(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005060
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】グラウト充填状況評価システム及びグラウト充填状況評価プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 29/46 20060101AFI20240110BHJP
G01N 29/12 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G01N29/46
G01N29/12
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105054
(22)【出願日】2022-06-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514250078
【氏名又は名称】中日本高速技術マーケティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】正司 明夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 謙一
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 博
(72)【発明者】
【氏名】東 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】本庄 慧
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA10
2G047BA03
2G047BC04
2G047BC09
2G047CA03
2G047CA07
2G047EA10
2G047GG10
2G047GG12
2G047GG20
2G047GG32
2G047GG33
(57)【要約】
【課題】非破壊検査データを人工知能により解析することで、そのグラウトの充填状況の評価を高精度に行う。
【解決手段】グラウト充填状況を評価するケーブルシースに対して非破壊検査を行うことにより得られた波形データを取得する取得手段と、入力した波形データを圧縮し、圧縮した波形データを復元した復元データを出力する復元モデルを参照し、前記取得手段により取得された波形データに基づく復元データを出力する出力手段と、前記出力手段により出力された復元データと前記取得手段により取得された波形データとに基づいて、前記グラウト充填状況を評価する評価手段とを備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PC構造物のケーブルシース内へのグラウト充填状況を評価するためのグラウト充填状況評価システムにおいて、
グラウト充填状況を評価するケーブルシースに対して非破壊検査を行うことにより得られた波形データを取得する取得手段と、
入力した波形データを圧縮し、圧縮した波形データを復元した復元データを出力する復元モデルを参照し、前記取得手段により取得された波形データに基づく復元データを出力する出力手段と、
前記出力手段により出力された復元データと前記取得手段により取得された波形データとに基づいて、前記グラウト充填状況を評価する評価手段とを備えること
を特徴とするグラウト充填状況評価システム。
【請求項2】
前記出力手段は、過去の波形データ又は疑似的に生成した波形データを学習データとして機械学習により生成された前記復元モデルを参照すること
を特徴とする請求項1に記載のグラウト充填状況評価システム。
【請求項3】
前記出力手段は、グラウトの充填度が閾値以上のケーブルシースに対する非破壊検査により得られた過去の波形データを学習データとする前記復元モデルを参照すること
を特徴とする請求項2記載のグラウト充填状況評価システム。
【請求項4】
前記出力手段は、PC構造物の表面からケーブルシースまでの深さに応じて、周波数が異なる弾性波を入力する非破壊検査により取得された波形データを学習データとする前記復元モデルを参照すること
を特徴とする請求項2に記載のグラウト充填状況評価システム。
【請求項5】
前記出力手段は、前記過去の波形データの周波数毎の強度の70%~130%の強度を有する波形データを学習データとする前記復元モデルを参照すること
を特徴とする請求項2に記載のグラウト充填状況評価システム。
【請求項6】
前記出力手段は、前記過去の波形データの周波数との差が200Hz以下の周波数を有する波形データを学習データとする前記復元モデルを参照すること
を特徴とする請求項2に記載のグラウト充填状況評価システム。
【請求項7】
前記取得手段は、新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシースを有するPC構造物の構成部材に関する構成情報を取得し、
前記出力手段は、前記取得手段により取得された構成情報に紐づく復元モデルを参照すること
を特徴とする請求項1に記載のグラウト充填状況評価システム。
【請求項8】
前記取得手段は、新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシースを有するPC構造物の断面形状に関する形状情報を取得し、
前記出力手段は、前記取得手段により取得された形状情報に紐づく復元モデルを参照すること
を特徴とする請求項1に記載のグラウト充填状況評価システム。
【請求項9】
前記取得手段は、PC構造物の表面から新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシースまでの深さに関する深さ情報を取得し、
前記出力手段は、前記取得手段により取得された深さ情報に紐づく復元モデルを参照すること
を特徴とする請求項1に記載のグラウト充填状況評価システム。
【請求項10】
前記取得手段は、PC構造物の表面から新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシースに関する付帯情報を取得し、
前記出力手段は、前記取得手段により取得された付帯情報に紐づく復元モデルを参照すること
を特徴とする請求項1に記載のグラウト充填状況評価システム。
【請求項11】
PC構造物のケーブルシース内へのグラウト充填状況を評価するためのグラウト充填状況評価プログラムにおいて、
グラウト充填状況を評価するケーブルシースに対して非破壊検査を行うことにより得られた波形データを取得する取得ステップと、
入力した波形データを圧縮し、圧縮した波形データを復元した復元データを出力する復元モデルを参照し、前記取得ステップにより取得された波形データに基づく復元データを出力する出力ステップと、
前記出力ステップにより出力された復元データと前記取得ステップにより取得された波形データとに基づいて、前記グラウト充填状況を評価する評価ステップとコンピュータに実行させること
を特徴とするグラウト充填状況評価プログラム。
【請求項12】
PC構造物のケーブルシース内へのグラウト充填状況を評価するためのグラウト充填状況評価プログラムにおいて、
グラウト充填状況を評価するケーブルシースに対して衝撃弾性波法を行うことにより得られた波形データを取得する取得ステップと、
入力した波形データを圧縮し、圧縮した波形データを復元した復元データを出力する復元モデルを参照し、前記取得ステップにより取得された波形データに基づく復元データを出力する出力ステップと、
前記出力ステップにより出力された復元データと前記取得ステップにより取得された波形データとに基づいて、前記グラウト充填状況を評価する評価ステップとをコンピュータに実行させること
を特徴とするグラウト充填状況評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PC構造物のケーブルシース内へのグラウト充填状況を非破壊検査により評価するためのグラウト充填状況評価システム及びグラウト充填状況評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポストテンション方式の橋梁や高架橋、建築物等のPC構造物のケーブルシース内にグラウトを注入する際には、ケーブルシースのグラウト注入側に圧送ポンプを、接続する。そして、圧送ポンプを運転してケーブルシース内にグラウトを充填する。
【0003】
ところで、近年において、PC構造物中のケーブルシース内へのグラウトの充填不良に起因する緊張材の腐食、破断事故が散見されるようになった。このような場合、ケーブルシース内のグラウト充填状況を把握する手法として削孔を行い、内部を直接観察する方法が一般的であるが,構造物に与える影響を最小限に留める配慮から非破壊検査により評価することが望まれている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ケーブルシースに対する非破壊検査により得られた過去の波形画像と、過去の波形画像に対するグラウト充填状況の判別結果との3段階以上の連関度が予め記憶され、新たにグラウト充填状況を判別するケーブルシースに対して非破壊検査を行うことにより得られた波形画像が入力され、連関度を参照し、入力された波形画像に基づき、ケーブルシース内へのグラウト充填状況を判別するグラウト充填状況判別システム及びプログラムが開示されている。これにより、特許文献1には、非破壊検査データを人工知能により解析することで、そのグラウトの充填状況の判別を高精度に行うことが可能なグラウト充填状況判別システム及びグラウト充填状況判別プログラムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、
