(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050634
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】閉塞物除去システム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/22 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
A61B17/22 528
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024005136
(22)【出願日】2024-01-17
(62)【分割の表示】P 2022142710の分割
【原出願日】2017-11-17
(31)【優先権主張番号】62/426,106
(32)【優先日】2016-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517416374
【氏名又は名称】マイクロベンション インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROVENTION, INC.
【住所又は居所原語表記】35 Enterprise, Aliso Viejo, California 92656 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【弁理士】
【氏名又は名称】舛谷 威志
(72)【発明者】
【氏名】ゴヤル,マヤンク
(72)【発明者】
【氏名】シミズ,ジャレッド
(72)【発明者】
【氏名】ボウマン,ヘルス
(72)【発明者】
【氏名】ラム,キエット
(57)【要約】 (修正有)
【課題】凝血塊の複数の部分と係合可能な1つ以上の係合部材を有する閉塞物除去デバイスを提供する。
【解決手段】1つ以上の係合部材は、潰された搬送状態と、膨張された配置状態を有しており、いくつかの実施形態において、自身の固定された構成を維持するようロックされ得る。
【選択図】
図22a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉塞物除去デバイスであって、
血管系にアクセス可能とするサイズで形成された押圧具であって、該押圧具の先端部と、押圧具の基端部との間で延伸する押圧具管腔を有する、押圧具と、
前記押圧具の前記先端部に接続され、前記血管系内の血栓を捕捉するよう構成された係合部材と、
前記押圧具管腔内に位置し、前記押圧具の前記先端部から延伸し、前記係合部材に接続されており、さらに、前記押圧具の前記基端部を超えて延伸する長尺要素であって、前記係合部材に膨張形状または潰れ形状を取らせるよう、前記押圧具に対して長尺方向に移動可能な、長尺要素と、
前記長尺要素が、前記押圧具に対して動くことを選択的に防止することにより、前記係合部材を、前記膨張形状または前記潰れ形状の少なくとも1つでロックするロック機構と、を含む閉塞物除去デバイス。
【請求項2】
膨張形状または潰れ形状を取る複数の係合部材をさらに含む請求項1の閉塞物除去デバイス。
【請求項3】
前記長尺要素の長尺方向の動きは、前記複数の係合部材の全てを、前記膨張形状と、前記潰れ形状との間で調整する請求項2の閉塞物除去デバイス。
【請求項4】
前記ロック機構は、前記長尺要素の外側に取り付けられ、さらに、前記係合部材と接触するよう構成された構造を備えており、前記係合部材のそれぞれは、自身専用の構造を有している請求項3の閉塞物除去デバイス。
【請求項5】
前記長尺部材は、前記押圧器および前記係合部材の双方に渡っている請求項1の閉塞物除去デバイス。
【請求項6】
前記長尺要素の外側に位置し、さらに、前記係合部材に取り付けられたテンション部材をさらに含む請求項1の閉塞物除去デバイス。
【請求項7】
前記ロック機構は、前記長尺要素に固定され、さらに、前記係合部材内に位置する固定具を含み、前記固定具は、並んで配置され、さらに、前記係合部材の複数の支柱と係合するよう構成された複数の凹部を有する請求項1の閉塞物除去デバイス。
【請求項8】
前記ロック機構は、前記長尺要素上の拡径領域と、前記拡径領域と係合するサイズで形成された前記押圧具管腔内の開口と、を含む請求項1の閉塞物除去デバイス。
【請求項9】
前記ロック機構は、前記押圧具の前記基端部の近くに配置され、前記押圧具に対する前記長尺部材の動きを防止するために、前記長尺部材と選択的に係合可能なコレットである請求項1の閉塞物除去デバイス。
【請求項10】
閉塞物除去システムであって、
搬送デバイス外において膨張形状を取り、前記搬送デバイス内において潰れ形状を取る係合部材と、
前記係合部材に接続された先端部を有し、さらに、自身の内部を挿通する押圧具管腔を有する押圧チューブと、
前記押圧具に渡っており、前記係合部材に、前記搬送デバイス外において前記膨張形状または前記潰れ形状を取らせるよう、前記押圧部とは独立して移動可能な、長尺の形状制御部と、
前記押圧チューブに対する前記形状制御部の動きを選択的に固定し、これにより、前記搬送デバイス外において前記係合部材の前記形状をロックするロック機構と、を含む閉塞物除去システム。
【請求項11】
前記形状制御部の位置によって制御される膨張形状または潰れ形状を取る複数の係合部材をさらに含む請求項10の閉塞物除去システム。
【請求項12】
前記長尺の形状制御部は、前記複数の係合部材の全てに接続されており、さらに、前記複数の係合部材の全ての前記形状を制御する請求項11の閉塞物除去システム。
【請求項13】
前記ロック機構は、前記長尺の形状制御部の外側に取り付けられ、前記複数の係合部材と接触するよう構成された構造を備えており、前記複数の係合部材のそれぞれは、自身専用の構造を有している請求項12の閉塞物除去システム。
【請求項14】
前記長尺の形状制御部は、前記押圧チューブおよび前記係合部材の双方に渡っている請求項10の閉塞物除去システム。
【請求項15】
前記長尺の形状制御部の外側に位置しており、さらに、前記係合部材に取り付けられているテンション部材をさらに含む請求項10の閉塞物除去システム。
【請求項16】
前記ロック機構は、前記長尺の形状制御部に固定され、さらに、前記係合部材内に位置する固定具を含み、前記固定具は、並べて配置され、さらに、前記係合部材の複数の支柱と係合するよう構成された複数の凹部を有している請求項10の閉塞物除去システム。
【請求項17】
前記搬送デバイスは、マイクロカテーテルである請求項10の閉塞物除去システム。
【請求項18】
前記ロック機構は、前記長尺の形状制御部上の拡径領域と、前記拡径領域を捕捉するようなサイズで形成された前記押圧チューブ内の開口と、を含む請求項10の閉塞物除去システム。
【請求項19】
前記ロック機構は、前記押圧チューブの基端部の近くに配置され、さらに、前記押圧チューブに対する前記長尺の形状制御部の動きを防止するために、前記長尺の形状制御部と選択的に係合可能なコレットである請求項10の閉塞物除去システム。
【請求項20】
血管内の閉塞物を除去する方法であって、
前記血管内において先端側で連結された係合部材を動かすために、押圧チューブを前進させる工程と、
前記係合部材に膨張形状または潰れ形状を取らせるために、前記押圧チューブに渡る形状制御部を動かす工程と、
前記形状制御部を所定の場所でロックし、これにより、前記血管内で前記係合部材の前記形状をロックするロック機構を利用する工程と、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2016年11月23日出願の米国仮出願第62/426,106(タイトル「閉塞物除去システム」)に基づく優先権を主張し、該米国仮出願の開示の全体が、参照により、ここに援用される。
【背景技術】
【0002】
本発明は、血管系から、凝血塊や他のもののような、閉塞物を捕捉および除去するために用いられるデバイス、および、血管系内における目標領域へのこれらデバイスの搬送に関する。
【0003】
血管系内の血栓の蓄積は、血液の凝塊の形成に繋がり得る。凝血塊の形成は、血管系の下流領域に供給される血液が規制されてしまう結果を引き起こす。神経血管系内に凝結塊が存在する場合、これらの凝結塊は、脳卒中に繋がり得る。
【0004】
凝血塊を除去するための近年の技術は、凝血塊を保持および捕捉するよう設計されたデバイスを利用し、その後、捕捉された凝血塊を身体から物理的に除去するためにデバイスを引き抜くものである。これらデバイスのいくつかは、凝血塊全体を捕捉することを失敗し得るか、血栓を動かし、別の箇所において蓄積させてしまい、脳卒中のリスクに繋がる凝血塊の断片化を促してしまう。さらに、これらデバイスのいくつかは、デバイスと血管壁との間の高い摩擦による内皮削剥を促し得る。さらに、これらデバイスのいくつかは、血管内での湾曲に直面する際に潰れてしまい、捕捉された血栓が抜け出る、および/または、断片化する機会を増やしてしまう。
【0005】
