(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050639
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】改善されたホットエア抵抗を持った加硫HNBR製品
(51)【国際特許分類】
C08L 15/00 20060101AFI20240403BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20240403BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20240403BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240403BHJP
C08K 3/20 20060101ALI20240403BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240403BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20240403BHJP
C08J 3/24 20060101ALI20240403BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20240403BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240403BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20240403BHJP
A43B 1/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C08L15/00
C08L77/00
C08K5/14
C08K3/013
C08K3/20
C08K3/36
C08K5/17
C08J3/24 Z CEQ
C08J3/20 CFG
C09K3/10 Z
F16J15/10 X
A43B1/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024005429
(22)【出願日】2024-01-17
(62)【分割の表示】P 2020531107の分割
【原出願日】2018-12-11
(31)【優先権主張番号】17209719.8
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】516112462
【氏名又は名称】アランセオ・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スザンナ・リーバー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・カイザー
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ・フレンツェル
(57)【要約】
【課題】加硫性組成物をベースとする加硫物であって、前記加硫物が、非常に良好なホットエア安定性、とりわけ破断点伸びの減少した変化及び/又は引張強さの減少した変化を有する加硫物を提供する。
【解決手段】HNBRゴムと、ポリアミドと過酸化物架橋剤と任意選択的に明るい充填材及び老化安定剤とを含有する加硫性組成物、これらの加硫生成物、並びに造形部品の製造のためのこれらの使用を実現する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)HNBRゴムと、
(b)ポリアミドと、
(c)過酸化物架橋剤と、
(d)任意選択的に明色充填材と
(e)任意選択的に老化安定剤と
を含む加硫性組成物であって、
(a)対(b)の比率が1:0.01~1:0.15、好ましくは1:0.5~1:0.10である組成物。
【請求項2】
(a)100重量部の水素化HNBRゴムと、
(b)1~15重量部、好ましくは1~12.5重量部、より好ましくは2~12.5重量部、最も好ましくは5~10部のポリアミドと、
(c)0.1~20重量部の過酸化物架橋剤と、
(d)0~300重量部の明色充填材と
(e)0~5重量部の老化安定剤と
を含む、請求項1に記載の加硫性組成物。
【請求項3】
前記HNBRゴム(a)が、20重量%~40重量%のアクリロニトリル単位と、20重量%~80重量%のブタジエン単位と、0重量%~60重量%の更なる共重合性モノマー、好ましくはブチルアクリレートとを含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の加硫性組成物。
【請求項4】
前記ポリアミド(b)が、ナイロン-6(PA6)又はナイロン-6,6(PA66)、好ましくはナイロン-6であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項5】
前記過酸化物架橋剤(c)が、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3-ジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-tert-ブチルペルオキシ(ヘキシン)、好ましくは1,3-ジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項6】
前記明色充填材(d)が、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウムナトリウム、沈澱シリカ、シラン化処理ケイ酸カルシウム又はか焼カオリン、好ましくはか焼カオリン又はシラン化処理ケイ酸カルシウムであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項7】
前記老化安定剤(e)が、ジアリール-p-フェニレンジアミン(DTPD)、4,4’-ビス(1,1-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(CDPA)、オクチル化ジフェニルアミン(ODPA)、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)、2-メルカプトベンズイミダゾール(MBI)、メチル-2-メルカプトベンズイミダゾール(MMBI)又は亜鉛メチルメルカプトベンズイミダゾール(ZMMBI)、好ましくは2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)又は4,4’-ビス(1,1-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(CDPA)であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項8】
(a)100重量部のHNBRゴムと、
(b)1~15重量部、好ましくは1~12.5重量部、より好ましくは2~12.5重量部、最も好ましくは5~10部のポリアミドと、
(c)0.5~10重量部の過酸化物架橋剤と、
(d)10~120重量部の明色充填材と
(e)0.5~3重量部の老化安定剤と
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項9】
構成要素(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)を混合することによる、請求項1~8のいずれか一項に記載の加硫性組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に規定の前記加硫性組成物が、好ましくは造形プロセスにおいて、及び更に好ましくは100℃~250℃の範囲の温度で、より好ましくは120℃~250℃、最も好ましくは130℃~250℃の範囲の温度で加硫にかけられることを特徴とする、HNBRゴムをベースとする、好ましくは成形品の形態での、加硫物の製造方法。
【請求項11】
請求項10に規定の方法によって得られる、請求項1~8のいずれか一項に規定の加硫性組成物をベースとする加硫物。
【請求項12】
成形品の製造のための、好ましくはベルト、ガスケット、カバーパネル、ローラー、履物構成部品、ホース、減衰要素、固定子、ケーブルシース及びパッカーエレメントからなる群から選択される成形品の製造のための、より好ましくはベルト及びガスケットの製造のための請求項1~8のいずれか一項に規定の加硫性組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HNBRゴムと、ポリアミドと過酸化物架橋剤と、任意選択的に明色充填材及び老化安定剤とを含む加硫性組成物に、これらの加硫物に並びに成形品の製造のためのこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
