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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005050
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】防護材料および防護衣
(51)【国際特許分類】
   B32B 25/10 20060101AFI20240110BHJP
   A41D 13/005 20060101ALI20240110BHJP
   B32B 15/20 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
B32B25/10
A41D13/005
B32B15/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105035
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517413605
【氏名又は名称】ニッタ化工品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 悠太
(72)【発明者】
【氏名】吉田 知弘
(72)【発明者】
【氏名】羽賀 道知
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
4F100
【Fターム(参考)】
3B011AA02
3B011AB01
3B011AC01
3B211AA02
3B211AB01
3B211AC01
4F100AB10C
4F100AN01A
4F100AN01D
4F100AN02A
4F100AN02D
4F100AT00
4F100BA04
4F100CA03A
4F100CA03D
4F100DG11B
4F100EC032
4F100EC03A
4F100EC03B
4F100EC03C
4F100EH662
4F100EH66C
4F100EJ062
4F100EJ06B
4F100EJ172
4F100EJ17B
4F100GB72
4F100GB87
4F100GB90
4F100JD11
4F100JJ02
(57)【要約】
【課題】日射による輻射熱の影響を抑制することで、防護衣の内部温度の上昇を抑制することが可能な、防護材料および防護衣の提供を目的とする。
【解決手段】この防護材料1Cは、内側と外側とを備える防護材料であって、第1ゴム層11と、金属層12と、補強布13と、を備え、最も外側に第1ゴム層11が配置され、第1ゴム層14の内側に補強布12および金属層13が配置されている。この構成により、輻射熱の内側への伝達が金属層12によって遮られる。その結果、防護材料1Cの内側での温度上昇を抑制することが可能となる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側と外側とを備える防護材料であって、
第1ゴム層と、
金属層と、
補強布と、
を備え、
最も外側に前記第1ゴム層が配置され、
前記第1ゴム層の内側に前記補強布および前記金属層が配置されている、
防護材料。
【請求項2】
第2ゴム層をさらに含み、
最も外側に前記第1ゴム層が配置され、
最も内側に前記第2ゴム層が配置されている、
請求項1に記載の防護材料。
【請求項3】
前記第1ゴム層の内側に前記金属層が配置され、
前記金属層の内側に前記補強布が配置され、
前記補強布の内側に前記第2ゴム層が配置されている、
請求項2に記載の防護材料。
【請求項4】
第2ゴム層をさらに含み、
最も外側に前記第1ゴム層が配置され、
前記第1ゴム層の内側に前記補強布が配置され、
前記補強布の内側に前記第2ゴム層が配置され、
前記第2ゴム層の内側に前記金属層が配置さている、
請求項1に記載の防護材料。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の防護材料を用いた、防護衣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有毒なガスや液体等から人体を防護するための防護材料および防護衣に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有毒なガスや液体等から人体を保護する防護材料に関する技術が、たとえば、特許第5784812号公報(特許文献1)に開示されている。このような防護材料には、材料表面の良好な耐ガス浸透性および耐液防護性が求められ、材料の表面処理に関する技術が、たとえば、特開2003-2903号公報(特許文献2)および特開2010-24279号公報(特許文献3)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5784812号公報
