IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 第一三共株式会社の特許一覧

特開2024-50683抗体-薬物コンジュゲートの効果的な製造方法
<>
  • 特開-抗体-薬物コンジュゲートの効果的な製造方法 図1
  • 特開-抗体-薬物コンジュゲートの効果的な製造方法 図2
  • 特開-抗体-薬物コンジュゲートの効果的な製造方法 図3
  • 特開-抗体-薬物コンジュゲートの効果的な製造方法 図4
  • 特開-抗体-薬物コンジュゲートの効果的な製造方法 図5
  • 特開-抗体-薬物コンジュゲートの効果的な製造方法 図6
  • 特開-抗体-薬物コンジュゲートの効果的な製造方法 図7
  • 特開-抗体-薬物コンジュゲートの効果的な製造方法 図8
  • 特開-抗体-薬物コンジュゲートの効果的な製造方法 図9
  • 特開-抗体-薬物コンジュゲートの効果的な製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050683
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】抗体-薬物コンジュゲートの効果的な製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20240403BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240403BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240403BHJP
   C07K 16/30 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
A61K47/68 ZNA
A61K31/4745
A61K39/395 N
A61K47/18
A61K47/26
A61K9/08
A61P35/00
C07K16/30
【審査請求】有
【請求項の数】33
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024009164
(22)【出願日】2024-01-25
(62)【分割の表示】P 2020532431の分割
【原出願日】2019-07-24
(31)【優先権主張番号】P 2018139633
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】山口 達也
(72)【発明者】
【氏名】櫻谷 憲司
(57)【要約】      (修正有)
【課題】凝集体の生成を減らしつつ副生成物を効果的に除去するための精製工程を含む、特定の抗体-薬物コンジュゲートの製造方法を提供する。
【解決手段】(i)抗体を、還元剤で還元する工程、(ii)薬物リンカー中間体を(i)の工程で還元された抗体と反応させる工程、(iii)チオール基を有する試薬を添加し(ii)の工程で残存した薬物リンカー中間体と反応させる工程、次いで、(iv)強酸と強塩基からなる塩を含有する緩衝液を用いた限外濾過により薬物リンカー中間体由来の副生成物を除去する工程、を含むことを特徴とする、薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した、特定の抗体-薬物コンジュゲートの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コンジュゲートの製造方法であって、
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、
(i)抗体を、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン又はその塩で還元する工程、
(ii)式(2)
【化2】

で表される化合物を、(i)の工程で還元された抗体と反応させる工程、
(iii)N-アセチルシステイン又はシステインを添加し、(ii)の工程で残存した式(2)で表される化合物と反応させる工程、次いで、
(iv)塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、及び硫酸カリウムからなる群より選択される少なくともいずれか一つの又は二種類以上の組み合わせの塩を含有する緩衝液を用いた限外濾過により、
式(3)
【化3】

で表される化合物、及び、
式(4)
【化4】

で表される化合物を除去する工程、
を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
(i)の工程で使用される還元剤が、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
(i)の工程が緩衝液中で行われる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
緩衝液が、リン酸水素二ナトリウム水溶液でpH6~8に調整された緩衝液である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
緩衝液が、酢酸緩衝液である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
緩衝液が、ヒスチジン緩衝液である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項7】
(i)の工程が、キレート剤の存在下で行われる、請求項1から6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
(i)の工程で使用される緩衝液が、界面活性剤を含有する、請求項3から8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
界面活性剤が、ポリソルベート20又はポリソルベート80である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
(iii)の工程で使用される試薬が、N-アセチルシステインである、請求項1から10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.7~5.3の範囲である、請求項1から11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
(iv)の工程で使用される緩衝液が、ヒスチジン緩衝液である、請求項1から12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
(iv)の工程で使用される塩の濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.2~1重量%である、請求項1から13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
(iv)の工程で使用される塩の濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.4~0.6重量%である、請求項1から13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
(iv)の工程で使用される塩が、塩化ナトリウムである、請求項1から15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
(iv)の工程に次いで、
(v)緩衝液を用いた限外濾過により、塩を除去する工程、
を含む、請求項1から16のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4~6の範囲である、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.7~5.3の範囲である、請求項17に記載の製造方法。
【請求項20】
(v)の工程で使用される緩衝液が、ヒスチジン緩衝液である、請求項17から19のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項21】
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7.5から8個の範囲である、請求項1から20のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項22】
抗体が、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗GPR20抗体又は抗CDH6抗体である、請求項1から21のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項23】
抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、請求項22に記載の製造方法。
【請求項24】
抗HER3抗体が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している該抗体の改変体である、請求項22に記載の製造方法。
【請求項25】
抗GPR20抗体が、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している該抗体の改変体である、請求項22に記載の製造方法。
【請求項26】
抗CDH6抗体が、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している該抗体の改変体である、請求項22に記載の製造方法。
【請求項27】
クロマトグラフィーによる精製工程を含まないことを特徴とする、請求項1から26のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項28】
クロマトグラフィーが、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、及びアフィニティークロマトグラフィーからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項27に記載の製造方法。
【請求項29】
請求項1から28のいずれか1項に記載の製造方法により、抗体-薬物コンジュゲートを製造し、さらに、
(vi)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液に緩衝液を添加する工程、
(vii)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液を濃縮する工程、及び、
(viii)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液を所定のpHに調整する工程、
からなる群より選択される少なくとも一つの工程、
並びに、
(ix)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液に賦形剤を添加する工程、
を含む工程を施すことによる、
抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、及び賦形剤を含む医薬組成物の製造方法。
【請求項30】
緩衝液がヒスチジン緩衝液である、請求項29に記載の製造方法。
【請求項31】
賦形剤がスクロース又はトレハロースである、請求項29又は30に記載の製造方法。
【請求項32】
請求項29から31のいずれか1項に記載の製造方法により、抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、及び賦形剤を含む医薬組成物を製造し、さらに、
(x)該医薬組成物に界面活性剤を添加する工程、
を含む工程を施すことによる、
抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、賦形剤、及び界面活性剤を含む医薬組成物の製造方法。
【請求項33】
界面活性剤が、ポリソルベート80又はポリソルベート20である、請求項32に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集体の生成を減らしつつ副生成物を効果的に除去するための精製工程を含む抗体-薬物コンジュゲートの製造方法、及び該抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がん細胞表面に発現する抗原に結合し、かつ細胞に内在化できる抗体に、細胞毒性を有する薬物を結合させた抗体-薬物コンジュゲート(Antibody-Drug Conjugate; ADC)は、がん細胞に選択的に薬物を送達できることによって、がん細胞内に薬物を蓄積させ、がん細胞を死滅させることが期待できる(非特許文献1~5)。
【0003】
特許文献1~9の実施例には、抗体-薬物コンジュゲートの製造方法が記載されている。これらの製造方法では、疎水性クロマトグラフィーやゲル濾過クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーによる精製工程が含まれている。
【0004】
抗体-薬物コンジュゲートの一つの例として、抗体とトポイソメラーゼI阻害剤であるエキサテカンの誘導体を構成要素とする抗体-薬物コンジュゲートが知られている(特許文献10~14、非特許文献6~9)。これらの抗体-薬物コンジュゲートは、優れた抗腫瘍効果と安全性を有することから、現在、臨床試験が進行中である。
【0005】
特許文献10~14には、上記の抗体-薬物コンジュゲートを製造するための方法として、抗体と薬物リンカー中間体とをコンジュゲーションする方法、及び、得られた抗体-薬物コンジュゲートを精製する方法が記載されている。
【0006】
特許文献11~13の実施例には、上記の抗体-薬物コンジュゲートを、ソルビトール含有酢酸緩衝液を用いた限外濾過により精製した旨が記載されている。また、特許文献14には、上記の抗体-薬物コンジュゲートを、酢酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、又はリン酸緩衝液を用いた限外濾過により精製することができる旨が記載されていた。しかしながら、工業的により優れた抗体-薬物コンジュゲートの製造方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2002/098883号
【特許文献2】国際公開第2005/037992号
【特許文献3】国際公開第2005/084390号
【特許文献4】国際公開第2006/086733号
【特許文献5】国際公開第2007/024536号
【特許文献6】国際公開第2010/141566号
【特許文献7】国際公開第2011/039724号
【特許文献8】国際公開第2012/135517号
【特許文献9】国際公開第2015/104359号
【特許文献10】国際公開第2014/057687号
【特許文献11】国際公開第2015/098099号
【特許文献12】国際公開第2015/115091号
【特許文献13】国際公開第2015/155998号
【特許文献14】国際公開第2017/002776号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Ducry, L., et al., Bioconjugate Chem. (2010) 21, 5-13.
【非特許文献2】Alley, S. C., et al., Current Opinion in Chemical Biology (2010) 14, 529-537.
【非特許文献3】Damle N. K. Expert Opin. Biol. Ther. (2004) 4, 1445-1452.
【非特許文献4】Senter P. D., et al., Nature Biotechnology (2012) 30, 631-637.
【非特許文献5】Howard A. et al., J Clin Oncol 29: 398-405.
【非特許文献6】Ogitani Y. et al., Clinical Cancer Research (2016) 22(20), 5097-5108.
【非特許文献7】Ogitani Y. et al., Cancer Science (2016) 107, 1039-1046.
【非特許文献8】Doi T, et al., Lancet Oncol 2017; 18: 1512-22.
