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特開2024-5064電源装置およびそれを備えた射出成形機システム、ならびに、射出成形機に駆動電力を供給する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005064
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】電源装置およびそれを備えた射出成形機システム、ならびに、射出成形機に駆動電力を供給する方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20240110BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20240110BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20240110BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20240110BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240110BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/17
H02M7/12 A
H02M3/28 H
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105061
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 啓
【テーマコード(参考)】
4F206
5H006
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
4F206AM20
4F206AP15
4F206AR16
4F206JA07
4F206JL02
4F206JP11
4F206JP13
4F206JP30
4F206JT31
4F206JT32
5H006BB05
5H006CB01
5H006CC01
5H006DB01
5H006DC02
5H006DC05
5H730AA14
5H730AS08
5H730AS17
5H730BB27
5H730CC02
5H730DD03
5H730EE04
5H730EE57
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FD41
5H770BA01
5H770CA01
5H770CA05
5H770DA03
5H770DA22
5H770DA30
5H770DA41
(57)【要約】
【課題】射出成形機に用いられる、バッテリが搭載された電源装置において、射出成形機からの回生動作時にバッテリを保護しながらエネルギの損失を抑制する。
【解決手段】射出成形機100用の電源装置200は、AC/DCコンバータ210と、バッテリ230と、制御装置300とを備える。AC/DCコンバータは、系統電源20からの交流電力を直流電力に変換して直流バス260に供給する。バッテリは、直流バスの直流電力を用いて充電可能である。射出成形機は、サーボモータ151~154と、直流バス260の電力を用いてサーボモータを駆動するサーボアンプ140とを含む。サーボアンプは、サーボモータの回生動作時に、回生電力を直流バスに供給する。制御装置は、サーボモータの回生動作時において、直流バスの電力がバッテリの充電許容電力を上回る場合には、AC/DCコンバータを制御して充電許容電力を超過する電力を系統電源に出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電源からの電力を用いて射出成形機の駆動電力を供給するための電源装置であって、
前記系統電源からの交流電力を直流電力に変換して直流バスに供給するように構成された第1電力変換装置と、
前記直流バスの直流電力を用いて充電が可能に構成されたバッテリと、
前記第1電力変換装置を制御するための制御装置とを備え、
前記射出成形機は、電動機、および、前記直流バスの電力を用いて前記電動機を駆動するための駆動装置を含み、
前記駆動装置は、前記電動機の回生動作時に、発生した回生電力を前記直流バスに供給するように構成されており、
前記制御装置は、前記電動機の回生動作時において、前記直流バスの電力が前記バッテリの充電許容電力を上回る場合には、前記第1電力変換装置を制御して、前記充電許容電力を超過する電力を前記系統電源に出力する、電源装置。
【請求項2】
前記第1電力変換装置は、複数のスイッチング素子を含む、フルブリッジタイプのAC/DCコンバータであり、
前記制御装置は、
前記直流バスの電圧が所定の目標電圧になるように、前記直流バスを流れる電流を制御するように構成された電流制御回路と、
前記第1電力変換装置に含まれるスイッチング素子の駆動信号を生成するように構成された第1駆動制御回路とを含み、
前記電流制御回路は、前記バッテリの定格電流に基づいて上限値が定められたリミッタ回路を含み、
前記電流制御回路は、
前記直流バスの電圧および前記目標電圧から目標電流値を演算し、
前記リミッタ回路通過後の前記目標電流値を、前記バッテリの充電電流指令値として設定し、
前記目標電流値と前記充電電流指令値との差分を、前記第1駆動制御回路の指令値として設定し、
前記第1駆動制御回路は、前記指令値を用いて前記第1電力変換装置の駆動信号を生成する、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記直流バスの直流電力を用いて前記バッテリを充電するとともに、前記バッテリに蓄えらえた電力を変換して前記直流バスに供給することが可能に構成された第2電力変換装置をさらに備える、請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記第2電力変換装置は、絶縁型のDAB(Dual Active Bridge)コンバータを含む、請求項3に記載の電源装置。
【請求項5】
前記第2電力変換装置は、
各々が複数のスイッチング素子を含んで構成された第1変換回路および第2変換回路と、
前記第1変換回路と前記第2変換回路とに接続された絶縁トランスとを含み、
前記制御装置は、前記第1変換回路におけるスイッチング素子の駆動信号と、前記第2変換回路におけるスイッチング素子の駆動信号との間の位相差を制御することによって、前記バッテリと前記直流バスとの間の電力の授受を制御する第2駆動制御回路を含む、請求項3に記載の電源装置。
【請求項6】
前記電源装置は、自然エネルギを用いた発電装置からの直流電力を受電可能に構成されている、請求項1に記載の電源装置。
【請求項7】
前記発電装置は、前記直流バスに接続されている、請求項6に記載の電源装置。
【請求項8】
前記発電装置は、前記バッテリに接続されている、請求項6に記載の電源装置。
【請求項9】
前記第1電力変換装置は、複数のスイッチング素子を含む、フルブリッジタイプのAC/DCコンバータであり、
前記制御装置は、
前記直流バスの電圧が所定の目標電圧になるように、前記直流バスを流れる電流を制御するように構成された電流制御回路と、
前記第1電力変換装置に含まれるスイッチング素子の駆動信号を生成するように構成された第1駆動制御回路とを含み、
前記電流制御回路は、前記バッテリの定格電流および前記発電装置から供給される発電電流に基づいて上限値が定められたリミッタ回路を含み、
前記電流制御回路は、
前記直流バスの電圧および前記目標電圧から目標電流値を演算し、
前記リミッタ回路通過後の前記目標電流値を、前記バッテリの充電電流指令値として設定し、
前記目標電流値と前記充電電流指令値との差分を、前記第1駆動制御回路の指令値として設定し、
前記第1駆動制御回路は、前記指令値を用いて前記第1電力変換装置の記駆動信号を生成する、請求項8に記載の電源装置。
【請求項10】
射出成形機と、
系統電源からの電力を用いて前記射出成形機の駆動電力を供給するための電源装置とを備え、
前記電源装置は、
前記系統電源からの交流電力を直流電力に変換して直流バスに供給するように構成された第1電力変換装置と、
前記直流バスの直流電力を用いて充電が可能に構成されたバッテリと、
前記第1電力変換装置を制御するための制御装置とを含み、
前記射出成形機は、電動機、および、前記直流バスの電力を用いて前記電動機を駆動するための駆動装置を含み、
前記駆動装置は、前記電動機の回生動作時に、発生した回生電力を前記直流バスに供給するように構成されており、