【特許文献2】特開2003-2903号公報
【特許文献3】特開2010-24279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防護材料を用いた防護衣は、全身が覆われることから、屋外での使用時には、日射による輻射熱の影響で、防護衣の内部は高温となる。そのために、長時間にわたる防護衣の着用は困難であり、その結果、防護衣を着用して行なう作業の作業効率が低下する。
【0005】
本開示では、上記課題を解決することにあり、日射による輻射熱の影響を抑制することで、防護衣の内部温度の上昇を抑制することが可能な、防護材料および防護衣を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本開示の防護材料においては、内側と外側とを備える防護材料であって、第1ゴム層と、金属層と、補強布と、を備え、最も外側に上記第1ゴム層が配置され、上記第1ゴム層の内側に上記補強布および上記金属層が配置されている。
【0007】
[2]:[1]に記載の防護材料であって、第2ゴム層をさらに含み、最も外側に上記第1ゴム層が配置され、最も内側に上記第2ゴム層が配置されている。
【0008】
[3]:[2]に記載の防護材料であって、上記第1ゴム層の内側に上記金属層が配置され、上記金属層の内側に上記補強布が配置され、上記補強布の内側に上記第2ゴム層が配置されている。
【0009】
[4]:[1]に記載の防護材料であって、第2ゴム層をさらに含み、最も外側に上記第1ゴム層が配置され、上記第1ゴム層の内側に上記補強布が配置され、上記補強布の内側に上記第2ゴム層が配置され、上記第2ゴム層の内側に上記金属層が配置さている。
【0010】
本開示の防護衣においては、上記[1]から[4]のいずれかに記載の防護材料を用いている。
【発明の効果】
【0011】
本開示に従えば、日射による輻射熱の影響を抑制することで、防護衣の内部温度の上昇を抑制することが可能な、防護材料および防護衣の提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1の防護材料の断面構造図である。
図2】日射による輻射熱を示す模式図である。
図3】実施の形態2の防護材料の断面構造図である。
図4】実施の形態3の防護材料の断面構造図である。
図5】比較例1の防護材料の断面構造図である。
図6】比較例2の防護材料の断面構造図である。
図7】各実施の形態の防護材料の評価結果を示す図である。
図8】実施の形態4の防護衣の構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示に基づいた各実施の形態の防護材料および防護衣について、以下、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。理解を容易にするために、図に示す膜厚さ、および、層厚さについては、実際の比率とは異ならせて記載している。
【0014】
明細書中、「外側」とは、防護材料の使用時において、有毒なガスや液体等に曝される側を意味し、「内側」とは、防護材料の使用時において、有毒なガスや液体等に曝されない側を意味する。したがって、この防護材料を防護衣に用いた場合には、着用者に触れる側が「内側」となる。
【0015】
[実施の形態1:防護材料1A]
図1および図2を参照して、本実施の形態の防護材料1Aについて説明する。図1は、防護材料1Aの断面構造図、図2は、日射による輻射熱を示す模式図である。
【0016】
本実施の形態の防護材料1Aは、第1ゴム層11、金属層12、補強布13、および、第2ゴム層14を含む。最も外側に第1ゴム層11が配置され、第1ゴム層11の内側に金属層12が配置され、金属層12の内側に補強布13が配置され、補強布13の内側に第2ゴム層14が配置されている。
【0017】
第1ゴム層11の厚みは、約0.10mm~0.30mm程度、金属層12の厚みは、約30mm~100nm程度、補強布13の厚みは、約0.05mm~0.30mm程度、および、第2ゴム層14の厚みは、約0.10mm~0.30mm程度である。
【0018】
本実施の形態では、第1ゴム層11および第2ゴム層14には、ブチルゴム(黒)を用いた。他のゴムとしては、他のゴムとしては、天然ゴム、ニトリルゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、エチレン・酢酸ビニルゴム、クロロプレンゴム、パイパロンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴムが挙げられるが、基本的には、ゴム種には制限はない。
