(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050584
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】重合プロセスを停止させる方法
(51)【国際特許分類】
C08G 64/32 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
C08G64/32
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024000772
(22)【出願日】2024-01-05
(62)【分割の表示】P 2020522960の分割
【原出願日】2018-10-24
(31)【優先権主張番号】1717441.8
(32)【優先日】2017-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】517022142
【氏名又は名称】エコニック テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ECONIC TECHNOLOGIES LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ケンバー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ミューア、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】シャルトワール、アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】リーランド、ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】バレーラ、フェルナンド
(72)【発明者】
【氏名】カラザース、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】カビール、ラキブル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】二酸化炭素とエポキシドとの反応を含む重合プロセスを停止させる方法を提供する。
【解決手段】バイメタリック金属錯体触媒の存在下でのポリマーを製造するための二酸化炭素とエポキシドとの反応は、触媒を失活させるのに有効な酸と触媒とを接触させることにより、触媒を失活させる停止工程を含む。失活した触媒は、触媒及びポリマー生成物を固相と接触させること及び/又は沈殿によりポリマー生成物から除去され得、触媒はまた、任意選択的に、失活した触媒をアニオンと接触させることによって再活性化され得る。酸は、重合プロセスを開始させるのに有効で且つ触媒を失活させるのに有効であるアニオンを含有し得、失活工程における酸対触媒のモル比は、反応のための酸対触媒のモル比の20:1以下であり得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイメタリック金属錯体触媒の存在下での二酸化炭素とエポキシドとの反応を含む重合プロセスを停止させる方法であって、前記触媒を失活させるのに有効な酸と前記触媒とを接触させることにより、前記触媒を失活させる工程を含む方法。
【請求項2】
バイメタリック金属錯体触媒の存在下での二酸化炭素とエポキシドとの反応を含む重合プロセスから形成されるポリマー生成物を精製する方法であって、
(i)前記触媒を失活させるのに有効な酸と前記触媒とを接触させることにより、前記重合プロセスを停止させる工程、
(ii)失活した前記触媒及びポリマー生成物を固相と接触させること及び/又は沈殿により、失活した前記触媒を前記ポリマー生成物から除去する工程、及び
(iii)任意選択的に、失活した前記触媒をアニオンと接触させることにより、前記触媒を再活性化させる工程
を含む方法。
【請求項3】
失活工程における酸対触媒のモル比は、失活反応のための酸対触媒のモル比の20:1以下である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
失活工程における酸対触媒のモル比は、失活反応のための酸対触媒のモル比の10:1以下である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記酸は、前記重合プロセスを開始させるのに有効なアニオンを含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
金属錯体触媒の存在下での二酸化炭素とエポキシドとの反応を含む重合プロセスを停止させる方法であって、前記重合プロセスを開始させるのに有効なアニオンを含有し前記触媒を失活させるのに有効な酸と前記触媒とを接触させることにより、前記触媒を失活させる工程を含み、失活工程における酸対触媒のモル比は、失活反応のための酸対触媒のモル比の20:1以下である、方法。
【請求項7】
金属錯体触媒の存在下での二酸化炭素とエポキシドとの反応を含む重合プロセスから形成されるポリマー生成物を精製する方法であって、
(i)前記重合プロセスを開始させるのに有効で且つ前記触媒を失活させるのに有効であるアニオンを含有する酸と前記触媒とを接触させることにより、前記重合プロセスを停止させる工程であって、失活工程における酸対触媒のモル比は、前記反応のための酸対触媒のモル比の20:1以下である、工程、
(ii)失活した前記触媒及びポリマー生成物を固相と接触させること及び/又は沈殿により、失活した前記触媒を前記ポリマー生成物から除去する工程、及び
(iii)任意選択的に、失活した前記触媒をアニオンと接触させることにより、前記触媒を再活性化させる工程
を含む方法。
【請求項8】
失活工程における酸対触媒のモル比は、前記反応のための酸対触媒のモル比の10:1以下である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記酸はカルボン酸である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記酸は官能化カルボン酸であり、酸基に加えて、前記触媒の金属中心の1つ又は複数との安定な結合又は相互作用を形成するのに有効な1つ又は複数の他の官能基を含むる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記官能基は、-OH、-SO3H、-P(O)(OH)2、-N(R9)2又は-COOHから選択され、R9は、独立に、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール又はヘテロアリール基から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記官能化カルボン酸は、ジカルボン酸、トリカルボン酸又はヒドロキシカルボン酸である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記酸は、OC(O)CH3、OC(O)CH2CH3、OC(O)(CH2)2CH3、OC(O)(CH2)3CH3、OC(O)(CH2)4CH3、OC(O)(CH2)5CH3、OC(O)(CH2)6CH3、OC(O)C(CH3)3、OC(O)C6H5、OC(O)CCCl3及び/又はOC(O)CF3から選択されるアニオン、最も好ましくはOC(O)CH3を含有する、請求項1又は12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記酸は、少なくとも2.5のpKaを有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記金属錯体触媒は、式(I)又は式(II):
【化1】
のものであり、
式中、R
1及びR
2は、独立に、水素、ハライド、ニトロ基、ニトリル基、イミン基、-NCR
13R
14、アミン、エーテル-OR
15、-R
16OR
17、エステル基-OC(O)R
10若しくは-C(O)OR
10、アミド基-NR
9C(O)R
9若しくは-C(O)-NR
9(R
9)、-COOH、-C(O)R
15、-OP(O)(OR
18)(OR
19)、-P(O)R
20R
21、-P(O)(OR)(OR)、-OP(O)R(OR)、シリル基、シリルエーテル基、スルホキシド基、スルホニル基、スルフィネート基若しくはアセチリド基又は任意選択的に置換されるアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、脂環族若しくはヘテロ脂環族基から選択され、
R
3は、独立に、任意選択的に置換されるアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はシクロアルキレンから選択され、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン及びヘテロアルキニレンは、任意選択的に、アリール、ヘテロアリール、脂環族又はヘテロ脂環族が挟まれ得、
R
4は、独立に、H又は任意選択的に置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール若しくはアルキルアリールから選択され、
R
9、R
10、R
13、R
14、R
18、R
19、R
20及びR
21は、独立に、水素又は脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール若しくはヘテロアリール基から選択され、
E
1はCでE
2はO、S若しくはNHであるか、又はE
1はNでE
2はOであり、
E
3は、N、NR
5、O又はSであり、E
3がNである場合、
【化2】
は、
【化3】
であり、E
3がNR
5、O又はSである場合、
【化4】
は、
【化5】
であり、
R
5は、独立に、H又は任意選択的に置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、-アルキルC(O)OR
10、-アルキルニトリル若しくはアルキルアリールから選択され、
Xは、存在する場合、独立に、OC(O)R
x、OSO
2R
x、OSOR
x、OSO(R
x)
2、S(O)R
x、OR
x、ホスフィネート、ハライド、ナイトレート、ヒドロキシル、カーボネート、アミノ、ニトロ、アミド又は任意選択的に置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール若しくはヘテロアリールから選択され、
m及びnは、m及びnの合計が0~5であるように、独立に、0~3の範囲から選択される整数であり、
R
Xは、独立に、水素又は脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール若しくはヘテロアリール基から選択され、
各Gは、独立に、存在しないか、又はルイス塩基である中性若しくはアニオン性のドナー配位子であり、
Y
1及びY
2は、存在する場合、独立に、金属M
2に孤立電子対を与えることが可能である中性又はアニオン性のドナー基であり、
M
1及びM
2は、独立に、Zn(II)、Cr(II)、Co(II)、Cu(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ni(II)、Fe(II)、Ti(II)、V(II)、Cr(III)、Co(III)、Mn(III)、Ni(III)、Fe(III)、Ca(II)、Ge(II)、Al(III)、Ti(III)、V(III)、Ge(IV)、Y(III)、Sc(III)又はTi(IV)から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記固相は、無機固相又はイオン交換樹脂である、請求項2~5又は7~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記イオン交換樹脂は酸性イオン交換樹脂である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
失活した前記触媒は、1つ又は複数の沈殿剤の添加により粗ポリマー生成物から沈殿させられるか、又は自動的に沈殿する、請求項2~5又は7~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記アニオンは酸から誘導される、請求項2~5又は7~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記アニオンは、1つ又は複数のカルボン酸から誘導される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記アニオンは、官能化カルボン酸、官能性カルボン酸の金属塩、又はそれらの組合せから誘導され、官能化カルボン酸は、前記酸に加えて、前記触媒の金属中心の1つ又は複数との安定な結合又は相互作用を形成するのに有効な1つ又は複数の他の官能基を含み、官能性カルボン酸の金属塩は、前記触媒の金属中心の1つ又は複数との安定な結合又は相互作用を形成するのに有効な1つ又は複数の他の官能基を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記官能基は、-OH、-SO3H、-P(O)(OH)2、-N(R9)2又は-COOHから選択され、R9は、独立に、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール又はヘテロアリール基から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記官能化カルボン酸は、ジカルボン酸、トリカルボン酸又はヒドロキシカルボン酸である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記アニオンは、少なくとも2.5のpKaを有する酸から誘導される、請求項19~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記アニオンは、前記重合プロセスのための開始剤として機能することが可能である、請求項1~5又は7~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記アニオンは、OC(O)CH3、OC(O)CH2CH3、OC(O)(CH2)2CH3、OC(O)(CH2)3CH3、OC(O)(CH2)4CH3、OC(O)(CH2)5CH3、OC(O)(CH2)6CH3、OC(O)C(CH3)3、OC(O)C6H5、OC(O)CCCl3及び/又はOC(O)CF3から選択され、最も好ましくはOC(O)CH3である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記酸はトリメシン酸を含まない、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素とエポキシドとの反応を含む重合プロセスを停止させる方法及びそれから得られたポリマー生成物を精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油資源の枯渇に伴う環境的及び経済的な関心は、二酸化炭素(CO2)を化学的に転化させて、それを再生可能な炭素源として使用できるようにする機運を高める契機となった。CO2は、その反応性が低いが、安価で、実質的に毒性がなく、高純度で大量に入手可能であり、且つ無害であるという理由から非常に魅力的な粗原料である。したがって、CO2は、多くのプロセスにおいて、一酸化炭素、ホスゲン又は他の石油化学原料などの有望な代替物質となり得るであろう。CO2の開発用途の1つは、脂肪族ポリカーボネートを得ることを目的としたエポキシドとの共重合である。
【0003】
脂肪族ポリカーボネートを製造するための一般的な方法としては、金属錯体触媒の存在下でのエポキシドとCO2との共重合が挙げられる。典型的には、したがって、その重合プロセスでは、典型的には、触媒を含む粗生成物が得られ、それが時間の経過につれてポリマー生成物を劣化させ得る。その粗生成物は、変色する可能性もある。したがって、ポリマー生成物の望ましくない分解を防ぐために触媒を失活させ、且つ/又は除去することが望ましい。さらに、脂肪族ポリカーボネートの多くの用途では、無色で金属フリーのポリマーが必要とされている。
【0004】
二酸化炭素とエポキシドとの反応を含む重合反応において、例えばスルホン酸又はリン酸のような強酸を使用して、モノメタリックな金属錯体触媒を停止(又は失活)させることができることは、公知である。欧州特許第2342257号明細書及び国際公開第2010/033703号パンフレットのそれぞれは、重合開始剤ではないアニオンを含む酸を用いて停止(又は失活)させることが可能なモノメタリック遷移金属錯体を開示している。スルホン酸及びリン酸が記載されており、1:1の酸対触媒のモル比で使用されている。しかしながら、欧州特許第2342257号明細書は、酢酸を用いて触媒を失活させることも開示しているが、触媒を停止(又は失活)させるには、触媒に対して800モル当量の酢酸が必要であった。欧州特許第2342257号明細書及び国際公開第2010/033703号パンフレットは、バイメタリック触媒を停止(又は失活)させることを開示していない。
【0005】
驚くべきことに、本発明者らは、ここで、バイメタリック金属錯体触媒の存在下での二酸化炭素とエポキシドとの反応を含む重合プロセスを、重合反応のための開始剤として機能するのに有効であり、且つ触媒を失活させるのにも有効であるアニオンを含む酸を用いて停止させることが可能であることを見出した。本発明者らは、ここで、驚くべきことに、金属錯体触媒の存在下での二酸化炭素とエポキシドとの反応を含む重合プロセスを、重合プロセスのための開始剤として機能するのに有効であり、且つ触媒を失活させるのにも有効であるアニオンを含む酸を20:1以下の酸対触媒のモル比で用いて停止させることが可能であることも見出した。本発明者らは、驚くべきことに、失活した触媒をポリマー生成物から除去することが可能であり、任意選択的に再活性化させ得ることも見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第2342257号明細書
【特許文献2】国際公開第2010/033703号
【発明の概要】
【0007】
本発明の第一の態様では、バイメタリック金属錯体触媒の存在下での二酸化炭素とエポキシドとの反応を含む重合プロセスを停止させる方法が提供され、その方法は、触媒を失活させるのに有効な酸と触媒とを接触させることにより、触媒を失活させる工程を含む。
【0008】
本発明の第二の態様では、バイメタリック金属錯体触媒の存在下での二酸化炭素とエポキシドとの反応を含む重合プロセスを停止させる方法が提供され、その方法は、重合プロセスを開始させるのに有効なアニオンを含有し触媒を失活させるのに有効な酸と触媒とを接触させることにより、触媒を失活させる工程を含む。
【0009】
本発明の第三の態様では、バイメタリック金属錯体触媒の存在下での二酸化炭素とエポキシドとの反応を含む重合プロセスを停止させる方法が提供され、その方法は、触媒を失活させるのに有効なカルボン酸と触媒とを接触させることにより、触媒を失活させる工程を含む。
【0010】
好ましくは、本発明の第一、第二及び/又は第三の態様の失活工程における酸対触媒のモル比は、失活反応のための酸対触媒のモル比の20:1以下である。
本発明の第四の態様では、金属錯体触媒の存在下での二酸化炭素とエポキシドとの反応を含む重合プロセスを停止させる方法が提供され、その方法は、重合プロセスを開始させるのに有効なアニオンを含有し触媒を失活させるのに有効な酸と触媒とを接触させることにより、触媒を失活させる工程を含み、失活工程における酸対触媒のモル比は、失活反応のための酸対触媒のモル比の20:1以下である。
【0011】
本発明の第五の態様では、金属錯体触媒の存在下での二酸化炭素とエポキシドとの反応を含む重合プロセスを停止させる方法が提供され、その方法は、触媒を失活させるのに有効なカルボン酸と触媒とを接触させることにより、触媒を失活させる工程を含み、失活工程における酸対触媒のモル比は、失活反応のための酸対触媒のモル比の20:1以下である。
【0012】
好ましくは、本発明の第一、第二、第三、第四及び/又は第五の態様の酸は、少なくとも2.5、より好ましくは少なくとも3、最も好ましくは少なくとも4のpKaを有する。
【0013】
本発明の第六の態様では、バイメタリック金属錯体触媒の存在下での二酸化炭素とエポキシドとの反応を含む重合プロセスから形成されるポリマー生成物を精製する方法が提供され、その方法は、
(i)触媒を失活させるのに有効な酸と触媒とを接触させることにより、重合プロセスを停止させる工程、
(ii)失活した触媒及びポリマー生成物を固相と接触させること及び/又は沈殿により、失活した触媒をポリマー生成物から除去する工程、及び
(iii)任意選択的に、失活した触媒をアニオンと接触させることにより、触媒を再活性化させる工程
を含む。
【0014】
本発明の第七の態様では、バイメタリック金属錯体触媒の存在下での二酸化炭素とエポキシドとの反応を含む重合プロセスから形成されるポリマー生成物を精製する方法が提供され、その方法は、
(i)重合プロセスを開始させるのに有効なアニオンを含有し触媒を失活させるのに有効な酸と触媒とを接触させることにより、重合プロセスを停止させる工程、
(ii)失活した触媒及びポリマー生成物を固相と接触させること及び/又は沈殿により、失活した触媒をポリマー生成物から除去する工程、及び
(iii)任意選択的に、失活した触媒をアニオンと接触させることにより、触媒を再活性化させる工程
を含む。
【0015】
本発明の第八の態様では、バイメタリック金属錯体触媒の存在下での二酸化炭素とエポキシドとの反応を含む重合プロセスから形成されるポリマー生成物を精製する方法が提供され、その方法は、
(i)触媒を失活させるのに有効なカルボン酸と触媒とを接触させることにより、重合プロセスを停止させる工程、
