうめんである、請求項2または請求項3に記載の麺状食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺状食品に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2022-088855号公報(特許文献1)は、タンパク質成分を高濃度で含有しつつ麺類としての食感、風味を失わないとされる麺状食品を開示している。上記特許文献1においてタンパク質成分としては、ソラマメタンパク、ヒヨコマメタンパク、リョクトウタンパク等を挙げている。特開2004-344081号公報(特許文献2)は、生麺のようなみずみずしい食感を実現するために、乾燥麺に対し食感改良剤としてコラーゲンペプチドを2質量%以下含ませることを提案している。特開2012-065554号公報(特許文献3)は、コラーゲンペプチドを食感改良剤として使用することにより、水分含量の高い食品にしっとりとしたソフトな食感を付与し、水分含量の低い食品にサクサクとした食感を付与することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-088855号公報
【特許文献2】特開2004-344081号公報
【特許文献3】特開2012-065554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
健康志向の高まり、ならびに高齢者の低栄養予防、フレイル予防等の観点から、タンパク質成分を高濃度で含有する高栄養化食品が要求されている。食品としてのたとえば麺は、幼児から高齢者までの全年齢区分において喫食しやすいため、タンパク質成分を高濃度で含有させることが要請されている。上記特許文献1は、穀類に豆類を配合することによりタンパク質成分を高濃度で含有した麺状食品を得たとするが、上記豆類を配合することは、その溶解度の低さによる麺類の風味および食感への悪影響、ならびに加工適性の低さが懸念される。
【0005】
一方、四肢動物の皮、皮膚、骨、軟骨および腱、あるいは魚類の骨、皮、鱗などを由来とするタンパク質分解物は、溶解性および加工適性の両者が良好で、かつ風味および食感に悪影響を及ぼすことが少ないため、タンパク質成分を高濃度で含有する麺または麺状食品の素材として有用となる可能性がある。しかしながら上記タンパク質分解物は、溶解性が高いために小麦粉等の穀物粉に配合しても沸騰水中で茹でる等の加熱調理時に溶出する可能性がある。さらに上記タンパク質分解物は、これを小麦粉に配合した場合、グルテンの形成を阻害することによって製麺が困難となるため、麺または麺状食品の素材としては上記特許文献2に開示されているように少量添加することに限られている。上記特許文献3は、上記タンパク質分解物の添加によってグルテンの形成が阻害されることの代わりに、牛乳および卵を利用することにより製麺を可能としているが、その場合に製麺された麺は、本来の食感が全く失われていると推定される。したがって、タンパク質分解物を含むことによってタンパク質成分を高濃度で含有し、かつ喫食時に麺本来の風味および食感が維持された麺または麺状食品は未だ実現しておらず、その開発が切望されている。
【0006】
上記実情に鑑み、本発明は、タンパク質分解物を含むことによってタンパク質成分を高濃度で含有し、かつ喫食時に麺本来の風味および食感が維持された麺状食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ね、本発明を完成させた。具体的には、沸騰水の温度帯でゲル化する性質を有する食品添加物であるヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、「HPMC」とも記す)をタンパク質分解物とともに小麦粉等の穀物粉に添加することに想到した。この場合、製麺が可能となり、かつ加熱調理時に上記タンパク質分解物の溶出が抑制されることによって、タンパク質成分を高濃度で含有する麺状食品を得られることを知見した。さらに上記麺状食品は、喫食時に麺本来の風味および食感が維持されていた。これによりタンパク質成分を高濃度で含有し、かつ喫食時に麺本来の風味および食感が維持された麺状食品に到達した。すなわち、本発明は次のような構成を有する。
【0008】
本発明に係る麺状食品は、小麦粉、そば粉、ライ麦粉、大麦粉、オーツ麦粉、米粉、片栗粉、もち粉、きび粉、ひえ粉およびあわ粉からなる群より選ばれる少なくとも1種の穀物粉と、タンパク質分解物と、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、を含み、上記穀物粉の含有量は、50質量%以上であり、上記タンパク質分解物の含有量は、3.7質量%以上8質量%以下であり、上記タンパク質分解物の重量平均分子量は、20000未満である。
【0009】
上記麺状食品は、上記ヒドロキシプロピル澱粉をさらに含むことが好ましい。
上記ヒドロキシプロピル澱粉の含有量は、3質量%以上9.6質量%以下であることが好ましい。
【0010】
上記麺状食品は、喫食時に100gあたりタンパク質成分を6.5g以上含み、上記タンパク質成分は、上記タンパク質分解物と、上記タンパク質分解物以外のタンパク質とからなることが好ましい。
【0011】
上記ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量は、0.5質量%以上3.2質量%以下であることが好ましい。
【0012】
上記麺状食品は、食物繊維をさらに含むことが好ましい。
上記麺状食品は、中華麺または蕎麦であることが好ましい。
【0013】
上記麺状食品は、中華麺または蕎麦である場合、上記タンパク質分解物の含有量は、3.7質量%以上7質量%以下であり、上記ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量は、0.5質量%以上2.8質量%以下であることが好ましい。
【0014】
上記麺状食品は、うどん、冷や麦またはそうめんであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上記によれば、タンパク質分解物を含むことによってタンパク質成分を高濃度で含有し、かつ喫食時に麺本来の風味および食感が維持された麺状食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態(以下、「本実施形態」とも記す)について、さらに詳細に説明する。ここで本明細書において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。本明細書において「タンパク質成分を高濃度で含有する」とは、麺状食品100g当たり3.7g以上のタンパク質分解物を含むことを意味する。これにより喫食時において、タンパク質成分の含有量が穀物粉(たとえば小麦粉)中のタンパク質等との合計で、1食(200g)当たり約13g以上が達成され、厚生労働省が定める『日本人の食事摂取基準(2020年版)』から導かれる1食当たりのタンパク質維持必要量に匹敵することができる。
【0017】
