(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050588
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】パラポックスウイルスベクター
(51)【国際特許分類】
C12N 15/90 20060101AFI20240403BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240403BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240403BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240403BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240403BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240403BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20240403BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240403BHJP
A61K 38/21 20060101ALI20240403BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240403BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20240403BHJP
A61K 39/29 20060101ALI20240403BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240403BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240403BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240403BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240403BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C12N15/90 100Z
C12N7/01
C12N5/10
A61K48/00
A61K35/76
A61K38/17
A61K38/19
A61K38/20
A61K38/21
A61K39/00 A
A61K39/12
A61K39/29
A61P11/00
A61P35/00
A61P31/12
A61P37/04
A61P43/00 105
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024001510
(22)【出願日】2024-01-09
(62)【分割の表示】P 2020546320の分割
【原出願日】2019-03-07
(31)【優先権主張番号】18305237.2
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18306424.5
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】599082883
【氏名又は名称】トランジェーヌ
【氏名又は名称原語表記】TRANSGENE
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】カローラ、リットナー
(72)【発明者】
【氏名】クリステル、レミ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーヌ、チウデレ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】自然免疫機構および特異的免疫機構の両方を誘発するウイルス免疫療法を提供する。
【解決手段】本発明は、新規な偽牛痘(PCPV)ウイルス(特に、組換えPCPV)、その組成物、ならびに疾患、特に、増殖性疾患(例えば、癌および再狭窄)および感染性疾患(例えば、慢性感染性疾患)を予防または治療するためのそれらの治療的使用を提供する。本発明はまた、このようなPCPVを作製および増幅するための方法、ならびにこのようなPCPVを使用して免疫応答を惹起もしくは刺激および/または再配向するための方法も提供する。より具体的には、本発明は、既存のポックスウイルスベクター、例えば、MVA(改変ウイルスアンカラ)の代替となり、主として、治療的ワクチン接種に使用され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲノムに挿入された少なくとも1つの外来核酸を含んでなる、偽牛痘ウイルス(PCPV)。
【請求項2】
前記PCPVが、ATCC参照番号ATCC VR-634(商標)により特定されるような野生型TJS株から、あるいは、同一名もしくは類似名のウイルス株またはその機能的フラグメントもしくは変異体から得られる、請求項1に記載のPCPV。
【請求項3】
前記PCPVが、さらに、PCPVゲノムによりコードされているウイルス機能に欠陥がある、好ましくは、非必須ウイルス機能に欠陥がある、より好ましくは、前記外来核酸の挿入部位にコードされているウイルス遺伝子機能に欠陥がある、請求項1または2に記載のPCPV。
【請求項4】
前記外来核酸が、対象において欠陥または欠損タンパク質を補償するポリペプチド;毒性作用を介して身体から罹患細胞を制限または除去する働きをするポリペプチド、例えば、自殺遺伝子産物;抗腫瘍効果を増強し得るポリペプチド、例えば、武装遺伝子産物;ならびに、免疫応答を誘導または活性化し得るポリペプチド、例えば、免疫刺激ポリペプチドおよび抗原ポリペプチドからなる群から選択されるポリペプチドをコードする、請求項1~3のいずれか一項に記載のPCPV。
【請求項5】
前記免疫刺激ポリペプチドが、サイトカイン、例えば、インターロイキン;ケモカイン;インターフェロン;腫瘍壊死因子;コロニー刺激因子;APCが露出したタンパク質;抗血管新生作用を有するポリペプチドおよび細胞表面受容体の調節に影響を及ぼすポリペプチド、例えば、免疫チェックポイントのアゴニストまたはアンタゴニストからなる群から選択される、請求項4に記載のPCPV。
【請求項6】
前記免疫刺激ポリペプチドが、インターロイキンもしくはコロニー刺激因子、特に、GM-CSFであるか、あるいはOX40に対するアゴニスト抗体である、請求項5に記載のPCPV。
【請求項7】
前記抗原ポリペプチドが、癌抗原、例えば、MUC-1抗原;ウイルス抗原ポリペプチド、例えば、HPV-16 E7抗原またはHBV抗原である、請求項4に記載のPCPV。
【請求項8】
前記少なくとも1つの外来核酸が、所望の宿主細胞または対象における発現に好適な調節エレメントに機能的に連結されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のPCPV。
【請求項9】
前記少なくとも1つの外来核酸が、ポックスウイルスプロモーター、好ましくは、ワクシニアウイルスプロモーター、より好ましくは、7.5K、H5R、11K7.5、SE、TK、pB2R、p28、p11およびK1Lプロモーター、合成プロモーター、ならびに、初期/後期キメラプロモーターからなる群から選択されるプロモーターの制御下に配置される、請求項4に記載のPCPV。
【請求項10】
前記少なくとも1つの外来核酸がVEGF遺伝子座に挿入されている、請求項1~9のいずれか一項に記載のPCPV。
【請求項11】
挿入部位の上流および下流に存在するPCPV配列が、それぞれ5’および3’に隣接する外来核酸を含んでなる導入プラスミドと、PCPVゲノムとの間の相同組換えにより、請求項1~10のいずれか一項に記載のPCPVを作製するための方法であって、
前記導入プラスミドを作製する工程、および、
前記導入プラスミドを、特に前記導入プラスミドに存在する隣接配列を含んでなるPCPVウイルスとともに、好適な宿主細胞に導入する工程
を含んでなる、前記方法。
【請求項12】
前記PCPVゲノム内の前記少なくとも1つの外来核酸の前記挿入部位が、ウイルス遺伝子、好ましくは、非必須ウイルス遺伝子、遺伝子間領域、PCPVゲノムの遺伝子産物をコードしない部分、または倍加された遺伝子座に存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記PCPVゲノムに前記外来核酸を挿入する際に、前記挿入部位のウイルス遺伝子座が、少なくとも部分的に削除され、ウイルス機能に関して欠陥のあるPCPVウイルスが生じる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの外来核酸がVEGF遺伝子座に挿入される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記導入プラスミドが、組換えPCPVの同定を容易にするために1以上の選択遺伝子および/または検出可能遺伝子をさらに含んでなる、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記導入プラスミドが、前記選択遺伝子または前記検出可能遺伝子に二本鎖切断をもたらし得るエンドヌクレアーゼの存在下で宿主細胞に導入される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記選択遺伝子が、選択培地中での増殖を可能とするグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼをコードするGPT遺伝子であり、かつ/あるいは、前記検出可能遺伝子が、GFP、e-GFPまたはmCherryをコードする、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記好適な宿主細胞がウシ鼻甲介(BT)細胞である、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
(a)一方もしくは両方のVEGF遺伝子座に挿入された、好ましくは初期/後期ワクシニアpH5Rプロモーターの転写制御下で挿入された、ヒトMUC-1抗原をコードする核酸を含んでなるPCPVウイルス、または、(b)一方もしくは両方のVEGF遺伝子座に挿入された、好ましくは初期/後期ワクシニアp7.5プロモーターの転写制御下で挿入された、膜係留型HPV-16非発癌性E7抗原をコードする核酸を含んでなるPCPV
を作製するための、請求項11~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~10のいずれか一項に記載のPCPVまたは請求項11~19のいずれか一項に記載の方法により作製されたPCPVを増幅するための方法であって、以下の工程:a)産生細胞株を準備する工程、
b)前記準備した産生細胞株にトランスフェクトするまたは感染させる工程、
c)前記トランスフェクトされたまたは感染した産生細胞株を、ウイルスの産生を可能とするために好適な条件下で培養する工程、
d)前記産生されたウイルスを、前記産生細胞株の培養物から回収する工程、および、
e)場合により、前記回収されたウイルスを精製する工程
を含んでなる、前記方法。
【請求項21】
前記産生細胞がHeLaである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
治療上有効な量の請求項1~10のいずれか一項に記載のPCPVまたは請求項20もしくは21に記載の方法により増幅されたPCPVと、薬学上許容可能なビヒクルとを含んでなる組成物。
【請求項23】
前記組成物が、およそ103~およそ1012pfu、有利にはおよそ104~およそ1011pfu、好ましくはおよそ105~およそ1010pfu、より好ましくはおよそ106~およそ109pfuのPCPVを含んでなる個別の用量で調合される、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物が、静脈内、筋肉内、皮下または腫瘍内投与向けに調合される、請求項22または23に記載の組成物。
【請求項25】
病原生物または望まない細胞分裂により引き起こされる疾患または病状の処置または予防に使用するための、請求項22~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
請求項22~25のいずれか一項に記載の組成物を、それを必要とする対象に、病原生物または望まない細胞分裂により引き起こされる疾患または病状を処置または予防するために十分な量で投与することを含んでなる、処置方法。
【請求項27】
請求項22~25のいずれか一項に記載の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる、腫瘍細胞の増殖を阻害するための方法。
【請求項28】
106~109pfuを含んでなるPCPV組成物の2~6回の毎週の投与と、場合により、その後の3週間隔の2~15回のさらなる投与とを含んでなる、請求項25~27のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項29】
腎臓癌、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、肝臓癌、胃癌、胆管癌、子宮内膜癌、膵臓癌および卵巣癌ならびにMUC1を過剰発現する癌からなる群から選択される癌を処置するための、請求項25~28のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項30】
MUC1抗原をコードするPVPCを使用して、非小細胞肺癌(NSCL)を有する対象を処置するための、請求項29に記載の使用または方法。
【請求項31】
HPV16 E7抗原をコードするPVPCを使用して、HPV陽性癌、例えば、子宮頸癌または頭頸部癌を処置するための、請求項29に記載の使用または方法。
【請求項32】
手術、放射線療法、化学療法、凍結療法、ホルモン療法、毒素療法、免疫療法、サイトカイン療法、標的癌療法、遺伝子療法、光線力学療法および移植からなる群から選択される1以上のその他の治療法と併用される、請求項25~31のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項33】
プライム組成物およびブースト組成物の逐次投与を含んでなるプライム・ブーストアプローチに従って行われる、請求項32に記載の使用または方法。
【請求項34】
前記プライム組成物が、腫瘍内経路により投与されるPCPV組成物であり、前記ブースト組成物が、静脈内経路により投与されるMVA組成物である、請求項33に記載の使用または方法。
【請求項35】
免疫応答を惹起もしくは刺激および/または再配向するための方法であって、請求項22~25のいずれか一項に記載の組成物を、それを必要とする対象に、その対象の免疫を活性化するために十分な量で投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項36】
以下の特性:
PBMCからの高レベルのIFN-αの分泌;
単球由来樹状細胞の活性化;
T細胞の活性化または増殖の誘導;
MDSCにおけるより良いサイトカイン/ケモカインプロファイル;
APCの活性化;
ヒトマクロファージのM2からM1への変換;および/または、
TLR9介在経路またはその他の自然免疫刺激経路による免疫の誘導
のうち少なくとも1つをもたらす、請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ウイルス免疫療法の分野である。本発明は、新規な偽牛痘ウイルス(PCPV:pseudocowpox virus)(特に、組換えPCPV)、その組成物、ならびに疾患(特に、増殖性疾患(例えば、癌および再狭窄)および感染性疾患)を予防または処置するためのそれらの治療的使用を提供する。本発明はまた、このようなPCPVを作製および増幅するための方法、ならびにこのようなPCPVを使用して免疫応答を惹起もしくは刺激および/または再配向するための方法も提供する。より具体的には、本発明は、既存のポックスウイルスベクター、例えば、MVA(改変ウイルスアンカラ:Modified Virus Ankara)の代替となり、主として、治療的ワクチン接種に使用され得る。
【背景技術】
【0002】
背景技術
免疫療法は、宿主の免疫系を増強して、身体を補助し、病原体および異常な細胞を根絶しようというものである。免疫療法は、従来のワクチン接種において広く使用されているが、特異的免疫応答および自然免疫応答を刺激する試みにおいて重篤な慢性疾患または命を脅かす疾患を処置するための潜在的方法として活発に検討されてもいる。膨大な数の免疫療法が、数十年間で文献に記載されてきた。特に、現在、いくつかのウイルスベクターおよび非ウイルス性ベクターが浮上しているが、それらは総て相対的な利益および制限を有し、それらを特定の適応に適合させる(例えば、Cattaneo and Russell,2017,PLOS Pathogens doi:10.1371/journalppat.1006190;Kaufman et al.,2015,Nature Reviews Drug Discovery 14:642-661;Gomez et al.,2013 expert Rev Vaccines 12(12):1395-1416参照)。膨大な数の免疫療法プラットフォームが臨床試験で評価されており、腫瘍溶解性であれそうでないものであれ、ポックスウイルス療法に基づく現在の臨床研究の数が、それらの治療可能性に関心が寄せられていることを表している。例えば、組換えワクシニアウイルス(VV)に基づくベクターは、それらの優れた安全性プロファイルと、ロバストな細胞性抗原特異的免疫応答および自然免疫系の全般的刺激を組み合わせるそれらの能力とに関して魅力的な候補である。TG4010(またはその研究名を伴うMVATG9931)は、MUC1腫瘍関連抗原およびヒトインターロイキン2(IL-2)をコードする改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA:modified vaccinia virus Ankara)に基づいた治療用癌ワクチンである。TG4010は、進行して転移した非小細胞肺癌(NSCLC)の第一選択標準治療化学療法と組み合わせて、2つの異なる無作為化比較対照第2b相臨床試験で有効性を示した(Quoix et al.,2011,The Lancet Oncology 12(12):1125-33)。
【0003】
パラポックスウイルスは、ベクターワクチンに使用可能なまた違った候補に相当する。パラポックスウイルスは、ポックスウイルス科、コードポックスウイルス亜科に属する。パラポックスウイルスは、反芻動物の皮膚疾患の病原体として一般に知られており、丘疹性口炎および伝染性嚢胞性皮膚炎を、特に口唇領域、鼻孔領域、口腔粘膜領域および乳頭領域にもたらす。ポックスウイルス科のその他のメンバーと同様に、パラポックスウイルスは、比較的大型で、エンベロープを有する、卵形の二本鎖DNAウイルスであり、哺乳動物およびヒトの広い選択を含む脊椎動物に感染し得る。パラポックスウイルスは、他のポックスウイルスとは異なるユニークならせん状のコートを有する。
【0004】
ポックスウイルスの場合、パラポックスのウイルス複製の場は細胞質である。宿主細胞への侵入は、宿主細胞へのウイルスのエンドサイトーシスを媒介する宿主のグリコサミノグリカン(GAG)にウイルスタンパク質が結合することによって達成される。細胞膜との融合により、宿主の細胞質へのコアの放出が可能となる。初期遺伝子は、ウイルスRNAポリメラーゼによって細胞質内で転写される。初期発現は感染後30分で開始する。中期は、感染後およそ100分でゲノムDNA複製を誘発する。次いで、後期遺伝子が感染後140分~48時間で発現され、総ての構造タンパク質が産生される。子孫ビリオンの組み立ては、細胞質のウイルス工場で開始し、球形の未成熟粒子が産生される。このウイルス粒子が、れんが型の細胞内成熟ビリオン(IMV)へと成熟する。IMVビリオンは、細胞溶解時に放出され得るか、またはトランスゴルジから第二の二重膜を獲得し、細胞外エンベロープビリオン(EEV)宿主受容体(external enveloped virion (EEV) host receptors)として出芽し、これがエンドサイトーシスを媒介し得る。ウイルスは、細胞死の後は包埋体内に存在することによって宿主細胞を出て行き、別の宿主を見つけるまで感染性を保持する。
【0005】
複製能があり、かつ、不活性化されたパラポックスウイルスは、それらの免疫調節特性に関して知られている(Schulze et al.,2009,Vet Microbiol.137:260-7)。パラポックスウイルス属の原種(prototype species)であるパラポックスウイルス・オヴィス(ORFV)は、獣医学において、動物の慢性持続的ウイルス感染における全般的な耐性を増強するために(例えば、US6,365,393;WO97/32029およびUS2003-0013076)、ならびにヒト医学において、HIVを処置するために(WO2006/005529)、好成績で使用されており、腫瘍溶解性があると考える人もいる(Rintoul et al.,2012,Mol.Ther.20(6):1148-57)。種々の挿入部位がORFVゲノム内に特定された(WO97/37031)。特に、イヌジステンバー(disempter)ウイルス(CDV)抗原をコードする組換えORFVは、CDVに対するワクチン(WO2012/01145)およびブタの偽狂犬病ウイルスに対するワクチンとして使用された(Rooij et al.,2010,Vaccine 28(7):1808-13)。化学的に不活化されたD1701株由来ORFVの調製物であるZylexis(登録商標)(旧称Baypamune(登録商標)としても知られる)は、動物において感染性疾患の予防および治療的処置のため、また、ストレス誘発疾患の予防のために使用される。不活化されたORFVは、おそらくTLR-9依存性経路の関与のために形質細胞様樹状細胞(pDC)を誘導することが示された(Von Buttlar et al.,2014,PLOS One 9(8):e106188)。より最近では、Choi et al.(2017,Surgery,doi 10.1016/j.surg.2017.09.030)は、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)腫瘍におけるキメラパラポックスウイルスの強力な細胞傷害活性を報告した。その注射の1週間後に腫瘍組織においてキメラORFウイルスの活発な複製が検出され、ウイルスで処置した腫瘍組織の辺縁部でナチュラルキラー(NK)細胞の浸潤が観察された。
