(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050504
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】遺伝子特異的組織情報およびシークエンシング
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20240403BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023167622
(22)【出願日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】22198689
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520094891
【氏名又は名称】ミルテニー バイオテック ベー.フェー. ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Miltenyi Biotec B.V. & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Friedrich-Ebert-Strasse 68, 51429 Bergisch Gladbach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ピナード
(72)【発明者】
【氏名】細野 正裕
(72)【発明者】
【氏名】レート ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】エミリー ニール
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QQ53
4B063QR08
4B063QR20
4B063QR32
4B063QR55
4B063QS14
4B063QS25
4B063QS28
4B063QS39
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い分解能で標的配列の空間的位置および配列情報の両方を同時に得る方法を提供する。
【解決手段】a.a)mRNA鎖結合領域と、b)UMI領域を含むアンカー配列と、c)プライマー領域とを含む直鎖状プローブを準備する工程、b.直鎖状プローブをmRNA鎖にハイブリダイズする工程、c.逆転写cDNA鎖を得る工程、d.ロケーター分子をハイブリダイズし、ギャップを生成する工程、e.非鎖置換酵素を用いて、環状鋳型を生成する工程、f.環状鋳型分子をRCAによって増加させ、ロロニーを生成する工程、g.組織上のmRNAの空間的位置を得る工程、h.一本鎖cDNAオリゴマーを得る工程、i.プライミング一本鎖オリゴマーをPCRにより増幅する工程、j.ロロニーの空間的情報とプライミング一本鎖オリゴマーの配列情報とをUMI配列により関連付ける工程を含む、方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織サンプル上の少なくとも1つのmRNA鎖の標的配列の空間的位置および配列情報を得る方法であって、
a.a)前記少なくとも1つのmRNA鎖に結合することが可能な結合領域と、b)第1のロケーター領域と第2のロケーター領域との間に位置するUMI領域を含むアンカー配列と、c)プライマー領域とを含む直鎖状プローブを準備する工程、
b.前記直鎖状プローブをその結合領域で前記mRNA鎖にハイブリダイズする工程、
c.前記mRNA鎖を鋳型として用いて前記直鎖状プローブを補完し、それにより逆転写cDNA鎖を得る工程、
d.ロケーター分子をその3’および5’末端で前記第1および第2のロケーター領域にハイブリダイズし、それにより前記直鎖状プローブの前記UMIの長さに対応するギャップを生成する工程、
e.非鎖置換酵素を用いて、前記UMIに相補的なヌクレオチドで前記ロケーター分子内のギャップを充填し、それにより前記直鎖状プローブから前記UMI領域のコピーを含む環状鋳型を生成する工程、
f.プライマー領域から開始して、前記環状鋳型分子を前記組織サンプル上でRCAによって増加させ、それによりロロニーを生成する工程、
g.前記ロロニーの少なくともUMI部分をシークエンシングし、それにより前記組織上の前記mRNAの空間的位置を得る工程、
h.前記逆転写cDNA鎖を前記組織から除去するとともに前記mRNA鎖を脱ハイブリダイズし、それにより一本鎖cDNAオリゴマーを得る工程、
i.前記一本鎖cDNAオリゴマーの3’および5’末端に第1および第2のアダプタープライマーを設け、プライミング一本鎖オリゴマーを得て、前記プライミング一本鎖オリゴマーをPCRにより増幅する工程、