(ii)失活した触媒及びポリマー生成物を固相と接触させること及び/又は沈殿により、失活した触媒をポリマー生成物から除去する工程、及び
(iii)任意選択的に、失活した触媒をアニオンと接触させることにより、触媒を再活性化させる工程
を含む。
【0016】
好ましくは、本発明の第六、第七及び/又は第八の態様の工程(i)における酸対触媒のモル比は、失活反応のための酸対触媒のモル比の20:1以下である。
本発明の第九の態様では、金属錯体触媒の存在下での二酸化炭素とエポキシドとの反応を含む重合プロセスから形成されるポリマー生成物を精製する方法が提供され、その方法は、
(i)重合プロセスを開始させるのに有効で且つ触媒を失活させるのに有効であるアニオンを含有する酸と触媒とを接触させることにより、重合プロセスを停止させる工程であって、失活工程におけるその酸対触媒のモル比は、失活反応のための酸対触媒のモル比の20:1以下である、工程、
(ii)失活した触媒及びポリマー生成物を固相と接触させること及び/又は沈殿により、失活した触媒をポリマー生成物から除去する工程、及び
(iii)任意選択的に、失活した触媒をアニオンと接触させることにより、触媒を再活性化させる工程
を含む。
【0017】
本発明の第十の態様では、金属錯体触媒の存在下での二酸化炭素とエポキシドとの反応を含む重合プロセスから形成されるポリマー生成物を精製する方法が提供され、その方法は、
(i)触媒を失活させるのに有効なカルボン酸と触媒とを接触させることにより、重合プロセスを停止させる工程であって、失活工程における酸対触媒のモル比は、失活反応のための酸対触媒のモル比の20:1以下である、工程、
(ii)失活した触媒及びポリマー生成物を固相と接触させること及び/又は沈殿により、失活した触媒をポリマー生成物から除去する工程、及び
(iii)任意選択的に、失活した触媒をアニオンと接触させることにより、触媒を再活性化させる工程
を含む。
【0018】
好ましくは、本発明の第六、第七、第八、第九及び/又は第十の態様の工程(i)における酸は、少なくとも2.5、より好ましくは少なくとも3、最も好ましくは少なくとも4のpKaを有する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
触媒
本発明の第一、第二、第三、第六、第七及び/又は第八の態様における重合プロセスは、バイメタリック金属錯体触媒の存在下で実施される。そのバイメタリック金属錯体触媒は、式(I)又は式(II):
【0020】
【化1】
のものであることが好ましく、
式中、R
1及びR
2は、独立に、水素、ハライド、ニトロ基、ニトリル基、イミン基、-NCR
13R
14、アミン、エーテル-OR
15、-R
16OR
17、エステル基-OC(O)R
10若しくは-C(O)OR
10、アミド基-NR
9C(O)R
9若しくは-C(O)-NR
9(R
9)、-COOH、-C(O)R
15、-OP(O)(OR
18)(OR
19)、-P(O)R
20R
21、-P(O)(OR)(OR)、-OP(O)R(OR)、シリル基、シリルエーテル基、スルホキシド基、スルホニル基、スルフィネート基若しくはアセチリド基又は任意選択的に置換されるアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、脂環族若しくはヘテロ脂環族基から選択され、
R
3は、独立に、任意選択的に置換されるアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はシクロアルキレンから選択され、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン及びヘテロアルキニレンは、任意選択的に、アリール、ヘテロアリール、脂環族又はヘテロ脂環族が挟まれ得、
R
4は、独立に、H又は任意選択的に置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール若しくはアルキルアリールから選択され、
R
9、R
10、R
13、R
14、R
18、R
19、R
20及びR
21は、独立に、水素又は脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール若しくはヘテロアリール基から選択され、
E
1はCでE
2はO、S若しくはNHであるか、又はE
1はNでE
2はOであり、
E
3は、N、NR
5、O又はSであり、E
3がNである場合、
【0021】
【0022】
【化3】
であり、E
3がNR
5、O又はSである場合、
【0023】
【0024】
【化5】
であり、
R
5は、独立に、H又は任意選択的に置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、-アルキルC(O)OR
10、-アルキルニトリル若しくはアルキルアリールから選択され、
Xは、存在する場合、独立に、OC(O)R
x、OSO
2R
x、OSOR
x、OSO(R
x)
2、S(O)R
x、OR
x、ホスフィネート、ハライド、ナイトレート、ヒドロキシル、カーボネート、アミノ、ニトロ、アミド又は任意選択的に置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール若しくはヘテロアリールから選択され、
m及びnは、m及びnの合計が0~5であるように、独立に、0~3の範囲から選択される整数であり、
R
Xは、独立に、水素又は脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール若しくはヘテロアリール基から選択され、
各Gは、独立に、存在しないか、又はルイス塩基である中性若しくはアニオン性のドナー配位子であり、
Y
1及びY
2は、存在する場合、独立に、金属M
2に孤立電子対を与えることが可能である中性又はアニオン性のドナー基であり、
M
1及びM
2は、独立に、Zn(II)、Cr(II)、Co(II)、Cu(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ni(II)、Fe(II)、Ti(II)、V(II)、Cr(III)、Co(III)、Mn(III)、Ni(III)、Fe(III)、Ca(II)、Ge(II)、Al(III)、Ti(III)、V(III)、Ge(IV)、Y(III)、Sc(III)又はTi(IV)から選択される。
【0025】
疑念を避けるために付言すれば、式(I)及び式(II)の両方に基が見出される場合、以下における定義が式(I)及び式(II)の両方に独立にあてはまる。
出現する基R1及びR2のそれぞれは、同一であるか又は異なり得る。R1及びR2は、独立に、以下のものから選択されることが好ましい。水素、ハライド、アミノ、ニトロ、スルホキシド、スルホニル、スルフィネート、シリル、シリルエーテル及び任意選択的に置換されるアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環族、アルコキシ、アリールオキシ又はアルキルチオ。好ましくは、出現するR2のそれぞれは同一であり、水素であることが好ましい。
【0026】
R2が水素であり、及びR1が、独立に、以下のものから選択されることがなおより好ましい。水素、ハライド、アミノ、ニトロ、スルホキシド、スルホニル、スルフィネート、シリル、シリルエーテル及び任意選択的に置換されるアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環族、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、例えば水素、C1~6アルキル(例えば、ハロアルキル)、アルコキシ、アリール、ハライド、ニトロ、スルホニル、シリル及びアルキルチオ、例えばt-ブチル、n-ブチル、i-プロピル、メチル、ピペリジニル、メトキシ、ヘキシルメチルエーテル、-SCH3、-S(C6H5)、H、ニトロ、トリメチルシリル、メチルスルホニル(-SO2CH3)、トリエチルシリル、ハロゲン又はフェニル。
【0027】
出現するR1のそれぞれは、同一であるか又は異なり得、R1とR2とは、同一であるか又は異なり得る。出現するR1のそれぞれが同一であることが好ましい。出現するR2のそれぞれが同一であることが好ましい。R1とR2とが同一である場合、出現するR1及びR2のそれぞれは、メチルであることが好ましい。出現するR1のそれぞれが同一であり、且つ出現するR2のそれぞれが同一であり、及びR1とR2とが異なることが好ましい。
【0028】
出現するR1の両方が同一であり、以下のものから選択されることが好ましい。水素、ハライド、アミノ、ニトロ、スルホキシド、スルホニル、スルフィネート、シリル、シリルエーテル及び任意選択的に置換されるアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環族、アルコキシ、アリールオキシ又はアルキルチオ。出現するR1の両方が同一であり、以下のものから選択されることがより好ましい。ハライド、スルホキシド、シリル及び任意選択的に置換されるアルキル、ヘテロアリール又はアルコキシ。出現するR1の両方が同一であり、以下のものから選択されることがさらにより好ましい。H、アルキル、アリール、アルコキシ、トリアルキルシリル、例えばトリエチルシリル又はハライド。出現するR1の両方が同一であり、以下のものから選択されることがさらにより好ましい。H、アルキル、フェニル、ハライド又はトリアルキルシリル。出現するR1の両方が同一であり、以下のものから選択されることが最も好ましい。H、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピルn-ブチル、t-ブチル、t-アミル又はt-オクチル。
【0029】
基R3が二価のアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン又はヘテロアルキニレン基(それらは、任意選択的に、アリール、ヘテロアリール、脂環族又はヘテロ脂環族基が挟まれ得る)であるか、又は式(I)及び(II)の化合物中の2つの窒素中心間の架橋基として機能する二価のアリーレン又はシクロアルキレン基であり得ることが理解されるであろう。したがって、R3が2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイルのようなアルキレン基であるような場合、そのR3基は、-CH2-C(CH3)2-CH2-の構造を有する。したがって、本明細書で言及されるアルキル、アリール、シクロアルキルなどの基の定義は、それぞれR3について言及された二価のアルキレン、アリーレン、シクロアルキレンなどの基にさらに関連し、それらは、任意選択的に置換され得る。R3の例示としては、以下のものが挙げられる。エタン-1,2-ジイル、2,2-フルオロプロパン-1,3-ジイル、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイル、プロパン-1,3-ジイル、ブタン-1,4-ジイル、フェニレン、シクロヘキサン-1,2-ジイル、シクロヘキサン-1,4-ジイル又はビフェニレン。R3がシクロヘキサン-1,2-ジイル又はシクロヘキサン-1,4-ジイルである場合、それは、ラセミ形、RR形、SS形をとることができる。
【0030】
R3は、独立に、以下のものから選択することができる。置換又は非置換のアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン又はヘテロアルキニレン、アリーレン又はシクロアルキレン。R3は、以下のものから選択されることが好ましい。置換又は非置換のアルキレン、シクロアルキレン、アルケニレン、ヘテロアルキレン及びアリーレン。より好ましくは、R3は、以下のものから選択される。-CH2C(CH3)2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-、-CH2C(CH2C6H5)2CH2-、-(C6H4)-、-CH2CH2-、-CH2-CH2CH2CH2-、-CH2CH2N(CH3)CH2CH2-、-(C6H10)-又は-CH2CH2CH(C2H5)-。さらにより好ましくは、R3は、以下のものから選択される。-CH2C(CH3)2CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-、-CH2C(CH2C6H5)2CH2-、-CH2CH2CH(C2H5)-、-CH2CH2CH2CH2-。より好ましくはさらに、R3は、以下のものから選択される。-CH2C(CH3)2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-及び-CH2C(C2H5)2CH2-。
【0031】
R3は、独立に、以下のものから選択される。置換又は非置換のアルキレン及び置換又は非置換のアリーレン、好ましくは置換又は非置換のプロピレン、例えばプロパン-1,3-ジイル及び2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイル並びに置換又は非置換のフェニレン又はビフェニレン。出現するR3の両方が同一であることが好ましい。なおより好ましくは、R3は、置換されたプロパン-1,3-ジイル、例えば2,2-ジ(アルキル)プロパン-1,3-ジイル、特に2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイルである。
【0032】
それぞれのR4は、独立に、以下のものから選択されることが好ましい。水素及び任意選択的に置換される脂肪族又はアリール。それぞれのR4は、独立に、以下のものから選択されることがより好ましい。水素又は任意選択的に置換されるアルキル若しくはアリール。それぞれのR4が同一であり、水素又は任意選択的に置換されるアルキル若しくはアリールから選択されることがなおより好ましい。R4基の例示としては、以下のものが挙げられる。水素、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、フェニル及びトリフルオロメチル、好ましくは水素、メチル又はトリフルオロメチル。それぞれのR4が水素であることがなおより好ましい。
【0033】
R4基とR1基との好ましい組合せでは、R1がH、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、t-ブチル、t-オクチル、Cl、Br、F、ニトロ、トリメチルシリル、トリエチルシリル、メチルチオ及びメトキシから選択され、R4がH、メチル、エチル、n-プロピル、フェニル及びトリフルオロメチルから選択される。
【0034】
出現するE1のそれぞれは、同一であるか又は異なり得る。出現するE1のそれぞれが同一であることが好ましい。出現するE2のそれぞれは、同一であるか又は異なり得る。出現するE2のそれぞれが同一であることが好ましい。好ましくは、E1がCでE2がO、S又はNHであるが、より好ましくは、E1がCでE2がOである。
【0035】
出現するE3それぞれは、同一であるか又は異なり得る。出現するE3のそれぞれが同一であることが好ましい。R5は、存在する場合、独立に、以下のものから選択されることが好ましい。水素又は任意選択的に置換されるアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、-アルキルC(O)R10若しくは-アルキルニトリル。それぞれのR5は、存在する場合、同一であるか又は異なり得る。R5は、存在する場合、以下のものから選択されることが好ましい。水素又は任意選択的に置換されるアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル若しくはヘテロアリール。それぞれのR5は、存在する場合、同一であり、水素又は任意選択的に置換されるアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル若しくはヘテロアリールから選択されることがより好ましい。R5基の例示としては、H、Me、Et、Bn、iPr、tBu又はPhが挙げられる。それぞれのR5は、存在する場合、水素又はアルキルであることがなおより好ましい。それぞれのR5は、存在する場合、水素であることが最も好ましい。
【0036】
式(II)のY1及びY2は、金属M2に孤立電子対を供与することが可能な基である。孤立電子対を供与するY1及びY2基の原子は、典型的には、それぞれY1及びY2と金属、M2との間の結合を形成する。Y1とY2とは、同一であるか又は異なり得る。Y1とY2が同一であることが好ましい。孤立電子対を供与するY1基及び/又はY2基の原子は、典型的には、酸素、窒素若しくは硫黄から選択されるヘテロ原子又はカルベン炭素である。
【0037】
したがって、Y1及びY2は、ヘテロ原子又は孤立電子対を供与することが可能なヘテロ原子を含む基であり得る。その孤立電子対は、典型的には、窒素、硫黄又は酸素原子により、より典型的には窒素又は酸素原子により、最も典型的には窒素原子により与えられる。
【0038】
Y1及びY2は、独立に、1~20の原子、好ましくは1~15の原子、より好ましくは1~10の原子を含み得る。
Y1及びY2は、独立に、以下のものから選択されることが好ましい。O、S、--NC(O)R10、-C(O)N-R10、-C(O)O-、-C(O)OR10、-C(O)R10、-C(R10)2C(O)N-(R10)、任意選択的に置換されるヘテロ脂肪族、例えば-OR10、-SR10、--NR10、-N(R10)2、-C(R10)2N(R10)2、-C(R10)=N(R10)、又は任意選択的に置換されるヘテロ脂環族、又はヘテロアリール、又は任意選択的に置換されるカルベン構造物。ここで、R10は、独立に、以下のものから選択される。水素又は脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール若しくはヘテロアリール基。Y1及びY2は、独立に、以下のものから選択されることがより好ましい。O-、S-、-OR10、-SR10、--N(R10)、-N(R10)2、-C(R10)2N(R10)2、-C(R10)=N(R10)、--NC(O)R10、-C(O)O、-C(O)OR10、C(O)R10又は任意選択的にイミダゾリン、「異常」イミダゾリン(ここで、「異常」イミダゾリンは、二重結合の位置に応じてその複素環上に正及び負の電荷を有する)、イミダゾリジン、ピロリジン、ピロリン、トリアゾリン、チアゾリン、オキサゾール、オキサゾリン、イミダゾイリデン、イミダゾリニリデン、チアゾリリデン、オキサゾリリデン、トリアゾリリデン、ベンズイミダゾリリデン、ピロリジニリデン、又は「異常」イミダゾリリデン、又はN,N’-ジアミドカルベン、任意選択的に置換されるピリジン、イミダゾール、メチルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピロール、トリアゾール、チアゾール、ベンズイミダゾリン、ベンゾトリアゾール(ここで、R10は、独立に、以下のものから選択される:水素又は脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール若しくはヘテロアリール基)。
【0039】
Y1及びY2が、独立に、任意選択的に置換されるヘテロ脂肪族、ヘテロ脂環族又はヘテロアリールから選択される場合、その任意選択的に置換されるヘテロ脂肪族、ヘテロ脂環族又はヘテロアリールには、金属M2に対して孤立電子対を供与することが可能なヘテロ原子が含まれる。Y1及びY2が、独立に、任意選択的に置換されるカルベン構造(ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂環族又はヘテロアリールであってもなくてもよい)から選択される場合、その任意選択的に置換されるカルベン構造には、金属M2に対して孤立電子対を供与することが可能な炭素原子が含まれる。
【0040】
さらにより好ましくは、Y1及びY2は、独立に、以下のものから選択することができる。O、-OR10、-N(R10)2、-C(R10)2N(R10)2、-C(R10)=N(R10)、-C(O)O-、-C(O)R10、任意選択的に置換されるイミダゾリリデン、ベンズイミダゾリリデン、イミダゾリニリデン又はピロール。
【0041】
最も好ましくは、Y1及びY2は、独立に、以下のものから選択される。O、-OCH3、-C(=O)H、-CH2N(CH3)2、-CH2N(H)(CH2CH(CH3)2)、-CH=N(CH2CH(CH3)2)、-CH2-ピペリジン又はベンゾトリアジン。
【0042】
Y1及びY2基の孤立電子対供与性原子は、独立に、それぞれのアリール基に対する結合を介して式(II)の触媒の残りの部分に直接結合されるか、又はそれぞれのアリール基に結合された結合基を介して式(II)の触媒の残りの部分に結合され得る。その結合基は、Y1及び/又はY2に存在する場合、以下のものから選択されることが好ましい。任意選択的に置換されるアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン又はシクロアルキレン。その結合基は、Y1及び/又はY2に存在する場合、以下のものから選択されることがより好ましい。任意選択的に置換されるアルキレン、アルケニレン、アルキニレン又はアリーレン、さらになおより好ましくは任意選択的に置換されるアルキレン又はアリーレン。その結合基は、Y1及び/又はY2に存在する場合、好ましくは任意選択的に置換されるC1~C10アルキレン、より好ましくは任意選択的に置換されるC1~C6アルキレン、なおより好ましくは任意選択的に置換されるC1~C4アルキレン、最も好ましくはメチレンである。疑念を避けるために付言すれば、Y1及び/又はY2基中の孤立電子対供与性原子は、カルベン炭素であり、そのカルベン炭素は、式(II)の触媒の残りの部分に直接結合されていない。
【0043】