【非特許文献9】Takegawa N, et al., Int. J. Cancer: 141, 1682-1689 (2017).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の製造方法にかかる抗体-薬物コンジュゲートは、式(1)
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コンジュゲートである。
【0012】
かかる抗体-薬物コンジュゲートの製造方法として、
(i)抗体を、還元剤で還元する工程、
(ii)式(2)
【0013】
【化2】
【0014】
で表される化合物を、(i)の工程で還元された抗体と反応させる工程、次いで、
(iii)チオール基を有する試薬を添加し、(ii)の工程で残存した式(2)で表される化合物と反応させる工程、を含む製造方法を挙げることができる。
【0015】
しかし、該抗体-薬物コンジュゲート、特に、1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である抗体-薬物コンジュゲートを製造するためには、大量の式(2)で表される化合物が必要とされ、これに伴い、式(2)で表される化合物由来の副生成物が大量に生じ得る。また、抗体-薬物コンジュゲートの製造にあたっては、凝集体の生成を抑制することが求められており、抗体部分及び薬物リンカー部分それぞれに特有な物性も考慮に入れた、反応・精製条件の検討が必要とされる。
【0016】
本発明の一つの課題は、式(2)で表される化合物由来の副生成物を効果的に除去するための精製工程を含み、且つ凝集体の生成を抑制した、工業的に優れた抗体-薬物コンジュゲートの製造方法を提供することである。さらに該抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物の工業的に優れた製造方法を構築することを他の一つの課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、抗体-薬物コンジュゲートの精製工程において、強酸と強塩基からなる塩を含有する緩衝液を用いた限外濾過を行うことにより、式(2)で表される化合物由来の副生成物を効果的に除去できることを見出した。更に、抗体-薬物コンジュゲートの製造工程及び精製工程において、凝集体の生成を抑制することができる反応・精製条件を見出した。これにより該抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物の工業的に優れた製造方法が提供された。
【0018】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[410]を提供する。
[1]
式(1)
【0019】
【化3】
【0020】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コンジュゲートの製造方法であって、
(i)抗体を、還元剤で還元する工程、
(ii)式(2)
【0021】
【化4】
【0022】
で表される化合物を、(i)の工程で還元された抗体と反応させる工程、
(iii)チオール基を有する試薬を添加し、(ii)の工程で残存した式(2)で表される化合物と反応させる工程、次いで、
(iv)強酸と強塩基からなる塩を含有する緩衝液を用いた限外濾過により、式(2)で表される化合物のマレイミジル基に(i)の工程で使用される還元剤が付加した化合物、及び、式(2)で表される化合物のマレイミジル基に(iii)の工程で使用されるチオール基を有する試薬が付加した化合物を除去する工程、
を含むことを特徴とする、製造方法。
[2]
(i)の工程で使用される還元剤が、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン又はその塩である、[1]に記載の製造方法。
[3]
(i)の工程で使用される還元剤が、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩である、[1]に記載の製造方法。
[4]
(i)の工程が緩衝液中で行われる、[1]から[3]のいずれか1項に記載の製造方法。
[5]
緩衝液が、リン酸水素二ナトリウム水溶液でpH6~8に調整された緩衝液である、[4]に記載の製造方法。
[6]
緩衝液が、酢酸緩衝液である、[4]又は[5]に記載の製造方法。
[7]
(i)の工程が、キレート剤の存在下で行われる、[1]から[6]のいずれか1項に記載の製造方法。
[8]
キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸である、[7]に記載の製造方法。
[9]
(i)の工程で使用される緩衝液が、界面活性剤を含有する、[4]から[8]のいずれか1項に記載の製造方法。
[10]
界面活性剤が、ポリソルベート20である、[9]に記載の製造方法。
[11]
界面活性剤が、ポリソルベート80である、[9]に記載の製造方法。
[12]
(iii)の工程で使用されるチオール基を有する試薬が、N-アセチルシステインである、[1]から[11]のいずれか1項に記載の製造方法。
[13]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが約5である、[1]から[12]のいずれか1項に記載の製造方法。
[14]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.7~5.3の範囲である、[1]から[12]のいずれか1項に記載の製造方法。
[15]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.8~5.2の範囲である、[1]から[12]のいずれか1項に記載の製造方法。
[16]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.9~5.1の範囲である、[1]から[12]のいずれか1項に記載の製造方法。
[17]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが5.0である、[1]から[12]のいずれか1項に記載の製造方法。
[18]
(iv)の工程で使用される緩衝液が、ヒスチジン緩衝液である、[1]から[17]のいずれか1項に記載の製造方法。
[19]
(iv)の工程で使用される強酸と強塩基からなる塩の濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.2~1重量%である、[1]から[18]のいずれか1項に記載の製造方法。
【0023】
[20]
(iv)の工程で使用される強酸と強塩基からなる塩の濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し約0.5重量%である、[1]から[18]のいずれか1項に記載の製造方法。
[21]
(iv)の工程で使用される強酸と強塩基からなる塩の濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.4~0.6重量%である、[1]から[18]のいずれか1項に記載の製造方法。
[22]
(iv)の工程で使用される強酸と強塩基からなる塩の濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.5重量%である、[1]から[18]のいずれか1項に記載の製造方法。
[23]
(iv)の工程で使用される強酸と強塩基からなる塩が、塩化ナトリウムである、[1]から[22]のいずれか1項に記載の製造方法。
[24]
(iv)の工程に次いで、
(v)緩衝液を用いた限外濾過により、強酸と強塩基からなる塩を除去する工程、
を含む、[1]から[23]のいずれか1項に記載の製造方法。
[25]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4~6の範囲である、[24]に記載の製造方法。
[26]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが約5である、[24]に記載の製造方法。
[27]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.7~5.3の範囲である、[24]に記載の製造方法。
[28]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.8~5.2の範囲である、[24]に記載の製造方法。
[29]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.9~5.1の範囲である、[24]に記載の製造方法。
[30]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが5.0である、[24]に記載の製造方法。
[31]
(v)の工程で使用される緩衝液が、ヒスチジン緩衝液である、[24]から[30]のいずれか1項に記載の製造方法。
[32]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[1]から[31]のいずれか1項に記載の製造方法。
[33]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7.5から8個の範囲である、[1]から[31]のいずれか1項に記載の製造方法。
[34]
抗体が、抗HER2抗体である、[1]から[33]のいずれか1項に記載の製造方法。
[35]
抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[34]に記載の製造方法。
[36]
抗HER2抗体が、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[34]に記載の製造方法。
[37]
抗体が、抗HER3抗体である、[1]から[33]のいずれか1項に記載の製造方法。
[38]
抗HER3抗体が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[37]に記載の製造方法。
[39]
抗HER3抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[38]に記載の製造方法。
【0024】
[40]
抗体が、抗GPR20抗体である、[1]から[33]のいずれか1項に記載の製造方法。
[41]
抗GPR20抗体が、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[40]に記載の製造方法。
[42]
抗GPR20抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[41]に記載の製造方法。
[43]
抗体が、抗CDH6抗体である、[1]から[33]のいずれか1項に記載の製造方法。
[44]
抗CDH6抗体が、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[43]に記載の製造方法。
[45]
抗CDH6抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[44]に記載の製造方法。
[46]
クロマトグラフィーによる精製工程を含まないことを特徴とする、[1]から[45]のいずれか1項に記載の製造方法。
[47]
クロマトグラフィーが、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、及びアフィニティークロマトグラフィーからなる群より選択される少なくとも一つである、[46]に記載の製造方法。
[48]
[1]から[47]のいずれか1項に記載の製造方法により、抗体-薬物コンジュゲートを製造し、さらに、
(vi)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液に緩衝液を添加する工程、
(vii)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液を濃縮する工程、及び、
(viii)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液を所定のpHに調整する工程、
からなる群より選択される少なくとも一つの工程、
並びに、
(ix)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液に賦形剤を添加する工程、
を含む工程を施すことによる、
抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、及び賦形剤を含む医薬組成物の製造方法。
[49]
緩衝液がヒスチジン緩衝液である、[48]に記載の製造方法。
[50]
賦形剤がスクロースである、[48]又は[49]に記載の製造方法。
[51]
賦形剤がトレハロースである、[48]又は[49]に記載の製造方法。
[52]
[48]から[51]のいずれか1項に記載の製造方法により、抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、及び賦形剤を含む医薬組成物を製造し、さらに、
(x)該医薬組成物に界面活性剤を添加する工程、
を含む工程を施すことによる、
抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、賦形剤、及び界面活性剤を含む医薬組成物の製造方法。
[53]
界面活性剤が、ポリソルベート80である、[52]に記載の製造方法。
[54]
界面活性剤が、ポリソルベート20である、[52]に記載の製造方法。
[55]
式(1)
【0025】
【化5】
【0026】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コンジュゲートの製造方法であって、
(i)抗体を、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩で還元する工程、
(ii)式(2)
【0027】
【化6】
【0028】
で表される化合物を、(i)の工程で還元された抗体と反応させる工程、
(iii)N-アセチルシステインを添加し、(ii)の工程で残存した式(2)で表される化合物と反応させる工程、次いで、
(iv)塩化ナトリウムを含有するヒスチジン緩衝液を用いた限外濾過により、式(3)
【0029】
【化7】
【0030】
で表される化合物、及び、式(4)
【0031】
【化8】
【0032】
で表される化合物を除去する工程、
を含むことを特徴とする、製造方法。
[56]
(i)の工程が緩衝液中で行われる、[55]に記載の製造方法。
[57]
緩衝液が、リン酸水素二ナトリウム水溶液でpH6~8に調整された緩衝液である、[56]に記載の製造方法。
[58]
緩衝液が、酢酸緩衝液である、[56]又は[57]に記載の製造方法。
[59]
(i)の工程が、キレート剤の存在下で行われる、[55]から[58]のいずれか1項に記載の製造方法。
[60]
キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸である、[59]に記載の製造方法。
[61]
(i)の工程で使用される緩衝液が、界面活性剤を含有する、[56]から[60]のいずれか1項に記載の製造方法。
[62]
界面活性剤が、ポリソルベート20である、[61]に記載の製造方法。
[63]
界面活性剤が、ポリソルベート80である、[61]に記載の製造方法。
[64]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが約5である、[55]から[63]のいずれか1項に記載の製造方法。
[65]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.7~5.3の範囲である、[55]から[63]のいずれか1項に記載の製造方法。
[66]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.8~5.2の範囲である、[55]から[63]のいずれか1項に記載の製造方法。
[67]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.9~5.1の範囲である、[55]から[63]のいずれか1項に記載の製造方法。
[68]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが5.0である、[55]から[63]のいずれか1項に記載の製造方法。
[69]
(iv)の工程で使用される塩化ナトリウムの濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.2~1重量%である、[55]から[68]のいずれか1項に記載の製造方法。
【0033】
[70]
(iv)の工程で使用される塩化ナトリウムの濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し約0.5重量%である、[55]から[68]のいずれか1項に記載の製造方法。
[71]
(iv)の工程で使用される塩化ナトリウムの濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.4~0.6重量%である、[55]から[68]のいずれか1項に記載の製造方法。
[72]
(iv)の工程で使用される塩化ナトリウムの濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.5重量%である、[55]から[68]のいずれか1項に記載の製造方法。
[73]
(iv)の工程に次いで、
(v)ヒスチジン緩衝液を用いた限外濾過により、塩化ナトリウムを除去する工程、
を含む、[55]から[72]のいずれか1項に記載の製造方法。
[74]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4~6の範囲である、[73]に記載の製造方法。
[75]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが約5である、[73]に記載の製造方法。
[76]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.7~5.3の範囲である、[73]に記載の製造方法。
[77]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.8~5.2の範囲である、[73]に記載の製造方法。
[78]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.9~5.1の範囲である、[73]に記載の製造方法。
