(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005048
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】シールド掘進機
(51)【国際特許分類】
E21D 11/00 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
E21D11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105030
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶川 初太郎
(72)【発明者】
【氏名】江嵜 智和
(72)【発明者】
【氏名】福田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】福田 勝仁
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA01
2D155BB03
2D155JA06
2D155LA02
(57)【要約】
【課題】シールド掘進機にバッキング現象が生じても、テールシールの保護板が破損することを防止する。
【解決手段】シールド掘進機1は、土砂が滞留するチャンバ2aを形成する隔壁2bを有する筒状のスキンプレート2と、スキンプレート2の後方の内周面に設けられ、スキンプレート2の内側に構築されたセグメント4とスキンプレート2との間をシールし、スキンプレート2の周方向に沿って並ぶ複数のテールシール10と、を備える。テールシール10は、スキンプレート2の内周面に基端11aが支持され、先端11bがスキンプレートの後方に向かって延びるブラシ11と、スキンプレート2の内周面に基端が支持され、ブラシ11の前方側においてブラシ11に沿って延びる第1保護板31と、を有する。第1保護板31の先端近傍には、セグメント4に接触する曲面部31dが設けられる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土砂が滞留するチャンバを形成する隔壁を有する筒状のスキンプレートと、
前記スキンプレートの後方の内周面に設けられ、前記スキンプレートの内側に構築されたセグメントと前記スキンプレートとの間をシールし、前記スキンプレートの周方向に沿って並ぶ複数のテールシールと、を備え、
前記テールシールは、
前記スキンプレートの内周面に基端が支持され、先端が前記スキンプレートの後方に向かって延びるブラシと、
前記スキンプレートの内周面に基端が支持され、前記ブラシの前方側において前記ブラシに沿って延びる第1保護板と、を有し、
前記第1保護板の先端近傍には、前記セグメントに接触する曲面部が設けられた、シールド掘進機。
【請求項2】
前記曲面部は、前記第1保護板の先端を折り曲げることによって形成される、請求項1に記載されたシールド掘進機。
【請求項3】
前記曲面部は、前記第1保護板に設けられた突起部によって形成される、請求項1に記載されたシールド掘進機。
【請求項4】
前記スキンプレートは、
周方向において直線状に延びる直線部と、
周方向において円弧状に延びる曲線部と、を有し、
前記テールシールは、
前記スキンプレートの内周面に基端が支持され、前記ブラシの後方側において前記ブラシに沿って延びる第2保護板をさらに有し、
前記スキンプレートの周方向に隣り合う前記第2保護板は、前記スキンプレートの周方向にオーバーラップして配置され、
前記曲線部に前記スキンプレートの周方向に隣り合うように配置された前記第2保護板のオーバーラップ量は、前記直線部に前記スキンプレートの周方向に隣り合うように配置された前記第2保護板のオーバーラップ量より小さい、請求項1から3のいずれか1つに記載されたシールド掘進機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、テールリングの内側に弾性ワイヤーを束ねたブラシが、内側保護板と外側保護板の間に挟まれた状態で、テールリングの内側に取り付けられたシールド掘進機が開示されている。
【0003】
そして、特許文献1に開示されたシールド掘進機では、泥土水や裏込注入剤などの侵入を防止するために、前後方向に位置する2つのブラシの間に設けられた充填材室に、充填材を充填して止水を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたシールド掘進機では、充填材室に充填剤が充填されることで、充填材室内の圧力が上昇するため、内側保護板がセグメントに押し付けられた状態になっている。
