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特開2024-50534マススペクトロメトリーによるアポリポタンパク質Eアイソタイプの検出
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050534
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】マススペクトロメトリーによるアポリポタンパク質Eアイソタイプの検出
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20240403BHJP
   C12Q 1/37 20060101ALI20240403BHJP
   C12Q 1/60 20060101ALN20240403BHJP
   C12Q 1/61 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
G01N27/62 V ZNA
G01N27/62 X
C12Q1/37
C12Q1/60
C12Q1/61
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213576
(22)【出願日】2023-12-19
(62)【分割の表示】P 2022149733の分割
【原出願日】2018-07-31
(31)【優先権主張番号】62/539,478
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517308264
【氏名又は名称】クエスト ダイアグノスティックス インヴェストメンツ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー,ダレン
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ニゲル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】タンデム型質量分析などのマススペクトロメトリーにより、サンプル中のアポリポタンパク質E(APOE)の量を検出又は決定する方法を提供する。
【解決手段】サンプル中のアポリポタンパク質E(ApoE)表現型を決定する方法であって、サンプル中に存在するApoE対立遺伝子が、マススペクトロメトリーにより検出されたイオンの同一性から決定される方法が提供される。別の態様では、アルツハイマー病又は認知症を診断又は予測する方法が、本明細書に提供される。
【選択図】図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のアポリポタンパク質E(ApoE)表現型を決定する方法であって、
(a)サンプル中のApoEを精製すること、
(b)前記サンプル中のApoEをイオン化させて、ApoEの1つ又は複数のイオン
を生成すること、
(c)マススペクトロメトリーにより、ステップ(b)に由来するイオンを検出するこ

を含み、前記サンプル中に存在するApoE対立遺伝子が、ステップ(c)において検出
されたイオンの同一性から決定される方法。
【請求項2】
前記精製することが、液体クロマトグラフィーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体クロマトグラフィーが、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記精製することが、固相抽出法(SPE)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記イオン化が、エレクトロスプレーイオン化(ESI)を含む、請求項1に記載の方
法。
【請求項6】
前記イオン化が、ポジティブモードでイオン化することを含む、請求項1に記載の方法
【請求項7】
内部標準を添加することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記内部標準が、同位体で標識されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプルが、脳脊髄液(CSF)である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプルが、血清である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
精製前に、ApoEを消化することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
消化が、トリプシン消化を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
消化が、マイクロウェーブ消化を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記表現型が、ApoE2/ApoE2である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ApoE2/ApoE2表現型が、665.72±0.5、835.93±0.5
、866.99±0.5、及び982.08±0.5からなる群から選択される質量/電
荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記表現型が、ApoE2/ApoE3である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ApoE2/ApoE3表現型が、374.42±0.5、502.55±0.5
、665.72±0.5、835.93±0.5、866.99±0.5、及び982.
08±0.5からなる群から選択される質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存
在により決定される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記表現型が、ApoE2/ApoE4である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ApoE2/ApoE4表現型が、374.42±0.5、502.55±0.5
、649.74±0.5、665.72±0.5、835.93±0.5、866.99
±0.5、892.96±0.5、及び982.08±0.5からなる群から選択される
質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定される、請求項18に記載
の方法。
【請求項20】
前記表現型が、ApoE3/ApoE3である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記ApoE3/ApoE3表現型が、374.42±0.5、502.55±0.5
、866.99±0.5、及び982.08±0.5からなる群から選択される質量/電
荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記表現型が、ApoE3/ApoE4である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記ApoE3/ApoE4表現型が、374.42±0.5、502.55±0.5
、649.74±0.5、866.99±0.5、892.96±0.5、及び982.
08±0.5からなる群から選択される質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存
在により決定される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記表現型が、ApoE4/ApoE4である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
ApoE3/ApoE4表現型が、374.42±0.5、502.55±0.5、6
49.74±0.5、及び892.96±0.5からなる群から選択される質量/電荷の
比を有するフラグメントイオンの存在により決定される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ApoE4対立遺伝子の存在が、アルツハイマー病発症リスクの増加を示唆する、請求
項1に記載の方法。
【請求項27】
ApoE4/ApoE4対立遺伝子の存在が、アルツハイマー病発症リスクの増加を示
唆する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アポリポタンパク質Eの検出又は定量に関する。ある特定の態様では、本発
明は、マススペクトロメトリーによりアポリポタンパク質E又はその対立遺伝子を検出す
る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病は、高齢者集団に影響を及ぼす最も一般的な認知症の形態である。ア
ルツハイマー病は、認知能力、特に記憶及び学習の進行性の衰退により特徴付けられる。
アポリポタンパク質E(APOE)は、アルツハイマー病発症時の顕著な増加と関連する
。ヒトAPOE遺伝子は、3つの多形対立遺伝子、ε2、ε3、及びε4を有し、その結
果6つの異なる表現型:ε2/ε2、ε2/ε3、ε3/ε3、ε2/ε4、ε3/ε4
、及びε4/ε4をもたらす。
【0003】
現行の臨床診断法でアルツハイマー病を予測又は診断する場合、その正確度及び感度は
低い。アポリポタンパク質Eを検出するための正確で高感度なアッセイ法が必要とされる
。特に、様々なアイソフォームを検出するための正確で高感度なアッセイ法が必要とされ
る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書において、タンデム型質量分析などのマススペクトロメトリーにより、サンプ
ル中のアポリポタンパク質E(APOE)の量を検出又は決定する方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
特定の実施形態では、アポリポタンパク質Eの量を検出又は決定するための本明細書に
提供される方法は、(a)サンプル中のアポリポタンパク質Eを精製することと、(b)
前記サンプル中のアポリポタンパク質Eをイオン化させることと、(c)マススペクトロ
メトリーにより、アポリポタンパク質Eイオンの量を検出又は決定することとを含み、そ
の場合、アポリポタンパク質Eイオンの量は、サンプル中のアポリポタンパク質Eの量と
関連する。
【0006】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、サンプル中のアポリポタンパク質
E(ApoE)表現型を決定することを目的とし、前記方法は、(a)サンプル中のAp
oEを精製することと、(b)前記サンプル中のApoEをイオン化させて、1つ又は複
数のApoEのイオンを生成することと、(c)マススペクトロメトリーにより、ステッ
プ(b)に由来するイオンを検出することを含み、その場合、ステップ(c)において検
出されたイオンの同一性から、サンプル中に存在するApoE対立遺伝子が決定される。
【0007】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される精製工程は、液体クロマトグラフィー
を含む。いくつかの実施形態では、液体クロマトグラフィーは、高性能液体クロマトグラ
フィー(HPLC)を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、サンプル中のApoEは消化される。いくつかの実施形態で
は、ApoEはトリプシンにより消化される。いくつかの実施形態では、消化されたAp
oEはマイクロウェーブ処理される。いくつかの実施形態では、ApoEは高速酵素消化
マイクロウェーブ技術により消化される。
【0009】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される精製工程は、固相抽出法(SPE)を
含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、イオン化は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)を含む
。いくつかの実施形態では、イオン化は、ポジティブモードでイオン化させることを含む
。いくつかの実施形態では、イオン化は、ネガティブモードでイオン化させることを含む
【0011】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、内部標準を添加することを更
に含む。いくつかの実施形態では、内部標準は同位体標識されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法により決定される表現型は、Ap
oE2/ApoE2である。いくつかの実施形態では、表現型は、ApoE2/ApoE
3である。いくつかの実施形態では、表現型は、ApoE2/ApoE4である。いくつ
かの実施形態では、表現型は、ApoE3/ApoE3である。いくつかの実施形態では
、表現型は、ApoE3/ApoE4である。いくつかの実施形態では、表現型は、Ap
oE4/ApoE4である。
【0013】
いくつかの実施形態では、ApoE2/ApoE2は、555.15±0.5の質量/
電荷の比を有する前駆イオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、Apo
E2/ApoE2は、612.19±0.5の質量/電荷の比を有する前駆イオンの存在
により決定される。いくつかの実施形態では、ApoE2/ApoE2は、665.72
±0.5及び835.93±0.5からなる群から選択される質量/電荷の比を有するフ
ラグメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、ApoE2/Ap
oE2は、665.72±0.5及び835.93±0.5の質量/電荷の比を有するフ
ラグメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、ApoE2/Ap
oE2は、866.99±0.5及び982.08±0.5からなる群から選択される質
量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態
では、ApoE2/ApoE2は、866.99±0.5及び982.08±0.5の質
量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態
では、ApoE2/ApoE2は、665.72±0.5、835.93±0.5、86
6.99±0.5、及び982.08±0.5からなる群から選択される質量/電荷の比
を有するフラグメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、Apo
E2/ApoE2は、665.72±0.5、835.93±0.5、866.99±0
.5、及び982.08±0.5の質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在に
より決定される。
【0014】
いくつかの実施形態では、ApoE2/ApoE3は、555.15±0.5の質量/
電荷の比を有する前駆イオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、Apo
E2/ApoE3は、612.19±0.5の質量/電荷の比を有する前駆イオンの存在
により決定される。いくつかの実施形態では、ApoE2/ApoE3は、475.05
±0.5の質量/電荷の比を有する前駆イオンの存在により決定される。いくつかの実施
形態では、ApoE2/ApoE3は、665.72±0.5及び835.93±0.5
からなる群から選択される質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定
される。いくつかの実施形態では、ApoE2/ApoE3は、665.72±0.5及
び835.93±0.5の質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定
される。いくつかの実施形態では、ApoE2/ApoE3は、866.99±0.5及
び982.08±0.5からなる群から選択される質量/電荷の比を有するフラグメント
イオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、ApoE2/ApoE3は、
866.99±0.5及び982.08±0.5の質量/電荷の比を有するフラグメント
イオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、ApoE2/ApoE3は、
374.42±0.5及び502.55±0.5からなる群から選択される質量/電荷の
比を有するフラグメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、Ap
oE2/ApoE3は、374.42±0.5及び502.55±0.5の質量/電荷の
比を有するフラグメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、Ap
oE2/ApoE3は、374.42±0.5、502.55±0.5、665.72±
0.5、835.93±0.5、866.99±0.5、及び982.08±0.5から
なる群から選択される質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定され
る。いくつかの実施形態では、ApoE2/ApoE3は、374.42±0.5、50
2.55±0.5、665.72±0.5、835.93±0.5、866.99±0.
