(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050679
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】配線基体および電子装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20240403BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H01L23/12 E
H01L23/12 301Z
H01L23/12 Q
H05K1/02 N
H05K1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024009105
(22)【出願日】2024-01-25
(62)【分割の表示】P 2022553973の分割
【原出願日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2020165236
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】川頭 芳規
(72)【発明者】
【氏名】木村 泰人
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高周波信号の伝送特性に優れる配線基体を提供する。
【解決手段】電子装置において、配線基体の端子部材10aは、基体11aと信号導体12と第1接地導体を含む接地導体13aとを備え、基体は、第1面と、該第1面における外辺の近くに位置し、外部基板2が実装される第1領域R1と、第1領域以外の第2領域R2と、を有し、信号導体は、第1面における第1領域を含んで、外辺から離れる第1方向Xに延びて位置し、第1接地導体は、基体の内部、かつ、信号導体からの距離が信号導体で伝送される高周波信号の波長の1/4未満に位置するとともに、第1面に向かう平面透視で第1領域かつ信号導体の少なくとも一部に重なる第1位置に、第1開口(によって挟まれた第1格子部を有し、第1開口は、第1方向及び第1方向に交わる第2方向における長さが波長の1/8以上かつ1/4以下であり、第1格子部には、貫通導体が位置している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
信号導体と、
第1接地導体を含む接地導体と、を備え、
前記基体は、第1面と、該第1面における外辺の近くに位置し、外部基板が実装される第1領域と、該第1領域以外の第2領域と、を有し、
前記信号導体は、前記第1面における前記第1領域を含んで、前記外辺から離れる第1方向に延びて位置し、
前記第1接地導体は、前記基体の内部、かつ、前記第1面に垂直な方向における前記信号導体からの距離が前記信号導体で伝送される高周波信号の波長の1/4未満に位置するとともに、前記第1面に向かう平面透視で前記第1領域かつ前記信号導体の少なくとも一部に重なる第1位置に、第1開口によって挟まれた第1格子部を有し、
前記第1開口は、前記第1方向および前記第1方向に交わる第2方向における長さが、前記高周波信号の波長の1/8以上かつ1/4以下であり、
前記第1格子部には、貫通導体が位置している、配線基体。
【請求項2】
前記第1開口は、前記第1方向および前記第2方向に辺を有する矩形状である、請求項1記載の配線基体。
【請求項3】
前記貫通導体は、前記第1格子部の交点に位置する、請求項1または請求項2記載の配線基体。
【請求項4】
前記第1接地導体は、前記第1方向において前記第1格子部と連なるとともに、前記平面透視で第2領域に重なる第2位置に、第2開口によって挟まれた第2格子部を有し、
前記第2開口は、前記第1方向および前記第2方向における長さが、前記高周波信号の波長の1/8以上かつ1/4以下であり、
前記第2開口の面積は、前記第1開口の面積よりも小さい、請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の配線基体。
【請求項5】
前記第2開口は、前記第1方向および前記第2方向に辺を有する矩形状である、請求項4記載の配線基体。
【請求項6】
前記貫通導体は、前記第2格子部の交点に位置する、請求項4または請求項5記載の配線基体。
【請求項7】
接地導体は、前記基体の内部、かつ、前記第1面に垂直な方向における前記信号導体からの距離が前記高周波信号の波長の1/4未満に位置するとともに、前記平面透視で前記第1領域かつ前記信号導体の少なくとも一部に重なる第3位置に、第3開口によって挟まれた第3格子部を有する第2接地導体を有し、
前記第3開口は、前記第1方向および前記第2方向における長さが、前記高周波信号の波長の1/8以上かつ1/4以下であり、
該第2接地導体は、前記第1面に垂直な方向において、前記第1接地導体よりも前記第1面から離れ、前記貫通導体によって前記第1接地導体と接続している、請求項1~請求項6のいずれか1つに記載の配線基体。
【請求項8】
前記第3開口は、前記第1方向および前記第2方向に辺を有する矩形状である、請求項7記載の配線基体。
【請求項9】
前記第3開口は、前記平面透視で、前記第1開口と重なっている、請求項7または請求項8記載の配線基体。
【請求項10】
前記第3開口の面積は、前記第1開口の面積よりも小さい、請求項7~請求項9のいずれか1つに記載の配線基体。
【請求項11】
前記第1開口は、前記平面透視で、前記接地導体と重なっていない、請求項1~請求項10のいずれか1つに記載の配線基体。
【請求項12】
前記第3開口は、前記平面透視で、前記接地導体と重なっていない、請求項7~請求項10のいずれか1つに記載の配線基体。
【請求項13】
前記貫通導体を複数有し、
前記貫通導体は、隣接する前記貫通導体との距離は、前記高周波信号の波長の1/4未満である、請求項1~請求項12のいずれか1つに記載の配線基体。
【請求項14】
複数の前記信号導体を備え、
前記基体は、隣り合う前記信号導体の間に、前記第1面から、前記第1接地導体の形成層まで貫通している溝を有し、
前記第1面に向かう平面透視で、前記第1開口の一部が前記溝から露出している、請求項1~請求項13のいずれか1つに記載の配線基体。
【請求項15】
請求項1~請求項14のいずれか1つに記載の配線基体と、
該配線基体に接続されている電子部品と、を備える電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線基体および電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品が搭載され、該電子部品と外部の配線とを電気的に接続する配線基体(例えば、パッケージ)がある。このような配線基体には、電子部品が内部に格納される本体と、該本体から外部に延出する端子部材と、を備えたものがある。端子部材は、電子部品と電気的に接続される信号導体および接地導体を有する。この端子部材に外部基板を実装することで、電子部品と外部基板の配線とが電気的に接続される。