本明細書において「製麺」とは、穀物粉等の粉体と水(練水)とを混合することによりおから様の塊とし、上記塊を麺帯とし、上記麺帯を圧延して薄い生地とし、続けて上記薄い生地を切断して生麺を得る麺打ちの操作を行うことに加え、これを茹でることにより加熱し、必要に応じて乾燥し、冷凍する一連の工程を含んで麺を製造することを意味する。また「製麺」の範疇には、上記の麺帯を得る工程を省略し、圧力で細孔へ上記塊を押出すことによって生麺を得る態様(所謂「押出製麺」)も含まれる。本明細書において「麺」とは、上記製麺により得られた線状に成形された食品、および上記麺打ちの操作のうち、上記塊を圧延して薄い生地とすることにより得られる食品(たとえば、餃子、シュウマイ、ワンタンの皮等)の両者をいう。本明細書において「生麺」とは、上記の麺打ちの操作により得られる食品素材をいうものとする。ここで上記「生麺」には、上記生麺を低水分として常温流通させる所謂半生麺を含む。さらに「喫食時」とは、生麺を茹でることによって喫食可能とした状態、茹でた生麺を冷凍して得られる冷凍麺を、再度茹で解凍することによって喫食可能とした状態、または茹でた生麺を冷凍して得られる冷凍麺を、電子レンジによるレンジアップ解凍によって喫食可能とした状態を意味する。
【0018】
本明細書において「加熱調理」の用語には、上記麺を各家庭等で喫食前に喫食可能とするために茹でる処理のみならず、製麺時の麺打ちの操作の後、これを食品工場等で加熱して茹でる処理も含まれるものとする。本明細書において、麺状食品に含まれる各種成分の「含有量」については、麺状食品に含まれる固形分および水分の総量に対する含有量を意味する。したがって、たとえば上記穀物粉の含有量は、本発明に係る麺状食品に含まれる固形分および水分の総量を100質量%としたときに50質量%以上であることを意味する。
【0019】
<麺状食品>
本発明に係る麺状食品は、小麦粉、そば粉、ライ麦粉、大麦粉、オーツ麦粉、米粉、片栗粉、もち粉、きび粉、ひえ粉およびあわ粉からなる群より選ばれる少なくとも1種の穀物粉と、タンパク質分解物と、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)とを含む。上記穀物粉の含有量は、50質量%以上である。上記タンパク質分解物の含有量は、3.7質量%以上8質量%以下である。上記タンパク質分解物の重量平均分子量は、20000未満である。このような特徴を備える麺状食品は、タンパク質分解物を含むことによってタンパク質成分を高濃度で含有し、かつ喫食時に麺本来の風味および食感を維持することができる。
【0020】
本発明者らは、麺状食品が上記のような特徴を備える場合、3.7質量%以上のタンパク質分解物を含んでいるにもかかわらず麺を製麺することができ、かつ喫食時に麺本来の風味および食感を維持できる理由を、次のように推定している。すなわち本発明者らは、タンパク質分解物および穀物粉とともに、30℃以下の冷水で溶解し、かつ熱水(65℃以上)の温度帯でゲル化するHPMCを配合して製麺することにより麺状食品を得た。この場合、生麺を麺打ちにて得る際にグルテンの形成がタンパク質分解物によって阻害されるものの、溶解性に優れたタンパク質分解物とHPMCとは共に溶解し、生麺を茹でたときに上記HPMCがゲル化することによって上記タンパク質分解物が包摂されるため、その溶出を抑制することができることを知見した。さらに穀物粉に含まれるタンパク質成分もHPMCで包摂されるため、その溶出も抑制することができることを知見した。これにより上記麺状食品は、タンパク質成分を高濃度で含有することができると考えられる。加えてメカニズムは不明ながら、麺状食品中に50質量%以上含まれる穀物粉、タンパク質分解物およびHPMCの間の化学的および物理的な相互作用によって、喫食時に麺本来の風味および食感を維持することができると推定される。以上により本発明は、3.7質量%以上のタンパク質分解物を含むことによってタンパク質成分を高濃度で含有し、かつ喫食時に麺本来の風味および食感を維持できる麺状食品を提供することができると考えられる。以下、上記麺状食品を構成する各種の食品素材について説明する。以下の説明において食品素材の各含有量は、特記する場合を除き、上記麺状食品が生麺である状態における含有量を意味するものとする。すなわち上記麺状食品は、生麺であることが好ましい。
【0021】
(穀物粉)
本発明に係る麺状食品は、上述のように小麦粉、そば粉、ライ麦粉、大麦粉、オーツ麦粉、米粉、片栗粉、もち粉、きび粉、ひえ粉およびあわ粉からなる群より選ばれる少なくとも1種の穀物粉を含む。上記麺状食品において上記穀物粉の含有量は、50質量%以上である。これにより上記穀物粉の含有量は麺状食品において主成分となり、もって喫食時に麺本来の風味および食感を維持することに寄与することができるものと考えられる。
【0022】
上記穀物粉は、うどん、冷や麦、そうめん、きしめん、蕎麦、はるさめ、中華麺、スパゲティ、マカロニ、ビーフンなど所謂麺類として公知の食品に用いられる素材である。上記穀物粉は、上記群より選ばれる1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記穀物粉は、少なくとも小麦粉を含むことが好ましい。上記小麦粉としては、薄力粉および強力粉の両方またはいずれか一方を含むことができる。上記麺状食品において上記穀物粉の含有量は、53質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。上記麺状食品において上記穀物粉の含有量の上限値は、上記穀物粉とともに配合されるタンパク質分解物およびHPMCの含有量に依るが、たとえば95質量%以下とすることが好ましい。
【0023】
(タンパク質分解物)
本発明に係る麺状食品は、上述のようにタンパク質分解物を含む。上記麺状食品においてタンパク質分解物の含有量は、3.7質量%以上8質量%以下である。上記タンパク質分解物の重量平均分子量は、20000未満である。
【0024】
タンパク質分解物は、ゼラチンおよびコラーゲンの両方またはいずれか一方を加水分解することにより得られるペプチドの集合体(加水分解物)をいう。すなわち「タンパク質分解物」は、一般にコラーゲンペプチド、ゼラチン加水分解物またはコラーゲン加水分解物と称呼されるペプチドの集合体と等価なものを意味する。その中で、本実施形態に係る麺状食品に含まれるタンパク質分解物は、上記のとおりの重量平均分子量を有する。さらにタンパク質分解物は、上述のとおりのペプチドの集合体を意味するため、ペプチド鎖を構成するアミノ酸配列において、グリシンが3残基ごとに繰り返される一次構造を有する等のコラーゲンおよびゼラチンと同じ特徴を有している。
【0025】
