(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050569
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】向上した微生物品質を有する押出物の製造
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20240403BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240403BHJP
【FI】
A23L5/00 D
A23L33/10
A23L5/00 N
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024000062
(22)【出願日】2024-01-04
(62)【分割の表示】P 2020544764の分割
【原出願日】2019-03-14
(31)【優先権主張番号】18162019.6
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】アッカー, ジハネ
(72)【発明者】
【氏名】コノリー, アラン
(72)【発明者】
【氏名】アーバン, カイ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】微生物ガイドラインに設定される要件を満たす飲み込み易い栄養補助食品、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、水溶性ビタミン及び他の微量養素を含む押出物に関する。その押出物は断熱押出し成形によって得られる。押出し成形中、押出し成形される組成物の粘度によって、温度が制御される。低温殺菌温度が達成され、つまり本発明の押出物は、微生物ガイドラインに設定される要件を満たす。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-組成物の全重量に対して、デンプン粉末を少なくとも10重量%、
-組成物の全重量に対して、セモリナを少なくとも10重量%、及び
-水を含み、
前記デンプン粉末と前記セモリナの重量比が3:1~1:3であり、
前記デンプン粉末が、振動供給60%、分散性空気圧0.1バールを用いたScirocco 2000乾燥ディスペンサーユニットに連結されたMalvern Mastersizer 2000で測定され、35秒にわたって連続的オブスキュレーション(7.0±1%)で測定された場合に10μm~100μmの粒径d(0.9)を有し、
前記セモリナが、30%(m/m)未満の500μmふるい分け阻止率を有する、組成物。
【請求項2】
前記組成物がさらに、水溶性ビタミンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
-組成物の全重量に対して、デンプン粉末を少なくとも20重量%、
-組成物の全重量に対して、セモリナを少なくとも20重量%、
-組成物の全重量に対して、少なくとも1種類の水溶性ビタミンを少なくとも5重量%、
-組成物の全重量に対して、少なくとも1種類の潤滑剤を少なくとも1重量%、及び
-組成物の全重量に対して、水を10~30重量%含み、
前記デンプン粉末と前記セモリナの重量比が、2:1~1:2である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物の断熱押出し成形を含む、押出物を製造する方法であって、該組成物が、
-組成物の全重量に対して、デンプン粉末を少なくとも10重量%、
-組成物の全重量に対して、セモリナを少なくとも10重量%、及び
-水を含み、
前記デンプン粉末と前記セモリナの重量比が3:1~1:3であり、
前記デンプン粉末が、振動供給60%、分散性空気圧0.1バールを用いたScirocco 2000乾燥ディスペンサーユニットに連結されたMalvern Mastersizer 2000で測定され、35秒にわたって連続的オブスキュレーション(7.0±1%)で測定された場合に10μm~100μmの粒径d(0.9)を有し、
前記セモリナが、30%(m/m)未満の500μmふるい分け阻止率を有する、方法。
【請求項5】
Rheomex PTW16/25 OS二軸スクリュー押出機を使用した(長さ/直径比=25;スクリュー回転数=200rpm;供給速度:300g/時)場合に、断熱押出し成形を開始して30分以内で前記押出機のダイにて、少なくとも70℃の温度に到達するように、前記デンプン粉末の粒径及び前記セモリナの粒径が選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
断熱押出し成形中の温度を制御するための、デンプン粉末とセモリナを含む混合物の使用であって、前記デンプン粉末と前記セモリナの重量比が3:1~1:3であり、
前記デンプン粉末が、振動供給60%、分散性空気圧0.1バールを用いたScirocco 2000乾燥ディスペンサーユニットに連結されたMalvern Mastersizer 2000で測定され、35秒にわたって連続的オブスキュレーション(7.0±1%)で測定された場合に10μm~100μmの粒径d(0.9)を有し、
前記セモリナが、30%(m/m)未満の500μmふるい分け阻止率を有する、使用。
【請求項7】
前記混合物が水溶性ビタミンを含む、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
ボブ直径27.99mm及び長さ42.10mmを有する同心回転シリンダーをせん断速度100s-1で使用して、MalvernレオメーターAR G2で温度60℃にて測定された場合に、混合物の全重量に対して前記デンプン粉末10重量%及び水90重量%からなる混合物の粘度が、少なくとも0.4Pa・sである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
ボブ直径27.99mm及び長さ42.10mmを有する同心回転シリンダーをせん断速度100s-1で使用して、MalvernレオメーターAR G2で温度70℃にて測定された場合に、混合物の全重量に対して前記セモリナ10重量%及び水90重量%からなる混合物の粘度が、少なくとも0.04Pa・sである、請求項1~3、8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
ボブ直径27.99mm及び長さ42.10mmを有する同心回転シリンダーをせん断速度100s-1で使用して、MalvernレオメーターAR G2で測定された場合に、混合物の全重量に対して前記セモリナ10重量%及び水90重量%からなる混合物の粘度が、75℃での同一混合物の粘度よりも85℃にて低い、請求項1~3、8、9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