5、及び982.08±0.5の質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在によ
り決定される。
【0015】
いくつかの実施形態では、ApoE2/ApoE4は、555.15±0.5の質量/
電荷の比を有する前駆イオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、Apo
E2/ApoE4は、612.19±0.5の質量/電荷の比を有する前駆イオンの存在
により決定される。いくつかの実施形態では、ApoE2/ApoE4は、475.05
±0.5の質量/電荷の比を有する前駆イオンの存在により決定される。いくつかの実施
形態では、ApoE2/ApoE4は、503.56±0.5の質量/電荷の比を有する
前駆イオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、ApoE2/ApoE4
は、665.72±0.5及び835.93±0.5からなる群から選択される質量/電
荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、
ApoE2/ApoE4は、665.72±0.5及び835.93±0.5の質量/電
荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、
ApoE2/ApoE4は、866.99±0.5及び982.08±0.5からなる群
から選択される質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定される。い
くつかの実施形態では、ApoE2/ApoE4は、866.99±0.5及び982.
08±0.5の質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定される。い
くつかの実施形態では、ApoE2/ApoE4は、374.42±0.5及び502.
55±0.5からなる群から選択される質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存
在により決定される。いくつかの実施形態では、ApoE2/ApoE4は、374.4
2±0.5及び502.55±0.5の質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存
在により決定される。いくつかの実施形態では、ApoE2/ApoE4は、649.7
4±0.5及び892.96±0.5からなる群から選択される質量/電荷の比を有する
フラグメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、ApoE2/A
poE4は、649.74±0.5及び892.96±0.5の質量/電荷の比を有する
フラグメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、ApoE2/A
poE4は、374.42±0.5、502.55±0.5、649.74±0.5、6
65.72±0.5、835.93±0.5、866.99±0.5、892.96±0
.5、及び982.08±0.5からなる群から選択される質量/電荷の比を有するフラ
グメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、ApoE2/Apo
E4は、374.42±0.5、502.55±0.5、649.74±0.5、665
.72±0.5、835.93±0.5、866.99±0.5、892.96±0.5
、及び982.08±0.5の質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在により
決定される。
【0016】
いくつかの実施形態では、ApoE3/ApoE3は、612.19±0.5の質量/
電荷の比を有する前駆イオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、Apo
E3/ApoE3は、475.05±0.5の質量/電荷の比を有する前駆イオンの存在
により決定される。いくつかの実施形態では、ApoE3/ApoE3は、866.99
±0.5及び982.08±0.5からなる群から選択される質量/電荷の比を有するフ
ラグメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、ApoE3/Ap
oE3は、866.99±0.5及び982.08±0.5の質量/電荷の比を有するフ
ラグメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、ApoE3/Ap
oE3は、374.42±0.5及び502.55±0.5からなる群から選択される質
量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態
では、ApoE3/ApoE3は、374.42±0.5及び502.55±0.5の質
量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態
では、ApoE3/ApoE3は、374.42±0.5、502.55±0.5、86
6.99±0.5、及び982.08±0.5からなる群から選択される質量/電荷の比
を有するフラグメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、Apo
E3/ApoE3は、374.42±0.5、502.55±0.5、866.99±0
.5、及び982.08±0.5の質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在に
より決定される。
【0017】
いくつかの実施形態では、ApoE3/ApoE4は、612.19±0.5の質量/
電荷の比を有する前駆イオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、Apo
E3/ApoE4は、475.05±0.5の質量/電荷の比を有する前駆イオンの存在
により決定される。いくつかの実施形態では、ApoE3/ApoE4は、503.56
±0.5の質量/電荷の比を有する前駆イオンの存在により決定される。いくつかの実施
形態では、ApoE3/ApoE4は、866.99±0.5及び982.08±0.5
からなる群から選択される質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定
される。いくつかの実施形態では、ApoE3/ApoE4は、866.99±0.5及
び982.08±0.5の質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定
される。いくつかの実施形態では、ApoE3/ApoE4は、374.42±0.5及
び502.55±0.5からなる群から選択される質量/電荷の比を有するフラグメント
イオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、ApoE3/ApoE4は、
374.42±0.5及び502.55±0.5の質量/電荷の比を有するフラグメント
イオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、ApoE3/ApoE4は、
649.74±0.5及び892.96±0.5からなる群から選択される質量/電荷の
比を有するフラグメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、Ap
oE3/ApoE4は、649.74±0.5及び892.96±0.5の質量/電荷の
比を有するフラグメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、Ap
oE3/ApoE4は、374.42±0.5、502.55±0.5、649.74±
0.5、866.99±0.5、892.96±0.5、及び982.08±0.5から
なる群から選択される質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定され
る。いくつかの実施形態では、ApoE3/ApoE4は、374.42±0.5、50
2.55±0.5、649.74±0.5、866.99±0.5、892.96±0.
5、及び982.08±0.5の質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在によ
り決定される。
【0018】
いくつかの実施形態では、ApoE3/ApoE4は、475.05±0.5の質量/
電荷の比を有する前駆イオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、Apo
E3/ApoE4は、503.56±0.5の質量/電荷の比を有する前駆イオンの存在
により決定される。いくつかの実施形態では、ApoE3/ApoE4は、374.42
±0.5及び502.55±0.5からなる群から選択される質量/電荷の比を有するフ
ラグメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、ApoE3/Ap
oE4は、374.42±0.5及び502.55±0.5の質量/電荷の比を有するフ
ラグメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、ApoE3/Ap
oE4は、649.74±0.5及び892.96±0.5からなる群から選択される質
量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態
では、ApoE3/ApoE4は、649.74±0.5及び892.96±0.5の質
量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態
では、ApoE3/ApoE4は、374.42±0.5、502.55±0.5、64
9.74±0.5、及び892.96±0.5からなる群から選択される質量/電荷の比
を有するフラグメントイオンの存在により決定される。いくつかの実施形態では、Apo
E3/ApoE4は、374.42±0.5、502.55±0.5、649.74±0
.5、及び892.96±0.5の質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在に
より決定される。
【0019】
いくつかの実施形態では、ApoE4対立遺伝子の存在は、アルツハイマー病発症リス
クの増加を示唆する。いくつかの実施形態では、ApoE4/ApoE4対立遺伝子の存
在は、アルツハイマー病発症リスクの増加を示唆する。
【0020】
いくつかの実施形態では、総ApoEの定量は、485.06±0.5の質量/電荷の
比を有する前駆イオンを測定することを含む。いくつかの実施形態では、総ApoEの定
量は、489.51±0.5及び588.64±0.5から選択される質量/電荷の比を
