(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005066
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】解施錠装置
(51)【国際特許分類】
E05B 47/00 20060101AFI20240110BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20240110BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
E05B47/00 Z
E05B49/00 J
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105066
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】307011510
【氏名又は名称】株式会社熊平製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中尾 勇造
(72)【発明者】
【氏名】千原 徳充
【テーマコード(参考)】
2E250
5H607
【Fターム(参考)】
2E250AA13
2E250BB08
2E250CC09
2E250DD02
5H607AA12
5H607BB02
5H607CC03
5H607EE31
(57)【要約】
【課題】環境発電による動作が可能なセキュリティシステムを提供する。
【解決手段】解施錠装置は、扉の開動作時及び閉動作時に互いに異なる方向の回転力が入力される動力伝達装置3と、発電装置2で発生した電力を蓄える蓄電部と、解錠信号に基づいて、蓄電部に蓄えられた電力を電気錠に供給して解錠させる一方、扉が閉状態にあるときに蓄電部に蓄えられた電力を電気錠に供給して施錠させる制御部とを備えている。動力伝達装置3は、扉の開動作時及び閉動作時の回転力が入力される入力軸300と、入力軸300の一方向の回転力及び他方向の回転力を同方向の回転力に変換して発電装置2の回転軸21に入力する回転方向変換機構Aとを有している。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉を解施錠する電気錠に供給される電力を発生する発電装置を備えた解施錠装置であって、
前記扉の開動作時及び閉動作時に互いに異なる方向の回転力が入力され、入力された回転力を前記発電装置が有する回転軸に伝達する動力伝達装置と、
前記発電装置で発生した電力を蓄える蓄電部と、
解錠信号に基づいて、前記蓄電部に蓄えられた電力を前記電気錠に供給して解錠させる一方、前記扉が閉状態にあるときに前記蓄電部に蓄えられた電力を前記電気錠に供給して施錠させる制御部とを備え、
前記動力伝達装置は、前記扉の開動作時及び閉動作時の回転力が入力される入力軸と、前記入力軸の一方向の回転力及び他方向の回転力を同方向の回転力に変換して前記発電装置の回転軸に入力する回転方向変換機構とを有している解施錠装置。
【請求項2】
請求項1に記載の解施錠装置において、
前記動力伝達装置は、ヒンジで支持された前記扉の開閉時の回動を直線運動に変換する運動方向変換機構を備え、
前記運動方向変換機構は、複数の歯が直線状に並ぶように形成された直線運動部材を有しており、
前記動力伝達装置の前記入力軸には、前記直線運動部材の前記歯に噛み合う歯車が固定されている解施錠装置。
【請求項3】
請求項1に記載の解施錠装置において、
前記動力伝達装置は、前記発電装置の前記回転軸と前記回転方向変換機構との間に、前記回転方向変換機構による変換後の回転力を伝達する一方、反対方向の回転力を非伝達として前記発電装置の前記回転軸を慣性力によって回転させる惰性回転機構を備えている解施錠装置。
【請求項4】
請求項3に記載の解施錠装置において、
前記発電装置は、無鉄心アキシャルギャップ型発電機で構成されている解施錠装置。
【請求項5】
請求項1に記載の解施錠装置において、
前記解錠信号を外部から受信する無線通信機を備え、
前記無線通信機には、前記蓄電部に蓄えられた電力が供給され、
前記制御部は、前記無線通信機により受信された前記解錠信号に基づいて、前記蓄電部に蓄えられた電力を前記電気錠に供給して解錠させるように構成されている解施錠装置。
【請求項6】
請求項2に記載の解施錠装置において、
前記発電装置及び前記動力伝達装置が取り付けられる筐体を備え、該筐体は前記扉に固定され、
前記直線運動部材は、前記筐体に対して前記扉の幅方向にスライド可能に支持されたラックで構成され、
前記歯車は前記ラックに噛み合うピニオンギヤで構成され、
前記運動方向変換機構はアームを備え、該アームの一端部が、前記扉をヒンジで支持する枠体に対して回動可能に連結され、該アームの他端部が、前記直線運動部材に対して回動可能に連結されている解施錠装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば電力を使用して施錠動作及び解錠動作する解施錠装置に関し、特に扉の開閉動作に伴って上記電力を生み出す構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、扉の開閉動作を利用して発電することが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1の扉開閉装置は、扉を扉枠に取り付ける扉蝶番と、扉蝶番の軸の回転トルクを発電装置に入力する動力伝達手段とを備えている。また、特許文献2の発電装置も、扉を扉枠に取り付けるヒンジ装置に設けられている。これら特許文献1、2のものでは、扉を開くとき及び閉じるときに発電装置を回転させて電力を発生させ、発生させた電力を蓄電可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-204533号公報