加硫性組成物から製造される加硫物は、これらの異なるホットエア安定性に注目すべきである。ASTM-D 2000標準に従った分類によれば、天然ゴム(NR)でできた加硫物は、70℃まで使用することができ;HNBRゴムは、明らかに低下した二重結合の数(典型的には、元のNBR中の二重結合の50%未満)を有し、それは、とりわけ、150℃までのホットエア安定性の改善を達成する。応用が、更により高いホットエア安定性を要求する場合、フッ素化ゴム(例えばFKM)を用いることが高い頻度で必要であるが、これは技術的条件及び金銭的条件の両方で不利であると理解することができる。このように、NBR加硫物は、典型的には、より良好な低温可撓性及び塩基性媒体へのより良好な安定性を有する。HNBRゴムをベースとするゴム混合物の好適な処方によって、本目的は、したがってFKM処方の技術的に及び経済的に魅力的な代替手段を顧客に提供するために、ホットエア安定性を更に向上させる方法を見出すことであった。
【0003】
(特許文献1)は、40重量%未満のアクリレートゴムを有するアクリレートゴムと、160℃超の融点を有する10重量%~60重量%のポリアミドとからなる組成物を開示している。HNBRゴムをベースとする組成物の開示は全くない。
【0004】
(特許文献2)は、EVM(エチレン酢酸ビニルポリマー)と、架橋性ポリアクリレートとポリアミドとからなる組成物であって、ポリアミドが160℃超の融点を有する組成物を記載している。HNBRゴムをベースとする組成物の開示は全くない。
【0005】
(特許文献3)は、ポリアミド(Nylon(登録商標)12;Grilamid L20G)を含む、1%未満の残存二重結合値を有するHNBRの加硫性組成物を開示している。加硫性組成物中のポリアミドの量は、20重量%~55重量%である。使用される例は、34重量%のアクリロニトリル(ACN)のHNBRゴムである。
【0006】
(特許文献4)は、カルボキシル基を含有する40重量部のHXNBRと60重量部のポリアミドとからなる熱可塑性エラストマー組成物(TPE)を開示している。
【0007】
(特許文献5)は、20又は30重量部のポリアミド(Nylon(登録商標)6又はNylon(登録商標)12)と、70~80重量部の高飽和ニトリルゴム及び/又はカルボキシル基を含有する高飽和ニトリルゴムとを含む組成物を開示している。
【0008】
(特許文献6)は、ゴムと熱可塑性樹脂とを含む組成物を開示している。使用され得るゴムの例としては、NBR、XNBR又はHNBRが挙げられている。熱可塑性樹脂は、5~60部の量で存在している。特に開示されているものは、HNBR(Zetpol 2000)と、ポリエーテルブロック及びポリアミドブロックからなるTPC(Pebax)とを含有する組成物である。これらの組成物のホットエア老化特性の開示は全くない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第A-2012/177879号パンフレット
【特許文献2】国際公開第A-2014/089136号パンフレット
【特許文献3】欧州特許出願公開第A-0364859号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第A-1672027号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第A-2692788号明細書
【特許文献6】米国特許第6,133,375号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明によって取り組まれる課題は、加硫性組成物をベースとする加硫物であって、前記加硫物が、非常に良好なホットエア安定性、とりわけ破断点伸びの減少した変化及び/又は引張強さの減少した変化を有する加硫物を提供するというものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題の解決策及び本発明の主題は、したがって、
(a)HNBRゴムと、
(b)ポリアミドと、
(c)過酸化物架橋剤と、
(d)任意選択的に明色充填材と
(e)任意選択的に老化安定剤と
を含む加硫性組成物であって、
(a)対(b)の比率が、1:0.01~1:0.15、好ましくは1:0.05~1:0.10である組成物である。
【0012】
本発明による加硫性組成物のおかげで、先行技術の欠点を克服する加硫物を提供することが既に可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の範囲は、一般的な用語で又は好ましさのエリア内で、上に述べられた及び本明細書で以下に引用される構成要素、値の範囲、基本的な定義及び/又はプロセスパラメータの任意の及び全ての可能な組み合わせを包含することが、この時点で指摘されるべきである。
【0014】
本発明による加硫性組成物の個々の構成要素が、本明細書で以下に詳述される。
【0015】
HNBRゴムをベースとする加硫性組成物
本発明は、HNBRゴム(a)と、ポリアミド(b)と過酸化物架橋剤(c)とを含む加硫性組成物であって、(a)対(b)の比率が1:0.01~1:0.15、好ましくは1:0.05~1:0.1である組成物を提供する。好ましい実施形態は、少なくとも1種の明色充填材(d)及び/又は少なくとも1種の老化安定剤(e)を更に含有する加硫性組成物に関する。
【0016】
(a)HNBRゴム
本出願との関連で、「ニトリル-ジエンコポリマー」(「NBR」とも略される、ニトリル-ブタジエンコポリマー、ニトリルゴム)は、少なくとも1種のα,β-エチレン性不飽和ニトリルと、少なくとも1種の共役ジエンと任意選択的に1種以上の追加の共重合性モノマーとのコポリマー、ターポリマー又はクォーターポリマーであるゴムを意味すると理解される。この用語は、したがって、2つ以上のα,β-エチレン性不飽和ニトリルモノマー単位と2つ以上の共役ジエンモノマー単位とを有するコポリマーをも包含する。
【0017】
「水素化ニトリル-ジエンコポリマー」(「HNBR」)は、共重合したジエン単位中のC=C二重結合の少なくともいくらか、好ましくはC=C二重結合の少なくとも50%が水素化されている、対応するコポリマー、ターポリマー又はクォーターポリマーを意味すると理解される。好ましい実施形態において、水素化HNBRゴムは、完全に水素化されている。
【0018】
用語「完全に水素化された」は、水素化ニトリル-ジエンコポリマー中のブタジエン単位の水素化度が99.1%~100%であることを意味する。
【0019】
用語「コポリマー」は、2個以上のモノマー単位を有するポリマーを包含する。
【0020】
α,β-エチレン性不飽和ニトリル
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単位を形成する、使用されるα,β-エチレン性不飽和ニトリルは、任意の公知のα,β-エチレン性不飽和ニトリルであり得る。アクリロニトリル、α-ハロアクリロニトリル、例えばα-クロロアクリロニトリル及びα-ブロモアクリロニトリル、α-アルキルアクリロニトリル、例えばメタクリロニトリル、エタクリロニトリル、又は2種以上のα,β-エチレン性不飽和ニトリルの混合物などの(C3~C5)α,β-エチレン性不飽和ニトリルが好ましい。アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル又はこれらの混合物が特に好ましい。アクリロニトリルが非常に特に好ましい。
【0021】
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単位の量は、典型的には、HNBRゴム中の全モノマー単位の100重量%の総量を基準として、10重量%~60重量%、好ましくは15重量%~50重量%、より好ましくは17重量%~44重量%の範囲にある。
【0022】
共役ジエン
共役ジエン単位を形成する共役ジエンは、任意の共役ジエン、とりわけ共役C4~C12ジエンであり得る。1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、1,3-ペンタジエン(ピペリレン)、2-クロロ-1,3-ブタジエン又はこれらの混合物が特に好ましい。1,3-ブタジエン及びイソプレン又はこれらの混合物がとりわけ好ましい。1,3-ブタジエンが非常に特に好ましい。
【0023】
共役ジエンの量は、典型的には、HNBRゴム中のモノマー単位の全ての100重量%の総量を基準として、40重量%~90重量%、好ましくは50重量%~85重量%、より好ましくは56重量%~83重量%の範囲にある。
【0024】
更なるコモノマー
α,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステル単位
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単位及び共役ジエン単位に加えて、本HNBRゴムは、少なくとも1種のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステル単位を含有し得る。
【0025】
典型的なα,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステル単位は、
● アルキル(メタ)アクリレート、とりわけC4~C18アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはn-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル若しくはn-ヘキシル(メタ)アクリレート;
● アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、とりわけC4~C18アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC4~C12アルコキシアルキル(メタ)アクリレート;
● ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、とりわけC4~C18ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC4~C12ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
● シクロアルキル(メタ)アクリレート、とりわけC5~C18-シクロアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC6~C12シクロアルキル(メタ)アクリレート、より好ましくはシクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート;
● アルキルシクロアルキル(メタ)アクリレート、とりわけC6~C12アルキルシクロアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC7~C10アルキルシクロアルキル(メタ)アクリレート、より好ましくはメチルシクロペンチル(メタ)アクリレート及びエチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート;
● アリールモノエステル、とりわけC6~C14アリールモノエステル、好ましくはフェニル(メタ)アクリレート若しくはベンジル(メタ)アクリレート;
● アミノ含有α,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステル、例えばジメチルアミノメチルアクリレート若しくはジエチルアミノエチルアクリレート;
● α,β-エチレン性不飽和モノアルキルジカルボキシレート、好ましくは
○ アルキルモノエステル、とりわけC4~C18アルキルモノエステル、好ましくはn-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル若しくはn-ヘキシルモノエステル、より好ましくはモノ-n-ブチルマレエート、モノ-n-ブチルフマレート、モノ-n-ブチルシトラコネート、モノ-n-ブチルイタコネート、最も好ましくはモノ-n-ブチルマレエート、
○ アルコキシアルキルモノエステル、とりわけC4~C18アルコキシアルキルモノエステル、好ましくはC4~C12アルコキシアルキルモノエステル、
○ ヒドロキシアルキルモノエステル、とりわけC4~C18ヒドロキシアルキルモノエステル、好ましくはC4~C12ヒドロキシアルキルモノエステル、
○ シクロアルキルモノエステル、とりわけC5~C18シクロアルキルモノエステル、好ましくはC6~C12シクロアルキルモノエステル、より好ましくはモノシクロペンチルマレエート、モノシクロヘキシルマレエート、モノシクロヘプチルマレエート、モノシクロペンチルフマレート、モノシクロヘキシルフマレート、モノシクロヘプチルフマレート、モノシクロペンチルシトラコネート、モノシクロヘキシルシトラコネート、モノシクロヘプチルシトラコネート、モノシクロペンチルイタコネート、モノシクロヘキシルイタコネート及びモノシクロヘプチルイタコネート、
○ アルキルシクロアルキルモノエステル、とりわけC6~C12アルキルシクロアルキルモノエステル、好ましくはC7~C10アルキルシクロアルキルモノエステル、より好ましくはモノメチルシクロペンチルマレエート及びモノエチルシクロヘキシルマレエート、モノメチルシクロペンチルフマレート及びモノエチルシクロヘキシルフマレート、モノメチルシクロペンチルシトラコネート及びモノエチルシクロヘキシルシトラコネート;モノメチルシクロペンチルイタコネート及びモノエチルシクロヘキシルイタコネート;
○ アリールモノエステル、とりわけC6~C14アリールモノエステル、好ましくはモノアリールマレエート、モノアリールフマレート、モノアリールシトラコネート若しくはモノアリールイタコネート、特に好ましくはモノフェニルマレエート若しくはモノベンジルマレエート、モノフェニルフマレート若しくはモノベンジルフマレート、モノフェニルシトラコネート若しくはモノベンジルシトラコネート、モノフェニルイタコネート若しくはモノベンジルイタコネート、
○ 不飽和ポリアルキルポリカルボキシレート、例えばジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジメチルイタコネート若しくはジエチルイタコネート;
又はこれらの混合物
である。
【0026】
特に好ましい実施形態において、完全に又は部分的に水素化されたHNBRゴムは、(C1~C4)アルキルメタクリレート、最も好ましくはブチルアクリレートを含有する。
【0027】
本発明によるHNBRゴム中の任意選択のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステル単位の量は、典型的には、モノマー単位の全ての100重量%の総量を基準として、0重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~15重量%、より好ましくは1重量%~10重量%の範囲にある。
【0028】
PEGアクリレート
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単位及び共役ジエン単位に加えて、本HNBRゴムは、更なる単位として、一般式(I)
【化1】
(式中、
Rは、分岐若しくは非分岐のC
1~C
20アルキル、好ましくはC
2~C
20アルキル、より好ましくはメチル、エチル、ブチル又はエチルヘキシルであり、
nは、1~12、好ましくは1~8、より好ましくは1~5、最も好ましくは1、2又は3であり、
R
1は、水素又はCH
3-である)
に由来する少なくとも1つのPEGアクリレート単位を含有し得る。
【0029】
用語「(メタ)アクリレート」は、本発明との関連で、「アクリレート」及び「メタクリレート」を表す。一般式(I)におけるR1ラジカルがCH3-である場合、分子はメタクリレートである。
【0030】
用語「ポリエチレングリコール」又は省略形「PEG」は、本発明との関連で、2個の繰り返しエチレングリコール単位(PEG-2;n=2)~12個の繰り返しエチレングリコール単位を有するエチレングリコールセクション(PEG-2~PEG-12;n=2~12)を表す。
【0031】
用語「PEGアクリレート」は、また、PEG-X-(M)A(ここで、「X」は、繰り返しエチレングリコール単位の数であり、「MA」はメタクリレートであり、「A」はアクリレートである)と略される。
【0032】
一般式(I)のPEGアクリレートに由来するアクリレート単位は、本発明との関連で、「PEGアクリレート単位」と言われる。
【0033】
好ましいPEGアクリレート単位は、次式no.1~no.8(式中、nは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12、好ましくは2、3、4、5、6、7又は8、より好ましくは2、3、4又は5、最も好ましくは2又は3である)を有するPEGアクリレートに由来する:
【0034】
【0035】
エトキシポリエチレングリコールアクリレート(式no.1)についての他の一般に用いられる呼称は、例えば、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート、エトキシPEGアクリレート、エトキシポリ(エチレングリコール)モノアクリレート又はポリ(エチレングリコール)モノエチルエーテルモノアクリレートである。
【0036】
これらのPEGアクリレートは、例えば、Sartomer(登録商標)商品名でArkemaから、Visiomer(登録商標)商品名でEvonikから、又はSigma Aldrichから商業的に購入することができる。
【0037】
本発明によるHNBRゴム中の任意選択のPEGアクリレート単位の量は、典型的には、モノマー単位の全ての100重量%の総量を基準として、0重量%~60重量%、好ましくは20重量%~60重量%、より好ましくは20重量%~55重量%の範囲にある。
【0038】
代わりの実施形態において、HNBRゴムは、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単位及び共役ジエン単位に加えて、更なるモノマーとしての一般式(I)のPEGアクリレートに由来するPEGアクリレート単位及び更なる不飽和カルボン酸エステル単位としてのモノアルキルジカルボキシレート単位、好ましくはモノブチルマレエートを含有する。
【0039】