【0006】
命を脅かす疾患、例えば、癌および感染性疾患の処置のために有効なアプローチを開発する重大な必要性が明らかにある。実際に、罹患細胞は、免疫系を回避するための強力な免疫抑制機構を発達させ、有効な免疫療法に対する主要な障害となっている。したがって、自然免疫機構および特異的免疫機構の両方の誘発は、より有効な免疫療法の開発の成功の鍵となり得る。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、治療遺伝子の送達のためのベクターとしてのパラポックスウイルスの使用に関する。本発明者らは、意外にも、偽牛痘ウイルス(PCPV)は、その限定された病原性および免疫調節特性を考慮すれば、抗癌療法に特に適当であり、顕著な利点を提供することを見出した。本発明者らは、PCPVは、免疫エフェクター細胞を刺激するいくつかのサイトカインおよびケモカインの分泌を、従来のMVAおよびVVよりも高いレベルで活性化するその能力によって裏づけられるような、その他のポックスウイルスとは異なる強力な自然免疫プロファイルを提供することを見出した。パラポックスウイルス属の別のメンバーであるウシ丘疹性口炎ウイルス(BPSV)は、PBMCにおいてPCPVと類似の効果を示し、上清中の分泌されたIFN-αが顕著に増加した。さらに、ヒトのin vitroで誘導されたM2型マクロファージにおけるCD86発現の増加は、M2マクロファージを抑制性の低い表現型へ再プログラミングする際のPCPVの役割を示唆する。最後に、腫瘍関連抗原(TAA)を発現するように操作された組換えPCPVウイルスは、シンジェニック動物モデルにおいて腫瘍成長を抑制し、生存率を高めるのに特に有効であることが示された。PCPVと抗PD1抗体との組合せは、「二腫瘍」モデルにおいて腫瘍抑制の統計的に有意な改善を示した。
【0008】
PCPVウイルスおよびBPSVウイルスによって示される免疫原性の改善のため、パラポックスウイルスは、増殖性疾患(例えば、癌)および感染性疾患(例えば、慢性HBV)を処置または予防するためのその他のウイルス療法の代替として首尾良く使用され得ることが予想可能である。したがって、PCPVまたはBPSVは、腫瘍環境に効果を及ぼし得る治療ワクチンの候補である。
【0009】
発明の概要
本発明の1つの態様は、ゲノムに挿入された少なくとも1つの外来核酸を含んでなる偽牛痘ウイルス(PCPV)に関する。
【0010】
一実施形態において、PCPVは、ATCC参照番号ATCC VR-634(商標)により特定されるような野生型TJS株から、あるいは同一名または類似名のウイルス株またはその機能的フラグメントもしくは変異体から得られる。
【0011】
別の実施形態において、PCPVは、さらにPCPVゲノムによりコードされているウイルス機能に欠陥があってよく、好ましくは、非必須ウイルス機能、より好ましくは、外来核酸の挿入部位にコードされているウイルス遺伝子機能に欠陥があってよい。
【0012】
さらなる実施形態において、外来核酸は、対象において欠陥または欠損タンパク質を補償するポリペプチド;毒性作用を介して身体から罹患細胞を制限または除去する働きをするポリペプチド、例えば、自殺遺伝子産物;抗腫瘍効果を増強し得るポリペプチド、例えば、武装遺伝子産物;および免疫応答を誘導または活性化し得るポリペプチド、例えば、免疫刺激ポリペプチドおよび抗原ポリペプチドからなる群から選択されるポリペプチドをコードする。好ましくは、免疫刺激ポリペプチドが、サイトカイン(例えば、インターロイキン);ケモカイン;インターフェロン;腫瘍壊死因子;コロニー刺激因子;APCが露出したタンパク質;抗血管新生作用を有するポリペプチドおよび細胞表面受容体の調節に影響を及ぼすポリペプチド(例えば、免疫チェックポイントのアゴニストまたはアンタゴニスト)からなる群から選択され、特に好ましくは、インターロイキンまたはコロニー刺激因子(特に、GM-CSF)、またはOX40に対するアゴニスト抗体である。また、癌抗原(例えば、MUC-1抗原)、ウイルス抗原ポリペプチド(例えば、HPV-16 E7抗原またはHBV抗原)も好ましい。
【0013】
なおさらなる実施形態において、少なくとも1つの外来核酸は、所望の宿主細胞または対象における発現に好適な調節エレメントに機能的に連結されている。
【0014】
さらなる実施形態において、少なくとも1つの外来核酸は、VEGF遺伝子座に挿入されている。
【0015】
別の態様において、本発明はさらに、挿入部位の上流および下流に存在するPCPV配列が、それぞれ5’および3’に隣接する外来核酸を含んでなる導入プラスミドと、PCPVゲノムとの間の相同組換えにより、本発明のPCPVを作製するための方法であって、
前記導入プラスミドを作製する工程、および、
前記導入プラスミドを、特に前記導入プラスミドに存在する隣接配列を含んでなるPCPVとともに、好適な宿主細胞に導入する工程
を含んでなる方法を提供する。
【0016】
一実施形態において、PCPVゲノム内の少なくとも1つの外来核酸の挿入部位は、ウイルス遺伝子、好ましくは、非必須ウイルス遺伝子、遺伝子間領域、PCPVゲノムの遺伝子産物をコードしない部分、または倍加された遺伝子座、より好ましくは、VEGF遺伝子座に存在する。
【0017】
一実施形態において、導入プラスミドは、組換えPCPVの同定を容易にするために1以上の選択遺伝子および/または検出可能遺伝子、は、選択用GPT遺伝子および/またはGFP、e-GFPもしくはmCherryをコードする検出可能遺伝子をさらに含んでなる。
【0018】
さらなる態様において、本発明はさらに、本発明のPCPV、または本発明の方法により作製されたPCPVを増幅するための方法であって、
以下の工程:
a)産生細胞株を準備する工程、
b)前記準備した生産細胞株にトランスフェクトするまたは感染させる工程、
c)前記トランスフェクトされたまたは感染した産生細胞株を、ウイルスの産生を可能とするために好適な条件下で培養する工程、
d)前記産生されたウイルスを、前記産生細胞株の培養物から回収する工程、および、
e)場合により、前記回収されたウイルスを精製する工程
を含んでなる、前記方法に関する。
【0019】
なおさらなる態様において、本発明は、治療上有効な量の本発明のPCPVまたは本発明による方法により増幅されたPCPVと薬学上許容可能なビヒクルとを含んでなる組成物に関する。好ましくは、この組成物は、およそ103~およそ1012pfuを含んでなる個別の用量で調合される。好ましくは、それは静脈内、筋肉内、皮下または腫瘍内投与向けに調合される。
【0020】
一実施形態において、組成物は、病原生物または望まない細胞分裂により引き起こされる疾患または病状の処置または予防に使用するためのものである。
【0021】
なおさらなる態様において、本発明は、腫瘍細胞の増殖を処置する方法および腫瘍細胞の増殖を阻害するための方法であって、本発明の組成物を、それを必要とする対象に、病原生物または望まない細胞分裂により引き起こされる疾患または病状を処置または予防するために十分な量で投与することを含んでなる方法を提供する。
【0022】
一実施形態において、癌は、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、肝臓癌、胃癌、胆管癌、子宮内膜癌、膵臓癌および卵巣癌、ならびにMUC1を過剰発現する癌からなる群から選択される。
【0023】
別の実施形態において、上記方法または使用は、手術、放射線療法、化学療法、凍結療法、ホルモン療法、毒素療法、免疫療法、サイトカイン療法、標的癌療法、遺伝子療法、光線力学療法および移植からなる群から選択される1以上のその他の治療法とともに実施される。
【0024】
さらなる実施形態において、上記方法または使用は、プライム組成物およびブースト組成物の逐次投与を含んでなるプライム・ブーストアプローチに従って実行される。
【0025】
さらなる態様において、本発明は、免疫応答を惹起もしくは刺激および/または再配向するための方法であって、本発明の組成物を、それを必要とする対象に、その対象の免疫を活性化させるために十分な量で投与することを含んでなる方法に関する。
【0026】
一実施形態において、その方法は、以下の特性:
(a)PBMCからの高レベルのIFN-αの分泌;
(b)単球由来樹状細胞の活性化;
(c)T細胞増殖の誘導(例えば、グランザイムB高発現T細胞によって間接的に表されるように);
(d)MDSCにおけるより良いサイトカイン/ケモカインプロファイル;
(e)APCの活性化;
(f)ヒトマクロファージのM2からM1への変換;および/または
(g)TLR9介在経路またはその他の自然免疫刺激経路による免疫の誘導
のうち少なくとも1つをもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、種々のMOI(MOI 0.1、MOI 1およびMOI 5)での2回の異なる実験(実験1および実験2)において、2名のドナーからのPBMCにおけるIFN-αの分泌を示す図である。Mockは陰性対照を表し、供試した種々のウイルスは、パラポックスウイルス(偽牛痘ウイルス(PCPV)およびパラポックスウイルス・オヴィス(ORFV))、MVA(MVAN33.1という名称のエンプティーMVAベクター)、牛痘ウイルス(CPX)、コペンハーゲンワクシニアウイルス(Copwt)、鶏痘(FPV)、粘液腫ウイルス(MYXV)、豚痘(SWPV)、ラクーンポックスウイルス(RCN)、コティアウイルス(CTV:Cotiavirus)およびヤバ様病ウイルス(YLDV:Yaba-like disease virus)である。
【
図2】
図2は、3名の異なるドナーから得たmoDCであって、ウイルス感染したmoDCにおける、フローサイトメトリーにより測定された活性化マーカーCD86の発現レベルを示す図である。エンプティーMVAベクターMVAN33.1またはPCPVに、MOI 0.03、0.3または1で感染後16時間に、あるいは、陰性対照としてのmockで観察されたmoDC(3名のドナー)中のCD86に関する蛍光強度中央値(MedFI)を示す。発現レベルは、フローサイトメトリーによる細胞結合シグナルの抗CD86-PE定量を使用した染色によって測定した。
【
図3】
図3は、MOI 5、1および0.3でMVAN33.1またはPCPVとともにインキュベートした後に、本明細書に記載されるようなPBMC由来のCD163
+CD206
+M2マクロファージの上清において、Luminex分析により測定されたサイトカインレベルを示す図である。
【
図4】
図4は、A)CTL単独、またはCTLと20ng/mlのGM-CSF、10ng/mlのIL4および1μMのプロスタグランジンE2の存在下で誘導されたMDSCとの共培養下(MDSC/T比1/2)において、MOI 0.03、0.3または3のPCPVで処理した後の相対的なCTLの増殖、B)高増殖性T細胞単独またはMDSCとの共培養下(Aに示されたように共培養)において、示されたMOIのPCPVで処理された高増殖性T細胞の相対的なグランザイムBの発現、C)MDSCを、示されたMOIのPCPVで一晩処理した後のIFN-αの分泌を示す図である。
【
図5】
図5は、A)CTL単独、またはCTLと10ng/mlのGM-CSFおよび10ng/mlのIL-6の存在下で誘導されたMDSCとの共培養下(MDSC/T比1/2および1/1)において、MOI 0.03、0.3または3のPCPVで処理した後の相対的なCTLの増殖、B)増殖性T細胞単独またはMDSCとの共培養下(Aに示されたように共培養)において、示されたMOIのPCPVで処理された増殖性T細胞の相対的なグランザイムBの発現を示す図である。
【
図6】
図6は、MC38腫瘍モデルにおける腫瘍成長および動物生存の進行を示す図である。動物を10個体ずつの3群に分けた。総ての群で、(A)に示されるプロトコールに従い、シンジェニックC57BL/6マウスの皮下に2.10
6個のMC38細胞を注射した。注射部位にパーマネントマーカーで印を付けた。この動物に3回の1.10
7pfu MVA-HPV16E7m(B)またはPCPV-HPV16E7m(C)またはバッファー(D)の腫瘍内注射を、それぞれ細胞移植(細胞株注射部位に)の2日後、ならびに9日目および16日目の新生腫瘍中に行った。腫瘍成長は、腫瘍体積を経時的に測定することにより評価した。(E):カプラン・マイヤー曲線として表した全生存率(OS)。実線(-)は、MVA-HPV16E7mで処置された動物群(MVATG14197)を表し、破線(--)は、PCPV-HPV16E7mで処置された群(PCPV19178)を表し、点線(..)は、バッファーで処置した群(S08)を表す。
【
図7】
図7は、MC38細胞の生存能に及ぼすPCPVの影響を示す図である。2×10
4個の細胞を播種し、PCPV-GFP、陽性対照としてVV-GFP(VVTGと呼称)および陰性対照としてmockのいずれかに、MOI 1、10
-1、10
-2および10
-3で感染させた。5日後、細胞を掻き取って採取し、生細胞の数および割合を、トリパンブルー染色および細胞計数器Vicellを使用して決定した。
【
図8】
図8は、PCPVまたはMVAまたはバッファー(陰性対照として)のsc注射後の局所的サイトカイン・ケモカインプロファイルを示す図である。各群4個体のマウスの剃毛した両側腹部に、5×10
5pfuウイルス/側腹部をsc注射した。各マウスについて、16時間後に両側腹部からの皮膚を採取し、細胞を機械的に解離させた(間質/細胞外分析物の遊離)。300gで遠心分離した後、上清をエッペンドルフ管に入れ、低温にて18000gで遠心分離した。明澄な上清を、MagPix装置を製造者の推奨に従って使用するProcartaplexマウスケモカイン・サイトカインマルチプレックスキットで分析した。
【
図9】
図9は、TILを含む組成物に関するPCPVの効果を示す図である。CD11b
+Ly6G
+CD45
+細胞集団において、好中球のパーセンテージを検出した(A)。TAMは、Ly6G
-CD11b
+細胞内のCD11c-亜集団として特定された。種々の亜集団をMHC IIおよびLy6Cで層化した。Braunerらによる「TAM C」は、MHC II
loおよびLy6C
+として特徴付けられた。
【
図10】
図10は、(A)R9Fペプチドで刺激後の、プールした脾臓中でのHPV16 E7特異的なT細胞の生成(ELISPOT)、(B)T8Vで刺激後のMVA特異的なT細胞の生成、(C)示されたウイルスで繰り返し静脈内(iv)処置したマウスのプールした肺におけるCD3
dimCD8
dimT細胞集団の出現、および(D)プールした肺におけるCD3
dimCD8
dimT細胞集団内のHPV-16 E7特異的なT細胞の生成を示す図である。
【
図11】
図11は、エンプティーMVA(MVATGN33.1)、HPV16E7コードMVA(MVATG14197)およびHPV16E7コードPCPV感染時に、ICSにより測定されたCD3
dimCD8
dimT細胞集団内のHPV16 E7特異的なT細胞の出現の誘導倍率(fold induction)(対照ペプチドに対する特異的なペプチド)を示す図である。
【
図12】
図12は、MC38担持マウスにおける、1×10
7pfuのPCPV(A)またはバッファー(E)の腫瘍内注射時、ならびにそれぞれマウス好中球、CD8
+細胞およびCD4
+細胞を除去するための除去抗体抗Ly6G(B)、抗CD8(C)および抗CD4(D)の腹腔内注射時の腫瘍抑制試験を示す図である。各群は13個体のマウスを含む。
【
図13】
図13は、PCPV注射を投与され、34日目にMC38腫瘍の退縮または消散を示した生存マウス由来の脾細胞に対するELISPOT分析を示す図である。脾細胞懸濁液からリンパ球を単離するために、5個体の生存動物(PCPV生存個体プール)および2個体の各生存個体(PCPV生存個体)およびナイーブマウス(ナイーブ)から脾臓を採取した。1×10
7細胞/mLをELISAプレートに播種し、マイトマイシンC処理MC38細胞または無関係のI8Lペプチドまたは完全培地(培地)で刺激した。スポットをELISPOTリーダー(CTL Immunoqpotリーダー)で計数した。各条件を4プレートで試験し、結果を1×10
6脾臓リンパ球当たりのスポット形成単位(spot-forming units)(sfu)の平均数として表した。
【
図14】
図14は、プライム/ブーストセットに従ったTC1担持C57BL/6マウスにおける腫瘍抑制試験を示す図である。TC1細胞をC57BL/6マウスの側腹部に皮下移植した。14日後に、腫瘍担持マウスを無作為化し(各群10個体)、1.10
6pfuのMVA-HPV16E7(AおよびB)もしくはPCPV-HPV16E7(C)またはバッファー(D)を腫瘍内に注射した(プライム注射)。1週間後、マウスに、1×10
6pfuの対応するウイルス、すなわち、PCPV-HPV16E7(D)またはMVA-HPV16E7(AおよびC)またはバッファー(バッファープライムマウスのB)の静注によってブーストを実施した。腫瘍成長は経時的であった。
【
図15】
図15は、1×10
7pfuのPCPV(A)またはVV(B)のいずれかを、単独で(濃い灰色)またはマウス抗PD1(腹腔内注射)と組み合わせて(中間的な灰色)腫瘍内注射した際のMC38担持マウスにおける腫瘍抑制試験を示す図である。対照群にはS08バッファー(最も薄い灰色)または抗PD1抗体単独(薄い灰色)を投与した。各群は13個体を含む。
【
図16】
図16は、代表的ドナーから得られ、MOI 0.3でMVA、PCPVまたはBPSVに感染させたPBMCにおけるIFN-αの分泌を示す図である。mockは、陰性対照を示し、CpG型TLR9リガンドであるODN2216を免疫刺激作用の対照とした。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
定義
出願全体を通して使用される用語「a」および「an」は、文脈が明らかにそうではないことを示していなければ、「少なくとも1つの」、「少なくとも第1の」、「1以上の」または「複数の」参照成分または工程を意味するという意味で使用される。例えば、用語「細胞(a cell)」は、その混合物を含む複数の細胞を含む。
【0029】
用語「1以上の」は、1または1を超える数(例えば、2、3、4など)を指す。
【0030】
用語「および/または」は、本明細書で使用する場合、「および」、「または」および「上記の用語でつながれた要素の総てまたはその他のいずれかの組合せ」の意味を含む。
【0031】
用語「約」または「およそ」は、本明細書で使用する場合、所与の値または範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内を意味する。
【0032】
本明細書で生成物および組成物を定義するために使用する場合、用語「を含んでなる」(ならびに「を含んでなる(comprising)」のいずれかの形態、例えば、「comprise」および「comprises」)、「を有する」(ならびに「を有する(having)」のいずれかの形態、例えば、「have」および「has」)、「を含む」(ならびに「を含む(including)」のいずれかの形態、例えば、「includes」および「include」)または「を含有する」(ならびに「を含有する(containing)」のいずれかの形態、例えば、「contains」および「contain」)は、オープンエンド形式であり、列挙されていない付加的な要素または方法工程を排除しない。「から本質的になる」という表現は、いずれの本質的に重要なその他の成分または工程を排除することを意味する。したがって、列挙された成分から本質的になる組成物は、微量成分、混入物および薬学上許容可能な担体を排除しない。「からなる」は、その他の成分または工程の微量ではない要素を排除することを意味するものとする。
【0033】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、ペプチド結合を介して結合された少なくとも9個以上のアミノ酸を含んでなるアミノ酸残基のポリマーを指す。ポリマーは、直鎖、分岐鎖または環状であってよく、天然起源のアミノ酸および/またはアミノ酸類似体を含んでなってもよく、それには非アミノ酸が挿入されていてもよい。一般的な指標として、アミノ酸ポリマーが50個を超えるアミノ酸残基である場合、ポリペプチドまたはタンパク質と呼ばれることが好ましく、50アミノ酸長以下である場合、「ペプチド」と呼ばれる。
【0034】
本発明の文脈の範囲内では、用語「核酸」、「核酸分子」、「ポリヌクレオチド」および「ヌクレオチド配列」は、互換的に使用され、いずれの長さのポリデオキシリボヌクレオチド(DNA)(例えば、cDNA、ゲノムDNA、プラスミド、ベクター、ウイルスゲノム、単離DNA、プローブ、プライマーおよびそれらの混合物)またはポリリボヌクレオチド(RNA)(例えば、mRNA、アンチセンスRNA、SiRNA)または混合ポリリボ-ポリデオキシリボヌクレオチドのポリマーも定義する。それらは一本鎖または二本鎖、直鎖または環状、天然または合成、改変または非改変ポリヌクレオチドを包含する。さらに、ポリヌクレオチドは、非天然起源のヌクレオチドを含んでなってもよく、非ヌクレオチド成分が挿入されていてもよい。
【0035】
