(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050551
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】マウス定常領域を伴うTCRを発現する細胞を選択的に増幅するための方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20240403BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240403BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240403BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240403BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240403BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240403BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240403BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20240403BHJP
A61K 35/17 20150101ALN20240403BHJP
【FI】
C12N5/10
C12N5/0783 ZNA
A61K39/395 T
A61K39/395 N
A61P31/12
A61P35/00
C12N15/12
C12N15/13
C07K16/18
A61K35/17
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023220106
(22)【出願日】2023-12-26
(62)【分割の表示】P 2020519092の分割
【原出願日】2018-09-24
(31)【優先権主張番号】62/568,339
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510002280
【氏名又は名称】アメリカ合衆国
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】デニガー、ドリュー シー.
(72)【発明者】
【氏名】フェルドマン、スティーヴン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンバーグ、スティーヴン エー.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】実質的に均一なT細胞集団を調製する方法を提供する。
【解決手段】方法は、TCRを発現するようにヒトT細胞を改変し、TCRがマウス定常領域を含むこと;TCRを発現する幾らかのヒトT細胞及びTCRを発現しない幾らかのヒトT細胞を含む細胞集団を製造すること;(i)1以上のサイトカイン、及び(ii)ヒトCD3複合体に特異的に結合する第1の抗体又はその抗原結合部分の存在下で細胞集団を培養すること;並びに前記第1の抗体又はその抗原結合部分を用いて、TCRを発現するヒトT細胞を、TCRを発現しないヒトT細胞から分離することを含み、該方法によって製造される、TCRを発現するT細胞の集団が実質的に均一である、方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞数を選択的に増幅する方法であって、
TCRを発現するようにヒトT細胞を改変し、TCRがマウス定常領域を含むこと;
TCRを発現する幾らかのヒトT細胞及びTCRを発現しない幾らかのヒトT細胞を含む細胞集団を製造すること;並びに
(i)放射線照射されたフィーダー細胞、(ii)1以上のサイトカイン、及び(iii)抗体又はその抗原結合部分の存在下で細胞集団を培養し、抗体が該TCRのマウスの定常領域に特異的に結合し、TCRを発現しないT細胞の数に対してTCRを発現するT細胞の数を選択的に増幅すること
を含む、方法。
【請求項2】
抗体又はその抗原結合部分を用いて、TCRを発現するT細胞を、TCRを発現しないT細胞から分離することを更に含む、請求項1の方法。
【請求項3】
TCRががん抗原に対して抗原特異性を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
TCRがウイルス抗原に対して抗原特異性を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
1以上のサイトカインが、IL-2、IL7、IL-12、IL-15、及びIL-21のうち1以上を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
(i)放射線照射された同種フィーダー細胞及び放射線照射された自己フィーダー細胞の一方又は両方、(ii)1以上のサイトカイン、及び(iii)ヒトCD3複合体に特異的に結合する抗体又はその抗原結合部分、の存在下でヒトT細胞を培養することを更に含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
抗体がTCRのβ鎖のマウス定常領域に特異的に結合する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
TCRを発現するようにヒトT細胞を改変することが、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)又は、クラスター化反復短回文配列リピート(CRISPR)-Casシステムを用いてTCRを発現するようにヒトT細胞を改変することを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
抗体が、配列番号1のアミノ酸配列のアミノ酸残基D2、R4、N5、T7、E101、D103、K104、W105、P106、E107、G108、S109及びP110に特異的に結合する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
抗体が、配列番号3及び配列番号4の両方のアミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
選択的に増幅された細胞集団を製造し、選択的に増幅された集団中の細胞の約10%~約75%がマウス定常領域を含むTCRを発現する、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
選択的に増幅された細胞集団を製造し、選択的に増幅された集団中の細胞の約20%~約99%がマウス定常領域を含むTCRを発現する、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
マウス定常領域を含むTCRを発現するT細胞の数を約10倍~約1,000倍増加させることを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
TCRがマウス可変領域を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
TCRがヒト可変領域を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項の方法に従って調製された、選択的に増幅された数のT細胞を含む細胞集団。
【請求項17】
請求項16の集団及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項18】
哺乳動物における疾患の治療又は予防において使用するための、請求項1~15のいずれか1項の方法に従って選択的に増幅されているT細胞。
【請求項19】
疾患がウイルス性疾患である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
疾患ががんである、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2017年10月5日に出願された米国仮特許出願番号第62/568,339号(参照によりその全体が本明細書に組込まれる)の利益を主張する。
【0002】
連邦によって支援された研究開発に関する陳述
本発明は、連邦政府の支援を受け、プロジェクト番号Z1A BC 010985の下、米国国立衛生研究所、米国国立がん研究所によりなされた。本発明において、連邦政府は一定の権利を有する。
【0003】
電子的に提出された物件の参照による組込み
本明細書と同時に提出され、以下の通り識別される、コンピューターで読み取り可能なヌクレオチド/アミノ酸の配列表は、参照により、その全体が本明細書に組込まれる:2018年9月24日付の「740358_ST25.txt」という名前の8,876バイトのASCII(テキスト)ファイル1件。
【背景技術】
【0004】
外因性T細胞受容体(TCR)を発現するように改変されている細胞を投与することによるがんの治療は、一部の患者において建設的な臨床結果をもたらしている。それにもかかわらず、かかる治療法のより広範な成功への障害は残っている。例えば、外因性TCRをコードする遺伝子の送達効率が低いと、外因性TCRを発現する細胞の数が少なくなる可能性がある。従って、外因性TCRを発現する細胞を製造する改善された方法に対する満たされていないニーズが存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態は、T細胞数を選択的に増幅する方法であって:TCRを発現するようにヒトT細胞を改変し、TCRがマウス定常領域を含むこと;TCRを発現する幾らかのヒトT細胞及びTCRを発現しない幾らかのヒトT細胞を含む細胞集団を製造すること;並びに(i)放射線照射されたフィーダー細胞、(ii)1以上のサイトカイン、及び(iii)抗体又はその抗原結合部分の存在下で細胞集団を培養し、抗体が該TCRのマウス定常領域に対して抗原特異性を有し、TCRを発現しないT細胞の数に対してTCRを発現するT細胞の数を選択的に増幅することを含む、方法を提供する。
【0006】
本発明の更なる実施形態は、本発明の方法に従って調製された、選択的に増幅された数のT細胞を含む、関連する細胞集団及び該細胞集団を含む医薬組成物を提供する。
【0007】
本発明の更に別の実施形態は、哺乳動物におけるがんを治療又は予防する方法(methods of method of)を提供し、該方法は、本発明の方法に従ってT細胞数を選択的に増幅し、選択的に増幅された数のT細胞を、哺乳動物におけるがんを治療又は予防するのに有効な量で哺乳動物に投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1Aは、ヒトTCRα鎖可変領域(hVα)、マウスTCRα鎖定常領域(mCα)、合成リンカー配列(L)、ヒトTCRβ鎖可変領域(hVβ)、及びマウスTCRβ鎖定常領域(mCβ)をコードするヌクレオチドコンストラクトを説明する模式図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明の実施形態による、mTCRを発現するT細胞の数を選択的に増幅する方法を説明する模式図である。
【
図2】
図2は、(i)CD3、CD4、又はCD8発現及び(ii)OKT3 Abを用いる標準の急速増幅プロトコル(Rapid Expansion Protocol)(REP)又はH57 Abを用いる選択的増幅を経た、抗変異ERBB2 mTCR又は抗変異ERBB2IP mTCRをエレクトロポレーションした細胞(ERBB2mutTCR又はERBB2IPmutTCR)におけるFACSにより検出したmTCRβ発現を説明する実験データ(ドットプロット)を示す。エレクトロポレーション緩衝液のみ(モック;DNA/TCRなし)とエレクトロポレーションしたT細胞が、ネガティブコントロールとして機能した。ドットプロット中の数は、検出したmTCR
+細胞のパーセンテージである。
【
図3A】
図3A及び3Bは、さまざまな濃度(ng/mL)のH57 Abによる選択的増殖後に検出した、CD3、CD4、又はCD8も発現する抗変異ERBB2IP mTCRβ
+(ERBB2IPmutTCR)(A)又は抗変異ERBB2(ERBB2mutTCR)mTCRβ
+(B)細胞のパーセンテージ(%)を示すグラフである。エレクトロポレーション緩衝液のみ(モック;DNA/TCRなし)とエレクトロポレーションしたT細胞が、ネガティブコントロールとして機能した。H57 Abによる選択的増殖の代わりにOKT3 Abによる標準REPを経た、エレクトロポレーションした細胞が、非特異的T細胞増殖についてのポジティブコントロールとして機能した。