図9は、グラウトの充填度毎に弾性波を加振したときに検出した波形の周波数と強度の関係を示す図である。これまでの知見では、
図9に示すように、ケーブルシース位置に相当する破線間Tに卓越する周波数に着目すると、ケーブルシース内のグラウトの充填度が0%である場合に、ケーブルシース位置の深さに相当する周波数が共振作用により卓越するものであった。しかしながら、
図9に示すように、ケーブルシース位置に相当する破線間Tに卓越する周波数に着目すると、ケーブルシース内のグラウトの充填度が100%である場合においても、ケーブルシース位置の深さに相当する周波数が共振作用により卓越する。
【0007】
これらのことから、特許文献1の開示技術では、想定される深さに相応する周波数が卓越するかどうかを判定するため、仮にケーブルシース内にグラウトの充填度が100%である場合においても、周波数が卓越する場合、グラウトの充填状況に空隙があると判断してしまう。このため、特許文献1の開示技術では、ケーブルシース内の充填状況を正確に判断することが難しいという問題点があった。
【0008】
また、
図10は、PC構造物107の断面107aを示す図である。また、
図10は、PC構造物107の表面107bのP点に弾性波を加振する図である。また、
図10において、A点、B点、C点、D点、E点、F点は、それぞれケーブルシース171とPC構造物107との界面の点を示す。また、
図10において、XはP点からケーブルシース171までの深さを示す。
図11は、高周波を入力したときの周波数毎の強度を示すグラフである。
図11のa、b、c、d、e、fの周波数は、それぞれ
図10のA点、B点、C点、D点、E点、F点における周波数毎の強度を示す。
図12は、低周波を入力したときの周波数毎の強度を示すグラフである。
図12のa′、b′、c′、d′、e′、f′の周波数は、それぞれ
図10のA点、B点、C点、D点、E点、F点における周波数毎の強度を示す。
【0009】
PC構造物107の断面171aは、例えば
図10に示すように、複数のケーブルシース171が配置されることが一般的である。かかる場合、単に弾性波を加振しただけでは、共振周波数が分散され、P点から深さのあるケーブルシース171のグラウト充填状況を評価することが難しい。例えば
図11に示すように、高周波数を入力加振した場合、深さXが短いA点に相当する周波数aが卓越することで、深さXが長いF点に相当する周波数fが卓越しにくくなっている。
【0010】
また、
図12に示すように、低周波数を入力加振した場合、深さXが短いA点に相当する周波数a′を無視して評価することが可能となり、深さXが長いF点に相当する周波数f′が卓越しやすくなっている。
【0011】
このため、ケーブルシース171が複数配置されたPC構造物7において、グラウト充填状況の評価を行う場合、着目したいケーブルシース171の深さに応じた入力周波数を選択して入力する必要がある。
【0012】
一方、特許文献1の開示技術では、着目したいケーブルシース171の深さに応じた入力周波数を選択して入力することを想定していない。このため、特許文献1の開示技術では、PC構造物107に複数のケーブルシース171が配置される場合に、高精度にグラウトの充填状況を判定することが難しいという問題点があった。
【0013】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、グラウトの充填状況の評価を高精度に行うことが可能なグラウト充填状況評価システム及びグラウト充填状況評価プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1発明に係るグラウト充填状況評価システムは、PC構造物のケーブルシース内へのグラウト充填状況を評価するためのグラウト充填状況評価システムにおいて、グラウト充填状況を評価するケーブルシースに対して非破壊検査を行うことにより得られた波形データを取得する取得手段と、入力した波形データを圧縮し、圧縮した波形データを復元した復元データを出力する復元モデルを参照し、前記取得手段により取得された波形データに基づく復元データを出力する出力手段と、前記出力手段により出力された復元データと前記取得手段により取得された波形データに基づいて、前記グラウト充填状況を評価する評価手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
第2発明に係るグラウト充填状況評価システムは、第1発明において、過去の波形データ又は疑似的に生成した波形データを学習データとして機械学習により生成された前記復元モデルを参照することを特徴とする。
【0016】
第3発明に係るグラウト充填状況評価システムは、第2発明において、前記出力手段は、グラウトの充填度が閾値以上のケーブルシースに対する非破壊検査により得られた過去の波形データを学習データとする前記復元モデルを参照することを特徴とする。
【0017】
第4発明に係るグラウト充填状況評価システムは、第2発明において、前記出力手段は、PC構造物の表面からケーブルシースまでの深さに応じて、周波数が異なる弾性波を入力する非破壊検査により取得された波形データを学習データとする前記復元モデルを参照することを特徴とする。
【0018】
第5発明に係るグラウト充填状況評価システムは、第2発明において、前記出力手段は、前記過去の波形データの周波数毎の強度の70%~130%の強度を有する波形データを学習データとする前記復元モデルを参照することを特徴とする。
【0019】
第6発明に係るグラウト充填状況評価システムは、第2発明において、前記出力手段は、前記過去の波形データの周波数との差が200Hz以下の周波数を有する波形データを学習データとする前記復元モデルを参照することを特徴とする。
【0020】
第7発明に係るグラウト充填状況評価システムは、第1発明において、前記取得手段は、新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシースを有するPC構造物の構成部材に関する構成情報を取得し、前記出力手段は、前記取得手段により取得された構成情報に紐づく復元モデルを参照することを特徴とする。
【0021】
第8発明に係るグラウト充填状況評価システムは、第1発明において、前記取得手段は、新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシースを有するPC構造物の断面形状に関する形状情報を取得し、前記出力手段は、前記取得手段により取得された形状情報に紐づく復元モデルを参照することを特徴とする。
【0022】
第9発明に係るグラウト充填状況評価システムは、第1発明において、前記取得手段は、PC構造物の表面から新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシースまでの深さに関する深さ情報を取得し、前記出力手段は、前記取得手段により取得された深さ情報に紐づく復元モデルを参照することを特徴とする。
【0023】
第10発明に係るグラウト充填状況評価システムは、第1発明において、前記取得手段は、PC構造物の表面から新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシースに関する付帯情報を取得し、前記出力手段は、前記取得手段により取得された付帯情報に紐づく復元モデルを参照することを特徴とする。
【0024】
第11発明に係るグラウト充填状況評価プログラムは、PC構造物のケーブルシース内へのグラウト充填状況を評価するためのグラウト充填状況評価プログラムにおいて、グラウト充填状況を評価するケーブルシースに対して非破壊検査を行うことにより得られた波形データを取得する取得ステップと、入力した波形データを圧縮し、圧縮した波形データを復元した復元データを出力する復元モデルを参照し、前記取得ステップにより取得された波形データに基づく復元データを出力する出力ステップと、前記出力ステップにより出力された復元データと前記取得ステップにより取得された波形データとに基づいて、前記グラウト充填状況を評価する評価ステップとコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0025】
第12発明に係るグラウト充填状況評価プログラムは、PC構造物のケーブルシース内へのグラウト充填状況を評価するためのグラウト充填状況評価プログラムにおいて、グラウト充填状況を評価するケーブルシースに対して衝撃弾性波法を行うことにより得られた波形データを取得する取得ステップと、入力した波形データを圧縮し、圧縮した波形データを復元した復元データを出力する復元モデルを参照し、前記取得ステップにより取得された波形データに基づく復元データを出力する出力ステップと、前記出力ステップにより出力された復元データと前記取得ステップにより取得された波形データとに基づいて、前記グラウト充填状況を評価する評価ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