Y1及びY2基のヘテロ原子は、結合基(存在する場合)を介して、式(II)の触媒の残りの部分のそれぞれのアリール基に対して、任意の適切な個数の原子、好ましくは1~10の原子、より好ましくは1~6つの原子、なおより好ましくは1~4つの原子、最も好ましくは1~2つの原子により結合され得る。Y1及び/又はY2基のヘテロ原子が式(II)の触媒の残りの部分のそれぞれのアリール基に対して直接結合されている場合、結合基は、存在しないことが理解されるであろう。
【0044】
Xは、本発明のプロセスのための開始化学種として機能することが理解されるであろう。それぞれのXは、独立に、以下のものから選択される。OC(O)RX、OSO2RX、OSO(RX)2、ORX、ハライド、ナイトレート、ヒドロキシル、カーボネート、アミド又は任意選択的に置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族(例えば、シリル)、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール又はヘテロアリール。RXは、独立に、水素又は任意選択的に置換される脂肪族、ハロ脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール、アルキルアリール若しくはヘテロアリールである。XがOC(O)RX又はORXであることが好ましい。好ましくは、RXは、独立に、水素、任意選択的に置換される脂肪族、ハロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、シリル又はアルキルアリールである。Xの例としては、以下のものが挙げられる。OCOCH3、OCOCF3、OSO2C7H7、OSO(CH3)2、Et、Me、PhOEt、OMe、OiPr、OtBu、Cl、Br、I、F、N(iPr)2又はN(SiMe3)2。
【0045】
Gが不在ではない場合、それは、孤立電子対を供与することが可能な基(すなわちルイス塩基)である。それぞれのGは、中性であるか又は負に荷電され得る。Gが負に荷電されている場合、その錯体の電荷のバランスをとるために1つ又は複数の正の対イオンが必要となる。適切な正の対イオンとしては、以下のものが挙げられる。第1族の金属イオン(Na+、K+など)、第2属の金属イオン(Mg2+、Ca2+など)、アンモニウムイオン(すなわちN(R26)4
+)、イミニウムイオン(すなわち(R12)2C=N(R26)2
+、例えばビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムイオン)若しくはホスホニウムイオン(P(R26)4
+)(ここで、それぞれのR26は、独立に、以下のものから選択される。水素又は任意選択的に置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール又はヘテロアリール)。好ましくは、Gは、独立に、以下のものから選択される。任意選択的に置換されるヘテロ脂肪族基、任意選択的に置換されるヘテロ脂環族基、任意選択的に置換されるヘテロアリール基、ハライド、水酸化物、水素化物、カルボキシレート及び水。より好ましくは、Gは、独立に、以下のものから選択される。水、アルコール、置換又は非置換のヘテロアリール(イミダゾール、メチルイミダゾール、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、ピロール、ピラゾールなど)、エーテル(ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、環状エーテルなど)、チオエーテル、カルベン、ホスフィン、ホスフィンオキシド、置換又は非置換のヘテロ脂環族(モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェンなど)、アミン、アルキルアミン(トリメチルアミン、トリエチルアミンなど)、アセトニトリル、エステル(酢酸エチルなど)、アセトアミド(ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド(ジメチルスルホキシドなど)、カルボキシレート、水酸化物、水素化物、ハライド、ナイトレート、スルホネートなど。いくつかの実施形態では、Gの一方又は両方の例は、独立に、以下のものから選択される。任意選択的に置換されるヘテロアリール、任意選択的に置換されるヘテロ脂肪族、任意選択的に置換されるヘテロ脂環族、ハライド、水酸化物、水素化物、エーテル、チオエーテル、カルベン、ホスフィン、ホスフィンオキシド、アミン、アルキルアミン、アセトニトリル、エステル、アセトアミド、スルホキシド、カルボキシレート、ナイトレート又はスルホネート。いくつかの実施形態では、Gの一方又は両方の例が負に荷電されている(例えば、ハライド)。さらなる実施形態では、Gの一方又は両方の例は、任意選択的に置換されるヘテロアリールである。
【0046】
式(II)では、基X及び基Gを単一のM1又はM2の金属中心に関連付けたように示しているが、1つ又は複数のX基及びG基は、M1及びM2金属中心間で架橋を形成し得ることも理解されるであろう。例えば、X基を、式(II)に示したように単一のMの金属中心に関わらせるか、又はX基を両方の金属中心に関わらせて、2つの金属中心間で架橋を形成し得る。
【0047】
M1及びM2は、独立に、以下のものから選択される。Zn(II)、Cr(II)、Co(II)、Cu(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ni(II)、Fe(II)、Ti(II)、V(II)、Cr(III)、Co(III)、Mn(III)、Ni(III)、Fe(III)、Ca(II)、Ge(II)、Al(III)、Ti(III)、V(III)、Ge(IV)、Y(III)、Sc(III)又はTi(IV)。
【0048】
本明細書における式(I)及び(II)では、M1及びM2は、独立に、好ましくは、Zn(II)、Cr(III)、Co(II)、Mn(II)、Mg(II)、Fe(II)又はFe(III)、最も好ましくはZn(II)、Co(II)又はMg(II)から選択される。
【0049】
好ましくは、M1又はM2の少なくとも1つは、以下のものから選択され得る。Ni(II)、Ni(III)、Co(II)、Co(III)、Cr(II)、Cr(III)、Fe(II)、Fe(III)、Mn(III)、Al(III)、Zn(II)又はMg(II)。
【0050】
ある種の実施形態では、出現するM1とM2とがそれぞれ異なり得る。好ましくは、それぞれ出現するM1とM2とが異なり、M1又はM2がNi(II)又はNi(III)であり、もう一方のM1又はM2がFe(II)、Fe(III)、Cr(III)、Al(III)、Mg(II)、Zn(II)、Co(II)又はCo(III)であることが好ましく、M1又はM2がNi(II)であり、もう一方のM1又はM2がMg(II)、Zn(II)、Co(II)、Co(III)又はCr(III)であることがより好ましい。それぞれ出現するM1とM2とが異なり、M1又はM2がZn(II)であり、もう一方のM1又はM2がMg(II)であることが好ましい。
【0051】
ある種の実施形態では、それぞれ出現するM1とM2とが同一である。好ましくは、それぞれ出現するM1とM2とが同一であり得、及びNi(II)、Ni(III)、Fe(II)、Fe(III)、Mn(III)、Cr(II)、Cr(III)、Co(II)、Co(III)、Zn(II)又はMg(II)であることが好ましく、それぞれ出現するM1とM2とが同一であり得、Ni(II)、Co(II)、Zn(II)又はMg(II)であることがより好ましい。
【0052】
触媒は、全体として、中性の電荷を有することが好ましい。M1及び/又はM2は、M1及びM2金属の酸化状態並びに使用されたY1及びY2基(存在する場合)の電荷に依存して、金属中心に配位された1つ又は複数の任意成分のX基(n個及びm個)をそれぞれ有し得ることが理解されるであろう(ここで、Xは、先に定義されたものである)。例えば、Y基を含まない配位子が2-の電荷を有する場合、金属基のM1及びM2それぞれがNi(II)であり、及びそれぞれのY基のY1及びY2がアニオン性である(すなわちそれぞれの1価の負の電荷を有する)場合、触媒は、全体として0の電荷を有することができる。この場合、金属中心に追加のX基が配位することはない。しかしながら、金属中心の一方又は両方が、3+の電荷を有するIII価の酸化状態を有する場合、Y基がアニオン性であったとしても、それぞれのM(III)の上にさらなるX基が必要となる。さらなる例を挙げれば、Y基のそれぞれが中性である場合、その配位子は、2-の電荷を有することになる。両方の金属中心がM(II)である場合、全体を中性電荷とするために全部で2つのX基が存在し得、及び両方の金属中心がM(III)である場合、全体を中性電荷とするために全部で4つのX基が存在し得る。
【0053】
好適な式(I)の触媒は、以下のものである。
【0054】
【0055】
【0056】
【化8】
より好適な式(I)の触媒は、以下のものである。
【0057】
【化9】
好適な式(II)の触媒は、以下のものである。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【化16】
本発明の第四、第五、第九及び/又は第十の態様による重合プロセスは、金属錯体触媒の存在下で実施される。金属錯体は、モノメタリックであり得るか又はバイメタリックであり得る。金属錯体はバイメタリックであることが好ましく、金属錯体は、先に述べたような、式(I)及び/又は式(II)に従っていることがより好ましい。
【0065】
ダブル金属シアニド(DMC)触媒
本発明の重合プロセスは、ダブル金属シアニド触媒をさらに含み得る。
DMC触媒は、少なくとも2つの金属中心及びシアン化物配位子を含む複雑な化合物である。DMC触媒は、(例えば、非化学量論量における)1つ若しくは複数の有機錯化剤、水、金属塩及び/又は酸の少なくとも1つをさらに含み得る。
【0066】
少なくとも2つの金属中心の最初の2つは、M’及びM’’によって表され得る。
M’は、Zn(II)、Ru(II)、Ru(III)、Fe(II)、Ni(II)、Mn(II)、Co(II)、Sn(II)、Pb(II)、Fe(III)、Mo(IV)、Mo(VI)、Al(III)、V(V)、V(VI)、Sr(II)、W(IV)、W(VI)、Cu(II)及びCr(III)から選択され得、M’は、好ましくは、Zn(II)、Fe(II)、Co(II)及びNi(II)から選択され、さらにより好ましくは、M’はZn(II)である。
【0067】
M’’は、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Cr(II)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Ir(III)、Ni(II)、Rh(III)、Ru(II)、V(IV)及びV(V)から選択され、好ましくは、M’’は、Co(II)、Co(III)、Fe(II)、Fe(III)、Cr(III)、Ir(III)及びNi(II)から選択され、より好ましくは、M’’は、Co(II)及びCo(III)から選択される。
【0068】
M’及びM’’についての上記の好ましい定義は、組み合わされ得ることを認識されたい。例えば、好ましくは、M’は、Zn(II)、Fe(II)、Co(II)及びNi(II)から選択され得、M’’は、好ましくは、Co(II)、Co(III)、Fe(II)、Fe(III)、Cr(III)、Ir(III)及びNi(II)から選択され得る。例えば、M’は、好ましくは、Zn(II)であり得、M’’は、好ましくは、Co(II)及びCo(III)から選択され得る。
【0069】
さらなる金属中心が存在する場合、さらなる金属中心は、M’又はM’’の定義からさらに選択され得る。
本発明の方法において使用することができるDMC触媒の例は、それらの全内容が参照により組み込まれる米国特許第3,427,256号明細書、米国特許第5,536,883号明細書、米国特許第6,291,388号明細書、米国特許第6,486,361号明細書、米国特許第6,608,231号明細書、米国特許第7,008,900号明細書、米国特許第5,482,908号明細書、米国特許第5,780,584号明細書、米国特許第5,783,513号明細書、米国特許第5,158,922号明細書、米国特許第5,693,584号明細書、米国特許第7,811,958号明細書、米国特許第6,835,687号明細書、米国特許第6,699,961号明細書、米国特許第6,716,788号明細書、米国特許第6,977,236号明細書、米国特許第7,968,754号明細書、米国特許第7,034,103号明細書、米国特許第4,826,953号明細書、米国特許第4,500,704号明細書、米国特許第7,977,501号明細書、米国特許第9,315,622号明細書、欧州特許出願公開第A-1568414号明細書、欧州特許出願公開第A-1529566号明細書及び国際公開第2015/022290号パンフレットに記載されているものを含む。
【0070】
本発明において有用であるDMC触媒は、1つ若しくは複数の有機錯化剤、水及び/又は酸の存在下で金属塩の溶液(例えば、水溶液)を金属シアン化物塩の溶液(例えば、水溶液)で処理することによって生成され得る。適切な金属塩は、式M’(X’)pの化合物を含み、式中、M’は、Zn(II)、Ru(II)、Ru(III)、Fe(II)、Ni(II)、Mn(II)、Co(II)、Sn(II)、Pb(II)、Fe(III)、Mo(IV)、Mo(VI)、Al(III)、V(V)、V(VI)、Sr(II)、W(IV)、W(VI)、Cu(II)及びCr(III)から選択され、M’は、好ましくは、Zn(II)、Fe(II)、Co(II)及びNi(II)から選択され、さらにより好ましくは、M’は、Zn(II)である。X’は、ハロゲン化物イオン、酸化物イオン、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、シアン化物イオン、シュウ酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン、カルボン酸イオン及び硝酸イオンから選択されるアニオンであり、好ましくは、X’は、ハロゲン化物イオンである。pは、1以上の整数であり、pを乗じたアニオン上の電荷は、M’の価数を満たす。適切な金属塩の例は、塩化亜鉛、臭化亜鉛、酢酸亜鉛、アセトニルアセトン酸亜鉛、安息香酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸鉄(II)、臭化鉄(II)、塩化コバルト(II)、チオシアン酸コバルト(II)、ギ酸ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)及びこれらの混合物を含む。
【0071】
適切な金属シアン化物塩は、式(Y)q[M’’(CN)b(A)c]の化合物を含み、式中、M’’は、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Cr(II)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Ir(III)、Ni(II)、Rh(III)、Ru(II)、V(IV)及びV(V)から選択され、好ましくは、M’’は、Co(II)、Co(III)、Fe(II)、Fe(III)、Cr(III)、Ir(III)及びNi(II)から選択され、より好ましくは、M’’は、Co(II)及びCo(III)から選択される。Yは、プロトン(H+)、又はアルカリ金属イオン、又はアルカリ土類金属イオン(例えば、K+)であり、Aは、ハロゲン化物イオン、酸化物イオン、水酸化物イオン、硫酸イオン、シアン化物イオン、シュウ酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン、カルボン酸イオン及び硝酸イオンから選択されるアニオンである。q及びbは、1以上の整数であり、好ましくは、bは、4又は6である。cは、0又は1以上の整数であり得る。それぞれq、b及びcを乗じたイオンY、CN及びA上の電荷の合計(例えば、Y×q+CN×b+A×c)は、M’’の価数を満たす。適切な金属シアン化物塩の例は、ヘキサシアノコバルト(III)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、ヘキサシアノコバルト(III)酸カルシウム、ヘキサシアノコバルト(III)酸リチウム及びこれらの混合物を含む。
【0072】
適切な錯化剤は、(ポリ)エーテル、ポリエーテルカーボネート、ポリカーボネート、ポリ(テトラメチレンエーテルジオール)、ケトン、エステル、アミド、アルコール、尿素などを含む。例示的な錯化剤は、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、(メ)エトキシエチレングリコール、ジメトキシエタン、tert-ブチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジグリム、トリグリム、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、3-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-2-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オールなどを含む。アルコールは、飽和され得るか、又は不飽和部分(例えば、二重結合若しくは三重結合)を含有し得ることを認識されたい。複数の(すなわち複数の異なるタイプの)錯化剤は、本発明において使用されるDMC触媒中に存在し得る。
【0073】
DMC触媒は、ポリエーテル、ポリエーテルカーボネート又はポリカーボネートである錯化剤を含み得る。
本発明において使用するための適切なポリエーテルは、環状エーテルの開環重合によって生成されるものを含み、エポキシドポリマー、オキセタンポリマー、テトラヒドロフランポリマーなどを含む。触媒作用の任意の方法を使用して、ポリエーテルを作製することができる。ポリエーテルは、例えば、ヒドロキシル、アミン、エステル、エーテルなどを含めた任意の所望の末端基を有することができる。本発明において使用するための好ましいポリエーテルは、2~8つのヒドロキシル基を有するポリエーテルポリオールである。本発明において使用するためのポリエーテルが約1,000ダルトン~約10,000ダルトン、より好ましくは約1,000ダルトン~約5,000ダルトンの分子量を有することも好ましい。本発明のDMC触媒において有用なポリエーテルポリオールは、PPGポリオール、EOキャップされたPPGポリオール、混合EO-POポリオール、ブチレンオキシドポリマー、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを有するブチレンオキシドコポリマー、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどを含む。好ましいポリエーテルは、PPG、例えばPPGポリオール、特にジオール及びトリオールを含み、前記PPGは、約250ダルトン~約8,000ダルトン、より好ましくは約400ダルトン~約4,000ダルトンの分子量を有する。
【0074】
本発明のDMC触媒において使用するための適切なポリエーテルカーボネートは、適切なスターター又はイニシエーター化合物の存在下でのアルキレンオキシド及び二酸化炭素の触媒反応によって得ることもできる。錯化剤として使用されるポリエーテルカーボネートは、当業者に公知の他の方法により、例えば二官能性又は三官能性ヒドロキシ化合物によるポリカーボネートポリオールの部分的加アルコール分解により生成することもできる。錯化剤として使用されるポリエーテルカーボネートは、好ましくは、1~6つ、より好ましくは2~3つ、最も好ましくは2つ平均のヒドロキシル官能基を有する。
【0075】
本発明のDMC触媒中で使用するための適切なポリカーボネートは、二官能性ヒドロキシ化合物(一般に、ビス-ヒドロキシ化合物、例えばアルカンジオール又はビスフェノール)と、炭酸誘導体、例えばホスゲン又はビス[クロロカルボニルオキシ]化合物、炭酸ジエステル(例えば、炭酸ジフェニル若しくは炭酸ジメチル)又は尿素との重縮合によって得ることもできる。ポリカーボネートを生成する方法は、一般に周知であり、例えば“Houben-Weyl,Methoden der organischen Chemie”,Volume E20,Makromolekulare Stoffe,4th Edition,1987,p.1443-1457、“Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry」,Volume A21,5th Edition,1992,p.207-215及び「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering”,Volume 11,2nd Edition,1988,p.648-718に詳細に記載されている。約500ダルトン~5000ダルトン、最も高度に好ましくは1000ダルトン~3000ダルトンの分子量を有する脂肪族ポリカーボネートジオールが特に好ましくは使用される。これらは、一般に、炭酸ジアリール、炭酸ジアルキル、ジオキソラノン、ホスゲン、ビスクロロギ酸エステル又は尿素との反応によって非隣接ジオールから得られる(例えば、欧州特許出願公開第A292772号明細書及びその中で引用されている文献を参照されたい)。適切な非隣接ジオールは、特に1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ビス-(6-ヒドロキシヘキシル)エーテル、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,4-ビス-ヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、1000ダルトンまで、好ましくは200ダルトン~700ダルトンのモル質量を有する、ジオールとエチレンオキシド、及び/又はプロピレンオキシド、及び/又はテトラヒドロフランとのアルコキシル化生成物並びにより稀な場合には不飽和植物性脂肪酸の二量体化によって得ることができるダイマー酸の両方のカルボキシル基を還元することによって得ることができる二量体ジオールである。非隣接ジオールは、個々に又は混合物中で使用することができる。反応は、当業者に公知の様式で塩基又は遷移金属化合物によって触媒することができる。