ボブ直径27.99mm及び長さ42.10mmを有する同心回転シリンダーをせん断速度100s-1で使用して、MalvernレオメーターAR G2で測定された場合に、混合物の全重量に対して前記デンプン粉末10重量%及び水90重量%からなる混合物の粘度が、75℃での同一混合物の粘度よりも85℃にて低い、請求項1~3、8~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記セモリナが、ボブ直径27.99mm及び長さ42.10mmを有する同心回転シリンダーをせん断速度100s-1で使用して、MalvernレオメーターAR G2で測定された場合に、粒径d(0.9)300~500μmを有する、請求項1~3、8~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記デンプン粉末が、ボブ直径27.99mm及び長さ42.10mmを有する同心回転シリンダーをせん断速度100s-1で使用して、MalvernレオメーターAR G2で測定された場合に、粒径d(0.9)10~300μmを有する、請求項1~3、8~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記デンプン粉末が小麦デンプン粉末である、請求項1~3、8~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記セモリナがデュラムセモリナである、請求項1~3、8~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記デンプン粉末が、1%(m/m)未満の200μmふるい分け阻止率を有する、請求項1~3、8~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記セモリナが、20%(m/m)未満の200μmふるい分け阻止率を有する、請求項1~3、8~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記デンプン粉末と前記セモリナの前記重量比が、2:1~1:2である、請求項1~3、8~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
サッシェ又はスティックパックである、請求項1~3、8~18のいずれか一項に記載の組成物を含む容器。
【請求項20】
前記デンプン粉末が小麦デンプン粉末である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項21】
前記セモリナがデュラムセモリナである、請求項4、5又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記デンプン粉末が、1%(m/m)未満の200μmふるい分け阻止率を有する、請求項4、5、20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記セモリナが、20%(m/m)未満の200μmふるい分け阻止率を有する、請求項4、5、20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記デンプン粉末と前記セモリナの前記重量比が、2:1~1:2である、請求項4、5、20~23のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、飲み込み易い栄養補助食品の、対費用効果が高く、且つ持続可能な製造に関する。栄養補助食品は食用であり、したがって微生物ガイドラインに設定される要件を満たさなければならない。
【0002】
[発明の背景]
いずれの食品も特定の微生物品質を有する必要がある。食品安全性を高めるために、微生物ガイドラインが発行されている。かかるガイドラインの目的は公衆衛生を保護することである。幼児食品については、特に厳しい要件が適用される。
【0003】
微生物(及び特に細菌)を殺滅する、1つの方法は低温殺菌である。低温殺菌は、すべての微生物を殺すことを意味するわけではない。低温殺菌によって、食物における生存可能な病原体の数が安全なレベルに減らされる。
【0004】
滅菌はすべての微生物を殺すが、味、栄養素の含有量及び食物の品質に悪影響を及ぼす場合が多い。したがって、食品を滅菌することはあまり一般的ではない。
【0005】
飲み込み易い栄養補助食品の1つのタイプは押出物である。
【0006】
国際公開第2014/164956号パンフレットに、栄養性製品における微生物を低減するプロセスであって、押出機のハウジングが加熱されるプロセスが開示されている。国際公開第2014/164956号パンフレットの発明者らは、いくつかの加熱ゾーンに押出機を分けることを提案している。
【0007】
押出機の加熱には、余分なエネルギーが必要である。食品製造のために追加のエネルギーを用いることは、持続可能でもないし、対費用効果も高くない。
【0008】
したがって、持続可能な、且つ対費用効果が高い方法で病原微生物が低減/不活性化される、飲み込み易い栄養補助食品を製造する方法が必要とされている。
【0009】
[発明の概要]
本発明が解決すべき問題は、病原微生物を低レベルで有する飲み込み易い栄養補助食品の提供である。
【0010】
この問題は、ビタミン及び/又はミネラルを含有する押出物を提供することによって解決される。前記押出物はサッシェ内に包装され得る。消費する場合には、サッシェを開き、ポリッジ(porridge)又は他の種類の温かい、水を含む食品の上に押出物が振りかけられる。攪拌すると押出物は崩壊し、したがって飲み込み易い。
【0011】
本発明の押出物は、セモリナ及びデンプン粉末を含む。セモリナ及びデンプン粉末(小麦デンプン粉末など)は市販されている。しかしながら、市販の粉末は、許容できない数の細菌を含有することが多い。したがって、食用押出物のマトリックスを低温殺菌して、微生物の数を減らさなければならない。
【0012】
意外なことに、押出し成形が断熱条件下で行われる場合でさえ、押出機内で低温殺菌を行うことができる。
【0013】
断熱押出し成形とは、熱のインプット又は抽出なく動作することを意味し、つまり押出機は冷却も加熱もされない。押出機を加熱するため、又は冷却するためのエネルギーが必要ないことから、断熱条件下での押出し成形は、持続可能であり、且つ対費用効果が高い。
【0014】
しかしながら、温度の制御は、断熱条件下で押出し成形する場合には難しい。
【0015】
低温殺菌温度未満で製造された押出物は、それに関連する微生物ガイドラインの要件を満たさない場合には、廃棄しなければならない。したがって、食品廃棄を防ぐために、押出し成形を開始した後に可能な限り急速に低温殺菌温度が達成されるように、断熱押出し成形を行わなければならない。
【0016】
それと同時に、所定の最高温度を超えないように、断熱押出し成形を行わなければならない。理想的には、押出機内の温度は急速に上昇し、押出し成形が終わるまで、低温殺菌温度で安定した状態を維持する。
【0017】
意外なことに断熱条件下では、本発明の組成物が押出し成形された場合に、低温殺菌温度に急速に達し、次いで安定な状態が維持される。
