(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050563
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】光配向性を有する熱硬化性液晶組成物、配向膜兼位相差フィルム及びその製造方法、位相差板及びその製造方法、光学部材及びその製造方法、並びに、表示装置
(51)【国際特許分類】
C08L 101/02 20060101AFI20240403BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240403BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240403BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20240403BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C08L101/02
G02B5/30
G02F1/1335 510
G02F1/13363
C08F220/18
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222650
(22)【出願日】2023-12-28
(62)【分割の表示】P 2022569058の分割
【原出願日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2021009570
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021009571
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】入江 俊介
(72)【発明者】
【氏名】奥山 健一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 輝賢
(72)【発明者】
【氏名】秋山 圭
(57)【要約】 (修正有)
【課題】垂直配向性に優れ、且つ、直接積層された液晶性材料を配向させる能力に優れる、配向層兼位相差層を形成可能な光配向性を有する熱硬化性液晶組成物、配向膜兼位相差フィルム及びその製造方法、並びに、前記配向層兼位相差層を含有する位相差板及びその製造方法、光学部材及びその製造方法、並びに、表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位と、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位とを有する側鎖型液晶ポリマー(A)と、光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位と、熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位とを有し、前記光配向性構成単位は光配向性基と単量体単位との間に直鎖アルキレン基を有しない共重合体(B)と、前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する熱架橋剤(C)とを含有する、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位と、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位とを有する側鎖型液晶ポリマー(A)と、
光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位と、下記式(2)で表される構成単位を有する熱架橋性構成単位とを有する共重合体(B)と、
前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する架橋剤(C)とを含有し、
前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、下記(i)~(vi)のいずれかを満たす、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物。
(i)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、熱架橋性基とアルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位を有し、前記側鎖型液晶ポリマー(A)の非液晶性且つ熱架橋性構成単位は、前記共重合体(B)の熱架橋性構成単位における炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数4~11の直鎖アルキレン基よりも炭素数と酸素数の合計が小さい、炭素鎖中に-O-を有していてもよいアルキレン基の1級炭素に前記熱架橋性基が結合した構造を有する
(ii)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、熱架橋性基とアルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位を有し、前記側鎖型液晶ポリマー(A)の非液晶性且つ熱架橋性構成単位は、アルキレン基の2級炭素又は3級炭素に前記熱架橋性基が結合した構造を有する
(iii)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、ヒドロキシ基、メルカプト基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基とアルキレン基とアリーレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位を有し、前記側鎖型液晶ポリマー(A)の非液晶性且つ熱架橋性構成単位は、アリーレン基に前記熱架橋性基が結合した構造を有する
(iv)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、カルボキシ基、グリシジル基、及びアミド基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基とアルキレン基とアリーレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位を有し、前記側鎖型液晶ポリマー(A)の非液晶性且つ熱架橋性構成単位は、アリーレン基に前記熱架橋性基が結合した構造を有し、当該アリーレン基は、前記共重合体(B)の熱架橋性構成単位における炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数4~11の直鎖アルキレン基よりも炭素数と酸素数の合計が3以上小さい、炭素鎖中又は末端に-O-を有していてもよいアルキレン基の炭素原子又は酸素原子に結合した構造を有する
(v)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、アルキレン基を側鎖に含まず、熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位を有する
(vi)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、熱架橋性基とアルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位及び熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位を有しない
【化1】
(上記式(2)中、Z
2は下記式(2-1)~(2-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、R
50は炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数4~11の直鎖アルキレン基であり、Yはヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、およびアミド基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基を表す。)
【化2】
(上記式(2-1)~(2-6)中、R
51は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
52は水素原子またはメチル基を表し、R
53は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
54は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、L
12は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、又は-OCO-を表し、L
12が、単結合の場合、R
50はスチレン骨格に直接結合される。)
【請求項2】
前記共重合体(B)の前記光配向性基が、シンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基、キノリン基、アゾベンゼン基、およびスチルベン基からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物。
【請求項3】
前記側鎖型液晶ポリマー(A)の、前記非液晶性且つ熱架橋性構成単位が、下記式(III)で表される構成単位を有する、請求項1又は2に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物。
【化3】
(上記式(III)中、Z
aは下記式(a-1)~(a-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、R
16は、-L
2a-R
13’-で表される基(ここで、L
2aは炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数1~10の直鎖又は分岐アルキレン基を表し、R
13’は、置換基を有してもよいメチル基から水素原子を除いた残基、アリール基から水素原子を除いた残基、又は-OR
15’を表し、R
15’はアリール基から水素原子を除いた残基を表す。)であり、Y
aはヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、およびアミド基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基を表す。)
【化4】
(上記式(a-1)~(a-6)中、R
11は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
17は水素原子またはメチル基を表し、R
18は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
19は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、L
aは、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、又は-OCO-を表し、L
aが、単結合の場合、R
16はスチレン骨格に直接結合される。)
【請求項4】
前記側鎖型液晶ポリマー(A)の、前記液晶性構成単位が、下記式(I)で表される構成単位を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物。
【化5】
(一般式(I)中、R
1は、水素原子又はメチル基を、R
2は、-(CH
2)
m-、又は-(C
2H
4O)
m’-で表される基を表す。L
1は、単結合、又は、-O-、-OCO-、若しくは-COO-で表される連結基を、Ar
1は、置換基を有してもよい炭素数6~10のアリーレン基を表し、複数あるL
1及びAr
1はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。R
3は、-F、-Cl、-CN、-OCF
3、-OCF
2H、-NCO、-NCS、-NO
2、-NHCO-R
4、-CO-OR
4、-OH、-SH、-CHO、-SO
3H、-NR
4
2、-R
5、又は-OR
5を、R
4は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R
5は、炭素数1~6のアルキル基を表す。aは2~4の整数、m及びm’はそれぞれ独立に2~10の整数である。)
【請求項5】
前記側鎖型液晶ポリマー(A)の、前記非液晶性構成単位のうち、非液晶性且つ非熱架橋性構成単位が、下記式(II)で表される構成単位を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物。
【化6】
(一般式(II)中、R
11は、水素原子又はメチル基を表し、R
12は、-L
2-R
13、又は-L
2’-R
14で表される基を表し、L
2は-(CH
2)
n-を表し、L
2’は-(C
2H
4O)
n’-で表される連結基を表し、R
13は、置換基を有してもよいメチル基、アルキル基を有してもよいアリール基、又は-OR
15を表し、R
14及びR
15はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、n及びn’はそれぞれ独立に、1~18の整数である。)
【請求項6】
前記共重合体(B)の前記光配向性構成単位が、下記式(1)で表される構成単位を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物。
【化7】
(上記式(1)中、Z
1は下記式(1-1)~(1-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、Xは光配向性基を表し、L
11は、アルキレン基、シクロアルキレン基、又は、これらの組み合わせを表す。)
【化8】
(上記式(1-1)~(1-6)中、R
21は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
22は水素原子またはメチル基を表し、R
23は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
24は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【請求項7】
配向層兼位相差層を有する配向膜兼位相差フィルムであって、
前記配向層兼位相差層が、請求項1~6のいずれか1項に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜である、配向膜兼位相差フィルム。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を成膜する工程と、
前記成膜された前記熱硬化性液晶組成物を加熱することにより、位相差層機能を有する硬化膜を形成する工程と、
前記硬化膜に偏光紫外線を照射することにより、更に配向層機能を有する硬化膜を形成する工程とを有する、配向膜兼位相差フィルムの製造方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜である、第一の位相差層と、
前記第一の位相差層に隣接して位置する、重合性液晶組成物の硬化物を含有する第二の位相差層と
を有する、位相差板。
【請求項10】
前記第一の位相差層がポジティブC型位相差層であり、前記第二の位相差層がポジティブA型位相差層である、請求項9に記載の位相差板。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか1項に記載の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を成膜する工程と、
前記成膜された前記熱硬化性液晶組成物を加熱することにより、位相差を有する硬化膜を形成する工程と、
前記位相差を有する硬化膜に、偏光紫外線を照射して、前記硬化膜に液晶配向能を付与することにより、配向膜兼第一の位相差層を形成する工程と、
前記配向膜兼第一の位相差層上に、重合性液晶組成物を塗布して前記重合性液晶組成物の塗膜を形成し、前記塗膜を前記重合性液晶組成物の相転移温度まで加熱することにより前記配向膜兼第一の位相差層によって液晶分子を配向させる工程と、
前記液晶分子が配向した重合性液晶組成物の塗膜に光照射して硬化することにより、第二の位相差層を形成する工程と
を有する、位相差板の製造方法。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の位相差板と、偏光板とを含有する、光学部材。
【請求項13】
偏光板を準備する工程と、
請求項9又は10に記載の位相差板を準備する工程と、
位相差板と偏光板とを積層する工程とを有する、光学部材の製造方法。
【請求項14】
請求項9又は10に記載の位相差板、又は前記位相差板と偏光板とを含有する光学部材、を備える表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1層で配向層と位相差層の両方の機能を有する配向層兼位相差層を形成可能な光配向性を有する熱硬化性液晶組成物、配向膜兼位相差フィルム及びその製造方法、位相差板及びその製造方法、光学部材及びその製造方法、並びに、表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置等に適用される光学フィルムとして、入射した光に対して位相差層により所望の位相差を付与する位相差板がある。例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置では、1/4波長位相差板が直線偏光板と組み合わせた形態で円偏光板として使用され、外光反射防止フィルムとして機能する。また、従来より、IPSモード等の液晶表示装置では、斜め方向からの視野に対するコントラストを高めるために、ポジティブAの特性を備えるポジティブAプレートとポジティブCの特性を備えるポジティブCプレートとが組み合わされた位相差板が偏光板補償フィルムの一部として用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
従来、ポジティブAプレートとポジティブCプレートとの積層は、接着剤層等で貼り合わせられていた。
表示装置の薄型化に伴い、上記の問題に対応して提案されている位相差板を組み合わせて構成する広帯域1/4波長位相差板などの位相差板にも、性能を維持しつつより薄型化が可能な構成や製造工程の効率化が求められている。
【0004】
位相差板の薄型化を目的として、特許文献2には、ポジティブCプレートと、ポジティブAプレートが積層された光学フィルム積層体であって、前記ポジティブCプレートは、感光性基を有する第1の液晶性材料から形成されたホメオトロピック配向層の配向性が固定されたものであり、前記ポジティブAプレートは、重合性を有する第2の液晶性材料から形成された、ホモジニアス配向層の配向性が固定されたものであり、前記ポジティブAプレートは、前記ポジティブCプレート上に直接積層されており、前記ポジティブCプレートにおいて、前記感光性基が異方的に光反応していることを特徴とする、光学フィルム積層体が開示されている。
【0005】
一方で、本発明者らは、特許文献3において、光配向部位および熱架橋部位の両方を有する共重合体を含有する熱硬化性組成物において、高感度な光配向性を有する熱硬化性液晶組成物ならびにそれを用いた配向層を目的として、光配向性基を有するスチレンモノマーと熱架橋性基を有するモノマーの共重合体と、架橋剤とを含有する、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を開示している。しかしながら特許文献3には、当該熱硬化性組成物を用いて位相差層にすることは一切記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4592005号公報
【特許文献2】特開2016-004142号公報
【特許文献3】特許第5626493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2においては、位相差板の薄型化を目的として前記ポジティブAプレートが、前記ポジティブCプレート上に直接積層されている。しかしながら、特許文献2に記載されているポジティブCプレートは、垂直配向性を有する液晶性成分の末端に感光性基として光配向性基を結合させた構造を有する第一の液晶性材料を用いて形成されているので、ポジティブCプレート自体の垂直配向性に劣り、更に、直接積層されたポジティブAプレートの液晶性材料を配向させる能力(液晶配向能)にも劣るものであった。また、特許文献2のポジティブCプレートは耐久性が不十分で、ポジティブCプレート上にポジティブAプレートの液晶性材料を積層する際の加熱や溶剤浸透により、ポジティブCプレートの垂直配向性が変動しやすいという問題もあった。
【0008】
また、重合性液晶化合物を含む光硬化性樹脂組成物の硬化物であるポジティブCプレート上に、ポジティブAプレートを直接積層した位相差板は、ポジティブCプレートとポジティブAプレートの密着性が不十分で、また屈曲耐性に劣るという課題があった。光硬化性樹脂組成物の硬化物であるポジティブCプレートは、垂直配向性が良好になるよう十分に硬化させると硬くて脆くなるからである。密着性が不十分であると、転写時にポジティブCプレートがポジティブAプレートと共に転写されず、ポジティブCプレートが基材上に残存してしまう問題が生じる。また、屈曲耐性に劣ると、当該位相差板をフレキシブルディスプレイの使用に不適切という問題が生じる。
【0009】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、垂直配向性に優れ、且つ、直接積層された液晶性材料を配向させる能力に優れる、配向層兼位相差層を形成可能な光配向性を有する熱硬化性液晶組成物、配向膜兼位相差フィルム及びその製造方法、並びに、前記配向層兼位相差層を含有する位相差板及びその製造方法、光学部材及びその製造方法、並びに、表示装置を提供することを第一の目的とする。
【0010】
また本開示は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、良好な垂直配向性と、直接積層された液晶性材料を配向させる能力を示し、且つ耐久性を有する配向層兼位相差層を形成可能な光配向性を有する熱硬化性液晶組成物、配向膜兼位相差フィルム及びその製造方法、並びに、前記配向層兼位相差層を含有する位相差板及びその製造方法、光学部材及びその製造方法、並びに、表示装置を提供することを第二の目的とする。
【0011】
また本開示は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、良好な密着性でポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層とが直接積層されており、屈曲耐性が良好な位相差板及びその製造方法、光学部材及びその製造方法、並びに、表示装置を提供することを第三の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記第一の目的を解決するために、本開示は、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位と、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位とを有する側鎖型液晶ポリマー(A)と、
下記式(1)で表される構成単位を有する光配向性構成単位と、熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位とを有する共重合体(B)と、
前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する熱架橋剤(C)と、
を含有する、第一の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を提供する。
【0013】
【化1】
(上記式(1)中、Z
1は下記式(1-1)~(1-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、Xは光配向性基を表し、L
11は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、-OCO-、又は、これらとアリーレン基との組み合わせを表す。)
【0014】
【化2】
(上記式(1-1)~(1-6)中、R
21は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
22は水素原子またはメチル基を表し、R
23は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
24は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【0015】
本開示の第一の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、前記共重合体(B)の前記光配向性基が、シンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基、キノリン基、アゾベンゼン基、およびスチルベン基からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。
【0016】
また本開示の第一の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物においては、前記熱架橋性基が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、およびアミド基からなる群から選択される少なくとも1種を含有するものであってよい。
【0017】
また本開示の第一の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物においては、前記側鎖型液晶ポリマー(A)の前記液晶性構成単位が、下記式(I)で表される構成単位を有することが、位相差層の垂直配向性を向上する点から好ましい。
【0018】
【化3】
(一般式(I)中、R
1は、水素原子又はメチル基を、R
2は、-(CH
2)
m-、又は-(C
2H
4O)
m’-で表される基を表す。L
1は、単結合、又は、-O-、-OCO-、若しくは-COO-で表される連結基を、Ar
1は、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリーレン基を表し、複数あるL
1及びAr
1はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。R
3は、-F、-Cl、-CN、-OCF
3、-OCF
2H、-NCO、-NCS、-NO
2、-NHCO-R
4、-CO-OR
4、-OH、-SH、-CHO、-SO
3H、-NR
4
2、-R
5、又は-OR
5を、R
4は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R
5は、炭素数1~6のアルキル基を表す。aは2~4の整数、m及びm’はそれぞれ独立に2~10の整数である。)
【0019】
前記第二の目的を解決するために、本開示は、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位と、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位とを有する側鎖型液晶ポリマー(A)と、
光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位と、下記式(2)で表される構成単位を有する熱架橋性構成単位とを有する共重合体(B)と、
前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する熱架橋剤(C)とを含有し、
前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、下記(i)~(vi)のいずれかを満たす、第二の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を提供する。
前記第一の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物において、前記第二の目的を解決するために、当該第二の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の構成を適用してもよい。
(i)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、熱架橋性基とアルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位を有し、前記側鎖型液晶ポリマー(A)の非液晶性且つ熱架橋性構成単位は、前記共重合体(B)の熱架橋性構成単位における炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数4~11の直鎖アルキレン基よりも炭素数と酸素数の合計が小さい、炭素鎖中に-O-を有していてもよいアルキレン基の1級炭素に前記熱架橋性基が結合した構造を有する
(ii)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、熱架橋性基とアルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位を有し、前記側鎖型液晶ポリマー(A)の非液晶性且つ熱架橋性構成単位は、アルキレン基の2級炭素又は3級炭素に前記熱架橋性基が結合した構造を有する
(iii)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、ヒドロキシ基、メルカプト基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基とアルキレン基とアリーレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位を有し、前記側鎖型液晶ポリマー(A)の非液晶性且つ熱架橋性構成単位は、アリーレン基に前記熱架橋性基が結合した構造を有する
(iv)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、カルボキシ基、グリシジル基、及びアミド基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基とアルキレン基とアリーレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位を有し、前記側鎖型液晶ポリマー(A)の非液晶性且つ熱架橋性構成単位は、アリーレン基に前記熱架橋性基が結合した構造を有し、当該アリーレン基は、前記共重合体(B)の熱架橋性構成単位における炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数4~11の直鎖アルキレン基よりも炭素数と酸素数の合計が3以上小さい、炭素鎖中又は末端に-O-を有していてもよいアルキレン基の炭素原子又は酸素原子に結合した構造を有する
(v)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、アルキレン基を側鎖に含まず、熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位を有する
(vi)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、熱架橋性基とアルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位及び熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位を有しない
【0020】
【化4】
(上記式(2)中、Z
2は下記式(2-1)~(2-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、R
50は炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数4~11の直鎖アルキレン基であり、Yはヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、およびアミド基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基を表す。)
【0021】
【化5】
(上記式(2-1)~(2-6)中、R
51は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
52は水素原子またはメチル基を表し、R
53は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
54は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、L
12は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、又は-OCO-を表し、L
12が、単結合の場合、R
50はスチレン骨格に直接結合される。)
【0022】
本開示の第二の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、前記側鎖型液晶ポリマー(A)の、前記非液晶性且つ熱架橋性構成単位が、下記式(III)で表される構成単位を有することが、原料調達の容易さの点から好ましい。
前記第一の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物において、当該第二の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の下記式(III)で表される構成単位を適用してもよい。
【0023】
【化6】
(上記式(III)中、Z
aは下記式(a-1)~(a-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、R
16は、-L
2a-R
13’-で表される基(ここで、L
2aは炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数1~10の直鎖又は分岐アルキレン基を表し、R
13’は、置換基を有してもよいメチル基から水素原子を除いた残基、アリール基から水素原子を除いた残基、又は-OR
15’を表し、R
15’はアリール基から水素原子を除いた残基を表す。)であり、Y
aはヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、およびアミド基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基を表す。)
【0024】
【化7】
(上記式(a-1)~(a-6)中、R
11は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
17は水素原子またはメチル基を表し、R
18は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
19は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、L
aは、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、又は-OCO-を表し、L
aが、単結合の場合、R
16はスチレン骨格に直接結合される。)
【0025】
また本開示は、配向層兼位相差層を含有する配向膜兼位相差フィルムであって、前記配向層兼位相差層が、前記本開示の第一又は第二の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜である、第一又は第二の配向膜兼位相差フィルムを提供する。
【0026】
さらに本開示は、前記本開示の第一又は第二の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を成膜する工程と、
前記成膜された前記熱硬化性液晶組成物を加熱することにより、位相差を有する硬化膜を形成する工程と、
前記位相差を有する硬化膜に、偏光紫外線を照射することにより、前記硬化膜に液晶配向能を付与する工程とを有する、第一又は第二の配向膜兼位相差フィルムの製造方法を提供する。
【0027】
また本開示は、前記本開示の第一又は第二の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜である、第一の位相差層と、
前記第一の位相差層に直接隣接して位置する、重合性液晶組成物の硬化物を含有する第二の位相差層とを含有する、第一又は第二の位相差板を提供する。
【0028】
本開示の第一又は第二の位相差板においては、前記第一の位相差層がポジティブC型位相差層であり、前記第二の位相差層がポジティブA型位相差層であることが視角特性を改善する位相差板を効率的に作成でき、本発明の効果を有効に発揮できる点から好ましい。
【0029】
また本開示は、前記本開示の第一又は第二の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を成膜する工程と、
前記成膜された前記熱硬化性液晶組成物を加熱することにより、位相差を有する硬化膜を形成する工程と、
前記位相差を有する硬化膜に、偏光紫外線を照射して、前記硬化膜に液晶配向能を付与することにより、配向膜兼第一の位相差層を形成する工程と、
前記配向膜兼第一の位相差層上に、重合性液晶組成物を塗布して前記重合性液晶組成物の塗膜を形成し、当該塗膜を前記重合性液晶組成物の相転移温度まで加熱することにより前記配向膜兼位相差層によって液晶分子を配向させる工程と、
前記液晶分子が配向した重合性液晶組成物の塗膜に光照射して硬化することにより、第二の位相差層を形成する工程と
を有する、第一又は第二の位相差板の製造方法を提供する。
【0030】
また前記第三の目的を解決するために、本開示は、光配向性成分と熱架橋剤を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物であるポジティブC型位相差層と、
前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置する、重合性液晶組成物の硬化物を含有するポジティブA型位相差層と
を含有する、第三の位相差板を提供する。
【0031】
本開示の第三の位相差板においては、波長550nmにおける厚み方向位相差Rthが-35nm~35nmであり、波長550nmにおける面内位相差Reが100nm以上であり、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層との合計厚みが0.2μm~6μmであってよい。
【0032】
本開示の第三の位相差板においては、前記ポジティブC型位相差層の複合弾性率が
4.5GPa以上9.0GPa以下であってよい。
【0033】
本開示の第三の位相差板においては、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置する基材を含有していてよい。
【0034】
本開示の第三の位相差板においては、前記ポジティブC型位相差層に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる特定成分が浸透した領域を含んでいてよい。また、前記特定成分が、重合性液晶化合物又はその硬化物を含有してよい。
【0035】
また、本開示は、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位を有する側鎖型液晶ポリマーと、光配向性構成単位と熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位とを有する共重合体と、前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する熱架橋剤とを含有する、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を成膜する工程と、
前記成膜された前記熱硬化性液晶組成物を加熱することにより、位相差を有する硬化膜を形成する工程と、
前記位相差を有する硬化膜に、偏光紫外線を照射することにより、液晶配向能が付与されたポジティブC型位相差層を形成する工程と、
前記ポジティブC型位相差層上に、重合性液晶組成物を塗布して前記重合性液晶組成物の塗膜を形成し、当該塗膜を前記重合性液晶組成物の相転移温度まで加熱することにより前記ポジティブC型位相差層によって液晶分子を配向させる工程と、
前記液晶分子が配向した重合性液晶組成物の塗膜に光照射して硬化することにより、ポジティブA型位相差層を形成する工程と、を有する、第三の位相差板の製造方法を提供する。
【0036】
また、本開示は、第一、第二、又は第三の位相差板と、偏光板とを含有する、光学部材を提供する。
【0037】
また、本開示は、偏光板を準備する工程と、
第一、第二、又は第三の位相差板を準備する工程と、
位相差板と偏光板とを積層する工程とを有する、光学部材の製造方法を提供する。
【0038】
また、本開示は、第一、第二、又は第三の位相差板、又は当該位相板と偏光板とを含有する光学部材、を備える表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0039】
第一の本開示においては、垂直配向性に優れ、且つ、直接積層された液晶性材料を配向させる能力に優れる、配向層兼位相差層を形成可能な光配向性を有する熱硬化性液晶組成物、配向膜兼位相差フィルム及びその製造方法、並びに、前記配向層兼位相差層を含有する位相差板及びその製造方法、光学部材及びその製造方法、並びに、表示装置を提供することができるという効果を奏する。
第二の本開示においては、良好な垂直配向性と、直接積層された液晶性材料を配向させる能力を示し、且つ耐久性を有する配向層兼位相差層を形成可能な光配向性を有する熱硬化性液晶組成物、配向膜兼位相差フィルム及びその製造方法、並びに、前記配向層兼位相差層を含有する位相差板及びその製造方法、光学部材及びその製造方法、並びに、表示装置を提供することができるという効果を奏する。