j.増幅された前記プライミング一本鎖オリゴマーをシークエンシングするとともに、前記ロロニーの空間的情報と前記増幅されたプライミング一本鎖オリゴマーの配列情報とをUMI配列により関連付ける工程
を含む、方法。
【請求項2】
工程a)~d)をa)、b)、c)およびd)の順序で行うことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程a)~d)をa)、d)、b)およびc)の順序で行うことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
工程e)における前記ロケーター分子の前記ギャップの充填を、前記環状ロケーターの領域にハイブリダイズしたプライマーを用い、Phusion DNAポリメラーゼまたは非鎖置換ポリメラーゼによって行うことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ギャップ充填DNA分子の3’および5’末端を互いにライゲートし、UMIおよび直鎖状ロケーターの第1の領域がブリッジスプリントとして作用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程e)におけるライゲーション反応をDNAリガーゼによって行うことを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ロケータープローブが、初めに前記直鎖状ロケーターを前記少なくとも1つのmRNA鎖にハイブリダイズし、前記ロケータープローブのRNAアンカー領域を逆転写cDNA鎖に補完し、続いて前記環状ロケーターを前記直鎖状ロケーターにハイブリダイズすることによって得られることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
第1および第2のアダプタープライマーを3’および5’末端に付加する前に、前記一本鎖オリゴマーをより小さな断片へと物理的に剪断することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
一本鎖適合DNAオリゴマーを環状化し、シークエンシング前にRCAにより第2のロロニーへと増加させることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
細胞下レベルで組織上の全ての発現遺伝子を検出し、同時にこれらの遺伝子の配列および/または空間的情報を得ることは困難である。
【0002】
本発明は、逆転写によって捕捉されるmRNA上の突然変異または配列変異体を含む関心領域を標的とする部分に並列した、予め定義されていないランダムに生成されたユニーク分子識別子(Unique Molecular Identifier)(UMI)を含むプローブと、直鎖状プローブUMIの配列情報をコピーするギャップパドロックロケータープローブとを用いてメッセンジャーRNA(mRNA)上の特定の領域を認識および増幅する方法を記載する。ライゲートされたパドロックプローブは、ローリングサークル増幅(RCA)を用いてロケーターDNAナノボールを生成するための環状鋳型として使用される。ロケーターDNAナノボールのシークエンシング後に、UMI情報を有するcDNAを回収し、抽出し、増幅し、NGSによってシークエンシングする。
【0003】
発明の概要
したがって、本発明の目的は、既知の技術よりも高い分解能で標的配列の空間的位置および配列情報の両方を同時に得る方法を提供することであった。
【0004】
ここでは、以下の方法を記載する:
(1)UMIを有するハイブリッド環状/直鎖状DNAプローブを用いることによって、組織上に発現されたmRNAを空間位置確認する。
(2)UMIを有するプローブの直鎖部分の領域の下流の隣接領域のヌクレオチド情報を逆転写酵素でコピーする。同時に、プローブの直鎖部分のUMI部分に隣接する標的配列に相補的な末端を有するパドロックロケータープローブをハイブリダイズし、UMIの長さに対応する小さなギャップを生じさせ、Phusion DNAポリメラーゼを用いてコピーし、環状鋳型を生成することができる。
(3)環状鋳型を用いて、組織上でUMI部分がシークエンシングされるDNAナノボールを生成し、直鎖状プローブのハイブリダイゼーションおよびmRNA座標生成にレポーターとして使用する。
(4)次いで、逆転写により生成したUMIを含むcDNA鎖を組織から抽出する。
(5)次いで、抽出したUMIを含むcDNA鎖を、既知の分岐アダプター末端を有するプライマーを用いたPCRにより増幅する。
(6)PCR産物を環状化し、RCA増幅する。
