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特開2024-50670複合ヤーン、製造プロセスおよびそのようなヤーンを含むテキスタイル表面
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050670
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】複合ヤーン、製造プロセスおよびそのようなヤーンを含むテキスタイル表面
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20240403BHJP
   D06M 15/248 20060101ALI20240403BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20240403BHJP
   D06M 11/79 20060101ALI20240403BHJP
   D03D 15/47 20210101ALI20240403BHJP
【FI】
C08J5/04 CEZ
D06M15/248
D06M15/263
D06M11/79
D03D15/47
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008588
(22)【出願日】2024-01-24
(62)【分割の表示】P 2021506064の分割
【原出願日】2019-04-19
(31)【優先権主張番号】1853527
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1858616
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】520407600
【氏名又は名称】メルメット
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ダムール,フランソワ-ザビエル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】難燃性複合ヤーンの製造プロセスおよび難燃性複合ヤーンを提供する。
【解決手段】マトリックスに組み込まれた連続マルチフィラメントコアヤーンを含む複合ヤーンは、マトリックスが少なくとも1種のポリマー材料および少なくとも1種の強化フィラーを含み、強化フィラーは官能化粒子から形成され、前記粒子は40μm未満のメジアン径(dv50)を有することを特徴とする。そのような複合ヤーンを製造するためのプロセスは、コーティングまたは押出しによって、ポリマーおよび強化フィラーを含むマトリックスを、コアヤーンに堆積する少なくとも1つのステップを含む。テキスタイル表面は少なくとも1つのそのような複合ヤーンを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックスに組み込まれた連続マルチフィラメントコアヤーンを含む複合ヤーンを製造するためのプロセスであって、コーティングまたは押出しによって、ポリマー材料と官能化粒子から形成される強化フィラーとを含むマトリックスをコアヤーンに堆積する少なくとも1つのステップを含む製造プロセス。
【請求項2】
前記強化フィラーが堆積の前に前記ポリマー全体に分散される、請求項1に記載の製造プロセス。
【請求項3】
前記フィラーの一部が前記コアヤーンのフィラメント間の隙間に存在する、請求項1に記載の製造プロセス。
【請求項4】
前記堆積ステップが、前記コアヤーンの前記フィラメントにプラスチゾルをコーティングすることによって実行される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
少なくとも1種の強化フィラーが分散されたポリマー材料の少なくとも1つの層を、前記堆積ステップで得られた前記複合ヤーンにコーティングまたは押出しすることによって、前記堆積ステップで製造された前記複合ヤーンに少なくとも1つのコーティングステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記コーティングステップが、プラスチゾルでコーティングすることによって、または化合物の押出しによって実行される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記コーティングステップが、少なくとも1種の強化フィラーが分散された化合物を用いた、前記堆積ステップで得られた複合ヤーンの押出しコーティングによって行われる、請求項5に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ポリマー材料の層が少なくとも1種の難燃性フィラーをさらに含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項9】
マトリックスに組み込まれた連続マルチフィラメントコアヤーンを含む複合ヤーンであって、前記マトリックスが少なくとも1種のポリマー材料および少なくとも1種の強化フィラーを含み、前記強化フィラーは官能化粒子から形成され、前記粒子は40μm未満のメジアン径(dv50)を有し、前記複合ヤーンは135~140のタイターを有することを特徴とする複合ヤーン。
【請求項10】
前記連続マルチフィラメントコアヤーンは、1メートルあたり20から40ラウンドの範囲内のねじれを有する、請求項9に記載の複合ヤーン。
【請求項11】
前記コアヤーンの各フィラメントの平均直径は、3.5μmから13μmの範囲内である、請求項9に記載の複合ヤーン。
【請求項12】
強化粒子のメジアン径(dv50)と前記コアヤーンの各フィラメントの直径との間の比は、0.15:1から12:1の範囲である、請求項9に記載の複合ヤーン。
【請求項13】
前記複合ヤーン中に存在する強化フィラーの重量パーセントは、0.5から30%の範囲内である、請求項9に記載の複合ヤーン。
【請求項14】
前記複合ヤーン中の難燃性フィラーの量は、1.5重量%超であり、かつ7.5重量%未満である、請求項9に記載の複合ヤーン。
【請求項15】
前記複合ヤーンが連続マルチフィラメントコアヤーンおよびマトリックスを含み、前記マトリックスが、
(i)少なくとも1つのポリマー材料であって、PVC、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、EVAポリマーおよびポリアミドからなる群から選択されるポリマー材料と、
(ii)少なくとも1つの強化フィラーであって、前記強化フィラーが前記マトリックスの前記ポリマー材料中に分散し、前記コアヤーンのフィラメント間の隙間に存在する粒子によって構成される強化フィラーと
を含み、前記粒子は官能化されており、前記複合ヤーンは0.5から5重量%の量の難燃性フィラーをさらに含む、請求項9に記載の複合ヤーン。
【請求項16】
前記複合ヤーンが連続マルチフィラメントコアヤーンおよびマトリックスを含み、前記マトリックスが、
(i)少なくとも1つのポリマー材料であって、PVC、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、EVAポリマーおよびポリアミドからなる群から選択されるポリマー材料と、
(ii)少なくとも1つの強化フィラーであって、前記強化フィラーが前記マトリックスの前記ポリマー材料中に分散し、前記コアヤーンのフィラメント間の隙間に存在する粒子によって構成される強化フィラーと
を含み、前記粒子は官能化されており、前記複合ヤーンは5から15重量%の量の難燃性フィラーをさらに含む、請求項9に記載の複合ヤーン。
【請求項17】
前記強化フィラーを構成する前記粒子のモース硬度は、1から5.5の範囲にある、請求項9に記載の複合ヤーン。
【請求項18】
請求項9に記載の複合ヤーンを少なくとも1つ含む、テキスタイル。
【請求項19】
日よけ、サンブロックテキスタイル、サンスクリーンテキスタイル、サンシールドテキスタイル、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項18に記載のテキスタイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下に開示される本発明は、連続マルチフィラメントヤーンを、少なくとも1種のポリマーを含むマトリックスでコーティングすることによって一般に得られる複合ヤーンの一般的な分野に;これらのヤーンから作られたテキスタイルの一般的な分野に、およびそのようなテキスタイルまたはヤーンから作られた日よけ、または他のサンブロック、サンスクリーンもしくはサンシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
複合ヤーンは、よく知られていて一般的に使用されている技術的なヤーンであり、一般に以下を含む;
・一般的に撚られている連続マルチフィラメントヤーン(すなわち、いくつかのフィラメントから形成されたヤーン)を含むコア;
