(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050516
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】繊維長分布予測モデル生成プログラム、繊維長分布予測プログラム、繊維長分布予測モデル生成方法および繊維長分布予測方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023169240
(22)【出願日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2022156354
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小柳 昂平
(72)【発明者】
【氏名】山中 悠司
(72)【発明者】
【氏名】山本 海
(72)【発明者】
【氏名】野村 圭一郎
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AB25
4F206AD16
4F206AM23
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL09
4F206JM01
4F206JP13
4F206JP30
4F206JQ88
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】折損工程後の繊維長分布を簡易かつ高精度に得ることができる繊維長分布予測モデル生成プログラム、繊維長分布予測プログラム、繊維長分布予測モデル生成方法および繊維長分布予測方を提供すること。
【解決手段】本発明に係る繊維長分布予測モデル生成プログラムは、コンピュータに、既知の繊維強化樹脂組成物が含む繊維状充填材の折損工程前の繊維長分布を説明変数、当該繊維強化樹脂組成物の折損工程後の繊維長分布を目的変数とする学習用データを用いて機械学習を実行することにより、折損工程後の繊維長分布を予測するための繊維長分布予測モデルを生成する繊維長分布予測モデル生成ステップ、を実行させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
既知の繊維強化樹脂組成物が含む繊維状充填材の折損工程前の繊維長分布を説明変数、当該繊維強化樹脂組成物の折損工程後の繊維長分布を目的変数とする学習用データを用いて機械学習を実行することにより、折損工程後の繊維長分布を予測するための繊維長分布予測モデルを生成する繊維長分布予測モデル生成ステップ、
を実行させる繊維長分布予測モデル生成プログラム。
【請求項2】
前記繊維長分布予測モデル生成ステップは、
前記繊維長分布として、繊維長の長さを区分けした各区分に属する度数分布を前記学習用データとする、
請求項1に記載の繊維長分布予測モデル生成プログラム。
【請求項3】
前記繊維長分布予測モデル生成ステップは、
各区分の度数をまとめた折損工程前の繊維長ベクトルを、折損工程後の繊維長ベクトルの予測値へと行列変換する繊維長予測行列を用いて、折損工程後の繊維長分布を予測する前記繊維長分布予測モデルを生成する、
請求項2に記載の繊維長分布予測モデル生成プログラム。
【請求項4】
前記繊維長分布予測モデル生成ステップは、
前記学習用データの前記繊維強化樹脂組成物中の繊維状充填材の繊維長分布を、繊維長予測行列を用いて行列変換することで得られる折損工程後の繊維長ベクトルの予測値と、前記繊維強化樹脂組成物に対応する折損工程後の繊維長ベクトルの値とから求められる予測誤差が最小となる繊維長予測行列の各項を決定することによって前記繊維長分布予測モデルを生成する、
請求項3に記載の繊維長分布予測モデル生成プログラム。
【請求項5】
前記繊維長分布予測モデル生成ステップは、
前記折損工程として、射出成形機による射出成形工程、溶融混練機による押出工程、および成形品の粉砕工程のいずれかを経た後の繊維強化樹脂組成物中の繊維状充填材の繊維長分布を予測する前記繊維長分布予測モデルを生成する、
請求項4に記載の繊維長分布予測モデル生成プログラム。
【請求項6】
前記繊維長分布予測モデル生成ステップは、
前記繊維状充填材として、ガラス繊維および炭素繊維のいずれかを含む繊維強化樹脂組成物中の繊維状充填材の繊維長分布を予測する前記繊維長分布予測モデルを生成する、
請求項5に記載の繊維長分布予測モデル生成プログラム。
【請求項7】
コンピュータに、
既知の繊維強化樹脂組成物が含む繊維状充填材の折損工程前の繊維長分布を説明変数、当該繊維強化樹脂組成物の折損工程後の繊維長分布を目的変数とする学習用データを用いて機械学習を実行することにより、折損工程後の繊維長分布を予測するための繊維長分布予測モデルに対して、予測対象の繊維強化樹脂組成物における折損工程前の繊維状充填材の繊維長分布を入力する入力ステップと、
前記繊維長分布予測モデルが出力する情報に基づいて、折損工程後の繊維長分布を予測する繊維長分布予測ステップと、
を実行させる繊維長分布予測プログラム。
【請求項8】
コンピュータが、
