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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050459
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】毛髪用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/46 20060101AFI20240403BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20240403BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20240403BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A61K8/46
A61K8/34
A61K8/42
A61Q5/02
A61Q5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023150406
(22)【出願日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2022156280
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 佳子
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 優美
(72)【発明者】
【氏名】阿部 晃也
(72)【発明者】
【氏名】長▲濱▼ 徹
(72)【発明者】
【氏名】辻野 義雄
(72)【発明者】
【氏名】堀田 弘樹
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC072
4C083AC111
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC312
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC441
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC641
4C083AC642
4C083AC692
4C083AC712
4C083AC761
4C083AC762
4C083AC792
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD132
4C083AD152
4C083AD201
4C083AD202
4C083AD662
4C083BB04
4C083CC33
4C083CC38
4C083CC39
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083EE06
4C083FF01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】毛髪処理剤として優れた効果を有する特定の化合物と多価アルコールの組み合わせに起因する経時的な臭気の発生を抑制した毛髪用組成物を提供すること。
【解決手段】次の成分(a)~(c)
(a)ムコン酸及びシステアミンを高温下で反応させて得られる、下記式(1)、(2)等の化合物、(b)多価アルコール、(c)ノニオン性界面活性剤を含有することを特徴とする毛髪用組成物。


【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)~(c)
(a)以下の式(1)~(5)で示される化合物の少なくとも1種
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
(b)多価アルコール
(c)ノニオン性界面活性剤
を含有することを特徴とする毛髪用組成物。
【請求項2】
成分(a)として、式(1)~(5)で示される化合物を全て含有するものである請求項1記載の毛髪用組成物。
【請求項3】
(b)多価アルコールが、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、及びジプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の毛髪用組成物。
【請求項4】
(c)ノニオン性界面活性剤が、コカミドDEA、コカミドMEA、デシルグルコシド、アプリコット核油ポリグリセリル-6エステルズ、及びモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の毛髪用組成物。
【請求項5】
成分(a)が、ムコン酸及びシステアミンを高温下で混合する混合工程を含む製造方法によって得られるものである請求項1または2記載の毛髪用組成物。
【請求項6】
シャンプー、リンス、トリートメントまたはコンディショニングである請求項1または2記載の毛髪用組成物。
【請求項7】
次の成分(a)及び(b)
(a)以下の式(1)~(5)で示される化合物の少なくとも1種
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
(b)多価アルコール
を含有する毛髪用組成物に、成分(c)ノニオン性界面活性剤を添加することを特徴とする毛髪用組成物の臭気抑制方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
身の回りの臭気抑制方法としては、感覚的消臭(強い香気により感覚的に悪臭をマスキングする方法)、物理的消臭(活性炭やゼオライトなどによって悪臭成分を吸着、あるいは法セルすることにより物理的に消臭する方法)、化学的消臭(悪臭成分と科学的に反応させて消臭する方法)、生物的消臭(活性汚泥等微生物を利用し、生物的に無臭化する方法)が挙げられる。
