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特開2024-506162,5-フランジカルボン酸ならびにその中間体および誘導体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050616
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】2,5-フランジカルボン酸ならびにその中間体および誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/68 20060101AFI20240403BHJP
   B01J 35/61 20240101ALI20240403BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20240403BHJP
   B01J 23/52 20060101ALI20240403BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
C07D307/68
B01J35/61
B01J23/42 Z
B01J23/52 Z
C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】29
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003014
(22)【出願日】2024-01-12
(62)【分割の表示】P 2018555833の分割
【原出願日】2017-01-12
(31)【優先権主張番号】62/278,332
(32)【優先日】2016-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】518250715
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーユーイー
【氏名又は名称原語表記】STORA ENSO OYJ
【住所又は居所原語表記】Kanavaranta 1,00160 Helsinki Finland
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ソコロフスキー,ヴァレリー
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー,ヴィンセント,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ボウジー,トマス,アール.
(72)【発明者】
【氏名】ダイアモンド,ゲイリー,エム.
(72)【発明者】
【氏名】ディアス,エリック,エル.
(72)【発明者】
【氏名】ジュー,グアン
(72)【発明者】
【氏名】ロングマイアー,ジェイムズ,エム.
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン,スタンリー
(72)【発明者】
【氏名】トーセル,スタファン
(72)【発明者】
【氏名】ラヴレンコ,マイヤ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】フラン系酸化基質から2,5-フランジカルボン酸(FDCA)経路生成物を製造する方法を提供する。
【解決手段】フラン系酸化基質を酸化させてFDCA経路生成物を得るための反応混合物を形成させるのに十分な条件下において、フラン系酸化基質と酸化溶媒とを含む酸化供給原料を、不均一系酸化触媒の存在下で酸素と接触させて、FDCA経路生成物を生成させることを含み、前記酸化溶媒が、有機溶媒および多成分溶媒からなる群から選択される溶媒であること、前記反応混合物に実質的に塩基が添加されていないこと、前記不均一系酸化触媒が固体担体および貴金属を含むこと、ならびに前記不均一系酸化触媒が複数の細孔を含み、20m/g~500m/gの範囲の比表面積またはこの範囲内の任意の値の比表面積を有することを特徴とする方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラン系酸化基質から2,5-フランジカルボン酸(FDCA)経路生成物を製造する方法であって、
(a)フラン系酸化基質を酸化させてFDCA経路生成物を得るための反応混合物を形成させるのに十分な条件下において、フラン系酸化基質と酸化溶媒とを含む酸化供給原料を、不均一系酸化触媒の存在下で酸素と接触させて、FDCA経路生成物を生成させること
を含み、
前記酸化溶媒が、有機溶媒および多成分溶媒からなる群から選択される溶媒であること、
前記反応混合物に実質的に塩基が添加されていないこと、
前記不均一系酸化触媒が固体担体および貴金属を含むこと、ならびに
前記不均一系酸化触媒が複数の細孔を含み、20m/g~500m/gの範囲の比表面積またはこの範囲内の任意の値の比表面積を有すること
を特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年1月13日に出願された米国仮出願第62/278,332号の優先権の利益を主張するものであり、この出願は引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される。
【0002】
本開示は、2,5-フランジカルボン酸経路生成物、これに関連するエステル類、アミド類およびポリマー類、ならびにこれらの組成物を製造するための新規方法に関する。
【背景技術】
【0003】
再生可能資源から低コストで製造される2,5-フランジカルボン酸(FDCA)およびその誘導体は、様々な商業用途に使用できるという大きな可能性を秘めている。たとえば、“Top Value Added Chemicals from Biomass,” Volume I - Results of Screening for Potential Candidates from Sugars and Synthesis Gas, produced by Staff at Pacific Northwest National Laboratory (PNNL), National Renewable Energy Laboratory (NREL), Office of Biomass Program (EERE); Eds. T. Werpy and G. Petersen (2003)を参照されたい。FDCAは、特定の用途において、テレフタル酸やイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に取って代わることができると考えられている(A. Corma, et al., Chem. Rev., 107:2411 (2007))。さらに、FDCAおよびその誘導体は、他の汎用化学品の製造にも有用である(上掲)。たとえば、FDCAを水素化することによって、ナイロンの製造で使用されるアジピン酸を得てもよい(上掲)。芳香族ジカルボン酸は、1年あたり数千万トン単位でポリエステルやポリアミドの製造に使用されている。たとえば“Modern Polyesters: Chemistry and Technology of Polyesters and Copolyesters,” Eds. J. Scheirs and T. Long; Wiley (2013)を参照されたい。
【0004】
FDCAの製造方法は前記文献で報告されている。たとえば、Cormaらは、低選択率および低収率ではあるものの、5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)を硝酸で直接酸化してFDCAを製造できることを報告している(A. Cormaら、上掲)。また、Verdeguerらは、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの存在下で、炭素に担持させた5%Ptを触媒として使用してHMFを酸化することによりFDCAを得る別の製造方法を報告しているが、その収率は70%であることが報告されている(J. Mol. Catal. 85:327 (1993))。この文献では、炭素に担持させた5%Pt/5%Pb触媒製剤を1.25M塩基性溶液の存在下で使用することによって、FDCAの収率を80%まで上昇させることができたことが報告されている(上掲)。ただし、塩基の量を0.1Mまで低下させると、HMFからFDCAへの転化は起こらないことが報告されており、高濃度の塩基が、FDCAの収率の上昇に重要な必要条件であることが示唆されている(上掲文献を参照されたい)。Bessonらによって過去に報告されている別の方法では、強塩基(NaCO)とHMFの比率を2:4とした反応条件下で、炭素に担持させたPt/Bi触媒を使用することによって、100%に近い選択率でFDCAを製造できることが報告されている(WO2014/122319を参照されたい)。また、この反応に塩基(たとえばNaOH、KOH、NaCO)を加えた補助実験では、FDCAの塩(たとえばナトリウム塩またはカリウム塩)が生成されることが示されている。FDCAの塩は、FDCA自体よりも水に溶けやすいことが報告されていることから、HMFの濃度をさらに高くして転化反応を実施できると考えられるため、FDCAの塩の生成は有利であると考えられる(上掲)。しかしながら、FDCAの塩の生成は、FDCAを回収するためにさらなる処理が必要であるという欠点がある(たとえば、FDCAの塩からFDCAを分離する工程および/またはFDCAの塩からFDCAに転化する工程がさらに必要となる)。
【0005】
米国特許第8,338,626号には、テレフタル酸の製造において使用される均一触媒系(Co/Mn/Br)とよく似た均一触媒系の存在下で、モノアルコキシメチルフルフラールまたはジアルコキシメチルフルフラールを酸化させることによって、FDCAおよびそのエステルを製造できることが記載されている。この特許文献では、フランジカルボン酸類(主要構成成分としてFDCAを含む)の総収率が最大で82%であったことが報告されている(上掲)。米国特許第7,700,788号には、アセチルアセトナト白金から特定の操作によって調製された5%Pt/ZrO触媒を使用して、高い酸素(空気)圧下でHMFを酸化してFDCAを得る方法が記載されている。この方法では、塩基の存在下、酸素圧150psiにおいて、3重量%のHMFから90%の収率でFDCAが得られている。
【0006】
米国特許第4,977,283号には、活性炭担持Pt(5%)触媒の存在下において、水とジエチレングリコールジメチルエーテルとからなる塩基非含有溶液中で約10%の濃度のHMFを酸化する方法が記載されている。ただし、この方法では、5-ホルミルフラン-2-カルボン酸が主生成物として得られ、FDCAは低収率(8%)でしか得られていない。
【0007】
FDCAは、プラスチックや他の材料の製造において使用される石油系化合物の代替となりうるバイオ再生可能資源由来化合物であることから、大量のFDCAを高収率で得ることが可能な、商業規模で利用できる製造方法が望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、本開示は、
フラン系酸化基質から2,5-フランジカルボン酸(FDCA)経路生成物を製造する方法であって、
(a)フラン系酸化基質を酸化させてFDCA経路生成物を得るための反応混合物を形成させるのに十分な条件下において、フラン系酸化基質と酸化溶媒とを含む酸化供給原料を、不均一系酸化触媒の存在下で酸素と接触させて、FDCA経路生成物を生成させること
を含み、
前記酸化溶媒が、有機溶媒および多成分溶媒からなる群から選択される溶媒であること、
前記反応混合物に実質的に塩基が添加されていないこと、
前記不均一系酸化触媒が固体担体および貴金属を含むこと、ならびに
前記不均一系酸化触媒が複数の細孔を含み、20m/g~500m/gの範囲の比表面積を有すること
を特徴とする方法に関する。
前記貴金属は、白金、金、その組み合わせのいずれであってもよい。前記酸化溶媒は、水および水混和性非プロトン性有機溶媒を含む多成分溶媒であってもよい。前記水混和性有機溶媒は水混和性非プロトン性有機溶媒であってもよい。前記水混和性非プロトン性有機溶媒は、テトラヒドロフラン、グライム類、ジオキサン、ジオキソラン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン(「NMP」)、メチルエチルケトン(「MEK」)およびγ-バレロラクトンからなる群から選択することができる。前記グライム類は、モノグライム(1,2-ジメトキシエタン)、エチルグライム、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、エチルジグライム、トリグライム、ブチルジグライム、テトラグライムおよびポリグライム類からなる群から選択することができる。前記水混和性有機溶媒は、水混和性軽質有機溶媒および水混和性重質有機溶媒からなる群から選択することができる。水と前記水混和性有機溶媒の比率は、1:6~6:1(v/v)の範囲であってもよく、この範囲内の任意の値であってもよい。水と前記水混和性有機溶媒の比率は1:1(v/v)であってもよい。前記水混和性有機溶媒は、少なくとも10vol%の多成分溶媒であってもよい。
【0009】
前記酸化溶媒は、水および2種の水混和性有機溶媒を含む多成分溶媒であってもよい。前記水混和性有機溶媒はいずれも水混和性非プロトン性有機溶媒であってもよい。前記水混和性非プロトン性有機溶媒はそれぞれ、テトラヒドロフラン、グライム類、ジオキサン、ジオキソラン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン(「NMP」)、メチルエチルケトン(「MEK」)およびγ-バレロラクトンからなる群から独立して選択することができる。
【0010】
前記フラン系酸化基質は5-(ヒドロキシメチル)フルフラール(HMF)であってもよい。前記フラン系酸化基質は、ジホルミルフラン(DFF)、ヒドロキシメチルフランカルボン酸(HMFCA)およびホルミルフランカルボン酸(FFCA)からなる群から選択することができる。
【0011】
前記酸化供給原料に含まれる前記フラン系酸化基質の濃度は、少なくとも5重量%であってもよい。前記酸化供給原料中の前記フラン系酸化基質の濃度は少なくとも10重量%であってもよい。
【0012】
前記不均一系酸化触媒中の前記貴金属の担持量は、該不均一系酸化触媒の重量の0.3%~5%の範囲であってもよく、この範囲内の任意の値であってもよい。前記不均一系酸化触媒は助触媒をさらに含んでいてもよい。
【0013】
前記固体担体は、金属酸化物、炭素質材料、ポリマー、金属ケイ酸塩、金属炭化物およびこれらの2種以上の任意の組み合わせからなる群から選択される材料を含んでいてもよい。前記金属酸化物は、シリカ、ジルコニアおよびアルミナからなる群から選択することができる。前記炭素質材料はカーボンブラックであってもよい。前記固体担体は、金属酸化物、炭素質材料、ポリマー、金属ケイ酸塩および金属炭化物からなる群から選択される材料とバインダーとを含む複合材料であってもよい。
【0014】
前記不均一系酸化触媒は、25m/g~350m/gの範囲の比表面積もしくはこの範囲内の任意の値の比表面積、25m/g~250m/gの範囲の比表面積もしくはこの範囲内の任意の値の比表面積、25m/g~225m/gの範囲の比表面積もしくはこの範囲内の任意の値の比表面積、25m/g~200m/gの範囲の比表面積もしくはこの範囲内の任意の値の比表面積、25m/g~175m/gの範囲の比表面積もしくはこの範囲内の任意の値の比表面積、25m/g~150m/gの範囲の比表面積もしくはこの範囲内の任意の値の比表面積、25m/g~125m/gの範囲の比表面積もしくはこの範囲内の任意の値の比表面積、または25m/g~100m/gの範囲の比表面積もしくはこの範囲内の任意の値の比表面積を有していてもよい。前記不均一系酸化触媒の細孔容積の少なくとも50%が、5nm~100nmの範囲の細孔直径またはこの範囲内の任意の値の細孔直径を有する細孔によって占められていてもよい。前記不均一系酸化触媒の細孔容積の10%以下が、0nmよりも大きく10nm未満の細孔直径を有する細孔によって占められていてもよい。前記不均一系酸化触媒の細孔容積の10%以下が、0.1nm~10nmの範囲の細孔直径またはこの範囲内の任意の値の細孔直径を有する細孔によって占められていてもよい。前記不均一系酸化触媒の細孔容積の5%以下が、0nmよりも大きく10nm未満の細孔直径を有する細孔によって占められていてもよい。前記不均一系酸化触媒の細孔容積の5%以下が、0.1nm~10nmの範囲の細孔直径またはこの範囲内の任意の値の細孔直径を有する細孔によって占められていてもよい。前記不均一系酸化触媒の細孔容積の2.5%以下が、0nmよりも大きく10nm未満の細孔直径を有する細孔によって占められていてもよい。前記不均一系酸化触媒の細孔容積の2.5%以下が、0.1nm~10nmの範囲の細孔直径またはこの範囲内の任意の値の細孔直径を有する細孔によって占められていてもよい。前記複数の細孔の平均細孔直径は、10nm~100nmの範囲であってもよく、この範囲内の任意の値であってもよい。
【0015】
前記不均一系酸化触媒は第2の複数の細孔を含んでいてもよく、第1の複数の細孔および第2の複数の細孔の少なくとも一方の平均細孔直径は、10nm~100nmの範囲またはこの範囲内の任意の値である。第1の複数の細孔および第2の複数の細孔のそれぞれの平均細孔直径は、10nm~100nmの範囲であってもよく、この範囲内の任意の値であってもよい。
【0016】
前記不均一系酸化触媒は、0.1cm/g~1.5cm/gの範囲の比細孔容積を有していてもよく、この範囲内の任意の値の比細孔容積を有していてもよい。
【0017】
前記酸素と前記フラン系酸化基質のモル比は、2:1~10:1の範囲であってもよく、この範囲内の任意の値であってもよい。前記酸素と前記フラン系酸化基質のモル比は、2:1~5:1の範囲であってもよく、この範囲内の任意の値であってもよい。前記酸素の圧力(pO2)は50psig~1000psigの範囲であってもよく、この範囲内の任意の値であってもよい。前記酸素の圧力(pO2)は50psig~200psigの範囲であってもよく、この範囲内の任意の値であってもよい。
【0018】
前記接触工程は、50℃~200℃の範囲の温度もしくはこの範囲内の任意の値の温度、80℃~180℃の範囲の温度もしくはこの範囲内の任意の値の温度、または100℃~160℃の範囲の温度もしくはこの範囲内の任意の値の温度で実施することができる。前記FDCA経路生成物は、少なくとも80%の収率で製造することができる。前記FDCA経路生成物は、少なくとも90%の選択率で製造することができる。前記接触工程は、前記酸化溶媒と少なくとも5重量%の前記FDCA経路生成物とを含む生成物溶液を得るのに十分な時間にわたって実施することができる。前記接触工程において、前記酸化溶媒と少なくとも5重量%の前記FDCA経路生成物とを含む生成物溶液を生成させることができる。
【0019】
前記方法は、第2の酸化工程を含んでもよく、該第2の酸化工程は、
(b)第2のフラン系酸化基質を酸化させて第2のFDCA経路生成物を得るための第2の反応混合物を形成させるのに十分な条件下において、第2のフラン系酸化基質と第2の酸化溶媒とを含む第2の酸化供給原料を、第2の不均一系酸化触媒の存在下で酸素と接触させて、第2のFDCA経路生成物を生成させること
を含み、
前記(第1の)接触工程(a)において、FDCA経路中間体化合物である第1のFDCA経路生成物が単独でまたはFDCAとともに生成されること、
第2のフラン系酸化基質が第1のFDCA経路生成物であること、
第2の反応混合物に実質的に塩基が添加されていないこと、
第2の不均一系酸化触媒が、工程(a)の前記(第1の)貴金属と同じまたは異なる第2の貴金属と第2の固体担体とを含むこと、および
第2の不均一系酸化触媒が複数の細孔を含み、20m/g~500m/gの範囲の比表面積またはこの範囲内の任意の値の比表面積を有すること
を特徴とする。
【0020】
第2の貴金属は、白金、金およびその組み合わせからなる群から選択することができる。第2の不均一系酸化触媒は、工程(a)の前記(第1の)不均一系酸化触媒と同じものであってもよい。第2の不均一系酸化触媒は、工程(a)の前記(第1の)不均一系酸化触媒とは異なるものであってもよい。第2の不均一系酸化触媒は、工程(a)の前記(第1の)不均一系酸化触媒中の前記(第1の)金属とは異なる第2の金属を含んでいてもよい。工程(a)の前記(第1の)酸化溶媒は、工程(b)の第2の酸化溶媒と同じものであってもよい。
【0021】
前記方法は、工程(a)の前記酸化溶媒から前記FDCA経路生成物を回収することを含んでもよい。前記方法は、工程(b)の第2の酸化溶媒から第2のFDCA経路生成物を回収することを含んでもよい。前記方法は、工程(a)で得られた前記FDCA経路生成物を精製することを含んでもよい。前記方法は、工程(b)で得られた第2のFDCA経路生成物を精製することを含んでもよい。前記精製工程は結晶化プロセスを含んでもよい。前記結晶化プロセスは、50℃~220℃の範囲の温度またはこの範囲内の任意の値の温度である第1の温度の、前記FDCA経路生成物と結晶化溶媒とを含む結晶化溶液を提供すること、および第1の温度よりも低い第2の温度まで前記結晶化溶液を冷却して、様々な粒径を有する複数のFDCA経路生成物結晶を形成させることを含んでもよい。前記結晶化溶媒は、工程(a)の前記(第1の)酸化溶媒と同じものであってもよい。前記結晶化プロセスは、50℃~220℃の範囲の温度またはこの範囲内の任意の値の温度である第1の温度の、第2のFDCA経路生成物と結晶化溶媒とを含む結晶化溶液を提供すること、および第1の温度よりも低い第2の温度まで前記結晶化溶液を冷却して、様々な粒径を有する複数の第2のFDCA経路生成物結晶を形成させることを含んでもよい。前記結晶化溶媒は、工程(a)の第1の酸化溶媒および工程(b)の第2の酸化溶媒からなる群から選択することができる。
【0022】
前記方法は、前記FDCA経路生成物と、水、有機溶媒およびその組み合わせからなる群から選択される第1の結晶化溶媒とを含む第1の結晶化溶液を提供すること;ならびに第1の結晶化溶液から第1の結晶化溶媒の第1の部分を除去して、様々な粒径を有する第1の複数のFDCA経路生成物結晶と第1の結晶化溶媒の第2の部分とを含む第1のFDCA経路生成物スラリーを得ることを含む結晶化プロセスを含んでもよい。該結晶化プロセスは、第1の複数のFDCA経路生成物結晶を第2の結晶化溶媒に溶解して、第1の複数のFDCA経路生成物と第2の結晶化溶媒とを含む第2の結晶化溶液を得ること;第2の結晶化溶液から第2の結晶化溶媒の第1の部分を除去して、様々な粒径を有する第2の複数のFDCA経路生成物結晶と第2の結晶化溶媒の第2の部分とを含む第2のFDCA経路生成物スラリーを得ること;および第2の結晶化溶媒の第2の部分から第2の複数のFDCA経路生成物結晶を分離することをさらに含んでもよい。
【0023】
前記方法は、第2のFDCA経路生成物と、水、有機溶媒およびその組み合わせからなる群から選択される第1の結晶化溶媒とを含む第1の結晶化溶液を提供すること;第1の結晶化溶液から第1の結晶化溶媒の第1の部分を除去して、様々な粒径を有する第2のFDCA経路生成物の第1の複数の結晶と第1の結晶化溶媒の第2の部分とを含む第1のFDCA経路生成物スラリーを得ること;ならびに任意で、第1の結晶化溶媒の第2の部分から第2のFDCA経路生成物の第1の複数の結晶を分離することを含む結晶化プロセスを含んでもよい。該結晶化プロセスは、第2のFDCA経路生成物の第1の複数の結晶を第2の結晶化溶媒に溶解して、第2のFDCA経路生成物と第2の結晶化溶媒とを含む第2の結晶化溶液を得ること;第2の結晶化溶液から第2の結晶化溶媒の第1の部分を除去して、様々な粒径を有する第2のFDCA経路生成物の第2の複数の結晶と第2の結晶化溶媒の第2の部分とを含む第2のFDCA経路生成物スラリーを得ること;および第2の結晶化溶媒の第2の部分から第2のFDCA経路生成物の第2の複数の結晶を分離することをさらに含んでもよい。
【0024】
前記方法は、FDCAをFDCAエステルに転化することをさらに含んでもよく、該転化工程は、対応するFDCAエステルを生成させるのに十分な条件下でFDCAをアルコール類と接触させることによって行われる。前記アルコールは、脂肪族アルコール類、ジオール類、エチレングリコール、芳香族アルコール類のいずれであってもよい。前記FDCAエステルはFDCAジエステルであってもよい。前記アルコール類はメタノールであってもよく、前記FDCAジエステルはFDCAジメチルエステルであってもよい。前記方法は、FDCAまたはFDCAエステルをFDCAアミドに転化することをさらに含んでもよく、該転化工程は、対応するFDCAアミドを生成させるのに十分な条件下で、FDCAまたはFDCAエステルをアミノ置換化合物と接触させることによって行われる。前記アミノ置換化合物は1,6-ヘキサメチレンジアミンであってもよい。前記FDCAアミドはFDCAジアミドであってもよい。前記方法は、FDCAをFDCAハロゲン化物に転化することをさらに含んでもよく、該転化工程は、対応するFDCAハロゲン化物を生成させるのに十分な条件下で、FDCAを、式HX(式中、Xはハロゲン化物である)で表されるハロゲン化水素酸と接触させることによって行われる。前記ハロゲン化物は塩化物であってもよく、前記FDCAハロゲン化物はFDCA塩化物であってもよい。前記FDCA塩化物はFDCAジクロリドであってもよい。
【0025】
前記方法は、FDCA系ポリマーを生成させるのに十分な条件下で、FDCAまたはその誘導体を重合させることをさらに含んでもよい。前記FDCA誘導体は、FDCAジエステル、FDCAジハライドおよびFDCAジアミドからなる群から選択することができる。前記FDCAジエステルはジメチルFDCAエステルであってもよい。前記FDCAジエステルはジ(エチレングリコール)FDCAエステルであってもよい。前記重合工程は重縮合反応であってもよい。前記方法は、前記重縮合反応の前に行われるエステル交換反応を含んでもよい。前記重合工程は、前記FDCA誘導体を第2のモノマーと接触させることを含んでもよい。第2のモノマーはポリオール類であってもよい。
【0026】
前記方法は、
(a)工程(a)の前に、糖を脱水して前記フラン系酸化基質を生成させるための反応混合物を形成させるのに十分な条件下において、糖および脱水溶媒を含む糖質供給原料を触媒と接触させること
をさらに含んでもよく、
生成されたフラン系酸化基質が、該フラン系酸化基質および前記脱水溶媒を含む脱水生成物溶液中に含まれていることを特徴とする。
【0027】
前記糖はフルクトースであってもよく、前記フラン系酸化基質はHMFであってもよい。工程(a)の前記酸化供給原料は、工程(a)の前記脱水生成物溶液を含んでいてもよい。前記(第1の)不均一系酸化触媒において、(1)前記貴金属は白金であってもよく;(2)前記固体担体は、シリカおよび炭素質材料からなる群から選択してもよく;(3)前記複数の細孔の平均細孔直径は、10nm~100nmの範囲であってもよく、この範囲内の任意の値であってもよい。前記(第2の)不均一系酸化触媒において、(1)前記貴金属は白金であってもよく;(2)前記固体担体は、シリカおよび炭素質材料からなる群から選択してもよく;(3)前記複数の細孔の平均細孔直径は、10nm~100nmの範囲であってもよく、この範囲内の任意の値であってもよい。
【0028】
別の一態様において、本開示は、結晶性FDCA経路生成物組成物を製造する方法であって、
FDCA経路生成物と、水および水混和性有機溶媒を含む多成分溶媒である結晶化溶媒とを含む結晶化溶液を提供すること;
前記FDCA経路生成物の結晶化を開始させること;ならびに
様々な粒径を有する複数のFDCA経路生成物結晶を生成させること
を含む方法に関する。
特定の実施形態において、前記水混和性有機溶媒は水混和性非プロトン性有機溶媒である。
【0029】
前記水混和性有機溶媒は水混和性非プロトン性有機溶媒であってもよい。前記水混和性非プロトン性有機溶媒は、テトラヒドロフラン、グライム類、ジオキサン、ジオキソラン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン(「NMP」)、メチルエチルケトン(「MEK」)およびγ-バレロラクトンからなる群から選択することができる。前記水混和性有機溶媒は、水混和性軽質有機溶媒および水混和性重質有機溶媒からなる群から選択することができる。
【0030】
前記多成分溶媒中に含まれる水と前記水混和性有機溶媒の比率は、1:6~6:1(v/v)の範囲であってもよく、この範囲内の任意の値であってもよい。前記多成分溶媒中に含まれる水と前記水混和性有機溶媒の比率は1:6~6:1(v/v)の範囲であってもよい。前記多成分溶媒は水混和性有機溶媒を少なくとも10vol%含んでいてもよい。
【0031】
前記結晶化溶液を60℃未満に冷却することによって結晶化を開始させてもよい。前記結晶化溶液を50℃未満に冷却することによって結晶化を開始させてもよい。前記結晶化溶媒の一部を除去することによって結晶化を開始させて、第1の複数のFDCA経路生成物結晶と前記結晶化溶媒の第2の部分またはその成分とを含む第1のFDCA経路生成物スラリーを得てもよい。前記結晶化溶液に種結晶を添加してもよい。
【0032】
前記複数のFDCA経路生成物結晶のメジアン粒径(D50)は、50μm~5000μmの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、または50μm~2000μmの範囲もしくはこの範囲内の任意の値であってもよい。前記複数のFDCA経路生成物結晶のメジアン粒径(D50)は、150μm~750μmの範囲またはこの範囲内の任意の値であってもよい。
【0033】
結晶性FDCA経路生成物組成物を製造するための前記方法は、第1の複数のFDCA経路生成物結晶を第2の結晶化溶媒に溶解して、第2の複数のFDCA経路生成物結晶と第2の結晶化溶媒とを含む第2の結晶化溶液を得ること;第2の結晶化溶液から第2の結晶化溶媒の第1の部分を除去して、第2の複数のFDCA結晶と第2の結晶化溶媒の第2の部分とを含む第2のFDCA経路生成物スラリーを得ること;および第2の結晶化溶媒の第2の部分から第2の複数のFDCA経路生成物結晶を分離することをさらに含んでもよい。第2の結晶化溶液に種結晶を添加してもよい。前記溶解工程は、80℃~220℃の範囲の温度もしくはこの範囲内の任意の値の温度、60℃~180℃の範囲の温度もしくはこの範囲内の任意の値の温度、または80℃~150℃の範囲の温度もしくはこの範囲内の任意の値の温度で実施してもよい。さらなる一態様において、本開示は、様々な粒径を有する複数のFDCA結晶粒子を含む結晶性FDCA組成物であって、該複数のFDCA結晶粒子のメジアン粒径(D50)が、50μm~5000μm、たとえば、50μm、75μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1000μm、1500μm、2000μm、2500μm、3000μm、3500μm、4000μm、4500μmもしくは5000μm、またはこれらの粒径のいずれか2つによって定義される範囲内の粒径であることを特徴とする組成物に関する。
【0034】
別の一態様において、本開示は、FDCAを転化して、FDCAの塩、FDCAのエステル、FDCAのアミドおよびFDCAのハロゲン化物からなる群から選択されるFDCA誘導体を生成させる方法に関する。
【0035】
さらなる一態様において、本開示は、FDCA系ポリエステルおよびFDCA系ポリアミドからなる群から選択されるFDCA系ポリマーを製造する方法に関する。
【0036】
いくつかの実施形態において、本開示は、組成物であって、
(a)フラン系酸化基質と酸化溶媒とを含む酸化供給原料;
(b)酸素;
(c)不均一系酸化触媒;および
(d)FDCA経路生成物
を含み、
前記酸化溶媒が、有機溶媒および多成分溶媒からなる群から選択される溶媒であること;
前記不均一系酸化触媒が固体担体および貴金属を含むこと;
前記不均一系酸化触媒が複数の細孔を含み、20m/g~500m/gの範囲の比表面積またはこの範囲内の任意の値の比表面積を有すること;ならびに
前記組成物に実質的に塩基が添加されていないこと
を特徴とする組成物に関する。
【0037】
前記貴金属は、白金、金およびその組み合わせからなる群から選択することができる。前記酸化溶媒は、水および水混和性有機溶媒を含む多成分溶媒であってもよい。前記水混和性有機溶媒は水混和性非プロトン性有機溶媒であってもよい。前記水混和性非プロトン性有機溶媒は、テトラヒドロフラン、グライム類、ジオキサン、ジオキソラン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン(「NMP」)、メチルエチルケトン(「MEK」)およびγ-バレロラクトンからなる群から選択することができる。前記水混和性有機溶媒は、水混和性軽質有機溶媒および水混和性重質有機溶媒からなる群から選択することができる。
【0038】
水と前記水混和性有機溶媒の比率は1:6~6:1(v/v)の範囲であってもよく、この範囲内の任意の値であってもよい。水と前記水混和性有機溶媒の比率は1:6~6:1(v/v)の範囲であってもよい。水と前記水混和性有機溶媒の比率は1:1(v/v)であってもよい。前記水混和性有機溶媒は多成分溶媒を少なくとも10vol%含んでいてもよい。
【0039】
前記フラン系酸化基質は5-(ヒドロキシメチル)フルフラール(HMF)であってもよい。前記フラン系酸化基質は、ジホルミルフラン(DFF)、ヒドロキシメチルフランカルボン酸(HMFCA)およびホルミルフランカルボン酸(FFCA)からなる群から選択することができる。
【0040】
前記酸化供給原料に含まれる前記フラン系酸化基質の濃度は少なくとも5重量%であってもよい。前記酸化供給原料中の前記フラン系酸化基質の濃度は少なくとも10重量%であってもよい。
【0041】
前記不均一系酸化触媒中の前記貴金属の担持量は、該不均一系酸化触媒の重量の0.3%~5%の範囲またはこの範囲内の任意の値であってもよい。前記不均一系酸化触媒は助触媒をさらに含んでいてもよい。
【0042】
前記固体担体は、金属酸化物、炭素質材料、ポリマー、金属ケイ酸塩、金属炭化物およびこれらの2種以上の任意の組み合わせからなる群から選択される材料を含んでいてもよい。前記金属酸化物は、シリカ、ジルコニアおよびアルミナからなる群から選択することができる。前記炭素質材料はカーボンブラックであってもよい。前記固体担体は、金属酸化物、炭素質材料、ポリマー、金属ケイ酸塩および金属炭化物からなる群から選択される材料とバインダーとを含む複合材料であってもよい。
【0043】
前記不均一系酸化触媒は、25m/g~350m/gの範囲の比表面積もしくはこの範囲内の任意の値の比表面積、25m/g~250m/gの範囲の比表面積もしくはこの範囲内の任意の値の比表面積、25m/g~225m/gの範囲の比表面積もしくはこの範囲内の任意の値の比表面積、25m/g~200m/gの範囲の比表面積もしくはこの範囲内の任意の値の比表面積、25m/g~175m/gの範囲の比表面積もしくはこの範囲内の任意の値の比表面積、25m/g~150m/gの範囲の比表面積もしくはこの範囲内の任意の値の比表面積、25m/g~125m/gの範囲の比表面積もしくはこの範囲内の任意の値の比表面積、または25m/g~100m/gの範囲の比表面積もしくはこの範囲内の任意の値の比表面積を有していてもよい。前記不均一系酸化触媒の細孔容積の少なくとも50%が、5nm~100nmの範囲の細孔直径またはこの範囲内の任意の値の細孔直径を有する細孔によって占められていてもよい。前記不均一系酸化触媒の細孔容積の10%以下が、10nm未満の細孔直径を有する細孔によって占められていてもよい。前記不均一系酸化触媒の細孔容積の10%以下が、0.1nm~10nmの範囲の細孔直径またはこの範囲内の任意の値の細孔直径を有する細孔によって占められていてもよい。前記不均一系酸化触媒の細孔容積の2.5%以下が、0nmよりも大きく10nm未満の細孔直径を有する細孔によって占められていてもよい。前記不均一系酸化触媒の細孔容積の2.5%以下が、0.1nm~10nmの範囲の細孔直径またはこの範囲内の任意の値の細孔直径を有する細孔によって占められていてもよい。前記複数の細孔の平均細孔直径は、10nm~100nmの範囲であってもよく、この範囲内の任意の値であってもよい。前記不均一系酸化触媒は、0.1cm/g~1.5cm/gの範囲の比細孔容積を有していてもよく、この範囲内の任意の値の比細孔容積を有していてもよい。
