(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050521
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】表面処理剤
(51)【国際特許分類】
C03C 17/30 20060101AFI20240403BHJP
C09K 3/18 20060101ALN20240403BHJP
C07F 7/18 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
C03C17/30 A
C09K3/18 104
C07F7/18 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023169482
(22)【出願日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2022156805
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】木村 真理
(72)【発明者】
【氏名】野村 孝史
(72)【発明者】
【氏名】高野 真也
【テーマコード(参考)】
4G059
4H020
4H049
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AA08
4G059AC22
4G059AC30
4G059FA05
4G059FA22
4G059FB01
4H020BA31
4H049VN01
4H049VP10
4H049VQ79
4H049VR22
4H049VR42
4H049VU28
(57)【要約】
【課題】摩擦耐久性に優れた処理表面を有する処理基材の提供。
【解決手段】ガラス基材と、該ガラス基材の表面を式(1)(式中、各記号は明細書中の記載と同意義である。)で表される化合物で処理して形成されるシロキサン層と、を含む物品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基材と、該ガラス基材の表面を式(1):
【化1】
[式中:
R
1は、C
mH
2m+1であり、
mは、1以上の整数であり、
R
2は、C
nH
2n+1であり、
nは、1以上の整数であり、
mとnの少なくとも一方は、4以上である。]
で表される化合物で処理して形成されるシロキサン層と、を含む物品。
【請求項2】
前記シロキサン層は、
【化2】
[式中:
R
1は、C
mH
2m+1であり、
mは、1以上の整数であり、
R
2は、C
nH
2n+1であり、
nは、1以上の整数であり、
mとnの少なくとも一方は、4以上である。]
で表される末端構造を有するポリマーの層である、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記シロキサン層は、
【化3】
[式中:
R
11は、C
sH
2s+1であり、
sは、1以上の整数であり、
R
12は、C
tH
2t+1であり、
tは、1以上の整数であり、
R
13は、C
1-18アルキル基又はアリール基である。]
で表される末端構造を有するポリマーの層である、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
mは、1~24の整数であり、nは、1~24の整数である、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
mは、1であり、nは、5~12の整数である、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記シロキサン層の厚みは、4nm以上である、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記基材と前記シロキサン層との間に酸化ケイ素を含む中間層を含む、請求項1に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面処理された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アルキルクロロシランおよび溶剤を含有する撥水処理剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の撥水処理剤での処理により得られる処理基材は、摩擦耐久性が十分とは言えない。
【0005】
本開示は、摩擦耐久性に優れた処理表面を有する処理基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、下記の態様を含む。
[1] ガラス基材と、該ガラス基材の表面を式(1):
【化1】
[式中:
R
