(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005059
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】スプロケットホルダ
(51)【国際特許分類】
B62M 9/128 20100101AFI20240110BHJP
【FI】
B62M9/128
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105050
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】金久 隆則
(72)【発明者】
【氏名】中村 克生
(72)【発明者】
【氏名】宇野 祐輝
(57)【要約】
【課題】多段リアスプロケット組立体から取り外された状態においてボリュームを低減することができるスプロケットホルダが、提供される。
【解決手段】スプロケットホルダ55は、複数の連結スプロケット31、および、少なくとも1つの分離スプロケット33を含む多段リアスプロケット組立体27に用いられる。スプロケットホルダ55は、ベースボディ61を備える。ベースボディ61は、フラット状態、および、係合状態の間で変形するように構成される。フラット状態では、ベースボディ61はフラットである。係合状態では、スプロケットホルダ55が多段リアスプロケット組立体27と係合した状態で、ベースボディ61は、多段リアスプロケット組立体27の回転中心軸心Xに関する少なくとも軸方向に、変形する。
【選択図】
図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の連結スプロケット、および、少なくとも1つの分離スプロケットを含む多段リアスプロケット組立体に用いられるスプロケットホルダであって、
フラット状態、および、係合状態の間で変形するように構成されるベースボディ、
を備え、
前記フラット状態では、前記ベースボディはフラットであり、
前記係合状態では、前記スプロケットホルダが前記多段リアスプロケット組立体と係合した状態で、前記ベースボディは、前記多段リアスプロケット組立体の回転中心軸心に関する少なくとも軸方向に、変形し、
前記ベースボディは、
前記多段リアスプロケット組立体のセンター部と接触するように構成されるセンターボディと、
前記センターボディから第1方向に延び、前記複数の連結スプロケットの少なくとも1つの第1連結スプロケット歯と係合するように構成される第1歯係合部、を有する第1歯係合ボディと、
前記センターボディから第2方向に延び、前記多段リアスプロケット組立体と係合するように構成される第2歯係合部、を有する第2歯係合ボディと、
前記センターボディから第3方向に延び、前記複数の連結スプロケットの少なくとも1つの第2連結スプロケット歯と係合するように構成される第3歯係合部、を有する第3歯係合ボディと、
前記センターボディから第4方向に延び、前記多段リアスプロケット組立体と係合するように構成される第4歯係合部、を有する第4歯係合ボディと、を含み、
前記第1方向、前記第2方向、前記第3方向、および、前記第4方向は、互いに異なる、
スプロケットホルダ。
【請求項2】
前記センターボディは、工具受入開口を有する、
請求項1に記載のスプロケットホルダ。
【請求項3】
前記第2歯係合ボディの前記第2歯係合部は、前記少なくとも1つの分離スプロケットの少なくとも1つの第1分離スプロケット歯と係合するように、構成され、
前記第4歯係合ボディの前記第4歯係合部は、前記少なくとも1つの分離スプロケットの少なくとも1つの第2分離スプロケット歯と係合するように、構成される、
請求項1に記載のスプロケットホルダ。
【請求項4】
前記第1歯係合ボディは、手動で操作されるように構成される第1タブ、を有する、
請求項1に記載のスプロケットホルダ。
【請求項5】
前記第3歯係合ボディは、手動で操作されるように構成される第2タブ、を有する、
請求項4に記載のスプロケットホルダ。
【請求項6】
前記第1方向は、前記センターボディに関して前記第3方向と反対である、
請求項1に記載のスプロケットホルダ。
【請求項7】
前記第2歯係合ボディは、前記少なくとも1つの分離スプロケットの少なくとも1つの第3分離スプロケット歯と係合するように構成される第5歯係合部、を有する、
請求項3に記載のスプロケットホルダ。
【請求項8】
前記第4歯係合ボディは、前記少なくとも1つの分離スプロケットの少なくとも1つの第4分離スプロケット歯と係合するように構成される第6歯係合部、を有する、
請求項7に記載のスプロケットホルダ。
【請求項9】
前記第2方向は、前記センターボディに関して前記第4方向と反対である、
請求項1に記載のスプロケットホルダ。
【請求項10】
前記ベースボディは、位置決めスプラインと一致するように構成される位置指標、を含み、
前記位置決めスプラインは、前記複数の連結スプロケット、および、前記少なくとも1つの分離スプロケットに設けられる、
請求項1に記載のスプロケットホルダ。
【請求項11】
前記ベースボディは、前記多段リアスプロケット組立体からの前記スプロケットホルダの取り外しを促進するように構成される弱化部、を有する、
請求項1に記載のスプロケットホルダ。
【請求項12】
前記弱化部にはミシン目が設けられる、
請求項11に記載のスプロケットホルダ。
【請求項13】
前記弱化部は、前記センターボディに設けられる、
請求項11に記載のスプロケットホルダ。
【請求項14】
前記ベースボディは、非金属材料によって形成される、
請求項1に記載のスプロケットホルダ。
【請求項15】
前記ベースボディは、紙によって形成される、
請求項14に記載のスプロケットホルダ。
【請求項16】
前記ベースボディは、生分解性材料によって形成される、
請求項1に記載のスプロケットホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプロケットホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、スプロケットホルダが開示されている(特許文献1を参照)。このスプロケットホルダは、多段リアスプロケット組立体の各スプロケットの周方向の位相を保持するように構成される。例えば、スプロケットホルダは、多段円環部から構成される。多段円環部は、少なくとも2つのスプロケットを覆う。多段円環部は合成樹脂製である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のスプロケットホルダは、合成樹脂製の多段円環部から構成される。スプロケットホルダが多段リアスプロケット組立体から取り外された場合、多段円環部の外観が立体形状で維持される。このため、スプロケットホルダの保管時のスペース、および、スプロケットホルダの輸送時のスペースが大きくなるという問題がある。