【0044】
前記不均一系酸化触媒は第2の複数の細孔を含んでいてもよく、第1の複数の細孔および第2の複数の細孔の少なくとも一方の平均細孔直径は、10nm~100nmの範囲またはこの範囲内の任意の値である。第1の複数の細孔および第2の複数の細孔のそれぞれの平均細孔直径は、10nm~100nmの範囲であってもよく、この範囲内の任意の値であってもよい。
【0045】
前記酸素と前記フラン系酸化基質のモル比は、2:1~10:1の範囲であってもよく、この範囲内の任意の値であってもよい。前記酸素と前記フラン系酸化基質のモル比は、2:1~5:1の範囲であってもよく、この範囲内の任意の値であってもよい。前記酸素の圧力(pO2)は50psig~1000psigの範囲であってもよく、この範囲内の任意の値であってもよい。前記酸素の圧力(pO2)は50psig~200psigの範囲であってもよく、この範囲内の任意の値であってもよい。
【0046】
いくつかの実施形態において、本開示は、装置であって、
(a)酸化反応ゾーン;
(b)酸素を含む酸素供給流;
(c)フラン系酸化基質と、有機溶媒および多成分溶媒からなる群から選択される溶媒である酸化溶媒とを含む酸化供給原料流;ならびに
(d)FDCA経路生成物を含む経路生成物流
を含み、
酸素供給流と酸化供給原料流とが酸化反応ゾーンへと送られて互いに反応し、FDCA経路生成物を生成すること;
酸化反応ゾーンが、不均一系酸化触媒、酸素、フラン系酸化基質および酸化溶媒を含むこと;
FDCA経路生成物流が酸化反応ゾーンから出ていくこと;
前記不均一系酸化触媒が固体担体および貴金属を含むこと;
前記不均一系酸化触媒が複数の細孔を含み、20m/g~500m/gの範囲の比表面積またはこの範囲内の任意の値の比表面積を有すること;ならびに
前記酸化反応ゾーンに実質的に塩基が添加されていないこと
を特徴とする装置に関する。
【0047】
前記装置は、未反応のフラン系酸化基質を含む再循環流をさらに含んでいてもよく;該再循環流が酸化反応ゾーンから出ていくこと;および前記装置が、該再循環流を酸化反応ゾーンに任意で送り戻すための手段を含むことを特徴とする。
【0048】
前記装置は、
(e)第2の酸化反応ゾーン;
(f)酸素を含む第2の酸素供給流;および
(g)FDCA経路生成物を含む第2の経路生成物流
をさらに含んでいてもよく、
前記(d)の経路生成物流と第2の酸素供給流とが第2の酸化反応ゾーンへと送られて互いに反応し、FDCA経路生成物を生成すること;
第2の経路生成物流が第2の酸化反応ゾーンから出ていくこと;
第2の酸化反応ゾーンが、第2の不均一系酸化触媒、酸素および前記(d)の経路生成物流を含むこと;
第2の不均一系酸化触媒が固体担体および貴金属を含むこと;
第2の不均一系酸化触媒が複数の細孔を含み、20m/g~500m/gの範囲の比表面積またはこの範囲内の任意の値の比表面積を有すること;ならびに
第2の酸化反応ゾーンに実質的に塩基が添加されていないこと
を特徴とする。
前記装置は、前記(d)からの未反応の経路生成物流を含む再循環流をさらに含んでいてもよく;該再循環流が第2の酸化反応ゾーンから出ていくこと;および前記装置が、該再循環流を前記(a)の酸化反応ゾーンに任意で送り戻すための手段を含むことを特徴とする。
【0049】
いくつかの実施形態において、本開示は、フラン系酸化基質を製造する方法であって、
糖を脱水してフラン系酸化基質を生成させるための脱水反応混合物を形成させるのに十分な条件下において、糖および脱水溶媒を含む糖質供給原料を酸触媒と接触させること
を含み、
前記酸触媒が、HBr、HSO、HNO、HCl、HI、HPO、トリフル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸からなる群から選択される酸であること、
前記酸触媒がHBrではない場合、前記脱水反応混合物が臭化物塩をさらに含むこと、ならびに
前記脱水溶媒がN-メチルピロリドン(NMP)を含むこと
を特徴とする方法に関する。
【0050】
前記酸触媒はHBrであってもよい。前記酸触媒は、HSO、HNO、HCl、HI、HPO、トリフル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸からなる群から選択することができ、前記脱水反応混合物は臭化物塩を含む。前記臭化物塩は、LiBr、NaBr、KBr、MgBr、CaBr、ZnBr、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミドおよびこれらの2種以上の任意の組み合わせからなる群から選択することができる。前記酸触媒はルイス酸をさらに含んでいてもよい。前記ルイス酸は、三ハロゲン化ホウ素、有機ボラン、三ハロゲン化アルミニウム、五フッ化リン、五フッ化アンチモン、希土類金属トリフラート、金属ハロゲン化物、金属トリフルオロ酢酸塩および金属カチオンエーテル錯体からなる群から選択することができる。前記ルイス酸は金属ハロゲン化物であってもよい。前記金属ハロゲン化物はZnClであってもよく、ZnBrであってもよい。
【0051】
前記フラン系酸化基質の収率は、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%のいずれであってもよい。前記糖はフルクトースであってもよい。前記フラン系酸化基質はHMFであってもよい。
【0052】
前記脱水反応混合物は、80℃~160℃の範囲の温度、80℃~150℃の範囲の温度、80℃~140℃の範囲の温度、80℃~130℃の範囲の温度、80℃~120℃の範囲の温度、80℃~110℃の範囲の温度もしくは80℃~100℃の範囲の温度、またはこれらのいずれかの範囲内の任意の値の温度で維持することができる。
【0053】
前記脱水溶媒は水をさらに含んでいてもよい。前記脱水溶媒は、1~5wt%の水と99~95%のNMP、5~10wt%の水と95~90wt%のNMP、10~15wt%の水と90~85wt%のNMP、15~20wt%の水と85~80wt%のNMP、20~25wt%の水と80~75wt%のNMP、25~30wt%の水と75~70wt%のNMP、30~35wt%の水と70~65wt%のNMP、35~40wt%の水と65~60wt%のNMP、40~45wt%の水と60~55wt%のNMP、45~50wt%の水と55~50wt%のNMP、50~55wt%の水と50~45wt%のNMP、55~60wt%の水と45~40wt%のNMP、60~65wt%の水と40~35wt%のNMP、65~70wt%の水と35~30wt%のNMP、70~75wt%の水と30~25wt%のNMP、75~80wt%の水と25~20wt%のNMP、80~85wt%の水と20~15wt%のNMP、85~90wt%の水と15~10wt%のNMP、90~95wt%の水と10~5wt%のNMP、もしくは95~99wt%の水と5~1wt%のNMP、またはこれらのいずれかの範囲内の任意の値で示される割合の水とNMPを含んでいてもよい。
【0054】
前記脱水溶媒は第2の有機溶媒種をさらに含んでいてもよい。第2の有機溶媒種は、N-メチルピロリドン(NMP)以外の水混和性有機溶媒であってもよい。前記水混和性非プロトン性有機溶媒はそれぞれ、テトラヒドロフラン、グライム類、ジオキサン、ジオキソラン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトン、メチルエチルケトン(「MEK」)およびγ-バレロラクトンからなる群から選択することができる。
【0055】
前記フラン系酸化基質は、該フラン系酸化基質および前記脱水溶媒を含む脱水生成物溶液中に含まれていてもよい。前記脱水生成物溶液は未反応の糖をさらに含んでいてもよい。前記脱水生成物溶液は、腐植質を含む混合物であってもよい。1種以上の膜を使用して、前記脱水生成物溶液または前記腐植質含有混合物を膜分離することによって、腐植質、未反応の糖およびその組み合わせからなる群から選択される1種以上の成分から前記フラン系酸化基質を分離してもよい。前記1種以上の膜は、限外濾過膜、ナノ濾過膜およびその組み合わせからなる群から選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】5-(ヒドロキシメチル)フルフラール(HMF)(I)から2,5-フランジカルボン酸(FDCA)(V)への最終的な転化を示す。
図2】HMFの酸化によって生成されうる様々なFDCA経路中間体を示す。これらの中間体はそれぞれ、ジホルミルフラン(II)、ヒドロキシメチルフランカルボン酸(III)およびホルミルフランカルボン酸(IV)である。この経路の最終酸化生成物はFDCA(V)である。
図3】22℃~140℃の温度範囲における、HO(黒三角)、ジオキサン(黒菱形)、ジグライム(黒四角)、ジグライムとHOの1:1(v/v)混合溶媒(白丸)およびジオキサンとHOの4:1(v/v)混合溶媒(黒丸)に対するFDCAの溶解度(重量%)を示す。
図4】フラン系酸化基質を所望のFDCA経路生成物に転化するための一段階の酸化反応ゾーンプロセスの模式図である。
図5】フラン系酸化基質を所望のFDCA経路生成物に転化するための多段階の統合型酸化反応ゾーンプロセスの模式図である。
図6】酸化反応ゾーンの生成物流である供給原料から精製結晶FDCA生成物を生成するための統合型結晶化プロセスを示す。この酸化反応ゾーン生成物流は、FDCAと、水および水混和性軽質有機溶媒からなる多成分溶媒(共溶媒)とを含む。このプロセスでは、第1の結晶化工程と第2の結晶化工程の間で、該共溶媒から水へと溶媒を変更する。
図7】酸化反応ゾーンの生成物流である供給原料から精製結晶FDCAを生成するための統合型結晶化プロセスを示す。このプロセスでは、水および水混和性軽質有機溶媒を含む多成分溶媒が使用される。
図8】酸化反応ゾーンの生成物流である供給原料から精製結晶FDCAを生成するための統合型結晶化プロセスを示す。この酸化反応ゾーン生成物流は、FDCAと、水および水混和性重質有機溶媒からなる共溶媒とを含む。このプロセスでは、第1の結晶化工程と第2の結晶化工程の間で、該共溶媒から水へと溶媒を変更する。
図9】酸化反応ゾーンの生成物流である供給原料から精製結晶FDCAを生成するための統合型結晶化プロセスを示す。この酸化反応ゾーン生成物流は、FDCAと、水および水混和性重質有機溶媒からなる多成分溶媒とを含む。
図10】蒸留によって精製FDCAジメチルエステルを生成するための統合型プロセスを示す。
図11】結晶化によって精製FDCAジメチルエステルを生成するための統合型プロセスを示す。
図12】ジオキサン/HO溶媒組成物に対するFDCAの溶解度の温度依存性を示す。
図13】DME/HO溶媒組成物に対するFDCAの溶解度の温度依存性を示す。
図14】NMPおよびHOからなる混合溶媒中でHBrまたはHSOを使用して実施したフルクトースからHMFへの転化におけるHMFの収率(%)を転化率(%)に対してプロットしたグラフを示す。
図15】NMPおよびHOからなる混合溶媒中でHBrまたはHClを使用して実施したフルクトースからHMFへの転化におけるHMFの収率(%)を転化率(%)に対してプロットしたグラフを示す。
図16】NMPおよびHOからなる混合溶媒中でHBrを使用して実施したフルクトースからHMFへの転化におけるHMFの収率(%)を転化率(%)に対してプロットしたグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
I.FDCA経路生成物の製造方法
一実施形態において、本開示は、フラン系酸化基質を酸化することによって高収率および高選択率で所望のフランジカルボン酸(FDCA)経路生成物を製造する新規方法を提供する。塩基の添加を必要とせずにこのような結果が得られたことは大変重要である。塩基を添加せずに(あるいは実質的に塩基を添加せずに)実施される本開示の酸化プロセスは、FDCAおよびこれに関連する経路生成物の既存の製造方法と比べて多くの魅力があり、とりわけ、添加された塩基の除去や、塩基の添加に伴って生成された副生成物の除去のためのさらなる後処理プロセスが必要でないという利点がある。本明細書において「フランジカルボン酸経路生成物」および「FDCA経路生成物」という用語は本明細書中で区別なく使用され、2,5-フランジカルボン酸(FDCA)または2,5-フランジカルボン酸経路中間体化合物を指す。図1に、HMFからFDCAへの最終的な転化を示す。本明細書において「フランジカルボン酸経路」は図2に示した経路を指す。本明細書において「2,5-フランジカルボン酸経路中間体化合物」および「FDCA経路中間体化合物」という用語は区別なく使用され、図2の化合物II、化合物IIIおよび化合物IVにそれぞれ対応するジホルミルフラン(DFF)、ヒドロキシメチルフランカルボン酸(HMFCA)および5-ホルミルフランカルボン酸(FFCA)のいずれかを指す。
【0058】
より具体的には、本開示は、フラン系酸化基質からFDCA経路生成物を製造する方法であって、
(a)フラン系酸化基質を酸化させてFDCA経路生成物を得るための反応混合物を形成させるのに十分な条件下において、フラン系酸化基質と酸化溶媒とを含む酸化供給原料を、不均一系酸化触媒の存在下で酸素と接触させて、FDCA経路生成物を生成させること
を含み、
前記酸化溶媒が、有機溶媒および多成分溶媒からなる群から選択される溶媒であること、
前記反応混合物に実質的に塩基が添加されていないこと、
前記不均一系酸化触媒が固体担体および貴金属を含むこと、ならびに
前記不均一系酸化触媒が複数の細孔を含み、20m/g~500m/gの範囲の比表面積、またはこの範囲内の任意の値の比表面積、たとえば、20m/g、30m/g、40m/g、50m/g、60m/g、70m/g、80m/g、90m/g、100m/g、120m/g、140m/g、160m/g、180m/g、200m/g、225m/g、250m/g、275m/g、300m/g、325m/g、350m/g、375m/g、400m/g、425m/g、450m/g、475m/gもしくは500m/gの比表面積、またはこれらの比表面積のいずれか2つによって定義される範囲内の比表面積を有すること
を特徴とする方法を提供する。
【0059】
本明細書において「実質的に塩基が添加されていない」とは、反応混合物に添加された塩基が存在しないこと(すなわち塩基が添加されていないこと)、または極微量の塩基が添加されていることを指す。本明細書において「極微量の塩基」とは、本開示の実施において使用される反応混合物に塩基が添加されている場合、反応混合物に塩基を添加しなかったこと以外は同じ条件で実施した同じ酸化反応と比較して、酸化反応の生成物の収率または選択率を1%を超えて変化させない量の塩基を指す。通常、本開示の方法において、接触(すなわち酸化)工程は、塩基が存在しない条件で、すなわち反応混合物に塩基を添加せずに実施される。
【0060】
本開示の酸化プロセスでは、通常少なくとも80%の収率および通常少なくとも90%の選択率(いずれもモル換算)で所望のFDCA経路生成物が生成される。いくつかの実施形態において、前記収率は少なくとも85%であり、別の実施形態において、前記収率は少なくとも90%、少なくとも95%、多くの場合、少なくとも98%または少なくとも99%である。いくつかの実施形態において、前記収率は、85~90%、87~92%、90~95%、92~97%、95~98%もしくは97~99%、またはこれらの割合(%)のいずれか2つによって定義される範囲内の割合(%)である。所望とするFDCA経路生成物の生成における選択率は、より典型的には、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。いくつかの実施形態において、所望とするFDCA経路生成物の選択率は、91~93%、92~94%、93~95%、94~96%、95~97%、96~98%もしくは97~99%、またはこれらの割合(%)のいずれか2つによって定義される範囲内の割合(%)である。所望とするFDCA経路生成物は通常FDCAである。
【0061】
本明細書において「酸化供給原料」は、フラン系酸化基質の供給源となる材料を指す。本明細書において「フラン系酸化基質」は、HMFまたはFDCA中間体化合物(すなわち、DFF、HMFCA、FFCAまたはこれらの組み合わせ)またはこれらの組み合わせを指す。本明細書に記載の方法を実施する際に使用される酸化供給原料はどのような形態のものであってもよく、たとえば、溶液、懸濁液、分散液、エマルションなどの様々な形態から選択することができる。酸化供給原料は、通常、フラン系酸化基質と酸化溶媒とを含む溶液である。
【0062】
本明細書に記載の酸化プロセスにおいて、FDCA経路生成物は通常FDCAである。特定の実施形態において、フラン系酸化基質は通常HMFである。しかしながら、FDCA経路中間体化合物またはこれらの混合物(すなわち、DFF、HMFCA、FFCAまたはこれらのいずれか2種以上の混合物)からなるフラン系酸化基質を使用することが望ましい場合もある。これは、特定の状況下では魅力的な選択肢の1つとなる場合があり、具体的には、HMFをあらかじめ酸化してFDCA経路中間体化合物またはこれらの混合物が得られており、これらの中間体化合物を原料として使用することが可能である場合に有利である。本開示の酸化プロセスにおいて、このような中間体をフラン系酸化基質として使用した場合、生成されるFDCA経路生成物は通常FDCAであるが、FDCA経路において(酸化という観点から見て)、フラン系酸化基質として使用されたFDCA経路中間体の「下流」に位置する別のFDCA経路中間体化合物であってもよい。
【0063】
酸化供給原料は、該酸化供給原料に可溶性または不溶性の他の薬剤または残渣成分を含んでいてもよい。たとえば、酸化供給原料は、HMFまたは他のフラン系酸化基質と酸化溶媒とからなる粗酸化供給原料であってもよい。本明細書において「粗供給原料」は、所望のフラン系酸化基質に加えて、該フラン系酸化基質の生成、単離および/または精製に関連する不純物および/または副生成物を含む供給原料を指す。たとえば、酸化供給原料は、所望のフラン系酸化基質に加えて、バイオマス由来成分や、(たとえば、熱分解法、化学的分解法、機械的分解法および/または酵素分解法による)バイオマスから糖への転化(この糖は次いでHMFに転化される)に伴って生成される副生成物などの特定のバイオマス関連成分を含んでいてもよい。したがって、酸化供給原料は、多糖類(たとえばセルロース(たとえばリグノセルロース、ヘミセルロースなど)、デンプンなど)、オリゴ糖(たとえばラフィノース、マルトデキストリン、セロデキストリンなど)、単糖類(たとえばグルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、キシロース、アラビノースなど)、二糖類(たとえばスクロース、ラクトース、マルトース、セロビオースなど)、フルフラールなどのフラン系基質、腐植質由来のオリゴマー副生成物およびポリマー副生成物(腐植質)ならびに残留鉱酸からなる群から選択される成分をさらに含んでいてもよい。同様に、酸化供給原料は、HMFおよび/またはFDCA経路中間体化合物を含むHMF酸化生成物からなる粗供給原料であってもよい。
【0064】
本開示の酸化プロセスは、収率および選択率が高いだけでなく、生成物溶液中にFDCAなどのFDCA経路生成物を比較的高濃度で得ることができる。本明細書に記載の方法は生産性が高く、これは、本発明で採用した新規の不均一系酸化触媒と酸化溶媒の特性を併用したことに起因すると考えられる。
【0065】
本明細書において「酸化溶媒」は、接触(酸化)工程が実施される温度において、フラン系酸化基質および所望のFDCA経路生成物をそれぞれ最低でも少なくとも2重量%ずつ溶解させることができる有機溶媒または多成分溶媒を指す。通常、酸化溶媒は、接触工程が実施される温度で測定した場合に、FDCA経路生成物が少なくとも3wt%または少なくとも4wt%の溶解度を示す溶媒であり、より典型的には、FDCA経路生成物が、少なくとも5wt%、少なくとも6wt%、少なくとも7wt%、少なくとも8wt%、少なくとも9wt%、少なくとも10wt%、少なくとも11wt%、少なくとも12wt%、少なくとも13wt%、少なくとも14wt%または少なくとも15wt%の溶解度を示す溶媒である。いくつかの実施形態において、FDCA経路生成物の溶解度は、2~4wt%、3~5wt%、4~6wt%、5~7wt%、6~8wt%、7~9wt%、8~10wt%、9~11wt%、10~12wt%、11~13wt%、12~14wt%もしくは13~15%、またはこれらの割合(重量%)のいずれか2つによって定義される範囲内の割合(重量%)である。有機溶媒候補または多成分溶媒候補に対するFDCA経路生成物の溶解度は、公知の方法または実施例1に記載の方法を使用して容易に測定することができる。
【0066】
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本開示で使用される酸化溶媒は、(本開示の高性能触媒を使用した)フラン系酸化基質からFDCA経路生成物への効率的な転化を促進すると考えられ、特に、反応器や触媒のファウリングを引き起こしうる生成物の沈殿を生じさせないという効果がある。さらに、本開示の方法は、米国特許第7,700,788号に記載されているような、たとえば水や、酢酸と水の混合物などの貧溶媒を使用した方法と比べて、FDCAおよびFDCA中間体化合物を比較的高濃度で得ることができるため、プロセス生産性が高く、それほどコストをかけずに溶媒を除去することができる。したがって、本開示は、特にFDCAおよびこれに関連する中間体の商業規模での製造に魅力的な方法を提供する。
【0067】
本開示の酸化プロセスの実施において、酸化供給原料が溶液の形態である場合、該酸化供給原料中のフラン系酸化基質の含量は、その溶解限度以下の任意の濃度であってもよい。いくつかの実施形態において、酸化供給原料中のフラン系酸化基質の濃度は、該酸化供給原料の重量の少なくとも1wt%、少なくとも2wt%、少なくとも3wt%、少なくとも4wt%、少なくとも5wt%、少なくとも6wt%、少なくとも7wt%、少なくとも8wt%、少なくとも9wt%、少なくとも10wt%、少なくとも11wt%、少なくとも12wt%、少なくとも13wt%、少なくとも14wt%または少なくとも15wt%である。いくつかの実施形態において、酸化供給原料中のフラン系酸化基質の濃度は、1~3wt%、2~4wt%、3~5wt%、4~6wt%、5~7wt%、6~8wt%、7~9wt%、8~10wt%、9~11wt%、10~12wt%、11~13wt%、12~14wt%もしくは13~15%、またはこれらの割合(重量%)のいずれか2つによって定義される範囲内の濃度(重量%)である。通常、酸化供給原料中のフラン系酸化基質の濃度は少なくとも5wt%である。より典型的には、接触(酸化)工程が実施される温度において、酸化供給原料中のフラン系酸化基質の濃度は、少なくとも6wt%、少なくとも7wt%、少なくとも8wt%、少なくとも9wt%、少なくとも10wt%、少なくとも11wt%、少なくとも12wt%、少なくとも13wt%、少なくとも14wt%または少なくとも15wt%である。いくつかの実施形態において、接触(酸化)工程が実施される温度において、酸化供給原料中のフラン系酸化基質の濃度は、6~8wt%、7~9wt%、8~10wt%、9~11wt%、10~12wt%、11~13wt%、12~14wt%もしくは13~15%、またはこれらの割合(重量%)のいずれか2つによって定義される範囲内の濃度(重量%)である。
【0068】
フラン系酸化基質およびFDCAに対して必要最小限の溶媒和力を示す有機溶媒を、単独でまたは多成分溶媒の一成分として、本開示の実施において好適に使用できる。より具体的には、本出願人らは、本明細書に記載の触媒および条件と組み合わせて非プロトン性有機溶媒を使用することによって、本開示の方法で達成される高い生産性をさらに向上させることができることを見出した。したがって、いくつかの実施形態において、前記酸化溶媒は、非プロトン性有機溶媒(たとえば、エーテル類、エステル類、ケトン類など)を、単独で(すなわち単一成分溶媒として)または多成分溶媒の一成分として含む。非プロトン性有機溶媒が多成分溶媒中の一成分として使用される場合、該非プロトン性有機溶媒は、通常、多成分溶媒中の他の成分に対して混和性を示す。本明細書において「多成分溶媒」は、2種、3種またはそれ以上の種類の溶媒種の混合物を指す。本開示の実施において使用される多成分溶媒は、第1の有機溶媒種、第2の有機溶媒種および水からなる群から選択される2種以上の溶媒種を含んでいてもよい。多成分溶媒が水と有機溶媒とを含む場合、該有機溶媒は水混和性有機溶媒である。該水混和性有機溶媒は、通常、水混和性非プロトン性有機溶媒である。
【0069】
本開示の方法において、多成分溶媒の成分候補は、フラン系酸化基質および所望のFDCA経路生成物が高い溶解度を示す溶媒に限定されないことに注意されたい。本出願人らは、FDCAが多成分溶媒中の各溶媒成分に対して低い溶解度しか示さない場合であっても、このような多成分溶媒がFDCAに対して相乗的な溶媒和効果を示しうることを見出した。たとえば、FDCAは水に難溶性であるが、本出願人らは、FDCAに対して低い溶媒和力しか持たない水混和性有機溶媒を組み合わせた場合であっても、水と水混和性有機溶媒とを併用することによって、FDCAに対する溶媒和力を向上させることができることを見出した。
【0070】
このような溶媒和効果を示す多成分溶媒としては、水と水混和性非プロトン性有機溶媒とを含む多成分溶媒が挙げられる。本開示の実施における使用に適した水混和性非プロトン性溶媒としては、テトラヒドロフラン、グライム類、ジオキサン、ジオキソラン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン(「NMP」)、メチルエチルケトン(「MEK」)、γ-バレロラクトンなどが挙げられる。前記水混和性非プロトン性有機溶媒は、たとえばグライム類、ジオキサン(1,4-ジオキサン)、ジオキソラン類(たとえば1,3-ジオキソラン)、テトラヒドロフランなどのエーテル類であることが好ましい。本開示の実施における使用に適したグライム類としては、たとえば、モノグライム(1,2-ジメトキシエタン(「DME」))、エチルグライム、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、エチルジグライム、トリグライム、ブチルジグライム、テトラグライム、ポリグライム類、高分子量アルコールの高エトキシ化ジエーテル(「ハイグライム」)などが挙げられる。多くの場合、前記酸化溶媒は、グライム類、ジグライムまたはジオキサンである水混和性非プロトン性有機溶媒と、水とを含む多成分溶媒である。
【0071】
いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は水とジオキサンを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は水とDMEを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は水とジグライムを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は水とトリグライムを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は水とテトラグライムを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は水とハイグライムを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は水とNMPを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は水とMEKを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は水とγ-バレロラクトンを含む。
【0072】
実施例1は、(1)ジグライムのみ;(2)ジオキサンのみ;(3)水のみ;(4)ジオキサンとHOの4:1(v/v)混合物からなる多成分溶媒;および(5)グライム類とHOの1:1(v/v)混合物からなる多成分溶媒の5種の溶媒に対するFDCAの溶解度を試験した溶解度評価について述べている。実験結果として、温度の関数としてプロットしたFDCAの溶解度を図3に示す。FDCAの溶解度は、水(22℃~140℃の温度において2重量%未満の溶解度)、ジオキサン(22℃~100℃の温度において2重量%未満の溶解度)およびジグライム(22℃~100℃の温度において2重量%未満の溶解度)では比較的低かったが、驚くべきことに、たとえば、ジオキサンとHOの4:1(v:v)混合物(22℃~140℃の温度において4重量%~11重量%の溶解度)やジグライムと水の1:1(v:v)混合物(22℃~140℃の温度において2重量%を少し下回る程度から最大で9重量%の溶解度)などの多成分溶媒では高い溶解度が示された。これらの多成分溶媒は、生成物の回収操作中に通常除去する必要のある溶媒の使用量を、(たとえば溶媒として水のみを使用した場合と比べて)比較的少なく抑えつつ、より多量のFDCA経路生成物の製造を容易とする点から望ましい。本開示を実施する際に酸化溶媒として使用するのに適した有機溶媒および別の多成分溶媒は、実施例1に記載の分析法を使用して容易に特定することができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、前記酸化溶媒の組成は、さらに下流のプロセスに必要とされる条件(たとえば生成物の回収、精製などを容易とするような条件)、または上流のプロセス(たとえば糖からフラン系酸化基質への転化)に必要とされる条件を考慮に入れて決定してもよい。たとえば、特定の実施形態において、軽質溶媒と重質溶媒を含む多成分溶媒を酸化溶媒として使用することが望ましい場合がある。「軽質溶媒」は、特定の圧力下において、同じ圧力下での重質溶媒の沸点(沸騰温度)よりも低い温度に沸点を有する溶媒を指す。これに対して、「重質溶媒」は、特定の圧力下において、同じ圧力下での軽質溶媒の沸点(沸騰温度)よりも高い温度に沸点を有する溶媒を指す。多成分溶媒が水と水混和性有機溶媒を含む場合、該水混和性有機溶媒は水混和性軽質有機溶媒(すなわち、水の沸点よりも低い温度に沸点を有する水混和性有機溶媒)であってもよく、水混和性重質有機溶媒(すなわち、水の沸点よりも高い温度に沸点を有する水混和性有機溶媒)であってもよい。通常、水混和性軽質有機溶媒は非プロトン性軽質有機溶媒であり、水混和性重質有機溶媒は非プロトン性重質有機溶媒である。多成分溶媒中で水と組み合わされる水混和性(かつ非プロトン性)の軽質有機溶媒としては、たとえば、グライム類、ジオキソラン類(たとえば1,3-ジオキソラン)、テトラヒドロフランなどが挙げられる。多成分溶媒中で水と組み合わされる水混和性(かつ非プロトン性)の重質有機溶媒としては、たとえば、ジオキサン、エチルグライム、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、エチルジグライム、トリグライム、ブチルジグライム、テトラグライム、ポリグライム類などが挙げられる。いくつかの実施形態(たとえば連続反応器系)において、前記酸化溶媒の全量もしくはその一部またはその成分を、(たとえば蒸留を経て)製造溶液から除去し、反応混合物に再利用してもよい。このような実施形態では、酸化工程(すなわち接触工程)を実施する際の温度または該酸化工程よりも上流もしくは下流のプロセスを実施する際の温度において、共沸混合物に相当する組成を有する多成分溶媒、または共沸混合物を形成することができる組成(すなわち「共沸組成」)を有する多成分溶媒を使用すると望ましい場合がある。共沸組成を有するこのような多成分溶媒を使用することによって、(共沸組成の一部としての)酸化溶媒を酸化工程または該酸化工程よりも上流および/もしくは下流のプロセスに再利用することが容易となる場合がある。
【0074】
いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒中の水混和性有機溶媒種の濃度は、少なくとも5体積%(vol%)、少なくとも10vol%、少なくとも15vol%、少なくとも20vol%、少なくとも25vol%、少なくとも30vol%、少なくとも35vol%、少なくとも40vol%、少なくとも45vol%、少なくとも50vol%、少なくとも55vol%、少なくとも60vol%、少なくとも65vol%、少なくとも70vol%、少なくとも75vol%、少なくとも80vol%、少なくとも85vol%、少なくとも90vol%または少なくとも95vol%であり;これらのそれぞれに対応して、前記多成分溶媒系中の水の濃度は、通常、95vol%未満、90vol%未満、85vol%未満、80vol%未満、75vol%未満、70vol%未満、65vol%未満、60vol%未満、55vol%未満、50vol%未満、45vol%未満、40vol%未満、35vol%未満、30vol%未満、25vol%未満、20vol%未満、15vol%未満、10vol%未満または5vol%未満である。
【0075】
いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、1~5wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、99~95wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、5~10wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、95~90wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、10~15wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、90~85wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、15~20wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、85~80wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、20~25wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、80~75wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、25~30wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、75~70wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、30~35wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、70~65wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、35~40wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、65~60wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、40~45wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、60~55wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、45~50wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、65~50wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、50~55wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、50~45wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、55~60wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、45~40wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、60~65wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、40~35wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、65~70wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、35~30wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、70~75wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、30~25wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、75~80wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、25~20wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、80~85wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、20~15wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、85~90wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、15~10wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、90~95wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、10~5wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、95~99wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、5~1wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。
【0076】
いくつかの実施形態において、水と水混和性有機溶媒の体積比は1:6~6:1またはこの範囲内の任意の値である。特定の実施形態において、水と水混和性有機溶媒の体積比は1:4~4:1またはこの範囲内の任意の値である。別の実施形態において、水と水混和性有機溶媒の体積比は1:4~3:1またはこの範囲内の任意の値である。別の実施形態において、水と水混和性有機溶媒の体積比は1:3~3:1またはこの範囲内の任意の値である。特定の実施形態において、水と水混和性有機溶媒の体積比は1:1である。
【0077】
いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、水および2種の水混和性有機溶媒を含む。通常、前記水混和性有機溶媒はいずれも水混和性非プロトン性有機溶媒である。前記2種の水混和性非プロトン性溶媒はそれぞれ、テトラヒドロフラン、グライム類、ジオキサン、ジオキソラン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン(「NMP」)、メチルエチルケトン(「MEK」)およびγ-バレロラクトンからなる群から独立して選択することができる。前記水混和性非プロトン性有機溶媒の一方または両方が、たとえばグライム類、ジオキサン(たとえば1,4-ジオキサン)、ジオキソラン類(たとえば1,3-ジオキソラン)、テトラヒドロフランなどのエーテル類であってもよい。グライム類としては、たとえば、モノグライム(1,2-ジメトキシエタン(「DME」))、エチルグライム、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、エチルジグライム、トリグライム、ブチルジグライム、テトラグライム、ポリグライム類、高分子量アルコールの高エトキシ化ジエーテル(「ハイグライム」)などが挙げられる。
【0078】
いくつかの実施形態において、水と第1の水混和性有機溶媒と第2の水混和性有機溶媒の体積比は約1:1:1(v:v:v)である。いくつかの実施形態において、水と第1の水混和性有機溶媒と第2の水混和性有機溶媒の体積比は約1:2:1(v:v:v)である。いくつかの実施形態において、水と第1の水混和性有機溶媒と第2の水混和性有機溶媒の体積比は約1:2:2(v:v:v)である。いくつかの実施形態において、水と第1の水混和性有機溶媒と第2の水混和性有機溶媒の体積比は約2:1:1(v:v:v)である。
【0079】
いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、水と第1の水混和性有機溶媒と第2の水混和性有機溶媒を、表Aに示すような相対量で含む。
【0080】
【表1】
【0081】
前記接触工程は、多くの場合、少なくとも2wt%、少なくとも3wt%、少なくとも4wt%、少なくとも5wt%、少なくとも6wt%、少なくとも7wt%、少なくとも8wt%、少なくとも9wt%、少なくとも10wt%、少なくとも11wt%、少なくとも12wt%、少なくとも13wt%、少なくとも14wt%もしくは少なくとも15wt%、またはこれらの値のいずれか2つによって定義される範囲内の濃度の(可溶性)FDCA経路生成物を含む生成物溶液を得るのに十分な時間にわたって実施される。したがって、(可溶性)FDCA経路生成物を含む生成物溶液が得られる場合に生成される該FDCA経路生成物の濃度は、少なくとも2wt%、少なくとも3wt%、少なくとも4wt%、少なくとも5wt%、少なくとも6wt%、少なくとも7wt%、少なくとも8wt%、少なくとも9wt%、少なくとも10wt%、少なくとも11wt%、少なくとも12wt%、少なくとも13wt%、少なくとも14wt%もしくは少なくとも15wt%、またはこれらの値のいずれか2つによって定義される範囲内の濃度である。本明細書において「生成物溶液」は、可溶性FDCA経路生成物と、反応混合物の他の可溶性成分とを酸化溶媒中に含む溶液を指す。本明細書において「特定の濃度のFDCA経路生成物を含む生成物溶液を得るのに十分な時間」とは、所定の濃度のFDCA経路生成物を含む生成物溶液を得るのに必要な最小時間を指す。
【0082】
より典型的には、前記接触工程は、少なくとも6wt%、少なくとも7wt%、少なくとも8wt%、少なくとも9wt%、少なくとも10wt%、少なくとも11wt%、少なくとも12wt%、少なくとも13wt%、少なくとも14wt%もしくは少なくとも15wt%、またはこれらの値のいずれか2つによって定義される範囲内の濃度のFDCA経路生成物を含む生成物溶液を得るのに十分な時間にわたって実施される。したがって、FDCA経路生成物を含む生成物溶液が得られる場合に生成される該FDCA経路生成物の濃度は、少なくとも6wt%、少なくとも7wt%、少なくとも8wt%、少なくとも9wt%、少なくとも10wt%、少なくとも11wt%、少なくとも12wt%、少なくとも13wt%、少なくとも14wt%もしくは少なくとも15wt%、またはこれらの値のいずれか2つによって定義される範囲内の濃度である。
【0083】
本開示の実施において使用される不均一系酸化触媒は、通常、担体の内面および外面に分散された貴金属を含む。本明細書において「貴金属」は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金または金を指す。特定の好ましい実施形態において、前記貴金属は、白金、金およびその組み合わせからなる群から選択される。通常、前記貴金属は白金である。いくつかの実施形態において、前記貴金属は金である。不均一系酸化触媒は、該触媒の性能を向上させる助触媒をさらに含んでいてもよい。前記貴金属が白金、金またはその組み合わせである場合、好適な助触媒としては、たとえば、Pd、Ir、Mo、Wなどが挙げられる。
【0084】
前記不均一系酸化触媒中の前記貴金属の総金属担持量は、通常、0.3重量%~5重量%の範囲またはこの範囲内の任意の値である。いくつかの実施形態において、前記金属担持量は0.5重量%~4重量%の範囲またはこの範囲内の任意の値である。いくつかの実施形態において、前記金属担持量は2~4wt%の範囲またはこの範囲内の任意の値である。いくつかの実施形態において、前記金属担持量は2wt%である。いくつかの実施形態において、前記金属担持量は3wt%である。いくつかの実施形態において、前記金属担持量は4wt%である。2種以上の金属が使用される場合、前記不均一系酸化触媒は、各触媒粒子が2種以上の金属を含む複数の不均一系酸化触媒粒子を含んでいてもよく、あるいは前記不均一系酸化触媒は、たとえば第1の金属種を含む第1の複数の不均一系酸化触媒粒子と第2の金属種を含む第2の複数の不均一系酸化触媒粒子とからなる不均一系酸化触媒金属粒子種の混合物を含んでいてもよい。本開示を実施する際に使用される前記不均一系酸化触媒を製造する方法は、本明細書中で後述する第II節および実施例に詳細に記載されている。
【0085】
前記不均一系酸化触媒の固体担体成分は、本明細書に記載の比表面積に関する要件を満たす触媒担体としての使用に適していることが当業者に知られている任意の種類の材料を含んでいてもよい。好適な材料としては、たとえば、金属酸化物、炭素質材料、ポリマー、金属ケイ酸塩、金属炭化物、およびこれらから製造される任意の複合材料が挙げられる。金属酸化物としては、酸化ケイ素(シリカ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化チタン(チタニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)などが挙げられる。本明細書において「炭素質」は黒鉛およびカーボンブラックを指す。金属ケイ酸塩としては、たとえば、オルトケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルミノケイ酸塩(たとえばゼオライト)などが挙げられる。金属炭化物としては、たとえば、炭化ケイ素などが挙げられる。好適な固体担体用ポリマー材料としては、ポリスチレン、ポリスチレン-co-ジビニルベンゼン、ポリアミド、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。
【0086】
好適な固体担体材料としては、さらに、金属酸化物、炭素質材料、ポリマー、金属ケイ酸塩および金属炭化物からなる群から選択される材料とバインダーから製造される複合材料、ならびに金属酸化物、炭素質材料、ポリマー、金属ケイ酸塩および金属炭化物からなる群から選択される材料とバインダーとを含む複合材料が挙げられる。いくつかの実施形態において、前記バインダーは樹脂である。別の実施形態において、前記複合材料は、金属酸化物、炭素質材料、金属ケイ酸塩および金属炭化物からなる群から選択される材料と炭化バインダーとを含む。一実施形態において、前記複合材料は炭化バインダーとカーボンブラックとを含む。このような炭素系複合材料を製造する方法は、PCT出願第PCT/US15/28358号に記載されている(この文献は引用によりその全体が明示的に本明細書に援用される)。担体材料の具体例は本明細書の実施例に記載されている。
【0087】
いくつかの実施形態において、前記固体担体は、Aditya Birla社製CDX-KU、Aditya Birla社製CSCUB、Aditya Birla社製R2000B、Aditya Birla社製R2500UB、Aditya Birla社製R3500B、Aditya Birla社製R5000U2、Arosperse 5-183A、Asbury社製5302、Asbury社製5303、Asbury社製5345、Asbury社製5348R、Asbury社製5358R、Asbury社製5365R、Asbury社製5368、Asbury社製5375R、Asbury社製5379、Asbury社製A99、キャボット社製Monarch 120、キャボット社製Monarch 280、キャボット社製Monarch 570、キャボット社製Monarch 700、キャボット社製Norit Darco 12x20L1、キャボット社製Vulcan XC72、Continental社製N120、Continental社製N234、Continental社製N330、Continental社製N330-C、Continental社製N550、Norit ROX 0.8、Orion社製Arosperse 138、Orion社製Arosperse 15、Orion社製Color Black FW 2、Orion社製Color Black FW 255、Orion社製HiBlack 40B2、Orion社製Hi-Black 50 L、Orion社製Hi-Black 50 LB、Orion社製Hi-Black 600 L、Orion社製HP-160、Orion社製Lamp Black 101、Orion社製N330、Orion社製Printex L6、Sid Richardson社製Ground N115、Sid Richardson社製Ground SR155、Sid Richardson社製SC159、Sid Richardson社製SC419、Timcal社製Ensaco 150G、Timcal社製Ensaco 250G、Timcal社製Ensaco 260GおよびTimcal社製Ensaco 350Gからなる群から選択されるカーボンブラック材料を含む。
【0088】
通常、前記固体担体に金属を含浸させても、該固体担体の比表面積、細孔直径および比容積には無視できるほどの小さい変化しか起こらない。通常、本開示での使用に適した不均一系酸化触媒は、複数の細孔を含み、20m/g~500m/gの比表面積を有する固体担体を使用して調製され、該比表面積は、たとえば、20m/g、30m/g、40m/g、50m/g、60m/g、70m/g、80m/g、90m/g、100m/g、120m/g、140m/g、160m/g、180m/g、200m/g、225m/g、250m/g、275m/g、300m/g、325m/g、350m/g、375m/g、400m/g、425m/g、450m/g、475m/gもしくは500m/gの比表面積、またはこれらの比表面積のいずれか2つによって定義される範囲内の比表面積である。比表面積は、たとえば、Bruanauer、EmmettおよびTeller(J. Am. Chem. Soc. 1938, 60:309-311)による方法ならびに/または水銀圧入法などの公知の方法を使用して測定することができる。たとえばASTM試験法D3663、D6556およびD4567を参照されたい(これらは引用によりその全体が本明細書に援用される)。通常、本開示を実施する際に使用される不均一系酸化触媒(および固体担体)は、25m/g~250m/gの比表面積またはこの範囲内の任意の値の比表面積を有しており、場合によっては、該比表面積は、25m/g~225m/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、25m/g~200m/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、25m/g~175m/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、25m/g~150m/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、25m/g~125m/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、または25m/g~100m/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値である。これらの比表面積は、たとえば活性炭などの当技術分野でより一般的に使用される高多孔性触媒担体材料の比表面積と比べて比較的小さい。表面積が比較的小さい不均一系酸化触媒を本開示の酸化プロセスにおいて使用することは、実質的に塩基が添加されていない条件下でのフラン系酸化基質からFDCAおよびFDCA経路中間体化合物への転化において高い選択率と高い収率を達成するのに有利であると考えられる。
【0089】
比表面積が比較的小さいことと相応して、本開示を実施する際に使用される不均一系酸化触媒(およびその固体担体成分)は、通常、他の酸化触媒と比べてやや小さい比細孔容積あるいは他の酸化触媒よりも小さい比細孔容積を有している。本開示の実施において使用される不均一系酸化触媒(およびその固体担体成分)は、通常、(1.7nm~100nmの直径を持つ細孔について測定した場合の)比細孔容積が、0.1cm/g~1.5cm/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、0.1cm/g~0.8cm/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、0.1cm/g~0.7cm/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、0.1cm/g~0.6cm/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、0.1cm/g~0.5cm/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、0.2cm/g~0.8cm/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、0.2cm/g~0.7cm/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、0.2cm/g~0.6cm/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、0.2cm/g~0.5cm/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、0.3cm/g~1cm/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、0.3cm/g~0.9cm/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、0.3cm/g~0.8cm/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、0.3cm/g~0.7cm/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、0.3cm/g~0.6cm/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、0.3cm/g~0.5cm/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、またはこれらの値のいずれか2つによって定義される範囲内の値であり、この比細孔容積は、E.P. Barrett, L.G. Joyner, P.P. Halenda, J. Am. Chem. Soc. (1951) 73:373-380およびASTM D4222-03(2008)(これらの文献はいずれも引用によりその全体が明示的に本明細書に援用される)に記載の方法(この方法を本明細書において「BJH法」と呼ぶ)などの、細孔直径および比細孔容積の測定法と、(たとえば、Micromeritics社製Autopore V 9605水銀ポロシメーター(Micromeritics Instrument Corp.、ジョージア州ノークロス)などの水銀ポロシメーターをメーカーの説明書に従って使用した)水銀圧入法とによって測定される。たとえば、ASTM 3663、ASTM D-4284-12およびD6761-07(2012)を参照されたい(これらの文献はいずれも引用により本明細書に援用される)。
【0090】
BJH法および/または水銀圧入法で測定した場合、前記不均一系酸化触媒の平均細孔直径は、通常、10nm~100nmの範囲またはこの範囲内の任意の値である。より典型的には、BJH法および/または水銀圧入法で測定した場合、前記不均一系酸化触媒の平均細孔直径は、10nm~90nmの範囲またはこの範囲内の任意の値である。いくつかの実施形態において、BJH法および/または水銀圧入法で測定した場合、前記平均細孔直径は、10nm~80nmの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、10nm~70nmの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、または10nm~60nmの範囲もしくはこの範囲内の任意の値であり、多くの場合、10nm~50nmの範囲もしくはこの範囲内の任意の値である。いくつかの実施形態において、BJH法および/または水銀圧入法で測定した場合、前記平均細孔直径は、20nm~100nmまたはこの範囲内の任意の値である。これらの実施形態のいくつかにおいて、BJH法および/または水銀圧入法で測定した場合、前記平均細孔直径は、20nm~90nmの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、20nm~80nmの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、20nm~70nmの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、20nm~60nmの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、または10nm~50nmの範囲もしくはこの範囲内の任意の値である。本開示を実施する際に使用される触媒は、通常、前記範囲のサイズの細孔を比較的高密度に含んでいる。
【0091】
いくつかの実施形態において、前記不均一系酸化触媒は、第2の複数の細孔を含んでいる。この実施形態において、前記不均一系酸化触媒とその固体支持担体の細孔分布はバイモーダルであり、第1の複数の細孔直径が第1の分布を構成しており、第2の複数の細孔直径が第2の分布を構成しており、第1の複数の細孔直径および第2の複数の細孔直径は、それぞれに見合った平均細孔直径を有している。第2の複数の細孔の平均細孔直径は、第2の複数の細孔の平均細孔直径とは異なるが、BJH法および/または水銀圧入法で測定した場合、通常、10nm~100nmの範囲もしくはこの範囲内の任意の値である。
【0092】
通常、(1.7nm~100nmの直径を有する細孔についてBJH法および/または水銀圧入法で測定した場合)5nm~100nmの範囲の細孔直径またはこの範囲内の任意の値の細孔直径を有する細孔が、前記不均一系酸化触媒の細孔容積の少なくとも50%を占めてもよい。通常、(1.7nm~100nmの直径を有する細孔についてBJH法および/または水銀圧入法で測定した場合)10nm~100nmの範囲の細孔直径またはこの範囲内の任意の値の細孔直径を有する細孔が、前記不均一系酸化触媒の細孔容積の少なくとも60%を占めてもよく、いくつかの実施形態においては、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%を占めてもよい。
【0093】
いくつかの実施形態において、(1.7nm~100nmの直径を有する細孔についてBJH法および/または水銀圧入法で測定した場合)10nm~50nmの範囲の細孔直径またはこの範囲内の任意の値の細孔直径を有する細孔が、本開示を実施する際に使用される不均一系酸化触媒の細孔容積の少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%または少なくとも50%を占めてもよい。たとえば、(1.7nm~100nmの直径を有する細孔についてBJH法および/または水銀圧入法で測定した場合)10nm~50nmの範囲の平均細孔直径またはこの範囲内の任意の値の平均細孔直径を有する細孔が、前記不均一系酸化触媒の細孔容積の35%~80%の範囲もしくはこの範囲内の任意の値、35%~75%の範囲もしくはこの範囲内の任意の値、35%~65%の範囲もしくはこの範囲内の任意の値、40%~80%の範囲もしくはこの範囲内の任意の値、40%~75%の範囲もしくはこの範囲内の任意の値、または40%~70%の範囲もしくはこの範囲内の任意の値を占めてもよい。
【0094】
通常、10nm未満または5nm未満の細孔直径を有する細孔が、前記不均一系酸化触媒の細孔容積の2.5%以下を占めてもよい。より典型的には、BJH法および/または水銀圧入法で測定した場合、10nm未満または5nm未満の細孔直径を有する細孔が、前記不均一系酸化触媒の細孔容積の3%以下、4%以下、5%以下もしくは10%以下、またはこれらの割合(%)のいずれか2つによって定義される範囲内の割合(%)以下を占めてもよい。本開示の実施における使用に適した不均一系酸化触媒を製造する際には、前述の物理的特性を持つ固体担体が選択される。担体材料の細孔構造は、金属が含浸された最終製品としての不均一系酸化触媒においても通常そのまま保持される。
【0095】
特定の好ましい実施形態において、前記不均一系酸化触媒中の貴金属は白金を含むか、あるいは実質的に白金からなり、いくつかの実施形態では、白金からなるが、いずれの場合においても、固体担体は、シリカおよび炭素質材料からなる群から選択される。これらの好ましい実施形態において、BJH法および/または水銀圧入法で測定した場合、前記不均一系酸化触媒の平均細孔直径は、通常、10nm~100nmの範囲またはこの範囲内の任意の値であり、多くの場合、20nm~100nmの範囲またはこの範囲内の任意の値である。
【0096】
本開示の方法を実施する際、純粋な酸素(すなわちOのみからなり、他のガスを含まない)を提供してもよく、あるいは混合ガスの一成分(たとえば空気、酸素濃縮空気など)として酸素を提供してもよい。前記接触工程における酸素とフラン系酸化基質のモル比は、通常2:1~10:1である。いくつかの実施形態において、酸素とフラン系酸化基質のモル比は2:1~10:1または3:1~5:1である。前記接触工程において、前記酸素の分圧は、通常、50psig~1000psigの範囲またはこの範囲内の任意の値である。より典型的には、前記酸素の分圧は、50psig~200psigの範囲またはこの範囲内の任意の値である。いくつかの実施形態において、前記酸素の分圧は、50~200psig、100~300psig、200~400psig、300~500psig、400~600psig、500~700psig、600~800psig、700~900psigもしくは800~1000psig、これらの分圧のいずれか2つによって定義される範囲内の分圧、またはこれらのいずれかの範囲内の任意の値である。
【0097】
前記接触(酸化)工程は、通常、50℃~200℃の範囲の温度またはこの範囲内の任意の値の温度で実施される。いくつかの実施形態において、前記接触工程は、80℃~180℃の範囲の温度またはこの範囲内の任意の値の温度で実施され、別の実施形態において、前記接触工程は、90℃~160℃の範囲の温度もしくはこの範囲内の任意の値の温度、または100℃~160℃の範囲の温度もしくはこの範囲内の任意の値の温度で実施される。特定の好ましい実施形態において、前記接触工程は、90℃~180℃の範囲の温度またはこの範囲内の任意の値の温度で実施され、場合によっては、前記接触工程は、110℃~160℃の範囲の温度またはこの範囲内の任意の値の温度で実施される。
【0098】
フラン系酸化基質から所望のFDCA経路生成物を製造するプロセスの一例を図4に示す。一段階の酸化反応ゾーンを利用したこのプロセスでは、O(純粋な酸素または混合ガス中の一成分としての酸素)を含む酸素供給流(110)とフラン系酸化基質供給原料流(100)とが酸化ゾーン(10)へと送られ、FDCA経路生成物流(127)と、未反応のフラン系酸化基質を含む任意の再循環流(115)とが生成される。
【0099】
いくつかの実施形態においては、フラン系酸化基質から所望のFDCA経路生成物への酸化を、2つ以上の酸化工程からなる一連のプロセスにおいて実施することが望ましい場合がある。この場合、第1の酸化工程は前述の通りであり、第2の酸化工程は、
(b)第2のフラン系酸化基質を酸化させて第2のFDCA経路生成物を得るための第2の反応混合物を形成させるのに十分な条件下において、第2のフラン系酸化基質と第2の酸化溶媒とを含む第2の酸化供給原料を、第2の不均一系酸化触媒の存在下で酸素と接触させること
を含み、
前記(第1の)接触工程(a)において、FDCA経路中間体化合物である第1のFDCA経路生成物が単独でまたはFDCAとともに生成されること、
第2のフラン系酸化基質が第1のFDCA経路生成物であること、
第2の反応混合物に実質的に塩基が添加されていないこと、
第2の不均一系酸化触媒が、工程(a)の前記(第1の)貴金属と同じまたは異なる貴金属と第2の固体担体とを含むこと、および
第2の不均一系酸化触媒が複数の細孔を含み、20m/g~500m/gの範囲の比表面積またはこの範囲内の任意の値の比表面積、たとえば、20m/g、30m/g、40m/g、50m/g、60m/g、70m/g、80m/g、90m/g、100m/g、120m/g、140m/g、160m/g、180m/g、200m/g、225m/g、250m/g、275m/g、300m/g、325m/g、350m/g、375m/g、400m/g、425m/g、450m/g、475m/gもしくは500m/gの比表面積、またはこれらの比表面積のいずれか2つによって定義される範囲内の比表面積を有すること
を特徴とする。
【0100】
第2のFDCA経路生成物は、第1のFDCA経路生成物の下流の酸化生成物であり、通常FFCAまたはFDCAである。第2のFDCA経路生成物は通常FDCAである。通常、第2の酸化工程に塩基は添加されない。
【0101】
第1の酸化プロセスでの使用に適した貴金属、触媒中の金属担持量、固体担体材料および反応条件(たとえば、反応温度、酸素の圧力(分圧)、酸素とフラン系酸化基質のモル比など)は、第2の酸化プロセスでも好適に使用できる。第2の不均一系酸化触媒は、第1の酸化プロセスにおいて使用される不均一系酸化触媒(すなわち「第1の」不均一系酸化触媒」)と同じものであってもよく、異なるものであってもよい。第2の酸化供給原料における使用に適した酸化溶媒は、第1の酸化プロセスにおける使用に適した酸化溶媒(すなわち「第1の酸化溶媒」)と同じものである。フラン系酸化基質から所望のFDCA経路生成物へと転化させる際、所望のFDCA経路生成物の生成を最適化するために反応条件の変更が必要とされる場合、多段階の酸化プロセスが望ましいことがある。たとえば、第1の酸化反応よりも高温または低温で第2の酸化反応を実施したり、第1の酸化反応における酸素と供給原料成分のモル比よりも高いまたは低いモル比で維持して第2の酸化反応を実施したり、あるいは、第1の酸化反応における酸素分圧よりも高いまたは低い酸素分圧で維持して第2の酸化反応を実施したりすると望ましい場合がある。第2の酸化溶媒の組成は、第1の酸化溶媒の組成と同じであってもよく、異なっていてもよい。第1の酸化溶媒の組成と第2の酸化溶媒の組成とが異なる場合、第1の酸化溶媒と第2の酸化溶媒は1種以上の共通の溶媒種成分を含んでいてもよい。第2の不均一系酸化触媒中の貴金属は、通常、白金、金またはその組み合わせである。第2の不均一系酸化触媒において使用される貴金属は、通常、白金である。
【0102】
特定の好ましい実施形態において、第2の不均一系酸化触媒中の貴金属は白金を含むか、あるいは実質的に白金からなり、いくつかの実施形態では、白金からなるが、いずれの場合においても、第2の固体担体は、シリカおよび炭素質材料からなる群から選択される。これらの好ましい実施形態において、第2の不均一系酸化触媒の平均細孔直径は、通常、10nm~100nmの範囲またはこの範囲内の任意の値であり、多くの場合、20nm~100nmの範囲またはこの範囲内の任意の値であり、たとえば、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nmもしくは100nm、またはこれらの平均細孔直径のいずれか2つによって定義される範囲内の値である。
【0103】
図5は、連結された2つの酸化反応ゾーン(酸化反応ゾーン1(20)および酸化反応ゾーン2(30))を使用して、所望のFDCA経路生成物の製造を二段階で行うための統合型プロセスの一例を示す。この統合型プロセスにおいて、Oを含む酸化剤供給流(110)とフラン系酸化基質供給原料流(100)は酸化反応ゾーン(20)へと送られて、酸化反応ゾーン1生成物流(120)を生成する。酸化反応ゾーン1生成物流は、FDCA経路中間体化合物と酸化溶媒とを含む。次いで、酸化反応ゾーン1生成物流(120)と、Oを含む酸化剤供給流(112)は酸化反応ゾーン2(30)へと送られ、酸化反応ゾーン生成物流(130)を生じるとともに、未反応のフラン系酸化基質を含む任意の再循環流(125)を生じる。酸化反応ゾーン生成物流(130)は、酸化反応ゾーン(30)で生成された、FDCA経路中間体化合物の酸化生成物を含み、該FDCA経路中間体化合物は、FDCAおよび/またはFDCA経路中間体であってもよく、これらは酸化反応ゾーン1生成物流(120)に由来するFDCA経路中間体の酸化生成物である。
【0104】
本開示のプロセスは、当技術分野で公知の反応器、たとえば、固定床反応器、トリクルベッド反応器、スラリー相反応器、移動床反応器などを使用して、バッチ式反応器法、セミバッチ式反応器法または連続式反応器法で実施してもよい。酸化溶媒に対する反応物および生成物(特にFDCA経路生成物)の溶解度は比較的高いため、前述の反応器法のいずれであっても容易に使用することができ、特に固定床反応器法を容易に使用することができる。
【0105】
本明細書に記載の酸化プロセスによって生成されたFDCA経路生成物は、FDCA経路生成物および酸化溶媒を含む生成物溶液から不均一系酸化触媒を分離することによって、反応混合物から回収してもよい。分離処理を経た生成物溶液は、酸化溶媒と反応混合物の可溶性成分とを含むが、不均一系酸化触媒は取り除かれている。さらに、この生成物溶液から酸化溶媒の一部を除去することによって、可溶性成分を濃縮してもよい。酸化溶媒の除去は、(たとえばエバポレーターを使用した)蒸発、蒸留などによって行ってもよい。