【
図3B】
図3A及び3Bは、さまざまな濃度(ng/mL)のH57 Abによる選択的増殖後に検出した、CD3、CD4、又はCD8も発現する抗変異ERBB2IP mTCRβ
+(ERBB2IPmutTCR)(A)又は抗変異ERBB2(ERBB2mutTCR)mTCRβ
+(B)細胞のパーセンテージ(%)を示すグラフである。エレクトロポレーション緩衝液のみ(モック;DNA/TCRなし)とエレクトロポレーションしたT細胞が、ネガティブコントロールとして機能した。H57 Abによる選択的増殖の代わりにOKT3 Abによる標準REPを経た、エレクトロポレーションした細胞が、非特異的T細胞増殖についてのポジティブコントロールとして機能した。
【
図4A】
図4Aは、本発明の実施形態による、マウス定常領域(mTCR)を含むTCRを発現するT細胞の数を選択的に増幅する方法を説明する模式図である。
【
図4B】
図4Bは、TCRのマウスTCRβ鎖定常領域(mCβ)へのH57 Abの結合を説明する模式図である。TCRの他の構成要素としては、ヒトTCRα鎖可変領域(hVα)、マウスTCRα鎖定常領域(mCα)、合成リンカー配列(L)、及びヒトTCRβ鎖可変領域(hVβ)が挙げられる。
【
図5】
図5A~5Dは、非トランスフェクション未染色細胞(A)、非トランスフェクション染色細胞(B)、エレクトロポレーション緩衝液のみ(モック)(TCR/トランスポゾン(Tn)なし)とエレクトロポレーションした細胞(C)、並びにmTCR(4149-TCRa2b2/pSBSO)をコードするSBTSプラスミド及び実施例3に記載のトランスポザーゼをコードするSBTSプラスミド(pKan-CMV-SB11)とエレクトロポレーションした細胞(D)におけるFACSにより検出したCD3発現及びマウスTCRβ鎖(mTCRβ)発現を説明する実験データ(ドットプロット)を示す。ドットプロット中の数は、CD3
+/mTCRβ
+(右上象限)、CD3
+/mTCRβ
-(右下象限)、CD3
-/mTCRβ
-(左下象限)、及びCD3
-/mTCRβ
+(左上象限))の細胞のパーセンテージである。
【
図6】
図6は、表示した初期数のエレクトロポレーションした細胞(表示した濃度(ng/mL)のH57 AbによるREPにおけるmTCR
+細胞)で選択的増幅を経た、mTCRをエレクトロポレーションした細胞におけるFACSにより検出したCD3発現及びmTCRβ発現を説明する実験データ(ドットプロット)を示す。エレクトロポレーション緩衝液のみ(モック)(TCRなし)とエレクトロポレーションした細胞が、ネガティブコントロールとして機能した。ドットプロット中の数は、CD3
+/mTCRβ
+(右上の象限)、CD3
+/mTCRβ
-(右下象限)、CD3
-/mTCRβ
-(左下象限)、及びCD3
-/mTCRβ
+(左上象限)の細胞のパーセンテージである。
【
図7】
図7は、H57 Ab又はOKT3 Abによる第2の増幅を経た、染色したか又は未染色の、mTCRをエレクトロポレーションした細胞におけるFACSにより検出したCD3発現及びmTCRβ発現を説明する実験データ(ドットプロット)を示す。OKT3 Abによる2回目の増幅を経た、mTCRをエレクトロポレーションした細胞におけるFACSにより検出したCD4及びCD8の発現を説明する実験データ(ドットプロット)も示す。
【
図8】
図8A及び8Bは、増殖前(プレ-急速増幅プロトコル(REP))の、非形質導入(UT)細胞(
図8B)及び形質導入細胞(
図8A)についてのFACSにより検出したCD8発現及び抗MART-1 TCR発現を説明する実験データ(ドットプロット)を示す。
図8Cは、増幅前(プレ-REP)且つ約5%mTCRb+細胞への希釈後の
図8Aの形質導入細胞についてのFACSにより検出したCD8発現及び抗MART-1 TCR発現を説明する実験データ(ドットプロット)を示す。
【
図9】
図9は、(i)50CU又は500CUのIL-2及び(ii)OKT3 Ab又はH57 Ab(「mTCRb」)による増幅後のUT細胞又は
図8Cの希釈形質導入細胞についてのFACSにより検出したCD8発現及び抗MART-1 TCR発現を説明する実験データ(ドットプロット)を示す。
図3A及び3Bは、さまざまな濃度(ng/mL)のH57 Abによる選択的増殖後に検出した、CD3、CD4、又はCD8も発現する抗変異ERBB2IP mTCRβ
+(ERBB2IPmutTCR)(A)又は抗変異ERBB2(ERBB2mutTCR)mTCRβ
+(B)細胞のパーセンテージ(%)を示すグラフである。エレクトロポレーション緩衝液のみ(モック;DNA/TCRなし)とエレクトロポレーションしたT細胞が、ネガティブコントロールとして機能した。H57 Abによる選択的増殖の代わりにOKT3 Abによる標準REPを経た、エレクトロポレーションした細胞が、非特異的T細胞増殖についてのポジティブコントロールとして機能した。
【
図10】
図10Aは、(i)50CU又は500CUのIL-2及び(ii)OKT3 Ab又はH57 Ab(「mTCRb」)による増幅後のUT細胞又は
図8Cの希釈形質導入細胞について検出した形質導入細胞のパーセンテージを示すグラフである。
図10Bは、(i)50CU又は500CUのIL-2及び(ii)OKT3 Ab又はH57 Ab(「mTCRB」)による増幅後のUT細胞又は
図8Cの希釈形質導入細胞について達成した増幅倍数を示すグラフである。
【
図11】
図11A~11Cは、UT細胞(
図11A)又は4倍希釈前(
図11B)又は後(
図11C)に抗MART-1 TCRで形質導入した細胞の増幅前のFACSにより検出したCD8発現及びmTCRb発現を説明する実験データ(ドットプロット)を示す。
【
図12】
図12A~12Eは、UT細胞(
図12E)の増幅、又はOKT3及び500CU IL-2(
図12A)、H57(mTCRb)及び500 CU IL-2(
図12B)、H57(mTCRb)及び50CU IL-2(
図12C)、又はH57(mTCRb)及びIL-2なし(
図12D)による
図11Cの希釈したTCR形質導入細胞の増幅後にFACSにより検出したCD8発現及びmTCRb発現を説明する実験データ(ドットプロット)を示す。
【
図13】
図13Aは、UT細胞又は、(i)0CU、50CU若しくは500CUのIL-2及び(ii)OKT3 Ab若しくはH57 Ab(「mTCRb」)による増幅後の、
図11Cの希釈した形質導入細胞について検出した形質導入細胞のパーセンテージを示すグラフである。
図13Bは、UT細胞又は、(i)0CU、50CU若しくは500CUのIL-2及び(ii)OKT3 Ab若しくはH57Ab(「mTCRb」)による増幅後の、
図11Cの希釈した形質導入細胞について達成した増幅倍数を示すグラフである。
【
図14】
図14A~14Fは、増幅前(
図14A)又はOKT3(30ng/ml)(
図14B)又は、H57(mTCRb)(5ng/ml)(
図14F)、10ng/ml(
図14E)、50ng/ml(
図14D)、若しくは500ng/ml(
図14C))による形質導入細胞の増幅後にFACSにより検出したCD8発現及びmTCRb発現を説明する実験データ(ドットプロット)を示す。
【
図15】
図15は、OKT3(30ng/ml)又はH57(mTCRb)(5、10、50、又は500ng/ml)による増幅後に、mTCR形質導入細胞について達成した増幅倍数を示すグラフである。
【
図16】
図16A~16Eは、H57による第1回目の増幅を経たmTCR形質導入細胞の、第2回目の増幅後にFACSにより検出したCD8発現及びmTCRb発現を説明する実験データ(ドットプロット)を示す。2回目の増幅は、OKT3(30ng/ml)(
図16A)又はH57(mTCRb)(5ng/ml(
図16E)、10ng/ml(
図16D)、50ng/ml(
図16C)、又は500ng/ml(
図16B))により行った。
【
図17】
図17は、H57による第1回目の増殖を経たmTCR形質導入細胞の、第2回目の増幅後にmTCR形質導入細胞について達成した増幅倍数を示すグラフである。第2回目の増幅は、OKT3(30ng/ml)又はH57(mTCRb)(5、10、50、又は500ng/ml)により行った。
【
図18】
図18は、4149-HUWE1-TCR1又は4149-TP53-TCRa2b2によるドナー1及び2からのPBMCのエレクトロポレーションの翌日にFACSにより検出したCD3発現及びmTCRb発現を説明する実験データ(ドットプロット)を示す。未染色PBMC、非トランスフェクションPBMC、及びエレクトロポレーション緩衝液のみ(モック)(TCRなし)とエレクトロポレーションしたPBMCが、ネガティブコントロールとして機能した。
【
図19】
図19A~19Bは、4149-HUWE1-TCR1又は4149-TP53-TCRa2b2が転移(transpose)し、H57による1回目の増幅を経たドナー1及び2からのPBMCによるCD3発現及びmTCRb発現を説明する実験データ(ドットプロット)を示す(
図19B)。未染色PBMC(
図19A)及びエレクトロポレーション緩衝液のみ(モック)(TCRなし)とエレクトロポレーションしたPBMC(
図19B)が、ネガティブコントロールとして機能した。
【
図20】
図20A~20Bは、4149-HUWE1-TCR1又は4149-TP53-TCRa2b2が転移し、H57による1回目の増幅後、標準のREPを用いる増幅を経たドナー1及び2からのPBMCによるCD3発現及びmTCRb発現を説明する実験データ(ドットプロット)を示す(
図20B)。未染色PBMC(
図20A)及びエレクトロポレーション緩衝液のみ(モック)(TCRなし)とエレクトロポレーションしたPBMC(
図20B)が、ネガティブコントロールとして機能した。
【
図21】
図21Aは、(i)DMSO、WT HUWE1ペプチド、又は変異(mut)HUWE1ペプチドでパルスしたDCの、(ii)4149HUWE1-TCR1が転移したドナー1からの細胞との共培養後に分泌されたIFN-γの濃度を示すグラフである。単独で培養したDCがコントロールとして機能した。平均±SEM;n=3のテクニカルレプリケート。
図21Bは、(i)DMSO、WT TP53ペプチド、又はmut TP53ペプチドでパルスしたDCの、(ii)4149-TP53-TCRa2b2が転移したドナー1由来の細胞との共培養後に分泌されたIFN-γの濃度を示すグラフである。単独で培養したDCがコントロールとして機能した。平均±SEM;n=3のテクニカルレプリケート。
図21Cは、(i)DMSO、WT HUWE1ペプチド、mut HUWE1ペプチドでパルスしたDCの、(ii)4149-HUWE1-TCR1が転移したドナー2からの細胞との共培養後に分泌されたIFN-γの濃度を示すグラフである。単独で培養したDCがコントロールとして機能した。平均±SEM;n=3のテクニカルレプリケート。
図21Dは、(i)DMSO、WT TP53ペプチド、又はmut TP53ペプチドでパルスしたDCの、(ii)4149-TP53-TCRa2b2が転移したドナー2由来の細胞との共培養後に分泌されたIFN-γの濃度を示すグラフである。単独で培養したDCがコントロールとして機能した。平均±SEM;n=3のテクニカルレプリケート。
【
図22】
図22は、本発明の実施形態による、マウス定常領域(mTCR)を含むTCRを発現するT細胞の数を選択的に増幅する方法を説明する模式図である。
【
図23】
図23Aは、実施例14に記載の方法中の4時点:エレクトロポレーション後(白棒)、H57による選択的増幅後(縞模様棒)、H57結合ビーズによる濃縮後(灰色棒)、及びOKT3による標準REP後(黒棒)、で測定した1キュベット内の細胞の総数を示すグラフである。細胞を4149-HUWE1-TCR1又は4149-TP53-TCRa2b2とエレクトロポレーションした。示すデータが平均値+/-SEM(n=3)であるように、トリプリケートのキュベットを並行して進めた。
図23Bは、実施例14に記載の方法中の4時点:エレクトロポレーション後(白棒)、H57による選択的増幅後(縞模様棒)、H57結合ビーズによる濃縮後(灰色棒)、及びOKT3による標準のREP後(黒棒)、で測定した1キュベット内のCD3+mTCR+細胞のパーセンテージを示すグラフである。細胞を4149-HUWE1-TCR1又は4149-TP53-TCRa2b2とエレクトロポレーションした。示すデータが平均値+/-SEM(n=3)であるように、トリプリケートのキュベットを並行して進めた。
図23C~23Dは、実施例14に記載の方法の28日目(OKT3 REP後)に測定した4149-HUWE1-TCR1転移(mTCR+)(
図23C)細胞又は4149-TP53-TCRa2b2転移(mTCR+)(