また第三の本開示においては、良好な密着性でポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層とが直接積層されており、屈曲耐性が良好な位相差板及びその製造方法、及び当該位相差板を用いた光学部材及びその製造方法、並びに表示装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本開示の配向膜兼位相差フィルムの一例を示す概略断面図である。
【
図2】本開示の配向膜兼位相差フィルムの一例を示す概略断面図である。
【
図3】本開示の配向膜兼位相差フィルムの一例を示す概略断面図である。
【
図4】本開示の位相差板の一例を示す概略断面図である。
【
図5】本開示の位相差板の一例を示す概略断面図である。
【
図6】本開示の光学部材の一例を示す概略断面図である。
【
図7】動的屈曲試験の方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本開示の実施の形態や実施例などを、図面等を参照しながら説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態や実施例等の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明する場合があるが、上下方向が逆転してもよい。
「本明細書において、ある部材又はある領域等のある構成が、他の部材又は他の領域等の他の構成の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限り、これは他の構成の直上(又は直下)にある場合のみでなく、他の構成の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の構成の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
【0042】
本開示において配向規制力とは、位相差層中の液晶化合物を特定方向に配列させる作用をいう。
本開示において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタアクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの各々を表す。
また、本明細書において「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではなく、「フィルム面(板面、シート面)」とは、対象となるフィルム状(板状、シート状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるフィルム状部材(板状部材、シート状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
また、本開示において、数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
なお、本開示において「配向層兼位相差層」とは、自身が位相差層でありながら、直接積層された液晶性材料を配向させる能力を有する層であり、「液晶配向能が付与された位相差層」と言い換えることができる。また、本開示において「配向層兼位相差層」は、1層で、配向層としても機能する位相差層であり、「配向層として機能する位相差層」とも言い換えることができる。
本開示において「配向膜兼位相差フィルム」は、同様に、「配向膜として機能する位相差フィルム」、又は「液晶配向能が付与された位相差フィルム」と言い換えることができる。
【0043】
また、本開示において、「炭素鎖中に-O-を有していてもよい・・・アルキレン基」は「炭素鎖中、すなわち末端以外に-O-を有していてもよい・・・アルキレン基であって、当該アルキレン基の両末端は炭素原子である場合」をいい、「炭素鎖中又は末端に-O-を有していてもよい・・・アルキレン基」は「炭素鎖中だけでなく末端に-O-を有していてもよい・・・アルキレン基であって、当該アルキレン基の両末端は炭素原子又は酸素原子である場合」をいう。
【0044】
以下、まず、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物、それを用いた配向膜兼位相差フィルム及びその製造方法、並びに、位相差板及びその製造方法について詳細に説明する。
【0045】
I.第一の本開示
A.光配向性を有する熱硬化性液晶組成物
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位と、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位とを有する側鎖型液晶ポリマー(A)と、
下記式(1)で表される構成単位を有する光配向性構成単位と、熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位とを有する共重合体(B)と、
前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する熱架橋剤(C)と、
を含有することを特徴とするものである。
【0046】
【化8】
(上記式(1)中、Z
1は下記式(1-1)~(1-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、Xは光配向性基を表し、L
11は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、-OCO-、又は、これらとアリーレン基との組み合わせを表す。)
【0047】
【化9】
(上記式(1-1)~(1-6)中、R
21は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
22は水素原子またはメチル基を表し、R
23は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
24は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【0048】
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、前記側鎖型液晶ポリマー(A)と、直接積層された液晶性材料を配向させる能力を発揮する光配向性構成単位と熱架橋性構成単位とを有する共重合体(B)と、前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する熱架橋剤(C)とを含有することから、当該組成物の硬化膜を形成することにより、1層で配向層と位相差層の両方の機能を有しながら、垂直配向性に優れ、且つ、直接積層された液晶性材料を配向させる能力に優れる、配向層兼位相差層を形成できる。
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物においては、光配向性構成単位を有する共重合体(B)において、光配向性構成単位が、光配向性基と、共重合体の主鎖の間に、アルキレン鎖を有しない構造を有する。共重合体(B)は、光配向性構成単位がアルキレン鎖を有しない構造であることにより、より非液晶性となるため、前記側鎖型液晶ポリマー(A)との相溶性が低下し、前記側鎖型液晶ポリマー(A)と相分離しやすくなると推定される。また、共重合体(B)は、光配向性構成単位がアルキレン鎖を有しない構造であることにより、剛直性が増し、光配向性基間の距離が小さくなりやすく、光配向性(液晶配向能)が向上すると推定される。また、前記側鎖型液晶ポリマー(A)は、低分子化合物の重合性液晶化合物と異なり、共重合体(B)と混合しても基材側に配置されやすく、垂直配向性が良好になりやすく、その結果、共重合体(B)も空気界面側に配置されやすく、光配向性が良好になりやすい。これらの相乗効果から、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物では、垂直配向して位相差を発現する前記側鎖型液晶ポリマー(A)と、直接積層された液晶性材料の配向性を発現する光配向性構成単位を有する共重合体(B)とが、互いの性能を阻害し難くなり、当該組成物の硬化膜を形成することにより、垂直配向性に優れ、且つ、直接積層された液晶性材料を配向させる能力に優れる、配向層兼位相差層を1層で実現できると考えられる。
【0049】
また、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物によれば、光配向性構成単位と熱架橋性構成単位の両方を有する共重合体、及び熱架橋剤を含むことから、熱硬化を行うと、その架橋構造によって膜の耐熱性、耐溶剤性が良好となり、耐久性が高い配向層兼位相差層が得られる。
【0050】
また、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化物である配向層兼位相差層は、熱架橋剤によりポリマー同士を架橋することから、重合性液晶化合物を含む光硬化性樹脂組成物の硬化物である場合と比べて、硬くなり難くて柔軟性を有し、且つ、直接積層された液晶性材料との密着性も良好になる。そのため本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化物である配向層兼位相差層によれば、後述する第三の本開示のように、良好な密着性で第一の位相差層と第二の位相差層とが直接積層されている、薄型の屈曲耐性が良好な位相差板を得ることができる。
【0051】
以下、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物における各成分について説明する。
1.側鎖型液晶ポリマー(A)
本開示に用いられる側鎖型液晶ポリマー(A)は、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位と、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位とを有するものである。
以下、側鎖型液晶ポリマー(A)における各構成単位について説明する。
【0052】
(1)液晶性構成単位
本開示の実施形態において、液晶性構成単位は、液晶性部分、すなわち液晶性を示す部分を含む側鎖を有する。液晶性構成単位は、側鎖に液晶性を示すメソゲンを含む構成単位であることが好ましい。液晶性構成単位は、メソゲン基にスペーサーを介して重合性基が結合した液晶性を示す化合物から誘導される構成単位であることが好ましい。本開示においてメソゲンとは、液晶性を示すような剛直性の高い部位をいい、例えば、2個以上の環構造、好ましくは3個以上の環構造を有し、環構造同士が直接結合により連結しているか、又は、当該環構造が1原子乃至3原子を介して連結している部分構造が挙げられる。側鎖にこのような液晶性を示す部位を有することにより、当該液晶性構成単位が垂直配向しやすくなる。
前記環構造としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等の芳香環であってもよく、シクロペンチル、シクロヘキシル等の環状の脂肪族炭化水素であってもよい。
また、当該環構造が1原子乃至3原子を介して連結している場合、当該連結部の構造としては、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR-C(=O)-、-C(=O)-NR-、-O-C(=O)-NR-、-NR-C(=O)-O-、-NR-C(=O)-NR-、-O-NR-、若しくは-NR-O-(Rは水素原子又は炭化水素基)等が挙げられる。
中でも、メソゲンとしては、前記環構造の連結が棒状になるように、ベンゼンであればパラ位、ナフタレンであれば2,6位で接続された、棒状メソゲンであることが好ましい。
【0053】
また、液晶性構成単位が側鎖に液晶性を示すメソゲンを含む構成単位である場合、垂直配向性の点から、当該構成単位の側鎖の末端が極性基であるか、アルキル基を有することが好ましい。このような極性基の具体例としては、-F、-Cl、-CN、-OCF3、-OCF2H、-NCO、-NCS、-NO2、-NHC(=O)-R’、-C(=O)-OR’、-OH、-SH、-CHO、-SO3H、-NR’2、-R”、又は-OR”(R’は水素原子又は炭化水素基、R”はアルキル基)等が挙げられる。
【0054】
液晶性構成単位は、側鎖として、-R2-(L1-Ar1)a-R3で表される基(ここで、R2は、-(CH2)m-、又は-(C2H4O)m’-で表される基を表す。L1は、単結合、又は、-O-、-OCO-、若しくは-COO-で表される連結基を、Ar1は、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリーレン基を表し、複数あるL1及びAr1はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。R3は、-F、-Cl、-CN、-OCF3、-OCF2H、-NCO、-NCS、-NO2、-NHCO-R4、-CO-OR4、-OH、-SH、-CHO、-SO3H、-NR4
2、-R5、又は-OR5を、R4は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R5は、炭素数1~6のアルキル基を表す。aは2~4の整数、m及びm’はそれぞれ独立に2~10の整数である。)を有する構成単位が挙げられる。
【0055】
R2のm及びm’は、それぞれ独立に2~10の整数である。垂直配向性の点から、中でも、m及びm’が2~8であることが好ましく、更に2~6であることが好ましい。
【0056】
Ar1における、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、中でもフェニレン基がより好ましい。当該アリーレン基が有してもよいR3以外の置換基としては、炭素数1~5のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0057】
R3における、R4は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であるが、中でも、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であることが好ましい。また、R3における、R5は、炭素数1~6のアルキル基であるが、中でも、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましい。
【0058】
液晶性構成単位は、重合可能なエチレン性二重結合含有基を有する単量体から誘導される構成単位であることが好ましい。このようなエチレン性二重結合含有基を有する単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、(メタ)アクリルアミド、マレイミド、ビニルエーテル、又はビニルエステル等の誘導体が挙げられる。液晶性構成単位は、中でも、(メタ)アクリル酸エステル誘導体から誘導される構成単位であることが、垂直配向性の点から、好ましい。
【0059】
本開示の実施形態において液晶性構成単位は、垂直配向性の点から、中でも、下記一般式(I)で表される構成単位を含むことが好ましい。
【0060】
【化10】
(一般式(I)中、R
1は、水素原子又はメチル基を、R
2は、-(CH
2)
m-、又は-(C
2H
4O)
m’-で表される基を表す。L
1は、単結合、又は、-O-、-OCO-、若しくは-COO-で表される連結基を、Ar
1は、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリーレン基を表し、複数あるL
1及びAr
1はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。R
3は、-F、-Cl、-CN、-OCF
3、-OCF
2H、-NCO、-NCS、-NO
2、-NHCO-R
4、-CO-OR
4、-OH、-SH、-CHO、-SO
3H、-NR
4
2、-R
5、又は-OR
5を、R
4は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R
5は、炭素数1~6のアルキル基を表す。aは2~4の整数、m及びm’はそれぞれ独立に2~10の整数である。)
【0061】
一般式(I)で表される構成単位において、-R2-(L1-Ar1)a-R3で表される基は、前記と同様であって良い。
【0062】
一般式(I)で表される液晶性構成単位の好適な具体例としては、例えば、下記一般式(I-1)、(I-2)及び(I-3)で表されるもの等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
【0064】
ここで、上記一般式(I-1)~(I-3)で表される構成単位において、R2、及び、R3はそれぞれ、一般式(I)のR2、及び、R3と同様である。
【0065】
本開示の実施形態において液晶性構成単位は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
共重合体の合成には、液晶性構成単位を誘導する、(メタ)アクリル酸エステル誘導体等の単量体を用いることができる。液晶性構成単位を誘導する、(メタ)アクリル酸エステル誘導体等の単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
共重合体における上記液晶性構成単位の含有割合としては、液晶性構成単位の垂直配向性を向上し、十分な液晶配向性を有する点から、共重合体全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、40モル%~90モル%の範囲内で設定することが好ましく、40モル%~80モル%の範囲内で設定することがより好ましく、更に45モル%~70モル%の範囲内で設定することが好ましく、特に50モル%~65モル%の範囲内であることが好ましい。
なお、共重合体における各構成単位の含有割合は、1H-NMR測定による積分値から算出することができる。
【0068】
(2)アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、側鎖型液晶ポリマーが液晶状態となった時に、当該アルキレン基を含む側鎖が、前記液晶性構成単位の側鎖の液晶性を示す部分(メソゲン)の垂直配向(ホメオトロピック配向)を促す作用を有する。アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位を含むことにより、側鎖型液晶ポリマー(A)の垂直配向性が向上し、溶剤溶解性も向上する。
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、側鎖として、-L2-R13、又は-L2’-R14で表される基(ここで、L2は-(CH2)n-を表し、L2’は-(C2H4O)n’-で表される連結基を表し、R13は、置換基を有してもよいメチル基、アルキル基を有してもよいアリール基、又は-OR15を表し、R14及びR15はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、n及びn’はそれぞれ独立に、1~18の整数である。)を有する構成単位が挙げられる。
【0069】
L2は-(CH2)n-を表し、L2’は-(C2H4O)n’-で表される連結基を表すが、中でも、垂直配向性が良好になりやすい点から、-(CH2)n-が好ましい。また、nは1~18の整数であるが、中でも2~18の整数であることが好ましい。R13が置換基を有するメチル基か置換基を有するアルキル基の場合、nは1の整数も好ましく用いられる。また、n’は、1~18の整数であるが、1~8の整数であることが好ましく、中でも、2~8の整数であることがより好ましい。
【0070】
R14及びR15におけるアルキル基としては、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよいが、中でも直鎖状であることが好ましい。
R14、及びR15におけるアルキル基としては、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基等の直鎖状アルキル基、i-プロピル基、i-ブチル基、t-ブチル基等の分岐状アルキル基、1-プロペニル基、1-ブテニル基等のアルケニル基、エチニル基、2-プロピニル基等のアルキニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基、1-シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基等が挙げられる。上記シクロアルキル基の場合には、直鎖状アルキル基が置換されたシクロアルキル基であることが好ましい。
【0071】
R14及びR15におけるアルキル基は、特に限定されないが、位相差の面内均一性の点から、炭素数1~12のアルキル基が好ましい。
【0072】
R13、R14、及びR15におけるアリール基としては、炭素数6~20のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられ、中でもフェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。上記アリール基の場合には、直鎖状アルキル基が置換されたアリール基であることが好ましい。
【0073】
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、置換基として、他の成分と反応するような反応性基を有していてもよく、例えば、後述する共重合体(B)と同様の熱架橋性基を有していてもよい。
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、非液晶性且つ非架橋性構成単位と、非液晶性且つ熱架橋性構成単位が挙げられる。アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、非液晶性且つ非架橋性構成単位のみを含んでも良いし、非液晶性且つ熱架橋性構成単位のみを含んでもよい。
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、垂直配向性が良好になりやすい点から、少なくとも非液晶性且つ非架橋性構成単位を含むことが好ましく、垂直配向性が良好になりやすく、且つ、耐久性が向上しやすい点から、非液晶性且つ非架橋性構成単位、及び、非液晶性且つ熱架橋性構成単位を含むことがより好ましい。
【0074】
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ非架橋性構成単位において、R13におけるメチル基が有してもよい置換基、及び、R14及びR15におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、非架橋性置換基が挙げられ、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、アルコキシ基、ニトロ基等が挙げられる。中でも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子が好ましい。
【0075】
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ非架橋性構成単位において、R13、R14、及びR15におけるアリール基が有していてもよい置換基としては、非架橋性置換基が挙げられ、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基等が挙げられ、当該アルキル基としては、炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、炭素数1~9のアルキル基が挙げられ、直鎖アルキル基であってもよく、分岐又は環構造を含むアルキル基であってもよい。中でも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、炭素数1~9のアルキル基が好ましい。当該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルプロピル基等が挙げられる。当該アルキル基が有する水素原子は、ハロゲン原子に置換されていてもよい。
【0076】
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位において、R13におけるメチル基、R14及びR15におけるアルキル基、及び、R13、R14、及びR15におけるアリール基が有していてもよい置換基としては、熱架橋性基であることが好ましく、後述する共重合体(B)と同様の熱架橋性基が挙げられ、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、トリアルコキシシリル基、ブロックイソシアネート基、およびメチル基に置換されるアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。自己架橋基であるヒドロキシメチル基及びアルコキシメチル基は、R13におけるメチル基に、ヒドロキシ基やアルコキシ基が置換することにより、ヒドロキシメチル基やアルコキシメチル基となるものであってよい。
熱架橋性基としては、中でも、反応性の点から、ヒドロキシ基が好ましく、第1級ヒドロキシ基がより好ましい。なお、第1級ヒドロキシ基とは、ヒドロキシ基が結合する炭素原子が第1級炭素原子であるヒドロキシ基をいう。
【0077】
非液晶性構成単位は、重合可能なエチレン性二重結合含有基を有する単量体から誘導される構成単位であることが好ましい。このようなエチレン性二重結合含有基を有する単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、(メタ)アクリルアミド、マレイミド、ビニルエーテル、又はビニルエステル等の誘導体が挙げられる。非液晶性構成単位は、垂直配向性の点から、(メタ)アクリル酸エステル誘導体又はスチレンから誘導される構成単位であることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル誘導体から誘導される構成単位であることがより好ましい。
【0078】
本開示の実施形態において前記非液晶性構成単位が、下記式(II)で表される構成単位を有することが好ましい。
【0079】
【化12】
(一般式(II)中、R
11は、水素原子又はメチル基を表し、R
12は、-L
2-R
13、又は-L
2’-R
14で表される基を表し、L
2は-(CH
2)
n-を表し、L
2’は-(C
2H
4O)
n’-で表される連結基を表し、R
13は、置換基を有してもよいメチル基、アルキル基を有してもよいアリール基、又は-OR
15を表し、R
14及びR
15はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、n及びn’はそれぞれ独立に、1~18の整数である。)
【0080】
式(II)で表される構成単位において、-L2-R13、又は-L2’-R14で表される基は、前記と同様であって良い。
【0081】
本開示の実施形態において前記非液晶性構成単位が、非液晶性且つ非架橋性構成単位である場合、前記式(II)で表される構成単位に含まれる、有していてもよい置換基としては、前述の非架橋性置換基が挙げられる。
また、本開示の実施形態において前記非液晶性構成単位が、非液晶性且つ熱架橋性構成単位である場合、前記式(II)で表される構成単位に含まれる、有していてもよい置換基としては、前述の熱架橋性基が挙げられる。1つの非液晶性且つ熱架橋性構成単位において、熱架橋性基を1つ有することが好ましいが、2つ以上有してもよい。
【0082】
本開示の実施形態において前記非液晶性構成単位が、非液晶性且つ熱架橋性構成単位を含む場合、下記式(III)で表される構成単位を有することが、反応性が向上し、耐久性が向上する点から、好ましい。
【0083】
【化13】
(上記式(III)中、Z
aは下記式(a-1)~(a-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、R
16は炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数1~11の直鎖アルキレン基であり、Y
aは熱架橋性基を表す。)
【0084】
【化14】
(上記式(a-1)~(a-6)中、R
11は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
17は水素原子またはメチル基を表し、R
18は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
19は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、L
aは、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、又は-OCO-を表し、L
aが、単結合の場合、R
16はスチレン骨格に直接結合される。)
【0085】
R16は炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数1~11の直鎖アルキレン基であるが、-(CH2)n”-または-(C2H4O)m”-C2H4-である(n”は1~11、m”は1~4)ことが好ましく、n”は2~11、m”は1~4であることが好ましく、n”は4~11、m”は2~4であることが好ましい。n”およびm”が小さすぎると、熱架橋性構成単位において熱架橋性基と共重合体の主骨格との距離が短くなるため、熱架橋性基に熱架橋剤が結合しにくくなり、熱架橋性構成単位と熱架橋剤との反応性が低下するおそれがある。一方、n”およびm”が大きすぎると、熱架橋性構成単位において連結基の鎖長が長くなるため、末端の熱架橋性基が表面に出にくく、熱架橋性基に熱架橋剤が結合しにくくなり、熱架橋性構成単位と熱架橋剤との反応性が低下するおそれがある。
Yaの熱架橋性基は、前述の熱架橋性基と同様であって良く、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、トリアルコキシシリル基、ブロックイソシアネート基、およびメチル基に置換されるアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。自己架橋基であるヒドロキシメチル基及びアルコキシメチル基は、メチル基(R16におけるメチレン基)に、ヒドロキシ基やアルコキシ基が置換することにより、ヒドロキシメチル基やアルコキシメチル基となるものであってよい。
【0086】
また、本開示の実施形態において前記非液晶性構成単位が、非液晶性且つ熱架橋性構成単位を含む場合、当該非液晶性且つ熱架橋性構成単位は、後述する第二の本開示の側鎖型液晶ポリマー(A)で説明している、後述の式(III)で表される構成単位と同様のものを用いることもできる。
【0087】
共重合体が有する非液晶性構成単位は、1種であってもよく、2種以上であっても良い。
一般式(II)で表される構成単位のうち、非液晶性且つ非架橋性構成単位としては、以下の化学式(II-1)~(II-10)が挙げられる。
また、一般式(II)で表される構成単位のうち、非液晶性且つ熱架橋性構成単位としては、以下の化学式(II-1)~(II-10)の炭化水素基の水素の1つが前記熱架橋性基に置換した構造が挙げられる。更に、非液晶性且つ熱架橋性構成単位としては、以下の化学式(III-1)~(III-11)が挙げられる。
【0088】
【0089】
【0090】
また、後述する第二の本開示の側鎖型液晶ポリマー(A)で説明している、第二の本開示の化学式(III-1)~(III-12)で表される構成単位を用いることもできる。
【0091】
共重合体の合成には、上記非液晶性構成単位を誘導する、(メタ)アクリル酸エステル誘導体等の単量体を用いることができる。上記非液晶性構成単位を誘導する(メタ)アクリル酸エステル誘導体等の単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0092】
共重合体における上記非液晶性構成単位の含有割合としては、液晶性構成単位の垂直配向性を向上し、十分な液晶配向性を有する点から、共重合体全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、10モル%~60モル%の範囲内で設定することが好ましく、15モル%~50モル%の範囲内で設定することがより好ましく、更に、15モル%~45モル%の範囲内で設定することが好ましく、特に、20モル%~40モル%の範囲内であることが好ましい。
【0093】
共重合体における上記非液晶性構成単位として、非液晶性且つ非架橋性構成単位と、非液晶性且つ熱架橋性構成単位の両方を含む場合、非液晶性且つ熱架橋性構成単位の含有割合としては共重合体全体に含まれる非液晶性構成単位の合計量を100モル%としたとき、10モル%~70モル%の範囲内で設定することが好ましく、30モル%~50モル%の範囲内で設定することがより好ましい。
なお、共重合体における各構成単位の含有割合は、1H-NMR測定による積分値から算出することができる。
【0094】
(3)その他の構成単位
本開示に用いられる側鎖型液晶ポリマー(A)は、前記液晶性構成単位と、前記アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位とを少なくとも有するが、更に、その他の構成単位を有していてもよい。
その他の構成単位としては、例えば、アルキレン基を側鎖に含まず前記熱架橋性基を有する熱架橋性構成単位や、後述する共重合体(B)が有する光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位が挙げられる。
アルキレン基を側鎖に含まず前記熱架橋性基を有する熱架橋性構成単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸、4-ヒドロキシスチレン、4-カルボキシスチレン等が挙げられる。
本開示に用いられる側鎖型液晶ポリマー(A)は、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位、及び、アルキレン基を側鎖に含まず前記熱架橋性基を有する熱架橋性構成単位からなる群から選択される少なくとも1種の、熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位を有することが、位相差層の耐久信頼性を向上する点から好ましい。
光配向性構成単位としては、後述する共重合体(B)が有する光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位と同様であって良い。
【0095】
共重合体における上記その他の構成単位の含有割合としては、液晶性構成単位の垂直配向性を向上し、十分な液晶配向性を有する点から、共重合体全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、30モル%以下の範囲内で設定することが好ましく、20モル%以下の範囲内で設定することがより好ましい。
【0096】
(4)側鎖型液晶ポリマー(A)の共重合体
本開示の実施形態において、側鎖型液晶ポリマー(A)は、液晶性構成単位からなるブロック部と、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位からなるブロック部とを有するブロック共重合体であってもよく、液晶性構成単位とアルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位とが不規則に並ぶランダム共重合体であってもよい。本実施形態においては、側鎖型液晶ポリマーの垂直配向性や位相差値の面内均一性を向上する点から、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0097】
また、共重合体である側鎖型液晶ポリマーの質量平均分子量Mwは特に限定されないが、5000~80000の範囲内であることが好ましく、8000~50000の範囲内であることがより好ましく、10000~36000の範囲内であることがさらに好ましい。上記範囲内であることにより、液晶組成物の安定性に優れ、位相差層形成時の取り扱い性に優れている。
【0098】
なお、上記質量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された値である。測定は、東ソー(株)製のHLC-8120GPCを用い、溶出溶剤を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN-メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、206500、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories社製 Easi PS-2シリーズ)及びMw1090000(東ソー(株)製)とし、測定カラムをTSK-GEL ALPHA-M×2本(東ソー(株)製)として行われたものである。
【0099】
側鎖型液晶ポリマー(A)の共重合体の合成方法としては、液晶性構成単位を誘導するモノマーとアルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位を誘導するモノマーとを従来公知の製造方法で共重合する方法が挙げられる。
側鎖型液晶ポリマー(A)は、共重合体を合成した際の溶液形態で、あるいは、粉体形態で、あるいは精製した粉末を後述する溶剤に再溶解した溶液形態で用いてもよい。
【0100】
上記側鎖型液晶ポリマー(A)は1種単独を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本実施形態において、垂直配向性を発揮する点から、上記側鎖型液晶ポリマーの含有割合は、液晶組成物の固形分100質量部に対して20質量部~80質量部であることが好ましく、25質量部~70質量部であることがより好ましく、30質量部~60質量部であることがより更に好ましい。
なお、本開示において固形分とは溶剤を除く全ての成分をいい、例えば、後述する重合性液晶化合物が液状であっても固形分に含まれるものとする。
【0101】
2.共重合体(B)
本開示に用いられる共重合体(B)は、光配向性基を特定の構造により側鎖に含む光配向性構成単位と、熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位とを有するものである。
共重合体(B)は光配向性共重合体である。
以下、共重合体における各構成単位について説明する。
【0102】
(1)光配向性構成単位
本開示の光配向性構成単位は、下記式(1)で表される構成単位を有するものである。
【0103】
【化17】
(上記式(1)中、Z
1は下記式(1-1)~(1-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、Xは光配向性基を表し、L
11は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、-OCO-、又は、これらとアリーレン基との組み合わせを表す。)
【0104】
【化18】
(上記式(1-1)~(1-6)中、R
21は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
22は水素原子またはメチル基を表し、R
23は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
24は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【0105】
光配向性構成単位を構成する単量体単位としては、前記式(1-1)~(1-6)からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。なお、Z1が式(1-2)からなる群から選択される少なくとも1種の場合、-L11-Xはオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよいが、-L11-Xがパラ位に結合していることが、光配向性基間の距離が小さくなりやすく、光配向性が得られやすい点から好ましい。
光配向性構成単位を構成する単量体単位としては、中でも、原料調達の容易さの点から、式(1-1)及び(1-2)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。更に、式(1-2)からなる群から選択される少なくとも1種であると、共重合体(B)がより非液晶性となりやすく、前記側鎖型液晶ポリマー(A)と相分離しやすくなり、側鎖型液晶ポリマー(A)の垂直配向性が向上し、且つ、共重合体(B)の光配向性構成単位の剛直性が増すため、光配向性基間の距離が小さくなりやすく、優れた光配向性が得られやすい点から、より好ましい。
【0106】
また、共重合体中にスチレン骨格を有し、π電子系を多く含むと、π電子系の相互作用により、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物から形成された配向層兼位相差層は、この配向層兼位相差層上に直接積層された液晶性材料との密着性も高くなると考えられる。
【0107】
L11は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、-OCO-、又は、これらとアリーレン基との組み合わせを表し、前記単量体単位と、光配向性基Xとを連結する。本開示の共重合体(B)は、光配向性構成単位が、光配向性基と単量体単位との間に直鎖アルキレン基を有しないので、前述のように、非液晶性となりやすく、前記側鎖型液晶ポリマー(A)との相溶性が低下して、前記側鎖型液晶ポリマー(A)と相分離しやすくなり、且つ、剛直性が増し、光配向性基間の距離が小さくなりやすく、優れた光配向性が得られると推定される。
【0108】
上記L11が単結合の場合、光配向性基Xは単量体単位Z1に直接結合される。2価の連結基としては、具体的には、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、-OCO-、-C6H4-、-C6H4O-、-OCOC6H4O-、-COOC6H4O-、-OC6H4O-等が挙げられ、ここで-C6H4-はフェニレン基である。
【0109】
一方、光配向性基は、光照射により光反応を生じることで異方性を発現する官能基であり、光二量化反応または光異性化反応を生じる官能基であることが好ましい。