【特許文献2】特許第6948652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、持続可能な開発目標、いわゆるSDGsへの取り組みが多方面で行われており、本願発明者らも各種セキュリティシステムについて持続可能な開発目標を設定し、エネルギー消費量の削減や環境負荷の低減を重要な技術課題として挙げ、その課題を解決すべく、積極的な開発活動を行っている。
【0005】
セキュリティシステムには様々なものが含まれており、扉の施錠動作及び解錠動作を所定の認証処理に基づいて電気式のアクチュエータで行うシステムがある。このシステムでは、電気式のアクチュエータを用いていることから電力が必要であり、一般的には商用電源から供給される電力が使用される。この点、SDGsの取り組みの一つであるエネルギーハーベスティング(環境発電)の観点からみれば改善の余地があった。
【0006】
そこで、例えば特許文献1、2に開示されているような扉の開閉動作を利用した発電装置を用いれば環境発電が可能になるので、この発電装置で発生した電力をアクチュエータに供給することが考えられる。
【0007】
しかしながら、実際の使用状況を想定すると、扉を閉じた後、施錠指令に基づいてアクチュエータが施錠し、その後、解錠指令に基づいてアクチュエータが解錠するまでの間、扉の開閉による発電は行われないので、発電が行われない状況でアクチュエータが少なくとも2回動作する。アクチュエータを2回動作させるのに必要な電力を、1回の扉の開閉によって発電するのは、特許文献1、2の発電装置では難しいと考えられる。
【0008】
その理由として、扉の開動作と閉動作とでは発電装置の回転軸の回転方向が逆転することになるが、扉の開動作から閉動作に切り替わる際には、開動作の終了時に回転軸の回転速度が低下して0になる点である。その後、閉動作により回転軸の回転速度が上昇するが、閉動作の終了時には同様に回転軸の回転速度が低下していき、0になる。従って、開動作から閉動作に切り替わる際には、回転軸が一旦停止するとともに、回転速度が低下してしまうので、発電装置の発電量が低下してしまう。
【0009】
さらに、認証結果を外部から受信する通信機を備えている場合には、その通信機が消費する電力もまかなわなければならず、上述した蓄電量の低下及び発電量の低下はより一層顕著な問題になる。
【0010】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、環境発電による動作が可能なセキュリティシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様では、扉を解施錠する電気錠に供給される電力を発生する発電装置を備えた解施錠装置を前提とすることができる。解施錠装置は、前記扉の開動作時及び閉動作時に互いに異なる方向の回転力が入力され、入力された回転力を前記発電装置が有する回転軸に伝達する動力伝達装置と、前記発電装置で発生した電力を蓄える蓄電部と、解錠信号に基づいて、前記蓄電部に蓄えられた電力を前記電気錠に供給して解錠させる一方、前記扉が閉状態にあるときに前記蓄電部に蓄えられた電力を前記電気錠に供給して施錠させる制御部とを備えている。前記動力伝達装置は、前記扉の開動作時及び閉動作時の回転力が入力される入力軸と、前記入力軸の一方向の回転力及び他方向の回転力を同方向の回転力に変換して前記発電装置の回転軸に入力する回転方向変換機構とを有している。
【0012】
この構成によれば、電気錠が制御部によって解錠された後、扉を開動作させると、扉の開動作による回転力が動力伝達装置の入力軸に入力される。また、開状態の扉を閉じる際に閉動作させると、扉の閉動作による回転力が動力伝達装置の入力軸に入力される。開動作時と閉動作時とで扉は反対の動きをするので、入力軸には、開動作時及び閉動作時に互いに異なる方向の回転力が入力されることになる。入力軸に異なる方向の回転力が入力されたとしても、回転方向変換機構によって同方向の回転力に変換されるので、発電装置の回転軸が同じ方向に回転する。よって、蓄電効率が向上するとともに、扉の開動作から閉動作に切り替わるときに発電装置の回転軸を回転させ続けることが可能になる。
【0013】
本開示の第2の態様に係る動力伝達装置は、ヒンジで支持された前記扉の開閉時の回動を直線運動に変換する運動方向変換機構を備えている。この運動方向変換機構は、複数の歯が直線状に並ぶように形成された直線運動部材を有している。前記動力伝達装置の前記入力軸には、前記直線運動部材の前記歯に噛み合う歯車が固定されている。
【0014】
この構成によれば、扉を開閉させると直線運動部材が直線運動し、直線運動部材の歯に噛み合った歯車を介して発電装置の回転軸が駆動される。これにより、従来例のようにヒンジの軸によって発電装置の回転軸を回転させる場合に比べて、回転軸の回転数が多くなり、発電量が増加する。
【0015】
本開示の第3の態様に係る動力伝達装置は、前記発電装置の前記回転軸と前記回転方向変換機構との間に、前記回転方向変換機構による変換後の回転力を伝達する一方、反対方向の回転力を非伝達として前記発電装置の前記回転軸を慣性力によって回転させる惰性回転機構を備えていてもよい。
【0016】
この構成によれば、扉の開閉時には回転方向変換機構による変換後の回転力が惰性回転機構を介して発電装置の回転軸に伝達される。その後、扉を停止させたとしても、惰性回転機構が介在していることにより、発電装置の回転軸は慣性によって回転し続けるので、発電装置による発電量を増加させることができる。
【0017】
本開示の第4の態様に係る発電装置は、無鉄心アキシャルギャップ型発電機で構成することができる。すなわち、発電機としては、有鉄心型と無鉄心型とがあるが、有鉄心型の場合、磁性体と磁石との間に働く吸引力が、起動時に制動力となる。一方、無鉄心型の場合、そのような吸引力が働かないので、低トルクで回転しやすくなる。よって、惰性回転機構による回転効率がより一層向上する。
【0018】