有するフラグメントイオンを測定することを含む。
【0021】
特定の実施形態では、方法の定量限界は、10ng/mL未満、又はそれに等しい。い
くつかの実施形態では、方法の定量限界は、5ng/mL未満、又はそれに等しい。いく
つかの実施形態では、方法の定量限界は、4ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつ
かの実施形態では、方法の定量限界は、3ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつか
の実施形態では、方法の定量限界は、2ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの
実施形態では、方法の定量限界は、1ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実
施形態では、方法の定量限界は、0.5ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの
実施形態では、方法の定量限界は、0.2ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつか
の実施形態では、方法の定量限界は、0.1ng/mL未満、又はそれに等しい。
【0022】
いくつかの実施形態では、方法の検出限界は、5ng/mL未満、又はそれに等しい。
いくつかの実施形態では、方法の検出限界は、1ng/mL未満、又はそれに等しい。い
くつかの実施形態では、方法の検出限界は、0.5ng/mL未満、又はそれに等しい。
いくつかの実施形態では、方法の検出限界は、0.1ng/mL未満、又はそれに等しい
。いくつかの実施形態では、方法の検出限界は、0.05ng/mL未満、又はそれに等
しい。いくつかの実施形態では、方法の検出限界は、0.01ng/mL未満、又はそれ
に等しい。
【0023】
いくつかの実施形態では、ApoEは、マススペクトロメトリーの前に誘導体化されな
い。
【0024】
いくつかの実施形態では、ApoEは、マススペクトロメトリーの前に誘導体化される
【0025】
特定の実施形態では、サンプルは、体液である。いくつかの実施形態では、サンプルは
、脳脊髄液(CSF)である。いくつかの実施形態では、サンプルは、血漿又は血清であ
る。いくつかの実施形態では、サンプルは、全血である。いくつかの実施形態では、サン
プルは、唾液又は尿である。
【0026】
いくつかの実施形態では、方法は、サンプルをタンパク質除去するのに十分な量で、薬
剤をサンプルに添加することを含み得る。
【0027】
本明細書で用いる場合、別途記載がなければ、単数形「a」、「an」、及び「the
」は、複数形の意味を含む。従って、例えば、「1つのタンパク質」と言う場合、複数の
タンパク質分子も含まれる。
【0028】
本明細書で用いる場合、用語「精製」又は「精製すること」とは、サンプルから目的と
する分析物以外のすべての物質を除去することを意味しない。むしろ、精製とは、目的と
する分析物の検出を妨害する可能性がある、サンプル中のその他の成分と比較して、目的
とする1つ又は複数の分析物の量を富化させる手順を意味する。サンプルは、本明細書で
は、1つ又は複数の妨害物質、例えば、マススペクトロメトリーによる、選択されたAp
oEの親及び娘イオンの検出を妨害する1つ又は複数の物質の除去を可能にする様々な手
段により精製される。
【0029】
本明細書で用いる場合、用語「試験サンプル」とは、ApoEを含み得る任意のサンプ
ルを意味する。本明細書で用いる場合、用語「体液」とは、個人の身体から単離可能な任
意の液を意味する。例えば、「体液」として、血液、血漿、血清、胆汁、唾液、尿、涙、
汗等を挙げることができる。
【0030】
本明細書で用いる場合、用語「誘導体化すること」とは、2つの分子を反応させて新規
分子を形成することを意味する。誘導体化薬は、イソチオシアネート基、ジニトロフルオ
ロフェニル基、ニトロフェノキシカルボニル基、及び/又はフタルアルデヒド基等を含み
得る。
【0031】
本明細書で用いる場合、用語「クロマトグラフィー」とは、液体又は気体により搬送さ
れる化学的混合物が、静止した液相又は固相の周辺又は上方を流通する際に、化学的実体
の差動的分配の結果として成分に分離するプロセスを意味する。
【0032】
本明細書で用いる場合、用語「液体クロマトグラフィー」又は「LC」とは、微細な物
質からなるカラムを通じて、又はキャピラリー通路を通じて流体が均一に浸透する際に、
流体の溶液の1つ又は複数の成分が選択的に遅延するプロセスを意味する。遅延は、1つ
又は複数の固定相とバルク液(すなわち、移動相)の間で、この流体が固定相に対して相
対的に移動する際に生ずる、混合物中の成分の分配に起因する。「液体クロマトグラフィ
ー」の例として、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)、高性能液体クロマトグラフ
ィー(HPLC)、及び高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)が挙げられる。
【0033】
本明細書で用いる場合、用語「高性能液体クロマトグラフィー」又は「HPLC」とは
、固定相、一般的には稠密充填カラムを通じて、加圧条件下で移動相に力を加えることに
より、分離度が増加する液体クロマトグラフィーを意味する。
【0034】
本明細書で用いる場合、用語「高乱流液体クロマトグラフィー」又は「HTLC」とは
、分離を実施する基本原理として、カラム充填材を通じてアッセイされる物質の乱流を活
用するクロマトグラフィーの一形態を意味する。HTLCは、マススペクトロメトリーに
よる分析前に、2つの無名の薬物を含有するサンプルを調製するのに適用されてきた。例
えば、Zimmerら、J.Chromatogr.A854巻:23~35頁(199
9年)を参照;HTLCについて更に説明する米国特許第5,968,367号、同第5
,919,368号、同第5,795,469号、及び同第5,772,874号も参照
。当業者は「乱流」について理解している。流体がゆっくりとスムーズに流れる場合、こ
の流れは「層流」と呼ばれる。例えば、HPLCカラムを通じて、低い流速で移動する流
体は、層流である。層流内では、流体中の粒子の動きは規律正しく、粒子は直線的に移動
するのが一般的である。より高速では、水の慣性力が流体の摩擦力を上回り、その結果乱
流が生ずる。不規則な境界と接触しない流体は、摩擦により低速化した、又は不均等な表
面により向きが変わった流体を「追い越す」。流体が乱れた状態で流れるとき、ぐるぐる
渦巻いて(又は渦状に)流れ、流れが層状の場合よりもより「抵抗性」となる。どの場合
に流体の流れが層流又は乱流であるか判断するのに役立つ多くの参考資料が入手可能であ
る(例えば、Turbulent Flow Analysis:Measuremen
t and Prediction、P.S.Bernard&J.M.Wallace
、John Wiley&Sons、Inc.、(2000年);An Introdu
ction to Turbulent Flow Flow、Jean Mathie
u&Julian Scott、Cambridge University Pres
s(2001年))。
【0035】
本明細書で用いる場合、用語「ガスクロマトグラフィー」又は「GC」とは、サンプル
混合物が気化され、そして液体又は微粒子固体から構成される固定相を含有するカラムを
通じて移動するキャリヤガス(窒素又はヘリウム)の流れの中に注入され、そして化合物
の固定相に対する親和性に基づき、その構成化合物に分離されるクロマトグラフィーを意
味する。
【0036】
本明細書で用いる場合、用語「大型の粒子カラム」又は「抽出カラム」とは、約35μ
mを上回る平均粒子径を含有するクロマトグラフィーカラムを意味する。この文脈で使用
される場合、用語「約」とは±10%を意味する。好ましい実施形態では、カラムは、直
径約60μmの粒子を含有する。
【0037】
本明細書で用いる場合、用語「分析カラム」は、カラムから溶出するサンプル中の物質
について、分析物の存否又は量の決定を可能にするのに十分な分離を有効にする、十分な
クロマトグラフプレートを有するクロマトグラフィーカラムを意味する。そのようなカラ
ムは、更なる分析用として精製されたサンプルを取得するために、保持された物質を保持
されない物質から分離又は抽出するという一般的な目的を有する「抽出カラム」から多く
の場合区別される。この文脈で使用される場合、用語「約」とは、±10%を意味する。
好ましい実施形態では、分析カラムは、直径約4μmの粒子を含有する。
【0038】
本明細書で用いる場合、例えば「オンライン自動化方式」又は「オンライン抽出」とし
て使用されるような用語「オンライン」又は「インライン」とは、オペレーターの介入を
必要とせずに実施される手順を意味する。対照的に、用語「オフライン」とは、本明細書
で使用する場合、オペレーターの手動介入を必要とする手順を意味する。従って、サンプ
ルが沈殿処理され、そして次に上清が手作業によりオートサンプラーに負荷される場合、
沈殿及び負荷ステップは後続ステップからオフラインの状態にある。本方法の様々な実施
形態では、1つ又は複数のステップが、オンライン自動化方式で実施され得る。
【0039】
本明細書で用いる場合、用語「マススペクトロメトリー」又は「MS」とは、化合物を
その質量別に識別する分析技法を意味する。MSは、イオンを、その質量対電荷の比、又
は「m/z」に基づきフィルター処理、検出、及び測定する方法を意味する。MS技術は
、(1)化合物をイオン化して、荷電した化合物を形成すること;及び(2)荷電した化
合物の分子量を検出し、そして質量対電荷の比を計算すること一般的に含む。化合物は、
任意の適する手段によりイオン化及び検出され得る。「質量分析装置」は、イオン化装置
及びイオン検出器を一般的に含む。一般的に、1つ又は複数の目的とする分子がイオン化
され、イオンがその後マススペクトログラフィック装置に導入され、そこでは磁場と電場
の組合せにより、イオンは、質量(「m」)及び電荷(「z」)に依存する空間内の経路
をたどる。例えば、「Mass Spectrometry From Surface
s」と題する米国特許第6,204,500号、「Methods And Appar
atus for Tandem Mass Spectrometry」と題する同第
6,107,623号、「DNA Diagnostics Based On Mas
s Spectrometry」と題する同第6,268,144号、「Surface
-Enhanced Photolabile Attachment And Rel
ease For Desorption And Detection Of Ana
lytes」と題する同第6,124,137号、Wrightら、Prostate
Cancer and Prostatic Diseases、第2巻:264~76