【0110】
光二量化反応を生じる光配向性基としては、例えばシンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基、キノリン基、アゾベンゼン基、スチルベン基等が挙げられる。これらの官能基におけるベンゼン環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、光二量化反応を妨げないものであればよく、例えばアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基等が挙げられる。
【0111】
光異性化反応を生じる光配向性基としては、シストランス異性化反応を生じるものであることが好ましく、例えばシンナモイル基、カルコン基、アゾベンゼン基、スチルベン基等が挙げられる。これらの官能基におけるベンゼン環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、光異性化反応を妨げないものであればよく、例えばアルコキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基等が挙げられる。
【0112】
中でも、光配向性基は、シンナモイル基であることが好ましい。具体的に、シンナモイル基としては、下記式(x-1)及び(x-2)で表される基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0113】
【0114】
上記式(x-1)中、R31は水素原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアリール基または炭素数1~18のシクロアルキル基を表す。ただし、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよく、置換基を有してもよい。R32~R35はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアリール基または炭素数1~18のシクロアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基またはシアノ基を表す。ただし、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよく、置換基を有してもよい。R36およびR37はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアリール基または炭素数1~18のアルコキシ基を表す。
また、上記式(x-2)中、R41~R45はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアリール基または炭素数1~18のシクロアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基またはシアノ基を表す。ただし、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよく、置換基を有してもよい。R46およびR47はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアリール基または炭素数1~18のアルコキシ基を表す。
【0115】
なお、光配向性基がシンナモイル基の場合であって、上記式(x-1)で表される基の場合、単量体単位に含まれるスチレン骨格(式(1-2))のベンゼン環がシンナモイル基のベンゼン環となっていてもよい。
【0116】
また、上記式(x-1)で表されるシンナモイル基は、下記式(x-3)で表される基であることがより好ましい。
【0117】
【0118】
上記式(x-3)中、R32~R37は上記式(x-1)と同様である。R38は水素原子、炭素数1~18のアルコキシ基、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基またはシクロヘキシル基を表す。ただし、アルキル基、フェニル基、ビフェニル基およびシクロヘキシル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよい。nは1~5を表し、R38はオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよい。nが2~5の場合、R38は互いに同一でもよく異なってもよい。中でも、nが1であり、R38がパラ位に結合していることが好ましい。
【0119】
共重合体が有する光配向性構成単位は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
共重合体の合成には、上記光配向性構成単位を誘導する、光配向性基を有する単量体を用いることができる。光配向性基を有する単量体は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0120】
共重合体における光配向性構成単位の含有割合としては、共重合体全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、10モル%~90モル%の範囲内で設定することができ、好ましくは20モル%~80モル%の範囲内である。光配向性構成単位の含有割合が少ないと、感度が低下し、良好な液晶配向能を付与するのが困難になる場合がある。一方で、光配向性構成単位の含有割合が多いと、相対的に熱架橋性構成単位の含有割合が少なくなり、十分な熱硬化性が得られず、良好な液晶配向能を維持するのが困難になる場合がある。
【0121】
(2)熱架橋性構成単位
本開示における熱架橋性構成単位は、加熱により熱架橋剤と結合する部位である。
熱架橋性構成単位は、熱架橋性基を有する構成単位であればよい。熱架橋性基としては、例えば30℃から250℃での加熱により架橋する基であればよく、例えばヒドロキシ基、カルボキシ基、フェノール性ヒドロキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。中でも、反応性の観点から、脂肪族ヒドロキシ基が好ましく、第1級ヒドロキシ基がより好ましい。なお、第1級ヒドロキシ基とは、ヒドロキシ基が結合する炭素原子が第1級炭素原子であるヒドロキシ基をいう。
また、熱架橋性基としては、同じ架橋基同士で架橋可能な自己架橋基であってもよい。自己架橋基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、トリアルコキシシリル基、ブロックイソシアネート基等が挙げられる。
熱架橋性構成単位が自己架橋基を有する場合、熱架橋性構成単位が熱架橋剤を兼ねることができ、光配向性能及び耐溶剤性が向上しやすい点から好ましい。熱架橋性構成単位が自己架橋基を有する場合、分子内の熱架橋性構成単位と反応しやすいことが考えられる。
熱架橋性構成単位としては、中でも、ヒドロキシ基、カルボキシ基、及びメルカプト基からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが、光配向性能及び耐溶剤性の点から好ましい。
熱架橋性構成単位としては、中でも、ヒドロキシ基、カルボキシ基、及びメルカプト基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基を有する構成単位と、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、トリアルコキシシリル基、及びブロックイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の自己架橋基を有する構成単位とを含有することが、光配向性能及び耐溶剤性をより向上しやすい点から好ましい。
なお、自己架橋基のアルコキシメチル基は、アルコキシ基の炭素数が1~6であるものが好ましく、具体的には、メトキシメチル基、エトキシメチル基、各種プロポキシメチル基、各種ブトキシメチル基、各種ペントキシメチル基等が挙げられる。アルコキシメチル基としては、中でも、アルコキシ基の炭素数が1~4であるものがより好ましく、炭素数が1~2であるものが更に好ましく、メトキシメチル基、エトキシメチル基が、架橋性が良好になる点から好ましい。
【0122】
熱架橋性構成単位を構成する単量体単位としては、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド、ビニルエーテル、ビニルエステル等が挙げられる。
熱架橋性構成単位としては、熱架橋性基がカルボキシ基の場合、アクリル酸、又はメタクリル酸由来の構成単位であってもよく、熱架橋性基がヒドロキシ基の場合、ビニルアルコール由来の構成単位であってもよい。
【0123】
熱架橋性構成単位としては、下記式(2)で表される構成単位を例示することができる。
【0124】
【化21】
(上記式(2)中、Z
2は下記式(2-1)~(2-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、R
50は炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数1~11の直鎖アルキレン基であり、Yは熱架橋性基を表す。)
【0125】
【化22】
(上記式(2-1)~(2-6)中、R
51は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
52は水素原子またはメチル基を表し、R
53は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
54は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、L
12は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、又は-OCO-を表し、L
12が、単結合の場合、R
50はスチレン骨格に直接結合される。)
【0126】
なお、Z2が式(2-2)からなる群から選択される少なくとも1種の場合、-L12-Yはオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよいが、-L12-Yがパラ位に結合していることが、熱架橋の反応性が優れる点から好ましい。
【0127】
熱架橋性構成単位を構成する単量体単位としては、中でも、原料調達の容易さの点から、式(2-1)及び(2-2)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。更に、式(2-2)からなる群から選択される少なくとも1種であると、共重合体(B)がより非液晶性となりやすく、前記側鎖型液晶ポリマー(A)と相分離しやすくなり、側鎖型液晶ポリマー(A)の垂直配向性が向上する点から、より好ましい。
【0128】
上記式(2)中、Yの熱架橋性基としては、前記と同様であって良く、自己架橋性基であってもよい。
上記式(2)中、Yの熱架橋性基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、トリアルコキシシリル基、ブロックイソシアネート基、およびメチル基に置換されるアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基であってよく、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、およびアミド基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基であってよい。自己架橋基であるヒドロキシメチル基及びアルコキシメチル基は、メチル基(R50におけるメチレン基)に、ヒドロキシ基やアルコキシ基が置換することにより、ヒドロキシメチル基やアルコキシメチル基となるものであってよい。
Yの熱架橋性基には、中でも、反応性の観点から、脂肪族ヒドロキシ基を含むことが好ましく、第1級ヒドロキシ基を含むことがより好ましい。
【0129】
上記式(2)中、L12は単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、又は-OCO-を表す。なお、L12が単結合の場合、熱架橋性基Yは単量体単位Z2に直接結合される。
R50は炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数1~11の直鎖アルキレン基であるが、-(CH2)j-または-(C2H4O)k-C2H4-である(jは1~11、kは1~4)ことが好ましく、jは2~11、kは1~4であることが好ましく、jは4~11、kは2~4であることが好ましい。jおよびkが小さすぎると、熱架橋性構成単位において熱架橋性基と共重合体の主骨格との距離が短くなるため、熱架橋性基に熱架橋剤が結合しにくくなり、熱架橋性構成単位と熱架橋剤との反応性が低下するおそれがある。一方、jおよびkが大きすぎると、熱架橋性構成単位において連結基の鎖長が長くなるため、末端の熱架橋性基が表面に出にくく、熱架橋性基に熱架橋剤が結合しにくくなり、熱架橋性構成単位と熱架橋剤との反応性が低下するおそれがある。
【0130】
共重合体が有する熱架橋性構成単位は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
共重合体の合成には、上記熱架橋性構成単位を誘導する熱架橋性基を有する単量体を用いることができる。熱架橋性基を有する単量体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0131】
熱架橋性基を有する単量体としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アクリル酸エステル化合物およびメタクリル酸エステル化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、テトラエチレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、トリプロピレングリコールモノアクリレート、テトラプロピレングリコールモノアクリレート等のヒドロキシ基とアクリル基またはメタクリル基とを有するモノマーが挙げられる。
スチレン化合物としては、例えば、4-ビニル安息香酸とジオールとのエステル化物、4-ビニル安息香酸とジエチレングリコールとのエステル化物、ヒドロキシスチレンとジオールとのエーテル化物、ヒドロキシスチレンとジエチレングリコールとのエーテル化物等のヒドロキシ基とスチレン基とを有するモノマーが挙げられる。
その他にも、熱架橋性構成単位を形成するモノマーとしては、具体的には例えば、特許5626493号公報 段落0075~0079に記載されているモノマーを用いることができる。また、前記例示のヒドロキシ基が、カルボキシ基やグリシジル基に置換されたモノマーであってもよい。
【0132】
熱架橋性基を有する単量体のうち、自己架橋基を有する単量体としては、例えば、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルメタクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミドおよびN-ブトキシメチルメタクリルアミド等のヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基で置換されたアクリルアミド化合物又はメタクリルアミド化合物;3-トリメトキシシリルプロピルアクリレート、3-トリエトキシシリルプロピルアクリレート、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレート等のトリアルコキシシリル基を有するモノマー;2-(0-(1’-メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ)エチルメタクリレート、2-(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノエチルメタクリレート等のブロックイソシアネート基を有するモノマー等が挙げられる。
【0133】
共重合体における熱架橋性構成単位の含有割合としては、共重合体全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、5モル%~90モル%の範囲内で設定することができ、好ましくは20モル%~80モル%の範囲内である。熱架橋性構成単位の含有割合が少ないと、十分な熱硬化性が得られず、良好な液晶配向能を維持するのが困難になる場合がある。また、熱架橋性構成単位の含有割合が多いと、相対的に光配向性構成単位の含有割合が少なくなり、感度が低下し、良好な液晶配向能を付与するのが困難になる場合がある。
【0134】
(3)他の構成単位
本開示において、共重合体は、光配向性構成単位および熱架橋性構成単位の他に、光配向性基および熱架橋性基のいずれも有しない構成単位を有していてもよい。共重合体に他の構成単位が含まれることにより、例えば溶剤溶解性、耐熱性、反応性等を高めることができる。
【0135】
光配向性基および熱架橋性基を有しない構成単位を構成する単量体単位としては、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、アクリルアミド、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン、ビニル等が挙げられる。中でも、上記熱架橋性構成単位と同様に、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンが好ましい。
【0136】
このような光配向性基および熱架橋性基を有しない構成単位を形成するモノマーとしては、例えばアクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物、ビニル化合物等が挙げられる。
具体的には例えば、国際公開第2010/150748号の段落0036~0040に記載されているモノマーのうち、前記光配向性基および熱架橋性基のいずれも有しないモノマーを用いることができる。
【0137】
また、その他の構成単位として、例えば、フッ素化アルキル基を有するモノマー由来の構成単位を含んでもよい。この場合には、共重合体(B)が塗膜表面に局在化しやすくなり、光配向性基を塗膜表面に配向させやすい。共重合体(B)を塗膜表面に局在化しやすくする点から、フッ素化アルキル基を有するモノマーのフッ素化アルキル基は、フッ素原子が直接結合した炭素原子の数が2~8のフッ素化アルキル基であってよい。
【0138】
共重合体における光配向性基および熱架橋性基を有しない構成単位は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
【0139】
共重合体における上記光配向性基および熱架橋性基を有しない構成単位の含有割合としては、共重合体全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、0モル%~50モル%の範囲内であることが好ましく、0モル%~30モル%の範囲内であることがより好ましい。上記構成単位の含有割合が多いと、相対的に光配向性構成単位および熱架橋性構成単位の含有割合が少なくなり、感度が低下し、良好な液晶配向能を付与するのが困難になり、また十分な熱硬化性が得られず、良好な液晶配向能を維持するのが困難になる場合がある。
【0140】
(4)共重合体(B)
共重合体(B)の質量平均分子量は、特に限定されるものではなく、例えば3,000~200,000程度とすることができ、好ましくは4,000~100,000の範囲内である。質量平均分子量が大きすぎると、溶剤に対する溶解性が低くなったり粘度が高くなったりして取り扱い性が低下し、均一な膜を形成しにくい場合がある。また、質量平均分子量が小さすぎると、熱硬化時に硬化不足になり溶剤耐性や耐熱性が低下する場合がある。
なお、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定することができる。
【0141】
共重合体(B)の合成方法としては、光配向性基を有する単量体と熱架橋性基を有する単量体とを従来公知の製造方法で共重合する方法が挙げられる。
共重合体(B)は、共重合体を合成した際の溶液形態で、あるいは、粉体形態で、あるいは精製した粉末を後述する溶剤に再溶解した溶液形態で用いてもよい。
【0142】
上記共重合体(B)は1種単独を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本実施形態において、直接積層する液晶性材料に対して配向能を発揮する点から、上記共重合体(B)の含有割合は、液晶組成物の固形分100質量部に対して1質量部~50質量部であることが好ましく、5質量部~40質量部であることがより好ましく10質量部~30質量部であることがより更に好ましい。
【0143】
3.熱架橋剤
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する熱架橋剤を含有する。熱架橋剤は、少なくとも前記共重合体の前記熱架橋性基と結合することにより、耐熱性および耐溶剤性を高めることができる。また、当該熱架橋剤は、任意に含まれていてもよい、熱架橋性基を側鎖に含む側鎖型液晶ポリマー(A)や、熱架橋性基を有する化合物とも結合して、硬化膜の耐久性を向上したり、それぞれの機能向上に寄与する。
【0144】
熱架橋剤としては、前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する化合物を選択して用いる。
このような熱架橋剤としては、前記熱架橋性基と反応可能な架橋性基を有する化合物が挙げられる。熱架橋剤が有する架橋性基は例えば、エポキシ基、メチロール基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基、マレイミド基等が挙げられる。熱架橋剤が有する架橋性基は2個以上であることが好ましく、2~6個であることが好ましい。熱架橋剤としては、例えばエポキシ化合物、メチロール化合物、イソシアナート化合物等が挙げられ、中でも、メチロール化合物が好ましい。
メチロール化合物の具体例としては、アルコキシメチル化グリコールウリル、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン及びアルコキシメチル化メラミン等の化合物が挙げられる。
アルコキシメチル化グリコールウリルの具体例としては、例えば、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(ブトキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(メトキシメチル)尿素、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリノン、及び1,3-ビス(メトキシメチル)-4,5-ジメトキシ-2-イミダゾリノン等が挙げられる。市販品として、三井サイテック(株)製グリコールウリル化合物(商品名サイメル1170、パウダーリンク1174)等の化合物、メチル化尿素樹脂(商品名UFR65)、ブチル化尿素樹脂(商品名UFR300、U-VAN10S60、U-VAN10R、U-VAN11HV)、大日本インキ化学工業(株)製尿素/ホルムアルデヒド系樹脂(高縮合型、商品名ベッカミンJ-300S、ベッカミンP-955、ベッカミンN)等が挙げられる。
アルコキシメチル化ベンゾグアナミンの具体例としてはテトラメトキシメチルベンゾグアナミン等が挙げられる。市販品として、三井サイテック(株)製(商品名サイメル1123)、(株)三和ケミカル製(商品名ニカラックBX-4000、ニカラックBX-37、ニカラックBL-60、ニカラックBX-55H)等が挙げられる。
アルコキシメチル化メラミンの具体例としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン等が挙げられる。市販品として、三井サイテック(株)製メトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名サイメル300、サイメル301、サイメル303、サイメル350)、ブトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名マイコート506、マイコート508)、三和ケミカル製メトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名ニカラックMW-30、ニカラックMW-22、ニカラックMW-11、ニカラックMS-001、ニカラックMX-002、ニカラックMX-730、ニカラックMX-750、ニカラックMX-035)、ブトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名ニカラックMX-45、ニカラックMX-410、ニカラックMX-302)等が挙げられる。
【0145】
また、このようなアミノ基の水素原子がメチロール基又はアルコキシメチル基で置換されたメラミン化合物、尿素化合物、グリコールウリル化合物及びベンゾグアナミン化合物を縮合させて得られる化合物であってもよい。例えば、米国特許第6323310号に記載されているメラミン化合物及びベンゾグアナミン化合物から製造される高分子量の化合物が挙げられる。前記メラミン化合物の市販品としては商品名サイメル303(三井サイテック(株)製)等が挙げられ、前記ベンゾグアナミン化合物の市販品としては商品名サイメル1123(三井サイテック(株)製)等が挙げられる。
【0146】
さらに、熱架橋剤としては、ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換されたアクリルアミド化合物またはメタクリルアミド化合物を使用して製造されるポリマーも用いることができる。
具体的には例えば、国際公開第2010/150748号の段落0049~0050に記載されている熱架橋剤を用いることができる。
【0147】
また、分子内にベンゼン環を複数個含む熱架橋剤も利用することができる。分子内にベンゼン環を複数個含む熱架橋剤としては、例えばヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基を合わせて2個以上有し、分子量が1200以下のフェノール誘導体や、少なくとも2個の遊離N-アルコキシメチル基を有するメラミン-ホルムアルデヒド誘導体やアルコキシメチルグリコールウリル誘導体が挙げられる。ヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体は、対応するヒドロキシメチル基を有しないフェノール化合物とホルムアルデヒドを塩基触媒下で反応させることによって得ることができる。
【0148】
また、エポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β-メチル-δ-バレロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシシクロへキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノール又はアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類;エポキシ化大豆油;エポキシステアリン酸ブチル;エポキシステアリン酸オクチル;エポキシ化アマニ油;エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
エポキシ化合物の市販品としては、例えばUVR-6100、UVR-6105、UVR-6110、UVR-6128、UVR-6200、UVR-6216(以上、ユニオンカーバイド製)、セロキサイド2021、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、エポリードGT-300、エポリードGT-301、エポリードGT-302、エポリードGT-400、エポリード401、エポリード403(以上、ダイセル化学工業製)、KRM-2100、KRM-2110、KRM-2199、KRM-2400、KRM-2410、KRM-2408、KRM-2490、KRM-2200、KRM-2720、KRM-2750(以上、旭電化工業製)、CER-4221、CER-4221-E、CER-4221-H(以上、ダリアントリコケミカル製)、Rapi-cure DVE-3、CHVE、PEPC(以上、ISP製)エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508(以上、ジャパンエポキシレジン製)、XDO(東亞合成製)、VECOMER 2010、同2020、同4010、同4020(以上、アライドシグナル製)等が挙げられる。
【0149】
これらの熱架橋剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本開示において、硬化膜の耐久性を向上する点から、上記熱架橋剤の含有量は、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の固形分100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、0.5質量部~25質量部であることがより好ましく、1質量部~20質量部であることがより更に好ましい。
また、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物における熱架橋剤の含有割合は、上記側鎖型液晶ポリマー(A)と共重合体(B)の合計100質量部に対して1質量部~30質量部であることが好ましく、2質量部~25質量部であることがより好ましく、3質量部~25質量部であることがより更に好ましい。
熱架橋剤の含有量が少なすぎる場合には、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物から形成される硬化膜の耐熱性および溶剤耐性が低下し、垂直配向性や液晶配向能が低下するおそれがある。また、含有量が多すぎる場合には、垂直配向性や液晶配向能および保存安定性が低下することがある。
【0150】
4.酸または酸発生剤
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、酸または酸発生剤を含有してもよい。酸または酸発生剤により、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の熱硬化反応を促進させることができる。
【0151】
酸または酸発生剤としては、スルホン酸基含有化合物、塩酸またはその塩、および塗膜の乾燥および加熱硬化時に熱分解して酸を発生する化合物、すなわち温度50℃から250℃で熱分解して酸を発生する化合物であれば特に限定されるものではない。具体的には、国際公開第2010/150748号の段落0054に記載されているものを用いることができる。
【0152】
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物における酸または酸発生剤の含有量は、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の固形分100質量部に対して0.01質量部~20質量部であることが好ましく、0.05質量部~10質量部であることがより好ましく、0.05質量部~5質量部であることがより更に好ましい。
また、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物における酸または酸発生剤の含有割合は、上記側鎖型液晶ポリマー(A)と共重合体(B)の合計100質量部に対して0.05質量部~20質量部であることが好ましく、0.1質量部~15質量部であることがより好ましく、0.1質量部~10質量部であることがより更に好ましい。酸または酸発生剤の含有量を上記範囲内とすることで、十分な熱硬化性および溶剤耐性を付与することができ、さらに光照射に対する高い感度をも付与することができる。一方、含有量が多すぎると、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の保存安定性が低下する場合がある。
【0153】
5.溶剤
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、塗工性の点から、必要に応じて溶剤を含んでいてもよい。溶剤としては、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物に含まれる各成分を溶解乃至分散し得る従来公知の溶剤の中から適宜選択すればよい。具体的には、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGME)等のエーテル系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶剤、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤、およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤、メタノール、エタノール、およびプロパノール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。本実施形態において溶剤は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて混合溶剤として用いることができる。
【0154】
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物において、溶剤の含有量は、各成分が均一に溶剤に溶解している限り特に限定されるものではなく、溶剤を含む組成物中に、50質量%~99質量%であることが好ましく、60質量%~95質量%であることがより好ましく、70質量%~90質量%であることがより更に好ましい。
溶剤の含有量が多すぎて固形分の割合が少なすぎると、位相差性、液晶配向能や熱硬化性を付与することが困難になる場合がある。また、溶剤の含有量が少なすぎて固形分の割合が多すぎると、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の粘度が高くなり、均一な膜を形成しにくくなる。
なお、固形分とは、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の全成分から溶剤を除いたものをいう。
【0155】
6.その他の成分
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、その効果を損なわない範囲で更に他の成分を含有してもよい。具体的には、その他の成分として、例えば、前記側鎖型液晶ポリマー(A)とは異なる重合性液晶化合物、塗膜の硬度や耐久性を向上させるための1分子中に重合性基を2つ以上有する重合性化合物、光重合開始剤、重合性基と熱架橋性基とを有する化合物、前記共重合体(B)とは異なる光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物、増感剤、レベリング剤、重合禁止剤、酸化防止剤、光安定化剤等を含有してもよい。これらは従来公知の材料を適宜選択して用いればよい。
【0156】
(1)前記側鎖型液晶ポリマー(A)とは異なる重合性液晶化合物
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、位相差を調整し、耐久性を向上する点から、必要に応じて前記側鎖型液晶ポリマー(A)とは異なる重合性液晶化合物を更に含んでいてもよい。
本開示の実施形態において、前記側鎖型液晶ポリマー(A)とは異なる重合性液晶化合物は、従来公知のものの中から適宜選択して用いることができる。当該重合性液晶化合物としては、所謂、低分子の重合性液晶モノマーが挙げられる。本実施形態においては、前記側鎖型液晶ポリマー(A)との組み合わせにおいて垂直配向しやすいことから、棒状メソゲンの少なくとも一方の末端に重合性基を有する重合性液晶化合物であることが好ましく、棒状メソゲンの両末端に重合性基を有する重合性液晶化合物であってよい。
重合性液晶化合物が有するメソゲン乃至棒状メソゲンは、前記側鎖型液晶ポリマーにおける液晶性構成単位が有するメソゲン乃至棒状メソゲンと同様のものとすることができる。
【0157】
重合性液晶化合物が有する重合性基としては、例えば、オキシラン環、オキセタン環等の環状エーテル含有基、エチレン性二重結合含有基等が挙げられるが、中でも光硬化性を示し、取り扱い性に優れる点から、エチレン性二重結合含有基であることが好ましい。エチレン性二重結合含有基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
【0158】
本実施形態において、重合性液晶化合物は、液晶配向性を発揮し、耐熱性に優れるという点から、中でも、下記一般式(IV)で表される化合物、及び下記一般式(V)で表される化合物より選択される1種以上の化合物が好ましい。
【0159】
【化23】
(一般式(IV)中、R
61は、水素原子又はメチル基を、R
62は、-(CH
2)
p-、又は-(C
2H
4O)
p’-で表される基を表す。L
3は、直接結合、又は、-O-、-O-C(=O)-、若しくは-C(=O)-O-で表される連結基を、Ar
3は、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリーレン基を表し、複数あるL
3及びAr
3はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。R
63は、-F、-Cl、-CN、-OCF
3、-OCF
2H、-NCO、-NCS、-NO
2、-NHC(=O)-R
64、-C(=O)-OR
64、-OH、-SH、-CHO、-SO
3H、-NR
64
2、-R
65、又は-OR
65を、R
64は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R
65は、炭素数1~6のアルキル基を表す。bは2~4の整数、p及びp’はそれぞれ独立に2~10の整数である。
【0160】
【化24】
(一般式(V)中、R
71及びR
72は各々独立に、水素原子又はメチル基を、R
73は、-(CH
2)
q-、又は-(C
2H
4O)
q’-で表される基を、R
74は、-(CH
2)
r-、又は-(OC
2H
4)
r’-で表される基を表す。L
4は、直接結合、又は、-O-、-O-C(=O)-、若しくは-C(=O)-O-で表される連結基を、Ar
4は、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリーレン基を表し、複数あるL
4及びAr
4はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。cは2~4の整数、q、q’、r及びr’はそれぞれ独立に2~10の整数である。)
【0161】
L3及びL4は前記一般式(I)におけるL2と同様のものとすることができる。
また、Ar3及びAr4は前記一般式(I)におけるAr1と同様のものとすることができる。
一般式(IV)で表される化合物、及び下記一般式(V)で表される化合物は、具体的には例えば、国際公開第2018/003498号の段落0057~0064に記載されている重合性液晶化合物を用いることができる。
【0162】
本実施形態において前記側鎖型液晶ポリマー(A)とは異なる重合性液晶化合物は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物において前記側鎖型液晶ポリマー(A)とは異なる重合性液晶化合物を用いる場合、その含有量は、位相差や耐久性の向上が適宜調整されればよく特に限定されないが、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の固形分100質量部に対して1質量部~90質量部であることが好ましく、5質量部~50質量部であることがより好ましく、10質量部~30質量部であることがより更に好ましい。
また、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物において前記側鎖型液晶ポリマー(A)とは異なる重合性液晶化合物を用いる場合、その含有量は、上記側鎖型液晶ポリマー(A)100質量部に対して5質量部~100質量部であることが好ましく、10質量部~60質量部であることがより好ましく、20質量部~40質量部であることがより更に好ましい。
【0163】
(2)1分子中に重合性基を2つ以上有する重合性化合物
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、塗膜の硬度や耐久性を向上する点から、必要に応じて1分子中に重合性基を2つ以上有する重合性化合物を更に含んでいてもよい。1分子中に重合性基を2つ以上有する重合性化合物としては前述のような重合性液晶化合物の他、液晶性を有しない重合性化合物を用いることができる。
1分子中に重合性基を2つ以上有する重合性化合物としては、所謂多官能モノマーを用いることもでき、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、イソボロニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートや、これらをPO、EO等で変性したものが挙げられる。架橋反応が進行し、塗膜の耐久性が向上するため、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)等の1分子中に重合性基を3つ以上有する重合性化合物であってもよい。
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物において液晶性を有しない1分子中に重合性基を2つ以上有する重合性化合物を用いる場合、その含有量は、塗膜の硬度や耐久性の向上が適宜調整されればよく特に限定されないが、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の固形分100質量部に対して1質量部~40質量部であることが好ましく、5質量部~35質量部であることがより好ましく、10質量部~30質量部であることがより更に好ましい。
【0164】
(3)光重合開始剤