本開示の第5の態様では、前記解錠信号を外部から受信する無線通信機を備えていてもよい。この場合、前記無線通信機には、前記蓄電部に蓄えられた電力を供給することができる。また、前記制御部は、前記無線通信機により受信された前記解錠信号に基づいて、前記蓄電部に蓄えられた電力を前記電気錠に供給して解錠させるように構成することができる。
【0019】
この構成によれば、無線通信機に蓄電部から電力が供給されるので、解施錠装置をワイヤレスで運用できる。したがって、既存の扉設備に電気配線や通信配線を設けなくても、解施錠装置を後付けして運用でき、また新設時においても電気配線や通信配線が不要なので、導入し易くなる。
【0020】
本開示の第6の態様では、前記発電装置及び前記動力伝達装置が取り付けられる筐体を備えている。筐体は前記扉に固定することができる。前記直線運動部材は、前記筐体に対して前記扉の幅方向にスライド可能に支持されたラックで構成され、前記歯車は前記ラックに噛み合うピニオンギヤで構成され、前記運動方向変換機構はアームを備え、該アームの一端部が、前記扉をヒンジで支持する枠体に対して回動可能に連結され、該アームの他端部が、前記直線運動部材に対して回動可能に連結されている。
【0021】
この構成によれば、扉を開閉することでアームが枠体に対して揺動しながら、直線運動部材を扉の幅方向にスライドさせる。この直線運動部材と歯車とでラックアンドピニオン機構が構成されているので、直線運動部材を扉の幅方向にスライドさせるだけで歯車を複数回転させることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、扉の開動作時及び閉動作時の回転力を同方向にして発電装置の回転軸に入力させることができるので、電気錠を解施錠するための電力を環境発電によって確保でき、持続可能なセキュリティシステムを構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態1に係る解施錠装置を備えたサーバラックの斜視図である。
【
図4】アームを畳んだ状態の解施錠装置の平面図である。
【
図5】アームを回動させた状態の解施錠装置の平面図である。
【
図8】動力伝達装置及び発電装置を上方から見た図である。
【
図9】動力伝達装置及び発電装置を右側方から見た図である。
【
図10】扉を開閉した場合の動きを説明する図である。
【
図11】本発明の実施形態2に係る解施錠装置を備えた開閉装置の斜視図である。
【
図12】本発明の実施形態3に係る解施錠装置の動力伝達装置及び発電装置の斜視図である。
【
図13】実施形態3に係る動力伝達装置及び発電装置の側面図である。
【
図14】実施形態3に係る動力伝達装置及び発電装置の側面図であり、
図13とは異なる方向から見た図である。
【
図15】本発明の実施形態4に係る解施錠装置の動力伝達装置及び発電装置の側面図である。
【
図16】実施形態4に係る動力伝達装置に反対方向の回転力が入力された場合を示す
図15相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。例えば各部材の形状や寸法等は任意に変更できる。
【0025】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る解施錠装置1を備えたサーバラック100の斜視図である。サーバラック100には、クライアントコンピュータから指示や要求を受け付けて、処理結果等をクライアントコンピュータに送信するサーバ(図示せず)が収納されている。管理者以外の者がサーバへ物理的にアクセスするのを未然に防止するため、サーバはサーバラック100に収納される。
【0026】
サーバラック100は、本体部101と、扉102と、扉102を支持するヒンジ103とを備えている。本体部101は、サーバが収納される収納空間を形成する部分であり、底板101a、左右一対の側板101b、背板101c及び天板101dで構成されている。底板101a、一対の側板101b及び天板101dにより、枠体101eが構成されるとともに、枠体101eの内部が前方に開口する収納口101fとされている。尚、この実施形態の説明では、サーバラック100の収納口101fが開口する側を「前」といい、背板101c側を「後」という。また、サーバラック100に向かって右側を「右」といい、サーバラック100に向かって左側を「左」というものとするが、これは説明の便宜を図るために定義するだけであり、本発明を限定して解釈し得るものではない。
【0027】
右側の側板101bには、扉102の側縁部がヒンジ103を介して取り付けられている。ヒンジ103は、上下方向に延びる軸を有している。したがって、扉102は、ヒンジ103の軸周りに回動して
図1に示す開状態と、図示しないが収納口101fを閉鎖する閉状態とに切り替えられる。尚、扉102は、本体部101の左側の側板101bに取り付けられていてもよい。
【0028】
サーバラック100には、扉102を施錠して開動作不能にするための電気錠104が設けられている。電気錠104は、従来から周知のものを用いることができ、扉102に取り付けられていてもよいし、本体部101に取り付けられていてもよい。電気錠104が扉102に取り付けられている場合には、施錠時に本体部101に係止する係止部(図示せず)が本体部101に係止したままとなる。電気錠104が本体部101に取り付けられている場合には、施錠時に扉102に係止する係止部(図示せず)が扉102に係止したままとなる。解錠時には、係止部の係止状態が解除される。解錠から施錠への切替、施錠から解錠への切替は、電気錠104に内蔵された電気式のアクチュエータによって実行される。
【0029】
上記のように構成されたサーバラック100は、
図2に示すセキュリティシステム200の一部を構成している。セキュリティシステム200は、複数のサーバラック100と、サーバPC201と、制御装置202と、認証端末203と、無線親機204とを備えている。サーバPC201は、サーバ及びサーバラック100の解施錠装置1等をコントロールするためのコンピュータである。制御装置202は、認証端末203から出力された認証データに基づいて解施錠装置1を制御するためのものであり、これもコンピュータ等で構成されている。認証端末203は、被認証者が所持するIDカードや携帯端末による認証、被認証者の生体情報を用いた認証、物理的な鍵による認証、暗証番号の入力による認証等、認証処理を実行する部分である。認証処理の手法は従来から周知の手法を用いることができる。