・少なくとも1種のポリマー材料、例えばポリ塩化ビニル(PVC)などの塩素化ポリマー材料、可塑剤、および通常は1種または複数種の鉱物難燃性フィラーから構成される難燃性系を含むマトリックス;および
・シースまたはエンベロープ。
【0003】
鉱物難燃性フィラーは不溶性の鉱物固形物質であり、通常、機械的手段によって有機マトリックスに分散させることを意図されている。難燃性フィラーは、材料の耐火性を向上させるために使用される。難燃性フィラーは、通常、ハロゲン化、有機リン(ホスホネート、ホスフィネート、ホスフェート、その他)、ホウ素ベースまたは窒素分子、(M(OH))タイプの金属水酸化物(Mは金属)、例えば、アルミニウムまたはマグネシウム、または三酸化または五酸化アンチモンなどの酸化アンチモンから選択される。多くの用途では、難燃性材料(すなわち、耐火性を備えた材料)を必要とする。この目的のために、少なくとも1種の難燃性フィラーを材料に組み込むことができる。このようにして得られた配合物を適用条件に適合させることも必要である。これを行うために、複合ヤーンのマトリックスの製造のために作られた化学調製物の粘度を調整することを可能にする減粘剤などの他の材料がマトリックス中に存在し得る。
【0004】
複合ヤーンは、一般に、通常はねじれを有する連続マルチフィラメントヤーンまたは「コアヤーン」(「繊維」としても知られる)上にポリマーを堆積させることによって得られる。この目的のために主に2つの技術が使用される:1つは「プラスチゾル」技術である。これはコアヤーンをプラスチゾルの少なくとも1つの層でコーティングすることを含み、前記プラスチゾル層は、ポリマー、可塑剤、および任意選択的にフィラーなどの他の成分を含む。その後コアヤーンの周りのプラスチゾルのゲル化が続く。もう1つは「押出コーティング」技術である。これは押出機内でポリマーを固体形態から液体形態に加熱し、続いてコアヤーン上に堆積させ、次いでダイで較正することを含む。「プラスチゾル」という用語は、一般に油の形態の可塑剤中のポリマーの分散から得られる生成物を指す。この分散液は加熱される。つまり、特定の温度から始まる可塑剤がポリマーの溶媒になる。したがって、2相媒体から1相媒体への変化がある。一種のゲル化であるこの変換は不可逆的である。「押出コーティング」技術は、押出し可能な熱可塑性ポリマー専用である。
【0005】
一般に、複合ヤーンの中心は、すべてのフィラメントが集中している領域から形成される。この領域は通常、ポリマーが非常に少ない。したがって、フィラメントは一般に互いに直接接触している。フィラメント間の分離の欠如、およびポリマーの欠如による凝集の欠如は、これらの複合ヤーンで作られたテキスタイルの切断作業中に引張りにつながり、シースが切断されると、フィラメントはもはや所定の位置に維持されず、簡単に引っ張ることがあり得る。引っ張られたフィラメントが脆弱な領域を形成し、それが複合ヤーンの機械的特性を低下させる可能性があるため、これは時間の経過とともに問題を引き起こす。これは、テキスタイルガラスヤーンで作られた複合ヤーンの場合に特に当てはまる。それというのも、テキスタイルガラスヤーンは非常に水に敏感であり、毛細管現象を介して、複合ヤーンに浸透する可能性のある水が一定時間後に機械的特性を大幅に低下させる可能性があるためである。
【0006】
この問題を克服するために、特許出願の国際公開第03/056082号パンフレットに記載されている解決策を含む、様々な技術的解決策が実施されてきた。前記文書は、各フィラメントにコーティングすることによって得られる複合ヤーンについて記載している。したがって、フィラーを含まない第1のコーティングの終了時に得られた複合ヤーン上に難燃性コーティングを堆積することによって、難燃性複合ヤーンを製造することが可能である。しかしながら、フィラメントを個別にコーティングすることは複合ヤーンを硬化させ、これはこの複合ヤーンから得られるテキスタイルの取り扱いを困難にし、ロールアップ後に「記憶力」を与えることによって標準EN13561の規定に従うブラインドの生地としての使用に適さなくなる可能性さえある。「記憶力」は数サイクルの使用後の外観に大きな影響を与える。標準EN13561は外部ブラインドに関するものであり、安全性に関連するものを含め、性能の要件が含まれている。
【0007】
特許出願の国際公開第2011/033130号パンフレット自体は、複合ヤーンを製造するためのプロセスが、(各フィラメントへのマトリックスのアクセシビリティを可能にするように)コアヤーンを構成する個々のフィラメントの機械的開離;好ましくは扇状化の予備ステップを含むという点で、特許出願の国際公開第03/056082号パンフレットの改良を記載している。しかしながら、国際公開第2011/033130号パンフレットに記載されているプロセスは、実施するのが非常に複雑である。さらに、コアヤーンは、それを構成する個々のフィラメントの機械的開離によって生成されるかなりの機械的応力に耐えることができなければならない。これによりコアヤーンの選択が制限される。
【0008】
一般に織りによって複合ヤーンから得られ、ブラインドファブリックを作ることを目的としたテキスタイルは、様々な法域で耐火性能規制の対象となる。
【0009】
ドイツでは、標準DIN 4102-1の下に、材料の火災に対する反応を定義する3つのカテゴリ(コードB1からB3)から構成されるクラスがある。コードB1は、有機材料の最も厳しい分類を示す。これは一般的に、特にドイツ愛好家の地域で、そして影響により北ヨーロッパで、太陽光保護テキスタイルに必要とされる。
【0010】
フランスでは、標準NF P92-507の下に、材料の火災反応を定義する5つのカテゴリ(またはクラス)から構成されるクラスがある(コードM0からM4)。この分類は、無機繊維をベースにした布などの溶けない材料の場合、バーナーを取り外した後の炎の持続時間、試験片の破壊された長さ、および標準NF P92-503の下での試験の実行中に火が付いた滴が滴り落ちる可能性に基づいている。標準NF P92-507は、標準NF P92-503の下で実行される試験を利用するクラスについて記載している。溶融性材料の場合、標準NF P92-504およびNF P92-505に従って追加の試験が必要である。燃焼性は材料の全燃焼によって放出される熱であり、引火性は材料によって生成される引火性ガスの量である。コードM1は非引火性の燃焼性材料を示し、特にフランス市場向けの太陽光保護テキスタイルに適用され、影響により南ヨーロッパの市場にも適用される。
【0011】
現在、フランスとドイツの分類は依然として広く使用されているが、「ユーロクラス」を定義するヨーロッパ標準EN13-501-1に取って代わられる過程にある。
【0012】
ユーロクラスは耐火性能を定義する。それらは、とりわけ、建設用および建物の付属品用の製品を特徴付けるために使用される。それらは個別に取り上げられるフランスおよびドイツの各クラスよりも完全である。それというのも、それらは、放出されるエネルギーのレベルに応じてA1、A2、B、C、D、またはFで示される材料の耐火性能、「煙(smoke)」の「s」で示される放出される煙霧の不透過度(量および速度)(コードs1からs3)、および「滴(droplet)」の「d」で示される発せられる火が付いた滴およびデブリ(コードd0からd2)を考慮に入れるためである。テキスタイルガラスヤーン(またはガラス繊維)などの鉱物コアヤーンを非常に難燃性の高いプラスチゾルでコーティングすることによって得られる一般的な市販の複合ヤーンは、標準EN 13-501-1のユーロクラスCs3d0の耐火性能基準を最もよく満たすテキスタイルを調製することを可能にする。理想的には、それらは、標準EN 13-501-1のユーロクラスBs2d0の耐火性能基準を満たすべきである。しかしながら、現時点では、ガラステキスタイルヤーンなどの鉱物コアヤーンに難燃性PVCプラスチゾルをコーティングすることによって得られる市販の複合ヤーンでは、標準EN 13-501-1のユーロクラスBs2d0またはBs3d0の耐火性能基準を満たす太陽光保護テキスタイルを調製することはできない。
【0013】
難燃性複合ヤーンを調製するために、通常、マトリックスのポリマーに分散された難燃性フィラーが使用される。これらの難燃性フィラーは、非常に多様なサイズおよび形状のものである。
【0014】
特許EP第0900294号明細書は、そのマトリックスを構成するポリマー材料が塩素化され、酸素化アンチモン化合物(一般に三酸化アンチモン)、水和金属酸化物およびホウ酸亜鉛を組み合わせた三成分組成物の難燃性フィラーを含むような複合ヤーンを記載しており、複合ヤーンの無機材料の総組成は4~65%である。可塑剤は一般に少なくとも1種の有機フタル酸エステルを含み、リン酸塩を含まない。しかしながら、特定のフタル酸エステルは有毒であると言われており、アンチモン塩は有毒であると疑われている。
【0015】