【0005】
また、従来のスプロケットホルダでは、多段円環部が合成樹脂によって形成されるので、成型が複雑になる。このため、合成樹脂例えばプラスティックの使用量が多くなり、スプロケットホルダを廃棄する際の重量が増える可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、多段リアスプロケット組立体から取り外された状態においてボリュームを低減することができるスプロケットホルダを、提供することにある。本発明の別の目的は、廃棄重量を低減することができるスプロケットホルダを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面に関して、スプロケットホルダは、複数の連結スプロケット、および、少なくとも1つの分離スプロケットを含む多段リアスプロケット組立体に用いられる。スプロケットホルダは、フラット状態、および、係合状態の間で変形するように構成されるベースボディ、を備える。
【0008】
フラット状態では、ベースボディはフラットである。係合状態では、スプロケットホルダが多段リアスプロケット組立体と係合した状態で、ベースボディは、多段リアスプロケット組立体の回転中心軸心に関する少なくとも軸方向に、変形する。
【0009】
ベースボディは、センターボディと、第1歯係合ボディと、第2歯係合ボディと、第3歯係合ボディと、第4歯係合ボディと、を含む。センターボディは、多段リアスプロケット組立体のセンター部と接触するように構成される。
【0010】
第1歯係合ボディは、センターボディから第1方向に延びる。第1歯係合ボディは、第1歯係合部、を有する。第1歯係合部は、複数の連結スプロケットの少なくとも1つの第1連結スプロケット歯と係合するように、構成される。
【0011】
第2歯係合ボディは、センターボディから第2方向に延びる。第2歯係合ボディは、第2歯係合部、を有する。第2歯係合部は、多段リアスプロケット組立体と係合するように、構成される。
【0012】
第3歯係合ボディは、センターボディから第3方向に延びる。第3歯係合ボディは、第3歯係合部、を有する。第3歯係合部は、複数の連結スプロケットの少なくとも1つの第2連結スプロケット歯と係合するように、構成される。
【0013】
第4歯係合ボディは、センターボディから第4方向に延びる。第4歯係合ボディは、第4歯係合部、を有する。第4歯係合部は、多段リアスプロケット組立体と係合するように、構成される。第1方向、第2方向、第3方向、および、第4方向は、互いに異なる。
【0014】
第1の側面に係るスプロケットホルダでは、ベースボディが、フラット状態、および、係合状態の間で変形する。ベースボディを係合状態で多段リアスプロケット組立体に取り付けることによって、スプロケットホルダは、多段リアスプロケット組立体の各スプロケットの周方向の位相を保持することができる。また、ベースボディが多段リアスプロケット組立体から取り外された状態において、ベースボディを係合状態からフラット状態に変形することによって、スプロケットホルダのボリュームを低減することができる。
【0015】
本発明の第2の側面に関して、第1の側面に係るスプロケットホルダは、センターボディが工具受入開口を有するように、構成される。
【0016】
第2の側面に係るスプロケットホルダでは、スプロケットホルダが多段リアスプロケット組立体の各スプロケットの周方向の位相を保持した状態で、工具を工具受入開口に挿入することによって、多段リアスプロケット組立体をリアハブに容易に装着することができる。
【0017】
本発明の第3の側面に関して、第1または第2の側面に係るスプロケットホルダは、以下のように構成される。第2歯係合ボディの第2歯係合部は、少なくとも1つの分離スプロケットの少なくとも1つの第1分離スプロケット歯と係合するように、構成される。第4歯係合ボディの第4歯係合部は、少なくとも1つの分離スプロケットの少なくとも1つの第2分離スプロケット歯と係合するように、構成される。
【0018】
第3の側面に係るスプロケットホルダは、多段リアスプロケット組立体の各スプロケットの周方向の位相を確実に保持することができる。
【0019】
本発明の第4の側面に関して、第1から第3の側面のいずれか1つに係るスプロケットホルダは、第1歯係合ボディが第1タブを有するように、構成される。第1タブは、手動で操作されるように構成される。
【0020】
第4の側面に係るスプロケットホルダでは、第1タブを手動で操作することによって、スプロケットホルダを多段リアスプロケット組立体から容易に取り外すことができる。
【0021】
本発明の第5の側面に関して、第4の側面に係るスプロケットホルダは、第3歯係合ボディが第2タブを有するように、構成される。第2タブは、手動で操作されるように構成される。
【0022】
第5の側面に係るスプロケットホルダでは、第2タブを手動で操作することによって、スプロケットホルダを多段リアスプロケット組立体から容易に取り外すことができる。
【0023】
本発明の第6の側面に関して、第1から第5の側面のいずれか1つに係るスプロケットホルダは、第1方向がセンターボディに関して第3方向と反対であるように、構成される。
【0024】
第6の側面に係るスプロケットホルダでは、多段リアスプロケット組立体の各スプロケットの周方向の位相を確実に保持することができる。
【0025】
本発明の第7の側面に関して、第3の側面に係るスプロケットホルダは、第2歯係合ボディが第5歯係合部を有するように構成される。第5歯係合部は、少なくとも1つの分離スプロケットの少なくとも1つの第3分離スプロケット歯と係合するように、構成される。
【0026】
第7の側面に係るスプロケットホルダは、多段リアスプロケット組立体の各スプロケットの周方向の位相を確実に保持することができる。
【0027】