本明細書において「ゼラチン」とは、コラーゲンの三重らせん構造が熱変性、酸変性等によってほどけたポリペプチドを意味する。具体的には、以下の第1群~第6群からなる群より選ばれる少なくとも1種を由来とするコラーゲンを、脱脂処理、脱灰処理、塩酸、硫酸などの無機酸を用いた酸処理もしくは石灰などの無機塩基を用いたアルカリ処理、または熱水抽出処理等の従来公知の処理を施すことにより得ることができる。一般に、無機酸を用いて処理することにより得たゼラチンを酸処理ゼラチンと称し、無機塩基を用いて処理することにより得たゼラチンをアルカリ処理ゼラチンと称する。酸処理ゼラチンは、pH8~9が等イオン点であり、上記等イオン点が示すpH領域はブロードとなる。これに対し、アルカリ処理ゼラチンは、ほぼpH5が等イオン点であり、上記等イオン点が示すpH領域は非常にシャープとなる。上記タンパク質分解物を得るために用いるゼラチンとしては、上記アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチンのどちらも用いることができる。
【0026】
ゼラチンは、微生物を用いた発酵法により得たポリペプチド、化学合成または遺伝子組換え操作により得たリコンビナントポリペプチドまたは合成されたポリペプチドであってもよい。また「コラーゲン」とは、以下の第1群~第6群に分類される脊椎動物の皮膚などにおける細胞外基質を由来とするタンパク質をいう。コラーゲンは、3本のペプチド鎖からなる右巻きのらせん構造を有し、そのペプチド鎖を構成するアミノ酸残基は、グリシン残基が3残基ごとに繰り返される一次構造(所謂コラーゲン様配列)を有している。
第1群:牛の皮、皮膚、骨、軟骨および腱からなる群
第2群:豚の皮、皮膚、骨、軟骨および腱からなる群
第3群:羊の皮、皮膚、骨、軟骨および腱からなる群
第4群:鶏の皮、皮膚、骨、軟骨および腱からなる群
第5群:ダチョウの皮、皮膚、骨、軟骨および腱からなる群
第6群:魚の骨、皮および鱗からなる群。
【0027】
タンパク質分解物は、上述のとおりゼラチンおよびコラーゲンの両方またはいずれか一方を加水分解することにより得られる。この場合の「加水分解」には、酸を用いる加水分解、塩基を用いる加水分解、酵素を用いる加水分解、および熱を用いる加水分解がいずれも含まれる。タンパク質分解物は、不純物のコンタミネーションを防止する観点から、熱を用いる加水分解により得ることが好ましい。さらにゼラチンおよびコラーゲンの両方またはいずれか一方を、酵素を用いて加水分解する場合、上記酵素としては、たとえばコラゲナーゼ、チオールプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、酸性プロテアーゼ、アルカリ性プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ等が挙げられる。上述の酵素は、これらを単独でまたは複数組み合わせて用いることができる。上記チオールプロテアーゼとしては、植物由来のキモパパイン、パパイン、ブロメライン、フィシン、動物由来のカテプシン、カルシウム依存性プロテアーゼ等が挙げられる。上記セリンプロテアーゼとしては、トリプシン、カテプシンD等が挙げられる。上記酸性プロテアーゼとしては、ペプシン、キモトリプシン等が挙げられる。
【0028】
使用する酵素としては、タンパク質分解物を食品に利用することを考慮すると、病原性微生物由来の酵素以外の酵素(たとえば、非病原性の微生物に由来する酵素)を用いることが好ましい。上記酵素の由来となる非病原性の微生物としては、Bacillus Iicheniforms、Bacillus subtillis、Aspergillus oryzae、Streptomyces、Bacillus amyloliquefaciens等が挙げられる。上記酵素は、1種の上述した非病原性の微生物に由来する酵素を用いてもよいし、複数種の上述した非病原性の微生物に由来する酵素を組み合わせて用いてもよい。酵素処理の具体的な方法は、従来から知られている方法を用いればよい。
【0029】
タンパク質分解物は、上述した方法によりゼラチンおよびコラーゲンの両方またはいずれか一方を加水分解した後、精製することにより液体として得ることができる。さらに上記液体を公知の手段によって加熱乾燥または凍結乾燥することにより粉体として得ることが可能である。
【0030】
上記麺状食品においてタンパク質分解物の含有量は、3.7質量%以上8質量%以下である。上記麺状食品においてタンパク質分解物の含有量が3.7質量%未満である場合、製麺が可能となり、かつ喫食時に麺本来の風味および食感を維持できる麺状食品を得ることができるが、上記麺状食品においてタンパク質成分を高濃度に含むことが困難となる。上記麺状食品においてタンパク質分解物の含有量が8質量%を超える場合、喫食時の麺本来の風味および食感に悪影響が及ぶ恐れがある。上記麺状食品においてタンパク質分解物の含有量は、4質量%以上6質量%以下であることが好ましい。上記麺状食品においてタンパク質分解物が含まれることおよびその含有量は、ハイドロキシプロリン定量等の公知の方法により測定することができる。
【0031】
タンパク質分解物の重量平均分子量は、20000未満である。これにより上記タンパク質分解物を溶媒(たとえば水)に溶解した場合、熱水(65℃以上)の温度帯においてはもちろん、たとえば25℃前後の室温下でもゲル化せず、ゾルの状態を維持することができる。本実施形態において「ゾル」とは、分散質と分散媒とからなる分散系において、分散媒が液体状である分散系を意味する。「ゲル」とは、分散質と分散媒とからなる分散系において、分散質が架橋構造を形成し、分散系全体として流動性を失った状態を意味する。タンパク質分解物の重量平均分子量は、10000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましい。タンパク質分解物の重量均分子量の下限値は、特に制限されることがないが、喫食時に麺本来の風味および食感に悪影響を及ぼさない観点から、500以上とすることが好ましい。
【0032】
タンパク質分解物の重量平均分子量は、以下の測定条件の下でゲル濾過クロマトグラフィを実行することにより求めることができる。
機器 :高速液体クロマトグラフィ(HPLC)(東ソー株式会社製)
カラム:TSKGel(登録商標)G2000SWXL
カラム温度:30℃
溶離液:40質量%アセトニトリル(0.05質量%TFAを含む)
流速 :0.5mL/min
注入量:10μL
検出 :UV220nm
分子量マーカー:以下の4種を使用
Cytochrom C Mw:12384
Aprotinin Mw:6512
Bacitracin Mw:1423
Gly-Gly-Tyr-Arg Mw:451。
【0033】
具体的には、上記タンパク質分解物をたとえば0.5g秤量し、これを約100mlの蒸留水に添加し、撹拌した後、0.2μmフィルターを用いてろ過することにより、重量平均分子量を測定する試料(被測定物)を調製する。この被測定物を上述したゲル濾過クロマトグラフィの条件に基づいて測定することにより、上記タンパク質分解物の重量平均分子量を求めることができる。
【0034】
(ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC))
本実施形態に係る麺状食品は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む。上記麺状食品において上記HPMCの含有量は、0.5質量%以上3.2質量%以下であることが好ましい。上記麺状食品はHPMCを含むことにより、上述のように加熱調理時にゲル化することによって上記タンパク質分解物を包摂することができ、もって上記麺状食品からタンパク質分解物を溶出させないようにすることができる。