[79]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが5.0である、[73]に記載の製造方法。
[80]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[55]から[79]のいずれか1項に記載の製造方法。
[81]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7.5から8個の範囲である、[55]から[79]のいずれか1項に記載の製造方法。
[82]
抗体が、抗HER2抗体である、[55]から[81]のいずれか1項に記載の製造方法。
[83]
抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[82]に記載の製造方法。
[84]
抗HER2抗体が、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[82]に記載の製造方法。
[85]
抗体が、抗HER3抗体である、[55]から[81]のいずれか1項に記載の製造方法。
[86]
抗HER3抗体が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[85]に記載の製造方法。
[87]
抗HER3抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[86]に記載の製造方法。
[88]
抗体が、抗GPR20抗体である、[55]から[81]のいずれか1項に記載の製造方法。
[89]
抗GPR20抗体が、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[88]に記載の製造方法。
【0034】
[90]
抗GPR20抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[89]に記載の製造方法。
[91]
抗体が、抗CDH6抗体である、[55]から[81]のいずれか1項に記載の製造方法。
[92]
抗CDH6抗体が、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[91]に記載の製造方法。
[93]
抗CDH6抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[92]に記載の製造方法。
[94]
クロマトグラフィーによる精製工程を含まないことを特徴とする、[55]から[93]のいずれか1項に記載の製造方法。
[95]
クロマトグラフィーが、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、及びアフィニティークロマトグラフィーからなる群より選択される少なくとも一つである、[94]に記載の製造方法。
[96]
[55]から[95]のいずれか1項に記載の製造方法により、抗体-薬物コンジュゲートを製造し、さらに、
(vi)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液に緩衝液を添加する工程、
(vii)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液を濃縮する工程、及び、
(viii)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液を所定のpHに調整する工程、
からなる群より選択される少なくとも一つの工程、
並びに、
(ix)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液に賦形剤を添加する工程、
を含む工程を施すことによる、
抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、及び賦形剤を含む医薬組成物の製造方法。
[97]
緩衝液がヒスチジン緩衝液である、[96]に記載の製造方法。
[98]
賦形剤がスクロースである、[96]又は[97]に記載の製造方法。
[99]
賦形剤がトレハロースである、[96]又は[97]に記載の製造方法。
[100]
[96]から[99]のいずれか1項に記載の製造方法により、抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、及び賦形剤を含む医薬組成物を製造し、さらに、
(x)該医薬組成物に界面活性剤を添加する工程、
を含む工程を施すことによる、
抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、賦形剤、及び界面活性剤を含む医薬組成物の製造方法。
[101]
界面活性剤が、ポリソルベート80である、[100]に記載の製造方法。
[102]
界面活性剤が、ポリソルベート20である、[100]に記載の製造方法。
[103]
式(1)
【0035】
【化9】
【0036】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コンジュゲートの製造方法であって、
(i)抗体を、還元剤で還元する工程、
(ii)式(2)
【0037】
【化10】
【0038】
で表される化合物を、(i)の工程で還元された抗体と反応させる工程、次いで、
(iii)チオール基を有する試薬を添加する工程、によって得られた、該抗体-薬物コンジュゲートの未精製物又は粗精製物を含む溶液を、
(iv)強酸と強塩基からなる塩を含有する緩衝液を用いた限外濾過により、式(2)で表される化合物のマレイミジル基に(i)の工程で使用される還元剤が付加した化合物、及び、式(2)で表される化合物のマレイミジル基に(iii)の工程で使用されるチオール基を有する試薬が付加した化合物を除去する工程、
により精製することを特徴とする、製造方法。
[104]
(i)の工程で使用される還元剤が、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン又はその塩である、[103]に記載の製造方法。
[105]
(i)の工程で使用される還元剤が、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩である、[103]に記載の製造方法。
[106]
(i)の工程が緩衝液中で行われる、[103]から[105]のいずれか1項に記載の製造方法。
[107]
緩衝液が、リン酸水素二ナトリウム水溶液でpH6~8に調整された緩衝液である、[106]に記載の製造方法。
[108]
緩衝液が、酢酸緩衝液である、[106]又は[107]に記載の製造方法。
[109]
(i)の工程が、キレート剤の存在下で行われる、[103]から[108]のいずれか1項に記載の製造方法。
[110]
キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸である、[109]に記載の製造方法。
[111]
(i)の工程で使用される緩衝液が、界面活性剤を含有する、[106]から[110]のいずれか1項に記載の製造方法。
[112]
界面活性剤が、ポリソルベート20である、[111]に記載の製造方法。
[113]
界面活性剤が、ポリソルベート80である、[111]に記載の製造方法。
[114]
(iii)の工程で使用されるチオール基を有する試薬が、N-アセチルシステインである、[103]から[113]のいずれか1項に記載の製造方法。
[115]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが約5である、[103]から[114]のいずれか1項に記載の製造方法。
[116]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.7~5.3の範囲である、[103]から[114]のいずれか1項に記載の製造方法。
[117]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.8~5.2の範囲である、[103]から[114]のいずれか1項に記載の製造方法。
[118]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.9~5.1の範囲である、[103]から[114]のいずれか1項に記載の製造方法。
[119]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが5.0である、[103]から[114]のいずれか1項に記載の製造方法。
【0039】
[120]
(iv)の工程で使用される緩衝液が、ヒスチジン緩衝液である、[103]から[119]のいずれか1項に記載の製造方法。
[121]
(iv)の工程で使用される強酸と強塩基からなる塩の濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.2~1重量%である、[103]から[120]のいずれか1項に記載の製造方法。
[122]
(iv)の工程で使用される強酸と強塩基からなる塩の濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し約0.5重量%である、[103]から[120]のいずれか1項に記載の製造方法。
[123]
(iv)の工程で使用される強酸と強塩基からなる塩の濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.4~0.6重量%である、[103]から[120]のいずれか1項に記載の製造方法。
[124]
(iv)の工程で使用される強酸と強塩基からなる塩の濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.5重量%である、[103]から[120]のいずれか1項に記載の製造方法。
[125]
(iv)の工程で使用される強酸と強塩基からなる塩が、塩化ナトリウムである、[103]から[124]のいずれか1項に記載の製造方法。
[126]
(iv)の工程に次いで、
(v)緩衝液を用いた限外濾過により、強酸と強塩基からなる塩を除去する工程、
を含む、[103]から[125]のいずれか1項に記載の製造方法。
[127]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4~6の範囲である、[126]に記載の製造方法。
[128]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが約5である、[126]に記載の製造方法。
[129]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.7~5.3の範囲である、[126]に記載の製造方法。
[130]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.8~5.2の範囲である、[126]に記載の製造方法。
[131]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.9~5.1の範囲である、[126]に記載の製造方法。
[132]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが5.0である、[126]に記載の製造方法。
[133]
(v)の工程で使用される緩衝液が、ヒスチジン緩衝液である、[126]から[132]のいずれか1項に記載の製造方法。
[134]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[103]から[133]のいずれか1項に記載の製造方法。
[135]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7.5から8個の範囲である、[103]から[133]のいずれか1項に記載の製造方法。
[136]
抗体が、抗HER2抗体である、[103]から[135]のいずれか1項に記載の製造方法。
[137]
抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[136]に記載の製造方法。
[138]
抗HER2抗体が、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[136]に記載の製造方法。
[139]
抗体が、抗HER3抗体である、[103]から[135]のいずれか1項に記載の製造方法。
【0040】
[140]
抗HER3抗体が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[139]に記載の製造方法。
[141]
抗HER3抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[140]に記載の製造方法。
[142]
抗体が、抗GPR20抗体である、[103]から[135]のいずれか1項に記載の製造方法。
[143]
抗GPR20抗体が、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[142]に記載の製造方法。
[144]
抗GPR20抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[143]に記載の製造方法。
[145]
抗体が、抗CDH6抗体である、[103]から[135]のいずれか1項に記載の製造方法。
[146]
抗CDH6抗体が、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[145]に記載の製造方法。
[147]
抗CDH6抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[146]に記載の製造方法。
[148]
クロマトグラフィーによる精製工程を含まないことを特徴とする、[103]から[147]のいずれか1項に記載の製造方法。
[149]
クロマトグラフィーが、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、及びアフィニティークロマトグラフィーからなる群より選択される少なくとも一つである、[148]に記載の製造方法。
[150]
[103]から[149]のいずれか1項に記載の製造方法により、抗体-薬物コンジュゲートを製造し、さらに、
(vi)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液に緩衝液を添加する工程、
(vii)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液を濃縮する工程、及び、
(viii)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液を所定のpHに調整する工程、
からなる群より選択される少なくとも一つの工程、
並びに、
(ix)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液に賦形剤を添加する工程、
を含む工程を施すことによる、
抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、及び賦形剤を含む医薬組成物の製造方法。
[151]
緩衝液がヒスチジン緩衝液である、[150]に記載の製造方法。
[152]
賦形剤がスクロースである、[150]又は[151]に記載の製造方法。
[153]
賦形剤がトレハロースである、[150]又は[151]に記載の製造方法。
[154]
[150]から[153]のいずれか1項に記載の製造方法により、抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、及び賦形剤を含む医薬組成物を製造し、さらに、
(x)該医薬組成物に界面活性剤を添加する工程、
を含む工程を施すことによる、
抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、賦形剤、及び界面活性剤を含む医薬組成物の製造方法。
[155]
界面活性剤が、ポリソルベート80である、[154]に記載の製造方法。
[156]
界面活性剤が、ポリソルベート20である、[154]に記載の製造方法。
[157]
式(1)
【0041】
【化11】
【0042】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コンジュゲートの製造方法であって、
(i)抗体を、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩で還元する工程、
(ii)式(2)
【0043】
【化12】
【0044】
で表される化合物を、(i)の工程で還元された抗体と反応させる工程、次いで、
(iii)N-アセチルシステインを添加する工程、によって得られた、該抗体-薬物コンジュゲートの未精製物又は粗精製物を含む溶液を、
(iv)塩化ナトリウムを含有するヒスチジン緩衝液を用いた限外濾過により、式(3)
【0045】
【化13】
【0046】
で表される化合物、及び、式(4)
【0047】
【化14】
【0048】
で表される化合物を除去する工程、
により精製することを特徴とする、製造方法。
[158]
(i)の工程が緩衝液中で行われる、[157]に記載の製造方法。
[159]
緩衝液が、リン酸水素二ナトリウム水溶液でpH6~8に調整された緩衝液である、[158]に記載の製造方法。
[160]
緩衝液が、酢酸緩衝液である、[158]又は[159]に記載の製造方法。
[161]
(i)の工程が、キレート剤の存在下で行われる、[157]から[160]のいずれか1項に記載の製造方法。
[162]
キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸である、[161]に記載の製造方法。
【0049】
[163]
(i)の工程で使用される緩衝液が、界面活性剤を含有する、[158]から[162]のいずれか1項に記載の製造方法。
[164]
界面活性剤が、ポリソルベート20である、[163]に記載の製造方法。
[165]
界面活性剤が、ポリソルベート80である、[163]に記載の製造方法。
[166]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが約5である、[157]から[165]のいずれか1項に記載の製造方法。
[167]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.7~5.3の範囲である、[157]から[165]のいずれか1項に記載の製造方法。
[168]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.8~5.2の範囲である、[157]から[165]のいずれか1項に記載の製造方法。