本発明による好ましいHNBRゴムにおいて、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単位は、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルに、より好ましくはアクリロニトリルに由来し、共役ジエン単位は、イソプレン又は1,3-ブタジエンに、より好ましくは1,3-ブタジエンに由来し、任意選択のPEGアクリレート単位は、一般式(I)(式中、nは2~8である)のPEGアクリレート、より好ましくは一般式(I)(式中、nは2又は3である)のPEGアクリレートに由来し、ここで、更なるカルボン酸エステル単位は存在しない。
【0040】
本発明による更なる好ましいHNBRゴムにおいて、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単位は、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルに、より好ましくはアクリロニトリルに由来し、共役ジエン単位は、イソプレン又は1,3-ブタジエンに、より好ましくは1,3-ブタジエンに由来し、任意選択のPEGアクリレート単位は、一般式(I)(式中、nは2~12である)のPEGアクリレート、より好ましくは一般式(I)(式中、nは2又は3である)のPEGアクリレートに由来する。
【0041】
加えて、HNBRゴム、並びに任意選択のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステル単位及び/又は任意選択のPEGアクリレート単位は、全モノマー単位の100重量%の総量を基準として、0重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%の量で1種以上の更なる共重合性モノマーを含有し得る。その場合に、他のモノマー単位の量は、全モノマー単位の合計が常に100重量%であるように、好適なやり方で減らされる。HNBRゴムは、更なる共重合性モノマーとして、1種以上の
● 芳香族ビニルモノマー、好ましくはスチレン、α-メチルスチレン及びビニルピリジン、
● フッ素含有ビニルモノマー、好ましくはフルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o-フルオロメチルスチレン、ビニルペンタフルオロベンゾエート、ジフルオロエチレン及びテトラフルオロエチレン等、
● α-オレフィン、好ましくはC2~C12オレフィン、例えばエチレン、1-ブテン、4-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン又は1-オクテン、
● 非共役ジエン、好ましくは、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、4-シアノシクロヘキセン、4-ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどのC4~C12ジエン等、
● 1-又は2-ブチンなどのアルキン、
● α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸又は桂皮酸、
● α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸、好ましくはマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、
● 共重合性酸化防止剤、例えばN-(4-アニリノフェニル)アクリルアミド、N-(4-アニリノフェニル)メタクリルアミド、N-(4-アニリノフェニル)シンアミド、N-(4-アニリノフェニル)クロトンアミド、N-フェニル-4-(3-ビニルベンジルオキシ)アニリン、N-フェニル-4-(4-ビニルベンジルオキシ)アニリン又は
● 架橋性モノマー、例えばジビニルベンゼンなどの例えばジビニル構成要素
を含有し得る。
【0042】
代わりの実施形態において、HNBRゴムは、任意選択のPEGアクリレート単位として、2~12の繰り返しエチレングリコール単位を含むエトキシ、ブトキシ又はエチルヘキシルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、より好ましくは2~5の繰り返しエチレングリコール単位を含むエトキシ又はブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、最も好ましくは2又は3つの繰り返しエチレングリコール単位を含むエトキシ又はブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを含有する。
【0043】
更なる代わりの実施形態において、HNBRゴムは、8重量%~18重量%のアクリロニトリル単位と、27重量%~65重量%の1,3-ブタジエン単位と任意選択的に27重量%~55重量%のPEG-2アクリレート単位又はPEG-3アクリレート単位とを含む。
【0044】
最も好ましいHNBRゴムは、アクリロニトリル/ブタジエン;アクリロニトリル/ブタジエン/(メタ)アクリル酸;アクリロニトリル/ブタジエン/ブチル(メタ)アクリレート;アクリロニトリル/ブタジエン/ブチルマレエート;アクリロニトリル/ブタジエン/ブチルイタコネート;アクリロニトリル/ブタジエン/メトキシエチル(メタ)アクリレート;アクリロニトリル/ブタジエン/ブトキシジグリコール(メタ)アクリレート又はアクリロニトリル/ブタジエン/エトキシトリグリコール(メタ)アクリレートを含有する。
【0045】
本発明によるHNBRゴムは、典型的には、10,000g/mol~2,000,000g/mol、好ましくは50,000g/mol~1,000,000g/mol、より好ましくは50,000g/mol~500,000g/mol、最も好ましくは50,000g/mol~300,000g/molの数平均分子量(Mn)を有する。
【0046】
本発明によるHNBRゴムは、典型的には、1.5~6、好ましくは2~5、より好ましくは2.5~4の多分散指数(PDI=Mw/Mn(ここで、Mwは、重量分子量である))を有する。
【0047】
本発明によるHNBRゴムは、典型的には、10~150、好ましくは20~120、より好ましくは25~100のムーニー(Mooney)粘度(ML1+4@100℃)を有する。
【0048】
非水素化ニトリル-ジエンコポリマーの調製方法
水素化のための中間体として必要とされる非水素化ニトリル-ジエンコポリマーの調製は、上述のモノマーの重合によって達成することができ、文献(例えばHouben-Weyl,Methoden der Organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry],vol.14/1,30 Georg Thieme Verlag Stuttgart 1961)に広範囲にわたって記載されており、特に制限されない。一般に、プロセスは、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単位と、共役ジエン単位と任意選択の更なるモノマー単位とが要望通り共重合させられるものである。用いられる重合プロセスは、任意の公知の乳化重合プロセス、懸濁重合プロセス、バルク重合プロセス又は溶液重合プロセスであり得る。乳化重合プロセスが好ましい。乳化重合は、とりわけ、使用される反応媒体が通常水である、それ自体公知のプロセスを意味すると理解される(とりわけ、Roempp Lexikon der Chemie[Roempp’s Chemistry Lexicon],volume 2,10th edition 1997;P.A.Lovell,M.S.El-Aasser,Emulsion Polymerization and Emulsion Polymers,John Wiley & Sons,ISBN:0471 96746 7;H.Gerrens,Fortschr.Hochpolym.Forsch.1,234(1959)を参照されたい)。ターモノマーの組み込み比率は、本発明によるターポリマーが得られるように当業者によって容易に調整することができる。モノマーは、最初に装入することができるか、又は2つ以上のステップで増分によって反応させることができる。
【0049】
メタセシス及び/又は水素化:
非水素化ニトリル-ジエンコポリマーの製造に、ニトリル-ジエンコポリマーの分子量の低下のためのメタセシス反応又はメタセシス反応及びその後の水素化又は水素化のみが続くこともまた可能である。これらのメタセシス又は水素化反応は、当業者に周知であり、文献に記載されている。メタセシスは、例えば、国際公開第A-02/100941号パンフレット及び国際公開第A-02/100905号パンフレットから公知であり、分子量を低下させるために用いることができる。
【0050】
(b)ポリアミド
本発明による加硫性組成物中のポリアミドは、ジアミンとジカルボン酸との組み合わせから、ω-アミノカルボン酸又は対応するラクタムから調製できる。原則として、任意のポリアミド、好ましくはPA6、PA66、PA610、PA88、PA612、PA810、PA108、PA9、PA613、PA614、PA812、PA1010、PA10、PA814、PA148、PA1012、PA11、PA1014、PA1212又はPA12を使用することが可能である。
【0051】