【0003】
端子部材としては、信号導体と、絶縁体を挟んで該信号導体と対向する接地導体とを有する信号線路(マイクロストリップ線路)により、高周波信号を伝送可能なものが知られている。また、このような端子部材において、接地導体にメッシュ状の開口を設けることで、信号線路のインピーダンスを調整する技術が知られている(例えば、特許文献1
)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様は、
基体と、
信号導体と、
第1接地導体を含む接地導体と、を備え、
前記基体は、第1面と、該第1面における外辺の近くに位置し、外部基板が実装される第1領域と、該第1領域以外の第2領域と、を有し、
前記信号導体は、前記第1面における前記第1領域を含んで、前記外辺から離れる第1方向に延びて位置し、
前記第1接地導体は、前記基体の内部、かつ、前記第1面に垂直な方向における前記信号導体からの距離が前記信号導体で伝送される高周波信号の波長の1/4未満に位置するとともに、前記第1面に向かう平面透視で前記第1領域かつ前記信号導体の少なくとも一部に重なる第1位置に、第1開口によって挟まれた第1格子部を有し、
前記第1開口は、前記第1方向および前記第1方向に交わる第2方向における長さが、前記高周波信号の波長の1/8以上かつ1/4以下であり、
前記第1格子部には、貫通導体が位置している、配線基体である。
【0006】
また、本開示の他の一の態様は、
上記の配線基体と、
該配線基体に接続されている電子部品と、を備える電子装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態の電子装置を示す斜視図である。
【
図7】端子部材の第3層の他の例を示す拡大図である。
【
図10】配線基体における反射損失のシミュレーション結果を示す図である。
【
図11】配線基体における挿入損失のシミュレーションの結果を示す図である。
【
図12】第2の実施形態の端子部材の第1層~第4層を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態を図面に基づいて説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、実施形態を説明する上で必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、本開示の配線基体100および電子装置1は、参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および寸法比率などを忠実に表したものではない。
【0009】
<第1の実施形態>
図1および
図2を参照して、第1の実施形態の電子装置1の構成を説明する。
電子装置1は、配線基体100と、電子部品200とを備える。また、電子装置1は、配線基体100を封止する蓋体30を備えている。
【0010】
配線基体100は、本体20と、本体20の外部に延出している端子部材10とを備える。電子装置1が蓋体30を備えるとき、蓋体30は、本体20を封止しているとも換言できる。配線基体100は、本体20の内部に電子部品200を搭載するとともに、端子部材10を介して電子部品200と外部基板2の配線とを電気的に接続する、電子装置用パッケージである。本実施形態の配線基体100は、例えば光通信用の電子部品200を搭載する。この場合の電子部品200は、光通信に係る高周波信号(例えば、変調レートが96Gbaud以下程度、周波数帯が75GHz以下程度)が入力または出力される電子部品、例えば発光素子または受光素子などとすることができる。ただし、これは例示であり、搭載される電子部品200は上記のものに限られない。
【0011】
本体20は、底部21と、枠体22と、シールリング23とを備える。底部21は、矩形の板状の部材である。以下では、底部21の矩形の辺に平行な方向をX方向およびY方向とし、底部21と垂直であり、かつ底部21から蓋体30に向かう方向をZ方向とする。また、XY平面に平行な任意の部材の面のうち+Z方向に向く面を「上面」と記し、-Z方向に向く面を「下面」と記す。また、相対的に-Z方向側にある層を「下層」と記す。また、Z方向から見ることを「平面視」と記し、Z方向から他の部材を透過させて見ることを「平面透視」と記す。
底部21の上面には、電子部品200が載置される載置領域が設けられているとともに、載置領域に載置された電子部品200の端子と電気的に接続される配線が形成されている。
【0012】
枠体22は、平面視で電子部品200の載置領域を囲む位置に設けられた枠状の部材である。本実施形態では、枠体22は、底部21の外周部分から+Z方向に延在して枠状の側壁を構成している。枠体22には、光ファイバー等を通すための貫通孔22aが形成されていてもよい。
【0013】
底部21および枠体22は、例えば、Z方向に複数の絶縁性基板が積層された構成とすることができる。絶縁性基板としては、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、炭化珪素質焼結体、ムライト質焼結体又はガラスセラミックス等のセラミック焼結体を用いることができる。なお、枠体22は、底部21とは別個の部材であってもよいし、底部21と一体的に形成されていてもよい。
【0014】
シールリング23は、枠体22の上面に位置している。シールリング23は、底部21に電子部品200を搭載した後に、蓋体30を用いて本体20を気密封止する際のシール材として用いることができる。シールリング23は、例えば、タングステンまたはモリブデン等の高融点金属を含む導体ペーストで形成する枠状導体にFe-Ni系合金またはFe-Ni-Co系合金の金属板を含む枠状金属板をろう材等でろう付け接合したものであってもよい。
【0015】
蓋体30は、平面視で底部21と略同一形状の板状部材である。蓋体30は、電子装置1の内部への水分および微粒子等の異物の侵入を低減することが可能なものであればよい。蓋体30は、例えば、シールリング23と同じ金属材料、または底部21および枠体22と同じセラミックス材料等を板状に加工、成形したものを用いることができる。以下では、底部21、枠体22および蓋体30によって形成される空間をキャビティと記す。
【0016】
枠体22のうち+X方向側の側壁には、厚さ方向(X方向)に貫通する嵌合部22bが設けられている。端子部材10は、この嵌合部22bに嵌合する形状を有しており、嵌合部22bの内側(―X方向側)から外側(+X方向側)にわたって位置しているとともに、嵌合部22bを塞いでいる。嵌合部22bに嵌合した端子部材10は、例えばろう材等により枠体22に固定されている。また、端子部材10は、枠体22の積層構造の一部であってもよい。
【0017】