【0006】
特許文献1に開示されたシールド掘進機を用いたシールド工事では、セグメントを組み立てる際にシールドジャッキを収縮する。このとき、シールド掘進機が若干後方に移動するバッキング現象が生じることがある。このバッキング現象が発生すると、セグメントに押し付けられた内側保護板の先端部分がセグメントに引っかかり、内側保護板が破損するおそれがある。
【0007】
本発明は、シールド掘進機にバッキング現象が生じても、テールシールの保護板が破損することを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、土砂が滞留するチャンバを形成する隔壁を有する筒状のスキンプレートと、スキンプレートの後方の内周面に設けられ、スキンプレートの内側に構築されたセグメントとスキンプレートとの間をシールし、スキンプレートの周方向に沿って並ぶ複数のテールシールと、を備え、テールシールは、スキンプレートの内周面に基端が支持され、先端がスキンプレートの後方に向かって延びるブラシと、スキンプレートの内周面に基端が支持され、ブラシの前方側においてブラシに沿って延びる第1保護板と、を有し、第1保護板の先端近傍には、セグメントに接触する曲面部が設けられたシールド掘進機である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シールド掘進機にバッキング現象が生じても、テールシールの保護板が破損することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は、本発明の実施形態に係るシールド掘進機によるシールド工法を説明するための断面図であり、(b)は、
図1(a)におけるIB-IB線に沿う断面図である。
【
図2】
図1(b)におけるII-II線に沿う拡大断面図である。
【
図3】(a)は、
図2に示されるシールユニットを単体でトンネル構造体から枠体に向かって(
図2に示す矢視IIIAの方向に)見た図であり、(b)は、
図2に示されるシールユニットを単体で枠体からトンネル構造体に向かって(
図2に示す矢視IIIBの方向に)見た図である。
【
図4】
図3(a)に示すIV-IV線に沿う断面図である。
【
図5】
図2に示すV-V線に沿う断面図であり、直線部Lにおいて隣り合って配置された2つのテールシールを示している。
【
図6】
図3(a)に示すVI-VI線に沿う断面図である。
【
図7】
図2に示すVII-VII線に沿う断面図であり、隣り合って配置された2つのテールシールを示している。
【
図8】
図1(b)における曲線部Cに用いられるテールシールの断面図である。
【
図9】
図1(b)における曲線部Cにおいて隣り合って配置された2つのテールシールの断面を示す図である。
【
図10】第1保護板の先端近傍にセグメントに接触した状態を示す図である。
【
図11】第1保護板の曲面部に係る変形例を示す図である。
【
図12】(a)は、スキンプレートのシール機構近傍における断面図であり、(b)は、
図1(a)における曲線部Cを拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係るシールド掘進機1について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1(a)は、実施形態に係るシールド掘進機1によるシールド工法を説明するための断面図である。
図1(b)は、
図1(a)におけるIB-IB線に沿う断面図である。
【0013】
本実施形態のシールド掘進機1は、例えば、シールド工法によってシールドトンネルTを構築するために用いられる。
図1(a)に示すように、シールド掘進機1は、地山の内壁Wを支持可能な筒状のスキンプレート(枠体)2と、スキンプレート2に回転可能に装着されたカッター3と、を備える。スキンプレート2の内部では、シールド掘進機1の前進に伴ってセグメント(トンネル構造体)4が順次構築される。なお、以下では、スキンプレート2の軸方向を単に「軸方向」、スキンプレート2の周方向を単に「周方向」という。また、シールド掘進機1の進行方向前側を単に「前方」といい、シールド掘進機1の進行方向後側を単に「後方」という。
【0014】
本実施形態のスキンプレート2は、