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、エチレン性二重結合含有基等の重合性基を有する化合物を含有する場合に、光重合開始剤を更に含有することが、積層する液晶層との密着性がより優れる配向層兼位相差層を得ることができる点から好ましい。
光重合開始剤としては、光照射によりラジカル種を発生するラジカル系光重合開始剤が好適に用いられる。光重合開始剤は、従来公知の物の中から適宜選択して用いることができる。このような光重合開始剤の具体例としては、例えば、チオキサントン等を含む芳香族ケトン類、α-アミノアルキルフェノン類、α-ヒドロキシケトン類、アシルフォスフィンオキサイド類、オキシムエステル類、芳香族オニウム塩類、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物等が好適に挙げられる。本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物に、前記酸または酸発生剤を含有させる場合には、光開始剤としては、例えばアミノアルキルフェノン系光開始剤のように塩基性を有する光開始剤ではないことが好ましく、塩基性基を有しない光開始剤であることが好ましい。中でも、塗膜の内部まで硬化し耐久性が向上するため、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤、α-ヒドロキシケトン系重合開始剤、及びオキシムエステル系重合開始剤よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
光重合開始剤は、具体的には例えば、国際公開第2018/003498号の段落0067~0070に記載されている光重合開始剤を用いることができる。
【0165】
本実施形態において光重合開始剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物において光重合開始剤を用いる場合、その含有量は、前記重合性基を有する化合物の硬化を促進させればよく特に限定されないが、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の固形分100質量部に対して0.1質量部~10質量部であることが好ましく、0.5質量部~9質量部であることがより好ましく、1質量部~8質量部であることがより更に好ましい。
【0166】
(4)重合性基と熱架橋性基とを有する化合物
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、塗膜の硬度や耐久性を向上する点や層間密着性を向上する点から、必要に応じて重合性基と熱架橋性基とを有する化合物を更に含んでいてもよい。ここで、重合性基としては、前述の重合性液晶化合物において説明した重合性基と同様であって良い。また、熱架橋性基としては、前述の共重合体(B)において説明した熱架橋性基と同様であって良い。
重合性基と熱架橋性基とを有する化合物としては、中でも、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つと、エチレン性不飽和二重結合基とを有する化合物であることが好ましく、更に、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つ、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物であることがより好ましい。ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つ、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物を含有させると、表面の液晶配向能が阻害されることなく、積層する液晶層との密着性がより優れる配向層兼位相差層が得られる点から好ましい。
また、ヒドロキシ基と、エチレン性不飽和二重結合基2つ以上とを有する化合物であるヒドロキシ基含有多官能アクリレートも、塗膜の硬度や耐久性を向上する点や層間密着性を向上する点から、好適に用いられる。
【0167】
重合性基と熱架橋性基とを有する化合物としては、具体的には例えば、国際公開第2014/073658号の段落0106~0112に記載されている重合性基と熱架橋性基とを有する化合物や、特開2017-068019号の段落0087~0100に記載されている芳香族炭化水素基を含む熱架橋性重合性化合物や、国際公開第2013/054784号の特開0125~0126に記載されているヒドロキシ基含有多官能アクリレートを用いることができる。
【0168】
本実施形態において重合性基と熱架橋性基とを有する化合物は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物において重合性基と熱架橋性基とを有する化合物を用いる場合、その含有量は、耐久性や層間密着性を向上すればよく特に限定されないが、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の固形分100質量部に対して1質量部~50質量部であることが好ましく、5質量部~40質量部であることがより好ましく、10質量部~30質量部であることがより更に好ましい。
【0169】
(5)前記共重合体(B)とは異なる光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、塗膜の耐久性や光配向性を向上する点から、必要に応じて前記共重合体(B)とは異なる光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物を更に含んでいてもよい。ここで、光配向性基としては、前述の共重合体(B)において説明した光配向性基と同様であって良い。また、熱架橋性基としては、前述の共重合体(B)において説明した熱架橋性基と同様であって良い。
前記共重合体(B)とは異なる光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物としては、非重合体の低分子化合物が挙げられる。前記共重合体(B)とは異なる光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物としては、中でも、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つと、シンナモイル基、カルコン基、アゾベンゼン基、及びスチルベン基の少なくとも1つとを有する化合物であることが好ましく、更に、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つと、シンナモイル基とを有する化合物であることがより好ましい。ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つ、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物を含有させると、表面の液晶配向能が阻害されることなく、積層する液晶層との密着性がより優れる配向層兼位相差層が得られる点から好ましい。
【0170】
光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物としては、具体的には例えば、国際公開第2013/054784号の段落0064~0074に記載されている光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物を用いることができる。
【0171】
本実施形態において、前記共重合体(B)とは異なる光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物において、前記共重合体(B)とは異なる光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物を用いる場合、その含有量は、塗膜の耐久性や光配向性を向上すればよく特に限定されないが、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の固形分100質量部に対して1質量部~50質量部であることが好ましく、10質量部~40質量部であることがより好ましく、15質量部~30質量部であることがより更に好ましい。
【0172】
(6)増感剤
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、増感剤を含有してもよい。増感剤により、光二量化反応や光異性化反応等の光反応を促進させることができる。
増感剤としては、具体的には、国際公開第2010/150748号の段落0057に記載されているものを用いることができる。
中でも、ベンゾフェノン誘導体およびニトロフェニル化合物が好ましい。増感剤は単独でまたは2種以上の化合物を組み合わせて併用することができる。
【0173】
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物において、増感剤を用いる場合、その含有量は、塗膜の耐久性や光配向性を向上すればよく特に限定されないが、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の固形分100質量部に対して0.1質量部~20質量部であることが好ましく、0.2質量部~10質量部であることがより好ましく、0.5質量部~10質量部であることがより更に好ましい。
【0174】
なお、第一の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物において、第二の目的を達成するために、後述の第二の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の組成を適用しても良い。
すなわち、第一の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位と、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位とを有する側鎖型液晶ポリマー(A)と、
光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位と、下記式(2)で表される構成単位を有する熱架橋性構成単位とを有する共重合体(B)と、
前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する架橋剤(C)とを含有し、
前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、下記(i)~(vi)のいずれかを満たすものであってよい。
(i)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、熱架橋性基とアルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位を有し、前記側鎖型液晶ポリマー(A)の非液晶性且つ熱架橋性構成単位は、前記共重合体(B)の熱架橋性構成単位における炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数4~11の直鎖アルキレン基よりも炭素数と酸素数の合計が小さい、炭素鎖中に-O-を有していてもよいアルキレン基の1級炭素に前記熱架橋性基が結合した構造を有する
(ii)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、熱架橋性基とアルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位を有し、前記側鎖型液晶ポリマー(A)の非液晶性且つ熱架橋性構成単位は、アルキレン基の2級炭素又は3級炭素に前記熱架橋性基が結合した構造を有する
(iii)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、ヒドロキシ基、メルカプト基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基とアルキレン基とアリーレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位を有し、前記側鎖型液晶ポリマー(A)の非液晶性且つ熱架橋性構成単位は、アリーレン基に前記熱架橋性基が結合した構造を有する
(iv)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、カルボキシ基、グリシジル基、及びアミド基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基とアルキレン基とアリーレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位を有し、前記側鎖型液晶ポリマー(A)の非液晶性且つ熱架橋性構成単位は、アリーレン基に前記熱架橋性基が結合した構造を有し、当該アリーレン基は、前記共重合体(B)の熱架橋性構成単位における炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数4~11の直鎖アルキレン基よりも炭素数と酸素数の合計が3以上小さい、炭素鎖中又は末端に-O-を有していてもよいアルキレン基の炭素原子又は酸素原子に結合した構造を有する
(v)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、アルキレン基を側鎖に含まず、熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位を有する
(vi)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、熱架橋性基とアルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位及び熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位を有しない
【0175】
【化25】
(上記式(2)中、Z
2は下記式(2-1)~(2-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、R
50は炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数4~11の直鎖アルキレン基であり、Yはヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、およびアミド基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基を表す。)
【0176】
【化26】
(上記式(2-1)~(2-6)中、R
51は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
52は水素原子またはメチル基を表し、R
53は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
54は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、L
12は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、又は-OCO-を表し、L
12が、単結合の場合、R
50はスチレン骨格に直接結合される。)
【0177】
7.光配向性を有する熱硬化性液晶組成物
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の調製方法は特に限定されるものではないが、保存安定性が長くなることから、側鎖型液晶ポリマー(A)、共重合体(B)、熱架橋剤(C)、およびその他の成分を混合し、後から酸または酸発生剤を添加する方法が好ましい。なお、酸または酸発生剤をはじめから添加する場合には、酸または酸発生剤として、塗膜の乾燥および加熱硬化時に熱分解して酸を発生する化合物を用いることが好ましい。
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の調製においては、溶剤中の重合反応によって得られる側鎖型液晶ポリマー(A)の溶液や、共重合体(B)の溶液をそのまま使用することができる。この場合、側鎖型液晶ポリマー(A)の溶液や、共重合体(B)の溶液に、上述のように熱架橋剤、およびその他の成分等を入れて均一な溶液とし、後から酸または酸発生剤を添加する。この際に、濃度調整を目的としてさらに溶剤を加えてもよい。このとき、共重合体の生成過程で用いられる溶剤と、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の濃度調整に用いられる溶剤とは同一であってもよく異なってもよい。
また、調製された光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の溶液は、孔径が0.2μm程度のフィルタ等を用いて濾過した後、使用することが好ましい。
【0178】
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の用途としては、前記側鎖型液晶ポリマー(A)が垂直配向しやすく、且つ共重合体(B)がその上に直接積層された液晶性材料を配向させる能力に優れるため、1層で配向層と位相差層の両方の機能を発揮する配向層兼位相差層、乃至、配向膜兼位相差フィルムの製造に適している。
【0179】
B.配向膜兼位相差フィルム
本開示の配向膜兼位相差フィルムは、配向層兼位相差層を含有する配向膜兼位相差フィルムであって、前記配向層兼位相差層が、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜であることを特徴とするものである。
以下、本開示の配向膜兼位相差フィルムにおける各構成について説明する。
【0180】
配向膜兼位相差フィルムの層構成について図を参照して説明する。
図1~
図3は、各々本開示の配向膜兼位相差フィルムの1実施形態を示す。
図1の例に示される配向膜兼位相差フィルム10の1実施形態は、配向層兼位相差層1のみからなる配向膜兼位相差フィルムである。
図2の例に示される配向膜兼位相差フィルム10の1実施形態は、基材2’上に直接、配向層兼位相差層1が形成されている。
図2の例に示される配向膜兼位相差フィルムには基材2’の配向層兼位相差層1側表面に配向規制力を発現する手段が付されていてもよい。また
図3の例に示される配向膜兼位相差フィルム10の1実施形態は、基材2上に配向膜3と配向層兼位相差層1がこの順に積層されている。
なお、前記側鎖型液晶ポリマー(A)を含有する配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、前述のように、前記側鎖型液晶ポリマーが垂直配向しやすく、それに伴い、任意で含まれていてもよい前記重合性液晶化合物も垂直配向しやすいため、配向膜3を用いなくても、垂直配向性を示し得るものである。
【0181】
1.配向層兼位相差層
本開示の配向層兼位相差層1は、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜であり、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物から形成されるものである。本開示の配向層兼位相差層は、前記側鎖型液晶ポリマー(A)が有する液晶性部分が垂直配向し且つ、配向層兼位相差層の表面に存在する光配向性基が光二量化構造または光異性化構造となっている状態で、硬化している膜である。
本開示の配向層兼位相差層は、1層に、垂直配向された前記側鎖型液晶ポリマーと、光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基と熱架橋剤とが結合してなる架橋構造を有する共重合体と、を含有する。前記側鎖型液晶ポリマーが、熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位を有する場合には、前記配向層兼位相差層は、更に、前記側鎖型液晶ポリマーの熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基と熱架橋剤とが結合してなる架橋構造を含有してもよい。
【0182】
ここで、架橋構造とは、三次元的な網目構造をいう。架橋構造には、前記共重合体の熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基と熱架橋剤とが結合してなる架橋構造と、必要に応じてその他の成分が有する熱架橋性基と熱架橋剤とが結合してなる架橋構造とが含まれる。架橋構造には、光配向性基同士が光二量化反応により架橋した構造、ならびに、エチレン性不飽和二重結合基同士が重合した構造は含まれない。但し、本開示の配向層兼位相差層には、さらにエチレン性不飽和二重結合基同士が重合した構造が含まれていてもよい。
【0183】
本開示の配向膜兼位相差フィルムにおける配向層兼位相差層は、前記特定の構造を有し、垂直配向して位相差を発現する前記側鎖型液晶ポリマーと、前記特定の構造を有する光配向性構成単位が含む光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基と熱架橋剤とが結合してなる架橋構造を有する共重合体とが、互いの性能を阻害し難いため、1層で、優れた垂直配向性と、優れた液晶配向能(直接積層された液晶性材料を配向させる能力)の両方を示すと推定される。
また、本開示の配向膜兼位相差フィルムにおける配向層兼位相差層は、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜であることから、その架橋構造によって膜の耐熱性、耐溶剤性が良好となり、耐久性が高い。
【0184】
垂直配向して位相差を発現する前記側鎖型液晶ポリマーは、上記「A.光配向性を有する熱硬化性液晶組成物」に記載した前記側鎖型液晶ポリマーと同様であって良いので、ここでの説明を省略する。
本開示の配向層兼位相差層には、光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基と熱架橋剤とが結合してなる架橋構造を有する共重合体が含まれる。
本開示の配向層兼位相差層に含まれる前記共重合体は、上記「A.光配向性を有する熱硬化性液晶組成物」に記載した光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有する共重合体を熱硬化し、光配向させることにより形成することができる。本開示においては熱架橋剤が用いられ、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基は熱架橋剤と結合する。したがって、架橋構造は、熱架橋性基と熱架橋剤とが加熱により架橋した構造となる。なお、前記側鎖型液晶ポリマーの非液晶性且つ熱架橋性構成単位が熱架橋基を有する場合には、当該架橋構造として、前記側鎖型液晶ポリマーの熱架橋性基と熱架橋剤とが結合してなる架橋構造を含んでいても良い。
なお、熱架橋剤は、前記「A.光配向性を有する熱硬化性液晶組成物」に記載した熱架橋剤を用いることができ、架橋構造中には、熱架橋剤が反応した後の熱架橋剤の残基が含まれる。
【0185】
例えば、熱架橋剤がヘキサメトキシメチルメラミンの場合、架橋構造は例えば下記に示すような構造になる。なお、下記式中、各符号は上記式(1)と同様である。下記共重合体は例示であり、単量体単位や熱架橋性基の残基等は下記に限定されるものではない。
【0186】
【0187】
なお、共重合体の各構成単位については、上記「A.光配向性を有する熱硬化性液晶組成物」に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
配向層が上記共重合体を含有することは、配向層から材料を採取し分析することで確認することができる。分析方法としては、NMR、IR、GC-MS、XPS、TOF-SIMSおよびこれらの組み合わせた方法を適用することができる。
【0188】
共重合体における光二量化構造は、上記式(1)で表される光配向性構成単位の光配向性基同士が光二量化反応により架橋した構造であり、シクロブタン骨格を有する構造である。
光二量化反応は、下記に示すような反応であり、光配向性基に含まれるオレフィン構造が光反応によりシクロブタン骨格を形成する反応である。光配向性基の種類に応じてXa~XdおよびXa’~Xd’は異なる。
【0189】
【0190】
光二量化構造は、シンナモイル基の光二量化構造であることが好ましい。具体的には、上記「A.光配向性を有する熱硬化性液晶組成物」に記載したシンナモイル基同士が光二量化反応により架橋した構造が好ましい。中でも、配向層は、下記式(x-4)、(x-5)で表されるような光二量化構造を有することが好ましい。なお、下記式中、各符号は上記式(x-1)、(x-2)、及び(x-3)と同様である。
【0191】
【0192】
配向層が、上記式(x-4)、(x-5)で表されるような光二量化構造を有する場合、芳香環が多く配置され、π電子を多く含むようになる。そのため、配向層上に形成される液晶層と親和性が高くなり、液晶配向能が向上し、液晶層との密着性がさらに高くなると考えられる。
【0193】
また、共重合体における光異性化構造は、光配向性構成単位が有する光配向性基が光異性化反応により異性化した構造である。例えばシストランス異性化反応の場合、光異性化構造は、シス体がトランス体に変化した構造およびトランス体がシス体に変化した構造のいずれであってもよい。
例えば、光配向性基がシンナモイル基の場合、光異性化反応は下記に示すような反応であり、光配向性基に含まれるオレフィン構造が光反応によりシス体またはトランス体を形成する反応である。光配向性基の種類に応じてXa~Xdは異なる。
【0194】
【0195】
光異性化構造は、シンナモイル基の光異性化構造であることが好ましい。具体的には、上記「A.光配向性を有する熱硬化性液晶組成物」に記載したシンナモイル基が光異性化反応により異性化した構造が好ましい。この場合、光異性化構造は、シス体がトランス体に変化した構造およびトランス体がシス体に変化した構造のいずれであってもよい。中でも、配向層は、下記式(x-6)及び(x-7)で示されるような、上記式(x-1)及び(x-2)で表されるシンナモイル基の光異性化構造を有することが好ましい。
【0196】
【0197】
なお、配向層が上記光二量化構造または光異性化構造を有することは、NMRまたはIRにより分析可能である。
【0198】
配向層兼位相差層には、更に、前記光配向性を有する熱硬化性液晶組成物に更に含まれていてもよいその他の成分が、含まれていてもよい。
配向層兼位相差層は、例えば、前記側鎖型液晶ポリマー(A)とは異なる重合性液晶化合物、1分子中に重合性基を2つ以上有する重合性化合物、及び重合性基と熱架橋性基とを有する化合物の少なくとも1種の、エチレン性不飽和二重結合基同士が重合した構造等が含まれていてもよい。
また、配向層兼位相差層は、例えば、重合性基と熱架橋性基とを有する化合物、前記共重合体(B)とは異なる光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物の少なくとも1種と、熱架橋剤とが結合してなる架橋構造が含まれていてもよく、更に、前記共重合体(B)とは異なる光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物の光配向性基の光二量化構造や光異性化構造が含まれていてもよい。
配向層兼位相差層は、更に、酸または酸発生剤、光重合開始剤、増感剤、その他の添加剤、及びそれらの分解物を含有してもよい。なお、これらの添加剤については、上記「A.光配向性を有する熱硬化性液晶組成物」に記載したものと同様である。
【0199】
なお、配向層兼位相差層が上述の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物から形成されたものであることは、配向層兼位相差層から材料を採取し分析することで確認することができる。分析方法としては、NMR、IR、GC-MS、XPS、TOF-SIMSおよびこれらの組み合わせた方法を適用することができる。
【0200】
また、配向層兼位相差層において、側鎖型液晶ポリマーの液晶性部分等、含まれる液晶性成分が垂直配向していることは、自動複屈折測定装置(例えば、王子計測機器株式会社製、商品名:KOBRA-WR)により位相差を測定することにより確認することができる。
【0201】
位相差は、自動複屈折測定装置(例えば、王子計測機器株式会社製、商品名:KOBRA-WR)により測定することができる。測定光を位相差層表面に対して垂直あるいは斜めから入射して、その光学位相差と測定光の入射角度のチャートから位相差層の位相差を増加させる異方性を確認することができる。
【0202】
配向層兼位相差層の厚みは、用途に応じて適宜設定すればよい。中でも、0.1μm~5μmであることが好ましく、0.5μm~3μmであることがより好ましい。
【0203】
2.基材
本開示の配向膜兼位相差フィルムにおいて基材は、ガラス基材、金属箔、樹脂基材等が挙げられる。中でも、基材は透明性を有することが好ましく、従来公知の透明基材の中から適宜選択することができる。透明基材としては、ガラス基材の他、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂を用いて形成された透明樹脂基材が挙げられる。
【0204】
上記透明基材は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、透明基材の透過率は、JIS K7361-1(プラスチック-透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0205】
また、ロールトゥロール方式で位相差層を形成する場合には、透明基材は、ロール状に巻き取ることができる可撓性を有するフレキシブル材であることが好ましい。
このようなフレキシブル材としては、セルロース誘導体、ノルボルネン系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アモルファスポリオレフィン、変性アクリル系ポリマー、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル類などを例示することができる。なかでも本実施形態においてはセルロース誘導体やポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。セルロース誘導体は特に光学的等方性に優れるため、光学的特性に優れたものとすることができるからである。また、ポリエチレンテレフタレートは、透明性が高く、機械的特性に優れる点から好ましい。
【0206】
本実施形態に用いられる基材の厚みは、配向膜兼位相差フィルムの用途等に応じて、必要な自己支持性を付与できる範囲内であれば特に限定されないが、通常、10μm~200μm程度の範囲内である。
中でも、基材の厚みは、25μm~125μmの範囲内が好ましく、中でも30μm~100μmの範囲内が好ましい。厚みが上記の範囲よりも厚いと、例えば、長尺状の位相差フィルムを形成した後、裁断加工し、枚葉の配向膜兼位相差フィルムとする際に、加工屑が増加したり、裁断刃の磨耗が早くなってしまう場合があるからである。
【0207】
本実施形態に用いられる基材の構成は、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有してもよい。複数の層が積層された構成を有する場合は、同一組成の層が積層されてもよく、また、異なった組成を有する複数の層が積層されてもよい。
例えば、本実施形態に用いられる後述の配向膜が紫外性硬化性樹脂を含有するものである場合、透明基材と当該紫外線硬化性樹脂の接着性を向上させるためのプライマー層を基材上に形成してもよい。このプライマー層は、基材および紫外線硬化性樹脂との双方に接着性を有し、可視光学的に透明であり、紫外線を通過させるものであればよく、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体系、ウレタン系のもの等を適宜選択して使用することができる。
【0208】
また、後述の垂直配向膜が設けられない場合、基材上にアンカーコート層を積層しても良い。当該アンカーコート層によって基材の強度を向上させることができ良好な垂直配向性を確保できる。アンカーコート材料としては、金属アルコキシド、特に金属シリコンアルコキシドゾルを用いることができる。金属アルコキシドは、通常アルコール系の溶液として用いられる。アンカーコート層は、均一で、かつ柔軟性のある膜が必要なため、アンカーコート層の厚みは0.04μm~2μm程度が好ましく、0.05μm~0.2μm程度がより好ましい。
前記基材がアンカーコート層を有する場合には、基材とアンカーコート層の間に更にバインダー層を積層したり、アンカーコート層に基材との密着性を強化する材料を含有させることにより、基材とアンカーコート層の密着性を向上させてもよい。前記バインダー層の形成に用いるバインダー材料は、基材とアンカーコート層との密着性を向上できるものを特に制限なく使用することができる。バインダー材料としては、たとえば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤等を例示できる。
【0209】
3.配向膜
本開示の配向膜兼位相差フィルムの実施形態に用いられる配向膜3としては、前記配向層兼位相差層1の液晶組成物が垂直配向しやすいことから、垂直配向膜を用いてもよい。
垂直配向膜は、塗膜として設けることで、側鎖型液晶ポリマーの液晶性部分等、配向層兼位相差層1に含まれる液晶性成分のメソゲンの長軸を垂直配向させる機能を有する配向膜である。
【0210】
垂直配向膜は、垂直方向の配向規制力を備えた配向膜であり、Cプレートの作製に供する各種垂直配向膜、VA液晶表示装置等に適用される各種の垂直配向膜を適用することができ、例えばポリイミド配向膜、LB膜による配向膜等を適用することができる。具体的に、配向膜の構成材料としては、例えば、レシチン、シラン系界面活性剤、チタネート系界面活性剤、ピリジニウム塩系高分子界面活性剤、n-オクタデシルトリエトキシシラン等のシランカップリング系垂直配向膜用組成物、長鎖アルキル基や脂環式構造を側鎖に有する可溶性ポリイミドや長鎖アルキル基や脂環式構造を側鎖に有するポリアミック酸等のポリイミド系垂直配向膜用組成物を適用することができる。
なお、垂直配向膜用組成物として、ジェイエスアール(株)製のポリイミド系垂直配向膜用組成物「JALS-2021」や「JALS-204」、日産化学工業(株)製の「RN-1517」、「SE-1211」、「EXPOA-018」等の市販品を適用することができる。また、特開2015-191143に記載の垂直配向膜であっても良い。
【0211】
配向膜3の形成方法は特に限定されないが、例えば、前記基材2上に、前記配向膜用組成物を塗布し、配向規制力を付与することにより配向膜とすることができる。配向膜に配向規制力を付与する手段は、従来公知のものとすることができる。
【0212】
配向膜3の厚さは、配向層兼位相差層1における液晶性成分を一定方向に配列できればよく、適宜設定すればよい。配向膜の厚さは、通常、1nm~10μmの範囲内であり、60nm~5μmの範囲内が好ましい。
【0213】
4.用途
本開示の配向膜兼位相差フィルムは、直接積層された液晶性材料を配向させる配向膜としても機能するポジティブC型の位相差層を含有する位相差フィルムとして好適に用いられる。
ここで、ポジティブCの特性とは、層面に沿ったX軸方向の屈折率をNx、層面に沿った方向でX軸に直交するY軸方向の屈折率をNy、層厚方向の屈折率をNzとしたとき、Nz>Nx≒Nyの関係であるとともに、光軸がNz方向となる特徴を有するものである。
【0214】
本開示の配向膜兼位相差フィルムは、例え外光反射防止フィルムの一部や、偏光板補償フィルムの一部として好適に用いられ、各種表示装置用の位相差板、光学部材に好適に用いられる。
【0215】
C.配向膜兼位相差フィルムの製造方法
本開示の配向膜兼位相差フィルムの製造方法は、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を成膜する工程と、
前記成膜された前記熱硬化性液晶組成物を加熱することにより、位相差を有する硬化膜を形成する工程と、
前記位相差を有する硬化膜に、偏光紫外線を照射することにより、前記硬化膜に液晶配向能を付与する工程とを有する。
【0216】
(1)光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の成膜工程
支持体上に、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を均一に塗布して成膜を形成する。
ここでの支持体上としては、前記基材上であっても良いし、前記配向膜を備えた基材の配向膜上であってもよい。
【0217】
塗布方法は、所望の厚みで精度良く成膜できる方法であればよく、適宜選択すればよい。例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法、E型塗布方法などが挙げられる。
【0218】
(2)位相差を有する硬化膜を形成する工程
次いで、前記成膜された前記熱硬化性液晶組成物を加熱することにより、位相差を有する硬化膜を形成する。当該硬化膜は、位相差層としての機能を有する。
当該工程においては、前記成膜された前記熱硬化性液晶組成物を加熱することにより、成膜された前記熱硬化性液晶組成物中の前記側鎖型液晶ポリマー(A)の液晶性部分を少なくとも配向させる工程が含まれる。
具体的には、成膜された液晶組成物中の側鎖型液晶ポリマーが有する液晶性構成単位の液晶性部分が垂直配向可能な温度に調整し、加熱する。任意で更に重合性液晶化合物を含む場合には、加熱温度を重合性液晶化合物も垂直配向可能な温度に調整する。当該加熱処理により、側鎖型液晶ポリマーが有する液晶性構成単位の液晶性部分を少なくとも垂直配向させて乾燥することができ、前記配向状態を維持した状態で固定化することができる。
垂直配向可能な温度は、液晶組成物中の各物質に応じて異なるため、適宜調整する必要がある。例えば、40℃~200℃の範囲内で行うことが好ましく、更に40℃~150℃の範囲内で行うことが好ましい。前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、前記側鎖型液晶ポリマーを含有するため、垂直配向可能な温度範囲が広く、温度管理が容易である。
加熱手段としては、例えばホットプレートやオーブン等、公知の加熱、乾燥手段を適宜選択して用いることができる。
また、加熱時間は、適宜選択されれば良いが、例えば、10秒以上2時間以内、好ましくは20秒以上30分以内の範囲内で選択される。
【0219】
また、当該工程においては、前記成膜された前記熱硬化性液晶組成物を加熱することにより、前記液晶性部分を配向させた状態で、成膜された前記熱硬化性液晶組成物中の前記共重合体(B)の熱架橋性基と熱架橋剤(C)とを反応させて硬化させる工程が含まれる。
成膜された前記熱硬化性液晶組成物中の前記側鎖型液晶ポリマー(A)の液晶性部分を少なくとも配向させるための加熱によって、成膜された前記熱硬化性液晶組成物中の前記共重合体(B)の熱架橋性基が熱架橋剤(C)と反応して硬化する場合には、加熱は1段階の加熱であってよい。
あるいは、成膜された前記熱硬化性液晶組成物中の前記側鎖型液晶ポリマー(A)の液晶性部分を少なくとも配向させるための加熱後に、更に加熱温度を変更して加熱することにより、前記液晶性部分を配向させた状態で、成膜された前記熱硬化性液晶組成物中の前記共重合体(B)の熱架橋性基と熱架橋剤(C)とを反応させて硬化させてもよい。
熱硬化させる加熱温度は、例えば40℃~250℃程度で設定することができる。加熱時間は、例えば20秒以上60分以内程度で設定することができる。
【0220】
光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を熱硬化させて得られる硬化膜の膜厚は、用途等に応じて適宜選択されるものであり、例えば0.1μm~5μm程度、好ましくは0.5μm~3μm程度とすることができる。なお、硬化膜の膜厚が薄すぎると、十分な位相差機能と、液晶配向能が得られない場合がある。
【0221】
(3)硬化膜に液晶配向能を付与する工程
次いで、前記位相差を有する硬化膜に、偏光紫外線を照射することにより、前記硬化膜に液晶配向能を付与する。すなわち、当該工程では、前記硬化膜に偏光紫外線を照射することにより、更に配向層としての機能も有する硬化膜を形成する。
得られた硬化膜には、偏光紫外線を照射することにより、共重合体(B)の光配向性基が光反応を生じさせて異方性を発現させることができる。偏光紫外線の波長は通常150nm~450nmの範囲内である。また、偏光紫外線の照射方向は、基板面に対して垂直または斜め方向とすることができる。
このようにして、液晶配向能が付与された硬化膜を形成することができる。
以上のようにして、前記硬化膜は、位相差層としての機能と、配向層としての機能とを有するようになり、配向層兼位相差層として機能する硬化膜が得られる。
【0222】
(4)その他の工程
本開示の配向膜兼位相差フィルムの製造方法においては、更に別の工程を有していてもよい。
例えば、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物に、重合性液晶化合物など、重合性基を有する化合物を含有する場合には、更に、液晶性成分の配向状態を維持した状態で固定化された塗膜に、例えば光照射することにより、重合性基を有する化合物を重合してもよい。
光照射としては、紫外線照射が好適に用いられる。紫外線照射は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線を使用することができる。エネルギー線源の照射量は、適宜選択されれば良く、紫外線波長365nmでの積算露光量として、例えば10mJ/cm2~10000mJ/cm2の範囲内であることが好ましい。
また、配向層兼位相差層として機能する硬化膜が得られた後に、支持体を剥離することにより、配向層兼位相差層1のみからなる配向膜兼位相差フィルムを得ることもできる。
【0223】
D.位相差板
本開示の位相差板は、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜である、第一の位相差層と、
前記第一の位相差層に直接隣接して位置する、重合性液晶組成物の硬化物を含有する第二の位相差層と、を含有することを特徴とするものである。