特許出願の国際公開第2010/001240号パンフレットは、難燃性プラスチゾルが鉛フリーの塩素化ポリマーを含み、可塑剤がオルトフタレートを含まず、難燃性フィラーがアンチモンを含まず、金属水和物と亜鉛塩を含むという点で、特許EP第0900294号明細書の改良を記載している。しかしながら、難燃剤の含有量は高い一方で可塑剤の含有量は耐火性クラスに準拠するために比較的低く、これは複合ヤーンの剛性をもたらし、したがってそのような複合ヤーンから、標準EN 13561によって規定されている性能要件にも準拠しているブラインドファブリックを得ることを困難にしている。
【発明の概要】
【0016】
したがって、従来技術と比較して改善された耐火性能を有し、製造が容易であり、標準EN 13561の要件を満たすブラインドファブリックの製造を可能にする複合ヤーンが必要とされている。
【0017】
本開示の一態様は、複合ヤーンの耐火性能の改善を提示することである。本開示の別の態様は、実行が容易な複合ヤーンを製造するためのプロセスを提供することである。
【0018】
本開示の別の態様は、とりわけ複合ヤーンの製造コストを削減する目的で、ねじれが少なく、標準的なサイジングを含むガラステキスタイルヤーンをコアヤーンとして使用できるようにすることである。本開示の別の態様は、環境基準に準拠し、特に、毒性が疑われず、揮発性有機化合物(VOC)の放出を制限する成分を使用するプロセスを提供することである。
【0019】
したがって、第1の態様によれば、マトリックスに組み込まれた連続マルチフィラメントコアヤーンを含む複合ヤーンは、マトリックスが少なくとも1種のポリマー材料および少なくとも1種の強化フィラーを含み、強化フィラーは官能化粒子で作られ、前記粒子は、40μm未満のメジアン径(dv50)を有することを特徴とする。
【0020】
有利なことに、複合ヤーンは、従来技術の複合ヤーンのタイターよりも低いタイター(または密度)を有する。したがって、典型的には、複合ヤーンは、コアヤーンが68テックスのタイターを有する場合、135~140テックスのタイターを有するが、従来技術の複合ヤーンは、同じコアヤーンに対して約165テックスのタイターを有する。これは、有利なことに、複合ヤーンから作られたテキスタイルの単位面積当たりの質量および厚さを、それぞれ、約10から20%、および約10から15%減らすことを可能にする。
【0021】
連続マルチフィラメントコアヤーンは、好ましくは、1メートルあたり20から40ラウンドの範囲内のねじれを有する。
【0022】
好ましい実施形態によれば、コアヤーンのねじれは、1メートルあたり28~40ターンの間である。
【0023】
さらにより好ましい実施形態によれば、コアヤーンのねじれは1メートルあたり28ターンである。
【0024】
好ましくは、強化フィラーの官能化粒子(または強化粒子)は、複合ヤーンのマトリックス全体に分散され、マトリックスはコアヤーンフィラメントと接触している。
【0025】
特に好ましくは、強化フィラーの一部は、コアヤーンのフィラメント間の隙間に存在する。有利なことに、強化フィラーの最小粒子は、コアヤーンのフィラメント間スペースの隙間に存在する。
【0026】
いかなる場合においても、マトリックスは一般に、官能化粒子が分散している連続媒体を形成する。
【0027】
好ましくは、マトリックス中の官能化粒子の分散は均質である。「均質」とは、マトリックス中の官能化粒子の濃度が、前記マトリックスのいずれの地点においても同じオーダーの大きさであることを理解されたい。
【0028】
本明細書に開示される好ましい実施形態によれば、複合ヤーンは、コアヤーン、マトリックス、およびシースで作られる。
【0029】
「XとYの間」という用語(XとYは任意の数値)は、XとYの間を意味し、限界値は除外される。「ZからTの範囲内」という用語(ZとTは任意の数値)は、ZとTの間を意味し、限界値が含まれる。
【0030】
「Aおよび/またはB」という用語(AおよびBは任意の特性)は、「A」または「B」または「AおよびB」を意味する。
【0031】
「テックス」という用語は、当業者に一般的であるように、1キロメートルのヤーンのグラム単位の質量を意味する。
【0032】
「マトリックス」という用語は、コアヤーンと接触している少なくとも1種のポリマー材料を含む要素を意味する。
【0033】
好ましくは、粒子は、コアヤーンを構成する材料の硬度以下の硬度(モース)を有する。
【0034】
モース硬度は、鉱物の硬度の測定値である。モーススケールは、すぐに利用できる10種類の鉱物に基づく。その硬度スケールは1(タルクの場合)から10(ダイヤモンドの場合)の範囲である。それは、ある鉱物と、硬度がすでに分かっている他の2種の鉱物との比較(一方が他方を引っ掻く能力)によって測定可能である。一般に、この値は製品供給業者によって提供される。したがって、マルチフィラメントから形成されたテキスタイルガラスヤーンの硬度は5.5である。テキスタイルガラスヤーンは一般にシリオン(silionne)と呼ばれる。テキスタイルガラスヤーンは、サイジングされたシリオンの様々なフィラメントのを撚り合わせたアセンブリである。「サイジングされた」という用語については、以下で説明する。好ましい実施形態によれば、強化フィラーを構成する粒子のモース硬度は、例えば、これらの値の間の0.5の増分を含めて、少なくとも1および5.5以下である。換言すると、この硬度は1から5.5の範囲にある。
【0035】
強化粒子の硬度が1未満の場合、強化フィラーは一般に砕けやすく、したがって、複合ヤーンの製造ステップの間のせん断に耐えられないために破壊される。強化粒子の硬度が5.5より大きい場合、強化フィラーはコアヤーンを構成するフィラメントを局所的に損傷する可能性がある。
【0036】
「サイズ」(または「平均サイズ」)という用語は、通常どおり、選択した粒子サイズ分析操作中に検討中の粒子と同じように挙動する理論球が有するであろう直径を意味する。「直径」または「等価直径」という用語も使用される。
【0037】
検討中の技術分野では、測定は一般に、一連の振動スクリーンによるスクリーニング、またはレーザー粒子サイズ分析(回折レーザーを使用)によって行われる。粒子サイズは、好ましくは、レーザー粒子サイズ分析によって測定される。レーザー粒子サイズ測定に使用できる機械は、通常、Malvern Instrumentsブランドの機械、例えばMalvern Masterizer 2000 Instrument機械である。この機械は、とりわけ、粒子の体積分布、特に、以下で説明する寸法dv50、dv10およびdv90を決定することを可能にする。当業者に知られているように、例えば、レーザー粒子サイズ分析器に供給する乾燥粉末を乾燥させることを可能にする、Scirocco 2000タイプの粉末乾燥機の使用を組み合わせることは一般的である。
【0038】
メジアン径(dv50)、または径(dv50)は中央値を示す:粒子の50%(体積基準)がより小さいサイズを有し、粒子の50%(体積基準)がより大きいサイズを有する。粒子は、40μm未満、好ましくは30μm未満、一般に5μmを超え、好ましくは15μmを超えるメジアン径(dv50)を有する。好ましくは、メジアン径(dv50)は5μm~40μmの間であり、さらにより好ましくは15μm~30μmの間、または15μmから30μmの範囲内であり、例えばそれらの間の1μmの増分を含む。
【0039】
強化粒子のメジアン径(dv50)が5μm未満の場合、コアヤーンのフィラメント間の隙間に存在する強化フィラーの粒子は多すぎる。プロセスの観点から、これは一般に、これらの粒子の表面積が大きすぎる結果となり、それが堆積されるときにマトリックスを構成するポリマー材料の粘度の増加につながる。これらの強化粒子のメジアン径(dv50)が40μmを超える場合、コアヤーンのフィラメント間の隙間に存在する強化粒子は少なすぎる。プロセスの観点から、これは一般に、コアヤーンのフィラメント間の隙間における強化フィラーの粒子の分散が困難であり、したがって不十分であるという結果をもたらす。その場合、複合ヤーンの破断強度は不十分であると一般に判断される。
【0040】
径(dv10)は、それより下で粒子の10%(体積基準)がより小さいサイズを有し、粒子の90%(体積基準)がより大きいサイズを有するサイズを示す。粒子は一般に15μm未満、好ましくは1μmから15μmの範囲内の径(dv10)を有する。
【0041】
強化粒子の径(dv10)が1μm未満の場合、コアヤーンのフィラメント間の隙間に強化フィラーの多すぎる量の粒子が存在する。プロセスの観点から、これは一般に、これらの粒子の表面積が大きすぎる結果となり、それが堆積されるときにマトリックスを構成するポリマー材料の粘度の増加につながる。強化粒子の径(dv10)が15μmより大きい場合、コアヤーンのフィラメント間の隙間に存在する強化粒子は少なすぎる。プロセスの観点から、これは一般に、コアヤーンのフィラメント間の隙間における強化フィラーの粒子の分散が困難であり、したがって不十分であるという結果をもたらす。その場合、複合ヤーンの破断強度は不十分であると一般に判断される。径(dv90)は、それより下で粒子の90%(体積基準)がより小さいサイズを有し、粒子の10%(体積基準)がより大きなサイズを有するサイズを示す。粒子は、一般に、90μm未満、好ましくは30μmから90μmの範囲内、さらにより好ましくは30μmから80μmの範囲内の径(dv90)を有する。