第1発明~第10発明によれば、新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシースに対して非破壊検査を行うことにより得られた波形データを、復元モデルに入力し、出力された復元データと波形データとに基づいて、グラウト充填状況を評価する。これにより、新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシースに対して非破壊検査を行うことにより得られた波形データを復元モデルに入力し、出力された復元データと波形データとに基づいて、新たに取得した波形データとグラウトが所定の充填度のときの波形データと比較したときの異常値を評価することが可能となる。これにより、周波数が卓越する場合、又はケーブルシースが複数配置された構造物において、グラウト充填状況の評価を行う場合においても、グラウトの充填状況を高精度に評価することが可能となる。
【0027】
特に、第2発明によれば、出力手段は、ケーブルシースに対する非破壊検査により得られた過去の波形データを学習データとして機械学習により生成された復元モデルを参照するこれにより、例えばグラウトが100%充填されているときの波形データを学習データとして、特徴データを抽出し、新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシースに対して非破壊検査を行うことにより得られた波形データを復元モデルに入力し、出力された復元データと波形データとに基づいて、新たに取得した波形データとグラウトが所定の充填度のときの波形データと比較したときの異常値を評価することが可能となる。これにより、グラウトの充填状況をさらに高精度に評価することが可能となる。
【0028】
特に、第3発明によれば、データベースは、グラウトの充填度が閾値以上のケーブルシースに対する非破壊検査により得られた過去の波形データを学習データとする復元モデルを記憶する。これにより、グラウトの充填度が高いときの波形データを学習データとすることが可能となる。例えばグラウトの充填度が100%のときに得られた波形データを学習データとすることで、新たに得られた波形データと学習データとを比較したときの異常値を評価することが可能となる。これにより、さらに高精度にグラウト充填状況を評価することができる。
【0029】
特に、第4発明によれば、データベースは、PC構造物の表面からケーブルシースまでの深さに応じて、周波数が異なる弾性波を入力する非破壊検査により取得された波形データを学習データとする復元モデルを記憶する。これにより、深さに応じて、最適な波形データから抽出した特徴データを学習データとすることが可能となり、さらに高精度にグラウト充填状況を評価することができる。
【0030】
特に、第5発明によれば、データベースは、過去の波形データの周波数毎の強度の70%~130%の強度を有する波形データを生成し、生成した波形データをさらに学習データとする復元モデルを記憶する。これにより、グラウト充填状況を評価するときに、取得する波形データの周波数毎の強度にばらつきがある場合においても、精度よく評価することが可能となる。
【0031】
特に、第6発明によれば、データベースは、過去の波形データの周波数との差が200Hz以下の周波数を有する波形データを生成し、生成した波形データを学習データとする復元モデルを記憶する。これにより、グラウト充填状況を評価するときに、取得する波形データの周波数にばらつきがある場合においても、精度よく評価することが可能となる。
【0032】
特に、第7発明によれば、出力手段は、構成情報に紐づく復元モデルを参照する。これにより、構成情報に応じて、それぞれ適切な復元モデルを参照することが可能となり、PC構造物の構成部材が異なる場合においても、精度よくグラウト充填状況を評価することが可能となる。
【0033】
特に、第8発明によれば、出力手段は、形状情報に紐づく復元モデルを参照する。これにより、形状情報に応じて、それぞれ適切な復元モデルを参照することが可能となり、PC構造物の断面形状が異なる場合においても、精度よくグラウト充填状況を評価することが可能となる。
【0034】
特に、第9発明によれば、出力手段は、深さ情報に紐づく復元モデルを参照する。これにより、深さ情報に応じて、それぞれ適切な復元モデルを参照することが可能となり、PC構造物の表面からケーブルシースまでの深さが異なる場合においても、精度よくグラウト充填状況を評価することが可能となる。
【0035】
特に、第10発明によれば、出力手段は、ケーブルシースに関する付帯情報に紐づく復元モデルを参照する。これにより、付帯情報に応じて、それぞれ適切な復元モデルを参照することが可能となり、ケーブルシースの形態情報、ケーブルシースの配置情報、ケーブルシースが設けられるPC構造物に設けられた緊張材(PC鋼材)に関する緊張材情報、ケーブルシース内に充填されるグラウトに関するグラウト情報、ケーブルシースが設けられるPC構造物内に打設されるコンクリート情報、ケーブルシースに対する非破壊検査の試験条件情報、ケーブルシースが設けられるPC構造物の表面状態などが異なる場合においても、精度よくグラウト充填状況を評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、本発明を適用したグラウト充填状況評価システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、評価装置の具体的な構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明を適用したグラウト充填状況評価システムの処理動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図6(a)は、グラウトの充填度が100%のときに取得した波形データと復元データとを示す図である。
図6(b)は、グラウトの充填度が0%のときに取得した波形データと復元データとを示す図である。
【
図7】
図7は、コンクリート供試体の模式図である。
【
図8】
図8は、本発明を適用したグラウト充填状況評価システムの評価結果を示す図である。
【
図9】
図9は、非破壊検査により得られたグラウト充填度毎の波形データ示す図である。
【
図11】
図11は、高周波を入力したときの周波数毎の強度を示すグラフである。
【
図12】
図12は、低周波を入力したときの周波数毎の強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を適用したグラウト充填状況評価システムついて、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0038】
図1は、本発明を適用したグラウト充填状況評価システム1の全体構成を示すブロック図である。グラウト充填状況評価システム1は、PC構造物7のケーブルシース71内へのグラウト充填状況を非破壊検査により評価する。グラウト充填状況評価システム1は、非破壊検査部8と、非破壊検査部8に接続された変換装置9と、変換装置9に接続された評価装置2と、評価装置2に接続されたデータベース3とを備えている。
【0039】
PC構造物7は、PC鋼材及びケーブルシース71が内部に配設された橋梁や高架橋、建築物等である。
【0040】
ケーブルシース71は、内部にPC鋼棒又は多数のPC鋼線等を初めとするこの図示しないPC鋼材が緊張状態で、しかも当該ケーブルシース71の内壁面から離間する形で配設される。ちなみに、本実施の形態においては、ポストテンション方式のPC構造物7を対象としていることから、かかる場合にはPC構造物7中にケーブルシース71を配置した後にコンクリートを充填並びに硬化させ、その後にケーブルシース71内に図示しないPC鋼材を挿入して引張応力を負荷する。更にその後、ケーブルシース71内にグラウトを充填して硬化させる。
【0041】
非破壊検査部8は、例えば衝撃弾性波法、インパクトエコー法、超音波法等の非破壊検査手法により、PC構造物7に弾性波を加振し、反射された波形を検査データとして検出する。非破壊検査部8は、検出した検査データを変換装置9へ送信する。
【0042】
変換装置9は、例えばPC(パーソナルコンピュータ)やスマートフォン、タブレット型端末、ウェアラブル端末等の電子機器で構成されている。この変換装置9は、取得した検査データをケーブルシース71におけるグラウトの充填状況を評価するための少なくとも周波数毎の強度及び周波数を示すデータが含まれる波形データへと変換し、変換した波形データを評価装置2へと送信する。
【0043】
変換装置9は、取得した検査データを、特段解析することなく、評価装置2に波形データとして送信してもよい。例えば変換装置9は、周波数と周波数毎の強度とを示す波形データが検査データとして取得された場合、特段解析することなく検査データをそのまま波形データとして、評価装置2に送信してもよい。
【0044】
