(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050479
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】ルーフドレーン、ルーフドレーン施工治具、ルーフドレーン施工方法、及び排水システム
(51)【国際特許分類】
E04D 13/04 20060101AFI20240403BHJP
E03C 1/122 20060101ALI20240403BHJP
E03F 1/00 20060101ALI20240403BHJP
E03F 3/04 20060101ALI20240403BHJP
E03F 5/20 20060101ALI20240403BHJP
E03C 1/12 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
E04D13/04 E
E03C1/122 Z
E03F1/00 Z
E03F3/04 Z
E03F5/20
E03C1/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023159981
(22)【出願日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2022156149
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】田中 将成
【テーマコード(参考)】
2D061
2D063
【Fターム(参考)】
2D061AA04
2D061AA05
2D061AA10
2D061AC03
2D061AC07
2D063AA07
2D063BA15
2D063BA20
2D063BA22
(57)【要約】
【課題】低水量での排水性能の高いルーフドレーン、ルーフドレーン施工治具及びルーフドレーンの施工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】このルーフドレーンは、ドレーン管に連結されて雨水等をドレーン管に流し込むものであって、ドレーン管に連結される連結管を有するベースプレート10と、ベースプレート10の上方に設置されるクランプリングと、クランプリングの上方にバッフル固定部材13によって支持されるバッフルと、を備え、バッフル固定部材13が、ベースプレート10と別体である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレーン管に連結されて雨水等を前記ドレーン管に流し込むルーフドレーンであって、
前記ドレーン管に連結される連結管を有するベースプレートと、
前記ベースプレートの上方に設置されるクランプリングと、
前記クランプリングの上方にバッフル固定部材によって支持されるバッフルと、
を備え、
前記バッフル固定部材が、前記ベースプレートと別体である
ことを特徴とするルーフドレーン。
【請求項2】
前記バッフル固定部材が、前記ベースプレートに対して着脱自在である
ことを特徴とする請求項1に記載のルーフドレーン。
【請求項3】
前記バッフル固定部材が、前記クランプリングと一体に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のルーフドレーン。
【請求項4】
前記バッフル固定部材が、前記クランプリング上に立設された板形状を有する
ことを特徴とする請求項3に記載のルーフドレーン。
【請求項5】
前記ベースプレートの外周縁が下方に向かう折り返し部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のルーフドレーン。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のルーフドレーンを設置する施工治具であって、
デッキプレートの上方に設置され、前記ベースプレートを支持するガイドパイプと、
前記ガイドパイプの下端部に配置される受台と、
前記ガイドパイプを通り鉛直方向に沿って延在し、下端が前記受台に接続されるボルトと、
前記ボルトが貫通し、前記ベースプレートを前記ガイドパイプとの間で挟む上蓋と、
前記ボルトの上端に螺着されるナットと、
を備え、
前記上蓋が、前記ベースプレートの上面の全面を覆う
ことを特徴とするルーフドレーン施工治具。
【請求項7】
請求項6に記載のルーフドレーン施工治具を用いて前記ルーフドレーンを設置する施工方法であって、
前記デッキプレートの上に前記受台を設置する受台設置工程と、
平面視で前記受台を取り囲むように、前記デッキプレートの上に前記ガイドパイプを設置するガイドパイプ設置工程と、
前記ガイドパイプの上に前記ベースプレートを設置するベースプレート設置工程と、
前記ベースプレートの上に前記上蓋を重ねて前記ベースプレートの上面を覆う上蓋設置工程と、
前記ガイドパイプ設置工程または前記上蓋設置工程の際に、前記ボルトの下端を前記受台に接続するボルト設置工程と、
前記ナットを前記ボルトの前記上端に螺着させることで前記上蓋を前記ベースプレートに対して固定するナット締め工程と、
を有する
ことを特徴とするルーフドレーン施工方法。
【請求項8】
請求項1~5の何れか1項に記載のルーフドレーンと、
前記ルーフドレーンの下流側に接続された排水管と、
前記排水管のうちの竪管に接続された継手と、
を備え、
前記継手が、
流路を内部に形成する内壁面を有する継手本体と、
前記継手本体内に配置された複数のフィン及び縮径部の少なくとも一方と、
を有し、
前記複数のフィンが、相対的に上流側にある上端及び相対的に下流側にある下端を有してかつ、前記継手本体の管軸の周囲に沿って前記流路内に配置され、
前記縮径部が、前記継手の最上端に位置する入口開口と、前記入口開口の下方に位置し、縮流傾斜面を介して前記入口開口に通じる絞り開口と、を有する
ことを特徴とする排水システム。
【請求項9】
請求項1~5の何れか1項に記載のルーフドレーンと、
前記ルーフドレーンの下流側に接続された排水管と、
前記排水管のうちの竪管と横管との間を接続するYチーズと、
を備えることを特徴とする排水システム。
【請求項10】
前記横管が主管で、前記竪管が枝管である
ことを特徴とする請求項9に記載の排水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフドレーン、ルーフドレーン施工治具、ルーフドレーン施工方法、及び排水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1に開示されているように、床構造物の上面に設けられ、下方に延びる排水管に連結可能な開口部を有するルーフドレーンが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ルーフドレーンは、ベースプレートと、クランプリングと、バッフルとを備えている。このルーフドレーンの設置に際しては、コンクリート打設前に、まずベースプレートの開口を養生蓋で塞ぐと共にベースプレートの露出した上面を養生テープで覆う。続いて、ベースプレートの周囲を含む床面にコンクリートを打設する。続いて、コンクリートが硬化した後に、養生蓋と養生テープを取り除く。続いて、ベースプレート上を防水シートで覆ってから、クランプリングを同軸配置してベースプレートに固定する。これにより、防水シートがベースプレートとクランプリングとの間に挟み込まれて保持される。続いて、クランプリング上にバッフルを同軸配置固定する。以上の各工程により、ルーフドレーンが設置される。
【0005】
ここで、ベースプレートの上面には、バッフルを支持するための複数のバッフル固定部材が一体に固定されている。これらバッフル固定部材は、クランプリングを介してその上方にあるバッフルを支持するため、ある程度の高さ寸法を有する。そして、コンクリート打設前のベースプレート上に養生蓋が置けるよう、養生蓋には各バッフル固定部材を通すための貫通孔が複数形成されている。しかしながら、養生蓋の各貫通孔から雨水が中に入り込まないように養生テープ等で各貫通孔をしっかり塞ぐなど、施工上の手間を必要としていた。
このような施工上の手間を要するものの、ルーフドレーンを用いて排水性能を向上させることが求められている。
【0006】
また、ルーフドレーンの下流側に繋がる配管や継手を含む排水システムにおいても、より高い排水性能が求められているものの、合流箇所での流速低下により排水性能が低い、雨水を複数個所から取り込んで排水する場合の雨水の流入量のバランスがとりにくい、排水音や振動が生じやすい、などの問題があり、まだ検討の余地があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、施工しやすく排水性能を向上できる、ルーフドレーン、ルーフドレーン施工治具、ルーフドレーンの施工方法、及び排水システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明は以下の態様を採用している。
(1)本発明の一態様に係るルーフドレーンは、
ドレーン管に連結されて雨水等を前記ドレーン管に流し込むルーフドレーンであって、
前記ドレーン管に連結される連結管を有するベースプレートと、
前記ベースプレートの上方に設置されるクランプリングと、
前記クランプリングの上方にバッフル固定部材によって支持されるバッフルと、
を備え、
前記バッフル固定部材が、前記ベースプレートと別体である。
上記(1)に記載のルーフドレーンによれば、バッフル固定部材がベースプレートとは別体であるため、コンクリート打設前のベースプレートを覆う養生蓋である上蓋にバッフル固定部材を挿通させるための貫通孔が不要となる。よって、上蓋の貫通孔を雨水等の浸入防止のためにシールする工程も不要となる。このように施工時における雨水浸入防止の手間を軽減できるので、施工がしやすく排水性能を向上することができる。
【0009】
(2)上記(1)に記載のルーフドレーンにおいて、
前記バッフル固定部材が、前記ベースプレートに対して着脱自在であってもよい。
上記(2)に記載のルーフドレーンの場合、ベースプレートを上蓋で覆う前に、バッフル固定部材をベースプレートから予め外しておく。これにより、バッフル固定部材との干渉を生じることなく上蓋をベースプレートに取り付けることができる。そして、ベースプレートから上蓋を外してからバッフル固定部材をベースプレートに取り付けることで、このバッフル固定部材によりバッフルをベースプレート上に支持固定できる。
【0010】
(3)上記(1)に記載のルーフドレーンにおいて、
前記バッフル固定部材が、前記クランプリングと一体に設けられていてもよい。
上記(3)に記載のルーフドレーンの場合、ベースプレート上にはバッフル固定部材が無いため、バッフル固定部材との干渉を生じることなく上蓋をベースプレート上に固定できる。
【0011】
(4)上記(3)に記載のルーフドレーンにおいて、
前記バッフル固定部材が、前記クランプリング上に立設された板形状を有してもよい。
上記(4)に記載のルーフドレーンの場合、バッフルの支持に加えて、板形状を有するバッフル固定部材によって雨水等の流れを整流させることもできる。
【0012】
(5)上記(1)~(4)の何れか1項に記載のルーフドレーンにおいて、
前記ベースプレートの外周縁が下方に向かう折り返し部を有してもよい。
上記(5)に記載のルーフドレーンの場合、折り返し部によりベースプレートの構造強度が高まるため、外力を受けても変形しにくくなる。また、設置場所に打設されるコンクリートに折り返し部を食い込ませることで、設置強度を高めることもできる。
【0013】
(6)本発明の一態様に係るルーフドレーン施工治具は、
上記(1)~(5)の何れか1項に記載のルーフドレーンを設置する施工治具であって、
デッキプレートの上方に設置され、前記ベースプレートを支持するガイドパイプと、
前記ガイドパイプの下端部に配置される受台と、
前記ガイドパイプを通り鉛直方向に沿って延在し、下端が前記受台に接続されるボルトと、
前記ボルトが貫通し、前記ベースプレートを前記ガイドパイプとの間で挟む上蓋と、
前記ボルトの上端に螺着されるナットと、
を備え、
前記上蓋が、前記ベースプレートの上面の全面を覆う。
上記(6)に記載のルーフドレーン施工治具によれば、上蓋によってベースプレートの上面の全面を隙間無く覆うことができるので、従来のような、上蓋の貫通孔をシールする工程が不要である。このように施工時の手間を軽減できるので、施工がしやすく排水性能を向上することができる。
【0014】
(7)本発明の一態様に係るルーフドレーン施工方法は、
上記(6)に記載のルーフドレーン施工治具を用いて前記ルーフドレーンを設置する施工方法であって、
前記デッキプレートの上方に前記受台を設置する受台設置工程と、
平面視で前記受台を取り囲むように、前記デッキプレートの上方に前記ガイドパイプを設置するガイドパイプ設置工程と、
前記ガイドパイプの上方に前記ベースプレートを設置するベースプレート設置工程と、
前記ベースプレートの上に前記上蓋を重ねて前記ベースプレートの上面を覆う上蓋設置工程と、
前記ガイドパイプ設置工程または前記上蓋設置工程の際に、前記ボルトの下端を前記受台に接続するボルト設置工程と、
前記ナットを前記ボルトの前記上端に螺着させることで前記上蓋を前記ベースプレートに対して固定するナット締め工程と、
を有する。
上記(7)に記載のルーフドレーン施工方法によれば、上蓋設置工程において、上蓋でベースプレートの全面を覆うので、従来のような、上蓋の貫通孔をシールする工程が不要である。このように施工時の手間を軽減できるので、施工がしやすく排水性能を向上することができる。
【0015】
(8)本発明の一態様に係る排水システムは、
上記(1)~(5)の何れか1項に記載のルーフドレーンと、
前記ルーフドレーンの下流側に接続された排水管と、
前記排水管のうちの竪管に接続された継手と、
を備え、
前記継手が、
流路を内部に形成する内壁面を有する継手本体と、
前記継手本体内に配置された複数のフィン及び縮径部の少なくとも一方と、
を有し、
前記複数のフィンが、相対的に上流側にある上端及び相対的に下流側にある下端を有してかつ、前記継手本体の管軸の周囲に沿って前記流路内に配置され、
前記縮径部が、前記継手の最上端に位置する入口開口と、前記入口開口の下方に位置し、縮流傾斜面を介して前記入口開口に通じる絞り開口と、を有する。