用語「変異体」、「類似体」、「誘導体」などは、天然対応物と比較して1以上の修飾を示す成分(ポリペプチド、核酸、ウイルスなど)を指して互換的に使用可能である。1以上のヌクレオチド/アミノ酸残基の置換、挿入および/または欠失を含むいかなる改変も想定することができる。天然対応物の配列との最適なグローバルアラインメントの後、すなわち、全長にわたって全体として行われた比較配列のアラインメントの後に、少なくとも75%、有利には少なくとも80%、望ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、一層より好ましくは少なくとも98%の配列同一性の程度を保持する変異体が好ましい。例示のため、「少なくとも75%の同一性」は、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%を意味する。一般的には、用語「同一性」は、2つのポリペプチド配列または核酸配列間のアミノ酸に対するアミノ酸またはヌクレオチドに対するヌクレオチドの一致を指す。2つの配列間の同一性パーセンテージは、最適なアラインメントのために導入する必要のあるギャップの数と各ギャップの長さとを考慮した、これらの配列が共有する同一位置の数の関数である。アミノ酸配列間の同一性パーセンテージを決定するために当技術分野では、種々のコンピュータープログラムおよび数学的アルゴリズム、例えば、Atlas of Protein Sequence and StructureのNCBIまたはALIGNで利用可能なBLASTプログラム(Dayhoffed,1981,Suppl.,3:482-9)が利用可能である。また、ヌクレオチド配列間の同一性を決定するためのプログラムも、専門のデータベース(例えば、Genbank、ウィスコンシン配列分析パッケージ、BESTFIT、FASTAおよびGAPプログラム)で利用可能である。最適な包括的アラインメントのためには、例えば、https://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/で利用可能なEmboss Needleソフトウエアを使用して、NeedlemanおよびWunschのアルゴリズム(Needleman and Wunsch.J.Mol.Biol.48,443-453,1970)を、使用することができる。このソフトウエアは、2つのインプット配列を読み取り、それらの最適なグローバル配列アラインメントを記載してファイリングする。このソフトウエアは、Needleman-Wunschアラインメントアルゴリズムを使用して、2つの配列の全長に沿ったそれらの最適アラインメント(ギャップを含む)を見出す。このアルゴリズムは、動的プログラミング法を使用して、可能性のあるあらゆるアラインメントを探索して最良のものを選択することにより、アラインメントが最適であることを保証する。可能性のあるあらゆる残基またはヌクレオチドのマッチ(match)の値を含むスコアリングマトリックスが読み取られる。Needleは、アラインメントのスコアがスコアリングマトリックスから得たマッチの合計から、アラインされた配列中のオープニングギャップおよびエクステンディングギャップ(opening and extending gaps)に起因するペナルティーを差し引いたものに相当するあり得る最大スコアを有するアラインメントを見つける。置換マトリックスおよびギャップオープニング・エクステンションペナルティーは、使用者により指定される。本発明に関して、最適な包括的アラインメントを得るために、Emboss Needleソフトウエアをデフォルトパラメータ、すなわち:
・アミノ酸配列の場合:「ギャップオープン(Gap open)」=10.0、「ギャップエクステンド(Gap extend)」=0.5、「エンドギャップペナルティー(End gap penalty)」=「フォールス(false)」、「エンドギャップオープン(End gap open)」=10.0、「エンドギャップエクステンド(End gap extend)」=0.5、および「Blosum 62」マトリックス;
・ヌクレオチド配列の場合:「ギャップオープン」=10.0、「ギャップエクステンド」=0.5、「エンドギャップペナルティー」=「フォールス」、「エンドギャップオープン」=10.0、「エンドギャップエクステンド」=0.5、および「DNAfull」マトリックス
で使用することができる。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「宿主細胞」は、組織、器官、または単離細胞における特定の構成に関して、何ら限定されることなく、広く理解されるべきである。このような細胞は、細胞の独特なタイプまたは異なるタイプの細胞の群、例えば、培養細胞株、初代細胞および分裂細胞であり得る。本発明に関して、用語「宿主細胞」は、より詳しくは、真核細胞、特に、哺乳動物(例えば、ヒトまたは非ヒト)細胞ならびに本発明のPCPVウイルスを産生し得る細胞(例えば、産生細胞)を指す。この用語にはまた、本明細書に記載のウイルスならびにそのような細胞の後代のレシピエントであり得るかまたはあった細胞が含まれる。
【0037】
用語「ウイルス」、「ウイルス粒子」、「ウイルスベクター」および「ビリオン」は、互換的に使用され、ウイルス粒子に封入され得る野生型ウイルスゲノムの少なくとも1つの要素を含んでなるビヒクル(ウイルスベクターとも呼ばれる)またはウイルス粒子それ自体を意味すると広く理解されるべきである。通常、ウイルスは、ウイルスキャプシドに封入されるDNAまたはRNAウイルスゲノム、エンベロープウイルスの場合には、脂質およびその他の成分(例えば、宿主の細胞膜など)を含んでなる。本発明は、野生型ウイルスおよび操作ウイルス(engineered virus)を包含する。すぐ上に述べたように、用語「ウイルス」などは、ウイルスベクター(例えば、DNAウイルスベクター)ならびにそれから生じたウイルス粒子を含むと広く理解されるべきである。用語「感染力」とは、宿主細胞または対象に感染し、それらへ侵入するウイルスの能力をさす。
【0038】
用語「天然起源の」、「天然の」または「野生型」は、ヒトにより人工的に作出されたものではなく、自然界に見出すことができる生体分子または生物を表して使用される。例えば、天然起源の、天然のまたは野生型のウイルスは、自然界における出所から単離され得る、あるいは、特定のコレクション(例えば、ECCAC、ATCC、CNCMなど)から取得され得るウイルスを指す。実験室でヒトにより意図的に改変された生体分子または生物は、天然起源でない。天然起源でないウイルスの代表例として、とりわけ、ウイルスゲノム中に対象とする1以上の核酸の挿入により操作された組換えウイルス、および/またはウイルスゲノム中に1以上の改変(例えば、ウイルス遺伝子の完全欠失または部分的欠失)から生じる欠陥ウイルスが含まれる。
【0039】
用語「から得られる」、「に起源する(originating)」または「に起源する(originate)」は、成分(例えば、ポリペプチド、核酸分子、ウイルスなど)の起源を特定するために使用されるが、成分が作製される方法を限定することを意味せず、例えば、化学合成、相同組換え、組換え手段またはその他のいずれかの手段によるものであり得る。
【0040】
用語「処置(treatment)」(および処置のいずれかの形態、例えば、「処置する(treating)」、「処置する(treat)」)は、本明細書で使用する場合、予防(例えば、その病状を有するリスクのある対象における予防的手段)および/または療法(例えば、その病状を有すると診断された対象における)であって、場合により、従来の治療方法と組み合わせた療法を包含する。処置の結果は、標的とする病状の進行を緩徐化する、治癒させる、改善するまたは抑制することである。例えば、本明細書に記載されるようなPCPVの単独または組合せ投与の後に、対象が観測可能なその臨床状態の改善を示す場合、その対象の癌に対する処置が成功である。
【0041】
用語「投与する(administrating)」(または投与(administration)のいずれかの形態、例えば、「投与される(administrated)」)は、本明細書で使用する場合、本明細書に記載の治療薬、例えば、PCPVの対象への送達を指す。
【0042】
用語「対象」は、一般に、本発明の産物および方法が必要とされる生物、または有益であり得る生物を指す。一般に、対象は、哺乳動物、特に、飼育動物、農用動物、競技動物および霊長類からなる群から選択される哺乳動物である。好ましくは、対象は、病理学的疾患(例えば、癌)を有する、または有するリスクがあると診断されたヒトである。用語「対象」および「患者」は、ヒト生物に関して互換的に使用可能であり、雄および雌を包含する。処置される対象は、新生児、幼児、若年成人、成人または高齢者であり得る。
【0043】
偽牛痘ウイルス
第1の態様において、本発明は、ゲノムに挿入された少なくとも1つの外来核酸を含んでなる偽牛痘ウイルス(PCPV)を提供する。一実施形態において、上記PCPVは、疾患、例えば、以下に記載されるような増殖性または感染性疾患を処置する使用のためのものである。
【0044】
用語「偽牛痘ウイルス」または「PCPV」は、本明細書では、ウイルス学の範囲内のその明白な通常の意味に従って使用され、その宿主の細胞質で複製し、パラポックスウイルス属に属するポックスウイルス科のメンバーを指す。PCPVは、一般に130~150キロベースの直鎖かつ二本鎖DNAゲノムを有する。本発明は、いずれの系統の偽牛痘ウイルスの天然起源の形態、ならびに本明細書に記載のものを含め、様々な目的で改変され得るその変異体も包含する。
【0045】
パラポックスウイルス属は、一連の異なる種、例えば、パラポックスウイルス・オヴィス(ORFV)、偽牛痘ウイルス(PCPV)およびウシ丘疹性口炎(BPSV)を包含し、それぞれの種において、様々な株が、完全または部分的ゲノム配列の開示とともに、当技術分野に記載されており、例えば、ORFVの01701、NZ2、NZ7、IA82、F07.821R、F09.1160SおよびSA00株ならびにウシ丘疹性口炎ウイルスのAR02およびV660株である。本明細書で使用するために好適なPCPV株の代表例として、限定されるものではないが、YG2828(Genbank受託番号LC230119)、F07.801R(Genbank受託番号JF773693)、F10.3081C(Genbank受託番号JF773695)、F07.798R(Genbank受託番号JF773692)、F99.177C(Genbank受託番号AY453678)、IT1303/05(Genbank受託番号JF800906)、F00.120R(Genbank受託番号GQ329669;Tikkanen et al.,2004,J.Gen.Virol.85:1413-8)およびTJS(VR634とも呼ばれる;Genbank受託番号GQ329670;Friedman-Kien et al.,1963,Science 140:1335-6;ATCCで受託番号VR634として入手可能)が含まれる。このような株は、互いに形態的、構造的および/または遺伝的差異(例えば、ITR長、予測される遺伝子の数および/またはGCリッチ含量に関して)を持ち得る(例えば、Hautaniemi et al.,2010,J.Gen.Virol.91:1560-76参照)。
【0046】
本発明に関して、PCPV種が好ましい。好ましい実施形態において、本発明のPCPVウイルスは、ATCC参照番号ATCC VR-634(商標)により特定されるような野生型TJS株から、または同一名もしくは類似名のウイルス株またはその機能的フラグメントもしくは変異体から得られる。好ましくは、このような変異体は、野生型TJS偽牛痘ウイルスゲノムの少なくとも10キロベースのセグメント(例えば、10kbの連続配列)とヌクレオチドレベルまたはアミノ酸レベルで少なくとも75%の同一性を維持する。
【0047】
本発明に関して適当な例示的改変として、限定されるものではないが、野生型偽牛痘ウイルス(例えば、TJS株)に比較して1以上のウイルス遺伝子の発現またはウイルス感染性を調節する(例えば、増強もしくは低下させる)こと、またはその治療効力を増強する(例えば、PCPVウイルスの、健常細胞に比較して罹患細胞で差次的に発現する能力を増強する)ことを目標としたPCPVゲノム内の1以上のヌクレオチドの挿入、置換および/または欠失、あるいは治療上注目される1以上の外来核酸の挿入、または異なるウイルス起源から得られるものを含むPCPVゲノム断片を含有するキメラウイルスを作製する1以上の外来核酸の挿入が含まれる。
【0048】
1つの好ましい実施形態において、本発明のPCPVは、ゲノムに挿入された少なくとも1つの外来核酸を含んでなる(例えば、組換えPCPVウイルスを生じる)。それとは別に、またはそれと併せて、PCPVウイルスは、PCPVゲノムによりコードされているウイルス機能(例えば、非必須ウイルス機能)、好ましくは、外来核酸の挿入部位にコードされているウイルス遺伝子機能に欠陥があってもよい。
【0049】
組換えPCPV
用語「組換え」は、本明細書において本発明のウイルスに関して使用される場合、ウイルスが少なくとも1つの外来核酸(組換え遺伝子または核酸とも呼ばれる)、特に、本明細書に記載されるような治療上注目される核酸の導入によって改変されていることを示す。本発明に関して、PCPVゲノムに挿入されている「外来核酸」は、天然起源のPCPVゲノムには見られないか、または天然起源のPCPVゲノムによっては発現されない。しかしながら、外来核酸は、組換えPCPVが導入される対象と同種であっても異種であってもよい。より具体的には、それはヒト起源または非ヒト起源(例えば、細菌、酵母、またはPCPVを除くウイルス起源)であり得る。有利には、上記外来核酸は、ポリペプチドをコードするか、または上記疾患に関与する遺伝子を阻害する目的で、罹患細胞内に存在する相補的細胞性核酸(例えば、DNA、RNA、miRNA)に少なくとも部分的に結合(ハイブリダイゼーションによる)し得る核酸配列である。ポリペプチドは、大きさおよびグリコシル化されているか否かに関わらず、ポリヌクレオチドのあらゆる翻訳産物であると理解され、ペプチドおよびタンパク質を含む。このような外来核酸は、天然遺伝子もしくはその一部(例えば、cDNA)、または1以上のヌクレオチドの突然変異、欠失、置換および/または付加により得られるそのいずれかの変異体であり得る。
【0050】
好ましい実施形態において、外来核酸は、対象に適切に投与された際に治療活性または予防活性を提供し得るポリペプチド(すなわち、治療上注目されるポリペプチド)をコードし、処置される病状の経過または症状に有益な効果をもたらす。治療上注目される膨大な数のポリペプチドが想定可能である。一実施形態において、外来核酸は、対象において欠陥または欠損タンパク質を補償するポリペプチド;毒性作用を介して身体から罹患細胞を制限または除去する働きをするポリペプチド(例えば、自殺遺伝子産物);抗腫瘍効果を増強し得るポリペプチド(例えば、武装遺伝子産物);および免疫応答を誘導または活性化することができるポリペプチド(例えば、免疫刺激ポリペプチドおよび抗原ポリペプチド)からなる群から選択されるポリペプチドをコードする。検出可能遺伝子の産物をコードする外来核酸もまた、本発明に関して有用であり得る。
【0051】
免疫刺激ポリペプチド
本明細書で使用する場合、用語「免疫刺激ポリペプチド」は、特異的または非特異的様式で免疫系を刺激する能力を有するポリペプチドを指す。免疫刺激効果を発揮するそれらの能力に関して膨大な数のポリペプチドが当技術分野で公知である。本発明に関して好適な免疫刺激タンパク質の例として、限定されるものではないが、サイトカイン、特に好ましくは、インターロイキン(例えば、IL-2、IL-6、IL-12、IL-15、IL-24);ケモカイン(例えば、CXCL10、CXCL9、CXCL11);インターフェロン(例えば、IFNα、IFNβ、IFNγ);腫瘍壊死因子(TNF);コロニー刺激因子(例えば、GM-CSF、C-CSF、M-CSFなど);APC(抗原提示細胞)が露出したタンパク質(例えば、B7.1、B7.2など);抗血管新生作用を有するポリペプチド(例えば、血管内皮増殖因子阻害剤(例えば、ベバシズマブまたはラニビズマブ));細胞表面受容体の調節に影響を及ぼすポリペプチド(例えば、免疫チェックポイントのアゴニストまたはアンタゴニスト(例えば、PD1またはそのリガンドに対する抗体(例えば、抗PD-L1)、CTLA4、LAG3、OX40などに対する抗体))が含まれる。好ましい実施形態において、免疫刺激ポリペプチドは、インターロイキンまたはコロニー刺激因子(例えば、GM-CSF)またはOX40に対するアゴニスト抗体である。
【0052】
抗原ポリペプチド
実施例のセクションに示すように、PCPVは、注射される対象の自然(非特異的)免疫を刺激することができる。したがって、この効果を抗原ポリペプチドの発現と組み合わせると、自然免疫応答および特異的免疫応答の両方を刺激することができるウイルスが提供され得る。これは、有効な抗癌応答を得るために、また、特定の病原体に対する保護を提供するためのワクチン接種目的に重要であり得る。このような効果は、何週間も持続し得る。
【0053】
用語「抗原性」は、抗原として適格なポリペプチドをコードする組換えPCPVが導入された対象において測定可能な免疫応答を誘導または刺激する能力を指す。上記組換えPCPVにより発現される抗原ポリペプチドに対して刺激または誘導される免疫応答は、体液性および/または細胞性(例えば、エフェクター免疫細胞の活性化に関与する抗体、サイトカインおよび/またはケモカインの産生)であり得る。刺激または誘導される免疫応答は、通常、投与された対象における保護効果に寄与する。当技術分野では、in vivo(動物またはヒト対象)またはin vitro(例えば、生体サンプル)でポリペプチドの抗原特性を評価するために、多様な直接的または間接的な生物学的アッセイが利用可能である。例えば、特定の抗原が自然免疫を刺激する能力の評価は、例えば、NK/NKT細胞の測定(例えば、活性化の代表性(representativity)およびレベル)、ならびにIFN関連サイトカインおよび/またはケモカイン産生カスケード、TLRの活性化および自然免疫のその他のマーカーの測定によって実施され得る(Scott-Algara et al.,2010 PLOS One 5(1),e8761;Zhou et al.,2006,Blood 107,2461-2469;Chan,2008,Eur.J.Immunol.38,2964-2968)。特定の抗原が細胞介在性免疫応答を刺激する能力の評価は、本明細書に記載されるように、例えば、慣例のバイオアッセイを使用するCD4+およびCD8+T細胞に由来するものを含む、活性化T細胞により産生されるサイトカインの定量(例えば、ELISpotによるか、マルチパラメータフローサイトメトリーICSによるか、マルチプレックス技術を使用するサイトカインプロファイル分析によるか、またはELISAによるT細胞の特性評価および/または定量)、T細胞の増殖能の決定(例えば、[3H]チミジン取り込みアッセイによるT細胞増殖アッセイ)、感作対象における抗原特異的Tリンパ球の細胞傷害能のアッセイ、あるいはフローサイトメトリーおよび適当な動物モデルの免疫誘導によるリンパ球亜集団の同定によって実施され得る。
【0054】
抗原ポリペプチドという用語は、天然抗原ならびにそのフラグメント(例えば、エピトープ、免疫原性ドメインなど)および変異体を(このようなフラグメントまたは変異体が免疫応答の標的とされ得る限り)包含することが企図される。本明細書で使用するために好ましい抗原ポリペプチドは、腫瘍関連抗原および病原生物(細菌、ウイルス、寄生虫、真菌、ウイロイドまたはプリオン)の抗原である。特定の病状を処置するために適当な1以上の抗原ポリペプチドを選択することは当業者の範囲内にある。
【0055】
一実施形態において、PCPVウイルスによりコードされる抗原ポリペプチドは、癌に関連する、および/または癌のマーカーとして役立つ癌抗原(腫瘍関連抗原とも呼ばれる)である。癌抗原として、様々なカテゴリーのポリペプチド、例えば、健常細胞では通常サイレントである(すなわち、発現しない)もの、低レベルでのみまたは特定の分化段階でのみ発現するもの、および一時的に発現するもの(例えば、胚・胎児抗原)、加えて、細胞性遺伝子の突然変異から生じるもの、例えば、癌遺伝子(例えば、活性化ras癌遺伝子)、癌原遺伝子(例えば、ErbBファミリー)の突然変異から生じるもの、または染色体転座から生じるタンパク質を包含する。
【0056】
癌抗原のいくつかの限定されない例として、限定されるものではないが、MART-1/Melan-A、gp100、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)-C017-1A/GA733、癌胎児性抗原(CEA)ならびにその免疫原性エピトープCAP-1およびCAP-2、etv6、aml1、前立腺特異的抗原(PSA)ならびにその免疫原性エピトープPSA-1、PSA-2、およびPSA-3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T細胞受容体/CD3-ζ鎖、MAGEファミリーの腫瘍抗原(例えば、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、MAGE-A12、MAGE-Xp2(MAGE-B2)、MAGE-Xp3(MAGE-B3)、MAGE-Xp4(MAGE-B4)、MAGE-C1、MAGE-C2、MAGE-C3、MAGE-C4、MAGE-C5)、GAGEファミリーの腫瘍抗原(例えば、GAGE-1、GAGE-2、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7、GAGE-8、GAGE-9)、BAGE、RAGE、LAGE-1、NAG、GnT-V、MUM-1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー(例えば、MUC1、MUC16など;例えば、US6,054,438;WO98/04727またはWO98/37095参照)、HER2/neu、p21ras、RCAS1、α-フェトタンパク質、E-カドヘリン、α-カテニン、β-カテニンおよびγ-カテニン、p120ctn、gp100.sup.Pmel117、PRAME、NY-ESO-1、cdc27、腺腫様多発結腸ポリープタンパク質(APC)、フォドリン、コネキシン37、Ig-イディオタイプ、p15、gp75、GM2およびGD2ガングリオシド、Smadファミリーの癌抗原、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX-1、SSX-2(HOM-MEL-40)、SSX-1、SSX-4、SSX-5、SCP-1およびCT-7、ならびにc-erbB-2が挙げられる。