本発明の第8の側面に関して、第7の側面に係るスプロケットホルダは、第4歯係合ボディが第6歯係合部を有するように、構成される。第6歯係合部は、少なくとも1つの分離スプロケットの少なくとも1つの第4分離スプロケット歯と係合するように、構成される。
【0028】
第8の側面に係るスプロケットホルダは、多段リアスプロケット組立体の各スプロケットの周方向の位相を確実に保持することができる。
【0029】
本発明の第9の側面に関して、第1から第8の側面のいずれか1つに係るスプロケットホルダは、第2方向がセンターボディに関して第4方向と反対であるように、構成される。
【0030】
第9の側面に係るスプロケットホルダは、多段リアスプロケット組立体の各スプロケットの周方向の位相を確実に保持することができる。
【0031】
本発明の第10の側面に関して、第1から第9の側面のいずれか1つに係るスプロケットホルダは、ベースボディが位置指標を含むように、構成される。位置指標は、位置決めスプラインと一致するように構成される。位置決めスプラインは、複数の連結スプロケット、および、少なくとも1つの分離スプロケットに設けられる。
【0032】
第10の側面に係るスプロケットホルダでは、位置指標を位置決めスプラインと一致させることによって、スプロケットホルダは、多段リアスプロケット組立体の各スプロケットの周方向の位相を正確に保持することができる。
【0033】
本発明の第11の側面に関して、第1から第10の側面のいずれか1つに係るスプロケットホルダは、ベースボディが弱化部を有するように、構成される。弱化部は、多段リアスプロケット組立体からのスプロケットホルダの取り外しを促進するように、構成される。
【0034】
第11の側面に係るスプロケットホルダでは、弱化部によって、スプロケットホルダを多段リアスプロケット組立体から容易に取り外すことができる。
【0035】
本発明の第12の側面に関して、第11の側面に係るスプロケットホルダは、ミシン目が弱化部に設けられるように、構成される。
【0036】
第12の側面に係るスプロケットホルダでは、弱化部のミシン目によって、スプロケットホルダを多段リアスプロケット組立体からより容易に取り外すことができる。
【0037】
本発明の第13の側面に関して、第11または第12の側面に係るスプロケットホルダは、弱化部がセンターボディに設けられるように、構成される。
【0038】
第13の側面に係るスプロケットホルダでは、弱化部をセンターボディに設けることによって、スプロケットホルダを多段リアスプロケット組立体からより容易に取り外すことができる。
【0039】
本発明の第14の側面に関して、第1から第13のいずれか1つの側面に係るスプロケットホルダは、ベースボディが非金属材料によって形成されるように、構成される。
【0040】
第14の側面に係るスプロケットホルダでは、ベースボディが非金属材料によって形成されるので、スプロケットホルダを容易に廃棄することができる。
【0041】
本発明の第15の側面に関して、第14の側面に係るスプロケットホルダは、ベースボディが紙によって形成されるように、構成される。
【0042】
第15の側面に係るスプロケットホルダでは、ベースボディが紙によって形成されるので、スプロケットホルダの廃棄重量を低減することができる。すなわち、廃棄物に関する環境問題の改善に貢献することができる。
【0043】
本発明の第16の側面に関して、第1から第15の側面のいずれか1つに係るスプロケットホルダは、ベースボディが生分解性材料によって形成されるように、構成される。
【0044】
第16の側面に係るスプロケットホルダでは、ベースボディが生分解性材料によって形成されるので、スプロケットホルダの廃棄重量を低減することができる。すなわち、廃棄物に関する環境問題の改善に貢献することができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、スプロケットホルダは、多段リアスプロケット組立体の各スプロケットの周方向の位相を保持することができる。また、スプロケットホルダが多段リアスプロケット組立体から取り外された状態において、スプロケットホルダのボリュームを低減することができる。また、本発明によれば、スプロケットホルダの廃棄重量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図2】リアスプロケット組立体、および、スプロケットホルダの斜視図。
【
図3】リアスプロケット組立体の正面図(ロック部材を除く)。
【
図4A】フラット状態のスプロケットホルダの正面図。
【
図5】リアスプロケット組立体、および、スプロケットホルダの正面図。
【
図6A】第2方向から見たリアスプロケット組立体、および、スプロケットホルダの側面図。
【
図6B】第4方向から見たリアスプロケット組立体、および、スプロケットホルダの側面図。
【
図7A】第1方向から見たリアスプロケット組立体、および、スプロケットホルダの側面図。
【
図7B】第3方向から見たリアスプロケット組立体、および、スプロケットホルダの側面図。
【
図8】変形例におけるフラット状態のスプロケットホルダの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1に示すように、本発明の実施形態では、自転車1が人力駆動車両の一例として用いられる。自転車1は、駆動チェーン3と、フレーム5と、ハンドル7と、フロントホイール9と、リアホイール11と、変速操作装置13と、駆動部15と、フロントフォーク17と、を有する。自転車1は、フロントディレーラ21と、リアディレーラ23と、をさらに有する。
【0048】
図1に示すように、フロントフォーク17は、フレーム5に回転可能に装着される。ハンドル7は、フロントフォーク17に固定される。フロントホイール9は、フロントハブ組立体18を介して、フロントフォーク17に回転可能に装着される。リアホイール11は、リアハブ組立体19を介して、フレーム5の後部に回転可能に装着される。フロントタイヤ9aは、フロントホイール9に装着される。リアタイア11aは、リアホイール11に装着される。
【0049】
変速操作装置13は、ハンドル7に装着される。変速操作装置13は、ケーブルを介して、フロントディレーラ21、および、リアディレーラ23を動作させる。例えば、リアディレーラ23は、フレーム5に装着される。リアディレーラ23は、変速操作装置13によって、あるリアスプロケットから他のリアスプロケットへと駆動チェーン3を移動させる。フロントディレーラ21は、フレーム5に装着される。フロントディレーラ21は、変速操作装置13によって、あるフロントスプロケットから他のフロントスプロケットへと駆動チェーン3を移動させる。