【0076】
本発明において有用であり得る他の錯化剤は、ポリ(テトラメチレンエーテルジオール)を含む。ポリ(テトラメチレンエーテルジオール)は、ポリテトラヒドロフラン(PTHF)又はポリオキシブチレングリコールとしても公知のテトラメチレンエーテルグリコールをベースとするポリエーテルポリオールである。これらのポリ(テトラメチレンエーテルジオール)は、1分子当たり2つのOH基を含む。これらは、触媒を用いてテトラヒドロフラン(THF)のカチオン重合によって生成することができる。
【0077】
錯化剤を上記に定義されているように使用して、このように得られたDMC触媒の結晶化度を増加又は減少させ得る。
本発明のDMC触媒において使用するための適切な酸は、式HrX’’’を有し得、式中、X’’’は、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、ホウ酸イオン、塩素酸イオン、炭酸イオン、シアン化物イオン、シュウ酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン、カルボン酸イオン及び硝酸イオンから選択されるアニオンであり、好ましくは、X’’’はハロゲン化物イオンである。rは、対イオンX’’’上の電荷に対応する整数である。例えば、X’’’がCl-であるとき、rは1であり、すなわち、塩はHClである。
【0078】
存在する場合、式HrX’’’を有する本発明のDMC触媒中で使用するための特に好ましい酸は、下記のHCl、H2SO4、HNO3、H3PO4、HF、HI、HBr、H3BO3及びHClO4を含む。HCl、HBr及びH2SO4が特に好ましい。
【0079】
アルカリ金属塩(例えば、アルカリ金属水酸化物、例えばKOH、アルカリ金属酸化物又はアルカリ金属炭酸塩)を反応混合物に加え得ることも理解されたい。例えば、金属塩(M’(X’)p)を金属シアン化物塩((Y)q[M’’(CN)b(A)c])に加えた後にアルカリ金属塩を反応混合物に加え得る。
【0080】
1つの一般の調製において、塩化亜鉛(過剰量)の水溶液をヘキサシアノコバルト酸カリウムの水溶液と混合し、有機錯化剤(例えば、ジメトキシエタン又はtert-ブチルアルコール)をこのように得られたスラリーに加える。錯化剤の水溶液(例えば、ジメトキシエタン水溶液又はtert-ブチルアルコール水溶液)による触媒の濾過及び洗浄後、活性触媒が得られる。それに続く洗浄ステップは、過剰な水を除去するため単に錯化剤を使用して行われ得る。それぞれは、濾過ステップが後に続く。
【0081】
代替の調製において、いくつかの別々の溶液を調製し、次いで順序を追って組み合わせ得る。例えば、下記の溶液を調製し得る。
1.金属シアン化物(例えば、ヘキサシアノコバルト酸カリウム)の溶液
2.金属塩、例えば(塩化亜鉛(過剰量))の溶液
3.第1の錯化剤(例えば、PPGジオール)の溶液
4.第2の錯化剤(例えば、tert-ブチルアルコール)の溶液。
【0082】
この方法において、溶液1及び溶液2を直ちに組み合わせ、それに続いて好ましくは急速に撹拌する一方で溶液4をゆっくりと加える。溶液3は、溶液4の添加が完了すると又はその直後に加えられ得る。触媒を濾過によって反応混合物から除去し、錯化剤の溶液でそれに続いて洗浄する。
【0083】
水がDMC触媒において望ましい場合、上記の溶液(例えば、溶液1~4)は、水溶液であり得る。
しかし、上記の調製において記載した溶液が無水溶液である場合、無水DMC触媒(すなわち水が存在しないDMC触媒)を調製し得ることが理解される。DMC触媒を水和させ、それによって水分子を導入することを回避するために、無水溶媒を使用して任意のさらなる加工ステップ(洗浄、濾過など)を行い得る。
【0084】
1つの一般の調製において、いくつかの別々の溶液を調製し、次いで順序を追って組み合わせ得る。例えば、下記の溶液を調製し得る。
1.金属塩(例えば、塩化亜鉛(過剰量))及び第2の錯化剤(例えば、tert-ブチルアルコール)の溶液
2.金属シアン化物(例えば、ヘキサシアノコバルト酸カリウム)の溶液
3.第1及び第2の錯化剤の溶液(例えば、第1の錯化剤は、ポリマー(例えば、PPGジオール)であり得、及び第2の錯化剤は、tert-ブチルアルコールであり得る)。
【0085】
この方法において、溶液1及び溶液2を(例えば、450rpmにおいて)撹拌しながら、上昇した温度(例えば、25℃超、例えば約50℃)で(例えば、1時間にわたり)ゆっくりと合わせる。添加が完了した後、撹拌速度を1時間(例えば、900rpmまで)増加させる。次いで、撹拌速度を低速(例えば、200rpmまで)に減少させ、弱く撹拌しながら溶液3を迅速に加える。混合物を濾過する。
【0086】
固体触媒は、第2の錯化剤の溶液に高い撹拌速度(例えば、約900rpm)で再スラリー化し、その後、第1の錯化剤を低い撹拌速度(例えば、200rpm)で添加し得る。次いで、混合物を濾過する。このステップを2回以上繰り返し得る。このように得られた触媒ケークは、真空下で乾燥され得る(例えば、60℃に加熱しながら)。
【0087】
代わりに、混合物を最初に濾過した後、これを上昇した温度(例えば、25℃超、例えば約50℃)で第1の錯化剤の溶液(第2又はさらなる錯化剤はなし)に再スラリー化し、次いで撹拌することによって均質化することができる。次いで、このステップ後、これを濾過する。次いで、固体触媒を第1及び第2の錯化剤の混合物中で再スラリー化させる。例えば、固体触媒を上昇した温度(例えば、25℃超、例えば約50℃)で第2の錯化剤に再スラリー化し、それに続いて第1の錯化剤を加え、混合物を撹拌することによって均質化する。混合物を濾過し、(例えば、100℃に)加熱しながら触媒を真空下で乾燥させる。
【0088】
DMC触媒は、
M’d[M’’e(CN)f]g
を含み得、式中、M’及びM’’は上記に定義されている通りであり、d、e、f及びgは整数であり、DMC触媒が電気的中性を有するように選択されることを認識されたい。好ましくは、dは3である。好ましくは、eは1である。好ましくは、fは6である。好ましくは、gは2である。好ましくは、M’は、Zn(II)、Fe(II)、Co(II)及びNi(II)から選択され、より好ましくは、M’はZn(II)である。好ましくは、M’’は、Co(III)、Fe(III)、Cr(III)及びIr(III)から選択され、より好ましくは、M’’はCo(III)である。
【0089】
これらの好ましい特徴のいずれかを組み合わせ得ることを認識されたい。例えば、dは3であり、eは1であり、fは6であり、gは2であり、M’はZn(II)であり、M’’はCo(III)である。
【0090】
上記の式の適切なDMC触媒は、ヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛、ヘキサシアノ鉄(III)酸亜鉛、ヘキサシアノ鉄(II)酸ニッケル及びヘキサシアノコバルト(III)酸コバルトを含み得る。
【0091】
DMC触媒の分野において多くの進展がなされており、DMC触媒は、上記の式に加えて、触媒の活性を増進するさらなる添加物を含み得ることを当業者は認識する。このように、上記の式は、DMC触媒の「コア」を形成し得る一方、DMC触媒は、化学量論量又は非化学量論量の1つ又は複数のさらなる成分、例えば少なくとも1つの有機錯化剤、酸、金属塩及び/又は水をさらに含み得る。
【0092】
例えば、DMC触媒は、下記の式:
M’d[M’’e(CN)f]g・hM’’’X’’i・jRc・kH2O・lHrX’’’
を有し得、式中、M’、M’’、X’’’、d、e、f及びgは上記に定義されている通りである。M’’’は、M’及び/又はM’’であり得る。X’’は、ハロゲン化物イオン、酸化物イオン、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、シアン化物イオン、シュウ酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン、カルボン酸イオン及び硝酸イオンから選択されるアニオンであり、好ましくは、X’’はハロゲン化物イオンである。iは1以上の整数であり、iを乗じたアニオンX’’上の電荷はM’’’の価数を満たす。rは、対イオンX’’’上の電荷に対応する整数である。例えば、X’’’がCl-であるとき、rは1である。lは0であるか、又は0.1~5の数である。好ましくは、lは0.15~1.5である。
【0093】
Rcは、錯化剤であり、上記に定義されている通りであり得る。例えば、Rcは、(ポリ)エーテル、ポリエーテルカーボネート、ポリカーボネート、ポリ(テトラメチレンエーテルジオール)、ケトン、エステル、アミド、アルコール(例えば、C1~8アルコール)、尿素など、例えばプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、(メ)エトキシエチレングリコール、ジメトキシエタン、tert-ブチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジグリム、トリグリム、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、3-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-2-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オールであり得、例えば、Rcは、tert-ブチルアルコール、ジメトキシエタン又はポリプロピレングリコールであり得る。
【0094】
上記で示したように、複数の錯化剤は、本発明において使用されるDMC触媒中に存在し得る。錯化剤であるtert-ブチルアルコール及びポリプロピレングリコールの組合せが特に好ましい。
【0095】
水、錯化剤、酸及び/又は金属塩がDMC触媒中に存在しない場合、h、j、k及び/又はlは、それぞれゼロであることを認識されたい。水、錯化剤、酸及び/又は金属塩が存在する場合、h、j、k及び/又はlは正の数であり、例えば0~20であり得る。例えば、hは0.1~4であり得る。jは0.1~6であり得る。kは、0~20、例えば0.1~10、例えば0.1~5であり得る。lは、0.1~5、例えば0.15~1.5であり得る。
【0096】
上記で示すようにDMC触媒は複雑な構造であり、このようにさらなる成分を含めた上記の式は限定的なものではない。代わりに、この定義は、本発明において使用することができるDMC触媒の包括的なものではないことを当業者は認識する。
【0097】
例示的なDMC触媒は、式Zn3[Co(CN)6]2・hZnCl2・kH2O・j[(CH3)3COH]のものであり、式中、h、k及びlは上記に定義されている通りである。例えば、hは、0~4(例えば、0.1~4)であり得、kは、0~20(例えば、0.1~10)であり得、jは、0~6(例えば、0.1~6)であり得る。
【0098】
連鎖移動剤
本発明の重合プロセスは、任意選択的に、連鎖移動剤の存在下で実施され得る。
連鎖移動剤は、水又は式(III)の化合物:
【0099】
【化17】
から選択することが好ましく、
式中、Zは、脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール、ヘテロアリール、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート又はそれらの組合せからなる群から選択される、任意選択的に置換される残基であり、
それぞれのWは、独立に、ヒドロキシル、アミン、チオール又はカルボキシレート基から選択され、
aは、少なくとも2の整数である。
【0100】
連鎖移動剤(CTA)は、水又は独立に以下のものから選択される2つ以上の基を有する化合物であり得る。ヒドロキシル(-OH)、アミン(-NHRW)、チオール(-SH)又はカルボキシレート(-C(O)OH)、(ここで、RWは、水素、任意選択的に置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール若しくはヘテロアリール又はそれらの組合せ(すなわち脂肪族アリール、脂肪族ヘテロアリール、ヘテロ脂肪族アリールなど)である)。水は、2つの異なる「-OH」基を有するわけではないが、それは、2つの明確な「-OH」基を有する分子と同様の連鎖移動性を示し、そのため、「連鎖移動剤」という用語に包含され得ることが理解されるであろう。
【0101】
Zは、連鎖移動剤のコアであり、それに結合した2つ以上の「W」基を有することが可能な任意の基であり得る。好ましい実施形態では、Zは、脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール、ヘテロアリール、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート又はそれらの組合せからなる群から選択される、任意選択的に置換される残基である。Zは、例えば、任意選択的に置換される芳香脂肪族、ヘテロ芳香脂肪族、脂肪族、脂環族などの基であり得る。好ましくは、Zは、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール又はポリエーテルから選択される。
【0102】
Zがポリマーである場合(すなわちZがポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテル又はポリカーボネートの基を含む場合)、そのようなポリマーの分子量(Mn)は、好ましくは、10,000g/mol未満である。好ましいポリマーとしては、ポリ(エチレングリコール)(PEG)及びポリ(乳酸)(PLA)が挙げられる。
【0103】
連鎖移動剤、特に基Zは、任意選択的に置換され得る。ある種の実施形態では、Zは、任意選択的に、ハロゲン、ニトリル、イミン、ニトロ、脂肪族、アセチル、アミド、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール又はヘテロアリールによって置換されている。
【0104】
nは、少なくとも2である整数である。好ましくは、nは、2~10(両端を含む)から選択される整数である。より好ましくは、aは、2~6(両端を含む)から選択される整数である。
【0105】
出現するWのそれぞれは、同一であるか又は異なり得る。出現するWのそれぞれが同一であることが好ましい。ある種の実施形態では、それぞれ出現するWがヒドロキシルである(すなわちその連鎖移動剤がポリオール、例えばジオール、トリオール、テトラオールなどである)。他の実施形態では、それぞれ出現するWがアミンである(すなわちその連鎖移動剤がポリアミン、例えばジアミン、トリアミン、テトラアミンなどである)。他の実施形態では、それぞれ出現するWがカルボン酸である(すなわちその連鎖移動剤がポリカルボン酸、例えば二酸、三酸、四酸などである)。他の実施形態では、それぞれ出現するWがチオールである(すなわちその連鎖移動剤がポリチオール、例えばジチオール、トリチオール、テトラチオールなどである)。他の実施形態では、その連鎖移動剤が水である。
【0106】
その連鎖移動剤が水である場合、Xは、好ましくは、OCOCH3、OCOCF3、OSO2C7H7、OSO(CH3)2又はハライドではなく、より好ましくは、CXは、OCOCH3、OCOCF3、OSO2C7H7、OSO(CH3)2、ハライド、アルキル、アルコキシ又はアミドではない。
【0107】
単一の連鎖移動剤を使用し得るか、又は複数の連鎖移動剤の混合物を使用し得る。
第二の態様において有用な連鎖移動剤の例としては、以下のものが挙げられる。水、モノ-アルコール(すなわち1つのOH基を有するアルコール、例えば4-エチルベンゼンスルホン酸、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、フェノール、シクロヘキサノール)、ジオール(例えば、1,2-エタンジオール、1-2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1-3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ジフェノール、1,3-ジフェノール、1,4-ジフェノール、カテコール及びシクロヘキセンジオール)、トリオール(グリセロール、ベンゼントリオール、1,2,4-ブタントリオール、トリス(メチルアルコール)プロパン、トリス(メチルアルコール)エタン、トリス(メチルアルコール)ニトロプロパン、トリメチロールプロパン、好ましくはグリセロール又はベンゼントリオール)、テトラオール(例えば、カリックス[4]アレーン、2,2-ビス(メチルアルコール)-1,3-プロパンジオール、ジ(トリメチロールプロパン))、ポリオール(例えば、ジペンタエリスリトール、D-(+)-グルコース又はD-ソルビトール)、ジヒドロキシ末端ポリエステル(例えば、ポリ乳酸)、ジヒドロキシ末端ポリエーテル(例えば、ポリ(エチレングリコール))、酸(例えば、ジフェニルホスフィン酸)、デンプン、リグニン、モノ-アミン(すなわちメチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン)、ジアミン(例えば、1,4-ブタンジアミン)、トリアミン、ジアミン末端ポリエーテル、ジアミン末端ポリエステル、モノ-カルボン酸(例えば、3,5-ジ-tert-ブチル安息香酸)、ジカルボン酸(例えば、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸又はテレフタル酸、好ましくはマレイン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸)、トリカルボン酸(例えば、クエン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸又は1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸、好ましくはクエン酸)、モノ-チオール、ジチオール、トリチオール並びにヒドロキシル、アミン、カルボン酸及びチオール基を混合して有する化合物、例えば乳酸、グリコール酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、天然のアミノ酸、非天然のアミノ酸、単糖類、二糖類、オリゴサッカライド及び多糖類(ピラノース及びフラノース形を含む)。連鎖移動剤は、以下のものから選択されることが好ましい。シクロヘキセンジオール、1,2,4-ブタントリオール、トリス(メチルアルコール)プロパン、トリス(メチルアルコール)ニトロプロパン、トリス(メチルアルコール)エタン、トリ(メチルアルコール)プロパン、トリ(メチルアルコール)ブタン、ペンタエリスリトール、ポリ(プロピレングリコール)、グリセロール、モノ-及びジ-エチレングリコール、プロピレングリコール、2,2-ビス(メチルアルコール)-1,3-プロパンジオール、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサンジオール、D-ソルビトール、1-ブチルアミン、テレフタル酸、D-(+)-グルコース、3,5-ジ-tert-ブチル安息香酸及び水。
【0108】
連鎖移動剤は、金属錯体(モノメタリック又はバイメタリック金属錯体触媒)に対して少なくとも1:1のモル比で存在し得る。連鎖移動剤は、金属錯体に対して約1:1~約100:1のモル比で存在することが好ましい。連鎖移動剤は、1:1~9:1のモル比で存在することがより好ましい。連鎖移動剤は、金属錯体に対して少なくとも2:1のモル比で存在することが最も好ましい。
【0109】
ハロゲン化されたX基は、両端をヒドロキシル基で停止させたポリカーボネート鎖を製造するのに必要とされる連鎖移動剤の量を低減させる。実際、二酸化炭素中又は触媒の製造時に残るか(例えば、第一の態様において有用な触媒を製造するために、水和された金属の酢酸塩を使用した場合)のいずれかの理由で存在する水不純物は、(連鎖移動剤が水である場合に)十分な量の連鎖移動剤としての役割を果たし、すべてのポリカーボネート鎖の末端をヒドロキシル基であり得る。したがって、過剰な量の連鎖移動剤が必要とされない。したがって、ある種の実施形態では、Xがハロゲン化基であり、その連鎖移動剤:金属錯体のモル比が少なくとも0.1:1、好ましくは少なくとも1:1、より好ましくは0.1:1~9:1、なおより好ましくは0.1:1~1:1である。XがOC(O)Rx、OSO2Rx、OSO(Rx)2、ORx又はハロ脂肪族であることが好ましく、ここで、Rx基の一方又は両方がハロ脂肪族、ハロアリール又はハロ脂環族、より好ましくはハロ脂肪族(例えば、フルオロ脂肪族)である。
【0110】
連鎖移動剤を使用して、本発明のプロセスにより製造されるポリマーの分子量(Mn)を調節することができる。
反応剤