ナイロン-6(PA6)又はナイロン-6,6(PA66)が特に好ましく、ナイロン-6を使用することが非常に特に好ましい。
【0052】
本発明に従って好ましいポリアミドは、ジアミン及びジカルボン酸並びに/又は少なくとも5つの環員を有するラクタム又は対応するアミノ酸から進めて調製できる半結晶性又は非晶質ポリアミドである。
【0053】
有用な反応剤は、好ましくは脂肪族及び/又は芳香族ジカルボン酸、より好ましくはアジピン酸、2,2,4-トリメチルアジピン酸、2,4,4-トリメチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、脂肪族及び/又は芳香族ジアミン、より好ましくはテトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナン-1,9-ジアミン、2,2,4-及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、異性体のジアミノジシクロヘキシルメタン、ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、アミノカルボン酸、とりわけアミノカプロン酸、又は対応するラクタムである。複数の述べられたモノマーのコポリアミドが含まれる。
【0054】
本発明に従って好適なポリアミドは、例えば、Durethan(登録商標)又はNylon(登録商標)ブランド名で公知である。最も好ましくは、LANXESS製のDurethan(登録商標)B31F PA 6が使用される。
【0055】
混合比が要望通りである、これらのポリアミドの混合物を使用することも、もちろん可能である。
【0056】
複数割合のリサイクルポリアミド成形材料及び/又は繊維リサイクル品もまた存在してもよい。
【0057】
ポリアミドは、好ましくは2.3~4.0の、より好ましくは2.7~3.5の相対粘度を有し、ここで、相対粘度は、25℃でm-クレゾール中の1重量%溶液に関して決定する/測定することができる。
【0058】
ポリアミドの調製は先行技術である。もちろん、別法として、上述のポリアミドをベースとするコポリアミドを使用することが可能である。
【0059】
所望の最終製品に応じて、異なるモノマー単位及び所望の分子量を確立するための様々な連鎖移動剤或いは反応基を持ったモノマーを使用した、多数のポリアミドの調製手順が公知になっている。物質混合物での使用のためのポリアミドの工業的に関係のある調製プロセスは、好ましくは、溶融体での重縮合によって進行する。これに関連して、ラクタムの加水分解重合もまた、重縮合であると考えられる。熱重縮合によるポリアミドの調製は、当業者に公知であり;とりわけ、Nylon Plastics Handbook,Hanser-Verlag Munich 1995,pages 17-27、及びKunststoff-Handbuch[Plastics Handbook] 3/4,Polyamide[Polyamides],Carl Hanser Verlag,Munich 1998,pages 22-36を参照されたい。
【0060】
ε-カプロラクタム及びヘキサメチレンジアミンアジペートから重合させられた、ランダム、半結晶性の、脂肪族PA 6/66コポリアミドがとりわけ好ましい。
【0061】
ε-カプロラクタム(CAS番号105-60-2)は、とりわけポリアミドの調製のために好ましく使用される。シクロヘキサノンオキシムが先ず、ヒドロキシルアミンの硫酸水素塩又は塩酸塩との反応によってシクロヘキサノンから調製される。このシクロヘキサノンオキシムは、ベックマン(Beckmann)転位によってε-カプロラクタムに転化される。
【0062】
ヘキサメチレンジアミンアジペート(CAS番号3323-53-3)は、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの反応生成物である。その使用の1つは、ナイロン-6,6の調製における中間体としてである。慣用名AH塩は、出発物質の頭文字に由来する。
【0063】
これらが十分に相溶性であるという条件で、異なるポリアミドの混合物を使用することもまた同様に可能である。ポリアミドの相溶性組み合わせは、当業者に公知である。好ましく使用するためのポリアミド組み合わせは、PA6/PA66、PA12/PA1012、PA12/1212、PA612/PA12、PA613/PA12、PA1014/PA12又はPA610/PA12、及びPA11との対応する組み合わせ、より好ましくはPA6/PA66である。疑念がある場合には、相溶性組み合わせは、日常実験によって突き止めることができる。
【0064】
脂肪族ポリアミドの代わりに、ジカルボン酸構成要素が、8~22個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸に5~100モル%の程度まで由来する、及び好ましくは少なくとも250℃の、より好ましくは少なくとも260℃の、とりわけ好ましくは少なくとも270℃のISO 11357-3に従った結晶子融点Tmを有する半芳香族ポリアミドを有利にまた使用することが可能である。この種のポリアミドは、典型的には、追加T(=半芳香族)によって特定される。これらは、任意選択的にω-アミノカルボン酸又は対応するラクタムを添加して、ジアミンとジカルボン酸との組み合わせから調製できる。好適なタイプは、好ましくは、PA66/6T、PA6/6T、PA6T/MPMDT(MPMDは、2-メチルペンタメチレンジアミンを表す)、PA9T、PA10T、PA11T、PA12T、PA14T並びにこれらの後者のタイプと脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸との又はω-アミノカルボン酸若しくはラクタムとの共重縮合物である。半芳香族ポリアミドはまた、別の、好ましくは脂肪族の、ポリアミドとの、より好ましくはPA6、PA66、PA11又はPA12とのブレンドの形態で使用することができる。
【0065】
別の好適なポリアミドクラスは、透明なポリアミドのそれであり;これらは、大抵の場合に非晶質であるが、微結晶性でもあり得る。これらは、これらのままでか、脂肪族及び/又は半芳香族ポリアミド、好ましくはPA6、PA66、PA11若しくはPA12との混合物でかのどちらかで使用することができる。ISO 11357-3に従って測定される、ガラス転移温度Tgは、少なくとも110℃、好ましくは少なくとも120℃、より好ましくは少なくとも130℃、より好ましくは少なくとも140℃である。好ましい透明なポリアミドは、とりわけ35%~65%のトランス,トランス異性体含有量を有する4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンから進む、ドデカン-1,12-二酸と4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンとのポリアミド(PAPACM12)、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸と2,2,4-及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミンの異性体混合物とのポリアミド、イソフタル酸とヘキサメチレン-1,6-ジアミンとのポリアミド、テレフタル酸/イソフタル酸の混合物と、任意選択的に4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンとの混合物での、ヘキサメチレン-1,6-ジアミンとのコポリアミド、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ラウロラクタム又はカプロラクタムからのコポリアミド、ドデカン-1,12-二酸又はセバシン酸と、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンと任意選択的にラウロラクタム又はカプロラクタムとの(コ)ポリアミド、イソフタル酸と、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンとラウロラクタム又はカプロラクタムとのコポリアミド、ドデカン-1,12-二酸と4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(低いトランス,トランス異性体含有量の)とのポリアミド、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸と、任意選択的にヘキサメチレンジアミンとの混合物で、アルキル置換ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン同族体とのコポリアミド、任意選択的に更なるジアミンと一緒に、ビス(4-アミノ-3-メチル-5-エチルシクロヘキシル)メタンと、任意選択的に更なるジカルボン酸と一緒に、イソフタル酸とのコポリアミド、m-キシリレンジアミンと更なるジアミン、例えばヘキサメチレンジアミンとの混合物と、任意選択的に更なるジカルボン酸、例えばテレフタル酸及び/又はナフタレン-2,6-ジカルボン酸と一緒に、イソフタル酸とのコポリアミド、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンとビス(4-アミノ-3-メチル-シクロヘキシル)メタンとの混合物と、8~14個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸とのコポリアミド、並びにテトラデカン-1,14-二酸と、芳香族、アリール脂肪族又は脂環式ジアミンを含有する混合物から形成されるポリアミド又はコポリアミドである。