血管系内に留まる断片化された血栓の可能性を低減する一方、凝血塊の機械的な捕捉の可能性を最大化し、内皮削剥のリスクを限定する閉塞物除去デバイスに対するニーズが存在している。
【発明の概要】
【0006】
本発明に係る1つの実施形態において、基端側軸コア構造と、先端側緩衝構造と、先端側緩衝構造に取り付けられた1つ以上の係合部材と、を有する閉塞物除去デバイスが記述される。
【0007】
本発明に係る別の実施形態において、基端側構造と、先端側構造と、2つの構造の間の1つ以上の接続された係合部材と、を有する閉塞物除去デバイスが記述される。
【0008】
本発明に係る別の実施形態において、基端側構造と、先端側構造と、2つの構造の間の1つ以上の接続された係合部材と、を有し、係合部材の少なくとも1つが、フィルターとして機能する、閉塞物除去デバイスが記述される。
【0009】
上述の実施形態の1つの実施例において、複数の係合部材は、互いに実質的に同様である。
【0010】
上述の実施形態の別の実施例において、複数の係合部材のいくつかは、他の係合部材と実質的に同様ではない。
【0011】
上述の実施形態の別の実施例において、複数の係合部材のいくつかは、能動的に凝血塊と係合し、残りの係合部材の1つ以上は、凝血塊と係合しない。
【0012】
1つの実施形態において、閉塞物除去デバイスは、搬送デバイス内に収納されており、カテーテルを介して搬送される。
【0013】
別の実施形態において、閉塞物除去デバイスは、カテーテルを介して、直接搬送される。
【0014】
別の実施形態において、デバイスは、異物を取り出すために用いられる。
【0015】
1つの実施形態において、閉塞物除去デバイスは、それぞれのリンケージに連結された複数の閉塞物係合部材を含む。リンケージは、一対の係合部材を互いに連結する。
【0016】
1つの実施形態において、閉塞物除去デバイスは、1つ以上の係合部材を、膨張および/または収縮形状でロックするロック機構を備えている。1つの実施形態において、デバイスは、皮下チューブ押圧具と、押圧具内に位置し、1つ以上の係合要素の全長に渡る形状制御要素と、を備え、形状制御部は、係合部材を収縮および/または膨張するため、または、係合部材を、固定またはロック状態で保持するために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の実施形態の態様および他の態様、特徴、および利点は、添付の図面を参照して、本発明の実施形態の以下の説明から、明白および明確となることができる。
【0018】
【
図1】
図1は、閉塞物除去デバイスにおいて用いられる係合部材である。
【0019】
【
図2】
図2は、閉塞物除去デバイス内において用いられる係合部材の別の図である。
【0020】
【
図3】
図3は、本発明の1つの実施形態に係る閉塞物除去デバイスである。
【0021】
【
図4】
図4は、本発明の別の実施形態に係る閉塞物除去デバイスである。
【0022】
【
図5】
図5は、
図4に示された閉塞物除去デバイスの分解図である。
【0023】
【
図6】
図6は、
図4および5の閉塞物除去デバイスの基端側係合部材の拡大図である。
【0024】
【
図7】
図7は、本発明の別の実施形態に係る閉塞物除去デバイスである。
【0025】
【
図8】
図8は、
図7に示された閉塞物除去デバイスの分解図である。
【0026】
【
図9】
図9は、
図7および8に示されたデバイス内において用いられる先端側係合部材の1つである。
【0027】
【
図10】
図10は、上述の実施形態において記述された閉塞物除去デバイスを配置する方法を示している。
【
図11】
図11は、上述の実施形態において記述された閉塞物除去デバイスを配置する方法を示している。
【
図12】
図12は、上述の実施形態において記述された閉塞物除去デバイスを配置する方法を示している。
【0028】
【
図13】
図13は、係合部材を作成するために用いられる皮下チューブを示している。
【0029】
【
図14】
図14は、係合部材の最終的な形状を整えることを支援するために用いられるプロセスを示している。
【
図15】
図15は、係合部材の最終的な形状を整えることを支援するために用いられるプロセスを示している。
【
図16】
図16は、係合部材の最終的な形状を整えることを支援するために用いられるプロセスを示している。
【0030】
【
図17】
図17は、皮下チューブと、係合部材が、膨張および/または収縮形状となることを可能とする形状制御部と、を利用する閉塞物除去デバイスを示している。
【
図18】
図18は、皮下チューブと、係合部材が、膨張および/または収縮形状となることを可能とする形状制御部と、を利用する閉塞物除去デバイスを示している。
【
図19】
図19は、皮下チューブと、係合部材が、膨張および/または収縮形状となることを可能とする形状制御部と、を利用する閉塞物除去デバイスを示している。
【0031】
【
図20】
図20は、
図17-19の閉塞物除去デバイス内において用いられる皮下チューブを示している。
【
図21】
図21は、
図17-19の閉塞物除去デバイス内において用いられる皮下チューブを示している。
【0032】
【
図22a】
図22aは、閉塞物除去デバイス内において用いられる係合部材の支柱を保持するために用いられる保持具要素を利用する閉塞物除去デバイスを示している。
【
図22b】
図22bは、閉塞物除去デバイス内において用いられる係合部材の支柱を保持するために用いられる保持具要素を利用する閉塞物除去デバイスを示している。
【
図23】
図23は、閉塞物除去デバイス内において用いられる係合部材の支柱を保持するために用いられる保持具要素を利用する閉塞物除去デバイスを示している。
【0033】
【
図24a】
図24aは、切り欠き部を有する皮下チューブを利用する係合部材と、係合部材をロックするために用いられる隆起を有する形状制御部と、を備える閉塞物除去デバイスを示している。
【
図24b】
図24bは、切り欠き部を有する皮下チューブを利用する係合部材と、係合部材をロックするために用いられる隆起を有する形状制御部と、を備える閉塞物除去デバイスを示している。
【
図25a】
図25aは、切り欠き部を有する皮下チューブを利用する係合部材と、係合部材をロックするために用いられる隆起を有する形状制御部と、を備える閉塞物除去デバイスを示している。
【
図25b】
図25bは、切り欠き部を有する皮下チューブを利用する係合部材と、係合部材をロックするために用いられる隆起を有する形状制御部と、を備える閉塞物除去デバイスを示している。
【発明の詳細な説明】
【0034】
本発明の特定の実施形態が、添付の図面を参照して記述される。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実施されてもよく、本明細書で説明される実施形態へ限定されて構成されるものではなく、むしろ、これら実施形態は、本開示が完璧かつ完全なものとなり、本分野における当業者に対し、本発明の範囲を完全に伝達するよう、提供されるものである。添付の図面に示された実施形態の詳細な説明において用いられる専門用語は、本発明の限定として意図されたものではない。図面において、同様の参照番号は、同様の要素を示す。
【0035】
特に定義されていない限り、本明細書で使用されている全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有している。辞書において通常定義されているような用語は、関連分野の文脈における意味とつじつまが合う意味を有しているものとして解釈されるべきであり、本明細書において明示的に定義されていない限り、理想化されたまたは非常に形式的な意味で解釈されないであろうことは、さらに理解されるであろう。
【0036】
以下に記載する専門用語の理解のため、用語「凝血塊」、「血栓」、「塞栓」、「閉塞物」は、同意語として用いることが可能である。閉塞物除去デバイスが記述されるが、本デバイスは、凝血塊、血栓、塞栓、異物、または他の物体を捕捉するために用いることもできる。本デバイスの係合部材は、凝血塊、血栓、塞栓、異物、閉塞物、または他の物体と係合することができる。
【0037】
図1および2は、本発明の閉塞物除去デバイスと共に用いられる係合部材100を示している。1つ以上の係合部材は、血管系内において蓄積し得る血栓と係合するために、閉塞物除去デバイスの一部として用いられる。係合部材の全体形状は、これに限られないが、丸形、卵形、楕円形、砂時計形、球形、バスケット形、ステント形、カウンター形、四角形、角柱形、籠形を含み得る。各係合部材100は、多数のセル(小部屋)または開口102を規定する多数の支柱101と、一対の対向する孔103、104と、を有している。形式的目的のため、孔103を先端側孔といい、孔104を基端側孔という。
【0038】