【0050】
駆動部15は、主に、リアハブ組立体19と、多段リアスプロケット組立体27と、クランク組立体29と、を有する。駆動部15は、駆動チェーン3を含んでいてもよい。リアハブ組立体19は、フレーム5に装着される。
【0051】
リアハブ組立体19には、リアホイール11が接続される。リアハブ組立体19の一部は、リアホイール11と一体的に回転する。すなわち、リアハブ組立体19の一部は、フレーム5に対して相対回転する。リアハブ組立体19は、多段リアスプロケット組立体27と一体的に回転するように、構成される。
【0052】
図1に示すように、多段リアスプロケット組立体27は、回転中心軸心Xを有する。多段リアスプロケット組立体27は、回転中心軸心Xまわりに回転する。例えば、多段リアスプロケット組立体27は、リアハブ組立体19の一部とともに回転する。自転車1の運転者からクランク組立体29に入力された駆動力は、駆動チェーン3を介して、多段リアスプロケット組立体27、および、リアハブ組立体19に伝達される。
【0053】
図1に示すように、クランク組立体29は、クランクアーム30と、フロントスプロケット組立体32と、を有する。クランクアーム30は、フレーム5の下部に回転可能に支持される。フロントスプロケット組立体32は、クランクアーム30と一体的に回転するように、クランクアーム30に装着される。フロントスプロケット組立体32は、少なくとも1つのフロントスプロケットを有する。
【0054】
図1に示すように、多段リアスプロケット組立体27は、駆動チェーン3に係合する。多段リアスプロケット組立体27には、クランク組立体29から駆動チェーン3に伝達された駆動力が伝達される。
【0055】
図2に示すように、多段リアスプロケット組立体27は、複数の連結スプロケット31、および、少なくとも1つの分離スプロケット33を含む。本実施形態では、多段リアスプロケット組立体27は、複数の連結スプロケット31、および、複数の分離スプロケット33を含む。多段リアスプロケット組立体27は、ロック部材35をさらに含む。
【0056】
本実施形態では、多段リアスプロケット組立体27が、複数の連結スプロケット31、複数の分離スプロケット33、および、ロック部材35を、含む場合の例が、示される。この場合、ロック部材35が、後述する多段リアスプロケット組立体27のセンター部28を構成する。
【0057】
多段リアスプロケット組立体27は、ロック部材35を含むことなく、複数の連結スプロケット31、および、複数の分離スプロケット33から構成されてもよい。この場合、多段リアスプロケット組立体27の中で最も小さいリアスプロケット、例えば、複数の分離スプロケット33の中で最も小さいリアスプロケットが、後述する多段リアスプロケット組立体27のセンター部28を構成する。
【0058】
図2に示すように、複数の連結スプロケット31は、第1から第8のリアスプロケット41~48を含む。第1から第8のリアスプロケット41~48は、回転中心軸心Xに関して同軸上に配置される。第1から第8のリアスプロケット41~48は、回転中心軸心Xに関する軸方向に並べて配置される。
【0059】
第1から第8のリアスプロケット41~48において互いに隣接する2つのスプロケットの間には、図示しないスペーサが配置される。この状態において、第1から第8のリアスプロケット41~48は、図示しない連結部材によって連結される。
【0060】
図2に示すように、複数の分離スプロケット33は、第9および第10のリアスプロケット49~50を含む。第9および第10のリアスプロケット49~50は、回転中心軸心Xに関して同軸上に配置される。第9および第10のリアスプロケット49~50は、回転中心軸心Xに関する軸方向に並べて配置される。
【0061】
第1から第10のリアスプロケット41~50は、回転中心軸心Xに関する軸方向に並べて配置される。第1リアスプロケット41は、多段リアスプロケット組立体27の中で最も大きいリアスプロケットである。第10のリアスプロケット50は、多段リアスプロケット組立体27の中で最も小さいリアスプロケットである。
【0062】
図3に示すように、第1から第10のリアスプロケット41~50は、複数のスプライン部141a~150aを、各別に有する。複数のスプライン部141a~150aは、第1から第10のリアスプロケット41~50の内周面を、各別に形成する。複数のスプライン部141a~150aは、リアハブ組立体19のスプロケット支持体19aに係合する。スプロケット支持体19aには、スプライン部141a~150aに係合するスプラインが、形成される。
【0063】
複数のスプライン部141a~150aのそれぞれは、位置決めスプライン141a1~150a1を含む。すなわち、複数の位置決めスプライン141a1~150a1は、第1から第10のリアスプロケット41~50に、各別に設けられる。
【0064】
例えば、複数の位置決めスプライン141a1~148a1は、第1から第8のリアスプロケット41~48に、各別に設けられる。複数の位置決めスプライン149a1~150a1は、第9および第10のリアスプロケット49~50に、各別に設けられる。すなわち、位置決めスプライン141a1~150a1は、複数の連結スプロケット31、および、少なくとも1つの分離スプロケット33に設けられる。
【0065】
例えば、複数の位置決めスプライン141a1~150a1は、他のスプラインより幅が広いスプラインである。複数の位置決めスプライン141a1~150a1のそれぞれの周方向長さは、複数のスプライン部141a~150aのそれぞれにおける他のスプラインの周方向長さより、長い。複数の位置決めスプライン141a1~150a1は、回転中心軸心Xに関する軸方向に並べて配置される。この配置によって、第1から第10のリアスプロケット41~50の周方向の位相が、合わせられる。
【0066】
複数の位置決めスプライン141a1~150a1は、他のスプラインより幅が狭いスプラインであってもよい。複数の位置決めスプライン141a1~150a1のそれぞれの周方向長さは、複数のスプライン部141a~150aのそれぞれにおける他のスプラインの周方向長さより、短くてもよい。
【0067】