【0019】
金属層12には、アルミ(Al)、銀(Ag)等の金属材料が用いられる。補強布13には、織物、編物、不織布、フィルム等が用いられる。その中でも防護衣に適用する補強布については柔軟性や強度の観点より織物や編物が好ましい。
【0020】
図2を参照して、本実施の形態の防護材料1Aにおける、日射による輻射熱について説明する。外側に配置された第1ゴム層11に日射が照射された場合、第1ゴム層11によっても反射されるが、第1ゴム層11は黒色であることから、その割合は小さく多くの日射が、第1ゴム層11に吸収され、輻射熱となって、防護材料1Aの内側に伝達される。本実施の形態の防護材料1Aの場合には、第1ゴム層11に金属層12が設けられていることから、輻射熱の内側への伝達が金属層12によって遮られる。その結果、防護材料1Aの内側での温度上昇を抑制することが可能となる。その評価結果については後述する。
【0021】
変形例として、最も外側に第1ゴム層11が配置され、第1ゴム層11の内側に補強布13が配置され、補強布13の内側に金属層12が配置され、金属層12の内側に第2ゴム層14が配置の順に積層した構成も取り得る。この変形例についても防護材料の内側での温度上昇を抑制する効果を期待することができる。
【0022】
(防護材料1Aの製造方法)
防護材料1Aの製造方法としては、はじめに、第2ゴム層14と補強布13との間に接着ゴム層(図示省略)を介在させて貼り合わせてプレス加硫法により加硫接着を行ない、互いに一体化された第2ゴム層14と補強布13との積層構造を得る。
【0023】
次に、補強布13の上に真空蒸着法により、膜厚さ100nmのAl薄膜を金属層12として成膜した。その後、第1ゴム層11と金属層12との間に接着ゴム層(図示省略)を介在させて貼り合わせてプレス加工を行なう。以上により、第1ゴム層11、金属層12、補強布13、および、第2ゴム層14を含む防護材料1Aの積層構造を得ることができる。
【0024】
[実施の形態2:防護材料1B]
図3を参照して、本実施の形態の防護材料1Bについて説明する。図3は、防護材料1Bの断面構造図である。
【0025】
本実施の形態の防護材料1Bは、第1ゴム層11、補強布13、第2ゴム層14、および、金属層12を含む。最も外側に第1ゴム層11が配置され、第1ゴム層11の内側に補強布13が配置され、補強布13の内側に第2ゴム層14が配置され、第2ゴム層14の内側に金属層12が配置されている。
【0026】
第1ゴム層11、補強布13、第2ゴム層14、および、金属層12の厚み、用いられる材料は、実施の形態1の防護材料1Aと同様である。
【0027】
(防護材料1Bの製造方法)
補強布13と第1ゴム層11との間、および、補強布13と第2ゴム層14との間に、同種のゴム材料からなる接着ゴム層(図示省略)を介在させて貼り合わせプレス加硫法により加硫接着を行ない、互いに一体化された第1ゴム層11、補強布13および第2ゴム層14の積層構造を得る。
【0028】
次に、第2ゴム層14の上に真空蒸着法により、膜厚さ100nmのAl薄膜を金属層12として成膜する。以上により、第1ゴム層11、補強布13、第2ゴム層14、および、金属層12を含む防護材料1Bの積層構造を得ることができる。
【0029】
本実施の形態においても、図2で説明したように、輻射熱の内側への伝達が金属層12によって遮られる。その結果、防護材料1Bの内側での温度上昇を抑制することが可能となる。その評価結果については後述する。
【0030】
[実施の形態3:防護材料1C]
図4を参照して、本実施の形態の防護材料1Cについて説明する。図4は、防護材料1Cの断面構造図である。
【0031】
本実施の形態の防護材料1Cは、第1ゴム層11、補強布13、および、金属層12を含む。最も外側に第1ゴム層11が配置され、第1ゴム層11の内側に補強布13が配置され、補強布13の内側に金属層12が配置されている。
【0032】
第1ゴム層11、補強布13、金属層12の厚み、用いられる材料は、実施の形態1の防護材料1Aと同様である。
【0033】
(防護材料1Cの製造方法)
補強布13と第1ゴム層11との間に、同種のゴム材料からなる接着ゴム層(図示省略)を介在させて貼り合わせプレス加硫法により加硫接着を行ない、互いに一体化された第1ゴム層11および補強布13の積層構造を得る。
【0034】
次に、補強布13の上に真空蒸着法により、膜厚さ100nmのAl薄膜を金属層12として成膜する。以上により、第1ゴム層11、補強布13、および、金属層12を含む防護材料1Cの積層構造を得ることができる。
【0035】
本実施の形態においても、図2で説明したように、輻射熱の内側への伝達が金属層12によって遮られる。その結果、防護材料1Cの内側での温度上昇を抑制することが可能となる。なお、外側から第1ゴム層11、金属層12、および、補強布13の順で積層しても、同様の効果が得られることが期待できる。