図1(b)に示すように、周方向において直線状に延びる直線部Lと、周方向において円弧状に延びる曲線部Cと、を有する略矩形形状に形成される。
図1(a)に示すように、スキンプレート2内の前方部分には、カッター3と隔壁2bとによって区画され、土砂が滞留するチャンバ2aが形成される。なお、
図1(b)に示す実施形態では、スキンプレート2及びセグメント4の断面は、略矩形状であるが、シールドトンネルT(スキンプレート2及びセグメント4)の断面は略円形状であってもよい。
【0015】
図1(a)に示すように、スキンプレート2の隔壁2bより後方の内周面には、ジャッキ5が固定される。ジャッキ5は、例えば、油圧によって駆動される。ジャッキ5に油圧が供給されると、ジャッキ5のロッド(図示せず)がセグメント4の端面を押圧する。これにより、ジャッキ5がセグメント4から反力を得ることで、スキンプレート2はシールドトンネルTの軸方向前方に推進し、カッター3が地山に軸方向に押付けられる。スキンプレート2が推進されてセグメント4がスキンプレート2から出ると、セグメント4の外周面と地山の内壁Wとの間に裏込め材(図示省略)が充填される。
【0016】
図1(a)に示すように、カッター3は、隔壁2bに取り付けられたモータ6の駆動により、スキンプレート2に対して回転する。カッター3には、シールドトンネルTの前方に突出するカッタビット3aが複数設けられている。カッター3が地山に押付けられた状態で回転すると、地山がカッタビット3aにより掘削される。地山の掘削により生じる泥土は、スキンプレート2内に形成されたチャンバ2aに取り込まれた後、スクリュコンベア7を用いて排出される。
【0017】
図1(a)に示すように、シールド工法では、スキンプレート2の内周面がセグメント4の外周面と間隔を空けて対向する。スキンプレート2の内周面とセグメント4の外周面との間がシールされていないと、地山の地下水がスキンプレート2の内部に流入するおそれがある。このため、シールド掘進機1では、スキンプレート2の後方の内周面に、スキンプレート2の内側に構築されたセグメント4とスキンプレート2との間をシールするシール機構Sが設けられている。
【0018】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、シール機構Sは、スキンプレート2の内周面に沿って円環状に設けられる。また、
図1(a)に示すように、シール機構Sは、スキンプレート2の内周面に軸方向に互いに間隔を空けて複数設けられる(
図1(a)では3つ)。軸方向に間隔を空けて配置される2つのシール機構Sによって、スキンプレート2の内周面とセグメント4の外周面との間にシール室8aが形成される。シール室8aには、グリース8bが充填される。
【0019】
図1(b)に示すように、シール機構Sは、スキンプレート2の内周に周方向に沿って並ぶ複数のテールシール10によって形成される。
【0020】
次に、
図2-
図4、
図6、及び
図8を参照しながら、本実施形態に係るテールシール10の具体的な構造について説明する。
図2は、
図1(b)におけるII-II線に沿う拡大断面図である。
図3(a)は、
図2に示されるテールシール10を単体でセグメント4からスキンプレート2に向かって(
図2に示す矢視IIIAの方向に)見た図である。
図3(b)は、
図2に示されるテールシール10を単体でスキンプレート2からセグメント4に向かって(
図2に示す矢視IIIBの方向に)見た図である。
図4は、
図3(a)に示すIV-IV線に沿う断面図である。
図6は、
図3(a)に示すVI-VI線に沿う断面図である。なお、
図3、
図4、
図6に示す構成は、
図1(b)における直線部Lに用いられるテールシール10を示している。また、
図8に示す構成は、
図1(b)における曲線部Cに用いられるテールシール10を示しており、
図4に対応する断面である。
【0021】
図2に示すように、テールシール10は、ブラシ11と、ブラシ11に重ねて設けられる第1及び第2遮蔽シート21,22と、第1及び第2遮蔽シート21,22に重ねてそれぞれ設けられる第1及び第2保護板31,32と、第1及び第2保護板31,32を支持する第1及び第2支持プレート41,42と、ブラシ11、第1及び第2遮蔽シート21,22、並びに第1及び第2保護板31,32を束ね連結する連結部材50と、を備える。
【0022】