(7)RCA産物をNGSによってシークエンシングすることができる。
(8)シークエンシングして得られたものを、UMIを用いて実際の組織位置と照合する。
【0005】
本発明の対象は、組織サンプル上の少なくとも1つのmRNA鎖の標的配列の空間的位置および配列情報を得る方法であって、
a.a)少なくとも1つのmRNA鎖に結合することが可能な結合領域と、b)第1のロケーター領域と第2のロケーター領域との間に位置するUMI領域を含むアンカー配列と、c)プライマー領域とを含む直鎖状プローブを準備する工程、
b.直鎖状プローブをその結合領域でmRNA鎖にハイブリダイズする工程、
c.mRNA鎖を鋳型として用いて直鎖状プローブを補完し、それにより逆転写cDNA鎖を得る工程、
d.ロケーター分子をその3’および5’末端で第1および第2のロケーター領域にハイブリダイズし、それにより直鎖状プローブのUMIの長さに対応するギャップを生成する工程、
e.非鎖置換酵素を用いて、UMIに相補的なヌクレオチドでロケーター分子内のギャップを充填し、それにより直鎖状プローブからUMI領域のコピーを含む環状鋳型を生成する工程、
f.プライマー領域から開始して、環状鋳型分子を組織サンプル上でRCAによって増加させ、それによりロロニーを生成する工程、
g.ロロニーの少なくともUMI部分をシークエンシングし、それにより組織上のmRNAの空間的位置を得る工程、
h.逆転写cDNA鎖を組織から除去するとともにmRNA鎖を脱ハイブリダイズし、それにより一本鎖cDNAオリゴマーを得る工程、
i.一本鎖cDNAオリゴマーの3’および5’末端に第1および第2のアダプタープライマーを設け、プライミング一本鎖オリゴマーを得て、プライミング一本鎖オリゴマーをPCRにより増幅する工程、
j.増幅されたプライミング一本鎖オリゴマーをシークエンシングするとともに、ロロニーの空間的情報と増幅されたプライミング一本鎖オリゴマーの配列情報とをUMI配列により関連付ける工程
を含む、方法である。
【0006】
第1の実施形態では、ロケーター分子を初めにその結合領域でmRNA鎖にハイブリダイズした後、直鎖状プローブを続いてロケーター分子にハイブリダイズする。言い換えると、工程a)~d)をa)、c)、d)およびd)の順序で行う。
【0007】
第2の実施形態では、ロケーター分子を初めに直鎖状プローブにハイブリダイズした後、その結合領域でmRNA鎖にハイブリダイズする。言い換えると、工程a)~d)をa)、d)、b)およびc)の順序で行う。
【0008】
本発明は、mRNA上の関心領域の上流の領域に相補的な配列またはmRNAポリAテールに相補的なポリT配列を含み、さらにパドロックロケータープローブ分子のハイブリダイゼーションに用いられる2つの領域(領域A&B)の間に位置するランダム配列(UMI)を含む非結合部分を含む直鎖状DNAプライマーを用いて、所与の組織における目的遺伝子の空間位置確認を行う方法に関する。mRNA上の特定の関心領域の配列情報は、初めに直鎖状DNAプライマーを用いてmRNAをcDNA分子に逆転写することによって取得される。
【0009】
パドロックロケータープローブ分子は、直鎖状DNAプライマーの非結合領域(領域A&B)に予め付着させてもよく、または直鎖状プライマーが組織上で直接、mRNA上の所望の領域の上流の配列に付着した後、直鎖状DNAプライマーにハイブリダイズしてもよい(
図1)。
【0010】
直鎖状DNAプライマーへのロケータープローブのハイブリダイゼーションにより、直鎖状プライマー上のランダム配列に対応するギャップを有するオープンサークルのパドロック様構造が生じる。ギャップを非鎖置換酵素によって充填し、両端をライゲートして、閉じた環状分子を形成し、これを続いてオリゴヌクレオチドプライマーを用いたローリングサークル増幅(RCA)によって組織上で直接増幅することができる。RCAにより、組織切片上でmRNAがcDNAにコピーされた同じ位置にDNAナノボール(ロロニー)が生成する。次いで、ランダムな予め定義されていない配列を、組織上でRCA産物をシークエンシングすることによって解読することができ、ここで生成されたロロニーの各々について一連の座標を使用する。
【0011】
次いで、直鎖状プライマーを用いて生成されたcDNAを物理的に回収し、組織から抽出する。
【0012】
次いで、回収されたcDNAを、cDNAの5’および3’末端にアニールし、DNAアダプターを有するPCRプライマーを用いてPCR増幅する。
【0013】
次いで、2つの末端を接合するスプリントブリッジオリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCR増幅産物を環状化することができる。
【0014】