各係合部材は、異なる支柱、セル、セルサイズ、材料、および/または形状で、ユニークに構成されていてもよい。支柱のデザインは、直線、波、正弦曲線、またはジグザグパターンを有することができ、または、非対称なデザイン(すなわち、係合部材の一方の側の支柱が、同じ係合部材の他方の側の鏡像にはなっていないデザイン)を有することができる。非対称な支柱デザインは、係合部材の重心を、係合部材の幾何学的中心からシフトさせることにより、血管を介して進行する部材の回転成分を促進することを支援することができる。この回転の容易さは、係合部材、すなわち、閉塞物除去デバイスが、特に、凝血塊と係合した後、デバイスが血管系を介して引き戻されている際に、生体構造を通過して容易に移動することを、容易とする。また、この回転の容易さは、血管壁の特定のセクションに対するダメージを制限することによって、大きな接触摩擦による血管壁へのダメージ量を制限することができる。係合部材は、係合部材の各端部上において、同様またはユニークなデザインを有していてもよい。これは、支柱および/またはセルの形状を変更、および/または、各端部のセル密度を変更することによりなされ、したがって、例えば、一方の端部においてセルサイズを大きくし、他方の端部においてセルサイズを小さくすることによりなされる。この変更は、異なった特性を可能とし、凝血塊と係合する能力の強化、または、血管を介して配置された係合デバイスおよび閉塞物除去デバイスを追跡する能力の強化を可能とする。
【0039】
図2は、異なる厚さを有する複数の支柱101を有する係合部材100を示している。より具体的には、複数の端側の支柱101aは、基端側孔104を規定する材料から枝分かれしており、1つ以上のこれら支柱101aが分岐し、支柱101bを形成している。支柱101bは、支柱101bから突出する機構105と共に示されている。機構105は、支柱101の他の連続面内における任意の遮断部であってもよい。非限定的な例として、釣り針の返し、隆起、突起、スパイク、枝、塊等を挙げることができる。そして、支柱101bは、隣接する支柱101bと合流し、より厚い支柱101cを形成するよう示されており、より厚い支柱101cは、その後、再度、機構105を有するように示されている、追加的な支柱101dを形成するよう分岐する。これら支柱101dは、その後、再度、互いに合流し、より厚い支柱101eを形成し、より厚い支柱101eは、先端側孔103を規定するよう接続される。したがって、この特定の実施形態において、複数の支柱が互いに接続され、基端側孔104から先端側孔103へ渡る支柱のウェブを形成することが見て取れる。
【0040】
別の支柱構成は、単一の支柱パターンを利用し得る。例として、係合部材の基端部と先端部との間を走る、または、係合部材の基端部から先端部に渡る長さの一部分の間を走る、連続的な、螺旋状の支柱構成が挙げられる。
【0041】
各係合部材は、搬送デバイス内に収納されたときの潰れ構成を有し、さらに、収納されていないときには、
図1および2に示されているような膨張構成を取る。各係合部材は、係合部材の膨張を制約する外力が付与されているか(搬送デバイス内に収納されているケースのような場合であろう)、制約力が存在しないか(収納されていないケースのような場合であろう)に基づいて、自己潰れおよび自己膨張することが可能である。
【0042】
係合部材は、ニチノールまたは同様の材料から形成されてもよく、また、外形形状を達成するためにレーザー切断されてもよい。他の材料および他の切断および/または加工プロセスも、本発明の範囲内であろう。
【0043】
係合部材の先端部および基端部のそれぞれ上の先端側孔および基端側孔103および104は、各係合部材がその上に配置される一般的なロッドの配置を容易にすることができ、また、閉塞物除去デバイスの複数のコンポーネントと係合部材とを接続するための分離接続片とフィットしていてもよい。
【0044】
図3は、本発明の1つの実施形態に係る閉塞物除去デバイス200を示している。閉塞物除去デバイスは、デバイスの一方の端部にある基端側コア構造201と、基端側コア構造201に接続された先端側緩衝構造202と、先端側緩衝構造202に取り付けられた1つ以上の係合部材203と、を含んでいる。1つの実施例において、デバイスは、コア構造201端部から押される、および/または、引っ張られる。押圧具は、コア構造の下方に位置しているか、コア構造自体が押圧具として機能していてもよい。
【0045】
コア構造201は、これに限定されないが、ニチノール、ステンレス鋼、コバルトクロム、または、PTFE、Pebax、TPE、Engage、ポリエチレン、または他の同様の材料のような高分子材料を含む様々な材料から形成されてもよい。コア構造構成は、これに限定されないが、コイル構造、編み構造、またはコイル構造/編み構造の組み合わせ含み得る。
【0046】
緩衝構造202は、これに限定されないが、プラチナ、タンタル、パラジウム、または他の同様の材料を含むX線不透過性材料から形成されてもよい。X線透過性材料を用いてもよいが、X線不透過性材料は、デバイス挿入処置の際、デバイスの画像化をより容易とすることができるので、好ましい。X線不透過材料から形成される緩衝構造に取り付けられる係合部材は、凝血塊除去処置の間のデバイスの画像化を補助する。係合部材は、いくつかの方法で、緩衝構造に取り付けられてもよい。例えば、緩衝構造は、ねじ切りされた外形を有していてもよく、係合部材の孔が、対応する受け構造を有しており、ねじ切りされた緩衝構造の外形と回転螺合される。代替的に、緩衝構造は、ねじ切りされていない構成を有していてもよく、係合部材は、溶接のような熱処理処置によって、緩衝構造に固定されてもよい。他の機械的手段または他の熱処理処置もまた、係合部材を緩衝構造に固定するために用いることが可能である。
【0047】
図4は、本発明の別の実施形態に係る閉塞物除去デバイス300を示している。閉塞物除去デバイス300は、1つ以上の係合部材303に接続された基端側構造301を備えている。最も先端側の係合部材(明確とするため、306が付されている。最も先端側の係合部材306は、他の係合部材303と構造的に同じであっても、異なっていてもよい)に取り付付けられた先端側構造302が存在していてもよい。1つ以上の係合部材303は、1つ以上の係合部材303が、基端側構造301から独立して回転可能となるように、基端側構造に接続されている。1つ以上の係合部材303は、以下に詳述するように、互いに独立して回転可能なように、互いに連結されていてもよい。好ましくは、閉塞物除去デバイス300は、基端側構造301の一方の端部から押される/引っ張られ、そのため、基端側部分構造および先端側構造との用語は、押圧/引っ張り端に対して用いられる。5つの係合部材が図中において示されているが、より少ない、または、より多くの係合部材が用いられてもよい。本明細書で記述される実施形態の全てと同様に、係合部材303は、上述のように、1つ以上の支柱101によって構築される。
【0048】
図5は、
図4の閉塞物除去デバイス300の実施形態の分解図である。基端側構造301は、コイル309の内側に位置するコアワイヤー307を含んでいてもよく、コアワイヤー307は、チューブ310の内側に位置していてもよい。コアワイヤー307は、張り出し端308を備えている。コアワイヤー307は、ニチノールまたは同様の材料で形成されていてもよいが、他の材料も本発明の範囲内である。コイル309は、タンタルまたは他のX線不透過性材料で形成されてもよいが、X線透過性材料を使用してもよい。チューブ310は、PETまたは他の高分子材料で形成されてもよいが、非高分子材料を同様に使用してもよい。また、基端側構造は、好ましくはコイル309よりも隙間が多く、同様の材料から形成されている別のコイル311を備えている。コイル311は、コアワイヤー307とその外側のコア309との間に位置しており、コイル309内の中央コアワイヤー307を補助する。基端側構造301は、基端側係合部材302に接続されており、1つを超える係合部材が、閉塞物除去デバイスで用いられている場合には、別の係合部材に順順に接続され得る。
【0049】
先端側構造302は、コイル316の内側に位置するモノフィラメント315を備えている。代替的に、複数のモノフィラメントが、互いに接合され、モノフィランメント構造315を形成していてもよい。モノフィラメント315は、Engageのような伸縮防止ポリマーで形成され得るが、他の材料が用いられてもよい。コイル316は、タンタルまたは他のX線不透過性材料から形成されてもよいが、X線透過性材料を使用してもよい。粘着剤(好ましくは、UV硬化粘着剤)317が、モノフィラメント315をコイル316内において一体的に保持するために、コイル構造316の両端において用いられる。1つの実施例において、先端側構造は、ガイドワイヤーとして機能することができる。
【0050】
先端側構造302は、最も先端側の係合部材306に接続されていてもよい。この先端側構造は、配置の際に、デバイスの画像化を補助するために、X線不透過性であってもよい。