【0224】
図4は本開示の位相差板の一例を示す概略断面図である。
図4に例示する位相差板20においては、基材13上に配向層兼位相差層である第一の位相差層11が形成され、当該第一の位相差層11上に、第二の位相差層12が形成されている。
【0225】
本開示の位相差板は、第一の位相差層が、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜であることから、垂直配向性に優れ、且つ、直接積層された液晶性材料を配向させる能力に優れる。そのため、本開示の位相差板20は、当該第一の位相差層11上に、別途配向膜を備えることなく、直接液晶性材料を積層して第二の位相差層が形成されたものであり、前記第一の位相差層11に直接隣接して位置する、第二の位相差層12を有するものである。
本開示の位相差板は、第一の位相差層が、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜であることから、前述のように耐溶剤性に優れているため、第二の位相差層の積層時にも第一の位相差層の位相差の劣化が抑制され、光学特性の良好な位相差板を得ることができる。
また、本開示の位相差板は、第一の位相差層が、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜であることから、前述のように、重合性液晶化合物を含む光硬化性樹脂組成物の硬化物である場合と比べて、硬くなり難くて柔軟性を有し、且つ、直接積層された液晶性材料との密着性も良好になる。そのため本開示の位相差板は、後述する第三の本開示の位相差板と同様に、良好な密着性で第一の位相差層と第二の位相差層とが直接積層されており、薄型で屈曲耐性が良好な位相差板とすることができる。
【0226】
また本開示の位相差板の製造方法は、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を成膜する工程と、
前記成膜された前記熱硬化性液晶組成物を加熱することにより、位相差を有する硬化膜を形成する工程と、
前記位相差を有する硬化膜に、偏光紫外線を照射して、前記硬化膜に液晶配向能を付与することにより、配向膜兼第一の位相差層を形成する工程と、
前記配向膜兼第一の位相差層上に、重合性液晶組成物を塗布して前記重合性液晶組成物の塗膜を形成し、当該塗膜を前記重合性液晶組成物の相転移温度まで加熱することにより前記配向膜兼位相差層によって液晶分子を配向させる工程と、
前記液晶分子が配向した重合性液晶組成物の塗膜に光照射して硬化することにより、第二の位相差層を形成する工程と
を有するものであってよい。
【0227】
なお、基材については、上記「B.配向膜兼位相差フィルム」に記載したものと同様であって良いので、ここでの説明は省略する。
【0228】
1.第一の位相差層
第一の位相差層が、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜であるので、第一の位相差層は、前述のように、配向層兼位相差層として機能する。
第一の位相差層は、上記「B.配向膜兼位相差フィルム」に記載した配向層兼位相差層と同様であって良いので、ここでの説明は省略する。
第一の位相差層に、第二の位相差層に含まれる重合性基や熱架橋性基を有する化合物と反応する化合物を含む場合には、第一の位相差層の第二の位相差層の界面側に、互いの層に含まれる化合物同士の反応生成物が含まれていてもよい。例えば、第一の位相差層と第二の位相差層との界面に、前記第一の位相差層に含まれる重合性基を有する化合物の重合性基と、第二の位相差層に含まれる重合性液晶化合物の重合性基とが重合した構造が含まれていてもよい。第一の位相差層の第二の位相差層の界面側に、このような反応生成物を含む場合には、第一の位相差層と第二の位相差層の密着性が向上する点から好ましい。
なお、本開示の熱架橋剤を含む熱硬化性樹脂組成物の第一の位相差層は、重合性液晶化合物を含む光硬化性樹脂組成物の硬化物である場合と比べて、直接積層された第二の位相差層との界面に、第一の位相差層の垂直配向性を阻害しない程度に適度な浸透領域ができやすいことにより、密着性が向上しやすい。本開示の熱架橋剤を含む熱硬化性樹脂組成物の第一の位相差層は、熱架橋剤により架橋されていることから、第二の位相差層を直接積層する際に表面においてのみ若干溶剤浸透が起こりやすいものの、垂直配向性が低下する程度の溶剤浸透は起こりにくいと推定される。
【0229】
第一の位相差層は、前記本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜であり、含まれる側鎖型液晶ポリマーが垂直配向しやすい点から、ポジティブC型の位相差層として、好適に用いられる。
【0230】
2.第二の位相差層
本開示の位相差板における第二の位相差層は、上記第一の位相差層に直接隣接して位置し、重合性液晶組成物の硬化物を含有するものである。
重合性液晶組成物としては、重合性基を有する重合性液晶化合物を含有するものを用いることができ、位相差層に一般的に用いられるものを使用することができる。
重合性液晶化合物が有する重合性基としては、例えばアクリロイル基、メタアクリロイル基等が挙げられる。
【0231】
重合性液晶組成物には、例えば水平配向、コレステリック配向、垂直配向、ハイブリッド配向等の配向性を有するものがあり、所望の位相差等に応じて適宜選択される。
【0232】
第二の位相差層における重合性液晶組成物は、第一の位相差層の液晶配向能の点から、水平配向性を有する重合性液晶組成物であることが好ましい。
【0233】
第二の位相差層における重合性液晶組成物は、液晶性を示し、分子内に重合性基を有する重合性液晶化合物(棒状化合物)を含有することが好ましい。当該重合性液晶化合物としては、水平配向性を有する従来公知の重合性液晶化合物を、適宜選択して用いることができる。
重合性液晶組成物は、1つの液晶化合物からなるものであっても2種以上の液晶化合物の混合物であってもよい。
【0234】
第二の位相差層における重合性液晶組成物は、上記「A.光配向性を有する熱硬化性液晶組成物」において、前記側鎖型液晶ポリマー(A)とは異なる重合性液晶化合物として説明したものと同様の重合性液晶化合物を好適に用いることができる。
第二の位相差層における重合性液晶組成物において、重合性液晶化合物は、液晶配向性を発揮し、耐熱性に優れるという点から、中でも、前記一般式(IV)で表される化合物、及び前記一般式(V)で表される化合物より選択される1種以上の化合物が好ましい。一般式(IV)で表される化合物、及び下記一般式(V)で表される化合物は、具体的には例えば、国際公開第2018/003498号の段落0057~0064に記載されている重合性液晶化合物を用いることができる。
第二の位相差層における重合性液晶組成物において、重合性液晶化合物としては、その他にも、具体的には例えば、特許第6473537号、特許第5463666号、特許第4186981号、特許第5962760号、及び特許第5826759号、特許第6568103号、特許第6427340号、特開2016-166344や、Recueil des Travaux Chimiques des Pays-Bas(1996),115(6),321-328に記載されている重合性液晶化合物を用いることができる。
また、第二の位相差層における重合性液晶組成物としては、特開2014-174468号の段落0133~0143記載の組成物や、特許第6739621号の段落0083~0092記載の組成物が挙げられる。
【0235】
第二の位相差層における重合性液晶組成物は、液晶化合物の他に、更に光重合開始剤や溶剤を含んでいてもよく、「A.光配向性を有する熱硬化性液晶組成物」で説明したようなその他の成分を更に含んでいてもよい。
【0236】
第二の位相差層は、配向層としても機能する前記第一の位相差層上に重合性液晶組成物を塗布し、重合性液晶組成物の相転移温度まで加熱して第一の位相差層の液晶配向能によって液晶性成分を配向させる工程と、
前記液晶性成分が配向した重合性液晶組成物の塗膜に光照射することにより位相差層を形成する工程とを有することにより形成することができる。
【0237】
液晶性成分を配向させる工程において重合性液晶組成物の塗膜を形成する方法、相転移温度まで加熱する方法については、従来公知の方法を用いればよく、特に限定されない。塗布方法、加熱方法については、上記配向層兼位相差層の製造方法における塗布方法、加熱方法と同様の方法を用いることができる。
【0238】
前記液晶性成分が配向した重合性液晶組成物の塗膜には、光照射することにより、重合反応を生じさせて、第二の位相差層に含まれる重合性液晶化合物が有する重合性基同士、更に、前記第一の位相差層が重合性基を含む化合物を含有する場合には、第一の位相差層における重合性基を含む化合物の重合性基と第二の位相差層に含まれる重合性液晶化合物が有する重合性基とを重合する。光照射方法は従来公知の方法を用いればよく、前記「C.配向膜兼位相差フィルム」で説明した方法と同様であって良い。
【0239】
本開示の位相差板は、第一の位相差層が配向層兼位相差フィルムとして機能するため、第一の位相差層に第二の位相差層を直接積層しており、第二の位相差層用の基材や配向膜や接着剤層等が含まれず、薄型化を図れるものである。本開示の位相差板は、基材を除いた第一の位相差層と第二の位相差層の積層体の合計厚みを、0.2μm~6μmとすることができ、1μm~4μmとすることがより好ましい。
【0240】
本開示の位相差板においては、前記第一の位相差層がポジティブC型位相差層であり、前記第二の位相差層がポジティブA型位相差層であることが好ましい。ここで、ポジティブAの特性とは、層面に沿ったX軸方向の屈折率をNx、層面に沿った方向でX軸に直交するY軸方向の屈折率をNy、層厚方向の屈折率をNzとしたとき、Nx>Ny≒Nzの関係であるとともに、光軸がNx方向となる特徴を有するものである。
ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層が積層された位相差板は、例えば有機エレクトロルミネッセンス表示装置での、λ/4位相差板と直線偏光板とを組み合わせた形態で円偏光板として使用され、外光反射防止フィルムとして使用される点から好ましく、また、液晶表示装置における偏光板補償フィルムの一部として使用される点から好ましい。
【0241】
本開示の位相差板においては、波長550nmにおける厚み方向位相差Rthは-35nm~35nmであってよく、更に-30nm~30nmであってよい。
また波長550nmにおける面内位相差Reは120nm以上であってよく、更に135nm以上であってよい。
【0242】
また、本開示の位相差板は、更に別の位相差層を有していても良い。
本開示の位相差板は、前記第一の位相差層とは異なる第三の位相差層を更に含有し、前記第三の位相差層と、前記第一の位相差層と、前記第二の位相差層とがこの順に、直接隣接して位置し、
前記第三の位相差層がポジティブC型位相差層であり、前記第一の位相差層がポジティブC型位相差層であり、前記第二の位相差層がポジティブA型位相差層であってもよい。
第三の位相差層がポジティブC型位相差層である場合、第一の位相差層と同様に側鎖型液晶ポリマーを用いて形成することが好ましく、例えば、第一の位相差層を形成するために用いられる光配向性を有する熱硬化性樹脂組成物から、共重合体(B)を除いた熱硬化性樹脂組成物を用いて形成することができる。
【0243】
4.用途
本開示の位相差板は、第一の位相差層に直接第二の位相差層を積層可能で、第二の位相差層用の基材や配向膜や接着剤層等が含まれず、薄型化することができる。
本開示の位相差板は、薄型化を目指している各種画像表示装置の光学部材として好適に用いることができる。
【0244】
II.第二の本開示
A.光配向性を有する熱硬化性液晶組成物
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位と、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位とを有する側鎖型液晶ポリマー(A)と、
光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位と、下記式(2)で表される構成単位を有する熱架橋性構成単位とを有する共重合体(B)と、
前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する熱架橋剤(C)とを含有し、
前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、下記(i)~(vi)のいずれかを満たす、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物である。
(i)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、熱架橋性基とアルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位を有し、前記側鎖型液晶ポリマー(A)の非液晶性且つ熱架橋性構成単位は、前記共重合体(B)の熱架橋性構成単位における炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数4~11の直鎖アルキレン基よりも炭素数と酸素数の合計が小さい、炭素鎖中に-O-を有していてもよいアルキレン基の1級炭素に前記熱架橋性基が結合した構造を有する
(ii)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、熱架橋性基とアルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位を有し、前記側鎖型液晶ポリマー(A)の非液晶性且つ熱架橋性構成単位は、アルキレン基の2級炭素又は3級炭素に前記熱架橋性基が結合した構造を有する
(iii)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、ヒドロキシ基、メルカプト基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基とアルキレン基とアリーレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位を有し、前記側鎖型液晶ポリマー(A)の非液晶性且つ熱架橋性構成単位は、アリーレン基に前記熱架橋性基が結合した構造を有する
(iv)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、カルボキシ基、グリシジル基、及びアミド基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基とアルキレン基とアリーレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位を有し、前記側鎖型液晶ポリマー(A)の非液晶性且つ熱架橋性構成単位は、アリーレン基に前記熱架橋性基が結合した構造を有し、当該アリーレン基は、前記共重合体(B)の熱架橋性構成単位における炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数4~11の直鎖アルキレン基よりも炭素数と酸素数の合計が3以上小さい、炭素鎖中又は末端に-O-を有していてもよいアルキレン基の炭素原子又は酸素原子に結合した構造を有する
(v)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、アルキレン基を側鎖に含まず、熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位を有する
(vi)前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、熱架橋性基とアルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位及び熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位を有しない
【0245】
【化32】
(上記式(2)中、Z
2は下記式(2-1)~(2-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、R
50は炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数4~11の直鎖アルキレン基であり、Yはヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、およびアミド基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基を表す。)
【0246】
【化33】
(上記式(2-1)~(2-6)中、R
51は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
52は水素原子またはメチル基を表し、R
53は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
54は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、L
12は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、又は-OCO-を表し、L
12が、単結合の場合、R
50はスチレン骨格に直接結合される。)
【0247】
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、前記側鎖型液晶ポリマー(A)と、直接積層された液晶性材料を配向させる能力を発揮する光配向性構成単位と熱架橋性構成単位とを有する前記共重合体(B)とを前記特定の条件を満たすように組み合わせ、更に前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する熱架橋剤(C)とを含有することから、当該組成物の硬化膜を形成することにより、1層で配向層と位相差層の両方の機能を有しながら、良好な垂直配向性と、良好な液晶配向能(直接積層された液晶性材料を配向させる能力)を示し、且つ耐久性を有する配向層兼位相差層を形成できる。
本発明者らは、垂直配向性を有する側鎖型液晶ポリマー(A)と、光配向膜材料(直接積層された液晶性材料を配向させる能力を発揮する光配向性構成単位と熱架橋性構成単位とを有する共重合体(B))とを含有する組成物から、耐久性を有する配向層兼位相差層の一体化機能層を形成するために鋭意検討した。その結果、組成物中において、光配向膜材料である共重合体(B)は熱硬化が進むほど光配向機能が向上するが、垂直配向性を有する側鎖型液晶ポリマー(A)は熱硬化が進むほど垂直配向性が低下することを見出した。そこで、組成物中の光配向膜材料である共重合体(B)の熱硬化を促進し、且つ一方で垂直配向性を有する側鎖型液晶ポリマー(A)の熱硬化を抑制する必要があると考えた。
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、光配向膜材料である共重合体(B)の熱架橋性構成単位においては、炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数4~11の直鎖アルキレン基を介して、熱架橋性基が単量体単位に結合している構造を有するので、光配向膜材料である共重合体(B)は熱架橋反応が進行しやすく、熱硬化しやすい。その一方で、組成物中の垂直配向性を有する側鎖型液晶ポリマー(A)は、前記(i)~(vi)のいずれかを満たすことから、共重合体(B)に比べて、相対的に熱架橋反応が進行し難く、熱硬化し難いか、熱硬化しない。
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、垂直配向性を有する側鎖型液晶ポリマー(A)の熱架橋性を相対的に下げて、光配向膜材料である共重合体(B)の熱硬化を進行しやすくすることにより、1層で配向層と位相差層の両方の機能を有しながら、良好な垂直配向性と、良好な液晶配向能(直接積層された液晶性材料を配向させる能力)を示し、且つ耐久性を有する配向層兼位相差層を形成できる。
【0248】
また、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、共重合体(B)の熱硬化が良好に進行することにより、膜中で3次元架橋構造が形成され、その結果配向している垂直配向性ポリマー(A)の垂直配向性がより揺らぎ難くなると推定される。これにより、配向層兼位相差層の加熱による垂直配向性の変動が抑制され、更に、配向層兼位相差層の上に直接塗工された液晶性材料の溶剤浸透による垂直配向性の変動も抑制されやすく、垂直配向性の再現性、乃至、耐久性が良好なものである。
【0249】
以下、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物における各成分について説明する。
1.側鎖型液晶ポリマー(A)
本開示に用いられる側鎖型液晶ポリマー(A)は、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位と、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位とを有するものである。
以下、側鎖型液晶ポリマー(A)における各構成単位について説明する。
【0250】
本開示に用いられる側鎖型液晶ポリマー(A)は、後述する共重合体(B)との関係で、前記(i)~(vi)のいずれかを満たす。
前記(i)を満たす場合、前記側鎖型液晶ポリマー(A)の熱架橋性基とアルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位において、熱架橋性基と単量体単位とを連結する、炭素鎖中に-O-を有していてもよいアルキレン基は、前記共重合体(B)の熱架橋性構成単位における熱架橋性基と単量体単位とを連結する、炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数4~11の直鎖アルキレン基よりも、炭素数と酸素数の合計が小さい。前記側鎖型液晶ポリマー(A)において、前記熱架橋性基と単量体単位とを連結する部分の長さが相対的に短いことにより、熱架橋性基に熱架橋剤が結合しにくくなり、熱架橋性構成単位と熱架橋剤との反応性が低下し、側鎖型液晶ポリマー(A)の熱架橋反応が共重合体(B)に比べて相対的に進行し難くなる。側鎖型液晶ポリマー(A)と共重合体(B)に硬化速度差があれば、後述する熱架橋剤量や酸触媒量を調整することにより、共重合体(B)が先に硬化する条件を作ることができる。
前記側鎖型液晶ポリマー(A)の非液晶性且つ熱架橋性構成単位における、炭素鎖中に-O-を有していてもよい1級炭素に前記熱架橋性基が結合したアルキレン基は、共重合体(B)の熱架橋性構成単位における炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数4~11の直鎖アルキレン基よりも、炭素数と酸素数の合計が2以上小さいことが好ましく、3以上小さいことがより好ましい。前記側鎖型液晶ポリマー(A)において、前記熱架橋性基と単量体単位との連結基の長さが上記のように異なることにより、側鎖型液晶ポリマー(A)の熱架橋反応が相対的により進行し難くなり、側鎖型液晶ポリマー(A)と共重合体(B)の硬化速度の差が生じやすくなるため、塗膜中で共重合体(B)が先に熱硬化する状況を作りやすく、垂直配向性と光配向性を良好にしやすい。
【0251】
前記(ii)を満たす場合、前記側鎖型液晶ポリマー(A)の熱架橋性基とアルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位は、アルキレン基の2級炭素又は3級炭素に前記熱架橋性基が結合した構造を有することから、前記熱架橋性基が直鎖アルキレン基の末端に結合することにより1級炭素に結合した構造を有する共重合体(B)の熱架橋性基に比べて、熱架橋反応が相対的に進行し難くなる。その結果、側鎖型液晶ポリマー(A)と共重合体(B)の硬化速度の差が生じやすくなるため、塗膜中で共重合体(B)が先に熱硬化する状況を作りやすく、垂直配向性と光配向性を良好にしやすい。
なお、1級炭素とは、第1級炭素原子であり、他の炭素原子1個と結合している炭素原子をいい、2級炭素とは、第2級炭素原子であり、他の炭素原子2個と結合している炭素原子をいい、3級炭素とは、第3級炭素原子であり、他の炭素原子3個と結合している炭素原子をいう。
【0252】
前記(iii)を満たす場合、前記側鎖型液晶ポリマー(A)の非液晶性且つ熱架橋性構成単位は、ヒドロキシ基、メルカプト基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基がアリール基に結合した構造を有することから、前記熱架橋性基が直鎖アルキレン基の末端に結合することにより1級炭素に結合した構造を有する共重合体(B)の熱架橋性基に比べて、熱架橋反応が相対的に進行し難くなる。その結果、側鎖型液晶ポリマー(A)と共重合体(B)の硬化速度の差が生じやすくなるため、塗膜中で共重合体(B)が先に熱硬化する状況を作りやすく、垂直配向性と光配向性を良好にしやすい。
【0253】
前記(iv)を満たす場合、カルボキシ基、グリシジル基、及びアミド基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基とアルキレン基とアリーレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位を有し、前記側鎖型液晶ポリマー(A)の非液晶性且つ熱架橋性構成単位は、アリーレン基に前記熱架橋性基が結合した構造を有し、当該アリーレン基は、前記共重合体(B)の熱架橋性構成単位における炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数4~11の直鎖アルキレン基よりも炭素数と酸素数の合計が3以上小さい、炭素鎖中又は末端に-O-を有していてもよいアルキレン基の炭素原子又は酸素原子に結合した構造を有する。そのため前記側鎖型液晶ポリマー(A)の熱架橋性基に熱架橋剤が結合しにくくなり、熱架橋性構成単位と熱架橋剤との反応性が低下し、側鎖型液晶ポリマー(A)の熱架橋反応が共重合体(B)に比べて相対的に進行し難くなる。その結果、側鎖型液晶ポリマー(A)と共重合体(B)の硬化速度の差が生じやすくなるため、塗膜中で共重合体(B)が先に熱硬化する状況を作りやすく、垂直配向性と光配向性を良好にしやすい。
【0254】
前記(v)を満たす場合、前記側鎖型液晶ポリマー(A)は、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位の他に、アルキレン基を側鎖に含まず、熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位を有する場合である。この場合、前記側鎖型液晶ポリマー(A)の前記熱架橋性基が、直鎖アルキレン基の末端に結合することにより1級炭素に結合した構造を有する共重合体(B)の熱架橋性基に比べて、熱架橋反応が相対的に進行し難くなる。その結果、側鎖型液晶ポリマー(A)と共重合体(B)の硬化速度の差が生じやすくなるため、塗膜中で共重合体(B)が先に熱硬化する状況を作りやすく、垂直配向性と光配向性を良好にしやすい。
【0255】
前記(vi)を満たす場合、前記側鎖型液晶ポリマー(A)は、熱架橋性基とアルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位及び熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位を有しない、すなわち、前記側鎖型液晶ポリマー(A)が熱架橋性基を含まないことから、塗膜中で共重合体(B)のみが熱硬化する状況を作りやすく、垂直配向性と光配向性を良好にしやすい。
【0256】
なお、前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、非液晶性且つ熱架橋性構成単位を2種以上含有する場合、当該2種以上の非液晶性且つ熱架橋性構成単位の全てが、前記(i)~(iv)のいずれかを満たすものとする。
また、前記側鎖型液晶ポリマー(A)が、1つの非液晶性且つ熱架橋性構成単位において、熱架橋性基を2つ以上有する場合には、当該2つ以上の熱架橋性基の全てが、前記(i)~(iv)のいずれかを満たせばよい。
【0257】
(1)液晶性構成単位
本開示の実施形態において、液晶性構成単位は、液晶性部分、すなわち液晶性を示す部分を含む側鎖を有する。液晶性構成単位は、側鎖に液晶性を示すメソゲンを含む構成単位であることが好ましい。液晶性構成単位は、メソゲン基にスペーサーを介して重合性基が結合した液晶性を示す化合物から誘導される構成単位であることが好ましい。本開示においてメソゲンとは、液晶性を示すような剛直性の高い部位をいい、例えば、2個以上の環構造、好ましくは3個以上の環構造を有し、環構造同士が直接結合により連結しているか、又は、当該環構造が1原子乃至3原子を介して連結している部分構造が挙げられる。側鎖にこのような液晶性を示す部位を有することにより、当該液晶性構成単位が垂直配向しやすくなる。
前記環構造としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等の芳香環であってもよく、シクロペンチル、シクロヘキシル等の環状の脂肪族炭化水素であってもよい。
また、当該環構造が1原子乃至3原子を介して連結している場合、当該連結部の構造としては、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR-C(=O)-、-C(=O)-NR-、-O-C(=O)-NR-、-NR-C(=O)-O-、-NR-C(=O)-NR-、-O-NR-、若しくは-NR-O-(Rは水素原子又は炭化水素基)等が挙げられる。
中でも、メソゲンとしては、前記環構造の連結が棒状になるように、ベンゼンであればパラ位、ナフタレンであれば2,6位で接続された、棒状メソゲンであることが好ましい。
【0258】
また、液晶性構成単位が側鎖に液晶性を示すメソゲンを含む構成単位である場合、垂直配向性の点から、当該構成単位の側鎖の末端が極性基であるか、アルキル基を有することが好ましい。このような極性基の具体例としては、-F、-Cl、-CN、-OCF3、-OCF2H、-NCO、-NCS、-NO2、-NHC(=O)-R’、-C(=O)-OR’、-OH、-SH、-CHO、-SO3H、-NR’2、-R”、又は-OR”(R’は水素原子又は炭化水素基、R”はアルキル基)等が挙げられる。
【0259】
液晶性構成単位は、側鎖として、-R2-(L1-Ar1)a-R3で表される基(ここで、R2は、-(CH2)m-、又は-(C2H4O)m’-で表される基を表す。L1は、単結合、又は、-O-、-OCO-、若しくは-COO-で表される連結基を、Ar1は、置換基を有してもよい炭素数6~10のアリーレン基を表し、複数あるL1及びAr1はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。R3は、-F、-Cl、-CN、-OCF3、-OCF2H、-NCO、-NCS、-NO2、-NHCO-R4、-CO-OR4、-OH、-SH、-CHO、-SO3H、-NR4
2、-R5、又は-OR5を、R4は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R5は、炭素数1~6のアルキル基を表す。aは2~4の整数、m及びm’はそれぞれ独立に2~10の整数である。)を有する構成単位が挙げられる。
【0260】
R2のm及びm’は、それぞれ独立に2~10の整数である。垂直配向性の点から、中でも、m及びm’が2~8であることが好ましく、更に2~6であることが好ましい。
【0261】
Ar1における、置換基を有してもよい炭素数6~10のアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、中でもフェニレン基がより好ましい。当該アリーレン基が有してもよいR3以外の置換基としては、炭素数1~5のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0262】
R3における、R4は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であるが、中でも、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であることが好ましい。また、R3における、R5は、炭素数1~6のアルキル基であるが、中でも、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましい。
【0263】
液晶性構成単位は、重合可能なエチレン性二重結合含有基を有する単量体から誘導される構成単位であることが好ましい。このようなエチレン性二重結合含有基を有する単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、(メタ)アクリルアミド、マレイミド、ビニルエーテル、又はビニルエステル等の誘導体が挙げられる。液晶性構成単位は、中でも、(メタ)アクリル酸エステル誘導体から誘導される構成単位であることが、垂直配向性の点から、好ましい。
【0264】
本開示の実施形態において液晶性構成単位は、垂直配向性の点から、中でも、下記一般式(I)で表される構成単位を含むことが好ましい。
【0265】
【化34】
(一般式(I)中、R
1は、水素原子又はメチル基を、R
2は、-(CH
2)
m-、又は-(C
2H
4O)
m’-で表される基を表す。L
1は、単結合、又は、-O-、-OCO-、若しくは-COO-で表される連結基を、Ar
1は、置換基を有してもよい炭素数6~10のアリーレン基を表し、複数あるL
1及びAr
1はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。R
3は、-F、-Cl、-CN、-OCF
3、-OCF
2H、-NCO、-NCS、-NO
2、-NHCO-R
4、-CO-OR
4、-OH、-SH、-CHO、-SO
3H、-NR
4
2、-R
5、又は-OR
5を、R
4は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R
5は、炭素数1~6のアルキル基を表す。aは2~4の整数、m及びm’はそれぞれ独立に2~10の整数である。)
【0266】
一般式(I)で表される構成単位において、-R2-(L1-Ar1)a-R3で表される基は、前記と同様であって良い。
【0267】
一般式(I)で表される構成単位の好適な具体例としては、例えば、下記一般式(I-1)、(I-2)及び(I-3)で表されるもの等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0268】
【0269】
ここで、上記一般式(I-1)~(I-3)で表される構成単位において、R2、及び、R3はそれぞれ、一般式(I)のR2、及び、R3と同様である。
【0270】
本開示の実施形態において液晶性構成単位は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0271】
共重合体の合成には、液晶性構成単位を誘導する、(メタ)アクリル酸エステル誘導体等の単量体を用いることができる。液晶性構成単位を誘導する、(メタ)アクリル酸エステル誘導体等の単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0272】
共重合体における上記液晶性構成単位の含有割合としては、液晶性構成単位の垂直配向性を向上し、十分な液晶配向性を有する点から、共重合体全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、40モル%~90モル%の範囲内で設定することが好ましく、40モル%~80モル%の範囲内で設定することがより好ましく、更に45モル%~70モル%の範囲内で設定することが好ましく、特に50モル%~65モル%の範囲内であることが好ましい。
なお、共重合体における各構成単位の含有割合は、1H-NMR測定による積分値から算出することができる。
【0273】
(2)アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、側鎖型液晶ポリマーが液晶状態となった時に、当該アルキレン基を含む側鎖が、前記液晶性構成単位の側鎖の液晶性を示す部分(メソゲン)の垂直配向(ホメオトロピック配向)を促す作用を有する。
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、側鎖として、-L2-R13、又は-L2’-R14で表される基(ここで、L2は置換基を有してもよい炭素数1~18の直鎖又は分岐アルキレン基を表し、L2’は-(C2H4O)n’-で表される連結基を表し、R13は、置換基を有してもよいメチル基、アルキル基を有してもよいアリール基、又は-OR15を表し、R14及びR15はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、n’は、1~18の整数である。)を有する構成単位が挙げられる。
【0274】
L2は置換基を有してもよい炭素数1~18の直鎖又は分岐アルキレン基を表し、L2’は-(C2H4O)n’-で表される連結基を表す。
L2における炭素数1~18の直鎖又は分岐アルキレン基としては、例えば、メチレン基、ジメチレン基(エチレン基)、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、ヘプタデカメチレン基、オクタデカメチレン基等の直鎖アルキレン基、メチルメチレン基、メチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1-メチルペンチレン基、1,4-ジメチルブチレン基等の分岐アルキレン基等が挙げられる。
【0275】
R14及びR15におけるアルキル基としては、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。
R14、及びR15におけるアルキル基としては、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基等の直鎖アルキル基、i-プロピル基、i-ブチル基、t-ブチル基等の分岐アルキル基、1-プロペニル基、1-ブテニル基等のアルケニル基、エチニル基、2-プロピニル基等のアルキニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基、1-シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基等が挙げられる。上記シクロアルキル基の場合には、直鎖アルキル基が置換されたシクロアルキル基であることが好ましい。
【0276】
R14及びR15におけるアルキル基は、特に限定されないが、位相差の面内均一性の点から、炭素数1~12のアルキル基が好ましい。
【0277】
R13、R14、及びR15におけるアリール基としては、炭素数6~20のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられ、中でもフェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。上記アリール基の場合には、直鎖アルキル基が置換されたアリール基であることが好ましい。
【0278】
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、置換基として、他の成分と反応するような反応性基を有していてもよく、例えば、後述する共重合体(B)と同様の熱架橋性基を有していてもよい。
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、非液晶性且つ非熱架橋性構成単位と、非液晶性且つ熱架橋性構成単位が挙げられる。アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、非液晶性且つ非架橋性構成単位のみを含んでも良いし、非液晶性且つ熱架橋性構成単位のみを含んでもよい。
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、垂直配向性が良好になりやすい点から、少なくとも非液晶性且つ非熱架橋性構成単位を含むことが好ましく、垂直配向性が良好になりやすく、且つ、耐久性が向上しやすい点から、非液晶性且つ非熱架橋性構成単位、及び、非液晶性且つ熱架橋性構成単位を含むことがより好ましい。
【0279】
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ非熱架橋性構成単位において、R13におけるメチル基が有してもよい置換基としては、非熱架橋性置換基が挙げられ、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子が挙げられる。
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ非熱架橋性構成単位において、L2における直鎖又は分岐アルキレン基や、R14及びR15におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、非熱架橋性置換基が挙げられ、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、アルコキシ基、ニトロ基等が挙げられる。中でも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子が好ましい。
【0280】
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ非熱架橋性構成単位において、R13、R14、及びR15におけるアリール基が有していてもよい置換基としては、非熱架橋性置換基が挙げられ、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基等が挙げられ、当該アルキル基としては、炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、炭素数1~9のアルキル基が挙げられ、直鎖アルキル基であってもよく、分岐又は環構造を含むアルキル基であってもよい。中でも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、炭素数1~9のアルキル基が好ましい。当該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルプロピル基等が挙げられる。当該アルキル基が有する水素原子は、ハロゲン原子に置換されていてもよい。