頁(1999年);並びにMerchant及びWeinberger、Electro
phoresis、第21巻:1164~67頁(2000年)を参照。
【0040】
本明細書で用いる場合、用語「陰イオンモードでの操作」とは、陰イオンが生成及び検
出されるマススペクトロメトリー法を意味する。用語「陽イオンモードでの操作」とは、
本明細書で用いる場合、陽イオンが生成及び検出されるマススペクトロメトリー法を意味
する。
【0041】
本明細書で用いる場合、用語「イオン化」又は「イオン化すること」とは、1又は複数
のエレクトロンユニットに等しい正味の電荷を有する分析物イオンを生成するプロセスを
意味する。陰イオンは、1又は複数のエレクトロンユニットの正味負電荷を有するイオン
である一方、陽イオンは、1又は複数のエレクトロンユニットの正味正電荷を有するイオ
ンである。
【0042】
本明細書で用いる場合、用語「電子イオン化法」又は「EI法」とは、気相〔gaseous
phase〕又は気相〔vapor phase〕の目的とする分析物が電子の流れと相互作用する方法を
意味する。分析物への電子の衝撃は分析物イオンを産生し、次にマススペクトロメトリー
技術の対象となり得る。
【0043】
本明細書で用いる場合、用語「化学イオン化法」又は「CI法」とは、試薬気体(例え
ば、アンモニア)が電子の衝撃を受け、そして試薬気体イオンと分析物分子との相互作用
により、分析物イオンが形成される方法を意味する。
【0044】
本明細書で用いる場合、用語「高速原子衝撃法」又は「FAB法」とは、高エネルギー
原子(多くの場合Xe又はAr)のビームが、不揮発性サンプルに衝撃を与え、サンプル
に含まれる分子を脱離及びイオン化させる方法を意味する。試験サンプルは、粘稠性の液
体マトリックス、例えばグリセロール、チオグリセロール、m-ニトロベンジルアルコー
ル、18-クラウン-6-クラウンエーテル、2-ニトロフェニルオクチルエーテル、ス
ルホラン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミン等に溶解する。化合物又はサ
ンプルに適するマトリックスの選択は、実験に基づいたプロセスである。
【0045】
本明細書で用いる場合、用語「マトリックス支援レーザー脱離イオン化法」又は「MA
LDI」とは、光イオン化、プロトン化、脱プロトン化、及びクラスター崩壊を含む様々
なイオン化経路によって、不揮発性サンプルが、サンプル中の分析物を脱離及びイオン化
させるレーザー照射に曝露される方法を意味する。MALDIの場合、サンプルは、分析
物分子の脱離を促進するエネルギー吸収性マトリックスと混合される。
【0046】
本明細書で用いる場合、用語「表面増強レーザー脱離イオン化法」又は「SELDI法
」とは、光イオン化、プロトン化、脱プロトン化、及びクラスター崩壊を含む様々なイオ
ン化経路によって、非揮発性サンプルが、サンプル中の分析物を脱離及びイオン化させる
レーザー照射に曝露される別の方法を意味する。SELDIでは、サンプルは、1つ又は
複数の目的とする分析物を優先的に保持する表面に一般的に結合する。MALDIと同様
に、このプロセスも、イオン化を促進するために、エネルギー吸収性材料を利用し得る。
【0047】
本明細書で用いる場合、用語「エレクトロスプレーイオン化法」又は「ESI法」は、
溶液が短尺のキャピラリー管に沿って通過し、そのキャピラリー管の端部に正又は負の高
電位が印加される方法を意味する。溶液が管の端部に到達すると気化(噴霧化)されて、
溶媒蒸気内で溶液の非常に小さい液滴からなるジェット又はスプレーとなる。この液滴の
ミストは、凝結を防止し、溶媒を蒸発させるためにわずかに加熱された蒸発チャンバーを
流通する。液滴がより小型になるに従い、表面電荷密度は増加し、やがて同一荷電間で自
然反発して、イオン並びに中性分子の放出が引き起こされる。
【0048】
本明細書で用いる場合、用語「大気圧化学イオン化法」又は「APCI法」とは、ES
Iと類似する質量分析法を意味するが、しかしAPCIは、大気圧でプラズマ内に生ずる
イオン-分子反応によりイオンを産生する。プラズマは、スプレーキャピラリーと対電極
の間の放電により維持される。次にイオンは、差次的にポンプ搬送される一連のスキマー
ステージの使用により質量分析器中に一般的に抽出される。乾燥及び事前加熱されたN
ガスの向流を使用して、溶媒の除去を改善することができる。極性がより低い種を分析す
る場合、APCIにおける気相イオン化の方がESIよりも有効であり得る。
【0049】
用語「大気圧光イオン化法」又は「APPI法」とは、本明細書で使用する場合、分子
Mを光イオン化する機構が、分子イオンM+を形成する光子吸収及び電子放出である質量
分析法の形態を意味する。光子エネルギーは、一般的にイオン化電位のすぐ上にあるので
、分子イオンは、それほど解離しやすくない。多くの場合、クロマトグラフィーを必要と
せずにサンプルを分析することができると考えられ、従ってかなりの時間及び出費が抑え
られる。水蒸気又はプロトン性溶媒の存在下で、分子イオンは、Hを取り出してMH+を
形成することができる。これは、Mが高プロトン親和性を有する場合に生ずる傾向がある
。M+とMH+の合計は一定なので、これは定量の正確性に影響を及ぼさない。プロトン
性溶媒中の薬物化合物は、通常MH+として観察される一方、非極性化合物、例えばナフ
タレン又はテストステロン等は、通常M+の形態を採る。Robb、D.B.、Cove
y、T.R.及びBruins、A.P.(2000年):例えば、Robbら、Atm
ospheric pressure photoionization:An ion
ization method for liquid chromatography
-mass spectrometry.Anal.Chem.第72巻(15号):3
653~3659頁を参照。
【0050】
本明細書で用いる場合、用語「誘導結合プラズマ法」又は「ICP法」とは、ほとんど
の元素が微粒化及びイオン化されるような十分に高温度において、サンプルが部分的にイ
オン化した気体と相互作用する方法を意味する。
【0051】
本明細書で用いる場合、用語「電界脱離法」とは、非揮発性の試験サンプルがイオン化
表面上に配置され、そして分析物イオンを生成するのに強電界が使用される方法を意味す
る。
【0052】
本明細書で用いる場合、用語「脱離」とは、表面から分析物を取り出すこと、及び/又
は分析物を気相に導入することを意味する。
【0053】
本明細書で用いる場合、用語「定量化限界〔limit of quantification〕」、「定量限
界〔limit of quantitation〕」、又は「LOQ」とは、測定が定量的に意味を有するよ
うになるポイントを意味する。このLOQにおける分析物の応答は、識別可能であり、個
別的であり、並びに20%の精密度及び80%~120%の正確度で再現性を有する。
【0054】
本明細書で用いる場合、用語「検出限界」又は「LOD」は、測定値が、それと関連し
た不確実性より大きくなるポイントである。LODは、ゼロ濃度から2標準偏差(SD)
として任意に定義される。
【0055】
本明細書で用いる場合、体液サンプル中のApoEの「量」とは、体液の容積中で検出
可能なApoEの質量を反映する絶対値を一般的に意味する。但し、量は、別のApoE
の量と比較した相対的な量についても考慮する。例えば、体液中のApoEの量は、通常
存在するApoEの対照レベル又は正常レベルを上回る又はそれ未満である量であり得る
【0056】
用語「約」とは、イオン質量測定を除き定量測定と関連して本明細書で使用する場合、
表示の数値±10%を意味する。マススペクトロメトリー装置は、所与の分析物の質量を
決定する際に、ほとんど変化し得ない。用語「約」とは、イオンの質量又はイオンの質量
/電荷の比の文脈において、±0.5原子質量単位を意味する。
【0057】
上記した本発明の概要は、非限定的であり、また本発明のその他の特性及び長所は、下
記の発明を実施するための形態から、及び特許請求の範囲から明白である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1-1】約0.2%の頻度を有するApoE2/E2表現型のクロマトグラムの例を示す図である。
図1-2】約0.2%の頻度を有するApoE2/E2表現型のクロマトグラムの例を示す図である。
図2-1】約9.4%の頻度を有するApoE2/E3表現型のクロマトグラムの例を示す図である。
図2-2】約9.4%の頻度を有するApoE2/E3表現型のクロマトグラムの例を示す図である。
図3-1】約2.2%の頻度を有するApoE2/E4表現型のクロマトグラムの例を示す図である。
図3-2】約2.2%の頻度を有するApoE2/E4表現型のクロマトグラムの例を示す図である。
図4-1】約66%の頻度を有するApoE3/E3表現型のクロマトグラムの例を示す図である。
図4-2】約66%の頻度を有するApoE3/E3表現型のクロマトグラムの例を示す図である。
図5-1】約20%の頻度を有するApoE3/E4表現型のクロマトグラムの例を示す図である。
図5-2】約20%の頻度を有するApoE3/E4表現型のクロマトグラムの例を示す図である。
図6-1】約2.5%の頻度を有するApoE4/E4表現型のクロマトグラムの例を示す図である。
図6-2】約2.5%の頻度を有するApoE4/E4表現型のクロマトグラムの例を示す図である。
図7】LC-MS/MSにより決定された、319例の個別血清サンプルに基づくApoE対立遺伝子の頻度を示す図である。
図8】リスクアセスメントモデルに対する各アルツハイマー病バイオマーカーの寄与を示す図である。MCI又はアルツハイマー病について線形予測子(スコア)を計算するための式:スコア=2.8336-9.9026×比+0.7358×ApoE4-0.2183×総ApoE。但し、Aβ42(pg/mL)/Aβ40(pg/mL)の比;ApoE4対立遺伝子カウント;総ApoE(μg/mL)。リスクは、3群:低リスク;平均的なリスク;高リスクに分類される。
図9】対立遺伝子数毎に、Aβ42/40比モデルに対する疾患確率のプロットを示す図である。
図10】ApoE4対立遺伝子数毎に、Aβ42/40の比+総ApoEモデルに対する疾患リスクのプロットを示す図である。
図11】ApoE4対立遺伝子の数に対するリスクアセスメントスコアを示す図である。
図12】ADMarkに対するロジスティック回帰分析モデルを示す図である。
図13】マススペクトロメトリーによるApoEアイソタイプ表現型のグラフィック表現を示す図である。ApoE2/E2表現型は、固有のE2と関連するイオンを検出することにより決定される。
【発明を実施するための形態】
【0059】
アポリポタンパク質E(ApoE)は、晩期発症型のアルツハイマー病(AD)に対す
る十分に定義されている遺伝子リスク因子である。ヒトAPOE遺伝子は、3つの多形対
立遺伝子、ε2、ε3、及びε4を有し、その結果、6つの異なる表現型:ε2/ε2、