1は、C
mH
2m+1であり、
mは、1以上の整数であり、
R
2は、C
nH
2n+1であり、
nは、1以上の整数であり、
mとnの少なくとも一方は、4以上である。]
で表される化合物で処理して形成されるシロキサン層と、を含む物品。
[2] 前記シロキサン層は、
【化2】
[式中:
R
1は、C
mH
2m+1であり、
mは、1以上の整数であり、
R
2は、C
nH
2n+1であり、
nは、1以上の整数であり、
mとnの少なくとも一方は、4以上である。]
で表される末端構造を有するポリマーの層である、上記[1]に記載の物品。
[3] 前記シロキサン層は、
【化3】
[式中:
R
11は、C
sH
2s+1であり、
sは、1以上の整数であり、
R
12は、C
tH
2t+1であり、
tは、1以上の整数であり、
R
13は、C
1-18アルキル基又はアリール基である。]
で表される末端構造を有するポリマーの層である、上記[1]に記載の物品。
[4] mは、1~24の整数であり、nは、1~24の整数である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の物品。
[5] mは、1であり、nは、5~12の整数である、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の物品。
[6] 前記シロキサン層の厚みは、4nm以上である、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の物品。
[7] 前記基材と前記層との間に酸化ケイ素を含む中間層を含む、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の物品。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、摩擦耐久性に優れた処理表面を有する処理基材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の物品は、ガラス基材と、該ガラス基材の表面を式(1):
【化4】
[式中:
R
1は、C
mH
2m+1であり、
mは、1以上の整数であり、
R
2は、C
nH
2n+1であり、
nは、1以上の整数であり、
mとnの少なくとも一方は、4以上である。]
で表される化合物で処理して形成されるシロキサン層と、を含む。
【0009】
<基材>
本開示の物品における基材は、ガラス基材である。ガラス基材は、特に限定されず、種々のガラス基材を用いることができる。
【0010】
上記ガラスとしては、例えば、サファイアガラス、ソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、クリスタルガラス、石英ガラスが好ましく、化学強化したソーダライムガラス、化学強化したアルカリアルミノケイ酸塩ガラス、及び化学結合したホウ珪酸ガラスが挙げられる。なかでも、Siを含むガラス、例えばソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、クリスタルガラス、石英ガラスが好ましく、化学強化したソーダライムガラス、化学強化したアルカリアルミノケイ酸塩ガラス、及び化学結合したホウ珪酸ガラスが好ましい。
【0011】
一の態様において、本開示の物品は、ガラスとシロキサン層との間に、酸化ケイ素を含む中間層を含んでいてもよい。かかる中間層を設けることにより、ガラスとシロキサン層との密着性が向上し、耐久性が向上する。
【0012】
例えば、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面を構成する材料は、光学部材用材料であってよい。また、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面(最外層)に何らかの層(又は膜)、例えばハードコート層や反射防止層などが形成されていてもよい。反射防止層には、単層反射防止層及び多層反射防止層のいずれを使用してもよい。反射防止層に使用可能な無機物の例としては、SiO2、SiO、ZrO2、TiO2、TiO、Ti2O3、Ti2O5、Al2O3、Ta2O5、Ta3O5,Nb2O5、HfO2、Si3N4、CeO2、MgO、Y2O3、SnO2、MgF2、WO3などが挙げられる。これらの無機物は、単独で、又はこれらの2種以上を組み合わせて(例えば混合物として)使用してもよい。多層反射防止層とする場合、その最外層にはSiO2及び/又はSiOを用いることが好ましい。製造すべき物品が、タッチパネル用の光学ガラス部品である場合、透明電極、例えば酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛などを用いた薄膜を、基材(ガラス)の表面の一部に有していてもよい。また、基材は、その具体的仕様等に応じて、絶縁層、粘着層、保護層、装飾枠層(I-CON)、霧化膜層、ハードコーティング膜層、偏光フィルム、相位差フィルム、及び液晶表示モジュールなどを有していてもよい。