【0018】
本発明の組成物は、
-組成物の全重量に対して、デンプン粉末を少なくとも10重量%、
-組成物の全重量に対して、セモリナを少なくとも10重量%、及び
-水を含み、
前記デンプン粉末と前記セモリナの重量比は5:1~1:5である。
【0019】
特定の理論に束縛されないが、押出し成形が開始された時に、かかる組成物の粘度は制御された手法で増加すると考えられる。粘度の増加は摩擦/圧力が大きくなることを意味し、その結果、低温殺菌するのに十分に高い温度が生じる。
【0020】
粘度の増加はいくつかの因子に依存する。小粒径を有するセモリナは、大きな粒子よりも、押出機内の組成物の粘度を多く、且つ/又は急速に増加する。セモリナの粒径が小さいほど、セモリナ中のデンプンはゲル化するのが速いと推測され得る。したがって、相対的に小さい粒径のセモリナが好ましい。
【0021】
本発明の好ましい実施形態において、200μmふるい分け阻止率40%未満(m/m)未満、好ましくは30%未満(m/m)未満、最も好ましくは20%未満(m/m)未満を有するセモリナが使用される。本発明のセモリナは、流動性であるべきであり、したがって少なくとも5%(m/m)を超える、200μmふるい分け阻止率を有するべきである。
【0022】
本発明の文脈において、「%(m/m)」とは、質量パーセントを意味し:特定のふるい(例えば、200μm)により保持されたものの質量が、ふるい分けされた組成物の総質量で割られ、それに100%を掛けたものである。
【0023】
粒径によって適正なセモリナを選択する代わりに、試験を実施して適切なセモリナを選択することができる。本発明の好ましい実施形態において、前記混合物の全重量に対して前記セモリナ10重量%、水90重量%からなる混合物の粘度が、ボブ直径27.99mm及び長さ42.10mmを有する同心回転シリンダーをせん断速度100s-1で使用して、MalvernレオメーターAR G2(Malvern Rheometer AR G2)で温度70℃にて測定された場合に、少なくとも0.04Pa・sであるように、セモリナが選択される。10%懸濁液の粘度は7回測定され、次いで平均化される。
【0024】
同様に、前記混合物の全重量に対して前記デンプン粉末10重量%、水90重量%からなる混合物の粘度が、ボブ直径27.99mm及び長さ42.10mmを有する同心回転シリンダーをせん断速度100s-1で使用して、MalvernレオメーターAR G2で温度60℃にて測定された場合に、少なくとも0.4Pa・sであるように、デンプン粉末が好ましくは選択される。10%懸濁液の粘度は7回測定され、次いで平均化される。
【0025】
かかる試験の文脈において、「重量%」とは、試験される混合物の全重量を意味する。
【0026】
本発明の好ましい組成物は、
-組成物の全重量に対して、デンプン粉末を少なくとも10重量%、
-組成物の全重量に対して、セモリナを少なくとも10重量%セモリナ、及び
-水を含み、
前記デンプン粉末と前記セモリナとの重量比は5:1~1:5であり、且つ
前記混合物の全重量に対して前記デンプン粉末10重量%及び水90重量%からなる混合物の粘度が、ボブ直径27.99mm及び長さ42.10mmを有する同心回転シリンダーをせん断速度100s-1で使用して、MalvernレオメーターAR G2で温度60℃にて測定された場合に、少なくとも0.4Pa・sであり、且つ/又は
前記混合物の全重量に対して前記セモリナ10重量%及び水90重量%からなる混合物の粘度が、ボブ直径27.99mm及び長さ42.10mmを有する同心回転シリンダーをせん断速度100s-1で使用して、MalvernレオメーターAR G2で温度70℃にて測定された場合に、少なくとも0.04Pa・sである。
【0027】
断熱条件下にてかかる組成物を押出し成形した場合、押出機ダイでの温度は、75~80℃の温度に急速に上昇し、押出機は加熱も冷却もされないが、押出し成形プロセスの残りの間、安定な状態を維持する。所望の温度に到達しない場合には、供給速度及び/又はスクリュー回転数を増加することができる。
【0028】
このように得られた押出物は、押出機の加熱又は冷却のための追加のエネルギーが使用されていないが、関連する微生物ガイドラインの要件を満たす。したがって、本発明は、本明細書に記載の組成物の断熱押出し成形を含む、低温殺菌方法にも関する。
【0029】
デンプン粉末と前記セモリナのどちらも含む組成物の粘度は、配合材料の重量比及び配合材料の総量に応じて異なる。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、
-組成物の全重量に対して、デンプン粉末を少なくとも20重量%、
-組成物の全重量に対して、セモリナを少なくとも20重量%、
-組成物の全重量に対して、少なくとも1種類の水溶性ビタミンを少なくとも5重量%、
-好ましくは、組成物の全重量に対して、中鎖トリグリセリド(MCT)などの少なくとも1種類の潤滑剤を少なくとも1重量%、及び
-組成物の全重量に対して、水を10~30重量%含み、
前記デンプン粉末と前記セモリナとの重量比は、4:1~1:4、好ましくは3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2である。
【0030】
最終的に、本発明は、飲み込み易い栄養補助食品を製造するための、デンプン粉末及びセモリナを含む組成物の使用に関する。本発明の好ましい実施形態は、水溶性ビタミンを含む押出物など、食用押出物を製造するためのかかる組成物の使用に関する。好ましい水溶性ビタミンはビタミンB12及びナイアシンアミドである。
【0031】
[発明の詳細な説明]
ビタミンを含む押出物は当技術分野で公知である。その押出物は固形であり、いくらかの残留水を含有する場合が多く、円柱と形状が似ている場合がある。所望の場合には、押出し成形後及び乾燥前に、例えば整粒機を使用することによって、これらの円柱が形作られ得る。
【0032】
押出物のサイズは、押出機の終端に取り付けられたダイに応じて異なる。本発明の一般的な押出物は円柱の形状と似ており、長さ50~1500μmを有する。
【0033】
ビタミンを含む押出物は食用マトリックスを有する。押出物のマトリックスの組成は、選択されるビタミンに適合させる必要がある。脂溶性ビタミンを含む押出物は、水溶性ビタミンを含む押出物と比べて、異なる種類のマトリックスを必要とする。
【0034】
本発明は、好ましくは水溶性ビタミンを含む押出物に関する。押出物マトリックスがデンプン粉末及びセモリナを含む場合、かかる押出物は意外なことに、容易に製造することができる。
【0035】
[製造原理]
好ましくは、複数のバレルを有する二軸スクリュー押出機が使用される。前記バレルのそれぞれ、又は一部は入口を有し得る。
【0036】