端子部材10は、誘電体を含む基体11と、信号導体12と、接地導体13とを有する。端子部材10のうち本体20から延出している部分は、+Z方向に向く第1面S1を有しており、この第1面S1に、信号導体12の一部および接地導体13の一部が露出している。
図1に示すように、第1面S1には、外部基板2が接続される。これにより、外部基板2の-Z方向側の面に位置する配線と、端子部材10の第1面S1に位置する信号導体12および接地導体13とが電気的に接続される。この信号導体12および接地導体13は、底部21等に形成されている配線を介して電子部品200の端子に電気的に接続される。このように、端子部材10を介して、外部基板2の配線と電子部品200の端子とが電気的に接続される。
【0018】
以下、
図3~
図9を参照して端子部材10の構成を詳しく説明する。
端子部材10は、第1層10a(
図3)、第2層10b(
図4)、第3層10c(
図5および
図6)、第4層10d(
図8)および第5層10e(
図9)を有している。第1層10a~第5層10eは、-Z方向において第1層10a~第5層10eの順に積層されており、このうち第1層10aが最も+Z方向側に位置している。なお、端子部材10は、第5層10eの-Z方向側にさらに第6層および第7層を有していてもよい。
【0019】
図3に示すように、第1層10aは、基体11aと、信号導体12と、接地導体13aと、貫通導体14aとを有する。基体11aは、平板状の誘電体であり、第1面S1(上面)を有する。また、基体11aは、第1面S1における外辺(+X方向側の端部でY方向に延びる辺)の近くに位置し、外部基板2が実装される第1領域R1と、該第1領域R1以外の第2領域R2と、を有する。
【0020】
基体11aの第1領域R1は、平面視でY方向に長い矩形の領域であり、配線基体100の外部に露出している。第1領域R1には、外部基板2が接続されて実装される。
図3では、平面視で外部基板2が接続される実装領域r1が矩形の破線で示されている。
【0021】
基体11aの第2領域R2のうち、第1領域R1と隣接する部分は、平面視で枠体22と重なる枠体積層領域r2である。第2領域R2は、枠体積層領域r2からさらに枠体22の内部(すなわち、キャビティの内部)まで延びている。
【0022】
信号導体12および接地導体13aは、基体11aの上面に形成されている。
このうち信号導体12は、第1面S1における第1領域R1を含んで、外辺から離れる第1方向(X方向)に延びて位置する。信号導体12は、第1領域R1、および第2領域R2のうち枠体積層領域r2の範囲内ではX方向に直線状に延在していてもよい。また、信号導体12は、第2領域R2のうちキャビティの内部に相当する範囲内では、湾曲して-X方向側の端部の所定位置まで引き回されていてもよい。信号導体12のうち第1領域R1にある部分は、矩形の信号端子12Tとなっていてもよい。信号端子12Tは、外部基板2の配線との電気的な接続を行うために、Y方向に所定の幅を有している。また、信号導体12のうち枠体積層領域r2にある部分は、信号端子12TよりもY方向の幅が小さくなっていてもよい。本実施形態の端子部材10は、16本の信号導体12を有している。信号導体12の数は、搭載する電子部品200の端子の数などに応じて適宜変更可能である。
【0023】
接地導体13aは、第1面S1における第1領域R1を含んで、外辺から離れる第1方向(X方向)に延びて位置する。接地導体13aは、第1領域R1、および第2領域R2のうち枠体積層領域r2の範囲内ではX方向に直線状に延在していてもよい。また、接地導体13aは、第2領域R2のうちキャビティの内部に相当する範囲内では、湾曲して-X方向側の端部の所定位置まで引き回されていてもよい。信号導体12のうち第1領域R1にある部分は、外部基板2の配線が接続される接地端子13Tとなっていてもよい。
【0024】
本実施形態の端子部材10は、9本の接地導体13aを有しており、各接地導体13aは接地電位である。このうち2本の接地導体13aは、16本の信号導体12を挟む両側、すなわち第1層10aにおけるY方向側の両端部に位置している。また、残りの7本は、隣り合う接地導体13aの間に2本の信号導体12が挟まれる位置に設けられている。すなわち、Y方向に、接地導体13a、信号導体12、信号導体12、接地導体13aの順に繰り返し配置されている。接地導体13の数は、搭載する電子部品200の端子の数などに応じて適宜変更可能である。
【0025】
接地端子13Tを挟まずに隣接する2つの信号端子12Tの間には、基体11aに溝15が形成されていてもよい。この溝15の形成部分は、空気で満たされて比誘電率が低くなるため、溝15を設けない場合と比較して、2つの信号端子12Tの間の電界結合が弱くなる。溝15は基体11aの端部まで形成されていてもよいし、信号端子12Tの間のみに形成されていてもよい。これにより、信号端子12Tの間のクロストークノイズ等の電磁的干渉による悪影響を低減することができる。このような構成を有する配線基体100は、高周波信号の伝送特性に優れる。
【0026】
各接地導体13aには、基体11aをZ方向に貫通する貫通導体14aが複数接続されていてもよい。
図3では、円形のドットにより貫通導体14の位置が示されている。貫通導体14は、平面透視で接地導体13aと重なる領域内において、接地導体13aの輪郭に沿って規則的な間隔で形成されている。また、枠体積層領域r2のうち、接地導体13aを挟まずに隣接する2つの信号導体12の間には、貫通導体14が形成されている。貫通導体14aは、例えば円柱形状とすることができるが、この形状に限られない。後述する貫通導体14b~14eについても同様である。
【0027】
図4に示すように、第2層10bは、誘電体を含む平板状の基体11bと、接地導体13bと、貫通導体14bとを有する。基体11bは、第1領域R1および第2領域R2を有する。第2層10bは、基体11bおよび基体11aの第1領域R1の位置が平面透視で一致するように第1層10aと重なっている。
図4では、平面透視で実装領域r1と重なる部分、および枠体積層領域r2と重なる部分がそれぞれ破線で示されている(
図5、8、9も同様)。
【0028】
接地導体13bは、基体11bの上面に形成されている。接地導体13bは、平面透視で第1層10aの接地導体13aと重なる部分を有するとともに、該部分の-X方向側の端部同士を一繋がりに接続する部分を有する。別の観点では、接地導体13bは、平面状の導体から、平面透視で第1層10aにおける信号導体12の形成領域およびその近傍領域と重なる部分を除去した形状を有する。接地導体13bの上面は、第1層10aの貫通導体14aと接続されている。したがって、接地導体13bは、貫通導体14aを介して第1層10aの接地導体13aと電気的に接続されて接地電位となっている。また、接地導体13bには、基体11bをZ方向に貫通する貫通導体14bが複数接続されている。
【0029】