【0042】
強化粒子の径(dv90)が30μm未満の場合、コアヤーンのフィラメント間の空間内に強化フィラーの粒子の多すぎる量が存在する。プロセスの観点から、これは一般に、これらの粒子の表面積が大きすぎる結果となり、それが堆積されるときにマトリックスを構成するポリマー材料の粘度の増加につながる。強化粒子の径(dv10)が90μmより大きい場合、コアヤーンのフィラメント間の隙間に存在する強化粒子は少なすぎる。プロセスの観点から、これは一般に、コアヤーンのフィラメント間の隙間における強化フィラーの粒子の分散が困難であり、したがって不十分であるという結果をもたらす。その場合、複合ヤーンの破断強度は不十分であると一般に判断される。複合ヤーンを使用するテキスタイル分野では、コアヤーンの各フィラメントの平均直径の公称値は、一般に3.5μmから13μmの範囲内であり、典型的に3.5μmから9μmの範囲であり、さらに好ましくは6μmから9μmの範囲、例えば、6μmまたは9μmである。この公称値は、通常、コアヤーンの供給業者によって提供される。複合ヤーンの他の用途については、他の公称値が想定され得る。
【0043】
好ましい実施形態によれば、強化粒子のメジアン径(dv50)とコアヤーンの各フィラメントの直径との間の比は、一般に、0.15:1から12:1の範囲であり、好ましくは1.5:1から5:1の範囲である。
【0044】
好ましい実施形態によれば、複合ヤーン中に存在する強化フィラーの重量パーセントは、0.5から30%の範囲内である。より好ましい実施形態によれば、複合ヤーン中に存在する強化フィラーの重量パーセントは、0.5から20%の範囲内である。さらにより好ましい実施形態によれば、複合ヤーン中の強化フィラーの重量パーセントは、1から10%の範囲内である。
【0045】
好ましい実施形態によれば、強化フィラーは、官能化フィラーによって形成される群から、好ましくは官能化ガラスビーズ、官能化炭酸カルシウム、および官能化タルクによって形成される群から選択される。
【0046】
官能化ガラスビーズの硬度は5.5である。官能化炭酸カルシウムの硬度は3.0である。官能化タルクの硬度は1.0である。
【0047】
「官能化された」という用語は、「表面処理された」、すなわち、官能性が少なくとも1つの有機基を介して粒子の表面に添加されたことを意味する。この官能化は、官能化剤として知られる少なくとも1種の化合物を用いて行われる。官能化により、フィラーとその環境(この場合はマトリックス)の間に「化学的架橋」を形成することが可能になる。したがって、フィラー、コアヤーン、およびマトリックスを化学的に結合する(例えば共有結合を介して)か、物理化学的に結合する(例えば水素結合を介して)ことが可能である。有利なことに、これにより、すべての構成要素が有機タイプの化学結合を介して一緒に結合されている実質的に均質な媒体を得ることが可能になる。有利なことに、これは、材料に実質的な凝集性および機械的特性の均一性を与える。これは、「強化フィラー」という用語の使用と一致している。換言すると、強化フィラーは、マトリックスを構成するポリマーおよびコアヤーンにも完全に付着している。
【0048】
さらに、強化フィラーは、それらの一部がコアヤーンのフィラメント間の隙間に存在するのに十分小さい粒子サイズを有し、これにより、フィラメント間の隙間、好ましくはフィラメント間の隙間のすべての充填が有利に可能になる。
【0049】
フィロシリケート粒子から構成されるタルクに関して、官能化剤は、一般に、オキシシラン(またはシロキサン)および少なくとも1つの有機基を有するオキシゲルマンによって形成される基から選択される。これは、例えば、国際公開第2014/207397号パンフレットに記載されている。
【0050】
官能化ガラスビーズは、一般に、共有結合的かつ直接的または間接的に、ガラスの表面に試薬を化学的にグラフトすることによって作製される。これは、例えば、国際公開第2014/083162号パンフレットに記載されている。官能化ガラスビーズは、Microperl(登録商標)またはOmicron(登録商標)の名前でSovitec社から販売されている。
【0051】
炭酸カルシウムは一般に、表面への試薬の化学的グラフト化によって官能化される。実行されるプロセスは、ガラスビーズに使用されるプロセスと同様である。
【0052】
好ましくは、強化フィラーは、シラン、例えば、アルキルアルコキシシランなどのシラン化剤;エポキシ(とりわけエポキシシランおよびDGEBA(ビスフェノールAジグリシジルエーテル)が挙げられる);MDI誘導体(または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの場合は4,4’-MDI)またはHDI(ヘキサメチレンジイソシアネートの場合)などのポリイソシアネートから選択される少なくとも1種の化合物で官能化される。
【0053】
好ましくは、強化フィラーは、シラン化剤、エポキシ、およびポリイソシアネート、さらにより好ましくはシラン化剤から選択される少なくとも1種の化合物で官能化される。
【0054】
シラン化剤は、アルキルアルコキシシラン、アルキルシリルハライド、例えばトリメチルシリルクロリドまたはジメチルシリルジクロリドなど、テトラメチルシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルシロキサン、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン、その他などの少なくとも1つのシリル基を含む化合物である。
【0055】
「シリル」とは、シランに由来するラジカルを意味する。
【0056】
「アルキル」とは、アルカンに由来するラジカルを意味し、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子、より好ましくは1~5個の炭素原子を含む。
【0057】
「アルコキシシラン」とは、二価の基-Si-Oと、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から5個の炭素原子を含むアルキル基とを含む化合物を意味する。
【0058】
これらの生成物には幅広い種類があるため、シランが優先的に使用される。シランは式SiHの分子である。拡大すると、「シラン」という用語は、ここで、通常通り、中心原子がシリコンである化合物、例えば、SiHCl(トリクロロシラン)またはテトラメチルシランSi(CHまたはテトラエトキシシランSi(OCを指す。官能化強化フィラーは、シランで官能化されている場合、すなわち、シランの少なくとも1つのシリル基と強化フィラーの粒子との間に共有結合が形成される場合、シラネートと呼ばれる。例えば、トリメチルシリルクロリドによるシラン化は、粒子に共有結合したトリメチルシリル基を形成し、またはジメチルシリルジクロリドによるシラン化は、粒子に共有結合したジメチルシリル基を形成する。当業者は、フィラー、コアヤーン、およびマトリックスに応じて、状況に完全に適したグレードを容易に特定することができる。特にコアヤーンが有機起源(ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコールその他)である場合、エポキシおよびポリイソシアネートが最も好ましい。
【0059】
好ましい実施形態によれば、マトリックスは、少なくとも1種の難燃性フィラーをさらに含む。
【0060】
難燃性フィラーは当業者によく知られている。それらは一般に、酸素化アンチモン化合物、例えば三酸化アンチモン、ヒドロキシスズ酸亜鉛またはホウ酸亜鉛を含む特定の亜鉛塩、その金属がアルミニウム、マグネシウム、スズおよび亜鉛によって形成される群から選択される水和金属酸化物、例えば、アルミナ三水和物などのアルミナ水和物、または水酸化マグネシウムなどのマグネシウム水和物、および膨張系として機能するリンベースのセラミックから選択される。
【0061】
コアヤーンの構成材料は、好ましくは、シリオン、玄武岩、アラミド、ポリエステル、ポリアミド、炭素、およびポリビニルアルコールから選択される。特に好ましい方法では、コアヤーンの構成材料はシリオンである。上に示したように、シリオンのモース硬度は5.5である。
【0062】
コアヤーンの構成材料がシリオンである場合、コアヤーンは、「標準的な」テキスタイルガラスヤーンまたは「特殊な」ガラスヤーンから形成され得ることが知られている。
【0063】