【0036】
[比較例1:防護材料2A]
図5を参照して、比較例1の防護材料2Aについて説明する。図5は、防護材料2Aの断面構造図である。
【0037】
比較例1の防護材料2Aは、金属層12、第1ゴム層11、補強布13、および、第2ゴム層14を含む。最も外側に金属層12が配置されている。
【0038】
金属層12、第1ゴム層11、補強布13、および、第2ゴム層14の厚み、用いられる材料は、実施の形態1の防護材料1Aと同様である。評価結果については後述する。
【0039】
[比較例2:防護材料2B]
図6を参照して、比較例2の防護材料2Bについて説明する。図6は、防護材料2Bの断面構造図である。
【0040】
比較例2の防護材料2Bは、第1ゴム層11、補強布13、および、第2ゴム層14を含む。金属層は配置されていない。
【0041】
第1ゴム層11、補強布13、および、第2ゴム層14の厚み、用いられる材料は、実施の形態1の防護材料1Aと同様である。評価結果については後述する。
【0042】
[防護材料1A~防護材料1Cの評価結果]
次に、図7を参照して、防護材料1A~防護材料1Cの評価結果について説明する。図7は、防護材料1A~防護材料1Cおよび防護材料2A、防護材料2Bの評価結果を示す図である。
【0043】
評価対象として、各防護材料の遮熱率を測定した。遮熱率は、以下の式1によって求めることができる。試験方法としては、レフランプの光を試験片の表面に照射し、試験片を透過した熱線及び光照射によって加熱された試験片から再放射された熱線を,試験片の背面に非接触で配置した熱線受光体で吸収する。光照射前及び光照射して15分後の熱線受光体温度をサーモカメラで測定し、熱線受光体の上昇温度から遮熱率を算出した。
【0044】
遮熱率(%)=(((ブランク試験の上昇温度)-(試料の上昇温度))/(ブランク試験の上昇温度))×100%(式1)
防護材料1Aの場合、金属層12を第1ゴム層11の内側に設けておくことで、比較例2に示す金属層が設けられていない防護材料2B(遮熱率31%)に比較して、遮熱率が59%となり良好な評価結果が得られた。
【0045】
防護材料1Bの場合、金属層12を最も内側に設けておくことで、比較例2に示す金属層が設けられていない防護材料2B(遮熱率31%)に比較して、遮熱率が57%となり良好な評価結果が得られた。
【0046】
なお、比較例1に示した、金属層12を最も外側に設けた防護材料2Aの場合では、遮熱率78%と、最も良好な数値である。しかし、最外層に金属層12を設けた場合には、日射の反射が強すぎること、第三者から視認し易くなることに加えて、外的な摩耗や擦れによる耐久性が問題になる場合がある。よって、防護材料としては不適切と判断される。
【0047】
[実施の形態4:防護衣100]
図8を参照して、本実施の形態における防護衣100の構成について説明する。図8は、防護衣100の構成を示す正面図である。
【0048】
この防護衣100は、上記各実施の形態で説明した防護材料1A、防護材料1B、または、防護材料1Cを用いて製造したものである。このように、防護材料1A、防護材料1B、または、防護材料1Cを用いて防護衣100を製造することで、防護衣100の内部の温度上昇を抑制することができる。その結果、防護衣100を着用した長時間の作業(たとえば、有害なガスや液体等の除染作業)が可能になるとともに、作業に要する労力の軽減を図ることが可能となる。
【0049】
さらに、防護衣100を着用した作業を継続して実施できるようになることから、汚染内外領域への迅速な偵察、救命活動を行なうことが可能となる。さらに、被着用者に精神的な安心感を与えることも可能となる。
【0050】
なお、防護衣100として、上衣、下衣、および、頭巾を有する防護衣を一例にしたが、本開示における防護材料は、同等の機能を必要とする領域への出入りの際に着用される衣服等に広く適用することが可能である。
【0051】
上記では、防護材料を防護衣に適用した例を示したが、本発明の防護材料は、他にも、例えば、防護手袋、防護靴下、防護フード、防護カバー、フィルター、防護天幕、寝袋等、さらに、これらアイテムを収納する収納袋、に適用することができる。また、防護性を有する容器、装置などのパッキン、ガスケットなどのシール材としても用いることができる。
【0052】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
1A 防護材料、11 第1ゴム層、12 金属層、13 補強布、14 第2ゴム層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8