次いで、サークルをローリングサークル増幅(RCA)によって増幅する。次いで、RCA産物をシークエンシングする。
【0015】
NGSシークエンシングにより、cDNAに連結した直鎖状プライマーからのランダム配列を特定した後、組織上の同じランダム配列のシークエンシングによって得られた座標により、正確な組織位置に割り当てることができる。
【0016】
NGSシークエンシングにより、ゲノムDNAまたはmRNA上の標的関心領域、突然変異またはヌクレオチド変異体を分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の方法の最初の3工程を示す図である。
【
図2】DNAナノボールを生成するために鋳型として使用される環状分子を示す図である。
【
図3】組織から抽出したcDNA鎖をPCR増幅し、後にPCRプライマーにアダプター領域(P1およびP2)を付加することによって環状化することができる方法を示す図である。
【0018】
詳細な説明
本発明の方法を
図1~3に詳細に説明し、「工程」という用語は、図中のそれぞれの工程を指す。
【0019】
RCAによるmRNA分子の空間位置確認に続く、コピーされたRNA分子からの関心領域のex situシークエンシングは、組織上で直接行われるRCAおよびUMIのin situシークエンシングを含み、8工程のプロセスからなる。(工程1)ランダム配列と2つのアンカー(A&B)とを含む直鎖状プローブを、3’末端に位置する特定の配列部分を介して組織上のmRNAにハイブリダイズし、プライマーとして直鎖状プローブを用いる逆転写により、下流のmRNA関心領域をcDNA分子にコピーする。(工程2)サークルロケーターパドロック分子を、UMI領域に対応するギャップを残し、領域A&Bを介して直鎖状プローブにハイブリダイズする。非鎖置換酵素を用いてギャップを充填することによりUMI領域をコピーし、DNAリガーゼを用いてサークルロケーターパドロックの両端をライゲートし、環状分子を生成する。
【0020】
環状分子を、サークル特異的RCAプライマーを用いるRCAを用いてDNAナノボール(ロロニー)を生成するための鋳型として使用する(工程3)。ロロニーのUMI部分を組織上で直接シークエンシングし、標的領域の位置座標を得る(工程4)。in situシークエンシング中に行われる画像取得は、広視野顕微鏡(単一の焦点面)を用いるか、または共焦点顕微鏡(複数の焦点面)を用いて行うことができる。
【0021】
直鎖状プライマーとUMI配列とを含むcDNAを組織から抽出し(工程5)、分岐プライマーアダプター配列(P2)を用いて第2鎖cDNA合成を行う(工程6)。直鎖状プローブA領域に相補的な分岐アダプター配列(P1)に続いてP1/P2アダプタープライマーを用いてcDNAをPCR増幅する(工程7)。PCR増幅産物を環状化し、UMIと関心領域とを含むサークルをRCA増幅する(工程8)。関心領域およびUMIをNGSシークエンシングし、組織外および組織上のUMI配列を対応する座標(x、yおよび/またはz)と照合することにより、関心領域の位置および配列を決定する(工程9)。
【0022】
図1はプロセスの最初の3工程を示し、直鎖状プローブは、2つのアンカー(A&B)に挟まれたランダム配列と、シークエンシングする必要がある目的のmRNA遺伝子の標的領域に相補的な特定の配列とを含む。直鎖状プローブの特定の部分が初めに標的にハイブリダイズし、続いて逆転写が行われる。関心領域は、変異体の違いのヌクレオチド変化が疑われる配列を含む。直鎖状プローブが伸長してcDNAコピーを生じ、標的に安定に付着した後、サークルロケーターを、UMI領域に対応するギャップを残し、領域A&Bを介して直鎖状プローブにハイブリダイズする。ギャップを充填することによりUMI領域をコピーし、サークルロケーターをライゲートし、環状分子を生成する(工程2)。環状分子を鋳型として用いてDNAナノボール(ロロニー)を生成する。ロロニーのUMI部分を組織上で直接シークエンシングし、標的領域の位置座標(x、yおよび/またはz)を得る。
【0023】
図1は、ランダム配列と2つのアンカー(A&B)とを含む直鎖状プローブを、スライド上の固定組織上のmRNAに対し、3’末端に位置する特定の配列部分を介して特定のmRNA(点線)中の関心領域の上流の領域にハイブリダイズすることをさらに示す。cDNAへの関心領域の逆転写(工程1)は、プライマーとして使用される直鎖状プローブによって開始する。直鎖状プローブの3’末端は、約30bp長の配列からなり、組織上の関心のmRNA標的の特定の領域にハイブリダイズすることができる。サークルロケーターパドロック分子を、UMI領域に対応するギャップを残し、領域A&Bを介して直鎖状プローブにハイブリダイズすることを工程2に示す。UMI領域は、非鎖置換酵素、例えばPhusion DNAポリメラーゼを用いてギャップを充填し、DNAリガーゼを用いてサークルロケーターパドロックの両端をライゲートすることにより、サークルロケーターパドロックにコピーされ、環状分子が生成する(工程2)。サークルのサイズは100~400bp長であり、ギャップ部分は約10~40bpであり得る。