前記制御装置は、前記電動機の回生動作時において、前記直流バスの電力が前記バッテリの充電許容電力を上回る場合には、前記第1電力変換装置を制御して、前記充電許容電力を超過する電力を前記系統電源に出力する、射出成形機システム。
【請求項11】
以下のステップを含む、系統電源からの電力を用いて電源装置から射出成形機に駆動電力を供給する方法:
前記電源装置は、
前記系統電源からの交流電力を直流電力に変換して直流バスに供給するように構成された第1電力変換装置と、
前記直流バスの直流電力を用いて充電が可能に構成されたバッテリとを含み、
前記射出成形機は、電動機、および、前記直流バスの電力を用いて前記電動機を駆動するための駆動装置を含み、
前記駆動装置は、前記電動機の回生動作時に、発生した回生電力を前記直流バスに供給するように構成されており、
(a)前記電動機が回生動作中であるか否かを判定するステップ;
(b)前記直流バスの電力および前記バッテリの充電許容電力の情報を取得するステップ;
(c)前記電動機の回生動作時において、前記直流バスの電力が前記充電許容電力を上回るか否かを判定するステップ;
(d)前記直流バスの電力が前記充電許容電力を上回る場合に、前記第1電力変換装置を制御して、前記充電許容電力を超過する電力を前記系統電源に出力するステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置およびそれを備えた射出成形機システム、ならびに、射出成形機に駆動電力を供給する方法に関し、より特定的には、バッテリを有する射出成形機用電源装置における電力制御に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-008397号公報(特許文献1)および特開2017-217836号公報(特許文献2)には、射出成形機のサーボアンプへの電力供給ラインに蓄電装置(バッテリ)が設けられた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-008397号公報
【特許文献2】特開2017-217836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなバッテリを備えた射出成形機においては、外部電源(たとえば、系統電源)からの交流電力を変換して得られた直流電力は、射出成形機を駆動するための駆動電力、および、バッテリを充電するための充電電力として用いられる。
【0005】
一方で、射出成形機において各装置の駆動にモータが用いられる場合に、当該モータが回生動作を行なうと、モータで発電された回生電力が電源装置の直流バスに供給される。このとき、射出成形機から供給される電力が、バッテリの充電許容電力を超過してしまうと、過電圧となってバッテリの故障の要因になる可能性がある。また、このような超過電力を、放熱抵抗などで消費させると、エネルギを無駄に消費してしまうことになってしまう。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、射出成形機に用いられる、バッテリが搭載された電源装置において、射出成形機からの回生動作時に、バッテリを保護しながらエネルギの損失を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示における射出成形機用の電源装置においては、射出成形機に含まれる電動機の回生動作の際に、電源装置の直流バスの電力がバッテリの充電許容電力を上回る場合には、当該充電許容電力を超過する電力を系統電源に出力する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る電源装置によれば、射出成形機に用いられる、バッテリが搭載された電源装置において、射出成形機からの回生動作時に、バッテリを保護しながらエネルギの損失を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に従う電源装置が用いられる射出成形機システムの全体概略図である。
図2図1における射出成形機の構成を説明するための図である。
図3】電源装置を説明するための機能ブロック図である。
図4】実施の形態1の射出成形機システムの電源回路構成を説明するための図である。
図5】電源装置における制御回路を説明するための第1図である。
図6】電源装置における制御回路を説明するための第2図である。
図7】電源装置における制御回路を説明するための第3図である。
図8図7の位相シフタを説明するための図である。
図9】DABコンバータの動作を説明するためのタイムチャートである。
図10】実施の形態1における回生時電力制御の詳細を説明するためのフローチャートである。
図11】バッテリ充電時の第1制御例の制御回路を説明するための第1図である。
図12】バッテリ充電時の第1制御例の制御回路を説明するための第2図である。
図13】バッテリ充電時の第2制御例の制御回路を説明するための図である。
図14】実施の形態2の射出成形機システムの電源回路構成を説明するための図である。
図15】実施の形態2の電源装置における制御回路を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
[実施の形態1]
<射出成形機システムの構成>
図1は、実施の形態1における電源装置200が用いられる射出成形機システム10の全体概略図である。図1を参照して、射出成形機システム10は、射出成形機100と、射出成形機100に電源電力を供給するための電源装置200とを含む。
【0012】
電源装置200は、バッテリ230を含んでいる。バッテリ230は、たとえば系統電源20などの外部電源から受電した電力の一部によって充電される。電源装置200は、外部電源から受電した電力および/またはバッテリ230に蓄えられた電力を射出成形機100へ出力する。射出成形機100においては、電源装置200から供給された電力を用いて、ヒータおよびサーボモータ(図2参照)などの機器が駆動される。
【0013】
また、外部電源として、系統電源20に代えてあるいは加えて、自然エネルギ発電装置30を用いてもよい。図1の例においては、自然エネルギ発電装置30は、太陽光発電装置31、および、DC/DCコンバータ35を含む。DC/DCコンバータ35は、太陽光発電装置31によって発電された直流電力を所定の電圧に調整して、電源装置200へ供給する。なお、自然エネルギ発電装置30には、自然エネルギを用いて発電する装置であれば、上記の太陽光発電装置31に代えてあるいは加えて、他の形態の発電装置が含まれていてもよい。たとえば、風力発電装置、水力発電装置、地熱発電装置、あるいは、潮力発電装置などが、自然エネルギ発電装置30に含まれていてもよい。
【0014】
<射出成形機の構成>
図2は、図1における射出成形機100の構成を説明するための図である。なお、説明の便宜上、射出成形機100が配置される床面をXY平面とし、当該床面に垂直な方向をZ軸方向とする。Z軸の正方向を上面側または上方、負方向を下面側または下方と称する場合がある。なお、実施の形態1における射出成形機100は、横型の射出成形機として示されているが、横型に限られず、竪型の射出成形機であってもよい。
【0015】
射出成形機100は、金型を型締めするための型締装置110、射出材料を溶融して射出するための射出装置120、操作盤130、および、制御装置140を含んで構成されている。図2においては、型締装置110は、射出装置120に対してX軸の負方向側に配置されている。
【0016】
型締装置110は、ベッド111と、固定盤112と、型締ハウジング113と、可動盤114と、タイバー115と、型締機構116と、金型117,118と、ボールねじ119とを含む。ベッド111は床面に配置されており、その上面に、固定盤112、型締ハウジング113、可動盤114等の機器が搭載されている。
【0017】
固定盤112は、ベッド111上において、射出装置120に近い側(すなわち、X軸の正方向)の端部に固定されている。型締ハウジング113は、ベッド111上におけるX軸の負方向の端部に配置されている。固定盤112と型締ハウジング113とは、複数のバーを含むタイバー115によって連結されている。型締ハウジング113は、ベッド111上において、X軸方向に移動可能である。
【0018】