上記(8)に記載の排水システムによれば、上述の通り、施工しやすく排水性能を向上できるルーフドレーンを採用している。そして、これに加えて、継手本体内に配置された複数のフィン及び縮径部の少なくとも一方(以下、これを「流路抵抗部」と呼ぶ場合がある)を備える継手を組み合わせた構成を採用している。ここで、継手について説明すると、ルーフドレーンから流れ込んだ雨水は、継手の流路内を通過する際に、前記流路抵抗部による流路抵抗を受けるため、前記流路抵抗部よりも上流側(上側)の空間に雨水が一時的に溜まりやすくなる。この一時的な雨水の溜まりにより、ルーフドレーンにおける空気の取り込みを抑えて渦流発生を抑制できるので、ここでのサイフォン現象を効果的に誘発させて排水性能を高めることが可能になる。また、継手の流路内を通過する雨水は、渦を巻きながら通過しようとするが、例えば前記流路抵抗部として複数のフィンを採用した場合には、雨水がフィンによって整流されるため、フィンの位置を通過した後、スムーズに排水される。したがって、ルーフドレーンと継手の組み合わせによる相乗効果により、排水性能をより向上させることができる。
【0016】
(9)本発明の他の態様に係る排水システムは、
上記(1)~(5)の何れか1項に記載のルーフドレーンと、
前記ルーフドレーンの下流側に接続された排水管と、
前記排水管のうちの竪管と横管との間を接続するYチーズと、
を備える。
上記(9)に記載の排水システムによれば、上述の通り、施工しやすく排水性能を向上できるルーフドレーンを採用している。そして、これに加えてYチーズにより竪管と横管の間を接続しているので、竪管から横管に雨水が慣れ込む際に、横管を流れる雨水の流れ方向に沿わせるように、竪管からの雨水をスムーズに流すことができる。したがって合流する雨水同士の干渉に伴う流路抵抗の増加を抑制できる。したがって、ルーフドレーンとYチーズの組み合わせによる相乗効果により、排水性能をより向上させることができる。
【0017】
(10)上記(9)に記載の排水システムにおいて、
前記横管が主管で、前記竪管が枝管であってもよい。
上記(10)に記載の排水システムによれば、Yチーズにより枝管と主管の間を接続しているので、枝管から主管に雨水が慣れ込む際に、主管を流れる雨水の流れ方向に沿わせるように、枝管からの雨水をスムーズに流すことができる。したがって合流する雨水同士の干渉に伴う流路抵抗の増加を抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
上記各態様によれば、施工しやすく排水性能を向上できる、ルーフドレーン、ルーフドレーン施工治具、ルーフドレーンの施工方法、及び排水システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るルーフドレーンを含むルーフスラブの縦断面図である。
【
図2】同ルーフドレーンのベースプレートの縦断面図である。
【
図3】同ベースプレートを示す図であって、
図2のA-A矢視図である。
【
図4】同ベースプレートの要部を示す図であって、
図2のB部である。ここで、(a)はバッフル固定部材を着脱させる構成の一例を示す斜視図であり、(b)は他の例を示す斜視図である。
【
図5】同実施形態に係るルーフドレーン施工治具をベースプレートに適用した場合を示す縦断面図である。
【
図6】同ルーフドレーン施工治具を用いたルーフドレーン施工方法を説明するための縦断面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態を示す図であって、ベースプレート及びクランプリングの縦断面図である。
【
図8】同クランプリングを示す図であって、
図7のC-C矢視図である。
【
図9】同クランプリングの変形例を示す図であって、
図8のD部の拡大斜視図である。
【
図10】上記第1実施形態及び上記第2実施形態におけるバッフル固定部材及びクランプリング固定部材の配置例を説明する図であって、
図2のA-A矢視図に相当する平面図である。ここで、(a)は第1実施形態及び第2実施形態の場合を示し、(b)はその変形例を示し、(c)はさらに他の変形例を示す。
【
図11】第1実施形態のルーフドレーンのベースプレートの変形例を示す図であって、
図2に対応する縦断面図である。
【
図12】第1実施形態のルーフドレーンの変形例を示す斜視図である。
【
図13】
図12の変形例に係るルーフドレーンの分解図であり、一部を縦断面視した側面図である。
【
図14】第1実施形態のルーフドレーンの他の変形例を示す斜視図である。
【
図15】第1実施形態のルーフドレーンのさらに他の変形例を示す斜視図である。
【
図16】
図15の変形例に係るルーフドレーンの縦断面図である。
【
図17】第1実施形態のルーフドレーンのさらに他の変形例を示す斜視図である。
【
図18】第1実施形態のルーフドレーンのさらに他の変形例を示す斜視図である。
【
図19】第1実施形態のルーフドレーンのさらに他の変形例を示す斜視図である。
【
図20】第1実施形態のルーフドレーンのさらに他の変形例を示す斜視図である。
【
図21】第1実施形態の変形例を示す図であって、
図1に示すドレーン管の下端に接続されたフィン付き継手を、管軸を含む断面で見た縦断面斜視図である。
【
図22】第1実施形態、第2実施形態、及び各種変形例に係るルーフドレーンを有する排水システムに備わるYチーズの斜視図である。
【
図23】同排水システムにおけるYチーズの作用効果を説明するための模式図であって、(a),(b)が従来構造に係るT字型の継手を用いた場合を示し、(c)が変形例のYチーズを用いた場合を示す。
【
図24】同排水システムにおけるYチーズの作用効果を説明するための図であって、(a)が従来構造に係るT字型の継手を用いた場合を示し、(b)が変形例のYチーズを用いた場合を示す。
【
図25】同排水システムにおけるYチーズの適用位置の一例を示す斜視図である。
【
図26】同排水システムにおけるYチーズの適用位置の他の例を示す斜視図である。
【
図27】同排水システムにおけるYチーズの適用位置のさらに他の例を示す斜視図である。
【
図28】同排水システムにおける複数のルーフドレーン間の相対的な高さ位置を説明する斜視図である。
【
図29】第1実施形態、第2実施形態、及び各種変形例に係るルーフドレーンを有する排水システムに備わる他のフィン付き継手を示す図であって、管軸を含む断面で見た縦断面図である。
【
図30】第1実施形態、第2実施形態、及び各種変形例に係るルーフドレーンを有する排水システムに備わる縮径部を示す図であって、管軸を含む断面で見た縦断面図である。
【
図31】第1実施形態、第2実施形態、及び各種変形例に係るルーフドレーンを有する排水システムに備わる他の縮径部を示す斜視図である。
【
図32】第1実施形態、第2実施形態、及び各種変形例に係るルーフドレーンを有する排水システムに適用された耐火二層管を示す図であって、管軸に垂直な断面で見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の各実施形態及び各種変形例に係る、ルーフドレーン、ルーフドレーン施工治具、ルーフドレーン施工方法、及び排水システムについて、図面を参照しながら以下に説明する。
【0021】
[第1実施形態]
(排水システム)
本実施形態に係る排水システムSTは、
図1に示すルーフドレーン100と、ドレーン管Eとを備える。
(ルーフドレーン)
まず、
図1~
図4を参照しながら、本発明の第1実施形態に係るルーフドレーン100について説明する。
図1は、本第1実施形態に係るルーフドレーン100を含むルーフスラブSを示す図であって、連結管11cの管軸Yを含む断面で見た縦断面図である。
図2は、同ルーフドレーン100のベースプレート10の縦断面図である。
図3は、同ベースプレート10を示す平面図であって、
図2のA-A矢視図である。
図4は、同ベースプレート10の要部を示す図であって、
図2のB部である。ここで、(a)はバッフル固定部材13を着脱させる構成の一例を示す斜視図であり、(b)は他の例を示す斜視図である。
【0022】
本第1実施形態に係るルーフドレーン100を備える排水システムSTは、例えば、ビル、マンション等の建築物の屋根の排水に適用できる。
ルーフドレーン100は、
図1に示すように、ルーフスラブSの抜孔Saに対し同軸に設けられている。ルーフドレーン100の下端部には、建築物の内部を通って下方に延びるドレーン管Eが接続されている。ルーフドレーン100は、ベースプレート10に設けられたアンカー14をルーフスラブSに埋設した状態で固定することにより、ルーフスラブSと一体に設けられている。
【0023】
ルーフドレーン100は、ベースプレート10と、クランプリング20と、バッフル30と、を備えている。
【0024】
ベースプレート10は、ドレーン管Eとルーフドレーン100とをルーフスラブSの抜孔Saに対して同軸に位置決めする機能と、ドレーン管Eとルーフドレーン100とを接続する機能とを有する。
ベースプレート10は、ドレーン管Eに連結可能な連結管11cを含む落とし口部11と、落とし口部11の周囲から円錐状に拡がる傾斜部12と、傾斜部12の外周縁に一体に連なる折り返し部12Aと、落とし口部11に対して着脱自在に設けられたバッフル固定部材13と、を有している。ベースプレート10は、ルーフスラブSに埋設されるアンカー14を有している。アンカー14は、L字形状を有し、ベースプレート10の底面から下方に突出して設けられている。
【0025】
落とし口部11は、ドレーン管Eに連結可能な連結管11cと、連結管11cから傾斜部12までの間の遷移部11tと、を有している。
連結管11cは、開口Dを有する環状体である。連結管11cは、ドレーン管Eの上端外周に設けられた雄ねじに螺合可能な雌ねじを内周に有している。連結管11cの上端には、遷移部11tが接合されている。なお、本実施形態ではドレーン管Eの上端に連結管11cを螺合させる場合を例示しているが、差し込んで嵌合させる接続構造を採用してもよい。
遷移部11tの下端又は内縁端は、連結管11cの上端に接合されており、上端又は外縁端は、傾斜部12の下端又は内縁端に接続されている。遷移部11tと傾斜部12とは、一体に形成されている。
【0026】
連結管11cから傾斜部12に至る遷移部11tは、テーパ形状であることが好ましい。すなわち、遷移部11tは、下方から上方に行くに連れて通水部の内径が徐々に拡がることが好ましい。これにより、落とし口部11に向かって雨水が流れやすくなるよう(集水しやすくするよう)にすることができ、落とし口部11からドレーン管Eまで速く流すことができる。なお、遷移部11tは、
図1の断面において内側に向けて凸となる円弧状に湾曲する内側部と、その内側部の外周縁と一体に接続されて水平面に沿う平坦な外側部と、を含んでもよい。あるいは、後述する
図11の変形例に示すように、遷移部11tとして、管軸Yを含む断面において、複数の直線的な傾斜面を組み合わせることで、下方から上方に行くに連れて通水部の内径が徐々に拡がるように構成してもよい。さらには、遷移部11tを、管軸Yを含む断面において、内側に向けて凸となる円弧状の内周面と、直線的な傾斜面との組み合わせで構成してもよい。
【0027】
傾斜部12は、平面視で円環状である。傾斜部12は、円錐台の外周面に沿う形状を有する。傾斜部12の下端又は内縁端は、落とし口部11に対して一体に接続されている。傾斜部12の上端又は外縁端は、円形であり、連結管11cの管軸Yと直交する面HL、すなわちルーフスラブSの上面又は水平面に沿って配置される。傾斜部12は、下方から上方に行くに連れて徐々に拡がる内径を有している。
【0028】
ここで、
図1及び
図2に示すように、傾斜部12の上面は、連結管11cの管軸Yと直交する面HLに対して、10°以上60°以下の範囲の傾斜角度θで傾斜している。これにより、傾斜部12より上方に集まる水の流量(水量)が少なくても、重力により加速させて落とし口部11に到達させ、高い流速でドレーン管Eに流すことができる。よって、低水量での排水性能を高くできる。なお、連結管11cの管軸Yと直交する面HLは、水平面であってよい。
【0029】
折り返し部12Aは、傾斜部12の外周縁に対して一体に形成された環状の部位であり、具体的には、傾斜部12の外周縁部分をプレス加工などにより下方に折り曲げたリップである。したがって、折り返し部12Aは、傾斜部12の外周縁から下方に向けて突出したリング形状を有する。この折り返し部12Aによれば、傾斜部12の外周縁を補強してその構造強度を高めることができる。加えて、この折り返し部12Aによれば、
図1に示したようにベースプレート10を設置してコンクリートを打設した際に、折り返し部12Aがコンクリートに食い込むため、ベースプレート10がコンクリートから浮き上がってしまうことを防止できる。
【0030】
図1に示すように、バッフル固定部材13は、落とし口部11の上面に対し、この上面から上方に突出するように設けられた棒状体である。バッフル固定部材13は、クランプリング20の通孔21gを通り、バッフル30の通孔31gを通った状態で、上部を、ワッシャ及びナット等の係止具(不図示)を介して、バッフル30の上面に係止されている。バッフル固定部材13は、ベースプレート10の上方に配置されるバッフル30を支持固定するため、ベースプレート10で最も高い外周縁よりも高さが高くなっている。なお、前記係止具としては、スプリングワッシャーやUナットなど、ばね作用を利用して緩みを防止する機能を有するものを採用してもよい。
バッフル固定部材13の上端には、雌ねじあるいは雄ねじが設けられていてよい。バッフル固定部材13は、例えば、ボルトであってよい。また、このボルトにナットを組み合わせた構成であってもよい。また、バッフル固定部材13は、棒状に限らず、後述するバッフル30の縦リブ32と同様の板状としてもよい。この場合、整流効果を高めて排水性能を向上させることが可能となる。
図3に示すように、バッフル固定部材13は、落とし口部11の上面に対して管軸Yを中心とした等角度間隔で2本が設けられている。なお、バッフル固定部材13の本数は、2本に限らず3本以上としてもよい。ただし、バッフル固定部材13の本数は、良好な排水性を確保するためには6本以下とすることが好ましく、クランプリング20に形成する通孔21gの個数を減らすために4本以下とすることがより好ましい。