図2に示すように、ロック部材35は、回転中心軸心Xに関する軸方向において、第10リアスプロケット50と並べて配置される。ロック部材35が第10リアスプロケット50に接触した状態でリアハブ組立体19に係合することによって、複数の連結スプロケット31、および、複数の分離スプロケット33がリアハブ組立体19に装着される。
【0068】
本実施形態では、
図2に示すように、スプロケットホルダ55が、自転車1の多段リアスプロケット組立体27に用いられる。スプロケットホルダ55は、自転車1とは異なる人力駆動車両に用いられてもよい。
【0069】
多段リアスプロケット組立体27がリアハブ組立体19から取り外された状態において、スプロケットホルダ55は、多段リアスプロケット組立体27に係合する。例えば、スプロケットホルダ55は、複数の連結スプロケット31、および、複数の分離スプロケット33の少なくとも一方に係合し、複数の連結スプロケット31、および、複数の分離スプロケット33を保持する。
【0070】
詳細には、スプロケットホルダ55は、少なくとも1つの連結スプロケット31、および、複数の分離スプロケット33に係合し、少なくとも1つの連結スプロケット31、複数の分離スプロケット33、および、ロック部材35を保持する。スプロケットホルダ55は、少なくとも1つの連結スプロケット31のみに係合し、少なくとも1つの連結スプロケット31、複数の分離スプロケット33、および、ロック部材35を保持してもよい。
【0071】
図4A、および、
図4Bに示すように、スプロケットホルダ55は、ベースボディ61を備える。ベースボディ61は、フラット状態、および、係合状態の間で変形するように、構成される。
図4Aはフラット状態を示す。
図4Bは係合状態を示す。
【0072】
図4Aに示すフラット状態では、スプロケットホルダ55が多段リアスプロケット組立体27と非係合である。フラット状態では、ベースボディ61はフラットである。例えば、フラット状態では、ベースボディ61はフラット状に形成される。
【0073】
図4Bに示す係合状態では、スプロケットホルダ55が多段リアスプロケット組立体27と係合した状態で、ベースボディ61は、多段リアスプロケット組立体27の回転中心軸心Xに関する少なくとも軸方向に、変形する。
【0074】
図4A、および、
図4Bに示すように、ベースボディ61は、多段リアスプロケット組立体27の回転中心軸心Xに関する軸方向に向けて、折り曲げられる。これにより、係合状態では、ベースボディ61は立体形状に形成される。
【0075】
ベースボディ61は、0.3mm以上且つ2.0mm以下の厚みで形成される。ベースボディ61は、非金属材料によって形成される。本実施形態では、ベースボディ61は、紙によって形成される。ベースボディ61は、生分解性材料によって形成されてもよい。
【0076】
図4A、および、
図4Bに示すように、ベースボディ61は、センターボディ63と、第1歯係合ボディ65と、第2歯係合ボディ67と、第3歯係合ボディ69と、第4歯係合ボディ71と、を含む。ベースボディ61は、弱化部73をさらに含む。ベースボディ61は、位置指標75をさらに含む。
【0077】
図5に示すように、センターボディ63は、多段リアスプロケット組立体27のセンター部28と接触するように構成される。例えば、本実施形態では、センターボディ63はロック部材35に接触する。すなわち、本実施形態においては、ロック部材35がセンター部28である。
【0078】
図4A、および、
図4Bに示すように、センターボディ63は、矩形状に形成される。センターボディ63は、工具受入開口63aを有する。例えば、工具受入開口63aは、円形状に形成される。工具受入開口63aの形状は、他の形状であってもよい。工具受入開口63aには、ロック部材35をリアハブ組立体19に取り付けるための工具が挿入される。
【0079】
図4A、および、
図4Bに示すように、第1歯係合ボディ65は、センターボディ63から第1方向に延びる。例えば、第1歯係合ボディ65は、
図4Aの視点において、センターボディ63から上方に延びる。第1歯係合ボディ65は、センターボディ63と一体的に形成される。第1歯係合ボディ65は、センターボディ63に対して折り曲げ可能なように、センターボディ63に接続される。第1歯係合ボディ65は、センターボディ63に対して山折り状態で折り曲げられる。
【0080】
図4A、および、
図4Bに示すように、第1歯係合ボディ65は、第1歯係合部65aを有する。
図6A、
図6B、および、
図7Aに示すように、第1歯係合部65aは、多段リアスプロケット組立体27と係合するように、構成される。例えば、第1歯係合部65aは、複数の連結スプロケット31の少なくとも1つの第1連結スプロケット歯48a1と係合するように、構成される。
【0081】
第1歯係合部65aは、第1連結スプロケット歯48a1に係合可能な形状であれば、どのように形成されてもよい。例えば、第1歯係合ボディ65に切り込みを設けることによって、第1歯係合部65aが形成される。第1歯係合部65aは、スリット、および、開口のような形状に形成されてもよい。
【0082】
図4A、および、
図4Bに示すように、第1歯係合ボディ65は第1タブ65bを有する。第1タブ65bは、手動で操作されるように構成される。第1タブ65bは、第1歯係合ボディ65に設けられる。第1タブ65bは、第1歯係合ボディ65と一体的に形成される。
【0083】
図6A、
図6B、および、
図7Aに示すように、第1歯係合部65aは、第8のリアスプロケット48の第1連結スプロケット歯48a1と係合する。第1連結スプロケット歯48a1は、第8のリアスプロケット48の少なくとも1つのリアスプロケット歯である。
【0084】
例えば、ベースボディ61が係合状態である場合、第1歯係合ボディ65は、センターボディ63に対して山折り状態で折り曲げられる。第1歯係合ボディ65は、第1歯係合部65aの位置において谷折り状態で折り曲げられる。
【0085】
この状態において、多段リアスプロケット組立体27の側面視において、第1歯係合ボディ65の先端部65c、および、第1タブ65bは、第7のリアスプロケット47、および、第8のリアスプロケット48の間に配置される。第1歯係合部65aは、第8のリアスプロケット48の第1連結スプロケット歯48a1と係合する。
【0086】
図4A、および、