【0030】
認証処理の結果、被認証者がサーバラック100へのアクセスが許可された者である場合には、許可信号を制御装置202に送信する一方、被認証者がサーバラック100へのアクセスが許可されていない者である場合には、不許可信号を制御装置202に送信する。許可信号を受信した制御装置202は、解施錠装置1を解錠させるための解錠信号を生成し、無線親機204を介して各解施錠装置1に送信する。不許可信号を受信した制御装置202は解錠信号を送信しない。各解施錠装置1の解錠動作については後述する。
【0031】
上述したセキュリティシステム200は一例であり、本発明は、サーバラック100以外にも、図示しないが、例えば工場や事務所の出入口、建物内の各部屋、居室、執務室の出入口、玄関やエントランスゲートの出入口、各種ロッカーや金庫等に設けられた扉の解施錠を管理するセキュリティシステム等に適用することもできる。
【0032】
次に、解施錠装置1の構造について詳細に説明する。
図1に示すように、解施錠装置1は、扉102の上部に設けられ、扉102が閉状態にあるときには解施錠装置1に外部からアクセスできないようになっている。
図3は、解施錠装置1の側面図であり、
図1に示す取付状態を扉102の裏側から見た場合を示している。
図4及び
図5は、共に解施錠装置1の平面図であり、
図4は解施錠装置1が有するアーム311を畳んだ状態を示し、
図5はアーム311を回動させた状態を示している。
【0033】
図4に示すように、解施錠装置1は、発電装置2と、発電装置2に回転力を伝達する動力伝達装置3と、発電装置2で発電した電力を蓄える蓄電部4と、電気錠104を制御する制御部5と、無線通信機6と、鋼板等からなる筐体7とを備えている。筐体7は全体として細長い形状とされており、扉102の上部に固定されている。尚、筐体7の固定位置は、扉102の上部に限られるものではなく、下部であってもよい。
【0034】
蓄電部4、制御部5及び無線通信機6は、
図4にのみ示しており、筐体7が有する電子機器収容部71に収容されている。無線通信機6は、解錠信号を外部から受信する機器であり、具体的には、
図2に示す無線親機204から送信された解錠信号を受信可能となっている。無線通信機6には、蓄電部4に蓄えられた電力が供給される。
【0035】
蓄電部4は、発電装置2で発電した電力を蓄えることが可能な部分であり、例えばキャパシタや充電池等で構成されている。これらのうち、1種のみまたは複数種を組み合わせて蓄電部4を構成することもできる。蓄電部4は、無線通信機6に電力を供給する他、制御部5及び電気錠104にも動作に必要な電力を供給する。
【0036】
蓄電部4の容量は、任意に設定することができるが、少なくとも、電気錠104の施錠状態から解錠状態への切替を1回行うのに要する電力と、電気錠104の解錠状態から施錠状態への切替を1回行うのに要する電力と、無線通信機6及び制御部5を数時間または数日間動作させることが可能な電力とを合わせた電力をまかなうことができる量とされている。
【0037】
制御部5は、例えばマイクロコンピュータや記憶装置等が組み合わされて構成されており、所定の制御プログラムに従って動作する。制御部5には、無線通信機6が接続されており、無線通信機6で受信した解錠信号は制御部5に入力される。制御部5は、無線通信機6で受信された解錠信号に基づいて、蓄電部4に蓄えられた電力を電気錠104に供給して解錠させるように構成されている。例えば無線親機204から送信された解錠信号には識別情報が付与されており、この識別情報に基づいて、本セキュリティシステム200の無線親機204から送信された解錠信号であるか否かを判定することができ、本セキュリティシステム200の無線親機204から送信された解錠信号であると判定された場合のみ、施錠状態にある電気錠104を解錠させるべく、電気錠104に解錠制御信号を送信する。電気錠104は、解錠制御信号を受信すると、電気式のアクチュエータを作動させて解錠する。
【0038】
尚、例えば、扉102が閉状態であるか否かのセンサ(図示せず)を設けておき、扉102が閉状態であると判定されると、電気錠104を施錠状態にするように、制御部5が施錠制御信号を電気錠104に送信してもよい。また、外部からの施錠操作により、制御部5が施錠制御信号を電気錠104に送信してもよい。電気錠104は、施錠制御信号を受信すると、蓄電部4に蓄えられた電力を電気錠104に供給して電気式のアクチュエータを作動させて施錠し、施錠状態を維持する。
【0039】
発電装置2は、無鉄心アキシャルギャップ型発電機で構成されている。無鉄心アキシャルギャップ型発電機では、有鉄心型のような制動力が磁性体と磁石との間に働かないので、低トルクで回転しやすくなる。
図6にその一例を示すように、発電装置2は、ケーシング20と、回転軸21と、磁性体からなる第1及び第2プレート22、23と、第1及び第2磁石24、25と、巻線26とを備えている。回転軸21は、ケーシング20に回転可能に支持されている。第1及び第2プレート22、23は、回転軸21に対して軸線方向に間隔をあけて固定された円形板材で構成されている。巻線26は、ケーシング20の内部に固定されており、第1プレート22と第2プレート23との間に配置される。第1磁石24は、第1プレート22における巻線26側の面に固定されている。また、第2磁石25は、第2プレート23における巻線26側の面に固定されている。このように構成されているので、回転軸21が回転することで電力が発生する。
【0040】
図7~