【0031】
バッフル固定部材13は、落とし口部11の上面に対して着脱自在である。その具体的構成としては、
図4(a)あるいは
図4(b)を例示できる。
図4(a)の場合は、バッフル固定部材13の下端から下方に突出する雄ねじ13aを同軸に設けておき、そして落とし口部11に雌ねじ13bを形成しておく。そして、雌ねじ13bに雄ねじ13aを螺合させることで、バッフル固定部材13を固定する。
図4(b)の場合は、落とし口部11の上面に起立した雄ねじ13aを溶接固定しておき、そしてバッフル固定部材13の下端に雌ねじ13bを同軸に形成しておく。そして、雄ねじ13aに雌ねじ13bを螺合させることで、バッフル固定部材13を固定する。
なお、結合方法はネジに限らず、バッフル固定部材13及び落とし口部11の何れか一方に凹部(不図示)を形成するとともに、他方に前記凹部に嵌合あるいは係止する凸部(不図示)を設ける構成としてもよい。
【0032】
図2及び
図3に示すように、バッフル固定部材13に加えて、落とし口部11の上面には複数本のクランプリング固定部材15が固定されている。これらクランプリング固定部材15は、落とし口部11の上面から上方に向かって突出するように立設されているが、バッフル固定部材13よりも高さが低く、さらには上述した面HLと略同じかあるいは低い高さを有する。つまり、クランプリング固定部材15の高さは、バッフル固定部材13とは異なり、ベースプレート10の外周縁の高さよりも低い。そのため、後述する上蓋240をベースプレート10上に載せた際に上蓋240と干渉しないので、上蓋240に貫通孔を形成する必要がない。なお、排水性能を高める面からも、バッフル固定部材13の高さは出来るだけ低い方が好ましい。バッフル固定部材13の設置数は、2本でもよいし、3本、4本、あるいは5本以上であってもよい。また、各バッフル固定部材13の配置に際しては、管軸Yを中心として互いに等角度間隔に配置されることが好ましい。
クランプリング固定部材15は、落とし口部11の上面に対して一体に設けられていてもよいし、あるいは落とし口部11の上面に対して螺合により着脱自在に立設させたボルトであってもよい。すなわち、クランプリング固定部材15としてボルトを用いてもよい。クランプリング固定部材15としてはクランプリング20が固定できれば良いので、ネジ頭を有する棒状体であってもよい。あるいは、ボルトとナットの組み合わせをクランプリング固定部材15としてもよい。
【0033】
図3に示すように、各クランプリング固定部材15は、管軸Yを中心として互いに等角度間隔をおいて配置されており、本実施形態では、固定後のバッフル30にがたつきが生じないよう、3本が120°間隔で配置されている。ただし、クランプリング固定部材15の本数は3本のみに限らず、4本以上としてもよい。ただし、良好な排水性を確保するためには6本以下とすることが好ましく、クランプリング20に形成する通孔の個数を減らすために4本以下とすることがより好ましい。
【0034】
図1に戻り、クランプリング20は、防水シートWSをベースプレート10との間に挟み込んで固定する部材である。防水シートWSには、平面視で連結管11cの内径よりも大きめの貫通孔が形成されており、この貫通孔と管軸Yとが同軸をなすようにクランプリング20が防水シートWSを固定する。その結果、前記貫通孔は、連結管11c及びドレーン管Eと同軸に配置される。
クランプリング20は、防水シートWSを介した上で、ベースプレート10の上に重ねて設置されている。クランプリング20は、ベースプレート10の上面の形状に沿った形状の下面を有している。これにより、ベースプレート10に対するクランプリング20の位置決めをし易くなっている。
クランプリング20は、円環状で板状のクランプベース21と、クランプベース21の外周縁21eの全周から上方に延びるリップ22と、を有している。クランプリング20は、リップ22を有しているため剛性が高い。なお、リップ22は、後述する
図15の変形例に示すように、外周縁以外の位置、すなわちクランプベース21の傾斜面上から立設するように配置してもよい。ただし、本実施形態のように外周縁21eの位置に配置した方が、クランプリング20の剛性がより高くなるため、好ましい。また、クランプリング20は、その周方向の各位置が連続している構成であってもよいし、あるいは後述する
図15の変形例に示すように、破線状に設けられていてもよい。ただし、本実施形態のように周方向で切れ目なく連続している構成の方が、クランプリング20の剛性がより高くなるため、好ましい。
【0035】
クランプベース21は、その中央に開口部21aを有している。ルーフスラブSの上を流れる水は、この開口部21aを通って、ドレーン管Eに流れ込む。クランプベース21は、バッフル固定部材13を通すための通孔21gを、バッフル固定部材13の本数と同数を有している。これにより、ベースプレート10に対するクランプリング20の位置決めを確実にできる。
【0036】
バッフル30は、落とし口部11の上方に配置される蓋部31と、蓋部31の周囲に設けられる縦リブ32と、を有している。
【0037】
蓋部31は、落とし口部11の上方からの空気を取り込みにくくして、ドレーン管Eによるサイフォン効果を高める部品である。蓋部31は、連結管11cの開口Dの上方を覆うことが好ましい。蓋部31は、管軸Yを中心とする円盤状である。蓋部31は、落とし口部11から上方に離間した位置に設けられる。蓋部31は、平面視で落とし口部11の遷移部11tを上方から完全に覆う大きさを有している。蓋部31の外周縁の径は、落とし口部11の遷移部11tの外周縁の径よりも大きいことが好ましい。なお、本実施形態の蓋部31は、落とし口部11の遷移部11tの外周縁の径よりも大きいサイズを有する場合を例示しているが、例えば後述する
図14のように、小径化した上で落とし口部11の上方に配置してもよい。
【0038】
縦リブ32は、ベースプレート10の周囲から集まる水を整流して、空気を取り込む渦を生じさせにくくして、ドレーン管Eによるサイフォン効果を高める部材である。縦リブ32は、管軸Yを通る面に沿って、管軸Yから放射状に延びる板状体である。縦リブ32は、管軸Yから放射状に、均等な間隔で、複数設けられている。なお、縦リブ32は、蓋部31からはみ出すように形成されていてもよい。また、縦リブ32は、蓋部31の底面に接触するように、落とし口部11の内径に至るまで延在していてもよい。さらに、縦リブ32は、管軸Yに沿って真っすぐに延在していてもよいし、あるいは傾斜するように設けられていてもよい。
また、本実施形態では縦リブ32として板状体の場合を例示しているが、柱状体を採用してもよい。ただし、本実施形態のように板状体とした方が、雨水を整流させる効果が高く、好ましい。
【0039】
縦リブ32の下端は、管軸Yを通る断面視において、クランプリング20の上面に沿う形状を有していてもよい。この場合、ルーフスラブSの上面より下方の、クランプリング20の上面を伝って流れる水が低流量であっても、流れる水に縦リブ32の下端が作用して、渦の発生を抑制するように確実に整流できる。縦リブ32の下端は、クランプリング20の上面に沿っていなくてもよいが、本実施形態のように沿わせることで、整流効果を確実に得ることができる。なお、縦リブ32の下端は、ベースプレート10の上面に沿う形状であってもよい。
【0040】
(ルーフドレーン施工治具)
次に、ルーフドレーン施工治具200について
図5を用いて説明する。
図5は、本第1実施形態に係るルーフドレーン施工治具200をベースプレート10に適用した場合を示す縦断面図である。
【0041】
ルーフドレーン施工治具200は、デッキプレートDP上に設置されてベースプレート10を支持するガイドパイプ210と、ガイドパイプ210の下端位置に同軸配置される受台220と、受台220に下端が接続され、ガイドパイプ210を通って上方に延びるボルト230と、ボルト230が挿通されてベースプレート10をガイドパイプ210との間で挟む上蓋(養生蓋)240と、を備えている。なお、ルーフドレーン施工治具200は、上蓋240を上方から抑えて固定するために、ボルト230に螺合可能なナット231を有している。なお、デッキプレートDPは、後に上方に打設されるコンクリート等と一体化されてルーフスラブSを構成する。
【0042】
ガイドパイプ210は、その周囲にルーフスラブSのコンクリート等が打設された際に堰となり、コンクリート等の硬化後のルーフスラブSに、抜孔を形成するための型枠としての機能と、ベースプレート10の位置決めの機能とを兼ねた部材である。ガイドパイプ210は、中空の円筒状である。ガイドパイプ210の高さは、ベースプレート10の設置位置に対応する高さに調節されている。ガイドパイプ210の内径は、ベースプレート10の連結管11cが収まるのに十分な大きさになっている。
【0043】
受台220は、円板状である。受台220は、本体部222と、ボルト230の下端を支持可能なボルト支持部221と、を有している。本体部222は、円板状である。ボルト支持部221は、本体部222の中央上面に設けられている。ボルト支持部221は、例えば、本体部222に溶接等によって固定され、ボルト230の下端を螺合可能な雌ねじを有するナットであってよい。ボルト支持部221は、ボルト230の下端を本体部222の上面に直接螺合させる構成であってもよい。
【0044】
ボルト230は、ナット231と共にベースプレート10の上方から上蓋240を押さえて、ルーフドレーン100が完成する前の施工時において止水効果をもたらす棒状体である。
ボルト230は、少なくとも、ガイドパイプ210の高さより長い長さを有している。ボルト230には、上蓋240を押さえるためにボルト230に設けられた雄ねじに螺合するナット231が螺着される。
【0045】
上蓋240は、全面にわたって一様な板厚と、ベースプレート10と略同じ外径とを有する円板である。上蓋240の中心には、ボルト230を通すためのボルト挿通孔242が形成されている。上蓋240は、ボルト挿通孔242以外に貫通孔はない。そのため、上蓋240をベースプレート10の上に同軸に重ね合わせた際、ボルト挿通孔242の位置を除き、ベースプレート10の上面を隙間無く覆うことが可能となっている。ここで、
図4(a),(b)に示したように、バッフル固定部材13がベースプレート10に対して着脱自在であるので、上蓋240でベースプレート10を覆う際には、バッフル固定部材13を全て予めベースプレート10から取り外しておく。これにより、上蓋240をベースプレート10の上に同軸に重ね合わせる際に、高さを有するバッフル固定部材13が上蓋240と干渉することを防げる。そのため、上蓋240の外周縁をベースプレート10の外周縁に対して隙間無く合わせることができる。なお、符号tは、後述する養生テープを示す。
【0046】
上蓋240の外周縁の近傍には、環状の補強部240aが形成されている。この補強部240aは、上蓋240に対してプレス加工などにより形成された環状の突起であり、上蓋240の中心と同軸に形成されている。より具体的に言うと、補強部240aは、上蓋240の上面においてはこの上面から突出するように形成され、上蓋240の下面においてはこの下面から凹むように形成されている。この補強部240aによれば、ベースプレート10と同じ大きい外径を有する上蓋240の強度を補強し、ボルト230に螺着されたナット231を締め付けて上蓋240の上面をナット231で加圧しても上蓋240が容易に撓まないようになっている。よって、上蓋240の撓みによって上蓋240の外周縁から雨水等がベースプレート10の上面に入り込むことを防止できる。
【0047】
(ルーフドレーン施工方法)
次に、本第1実施形態におけるルーフドレーン100の施工方法について、
図6を用いて説明する。
図6は、ルーフドレーン施工治具200を用いたルーフドレーン施工方法を説明するための縦断面図である。
【0048】
本第1実施形態に係るルーフドレーン100の施工方法は、受台設置工程S1と、ガイドパイプ設置工程S2と、ベースプレート設置工程S3と、上蓋設置工程S4と、上蓋設置工程S5と、ボルト設置工程S6と、ナット締め工程S7とを含んでいる。詳細には、次の通りである。
(1)まず、デッキプレートDPの上に受台220を設置する(受台設置工程S1)。
(2)次に、平面視で受台220の周囲を取り囲むように、デッキプレートDPの上にガイドパイプ210を同軸に設置する(ガイドパイプ設置工程S2)。
(3)次に、ガイドパイプ210の上に、ベースプレート10を同軸に設置する(ベースプレート設置工程S3)。このとき、バッフル固定部材13を全てベースプレート10から取り外しておく。
【0049】
(4)次に、ボルト230を、ベースプレート10とガイドパイプ210とを通して、受台220に予め固定しておく(ボルト設置工程S6)。その後、上蓋240のボルト挿通孔242にボルト230を通してから上蓋240をベースプレート10の上に重ね合わせる(上蓋設置工程S5)。このとき、ボルト230が挿通されたボルト挿通孔242が、上蓋240をベースプレート10と同軸に位置合わせするガイドとして機能するため、精度良く容易に上蓋240を設置できる。(上蓋設置工程S4)。なお、ボルト230を挿入する工程は、上記工程のタイミングで行う場合の他、ガイドパイプ設置工程S2の時点で行うようにしてもよい。
(5)ナット231を締めて、上蓋240をベースプレート10の上面に押し当てる(ナット締め工程S7)。これにより、上蓋240がベースプレート10に対して同軸に固定される。その後、
図5に示したように、上蓋240の外周縁とベースプレート10の外周縁との重ね合わせた部分の隙間を、養生テープtにより、水密にシールする。また、ボルト挿通孔242についてはナット231の締め付けによって同様にシールされる。以上の工程により、ベースプレート10の上面が水密に封止される。ここで、上蓋240にはボルト挿通孔242以外に貫通孔が形成されておらず、しかもベースプレート10の上面の全面を覆うことができるため、養生を容易かつ短時間に行える上に、使用する養生テープも少なくて済む。
【0050】