【0035】
上記HPMCとは、セルロースのメチルおよびヒドロキシプロピルの混合エーテルである。上記HPMCとしては、第9版食品添加物公定書に記載されているヒドロキシプロピルメチルセルロースの規格を満たすものである限り、特に制限することなく上記麺状食品に適用することができる。上記HPMCは、その乾燥体においてメトキシ基が27~30質量%含まれ、かつヒドロキシプロポキシ基が4~12質量%含まれていることが好ましい。とりわけ、水への溶解温度が50℃以下であること、および熱ゲル化温度が50℃以上70℃以下であることの両方またはいずれか一方の性質を有するHPMCを本実施形態に係る麺状食品に適用することが好ましい。これにより上記麺状食品からタンパク質分解物をより効果的に溶出させないようにすることが可能となる。
【0036】
上記麺状食品においてHPMCの含有量は、上述のように0.5質量%以上3.2質量%以下であることが好ましい。上記麺状食品においてHPMCの含有量が0.5質量%未満である場合、上記麺状食品からタンパク質分解物の溶出を抑制する効果が減少する恐れがある。上記麺状食品においてHPMCの含有量が3.2質量%を超える場合、喫食時の麺本来の風味および食感に悪影響が及ぶ恐れがある。上記麺状食品においてHPMCの含有量は、1質量%以上3質量%以下であることが好ましく、1質量%以上2質量%以下であることがさらに好ましい。上記麺状食品においてHPMCが含まれることおよびその含有量は、従来公知の適宜の方法により測定すればよい。
【0037】
(ヒドロキシプロピル澱粉(HPS))
本実施形態に係る麺状食品は、ヒドロキシプロピル澱粉(以下、「HPS」とも記す)をさらに含むことが好ましい。上記麺状食品において上記HPSの含有量は、3質量%以上9.6質量%以下であることが好ましい。上記麺状食品はHPSを含むことにより、食感を向上させることができる。とりわけHPSは麺状食品に対し、もちもち感を付与することができるとともに、べたつき感を抑えることができる。
【0038】
上記HPSとは、デンプンを酸化プロピレンでエーテル化することにより得られる加工澱粉である。上記HPSとしては、第9版食品添加物公定書に記載されているヒドロキシプロピル澱粉の規格を満たすものである限り、制限することなく上記麺状食品に適用することができる。上記HPSを得るための起源原料としては、タピオカ、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉などの従来公知のデンプンを特に制限することなく用いることができる。とりわけ粘度が100mPa・s以上であるHPSを、上記麺状食品に適用することが好ましい。またHPSの粘度は、HPS5質量%および砂糖10質量%を水で分散することにより分散液を得、当該分散液を80℃で10分間、加熱撹拌することにより溶解して試料を得た後、当該試料を80℃、60rpmで30秒間撹拌しながら、B型粘度計を用いることにより求めることができる。
【0039】
上記麺状食品においてHPSの含有量は、上述のように3質量%以上9.6質量%以下であることが好ましい。上記麺状食品においてHPSの含有量が3質量%未満である場合、上記麺状食品の食感を向上させる効果が減少する恐れがある。上記麺状食品においてHPSの含有量が9.6質量%を超える場合、喫食時の麺本来の風味および食感に悪影響が及ぶ恐れがある。上記麺状食品においてHPSの含有量は、4質量%以上8質量%以下であることが好ましく、5質量%以上7質量%以下であることがさらに好ましい。上記麺状食品においてHPSが含まれることおよびその含有量は、たとえば顕微鏡観察等の従来公知の適宜の方法により確認することができる。
【0040】
(タンパク質成分)
上記麺状食品は、喫食時に100gあたりタンパク質成分を6.5g以上含むことが好ましい。上記タンパク質成分は、上記タンパク質分解物と、上記タンパク質分解物以外のタンパク質とからなることが好ましい。これにより上記タンパク質分解物と、上記タンパク質分解物以外のタンパク質とで、タンパク質成分を高濃度で含有することを容易に達成することが可能となる。とりわけ上記麺状食品のアミノ酸スコアを容易に100となるように調整することができる。上記麺状食品における喫食時100gあたりのタンパク質成分の上限は、喫食時に麺本来の風味および食感を維持することができる限り、特に制限されない。たとえば上記麺状食品は、喫食時に100gあたりタンパク質成分を16.9g以下含むことができる。
【0041】
本明細書において「タンパク質成分」とは、アミノ酸の単量体およびその誘導体、ならびに2以上のアミノ酸が結合したペプチドまたはアミノ酸が多数結合したタンパク質を意味する。したがって上記タンパク質成分には、上記タンパク質分解物が含まれる。上記タンパク質成分を構成するタンパク質分解物以外のタンパク質としては、タンパク質分解物以外であって、上記のタンパク質成分の定義を満たすタンパク質であれば特に制限されない。上記タンパク質分解物以外のタンパク質としては、たとえば乳清蛋白、卵白、大豆タンパク質、カゼインなどを例示することができる。
【0042】
上記麺状食品は、茹でる等の加熱調理前の生麺または冷凍麺の状態で100gあたりタンパク質成分を12.1g以上含むことが好ましい。これにより喫食時において、茹でる工程等によって加水されたとしても、喫食時に上記麺状食品100gあたりタンパク質成分を6.5g以上含むことが容易となる。
【0043】
(食物繊維)
上記麺状食品は、食物繊維をさらに含むことが好ましい。これにより麺状食品の栄養価を容易に高めることが可能となる。さらに食物繊維が有する整腸作用、食後血糖値の上昇抑制作用、コレステロールの吸収抑制作用等の機能を付加することもできる。本明細書において「食物繊維」とは、ヒトの消化酵素によって消化されにくい食物中の難消化性成分の総称をいう。上記食物繊維に分類される成分としては、たとえば植物、藻類および菌類中の細胞壁成分であるセルロース、ペクチン等、植物中の多糖類として分類されるグルコマンナン、イヌリン等、その他のシトラスファイバー、レジスタントスターチ、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等を挙げることができる。上記麺状食品は、上述した機能を得つつ喫食時に麺本来の風味および食感を維持する観点から、喫食時に上記麺状食品100gあたり食物繊維を3g以上7g以下含むことが好ましい。
【0044】
<用途>