【0106】
別の方法として、あるいはさらなる単離工程として、FDCA経路生成物を精製してもよい。FDCA経路生成物は結晶化によって精製することが好ましい。したがって、本開示は、一実施形態において、結晶性FDCA経路生成物組成物を製造する方法であって、
FDCA経路生成物と、有機溶媒および多成分溶媒からなる群から選択される溶媒である結晶化溶媒とを含む結晶化溶液を提供すること;
前記FDCA経路生成物の結晶化を開始させること;ならびに
様々な粒径を有する複数のFDCA経路生成物結晶を生成させること
を含む方法を提供する。
【0107】
本明細書において「結晶化溶媒」は、該結晶化溶媒に対するFDCA経路生成物の溶解度を低下させる条件(たとえば温度低下(冷却)または溶媒除去)が課された場合に、FDCA経路生成物を結晶化させることができる溶媒を指す。結晶化溶媒は、水、有機溶媒、水と水混和性有機溶媒とを含む多成分溶媒、水と2種以上の有機溶媒種とを含む多成分溶媒のいずれであってもよい。結晶化プロセスは、酸化プロセス(たとえば一段階酸化プロセスまたは多段階酸化プロセス)の直後に行ってもよく、あるいは酸化プロセスの下流の別の単位操作の後に行ってもよい。
【0108】
FDCA経路生成物を生成させた後に結晶化を行う場合、前記結晶化溶液は、通常、FDCA経路生成物と酸化溶媒とを含む生成物溶液である。したがって、このような実施形態において、結晶化溶媒は、酸化溶媒(たとえば(一段階酸化で使用される)第1の酸化溶媒または(二段階酸化で使用される)第2の酸化溶媒)と同じものである。酸化溶媒としての使用に適した溶媒のいくつかは、結晶化溶媒としての使用にも適している。
【0109】
工業的な液相結晶化は、通常、以下のようにして行われる。まず、生成物の飽和溶液(または過飽和溶液)を晶析装置に投入して、該溶液を結晶化条件に付し、次いで、たとえば、温度を低下させるか、溶媒留去(すなわち溶媒除去)により前記溶液を濃縮するか、またはこれらの両方を併用して、結晶化を開始させる。溶媒留去は結晶化を開始させる目的で前記溶液を濃縮するために行ってもよく、FDCA経路生成物の溶解度を低下させる目的で溶媒組成を調整するために行ってもよい。本明細書において「結晶化条件」は、FDCA経路生成物の結晶化を開始させるような、温度の調節、結晶化溶液の濃度の調整および/または結晶化溶液の組成の調整を指す。
【0110】
一実施形態において、結晶化条件が温度の調節を含む場合、本開示は、結晶性FDCA製剤を製造する方法であって、
50℃~220℃の範囲の温度またはこの範囲内の任意の値の温度、たとえば、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、180℃、190℃、200℃、210℃もしくは220℃、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度である第1の温度の、FDCA経路生成物と結晶化溶媒とを含む結晶化溶液を提供すること;および
第1の温度よりも低い第2の温度まで前記結晶化溶液を冷却して、様々な粒径を有する複数のFDCA経路生成物結晶を形成させること
を含む方法を提供する。
【0111】
冷却することによって、結晶化溶媒に対するFDCA経路生成物の溶解度が低下し、結晶化溶液中でFDCA経路生成物の結晶化が起こる。第1の温度は、通常、60℃~180℃の範囲の温度またはこの範囲内の任意の値の温度であり、たとえば、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃もしくは180℃、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度である。いくつかの実施形態において、第1の温度は、70℃~150℃の範囲の温度またはこの範囲内の任意の値の温度であり、たとえば、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃もしくは150℃、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度である。結晶化溶液を冷却する場合、該結晶化溶液は、通常、60℃またはそれよりも低い温度、たとえば、60℃以下、50℃以下、40℃以下、30℃以下、20℃以下、10℃以下、5℃以下もしくは0℃以下、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度以下に冷却される。より典型的には、前記結晶化溶液は、50℃もしくはそれよりも低い温度または40℃またはそれよりも低い温度、たとえば、50℃以下、40℃以下、30℃以下、20℃以下、10℃以下、5℃以下もしくは0℃以下、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度以下に冷却される。
【0112】
一実施形態において、溶媒除去(留去)によって結晶化を開始させる場合、本開示は、結晶性FDCA製剤を製造する方法であって、
(a)FDCAと、水、有機溶媒およびその組み合わせからなる群から選択される第1の結晶化溶媒とを含む第1の結晶化溶液を提供すること;
(b)第1の結晶化溶液から第1の結晶化溶媒の第1の部分を除去して、第1の複数のFDCA経路生成物結晶と第1の結晶化溶媒の第2の部分とを含む第1のFDCA経路生成物スラリーを得ること;ならびに
(c)第1の結晶化溶媒の第2の部分から第1の複数のFDCA経路生成物結晶を分離すること
を含む方法を提供する。
さらなる一実施形態において、
(d)第1の複数のFDCA結晶を第2の結晶化溶媒に溶解して、FDCAと第2の結晶化溶媒とを含む第2の結晶化溶液を得ること;
(e)第2の結晶化溶液から第2の結晶化溶媒の第1の部分を除去して、第2の複数のFDCA経路生成物結晶と第2の結晶化溶媒の第2の部分とを含む第2のFDCA経路生成物スラリーを得ること;および
(f)第2の結晶化溶媒の第2の部分から第2の複数のFDCA経路生成物結晶を分離すること
をさらに実施することによって、第1の複数のFDCA経路生成物結晶を再結晶化させる。
【0113】
結晶化溶媒の一部の除去は、たとえば蒸発や蒸留などの、溶液から溶媒を除去するための公知の方法を使用して行うことができる。溶媒の除去は、結晶化溶液の温度を上昇させて結晶化溶媒またはその成分を蒸発させることによって促進してもよく、その結果、結晶化溶媒の一部は液相のまま保たれ、別の一部は気相に変化して除去される。溶媒を除去することによってFDCA経路生成物の濃度が上昇して結晶化し、これによって連続液相中にFDCA経路生成物結晶のスラリーが得られる。多くの場合、第1の結晶化溶媒と第2の結晶化溶媒の一方または両方が多成分溶媒であり、第1の結晶化溶媒および/または第2の結晶化溶媒の第1の部分を除去することによって該多成分溶媒の成分のうちの1種が完全にまたは部分的に除去されるが、その他の成分はほとんど除去されないか、全く除去されない。これらの実施形態において、多成分溶媒は、軽質有機溶媒である1種の有機溶媒と、重質有機溶媒である第2の有機溶媒とを含んでいてもよく;あるいは水混和性重質有機溶媒または水混和性軽質有機溶媒である有機溶媒と水とを含んでいてもよい。
【0114】
第1の結晶化溶媒の第2の部分からの第1の複数のFDCA経路生成物結晶の分離、および第2の結晶化溶媒の第2の部分からの第2の複数のFDCA経路生成物結晶の分離は、たとえば濾過や遠心分離などの、液体から固体を分離するための公知の方法を利用して行うことができる。
【0115】
前記溶解工程(工程(c))は、第2の結晶化溶媒中への第1の複数のFDCA経路生成物結晶の溶解が促進されるように、通常、高温で実施される。この温度は、使用する結晶化溶媒の種類に左右されるが、温度を上昇させることによって容易に決定することができ、また、第1の複数のFDCA経路生成物結晶が完全に溶解するまで第2の結晶化溶媒をさらに加えることもできる。前記溶解工程は、通常、50℃~220℃の範囲の温度またはこの範囲内の任意の値の温度、たとえば、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、180℃、190℃、200℃、210℃もしくは220℃、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度で実施される。多くの場合、前記溶解工程は、60℃~180℃の範囲の温度もしくはこの範囲内の任意の値の温度、または70℃~150℃の範囲の温度もしくはこの範囲内の任意の値の温度、たとえば、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃もしくは180℃、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度で実施される。いくつかの実施形態において、前記溶解工程は、前記温度範囲の高温域、たとえば、100℃~220℃の範囲の温度もしくはこの範囲内の任意の値の温度、または150℃~220℃の範囲の温度もしくはこの範囲内の任意の値の温度、たとえば、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、180℃、190℃、200℃、210℃もしくは220℃、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度で実施される。
【0116】
第1の結晶化溶媒と第2の結晶化溶媒は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。特定の実施形態において、第1の結晶化溶媒および第2の結晶化溶媒の少なくとも一方は、これらの結晶化溶媒に共通の溶媒種を一成分として含む多成分溶媒である。いくつかの実施形態において、FDCA経路生成物を含む第1の結晶化溶液は、前述したフラン系酸化基質の酸化によって生じたFDCA経路生成物を含む生成物溶液である。別の実施形態において、第1の結晶化溶媒は、結晶化よりも前に実施される酸化工程で使用される酸化溶媒とは異なるものである。これらの実施形態において、酸化溶媒のすべてまたはその一部は、たとえば蒸発などによって結晶化工程の前に除去してもよい。このようにして得られた固体は、別の溶媒(たとえば、水または別の有機溶媒種)または別の多成分溶媒(すなわち、酸化溶媒とは異なる組成の溶媒)に溶解することによって、第1の結晶化溶液を調製することができる。
【0117】
特定の一実施形態において、前記結晶化溶媒は、水および水混和性有機溶媒を含む多成分溶媒である。したがって、さらなる一実施形態において、本開示は、FDCA経路生成物の結晶製剤を製造する方法であって、
FDCA経路生成物と、水および水混和性有機溶媒を含む多成分溶媒である結晶化溶媒とを含む結晶化溶液を提供すること;
前記FDCA経路生成物の結晶化を開始させること;ならびに
様々な粒径を有する複数のFDCA経路生成物結晶を生成させること
を含む方法を提供する。
【0118】
この実施形態において、前記水混和性有機溶媒は、通常、水混和性非プロトン性有機溶媒である。代表的な一実施形態において、前記水混和性非プロトン性有機溶媒はエーテル類であり、たとえば、ジオキサン、ジオキソラン、ジグライムなどである。このような溶媒系の利点を説明するため、本開示の代表的な溶媒組成物に対するFDCAの溶解度を、水、ジオキサン、ジオキソラン(たとえば1,3-ジオキソラン)およびジグライムと比較したものを図3に示す。本開示の溶媒組成物に対するFDCAの溶解度が高いため、FDCAの飽和溶液を調製して結晶化による精製を行うことができる。さらに、図3に示すように、水または有機溶媒(または水と有機溶媒の共沸混合物)を除去して溶媒組成を調整することによって、(選択された有機溶媒の揮発性が水よりも低い場合)有機溶媒の含量が高い溶媒組成物を調製することができ、または(選択された有機溶媒の揮発性が水よりも高い場合に)水の含量が高い溶媒組成物を調製することができる。図3は、FDCAが、本開示の溶媒組成物と比べて水または有機溶媒に極めて難溶性であることを示している。FDCAの飽和溶液は、温度を低下させるか、溶媒留去して溶媒組成を調整するか、またはこれらの両方を併用することによって結晶化条件に付してもよい。
【0119】
本開示の結晶化プロセスでの使用に適した水混和性非プロトン性溶媒としては、テトラヒドロフラン、グライム類、ジオキサン、ジオキソラン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン(「NMP」)、メチルエチルケトン(「MEK」)、γ-バレロラクトンなどが挙げられる。前記水混和性非プロトン性有機溶媒は、たとえばグライム類、ジオキサン(たとえば1,4-ジオキサン)、ジオキソラン類(たとえば1,3-ジオキソラン)、テトラヒドロフランなどのエーテル類であることが好ましい。本開示の実施における使用に適したグライム類としては、たとえば、モノグライム(1,2-ジメトキシエタン(「DME」))、エチルグライム、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、エチルジグライム、トリグライム、ブチルジグライム、テトラグライム、ポリグライム類、高分子量アルコールの高エトキシ化ジエーテル(「ハイグライム」)などが挙げられる。多くの場合、前記水混和性非プロトン性有機溶媒は、グライム類、ジグライムまたはジオキサンである。
【0120】
いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒中の前記水混和性有機溶媒種の濃度は、少なくとも5vol%、少なくとも10vol%、少なくとも15vol%、少なくとも20vol%、少なくとも25vol%、少なくとも30vol%、少なくとも35vol%、少なくとも40vol%、少なくとも45vol%、少なくとも50vol%、少なくとも55vol%、少なくとも60vol%、少なくとも65vol%、少なくとも70vol%、少なくとも75vol%、少なくとも80vol%、少なくとも85vol%、少なくとも90vol%、もしくは少なくとも95vol%、またはこれらの値のいずれか2つによって定義される範囲内の濃度であり;これらのそれぞれに対応して、前記多成分溶媒系中の水の濃度は、通常、95vol%未満、90vol%未満、85vol%未満、80vol%未満、75vol%未満、70vol%未満、65vol%未満、60vol%未満、55vol%未満、50vol%未満、45vol%未満、40vol%未満、35vol%未満、30vol%未満、25vol%未満、20vol%未満、15vol%未満、10vol%未満、もしくは5vol%未満、またはこれらの値のいずれか2つによって定義される範囲内の濃度である。
【0121】
いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、1~5wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、99~95wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、5~10wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、95~90wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、10~15wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、90~85wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、15~20wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、85~80wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、20~25wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、80~75wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、25~30wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、75~70wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、30~35wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、70~65wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、35~40wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、65~60wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、40~45wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、60~55wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、45~50wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、65~50wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、50~55wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、50~45wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、55~60wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、45~40wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、60~65wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、40~35wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、65~70wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、35~30wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、70~75wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、30~25wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、75~80wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、25~20wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、80~85wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、20~15wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、85~90wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、15~10wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、90~95wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、10~5wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、95~99wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、5~1wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。
【0122】
より典型的には、水と水混和性有機溶媒の体積比は、通常、1:6~6:1(v:v)またはこの範囲内の任意の値である。いくつかの実施形態において、前記体積比は1:4~4:1(v:v)またはこの範囲内の任意の値である。いくつかの実施形態において、水と水混和性有機溶媒の体積比は1:4~3:1(v:v)またはこの範囲内の任意の値である。別の実施形態において、水と水混和性有機溶媒の体積比は1:4~1:3(v:v)またはこの範囲内の任意の値である。特定の実施形態において、水と水混和性有機溶媒の体積比は1:1(v:v)である。
【0123】
結晶化は、前述したように、温度低下(冷却)法または溶媒除去法によって開始させることができる。温度を低下させることによって結晶化を開始させる場合、通常、前記結晶化溶液の温度は、通常60℃~220℃またはこの範囲内の任意の値の温度である第1の温度から、これよりも低い温度へと冷却され、該第1の温度は、たとえば、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、180℃、190℃、200℃、210℃もしくは220℃、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度である。水が前記結晶化溶媒の一成分として含まれている場合、第1の温度はしばしば前記温度範囲の高温域にあり、たとえば、100℃~220℃の範囲の温度もしくはこの範囲内の任意の値の温度、または150℃~220℃の範囲の温度もしくはこの範囲内の任意の値の温度、たとえば、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、180℃、190℃、200℃、210℃もしくは220℃、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度である。いくつかの実施形態において、第1の温度は、60℃~180℃の範囲の温度またはこの範囲内の任意の値の温度であり、たとえば、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃もしくは180℃、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度であり、第1の温度よりも低い第2の温度まで冷却する。別の実施形態において、第1の温度は、70℃~150℃の範囲の温度またはこの範囲内の任意の値の温度であり、たとえば、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃もしくは150℃、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度である。前記結晶化溶液を冷却する場合、該結晶化溶液は、通常、60℃未満の第2の温度まで冷却され、該第2の温度は、たとえば、60℃以下、50℃以下、40℃以下、30℃以下、20℃以下、10℃以下、5℃以下もしくは0℃以下、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度である。より典型的には、前記結晶化溶液は50℃未満または40℃未満の第2の温度まで冷却され、該第2の温度は、たとえば、50℃以下、40℃以下、30℃以下、20℃以下、10℃以下、5℃以下もしくは0℃以下、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度である。
【0124】
また、結晶化は、前記結晶化溶液から前記結晶化溶媒の第1の部分を除去して、様々な粒径を有する第1の複数のFDCA経路生成物結晶と前記結晶化溶媒の第2の部分とを含むFDCA経路生成物スラリーを得た後、該第1の結晶化溶媒の第2の部分から第1の複数のFDCA経路生成物結晶を分離することによっても開始させることができる。得られた第1の複数のFDCA経路生成物結晶を、前記結晶化溶媒と同一または異なる結晶化溶媒に溶解し、前記プロセスを繰り返して、様々な粒径を有する第2の複数のFDCA経路生成物結晶を得てもよい。
【0125】
FDCA経路生成物の種結晶を加えて、結晶化の開始をさらに促進させてもよい。また、消泡剤や結晶化助剤などの他の添加剤を前記結晶化溶液に加えて、結晶化プロセスを促進させるとともに、FDCA結晶を含む懸濁液を形成させてもよい。本開示の実施における使用に適した消泡剤としては、たとえば、シリコーン、界面活性剤、リン酸エステル、アルコール、グリコール、ステアリン酸エステルなどが挙げられる。界面活性剤や電解質ポリマーなどの添加剤も、形成される結晶の形態および組成に影響を与えうる。たとえば、米国特許第5,296,639号および米国特許第6,534,680号を参照されたい(これらの文献はいずれも引用によりその全体が本明細書に援用される)。保存中の結晶性生成物の凝集を防止するため、流動性向上剤として機能するその他の添加剤を加えてもよい(たとえば米国特許第6,534,680号を参照されたい)。
【0126】
本明細書に記載の方法によって生成されたFDCA経路生成物結晶は、遠心分離や濾過、または液体から固体を分離するのに適した他の方法によって、前記溶液(母液)から分離することができる。次いで、得られた結晶を、当業者に公知の好適な方法を使用して洗浄および乾燥することができる。
【0127】
本明細書に記載の結晶化プロセスは、FDCA経路生成物を含む供給原料からFDCA経路生成物結晶を製造するための統合型プロセスの一部として実施することができる。一連の前記製造工程は、第1の結晶化ゾーン、溶解ゾーンおよび第2の(精製)結晶化ゾーンを少なくとも備えるプロセスにおいて実施することができる。また、前記結晶化プロセスは、フラン系酸化基質と酸化溶媒とを含む酸化供給原料からFDCA経路生成物結晶を製造するための統合型プロセスの一部として実施することもできる。この方法における統合型結晶化プロセスには、本明細書に記載の酸化反応プロセスがさらに組み込まれている。この統合型プロセスでは、少なくとも1つの酸化反応ゾーンから吐出された流れが、供給原料として統合型結晶化プロセスに送られる。本明細書に記載の結晶化プロセスにおいて、各結晶化ゾーンの後(たとえば結晶化ゾーンと次の溶解ゾーンの間)に、(たとえば遠心分離を利用した)結晶分離操作を置いてもよい。結晶性FDCA製剤を製造するための統合型プロセスの例のいくつかを図6~9に示す。
【0128】
酸化反応ゾーン生成物流が、水と軽質有機溶媒とを含む多成分溶媒を含む場合、図6に示す統合型プロセスを使用してもよい。このプロセスでは、第2の(精製)結晶化ゾーンにおいて溶媒を水に変更する。この統合型プロセスでは、水、軽質有機溶媒およびFDCAを含む酸化ゾーン生成物流(105)が第1の結晶化ゾーン(200)へと送られて、固体のFDCA粗結晶を含む生成物流(205)と、任意で酸化反応ゾーンへと送られて再利用される水/軽質有機溶媒からなる蒸気再循環流(211)と、任意で酸化反応ゾーンへと送られて再利用される水/軽質有機溶媒からなる液体再循環流(207)とが生成される。パージ流(209)を任意で使用して、前記液体再循環流(207)から不純物を除去してもよい。固体FDCA粗結晶生成物流(205)は溶解ゾーン(220)へと供給され、ここで、固体のFDCA粗結晶生成物が再溶解される。固体FDCA粗結晶生成物流(205)が溶解ゾーン(220)へと送られる前に、水(115)が固体FDCA粗結晶生成物流(205)に供給され、水に溶解されたFDCAを含む溶解ゾーン生成物流(225)が生成される。溶解ゾーン生成物流(225)は、第2の(精製)結晶化ゾーン(230)へと送られ、水蒸気再循環流(222)と、液体の水再循環流(236)と、精製されたFDCA結晶を含む精製結晶化生成物流(235)とが生成される。水蒸気再循環流(222)と液体の水再循環流(236)はいずれも、固体FDCA粗結晶生成物流(205)に任意で供給することができる。
【0129】
酸化反応ゾーン生成物流が、水と軽質有機溶媒とを含む多成分溶媒を含む場合、図7に示す統合型プロセスを使用してもよい。この統合型プロセスでは、水、軽質有機溶媒およびFDCAを含む酸化ゾーン生成物流(105)が、第1の結晶化ゾーン(200)へと送られて、固体のFDCA粗結晶を含む生成物流(205)と、該固体FDCA粗結晶生成物流(205)に供給される水/軽質有機溶媒からなる蒸気再循環流(213)と、任意で上流の酸化反応ゾーンへと送られて再利用される水/軽質有機溶媒からなる液体再循環流(207)とが生成される。パージ流(209)を任意で使用して、前記液体再循環流(207)から不純物を除去してもよい。FDCA粗結晶生成物流(205)は溶解ゾーン(220)へと供給され、ここで、固体のFDCA粗結晶生成物が再溶解される。固体FDCA粗結晶生成物流(205)が溶解ゾーン(220)へと送られる前に、メイクアップ共溶媒流(125)(水または軽質有機溶媒であってもよく、水および軽質有機溶媒の両方を含む溶媒組成物であってもよい)が固体FDCA粗結晶生成物流(205)に供給され、該多成分溶媒(共培養)中に溶解されたFDCAを含む溶解ゾーン生成物流(226)が生成される。溶解ゾーン生成物流(226)は、第2の(精製)結晶化ゾーン(230)へと送られ、共溶媒からなる蒸気再循環流(237)と、精製されたFDCA結晶を含む精製結晶化生成物流(235)とが生成される。共溶媒からなる蒸気再循環流(237)は、任意で酸化反応ゾーンへと送られて再利用することができる。また、共溶媒からなる液体再循環流(233)を、固体FDCA粗結晶生成物流(205)に任意で供給することができる。
【0130】
さらに別の統合型プロセスにおいて、酸化反応ゾーン生成物流が、水と重質有機溶媒とを含む多成分溶媒を含む場合、図8に示す統合型プロセスを使用してもよい。このプロセスでは、第2の(精製)結晶化ゾーンにおいて溶媒を水に変更する。この統合型プロセスでは、水、重質有機溶媒およびFDCAを含む酸化ゾーン生成物流(105)が、第1の結晶化ゾーン(200)へと送られて、固体のFDCA粗結晶を含む生成物流(205)と、任意で酸化反応ゾーンへと送られて再利用される水蒸気再循環流(212)と、任意で酸化反応ゾーンへと送られて再利用される水/重質有機溶媒からなる液体再循環流(207)とが生成される。パージ流(209)を任意で使用して、前記液体再循環流(207)から不純物を除去してもよい。固体FDCA粗結晶生成物流(205)は溶解ゾーン(220)へと供給され、ここで、固体のFDCA粗結晶生成物が再溶解される。固体FDCA粗結晶生成物流(205)が溶解ゾーン(220)へと送られる前に、水流(115)が固体FDCA粗結晶生成物流(205)に供給され、水に溶解されたFDCAを含む溶解ゾーン生成物流(223)が生成される。溶解ゾーン生成物流(223)は、第2の(精製)結晶化ゾーン(230)へと送られ、水蒸気再循環流(245)と、液体の水再循環流(236)と、精製されたFDCA結晶を含む精製結晶化生成物流(235)とが生成される。水蒸気再循環流(245)と液体の水再循環流(236)はいずれも、固体FDCA粗結晶生成物流(205)に任意で供給することができる。
【0131】
酸化反応ゾーン生成物流が、水と重質有機溶媒とを含む多成分溶媒(すなわち共溶媒)を含む場合、図9に示す統合型プロセスを使用してもよい。この統合型プロセスでは、水、重質有機溶媒およびFDCAを含む酸化ゾーン生成物流(105)が、第1の結晶化ゾーン(200)へと送られて、固体のFDCA粗結晶を含む生成物流(205)と、該固体FDCA粗結晶生成物流(205)へと任意で送られる水蒸気再循環流(211)と、任意で上流の酸化反応ゾーンへと送られて再利用される水/重質有機溶媒からなる液体再循環流(207)とが生成される。パージ流(209)を任意で使用して、前記液体再循環流(207)から不純物を除去してもよい。固体FDCA粗結晶生成物流(205)は溶解ゾーン(220)へと供給され、ここで、固体のFDCA粗結晶生成物が再溶解される。固体FDCA粗結晶生成物流(205)が溶解ゾーン(220)へと送られる前に、水および重質有機溶媒を含むメイクアップ溶媒流(125)が固体FDCA粗結晶生成物流(205)に供給され、水および重質有機溶媒からなる混合溶媒に溶解されたFDCAを含む溶解ゾーン生成物流(223)が生成される。溶解ゾーン生成物流(223)は、第2の(精製)結晶化ゾーン(230)へと送られ、水蒸気再循環流(245)と、水/重質有機溶媒からなる液体再循環流(236)と、精製されたFDCA結晶を含む精製結晶化生成物流(235)とが生成される。水蒸気流(245)は、任意で上流の酸化反応ゾーンへと送られて再利用することができる。水/重質有機溶媒からなる液体再循環流(236)は、任意で固体FDCA粗結晶生成物流(205)へと送られて再利用することができる。パージ流(239)を任意で使用して、前記液体再循環流(236)から不純物を除去してもよい。ここで述べたプロセスは例示を目的としたものであり、これらのプロセスの様々なバリエーションも可能である(たとえば、これらプロセス流は、これらのプロセスの別のポイントで別経路に送ってもよい)。
【0132】
本明細書に記載の方法で製造された結晶生成物は所望のバルク特性を示す。したがって、さらなる一実施形態において、本開示は、D50が50μm~5000μmである粒度分布を特徴とする複数のFDCA結晶を含む結晶性FDCA組成物を提供する。この結晶性FDCA製剤は、前記の方法を使用して製造することができる。
【0133】
本明細書において「D50」は粒度分布のメジアン径を指す。いくつかの実施形態において、前記D50は、50μm~2000μmの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、または100μm~3500μmの範囲もしくはこの範囲内の任意の値であり、多くの場合、100μm~3000μmの範囲もしくはこの範囲内の任意の値である。前記粒度分布のD50は、通常、100μm~750μmの範囲またはこの範囲内の任意の値であり、より典型的には、125μm~500μmの範囲またはこの範囲内の任意の値であり、場合によっては、125μm~450μmの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、または125μm~400μmの範囲もしくはこの範囲内の任意の値であり、いくつかの実施形態においては、200μm~500μmの範囲またはこの範囲内の任意の値である。
【0134】
前記態様の実施形態のいくつかにおいて、前記結晶性FDCA製剤は、10μm未満の粒径を有するFDCA結晶を1重量%未満の量で含む。別の実施形態において、前記結晶性FDCA製剤は、10μm未満の粒径を有するFDCA結晶を10wt%未満の量で含み、より典型的には、9wt%未満、8wt%未満、7wt%未満、6wt%未満または5wt%未満の量で含む。さらなる実施形態において、本開示の結晶性FDCA製剤は、通常、4μm未満の粒径を有するFDCA結晶を10wt%未満、9wt%未満、8wt%未満、7wt%未満、6wt%未満、5wt%未満、4wt%未満、3wt%未満、2wt%未満または1wt%未満の量で含む。
【0135】
前記結晶性FDCA製剤は、通常、少なくとも98wt%のFDCAを含み、より典型的には、少なくとも99wt%のFDCAを含み、いくつかの実施形態では、99wt%を超える量のFDCAを含む。
【0136】
本開示の結晶化プロセスは、液相結晶化の実施に適した公知の工業用晶析装置システムを使用して行ってもよい。好適な晶析装置システムとしては、たとえば、バッチ式晶析装置、連続晶析装置(たとえば強制循環型晶析装置、ドラフトチューブ型晶析装置、ドラフトチューブ&バッフル型晶析装置、オスロ型晶析装置など)、および他のタイプの晶析装置システムが挙げられる。
【0137】