本発明の重合プロセスは、二酸化炭素とエポキシドとの反応を含む。エポキシドは、エポキシド残基を含むいかなる化合物でもあり得る。エポキシドは、脂肪族(脂環族を含む)又は芳香族であり得る。本発明において使用可能なエポキシドの例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、非置換若しくは置換のアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシド、置換されたシクロヘキセンオキシド(例えば、リモネンオキシド、C10H16O又は2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、C11H22O)、非置換若しくは置換のオキシラン(例えば、オキシラン、エピクロロヒドリン、2-(2-メトキシエトキシ)メチルオキシラン(MEMO)、2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)メチルオキシラン(ME2MO)、2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチルオキシラン(ME3MO)、1,2-エポキシブタン、グリシジルエーテル、ビニル-シクロヘキセンオキシド、3-フェニル-1,2-エポキシプロパン、1,2-及び2,3-エポキシブタン、イソブチレンオキシド、シクロペンテンオキシド、2,3-エポキシ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、インデンオキシド、並びに官能化3,5-ジオキサエポキシド。官能化3,5-ジオキサエポキシドの例としては、以下のものが挙げられる。
【0111】
【化18】
エポキシド残基は、グリシジルエーテル、グリシジルエステル又はグリシジルカーボネートであり得る。グリシジルエーテル、グリシジルエステル、グリシジルカーボネートの例としては、以下のものが挙げられる。
【0112】
【化19】
エポキシド基材は、2つ以上のエポキシド残基を含み得、すなわちそれは、ビス-エポキシド、トリス-エポキシド又はマルチ-エポキシド含有残基であり得る。2つ以上のエポキシド残基を含む化合物の例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及び3,4-エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチルが挙げられる。2つ以上のエポキシド残基を有する1つ又は複数の化合物の存在下で反応を実施すると、得られるポリマーに架橋が生じる可能性があることが理解されるであろう。
【0113】
当業者がよく理解するように、エポキシドは、「グリーン」な、すなわち再生可能な資源から得ることが可能である。エポキシドは、(ポリ)不飽和化合物、例えば脂肪酸及び/又はテルペンから誘導されるものから標準的な酸化反応を使用して得ることができる。
【0114】
エポキシド残基は、-OH残基又は保護された-OH残基を含み得る。その-OH残基は、任意の適切な保護基によって保護することができる。好適な保護基としては、以下のものが挙げられる。メチル又は他のアルキル基、ベンジル、アリル、tert-ブチル、テトラヒドロピラニル(THP)、メトキシメチル(MOM)、アセチル(C(O)アルキル)、ベンゾリル(C(O)Ph)、ジメトキシトリチル(DMT)、メトキシエトキシメチル(MEM)、p-メトキシベンジル(PMB)、トリチル、シリル(例えば、トリメチルシリル(TMS)、t-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、t-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、トリ-イソ-プロピルシリルオキシメチル(TOM)及びトリイソプロピルシリル(TIPS))、(4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル(MMT)、テトラヒドロフラニル(THF)並びにテトラヒドロピラニル(THP)。
【0115】
エポキシドは、二酸化炭素と反応させる前に(例えば、水素化カルシウム上での蒸留などによって)精製され得る。例えば、反応混合物に添加する前にエポキシドを蒸留し得る。
【0116】
そのエポキシドは、少なくとも98%、より好ましくは99%より高い純度を有することが好ましい。
「エポキシド」という用語には、1つ又は複数のエポキシドが包含されることが意図されていることが理解されるであろう。換言すれば、「エポキシド」という用語は、単一のエポキシド又は2つ以上の異なるエポキシドの混合物を指す。例えば、そのエポキシド基材は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの混合物、シクロヘキセンオキシドとプロピレンオキシドとの混合物、エチレンオキシドとシクロヘキセンオキシドとの混合物又はエチレンオキシドと、プロピレンオキシドと、シクロヘキセンオキシドとの混合物であり得る。
【0117】
本発明の第二の態様のエポキシドの代わりに又はそれに加えて、置換及び非置換のオキセタンを使用できることも当業者は理解するであろう。適切なオキセタンとしては、以下のものが挙げられる。非置換若しくは置換のオキセタン(好ましくは、その3位をハロゲン、アルキル(非置換又は-OH若しくはハロゲンで置換された)、アミノ、ヒドロキシル、アリール(例えば、フェニル)、アルキルアリール(例えば、ベンジル)によって置換されたもの)。オキセタンの例としては、以下のものが挙げられる:オキセタン、3-エチル-3-オキセタンメタノール、オキセタン-3-メタノール、3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-メチルオキセタン、3-エチルオキセタンなど。
【0118】
好ましくは、そのエポキシドは、脂肪族であり得る。そのエポキシドは、C1~C10アルキルオキシドであることが好ましい。そのエポキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド又はそれらの組合せであることがより好ましい。そのエポキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はそれらの組合せであることが最も好ましい。そのようなオキシドは、それらから、多くの用途、例えばフィルムにおいて有用である、エラストマー的な性質を有するポリマー(ポリアルキレンカーボネート、例えばPPC)が製造できるため、特に興味深い。
【0119】
反応条件
本発明の各種の態様の重合プロセスは、各種の適した圧力で実施することができる。その重合プロセスは、1~100気圧、好ましくは1~40気圧、例えば1~20気圧、より好ましくは1気圧又は10気圧の圧力で実施することができる。
【0120】
その重合プロセスは、任意の適切な温度で実施することができる。その重合プロセスは、約0℃~約250℃、好ましくは約40℃~約160℃、なおより好ましくは約50℃~約120℃の温度で実施することができる。
【0121】
その重合プロセスの時間は、168時間まで、好ましくは約1分~約24時間、より好ましくは約5分~約12時間、最も好ましくは約1時間~約6時間であり得る。
その重合プロセスに二酸化炭素とエポキシドとの反応が含まれる場合、そのプロセスの温度(すなわち重合プロセスが実施される温度)を使用して、反応生成物の組成を調節することが可能である。温度を高くすると、式(I)及び(II)の触媒の、環状カーボネートの生成に向かう選択率も高くなる。式(I)及び(II)の触媒並びに重合プロセスは、250℃までの温度で操作され得る。
【0122】
その重合プロセスは、低い触媒担持量で実施することができる。例えば、その重合に二酸化炭素とエポキシドとの反応が含まれる場合、そのプロセスのための触媒担持量は、好ましくは、約1:1,000~100,000の触媒:エポキシドの比、より好ましくは約1:1,000~300,000の触媒:エポキシドの比、なおより好ましくは約1:10,000~100,000、最も好ましくは約1:50,000~100,000の触媒:エポキシドの比である。その重合プロセスに水素化物とエポキシドとの反応が含まれる場合、そのプロセスのための触媒担持量は、好ましくは、約1:1,000~300,000の触媒:全モノマー含量の比、より好ましくは約1:10,000~100,000の触媒:全モノマー含量の比、最も好ましくは約1:50,000~100,000の触媒:全モノマー含量の比である。疑念を避けるために付言すれば、上記の比率は、モル比である。
【0123】
その重合プロセスは、溶媒の存在下で実施することができる。溶媒の例としては、以下のものが挙げられる。トルエン、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジオキサン、ジクロロベンゼン、塩化メチレン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートなど。
【0124】
その重合プロセスは、バッチ反応器中又は連続反応器で実施することができる。
反応生成物
本発明の各種の態様の重合プロセスでのポリマー生成物は、ポリカーボネート又はポリエーテルカーボネートポリオールであり得る。例えば、ポリマー生成物は、ポリエーテルカーボネートポリオール、例えばポリ(シクロヘキセンカーボネート)(PCHC)又はポリ(プロピレンカーボネート)(PPC)であり得る。
【0125】
ポリマー生成物は、ポリカーボネート又はポリエーテルカーボネートポリオールであることが理解されるであろう。
ポリマー生成物がポリエーテルカーボネートポリオールであった場合、そのポリエーテルカーボネートポリオールは、n個のエーテル結合とm個のカーボネート結合とを含み得、ここで、nとmとは、整数であり、及びm/(n+m)は、ゼロ超~1未満である。ポリマー生成物がポリカーボネートであった場合、そのポリカーボネートは、n個のエーテル結合とm個のカーボネート結合とを含み得、ここで、nとmは整数であり、m/(n+m)は1に等しい。したがって、当業者がよく認めるように、m/(n+m)が1である場合、ポリマー生成物はポリカーボネートであり、m/(n+m)がゼロ超~1未満である場合、ポリマー生成物はポリエーテルカーボネートポリオールである。
【0126】
典型的には、その重合プロセスが、上で述べたように、DMC触媒の存在下で実施された場合、m/(n+m)の比率は、0超~1未満までである。典型的には、本発明の重合プロセスが、上で述べたように、DMC触媒の不在下、すなわちモノメタリック又はバイメタリック金属錯体触媒の存在下で実施された場合、m/(n+m)は、0.05~0.95である。
【0127】
例えば、本発明の重合プロセスでは、1に等しいm/(n+m)値を有するポリカーボネートを調製することができる。当業者が認めるであろうように、この場合、ポリマー生成物のエポキシドとCO2モノマーとが完全に交互になっている。
【0128】
例えば、本発明の重合プロセスでは、広い範囲のm/(n+m)値を有するポリエーテルカーボネートポリオールを調製することができる。m/(n+m)は、0.05未満、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、0.95超であるか又は特定の例で調製する場合にいかなる範囲でもあり得る。例えば、m/(n+m)は、約0.5~0.95、約0.10~0.90、約0.15~0.85、約0.20~約0.80又は約0.25~約0.75などであり得る。ある種の実施形態では、ポリマー生成物がポリエーテルカーボネートポリオールである場合、そのポリエーテルカーボネートポリオールは、カーボネート結合の高い比率を有することができ、例えば、m/(n+m)は、約0.50超、例えば約0.55超~約0.95未満、例えば約0.65~約0.90、例えば約0.75~約0.90であり得る。本発明の重合プロセスでは、穏やかな条件下、例えば20気圧以下、例えば10気圧以下の圧力において、高いm/(n+m)比を有するポリエーテルカーボネートポリオールを調製することができる。
【0129】
そのポリエーテルカーボネートポリオールは、式(IV):
【0130】
【化20】
に従った構造を有することができ、式中、Z及びW’は、連鎖移動剤の本性に依存し、R’及びR”は、エポキシドの本性に依存し、m及びnは、ポリエーテルカーボネートポリオール中のカーボネート結合とポリエーテル結合との量を規定する。ポリエーテルカーボネートポリオールには、少なくとも1つのカーボネート結合と、少なくとも1つのエーテル結合とを含んでいなければならないことが理解されるであろう。したがって、そのポリオール中のエーテル結合及びカーボネート結合の数(n+m)は、a超であるか又はaに等しいことが理解されるであろう。n+mの合計は、a超であるか又はaに等しくならなければならない。
【0131】
式(IV)のポリマーにおいて、骨格における隣接するエポキシドモノマー単位は、ヘッドトゥーテール連結、ヘッドトゥーヘッド連結又はテールトゥーテール連結であり得ることを理解されたい。式(IV)は、カーボネート連結及びエーテル連結が、「a」によって定義されるセクションのそれぞれにおける2つの別個の「ブロック」中に存在することを必要としないが、代わりに、カーボネート及びエーテル繰り返し単位は、ポリマー骨格に沿って統計的に分布され得るか、又はカーボネート連結及びエーテル連結が2つの別個のブロック中にはないように配置され得ることも理解されたい。
【0132】
このように、ポリエーテルポリオール(例えば、式(IV)のポリマー)は、ランダムコポリマー、統計コポリマー、交互コポリマー又は周期コポリマーと称され得る。ポリマー中に取り込まれた二酸化炭素の重量%は、ポリマー骨格中のカーボネート連結の量を決定するために断定的に使用することができないことを理解されたい。例えば、同じ重量%の二酸化炭素を取り込む2つのポリマーは、非常に異なる比のカーボネート連結及びエーテル連結を有し得る。これは、二酸化炭素の「取込み重量%」が連鎖移動剤の長さ及び性質を考慮しないからである。例えば、1つのポリマー(Mn、2000g/mol)を、100g/molのモル質量を有する連鎖移動剤を使用して調製し、別のポリマー(Mn、また2000g/mol)を、500g/molのモル質量を有する連鎖移動剤を使用して調製し、両方の生成したポリマーが同じ比のm/nを有する場合、ポリマー中の二酸化炭素の重量%は、全体的なポリマー分子量(Mn)における連鎖移動剤の質量の異なる割合によって異なる。例えば、m/(m+n)が0.5であった場合、記載されている2つのポリエーテルカーボネートポリオールは、それぞれ26.1重量%及び20.6重量%の二酸化炭素含量を有する。
【0133】
上で明らかにしたように、本発明の重合プロセスでは、広い範囲のカーボネート結合対エーテル結合の比率を有する(例えば、m/(n+m)は、ゼロ超~1であり得る)ポリエーテルカーボネートポリオールを製造することが可能であり、これは、プロピレンオキシドを使用した場合、約43重量%までの二酸化炭素の組み入れに相当する。同様に、m/(n+m)が1である場合、ポリカーボネートを形成することができる。
【0134】
先にも述べたように、本発明の重合プロセスの方法で、ランダムコポリマー、統計的コポリマー、交互コポリマー又は周期的コポリマーであるポリエーテルカーボネートポリオールを製造することが可能である。したがって、そのカーボネート結合が単一のブロック中に存在しなければ、そのことによってポリカーボネートポリオールと比較して改良された性質、例えば耐熱分解性を有するポリマー生成物が得られる。本発明の方法で調製されるポリマーは、ランダムコポリマー又は統計的コポリマーであることが好ましい。
【0135】
それぞれのR’は、独立に、以下のものから選択することができる。H、ハロゲン、ヒドロキシル又は任意選択的に置換されるアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、脂環族若しくはヘテロ脂環族基。R’は、H又は任意選択的に置換されるアルキルから選択されることが好ましい。それぞれのR’’は、独立に、以下のものから選択することができる。H、ハロゲン、ヒドロキシル又は任意選択的に置換されるアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、脂環族若しくはヘテロ脂環族基。R’’は、H又は任意選択的に置換されるアルキルから選択されることが好ましい。
【0136】
R’及びR’’は、炭素及び水素原子並びに任意選択的に1つ又は複数のヘテロ原子(例えば、O、N又はS)を含有する飽和、部分不飽和又は不飽和環を一緒に形成し得る。例えば、R’及びR’’は、5員又は6員環を一緒に形成し得る。
【0137】
上記で示すように、R’及びR’’の性質は、反応において使用されるエポキシドによって決まる。エポキシドがシクロヘキセンオキシド(CHO)である場合、R’及びR’’は、6員アルキル環(例えば、シクロヘキシル環)を一緒に形成する。エポキシドがエチレンオキシドである場合、R’及びR’’は、両方ともHである。エポキシドがプロピレンオキシドである場合、R’はHであり、R’’はメチルである(又はどのようにエポキシドがポリマー骨格中に加えられるかにより、R’はメチルであり、R’’はHである)。エポキシドがブチレンオキシドである場合、R’はHであり、R’’はエチルである(又は逆も同様である)。エポキシドがスチレンオキシドである場合、R’は水素であり得、R’’はフェニルであり得る(又は逆も同様である)。
【0138】
R’及び/又はR’’の各出現は異なり得、例えばエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの混合物が使用される場合、R’は、独立に、水素又はメチルであり得、R’’は、独立に、水素又はメチルであり得ることも理解されたい。
【0139】
このように、R’及びR’’は、水素又はアルキルから独立に選択され得るか、又はR’及びR’’は、シクロヘキシル環を一緒に形成し得、好ましくは、R’及びR’’は、水素、メチル又はエチルから独立に選択され得るか、又はR’及びR’’は、シクロヘキシル環を一緒に形成し得る。
【0140】
W’は、結合を移動性の水素原子に代えたこと以外、先に説明したWに相当する。したがって、それぞれのW’の素性は、連鎖移動剤中のWの定義に依存する。
変数のaも同様にその連鎖移動剤の素性に依存するであろう。式(IV)中のaの値は、式(III)の場合と同じになることが理解されるであろう。したがって、式(IV)では、aは、少なくとも2である整数であり、好ましくは、aは、2~8の範囲であり、好ましくは、aは、2~6の範囲である。
【0141】
aの値は、ポリエーテルカーボネートポリオール反応生成物の形状に影響するであろう。例えば、aが2である場合、式(IV)のポリオールは、次の構造を有することができる。
【0142】
【化21】
式中、Z、W’、m、n、R’及びR”は、先に式(IV)について述べたものである。
【0143】
例えば、aが3である場合、式(IV)のポリエーテルカーボネートポリオールは、次式を有することができる。
【0144】
【化22】
式中、Z、W’、m、n、R’及びR”は、先に式(IV)について述べたものである。
【0145】
ポリマー生成物は、任意の適切な数平均分子量(Mn)を有することができる。ポリマー生成物の数平均分子量(Mn)は、約1,000g/mol~約100,000g/molであることが好ましい。ポリマー生成物の数平均分子量(Mn)は、例えば、Polymer Labs製のGPC-60を使用し、Polymer Labs製のMixed Bカラムで、溶離液としてTHFを1mL/分の流量で使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。狭い分子量分布のポリスチレン基準を使用して装置の較正を行うことができる。
【0146】
連鎖移動剤を使用して、ポリマー生成物の分子量(Mn)を制御することができる。例えば、重合プロセスに連鎖移動剤を添加することにより、約200g/mol~約20,000g/mol、好ましくは約10,000g/mol未満のMnを有するポリエーテルカーボネートポリオール及びポリエステルポリオールを製造することが可能である。
【0147】
ポリマー生成物が約2未満、好ましくは約1.5未満、なおより好ましくは約1.2未満の多分散性指数(PDI)を有するようにすることができる。有利には、1つ又は複数の連鎖移動剤を添加することにより、分子量分布を制御して、マルチモーダル又は広い分子量分布のポリマーを製造することができる。
【0148】
ポリマー生成物は、各種のコポリマー物質の調製における有用な分子構成単位である。ポリマー生成物をさらに反応させて、例えばポリマー性の反応生成物、例えばポリウレア又はポリアミンを製造することができる。それらのプロセス及び反応は、当業者に公知である(例えば、国際公開第2013/034750号パンフレットを参照されたい)。
【0149】
それらのポリエーテルカーボネートポリオール又はポリエステルポリオールは、従来からポリオールが使用されている各種の用途及び製品において使用することができ、そのようなものとしては、以下のものが挙げられる(これらに限定されるわけではない)。接着剤(例えば、ホットメルト接着剤及び構造接着剤)、バインダー(例えば、農産物製品用バインダー、鋳物用中子用バインダー及びゴムクラム用バインダー)、コーティング(例えば、粉体コーティング、輸送、例えば自動車又は船舶用コーティング、速硬化コーティング、自己修復性コーティング、トップコート及びプライマー、ワニス及び海洋用途、例えば石油掘削リグのためのコーティング)、エラストマー(例えば、注型エラストマー、繊維/スパンデックス用エラストマー、履物用エラストマー、RIM/RRIM用エラストマー、合成皮革用エラストマー、工業用微孔質エラストマー及びTPUエラストマー)、軟質フォーム(例えば、粘弾性フォーム)、硬質フォーム(例えば、硬質及び軟質のパネル、注型硬質フォーム、エアロゾル隙間充填フォーム、スプレーフォーム、冷凍用フォーム、現場注入フォーム及びフォームスラブ)並びにシーラント(例えば、民生用、産業用及び輸送用(例えば、自動車)のためのつや出し用シーラント及び建築用シーラント)。ポリアミン及びポリウレアは、例えば、発泡のような当業者に公知の標準技術的な方法を用いて加工することができる。
【0150】
本発明の重合によって製造されるポリエーテルカーボネートポリオール及びポリエステルポリオール又は本発明の第四の態様のポリマーを、さらなる使用又は反応前に他のポリオールと混合し得ることが理解されるであろう。
【0151】