【0057】
癌抗原は、対象(特に、慢性的に感染した対象)において悪性病態を誘発し得る病原生物、例えば、RNAおよびDNA腫瘍ウイルス(例えば、HPV、HCV、HBV、EBVなど)および細菌(例えば、ピロリ菌)によりコードされる抗原も含み得る。
【0058】
本発明で使用するためのウイルス抗原ポリペプチドとして、例えば、肝炎ウイルスA、B、C、DまたはE、免疫不全ウイルス(例えば、HIV)、ヘルペスウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹、パピローマウイルス(HPV)、エプスタイン・バールウイルス(EBV)、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、ピコルナウイルス、ロタウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ポックスウイルス、ライノウイルス、風疹ウイルス、パポウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス由来の抗原が含まれる。HIV抗原のいくつかの限定されない例として、gp120 gp40、gp160、p24、gag、pol、env、vif、vpr、vpu、tat、rev、nef tat、nefが含まれる。ヒトヘルペスウイルス抗原のいくつかの限定されない例として、gH、gL、gM、gB、gC、gK、gEもしくはgDまたはHSV1もしくはHSV2由来の前初期タンパク質、例えば、ICP27、ICP47、ICP4、ICP36が含まれる。サイトメガロウイルス抗原のいくつかの限定されない例として、gBが含まれる。エプスタイン・バールウイルス(EBV)由来のいくつかの限定されない例として、gp350およびEBVによりコードされる核抗原(EBNA:EBV-encoded nuclear antigen)-1が含まれる。水痘帯状疱疹ウイルス抗原のいくつかの限定されない例として、gp1、11、111およびIE63が含まれる。C型肝炎ウイルス(HCV)抗原のいくつかの限定されない例として、E1またはE2 envタンパク質、コアタンパク質、NS2、NS3、NS4a、NS4b、NS5aおよびNS5bが含まれる。B型肝炎ウイルス(HBV)抗原のいくつかの限定されない例として、ポリメラーゼ、コアおよびenvポリペプチド(例えば、WO2013/007772に記載されているHBV抗原の組合せ)が含まれる。ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原のいくつかの限定されない例として、L1、L2、E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7が含まれる。また、その他のウイルス病原体、例えば、呼吸器合胞体ウイルス(例えば、FおよびGタンパク質)、パラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、フラビウイルス(例えば、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)およびインフルエンザウイルス細胞(例えば、HA、NP、NA、またはMタンパク質)に由来する抗原も本発明において使用可能である。好ましい実施形態において、本発明のPCPVは、HPV-16またはHPV-18 E6および/またはE7抗原をコードおよび発現するように操作される。
【0059】
細菌抗原ポリペプチドとして、例えば、TBおよびらい病を引き起こすマイコバクテリア、肺炎球菌、好気性グラム陰性桿菌、マイコプラズマ、ブドウ球菌属、連鎖球菌属、サルモネラ菌属、クラミジア、ナイセリアンなどに由来する抗原が含まれる。
【0060】
寄生虫抗原ポリペプチドとして、例えば、マラリア、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、トキソプラスマ症、住血吸虫症およびフィラリア症由来の抗原が含まれる。
【0061】
本発明のPCPVによる発現のために好ましい抗原ポリペプチドは、
・異常にグリコシル化され、様々な上皮癌において過剰発現されるMUC-1抗原、
・HPV-16 E7抗原、特に、その非発癌性変異体、
・HBV抗原、特に、HBVポリメラーゼ、HBVコアタンパク質およびHBsAg免疫原性ドメイン(例えば、WO2013/007772に記載のとおり)を含んでなる融合物
である。
【0062】
自殺遺伝子産物
用語「自殺遺伝子産物」は、「プロドラッグ」とも呼ばれる薬物の前駆体を細胞傷害性化合物へと変換し得るポリペプチドを指す。自殺遺伝子産物の例および対応するプロドラッグを下表に開示する。
【0063】
【0064】
望ましくは、本発明のPCPVは、そのゲノムに、少なくともシトシンデアミナーゼ(CDase)活性を有するポリペプチドをコードする自殺遺伝子を保有する。原核生物および下等な真核生物において(それは哺乳動物には存在しない)、CDaseは、外因性のシトシンが加水分解性脱アミノ化によりウラシルに変換されるピリミジン代謝経路に含まれる。CDaseはまた、シトシンの類似体、すなわち、5-フルオロシトシン(5-FC)を脱アミノ化し、それにより、5-フルオロウラシル(5-FU)を生成する。5-フルオロウラシル(5-FU)は、それ自体、細胞傷害性であるが、ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRTase)の作用によって5-フルオロ-UMP(5-FUMP)に変換された際にさらにより障害性を増強する化合物である。
【0065】
CDaseおよびUPRTaseをコードする核酸は、いずれの原核生物および下等真核生物から得てもよい。遺伝子配列およびコードされる酵素は公開されており、専門のデータバンク、例えば、SWISSPROT EMBL、Genbank、Medlineなどで入手可能である。本発明においては、サッカロミセス・セレビシエのCDase(FCY1遺伝子)および/またはUPRTase(FUR1遺伝子)が好ましい(Kern et al.,1990,Gene,88:149-57)。これらの遺伝子の機能的変異体もまた使用可能である。このような変異体は、好ましくは、天然対応物のアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を保持する。N末端切断型UPRTaseの機能的類似体が、天然酵素よりも高いUPRTase活性を示すその能力のために、本発明においては特に有用である(例えば、EP998568に記載のとおり、天然タンパク質の2番目のMet残基までの最初の35個の残基の欠失を有する)。また、2つの酵素活性の融合により操作されたCDase活性およびUPRTase活性の両方を有するポリペプチド(例えば、WO96/16183、EP998568およびWO2005/07857に記載されているFCY1::FUR1およびFCY1::FUR1[Delta]105(FCU1)およびFCU1-8ポリペプチド)も好ましい。WO2009/065546の配列識別子である配列番号1で表されるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドをコードするFCU1自殺遺伝子(またはFCY1::FUR1[Delta]105融合物)が特に注目される。
【0066】
武装遺伝子産物
その他の外来核酸も、本発明に関して、抗腫瘍効果を増強する目的でPCPVウイルスを武装するために使用可能である。一実施形態において、武装遺伝子産物(armed gene product)は、ヌクレオシドプールモジュレーター(例えば、シチジンデアミナーゼ、特に、酵母シチジンデアミナーゼ(CDD1)またはヒトシチジンデアミナーゼ(hCD);EP16306831.5参照);代謝および免疫経路に作用するポリペプチド(例えば、アデノシンデアミナーゼ、特に、ヒトアデノシンデアミナーゼhuADA1またはhuADA2;EP17306012.0参照);アポトーシス経路に作用するポリペプチド;エンドヌクレアーゼ(例えば、制限酵素、CRISPR/Cas9)、および標的特異的RNA(例えば、miRNA、shRNA、siRNA)からなる群から選択される。
【0067】
検出可能遺伝子の産物
一般に、このようなポリペプチドは、分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、またはその他の物理的手段によって検出可能であり、したがって、宿主細胞または対象内の組換えPCPVを同定可能とする。好適な検出可能遺伝子の産物の限定されない例として、蛍光手段により検出可能なmCherry、Emerald、ホタルルシフェラーゼおよび緑色蛍光タンパク質(GFPおよびその増強型e-GFP)ならびに比色定量手段により検出可能なβ-ガラクトシダーゼが含まれる。
【0068】
本発明はまた、本明細書に記載されるような対象とする2種以上のポリペプチド、例えば、少なくとも2種抗原ポリペプチド(例えば、HPV-16 E6およびE7ポリペプチド)、少なくとも1種の抗原および1種のサイトカイン(例えば、MUC1抗原およびIL-2)、少なくとも2種の抗原および1種のサイトカイン(例えば、HPV E6およびE7抗原ならびにIL-2)などを発現するPCPVを包含する。
【0069】
本発明に関して、本明細書で使用するための対象とするコードされたポリペプチドには、本発明のPCPVによるその発現および対象におけるその治療効果に有益な構造的特徴が組み込まれていてよく、例えば、PCPVゲノムにおけるクローニングの補助を可能とするもの(潜在的切断部位の改変)、抗原性の強化を可能とするもの(グリコシル化部位の改変)ならびに/またはMHCクラスIおよび/もしくはMHCクラスII提示の改善を可能とするもの(例えば、膜係留)などがある。膜係留は、対象とするポリペプチドに、天然ポリペプチドがそれを欠く場合に膜係留配列および分泌配列(すなわち、シグナルペプチド)を組み込むことによって達成することができる。簡単に述べれば、シグナルペプチドは、通常、15~35個の本質的に疎水性のアミノ酸を含んでなり、これらのアミノ酸は、次いで、特定のER(小胞体)に局在するエンドペプチダーゼにより除去されて成熟ポリペプチドとなる。膜貫通ペプチドもまた、事実上、疎水性が高く、細胞膜内にポリペプチドを係留する働きをする。本発明に関して使用可能な膜貫通ペプチドおよび/またはシグナルペプチドの選択肢は膨大である。それらは、細胞性ポリペプチドもしくはウイルス性ポリペプチド、例えば、免疫グロブリン、組織プラスミノーゲン活性化因子、インスリン、狂犬病糖タンパク質、HIVウイルスエンベロープ糖タンパク質もしくは麻疹ウイルスFタンパク質のポリペプチドから得ることができるか、または合成され得る。好ましくは、分泌配列は、翻訳開始コドンの下流のポリペプチドのN末端に、膜係留配列は、C末端の、好ましくは、終止コドンのすぐ上流に挿入される。
【0070】
外来核酸の作製および発現
本発明のPCPVにより発現される外来核酸は、当業者に既知のいくつかの方法(例えば、クローニング、PCR増幅、DNAシャッフリング)によって容易に作製することができる。例えば、このような外来核酸は、当業者に利用可能な配列データ(例えば、刊行物、特許出願、Genbankなど)を使用して、あらゆる利用可能な供給源(例えば、当技術分野で記載されている生体材料、cDNAおよびゲノムライブラリー、またはそれを含むことが知られているあらゆる従来技術ベクター)から単離することもでき、次いで、PCPVゲノムに適宜挿入することができる。あるいは、それらは自動化されたプロセスで化学合成によって作製可能である(例えば、オーバーラップする合成オリゴヌクレオチドまたは合成遺伝子から組み立てる)。好ましくは、このような外来核酸は、cDNAから得られ、イントロン配列を含まない。当業者に公知のいくつかの方法、例えば、化学合成、部位特異的突然変異誘発、PCR突然変異誘発などによって改変を行うことができる。
【0071】
本発明に関して、外来核酸は、特定の宿主細胞または対象において高レベルの発現を提供するために最適化可能である。生物のコドン使用頻度パターンは極めて非無作為であり、コドンの使用は宿主が異なれば著しく異なり得るということが実際に見られる。外来核酸は原核生物由来(例えば、細菌もしくはウイルス抗原)または下等真核生物起源(例えば、自殺遺伝子産物)であり得るため、高等真核細胞(例えば、ヒト)での効率的な発現のためには不適当なコドン使用頻度パターンである場合もある。一般に、コドンの最適化は、使用頻度の低いコドンに相当する1以上の「天然」コドンを、同じアミノ酸をコードするコドンであって、処置する対象においてより高頻度で使用されている1以上のコドンで置換することによって行われる。部分的な置換であっても発現の増強は達成可能であるため、使用頻度の低いコドンに相当する総ての天然コドンを置換する必要はない。
【0072】
コドン使用頻度の最適化に付け加えて、発現は、外来核酸の付加的改変によっても改善可能である。例えば、核酸配列は、希な最適でないコドンのクラスターが集中した領域に存在しないように、かつ/あるいは、発現レベルに悪影響を及ぼすと予測される「負の」配列要素を抑制または改変するように改変可能である。このような負の配列要素は、限定されるものではないが、極めて高い(>80%)または極めて低い(<30%)GC含量を有する領域;ATリッチまたはGCリッチ配列区間;不安定な順方向または逆方向反復配列;RNA二次構造;ならびに/あるいは内部の隠れた調節エレメント、例えば、内部TATAボックス、Chi部位、リボソーム進入部位、および/またはスプライシングドナー/アクセプター部位が含まれる。
【0073】
さらに、相同的な外来核酸(homologous foreign nucleic acids)が本発明のPCPVによって発現される必要がある場合、配列同一性を低減するために、少なくとも1つの相同的な配列(少なくともその一部)が全長核酸またはその一部にわたって縮重させることができる。実際には、作製過程での相同組換えの問題を回避するために、高い程度(例えば、少なくとも70%)の配列同一性を示す配列部分を縮重させることが賢明であり、当業者ならば配列アラインメントによりこのような部分を特定することができる。種々の血清型(例えば、HPV-16およびHPV-18 E6および/またはE7抗原)から得られるHPV抗原に適用される適切な配列縮重の例は、WO2008/092854に見出すことができる。
【0074】
一実施形態において、本発明のPCPVに挿入され、それによって発現される外来核酸は、所望の宿主細胞または対象における発現に好適な調節エレメントに機能的に連結される。
【0075】
本明細書で使用する場合、用語「調節エレメント」または「調節配列」は、所与の宿主細胞または対象において核酸の発現を可能とする、その発現に寄与する、あるいは、その発現を調節するあらゆるエレメント、例えば、核酸またはその誘導体(すなわち、mRNA)の複製、倍加、転写、スプライシング、翻訳、安定性および/または輸送を指す。本明細書で使用する場合、「機能的に連結される」は、連結されているエレメントが、それらの意図される目的に関してそれらが機能するように配置されていることを意味する。例えば、プロモーターは、そのプロモーターが少なくとも許容される宿主細胞において転写開始から上記核酸のターミネーターまで転写を果たす場合、機能的に連結されている。
【0076】
調節配列の選択は、複数の因子、例えば、核酸それ自体、所望の発現レベルなどによって決まることが当業者に認識されるであろう。プロモーターは特に重要である。本発明に関して、プロモーターは、多くのタイプの細胞において外来核酸を恒常的に発現するようにすることができるか、またはある種の細胞もしくは組織に特異的であり得るか、またはウイルス周期の段階(例えば、後期、中期または初期)に従って調節され得る。また、組換えPCPVの産生を最適化し、発現されるポリペプチドの潜在毒性を回避するために、産生プロセス中に特定の事象または外因的因子(例えば、特定の成分、温度など)に応答して抑制されるプロモーターを使用することもできる。
【0077】
ポックスウイルスプロモーターは、組換えPCPVでの発現に特に適合されている。一実施形態において、PCPVゲノムに挿入された外来核酸は、ポックスウイルスプロモーター、好ましくは、ワクシニアウイルスプロモーター、より好ましくは、7.5K、H5R、11K7.5(Erbs et al.,2008,Cancer Gene Ther.15(1):18-28)、SE、TK、pB2R、p28、p11およびK1Lプロモーター、合成プロモーター(例えば、Chakrabarti et al.1997,Biotechniques 23:1094-7;Hammond et al,1997,J.Virol Methods 66:135-8;およびKumar and Boyle,1990,Virology 179:151-8に記載されているもの)ならびに初期/後期キメラプロモーターからなる群から選択されるものの制御下に配置される。
【0078】
当業者は、少なくとも1つの外来核酸の発現を制御する調節エレメントは、転写の適切な開始、調節および/または終結のための付加的エレメント(例えば、ポリA転写終結配列)、mRNA輸送のための付加的エレメント(例えば、核局在配列)、翻訳のための付加的エレメント(例えば、イニシエーターMet、三分節リーダー配列(tripartite leader sequences)など)、プロセシングのための付加的エレメント(例えば、シグナルペプチド、膜貫通係留配列など)および精製工程のための付加的エレメント(例えば、タグ)をさらに含んでなり得ることを認識するであろう。
【0079】
PCPVゲノム内の挿入および組換えPCPVの作製
PCPVゲノムへの少なくとも1つの外来核酸の挿入(適当な調節エレメントを備える)は、従来の手段(適当な制限酵素を使用するか、または好ましくは相同組換えによる)によって実施される。
【0080】
別の態様において、本発明は、挿入部位の上流および下流に存在するPCPV配列が、それぞれ5’および3’側に隣接する外来核酸(その調節エレメントを含む)を含んでなる導入プラスミド(transfer plasmid)と、PCPVゲノムとの相同組換えにより、本発明の組換えPCPVを作製するための方法を提供する。一実施形態において、上記方法は、上記導入プラスミド(例えば、従来の分子生物学的方法による)を作製する工程、および上記導入プラスミドを、特に、導入プラスミドに存在する隣接配列を含んでなるPCPVウイルス(例えば、野生型PCPVウイルス)とともに、好適な宿主細胞に導入する工程を含んでなる。好ましくは、この導入プラスミドは、トランスフェクションにより宿主細胞に導入され、感染によりPCPVウイルスに導入される。
【0081】
各隣接PCPV配列の大きさは様々であり得る。この配列は通常、挿入される外来核酸の各側に対して100bp~1500bp、好ましくはおよそ150~500bp、有利には180~450bp、より好ましくは200~400bp、より一層好ましくは250~350bp、より一層好ましくはおよそ300bpである。
【0082】
種々の挿入部位は、何ら限定されるものではないが、ウイルス遺伝子、好ましくは、非必須ウイルス遺伝子、遺伝子間領域、PCPVゲノムの遺伝子産物をコードしない部分、または倍加された遺伝子座(天然ウイルスゲノムに2以上のコピーで存在する遺伝子または遺伝子座)を含むPCPVゲノム内であると考えられる。本発明の方法に従って外来核酸をPCPVゲノムに挿入すると、挿入部位におけるウイルス遺伝子座は少なくとも部分的に欠失され得る。一実施形態において、この欠失または部分欠失は、その欠失があるPCPV配列によりコードされているウイルス遺伝子産物の発現の抑制がもたらされ、その結果、上記ウイルス機能に関して欠陥のあるPCPVウイルスが生じ得る。
【0083】
挿入部位の例はUS6,365,393に示されている。好ましい実施形態において、外来核酸は、PCPVゲノムの非必須の倍加された遺伝子座、好ましくは、VEGF遺伝子座に挿入される(Rziha et al.,2000,J.Biotechnol.83(1-2):137-145)。VEGF遺伝子はPCPVゲノム内に2コピーで存在し、本発明は、両方のVEGF遺伝子座または一方のVEGF遺伝子座(ウイルス機能を提供するために1コピーを完全なまま残す)への挿入を企図することに留意されたい。好ましくは、外来核酸は両方のVEGF遺伝子座に挿入され、その結果、2コピーの外来核酸がPCPVゲノムに挿入される。
【0084】
特定の実施形態において、本発明の方法は、組換えPCPVの同定を容易にするために選択および/または検出可能遺伝子をさらに使用する。好ましい実施形態において、導入プラスミドは、選択培地(例えば、ミコフェノール酸、キサンチンおよびヒポキサンチンの存在下)での成長を可能とする選択マーカー、特に好ましくはGPT遺伝子(グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする)、または検出可能遺伝子の産物、例えば、GFP、e-GFPもしくはmCherryをコードする検出可能遺伝子をさらに含んでなる。一実施形態において、導入プラスミドは、上記選択または検出可能遺伝子に二本鎖切断をもたらし得るエンドヌクレアーゼの存在下で宿主細胞に導入される。上記エンドヌクレアーゼは、タンパク質の形態であっても、または発現ベクターによって発現されてもよい。代表的な実施形態は実施例のセクションに示される。
【0085】
組換えPCPVの作製を可能とする相同組換えは、好ましくは、適当な宿主細胞(例えば、ウシ鼻甲介細胞)で行われる。
【0086】
特に好ましい実施形態は、