また、変換装置9は、取得された検査データの解析を行い、波形データに変換して評価装置2に送信してもよい。例えば変換装置9は、時間と振れ幅との関係を示す波形数値データが検査データとして取得された場合、これを解析し、周波数と周波数毎の強度とを示す波形データとしたうえで、評価装置2に送信してもよい。変換装置9は、波形数値データからなる検査データを解析することにより、ケーブルシース71内におけるグラウトの充填度を評価する上で最適なものに適宜加工することとなる。
【0045】
例えばこの変換装置9は、取得された時間と振れ幅との関係を示す波形数値データを、FFT(Fast Fourier Transform)変換を施すことにより、周波数と周波数毎の強度との関係を示す波形データに変換してもよい。また、変換装置9は、取得された時間と振れ幅との関係を示す波形数値データを、フーリエ変換を施して、時間と周波数との関係を示す波形数値データに変換した上で、特定周波数領域を除去し、さらに逆フーリエ変換を施すことにより、特定周波数領域を残した時間と振れ幅との関係を示す波形数値データに変換してもよい。また、変換装置9は、この特定周波数領域を残した時間と振れ幅との関係を示す波形数値データに対して、さらにフーリエ変換を施すことにより、特定周波数領域を残した周波数と周波数毎の強度との関係を示す波形データに変換してもよい。また、変換装置9は、取得された時間と振れ幅との関係を示す波形数値データを、パワースペクトル等の強度と周波数との関係を示す波形データに変換してもよい。
【0046】
変換装置9は、取得された検査データとしての波形数値データに対して、ウェーブレット変換を施して、時間と周波数との関係を示す波形数値データに変換してもよい。ウェーブレット変換を施すことにより、フーリエ変換の際には失われてしまう時間特性を残すことができる。このため、ウェーブレット変換を施すことにより、時間と周波数との関係を示す波形数値データに変換されることとなる。
【0047】
変換装置9は、取得された検査データとしての波形数値データに対して、フーリエ変換して得たパワースペクトルについて、その値の対数をとり、さらに逆フーリエ変換したケプストラムを示す波形数値データに変換してもよい。また、変換装置9は、さらに、ケプストラムを示す波形数値データから、低次のケプストラムであるスペクトル包絡や高次のケプストラムであるスペクトル微細構造を示す波形数値データを抽出してもよい。例えば、スペクトル包絡を示す波形数値データは、ケプストラム次数を定めるにより抽出されるものであってもよい。このケプストラム次数は、例えば20、100等の任意の値を取り得る。さらに、スペクトル包絡を示す波形数値データにおいては、各ケプストラム次数の係数を抽出してもよい。また、変換装置9は、取得された波形画像において、ある時間領域から切り出した振れ幅を周波数領域に変換したときのピークであるフォルマントを示す波形数値データに変換してもよい。ピークの周波数帯が低い方から、第1フォルマント、第2フォルマント、・・・としたとき、波形数値データは、例えば、第1フォルマントと第2フォルマントとの関係を示すものとして、周波数と周波数との関係を示すものであってもよい。また、変換装置9は、取得された検査データとしての波形数値データに対して、AFTE(Auditory filterbank temporal Envelope)変換を施してもよい。
【0048】
このように変換装置9は、取得された検査データを、
図2に示すような2次元の波形データに変換してもよい。2次元の波形データは、例えば、時間、振れ幅、周波数、強度、スペクトル、ケプストラム、フォルマント等のうち、2つの関係を示すものであってもよい。また、これらの逆数をとってもよい。
【0049】
また、変換装置9は、例えばスぺクトログラム等を施して、取得された検査データを3次元の波形数値データに変換してもよい。3次元の波形数値データは、例えば、時間、振れ幅、周波数、強度、スペクトル、ケプストラム、フォルマント等のうち、3つの関係を示すものであってもよい。
【0050】
ちなみに、この変換装置9は、例えば図示しないディスプレイ等からなる表示部を介して各検査データを表示することができる。また変換装置9は、これら各データをストレージ内に記憶し、ユーザによる命令に基づいてこれらデータを表示部へ表示し、又は携帯型メモリにこれらデータを書き込むことができる。ユーザは、この携帯型メモリを変換装置9から取り外して自由に持ち運びすることが可能となる。更に変換装置9は、これら各データを公衆通信網を介して他の電子機器へ転送することも可能となる。
【0051】
なお、本発明においてこの変換装置9の構成は必須ではなく、省略するようにしてもよい。かかる場合には、非破壊検査部8から出力される検査データは、評価装置2へ直接送信されることとなる。
【0052】
データベース3は、各種情報が記憶されている。データベース3には、公衆通信網を介して送られてきた情報、或いは本システムのユーザによって入力された情報が蓄積される。またデータベース3は、評価装置2からの要求に基づいて、この蓄積した情報を評価装置2へと送信する。
【0053】
評価装置2は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)等を始めとした電子機器で構成されているが、PC以外に、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、ウェアラブル端末等、他のあらゆる電子機器で具現化されるものであってもよい。ユーザは、この評価装置2による探索解としてのグラウトの充填状況の評価結果を得ることにより、ケーブルシース71内におけるグラウトの充填が足りているか否かを評価することが可能となる。そして、ケーブルシース71内においてグラウトの充填が足りていない場合には、図示しない圧送ポンプを運転してケーブルシース71内にグラウトを充填する作業を行うこととなる。
【0054】
図3は、評価装置2の具体的な構成例を示している。この評価装置2は、評価装置2全体を制御するための制御部24と、操作ボタンやキーボード等を介して各種制御用の指令を入力するための操作部25と、有線通信又は無線通信を行うための通信部26と、最適な設計条件を探索する探索部27と、ハードディスク等に代表され、実行すべき検索を行うためのプログラムを格納するための記憶部28とが内部バス21にそれぞれ接続されている。さらに、この内部バス21には、実際に情報を表示するモニタとしての表示部23が接続されている。
【0055】
制御部24は、内部バス21を介して制御信号を送信することにより、評価装置2内に実装された各構成要素を制御するためのいわゆる中央制御ユニットである。また、この制御部24は、操作部25を介した操作に応じて各種制御用の指令を内部バス21を介して伝達する。
【0056】
操作部25は、キーボードやタッチパネルにより具現化され、プログラムを実行するための実行命令がユーザから入力される。この操作部25は、実行命令がユーザから入力された場合には、これを制御部24に通知する。この通知を受けた制御部24は、探索部27を始め、各構成要素と協調させて所望の処理動作を実行していくこととなる。また、操作部25は、ユーザから各種情報が入力されてもよい。操作部25は、例えばPC構造物7の構成部材に関する構成情報、PC構造物7の断面形状に関する形状情報、又はPC構造物7の表面から新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシースまでの深さに関する深さ情報等を含む付帯情報がユーザにより入力されてもよい。
【0057】
探索部27は、グラウトの充填状況の評価結果を探索する。この探索部27は、探索動作を実行するに当たり、必要な情報として記憶部28に記憶されている各種情報や、データベース3に記憶されている各種情報を読み出す。この探索部27は、人工知能により制御されるものであってもよい。この人工知能はいかなる周知の人工知能技術に基づくものであってもよい。
【0058】
表示部23は、制御部24による制御に基づいて表示画像を作り出すグラフィックコントローラにより構成されている。この表示部23は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)等によって実現される。
【0059】
記憶部28は、ハードディスクで構成される場合において、制御部24による制御に基づき、各アドレスに対して所定の情報が書き込まれるとともに、必要に応じてこれが読み出される。また、この記憶部28には、本発明を実行するためのプログラムが格納されている。このプログラムは制御部24により読み出されて実行されることになる。
【0060】
上述した構成からなるグラウト充填状況評価システム1における動作について説明をする。
【0061】
グラウト充填状況評価システム1では、グラウト充填状況を評価するケーブルシースに対して非破壊検査を行うことにより得られた検査データを波形データに変換し、変換した波形データを復元モデルに入力し、復元データを出力し、出力された復元データと波形データとに基づいて、グラウト充填状況を評価する。このグラウト充填状況評価システム1の処理動作フローを
図4に示す。以下、
図4の各ステップでの詳細な処理を説明する。
【0062】