可動盤114は、ベッド111上において、固定盤112と型締ハウジング113との間に配置されている。可動盤114は、X軸方向に移動可能に構成されている。型締ハウジング113と可動盤114とは、型締機構116によって連結されている。型締機構116はトグル機構を有している。トグル機構には、ボールねじ119が連結されており、型締ハウジング113に配置されるサーボモータ151を駆動して当該ボールねじ119を回転させることによって、型締ハウジング113に対して可動盤114をX軸方向に相対移動させることができる。なお、型締機構116として、油圧によって駆動される直動式のシリンダを用いてもよい。
【0019】
可動盤114および固定盤112には、金型117,118がそれぞれ配置されている。金型117および金型118は、可動盤114と固定盤112との間において互いに対向して配置されている。型締機構116を用いて金型117をX軸方向に移動させることによって、金型117と金型118とを密着させたり、金型117を金型118から離間させたりすることができる。以降の説明においては、金型117および金型118が離間した状態から密着する状態へ移行させる工程を「型締」と称する。また、金型117および金型118が密着している状態から離間した状態へ移行させる工程を「型開」と称する。
【0020】
型締工程によって金型117と金型118とが密着させた状態で、金型内部に溶融材料(樹脂)を充填し、冷却して固化させることによって、所望の形状の製品を成形することができる。製品の成形後、型開工程によって金型117を金型118から離間させた状態で、可動盤114に配置された突出機構(図示せず)を動作させることによって、成形された製品を金型117から取り出すことができる。突出機構は、可動盤114に配置されたサーボモータ152によって駆動される。なお、突出機構を用いて製品を取り出す工程を「突出」工程と称する。
【0021】
射出装置120は、基台121と、加熱シリンダ122と、駆動装置124と、ホッパ125と、ノズルタッチ装置127と、温度センサ128とを含む。基台121は、ベッド111のX軸の正方向側の床面に配置され、その上面に駆動装置124が搭載されている。駆動装置124には、サーボモータ153,154が配置されている。
【0022】
駆動装置124には、X軸方向に延在する加熱シリンダ122が配置されている。加熱シリンダ122は、内部を加熱するためのヒータ(図示せず)と、スクリュ123と、射出ノズル126とを含む。スクリュ123は、駆動装置124内のサーボモータ153によって駆動され、X軸方向を回転軸として回転可能に構成される。また、スクリュ123は、サーボモータ154によって駆動され、X軸方向に移動可能に構成されている。射出ノズル126は、加熱シリンダ122における型締装置110側の端部(すなわち、X軸の負方向の端部)に配置されている。加熱シリンダ122は、ホッパ125から投入されたビーズ状の樹脂材料を加熱溶融し、スクリュ123を用いて混練することによって溶融材料を生成する。このように、樹脂材料を溶融する工程を「可塑化」工程と称する。
【0023】
ノズルタッチ装置127は、たとえば油圧シリンダを用いた機構、あるいは、ボールねじを用いた機構によって構成されており、駆動装置124と、型締装置110の固定盤112とを連結している。ノズルタッチ装置127がボールねじを用いた機構によって構成されている場合には、ノズルタッチ装置127は、駆動装置124によって駆動され、駆動装置124および加熱シリンダ122をX軸方向に移動させる。ノズルタッチ装置127によって、射出ノズル126を型締装置110における金型118のスプルーブッシュに接触させ、射出ノズル126から溶融材料を射出することによって、金型117,118のキャビティ内に溶融材料が充填される。サーボモータ154は、加熱シリンダ122内のスクリュ123をX軸の負方向に移動させることによって溶融材料に圧力を付与し、金型117,118内への溶融材料の注入、および、注入後の溶融材料の圧力を一定に保持する。
【0024】
なお、ノズルタッチ機構の構成については、上記のように固定盤112と駆動装置124との間に配置されたボールねじによって射出装置全体を移動させる構成には限らず、他の構成であってもよい。たとえば、装置フレームと加熱シリンダ後部の固定部材とをボールねじを用いて連結し、加熱シリンダ自体を金型方向へ移動させる構成であってもよい。あるいは、射出装置が搭載されたスライドベースと装置フレームとをボールねじを用いて連結し、スライドベースとともに射出装置を移動させて射出ノズルを金型へ接触させる構成であってもよい。
【0025】
なお、金型117,118内に溶融材料を注入する工程を「射出」工程と称する。また、射出工程後、金型117,118内に充填された溶融材料を一定圧力に保持して冷却する工程を「保圧」工程と称する。
【0026】
温度センサ128は、加熱シリンダ122における射出ノズル126の近傍に配置されている。温度センサ128は、加熱シリンダ122内部の溶融材料の温度を検出し、制御装置140へ出力する。制御装置140は、温度センサ128の検出値に基づいてヒータを制御して、溶融材料の温度を所望の温度に調整する。
【0027】
保圧工程が完了すると、型開工程および突出工程が実行されて、成形された製品が取り出される。
【0028】
射出成形機100は、型締工程、射出工程、保圧工程、可塑化工程、型開工程および突出工程をサイクリックに繰り返し実行することによって、製品を連続的に形成することができる。
【0029】
制御装置140は、基台121の内部に格納されている。制御装置140は、CPU(Central Processing Unit)141と、メモリ142と、サーボモータ151~154を駆動するためのサーボアンプ143とを含む。制御装置140は、射出成形機100に配置された各種センサの検出値を取得し、射出成形機100を統括的に制御する。
【0030】
操作盤130は、オペレータが射出成形機100を操作するための機器であり、液晶ディスプレイのような表示装置、および、キーボードなどの入力装置を含む。操作盤130は制御装置140に接続されており、射出成形機100の状態を取得して表示したり、入力装置からのユーザ操作信号を制御装置140に出力したりすることができる。操作盤130は、表示装置および入力装置が一体化されたタッチパネルであってもよい。また、操作盤130は、射出成形機100のベッド111あるいは基台121に取り付けられていてもよいし、射出成形機100とは独立した位置に配置されていてもよい。
【0031】
<電源装置の構成>
次に図3を用いて、図1における電源装置200の詳細を説明する。図3を参照して、電源装置200は、AC/DCコンバータ210と、DC/DCコンバータ220と、バッテリ230と、インバータ240と、電圧センサ270と、制御装置300とを含む。また、制御装置300は、CPU310およびメモリ320を含む。
【0032】
AC/DCコンバータ210は、外部電源である系統電源20から供給された交流電力を直流電力に変換して直流バス260に供給する。AC/DCコンバータ210によって変換された直流電力は、バッテリ230を充電するための充電電力、および/または、射出成形機100を駆動するための駆動電力として用いられる。また、直流バス260には、上述の自然エネルギ発電装置30からの電力も供給される。
【0033】
DC/DCコンバータ220は、直流バス260の直流電力をバッテリ230の充電に適した電圧に変換する。バッテリ230は、たとえばリチウムイオン電池あるいは鉛蓄電池などの充放電が可能な二次電池である。バッテリ230は、DC/DCコンバータ220から供給される直流電力を用いて充電される。バッテリ230に蓄えられた電力は、射出成形機100の駆動電力として用いられる。この場合、DC/DCコンバータ220は、バッテリ230からの直流電力の電圧を調整して直流バス260へ供給する。すなわち、DC/DCコンバータ220は、電力を双方向に変換することができる双方向型のDC/DCコンバータである。図4で後述するように、実施の形態1におけるDC/DCコンバータ220は、絶縁型のDAB(Dual Active Bridge)コンバータである。
【0034】
直流バス260は、射出成形機100に接続されている。直流バス260から射出成形機100に供給される直流(DC)電力は、たとえば、射出成形機100におけるサーボモータ151~154の駆動電力として用いられる。電圧センサ270は、直流バス260の電圧を検出して制御装置300に出力する。
【0035】
インバータ240はDC/ACコンバータであり、直流バス260に接続されている。インバータ240は、直流バス260の直流電力を交流電力に変換して、射出成形機100へ供給する。インバータ240によって変換された交流(AC)電力は、たとえば、射出成形機100におけるヒータの駆動電力、および/または、制御電源などに用いられる。