ブラシ11は、束ねられた複数の金属製、ゴム製又は樹脂製の線材(ワイヤ)をくの字状に曲げて形成される。本実施形態では、線材は金属製である。ブラシ11は、基端11aがスキンプレート2の内周面に支持される。線材を束ねる結束バンド(不図示)は、ブラシ11の基端11aと曲部11cとの間に配置され、ブラシ11は、結束バンドから先端11bに向かうにつれ広がっている。テールシール10がスキンプレート2の内周に配置された状態では、ブラシ11における基端11aと曲部11cとの間の部分がシールドトンネルTの軸方向に略平行に延び、曲部11cから先端11bの部分がスキンプレート2の後方に、かつ、セグメント4に向かって斜めに延びる。ブラシ11の先端11bは、セグメント4の外周面に当接する。ブラシ11は、先端11bがセグメント4の外周面に当接することにより、スキンプレート2とセグメント4との間の地下水及びグリース8b(
図1(a)参照)の軸方向における流れを遮る。なお、ブラシ11のシール性を高めるために、ブラシ11に発泡ウレタンやシリコン等の止水材が吹付けられていてもよい。
【0023】
図2に示すように、第1及び第2遮蔽シート21,22は、ブラシ11と同様に、くの字状に曲げられた金網によって構成される。第1及び第2遮蔽シート21,22の一部は、ブラシ11に沿って軸方向に対して斜めに延びており、ブラシ11と同様に、スキンプレート2とセグメント4との間の地下水及びグリース8b(
図1(a)参照)の軸方向における流れを遮る。第1及び第2遮蔽シート21,22の網目の大きさは、同じであっても良いし、異なっていてもよい。また、第1及び第2遮蔽シート21,22は、水やグリースを完全に遮断する必要はない。第1及び第2遮蔽シート21,22は、例えば、グリースが浸潤した金網が好ましい。なお、第1及び第2遮蔽シート21,22は、金網に限られず、金属製シート、塩化ビニルシート又はポリカーボネートシートであってもよい。
【0024】
図2などに示すように、第1及び第2遮蔽シート21,22は、これらの間にブラシ11を挟むように設けられる。具体的には、第1遮蔽シート21は、くの字状に曲げられたブラシ11の前方側かつ内側に配置されており、第2遮蔽シート22は、ブラシ11の後方側かつ外側に配置される。
【0025】
図2に示すように、第1及び第2保護板31,32は、ブラシ11と同様にくの字状に曲げられた鋼製のばね板である。第1及び第2保護板31,32は、スキンプレート2の内周面に基端が支持される。第1及び第2保護板31,32は、それぞれブラシ11及び第1及び第2遮蔽シート21,22に沿って延びるように設けられ、第1及び第2遮蔽シート21,22をブラシ11に向けて付勢する。これにより、第1及び第2遮蔽シート21,22は、第1及び第2保護板31,32によりブラシ11にそれぞれ押付けられる。この結果、第1及び第2遮蔽シート21,22がブラシ11から離間することが抑制されるとともに、第1及び第2保護板31,32による付勢力によって、ブラシ11の線材間の隙間が減少するので、テールシール10のシール性が向上する。
【0026】
図2などに示すように、第1及び第2支持プレート41,42は、互いに間隔を空けて設けられる。第1及び第2支持プレート41,42の間には、第1保護板31、第1遮蔽シート21、ブラシ11、第2遮蔽シート22及び第2保護板32が積層された状態で設けられる。第2支持プレート42は、スキンプレート2の内周面に溶接により接合される。符号43は、第2支持プレート42をスキンプレート2の内周面に溶接することによって形成される溶接ビードを示している。また、複数のテールシール10は、周方向に沿って並べて配置される際には、隣り合うテールシール10の第1支持プレート41どうしが溶接により接合される。
【0027】
連結部材50は、第1及び第2支持プレート41,42の間に渡って設けられる。第1支持プレート41、第1保護板31、第1遮蔽シート21、ブラシ11、第2遮蔽シート22、第2保護板32、及び第2支持プレート42を積層した状態で、連結部材50の両端をかしめることで、これらが一体化される。なお、以下では、第1保護板31、第1遮蔽シート21、ブラシ11、第2遮蔽シート22及び第2保護板32のスキンプレート2の内周面に沿って軸方向に延びる部分(スキンプレート2に平行な部分)を「固定領域R」といい、第1保護板31、第1遮蔽シート21、ブラシ11、第2遮蔽シート22及び第2保護板32の固定領域Rより先端11b側の部分(傾斜部分)を「変形領域F」という(