【0066】
これらの例は、更なる構成要素、好ましくはカプロラクタム、ラウロラクタム若しくはジアミン/ジカルボン酸組み合わせの添加によって、又は出発構成要素の他の構成要素での部分若しくは完全置き換えによって極めて実質的に変えられ得る。
【0067】
ポリアミド形成モノマーとして使用されるラクタム又はω-アミノカルボン酸は、4~19個、とりわけ6~12個の炭素原子を含有する。ε-カプロラクタム、ε-アミノカプロン酸、カプリロラクタム、ω-アミノカプリル酸、ラウロラクタム、ω-アミノドデカン酸及び/又はω-アミノウンデカン酸を使用することが特に好ましい。
【0068】
ジアミンとジカルボン酸との組み合わせは、例えば、ヘキサメチレンジアミン/アジピン酸、ヘキサメチレンジアミン/ドデカン二酸、オクタメチレンジアミン/セバシン酸、デカメチレンジアミン/セバシン酸、デカメチレンジアミン/ドデカン二酸、ドデカメチレンジアミン/ドデカン二酸及びドデカメチレンジアミン/ナフタレン-2,6-ジカルボン酸である。加えて、別法として、全ての他の組み合わせ、とりわけデカメチレンジアミン/ドデカン二酸/テレフタル酸、ヘキサメチレンジアミン/アジピン酸/テレフタル酸、ヘキサメチレンジアミン/アジピン酸/カプロラクタム、デカメチレンジアミン/ドデカン二酸/ω-アミノウンデカン酸、デカメチレンジアミン/ドデカン二酸/ラウロラクタム、デカメチレンジアミン/テレフタル酸/ラウロラクタム又はドデカメチレンジアミン/ナフタレン-2,6-ジカルボン酸/ラウロラクタムを使用することが可能である。
【0069】
本発明による組成物中のHNBRゴム(a)対ポリアミド(b)の比率は、1:0.01超~1:0.15、好ましくは1:0.05~1:0.1である。
【0070】
加硫性組成物中のポリアミド(b)の量は、HNBRゴム(a)の100重量部を基準として、1~15重量部、好ましくは1~12.5重量部、より好ましくは2~12.5重量部、最も好ましくは5~10重量部である。
【0071】
ポリアミドの量が少なすぎる、すなわち、5phr未満である場合、ホットエア老化の改善、とりわけ破断点伸びの変化及び/又は引張強さの変化は全く起こらない。
【0072】
ポリアミドの量が高すぎる、すなわち、10phr超である場合、ホットエア老化の、とりわけ硬度の変化の、破断点伸びの変化及び/又は引張強さの変化の十分な改善は同様に全く起こらない。
【0073】
(c)過酸化物架橋剤
有用な過酸化物架橋剤の例としては、ビス(2,4-ジクロロベンジル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(4-クロロベンゾイル)ペルオキシド、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルパーベンゾエート、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブテン、4,4-ジ-tert-ブチルペルオキシノニルバレレート、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ-t-ブチルペルオキシド及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサ-3-インなどの過酸化物架橋剤が挙げられる。
【0074】
好ましい実施形態において、本発明による組成物は、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3-ジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-tert-ブチルペルオキシ(ヘキシン)、好ましくは1,3-ジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンから選択される少なくとも1種の過酸化物架橋剤を含む。
【0075】
これらの過酸化物架橋剤に加えて、架橋収率を上げるのに役立つことができる更なる添加物を使用することが有利であり得る:これらの好適な例としては、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルトリメリテート、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ジアクリル酸亜鉛、ジメタクリル酸亜鉛、1,2-ポリブタジエン又はN,N-m-フェニレンビスマレイミドが挙げられる。
【0076】
過酸化物架橋剤の総量は、典型的には、HNBRゴムを基準として、0.1~20phrの範囲に、好ましくは1.5~15phrの範囲に、より好ましくは2~10phrの範囲にある。
【0077】
(d)明色充填材
用語「明色充填材」は、当業者によく知られており、例えばF.Roethemeyer/F.Sommer:Kautschuktechnologie[Rubber Technology],p.262 ff.,2001から十分に周知であり、明色充填材としては、天然及び合成明色充填材、とりわけシリカ系及び/又は酸化物系充填材を挙げられる。
【0078】
合成明色充填材は、シリカ(非晶質二酸化ケイ素)又はケイ酸塩、とりわけケイ酸カルシウム、シラン化処理ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムナトリウム若しくはケイ酸アルミニウム、シリカ、ヒュームドシリカ、水ガラス又は表面改質シリカである。
【0079】
天然明色充填材は、例えば、ケイ質土、ノイブルク(Neuburg)ケイ質土、石英粉末、アルミナ、珪藻土、ベントナイト、チョーク(CaCO3)、カオリン、ウォラストナイト(CaSiO3)又はタルクである。
【0080】
更なる明色充填材は、金属化合物、例えばアルカリ土類金属硫酸塩、とりわけ硫酸バリウム、金属酸化物、とりわけ二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム(水和物)、酸化鉄、アルカリ土類金属炭酸塩、とりわけ炭酸カルシウム、炭酸亜鉛又は炭酸マグネシウム、金属水酸化物、とりわけ水酸化アルミニウム、アルミニウムオキシハイドレート又は水酸化マグネシウムである。
【0081】
明色充填材は、本発明との関連で、好ましくは塩基性のシリカ系又は酸化物系充填材、より好ましくは酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウムナトリウム、沈澱シリカ、シラン化処理ケイ酸カルシウム又はか焼カオリン、最も好ましくはか焼カオリン、例えばPolestar(登録商標)200 R、又はシラン化処理ケイ酸カルシウム、例えばTremin(登録商標)283-600 VSTである。
【0082】
(e)老化安定剤
本発明による加硫性組成物は、また、少なくとも1種の老化安定剤、好ましくはフェノール系老化安定剤、アミン系老化安定剤又はホスファイトを含有する。
【0083】
好適なフェノール系老化安定剤は、アルキル化フェノール、スチレン化フェノール;2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(BHT)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル)-p-クレゾール、ポリ(ジシクロペンタジエン-コ-p-クレゾール)などの、立体障害のあるフェノール;n-オクタデシルベータ-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオネートなどの、エステル基を含有する立体障害のあるフェノール;チオエステル基を含有する立体障害のあるフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)(BPH)、2-メチル-4,6-ビス(オクチルスルファニルメチル)フェノール及び立体障害のあるチオビスフェノールである。特に好適な実施形態において、2種以上の老化安定剤、例えば2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル)-p-クレゾールと、ポリ(ジシクロペンタジエン-コ-p-クレゾール)と2-メチル-4,6-ビス(オクチルスルファニルメチル)フェノールとの混合物がまた添加される。
【0084】