図9に動力伝達装置3の詳細を示している。動力伝達装置3は、発電装置2が取り付けられる取付プレート30を備えている。取付プレート30は、左右方向及び上下方向に延びる中間部30aと、中間部30aの左右両端部から前側へ延びるとともに筐体7に固定される一対の側板部30bとを備えており、例えば鋼板等で構成されている。発電装置2は、中間部30aの右側前方に配置されるとともに、当該中間部30aに締結されている。発電装置2の回転軸21は、前後方向に延びる姿勢とされており、ケーシング20から後側へ突出し、さらに中間部30aを貫通して当該中間部30aよりも後へ突出している。発電装置2の回転軸21の端部には、動力伝達装置3の一部を構成している出力ギヤ31が固定されており、動力伝達装置3の出力ギヤ31を介して回転軸21が駆動される。
【0041】
(回転方向変換機構)
動力伝達装置3は、入力軸300、第1軸301、第2軸302、第3軸303、第4軸304及び第5軸305を備えている。入力軸300、第1軸301、第2軸302、第3軸303、第4軸304及び第5軸305は互いに平行であり、前後方向に延びる姿勢で配置されている。第1軸301と第5軸305とは同じ高さに配置される。第2軸302及び第3軸303は、第1軸301及び第5軸305よりも下に配置される。第4軸304は、第5軸305及び第3軸303よりも右に配置される。
【0042】
入力軸300、第1軸301、第2軸302、第3軸303、第4軸304及び第5軸305の各前端部(一端部)は、取付プレート30の中間部30aに対して軸受部材等を介して回転可能に支持されている。一方、第1軸301、第2軸302、第3軸303、第4軸304及び第5軸305の各後端部(他端部)は、
図4等に示すギヤ収容箱70が有する後板部70aに対して軸受部材等を介して回転可能に支持されている。ギヤ収容箱70も動力伝達装置3の一部を構成する部材である。
【0043】
入力軸300は、その軸方向中間部が後板部70aに対して軸受部材等を介して回転可能に支持されている。入力軸300の後端部(他端部)は、後板部70aから後側へ突出している。
図8及び
図9に示すように、入力軸300の後端部には、ピニオンギヤ(歯車)300aが固定されている。詳細は後述するが、扉102の開閉時の力は、ピニオンギヤ300aを回転させる力として入力される。入力軸300の中間部には、駆動ギヤ300bが固定されている。
【0044】
図8に示すように、第1軸301には、第1従動ギヤ301a及び第2従動ギヤ301bと、第1ワンウェイクラッチ301cとが設けられている。第1従動ギヤ301aが、第2従動ギヤ301bの前側に位置付けられており、駆動ギヤ300bに噛み合うようになっている。第1従動ギヤ301aの歯数は、第2従動ギヤ301bの歯数よりも少なく設定されている。
【0045】
第1ワンウェイクラッチ301cは、一方向の回転力は伝達するが反対方向の回転力は非伝達とするように構成された周知の部材である。第1ワンウェイクラッチ301cは、第1軸301に取り付けられ、第1従動ギヤ301aと第2従動ギヤ301bとの間に介在している。第1ワンウェイクラッチ301cは、第1従動ギヤ301aが
図7に示す破線矢印Y2方向に回転した場合、その第1従動ギヤ301aの回転力を第2従動ギヤ301bに伝達する一方、第1従動ギヤ301aが破線矢印Y2方向と反対方向(実線矢印Y13方向)に回転した場合、その第1従動ギヤ301aの回転力を第2従動ギヤ301bに伝達しない。
【0046】
図8に示すように、第5軸305には、第3従動ギヤ305a及び第4従動ギヤ305bと、第2ワンウェイクラッチ305cとが設けられている。第3従動ギヤ305aが、第4従動ギヤ305bの前側に位置付けられており、駆動ギヤ300bに噛み合うようになっている。第3従動ギヤ305aの歯数は、第4従動ギヤ305bの歯数よりも少なく設定されている。
【0047】
第2ワンウェイクラッチ305cは、第1ワンウェイクラッチ301cと同様な部材構成されており、第5軸305に取り付けられ、第3従動ギヤ305aと第4従動ギヤ305bとの間に介在している。第2ワンウェイクラッチ305cは、第3従動ギヤ305aが
図7に示す実線矢印Y8方向に回転した場合、その第3従動ギヤ305aの回転力を第4従動ギヤ305bに伝達する一方、第3従動ギヤ305aが実線矢印Y8方向と反対方向(破線矢印Y12方向)に回転した場合、その第3従動ギヤ305aの回転力を第4従動ギヤ305bに伝達しない。
【0048】
第2軸302には、第5従動ギヤ302aが固定されている。第5従動ギヤ302aは、第1軸301の第2従動ギヤ301bに噛み合うようになっている。第3軸303には、第6従動ギヤ303aが固定されている。第6従動ギヤ303aは、第5軸305の第4従動ギヤ305bに噛み合うようになっている。
【0049】
第4軸304には、第7従動ギヤ304a及び第8従動ギヤ304bと、第3ワンウェイクラッチ304cとが設けられている。第8従動ギヤ304bが、第7従動ギヤ304aの前側に位置付けられており、出力ギヤ31に噛み合うようになっている。第7従動ギヤ304aの歯数は、第8従動ギヤ304bの歯数よりも少なく設定されている。また、第7従動ギヤ304aは、第6従動ギヤ303aに噛み合うようになっている。
【0050】
第3ワンウェイクラッチ304cは、第1ワンウェイクラッチ301cと同様な部材で構成されており、第4軸304に取り付けられ、第7従動ギヤ304aと第8従動ギヤ304bとの間に介在している。第3ワンウェイクラッチ304cは、第7従動ギヤ304aが
図7に示す実線矢印Y10及び破線矢印Y5方向に回転した場合、その第7従動ギヤ304aの回転力を第8従動ギヤ304bに伝達する一方、第7従動ギヤ304aが実線矢印Y10及び破線矢印Y5方向と反対方向に回転した場合、その第7従動ギヤ304aの回転力を第8従動ギヤ304bに伝達しない。
【0051】
ピニオンギヤ300aに対して破線矢印Y1方向の回転力が入力すると、その回転力は入力軸300を介して駆動ギヤ300bに入力されて駆動ギヤ300bが破線矢印Y1方向に回転する。駆動ギヤ300bには、第1従動ギヤ301aが噛み合っているので、第1従動ギヤ301aが破線矢印Y2方向に回転する。破線矢印Y2方向の回転力は第1ワンウェイクラッチ301cを介して第2従動ギヤ301bに伝達されるので、第2従動ギヤ301bは破線矢印Y2方向に回転する。