【0036】
制御装置300は、電源装置200に含まれる各機器を統括的に制御する。より具体的には、制御装置300は、系統電源20から供給される交流電力の電圧Vおよび電流ILSをAC/DCコンバータ210から取得する。また、制御装置300は、バッテリ230から、バッテリ230の端子間電圧Vbat、および、バッテリ230に流入/流出する電流ip_batを取得する。さらに、制御装置300は、電圧センサ270から、直流バス260の直流電圧VDCを取得する。そして、制御装置300は、これらの情報に基づいて、AC/DCコンバータ210の制御信号CON1、DC/DCコンバータ220の制御信号CON2、およびインバータ240の制御信号CON3を生成して、対応する機器へ出力する。
【0037】
このような構成の射出成形機システム10(図1参照)においては、系統電源20から供給される交流電力および/または自然エネルギ発電装置30で発電された直流電力を用いてバッテリ230が充電されるとともに、系統電源20、自然エネルギ発電装置30およびバッテリ230からの電力を用いて射出成形機100が駆動される。
【0038】
一方で、射出成形機100においては、図2で説明したように、型締装置110および射出装置120の各機器の駆動にはサーボモータ151~154が用いられる。後述するように、サーボモータ151~154を駆動するサーボアンプ143には、PWM型のインバータが用いられており、減速時のような回生動作時には、サーボモータ151~154が発電機として機能する。サーボモータで発電された電力は、射出成形機100内の他のサーボモータの駆動にも用いられるが、射出成形機100によって消費しきれない電力は、結果的に、インバータを介して直流バス260(図3参照)に供給される。
【0039】
この場合、図3に示されているように、直流バス260に供給された電力は、バッテリ230の充電にのみ使用されることになる。しかしながら、バッテリ230には、通常、装置保護のために充電許容電力が定められており、当該充電許容電力を超える電力を充電することはできない。そのため、射出成形機100の回生動作時において、直流バス260に供給される電力がバッテリ230の充電許容電力を超える場合に、余剰の電力を処理できないと、過電圧となって機器の劣化あるいは故障の要因となる可能性がある。特に、自然エネルギ発電装置30(太陽光発電装置)の発電タイミングと、サーボモータの回生タイミングとが重なった場合には、直流バス260に供給される電力がバッテリ230の充電許容電力を超過しやすくなる。
【0040】
余剰電力を放熱抵抗によって熱として消費することも考えられるが、エネルギを無駄に消費してしまうことになるので、省エネルギの観点からは推奨されない。
【0041】
そこで、本実施の形態1においては、上記のように、直流バス260に供給される電力がバッテリ230の充電許容電力を超える場合には、AC/DCコンバータ210をインバータとして動作させることによって余剰電力を系統電源へ戻す「バッテリ保護制御」を実行する。このバッテリ保護制御によって、射出成形機100の回生動作の際に、バッテリ230を保護しながらエネルギの損失を抑制する。
【0042】
<回路構成の詳細>
以下においては、本実施の形態1におけるバッテリ保護制御を実現するための回路構成の詳細について説明する。
【0043】
(電気回路の説明)
図4は、本実施の形態1の射出成形機システム10の電気回路構成の詳細を示す図である。図3で説明したように、系統電源20からの交流電力がAC/DCコンバータ210によって直流電力に変換され、直流バス260に供給される。また、自然エネルギ発電装置30において太陽光発電装置31によって発電された直流電力は、DC/DCコンバータ35によって所定の電圧に変換されて直流バス260に供給される。直流バス260に供給された電力は、射出成形機100に駆動電力として供給されるとともに、DC/DCコンバータ220を介してバッテリ230を充電するために用いられる。
【0044】
AC/DCコンバータ210は、フィルタ回路211および変換回路212を含む、フィルタ回路211は、各相において、直列に接続されたインダクタL,Lと、インダクタLおよびインダクタLの間において各相間に接続されたキャパシタCとを含む。フィルタ回路211によって、系統電源20から供給される交流電源における高周波のノイズ成分が除去される。
【0045】
変換回路212は三相フルブリッジタイプのPWM型整流器であり、直流バス260の電源ラインPL1,NL1間に配置されたスイッチング素子Q~Qを含む。電源ラインPL1,NL1間に直列に接続されたスイッチング素子Q,Qの接続ノードには、フィルタ回路211のa相が接続される。電源ラインPL1,NL1間に直列に接続されたスイッチング素子Q,Qの接続ノードには、フィルタ回路211のb相が接続される。電源ラインPL1,NL1間に直列に接続されたスイッチング素子Q,Qの接続ノードには、フィルタ回路211のc相が接続される。変換回路212は、制御装置300からの制御信号CON1によって制御され、フィルタ回路211を通過した交流電源を整流して、直流バス260に直流電力を供給する。また、変換回路212はインバータとしても機能することができ、直流バス260の直流電力を変換して、系統電源20へ交流電力を供給することもできる。
【0046】
また、図4には示されていないが、フィルタ回路211には、AC/DCコンバータ210側の各相の電流を検出するための電流センサ、および、系統電源20側の各線間電圧を検出するための電圧センサが配置されている。これらのセンサによって検出された電流値iLSa,iLSb、および、電圧値VSab,VSbcは、制御装置300へ出力される。なお、三相交流電源は、各相の位相が互いに120°ずれているため、上記の電流値および電圧値は、2つの相電流および2つの線間電圧を検出すればよい。
【0047】
直流バス260において、電源ラインPL1,NL1間には、平滑用のキャパシタCdcが配置される。キャパシタCdcの端子間電圧VDCは、電圧センサ270(図3)によって検出され、制御装置300へと出力される。
【0048】
自然エネルギ発電装置30のDC/DCコンバータ35は、いわゆる昇圧チョッパ回路である。DC/DCコンバータ35は、制御装置300からの制御信号CON2によって制御され、太陽光発電装置31によって発電された直流電力を昇圧して、直流バス260へ供給する。
【0049】
射出成形機100には、図2で説明したように複数のサーボモータが配置されている。各サーボモータには対応するサーボアンプによって駆動される。図4においては、一例として、サーボモータ151,152に対して、サーボアンプ1431,1432がそれぞれ接続された構成が記載されている。各サーボアンプは、三相フルブリッジタイプのインバータを含んでおり、直流バス260に対して並列に接続されている。各サーボアンプは、射出成形機100のCPU141によって制御され、直流バス260からの直流電力を交流電力に変換して、対応するサーボモータを駆動する。
【0050】
DC/DCコンバータ220は、変換回路221と、変換回路221およびバッテリ230の間に配置されたフィルタ回路222とを含む。変換回路221は、双方向タイプのコンバータであり、直流バス260からの直流電力の電圧を変換してバッテリ230を充電するとともに、バッテリ230に蓄えらえた直流電力の電圧を変換して直流バス260へ出力することが可能に構成されている。
【0051】
変換回路221は、上述のように、絶縁型のDABコンバータである。変換回路221は、巻線比がN:Nの絶縁トランスTRと、絶縁トランスTRの一次側および二次側にそれぞれ配置されたブリッジ回路2211,2212を含む。ブリッジ回路2211は、スイッチング素子Q11~Q14を含み、ブリッジ回路2212は、スイッチング素子Q21~Q24を含む。
【0052】
ブリッジ回路2211において、スイッチング素子Q11,Q12は電源ラインPL2,NL2の間に直列に接続されている。同様に、スイッチング素子Q13,Q14は電源ラインPL2,NL2の間に直列に接続されている。スイッチング素子Q11,Q12の接続ノードは、インダクタLを介して絶縁トランスTRの一次巻線の正極側端子に接続されている。スイッチング素子Q13,Q14の接続ノードは、絶縁トランスTRの一次巻線の負極側端子に接続されている。
【0053】