標準的なテキスタイルガラスヤーンのねじれは、一般に1メートルあたり20から40ターンの範囲内である。ねじれは、通常、33テックスまたは68テックスのコアヤーンテックスの場合は1メートルあたり28ターン、または22テックスのコアヤーンの場合は1メートルあたり40ターンである。標準的なテキスタイルガラスヤーンは、一般にデンプンに基づくサイジングをさらに含み、その目的は、シリオンフィラメントを保護し、それらの凝集を確実にすることである。これは、サイジングされたテキスタイルガラスヤーンと呼ばれる。そのようなサイジングの組成物は、一般に、これらのコアヤーンを商品化する会社によって開発されているが、それらは開示されていない。
【0064】
サイジングは、ダイの穴を通して溶融ガラスのフィラメントを高速で紡ぐものである、この業界で「成形」作業と呼ばれる作業の間、テキスタイルガラスヤーンを構成する個々のフィラメントに堆積される。このサイジングは、一般に、コアヤーンの製造中に水性エマルジョンの形態でフィラメントの表面に堆積される。それは一般にコアヤーンの重量組成の0.5%から1.5%に相当する。テキスタイルヤーンの場合、サイジングの役割は、フィラメントを保護して操作できるようにし、織り中の静電気の現象を減らすことである。テキスタイルサイジングは、通常、接着剤(一般にデンプンである)、および場合により少なくとも1種の湿潤剤(ヤーンの含浸を改善することを目的とする)および/または少なくとも1種の潤滑剤から構成される。特殊なテキスタイルガラスヤーンとは対照的に、標準のテキスタイルガラスヤーンは、そのサイジングにカップリング剤を含まない。
【0065】
したがって、標準的なテキスタイルガラスヤーンは、一般に、1メートルあたり20から40ターンの範囲のねじれを有し、少なくとも1種の接着剤、および場合により少なくとも1種の湿潤剤および/または少なくとも1種の潤滑剤を含む、好ましくはそれらから形成されるサイジングを含むテキスタイルガラスヤーンである。
【0066】
テキスタイルガラスヤーンをPVCプラスチゾルでコーティングする用途で通常使用される特殊なテキスタイルガラスヤーンは、一般に1メートルあたり40から80ターンの範囲のねじれ、および/または特殊なサイジングと呼ばれるものを有し、特殊なサイジングは、標準的なテキスタイルガラスヤーンのサイジングに加えて、サイジングのための少なくとも1種の接着促進剤および/または少なくとも1種のカップリング剤を含む。ねじれ値は、通常、関連する最終用途に関連付けられる。接着促進剤および/またはカップリング剤は、テキスタイルガラスヤーンの構成フィラメントと接着促進剤および/またはカップリング剤との間、さらに、接着促進剤および/またはカップリング剤と、マトリックスを構成するポリマーとの間の接着(主に少なくとも1つの化学結合を作り出すことによる)を可能にすることを意図している。したがって、テキスタイルガラスヤーンの構成フィラメントとポリマーは化学的に結合している。好ましくは、特殊なサイジングは、少なくとも1種の有機結合剤および/または少なくとも1種の潤滑剤をさらに含む。接着促進剤/カップリング剤は一般的にシランである。各テキスタイルガラスヤーン製造業者は独自のサイジングを有し、その正確な化学組成は企業秘密である。したがって、VETROTEX社のサイジングTD52およびTD53などのシリオン/PVC接着を促進するために特別に開発されたサイジングと、VETROTEX社のサイジングTD22およびTD37などの様々なタイプのポリマーとのシリオンの接着を促進するために特別に開発されたサイジングがある。
【0067】
したがって、特殊なテキスタイルガラスヤーンは、一般に、1メートルあたり40から80ターンの範囲のねじれを有し、および/または、少なくとも1種の接着剤、および少なくとも1種の接着促進剤および/または少なくとも1種のカップリング剤を含む、好ましくはそれらから形成されるサイジングを含むテキスタイルガラスヤーンである。
【0068】
したがって、特殊なテキスタイルガラスヤーンは、標準的なテキスタイルガラスヤーンよりもはるかに高価である。
【0069】
特に有利な方法において、複合ヤーンは、強制的に特殊なテキスタイルガラスヤーンではなく、標準的なテキスタイルガラスヤーンであるコアヤーンを含み得る。
【0070】
いかなる理論によっても制限されることを望まないが、本出願人は、この利点は、マトリックスを構成するポリマーとコアヤーンとの間の結合の特定量の制御によって、および中間的な役割を果たし、テキスタイルガラスヤーンの構成フィラメントとマトリックスの構成ポリマーとの間の「関節」のように振る舞う官能化粒子のマトリックス中の存在のおかげで得られると考える。これらの官能化粒子は、コアヤーンの標準的なサイジングとマトリックスを構成するポリマーとの間に化学結合を作り出すが、これは従来技術では不可能である。
【0071】
したがって、テキスタイル用途の場合、これにより、特殊なテキスタイルガラスヤーンを標準のテキスタイルガラスヤーンで置き換えることが有利に可能になり、これにより、複合ヤーンの製造コストを25%のオーダーで大幅に削減することができ、これは、複合ヤーン製造業者に向けて、特に最大の世界的生産能力を有する製造業者に向けて、コアヤーンの潜在的供給業者のパネルを開き、例えばアジアの供給業者はプリント回路基板の製造に意図されたテキスタイルガラスヤーンを製造している。具体的には、コアヤーンの原料が、特にサイジングのための特別で高価な有機製品(すなわち、少なくとも1種の接着促進剤および/または少なくとも1種のカップリング剤)の使用を回避することによって、より安価であるだけでなく、テキスタイルガラスヤーンであるコアヤーンのより少ない撚りによって、テキスタイル生産で一般的に使用される撚り機でこれらのヤーンの通過時間を制限することが可能である。
【0072】
実施例に示すように、標準的なテキスタイルガラスヤーンであるコアヤーンを使用することによって得られる複合ヤーンの品質は損なわれず、むしろ特殊なテキスタイルガラスヤーンであるコアヤーンを使用する従来技術の複合ヤーンの品質よりも優れている。いかなる理論によっても制限されることを望まないが、本出願人は、それが、マトリックス中に存在する官能化粒子によって可能とされるフィラメント間の隙間へのより容易なアクセスのおかげであると考える。
【0073】
したがって、複合ヤーンのコアヤーンは、標準的なテキスタイルガラスヤーンであり得る。
【0074】
複合ヤーンのコアヤーンはまた、特殊なテキスタイルガラスヤーンであり得る。
【0075】
コアヤーンの構成材料の軟化点または融点は、複合ヤーンのマトリックスのポリマー材料の実装温度よりも高くなければならない。例えば、テキスタイルガラスヤーンである場合のコアヤーンの構成材料の軟化点は、複合ヤーンのマトリックスのポリマー材料の実装温度よりも少なくとも20℃高い、好ましくは少なくとも30℃高い、さらにより好ましくは少なくとも50℃高い。例として、複合ヤーンのマトリックスのポリマー材料の実装温度は、典型的には50から180℃の範囲である。コアヤーンの構成材料の軟化点は、前記ヤーンがテキスタイルガラスヤーンである場合、典型的には約600℃である。
【0076】
好ましい実施形態によれば、複合ヤーンは、前記マトリックスを包む「シース」または「エンベロープ」とも呼ばれる少なくとも1つの層をさらに含み、この層は、少なくとも1種のポリマー材料および少なくとも1種の強化フィラーを含む。この層は通常、マトリックスと同じ方法で、好ましくはコーティングによって堆積される。好ましい実施形態によれば、複合ヤーンは、コアヤーン、マトリックス、およびシースから形成される。
【0077】
好ましくは、この層のポリマー材料は、マトリックスのポリマー材料と同じ化学的性質のものである。「同じ化学的性質」という用語は、当業者に知られているように、適合性のある化学組成を意味する。
【0078】
好ましい実施形態によれば、前記層の強化フィラーは、前記マトリックスの強化フィラーと同じ化学的性質のものである。有利なことに、この化学的性質の同一性は、より良好な均質性を有する複合ヤーンを得ることを可能にする、すなわち、それを構成するコアヤーン、マトリックス、および層が収着および接着に関して相互作用する。
【0079】
さらに、1種または複数種の難燃性フィラー、色素性フィラーおよび/または熱安定剤および/またはUV安定剤など、少なくとも1種の他の添加剤をマトリックス、層、またはその両方(層およびマトリックス)に組み込んで分散することができる。
【0080】
好ましくは、シースは、少なくとも1種の難燃性フィラーをさらに含む。そのような難燃性フィラーは、当業者に知られており且つ上に記載した難燃性フィラーから選択される。
【0081】
本開示は、有利には、複合ヤーン中に存在する難燃性フィラーの量(重量基準)を制限することを可能にする。したがって、通常、複合ヤーン中の難燃性フィラーの量(重量基準)は、最先端の複合ヤーンと同様のレベルの難燃性を得るために、一般に1.5%超且つ7.5重量%未満、例えば、複合ヤーンの総重量に対して約3重量%であり、最先端の複合ヤーンでは、難燃性フィラーの重量基準の量は、ほとんどの場合、複合ヤーンの総重量に対して8から12重量%である。