【0052】
このとき、駆動ギヤ300bには、第3従動ギヤ305aも噛み合っているので、第3従動ギヤ305aが破線矢印Y12方向に回転する。破線矢印Y12は実線矢印Y8と反対方向であるため、破線矢印Y12方向の回転力は第2ワンウェイクラッチ305cを介して第4従動ギヤ305bに伝達されない。
【0053】
第2従動ギヤ301bには、第5従動ギヤ302aが噛み合っているので、第5従動ギヤ302aが破線矢印Y3方向に回転する。第5従動ギヤ302aには、第6従動ギヤ303aが噛み合っているので、第6従動ギヤ303aが破線矢印Y4方向に回転する。第6従動ギヤ303aが破線矢印Y4方向に回転すると、第7従動ギヤ304aが破線矢印Y5方向に回転する。破線矢印Y5方向の回転力は第3ワンウェイクラッチ304cを介して第8従動ギヤ304bに伝達されるので、第8従動ギヤ304bは破線矢印Y5方向に回転する。第8従動ギヤ304bには、出力ギヤ31が噛み合っているので、発電装置2の回転軸21が破線矢印Y6方向に回転する。
【0054】
第6従動ギヤ303aが破線矢印Y4方向に回転すると、その回転力は第4従動ギヤ305bに対して実線矢印Y8方向の回転力として作用することになる。このとき、第2ワンウェイクラッチ305cが設けられていることにより、第4従動ギヤ305bが実線矢印Y8方向に空転する。
【0055】
次に、ピニオンギヤ300aに対して実線矢印Y7方向の回転力が入力すると、その回転力は入力軸300を介して駆動ギヤ300bに入力されて駆動ギヤ300bが実線矢印Y7方向に回転する。駆動ギヤ300bには、第3従動ギヤ305aが噛み合っているので、第3従動ギヤ305aが実線矢印Y8方向に回転する。実線矢印Y8方向の回転力は第2ワンウェイクラッチ305cを介して第4従動ギヤ305bに伝達されるので、第4従動ギヤ305bは実線矢印Y8方向に回転する。
【0056】
このとき、駆動ギヤ300bには、第1従動ギヤ301aも噛み合っているので、第1従動ギヤ301aが実線矢印Y13方向に回転する。実線矢印Y13は破線矢印Y2と反対方向であるため、実線矢印Y13方向の回転力は第1ワンウェイクラッチ301cを介して第2従動ギヤ301bに伝達されない。
【0057】
第4従動ギヤ305bには、第6従動ギヤ303aが噛み合っているので、第6従動ギヤ303aが実線矢印Y9方向に回転する。第6従動ギヤ303aには、第7従動ギヤ304aが噛み合っているので、第7従動ギヤ304aが実線矢印Y10方向に回転する。実線矢印Y10方向の回転力は第3ワンウェイクラッチ304cを介して第8従動ギヤ304bに伝達されるので、第8従動ギヤ304bは実線矢印Y10方向に回転する。第8従動ギヤ304bには、出力ギヤ31が噛み合っているので、発電装置2の回転軸21が実線矢印Y11方向に回転する。
【0058】
第6従動ギヤ303aが破線矢印Y4方向に回転すると、その回転力は第5従動ギヤ302aを介して第2従動ギヤ301bに対して破線矢印Y2方向の回転力として作用することになる。このとき、第1ワンウェイクラッチ301cが設けられていることにより、第2従動ギヤ301bが破線矢印Y2方向に空転する。
【0059】
したがって、ピニオンギヤ300aが破線矢印Y1方向に回転した場合であっても、破線矢印Y1とは反対の実線矢印Y7方向に回転した場合であっても、発電装置2は同方向(実線矢印Y11、破線矢印Y6で示す方向)に回転させることができる。これは、動力伝達装置3の第2軸302、第3軸303、第5軸305、第1従動ギヤ301a、第2従動ギヤ301b、第3従動ギヤ305a、第4従動ギヤ305b、第5従動ギヤ302a、第6従動ギヤ303a、第1ワンウェイクラッチ301c及び第2ワンウェイクラッチ305cで構成された回転方向変換機構Aによって実現される。つまり、回転方向変換機構Aは、入力軸300の一方向の回転力及び他方向の回転力を同方向の回転力に変換して発電装置2の回転軸21に入力する機構である。また、回転方向変換機構Aは、入力軸300の回転速度を減速して出力してもよいし、増速して出力してもよい。
【0060】
(運動方向変換機構)
図3及び
図4に示すように、動力伝達装置3は、扉102の開閉時の回動を直線運動に変換する運動方向変換機構Bを備えている。運動方向変換機構Bは、複数の歯が直線状に並ぶように形成されたラック(直線運動部材)310と、アーム311とを備えている。ラック310は、筐体7の長手方向である左右方向に沿って延びるように配置されており、従って歯の並ぶ方向は左右方向となっている。ラック310は、当該筐体7に対して左右方向(扉102の幅方向)にスライド可能に支持されている。ラック310は、ピニオンギヤ300aの下に位置するとともに、ラック310の歯の形成された面が上に向いている。ピニオンギヤ300aは、ラック310に噛み合うようになっている。ラック310の長さは、ピニオンギヤ300aの複数回転分以上の長さに設定されている。これにより、ラック310が左右方向のどちらか一方へ移動するだけで、ピニオンギヤ300aを複数回転させることができるので、従来例のようなヒンジ軸の回動によって発電装置を直接駆動する場合に比べて、発電装置2の回転軸21の回転数を多くすることができる。
【0061】
アーム311の一端部(先端部)は、ブラケット311aと、ブラケット311aをアーム311に連結する先端側連結軸311bとを有している。先端側連結軸311bは上下方向に延びており、ブラケット311aは、先端側連結軸311b周りに回動可能になっている。
図1に示すように、ブラケット311aは、サーバラック100の枠体101eに固定されている。これにより、アーム311の一端部は、枠体101eに対して上下方向に延びる軸周りに回動可能に連結されることになる。
【0062】