まず、ステップS11において、非破壊検査部8は、例えば衝撃弾性波法、インパクトエコー法、超音波法等の非破壊検査手法により、ケーブルシース71の検査データを検出する。かかる場合、
図1に示すようにPC建造物7の表面からケーブルシース71までの深さYに応じて、加振する弾性波の周波数を変化させてもよい。例えば、深さYが大きなケーブルシース71を評価する場合は、低周波を入力する。非破壊検査部8は、検出した検査データを変換装置9に出力する。また、下記の数1の式(1)に示す周波数f以上の弾性波を加振してもよい。かかる場合、Vは弾性波の伝搬速度を示す。
【数1】
【0063】
次にステップS12において、変換装置9は、非破壊検査部8により検出された検査データについて、必要に応じて各種解析を行い、また後段の探索装置による探索を行い易くするために必要に応じて波形データに加工を施す。ちなみに、各種解析や加工を行わない場合には、このステップS12を省略することができる。変換装置9は、変換した波形データを評価装置2に出力する。
【0064】
また、ステップS12において、変換装置9は、波形データを規格化してもよい。変換装置9は、例えば周波数毎の強度の最大値を1、最小値を0として、波形データを規格化してもよい。また、変換装置9は、深さYの相当する周波数以外の周波数で共通する周波数箇所の強度を1、最小値を0として規格化してもよい。
【0065】
次にステップS13へ移行し、入力した波形データを圧縮し、圧縮した波形データを復元した復元データを出力する復元モデルを参照し、ステップS12において変換装置9から出力された波形データに基づく復元データを出力する。
【0066】
図5は、復元モデルを示す図である。復元モデルは、入力した波形データを圧縮し、圧縮した波形データを復元した復元データを出力するモデルである。復元モデルは、入力した波形を圧縮するエンコーダと、圧縮した波形データを復元するデコーダとを有する。また、復元モデルは、ケーブルシースに対する非破壊検査により得られた過去の波形データを学習データとして機械学習により生成された学習済みモデルであってもよい。かかる場合、復元モデルは、学習データの波形データを圧縮し、圧縮した波形データの特徴を抽出し、波形データの特徴を蓄積することで生成される。これにより、復元モデルは、入力した波形データを圧縮し、学習データの特徴に基づいて、圧縮した波形データを復元することが可能となる。復元モデルは、例えばAutoEncoder等の機械学習により生成されてもよい。また、波形データの特徴は、入力した波形データを再現し得る情報である。また、波形データの圧縮は、波形データをより低い次元のデータに変換することである。例えば、波形データは、周波数と周波数毎との強度で示されてもよいが、かかる場合、波形データの圧縮とは、特徴を有する周波数を限定することである。また、波形データの復元は、波形データをより高い次元のデータに変換することである。例えば、波形データは、周波数と周波数の強度とで示されてもよいが、かかる場合、波形データの復元とは、特徴を限定した周波数から元の周波数へデータを変換することである。
【0067】
学習データとなる波形データは、例えばケーブルシース71に対する非破壊検査により得られた過去の波形データを用いてもよい。この波形データは、例えば2500~50000Hzまでの10Hz毎の周波数の弾性波を加振して非破壊検査により得られた過去の複数の波形データを用いてもよい。また、波形データは、例えば2500~50000Hzまでの10Hz毎の周波数の波形データをシースや弾性波速度を仮定して擬似的に生成した人工の波形データを用いてもよい。
【0068】
また、学習データは、非破壊検査したときのケーブルシース71のグラウト充填状況により、正常データと異常データとに分類してもよい。例えば学習データは、非破壊検査したときのケーブルシース71のグラウト充填状況が予め設定された閾値以上の充填度であった場合に得られた波形データを正常データとし、閾値より下の充填度であった場合に得られた波形データを異常データとしてもよい。具体的には、充填度が100%であった場合に得られた波形データを正常データとし、充填度が100%未満であった場合に得られた波形データを異常データとしてもよい。また、学習データは、非破壊検査したときのケーブルシース71のグラウト充填状況が予め設定された閾値以上の複数種類の充填度であった場合に得られた複数の波形データを正常データとし、閾値未満の複数種類の充填度であった場合に得られた波形データを異常データとしてもよい。具体的には、閾値を80%として、充填度が100%、及び90%であった場合に得られたそれぞれの波形データを正常データとし、充填度が70%、及び50%であった場合に得られたそれぞれの波形データを異常データとしてもよい。また、学習データは、規格化した波形データであってもよい。
【0069】
また、復元モデルは、過去の波形データの周波数毎の強度、及び周波数帯をばらつかせて新たに波形データを生成し、生成した波形データをさらに学習データとしてもよい。例えば復元モデルは、過去に実測した波形データの周波数毎の強度の70%~130%の強度を有する波形データを生成し、生成した波形データをさらに学習データとしてもよい。これは、弾性波を入力する装置の入力地ばらつきを考慮した値である。また、復元モデルは、過去の波形データの他に、擬似的に生成した波形データを学習データとして用いてもよい。擬似的に生成した波形データは、想定するシース深さと想定する弾性波速度を用いて,算出された仮想のピークを有する波形のデータである。また、擬似的に生成した波形データは、人工的に作成した波形データを含む。また、復元モデルは、過去の波形データの周波数との差が200Hz以下の周波数を有する波形データを新たに生成し、生成した波形データを学習データとして取得してもよい。これは、評価する弾性波速度がコンクリート構造物で一様ではなくばらつきを有すること、ケーブルシース位置の設計と施工に誤差を有することを考慮した値である。これにより、グラウト充填状況を評価するときに、取得する波形データの周波数毎の強度及び周波数にばらつきがある場合においても、精度よく評価することが可能となる。
【0070】
復元モデルは、入力層と出力層とのノード61の数が同じであり、中間層のノード61の数が、入力層のノード61の数よりも少なくなる。例えば入力層と出力層のノード61の数を4750個とし、中間層のノード61の数を8個としてもよい。また、復元モデルにおいて、入力層の各ノード61は、中間層の各ノード61と3段階以上の連関度により接続され、中間層の各ノード61は、出力層の各ノード61と3段階以上の連関度により接続される。また、入力層と中間層との間、又は中間層と出力層との間にそれぞれ複数の隠れ層を設けてもよい。隠れ層の各ノード61は、隣接する層の各ノード61に3段階以上の連関度により接続される。
【0071】
連関度は、各ノード61間での的確性を示すものである。連関度は、例えば波形データAを入力とする入力層のノード61aに対して、隠れ層のノード61bとノード61cとがそれぞれ連関度30%、連関度60%で接続されている。かかる場合、連関度が高いノード61cの方がノード61bと比較して、的確な判断に近いということになる。この連関度は例えば5段階又は百分率等により示されてもよい。
【0072】
グラウト充填状況評価システム1は、予め上述した復元モデルを生成しておき、データベース3に記憶し、評価装置2の要請に応じて、評価装置2に復元モデルを出力してもよい。ステップS13において、評価装置2は、上述した復元モデルを参照し、ステップS12により出力された波形データに基づく復元データを出力する。
【0073】
また、ステップS13において、評価装置2は、正常データのみを学習データとして生成された復元モデル参照し、復元データを出力してもよい。これにより、復元データは、正常データの特徴に基づいて復元されるため、正常データの特徴に基づいた波形データとなる。これにより、波形データと正常データとの比較が可能となり、高精度にグラウト充填状況を評価することができる。
【0074】
また、ステップS13において、評価装置2は、異常データのみを学習データとして生成された復元モデル参照し、復元データを出力してもよい。これにより、復元データは、異常データの特徴に基づいて復元されるため、異常データの特徴に基づいた波形データとなる。これにより、波形データと異常データとの比較が可能となり、高精度にグラウト充填状況を評価することができる。
【0075】
また、データベース3は、複数の復元モデルを学習データの特徴に紐づけてそれぞれ記憶するようにしてもよい。例えば、復元モデルはそれぞれ学習データを取得したときの、ユーザから入力されたPC構造物7の構成部材に関する構成情報に紐づけて記憶されてもよい。かかる場合、ステップS13において、評価装置2は、例えば操作部25を介して、ユーザから入力された構成情報を取得し、取得した構成情報と同一又は対応する構成情報と紐づく復元モデルを参照し、復元データを出力する。これにより、構成情報に応じて、それぞれ適切な復元モデルを参照することが可能となり、PC構造物7の構成部材が異なる場合においても、精度よくグラウト充填状況を評価することが可能となる。なお、PC構造物7の構成部材に関する構成情報とは、例えばT桁、I桁、箱桁などの構造形式や張出床版、ウェブ、フランジなどの部位を示す情報を意味する。