・一方もしくは両方のVEGF遺伝子座内に挿入された、好ましくは、初期/後期ワクシニアpH5Rプロモーターの転写制御下で挿入された、ヒトMUC-1抗原をコードする核酸(例えば、WO92/07000およびUS5,861,381に記載されるとおり)を含んでなるPCPVウイルス;または
・一方もしくは両方のVEGF遺伝子座内に挿入された、好ましくは、初期/後期ワクシニアp7.5プロモーターの転写制御下で挿入された、膜係留型HPV-16非発癌性E7抗原をコードする核酸(WO99/03885に記載のとおり)を含んでなるPCPVウイルス
の作製方法である。
【0087】
PCPVウイルスの産生
別の態様において、本発明は、本発明のPCPVを増幅するための方法に関する。好ましくは、上記方法は、a)産生細胞株を準備する工程、b)準備した産生細胞株にトランスフェクトするまたは感染させる工程、c)トランスフェクトされたまたは感染した産生細胞株を、ウイルス(例えば、感染性ウイルス粒子)の産生を可能とするために好適な条件下で培養する工程、d)産生されたウイルスを上記産生細胞株の培養物から回収する工程、および、e)場合により、上記回収されたウイルスを精製する工程を含んでなる。
【0088】
一実施形態において、産生細胞は、哺乳動物(例えば、ヒトまたは非ヒト)細胞、好ましくはHeLa細胞(例えば、ATCC-CRM-CCL-2(商標)またはATCC-CCL-2.2(商標))である。
【0089】
好ましくは、必要であれば血清および/もしくは好適な増殖因子を添加することができる、あるいは、添加していない適当な培地(例えば、化学的に定義された培地、好ましくは、動物またはヒト由来産物不含)で産生細胞を培養する。適当な培地は、産生細胞に応じて当業者ならば容易に選択可能である。このような培地は市販されている。好ましくは、+30℃~+38℃の温度(より好ましくは、およそ37℃)で、感染前に1~8日間、産生細胞を培養する。必要であれば、細胞総数を増すために1~8日の継代培養を数回行ってもよい。
【0090】
工程b)において、産生細胞の産生的感染を可能とするために適当な多重感染度(MOI)を使用し、適当な条件下で本明細書に記載のPCPVウイルスに産生細胞を感染させる。例示として、適当なMOIは、10-3~50の範囲であり、特に好ましくは、MOIは0.01~5である。感染工程は、産生細胞の培養に使用した培地と同じであっても異なっていてもよい培地で行われる。
【0091】
工程c)において、次いで、子孫ウイルス(例えば、感染性ウイルス粒子)が産生されるまで、当業者に周知の適当な条件下で感染した産生細胞を培養する。また、好ましくは、産生細胞の培養および感染工程のために使用した培地と同じであっても異なっていてもよい培地中、+32℃~+37℃の温度で1~5日間、感染した産生細胞の培養を行う。
【0092】
工程d)において、工程c)で産生されたウイルスを、培養上清および/または産生細胞から回収する。産生細胞からの回収は、ウイルスの遊離を可能とするために産生細胞膜の破壊を可能とする工程を必要とする場合がある。産生細胞膜の破壊は、当業者に周知の様々な技術、例えば、限定されるものではないが、凍結/解凍、低張溶解、超音波処理、顕微溶液化(microfluidization)、高剪断(高速とも呼ばれる)ホモジナイゼーションまたは高圧ホモジナイゼーションによって誘導され得る。
【0093】
次いで、当技術分野で周知の精製工程を使用して、さらにウイルスベクターを精製してもよい。清澄化、酵素処理(例えば、エンドヌクレアーゼ、プロテアーゼなど)、クロマトグラフィー工程および濾過工程を含め、様々な精製工程を想定することができる。適当な方法が当技術分野において記載されている(例えば、WO2007/147528)。
【0094】
医薬組成物
1つの態様において、治療上有効な量の本明細書に記載のPCPVと薬学上許容可能なビヒクルとを含んでなる組成物が提供される。複数の実施形態において、PCPVは組換え型であり、ゲノムに挿入された1以上の外来核酸(従前に記載したような好適な調節エレメントを有する)、特に、抗原ポリペプチド、例えば、癌抗原、病原生物に起源する抗原、および/または免疫刺激ポリペプチドなどをコードする1以上の外来核酸を含んでなる。特定の実施形態において、組成物は、PCPV感染後に生成されたエキソソームを含んでなり得る。
【0095】
「治療上有効な量」は、有益な結果を生じるために十分なPCPVの量に相当する。このような治療上有効な量は、様々なパラメータ、例えば、投与様式;対象の年齢および体重;症状の性質および程度;処置に応答する対象の能力;併用処置の種類;処置の頻度および/または予防もしくは療法の必要などの関数として変動し得る。
【0096】
「予防的」使用に関する場合、組成物は、その病状の発症および/または確立および/または再発を、特にリスクのある対象において予防するまたは遅延させるために十分な用量として投与される。「治療的」使用の場合、組成物は、疾患または病状を有すると診断された対象に、それを処置する目的で、場合により1以上の従来の治療方法とともに投与される。
【0097】
用語「薬学上許容可能なビヒクル」は、哺乳動物、特に、ヒト対象における投与に適合したありとあらゆる担体、溶媒、希釈剤、賦形剤、アジュバント、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、吸収剤などを含むことを意図する。薬学上許容可能なビヒクルの限定されない例として、水、NaCl、生理食塩水、乳酸加リンゲル液、糖類溶液(例えば、グルコース、トレハロース、サッカロース、デキストロースなど)、アルコール、オイル、ゼラチン、炭水化物(例えば、ラクトース、アミロースまたはデンプン)、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース(hydroxymethycellulose)などが含まれ、加えて、その他の水性の生理学的平衡塩溶液も使用可能である(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,A.Gennaro,Lippincott,Williams&Wilkinsの最新版を参照)。
【0098】
一実施形態において、本発明のPCPV組成物は、製造と、冷凍温度(例えば、-70℃、-20℃)、冷蔵温度(例えば、4℃)または周囲温度(例えば、20~25℃)での長期保存(すなわち、少なくとも6か月、好ましくは少なくとも2年)との条件下でその安定性を保証するように適切に調合される。このような調合物は、一般に、液体担体、例えば、水溶液を含む。
【0099】
有利には、本明細書で使用するための調合物は、好適には、ヒト使用のために、好ましくは、生理学的pHまたはやや塩基性のpH(例えば、およそpH7~およそpH9、特に好ましくは7~8、より詳しくは7.5に近いpH)で緩衝される。好適なバッファーとして、限定されるものではないが、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン)、トリス-HCl(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン-HCl)、HEPES(4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、リン酸バッファー(例えば、PBS)、ACES(N-(2-アセトアミド)-アミノエタンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸))、MOPSO(3-(N-モルホリノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、TES(2-{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}エタンスルホン酸)、DIPSO(3-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸)、MOBS(4-(N-モルホリノ)ブタンスルホン酸)、TAPSO(3-[N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、HEPPSO(4-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン-1-(2-ヒドロキシ)-プロパンスルホン酸)、POPSO(2-ヒドロキシ-3-[4-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)ピペラジン-1-イル]プロパン-1-スルホン酸)、TEA(トリエタノールアミン)、EPPS(N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン-N’-3-プロパンスルホン酸)、およびTRICINE(N-[トリス(ヒドロキシメチル)-メチル]-グリシン)が含まれる。好ましくは、上記バッファーは、トリス-HCl、トリス、Tricine、HEPESおよびリン酸バッファーであって、Na2HPO4とKH2PO4の混合物またはNa2HPO4とNaH2PO4の混合物を含んでなるリン酸バッファーから選択される。上記バッファー(特に、上述のもの、特に、トリス-HCl)は、好ましくは、10~50mMの濃度で存在する。適当な浸透圧を保証するためにこのような調合物中に一価の塩も含むことが有益であり得る。上記一価の塩は、特にNaClおよびKClから選択することができ、好ましくは、上記一価の塩は、NaClであり、好ましくは10~500mMの濃度のNaClである。
【0100】
この調合物はまた、ウイルスに基づく組成物を低い保存温度で保護するために凍結防止剤も含み得る。好適な凍結防止剤として、限定されるものではないが、スクロース(またはサッカロース)、トレハロース、マルトース、ラクトース、マンニトール、ソルビトールおよびグリセロール、好ましくは0.5~20%(w/vで表される重量g/容量L)の濃度のスクロース(またはサッカロース)、トレハロース、マルトース、ラクトース、マンニトール、ソルビトールおよびグリセロールが含まれる。例えば、スクロースは、好ましくは、5~15%(w/v)の濃度で存在する。
【0101】
PCPV組成物、特に、その液体組成物は、薬学上許容可能なキレート剤、特に、安定性を改善するためにジカチオンをキレートする作用剤をさらに含んでなってもよい。薬学上許容可能なキレート剤は、特に、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1,2-ビス(o-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N’,N’-四酢酸(BAPTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、および2,3-ジメルカプト-1-プロパンスルホン酸(DMPS)から選択され得る。薬学上許容可能なキレート剤は、好ましくは、少なくとも50μMの濃度、特に好ましくは50~1000μMの濃度で存在する。好ましくは、上記薬学上許容可能なキレート剤は、150μM付近の濃度で存在するEDTAである。
【0102】
PCPV組成物の安定性を増すために付加的化合物がさらに存在してもよい。このような付加的化合物として、限定されるものではないが、C2-C3アルコール(望ましくは、0.05~5%(容量/容量またはv/v)の濃度)、グルタミン酸ナトリウム(望ましくは、10mM未満の濃度)、非イオン性界面活性剤(例えば、0.1%より低い濃度のTween 80(ポリソルベート80としても知られる))(US7,456,009、US2007-0161085)が含まれる。二価塩、例えば、MgCl2またはCaCl2は、液体状態の様々な生体産物を安定化させることが判明している(Evans et al.2004,J Pharm Sci.93:2458-75およびUS7,456,009参照)。アミノ酸、特に、ヒスチジン、アルギニンまたはメチオニンは、液体状態の様々なウイルスを安定化させることが判明している(WO2016/087457参照)。
【0103】
高分子量ポリマー、例えば、デキストランまたはポリビニルピロリドン(PVP)の存在は、凍結乾燥組成物、通常、真空乾燥および凍結乾燥を含む方法によって得られる凍結乾燥組成物に特に適しており、これらのポリマーの存在は、凍結乾燥中に固形状の物(cake)の形成を補助する(例えば、WO03/053463;WO2006/085082;WO2007/056847;WO2008/114021およびWO2014/053571参照)。
【0104】
本発明においては、PCPV組成物の調合はまた、適切な分布を確保するように投与様式を適合させ、in vivoにおける放出を遅延させることもできる。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸およびポリエチレングリコールが使用可能である(例えば、J.R.Robinson in “Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems”,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978;WO01/23001;WO2006/93924;WO2009/53937参照)。
【0105】
例示として、サッカロース5%(w/v)、グルタミン酸ナトリウム10mMおよびNaCl50mMを含んでなるトリス緩衝調合物(トリス-HCl pH8)は、-20℃~5℃での本発明の組成物の保存のために適している。
【0106】
用量
本発明の組成物は、個別の用量で調合することができ、各用量は、使用する定量技術に応じて規定された約103~1012vp(ウイルス粒子)、iu(感染単位)またはpfu(プラーク形成単位)のPCPVを含有する。サンプル中に存在する規定のPCPVの量は、慣例の力価測定技術、例えば、感染後の許容細胞(例えば、HeLa細胞)のプラークの数を数えてプラーク形成単位(pfu)力価を得ること、A260吸光度(vp力価)を測定すること、またはさらに定量的免疫蛍光、例えば、抗ウイルス抗体を使用する定量的免疫蛍光(iu力価)によって決定することができる。対象または対象群に対する適当な用量を適合させるために必要な計算のさらなる精密化は、関連の状況に照らして現場の人によって慣例的に行うことができる。一般的な指針として、PCPV組成物に好適な個別の用量は、およそ103~およそ1012pfu、有利にはおよそ104~およそ1011pfu、好ましくはおよそ105~およそ1010pfu、より好ましくはおよそ106~およそ109pfuを含んでなり、特におよそ107、5×107、108または5×108pfuの個別の用量が特に好ましい。
【0107】
投与
本発明に関して、非経口、局所または粘膜経路を含め、従来の投与経路はいずれもが適用可能である。非経口経路は注射または注入(infusion)としての投与を意図し、全身経路ならびに局所経路を包含する。PCPV組成物を投与するために使用可能な非経口注射のタイプとして、静脈内(静脈、例えば、肝臓に供給を行う門脈へ)、血管内(血管へ)、動脈内(動脈、例えば、肝動脈へ)、皮内(真皮へ)、皮下(皮膚下)、筋肉内(筋肉へ)、腹腔内(腹膜へ)および腫瘍内(腫瘍またはその近傍へ)、また、乱刺法(scarification)が含まれる。投与は、単回のボーラス投与の形態であってもよく、または、例えば、連続注入ポンプによってもよい。粘膜投与として、限定されるものではないが、経口/消化管、鼻腔内、気管内、肺内、腟内または直腸内経路が含まれる。局所投与も経皮的手段(例えば、パッチなど)を使用して実施可能である。好ましくは、PCPV組成物は、静脈内、筋肉内、皮下または腫瘍内投与向けに調合される。
【0108】
投与は、従来のシリンジおよび針(例えば、Quadrafuse注射針)または対象においてウイルスの送達を容易にし得、または改善し得る当技術分野で利用可能なあらゆる化合物または装置(例えば、筋肉内投与を容易にするするためのエレクトロポレーション)を使用してもよい。別法として無針注射装置(例えば、Biojector TM装置)の使用がある。経皮パッチも想定することができる。
【0109】
本発明の組成物は、単回投与または一連の投与に好適である。また、一定の休薬期間の後に反復される逐次的投与サイクルを介して進めることもできる。各投与の間隔は、3日~6か月(例えば、24時間、48時間、72時間、1週間毎、2週間毎、1か月毎または四半期毎など)であり得る。間隔は不規則であってもよい。これらの用量は、上記の範囲内で投与毎に異なってもよい。
【0110】
PCPV組成物の治療的使用および処置方法
別の態様において、本発明は、医薬、特に、病原生物または望まない細胞分裂により引き起こされる疾患または病状を本明細書に記載の方法に従って処置または予防するための医薬として使用するための組換え偽牛痘ウイルス(PCPV)または本発明の組成物(特に、医薬組成物)、ならびに組換え偽牛痘ウイルス(PCPV)または本発明の組成物を、それを必要とする対象に、そのような疾患または病状を処置または予防するために十分な量で投与することを含んでなる処置方法に関する。本発明はまた、組換え偽牛痘ウイルス(PCPV)または本発明の組成物の使用であって、病原生物または望まない細胞分裂により引き起こされる疾患または病状を本明細書に記載の方法に従って処置または予防するための薬物の製造のための使用にも関する。本発明はまた、組換え偽牛痘ウイルス(PCPV)または本発明の組成物の使用であって、本明細書に記載の方法に従って病原生物または望まない細胞分裂により引き起こされる疾患または病状を治療または予防するための使用にも関する。好ましい治療スキームまたは処置方法は、106~109pfuを含んでなるPCPV組成物の2~6回の毎週の投与と、場合により、その後の3週間隔での2~15回のさらなる投与とを含んでなる。
【0111】
好ましい実施形態において、処置される疾患または病状は、増殖性疾患である。したがって、本発明はまた、本発明の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる、腫瘍細胞の増殖を阻害するための方法にも関する。本発明に関して、本発明による方法および使用は、標的疾患の発症または進行を緩徐化する、治癒させる、改善する、または抑制することを目的とする。
【0112】
「疾患」(および疾患のあらゆる形態、例えば、「障害」または「病状」など)は、一般に、識別可能な症状を特徴とする。例示的疾患として、限定されるものではないが、病原生物(例えば、細菌、寄生虫、ウイルス、真菌など)の感染から起こる感染性疾患および細胞の異常な増殖を含む増殖性疾患が含まれる。本明細書で使用する場合、用語「増殖性疾患」は、細胞の制御されていない増殖および拡散から起こるいずれの疾患または病状、例えば、癌およびいくつかの心血管疾患(例えば、血管壁の平滑筋細胞の増殖から生じる再狭窄など)も包含する。用語「癌」は、用語「腫瘍」、「悪性」、「新生物」などのいずれとも互換的に使用され得る。これらの用語は、いずれのタイプの組織、器官または細胞、いずれの病期の悪性腫瘍(例えば、前病変から病期IVまで)も含み、固形腫瘍および血液腫瘍ならびに原発癌および転移癌を包含することを意味する。
【0113】
本発明の組成物および方法を使用して治療され得る癌の代表例として、限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病、より詳しくは、骨癌、消化管癌、肝臓癌、膵臓癌、胃癌、結腸直腸癌、食道癌、口咽頭癌、喉頭癌、唾液腺癌、甲状腺癌、肺癌、頭部または頸部癌、皮膚癌、扁平上皮細胞癌、黒色腫、子宮癌、子宮頸癌、子宮内膜癌腫、外陰癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、内分泌系癌、軟組織肉腫、膀胱癌、腎臓癌、膠芽腫および様々なタイプの中枢神経系(CNS)の癌などが含まれる。一実施形態において、本発明による方法および使用は、腎臓癌(例えば、明細胞癌)、前立腺癌(例えば、ホルモン不応性前立腺腺癌)、乳癌(例えば、転移性乳癌)、結腸直腸癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、肝臓癌(例えば、肝癌)、胃癌、胆管癌、子宮内膜癌、膵臓癌および卵巣癌ならびにMUC1を過剰発現する癌からなる群から選択される癌を処置するためのものである。好ましい実施形態は、非小細胞肺癌(NSCL)を有する対象の処置に使用するためのPVPCであって、本明細書に記載されるようなMUC1抗原をコードするPVPC、およびHPV陽性癌、例えば、子宮頸癌または頭頸部癌を有する対象の治療に使用するためのPVPCであって、本明細書に記載されるようなHPV16 E7抗原をコードするPVPCに関する。
【0114】
本発明の組成物および方法を使用して処置され得る感染性疾患の代表例として、限定されるものではないが、a)ヘルペスウイルス(HSV1、HSV2、またはVZV)、パピローマウイルス(HPV)、天然痘または水痘を引き起こすポックスウイルス、エンテロウイルス、レトロウイルス(例えば、AIDSを引き起こすHIV)、サイトメガロウイルス、フラビウイルス(例えば、日本脳炎、C型肝炎、デング熱および黄熱を引き起こす)、ヘパドナウイルス(例えば、HBV)、オルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルスおよび呼吸器合胞体ウイルス(RSV))、コロナウイルス(例えば、SARS)、ラブドウイルスおよびロタウイルスによる感染から起こるウイルス性疾患;b)細菌、例えば、大腸菌属、エンテロバクター属、サルモネラ菌属、ブドウ球菌属、赤痢菌属、リステリア菌属、アエロバクター属、ヘリコバクター属、クレブシエラ属、プロテウス属、シュードモナス属、連鎖球菌属、クラミジア属、マイコプラズマ属、肺炎球菌属、ナイセリア属、クロストリジウム属、バチルス属、コリネバクテリウム属、マイコバクテリア属、カンピロバクター属、ビブリオ属、セラチア属、プロビデンシア属、クロモバクテリウム属、ブルセラ属、エルシニア属、ヘモフィルス属、またはボルデテラ属による感染から起こる細菌性疾患;ならびに(c)限定されるものではないが、カンジダ症、アスペルギルス症、ヒストプラスマ症、クリプトコッカス髄膜炎を含む真菌性疾患;およびd)限定されるものではないが、マラリア、ニューモシスチス・カリニ肺炎、リーシュマニア症、クリプトスポリジウム症、トキソプラスマ症、およびトリパノソーマ感染を含む寄生虫性疾患が含まれる。