図23D)細胞のパーセンテージを示すグラフである。エレクトロポレーション緩衝液のみ(モック)(TCRなし)とエレクトロポレーションしたPBMCが、ネガティブコントロールとして機能した。モックは(1)で表示し、TCR転移細胞は(2)で表示する。示すデータが平均値+/-SEM(n=3)であるように、トリプリケートのキュベットを並行して進めた。
図23Eは、実施例14に記載の方法の28日目(OKT3 REP後)に測定したCD4+mTCRβ+細胞(白棒)又はCD8+mTCRβ+細胞(黒棒)のパーセンテージを示すグラフである。TCRは4149-HUWE1-TCR1又は4149-TP53-TCRa2b2であった。示すデータが平均値+/-SEM(n=3)であるように、トリプリケートのキュベットを並行して進めた。
【
図24】
図24Aは、細胞数の増幅前(1日目)(白棒)又は後(28日目)(黒棒)に測定した、表示したマーカーについて陽性の細胞のパーセンテージを示すグラフである。細胞では、4149-HUWE1-TCR1が転移した。
図24Bは、細胞数の増幅前(1日目)(白棒)又は後(28日目)(黒棒)に測定した、表示した表現型を有するmTCRβ+細胞のパーセンテージを示すグラフである。細胞では、4149-HUWE1-TCR1が転移した。表現型は、中央記憶T(T
CM)細胞、記憶幹T細胞(memory stem T cell)(T
SCM細胞)、ナイーブT細胞(T
N)、エフェクター記憶T細胞(T
EM)、及びエフェクター記憶RA T細胞(T
EMRA)である。
図24Cは、細胞数の増幅前(1日目)(白棒)又は後(28日目)(黒棒)に測定した、表示したマーカーについて陽性の細胞のパーセンテージを示すグラフである。細胞では、4149-TP53-TCRa2b2が転移した。
図24Dは、細胞数の増幅前(1日目)(白棒)又は後(28日目)(黒棒)に測定した、表示した表現型を有するmTCRβ+細胞のパーセンテージを示すグラフである。細胞では、4149-TP53-TCRa2b2が転移した。
【
図25】
図25Aは、(i)DMSO又は10、1、若しくは0.1μg/mLのWT HUWE1ペプチド(白棒)又はmut HUWE1ペプチド(黒棒)でパルスしたDCの、(ii)4149-HUWE1-TCR1が転移した細胞との共培養後に分泌されたIFN-γの濃度を示すグラフである)。
図25Bは、(i)DMSO又は10、1、若しくは0.1μg/mLのWT TP53ペプチド(白棒)又はmut TP53ペプチド(黒棒)でパルスしたDCの、(ii)4149-TP53-TCRa2b2が転移した細胞との共培養後に分泌されたIFN-γの濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
本発明の実施形態は、T細胞数を選択的に増幅する方法を提供する。該方法は、TCRを発現するようにヒトT細胞を改変することを含み得、該TCRは、マウス定常領域(以下、「mTCR」)を含む。本発明の方法は、様々な利点のいずれか1以上を提供し得る。例えば、本発明の方法は、mTCRを発現しない細胞の数に対する、mTCRを発現するT細胞の数の選択的増幅を提供し得る。本発明の方法は、本明細書に記載の通り、T細胞の数を選択的に増幅しない方法により調製される細胞集団と比較して、より高い割合の、mTCRを発現する細胞を含む細胞集団を提供し得る。特定の理論又はメカニズムには拘束されないが、より高い割合の、mTCRを発現する細胞を含む細胞集団は、より少ない割合の、mTCRを発現する細胞を含む細胞集団と比較して、標的がん細胞の破壊の改善とがんの治療の改善の一方又は両方を提供し得ると考えられている。
【0010】
TCRは、一般に、TCRのα鎖、TCRのβ鎖、TCRのγ鎖、TCRのδ鎖、又はそれらの組み合わせ等の、2つのポリペプチド(即ち、ポリペプチド鎖)を含む。TCRのかかるポリペプチド鎖は、当該技術分野で公知である。mTCRが、マウス定常領域を含み、疾患関連抗原等の抗原又はそのエピトープに特異的に結合し、免疫学的に認識することができるという条件で、mTCRは任意のアミノ酸配列を含み得る。
【0011】
mTCRは、外因性のTCR、即ち、T細胞に固有ではない(天然に生じない)TCRであり得る。外因性TCRは組換えTCRであり得る。組換えTCRは、1つ以上の外因性TCRα-、β-、γ-、及び/又はδ-鎖をコードする遺伝子の組換え発現によって生成されているTCRである。組換えTCRを作製する方法は当該技術分野で公知である。
【0012】
本発明の実施形態においては、mTCRは2つのポリペプチド鎖を含み、そのそれぞれは、TCRの相補性決定領域(CDR)1、CDR2、及びCDR3を含む可変領域を含む。好ましくは、mTCRは、α鎖のCDR1、α鎖のCDR2、α鎖のCDR3、β鎖のCDR1、β鎖のCDR2、及びβ鎖のCDR3を含む。
【0013】
一実施形態においては、mTCRは、上記のCDRを含むTCRの可変領域のアミノ酸配列を含み得る。これに関して、TCRは、α鎖可変領域及びβ鎖可変領域を含み得る。
【0014】
本発明の実施形態においては、mTCRは、上記の可変領域又はCDRに加えて、マウス定常領域を更に含む。好ましくは、mTCRは、α鎖マウス定常領域及びβ鎖マウス定常領域の両方を含む。本明細書で用いられる場合、用語「マウス」は、本明細書に記載のTCR又はTCRの任意の構成要素(例、相補性決定領域(CDR)、可変領域、定常領域、アルファ鎖、及び/又はベータ鎖)に言及するとき、マウスに由来するTCR(又はその構成要素)、即ち、マウスT細胞起源であるか、又はマウスT細胞によってかつて発現されたTCR(又はその構成要素)を意味する。
【0015】
mTCRは、可変領域及び定常領域を含むTCRα鎖並びに可変領域及び定常領域を含むTCRβ鎖を含み得る。以下、α鎖可変領域及びβ鎖可変領域を総称して、TCRの「可変領域」という。以下、α鎖定常領域及びβ鎖定常領域を総称して、TCRの「定常領域」という。
【0016】
本発明の実施形態においては、mTCRはマウスTCRである。マウスTCRは、完全にマウスに由来するポリペプチド鎖を含み得る。これに関して、マウスTCRは、マウス可変領域及びマウス定常領域を含み得る。マウスTCRの例としては、米国特許番号第8,216,565号及び9,487,573号並びに米国特許出願番号第15/528,813号に開示されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本発明の別の実施形態においては、mTCRは、2つの異なる哺乳動物種、即ち、マウス及び非マウス種からのTCRに由来するアミノ酸配列で構成されるキメラ又はハイブリッドTCRである。例えば、mTCRは、ヒト可変領域及びマウス定常領域を含み得る。ヒト可変領域及びマウス定常領域を含むキメラTCRの例は、特許出願番号第PCT/US2016/050875号、第PCT/US2017/044615号、第PCT/US2017/027865号、米国特許出願公開番号第2013/0274203号、第2017/0145070号、及び第2016/0152681号;及び米国特許番号第8,785,601号に開示されている。
【0018】
本発明の実施形態においては、mTCRは抗原特異的TCRである。本明細書で用いられる場合、語句「抗原特異的」及び「抗原特異性」は、mTCRの、抗原又はそのエピトープへの結合が免疫反応を誘発するように、mTCRが抗原又はそのエピトープに特異的に結合し、免疫学的に認識できることを意味する。
【0019】
抗原特異的mTCRによって認識される抗原は、疾患に特徴的な任意の抗原であり得る。例えば、抗原は、がん抗原(腫瘍抗原又は腫瘍関連抗原とも呼ばれる)又はウイルス抗原であり得るが、それらに限定されない。ウイルス抗原は当該技術分野で公知であり、例えば、任意のウイルスタンパク質、例、env、gag、pol、gp120、チミジンキナーゼ等が挙げられる。
【0020】
本明細書で用いられる場合、用語「がん抗原」は、抗原が腫瘍又はがんに関連付けられるように、腫瘍細胞又はがん細胞によって単独で又は主に発現又は過剰発現される任意の分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、脂質、炭水化物等)を指す。がん抗原は更に、正常、非腫瘍、又は非がん性細胞によって発現され得る。しかしながら、かかる場合、正常、非腫瘍、又は非がん性細胞によるがん抗原の発現は、腫瘍又はがん細胞による発現ほど確固としていない。これに関して、腫瘍細胞又はがん細胞は、正常細胞、非腫瘍細胞、又は非がん性細胞による抗原の発現と比較して、抗原を過剰発現し得るか、又は抗原を有意に高いレベルで発現し得る。がん抗原は、発生又は成熟の異なる状態の細胞によっても更に発現され得る。例えば、がん抗原は、胚又は胎児期の細胞によって更に発現され得、これらの細胞は、通常、成体宿主では見出されない。或いは、がん抗原は幹細胞又は前駆細胞によって更に発現され得、これらの細胞は通常、成体宿主では見出されない。がん抗原は当該技術分野で公知であり、例えば、メソセリン、CD19、CD22、CD276(B7H3)、gp100、MART-1、上皮成長因子受容体変異体III(EGFRVIII)、TRP-1、TRP-2、チロシナーゼ、変異KRAS、NY-ESO-1(CAG-3としても知られる)、MAGE-1、MAGE-3等が挙げられる。
【0021】
一実施形態においては、がん抗原はネオ抗原である。ネオ抗原は、腫瘍性形質転換中に腫瘍細胞又はがん細胞で生じる遺伝子変異から生成される腫瘍特異的又はがん特異的抗原である。ネオ抗原は患者に特有であり得る。好ましい実施形態においては、ネオ抗原は免疫原性ネオ抗原である。
【0022】
がん抗原は、本明細書に記載のがん及び腫瘍を含む、任意のがん又は腫瘍の任意の細胞によって発現される抗原であり得る。がん抗原は、がん抗原が1タイプのみのがん又は腫瘍に関連するか又は特徴的であるように、1タイプのがん又は腫瘍のみのがん抗原であり得る。或いは、がん抗原は、1超のタイプのがん又は腫瘍のがん抗原であり得る(例、それに特徴的であり得る)。例えば、がん抗原は、乳がん細胞及び前立腺がん細胞の両方によって発現され得、正常、非腫瘍、又は非がん細胞によっては全く発現されない場合がある。
【0023】
抗原特異的mTCRによって認識される抗原に関連するか又は特徴的である疾患は、任意の疾患であり得る。例えば、状態は、本明細書で検討される通り、がんの又はウイルス性の疾患であり得る。
【0024】
がんは、急性リンパ球性がん、急性骨髄性白血病、胞巣状横紋筋肉腫、骨がん、脳がん、乳がん、肛門、肛門管又は肛門直腸のがん、目のがん、肝内胆管のがん、関節のがん、首、胆嚢又は胸膜のがん、鼻、鼻腔又は中耳のがん、口腔のがん、外陰部のがん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄がん、結腸がん、食道がん、子宮頸がん、胃腸カルチノイド腫瘍、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、肝臓がん、肺がん、悪性中皮腫、メラノーマ、多発性骨髄腫、鼻咽頭がん、非ホジキンリンパ腫、卵巣がん、膵臓がん、腹膜、大網及び腸間膜のがん、咽頭がん、前立腺がん、直腸がん、腎臓がん(例、腎細胞がん(RCC))、小腸がん、軟組織がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、尿管がん及び膀胱がんのいずれかを含む、任意のがんであり得る。
【0025】
本明細書の目的のために、「ウイルス性疾患」は、人から人へ又は生物から生物へ伝染し得、ウイルスによって引き起こされる疾患を意味する。本発明の実施形態においては、ウイルス性疾患は、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、ヘパドナウイルス、パピローマウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス(coronoviruses)、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、フラビウイルス、及びカリシウイルスからなる群から選択されるウイルスによって引き起こされる。例えば、ウイルス性疾患は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス、エプスタイン-バーウイルス、水痘ウイルス、サイトメガロウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトTリンパ向性ウイルス、カリシウイルス、アデノウイルス、アリーナウイルスからなる群から選択されるウイルスによって引き起こされ得る。
【0026】