【0076】
また、復元モデルはそれぞれ学習データを取得したときの、ユーザから入力されたPC構造物7の断面形状に関する形状情報に紐づけて記憶されてもよい。かかる場合、ステップS13において、評価装置2は、例えば操作部25を介して、ユーザから入力された形状情報を取得し、当該形状情報と同一又は対応する形状情報と紐づく復元モデルを参照し、復元データを出力する。これにより、形状情報に応じて、それぞれ適切な復元モデルを参照することが可能となり、PC構造物7の断面形状が異なる場合においても、精度よくグラウト充填状況を評価することが可能となる。なお、PC構造物7の断面形状に関する形状情報とは、例えば部材の厚さ、幅、長さ等で、部材端からの距離も含む。
【0077】
また、復元モデルはそれぞれ学習データを取得したときの、ユーザから入力されたPC構造物7の表面から新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシース71までの深さ情報に紐づけて記憶されてもよい。かかる場合、ステップS13において、評価装置2は、例えば操作部25を介して、ユーザから入力された深さ情報を取得し、当該深さ情報と同一又は対応する深さ情報と紐づく復元モデルを参照し、復元データを出力する。これにより、深さ情報に応じて、それぞれ適切な復元モデルを参照することが可能となり、PC構造物7の表面からケーブルシースまでの深さが異なる場合においても、精度よくグラウト充填状況を評価することが可能となる。
【0078】
また復元モデルは、それぞれ学習データを取得したときの、ユーザから入力された付帯情報と復元モデルを紐づけて記憶されてもよい。付帯情報は、ケーブルシース71の形態情報、ケーブルシース71の配置情報、ケーブルシース71が設けられるPC構造物7内に設けられた緊張材(PC鋼材)に関する緊張材情報、ケーブルシース71内に充填されるグラウトに関するグラウト情報、ケーブルシース71が設けられるPC構造物内に打設されるコンクリート情報、ケーブルシース71に対する非破壊検査の試験条件情報、ケーブルシース71が設けられるPC構造物7の表面状態情報、ケーブルシース71が設けられるPC構造物7内の構成情報の何れか1以上を含む。
【0079】
ケーブルシース71の形態情報としては、ケーブルシース71の長さ、ケーブルシース71の径、ケーブルシースの材質、ケーブルシースの腐食程度,ケーブルシースが腐食により消失した等である。ケーブルシース71の配置情報は、PC構造物7内におけるケーブルシース71の配置形態に関するあらゆる情報が含まれる。このケーブルシース71の配置情報の例としては、例えば、正面視におけるケーブルシースが並列で配置されているか否か、またケーブルシース71間の間隔等に関する情報が含まれる。緊張材情報としては、PC鋼材の長さ、PC鋼材の種類や、緊張力等である。グラウト情報は、グラウトのヤング係数等である。コンクリート情報は、PC構造物7に打設されたコンクリートのヤング係数やかぶりコンクリートの有無等である。非破壊検査の試験条件情報は、衝撃弾性波法の場合には、検査対象を打撃する鋼球の衝撃力等に関する情報が含まれる。非破壊検査の試験条件情報は、インパクトエコー法の場合には、検査対象を打撃するための打撃用鋼球径等に関する情報が含まれる。非破壊検査の試験条件情報は、超音波法の場合には、検査対象に向けて付与する超音波の周波数等に関する情報が含まれる。PC構造物7の表面状態情報は、凹凸の有無や、ひび割れ状況、乾湿状況等の情報が含まれる。PC構造物7内の構成情報は、鉄筋の配置間隔等である。
【0080】
図6(a)は、グラウトの充填度が100%のときに取得した波形データと正常データを学習データとして生成された復元モデルを参照し、圧縮した波形データを復元した復元データとを示す図である。
図6(b)は、グラウトの充填度が0%のときに取得した波形データと正常データを学習データとして生成された復元モデルを参照し、圧縮した波形データを復元した復元データとを示す図である。
【0081】
ステップS14において、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、評価装置2は、ステップS12において変換された波形データとステップS13において出力された復元データとに基づいて、グラウト充填状況を評価する。評価装置2は、例えばステップS12において変換された波形データとステップS13において出力された復元データとの差分に基づいて、異常値を計算してもよい。かかる場合、例えば、波形データと復元データとの各周波数の周波数毎の強度の差分値を2乗した値の累計を異常値としてもよい。また、評価装置2は、例えばステップS12において変換された波形データとステップS13において出力された復元データとの比率に基づいて、異常値を計算してもよい。かかる場合、例えば、波形データと復元データとの各周波数の周波数毎の強度の比率に-1を加算したものを2乗した値の累計を異常値としてもよい。この異常値は、波形データと復元データとの差分に応じて大きくなるため、波形データと復元データとの違いを示す指標となる。復元データは、ステップS13において参照した復元モデルの学習データの特徴が反映された波形データであるため、異常値が大きいということは波形データには学習データの特徴が含まれていないということを示す。例えば
図6(a)及び
図6(b)に示すように、正常データを学習データとして生成された復元モデルを参照した場合、グラウトの充填度が100%のときに取得した波形データを入力した
図6(a)と比較して、グラウトの充填度が100%のときに取得した波形データを入力した
図6(b)の異常値の方が大きくなる。これにより、例えば学習データを正常データとすることで波形データと正常データとの類似度を評価することが可能となり、学習データを異常データとすることで、波形データと異常データとの類似度を評価することが可能となる。これにより、これにより、周波数が卓越する場合、又はケーブルシース71が複数配置された構造物において、グラウト充填状況の評価を行う場合においても、グラウトの充填状況を高精度に評価することが可能となる。
【0082】
また、ステップS14において、評価装置2は、複数の波形データと、当該波形データから得られたそれぞれの復元データとの比較に基づいて、それぞれ異常値を計算し、計算した複数の異常値の平均を異常値としてもよい。
【0083】
次にステップS15へ移行し、ステップS14において評価したケーブルシース71内へのグラウト充填状況を表示部23を介して表示する。これによりユーザは、表示部23を視認することにより、これからケーブルシース71内へのグラウト充填状況を即座に把握することが可能となる。
【0084】
更に本発明では、上述した連関度を更新させるようにしてもよい。この更新は、例えばインターネットを始めとした公衆通信網を介して提供された情報を反映させるようにしてもよい。公衆通信網から取得可能なサイト情報や書き込み等を通じて、入力パラメータと、出力解(グラウトの充填状況の評価結果)との関係性について新たな知見が発見された場合には、当該知見に応じて連関度を上昇させ、或いは下降させる。
【0085】
この連関度の更新は、公衆通信網から取得可能な情報に基づく場合以外に、専門家による研究データや論文、学会発表や、新聞記事、書籍等の内容に基づいてシステム側又はユーザ側が人為的に、又は自動的に更新するようにしてもよい。これらの更新処理においては人工知能を活用するようにしてもよい。
【0086】
次に、本発明を適用したグラウト充填状況評価システム1の評価結果について図を用いて説明する。
【0087】
図7は、コンクリート供試体70の模式図である。コンクリート供試体70は、建造物を模したコンクリート部材からなる供試体である。コンクリート供試体70は、例えば短辺400mm、長辺が1000mmとなる長方形を断面とする直方体である。コンクリート供試体70は、内部にケーブルシース71を備える。Yは、コンクリート供試体70の下面70aからケーブルシース71までの深さを示す。
【0088】
このコンクリート供試体70の下面70aにZ方向から弾性波を加振する非破壊検査により取得した波形データを、本発明を適用したグラウト充填状況評価システム1に入力する。また、このとき、深さYが120mmとし、ケーブルシース71のグラウト充填度が0%、100%の充填度毎に取得した波形データを用いて評価を行う。また、このとき、グラウト充填度が100%のときに取得した波形データを学習データとして生成した復元モデルを用いる。
【0089】
図8は、グラウト充填度毎のデータ数に対する異常値を示すグラフである。
図8において、それぞれ三角の凡例は、グラウト充填度が100%、円形の凡例は、グラウト充填度が0%のときの異常値を示す。また、大凡例はグラウト充填度毎の異常値の平均を示す。
【0090】
図8に示すように、グラウトの充填度が0%と100%との場合を比較すると、グラウト充填度が、100%の場合の方が異常値が低くなり、グラウト充填度が0%の場合では、異常値が大きくなる。このことから、復元データは、グラウト充填度が100%の場合に取得した正常データの特徴に基づいて復元されている。これにより、本発明を適用したグラウト充填状況評価システム1を用いることで、グラウトの充填状況を高精度に評価することが可能となる。