図2、
図3(a)、及び
図3(b)参照)。
【0028】
図3(a)及び
図4に示すように、固定領域Rにおける第1保護板31の周方向の寸法は、固定領域Rにおけるブラシ11の周方向の寸法と略等しくなるように形成される。
図3(a)及び
図4に示すように、第1保護板31は、ブラシ11に対して周方向にずれて配置されており、周方向において一端31a側がブラシ11の外側に位置し他端31b側がブラシ11の内側に位置している。
【0029】
図3(a)及び
図4に示すように、固定領域Rにおける第1遮蔽シート21の周方向の寸法は、固定領域Rにおけるブラシ11及び第1保護板31の周方向の寸法よりも大きくなるように形成される。第1遮蔽シート21の一方側は、ブラシ11の端部から周方向外側に延出し、他方側は第1保護板31から周方向外側に延出する。具体的には、
図4などに示すように、第1遮蔽シート21は、ブラシ11と第1保護板31との間に位置する中間部21cと、ブラシ11の周方向における端部から第1保護板31に沿って一端31a側へ延出する第1延出部21aと、第1保護板31の他端31b側からブラシ11に沿って延出する第2延出部21bと、を有している。
【0030】
本実施形態では、第2延出部21bの端部は、ブラシ11の他方側の端部と一致しているが、必ずしも周方向に端部が一致する必要はなく、第2延出部21bは、ブラシ11の端部より内側に位置してもよく、あるいは、第2延出部21bの端部は、ブラシ11の端部から外側に位置して(延出して)もよい。
【0031】
図3(a)及び
図4に示すように、第1支持プレート41の周方向の寸法は、固定領域Rにおける第1保護板31の周方向の寸法と略等しくなるように形成される。第1支持プレート41は、第1保護板31とともにブラシ11に対して同じ方向にずれて配置されている。
【0032】
図3(b)及び
図4に示すように、固定領域Rにおける第2保護板32の周方向の寸法は、固定領域Rにおけるブラシ11の周方向の寸法と略等しくなるように形成される。
図3(b)及び
図4に示すように、第2保護板32は、第1保護板31とは周方向の反対方向にブラシ11に対してずれて配置されており、周方向において一端32a側がブラシ11の外側に位置し他端32b側がブラシ11の内側に位置している。また、
図3(b)に示すように、第2保護板32の変形領域Fにおける周方向の寸法は、第2保護板32の固定領域Rにおける周方向の寸法よりも大きくなるように形成される。
【0033】
図3(b)及び
図4に示すように、第2遮蔽シート22の固定領域Rにおける周方向の寸法は、ブラシ11及び第2保護板32の固定領域Rにおける周方向の寸法よりも大きくなるように形成される。第2遮蔽シート22の一方側は、ブラシ11の端部から周方向外側に延出し、他方側は第2保護板32から周方向外側に延出する。具体的には、
図4などに示すように、第2遮蔽シート22は、ブラシ11と第2保護板32との間に位置する中間部22cと、ブラシ11の周方向の端部から第2保護板32に沿って一端32a側へ延出する第1延出部22aと、第2保護板32の他端32b側からブラシ11に沿って延出する第2延出部22bと、を有している。
【0034】
本実施形態では、第2延出部22bの端部は、ブラシ11の他方側の端部と一致しているが、必ずしも周方向に端部が一致する必要はなく、第2延出部21bはブラシ11の端部より内側に位置してもよく、あるいは、第2延出部21bの端部はブラシ11の端部から外側に位置して(延出して)もよい。
【0035】
図3(b)及び
図4に示すように、固定領域Rにおける第2支持プレート42の周方向の寸法は、固定領域Rにおける第2保護板32の周方向の寸法と略等しくなるように形成される。第2支持プレート42は、第2保護板32とともにブラシ11に対して同じ方向にずれて配置されている。
【0036】
テールシール10の変形領域Fでは、ブラシ11を構成する複数の線材が束ねられていない。そのため、テールシール10が周方向に沿って並べて配置されていない状態では、
図3(a)や
図3(b)に示すように、ブラシ11の変形領域Fにおける部位は、周方向に広がっている。このため、
図3(a)や
図6に示すように、変形領域Fにおける第1保護板31の周方向の寸法は、見かけ上、変形領域Fにおけるブラシ11の周方向の寸法よりも小さくなっている。変形領域Fでは、第1保護板31は、一端31a側及び他端31bの両方がブラシ11の周方向内側に位置するように配置されている。