ブリッジ回路2212において、スイッチング素子Q21,Q22は電源ラインPL1,NL1の間に直列に接続されている。同様に、スイッチング素子Q23,Q24は電源ラインPL1,NL1の間に直列に接続されている。スイッチング素子Q21,Q22の接続ノードは、インダクタLを介して絶縁トランスTRの二次巻線の正極側端子に接続されている。スイッチング素子Q23,Q24の接続ノードは、絶縁トランスTRの二次巻線の負極側端子に接続されている。
【0054】
フィルタ回路222は、バッテリ230の正極端子と電源ラインPL2との間に接続されたインダクタLと、電源ラインPL2,NL2の間に接続されたキャパシタCとを含むローパスフィルタである。フィルタ回路222は、変換回路221のスイッチング等によって電源ラインに生じる高周波ノイズを除去するように構成されている。
【0055】
バッテリ230には、バッテリ230の端子間電圧Vbatを検出するための電圧センサ、および、バッテリ230に入出力される電流ip_batを検出するための電流センサが設けられている。
【0056】
DC/DCコンバータ220においては、ブリッジ回路2211のスイッチング素子Q11~Q14の制御パルスと、ブリッジ回路2212のスイッチング素子Q21~Q24の制御パルスとの位相を調整することによって、バッテリ230への充電およびバッテリ230からの放電を制御することができる。
【0057】
<制御回路の説明>
次に、図4に示した制御装置300において実行されるバッテリ保護制御の具体的な制御方法について説明する。なお、以下の制御回路の説明では、図4についても適宜参照するものとする。図5図8は、バッテリ保護制御を説明するための制御回路の機能ブロック図である。図5は、直流バス260を指令電圧に制御するための電流指令値およびバッテリ230の充電電流指令値を算出する電流制御回路400についての機能ブロック図である。図6は、AC/DCコンバータ210におけるスイッチング素子の制御信号を生成する駆動制御回路500についての機能ブロック図である。図7は、電流指令値に基づく、DC/DCコンバータ220におけるスイッチング素子の制御信号を生成する駆動制御回路600についての機能ブロック図である。図8は、図7における位相シフタ630の詳細な回路についての機能ブロック図である。
【0058】
(電流制御回路)
まず、図5の電流制御回路400について説明する。図5を参照して、電流制御回路400は、減算部410,460と、PI制御部420と、リミッタ回路430と、乗算部440と、除算部450とを含む。
【0059】
減算部410において、予め定められた直流バス260の電圧指令値VDC から、電圧センサ270で検出された直流バス260の電圧VDCが差し引かれる。PI制御部420は、減算部410で算出された差電圧にPI(比例積分)制御を施すことによって、電流指令値iを算出する。
【0060】
そして、リミッタ回路430において、PI制御部420によって算出された電流指令値iが、バッテリ230の充電許容電流ip_limによって制限される。充電許容電流ip_limは、以下の式(1)によって定められる。
【0061】
p_lim=ibat_rating×Vbat/Veff (1)
ここで、ibat_ratingはバッテリの定格電流値を示しており、Vbatはバッテリ電圧を示しており、Veffは交流電力における実効電圧を示している。リミッタ回路430によって、電流指令値iが充電許容電流ip_lim以内であれば、出力される指令値ip_sub =iとなる。一方で、電流指令値iが充電許容電流ip_limを超えていれば、指令値ip_sub =ip_limとなる。
【0062】
リミッタ回路430通過後の指令値ip_sub は、乗算部440において、系統電源20からの三相交流電圧の実効値と掛け合わされることによって、バッテリ230の充電電力指令値Pbat が算出される。その後、除算部450において、充電電力指令値Pbat をバッテリ電圧Vbatで除すことによって、バッテリ230の目標充電電流指令値ibat が算出される。この目標充電電流指令値ibat を用いて、図7で後述する駆動制御回路600によって、バッテリ230を充電するためのDC/DCコンバータ220の制御信号CON2(図3参照)が生成される。
【0063】
また、減算部460においては、PI制御部420によって算出された電流指令値iから、リミッタ回路430通過後の指令値ip_sub が差し引かれることによって、AC/DCコンバータ210における電流指令値ip_dif が算出される。電流指令値ip_dif は、図6で後述する駆動制御回路500によって用いられて、AC/DCコンバータ210の制御信号CON1(図3参照)が生成される。
【0064】
(AC/DCコンバータ駆動制御回路)
次に、図6の駆動制御回路500について説明する。図6を参照して、駆動制御回路500は、三相-二相変換部510,540と、減算部520,530と、PI制御部525,535と、二相変調器550と、PLL(Phase Locked Loop)回路560と、オシレータ570と、比較器580と、反転器590とを含む。
【0065】
PLL回路560は、系統電源20から供給される交流電力の線間電圧VSab,VSbc,VScaを受け、各相の位相差から同期信号θを生成する。
【0066】
三相-二相変換部510は、系統電源20から供給される交流電力の相電流iLSa,iLSb,iLScを受ける。三相-二相変換部510は、PLL回路560からの同期信号θに従って、三相の相電流iLSa,iLSb,iLScをdq変換により、有効電力成分の電流iおよび無効電流成分の電流iの二相電流を算出する。
【0067】
そして、減算部520,530において、d軸およびq軸における電流指令値との差分がそれぞれ算出される。ここで、d軸の指令値は、図5の電流制御回路400で算出された電流指令値ip_dif である。なお、無効電流成分のq軸の指令値i はゼロである。その後、PI制御部525,535によって、d軸およびq軸の各々についての指令値との差分がPI制御され、さらに三相-二相変換部540によって同期信号θに従って三相変換が施されて、三相電圧指令値が生成される。
【0068】
そして、スイッチング損失の低減と電圧利用率を向上するために、算出された三相電圧指令値が二相変調器550によって二相変調され、比較器580においてオシレータ570からの三角波と比較することによって、各相の上アームのスイッチング素子Q,Q,QのPWM制御信号が生成される。また、反転器590によりこれらの信号を反転することによって、下アームのスイッチング素子Q,Q,QのPWM制御信号がそれぞれ生成される。生成されたPWM制御信号CON1(図3参照)に従って、AC/DCコンバータ210が制御される。
【0069】
図5で説明したように、電流指令値iが充電許容電流ip_limを超えない場合には、電流制御回路400においてi=ip_sub となるため、電流指令値ip_dif はゼロになる。この場合、AC/DCコンバータ210による電力変換は行なわれない。一方で、電流指令値iが充電許容電流ip_limを超えて電流指令値ip_dif がゼロではなくなると、電流指令値ip_dif に従ってAC/DCコンバータ210が駆動される。これによって、直流バス260の余剰電力がAC/DCコンバータ210によって系統電源20に出力される。
【0070】
(DC/DCコンバータ駆動制御回路)
次に、図7および図8を用いて駆動制御回路600について説明する。図7を参照して、駆動制御回路600は、減算部610と、PI制御部620と、位相シフタ630とを含む。また、図8を参照して、位相シフタ630は、オシレータ631と、比較器632,634と、フリップフロップ回路633,635とを含む。
【0071】
減算部610において、電流制御回路400で算出された目標充電電流指令値ibat から、バッテリ230の電流センサで検出された電流値ibatが差し引かれる。減算部610による差分は、PI制御部620によってPI制御が施されて、充電電圧指令値VCONが生成される。
【0072】
位相シフタ630においては、充電電圧指令値VCONとオシレータ631からの三角波Vtriとの比較によって、DABコンバータの変換回路221におけるブリッジ回路2212のスイッチング素子Q21~Q24を駆動するためのPWM制御信号が生成される。また、一定値の基準信号Vと三角波Vtriとの比較によって、DABコンバータのブリッジ回路2211のスイッチング素子Q11~Q14を駆動するためのPWM制御信号が生成される。