ウイルス性疾患は、例えば、インフルエンザ、肺炎、ヘルペス、肝炎、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、慢性疲労症候群、突発性急性呼吸器症候群(SARS)、胃腸炎、腸炎、心臓炎、脳炎、細気管支炎、呼吸器乳頭腫症、髄膜炎、HIV/AIDS、及び単核球症であり得る。
【0027】
本発明の実施形態においては、方法は、mTCRを発現するようにヒトT細胞を改変することを含む。T細胞は単離又は精製され得る。本明細書で用いられる場合、用語「単離された」は、その自然環境から取り出されていることを意味する。本明細書で用いられる場合、用語「精製された」は、純度が増加していることを意味し、「純度」は相対的な用語であり、必ずしも絶対的な純度と解釈されるべきではない。「精製された」T細胞は、組織、細胞、タンパク質、核酸等の他の天然成分から分離されているT細胞を指す。
【0028】
T細胞は、培養T細胞、例、初代T細胞、又は培養T細胞株由来のT細胞、例、Jurkat、SupT1等、又は非マウス哺乳動物から得られたT細胞等の任意のT細胞であり得る。非マウス哺乳動物から得られる場合、T細胞は、血液、骨髄、リンパ節、胸腺、脾臓又は他の組織若しくは体液を含むが、これらに限定されない多数のソースから得られ得る。細胞は、濃縮又は精製もされ得る。好ましくは、T細胞はヒトT細胞である。T細胞は、CD4+/CD8+二重陽性T細胞、CD4+ヘルパーT細胞、例、Th1及びTh2細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞(例、細胞傷害性T細胞)、末梢血単核細胞(PBMC)、末梢血白血球(PBL)、腫瘍浸潤細胞、記憶T細胞、ナイーブT細胞等を含むが、これらに限定されない、任意の型のT細胞であり得、任意の発生段階のT細胞であり得る。T細胞はCD8+T細胞又はCD4+T細胞であり得る。
【0029】
方法は、mTCR又はmTCRをコードする核酸をヒトT細胞に導入するのに好適な任意の技術を用いて、mTCRを発現するようにヒトT細胞を改変すること、及びヒトT細胞によるmTCRの発現を得ることを含み得る。かかる技術は、例えば、Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第4版,Cold Spring Harbour Press,Cold Spring Harbour,NY(2012)に記載されている。ヒトT細胞を改変してTCRを発現させるのに有用であり得る技術の例としては、トランスフェクション、形質転換、形質導入、エレクトロポレーション、及び遺伝子編集技術が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の実施形態においては、ヒトT細胞は、トランスポゾン、レンチウイルスベクター、又はレトロウイルスベクターを用いて改変される。トランスポゾンの例としては、SLEEPING BEAUTYトランスポゾンシステム(SBTS)(Intrexon(Germantown,MD)及びZiopharm(Boston,MA)から入手可能)、PIGGYBACトランスポゾンシステム(Transposagen、Lexington,KYから入手可能)及びTol2トランスポゾンシステムが挙げられるが、これらに限定されない。遺伝子編集技術の例としては、クラスター化反復短回文配列リピート(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)(CRISPR)/Casシステム(Cheng et al.,Cell Res.,23:1163-71(2013))、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、及び転写活性化様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)が挙げられ得る。
【0030】
方法は更に、mTCRを発現する幾らかのヒトT細胞及びmTCRを発現しない幾らかのヒトT細胞を含む細胞集団を製造することを含み得る。mTCRを発現するようにヒトT細胞を改変することは、様々な効率で行われ得る。従って、mTCRを発現するようにヒトT細胞を改変することは、mTCRを発現する細胞及びmTCRを発現しない細胞を含む細胞の混合集団をもたらし得る。
【0031】
方法は、(i)放射線照射されたフィーダー細胞、(ii)1以上のサイトカイン、及び(iii)抗体又はその抗原結合部分の存在下で細胞集団を培養することを更に含み得る。ここで抗体は、mTCRを発現しないT細胞の数に対してmTCRを発現するT細胞の数を選択的に増やす(本明細書では「選択的増幅」とも呼ばれる)ように、mTCRのマウス定常領域に特異的に結合する。
【0032】
放射線照射されたフィーダー細胞は、T細胞の数を増幅するのに好適な、任意の放射線照射されたフィーダー細胞を含み得る。本発明の実施形態においては、放射線照射されたフィーダー細胞は、(i)放射線照射された同種フィーダー細胞;(ii)放射線照射された自己フィーダー細胞;又は(ii)(i)及び(ii)の両方を含む。用いられる放射線照射されたフィーダー細胞の数は限定されず、例、用途及び得られる細胞の所望の数等の様々な要因に応じて、当業者により選択され得る。例えば、2×107の倍数単位の放射線照射されたフィーダー細胞は、小規模な研究における増幅に有用であり得る。1×108の倍数単位の放射線照射されたフィーダー細胞は、中規模の増幅に有用であり得る。約2から約30の5×108の倍数単位の放射線照射されたフィーダー細胞は、大規模な増幅(例えば、臨床上の生産)(通常、最大約1.5×1010)に有用であり得る。例えば、方法は、約1×109~約4×109同種フィーダー細胞及び/又は自己フィーダー細胞、好ましくは約2×109~約3×109同種フィーダー細胞及び/又は自己フィーダー細胞を用い得る。
【0033】
1以上のサイトカインは、T細胞の数を増幅するのに好適な任意の1以上のサイトカインを含み得る。本発明の実施形態においては、1以上のサイトカインは、インターロイキン(IL)-2、IL-7、IL-12、IL-15、及びIL-21のいずれか1以上
を含む。
【0034】
方法は、細胞集団を、抗体又はその抗原結合部分の存在下で培養することを更に含み得、抗体は、mTCRのマウス定常領域に特異的に結合する。抗体は、当該技術分野で公知の任意のタイプの免疫グロブリンであり得る。例えば、抗体は組換え抗体であり得る。抗体は、任意のアイソタイプ、例、IgA、IgD、IgE、IgG(例、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4)、IgM等であり得る。抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであり得る。抗体は、天然に生じる抗体、例、哺乳動物、例、ウサギ、ヤギ、ウマ、ニワトリ、ハムスター、ヒト等から単離及び/又は精製された抗体であり得る。或いは、抗体は、遺伝子操作された抗体、例、ヒト化抗体又はキメラ抗体、であり得る。抗体は、単量体型又は多量体型であり得る。抗体又はその抗原結合断片は、mTCRのマウス定常領域に対して任意のレベルの親和性又は結合力(avidity)も有し得る。
【0035】
本発明の実施形態においては、抗体は、2つのポリペプチド鎖(重鎖及び軽鎖)を含み、そのそれぞれは、抗体の相補性決定領域(CDR)1、CDR2、及びCDR3を含む可変領域を含む。抗体は、重鎖CDR1、重鎖CDR2、重鎖CDR3、軽鎖CDR1、軽鎖CDR2、及び軽鎖CDR3を含み得る。本発明の実施形態においては、抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。
【0036】
抗体の抗原結合部分は、少なくとも1つの抗原結合部位を有する任意の部分であり得る。本発明の実施形態においては、抗原結合部分は、抗体の重鎖CDR1、重鎖CDR2、重鎖CDR3、軽鎖CDR1、軽鎖CDR2、及び軽鎖CDR3を含み得る。本発明の別の実施形態においては、抗原結合部分は、抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み得る。抗体の抗原結合部分は、Fab断片(Fab)、F(ab’)2断片、Fab’断片、Fv断片、一本鎖可変領域断片(scFv)、ジスルフィド安定化可変領域断片(dsFv)、scFv2CH3、scFv4、scFv3、scFv2、scFv-Fc、又は(scFv)2であり得る。合成ペプチドを介して抗体軽鎖の可変(V)ドメインに連結された抗体重鎖のVドメインを含む融合タンパク質である一本鎖可変領域断片(scFv)は、通常の組換えDNA技術の技法を用いて生成され得る。同様に、ジスルフィド安定化可変領域断片(dsFv)は、組換えDNA技術によって調製され得る。しかしながら、抗体の抗原結合部分は、これらの例示的なタイプの抗原結合部分に限定されない。抗体、及びその抗原結合部分は、特に明記しない限り、以下「抗体」と総称される。
【0037】
抗体は、mTCRのマウス定常領域に特異的に結合する任意の抗体であり得る。本発明の実施形態においては、抗体は、mTCRのマウス定常領域に特異的に結合し、ヒトTCRの任意の部分、例、ヒトTCR定常領域、又はヒトTCR複合体の任意の部分には結合しない。TCR複合体はTCRのα及びβ鎖と3つの二量体シグナル伝達鎖:CD3δ/ε、CD3γ/ε及びCD247ζ/ζ又はζ/η、を含む。CD3δ/ε及びCD3γ/ε鎖は、まとめてCD3複合体と呼ばれる。
【0038】
抗体は、mTCRのα鎖のマウス定常領域又はmTCRのβ鎖のマウス定常領域に特異的に結合し得る。好ましい実施形態においては、抗体は、mTCRのβ鎖のマウス定常領域に特異的に結合する。抗体が特異的に結合するmTCRβ鎖のマウス定常領域は、配列番号1のアミノ酸配列(mTCRβ鎖の全長マウス定常領域のアミノ酸配列)を含み得るか、又はそれからなり得る。抗体は、mTCRβ鎖のマウス定常領域の任意の部分に特異的に結合し得る。例えば、抗体は、配列番号2のアミノ酸配列(mTCRβ鎖の全長マウス定常領域の例示的な最小エピトープのアミノ酸配列)に特異的に結合し得る。本発明の実施形態においては、抗体は、配列番号1のアミノ酸配列のアミノ酸残基D2、R4、N5、T7、E101、D103、K104、W105、P106、E107、G108、S109、及びP110に特異的に結合する。
【0039】
mTCRのマウス定常領域に特異的に結合する抗体は市販されている。例えば、mTCRのβ鎖のマウス定常領域に特異的に結合する抗体は、H57抗体(H57-597とも呼ばれる)(Biolegend,San Diego,CAから入手可能)である。H57はアルメニアンハムスターのIgG抗体であり、例えばKubo et al.,J.Immunol.,142(8):2736-42(1989)及びGregoire
et al.,PNAS、88:8077-81(1991)に記載されている。H57抗体のエピトープは、例えば、Wang et al.,EMBO J.,17(1):10-26(1998)に記載されている。H57抗体は、配列番号1のアミノ酸配列のアミノ酸残基D2、R4、N5、T7、E102、D104、K105、W106、P107、E108、G109、S110、及びP111に特異的に結合する。
【0040】
本発明の実施形態においては、抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。例えば、抗体(Ab)は、配列番号3(H57 Ab重鎖の可変領域)若しくは配列番号4(H57 Ab軽鎖の可変領域)又は配列番号3及び4の両方のアミノ酸配列を含み得るか、それらからなり得るか、又はそれらから実質的に成り得る。好ましくは、抗体は、配列番号3及び4の両方のアミノ酸配列を含む。本発明の実施形態においては、抗体は、配列番号3のH57 Ab重鎖の相補性決定領域(CDR)1、CDR2、及びCDR3、並びに配列番号4のH57 Ab軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。
【0041】
本発明の実施形態においては、抗体は、上記の可変領域を含む重鎖及び軽鎖を含む。例えば、抗体は、配列番号5(H57 Ab重鎖)若しくは配列番号6(H57 Ab軽鎖)、又は配列番号5及び6の両方のアミノ酸配列を含み得るか、それらからなり得るか、又はそれらから実質的になり得る。好ましくは、抗体は、配列番号5及び6の両方のアミノ酸配列を含む。
【0042】