好ましくは、デンプン粉末、セモリナ及びビタミン/微量養素の乾燥混合物が押出機の第1バレル内に供給される。次いで、押出機の第2バレル内に水が供給され、前記第2バレルは前記第1バレルの下流に位置する。前記第2バレル内に供給される水の量は、切断可能なストランドが押出機のダイから出るように調節される。次いで、任意の潤滑剤が押出機の第3バレル内に供給され、前記第3バレルは前記第2バレルの下流に位置する。
【0037】
本発明に従って、押出し成形は断熱条件下にて行われ、つまり押出機は冷却も加熱もされない。本発明の好ましい実施形態において、断熱条件は、押出機内に供給される成分(つまり、デンプン粉末、セモリナ、ビタミン/微量養素、水及び潤滑剤)が室温であることも意味する。
【0038】
押出し成形プロセスを開始した直後に、温度が上昇し始める。ダイの温度が低温殺菌するのに十分に高くなったら、ダイフェイスカットが開始され得る。
【0039】
意外なことに、本明細書に記載の組成物を押出し成形する場合には、より迅速に、低温殺菌に十分に高い温度に達する。さらに、本明細書に記載の組成物を押出し成形する場合には、ダイの温度が、意外なことに安定なままである(例えば、70℃~80°)。押出し成形パラメーターの適切な値(供給速度、スクリュー回転数等)を選択することによって、温度をさらに調節することができる。
【0040】
ダイフェイスカット後、押出物を乾燥させる必要があり得る。例えば、流動層乾燥機を使用して、文献に記載のように、これを行うことができる。任意選択で、乾燥前に押出物を形作ることができる(例えば、整粒機を用いて)。
【0041】
包装及び貯蔵前に乾燥押出物がふるい分けされ得る。
【0042】
本発明は、
-組成物の全重量に対して、デンプン粉末を少なくとも10重量%、
-組成物の全重量に対して、セモリナを少なくとも10重量%、
-水を含む組成物の押出し成形を含む、押出物を製造する方法に関し、
前記デンプン粉末と前記セモリナとの重量比は、5:1~1:5、好ましくは4:1~1:4、より好ましくは3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2である。
【0043】
本発明は、以下の工程:
-(i)組成物の全重量に対してデンプン粉末を少なくとも10重量%、(ii)組成物の全重量に対してセモリナを少なくとも10重量%、及び(iii)ビタミンを含む混合物を、押出機の第1バレル内に供給する工程と、
-押出機の第2バレル内に水を供給する工程であって、前記第2バレルが、前記第1バレルの下流に位置する工程と、
-押出機の第3バレル内に少なくとも1種類の潤滑剤を供給する工程であって、前記第3バレルが、前記第2バレルの下流に位置する工程と、を含む押出物を製造する方法であって、
前記デンプン粉末と前記セモリナとの重量比が5:1~1:5であり、且つ前記重量比が、好ましくは4:1~1:4、より好ましくは3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2である方法にも関する。
【0044】
本発明の好ましい実施形態において、押出物を製造する方法は、組成物の押出し成形を含み、前記組成物は、
-組成物の全重量に対して、デンプン粉末を少なくとも20重量%、
-組成物の全重量に対して、セモリナを少なくとも20重量%、
-組成物の全重量に対して、少なくとも1種類の水溶性ビタミンを少なくとも5重量%、
-組成物の全重量に対して、中鎖トリグリセリド(MCT)などの少なくとも1種類の潤滑剤を好ましくは少なくとも1重量%、
-組成物の全重量に対して、水を10~30重量%含み、
前記デンプン粉末と前記セモリナの重量比が、4:1~1:4、好ましくは3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2である。
【0045】
本発明は、組成物の押出し成形を含む、押出物を製造する方法であって、前記組成物が、
-組成物の全重量に対して、デンプン粉末を少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、
-組成物の全重量に対して、セモリナを少なくとも10重量%セモリナ、好ましくは少なくとも20重量%、
-水を含み、
前記デンプン粉末と前記セモリナの重量比が5:1~1:5、好ましくは4:1~1:4、より好ましくは3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2であり、且つ
Rheomex PTW16/25 OS二軸スクリュー押出機を使用した(長さ/直径比=25;スクリュー回転数=200rpm;供給速度:300g/時)場合に、断熱押出し成形を開始して30分以内で押出機のダイにて、少なくとも70℃の温度に到達するように、前記デンプン粉末の粒径と前記セモリナの粒径が選択される、方法にも関する。
【0046】
本発明は、組成物の押出し成形を含む、押出物を製造する方法であって、前記組成物が、
-組成物の全重量に対して、デンプン粉末を少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、
-組成物の全重量に対して、セモリナを少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、
-水を含み、
前記デンプン粉末と前記セモリナの重量比が、5:1~1:5、好ましくは4:1~1:4、より好ましくは3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2であり、且つ
ボブ直径27.99mm及び長さ42.10mmを有する同心回転シリンダーをせん断速度100s-1で使用して、MalvernレオメーターAR G2で測定された場合に、前記混合物の全重量に対して前記セモリナ10重量%及び水90重量%からなる混合物の粘度が、75°での同一混合物の粘度よりも85℃にて低く、且つ/又は
ボブ直径27.99mm及び長さ42.10mmを有する同心回転シリンダーをせん断速度100s-1で使用して、MalvernレオメーターAR G2で測定された場合に、前記混合物の全重量に対して前記デンプン粉末10重量%及び水90重量%からなる混合物の粘度が、75°での同一混合物の粘度よりも85℃にて低い、方法にも関する。
【0047】
本発明は、組成物の押出し成形を含む、押出物を製造する方法であって、前記組成物が、
-組成物の全重量に対して、デンプン粉末を少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、
-組成物の全重量に対して、セモリナを少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、
-水を含み、
前記デンプン粉末と前記セモリナの重量比が、5:1~1:5、好ましくは4:1~1:4、より好ましくは3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2であり、且つ
振動(vibration)供給60%、分散性空気圧0.1バールを用いたScirocco 2000乾燥ディスペンサーユニットに連結されたMalvern Mastersizer 2000で測定された場合、及び35秒にわたって連続的オブスキュレーション(7.0±1%)で測定された場合、前記セモリナが、300~500μm、好ましくは350~450μmの粒径d(0.9)を有し、且つ/又は