[169]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.9~5.1の範囲である、[157]から[165]のいずれか1項に記載の製造方法。
[170]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが5.0である、[157]から[165]のいずれか1項に記載の製造方法。
[171]
(iv)の工程で使用される塩化ナトリウムの濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.2~1重量%である、[157]から[170]のいずれか1項に記載の製造方法。
[172]
(iv)の工程で使用される塩化ナトリウムの濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し約0.5重量%である、[157]から[170]のいずれか1項に記載の製造方法。
[173]
(iv)の工程で使用される塩化ナトリウムの濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.4~0.6重量%である、[157]から[170]のいずれか1項に記載の製造方法。
[174]
(iv)の工程で使用される塩化ナトリウムの濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.5重量%である、[157]から[170]のいずれか1項に記載の製造方法。
[175]
(iv)の工程に次いで、
(v)ヒスチジン緩衝液を用いた限外濾過により、塩化ナトリウムを除去する工程、
を含む、[157]から[174]のいずれか1項に記載の製造方法。
[176]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4~6の範囲である、[175]に記載の製造方法。
[177]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが約5である、[175]に記載の製造方法。
[178]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.7~5.3の範囲である、[175]に記載の製造方法。
[179]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.8~5.2の範囲である、[175]に記載の製造方法。
【0050】
[180]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.9~5.1の範囲である、[175]に記載の製造方法。
[181]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが5.0である、[175]に記載の製造方法。
[182]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[157]から[181]のいずれか1項に記載の製造方法。
[183]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7.5から8個の範囲である、[157]から[181]のいずれか1項に記載の製造方法。
[184]
抗体が、抗HER2抗体である、[157]から[183]のいずれか1項に記載の製造方法。
[185]
抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[184]に記載の製造方法。
[186]
抗HER2抗体が、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[184]に記載の製造方法。
[187]
抗体が、抗HER3抗体である、[157]から[183]のいずれか1項に記載の製造方法。
[188]
抗HER3抗体が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[187]に記載の製造方法。
[189]
抗HER3抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[188]に記載の製造方法。
【0051】
[190]
抗体が、抗GPR20抗体である、[157]から[183]のいずれか1項に記載の製造方法。
[191]
抗GPR20抗体が、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[190]に記載の製造方法。
[192]
抗GPR20抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[191]に記載の製造方法。
[193]
抗体が、抗CDH6抗体である、[157]から[183]のいずれか1項に記載の製造方法。
[194]
抗CDH6抗体が、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[193]に記載の製造方法。
[195]
抗CDH6抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[194]に記載の製造方法。
[196]
クロマトグラフィーによる精製工程を含まないことを特徴とする、[157]から[195]のいずれか1項に記載の製造方法。
[197]
クロマトグラフィーが、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、及びアフィニティークロマトグラフィーからなる群より選択される少なくとも一つである、[196]に記載の製造方法。
[198]
[157]から[197]のいずれか1項に記載の製造方法により、抗体-薬物コンジュゲートを製造し、さらに、
(vi)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液に緩衝液を添加する工程、
(vii)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液を濃縮する工程、及び、
(viii)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液を所定のpHに調整する工程、
からなる群より選択される少なくとも一つの工程、
並びに、
(ix)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液に賦形剤を添加する工程、
を含む工程を施すことによる、
抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、及び賦形剤を含む医薬組成物の製造方法。
[199]
緩衝液がヒスチジン緩衝液である、[198]に記載の製造方法。
【0052】
[200]
賦形剤がスクロースである、[198]又は[199]に記載の製造方法。
[201]
賦形剤がトレハロースである、[198]又は[199]に記載の製造方法。
[202]
[198]から[201]のいずれか1項に記載の製造方法により、抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、及び賦形剤を含む医薬組成物を製造し、さらに、
(x)該医薬組成物に界面活性剤を添加する工程、
を含む工程を施すことによる、
抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、賦形剤、及び界面活性剤を含む医薬組成物の製造方法。
[203]
界面活性剤が、ポリソルベート80である、[202]に記載の製造方法。
[204]
界面活性剤が、ポリソルベート20である、[202]に記載の製造方法。
[205]
式(6)
【0053】
【化15】
【0054】
(式中、薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合しており、nは1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数を示す)
で示される抗体-薬物コンジュゲートの製造方法であって、
(i)抗体を、還元剤で還元する工程、
(ii)式(2)
【0055】
【化16】
【0056】
で表される化合物を、(i)の工程で還元された抗体と反応させる工程、
(iii)チオール基を有する試薬を添加し、(ii)の工程で残存した式(2)で表される化合物と反応させる工程、次いで、
(iv)強酸と強塩基からなる塩を含有する緩衝液を用いた限外濾過により、式(2)で表される化合物のマレイミジル基に(i)の工程で使用される還元剤が付加した化合物、及び、式(2)で表される化合物のマレイミジル基に(iii)の工程で使用されるチオール基を有する試薬が付加した化合物を除去する工程、
を含むことを特徴とする、製造方法。
[206]
(i)の工程で使用される還元剤が、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン又はその塩である、[205]に記載の製造方法。
[207]
(i)の工程で使用される還元剤が、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩である、[205]に記載の製造方法。
[208]
(i)の工程が緩衝液中で行われる、[205]から[207]のいずれか1項に記載の製造方法。
[209]
緩衝液が、リン酸水素二ナトリウム水溶液でpH6~8に調整された緩衝液である、[208]に記載の製造方法。
[210]
緩衝液が、酢酸緩衝液である、[208]又は[209]に記載の製造方法。
[211]
(i)の工程が、キレート剤の存在下で行われる、[205]から[210]のいずれか1項に記載の製造方法。
[212]
キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸である、[211]に記載の製造方法。
[213]
(i)の工程で使用される緩衝液が、界面活性剤を含有する、[208]から[212]のいずれか1項に記載の製造方法。
[214]
界面活性剤が、ポリソルベート20である、[213]に記載の製造方法。
[215]
界面活性剤が、ポリソルベート80である、[213]に記載の製造方法。
[216]
(iii)の工程で使用されるチオール基を有する試薬が、N-アセチルシステインである、[205]から[215]のいずれか1項に記載の製造方法。
[217]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが約5である、[205]から[216]のいずれか1項に記載の製造方法。
[218]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.7~5.3の範囲である、[205]から[216]のいずれか1項に記載の製造方法。
[219]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.8~5.2の範囲である、[205]から[216]のいずれか1項に記載の製造方法。
【0057】
[220]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.9~5.1の範囲である、[205]から[216]のいずれか1項に記載の製造方法。
[221]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが5.0である、[205]から[216]のいずれか1項に記載の製造方法。
[222]
(iv)の工程で使用される緩衝液が、ヒスチジン緩衝液である、[205]から[221]のいずれか1項に記載の製造方法。
[223]
(iv)の工程で使用される強酸と強塩基からなる塩の濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.2~1重量%である、[205]から[222]のいずれか1項に記載の製造方法。
[224]
(iv)の工程で使用される強酸と強塩基からなる塩の濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し約0.5重量%である、[205]から[222]のいずれか1項に記載の製造方法。
[225]
(iv)の工程で使用される強酸と強塩基からなる塩の濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.4~0.6重量%である、[205]から[222]のいずれか1項に記載の製造方法。
[226]
(iv)の工程で使用される強酸と強塩基からなる塩の濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.5重量%である、[205]から[222]のいずれか1項に記載の製造方法。
[227]
(iv)の工程で使用される強酸と強塩基からなる塩が、塩化ナトリウムである、[205]から[226]のいずれか1項に記載の製造方法。
[228]
(iv)の工程に次いで、
(v)緩衝液を用いた限外濾過により、強酸と強塩基からなる塩を除去する工程、
を含む、[205]から[227]のいずれか1項に記載の製造方法。
[229]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4~6の範囲である、[228]に記載の製造方法。
【0058】
[230]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが約5である、[228]に記載の製造方法。
[231]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.7~5.3の範囲である、[228]に記載の製造方法。
[232]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.8~5.2の範囲である、[228]に記載の製造方法。
[233]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.9~5.1の範囲である、[228]に記載の製造方法。
[234]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが5.0である、[228]に記載の製造方法。
[235]
(v)の工程で使用される緩衝液が、ヒスチジン緩衝液である、[228]から[234]のいずれか1項に記載の製造方法。
[236]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[205]から[235]のいずれか1項に記載の製造方法。
[237]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7.5から8個の範囲である、[205]から[235]のいずれか1項に記載の製造方法。
[238]
抗体が、抗HER2抗体である、[205]から[237]のいずれか1項に記載の製造方法。
[239]
抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[238]に記載の製造方法。
【0059】
[240]
抗HER2抗体が、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[238]に記載の製造方法。
[241]
抗体が、抗HER3抗体である、[205]から[237]のいずれか1項に記載の製造方法。
[242]
抗HER3抗体が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[241]に記載の製造方法。
[243]
抗HER3抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[242]に記載の製造方法。
[244]
抗体が、抗GPR20抗体である、[205]から[237]のいずれか1項に記載の製造方法。
[245]
抗GPR20抗体が、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[244]に記載の製造方法。
[246]
抗GPR20抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[245]に記載の製造方法。
[247]
抗体が、抗CDH6抗体である、[205]から[237]のいずれか1項に記載の製造方法。
[248]
抗CDH6抗体が、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[247]に記載の製造方法。
[249]
抗CDH6抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[248]に記載の製造方法。
【0060】
[250]
クロマトグラフィーによる精製工程を含まないことを特徴とする、[205]から[249]のいずれか1項に記載の製造方法。
[251]
クロマトグラフィーが、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、及びアフィニティークロマトグラフィーからなる群より選択される少なくとも一つである、[250]に記載の製造方法。
[252]
[205]から[251]のいずれか1項に記載の製造方法により、抗体-薬物コンジュゲートを製造し、さらに、
(vi)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液に緩衝液を添加する工程、
(vii)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液を濃縮する工程、及び、
(viii)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液を所定のpHに調整する工程、
からなる群より選択される少なくとも一つの工程、
並びに、
(ix)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液に賦形剤を添加する工程、
を含む工程を施すことによる、
抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、及び賦形剤を含む医薬組成物の製造方法。
[253]
緩衝液がヒスチジン緩衝液である、[252]に記載の製造方法。
[254]
賦形剤がスクロースである、[251]又は[252]に記載の製造方法。
[255]
賦形剤がトレハロースである、[251]又は[252]に記載の製造方法。
[256]
[252]から[255]のいずれか1項に記載の製造方法により、抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、及び賦形剤を含む医薬組成物を製造し、さらに、
(x)該医薬組成物に界面活性剤を添加する工程、