本実施形態に係る麺状食品は、うどん、冷や麦、そうめん、きしめん、中華麺、蕎麦、はるさめ、スパゲティ、マカロニ、ビーフン、焼きそば、冷麺など所謂麺類と呼ばれる食品として制限なく適用することができる。さらに上記麺状食品は、たとえば餃子、シュウマイ、ワンタンの皮等の上述した麺打ちの操作のうち、上記おから様の塊を圧延して薄い生地とすることにより得られる食品としても適用することもできる。上記麺状食品は、タンパク質分解物およびHPMCの少なくとも2成分を含む場合、中華麺または蕎麦であることが好ましい。上記麺状食品は、中華麺または蕎麦である場合、上記タンパク質分解物の含有量は、3.7質量%以上7質量%以下であり、上記HPMCの含有量は、0.5質量%以上2.8質量%以下であることが好ましい。これによりタンパク質成分を高濃度で含有し、かつ喫食時に麺本来の風味および食感がより適切に維持された中華麺または蕎麦を提供することができる。上記麺状食品は、タンパク質分解物、HPMCおよびHPSの少なくとも3成分を含む場合、うどん、冷や麦またはそうめんであることが好ましい。上記麺状食品は、うどん、冷や麦またはそうめんである場合、上記タンパク質分解物の含有量は、3.7質量%以上8質量%以下であり、上記HPMCの含有量は、0.5質量%以上3.2質量%以下であり、上記HPSの含有量は、3質量%以上9.6質量%以下であることが好ましい。これによりタンパク質成分を高濃度で含有し、かつ喫食時に麺本来の風味および食感がより適切に維持されたうどん、冷や麦またはそうめんを提供することができる。
【実施例0045】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下に説明する試料A、試料Bおよび試料Cは、従来から知られる一般的な中華麺、蕎麦またはうどんの組成を有する参考例である。試料11~試料19および試料1A~試料1Dは、本発明の範囲に属する中華麺の組成を有する実施例である。試料101~試料104は、中華麺の比較例である。試料21~試料29および試料2A~試料2Dは、本発明の範囲に属する蕎麦の組成を有する実施例である。試料201~試料205は、蕎麦の比較例である。試料31~試料39および試料3A~試料3Fは、本発明の範囲に属するうどんの組成を有する実施例である。試料301~試料309は、うどんの比較例である。
【0046】
[麺状食品を構成する食品素材]
以下に説明する各試料に必要に応じ配合される食品素材(タンパク質分解物、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピル澱粉)は、次のとおりである。
【0047】
タンパク質分解物として以下のいずれかを用いた。「Mw」とは、重量平均分子量を意味する。
タンパク質分解物a:「イージープロテインBBP」、新田ゼラチン株式会社製、Mw2500
タンパク質分解物b:「TYPE-S」、新田ゼラチン株式会社製、Mw1000
タンパク質分解物c:「SCP-5200」、新田ゼラチン株式会社製、Mw5000
タンパク質分解物d:「HBC-P20」、新田ゼラチン株式会社製、Mw20000。
【0048】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースとして以下のいずれかを用いた。
ヒドロキシプロピルメチルセルロースe(HPMC e):乾燥体においてメトキシ基27.0~30.0質量%およびヒドロキシプロポキシ基4.0~7.5質量%含有、熱ゲル化温度約70℃
ヒドロキシプロピルメチルセルロースf(HPMC f):乾燥体においてメトキシ基27.0~30.0質量%およびヒドロキシプロポキシ基4.0~7.5質量%含有、熱ゲル化温度約70℃
(なお、ヒドロキシプロピルメチルセルロースeとヒドロキシプロピルメチルセルロースfとは同一の規格幅が設定された別製品である。)
ヒドロキシプロピルメチルセルロースg(HPMC g):乾燥体においてメトキシ基28.0~30.0質量%およびヒドロキシプロポキシ基7.0~12.0質量%含有、熱ゲル化温度約65℃。
【0049】
ヒドロキシプロピル澱粉として以下のいずれかを用いた。
ヒドロキシプロピル澱粉h(HPS h):起源原料タピオカ、粘度約400mPa・s
ヒドロキシプロピル澱粉i(HPS i):起源原料タピオカ、粘度約500mPa・s
ヒドロキシプロピル澱粉j(HPS j):起源原料コーンスターチ、粘度約800mPa・s。
【0050】
[第1実施例:中華麺]
<麺状食品の製造>
(試料Aの調製)
表1に示す量(質量%)の市販の強力粉、食塩、重曹および冷水(10℃以下)を準備した。上記冷水に食塩および重曹を溶解することにより食塩重曹含有水を得るとともに、強力粉からなる粉体を得た。さらに上記食塩重曹含有水および粉体をヌードルメーカー(商品名(品番):「HR2365/01」、フィリップス株式会社)に導入し、練り時間8分の条件で麺打ちを行うことにより生麺の状態で試料Aの中華麺を得た。
【0051】
次に、上記試料Aの中華麺を沸騰水中で4分間茹でた後、これを-30℃で急速冷凍し、その後、沸騰水中で再び1分間茹でることにより喫食可能な中華麺とした。喫食時における試料Aの中華麺に含まれるタンパク質成分は、100gあたり5.3gであった。
【0052】
(試料11~試料19および試料1A~試料1Dの調製)
各試料を調製するため、表1に示す量(質量%)の強力粉、食塩、重曹および冷水、タンパク質分解物a、タンパク質分解物bおよびタンパク質分解物c、ヒドロキシプロピルメチルセルロースe、ヒドロキシプロピルメチルセルロースfおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースg、ならびにヒドロキシプロピル澱粉h、ヒドロキシプロピル澱粉iおよびヒドロキシプロピル澱粉jをそれぞれ準備した。さらに乳清蛋白(商品名:「Whey Protein Concentrate 132(WPC132)」、日成共益株式会社)、食物繊維(商品名:「KCフロック W-400Y」、日本紙通商株式会社)、および乾燥卵白(商品名:「乾燥卵白Kタイプ」、MP五協フード&ケミカル株式会社)も準備した。
【0053】
次に、上記冷水に食塩および重曹を溶解することにより食塩重曹含有水を得るとともに、強力粉と、タンパク質分解物a、タンパク質分解物bおよびタンパク質分解物cから選ばれる1種と、ヒドロキシプロピルメチルセルロースe、ヒドロキシプロピルメチルセルロースfおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースgから選ばれる1種と、必要に応じてヒドロキシプロピル澱粉h、ヒドロキシプロピル澱粉iおよびヒドロキシプロピル澱粉jから選ばれる1種、乳清蛋白、乾燥卵白、食物繊維等とを混合することにより混合粉体を得た。
【0054】
これらのこと以外、試料Aと同じ方法により、上記混合粉体から生麺を製麺し、当該生麺の状態で試料11~試料19および試料1A~試料1Dの中華麺を得た。さらに試料11~試料19および試料1A~試料1Dの中華麺を、試料Aと同じ条件にて茹で、急速冷凍し、再び茹でる操作を行うことにより、それぞれ喫食可能な中華麺とした。生麺の状態の試料11~試料19および試料1A~試料1Dの中華麺を茹でた際に、タンパク質の栄養成分分析をすることにより、各試料からタンパク質分解物が溶出しなかったことを確認した。
【0055】