(6)ベースプレート10の養生が完了した後、ルーフスラブSを構成するコンクリート等を、ガイドパイプ210の周囲のデッキプレートDP上に打設する。そして、打設されたコンクリート等に、ベースプレート10のアンカー14が埋設されて固定された状態になる。その結果、ガイドパイプ210によって形成されたルーフスラブSの抜孔に対して、ベースプレート10が確実に位置決めして設置される。
(7)コンクリート等が完全に硬化してルーフスラブSが出来上がったら、養生テープtを全て剥がし、ボルト230からナット231を外し、ベースプレート10から上蓋240を外し、最後にボルト230等を取り除く。そして、取り外しておいた全てのバッフル固定部材13を、ベースプレート10に対して取り付ける。そして、防水シートWSをその貫通孔が管軸Yと同軸をなすように敷設した後、クランプリング20で挟み込んで固定する。その後、クランプリング20上にバッフル30を同軸に配置し、各バッフル固定部材13によってバッフル30を固定する。
以上の各工程により、ルーフドレーン100の施工が完了する。
【0051】
[第2実施形態]
以下、
図7~
図9を参照しながら、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明では、上記第1実施形態との相違点を中心に説明し、その他については上記第1実施形態と同様であるとして重複説明を省略する。
図7は、ベースプレート10及びクランプリング20の縦断面図である。
図8は、クランプリング20を示す図であって、
図7のC-C矢視図である。
図9は、クランプリング20の変形例を示す図であって、
図8のD部の拡大斜視図である。
【0052】
図7に示すように、本第2実施形態のルーフドレーン100も、上記第1実施形態と同様に、バッフル固定部材13Aがベースプレート10と別体になっている。すなわち、上記第1実施形態ではバッフル固定部材13がベースプレート10に対して着脱自在に取り付けられる構成であったが、本第2実施形態ではバッフル固定部材13Aをクランプリング20の上面に固定した構成を採用している。つまり、言い換えると、本第2実施形態のバッフル固定部材13Aは、クランプリング20と共に、ベースプレート10に対して着脱自在となっている。
【0053】
図8に示すように、全てのバッフル固定部材13Aは、クランプベース21の上面に、管軸Yを中心として互いに等角度間隔で2本が設けられている。バッフル固定部材13Aの本数は、2本に限らず3本以上としてもよく、良好な排水性を確保するためには6本以下とすることが好ましい。なお、
図8に示す符号25は、前記クランプリング固定部材15が挿通するための貫通孔である。これら貫通孔25は、クランプリング固定部材15の本数に合わせて3つが、各クランプリング固定部材15に対応した位置に形成されている。
【0054】
本第2実施形態のバッフル固定部材13Aは、クランプリング20に対して一体に固定されている。しかし、バッフル固定部材13Aは、クランプリング20に対して一体に固定する構成のみに限らず、クランプリング20に対して着脱自在としてもよい。これらの何れの場合においても、ベースプレート10上にはバッフル固定部材13Aが存在しないため、上記第1実施形態で説明した上蓋設置工程S4において、バッフル固定部材13Aとの干渉を生じることなく上蓋240をベースプレート10上に重ねることができる。
本第2実施形態のルーフドレーン施工方法は、上記第1実施形態で説明した各工程と同様の工程によりルーフドレーン100を設置できるが、工程の途中でバッフル固定部材13Aを取り付ける工程が不要となっており、より少ない工数でより簡易に施工できる。
【0055】
なお、バッフル固定部材13Aは、円柱形状に限らず、例えば
図9に示すように、クランプリング20上に立設された板形状を有してもよい。この場合、雨水等の流れを整流させることができる。この点は、上記第1実施形態で示したバッフル固定部材13についても同様である。
【0056】
以上、第1実施形態及び第2実施形態に係るルーフドレーン100を説明した。
各実施形態で説明したバッフル固定部材13及びクランプリング固定部材15の相対的な配置は一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。例えば上記第1実施形態及び第2実施形態では、
図10(a)に示す配置を採用した。
すなわち、バッフル固定部材13(13A)を2本備える構成とした。そして、これら2本のバッフル固定部材13(13A)は、平面視で見たときに管軸Yを通る一直線上にそれぞれ重なって配置されている。バッフル30、クランプリング20、ベースプレート10は、管軸Yを中心として同軸に配置されており、さらに、前記中心に対して2本のバッフル固定部材13(13A)間の中央位置が重なっている。つまり、2本のバッフル固定部材13(13A)は、管軸Yから互いに等距離に配置されている。
一方、クランプリング固定部材15については、これを3本備える構成とした。そして、これら3本のクランプリング固定部材15を、管軸Yの周囲を互いに等角度間隔でかつ管軸Yからの距離が互いに同じである位置に配置した。この配置によれば、防水シートWSをベースプレート10及びクランプリング20間に挟み込む際に、均等に防水シートWSを押さえることが可能である。
【0057】
この他、
図10(b)に示す配置も採用可能である。
すなわち、上述した
図10(a)の例では、管軸Yを中心とする径方向に沿って見たときに、2本のバッフル固定部材13を径方向外側に配置するとともに3本のクランプリング固定部材15を径方向内側に配置したが、
図10(b)ではその逆としている。すなわち、管軸Yを中心とする径方向に沿って見たときに、2本のバッフル固定部材13を径方向内側に配置するとともに3本のクランプリング固定部材15を径方向外側に配置している。一方、管軸Yを中心とする周方向の配置に関しては
図10(a)と同様である。したがって、本例においても、防水シートWSをベースプレート10及びクランプリング20間に挟み込む際に、均等に防水シートWSを押さえることが可能である。
【0058】
また、
図10(c)に示す配置も採用可能である。
すなわち、上述した
図10(a)の例では、バッフル固定部材13の本数を2本としたが、これを3本にしている。これら3本のバッフル固定部材13(13A)は、平面視で見たときに管軸Yの周囲を互いに等角度間隔でかつ管軸Yからの距離が互いに同じである位置に配置されている。
一方、クランプリング固定部材15については、
図10(a)の例と同様に、3本備える構成とした。そして、管軸Yを中心とする径方向に沿って見たときに、3本のバッフル固定部材13と3本のクランプリング固定部材15とが、互いに管軸Yから等距離にそれぞれ配置されている。そして、管軸Yを中心とする周方向に沿って見たときに、3本のバッフル固定部材13と3本のクランプリング固定部材15とが交互に並ぶように配置されている。したがって、これら合計6本のバッフル固定部材13及びクランプリング固定部材15を見たときに、これらが互いに等角度間隔を置くように配置されている。したがって、本例においても、防水シートWSをベースプレート10及びクランプリング20間に挟み込む際に、均等に防水シートWSを押さえることが可能である。
【0059】
以上説明の各実施形態の骨子を、以下に纏める。
[1]
図1及び
図7に示した、ルーフドレーン100は、
ドレーン管Eに連結されて雨水等をドレーン管Eに流し込むものであって、
ドレーン管Eに連結される連結管11cを有するベースプレート10と、
ベースプレート10の上方に設置されるクランプリング20と、
クランプリング20の上方にバッフル固定部材13,13Aによって支持されるバッフル30と、
を備える。
そして、
図4(a),(b)及び
図7に示したように前記バッフル固定部材13,13Aが、ベースプレート10と別体である。
【0060】
[2]上記[1]に記載のルーフドレーン100において、
図4(a),(b)に示したように、バッフル固定部材13が、ベースプレート10に対して着脱自在であってもよい。
[3]上記[1]に記載のルーフドレーン100において、
図7に示したように、バッフル固定部材13Aが、クランプリング20と一体に設けられていてもよい。
[4]上記[3]に記載のルーフドレーン100において、
図9に示したように、バッフル固定部材13Aが、クランプリング20上に立設された板形状を有してもよい。
[5]上記[1]~[4]の何れか1項に記載のルーフドレーン100において、
図1に示したように、ベースプレート10の外周縁が下方に向かう折り返し部12Aを有してもよい。
【0061】
[6]
図5に示したルーフドレーン施工治具200は、
上記[1]~[5]の何れか1項に記載のルーフドレーン100を設置する施工治具であって、
デッキプレートDPの上方に設置され、ベースプレートを10支持するガイドパイプ210と、
ガイドパイプ210の下端部に配置される受台220と、
ガイドパイプ210を通り鉛直方向に沿って延在し、下端が受台220に接続されるボルト230と、
ボルト230が貫通し、ベースプレート10をガイドパイプ210との間で挟む上蓋240と、
ボルト230の上端に螺着されるナット231と、
を備え、
上蓋240が、ベースプレート10の上面の全面を覆う。
【0062】
[7]
図6に示したルーフドレーン施工方法は、
上記[6]に記載のルーフドレーン施工治具200を用いてルーフドレーン100を設置する施工方法であって、
デッキプレートDPの上方に受台220を設置する受台設置工程S1と、
平面視で受台220を取り囲むように、デッキプレートDPの上方にガイドパイプ210を設置するガイドパイプ設置工程S2と、
ガイドパイプ210の上方にベースプレート10を設置するベースプレート設置工程S3と、
上蓋240に通されたボルト230をベースプレート10とガイドパイプ210とに通して受台220に接続する上蓋設置工程S4と、
ベースプレート10の上に上蓋240を重ねてベースプレート10の上面を覆う上蓋設置工程S5と、
前記ガイドパイプ設置工程または前記上蓋設置工程の際に、ボルト230の下端を受台220に接続するボルト設置工程S6と、
ナット231をボルト230の上端に螺着させることで上蓋240をベースプレート10に対して固定するナット締め工程S7と、
を有する。
その結果、
図5に示したように、上蓋設置工程S4において、上蓋240でベースプレート10の全面を覆う。
【0063】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。よって、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。以下、具体的な各種変形例を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、上記各実施形態の構成との相違点を中心に説明し、その他の同一構成については同一符号を用いてその重複説明を省略する。
【0064】
(ルーフドレーンの変形例1)
図11は、第1実施形態のルーフドレーンのベースプレートの変形例を示す図であって、
図2に対応する縦断面図である。本変形例のルーフドレーンでは、ベースプレート10における遷移部311tの構成が、第1実施形態の遷移部11tと特に異なっている。
【0065】
本変形例では、遷移部311tとして、管軸Yを含む断面において、複数の直線的な傾斜面を組み合わせることで、下方から上方に行くに連れて通水部の内径が徐々に拡がるように構成している。
遷移部311tの下端は、連結管11cの上端に接合されている。また、遷移部311tの上端は、傾斜部12の下端に接続されている。遷移部311tと傾斜部12とは、一体に形成されている。
連結管11cから傾斜部12に至る遷移部311tは、テーパ形状である。すなわち、遷移部311tは、下方から上方に行くに連れて徐々に拡がる内径を有している。これにより、落とし口部11に向かって雨水が流れやすくなるよう(集水しやすくするよう)にすることができ、落とし口部11からドレーン管Eまで早く流すことができる。
【0066】
(ルーフドレーンの変形例2)
図12は、第1実施形態のルーフドレーンの変形例を示す斜視図である。また、
図13は、
図12の変形例に係るルーフドレーンの分解図であり、一部を縦断面視した側面図である。
本変形例のルーフドレーン350は、ベースプレート360と、クランプリング370と、バッフル380と、を備えている。
【0067】
ベースプレート360は、ドレーン管Eに連結可能な連結管を含む落とし口部361と、落とし口部361の周囲から円錐状に拡がる傾斜部362とを有している。ベースプレート360の中央近傍の上面には、不図示のボルト穴が形成されている。そして、このボルト穴には、鉛直方向に沿って長い第1ボルト363の下端が螺合可能となっている。
クランプリング370は、その中央開口の周囲に形成された平坦部371と、平坦部371の外周縁から斜め上方に向けて円錐状に拡がる傾斜部372とを有している。そして、平坦部371には、ボルト穴373と、不図示の貫通孔とが形成されている。ボルト穴373には、第1ボルト391の下端が螺合可能となっている。また、前記貫通孔には、第2ボルト392が上下に沿って挿通可能となっている。
バッフル380は、管軸Yの周りに環状配置された複数枚の下側縦リブ381と、これら下側縦リブ381の上端に一体に固定された蓋部382と、蓋部382の上面に管軸Yの周りに環状配置された複数枚の上側縦リブ383と、各下側縦リブ381の外周縁及び各上側縦リブ383の外周縁が一体に接続されるリング部384とを有する。蓋部382には、第2ボルト392を挿通させるための貫通孔(不図示)が形成されている。第2ボルト392は、第1ボルト391よりも長い。第1ボルト391の上端には、ナット394が螺着可能である。第2ボルト392の上端には、ナット393が螺着可能である。
【0068】
上記構成を有するルーフドレーン350の施工方法は、第1実施形態と同様に、受台設置工程S1と、ガイドパイプ設置工程S2と、ベースプレート設置工程S3と、上蓋設置工程S4と、上蓋設置工程S5と、ボルト設置工程S6と、ナット締め工程S7とにより行われる。詳細には、以下の通りである。なお、以下の説明において、上記第1実施形態と同じ部品を用いる箇所については、同一符号を用いて説明する場合がある。
【0069】