本明細書に記載の通り、(i)放射線照射されたフィーダー細胞、(ii)1以上のサイトカイン、及び(iii)抗体の存在下で細胞集団を培養することにより、好都合に、mTCRを発現するT細胞の数が、mTCRを発現しないT細胞の数に対して選択的に増幅される。これに関して、本発明の方法は、TCRのマウス定常領域に特異的に結合する抗体を用いない、細胞数を増幅する方法と比較して、好都合に、より高い割合の、mTCRを発現する細胞を含む細胞集団を提供し得る。本発明の実施形態においては、方法は、mTCRを発現するT細胞の数を、約5倍以下から約4,000倍以上まで増加させる。例えば、本発明の方法は、mTCR発現細胞の数を約5倍~約4,000倍、約100倍~約3,500倍、約1,000倍~約3,000倍、約1,500倍~約2,500倍、約10倍~約1,000倍、約50倍~約850倍、約100倍~約900倍、約150倍~約850倍、約200倍~約800倍、約250倍~約750倍、約300倍~約700倍、約350倍~約650倍、又は約400倍~約600倍増加させ得る。例えば、本発明の方法は、mTCR発現細胞の数を、約10倍、約50倍、約100倍、約150倍、約200倍、約250倍、約300倍、約350倍、約400倍、約450倍、約500倍、約550倍、約600倍、約650倍、約700倍、約750倍、約800倍、約850倍、約900倍、約950倍、約1,000倍、又は前述の値のいずれか2つの範囲で増加させ得る。前述の増幅倍数は、約10~約14日、好ましくは約14日の期間にわたって達成され得る。本発明の方法によって達成される増幅倍数は、非常に変動しやすく、ドナー依存性であり得る。
【0043】
本発明の実施形態においては、方法は、選択的に増幅された細胞集団を製造し、選択的に増幅された集団における約10%~約95%の細胞が、マウス定常領域を含むTCRを発現する。これに関して、方法は、選択的に増幅された集団における約10%~約95%、約15%~約90%、約20%~約85%、約25%~約80%、約30%~約75%
、約35%~約70%、又は約40%~約65%の細胞がmTCRを発現する、選択的に増幅された細胞集団を製造し得る。方法は、選択的に増幅した集団における、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は前述の値のいずれか2つの範囲の細胞がmTCRを発現する、選択的に増幅された細胞集団を製造し得る。
【0044】
本発明の方法は、好都合に、様々な用途のいずれかに好適であり得る、任意の数のmTCR発現T細胞を製造し得る。本発明の実施形態においては、方法は、mTCRを発現する約1×106~約1×1011以上のT細胞を製造し得る。例えば、本発明の方法は、小さな容器(例えば、T25フラスコ)において、mTCRを発現する約1×106~約1×107のT細胞を製造し得る。本発明の方法は、より大きな容器(例えば、T175フラスコ)において、mTCRを発現する約5×106~約3×107のT細胞を製造し得る。本発明の方法は、他の容器(例えば、Wilson Wolf Manufacturing,New Brighton,MNから入手可能なGREXフラスコ)において、mTCRを発現する約1×109~約1×1010のT細胞を製造し得る。mTCRを発現する約1×106~約1×1010のT細胞の集団は、小規模のスクリーニング実験に有用であり得る。mTCRを発現するより多くの数、例、約1.5×1010以上、の細胞も、本発明の方法を用いて、例えば、臨床適用のために得られ得る。本発明の方法によって製造されるmTCR発現T細胞の数は、非常に変動しやすく、ドナー依存性であり得る。
【0045】
方法は、mTCR発現細胞の数の1回以下の選択的増幅、又はmTCR発現細胞の数の複数回の選択的増幅を行うことを含み得る。本発明の実施形態においては、方法は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載された、1回以上の選択的増幅を行い、その後、細胞数の1回以上の非選択的増幅を行うことを含む。これに関して、方法は、(i)放射線照射された同種フィーダー細胞及び放射線照射された自己フィーダー細胞の一方又は両方、(ii)1以上のサイトカイン、及び(iii)ヒトCD3複合体に特異的に結合する抗体、又は、その抗原結合部分の存在下でヒトT細胞を培養すること(本明細書では「非選択的増幅」とも呼ばれる)を更に含み得る。T細胞の数の増幅は、例えば、米国特許第8,034,334号;米国特許第8,383,099号;米国特許出願公開番号第2012/0244133号;Dudley et al.,J.Immunother.,26:332-42(2003);及びRiddell et al.,J.Immunol.Methods,128:189-201(1990)に記載の通りの多くの方法のいずれかによって達成され得る。例えば、T細胞の数は、フィーダーリンパ球及びインターロイキン-2(IL-2)又はインターロイキン-15(IL-15)のいずれか(IL-2が好ましい)の存在下でヒトCD3複合体に特異的に結合する抗体又はその抗原結合部分を用いて非選択的に増幅され得る。ヒトCD3複合体に特異的に結合する抗体の例は、OKT3(Ortho-McNeil,Raritan,NJから入手可能)である。
【0046】
複数回の選択的増幅、又は1回以上の選択的増幅後の1回以上の非選択的増幅は、mTCRの数を約100,000倍以上増加させ得る。本発明の実施形態においては、方法は、集団中の約20%~約99%の細胞がマウス定常領域を含むTCRを発現する、細胞集団を製造する。複数回の選択的増殖、又は1回以上の選択的増殖後の1回以上の非選択的増殖は、集団中の約25%~約95%、約30%~約90%、約35%~約85%、約40%~約80%、約45%~約75%、又は約50%~約70%の細胞がmTCRを発現する、細胞集団を製造し得る。方法は、集団中の約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は前述の値のいずれか2つ
の範囲の細胞がmTCRを発現する、細胞集団を製造し得る。
【0047】
本発明の実施形態においては、方法は、TCRのマウス定常領域に特異的に結合する抗体又はその抗原結合部分を用いて、TCRを発現するT細胞を、TCRを発現しないT細胞から分離することを更に含む。これに関して、方法は、抗体がTCRのマウス定常領域に特異的に結合するように、mTCRを発現する細胞及びmTCRを発現しない細胞を含む細胞の混合集団を抗体と物理的に接触させることを含み得る。抗体は、支持体、例、ビーズ、に接着され得る。方法は、mTCRを発現しない細胞の全部又は一部が、mTCRを発現する細胞から除去されるように、抗体及び細胞を洗浄することを更に含み得る。方法は、抗体からmTCR発現細胞を溶出することを更に含み得る。T細胞を分離するための技術の例は、例えば、Deniger et al.,Mol.Ther.,24(6):1078-89(2016)及びField et al.,PLoS One,8(6):e68201(2013)に記載されている。
【0048】
本発明の方法は、好都合に、mTCRを発現する細胞が濃縮されている細胞集団を提供し得る。従って、本発明の実施形態は、本明細書に記載の方法のいずれかに従って調製された、幾らかの選択的に増幅されたT細胞を含む細胞集団を提供する。細胞集団は、少なくとも1つの他の細胞(例、mTCRを発現しないT細胞)又はT細胞以外の細胞(例、B細胞、マクロファージ、好中球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋肉細胞、脳細胞等)と共に、mTCRを発現するT細胞を含む不均一集団であり得る。或いは、細胞集団は、集団が、mTCRを発現するT細胞を主に含む(例、実質的にそれからなる)、実質的に均一な集団であり得る。集団は、集団の全ての細胞がmTCRを発現するように、集団の全ての細胞が、mTCRを発現する単一のT細胞のクローンである、細胞のクローン集団でもあり得る。本発明の一実施形態においては、細胞集団は、mTCRを発現するT細胞を含むクローン集団である。
【0049】
本発明の細胞集団は、単離及び/又は精製され得る。本明細書において用いられる場合、用語「単離された」は天然環境から取り出されていることを意味する。本明細書において用いられる場合、用語「精製された」は純度が増加していることを意味し、「純度」は、相対的な用語であり、必ずしも絶対的な純度と解釈されるべきではない。純度は、例えば、少なくとも約50%であり得、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%超であり得、又は約100%であり得る。
【0050】
本発明の細胞集団は、医薬組成物等の組成物に製剤化され得る。これに関して、本発明は、本明細書に記載の細胞集団のいずれか、及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、例、アスパラギナーゼ(asparaginase)、ブスルファン(busulfan)、カルボプラチン(carboplatin)、シスプラチン(cisplatin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、フルオロウラシル(fluorouracil)、ゲムシタビン(gemcitabine)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、メトトレキセート(methotrexate)、パクリタキセル(paclitaxel)、リツキシマブ(rituximab)、ビンブラスチン(vinblastine)、ビンクリスチン(vincristine)等の化学療法剤等の、他の医薬的な活性剤(複数可)又は薬剤(複数可)との組合せで、本発明の細胞集団のいずれかを含み得る。
【0051】
好ましくは、担体は医薬的に許容可能な担体である。医薬組成物に関して、担体は、T細胞のために従来用いられているもののいずれかであり得る。投与可能な組成物を調製するための方法は、当業者に公知であるか、又は明らかであり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,2
2版,Pharmaceutical Press(2012)により詳細に記載されている。医薬的に許容可能な担体は、使用条件下で有害な副作用又は毒性を有さないものであることが好ましい。
【0052】
担体の選択は、本発明の細胞集団を投与するために用いられる特定の方法によって決定され得る。従って、本発明の医薬組成物の種々の好適な製剤がある。好適な製剤としては、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、腫瘍内、又は腹腔内投与用のもののいずれかが挙げられ得る。本発明の細胞集団を投与するために1超の経路が用いられ得、特定の例においては、ある経路が、別の経路よりも即時の、効果的な応答を提供し得る。
【0053】
好ましくは、本発明の細胞集団は、注射、例、静脈内、によって投与される。注射用の細胞のための医薬的に許容可能な担体は、例えば、通常の生理食塩水(水中約0.90%
w/vのNaCl、水中約300mOsm/LのNaCl、又は水1リットル当たり約9.0gのNaCl)、NORMOSOL R電解質溶液(Abbott,Chicago,IL)、PLASMA-LYTE A(Baxter,Deerfield,IL)、水中約5%のデキストロース、又は乳酸リンゲル液等の任意の等張性の担体が挙げられ得る。一実施形態においては、医薬的に許容可能な担体には、ヒト血清アルブミンが補充される。注入用の医薬組成物はIL-2を含有する場合としない場合がある。医薬組成物がIL-2を含有する場合、約300IU/mLの濃度が用いられ得る。
【0054】
本発明の目的のために、投与される量又は用量(例、細胞の数)は、合理的な時間枠に亘り、哺乳動物における、例、治療的又は予防的応答、をもたらすために十分であるべきである。例えば、用量(例、細胞の数)は、疾患関連抗原に結合するか、又は投与時から、約2時間以上から、例、約12~約24時間以上の期間で、疾患を検出、治療若しくは予防するために十分であるべきである。特定の実施形態においては、期間は更に長くなる場合がある。用量は、細胞集団の効能及び哺乳動物(例、ヒト)の状態、並びに治療される哺乳動物(例、ヒト)の体重によって決定される。
【0055】
投与量を決定するための多くのアッセイが、当該技術分野において公知である。本発明の目的のために、T細胞の種々の用量がそれぞれ与えられる1組の哺乳動物間で、哺乳動物にかかるT細胞のある特定の用量が投与される際に、mTCRを発現するT細胞により標的細胞が溶解され又はIFN-γが分泌される程度を比較することを含むアッセイが、哺乳動物に投与する開始用量を決定するために用いられ得る。特定の用量の投与の際に標的細胞が溶解され又はIFN-γが分泌される程度は、当該技術分野において公知の方法によってアッセイされ得る。
【0056】