図5の実施形態において、先端側構造302のコイルが、最も先端側の係合部材306の孔103内においてフィットし、保持片312が、他方の端部上でフィットし、先端側部分302を係合部材306と一体的に保持している。保持片は、孔103の構造の内部において溶接されている。係合部材306は、その場合でも回転可能である。保持片は、チューブ状構造であってもよく、ニチノールから形成されてもよいが、同様の材料を用いることも可能である。画像化を補助するため、保持片は、X線不透過性材料で満たされたニチノールから形成されてもよい。代替的に、処置中におけるデバイスの画像化を補助するために、保持片がX線不透過性材料でコーティングされていてもよい。代替的に、保持片が、X線不透過性材料で形成されていてもよい。
【0051】
係合部材同士を接続するために用いられている接続メカニズムが、
図5および6に示されている。
図6は、閉塞物除去デバイスの基端側構造301に接続されている係合部材303の接続構造を示している。
【0052】
接続メカニズムは、2つの張り出し端314および保持片312を有するリンク313を備えている。リンク313は、ステンレス鋼から形成されてもよいが、同様の材料を使用してもよい。張り出し端は、互いに接続されている係合部材の対向する孔103、104内へ延伸しており、保持片312は、張り出し端314の隣でフィットしており、リンク313を、係合部材の孔内で保持する。この接続構造は、1つを超える係合部材が閉塞物除去デバイス内において用いられる場合に、係合部材を互いに接続するために用いられる。保持片312が穴に溶接され、さらに、リンクが係合部材の孔内において保持されるが、リンクは回転可能である。複数の係合部材は、独立して回転可能であってもよい。
【0053】
また、
図5および6に示されているように、係合部材303は、基端側構造301に接続されている。コアワイヤーの張り出し端308は、係合部材303の孔104を挿通するよう位置しており、保持片312は、コアワイヤー307の外側に位置しており、基端側構造301を係合部材303に固定している。また、保持片312は、孔104内において溶接されている。より小さな、隙間が大きいコイル311がコイル309の先端内に位置しており、コイル309内においてコアワイヤー307の中心合わせを支援するよう機能する。
【0054】
1つの実施例において、接続片313は、孔構造内に配置されており、保持片312が、接続片の外側で孔内において溶接されている。続いて、張り出し端313は、接続片の端部上において、レーザー溶接されてもよい。他の実施例において、保持片312は、孔内で溶接され、接続片がその内部に配置され、張り出し端がレーザー溶接される。レーザー溶接が述べられたが、他の同様な熱処理技術が、同様に用いられてもよい。また、この処置は、張り出し端308を形成し、最も基端側の係合部材303をデバイスの基端側部分301に接続するために、コアワイヤー307の端部において用いられ得る。1つの実施例において、この処置は、デバイスの先端側部分を、最も先端側の係合部材306に接続する際に、コイル316の端部において用いられ得る。
【0055】
各係合部材は、回転コンポーネントを有しており、この回転能力は、血栓の捕捉と、血管での操縦を支援することができる。また、これにより、支柱と血管壁との間の大きな接触摩擦による任意の過度の力を制限することを支援することにより、血管を介してデバイスが押されている、および/または、引っ張られている際に発生し得る、内皮削剥の量の制限を支援することができる。また、係合部材は、高い接触摩擦によって削剥を促進する係合部材上の任意の鋭利なエッジが除去している、より丸み帯びており、より平滑な外形(図示のようなもの)を有するよう構成されていてもよい。さらに、係合部材間の空間によって、例えば、より長い1つの片の凝血塊係合ユニットを利用する他のデザインよりも、より少ない材料が、血管に物理的接触することになる。また、より少ない材料が血管と接触することは、凝血塊除去処置の間の内皮削剥を制限するよう機能する。
【0056】
1つの実施例において、閉塞物除去デバイスの基端側部分301は、閉塞物除去デバイスから、係合部材を取り外すための手段を備えていてもよい。取り外し手段は、係合部材303(最も基端側の係合部材)と接触する基端側部分301の一部分上に備えられていてもよく、リンケージの切断および/または分解を誘導するための、電解、機械、熱、または本分野において既知の他の手段を備えていてもよい。
【0057】
1つ以上の係合部材は、能動的に凝血塊と係合する一方、他の部材は、凝血塊のサイズおよびデバイス上において用いられている係合部材の数に応じて、血栓の先端のさらに先、または、基端の手前に、位置し得る。凝血塊のサイズと比較した閉塞物除去デバイス内において用いられる係合部材の数と同様に、各係合部材の個々の形状または外形の潜在的なばらつきによって、1つ以上の係合部材は、凝血塊よりも先端側に位置しており、閉塞物除去デバイスを用いて凝血塊を捕捉する際に動き得る血栓を捕まえるためのフィルターとして機能する高密度セル構成を有していてもよい。
【0058】
フィルターとして機能する1つ以上の係合部材は、メッシュ構成を有していてもよく、このメッシュ構成は、血栓を動かすことなく、緩くなった血栓を捕らえる機会を最大化するため、係合部材全体に渡っている、または、係合部材の一方の特定の側に位置していてもよい。1つの実施形態において、フィルターとして機能する1つ以上の係合部材は、凝血塊と、より基端側の係合部材との交差部分から動いた血栓を捕らえるために、該部材のより先端側の部分上の高密度セル構成を有している。この配置は、より基端側の係合部材が凝血塊と交差し、凝血塊の複数の部分が、浸されて柔らかくなる場合に有用となり得る。フィルター構成を有する、より先端側の係合部材は、特に、血流内において蓄積する可能性のある、浸されて柔らかくなった血栓を捕らえることができる。フィルターとして機能する係合部材は、ニチノール、ステンレス鋼、または同様の材料から形成されてもよい。
【0059】
代替的に、これらは、レーザー切断ポリマーで形成されてもよい。代替的に、フィルターとして機能するこれら係合部材は、逆編み構成、他の籠型格子、または塞栓症保護デバイスの分野において既知の他の構成を有していてもよい。また、1つ以上の係合部材は、係合部材と血栓との間の粘着を促進することにより、凝血塊取り出し処置を補助するために、血栓形成用材料から構成されていてもよく、または、血栓形成用材料によってコーティングされていてもよい。代替的に、係合部材と接触する凝血塊の一部分の分解を支援するために、非血栓形成用材用を用いることもでき、または、非血栓形成用材料コーティングを用いてもよい。これは、例えば、大きな凝血塊を取り込む取り出し処置において有用であり得る。
【0060】
図7および8は、凝血塊除去処置の際に動き得る血栓を捕らえるためのフィルターとして機能する1つ以上の係合部材を利用する閉塞物除去デバイスの別の実施形態を示している。
図7は、基端側部分401と、先端側部分402と、を有する閉塞物除去デバイスを示している。基端側部分は、複数の係合部材303を備えている。先端側部分は、係合部材407および408を備えている。先端側係合部材407および408は、全体として上述された凝血塊除去処置において削ぎ取りをし得る、動かされた血栓を捕捉するためのフィルターとして機能する高密度セル構成を有している。高密度セル構成は、
図8に示されているように、係合部材を形成するために用いられた内側および外側構造によるものである。
【0061】
図8に示されているように、2つの先端側係合部材407および408は、それぞれ、内側構造409と、外側構造410とから構成されており、内側構造は、外側構造内に入れ子となっている。先端側係合部材407および408を含む内側構造409および外側構造410は、レーザー切断ニチノールまたは同様の材料から形成されていてもよい。基端側部分401および先端側部分402は、係合部材のそれぞれの間のリンケージとして、
図4-5において示された実施形態と同じように構成されており、このフィルター係合部材構造は、提供された閉塞物除去デバイスの実施形態の任意のものにおいて存在する係合部材の任意のものに適用することができる。
【0062】
内側構造が外側構造内において入れ子にされたときに、高密度セル外形を生成するために、セルパターンは、内側および外側構造においてわずかにオフセットしていてもよい。
図9に示されているように、係合部材408の先端側部分510は、凝血塊除去処置の間に抜け出る可能性のある、動いた血栓を捕らえるために、基端側部分511よりも高密度のセル外形を有している。この配置は、より基端側の係合部材が凝血塊と交差し、凝血塊の複数の部分が浸されて柔らかくなる際に有用となり得る。フィルター構成を有する、より先端側の係合部材は、血流中において蓄積し得る、浸されて柔らかくなった血栓を捕らえることができる。
図7および8は、フィルターとして機能する内側および外側構成を有する2つの係合部材を示しているが、より多くの、または、より少ない係合部材が、このフィルター構造を有していてもよい。
【0063】