【0073】
より詳細には、充電電圧指令値VCONと三角波Vtriとを比較器634で比較することによってPWM信号を(PWM2)生成し、当該PWM信号をフリップフロップ回路635に入力することによって、スイッチング素子Q21,Q24の制御信号と、これらを反転させたスイッチング素子Q22,Q23の制御信号とが生成される。また、基準信号Vと三角波Vtriとを比較器632で比較することによってPWM信号(PWM1)を生成し、当該PWM信号をフリップフロップ回路633に入力することによって、スイッチング素子Q11,Q14の制御信号と、これらを反転させたスイッチング素子Q12,Q13の制御信号とが生成される。
【0074】
図9は、DABコンバータ(変換回路221)の動作を説明するためのタイムチャートである。図9においては、横軸には時間が示されており、縦軸には三角波Vtri(LN10)、充電電圧指令値VCON(LN11)、基準信号V(LN12)と、各ブリッジ回路2211,2212におけるPWM信号PWM1(LN20),PWM2(LN30)と、スイッチング素子Q11,Q14の駆動信号OutA(LN40)と、スイッチング素子Q12,Q13の駆動信号OutB(LN50)と、スイッチング素子Q21,Q24の駆動信号OutC(LN60)と、スイッチング素子Q22,Q23の駆動信号OutD(LN70)とが示されている。
【0075】
図9を参照して、最上段のグラフにおいて、搬送波である三角波Vtriが実線LN10で示されており、PI制御部620で生成される充電電圧指令値VCONが一点鎖線LN11で示され、基準電圧Vが破線LN12で示されている。基準電圧Vは、振幅ゼロの固定値に設定されており、三角波Vtriと基準電圧Vとの比較によって、DABコンバータのブリッジ回路2211のスイッチング素子Q11~Q14を駆動するための制御信号PWM1が生成される。制御信号PWM1は、デューティ50%の方形波パルスである(LN20)。
【0076】
また、充電電圧指令値VCONと三角波Vtriとの比較によって、DABコンバータのブリッジ回路2212のスイッチング素子Q21~Q24を駆動するための制御信号PWM2が生成される。充電電圧指令値VCONは、直流バス260の電力によって変化する。図9の例においては、充電電圧指令値VCONは時間とともに増加している。このため、時間の経過とともに、三角波Vtriと充電電圧指令値VCONとの重なり部分が変化し、制御信号PWM2の各パルスのパルス幅、および、立ち上がり/立ち下がりのタイミングが変化している(LN30)。
【0077】
制御信号PWM1が図8のフリップフロップ回路633に入力されることにより、パルスの立ち上がりのタイミングごとに振幅が反転する駆動信号OutA,OutB(LN40,LN50)が生成される。駆動信号OutBは、駆動信号OutAを反転させた信号である。駆動信号OutAによってスイッチング素子Q11,Q14が駆動され、駆動信号OutBによってスイッチング素子Q12,Q13が駆動される。
【0078】
同様に、制御信号PWM2が図8のフリップフロップ回路635に入力されることにより、パルスの立ち上がりのタイミングごとに振幅が反転する駆動信号OutC,OutD(LN60,LN70)が生成される。駆動信号OutDは、駆動信号OutCを反転させた信号である。駆動信号OutCによってスイッチング素子Q21,Q24が駆動され、駆動信号OutDによってスイッチング素子Q22,Q23が駆動される。
【0079】
図9に示されるように、充電電圧指令値VCONが大きくなると、制御信号PWM2の立ち上がりのタイミングが、制御信号PWM1の立ち上がりのタイミングよりも遅れる。すなわち、制御信号PWM1に対する制御信号PWM2の位相(φ~φ)のずれが大きくなる。DABコンバータにおいては、一次側のブリッジ回路のスイッチングの位相と二次側のブリッジ回路のスイッチングの位相が同位相である場合(すなわち、位相差φ=0°の場合)には伝送される電力はゼロとなり、位相差が大きくなるにつれて伝送される電力は大きくなり、位相差φ=90°において最大となる。
【0080】
伝送される電力をPとし、スイッチング周波数をfとすると、電力Pは以下の式(2)のように表すことができる。ここで、ω=2πfである。
【0081】
【数1】
【0082】
このように、電流制御回路400で算出された目標充電電流指令値ibat に応じて、変換回路221の2つのブリッジ回路2211,2212のスイッチングの位相差を調整することによって、所望の電力を用いてバッテリ230を充電することができる。
【0083】
なお、上記の例においては、一次側(すなわち、バッテリ230側)のブリッジ回路2211の制御信号PWM1は一定であり、二次側(すなわち、直流バス260側)のブリッジ回路2212の制御信号PWM2の位相を変化させる構成であったが、一次側の制御信号PWM1についても、たとえばバッテリ230の充電状態(SOC:State of Charge)に応じて位相を変化させるように制御してもよい。
【0084】
以上のような制御回路を用いて制御を行なうことによって、直流バス260に供給される電力がバッテリ230の充電許容電力を超える場合に、AC/DCコンバータ210をインバータとして動作させて余剰電力を系統電源へ戻すことによって、射出成形機100の回生動作の際に、バッテリ230を保護しながらエネルギの損失を抑制することができる。
【0085】
なお、本開示における「AC/DCコンバータ210」は、本開示における「第1電力変換装置」に対応する。本開示における「サーボアンプ143,1431,1432」の各々は、本開示における「駆動装置」に対応する。本開示における「駆動制御回路500」および「駆動制御回路600」は、本開示における「第1駆動制御回路」および「第2駆動制御回路」にそれぞれ対応する。本開示における「ブリッジ回路2211」および「ブリッジ回路2212」は、本開示における「第1ブリッジ回路」および「第2ブリッジ回路」にそれぞれ対応する。
【0086】
<制御フローの説明>
図10は、実施の形態1におけるバッテリ保護制御の処理を説明するためのフローチャートである。なお、以下の制御フローの説明では、図4についても適宜参照するものとする。図10に記載された処理は、上述の制御装置300における電流制御回路400(図5参照)および駆動制御回路500(図6参照),600(図7参照)によって実行される。
【0087】
制御装置300は、ステップ(以下、ステップを「S」と略す。)100にて、射出成形機100が回生動作中であるか否かを判定する。回生動作中の判定については、たとえば、射出成形機100の制御装置300からの信号、あるいは、直流バス260から射出成形機100へ供給される電流の方向などに基づいて行なうことができる。
【0088】
射出成形機100が回生動作中である場合(S100にてYES)は、処理がS110に進められ、制御装置300は、直流バス260に供給される電力PDCと、バッテリ230の許容充電電力P_limを取得する。直流バス260に供給される電力PDCは、図5の電流制御回路400で説明したように、直流バス260の電圧VDCと、直流バス260の目標電圧VDC とから算出される電流指令値iに基づいて算出することができる。また、バッテリ230の許容充電電力P_limについても、バッテリ230の電圧Vbat、および、定格電流ibat_ratingから算出される充電許容電流ip_limに基づいて算出される。そして、制御装置300は、S120にて、直流バス260に供給される電力PDCが、バッテリ230の許容充電電力P_limを超過しているか否かを判定する。
【0089】
直流バス260の電力PDCが許容充電電力P_limを超過している場合(PDC>P_lim:S120にてYES)は、処理がS130の処理が進められ、制御装置300は、図7の駆動制御回路600で説明したように、許容充電電力P_limに対応する電力を用いてバッテリ230を充電するようにDC/DCコンバータ220の制御信号を生成する。さらに、制御装置300は、図6の駆動制御回路500で説明したように、許容充電電力P_limを超過する電力を系統電源20に出力するようにAC/DCコンバータ210の制御信号を生成する。直流バス260の電力PDCが許容充電電力P_lim以下の場合(PDC≦P_lim:S120にてNO)は、処理が後述するS140に進められる。
【0090】
一方、射出成形機100が回生動作中でない場合(S100にてNO)は、処理がS140に進められて、制御装置300は、後述する充電制御モードにより、系統電源20および/または自然エネルギ発電装置30からの外部電力を用いて、バッテリ230を充電するとともに射出成形機100を駆動する。