【0013】
上記基材の形状は、特に限定されず、例えば、板状、フィルム、その他の形態であってよい。また、シロキサン層を形成すべき基材の表面領域は、基材表面の少なくとも一部であればよく、製造すべき物品の用途及び具体的仕様等に応じて適宜決定され得る。
【0014】
一の態様において、かかる基材としては、少なくともその表面部分が、水酸基を元々有する材料から成るものであってよい。基材に何らかの前処理を施すことにより、基材の表面に水酸基を導入したり、増加させたりすることができる。かかる前処理の例としては、プラズマ処理(例えばコロナ放電)や、イオンビーム照射が挙げられる。プラズマ処理は、基材表面に水酸基を導入又は増加させ得ると共に、基材表面を清浄化する(異物等を除去する)ためにも好適に利用され得る。また、かかる前処理の別の例としては、炭素-炭素不飽和結合基を有する界面吸着剤をLB法(ラングミュア-ブロジェット法)や化学吸着法等によって、基材表面に予め単分子膜の形態で形成し、その後、酸素や窒素等を含む雰囲気下にて不飽和結合を開裂する方法が挙げられる。
【0015】
<式(1)で表される化合物>
mは、1以上の整数であり、nは、1以上の整数であり、mとnの少なくとも一方は、4以上である。
【0016】
一の態様において、mは、1~24の整数であり、nは、1~24の整数である。
【0017】
mとnの和は、5以上であり、好ましくは7以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは12以上であり得る。mとnの和は、好ましくは26以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは16以下であり得る。
【0018】
mとnの和は、例えば、5~26、6~20、6~16、8~16、10~16、又は12~16であり得る。
【0019】
好ましい態様において、mは、1~3、好ましくは1又は2、より好ましくは1であり、nは、4~24、好ましくは5~18、より好ましくは5~12、さらに好ましくは6~12、さらにより好ましくは8~12であり得る。
【0020】
上記CmH2m+1は、炭素数m個のアルキル基である。上記CnH2n+1は、炭素数n個のアルキル基である。
【0021】
上記アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。一の態様において、上記アルキル基は、直鎖である。別の態様において、上記アルキル基は、分枝鎖である。また、R1とR2の一方が直鎖で、他方が分枝鎖であってもよい。
【0022】
式(1)で表される化合物としては、例えば、ジクロロジブチルシラン、ジクロロジペンチルシラン、ジクロロジヘキシルシラン、ジクロロジ-n-オクチルシラン、ジクロロブチルメチルシラン、ジクロロペンチルメチルシラン、ジクロロヘキシルメチルシラン、ジクロロ(メチル)n-オクチルシラン、ジクロロデシルメチルシラン、ジクロロドデシルメチルシラン、ジクロロメチルテトラデシルシラン、ジクロロメチルヘキサデシルシラン、ジクロロメチルオクタデシルシラン等が挙げられる。式(1)で表される化合物は、好ましくはジクロロ(メチル)n-オクチルシラン、ジクロロデシルメチルシラン、又はジクロロドデシルメチルシラン、より好ましくはジクロロデシルメチルシラン、又はジクロロドデシルメチルシランであり得る。
【0023】
上記シロキサン層は、上記基材表面を上記式(1)で表される化合物で処理することにより得られる層である。上記シロキサン層は、-Si-O-Si-構造を含む層を意味する。上記シロキサン層は、ガラス基材に結合した複数のシロキサン鎖がガラス基材表面を覆うことにより形成され得る。これらのシロキサン鎖は、互いに独立していても、連結していてもよい。上記シロキサン層が主に式(1)で表される化合物から形成される場合、式(1)で表される化合物は二官能性であることから、ガラス基材から直線上に形成されたシロキサン鎖が独立して存在し得る。
【0024】
典型的には、上記シロキサン層は、下記構造を含む。
【化5】
【0025】
一の態様において、上記シロキサン層は、
【化6】
[式中:
R
1は、C
mH
2m+1であり、
mは、1以上の整数であり、
R
2は、C
nH
2n+1であり、
nは、1以上の整数であり、
mとnの少なくとも一方は、4以上である。]
で表される末端構造を有するポリマーの層であり得る。OH末端は、例えば、Cl末端が水と反応することにより生成し得る。