【0082】
本開示は、有利には、同量(重量基準)の難燃性フィラーについて、従来技術の複合ヤーンの耐火性能と比較して特に改善された耐火性能を有する複合ヤーンを得ることを可能にする。したがって、初めて、コアヤーンがシリオンから形成され、ユーロクラス標準EN 13501-1の基準Bs2d0またはBs3d0を満たす複合ヤーンを製造することが許可される。いかなる理論にも拘束されることを望まずに、本出願人は、強化フィラーの無機性が、火によって供給される熱の局所的な分散を可能にすると考えている。さらに、フィラメント間の隙間を強化粒子で満たすことにより、コアヤーンの中心に材料が不足していることに関連する「煙突」効果を排除することが可能になる。コアヤーンの中心の材料の不足は火炎の伝播に有利に働く。
【0083】
一実施形態によれば、複合ヤーンは、連続マルチフィラメントコアヤーンおよびマトリックスを含み、マトリックスは以下を含む:
(i)少なくとも1種のポリマー材料。ポリマーは、PVC、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、EVAポリマーおよびポリアミドからなる群から選択される。
(ii)少なくとも1種の強化フィラー。強化フィラーは、マトリックスのポリマー材料に分散し、コアヤーンのフィラメント間の隙間に存在する粒子によって構成され、前記粒子は官能化されており、40μm未満のメジアン径(dv50)を有する。
複合ヤーンは、約0.5から5重量%の量の難燃性フィラーをさらに含み、前記ヤーンから得られるテキスタイル表面が、標準EN 13561(10,000サイクル超)によって規定される性能要件を満たすようなものである。
【0084】
「テキスタイル表面」とは、布、不織布、ニット、テキスタイルグリッド、その他などのヤーンの機械的アセンブリを意味する。「前記ヤーンから得られるテキスタイル表面」とは、ヤーンアセンブリが複合ヤーンであることを意味する。
【0085】
一実施形態によれば、複合ヤーンは、連続マルチフィラメントコアヤーンおよびマトリックスを含み、マトリックスは以下を含む:
(i)少なくとも1種のポリマー材料。ポリマーは、PVC、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、EVAポリマーおよびポリアミドからなる群から選択される。
(ii)少なくとも1種の強化フィラー。強化フィラーは、マトリックスのポリマー材料に分散し、コアヤーンのフィラメント間の隙間に存在する粒子によって構成され、前記粒子は官能化されており、40μm未満のメジアン径(dv50)を有する。
複合ヤーンは、約0.5から5重量%の量の難燃性フィラーをさらに含み、前記ヤーンから得られるテキスタイル表面が、標準NF P-92-507のクラスM1の耐火性能要件を満たすようなものである。
【0086】
一実施形態によれば、複合ヤーンは、連続マルチフィラメントコアヤーンおよびマトリックスを含み、マトリックスは以下を含む:
(iii)少なくとも1種のポリマー材料。ポリマーは、PVC、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、EVAポリマーおよびポリアミドからなる群から選択される。
(iv)少なくとも1種の強化フィラー。強化フィラーは、マトリックスのポリマー材料に分散し、コアヤーンのフィラメント間の隙間に存在する粒子によって構成され、前記粒子は官能化されており、40μm未満のメジアン径(dv50)を有する。
複合ヤーンは、約5から15重量%の量の難燃性フィラーをさらに含み、前記ヤーンから得られるテキスタイル表面が、標準NF P13501-1のユーロクラスBs2d0またはBs3d0の耐火性能要件を満たすようなものである。
【0087】
第2の態様によれば、本開示はまた、第1の態様による複合ヤーンを製造するためのプロセスをカバーし、前記プロセスは、コーティングまたは押出しによって、少なくとも1種のポリマー材料と少なくとも1種の強化フィラーとを含むマトリックスをコアヤーンに堆積する少なくとも1つのステップを含む。
【0088】
マトリックスは、ポリマー材料に加えて、少なくとも1種の強化フィラー、および場合によっては難燃性フィラーなどの少なくとも1種の他の添加剤を組み込む。
【0089】
堆積に使用されるポリマーは、PVC、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル(またはEVA)ポリマーまたはポリアミドなどの従来のポリマーである。PVCおよびポリアクリレートは、一般に、コーティングによる堆積によって、典型的にはプラスチゾル技術を用いて使用される。ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、EVAポリマー、およびポリアミドは、一般に押出堆積で使用される。
【0090】
好ましくは、強化フィラーは、堆積前にポリマー全体に分散される。換言すると、強化フィラーは、特に、ポリマーが液体の形態で堆積される場合に堆積のために加熱されるときに、ポリマーと混合される。ポリマーが粉末形態である場合、強化フィラーは粉末の混合物として混合され得る。強化フィラーはまた、ポリマーが顆粒の形態である場合、押出操作(「配合」)によってポリマーと密接に混合され得る。
【0091】
そのような堆積は、特に好ましくは、フィラーの一部がコアヤーンのフィラメント間の隙間に配置されるように行われる。これは、当業者に知られているように、堆積中にマトリックスのレオロジー特性を調整することによって一般に実行される。
【0092】
好ましくは、堆積ステップは、コアヤーンのフィラメント上にプラスチゾルをコーティングすることによって実施され、プラスチゾルは、より好ましくは、ポリ塩化ビニル(PVC)を主成分とするか、あるいはアクリル樹脂(ポリアクリル酸)を主成分とする。「を主成分とする」とは、本発明によれば「を主に含む」を意味する。
【0093】
プラスチゾルは当業者によく知られている。それらは一般に室温でペースト状であり、粉末状の合成樹脂(ポリマー)を液体可塑剤に分散させることによって得られる。様々なプラスチゾルが、例えば、特許出願の国際公開第2010/001240号パンフレットに記載されている。
【0094】
好ましい実施形態によれば、製造プロセスは、堆積ステップで製造された複合ヤーン上に、少なくとも1種の強化フィラーが分散されたポリマー材料の少なくとも1つの層をコーティングする少なくとも1つのステップをさらに含む。この場合、好ましくは、層は少なくとも1種の難燃性フィラーをさらに含む。
【0095】
このコーティングステップは、典型的には、堆積ステップで得られた複合ヤーン上にプラスチゾルをコーティングすることによって、または堆積ステップで得られた複合ヤーン上に化合物を押し出すことによって、好ましくは堆積ステップで得られた複合ヤーン上にプラスチゾルをコーティングすることによって実施される。
【0096】
この層は、少なくとも1種の強化フィラー、および場合によっては難燃性フィラーなどの少なくとも1種の他の添加剤を組み込んでいる。
【0097】
コーティングに使用されるポリマーは、一般に、堆積に使用されるポリマーと同様である。コーティングに使用されるポリマーは、一般に、PVC、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、EVAポリマー、およびポリアミドからなる群から選択される。
【0098】
このコーティングステップのパラメータは、一般に、コーティング前にポリマーに1種または複数種の添加剤を混合することによる添加を含めて、上で説明した堆積ステップのパラメータと同様である。
【0099】
堆積ステップで得られた複合ヤーンにプラスチゾルをコーティングすることは、上で説明した。
【0100】
「化合物」という用語は、可塑化ポリマー(PVC、ポリアクリレート、その他)の化合物(一般に粒状)、またはガラス転移温度が低いポリマー(ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、EVA、ポリアミド、その他)の化合物(一般に粒状)を意味し、前記化合物はまた、任意選択的に、安定剤および/または難燃性フィラーなどの少なくとも1種の添加剤を含む。「化合物」という用語は、当業者によく知られている。「可塑化ポリマー」という用語は、当業者に理解されるように、ポリマーとそれを可塑化するために使用されてきた可塑剤との間に密接な混合が存在することを意味する。
【0101】
好ましくは、コーティングステップが化合物の押出しによって行われる場合、コーティングステップは、少なくとも1種の強化フィラーが分散された化合物を用いた、堆積ステップで得られた複合ヤーンの押出しコーティングによって行われる。強化フィラーについては上で記載した。