【符号の説明】
【0091】
1 グラウト充填状況評価システム
2 評価装置
3 データベース
7 PC構造物
8 非破壊検査部
9 変換装置
21 内部バス
23 表示部
24 制御部
25 操作部
26 通信部
27 探索部
28 記憶部
61 ノード
70 コンクリート供試体
71 ケーブルシース
107 PC構造物
171 ケーブルシース
【手続補正書】
【提出日】2022-11-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PC構造物のケーブルシース内へのグラウト充填状況を評価するためのグラウト充填状況評価システムにおいて、
グラウト充填状況を評価するケーブルシースに対して非破壊検査を行うことにより得られた波形データを取得する取得手段と、
過去の波形データ又は疑似的に生成した波形データを学習データとして機械学習により生成され、入力した波形データにおいて特徴を有する周波数を限定し、限定した前記特徴に基づいて波形データを復元した復元データを出力する復元モデルを参照し、前記取得手段により取得された波形データに基づく復元データを出力する出力手段と、
前記出力手段により出力された復元データと前記取得手段により取得された波形データとに基づいて、前記グラウト充填状況を評価する評価手段とを備えること
を特徴とするグラウト充填状況評価システム。
【請求項2】
前記出力手段は、グラウトの充填度が閾値以上のケーブルシースに対する非破壊検査により得られた過去の波形データを学習データとする前記復元モデルを参照すること
を特徴とする請求項1記載のグラウト充填状況評価システム。
【請求項3】
前記出力手段は、PC構造物の表面からケーブルシースまでの深さに応じて、周波数が異なる弾性波を入力する非破壊検査により取得された波形データを学習データとする前記復元モデルを参照すること
を特徴とする請求項1に記載のグラウト充填状況評価システム。
【請求項4】
前記出力手段は、前記過去の波形データの周波数毎の強度の70%~130%の強度を有する波形データを学習データとする前記復元モデルを参照すること
を特徴とする請求項1に記載のグラウト充填状況評価システム。
【請求項5】
前記出力手段は、前記過去の波形データの周波数との差が200Hz以下の周波数を有する波形データを学習データとする前記復元モデルを参照すること
を特徴とする請求項1に記載のグラウト充填状況評価システム。
【請求項6】
前記取得手段は、新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシースを有するPC構造物の構成部材に関する構成情報を取得し、
前記出力手段は、前記取得手段により取得された構成情報に紐づく復元モデルを参照すること
を特徴とする請求項1に記載のグラウト充填状況評価システム。
【請求項7】
前記取得手段は、新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシースを有するPC構造物の断面形状に関する形状情報を取得し、
前記出力手段は、前記取得手段により取得された形状情報に紐づく復元モデルを参照すること
を特徴とする請求項1に記載のグラウト充填状況評価システム。
【請求項8】
前記取得手段は、PC構造物の表面から新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシースまでの深さに関する深さ情報を取得し、
前記出力手段は、前記取得手段により取得された深さ情報に紐づく復元モデルを参照すること
を特徴とする請求項1に記載のグラウト充填状況評価システム。
【請求項9】
前記取得手段は、PC構造物の表面から新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシースに関する付帯情報を取得し、
前記出力手段は、前記取得手段により取得された付帯情報に紐づく復元モデルを参照すること
を特徴とする請求項1に記載のグラウト充填状況評価システム。
【請求項10】
PC構造物のケーブルシース内へのグラウト充填状況を評価するためのグラウト充填状況評価プログラムにおいて、
グラウト充填状況を評価するケーブルシースに対して非破壊検査を行うことにより得られた波形データを取得する取得ステップと、
過去の波形データ又は疑似的に生成した波形データを学習データとして機械学習により生成され、入力した波形データにおいて特徴を有する周波数を限定し、限定した前記特徴に基づいて波形データを復元した復元データを出力する復元モデルを参照し、前記取得ステップにより取得された波形データに基づく復元データを出力する出力ステップと、
前記出力ステップにより出力された復元データと前記取得ステップにより取得された波形データとに基づいて、前記グラウト充填状況を評価する評価ステップとコンピュータに実行させること
を特徴とするグラウト充填状況評価プログラム。
【請求項11】
PC構造物のケーブルシース内へのグラウト充填状況を評価するためのグラウト充填状況評価プログラムにおいて、
グラウト充填状況を評価するケーブルシースに対して衝撃弾性波法を行うことにより得られた波形データを取得する取得ステップと、
過去の波形データ又は疑似的に生成した波形データを学習データとして機械学習により生成され、入力した波形データにおいて特徴を有する周波数を限定し、限定した前記特徴に基づいて波形データを復元した復元データを出力する復元モデルを参照し、前記取得ステップにより取得された波形データに基づく復元データを出力する出力ステップと、
前記出力ステップにより出力された復元データと前記取得ステップにより取得された波形データとに基づいて、前記グラウト充填状況を評価する評価ステップとをコンピュータに実行させること
を特徴とするグラウト充填状況評価プログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
第1発明に係るグラウト充填状況評価システムは、PC構造物のケーブルシース内へのグラウト充填状況を評価するためのグラウト充填状況評価システムにおいて、グラウト充填状況を評価するケーブルシースに対して非破壊検査を行うことにより得られた波形データを取得する取得手段と、過去の波形データ又は疑似的に生成した波形データを学習データとして機械学習により生成され、入力した波形データにおいて特徴を有する周波数を限定し、限定した前記特徴に基づいて波形データを復元した復元データを出力する復元モデルを参照し、前記取得手段により取得された波形データに基づく復元データを出力する出力手段と、前記出力手段により出力された復元データと前記取得手段により取得された波形データに基づいて、前記グラウト充填状況を評価する評価手段とを備えることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
第2発明に係るグラウト充填状況評価システムは、第1発明において、前記出力手段は、グラウトの充填度が閾値以上のケーブルシースに対する非破壊検査により得られた過去の波形データを学習データとする前記復元モデルを参照することを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
第3発明に係るグラウト充填状況評価システムは、第1発明において、前記出力手段は、PC構造物の表面からケーブルシースまでの深さに応じて、周波数が異なる弾性波を入力する非破壊検査により取得された波形データを学習データとする前記復元モデルを参照することを特徴とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
第4発明に係るグラウト充填状況評価システムは、第1発明において、前記出力手段は、前記過去の波形データの周波数毎の強度の70%~130%の強度を有する波形データを学習データとする前記復元モデルを参照することを特徴とする。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
第5発明に係るグラウト充填状況評価システムは、第1発明において、前記出力手段は、前記過去の波形データの周波数との差が200Hz以下の周波数を有する波形データを学習データとする前記復元モデルを参照することを特徴とする。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
第6発明に係るグラウト充填状況評価システムは、第1発明において、前記取得手段は、新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシースを有するPC構造物の構成部材に関する構成情報を取得し、前記出力手段は、前記取得手段により取得された構成情報に紐づく復元モデルを参照することを特徴とする。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