振動供給60%、分散性空気圧0.1バールを用いたScirocco 2000乾燥ディスペンサーユニットに連結されたMalvern Mastersizer 2000で測定された場合、及び35秒にわたって連続的オブスキュレーション(7.0±1%)で測定された場合、前記デンプン粉末が、10~300μm、好ましくは30~100μmの粒径d(0.9)を有する、方法にも関する。
【0048】
本発明は、組成物の押出し成形を含む、押出物を製造する方法であって、前記組成物が、
-組成物の全重量に対して、デンプン粉末を少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、
-組成物の全重量に対して、セモリナを少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、
-水を含み、
前記デンプン粉末と前記セモリナの重量比が、5:1~1:5、好ましくは4:1~1:4、より好ましくは3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2であり、且つ
ボブ直径27.99mm及び長さ42.10mmを有する同心回転シリンダーをせん断速度100s-1で使用して、MalvernレオメーターAR G2で測定された場合に、前記混合物の全重量に対して前記デンプン粉末10重量%及び水90重量%からなる混合物の粘度が、温度60℃で測定された場合に少なくとも0.4Pa・sであり、且つ/又は
ボブ直径27.99mm及び長さ42.10mmを有する同心回転シリンダーをせん断速度100s-1で使用して、MalvernレオメーターAR G2で測定された場合に、前記混合物の全重量に対して前記セモリナ10重量%及び水90重量%からなる混合物の粘度が、温度70℃で測定された場合に少なくとも0.04Pa・sである、方法にも関する。
【0049】
本発明の方法において、前記デンプン粉末は、好ましくは小麦デンプン粉末である。
【0050】
本発明は、押出物を製造するための請求項に記載の方法によって得られる押出物にも関する。
【0051】
[水溶性ビタミン]
好ましくは、本発明の押出物は、水溶性ビタミン及び他の好ましくは水溶性の微量養素を含む。一実施形態において、本発明の押出物は、
-チアミン硝酸塩などのビタミンB1の供給源、
-リボフラビン又はリボフラビン5’リン酸エステルナトリウムなどのビタミンB2の供給源、
-ピリドキシン塩酸塩などのビタミンB6の供給源、
-ナイアシンアミドなどのビタミンPPの供給源、
-結晶質ビタミンB12などのビタミンB12の供給源、
-任意選択で、リン酸三カルシウム及び/又は
-葉酸、
を含む組成物の押出し成形によって得られる。
【0052】
好ましくは、本発明の押出物は、
-組成物の全重量に対して、デンプン粉末を少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、
-組成物の全重量に対して、セモリナを少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、
-チアミン硝酸塩、リボフラビン5’リン酸エステルナトリウム、ピリドキシン塩酸塩ナイアシンアミド、結晶質ビタミンB12及び/又は葉酸、及び
-水、
を含む組成物であって、
前記デンプン粉末と前記セモリナの重量比が、5:1~1:5、好ましくは4:1~1:4、より好ましくは3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2である、組成物の押出し成形によって得ることができる。
【0053】
水溶性ビタミン及び他の微量養素の量は、成人が健康を維持するために、1日当たり10~50個を超える押出物を飲み込む必要がないように選択される。
したがって、本発明の一実施形態は、
-組成物の全重量に対して、デンプン粉末を少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、
-組成物の全重量に対して、セモリナを少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、
-組成物の全重量に対して、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンPP及びビタミンB12からなる群から選択される、少なくとも1種類の水溶性を少なくとも5重量%、
-任意選択で葉酸、及び
-水、
を含む組成物であって、
前記デンプン粉末と前記セモリナの重量比が、5:1~1:5、好ましくは4:1~1:4、より好ましくは3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2である、組成物の押出し成形によって得られる押出物に関する。
【0054】
水溶性ビタミン及び他の水溶性微量養素は市販されている。好ましい供給元はDSMニュートリショナル・プロダクツ社(DSM(登録商標)Nutritional Products)である。リボフラビンは商品名Riboflavin Universal(登録商標)で市販されている。
【0055】
完全に除外されるわけではないが、葉酸を除いて、いずれかの脂溶性ビタミンを含むことは予見されない。本発明の好ましい実施形態において、中鎖トリグリセリド(MCT)などの潤滑剤が、押出物中の唯一の脂溶性材料である。
【0056】
したがって、本発明の一実施形態は、
-組成物の全重量に対して、デンプン粉末を少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、
-組成物の全重量に対して、セモリナを少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、
-組成物の全重量に対して、少なくとも1種類の水溶性ビタミンを少なくとも5重量%、
-任意選択で、少なくとも1種類の更なる水溶性微量養素及び/又は葉酸、
-好ましくは、中鎖トリグリセリド(MCT)などの少なくとも1種類の潤滑剤、及び
-水、
からなる組成物であって、
前記デンプン粉末と前記セモリナの重量比が、5:1~1:5、好ましくは4:1~1:4、より好ましくは3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2である、組成物の押出し成形によって得られる押出物に関する。
【0057】
本発明の文脈において、また上述の実施形態において、小麦デンプン粉末が好ましいデンプン粉末である。
【0058】
[セモリナ]
本発明の押出物は、市販のセモリナを含む。セモリナは、主に鋭いエッジ及びかどを有する粒子からなる顆粒製品である。それは、不純物が取り除かれたデュラム小麦を製粉して、ふるい分けして得られる。
【0059】