を含む工程を施すことによる、
抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、賦形剤、及び界面活性剤を含む医薬組成物の製造方法。
[257]
界面活性剤が、ポリソルベート80である、[256]に記載の製造方法。
[258]
界面活性剤が、ポリソルベート20である、[256]に記載の製造方法。
[259]
式(6)
【0061】
【化17】
【0062】
(式中、薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合しており、nは1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数を示す)
で示される抗体-薬物コンジュゲートの製造方法であって、
(i)抗体を、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩で還元する工程、
(ii)式(2)
【0063】
【化18】
【0064】
で表される化合物を、(i)の工程で還元された抗体と反応させる工程、
(iii)N-アセチルシステインを添加し、(ii)の工程で残存した式(2)で表される化合物と反応させる工程、次いで、
(iv)塩化ナトリウムを含有するヒスチジン緩衝液を用いた限外濾過により、式(3)
【0065】
【化19】
【0066】
で表される化合物、及び、式(4)
【0067】
【化20】
【0068】
で表される化合物を除去する工程、
を含むことを特徴とする、製造方法。
[260]
(i)の工程が緩衝液中で行われる、[259]に記載の製造方法。
[261]
緩衝液が、リン酸水素二ナトリウム水溶液でpH6~8に調整された緩衝液である、[260]に記載の製造方法。
[262]
緩衝液が、酢酸緩衝液である、[260]又は[261]に記載の製造方法。
[263]
(i)の工程が、キレート剤の存在下で行われる、[259]から[262]のいずれか1項に記載の製造方法。
[264]
キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸である、[263]に記載の製造方法。
[265]
(i)の工程で使用される緩衝液が、界面活性剤を含有する、[260]から[264]のいずれか1項に記載の製造方法。
[266]
界面活性剤が、ポリソルベート20である、[265]に記載の製造方法。
[267]
界面活性剤が、ポリソルベート80である、[265]に記載の製造方法。
[268]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが約5である、[259]から[267]のいずれか1項に記載の製造方法。
[269]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.7~5.3の範囲である、[259]から[267]のいずれか1項に記載の製造方法。
【0069】
[270]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.8~5.2の範囲である、[259]から[267]のいずれか1項に記載の製造方法。
[271]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.9~5.1の範囲である、[259]から[267]のいずれか1項に記載の製造方法。
[272]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが5.0である、[259]から[267]のいずれか1項に記載の製造方法。
[273]
(iv)の工程で使用される塩化ナトリウムの濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.2~1重量%である、[259]から[272]のいずれか1項に記載の製造方法。
[274]
(iv)の工程で使用される塩化ナトリウムの濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し約0.5重量%である、[259]から[272]のいずれか1項に記載の製造方法。
[275]
(iv)の工程で使用される塩化ナトリウムの濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.4~0.6重量%である、[259]から[272]のいずれか1項に記載の製造方法。
[276]
(iv)の工程で使用される塩化ナトリウムの濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.5重量%である、[259]から[272]のいずれか1項に記載の製造方法。
[277]
(iv)の工程に次いで、
(v)ヒスチジン緩衝液を用いた限外濾過により、塩化ナトリウムを除去する工程、
を含む、[259]から[276]のいずれか1項に記載の製造方法。
[278]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4~6の範囲である、[277]に記載の製造方法。
[279]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが約5である、[277]に記載の製造方法。
【0070】
[280]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.7~5.3の範囲である、[277]に記載の製造方法。
[281]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.8~5.2の範囲である、[277]に記載の製造方法。
[282]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.9~5.1の範囲である、[277]に記載の製造方法。
[283]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが5.0である、[277]に記載の製造方法。
[284]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[259]から[283]のいずれか1項に記載の製造方法。
[285]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7.5から8個の範囲である、[259]から[283]のいずれか1項に記載の製造方法。
[286]
抗体が、抗HER2抗体である、[259]から[285]のいずれか1項に記載の製造方法。
[287]
抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[286]に記載の製造方法。
[288]
抗HER2抗体が、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[286]に記載の製造方法。
[289]
抗体が、抗HER3抗体である、[259]から[285]のいずれか1項に記載の製造方法。
[290]
抗HER3抗体が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[289]に記載の製造方法。
[291]
抗HER3抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[290]に記載の製造方法。
[292]
抗体が、抗GPR20抗体である、[259]から[285]のいずれか1項に記載の製造方法。
[293]
抗GPR20抗体が、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[292]に記載の製造方法。
[294]
抗GPR20抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[293]に記載の製造方法。
[295]
抗体が、抗CDH6抗体である、[259]から[285]のいずれか1項に記載の製造方法。
[296]
抗CDH6抗体が、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[295]に記載の製造方法。
[297]
抗CDH6抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[296]に記載の製造方法。
[298]
クロマトグラフィーによる精製工程を含まないことを特徴とする、[259]から[297]のいずれか1項に記載の製造方法。
[299]
クロマトグラフィーが、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、及びアフィニティークロマトグラフィーからなる群より選択される少なくとも一つである、[298]に記載の製造方法。
【0071】
[300]
[259]から[299]のいずれか1項に記載の製造方法により、抗体-薬物コンジュゲートを製造し、さらに、
(vi)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液に緩衝液を添加する工程、
(vii)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液を濃縮する工程、及び、
(viii)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液を所定のpHに調整する工程、
からなる群より選択される少なくとも一つの工程、
並びに、
(ix)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液に賦形剤を添加する工程、
を含む工程を施すことによる、
抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、及び賦形剤を含む医薬組成物の製造方法。
[301]
緩衝液がヒスチジン緩衝液である、[300]に記載の製造方法。
[302]
賦形剤がスクロースである、[300]又は[301]に記載の製造方法。
[303]
賦形剤がトレハロースである、[300]又は[301]に記載の製造方法。
[304]
[300]から[303]のいずれか1項に記載の製造方法により、抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、及び賦形剤を含む医薬組成物を製造し、さらに、
(x)該医薬組成物に界面活性剤を添加する工程、
を含む工程を施すことによる、
抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、賦形剤、及び界面活性剤を含む医薬組成物の製造方法。
[305]
界面活性剤が、ポリソルベート80である、[304]に記載の製造方法。
[306]
界面活性剤が、ポリソルベート20である、[304]に記載の製造方法。
[307]
式(6)
【0072】
【化21】
【0073】
(式中、薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合しており、nは1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数を示す)
で示される抗体-薬物コンジュゲートの製造方法であって、
(i)抗体を、還元剤で還元する工程、
(ii)式(2)
【0074】
【化22】
【0075】
で表される化合物を、(i)の工程で還元された抗体と反応させる工程、次いで、
(iii)チオール基を有する試薬を添加する工程、によって得られた、該抗体-薬物コンジュゲートの未精製物又は粗精製物を含む溶液を、
(iv)強酸と強塩基からなる塩を含有する緩衝液を用いた限外濾過により、式(2)で表される化合物のマレイミジル基に(i)の工程で使用される還元剤が付加した化合物、及び、式(2)で表される化合物のマレイミジル基に(iii)の工程で使用されるチオール基を有する試薬が付加した化合物を除去する工程、
により精製することを特徴とする、製造方法。
[308]
(i)の工程で使用される還元剤が、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン又はその塩である、[307]に記載の製造方法。
[309]
(i)の工程で使用される還元剤が、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩である、[307]に記載の製造方法。
[310]
(i)の工程が緩衝液中で行われる、[307]から[309]のいずれか1項に記載の製造方法。
[311]
緩衝液が、リン酸水素二ナトリウム水溶液でpH6~8に調整された緩衝液である、[310]に記載の製造方法。
[312]
緩衝液が、酢酸緩衝液である、[310]又は[311]に記載の製造方法。
[313]
(i)の工程が、キレート剤の存在下で行われる、[307]から[312]のいずれか1項に記載の製造方法。
[314]
キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸である、[313]に記載の製造方法。
[315]
(i)の工程で使用される緩衝液が、界面活性剤を含有する、[310]から[314]のいずれか1項に記載の製造方法。
[316]
界面活性剤が、ポリソルベート20である、[315]に記載の製造方法。
[317]
界面活性剤が、ポリソルベート80である、[315]に記載の製造方法。
[318]
(iii)の工程で使用されるチオール基を有する試薬が、N-アセチルシステインである、[307]から[317]のいずれか1項に記載の製造方法。
[319]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが約5である、[307]から[318]のいずれか1項に記載の製造方法。
【0076】
[320]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.7~5.3の範囲である、[307]から[318]のいずれか1項に記載の製造方法。
[321]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.8~5.2の範囲である、[307]から[318]のいずれか1項に記載の製造方法。
[322]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.9~5.1の範囲である、[307]から[318]のいずれか1項に記載の製造方法。
[323]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが5.0である、[307]から[318]のいずれか1項に記載の製造方法。
[324]
(iv)の工程で使用される緩衝液が、ヒスチジン緩衝液である、[307]から[323]のいずれか1項に記載の製造方法。
[325]
(iv)の工程で使用される強酸と強塩基からなる塩の濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.2~1重量%である、[307]から[324]のいずれか1項に記載の製造方法。
[326]
(iv)の工程で使用される強酸と強塩基からなる塩の濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し約0.5重量%である、[307]から[324]のいずれか1項に記載の製造方法。
[327]
(iv)の工程で使用される強酸と強塩基からなる塩の濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.4~0.6重量%である、[307]から[324]のいずれか1項に記載の製造方法。
[328]
(iv)の工程で使用される強酸と強塩基からなる塩の濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.5重量%である、[307]から[324]のいずれか1項に記載の製造方法。
[329]
(iv)の工程で使用される強酸と強塩基からなる塩が、塩化ナトリウムである、[307]から[328]のいずれか1項に記載の製造方法。
[330]
(iv)の工程に次いで、
(v)緩衝液を用いた限外濾過により、強酸と強塩基からなる塩を除去する工程、
を含む、[307]から[329]のいずれか1項に記載の製造方法。
[331]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4~6の範囲である、[330]に記載の製造方法。
[332]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが約5である、[330]に記載の製造方法。
[333]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.7~5.3の範囲である、[330]に記載の製造方法。
[334]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.8~5.2の範囲である、[330]に記載の製造方法。
[335]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.9~5.1の範囲である、[330]に記載の製造方法。
[336]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが5.0である、[330]に記載の製造方法。
[337]
(v)の工程で使用される緩衝液が、ヒスチジン緩衝液である、[330]から[336]のいずれか1項に記載の製造方法。
[338]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[307]から[337]のいずれか1項に記載の製造方法。
[339]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7.5から8個の範囲である、[307]から[337]のいずれか1項に記載の製造方法。
【0077】
[340]
抗体が、抗HER2抗体である、[307]から[339]のいずれか1項に記載の製造方法。
[341]
抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[340]に記載の製造方法。
[342]
抗HER2抗体が、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[340]に記載の製造方法。
[343]
抗体が、抗HER3抗体である、[307]から[339]のいずれか1項に記載の製造方法。
[344]
抗HER3抗体が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[343]に記載の製造方法。