既知の繊維強化樹脂組成物が含む繊維状充填材の折損工程前の繊維長分布を説明変数、当該繊維強化樹脂組成物の折損工程後の繊維長分布を目的変数とする学習用データを記憶部から読み出し、該学習用データを用いて機械学習を実行することにより、折損工程後の繊維長分布を予測するための繊維長分布予測モデルを生成する、
繊維長分布予測モデル生成方法。
【請求項9】
コンピュータが、
既知の繊維強化樹脂組成物が含む繊維状充填材の折損工程前の繊維長分布を説明変数、当該繊維強化樹脂組成物の折損工程後の繊維長分布を目的変数とする学習用データを記憶部から読み出し、該学習用データを用いて機械学習を実行することにより生成された、折損工程後の繊維長分布を予測するための繊維長分布予測モデルに対して、予測対象の繊維強化樹脂組成物における折損工程前の繊維状充填材の繊維長分布を入力し、
前記繊維長分布予測モデルが出力する情報に基づいて、折損工程後の繊維長分布を予測する、
繊維長分布予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維長分布予測モデル生成プログラム、繊維長分布予測プログラム、繊維長分布予測モデル生成方法および繊維長分布予測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジニアリングプラスチックは、耐熱性、難燃性、耐薬品性、電気絶縁性、耐湿熱性および機械的強度や寸法安定性などに優れた樹脂組成物である。さらに、樹脂組成物にガラス繊維や炭素繊維などの繊維状充填材や、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等の無機充填材を配合することにより、機械的強度や寸法安定性を向上させることができることが知られている。例えば、特許文献1には、熱可塑性樹脂にガラス繊維や各種添加剤を配合した繊維強化樹脂組成物が記載されている。
【0003】
ところで、熱可塑性樹脂にガラス繊維を混合してなる繊維強化樹脂組成物は、例えば押出機を用いて混合混錬し、射出成形によって作製される。この際、射出成形のような折損工程時に繊維が折損し、工程前後で繊維長の分布が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、切断回数をシミュレーションによって求め、このシミュレーションの結果をもとに折損工程前の繊維長から工程後の繊維長分布を算出している。一方、シミュレーションを必要とせずに、簡易かつ高精度に折損工程後の繊維長分布を得ることが求められていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、折損工程後の繊維長分布を簡易かつ高精度に得ることができる繊維長分布予測モデル生成プログラム、繊維長分布予測プログラム、繊維長分布予測モデル生成方法および繊維長分布予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る繊維長分布予測モデル生成プログラムは、コンピュータに、既知の繊維強化樹脂組成物が含む繊維状充填材の折損工程前の繊維長分布を説明変数、当該繊維強化樹脂組成物の折損工程後の繊維長分布を目的変数とする学習用データを用いて機械学習を実行することにより、折損工程後の繊維長分布を予測するための繊維長分布予測モデルを生成する繊維長分布予測モデル生成ステップ、を実行させる。
【0008】
本発明に係る繊維長分布予測モデル生成プログラムは、上記発明において、前記繊維長分布予測モデル生成ステップは、前記繊維長分布として、繊維長の長さを区分けした各区分に属する度数分布を前記学習用データとする。
【0009】
本発明に係る繊維長分布予測モデル生成プログラムは、上記発明において、前記繊維長分布予測モデル生成ステップは、各区分の度数をまとめた折損工程前の繊維長ベクトルを、折損工程後の繊維長ベクトルの予測値へと行列変換する繊維長予測行列を用いて、折損工程後の繊維長分布を予測する前記繊維長分布予測モデルを生成する。
【0010】
本発明に係る繊維長分布予測モデル生成プログラムは、上記発明において、前記繊維長分布予測モデル生成ステップは、前記学習用データの前記繊維強化樹脂組成物中の繊維状充填材の繊維長分布を、繊維長予測行列を用いて行列変換することで得られる折損工程後の繊維長ベクトルの予測値と、前記繊維強化樹脂組成物に対応する折損工程後の繊維長ベクトルの値とから求められる予測誤差が最小となる繊維長予測行列の各項を決定することによって前記繊維長分布予測モデルを生成する。
【0011】
本発明に係る繊維長分布予測モデル生成プログラムは、上記発明において、前記繊維長分布予測モデル生成ステップは、前記折損工程として、射出成形機による射出成形工程、溶融混練機による押出工程、および成形品の粉砕工程のいずれかを経た後の繊維強化樹脂組成物中の繊維状充填材の繊維長分布を予測する前記繊維長分布予測モデルを生成する。
【0012】
本発明に係る繊維長分布予測モデル生成プログラムは、上記発明において、前記繊維長分布予測モデル生成ステップは、前記繊維状充填材として、ガラス繊維および炭素繊維のいずれかを含む繊維強化樹脂組成物中の繊維状充填材の繊維長分布を予測する前記繊維長分布予測モデルを生成する。
【0013】