【0003】
毛髪に適用する組成物においては、例えば、パーマ剤、髪質矯正剤、染毛料、除毛剤等の毛髪化粧料は、一般に臭気が発生することが知られている。それらが発生する臭気を有効に消臭できる毛髪化粧料用組成物が求められており、これまでに種々の検討がされているが、より臭気の少ない成分への置き換えや、香料を用いたマスキングなどが主な対処法である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4098479号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、以下の式(1)~(5)
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
で示される新規化合物が、毛髪処理剤として優れた効果を有することを見出した。しかし、これらの化合物を多価アルコールと組み合わせて毛髪用組成物とした場合、経時的に特異な臭気が発生したり、臭気が増強されることが認められた。
【0006】
従って、本発明は、上記式(1)~(5)で示される化合物の少なくとも1種と多価アルコールを含有し、経時的な臭気の発生等が抑制された毛髪用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、上記式(1)~(5)で示される化合物の少なくとも1種及び多価アルコールを含有する毛髪用組成物に、ノニオン性界面活性剤を添加することにより、特異的な臭気発生ないし臭気の増強を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、
[1]次の成分(a)~(c)
(a)上記式(1)~(5)で示される化合物の少なくとも1種
(b)多価アルコール
(c)ノニオン性界面活性剤
を含有することを特徴とする毛髪用組成物、
[2]成分(a)が、式(1)~(5)で示される化合物を全て含有するものである[1]記載の毛髪用組成物、
[3](b)多価アルコールが、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、及びジプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種である[1]または[2]に記載の毛髪用組成物、
[4](c)ノニオン性界面活性剤が、コカミドDEA、コカミドMEA、デシルグルコシド、アプリコット核油ポリグリセリル-6エステルズ、及びモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)からなる群から選択される少なくとも1種である[1]~[3]のいずれかに記載の毛髪用組成物、
[5]成分(a)が、ムコン酸及びシステアミンを高温下で混合する混合工程を含む製造方法によって得られるものである[1]~[4]のいずれかに記載の毛髪用組成物。
[6]シャンプー、リンス、トリートメントまたはコンディショニングである[1]~[5]のいずれかに記載の毛髪用組成物、
[7]上記成分(a)及び(b)を含有する毛髪用組成物に、上記成分(c)を添加することを特徴とする毛髪用組成物の臭気抑制方法、である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、式(1)~(5)で示される化合物による優れた髪質改善効果等を有しながら、経時的な臭気の発生等が抑制された毛髪用組成物を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】製造例1におけるムコン酸とシステアミンの反応生成物のUVクロマトグラムとマスクロマトグラムである。
図2】CMのマスクロマトグラムである。
図3】CMのマスクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の毛髪用組成物における成分(a)は、以下の式(1)~(5)で示される化合物の少なくとも1種である。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【0012】
これらの化合物は、ムコン酸(C)とシステアミン(HSCHCHNH)を高温下で混合する工程を含む製造方法によって得ることができる。原料となるムコン酸は、trans,trans型、cis,trans型、cis,cis型の3種のシス・トランス異性体が存在し、いずれの異性体も用いることができるが、trans-trans型が好ましく用いられる。
【0013】
ムコン酸とシステアミンを混合する工程では、ムコン酸とシステアミンの他、溶媒(水、エタノール等)及びpH調整剤(酸又はアルカリ等)の存在は許容されるが、その他の成分が実質的に存在しない環境で、ムコン酸とシステアミンを混合することが好ましい。ムコン酸とシステアミンをその他の成分の存在下で混合すると、式(1)~(5)で示される化合物の生成が阻害される可能性がある。ここで「実質的に存在していない」とは、式(1)~(5)で示される化合物の製造工程上、その他の成分を故意に含有させないことを言い、溶媒(水、エタノール等)に当初から溶解していた物質や、製造工程中に空気から溶媒に溶け込んだ物質の存在は許容される。
【0014】
ムコン酸及びシステアミンを混合する工程は、ムコン酸及びシステアミンが共に溶媒(水、エタノール等)に溶解した状態で、高温環境下で混合し、反応させる工程であり、具体的には、ムコン酸とシステアミンを混合・反応させるときの温度は通常40~120℃であり、好ましくは60~100℃である。溶媒が水である場合、常圧下で沸騰状態(100℃)まで加熱してムコン酸及びシステアミンを混合することが好ましい。高温下で混合・反応させる時間は特に限定されないが、通常1~120分間であり、好ましくは3~60分間である。ムコン酸及びシステアミンが溶媒に完全に溶解するまで、すなわち溶け残りがなくなるまで、高温下で混合・反応させれば良い。