製粉及びふるい分けが如何に行われるかによって、セモリナの粒子は小さくなり得るし、大きくなり得る。水性セモリナの粘度は、小さな粒子を有するセモリナが使用される場合には(i)急激に、且つ/又は(ii)低温で増加する。したがって、断熱条件下にて一定のパラメーター(例えば、スクリュー回転数)を用いて押出し成形した場合、粒子が小さいセモリナが使用された場合には、低温殺菌温度に達するのが速い。
【0060】
本発明の好ましい実施形態において、40%(m/m)未満、好ましくは30%(m/m)未満、最も好ましくは20%(m/m)未満の200μmふるい分け阻止率を有するセモリナが使用される。前記セモリナは好ましくは、30%(m/m)未満の500μmふるい分け阻止率、及び/又は40%(m/m)未満の390μmふるい分け阻止率、及び/又は40%(m/m)未満の280μmふるい分け阻止率、及び/又は10%(m/m)未満の112μmふるい分け阻止率を有する。
【0061】
本発明の他の実施形態において、ボブ直径27.99mm及び長さ42.10mmを有する同心回転シリンダーをせん断速度100s-1で使用して、MalvernレオメーターAR G2で70℃にて測定された場合に、前記混合物の全重量に対して前記セモリナ10重量%及び水90重量%からなる混合物の粘度が、少なくとも0.04Pa・sとなるように、且つ/又はボブ直径27.99mm及び長さ42.10mmを有する同心回転シリンダーをせん断速度100s-1で使用して、MalvernレオメーターAR G2で測定された場合に、前記混合物の全重量に対して前記セモリナ10重量%及び水90重量%からなる混合物の粘度が、75℃での同一混合物の粘度よりも85℃にて低くなるように、且つ/又は振動供給60%、分散性空気圧0.1バールを用いたScirocco 2000乾燥ディスペンサーユニットに連結されたMalvern Mastersizer2000で測定された場合、及び35秒にわたって連続的オブスキュレーション(7.0±1%)で測定された場合、セモリナが300~500μm、好ましくは350~450μmの粒径d(0.9)を有するように、セモリナが選択される。
【0062】
意外なことに、セモリナがかかる手法で選択された場合には、断熱押出し成形中の温度は十分に制御される。
【0063】
[デンプン粉末]
本発明の押出物は、市販のデンプン粉末を含む。好ましい供給元はロケット社(Roquette)である。好ましいデンプン粉末は小麦デンプン粉末である。
【0064】
本発明の文脈で使用されるデンプン粉末は、外観は白色であり、セモリナと異なり、流動性ではない。大部分の小麦粉より軽いが、視覚的には、デンプン粉末は小麦粉と似ている。
【0065】
デンプン粉末の粒子は、製粉及びふるい分けが如何に行われるかによって、セモリナの粒子は小さくなり得るし、大きくなり得る。水性デンプン粉末の粘度は、小さな粒子を有するデンプン粉末が使用された場合には、(i)急激に、且つ/又は(ii)低温で増加する。したがって、断熱条件下にて押出し成形した場合、速く低温殺菌温度に達する。
【0066】
本発明の好ましい実施形態において、5%(m/m)未満、好ましくは3%(m/m)未満、最も好ましくは1%(m/m)未満の200μmふるい分け阻止率を有するデンプン粉末が使用される。好ましくは、前記デンプン粉末は、少なくとも0.05%(m/m)の200μmふるい分け阻止率を有する。
【0067】
本発明の他の実施形態において、ボブ直径27.99mm及び長さ42.10mmを有する同心回転シリンダーをせん断速度100s-1で使用して、MalvernレオメーターAR G2で60℃にて測定された場合に、前記混合物の全重量に対して前記デンプン粉末10重量%及び水90重量%からなる混合物の粘度が少なくとも0.4Pa・sとなるように、且つ/又はボブ直径27.99mm及び長さ42.10mmを有する同心回転シリンダーをせん断速度100s-1で使用して、MalvernレオメーターAR G2で測定された場合に、前記混合物の全重量に対して前記デンプン粉末10重量%及び水90重量%からなる混合物の粘度が、75℃での同一混合物の粘度よりも85℃にて低くなるように、且つ/又は振動供給60%、分散性空気圧0.1バールを用いたScirocco 2000乾燥ディスペンサーユニットに連結されたMalvern Mastersizer 2000で測定された場合、及び35秒にわたって連続的オブスキュレーション(7.0±1%)で測定された場合、デンプン粉末が10~300μm、好ましくは30~100μmの粒径d(0.9)を有するように、デンプン粉末が選択される。
【0068】
意外なことに、デンプン粉末がかかる手法で選択された場合には、本明細書に記載の組成物を押出し成形した場合に、断熱押出し成形中の温度は十分に制御される。前記デンプン粉末が小麦デンプン粉末であり、且つ/又は前記デンプン粉末が本明細書に記載のようにセモリナと混合される場合に、これは特に当てはまる。
【0069】
[押出物の組成]
本発明の押出物は、本明細書に記載のセモリナ、本明細書に記載のデンプン粉末、及び本明細書に記載のビタミン/微量養素を含む。
【0070】
したがって、本発明は、水溶性ビタミン及び/又は微量養素を含む押出物を製造するための、デンプン粉末とセモリナを含む混合物の使用にも関する。かかる混合物が断熱条件下にて押出し成形される場合、温度は十分に制御される。したがって、本発明は、断熱押出し成形中の温度を制御するための、デンプン粉末とセモリナを含む混合物の使用にも関する。
【0071】
本発明の押出物は、
-組成物の全重量に対して、デンプン粉末を少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、
-組成物の全重量に対して、セモリナを少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、及び
-水を含む組成物であって、
前記デンプン粉末と前記セモリナの重量比が、5:1~1:5、好ましくは4:1~1:4、より好ましくは3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2であり、且つ
前記デンプン粉末及び/又は前記セモリナが、先行するパラグラフに記載のように選択される、組成物の押出し成形によって得られる。
【0072】
本発明の好ましい実施形態において、押出物は、
-組成物の全重量に対して、デンプン粉末を少なくとも20重量%、
-組成物の全重量に対して、セモリナを少なくとも20重量%、
-好ましくは、組成物の全重量に対して、中鎖トリグリセリド(MCT)などの少なくとも1種類の潤滑剤を少なくとも1重量%、及び
-組成物の全重量に対して、水を10~30重量%含む組成物であって、
前記デンプン粉末と前記セモリナの重量比が、5:1~1:5、好ましくは4:1~1:4、より好ましくは3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2であり、且つ
前記デンプン粉末及び/又は前記セモリナが、先行するパラグラフに記載のように選択される、組成物の押出し成形によって得られる。