【0281】
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位において、R13におけるメチル基、L2における直鎖又は分岐アルキレン基、R14及びR15におけるアルキル基、及び、R13、R14、及びR15におけるアリール基が有していてもよい置換基としては、熱架橋性基であることが好ましく、後述する共重合体(B)と同様の熱架橋性基が挙げられ、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、およびアミド基からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。中でも、反応性の点から、ヒドロキシ基が好ましい。
1つの非液晶性且つ熱架橋性構成単位において、熱架橋性基を1つ有することが好ましいが、2つ以上有してもよい。
【0282】
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ非熱架橋性構成単位においては、垂直配向性が良好になりやすい点から、L2は、-(CH2)n-(ここで、nは1~18の整数である)が好ましい。また、nは、中でも3~17の整数であることが好ましく、5~17の整数であることがより好ましい。また、n’は、1~18の整数であるが、3~17の整数であることが好ましく、5~17の整数であることがより好ましい。
一方で、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位においては、熱架橋反応の進行を遅くするために、L2は、分岐アルキル基であるか、炭素数が小さい方が好ましく、炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
また、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ非熱架橋性構成単位においては、R14及びR15におけるアルキル基としては、垂直配向性が良好になりやすい点から、中でも直鎖であることが好ましい。一方で、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位においては、熱架橋反応の進行を遅くするために、直鎖、分岐、環状アルキル基を適宜選択して用いればよい。
【0283】
非液晶性構成単位は、重合可能なエチレン性二重結合含有基を有する単量体から誘導される構成単位であることが好ましい。このようなエチレン性二重結合含有基を有する単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、(メタ)アクリルアミド、マレイミド、ビニルエーテル、又はビニルエステル等の誘導体が挙げられる。非液晶性構成単位は、垂直配向性の点から、(メタ)アクリル酸エステル誘導体又はスチレンから誘導される構成単位であることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル誘導体から誘導される構成単位であることがより好ましい。
【0284】
本開示の実施形態において前記非液晶性構成単位のうち、非液晶性且つ非熱架橋性構成単位は、下記式(II)で表される構成単位を有することが好ましい。
【0285】
【化36】
(一般式(II)中、R
11は、水素原子又はメチル基を表し、R
12は、-L
2”-R
13、又は-L
2’-R
14で表される基を表し、L
2”は-(CH
2)
n-を表し、L
2’は-(C
2H
4O)
n’-で表される連結基を表し、R
13は、置換基を有してもよいメチル基、アルキル基を有してもよいアリール基、又は-OR
15を表し、R
14及びR
15はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、n及びn’はそれぞれ独立に、1~18の整数である。)
【0286】
式(II)で表される構成単位において、-L2”-R13、又は-L2’-R14で表される基は、前記と同様であって良い。
非液晶性且つ非熱架橋性構成単位が前記式(II)で表される構成単位である場合、前記式(II)で表される構成単位に含まれる、有していてもよい置換基としては、前述の非熱架橋性置換基が挙げられる。
【0287】
本開示の実施形態において前記非液晶性構成単位が、非液晶性且つ熱架橋性構成単位を含む場合、非液晶性且つ熱架橋性構成単位としては、下記式(III)で表される構成単位を有することが、反応性が向上し、耐久性が向上する点から、好ましい。
【0288】
【化37】
(上記式(III)中、Z
aは下記式(a-1)~(a-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、R
16は、-L
2a-R
13’ -で表される基(ここで、L
2aは炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数1~10の直鎖又は分岐アルキレン基を表し、R
13’は、置換基を有してもよいメチル基から水素原子を除いた残基、アリール基から水素原子を除いた残基、又は-OR
15’を表し、R
15’はアリール基から水素原子を除いた残基を表す。)であり、Y
aはヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、およびアミド基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基を表す。)
【0289】
【化38】
(上記式(a-1)~(a-6)中、R
11は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
17は水素原子またはメチル基を表し、R
18は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
19は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、L
aは、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、又は-OCO-を表し、L
aが、単結合の場合、R
16はスチレン骨格に直接結合される。)
【0290】
R16は、-L2a-R13’ -で表される基(ここで、L2aは炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数1~10の直鎖又は分岐アルキレン基を表し、R13’は、置換基を有してもよいメチル基から水素原子を除いた残基、アリール基から水素原子を除いた残基、又は-OR15’を表し、R15’はアリール基から水素原子を除いた残基を表す。)である。
R13’、及びR15’の水素原子を除く前の、置換基を有してもよいメチル基、アリール基はそれぞれ、R13及びR15と同様であって良い。
L2aは、炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数1~6の直鎖又は分岐アルキレン基であってよく、炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数1~4の直鎖又は分岐アルキレン基であってよく、炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数1~3の直鎖又は分岐アルキレン基であってよく、炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数1~2の直鎖アルキレン基であってよく、メチレン基であってよい。
L2aの炭素数が小さいと、熱架橋性構成単位において熱架橋性基と共重合体の主骨格との距離が短くなるため、熱架橋性基に熱架橋剤が結合しにくくなり、熱架橋性構成単位と熱架橋剤との反応性が低下する。
L2aが炭素鎖中に-O-を有していてもよい分岐アルキレン基である場合、熱架橋性基Yaが結合する炭素原子が、2級炭素又は3級炭素となるアルキレン基が挙げられる。R16が炭素鎖中に-O-を有していてもよい分岐アルキレン基である場合の分岐アルキレン基としては、例えば、メチルメチレン基、メチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1-メチルプロピレン基、エチルエチレン基等が挙げられる。
【0291】
また、R16において、炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数1~11の直鎖又は分岐アルキレン基が有してもよい置換基としては、非熱架橋性置換基が挙げられ、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、アルコキシ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基等が挙げられる。当該置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基における置換基としては、前記R13、R14、及びR15におけるアリール基が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0292】
共重合体が有するアルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、1種であってもよく、2種以上であっても良い。
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ非熱架橋性構成単位としては、例えば、以下の化学式(II-1)~(II-10)が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位としては、例えば、以下の化学式(III-1)~(III-12)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0293】
【0294】
【0295】
共重合体の合成には、上記非液晶性構成単位を誘導する、(メタ)アクリル酸エステル誘導体等の単量体を用いることができる。上記非液晶性構成単位を誘導する(メタ)アクリル酸エステル誘導体等の単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0296】
共重合体における上記非液晶性構成単位の含有割合としては、液晶性構成単位の垂直配向性を向上し、十分な液晶配向性を有する点から、共重合体全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、10モル%~60モル%の範囲内で設定することが好ましく、15モル%~50モル%の範囲内で設定することがより好ましく、更に、15モル%~45モル%の範囲内で設定することが好ましく、特に、20モル%~40モル%の範囲内であることが好ましい。
【0297】
共重合体における上記非液晶性構成単位として、非液晶性且つ非熱架橋性構成単位と、非液晶性且つ熱架橋性構成単位の両方を含む場合、非液晶性且つ熱架橋性構成単位の含有割合としては共重合体全体に含まれる非液晶性構成単位の合計量を100モル%としたとき、5モル%~70モル%の範囲内で設定することが好ましく、20モル%~50モル%の範囲内で設定することがより好ましい。
なお、共重合体における各構成単位の含有割合は、1H-NMR測定による積分値から算出することができる。
【0298】
(3)その他の構成単位
本開示に用いられる側鎖型液晶ポリマー(A)は、前記液晶性構成単位と、前記アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位とを少なくとも有するが、更に、その他の構成単位を有していてもよい。
その他の構成単位としては、例えば、アルキレン基を側鎖に含まず前記熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位や、後述する共重合体(B)が有する光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位が挙げられる。
アルキレン基を側鎖に含まず前記熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシスチレン、4-カルボキシスチレン等が挙げられる。
本開示に用いられる側鎖型液晶ポリマー(A)は、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位、及び、アルキレン基を側鎖に含まず前記熱架橋性基を有する熱架橋性構成単位からなる群から選択される少なくとも1種の、熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位を有することが、位相差層の耐久信頼性を向上する点から好ましい。
光配向性構成単位としては、後述する共重合体(B)が有する光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位と同様であって良い。
【0299】
共重合体における上記その他の構成単位の含有割合としては、液晶性構成単位の垂直配向性を向上し、十分な液晶配向性を有する点から、共重合体全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、30モル%以下の範囲内で設定することが好ましく、20モル%以下の範囲内で設定することがより好ましい。
【0300】
(4)側鎖型液晶ポリマー(A)の共重合体
本開示の実施形態において、側鎖型液晶ポリマー(A)は、液晶性構成単位からなるブロック部と、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位からなるブロック部とを有するブロック共重合体であってもよく、液晶性構成単位とアルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位とが不規則に並ぶランダム共重合体であってもよい。本実施形態においては、側鎖型液晶ポリマーの垂直配向性や位相差値の面内均一性を向上する点から、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0301】
また、共重合体である側鎖型液晶ポリマーの質量平均分子量Mwは特に限定されないが、5000~80000の範囲内であることが好ましく、8000~50000の範囲内であることがより好ましく、10000~36000の範囲内であることがさらに好ましい。上記範囲内であることにより、液晶組成物の安定性に優れ、位相差層形成時の取り扱い性に優れている。
【0302】
なお、上記質量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された値である。測定は、東ソー(株)製のHLC-8120GPCを用い、溶出溶剤を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN-メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、206500、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories社製 Easi PS-2シリーズ)及びMw1090000(東ソー(株)製)とし、測定カラムをTSK-GEL ALPHA-M×2本(東ソー(株)製)として行われたものである。
【0303】
側鎖型液晶ポリマー(A)の共重合体の合成方法としては、液晶性構成単位を誘導する単量体とアルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位を誘導する単量体とを従来公知の製造方法で共重合する方法が挙げられる。
側鎖型液晶ポリマー(A)は、共重合体を合成した際の溶液形態で、あるいは、粉体形態で、あるいは精製した粉末を後述する溶剤に再溶解した溶液形態で用いてもよい。
【0304】
上記側鎖型液晶ポリマー(A)は1種単独を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本実施形態において、垂直配向性を発揮する点から、上記側鎖型液晶ポリマー(A)の含有割合は、液晶組成物の固形分100質量部に対して60質量部~99質量部であってよく、好ましくは70質量部~95質量部であってよく、より好ましくは80質量部~90質量部であってよい。
なお、本開示において固形分とは溶剤を除く全ての成分をいい、例えば、後述する重合性液晶化合物が液状であっても固形分に含まれるものとする。
【0305】
2.共重合体(B)
本開示に用いられる共重合体(B)は、光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位と、熱架橋性基を特定の構造により側鎖に含む熱架橋性構成単位とを有するものである。
以下、共重合体(B)における各構成単位について説明する。
【0306】
(1)光配向性構成単位
本発明における光配向性構成単位は、光照射により光反応を生じることで異方性を発現する部位である。光反応としては、光二量化反応または光異性化反応であることが好ましい。すなわち、光配向性構成単位は、光照射により光二量化反応を生じることで異方性を発現する光二量化構成単位、または、光照射により光異性化反応を生じることで異方性を発現する光異性化構成単位であることが好ましい。
【0307】
光配向性構成単位は、光配向性基を有するものである。光配向性基は、上述のように、光照射により光反応を生じることで異方性を発現する官能基であり、光二量化反応または光異性化反応を生じる官能基であることが好ましい。
【0308】
光二量化反応を生じる光配向性基としては、例えばシンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基、キノリン基、アゾベンゼン基、スチルベン基等が挙げられる。これらの官能基におけるベンゼン環は、置換基を有してもよい。置換基としては、光二量化反応を妨げないものであればよく、例えばアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基等が挙げられる。
【0309】
光異性化反応を生じる光配向性基としては、シストランス異性化反応を生じるものであることが好ましく、例えばシンナモイル基、カルコン基、アゾベンゼン基、スチルベン基等が挙げられる。これらの官能基におけるベンゼン環は、置換基を有してもよい。置換基としては、光異性化反応を妨げないものであればよく、例えばアルコキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基等が挙げられる。
【0310】
中でも、光配向性基は、シンナモイル基であることが好ましい。具体的に、シンナモイル基としては、下記式(x-1)及び(x-2)で表される基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0311】
【0312】
上記式(x-1)中、R31は水素原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアリール基または炭素数1~18のシクロアルキル基を表す。ただし、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよく、置換基を有してもよい。R32~R35はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアリール基または炭素数1~18のシクロアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基またはシアノ基を表す。ただし、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよく、置換基を有してもよい。R36およびR37はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアリール基または炭素数1~18のアルコキシ基を表す。
また、上記式(x-2)中、R41~R45はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアリール基または炭素数1~18のシクロアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基またはシアノ基を表す。ただし、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよく、置換基を有してもよい。R46およびR47はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアリール基または炭素数1~18のアルコキシ基を表す。
【0313】
なお、光配向性基がシンナモイル基の場合であって、上記式(x-1)で表される基の場合、単量体単位に含まれるスチレン骨格(式(1-2))のベンゼン環がシンナモイル基のベンゼン環となっていてもよい。
【0314】
また、上記式(x-1)で表されるシンナモイル基は、下記式(x-3)で表される基であることがより好ましい。
【0315】
【0316】
上記式(x-3)中、R32~R37は上記式(x-1)と同様である。R38は水素原子、炭素数1~18のアルコキシ基、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基またはシクロヘキシル基を表す。ただし、アルキル基、フェニル基、ビフェニル基およびシクロヘキシル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよい。nは1~5を表し、R38はオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよい。nが2~5の場合、R38は互いに同一でもよく異なってもよい。中でも、nが1であり、R38がパラ位に結合していることが好ましい。
【0317】
光配向性基が上記式(x-3)及び(x-2)で表される基からなる群から選択される少なくとも1種の基である場合、光配向性構成単位の末端付近に芳香環が配置されるようになり、π電子を多く含むようになる。そのため、配向層上に形成される液晶層と親和性が高くなり、液晶配向能が向上し、液晶層との密着性が高くなると考えられる。
【0318】
光配向性構成単位を構成する単量体単位としては、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド、ビニルエーテル、ビニルエステル等が挙げられる。中でも、原料調達の容易さの点から、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンが好ましい。
【0319】
本開示の光配向性構成単位としては、下記式(1)で表される構成単位を例示することができる。
【0320】
【化43】
(上記式(1)中、Z
1は下記式(1-1)~(1-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、Xは光配向性基を表し、L
11は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、-OCO-、アルキレン基、アリーレン基、シクロアルキレン基、又は、これらの組み合わせを表す。)
【0321】
【化44】
(上記式(1-1)~(1-6)中、R
21は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
22は水素原子またはメチル基を表し、R
23は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
24は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【0322】
光配向性構成単位を構成する単量体単位としては、前記式(1-1)~(1-6)からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。なお、Z1が式(1-2)からなる群から選択される少なくとも1種の場合、-L11-Xはオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよいが、-L11-Xがパラ位に結合していることが、光配向性基間の距離が小さくなりやすく、光配向性が得られやすい点から好ましい。
【0323】
光配向性構成単位を構成する単量体単位としては、中でも、原料調達の容易さの点から、式(1-1)及び(1-2)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。更に、式(1-2)からなる群から選択される少なくとも1種であると、共重合体(B)の光配向性構成単位の剛直性が増すため、光配向性基間の距離が小さくなりやすく、優れた光配向性が得られやすい点から、より好ましい。また、共重合体中にスチレン骨格を有し、π電子系を多く含むと、π電子系の相互作用により、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物から形成された配向層兼位相差層は、この配向層兼位相差層上に直接積層された液晶性材料との密着性も高くなると考えられる。
【0324】
上記式(1)中、Xは光配向性基を表し、前述と同様であって良く、シンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基、キノリン基、アゾベンゼン基、およびスチルベン基からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。これらの官能基におけるベンゼン環は、置換基を有してもよい。置換基としては、光二量化反応や光異性化反応を妨げないものであればよく、例えばアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基等が挙げられる。
中でも、光配向性基はシンナモイル基であることが好ましい。具体的には、上記式(x-1)、(x-2)で表される基であることが好ましい。
【0325】
L11は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、-OCO-、アルキレン基、アリーレン基、シクロアルキレン基、又は、これらの組み合わせを表し、前記単量体単位と、光配向性基Xとを連結する。
【0326】
上記L11が単結合の場合、光配向性基Xは単量体単位Z1に直接結合される。2価の連結基としては、具体的には、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、-OCO-、-(CH2)n-、-(CH2CH2O)m-、-C6H4-、-C6H10-、-(CH2)nO-、-(CH2CH2O)mO-、-C6H4O-、-C6H10O-、-O(CH2)nO-、-O(CH2CH2O)mO-、-OC6H4O-、-OC6H10O-、-OCO(CH2)nCOO-、-OCO(CH2CH2O)mCOO-、-OCOC6H4O-、-OCOC6H10O-、-COO(CH2)nO-、-COO(CH2CH2O)m-、-COOC6H4O-、-COOC6H10O-等が挙げられ、ここで-C6H4-はフェニレン基、-C6H10-はシクロへキシレン基を表す。nは1~20、mは1~10である。
【0327】
光配向性の点からは、前記単量体単位と、光配向性基Xとの間のアルキレン鎖は短い方が好ましい。光配向性構成単位において、アルキレン鎖が短い構造であることにより、剛直性が増し、光配向性基間の距離が小さくなりやすく、光配向性(液晶配向能)が向上すると推定される。
光配向性の点からは、前記n及びmは小さい方が好ましく、nは1~6が好ましく、1~4がより好ましく、mは1~3が好ましく、1~2がより好ましい。
光配向性の点からは、光配向性構成単位が、光配向性基と、共重合体(B)の主鎖の間に、アルキレン鎖を有しない構造であることがより好ましく、L11は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、-OCO-、又は、これらとアリーレン基との組み合わせであることがより好ましい。
【0328】
共重合体(B)が有する光配向性構成単位は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
共重合体(B)の合成には、上記光配向性構成単位を誘導する、光配向性基を有する単量体を用いることができる。光配向性基を有する単量体は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0329】
共重合体(B)における光配向性構成単位の含有割合としては、共重合体(B)全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、10モル%~90モル%の範囲内で設定することができ、好ましくは20モル%~80モル%の範囲内である。光配向性構成単位の含有割合が少ないと、感度が低下し、良好な液晶配向能を付与するのが困難になる場合がある。一方で、光配向性構成単位の含有割合が多いと、相対的に熱架橋性構成単位の含有割合が少なくなり、十分な熱硬化性が得られず、良好な液晶配向能を維持するのが困難になる場合がある。
【0330】
(2)熱架橋性構成単位
本開示の共重合体(B)における熱架橋性構成単位は、加熱により、後述する熱架橋剤と結合する部位であり、下記式(2)で表される構成単位を有する。
【0331】
【化45】
(上記式(2)中、Z
2は下記式(2-1)~(2-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、R
50は炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数4~11の直鎖アルキレン基であり、Yはヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、およびアミド基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基を表す。)
【0332】
【化46】
(上記式(2-1)~(2-6)中、R
51は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
52は水素原子またはメチル基を表し、R
53は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
54は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、L
12は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、又は-OCO-を表し、L
12が、単結合の場合、R
50はスチレン骨格に直接結合される。)
【0333】
前記一般式(2)において、熱架橋性基Yは、炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数4~11の直鎖アルキレン基R50の末端に結合するため、熱架橋性基が結合する炭素原子は1級炭素であり、反応性が高くなる。熱架橋性基としては、中でも、反応性の観点から、ヒドロキシ基が好ましい。
【0334】
上記式(2)中、L12は単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、又は-OCO-を表す。なお、L12が単結合の場合、熱架橋性基Yは単量体単位Z2に直接結合される。
R50は炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数4~11の直鎖アルキレン基であることから、熱架橋性構成単位において熱架橋性基と共重合体の主骨格との距離が適切に長くなるため、熱架橋性基に熱架橋剤が結合しやすくなり、熱架橋性構成単位と熱架橋剤との反応性が高くなり、共重合体(B)の硬化速度は速くなる。
中でも、R50は、-(CH2)j-、または-(C2H4O)k-C2H4-である(jは4~11、kは1~4)ことが好ましい。前記jは6~11がより好ましく、kは2~4がより好ましい。jおよびkが小さすぎると、熱架橋性構成単位において熱架橋性基と共重合体の主骨格との距離が短くなるため、熱架橋性基に熱架橋剤が結合しにくくなり、熱架橋性構成単位と熱架橋剤との反応性が低下するおそれがある。一方、jおよびkが大きすぎると、熱架橋性構成単位において連結基の鎖長が長くなるため、末端の熱架橋性基が表面に出にくく、熱架橋性基に熱架橋剤が結合しにくくなり、熱架橋性構成単位と熱架橋剤との反応性が低下するおそれがある。
【0335】
Z2が式(2-2)からなる群から選択される少なくとも1種の場合、-L12-R50-Yはオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよいが、-L12-R50-Yがパラ位に結合していることが、熱架橋の反応性が優れる点から好ましい。
【0336】
熱架橋性構成単位を構成する単量体単位としては、中でも、原料調達の容易さの点から、式(2-1)及び(2-2)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0337】
共重合体(B)が有する熱架橋性構成単位は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
なお、共重合体(B)が式(2)で表される構成単位を有する熱架橋性構成単位を2種以上含有する場合、そのうち最も炭素数が大きい炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数4~11の直鎖アルキレン基と、側鎖型液晶ポリマー(A)の全ての非液晶性且つ熱架橋性構成単位と比較して、前記(i)~(iv)のいずれかを満たせばよい。
共重合体(B)の合成には、上記熱架橋性構成単位を誘導する熱架橋性基を有する単量体を用いることができる。熱架橋性基を有する単量体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0338】
共重合体(B)における熱架橋性構成単位の含有割合としては、共重合体(B)全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、10モル%~90モル%の範囲内で設定することができ、好ましくは20モル%~80モル%の範囲内である。熱架橋性構成単位の含有割合が少ないと、十分な熱硬化性が得られず、良好な液晶配向能を維持するのが困難になる場合がある。また、熱架橋性構成単位の含有割合が多いと、相対的に光配向性構成単位の含有割合が少なくなり、感度が低下し、良好な液晶配向能を付与するのが困難になる場合がある。
【0339】
(3)他の構成単位
本開示において、共重合体(B)は、前記光配向性構成単位および前記熱架橋性構成単位の他に、他の構成単位を有していてもよい。共重合体(B)に他の構成単位が含まれることにより、例えば溶剤溶解性、耐熱性、反応性等を高めることができる。
【0340】
他の構成単位としては、同じ架橋基同士で架橋可能な自己架橋基を有する自己架橋性構成単位を含んでもよい。自己架橋基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、トリアルコキシシリル基、ブロックイソシアネート基等が挙げられる。
共重合体(B)が、前記熱架橋性構成単位に加えて、自己架橋性構成単位を更に有する場合、当該自己架橋性構成単位が熱架橋剤を兼ねることができ、光配向性能及び耐溶剤性が向上しやすい点から好ましい。
共重合体(B)が自己架橋性構成単位を更に有する場合、分子内の熱架橋性構成単位と反応しやすいため、共重合体(B)の熱架橋が進行しやすく、一方で、側鎖型液晶ポリマー(A)の熱架橋が進行し難くなることから、組成物中の光配向膜材料である共重合体(B)の硬化を促進し、且つ一方で垂直配向性を有する側鎖型液晶ポリマー(A)の硬化を抑制するのに効果的である。
【0341】
自己架橋基を有する単量体としては、例えば、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルメタクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミドおよびN-ブトキシメチルメタクリルアミド等のヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基で置換されたアクリルアミド化合物又はメタクリルアミド化合物;3-トリメトキシシリルプロピルアクリレート、3-トリエトキシシリルプロピルアクリレート、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレート等のトリアルコキシシリル基を有する単量体;2-(0-(1’-メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ)エチルメタクリレート、2-(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノエチルメタクリレート等のブロックイソシアネート基を有する単量体等が挙げられる。
【0342】
光配向性基および熱架橋性基を有さない構成単位を構成する単量体単位としては、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、アクリルアミド、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン、ビニル等が挙げられる。中でも、上記熱架橋性構成単位と同様に、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンが好ましい。
【0343】
このような光配向性基および熱架橋性基を有さない構成単位を形成する単量体としては、例えばアクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物、ビニル化合物等が挙げられる。具体的には例えば、国際公開第2010/150748号の段落0036~0040に記載されている単量体のうち、前記光配向性基および熱架橋性基のいずれも有しない単量体を用いることができる。
【0344】
また、他の構成単位として、例えば、フッ素化アルキル基を有する単量体由来の構成単位を含んでもよい。この場合には、共重合体(B)が塗膜表面に局在化しやすくなり、光配向性基を塗膜表面に配向させやすい。共重合体(B)を塗膜表面に局在化しやすくする点から、フッ素化アルキル基を有する単量体のフッ素化アルキル基は、フッ素原子が直接結合した炭素原子の数が2~8のフッ素化アルキル基であってよい。
【0345】
共重合体(B)における他の構成単位は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
【0346】
共重合体(B)における上記他の構成単位の含有割合としては、共重合体(B)全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、0モル%~50モル%の範囲内であることが好ましく、0モル%~30モル%の範囲内であることがより好ましい。上記構成単位の含有割合が多いと、相対的に前記光配向性構成単位および前記熱架橋性構成単位の含有割合が少なくなり、感度が低下し、良好な液晶配向能を付与するのが困難になり、また十分な熱硬化性が得られず、良好な液晶配向能を維持するのが困難になる場合がある。
【0347】
(4)共重合体(B)
共重合体(B)の質量平均分子量は、特に限定されるものではなく、例えば3,000~200,000程度とすることができ、好ましくは4,000~100,000の範囲内である。質量平均分子量が大きすぎると、溶剤に対する溶解性が低くなったり粘度が高くなったりして取り扱い性が低下し、均一な膜を形成しにくい場合がある。また、質量平均分子量が小さすぎると、熱硬化時に硬化不足になり溶剤耐性や耐熱性が低下する場合がある。
なお、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定することができる。
【0348】
共重合体(B)の合成方法としては、光配向性基を有する単量体と熱架橋性基を有する単量体とを従来公知の製造方法で共重合する方法が挙げられる。
共重合体(B)は、共重合体を合成した際の溶液形態で、あるいは、粉体形態で、あるいは精製した粉末を後述する溶剤に再溶解した溶液形態で用いてもよい。
【0349】
上記共重合体(B)は1種単独を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本実施形態において、直接積層する液晶性材料に対して配向能を発揮する点から、上記共重合体(B)の含有割合は、液晶組成物の固形分100質量部に対して1質量部~50質量部であることが好ましく、5質量部~40質量部であることがより好ましく10質量部~25質量部であることがより更に好ましい。
【0350】
3.熱架橋剤
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物は、前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する熱架橋剤を含有する。
本開示の第二の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物において、熱架橋剤(C)は、第一の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物における熱架橋剤(C)と同様であって良いのでここでの説明を省略する。
本開示の第二の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物においては、側鎖型液晶ポリマー(A)の熱架橋性構成単位の構造に合わせて、熱架橋剤(C)の含有量を適宜調整することにより、垂直配向性の低下を抑制することができる。
また、本開示の第二の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物において、酸または酸発生剤、溶剤、及びその他の成分はそれぞれ、第一の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物における酸または酸発生剤、溶剤、及びその他の成分と同様であって良いのでここでの説明を省略する。