【0102】
本開示はまた、第3の態様において、第1の態様による、または第2の態様に従って製造された少なくとも1つの複合ヤーンを含むテキスタイル表面に関する。
【0103】
好ましくは、前記テキスタイル表面は、織りによって調製される。
【0104】
本開示は以下の実施例に照らしてより明確に理解される。以下の実施例は、その範囲を限定することなく、特許請求される発明の選択された実施形態を例示する。
【実施例0105】
実施例1
一実施形態による2つの複合ヤーンが、強化フィラーとしてシラン化ガラスマイクロビーズを含む非難燃性マトリックスをコーティングし、続いて強化フィラーとしてシラン化ガラスマイクロビーズを同じく含む難燃性層自体をコアヤーンにコーティングすることにより、PVCプラスチゾルから製造された。コアヤーンは、2つの異なる供給源からのテキスタイルガラスヤーンで構成されていた。シラン処理されたガラスビーズは5.5モースの硬度を有していた。それらは球形であり、20μmの平均直径を有し、dv50が30μm、dv10が15μm、dv90が80μmだった。これらは、例えばMalvern Masterizer 2000 Instrument機械を使用したレーザー粒子サイズ測定によって測定された。
【0106】
対照複合ヤーンもまた、特許EP0900294号の教示に基づいて、同じコアヤーン上に同じPVCプラスチゾルの2つの連続したコーティングを用いて作製された。
【0107】
1.本発明の一実施形態による複合ヤーン
コアヤーン:テキスタイルガラスヤーン
テキスタイルガラスヤーンは、シリオンの化学組成、テックスで表されるタイター、ヤーンを構成するフィラメントの直径と数、ねじれ、および使用されるサイジングのタイプによって特徴付けられる。
【0108】
サイジングはシリオンを紡いだ直後に堆積される保護コーティングであるため、テキスタイルガラスヤーンの最終的な使用がサイジングの化学的性質を調整する。
【0109】
2種類のコアヤーンが、それぞれ、一実施形態による2つの複合ヤーンに使用された:
・「PVCコーティング」用途向けに特別に開発された(したがってより高価な)特殊なテキスタイルガラスヤーン。これはPVCコーティングと適合性のある特殊なサイジング(Vetrotex社が販売するシランベースのサイジングTD52M、独自の組成は不明)と高いねじれ(1メートルあたり52ターン、すなわち「1.3Z」)を備えていた;それは対照複合ヤーンにも使用された。;
・デンプンベースのサイジングで覆われた標準的なテキスタイルガラスヤーン(1メートルあたり28ターンのねじれ、すなわち「0.7Z」)。
【0110】
一実施形態によるPVCプラスチゾル
いずれの場合も、コアヤーンは、シラン処理ガラスマイクロビーズを含む第1の非難燃性コーティングを使用してコーティングされ、次に、同じくシラン処理ガラスマイクロビーズを含む第2の少々難燃性のコーティングを使用してコーティングされた。使用した2種類のプラスチゾルの組成を以下の表1および2に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
このプラスチゾルのRV型ブルックフィールド粘度は1200mPa.sであった(23°CでNo.3スピンドルで測定)。
【0113】
コーティングラインを出るヤーンの温度は125℃であった。
【0114】
【表2】
【0115】
このプラスチゾルのRV型ブルックフィールド粘度は1350mPa.sであった(23°CでNo.3スピンドルで測定)。
【0116】
コーティングラインを出るヤーンの温度は135℃であった。
【0117】
プラスチゾル1および2に粘度降下剤は含まれていなかった。この粘度降下剤がないことは1つの利点であり、これはプラスチゾルの保存に非常に有益であり、複合ヤーンの製造中のVOCの放出を減らすことに関与する。
【0118】
このようにして、2つの複合ヤーンが一実施形態に従って得られ、その特性を以下の表3に示す。
【0119】
【表3】
【0120】
2.対照ヤーン
基準165テックスの対照ヤーンは、Vetrotex社が販売する特殊なサイジングタイプTD52MのPVCコーティング用に特別に開発され、一実施形態による2つの複合ヤーンのうちの1つに使用されるものと同様の高ねじれ(1メートルあたり52ターン)の特殊なテキスタイルガラスヤーンであるコアヤーンから始めて、特許EP0900294号の推奨に従って作製された。同じプラスチゾルで2回の連続コーティングのみを行った。使用したプラスチゾルの組成を以下の表4に示す。
【0121】
【表4】
【0122】
このプラスチゾルのRV型ブルックフィールド粘度は1300mPa.sであった(23°CでNo.3スピンドルで測定)。この値は、5.4%の揮発性粘度降下剤を添加して得られたものであり、その存在によりプラスチゾルの変換中にVOCが生成された。
【0123】
コーティングラインの出口でのヤーンの温度は、135℃であった。
【0124】
3.結果
3つの複合ヤーンおよびこれらの複合ヤーンを織るための同じ操作によって得られた対応するテキスタイルは、以下の表5および6にそれぞれ提示された特性を有していた。
【0125】
【表5】
【0126】
【表6】
【0127】
表5および6に見られるように、ヤーンAおよびBの特性は、コアヤーン(ヤーンAの標準またはヤーンBの固有)に関係なく、対照ヤーンの特性よりも優れていることが明らかになった。以下の表7および8は、同じコアヤーンで作製された一実施形態による対照ヤーンCとヤーンBとの間の組成の違いを明らかにしている。これらの結果は、ヤーンBと同じプラスチゾルを使用し、ヤーンBおよびCを作製するために使用されるテキスタイルガラスヤーンと同じタイターを有するテキスタイルガラスヤーンで作製されるヤーンAにも当てはまる。
【0128】
【表7】
【0129】
したがって、一実施形態によるヤーンBは、同じ耐火クラスの場合、対照ヤーンCの難燃性フィラーの重量基準で約25%(すなわち、1.9%対7.5%の比率)に等しい難燃性フィラーの量を含むことが見出された。したがって、対照複合ヤーンと同様のレベルの難燃性を得るために難燃性フィラーの量を約75%減らすことができた。
【0130】
これにより、製造コストが大幅に削減される。したがって、コアヤーンとしてのテキスタイルガラスヤーンおよびPVCプラスチゾルを含む実施形態による複合ヤーンの場合、これは、従来技術に従って得られたものと同一の火災コンプライアンス結果、例えば、本例によるクラスM1を得るために、PVCプラスチゾルのコストを25%から35%のオーダーで大幅に削減する。
【0131】
【表8】
【0132】
このように、実施形態によるヤーンBは、同様の鉱物材料/有機材料比(対照ヤーンCでは58.8%;ヤーンBでは最大50.5%)を有するが、難燃剤/有機材料比は大幅に減少する(ヤーンCでは15.2%、ヤーンBでは4.5%)ことが分かった。しかしながら、ヤーンBは同じレベルの耐火性能を得ることを可能にする。
【0133】
さらに、強化フィラーを使用すると、より高い機械的特性(ヤーンの破断強度の18.5%の増加:ヤーンBで54N、ヤーンCで42N、表5を参照)を得ることができるが、2つのヤーンの可塑化レベル全体は同様であり(ヤーンCで14.7%、ヤーンBで14.3%、表8を参照)、これにより2つのヤーンについて同等の柔軟性が保証される。
【0134】
要約すると、マトリックス内の粒子の使用が、その中に組み込まれる粒子のおかげで、材料がコアヤーンのフィラメント間の隙間に存在することを可能にする複合ヤーンが開示される。粒子は、コアヤーンフィラメントおよびマトリックスポリマーの両方と相互作用して、開示されたパラメータおよび所望の用途に基づいて、上記の1つまたは複数の利点を提供する。
【0135】
実施例2
1.複合ヤーン
一実施形態による1つの複合ヤーン(D)は、難燃性粒子およびコアヤーン上の強化フィラーとしてシラン処理ガラスマイクロビーズを含む同じPVCプラスチゾルコーティングの2回の連続するコーティングによって、PVCプラスチゾルから製造された。コアヤーンは、実施例1の低ねじれ(1メートルあたり28ラウンド)と68テックスのタイターで構成された標準的なテキスタイルガラスヤーンである。2種類のシラン処理ガラスビーズを使用した。シラン処理ガラスビーズMicroperl(登録商標)は5.5モースの硬度を有していた。それらは球形であり、20μmの平均直径を有し、dv50が30μm、dv10が15μm、dv90が80μmだった。これらは、例えばMalvern Masterizer 2000 Instrument機械を使用したレーザー粒子サイズ測定によって測定された。シラン処理ガラスビーズOmicron(登録商標)は5.5モースの硬度を有していた。それらは球形であり、5μmの平均直径を有し、dv50が7μm、dv10が2μm、dv90が15μmだった。これらは、例えばMalvern Masterizer 2000 Instrument機械を使用したレーザー粒子サイズ測定によって測定された。