[345]
抗HER3抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[344]に記載の製造方法。
[346]
抗体が、抗GPR20抗体である、[307]から[339]のいずれか1項に記載の製造方法。
[347]
抗GPR20抗体が、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[346]に記載の製造方法。
[348]
抗GPR20抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[347]に記載の製造方法。
[349]
抗体が、抗CDH6抗体である、[307]から[339]のいずれか1項に記載の製造方法。
【0078】
[350]
抗CDH6抗体が、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[349]に記載の製造方法。
[351]
抗CDH6抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[350]に記載の製造方法。
[352]
クロマトグラフィーによる精製工程を含まないことを特徴とする、[307]から[351]のいずれか1項に記載の製造方法。
[353]
クロマトグラフィーが、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、及びアフィニティークロマトグラフィーからなる群より選択される少なくとも一つである、[352]に記載の製造方法。
[354]
[307]から[353]のいずれか1項に記載の製造方法により、抗体-薬物コンジュゲートを製造し、さらに、
(vi)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液に緩衝液を添加する工程、
(vii)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液を濃縮する工程、及び、
(viii)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液を所定のpHに調整する工程、
からなる群より選択される少なくとも一つの工程、
並びに、
(ix)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液に賦形剤を添加する工程、
を含む工程を施すことによる、
抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、及び賦形剤を含む医薬組成物の製造方法。
[355]
緩衝液がヒスチジン緩衝液である、[354]に記載の製造方法。
[356]
賦形剤がスクロースである、[354]又は[355]に記載の製造方法。
[357]
賦形剤がトレハロースである、[354]又は[355]に記載の製造方法。
[358]
[354]から[357]のいずれか1項に記載の製造方法により、抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、及び賦形剤を含む医薬組成物を製造し、さらに、
(x)該医薬組成物に界面活性剤を添加する工程、
を含む工程を施すことによる、
抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、賦形剤、及び界面活性剤を含む医薬組成物の製造方法。
[359]
界面活性剤が、ポリソルベート80である、[358]に記載の製造方法。
[360]
界面活性剤が、ポリソルベート20である、[358]に記載の製造方法。
[361]
式(6)
【0079】
【化23】
【0080】
(式中、薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合しており、nは1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数を示す)
で示される抗体-薬物コンジュゲートの製造方法であって、
(i)抗体を、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩で還元する工程、
(ii)式(2)
【0081】
【化24】
【0082】
で表される化合物を、(i)の工程で還元された抗体と反応させる工程、次いで、
(iii)N-アセチルシステインを添加する工程、によって得られた、該抗体-薬物コンジュゲートの未精製物又は粗精製物を含む溶液を、
(iv)塩化ナトリウムを含有するヒスチジン緩衝液を用いた限外濾過により、式(3)
【0083】
【化25】
【0084】
で表される化合物、及び、式(4)
【0085】
【化26】
【0086】
で表される化合物を除去する工程、
により精製することを特徴とする、製造方法。
[362]
(i)の工程が緩衝液中で行われる、[361]に記載の製造方法。
[363]
緩衝液が、リン酸水素二ナトリウム水溶液でpH6~8に調整された緩衝液である、[362]に記載の製造方法。
[364]
緩衝液が、酢酸緩衝液である、[362]又は[363]に記載の製造方法。
[365]
(i)の工程が、キレート剤の存在下で行われる、[361]から[364]のいずれか1項に記載の製造方法。
[366]
キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸である、[365]に記載の製造方法。
[367]
(i)の工程で使用される緩衝液が、界面活性剤を含有する、[362]から[366]のいずれか1項に記載の製造方法。
[368]
界面活性剤が、ポリソルベート20である、[367]に記載の製造方法。
[369]
界面活性剤が、ポリソルベート80である、[367]に記載の製造方法。
[370]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが約5である、[361]から[369]のいずれか1項に記載の製造方法。
[371]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.7~5.3の範囲である、[361]から[369]のいずれか1項に記載の製造方法。
[372]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.8~5.2の範囲である、[361]から[369]のいずれか1項に記載の製造方法。
[373]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが4.9~5.1の範囲である、[361]から[369]のいずれか1項に記載の製造方法。
[374]
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHが5.0である、[361]から[369]のいずれか1項に記載の製造方法。
[375]
(iv)の工程で使用される塩化ナトリウムの濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.2~1重量%である、[361]から[374]のいずれか1項に記載の製造方法。
[376]
(iv)の工程で使用される塩化ナトリウムの濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し約0.5重量%である、[361]から[374]のいずれか1項に記載の製造方法。
[377]
(iv)の工程で使用される塩化ナトリウムの濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.4~0.6重量%である、[361]から[374]のいずれか1項に記載の製造方法。
[378]
(iv)の工程で使用される塩化ナトリウムの濃度が、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し0.5重量%である、[361]から[374]のいずれか1項に記載の製造方法。
[379]
(iv)の工程に次いで、
(v)ヒスチジン緩衝液を用いた限外濾過により、塩化ナトリウムを除去する工程、
を含む、[361]から[378]のいずれか1項に記載の製造方法。
【0087】
[380]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4~6の範囲である、[379]に記載の製造方法。
[381]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが約5である、[379]に記載の製造方法。
[382]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.7~5.3の範囲である、[379]に記載の製造方法。
[383]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.8~5.2の範囲である、[379]に記載の製造方法。
[384]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが4.9~5.1の範囲である、[379]に記載の製造方法。
[385]
(v)の工程で使用される緩衝液のpHが5.0である、[379]に記載の製造方法。
[386]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[361]から[385]のいずれか1項に記載の製造方法。
[387]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7.5から8個の範囲である、[361]から[385]のいずれか1項に記載の製造方法。
[388]
抗体が、抗HER2抗体である、[361]から[387]のいずれか1項に記載の製造方法。
[389]
抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[388]に記載の製造方法。
【0088】
[390]
抗HER2抗体が、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[388]に記載の製造方法。
[391]
抗体が、抗HER3抗体である、[361]から[387]のいずれか1項に記載の製造方法。
[392]
抗HER3抗体が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[391]に記載の製造方法。
[393]
抗HER3抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[392]に記載の製造方法。
[394]
抗体が、抗GPR20抗体である、[361]から[387]のいずれか1項に記載の製造方法。
[395]
抗GPR20抗体が、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[394]に記載の製造方法。
[396]
抗GPR20抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[395]に記載の製造方法。
[397]
抗体が、抗CDH6抗体である、[361]から[387]のいずれか1項に記載の製造方法。
[398]
抗CDH6抗体が、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[397]に記載の製造方法。
[399]
抗CDH6抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[398]に記載の製造方法。
【0089】
[400]
クロマトグラフィーによる精製工程を含まないことを特徴とする、[361]から[399]のいずれか1項に記載の製造方法。
[401]
クロマトグラフィーが、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、及びアフィニティークロマトグラフィーからなる群より選択される少なくとも一つである、[400]に記載の製造方法。
[402]
[361]から[401]のいずれか1項に記載の製造方法により、抗体-薬物コンジュゲートを製造し、さらに、
(vi)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液に緩衝液を添加する工程、
(vii)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液を濃縮する工程、及び、
(viii)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液を所定のpHに調整する工程、
からなる群より選択される少なくとも一つの工程、
並びに、
(ix)抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液に賦形剤を添加する工程、
を含む工程を施すことによる、
抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、及び賦形剤を含む医薬組成物の製造方法。
[403]
緩衝液がヒスチジン緩衝液である、[402]に記載の製造方法。
[404]
賦形剤がスクロースである、[401]又は[402]に記載の製造方法。
[405]
賦形剤がトレハロースである、[401]又は[402]に記載の製造方法。
[406]
[402]から[405]のいずれか1項に記載の製造方法により、抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、及び賦形剤を含む医薬組成物を製造し、さらに、
(x)該医薬組成物に界面活性剤を添加する工程、
を含む工程を施すことによる、
抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、賦形剤、及び界面活性剤を含む医薬組成物の製造方法。
[407]
界面活性剤が、ポリソルベート80である、[406]に記載の製造方法。
[408]
界面活性剤が、ポリソルベート20である、[406]に記載の製造方法。
[409]
[1]から[47]、[55]から[95]、[103]から[149]、[157]から[197]、[205]から[251]、[259]から[299]、[307]から[353]、及び[361]から[401]のいずれか1項に記載の製造方法により製造された抗体-薬物コンジュゲート。
[410]
[48]から[54]、[96]から[102]、[150]から[156]、[198]から[204]、[252]から[258]、[300]から[306]、[354]から[360]、及び[402]から[408]のいずれか1項に記載の製造方法により製造された医薬組成物。
【発明の効果】
【0090】
本発明により、凝集体の生成を抑制しつつ式(2)で表される化合物由来の副生成物を効果的に除去するための精製工程を含む、抗体-薬物コンジュゲートの製造方法を提供することができる。さらに該抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物の工業的に優れた製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
図1】ヒスチジン緩衝液 (pH5.0)、又は0.5%塩化ナトリウム含有ヒスチジン緩衝液(pH5.0)を用いて限外濾過を行った場合の、化合物(3)及び化合物(4)の含有率を示した図である。
図2】ヒスチジン緩衝液(pH5.0、若しくはpH5.8)、又は0.4%塩化ナトリウム含有ヒスチジン緩衝液(pH5.0、若しくはpH5.8)を用いて限外濾過を行った場合の、凝集体の含有率を示した図である。
図3】抗HER2抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号1)を示した図である。
図4】抗HER2抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号2)を示した図である。
図5】抗HER3抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号3)を示した図である。
図6】抗HER3抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号4)を示した図である。
図7】抗GPR20抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号5)を示した図である。
図8】抗GPR20抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号6)を示した図である。
図9】抗CDH6抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号7)を示した図である。
図10】抗CDH6抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号8)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これによって本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0093】
1.抗体-薬物コンジュゲート
本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートは、
式(1)
【0094】
【化27】
【0095】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コンジュゲートである。
【0096】
本発明においては、抗体-薬物コンジュゲートのうち、リンカー及び薬物からなる部分構造を「薬物リンカー」と称する。この薬物リンカーは抗体の鎖間のジスルフィド結合部位(2箇所の重鎖-重鎖間、及び2箇所の重鎖-軽鎖間)において生じたチオール基(言い換えれば、システイン残基の硫黄原子)に結合している。
【0097】
本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートの薬物リンカーは、トポイソメラーゼI阻害剤であるエキサテカンを構成要素としている。エキサテカンは、
式(5)
【0098】
【化28】
【0099】
で示される、抗腫瘍効果を有するカンプトテシン誘導体である。
【0100】
本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートは、
式(6)
【0101】
【化29】
【0102】
で表されることもできる。
【0103】
ここで、薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合している。また、nはいわゆる平均薬物結合数(DAR; Drug-to-Antibody Ratio)と同義であり、1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数を示す。