本発明に係る繊維長分布予測プログラムは、コンピュータに、既知の繊維強化樹脂組成物が含む繊維状充填材の折損工程前の繊維長分布を説明変数、当該繊維強化樹脂組成物の折損工程後の繊維長分布を目的変数とする学習用データを用いて機械学習を実行することにより、折損工程後の繊維長分布を予測するための繊維長分布予測モデルに対して、予測対象の繊維強化樹脂組成物における折損工程前の繊維状充填材の繊維長分布を入力する入力ステップと、前記繊維長分布予測モデルが出力する情報に基づいて、折損工程後の繊維長分布を予測する繊維長分布予測ステップと、を実行させる。
【0014】
本発明に係る繊維長分布予測モデル生成方法は、コンピュータが、既知の繊維強化樹脂組成物が含む繊維状充填材の折損工程前の繊維長分布を説明変数、当該繊維強化樹脂組成物の折損工程後の繊維長分布を目的変数とする学習用データを記憶部から読み出し、該学習用データを用いて機械学習を実行することにより、折損工程後の繊維長分布を予測するための繊維長分布予測モデルを生成する。
【0015】
本発明に係る繊維長分布予測方法は、コンピュータが、既知の繊維強化樹脂組成物が含む繊維状充填材の折損工程前の繊維長分布を説明変数、当該繊維強化樹脂組成物の折損工程後の繊維長分布を目的変数とする学習用データを記憶部から読み出し、該学習用データを用いて機械学習を実行することにより作成された、折損工程後の繊維長分布を予測するための繊維長分布予測モデルに対して、予測対象の繊維強化樹脂組成物における折損工程前の繊維状充填材の繊維長分布を入力し、前記繊維長分布予測モデルが出力する情報に基づいて、折損工程後の繊維長分布を予測する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、折損工程後の繊維長分布を簡易かつ高精度に得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る繊維長分布予測システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る繊維長分布予測システムが備える学習装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、折損工程前の繊維長と、折損工程後の繊維長とについて説明するための図である。
【
図4】
図4は、折損工程前の繊維長分布と、リサイクル1回目の折損工程後の予測繊維長分布とについて説明するための図である。
【
図5】
図5は、リサイクル1回目後の折損工程前の繊維長分布と、リサイクル2回目の折損工程後の予測繊維長分布とについて説明するための図である。
【
図6】
図6は、リサイクル2回目後の折損工程前の繊維長分布と、リサイクル3回目の折損工程後の予測繊維長分布とについて説明するための図である。
【
図7】
図7は、折損工程前の繊維長分布と、折損工程後の予測繊維長分布について説明するための図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態に係る繊維長分布予測システムが備える繊維長分布予測装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態に係る繊維長分布予測システムが行う繊維長分布予測処理の流れを説明するための図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態に係る学習装置が行う学習処理の概要を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態に係る繊維長分布予測装置が行う繊維長分布予測処理の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る繊維長分布予測システムの実施形態を、図面に基づいて、詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る繊維長分布予測システムの概略構成を示す図である。繊維長分布予測システム1は、学習用データを作成し、該作成した学習用データを用いて学習した学習モデルを生成する学習装置2と、学習装置2が生成した学習モデルを用いて、処理後の繊維強化樹脂組成物に含まれる繊維状充填材の繊維長分布を予測する繊維長分布予測装置3と、繊維長分布予測装置3の設定結果を含む情報を表示する表示装置4と、入力装置5とを備える。
【0020】
繊維強化樹脂組成物に含まれる繊維状充填材は、射出成形機による射出成形工程や、溶融混練機による押出工程、および成形品の粉砕工程などの折損工程を経て繊維長分布が変化する。例えば、繊維強化樹脂組成物の射出成形で成形品を成形する際は、射出成形に用いた原料の樹脂組成物中の繊維状充填材の繊維長分布と比べて繊維の折損により繊維長は短くなっている。
【0021】
繊維長分布予測装置3が予測する繊維長分布は、繊維状充填材が樹脂組成物に混合されている繊維強化樹脂組成物における、当該繊維状充填材の繊維長の分布であり、折損工程後の繊維長分布である。
【0022】