【0073】
本発明の最も好ましい実施形態において、押出物は、
-組成物の全重量に対して、デンプン粉末を少なくとも20重量%、
-組成物の全重量に対して、セモリナを少なくとも20重量%、
-組成物の全重量に対して、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンPP及びビタミンB12、からなる群から選択される、少なくとも1種類の水溶性ビタミンを少なくとも5重量%、
-葉酸、
-好ましくは、組成物の全重量に対して、中鎖トリグリセリド(MCT)などの少なくとも1種類の潤滑剤を少なくとも1重量%、及び
-水を含む組成物であって、
前記デンプン粉末と前記セモリナの重量比が2:1~1:2であり、且つ
ボブ直径27.99mm及び長さ42.10mmを有する同心回転シリンダーをせん断速度100s-1で使用して、Malvernレオメーター AR G2で測定された場合に、前記混合物の全重量に対して前記セモリナ10重量%及び水90重量%からなる混合物の粘度が、75℃での同一混合物の粘度よりも85℃にて低く、且つ/又はボブ直径27.99mm及び長さ42.10mmを有する同心回転シリンダーをせん断速度100s-1で使用して、MalvernレオメーターAR G2で測定された場合に、前記混合物の全重量に対して前記デンプン粉末10重量%及び水90重量%からなる混合物の粘度が、75℃での同一混合物の粘度よりも85℃にて低い、組成物の押出し成形によって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】タイプ1水性セモリナ及びタイプ2水性セモリナそれぞれの粘度の温度依存性を示す。粘度はy軸[Pa・s]に示されるのに対して、温度はx軸[℃]に示される。更なる詳細については、以下の実施例1を参照のこと。
【
図2】タイプ1水性小麦デンプン及びタイプ2水性小麦デンプンそれぞれの粘度の温度依存性を示す。粘度はy軸[Pa・s]に示されるのに対して、温度はx軸[℃]に示される。更なる詳細については、以下の実施例2を参照のこと。
【
図3】供給速度300g/時での押出し成形の開始(t=0)から押出し成形の終了までの押出機ダイの温度を示す。温度はy軸[℃]に示されるのに対して、時間はx軸に分で示される。更なる詳細については、以下の実施例3を参照のこと。
【
図4】供給速度500g/時での押出し成形の開始(t=0)から押出し成形の終了までの押出機ダイの温度を示す。温度はy軸[℃]に示されるのに対して、時間はx軸に分で示される。更なる詳細については、以下の実施例4を参照のこと。
【
図5】供給速度300g/時での押出し成形の開始(t=0)から押出し成形の終了までの押出機ダイの温度を示す。温度はy軸[℃]に示されるのに対して、時間はx軸に分で示される。更なる詳細については、以下の実施例5を参照のこと。
【0075】
[実施例1(セモリナ)]
2種類の異なるタイプのセモリナを試験した:タイプ1はタイプ2よりも粒径が小さい。したがって、タイプ2のセモリナをふるい分けした場合、タイプ1のセモリナをふるい分けした場合よりも、ふるい(200μm)に粒子が多く残る。詳細を表1に示す。
【0076】
タイプ1のセモリナを水と混合した。得られた混合物は、前記混合物の全重量に対して前記セモリナ10重量%及び水90重量%からなった。
【0077】
同様に、タイプ2のセモリナを水と混合した。得られた混合物は、前記混合物の全重量に対して前記セモリナ10重量%及び水90重量%からなった。
【0078】
次いで、ボブ直径27.99mm及び長さ42.10mmを有する同心回転シリンダーをせん断速度100s
-1で使用して、MalvernレオメーターAR G2で、両方の混合物の粘度が測定される。10%懸濁液を段階的に25℃~85℃に加熱し、それぞれの温度段階で粘度を7回測定し、次いで平均化した。両方の試験結果を
図1に示す。
【0079】
【0080】
図1から、粘度の増加はセモリナの粒径に応じて異なることが分かる。タイプ1のセモリナ(小さい粒径)を含む混合物の粘度は、タイプ2のセモリナ(大きい粒径)を含む混合物の粘度よりも低い温度で増加し始める。
【0081】
さらに、タイプ1のセモリナ(小さい粒径)を含む混合物の最大粘度は、タイプ2のセモリナ(大きい粒径)を含む混合物の最大粘度よりも低い温度で達成される。
【0082】
意外なことに、2種類のセモリナの違いは、55~80℃の温度範囲で最も顕著である。この温度範囲は、ビタミンの押出し成形に関して特に重要である(実施例3、4及び5参照)。
【0083】
温度60~70℃にて、タイプ1のセモリナ(小さい粒径)を含む混合物は、タイプ2のセモリナ(大きい粒径)よりも高い粘度を有する。特定の理論に束縛されないが、小さな粒子は、大きな粒子よりもゲル化を受けやすいと考えられる。
【0084】
しかしながら、温度75~85℃では、タイプ1の水性セモリナ(小さい粒径)は、タイプ2の水性セモリナ(大きい粒径)よりも低い粘度を有する。予め決定された最高温度を断熱押出し成形中に超えていないことを確かめるのに、粘度の減少を確認することは役に立つと考えられる。
【0085】
実施例5の断熱押出し成形(以下参照)において、タイプ1のセモリナ(小さい粒径)が使用された。タイプ1のセモリナ(小さい粒径)の粘度の温度依存性は、断熱押出し成形の初めに急速に温度が上昇する引き金となり、それによって温度が100℃を超えないことが保証されると思われる。100℃を超える温度はビタミンに悪影響であると考えられる。
【0086】
[実施例2(小麦デンプン粉末)]
2つの異なるタイプの小麦デンプン粉末を試験した。どちらの粉末も外観は白色であり、セモリナと異なり流動性ではない:タイプ1はタイプ2よりも低いd(0.9)値を有し、粒径が小さいことを示す。
【0087】
d(0.9)値は、振動供給60%、分散性空気圧0.1バールを用いたScirocco 2000乾燥ディスペンサーユニットに連結されたMalvern Mastersizer 2000で測定され、且つ35秒にわたって連続的オブスキュレーション(7.0±1%)で測定された。
【0088】
2つのタイプの小麦デンプン粉末についての詳細を表2に示す。
【0089】
タイプ1の小麦デンプン粉末を水と混合した。得られた混合物は、前記混合物の全重量に対して前記小麦デンプン10重量%及び水90重量%からなった。
【0090】
同様に、タイプ2の小麦デンプン粉末を水と混合した。得られた混合物は、前記混合物の全重量に対して前記小麦デンプン10重量%及び水90重量%からなった。
【0091】
次いで、実施例1に記載のように、両方の混合物の粘度を測定した。
【0092】
【0093】
【0094】
図2は、粘度の増加が小麦デンプン粉末の粒径に依存することを示す。温度が上昇すると、タイプ1の小麦デンプン粉末(小さな粒径)を含む混合物の粘度が、タイプ2の小麦デンプン粉末(大きな粒径)を含む混合物の粘度よりもかなり大きく増加する。
【0095】