【0015】
このようにして得られたムコン酸及びシステアミンの混合・反応後の溶液には、ムコン酸及びシステアミンの反応生成物として、式(1)~(5)で示される化合物が含まれ得る。本発明の毛髪用組成物に用いる成分(a)として、反応後の溶液をそのまま、または必要に応じ濃縮等の処理を行って用いることができるが、当該溶液から式(1)~(5)で示される各化合物を常法に従って単離・精製し、各化合物単独または2種以上を組み合わせて用いることもできる。臭気の抑制等の観点から、成分(a)として式(1)~(5)で示される化合物をすべて含有することが好ましい。
【0016】
本発明の毛髪用組成物における(a)成分の含有量(化合物を複数含む場合はその合計量)は、特に限定されないが、例えば、0.001~1.0w/w%が好ましく、0.01~0.5w/w%がより好ましい。
【0017】
本発明の毛髪用組成物における(b)成分である多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。本発明の毛髪用組成物における(b)成分の含有量(多価アルコールを複数含む場合はその合計量)は、特に限定されないが、例えば、0.001~30w/w%が好ましく、0.01~20w/w%がより好ましく、さらに0.1~10w/w%が好ましく、特に1~5w/w%が好ましい。
【0018】
本発明の毛髪用組成物中における(c)成分であるノニオン性界面活性剤は、特に限定されないが、例えば、アルキルアルカノールアミド、アルキルグルコシド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル等が挙げられる。アルキルアルカノールアミドとしては、例えば脂肪酸残基がヤシ脂肪酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などが挙げられるが、好ましくはヤシ脂肪酸が挙げられ、具体的にはコカミドDEA(医薬部外品名称:ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド)、コカミドMEA(医薬部外品名称:ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド)等が例示される。アルキルグルコシドとしては、例えば炭素数8~16、好ましくは8~12のアシル基を有するものが挙げられ、具体的にはデシルグルコシド、カプリルグルコシド、ラウリルグルコシド等が例示される。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリンが4~20個縮合したポリグリセリンに、炭素数が8~20、好ましくは12~20の脂肪酸がエステル結合したものが挙げられ、具体的には、アプリコット核油ポリグリセリル-6エステルズ等が例示される。ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば炭素数8~20、好ましくは12~20のアシル基を有し、ポリオキシエチレン基の平均付加モル数が、例えば4~22、好ましくは12~18のものが挙げられ、具体的にはモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20.E.O.)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)等が例示される。本発明の毛髪用組成物における(c)成分の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.1~30w/w%が好ましく、より好ましくは1~10w/w%であり、さらに好ましくは1~5w/w%である。
【0019】
本発明の毛髪用組成物は、上記した(a)~(c)成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の化粧料、医薬部外品、医薬品などに用いられる各種成分を加えることができる。そのような成分としては、例えば、賦形剤、香料、清涼化剤(メントール、ハッカ油、カンフル等)、抗炎症剤(グアイアズレン、サリチル酸、グリチルリチン酸塩、グリチルレチン酸等)、殺菌剤(グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、第4級アンモニウム塩、ピロクトンオラミン等)、防腐剤(パラベン類(メチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン等)、安息香酸又はその塩、デヒドロ酢酸ナトリウム、ヒノキチオール等)、保湿剤(ヒアルロン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸等)、各種動植物(イチイ、ボタンピ、カンゾウ、オトギリソウ、附子、ビワ、カワラヨモギ、コンフリー、アシタバ、サフラン、サンシシ、ローズマリー、セージ、モッコウ、セイモッコウ、ホップ、プラセンタ、ノコギリヤシ、パンプキンシード等)の抽出物、ビタミン類(酢酸レチノール、アスコルビン酸、硝酸チアミン、シアノコバラミン、ビオチン、リボフラビン等)、抗酸化剤(ジブチルヒドロキシトルエン、ピロ亜硫酸ナトリウム、トコフェロール、エデト酸ナトリウム、アスコルビン酸、イソプロピルガレート等)、溶解補助剤(各種植物油、各種動物油、アルキルグリセリルエーテル、炭化水素類等)、代謝賦活剤、ゲル化剤(水溶性高分子等)、粘着剤等が挙げられる。これらは必要により1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