(1)まず、デッキプレートDPの上に受台220を設置する(受台設置工程S1)。
(2)次に、平面視で受台220の周囲を取り囲むように、デッキプレートDPの上にガイドパイプ210を同軸に設置する(ガイドパイプ設置工程S2)。
(3)次に、ガイドパイプ210の上に、ベースプレート360を同軸に設置する(ベースプレート設置工程S3)。このとき、第1ボルト391及び第2ボルト392を全てベースプレート10から取り外しておく。
【0070】
(4)次に、ボルト230を、ベースプレート360とガイドパイプ210とを通して、受台220に予め固定しておく(ボルト設置工程S6)。その後、上蓋240のボルト挿通孔242にボルト230を通してから上蓋240をベースプレート360の上に重ね合わせる(上蓋設置工程S5)。このとき、ボルト230が挿通されたボルト挿通孔242が、上蓋240をベースプレート360と同軸に位置合わせするガイドとして機能するため、精度良く容易に上蓋240を設置できる。(上蓋設置工程S4)。なお、ボルト230を挿入する工程は、上記工程のタイミングで行う場合の他、ガイドパイプ設置工程S2の時点で行うようにしてもよい。
(5)ナット231を締めて、上蓋240をベースプレート360の上面に押し当てる(ナット締め工程S7)。これにより、上蓋240がベースプレート360に対して同軸に固定される。その後、
図5に示したように、上蓋240の外周縁とベースプレート360の外周縁との重ね合わせた部分の隙間を、養生テープtにより、水密にシールする。また、ボルト挿通孔242についてはナット231の締め付けによって同様にシールされる。以上の工程により、ベースプレート360の上面が水密に封止される。ここで、上蓋240にはボルト挿通孔242以外に貫通孔が形成されておらず、しかもベースプレート360の上面の全面を覆うことができるため、養生を容易かつ短時間に行える上に、使用する養生テープも少なくて済む。
【0071】
(6)ベースプレート360の養生が完了した後、ルーフスラブSを構成するコンクリート等を、ガイドパイプ210の周囲のデッキプレートDP上に打設する。これにより、ガイドパイプ210によって形成されたルーフスラブSの抜孔に対して、ベースプレート360が確実に位置決めして設置される。
(7)コンクリート等が完全に硬化してルーフスラブSが出来上がったら、養生テープtを全て剥がし、ボルト230からナット231を外し、ベースプレート360から上蓋240を外し、最後にボルト230等を取り除く。そして、取り外しておいた第2ボルト392をベースプレート360上に螺合して立設させておく。そして、防水シートWSをその貫通孔が管軸Yと同軸をなすように敷設した後、クランプリング370で挟み込む。この時、第2ボルト392が、防水シートWS及びクランプリング370を貫通するように取り付ける。そして、クランプリング370上に第1ボルト391の下端を固定する。
続いて、クランプリング370上に、バッフル380を同軸に重ねて配置する。この時、第1ボルト391及び第2ボルト392の双方が蓋部382を貫通するように取り付ける。最後に、蓋部382から突出している第1ボルト391及び第2ボルト392に対し、ナット393,394を取り付けて締め付ける。
【0072】
以上の工程により、ルーフドレーン350の組付けが完了する。こうして組付けられたルーフドレーン350においては、各下側縦リブ381間に形成される開口から周囲の雨水を取り込み、ドレーン管Eへと排水する。
本変形例においても、ベースプレート設置工程S3において、ベースプレート360及びクランプリング370を固定する部材を挿通させるための貫通孔を上蓋240に設ける必要がない。よって、上蓋240の貫通孔を雨水等の浸入防止のためにシールする工程が不要であるので、施工時の手間を軽減することができる。
特に、ベースプレート設置工程S3においては、ストレーナ部材410及び保持部材420を固定する部材を挿通させるための貫通孔を上蓋240に設ける必要がない。よって、上蓋240の貫通孔を雨水等の浸入防止のためにシールする工程が不要であるので、施工時の手間を軽減することができる。また、これにより、傾斜部362の上面は、連結管11cの管軸Yと直交する面HLに対して、0°以上15°以下の範囲の傾斜角度θで傾斜させてもよく、ルーフドレーン350の周囲のルーフスラブSとして十分な厚さを確保する場合には、0°以上10°未満の範囲の傾斜角度θで傾斜していることが好ましい。傾斜部362の傾斜角度θが浅く、第1ボルト391及び第2ボルト392と上蓋240が干渉しやすいが、第1ボルト391及び第2ボルト392を全てベースプレート10から取り外すことができるため、上蓋240に貫通孔を設ける必要がない。
【0073】
(ルーフドレーンの変形例3)
図14は、第1実施形態のルーフドレーンの他の変形例を示す斜視図である。
本変形例のルーフドレーン400は、ストレーナ部材410と、保持部材420と、ベースプレート430とを有する。
【0074】
ストレーナ部材410は、略リング状のベース部411と、ベース部411の内側に立設した略円錐台形状の立設部412とを有している。また、ストレーナ部材410は、立設部412の中心軸(管軸Y)を通る中心面に沿って180度位相で、立設部412の外表面から外側に向かって延在する一対の外側フィン(主整流板)413を有している。また、ストレーナ部材410は、立設部412の前記中心軸を通る中心面に沿って180度位相で、立設部412の内表面から中心方向に延在する一対の内側フィン(副整流板)414も有している。内側フィン414は1枚でもよい。そして、外側フィン413の中心面と内側フィン414の中心面は、互いに交差している。なお、ストレーナ部材410は、鋳物から一体的に形成することもでき、あるいはプレス成形した各パーツを、溶接により接合して形成することもできる。
【0075】
立設部412は、環状の根元部412aと、円形の頂面412bと、根元部412aの上面と頂面412bの外周とを連結する複数の縦桟412cとを有している。頂面412bの中央には円形開口412dが形成されている。
立設部412の根元部412aの外周と、ベース部411の内周とは、放射方向に延在する複数の放射桟411aにより連結されている。また、ベース部411の外周において、外側フィン413とは90度位相で、切欠411bが設けられている。互いに隣接する縦桟412c同士の間隔、および互いに隣接する放射桟411a同士の間隔は、水の通過を妨げないが、比較的大きなゴミなどの異物の通過を妨げるような寸法となっており、これにより排水管にゴミが流入することを抑制して、詰まりを防止するように機能する。
【0076】
外側フィン413は、それぞれベース部411に対して直交して配置される略L字形の板状をなし、対向して延在する放射桟411aの上面と、対応する縦桟412cの外側面と、立設部412の頂面412bの上面に接合して立設部412と一体化している。また、外側フィン413の上縁は水平であり、外側フィン413の側縁は、対応する放射桟411aと略平行である。
内側フィン414は、それぞれベース部411に対して直交して配置される矩形板状をなし、根元部412aの内周と、対応する縦桟412cの内側面の一部に接合しており、さらに端部同士を突き合わせるようにして配置されている。一対の内側フィン414の端部間には隙間が形成されているが、内側フィン414を単一の矩形板から形成して、根元部412aの直径にわたるように配置してもよい。内側フィン414は、外側フィン413に対して90度位相で配置されている。ただし、かかる配置に限られず、内側フィン414の中心面と外側フィン413の中心面とは交差していれば足りる。
【0077】
円形の保持部材420は、中央に円形の開口420aを有し、さらに周縁近傍の上面に、周方向に沿って等間隔に設けられた複数の係止片420bを有する。保持部材420は、外周から中央の開口420aに向かって円錐状になだらかに傾斜した浅皿形状を有する。また、径方向に対向する係止片420b同士の間隔は、ストレーナ部材410のベース部411の外径に略等しい。
さらに、保持部材420の上面において、開口420aから外周にかけて6本の隆起部420cが放射状に延在している。隆起部420cの裏面側は、ストレートなトンネル状の流路となっており、周囲に溜まった水が少ない場合に、裏面側の流路を通過して保持部材420の外周側から開口420a側に、水が流れるようになっている。隆起部420c間を、それぞれ低部420dとする。保持部材420の上面において、ベース部411の切欠411bに対向する位置に、ねじ穴420eが形成されている。
ベースプレート430は、円形の中央穴430bを備えた矩形板(支持板)430aを有し、さらに中央穴430bに連通するようにして、円筒状の連結管430cを矩形板430aの下面に溶接等で接合してなる。矩形板430aは、中央穴430bの周囲において、保持部材420の形状に応じて、中央に向かって円錐状になだらかに傾斜した円形の傾斜面430dを有している。これにより、傾斜面430dに積層した防水層も同方向に傾斜するので、その上の雨水が中央穴430bへと流れることとなる。
【0078】
上記構成を有するルーフドレーン400の施工方法は、第1実施形態と同様に、受台設置工程S1と、ガイドパイプ設置工程S2と、ベースプレート設置工程S3と、上蓋設置工程S4と、上蓋設置工程S5と、ボルト設置工程S6と、ナット締め工程S7とにより行われる。
特に、ベースプレート設置工程S3においては、ストレーナ部材410及び保持部材420を固定する部材を挿通させるための貫通孔を上蓋240に設ける必要がない。よって、上蓋240の貫通孔を雨水等の浸入防止のためにシールする工程が不要であるので、施工時の手間を軽減することができる。
【0079】
(ルーフドレーンの変形例4)
図15は、第1実施形態のルーフドレーンのさらに他の変形例を示す斜視図である。
図16は、
図15の変形例に係るルーフドレーンの縦断面図である。
本変形例のルーフドレーン450は、ベースプレート460と、クランプリング470と、ストレーナ部材480と、を備えている。
【0080】
ベースプレート460は、落とし口となる開口を有してかつドレーン管Eに連結可能な落とし口部461と、落とし口部461の周囲から円錐状に拡がる傾斜部462と、落とし口部461上に対して着脱自在に立設された複数本(図示の例では3本)の固定ボルト463と、ルーフスラブSに埋設されるアンカー464とを有している。アンカー464は、L字形状を有し、ベースプレート460の底面から下方に突出して設けられている。
【0081】
クランプリング470は、中央に開口471を有する環状の円板であり、開口471の周囲から円錐状に広がる傾斜部472を有する。傾斜部472の開口471上には、固定ボルト463を通すための貫通孔472aが複数(図示の例では3か所)形成されている。さらに、これら貫通孔472aの周囲には、管軸Y回りに沿って複数の補強リブ473が形成されている。これら補強リブ473は、傾斜部462の上面(傾斜面)上に立設されており、クランプリング470の構造強度を補強する役目と、ストレーナ部材480を位置決めする機能とを有している。そして、これら補強リブ473により囲まれた円形領域内に、2か所の雌ねじ孔474が形成されている。
【0082】
ストレーナ部材480は、蓋部481と、蓋部481の外周縁の各位置に接続されて鉛直方向に長い複数本の縦柱部482と、これら縦柱部482の各下端が周方向の各位置に接続される第1環状部483と、この第1環状部483から管軸Yを中心とする略水平方向に延在する横柱部484と、これら横柱部484の各先端が周方向の各位置に接続される第2環状部485とを有する。第2環状部485の周方向2か所には、前記雌ねじ孔474に対応する貫通孔485aが形成されている。
【0083】
上記構成を有するルーフドレーン450の施工方法は、第1実施形態と同様に、受台設置工程S1と、ガイドパイプ設置工程S2と、ベースプレート設置工程S3と、上蓋設置工程S4と、上蓋設置工程S5と、ボルト設置工程S6と、ナット締め工程S7とにより行われる。
ここで、ベースプレート設置工程S3においては、各固定ボルト463をベースプレート460から取り外した状態で作業を行えるため、クランプリング470及びストレーナ部材480を固定する部材を挿通させるための貫通孔を上蓋240に設ける必要がない。よって、上蓋240の貫通孔を雨水等の浸入防止のためにシールする工程が不要であるので、施工時の手間を軽減することができる。
【0084】
(ルーフドレーンの変形例5)
図17は、第1実施形態のルーフドレーンのさらに他の変形例を示す斜視図である。なお、同
図17では、ベースプレート10及びクランプリング20の図視を省略し、バッフル530のみを図示している。バッフル530は、
図1に示したクランプリング20上に、バッフル30に代わって取り付けられる部品であり、排水される雨水に対してサイフォン現象の発生を誘発する。バッフル530は、硬質塩化ビニル樹脂やポリカーボネート、ABS、AES等の合成樹脂を用いて射出成形によって製造された樹脂製である。なお、バッフル530は、樹脂製のみに限らず、鋳型を用いた鋳鉄製、あるいはSUS製であってもよい。
【0085】
図17に示すように、バッフル530は、蓋部材531と、複数の縦リブ533と、嵌合部532と、を有する。
蓋部材531は、上下方向に沿った管軸Yを中心線とする円板である。なお、ここでは、蓋部材531の形状として円板を例示したが、これのみに限らず、矩形を含む多角形(五角形または六角形など)の平板であってもよい。あるいは、蓋部材531の形状として、落とし口部461に対して、蓋部材531の全体が凹状や凸状になっていてもよい。よって、蓋部材531の形状が、漏斗状であってもよい。蓋部材531は、省略することも可能ではあるが、装備している方が排水時に封水しやすくなり、サイフォン現象をより誘発しやすくなって排水性能を向上させることができる。
複数枚の縦リブ533は、蓋部材531の下面に、管軸Yの周囲に等角度間隔を置いて固定された板材である。なお、ここでは縦リブ533として板材を例示したが、これのみに限らず、長手方向に直交する断面形状が矩形あるいは円形である棒材(支持脚)を採用してもよい。複数枚の縦リブ533を備えることで、互いに隣り合う縦リブ533間の間隔よりも大きい異物を雨水から取り除くことができる。また、排水時に渦を巻こうとする水の流れを整流させることもできる。