【0024】
図2は、DNAナノボールを生成するために鋳型として使用される環状分子を示す。環状分子を(ローリングサークル増幅)RCAによって増幅し(工程3)、UMI部分をin situシークエンシングする(工程4)。次いで、コピーされたUMIを含むcDNA鎖を関心領域のシークエンシングのために抽出する(工程5)。
【0025】
図2は、Phi29 DNAポリメラーゼのような高度の処理能力および鎖置換活性を有する酵素を用い、サークルロケーターに結合するRCAオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いた等温ローリングサークル増幅(RCA)により、サークルロケーターを用いて組織上にDNAナノボール(ロロニー)を生成するプロセスをさらに示す(工程3)。得られる組織上のRCA産物の位置は、組織上でランダムに生成されたUMIをシークエンシングし、全てのロロニーの座標(x、yおよび/またはz)を得ることによって決定される(工程4)。本発明の一実施形態では、サークルロケータープローブは、最後が特定のmRNA(点線)中の関心領域の上流の領域に結合する前に、初めに直鎖状プローブアンカーにハイブリダイズする。工程5において、伸張cDNAを組織切片スライドから抽出する。
【0026】
図3は、組織から抽出したcDNA鎖をPCR増幅し、後にPCRプライマーにアダプター領域(P1およびP2)を付加することによって環状化することができる方法を示す。工程6において第2鎖cDNA合成を行い、PCR増幅して、P1/P2アダプター末端を有する二本鎖DNA分子を生成し(工程7)、これをNGSシークエンシングによって分析することができる(工程8)。
【0027】
図3は、実施した第2鎖cDNA合成(工程6)、ならびに分岐プライマー対P1およびP2を用いて実施したその後のPCR反応(工程7)をさらに示す。結合領域は、プライマーP1についてはサークルロケーター領域の上流に位置し、プライマーP2については「関心領域」の下流に位置し、関心領域とUMI部分とを含む適合DNAライブラリーが生成する。DNAライブラリーのシークエンシングにより、突然変異/ヌクレオチド変異体のいずれかが標的関心領域に存在するかを決定し、UMIをシークエンシングすることで、組織上の各関心領域の元の位置/起源を、組織切片上のロロニーのシークエンシングにより生成したサークルロケーターUMI配列座標と相関させて特定することができる(工程8)。
【0028】
実施例
DNAライブラリーのシークエンシングにより、標的関心領域における突然変異/ヌクレオチド変異体の存在を検出し、UMIをシークエンシングすることで、組織上の各関心領域の元の位置/起源を、組織切片上のロロニーのシークエンシングにより生成したサークルロケーターUMI配列座標と相関させて特定することができる(工程8)。
【0029】
図4は、抽出し、PCR増幅したcDNA(MS4A1遺伝子)およびDNAナノボールから生成されたライブラリーに対して行った配列分析の例を示す。シークエンシングは、関心領域およびユニーク分子識別子(UMI)部分の上流に位置するプライマーオリゴヌクレオチドを用いてex situで行った。UMI部分をロケーターパドロックとともにシークエンシングし、ロケーターロロニーに由来するリードを、ロケーター配列リードを既知のパドロック参照配列にマッピングすることにより特定した。さらに、UMI部分だけでなく、cDNA転写産物からのコード配列が、直鎖状プライマーとロケーターパドロックにコピーされたUMI配列とを含む転写産物もシークエンシングした。cDNA転写産物に由来するリードを、配列リードを目的遺伝子(本実施例ではMS4A1遺伝子)からのコード領域の既知の参照配列にマッピングすることによって特定した。
【0030】
図5は、抽出し、PCR増幅したcDNAの転写産物部分から生成したライブラリーから得られた実際のリードおよび(MS4A1遺伝子)に実際にマッピングされたものを示す。シークエンシングは、関心領域およびユニーク分子識別子(UMI)部分の上流に位置するプライマーオリゴヌクレオチドを用いてex situで行った。直鎖状プライマーの逆転写によって生成したMS4A1のコード配列部分を強調する(ブロック領域)。
【外国語明細書】