図4Bに示すように、第2歯係合ボディ67は、センターボディ63から第2方向に延びる。例えば、第2歯係合ボディ67は、
図4Aの視点において、センターボディ63から左方に延びる。第2歯係合ボディ67は、センターボディ63と一体的に形成される。第2歯係合ボディ67は、センターボディ63に対して折り曲げ可能なように、センターボディ63に接続される。第2歯係合ボディ67は、センターボディ63に対して山折り状態で折り曲げられる。
【0087】
図4A、および、
図4Bに示すように、第2歯係合ボディ67は、第2歯係合部67aを有する。第2歯係合ボディ67は、第5歯係合部67bをさらに有する。
図6A、
図7A、および、
図7Bに示すように、第2歯係合部67aは、多段リアスプロケット組立体27と係合するように、構成される。例えば、第2歯係合部67aは、少なくとも1つの分離スプロケット33の少なくとも1つの第1分離スプロケット歯49a1と係合するように、構成される。
【0088】
第2歯係合部67aは、第1分離スプロケット歯49a1に係合可能な形状であれば、どのように形成されてもよい。例えば、第2歯係合ボディ67に切り込みを設けることによって、第2歯係合部67aが形成される。第2歯係合部67aは、スリット、および、開口のような形状に形成されてもよい。
【0089】
図6A、
図7A、および、
図7Bに示すように、第2歯係合部67aは、第9のリアスプロケット49の第1分離スプロケット歯49a1と係合する。第1分離スプロケット歯49a1は、第9のリアスプロケット49の少なくとも1つのリアスプロケット歯である。
【0090】
例えば、ベースボディ61が係合状態である場合、第2歯係合ボディ67は、センターボディ63に対して山折り状態で折り曲げられる。第2歯係合ボディ67は、第2歯係合部67aの位置において谷折り状態で折り曲げられる。
【0091】
この状態において、多段リアスプロケット組立体27の側面視において、第2歯係合ボディ67の先端部67cは、第8のリアスプロケット48、および、第9のリアスプロケット49の間に配置される。第2歯係合部67aは、第9のリアスプロケット48の第1分離スプロケット歯49a1と係合する。
【0092】
図6A、
図7A、および、
図7Bに示すように、第5歯係合部67bは、多段リアスプロケット組立体27と係合するように、構成される。例えば、第5歯係合部67bは、少なくとも1つの分離スプロケット33の少なくとも1つの第3分離スプロケット歯50a1と係合するように、構成される。
【0093】
第5歯係合部67bは、第3分離スプロケット歯50a1に係合可能な形状であれば、どのように形成されてもよい。例えば、第2歯係合ボディ67に切り込みを設けることによって、第5歯係合部67bが形成される。第5歯係合部67bは、スリット、および、開口のような形状に形成されてもよい。
【0094】
図6A、
図7A、および、
図7Bに示すように、第5歯係合部67bは、第10のリアスプロケット50の第3分離スプロケット歯50a1と係合する。第3分離スプロケット歯50a1は、第10のリアスプロケット50の少なくとも1つのリアスプロケット歯である。
【0095】
例えば、ベースボディ61が係合状態である場合、第2歯係合ボディ67は、第5歯係合部67bの位置において、センターボディ63に対して山折り状態で折り曲げられる。第2歯係合ボディ67は、第2歯係合部67aの位置において谷折り状態で折り曲げられる。この状態において、第5歯係合部67bは、第10のリアスプロケット50の第3分離スプロケット歯50a1と係合する。
【0096】
図4A、および、
図4Bに示すように、第3歯係合ボディ69は、センターボディ63から第3方向に延びる。第3方向は、センターボディ63に関して、第1方向と反対である。例えば、第3歯係合ボディ69は、
図4Aの視点において、センターボディ63から下方に延びる。第3歯係合ボディ69は、センターボディ63と一体的に形成される。第3歯係合ボディ69は、センターボディ63に対して折り曲げ可能なように、センターボディ63に接続される。第3歯係合ボディ69は、センターボディ63に対して山折り状態で折り曲げられる。
【0097】
図4A、および、
図4Bに示すように、第3歯係合ボディ69は、第3歯係合部69aを有する。第3歯係合部69aは、複数の連結スプロケット31の少なくとも1つの第2連結スプロケット歯48a2と係合するように、構成される。
【0098】
第3歯係合部69aは、第2連結スプロケット歯48a2に係合可能な形状であれば、どのように形成されてもよい。例えば、第3歯係合ボディ69に切り込みを設けることによって、第3歯係合部69aが形成される。第3歯係合部69aは、スリット、および、開口のような形状に形成されてもよい。
【0099】
図4A、および、
図4Bに示すように、第3歯係合ボディ69は第2タブ69bを有する。第2タブ69bは、手動で操作されるように構成される。第2タブ69bは、第3歯係合ボディ69に設けられる。第2タブ69bは、第3歯係合ボディ69と一体的に形成される。
【0100】
図6A、
図6B、および、
図7Bに示すように、第3歯係合部69aは、第8のリアスプロケット48の第2連結スプロケット歯48a2と係合する。第2連結スプロケット歯48a2は、第8のリアスプロケット48の少なくとも1つのリアスプロケット歯である。第8のリアスプロケット48の第1連結スプロケット歯48a1は、第8のリアスプロケット48の第2連結スプロケット歯48a2とは異なる。
【0101】
例えば、ベースボディ61が係合状態である場合、第3歯係合ボディ69は、センターボディ63に対して山折り状態で折り曲げられる。第3歯係合ボディ69は、第3歯係合部69aの位置において谷折り状態で折り曲げられる。
【0102】
この状態において、多段リアスプロケット組立体27の側面視において、第3歯係合ボディ69の先端部69c、および、第2タブ69bは、第7のリアスプロケット47、および、第8のリアスプロケット48の間に配置される。第3歯係合部69aは、第9のリアスプロケット48の第1分離スプロケット歯49a1と係合する。
【0103】
図4A、および、
図4Bに示すように、第4歯係合ボディ71は、センターボディ63から第4方向に延びる。第2方向は、センターボディ63に関して、第4方向と反対である。例えば、第4歯係合ボディ71は、