図示の例では、縦リブ533が6枚が設けられており、これら6枚の縦リブ533が、管軸Yを中心として約60度間隔で設けられている。ただし、縦リブ533の枚数及び配置間隔は、この例のみに限られるものではない。
【0086】
各縦リブ533は、互いに同一形状を有している。各縦リブ533は、蓋部材531の下面に接続された上辺531aと、上辺531aの真下に配置された下辺531bと、これら上辺531a及び下辺531b間を接続する内辺531c及び外辺531dと、を有する。
各上辺531aは、蓋部材531の下面を底面視した場合に、管軸Yを中心とする半径方向に沿って配置されている。そして、これら上辺531aのうちで管軸Yに最も近い端部に対して内辺531cが接続されている。逆に、各上辺531aのうちで管軸Yから最も遠い端部に対して外辺531dが接続されている。各内辺531c及び各外辺531dは、管軸Yに対して平行である。そして、各内辺531cは、各外辺531dよりも長い。
【0087】
上辺531a、内辺531c、外辺531dは、全て直線形状であるが、下辺531bは凹曲線形状となっている。したがって、円周状に等角度間隔で配置された各縦リブ533の下辺531b外接する面を考えた場合、この面は、管軸Yに沿って上から下に向かって先細りとなる略逆円錐台形状をなす。このように各縦リブ533を纏めて見たときに各下辺531bが全体として下方に向かって先細りになっているので、ベースプレート10の開口に嵌め込むことができる。しかも、各下辺531bは、互いに同一形状を有してかつ管軸Yから互いに等しい距離に配置されているので、各縦リブ533の下辺531bをベースプレート10の開口に嵌め込むだけで、バッフル530の中心線を管軸Yと自然に一致させるように位置決めすることができる。加えて、バッフル530をクランプリング20に取り付けた状態では、クランプリング20上面から上方の所定高さ位置に、蓋部材531の下面が位置するように配置できる。言い換えると、クランプリング20上に、各縦リブ533によって蓋部材531を支持固定できる。
バッフル530をクランプリング20上に取り付けた際、蓋部材531は、平面視でベースプレート10の開口の一部または全体を塞ぐように配置されている。また、平面視における蓋部材531の面積は、前記開口の面積よりも大きい。
【0088】
上記構成を有するバッフル530をベースプレート10の開口に嵌め込むことで、クランプリング20の上面と各縦リブ533の側面と蓋部材531の下面とによって区画される6つの流入開口が形成される。各縦リブ533は、流入開口から流入する雨水を整流する機能を有する。また、蓋部材531は、流入開口から流入する雨水に空気が混ざり込むことを抑制する。なお、全ての流入開口の合計面積が、ベースプレート10の開口の面積以上となるように、蓋部材531の大きさや各縦リブ533の高さを設定することが好ましい。
【0089】
蓋部材531の上面には、上方に突出し、周方向において互いに等角度間隔を空けて配置された複数の把持リブ535が固定されている。これら把持リブ535は、バッフル530をベースプレート10の開口に嵌め込む際に、作業者によって把持される部分である。
【0090】
嵌合部532は、各縦リブ533のそれぞれに固定された樹脂製の棒状部品であり、弾性を有する。嵌合部532は、各縦リブ533の最下端位置からさらに真下に向かって延在する。そして、バッフル530を取り付けた際に、嵌合部532の側面がベースプレート19の開口の内周面に当接する。嵌合部532は、蓋部材531を底面視した場合に環状に配置され、そしてこれら嵌合部532の外側面に接する外接面の径が、ベースプレート10の開口の内径寸法よりも若干大きめになっている。そのため、嵌合部532を嵌め込んだ際、弾性変形した嵌合部532の外側面がベースプレート10の開口の内壁面に対して押し付けられるので、これらの間で摩擦力が生じ、バッフル530を確実かつ容易に固定できる。よって、雨水による外力を受けても容易に外れることがない。逆に、作業者は、把持リブ535を持ってバッフル530を前記摩擦力に抗しながら上方に持ち上げることで取り外すことができる。このように、本変形例のバッフル530は、ベースプレート10の開口に対して着脱自在である。
【0091】
以上説明のバッフル530を備えるルーフドレーン100の施工方法は、第1実施形態と同様に、受台設置工程S1と、ガイドパイプ設置工程S2と、ベースプレート設置工程S3と、上蓋設置工程S4と、上蓋設置工程S5と、ボルト設置工程S6と、ナット締め工程S7とにより行われる。
ここで、ベースプレート設置工程S3においては、バッフル固定部材13をベースプレート10から取り外した状態で作業を行えるため、バッフル固定部材13を挿通させるための貫通孔を上蓋240に設ける必要がない。よって、上蓋240の貫通孔を雨水等の浸入防止のためにシールする工程が不要であるので、施工時の手間を軽減することができる。
【0092】
(ルーフドレーンの変形例6)
図18は、第1実施形態のルーフドレーンのさらに他の変形例を示す斜視図である。なお、同
図18では、ベースプレート10及びクランプリング20の図視を省略し、バッフル550のみを図示している。バッフル550は、
図1に示したクランプリング20上に、バッフル30に代わって取り付けられる部品であり、排水される雨水に対してサイフォン現象の発生を誘発する。
【0093】
本変形例に係るバッフル550は、例えば樹脂により形成され、管軸Yを中心として周方向複数位置に配置された羽根551Aと、これら羽根551Aの径方向内側端に連結された内側筒部552A及び漏斗部553Aとを有する。内側筒部552Aは上下方向に長い円管形状を有する。漏斗部553Aは、内側筒部552Aの上端に連なって一体に固定された逆円錐台形状の管材であり、その下端から上端に向かって拡径している。バッフル550をベースプレート10の開口に取り付けた際、内側筒部552A及び漏斗部553Aは、平面視でベースプレート10の開口の一部または全体を塞ぐ蓋部材として機能する。
【0094】
各羽根551Aは、互いに同一形状を有する平板である。各羽根551Aは、漏斗部553Aの上端外周縁から等角度間隔で水平方向に延在する上辺551Aaと、上辺551Aaの最外周端から下方に向かって延在する外辺551Abと、外辺551Abの下端から管軸Yに向かって延在する下辺551Acと、を有する。各下辺551Acは、側面視で上方に凹む曲線形状を有する。
【0095】
各羽根551Aの下辺551Acそれぞれに、前記嵌合部552が固定されている。すなわち、各羽根551Aの最下端位置からさらに真下に向かって延在し、その側面がベースプレート10の開口の内周面に当接するように、嵌合部552が羽根551Aに固定されている。したがって、本変形例においても、漏斗部553Aを底面視した場合に、各嵌合部552が環状に配置され、そしてこれら嵌合部552の外側面に接する外接面の径が、ベースプレート10の開口径よりも若干大きめになっている。そのため、嵌合部552を嵌め込むことで、バッフル550を、ベースプレート10に対して着脱自在に固定可能としている。
【0096】
以上説明のバッフル550をベースプレート10に取り付けることで、ベースプレート10の開口に通じる複数の開口が形成される。すなわち、漏斗部553Aの外周面と、各羽根551Aの側面と、底壁553eの上面とによって区画された複数の開口が形成される。加えて、内側筒部552A及び漏斗部553Aを上下方向に貫く開口も形成されている。そして、このバッフル550においても、各羽根31Aの側面間に形成された開口に雨水を通すことで、雨水を整流させる。
【0097】
以上説明のバッフル550を備えるルーフドレーン100の施工方法は、第1実施形態と同様に、受台設置工程S1と、ガイドパイプ設置工程S2と、ベースプレート設置工程S3と、上蓋設置工程S4と、上蓋設置工程S5と、ボルト設置工程S6と、ナット締め工程S7とにより行われる。
ここで、ベースプレート設置工程S3においては、バッフル固定部材13をベースプレート10から取り外した状態で作業を行えるため、バッフル固定部材13を挿通させるための貫通孔を上蓋240に設ける必要がない。よって、上蓋240の貫通孔を雨水等の浸入防止のためにシールする工程が不要であるので、施工時の手間を軽減することができる。
【0098】
(ルーフドレーンの変形例7)
図19は、第1実施形態のルーフドレーンのさらに他の変形例を示す斜視図である。なお、同
図19では、ベースプレート10及びクランプリング20の図視を省略し、バッフル600のみを図示している。バッフル600は、
図1に示したクランプリング20上に、バッフル30に代わって取り付けられる部品であり、排水される雨水に対してサイフォン現象の発生を誘発する。
本変形例に係るバッフル600は、例えば樹脂により形成された部品であり、フィンを持たない代わりに支持脚を備えた構造を有している。すなわち、このバッフル600は、リング状の環状部601と、環状部601上に立設された複数本の支持脚602と、これら支持脚602により環状部601の中央開口上に固定配置された天板部603と、嵌合部604とを有する。
【0099】
環状部601は、平面視で円形開口601aと円形の外周縁601bとを有するリング状の平板であり、円形開口を通って雨水が取り込まれる。
各支持脚602は、環状部601の円形開口601aの周方向の各位置から、上方かつ管軸Yに徐々に近づく方向に向かって直線的に傾斜した板部品である。言い換えると、各支持脚602は、上下が開口した円錐台の側壁に、上下に長い縦開口602aが複数形成された部品である。各縦開口602aは、円錐台の周方向に複数が形成されている。各縦開口602aは、円錐台の周方向において等角度間隔に配置されてもよいし、あるいは
図19のように、部分的に密集させた配置構造としてもよい。
天板部603は、複数の横開口603aを有する円盤状の部品である。天板部603の外周縁には、各支持脚602の上端が一体に接続されている。したがって、天板部603は、環状部601上に、各支持脚602を介して支持固定されている。天板部603は、環状部601の開口と同軸をなしており、よって、落とし口の一部または全部を覆う。
嵌合部604は、環状部601の下面から真下に向かって延在している。嵌合部604は、その側面がベースプレート10の開口の内周面に当接するように、円形開口601aの周方向の各位置に固定されている。したがって、本変形例においても、環状部601を底面視した場合に、各嵌合部604が環状に配置され、そしてこれら嵌合部604の外側面に接する外接面の径が、ベースプレート10の開口径よりも若干大きめになっている。そのため、嵌合部604を嵌め込むことで、バッフル600を、ベースプレート10に対して着脱自在に固定可能としている。
【0100】
(ルーフドレーンの変形例8)
図20は、第1実施形態のルーフドレーンのさらに他の変形例を示す斜視図である。なお、同
図20では、ベースプレート10及びクランプリング20の図視を省略し、バッフル700のみを図示している。バッフル700は、
図1に示したクランプリング20上に、バッフル30に代わって取り付けられる部品であり、排水される雨水に対してサイフォン現象の発生を誘発する。
本変形例に係るバッフル700は、例えば樹脂により形成され、つば付き円筒状の本体710と、本体710上に同軸に固定されたストレーナ部材720とを有する。
【0101】
本体710は、管軸Yと同軸の中心線を有する円筒形状の筒部711と、筒部711の上端に同軸かつ水平方向に張り出すように形成されたリング部712とを有する。筒部711の内周面の上部には、管軸Yと同軸の雌ねじ(不図示)が形成されている。
ストレーナ部材720は、管軸Yと同軸の中心線を有してかつ筒部711よりも小径な円筒形状を有する筒部721と、筒部721の上端から水平方向に張り出すように形成されたリング部722と、リング部722上に一体に形成された通水部723とを有する。リング部722の外周面には、本体710の雌ねじに螺合する雄ねじ(不図示)が形成されている。
【0102】
通水部723は、リング部722から上方に向かって延在する複数本の縦柱部723aと、これら縦柱部723aの各上端間を接続する環状接続部723bと、この環状接続部723bの開口内にかけ渡された複数本の横柱部723cとを有する。各横柱部723cは水平な一方向に沿って延在するものと、前記一方向に対して交差方向に沿って延在するものとが互いに交差することで、環状接続部723bで囲まれる開口を複数(図示の例では9個)の小開口に区画している。これにより、ゴミなどが配管内へ流入することを防ぐことができる。
【0103】
本変形例に係るバッフル700を備えるルーフドレーン100の施工方法は、第1実施形態と同様に、受台設置工程S1と、ガイドパイプ設置工程S2と、ベースプレート設置工程S3と、上蓋設置工程S4と、上蓋設置工程S5と、ボルト設置工程S6と、ナット締め工程S7とにより行われる。
ここで、ベースプレート設置工程S3においては、バッフル固定部材13をベースプレート10から取り外した状態で作業を行えるため、バッフル固定部材13を挿通させるための貫通孔を上蓋240に設ける必要がない。よって、上蓋240の貫通孔を雨水等の浸入防止のためにシールする工程が不要であるので、施工時の手間を軽減することができる。
【0104】
以上、ルーフドレーンの各種変形例について説明した。
続いて、上記第1実施形態の変形例として、ルーフドレーンの下流側配管を含む配管システムの変形例を説明する。
【0105】
(フィン付き継手)
本変形例では、ドレーン管Eの下端に対して
図21に示すフィン付き継手を接続した場合を説明する。
図21は、第1実施形態の変形例を示す図であって、
図1に示すドレーン管Eの下端に接続されたフィン付き継手を、管軸Yを含む断面で見た縦断面斜視図である。
本変形例に係るフィン付き継手750は、継手本体760と複数のフィン770とを有する。
継手本体760は、鉛直上下方向に沿った管軸を有する円筒管である直管部761と、直管部761の上端に対して一体に形成された入口側嵌合部762と、直管部761の下端に対して同軸に接続された出口側嵌合部763とを有する。
【0106】