また、本開示の第二の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物において、製法、及び用途は、第一の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物における製法、及び用途と同様であって良いのでここでの説明を省略する。
【0351】
B.配向膜兼位相差フィルム
本開示の第二の配向膜兼位相差フィルムは、配向層兼位相差層を含有する配向膜兼位相差フィルムであって、前記配向層兼位相差層が、前記本開示の第二の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜であることを特徴とするものである。
本開示の第二の配向膜兼位相差フィルムは、用いられる光配向性を有する熱硬化性液晶組成物が異なる以外は、前記本開示の第一の配向膜兼位相差フィルムと同様であって良いのでここでの説明を省略する。
【0352】
C.配向膜兼位相差フィルムの製造方法
本開示の第二の配向膜兼位相差フィルムの製造方法は、前記本開示の第二の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を成膜する工程と、
前記成膜された前記熱硬化性液晶組成物を加熱することにより、位相差を有する硬化膜を形成する工程と、
前記位相差を有する硬化膜に、偏光紫外線を照射することにより、前記硬化膜に液晶配向能を付与する工程とを有する、。
本開示の第二の配向膜兼位相差フィルムの製造方法は、用いられる光配向性を有する熱硬化性液晶組成物が異なる以外は、前記本開示の第一の配向膜兼位相差フィルムの製造方法と同様であって良いのでここでの説明を省略する。
【0353】
D.位相差板
本開示の第二の位相差板は、前記本開示の第二の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の硬化膜である、第一の位相差層と、
前記第一の位相差層に隣接して位置する、重合性液晶組成物の硬化物を含有する第二の位相差層と、を含有することを特徴とするものである。
本開示の第二の位相差板及びその製造方法は、用いられる光配向性を有する熱硬化性液晶組成物が異なる以外は、前記本開示の第一の位相差板及びその製造方法と同様であって良いのでここでの説明を省略する。
【0354】
III.第三の開示
本開示は、光配向性成分と熱架橋剤を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物であるポジティブC型位相差層と、
前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置する、重合性液晶組成物の硬化物を含有するポジティブA型位相差層と、
を含有する、第三の位相差板を提供する。
【0355】
図5は本開示の第三の位相差板の一例を示す概略断面図である。
図5に例示する位相差板30においては、基材23上にポジティブC型位相差層21が形成され、当該ポジティブC型位相差層21と、ポジティブA型位相差層22とが直接積層されている。
【0356】
本開示の第三の位相差板30において、ポジティブC型位相差層21は光配向性成分と熱架橋剤を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物であり、ポジティブA型位相差層22と直接積層されていることから、ポジティブC型位相差層21が液晶配向能も有するものである。当該ポジティブC型位相差層21は、熱架橋剤を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物である。そのため、当該ポジティブC型位相差層21は、重合性液晶化合物を含む光硬化性樹脂組成物の硬化物である場合と比べて、硬くなり難くて柔軟性を有し、且つ、直接積層されたポジティブA型位相差層との密着性も良好になる。本開示の熱架橋剤を含む熱硬化性樹脂組成物のポジティブC型位相差層は、重合性液晶化合物を含む光硬化性樹脂組成物の硬化物である場合と比べて、直接積層されたポジティブA型位相差層との界面に、ポジティブC型位相差層の垂直配向性を阻害しない程度に適度な浸透領域ができやすいことにより、密着性が向上しやすい。
本開示の第三の位相差板は、良好な密着性でポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層とが直接積層されており、従来のような貼り合わせのための粘着層が不要であることから、厚みを薄くすることが可能である。本開示の第三の位相差板は、良好な密着性でポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層とが直接積層されており、厚みを薄くすることができ、且つ、ポジティブC型位相差層が柔軟性を有することから、屈曲耐性が良好な位相差板とすることができる。
【0357】
図5の例に示される第三の位相差板30の1実施形態は、基材23とポジティブC型位相差層21とが直接積層されている。
図5の例に示される第三の位相差板には基材23のポジティブC型位相差層21側表面に配向規制力を発現する手段が付されていてもよい。第三の位相差板の1実施形態は、基材と配向膜とポジティブC型位相差層がこの順に積層されていてもよい。
なお、基材と配向膜については、上記「B.配向膜兼位相差フィルム」に記載したものと同様であって良いので、ここでの説明は省略する。
【0358】
本開示の第三の位相差板においては、生産性向上の点から、基材とポジティブC型位相差層との間に配向膜を含有しないことが好ましく、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置する基材を含有することが好ましい。
【0359】
また、本開示の第三の位相差板においては、製造後の厚みを削減できる点から、基材を製造後に剥離することにより、基材を含有しなくてもよい。
【0360】
1.ポジティブC型位相差層
光配向性成分と熱架橋剤を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物であるポジティブC型位相差層において用いられる光配向性成分としては、光配向性基を含有する化合物又は重合体が挙げられる。光配向性成分としては、光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位と熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位とを有する共重合体や、前記共重合体とは異なる光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物が挙げられる。前記共重合体における光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位は、前記第一又は第二の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物における共重合体(B)の光配向性構成単位と同様であって良い。また、前記共重合体における熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位は、前記共重合体(B)の熱架橋性構成単位と同様であって良い。また、前記共重合体におけるその他の構成や特性についても、前記共重合体(B)と同様であって良い。
また、前記共重合体とは異なる光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物としては、前記第一又は第二の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物における前記共重合体(B)とは異なる光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物と同様であって良い。
光配向性成分と熱架橋剤を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物であるポジティブC型位相差層において用いられる光配向性成分としては、良好な垂直配向性と液晶配向能を発現する点から、光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位と熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位とを有する共重合体を用いることが好ましく、前記第一又は第二の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物における前記共重合体(B)を用いてよい。
【0361】
光配向性成分と熱架橋剤を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物であるポジティブC型位相差層において用いられる熱架橋剤としては、前記第一又は第二の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物における熱架橋剤(C)と同様であって良い。
【0362】
ポジティブC型位相差層に含まれる、光配向性成分及び熱架橋剤由来の構造は、NMR、IR、GC-MS、XPS、TOF-SIMSおよびこれらの組み合わせた方法などを適用して分析することができる。例えば、ポジティブC型位相差層から材料を採取し、核磁気共鳴分光法(NMR)により、光配向性成分および熱架橋剤成分の化学構造を分析できる。また、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)により、光配向性基由来のフラグメントを検出することができる。さらに、X線光電子分光法(XPS)や赤外分光法(IR)、ラマン分光法により、熱架橋剤や光配成分由来の結合および官能基のピークを確認できる。これらの分析結果の複合判断によってポジティブC型位相差層に含まれる成分の構造を分析することができる。
【0363】
前記ポジティブC型位相差層に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、位相差を発現するための液晶成分が含まれる。液晶成分としては、光配向性成分と混合しても垂直配向性が良好になりやすく、且つ柔軟性を付与しやすい点から、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位を有する側鎖型液晶ポリマーを用いることが好ましい。前記側鎖型液晶ポリマーにおける液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位は、前記第一又は第二の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物における側鎖型液晶ポリマー(A)の液晶性構成単位と同様であって良い。
前記側鎖型液晶ポリマーとしては、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位を有しても、有しなくてもよい。前記側鎖型液晶ポリマーにおいて含んでも良い非液晶性構成単位としては、前記第一又は第二の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物における側鎖型液晶ポリマー(A)の非液晶性構成単位やその他の構成単位と同様であって良い。また、前記側鎖型液晶ポリマーにおけるその他の構成や特性についても、前記側鎖型液晶ポリマー(A)と同様であって良い。
【0364】
前記ポジティブC型位相差層に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、酸または酸発生剤、溶剤、及びその他の成分を含んでも良い。酸または酸発生剤、溶剤、及びその他の成分はそれぞれ、第一の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物における酸または酸発生剤、溶剤、及びその他の成分と同様であって良い。
【0365】
前記ポジティブC型位相差層は、1層に、垂直配向された前記側鎖型液晶ポリマーと、光配向性基の光二量化構造または光異性化構造および熱架橋性基と熱架橋剤とが結合してなる架橋構造を含有する構造であって良い。また、前記ポジティブC型位相差層は、1層に、垂直配向された前記側鎖型液晶ポリマーと、光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基と熱架橋剤とが結合してなる架橋構造を有する共重合体とを含有する構造であって良い。
前記ポジティブC型位相差層に含まれる、光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および熱架橋性基と熱架橋剤とが結合してなる架橋構造としては、前記「B.配向膜兼位相差フィルム」に記載した配向層兼位相差層と同様であって良い。
【0366】
本開示の第三の位相差板においては、屈曲耐性が良好な位相差板とする点から、ポジティブC型位相差層の複合弾性率を調整することが好ましい。前記ポジティブC型位相差層の複合弾性率は4.5GPa以上9.0GPa以下であってよく、5.0GPa以上8.5GPa以下であってよく、5.0GPa以上8.0GPa以下であってよい。前記ポジティブC型位相差層は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物であることから、前記複合弾性率を容易に調整可能である。
ポジティブC型位相差層の複合弾性率は、ポジティブC型位相差層の表面において、インデンテーション硬さ(HIT)を測定する際に求められる接触投影面積Apを用いて下記数式(1)から算出するErとする。「インデンテーション硬さ」とは、ナノインデンテーション法による硬度測定によって得られる圧子の負荷から除荷までの荷重-変位曲線から求められる値である。ポジティブC型位相差層の複合弾性率は、ポジティブC型位相差層の弾性変形および圧子の弾性変形が含まれた弾性率である。
なお、ポジティブC型位相差層の複合弾性率は、ポジティブC型位相差層のポジティブA型位相差層との界面とは反対側の表面において測定する。ポジティブC型位相差層の複合弾性率は、具体的には実施例に記載した複合弾性率の求め方により求めることができる。
【0367】
【数1】
(上記数式(1)中、Apは接触投影面積であり、Erは配向膜兼位相差層の複合弾性率であり、Sは接触剛性である。)
【0368】
本開示の第三の位相差板においては、前記ポジティブC型位相差層に、後述するポジティブA型位相差層中に含まれる特定成分が浸透した領域を含んでいてよい。また、前記特定成分が、重合性液晶化合物又はその硬化物を含有してよい。
浸透領域の存在ならびに特定成分については、以下の手順で分析することができる。
まず、本開示の第三の位相差板のポジティブA型位相差層表面から、ガスクラスターイオンビーム(Ar-GCIB)銃で膜厚方向にエッチングしながら、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)で測定する。そして、後述するポジティブA型位相差層に含まれる重合性液晶化合物の成分由来のフラグメントイオンと、ポジティブC型位相差層に含まれる光配向性成分由来のフラグメントイオンについて、膜厚方向の分布を分析する。浸透領域は、重合性液晶化合物の成分由来のフラグメントイオンと光配向性成分由来のフラグメントイオンが両方検出される部分として測定することができる。
また、浸透領域の厚みは、TOF-SIMSの各フラグメントイオンの膜厚方向分布における浸透領域の割合から、走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて測定される膜厚と照らして、概算できる。
【0369】
前記ポジティブC型位相差層の厚みは、用途に応じて適宜設定すればよい。中でも、0.1μm~5μmであることが好ましく、0.5μm~3μmであることがより好ましい。
【0370】
2.ポジティブA型位相差層
本開示の第三の位相差板において、前記ポジティブA型位相差層は、重合性液晶組成物の硬化物を含有する。
本開示の第三の位相差板において、前記ポジティブA型位相差層は、前記第一又は第二の位相差板における第二の位相差層と同様であって良い。
【0371】
3.位相差板
本開示の第三の位相差板においては、波長550nmにおける厚み方向位相差Rthが-35nm~35nmであり、波長550nmにおける面内位相差Reが100nm以上であり、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層との合計厚みが0.2μm~6μmであってよい。
波長550nmにおける厚み方向位相差Rthは-30nm~30nmであってよく、更に-25nm~25nmであってよい。
また波長550nmにおける面内位相差Reは120nm以上であってよく、更に135nm以上であってよい。
波長550nmにおける厚み方向位相差Rth及び面内位相差Reは、具体的には実施例に記載した方法により求めることができる。
ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層との合計厚みは0.8μm~5μmであってよく、更に1μm~4μmであってよい。
ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層との合計厚みは実施例に記載した走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いることによって求めることができる。
【0372】
4.位相差板の製造方法
第三の位相差板の製造方法は、前記第三の位相差板を提供することができれば、特に限定されるものではない。
第三の位相差板の製造方法は、例えば、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位を有する側鎖型液晶ポリマーと、光配向性構成単位と熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位とを有する共重合体と、前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する熱架橋剤とを含有する、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を成膜する工程と、
前記成膜された前記熱硬化性液晶組成物を加熱することにより、位相差を有する硬化膜を形成する工程と、
前記位相差を有する硬化膜に、偏光紫外線を照射することにより、液晶配向能が付与されたポジティブC型位相差層を形成する工程と、
前記ポジティブC型位相差層上に、重合性液晶組成物を塗布して前記重合性液晶組成物の塗膜を形成し、当該塗膜を前記重合性液晶組成物の相転移温度まで加熱することにより前記ポジティブC型位相差層によって液晶分子を配向させる工程と、
前記液晶分子が配向した重合性液晶組成物の塗膜に光照射して硬化することにより、ポジティブA型位相差層を形成する工程と
を有してよい。
光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の各成分としては、第三の位相差板において説明したものと同様であって良い。
第三の位相差板の製造方法は、第一又は第二の位相差板の製造方法を参照して、各工程を同様に行うことができる。
【0373】
次に、第一、第二、又は第三の本開示の位相差板を用いた、光学部材及びその製造方法、並びに表示装置について説明する。
【0374】
E.光学部材
本開示は、第一、第二、又は第三の位相差板と、偏光板とを含有する、光学部材を提供する。
【0375】
本実施形態の光学部材を、図を参照して説明する。
図6は、光学部材の1実施形態を示す模式断面図である。
図6の光学部材50の例では、前記本開示の位相差板30と、当該位相差板に隣接して位置する偏光板40とを含有する。位相差板30と偏光板40との間には、必要に応じて粘着層(接着層)を含有していてもよい(図示せず)。本開示の位相差板30としては、第一、第二、又は第三の位相差板を用いることができる。
図6の光学部材50の例では、前記本開示の第一の位相差層31と第二の位相差層32が直接積層されている位相差板30上に、偏光板40が配置されている。第一の位相差層31と第二の位相差層32はそれぞれ、前記ポジティブC型位相差層と前記ポジティブA型位相差層であってよい。
本実施形態において本開示の第一、第二、又は第三の位相差板は前述と同様であって良いので、ここでの説明を省略する。
【0376】
本実施形態において偏光板は、特定方向に振動する光のみを通過させる板状ものであり、従来公知の偏光板の中から適宜選択して用いることができる。本実施形態において偏光板は直線偏光板であって良い。
直線偏光板としては、偏光子と、偏光子の少なくとも片面に設けられた偏光子保護層を含有するものが挙げられる。
偏光子としては、吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルム若しくは延伸層、または吸収異方性を有する色素を塗布し硬化させたフィルムが挙げられる。吸収異方性を有する色素としては、例えば二色性色素が挙げられる。二色性色素として、具体的には、ヨウ素や二色性の有機染料が用いられる。
吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムとしては、例えば、沃素又は染料により染色し、延伸してなるポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等を用いることができる。
直線偏光板としては、例えば、特開2021-51287号公報の段落0025~0059を参照して用いることができる。
偏光板の厚みは、例えば2μm以上100μm以下であり、好ましくは10μm以上60μm以下である。
【0377】
また、本実施形態において粘着層(接着層)用の粘着剤又は接着剤としては、従来公知のものの中から適宜選択すればよく、感圧接着剤(粘着剤)、2液硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、熱溶融型接着剤等、いずれの接着形態のもの好適に用いることができる。粘着層の粘着剤としては、透明性、耐候性、耐熱性等の点から好ましくは(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物であってよい。
粘着層(接着層)の厚みは、その接着力等に応じて決定されるが、例えば1μm~50μmであってよく、好ましくは2μm~45μm、より好ましくは3μm~40μm、さらに好ましくは5μm~35μmである。
【0378】
本実施形態の光学部材には、偏光板の他にも、公知の光学部材が備える他の層を更に有していても良い。当該他の層としては、例えば、前記本実施形態の位相差層とは異なる他の位相差層の他、反射防止層、拡散層、防眩層、帯電防止層、保護フィルム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0379】
本実施形態の光学部材は、例えば、円偏光板として好適に用いることができる。本実施形態の光学部材は、例えば、発光表示装置用の外光反射を抑制するための光学部材として好適に用いることができる。
【0380】
F.光学部材の製造方法
また、本開示は、偏光板を準備する工程と、
第一、第二、又は第三の位相差板を準備する工程と、
位相差板と偏光板とを積層する工程とを有する、光学部材の製造方法を提供する。
本開示の光学部材の製造方法において、各工程の順序は任意である。
例えば、偏光板を準備する工程を行い、当該偏光板上に、第一、第二、又は第三の位相差板を形成することにより、第一、第二、又は第三の位相差板を準備してもよく、この場合には、位相差板と偏光板とを積層する工程は、位相差板を準備する工程と同時に進行する。
【0381】
1.偏光板を準備する工程
偏光板を準備する工程として、例えば、吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムを偏光子として用いる場合を挙げる。吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムは、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、および二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、およびホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。得られた偏光子の片面または両面に偏光子保護層を貼合したもの偏光板として準備することができる。
偏光板としては、例えば、特開2021-51287号公報の段落0025~0059を参照して準備することができる。
【0382】
2.位相差板を準備する工程
第一、第二、又は第三の位相差板を準備する工程としては、第一、第二、又は第三の位相差板を準備できれば、その工程としては特に限定されない。
第一、第二、又は第三の位相差板を準備する工程としては、例えば、前述の第一、第二、又は第三の位相差板の製造方法と同様にして行うことができる。
位相差板を準備する際には、後から剥離可能な基材上に、第一の位相差層及び第二の位相差層を形成することが好ましい。
剥離可能な基材は、剥離可能なように適宜選択して用いることができる。基材は表面処理が施されていてもよく、離型処理が施されていてもよく、あるいは離型層が形成されていてもよい。
【0383】
3.位相差板と偏光板とを積層する工程
位相差板と偏光板とを積層する工程において、位相差板と偏光板とは、粘着層(接着層)により貼合してよい。或いは、前述のように偏光板上に直接位相差板を形成することにより、位相差板を準備すると同時に、位相差板と偏光板とを積層してもよい。
粘着層(接着層)としては前述と同様のものを用いることができる。
【0384】
位相差板と偏光板の積層の際に、位相差層におけるポジティブA型位相差層の遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角は、好ましくは45°±5°である。
【0385】
位相差板と偏光板とを積層する工程において、位相差板と偏光板とを、粘着層(接着層)により貼合する場合には、貼合後に、位相差板の基材を剥離することが好ましい。位相差板の基材を後から剥離することにより、偏光板と、前記本開示の位相差板のうち前記第一の位相差層及び第二の位相差層のみを備えた光学部材を得ることができる。
【0386】
G.表示装置
本開示は、第一、第二、又は第三の位相差板、又は当該位相板と偏光板とを含有する光学部材、を備える表示装置を提供する。
本開示の表示装置は第一、第二、又は第三の位相差板、又は当該位相板と偏光板とを含有する光学部材、を備えることを特徴とする。
表示装置としては、例えば、発光表示装置、液晶表示装置等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。表示装置は、タッチセンサを備えたタッチパネルであっても良い。また、表示装置はフレキシブル表示装置であってもよい。
【0387】
本開示の表示装置は、中でも発光表示装置であることが好ましい。
前記本開示の位相差板又は前記本開示の光学部材を備えるため、特に、透明電極層と、発光層と、電極層とをこの順に有する有機発光表示装置等の発光表示装置においては、外光反射を抑制しながら、視野角が向上するという効果を有する。
【0388】
また、本開示の表示装置は、中でもフレキシブル表示装置であることが好ましい。
厚みを薄くすることが可能で、密着性や屈曲耐性が良好な前記本開示の位相差板又は前記本開示の光学部材を備えるため、フレキシブル表示装置において、屈曲耐性が向上するという効果を有する。フレキシブル表示装置としては、フォルダブル表示装置であってもよい。
なお、本開示の表示装置において、位相差板又は光学部材以外の他の構成については、適宜選択した公知の構成とすることができる。
【0389】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例0390】
以下に実施例および比較例を示し、本開示をさらに詳細に説明する。
実施例Iシリーズ:第一の本開示
(合成例1:液晶モノマー1の合成)
国際公開第2018/003498号の段落0121~0124を参照して、4’-シアノ-4-{4-[2-(アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾアート}(下記化学式(i-1))を得た。
【0391】
(合成例2:液晶モノマー2の合成)
上記合成例1において、2-ブロモエタノールの代わりに6-クロロ-1-n-ヘキサノールを用いた以外は、合成例1と同様にして、下記化学式(i-2)で表される液晶モノマー2を得た。
【0392】
(合成例3:液晶モノマー3の合成)
国際公開第2018/003498号の段落0127~0130を参照して、4-[(4-プロポキシカルボニルフェニルオキシカルボニル)フェニル-4-[6-(アクリロイルオキシ)ヘキシルオキシ]ベンゾアート(下記化学式(i-3))を得た。
【0393】
【0394】
非液晶モノマー1としてアクリル酸ステアリル(下記化学式(ii-1)、東京化成社製)、非液晶モノマー2としてアクリル酸ヘキシル(下記化学式(ii-2)、東京化成社製)、非液晶モノマー3として、日立化成社製ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート(下記化学式(ii-3))を用いた。当該非液晶モノマー3は、下記化学式(ii-3)におけるn'が1~12の混合物であって、少なくともn'が8のモノマーと、n'が12のモノマーとを含むものであり、n’の平均が8である。
【0395】
また、熱架橋性基を有する非液晶モノマー4tcとしてメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(下記化学式(ii-4)、共栄社化学社製)、熱架橋性基を有する非液晶モノマー5tcとしてアクリル酸4-ヒドロキシブチル(下記化学式(ii-5)、東京化成工業製)、熱架橋性基を有する非液晶モノマー8tcとしてN-(メトキシメチル)メタクリルアミド(下記化学式(ii-8)、東京化成工業製)を用いた。
【0396】
(合成例4:熱架橋性基を有する非液晶モノマー6の合成)
特許第5668881号の合成例6の熱架橋性モノマーB8と同様にして、下記化学式(ii-6)で表される熱架橋性基を有する非液晶モノマー6tcを合成した。
【0397】
(合成例5:熱架橋性基を有する非液晶モノマー7の合成)
特許第5668881号の合成例7の熱架橋性モノマーB9と同様にして、下記化学式(ii-7)で表される熱架橋性基を有する非液晶モノマー7tcを合成した。
【0398】
【0399】
(合成例6:光配向性モノマー1の合成)
特許第5626492号の合成例3の光配向性モノマー3と同様にして、下記化学式(iii-1)で表される光配向性モノマー1を合成した。
【0400】
(合成例7:光配向性モノマー2の合成)
特許第5626492号の合成例1の光配向性モノマー1と同様にして、下記化学式(iii-2)で表される光配向性モノマー2を合成した。
【0401】
(合成例8:光配向性モノマー3の合成)
特許第5626492号の合成例8の光配向性モノマー8と同様にして、下記化学式(iii-3)で表される光配向性モノマー3を合成した。
【0402】
(合成例9:光配向性モノマー4の合成)
特許第5626492号の合成例9の光配向性モノマー9と同様にして、下記化学式(iii-4)で表される光配向性モノマー4を合成した。
【0403】
(合成例10:光配向性モノマー5の合成)
特許第5626492号の合成例4の光配向性モノマー4と同様にして、下記化学式(iii-5)で表される光配向性モノマー5を合成した。
【0404】
(合成例11:光配向性モノマー6の合成)
4’-ヒドロキシカルコン(東京化成工業製)(20g,90mmol)、アクリロイルクロリド(7.4g,82mmol)、ジメチルアニリン(DMA)(9.9g,82mmol)、のテトラヒドロフラン(400mL)懸濁液を12時間撹拌した。反応終了後、水、酢酸エチルを加え、分液を行った。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、溶媒を留去することで、下記化学式(iii-6)で表される光配向性モノマー6を収率89%(22g,80mmol)で合成した。
【0405】
(合成例12:光配向性モノマー7の合成)
特許第5626492号の合成例aにおいて、4-ビニル安息香酸を用いる代わりに、4-メトキシけい皮酸を等モル量用い、エチレングリコールを用いる代わりに、4-ヒドロキシフェニルメタクリレート(精工化学社製)を等モル量用い同様に縮合することで、下記化学式(iii-7)で表される光配向性モノマー7を合成した。
【0406】
(合成例13:比較光配向性モノマー1の合成)
特許第5668881号の合成例2において、フェルラ酸メチルの代わりに、trans-4-ヒドロキシけい皮酸メチルを等モル量用い、4-クロロ-1-ブタノールの代わりに、6-クロロ-1-ヘキサノールを等モル量用いる以外は同様にして、下記化学式(iii-c1)で表される比較光配向性モノマー1を合成した。
【0407】
下記化学式(iii-c2)で表される比較光配向性モノマー2として、4-(6-メ タクリルオキシヘキシル-1-オキシ)ケイ皮酸メチルエステルを準備した。
【0408】
(合成例15:比較光配向性モノマー3の合成)
特許第5626492号の参考合成例1の参考光配向性モノマー2と同様にして、下記化学式(iii-c3)で表される比較光配向性モノマー3を合成した。
【0409】
【0410】
また、熱架橋性モノマー1としてメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(下記化学式(iv-1)、
共栄社化学社製)、熱架橋性モノマー2としてアクリル酸4-ヒドロキシブチル(下記化学式(iv-2)、東京化成工業製)を用いた。
【0411】
(合成例16:熱架橋性モノマー3の合成)
特許第5668881号の合成例4の熱架橋性モノマーB3と同様にして、下記化学式(iv-3)で表される熱架橋性モノマー3を合成した。
【0412】
(合成例17:熱架橋性モノマー4の合成)
特許第5626492号の合成例eの熱架橋性モノマー5と同様にして、下記化学式(iv-4)で表される熱架橋性モノマー4を合成した。
【0413】
(合成例18:熱架橋性モノマー5の合成)
特許第5626492号の合成例fの熱架橋性モノマー6と同様にして、下記化学式(iv-5)で表される熱架橋性モノマー5を合成した。
【0414】
(合成例19:熱架橋性モノマー6の合成)
特表2016-538400の実施例9の化合物46と同様にして、下記化学式(iv-6)で表される熱架橋性モノマー6を合成した。
【0415】
(合成例20:熱架橋性モノマー7の合成)
特表2018-525444の段落124と同様にして、下記化学式(iv-7)で表される熱架橋性モノマー7を合成した。
【0416】
また、第三成分モノマーとして、自己架橋基を有する熱架橋性モノマー8であるN-(メトキシメチル)メタクリルアミド(下記化学式(iv-8)、東京化成工業製)、及び、フッ素化アルキル基を有するモノマー1であるビスコート13F(下記化学式(v-1)、大阪有機化学工業社製)、を用いた。
【0417】
【0418】
(製造例A1~A14:側鎖型液晶ポリマーA1~A14の製造)
前記液晶モノマー1~3、及び、非液晶モノマー1~3と4tc~8tc、並びに光配向性モノマー1を表5に従って組み合わせ、側鎖型液晶ポリマーを合成した。
側鎖型液晶ポリマーA2の合成例を具体的に説明する。
非液晶モノマー1と非液晶モノマー2とをモル比で50:50として組み合わせ、これら非液晶モノマーの合計と、液晶モノマー1とをモル比で40:60となるように組み合わせて混合し、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を加え、40℃で撹拌し溶解させた。溶解後24℃まで冷却し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加え同温にて溶解させた。80℃に加温したDMAcに上記反応溶液を30分かけて滴下し、滴下終了後、80℃で6時間撹拌した。反応終了後室温まで冷却した後、メタノールを撹拌している別の容器に滴下し20分撹拌した。上澄み液を除去後スラリーをろ過し、得られた粗体を再びメタノール中で20分撹拌、上澄み液の除去、ろ過をした。得られた結晶を乾燥させることにより側鎖型液晶ポリマーA2を収率76.5%で得た。
得られた側鎖型液晶ポリマーについて、質量平均分子量を測定し、構造解析を行った。また、Py-GC-MS、乃至、MALDI-TOFMSにより、用いた1種、2種又は3種の非液晶モノマー由来の構成単位を含むことを確認した。
【0419】
【0420】
(製造例B1~B15:共重合体B1~B15の製造)
前記光配向性モノマー1~7、熱架橋性モノマー1~7、及び、第三成分モノマーを表6に従って組み合わせ、共重合体(B)を合成した。
共重合体B1の合成例を具体的に説明する。
光配向性モノマー1を3.08g、熱架橋性モノマー1(ヒドロキシブチルメタクリレート)を
1.30g、重合触媒としてα,α’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)50mgをジオキサン25mlに溶解し、90℃にて6時間反応させた。反応終了後、再沈殿法により精製することで、共重合体B1を得た。得られた共重合体B1の質量平均分子量は18000であった。
なお、合成した各共重合体の質量平均分子量(以下、Mwと称す)は、東ソー(株)製HLC-8220 GPCを用いて、ポリスチレンを標準物質とし、NMPを溶離液としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて算出した。
【0421】
[比較製造例B’1~B’3]比較共重合体B’1~B’3の合成
前記比較光配向性モノマー1~3、及び、熱架橋性モノマー1を表6に従って組み合わせ、前記共重合体B1と同様にして、比較共重合体B’1~B’3を合成した。
【0422】
【0423】
[比較製造例C1]比較共重合体C1の合成
特開2016-004142号公報の段落0073~0076、0079に記載されている重合体1と同様にして、下記化学式(vi-1)で表される単量体1と下記化学式(vi-2)で表される単量体2とをモル比3:7で共重合して、比較共重合体C1を得た。
【0424】
【0425】
[実施例1~32]
(光配向性を有する熱硬化性液晶組成物1~32の調製)
表7に示す側鎖型液晶ポリマー(A)と共重合体(B)とを、表7に示す質量比で混合して組成物を得た。
下記に示す組成の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を調製した。
・表7に示す組成物:0.1質量部
・熱架橋剤(ヘキサメトキシメチルメラミン、HMM):0.01質量部
・p-トルエンスルホン酸1水和物(PTSA):0.001質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME):0.17質量部
・シクロヘキサノン:0.4質量部
【0426】
[実施例33]
(光配向性を有する熱硬化性液晶組成物33の調製)
下記に示す組成の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を調整した。
・側鎖型液晶ポリマーA-3:0.09質量部
・共重合体B-1:0.01質量部
・重合性液晶化合物(商品名LC242、BASF社製):0.01質量部
・光重合開始剤(商品名オムニラッド907、IGM Resins社製):0.004質量部
・熱架橋剤(ヘキサメトキシメチルメラミン、HMM):0.01質量部
・p-トルエンスルホン酸1水和物(PTSA):0.001質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME):0.17質量部
・シクロヘキサノン:0.4質量部
【0427】
[実施例34]
(光配向性を有する熱硬化性液晶組成物34の調製)
下記に示す組成の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を調整した。
・側鎖型液晶ポリマーA-3:0.09質量部
・共重合体B-1:0.01質量部
・多官能モノマー(ペンタエリスリトールトリアクリレート、PETA):0.01質量部
・光重合開始剤(商品名オムニラッド907、IGM Resins社製):0.004質量部
・熱架橋剤(ヘキサメトキシメチルメラミン、HMM):0.01質量部
・p-トルエンスルホン酸1水和物(PTSA):0.001質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME):0.17質量部
・シクロヘキサノン:0.4質量部
【0428】
[実施例35]
(光配向性を有する熱硬化性液晶組成物35の調製)
下記に示す組成の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を調整した。
・側鎖型液晶ポリマーA-3:0.09質量部
・共重合体B-1:0.01質量部
・光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物(4-ヒドロキシけい皮酸メチル、東京化成工業製):0.01質量部
・熱架橋剤(ヘキサメトキシメチルメラミン、HMM):0.01質量部
・p-トルエンスルホン酸1水和物(PTSA):0.001質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME):0.17質量部
・シクロヘキサノン:0.4質量部
【0429】
(配向膜兼位相差フィルムの形成)
PET基板(東洋紡(株)製、E5100、厚さ38μm)の片面上に、前記光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を、硬化後の膜厚が1.6μmとなるようにバーコートにより塗布し、120℃のオーブンで1分間加熱して乾燥、液晶性成分の配向、及び熱硬化を行い、位相差層機能を有する硬化膜を形成した。その後、この硬化膜表面にHg-Xeランプおよびグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線を基板法線から垂直方向に100mJ/cm2照射することで、配向層機能を有する硬化膜として配向層兼位相差層を形成し、配向層兼位相差層を含有する配向膜兼位相差フィルムを得た。