本発明の細胞集団の用量は、特定の細胞集団の投与に伴う可能性のある任意の有害な副作用の存在、性質及び程度によっても決定される。通常、主治医は、年齢、体重、一般的な健康状態、食事、性別、投与される本発明の細胞集団、投与経路、及び治療される疾患の重篤度等のさまざまな要因を考慮して、各個人の患者を治療する細胞集団の投与量を決定する。一実施形態においては、注入ごとに投与される細胞の数は、例えば、約1×106細胞から約1×1012細胞以上まで変動し得る。特定の実施形態においては、少なくとも約1.5×1010細胞が投与され得る。
【0057】
本発明の方法によって製造された細胞集団は、疾患、例、がん、を治療又は予防するのに有用であり得る。従って、本発明の別の実施形態は、哺乳動物における疾患を治療又は予防する方法を提供し、該方法は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載された方法のいずれかに従って、T細胞数を選択的に増幅すること、及び選択的に増幅された数のT細胞を、哺乳動物における疾患を治療又は予防するのに有効な量で、哺乳動物に投与することを含む。
【0058】
本発明の方法の目的のために、細胞集団が投与され、該細胞は、哺乳動物に対して同種又は自己である細胞であり得る。好ましくは、該細胞は哺乳動物に対して自己である。
【0059】
本発明の実施形態においては、疾患はがんである。がんは、本発明の他の態様に関して本明細書に記載されたがんのいずれかであり得る。
【0060】
本発明の実施形態においては、疾患はウイルス性疾患である。ウイルス性疾患は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載されたウイルス性疾患のいずれかであり得る。
【0061】
本明細書中で用いられる場合、用語「哺乳動物」は、マウス及びハムスター等のネズミ目の哺乳動物、並びにウサギ等のウサギ目の哺乳動物を含むが、これらに限定されない任意の哺乳動物を指す。哺乳動物がネコ科動物(ネコ)及びイヌ科動物(イヌ)を含むネコ目由来であることが好ましい。哺乳動物がウシ亜科動物(ウシ)及びイノシシ科動物(ブタ)を含むウシ目由来、又はウマ科動物(ウマ)を含むウマ目のものであることがより好ましい。哺乳動物が霊長目、セボイド目若しくはシモイド目(サル)又は類人目(ヒト及び類人猿)のものであることが最も好ましい。特に好ましい哺乳動物はヒトである。
【0062】
本明細書中で用いられる場合、用語「治療」及び「予防」、並びにそれに由来する語は、必ずしも100%又は完全な治療若しくは予防を意味しない。むしろ、当業者が潜在的な利益又は治療効果を有すると認識する、治療又は予防の様々な程度がある。これに関して、本発明の方法は、哺乳動物における、任意の量の任意のレベルのがんの治療又は予防を提供し得る。更には、本発明の方法によって提供される治療又は予防は、治療又は予防される、疾患、例、がん、の1以上の状態又は症状の治療又は予防を含み得る。例えば、本発明の方法により提供される治療又は予防は、腫瘍の退縮を促進することを含み得る。本明細書の目的のために、「予防」は、疾患、又はその症状若しくは状態の発症を遅延させることも包含し得る。
【0063】
以下の実施例は本発明を更に説明するが、当然ながら、決してその範囲を限定すると解釈すべきではない。
【実施例0064】
実施例1
本実施例は、マウス定常領域(mTCR)を含むTCRを発現するT細胞の数を選択的に増幅することにより、mTCRを発現する細胞の数が増加することを実証する。
【0065】
一方はがん特異的変異ERBB2ネオ抗原に対して抗原特異性を有し、他方はがん特異的変異ERBB2IPネオ抗原に対して抗原特異性を有する、2つのTCRをコードするRNAを、がん患者から単離した腫瘍浸潤リンパ球(TIL)から単離した。逆転写を介してRNAからcDNAを増幅した後、cDNAコピーのPCR増幅を行った。mTCRコンストラクト(TCRごとに1つ)は、Deniger et al.,Mol.Ther.,24(6):1078-89(2016)に記載の通り調製した。簡単に述べると、ヒトTCR-α-V-J領域をマウスTCR-α定常鎖に融合し、ヒトTCR-β-V-D-J領域をマウスTCR-β定常鎖に融合し、合成リンカー配列をアルファ(α)及びベータ(β)鎖間に配置させた(
図1A)。両方のmTCRコンストラクトを合成し、SLEEPING BEAUTY Transposon System(SBTS))プラスミド(Intrexon(Germantown,MD)及びZiopharm(Boston,MA)から入手可能)中にクローン化した(Deniger et al.,PLoS One,10(6):e0128151(2015)及びSingh et al.,Cancer Res.,71(10):3516-27(2011)に
記載)。
【0066】
本発明の実施形態による、末梢血単核細胞(PBMC)をmTCRとエレクトロポレーションし、mTCR
+T細胞の数を選択的に増幅する方法を示す模式図を
図1Bに示す。
図1Bに示すように、AMAXA NUCLEOFECTOR II装置及びキット(Lonza,Basel,Switzerland)を用いて、2つのmTCRのそれぞれの1つをコードするSBTSプラスミド(15μg)及びトランスポザーゼをコードするSBTSプラスミド(5μg)を、それぞれ自己PBMC(2×10
7)にエレクトロポレーションした。24時間後、mTCRを発現する細胞とmTCRを発現しない細胞を含む、エレクトロポレーションした細胞の混合集団を得た。
【0067】
図1Bに示す通り、混合集団において、マウスTCR定常領域を発現するT細胞(mTCR
+T細胞)の数を選択的に増幅した。mTCR
+T細胞を選択的に増幅するために、エレクトロポレーションした細胞の混合集団(2×10
6)からの細胞を、(i)H57抗体(Ab)(Biolegend,San Diego,CA)又はOKT3抗体、(ii)IL-2、及び(iii)IL-21の存在下で放射線照射した末梢血リンパ球(PBL)(2×10
7)と共培養した。
【0068】
mTCR+T細胞の数を選択的に増幅した後、細胞を(i)抗CD3 Ab、抗CD4
Ab、又は抗CD8 Ab及び(ii)抗mTCRβ抗体(H57)で染色した。エレクトロポレーション緩衝液のみ(モック)(TCRなし)とエレクトロポレーションしたPBMCが、ネガティブコントロールとして機能した。
【0069】
染色した細胞を、蛍光活性化細胞選別(FACS)によって計数した。結果を
図2に示す。
図2に示す通り、H57 Abによる選択的増幅により、OKT3と比較して、抗変異ERBB2 mTCR
+T細胞の数と抗変異ERBB2IP mTCR
+T細胞の数が増加した。
【0070】
実施例2
本実施例は、より高い濃度のH57 Abでより多数のmTCR+が得られることを実証する。
【0071】
実施例1に記載の通り、PBMCを抗ERBB2IP mTCR又は抗ERBB2 mTCRコンストラクトとエレクトロポレーションした。混合集団中のマウスTCR定常領域を発現するT細胞(mTCR+T細胞)の数を、さまざまな濃度のH57 Ab(0ng/mL、1ng/mL、5ng/mL、10ng/mL、25ng/mL、50ng/mL、100ng/mL、250ng/mL、又は500ng/mL)で、実施例1に記載の通り、選択的に増幅した。
【0072】
mTCR+T細胞の数の選択的増殖後に、細胞を、(i)抗CD3 Ab、抗CD4 Ab、又は抗CD8 Ab及び(ii)抗mTCRβ抗体(H57)で染色した。エレクトロポレーション緩衝液のみ(モック)(TCRなし)とエレクトロポレーションしたPBMCが、ネガティブコントロールとして機能した。H57 Abでの選択的増殖の代わりにOKT3 Ab(30ng/mL)による標準REPを経たエレクトロポレーションした細胞が、非特異的T細胞増殖のポジティブコントロールとして機能した。
【0073】
染色した細胞をFACSにより計数した。結果を
図3A及び3Bに示す。
図3A及び3Bに示す通り、より高濃度のH57 Abにより、より多数の抗変異ERBB2 mTCR
+及び抗変異ERBB2IP mTCR
+細胞を得た。
【0074】
実施例3
本実施例は、mTCRを発現するT細胞の数を選択的に増幅する方法を実証する。
【0075】
がん特異的p53-Y220Cネオ抗原に対する抗原特異性を有するTCRをコードするRNAを、卵巣がん患者4149から単離した腫瘍浸潤リンパ球から単離した。cDNAを、RNAから逆転写により増幅し、その後、cDNAコピーをPCR増幅した。mTCRコンストラクトを、ヒトTCR-α-V-J領域をマウスTCR-α定常鎖に融合させ、ヒトTCR-β-V-D-J領域をマウスTCR-β定常鎖に融合させ、合成リンカー配列をα及びβ鎖間に位置させることにより調製した(
図4B)。mTCRコンストラクトを合成し、SBTSプラスミドにクローニングした。
【0076】
本発明の実施形態による、PBMCをmTCRとエレクトロポレーションし、mTCR
+T細胞の数を選択的に増幅する方法を示す模式図を、
図4Aに示す。
図4Aに示す通り、患者から自己のPBMCを得て、凍結保存した。凍結保存したPBMC(200g)を20~23℃で10分間解凍した。PBMCを50/50培地(3×10
6細胞/mL)に入れ、37℃で2時間培養した。mTCRをコードするSBTSプラスミド及びトランスポザーゼをコードするSBTSプラスミドを、AMAXA NUCLEOFECTOR
II装置及びキット(Lonza,Basel,Switzerland)を用いて自己PBMCにエレクトロポレーションした。ヒトT細胞NUCLEOFECTOR溶液(300μL)には、mTCRをコードするSBTSプラスミド(45μg)及びトランスポザーゼをコードするSBTSプラスミド(15μg)が含まれていた。このヒトT細胞NUCLEOFECTOR溶液をキュベットに加えた(100μL/キュベット)。エレクトロポレーションした細胞をウェル(5mL 50/50培地/ウェル)内で37℃で一晩培養した。18時間超後、50U/mLベンゾナーゼを37℃で1時間インキュベートした。mTCRを発現する細胞とmTCRを発現しない細胞を含む、エレクトロポレーションした細胞の混合集団を得た。
【0077】
図4Aに示す通り、37℃で18時間超の培養後、混合集団中でマウスTCR定常領域を発現するT細胞(mTCR
+T細胞)の数が選択的に増幅された。mTCR
+T細胞を選択的に増幅するために、H57 Ab(Biolegend,San Diego,CA)(250ng/mL)、IL-2(50IU/mL)、及びIL-21(30ng/mL)の存在下で、mTCR
+T細胞(5×10
5)を放射線照射した末梢血リンパ球(PBL)(1×10
8)と共培養した。
【0078】
mTCR+T細胞の数の選択的増幅後に、mTCR+T細胞の数を、標準的な急速増幅プロトコル(REP)を用いて更に増幅した(実施例5を参照)。標準的なREPにおいては、選択的に増幅したmTCR+T細胞(5×106)を、放射線照射したPBL(5×108)、OKT3抗体(30ng/mL)、及びIL-2(3000IU/mL)と共培養した。OKT3抗体は、ヒトCD3複合体内のイプシロンサブユニットにおけるエピトープと反応する。
【0079】
比較例1
本例は、選択的増幅がないときにmTCRを発現するエレクトロポレーションした細胞の数を実証する。
【0080】
自己PBMCを、実施例4に記載の通り、mTCRをコードするSBTSプラスミド及びトランスポザーゼをコードするSBTSプラスミドとエレクトロポレーションした。ネガティブコントロールは、非トランスフェクション自己PBMC及びエレクトロポレーション緩衝液のみ(モック)とエレクトロポレーションしたPBMCを含んだ。エレクトロポレーションした細胞を抗CD3抗体及び抗mTCRβ抗体(H57)で染色した。未染
色非トランスフェクション自己PBMCが、更に別のネガティブコントロールとして機能した。
【0081】
エレクトロポレーションの翌日に、染色した細胞を、選択的増幅を経ることなく、実施例4に記載の通りFACSにより計数した。FACSにより、リンパ球/PI(neg)細胞にゲートした。PIは死んだ細胞のための染色である。PI(neg)細胞は生細胞である。
【0082】
結果を
図5A~5Dに示す。
図5A~5Dに示す通り、全集団中の若干数の細胞(全細胞の約5%)が、選択的増殖を経ることなく、エレクトロポレーション後にmTCRを発現した。
【0083】
実施例4
本実施例は、エレクトロポレーションしたT細胞をH57抗体により選択的に増幅することによって、混合集団におけるマウス定常領域を含むTCRを発現する細胞の数が選択的に増加することを実証する。
【0084】