ポリエーテルカーボネートポリオールは、LDPEと比較して、以下に示すような各種の有利な性質を有する。高強度、高靱性、高光沢、高透明性、低ヘーズ、ガス(例えば、酸素及び二酸化炭素)又は水に対する高いバリヤー性、難燃性、耐UV性、高耐久性、剛性(rigidity)及び剛性(stiffness)、可塑剤との相容性、広い寸法安定温度、生分解性及び生体適合性並びに弾性率及び降伏強度。したがって、これらのポリマーは、例えば、以下に示すような各種の用途及び製品で使用することができる。電子用構成要素、建築材料、データ記憶製品、自動車及び航空機用製品、安全用部品、医療用途、携帯電話、包装(ボトルを含む)、光学用途(例えば、安全ガラス、フロントガラスなど)。
【0152】
酸
本発明の方法は、触媒を失活させるのに有効な酸と触媒とを接触させる工程を含む。有利には、触媒を酸と接触させることにより、ポリマー生成物が安定化される。理論に拘束されるわけではないが、触媒と酸のアニオン(例えば、酸として酢酸を使用した場合には酢酸アニオン)との間で錯体が形成され、それは、使用した酸に依存して触媒-ポリマー錯体と平衡状態であるか又は平衡状態でないことがあり得ると考えられる。その重合反応から二酸化炭素を除去する(又は追加しない)と、触媒-ポリマー錯体の存在することでそのポリマー鎖の分解が始まる可能性がある。触媒と酸のアニオンとの間で錯体が形成されると、存在する触媒-ポリマー錯体の量が低下し、有利にはポリマーの分解量が低下する。
【0153】
本発明の第一及び第六の態様のプロセスは、触媒を失活させるのに有効な酸と触媒とを接触させる工程を含む。本発明の第一及び第六の態様の酸は、任意の適切な、触媒を失活させるのに有効な酸であり得る。本発明の第一及び第六の態様の酸は、重合プロセスのための開始剤として有効なアニオンを含有する酸であることが好ましい。したがって、その酸は、OC(O)RX、OSO2RX、OSO(RX)2、ハライド、ナイトレート又はカーボネートから選択されるアニオンを含有する酸であることが好ましい。RXは、独立に、水素又は任意選択的に置換される脂肪族、ハロ脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール、アルキルアリール若しくはヘテロアリールである。そのアニオンは、OC(O)RXから選択され得ることがより好ましい。RXは、独立に、水素、任意選択的に置換される脂肪族、ハロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、シリル又はアルキルアリールである。アニオンの例としては、以下のものが挙げられる。OCOCH3、OCOCF3、OSO2C7H7、OSO(CH3)2、Cl、Br、I、F。その酸が、以下のものから選択されるアニオンを含むことが最も好ましい。OC(O)CH3、OC(O)CH2CH3、OC(O)(CH2)2CH3、OC(O)(CH2)3CH3、OC(O)(CH2)4CH3、OC(O)(CH2)5CH3、OC(O)(CH2)6CH3、OC(O)C(CH3)3、OC(O)C6H5、OC(O)CCCl3及び/又はOC(O)CF3、最も好ましくはOC(O)CH3。
【0154】
本発明の第一及び第六の態様の酸は、スルホン酸、リン酸、有機酸、例えばカルボン酸又は任意のそのような酸の組合せから選択することが好ましい。その酸はカルボン酸であることがより好ましい。カルボン酸は、適切などのようなカルボン酸でもあり得る。酸は官能化有機酸であることが好ましく、ここで、官能化有機酸とは、酸基に加えて、触媒の金属中心の1つ又は複数と安定な結合又は相互作用を形成するのに有効な1つ又は複数の他の官能基を有する有機酸である。その1つ又は複数の他の官能基は、触媒の金属中心の1つ又は複数と安定な結合を形成するのに有効である任意の適切な基であり得る。例えば、その官能基は、-OH、-SO3H、-P(O)(OH)2、-N(R9)2又は-COOHから選択することができ、ここで、R9は、独立に、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール又はヘテロアリール基から選択することができる。その酸は、先に述べたように、触媒の金属中心の1つ又は複数と安定な結合又は相互作用を形成するのに有効な1つ又は複数の他の官能基を含む官能化カルボン酸であることがより好ましい。その酸は、1つ又は複数のさらなる-COOH基及び1つ又は複数の-OH基を含む官能化カルボン酸であるか、又は2つ以上の-COOH基を含む多官能カルボン酸であることがより好ましい。その酸は、例えば、ジカルボン酸、トリカルボン酸又はサリチル酸のような多官能カルボン酸であることが最も好ましい。
【0155】
有利には、本発明のプロセスにおいて、典型的に予想されるより少ない量でそれらのカルボン酸を使用して触媒を失活させ、且つ/又はポリマー生成物を安定化させることができる。例えば、実質的に化学量論的な量で使用することができる。
【0156】
その酸がカルボン酸である場合、そのカルボン酸は、任意選択的に置換されるC1~C20アルキル又は任意選択的に置換されるC5~C20アリールカルボン酸、好ましくは任意選択的に置換されるC1~C10アルキル又は任意選択的に置換されるC6~C12アリールカルボン酸、より好ましくは任意選択的に置換されるC1~C6アルキル又は任意選択的に置換されるC6アリールカルボン酸、より好ましくは任意選択的に置換されるC1~C4アルキル又は任意選択的に置換されるC6アリールカルボン酸であり得る。最も好ましくは、そのカルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ステアリン酸、ピバル酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、1-アダマンタンカルボン酸、安息香酸及び/又はサリチル酸であり得る。例えば、サリチル酸も、それが-COOH基と-OH基とを有するという事実から、官能性カルボン酸であることを当業者は認めるであろう。
【0157】
その酸がジカルボン酸である場合、そのジカルボン酸は、任意選択的に置換されるC0~C20アルキル又は任意選択的に置換されるC6~C20アリールジカルボン酸、好ましくは任意選択的に置換されるC0~C10アルキル又は任意選択的に置換されるC6~C12アリールジカルボン酸、より好ましくは任意選択的に置換されるC0~C6アルキル又は任意選択的に置換されるC6アリールジカルボン酸、より好ましくは任意選択的に置換されるC0~C4アルキル又は任意選択的に置換されるC6アリールジカルボン酸であり得る。最も好ましくは、そのジカルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸、アスパラギン酸、酒石酸、グルタミン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェン酸又は2,6-ナフタレンジカルボン酸であり得る。
【0158】
その酸がトリカルボン酸である場合、そのトリカルボン酸は、任意選択的に置換されるC0~C20アルキル又は任意選択的に置換されるC6~C20アリールトリカルボン酸、好ましくは任意選択的に置換されるC0~C10アルキル又は任意選択的に置換されるC6~C12アリールトリカルボン酸、より好ましくは任意選択的に置換されるC0~C6アルキル又は任意選択的に置換されるC6アリールトリカルボン酸、より好ましくは任意選択的に置換されるC0~C4アルキル又は任意選択的に置換されるC6アリールトリカルボン酸であり得る。最も好ましくは、そのジカルボン酸は、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、プロパン-1,2,3-トリカルボン酸又はトリメシン酸であり得、なおより好ましくは、そのジカルボン酸は、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸又はプロパン-1,2,3-トリカルボン酸であり得る。
【0159】
本発明の第二、第四、第七及び第九の態様のプロセスは、触媒を、重合プロセスを開始させるのに有効であり、且つ触媒を失活させるのに有効であるアニオンを含有する酸と接触させる工程を含む。
【0160】
本発明の第二、第四、第七及び第九の態様の酸をスルホン酸、リン酸、有機酸、例えばカルボン酸又は任意のそのような酸の組合せから選択することが好ましいが、ただし、その酸は、重合プロセスを開始させるのにも有効である。重合プロセスを開始させるのに有効であり、且つ触媒を失活させるのに有効であるアニオンを含有する酸は、本発明の第一及び第六の態様に関連して先に定義されたものである。したがって、その酸は、以下のものから選択されるアニオンを含むことが最も好ましい。OC(O)CH3、OC(O)CH2CH3、OC(O)(CH2)2CH3、OC(O)(CH2)3CH3、OC(O)(CH2)4CH3、OC(O)(CH2)5CH3、OC(O)(CH2)6CH3、OC(O)C(CH3)3、OC(O)C6H5、OC(O)CCCl3及び/又はOC(O)CF3、最も好ましくはOC(O)CH3。
【0161】
本発明の第二、第四、第七及び第九の態様の酸は、有機酸、例えばカルボン酸であることが好ましい。好適なカルボン酸は、本発明の第一及び第三の態様に関連して先に定義されたものである。
【0162】
本発明の第三、第五、第八及び第十の態様のプロセスは、触媒を失活させるのに有効なカルボン酸と触媒とを接触させる工程を含む。好適なカルボン酸は、本発明の第一及び第六の態様に関連して先に定義されたものである。そのカルボン酸は、重合プロセスを開始させるのに有効であり、且つ触媒を失活させるのに有効であることが好ましい。したがって、その酸は、以下のものから選択されるアニオンを含有することが最も好ましい。OC(O)CH3、OC(O)CH2CH3、OC(O)(CH2)2CH3、OC(O)(CH2)3CH3、OC(O)(CH2)4CH3、OC(O)(CH2)5CH3、OC(O)(CH2)6CH3、OC(O)C(CH3)3、OC(O)C6H5、OC(O)CCCl3及び/又はOC(O)CF3、最も好ましくはOC(O)CH3。
【0163】
本発明の各種の態様の酸は、好ましくは、少なくとも2.5、より好ましくは少なくとも3、最も好ましくは少なくとも4のpKaを有する。
疑念を避けるために付言すれば、本明細書において言及するpKaは、特に断らない限り、25℃において希釈水溶液で測定したpKaを指す。ここで、本発明の目的のために、そのpKaは、当業者に公知の適切な方法で測定することができる。
【0164】
本発明の第四、第五、第九及び第十の態様における、好ましくは本発明の第一、第二、第三、第六、第七及び/又は第八の態様における方法での酸対触媒のモル比は、失活反応のための酸対触媒のモル比の20:1以下である。好ましくは、酸対触媒のモル比は、反応のための酸対触媒のモル比の18:1以下、16:1以下、14:1以下、12:1以下、10:1以下、5:1以下、4:1以下、3:1以下、2:1以下である。その酸対触媒のモル比は、反応の酸対触媒のモル比の10:1以下であることがより好ましい。その酸対触媒のモル比は、反応の酸対触媒のモル比の5:1以下であることがさらにより好ましい。その酸対触媒のモル比は、反応の酸対触媒のモル比の2:1~1:1であることが最も好ましい。
【0165】
疑念を避けるために付言すれば、本明細書で使用するとき、反応のための酸対触媒のモル比及び同様の用語は、反応のための酸対触媒の化学量論的比率を意味する。その反応は、次の反応スキームで表すことができる。
【0166】
【化23】
触媒-Oポリマー錯体のポリマー鎖の数は、典型的には、X基、すなわち重合反応の開始時に触媒中に存在する開始化学種の数に依存するであろう。その理由は、典型的には、ポリマー鎖は、それぞれ重合反応の開始時に触媒中に存在する開始化学種から生長するであろうためである。したがって、反応のための酸対触媒の化学量論比は、典型的には、重合反応の開始時での触媒のX基の数、したがって重合反応の終了時に存在するポリマー鎖の数及び使用した酸に依存するであろうことが理解されるであろう。例えば、その酸が一塩基性の酸である場合、重合反応の開始時に2つのX基が存在する金属錯体触媒を失活させるには、重合反応の開始時に1つのX基が存在する金属錯体触媒と比較して2倍の酸が必要となるであろう(重合反応の開始時に1つの開始化学種が存在し、したがって重合反応の終了時に典型的には1本のポリマー鎖が存在する金属錯体触媒と比較して、その金属錯体触媒は、重合反応の開始時に2つの開始化学種が存在し、したがって典型的には重合反応の終了時に2本のポリマー鎖が存在するという事実のためである)。例えば、触媒が、重合反応の開始時に2つのX基が存在する金属錯体触媒である場合、触媒を失活させるには、二塩基酸と比較して2倍の一塩基性酸が必要となるであろう(単一の酸基を有する一塩基性の酸と比較して、二塩基酸は、2つの酸基を有するという事実のためである)。その反応は、完結するまで進行するか又は平衡状態に留まることが理解されるであろう。しかしながら、いずれの場合にも、その反応の化学量論性は、同じである。しかしながら、当業者が理解するように、ポリマー鎖は、必ずしもX基、すなわち重合反応の開始時に触媒中に存在する開始化学種の全部から生長するわけではない。この場合、反応のための酸対触媒の化学量論比は、重合反応の終了時に存在するポリマー鎖の数及び使用する酸に依存するであろう。
【0167】
有利には、本発明のプロセスにおいて、典型的に予想されるより少ない量の有機酸を使用して触媒を失活させ、且つ/又はポリマー生成物を安定化させることができる。例えば、実質的に化学量論的な量で使用することができる。有機酸を用いて触媒を失活させることができることがさらなる利点である。有利には、本発明の重合プロセスのための開始化学種であるアニオンを含有する酸、例えばO(C)ORXアニオンを含有する酸(例えば、酢酸)と接触させることにより、触媒を失活させることができることが驚くべきことに見出された。
【0168】
本発明の方法の酸は、任意の適切な形態であり得る。例えば、その酸は、固体状態及び/又は液体状態であり得る。ある種の実施形態では、その酸は、固体の担体、例えば酸性イオン交換樹脂上に存在し得る。その酸は、任意の適切な方法で触媒と接触するようにし得る。例えば、固体及び/又は液体の酸を重合反応の媒体に直接添加し得る。例えば、酸が固体上に存在する場合、その固体を重合反応混合物に直接添加するか、又はその重合反応混合物を、その固体上及び/又はその中を通過するようにし得る。
【0169】
触媒の除去
本発明の第六~第十の態様のプロセスは、失活した触媒及びポリマー生成物を固相と接触させること及び/又は沈殿により、失活した触媒をポリマー生成物から除去する工程を含む。失活した触媒及びポリマー生成物を含む混合物(典型的には、さらに触媒を停止させるためにそのプロセスに添加された酸及び/又は他の副生物も含むであろう)は、本明細書では、「粗ポリマー生成物」と呼ぶ。
【0170】
触媒を失活させるために使用した酸が固体上に存在する場合、(その上に酸を有する)固体は、失活した触媒をポリマー生成物から除去する工程のための固相としても機能することができる。したがって、ある種の実施形態では、触媒を失活させるのに有効な酸と触媒とを接触させる工程(i)を、失活した触媒及びポリマー生成物を固相と接触させる工程(ii)と同時に実施し得る。酸と接触させると、触媒が失活し、その酸が固体上に存在する場合、失活した触媒も、失活すると同時に固体と接触状態になることを当業者は認めるであろう。有利には、触媒を失活させるために使用される酸が固体上に存在する場合、失活工程と除去工程とを同時に実施することができる。
【0171】
失活した触媒は、失活した触媒及びポリマー生成物を、失活した触媒をポリマー生成物から除去するのに有効な固相と接触させることにより、粗ポリマー生成物から除去することができる。その固相は、任意の適切な固相であり得る。好ましくは、その固相は、無機固相又はイオン交換樹脂、より好ましくは無機固相又は酸性イオン交換樹脂であり得る。
【0172】
無機固相は、任意の適切な無機固相であり得る。例えば、その無機固相は、以下のものであり得る。シリカ、アルミナ、ジルコニア、モレキュラーシーブ、ゼオライト、クレー又はそれらの誘導体若しくは組合せ。好ましくは、無機固相は、シリカ、ケイ酸マグネシウム又はアルミナであり得る。好ましくは、無機固相は、失活した触媒の1つ又は複数の金属中心と安定な結合を形成させるのに有効である、例えば以下のような官能基を用いて表面官能化され得る。ヒドロキシル、カルボン酸、カルボキシレート、スルホン酸、スルホネート、ホスフェート、チオール及び又はアミン官能基。無機固相は、より好ましくは、スルホン酸、スルホネート、カルボン酸及び/又はカルボキシレート官能基、最も好ましくはスルホネート又はカルボン酸官能基を含む。
【0173】
酸性イオン交換樹脂は、任意の適切な形態であり得る。例えば、酸性イオン交換樹脂は、ゲル又はマクロレティキュラー樹脂であり得る。酸性イオン交換樹脂は、マクロレティキュラー樹脂であることが好ましい。酸性イオン交換樹脂は、多孔質なポリマーベースの樹脂を含むことが好ましい。例えば、酸性イオン交換樹脂は、ポリマービーズの形態の樹脂、例えば球状ビーズの形態である架橋されたポリスチレン樹脂を含み得る。
【0174】
好ましくは、酸性イオン交換樹脂は、ポリマービーズ(「フリー」ポリマービーズ)の形態であり得、それは、任意選択的に、充填樹脂ベッドの形態であり得る。酸性イオン交換樹脂が「フリー」ポリマービーズの形態である場合、典型的には、粗ポリマー生成物中に「フリー」ポリマービーズを混ぜ込むことにより、その粗ポリマー生成物をイオン交換樹脂と接触させる。酸性イオン交換樹脂が充填樹脂ベッド中のポリマービーズの形態である場合、典型的には、粗ポリマー生成物を、その充填樹脂ベッド中にある容量の粗ポリマー生成物を通過させることにより、イオン交換樹脂と接触させる。
【0175】
酸性イオン交換物質は、強酸性又は弱酸性であり得る。例えば、酸性イオン交換樹脂は、強酸性樹脂、例えばホスホン酸イオン交換樹脂又はスルホン酸イオン交換樹脂であり得る。強酸性樹脂がスルホン酸イオン交換樹脂であることが好ましい。逆に、酸性イオン交換樹脂は、弱酸性樹脂、例えば-COOH官能基を含むイオン交換樹脂であり得る。弱酸性樹脂は、イミノ二酢酸基を含むことが好ましく、弱酸性樹脂は、-COOH官能基を含むポリメタクリル酸樹脂又はイミノ二酢酸キレートカチオン交換樹脂であることがより好ましい。
【0176】
好ましい酸性イオン交換樹脂としては、以下のものが挙げられる。商品名Amberlite(登録商標)、例えばAmberlite IRC 748として販売されているもの、商品名Amberlyst(登録商標)、例えばAmberlyst 15として販売されているもの及び商品名Dowex(登録商標)、例えばDowex Marathon MSCとして販売されているもの。
【0177】
粗ポリマー生成物は、任意の適切な時間にわたって固相と接触され得る。好ましくは、粗ポリマー生成物を固相と少なくとも1分、例えば少なくとも10分、例えば少なくとも30分、例えば少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間又は72時間にわたって接触され得る。疑念を避けるために付言すれば、粗ポリマー生成物を固相と接触させる時間の長さは、固相との粗ポリマー生成物の滞留時間に相当する。
【0178】
粗ポリマー生成物を固相と接触させると、失活した触媒が、典型的には、固相と結合して、ポリマー生成物を含む液相から除去されることを当業者は認めるであろう。典型的には、上に述べたようにして、固相と粗ポリマー生成物とを接触させた後、その固相をその液相から取り出す。その固相は、任意の適切な方法により、その液相から取り出すことができる。例えば、その固相がポリマービーズの形態である場合、その固相を濾過により取り出すことが好ましい。例えば、その固相が充填樹脂ベッドの形態である場合、適切な洗浄工程により、その液相をその固相から除去し得る。適切な洗浄工程は、当業者に公知であろう。
【0179】
有利には、本発明のプロセスにおいて触媒を失活させるのに有機カルボン酸及び/又は有機ジカルボン酸を使用すると、例えば触媒を失活させるのにスルホン酸を使用した場合と比較して、粗ポリマー生成物から失活した触媒をより容易に除去できるようになることが見出された。
【0180】
別の方法として、沈殿法により、失活した触媒をポリマー生成物から除去することも可能である。沈殿法は、任意の適切な方法で実施することができる。例えば、1つ又は複数の沈殿剤を添加することにより、失活した触媒を粗ポリマー生成物から沈殿させるか、又は自動的に(すなわち1つ又は複数の沈殿剤を添加せずに)沈殿させ得る。例えば、失活した触媒を沈殿させるのに有効な1つ又は複数の酸を添加することにより、失活した触媒を粗ポリマー生成物から沈殿させ得る。失活した触媒を沈殿させるのに有効な酸は、任意の適切な酸であり得る。失活した触媒を沈殿させるのに有効な酸は、好ましくは、カルボン酸、より好ましくは官能性又は多官能性のカルボン酸(すなわち1つ又は複数のさらなる官能基を有するカルボン酸であり、そのさらなる官能基は、例えば、-OH、-SO3H、-P(O)(OH)2、-N(R9)2又は-COOHから選択でき、ここで、R9は、独立に、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール又はヘテロアリール基から選択され得る)、最も好ましくはジカルボン酸又はサリチル酸である。失活した触媒を沈殿させるのに有効な酸は、触媒を失活させるのに有効な酸と同じであるか又は異なり得る。別の方法として、粗ポリマー生成物を適切な時間にわたって放置して、失活した触媒をその粗ポリマー生成物から自動的に沈殿させ得る。粗ポリマー生成物は、任意の適切な時間にわたって放置され得る。好ましくは、その粗ポリマー生成物は、少なくとも1時間、例えば少なくとも2時間、例えば少なくとも4時間、例えば少なくとも6時間、例えば少なくとも8時間、例えば少なくとも12時間、例えば少なくとも18時間、例えば少なくとも24時間にわたって放置され得る。
【0181】