さらに、タイプ1の小麦デンプン粉末(小さな粒径)を含む混合物の最大粘度は、タイプ2の小麦デンプン粉末(大きな粒径)を含む混合物の最大粘度よりもかなり高い。
【0096】
2つのタイプの小麦デンプン粉末の違いは、55℃を超える温度で最も顕著である。
【0097】
55℃を超える温度にて、タイプ1の小麦デンプン粉末(小さな粒径)は、タイプ2のセモリナ(大きな粒径)よりも高い粘度を有する。特定の理論に束縛されないが、小さな粒子は大きな粒子よりもゲル化を受けやすいと考えられる。
【0098】
しかしながら、65℃を超える温度では、タイプ1の小麦デンプン粉末(小さな粒径)を含む混合物の粘度が減少し始める。確認される減少は、断熱押出し成形中の最高温度を制御するのに役立つと考えられる。
【0099】
実施例5(下記参照)の断熱押出し成形において、タイプ1の小麦デンプン粉末(小さな粒径)が、タイプ1のセモリナ(小さな粒径)と併せて使用された。かかる混合物の粘度の温度依存性が、断熱押出し成形の開始時の急速な温度上昇を引き起こし、それと同時に温度が100℃を超えるのを防ぐと思われる。100℃を超える温度はビタミンに悪影響を及ぼすと考えられる。
【0100】
[実施例3(タイプ2のマトリックス)]
表3に示す組成物の押出し成形によって、押出物が得られた。マトリックスとして、実施例2のタイプ2小麦デンプン粉末と、実施例1のタイプ2セモリナが、重量比1:1で混合された。
【0101】
【0102】
15穴からなる0.8mmダイを備えた、長さ/直径比25のRheomex PTW16/25 OS二軸スクリュー押出機(サーモ・フィッシャー社(Thermo Fischer),カールスルーエ(Karlsruhe))を使用した。Haake Polylab drive(サーモ・フィッシャー社,カールスルーエ)ユニットが押出機に連結された。
【0103】
小麦デンプン粉末、セモリナ及びすべての水溶性活性成分(つまり、ビタミン及び微量養素)のブレンドを押出機の第1バレル内に添加した(供給速度:300g/時)。次いで、押出機の第2バレルに水を添加し、前記第2バレルは前記第1バレルの下流に位置した。次いで、潤滑剤(つまり、MCT)を押出機のバレル4に添加し、前記バレルは、前記バレル2の下流に位置した。
【0104】
押出機のスクリューは、適切な混合を確保するために2つの応力ゾーンを有した。応力ゾーン1はバレル2の後に位置し、第2応力ゾーンはバレル4の後に位置した。
【0105】
押出し成形を断熱条件下にて行った。つまり押出機は冷却も加熱もされず、押出機内に挿入される配合材料(例えば、水)は室温であった。全押出し成形中(60分間)に押出機のダイにて温度を測定した;その結果を
図3に示す。
【0106】
切断可能な押出しストランドがそのダイから現れたら、ダイフェイスカットが開始された。試料を定期的に採取し、次いで流動層乾燥機で乾燥させた。乾燥させた押出物は、乾燥押出物の全重量に対して、約5重量%の残留水を有した。
【0107】
図3は、ダイの温度が上昇し、次いで60℃にて安定な状態を維持したことを示す。
図3から、温度約60℃に達するのに、およそ30分掛かったことも分かる。
【0108】
[実施例4(タイプ2のマトリックス)]
実施例3を繰り返した。しかしながら、今回は、供給速度を300g/時から500g/時に増加した。
【0109】
実施例2と同様に、押出し成形を断熱条件下にて行い、つまり押出機は冷却も加熱もされず、押出機内に挿入される配合材料(例えば、水)は室温であった。全押出し成形中(90分間)に押出機のダイにて温度を測定した;その結果を
図4に示す。
【0110】
実施例3と異なり、温度は上昇し続けた。
【0111】
おそらく、高い供給速度(300g/時に対して500g/時)を適用したため、低温殺菌を確保するのに十分に高い温度に達した。しかしながら、低温殺菌に十分に高い温度に到達するのに、およそ50分掛かった。したがって、実施例3と同様に、断熱押出し成形の開始時での温度の上昇は相対的に遅かった。
【0112】
70℃未満の温度で製造された押出物(つまり、最初の30分間で製造された押出物)は廃棄しなければならなかった。
【0113】
[実施例5(タイプ1のマトリックス)]
実施例3を繰り返した(つまり、供給速度:300g/時)。しかしながら今回は、実施例2のタイプ1小麦デンプン粉末(タイプ2の代わりに)及び実施例1のタイプ1セモリナ(タイプ2の代わりに)を使用した。詳細については、表4を参照のこと。
【0114】
【0115】
再び、押出し成形を断熱条件下にて行った。つまり押出機は冷却も加熱もされず、押出機内に挿入される配合材料(例えば、水)は室温であった。全押出し成形中(130分間)に押出機のダイにて温度を測定した;その結果を
図5に示す。
【0116】
意外なことに、わずか300g/時の供給速度を適用したにもかかわらず、約82℃の温度プラトーに達した。
【0117】
さらに、非常に急速に前記プラトーに達した。実施例4において、約82℃の温度に達するのに、ほぼ50分掛かった。実施例5では、約30分後に同様な温度に達した。
【0118】
したがって、タイプ1セモリナとタイプ1小麦デンプン粉末の混合物を使用することによって、迅速に低温殺菌温度に達することが可能となり、それと同時に許容できない高温が防がれる。
【0119】
[実施例6(食品における適用)]
ポリッジ(Porridge)を調製した。実施例5の押出物約40個を温かいポリッジに振りかけた。スプーンでかき混ぜた後に目視で観察すると、押出物を発見することができなかった。つまり、押出物は崩壊されていた。ポリッジは飲み込み易い。
【0120】
[実施例7(微生物品質)]
実施例1で使用されたタイプ1セモリナの微生物品質を試験した。好気性細菌総数(CFU/gで測定された)は規制限度の約50倍高いことが試験から判明した。酵母及びカビ(CFU/gで測定された)も規制限度を超えた。さらに、かなりの量のサルモネラ属菌(Salmonella spp.)及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が検出された。
【0121】
適用可能な規制限度を以下の表5に示す。CFUは「コロニー形成単位」を意味する。
【0122】
【0123】
次に、実施例5で製造された押出物の微生物品質を試験した。前記実施例において、タイプ1のセモリナを使用した。低温殺菌温度未満で製造された押出物は廃棄された。
【0124】
前記押出物において、好気性細菌総数(CFU/gで測定された)は、セモリナ自体での総数の約500倍少なく、したがって規制限度を満たした。酵母及びカビ(CFU/gで測定された)も規制限度を下回った。サルモネラ属菌(Salmonella spp.)も黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)も押出物で検出されなかった。したがって、本発明の組成物を使用した場合、断熱条件下にて、良好な微生物品質の押出物を製造するのに十分に高い温度を達成することができることが実施例7から分かる。
【外国語明細書】