自己PBMCを、実施例3に記載の通り、mTCRをコードするSBTSプラスミド及びトランスポザーゼをコードするSBTSプラスミドとエレクトロポレーションした。様々な開始数のmTCR+T細胞(1×105、5×105、又は10×105)を、さまざまな濃度のH57 Ab(250ng/mL、500ng/mL、又は750ng/mL)を用いて、実施例3に記載の通り選択的に増幅した。本実験では、初期頻度に基づいて、インプットを5×105mTCR+T細胞に揃えた。例えば、5%mTCR発現は、合計1×107個の細胞を増幅プロトコルに移行し、5×105mTCR+T細胞を達成することを意味した。エレクトロポレーション緩衝液のみ(モック)とエレクトロポレーションしたPBMCが、ネガティブコントロールとして機能した。エレクトロポレーションした、選択的に増幅した細胞を、抗CD3抗体及び抗mTCRβ抗体(H57)で染色した。
【0085】
染色した細胞を、FACSにより計数した。FACSにより、リンパ球/PI(neg)細胞にゲートした。結果を
図6と表1~2に示す。
図6及び表1~2に示す通り、H57 Abによる選択的増幅により、集団内のmTCR
+T細胞の数が増加した。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
実施例5
本実施例は、H57 Abによる第1の増幅後の、OKT3 Abによる第2の増幅がmTCR+細胞の数を更に増加させることを実証する。
【0090】
実施例4に記載の通り、既に、(i)初期数5×105のmTCR+T細胞で、(ii)250ng/mLのH57 Abによる選択的増殖(本実施例では、「1回目の増幅」と称する)を経た、エレクトロポレーションした細胞を、GREXフラスコ(Wilson Wolf Manufacturing,St Paul,MN)中で、(i)実施例3に記載の通りの、OKT3 Abによる標準REPを用いて、又は(ii)実施例4に記載の通り、H57 Abを用いて、更に増幅した(本実施例では、「2回目の増幅」と称する)。
【0091】
2回目の増幅後、細胞を抗CD3抗体及び抗mTCRβ抗体(H57)で染色した。染色した細胞をFACSにより計数した。FACSにより、リンパ球/PI(neg)細胞にゲートした。結果を
図7に示す。
【0092】
図7に示す通り、H57 Abによる1回目の増幅後の、OKT3 Abでの2回目の増幅により、mTCR+細胞の数が更に増加する。OKT3 Abによる2回目の増幅により、H57 Abによる2回目の増幅と比較して、mTCR+細胞の数が大幅に増加した。
【0093】
生細胞のパーセンテージ、細胞の総数、2回目の増殖により達成した細胞の数の変化倍数、mTCR+細胞の数、及び2回目の増殖により達成したmTCR+細胞の変化倍数も、OKT3 Ab及びH57 Abによる2回目の増幅を経た細胞で測定し、比較した。結果を表3に示す。表3に示す通り、H57 Abによる1回目の増幅後の、OKT3 Abによる2回目の増幅によって、mTCR+細胞の数が更に増加する。OKT3 Abによる2回目の増幅によって、H57 Abによる2回目の増幅と比較して、mTCR+細胞の数が大幅に増加した。
【0094】
【0095】
実施例6
本実施例は、mTCRを発現するT細胞の数を選択的に増幅することにより、mTCRを発現する細胞の数が増加することを実証する。
【0096】
PBLを、標準的な方法を用いて、0日目に、マウスF5(mF5)抗MART-1 TCRをコードするガンマレトロウイルスベクターで形質導入した。10日目に、形質導入した細胞を、二回目の増幅用に調製した。増幅を、(i)さまざまな濃度のIL-2、(ii)さまざまな比率のフィーダー細胞、及び(iii)表4に記載の通りのOKT3
Ab(30ng/ml)又はH57 Ab(50ng/ml)のいずれかを用いて行った。
【0097】
【0098】
図8A~8BにおけるFACSプロットは、非形質導入細胞及びOKT3 Ab又はH57 Abによる増幅前の、CD8及びマウスF5(mF5)抗MART-1 TCRを発現する形質導入細胞(プレ-急速増幅プロトコル(REP))のパーセンテージを示す。増幅前の形質導入効率は83.9%であった。この形質導入した集団を細胞培養培地で希釈して、増幅前に約5%のマウスTCRベータ鎖陽性(mTCRb+)細胞(
図8C)にした。
【0099】
図8Cの5%mTCRb+開始集団における細胞数の、(i)OKT3(50ng/ml)又はH57(50ng/ml)による、(ii)500又は50CU/IL-2のいずれかにおける増幅後の結果を、
図9及び10A~10Bに示す。細胞の数はOKT3に
より約1500~2300倍に増幅したが、mTCRb+細胞集団中の細胞の数の選択的な増幅は見られなかった。或いは、H57により増幅する細胞の数は少ない(500~800倍)が、それらはmTCRb+細胞のパーセンテージにおいて4~8倍の増加を示した。全体として、増殖におけるH57の使用により、より多くのmTCRb+細胞がもたらされた。
【0100】
実施例7
本実施例は、mTCRを発現するT細胞の数を選択的に増幅することにより、mTCRを発現する細胞の数が増加することを実証する。
【0101】
PBLを、実施例6に記載の通り、マウスF5 TCRをコードするレトロウイルスベクターで形質導入した。H57又はOKT3による増幅前の形質導入細胞(開始細胞集団)によるCD8及びmTCRbの発現を、
図11A~11Cに示す。開始mTCR+集団は、元々64.7%のmTCRb+細胞を有していた(
図11B)。開始mTCR+集団を、4倍に希釈して14%mTCRb+にした(
図11C)。
【0102】
形質導入細胞及びUT細胞の数を、(i)IL-2なし、50CU IL-2、又は500CU IL-2で、(ii)OKT3 Ab又はH57 Abを用いて増幅した。結果を
図12A~12E及び13A~13Bに示す。
【0103】
増幅後、OKT3集団は、ほぼ等しいパーセンテージ(5%)のCD8+及びCD8-形質導入細胞を有するmTCRb+細胞集団全体の選択的増幅を示さなかった。比較すると、両方のH57増幅集団(それぞれ500又は50CU/IL-2)は、それぞれ31.2%及び59.1%の選択的mTCRb+増幅を示した。50CU/IL-2を用いたH57増幅は、500CU/IL-2中で増殖した細胞と比較して、ほぼ2倍高いmTCRb+細胞の増幅を示した。
【0104】
図13~13Bに示すように、OKT3又はH57により増幅した細胞の数は、500CU/IL-2の存在下で約1400~1600倍増幅された。しかし、50CU/IL-2を加えたH57増幅により、約3500倍(試験した他の条件の2倍超)に増幅された。
【0105】
実施例8
本実施例は、mTCRを発現するT細胞の数を選択的に増幅することにより、mTCRを発現する細胞の数が増加することを実証する。
【0106】
PBLを、実施例6に記載の通り、マウスF5 TCRをコードするレトロウイルスベクターで形質導入した。H57又はOKT3による増幅前の形質導入細胞(プレ-REP)によるCD8及びmTCRbの発現を、
図14A~14Fに示す。
【0107】
形質導入した細胞の数を、(i)50CU IL-2及び(ii)OKT3 Ab(30ng/ml)又はH57 Ab(500、50、10、5ng/ml)を用いて増幅した。結果を
図14A~14F及び
図15に示す。
図14A~14F及び
図15に示す通り、H57抗体の濃度は、選択的mTCRb+増幅に何ら悪影響を与えることなく、力価を10倍低減できる。全体的な増幅倍数も、試験したすべての群間で同様であった。H57による増幅後のCD8-細胞の優先的な増殖も観察された。
【0108】
実施例9
本実施例は、実施例8におけるH57による第1回目の増幅を経た細胞の数の、OKT3又はH57による第2回目の増幅による更なる増幅を示す。
【0109】
実施例8においてH57 Abによる増幅を経たmTCR形質導入細胞を、OKT3又はH57による2回目の増幅に供して、mTCRb+細胞の更なる濃縮が達成し得るかどうかを決定した。増幅条件は、実施例8に記載のものと同一であった。
【0110】
結果を
図16A~16E及び
図17に示す。OKT3による2回目の増幅によっては、mTCRb+細胞に関しては更に濃縮しなかったが、細胞の数は、更に1000倍増幅した。H57による2回目の増幅によっては、mTCRb+細胞については何ら更なる濃縮は加えられず、500及び50ng/mlでmTCRb+細胞におけるわずかな減少がもたらされた可能性がある。H57による2回目の増幅を経た集団の増幅倍数は低く、200~500倍の範囲であった。
【0111】
実施例10
本実施例は、エレクトロポレーションの翌日に、変異特異的TCRがトランスポゾンによって発現することを実証する。
【0112】
図4Aに示す通り、自己PBMCを、健康なドナー1及び健康なドナー2から得て、凍結保存した。凍結保存したPBMCを解凍し、20~23℃で10分間遠心分離した(200g)。PBMCを50/50培地に入れ(3×10
6細胞/mL)、37℃で2時間培養した。2つのmTCRの一方をコードするSBTSプラスミド及びトランスポザーゼをコードするSBTSプラスミドを、AMAXA NUCLEOFECTOR II装置及びキット(Lonza,Basel,Switzerland)を用いて自己PBMCにエレクトロポレーションした。2つのmTCRは、(1)4149-HUWE1-TCR1(クラスI)及び(2)4149-TP53-TCRa2b2(クラスII)であった。ヒトT細胞NUCLEOFECTOR溶液(300μL)には、mTCRをコードするSBTSプラスミド(45μg)及びトランスポザーゼをコードするSBTSプラスミド(15μg)が含まれていた。2時間の休止期間後、非接着性のPBMCを20~23℃で10分間遠心分離(200g)することにより回収し、培地を除去して、SBTSプラスミドを含むヒトT細胞NUCLEOFECTOR溶液に置き換えた(1キュベットあたり100μLを加えた)。エレクトロポレーションした細胞をウェル(5mL 50/50培地/ウェル)内で37℃で一晩培養した。>18時間後、50U/mLベンゾナーゼを37℃で1時間インキュベートした。mTCRを発現する細胞とmTCRを発現しない細胞を含む、エレクトロポレーションした細胞の混合集団を得た。
【0113】
エレクトロポレーションの翌日、エレクトロポレーションした細胞を、(i)抗CD3
Ab及び(ii)抗mTCRβ Abで染色した。未染色PBMC、非トランスフェクションPBMC、及びエレクトロポレーション緩衝液のみ(モック)(TCRなし)とエレクトロポレーションしたPBMCが、ネガティブコントロールとして機能した。エレクトロポレーションした細胞によるCD3及びmTCRの発現をFACSにより測定した(ゲート:リンパ球\生細胞(PI-))。結果を
図18に示す。
図18に示す通り、エレクトロポレーションの翌日に、トランスポゾンによって変異特異的TCRが発現した。
【0114】
実施例11
本実施例は、H57による1回の増幅が、mTCR+T細胞の数の選択的増殖をもたらすことを実証する。
【0115】
ドナー1及び2からのPBMCを実施例10に記載の通りエレクトロポレーションした。
図4Aに示す通り、37℃で18時間超の培養後、混合集団中の、マウスTCR定常領域を発現するT細胞(mTCR
+T細胞)の数を選択的に増幅した。mTCR
+T細胞の数を選択的に増幅するために、mTCR
+T細胞(5×10
5)を、放射線照射したPB
L(1×10
8)と、H57 Ab(Maine Biotechnology Services,Portland,ME)(250ng/mL)、IL-2(50IU/mL)、及びIL-21(30ng/mL)の存在下で共培養した。
【0116】
選択的に増幅した細胞を染色し、実施例10に記載の通りFACSにより評価した。未染色のPBMC(
図19A)及びエレクトロポレーション緩衝液のみ(モック)(TCRなし)とエレクトロポレーションしたPBMC(
図19B)がネガティブコントロールとして機能した。結果を
図19A~19Bに示す。
図19A~19Bにおいては、細胞数を、1つのT175フラスコからの、H57による1回の増幅後の14日目に決定した。
図19A~19Bにす通り、H57による1回の増幅により、mTCR+T細胞の数の選択的増殖がもたらされた。
【0117】
実施例12
本実施例は、ガス透過性フラスコ中で、OKT3による第2回目の増殖を伴う、H57による第1回目の増殖を経た細胞の数の更なる増幅が、TCR転移T細胞の数の大幅な増幅をもたらすことを実証する。
【0118】
ドナー1及び2からのPBMCを実施例10に記載の通りエレクトロポレーションした。転移細胞の数を、実施例11に記載の通り、H57抗体により選択的に増殖させた。mTCR+T細胞の数の選択的増幅後に、mTCR+T細胞の数を、標準のREPを用いて更に増幅した。標準的なREPにおいては、選択的に増幅したmTCR+T細胞(5×106)を、放射線照射したPBL(5×108)、OKT3抗体(30ng/mL)、及びIL-2(3000IU/mL)と共培養した。
【0119】
選択的に増幅した細胞を、実施例10に記載の通り染色及びFACSにより評価した。未染色PBMC(
図20A)及びエレクトロポレーション緩衝液のみ(モック)(TCRなし)とエレクトロポレーションしたPBMC(