【0104】
本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートは、がん細胞内に移行した後に、
式(7)
【0105】
【化30】
【0106】
で表される化合物を遊離する。
【0107】
式(7)で表される化合物は、本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートの抗腫瘍活性の本体であると考えられ、トポイソメラーゼI阻害作用を有することが確認されている(Ogitani Y. et al., Clinical Cancer Research, 2016, Oct 15;22(20):5097-5108, Epub 2016 Mar 29)。
【0108】
式(7)で表される化合物は、本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートのリンカー部分が切断されることにより生じると考えられる、式(8)
【0109】
【化31】
【0110】
で表される化合物のアミナール構造が分解することにより生じると考えられる。
【0111】
本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートは、バイスタンダー効果を有することも知られている(Ogitani Y. et al., Cancer Science (2016) 107, 1039-1046)。このバイスタンダー効果は、本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートが、標的発現がん細胞に内在化した後、式(7)で表される化合物が遊離され、標的を発現していない近傍のがん細胞に対しても抗腫瘍効果を及ぼすことにより発揮される。
【0112】
2.抗体-薬物コンジュゲートの製造に使用される抗体
本発明の抗体-薬物コンジュゲートの製造に使用される抗体は、いずれの種に由来してもよいが、好適には、ヒト、ラット、マウス、及びウサギに由来する抗体である。抗体がヒト以外の種に由来する場合は、周知の技術を用いて、キメラ化又はヒト化することが好ましい。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。
【0113】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートの製造に使用される抗体は、好適にはがん細胞を標的にできる性質を有するものであり、がん細胞を認識できる特性、がん細胞に結合できる特性、がん細胞内に取り込まれて内在化する特性、及び/又はがん細胞に対する殺細胞活性等を備えているものが好ましい。
【0114】
抗体のがん細胞への結合性は、フローサイトメトリーを用いて確認できる。がん細胞内への抗体の取り込みは、(1)治療抗体に結合する二次抗体(蛍光標識)を用いて細胞内に取り込まれた抗体を蛍光顕微鏡で可視化するアッセイ(Cell Death and Differentiation (2008) 15, 751-761)、(2)治療抗体に結合する二次抗体(蛍光標識)を用いて細胞内に取り込まれた蛍光量を測定するアッセイ(Molecular Biology of the Cell Vol. 15, 5268-5282, December 2004)、又は(3)治療抗体に結合するイムノトキシンを用いて、細胞内に取り込まれると毒素が放出されて細胞増殖が抑制されるというMab-ZAPアッセイ(Bio Techniques 28:162-165, January 2000)を用いて確認できる。イムノトキシンとしては、ジフテテリア毒素の触媒領域とプロテインGとのリコンビナント複合蛋白質も使用可能である。
【0115】
抗体の抗腫瘍活性は、in vitroでは、細胞の増殖の抑制活性を測定することで確認できる。例えば、抗体の標的蛋白質を過剰発現しているがん細胞株を培養し、培養系に種々の濃度で抗体を添加し、フォーカス形成、コロニー形成及びスフェロイド増殖に対する抑制活性を測定することができる。in vivoでは、例えば、標的蛋白質を高発現しているがん細胞株を移植したヌードマウスに抗体を投与し、がん細胞の変化を測定することによって、抗腫瘍活性を確認できる。
【0116】
抗体自体が抗腫瘍効果を有することは、好ましいが、抗体-薬物コンジュゲートは抗腫瘍効果を発揮する化合物を結合させてあるので、抗体自体の抗腫瘍効果は必須ではない。抗腫瘍性化合物の細胞障害性をがん細胞において特異的・選択的に発揮させる目的からは、抗体が内在化してがん細胞内に移行する性質のあることが重要であり、好ましい。
【0117】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートの製造に使用される抗体は、公知の手段によって取得することができる。例えば、この分野で通常実施される方法を用いて、抗原となるポリペプチドを動物に免疫し、生体内に産生される抗体を採取、精製することによって得ることができる。抗原の由来はヒトに限定されず、マウス、ラット等のヒト以外の動物に由来する抗原を動物に免疫することもできる。この場合には、取得された異種抗原に結合する抗体とヒト抗原との交差性を試験することによって、ヒトの疾患に適用可能な抗体を選別できる。
【0118】
また、公知の方法(例えば、Kohler and Milstein, Nature (1975) 256, p.495-497;Kennet, R. ed., Monoclonal Antibodies, p.365-367, Plenum Press, N.Y.(1980))に従って、抗原に対する抗体を産生する抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることによってハイブリドーマを樹立し、モノクローナル抗体を得ることもできる。
【0119】
なお、抗原は抗原蛋白質をコードする遺伝子を遺伝子操作によって宿主細胞に産生させることによって得ることができる。具体的には、抗原遺伝子を発現可能なベクターを作製し、これを宿主細胞に導入して該遺伝子を発現させ、発現した抗原を精製すればよい。上記の遺伝子操作による抗原発現細胞、或は抗原を発現している細胞株、を動物に免疫する方法を用いることによっても抗体を取得できる。
【0120】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートの製造に使用される抗体は、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト化(Humanized)抗体であることが好ましく、又はヒト由来の抗体の遺伝子配列のみを有する抗体、すなわちヒト抗体であることが好ましい。これらの抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
【0121】
キメラ抗体としては、抗体の可変領域と定常領域が互いに異種である抗体、例えばマウス又はラット由来抗体の可変領域をヒト由来の定常領域に接合したキメラ抗体を挙げることができる(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81, 6851-6855,(1984))。
【0122】
ヒト化抗体としては、異種抗体の相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)のみをヒト由来の抗体に組み込んだ抗体(Nature(1986) 321, p.522-525)、CDR移植法によって、異種抗体のCDRの配列に加えて、異種抗体の一部のフレームワークのアミノ酸残基もヒト抗体に移植した抗体(国際公開第90/07861号)、遺伝子変換突然変異誘発(gene conversion mutagenesis)ストラテジーを用いてヒト化した抗体(米国特許第5821337号)を挙げることができる。
【0123】
ヒト抗体としては、ヒト抗体の重鎖と軽鎖の遺伝子を含むヒト染色体断片を有するヒト抗体産生マウスを用いて作成した抗体(Tomizuka, K. et al., Nature Genetics(1997) 16, p.133-143;Kuroiwa, Y. et. al., Nucl. Acids Res.(1998) 26, p.3447-3448;Yoshida, H. et. al., Animal Cell Technology:Basic and Applied Aspects vol.10, p.69-73(Kitagawa, Y., Matsuda, T. and Iijima, S. eds.), Kluwer Academic Publishers, 1999;Tomizuka, K. et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(2000) 97, p.722-727等を参照。)を挙げることができる。或いは、ヒト抗体ライブラリーより選別したファージディスプレイにより取得した抗体(Wormstone, I. M. et. al, Investigative Ophthalmology & Visual Science. (2002)43 (7), p.2301-2308;Carmen, S. et. al., Briefings in Functional Genomics and Proteomics(2002), 1(2), p.189-203;Siriwardena, D. et. al., Ophthalmology(2002) 109(3), p.427-431等参照。)も挙げることができる。
【0124】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートの製造に使用される抗体には、抗体の修飾体も含まれる。当該修飾体とは、本発明に係る抗体に化学的又は生物学的な修飾が施されてなるものを意味する。化学的な修飾体には、アミノ酸骨格への化学部分の結合、N-結合又はO-結合炭水化物鎖への化学部分の結合を有する化学修飾体等が含まれる。生物学的な修飾体には、翻訳後修飾(例えば、N-結合又はO-結合型糖鎖の付加、N末端又はC末端のプロセッシング、脱アミド化、アスパラギン酸の異性化、メチオニンの酸化等)されたもの、原核生物宿主細胞を用いて発現させることによってN末にメチオニン残基が付加されたもの等が含まれる。また、本発明に係る抗体又は抗原の検出又は単離を可能にするために標識されたもの、例えば、酵素標識体、蛍光標識体、アフィニティ標識体もかかる修飾体の意味に含まれる。この様な本発明に係る抗体の修飾体は、抗体の安定性及び血中滞留性の改善、抗原性の低減、抗体又は抗原の検出又は単離等に有用である。
【0125】
また、本発明に係る抗体に結合している糖鎖修飾を調節すること(グリコシル化、脱フコース化等)によって、抗体依存性細胞傷害活性を増強することが可能である。抗体の糖鎖修飾の調節技術としては、国際公開第99/54342号、国際公開第00/61739号、国際公開第02/31140号等が知られているが、これらに限定されるものではない。本発明に係る抗体には当該糖鎖修飾が調節された抗体も含まれる。
【0126】
なお、哺乳類培養細胞で生産される抗体では、その重鎖のカルボキシル末端のリシン残基が欠失することが知られており(Journal of Chromatography A, 705: 129-134(1995))、また、同じく重鎖カルボキシル末端のグリシン、リシンの2アミノ酸残基が欠失し、新たにカルボキシル末端に位置するプロリン残基がアミド化されることが知られている(Analytical Biochemistry, 360: 75-83(2007))。しかし、これらの重鎖配列の欠失及び修飾は、抗体の抗原結合能及びエフェクター機能(補体の活性化や抗体依存性細胞障害作用等)には影響を及ぼさない。したがって、本発明に係る抗体には、当該修飾を受けた抗体及び当該抗体の機能性断片も含まれ、重鎖カルボキシル末端において1又は2のアミノ酸が欠失した欠失体、及びアミド化された当該欠失体(例えば、カルボキシル末端部位のプロリン残基がアミド化された重鎖)等も包含される。但し、抗原結合能及びエフェクター機能が保たれている限り、本発明に係る抗体の重鎖のカルボキシル末端の欠失体は上記の種類に限定されない。本発明に係る抗体を構成する2本の重鎖は、完全長及び上記の欠失体からなる群から選択される重鎖のいずれか一種であってもよいし、いずれか二種を組み合わせたものであってもよい。各欠失体の量比は本発明に係る抗体を産生する哺乳類培養細胞の種類及び培養条件に影響を受け得るが、本発明に係る抗体は、好ましくは2本の重鎖の双方でカルボキシル末端のひとつのアミノ酸残基が欠失しているものを挙げることができる。
【0127】
本発明に係る抗体のアイソタイプとしては、例えばIgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)等を挙げることができるが、好ましくはIgG1又はIgG2を挙げることができる。
【0128】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートの製造に使用できる抗体は、特に制限はないが、例えば、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗TROP2抗体、抗B7-H3抗体、抗CD3抗体、抗CD30抗体、抗CD33抗体、抗CD37抗体、抗CD56抗体、抗CD98抗体、抗DR5抗体、抗EGFR抗体、抗EPHA2抗体、抗FGFR2抗体、抗FGFR4抗体、抗FOLR1抗体、抗VEGF抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD70抗体、抗PSMA抗体、抗CEA抗体、抗Mesothelin抗体、抗A33抗体、抗CanAg抗体、抗Cripto抗体、抗G250抗体、抗MUC1抗体、抗GPNMB抗体、抗Integrin抗体、抗Tenascin-C抗体、抗SLC44A4抗体、抗GPR20抗体、及び抗CDH6抗体を挙げることができ、好適には、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗TROP2抗体、抗B7-H3抗体、抗GPR20抗体、及び抗CDH6抗体を挙げることができ、より好適には、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗GPR20抗体、及び抗CDH6抗体を挙げることができる。
【0129】
本発明において、「抗HER2抗体」とは、HER2(Human Epidermal Growth FactorReceptor Type 2; ErbB-2)に特異的に結合し、好ましくは、HER2と結合することによってHER2発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0130】
抗HER2抗体としては、例えば、トラスツズマブ(Trastuzumab)(米国特許第5821337号)、及び、ペルツズマブ(Pertuzumab)(国際公開第01/00245号)を挙げることができ、好適にはトラスツズマブを挙げることができる。
【0131】
本発明において、「抗HER3抗体」とは、HER3(Human Epidermal Growth FactorReceptor Type 3; ErbB-3)に特異的に結合し、好適には、HER3と結合することによってHER3発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0132】
抗HER3抗体としては、例えば、パトリツマブ(Patritumab; U3-1287)、U1-59(国際公開第2007/077028号)、MM-121(Seribantumab)、国際公開2008/100624号記載の抗ERBB3抗体、RG-7116(Lumretuzumab)、及びLJM-716(Elgemtumab)を挙げることができ、好適には、パトリツマブ、及びU1-59を挙げることができる。
【0133】
本発明において、「抗TROP2抗体」とは、TROP2(TACSTD2:Tumor-associated calcium signal transducer 2; EGP-1)に特異的に結合し、好ましくは、TROP2と結合することによってTROP2発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0134】
抗TROP2抗体としては、例えば、hTINA1-H1L1(国際公開第2015/098099号)を挙げることができる。
【0135】
本発明において、「抗B7-H3抗体」とは、B7-H3(B cell antigen #7 homolog 3; PD-L3; CD276)に特異的に結合し、好ましくは、B7-H3と結合することによってB7-H3発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0136】
抗B7-H3抗体としては、例えば、M30-H1-L4(国際公開第2014/057687号)を挙げることができる。
【0137】
本発明において、「抗GPR20抗体」とは、GPR20(G Protein-coupled receptor 20)に特異的に結合し、好ましくは、GPR20と結合することによってGPR20発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0138】
抗GPR20抗体としては、例えば、h046-H4e/L7(国際公開第2018/135501号)を挙げることができる。
【0139】
本発明において、「抗CDH6抗体」とは、CDH6(Cadherin-6)に特異的に結合し、好ましくは、CDH6と結合することによってCDH6発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0140】
抗CDH6抗体としては、例えば、H01L02(国際公開第2018/212136号)を挙げることができる。
【0141】
3.抗体-薬物コンジュゲートの製造に使用される薬物リンカー中間体
本発明の抗体-薬物コンジュゲートの製造に使用される薬物リンカー中間体は、
式(2)で表される化合物である。
【0142】
【化32】
【0143】
式(2)で表される化合物は、国際公開第2014/057687号、国際公開第2015/098099号、国際公開第2015/115091号、国際公開第2015/155998号、及び国際公開第2019/044947号等の記載を参考に製造することができる。
【0144】
4.抗体と薬物リンカー中間体のコンジュゲーション
本発明の抗体-薬物コンジュゲートの製造における、抗体と薬物リンカー中間体のコンジュゲーションは、
(i)抗体を、還元剤で還元する工程、