上述の各種の沈殿法では、熱を加え得る。熱は、任意の適切な時間にわたって加えられ得る。例えば、熱は、1分まで、例えば2分まで、例えば5分まで、例えば10分まで、例えば15分まで、例えば30分まで、例えば1時間まで、例えば2時間まで、例えば5時間まで加えられ得る。熱は、任意の適切な温度で加えられ得る。熱は、例えば、少なくとも30℃、例えば少なくとも40℃、例えば少なくとも50℃、例えば少なくとも60℃、例えば少なくとも70℃、例えば少なくとも80℃、例えば少なくとも90℃、例えば少なくとも100℃の温度まで加えられ得る。
【0182】
沈殿させた失活触媒は、任意の適切な方法により、粗ポリマー生成物から除去することができる。沈殿させた失活触媒は、粗ポリマー生成物から好ましくは濾過又は遠心分離によって除去し、より好ましくは濾過により除去し、任意選択的にそれに続けてさらなる固相と接触させ、ここで、そのさらなる固相は、先に定義されたものである。
【0183】
驚くべきことに且つ有利には、本発明者らが見出したように、本発明のプロセスにおいて触媒を失活させるために有機カルボン酸、官能化カルボン酸(ジ又はトリカルボン酸を含む)を使用することは、失活した触媒が特に沈殿法によって除去するのに特に適していることを意味する。理論に拘束されるわけではないが、これらの嵩高く且つ/又は多価の有機酸は、触媒上の金属の空サイトにおそらくアグリゲートとして結合して、それらの溶解度を低下させるという仮説が立てられる。
【0184】
再活性化
本発明の第六、第七、第八、第九及び第十の態様のプロセスは、失活した触媒を適切なアニオンと接触させることにより、触媒を任意選択的に再活性化させる工程を含む。好ましくは、本発明の第六、第七、第八、第九及び第十の態様のプロセスは、失活した触媒を適切なアニオンと接触させることにより、触媒を再活性化させる工程を含む。しかしながら、触媒が、実質的に再活性化された形態、すなわち本発明のプロセスに触媒作用を与えるのに有効な形態で粗ポリマー生成物から除去される場合、再活性化工程が必要とされないことを当業者は認識するであろう。
【0185】
失活した触媒及びポリマー生成物を固相と接触させることにより、失活した触媒をポリマー生成物から除去したとき、そのアニオンは、固相から触媒を離すことが可能であることが好ましい。
【0186】
そのアニオンは、任意の適切なアニオンであり得る。そのアニオンは、酸から誘導されることが好ましい。そのアニオンは、以下のものから選択される酸から誘導されることが好ましい。硝酸;硫酸;有機酸、例えば任意選択的に置換されるC0~20アルキルカルボン酸及び任意選択的に置換されるC6~20アリールカルボン酸;スルホン酸、例えばメタンスルホン酸、クロロスルホン酸、フルオロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、例えばp-トルエンスルホン酸、t-ブチルスルホン酸及び2-ヒドロキシプロパンスルホン酸;過ハロゲン酸、例えば過塩素酸;ハロゲン化カルボン酸、例えばトリクロロ酢酸及びトリフルオロ酢酸;オルトリン酸;ホスホン酸、例えばベンゼンホスホン酸;並びにルイス酸とブレンステッド酸との間の相互作用から誘導される酸;又は上述の酸それぞれの金属塩。
【0187】
そのアニオンは、以下のものから選択されるカルボン酸から誘導されることが好ましい。任意選択的に置換されるC0~20アルキルカルボン酸又は任意選択的に置換されるC6~20アリールカルボン酸、より好ましくは任意選択的に置換されるC0~10アルキルカルボン酸又は任意選択的に置換されるC6~12アリールカルボン酸、より好ましくは任意選択的に置換されるC0~C6アルキルカルボン酸又は任意選択的に置換されるC6アリールカルボン酸、より好ましくは、任意選択的に置換されるC0~C4アルキルカルボン酸又は任意選択的に置換されるC6アリールカルボン酸。そのアニオンは、以下のものから誘導されることが最も好ましい。酢酸、シュウ酸、サリチル酸;酢酸、シュウ酸及び/又はサリチル酸の金属塩又はそれらの組合せ。
【0188】
そのアニオンは、好ましくは、官能性カルボン酸(先に定義されたもの)、官能性カルボン酸の金属塩又はそれらの組合せ、より好ましくは官能性カルボン酸から誘導され得る。
【0189】
好ましくは、そのアニオンは、少なくとも2.5、より好ましくは少なくとも3、最も好ましくは少なくとも4のpKaを有する酸から誘導され得る。より好ましくは、そのアニオンは、少なくとも2.5、より好ましくは少なくとも3、最も好ましくは少なくとも4のpKaを有するカルボン酸から誘導され得る。最も好ましくは、そのアニオンは、少なくとも2.5、より好ましくは少なくとも3、最も好ましくは少なくとも4のpKaを有するモノカルボン酸から誘導され得る。
【0190】
そのアニオンは、本発明のプロセスのための開始化学種として機能し得ることが好ましい。したがって、そのアニオンは、以下のものから選択され得る。OC(O)RX、OSO2RX、OSO(RX)2、ORX、ハライド、ナイトレート、ヒドロキシル、カーボネート、アミド又は任意選択的に置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族(例えば、シリル)、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール又はヘテロアリール。RXは、独立に、水素又は任意選択的に置換される脂肪族、ハロ脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール、アルキルアリール若しくはヘテロアリールである。そのアニオンは、OC(O)RX又はORXから選択され得ることがより好ましい。RXは、独立に、水素、任意選択的に置換される脂肪族、ハロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、シリル又はアルキルアリールである。アニオンの例としては、以下のものが挙げられる。OCOCH3、OCOCF3、OSO2C7H7、OSO(CH3)2、Et、Me、PhOEt、OMe、OiPr、OtBu、Cl、Br、I、F、N(iPr)2又はN(SiMe3)2。そのアニオンは、以下のものであることが好ましい。OC(O)CH3、OC(O)CH2CH3、OC(O)(CH2)2CH3、OC(O)(CH2)3CH3、OC(O)(CH2)4CH3、OC(O)(CH2)5CH3、OC(O)(CH2)6CH3、OC(O)C(CH3)3、OC(O)C6H5、OC(O)CCCl3及び/又はOC(O)CF3、より好ましくはOC(O)CH3。
【0191】
より好ましくは、そのアニオンは、モノカルボン酸、例えば少なくとも2.5、より好ましくは少なくとも3、最も好ましくは少なくとも4のpKaを有するモノカルボン酸から誘導されるアニオンから、及び/又は本発明のプロセスのための開始化学種として機能することができるアニオンから選択され得る。
【0192】
そのアニオンは、酢酸及び/又は酢酸の金属塩であることが最も好ましい。
有利には、そのアニオンが本発明のプロセスのための開始化学種として機能することができる場合、再活性化された触媒は、さらなるポリマー重合プロセスで直接使用することが可能である。例えば、そのアニオンが酢酸から誘導されている場合、酢酸のOC(O)CH3アニオンは、さらなる重合プロセスにおいて開始化学種として機能することができ、そのようなものとして、その再活性化された触媒を前記さらなる重合プロセスにおいて直接使用することができる。有利には、これは、さらなる精製工程が不要である、すなわち再活性化された触媒をさらに精製することが不要であることを意味する。
【0193】
定義
本発明の目的のために、脂肪族基は、直鎖状又は分岐状であり得、且つ完全に飽和であるか、又は1つ若しくは複数の不飽和単位を含み得るが、ただし、芳香族ではない炭化水素残基である。「不飽和」という用語は、1つ又は複数の二重結合及び/又は三重結合を有する残基を意味する。したがって、「脂肪族」という用語には、アルキル、アルケニル又はアルキニル基(それらの多価の均等物、例えばアルキレン、アルケニレン及びアルキニレンを含む)並びにそれらの組合せが包含されるものとする。脂肪族基は、好ましくは、C1~20脂肪族基であり、それは、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20の炭素原子を有する脂肪族基である。脂肪族基は、好ましくは、C1~15脂肪族、より好ましくはC1~12脂肪族、より好ましくはC1~10脂肪族、なおより好ましくはC1~8脂肪族、例えばC1~6脂肪族基である。
【0194】
アルキル基は、好ましくは、「C1~20アルキル基」であり、それは、すなわち、1~20の炭素原子を有する直鎖又は枝分れ鎖であるアルキル基である。したがって、アルキル基は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20の炭素原子を有する。好ましくは、アルキル基は、C1~15アルキル、好ましくはC1~12アルキル、より好ましくはC1~10アルキル、なおより好ましくはC1~8アルキル、なおより好ましくはC1~6アルキル基である。具体的には、「C1~20アルキル基」としては、以下のものが挙げられる。メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソ-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-エイコシル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1-エチルブチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基など。
【0195】
アルケニル及びアルキニル基は、それぞれ好ましくは「C2~20アルケニル」及び「C2~20アルキニル」、より好ましくは「C2~15アルケニル」及び「C2~15アルキニル」、なおより好ましくは「C2~12アルケニル」及び「C2~12アルキニル」、なおより好ましくは「C2~10アルケニル」及び「C2~10アルキニル」、なおより好ましくは「C2~8アルケニル」及び「C2~8アルキニル」、最も好ましくは「C2~6アルケニル」及び「C2~6アルキニル」基である。
【0196】
アルキレンは、二価であること以外、上でアルキル基として定義されたものである。同様に、アルケニレン及びアルキニレンは、上でのアルケニル及びアルキニルの二価の均等物と定義される。
【0197】
ヘテロ脂肪族基(ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル及びヘテロアルキニルを含む)は、上述の脂肪族基であり、1つ又は複数のヘテロ原子をさらに含むものである。したがって、ヘテロ脂肪族基には、好ましくは、2~21の原子、好ましくは2~16の原子、より好ましくは2~13の原子、より好ましくは2~11の原子、より好ましくは2~9つの原子、なおより好ましくは2~7つの原子が含まれ、その中で、少なくとも1つの原子が炭素原子である。特に好ましいヘテロ原子は、O、S、N、P及びSiから選択される。ヘテロ脂肪族基が2つ以上のヘテロ原子を有する場合、それらのヘテロ原子は、同一であるか又は異なり得る。
【0198】
ヘテロアルキレンは、二価であること以外、上でヘテロアルキル基として定義されたものである。同様に、ヘテロアルケニレン及びヘテロアルキニレンは、上でのヘテロアルケニル及びヘテロアルキニルの二価の均等物と定義される。脂環族基は、飽和又は部分不飽和の環状脂肪族の単環式又は多環式(縮合環、架橋環及びスピロ縮合環を含む)の環構造であり、3~20の炭素原子を有する、すなわち3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20の炭素原子を有する脂環族基である。脂環族基は、好ましくは、3~15、より好ましくは3~12、なおより好ましくは3~10、なおより好ましくは3~8つの炭素原子、なおより好ましくは3~6つの炭素原子を有する。「脂環族」という用語には、シクロアルキル、シクロアルケニル及びシクロアルキニル基が包含される。脂環族基は、1つ又は複数の結合性又は非結合性アルキル置換基を担持する脂肪族環、例えば-CH2-シクロヘキシルを含み得ることが理解されるであろう。C3~20シクロアルキル基の具体例としては、以下のものが挙げられる:シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル及びシクロオクチル。
【0199】
ヘテロ脂環族基は、先に定義された脂環族基であり、炭素原子に加えて、1つ又は複数の、好ましくはO、S、N、P及びSiから選択される環ヘテロ原子を有するものである。ヘテロ脂環族基には、好ましくは、1~4つのヘテロ原子が含まれ、それらは、同一であるか又は異なり得る。ヘテロ脂環族基には、好ましくは、5~20の原子、より好ましくは5~14の原子、なおより好ましくは5~12の原子が含まれる。
【0200】
アリール基は、5~20の炭素原子を有する単環式又は多環式環の構造である。アリール基は、好ましくは、「C6~12アリール基」であり、且つ6、7、8、9、10、11又は12の炭素原子で構成されるアリール基であり、単環基又は2環基などの縮合環基も含まれる。「C6~10アリール基」の具体例としては、以下のものが挙げられる。フェニル基、ビフェニル基、インデニル基、ナフチル基又はアズレニル基など。インダン及びテトラヒドロナフタレンのような縮合環アリール基に含まれることに注意されたい。
【0201】
ヘテロアリール基は、炭素原子に加えて、1~4つの、好ましくはO、S、N、P及びSiから選択される、環ヘテロ原子を有するアリール基である。ヘテロアリール基は、好ましくは、5~20、より好ましくは5~14の環原子を有する。ヘテロアリール基の具体例としては、以下のものが挙げられる:ピリジン、イミダゾール、メチルイミダゾール及びジメチルアミノピリジン。
【0202】
脂環族、ヘテロ脂環族、アリール及びヘテロアリール基の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。シクロヘキシル、フェニル、アクリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、シノリン、ダイオキシン、ジオキサン、ジオキソラン、ジチアン、ジチアジン、ジチアゾール、ジチオラン、フラン、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、インドール、インドリン、インドリジン、インダゾール、イソインドール、イソキノリン、イソオキサゾール、イソチアゾール、モルホリン、ナフチリジン、オキサゾール、オキサジアゾール、オキサチアゾール、オキサチアゾリジン、オキサジン、オキサジアジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、フタラジン、ピペラジン、ピペリジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、ピロリン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、キオノリジン、テトラヒドロフラン、テトラジン、テトラゾール、チオフェン、チアジアジン、チアジアゾール、チアトリアゾール、チアジン、チアゾール、チオモルホリン、チアナフタレン、チオピラン、トリアジン、トリアゾール及びトリチアン。
【0203】
アリーレンは、二価であること以外、上でアリール基として定義されたものである。同様に、ヘテロアリーレンは、ヘテロアリールの二価の均等物として定義され、及びシクロアルキレンは、上の脂環族及びヘテロ脂環族の二価の均等物として定義される。
【0204】
「ハライド」という用語又は「ハロゲン」という用語は、相互に置き換え可能に使用され、本明細書で使用するとき、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など、好ましくはフッ素原子、臭素原子又は塩素原子、より好ましくはフッ素原子を意味する。
【0205】
ハロアルキル基は、好ましくは、「C1~20ハロアルキル基」、より好ましくは「C1~15ハロアルキル基」、より好ましくは「C1~12ハロアルキル基」、より好ましくは「C1~10ハロアルキル基」、なおより好ましくは「C1~8ハロアルキル基」、なおより好ましくは「C1~6ハロアルキル基」であり、且つ少なくとも1つのハロゲン原子、好ましくは1、2又は3つのハロゲン原子で置換された、それぞれ上述のC1~20アルキル、C1~15アルキル、C1~12アルキル、C1~10アルキル、C1~8アルキル又はC1~6アルキル基である。「C1~20ハロアルキル基」の具体例としては、以下のものが挙げられる。フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基など。
【0206】
アルコキシ基は、好ましくは、「C1~20アルコキシ基」、より好ましくは「C1~15アルコキシ基」、より好ましくは「C1~12アルコキシ基」、より好ましくは「C1~10アルコキシ基」、なおより好ましくは「C1~8アルコキシ基」、なおより好ましくは「C1~6アルコキシ基」であり、且つそれぞれ先に定義された、C1~20アルキル、C1~15アルキル、C1~12アルキル、C1~10アルキル、C1~8アルキル又はC1~6アルキル基に結合されたオキシ基である。「C1~20アルコキシ基」の具体例としては、以下のものが挙げられる。メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソ-プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソ-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソ-ペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、イソ-ヘキシルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基、n-ペンタデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基、n-ヘプタデシルオキシ基、n-オクタデシルオキシ基、n-ノナデシルオキシ基、n-エイコシルオキシ基、1,1-ジメチルプロポキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、2,2-ジメチルプロポキシ基、2-メチルブトキシ基、1-エチル-2-メチルプロポキシ基、1,1,2-トリメチルプロポキシ基、1,1-ジメチルブトキシ基、1,2-ジメチルブトキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、1,3-ジメチルブトキシ基、2-エチルブトキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、3-メチルペンチルオキシ基など。
【0207】
アリールオキシ基は、好ましくは、「C5~20アリールオキシ基」、より好ましくは「C6~12アリールオキシ基」、なおより好ましくは「C6~10アリールオキシ基」であり、且つそれぞれ先に定義されたC5~20アリール、C6~12アリール又はC6~10アリール基に結合されたオキシ基である。
【0208】
アルキルチオ基は、好ましくは、「C1~20アルキルチオ基」、より好ましくは「C1~15アルキルチオ基」、より好ましくは「C1~12アルキルチオ基」、より好ましくは「C1~10アルキルチオ基」、なおより好ましくは「C1~8アルキルチオ基」、なおより好ましくは「C1~6アルキルチオ基」であり、且つそれぞれ先に定義されたC1~20アルキル、C1~15アルキル、C1~12アルキル、C1~10アルキル、C1~8アルキル又はC1~6アルキル基に結合されたチオ(-S-)基である。本明細書において定義された置換基として使用されるアルキルチオ基は、先に定義されたアルキル基の炭素原子又はチオ基の硫黄原子のいずれかを介して結合されることができる。アリールチオ基は、好ましくは、「C5~20アリールチオ基」、より好ましくは「C6~12アリールチオ基」、なおより好ましくは「C6~10アリールチオ基」であり、且つそれぞれ先に定義されたC5~20アリール、C6~12アリール又はC6~10アリール基に結合されたチオ(-S-)基である。
【0209】
アルキルアリール基は、好ましくは、「C6~12アリールC1~20アルキル基」、より好ましくは「C6~12アリールC1~16アルキル基」、なおより好ましくは「C6~12アリールC1~6アルキル基」であり、且つ先に定義されたアルキル基に各種の位置で結合された、先に定義されたアリール基である。分子に対するアルキルアリール基の結合ポイントは、アルキル位を介するものであり得、したがって、好ましくは、そのアルキルアリール基は、-CH2-Ph又は-CH2CH2-Phである。アルキルアリール基は、「アラルキル」と呼ぶことも可能である。
【0210】
シリルエーテル基は、好ましくは、基OSi(R7)3であり、ここで、それぞれのR7は、独立に、先に定義された脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール又はヘテロアリール基である。ある種の実施形態では、それぞれのR7は、独立に、非置換の脂肪族、脂環族又はアリールであり得る。好ましくは、それぞれのR7は、任意選択的に置換されるフェニル又は任意選択的に置換されるメチル、エチル、プロピル又はブチル(例えば、n-ブチル又はtert-ブチル(tBu))から選択されるアルキル基である。シリルエーテル基の例としては、以下のものが挙げられる。OSi(CH3)3、OSi(C2H5)3、OSi(C6H5)3、OSi(CH3)2C(CH3)3、OSi(tBu)3及びOSi(C6H5)2C(CH3)3。
【0211】
ニトリル基(シアノ基とも呼ばれる)は、基CNである。