【0430】
(位相差板の作製)
下記重合性液晶化合物(商品名:LC242、BASF社製)をシクロヘキサノンに固形分15質量%となるように溶解した溶液に、BASF社製の光重合開始剤イルガキュア184を5質量%添加し、重合性液晶組成物を調整した。
上記で得られた配向膜兼位相差フィルムの配向層兼位相差層(第一の位相差層)上に、上記重合性液晶組成物を、硬化後の膜厚が1μmになるようにバーコートにより塗布し、85℃で120秒乾燥させ、塗膜を形成した。この塗膜に、窒素雰囲気化でHg-Xeランプを用いて365nmの輝線を含む非偏光の紫外線300mJ/cm2を照射して、第二の位相差層を形成し、位相差板を製造した。
【0431】
【0432】
[比較例1]
特開2016-004142号公報の段落0082に記載されている実施例1と同様にして、上記で得られた比較共重合体C1をシクロヘキサノンに溶解し、ここに100質量部の比較共重合体C1に対し2重量部の4、4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを添加し、比較組成物1を調製し、液晶配向能を有するホメオトロピック配向層である第1の塗布膜を形成した。当該第1の塗布膜(配向膜兼位相差フィルム、第一の位相差層に相当)上に、実施例と同様にして、第二の位相差層を形成し、位相差板を製造した。
【0433】
[比較例2~5]
表5に示す側鎖型液晶ポリマー(A)と、比較共重合体B’1~B’3のいずれかとを表7に示す質量比で混合して組成物を得た以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性液晶組成物を調製し、配向膜兼位相差フィルムを形成し、位相差板を作製した。
【0434】
[評価]
得られた各配向膜兼位相差フィルムおよび各位相差板について以下の評価を行った。
【0435】
(1)垂直配向性
配向膜兼位相差フィルムのPET基板を剥離して、配向層兼位相差層を粘着付きガラスに転写したサンプルに対して、位相差測定装置(王子計測機器(株)製、KOBRA-WR)により、波長550nmにおける厚み方向位相差Rthを測定した。
(垂直配向性の評価基準)
A:Rth≦-60nm
B:-40nm≧Rth>-60nm
C:Rth>-40nm
【0436】
(2)光配向性(直接積層した液晶性成分を配向させる能力)
位相差板のPET基板を剥離して、配向層兼位相差層(第一の位相差層)と第二の位相差層とを粘着付きガラスに転写したサンプルに対して、位相差測定装置(王子計測機器(株)製、KOBRA-WR)により、波長550nmにおける面内位相差Reを測定した。
(光配向性の評価基準)
A:Re≧135nm
B:100nm≦Re<135nm
C:Re<100nm
【0437】
【0438】
【0439】
実施例IIシリーズ:第二の本開示
実施例IIシリーズは、第二の本開示に関する実施例であるが、第一の本開示において前記側鎖型液晶ポリマー(A)と、前記共重合体(B)とを第二の本開示に関する条件を満たすように組み合わせれば、同様の作用によって第二の本開示の効果を得ることができることを理解できるものである。
【0440】
(合成例II-1:液晶モノマーII-1の合成)
国際公開第2018/003498号の段落0121~0124を参照して、4’-シアノ-4-{4-[2-(アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾアート}(下記化学式(II-i-1))を得た。
【0441】
(合成例II-2:液晶モノマーII-2の合成)
上記合成例1において、2-ブロモエタノールの代わりに6-クロロ-1-n-ヘキサノールを用いた以外は、合成例1と同様にして、下記化学式(II-i-2)で表される液晶モノマーII-2を得た。
【0442】
(合成例II-3:液晶モノマーII-3の合成)
国際公開第2018/003498号の段落0127~0130を参照して、4-[(4-プロポキシカルボニルフェニルオキシカルボニル)フェニル-4-[6-(アクリロイルオキシ)ヘキシルオキシ]ベンゾアート(下記化学式(II-i-3))を得た。
【0443】
【0444】
非液晶モノマーII-1としてアクリル酸ステアリル(下記化学式(II-ii-1)、東京化成社製)、非液晶モノマーII-2としてアクリル酸ヘキシル(下記化学式(II-ii-2)、東京化成社製)、非液晶モノマーII-3として、日立化成社製ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート(下記化学式(II-ii-3))を用いた。当該非液晶モノマーII-3は、下記化学式(II-ii-3)におけるn'が1~12の混合物であって、少なくともn'が8のモノマーと、n'が12のモノマーとを含むものであり、n’の平均が8(n'≒8)である。
【0445】
また、熱架橋性基を有する非液晶モノマーII-4tcとしてメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(下記化学式(II-ii-4)、共栄社化学社製、前記熱架橋性基が1級炭素に結合、炭素鎖中に-O-を有していてもよい直鎖アルキレン基の炭素数と酸素数の合計=2)、熱架橋性基を有する非液晶モノマーII-5tcとしてアクリル酸4-ヒドロキシブチル(下記化学式(II-ii-5)、東京化成工業製、前記熱架橋性基が1級炭素に結合、炭素鎖中に-O-を有していてもよい直鎖アルキレン基の炭素数と酸素数の合計=4)、熱架橋性基を有する非液晶モノマーII-6tcとしてアクリル酸2-ヒドロキシプロピル(下記化学式(II-ii-6)、共栄社化学社製、前記熱架橋性基が2級炭素に結合)を用いた。
【0446】
(合成例II-4:熱架橋性基を有する非液晶モノマーII-7tcの合成)
特開2016-155997の実施例1Aの化合物1の合成と同様にして、アクリル酸2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル(下記化学式(II-ii-7)、前記熱架橋性基が3級炭素に結合)を、熱架橋性基を有する非液晶モノマーII-7tcとして得た。
【0447】
(合成例II-5:熱架橋性基を有する非液晶モノマーII-8tcの合成)
アクリル酸クロリド(13.6g,0.15mol)、ジエチレングリコール(31.8g,0.30mol)、トリエチルアミン(16.2g,0.16mol)のテトラヒドロフラン(100ml)溶液を室温で16時間撹拌した。反応終了後、反応液をろ過・濃縮し、残差をクロロホルムに溶解させた。有機層を5%塩酸、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後溶媒を留去した。得られた残差をカラムクロマトグラフィーで精製することで、アクリル酸2-[(2-ヒドロキシエチル)オキシ]エチル(下記化学式(II-ii-8)前記熱架橋性基が1級炭素に結合、炭素鎖中に-O-を有していてもよい直鎖アルキレン基の炭素数と酸素数の合計=5)を、熱架橋性基を有する非液晶モノマーII-8tcとして得た。
【0448】
(合成例II-6:熱架橋性基を有する非液晶モノマーII-9tcの合成)
特許第5626492号の合成例eの熱架橋性モノマー5と同様にして、下記化学式(II-ii-9)で表される熱架橋性基を有する非液晶モノマーII-9tcを合成した。非液晶モノマー9tcは、前記熱架橋性基が1級炭素に結合し、炭素鎖中に-O-を有していてもよい直鎖アルキレン基の炭素数と酸素数の合計は2である。
【0449】
(合成例II-7:熱架橋性基を有する非液晶モノマーII-10tcの合成)
-30℃に冷却したp-ヒドロキノン(33.0g,0.30mol)、トリエチルアミン(60.7g,0.60mol)のテトラヒドロフラン(10ml)溶液中に、アクリル酸クロリド(27.2g,0.30mol)を滴下し、滴下終了後2時間撹拌した。反応終了後、反応液をろ過・濃縮し、残差を酢酸エチルに溶解させた。有機層を水、食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後溶媒を留去した。得られた残差をカラムクロマトグラフィーで精製することで、アクリル酸4-ヒドロキシフェニル(下記化学式(II-ii-10)、ヒドロキシ基がアリーレン基に結合)を、熱架橋性基を有する非液晶モノマーII-10tcとして合成した。
【0450】
また、熱架橋性基を有する非液晶モノマーII-11tcとしてアクリル酸6-(4-ヒドロキシフェニル)ヘキシル(下記化学式(II-ii-11)、DKSH製、ヒドロキシ基がアリーレン基に結合)を用いた。
【0451】
(合成例8:熱架橋性基を有する非液晶モノマーII-12tcの合成)
国際公開第2019/065608号の合成例1と同様にして、4-[2-(アクリロイルオキシ)エトキシ]安息香酸(下記化学式(II-ii-12)、カルボキシ基がアリーレン基に結合、且つ当該アリーレン基が炭素鎖中又は末端に-O-を有していてもよいアルキレン基の炭素数と酸素数の合計は3)を、熱架橋性基を有する非液晶モノマーII-12tcとして得た。
【0452】
【0453】
(合成例II-9:光配向性モノマーII-1の合成)
特許第5668881号の合成例2において、フェルラ酸メチルの代わりに、trans-4-ヒドロキシけい皮酸メチルを等モル量用い、4-クロロ-1-ブタノールの代わりに、6-クロロ-1-ヘキサノールを等モル量用いた以外は同様にして、下記化学式(II-iii-1)で表される光配向性モノマーII-1を合成した。
【0454】
(合成例II-10:光配向性モノマーII-2の合成)
国際公開第2018/003498号の合成例2において、4’-シアノ-4-ヒドロキシビフェニルの代わりに、trans-4-ヒドロキシけい皮酸メチルを等モル量用いた以外は同様にして、下記化学式(II-iii-2)で表される光配向性モノマー2を合成した。
【0455】
(合成例II-11:光配向性モノマーII-3の合成)
特許第5668881号の合成例1の光配向性モノマーA1と同様にして、下記化学式(II-iii-3)で表される光配向性モノマーII-3を合成した。
【0456】
(合成例II-12:光配向性モノマーII-4の合成)
特許第5668881号の合成例2の光配向性モノマーA2と同様にして、下記化学式(II-iii-4)で表される光配向性モノマー4を合成した。
【0457】
(合成例II-13:光配向性モノマーII-5の合成)
特許第5626492号の合成例14の光配向性モノマー14と同様にして、下記化学式(II-iii-5)で表される光配向性モノマーII-5を合成した。
【0458】
(合成例II-14:光配向性モノマーII-6の合成)
特許第5626492号の合成例3の光配向性モノマー3と同様にして、下記化学式(II-iii-6)で表される光配向性モノマーII-6を合成した。
【0459】
(合成例II-15:光配向性モノマーII-7の合成)
特許第5668881号の合成例2において、フェルラ酸メチルの代わりに、trans-4-ヒドロキシけい皮酸メチルを等モル量用いた以外は同様にして、下記化学式(II-iii-7)で表される光配向性モノマーII-7を合成した。
【0460】
【0461】
(合成例II-16:熱架橋性モノマーII-1の合成)
アクリル酸(20g,0.27mol)、1,6-ヘキサンジオール(33g,0.27mol)の混合液に濃硫酸を触媒量添加し、90℃で4時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルを加え、水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、その後有機層の溶媒を留去することで、アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル(下記化学式(II-iv-1)、炭素鎖中に-O-を有していてもよい直鎖アルキレン基の炭素数と酸素数の合計=6)を熱架橋性モノマーII-1として得た。
【0462】
熱架橋性モノマーII-2としてアクリル酸4-ヒドロキシブチル(下記化学式(II-iv-2)、東京化成工業製、炭素鎖中に-O-を有していてもよい直鎖アルキレン基の炭素数と酸素数の合計=4)を用いた。
【0463】
(合成例II-17:熱架橋性モノマーII-3の合成)
特許第5668881号の合成例4の熱架橋性モノマーB3と同様にして、下記化学式(II-iv-3)で表される熱架橋性モノマーII-3(炭素鎖中に-O-を有していてもよい直鎖アルキレン基の炭素数と酸素数の合計=11)を合成した。
【0464】
(合成例II-18:熱架橋性モノマーII-4の合成)
特許第5668881号の合成例5の熱架橋性モノマーB7と同様にして、下記化学式(II-iv-4)で表される熱架橋性モノマーII-4(炭素鎖中に-O-を有していてもよい直鎖アルキレン基の炭素数と酸素数の合計=4)を合成した。
【0465】
(合成例II-19:熱架橋性モノマーII-5の合成)
特許第5668881号の合成例6の熱架橋性モノマーB8と同様にして、下記化学式(II-iv-5)で表される熱架橋性モノマーII-5(炭素鎖中に-O-を有していてもよい直鎖アルキレン基の炭素数と酸素数の合計=6)を合成した。
【0466】
(合成例II-20:熱架橋性モノマーII-6の合成)
特許第5668881号の合成例8の熱架橋性モノマーB10と同様にして、下記化学式(II-iv-6)で表される熱架橋性モノマーII-6(炭素鎖中に-O-を有していてもよい直鎖アルキレン基の炭素数と酸素数の合計=6)を合成した。
【0467】
(合成例II-21:熱架橋性モノマーII-7の合成)
特表2016-538400の実施例9と同様にして、下記化学式(II-iv-7)で表される熱架橋性モノマーII-7(炭素鎖中に-O-を有していてもよい直鎖アルキレン基の炭素数と酸素数の合計=5)を合成した。
【0468】
(合成例II-22:熱架橋性モノマーII-8の合成)
特表2018-525444の段落0124と同様にして、下記化学式(II-iv-8)で表される熱架橋性モノマーII-8(炭素鎖中に-O-を有していてもよい直鎖アルキレン基の炭素数と酸素数の合計=4)を合成した。
【0469】
また、合成例II-5の熱架橋性基を有する非液晶モノマーII-8tcと同様にして、下記化学式(II-iv-9)で表される熱架橋性モノマーII-9(炭素鎖中に-O-を有していてもよい直鎖アルキレン基の炭素数と酸素数の合計=5)を準備した。
【0470】
【0471】
また、第三構成単位のために、自己架橋基含有モノマーII-1としてN-(メトキシメチル)メタクリルアミド(下記化学式(II-v-1)、東京化成工業製)、及び、フッ素化アルキル基含有モノマーII-1としてビスコート13F(下記化学式(II-v-2)、大阪有機化学工業社製)を用いた。
【0472】
【0473】
(製造例II-A1~II-A19:側鎖型液晶ポリマーII-A1~II-A19の製造)
前記液晶モノマーII-1~II-3、及び、非液晶モノマーII-1~II-3、II-4tc~II-12tc、並びに光配向性モノマーII-7を表13に従って組み合わせ、側鎖型液晶ポリマーを合成した。
側鎖型液晶ポリマーII-A2の合成例を具体的に説明する。
非液晶モノマーII-1と非液晶モノマーII-2とをモル比で50:50として組み合わせ、これら非液晶モノマーの合計と、液晶モノマー1とをモル比で40:60となるように組み合わせて混合し、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を加え、40℃で撹拌し溶解させた。溶解後24℃まで冷却し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加え同温にて溶解させた。80℃に加温したDMAcに上記反応溶液を30分かけて滴下し、滴下終了後、80℃で6時間撹拌した。反応終了後室温まで冷却した後、メタノールを撹拌している別の容器に滴下し20分撹拌した。上澄み液を除去後スラリーをろ過し、得られた粗体を再びメタノール中で20分撹拌、上澄み液の除去、ろ過をした。得られた結晶を乾燥させることにより側鎖型液晶ポリマーII-A2を収率76.5%で得た。
得られた側鎖型液晶ポリマーについて、質量平均分子量を測定し、構造解析を行った。また、Py-GC-MS、乃至、MALDI-TOFMSにより、用いた1種、2種又は3種の非液晶モノマー由来の構成単位を含むことを確認した。
【0474】
【0475】
(製造例II-B1~II-B17:共重合体II-B1~II-B17の製造)
前記光配向性モノマーII-1~II-7、前記熱架橋性モノマーII-1~II-9、並びに、フッ素化アルキル基含有モノマーII-1及び自己架橋基含有モノマーII-1を表14に従って組み合わせ、共重合体(B)を合成した。
共重合体II-B1の合成例を具体的に説明する。
光配向性モノマーII-1を3.32g、熱架橋性モノマーII-1を1.72g、重合触媒としてα,α’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)50mgをジオキサン25mlに溶解し、90℃にて6時間反応させた。反応終了後、再沈殿法により精製することで、共重合体II-B1を得た。得られた共重合体II-B1の数平均分子量は21300であった。
なお、合成した各共重合体の質量平均分子量(以下、Mwと称す)は、東ソー(株)製HLC-8220 GPCを用いて、ポリスチレンを標準物質とし、NMPを溶離液としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて算出した。
【0476】
[比較製造例II-B’1~II-B’2]比較共重合体II-B’1~II-B’2の合成
比較熱架橋性モノマーII-1として、前記合成例4の前記化学式(II-ii-9)で表される熱架橋性基を有する非液晶モノマーII-9tc(炭素鎖中に-O-を有していてもよい直鎖アルキレン基の炭素数と酸素数の合計は2)を準備した。また、比較熱架橋性モノマーII-2として、前記化学式(II-ii-4)で表される熱架橋性基を有する非液晶モノマーII-4tc(炭素鎖中に-O-を有していてもよい直鎖アルキレン基の炭素数と酸素数の合計は2)を準備した。
前記光配向性モノマーII-1、及び、比較熱架橋性モノマーII-1及びII-2を表14に従って組み合わせ、前記共重合体II-B1と同様にして、比較共重合体II-B’1~II-B’2を合成した。
【0477】
【0478】
[比較製造例II-C1]比較共重合体II-C1の合成
特開2016-004142号公報の段落0073~0076、0079に記載されている重合体1と同様にして、下記化学式(II-vi-1)で表される単量体1と下記化学式(II-vi-2)で表される単量体2とをモル比3:7で共重合して、比較共重合体II-C1を得た。
【0479】
【0480】
[実施例II-1~II-38]
(光配向性を有する熱硬化性液晶組成物II-1~II-38の調製)
表15又は16に示す側鎖型液晶ポリマー(A)と共重合体(B)とを、表15又は16に示す質量比で混合して組成物を得た。
下記に示す組成の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を調製した。
・表15又は16に示す側鎖型液晶ポリマー(A)と共重合体(B)の組成物:100質量部
・熱架橋剤(ヘキサメトキシメチルメラミン、HMM):表15又は16に示す質量比(10質量部又は7質量部)
・p-トルエンスルホン酸1水和物(PTSA):1質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME):170質量部
・シクロヘキサノン:400質量部
【0481】
[実施例II-39]
(光配向性を有する熱硬化性液晶組成物II-39の調製)
下記に示す組成の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を調整した。
・側鎖型液晶ポリマーII-A3:0.09質量部
・共重合体II-B1:0.01質量部
・重合性液晶化合物(商品名LC242、BASF社製):0.01質量部
・光重合開始剤(商品名オムニラッド907、IGM Resins社製):0.004質量部
・熱架橋剤(ヘキサメトキシメチルメラミン、HMM):0.01質量部
・p-トルエンスルホン酸1水和物(PTSA):0.001質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME):0.17質量部
・シクロヘキサノン:0.4質量部
【0482】
[実施例II-40]
(光配向性を有する熱硬化性液晶組成物II-40の調製)
下記に示す組成の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を調整した。
・側鎖型液晶ポリマーII-A3:0.09質量部
・共重合体II-B1:0.01質量部
・多官能モノマー(ペンタエリスリトールトリアクリレート、PETA):0.01質量部
・光重合開始剤(商品名オムニラッド907、IGM Resins社製):0.004質量部
・熱架橋剤(ヘキサメトキシメチルメラミン、HMM):0.01質量部
・p-トルエンスルホン酸1水和物(PTSA):0.001質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME):0.17質量部
・シクロヘキサノン:0.4質量部
【0483】
[実施例II-41]
(光配向性を有する熱硬化性液晶組成物II-41の調製)
下記に示す組成の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を調整した。
・側鎖型液晶ポリマーII-A3:0.09質量部
・共重合体II-B1:0.01質量部
・光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物(4-ヒドロキシけい皮酸メチル、東京化成工業製):0.01質量部
・熱架橋剤(ヘキサメトキシメチルメラミン、HMM):0.01質量部
・p-トルエンスルホン酸1水和物(PTSA):0.001質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME):0.17質量部
・シクロヘキサノン:0.4質量部
【0484】
(配向膜兼位相差フィルムの形成)
PET基板(東洋紡(株)製、E5100、厚さ38μm)の片面上に、前記光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を、硬化後の膜厚が1.6μmとなるようにバーコートにより塗布し、120℃のオーブンで1分間加熱して乾燥、液晶性成分の配向、及び熱硬化を行い、位相差層機能を有する硬化膜を形成した。その後、この硬化膜表面にHg-Xeランプおよびグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線を基板法線から垂直方向に100mJ/cm2照射することで、配向層機能を有する硬化膜として配向層兼位相差層を形成し、配向層兼位相差層を含有する配向膜兼位相差フィルムを得た。
【0485】
(位相差板の作製)
下記重合性液晶化合物(商品名:LC242、BASF社製)をシクロヘキサノンに固形分15質量%となるように溶解した溶液に、BASF社製の光重合開始剤イルガキュア184を5質量%添加し、重合性液晶組成物を調製した。
上記で得られた配向膜兼位相差フィルムの配向層兼位相差層(第一の位相差層)上に、上記重合性液晶組成物を、硬化後の膜厚が1μmになるようにバーコートにより塗布し、85℃で120秒乾燥させ、塗膜を形成した。この塗膜に、窒素雰囲気化でHg-Xeランプを用いて365nmの輝線を含む非偏光の紫外線300mJ/cm2を照射して、第二の位相差層を形成し、位相差板を製造した。
【0486】
【0487】
[比較例II-1]
特開2016-004142号公報の段落0082に記載されている実施例1と同様にして、上記で得られた比較共重合体II-C1をシクロヘキサノンに溶解し、ここに100質量部の比較共重合体II-C1に対し2重量部の4、4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを添加し、比較組成物1を調製し、液晶配向能を有するホメオトロピック配向層である第1の塗布膜を形成した。当該第1の塗布膜(配向膜兼位相差フィルム、第一の位相差層に相当)上に、実施例と同様にして、第二の位相差層を形成し、位相差板を製造した。
【0488】
[比較例II-2~II-7]
表16に示す側鎖型液晶ポリマー(A)と、比較共重合体II-B’1~II-B’2、又は共重合体II-B7のいずれかとを表16に示す質量比で混合して組成物を得た以外は、実施例II-1と同様にして、熱硬化性液晶組成物を調製し、配向膜兼位相差フィルムを形成し、位相差板を作製した。
【0489】
[評価]
得られた各配向膜兼位相差フィルムおよび各位相差板について以下の評価を行った。
(1)垂直配向性
配向膜兼位相差フィルムのPET基板を剥離して、配向層兼位相差層を粘着付きガラスに転写したサンプルに対して、位相差測定装置(王子計測機器(株)製、KOBRA-WR)により、波長550nmにおける厚み方向位相差Rthを測定した。
(垂直配向性の評価基準)
A:Rth≦-80nm
B:-40nm≧Rth>-80nm
C:Rth>-40nm
【0490】
(2)光配向性(直接積層した液晶性成分を配向させる能力)
位相差板のPET基板を剥離して、配向層兼位相差層(第一の位相差層)と第二の位相差層とを粘着付きガラスに転写したサンプルに対して、位相差測定装置(王子計測機器(株)製、KOBRA-WR)により、波長550nmにおける面内位相差Reを測定した。
(光配向性の評価基準)
A:Re≧135nm
B:100nm≦Re<135nm
C:Re<100nm
【0491】
(3)耐熱性
前記垂直配向性を評価したサンプルを、オーブンを用いて、100℃で1時間加熱した。加熱後の、波長550nmにおける厚み方向位相差Rthを前記垂直配向性の評価と同様にして測定し、これらの測定値を用いて、下記式で算出される加熱後の位相差変動率を算出し、下記評価基準により耐熱性を評価した。
加熱後の位相差変動率(%)={(加熱前Rth-加熱後Rth)/加熱前Rth}×100
(耐熱性の評価基準)
A:加熱後の位相差変動率が10%以下であった
B:加熱後の位相差変動率が10%超過15%以下であった
C:加熱後の位相差変動率が15%超過であった
【0492】
(4)溶剤浸透耐久性
前記垂直配向性を評価したサンプル上に、シクロヘキサノンをバーコートにより塗布し、85℃で120秒乾燥させた。その後、波長550nmにおける厚み方向位相差Rthを前記垂直配向性の評価と同様にして測定しこれらの測定値を用いて、下記式で算出される位相差変動率を算出し、下記評価基準により溶剤浸透耐久性を評価した。
(溶剤浸透耐久性の評価基準)
A:試験後の位相差変動率が3%以下であった
B:試験後の位相差変動率が3%超過10%以下であった
C:試験後の位相差変動率が10%超過であった
【0493】
【0494】
【表16】
表15又は16において、“(C+O)数”は、熱架橋性構成単位における炭素鎖中に-O-を有していてもよい直鎖アルキレン基の炭素数と酸素数の合計を表す。
【0495】
【0496】
実施例IIIシリーズ:第三の本開示
実施例IIIシリーズは、第三の本開示の実施例であるが、第一又は第二の本開示でも同様の効果を得ることができることを示すものである。
【0497】
実施例Iシリーズの液晶モノマー1、非液晶モノマー1及び4tcと同様にして、液晶モノマーIII-1、非液晶モノマーIII-1及びIII-2tcを準備した。また、実施例IIシリーズの非液晶モノマーII-10tcと同様にして、非液晶モノマーIII-3tcを準備した。
【0498】
【0499】
実施例Iシリーズの光配向性モノマー1と同様にして、光配向性モノマーIII-1を準備した。また、実施例Iシリーズの熱架橋性モノマー1、2及び6と同様にして、熱架橋性III-1、III-2及びIII-3を準備した。
【0500】
【0501】
(製造例III-A1~III-A4:側鎖型液晶ポリマーIII-A1~III-A4の製造)
前記液晶モノマーIII-1、及び、非液晶モノマーIII-1、III-2tc~III-3tc、を表20に従って組み合わせ、実施例Iシリーズと同様にして側鎖型液晶ポリマーを合成した。
【0502】
【0503】
(製造例III-B1~III-B3:共重合体III-B1~III-B3の製造)
前記光配向性モノマーIII-1、及び前記熱架橋性モノマーIII-1~III-3を表21に従って組み合わせ、実施例Iシリーズの共重合体(B)と同様に光配向性共重合体を合成した。
【0504】
【0505】
[実施例III-1~III-8]
(光配向性を有する熱硬化性液晶組成物III-1~III-8の調製)
表22に示す側鎖型液晶ポリマーと共重合体とを、表22に示す質量比で混合して組成物を得た。
下記に示す組成の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を調製した。
・表22に示す側鎖型液晶ポリマーと共重合体の組成物:100質量部
・熱架橋剤(ヘキサメトキシメチルメラミン、HMM):10質量部
・p-トルエンスルホン酸1水和物(PTSA):1質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME):170質量部
・シクロヘキサノン:400質量部
【0506】
(位相差板の作製)
(1)ポジティブC型位相差層:配向膜兼位相差層の形成
PET基板(東洋紡(株)製、E5100、厚さ38μm)の片面上に、前記光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を、硬化後の膜厚が1.6μmとなるようにバーコートにより塗布し、120℃のオーブンで1分間加熱して乾燥、液晶性成分の配向、及び熱硬化を行い、位相差を有する硬化膜を形成した。その後、この硬化膜表面にHg-Xeランプおよびグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線を基板法線から垂直方向に100mJ/cm2照射することで、前記硬化膜に配向層としての機能を更に付与した配向層兼位相差層を基材上に形成した。当該配向層兼位相差層は、位相差を測定したところ、ポジティブC型位相差層であった。
【0507】
(2)ポジティブA型位相差層の形成
下記重合性液晶化合物(商品名:LC242、BASF社製)をシクロヘキサノンに固形分15質量%となるように溶解した溶液に、BASF社製の光重合開始剤イルガキュア184を5質量%添加し、重合性液晶組成物を調製した。
上記で得られたポジティブC型位相差層(配向層兼位相差層)上に、上記重合性液晶組成物を、硬化後の膜厚が1μmになるようにバーコートにより塗布し、85℃で120秒乾燥させ、塗膜を形成した。この塗膜に、窒素雰囲気化でHg-Xeランプを用いて365nmの輝線を含む非偏光の紫外線300mJ/cm2を照射して、第二の位相差層を形成し、位相差板を製造した。第二の位相差層は、位相差を測定したところ、ポジティブA型位相差層であった。
位相差板において、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の合計厚みは2.6μmであった。
【0508】
【0509】
[実施例III-9]
下記に示す組成の光配向性を有しない熱硬化性液晶組成物を調製した。
・側鎖型液晶ポリマーIII-A2:0.1質量部
・熱架橋剤(ヘキサメトキシメチルメラミン、HMM):0.01質量部
・p-トルエンスルホン酸1水和物(PTSA):0.001質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME):0.17質量部
・シクロヘキサノン:0.4質量部
【0510】
PET基板(東洋紡(株)製、E5100、厚さ38μm)の片面上に、前記光配向性を有しない熱硬化性液晶組成物を、硬化後の膜厚が1.4μmとなるようにバーコートにより塗布し、90℃のオーブンで1分間加熱して乾燥、液晶性成分の配向、及び熱硬化を行い、位相差層を形成した。その後、得られた位相差層上に、前記実施例III-1に示す光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を、硬化後の膜厚が0.2μmとなるようにバーコートにより塗布し、120℃のオーブンで1分間加熱して乾燥、液晶性成分の配向、及び熱硬化を行い、位相差を有する硬化膜を形成した。その後、この硬化膜表面にHg-Xeランプおよびグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線を基板法線から垂直方向に100mJ/cm2照射することで、前記硬化膜に配向層としての機能を更に付与した配向層兼位相差層を形成した。前記位相差層と配向層兼位相差層の積層体は、位相差を測定したところ、ポジティブC型位相差層であった。
得られた配向層兼位相差層上に、実施例III-1のポジティブA型位相差層の形成に用いられた重合性液晶組成物を、硬化後の膜厚が1μmになるようにバーコートにより塗布し、85℃で120秒乾燥させ、塗膜を形成した。この塗膜に、窒素雰囲気化でHg-Xeランプを用いて365nmの輝線を含む非偏光の紫外線300mJ/cm2を照射して、第二の位相差層を形成し、位相差板を製造した。第二の位相差層は、位相差を測定したところ、ポジティブA型位相差層であった。
位相差板において、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の合計厚みは2.6μmであった。
【0511】
[比較例III-1]
実施例Iシリーズの比較例1の比較共重合体C1と同様にして比較共重合体III-C1を合成し、実施例Iシリーズの比較例1と同様にして、位相差板を作製した。
位相差板において、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の合計厚みは2.6μmであった。
【0512】
[比較例III-2]
トリアセチルセルロース樹脂フィルム(TAC)基板(富士フイルム社、TD80UL、厚さ80μm)の片面上に、特許第6770634号の段落0155に記載の液晶1-1を塗布し、次いで熟成工程、紫外線照射について同様に行い、光学異方性層1と同様にして硬化後の膜厚が1.6μmとなるようにポジティブC型位相差層を形成した。続いて、実施例III-1のポジティブA型位相差層の形成に用いられた重合性液晶組成物を、硬化後の膜厚が1μmになるようにバーコートにより塗布し、85℃で120秒乾燥させ、塗膜を形成した。この塗膜に、窒素雰囲気化でHg-Xeランプを用いて365nmの輝線を含む非偏光の紫外線300mJ/cm2を照射して、第二の位相差層を形成し、位相差板を製造した。第二の位相差層は、位相差を測定したところ、ポジティブA型位相差層であった。
位相差板において、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の合計厚みは2.6μmであった。
【0513】
[評価]
得られた位相差板について以下の評価を行った。
(1)位相差層の厚み測定
位相差層の膜厚は、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S-4800」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、位相差層の断面を撮影し、その断面の画像においてポジティブC型位相差層およびポジティブA型位相差層の膜厚を10箇所測定し、その10箇所の膜厚の算術平均値とした。位相差層の断面写真は、以下のようにして撮影した。まず、1mm×10mmに切り出したサンプルを包埋樹脂によって包埋したブロックを作製し、このブロックから一般的な切片作製方法によって穴等がない均一な、厚さ70nm以上100nm以下の切片を切り出した。切片の作製には、「ウルトラミクロトーム EM UC7」(ライカマイクロシステムズ株式会社)等を用いた。そして、この穴等がない均一な切片を測定サンプルとした。その後、走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて、測定サンプルの断面写真を撮影した。この断面写真の撮影の際には、検出器を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッション電流を「10μA」にしてSTEM観察を行った。倍率については、フォーカスを調節しコントラストおよび明るさを各層が見分けられるか観察しながら5000倍~20万倍で適宜調節した。
【0514】
(2)厚み方向位相差Rth及び面内位相差Re
位相差板の基板を剥離して、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層とを粘着付きガラスに、ポジティブC型位相差層/ポジティブA型位相差層/粘着付きガラスの順になるように転写して測定用サンプルを作製した。測定用サンプルに対して、位相差測定装置(王子計測機器(株)製、KOBRA-WR)により、波長550nmにおける厚み方向位相差Rth、及び面内位相差Reを測定した。
なお、本明細書において、波長550nmにおける厚み方向位相差Rth、及び面内位相差Reは、入射角を0°~50°の10°刻みで測定し、入射角0°および40°の測定結果から、面内位相差Reおよび厚み方向位相差Rthを算出した。傾斜中心角を遅相軸とし、平均屈折率は1.55、膜厚1.0μmと設定した際の算出値を用いた。
【0515】
(3)密着性
位相差板の基板を剥離して、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層とを粘着付きガラスに、ポジティブC型位相差層/ポジティブA型位相差層/粘着付きガラスの順になるように転写して測定用サンプルを作製した。測定用サンプルに対して、JIS K5400-8.5(JIS D0202)に準拠した方法で付着性-碁盤目試験を実施した。カッターナイフを使用して、ポジティブC型位相差層側からポジティブA型位相差層まで達する切込みを11本入れた後、90°向きを変えて11本切込みを入れた。カットした塗膜面にセロテープ(登録商標、(24mm×35m CT405AP-24)ニチバン製)を貼り付け、消しゴムでこすって塗膜に前記テープを付着させ、1~2分後に前記テープの端を持って塗膜面に直角に保ち、瞬間的にひきはがした。剥離した後の、残存したポジティブC型位相差層のカット部数の比をもとめ、下記の基準にて評価した。
(評価基準)
A:90/100~100/100
B:50/100~89/100
C:0/100~49/100
【0516】
(4)複合弾性率
ポジティブC型位相差層(第一の位相差層、配向層兼位相差層)の複合弾性率は以下のように求めた。
まず、位相差板の基板を剥離して、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層とを粘着付きガラスに、ポジティブC型位相差層/ポジティブA型位相差層/粘着付きガラスの順になるように転写して測定用サンプルを作製した。測定用サンプルを用いて、基板を剥離して露出したポジティブC型位相差層の表面のインデンテーション硬さを測定した。インデンテーション硬さ(HIT)の測定は、測定サンプルについてBRUKER社製の「TI950 TriboIndenter」を用いて行った。以下の測定条件で、圧子としてバーコビッチ(Berkovich)圧子(三角錐、BRUKER社製のTI-0039)をポジティブC型位相差層の表面に10秒かけて最大押し込み荷重3μNとなるまで垂直に押し込んだ。その後、一定保持して残留応力の緩和を行った後、10秒かけて除荷させて、緩和後の最大荷重を計測し、該最大荷重Pmax(μN)と接触投影面積Ap(nm2)とを用い、Pmax/Apにより、インデンテーション硬さ(HIT)を算出した。上記接触投影面積は、標準試料の溶融石英(BRUKER社製の5-0098)を用いてOliver-Pharr法で圧子先端曲率を補正した接触投影面積とした。なお、測定値の中に算術平均値から±20%以上外れるものが含まれている場合は、その測定値を除外し再測定を行った。
(測定条件)
・荷重速度:0.3μN/秒
・保持時間:5秒
・荷重除荷速度:0.3μN/秒
・測定温度:25℃
【0517】
次いで、得られたポジティブC型位相差層のインデンテーション硬さ(HIT)を測定する際に求められる上記接触投影面積Apを用いて、前記数式(1)から複合弾性率Erを求めた。複合弾性率は、インデンテーション硬さを10箇所測定し、その都度複合弾性率を求め、得られた10箇所の複合弾性率の算術平均値とした。
【0518】
(5)屈曲耐性試験
得られた位相差板について、下記の動的屈曲試験を行い、屈曲耐性を評価した。
動的屈曲試験の方法について、
図7を参照して説明する。可動部60aと非可動部60bとを備える可動式の金属板60(100mm×30mm )を2枚用意し、2枚の金属板60の非可動部60b間の距離が60mmとなるように、平行に配置した。金属板60の可動部60aを、
図7の(A)に示すように、非可動部60bに対して垂直になるように折り曲げ、可動部60aの上に、20mm×100mmに 切り出した位相差板の試験片70をポジティブA型位相差層の遅相軸方向が2枚の金属板60と平行になるよう置き、試験片70の中央が金属板間の距離の中央に位置するように、試験片70の両端をカプトン(登録商標)テープで可動部60aに固定した。次いで、可動部60aと非可動部60bとを直線状に配置して、
図7の(B)に示すような状態とし、すなわち、長辺の半分の位置で湾曲させた試験片70を両側から金属板60で挟み、両側の金属板60間の距離が60mmとなるように両側の金属板60を平行に配置した状態とした。このような状態と、
図7の(C)に示すような、 両側の金属板60間の距離が2.0mm(φ2mm動的屈曲試験の場合)となるように両側の金属板を平行に配置した状態に、60℃、93%相対湿度(RH)の環境下で、1分間に90回の屈曲回数で繰り返し変化させ、20万回屈曲を繰り返した。試験治具としては、恒温恒湿器内耐久試験システム(ユアサシステム機器製、面状体無負荷U字伸縮試験治具 DMX-FS)を用いた。
(評価基準)
A:20万回屈曲を繰り返しても破断せず、且つクラックを生じない。
B:20万回屈曲を繰り返す間に、破断する、又はクラックが生じる。
【0519】