第2層10bは、主に第1層10aと第3層10cとの間の厚さ調整または端子部材10のインピーダンス調整のために設けられている。このため、厚さの調整またはインピーダンス調整が不要な場合には省略できる。
【0030】
図5に示すように、第3層10cは、誘電体を含む平板状の基体11cと、接地導体13c(第1接地導体)と、貫通導体14cとを有する。基体11cは、第1領域R1および第2領域R2を有する。第3層10cは、基体11cおよび基体11bの第1領域R1の位置が平面透視で一致するように第2層10bと重なっている。また、基体11cの形状は、基体11bの形状と略同一である。
【0031】
接地導体13cは、基体11cの上面に形成されている。接地導体13cは、信号導体12で伝送される高周波信号の波長をλとした場合に、第1面S1に垂直な方向(Z方向)における信号導体12からの距離がλ/4未満となる位置に設けられている。接地導体13cは、平面透視で第2層10bの接地導体13bと重なる部分を有する。また、接地導体13cには、第1領域R1に複数の第1開口131Aが形成されている。また、接地導体13cには、第2領域R2のうち第1領域R1との境界から-X方向に所定の距離範囲内に、複数の第2開口132Aが形成されている。詳しくは、平面透視で枠体積層領域r2と重なる部分に第2開口132Aが形成されているとともに、第3層10cのY方向中央部より+Y方向側では、枠体積層領域r2よりも-X方向側、すなわちキャビティの内部にも第2開口132Aが形成されている。
【0032】
第1開口131Aおよび第2開口132Aは、X方向およびY方向にそれぞれ隣り合うようにマトリクス状に配置されている。換言すれば、接地導体13cには、メッシュ状の第1開口131Aおよび第2開口132Aが形成されている。接地導体13cは、隣り合う第1開口131Aによって挟まれた第1格子部131、および隣り合う第2開口132Aによって挟まれた第2格子部132を有する。第1格子部131および第2格子部132は、X方向およびY方向に延びる直線状の導体である。また、接地導体13cは、第1領域R1と第2領域R2の境界にも、隣り合う第1開口131Aと第2開口132Aによって挟まれた、Y方向に延びる直線状の格子部を有する。
【0033】
以下では、X方向に1列に配列された第1開口131Aおよび第2開口132Aを「開口列」と記す。接地導体13cには、16本の信号導体12に対応する16列の開口列が形成されている。各開口列は、平面透視で1つの信号導体12と重なっている。詳しくは、開口列のY方向の中心と、信号導体12とが重なっている。よって、開口列においてX方向に隣り合う第1開口131Aによって挟まれた、Y方向に延びる第1格子部131は、それぞれ平面透視で信号導体12と直交している。また、開口列においてX方向に隣り合う第2開口132Aによって挟まれた、Y方向に延びる第2格子部132は、それぞれ平面透視で信号導体12と直交している。このように、接地導体13cは、平面透視で第1領域R1かつ信号導体12の少なくとも一部に重なる位置(第1位置)に第1格子部131を有する。また、接地導体13cは、X方向において第1格子部131と連なるとともに、平面透視で第2領域R2かつ信号導体12の少なくとも一部に重なる位置(第2位置)に第2格子部132を有する。
【0034】
接地導体13cの上面は、第2層10bの貫通導体14bと接続されている。したがって、接地導体13cは、貫通導体14bを介して第2層10bの接地導体13bと電気的に接続されて接地電位となっている。また、接地導体13cには、基体11cをZ方向に貫通する貫通導体14cが複数接続されている。
【0035】
ここで、
図6を参照して、第3層10cにおける第1開口131Aおよび第2開口132Aの形状、ならびに貫通導体14cの配置について詳しく説明する。
図6に示すように、第1開口131Aおよび第2開口132Aは、X方向(第1方向)およびY方向(第2方向)に辺を有する矩形状である。ここで、矩形状は、4つの角部の頂角が厳密に直角となっている形状(矩形)に限られない。なお、第2方向は、第1方向に交わる方向であると換言できる。
例えば、矩形状には、矩形の一部の角部が落とされて多角形となっている形状が含まれる。角部が落とされている形状とは、矩形の4辺のうち角部をなす2辺が、該2辺のいずれとも非平行である辺によって繋がれている形状をいう。
また、矩形状には、矩形の辺同士が曲線により繋げられた形状が含まれていてもよい。よって、本開示では、設計上は矩形であり、製造工程を経て実際に形成された開口の角部が、工程上の制約により曲線状となるような場合における開口の形状も、矩形状に含まれる。
また、矩形状には、一部の辺から、平面視で貫通導体14cと重なる突部Pが突出している形状が含まれていてもよい。
【0036】
第1開口131Aおよび第2開口132Aは、X方向およびY方向における長さが、λ/8以上かつλ/4以下である。また、各第1開口131Aの面積は、各第2開口132Aの面積よりも大きい。詳しくは、第1開口131Aおよび第2開口132Aは、Y方向の幅が同一であり、第1開口131AのX方向の幅が、第2開口132AのX方向の幅より大きい。
【0037】
また、第1格子部131および第2格子部132には、貫通導体14cが位置している。すなわち、平面視で第1格子部131および第2格子部132と重なる位置に貫通導体14cが形成され、接続されている。詳しくは、第1格子部131のうちX方向に延びる部分と重なるように貫通導体14cが位置している。また、第1領域R1および第2領域R2の境界においてY方向に延びる格子部と重なるように貫通導体14cが位置している。また、第2格子部132の交点に貫通導体14cが位置している。また、第1開口131Aおよび第2開口132Aの周囲にも貫通導体14cが位置している。各貫通導体14cは、隣接する貫通導体14cとの距離がλ/4未満である。すなわち、1つの貫通導体14cに着目したときに、XY平面内で該貫通導体14cからλ/4の範囲内に少なくとも1つの他の貫通導体14cが位置している。
【0038】
また、一部の貫通導体14cと平面透視で重なる位置には、第2層10bの貫通導体14bが位置している。
図4および
図5の例では、第2領域R2内に位置する貫通導体14bおよび14cは、平面透視で重なる位置に形成されている。特に、平面透視で第2格子部132の交点と重なる位置に、貫通導体14b、14cが位置していることで、メッシュ状の第2開口132Aの形成領域における貫通導体14b、14cの配置密度が高められている。換言すれば、貫通導体14b、14cは、第2格子部132の交点を挟んでZ方向に一直線上に位置している。
【0039】
なお、
図6では、第1領域R1および第2領域R2にわたって、複数の貫通導体14cがX方向に等間隔に位置しているが、これに限られない。例えば、
図7に示すように、第1領域R1における貫通導体14cの配置間隔を、第2領域R2における貫通導体14cの配置間隔より小さくしてもよい。換言すれば、第1領域R1における貫通導体14cの配置密度を、第2領域R2における貫通導体14cの配置密度より高くしてもよい。また、