上述の実施形態において述べたデバイスの搬送のための1つの実施形態において、閉塞物除去デバイスは、搬送デバイス内に収納され、搬送デバイスは、カテーテルを介して搬送される。1つの実施例において、搬送デバイスは、マイクロカテーテルであってもよい。搬送デバイスは、閉塞物の側に搬送され、その後、引き戻される。搬送デバイスの引き戻しは、閉塞物除去デバイスを搬送デバイスから取り出すことになり、その結果、搬送デバイスの引き戻しの際に、係合部材が膨張する。
【0064】
代替的に、閉塞物除去デバイスは、搬送デバイスの外側に押し出され、これにより、次に、係合部材が膨張することを可能とする。閉塞物除去デバイス上の係合部材の数、凝血塊のサイズ、および閉塞物に対する搬送の位置に応じて、いくつかの部材が、閉塞物の先端のさらに先、および/または、基端の手前に位置していてもよい。閉塞物除去デバイスは、コアワイヤーを介して操作可能なものであってもよい。閉塞物除去デバイスが閉塞物と係合すると、搬送デバイスが、カテーテルの先端をちょうど過ぎた地点へ引っ張られ、その後、カテーテルが引き抜かれる。代替的に、閉塞物除去デバイスは、搬送デバイスをカテーテル内に引き込み、その後、カテーテルを引き抜くこと、または、カテーテルを介して搬送デバイスおよび/または閉塞物除去デバイスを引き抜くことにより、血管系から引き抜かれてもよい。代替的に、カテーテルは、搬送デバイスおよび閉塞物除去デバイスを除去するために、全体として引き抜かれてもよい。他の実施例において、搬送デバイスは、皮下チューブであってもよい。
【0065】
代替的な実施形態において、デバイスは、搬送デバイス内に収納されることなく、カテーテルを介して、直接搬送されてもよい。
【0066】
図10-12は、閉塞物除去デバイスを配置するための特定の方法の1つの実施例を示している。この実施例において、搬送デバイス602は、血管系600を通過し、凝血塊601の側に搬送される。閉塞物除去デバイス603は、搬送デバイスを介して、凝血塊の側へ押し出される。この特定の実施例は、凝血塊の途中に配置された閉塞物除去デバイスを示しているが、デバイスは、凝血塊内に配置されてもよいし、凝血塊の位置に対して基端側または先端側の位置に配置されてもよい。凝血塊のサイズおよび閉塞物除去デバイスにおいて用いられる係合部材の数に応じて、いくつかの係合部材が、凝血塊の先端のさらに先、または、基端の手前に、位置していてもよい。その後、搬送デバイス602が引き戻され、これにより、閉塞物除去デバイスの係合部材が、膨張し、凝血塊の複数の部分と交差することが可能となる。閉塞物除去デバイス603は、操作者によって、デバイスの基端側部分604から操作され得る。閉塞物除去デバイスが凝血塊を確保すると、上述のように、デバイスが引き戻される。また、凝血塊/閉塞物除去処置を補助するために、吸引が用いられてもよい。
図10-12は、説明のための特定の実施例を示している。搬送デバイスから閉塞物除去デバイスを押し出すような、他の搬送方法も本発明の範囲内にあることは予期されることである。
【0067】
係合部材は、全て同じサイズであってもよいし、全て異なるサイズであってもよいし、いくつかの係合部材が、互いに異なるサイズであってもよい。1つの実施例において、球形に成形された係合部材の直径の範囲は、1-12ミリメートルの間であってもよい。別の実施例において、3-6ミリメートルの直径の範囲が用いられる。
【0068】
係合部材は、レーザー切断によりセル102および支柱101の形状に基づく特定のパターンに成形された皮下チューブから形成される。この皮下チューブ700は、
図13に示されている。皮下チューブは、熱処理され、1つの実施例では、皮下チューブは、530-550度で、5分間熱硬化され得る。続いて、皮下チューブは、水内で急冷され、冷やされる。その後、膨張プランジャー702が挿入され、皮下チューブの一部分を膨張するために用いられる(
図14参照)。その後、膨張された皮下チューブは、この膨張形状に熱硬化される。1つの実施例において、皮下チューブは、530-550度で、3分間熱硬化される。膨張された皮下チューブは、その後、水内において急冷される。係合部材のサイズに基づいて、膨張プランジャーおよびその後の熱処理工程が、係合部材の複数の部分に実行され、各セクションが膨張後に熱硬化される。その後、皮下チューブの壁部の膨張を支援するため、膨張ピン704が、皮下チューブ内に挿入される(
図15参照)。膨張された皮下チューブ700は、固定具内に配置される。固定具は、2つのプレート706、708を備えている。ねじ切りされたロッドが2つのプレートを接続しており、2つのプレートは、外側に取り付けられたナットを有している。皮下チューブをさらに膨張させるために、ナットが締め付けられ、2つのプレートに同時に圧力がかけられる。適切な形状がセットされると、膨張された皮下チューブが熱処理され得(1つの実施例において、530-550度で、5分間熱処理される)、さらに、急冷されて、係合部材の形状をセットする。
【0069】
その後、係合部材は、取り出され、エッチング処理され、さらに、電解研磨され、上述の部材の最終形状がセットされる。その後、閉塞物除去デバイスが、1つ以上の取り込み部材と共に組み立てられる。係合部材は、膨張形状となるように、熱硬化および処理されているが、係合部材は、材料特性および支柱厚みのような要因によって、高い形状記憶性能を維持している。よって、係合部材は、押さえつけられていない(すなわち、搬送デバイス内に収納されていない)ときに、膨張形状となり、さらに、押さえつけられた(すなわち、搬送デバイス内に収納されている)ときに、皮下チューブの初期形状と同様の収縮形状となる。
【0070】
閉塞物除去デバイスのいくつかの上述の実施形態において、係合部材は、搬送デバイス(例えば、マイクロカテーテル)から解放されたときに自己膨張可能であり、さらに、搬送デバイス内に収納されたときに自己潰れ可能である。いくつかの実施形態および状況において、1つ以上の係合部材を膨張および/または潰れ構成でロックするためのロック機構を有することは有用となり得るであろう。神経系血管は、小さく、複雑に曲がりくねっている。閉塞物除去デバイスおよび結合された係合部材が神経血管内の凝血塊を除去するために用いられる際、血管の幾何学的配置は、係合部材が、完全に開くことを阻み得る、または、患者の血管系の外側への排出のために血管系を介してデバイスが引き戻される際、凝血塊が保持された後に、係合部材が、予定より早く潰れてしまうことを引き起こし得る。係合部材を膨張形状でロックするロック機能は、これらの問題に対処するであろう。
【0071】
以下詳述される図の説明の目的のため、明示されていない限り、図面の左側にある任意のものは、先端側(または、血管系内への更なる配置の方向)とし、右側にある任意のものは、基端側(または、血管に対するアクセスが得られる方向)であるものとする。
【0072】
図17は、上述の実施形態と全体において同様であるが、膨張位置で係合部材802a-802dを操作または係合部材802a-802dの形状を維持するための機構をさらに備えている。デバイス800は、互いに接続され、直線形状を形成する多数の係合部材802a-802d(例えば、4つの部材)を備えている。最も基端側の係合部材802dは、長尺の押圧具806の先端部に接続されている。
【0073】
操作機構は、先端側係合部材802dの先端部に接続され、係合部材802a-802dのそれぞれを挿通して延伸し、押圧具806内の経路を挿通して延伸し、押圧具806の基端部またはその近傍において終端する形状制御部材808によって制御される。この態様において、医者は、形状制御部材808を引っ張って、押圧具806の先端部に当たるように、係合部材802a-802dを引く。これにより、係合部材の膨張構成を保つことができる。
【0074】
好ましくは、押圧具は、カテーテルまたはシース内を通過するのに適した直径を有する長尺体であり、形状制御部808を内部に収納する管腔または経路をさらに備えている。
図1に最もよく示されている上述の実施形態と同様に、係合部材802a-802dのそれぞれは、デバイス800の長軸に沿って互いに一列となり、さらに、押圧具806の経路と一列になる基端側および先端側開口103および104を備えている。さらに、各係合部材802a-802dも、各係合部材の先端側または「左側」端部にのみ(代替的に、各係合部材の基端側端部にのみ)接続されているが、係合部材802a-802dの他方の側には接続されていないチューブ状要素804a-804d(例えば、金属製皮下チューブ)を備えている。チューブ状要素804a-804dは、互いに一列に配置されており、そのため、それら自身の内部経路が、係合部材802a-804dのそれぞれの基端側および先端側開口の間を接続する。この態様において、経路は、押圧具、係合部材802a-802d、およびチューブ状要素804a-804dを通過するよう生成されている。接着、はんだ付け、または機械的ネジを含む様々な技術を、チューブ状要素804a-804dを係合部材802a-802dに接続するために用いることができる。