喫食時における試料11の中華麺に含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.7gであり、喫食時における試料12の中華麺に含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.8gであり、喫食時における試料13の中華麺に含まれるタンパク質成分は、100gあたり8.1gであった。喫食時における試料14の中華麺に含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.3gであり、喫食時における試料15の中華麺に含まれるタンパク質成分は、100gあたり10.2gであり、喫食時における試料16の中華麺に含まれるタンパク質成分は、100gあたり9.7gであった。喫食時における試料17の中華麺に含まれるタンパク質成分は、100gあたり8.7gであり、喫食時における試料18の中華麺に含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.4gであり、喫食時における試料19の中華麺に含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.3gであった。喫食時における試料1Aの中華麺に含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.4gであり、喫食時における試料1Bの中華麺に含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.1gであり、喫食時における試料1Cの中華麺に含まれるタンパク質成分は、100gあたり8.6gであり、喫食時における試料1Dの中華麺に含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.5gであった。
【0056】
(試料101~試料104の調製)
各試料を調製するため、表2に示す量(質量%)の薄力粉、強力粉、食塩および冷水、タンパク質分解物aおよびタンパク質分解物d、ヒドロキシプロピル澱粉h、ヒドロキシプロピルメチルセルロースe、メチルセルロース(商品名:「メトローズ(登録商標)MCE-100TS」、信越化学工業株式会社)、ならびに粉末大豆蛋白(商品名:「フジプロE」、不二製油株式会社)をそれぞれ準備した。
【0057】
次に、上記冷水に食塩および重曹を溶解することにより食塩重曹含有水を得るとともに、表2に示す含有量にて強力粉と、タンパク質分解物aおよびタンパク質分解物dから選ばれる1種と、必要に応じてヒドロキシプロピルメチルセルロースe、メチルセルロース、ヒドロキシプロピル澱粉h、粉末大豆蛋白等とを混合することにより混合粉体を得た。
【0058】
これらのこと以外、試料Aと同じ方法により、上記混合粉体から生麺を製麺しようとしたが、試料104以外の試料(試料101~試料103)については、生麺が得られなかった。試料104については、上記生麺を製麺できたため、当該生麺を試料104の中華麺として得た。さらに試料104の中華麺を、試料Aと同じ条件にて茹で、急速冷凍し、再び茹でる操作を行った。試料101~試料104の中華麺に対しては、後述する麺状食品の評価において良好な結果が得られなかったため、タンパク質の栄養成分分析を行わなかった。
【0059】
試料A、試料11~試料19、試料1A~試料1D、および試料101~試料104の中華麺の組成の一覧を表1~表2に示す。
【0060】
<中華麺(麺状食品)の評価>
試料A、試料11~試料19、試料1A~試料1D、および試料104の喫食可能な状態の中華麺について、20~50代の男女5名からなるパネラーが喫食することにより、「製麺適性」、「茹で解凍後の食感」および「喫食時の麺の風味」の項目に関し官能評価を行った。各項目における評価基準は以下のとおりであり、各試料における最終評価は上記パネラーによる多数決とした。さらに各試料における上記の3つの項目に基づいた「総合評価」の決定も上記パネラーによる多数決とした。結果を表1~表2に示す。なお、試料101~試料103は、上述のように製麺不可能であって中華麺が得られなかったため、「製麺適性」の評価については「C」に相当し、もって他の2項目に関する評価を行わなかった。
【0061】
(製麺適性)
生麺を得た後に麺線同士が接着せず、かつ茹でた際に麺自体が崩壊しない場合を「A」と評価し、生麺を得た後に麺線同士が接着するか、あるいは茹でた際に麺自体が崩壊した場合を「C」と評価した。
【0062】
(茹で解凍後の食感)
生麺を上述した条件にて茹でた後、急速冷凍し、かつ再び茹でることにより得た麺状食品を実際に喫食したときに、十分に麺本来の風味および食感が得られた場合を「A」と評価し、麺本来の風味および食感が得られた場合を「B」と評価し、麺本来の風味および食感が得られなかった場合を「C」と評価した。
【0063】
(喫食時の麺の風味)
生麺を上述した条件にて茹でた後、急速冷凍し、かつ再び茹でることにより得た麺状食品を実際に喫食したときに、異味および異臭を感じなかった場合を「A」と評価し、異味および異臭を感じた場合を「C」と評価した。
【0064】
(総合評価)
上述した3項目を踏まえ、本発明の効果を顕著に得られる麺状食品であると判断した場合に「VG(Very Good)」と評価し、本発明の効果を適切に得られる麺状食品であると判断した場合に「G(Good)」と評価し、発明の効果を得るには不十分である麺状食品であると判断した場合に「NG(Not Good)」と評価した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
[第2実施例:蕎麦]
<麺状食品の製造>
(試料Bの調製)
表3に示す量(質量%)の強力粉、そば粉、食塩および冷水を準備した。さらに上記冷水に食塩を溶解することにより食塩水を得るとともに、強力粉およびそば粉を混合することにより混合粉体を得た。これらのこと以外、試料Aと同じ方法により、生麺の状態で試料Bの蕎麦を得た。さらに試料Bの蕎麦を沸騰水中で2分間茹でたこと以外、試料Aと同じ条件にて急速冷凍し、再び茹でる操作を行うことにより喫食可能な蕎麦とした。喫食時における試料Bの蕎麦に含まれるタンパク質成分は、100gあたり5.7gであった。
【0068】
(試料21~試料29および試料2A~試料2Dの調製)
各試料を調製するため、表3に示す量(質量%)の強力粉、そば粉、食塩および冷水、タンパク質分解物a、タンパク質分解物bおよびタンパク質分解物c、ヒドロキシプロピルメチルセルロースe、ヒドロキシプロピルメチルセルロースfおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースg、ならびにヒドロキシプロピル澱粉h、ヒドロキシプロピル澱粉iおよびヒドロキシプロピル澱粉jをそれぞれ準備した。さらに乳清蛋白(商品名:「Whey Protein Concentrate 132(WPC132)」、日成共益株式会社)、および食物繊維(商品名:「KCフロック W-400Y」、日本紙通商株式会社)も準備した。
【0069】
次に、上記冷水に食塩を溶解することにより食塩水を得るとともに、強力粉と、そば粉と、タンパク質分解物a、タンパク質分解物bおよびタンパク質分解物cから選ばれる1種と、ヒドロキシプロピルメチルセルロースe、ヒドロキシプロピルメチルセルロースfおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースgから選ばれる1種と、必要に応じてヒドロキシプロピル澱粉h、ヒドロキシプロピル澱粉iおよびヒドロキシプロピル澱粉jから選ばれる1種、乳清蛋白、食物繊維等とを混合することにより混合粉体を得た。