通常、本開示の結晶性FDCA製剤は乾燥品であり、水の含量が1wt%未満である。多くの場合、水の含量は、0.9wt%未満、0.8wt%未満、0.7wt%未満、0.6wt%未満、0.5wt%未満、0.4wt%未満、0.3wt%未満もしくは0.2wt%未満、またはこれらの量のいずれか2つによって定義される範囲内の量である。
【0138】
さらなる一実施形態において、本開示は、FDCAと多成分溶媒とを含む組成物であって、該多成分溶媒が水および水混和性非プロトン性有機溶媒を含み、前記FDCAの濃度が少なくとも5wt%であることを特徴とする組成物を提供する。いくつかの実施形態において、前記FDCAの濃度は、少なくとも6wt%、少なくとも7wt%、少なくとも8wt%、少なくとも9wt%、少なくとも10wt%、少なくとも11wt%、少なくとも12wt%、少なくとも13wt%、少なくとも14wt%または少なくとも15wt%である。FDCAと多成分溶媒とを含む前記組成物は溶液の形態であってもよい。この溶液は、該溶液中に固体のFDCAが残らないように溶解されたFDCAを含んでいてもよい。FDCAと多成分溶媒とを含む前記組成物は、室温または160℃以下の温度(たとえば、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃もしくは160℃、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度)において溶液(該溶液中に固体のFDCAが残らないように溶解されたもの)の形態であってもよい。このような組成物は、酸化工程の下流の様々な単位操作、たとえば、エステル交換、重縮合、結晶化や、FDCA系生成物の製造に付随するその他の下流のプロセスなどを行うのに有用である。前記水混和性非プロトン性有機溶媒は、通常、NMPまたはグライム類やジオキサンなどのエーテル類である。
【0139】
いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒系中の水混和性非プロトン性有機溶媒種の濃度は、少なくとも5vol%、少なくとも10vol%、少なくとも15vol%、少なくとも20vol%、少なくとも25vol%、少なくとも30vol%、少なくとも35vol%、少なくとも40vol%、少なくとも45vol%、少なくとも50vol%、少なくとも55vol%、少なくとも60vol%、少なくとも65vol%、少なくとも70vol%、少なくとも75vol%、少なくとも80vol%、少なくとも85vol%、少なくとも90vol%または少なくとも95vol%であり;これらのそれぞれに対応して、前記多成分溶媒中の水の濃度は、通常、95vol%未満、90vol%未満、85vol%未満、80vol%未満、75vol%未満、70vol%未満、65vol%未満、60vol%未満、55vol%未満、50vol%未満、45vol%未満、40vol%未満、35vol%未満、30vol%未満、25vol%未満、20vol%未満、15vol%未満、10vol%未満もしくは5vol%未満、またはこれらの量のいずれか2つによって定義される範囲内の濃度である。
【0140】
より典型的には、水と水混和性非プロトン性有機溶媒の体積比は、通常、1:6~6:1である。いくつかの実施形態において、水と水混和性非プロトン性有機溶媒の体積比は1:4~4:1(v:v)または1:4~3:1(v:v)である。特定の実施形態において、水と水混和性非プロトン性有機溶媒の体積比は1:1(v:v)である。
【0141】
II.触媒の調製
本明細書に記載の方法において使用される不均一系酸化触媒は、様々な方法によって調製することができる。たとえば、貴金属は、たとえばincipient wetness法、イオン交換法、析出沈殿法および/または真空含浸法などの方法を使用して、担体材料の外面および内面に堆積させることができる。2種以上の金属を担体に堆積させる場合、これらの金属は順次に堆積させてもよく、同時に堆積させてもよい。触媒担体の表面に金属を堆積させた後、通常、20℃~120℃の温度(たとえば、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃もしくは120℃、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度)で1時間~24時間(たとえば、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間もしくは24時間、またはこれらの時間のいずれか2つによって定義される範囲内の時間)にわたって触媒を乾燥させる。触媒の乾燥は、大気圧よりも低い圧力条件で実施することができる。いくつかの実施形態において、触媒は乾燥後に還元される(たとえば、少なくとも200℃のN雰囲気に5%Hを一定時間(たとえば少なくとも3時間)にわたって吹き込むことによって触媒を還元する)。また、少なくとも200℃の温度で少なくとも3時間にわたって空気中で触媒を焼成してもよい。
【0142】
前記不均一系酸化触媒が金を含む場合、液体中に溶解された一成分としての金を担体材料に加えてもよい。金含有溶液を担体材料と混合した場合、溶解された金を含む液相中に担体材料が懸濁された懸濁液が形成される。この方法では、次いで、塩基を該懸濁液に加えて不溶性の金錯体の沈殿物を形成させ、この金錯体沈殿物を担体材料の表面に均一に堆積させる。この堆積法において、溶解される金成分は、金の塩(たとえばHAuClなど)の形態であってもよい。前記塩基としては、不溶性金錯体の形成を促進することができる塩基であればどのようなものであっても好適に使用することができるが、通常、水酸化カリウム(KOH)や水酸化ナトリウム(NaOH)などの塩基が使用される。得られた固体は、たとえば濾過や遠心分離などの、液体から固体を分離するための公知の方法によって回収してもよい。回収された固体は、次いで洗浄してもよく、加熱乾燥してもよい。また、加熱することによって、担体に担持された金錯体を還元して金(0)としてもよい。60℃以上の温度で加熱して乾燥させ、金を効果的に還元可能な温度である150℃~500℃(たとえば、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃もしくは500℃、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度)で加熱して還元してもよい。様々な実施形態において、該加熱工程を還元雰囲気下で行うことにより金錯体の還元を促進させ、金を金(0)として担体上に堆積させてもよい。加熱時間は、様々な要因、たとえば加熱工程の目的や、不溶性錯体を形成させるために加えられる塩基の分解速度などに応じて数時間から数日間の範囲で選択される。通常、乾燥を目的とした加熱時間は、2~24時間(たとえば、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間もしくは24時間、またはこれらの時間のいずれか2つによって定義される範囲内の時間)であり、金錯体の還元を目的とした加熱時間は、1~4時間(たとえば、1時間、2時間、3時間もしくは4時間、またはこれらの時間のいずれか2つによって定義される範囲内の時間)である。
【0143】
前記不均一系酸化触媒が白金を含む場合、通常、可溶性白金前駆体化合物を含む溶液または白金含有コロイドと担体材料とを接触させることによって白金を担体材料に加える。白金は、様々な化合物の形態で担体材料に堆積させてもよく、たとえば、硝酸白金(II)、硝酸白金(IV)、オキシ硝酸白金、アセチルアセトナト(acac)白金(II)、硝酸テトラアンミン白金(II)、リン酸水素テトラアンミン白金(II)、硝酸テトラアンミン白金(II)、リン酸水素テトラアンミン白金(II)、硝酸テトラアンミン白金(II)、リン酸水素テトラアンミン白金(II)、炭酸水素テトラアンミン白金(II)、水酸化テトラアンミン白金(II)、HPtCl、PtCl、NaPtCl、KPtCl、(NHPtCl、Pt(NHCl、Pt(NHClの混合物、KPt(OH)、NaPt(OH)、(NMePt(OH)、[(CNO)]Pt(OH)などの形態で担体材料に堆積させてもよい。通常、白金は、硝酸白金(II)、硝酸白金(IV)、アセチルアセトナト(acac)白金(II)、水酸化テトラアンミン白金(II)、KPtClまたはKPt(OH)の形態で担体材料に加えられる。
【0144】
金と白金を含む不均一系酸化触媒が望ましい場合、金を担体材料の表面に堆積する前またはその後に白金を担体材料の表面に堆積することができ、あるいは、白金と金を同時に堆積することもできる。金含有不均一系酸化触媒に白金を担持させる場合、白金は、金を堆積させた後、金を乾燥させる前もしくはその後、または金の乾燥後に金を還元する前もしくはその後に担持させることができる。金を堆積させる前に白金を触媒担体に担持させる場合、担体への金の堆積を促進するために使用される塩基の添加によって再溶解されないような形態の白金を使用する。
【0145】
白金化合物を担体材料に担持させた後、得られた白金担持担体材料を乾燥させる。乾燥は室温で行ってもよく、120℃以下の温度(たとえば、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃もしくは120℃、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度)で行ってもよい。乾燥は、通常、40℃~80℃の範囲の温度もしくはこの範囲内の任意の値の温度で行われ、多くの場合、60℃(たとえば、40℃、50℃、60℃、70℃もしくは80℃、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度)で行われる。乾燥は、通常、数分間から数時間までの範囲の時間にわたって実施される。通常、白金担持担体材料は、6時間~24時間またはこの範囲内の任意の値の時間(たとえば、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間もしくは24時間、またはこれらの時間のいずれか2つによって定義される範囲内の時間)にわたって乾燥される。乾燥は、バンド式焼成機またはベルトドライヤー上で、60℃~120℃の範囲の温度またはこの範囲内の任意の値の温度(たとえば、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃もしくは120℃、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度)まで連続的または段階的に温度を上昇させて行うことができる。
【0146】
白金担持担体材料は、乾燥させた後、少なくとも1つの熱処理に付すことによって、(白金(II)または白金(IV)として堆積された)白金を還元して白金(0)とする。特定の実施形態において、熱処理はフォーミングガス雰囲気下で実施してもよい。あるいは、液体還元剤を使用して白金を還元してもよい。たとえば、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、ギ酸もしくはその塩(たとえばギ酸ナトリウム)またはNaHPOを使用して、白金を還元してもよい。
【0147】
前記少なくとも1つの熱処理を実施する際の温度は、通常、150℃~600℃の範囲の温度またはこの範囲内の任意の値の温度(たとえば、150℃、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃もしくは600℃、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度)である。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つの熱処理を実施する際の温度は、200℃~500℃の温度またはこの範囲内の任意の値の温度であり、より典型的には、200℃~400℃の温度またはこの範囲内の任意の値の温度(たとえば、200℃、250℃、300℃、350℃もしくは400℃、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度)である。前記熱処理は、通常、1時間~8時間またはこの範囲内の任意の値の時間にわたって実施され、いくつかの実施形態において、1時間~3時間またはこの範囲内の任意の値の時間にわたって実施される(たとえば、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間もしくは8時間、またはこれらの時間のいずれか2つによって定義される範囲内の時間にわたって実施される)。
【0148】
III.FDCA誘導体およびFDCAポリマーの調製
FDCAの誘導体は、本開示の方法を使用して製造されたFDCAから容易に調製することができる。たとえば、いくつかの実施形態において、(たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニアなどの塩基を加えることによって)1種以上のFDCA経路生成物をさらに転化してFDCAの塩を得たり、FDCAのエステル、アミド、ハロゲン化物などを得たりすることが望ましい場合もある。
【0149】
FDCAはジカルボン酸官能基を有することから、そのままの形態でも、誘導体化された形態でも、モノマーとして有用に使用できる。さらなる重合化を実施するためのモノマーとして有用なFDCA誘導体としては、FDCAエステル、FDCAアミド、FDCAハロゲン化物などが挙げられる。得られたFDCA誘導体は、たとえば蒸留や結晶化などによって精製してもよい。
【0150】
一実施形態において、本開示は、FDCAをFDCAエステルに転化する方法であって、対応するFDCAモノエステルまたはFDCAジエステルを生成させるのに十分な条件下で、本開示の方法によって製造されたFDCAをアルコール類と接触させることを含む転化工程を含む方法を提供する。本開示の実施における使用に適したアルコール類としては、分岐鎖または直鎖のC~C20アルコール(たとえば脂肪族アルコール類または芳香族C~C20アルコール類、たとえばジオール類やポリオール類など)が挙げられる。いくつかの実施形態において、前記アルコール類は、分岐鎖もしくは直鎖のC~C10アルコールもしくはC~Cアルコール、または分岐鎖もしくは直鎖のC~Cアルコール(すなわち、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、2-メチルプロパン-1-オール(すなわちイソブチルアルコール)、2-メチル-2-プロパノール(すなわちt-ブチルアルコール)、n-ブチルなど)である。また、ジオール類や他のポリオール類を含むC~C12ポリオール類も、この方法において好適に使用できる。C~C12ポリオール類としては、エタンジオール(エチレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ヘキサンジオール(たとえば、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオールなど)、ヘキサントリオール(たとえば、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,3-ヘキサントリオール、1,3,6-ヘキサントリオールなど)、ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,8-オクタンジオール、4-オクテン-1,8-ジオール、1,9-ノナンジオール、2-ノネン-1,4-ジオール、7-ノネン-1,5-ジオール、7-ノネン-1,5-ジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールなど、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。FDCAのモノエステルまたはジエステルの形成を促進するのに十分な条件(すなわち「エステル化条件」)としては、たとえば、50℃~150℃の範囲の温度(たとえば、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃もしくは150℃、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度)において、たとえば鉱酸(たとえばHClやHSOなど)などの触媒の存在下でFDCAを所望のアルコール類と接触させることが挙げられる。多くの場合、前記アルコール類はメタノールであり、前記FDCAエステルはFDCAのメチルエステルであり、通常、FDCAのジメチルエステルである。別の実施形態において、前記アルコール類はエタノールであり、前記FDCAエステルはFDCAのエチルエステルであり、通常、FDCAのジエチルエステルである。
【0151】
蒸留によって精製FDCAジメチルエステルを製造するための統合型プロセスの一例を図10に示す。図10を参照して説明すると、固体の粗FDCAを含む供給原料流(205)は、エステル化ゾーン(280)に送られる前に、メタノール流(250)およびメタノール/水からなる任意の蒸気流(265)と混合される。エステル化ゾーン(280)に送られたFDCAとメタノールはエステル化促進条件に付され、FDCAのジメチルエステルを含むエステル化ゾーン生成物流(285)が生成される。エステル化ゾーン生成物流(285)は、フラッシュ蒸留塔を備えたフラッシュ蒸留ゾーンへと送られ、メタノール/水からなる蒸気再循環流(265)と、FDCAのジメチルエステルを含むフラッシュゾーン生成物流(263)とが生成される。エステル化ゾーンで生成された水の一部は、メタノール/水からなる蒸気再循環流(265)を経由して水蒸気パージ流(267)へと除去されてもよい。メタノールまたはメタノール/水からなる蒸気再循環流(265)は、FDCA供給原料流(205)へと送られて再利用される。フラッシュゾーン生成物流(263)は、蒸留塔ゾーン(270)へと送られ、不純物流(273)と、精製されたFDCAジメチルエステルを含む軽質流(275)とが生成される。
【0152】
精製工程として結晶化を利用した、精製FDCAジメチルエステルを製造するための別の統合型プロセスを図11に示す。このプロセスでは、固体の粗FDCAを含む供給原料流(205)が、メイクアップされたメタノール流(265)およびメタノール/水からなる任意の蒸気流(297)と混合されて、エステル化ゾーン(280)に送られる。エステル化ゾーン(280)に送られたFDCAとメタノールはエステル化促進条件に付され、FDCAのジメチルエステルを含むエステル化ゾーン生成物流(285)が生成される。エステル化ゾーン生成物流(285)は、ジエステル晶析装置ゾーン(290)へと送られ、結晶形態のFDCAジメチルエステルを含むジエステル晶析装置ゾーン生成物流(295)と、メタノールおよび水を含む液体再循環流(293)と、メタノール/水からなる蒸気流(297)とが生成される。液体再循環流(293)はメタノール/水からなる蒸気流(297)へと送られる。メタノール/水からなる蒸気流(297)に含まれる水の一部は、水蒸気パージ流(281)へと除去してもよい。パージ流(294)を任意で使用することによって、メタノール/水からなる蒸気流(293)から不純物成分を容易に除去することができる。
【0153】
別の一実施形態において、本開示は、FDCAまたはFDCAエステルをFDCAアミドに転化する方法であって、対応するFDCAモノアミドまたはFDCAジアミドを生成させるのに十分な条件下で、本開示の方法によって製造されたFDCAまたはFDCAエステルをアミノ置換化合物と接触させることを含む転化工程を含む方法を提供する。FDCAのモノアミドまたはジアミドの形成を促進させるのに十分な条件(すなわち「アミド化条件」)としては、たとえば、カルボン酸またはエステルをアミドに転化することが知られている条件下において、FDCAまたはFDCAエステルをアミンと接触させることが挙げられる。たとえば、March’s Advanced Organic Chemistry Eds. M. B. Smith and J. March; Wiley (2013)を参照されたい(この文献は引用により本明細書に援用される)。本開示の実施における使用に適したアミノ置換化合物としては、たとえば、C~C20の脂肪族アミン類または芳香族アミン類が挙げられる。アミノ置換化合物は、通常、C~C10またはC~Cのモノアミンまたはジアミンである。好適なアミノ置換化合物としては、たとえば、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミンなどが挙げられる。
【0154】
さらなる一実施形態において、本開示は、FDCAをFDCAのハロゲン化物に転化する方法であって、カルボン酸をハロゲン化アシルに転化することが知られている条件下において、本開示の方法によって製造されたFDCAとハロゲン化剤(たとえばSOCl)を接触させることを含む転化工程を含む方法を提供する。たとえば、March’s Advanced Organic Chemistry Eds. M. B. Smith and J. March; Wiley (2013)を参照されたい(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。
【0155】
特定のFDCA誘導体はFDCAモノマーとして使用してもよく、これは、たとえばポリエステルやポリアミドなどのポリマーの製造に有用である。本明細書において「FDCA系モノマー」は、FDCAを指すとともに、別のモノマーと反応してポリマーを形成することが可能なFDCA誘導体も指す。したがって、さらなる一実施形態において、本開示は、FDCA系ポリマーを製造する方法であって、FDCA系ポリマーの製造に十分な条件下で、本開示のFDCA系モノマーを重合することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、FDCA系モノマーは、FDCAエステル(すなわちモノエステルまたはジエステル)、FDCAアミド(すなわちFDCAモノアミドまたはFDCAジアミド)、FDCAハロゲン化物(たとえばFDCAモノクロリド、FDCAジクロリドなど)などからなる群から選択されるFDCA誘導体である。特定の実施形態において、FDCA系モノマー(第1のモノマー)は、該第1のモノマーとは別の種類の第2のモノマーと重合される。本開示の実施における使用に適した第2のモノマーとしては、少なくとも2つのヒドロキシル基を有するポリオール類が挙げられる。
【0156】
好適なコモノマーとして使用することができるポリオール類としては、エタンジオール(エチレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ヘキサンジオール(たとえば、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオールなど)、ヘキサントリオール(たとえば、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,3-ヘキサントリオール、1,3,6-ヘキサントリオールなど)、ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,8-オクタンジオール、4-オクテン-1,8-ジオール、1,9-ノナンジオール、2-ノネン-1,4-ジオール、7-ノネン-1,5-ジオール、7-ノネン-1,5-ジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールなど、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。前記ポリオール類は、通常、ジオール類である。ジカルボン酸としては、たとえば、コハク酸、アジピン酸などが挙げられる。ヒドロキシ酸としては、たとえば、乳酸、コハク酸、リンゴ酸、サリチル酸、シリンガ酸、フェルラ酸などが挙げられる。糖アルコールとしては、たとえば、イソソルビド、イソマンニド、イソイジドなどが挙げられる。通常、FDCA系モノマーは、FDCAおよびジメチルFDCAエステルからなる群から選択され、第2のモノマーとしてポリオール類が使用される。
【0157】
FDCA系モノマーがFDCAである場合、第2のモノマーは、脂肪族ジアミン類もしくは芳香族ジアミン類、または脂肪族ポリオール類もしくは芳香族ポリオール類(たとえば、ジオール類、トリオール類など)のいずれであってもよい。好適なジアミン類としては、たとえば、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミンなどが挙げられる。好適なポリオール類としては、前述したものが挙げられる。
【0158】
本開示のFDCA系ポリマーは、通常、溶液重合または溶融重合における重縮合反応を使用して製造される。いくつかの実施形態においては、先にエステル交換工程を行い、次いで重合工程を行う。重縮合反応は、通常、たとえば酸化ジブチルスズ(IV)、チタン(IV)イソプロポキシド、酸化アンチモン(III)などの触媒の存在下で行われる(たとえば、G.-J. M. Gruter, et al., Comb. Chem. High Throughput Screening (2012) 15:180-188を参照されたい(この文献は引用により本明細書に援用される))。
【0159】
特定の一実施形態において、本開示は、FDCA系ポリエステルを製造する方法であって、
120℃~225℃の範囲の温度(たとえば、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、180℃、190℃、200℃、210℃もしくは225℃、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度)において、FDCAおよびFDCAジメチルエステルからなる群から選択されるFDCAモノマーを、C~C20ポリオール類と接触させて、(それぞれエステル化工程またはエステル交換工程において)対応するジヒドロキシC~C20FDCAエステルを得るための反応混合物を形成させること、ならびに
前記反応混合物の温度を180℃~250℃の範囲の温度(たとえば、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃もしくは250℃、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度)に上昇させて、(重縮合工程において)対応するFDCA系ポリエステルを生成させること
を含む方法を提供する。
前記C~C20FDCAポリオール類は、通常、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオールからなる群から選択されるジオール類である。特定の実施形態では、前記方法で得られたポリエステルの分子量を、第3の段階の固相重合によってさらに増加させることができ、該第3の段階の固相重合では、(ペレット状、顆粒状、フレーク状、チップ状などの形態の)前記ポリエステル系ポリマー材料を、特定の時間にわたって、たとえば1~24時間(たとえば、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間もしくは24時間、またはこれらの時間のいずれか2つによって定義される範囲内の時間)にわたって、該ポリエステルのガラス転移温度よりも高く、該ポリエステルの融解温度よりも低い温度に加熱する。前記重縮合方法は、通常、1気圧よりも低い圧力で行われる。
【0160】
IV.フラン系酸化基質の調製
フラン系酸化基質材料は容易に購入することができるが、特定の状況下ではフラン系酸化基質材料を調製することが望ましい場合もあると考えられる。本開示は、フラン系酸化基質を製造する方法であって、
(a)糖を脱水してフラン系酸化基質を生成させるための(脱水)反応混合物を形成させるのに十分な条件下において、糖および脱水溶媒を含む糖質供給原料を触媒と接触させること(本明細書において「脱水プロセス」と呼ぶ)
を含む方法を提供する。
前記糖は通常ヘキソースであり、たとえば、グルコース、ガラクトース、マンノース、イドース、ケトヘキソース、フルクトース、レブロース、ソルボース、タガトース、アロースなどが挙げられる。通常、前記糖はグルコースまたはフルクトースである。多くの場合、前記糖はフルクトースである。
【0161】
「脱水溶媒」は、脱水反応が実施される温度において、前記糖およびフラン系酸化基質をそれぞれ最低でも少なくとも2重量%ずつ溶解させることができる溶媒を指す。通常、脱水溶媒は、脱水反応が実施される温度で測定した場合に、フラン系酸化基質が、少なくとも3wt%、少なくとも4wt%、少なくとも5wt%、少なくとも6wt%、少なくとも7wt%、少なくとも8wt%、少なくとも9wt%、少なくとも10wt%、少なくとも11wt%、少なくとも12wt%、少なくとも13wt%、少なくとも14wt%、少なくとも15wt%、少なくとも17%、少なくとも19%、少なくとも21%、少なくとも23%または少なくとも25%の溶解度を示す溶媒である。いくつかの実施形態において、脱水溶媒中のフラン系酸化基質の濃度は、2~4wt%、3~5wt%、4~6wt%、5~7wt%、6~8wt%、7~9wt%、8~10wt%、9~11wt%、10~12wt%、11~13wt%、12~14wt%、13~15wt%、14~16wt%、15~17wt%、16~18wt%、17~19wt%、18~20wt%、19~21wt%、20~22wt%、21~23wt%、22~24wt%もしくは23~25wt%、前記割合(重量%)のいずれか2つによって定義される範囲内の濃度、またはこれらの範囲内の任意の値の濃度である。脱水溶媒は、通常、水および/または水混和性有機溶媒を含む。より典型的には、脱水溶媒は多成分溶媒である。通常、脱水プロセスにおいて使用される多成分溶媒は、水および水混和性非プロトン性有機溶媒を含む。脱水プロセスでの使用に適した水混和性非プロトン性有機溶媒および多成分溶媒組成物は、前述したような、FDCA経路生成物の製造方法での使用に適したものと同一である。いくつかの実施形態において、前記水混和性非プロトン性有機溶媒はN-メチル-2-ピロリドン(NMP)である。いくつかの実施形態において、前記糖質供給原料はフルクトースを含み、前記フラン系酸化基質はHMFを含む。
【0162】
脱水溶媒中での使用に適した水混和性非プロトン性溶媒としては、テトラヒドロフラン、グライム類、ジオキサン、ジオキソラン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン(「NMP」)、メチルエチルケトン(「MEK」)、γ-バレロラクトンなどが挙げられる。前記水混和性非プロトン性有機溶媒は、たとえばグライム類、ジオキサン(1,4-ジオキサン)、ジオキソラン類(たとえば1,3-ジオキソラン)、テトラヒドロフランなどのエーテル類であることが好ましい。本開示の実施における使用に適したグライム類としては、たとえば、モノグライム(1,2-ジメトキシエタン(「DME」))、エチルグライム、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、エチルジグライム、トリグライム、ブチルジグライム、テトラグライム、ポリグライム類、高分子量アルコールの高エトキシ化ジエーテル(「ハイグライム」)などが挙げられる。多くの場合、前記脱水溶媒は、グライム類、ジグライムまたはジオキサンである水混和性非プロトン性有機溶媒と、水とを含む多成分溶媒である。
【0163】
いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒中の水混和性有機溶媒種の濃度は、少なくとも5体積%(vol%)、少なくとも10vol%、少なくとも15vol%、少なくとも20vol%、少なくとも25vol%、少なくとも30vol%、少なくとも35vol%、少なくとも40vol%、少なくとも45vol%、少なくとも50vol%、少なくとも55vol%、少なくとも60vol%、少なくとも65vol%、少なくとも70vol%、少なくとも75vol%、少なくとも80vol%、少なくとも85vol%、少なくとも90vol%または少なくとも95vol%であり;これらのそれぞれに対応して、前記多成分溶媒系中の水の濃度は、通常、95vol%未満、90vol%未満、85vol%未満、80vol%未満、75vol%未満、70vol%未満、65vol%未満、60vol%未満、55vol%未満、50vol%未満、45vol%未満、40vol%未満、35vol%未満、30vol%未満、25vol%未満、20vol%未満、15vol%未満、10vol%未満または5vol%未満である。
【0164】
いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、1~5wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、99~95wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、5~10wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、95~90wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、10~15wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、90~85wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、15~20wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、85~80wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、20~25wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、80~75wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、25~30wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、75~70wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、30~35wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、70~65wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、35~40wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、65~60wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、40~45wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、60~55wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、45~50wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、65~50wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、50~55wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、50~45wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、55~60wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、45~40wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、60~65wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、40~35wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、65~70wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、35~30wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、70~75wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、30~25wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、75~80wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、25~20wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、80~85wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、20~15wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、85~90wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、15~10wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、90~95wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、10~5wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、95~99wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水と、5~1wt%またはこの範囲内の任意の値で示される割合の水混和性有機溶媒とを含む。