図4Aの視点において、センターボディ63から右方に延びる。第4歯係合ボディ71は、センターボディ63と一体的に形成される。第4歯係合ボディ71は、センターボディ63に対して折り曲げ可能なように、センターボディ63に接続される。第4歯係合ボディ71は、センターボディ63に対して山折り状態で折り曲げられる。
【0104】
図4Aの視点において、第1方向は上方であり、第2方向は左方であり、第3方向は下方であり、第4方向は右方である。このように、第1方向、第2方向、第3方向、および、第4方向は、互いに異なる。本実施形態では、第1方向、第2方向、第3方向、および、第4方向が互いに直交する場合の例が示されるが、第1方向、第2方向、第3方向、および、第4方向が、互いに異なる方向であれば、必ずしも直交していなくてもよい。
【0105】
図4A、および、
図4Bに示すように、第4歯係合ボディ71は、第4歯係合部71aを有する。第4歯係合ボディ71は、第6歯係合部71bをさらに有する。
図6B、
図7A、および、
図7Bに示すように、第4歯係合部71aは、多段リアスプロケット組立体27と係合するように、構成される。例えば、第4歯係合部71aは、少なくとも1つの分離スプロケット33の少なくとも1つの第2分離スプロケット歯49a2と係合するように、構成される。
【0106】
第4歯係合部71aは、第2分離スプロケット歯49a2に係合可能な形状であれば、どのように形成されてもよい。例えば、第4歯係合ボディ71に切り込みを設けることによって、第4歯係合部71aが形成される。第4歯係合部71aは、スリット、および、開口のような形状に形成されてもよい。
【0107】
図6B、
図7A、および、
図7Bに示すように、第4歯係合部71aは、第9のリアスプロケット49の第2分離スプロケット歯49a2と係合する。第2分離スプロケット歯49a2は、第9のリアスプロケット49の少なくとも1つのリアスプロケット歯である。
【0108】
例えば、ベースボディ61が係合状態である場合、第4歯係合ボディ71は、センターボディ63に対して山折り状態で折り曲げられる。第4歯係合ボディ71は、第4歯係合部71aの位置において谷折り状態で折り曲げられる。
【0109】
この状態において、多段リアスプロケット組立体27の側面視において、第4歯係合ボディ71の先端部71cは、第8のリアスプロケット48、および、第9のリアスプロケット49の間に配置される。第4歯係合部71aは、第9のリアスプロケット48の第2分離スプロケット歯49a2と係合する。第9のリアスプロケット49の第2分離スプロケット歯49a2は、第9のリアスプロケット49の第1分離スプロケット歯49a1とは異なる。
【0110】
図6B、
図7A、および、
図7Bに示すように、第6歯係合部71bは、多段リアスプロケット組立体27と係合するように、構成される。例えば、第6歯係合部71bは、少なくとも1つの分離スプロケット33の少なくとも1つの第4分離スプロケット歯50a2と係合するように、構成される。
【0111】
第6歯係合部71bは、第4分離スプロケット歯50a2に係合可能な形状であれば、どのように形成されてもよい。例えば、第4歯係合ボディ71に切り込みを設けることによって、第6歯係合部71bが形成される。第6歯係合部71bは、スリット、および、開口のような形状に形成されてもよい。
【0112】
図6B、
図7A、および、
図7Bに示すように、第6歯係合部71bは、第10のリアスプロケット50の第4分離スプロケット歯50a2と係合する。第4分離スプロケット歯50a2は、第10のリアスプロケット50の少なくとも1つのリアスプロケット歯の1つである。
【0113】
例えば、ベースボディ61が係合状態である場合、第4歯係合ボディ71は、第6歯係合部71bの位置において、センターボディ63に対して山折り状態で折り曲げられる。第4歯係合ボディ71は、第4歯係合部71aの位置において谷折り状態で折り曲げられる。この状態において、第6歯係合部71bは、第10のリアスプロケット50の第4分離スプロケット歯50a2と係合する。第10のリアスプロケット50の第4分離スプロケット歯50a2は、第10のリアスプロケット50の第3分離スプロケット歯50a1とは異なる。
【0114】
図4A、および、
図4Bに示す弱化部73は、多段リアスプロケット組立体27からのスプロケットホルダ55の取り外しを促進するように、構成される。弱化部73は、センターボディ63に設けられる。例えば、弱化部73は、工具受入開口63a、および、第2歯係合ボディ67、および、第3歯係合ボディ69によって形成される隅角部の間に、設けられる。
【0115】
弱化部73には、ミシン目が設けられる。ミシン目は、工具受入開口63aを形成するためのセンターボディ63の孔部の内周面から、第2歯係合ボディ67、および、第3歯係合ボディ69の間の間隙に向けて、直線状に延びる。ミシン目は、センターボディ63の孔部の内周面から上記間隙に向けて、曲線状に延びてもよい。
【0116】
図4A、および、
図4Bに示す位置指標75は、スプロケットホルダ55が取り付けられた多段リアスプロケット組立体27をリアハブ組立体19に装着する際に、多段リアスプロケット組立体27の位置決めスプラインの位置を示すために用いられる。位置指標75は、
図3に示す位置決めスプライン141a1~150a1と一致するように構成される。
【0117】
位置指標75は、センターボディ63に設けられる。本実施形態では、位置指標75は、工具受入開口63aを形成する孔部の内周面に、設けられる。位置指標75は、切り欠きである。
【0118】
位置指標75は、位置決めスプライン141a1~150a1と一致させることができれば、上記とは異なる位置に設けられてもよく、上記とは異なる形状に形成されてもよい。例えば、位置指標75は、スリット、開口、突起、凹部、および、マークであってもよい。
【0119】
上記の構成を有するスプロケットホルダ55は、以下のように、多段リアスプロケット組立体27に取り付けられる。まず、ロック部材35が、センターボディ63に接触するように、センターボディ63に対向して配置される。
【0120】
続いて、位置指標75を第10のリアスプロケット50の位置決めスプライン150a1に一致させることによって、第10のリアスプロケット50に対するスプロケットホルダ55の回転中心軸心Xに関する周方向の位置が決定される。第10のリアスプロケット50は、分離スプロケット33である。
【0121】