ε2/ε3、ε3/ε3、ε2/ε4、ε3/ε4、及びε4/ε4をもたらす。AD患
者の約半数(一般集団内の14%と比較して)がε4対立遺伝子を担持し、その大部分は
異型接合体(ε3/ε4)である。遺伝性のε4対立遺伝子の数は、ε2又はε3対立遺
伝子の遺伝質と比較して、疾患リスクの上昇、及び平均発現年齢の低下の両方と関連する
。3つのApoEアイソフォーム間の差異は、その構造、したがってタンパク質と様々な
脂質及びβアミロイド(Aβ)との相互作用及び結合に影響を及ぼす2つのアミノ酸に基
づく。ApoE及びAβは脳内で共存する可能性があり、従ってADにおけるその補完的
な役割について広範に試験されている。循環性の血漿及びCSFのApoEレベルは、A
Dに対する潜在的バイオマーカーであることが近年判明した。更に、CSF Apo-E
2又は-E3レベルの増加は、ADにおける傷害に対する防御性の応答を表している可能
性があり、またそのアミロイド排除に対する効果に付加して、τ及びアミロイド沈着とは
独立して神経傷害を減少させることにより、神経保護効果を有し得る。ApoEレベルの
低下は、多発性硬化症及び脳の脂質代謝に影響を及ぼすその他の神経変性疾患とも関連し
ている可能性がある。
【0060】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、サンプル中のアポリポタンパク質
E(ApoE)表現型を決定することを目的とし、前記方法は:(a)サンプル中のAp
oEを精製することと、(b)前記サンプル中のApoEをイオン化させて、ApoEの
1つ又は複数のイオンを生成することと、(c)マススペクトロメトリーにより、ステッ
プ(b)に由来するイオンを検出することとを含み、その場合、サンプル中に存在するA
poE対立遺伝子は、ステップ(c)において検出されたイオンの同一性から決定される
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される精製工程は、液体クロマトグラフィー
を含む。いくつかの実施形態では、液体クロマトグラフィーは、高性能液体クロマトグラ
フィー(HPLC)を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される精製工程は、固相抽出法(SPE)を
含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、イオン化は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)を含む
。いくつかの実施形態では、イオン化は、ポジティブモードでイオン化させることを含む
。いくつかの実施形態では、イオン化は、ネガティブモードでイオン化させることを含む
【0064】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、内部標準を添加することを更
に含む。いくつかの実施形態では、内部標準は同位体標識されている。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法により決定される表現型は、Ap
oE2/ApoE2である。いくつかの実施形態では、表現型は、ApoE2/ApoE
3である。いくつかの実施形態では、表現型は、ApoE2/ApoE4である。いくつ
かの実施形態では、表現型は、ApoE3/ApoE3である。いくつかの実施形態では
、表現型は、ApoE3/ApoE4である。いくつかの実施形態では、表現型は、Ap
oE4/ApoE4である。
【0066】
いくつかの実施形態では、ApoE4対立遺伝子の存在は、アルツハイマー病発症リス
クの増加を示唆する。いくつかの実施形態では、ApoE4/ApoE4対立遺伝子の存
在は、アルツハイマー病発症リスクの増加を示唆する。
【0067】
特定の実施形態では、方法の定量限界は、10ng/mL未満、又はそれに等しい。い
くつかの実施形態では、方法の定量限界は、5ng/mL未満、又はそれに等しい。いく
つかの実施形態では、方法の定量限界は、4ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつ
かの実施形態では、方法の定量限界は、3ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつか
の実施形態では、方法の定量限界は、2ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの
実施形態では、方法の定量限界は、1ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実
施形態では、方法の定量限界は、0.5ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの
実施形態では、方法の定量限界は、0.2ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつか
の実施形態では、方法の定量限界は、0.1ng/mL未満、又はそれに等しい。
【0068】
いくつかの実施形態では、方法の検出限界は、5ng/mL未満、又はそれに等しい。
いくつかの実施形態では、方法の検出限界は、1ng/mL未満、又はそれに等しい。い
くつかの実施形態では、方法の検出限界は、0.5ng/mL未満、又はそれに等しい。
いくつかの実施形態では、方法の検出限界は、0.1ng/mL未満、又はそれに等しい
。いくつかの実施形態では、方法の検出限界は、0.05ng/mL未満、又はそれに等
しい。いくつかの実施形態では、方法の検出限界は、0.01ng/mL未満、又はそれ
に等しい。
【0069】
いくつかの実施形態では、ApoEは、マススペクトロメトリーの前に誘導体化されな
い。
【0070】
いくつかの実施形態では、ApoEは、マススペクトロメトリーの前に誘導体化される
【0071】
特定の実施形態では、サンプルは、体液である。いくつかの実施形態では、サンプルは
、脳脊髄液(CSF)である。いくつかの実施形態では、サンプルは、血漿又は血清であ
る。いくつかの実施形態では、サンプルは、全血である。いくつかの実施形態では、サン
プルは、唾液又は尿である。
【0072】
いくつかの実施形態では、方法は、サンプルのタンパク質除去に十分な量で、薬剤をサ
ンプルに添加することを含み得る。
【0073】
適する試験サンプルは、目的とする分析物を含有し得る任意の試験サンプルを含む。い
くつかの好ましい実施形態では、サンプルは、生体サンプルである;すなわち、任意の生
物起源物質、例えば動物、細胞培養物、臓器培養物等から得られるサンプルである。特定
の好ましい実施形態では、サンプルは、哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、ウマ等から得られ
る。特に好ましい哺乳動物は、霊長類、最も好ましくは男性又は女性のヒトである。特に
好ましいサンプルとして、血液、血漿、血清、毛髪、筋肉、尿、唾液、涙、脳脊髄液、又
はその他の組織サンプルが挙げられる。そのようなサンプルは、例えば患者;すなわち、
疾患又は状態を診断、予測、又は処置するために、臨床現場において自己を提示する生存
者、男性又は女性から取得され得る。試験サンプルは、好ましくは患者から得られ、例え
ば血清である。
【0074】
マススペクトロメトリーのためのサンプル調製
サンプル中のその他の成分(例えば、タンパク質)と比較してそれよりもApoEを富
化させるのに利用可能である方法として、例えば、フィルター処理法、遠心分離法、薄層
クロマトグラフィー(TLC)法、キャピラリー電気泳動法を含む電気泳動法、免疫親和
性分離法を含む親和性分離法、酢酸エチル抽出法及びメタノール抽出法を含む抽出法、及
びカオトロピック薬剤の使用、又は上記の任意の組合せ等が挙げられる。
【0075】
タンパク質沈殿法は、試験サンプルを調製する1つの好ましい方法である。そのような
タンパク質精製法は、当技術分野に周知であり、例えば、Polsonらの、Journ
al of Chromatography B、第785巻:263~275頁(20
03年)は、本方法で使用するのに適するタンパク質沈殿技術について記載する。タンパ
ク質沈殿法は、上清にApoEを残して、サンプルからほとんどのタンパク質を取り除く
のに利用可能である。サンプルは、沈殿したタンパク質から液体上清を分離するために遠
心分離され得る。得られた上清は、次に、液体クロマトグラフィー及び後続するマススペ
クトロメトリー分析に適用され得る。特定の実施形態では、タンパク質沈殿法、例えばア
セトニトリルタンパク質沈殿法等を使用すれば、HPLC及びマススペクトロメトリーを
行う前に、高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)又はその他のオンライン抽出を行
う必要がなくなる。従って、そのような実施形態では、方法は、(1)目的とするサンプ
ルのタンパク質沈殿を実施すること;及び(2)オンライン抽出又は高乱流液体クロマト
グラフィー(HTLC)を使用することなく、上清をHPLC-質量分析装置に直接負荷
することと関係する。
【0076】
いくつかの好ましい実施形態では、HPLCは、単独で、又は1つ若しくは複数の精製
法と組み合わせて、マススペクトロメトリーの前にApoEを精製するのに利用可能であ
る。そのような実施形態では、サンプルは、分析物を捕捉するHPLC抽出カートリッジ
を使用して抽出され、次に溶出され、そして第2のHPLCカラム上でクロマトグラフさ
れ得る、又はイオン化前に分析用HPLCカラム上に溶出され得る。このようなクロマト
グラフィー手順に関与するステップは、自動化方式で連結可能であるので、分析物の精製
期間中にオペレーターが関与する必要性は、最低限に抑えることができる。このような特
性は、その結果、時間とコストの節約をもたらし、またオペレーターがミスする機会を取
り除くことができる。
【0077】
例えば、HTLCカラムや諸方法等が引き起こす乱流は、物質移動速度を増強する可能
性があり、分離特性を改善すると考えられている。HTLCカラムは、剛性粒子を含有す
る充填カラムを通じた、クロマトグラフィーの高い流速によって成分を分離する。高速流
速(例えば、3~5mL/分)を利用することにより、乱流がカラム内に生じ、固定相と
目的とする分析物の間でほぼ完全な相互作用を引き起こす。HTLCカラムを使用する長
所として、高分子量の種は、乱流条件下では保持されないので、生体液マトリックスと関
連した高分子の蓄積が回避されることが挙げられる。1つの手順において複数の分離法を
組み合わせるHTLC法では、サンプル調製を長時間行う必要性が低下し、また著しく高
速で作動する。そのような方法は、層流(HPLC)クロマトグラフィーよりも優れた分
離性能も実現する。HTLCは、生体サンプル(血漿、尿、等)の直接注入を可能にする
。直接注入する場合、変性したタンパク質及びその他の生物学的デブリが分離カラムを急
速にブロックするので、従来型のクロマトグラフィーでは実現が難しい。また、HTLC