【0075】
形状制御部808は、押圧具の管腔、係合部材802a-802d、およびチューブ状要素804a-804dを挿通することを含む、この経路を通過する。形状制御部808の先端部は、最も先端側の係合部材802aの先端部にある先端側キャップ810に取り付けられている。また、接着、溶接、または機械的ネジのコンセプトが、この取り付けを行うために使用され得、好ましくは、キャップ810は、先端側係合部材802dの先端側開口の直径よりも大きな直径を有している。代替的に、形状制御部808が、先端側の係合部材802aの先端部に、機械的に直接取り付けられてもよい。
【0076】
形状制御部808は、制御部が押圧具の管腔内に配置されているので、押圧具806とは別々に動くことが可能であり、そのため、ユーザーは、独立かつ別々に、押圧具806に対して、制御部808を長さ方向に動かすことができる。押圧具806は、取り付けられた/連結された係合部材802a-802dを含む閉塞物除去デバイス全体の位置を制御するために用いられる一方、制御部808は、係合部材802a-802dの形状を制御するために用いられる。好ましくは、形状制御部808は、ワイヤー、可撓性ロッド、または、デバイスの先端部と、少なくともデバイスの基端部との間に延伸する長さを有する同様の長尺状の要素である。
【0077】
形状制御部808は、先端側キャップ810に接続されているので、制御部808を押すことは、キャップ810(または、そのようなキャップが用いられてない場合、先端側の係合部材802aの先端部)に対する先端側への力を与えることになる。チューブ状要素804a-804dは、係合部材の左または先端側にのみ固定されているので、チューブ状要素804a-804dは、係合部材802a-804dが楕円形または長尺になるにつれて、
図18に示されているように、係合部材の基端部との接触を解除し、先端側に動く。逆に、制御部808を引っ張るまたは引き戻すと、キャップ810(または、そのようなキャップが用いられてない場合、先端側の係合部材802a)に対する反対側の基端側への力が生じ、チューブ状要素804a-804dの自由端または基端部が係合部材の内部の基端側の面に接触するまで、係合部材802a-802dが球形となるよう放射状に膨張する。これにより、係合部材802a-802dによる如何なる更なる膨張、または、形状制御部808によるさらなる基端側への動きを防止することができる。この態様において、取り付けられたチューブ状要素804a-804dは、係合部材802a-802dが過度に膨張することに抵抗するよう機能する。1つの実施形態において、チューブ状要素804a-804dは、係合部材802a-802dの一方の端部(例えば、係合部材の左側または先端側端部)にのみ取り付けられ、さらに、特定の取り付けられた端部は、特定の方向での動きに対するいくつかの抵抗を提供する高密度で重み付きの材料で構成されていてもよい。例えば、チューブ状要素804a-804dは、係合部材802a-802dの先端部に取り付けられ、各係合部材の先端部は、重み付けられ、引き込み部材を潰れさせるような、血管系を介した動きに基づく自然力に自然に抵抗する。したがって、ユーザーが係合部材を膨張または潰れさせるために形状制御部を用いない場合であっても、チューブ状要素の存在によって、係合部材が、形状の変化に対して自然と抵抗するようになっている。
【0078】
患者の内部において用いられている間、形状制御部808は、係合部材802a-802dの潰れ、特に、湾曲または複雑に曲がりくねった領域を通過しての潰れを防止するために用いられ得る。しかしながら、ユーザーも、(例えば、シースまたはカテーテル内への)デバイス800の引き抜き中に、係合部材802a-802dを潰れさせる能力を有していることが、望ましい。
【0079】
1つの実施形態において、制御部808は、ユーザーが、押圧具806に対する制御部の位置をロックし、また、係合部材の形状もロックする、コレットまたは他のロック機能を、その基端部において備えている。他の実施形態は、ロック機能を省略してもよく、代わりに、特定の形状に変形させ、さらに、維持するために、係合部材802a-802dを操作する制御部808に対してユーザーが力を付与することに依存していてもよい。
【0080】
図19は、上述のデバイス800と全体において同様のデバイス801の代替的な実施形態を示している。しかしながら、チューブ状要素804a-804dは、
図18に示されているような係合部材802a-802dの先端側(又は左側)の端部の代わりに、係合部材802a-802dの基端側(または右側)の端部に代替的に固定されている。この実施形態において、制御部808を押すことは、同様に、係合部材802a-802dを潰れさせ、一方、制御部808を引っ張ることは、同様に、係合部材を膨張させる。
【0081】
1つの実施例において、押圧チューブ806は、約0.004インチの内径と、約0.015インチの外径を有するテーパー状のニチノール皮下チューブであり、形状制御部808は、約0.003インチの外径のワイヤーである。ワイヤーは、金属、繊維、および、ニチノールのようなポリマー、ステンレス鋼、ベクトラン、ケプラー、PET、ポリプロピレンを含む様々な材料から形成され得る。これらサイズは、閉塞物除去デバイスのサイズに基づいて増加または減少されてもよく、これらサイズは、例示のためだけに提供されたものである。また、形状操作部808は、ワイヤー、皮下チューブまたは他の要素の形態を取り得る。また、形状制御部808の基端部は、ユーザーによる、より容易な操作を可能とするためにハンドルまたは同様のユーザーインターフェースを備えていてもよい。
【0082】
1つの実施形態において、チューブ状要素804a-804dは、画像化を補助するために、X線不透過性である。プラチナ、タンタル、パラジウム、または金のようなX線不透過性材料を用いることができる。画像化は、医者が、チューブ状要素の互いの相対的な位置に基づいて、係合部材が潰れているか、膨張しているかを判断することができるため、有用である。
図18-19に示されているように、係合部材が潰れているときには、チューブ状要素804a-804dは、互いに離れており、隙間が空いた構成を取る。チューブ状要素がX線不透過性である場合に画像化技術を利用することにより、医者は、
図20に示されている隙間の空いたチューブ状要素構成を視認することができ、係合部材が潰されていることを確認することができる。対照的に、引き込み部材が膨張されているときには(
図17に示されているような状態では)、チューブ状要素804a-804dは、
図21に示されているように、連続的な直線となるように、比較的互いに近接しており、係合部材が膨張されていることを確認することができる。このようにして、医者は、係合部材が潰されているか膨張されているかを確認するために、画像化を用いることができる。
【0083】
他の実施形態は、チューブ状要素804a-804dに代わって、各係合部材802a-802dの全長に渡るコイル要素を利用してもよい。コイル要素の利点は、係合部材の両端に取り付け可能であり、伸縮するコイルの能力は、係合部材が潰れる、または、膨張することを可能とする。代替的に、コイル要素は、
図17-21のチューブ状要素804a-804dのように用いられてもよく、コイルの一端が係合部材802a-802dに固定され、他方の端部が自由端となっている。
【0084】
上述のように、コイルまたはチューブ状要素の存在は、それが係合部材の潰れに自然と抵抗するため、有益である。したがって、コイルまたは皮下チューブは、係合部材の潰れに抵抗することを支援するテンション部材と見なすことができる。しかしながら、1つの実施形態は、コイルまたはチューブ状要素を省略してもよく、代わりに、係合要素の形状を制御するための単一の機構として、制御部808を利用することができる。この実施形態は、ユーザーが、係合部材の形状を制御することを可能とするが、係合部材が、形状制御部808によって、過度に放射状に膨張することを防止するための「係止」機構が存在しない。
【0085】
図22a、22b、および23は、上述の実施形態800および801と全体として同様のデバイス803を示している。しかしながら、形状制御部の位置を維持するユーザー、または、形状制御部808をロック(したがって、係合部材802a-802dを、特定の形状でロック)するための別のコレット機構に依存するというよりも、制御部808は、係合部材の一部分と噛合またはラッチし、係合部材を特定の形状でロックすることができるロック要素812を備えている。
【0086】