【0165】
いくつかの実施形態において、水と水混和性有機溶媒の体積比は1:6~6:1またはこの範囲内の任意の値である。特定の実施形態において、水と水混和性有機溶媒の体積比は1:4~4:1またはこの範囲内の任意の値である。別の実施形態において、水と水混和性有機溶媒の体積比は1:4~3:1またはこの範囲内の任意の値である。別の実施形態において、水と水混和性有機溶媒の体積比は1:3~3:1またはこの範囲内の任意の値である。特定の実施形態において、水と水混和性有機溶媒の体積比は1:1である。
【0166】
いくつかの実施形態において、前記多成分溶媒は、水および2種の水混和性有機溶媒を含む。通常、前記水混和性有機溶媒はいずれも水混和性非プロトン性有機溶媒である。前記2種の水混和性非プロトン性溶媒はそれぞれ、テトラヒドロフラン、グライム類、ジオキサン、ジオキソラン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン(「NMP」)、メチルエチルケトン(「MEK」)およびγ-バレロラクトンからなる群から独立して選択することができる。前記水混和性非プロトン性有機溶媒の一方または両方が、たとえばグライム類、ジオキサン(たとえば1,4-ジオキサン)、ジオキソラン類(たとえば1,3-ジオキソラン)、テトラヒドロフランなどのエーテル類であってもよい。グライム類としては、たとえば、モノグライム(1,2-ジメトキシエタン(「DME」))、エチルグライム、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、エチルジグライム、トリグライム、ブチルジグライム、テトラグライム、ポリグライム類、高分子量アルコールの高エトキシ化ジエーテル(「ハイグライム」)などが挙げられる。
【0167】
いくつかの実施形態において、水と第1の水混和性有機溶媒と第2の水混和性有機溶媒の体積比は約1:1:1(v:v:v)である。いくつかの実施形態において、水と第1の水混和性有機溶媒と第2の水混和性有機溶媒の体積比は約1:2:1(v:v:v)である。いくつかの実施形態において、水と第1の水混和性有機溶媒と第2の水混和性有機溶媒の体積比は約1:2:2(v:v:v)である。いくつかの実施形態において、水と第1の水混和性有機溶媒と第2の水混和性有機溶媒の体積比は約2:1:1(v:v:v)である。
【0168】
いくつかの実施形態において、前記脱水溶媒に使用される多成分溶媒は、水と第1の水混和性有機溶媒と第2の水混和性有機溶媒を、表Bに示すような相対量で含む。
【0169】
【表2】
【0170】
前記糖質供給原料中の糖の濃度は、通常、2wt%~80wt%の範囲もしくはこの範囲内の任意の値、または5wt%~80wt%の範囲もしくはこの範囲内の任意の値である。様々な実施形態において、前記糖の濃度は、20wt%~80wt%の範囲またはこの範囲内の任意の値である。いくつかの実施形態において、前記糖質供給原料中の糖の濃度は5wt%~20wt%の範囲またはこの範囲内の任意の値である。別の実施形態において、前記糖質供給原料中の糖の濃度は、5wt%~40wt%の範囲またはこの範囲内の任意の値である。いくつかの実施形態において、前記糖質供給原料中の糖の濃度は、5~15wt%、10~20wt%、15~25wt%、20~30wt%、25~35wt%、30~40wt%、35~45wt%、40~50wt%、45~55wt%、50~60wt%、55~65wt%、60~70wt%、65~75wt%もしくは70~80wt%、これらの割合(重量%)のいずれか2つによって定義される範囲内の濃度、またはこれらの範囲内の任意の値の濃度である。
【0171】
前記脱水プロセスでの使用に適した触媒としては、たとえば均一系酸触媒などの均一系触媒、および不均一系触媒が挙げられる。好適な均一系酸触媒としては、たとえば無機酸が挙げられ、たとえば、鉱酸(たとえば、HSO、HNO、HCl、HBr、HIなど、およびこれらの2種以上の任意の組み合わせ)、ブレンステッド酸(たとえば、HCl、HI、HSO、HNO、HPO、シュウ酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸など、およびこれらの2種以上の任意の組み合わせ)、ルイス酸(たとえば、三ハロゲン化ホウ素、有機ボラン、三ハロゲン化アルミニウム、五フッ化リン、五フッ化アンチモン、希土類金属トリフラート、金属ハロゲン化物(たとえばZnClやZnBr)、金属トリフルオロ酢酸塩、金属カチオンエーテル錯体など、およびこれらの2種以上の任意の組み合わせ)、有機酸(たとえば、トリフル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シュウ酸、レブリン酸など、およびこれらの2種以上の任意の組み合わせ)、ならびにこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0172】
均一系触媒の使用量は、通常、0.1~25mol%またはこの範囲内の任意の値であり、より典型的には、0.5~5mol%またはこの範囲内の任意の値である(このモル濃度(mol%)は、糖(たとえばヘキソース)のモル数に対して算出した濃度である)。本開示の実施における使用に適した不均一系触媒としては、酸機能化樹脂、酸性化炭素、ゼオライト、マイクロ多孔質金属酸化物および/またはメソ多孔質金属酸化物、スルホン化金属酸化物、ホスホン酸化金属酸化物、粘土、ポリオキソメタレート、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい不均一系触媒としては、酸機能化樹脂が挙げられる。スラリー反応器への不均一系触媒の投入量は、通常、1g/L~20g/Lまたはこの範囲内の任意の値(たとえば、1g/L、2g/L、3g/L、4g/L、5g/L、6g/L、7g/L、8g/L、9g/L、10g/L、11g/L、12g/L、13g/L、14g/L、15g/L、16g/L、17g/L、18g/L、19g/Lまたは20g/L)であり、固定床反応器への不均一系触媒の投入量は、通常、200g/L~1500g/L(たとえば、200g/L、300g/L、400g/L、500g/L、600g/L、700g/L、800g/L、900g/L、1000g/L、1100g/L、1200g/L、1300g/L、1400g/Lまたは1500g/L)である。当業者であれば、不均一系触媒の投入量は、使用する反応器の種類によって変える必要があるものの、前記ガイドラインに従って容易に決定することができることを理解できるであろう。
【0173】
さらなる特定の一実施形態において、本開示は、フラン系酸化基質を製造する方法であって、
(a)糖を脱水してフラン系酸化基質を生成させるための(脱水)反応混合物を形成させるのに十分な条件下において、糖および脱水溶媒を含む糖質供給原料を酸触媒と接触させること
を含み、
前記酸触媒が、HBr、HSO、HNO、HCl、HI、HPO、トリフル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸からなる群から選択される酸であること、
前記酸触媒がHBrではない場合、前記反応混合物が臭化物塩をさらに含むこと、ならびに
前記脱水溶媒がNMPを含むこと
を特徴とする方法を提供する。
前記酸触媒は、通常、均一系酸触媒である。好適な有機酸としては、前述したものが挙げられる。好適な臭化物塩としては、LiBr、NaBr、KBr、MgBr、CaBr、ZnBr、およびRBr(式中RはC~Cアルキル基である)で示される化学構造を有する臭化アンモニウム塩が挙げられる。該臭化アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミドなどが挙げられるが、これらに限定されない。臭化物塩の使用量は、通常、反応混合物中に含まれる酸に対してモル過剰量である。
【0174】
酸触媒の使用量は、通常、0.1~25mol%またはこの範囲内の任意の値であり、より典型的には、0.5~5mol%またはこの範囲内の任意の値である(このモル濃度(mol%)は、糖(たとえばヘキソース)のモル数に対して算出した濃度である)。いくつかの実施形態において、糖を脱水するための反応混合物中の酸触媒の量は、該反応混合物のpHが酸性となる量である。いくつかの実施形態において、糖を脱水するための反応混合物中の酸触媒の量は、該反応混合物のpHが6未満となる量である。いくつかの実施形態において、糖を脱水するための反応混合物中の酸触媒の量は、該反応混合物のpHが5未満となる量である。いくつかの実施形態において、糖を脱水するための反応混合物中の酸触媒の量は、該反応混合物のpHが4未満となる量である。いくつかの実施形態において、糖を脱水するための反応混合物中の酸触媒の量は、該反応混合物のpHが3未満となる量である。いくつかの実施形態において、糖を脱水するための反応混合物中の酸触媒の量は、該反応混合物のpHが2未満となる量である。いくつかの実施形態において、糖を脱水するための反応混合物中の酸触媒の量は、該反応混合物のpHが1未満となる量である。
【0175】
前記脱水反応混合物は、通常、1atm~15atmの範囲の圧力下もしくはこの範囲内の任意の値の圧力下、または2atm~15atmの範囲の圧力下もしくはこの範囲内の任意の値の圧力下(たとえば、1atm、2atm、3atm、4atm、5atm、6atm、7atm、8atm、9atm、10atm、11atm、12atm、13atm、14atmまたは15atmの圧力下)において、50℃~250℃の範囲の温度またはこの範囲内の任意の値の温度(たとえば、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃もしくは250℃、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度)で維持される。より典型的には、前記脱水反応混合物は、80℃~180℃の範囲の温度またはこの範囲内の任意の値の温度(たとえば、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃もしくは180℃、またはこれらの温度のいずれか2つによって定義される範囲内の温度)で維持される。いくつかの実施形態において、前記脱水混合物は、80℃~160℃、80℃~150℃、80℃~140℃、80℃~130℃、80℃~120℃、80℃~110℃もしくは80℃~100℃、またはこれらのいずれかの範囲内の任意の値の温度で維持される。いくつかの実施形態において、前記脱水混合物は、110℃未満または100℃未満の温度で維持される。本出願人らは、驚くべきことに、本開示の脱水混合物が、110℃未満という比較的低い温度(たとえば100℃未満)においてフラン系酸化基質を高収率で生成できることを発見した。
【0176】
望ましくない生成物の生成を最小限に抑え、かつフラン系酸化基質の収率を最大限にするためには、WO2015/113060(この文献は引用により本明細書に援用される)に記載されているように、転化が部分的に完了した時点まで脱水反応を行うことが望ましい場合があり、これは、脱水反応を停止させ、たとえば濾過などにより未転化の糖を分離し再利用することによって行われる。フラン系酸化基質が脱水反応によって生成される場合、該フラン系酸化基質は脱水生成物溶液中に含まれる。本明細書において「脱水生成物溶液」は、フラン系酸化基質および脱水溶媒を含む溶液を指す。脱水生成物溶液は、溶解したフラン系酸化基質と、溶解していない1種以上の成分とを含む混合物であってもよく、溶解していない1種以上の成分は、腐植質および未反応の糖から選択される。フラン系酸化基質は、腐植質および未反応の糖からなる群から選択される1種以上の成分から分離してもよく、かつ/または脱水生成物溶液から単離してもよく、さらに任意で精製してもよい。このような一実施形態では、脱水生成物溶液を膜分離することによって、腐植質および未反応の糖からなる群から選択される1種以上の成分からフラン系酸化基質を分離する。このような分離での使用に適した膜としては、ナノ濾過膜、限外濾過膜およびその組み合わせが挙げられる。
【0177】
前記脱水生成物溶液は、FDCA経路生成物またはその誘導体を製造するための供給原料として使用してもよく、フラン系酸化基質を利用した別の後工程において使用してもよい。通常、フラン系酸化基質はHMFである。
【0178】
前記糖質供給原料の脱水によってフラン系酸化基質を製造する場合、該フラン系酸化基質は、通常少なくとも60%の収率(モル換算)で製造することができる。いくつかの実施形態において、前記収率は少なくとも70%であり、別の実施形態において、前記収率は、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%である。いくつかの実施形態において、前記収率は、60~65%、62~67%、65~70%、67~72%、70~75%、72~77%、75~80%、77~82%、80~85%、82~87%、85~90%、87~92%、90~95%、92~97%、95~98%もしくは97~99%、またはこれらの割合(%)のいずれか2つによって定義される範囲内の割合(%)である。
【0179】
特定の一実施形態において、FDCA経路生成物を生成するための本開示の酸化プロセス工程(a)を行う前に、工程(a)を実施して、脱水生成物溶液中でフラン系酸化基質を生成させる。脱水生成物溶液は、工程(a)の酸化供給原料と同様に、直接使用することができ、あるいは間接的に(すなわち1つ以上の前処理工程を行ってから)使用することもできる。この前処理工程としては、分離工程(たとえば、濾過工程、膜分離工程(たとえば限外濾過またはナノ濾過など)、クロマトグラフィー、イオン交換など);蒸留工程(全溶媒成分の除去または一部の溶媒成分の除去);または脱水生成物溶液の組成を調整することによって、所望の組成としたり、工程(a)で使用される酸化供給原料を形成させたりするのに適した他の類似の工程/プロセスを挙げることができる。この実施形態において、前記脱水溶媒は、通常、酸化溶媒と共通の溶媒種を少なくとも1種含む。前処理工程中に1種以上のさらなる溶媒種を前記脱水生成物溶液に加えることによって、工程(a)で使用するための所望の酸化供給原料組成物を該脱水生成物溶液から調製してもよい。たとえば、前記脱水溶媒は水混和性非プロトン性有機溶媒であってもよい。工程(a)を行なった後、工程(a)を行う前に、前処理工程において脱水生成物溶液に水を加え、その結果得られた、フラン系酸化基質および酸化溶媒(すなわち、この例においては、水混和性非プロトン性有機溶媒および水で構成される多成分溶媒)を含む酸化供給原料を工程(a)で使用することができる。あるいは、脱水生成物溶液は、工程(a)に直接(すなわち、そのままの状態で)酸化供給原料として使用することもできる。この実施形態において、脱水生成物溶液に含まれる脱水溶媒は、通常、水と非プロトン性有機溶媒とを含む多成分溶媒(すなわち、酸化溶媒としての使用に適した多成分溶媒)である。
【0180】
本開示の前記態様およびその他の態様は、以下の実施例を参照することによってより深く理解することができる。なお、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【実施例0181】
実施例1
FDCAの溶解度の評価
FDCAを溶解する能力について様々な溶媒をスクリーニングした。各溶媒候補10mlを一定の温度に加熱し、FDCA(製品No.F0710、TCI America)を少量ずつ加え、溶解限度を超える量まで添加を継続した。次いで、溶解限度を超えて析出した固形物が完全に溶解するまで、溶媒を少量ずつ加えた。実験は各温度において2回ずつ繰り返し、その平均値をFDCAの溶解度とした。5種の溶媒、すなわち(1)脱イオン水、(2)ジグライム、(3)ジオキサン、(4)ジグライムと脱イオン水の容量比が1:1の混合物、および(5)ジオキサンと脱イオン水の容量比が4:1の混合物を試験した。温度(℃)の関数としてプロットしたFDCAの溶解度(重量%)を実験結果として図3に示す。25℃~100℃の温度範囲において、水、ジグライムおよびジオキサンの各溶媒に対するFDCAの溶解度は比較的低いことが実験結果から示された。これに対して、各有機溶媒を水と組み合わせて調製した共溶媒では、FDCAを溶解する能力が相乗的に増強されたことが確認された。たとえば、100℃において、水のみからなる溶媒に対するFDCAの溶解度は1(重量)%未満であり、ジグライムのみからなる溶媒に対するFDCAの溶解度は2(重量)%未満であったが、これらの2種の溶媒を組み合わせて、脱イオン水とジグライムの容量比が1:1の共溶媒系とした場合、FDCAの溶解度は9(重量)%に達した。同様に、100℃において、水のみからなる溶媒に対するFDCAの溶解度は1(重量)%未満であり、ジオキサンのみからなる溶媒に対するFDCAの溶解度は2(重量)%未満であったが、脱イオン水とジオキサンの容量比が1:4の共溶媒系とした場合、FDCAの溶解度の傾向曲線においてFDCAの溶解度が9(重量)%に達することが示された。
【0182】
実施例2
不均一系酸化触媒(3wt%Pt/シリカ)の調製
Pt(NH(OH)溶液0.152ml(Ptを101.8mg/ml含む)を脱イオン水0.047mlと混合して金属前駆体溶液を調製した。この溶液を0.5gのシリカ(Cariact Q-50、BET比表面積:80m/g、平均細孔直径:50nm、粒径:75~150μm、富士シリシア化学株式会社)に含浸させた。含浸後、120℃で2時間乾燥し、6%のHを含むアルゴン気流下、300℃で2時間還元処理を行った。冷却後、0.5%のOを含む窒素気流下で15分間不動態化処理を行った。このようにしてPtの担持量が3wt%の触媒を得て、この触媒にさらなる前処理を行うことなく、後述する実施例11の触媒活性試験に使用した。
【0183】
実施例3および実施例4
不均一系酸化触媒(2.5wt%Pt/シリカおよび4wt%Pt/シリカ)の調製
Pt(NH(OH)溶液0.204ml(Ptを62.8mg/ml含む)と脱イオン水0.546mlとを使用したこと以外は実施例2と同様にして、白金の担持量が2.5wt%の不均一系酸化触媒(実施例3)を調製した。また、Pt(NH(OH)溶液0.205ml(Ptを101.8mg/ml含む)と脱イオン水0.42mlとを使用したこと以外は実施例2と同様にして、白金の担持量が4wt%の不均一系酸化触媒(実施例4)を調製した。得られたこれらの触媒を、後述する実施例11の触媒活性試験に使用した。
【0184】
実施例5
不均一系酸化触媒(3wt%Pt/ZrO )の調製
Pt(NH(OH)溶液0.152ml(Ptを101.8mg/ml含む)を脱イオン水0.048mlと混合して金属前駆体溶液を調製した。この溶液を0.5gのZrO(SZ31163、BET比表面積:55m/g、16nmおよび60nmに平均細孔直径のピークを有するバイモーダル細孔分布、粒径:<150μm、サンゴバン社)に含浸させた。含浸後、120℃で2時間乾燥し、6%のHを含むアルゴン気流下、300℃で2時間還元処理を行った。冷却後、0.5%のOを含む窒素気流下で15分間不動態化処理を行った。このようにしてPtの担持量が3wt%の触媒を得て、この触媒にさらなる前処理を行うことなく、後述する実施例11の触媒活性試験に使用した。
【0185】
実施例6
不均一系酸化触媒(4wt%Pt/ZrO )の調製
実施例5と同じPt(NH(OH)溶液を0.205ml使用したこと以外は実施例5と同様にして、白金の担持量が4wt%の不均一系酸化触媒を調製した。得られた触媒を、後述する実施例11の触媒試験に使用した。
【0186】
実施例7
不均一系酸化触媒(3wt%Pt/Al )の調製
Pt(NH(OH)溶液0.152ml(Ptを101.8mg/ml含む)を脱イオン水0.298mlと混合して金属前駆体溶液を調製した。この溶液を0.5gのAl(SA 31132、BET比表面積:55m/g、25nmおよび550nmに平均細孔直径のピークを有するバイモーダル分布、粒径:<150μm、サンゴバン社)に含浸させた。含浸後、120℃で2時間乾燥し、6%のHを含むアルゴン気流下、300℃で2時間還元処理を行った。冷却後、0.5%のOを含む窒素気流下で15分間不動態化処理を行った。このようにしてPtの担持量が3wt%の触媒を得て、この触媒にさらなる前処理を行うことなく、後述する実施例11の触媒活性試験に使用した。
【0187】
実施例8
不均一系酸化触媒(4wt%Pt/Al )の調製
本実施例では、実施例7と同じPt(NH(OH)溶液0.205mlと脱イオン水0.245mlとを使用して調製した金属前駆体溶液を使用したこと以外は実施例7と同様にして、白金の担持量が4wt%の不均一系酸化触媒を調製した。得られた触媒を、後述する実施例11の触媒活性試験に使用した。
【0188】
実施例9および実施例10
不均一系酸化触媒の調製
(2wt%Pt、1wt%Au/シリカ;1wt%Pt、2wt%Au/シリカ)
PtONO溶液0.018ml(Ptを100mg/ml含む)、(NHAuO溶液0.009ml(Auを100mg/ml含む)および脱イオン水0.09mlを混合して金属前駆体溶液を調製した(実施例9)。同様に、PtONO溶液0.009ml(Ptを100mg/ml含む)、(NHAuO溶液0.018ml(Auを100mg/ml含む)および脱イオン水0.09mlを混合して金属前駆体溶液を調製した(実施例10)。各溶液を0.1gのシリカ(Cariact Q-50、粒径:75~150μm、比表面積:80m/g、平均細孔直径:50nm、富士シリシア化学株式会社)に含浸させた。含浸後、6%のHを含むアルゴン気流下、350℃で3時間還元処理を行った。冷却後、0.5%のOを含む窒素気流下で15分間不動態化処理を行った。このようにして、Ptの担持量が2wt%であり、Auの担持量が1wt%の触媒(実施例9)と、Ptの担持量が1wt%であり、Auの担持量が2wt%の触媒(実施例10)とを得て、これらの触媒にさらなる前処理を行うことなく、後述する実施例11の触媒活性試験に使用した。
【0189】
実施例11
触媒性能アッセイおよびFDCA経路生成物の生成
ハイスループット高圧反応器に収容した96ウェルインサート内に入れた1mlガラスバイアル中で触媒試験を実施した。Diamond, G. M., Murphy, V., Boussie, T. R., in Modern Applications of High Throughput R&D in Heterogeneous Catalysis, (eds, Hagemeyer, A. and Volpe, A. Jr. Bentham Science Publishers 2014, Chapter 8, 299-309);および米国特許第8,669,397号を参照されたい(これらの文献はいずれも引用により本明細書に援用される)。ジオキサンとHOの4:1(v/v)混合物中に調製した0.5M HMF溶液(6wt%のHMFに相当)0.8mlとともに各触媒20mgを前記反応器に仕込んだ。ガスの流入を可能にするピンホールを備えた、テフロンシート、シリコーンマットおよび鋼鉄製ガス拡散プレートでインサート内の各1ml反応バイアルを覆った。窒素圧下でリークチェックを行った圧力容器内にインサートを入れた。次いで反応器内の雰囲気を酸素で置換し、反応器を90℃に加熱し、200psigの酸素圧下において500rpmで20時間振盪した。反応終了後、振盪を止め、反応器を室温まで戻した。各反応器から試料を採取し、ジオキサンとHOの4:1混合物で試料を200倍に希釈して、HPLC分析用試料を調製した。反応生成物として、ヒドロキシメチルフランカルボン酸(HMFCA)、ホルミルフランカルボン酸(FFCA)、ジホルミルフラン(DFF)およびFDCAが得られた。結果を表1に示す。
【0190】
【表3】
【0191】
上記表に示したように、金属の担持量が比較的少なかったため、調製された不均一系酸化触媒において固体担体材料のBET比表面積は変化しなかったと考えられる。
【0192】
実施例12
炭素に担持させた触媒の調製および試験
MeNAuOの形態で添加された10mg/mlのAuと、PtO(NO)の形態で添加された20mg/mlのPtとを含む水溶液(0.10ml)を、キャボット社製のカーボンブラック粉末Monarch 570(100mg)に加えた。この混合物を振盪してカーボンブラック担体に含浸させ、ドライエアーパージ下、70℃のオーブンで一晩乾燥させた。次いで、フォーミングガス(5%Hおよび95%N)雰囲気下、5℃/分の速度で温度を上げ、350℃で2時間還元処理を行った。得られた触媒の組成は、約1.0wt%のAuと約2.0wt%のPtからなっていた。他の様々なカーボンブラックを使用し、溶液中のAu量およびPt量を調整することによって、様々な市販のカーボンブラック粉末または押出物から調製した粒子に様々な担持量でAuおよびPtを担持させた様々な触媒を同様の方法で調製した。このようにして得た触媒の組成を以下の表2に示す。
【0193】
以下の試験プロトコルを使用して、ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の酸化についてこれらの触媒を試験した。触媒(10mg)をガラスバイアルインサートに量り取り、HMF水溶液(1,4-ジオキサンと水(4:1(v/v))の混合溶媒中の0.50M(6.0wt%)溶液250μl)を加えた。ガラスバイアルインサートを反応器に入れ、反応器の蓋を閉じた。反応器内の雰囲気を酸素で置換し、室温において200psigに加圧した。バイアルを振盪しながら、反応器を110℃に加熱して、この温度で4時間維持するか、あるいは90℃に加熱して、この温度で20時間維持した。反応終了後、振盪を止め、反応器を40℃まで冷却した。次いで反応器内の圧力を徐々に常圧に戻した。ガラスバイアルインサートを反応器から取り出し、遠心分離した。分離された溶液を1,4-ジオキサンと水の(4:1(v/v))混合溶媒で希釈し、UV検出器を備えたHPLCで分析して2,5-フランジカルボン酸(FDCA)の収率を測定した。結果を表2に示す。
【0194】
【表4】
【0195】
実施例13
水と非プロトン性有機溶媒を含む多成分溶媒からのFDCAの結晶化
マグネチックスターラーを備えた2つのバイアルにFDCAを0.5gずつ量り取った。バイアル1にはHO 3mlとグライム類2mlを加えた。バイアル2にはHO 2mlとグライム類3mlを加えた。室温において乳白色の不溶性懸濁液が形成された。油浴中でバイアルを攪拌しながら140℃に加熱した。バイアル1の懸濁液は約130℃においてFDCAが見かけ上完全に溶解し、透明な溶液へと変化した。バイアル2の懸濁液は約110℃においてFDCAが見かけ上完全に溶解し、透明な溶液へと変化した。これらの透明な溶液の温度を室温まで徐々に下げるに従ってFDCAが結晶化し、精製されたFDCAが得られた。
【0196】
分析法
以下の実施例では、分析機器として、Thermo Scientific Hypercarb 3μm 3×50mm分析カラムおよび3000 RS可変波長UV/Vis検出器を備えたThermo Scientific Dionex Ultimateシステムを使用した。
【0197】
実施例14
不均一系酸化触媒(3.0wt%Pt/炭素)40gの調製
硝酸白金溶液5.64ml(ヘレウスグループ社から入手、Ptを219mg/ml含む)を脱イオン水94.4mlと混合して金属前駆体溶液を調製した。この溶液を40.0gの炭素粉末(Continental社製N234カーボンブラック粉末、BET表面積:117m/g、平均細孔直径:14nm)に含浸させた。含浸後、100℃で3時間乾燥し、5%のHを含む窒素気流下、5℃/分の速度で温度を上げ、350℃で3時間還元処理を行った。冷却後、0.5%のOを含む窒素気流下で15分間不動態化処理を行った。このようにしてPtの担持量が3.0wt%の触媒を得て、この触媒にさらなる前処理を行うことなく、後述する実施例15の触媒活性試験に使用した。
【0198】
実施例15
Parr社製圧力反応器における、炭素に担持させた触媒の試験
Parr社製の300mlステンレス鋼製オートクレーブ圧力反応器内で触媒の試験を行った。触媒を量り取り(たとえば3.0wt%Pt/Continental社製N234カーボンブラック粉末8.00g)、基質としてのHMF(5-(ヒドロキシメチル)フルフラール)溶液(65wt%DME/35wt%HO混合溶媒中または60wt%1,4-ジオキサン/40wt%HO混合溶媒中で調製した6.0wt%溶液100g)とともに反応器に仕込んだ。反応器を組み立て、マグネチックスターラーを取り付けた。
【0199】
環境温度で攪拌(1000rpm)しながらプロセスガス(O)で反応器を所望の圧力まで加圧した後、目標温度まで加熱し、その温度で所定の反応時間にわたって維持した。所定の反応時間が経過した後、攪拌速度を約200rpmに下げて反応器の温度を低下させ、30℃で徐々に排気した。
【0200】
ジメチルスルホキシド(DMSO)を反応器に加えて第1の希釈を行った。約30分間攪拌後、得られた生成物溶液を遠心分離し、脱イオン水でさらに希釈してHPLC分析を行った。
【0201】
反応生成物として、5-ヒドロキシメチル-フラン-2-カルボン酸(HMFCA)、2,5-フランジカルボキシアルデヒド(DFF)、5-ホルミルフラン-3-カルボン酸(FFCA)および2,5-フランジカルボン酸(FDCA)が得られた。検量線用標準試料の相対濃度に対して検出器の相対的な応答をプロットした各分析種の検量線を使用して、各反応生成物および残ったHMFを定量し、放物線で近似した。結果を表3にまとめる。
【0202】
【表5】
【0203】
物質収支は、HMF、HMFCA、DFF、FFCAおよびFDCAの収率(mol%)の合計を表す。
【0204】
実施例16
炭素に担持させた様々な触媒の調製および試験
10mg/mlのPtを硝酸白金の形態で含む水溶液(0.60ml)をカーボンブラック粉末(200mg)に加え、得られた混合物を振盪して該担体に含浸させた。次いで、70℃のオーブンで一晩乾燥し、フォーミングガス(5%Hおよび95%N)雰囲気下、5℃/分の速度で温度を上げ、350℃で3時間還元処理を行い、Ptを3.0wt%含む触媒を得た。他の様々なカーボンブラック担体およびPt前駆体を使用し、溶液中のPt量を調整することによって、様々な市販のカーボンブラック粉末、押出物から調製した粒子または押出物に様々な担持量でPtを担持させた様々な触媒を同様の方法で調製した。
【0205】
以下の試験プロトコルを使用して、5-(ヒドロキシメチル)フルフラール(HMF)の酸化についてこれらの触媒を試験した。触媒(10mg)を1mlガラスバイアルインサートに量り取り、HMF溶液(23wt%ジグライム/77wt%HO混合溶媒中の6.0wt%(0.50M)溶液250μl)を加えた。ガラスバイアルインサートを反応器に入れ、反応器の蓋を閉じた。反応器内の雰囲気を酸素で置換し、環境温度において200psigに加圧した。バイアルを振盪しながら、反応器を110℃に加熱し、この温度で3時間維持した。反応終了後、振盪を止め、反応器を40℃まで冷却した。次いで反応器内の圧力を徐々に常圧に戻した。ガラスバイアルインサートを反応器から取り出し、遠心分離した。分離された溶液をジメチルスルホキシド(DMSO)で希釈し、1,4-ジオキサンと水の(2:1(v/v))混合溶媒でさらに希釈し、UV検出器を備えたHPLCで分析して2,5-フランジカルボン酸(FDCA)の収率を測定した。結果を表4に示す。
【0206】
【表6】
【0207】
実施例17
様々な溶媒組成物中における、炭素に担持させた粉末触媒の試験
前述の実験と非常によく似た試験プロトコルを使用して、5-(ヒドロキシメチル)フルフラール(HMF)の酸化について前述の様々な触媒を試験した。具体的には、HMF溶液(DME、1,4-ジオキサン、ジグライムのいずれかを水と組み合わせた様々な混合溶媒中の6.0wt%(0.50M)溶液250μl)に、前記カーボンブラック粉末担持3.0wt%Pt触媒(硝酸白金から調製したもの)10mgを加えた。ガラスバイアルインサートを反応器に入れ、反応器の蓋を閉じた。反応器内の雰囲気を酸素で置換し、環境温度において200psigに加圧した。バイアルを振盪しながら、反応器を110℃に加熱し、この温度で3時間維持した。反応終了後、振盪を止め、反応器を40℃まで冷却した。次いで反応器内の圧力を徐々に常圧に戻した。ガラスバイアルインサートを反応器から取り出し、遠心分離した。分離された溶液をジメチルスルホキシド(DMSO)で希釈し、1,4-ジオキサンと水の(2:1(v/v))混合溶媒でさらに希釈し、UV検出器を備えたHPLCで分析して2,5-フランジカルボン酸(FDCA)の収率を測定した。結果を表5に示す。
【0208】
【表7】
【0209】
実施例18
炭素系押出物触媒の調製および様々な混合溶媒中における試験
60mg/mlのPtを硝酸白金の形態で含む水溶液(0.25ml)を、炭素系押出物(WO2015/168327(この文献は引用により本明細書に援用される)の記載に従って調製した平均長3mm、平均直径0.75mmの炭素系押出物500mg)に加え、得られた混合物を振盪して該担体に含浸させた。次いで、100℃のオーブンで3時間乾燥し、フォーミングガス(5%Hおよび95%N)雰囲気下、5℃/分の速度で温度を上げ、350℃で3時間還元処理を行い、Ptを3.0wt%含む触媒を得た。他の様々な炭素系押出物担体およびPt前駆体を使用し、溶液中のPt量を調整することによって、様々な炭素系押出物担体に様々な担持量でPtを担持させた様々な触媒を同様の方法で調製した。
【0210】