【0026】
一の態様において、上記シロキサン層は、
【化7】
[式中:
R
11は、C
sH
2s+1であり、
sは、1以上の整数であり、
R
12は、C
tH
2t+1であり、
tは、1以上の整数であり、
R
13は、C
1-18アルキル基又はアリール基である。]
で表される末端構造を有するポリマーの層であり得る。
【0027】
上記CsH2s+1は、炭素数s個のアルキル基である。上記CtH2t+1は、炭素数t個のアルキル基である。
【0028】
sは、好ましくは1~24、より好ましくは1~18、さらに好ましくは1~12、さらにより好ましくは1~6、特に好ましくは1~3であり得る。
【0029】
tは、好ましくは1~24、より好ましくは1~18、さらに好ましくは1~12、さらにより好ましくは1~6、特に好ましくは1~3であり得る。
【0030】
一の態様において、sとtは、同じ整数であり得る。
【0031】
R11及びR12におけるアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。
【0032】
R13におけるC1-18アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。
【0033】
上記C1-18アルキル基は、好ましくはC1-12アルキル基、より好ましくはC1-6アルキル基、例えばC1-4アルキル基、C4-6アルキル基等であり得る。具体的な、C1-6アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、3-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、及び2,3-ジメチルブタンが挙げられる。
【0034】
上記末端構造は、好ましくは、下記の基であり得る。
【化8】
【0035】
上記C1-18アルキル基は、1個又はそれ以上のハロゲンにより置換されていてもよい。
【0036】
上記アリール基は、好ましくはC6-12アリール基であり、より好ましくはフェニル基、又はナフチル基、さらに好ましくはフェニル基であり得る。
【0037】
上記アリール基は、1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。かかる置換基としては、ハロゲン、又はC1-6アルキル等が挙げられる。好ましくは、上記アリール基は、非置換である。
【0038】
上記シロキサン層の厚みは、好ましくは2nm以上、より好ましくは4nm以上、さらに好ましくは6nm以上、さらにより好ましくは10nm以上であり得る。上記シロキサン層の厚みは、好ましくは300nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下であり得る。
【0039】
一の態様において、上記シロキサン層の厚みは、好ましくは2~300nm、より好ましくは4~100nm、さらに好ましくは4~50nmであり得る。
【0040】
上記シロキサン層の厚みは、エリプソメーター(J.A.Woollam社製)による分光エリプソメトリー法により測定することができる。
【0041】
上記シロキサン層の対水接触角は、好ましくは95°以上、より好ましくは100°以上であり得る。
【0042】
対水接触角は、水平に置いた基板にマイクロシリンジから水を2μL滴下し、滴下1秒後の静止画をビデオマイクロスコープで撮影することにより求めることができる。例えば、対水接触角は、全自動接触角計DropMaster700(協和界面科学社製)を用いて測定することができる。
【0043】
<処理基材の製造方法>
次に、本開示の物品の製造方法について説明する。
【0044】
まず、ガラス基材を準備する。ガラス基材は、前処理することが好ましい。
【0045】
ガラス基材の前処理としては、UV処理、O3処理などが挙げられる。
【0046】
次いで、ガラス基材を、式(1)で表される化合物での飽和蒸気処理に付す。
【0047】
飽和蒸気処理は、例えば、密閉容器内にガラス基材と式(1)で表される化合物を封入し、式(1)で表される化合物を気化させ、密閉容器内をその蒸気で飽和させて、ガラス基材を一定時間静置することにより行われる。
【0048】
飽和蒸気処理の温度は、特に限定されないが、室温~式(1)で表される化合物の沸点±20℃であり得、好ましくは20~150℃、好ましくは40~100℃、例えば50~80℃であり得る。
【0049】
飽和蒸気処理の処理時間は、特に限定されないが、好ましくは10分~24時間、好ましくは30分~16時間、例えば30分~6時間、30分~3時間、又は30分~90分であり得る。
【0050】
飽和蒸気処理の後に、後処理を行ってもよい。後処理としては、例えば加熱処理が挙げられる。