これらの任意成分の添加量は、特に制約はなく、使用感等を考慮しながら実験的に定めることができる。なお、本発明の毛髪用組成物において用いる各成分は、通常医薬品、医薬部外品、又は化粧品に用いられる品質のものを適宜使用することができる。
【0021】
本発明の毛髪用組成物は化粧料、医薬部外品、医薬品などの用途に使用できる。また、本発明の毛髪用組成物は、毛髪用のシャンプー、リンス、トリートメント、コンディショニング等として使用すること好ましく、毛髪用のシャンプーとして使用することがより好ましい。
【実施例0022】
以下に、製造例、実施例、比較例及び試験例を記載し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら制約されるものではない。
【0023】
(製造例1)
ムコン酸とシステアミンの反応生成物(CM)の調製:
trans,trans型ムコン酸1.41gを10gの精製水に加え、3gのアンモニア水を加えた後、80℃まで加熱した。ムコン酸が溶解したことを確認後、システアミン0.77gを加え、混合しながら沸騰するまで(100℃まで)加熱し、沸騰状態(100℃)を3分間維持した。加温を止め、常温になるまで放置し、溶け残りがないことを確認した後、アンモニア水でpH7.0付近に調整し、精製水を加え、ムコン酸とシステアミンの反応生成物の最終濃度が10質量%になるように調製し水溶液を得た。この水溶液中に含まれるムコン酸とシステアミンの反応生成物(CM)としては、システアミン(C)1mol:ムコン酸(M)1molからなる化合物(CM)およびシステアミン(C)2mol:ムコン酸(M)1molからなる化合物(CM)として、下記表1に示す5つの化合物が含まれ得るところ、生成した化合物の構造を特定するために以下の条件でUVクロマトグラフィーとマスクロマトグラフィーを行った。それらの結果を図1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
<クロマトグラム条件>
溶離液:Aは0.1%ギ酸水溶液、Bは0.1%ギ酸アセトニトリル溶液でそれぞれオンライン脱ガス処理を行った
流速:1.0mL/min
インジェクト量:20μL
カラム:InertSustain(登録商標)C18粒径5μm、4.6×150mm
検出:DAD(210-800nm)-ECD(クーロメトリー検出)、MS/MS(ネガティブイオンモード)
MSサンプル:0.1%
グラジエント条件:表2
【0026】
【表2】
【0027】
クロマトグラムから、CMに基づく溶出が5minと7minに、CMに基づく溶出が2~3.5minにそれぞれ認められた。
【0028】
更にCM及びCMの構造を決定するためにマスクロマトグラムを詳細に調べたところ、CMについて2種類、CMについて3種類の検出が確認された(図2および図3)。次にこれらの、MS/MSプロダクトイオンスペクトルを測定したところ(結果は図示せず)、フラグメントイオンの分析から、CMはシステアミン(C)1mol:ムコン酸(M)1molからなる化合物の異性体を2種含むこと、CMはシステアミン(C)2mol:ムコン酸(M)1molからなる化合物の異性体を3種含むことが明らかになり、これらの結果から、ムコン酸とシステアミンの反応生成物(CM)には、表1に記載した式(1)~(5)で示される化合物が含まれることがわかった。
【0029】
(実施例1)
表3の処方に従い、1,3-ブチレングリコール、コカミドDEA、精製水を混合溶解し、製造例1の水溶液を添加してさらに攪拌混合し、組成物を得た。これをガラススクリュー管に充填した。
【0030】
(実施例2)
表3の処方に従い、グリセリン、コカミドDEA、精製水を混合溶解し、製造例1の水溶液を添加してさらに攪拌混合し、組成物を得た。これをガラススクリュー管に充填した。
【0031】
(実施例3)
表3の処方に従い、ジプロピレングリコール、コカミドDEA、精製水を混合溶解し、製造例1の水溶液を添加してさらに攪拌混合し、組成物を得た。これをガラススクリュー管に充填した。
【0032】
(実施例4)
表3の処方に従い、プロピレングリコール、コカミドDEA、精製水を混合溶解し、製造例1の水溶液3を添加してさらに攪拌混合し、精製水を加え全量100gとした。これをガラススクリュー管に充填した。
【0033】
(比較例1)
表3の処方に従い、1,3-ブチレングリコール、精製水を混合溶解し、製造例1の水溶液を添加してさらに攪拌混合した後、組成物を得た。これをガラススクリュー管に充填した。
【0034】
(比較例2)
表3の処方に従い、グリセリン、精製水を混合溶解し、製造例1の水溶液を添加してさらに攪拌混合し、組成物を得た。これをガラススクリュー管に充填した。
【0035】
(比較例3)
表3の処方に従い、ジプロピレングリコール、精製水を混合溶解し、製造例1の水溶液を添加してさらに攪拌混合し、組成物を得た。これをガラススクリュー管に充填した。
【0036】
(比較例4)
表3の処方に従い、プロピレングリコール、精製水を混合溶解し、製造例1の水溶液を添加してさらに攪拌混合し、組成物を得た。これをガラススクリュー管に充填した。
【0037】
実施例1~4及び比較例1~4の処方を表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
<試験例:臭気測定>
実施例1~4及び比較例1~4について、65℃条件下と5℃条件下で1週間経過後、サンプルを室温に戻したのち、ハンディにおいモニターOMX-ADM(神栄テクノロジー社製)を用いて臭気の強度を測定した。この結果を併せて表3に示す。
【0040】