図3(a)や
図6に示すように、変形領域Fでは、第1遮蔽シート21は、第1保護板31の他端31b側からブラシ11に沿って周方向外側に延出しているが、第1保護板31の一端31a側からは第1保護板31に沿って延出してはいない。
【0037】
なお、
図8には、曲線部Cに配置されるテールシール10の断面図を示している。
図8に示すように、曲線部Cに配置されるテールシール10は、ブラシ11、第1及び第2遮蔽シート21,22、第1及び第2保護板31,32、並びに第1及び第2支持プレート41,42が、スキンプレート2の内周面に沿って湾曲して形成される以外は、直線部Lに配置されるテールシール10と同様の構成であるので、具体的な説明は省略する。
【0038】
続いて、
図5、
図7及び
図9などを参照して、複数のテールシール10の配置方法について説明する。
図5は、
図2に示すV-V線に沿う断面図であり、直線部Lにおいて隣り合って配置された2つのテールシール10を示している。
図7は、
図2に示すVII-VII線に沿う断面図であり、隣り合って配置された2つのテールシール10を示している。
図9は、曲線部Cにおいて隣り合って配置された2つのテールシール10を示しており、
図5の断面に対応する図である。なお、以下では、
図5、
図7及び
図9における2つのテールシール10のうち、紙面における周方向右側のテールシール10を「右側テールシール10a」とも称し、紙面における周方向左側のテールシール10を「左側テールシール10b」とも称する。
【0039】
上述のように、シール機構Sは、複数のテールシール10が周方向に沿って並べて配置されることで構成される(
図1(b)参照)。
図5、
図7、及び
図9に示すように、右側テールシール10aと左側テールシール10bは、右側テールシール10aにおける第1遮蔽シート21の第1延出部21aと、左側テールシール10bにおける第1遮蔽シート21の第2延出部21bと、が重なり合うようにして配置される。重なり合った第1延出部21a及び第2延出部21bは、右側テールシール10aの第1保護板31により、左側テールシール10bのブラシ11に向かって付勢される。そのため、右側及び左側テールシール10a,10bを周方向に並べて配置するだけで、右側テールシール10aにおける第1遮蔽シート21の第1延出部21aと、左側テールシール10bにおける第1遮蔽シート21の第2延出部21bとが、右側テールシール10aの第1保護板31により互いに密着する。これにより、右側及び左側テールシール10a,10bの間にわたって別のテールシール10を重ねることなく、右側及び左側テールシール10a,10bの間をシールすることができる。
【0040】
なお、左側テールシール10bにおけるブラシ11の周方向右側端部は、右側テールシール10aにおける第1遮蔽シート21の第1延出部21aが左側テールシール10bにおける第1遮蔽シート21の第2延出部21bに重なる分、圧縮されることになるが、実際には、第1遮蔽シート21の厚さは、ブラシ11の厚さの1/10以下であり、ブラシ11の圧縮はほとんど生じない。
【0041】
また、
図5及び
図9に示すように、右側テールシール10aと左側テールシール10bは、左側テールシール10bにおける第2遮蔽シート22の第1延出部22aと、右側テールシール10aにおける第2遮蔽シート22の第2延出部22bと、が重なり合うようにして配置される。重なり合った第1延出部22a及び第2延出部22bは、左側テールシール10bの第2保護板32により、右側テールシール10aのブラシ11に向かって付勢される。そのため、右側及び左側テールシール10a,10bを周方向に並べて配置するだけで、左側テールシール10bにおける第2遮蔽シート22の第1延出部22aと、右側テールシール10aにおける第2遮蔽シート22の第2延出部22bとが、左側テールシール10bの第2保護板32により互いに密着する。これにより、シール機構Sのシール性をより向上させることができる。
【0042】
なお、右側テールシール10aにおけるブラシ11の周方向左側端部は、左側テールシール10bにおけるブラシ11の周方向右側端部と同様に、圧縮されることになるが、実際には、第2遮蔽シート22の厚さはブラシ11の厚さの1/10以下であり、ブラシ11の圧縮はほとんど生じない。
【0043】
上述のように、変形領域Fにおいては、ブラシ11を構成する複数の線材が束ねられていない。そのため、テールシール10が周方向に沿って並べて配置されていない状態では、