図7に示すように、第1格子部131の交点に貫通導体14cが位置していてもよい。
【0040】
図8に示すように、第4層10dは、誘電体を含む平板状の基体11dと、接地導体13d(第2接地導体)と、貫通導体14dとを有する。基体11dは、第1領域R1および第2領域R2を有する。第4層10dは、基体11dおよび基体11cの第1領域R1の位置が平面透視で一致するように第3層10cと重なっている。また、基体11dの+X方向の端部近傍の形状は、基体11cの形状と略同一である。
【0041】
接地導体13dは、基体11dの上面に形成されている。接地導体13dは、Z方向における信号導体12からの距離がλ/4未満となる位置に設けられている。接地導体13dは、第3層10cの接地導体13cよりも第1面S1から離れているため、第1面S1と接地導体13dとの距離は、第1面S1と接地導体13cとの距離より大きい。
【0042】
また、接地導体13dには、第1領域R1にメッシュ状の複数の第3開口133Aが形成されている。各第3開口133Aの形状および面積は、第3層10cの第1開口131Aの形状および面積と同一である。よって、第3開口133Aは、X方向およびY方向に辺を有する矩形状であり、X方向およびY方向における長さが、λ/8以上かつλ/4以下である。各第3開口133Aは、平面視で第1開口131Aと重なっている。接地導体13dは、隣り合う第3開口133Aによって挟まれた第3格子部133を有する。第3格子部133は、X方向およびY方向に延びる直線状の導体である。X方向に1列に配列された第3開口133Aからなる開口列は、第1開口131Aからなる開口列と同様、平面透視で1つの信号導体12と重なっている。また、Y方向に延びる第3格子部133は、平面透視で信号導体12と直交している。このように、接地導体13dは、平面透視で第1領域R1かつ信号導体12の少なくとも一部に重なる位置(第3位置)に第3格子部133を有する。
【0043】
なお、インピーダンス調整のために、接地導体13dのうち、第3層10cの第2開口132Aと重なる位置にさらに開口が形成されていてもよい。また、第3開口133AのX方向およびY方向における長さがλ/8以上かつλ/4以下となる範囲内で、第3開口133Aの面積を第1開口131Aの面積より小さくしてもよい。
【0044】
接地導体13dの上面は、第3層10cの貫通導体14cと接続されている。したがって、接地導体13dは、貫通導体14cを介して第3層10cの接地導体13cと電気的に接続されて接地電位となっている。また、接地導体13dには、基体11dをZ方向に貫通する貫通導体14dが複数接続されている。
【0045】
図9に示すように、第5層10eは、誘電体を含む平板状の基体11eと、接地導体13eと、貫通導体14eとを有する。基体11eは、第1領域R1および第2領域R2を有する。第5層10eは、基体11eおよび基体11dの第1領域R1の位置が平面透視で一致するように第4層10dと重なっている。また、基体11eの形状は、基体11dの形状と略同一である。
【0046】
接地導体13eの上面は、第4層10dの貫通導体14dと接続されている。したがって、接地導体13eは、貫通導体14dを介して第4層10dの接地導体13dと電気的に接続されて接地電位となっている。接地導体13eは、平面視で第4層10dの第3開口133Aと重なる位置を含む領域に形成されたベタ導体である。接地導体13eは、実装領域r1および枠体積層領域r2の一部にわたって位置している。
【0047】
また、接地導体13eには、基体11eをZ方向に貫通する貫通導体14eが複数接続されている。貫通導体14eは、貫通導体14eの下層の第6層が有する接地導体に接続されている。また、第6層の接地導体は、第6層の基体を貫通する貫通導体により、さらに下層の第7層の接地導体に接続されていてもよい。このように、貫通導体を介して複数層の接地導体を電気的に接続することにより、接地電位を安定させることができる。なお、端子部材10が第6層以下の層を有しない場合には、貫通導体14eは省略できる。
【0048】
以上に説明したように、端子部材10の基体11は、第1層10a~第5層10eに設けられた基体11a~11eを有する。また、端子部材10の接地導体13は、第1層10a~第5層10eに設けられた接地導体13a~13eを有する。このうち接地導体13b~13eは、基体11の内部に位置している。端子部材10では、第1層10aの信号導体12、およびこれより下層にある接地導体13b~13eによってマイクロストリップ線路が構成されている。
【0049】
端子部材10は、例えば以下の方法により製造できる。
基体11a~11eの素材には、例えば酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、炭化珪素質焼結体、ムライト質焼結体又はガラスセラミックス等のセラミック焼結体を適用できる。基体11a~11eの素材として酸化アルミニウム質焼結体を適用する場合、端子部材10の基体11は、次のように製作できる。まず、酸化アルミニウム粉末および焼結助剤成分となる酸化ケイ素等の粉末を主成分とする原料粉末を、有機溶剤、バインダと混練してスラリーとする。次に、このスラリーをドクターブレード法又はリップコータ法等の成形方法でシート状に成形して基体11a~11eとなるセラミックグリーンシート(以下、グリーンシートともいう)をそれぞれ作製する。次に、複数のグリーンシートを積層して積層体を作製する。その後、この積層体を約1300℃~1600℃程度の温度で焼成することによって基体11を製作できる。
【0050】
また、基体11a上の信号導体12、および基体11a~11e上の接地導体13a~13eは、例えば、タングステン、モリブデン、マンガン又は銅等の金属材料、もしくは、これらの金属材料の合金材料を導体成分として含む。信号導体12および接地導体13a~13eとしてタングステンのメタライズ層を用いる場合、タングステンの粉末を有機溶剤および有機バインダと混合して作製した金属ペーストをグリーンシートの所定位置にスクリーン印刷法等で印刷し、焼成することで形成できる。また、貫通導体14a~14eは、上記の金属ペーストの印刷に先立ってグリーンシートの所定の位置に貫通孔を設け、上記と同様の金属ペーストをこの貫通孔に充填しておき、グリーンシートとともに焼成することで形成できる。信号導体12および接地導体13aのように外部に露出する導体層の表面には、1~10μm程度のニッケル膜および0.1~3μm程度の金膜を順に形成して、その表面を保護するとともに、ろう材あるいははんだ等の接合性を高めることができる。
【0051】
本実施形態の配線基体100によれば、端子部材10が上述した構成を有していることにより、端子部材10のインピーダンスを適切な値に調整できる。以下、これについて説明する。