繊維強化樹脂組成物は、樹脂、繊維状充填材、繊維状充填材以外の添加剤によって構成される。繊維強化樹脂組成物を構成する樹脂には特に制限はないが、具体例として、ナイロン6や、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、芳香族系ナイロン等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレートや、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシルジメチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシル基や、カルボン酸エステル基、酸無水物基やエポキシ基等の官能基を有するオレフィン系コポリマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルアミドエラストマー、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、エポキシ基含有ポリオレフィン共重合体等が挙げられる。
【0023】
繊維状充填材としては、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ガラスフラットファイバー、異形断面ガラスファイバー、ガラスカットファイバー、扁平ガラス繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維、黄銅繊維、ロックウール、PAN(Polyacrylonitrile)系やピッチ系等の炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、アスベスト繊維、石膏繊維、セラミック繊維、ジルコニア繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維等が挙げられ、これらは2種類以上を併用することも可能である。なかでもガラス繊維、炭素繊維が好ましい。
本実施の形態では、繊維状充填材として、少なくとも、ガラス繊維および炭素繊維から選択される一つを含む。
【0024】
本実施の形態における繊維強化樹脂組成物は、繊維状充填材以外の添加剤を配合して用いてもよい。繊維状充填材以外の添加剤としては、例えば非繊維状の無機充填材等が挙げられる。非繊維状の無機充填材としては、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケート、ハイドロタルサイト等の珪酸塩、酸化珪素、ガラス粉、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、シリカ(破砕状・球状)、石英、ガラスビーズ、ガラスフレーク、破砕状・不定形状ガラス、ガラスマイクロバルーン、二硫化モリブデン、酸化アルミニウム(破砕状)や、透光性アルミナ(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、酸化チタン(破砕状)、酸化亜鉛(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)等の酸化物、炭酸カルシウムや、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛等の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩、水酸化カルシウムや、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛、窒化アルミニウム、透光性窒化アルミニウム(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属酸化物等が挙げられる。ここで、金属種(金属粉、金属フレーク、金属リボン)の具体例としては、銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫等が例示できる。また、その他の無機充填材としてカーボン粉末、黒鉛、カーボンフレーク、鱗片状カーボン、フラーレン、グラフェン等が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら無機充填材を2種類以上併用することも可能である。なかでも炭酸カルシウム、カーボンブラック、黒鉛が好ましい。
【0025】
その他の添加剤としては、例えば、シラン化合物(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランや、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシランや、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシランや、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルエチルジメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルエチルジエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリクロロシラン等のイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランや、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン化合物、および、γ-ヒドロキシプロピルトリメトキシシランや、γ-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン等の水酸基含有アルコキシシラン化合物等)や、酸化防止剤および耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、リン系、ホスファイト系、アミン系、硫黄系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、ステアラート、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、着色用カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p-オキシ安息香酸オクチル、N-ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、燐酸エステル、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂、または、これらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、熱安定剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウムなどの滑剤、ビスフェノールA型などのビスフェノールエポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の強度向上材、紫外線防止剤や、着色剤、難燃剤および発泡剤等の通常の添加剤が挙げられる。
【0026】
続いて、学習装置2の構成について
図2を参照して説明する。学習装置2は、繊維長分布予測装置3と電気的に接続されている。学習装置2は、学習用データを選択的に抽出して、抽出した学習用データを用いた学習によって学習モデルを生成して出力する。
【0027】
図2は、本実施形態に係る繊維長分布予測システムが備える学習装置の構成を示すブロック図である。学習装置2は、抽出部21、学習部22、制御部23および記憶部24を有する。
【0028】
抽出部21は、記憶部24に記憶されているデータから、対象の繊維強化樹脂組成物を構成する繊維状充填材の繊維長分布における、折損工程前後の繊維長分布が対応付いているデータを抽出する。すなわち、抽出されるデータは、繊維強化樹脂組成物における既知の繊維長分布データであって、折損工程前の繊維長分布と、折損工程後の繊維長分布とが対応付いている。なお、抽出部21は、入力装置5を介して入力された条件にしたがってデータを抽出してもよい。
抽出部21が抽出したデータセットは、折損工程前の繊維状充填材の繊維長分布を説明変数、折損工程後の繊維長分布を目的変数とする学習用データとして用いられる。
【0029】
ここで、既知の繊維長分布とは、過去に蓄積された、繊維強化樹脂組成物中の折損工程前後の繊維状充填材の繊維長の実測データからなる。繊維長分布は、例えば、繊維長を所定の範囲で区切った各区分に属する度数分布として扱う。繊維長分布として、繊維長の分散、偏差の値や、繊維状充填材の繊維長が何らかの統計分布に従う場合は、その分布を表すパラメータを用いてもよい。なお、繊維長分布のデータとして、繊維径の情報を含んでもよい。
【0030】
図3は、折損工程前の繊維長と、折損工程後の繊維長とについて説明するための図である。
図3の(a)に示すように、繊維強化樹脂組成物FP
1は、樹脂組成物P
1中に、複数の繊維状充填材F
1が含まれてなる。この繊維強化樹脂組成物は、射出成形等の折損工程を経ることで、樹脂組成物中の繊維状充填材の繊維長が短くなる。例えば、
図3の(a)に示す繊維強化樹脂組成物FP
1に対して折損工程を施すと、
図3の(b)に示す繊維強化樹脂組成物FP
2が得られる。この際、繊維強化樹脂組成物FP
2における樹脂組成物P
2中の繊維状充填材F
2の繊維長は、該工程前の樹脂組成物中の繊維状充填材(例えば繊維状充填材F
1)の繊維長よりも短くなる。なお、折損工程によってすべての繊維状充填材が短くなるとは限らず、また、すべてが同じ長さになるとも限らない。樹脂組成物中の繊維状充填材は、折損工程によって工程前の繊維長以下、かつ分布のピークが、繊維長が短くなる側に遷移する。
【0031】
また、樹脂組成物中の繊維状充填材は、繊維長の分布が、折損工程の繰り返しによって、繊維長が短くなる側に遷移する。
図4は、折損工程前の繊維長分布と、リサイクル1回目の折損工程後の予測繊維長分布とについて説明するための図である。
図5は、リサイクル1回目後の折損工程前の繊維長分布と、リサイクル2回目の折損工程後の予測繊維長分布とについて説明するための図である。
図6は、リサイクル2回目後の折損工程前の繊維長分布と、リサイクル3回目の折損工程後の予測繊維長分布とについて説明するための図である。
図4~
図6は、同一の繊維強化樹脂組成物に対して折損工程を繰り返した結果の一例を示すものであり、繊維長を所定の範囲毎に区切った各区分(0~0.5)に属する度数分布を示している。ここで、
図4の(b)と