は、1mL未満、好ましくは0.5mL未満、好ましくは0.2mL未満、好ましくは0
.1mLの非常に少ないサンプルボリュームも可能にする。
【0078】
マススペクトロメトリーによる分析前に、サンプル調製に適用されるHTLCの例は、
別途記載されている。例えば、Zimmerら、J.Chromatogr.A854巻
:23~35頁(1999年)を参照;米国特許第5,968,367号;同第5,91
9,368号;同第5,795,469号;及び同第5,772,874号も参照。本方
法の特定の実施形態では、サンプルは、HTLCカラムに負荷する前に上記のようなタン
パク質沈殿処理がなされる;代替的な好ましい実施形態では、サンプルは、タンパク質沈
殿処理されることなく、HTLC上に直接負荷され得る。HTLC抽出カラムは、好まし
くは大型の粒子カラムである。様々な実施形態では、方法の1つ又は複数のステップは、
オンラインの自動化された方式で実施され得る。例えば、1つの実施形態では、ステップ
(i)~(v)は、オンラインの自動化された方式で実施される。別の場合、イオン化及
び検出のステップは、ステップ(i)~(v)の後に、オンラインで実施される。
【0079】
高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む液体クロマトグラフィー(LC)は
、比較的低速の層流技術に基づく。従来型のHPLC分析法は、カラムを通過するサンプ
ルの層流が、サンプルから目的とする分析物を分離する基礎となる、カラム充填材に依存
する。当業者は、そのようなカラムにおける分離は、拡散プロセスであると理解している
。HPLCは、生体サンプル中の化合物の分離に問題なく適用されるが、かなりの量のサ
ンプル調製が、分離及び質量分析装置(MS)によるその後の分析の前に必要とされ、こ
の技術を労働集約的なものとしている。更に、ほとんどのHPLCシステムは、質量分析
装置をその能力の最大限まで活用しておらず、1つのHPLCシステムが1つのMS装置
に接続可能としているにすぎず、その結果、多数のアッセイを実施するのに冗長な時間を
必要とする。
【0080】
マススペクトロメトリー分析前のサンプル除去を目的としたHPLCの使用について、
様々な方法が記載されている。例えば、Taylorら、Therapeutic Dr
ug Monitoring、第22巻:608~12頁(2000年);及びSalm
ら、Clin.Therapeutics、22巻Supl.B:B71~B85頁(2
000年)を参照。
【0081】
当業者は、ApoEと共に利用するのに適するHPLC装置及びカラムを選択し得る。
クロマトグラフ用カラムは、化学的部分の分離(すなわち、分画)を促進する媒体(すな
わち、充填材料)を一般的に含む。媒体として微細粒子を挙げることができる。粒子は、
様々な化学的部分と相互作用して化学的部分の分離を促進する結合表面を備える。1つの
適する結合表面は、疎水結合表面、例えばアルキル結合表面等である。アルキル結合表面
は、C-4、C-8、C-12、又はC-18結合アルキル基、好ましくはC-18結合
基を含み得る。クロマトグラフ用カラムは、サンプルを受け取るための注入ポートと、分
画されたサンプルを含む流出物を排出するための排出ポートを備える。1つの実施形態で
は、サンプル(又は事前精製されたサンプル)が、注入ポートにおいてカラムに適用され
、溶媒又は溶媒混合物により溶出され、そして排出ポートから排出される。異なる溶媒モ
ードが、目的とする分析物を溶出させるのに選択され得る。例えば、液体クロマトグラフ
ィーは、勾配モード、アイソクラチックモード、又は多型(すなわち、混合)モードを使
用して実施され得る。クロマトグラフィー期間中に、材料の分離は、変動要因、例えば溶
離液(「移動相」としても知られている)の選択、溶出モード、勾配条件、温度等により
影響を受ける。
【0082】
特定の実施形態では、分析物は、目的とする分析物がカラム充填材料により可逆的に保
持される一方、1つ又は複数のその他の物質は保持されない条件下で、サンプルをカラム
に適用することにより精製され得る。このような実施形態では、第1の移動相の条件は、
目的とする分析物がカラムにより保持されるように設定可能であり、また第2の移動相の
条件は、その後、保持されなかった物質が洗い出されたら、保持された物質がカラムから
取り出されるように、設定可能である。或いは、分析物は、1つ又は複数のその他の物質
と比較して、異なる速度で目的とする分析物が溶出するような移動相の条件下でサンプル
をカラムに適用することにより精製され得る。そのような手順は、サンプルの1つ又は複
数のその他の成分と比較して、目的とする1つ又は複数の分析物の量を富化させる可能性
がある。
【0083】
1つの好ましい実施形態では、HTLCは、疎水性カラムクロマトグラフィーシステム
上のHPLCに後続し得る。特定の好ましい実施形態では、Cohesive Tech
nologies社製のTurboFlow Cyclone P(登録商標)ポリマー
ベースカラム(粒径60μm、カラム寸法50×1.0mm、ポアサイズ100Å)が使
用される。関連する好ましい実施形態では、親水性エンドキャッピングを有する、Phe
nomenex Inc社製のSynergi Polar-RP(登録商標)エーテル
結合型フェニルの分析カラム(粒径4μm、カラム寸法150×2.0mm、ポアサイズ
80Å)が使用される。特定の好ましい実施形態では、HTLC及びHPLCが、移動相
としてHPLCグレード超純水及び100%メタノールを使用して実施される。
【0084】
慎重なバルブの選択及びコネクター配管作業により、手動ステップを一切必要とせずに
、物質が1つのカラムから次のカラムへと通過するように、2つ以上のクロマトグラフィ
ーカラムが、必要に応じて接続され得る。好ましい実施形態では、バルブの選択及び配管
作業は、必要なステップを実施するように事前プログラムされたコンピューターにより管
理される。最も好ましくは、クロマトグラフィーシステムも、検出器システム、例えばM
Sシステムと、そのようなオンライン方式で接続される。従って、オペレーターは、サン
プルのトレーをオートサンプラーに配置すればよく、そして残りの作業は、コンピュータ
ー制御下で実施され、その結果、選択されたすべてのサンプルの精製及び分析が完了する
【0085】
特定の好ましい実施形態では、サンプル中のApoE又はそのフラグメントは、イオン
化の前に精製され得る。特に好ましい実施形態では、クロマトグラフィーは、ガスクロマ
トグラフィーではない。
【0086】
マススペクトロメトリーによる検出及び定量
様々な実施形態では、ApoE又はそのフラグメントは、当業者にとって公知の任意の
方法によりイオン化することができる。マススペクトロメトリーは、分画されたサンプル
をイオン化し、そして更なる分析用として荷電分子を生み出すイオン源を備える質量分析
装置を使用して実施される。例えば、サンプルのイオン化は、電子イオン化、化学イオン
化、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、光子イオン化、大気圧化学イオン化(AP
CI)、光イオン化、大気圧光イオン化(APPI)、高速原子衝撃(FAB)、液体二
次イオン化(LSI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、電界イ
オン化、電界脱離、サーモスプレー/プラズマスプレーイオン化、表面増強レーザー脱離
イオン化(SELDI)、誘導結合プラズマ(ICP)、及び粒子ビームイオン化により
実施され得る。当業者は、イオン化法の選択は、測定される分析物、サンプルの種類、検
出器の種類、ポジティブモードとネガティブモードの選択等に基づき決定され得るものと
理解する。
【0087】
好ましい実施形態では、ApoE又はそのフラグメントは、ポジティブモード又はネガ
ティブモードでの加熱式エレクトロスプレーイオン化(HESI)によりイオン化する。
代替的実施形態では、ApoE又はそのフラグメントは、ポジティブモード又はネガティ
ブモードでのエレクトロスプレーイオン化(ESI)又は大気圧化学イオン化(APCI
)によりイオン化する。
【0088】
サンプルがイオン化した後、これにより生成した正に荷電したイオン又は負に荷電した
イオンは、質量対電荷の比を決定するために分析され得る。質量対電荷の比を決定するた
めの適するアナライザーとして、四重極型アナライザー、イオントラップアナライザー、
及び飛行時間アナライザーが挙げられる。イオンは、いくつかの検出モードを使用して検
出可能である。例えば、選択されたイオンは、すなわち、選択的イオンモニタリングモー
ド(SIM)を使用して検出可能であるか、また或いは、イオンは、スキャニングモード
、例えば、多重反応モニタリング(MRM)又は選択的反応モニタリング(SRM)を使
用して検出可能である。好ましくは、質量対電荷の比は、四重極型アナライザーを使用し
て決定される。例えば、「四重極」又は「四重極型イオントラップ」装置では、電極間に
印加されたDC電位、RFシグナルの振幅、及び質量/電荷の比に比例した力が、振動性
ラジオ周波数場内のイオンに加わる。電圧及び振幅は、特定の質量/電荷の比を有するイ
オンのみが、四重極の長さを移動する一方、その他のすべてのイオンは外れるように選択
され得る。従って、四重極型装置は、装置に注入されたイオンに対して、「マスフィルタ
ー」及び「マス検出器」の両方として作用し得る。
【0089】
「タンデム型質量分析」又は「MS/MS」を利用することにより、MS技術の分解能
を強化することができる。この技術では、目的とする分子から生成した前駆イオン(親イ
オンとも呼ばれる)を、MS装置内でフィルター処理することができ、そして前駆イオン
は、その後フラグメント化されて、次に第2のMS手順において分析の対象とされる1つ
又は複数のフラグメントイオン(娘イオン又はプロダクトイオンとも呼ばれる)となる。
前駆イオンを慎重に選択することにより、特定の分析物より産生するイオンのみが、フラ
グメント化チャンバーを通過し、そこで、不活性気体の原子と衝突してフラグメントイオ
ンが産生する。前駆イオン及びフラグメントイオンのいずれも、イオン化/フラグメント
化させる一連の所定条件下で再現的に産生するので、MS/MS技術は、極めて強力な分
析ツールを提供し得る。例えば、フィルター処理/フラグメント化の組合せは、妨害物質
を取り除くのに利用可能であり、また複合サンプル、例えば生体サンプル等において特に
有用であり得る。
【0090】
質量分析装置は、一般的に、イオンスキャン;すなわち、所定の範囲(例えば、100
~1000amu)において、特定の質量/電荷を有する各イオンの相対的存在量をユー
ザーに提供する。分析物アッセイの結果、すなわち質量スペクトルは、当技術分野におい
て公知の非常に多くの方法により、オリジナルサンプル内の分析物の量と関連付けること
ができる。例えば、サンプリング及び分析パラメーターが慎重に管理されることを前提と
すれば、所定のイオンの相対的存在量は、相対的存在量をオリジナル分子の絶対量に変換