好適なアミン系老化安定剤は、ジアリール-p-フェニレンジアミン(DTPD)、4,4’-ビス(1,1-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(CDPA)、オクチル化ジフェニルアミン(ODPA)、フェニル-α-ナフチルアミン(PAN)、フェニル-ベータ-ナフチルアミン(PBN)又はこれらの混合物、好ましくはフェニレンジアミンをベースとするものである。フェニレンジアミンの例は、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-1,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N-1,4-ジメチルペンチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(7PPD)又はN,N-ビス-1,4-(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(77PD)である。
【0085】
好適なホスファイトは、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト又は次亜リン酸ナトリウムである。好ましいホスファイトは、次亜リン酸ナトリウムである。ホスファイトは、一般に、フェノール系老化安定剤と組み合わせて使用される。
【0086】
更なる好適な老化安定剤は、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)、2-メルカプトベンズイミダゾール(MBI)、メチル-2-メルカプトベンズイミダゾール(MMBI)又は亜鉛メチルメルカプトベンズイミダゾール(ZMMBI)である。
【0087】
老化安定剤は、HNBRゴムの100重量部を基準として、典型的には0~5重量部、好ましくは0.5~3重量部の量で加硫性組成物に使用される。
【0088】
他の任意選択の構成要素:
任意選択的に、本発明による加硫性組成物は、更にまた、ゴムの技術分野における当業者によく知られている1種以上の添加剤及び繊維材料を含み得る。これらとしては、充填材活性化剤、加硫戻り安定剤、光安定剤、オゾン劣化防止剤、加工補助剤、離型剤、可塑剤、鉱油、粘着性付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、樹脂、増量剤、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、テフロン(登録商標)(後者は、好ましくは、粉末形態で)、加硫遅延剤、ガラスの強化部材(繊維)、コード、布地、ポリエステル及び天然繊維製品の繊維、不飽和カルボン酸の塩、例えばジアクリル酸亜鉛(ZDA)、メタクリル酸亜鉛(ZMA)及び亜鉛ジメチルアクリル酸亜鉛(ZDMA)、液体アクリレート、更なるゴム又はゴム産業において公知である他の添加剤(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,VCH Verlagsgesellschaft mbH,D-69451 Weinheim,1993,vol A 23“Chemicals and Additives”,p.366-417)が挙げられる。
【0089】
有用な充填材活性化剤としては、とりわけ、有機シラン、例えばビニルトリメチルオキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-シクロヘキシル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン又は(オクタデシル)メチルジメトキシシランが挙げられる。更なる充填材活性化剤は、例えば、トリエタノールアミン及び74~10,000g/molの分子量を有するエチレングリコールなどの表面活性物質である。充填材活性化剤の量は、典型的には、HNBRの100重量部を基準として0~10重量部である。
【0090】
更なるゴムは、任意選択的に、加硫性組成物の総重量を基準として、30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下の量で存在し得る。好ましい更なるゴムは、エチレン-酢酸ビニルポリマー(EVM)である。
【0091】
添加剤と繊維材料との総量は、典型的には、ニトリルゴムの100重量部を基準として1~300重量部の範囲にある。
【0092】
本発明の好ましい実施形態において、加硫性組成物は、
(a)100重量部のHNBRゴムと、
(b)1~15重量部、好ましくは1~12.5重量部、より好ましくは2~12.5重量部、最も好ましくは5~10部のポリアミドと、
(c)0.1~20重量部の過酸化物架橋剤と、
(d)0~300重量部の明色充填材と、
(e)0~5重量部の老化安定剤と
を含有する。
【0093】
本発明の特に好ましい実施形態において、加硫性組成物は、
(a)100重量部のHNBRゴムと、
(b)1~15重量部、好ましくは1~12.5重量部、より好ましくは2~12.5重量部、最も好ましくは5~10部のポリアミドと、
(c)0.5~10重量部の過酸化物架橋剤と、
(d)10~120重量部の明色充填材と、
(e)0.5~3重量部の老化安定剤と
を含有する。
【0094】
HNBRゴムをベースとする加硫性組成物の製造方法
本発明は、更に、HNBRゴム(a)、ポリアミド(b)及び過酸化物架橋剤(c)と、任意選択的に明色充填材(d)及び老化安定剤(e)と、任意選択的に存在する更なる構成要素とを混合することによるHNBRゴムをベースとする加硫性組成物の製造方法を提供する。この混合操作は、ポリアミドの融点を達成できるような、十分に高い温度を確立することができる、標準的な混合装置、例えば内部ミキサー、バンバリー(Banbury)ミキサー又はローラーで達成することができる。計量供給添加の順番は、プロセスAにおいて記載されるように達成される。
【0095】
2つの可能な手順上の変形が、例として本明細書で以下に提示される:
【0096】
プロセスA:内部ミキサーにおけるPA/HNBR混合物の製造
互いに噛み合う回転子ジオメトリーを有する内部ミキサーが好ましい。
【0097】
使用前に、ポリアミドは、80℃で16h貯蔵される。開始時に、内部ミキサーは、ポリアミドを装入される。好適な混合期間後に、HNBRゴム及び老化安定剤が添加される。混合は、混合物が少なくとも230℃の領域の温度で好適な時間とどまるという条件で、温度制御下に達成される。更なる好適な混合期間後に、任意選択的に充填材、白色顔料(例えば二酸化チタン)、染料及び他の加工活性体などの、更なる混合物構成成分が添加される。更なる好適な混合期間後に、内部ミキサーがガス抜きされ、シャフトがきれいにされる。更なる好適な期間後に、内部ミキサーを空にして加硫性混合物を得る。好適な期間は、2、3秒~2、3分を意味すると理解される。架橋化学物質は、とりわけ混合が高められた混合温度で行われる場合、ローラー上で別個のステップに組み込まれるか、内部ミキサーに直接一緒に添加されるかのどちらかである。この場合は、混合温度が架橋化学物質の反応温度よりも十分に下であることが確実にされなければならない。混合物は、このようにして、(全ての構成要素の完全な添加で)方法Aによって完全に製造することができるか、或いは方法Bと組み合わせた(架橋化学物質の添加なしの)方法Aによって製造することができる。方法AとBとの組み合わせが好ましい。
【0098】
このようにして製造された加硫性混合物は、お決まりの方法で、例えばムーニー粘度によって、ムーニースコーチによって又はレオメーター試験によって評価することができる。
【0099】
プロセスB:ローラー上での製造
ローラーが混合装置として用いられる場合、方法Aによって製造されたHNBRゴム-PA混合物は、先ず、ローラーに適用される。均一なミルドシートが形成されるとすぐに、充填材、可塑剤及び、架橋化学物質を除いて他の添加剤が添加される。全ての構成要素の組み込み後に、架橋化学物質が添加され、組み込まれる。混合物は、次に、右に3回及び左に3回切込みを入れられ、5回にわたってひっくり返される。所望の試験方法に従って、完成ミルドシートが、所望の厚さまで転がされ、更なる加工にかけられる。
【0100】
HNBRゴムをベースとする加硫物の製造方法
本発明は、更に、構成要素(a)、(b)、(c)、任意選択的に(d)及び任意選択的に(e)並びに任意選択的に更なる構成要素を含む加硫性組成物が、好ましくは成形プロセスにおいて、及びより好ましくは100℃~250℃の範囲の温度で、より好ましくは120℃~250℃の範囲の温度、最も好ましくは130℃~250℃の範囲の温度で、加硫にかけられることを特徴とする、好ましくは成形品としての、本発明による加硫物の製造方法を提供する。このために、加硫性組成物は、カレンダー、ロール又は押出機での更なる加工にかけられる。前もって形成されたマスは、次に、プレス、オートクレーブ、ホットエア系において又は自動マット加硫系(「Auma」)と呼ばれるものにおいて加硫され、好ましい温度は、100℃~250℃の範囲に、120℃~250℃の範囲の特に好ましい温度、及び130℃~250℃の範囲の非常に特に好ましい温度にあることが分かった。加硫時間は、典型的には、1分~24時間、好ましくは2分~1時間である。加硫物の形状及びサイズに応じて、完全な加硫を達成するために再加熱による第2加硫が必要であり得る。
【0101】
本発明は、更に、本発明による加硫性組成物をベースとする、このようにして得られる加硫物を提供する。
【0102】