図20B)がネガティブコントロールとして機能した。1つのGREX-100ガス透過性フラスコ(Wilson Wolf Corporation,St.Paul,MN)からの、標準REP後14日目の細胞数を表5に示す。H57による選択的増幅後14日目のmTCR+細胞のパーセンテージを表6に示す。
【0120】
【0121】
【0122】
結果を
図20A~20Bに示す。
図20A~20Bに示す通り、ガス透過性フラスコ中でOKT3による第2回目の増幅を伴うH57による、第1回目の増殖を経た細胞の数の更なる増幅により、TCR転移T細胞の数の大幅な増幅がもたらされた。
【0123】
実施例13
本実施例は、H57抗体により選択的に増幅したTCR転移T細胞が、同種変異ネオ抗原に特異的であることを実証する。
【0124】
ドナー1及び2からのPBMCを、実施例10に記載の通りエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションした細胞の数を、実施例11に記載の通り、H57抗体により選択的に増幅した。4149- HUWE1-TCR1は変異HUWE1を認識する。
4149-TP53-TCRa2b2は変異TP53(Y220C)を認識する。
【0125】
未成熟DCを、野生型(WT)HUWE1ペプチド、変異HUWE1ペプチド、WT TP53、又は変異TP53でパルスした。HUWE1ペプチドは1μg/mLでパルスした。TP53ペプチドは10ng/mLでパルスした。5×104個のペプチドパルス未成熟DCと105個のT細胞の共培養物を37℃で一晩インキュベートした。DCを単独で培養し、DMSOでパルスしたDCがコントロールとして機能した。IFN-γ分泌をELISA(酵素結合免疫吸着測定法)により測定した。
【0126】
結果を
図21A~21Dに示す。
図21A~21Dに示す通り、H57抗体により選択的に増幅したTCR転移T細胞は、同種変異ネオ抗原を認識した。
【0127】
実施例14
本実施例は、mTCRを発現するT細胞の数を選択的に増幅する方法を実証する。
【0128】
PBMCをmTCRとエレクトロポレーションし、本発明の実施形態に従ってmTCR
+T細胞の数を選択的に増幅する方法を説明する模式図を
図22に示す。
図22に示す通り、自己PBMCを患者から得て、凍結保存した。一部のPBMCを、LDカラムによりCD4+細胞を枯渇させた。凍結保存したPBMCを完全培地(CM)中で解凍し、175gで、約22℃で10分間遠心分離した。細胞をハンクス平衡塩類溶液(HBSS)中で洗浄し、計数した。細胞数は6×10
7であった。
【0129】
図22に示す通り、mTCR(4149-HUWE1-TCR1又は4149-TP53-TCRa2b2)をコードするSBTSプラスミド及びトランスポザーゼをコードするSBTSプラスミドを、AMAXA NUCLEOFECTOR II装置及びキット(Lonza,Basel,Switzerland)を用いて自己PBMCにエレクトロポレーションした。ヒトT細胞NUCLEOFECTOR溶液(300μL)には、mTCRをコードするSBTSプラスミド(45μg)及びトランスポザーゼをコードするSBTSプラスミド(15μg)が含まれていた。このヒトT細胞NUCLEOFECT
OR溶液を細胞に加え、次いで細胞とDNAとの混合物をキュベットに加えた(キュベットあたり100μL)。
【0130】
図22に示す通り、エレクトロポレーションした細胞を、ウェル(ウェルあたりCM(5mL)、IL-2(50IU/mL)、及びIL-21(30ng/mL))中で37℃で一晩培養した。>18時間後、50U/mLベンゾナーゼを37℃で1時間インキュベートした。細胞を採取し、染色し、mTCR発現をFACSにより測定した。mTCRを発現する細胞(mTCR+>1%)及びmTCRを発現しない細胞を含む、エレクトロポレーションした細胞の混合集団を得た。
【0131】
図22に示す通り、37℃で18時間超の培養後、混合集団においてマウスTCR定常領域を発現するT細胞(mTCR
+T細胞)の数を選択的に増幅した。mTCR
+T細胞を選択的に増幅するために、エレクトロポレーションした細胞(5×10
6)を、放射線照射したPBL(1×10
8)とH57 Ab(Maine Biotechnology Services,Portland,ME)(250ng/mL)、IL-2(50IU/mL)、及びIL-21(30ng/mL)の存在下で共培養した。
【0132】
図22に示す通り、細胞を13日間培養した。この13日の期間の間、2~3日ごとにIL-2(50IU/mL)及びIL-21(30ng/mL)を含む50/50CMを細胞に供給した。
【0133】
図22に示す通り、mTCR+細胞を、LSカラム(Miltenyi Biotec)において抗ビオチン抗体及びビオチン化H57抗体とコンジュゲートしたマイクロビーズ(Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach,Germany)と細胞を接触させることにより更に濃縮した。
【0134】
H57結合ビーズによるmTCR+細胞の濃縮後に、mTCR+T細胞の数を、標準的なREPを用いて更に増幅した。標準的なREPにおいては、選択的に増幅したmTCR+T細胞(5×106)を、放射線照射したPBL(5×108)、OKT3抗体(30ng/mL)、及びIL-2(3000IU/mL)と共培養した。
【0135】
辿ったスケジュールは以下の通りであった:
・0日目=エレクトロポレーション(2×107の総PBMC(TP53-TCR)又はCD4を枯渇したPMBC(HUWE1-TCR))
・1日目=H57 REP(T175フラスコ;5×106細胞、1×108の放射線照射したPBMC、250ng/mL H57、50IU/mL IL-2、30ng/mL IL-21)
・14日目=H57ビーズ濃縮(H57-ビオチンmAb(GMP)、CliniMACSビオチンビーズ、LSカラム)
・15日目=OKT3 REP(GREX-100フラスコ;5e6細胞、5e8の放射線照射したPBMC、30ng/mL OKT3、3000IU/mL IL-2)
・28日目=採取、表現型、共培養。
【0136】
実施例15
本実施例は、実施例14に記載の方法中の4時点で得た細胞の総数及びCD3+mTCR+細胞のパーセンテージを実例で示す。
【0137】
実施例14に記載の方法を行った。1つのキュベット中の細胞の総数及び1つのキュベット中のCD3+mTCR+細胞のパーセンテージを、実施例14に記載した方法中の4時点:エレクトロポレーション後、H57による選択的増幅後、H57結合ビーズによる
濃縮後、及びOKT3による標準のREP後、に測定した。
【0138】
細胞を、エレクトロポレーション及びH57結合ビーズ濃縮の後に残した。計数を、理論上の収率ではなく実際の収率を反映するように調整した。
【0139】
結果を
図23A(細胞の総数)及び
図23B(CD3+mTCR+細胞のパーセンテージ)に示す。
【0140】
実施例16
本実施例は、実施例14に記載の方法の28日目(OKT3 REP後)に測定したmTCRβ+細胞のパーセンテージを実例で示す。
【0141】
実施例14に記載の方法を行った。mTCRβ+細胞のパーセンテージを28日目(OKT3 REP後)にFACSで測定した。結果を
図23C~23Dに示す。エレクトロポレーション緩衝液のみ(モック)(TCRなし)とエレクトロポレーションしたPBMCが、
図23C~23Dにおいてネガティブコントロールとして機能した。
【0142】
CD4+mTCRβ+又はCD8+mTCRβ+細胞のパーセンテージを、28日目(OKT3 REP後)にFACSにより測定した。結果を
図23Eに示す。
【0143】
実施例17
本実施例は、実施例14に記載の通りの細胞数の増幅前(1日目)及び後(28日目)の細胞の記憶細胞表現型を実例で示す。
【0144】
実施例14に記載の方法を行った。記憶表現型マーカーの発現を、細胞の数の増幅前(1日目)又は後(28日目)に測定した。結果を
図24A~24Dに示す。
【0145】
実施例18
本実施例は、実施例14に記載通りの細胞数の増幅後の、T細胞の特異性を実証する。
【0146】
実施例14に記載の方法を行った。未成熟DCに、10、1、又は0.1μg/mLの濃度のWT HUWE1ペプチド、変異HUWE1ペプチド、WT TP53ペプチド、又は変異TP53ペプチドをパルスした。ペプチドパルス未成熟DCと転移T細胞の共培養物を37℃で一晩インキュベートした。DMSOでパルスしたDCがコントロールとして機能した。IFN-γ分泌をELISAによって測定した。結果を
図25A~25Bに示す。
【0147】
刊行物、特許出願及び特許を含む、本明細書中に引用した全ての参考文献は、それぞれの参考文献が参照によって組込まれることが個々に且つ具体的に示されているのと同程度及びその全体が本明細書中に記載されているのと同程度まで、参照によって本明細書中に組込まれる。
【0148】
本発明の説明に関して(特に、以下の特許請求の範囲に関して)、用語「a」及び「an」及び「the」及び「少なくとも1つの」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中に特記しない又は文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈すべきである。1以上の事項の列挙の後での用語「少なくとも1つの」の使用(例えば、「A及びBのうち少なくとも1つの」)は、本明細書中に特記しない又は文脈と明らかに矛盾しない限り、列挙した事項から選択された1つの事項(A若しくはB)又は列挙した事項のうちの2以上の任意の組合せ(A及びB)を意味すると解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(
including)」及び「含有する(containing)」は、特記しない限り、オープンエンドの用語(即ち、「~を含むがこれらに限定されない」を意味する)と解釈すべきである。本明細書中の値の範囲の記載は、本明細書中に特記しない限り、その範囲内に入る各個別の値に個々に言及する省略方法として働くことのみを意図しており、各個別の値は、それが本明細書中に個々に記載されているかのように本明細書中に組込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中に特記しない又は文脈と特に明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施できる。本明細書中に提供される任意の及び全ての例又は例示的語句(例、「等(such as)」)の使用は、本発明をよりよく説明することのみを意図しており、特段特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中の全ての語句は、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施に必須のものとして示していると解釈すべきではない。
【0149】
発明を実施するための、発明者が知る最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書中に記載される。これらの好ましい実施形態のバリエーションは、上述の説明を読めば当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がかかるバリエーションを適宜使用することを予期しており、本発明者らは、本明細書中に具体的に記載されたのとは異なる方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法によって許容されるとおり、本明細書中に添付した特許請求の範囲に記載される主題の全ての改変及び均等物を含む。更に、その全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組合せが、本明細書中に特記しない又は特に文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
TCRを発現するようにヒトT細胞を改変することが、トランスフェクション、形質転換、形質導入、エレクトロポレーション、トランスポゾン、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、及び転写活性化様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)又は、クラスター化反復短回文配列リピート(CRISPR)-Casシステムを用いてTCRを発現するようにヒトT細胞を改変することを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。