本変形例の出口側嵌合部763には、各フィン770が内周面に形成されたフィン付きリング764が、接続部770E2を介して一体に接続されている。
フィン付きリング764は、相対的に上流側に位置する上流端縁770E1aと、相対的に下流側に位置する下流端縁770E1bと、これら上流端縁770E1a及び下流端縁770E1b間を接続する縮流部770E1cと、縮流部770E1cの内周面に管軸Yを中心とした周方向に等角度間隔で配置された複数の前記フィン770とを有する。
【0107】
上流端縁770E1a及び下流端縁770E1bは、ともに環状をなすフランジ部分であり、直管部761の内周面の内径に近い外径寸法を有する。よって、上流端縁770E1a及び下流端縁770E1bは、直管部761の内壁面761aに対して隙間を開けずに接することができる。上流端縁770E1aの内周面は、管軸を含む断面で見た場合、その上流側から下流側に向かって徐々に厚みが増すようになっている。よって、上流端縁770E1aは、内壁面761a内に挿入配置されるものの、直管部761の内周面に対して過度に大きな段差を生じず、ここを通過していく雨水の流れを乱さずスムーズに通過させる。
下流端縁770E1bは、接続部770E2の上端に対し、過度に大きな段差を生じないように滑らかに接続されている。よって、下流端縁770E1bは、ここを通過していく雨水の流れを乱さずスムーズに通過させる。また、下流端縁770E1bは、出口側嵌合部763の内周面との間に環状の隙間を形成しており、この環状の隙間内に図示されない配管の上端が同軸かつ水密に嵌め込まれるようになっている。
【0108】
縮流部(縮径部)770E1cは、管軸を含む断面で見た形状がアーチ状をなしており、管軸方向の上流側から途中位置までの上半分が縮流傾斜面を持つ縮流路を形成し、続いて前記途中位置から管軸方向の下流側に向かう下半分が拡大流路を形成している。すなわち、前記上半分では、管軸Yに沿った方向から見た円形開口の内径が、上流側から下流側に向かうにつれて徐々に縮径し、そして下半分との境位置で最小内径となっている。前記境位置における流路開口が、絞り開口となる。そして、続く前記下半分では、管軸Yに沿った方向から見た円形開口の内径が、上流側から下流側に向かうにつれて徐々に前記最小内径より拡径していき、そして接続部770E2との境界位置で接続部770E2の内径と等しくなっている。
【0109】
各フィン770は、管軸方向の最も上流側にある上端770Eaと、管軸方向の最も下流側にある下端770Ebとを有する略線状の突起である。そして、本変形例では、管軸方向に沿って見た場合、上端770Eaの直下よりも若干横方向にずれた位置に下端770Ebが位置している。よって、これら上端770Ea及び下端770Eb間を結ぶ直線を管軸Yと重ねたときに交差するように、各フィン770は傾斜配置されている。そして、互いに隣り合うフィン770間に、管軸Yと重ねたときに交差する方向に沿った傾斜流路が形成されている。
【0110】
各フィン770は、上端770Ea及び下端770Eb間を結ぶ直線に対して垂直をなす断面で見た場合、前記直線上の各位置で略三角形の断面形状を有する。そして、この三角形断面の高さが、上端770Eaの位置から前記直線の中央位置までは徐々に高さが増していき、続いて前記直線の中央位置から下端770Ebにかけては徐々に高さが低くなっていく。また、これらフィン770を対向視した場合の幅寸法は、上端770Eaの位置から前記直線の中央位置までは徐々に増していき、続いて前記直線の中央位置から下端770Ebにかけては徐々に狭くなっていく。つまり、各フィン770は、管軸方向の中央位置で最も厚く、この中央位置から上端770Eaに向かうにつれて徐々に薄くなる。同様に、各フィン770は、前記中央位置から下端770Ebに向かうにつれて徐々に薄くなる。また、各フィン770を、上端770Ea及び下端770Eb間を結ぶ直線を含んでかつ縮流部770E1cの壁部の板厚方向に沿った断面で見た場合は、縮流部770E1cの内周面に沿った凸型のアーチ状をなしている。
各フィン770は、上記形状を有するので、雨水に加える流路抵抗を、管軸方向に沿って徐々に増していくように加えていくことが可能である。
【0111】
以上説明の構成によれば、各フィン770及びフィン付きリング764を通過する際の雨水では、縮流と整流の両方が同時に行われ、スムーズに排水されていく。
加えて、各フィン770の上端770Eaが、ベースプレート10の開口から鉛直下方に沿って1000mm以内に位置するように、各フィン770が配置されている。これにより、フィン付き継手750内に流れ込んだ雨水は、各フィン770に当たることによる流路抵抗と、縮流部770E1cの内周面によって形成された縮流による抵抗とを受け始めることになる。この流路抵抗によれば、上記第1実施形態と同様に、流れ込んだ雨水の流速を下げるブレーキ効果が生じる。また、各フィン770によって整流効果が得られる点も同様である。
【0112】
したがって、上記フィン付き継手750を備える本変形例によれば、ベースプレート10の開口から各フィン770の上辺にかけての間の流路内に、流速を下げられた雨水が一時的に溜まるようになるので、前記開口内に流れ込む雨水に空気が入り込みにくくなり、サイフォン現象を確実に誘発させることが可能である。しかも、各フィン770を通過した後の雨水は、整流済みであるため、渦を巻くことなくスムーズに排水されていく。
加えて、各フィン770が形成されたフィン付きリング764を出口側嵌合部763と一体化し、そして直管部761の下端に同軸に嵌め込むソケット式の構造を採用しているので、各フィン770の取り付けや交換、さらには掃除等のメンテナンスを容易に行うことが可能となっている。
【0113】
(Yチーズ)
本変形例に係る排水システムでは、ドレーン管Eを竪管である枝管とし、この枝管の下流端に横管である主管を接続して流れを合流させる継手位置に、Yチーズを適用した場合を説明する。まず、
図22を用いてYチーズを先に説明する。
図22は、第1実施形態、第2実施形態、及び各種変形例に係るルーフドレーンを有する排水システムに備わるYチーズ800の斜視図である。
【0114】
Yチーズ800は、水平方向に沿った管軸C1を有する主管接続部810と、管軸C1に対して交差する管軸C2を有する枝管接続部820とを有する。
主管接続部810は、管軸C1に垂直な断面における開口面積が管軸C1に沿った各位置で一定な流路を有する。そして、この流路の上流側には入口開口811、下流側には出口開口812が形成されている。これら入口開口811及び出口開口812には不図示の主管が接続されるため、前記流路よりも大きめの開口を有している。そして、本排水システムのYチーズ800は、主管接続部810内の流路を、紙面左側から紙面右側に向かって雨水が流れるような向きで用いられる。
【0115】
枝管接続部820は、管軸C2に垂直な断面における開口面積が管軸C2に沿った各位置で一定な流路を有する。そして、この流路の上流側には入口開口821、下流側には合流開口822が形成されている。入口開口821には不図示の枝管が接続されるため、枝管接続部820内の流路よりも大きめの開口を有している。一方、合流開口822は、主管接続部810の側面に形成された開口と連なっている。管軸C1及び管軸C2間の交差角度Θは、90°未満であり、例えば20°~80°、より好ましくは30°~60°の範囲から設定することが好ましい。そして、本排水システムのYチーズ800は、枝管接続部820内の流路を、紙面左上から紙面右下に向かって雨水が流れる。したがって、枝管接続部820の入口開口821に流れ込んだ雨水は、合流開口822を出た直後に、主管接続部810内を流れる雨水と合流し、そして出口開口812から下流側の主管へと流れていく。
【0116】
この合流時における雨水の流れについて、
図23を用いて説明する。
図23は、排水システムにおけるYチーズの作用効果を説明するための模式図であって、(a),(b)が従来構造に係るT字型の継手800Xを用いた場合を示し、(c)が本変形例のYチーズ800を用いた場合を示す。
例えば
図23(a)に示すように、主管と枝管との合流箇所にT字型の継手800Xを用いた場合、管軸C1,C2が直交した状態にあるため、紙面上方にある枝管から紙面下方にある主管に流れ込んだ雨水は、継手の内壁面に対して垂直に当たり、紙面左側に向かう流れと紙面右側に向かう流れとに二分される。ここで、主管内の流れで合流箇所を通過しようとする流れが、枝管から流れ込んできて主管内を逆流しようとする流れにより干渉を受けるため、この合流部でのスムーズな流れが得られないものとなる。なお、
図23(a)では紙面左側から主管に雨水が流れ込み、そして枝管から流れ込んできた雨水と合流する場合を例示したものであるが、仮に、主管左側に掃除口を設けて枝管から流れ込んできた雨水のみを排水する場合も、スムーズな流れが得られない点は同様である。
【0117】
このT字型の継手800Xの問題について、
図23(b)を用いて再度説明する。
まず、紙面左から右に向かって主管内の流路を雨水が流れていく。そして、紙面上から下に向かって枝管内の流路を雨水が流れ落ちていく。すると、主管と枝管の合流位置において、主管内の流れが上から落ちてきた枝管からの流れによって乱される。加えて、枝管から合流してきた流れの一部が主管内において逆流するため、主管を流れる雨水に対してブレーキをかける。このように、枝管を流れる雨水のベクトルが、主管内を流れる雨水の方向に向かうベクトル成分を持たないことに起因して、スムーズな流れが得られないものとなる。
【0118】
T字型の継手に関する上記問題は、従来から認識されていた。
すなわち、例えば1本の横管を主管とし、この主管の長手方向各位置においてその直上に接続される複数本の竪管を枝管とした場合、主管内を流れる雨水に対し、その真上に配置された各枝管からの流入にしてくる雨水がほぼ垂直に当たるように流れ込む。そのため、枝管から流れ込んだ雨水は、主管の下流側に向かうものとは別に、一部が主管の上流側に向かって逆流し、主管内の雨水の流れを阻害する。加えて、枝管から主管に流れ込んだ雨水は、合流後の流れ方向がほぼ90°曲げられるため、ここで流速低下が生じ、主管を流れる雨水に合流しにくいという問題もある。これら問題は、排水システムの排水性能低下を招くこととなる。加えて、主管内を流れる雨水に向かってほぼ直角に枝管から流れ込む雨水の合流により、排水音や振動が主管や枝管を通して生じやすいという問題も招いていた。
【0119】
一方、
図23(c)に示すように、
図22に示した本変形例のYチーズ800の場合は、枝管接続部820から流れ込んでくる雨水の流れに対し、予め、主管接続部810の流れ方向に沿うベクトル成分を持たせている。そのため、主管接続部810内における逆流が生じない上に、主管接続部810内の流れを後押しするように合流させることができる。したがって、合流部での圧損を抑えることができ、スムーズに合流させることが可能になる。
【0120】
加えて、本変形例のYチーズ800はメンテナンスの面でも優れている。これについて、
図24を用いて説明する。
図24は、排水システムにおけるYチーズの作用効果を説明するための図であって、(a)が従来構造に係るT字型の継手800Xを用いた場合を示し、(b)が本変形例のYチーズ800を用いた場合を示す。
図24(a)に示すように、枝管からT字型の継手800Xを介して主管にホースHを入れてメンテナンスする場合、ホースHが主管の内壁面に対して垂直に当たるため、主管の奥までホースHを差し込むことが難しい。一方、
図24(b)に示すように、枝管からYチーズ800を介して主管にホースHを入れてメンテナンスする場合は、主管内におけるホースHの送り先に沿うように、枝管接続部820を傾斜させているため、ホースHを主管接続部810の内壁面に対して斜めに当てることができる。そのため、ホースHをスムーズに送り出すことができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【0121】
排水システムにおけるYチーズ800の適用箇所の一例を、
図25に示す。
図25は、Yチーズ800を備える排水システムを建造物850に適用した一例を示す斜視図である。
建造物850は、3階建てのビルであって、1階と2階との間、2階と3階との間に、それぞれスラブ851が設けられている。
排水システムは、竪管である複数本の枝管852と、これら枝管852の下端がそれぞれ接続された2本の横管である主管853とを備えている。
【0122】
各枝管852は、ビル等である建造物850の屋上面に降った雨水を、主管853に流し込むための配管であり、それぞれの上端にはルーフドレーン(図示略)が接続されている。このような配管接続構造を有する排水システムでは、各枝管852のうち、主管853の最上流側にあるものを除く全てと、主管853との間の接続位置(破線の円で示した4か所の位置)に対して、Yチーズ800を適用することが好ましい。このとき、
図25では紙面左から紙面右に向かって主管853内を雨水が流れるため、
図22に例示した向きと同じ取り付け向きで、各Yチーズ800を接続することになる。すなわち、
図25の破線枠内に示す通りに管軸C1,C2が配置され、そして、管軸C1及び管軸C2間の交差角度Θが90°未満(例えば20°~80°、より好ましくは30°~60°の範囲)に設定されている。これにより、各枝管852及び主管853間での圧力損失を抑えてスムーズに雨水を排水させることが可能となる。
【0123】
なお、さらに排水性能を高める観点から、各枝管852から排水口に至るまでの圧力損失を均等に揃えることが好ましい。
例えば、従来の排水システムについて、主管の上流側の位置に接続された枝管から流れ込んでくる雨水の上流側ルートと、主管の下流側の位置に接続された枝管から流れ込んでくる雨水の下流側ルートとを比較した場合を考える。この場合、仮に、下流側ルートよりも上流側ルートの方が圧力損失が低ければ、上流側ルートに繋がる流入口には雨水が流れ込みやすいが、下流側ルートに繋がる流入口には雨水が流れ込みにくくなる。このような流入量の偏りが生じると、特定の流入口に雨水の流れ込みが集中し、その一方で、他の流入口からは空気が出てくるなどの不具合が生じる。よって、各流入口からの雨水の流入量を均等にするためには、上流側ルートの圧力損失と下流側ルートの圧力損失を均等にする必要がある。しかし、各枝管の流入口から主管の出口までの各ルートを比較した場合、各枝管と主管の合流箇所に配置される継手をいくつ通過するかが互いに異なる。いくつの継手を通過するかにより圧力損失が変わってくるため、各枝管の流入口から主管の出口に至るまで各流路の圧力損失を均等にすることは、容易ではなかった。