【0052】
一般に、マイクロストリップ線路において、信号導体の下層の接地導体をベタ導体層にすると、共振周波数が高周波側にシフトするので、高周波信号の伝送特性が良好となる。一方で、信号導体と接地導体とが近いほどインピーダンスが下がり、インピーダンス整合が難しくなる。
【0053】
これに対し、本実施形態の配線基体100は、実装領域r1(第1領域R1)に、信号導体12の下層の接地導体13cにメッシュ状の第1開口131Aが形成されている。これによって、共振周波数を維持しつつ、インピーダンスの低下を低減し、インピーダンスを所望の値に調整できる。このような配線基体100は、高周波信号の伝送特性に優れる。
【0054】
また、実装領域r1よりキャビティ側、すなわち枠体積層領域r2およびキャビティの内部に、さらにメッシュ状の第2開口132Aが形成されている。これにより、実装領域r1の周囲で生じる共振の周波数を高周波側へシフトさせることができるので、このような構成を備える配線基体100は、高周波信号の伝送特性に優れる。また、インピーダンスの低下をさらに低減できる。
一般に、マイクロストリップ線路の共振周波数は、信号伝搬方向に対し垂直な面の配線断面形状に大きく支配されるため、通常、共振周波数調整においては、実装領域r1の範囲内における信号導体および接地導体の形状が調整対象となる。しかしながら、実際には、実装領域r1で発生した電磁界はキャビティの方向にも広がっており、信号伝播方向と平行な方向にわたる導体形状、すなわち実装領域r1からキャビティ内部にわたる導体形状も共振周波数に影響を与える。このため、実装領域r1よりキャビティ側の接地導体13にもメッシュ状の第2開口132Aを形成した配線基体100は、高周波信号の伝送特性に優れる。
【0055】
また、第3層10cの第1開口131Aに加えて、第4層10dにも、実装領域r1にメッシュ状の第3開口133Aが形成されている。換言すれば、メッシュ状の開口が2層にわたって形成されている。これにより、インピーダンスの低下をより低減できる。上述のとおり、信号導体12は、実装領域r1において信号端子12Tとなっているところ、この信号端子12Tの線幅(
図3におけるY方向の幅)は、外部基板2を適切に実装するための設計上の要請によって下限値が定められている。このため、インピーダンスが所望の値より小さくなってしまう場合がある。これに対し、信号端子12Tの下層に、2層にわたってメッシュ状の開口を設けることで、インピーダンスの低下を低減して所望の値に調整できる。また、第2開口132Aの面積より第1開口131Aの面積を大きくすることによっても、同様にインピーダンスの低下を低減できる。
他方で、実装領域r1よりキャビティ側、例えば枠体積層領域r2では、信号導体12の線幅に関する制約がないため、信号導体12を細くすることでインピーダンスの低下を低減できる。このため、第3層10cにおいて、第2開口132Aの面積は、第1開口131Aの面積より小さくてよい。また、第4層10dには、枠体積層領域r2を含む第2領域R2の範囲内には開口が形成されていない。ただし、この構成に限られず、必要に応じて第4層10dの第2領域R2に開口を形成し、インピーダンスをさらに調整してもよい。
【0056】
また、第1開口131A、第2開口132Aおよび第3開口133AのX方向およびY方向における長さをλ/8以上かつλ/4以下とすることで、高周波信号の伝送に応じて生じた電磁波を通過しにくくできる。これによって、該電磁波の外部への輻射を低減できる。また、開口の長さをλ/4以下に小さくすることで、共振周波数の低周波側へのシフトを低減できる。このような構成を有する配線基体100は、高周波信号の伝送特性に優れる。
【0057】
また、第2開口132Aの面積より第1開口131Aの面積を大きくすることによって、各開口が形成されている部分の実効比誘電率を考慮してインピーダンスを調整できる。以下、これについて説明する。
メッシュ状の開口は、小さいほど共振周波数を高周波側へシフトさせることができる。一方、メッシュ状の開口が小さいほどインピーダンスが低下する。よって、開口の長さをλ/4以下とすることで共振周波数を高く維持しつつ、なるべく開口を大きくしたいという要請がある。ここで、空気に接する実装領域r1では、セラミックの枠体22が接する枠体積層領域r2と比較して実効比誘電率が低いため、同一周波数の電磁波における波長λが大きくなる。よって、実装領域r1に形成する第1開口131Aについては、枠体積層領域r2に形成する第2格子部132よりも、「開口の長さがλ/4以下」との条件を満たしつつ開口を大きくできる。よって、共振周波数を低周波側にシフトさせずに、インピーダンスの低下を低減できる。このような構成を有する配線基体100は、高周波信号の伝送特性に優れる。
【0058】
また、第1開口131Aおよび第2開口132Aが形成される接地導体13c、ならびに第3開口133Aが形成される接地導体13dを、信号導体12からの距離がλ/4未満となる位置に設けることで、電磁波が伝播する範囲内にメッシュ状の開口を形成できる。このため、インピーダンスの低下を低減できるので、このような構成を備える配線基体100は、高周波信号の伝送特性に優れる。
【0059】
また、第3開口133Aが形成されている接地導体13dの下層に接地導体13eが位置しており、この接地導体13eが、平面視で第3開口133Aと重なる位置を含む領域に形成されたベタ導体となっている。これにより、第1開口131Aおよび第3開口133Aを通過した電磁波の、電子装置1の外部への輻射を低減できる。
【0060】
また、メッシュ状の開口が形成されている接地導体13c、13dが貫通導体14cによって電気的に接続されていることで、接地電位を安定(強化)させることができるため、高周波信号の伝送特性を向上させることができる。また、接地導体13c、13dが、他の貫通導体によって、さらに接地導体13a、13b、13e(および、より下層の第6層、第7層の接地導体)に電気的に接続されているため、接地電位をさらに安定させることができる。
【0061】
また、複数の貫通導体14c(およびこれに連なる貫通導体14b)が、λ/4未満の距離で形成されていることにより、高周波信号の伝送に伴って生じた電磁波の、キャビティ方向への漏洩を低減できる。特に、外部基板との接合により共振周波数が変動しやすい第1領域R1(実装領域r1)における貫通導体14cの配置密度を、第2領域R2における貫通導体14cの配置密度より高くすることで、電磁波の漏洩を低減できる。また、第1格子部131の交点に貫通導体14cが位置している構成、および第2格子部132の交点に貫通導体14cが位置している構成によれば、貫通導体14cをより高密度に配置できる。電磁波の漏洩を低減する観点では、貫通導体14cの配置密度は高いことが望ましい。また、貫通導体同士の距離をλ/4未満とすることで、貫通導体を介した接地導体同士の電気的な接続強度を高めて接地電位を安定させることができる。