【0070】
これらのこと以外、試料Bと同じ方法により、上記混合粉体から生麺を製麺し、当該生麺の状態で試料21~試料29および試料2A~試料2Dの蕎麦を得た。さらに試料21~試料29および試料2A~試料2Dの蕎麦を、試料Bと同じ条件にて茹で、急速冷凍し、再び茹でる操作を行うことにより、それぞれ喫食可能な蕎麦とした。生麺の状態の試料21~試料29および試料2A~試料2Dの蕎麦を茹でた際に、タンパク質の栄養成分分析をすることにより、各試料からタンパク質分解物が溶出しなかったことを確認した。
【0071】
喫食時における試料21の蕎麦に含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.9gであり、喫食時における試料22の蕎麦に含まれるタンパク質成分は、100gあたり8.2gであり、喫食時における試料23の蕎麦に含まれるタンパク質成分は、100gあたり8.3gであった。喫食時における試料24の蕎麦に含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.5gであり、喫食時における試料25の蕎麦に含まれるタンパク質成分は、100gあたり8.9gであり、喫食時における試料26の蕎麦に含まれるタンパク質成分は、100gあたり8.7gであった。喫食時における試料27の蕎麦に含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.6gであり、喫食時における試料28の蕎麦に含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.8gであり、喫食時における試料29の蕎麦に含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.7gであった。喫食時における試料2Aの蕎麦に含まれるタンパク質成分は、100gあたり8.2gであり、喫食時における試料2Bの蕎麦に含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.9gであり、喫食時における試料2Cの蕎麦に含まれるタンパク質成分は、100gあたり8.6gであり、喫食時における試料2Dの蕎麦に含まれるタンパク質成分は、100gあたり8.0gであった。
【0072】
(試料201~試料205の調製)
各試料を調製するため、表4に示す量(質量%)の強力粉、そば粉、食塩および冷水、タンパク質分解物aおよびタンパク質分解物d、ヒドロキシプロピル澱粉h、ヒドロキシプロピルメチルセルロースe、メチルセルロース(商品名:「メトローズ(登録商標)MCE-100TS」、信越化学工業株式会社)、乾燥卵白(商品名:「乾燥卵白Kタイプ」、MP五協フード&ケミカル株式会社)、ならびに粉末大豆蛋白(商品名:「フジプロE」、不二製油株式会社)をそれぞれ準備した。
【0073】
次に、上記冷水に食塩を溶解することにより食塩水を得るとともに、表4に示す含有量にて強力粉と、そば粉と、タンパク質分解物aおよびタンパク質分解物dから選ばれる1種と、必要に応じてヒドロキシプロピルメチルセルロースe、メチルセルロース、ヒドロキシプロピル澱粉h、乾燥卵白、粉末大豆蛋白等とを混合することにより混合粉体を得た。
【0074】
これらのこと以外、試料Bと同じ方法により、上記混合粉体から生麺を製麺しようとしたが、試料204および試料205以外の試料(試料201~試料203)については、生麺が得られなかった。試料204および試料205については、上記生麺を製麺できたため、当該生麺を試料204および試料205の蕎麦として得た。さらに試料204および試料205の蕎麦を、試料Bと同じ条件にて茹で、急速冷凍し、再び茹でる操作を行った。試料201~試料205の蕎麦に対しては、後述する麺状食品の評価において良好な結果が得られなかったため、タンパク質の栄養成分分析を行わなかった。
【0075】
試料B、試料21~試料29、試料2A~試料2D、および試料201~試料205の蕎麦の組成の一覧を表3~表4に示す。
【0076】
<蕎麦(麺状食品)の評価>
試料B、試料21~試料29、試料2A~試料2D、および試料204~試料205の喫食可能な状態の蕎麦について、20~50代の男女5名からなるパネラーが喫食することにより、「製麺適性」、「茹で解凍後の食感」および「喫食時の麺の風味」の項目に関し官能評価を行った。各項目における評価基準は、上述した中華麺に対する評価基準と同じとし、各試料における総合評価の評価基準も上述した中華麺に対する評価基準と同じとした。結果を表3~表4に示す。なお、試料201~試料203は、上述のように製麺不可能であって蕎麦が得られなかったため、「製麺適性」の評価については「C」に相当し、もって他の2項目に関する評価を行わなかった。
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
[第3実施例:うどん]
<麺状食品の製造>
(試料Cの調製)
表5に示す量(質量%)の薄力粉、強力粉、食塩および冷水を準備した。さらに上記冷水に食塩を溶解することにより食塩水を得るとともに、薄力粉および強力粉を混合することにより混合粉体を得た。これらのこと以外、試料Aと同じ方法により、生麺の状態で試料Cのうどんを得た。さらに試料Cのうどんを沸騰水中で8分間茹でたこと以外、試料Aと同じ条件にて急速冷凍し、再び茹でる操作を行うことにより喫食可能なうどんとした。喫食時における試料Cのうどんに含まれるタンパク質成分は、100gあたり3.9gであった。
【0080】
(試料31~試料39および試料3A~試料3Fの調製)
各試料を調製するため、表5および表6に示す量(質量%)の薄力粉、強力粉、食塩および冷水、タンパク質分解物a、タンパク質分解物bおよびタンパク質分解物c、ヒドロキシプロピルメチルセルロースe、ヒドロキシプロピルメチルセルロースfおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースg、ならびにヒドロキシプロピル澱粉h、ヒドロキシプロピル澱粉iおよびヒドロキシプロピル澱粉jをそれぞれ準備した。さらに乳清蛋白(商品名:「Whey Protein Concentrate 132(WPC132)」、日成共益株式会社)、および食物繊維(商品名:「KCフロック W-400Y」、日本紙通商株式会社)も準備した。
【0081】
次に、上記冷水に食塩を溶解することにより食塩水を得るとともに、薄力粉と、強力粉と、タンパク質分解物a、タンパク質分解物bおよびタンパク質分解物cから選ばれる1種と、ヒドロキシプロピルメチルセルロースe、ヒドロキシプロピルメチルセルロースfおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースgから選ばれる1種と、ヒドロキシプロピル澱粉h、ヒドロキシプロピル澱粉iおよびヒドロキシプロピル澱粉jから選ばれる1種と、必要に応じて乳清蛋白、食物繊維等とを混合することにより混合粉体を得た。