アーム311の他端部(基端部)は、ラック310に対して回動可能に連結されている。具体的には、上下方向に延びる基端側連結軸311cにより、アーム311の他端部がラック310の左端部に連結されている。これにより、
図5に示すように、アーム311は基端側連結軸311c周りに回動可能になる。
【0063】
扉102を閉状態にすると、
図10の実線で示すようにアーム311が畳まれる。扉102を開いていくと、仮想線で外形のみ示すように相対移動していき、アーム311によってラック310が筐体7の右側へ引っ張られる。これにより、ラック310に噛み合っているピニオンギヤ300aが複数回転する。一方、開状態の扉102を閉じていくと、筐体7の右側に移動していたラック310がアーム311によって筐体7の左側へ引っ張られていく。このように、扉102の開閉時の回動を運動方向変換機構Bによって直線運動に変換することで、扉102を閉状態にする時、または開状態にする時に、ピニオンギヤ300aを複数回転させることができる。
【0064】
また、ラック310の移動方向が扉102を閉状態にする時と開状態にする時とで反対方向なので、ラック310に噛み合っているピニオンギヤ300aが反対方向に回転することになるが、上述した回転方向変換機構Aを備えていることで、ピニオンギヤ300aの回転方向に関わらず、発電装置2には同方向の回転力を伝達できる。
【0065】
(惰性回転機構)
動力伝達装置3は、発電装置2の回転軸21と回転方向変換機構Aとの間に、回転方向変換機構Aによる変換後の回転力を伝達する一方、反対方向の回転力を非伝達として発電装置2の回転軸21を慣性力によって回転させる惰性回転機構を備えている。惰性回転機構は、第3ワンウェイクラッチ304cで構成されている。
【0066】
図7に示すように、第3ワンウェイクラッチ304cは、第7従動ギヤ304aが実線矢印Y10及び破線矢印Y5方向に回転した時だけ第7従動ギヤ304aの回転力を第8従動ギヤ304bに伝達するが、反対方向の回転力が伝達しない。例えば、発電装置2の回転軸21が扉102の開閉力によって駆動されて、実線矢印Y11方向に回転していたとすると、回転軸21は慣性力によって実線矢印Y11方向に回転し続けようとする。この状態で、例えば扉102が閉状態になったり、開状態になったりして、扉102の動きが急に止まることがある。扉102の動きが止まると、第6従動ギヤ303aが停止することになるが、第6従動ギヤ303aが停止したとしても、第3ワンウェイクラッチ304cが介在していることで第8従動ギヤ304bは空転可能であり、よって発電装置2の回転軸21を慣性力によって回転させ続けることができる。
【0067】
尚、上述した惰性回転機構の構成は一例であり、図示しないが、惰性回転機構を出力ギヤ31の軸に備えていてもよい。
【0068】
(作用効果)
以上説明したように、実施形態1によれば、扉102を開動作させた時、及び閉動作させた時の両方で、動力伝達装置3の入力軸300に回転力が入力される。開動作時と閉動作時とでは扉102は反対の動きをするので、入力軸300には、開動作時及び閉動作時に互いに異なる方向の回転力が入力されることになるが、回転方向変換機構Aによって同方向の回転力に変換されるので、発電装置2の回転軸21が同じ方向に回転する。よって、発電装置2から出力された電力を蓄電部4に蓄電する際の効率が向上する。
【0069】
また、扉102の開閉時には回転方向変換機構Aによる変換後の回転力が第3ワンウェイクラッチ304cを介して発電装置2の回転軸21に伝達される。その後、扉102を停止させたとしても、第3ワンウェイクラッチ304cが介在していることにより、発電装置2の回転軸21は慣性によって回転し続けるので、発電装置2による発電量を増加させることができる。加えて、低トルクで回転する無鉄心型の発電装置2としているので、慣性による回転持続時間を長時間化することができ、このことによっても発電量を増加させることができる。
【0070】
また、電気錠104、制御部5及び無線通信機6に蓄電部4から電力が供給されるので、解施錠装置1をワイヤレスで運用できる。したがって、既存の扉設備に電気配線や通信配線を設けなくても、解施錠装置1を後付けして運用でき、また新設時においても電気配線や通信配線が不要なので、セキュリティシステム200を導入し易くなる。尚、無線通信機6の無線通信規格は、自己発電した電力だけで解施錠装置1を施錠動作及び解錠動作するために、ZigBee(登録商標)やEnOcean(登録商標)などの低消費電力のものが好ましいが、これらに限定されるものではなく、どのような無線通信規格であってもよい。
【0071】
(実施形態2)
図11は、本発明の実施形態2に係る開閉装置80の斜視図である。実施形態2では、スライド扉81の開閉動作によって発電装置2を作動させるように構成されている点で実施形態1のものとは異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0072】
開閉装置80は、スライド扉81によって開閉される枠体82と、スライド扉81を開閉方向に案内するレール部材83とを備えている。スライド扉81の上部には、レール部材83上を転動するローラ81aが設けられている。図示しないが、電気錠は適宜設けることができる。
【0073】
解施錠装置1は、スライド扉81の上部に固定されており、この解施錠装置1の入力軸300にはローラ81aの回転力が伝達されるようになっている。スライド扉81の開動作時と閉動作ではローラ81aの回転方向が異なるので、解施錠装置1の入力軸300には異なる方向の回転力が入力されるが、解施錠装置1の回転方向変換機構Aにより、同方向の回転力に変換して発電装置2の回転軸21に入力することができる。したがって、実施形態1と同様な作用効果を奏することできる。
【0074】
(実施形態3)
図12~
図14は、本発明の実施形態3に係る動力伝達装置3及び発電装置2の斜視図である。この実施形態では、遊星歯車機構320を用いている点で実施形態1とは異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0075】