【0062】
次に、
図10および
図11を参照して、本実施形態の配線基体100の反射損失および挿入損失のシミュレーション結果について説明する。
図10および
図11では、本実施形態のメッシュ状の第1開口131A、第2開口132Aおよび第3開口133Aを設けた実施例のシミュレーション結果が実線で示されている。また、端子部材10の接地導体13にメッシュ状の開口を設けない比較例のシミュレーション結果が破線で示されている。
【0063】
図10に示すように、55GHz~85GHzの高周波帯域において、実施例の反射損失(0に近いほど入射に対して反射が大きくなる)は、比較例の反射損失より低い結果となった。
【0064】
また、
図11に示すように、55GHz以上の高周波帯域において、実施例の挿入損失(損失は値の絶対値が大きいほど大きい)は、比較例の挿入損失より低い結果となった。
【0065】
以上のように、本実施形態の配線基体100は、基体11と、信号導体12と、第1接地導体としての接地導体13cを含む接地導体13と、を備える。基体11は、第1面S1と、該第1面S1における外辺の近くに位置し、外部基板2が実装される第1領域R1と、該第1領域R1以外の第2領域R2と、を有する。信号導体12は、第1面S1における第1領域R1を含んで、外辺から離れるX方向に延びて位置する。接地導体13cは、基体11の内部、かつ、第1面S1に垂直な方向における信号導体12からの距離が信号導体12で伝送される高周波信号の波長λの1/4未満に位置する。接地導体13cは、第1面S1に向かう平面透視で第1領域R1かつ信号導体12の少なくとも一部に重なる第1位置に、第1開口131Aによって挟まれた第1格子部131を有する。第1開口131Aは、X方向およびY方向における長さがλ/8以上かつλ/4以下であり、第1格子部131には、貫通導体14cが位置している。
接地導体13cに上記の大きさのメッシュ状の第1開口131Aを形成することにより、共振周波数を維持しつつ、インピーダンスを所望の値に調整できる。また、貫通導体14cによって接地導体13cを他の接地導体と電気的に接続することで、接地電位を安定(強化)させることができる。これにより、高周波信号の伝送特性を向上させることができる。
【0066】
また、第1開口131Aを、X方向およびY方向に辺を有する矩形状とすることで、簡易な設計で第1開口131Aを所望の面積とすることができる。
【0067】
また、貫通導体14cが、第1格子部131の交点に位置する構成とすることで、貫通導体14cをより高密度に配置できる。
【0068】
また、接地導体13cは、X方向において第1格子部131と連なるとともに、平面透視で第2領域R2に重なる第2位置に、第2開口132Aによって挟まれた第2格子部132を有する。また、第2開口132Aは、X方向およびY方向における長さがλ/8以上かつλ/4以下であり、第2開口132Aの面積は、第1開口131Aの面積よりも小さい。これにより、実装領域r1の周囲で生じる共振の周波数を高周波側へシフトさせて、高周波信号の伝送特性を向上させることができる。また、インピーダンスの低下をさらに低減できる。また、第2開口132Aの面積を第1開口131Aの面積よりも小さくすることで、各開口が形成されている部分の実効比誘電率を考慮してインピーダンスを調整できる。
【0069】
また、第2開口132Aを、X方向およびY方向に辺を有する矩形状とすることで、簡易な設計で第2開口132Aを所望の面積とすることができる。
【0070】
また、貫通導体14cが、第2格子部132の交点に位置する構成とすることで、貫通導体14cをより高密度に配置できる。
【0071】
また、接地導体13は、基体11の内部、かつ、第1面S1に垂直な方向における信号導体12からの距離がλ/4未満に位置する。そして、平面透視で第1領域R1かつ信号導体12の少なくとも一部に重なる第3位置に、第3開口133Aによって挟まれた第3格子部133を有する第2接地導体としての接地導体13dを有する。また、第3開口133Aは、X方向およびY方向における長さがλ/8以上かつλ/4以下である。また、接地導体13dは、第1面S1に垂直な方向において、接地導体13cよりも第1面S1から離れ、貫通導体14cによって接地導体13cと接続している。これにより、2層にわたってメッシュ状の開口を形成できるため、インピーダンスの低下をより低減できる。また、接地導体同士の電気的な接続強度を高めて接地電位を安定させることができる。
【0072】
また、第3開口133Aを、X方向およびY方向に辺を有する矩形状とすることで、簡易な設計で第3開口133Aを所望の面積とすることができる。
【0073】
また、第3開口133Aは、平面透視で、第1開口131Aと重なっている。これにより、2層にわたってメッシュ状の開口を形成できるため、インピーダンスの低下を低減できる。
【0074】
また、第3開口133Aの面積を、第1開口131Aの面積よりも小さくすることで、インピーダンスを所望の範囲に調整しつつ、共振周波数の調整などのための設計の自由度を高めることができる。第3開口133Aが形成される第4層10dは、第1開口131Aが形成される第3層10cよりも信号導体12から離れているため、このような調整が可能となる。
【0075】
また、配線基体100は、貫通導体14cを複数有し、貫通導体14cは、隣接する貫通導体14cとの距離がλ/4未満である。これにより、高周波信号の伝送に伴って生じた電磁波のキャビティ方向への漏洩を低減できる。また、貫通導体を介した接地導体同士の電気的な接続強度を高めて接地電位を安定させることができる。
【0076】
また、本実施形態に係る電子装置1は、上記の配線基体100と、該配線基体100に接続されている電子部品200と、を備えるため、高周波信号の伝送特性に優れる。
【0077】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、端子部材10の構造が第1の実施形態と異なる。以下では、第1の実施形態との相違点について説明する。第2の実施形態の電子装置1および配線基体100は、より高い周波数帯域の光通信用途(例えば、変調レートが128Gbaud以下程度、周波数帯が95GHz以下程度)などに用いることができる。
【0078】
図12を参照して、第2の実施形態に係る端子部材10の構成について説明する。
第2の実施形態の端子部材10は、第1層10a、第2層10b、第3層10cおよび第4層10dからなる4層構造の例を示す。
【0079】
第1層10aは、基体11aと、8本の信号導体12と、5本の接地導体13aと、貫通導体14aとを有する。第2の実施形態においても、基体11aは、外部基板2が実装される第1領域R1と、枠体積層領域r2を含む第2領域R2とを有している。
【0080】