前述の実験と非常によく似た試験プロトコルを使用して、5-(ヒドロキシメチル)フルフラール(HMF)の酸化について前述の様々な触媒を試験した。具体的には、平均長3mm、平均直径0.75mmの押出物に担持させた前記3.0wt%Pt触媒15mgを、HMF溶液(DME、1,4-ジオキサン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、ハイグライムのいずれかを水と組み合わせた様々な混合溶媒中の6.0wt%(0.50M)溶液250μl)に加えた。ガラスバイアルインサートを反応器に入れ、反応器の蓋を閉じた。反応器内の雰囲気を酸素で置換し、環境温度において200psigに加圧した。バイアルを振盪しながら、反応器を120℃に加熱し、この温度で2時間維持した。反応終了後、振盪を止め、反応器を40℃まで冷却した。次いで反応器内の圧力を徐々に常圧に戻した。ガラスバイアルインサートを反応器から取り出し、遠心分離した。分離された溶液をジメチルスルホキシド(DMSO)で希釈し、1,4-ジオキサンと水の(2:1(v/v))混合溶媒でさらに希釈し、UV検出器を備えたHPLCで分析して2,5-フランジカルボン酸(FDCA)の収率を測定した。結果を表6に示す。
【0211】
【表8】
【0212】
実施例19
様々な混合溶媒中における、炭素に担持させた粉末触媒の試験
実施例5と非常によく似た試験プロトコルを使用して、5-(ヒドロキシメチル)フルフラール(HMF)の酸化について様々なPt触媒を試験した。具体的には、Continental社製N234カーボンブラック粉末に担持させた3.0wt%Pt触媒(硝酸白金から調製したもの)5mg、10mg、15mgまたは20mgを、HMF溶液(水と1,4-ジオキサンを様々な比率で含む様々な混合溶媒中の6.0wt%(0.50M)溶液250μl)に加えた。ガラスバイアルインサートを反応器に入れ、反応器の蓋を閉じた。反応器内の雰囲気を酸素で置換し、環境温度において200psigに加圧した。バイアルを振盪しながら、反応器を110℃に加熱し、この温度で3時間維持した。反応終了後、振盪を止め、反応器を40℃まで冷却した。次いで反応器内の圧力を徐々に常圧に戻した。ガラスバイアルインサートを反応器から取り出し、遠心分離した。分離された溶液をジメチルスルホキシド(DMSO)で希釈し、1,4-ジオキサンと水の(2:1(v/v))混合溶媒でさらに希釈し、UV検出器を備えたHPLCで分析して2,5-フランジカルボン酸(FDCA)の収率を測定した。結果を表7に示す。
【0213】
【表9】
【0214】
実施例20
炭素に担持させた押出物触媒の試験
前述の実験と非常によく似た試験プロトコルを使用して、5-(ヒドロキシメチル)フルフラール(HMF)の酸化について様々なPt触媒を試験した。具体的には、Continental社製N234カーボンブラックの押出物に担持させた2.0wt%Pt触媒(平均長3mm、平均直径1.5mmまたは0.75mm、PtO(NO)から調製したもの)10mgまたは20mgを、HMF溶液(50wt%ジオキサン/50wt%HO中の6.0wt%(0.50M)溶液250μl)に加えた。ガラスバイアルインサートを反応器に入れ、反応器の蓋を閉じた。反応器内の雰囲気を酸素で置換し、環境温度において100psig、200psigまたは400psigに加圧した。バイアルを振盪しながら、反応器を120℃に加熱し、この温度で2時間維持した。反応終了後、振盪を止め、反応器を40℃まで冷却した。次いで反応器内の圧力を徐々に常圧に戻した。ガラスバイアルインサートを反応器から取り出し、遠心分離した。分離された溶液をジメチルスルホキシド(DMSO)で希釈し、1,4-ジオキサンと水の(2:1(v/v))混合溶媒でさらに希釈し、UV検出器を備えたHPLCで分析して2,5-フランジカルボン酸(FDCA)の収率を測定した。結果を表8に示す。
【0215】
【表10】
【0216】
実施例21
炭素に担持させた押出物触媒の試験
前述の実験と非常によく似た試験プロトコルを使用して、5-(ヒドロキシメチル)フルフラール(HMF)の酸化について様々なPt触媒を試験した。具体的には、カーボンブラックの押出物に担持させた2.0wt%または3.0wt%Pt触媒(平均長3mm、平均直径1.5mmまたは0.75mm、PtO(NO)から調製したもの)20mgを、HMF溶液(50wt%ジオキサン/50wt%HO中の6.0wt%(0.50M)溶液250μl)に加えた。ガラスバイアルインサートを反応器に入れ、反応器の蓋を閉じた。反応器内の雰囲気を酸素で置換し、環境温度において200psigに加圧した。バイアルを振盪しながら、反応器を120℃に加熱し、この温度で2時間維持した。反応終了後、振盪を止め、反応器を40℃まで冷却した。次いで反応器内の圧力を徐々に常圧に戻した。ガラスバイアルインサートを反応器から取り出し、遠心分離した。分離された溶液をジメチルスルホキシド(DMSO)で希釈し、1,4-ジオキサンと水の(2:1(v/v))混合溶媒でさらに希釈し、UV検出器を備えたHPLCで分析して2,5-フランジカルボン酸(FDCA)の収率を測定した。結果を表9に示す。
【0217】
【表11】
【0218】
実施例22
N-メチル-2-ピロリドン/H O溶媒組成物中における、炭素に担持させた粉末触媒および押出物触媒の試験
前述の実験と非常によく似た試験プロトコルを使用して、5-(ヒドロキシメチル)フルフラール(HMF)の酸化について様々なPt触媒を試験した。具体的には、Continental社製N234カーボンブラック粉末に担持させた3.0wt%Pt触媒(硝酸白金から調製したもの)または同じカーボンブラックの押出物に担持させた3.0wt%Pt触媒(平均長3mm、平均直径1.5mmまたは0.75mm、PtO(NO)から調製したもの)10mgまたは20mgを、HMF溶液(N-メチル-2-ピロリドン(NMP)とHOの混合溶媒中の6.0wt%(0.50M)溶液250μl)に加えた。ガラスバイアルインサートを反応器に入れ、反応器の蓋を閉じた。反応器内の雰囲気を酸素で置換し、環境温度において200psigに加圧した。バイアルを振盪しながら、反応器を110℃に加熱し、この温度で3時間維持した。反応終了後、振盪を止め、反応器を40℃まで冷却した。次いで反応器内の圧力を徐々に常圧に戻した。ガラスバイアルインサートを反応器から取り出し、遠心分離した。分離された溶液をジメチルスルホキシド(DMSO)で希釈し、1,4-ジオキサンと水の(2:1(v/v))混合溶媒でさらに希釈し、UV検出器を備えたHPLCで分析して2,5-フランジカルボン酸(FDCA)の収率を測定した。結果を表10に示す。
【0219】
【表12】
【0220】
実施例23
様々な溶媒組成物中におけるFDCAの溶解度の評価
密封した圧力アンプル内で、様々な量のFDCAと混合溶媒組成物とを含む一連の試料を調製した(概して2~5gの材料(FDCAと溶媒組成物)を含んでいた)。たとえば、攪拌棒を入れた8mLのガラスバイアルに、FDCA200mg、NMP900mgおよび脱イオン水900mgを加えて、10wt%のFDCAを含む混合物を得た。これと同様にして、様々な混合溶媒組成物中に様々な量(wt%)でFDCA試料を含む様々な試料を調製した。これらのバイアルを密封し、攪拌しながら所望の温度で約60分間加熱し、FDCAが完全に溶解したかどうかを目視で確認した(透明な溶液であればFDCAが溶解していることが示され、濁った溶液であれば溶解が不完全であることが示唆された)。この試験方法を使用して、選択した溶媒組成物中に溶解可能なFDCAの最大量(wt%)を求め、FDCAの溶解度として表11に示した。
【0221】
【表13】
【0222】
実施例24
様々な温度における様々なジオキサン/H O溶媒組成物またはDME/H O溶媒組成物に対するFDCAの溶解度
実施例23と同様のプロトコルを使用して、様々なジオキサン/HO溶媒組成物またはDME/HO溶媒組成物に対するFDCAの溶解度データを得た。ジオキサン/HO溶媒組成物に対する溶解度を図12に示す。DME/HO溶媒組成物に対する溶解度を図13に示す。
【0223】
実施例25
NMP中においてHBrを使用したフルクトースからHMFへの転化
分析条件
残ったフルクトースは、Rezex RCU-USPカラム(Ca+2型、4×250mm、8μm)および示差屈折率検出器(RID)を使用したHPLCで定量した。移動相としてHOを使用して、フルクトースをイソクラティック溶出した。
【0224】
異性体混合物形態のジフルクトース無水物(これらをまとめて中間体と呼ぶ)は、サーモサイエンティフィック社製Hypercarbカラム(3×50mm、3μm)および荷電化粒子検出器(CAD)を使用したHPLCで定量した。0.1%TFA含有HO中のCHCNの濃度を最大で15%まで上昇させた移動相グラジエントを使用して、これらの中間体を溶出した。
【0225】
5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)は、サーモサイエンティフィック社製Hypercarbカラム(3×50mm、3μm)を使用して、254nmでUV検出を行ったHPLCで定量した。0.1%TFA含有HO中のCHCNの濃度を最大で15%まで上昇させた移動相グラジエントを使用してHMFを溶出した。
【0226】
フルクトースおよびHMFは、純粋な標準品から作製した検量線に当てはめて定量した。前記中間体は、ジ-D-フルクトフラノース-1,2’:2,3’-二無水物(DFA-III)から作製した検量線に当てはめて定量した。DFA-IIIは和光純薬株式会社から購入した。
【0227】
スクリーニング条件
基本手順A マイクロウェーブによる加熱を利用した反応のための手順
反応原液を以下のようにして調製した。まず、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)とHOの混合溶媒中にフルクトースを溶解した。次いで、HBrの濃縮水溶液(48wt%)または濃HSO(97wt%)を酸触媒として加えた。各反応原液の最終組成は、0.6Mのフルクトース、0.1Mの酸および2.0MのHOであった。
【0228】
バイオタージ社製Initiatorマイクロウェーブ反応装置を使用して反応を行った。反応装置の出力ワット数をこの装置上で様々に変えて目標温度を維持した。マグネチックスターラーバーを備えたマイクロウェーブ用バイアルに反応原液を3g仕込み、密封した。
【0229】
基本手順B 従来の加熱方法を利用した反応のための手順
反応原液を以下のようにして調製した。まず、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)とHOの混合溶媒中にフルクトースを溶解した。次いで、HBrの濃縮水溶液(48wt%)または濃HCl(37wt%)を酸触媒として加えた。調製した各反応原液は0.6Mのフルクトースを含んでいた。この実験における酸およびHOの濃度は様々に変えた。試験した濃度を以下の表13および表14に示す。
【0230】
従来の加熱方法を利用して、マグネチックスターラーで攪拌しながら8mLのガラスバイアル中で反応を行った。マグネチックスターラーバーを備えた反応バイアルに反応原液を3g仕込み、密封した。所望の温度にあらかじめ加熱したアルミニウムブロック恒温槽中にバイアルを置いた。
【0231】
実施例25.1:基本手順Aを使用して実施したHBrおよびHSOの触媒としての比較
試験条件と結果を表12に示し、図14に図示した。実験結果から、HBrを触媒として使用した場合、HSOを触媒として使用した場合よりも高い収率でHMFを得ることができることが示された。HMFの収率は、120~160℃の範囲で反応温度を変化させても変動は見られなかった。
【0232】
【表14】
【0233】
実施例25.2:基本手順Bを使用して120℃で実施したHBrおよびHClの触媒としての比較
試験条件と結果を表13に示し、図15に図示した。実験結果から、HBrを触媒として使用した場合、HClを触媒として使用した場合よりも高い収率でHMFを得ることができることが示された。
【0234】
【表15】
【0235】
実施例25.3:基本手順Bを使用して実施した反応温度100℃と反応温度120℃の比較
試験条件と結果を表14に示し、図16に図示した。実験結果から、反応温度を120℃から100℃に下げるとHMFの収率が上昇することが示された。
【0236】
【表16】
【0237】
本開示の好ましい実施形態を例示し述べてきたが、本開示の要旨や範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることができることは明らかであろう。

下記は、もとの出願の請求項1~237に対応する[1]~[237]である。
[1] フラン系酸化基質から2,5-フランジカルボン酸(FDCA)経路生成物を製造する方法であって、
(a)フラン系酸化基質を酸化させてFDCA経路生成物を得るための反応混合物を形成させるのに十分な条件下において、フラン系酸化基質と酸化溶媒とを含む酸化供給原料を、不均一系酸化触媒の存在下で酸素と接触させて、FDCA経路生成物を生成させること
を含み、
前記酸化溶媒が、有機溶媒および多成分溶媒からなる群から選択される溶媒であること、
前記反応混合物に実質的に塩基が添加されていないこと、
前記不均一系酸化触媒が固体担体および貴金属を含むこと、ならびに
前記不均一系酸化触媒が複数の細孔を含み、20m/g~500m/gの範囲の比表面積またはこの範囲内の任意の値の比表面積を有することを特徴とする方法。
[2] 前記貴金属が、白金、金およびその組み合わせからなる群から選択される、[1]に記載の方法。
[3] 前記貴金属が白金である、[2]に記載の方法。
[4] 前記貴金属が金である、[2]に記載の方法。
[5] 前記酸化溶媒が、水および水混和性有機溶媒を含む多成分溶媒である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6] 前記水混和性有機溶媒が水混和性非プロトン性有機溶媒である、[5]に記載の方法。
[7] 前記水混和性非プロトン性有機溶媒が、テトラヒドロフラン、グライム類、ジオキサン、ジオキソラン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン(「NMP」)、メチルエチルケトン(「MEK」)およびγ-バレロラクトンからなる群から選択される、[6]に記載の方法。
[8] 前記水混和性非プロトン性有機溶媒が、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホランおよびアセトンからなる群から選択される、[7]に記載の方法。
[9] 前記水混和性非プロトン性有機溶媒がエーテル類である、[6]に記載の方法。
[10] 前記エーテル類が、グライム類、ジオキサンおよび1,3-ジオキソランからなる群から選択される、[9]に記載の方法。
[11] 前記エーテル類がジオキサンである、[10]に記載の方法。
[12] 前記エーテル類がグライム類である、[10]に記載の方法。
[13] 前記グライム類が、モノグライム(1,2-ジメトキシエタン)、エチルグライム、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、エチルジグライム、トリグライム、ブチルジグライム、テトラグライムおよびポリグライム類からなる群から選択される、[12]に記載の方法。
[14] 前記グライム類がジグライムである、[13]に記載の方法。
[15] 前記水混和性有機溶媒が、水混和性軽質有機溶媒および水混和性重質有機溶媒からなる群から選択される、[5]に記載の方法。
[16] 水と前記水混和性有機溶媒の比率が1:6~6:1(v/v)の範囲またはこの範囲内の任意の値である、[5]~[15]のいずれか一項に記載の方法。
[17] 水と前記水混和性有機溶媒の比率が1:6~6:1(v/v)の範囲である、[5]~[15]のいずれか一項に記載の方法。
[18] 水と前記水混和性有機溶媒の比率が1:1(v/v)である、[16]に記載の方法。
[19] 前記水混和性有機溶媒が多成分溶媒を少なくとも10vol%含む、[5]~[15]のいずれか一項に記載の方法。
[20] 前記酸化溶媒が、水および2種の水混和性有機溶媒を含む多成分溶媒である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の方法。
[21] 前記水混和性有機溶媒がいずれも水混和性非プロトン性有機溶媒である、[20]に記載の方法。
[22] 前記水混和性非プロトン性有機溶媒がそれぞれ、テトラヒドロフラン、グライム類、ジオキサン、ジオキソラン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン(「NMP」)、メチルエチルケトン(「MEK」)およびγ-バレロラクトンからなる群から独立して選択される、[21]に記載の方法。
[23] 前記水混和性非プロトン性有機溶媒の少なくとも1種が、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホランおよびアセトンからなる群から選択される、[22]に記載の方法。
[24] 前記水混和性非プロトン性有機溶媒の少なくとも1種がエーテル類である、[22]に記載の方法。
[25] 前記エーテル類が、グライム類、ジオキサンおよび1,3-ジオキソランからなる群から選択される、[24]に記載の方法。
[26] 前記グライム類が、モノグライム(1,2-ジメトキシエタン)、エチルグライム、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、エチルジグライム、トリグライム、ブチルジグライム、テトラグライムおよびポリグライム類からなる群から選択される、[25]に記載の方法。
[27] 前記グライム類がジグライムである、[26]に記載の方法。
[28] 前記フラン系酸化基質が5-(ヒドロキシメチル)フルフラール(HMF)である、[1]~[27]のいずれか一項に記載の方法。
[29] 前記フラン系酸化基質が、ジホルミルフラン(DFF)、ヒドロキシメチルフランカルボン酸(HMFCA)およびホルミルフランカルボン酸(FFCA)からなる群から選択される、[1]~[27]のいずれか一項に記載の方法。
[30] 前記酸化供給原料に含まれる前記フラン系酸化基質の濃度が少なくとも5重量%である、[1]~[29]のいずれか一項に記載の方法。
[31] 前記酸化供給原料中の前記フラン系酸化基質の濃度が少なくとも10重量%である、[30]に記載の方法。
[32] 前記不均一系酸化触媒中の前記貴金属の担持量が、該不均一系酸化触媒の重量の0.3%~5%の範囲またはこの範囲内の任意の値である、[1]~[31]のいずれか一項に記載の方法。
[33] 前記不均一系酸化触媒が助触媒をさらに含む、[1]~[32]のいずれか一項に記載の方法。
[34] 前記固体担体が、金属酸化物、炭素質材料、ポリマー、金属ケイ酸塩、金属炭化物およびこれらの2種以上の任意の組み合わせからなる群から選択される材料を含む、[1]~[33]のいずれか一項に記載の方法。
[35] 前記固体担体が金属酸化物を含む、[34]に記載の方法。
[36] 前記金属酸化物が、シリカ、ジルコニアおよびアルミナからなる群から選択される、[35]に記載の方法。
[37] 前記固体担体が炭素質材料を含む、[34]に記載の方法。
[38] 前記炭素質材料がカーボンブラックである、[37]に記載の方法。
[39] 前記固体担体が金属ケイ酸塩を含む、[34]に記載の方法。
[40] 前記固体担体が、金属酸化物、炭素質材料、ポリマー、金属ケイ酸塩および金属炭化物からなる群から選択される材料とバインダーとを含む複合材料である、[1]~[33]のいずれか一項に記載の方法。
[41] 前記不均一系酸化触媒の比表面積が、25m/g~350m/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、25m/g~250m/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、25m/g~225m/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、25m/g~200m/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、25m/g~175m/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、25m/g~150m/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、25m/g~125m/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、または25m/g~100m/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値である、[1]~[40]のいずれか一項に記載の方法。
[42] 前記不均一系酸化触媒の細孔容積の少なくとも50%が、5nm~100nmの範囲の細孔直径またはこの範囲内の任意の値の細孔直径を有する細孔によって占められている、[1]~[41]のいずれか一項に記載の方法。
[43] 前記不均一系酸化触媒の細孔容積の10%以下が、0nmよりも大きく10nm未満の細孔直径を有する細孔によって占められている、[1]~[42]のいずれか一項に記載の方法。
[44] 前記不均一系酸化触媒の細孔容積の10%以下が、0.1nm~10nmの範囲の細孔直径またはこの範囲内の任意の値の細孔直径を有する細孔によって占められている、[1]~[42]のいずれか一項に記載の方法。
[45] 前記不均一系酸化触媒の細孔容積の5%以下が、0nmよりも大きく10nm未満の細孔直径を有する細孔によって占められている、[43]に記載の方法。
[46] 前記不均一系酸化触媒の細孔容積の5%以下が、0.1nm~10nmの範囲の細孔直径またはこの範囲内の任意の値の細孔直径を有する細孔によって占められている、[44]に記載の方法。
[47] 前記不均一系酸化触媒の細孔容積の2.5%以下が、0nmよりも大きく10nm未満の細孔直径を有する細孔によって占められている、[45]に記載の方法。
[48] 前記不均一系酸化触媒の細孔容積の2.5%以下が、0.1nm~10nmの範囲の細孔直径またはこの範囲内の任意の値の細孔直径を有する細孔によって占められている、[46]に記載の方法。
[49] 前記複数の細孔の平均細孔直径が、10nm~100nmの範囲またはこの範囲内の任意の値である、[1]~[48]のいずれか一項に記載の方法。
[50] 前記不均一系酸化触媒が第2の複数の細孔を含み、第1の複数の細孔および第2の複数の細孔の少なくとも一方の平均細孔直径が、10nm~100nmの範囲またはこの範囲内の任意の値である、[1]~[48]のいずれか一項に記載の方法。
[51] 第1の複数の細孔および第2の複数の細孔のそれぞれの平均細孔直径が、10nm~100nmの範囲またはこの範囲内の任意の値である、[50]に記載の方法。
[52] 前記不均一系酸化触媒が、0.1cm/g~1.5cm/gの範囲の比細孔容積またはこの範囲内の任意の値の比細孔容積を有する、[1]~[51]のいずれか一項に記載の方法。
[53] 前記酸素と前記フラン系酸化基質のモル比が、2:1~10:1の範囲またはこの範囲内の任意の値である、[1]~[52]のいずれか一項に記載の方法。
[54] 前記酸素と前記フラン系酸化基質のモル比が、2:1~5:1の範囲またはこの範囲内の任意の値である、[53]に記載の方法。
[55] 前記酸素の圧力(pO2)が50psig~1000psigの範囲またはこの範囲内の任意の値である、[1]~[54]のいずれか一項に記載の方法。
[56] 前記酸素の圧力(pO2)が50psig~200psigの範囲またはこの範囲内の任意の値である、[55]に記載の方法。
[57] 前記接触工程が、50℃~200℃の範囲の温度もしくはこの範囲内の任意の値の温度、80℃~180℃の範囲の温度もしくはこの範囲内の任意の値の温度、または100℃~160℃の範囲の温度もしくはこの範囲内の任意の値の温度で実施される、[1]~[56]のいずれか一項に記載の方法。
[58] 前記FDCA経路生成物が少なくとも80%の収率で生成される、[1]~[57]のいずれか一項に記載の方法。
[59] 前記FDCA経路生成物が少なくとも90%の選択率で生成される、[1]~[58]のいずれか一項に記載の方法。
[60] 前記接触工程が、前記酸化溶媒と少なくとも5重量%の前記FDCA経路生成物とを含む生成物溶液を得るのに十分な時間にわたって実施される、[1]~[59]のいずれか一項に記載の方法。
[61] 前記接触工程において、前記酸化溶媒と少なくとも5重量%の前記FDCA経路生成物とを含む生成物溶液が生成される、[1]~[60]のいずれか一項に記載の方法。
[62] 第2の酸化工程をさらに含み、該第2の酸化工程が、
(b)第2のフラン系酸化基質を酸化させて第2のFDCA経路生成物を得るための第2の反応混合物を形成させるのに十分な条件下において、第2のフラン系酸化基質と第2の酸化溶媒とを含む第2の酸化供給原料を、第2の不均一系酸化触媒の存在下で酸素と接触させて、第2のFDCA経路生成物を生成させることを含み、
前記(第1の)接触工程(a)において、FDCA経路中間体化合物である第1のFDCA経路生成物が単独でまたはFDCAとともに生成されること、
第2のフラン系酸化基質が第1のFDCA経路生成物であること、
第2の反応混合物に実質的に塩基が添加されていないこと、
第2の不均一系酸化触媒が、工程(a)の前記(第1の)貴金属と同じまたは異なる第2の貴金属と第2の固体担体とを含むこと、および
第2の不均一系酸化触媒が複数の細孔を含み、20m/g~500m/gの範囲の比表面積またはこの範囲内の任意の値の比表面積を有することを特徴とする、[1]~[61]のいずれか一項に記載の方法。
[63] 前記貴金属が、白金、金およびその組み合わせからなる群から選択される、[62]に記載の方法。
[64] 第2の不均一系酸化触媒が、工程(a)の前記(第1の)不均一系酸化触媒と同じものである、[62]または[63]に記載の方法。
[65] 第2の不均一系酸化触媒が、工程(a)の前記(第1の)不均一系酸化触媒とは異なるものである、[62]または[63]に記載の方法。
[66] 第2の不均一系酸化触媒が、工程(a)の前記(第1の)不均一系酸化触媒中の前記(第1の)金属とは異なる第2の金属を含む、[65]に記載の方法。
[67] 工程(a)の前記(第1の)酸化溶媒が、工程(b)の第2の酸化溶媒と同じものである、[62]~[66]のいずれか一項に記載の方法。
[68] 工程(a)の前記酸化溶媒から前記FDCA経路生成物を回収することをさらに含む、[1]~[67]のいずれか一項に記載の方法。
[69] 工程(b)の第2の酸化溶媒から第2のFDCA経路生成物を回収することをさらに含む、[62]~[67]のいずれか一項に記載の方法。
[70] 工程(a)で得られた前記FDCA経路生成物を精製することをさらに含む、[1]~[68]のいずれか一項に記載の方法。
[71] 工程(b)で得られた第2のFDCA経路生成物を精製することをさらに含む、[62]~[69]のいずれか一項に記載の方法。
[72] 前記精製工程が結晶化プロセスを含む、[70]に記載の方法。
[73] 前記結晶化プロセスが、
50℃~220℃の範囲の温度またはこの範囲内の任意の値の温度である第1の温度の、前記FDCA経路生成物と結晶化溶媒とを含む結晶化溶液を提供すること、および
第1の温度よりも低い第2の温度まで前記結晶化溶液を冷却して、様々な粒径を有する複数のFDCA経路生成物結晶を形成させることを含む、[72]に記載の方法。
[74] 前記結晶化溶媒が、工程(a)の前記(第1の)酸化溶媒と同じものである、[73]に記載の方法。
[75] 前記精製工程が結晶化プロセスを含む、[71]に記載の方法。
[76] 前記結晶化プロセスが、
50℃~220℃の範囲の温度またはこの範囲内の任意の値の温度である第1の温度の、第2のFDCA経路生成物と結晶化溶媒とを含む結晶化溶液を提供すること、および
第1の温度よりも低い第2の温度まで前記結晶化溶液を冷却して、様々な粒径を有する複数の第2のFDCA経路生成物結晶を形成させることを含む、[75]に記載の方法。
[77] 前記結晶化溶媒が、工程(a)の第1の酸化溶媒および工程(b)の第2の酸化溶媒からなる群から選択される、[76]に記載の方法。
[78] 前記結晶化プロセスが、
前記FDCA経路生成物と、水、有機溶媒およびその組み合わせからなる群から選択される第1の結晶化溶媒とを含む第1の結晶化溶液を提供すること;ならびに
第1の結晶化溶液から第1の結晶化溶媒の第1の部分を除去して、様々な粒径を有する第1の複数のFDCA経路生成物結晶と第1の結晶化溶媒の第2の部分とを含む第1のFDCA経路生成物スラリーを得ることを含む、[72]に記載の方法。
[79] 第1の複数のFDCA経路生成物結晶を第2の結晶化溶媒に溶解して、第1の複数のFDCA経路生成物と第2の結晶化溶媒とを含む第2の結晶化溶液を得ること;
第2の結晶化溶液から第2の結晶化溶媒の第1の部分を除去して、様々な粒径を有する第2の複数のFDCA経路生成物結晶と第2の結晶化溶媒の第2の部分とを含む第2のFDCA経路生成物スラリーを得ること;および
第2の結晶化溶媒の第2の部分から第2の複数のFDCA経路生成物結晶を分離することをさらに含む、[78]に記載の方法。
[80] 第1の結晶化溶媒および第2の結晶化溶媒の少なくとも一方が、前記酸化溶媒と同じものである、[79]に記載の方法。
[81] 第1の結晶化溶媒と第2の結晶化溶媒とが同じものである、[79]または[80]に記載の方法。
[82] 第1の結晶化溶媒と第2の結晶化溶媒とが異なるものである、[79]または[80]に記載の方法。
[83] 第1の結晶化溶媒および第2の結晶化溶媒の少なくとも一方が多成分溶媒であり、第1の結晶化溶媒および第2の結晶化溶媒が共通の溶媒種を含む、[82]に記載の方法。
[84] 前記結晶化プロセスが、
第2のFDCA経路生成物と、水、有機溶媒およびその組み合わせからなる群から選択される第1の結晶化溶媒とを含む第1の結晶化溶液を提供すること;
第1の結晶化溶液から第1の結晶化溶媒の第1の部分を除去して、様々な粒径を有する第2のFDCA経路生成物の第1の複数の結晶と第1の結晶化溶媒の第2の部分とを含む第1のFDCA経路生成物スラリーを得ること;ならびに
任意で、第1の結晶化溶媒の第2の部分から第2のFDCA経路生成物の第1の複数の結晶を分離することを含む、[75]に記載の方法。
[85] 第2のFDCA経路生成物の第1の複数の結晶を第2の結晶化溶媒に溶解して、第2のFDCA経路生成物と第2の結晶化溶媒とを含む第2の結晶化溶液を得ること;
第2の結晶化溶液から第2の結晶化溶媒の第1の部分を除去して、様々な粒径を有する第2のFDCA経路生成物の第2の複数の結晶と第2の結晶化溶媒の第2の部分とを含む第2のFDCA経路生成物スラリーを得ること;および
第2の結晶化溶媒の第2の部分から第2のFDCA経路生成物の第2の複数の結晶を分離することをさらに含む、[84]に記載の方法。
[86] 第1の結晶化溶媒および第2の結晶化溶媒の少なくとも一方が、工程(a)の前記(第1の)酸化溶媒および工程(b)の第2の酸化溶媒からなる群から選択される溶媒である、[85]に記載の方法。
[87] 第1の結晶化溶媒と第2の結晶化溶媒とが同じものである、[85]または[86]に記載の方法。
[88] 第1の結晶化溶媒と第2の結晶化溶媒とが異なるものである、[85]または[86]に記載の方法。
[89] 前記FDCA経路生成物がFDCAである、[1]~[61]、[68]、[70]、[72]~[74]および[78]~[82]のいずれか一項に記載の方法。
[90] 前記FDCA経路生成物がFDCA経路中間体化合物である、[1]~[61]、[68]、[70]、[72]~[74]および[78]~[82]のいずれか一項に記載の方法。
[91] 第2のFDCA経路生成物がFDCAである、[62]~[67]、[69]、[71]、[75]~[77]および[84]~[88]のいずれか一項に記載の方法。
[92] FDCAをFDCAエステルに転化することをさらに含み、
該転化工程が、対応するFDCAエステルを生成させるのに十分な条件下でFDCAをアルコール類と接触させることを含む、[89]または[91]に記載の方法。
[93] 前記アルコール類が脂肪族アルコール類である、[92]に記載の方法。
[94] 前記アルコール類がジオール類である、[92]に記載の方法。
[95] 前記ジオール類がエチレングリコールである、[94]に記載の方法。
[96] 前記アルコール類が芳香族アルコール類である、[92]に記載の方法。
[97] 前記FDCAエステルがFDCAジエステルである、[92]~[96]のいずれか一項に記載の方法。
[98] 前記アルコール類がメタノールであり、前記FDCAジエステルがFDCAジメチルエステルである、[97]に記載の方法。
[99] FDCAまたはFDCAエステルをFDCAアミドに転化することをさらに含み、
該転化工程が、対応するFDCAアミドを生成させるのに十分な条件下で、FDCAまたはFDCAエステルをアミノ置換化合物と接触させることを含む、[89]および[91]~[98]のいずれか一項に記載の方法。
[100] 前記アミノ置換化合物が1,6-ヘキサメチレンジアミンである、[99]に記載の方法。
[101] 前記FDCAアミドがFDCAジアミドである、[99]または[100]に記載の方法。
[102] FDCAをFDCAハロゲン化物に転化することをさらに含み、
該転化工程が、対応するFDCAハロゲン化物を生成させるのに十分な条件下で、FDCAを、式HX(式中、Xはハロゲン化物である)で表されるハロゲン化水素酸と接触させることを含む、[89]または[91]に記載の方法。
[103] 前記ハロゲン化物が塩化物であり、前記FDCAハロゲン化物がFDCA塩化物である、[102]に記載の方法。
[104] 前記FDCA塩化物がFDCAジクロリドである、[103]に記載の方法。
[105] FDCA系ポリマーを生成させるのに十分な条件下で、FDCAまたはその誘導体を重合させることをさらに含む、[89]または[91]に記載の方法。
[106] 前記FDCA誘導体が、FDCAジエステル、FDCAジハライドおよびFDCAジアミドからなる群から選択される、[105]に記載の方法。
[107] 前記FDCAジエステルがジメチルFDCAエステルである、[106]に記載の方法。
[108] 前記FDCAジエステルがジ(エチレングリコール)FDCAエステルである、[106]に記載の方法。
[109] 前記重合工程が重縮合反応である、[105]~[108]のいずれか一項に記載の方法。
[110] 前記重縮合反応の前に行われるエステル交換反応を含む、[109]に記載の方法。
[111] 前記重合工程が、前記FDCA誘導体を第2のモノマーと接触させることを含む、[105]~[110]のいずれか一項に記載の方法。
[112] 第2のモノマーがポリオール類である、[111]に記載の方法。
[113](a)工程(a)の前に、糖を脱水して前記フラン系酸化基質を生成させるための反応混合物を形成させるのに十分な条件下において、糖および脱水溶媒を含む糖質供給原料を触媒と接触させることをさらに含み、
生成されたフラン系酸化基質が、該フラン系酸化基質および前記脱水溶媒を含む脱水生成物溶液中に含まれていることを特徴とする、[1]~[112]のいずれか一項に記載の方法。
[114] 前記糖がフルクトースであり、前記フラン系酸化基質がHMFである、[113]に記載の方法。
[115] 工程(a)の前記酸化供給原料が、工程(a)の前記脱水生成物溶液を含む、[113]または[114]に記載の方法。