続いて、第2歯係合ボディ67の第5歯係合部67b、および、第4歯係合ボディ71の第6歯係合部71bを、第10のリアスプロケット50の第3分離スプロケット歯50a1、および、第10のリアスプロケット50の第4分離スプロケット歯50a2に各別に係合させることによって、第10のリアスプロケット50、および、ロック部材35は、回転中心軸心Xに関する軸方向に並べて配置される。
【0122】
続いて、第9のリアスプロケット49の位置決めスプライン149a1を、第10のリアスプロケット50の位置決めスプライン150a1に一致させることによって、第9のリアスプロケット49に対するスプロケットホルダ55の位置が決定される。第9のリアスプロケット49は、複数の分離スプロケット33の1つである。
【0123】
続いて、第2歯係合ボディ67の第2歯係合部67a、および、第4歯係合ボディ71の第4歯係合部71aを、第9のリアスプロケット49の第1分離スプロケット歯49a1、および、第9のリアスプロケット49の第2分離スプロケット歯49a2に、各別に係合させることによって、第9のリアスプロケット49、および、第10のリアスプロケット50は、回転中心軸心Xに関する軸方向に並べて配置される。
【0124】
このようにして、スプロケットホルダ55は、ロック部材35、第10のリアスプロケット50、および、第9のリアスプロケット49を、保持する。すなわち、この状態では、スプロケットホルダ55は、ロック部材35、および、複数の分離スプロケット3349,50を保持する。
【0125】
次に、第8のリアスプロケット48の位置決めスプライン148a1を、第9のリアスプロケット49の位置決めスプライン149a1に、一致させることによって、第8のリアスプロケット48に対するスプロケットホルダ55の位置が決定される。第8のリアスプロケット49は、複数の連結スプロケット31の1つである。
【0126】
続いて、第1歯係合ボディ65の先端部65cが、第7のリアスプロケット47、および、第8のリアスプロケット48の間に挿入されるように、第1歯係合ボディ65の第1タブ65bが、回転中心軸心Xに関する径方向内側に押される。この操作によって、第1歯係合ボディ65の第1歯係合部65aが、第8のリアスプロケット48の第1連結スプロケット歯48a1と係合する。
【0127】
続いて、第3歯係合ボディ69の先端部69cが、第7のリアスプロケット47、および、第8のリアスプロケット48の間に挿入されるように、第2歯係合ボディ67の第2タブ69bが、回転中心軸心Xに関する径方向内側に押される。この操作によって、第3歯係合ボディ69の第3歯係合部69aが、第8のリアスプロケット48の第2連結スプロケット歯48a2と係合する。
【0128】
このようにして、スプロケットホルダ55は、ロック部材35、第9および第10のリアスプロケット49,50、および、第8のリアスプロケット48を、保持する。上述したように、第1から第8のリアスプロケット41~48は、複数の連結スプロケット31である。このことから、スプロケットホルダ55は、ロック部材35、複数の分離スプロケット33、および、複数の連結スプロケット31を、保持する。この状態が、スプロケットホルダ55が多段リアスプロケット組立体27に取り付けられた状態である。
【0129】
上記の構成を有するスプロケットホルダ55は、以下のように、多段リアスプロケット組立体27から取り外される。まず、第3歯係合ボディ69の第2タブ69bが、回転中心軸心Xに関する径方向に引っ張られる。この操作によって、第3歯係合ボディ69、および、第8のリアスプロケット48の係合が、解除される。
【0130】
続いて、センターボディ63が弱化部73のミシン目に沿って破断するように、第2タブ69bが回転中心軸心Xに関する軸方向に引っ張られる。センターボディ63が弱化部73のミシン目に沿って破断した後には、第2タブ69bが第4歯係合ボディ71の先端部71cに向けて引っ張られる。この操作によって、第4歯係合ボディ71、および、第9および第10のリアスプロケット49,50の係合が、解除される。
【0131】
この状態で、第2タブ69bが、回転中心軸心Xに関する第1回転方向Rに回転させられる。
図4A、および、
図4Bでは、第1回転方向Rは、反時計まわりの方向である。この操作によって、第1歯係合ボディ65、および、第8のリアスプロケット48の係合と、第2歯係合ボディ67、および、第9および第10のリアスプロケット49,50の係合とが、順次、解除される。このようにして、スプロケットホルダ55が多段リアスプロケット組立体27から取り外される。
【0132】
(変形例)
前記実施形態では、スプロケットホルダ55の第1歯係合ボディ65、および、第3歯係合ボディ69が、第8のリアスプロケット48に係合する場合の例が示された。第1歯係合ボディ65、および、第3歯係合ボディ69は、複数の連結スプロケット31のいずれか1つであれば、第8のリアスプロケット48とは異なるリアスプロケットに係合してもよい。
【0133】
例えば、
図8に示すように、スプロケットホルダ155の第1歯係合ボディ65の径方向長さ、および、第3歯係合ボディ69の径方向長さを、
図4Aのスプロケットホルダ55よりも長くすることによって、第8のリアスプロケット48とは異なるリアスプロケットに係合させることができる。なお、
図8では、前記実施形態と同じ構成については、前記実施形態と同じ符号を付している。
【符号の説明】
【0134】
1 自転車
3 駆動チェーン
19 リアハブ組立体
27 多段リアスプロケット組立体
28 センター部
31 連結スプロケット
33 分離スプロケット
35 ロック部材
41~50 第1から第10のリアスプロケット
48 第8のリアスプロケット
48a 第1連結スプロケット歯、第2連結スプロケット歯
49 第9のリアスプロケット
49a 第1分離スプロケット歯、第2分離スプロケット歯
50 第10のリアスプロケット
50a 第3分離スプロケット歯、第4分離スプロケット歯
61 ベースボディ
63 センターボディ
63a 工具受入開口
65 第1歯係合ボディ
65a 第1歯係合部
65b 第1タブ
67 第2歯係合ボディ
67a 第2歯係合部
67b 第5歯係合部
69 第3歯係合ボディ
69a 第3歯係合部
69b 第2タブ
71 第4歯係合ボディ
71a 第4歯係合部
71b 第6歯係合部
73 弱化部
75 位置指標
X 回転中心軸心