実施形態3では、実施形態1の第3軸303及び第4軸304が省略され、また、第3軸303の従動ギヤ303a及び第4軸304の従動ギヤ304a、304bも省略されている。その分、動力伝達装置3の左右方向の寸法が短くなっている。
【0076】
発電装置2の回転軸(図示せず)には、実施形態1の第3ワンウェイクラッチ304cと同様な惰性回転機構321が設けられている。遊星歯車機構320の出力軸320aは、惰性回転機構321を介して発電装置2の回転軸に連結されている。
【0077】
遊星歯車機構320の入力軸307は、第1軸301等と平行に配置されている。遊星歯車機構320の入力軸307には、第9従動ギヤ307aと第10従動ギヤ307bとが固定されている。第9従動ギヤ307aは、第2軸302の第5従動ギヤ302aと噛み合っており、また、第10従動ギヤ307bは、第5軸305の第4従動ギヤ305bと噛み合っている。
【0078】
この実施形態3によれば、実施形態1と同様に、互いに異なる方向の回転力が入力された場合に、回転方向変換機構Aによって同方向の回転力に変換されて出力されるので、発電装置2の回転軸が同じ方向に回転する。従って、蓄電効率が向上する。また、遊星歯車機構320を用いることで、コンパクトで所望のギヤ比を得ることができる。
【0079】
(実施形態4)
図15は、本発明の実施形態4に係る動力伝達装置3及び発電装置2の側面図である。実施形態4では、第1軸301及び第5軸305が入力軸300の径方向に変位可能に支持されている点で実施形態1のものとは異なっている。以下、実施形態1と同じ部分に同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0080】
この実施形態4では、第1ワンウェイクラッチ301cが省略されており、第1軸301に第1従動ギヤ301a及び第2従動ギヤ301bが固定されている。また、第2ワンウェイクラッチ305cが省略されており、第5軸305に第3従動ギヤ305a及び第4従動ギヤ305bが固定されている。
【0081】
第1軸301は、第1揺動アーム331により第2軸302に支持されている。第1揺動アーム331の一端部は、第2軸302に対して軸芯周りに揺動可能に取り付けられている。第1揺動アーム331の他端部には、第1軸301が回転可能に取り付けられている。これにより、第1軸301は、第2軸302周りに揺動可能になる。
【0082】
また、第5軸305は、第2揺動アーム332により第3軸303に支持されている。第2揺動アーム332の一端部は、第3軸303に対して軸芯周りに揺動可能に取り付けられている。第2揺動アーム332の他端部には、第5軸305が回転可能に取り付けられている。これにより、第5軸305は、第3軸303周りに揺動可能になる。
【0083】
入力軸300が矢印Y20方向に回転して駆動ギヤ300bが同方向に回転すると、第1従動ギヤ301aが駆動ギヤ300bの内側に食い込む回転となり、当該駆動ギヤ300bに噛み合う。よって、第1従動ギヤ301a及び第2従動ギヤ301bが矢印Y21方向に回転する。このとき、第5軸305の第3従動ギヤ305aは駆動ギヤ300bに対して外側へ押されるような力を受けるため、第2揺動アーム332が揺動して歯飛びし、空転する。
【0084】
第2従動ギヤ301bは第5従動ギヤ302aを矢印Y22方向に回転させ、第5従動ギヤ302aは第6従動ギヤ303aを矢印Y23方向に回転させる。第6従動ギヤ303aの回転力は、図示しない第7従動ギヤに伝達されて第8従動ギヤ304bを矢印Y24方向に回転させ、発電装置2の回転軸21を回転させる。
【0085】
一方、
図16に示すように、入力軸300が
図15とは反対方向、即ち矢印Y30方向に回転して駆動ギヤ300bが同方向に回転すると、第3従動ギヤ305aが駆動ギヤ300bの内側に食い込む回転となり、当該駆動ギヤ300bに噛み合う。よって、第3従動ギヤ305a及び第4従動ギヤ305bが矢印Y31方向に回転する。このとき、第1軸301の第1従動ギヤ301aは駆動ギヤ300bに対して外側へ押されるような力を受けるため、第1揺動アーム331が揺動して歯飛びし、空転する。
【0086】
第4従動ギヤ305bは第6従動ギヤ303aを矢印Y32方向に回転させ、第6従動ギヤ303aの回転力は、図示しない第7従動ギヤに伝達されて第8従動ギヤ304bを矢印Y33方向に回転させ、発電装置2の回転軸21を回転させる。
【0087】
よって、この実施形態4によれば、実施形態1と同様に、互いに異なる方向の回転力が入力された場合に、回転方向変換機構Aによって同方向の回転力に変換されて出力されるので、発電装置2の回転軸が同じ方向に回転する。従って、蓄電効率が向上する。
【0088】
尚、本発明に係る発電装置2は、発電した電力を蓄える蓄電部4から制御装置202や認証端末203、図示しないが、認証結果を表示する表示器、該表示器や足元を照らすライト、扉102の開閉を検出するセンサ等、発電装置2付近に設置される機器に対して電力を供給してもよい。従って、環境発電電力により様々な機器を動作させることが可能なシステムを提供できる。
【0089】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上説明したように、本発明に係る解施錠装置は、例えば各種開閉装置の扉を解施錠する場合に適しており、環境発電による動作が可能なセキュリティシステムを構築する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0091】
1 解施錠装置
2 発電装置
3 動力伝達装置
4 蓄電部
5 制御部
6 無線通信機
7 筐体
102 扉
103 ヒンジ
104 電気錠
300 入力軸
300a ピニオンギヤ(歯車)
304c 第3ワンウェイクラッチ(惰性回転機構)
310 ラック(直線運動部材)
311 アーム
A 回転方向変換機構
B 運動方向変換機構