図3(a)や
図3(b)に示すように、ブラシ11の変形領域Fにおける部位は、周方向に広がっている。これに対し、テールシール10が周方向に沿って並べて配置された状態では、隣り合うテールシール10のブラシ11どうしが押し合い、ブラシ11は、
図6の破線で示される位置まで圧縮される。その結果、
図7に示すように、右側テールシール10aの第1保護板31は、周方向において一端31a側がブラシ11の外側に位置(外側に延出)することになる。また、第1遮蔽シート21は、周方向においてブラシ11から第1保護板31の一端31a側へと第1保護板31に沿って延出する第1延出部21aを形成することになる。一方、第1保護板31は、周方向において、他端31bは、ブラシ11の内側に位置したままであり、また、第1遮蔽シート21には、周方向において第1保護板31の他端31b側からブラシ11に沿って延出する第2延出部21bが形成される。なお、第1遮蔽シート21の第2延出部21bの端面は、収縮したブラシ11の他端側の端面と略同一になるが、ブラシ11に沿って外側に位置(外側に延出)していてもよい。
【0044】
図7に示すように、テールシール10が周方向に沿って並べて配置された状態では、変形領域Fにおいても、右側テールシール10aにおける第1遮蔽シート21の第1延出部21aと、左側テールシール10bにおける第1遮蔽シート21の第2延出部21bと、が重なり合うように配置される。重なり合った第1延出部21a及び第2延出部21bは、右側テールシール10aの第1保護板31により、左側テールシール10bのブラシ11に向かって付勢される。そのため、変形領域Fにおいても、右側及び左側テールシール10a,10bを周方向に並べて配置するだけで、右側テールシール10aにおける第1遮蔽シート21の第1延出部21aと、左側テールシール10bにおける第1遮蔽シート21の第2延出部21bとが、右側テールシール10aの第1保護板31により互いに密着する。つまり、変形領域Fにおいてシール性を損なうことがない。
【0045】
なお、本実施形態では、
図3(b)に示すように、変形領域Fにおける第2遮蔽シート22の周方向の寸法は、固定領域Rにおける第2遮蔽シート22の周方向の寸法よりも大きい。そのため、
図7に示すように、テールシール10が周方向に沿って並べて配置された状態では、右側テールシール10aの第2遮蔽シート22と左側テールシール10bの第2遮蔽シート22とがより広い範囲で重なる。これにより、変形領域Fにおいて、右側及び左側テールシール10a,10bの第2遮蔽シート22どうしの間のシール性をより向上させることができ、シール機構Sのシール性をより向上させることができる。
【0046】
また、
図7に示すように、変形領域Fにおいては、テールシール10が周方向に沿って並べて配置された状態では、右側テールシール10aの第2保護板32と左側テールシール10bの第2保護板32が互いに重なる(オーバーラップする)。そのため、重なり合った第2遮蔽シート22は、右側及び左側テールシール10a,10bの第2保護板32により付勢され、より強固に互いに密着する。したがって、右側及び左側テールシール10a,10bの第2遮蔽シート22どうしの間のシール性をより向上させることができ、シール機構Sのシール性をより向上させることができる。なお、曲線部Cに隣り合うように配置された第2保護板32のオーバーラップ量は、直線部Lに隣り合うように配置された第2保護板32のオーバーラップ量より小さい。これは、曲線部Cに配置されるテールシール10は、隣り合うテールシール10をスキンプレート2に沿って曲げて配置する必要があるためである。
【0047】
さらに、
図12(a)及び
図12(b)に示すように、曲線部C(
図12(a)参照)に配置された隣り合うテールシール10の第1保護板31の先端側どうしは、互いに重なる(オーバーラップする)。本実施形態の第1保護板31は、矩形状に形成されているため、オーバーラップ量は、第1保護板31の先端側に向かうにつれ、大きくなる。
【0048】
ところで、このように構成されたシールド掘進機1では、スキンプレート2とセグメント4との間の隙間が変化することによって、
図10に示すようにテールシール10の第1保護板31がセグメント4に接触することがある。
【0049】