する表と比較することができる。或いは、分子標準をサンプルと共にランニングすること
ができ、そしてその標準から生成したイオンに基づき、標準曲線が構築される。そのよう
な標準曲線を使用して、所定のイオンの相対的存在量が、オリジナル分子の絶対量に変換
され得る。特定の好ましい実施形態では、内部標準が、ApoEの量を計算するための標
準曲線を生成するのに使用される。そのような標準曲線を生成及び使用する方法は、当技
術分野に周知であり、また当業者は、適切な内部標準を選択する能力を有する。例えば、
ApoEの同位体が、内部標準として利用可能である。イオンの量をオリジナル分子の量
と関連付けるための非常に多くのその他の方法が、当業者に周知である。
【0091】
方法の1つ又は複数のステップは、自動化された機械を使用して実施され得る。特定の
実施形態では、1つ又は複数の精製ステップが、オンラインで実施され、またより好まし
くは、精製及びマススペクトロメトリーステップのすべてが、オンライン方式で実施され
得る。
【0092】
特定の実施形態、例えば前駆イオンが更なるフラグメント化を目的として単離されるよ
うなMS/MS等では、衝突活性化解離法〔collision activation dissociation〕が、
更なる検出を目的としてフラグメントイオンを生成するのに多くの場合使用される。CA
Dでは、前駆イオンは、不活性気体との衝突を通じてエネルギーを獲得するが、その後「
単分子分解反応」と呼ばれるプロセスによりフラグメント化する。振動エネルギーの増加
に起因して、イオン内の特定の結合が破壊され得るように、十分なエネルギーが、前駆イ
オン内に蓄積しなければならない。
【0093】
特に好ましい実施形態では、ApoEが、MS/MSを使用して、以下のように検出及
び/又は定量化される。サンプルは、液体クロマトグラフィー、好ましくはHPLCで処
理され、クロマトグラフ用カラムからの液体溶媒の流れは、MS/MSアナライザーの加
熱されたネブライザーインターフェースに進入し、そして溶媒/分析物混合物が、インタ
ーフェースの加熱されたチューブ内で蒸気に変換される。分析物は、選択されたイオン化
装置によりイオン化される。イオン、例えば前駆イオンは、装置の開口部を通過し、そし
て第1の四重極に進入する。四重極1及び3(Q1及びQ3)は、質量フィルターであり
、その質量対電荷の比(m/z)に基づき、イオン(すなわち、「前駆」及び「フラグメ
ント」イオン)の選択を可能にする。四重極2(Q2)は衝突セルであり、そこでイオン
がフラグメント化される。質量分析装置の第1の四重極(Q1)は、ApoEの質量対電
荷の比を用いて分子を選択する。ApoEの正しい質量/電荷の比を有する前駆イオンが
、衝突チャンバー(Q2)に導入可能となる一方、その他の質量/電荷の比を有する望ま
しくないイオンはいずれも四重極の側面と衝突し、除去される。Q2に進入する前駆イオ
ンは、中性のアルゴン気体分子と衝突して、フラグメント化する。このプロセスは衝突活
性化解離(CAD)と呼ばれる。生成したフラグメントイオンは、四重極3(Q3)に導
入され、そこでは、ApoEフラグメントのイオンが選択される一方、その他のイオンは
除去される。
【0094】
本方法は、ポジティブ又はネガティブイオンモードのいずれかで実施されるMS/MS
と関係し得る。当技術分野において周知の標準法を使用して、当業者は、四重極3(Q3
)における選択で利用可能な、特定のApoEの前駆イオンの1つ又は複数のフラグメン
トイオンを識別する能力を有する。
【0095】
ApoEの前駆イオンがアルコール又はアミン基を含む場合、一般的に、前駆イオンの
脱水又は脱アミノに該当するフラグメントイオンがそれぞれ形成される。アルコール基を
含む前駆イオンの場合、脱水により形成されるそのようなフラグメントイオンは、前駆イ
オンから1つ又は複数の水分子の喪失により引き起こされる(すなわち、前駆イオンとフ
ラグメントイオンの間の質量対電荷の比の差異は、水分子1個の喪失では約18であり、
又は水分子2個の喪失では約36である、等)。アミン基を含む前駆イオンの場合、脱ア
ミノにより形成されるそのようなフラグメントイオンは、1つ又は複数のアンモニア分子
の喪失により引き起こされる(すなわち、前駆イオンとフラグメントイオンの間の質量対
電荷の比の差異は、アンモニア分子1個の喪失では約17であり、又はアンモニア分子2
個の喪失では約34である、等)。同様に、1つ又は複数のアルコール及びアミン基を含
む前駆イオンは通常、1つ若しくは複数の水分子及び/又は1つ若しくは複数のアンモニ
ア分子の喪失に該当するフラグメントイオンを形成する(すなわち、前駆イオンとフラグ
メントイオンの間の質量対電荷の比の差異は、水分子1個の喪失、及びアンモニア分子1
個の喪失について約35である)。概して、前駆イオンの脱水又は脱アミノに該当するフ
ラグメントイオンは、特定の分析物に対する固有のフラグメントイオンではない。従って
、本発明の好ましい実施形態では、MS/MSは、ApoEの少なくとも1つのフラグメ
ントイオンが検出され、それが、前駆イオンから1つ若しくは複数の水分子が喪失した唯
一のもの、及び/又は1つ若しくは複数のアンモニア分子が喪失した唯一のものに該当し
ないように実施される。
【0096】
イオンが検出器と衝突すると、イオンは、デジタルシグナルに変換される電子のパルス
を産生する。取得されたデータは、収集されたイオンのカウントを時間に対してプロット
するコンピューターに伝達される。得られた質量クロマトグラムは、従来型のHPLC法
で生成されるクロマトグラムと類似している。特定のイオンに対応するピーク下面積、又
はそのようなピークの振幅が測定され、そして面積又は振幅が、目的とする分析物の量と
関連付けられる。特定の実施形態では、フラグメントイオン及び/又は前駆イオンに関す
る曲線下面積又はピークの振幅が、ApoEの量を決定するために測定される。上記のよ
うに、内部分子標準の1つ又は複数のイオンに由来するピークに基づく校正標準曲線を使
用して、所定のイオンの相対的存在量は、オリジナルの分析物の絶対量に変換され得る。
【0097】
下記の実施例は、本発明を説明する役目を果たす。これらの実施例には、本方法の範囲
に制限を設けるような意図は一切存在しない。
【実施例0098】
実施例1:マススペクトロメトリーによるApoE表現型の決定
試薬の概要:表1
【0099】
【表1】
【0100】
LC-MS/MSアッセイによりCSFアポリポタンパク質E(ApoE)アイソフォ
ームを同定すれば、ApoEにおける3つの異なるアイソフォームが判明し、次に表現型
を推測するのに使用可能である。アポリポタンパク質Eタンパク質(ApoE2、Apo
E3、及びApoE4)をコードする3つの対立遺伝子が存在し、それらは共優性的に発
現して6つの固有の表現型;ApoE2/E2、ApoE2/E3、ApoE2/E4、
ApoE3/E3、ApoE3/E4、及びApoE4/E4をもたらす。
【0101】
各ApoE表現型を判定するために、タンパク質のトリプシン消化を実施し、そして固
有のペプチドを、各タンパク質アイソフォームを識別する代用物として使用する。Apo
E2アイソフォーム及びApoE4アイソフォームの両方について固有のペプチドが存在
する。ApoE3アイソフォームは、ApoE2及びApoE3アイソフォーム間の共通
するペプチド、並びにApoE3及びApoE4アイソフォーム間の共通するペプチドを
使用して決定する。各アイソフォームに対する内部標準を、リテンションタイム参照ポイ
ントとして役に立つように各サンプル中にスパイクする。
【0102】
CSF ApoEサンプルを、Thermo Fisher Quantiva三連四
重極型質量分析装置に接続したThermo Aria Cohesive TLX-4
大流量LCを用いたタンデム型質量分析を使用して分析する。データは複数反応モニタリ
ング(MRM)によりモニタリングし、そしてThermo Fisher LC Qu
anデータ分析ソフトウェアを使用して分析する。
【0103】
様々なApoE対立遺伝子を同定するすべての質量対電荷の比(m/z)をいくつかの
図に記載し、下記の表2にまとめる。
【0104】
【表2】
【0105】
予測値:CSF中のアポリポタンパク質E:2.84~7.24μg/mL;血清中の
アポリポタンパク質E:20.07~101.68μg/mL。
【0106】
各品質管理レベルについて5回の技術的反復実験を、5日間にわたり、各日、低、中、
及び高レベルの順番で測定した。
【0107】
CSF低レベル品質管理:1.2μg/mL
アポリポタンパク質E:
平均:1.16~1.37
SD:0.03~0.12
CV(%):2.27~10.35%
回収率(%):97.00~104.00%
【0108】
CSF中レベル品質管理:3.0μg/mL
アポリポタンパク質E:
平均:2.68~3.37
SD:0.05~0.33
CV(%):1.74~10.59%
回収率(%):89.27~112.40%
【0109】
CSF高レベル品質管理:15.0μg/mL
アポリポタンパク質E:
平均:13.38~16.54
SD:0.40~1.65
CV(%):4.71~11.36%
回収率(%):89.20~110.29%
【0110】
正確度:APOE遺伝子型既知(分析法:制限長さ多形性分析法(RLPM))の患者
サンプル20例を、LC-MS/MSにより分析した。ApoE表現型を次に既知遺伝子
型と比較した。下記の表3に示すように、各患者サンプルについて、遺伝子型と表現型の
間に100%の一致が認められた。
【0111】
【表3】
【0112】
凍結-解凍安定性:スパイクされた6つの表現型を4つの等しい一定分量に分割し、そ
れを分析することにより、凍結解凍分析を実施した。各表現型に関する一定分量を、4つ
すべてについて-90~-60℃で凍結した。2~4番目の一定分量を、1回の凍結-解
凍用として、18~25℃の周囲温度において解凍し、そして凍結した。3~4番目の一
定分量を、2回の凍結-解凍用として、18~25℃の周囲温度において解凍し、そして
凍結した。4番目の一定分量を、次に3回の凍結-解凍用として、18~25℃の周囲温
度において解凍し、そして凍結した。
【0113】
最終的に、アリコートすべてを18~25℃の周囲温度で解凍し、そして技術的に三連
で分析した。凍結解凍分析は、3種類の凍結解凍サイクルに関わるデータを含有する。A
poE表現型は、最大3回の凍結解凍サイクルに対して許容される安定性を有する。表4
【0114】
【表4】
【0115】
抽出後のサンプルの安定性:ベースライン値としてサンプル抽出した日と同じ日に、1
0サンプルを分析した。翌日、同一サンプルを再注入して、ベースライン値と対比分析し
た。このアッセイでは、2回の注入に十分なサンプルが得られる。ApoEは、CTCオ
ートサンプラーのCスタック内、2~8℃で、少なくとも1日間の抽出後サンプル安定性
を示す。表5:
【0116】
【表5】
【0117】
室温安定性:サンプルは、18~25℃で最長7日間安定である。表6:
【0118】
【表6】
【0119】
冷蔵安定性:サンプルは、2~8℃で最長7日間安定である。表7:
【0120】
【表7】
【0121】
凍結安定性:サンプルは-30~-10℃で少なくとも31日間安定である。表8:
【0122】
【表8】
【0123】
妨害試験
合否基準:潜在的妨害物質に起因する差異は、≦2SDであるべきである、又は20%
CVは許容されるとみなされる。
【0124】
溶血による妨害:患者プール品6例を、ヘモグロビン(Sigma社カタログ番号H7
379)でスパイクし、そしてベースライン、小規模、中規模、及び大規模な溶血による
妨害について三連で分析した。10mg/mLのヘモグロビン溶液を「大規模な」妨害に
対して使用した。中規模及び小規模の妨害用として、10mg/mL溶液を、10mMの
BSでそれぞれ1:10及び1:20稀釈した。
【0125】
血清由来のアポリポタンパク質Eの起こり得る汚染のために、いずれの溶血レベルも許
容されない。表9:
【0126】
【表9】
【0127】
脂肪血症による妨害:患者プール品6例を、イントラリピド(Sigma社カタログ番
号I141)でスパイクし、そしてベースライン、小規模、中規模、及び大規模な脂肪血
症による妨害について三連で分析した。1:5希釈(イントラリピド:10mMのPBS
)を、「大規模な」妨害用として使用した。中規模及び小規模の妨害用として、1:5溶
液を、10mMのPBSで、それぞれ1:10及び1:20稀釈した。ApoEは、CS
Fサンプルの脂肪血症の程度について、そのすべてが許容される。表10:
【0128】
【表10】
【0129】
ビリルビンによる妨害:患者プール品6例を、ビリルビン(Sigma社カタログ番号
B4126)でスパイクし、そしてベースライン、小規模、中規模、及び大規模な黄疸に
よる妨害について三連で分析した。「大規模な」妨害用として1mg/mLのビリルビン
溶液を使用した。1mg/mL溶液を、中規模及び小規模の妨害用として、10mMのP
BSでそれぞれ1:10及び1:20稀釈した。ApoEは、CSFサンプルの黄疸の程
度について、そのいずれも許容される。表11:
【0130】
【表11】
【0131】
イオン抑制:患者サンプル10例を抽出した。サンプル10例を、分析カラムを通じて
注入した(injected)一方、ApoEの消化ペプチド混合物をポストカラム注入した(in
fused)。ApoEの内部標準が溶出したときに、ApoEの全イオンクロマトグラム(
TIC)が、シグナル強度について≧15%の減少を示した場合、アッセイにおいてイオ
ン抑制が存在すると判断される。ApoEの消化されたペプチドのTICは、分析物の溶
出時に、勾配内で抑制を示さなかった。TICシグナル強度は一定であり、シグナル強度
の差異は≦15%であることを示しており、許容されるアッセイパラメーターの範囲内で
ある。
【0132】
総ApoEの定量分析:LC-MS/MSアッセイによるCSFアポリポタンパク質E
(ApoE)は、CSF内の総ApoEレベルを測定する。総ApoEを測定するために
、タンパク質のトリプシン消化を実施し、そして3つのアイソフォーム(ApoE2、A
poE3、及びApoE4)すべてにおいて、その固有のペプチドを、総ApoEタンパ
ク質濃度を測定するための代用物として使用する。CSF ApoEサンプルを、The
rmo Fisher Quantiva三連四重極型質量分析装置に接続したTher
mo Aria Cohesive TLX-4大流量LCを用いたタンデム型質量分析
を使用して分析する。データを、複数反応モニタリング(MRM)によりモニタリングし
、そしてThermo Fisher LC Quanデータ分析ソフトウェアを使用し
て分析する。下記のイオンについて測定した:
【0133】
【表12】
【0134】
CSF ApoEの検出限界(LOD):0.33μg/mL。CSF ApoEの定
量限界は1.0μg/mLとして決定される。CSF ApoEのLOB:0.3μg/
mL。
【0135】
本明細書に記載又は引用する文献、特許、及び特許出願、並びにその他のすべての文書
及び電子的に利用可能な情報の内容は、個々の公開資料が参照として組み込まれるものと
特別及び個別に示唆されたのと同程度に、参照により本明細書にその全体が援用される。
出願者らは、任意のそのような文献、特許、特許出願、又はその他の物理的及び電子的な
文書に由来する任意の及びすべての資料及び情報を本出願に物理的に組み込む権利を留保
する。
【0136】
本明細書に事例的に記載する方法は、本明細書に特に開示されない、任意の1つの要素
又は複数の要素、1つの制限又は複数の制限が存在しなくても、好適に実践できる。従っ
て、例えば、用語「含む〔comprising〕」、「含む〔including〕」、「含有する〔conta
ining〕」等は、拡大的及び非限定的に解釈されなければならない。更に、本明細書で採
用されている用語及び表現は、制限の用語としてではなく、説明の用語として使用されて
おり、そのような用語及び表現の使用において、提示及び記載された特性の任意の等価物
又はその一部分を排除する意図は存在しない。様々な修正が、主張された本発明の範囲内
で可能であると認識される。従って、本発明は、好ましい実施形態及び任意選択的な特性
により特別に開示されているが、本明細書に開示する本発明に取り込まれた本発明の修正
及び変更は、当業者により実施可能であるものと理解し、またそのような修正及び変更は
、本発明の範囲内であるとみなされるものと理解すべきである。
【0137】
本発明は、本明細書において広範且つ全体的に記載されている。一般的な開示の範囲に
含まれるより狭い種及び亜属のグルーピングのそれぞれも、本方法の一部をなす。これに
は、属から主題のいずれかを除去する条件又は否定的限定を伴う方法の一般的な説明が、
切り取られた題材が本明細書において特に列挙されるか、又はされないかを問わず含まれ
る。
【0138】
その他の実施形態は、下記の特許請求の範囲内に含まれる。更に、方法の特徴又は態様
が、マーカッシュ群によって記載されている場合、当業者は、発明は、これにより、マー
カッシュ群の個々のメンバー又はメンバーのサブグループのいずれについても記載されて
いるものと認識する。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2024-01-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のアポリポタンパク質E(ApoE)表現型を決定する方法であって、
(a)精製前に、ApoEを消化すること、
前記サンプル中のApoEを精製すること、
)前記サンプル中のApoEをイオン化させて、ApoEの1つ又は複数のイオンを生成すること、
)マススペクトロメトリーにより、ステップ()に由来するイオンを検出すること、ならびに、
(e)前記サンプル中に存在するApoE対立遺伝子の表現型が、ステップ()において検出されたイオンから決定されること、ここで決定される表現型がApoE2/ApoE2、ApoE2/ApoE4、ApoE3/ApoE3、ApoE3/ApoE4、またはApoE4/ApoE4であること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記精製することが、液体クロマトグラフィーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体クロマトグラフィーが、高性能液体クロマトグラフィーを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記精製することが、固相抽出法を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記イオン化が、エレクトロスプレーイオン化を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記イオン化が、ポジティブモードでイオン化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
内部標準を添加することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記内部標準が、同位体で標識されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプルが、脳脊髄液である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプルが、血漿又は血清である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
消化が、トリプシン消化を含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
消化が、マイクロウェーブ消化を含む、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記ApoE2/ApoE2表現型が、665.72±0.5、835.93±0.5、866.99±0.5、及び982.08±0.5からなる群から選択される質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定される、請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記ApoE2/ApoE4表現型が、374.42±0.5、502.55±0.5、649.74±0.5、665.72±0.5、835.93±0.5、866.99±0.5、892.96±0.5、及び982.08±0.5からなる群から選択される質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定される、請求項に記載の方法。
【請求項15】
前記ApoE3/ApoE3表現型が、374.42±0.5、502.55±0.5、866.99±0.5、及び982.08±0.5からなる群から選択される質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定される、請求項に記載の方法。
【請求項16】
前記ApoE3/ApoE4表現型が、374.42±0.5、502.55±0.5、649.74±0.5、866.99±0.5、892.96±0.5、及び982.08±0.5からなる群から選択される質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定される、請求項に記載の方法。
【請求項17】
前記ApoE/ApoE4表現型が、374.42±0.5、502.55±0.5、649.74±0.5、及び892.96±0.5からなる群から選択される質量/電荷の比を有するフラグメントイオンの存在により決定される、請求項に記載の方法。
【請求項18】
1つ又は二つのApoE4対立遺伝子の存在が、アルツハイマー病発症リスクの増加を示唆する、請求項1に記載の方法。