図5の(a)とは同じ度数分布を示している。また、
図5の(b)と
図6の(a)とは同じ度数分布を示している。
図4~
図6に示すように、折損工程を繰り返す、すなわち、繊維強化樹脂組成物のリサイクルを繰り返すことによって、度数分布のピークが、区分が小さい方に遷移する。すなわち、折損工程を繰り返すことによって、繊維長の分布が短い方に遷移する。
【0032】
学習部22は、折損工程前後の繊維状充填材の繊維長の実測データを、折損工程前の繊維状充填材の繊維長を説明変数、折損工程後の繊維状充填材の繊維長を目的変数とした学習用データを記憶部24から読み出し、該学習用データを用いて機械学習を行って、学習モデルを生成する。以下、学習部22が生成する学習モデルの一例について説明する。
【0033】
〔平均、分散、分布形状を仮定したパラメータを予測する方法〕
学習部22で行う学習としては、繊維長分布を確率分布の足し合わせとしてそれぞれのパラメータに対する学習モデルを予測モデルとして構築する手法が挙げられる。具体的には、折損工程前および折損工程後の繊維状充填材の繊維長分布を、複数の互いに異なる確率分布の足し合わせとして近似して、折損工程前のそれぞれの確率分布に固有のパラメータと、それぞれの確率分布の強度比と、をそれぞれ説明変数、折損工程後のそれぞれの確率分布に固有のパラメータと、それぞれの確率分布の強度比と、をそれぞれ目的変数として予測モデルを構築する。この場合、得られた予測モデルによって得られた予測値を用いてそれぞれの予測確率分布を求め、強度比の予測値に従って足し合わせることで、折損工程後の繊維長分布を予測することができる。
また、予測精度を向上させるために、説明変数として、繊維強化樹脂組成物の処方情報を加えてもよい。
【0034】
<確率分布の種類>
また、上記した確率分布としては、例えばγ分布、β分布、t分布、F分布、χ2分布、正規分布などが挙げられる。
【0035】
[度数分布を用いた機械学習(目的変数の数Nだけモデル構築)]
学習部22は、折損工程前の繊維長分布を度数分布で表した折損工程前の繊維長ベクトル(N1(0)、N2(0)、・・・、NN(0))の各項それぞれを説明変数、折損工程後の繊維長ベクトル(予測値)(N1(1)、N2(1)、・・・、NN(1))の各項それぞれを目的変数とした機械学習を行い、N1(1)、N2(1)、・・・、NN(1)の各項それぞれに対するN個の予測モデルを構築する。この場合、N1(1)、N2(1)、・・・、NN(1)の各項それぞれを目的変数とする予測モデルから得られたそれぞれの予測値を合わせて折損後の繊維長ベクトル(予測値)(N1(1)、N2(1)、・・・、NN(1))を得ることができる。
【0036】
[度数分布を用いた機械学習(目的変数が多次元に対応したモデルの構築)]
学習部22は、度数分布で表した折損工程前の繊維長ベクトル(N1(0)、N2(0)、・・・、NN(0))を説明変数として、折損工程後の繊維長ベクトル(予測値)(N1(1)、N2(1)、・・・、NN(1))を多次元の目的変数とした機械学習を行い、繊維長ベクトルを直接予測する1つの繊維長分布予測モデルを構築する。
【0037】
学習部22が行う機械学習は、公知の学習方法を採用することができる。機械学習に採用される統計モデルとしては、例えば、単純線形回帰モデル、Ridge回帰、Lasso回帰、Elastic Net回帰、一般加法モデル、ランダムフォレスト回帰、ルールフィット回帰、勾配ブースティング木、エクストラツリー、サポートベクトル回帰、ガウス過程回帰、k最近傍法による回帰、カーネルリッジ回帰、ニューラルネットワーク等が挙げられる。特に多次元の目的変数に対応する統計モデルとしては、ランダムフォレスト回帰、ルールフィット回帰、勾配ブースティング木、エクストラツリー、ニューラルネットワーク等が挙げられる。また、事前に別の学習用データに対して作成された予測モデルを、抽出部21が抽出した学習用データに対して再学習させる、いわゆる転移学習を実行してもよい。
【0038】
また、学習部22が正則化を用いた学習によって学習済みモデルを生成する場合、学習部22は、学習モデルのハイパーパラメータの候補値を複数与え、与えられたハイパーパラメータの候補値のそれぞれに対して学習を実行することで、学習モデルを生成し、記憶部24に格納する。その後、学習部22は、各候補値によって学習して得たモデルに対し、学習用データを用いて、交差検証またはホールドアウト検証による予測誤差を算出し、最小の予測誤差を与える学習モデルを選択する。なお、ここでいうハイパーパラメータは、学習部22が学習を行うためにあらかじめ設定しておくパラメータであり、例えば正則化の係数などを含む。また、ニューラルネットワークを用いた学習モデルの場合のハイパーパラメータには、ニューラルネットワークの層の数なども含まれる。
【0039】
また、学習部22で行う学習のうち度数分布を用いて学習モデルを生成する例として、繊維長予測行列が挙げられる。この場合、学習部22は、下式(1)のように、折損工程後の繊維長の予測を行うための繊維長予測行列として、右辺第1項の行列を生成する。この繊維長予測行列は、折損工程前の繊維長ベクトルを、折損工程後の繊維長ベクトルの予測値に変換するものである。なお、P
11、P