第2層10bは、基体11bと、接地導体13bと、貫通導体14bとを有する。第2の実施形態では、接地導体13bが「第1接地導体」に相当する。接地導体13bには、第1領域R1に第1開口131Aが形成されている。すなわち、接地導体13bは、第1開口131Aによって挟まれた第1格子部131を有する。なお、
図12の例では、接地導体13bに第2開口132Aが形成されていないが、インピーダンス調整に必要な場合には第2開口132Aが形成されていてもよい。
【0081】
第3層10cは、基体11cと、接地導体13cとを有する。第2の実施形態では、接地導体13cが「第2接地導体」に相当する。接地導体13cには、平面透視で第1開口131Aと重なる第3開口133Aが形成されている。すなわち、接地導体13cは、第3開口133Aによって挟まれた第3格子部133を有する。なお、第3層10cは貫通導体を有していない。
【0082】
第4層10dは、誘電体の基体11dからなり、接地導体および貫通導体等の導体を有していない。
【0083】
このように、第2の実施形態では、第1開口131Aまたは第3開口133Aは、平面透視で接地導体13と重なっていない。換言すれば、平面透視で第1開口131Aまたは第3開口133Aと重なる位置にベタ導体が設けられていない。これにより、インピーダンスの低下をさらに低減させることができる。また、共振周波数をさらに高周波側にシフトさせて高周波信号の伝送特性を向上させることができる。また、共振周波数が高くなることで、キャビティ内で定在波が発生するキャビティ共振が生じやすくなるところ、最下層にベタ導体を設けない(シールドしない)ことによって、このキャビティ共振を低減させることができる。これにより、キャビティ共振の影響による高周波信号の伝送特性の劣化を低減し、共振周波数をさらに高周波側にシフトさせることができる。
【0084】
<変形例>
図13を参照して、上記第1の実施形態及び第2の実施形態の変形例に係る端子部材10について説明する。
図13には、端子部材10の一部を拡大して示す図であり、端子部材10のうち、第1層10aと、第1層10aの下面に重なる第2層10bが示されている。第1層10aの基体11aの上面には複数の信号導体12が形成されている。また、第2層10bの基体11bの上面には接地導体13bが形成されている。基体11aのうち、隣接する2つの信号導体12の間には、基体11aをZ方向に貫通する溝15が設けられている。言い換えると、端子部材10の基体11は、第1面S1から、第1接地導体としての接地導体13bの形成層まで貫通している溝15を有する。
図13では、溝15は、信号導体12の延在方向(X方向)に長い長円形となっているが、形状はこれに限られず、矩形などであってもよい。また、溝15は、基体11aの端部まで延びる切り欠きであってもよい。接地導体13bの一部は、平面透視で信号導体12と重なっている。接地導体13bには、メッシュ状の複数の第1開口131Aが形成されている。第1開口131Aの一部は、平面透視で信号導体12に重なっている。また、第1開口131Aの一部は、平面透視で溝15に重なっている。言い換えると、Z方向から見て(すなわち、第1面S1に向かう平面透視で)第1開口131Aの一部が溝15から露出している。また、Z方向から見て、第2層10bの接地導体13bの一部が溝15から露出している。
溝15を設けることで、溝15の形成部分の比誘電率を低くすることができるため、信号導体12のインピーダンス低下を低減できる。また、接地導体13bにメッシュ状の第1開口131Aを設けることによっても、信号導体12のインピーダンス低下を低減できる。よって、
図13に示す構成によれば、伝送線路の広帯域化を行うために信号導体12と接地導体13bとを近付けた構成におけるインピーダンスの低下を低減し、インピーダンスを所望の値に調整できる。これにより、高周波信号の良好な伝送特性と広帯域化を達成できる。
【0085】
また、
図14に示すように、溝15はT字形状となっていてもよい。具体的には、信号導体12の信号伝送方向の延長線上に溝15が配置されている形状が好ましい。詳しくは、溝15は、隣接する2本の信号導体12の間においてX方向(信号伝送方向)に延在する部分と、当該X方向に延在する部分の+X方向側の端部から+Y方向に延在する部分と、当該端部から-Y方向に延在する部分と、を有していることが好ましい。また、溝15のうち上記の+Y方向に延在する部分、及び-Y方向に延在する部分は、それぞれ信号導体12を+X方向に延長したと仮定したときに当該延長した部分と重なる位置まで延在していることが好ましい。このような構成により、信号導体12が外部基板であるFPCなどに接続される場合、外部基板との接続によって接続部付近における信号導体12のインピーダンスが低下することを低減できる。これにより、信号導体12の高周波特性、特にコモンモードにおける高周波特性を改善することができる。
【0086】
なお、上記実施の形態は例示であり、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、第1開口131A、第2開口132Aおよび第3開口133Aが、X方向およびY方向に辺を有する矩形状であるとしたが、これに限られない。
例えば、第1開口131A、第2開口132Aおよび第3開口133Aは、直交しない第1方向および第2方向に辺を有する形状、例えば平行四辺形あるいは菱形であってもよい。
また、第1開口131A、第2開口132Aおよび第3開口133Aは、矩形状以外の多角形、円形又は楕円形などであってもよい。
また、第1開口131A、第2開口132Aおよび第3開口133Aのいずれか、又は2つが矩形状であり、残りが上記で例示した非矩形状であってもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、2層にわたってメッシュ状の開口を設ける例を挙げて説明したが、これに限られず、メッシュ状の開口が形成された層の数は、1層又は3層以上であってもよい。
【0088】
その他、上記実施の形態で示した構成、構造、位置関係および形状などの具体的な細部は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態で示した構成、構造、位置関係および形状を適宜組み合わせ可能である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本開示は、配線基体および電子装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 電子装置
2 外部基板
10 端子部材
11、11a~11e 基体
12 信号導体
12T 信号端子
13、13a~13e 接地導体
13T 接地端子
14a~14e 貫通導体
15 溝
20 本体
21 底部
22 枠体
22a 貫通孔
22b 嵌合部
23 シールリング
30 蓋体
100 配線基体
200 電子部品
R1 第1領域
R2 第2領域
r1 実装領域
r2 枠体積層領域