【0051】
加熱処理の温度は、特に限定されないが、好ましくは50~300℃、好ましくは100~200℃であり得る。
【0052】
加熱処理の処理時間は、特に限定されないが、好ましくは10秒~1時間、好ましくは30秒~10分、例えば1分~3分であり得る。
【0053】
さらに、シロキサン層におけるシロキサン化合物の末端をキャップする処理を行ってもよい。上記キャップ処理は、反応性の一官能性の化合物での処理、次いで、所望により加熱処理により行うことができる。
【0054】
反応性の一官能性の化合物は、例えば、下記式:
【化9】
[式中:
R
11は、C
sH
2s+1であり、
sは、1以上の整数であり、
R
12は、C
tH
2t+1であり、
tは、1以上の整数であり、
R
13は、C
1-18アルキル基又はアリール基である。]
で表される化合物が挙げられる。一官能性の化合物は、好ましくは、クロロトリメチルシランであり得る。
【0055】
上記一官能性の化合物での処理は、例えば、ガラス基材を、一官能性の化合物での飽和蒸気処理に付すことにより行うことができる。別法として、上記一官能性の化合物での処理は、化合物の塗布、例えば化合物それ自体、又は希釈液を、スピンコート、浸漬、スプレー塗布することにより行うことができる。
【0056】
薬剤処理の後に、後処理を行ってもよい。後処理としては、例えば加熱処理が挙げられる。
【0057】
加熱処理の温度は、特に限定されないが、好ましくは50~300℃、好ましくは100~200℃であり得る。
【0058】
加熱処理の処理時間は、特に限定されないが、好ましくは10秒~1時間、好ましくは1分~60分、例えば10~30分であり得る。
【0059】
以上、本開示の物品について詳述した。なお、本開示の物品は、上記で例示したものに限定されない。
【実施例0060】
以下、本開示について、実施例において説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
[飽和蒸気処理]
薬液を密閉容器内で気化させ、飽和蒸気としたのちに一定時間静置し、その蒸気によって、同包された基材の表面を処理した。
【0062】
実施例1
[飽和蒸気処理]
化学強化ガラス(コーニング社製、ゴリラガラス、厚さ0.7mm)をUV/O3処理した後、ジクロロ(メチル)n-オクチルシラン0.1mLを用いて、50℃で1時間飽和蒸気処理した。その後、ホットプレート上で150℃、1分間加熱し、表面処理層を得た。
【0063】
実施例2
[飽和蒸気処理]
飽和蒸気処理時間を2時間とした以外は、実施例1と同様の条件で成膜し、表面処理層を得た。
【0064】
実施例3
[飽和蒸気処理]
ジクロロ(メチル)n-オクチルシランの代わりにジクロロメチルドデシルシランを用いた以外は、実施例1と同様の条件で成膜し、表面処理層を得た。
【0065】
実施例4
[飽和蒸気処理]
飽和蒸気処理時間を45分とした以外は、実施例3と同様の条件で成膜し、表面処理層を得た。
【0066】
実施例5
[飽和蒸気処理]
飽和蒸気処理時間を30分とした以外は、実施例3と同様の条件で成膜し、表面処理層を得た。
【0067】
比較例1
[飽和蒸気処理]
実施例1の飽和処理条件を25℃、16時間、ジクロロ(メチル)n-オクチルシランの代わりにジクロロジメチルシランを用いた以外は同様の条件で成膜し、表面処理層を得た。
【0068】
比較例2
[薬液の塗布]
特開2010-159338号に記載の方法に従い、デシルトリクロロシラン(C10H21SiCl3)3質量部およびイソオクタン(沸点99℃)97質量部を配合して、均一に混合することにより、撥水処理剤を調製した。
次いで、化学強化ガラス(コーニング社製、ゴリラガラス、厚さ0.7mm)の表面に撥水処理剤を塗布し、続いて、5分経過後に、清浄なタオル
でガラス板の表面を拭き上げた。
その後、ガラス板を、常温で30分放置した。その後、ガラス板の表面を、水を含浸さ
せたスポンジで洗浄することにより、ガラス板を撥水処理した。
【0069】
<評価>
[耐摩耗性評価]
耐摩耗試験後の水の静的接触角が高いほど、摩擦による性能の低下が小さく、耐摩耗性に優れる。
(初期評価)
初期評価(摩擦回数0回)として、表面処理層の形成後、表面上の余剰分を拭き上げたのちに、水の静的接触角を測定した。
(耐摩耗性試験後の評価)
形成された表面処理層に対して、ラビングテスター(井元製作所社製)を用いて、下記条件で摩擦子を往復させた。所定の摩擦回数において、水の静的接触角を測定した。結果は下記表に示す。
【0070】
摩擦子:Rubber Eraser(Minoan社製)
接地面積:6mmφ
移動距離(片道):30mm
移動速度:2,400mm/分
荷重:1kg/6mmφ
【0071】