12、P
13、P
21、P
22、P
23、P
31、P
32、P
33、・・・は、繊維長算出のための重みであり、学習によって設定、更新される。
下式(1)では、折損工程前の繊維長ベクトル(N
1(0)、N
2(0)、・・・、N
N(0))と、繊維長予測行列との積を求めることによって、折損工程後の繊維長ベクトル(予測値)(N
1(1)、N
2(1)、・・・、N
N(1))が得られる。ここで、Nは区分における度数を示し、区分(1、2、・・・、N)ごとの繊維長の度数(N
1、N
2、・・・N
N)が得られる。繊維強化樹脂組成物がリサイクルによってm+1回の同じ折損工程を経る場合には、最初の繊維長ベクトルに対して繊維長予測行列との積の計算をm+1回繰り返すことで、その時の繊維長ベクトルを予測することができる。
【数1】
【0040】
この際、学習部22は、学習用データにおける繊維強化樹脂組成物中の繊維状充填材の繊維長分布を行列変換することによって得られる折損工程後の繊維長ベクトルの予測値と、繊維強化樹脂組成物に対応する折損工程後の繊維長ベクトルの値とから求められる予測誤差が最小となるような繊維長予測行列の各項(P11、P12、P13、P21、P22、P23、P31、P32、P33、・・・)を決定する。
【0041】
図7は、折損工程前の繊維長分布と、折損工程後の予測繊維長分布について説明するための図である。折損工程前の繊維長分布(
図7の(a)参照)を、学習モデルに入力することによって、折損工程後の繊維長分布の予測値が、区分に対する度数分布として得られる(
図7の(b)参照)。
【0042】
図2に戻り、制御部23は、学習装置2の動作を統括して制御する。
【0043】
記憶部24は、学習装置2を動作させるための各種プログラム、および学習装置2の動作に必要な各種パラメータ等を含むデータを記憶する。各種プログラムには、学習モデルを生成するための学習用データを生成する学習用データ生成プログラム、学習用データを用いて学習して学習モデルを生成する学習モデル生成プログラムも含まれる。各種パラメータには、ハイパーパラメータや、学習部22が学習することによって取得したパラメータ等が含まれる。また、記憶部24は、学習用データを構成するためのデータ(例えば、上述した配合比率や機械物性値)を記憶する。
【0044】
記憶部24は、各種プログラム等があらかじめインストールしたROM(Read Only Memory)、および各処理の演算パラメータやデータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等を用いて構成される。
【0045】
各種プログラムは、HDD、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、Blu-ray(登録商標)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。ここでいう通信ネットワークは、例えば既存の公衆回線網、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等を用いて構成されるものであり、有線、無線を問わない。
【0046】
以上の機能構成を有する学習装置2は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の1または複数のハードウェアを用いて構成されるコンピュータである。
【0047】
続いて、繊維長分布予測装置3について、
図8を参照して説明する。
図8は、本実施形態に係る繊維長分布予測システムが備える繊維長分布予測装置の構成を示すブロック図である。繊維長分布予測装置3は、学習装置2および表示装置4と電気的に接続されている。繊維長分布予測装置3は、予測部31、制御部32および記憶部33を有する。
【0048】
繊維長分布予測装置3は、予測候補となる繊維強化樹脂組成物の折損工程前の繊維長分布と、学習装置2から取得した学習モデルとを用いて、折損工程後の繊維状充填材の繊維長分布を予測する。
【0049】
図9は、本実施形態に係る繊維長分布予測システムが行う繊維長分布予測処理の流れを説明するための図である。予測部31は、学習装置2から繊維長分布予測モデル100を取得する。予測部31は、繊維強化樹脂組成物の折損工程前の繊維状充填材の繊維長の分布(折損前繊維長分布)IPを、繊維長分布予測モデル100に入力することによって、予測値である、折損工程後の繊維長の分布(折損後繊維長分布)OPをそれぞれ出力する。
【0050】
制御部32は、繊維長分布予測装置3の動作を統括して制御する。制御部32は、予測部31の処理結果(予測結果)を表示装置4に表示させる表示制御部321を有する。表示制御部321は、予測結果に加えて、折損工程前の繊維長分布や、繊維強化樹脂組成物の情報等を表示装置4に表示させてもよい。
【0051】
記憶部33は、繊維長分布予測装置3を動作させるための各種プログラム、および繊維長分布予測装置3の動作に必要な各種パラメータ等を含むデータを記憶する。各種プログラムには、学習モデルを用いて実行される繊維長分布予測プログラムも含まれる。記憶部33は、各種プログラム等があらかじめインストールされたROM、および各処理の演算パラメータやデータ等を記憶するRAM、HDD、SSD等を用いて構成される。