イミン基は、基-CR8NR8、好ましくは基-CHNR8であり、ここで、R8は、先に定義された脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール又はヘテロアリール基である。ある種の実施形態では、R8は、非置換の脂肪族、脂環族又はアリールである。R8は、メチル、エチル又はプロピルから選択されるアルキル基であることが好ましい。
【0212】
アミド基は、好ましくは、-NR9C(O)R9又は-C(O)-NR9(R9)であり、ここで、R9は、水素、先に定義された、脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール又はヘテロアリール基であり得る。ある種の実施形態では、R9は、非置換の脂肪族、脂環族又はアリールである。R9は、水素、メチル、エチル、プロピル又はフェニルであることが好ましい。アミド基は、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール又はヘテロアリール基によって末端停止され得る。
【0213】
エステル基は、好ましくは、-OC(O)R10又は-C(O)OR10であり、ここで、R10は、水素、先に定義された、脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール又はヘテロアリール基であり得る。ある種の実施形態では、R10は、非置換の脂肪族、脂環族又はアリールである。R10は、水素、メチル、エチル、プロピル又はフェニルであることが好ましい。エステル基は、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール又はヘテロアリール基によって末端停止され得る。
【0214】
アセチリド基には三重結合-C≡C-R11が含まれ、好ましくは、ここで、R11は、水素、先に定義された、脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール又はヘテロアリール基であり得る。本発明の目的のために、R11がアルキルである場合、その三重結合は、そのアルキル鎖中のいずれの位置にもあり得る。ある種の実施形態では、R11は、非置換の脂肪族、脂環族又はアリールである。R11は、メチル、エチル、プロピル又はフェニルであることが好ましい。
【0215】
アミノ基は、好ましくは、-NH2、-NHR12又は-N(R12)2であり、ここで、R12は、先に定義された脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、シリル基、アリール又はヘテロアリール基であり得る。そのアミノ基がN(R12)2である場合、それぞれのR12基は、同一であるか又は異なり得ることが理解されるであろう。ある種の実施形態では、それぞれのR19は、独立に、非置換の脂肪族、脂環族、シリル又はアリールである。R12は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、Si(CH3)3又はフェニルであることが好ましい。
【0216】
エーテル基は、好ましくは、-OR15又は-R16OR17であり、ここで、R15、R16及びR17は、先に定義された脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール又はヘテロアリール基であり得る。ある種の実施形態では、R15、R16及びR17は、それぞれ非置換の脂肪族、脂環族又はアリールである。R15、R16及びR17は、それぞれメチル、エチル、プロピル又はフェニルであることが好ましい。エーテル基は、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール又はヘテロアリール基によって末端停止され得る。
【0217】
基R13、R14、R18、R19、R20及びR21は、水素、先に定義された脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール又はヘテロアリール基であり得る。ある種の実施形態では、R13、R14、R18、R19、R20及びR21は、それぞれ非置換の脂肪族、脂環族又はアリールである。R13、R14、R18、R19、R20及びR21は、それぞれ水素、メチル、エチル、プロピル又はフェニルであることが好ましい。
【0218】
スルホキシドは、好ましくは、-S(O)R22であり、及びスルホニル基は、好ましくは、-S(O)2R22であり、ここで、R22は、水素、先に定義された、脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール又はヘテロアリール基であり得る。ある種の実施形態では、R22は、非置換の脂肪族、脂環族又はアリールである。R22は、水素、メチル、エチル、プロピル又はフェニルであることが好ましい。
【0219】
スルフィネート基は、好ましくは、-OSOR23であり、ここで、R23は、水素、先に定義された脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール又はヘテロアリール基であり得る。ある種の実施形態では、R23は、非置換の脂肪族、脂環族又はアリールである。R23は、水素、メチル、エチル、プロピル又はフェニルであることが好ましい。
【0220】
本明細書で使用するとき、「ホスホニウム」という用語は、式P(R24)4
+、典型的にはPH4
+を含むカチオンを意味し、ここで、R24は、水素、先に定義された脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール又はヘテロアリール基であり得る。ある種の実施形態では、R24は、非置換の脂肪族、脂環族又はアリールである。R24は、水素、メチル、エチル、プロピル又はフェニルであることが好ましい。
【0221】
シリル基は、好ましくは、基-Si(R25)3であり、ここで、それぞれのR25は、独立に、先に定義された脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール又はヘテロアリール基である。ある種の実施形態では、それぞれのR25は、独立に、非置換の脂肪族、脂環族又はアリールである。それぞれのR25は、メチル、エチル又はプロピルから選択されるアルキル基であることが好ましい。
【0222】
先にいずれかで言及された脂肪族(アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アルケニレン及びアルキニレンを含む)、ヘテロ脂肪族(ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン及びヘテロアルキニレンを含む)、脂環族、シクロアルキレン、ヘテロ脂環族、アリール、アリーレン、ヘテロアリール、ヘテロアリーレンハロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルアリール、シリル、シリルエーテル、エステル、スルホキシド、スルホニル、イミン、アセチリド、アミノ、スルホネート又はアミド基のいずれも、特に先に「任意選択的に置換される」と言及された場合、任意選択的に、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールオキシ、アルキルアリール、アミノ、アミド、イミン、ニトリル、シリル、シリルエーテル、エステル、スルホキシド、スルホニル、アセチリド、スルホネートによって置換されるか、又は任意選択的に置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環族、ヘテロ脂環族、アリール又はヘテロアリール基によって置換(例えば、任意選択的にハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アミノ、イミン、ニトリル、シリル、スルホキシド、スルホニル、スルホネート又はアセチリドによって置換)され得る。
【0223】
化学種を列記する際、その最初に「任意選択的に置換される」という文言が使用されている場合、置換することが可能な列記されているすべての化学種が任意選択的に置換され得ることを意味し、すなわち、列記されているものの最初の化学種のみが任意選択的に置換され得ることを意味しない。「任意選択的に置換される」という用語は、本明細書で使用された場合、非置換であるか、又は適切な基で置換されていることを意味する。適切な基は、当業者に公知であろう。一般的に、そのような基は、置換された基又は置換された基が結合されているより大きい残基の機能に顕著な悪影響を与えはないであろう。いくつかの場合、その置換基が、置換された基の機能を改良すると当業者は予想するであろう。
【0224】
本明細書に含まれるすべての特徴は、すべての上記の態様とあらゆる組合せで組み合わせることができる。
ここで、以下の非限定的な実施例を引用して、本発明の実施形態を説明する。
【実施例0225】
触媒
実施例で使用した触媒1及び触媒2は、以下のものである。
【0226】
【化24】
実施例1:酸を変化させてのMn2000のPPCジオールの安定化
約78重量%の、Mn2243g/mol(GPC)のポリプロピレンカーボネートポリオール(PCCポリオール)、20重量%のプロピレンオキシド及び約4.8gの触媒1を含む600gの粗反応器生成物からそれぞれ約70~80gの5つの異なるアリコートを抜き出した。その粗製PPCポリオールには、約2.6(モル)%の環状カーボネートが含まれていた。1つのアリコートは、未処理で静置し、他の4つのアリコートには、それぞれのサンプル中に存在する触媒のモル量に対して2.2モル当量で各種の酸を添加した(触媒上の1金属サイトあたり1.1当量)。それらの5つのサンプルについて、
1H NMR及びGPCにより、最初及び13日後に分析した。それらの結果を表1にまとめた。
【0227】
【表1】
データから、13日後、酸安定化をしなかった粗製物は、顕著に劣化して、環状カーボネートが2.6%から約70%となり、それに対して分子量が半分になり、分散度が顕著に高くなったことが明らかに認められる。驚くべきことに、試験した酸のそれぞれの2.2当量(それぞれの金属中心に対してまさに1.1当量)では、PPCポリオールを効果的に安定化させたことが示された。
【0228】
実施例2:酸を変化させてのMn1600のPPCジオールの安定化
実施例1を繰り返したが、ただし、30gのポリマー混合物(60%の、1574g/molのMnを有するPPCポリオール反応生成物(66%のPPCと34%の環状カーボネートとを含む)、40%のプロピレンオキシド及び0.16gの触媒2を含む)を約4gずつに分けた。1つのサンプルは、手を加えなかったが、他のものに対して、それぞれのサンプル中に存在する触媒のモル量に対して2.5モル当量で各種の酸を添加した(触媒上の1金属サイトあたり1.25当量)。3日後にそれらのサンプルを分析し、粗製物と比較した。それらの結果を表2に示す。
【0229】
【表2】
これは、各種の酸が選択率として同様に混合物を安定化させ、分子量が実質的に変化せずに留まっていることを示している。
【0230】
実施例3:酸を変化させてのMn900のPPCジオールの安定化
実施例1を繰り返したが、ただし、そのPPCポリオールは、922g/molのMn及び5.9モル%の環状カーボネートを有していた。サンプルを11の約40gのアリコートとして抜き出した。1つのサンプルは、手を加えなかったが、残りのサンプルには、数種の異なる酸を触媒に対して異なる量で添加した。それらの結果を表3に示す。
【0231】
【表3】
驚くべきことに、1金属中心あたりで化学量論的に不足の量の酸(例えば、1.2当量のシュウ酸又はpTSA)を使用した場合でも、ポリマーの分子量及び選択率が実質的に維持されることが示された。触媒1は、その活性な形態では、アセテートの開始基を特徴としているが、失活プロセスは、酸の共役アニオンが重合反応のための実施可能な開始剤であるかどうかに関係しないことが明らかである。
【0232】
実施例4:酸を変化させてのMn500のPPCジオールの安定化
522g/molのMn及び15.1モル%の環状カーボネートを有するPPCポリオール600gを、触媒1に対して5当量(金属サイトあたり2.5当量)の酢酸を用いて安定化させた。6日かけてそのサンプルの選択率を測定したが、この期間では変化がないことを見出した。それらの結果を表4に示す。
【0233】
【表4】
実施例5:安定化
59%のカーボネート結合(28.7重量%CO
2)を含み、1395g/molのMnを有し、2gの触媒1及び0.3gのDMC触媒を含むポリエーテルカーボネートポリオール600gを、触媒に対して異なる量で添加した数種の異なる酸を用いて安定化させた。6日後に分子量及び環状物含量を再評価した。それらの結果を表5に示す。
【0234】
【表5】
それら各種の酸は、すべて同等のレベルの安定化を示し、観察される環状カーボネートの増加もなく、すべてのサンプルで安定化された分子量が見られた。pTSAで安定化されたサンプルは、分子量の点で極めて限界的な減少を示し、その理由は、おそらく、公知のようにpTSAがポリエーテルを劣化させるためである。これは、ポリカーボネートと同様に、ポリエーテルカーボネートポリオール中でも触媒が満足のいくレベルで失活されることと、開始剤である共役アニオンを含有する酸が、触媒の後反応を停止させるのに満足のいくレベルで使用され得ることとを示している。
【0235】
いくつかのサンプルを、失活した触媒1の存在下において120℃で16時間加熱して、どの程度ポリオールが安定化されるかを評価した。それらの結果を表5aに示す。
【0236】
【表6】
失活した触媒の存在下において粗製物サンプルを120℃で16時間加熱した後、そのサンプルは、触媒が依然として存在することを考慮すれば、顕著に強靱であることが見出された。理論に拘束されるわけではないが、pTSAによって起きる余分な分解は、pTSAによるポリエーテル結合の分解が原因と考えられる。
【0237】
実施例6:弱酸性樹脂を使用する触媒の除去
Mn約550g/molで5当量のp-TSAで安定化させ、約4gの触媒1及び8重量%の環状カーボネートを含むポリカーボネートポリオール500gにEtOAc(500mL)及び乾燥させた酸性化Amberlite IRC748樹脂(官能基、イミノ二酢酸、300g、酸性化、乾燥)を添加した。
【0238】
その混合物を一夜撹拌してから、濾過により樹脂を除去し、2×200mLのEtOAcを使用して洗浄した。これにより、青色に着色した樹脂と、無色のポリオール/環状カーボネート/EtOAc混合物(20ppm未満の金属(UV-Vis)含量)とがほぼ定量的収率で単離された。
【0239】
実施例7:強酸性樹脂を使用した触媒の除去
Mn約550g/molで5当量のp-TSAで安定化させ、約4gの触媒1及び8重量%の環状カーボネートを含むポリカーボネートポリオール500gにEtOAc(500mL)及び乾燥させた酸性化Amberlyst 15樹脂(官能基、スルホン酸、300g、予備洗浄品)を添加した。
【0240】
その混合物を一夜撹拌してから、濾過により樹脂を除去し、2×200mLのEtOAcを使用して洗浄した。これにより、青色に着色した樹脂と、無色のポリオール/環状カーボネート/EtOAc混合物(20ppm未満の金属(UV-Vis)含量)とがほぼ定量的収率で単離された。
【0241】
実施例8:ケイ酸マグネシウムを使用した触媒の除去
Mn約2000g/molで5当量のp-TSAを使用して安定化し、約4gの触媒2及び9重量%の環状カーボネートを含むポリカーボネートポリオール600gにEtOAc(300mL)を添加した。カラムにFlorisil(600g、EtOAcで予め濡らしたもの)を充填し、そのカラムの塔頂にポリオール溶液を加えた。EtOAcを用いてそのポリオール混合物を完全に洗浄し、乾燥させると、無色のポリオール/環状カーボネート混合物(ICP-OESにより、5ppm未満の金属含量)がほぼ定量的な収率で得られた。
【0242】
実施例9:アルミナを使用した触媒の除去
Mn約2000g/molで5当量のp-TSAを使用して安定化し、約0.01gの触媒2及び30重量%の環状カーボネートを含むポリカーボネートポリオール2gにEtOAc(2mL)を添加した。カラムに中性又は塩基性のアルミナ(20g、EtOAcで予め濡らしたもの)を充填し、そのカラムの塔頂にポリオール溶液を加えた。EtOAcを用いてそのポリオール混合物を完全に洗浄し、乾燥させると、無色のポリオール/環状カーボネート混合物(ICP-OESにより、5ppm未満の金属含量)がほぼ定量的な収率で得られた。
【0243】
実施例10:シリカを使用した触媒の除去
Mn約2000g/molで5当量のp-TSAを使用して安定化し、約0.01gの触媒2及び30重量%の環状カーボネートを含むポリカーボネートポリオール2gに、DCM(2mL)を添加した。カラムにSilica(12g、DCMで予め濡らしたもの)を充填し、そのカラムの塔頂にポリオール溶液を加えた。CHCl3を用いてそのポリオール混合物を完全に洗浄し、乾燥させると、無色のポリオール/環状カーボネート混合物(ICP-OESにより、20ppm未満の金属含量)がほぼ定量的な収率で得られた。
【0244】
実施例11:ポリマービーズを使用した触媒の除去
実施例1で作製したサンプルからのアリコートをある容量の酢酸エチルに溶解させ、Dowex Marathon MSCを使用して、下の表7に示された所定の時間撹拌し、その後、サンプルを濾過し、真空下で酢酸エチルを除去した。それらのサンプルを、ICP-OES又はUV-Visible分光光度法のいずれかを使用して金属含量について分析した。それらの結果を表7に示す。
【0245】
【表7】
驚くべきことに、カルボン酸を用いて失活されたサンプルは、Dowex樹脂を用いて溶液から容易に除去されたことが見出された。それとは対照的に、pTSAを用いて失活されたサンプルは、顕著に多いDowex樹脂及び時間を必要とし、それでもなお金属のほとんどを除去することができなかった。
【0246】
実施例12:沈殿及び濾過による触媒の除去
実施例1からのサンプルの第二アリコートを一夜静置すると、その時点でポリオール中に緑/青色の沈殿物が観察できた。そのポリオールを濾過し、ICP-OESにより金属含量の分析を行った。それらの結果を表8に示す。
【0247】
【表8】
単一の沈殿工程でサリチル酸を使用すると、92%を超える触媒が除去され、シュウ酸を使用する沈殿法では85%を超える触媒が除去されることが見出された。いずれの酸も多官能である。したがって、理論に拘束されるわけではないが、多座配位のアニオンは、触媒上の金属の空サイをブロックすることができるか、又はアグリゲートを形成させることができるため、それらのいずれでも触媒の溶解度が低下することになると推論される。
【0248】
実施例13:触媒1の再生(方法1)
フィルターに収めたAmberlite IRC-748ビーズ(500g、約1.6重量%触媒)のベッドにEtOAc(400mL)を添加した。各部分でビーズを時々撹拌しながら5分間浸漬させ、その後、フィルターの下に真空を適用し、EtOAc濾液を排出させた。そのビーズに氷酢酸(400mL)を添加し、15分間浸漬させておいてから、真空を適用して、青色の濾液を回収した。その濾液を、EtOAc(400mL)及び水(700mL)を用いて層化させ、これを遠心分離にかけ、分液漏斗内で合わせた。その有機層を過剰の水で洗浄し、真空中で減量させると、触媒1(6.26g)が得られた。
MS(ESI又はAPCI)767.3[M-2OAc+HCOO]+及び781.3[M-OAc]+.
実施例14:触媒1の再生(方法2)
Purolite C106(回収した触媒1gあたり、84g)を粗重合反応混合物に添加した。そのようにして得られた懸濁液を23℃で90分間撹拌した。その混合物を濾過した。焼結物の上でその樹脂を乾燥させてから、クリーンなガラスジャーへ移した。その樹脂にEtOAc中30%ギ酸(10mL/g樹脂)を添加し、その懸濁液を4時間撹拌した。その混合物を濾過して、樹脂を捕集した。その有機物をNa2SO4の上で乾燥させ、濾過し、MeOHをその混合物に添加し、溶媒を真空下で蒸発させた。これにより、触媒1が固形物として得られた(260mg)。
MS(ESI又はAPCI)767.3[M+HCOO]+.
実施例15:触媒1の再生(方法3)
Purolite C106(回収した触媒1gあたり、84g)を粗重合反応混合物に添加した。そのようにして得られた懸濁液を23℃で3時間撹拌した。その混合物を濾過した。焼結物の上でその樹脂を乾燥させてから、クリーンなガラスジャーへ移した。その樹脂に1Lの酢酸及び1LのEtOHを添加し、その懸濁液を23℃で2時間撹拌した。その混合物を濾過して、樹脂を除去し、溶媒を真空中で除去すると、青色の懸濁液が得られた。そのようにして得られた懸濁液を濾過し、水(100mL)を用いて洗浄すると、触媒1が固形物として得られた(2.37g)。
MS(ESI又はAPCI)767.3[M-2OAc+HCOO]+及び781.3[M-OAc]+
実施例16:回収した触媒を使用した共重合
ドデカンジオール(1.05g、5.2mmol)を反応器に入れ、真空下100℃で30分かけて乾燥させ、冷却して反応器を室温としてから、それを0.2バールのCO2で加圧し、真空/CO2のサイクルを3回繰り返した。回収した触媒(0.086mmol)をシュレンクチューブに入れ、真空下で30分かけて乾燥させ、次いでCO2下にプロピレンオキシド(15mL、0.214mol)を注射器で反応器に加えた。その反応器を加熱して75℃とし、20バールのCO2で加圧し、反応器加熱して75℃とした。その設定温度及び圧力を16時間保持した。その反応器を冷却して、10℃未満とし、圧力を徐々に抜いた。直ちに1H NMR及びGPCを測定した。
【0249】
【表9】
このデータは、再捕集した触媒が、ポリプロピレンカーボネートポリオールを製造する活性を有し、フレッシュ触媒の活性に近い活性を保持して回収することが可能であることを示している。
バイメタリック金属錯体触媒の存在下での二酸化炭素とエポキシドとの反応を含む重合プロセスを停止させる方法であって、前記触媒を失活させるのに有効な酸と前記触媒とを接触させることにより、前記触媒を失活させる工程を含む方法。