図17-21の実施形態と同様に、このシステムは、基端側の押圧具806と、押圧具806を挿通し、一列に配置された係合部材802a-802dを渡って、押圧具の先端から出る形状制御部808と、を利用する。制御部808は、星型の保持部材812a-812dとして構成され、係合部材802a-802d内において制御部にそれぞれ固定されている(すなわち、各係合部材は、その内部に保持具を有している)、複数(例えば、4つ)の固定具を備えている。形状制御部808は、制御部808を押すことにより、係合部材が潰されるようになり、一方、制御部808を引っ張ることにより、係合部材が膨張するようになるよう、先端側キャップ要素の先端側に接続され、または、最も先端側の係合部材802aに接続される。保持部材812a-812dが制御部に固定されているので、形状制御部808の変位もまた、保持具を変位させることになる。この態様において、保持部材は、制御部808が基端側にどのくらい引き抜かれるかを限定し、それにより、係合部材802a-802dの形状および放射状膨張をも限定するバックストップ機構を提供する。
【0087】
図22bに詳細に示されているように、星型保持部材812a-812dは、経路815を含んでおり、形状制御部808が経路815を挿通して位置している。溶接または接着のような機械的手段を、保持具を制御部に接続するために用いることができ、または、代替的に、保持部材は、形状制御部808上に一体的に形成されていてもよい。保持部材は、複数の湾曲した、放射状の凹部、くぼみ、またはスロット816を備えており、これらが、保持部材の全体の星型形状に寄与している。さらに、保持部材812は、テーパー状の基端側面と、平坦な先端側面と、を備えている。保持部材812a-812dは、形状制御部808上に位置しているため、制御部の引き戻しまたは引っ張りは、保持部材812を変位させることになり、これらが、それぞれ用の係合部材812の先端側支柱と係合することを可能とする。保持部の凹部816は、係合部材の支柱と係合または支柱を部分的に捕えるようなサイズにされている。したがって、制御部808を引っ張ることは、保持部材812a-812dを、係合部材の支柱に接触させることになり、支柱が保持部材812のスロット/凹部816内で保持されることになる。保持部材816は、ニチノール、ステンレス鋼、ポリマー、または、タンタル、プラチナ、パラジウム、または金のようなX線不透過性材料を含む様々な材料から形成され得る。
【0088】
凹部816は、支柱を直接収納するために、支柱よりも幅が広い、または、支柱のサイズよりもわずかに大きいサイズとされていてもよい。代替的に、スロット/凹部816は、係合部材812の内側と全体として同様であるが、逆方向に湾曲しているテーパー状、円錐状の基端側面を含んでいてもよく、これにより、2つの面が互いに噛み合う。
【0089】
デバイス803は、支柱ロック機能が永続的または一時的となるように、構成され得る。例えば、永続的なロックのデザインでは、支柱は、保持部材によって永続的にロックされ、そのため、制御部808もまた、ロックされることになる。非永続的/一時的なロックのデザインにおいて、ユーザーは、十分な力を付与し(例えば、制御部808を、ロック力を超える十分な力で押すことにより)、保持部812の凹部816から支柱を開放し、システムのロックを解除する。
【0090】
形状制御部808が基端側に引かれると、保持部材812a-812dが、係合部材802a-802dの基端側の支柱(または、図面の視点から見て右側の支柱)と係合し、
図23に示されているように、係合部材を、膨張構成でロックする。また、この機能は、係合部材を、潰れ状態でロックするためにも用いられ得、制御部808を押すことにより、保持部材が、先端側(図面の視点から見て左側)の支柱と係合し、係合部材を潰す。
図1に最も良く示されている基端側および先端側の支柱構成は、孔103/104から発する5つの支柱領域101を有する球根花弁形状で配置されている。また、保持部材812は、5つの凹領域816を含んでおり、各凹部は、1つの支柱領域に対応している。他の実施形態は、異なる支柱パターンと、異なる支柱パターンを収納するための異なる数の凹部816を利用してもよい。
【0091】
係合部材の上述の実施形態では、係合部材が共通のコア部材(例えば、
図3)に沿って位置している態様を含み、さらに、別々のリンク要素が、係合部材の対を互いに連結している態様を含む(例えば、
図5-6)ことに留意されたい。いずれの実施形態も、形状制御部808に関連して上述されたロックまたは形状変更機能と共に用いられ得る。共通のコア部材(例えば、
図3に示されているようなもの)が全ての係合部材に渡って用いられる場合、制御部808が、図示のより大きなチューブ状構造の所定の位置で用いられていてもよいし、制御部が、様々な係合部材が配置されている図示の共通のチューブ状のコア構造の形態を取ることもできる。係合部材の複数の対を互いに連結するために別々のリンク要素313が用いられる場合(例えば、
図5に示されているようなもの)、各リンク要素313は、形状制御部808を収納する管腔を利用し得る。
【0092】
他の実施形態は、形状制御部の周囲に部分的に位置する保持部材を利用することができ(例えば、保持具812a-812dの上端部または底部のみを用いる)、この場合、保持具は、支柱のいくつかのみと係合する。追加的な実施形態は、保持具を1つだけ、例えば、先端側の係合部材をロックする先端側保持具、または、基端側の係合部材をロックする基端側保持具を利用することができる。複数の保持具は、各係合部材に対するロック力を増補するが、1つの保持具の実施形態は、ロック動作を簡略化することができるとともに、複数の係合部材に対するある程度のロック力を付与することができる。
【0093】
1つの実施形態において、係合部材が、膨張および潰れ状態の双方でロックされることが可能となるように、潰れおよび膨張ロックの双方が可能である。別の実施形態では、潰れロックのみが可能である。別の実施形態では、膨張ロックのみが可能である。ロックの可能性は、各係合要素802a-802d内の保持具812a-812dの位置、各保持具のサイズ、および形状制御部808の全体の変位を含む様々な変数に基づいて制御され得る。1つの実施形態において、係合部材をロックするロック力をさらに増補する目的のために、形状制御部808の基端部のコレットロック機構も、保持具のコンセプトと共に、用いられてもよい。
【0094】
図24aおよび24bは、上述の実施形態において記述されたものと同様であるが、形状制御部808の位置を維持するための異なるロック機構を用いる、形状制御部808を用いた血栓除去デバイスの別の実施形態を示している。特に、1つ以上の拡張部818が、形状制御部808上に備えられており、チューブ状押圧具806内でチャンネル820(例えば、開口、溝、または凹部)と係合またはチャンネル802内に入ることができ、これにより、形状制御部808をその長尺方向の位置でロックすることができる。好ましくは、チャンネル818と対向および隣接する管腔の領域は、チャンネル820内へ拡張部818を付勢または導くことを支援するような形状、例えば、傾斜面または隆起になっている。1つのチャンネル820が示されているが、ロックまたは戻り止め位置が、潰れまたは膨張位置のいずれかで係合部材802を維持するよう配置された2つのチャンネルも可能である。
【0095】
他の実施形態と同様に、形状制御部808は、制御部を引っ張ることが、係合部材802を膨張させ、一方、制御部を押すことが、係合部材802を潰れさせることになるように、最も先端側の係合部材(または、代替的に、先端部キャップ)に接続されている。膨張構成で係合部材をロックするために、ユーザーは、拡張部818がチャンネル820に到達し、チャンネル内へ移動するよう、制御部808を引っ張るまたは押し、これにより、係合部材の位置をロックすることができる。
【0096】
図25aおよび25bは、チャンネルが用いられていない代替的なロックの実施形態を示している。代わりに、拡張部118は、押圧チューブの先端内に圧入可能となるように、多少の可鍛性を有する材料で構成されているが、拡張部の更なる引き出しは不可能となっている。選択的に、拡張部は、押圧具806内への侵入を容易とするが、引き出しを防止するために、先端側に向かって漸減するテーパーを有していてもよい。また、押圧具806の内部管腔も、自身の先端部が、より基端側のセクションよりもわずかに大きくなるように、テーパー上にされていてもよく、これにより、拡張部818が特定の点を超えて基端側へ動くことを防止することができ、そのため、拡張部818の構成を維持することができる。1つの実施形態において、係合部材802がロックされると、この構成が永続的なものとなる。別の実施形態では、ユーザーは、保持構造から拡張部818を取り外し、係合部材の位置のロックを解除するための十分な力を付与することができる。
【0097】
直前で述べた実施形態は、係合部材を膨張構成でロックだけするよう機能しているが、他の実施形態も、または、代替的に、係合部材を潰れ構成でロックするための先端側チューブ状構造を利用することができる。これら実施形態において、先端側チューブ(例えば、
図5の先端側チューブ状構造と同様のもの)は、最も先端側の係合部材の先端部に接続されており、このチューブ状構造は、拡張部を形状制御部808に沿ってロックするための