【0115】
一般に、本明細書に記載の方法に従って投与する場合、本発明の組成物は、処置される対象に、ベースラインの状態または処置されなかった場合に予想される状態からの臨床状態の観察可能な改善を証拠とし得る治療利益を提供する。臨床状態の改善は、医師またはその他の医療スタッフにより一般に使用されるあらゆる適切な臨床測定によって容易に評価することができる。本発明に関して、治療利益は、一過性(投与の休止後1または2~3か月間)である場合も、または持続的(数ヶ月または数年間)である場合もある。臨床状態の自然経過は対象ごとに相当異なり得るため、必ずしも各処置対象に治療利益が見られる必要はなく、有意な数の対象に見られればよい(例えば、2つの群の間の統計的有意差は、当技術分野で公知のいずれかの統計学的検定、例えば、テューキーパラメトリック検定、クラスカル・ウォリス検定、マン・ホイットニーのU検定、スチューデントのt検定、ウィルコクソン検定などによって決定可能である)。
【0116】
本発明の方法または使用が増殖性疾患、特に、癌の処置を目的とする場合、治療利益は、少なくとも一過性で、例えば、腫瘍数の減少、腫瘍サイズの縮小、転移の数または程度の低減、寛解期間の延長、疾患の状態の安定化(すなわち、非増悪)、疾患の進行または重篤度の遅延または緩徐化、生存期間の延長、標準的な処置に対する応答の改善、生活の質の改善、死亡率の低下などを証拠とし得る。「処置」はまた、処置を行わない場合に予想されるものを超える対象の生存期間の延長を意味し得る。
【0117】
本発明の方法または使用が感染性疾患の処置を目的とする場合、治療利益は、例えば、処置された対象の血液、血漿、もしくは血清において定量される感染している病原生物の量の減少、および/または感染性疾患の安定化(非増悪)状態(例えば、感染性疾患に一般に関連する病態、例えば、炎症状態の安定化)、および/または特定の血清マーカーのレベルの低下(例えば、慢性C型肝炎において通常見られる肝臓不全状態に関連したアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)および/またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の減少)、感染性疾患の発症に関連したいずれかの抗原のレベルの低下、および/または病原生物に対する抗体の出現もしくはそのレベルの変調、および/または従来療法(例えば、抗生物質)に対する処置された対象の応答の改善、および/または組成物処置を受けない場合に予想される生存期間と比較した場合の生存期間の延長を証拠とし得る。
【0118】
適当な測定(例えば、血液検査、体液の分析および生検)ならびに医学的イメージング技術を、臨床利益を評価するために使用することができる。投与前(ベースライン)および処置中の種々の時点および処置の終了後に、それらを実施することができる。一般的な指針として、このような測定値は医学研究室および病院で日常的に評価され、多数のキットが市販されている(例えば、イムノアッセイ、定量的PCRアッセイ)。
【0119】
別の態様において、処置される対象において免疫応答を惹起もしくは刺激および/または再配向するために本発明の組成物を使用または投与する。したがって、本発明はまた、本発明の組成物を、それを必要とする対象に、その対象の免疫を活性化するために、本明細書に記載の方法に従って十分な量で投与することを含んでなる、免疫応答(例えば、腫瘍または感染細胞に対する)を惹起もしくは刺激および/または再配向するための方法を包含する。惹起、刺激または再配向された免疫応答は、特異的(すなわち、エピトープ/抗原を対象とする)および/または非特異的(自然)、体液性および/または細胞性、特に、CD4+またはCD8+が介在するT細胞応答であり得る。免疫応答を惹起、刺激または再配向する本明細書に記載の組成物の能力は、in vitroで(例えば、対象から採取された生体サンプルを使用)または当技術分野で標準的な様々な直接的または間接的なアッセイ(例えば、Coligan et al.,1992および1994,Current Protocols in Immunology;ed J Wiley & Sons Inc,National Institute of Healthまたは後続版を参照)を使用してin vivoで評価可能である。ポリペプチドの抗原性に関して上記で引用されたものも適当である。
【0120】
好ましい実施形態において、本発明による方法は、下記の特性:
PBMCからの高レベルのIFN-αの分泌、好ましくは、同じ条件下でMVAの投与後に見られたレベルの少なくとも50倍のレベルのIFN-αの分泌または同じ条件下でORFVの投与の後に見られたレベルの少なくとも10倍のレベルでのPBMCからの高レベルのIFN-αの分泌;
単球由来樹状細胞の活性化(例えば、活性化マーカーCD86の誘導により表すことができ、好ましくは、同じ条件下でのMVAの投与後に見られたレベルの少なくとも2倍のレベルの活性化マーカーCD86の誘導により表すことができる);
T細胞の活性化または増殖の誘導(例えば、グランザイムB高発現T細胞により間接的に表される);
MDSCにおけるより良好なサイトカイン/ケモカインプロファイル(例えば、PCPVの感染後にMDSCにより分泌されるIFN-αおよびMIP1αのうち少なくとも1つのレベルが、MVA感染後よりも高いことで表され得る);
APCの活性化(例えば、PCPVの投与後のヒトマクロファージにおけるCD86の上方調節により表され得る);
ヒトマクロファージのM2からM1への変換(例えば、PCPVの投与後のヒトマクロファージンにおけるIL-18、IL-6およびIP-10の分泌が、MVA感染後よりも高いことで表され得る);および/または
TLR9介在経路またはその他の自然免疫刺激経路、例えば、cGAS-STINGおよびRIG-I様受容体(RLR)(例えば、レチノイン酸誘導遺伝子I(RIG-I)および黒色腫分化関連遺伝子5(MDA5))による免疫の誘導
のうち少なくとも1つをもたらす。
【0121】
したがって、本発明はまた、免疫細胞、例えば、PBMCからのIFN-αの分泌を増大させるための方法、単球由来樹状細胞の活性化を誘導するための方法、T細胞の活性化および/または増殖を誘導するための方法、ヒトマクロファージのM2からM1への変換を誘導するための方法、MDSCが関連する免疫抑制を低減するための方法、および/または免疫抑制を低減するための方法を包含し、このような方法はいずれも、所望の結果を達成するために、本発明の組成物を、それを必要とする対象に投与すること(in vivo法)または前駆細胞を本発明の組成物と接触させること(in vitro法)を含んでなる。
【0122】
一実施形態において、本発明の組成物または方法は、処置または予防される疾患または病状を処置または予防するために利用可能な1以上のその他の治療法とともに使用または実施され得る。一実施形態において、その他の治療法は、手術、放射線療法、化学療法、凍結療法、ホルモン療法、毒素療法、免疫療法、サイトカイン療法、標的癌療法、遺伝子療法、光線力学療法および移植などからなる群から選択される。本発明による方法または使用は、第3またはそれよりさらに多い治療法を含んでもよい。
【0123】
このような付加的抗癌療法は、標準的な実施に従って、本発明のPCPV組成物の前、後、本質的に同時または散在的に対象に投与される。2種類以上の治療法の本質的に同時の投与は、それらの方法がそれらの治療効果を発揮する期間が重複する限り、作用剤が同時または同じ経路で投与される必要はない。同時投与として、本発明の組成物をその他の治療法と同じ日(例えば、0.5、1、2、4、6、8、10、12時間)のうちに投与することを含む。本発明によりいずれの順序も企図されるが、本発明の組成物がその他の治療法の前に対象に投与されることが好ましい。
【0124】
特定の実施形態において、本発明による方法または使用は、手術とともに実施されてもよい。例えば、この組成物は、腫瘍の部分的または完全切除の後に投与されてもよい(例えば、摘出区域内への局所適用による)。
【0125】
その他の実施形態において、本発明による方法または使用は、放射線療法とともに使用することができる。当業者ならば適当な放射線療法プロトコールおよびパラメータを容易に設定することができる(例えば、Perez and Brady,1992,Principles and Practice of Radiation Oncology,第2版 JB Lippincott Co参照;当業者に容易に明らかとなるような適当な適合および修正を使用)。特に癌の処置に使用可能な放射線のタイプは、当技術分野で周知であり、電子線、線形加速器からまたは線源(例えば、コバルトもしくはセシウム)からの高エネルギー光子、陽子、および中性子を含む。放射性同位元素の用量範囲は極めて広く、同位体の半減期、放射される放射線の強度およびタイプ、ならびに新生細胞による取り込みによって異なる。長期間(3~6週間)の一定のX線量、または高い単回の線量が本発明により企図される。
【0126】
本発明の特定の実施形態において、本発明の組成物は、化学療法とともに使用可能である。癌を処置するために現在利用可能な好適な化学療法剤の代表例として、限定されるものではないが、アルキル化剤、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、白金誘導体、チロシンキナーゼ受容体阻害剤、シクロホスファミド、代謝拮抗剤、DNA傷害剤および細胞分裂抑制剤が挙げられる。感染性疾患を処置するために現在利用可能な好適な化学療法剤の代表例として、とりわけ、抗生物質、代謝拮抗剤、抗有糸分裂剤および抗ウイルス剤(例えば、インターフェロンα)が挙げられる。
【0127】
さらなる実施形態において、本発明の組成物は、免疫治療薬(例えば、抗新生物抗体、ならびにsiRNAおよびアンチセンスポリヌクレオチド)とともに使用可能である。代表例として、とりわけ、特定の免疫チェックポイントを遮断するモノクローナル抗体(例えば、抗PD-1、抗PD-L1、抗CTLA-4、抗LAG3、抗OX40など(例えば、イピリムマブ、トレメリムマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ピディリズマブ、デュルバルマブ、ダクリズマブ、アベルマブ、アテゾリズマブなど))、上皮細胞増殖因子受容体を遮断するモノクローナル抗体(特に、セツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ、マツズマブ、トラスツズマブ(ハーセプチン(商標))など)および血管内皮増殖因子を遮断するモノクローナル抗体(特に、ベバシズマブおよびラニビズマブ)が挙げられる。
【0128】
なおさらなる実施形態において、本発明の組成物は、アジュバントとともに使用可能である。好適なアジュバントの代表例として、限定されるものではないが、TLR3リガンド(Claudepierre et al.,2014,J.Virol.88(10):5242-55)、TLR9リガンド(例えば、CpG(例えば、ODN1826(Fend et al.,2014,Cancer Immunol.Res.2,1163-74)およびリテニモド(Li28)(Carpentier et al.,2003,Frontiers in Bioscience 8,e115-127;Carpentier et al.,2006,Neuro-Oncology 8(1):60-6;EP1162982;US7,700,569およびUS7,108,844)))ならびにPDE5阻害剤(例えば、シルデナフィル)(US5,250,534、US6,469,012およびEP463756)が挙げられる。
【0129】
さらなる実施形態において、本発明の組成物または方法は、プライム組成物およびブースト組成物の逐次投与を含んでなるプライム・ブーストアプローチに従って使用可能である。一般に、プライム組成物およびブースト組成物は、少なくとも抗原ドメインを共通に含んでなるまたはコードする異なるベクターを使用する。さらに、同じ投与経路または異なる投与経路によって、同じ部位または別の部位に、プライム組成物およびブースト組成物を投与することができる。本発明に関して好ましいプライム・ブーストアプローチは、本明細書に記載されるようなPCPV組成物と対象とする同じポリペプチド(例えば、同じ抗原)をコードするMVA組成物とを含む。一実施形態において、MVAをプライムのために使用し、本発明のPCPV組成物をブーストのために使用するか、またはその逆(プライムのためのPCPVおよびブーストのためのMVA)である。本発明は、プライム組成物および/またはブースト組成物の1回または複数回の投与、好ましくは皮下、腫瘍内および静脈内経路での投与を包含する。特に好ましいプライム・ブースト計画は、腫瘍内経路により投与されるPCPVプライム組成物と、静脈内経路により投与されるMVAブースト組成物とを含んでなる。好ましい実施形態において、PCPVおよびMVA組成物は、同じ腫瘍関連抗原をコードする。別の実施形態において、プライムおよびブーストの投与間に設ける期間は1週間~6か月、好ましくは1週間~1か月、より好ましくは1~2週間と様々である。およそ106~およそ109pfuの個別の用量が、プライム組成物およびブースト組成物には特に適しており、特に、個別の用量はおよそ106、5×106、107、5×107、108または5×108pfuである。
【0130】
別の態様において、本発明はまた、ウシ丘疹性口炎ウイルス(BPSV)、好ましくは、ゲノムに挿入された少なくとも1つの外来核酸を含んでなる組換えBPSVを提供する。用語「ウシ丘疹性口炎ウイルス」または「BPSV」は、本明細書では、ウイルス学の範囲内のその明白な通常の意味に従って使用され、パラポックスウイルス属に属するポックスウイルス科のメンバーを指す。
【0131】
組換えBPSVにより発現される外来核酸は、PCPVに関して記載したもの、ならびに所望の宿主細胞または対象での発現のために必要とされる調節エレメントと同様である。BPSVゲノム内の外来核酸の挿入部位および組換えBPSVを産生する方法もまた、当業者の及ぶ範囲内である。BPSVの増幅方法は、PCPVウイルスに関して本明細書に示される説明および一般知識に基づいて慣例のものであるが、産生細胞株、MOI、培養培地などは、当業者がBPSVウイルスに適合させることができる。
【0132】
また、治療上有効な量のBPSVと、薬学上許容可能なビヒクルとを含んでなる組成物も本発明の一部である。好適な用量、投与経路および治療的使用は、PCPVを含んでなる組成物に関して上記される通りである。
【0133】
上記に引用された特許、刊行物およびデータベースエントリーの開示は総て、引用することによりそれらの全内容が具体的に本明細書の一部とされる。本発明のその他の特徴、目的および利点は、本明細書および図面および特許請求の範囲から明らかとなる。以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために組み込まれている。しかしながら、本開示に照らして、当業者は、開示されるそれらの特定の実施形態に、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく変更を行うことができると考えるべきである。
【実施例0134】
いくつかのウイルスおよび株が腫瘍抗原およびサイトカインを発現するように開発されており、それらのいくつかは進んだ段階の臨床試験下にある。しかしながら、免疫原性が改善された新規なウイルス株が求められている。この観点で、本発明者らは、パラポックスウイルス、例えば、偽牛痘ウイルス(PCPV)およびパラポックスウイルス・オヴィス(ORF)をスクリーニングし、それらを様々なその他のポックスウイルスと比較した。この比較は、in vitroではヒト初代免疫細胞で、in vivoではシンジェニックマウス腫瘍モデルで実施した。
【0135】
実施例1:感染ヒト末梢血単核細胞(PBMC)における分泌サイトカイン/ケモカインのプロファイル
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、2名の健常ドナー(EFS、Etablissement de Strasbourg;ドナーAおよびB)のヒト全血から単離した。PBMCをフィコール-パークPLUS(GE HealthCare)および血液分離チューブ(Greiner)を使用した密度勾配遠心分離により単離し、液体窒素中で保存した。
【0136】
PBMCの凍結アリコートを、10%ウシ胎児血清(FSC)を添加したRPMI中で解凍し、24ウェルプレート中に直ぐに播種した(dispatch)(500μL/ウェル中、5.105細胞)。5~6時間後、細胞を種々のウイルス(下記参照)に10-3~10の感染多重度(MOI)で感染させた。一晩のインキュベーション(16時間)後、細胞を掻き取り、細胞および上清をエッペンドルフ管に移し、10分間300gで遠心分離した。上清を単離し、-80℃で冷凍した。サイトカインおよびケモカインプロファイルを、Procartaplex 20プレックス炎症パネル(EPX200-12185-901)を使用し、上清中でMultiplexアプローチにより定量した。MagPix装置を使用し、製造者の推奨に従って分析を実施した。
【0137】
供試した種々のウイルスは、パラポックスウイルスである偽牛痘ウイルス(PCPV)およびパラポックスウイルス・オヴィス(ORF)に加えて、MVA、牛痘ウイルス(CPX)、コペンハーゲンワクシニアウイルス(Copwt)、鶏痘(FPV)、粘液腫ウイルス(MYXV)、豚痘(SWPV)、ラクーンポックスウイルス(RCN)、コティアウイルス(CTV)およびヤバ様病ウイルス(YLDV)である。ウイルスは、MVAN33という名称のエンプティーMVAベクターが使用されているMVA(Genbank受託番号EF675191)、コペンハーゲンワクシニアウイルス(例えば、WO2009/065546参照)およびFPV(例えば、Laidlaw and Skinner,2004;J.Gen.Virol.,85:305-22参照)を除いて、ATCCコレクション、それぞれATCC-VR-644(PCPV TJS)、ATCC VR-1548(ORFV NZ2)、ATCC VR-302(CPX Brighton)、ATCC VR-115(MYXV Lausanne)、ATCC VR-363(SWPX Kasza)、ATCC VR-838(RCN Herman)、ATCC VR-464(CTV SP AN 32)およびATCC VR-937(YLDV Davis)から得られた。
【0138】
図1に示されるように、PCPV感染PBMCは、MOI依存的に極めて高レベルのIFN-αの分泌を誘導した。PCPV感染PBMCにより分泌されるレベルはこれら2つの実験で異なるが、それらはSWPXおよびORFV(別のパラポックスウイルス)で見られるIFN-αの中程度の分泌レベルよりも十分高い。MVAに比較して、PCPVはヒトPBMCにおいて1000倍のIFN-α発現を誘導したが、SWPXおよびORFは、低めの10~100倍の誘導を示した。コペンハーゲンVVおよびその他の腫瘍溶解性ベクター(例えば、RCN、RPV、CTV、CPXおよびMYX)は、IFNαレベルを上昇させなかった。
【0139】
ウイルス感染時の生存率試験を行った。細胞をLiveDead「NearIR」で染色し、フローサイトメトリー(MacsQuant)により分析し、死細胞および生細胞の割合を決定した。結果は、ORFVおよびYLDVは特に毒性があることを示し、MOI 5で感染させた細胞の90%が16時間以内に死滅したが、PCPVを含むその他総てのウイルスでは少なくとも50%の生細胞が見られた。
【0140】
実施例2:ヒト単球由来樹状細胞、M2マクロファージおよび骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)に対するPCPVの効果
IFN-αのようなI型インターフェロンは癌の免疫療法の重要な役者であり、免疫抑制腫瘍環境を変更し、例えば、Parker et al.(2016,Nat Rev Cancer 16(3):131-44)およびZitvogel et al.(2015,Nat Rev Immunol.15(7):405-14)により記載されるように、ワクチンによりコードされている抗原および/または腫瘍により提示されている抗原に対する適応抗腫瘍応答を改善した。これらの側面に取り組むために、本発明者らは、in vitroでヒト初代免疫細胞において、PCPV処理時のヒト単球由来樹状細胞(moDC)の活性化および免疫抑制細胞集団(免疫抑制細胞、例えば、M2マクロファージおよびMDSCの再プログラミング)に対する効果を調べた。また、自然免疫および適応免疫に対する前臨床試験もマウスシンジェニック腫瘍モデルで行った。
【0141】
moDCの刺激
抗原提示細胞(APC)の活性化を調べるために、本発明者らは、単球由来樹状細胞(moDC)で研究した。これらの細胞を得るために、ヒト単球をPBMCからの分離により富化した(Miltenyi、単球単離キットII)。単球を顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF 20ng/ml)およびIL-4(10ng/ml)中で3日間インキュベートすることにより樹状細胞(moDC)に分化させた。刺激アッセイにおいて、3名の異なるドナー(ドナー12Jul16、ドナー24Aug16およびドナー31Aug16)由来のmoDCを24ウェルプレートに播種し、MOI 0.03、0.3および1でMVAN33.1またはPCPVに感染させた。翌日、成熟マーカーCD86をフローサイトメトリーにより定量した。発現レベルを抗CD86-PEでの染色、フローサイトメトリーによる細胞に結合したシグナルの定量によって測定した。
【0142】