【0082】
これらのこと以外、試料Cと同じ方法により、上記混合粉体から生麺を製麺し、当該生麺の状態で試料31~試料39および試料3A~試料3Fのうどんを得た。さらに試料31~試料39および試料3A~試料3Fのうどんを、試料Cと同じ条件にて茹で、急速冷凍し、再び茹でる操作を行うことにより、それぞれ喫食可能なうどんとした。生麺の状態の試料31~試料39および試料3A~試料3Fのうどんを茹でた際に、タンパク質の栄養成分分析をすることにより、各試料からタンパク質分解物が溶出しなかったことを確認した。
【0083】
喫食時における試料31のうどんに含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.3gであり、喫食時における試料32のうどんに含まれるタンパク質成分は、100gあたり6.6gであり、喫食時における試料33のうどんに含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.1gであった。喫食時における試料34のうどんに含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.7gであり、喫食時における試料35のうどんに含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.9gであり、喫食時における試料36のうどんに含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.1gであった。喫食時における試料37のうどんに含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.2gであり、喫食時における試料38のうどんに含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.6gであり、喫食時における試料39のうどんに含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.1gであった。喫食時における試料3Aのうどんに含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.1gであり、喫食時における試料3Bのうどんに含まれるタンパク質成分は、100gあたり7.4gであり、喫食時における試料3Cのうどんに含まれるタンパク質成分は、100gあたり6.6gであった。喫食時における試料3Dのうどんに含まれるタンパク質成分は、100gあたり6.5gであり、喫食時における試料3Eのうどんに含まれるタンパク質成分は、100gあたり6.8gであり、喫食時における試料3Fのうどんに含まれるタンパク質成分は、100gあたり6.7gであった。
【0084】
(試料301~試料309の調製)
各試料を調製するため、表7に示す量(質量%)の薄力粉、強力粉、食塩および冷水、ならびにタンパク質分解物a、タンパク質分解物d、ヒドロキシプロピルメチルセルロースeおよびヒドロキシプロピル澱粉hを準備した。さらにメチルセルロース(商品名:「メトローズ(登録商標)MCE-100TS」、信越化学工業株式会社)、乾燥卵白(商品名:「乾燥卵白Kタイプ」、MP五協フード&ケミカル株式会社)および粉末大豆蛋白(商品名:「フジプロE」、不二製油株式会社)も準備した。上記冷水に食塩を溶解することにより食塩水を得るとともに、薄力粉と、強力粉と、タンパク質分解物aまたはタンパク質分解物dと、必要に応じてヒドロキシプロピル澱粉hと、必要に応じてヒドロキシプロピルメチルセルロースeまたはメチルセルロースと、必要に応じて乾燥卵白と、必要に応じて粉末大豆蛋白とを混合することにより混合粉体を得た。
【0085】
これらのこと以外、試料Cと同じ方法により、上記混合粉体から生麺を製麺しようとしたが、試料304~試料309以外の試料(試料301~試料303)については、生麺が得られなかった。試料304~試料309については、上記生麺を製麺できたため、当該生麺を試料304~試料309のうどんとして得た。さらに試料304~試料309のうどんを、試料Cと同じ条件にて茹で、急速冷凍し、再び茹でる操作を行った。試料301~試料309のうどんに対しては、後述する麺状食品の評価において良好な結果が得られなかったため、タンパク質の栄養成分分析を行わなかった。
【0086】
試料C、試料31~試料39、試料3A~試料3F、および試料301~試料309のうどんの組成の一覧を表5~表7に示す。
【0087】
<うどん(麺状食品)の評価>
試料C、試料31~試料39、試料3A~試料3F、および試料304~試料309の喫食可能な状態のうどんについて、20~50代の男女5名からなるパネラーが喫食することにより、「製麺適性」、「茹で解凍後の食感」および「喫食時の麺の風味」の項目に関し官能評価を行った。各項目における評価基準は、上述した中華麺に対する評価基準と同じとし、各試料における総合評価の評価基準も上述した中華麺に対する評価基準と同じとした。結果を表5~表7に示す。なお、試料301~試料303は、上述のように製麺不可能であってうどんが得られなかったため、「製麺適性」の評価については「C」に相当し、もって他の2項目に関する評価を行わなかった。
【0088】
【表5】
【0089】
【表6】
【0090】
【表7】
【0091】
[考察]
表1~表7によれば、試料11~試料19および試料1A~試料1D、試料21~試料29および試料2A~試料2D、ならびに試料31~試料39および試料3A~試料3Fの麺状食品は、重量平均分子量20000未満のタンパク質分解物を3.7質量%以上と、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとを含むことによってタンパク質成分を高濃度に含有するとともに、喫食時において試料A~試料Cと同程度に麺本来の風味および食感が得られていることが理解される。とりわけ試料31~試料39および試料3A~試料3Fの麺状食品は、タンパク質分解物およびヒドロキシプロピルメチルセルロースに加え、ヒドロキシプロピル澱粉をさらに含むことにより、喫食時においてうどん本来の風味および食感が得られていることが理解される。一方、試料101~試料104、試料201~試料205、および試料301~試料109の麺状食品は、タンパク質分解物が3.7質量%未満であるか、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含まないこと等により、喫食時に麺本来の風味および食感が得られないことが理解される。またヒドロキシプロピルメチルセルロースを含まない試料においては、タンパク質成分を高濃度に含有することができないと推定された。
【0092】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0093】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。