本発明は、また、成形品の製造のための、好ましくはベルト、ガスケット、カバーパネル、ローラー、履物構成部品、ホース、減衰要素、固定子、ケーブルシース及びパッカーエレメント、より好ましくはベルト及びガスケットからなる群から選択される成形品の製造のための本発明による加硫性組成物をベースとする加硫物の使用を提供する。
【0103】
本発明は、こうして、ベルト、ガスケット、カバーパネル、ローラー、履物構成部品、ホース、減衰要素、固定子、ケーブルシース及びパッカーエレメント、より好ましくはベルト及びガスケットから好ましくは選択される、本発明による加硫性組成物をベースとする成形品としての加硫物を提供する。鋳造、射出成形又は押出方法などの、このために例として用いることができる方法、及び対応する射出成形装置又は押出機は、当業者に十分に周知である。これらの成形品の製造において、本発明による加硫性組成物を、当業者に公知であり、そして慣習上の技術知識を用いて好適に選択されなければならない前述の標準的な補助剤、例えば充填材活性化剤、加硫促進剤、架橋剤、オゾン劣化防止剤、加工油、増量剤油、可塑剤、活性化剤又はスコーチ防止剤で補完することが可能である。
【0104】
本発明の特定の利点は、HNBRゴムをベースとする本発明による加硫性組成物が、改善されたホットエア抵抗を有する、すなわち、引張強さ及び/又は破断点伸びの小さい変化を有する加硫物の製造に好適であることである。
【実施例0105】
試験方法:
引張試験のために、2mmシートを180℃での加硫性混合物の加硫によって製造した。ダンベル形状の試験検体をこれらのシートから打ち抜き、引張強さ及び伸びをDIN 553504に従って測定した。
【0106】
硬度は、DIN-ISO 7619に従ってデュロメーターで測定した。
【0107】
圧縮永久歪み(CS)は、DIN ISO 850 Part Aに従って測定した。
【0108】
加硫物の老化特性は、DIN 53508に従って測定した。
【0109】
以下の物質を実施例において使用した:
以下の化学物質は、その都度明記される会社から市販製品として購入したか又は明記される会社の生産プラントに由来する。
【0110】
加硫性組成物に使用される物質:
Therban(登録商標)3907 HNBRゴム;39±1.5重量%のアクリロニトリル(ACN)、残存二重結合含有量(RDB)≦0.9%;ムーニー粘度 70MU;揮発性物質≦0.5重量%(ARLANXEO)
Therban(登録商標)LT 2007 HNBRゴム(アクリレートターポリマー);21±1.5重量%のアクリロニトリル(ACN)、残存二重結合含有量(RDB)≦0.9%;ムーニー粘度 74MU;揮発性物質≦0.49重量%(ARLANXEO)
Durethan(登録商標)B 31 F PA6ポリアミド(LANXESS)
Perkadox(登録商標)14-40 シリカ上に担持されたジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン40%;過酸化物架橋剤(Akzo Nobel Polymer Chemicals)
Vulkasil(登録商標)A1 11.3±0.7のDIN ISO 787/9に従って測定される水中(水中5重量%)のpH、5.5±1.5のDIN ISO 787/2に従って測定される揮発性成分の含有量及び65±15のISO 9277に従って測定される表面積(BET)を有するケイ酸アルミニウムナトリウム(LANXESS)
Aktifit(登録商標)VM 活性化Silfit(登録商標)Z91(=粒子状シリカと薄板状カオリナイトとの天然混合物);明色充填材(Hoffmann Mineral)
Polestar(登録商標)200R 6.5±0.5のpH及び8.5m2/gの表面積(BET)を有する、55重量%のSiO2、41重量%のAl2O3を含有するか焼カオリン;明色充填材(Imerys)
Vulkanox(登録商標)HS/LG 2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンポリマー(TMQ);レンズ状顆粒(LG);老化安定剤(LANXESS)
Luvomaxx(登録商標)CDPA 4,4’-ビス(1,1-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン;老化安定剤(Lehmann und Voss)
Antilux(登録商標)110 パラフィンと適度に幅広い分子量分布のマイクロワックスとの混合物;オゾン劣化防止剤ワックス(LANXESS)
Vulkanox(登録商標)MB2 4-及び5-メチル-2-メルカプトベンズイミダゾール;老化安定剤(LANXESS)
Uniplex(登録商標)546 トリオクチルトリメリテート(TOTM);可塑剤(LANXESS)
Maglite(登録商標)DE 酸化マグネシウム(CP Hall)
炭酸リチウム Li2CO3
次亜リン酸ナトリウム*H2O NaH2PO2老化安定剤
TAIC 70% KETTLITZ-TAIC 70;架橋助剤;(Kettlitz-Chemie)
【0111】
加硫性組成物の製造
使用前に、ポリアミドを80℃で16h貯蔵した。開始時に、内部ミキサーにポリアミドを装入した。添加前に、内部ミキサーを200℃に加熱し、添加後に、回転子速度を調整することによって、少なくともポリアミドの溶融温度、このケースでは230℃にした。1分後に、HNBRゴム及び老化安定剤を添加した。混合は、混合物が少なくとも230℃の領域の温度で10分間とどまるという条件で、温度制御下に達成した。その後、架橋助剤及び過酸化物を除いて更なる混合物構成成分を添加した。1分後に、内部ミキサーをガス抜きし、シャフトをきれいにした。その後、内部ミキサーを空にして混合物を得た。
【0112】
混合物を室温に冷却した後、それをローラー単位装置に適用した。逆回転ローラーの直径は200mm、長さは450mmであった。ローラーを40℃に予熱した。これらが1:1.1の摩擦で動作するように、フロントローラーの速度は20rpmであり、リアローラーのそれは22rpmであった。均質なミルドシートが生成したらすぐに、架橋化学物質を添加し、混ぜ入れた。混合物に、次に、右に3回及び左に3回切込みを入れ、5回にわたってひっくり返した。所望の試験方法に従って、完成ミルドシートを所望の厚さまで転がし、更なる加工にかけた。
【0113】
加硫物の製造
上記方法によって製造された加硫性混合物の加硫特性は、移動ダイレオメーター(MDR)を用いて突き止める。測定は、180℃で行い、スコーチ時間、t95及びSmaxなどの、当業者によく知られている指数を突き止める。
【0114】
前述の加硫性組成物を熱処理にかける。この処理の継続時間は、MDRにおいて突き止められたt95に対応する。
【0115】
本発明による加硫性組成物を、好適な金型中で180℃の温度にかける(圧縮加硫)。
【0116】
本発明による加硫性組成物の架橋の過程で、過酸化物化合物(c)は、使用された水素化ニトリルゴム(a)間の及び水素化ニトリルゴム(a)とのフリーラジカル架橋をもたらす。
【0117】
「phr」単位で表に示される全ての数字は、ゴムの百部当たりの部を意味する。HNBRを含むエラストマー構成要素の全ての合計は、100phrに相当する。
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
本発明による加硫物は、5~10phrのポリアミド(b)を含有し、及び2又は3週間(336時間又は504時間)の170℃でのホットエア老化後に、引張強さのより小さい変化及び/又は破断点伸びのより小さい変化を有する。ポリアミドなしの加硫物(V1又はV B1)は、ポリアミドありの加硫物(P1、P2、P3、P4、P5、P6、並びにP4.1、P4.2及びP B1)よりも大きい引張強さ及び破断点伸びの変化を有する。
【0129】
15phr以上のポリアミドを有する加硫物(V2)は、ポリアミドなしの加硫物(V1)よりも小さい変化を有する。しかしながら、引張強さの若しくは破断点伸びの又は両方の変化は、5~15phr未満のみのポリアミドありの本発明による加硫物よりもはるかに大きく、それ故に悪い。
【0130】
170℃で504時間のホット老化後に、10phrのポリアミドありの加硫物P4は、ポリアミドなしの比較加硫物(V1)及び多すぎるポリアミドありの加硫物(V2)と比較して、破断点伸びの最小の変化(ΔEB)及び引張強さの最小の変化(ΔTS)の両方を有する。
【0131】
180℃で336時間のホット老化後に、1~15phrのポリアミドありの本発明の加硫物P1~P6は、ポリアミドなしの加硫物(V1)及び15phr超のポリアミドありの加硫物(V2)よりも小さい破断点伸びの変化(ΔEB)及び小さい引張強さの変化(ΔTS)を有する。
【0132】
加硫物V B1とP B1との比較は、アクリレート含有HNBRターポリマーをベースとする加硫物のケースにおいでさえも、ちょうど7phrの少量のポリアミドの添加が、ホットエア老化のかなりの改善を、とりわけ破断点伸びの及び引張強さの変化の減少をもたらすことを示す。
前記HNBRゴム(a)が、20重量%~40重量%のアクリロニトリル単位と、20重量%~80重量%のブタジエン単位と、0重量%~60重量%の更なる共重合性モノマーとを含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。