シールド掘進機1を用いたシールド工事では、セグメント4を組み立てる際にジャッキ5を収縮することになる。このとき、ジャッキ5がセグメント4の端面を押圧することによって得られていた反力が失われるため、シールド掘進機1が若干後方に移動するバッキング現象が生じることがある。このようなバッキング現象が、テールシール10の第1保護板31がセグメント4に接触した状態で発生すると、第1保護板31の先端部分がセグメント4に引っかかり、第1保護板31が破損するおそれがある。
【0050】
そこで、本実施形態のシールド掘進機1では、第1保護板31の先端近傍にセグメント4に接触する曲面部31dを設けている(
図2、
図10など参照)。曲面部31dは、第1保護板31の先端を折り曲げることによって形成される。より具体的には、曲面部31dは、第1保護板31がセグメント4に接触したときに、第1保護板31の先端部分がセグメント4から離間する方向に湾曲して形成される。曲面部31dは、第1保護板31の先端の周方向全域にわたって設けられていてもよいし、第1保護板31の先端の周方向の一部に設けられていてもよい。また、曲面部31d近傍に、例えば、表面処理を施して摩擦抵抗を低下させるようにしてもよい。
【0051】
このような曲面部31dを設けることにより、テールシール10の第1保護板31がセグメント4に接触した状態でバッキング現象が発生した場合に、第1保護板31の先端部分が引っかかることを防止できる。これにより、第1保護板31が破損することを防止できる。
【0052】
また、曲面部31dを、例えば、
図11に示すように、第1保護板31の先端に曲面を有する突起部60を設けることによって構成してもよい。突起部60は、例えば、滑り特性に優れた樹脂材料(ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリアセタールなど)によって、第1保護板31の先端部分を覆う断面円形形状に形成される。
【0053】
このような突起部60を設けた構成でも、テールシール10の第1保護板31がセグメント4に接触した状態でバッキング現象が発生した場合に、第1保護板31の先端部分が引っかかることを防止できる。これにより、第1保護板31が破損することを防止できる。
【0054】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0055】
本実施形態のシールド掘進機1では、第1保護板31の先端近傍にセグメント4に接触する曲面部31dが設けられる。これにより、テールシール10の第1保護板31がセグメント4に接触した状態でバッキング現象が発生した場合に、第1保護板31の先端部分がセグメント4に引っかかることを防止できる。よって、第1保護板31が破損することを防止でき、テールシール10(シール機構S)のシール性が損なわれることを防止できる。
【0056】
また、曲面部31dを第1保護板31の先端を折り曲げることによって形成した場合には、新たに部品などを追加する必要がなく、また、先端を折り曲げることによって形成できるので、コストの上昇を抑制できる。
【0057】
曲面部31dを、突起部60によって構成した場合には、突起部60を第1保護板31とは異なる滑り特性に優れたで形成することができるので、テールシール10の第1保護板31がセグメント4に接触した状態でバッキング現象が発生した場合に、より確実に第1保護板31の先端部分がセグメント4に引っかかることを防止できる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0059】
テールシール10は、第1及び第2遮蔽シート21,22のいずれか一方のみを備える形態であってもよい。さらに、ブラシ11によってシール性が確保できれば、第1及び第2遮蔽シート21,22を備えていなくてもよい。また、第2保護板32は、必ずしも設ける必要はない。
【符号の説明】
【0060】
1・・・シールド掘進機
2・・・スキンプレート
2a・・・チャンバ
2b・・・隔壁
3・・・カッター
4・・・セグメント
5・・・ジャッキ
10・・・テールシール
11・・・ブラシ
11a・・・基端
11b・・・先端
21・・・第1遮蔽シート
22・・・第2遮蔽シート
31・・・第1保護板
31a・・・一端
31b・・・他端
31d・・・曲面部
32・・・第2保護板
41・・・第1支持プレート
42・・・第2支持プレート
50・・・連結部材
60・・・突起部(曲面部)
C・・・曲線部
L・・・直線部
S・・・シール機構
T・・・シールドトンネル