【0124】
これについて、
図26(a)を用いてより具体的に説明する。
図26(a)において、A,B,Cの各位置にあるルーフドレーンから流れ込んだ雨水がDに至るまでの各ルートを考える。この場合、CからDに向かうルート1と、AからDに向かうルート2とを考えると、ルート1の方が、通過するYチーズ800の数が多いため、圧力損失が相対的に高くなる。この場合、Aの位置のルーフドレーンからの排水が十分になされるものの、Cの位置では相対的に排水性能がやや劣る場合が生じえる。このような排水性能のアンバランスを抑えるためには、各ルート間で管径に差を設けるなどして、Dに至るまでの総合的な圧力損失を揃えることが好ましい。これは、例えば
図26(b)に示すように各ルーフドレーンの相対的な高さが異なる場合についても同様である。なお、ルーフドレーンの直下に接続される枝管(竪管)の長さは特に限定されず、60cm以上であってもよいし、あるいは60cm未満であってもよい。
【0125】
また、Yチーズ800は、横菅に対して竪管を接続する場合のみならず、
図27に示すように竪管に対して横菅を接続する場合も有効である。
すなわち、
図27(a)の従来構造に対して、
図27(b)の構造では、竪管に対して横菅を斜め下方に交差させるように接続しており、この接続位置に、Yチーズ800を採用している。この場合も従来のT字型の継手を用いる場合に比べて、横菅から竪管に向かう流れに対して下方に向かうベクトル成分を合流前に予め付与できるため、合流箇所での圧力損失を抑えてスムーズに排水することができる。
なお、本発明では各ルーフドレーン間の相対的な高低差について制限はなく、
図28に(a)示すように4~9mの高低差を設けてもよいし、あるいは、
図29(b)に示すように9m以上の高低差を有してもよい。さらに言うと、各ルーフドレーン間で高低差が無い場合(0m)であっても、本発明を適用できる。
【0126】
また、
図21に示したフィン付き継手750の代わりに、
図29に示すフィン付き継手900を採用してもよい。
フィン付き継手900は、継手本体910と複数のフィン920とを有する。
継手本体910は、鉛直上下方向に沿った中心軸線を有する円筒管であり、上端に形成された入口側嵌合部911と、下端に形成された出口側嵌合部912と、これらの間に形成された直管部913と、を有する。
入口側嵌合部911はリング形状を有し、ドレーン管Eの下端に対して同軸に外嵌めして固定されている。入口側嵌合部911の内周面はドレーン管Eの下端外径よりも若干大きめであり、不図示のシール材を介してドレーン管Eの下端に水密に接続されている。
出口側嵌合部912もリング形状を有し、枝管940の上端に対して同軸に外嵌めして固定されている。出口側嵌合部912の内周面は枝管940の上端外径よりも若干大きめであり、不図示のシール材を介して枝管940の上端に水密に接続されている。なお、ここでは外嵌めの場合を例示したが、外嵌めのみに限らず、内嵌めとしてもよい。内嵌めとした場合には、この接続位置での外径が管軸方向において変化しない(段差が無い)外観形状とすることができるので、美観に優れた配管構造を得ることができる。
【0127】
直管部913は、入口側嵌合部911と出口側嵌合部912との間に挟まれた位置に配置され、入口側嵌合部911及び出口側嵌合部912と同軸をなす円筒管である。ドレーン管E、フィン付き継手900、および枝管940それぞれの呼び径を統一してもよい。この場合には、外部から見たときの外観が統一されるので、美観に優れた排水構造とすることができる。また、直管部913の内径寸法も、ドレーン管Eの内径寸法及び枝管940の内径寸法に等しい。従って、ドレーン管E、フィン付き継手900、および枝管940それぞれの内部を通って鉛直方向に延在する流路は、前記フィン920が配置された部分を除き、鉛直方向の各位置において同一内径を有する円柱状の内部空間を形成している。すなわち、ドレーン管Eからフィン付き継手900を介して枝管940に向かう流路は、ドレーン管E及びフィン付き継手900間の接続箇所、および、フィン付き継手900及び枝管940間の接続箇所のいずれの位置においても、段差がなくスムーズに接続されている。
【0128】
フィン920は、フィン付き継手900の直管部913の内壁面913aに対して一体に形成された複数の羽根である。本実施形態の場合は、4枚のフィン920を、直管部913の中心軸線を中心とした周方向に等角度間隔(90°間隔)で配置している。なお、フィン920の枚数は4枚のみに限らず、2枚、3枚、あるいは5枚以上、さらには10枚以上としてもよい。各フィン920は、互いに同じ形状寸法を有し、また管軸方向に沿った位置も全て同じになっている。
すなわち、全てのフィン920は、縦断面視あるいは側面視で二等辺三角形でかつ、その底辺が直管部913の内壁面913aに対して一体をなすように接続されている。よって、各フィン920は、内壁面913aから管軸(中心軸線)に向かって突出するようにそれぞれ形成されている。これらフィン920を形成する二等辺三角形の等辺の一方である直線状の上辺921が流路内の上流側(鉛直方向の上側)に配置され、他方である直線状の下辺922が流路内の下流側(鉛直方向の下側)に配置されている。そして、これら上辺921及び下辺922間が、接続点923において接続されている。なお、他の形態として、例えば
図17を用いて後述するフィン920Eのような形状及び配置を採用してもよい。
【0129】
各フィン920は、それぞれ、管軸を間に挟んで反対側の周方向位置に対向するように他のフィン920が配置されている。本実施形態の場合は、上述の通り、管軸に沿ってみた場合、4枚のフィン920が等角度間隔で配置されているため、管軸を間に挟んで互いに対向する一対のフィン920が、二対、配置されることになる。
そして、これらフィン920の各上辺921は、流路内に向かってせり出した薄い傾斜面を形成している。これら傾斜面は、上辺921の最上端位置では内壁面913aに接続され、この最上端位置から下流側に向かうにしたがって内壁面913aからの突出高さが徐々に高くなり、そして接続点923の位置で内壁面913aからの突出高さが最も高くなる。このように配置された上辺921による薄い傾斜面は、その上流側から流れ落ちてくる雨水に面しているため、この雨水が傾斜面に当たることで流路抵抗を付与する。
【0130】
各フィン920の各下辺922も、流路内に向かってせり出した薄い傾斜面を形成している。これら傾斜面は、下辺922の最下端位置では内壁面913aに接続され、この最下端位置から上流側に向かうにしたがって内壁面913aからの突出高さが徐々に高くなり、そして接続点923の位置で内壁面913aからの突出高さが最も高くなる。つまり、各上辺921に形成された傾斜面と、各下辺922に形成された傾斜面は、互いに同じ形状寸法を有しており、その傾斜方向が、鉛直方向において接続点923を境として逆向きになっている。
【0131】
各フィン920の左側面924と右側面925は、それぞれ二等辺三角形の形状を有する平面であり、互いに平行をなしている。従って、各フィン920は、その上端位置から下端位置にかけての各位置で板厚が一定になっている。左側面924及び右側面925は流路内に入り込んでいるため、雨水が各フィン920を通過する際、左側面924及び右側面925に接することによる粘性抵抗を雨水に付与する。したがって、雨水に対し、上辺921によって形成された前記傾斜面が当たることによる抵抗と、左側面924及び右側面925との接触による粘性抵抗との両方を付与する。以下、これら2つの抵抗を纏めて、フィン920による流路抵抗と呼ぶ場合がある。
【0132】
全てのフィン920は、その上端が、ベースプレート10の開口から鉛直下方に向かって1000mm以内に位置するように、内壁面913aに固定されている。これにより、前記開口からドレーン管Eを介してフィン付き継手900内に流れ込んだ雨水は、前記開口から鉛直下方に向かって1000mm以内の位置にある各フィン920に当たることで流路抵抗を受け始めることになる。この流路抵抗によって、流れ込んだ雨水の流速を下げるブレーキ効果が生じる。その一方で、接続点923よりも下流位置では下辺922による傾斜面の向きが上辺921とは逆向きとなっており、内壁面913aからの突出高さが徐々に小さくなっているので、雨水に対して過度な流路抵抗を与え続けないようになっている。加えて、渦を巻きながら通過しようとする雨水を、各フィン920の左側面924及び右側面925によって整流させることができる。したがって、各フィン920によれば、雨水に対して適切な流路抵抗を付与して流速を下げるとともに、雨水の整流も同時に行えるものとしている。
なお、上記1000mmは例示であり、必要に応じて1000mm超としてもよい。
【0133】
上記構成によれば、各フィン920の上辺921とベースプレート10の開口との間の流路内に、流速を下げられた雨水が一時的に溜まるようになるので、ルーフドレーン100から流れ込む雨水に空気が入り込みにくくなり、サイフォン現象を確実に誘発させることが可能である。しかも、各フィン920を通過した後の雨水は、左側面924及び右側面925によって整流済みであるため、渦を巻くことなくスムーズに排水されていく。
【0134】
なお、フィン付き継手900の代わりに、
図30に示す縮流継手950を採用してもよい。この場合も、ドレーン管Eから枝管940に至る雨水に対して適切な流路抵抗を付与できるので、流路内に、流速を下げられた雨水が一時的に溜まるようになる。よって、ルーフドレーン100から流れ込む雨水に空気が入り込みにくくなり、サイフォン現象を確実に誘発させることが可能である。
【0135】
また、
図21に示したフィン付き継手750の代わりに、
図31に示すフィン付き継手1000を採用してもよい。
本変形例は、管軸Yに沿った上流側から下流側に向かって先細りとなる逆円錐台形状の内管1010を加えた構成となっている。
内管1010は、下方に向かって先細りとなる内壁面1011及び外壁面1012を有する。内管1010の上端には円形入口開口が形成され、内管1010の下端には上端よりも小径の円形出口開口が形成されている。内管1010の外壁面1012は、一対のフィン1013により、内壁面1014に対して離間した状態で固定されている。これにより、フィン付き継手1000内には、内壁面1014と外壁面1012との間に形成された第1流路と、内壁面1011内に形成された第2流路との2つが形成されている。よって、このフィン付き継手1000内に流れ込んだ雨水は、前記第1流路を流れるものと、前記第2流路を流れるものとの2つに分岐して流れる。これらのうち、前記第1流路を流れる雨水は、流路面積が縮小することによる流路抵抗を受けて減速する。また、前記第2流路を流れる雨水は、一対のフィン1013に当たることで流路抵抗を受けて減速する。
【0136】
本変形例の場合も、全てのフィン1013は、その上端が、ベースプレート10の開口から鉛直下方に向かって1000mm以内に位置するように、フィン付き継手1000内に固定されている。同様に、内管1010の上端も、ベースプレート10の開口から鉛直下方に向かって1000mm以内に位置するように、フィン付き継手1000内に固定されている。
これにより、ベースプレート10の開口からドレーン管Eを介してフィン付き継手1000内に流れ込んだ雨水は、ベースプレート10の開口から鉛直下方に向かって1000mm以内の位置にある各フィン1013及び内管1010を通過する際に上記の通り流路抵抗を受けて減速する。
また、渦を巻きながら通過しようとする雨水を、各フィン1013によって整流させることもできる。したがって、本変形例のフィン付き継手1000によれば、雨水に対して適切な流路抵抗を付与して流速を下げるとともに、雨水の整流も同時に行える。
【0137】
したがって、本変形例の構成によれば、前記第1流路及び前記第2流路とベースプレート10の開口との間の流路内に、流速を下げられた雨水が一時的に溜まるようになるので、ルーフドレーン100からベースプレート10の開口内に流れ込む雨水に空気が入り込みにくくなり、サイフォン現象を確実に誘発させることが可能である。
なお、上記1000mmは例示であり、必要に応じて1000mm超としてもよい。
【0138】
なお、上記各実施形態及び各種変形例に示した配管(ドレーン管E、竪管、横菅、主管、枝管等)は通常の鋼管である場合を例示したが、これのみに限らず、
図32に示す耐火二層管を採用してもよい。この
図32は、耐火二層管を管軸に垂直な断面で見た断面図である。
この
図32に示す耐火二層管1100は、硬質塩化ビニールなどの合成樹脂からなる内管1101と、その外周を覆う耐火性の繊維モルタル層1102との二層構成を有する。繊維モルタル層1102は、一般的には、金型内に内管1101を設置した後、前記金型と内管1101との間に繊維モルタルを注入することにより形成される。
前記金型から取り出した耐火二層管1100は、繊維モルタル層1102を養生して乾燥硬化させた後、製品として提供されるが、配管工事において無理な力が加わったときに繊維モルタル層1102が破損することを防止するために、内管1101の外周面と繊維モルタル層1102との間に、内管1101の変形を許容する比較的大きな隙間1103を形成している。この隙間1103を簡単に形成するため図画用紙や白板紙などの吸水性の良好な紙葉1104を内管1101と繊維モルタル層1102との間に介在させている。
【符号の説明】
【0139】
10 ベースプレート
11c 連結管
12A 折り返し部
13、13A バッフル固定部材
20 クランプリング
30 バッフル
100 ルーフドレーン
200 ルーフドレーン施工治具
210 ガイドパイプ
220 受台
230 ボルト
231 ナット
240 上蓋
750,900,1000 フィン付き継手(継手)
760,910 継手本体
770,920 フィン
800 Yチーズ
852 枝管
853 主管
950 縮流継手(継手)
DP デッキプレート
E ドレーン管(排水管)