[116] 前記(第1の)不均一系酸化触媒において、(1)前記貴金属が白金であり;(2)前記固体担体が、シリカおよび炭素質材料からなる群から選択され;(3)前記複数の細孔の平均細孔直径が、10nm~100nmの範囲またはこの範囲内の任意の値である、[1]~[115]のいずれか一項に記載の方法。
[117] 前記複数の細孔の平均細孔直径が、20nm~100nmの範囲またはこの範囲内の任意の値である、[116]に記載の方法。
[118] 前記(第2の)不均一系酸化触媒において、(1)前記貴金属が白金であり;(2)前記固体担体が、シリカおよび炭素質材料からなる群から選択され;(3)前記複数の細孔の平均細孔直径が、10nm~100nmの範囲またはこの範囲内の任意の値である、[62]~[67]、[69]、[71]、[76]~[88]および[91]~[117]のいずれか一項に記載の方法。
[119] 前記複数の細孔の平均細孔直径が、20nm~100nmの範囲またはこの範囲内の任意の値である、[118]に記載の方法。
[120] [72]~[74]および[78]のいずれか一項に記載の方法によって製造された複数のFDCA経路生成物結晶。
[121] [79]~[83]のいずれか一項に記載の方法によって製造された第2の複数のFDCA経路生成物結晶。
[122] 前記FDCA経路生成物がFDCAである、[120]または[121]に記載の複数のFDCA経路生成物結晶。
[123] [75]~[77]および[84]のいずれか一項に記載の方法によって製造された、第2のFDCA経路生成物の複数の結晶。
[124] [85]~[88]のいずれか一項に記載の方法によって製造された、第2のFDCA経路生成物の第2の複数の結晶。
[125] 第2のFDCA経路生成物がFDCAである、[123]または[124]に記載の第2のFDCA経路生成物の複数の結晶。
[126] 結晶性FDCA経路生成物組成物を製造する方法であって、
FDCA経路生成物と、水および水混和性有機溶媒を含む多成分溶媒である結晶化溶媒とを含む結晶化溶液を提供すること;
前記FDCA経路生成物の結晶化を開始させること;ならびに
様々な粒径を有する複数のFDCA経路生成物結晶を生成させることを含む方法。
[127] 前記水混和性有機溶媒が水混和性非プロトン性有機溶媒である、[126]に記載の方法。
[128] 前記水混和性非プロトン性有機溶媒が、テトラヒドロフラン、グライム類、ジオキサン、ジオキソラン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン(「NMP」)、メチルエチルケトン(「MEK」)およびγ-バレロラクトンからなる群から選択される、[126]または[127]に記載の方法。
[129] 前記水混和性非プロトン性有機溶媒が、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホランおよびアセトンからなる群から選択される、[128]に記載の方法。
[130] 前記水混和性非プロトン性有機溶媒がエーテル類である、[126]または[127]に記載の方法。
[131] 前記エーテル類が、グライム類、1,3-ジオキソランおよびジオキサンからなる群から選択される、[130]に記載の方法。
[132] 前記水混和性有機溶媒が、水混和性軽質有機溶媒および水混和性重質有機溶媒からなる群から選択される、[126]に記載の方法。
[133] 前記多成分溶媒中に含まれる水と前記水混和性有機溶媒の比率が、1:6~6:1(v/v)の範囲またはこの範囲内の任意の値である、[126]~[132]のいずれか一項に記載の方法。
[134] 前記多成分溶媒中に含まれる水と前記水混和性有機溶媒の比率が1:6~6:1(v/v)の範囲である、[126]~[132]のいずれか一項に記載の方法。
[135] 前記多成分溶媒が少なくとも10vol%の水混和性有機溶媒を含む、[126]~[132]のいずれか一項に記載の方法。
[136] 前記結晶化溶液を60℃未満に冷却することによって結晶化を開始させる、[126]~[135]のいずれか一項に記載の方法。
[137] 前記結晶化溶液を50℃未満に冷却することによって結晶化を開始させる、[135]に記載の方法。
[138] 前記結晶化溶媒の一部を除去することによって結晶化を開始させて、第1の複数のFDCA経路生成物結晶と前記結晶化溶媒の第2の部分またはその成分とを含む第1のFDCA経路生成物スラリーを得る、[126]~[136]のいずれか一項に記載の方法。
[139] 前記複数のFDCA経路生成物結晶のメジアン粒径(D50)が、50μm~5000μmの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、または50μm~2000μmの範囲もしくはこの範囲内の任意の値である、[126]~[136]のいずれか一項に記載の方法。
[140] 前記複数のFDCA経路生成物結晶のメジアン粒径(D50)が、150μm~750μmの範囲またはこの範囲内の任意の値である、[139]に記載の方法。
[141] 前記結晶化溶液に種結晶を添加することをさらに含む、[126]~[140]のいずれか一項に記載の方法。
[142] 第1の複数のFDCA経路生成物結晶を第2の結晶化溶媒に溶解して、第2の複数のFDCA経路生成物結晶と第2の結晶化溶媒とを含む第2の結晶化溶液を得ること;
第2の結晶化溶液から第2の結晶化溶媒の第1の部分を除去して、第2の複数のFDCA結晶と第2の結晶化溶媒の第2の部分とを含む第2のFDCA経路生成物スラリーを得ること;および
第2の結晶化溶媒の第2の部分から第2の複数のFDCA経路生成物結晶を分離すること
をさらに含む、[126]~[141]のいずれか一項に記載の方法。
[143] 前記溶解工程が、80℃~220℃の範囲の温度もしくはこの範囲内の任意の値の温度、60℃~180℃の範囲の温度もしくはこの範囲内の任意の値の温度、または80℃~150℃の範囲の温度もしくはこの範囲内の任意の値の温度で実施される、[142]に記載の方法。
[144] 第2の結晶化溶液に種結晶を添加することをさらに含む、[142]または[143]に記載の方法。
[145] 第2の複数のFDCA経路生成物結晶のメジアン粒径(D50)が、50μm~5000μmの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、または50μm~2000μmの範囲もしくはこの範囲内の任意の値である、[142]~[144]のいずれか一項に記載の方法。
[146] 第2の複数のFDCA経路生成物結晶のメジアン粒径(D50)が、150μm~750μmの範囲またはこの範囲内の任意の値である、[142]~[144]のいずれか一項に記載の方法。
[147] 前記FDCA経路生成物がFDCAである、[126]~[146]のいずれか一項に記載の方法。
[148] 前記FDCA経路生成物がFDCA経路中間体化合物である、[126]~[146]のいずれか一項に記載の方法。
[149] [126]~[146]のいずれか一項に記載の方法によって製造された複数のFDCA経路生成物結晶。
[150] [142]~[146]のいずれか一項に記載の方法によって製造された第2の複数のFDCA経路生成物結晶。
[151] 様々な粒径を有する複数のFDCA経路生成物結晶を含む結晶組成物であって、該複数のFDCA経路生成物結晶のメジアン粒径(D50)が、50μm~5000μmの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、または50μm~2000μmの範囲もしくはこの範囲内の任意の値であることを特徴とする組成物。
[152] 前記FDCA経路生成物がFDCAである、[151]に記載の結晶組成物。
[153] 0.2重量%未満の水をさらに含む、[151]または[152]に記載の結晶組成物。
[154] FDCAと多成分溶媒とを含む組成物であって、該多成分溶媒が水および水混和性非プロトン性有機溶媒を含み、前記FDCAの濃度が少なくとも5wt%であることを特徴とする組成物。
[155] 前記水混和性非プロトン性有機溶媒がエーテル類である、[154]に記載の組成物。
[156] 前記エーテル類が、グライム類およびジオキサンからなる群から選択される、[155]に記載の組成物。
[157] 前記多成分溶媒中に含まれる水と前記水混和性有機溶媒の比率が、1:6~6:1(v/v)の範囲またはこの範囲内の任意の値である、[155]または[156]に記載の組成物。
[158] 前記多成分溶媒中に含まれる水と前記水混和性有機溶媒の比率が1:6~6:1(v/v)の範囲である、[155]または[156]に記載の組成物。
[159] 組成物であって、
(a)フラン系酸化基質と酸化溶媒とを含む酸化供給原料;
(b)酸素;
(c)不均一系酸化触媒;および
(d)FDCA経路生成物を含み、
前記酸化溶媒が、有機溶媒および多成分溶媒からなる群から選択される溶媒であること;
前記不均一系酸化触媒が固体担体および貴金属を含むこと;
前記不均一系酸化触媒が複数の細孔を含み、20m/g~500m/gの範囲の比表面積またはこの範囲内の任意の値の比表面積を有すること;ならびに
前記組成物に実質的に塩基が添加されていないことを特徴とする組成物。
[160] 前記貴金属が、白金、金およびその組み合わせからなる群から選択される、[159]に記載の組成物。
[161] 前記貴金属が白金である、[160]に記載の組成物。
[162] 前記貴金属が金である、[160]に記載の組成物。
[163] 前記酸化溶媒が、水および水混和性有機溶媒を含む多成分溶媒である、[159]~[162]のいずれか一項に記載の組成物。
[164] 前記水混和性有機溶媒が水混和性非プロトン性有機溶媒である、[163]に記載の組成物。
[165] 前記水混和性非プロトン性有機溶媒が、テトラヒドロフラン、グライム類、ジオキサン、ジオキソラン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン(「NMP」)、メチルエチルケトン(「MEK」)およびγ-バレロラクトンからなる群から選択される、[164]に記載の組成物。
[166] 前記水混和性非プロトン性有機溶媒が、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホランおよびアセトンからなる群から選択される、[165]に記載の組成物。
[167] 前記水混和性非プロトン性有機溶媒がエーテル類である、[164]に記載の組成物。
[168] 前記エーテル類が、グライム類、ジオキサンおよび1,3-ジオキソランからなる群から選択される、[167]に記載の組成物。
[169] 前記エーテル類がジオキサンである、[168]に記載の組成物。
[170] 前記エーテル類がグライム類である、[168]に記載の組成物。
[171] 前記グライム類が、モノグライム(1,2-ジメトキシエタン)、エチルグライム、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、エチルジグライム、トリグライム、ブチルジグライム、テトラグライムおよびポリグライム類からなる群から選択される、[170]に記載の組成物。
[172] 前記グライム類がジグライムである、[171]に記載の組成物。
[173] 前記水混和性有機溶媒が、水混和性軽質有機溶媒および水混和性重質有機溶媒からなる群から選択される、[163]に記載の組成物。
[174] 水と前記水混和性有機溶媒の比率が1:6~6:1(v/v)の範囲またはこの範囲内の任意の値である、[163]~[173]のいずれか一項に記載の組成物。
[175] 水と前記水混和性有機溶媒の比率が1:6~6:1(v/v)の範囲である、[163]~[173]のいずれか一項に記載の組成物。
[176] 水と前記水混和性有機溶媒の比率が1:1(v/v)である、[174]に記載の組成物。
[177] 前記水混和性有機溶媒が多成分溶媒を少なくとも10vol%含む、[163]~[173]のいずれか一項に記載の組成物。
[178] 前記フラン系酸化基質が5-(ヒドロキシメチル)フルフラール(HMF)である、[159]~[177]のいずれか一項に記載の組成物。
[179] 前記フラン系酸化基質が、ジホルミルフラン(DFF)、ヒドロキシメチルフランカルボン酸(HMFCA)およびホルミルフランカルボン酸(FFCA)からなる群から選択される、[159]~[177]のいずれか一項に記載の組成物。
[180] 前記酸化供給原料に含まれる前記フラン系酸化基質の濃度が少なくとも5重量%である、[159]~[179]のいずれか一項に記載の組成物。
[181] 前記酸化供給原料中の前記フラン系酸化基質の濃度が少なくとも10重量%である、[180]に記載の組成物。
[182] 前記不均一系酸化触媒中の前記貴金属の担持量が、該不均一系酸化触媒の重量の0.3%~5%の範囲またはこの範囲内の任意の値である、[159]~[181]のいずれか一項に記載の組成物。
[183] 前記不均一系酸化触媒が助触媒をさらに含む、[159]~[182]のいずれか一項に記載の組成物。
[184] 前記固体担体が、金属酸化物、炭素質材料、ポリマー、金属ケイ酸塩、金属炭化物およびこれらの2種以上の任意の組み合わせからなる群から選択される材料を含む、[159]~[183]のいずれか一項に記載の組成物。
[185] 前記固体担体が金属酸化物を含む、[184]に記載の組成物。
[186] 前記金属酸化物が、シリカ、ジルコニアおよびアルミナからなる群から選択される、[185]に記載の組成物。
[187] 前記固体担体が炭素質材料を含む、[184]に記載の組成物。
[188] 前記炭素質材料がカーボンブラックである、[187]に記載の組成物。
[189] 前記固体担体が金属ケイ酸塩を含む、[184]に記載の組成物。
[190] 前記固体担体が、金属酸化物、炭素質材料、ポリマー、金属ケイ酸塩および金属炭化物からなる群から選択される材料とバインダーとを含む複合材料である、[159]~[184]のいずれか一項に記載の組成物。
[191] 前記不均一系酸化触媒の比表面積が、25m/g~350m/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、25m/g~250m/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、25m/g~225m/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、25m/g~200m/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、25m/g~175m/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、25m/g~150m/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、25m/g~125m/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値、または25m/g~100m/gの範囲もしくはこの範囲内の任意の値である、[159]~[190]のいずれか一項に記載の組成物。
[192] 前記不均一系酸化触媒の細孔容積の少なくとも50%が、5nm~100nmの範囲の細孔直径またはこの範囲内の任意の値の細孔直径を有する細孔によって占められている、[159]~[191]のいずれか一項に記載の組成物。
[193] 前記不均一系酸化触媒の細孔容積の10%以下が、10nm未満の細孔直径を有する細孔によって占められている、[159]~[192]のいずれか一項に記載の組成物。
[194] 前記不均一系酸化触媒の細孔容積の10%以下が、0.1nm~10nmの範囲の細孔直径またはこの範囲内の任意の値の細孔直径を有する細孔によって占められている、、[159]~[192]のいずれか一項に記載の組成物。
[195] 前記不均一系酸化触媒の細孔容積の5%以下が、10nm未満の細孔直径を有する細孔によって占められている、[193]に記載の組成物。
[196] 前記不均一系酸化触媒の細孔容積の5%以下が、0.1nm~10nmの範囲の細孔直径またはこの範囲内の任意の値の細孔直径を有する細孔によって占められている、[194]に記載の組成物。
[197] 前記不均一系酸化触媒の細孔容積の2.5%以下が、10nm未満の細孔直径を有する細孔によって占められている、[195]に記載の組成物。
[198] 前記不均一系酸化触媒の細孔容積の2.5%以下が、0.1nm~10nmの範囲の細孔直径またはこの範囲内の任意の値の細孔直径を有する細孔によって占められている、[196]に記載の組成物。
[199] 前記複数の細孔の平均細孔直径が、10nm~100nmの範囲またはこの範囲内の任意の値である、[159]~[198]のいずれか一項に記載の組成物。
[200] 前記不均一系酸化触媒が第2の複数の細孔を含み、第1の複数の細孔および第2の複数の細孔の少なくとも一方の平均細孔直径が、10nm~100nmの範囲またはこの範囲内の任意の値である、[159]~[198]のいずれか一項に記載の組成物。
[201] 第1の複数の細孔および第2の複数の細孔のそれぞれの平均細孔直径が、10nm~100nmの範囲またはこの範囲内の任意の値である、[200]に記載の組成物。
[202] 前記不均一系酸化触媒が、0.1cm/g~1.5cm/gの範囲の比細孔容積またはこの範囲内の任意の値の比細孔容積を有する、[159]~[201]のいずれか一項に記載の組成物。
[203] 前記酸素と前記フラン系酸化基質のモル比が、2:1~10:1の範囲またはこの範囲内の任意の値である、[159]~[202]のいずれか一項に記載の組成物。
[204] 前記酸素と前記フラン系酸化基質のモル比が、2:1~5:1の範囲またはこの範囲内の任意の値である、[203]に記載の組成物。
[205] 前記酸素の圧力(pO2)が50psig~1000psigの範囲またはこの範囲内の任意の値である、[159]~[204]のいずれか一項に記載の組成物。
[206] 前記酸素の圧力(pO2)が50psig~200psigの範囲またはこの範囲内の任意の値である、[205]に記載の組成物。
[207] 装置であって、
(a)酸化反応ゾーン;
(b)酸素を含む酸素供給流;
(c)フラン系酸化基質と、有機溶媒および多成分溶媒からなる群から選択される溶媒である酸化溶媒とを含む酸化供給原料流;ならびに
(d)FDCA経路生成物を含む経路生成物流を含み、
酸素供給流と酸化供給原料流とが酸化反応ゾーンへと送られて互いに反応し、FDCA経路生成物を生成すること;
酸化反応ゾーンが、不均一系酸化触媒、酸素、フラン系酸化基質および酸化溶媒を含むこと;
FDCA経路生成物流が酸化反応ゾーンから出ていくこと;
前記不均一系酸化触媒が固体担体および貴金属を含むこと;
前記不均一系酸化触媒が複数の細孔を含み、20m/g~500m/gの範囲の比表面積またはこの範囲内の任意の値の比表面積を有すること;ならびに
前記酸化反応ゾーンに実質的に塩基が添加されていないことを特徴とする装置。
[208] 未反応のフラン系酸化基質を含む再循環流をさらに含み;
該再循環流が酸化反応ゾーンから出ていくこと;および
前記装置が、該再循環流を酸化反応ゾーンに任意で送り戻すための手段を含むことを特徴とする、[207]に記載の装置。
[209] (e)第2の酸化反応ゾーン;
(f)酸素を含む第2の酸素供給流;および
(g)FDCA経路生成物を含む第2の経路生成物流をさらに含み、
前記(d)の経路生成物流と第2の酸素供給流とが第2の酸化反応ゾーンへと送られて互いに反応し、FDCA経路生成物を生成すること;
第2の経路生成物流が第2の酸化反応ゾーンから出ていくこと;
第2の酸化反応ゾーンが、第2の不均一系酸化触媒、酸素および前記(d)の経路生成物流を含むこと;
第2の不均一系酸化触媒が固体担体および貴金属を含むこと;
第2の不均一系酸化触媒が複数の細孔を含み、20m/g~500m/gの範囲の比表面積またはこの範囲内の任意の値の比表面積を有すること;ならびに
第2の酸化反応ゾーンに実質的に塩基が添加されていないことを特徴とする、[207]または[208]に記載の装置。
[210] 前記(d)からの未反応の経路生成物流を含む再循環流をさらに含み;
該再循環流が第2の酸化反応ゾーンから出ていくこと;および
前記装置が、該再循環流を前記(a)の酸化反応ゾーンに任意で送り戻すための手段を含むことを特徴とする、[209]に記載の装置。
[211] フラン系酸化基質を製造する方法であって、
糖を脱水してフラン系酸化基質を生成させるための脱水反応混合物を形成させるのに十分な条件下において、糖および脱水溶媒を含む糖質供給原料を酸触媒と接触させることを含み、
前記酸触媒が、HBr、HSO、HNO、HCl、HI、HPO、トリフル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸からなる群から選択される酸であること、
前記酸触媒がHBrではない場合、前記脱水反応混合物が臭化物塩をさらに含むこと、ならびに
前記脱水溶媒がN-メチルピロリドン(NMP)を含むことを特徴とする方法。
[212] 前記酸触媒がHBrである、[211]に記載の方法。
[213] 前記酸触媒が、HSO、HNO、HCl、HI、HPO、トリフル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸からなる群から選択されること、ならびに前記脱水反応混合物が臭化物塩を含むことを特徴とする、[211]に記載の方法。
[214] 前記臭化物塩が、LiBr、NaBr、KBr、MgBr、CaBr、ZnBr、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミドおよびこれらの2種以上の任意の組み合わせからなる群から選択される、[211]または[213]に記載の方法。
[215] 前記酸触媒がルイス酸をさらに含む、[211]~[214]のいずれか一項に記載の方法。
[216] 前記ルイス酸が、三ハロゲン化ホウ素、有機ボラン、三ハロゲン化アルミニウム、五フッ化リン、五フッ化アンチモン、希土類金属トリフラート、金属ハロゲン化物、金属トリフルオロ酢酸塩および金属カチオンエーテル錯体からなる群から選択される、[215]に記載の方法。
[217] 前記ルイス酸が金属ハロゲン化物である、[216]に記載の方法。
[218] 前記金属ハロゲン化物がZnClまたはZnBrである、[217]に記載の方法。
[219] 前記脱水反応混合物が、80℃~160℃の範囲の温度、80℃~150℃の範囲の温度、80℃~140℃の範囲の温度、80℃~130℃の範囲の温度、80℃~120℃の範囲の温度、80℃~110℃の範囲の温度もしくは80℃~100℃の範囲の温度、またはこれらのいずれかの範囲内の任意の値の温度で維持される、[211]~[218]のいずれか一項に記載の方法。
[220] 前記脱水溶媒が水をさらに含む、[211]~[219]のいずれか一項に記載の方法。
[221] 前記脱水溶媒が、1~5wt%の水と99~95%のNMP、5~10wt%の水と95~90wt%のNMP、10~15wt%の水と90~85wt%のNMP、15~20wt%の水と85~80wt%のNMP、20~25wt%の水と80~75wt%のNMP、25~30wt%の水と75~70wt%のNMP、30~35wt%の水と70~65wt%のNMP、35~40wt%の水と65~60wt%のNMP、40~45wt%の水と60~55wt%のNMP、45~50wt%の水と55~50wt%のNMP、50~55wt%の水と50~45wt%のNMP、55~60wt%の水と45~40wt%のNMP、60~65wt%の水と40~35wt%のNMP、65~70wt%の水と35~30wt%のNMP、70~75wt%の水と30~25wt%のNMP、75~80wt%の水と25~20wt%のNMP、80~85wt%の水と20~15wt%のNMP、85~90wt%の水と15~10wt%のNMP、90~95wt%の水と10~5wt%のNMP、もしくは95~99wt%の水と5~1wt%のNMP、またはこれらのいずれかの範囲内の任意の値で示される割合の水とNMPを含む、[220]に記載の方法。
[222] 前記脱水溶媒が第2の有機溶媒種をさらに含む、[211]~[221]のいずれか一項に記載の方法。
[223] 第2の有機溶媒種が、N-メチルピロリドン(NMP)以外の水混和性有機溶媒である、[222]に記載の方法。
[224] 前記水混和性非プロトン性有機溶媒が、テトラヒドロフラン、グライム類、ジオキサン、ジオキソラン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトン、メチルエチルケトン(「MEK」)およびγ-バレロラクトンからなる群から選択される、[223]に記載の方法。
[225] 前記水混和性非プロトン性有機溶媒が、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホランおよびアセトンからなる群から選択される、[224]に記載の方法。
[226] 前記水混和性非プロトン性有機溶媒がエーテル類である、[223]に記載の方法。
[227] 前記エーテル類が、グライム類、ジオキサンおよび1,3-ジオキソランからなる群から選択される、[226]に記載の方法。
[228] 前記グライム類が、モノグライム(1,2-ジメトキシエタン)、エチルグライム、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、エチルジグライム、トリグライム、ブチルジグライム、テトラグライムおよびポリグライム類からなる群から選択される、[227]に記載の方法。
[229] 前記グライム類がジグライムである、[228]に記載の方法。
[230] 前記フラン系酸化基質が、該フラン系酸化基質および前記脱水溶媒を含む脱水生成物溶液中に含まれている、[211]~[229]のいずれか一項に記載の方法。
[231] 前記脱水生成物溶液が未反応の糖をさらに含む、[230]に記載の方法。
[232] 前記脱水生成物溶液が腐植質を含む混合物である、[230]または[231]に記載の方法。
[233] [231]に記載の脱水生成物溶液または[232]に記載の混合物を、1種以上の膜を使用して膜分離することによって、腐植質、未反応の糖およびその組み合わせからなる群から選択される1種以上の成分から前記フラン系酸化基質を分離することをさらに含む、[231]または[232]に記載の方法。
[234] 前記1種以上の膜が、限外濾過膜、ナノ濾過膜およびその組み合わせからなる群から選択される、[233]に記載の方法。
[235] 前記フラン系酸化基質の収率が、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%である、[211]~[224]のいずれか一項に記載の方法。
[236] 前記糖がフルクトースである、[211]~[235]のいずれか一項に記載の方法。
[237] 前記フラン系酸化基質がHMFである、[211]~[236]のいずれか一項に記載の方法。
図1
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【手続補正書】
【提出日】2024-02-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラン系酸化基質から2,5-フランジカルボン酸(FDCA)経路生成物を製造する方法であって、
(a)フラン系酸化基質を酸化させてFDCA経路生成物を得るための反応混合物を形成させるのに十分な条件下において、フラン系酸化基質と酸化溶媒とを含む酸化供給原料を、不均一系酸化触媒の存在下で酸素と接触させて、FDCA経路生成物を生成させること
を含み、
前記酸化溶媒が、水および水混和性非プロトン性有機溶媒を含む多成分溶媒を含む多成分溶媒であること、
前記接触工程(a)において、前記反応混合物に塩基が添加されていないこと、
前記不均一系酸化触媒が固体担体および貴金属を含むこと、ならびに
前記固体担体が複数の細孔を含み、20m/g~500m/gの範囲またはこの範囲内の任意の値の比表面積を有すること
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記貴金属が、白金、金およびその組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水混和性非プロトン性有機溶媒が、テトラヒドロフラン、グライム類、ジオキサン、ジオキソラン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、メチルエチルケトン(MEK)およびγ-バレロラクトンからなる群から選択されること、および
前記水混和性非プロトン性有機溶媒がグライム類である場合、該グライム類が、モノグライム(1,2-ジメトキシエタン)、エチルグライム、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、エチルジグライム、トリグライム、ブチルジグライム、テトラグライムおよびポリグライム類からなる群から選択されること
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記酸化供給原料に含まれる前記フラン系酸化基質の濃度が少なくとも5重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記不均一系酸化触媒中の前記貴金属の担持量が、該不均一系酸化触媒の重量の0.3%~5%の範囲またはこの範囲内の任意の値である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記固体担体が、金属酸化物、炭素質材料、ポリマー、金属ケイ酸塩、金属炭化物およびこれらの2種以上の任意の組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記固体担体の比表面積が、25m /g~350m /gの範囲またはこの範囲内の任意の値である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記固体担体の細孔容積の少なくとも50%が、5nm~100nmの範囲またはこの範囲内の任意の値の細孔直径を有する細孔によって占められている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記酸素と前記フラン系酸化基質のモル比が、2:1~10:1の範囲またはこの範囲内の任意の値である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記接触工程が、50℃~200℃の範囲またはこの範囲内の任意の値の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記FDCA経路生成物が少なくとも80%の収率で生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
第2の酸化工程をさらに含み、該第2の酸化工程が、
(b)第2のフラン系酸化基質を酸化させて第2のFDCA経路生成物を得るための第2の反応混合物を形成させるのに十分な条件下において、第2のフラン系酸化基質と第2の酸化溶媒とを含む第2の酸化供給原料を、第2の不均一系酸化触媒の存在下で酸素と接触させて、第2のFDCA経路生成物を生成させること
を含み、
前記(第1の)接触工程(a)において、FDCA経路中間体化合物である第1のFDCA経路生成物が単独でまたはFDCAとともに生成されること、
第2のフラン系酸化基質が第1のFDCA経路生成物であること、
第2の反応混合物に実質的に塩基が添加されていないこと、
第2の不均一系酸化触媒が、工程(a)の前記(第1の)貴金属と同じまたは異なる第2の貴金属と第2の固体担体とを含むこと、および
第2の固体担体が複数の細孔を含み、20m /g~500m /gの範囲またはこの範囲内の任意の値の比表面積を有すること
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記貴金属が、白金、金およびその組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記FDCA経路生成物がFDCAである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
(a )工程(a)の前に、糖を脱水して前記フラン系酸化基質を生成させるための反応混合物を形成させるのに十分な条件下において、糖および脱水溶媒を含む糖質供給原料を触媒と接触させることをさらに含み、
生成されたフラン系酸化基質が、該フラン系酸化基質および前記脱水溶媒を含む脱水生成物溶液中に含まれていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
フラン系酸化基質を製造する方法であって、
糖を脱水してフラン系酸化基質を生成させるための脱水反応混合物を形成させるのに十分な条件下において、糖および脱水溶媒を含む糖質供給原料を酸触媒と接触させること
を含み、
前記酸触媒が、HBr、H SO 、HNO 、HCl、HI、H PO 、トリフル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸からなる群から選択される酸であること、
前記酸触媒がHBrではない場合、前記脱水反応混合物が臭化物塩をさらに含むこと、ならびに
前記脱水溶媒がN-メチルピロリドン(NMP)を含むこと
を特徴とする方法。
【請求項17】
前記糖がフルクトースであり、前記フラン系酸化基質がHMFである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
糖を脱水してフラン系酸化基質を生成するための脱水反応混合物を形成させるのに十分な条件下において、糖および脱水溶媒を含む糖質供給原料を酸触媒およびZnCl またはZnBr と接触させることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記固体担体の比表面積が、20m /g~50m /gの範囲またはこの範囲内の任意の値である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記固体担体の比表面積が、20m /g~40m /gの範囲またはこの範囲内の任意の値である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記水混和性非プロトン性有機溶媒が、グライム類である、請求項3に記載の方法。
【請求項22】
前記水混和性非プロトン性有機溶媒が、1,2-ジメトキシエタン(DME)である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記水混和性非プロトン性有機溶媒が、ジグライムである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記水混和性非プロトン性有機溶媒が、ジオキサンである、請求項3に記載の方法。
【請求項25】
前記水混和性非プロトン性有機溶媒が、NMPである、請求項3に記載の方法。
【請求項26】
前記水混和性非プロトン性有機溶媒が、MEKである、請求項3に記載の方法。
【請求項27】
水混和性非プロトン性有機溶媒:水の重量パーセント(wt%)比が、70:30~20:80の範囲またはそれらの間の任意の値である、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
水混和性非プロトン性有機溶媒:水の重量パーセント(wt%)比が、60:40~40:60の範囲またはそれらの間の任意の値である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記接触工程が、110℃未満の温度で実施される、請求項16に記載の方法。