【0091】
<充電制御モードの説明>
次に、充電制御モードにおける制御回路の例について説明する。なお、以下の充電制御モードの説明では、図4についても適宜参照するものとする。
【0092】
(第1制御例)
充電制御モードの第1制御例は、工場の休止時のように射出成形機100が停止している状態で、外部電源(系統電源20および自然エネルギ発電装置30)を用いて、バッテリ230を充電する場合に適用される制御である。第1制御例においては、自然エネルギ発電装置30からの電力をバッテリ230の充電電力として最大限利用しつつ、天候等によって変動し得る発電電力を系統電源20からの電力により補填するように制御する。これによって、系統電源20からの電力の使用を抑制して、電気料金および二酸化炭素の排出量を低減しつつ、バッテリ230を最大電力(すなわち、充電許容電力)で充電することが可能となる。
【0093】
なお、第1制御例においては、直流バス260の電圧制御は、自然エネルギ発電装置30のDC/DCコンバータ35によって実行される。
【0094】
図11は、第1制御例における電流制御回路700を示す図であり、図12は、バッテリ230の充電に用いるDC/DCコンバータ220を駆動する駆動制御回路800を示す図である。なお、AC/DCコンバータ210の駆動制御回路については、図6で示した駆動制御回路500と同様の構成である。
【0095】
図11を参照して、電流制御回路700は、減算部710と、乗算部720,740と、除算部730,750とを含む。
【0096】
乗算部740は、自然エネルギ発電装置30に設けられた電圧センサおよび電流センサ(いずれも図示せず)から取得した、太陽光発電装置31の発電電圧Vpvおよび供給電流ipvを掛け合わせて発電電力Ppvを算出する。除算部750は、太陽光発電装置31の発電電力Ppvを、バッテリ230のバッテリ電圧Vbatで除すことによって、太陽光発電装置31の発電電力に対応した充電電流ibat_pvを算出する。
【0097】
減算部710は、バッテリの定格電流値ibat_ratingから、除算部750で算出された充電電流ibat_pvを差し引く。そして、乗算部720において、減算部710で算出された差分ibat_diffにバッテリ電圧Vbatを掛け合わせることによって、系統電源20から供給すべき充電電力pbat_diffが算出される。その後、除算部730におて、充電電力pbat_diffを系統電源20からの三相交流電圧の実効値で除すことによって、図6の駆動制御回路500に対する電流指令値id_ref が算出される。電流指令値id_ref を、駆動制御回路500における三相-二相変換後のd軸の減算部520に入力することによって、自然エネルギ発電装置30の発電電力がバッテリ230の充電許容電力に対して不足する場合に、当該不足電力を系統電源20から供給することができる。
【0098】
次に、図12を参照して、駆動制御回路800について説明する。駆動制御回路800は、減算部810,830と、PI制御部820,840と、位相シフタ850とを含む。なお、図12において、減算部810およびPI制御部820は、図5の電流制御回路400における減算部410およびPI制御部420にそれぞれ対応し、減算部830、PI制御部840および位相シフタ850は、図7の駆動制御回路600における減算部610、PI制御部620および位相シフタ630にそれぞれ対応している。そのため、駆動制御回路800の各要素の詳細な説明は繰り返さない。
【0099】
駆動制御回路800においては、減算部810およびPI制御部820によって生成された目標充電電流指令値ibat と、バッテリ電流ibatとの差分に基づいて、DC/DCコンバータ220の制御信号CON2(図3参照)が生成される。
【0100】
充電制御モードの第1制御例においては、基本的には、バッテリ230の充電許容電力に一致する電力が、系統電源20および/または自然エネルギ発電装置30から供給される。そのため、仮に射出成形機100から回生電力が供給されると、直流バス260に供給される電力がバッテリ230の充電許容電力を超過してしまい、直流バス260が過電圧となる可能性がある。そのため、当該第1制御例の構成は、基本的には射出成形機100が停止している場合に適用することが望ましい。
【0101】
(第2制御例)
上述の第1制御例においては、基本的には、バッテリ230は常に最大電力で充電するような構成であった。充電制御モードの第2制御例においては、任意の充電電力でバッテリ230を充電する構成について説明する。
【0102】
図13は、第2制御例における制御回路を説明するための図である。図13においては、AC/DCコンバータ210を駆動するための駆動制御回路と、当該駆動制御回路の指令値を生成するための電流制御部900とが示されている。なお、第2制御例における駆動制御回路の構成は、基本的には図6で示した駆動制御回路500の構成と同様であるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0103】
第2制御例において、駆動制御回路500の減算部520には、電流制御部900で算出された電流指令値i が入力される。電流制御部900は、減算部910と、PI制御部920とを含んでいる。そして、直流バス260の電圧指令値VDC と電圧センサ270で検出された直流バス260の電圧VDCとの差分を、PI制御部920によってPI制御することによって、電流指令値i が生成される。
【0104】
DC/DCコンバータ220を駆動するための駆動制御回路は、基本的には図7で説明した駆動制御回路600と同様である。第2制御例においては、バッテリ230の目標充電電流指令値ibat は、バッテリ230の定格電流を上限として任意に設定することができる。また、自然エネルギ発電装置30は電流源と見なすことができる。第2制御例においては、自然エネルギ発電装置30で発電される発電電力、射出成形機100による消費電力、および、バッテリ230における充電電力に基づく、直流バス260の電力収支(すなわち、電圧VDC)に従って、系統電源20から供給される電力が決定される。
【0105】
第2制御例の構成においては、射出成形機100からの回生電力に対してもある程度は対処することができるが、自然エネルギ発電装置30および射出成形機100から直流バス260へ供給される電力の合計が、バッテリ230の充電許容電力を超過する場合には対処することができない。したがって、第2制御例の構成は、たとえば、バッテリ230の充電許容電力が、射出成形機100の回生能力よりも十分大きい場合に適用することができる。
【0106】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、図3に示すように、自然エネルギ発電装置30が、電源装置200の直流バス260に接続される構成について説明した。
【0107】
実施の形態2においては、自然エネルギ発電装置30が、バッテリ230に直接接続される構成の場合におけるバッテリ保護制御について説明する。
【0108】
図14は、実施の形態2に係る射出成形機システムの電源回路構成を説明するための図である。実施の形態2の射出成形機システムにおいては、インダクタLb_2を介して、自然エネルギ発電装置30がバッテリ230に接続されている。また、インダクタLb_2を流れる電流、すなわち、自然エネルギ発電装置30から供給される充電電流ip_bat2を検出するための電流センサが設けられている。なお、その他の回路構成については、図4の実施の形態1の場合と同様であるので、重複する要素の説明は繰り返さない。
【0109】
図15は、実施の形態2における電流制御回路400Aを示す機能ブロック図である。電流制御回路400Aに含まれる要素は、実質的には、図5の電流制御回路400と同じであるが、リミッタ回路430において設定されるバッテリ230の充電許容電流ip_lim図5の場合と異なっている。なお、AC/DCコンバータ210およびDC/DCコンバータ220の駆動制御回路については、図6図8と同様である。
【0110】
電流制御回路400Aにおいては、自然エネルギ発電装置30がバッテリ230に接続されているため、バッテリ230が直流バス260から受容可能な充電電力は、自然エネルギ発電装置30から供給される電力をバッテリ230の充電許容電力から差し引いた電力となる。したがって、バッテリ230の充電許容電流ip_limは、自然エネルギ発電装置30からの充電電流ip_bat2を用いて、以下の式(3)によって定められる。