図2に示すように、PCPV処理moDCは、MVAN33.1処理細胞に比較して活性化マーカーCD86の極めて高い発現レベルを示した。moDC刺激に関する有益な効果が低MOI(0.03)で見られ、MOI 0.3および3で増大した。予想されたように、mock処理時にはmoDC刺激は検出されなかった。したがって、PCPV感染は、総てのドナーにおいて総てのMOIで、MVAN33より高いレベルにCD86発現を増大させたことが明らかである。Copwtは、moDC CD86発現に対する効果を示さなかった(データは示されていない)。
【0143】
M2マクロファージに対する効果
次いで、本発明者らは、免疫抑制細胞種がPCPVにより変更/再教育され得るか否か、およびどの程度かという問題に取り組んだ。
【0144】
本発明者らは、Mia et al.(2014,Scand.J.Immunol.79(5):305-14)から適合させたプロトコールに従い、in vitro誘導性CD163+CD206+「M2型」マクロファージを作製した。簡単に述べれば、健常ドナーから得たPBMCからの、積極的なCD14+選択によるか、または単球単離キットII(Miltenyi、Biotec)を使用した消極的な選択による単離の後に、48ウェルプレートにおいて、50ng/ml M-CSF(Miltenyi Biotec)を添加した500μLマクロファージ基本培地DXF(Promocell)中で4×105の単球を培養した。培地を3日目および7日目に交換した。7日目に、CD16hiCD68+CD11b+M0マクロファージを、IL-4、IL-10およびTGF-β(Miltenyi Biotec)を20ng/mLの濃度まで添加してM2表現型へ分極させた。2日後、CD163+CD206+M2マクロファージをMOI 5、1および0.3のMVAN33.1またはPCPVとともにインキュベートし、IL-18、IL-6、IP-10およびCD86の分泌をフローサイトメトリーまたはLuminex分析によりアッセイした。この目的で、細胞をヒトFcRブロッキング試薬(Miltenyi Biotec)およびAPC標識抗CD86(クローンFM95、Miltenyi Biotec)とともに20分間インキュベートした。死細胞を自動ヨウ化プロピジウム染色により標識した後、細胞取得数を、MACSQuantサイトメーター(Miltenyi)を使用して記録した。Kaluzaソフトウエア(Beckman Coulter)を使用してデータを分析した。刺激した細胞の上清中のサイトカインレベルを、MAGPIX装置(Luminex XMAP Technologies)でのLuminex分析(ProcartaPlex、eBiosciences)により定量した。
【0145】
図3に示されるように、MVAと比較して、PCPVは、MOI 5および1でIL-18の分泌、MOI 5でのIL-6およびIP-10の分泌を増強した。したがって、PCPVがM2マクロファージの表現型をM1型表現型に変化させることが明らかである。M2マクロファージはヒトNSCLCにおいて負の転帰に関連し、M1マクロファージは正の予後マーカーに相当する(Yuan et al,2015,Nature,Scientific Reports)。これらのデータは、MVA処理に比較してPCPV処理の後に抑制性の低い表現型への変換を示唆する。
【0146】
骨髄由来サプレッサー細胞MDSCに対する効果
自己CD14
+単球およびCD8
+T細胞を健常ドナーから磁性ビーズ技術(Miltenyi)により単離した。2つのモデルを検討した。MDSCを単球から、20ng/ml GM-CSF、10ng/ml IL-4および1μMプロスタグランジンE
2とともに(
図4)、あるいは、10ng/ml GM-CSFおよび10ng/ml IL-6の存在下で(
図5)6~7日間のインキュベーションによって生成した。抗CD2、抗CD3および抗CD28でコーティングしたT細胞活性化ビーズまたはTransAct T細胞試薬+IL-2(Miltenyi Biotec)の存在下で、得られたMDSCを自己CFSE標識CD8
+T細胞と共培養した。4~5日後、T細胞の増殖および増殖中のT細胞におけるグランザイムBの発現をフローサイトメトリーにより測定した。加えて、MDSC単独をPCPVで処理し、翌日、検査物質、例えば、サイトカインおよびケモカイン定量するために上清を採取した。
図4に示されるように、活性化T細胞の増殖は、共培養されたin vitro誘導性MDSCによって阻害された(
図4Aにおける非感染対照参照;MDSC/T比1/2)。しかしながら、MDSCにより提供される、CTLの増殖に対する抑制活性は、共培養物に添加したPCPVによる処理によって阻害可能であり、漸増するMOIでCTLの増殖を回復させるPCPVの能力に裏付けられ(
図4A)、PCPVで処理した共培養物におけるグランザイムB産生の上方調節と相関する(
図4B)。PCPVの存在下における抗抑制効果は低MOIであっても検出されたことを強調しておくべきである。これらの所見は、PCPV処理の翌日にMDSC培養物において測定されたIFNαの分泌と相関する(
図4C)。
【0147】
上記のように、また、GM-CSF、IL-6誘導性MDSCモデルを示す
図5に示されるように、活性化T細胞の増殖は、共培養されたin vitro誘導性MDSCにより強く阻害された。漸増するMOIのPCPVで共培養物を処理した場合、増殖は部分的に回復され、グランザイムBの発現は上方調節された。
【0148】
要約すると、PCPVは、初代moDCにおいてCD86の発現を誘発するためにMVAおよびVVよりも優れていることが示された。さらに、PCPV処理は、ヒトin vitro誘導性CD163+CD206+「M2」型マクロファージにおいてCD86発現を増大させ、抗原提示表現型への移行を示唆する。これらの細胞において、PCPVは、抑制性の低いマクロファージ表現型への変換の徴候であるIL-18、IL-6およびIP-10の分泌を有意に増大させた。MDSCに対するPCPVの作用様式は、抑制性の低い表現型への成熟またはMDSCに対するPCPVの毒性作用であり得る。
【0149】
実施例3:組換えPCPVの構築および抗腫瘍特性
ウイルス骨格としてのPCPVに対する利益は、腫瘍抗原をコードする組換えPCPVを作製し、それらを腫瘍抑制試験で試験することによって評価した。
【0150】
組換えPCPVベクターを、野生株TJS(ATTC、VR-634)から構築した。総てのパラポックスウイルスのようにPCPVは、その他のポックスウイルスに存在する、またはその他のポックスウイルスで保存されている遺伝子を欠く。これらは、ヌクレオチド代謝に関与する可能性のあるほとんどのポックスウイルス遺伝子のホモログ、例えば、リボヌクレオチドレダクターゼ(RR)、チミジンキナーゼ(TK)、グアニル酸キナーゼおよびチミジル酸キナーゼのホモログを含んでなる。したがって、組換えワクシニアウイルスの作製のために一般に使用される遺伝子座TKは、PCPVにおける組換え遺伝子の導入のためには使用不可能であった。しかしながら、組換えORFウイルスは、非必須VEGF遺伝子への導入遺伝子の挿入により作製可能であることが示された(Rziha et al.,2000,J.Biotechnol.83(1-2):137-145)。したがって、この遺伝子座を組換えPCPVの作製に関して評価した。VEGF遺伝子は、PCPVゲノムの左および右のゲノム末端に2コピーで存在することに留意されたい。
【0151】
pUC18プラスミド(例えば、Thermo Fisher Scientificで入手可能)においてPCPV VEGF遺伝子に隣接する約300bpの2配列をクローニングすることによって、導入プラスミドを作製した。VEGF遺伝子の上流の配列は、PCPV(Genbank NC_013804)のヌクレオチド配列部位6391~6089または138899~139201に相当する。VEGF遺伝子の下流の配列は、PCPVのヌクレオチド配列部位5545~5225または139745~140065に相当する。これらの配列によって、導入プラスミドとPCPVウイルスとの間の相同組換えを可能とし、両VEGF遺伝子座に挿入された外来核酸を有する組換えウイルスをもたらす。
【0152】
PCP-GFP(PCPTG19106)の作製
増強型緑色蛍光タンパク質(eGFP)をコード遺伝子およびグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(GPT)をコードする遺伝子の融合物である選択カセット(eGFP/GPT)(例えば、WO2009/065546参照)を、p11K7.5ワクシニアプロモーターの制御下に配置し、導入プラスミドに挿入してpTG19106を得た。
【0153】
PCPVを感染させ、pTG19106をヌクレオフェクション(Amaxa Nucleofector技術に従う)によりトランスフェクトしたウシ鼻甲介細胞(BT、ATCC CRL-1390)における相同組換えによって、PCPTG19106の作製を実施した。蛍光および選択(GPT+)プラークを選択した。より具体的には、GPT+組換えPCPVは、組換えPCPVの単離中にGPT選択マーカーを保持することにより、選択培地(ミコフェノール酸、キサンチン、およびヒポキサンチン)における増殖の利益を有する。組換えウイルスをGFP蛍光プラークから単離し、BT細胞においてさらなるプラーク精製を行った。複数回のPCRおよび発現カセットのDNAシークエンシングにより、ウイルスの構造および親PCPVが存在しないことを確認した。得られたウイルスPCPTG19106をBT細胞で増幅させた。ウイルスストックの力価をBT細胞におけるプラークアッセイにより測定した。
【0154】
PCP-mCherry(PCPTG19153)の作製
mCherry蛍光タンパク質をコードする配列をpH5Rワクシニアプロモーターの制御下に配置し、導入プラスミドに挿入してpTG19153を得た。
【0155】
PCPTG19106を感染させ、pTG19153をヌクレオフェクションによりトランスフェクトしたBT細胞における相同組換えによって、PCPTG19153の作製を実施した。組換えウイルスは、mCherry蛍光プラークを選択し、BT細胞でさらなるプラーク精製を行うことにより単離した。複数回のPCRおよび発現カセットのDNAシークエンシングにより、ウイルスの構造および親PCPTG19106が存在しないことを確認した。得られたウイルスPCPTG19153をBT細胞で増幅させた。
【0156】
PCP-HPV16E7(PCPTG19178)の作製
SR-E7*Tmをコードする配列(WO99/03885)をp7.5Kプロモーターの制御下に配置し、導入プラスミドに挿入してpTG19178を得た。PCPTG19106を感染させ、GFP遺伝子に二本鎖切断を生じるエンドヌクレアーゼの存在下でpTG19178をヌクレオフェクションによりトランスフェクトしたBT細胞における相同組換えによって、PCPTG19178の作製を実施した。組換えウイルスは、GFP蛍光陰性プラークを選択し、BT細胞でさらなるプラーク精製を行うことにより単離した。複数回のPCRおよび発現カセットのDNAシークエンシングにより、ウイルスの構造および親PCPTG19106が存在しないことを確認した。得られたウイルスPCPTG19178をBT細胞で増幅させた。
【0157】
PCPTG19178の前臨床バッチの産生は、感染させたHela細胞(ATCC(登録商標)CCL-2(商標))によって数本のF500フラスコで行った。ウイルスの増幅を34~37℃、5%CO2で72時間行った。次いで、感染細胞および培地をペレットとし、凍結した。粗収集物を、高剪断ホモジナイザー(SILVERSON L4R)を使用して破壊し、精製工程を行った(例えば、W02007/147528に記載の通り)。簡単に述べれば、溶解したウイルス調製物を濾過により明澄化し、タンジェンシャルフロー・フィルトレーション(TFF)工程により精製することができる。精製されたウイルスを好適なウイルス調剤バッファー(例えば、5%(w/v)サッカロース、50mM NaCl、10mMトリス/HCl、10mMグルタミン酸ナトリウム、pH8)に再懸濁させた。
【0158】
PCP-MUC1(PCPTG19194)の作製
Muc1をコードする配列(US5,861,381)をpH5Rプロモーターの制御下に配置し、導入プラスミドに挿入してpTG19194を得た。PCPTG19153を感染させ、m-Cherry遺伝子内に二本鎖切断を生じるエンドヌクレアーゼの存在下でpTG19106をヌクレオフェクションによりトランスフェクトしたBT細胞における相同組換えによって、PCPTG19194の作製を実施した。組換えウイルスは、mCherry蛍光陰性プラークを選択し、BT細胞においてさらなるプラーク精製を行うことにより単離した。複数回のPCRおよび発現カセットのDNAシークエンシングにより、ウイルスの構造および親PCPTG19194が存在しないことを確認した。得られたウイルスPCPTG19194をBT細胞で増幅させた。前臨床バッチを、上記のようにHela細胞で産生した。
【0159】
PCP-HBV(PCPTG19179)の作製
HBVコア、Polおよびenv抗原の融合物をコードする配列(WO2013/007772に記載の通り)をp7.5Kプロモーターの制御下に配置し、導入プラスミドに挿入してpTG19179を得た。PCPTG19106を感染させ、GFP遺伝子内に二本鎖切断を生じるエンドヌクレアーゼの存在下でpTG19179をヌクレオフェクションによりトランスフェクトしたBT細胞での相同組換えによって、PCPTG19179の作製を実施した。組換えウイルスは、GFP蛍光陰性プラークを選択し、BT細胞でさらなるプラーク精製を行うことにより単離した。複数回のPCRおよび発現カセットのDNAシークエンシングにより、ウイルスの構造および親ウイルスが存在しないことを確認した。
【0160】
シンジェニックMC38モデルにおける腫瘍抑制試験
腫瘍成長を抑制し、生存率を高めるPCPVの能力を、予め剃毛したシンジェニックC57BL/6マウスに皮下注射した結腸癌細胞株MC38(2×10
6細胞)(Kerafastから入手可能)で調べた。注射部位にパーマネントマーカーで印を付けた。1×10
7pfuのHPV-16 E7コードPCPVもしくはMVAウイルス、またはバッファーを、細胞株注射部位に2日目(D2)に、その後、出現した腫瘍に9日目および16日目(D9およびD16)に注射した。各群10個体のマウスに注射した。腫瘍成長および生存率は、MC38細胞移植後1か月間、経過観察した。投与プロトコールを
図6Aに示す。
【0161】
バッファーで処置した総ての動物では、腫瘍は、MC38移植後11~18日以内に1500mm
3の体積を超えて急速に成長した(
図6D)。対照的に、組換えHPV16E7コードMVAで処置した動物は、腫瘍成長に遅延を示した。より具体的には、18日目で5/10個体に1500mm
3を超える腫瘍が見られたが、
図6Bに示されるように、その他の5個体では腫瘍成長はあまり大きくない(腫瘍移植後18日目で<1000mm
3)。意外にも、PCPV処置は、MVA処置に比較して強い抗腫瘍防御を提供する。実際に、1500mm
3の体積に達する腫瘍は、腫瘍移植から15~24日後に4/10個体でのみ見られ、その他の6個体には腫瘍成長は見られなかった(
図6C)。同様に、PCPVは、処置した動物で生存率を高めた(
図6E)。
【0162】
結論として、成長の速いMC38腫瘍に腫瘍内注射する場合、PCPV注射は腫瘍成長の抑制をもたらし、バッファーまたはMVA注射動物に比較して生存率を高めた。
【0163】
除去試験
PCPV処置前および処置中に適当な除去抗体を注射して、特定の細胞集団、それぞれCD4+、CD8+および好中球を除去した以外は、MC38担持マウスにおける腫瘍抑制試験を繰り返した。より具体的には、CD8+細胞の除去は、-1、-2、6および13日目にラットモノクローナル抗体(MAb)抗マウスCD8(クローン53-6-7;BioXCell)200μgの腹腔内(ip)注射により行った。CD4+細胞の除去は、-1、-2、6および13日目にマウスCD4に対するラットMab(BioXCellで入手可能なクローンGK1.5)200μgの腹腔内注射から達成された。好中球(およびその他のLy6G細胞)の除去は、-2日目、次いで、週末にかけて1日おきまたは3日毎に、200μgの用量でip注射されるマウスLy6Gに対するラットMAb(クローン1A8;BioXCell)を使用し、Wozniak et al.(2012,BMC Immunology,13:65)に記載されているプロトコールに従って行った。
【0164】
上記のように、結腸癌細胞株MC38(2×106細胞)を、2日前に剃毛したシンジェニックC57BL/6マウスに皮下注射した。注射部位にパーマネントマーカーで印を付けた。1×107pfuのPCPVまたはバッファー(陰性対照)を、2日目に細胞株注射部位およびその後は出現した腫瘍(9および16日目)に注射した。各群13個体のマウスに注射した。
【0165】
CD4+、CD8+およびLy6G+細胞の除去を、14日目に屠殺したマウス由来の血液および脾臓(末梢)で確認した(データは示されていない)。しかしながら、Ly6Gで処置したマウス由来のMC38腫瘍に好中球が存在しないことは実証できなかった(ミエロペルオキシダーゼMPOシグナルはなお検出可能であった)。好中球数の減少は定量的測定値がないために根拠とすることができなかった。腫瘍中のCD4+およびCD8+細胞の除去は技術上の理由で調べることができなかった。
【0166】
予想されたように、バッファー処置動物では腫瘍は急速に成長したが(
図12E)、PCPV処置は腫瘍成長を遅延させた(
図12A)。腫瘍サイズは、PCPV単独で処置した群に比較して、PCPVおよび抗Ly6Gで処置した群では16~29日目にさらによく抑制された(
図12B)(p値<0.001)。PCPVおよび抗CD8による処置は、PCPV処置群に比較して腫瘍サイズの増大をもたらしたが(p値0.05)(
図12C)、CD4除去抗体による処置は腫瘍成長に有意な効果を示さなかった(
図12D)。加えて、PCPVおよび抗CD8による処置は生存率を低下させたが、PCPVおよび抗Ly6Gによる処置は生存率を上昇させた(p値0.001)。
【0167】
これらの結果は、PCPVに誘導された抗腫瘍応答におけるCD8+細胞の役割を示唆する。おそらくは循環MDSCおよびN2好中球の除去のために、Ly6Gによる処置は生存率を高めた。Shaul and Fridlender(2017,J.Leuko.Biol.102(2):343-9)は、好中球の機能的可塑性(特定のサイトカインの影響下で腫瘍に浸潤する好中球の腫瘍形成性(pro-tumor)(N2)および抗腫瘍性(N1))を記載している。
【0168】
長期生存個体における腫瘍特異的なT細胞の誘導
34日目に、MC38腫瘍が退縮/消散した長期マウス生存個体においてMC-38特異的なT細胞の存在を検討し、ナイーブ動物と比較した。脾細胞を単離し、本質的に以下のように処理した。5個体の生存動物から脾臓を回収し、プールし(PCPV生存個体プール)または2個体の生存マウスの個々の脾臓を完全培地(CM)中に回収し、次いで、シリンジプランジャーで破砕した。脾細胞懸濁液をCMで希釈し、4mLのLympholyte(登録商標)-M分離細胞培地(Cedarlane)に載せた。リンパ球を含有する中間層を遠心分離により回収し、赤血球(RBC)の溶解が起こるまでRBC溶解バッファー(BD PharmLyse、BD BioScience)に再懸濁した。リンパ球をCMに再懸濁し、計数した(Beckman Coulter)。細胞濃度をCMで1×107細胞/mLに調整した。マイトマイシンC(Mitomycin C)で処理したMC38細胞、培地(陰性対照)または無関係のペプチドi8L(陰性対照)で刺激した細胞で、刺激を行った。抗原特異的なIFN-ガンマ(IFNg)産生脾細胞のELISpot分析を、標準的プロトコールに従って行った。
【0169】
図13は、PCPV処理後の腫瘍特異的(MC-38特異的)なT細胞が、プールした生存マウスまたは個々の生存マウス(34日目にMC38腫瘍が退縮/消散している)の脾細胞で、マイトシチンC(Mitocytin C)で処理したMC38細胞で刺激した後に検出されたことを示す。これに対して、陰性対照(CMまたは無関係のペプチドで刺激)またはナイーブマウスは、IFNg産生細胞を示さなかった。
【0170】
PCVPの腫瘍溶解能
PCPVの腫瘍溶解能を、American Type Culture Collection(ATCC、Rockville、MD)から入手した様々なマウスおよびヒト腫瘍細胞株、例えば、LoVo(ATCC(登録商標)CCL-229(商標))、HCT 116(ATCC(登録商標)CCL-247(商標))、ヒト膠芽腫細胞株U-87 MG(ATCC(登録商標)HTB-14)、ヒト子宮頸癌細胞株HeLa(ATCC(登録商標)CCL-2(商標))およびMIA-Paca-2(ATCC(登録商標)CRL-1420(商標))(データは示されていない)に加えて、マウス結腸癌MC38細胞株で検討した。これらの細胞株の総てで、PCPVは軽度の腫瘍溶解性を示すか、腫瘍溶解性を全く示さなかった。ここで、本発明者らは、MOI 1、10
-1、10
-2および10
-3でPCPV-GFPまたは陽性対照としてGFPを発現するように操作したVV(VVTG)を感染させたMC38細胞の生存率を示す。5日後、細胞を掻き取って採取し、生細胞の数および割合を、トリパンブルー染色および細胞計数器Vicellを使用して決定した。
図7に示されるように、MC38細胞に対するVV感染は、MC38の生存能を強く損なった(MOI 0.1および1でなお55%および30%の細胞が生存)。MC38の19%がPCPV-GFPに感染したが、それらの感染細胞でウイルスは溶解作用を全く示さなかった(MOIを10
-3から1に引き上げた場合に生細胞の数は同じであったことに裏付けられる)。Mock処理は、予想されたように、MC38の生存に効果を示さない。
【0171】
これらの結果に基づけば、PCPVで見られた腫瘍抑制は、MC38細胞におけるこのウイルスの腫瘍溶解効力で説明することはできないと考えられる。したがって、PCPVのin vivo有効性と相関があるその他のもの、例えば、サイトカイン/ケモカインプロファイルおよび腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を検討した。