表3から明らかなように、比較例1~4の65℃1W保管サンプルの臭気と比較して、コカミドDEAを配合した実施例1~4の65℃1W保管サンプルでは臭気の抑制が認められた。また、5℃条件下で保管した場合も、比較例1~4の保管サンプルの臭気と比較してコカミドDEAを配合した実施例1~4の5℃条件下で保管したサンプルでは臭気の抑制が認められた。製造例1の水溶液と多価アルコールである1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールのいずれかを組み合わせた場合、臭気の発生が認められるが、そこに更にコカミドDEAを配合することにより臭気が抑制されることが認められた。
また実施例記載の処方を毛髪に適用すると、毛髪の質が改善し、柔らかくまとまりのある質感となった。
【0041】
(比較例5~8)
比較例1~4と同様にして、下記表4の処方に従い比較例5~8の組成物を調製した。
【0042】
<試験例:臭気測定>
比較例5~8について、65℃条件下と5℃条件下で1週間経過後、サンプルを室温に戻したのち、ハンディにおいモニターOMX-ADM(神栄テクノロジー社製)を用いて臭気の強度を測定した。この結果を併せて表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
表4に示す通り、カチオン性界面活性剤ベヘントリモニウムクロリドを配合した比較例5~8の65℃1W保管サンプル及び5℃条件下で保管したサンプルはいずれも臭気の抑制が認められず、むしろ臭気を増強する結果となった。
【0045】
(実施例5~18)
実施例1~4及び比較例1~4と同様にして、下記表5~8の処方に従い実施例5~18の組成物を調製した。
【0046】
<試験例:臭気測定>
実施例5~18について、65℃条件下と5℃条件下で1週間経過後、サンプルを室温に戻したのち、ハンディにおいモニターOMX-ADM(神栄テクノロジー社製)を用いて臭気の強度を測定した。この結果を併せて表5~8(表5((b)1,3-ブチレングリコール)、表6((b)グリセリン)、表7((b)ジプロピレングリコール)、表8((b)プロピレングリコール)に示す。
【0047】
【表5】
【0048】
【表6】
【0049】
【表7】
【0050】
【表8】
【0051】
表5~8から明らかなように、比較例1~4の65℃1W保管サンプルの臭気と比較して、ノニオン性界面活性剤であるデシルグルコシド、アプリコット核油ポリグリセリル-6エステルズ、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)のいずれかを配合した実施例5~18の65℃1W保管サンプルでは臭気の抑制が認められた。また、5℃条件下で保管した場合も、実施例5~18では臭気の抑制が認められた。製造例1の水溶液と多価アルコールである1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールのいずれかを組み合わせた場合、臭気の発生が認められるが、そこに更にノニオン性界面活性剤を配合することにより臭気が抑制されることが確認された。
【0052】
(実施例19~20及び比較例9~10)
実施例1~4及び比較例1~4と同様にして、下記表9の処方に従い実施例19~20及び比較例9~10の組成物を調製した。
【0053】
<試験例:臭気測定>
実施例19~20及び比較例9~10について、65℃条件下と5℃条件下で保管後、サンプルを室温に戻したのち、ハンディにおいモニターOMX-ADM(神栄テクノロジー社製)を用いて臭気の強度を測定した。この結果を併せて表9に示す。
【0054】
【表9】
【0055】
表9から明らかなように、比較例9の65℃7D、比較例10の65℃3D保管サンプルの臭気と比較して、コカミドDEAを配合した実施例19の65℃7D、実施例20の65℃3D保管サンプルでは臭気の抑制が認められた。製造例1の水溶液の配合量が1mLまたは5mLの場合においても、多価アルコールである1,3-ブチレングリコールを組み合わせた場合、臭気の発生が認められるが、そこに更にノニオン性界面活性剤であるコカミドDEAを配合することにより臭気が抑制されることが認められた。
【0056】
(処方例1)シャンプー(配合量:w/w%)
ポリオクタニウム-10 1%
ココイルメチルタウリンNa 10%
ラウリルベタイン 5%
ラウロイルメチル-β-アラニンタウリンNa 5%
コカミドDEA 1%
コカミドメチルMEA 1%
1,3-ブチレングリコール 3%
フェノキシエタノール 0.5%
酢酸トコフェロール 0.1%
パンテノール 0.1%
クエン酸 適量
香料 適量
製造例1の水溶液 0.5%
精製水 残部
合計 100%
(処方例2)シャンプー(配合量:w/w%)
ポリオクタニウム-10 0.5%
ココイルグルタミン酸TEA 5%
ココイルメチルタウリンNa 6%
ラウラミドプロピルベタイン 10%
コカミドDEA 3%
グリセリン 2%
メチルパラベン 0.2%
酢酸トコフェロール 0.1%
パンテノール 0.1%
安息香酸Na 適量
香料 適量
製造例1の水溶液 1%
精製水 残部
合計 100%
(処方例3)トリートメント(配合量:w/w%)
ベヘントリウムクロリド 1.2%
セテアリルアルコール 2%
ステアリルアルコール 1%
ジメチコン 2%
ジメチコノール 1%
コカミドDEA 1%
ジプロピレングリコール 3%
1,3-ブチレングリコール 2%
メチルパラベン 0.2%
酢酸トコフェロール 0.1%
パンテノール 0.1%
香料 適量
製造例1の水溶液 2%
精製水 残部
合計 100%
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の毛髪組成物は、式(1)~(5)で示される化合物に起因する経時的な臭気の発生を抑制しながら、当該化合物による優れた髪質改善効果等が得られるものであり、シャンプー、リンス等の毛髪化粧料として有用である。
図1
図2
図3