【0111】
p_lim=(ibat_rating-ip_bat2)×Vbat/Veff (3)
このような構成とすることによって、バッテリ230を直接充電する自然エネルギ発電装置30の発電状態を考慮しつつ、バッテリ230を充電することが可能となる。そして、直流バス260に供給される電力がバッテリ230の充電許容電力を超える場合に、AC/DCコンバータ210をインバータとして動作させて余剰電力を系統電源へ戻すことによって、射出成形機100の回生動作の際に、バッテリ230を保護しながらエネルギの損失を抑制することができる。
【0112】
[態様]
(第1項)一態様に係る電源装置は、系統電源からの電力を用いて射出成形機の駆動電力を供給するために用いられる電源装置である。電源装置は、第1電力変換装置と、バッテリと、第1電力変換装置を制御するための制御装置とを備える。第1電力変換装置は、系統電源からの交流電力を直流電力に変換して直流バスに供給するように構成される。バッテリは、直流バスの直流電力を用いて充電が可能に構成されている。射出成形機は、電動機、および、直流バスの電力を用いて電動機を駆動するための駆動装置を含む。駆動装置は、電動機の回生動作時に、発生した回生電力を直流バスに供給するように構成されている。制御装置は、電動機の回生動作時において、直流バスの電力がバッテリの充電許容電力を上回る場合には、第1電力変換装置を制御して、充電許容電力を超過する電力を系統電源に出力する。
【0113】
(第2項)第1項に記載の電源装置において、第1電力変換装置は、複数のスイッチング素子を含む、フルブリッジタイプのAC/DCコンバータである。制御装置は、直流バスの電圧が所定の目標電圧になるように、直流バスを流れる電流を制御するように構成された電流制御回路と、第1電力変換装置に含まれるスイッチング素子の駆動信号を生成するように構成された第1駆動制御回路とを含む。電流制御回路は、バッテリの定格電流に基づいて上限値が定められたリミッタ回路を含む。電流制御回路は、直流バスの電圧および目標電圧から目標電流値を演算し、リミッタ回路通過後の目標電流値を、バッテリの充電電流指令値として設定し、目標電流値と充電電流指令値との差分を、第1駆動制御回路の指令値として設定する。第1駆動制御回路は、指令値を用いて第1電力変換装置の駆動信号を生成する。
【0114】
(第3項)第1項または第2項に記載の電源装置は、直流バスの直流電力を用いてバッテリを充電するとともに、バッテリに蓄えらえた電力を変換して直流バスに供給することが可能に構成された第2電力変換装置をさらに備える。
【0115】
(第4項)第3項に記載の電源装置において、第2電力変換装置は、絶縁型のDABコンバータを含む。
【0116】
(第5項)第3項に記載の電源装置において、第2電力変換装置は、各々が複数のスイッチング素子を含んで構成された第1変換回路および第2変換回路と、第1変換回路と第2変換回路とに接続された絶縁トランスとを含む。制御装置は、第1変換回路におけるスイッチング素子の駆動信号と、第2変換回路におけるスイッチング素子の駆動信号との間の位相差を制御することによって、バッテリと直流バスとの間の電力の授受を制御する第2駆動制御回路を含む。
【0117】
(第6項)第1項に記載の電源装置において、電源装置は、自然エネルギを用いた発電装置からの直流電力を受電可能に構成されている。
【0118】
(第7項)第6項に記載の電源装置において、発電装置は直流バスに接続されている。
(第8項)第6項に記載の電源装置において、発電装置はバッテリに接続されている。
【0119】
(第9項)第8項に記載の電源装置において、第1電力変換装置は、複数のスイッチング素子を含む、フルブリッジタイプのAC/DCコンバータである。制御装置は、直流バスの電圧が所定の目標電圧になるように、直流バスを流れる電流を制御するように構成された電流制御回路と、第1電力変換装置に含まれるスイッチング素子の駆動信号を生成するように構成された第1駆動制御回路とを含む。電流制御回路は、バッテリの定格電流および発電装置から供給される発電電流に基づいて上限値が定められたリミッタ回路を含む。電流制御回路は、直流バスの電圧および目標電圧から目標電流値を演算し、リミッタ回路通過後の目標電流値をバッテリの充電電流指令値として設定し、目標電流値と充電電流指令値との差分を、第1駆動制御回路の指令値として設定する。第1駆動制御回路は、指令値を用いて第1電力変換装置の記駆動信号を生成する。
【0120】
(第10項)他の態様に係る射出成形機システムは、射出成形機と、系統電源からの電力を用いて射出成形機の駆動電力を供給するための電源装置とを備える。電源装置は、第1電力変換装置と、バッテリと、第1電力変換装置を制御するための制御装置とを含む。第1電力変換装置は、系統電源からの交流電力を直流電力に変換して直流バスに供給するように構成されている。バッテリは、直流バスの直流電力を用いて充電が可能に構成されている。射出成形機は、電動機、および、直流バスの電力を用いて電動機を駆動するための駆動装置を含む。駆動装置は、電動機の回生動作時に、発生した回生電力を直流バスに供給するように構成されている。制御装置は、電動機の回生動作時において、直流バスの電力がバッテリの充電許容電力を上回る場合には、第1電力変換装置を制御して、充電許容電力を超過する電力を系統電源に出力する。
【0121】
(第11項)他の態様に係る方法は、系統電源からの電力を用いて電源装置から射出成形機に駆動電力を供給する方法に関する。電源装置は、第1電力変換装置と、バッテリとを含む。第1電力変換装置は、系統電源からの交流電力を直流電力に変換して直流バスに供給するように構成されている。バッテリは、直流バスの直流電力を用いて充電が可能に構成されている。射出成形機は、電動機、および、直流バスの電力を用いて電動機を駆動するための駆動装置を含む。駆動装置は、電動機の回生動作時に、発生した回生電力を直流バスに供給するように構成されている。方法は、(a)電動機が回生動作中であるか否かを判定するステップと、(b)直流バスの電力およびバッテリの充電許容電力の情報を取得するステップと、(c)電動機の回生動作時において、直流バスの電力が充電許容電力を上回るか否かを判定するステップと、(d)直流バスの電力が充電許容電力を上回る場合に、第1電力変換装置を制御して、充電許容電力を超過する電力を系統電源に出力するステップとを含む。
【0122】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
【符号の説明】
【0123】
10 射出成形機システム、20 系統電源、30 自然エネルギ発電装置、31 太陽光発電装置、35,220 DC/DCコンバータ、260 直流バス、100 射出成形機、110 型締装置、111 ベッド、112 固定盤、113 型締ハウジング、114 可動盤、115 タイバー、116 型締機構、117,118 金型、119 ボールねじ、120 射出装置、121 基台、122 加熱シリンダ、123 スクリュ、124 駆動装置、125 ホッパ、126 射出ノズル、127 ノズルタッチ装置、128 温度センサ、130 操作盤、140,300 制御装置、142,320 メモリ、143,1431,1432 サーボアンプ、151~154 サーボモータ、200 電源装置、210 AC/DCコンバータ、211,222 フィルタ回路、212,221 変換回路、230 バッテリ、240 インバータ、270 電圧センサ、361,570,631 オシレータ、400,400A,700 電流制御回路、410,460,520,530,610,710,810,830,910 減算部、420,525,535,620,820,840,920 PI制御部、430 リミッタ回路、440,720,740 乗算部、450,730,750 除算部、500,600,800 駆動制御回路、510,540 三相-二相変換部、550 二相変調器、560 PLL回路、580,632,634 比較器、590 反転器、630,850 位相シフタ、633,635 フリップフロップ回路、900 電流制御部、2211,2212 ブリッジ回路、C,Cdc,C キャパシタ、L,L,L,L,L インダクタ、NL1,NL2,PL1,PL2 電源ライン、Q~Q,Q11~Q14,Q21~Q24 スイッチング素子、TR 絶縁トランス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15