【0172】
MVAN33.1またはPCPVの皮下(sc)適用の後のin vivo局所サイトカインプロファイル
局所サイトカインおよびケモカイン検出のために、5.105pfu/側腹部としてマウスの両側腹部に注射した。各マウスで2つの皮膚サンプルの小片を切り取り、C型チューブ(Miltenyi Biotec)中の500μl PBS中に入れ、機械的に解離させた(GentleMACS;Miltenyi Biotec)。300gでの遠心分離の後、上清をエッペンドルフ管に移し、低温にて18000gで遠心分離した。明澄な上清を、MagPix装置を製造業者の推奨に従って使用し、Procartaplexマウスケモカイン・サイトカインマルチプレックスキットで分析した。
【0173】
各群4個体のマウスを分析した。MVAおよびPCPVの注射後に得られたプロファイルをバッファー(陰性対照)と比較した。一般に、各検査物質は、MVAまたはバッファーの注射後よりもPCPVの注射後に高い程度で分泌された。予想されたように、バッファーによる処置はサイトカインの分泌に影響を示さなかった。意外にも、MVAN33.1に比較して、PCPVは、有意に高い局所レベルのIP-10、IFN-γ、TNF-α、IL-12、IL-1β、RANTES、IL-18、MCP-1およびMIP1-β(総て
図8に示す通り)、ならびにIL-4、GM-CSF、MIP-1α、エオタキシン、IL-6、GRO-α、MCP-3、G-CSF、M-CSFおよびLIF(データは示されていない)を誘導した。
【0174】
マウスMC38モデルにおけるTILに対するPCPVの効果
マウスを6個体の3群に分けた。MC38細胞の皮下移植後に成長した明白な(palpable)腫瘍(少なくとも100mm3の明白な腫瘍)を、腫瘍細胞移植の9日後に1×107pfuの組換えPCPVまたはMVA(両ウイルスはこの腫瘍モデルに関して無関係の抗原であるHPV16E7mをコードする)またはバッファー(陰性対照)とともに腫瘍内に注射した。ウイルス注射の翌日、マウスを屠殺し、腫瘍を単離し、酵素的に解離させ(Miltenyi products:腫瘍解離キット、Cチューブ、Gentle Macsプログラム:Tumors m_imp tumor 02の後に撹拌下で37℃40分、最後にプログラムm_imptumor_03を2回)、TILを富化した。得られた細胞懸濁液の濾過(孔径70μm)および赤血球溶解(BD PharmLyse、5分)の後に、磁性ビーズ技術(Miltenyi products:CD45 TILマイクロビーズ、MultiMAVS Cell24で分離、プログラム:prog POSSEL+bloc 24)を使用して、CD45+細胞を富化した。CD45+富化細胞内の亜集団は、Braunerら(AACR 2017ポスター要約N°1672)に従い、フローサイトメトリーにより識別した。好中球のパーセンテージは、CD11b+Ly6G+CD45+細胞の集団で検出した。TAMは、Ly6G-CD11b+細胞内のCD11c-亜集団として識別した。様々な亜集団をMHC IIおよびLy6Cで層化した。Braunerらによる「TAM C」は、MHC IIloおよびLy6C+として特徴付けられた。
【0175】
図9は、成長中の腫瘍において好中球のパーセンテージを高める(9A)が、TAM C集団のパーセンテージを引き下げる(9B)PCPVの能力を示す。これらの結果はPCPVを媒介とする腫瘍抑制の指標となり得る。
【0176】
また、癌において好中球は不均質であり、癌の抑制または進行を増進する異なる好中球集団がある(Singel and Segal,2016,Immunol Rev.273:329-43に総説)という認識も高まりつつある。亜集団のさらなる特性決定ならびにCTL集団および機能に及ぼすそれらの影響は有用であり得る。
【0177】
TAM Cマクロファージ(MHC IIlo)に関して、Movahediら(2010,Cancer Res 70:5728-39)は、マウス乳房腫瘍において異なるTAMサブセットを記載している。MHC IIlo TAMSは、多くがM2様表現型であり、低酸素腫瘍領域で存在量が多く、in vivoにおいて優れた血管新生促進活性を有し、腫瘍が進行するにつれ数を増す。この集団の減少は、腫瘍抑制のより良好な予後の指標となり得る。
【0178】
実施例4:HPV-E7mを発現するPCPVを使用したin vivo免疫原性試験
ELISPOT分析
PCPVワクチンベクターにより誘導された免疫原性をELISPOTにより評価し、MVAと比較した。マウスを6個体の4群に分け、1群をHPV16 E7mutをコードするPCPVで処置し、1群をそのMVA対応物(MVA-HPV16E7mut)で処置し、1群をエンプティーMVA(MVA N33)で処置し、陰性群にはバッファーを施した。1×105pfuのウイルスを1日目および8日目にC57BL/6マウスに静注した。2回目の免疫誘導の1週間後(15日目)に、マウスを屠殺し、脾臓および肺を単離した。ELISPOT分析のため、1つの群の全マウスの脾臓をプールした。肺は、プールするか(実験ICS24)、または細胞内サイトカイン染色により抗原特異的なCD8+T細胞に関して別個に試験した(実験ICS28)。両試験とも、HPV16E7特異的ペプチドR9F、MVA特異的ペプチドT8V、および無関係のペプチドI8LまたはK9i-3C CTRLで、抗原特異性を調べた。
【0179】
抗原特異的なIFN-γ産生脾細胞のELISPOT分析は、標準的なプロトコールに従って行った。
【0180】
プレートの準備
プレート(Millipore、MSIPS4W10)をエタノール35%(15μl/ウェル)で1分間前処理し、無菌水(200μl/ウェル)で5回洗浄した。ウェルを100μlの15μg/ml抗マウスIFNg抗体(Mabtech、AN18、3321-3-1000;PBSに希釈)でコーティングし、一晩または週末にかけて+4℃でインキュベートした。試験当日に、プレートを無菌PBS(200μL/ウェル)で5回洗浄し、37℃にて完全培地(CM 200μL/ウェル)で少なくとも1時間飽和させた。
【0181】
サンプル調製
ex vivo Elispotsは、新鮮な脾臓リンパ球で行った。各試験のため、各群5個体から脾臓を回収し、プールした。脾臓を4mLの完全培地(CM;X-Vivo、Lonza BE04-380Q)に回収し、次いで、6ウェルプレート内で70μmのセルストレーナーを通してシリンジプランジャーで破砕した。得られた脾細胞懸濁液をCMで2倍希釈し、4mLのLympholyte(登録商標)-M分離細胞培地(Cedarlane、ref:CL5035)に載せ、室温にて1500gで20分間遠心分離した。リンパ球を含有する中間層を回収し、10mLのPBSで2回洗浄した(室温にて400gで遠心分離5分)。リンパ球を2mLの赤血球(RBC)溶解バッファー(BD PharmLyse、BD BioScience、ref 555899)に再懸濁させ、室温で5~15分間インキュベートして赤血球を溶解させた。CM中で1回の洗浄工程(室温にて400gで遠心分離5分)の後、リンパ球を10mLのCMに再懸濁させ、Beckman Coulterの「Z2 Coulterパーティクルカウント・サイズアナライザー」を使用して計数した。細胞の濃度をCMで1×107細胞/mLに調整した。
【0182】
アッセイ
最初に、プレートを空にして飽和している培地を除き、50μLのCMを総てのウェルに添加した。CM中4μg/mLの各ペプチド溶液50μLまたは50μLのCM(陰性対照)を関連のウェルに添加した(予め定義されたピペットスキームに従う;各条件を4反復で試験した)。陽性対照として、50μLの20μg/mLコンカナバリンA(ConA)を所定のウェルに添加した。次いで、100μLの各リンパ球懸濁液(1×106細胞)をそれらのウェル(3×105細胞を添加するのみであるT8Vウェル以外)に添加し、プレートを5%CO2中、37℃で18~20時間インキュベートした。
【0183】
翌日、プレートを空にして細胞を除き、プレートをPBS(200μL/ウェル)で5回洗浄し、ビオチン化抗マウスIFNgモノクローナル抗体(Mabtech、R4-6A2、3321-6-1000;0.5%FCS含有PBS中、終濃度1μg/mL)を各ウェルに分配した(100μL/ウェル)。プレートを室温で2時間インキュベートし、次いで、PBSで5回洗浄し、Extravidin-アルカリホスファターゼ(SIGMA、E236、0.5%FCS含有PBS中1/5000e)を各ウェルに分配した(100μL/ウェル)。プレートを再び室温で1時間インキュベートし、PBSで5回洗浄し、100μLのBCIP/NBT基質溶液(BCIP/NBT錠、SIGMA、B5655;0.45μMで濾過済み)を各ウェルに分配した。プレートを、陽性対照のウェルに明瞭なスポットが見られるまで(5~10分間)、暗所に室温でインキュベートした。プレートを空にし、水道水でよく洗浄することで発色を停止させた。プレートを、室温で少なくとも1時間、乾燥するまで蓋をせずに暗所に置いた。
【0184】
データの取得
スポットをELISpotリーダー(CTL Immunoqpotリーダー、S5UV)で計数した。ウェル毎に品質管理を行って、ELISpotリーダーが示した計数値が画像の実態と合致することを保証した。4反復のそれぞれについて、1×106の脾臓リンパ球当たりのスポット形成単位(sfu)の平均数として、結果を表した。正値性はRスクリプト(livelink Biostat)により決定した。
【0185】
結果
HPV16E7mコードPCPVおよびMVAで処置した動物群から採取した脾細胞は、
図10Aに示すように、R9F特異的にIFNγの分泌を示し、これによりコードされている抗原に対する特異的免疫応答を惹起するこれら2つの組換えウイルスの能力が明らかとなった。一方、エンプティーMVAもしくはバッファーを投与した後または無関係のペプチドK9i-3で刺激した後にはIFNγの分泌を検出することができなかった。他方で、MVAベクター(エンプティーおよび組換えMVAのいずれか)のみが、MVA特異的ペプチドT8Vで刺激した後に応答する(
図10B)。
【0186】
プールした肺サンプルに対するICS分析
免疫したマウスの肺をプールするか(ICS 024)、またはRemy-Ziller et al.(2018,Hum Vaccin Immunother.14:140-5)に記載されているように別個に処理した(ICS 028)。まず、肺を酵素的および機械的に解離させた(Miltenyi products:腫瘍解離キット、CチューブおよびGentleMacs)。2×10
6細胞をex vivoにて、150μLのTexMACS培地(Miltenyi)中、1μgの抗CD28(abcam)と、HPV16E7特異的ペプチドR9F、MVA特異的ペプチドT8Vまたは無関係のペプチドI8Lのいずれかとの存在下で刺激した。ブレフェルジンの存在下で5時間のインキュベーションの後、抗CD3および抗CD8抗体を使用し、フローサイトメトリーにより細胞を分析した。透過処理(Cytofix/Cytoperm、BD Bioscience)の後、抗IFN-γ-FITC(クローンXMG1.2、BD Pharmingen)またはそのアイソタイプ対照による細胞内染色によって、活性化を評価した。リンパ球亜集団を、短命のエフェクター細胞および初期のエフェクター細胞を含んでなるCD3
dimCD8
dim亜集団として定義した。ドットブロット分析は、組換えMVAまたはPCPVの2回の注射が、エフェクターCD8
+T細胞から構成されるCD3
dimCD8
dim集団(Remy-Ziller et al,2018,Hum Vaccin Immunother.14:140-5に記載の通り)の出現をもたらすことを示す(データは示されていない)。この集団が増殖する程度は、PCPVよりもMVAで良好であった(
図10C)。しかしながら、これらの亜集団では、
図10Dに示されるように、HPV16 E7mコードPCPVまたはMVAの注射の後に、同等の数のR9F特異的なT細胞が検出された。言い換えれば、PCPVにより誘導されたCD3
dimCD8
dim細胞の全体的な数は少なくても、R9F特異的なIFN-γ分泌細胞の絶対数は、HPV16E7mコードPCPVおよびMVAを投与された動物で同等であった。このことはHPV16 E7特異的なCD8
+T細胞の誘導倍率がMVAベクターよりもPCPVベクターの接種後に高かったことを示唆する。
【0187】
MVAN33.1、HPV16E7コードMVAおよびHPV16E7コードPCPV(すなわち、その非発癌型)を接種したマウスの別個の肺を、CD3
dimCD8
dim集団内のR9F特異的なIFN-γ分泌CD8
+T細胞の増加倍率に関して分析した。
図11に示されるように、HPVE7 MVA処置群に比較してHPVE7 PCPV処置群では有意に高い数(増加倍率)の計数値が見られた。
【0188】
まとめると、これらのデータは、MVA-E7と同様に、PCPV-E7は強い細胞応答(脾細胞のELISPOTおよび抗原特異的な短命のエフェクター細胞の度数)を誘導したが、PCPV-E7は、IP-10、IFN-γ、GM-CSF、IL-18、MIP-1α、MIP-1β、IL-12およびIL-6を含む亢炎症性サイトカインのレベルの上昇とともに、注射部位に異なるプロファイルを示した。成長の速いMC-38腫瘍に腫瘍内注射すると、PCPVは腫瘍抑制をもたらした。腫瘍浸潤物の分析は、PCPV処置によって、より好中球レベルの上昇およびMHCIIlo(M2)TAMの頻度低下がもたらされたことを示した。
【0189】
結論として、本発明者らのデータは、PCPVは現行のウイルスベクターよりも、局所応答およびプライム活性という点で、エフェクターT細胞を誘導し、腫瘍浸潤プロファイルを再形成する能力に、より良好な特性を示し得ることを実証する。その他のポックスウイルスに比較して多くの遺伝的差異があるが、PCPVは大きな遺伝子ペイロード(payload)をコードし、送達する能力を有し、これは高度な抗腫瘍ワクチンを設計するために有用である。
【0190】
異種プライム・ブースト(PCPV/MVA)
PCPV感染患者は、ワクシニア/MVAに対する免疫を生じず、逆もまた然りであることが公表されている(Friedman-Kien et al.,1963,Science 140:1335-6)。したがって、MVA-HPV16E7およびPCPV-HPV16E7による併用処置をTC1腫瘍モデルで検討した。
【0191】
このために、HPV16E7陽性TC1細胞をC57BL/6マウスの側腹部に皮下移植した。14日後、腫瘍担持マウスを無作為化し(各群10個体)、1×106pfuのMVA-HPV16E7またはPCPV-HPV16E7を腫瘍内に注射した。1週間後、1×106pfuのPCPV-HPV16E7またはMVA-HPV16E7の静注によってブーストを行った。同種MVA/MVAおよび異種MVA/PCPVおよびPCPV/MVAセットまたは陰性対照として同じ条件下(腫瘍内プライムおよびivブースト)のバッファーで処置したマウスにおいて、腫瘍成長および生存率を経時的に追跡した。
【0192】
図14に示されるように、異種処置は、同種MVA-HPV16E7プライム・ブースト処置に比較してより良好な腫瘍抑制をもたらした。興味深いことに、MVAプライム/PCPVブーストまたはPCPVプライム/MVAブーストは両方とも、MVAプライム/MVAブースト群よりも腫瘍成長に低下をもたらしたが、PCPVプライム/MVAブーストは腫瘍成長をより良好に抑制する傾向がある(
図14Cに示されるように、より多数のマウスで腫瘍抑制)。予想されたように、バッファー処置動物では、腫瘍はかなり急速に成長した。
【0193】
実施例5:PCPVとICI(免疫チェックポイント阻害剤)との併用処置
PCPV処置を全身性ICI処置と併用する効果をMC38腫瘍モデルで評価した。ラット抗mPD-1(mはマウスを表す)抗体RMP1-14(BioXcellから市販)を選択した。この抗体は、mPD1とそのリガンドとの相互作用を遮断することが示されている(Yamazaki et al.,2005,J.Immunol.175(3):1586-92)。
【0194】
1日目(D1)に、結腸癌細胞株MC38(2×106細胞)を、2日前に剃毛したシンジェニックC57BL/6マウスの右側腹部に皮下(sc)注射した。この注射部位にパーマネントマーカーで印を付けた。同日に、4分の1のMC38細胞(5×105)を左側腹部にsc注射した。1×107pfuのPCPV(PCPTG19178)またはVVウイルス(VVTG5095)(両方ともHPV16E7m(MC38モデルとは無関係)をコードする)、またはバッファー(S08)を右側の細胞株注射部位の腫瘍内(it)に注射し(2日目)、その後は出現した右側の腫瘍に注射した(9および16日目)。他方、200μgの抗mPD-1(RMPI1-14)を5、9および16日目に腹腔内(ip)注射した。右(注射)および左の腫瘍の腫瘍成長および生存率を経時的に追跡した。
【0195】
まとめると、マウスを以下のそれぞれ13個体の6群、
・S08バッファーを施す対照群(2、9および16日目で3回のit注射)、
・E7発現PCPVウイルスで処置するマウス群(107pfuのPCPTG19178の、2、9および16日目で3回のit注射)、
・E7発現腫瘍溶解性VVウイルスで処置するマウス群(107pfuのVVTG5095の、2、9および16日目で3回のit注射)、
・抗PD1抗体で処置するマウス群(RMP1-14抗体の、5、9および16日目で3回のip注射)、
・E7発現PCPVウイルスおよび抗PD1抗体の両方を施す群(107pfuのPCPTG19178の、2、9および16日目で3回のit注射ならびにRMP1-14抗体の、5、9および16日目で3回のip注射)、および
・E7発現VV腫瘍溶解性ウイルスおよび抗PD1抗体の両方を施す群(107pfuのVVTG5095の、2、9および16日目で3回のit注射ならびにRMP1-14抗体の、5、9および16日目で3回のip注射)
に分けた。
【0196】
図15は、PCPV(A)またはVV(B)を単独でまたはマウス抗PD1と組み合わせて処置したマウス群の右側腹部に移植した腫瘍の直径の拡大を示す。より具体的には、対照群(S08)では腫瘍は急速に成長して、D13という早くに平均で2000mm
3を超え、一方、抗mPD1での処置は、平均2000mm
3の体積を超えるのを数日(D16)引き延ばすことを可能とした。
図15Bに示されるように、同じ傾向が腫瘍溶解性VVTG5095での処置後にも見られた(濃い灰色)。しかし、腫瘍成長は、VVTG5095および抗mPD1の組合せで処置したマウス(中間の灰色)において抑制され、平均2000mm
3の体積はD22に見られた。これに対し、
図15Aに示されるように、PCPVウイルスでの処置後には腫瘍成長は有意に遅延され(濃い灰色)、平均腫瘍体積は、D22において2000mm
3を十分下回り、PCPTG19178および抗PD1の両方を施す併用群ではさらに顕著に下回った(中間の灰色)。特に、PCPV-HPV16E7+抗PD-1併用群では、腫瘍サイズの差異は、その他の3群PCPV-HPV16E7、抗PD-1およびS08で見られる腫瘍サイズに対して有意であることが判明した。
【0197】
反対側の腫瘍(左側腹部)では、抗mPD1抗体での処置が腫瘍進行を遅延させた。その他の群に対して抗PD1群では、有意な腫瘍サイズの縮小が見られた(データは示されていない)。
【0198】
生存期間分析に関して(データは示されていない)、PCPV-HPV16E7群およびPCPV-HPV16E7+抗PD-1併用群の両方で、S08バッファー群に対して有意に高いOSが見られた(補正p値は両方とも0.036であった)。平均生存期間の差異はそれぞれ4.4日および3.4日であった。また、VV-HPV16E7+抗PD-1併用群でも、VV-HPV16E7および対照群に対して有意に高いOSが見られた(補正p値は0.040および0.004であった)。平均生存期間の差異はそれぞれ2.9日および3.6日であった。
【0199】
これらの結果から、組換えPCPVとICI(例えば、抗PD1)との併用は抗腫瘍防御の強化を可能とすることが強調される。
【0200】
実施例6:ウシ丘疹性口炎ウイルスの効果
パラポックスウイルス属は、異なるメンバー、例えば、ORFウイルス、PCPVおよびウシ丘疹性口炎ウイルス(BPSV)を含んでなり、総て反芻動物およびそれらの取扱者の感染を引き起こし得る(Zhao et al,2013,J Virol Methods,194:229-34)。ヒトにおけるPAPV感染は、強くて短い細胞媒介免疫応答および弱くて短い体液性応答を誘導し、約8~12%の個体が取扱者に二次感染する(Zhao et al.,2013,J Virol Methods,194:229-34)。
【0201】
パラポックスウイルス属の別のメンバーである(BPSV)を、2名の異なるドナーから得られたPBMCにおいてIFNαの分泌を誘導するその能力に関して試験し、MVAおよびPCPVと比較した(実施例1参照)。新鮮なPBMCを単離し、一晩インキュベートし(休止させ)、翌日にMOI 0.3でウイルスを感染させた。CpG型TLR9リガンド(Invivogenから入手したODN2216)をpDC、B細胞により媒介されるIFN-αの分泌の対照として添加した。感染2、4、6、16または24時間後に上清を採取し、上清中のIFN-αを、上記のようにLuminex技術で定量した。
【0202】
図16に示されるように、PCPVに感染したPBMCのようにBPSVに感染したPBMCは、細胞感染の16および24時間後に極めて高レベルのIFN-αの分泌を誘導した。両場合とも、分泌されたIFN-αレベルは、MVA感染時に見られたIFN-αの中程度の分泌レベルを十分に超えており(実施例1で得られた結果が確認される)、ODN2216対照も超えていた。
【0203】
結論として、BPSVは、PCPVと同様の効果を示し、すなわち、種々のドナーから得られたPBMCの上清において分泌されたIFN-αを顕著に増大させた。
【0204】
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