図24-25の保持機構と同じ機構を利用している。このようにして、係合部材は、膨張または潰れ構成のいずれかでロックされ得る。代替的な実施形態は、係合部材が、潰れ状態でのみロックされるように、この先端側保持構造のみを利用することができる。
【0098】
この実施形態は、係合部材の複数の対がリンク構造を介して連結される実施形態で、リンク構造313(
図5参照)内において用いられ得る。この実施形態では、リンク構造313も、
図24-25の構成を利用し、制御部808に沿った複数の拡張部818が存在する(例えば、4つの係合部材と、4つの拡張部であり、各拡張部は、係合部材をロックするよう機能する)。形状制御部808は、拡張部818がロック構造と噛合し、係合部材の膨張および/または潰れ構成をロックするよう、押される/引っ張られる。複数のロック構造は、係合部材を特定の形状で維持するためのロック力をさらに増補するが、ロック機構の複雑さを増やすことになる。1つのロック機構(押圧具806上に位置するもの、または、先端側若しくは最も遠い係合部材に接続された先端側チューブ状構造上に位置するもの)の利点は、1つのロック構造を複数の係合部材をロックするために使用可能である一方、ユーザーが、十分な力を付与することによって、係合部材のロックを解除することを潜在的に可能とすることにある。一般的に、大部分の状況において、係合部材の形状を選択的にロックまたはロック解除できることは、ユーザーにとって有益であろう。例えば、凝血塊の保持を補助するために、係合部材を膨張形状でロックし、その後、凝血塊/閉塞物除去処置が完了した際に、血管系からの引き抜きのために、該係合部材を潰して、シース内に入れることを可能とするために、係合部材のロックを解除する。
【0099】
別の実施形態において、ロック機構は、操作者が、係合部材の適切な直径を判断し、係合部材を適切な直径でロックするために、血管の直径を用いることができるよう、調整される。このようにして、操作者は、生体組織の変化に基づいて、直径を変更することができる(例えば、デバイスが、中大脳動脈のより小さな直径M2セグメントから、より大きな直径M1セグメントに移動する際に、操作者は、デバイスを、M2セグメントよりも大きなサイズのM1に対応する、より大きな径で「固定」するという選択肢を有している)。
【0100】
別の実施形態において、ロック機構は、操作者の選択によって様々な抵抗を可能とするようデザインされている。操作者が、閉塞物除去デバイスを引き抜くときに抵抗が高すぎると感じたときは、彼または彼女は、一時的に、ロック機構を「弛緩」させ、係合部材のより高い可撓性および減少した抵抗を実現することができる。例えば、ロック機構は、係合部材を膨張および/または潰れ形状で保持しつつも、抵抗を低下させる自由度を有してもよく、または、抵抗を低下させるために「緩めて」もよい。
【0101】
代替的な実施形態において、上述の実施形態において述べられたデバイスは、凝血塊または他の閉塞物に加えて、異物を引き出すために用いられ得る。動脈瘤を満たすために通常用いられる塞栓用コイルのような異物が壊れた、または、血管系内から外れてしまうような状況が生じ得る。デバイスは、閉塞物除去の際に用いられた手順と同様の手順を用いて、異物を引き出すために用いられてもよい。
【0102】
前述の実施形態は、形状制御部を長尺方向の位置でロックするための様々な機構を開示しているが、ロック機構という用語は、いくつかの状況において、形状制御部、および、形状制御部の先端部に固定され、係合部材と接触/係合する1つ以上の先端側構造も含むものとして解釈可能であることは、理解されるべきである。
【0103】
本発明が特定の実施形態および用途の文脈において記述されたが、本分野における当業者であれば、本教示を参照して、特許請求の範囲に記載された本発明の原理から逸脱することなく、または、その範囲を超えることなく、追加的な実施形態および変形を作成することが可能である。したがって、本明細書の図面および記述は、本発明の理解を容易とするために、1つの例として提供されたものであって、本発明の範囲を限定するよう構成されるべきものではない。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉塞物除去デバイス(800、801、803)であって、
押圧具(806)であって、該押圧具の先端部と、押圧具の基端部との間で延伸する押圧具管腔を有する、押圧具と、
複数の係合部材(802a、802b、802c、802d)であって、該複数の係合部材のそれぞれが、前記押圧具の前記先端部に接続された複数の係合部材と、
前記押圧具管腔内に位置した長尺要素(808)と、
前記長尺要素の外側に取り付けられた複数の構造(804a、804b、804c、804d、812a、812b、812c、812d)であって、前記複数の構造のそれぞれが前記複数の係合部材うちの対応する1つの内部に配置される、複数の構造と、
を含み、
前記長尺要素は、前記複数の構造を介して前記複数の記係合部材のそれぞれに膨張形状または潰れ形状を取らせるよう、前記押圧具に対して長尺方向に移動可能である、
閉塞物除去デバイス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正書】
【提出日】2024-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉塞物除去デバイス(800、801、803)であって、
押圧具(806)であって、該押圧具の先端部と、押圧具の基端部との間で延伸する押圧具管腔を有する、押圧具と、
少なくとも1つの係合部材(802a、802b、802c、802d)であって、前記少なくとも1つの係合部材が、前記押圧具の前記先端部に接続された複数の係合部材と、
前記押圧具管腔内に位置した長尺要素(808)と、
を含み、
第1の構成では、前記長尺要素は第1の位置にあり、前記少なくとも1つの係合部材は放射状に潰れた形状であり、
第2の構成では、前記長尺要素は前記第1の位置とは異なる第2の位置にあり、前記少なくとも1つの係合部材は放射状に膨張した形状である、
閉塞物除去デバイス。
【請求項2】
前記少なくとも1つの係合部材は、多数の開口を画定する複数の支柱を有する、請求項1の閉塞物除去デバイス。
【請求項3】
経路および複数のスロットを有する少なくとも1つの保持部材であって、前記長尺要素が前記経路内に位置決めされ、前記複数の支柱が前記複数のスロットに係合する、少なくとも1つの保持部材をさらに含む、請求項2の閉塞物除去デバイス。
【請求項4】
前記長尺要素は、前記押圧具から前記少なくとも1つの係合部材の最も先端側の係合部材まで延伸する、請求項1の閉塞物除去デバイス。
【請求項5】
前記長尺要素の第2の基端部は、前記押圧具の基端部を越えて延伸し、前記長尺要素の前記第2の基端部は、ユーザーによって引っ張られるか押されるように構成される、請求項4の閉塞物除去デバイス。
【請求項6】
前記長尺要素の先端に接続された先端側キャップをさらに含み、
当該先端側キャップは、前記少なくとも1つの係合部材の最も先端側の係合部材の先端側開口部よりも大きい直径を有する先端側キャップである、請求項4の閉塞物除去デバイス。
【請求項7】
前記少なくとも1つの係合部材を前記第2の構成または前記第1の構成にロックするために、前記長尺要素が前記押圧具に対して移動するのを選択的に防止するように構成されたロック機構をさらに含む、請求項1の閉塞物除去デバイス。
【請求項8】
前記ロック機構は、前記長尺要素に固定された固定具を有する、請求項7の閉塞物除去デバイス。
【請求項9】
前記押圧具の基端部の近くに配置され、前記押圧具に対する前記長尺要素の動きを防止するために、前記長尺要素と選択的に係合可能に構成されたコレットをさらに含む、請求項1の閉塞物除去デバイス。
【請求項10】
前記少なくとも1つの係合部材は複数の係合部材を含む、請求項1の閉塞物除去デバイス。
【請求項11】
前記第1の構成では、前記複数の係合部材のそれぞれは放射状に潰れた形状であり、
前記第2の構成では、前記複数の係合部材のそれぞれは放射状に膨張した形状である、請求項10の閉塞物除去デバイス。
【請求項12】
前記複数の係合部材のそれぞれは、多数の開口を画定する複数の支柱を有する、請求項10の閉塞物除去デバイス。
【請求項13】
前記長尺要素は、前記閉塞物除去デバイスを前記第1の構成と前記第2の構成との間で移動させるために、前記押圧具に対して長尺方向に移動可能である、請求項1の閉塞物除去デバイス。
【請求項14】
前記第1の構成では、前記長尺要素の一部が前記押圧具管腔内の第3の位置にあり、
前記第2の構成では、前記長尺要素の前記一部が前記押圧具管腔内の第4の位置にある、請求項1の閉塞物除去デバイス。
【請求項15】
前記長尺要素は少なくとも1つの拡張部を有し、前記押圧具はチャンネルを有し、前記第2の構成では、前記少なくとも1つの拡張部は前記チャンネル内にあり、前記第1の構成では、前記少なくとも1つの拡張部は前記チャンネル内にない、請求項1の閉塞物除去デバイス。
【外国語明細書】