第7発明に係るグラウト充填状況評価システムは、第1発明において、前記取得手段は、新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシースを有するPC構造物の断面形状に関する形状情報を取得し、前記出力手段は、前記取得手段により取得された形状情報に紐づく復元モデルを参照することを特徴とする。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
第8発明に係るグラウト充填状況評価システムは、第1発明において、前記取得手段は、PC構造物の表面から新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシースまでの深さに関する深さ情報を取得し、前記出力手段は、前記取得手段により取得された深さ情報に紐づく復元モデルを参照することを特徴とする。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
第9発明に係るグラウト充填状況評価システムは、第1発明において、前記取得手段は、PC構造物の表面から新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシースに関する付帯情報を取得し、前記出力手段は、前記取得手段により取得された付帯情報に紐づく復元モデルを参照することを特徴とする。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
第10発明に係るグラウト充填状況評価プログラムは、PC構造物のケーブルシース内へのグラウト充填状況を評価するためのグラウト充填状況評価プログラムにおいて、グラウト充填状況を評価するケーブルシースに対して非破壊検査を行うことにより得られた波形データを取得する取得ステップと、過去の波形データ又は疑似的に生成した波形データを学習データとして機械学習により生成され、入力した波形データにおいて特徴を有する周波数を限定し、限定した前記特徴に基づいて波形データを復元した復元データを出力する復元モデルを参照し、前記取得ステップにより取得された波形データに基づく復元データを出力する出力ステップと、前記出力ステップにより出力された復元データと前記取得ステップにより取得された波形データとに基づいて、前記グラウト充填状況を評価する評価ステップとコンピュータに実行させることを特徴とする。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
第11発明に係るグラウト充填状況評価プログラムは、PC構造物のケーブルシース内へのグラウト充填状況を評価するためのグラウト充填状況評価プログラムにおいて、グラウト充填状況を評価するケーブルシースに対して衝撃弾性波法を行うことにより得られた波形データを取得する取得ステップと、過去の波形データ又は疑似的に生成した波形データを学習データとして機械学習により生成され、入力した波形データにおいて特徴を有する周波数を限定し、限定した前記特徴に基づいて波形データを復元した復元データを出力する復元モデルを参照し、前記取得ステップにより取得された波形データに基づく復元データを出力する出力ステップと、前記出力ステップにより出力された復元データと前記取得ステップにより取得された波形データとに基づいて、前記グラウト充填状況を評価する評価ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
第1発明~第11発明によれば、新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシースに対して非破壊検査を行うことにより得られた波形データを、復元モデルに入力し、出力された復元データと波形データとに基づいて、グラウト充填状況を評価する。これにより、新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシースに対して非破壊検査を行うことにより得られた波形データを復元モデルに入力し、出力された復元データと波形データとに基づいて、新たに取得した波形データとグラウトが所定の充填度のときの波形データと比較したときの異常値を評価することが可能となる。これにより、周波数が卓越する場合、又はケーブルシースが複数配置された構造物において、グラウト充填状況の評価を行う場合においても、グラウトの充填状況を高精度に評価することが可能となる。また、出力手段は、ケーブルシースに対する非破壊検査により得られた過去の波形データを学習データとして機械学習により生成された復元モデルを参照するこれにより、例えばグラウトが100%充填されているときの波形データを学習データとして、特徴データを抽出し、新たにグラウト充填状況を評価するケーブルシースに対して非破壊検査を行うことにより得られた波形データを復元モデルに入力し、出力された復元データと波形データとに基づいて、新たに取得した波形データとグラウトが所定の充填度のときの波形データと比較したときの異常値を評価することが可能となる。これにより、グラウトの充填状況をさらに高精度に評価することが可能となる。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
特に、第2発明によれば、データベースは、グラウトの充填度が閾値以上のケーブルシースに対する非破壊検査により得られた過去の波形データを学習データとする復元モデルを記憶する。これにより、グラウトの充填度が高いときの波形データを学習データとすることが可能となる。例えばグラウトの充填度が100%のときに得られた波形データを学習データとすることで、新たに得られた波形データと学習データとを比較したときの異常値を評価することが可能となる。これにより、さらに高精度にグラウト充填状況を評価することができる。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
特に、第3発明によれば、データベースは、PC構造物の表面からケーブルシースまでの深さに応じて、周波数が異なる弾性波を入力する非破壊検査により取得された波形データを学習データとする復元モデルを記憶する。これにより、深さに応じて、最適な波形データから抽出した特徴データを学習データとすることが可能となり、さらに高精度にグラウト充填状況を評価することができる。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
特に、第4発明によれば、データベースは、過去の波形データの周波数毎の強度の70%~130%の強度を有する波形データを生成し、生成した波形データをさらに学習データとする復元モデルを記憶する。これにより、グラウト充填状況を評価するときに、取得する波形データの周波数毎の強度にばらつきがある場合においても、精度よく評価することが可能となる。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
特に、第5発明によれば、データベースは、過去の波形データの周波数との差が200Hz以下の周波数を有する波形データを生成し、生成した波形データを学習データとする復元モデルを記憶する。これにより、グラウト充填状況を評価するときに、取得する波形データの周波数にばらつきがある場合においても、精度よく評価することが可能となる。
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
特に、第6発明によれば、出力手段は、構成情報に紐づく復元モデルを参照する。これにより、構成情報に応じて、それぞれ適切な復元モデルを参照することが可能となり、PC構造物の構成部材が異なる場合においても、精度よくグラウト充填状況を評価することが可能となる。
【手続補正21】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
特に、第7発明によれば、出力手段は、形状情報に紐づく復元モデルを参照する。これにより、形状情報に応じて、それぞれ適切な復元モデルを参照することが可能となり、PC構造物の断面形状が異なる場合においても、精度よくグラウト充填状況を評価することが可能となる。
【手続補正22】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
特に、第8発明によれば、出力手段は、深さ情報に紐づく復元モデルを参照する。これにより、深さ情報に応じて、それぞれ適切な復元モデルを参照することが可能となり、PC構造物の表面からケーブルシースまでの深さが異なる場合においても、精度よくグラウト充填状況を評価することが可能となる。
【手続補正23】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
特に、第9発明によれば、出力手段は、ケーブルシースに関する付帯情報に紐づく復元モデルを参照する。これにより、付帯情報に応じて、それぞれ適切な復元モデルを参照することが可能となり、ケーブルシースの形態情報、ケーブルシースの配置情報、ケーブルシースが設けられるPC構造物に設けられた緊張材(PC鋼材)に関する緊張材情報、ケーブルシース内に充填されるグラウトに関するグラウト情報、ケーブルシースが設けられるPC構造物内に打設されるコンクリート情報、ケーブルシースに対する非破壊検査の試験条件情報、ケーブルシースが設けられるPC構造物の表面状態などが異なる場合においても、精度よくグラウト充填状況を評価することが可能となる。