【0136】
コアヤーン上に同じPVCプラスチゾルを2回連続してコーティングすることにより作製された、本出願人の市販製品である1つの対照複合ヤーン(E)も使用された。コアヤーンは、実施例1の高ねじれ(1メートルあたり52ラウンド)と68テックスのタイターを備えた特殊なテキスタイルガラスヤーンである。この市販製品は、本出願人が販売する市販製品の中で最高の耐火性能を有しており、したがって標準NF92-503の耐火性能基準「M1」と標準DIN4102-1の耐火性能基準「B1」の両方を満たしている。
【0137】
使用したプラスチゾルの組成を以下の表9および10に示す。
【0138】
【表9】
【0139】
このプラスチゾルのRV型ブルックフィールド粘度は900mPa.sであった(23℃でNo.3スピンドルで測定)。コーティングラインの出口でのヤーンの温度は、155℃であった。
【0140】
このようにして得られた実施形態による複合ヤーンDのタイターは139テックスであった。
【0141】
【表10】
【0142】
このプラスチゾルのRV型ブルックフィールド粘度は1300mPa.sであった(23°CでNo.3スピンドルで測定)。コーティングラインの出口でのヤーンの温度は、135℃であった。
【0143】
このようにして得られた対照複合ヤーンEのタイターは165テックスであった。
【0144】
2.結果
2つの複合ヤーンおよびこれらの複合ヤーンを織るための同じ操作によって得られた対応するテキスタイルは、それぞれ、以下の表11、12および13に示された特性を有していた。
【0145】
【表11】
【0146】
実施形態による複合ヤーンDは、対照複合ヤーンEによって得られたテキスタイル表面と実質的に同様の重量、厚さ、および開放係数を有するテキスタイル表面を与え、2つの複合ヤーンの機械的特性は非常に似ている。
【0147】
【表12】
【0148】
表11および12に見られるように、対照ヤーンEと比較して、実施形態による複合ヤーンDは、わずかにより低い難燃剤/有機材料比(対照ヤーンEでは15.4%、複合ヤーンDでは14%)、およびわずかにより低い難燃剤/可塑剤比(対照ヤーンEでは50.5%、複合ヤーンDでは47.6%)を有する。
【0149】
【表13】
【0150】
FIGRAパラメータは、燃焼中のエネルギー生成の速度を測定する。FIGRA0.2パラメータは、0.2MJに到達するための速度レベルを提供する。ユーロクラス「B」のFIGRA0.2値は120W/s以下である。
【0151】
THPパラメータは、燃焼中の総エネルギー生成を測定する。THP600パラメータは、600秒で到達するエネルギー生成レベルを提供する。ユーロクラス「B」のTHP600値は7.5MJ以下であるが、ユーロクラス「C」のTHP600は15.MJ以下である。
【0152】
実施形態による複合ヤーンDから作製されたテキスタイルで得られたFIGRA0.2値は、対照ヤーンEから作製されたテキスタイルと比較して、燃焼中のエネルギー生成の非常に急激な減少(260W/秒に対して90W/秒)を反映しているが、それらは非常に似た物理的特性を有する。このレベルの性能(FIGRA0.2<100W/s)は、通常、可塑化PVCでコーティングされたガラス繊維ベースのテキスタイルでは達成できない。
【0153】
したがって、複合ヤーンDのみが標準EN13-501-1のユーロクラス「B」の要件を満たすことができ、対照ヤーンは標準EN13-501-1のユーロクラス「C」の要件しか満たさない。しかしながら、実施形態による複合ヤーンDによって得られたテキスタイル表面は大幅に改善された耐火性能を有するが、それは対照ヤーンEによって得られたテキスタイル表面よりも低い難燃剤含有量(7.8%に対して5.6%)およびわずかに低い難燃剤/可塑剤比(50.5%に対して47.6%)を有する。
【0154】
本出願人の知る限り、ガラステキスタイルヤーンに難燃性プラスチゾルをコーティングすることによって得られた複合ヤーンが、標準EN 13-501-1のユーロクラス「B」の要件を満たすことができるのはこれが初めてである。
【0155】
本出願は、以下の発明を含み得る。
(1)
マトリックスに組み込まれた連続マルチフィラメントコアヤーンを含む複合ヤーンであって、前記マトリックスが少なくとも1種のポリマー材料および少なくとも1種の強化フィラーを含み、前記強化フィラーは官能化粒子から形成され、前記粒子は40μm未満のメジアン径(dv50)を有することを特徴とする複合ヤーン。
(2)
前記粒子が前記コアヤーンのフィラメントの構成材料の硬度以下の硬度(モース)を有する、(1)に記載の複合ヤーン。
(3)
前記粒子が、5μm~40μmの間に含まれるメジアン径(dv50)を有する、(1)または(2)に記載の複合ヤーン。
(4)
前記粒子が90μm未満、好ましくは30μmから90μmの範囲の径(dv90)を有する、(1)~(3)のいずれか一項に記載の複合ヤーン。
(5)
前記粒子が15μm未満、好ましくは1μmから15μmの範囲の径(dv10)を有する、(1)~(4)のいずれか一項に記載の複合ヤーン。
(6)
前記強化フィラーの前記官能化粒子が前記複合ヤーンマトリックス全体に分散され、前記マトリックスは前記コアヤーンフィラメントと接触する、(1)~(5)のいずれか一項に記載の複合ヤーン。
(7)
前記強化フィラーの一部が前記コアヤーンのフィラメント間の隙間に存在する、(1)~(6)のいずれか一項に記載の複合ヤーン。
(8)
前記強化フィラーが官能化フィラーによって形成された群から、好ましくは官能化ガラスビーズ、官能化炭酸カルシウムおよび官能化タルクによって形成された群から選択される、(1)~(7)のいずれか一項に記載の複合ヤーン。
(9)
前記強化フィラーがシラン化剤、エポキシ、およびポリイソシアネートから選択された少なくとも1種の化合物、好ましくはシラン化剤で官能化される、(1)~(8)のいずれか一項に記載の複合ヤーン。
(10)
前記マトリックスが少なくとも1種の難燃性フィラーを含む、(1)~(9)のいずれか一項に記載の複合ヤーン。
(11)
前記コアヤーンの構成材料がシリオン、玄武岩、アラミド、ポリエステル、ポリアミド、炭素、およびポリビニルアルコールから選択される、(1)~(10)のいずれか一項に記載の複合ヤーン。
(12)
前記コアヤーンの前記構成材料がシリオンであり、前記コアヤーンが標準的なテキスタイルガラスヤーンである、(1)~(11)のいずれか一項に記載の複合ヤーン。
(13)
前記コアヤーンの前記構成材料がシリオンであり、前記コアヤーンが特殊なキスタイルガラスヤーンである、(1)~(11)のいずれか一項に記載の複合ヤーン。
(14)
前記マトリックスを覆う少なくとも1つのシース層をさらに含み、前記層が少なくとも1種のポリマー材料と少なくとも1種の強化フィラーとを含む、(1)~(13)のいずれか一項に記載の複合ヤーン。
(15)
前記層の前記強化フィラーが前記マトリックスの前記強化フィラーと同じ化学的性質のものである、(14)に記載の複合ヤーン。
(16)
前記層が少なくとも1種の難燃性フィラーをさらに含む、(14)または(15)に記載の複合ヤーン。
(17)
(1)~(16)のいずれか一項に記載の複合ヤーンを製造するためのプロセスであって、コーティングまたは押出しによって、ポリマー材料および強化フィラーを含むマトリックスをコアヤーンに堆積する少なくとも1つのステップを含む製造プロセス。
(18)
前記強化フィラーが堆積の前に前記ポリマー全体に分散される、(17)に記載の製造プロセス。
(19)
前記フィラーの一部が前記コアヤーンの前記フィラメント間の隙間に存在する、(17)または(18)に記載の製造プロセス。
(20)
前記堆積ステップが、前記コアヤーンの前記フィラメントにプラスチゾルをコーティングすることによって実行され、前記プラスチゾルは好ましくはポリ塩化ビニル(PVC)を主成分とする、またはアクリル樹脂を主成分とする、(17)~(19)のいずれか一項に記載のプロセス。
(21)
少なくとも1種の強化フィラーが分散されたポリマー材料の少なくとも1つの層を、前記堆積ステップで得られた前記複合ヤーンにコーティングまたは押出しすることによって、前記堆積ステップで製造された前記複合ヤーンにコーティングする少なくとも1つのステップをさらに含む、(17)~(20)のいずれか一項に記載のプロセス。
(22)
前記コーティングステップが、プラスチゾルでコーティングすることによって、または化合物の押出しによって実行される、(21)に記載のプロセス。
(23)
前記ポリマー材料の層が少なくとも1種の難燃性フィラーをさらに含む、(21)または(22)に記載のプロセス。
(24)
(1)~(16)のいずれか一項に記載の、または(17)~(23)のいずれか一項に従って製造された少なくとも1つの複合ヤーンを含むテキスタイル表面。
(25)
織ることにより作られることを特徴とする(24)に記載のテキスタイル表面。