【0052】
各種プログラムは、HDD、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、Blu-ray(登録商標)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。また、繊維長分布予測装置3が、通信ネットワークを介して各種プログラムを取得することも可能である。ここでいう通信ネットワークは、例えば既存の公衆回線網、LAN、WAN等を用いて構成されるものであり、有線、無線を問わない。
【0053】
以上の機能構成を有する繊維長分布予測装置3は、CPU、GPU、ASIC、FPGA等の1または複数のハードウェアを用いて構成されるコンピュータである。
【0054】
表示装置4は、液晶や有機EL(Electro Luminescence)などからなるディスプレイであり、繊維長分布予測装置3と電気的に接続されている。表示装置4は、表示制御部321の制御のもとで繊維長分布予測装置3から出力される表示用データを取得して表示する。なお、表示装置4がスピーカ等の音声出力機能を有してもよい。
【0055】
入力装置5は、予測対象とする折損工程前繊維長分布等の情報を含む各種情報の入力を受け付け、受け付けた情報を学習装置2および繊維長分布予測装置3に出力する。入力装置5は、キーボード、マウス、マイク、タッチパネル等のユーザインタフェースを用いて構成される。
【0056】
次に、学習装置2が行う学習処理の流れについて、
図10を参照して説明する。
図10は、本実施形態に係る学習装置が行う学習処理の概要を示すフローチャートである。まず、学習装置2は、記憶部24を参照して、学習に用いるデータセットを抽出する(ステップS11)。ここでは、抽出部21が、折損工程前の繊維長分布と、折損工程後の繊維長分布とを組とするデータセットを抽出する。例えば、
図4~
図6に示すような繊維長分布が抽出される。このデータセットは、学習モデル生成のための学習用データに相当する。
【0057】
この際、抽出部21は、繊維強化樹脂組成物の種別ごとに繊維長分布を抽出してもよいし、繊維強化樹脂組成物の情報が付与されたデータセットのすべてを抽出してもよい。繊維強化樹脂組成物の種別が区別でき、その種別に応じた学習ができるデータセットであれば、抽出するデータセットの形式は問わない。
【0058】
学習部22は、ステップS11において生成された学習用データを用いて機械学習を実行することによって学習モデルを生成する(ステップS12)。
【0059】
その後、繊維長分布予測装置3において、繊維強化樹脂組成物の折損工程後の繊維長分布を予測する。
図11は、本実施形態に係る繊維長分布予測装置が行う繊維長分布予測処理の概要を示すフローチャートである。予測部31は、学習装置2から学習モデルである繊維長分布予測モデルを取得し、折損工程前の繊維長分布を、繊維長分布予測モデルに入力する(ステップS21)。
【0060】
繊維長分布が繊維長分布予測モデルに入力されると、折損工程後の繊維長分布(予測値)が出力される(ステップS22)。予測部31は、出力された予測値に基づいて、折損後の繊維長分布(予測値)に関する予測結果を生成する。
【0061】
その後、例えば、表示制御部321は、予測部31から予測結果を取得すると、この予測結果を表示装置4に出力し、該表示装置4に予測結果を表示させる表示制御を行う。表示装置4は、折損工程後の繊維長分布(予測値)を表示する。
【0062】
以上説明した実施形態では、折損工程前の繊維長分布と、折損工程後の繊維長分布とをもとに学習モデルを生成し、該学習モデルを用いて、折損工程後の繊維長分布を予測する。この際、予測する繊維強化樹脂組成物の折損工程前の繊維長分布を学習モデルに入力するのみで折損工程後の繊維長分布が得られる。本実施形態によれば、折損工程後の繊維長分布を簡易かつ高精度に得ることができる。
【0063】
なお、実施形態では、説明変数が折損前の繊維長分布であるものとして説明したが、これらのほか、製造時のプロセス条件値等の他の物理量をさらに含んでもよい。また、繊維強化樹脂組成物中に含まれる樹脂や添加剤といった各成分の化学構造に由来する寄与が想定される場合には、各成分の化学構造式を元に算出される特定の官能基量や部分構造の個数やそれに関連する値、または各成分の化学構造から計算が可能な分子量、または沸点等の物性値を含む物理量を説明変数として用いてもよい。
【0064】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は、上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、繊維長分布予測装置が学習部の機能を備えてもよい。この場合、繊維長分布予測装置は、予測対象の繊維長分布(予測値)を生成することに加え、学習モデルを逐次更新する。
【符号の説明】
【0065】
1 繊維長分布予測システム
2 学習装置
3 繊維長分布予測装置
4 表示装置
5 入力装置
21 抽出部
22 学習部
31 予測部
23、32 制御部
24、33 記憶部
321 表示制御部