(ii)式(2)で表される化合物を、(i)の工程で還元された抗体と反応させる工程、
(iii)チオール基を有する試薬を添加し、(ii)の工程で残存した式(2)で表される化合物と反応させる工程、
を含む。
【0145】
(i)の工程で使用される還元剤は、抗体の鎖間ジスルフィドを還元できるものであれば特に限定されないが、例えば、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン若しくはその塩、ジチオトレイトール、又は2-メルカプトエタノールを用いることができ、好適には、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン若しくはその塩を用いることができ、より好適には、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩を用いることができる。
【0146】
(i)の工程で使用される還元剤の抗体1分子あたりの当量(以下、本発明において「当量」とは、モル当量を意味する。)は、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数、及び抗体の種類に応じて、適宜選択することができる。
【0147】
例えば、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗HER2抗体(好適には、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)である場合、還元剤は、好適には、抗体1分子に対して4.1~5.1当量、より好適には、4.4~4.8当量、更により好適には、約4.6当量用いることができる。ここで、「約4.6当量」とは、好適には、4.5~4.7当量であり、より好適には4.6当量である。
【0148】
また、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗HER3抗体(好適には、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体)である場合、還元剤は、好適には、抗体1分子に対して5.5~6.5当量、より好適には、5.8~6.2当量、更により好適には、約6当量用いることができる。ここで、「約6当量」とは、好適には、5.9~6.1当量であり、より好適には6.0当量である。
【0149】
また、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗GPR20抗体(好適には、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体)である場合、還元剤は、好適には、抗体1分子に対して4.3~5.3当量、より好適には、4.6~5当量、更により好適には、約4.8当量用いることができる。ここで、「約4.8当量」とは、好適には、4.7~4.9当量であり、より好適には4.8当量である。
【0150】
また、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗CDH6抗体(好適には、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体)である場合、還元剤は、好適には、抗体1分子に対して4.3~5.3当量、より好適には、4.6~5当量、更により好適には、約4.8当量用いることができる。ここで、「約4.8当量」とは、好適には、4.7~4.9当量であり、より好適には4.8当量である。
【0151】
(i)の工程は、好適には、緩衝液中で行うことができる。
【0152】
(i)の工程で使用される緩衝液のpHは、好適には6~8であり、より好適には6.5~7.5であり、更により好適には6.9~7.4であり、更により好適には、7.0~7.3である。
【0153】
(i)の工程で使用される緩衝液は、抗体の鎖間ジスルフィドの還元の際に使用され得るものであれば特に制限されないが、例えば、酢酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、リン酸緩衝液、Piperazine-1,4-bis(2-ethanesulfonic acid)(以下、「PIPES」とも言う)緩衝液、4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperazine ethanesulfonic acid(以下、「HEPES」とも言う)緩衝液を用いることができる。
【0154】
例えば、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗HER2抗体(好適には、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)である場合、好適には、pH6~8に調整された酢酸緩衝液を用いることができ、より好適には、リン酸水素二ナトリウム水溶液でpH6~8に調整された酢酸緩衝液を用いることができ、更により好適には、リン酸水素二ナトリウム水溶液でpH6.8~7.8に調整された酢酸緩衝液を用いることができ、更により好適には、リン酸水素二ナトリウム水溶液でpHが約7.3に調整された酢酸緩衝液を用いることができる。ここで、「約7.3」とは、好適には、7.1~7.5の範囲であり、より好適には、7.2~7.4の範囲であり、更により好適には、7.3である。
【0155】
また、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗HER3抗体(好適には、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体)である場合、好適には、pH6~8に調整された酢酸緩衝液を用いることができ、より好適には、リン酸水素二ナトリウム水溶液でpH6~8に調整された酢酸緩衝液を用いることができ、更により好適には、リン酸水素二ナトリウム水溶液でpH6.5~7.5に調整された酢酸緩衝液を用いることができ、更により好適には、リン酸水素二ナトリウム水溶液でpHが約7に調整された酢酸緩衝液を用いることができる。ここで、「約7」とは、好適には、6.8~7.2の範囲であり、より好適には、6.9~7.1の範囲であり、更により好適には7.0である。
【0156】
かかる緩衝液を用いることにより、凝集体の生成を最小化することができる。なお、(i)の工程で使用される緩衝液は、抗体製造由来の緩衝液を含有していてもよい。
【0157】
(i)の工程は、好適には、キレート剤の存在下で行われる。キレート剤は、抗体の鎖間ジスルフィドの還元の際に使用され得るものであれば特に制限されないが、例えば、エチレンジアミン四酢酸(以下、「EDTA」とも言う)、ジエチレントリアミン五酢酸、又は、グリコールエーテルジアミン四酢酸を用いることができ、好適には、エチレンジアミン四酢酸を用いることができる。
【0158】
キレート剤は、好適には、抗体1分子に対して1~20当量用いることができ、より好適には、抗体1分子に対して3~8当量用いることができ、更により好適には、抗体1分子に対して4~6当量用いることができ、更により好適には、抗体1分子に対して5当量用いることができる。
【0159】
(i)の工程で使用される緩衝液は、界面活性剤を含有していてもよい。本発明において「界面活性剤」とは、親水性基と疎水性基を有し、医薬品製剤の構成成分の一つとして使用され得る物質を示す。このような界面活性剤としては、例えば、ポリソルベート(ポリソルベート80(Tween80)、ポリソルベート20(Tween20)、及びポリソルベート60(Tween60)を含む)、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンヒマシ油、又はラウリル硫酸ナトリウムを挙げることができ、より好適には、ポリソルベート20、又はポリソルベート80を挙げることができる。
【0160】
(i)の工程で使用される緩衝液が界面活性剤を含有するか否か、及び、界面活性剤の種類は、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数、及び抗体の種類に応じて、適宜選択することができる。
【0161】
例えば、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗HER2抗体(好適には、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)である場合、(i)の工程で使用される緩衝液は、好適には界面活性剤を含有しない。
【0162】
また、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗HER3抗体(好適には、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体)である場合、(i)の工程で使用される緩衝液は、ポリソルベート20を含有し、好適に用いることができる。
【0163】
また、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗GPR20抗体(好適には、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体)である場合、(i)の工程で使用される緩衝液は、ポリソルベート80を含有し、好適に用いることができる。
【0164】
また、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗CDH6抗体(好適には、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体)である場合、(i)の工程で使用される緩衝液は、ポリソルベート80を含有し、好適に用いることができる。
【0165】
(i)の工程は、好適には、25~50℃の内温下で行うことができる。
【0166】
製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗HER2抗体(好適には、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)である場合、(i)の工程は、好適には、30~40℃の内温下で行うことができ、より好適には、約35℃の内温下で行うことができる。ここで、「約35℃」とは、好適には、33℃~37℃であり、より好適には、34℃~36℃であり、更により好適には35℃である。
【0167】
製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗HER3抗体(好適には、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体)である場合、(i)の工程は、好適には、30~40℃の内温下で行うことができ、より好適には、約35℃の内温下で行うことができる。ここで、「約35℃」とは、好適には、33℃~37℃であり、より好適には、34℃~36℃であり、更により好適には35℃である。
【0168】
製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗GPR20抗体(好適には、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体)である場合、(i)の工程は、好適には、25~35℃の内温下で行うことができ、より好適には、約30℃の内温下で行うことができる。ここで、「約30℃」とは、好適には、28℃~32℃であり、より好適には、29℃~31℃であり、更により好適には30℃である。
【0169】
製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗CDH6抗体(好適には、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体)である場合、(i)の工程は、好適には、25~35℃の内温下で行うことができ、より好適には、約30℃の内温下で行うことができる。ここで、「約30℃」とは、好適には、28℃~32℃であり、より好適には、29℃~31℃であり、更により好適には30℃である。
【0170】
(i)の工程の反応時間は、好適には、1~4時間である。
【0171】
(ii)の工程で使用される式(2)で表される化合物の抗体1分子あたりの当量は、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数、及び抗体の種類に応じて、適宜選択することができる。
【0172】
例えば、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗HER2抗体(好適には、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)である場合、式(2)で表される化合物は、好適には、抗体1分子に対して8~10当量、より好適には、8.2~9.2当量、更により好適には、約8.7当量用いることができる。ここで、「約8.7当量」とは、好適には、8.5~8.9当量であり、より好適には、8.6~8.8当量であり、更により好適には8.7当量である。
【0173】
また、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗HER3抗体(好適には、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体)である場合、式(2)で表される化合物は、好適には、抗体1分子に対して8~10当量、より好適には、9~10当量、更により好適には、約9.5当量用いることができる。ここで、「約9.5当量」とは、好適には、9.3~9.7当量であり、より好適には、9.4~9.6当量であり、更により好適には9.5当量である。
【0174】
また、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗GPR20抗体(好適には、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体)である場合、式(2)で表される化合物は、好適には、抗体1分子に対して8~10当量、より好適には、8.3~9.3当量、更により好適には、約8.8当量用いることができる。ここで、「約8.8当量」とは、好適には、8.6~9.0当量であり、より好適には、8.7~8.9当量であり、更により好適には8.8当量である。
【0175】
また、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗CDH6抗体(好適には、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体)である場合、式(2)で表される化合物は、好適には、抗体1分子に対して8~10当量、より好適には、8.6~9.6当量、更により好適には、約9.1当量用いることができる。ここで、「約9.1当量」とは、好適には、8.9~9.3当量であり、より好適には、9.0~9.2当量であり、更により好適には9.1当量である。
【0176】
式(2)で表される化合物は、好適には、溶媒に溶解した状態で(i)の工程で得られた反応液に添加することができる。かかる溶媒としては、抗体との結合反応の際に使用され得るものであれば特に制限されないが、好適には、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド水溶液、アセトン、又は、アセトン水溶液を用いることができ、より好適には、ジメチルスルホキシド水溶液を用いることができ、更により好適には、80%ジメチルスルホキシド水溶液を用いることができる。更に、これらの溶媒は、好適には酢酸を含有した状態で用いることができる。該酢酸は、好適には、抗体1分子に対して9~10当量用いることができる。
【0177】
(ii)の工程は、好適には、5~25℃の内温下で行うことができ、より好適には、10~20℃の内温下で行うことができ、更により好適には、約15℃の内温下で行うことができる。ここで、「約15℃」とは、好適には、13℃~17℃であり、より好適には、14℃~16℃であり、更により好適には15℃である。
【0178】
(ii)の工程の反応時間は、好適には0.5~2時間である。
【0179】
(iii)の工程で使用されるチオール基を有する試薬は、(ii)の工程で残存した式(2)で表される化合物と反応させるために用いることができる。言い換えれば、(iii)の工程で使用されるチオール基を有する試薬は、余剰の式(2)で表される化合物をクエンチさせるために用いることができる。
【0180】
(iii)の工程で使用されるチオール基を有する試薬としては、式(2)で表される化合物のマレイミジル基と反応できるものであれば特に制限されないが、例えば、N-アセチルシステイン、及びシステインを用いることができ、好適には、N-アセチルシステインを用いることができる。
【0181】
(iii)の工程で使用されるチオール基を有する試薬は、好適には、抗体1分子に対して10~50当量用いることができ、より好適には、10~30当量用いることができる。
【0182】
(iii)の工程は、好適には、5~25℃の内温下で行うことができ、より好適には、10~20℃の内温下で行うことができ、更により好適には、約15℃の内温下で行うことができる。ここで、「約15℃」とは、好適には、13℃~17℃であり、より好適には、14℃~16℃であり、更により好適には15℃である。
【0183】
(iii)の工程の反応時間は、好適には0.5~2時間である。
【0184】
5.抗体-薬物コンジュゲートの精製
本発明の抗体-薬物コンジュゲートの製造方法は、(i)抗体を、還元剤で還元する工程、
(ii)式(2)
【0185】
【化33】
【0186】
で表される化合物を、(i)の工程で還元された抗体と反応させる工程、次いで、
(iii)チオール基を有する試薬を添加する工程、によって得られた、該抗体-薬物コンジュゲートの未精製物又は粗精製物を含む溶液を、
(iv)強酸と強塩基からなる塩を含有する緩衝液を用いた限外濾過により、式(2)で表される化合物のマレイミジル基に(i)の工程で使用される還元剤が付加した化合物、及び、式(2)で表される化合物のマレイミジル基に(iii)の工程で使用されるチオール基を有する試薬が付加した化合物を除去する工程
により精製することを特徴とする。
【0187】
本発明において「抗体-薬物コンジュゲートの未精製物又は粗精製物」とは、(i)~(iii)の工程を行った直後の未精製の状態の抗体-薬物コンジュゲート、又は、クロマトグラフィー以外の操作(例えば、限外濾過以外の簡易な濾過)で粗精製した状態の抗体-薬物コンジュゲートを意味する。限外濾過以外の簡易な濾過としては、例えば精密濾過(メンブランフィルター濾過)を挙げることができる。
【0188】
また、上記「抗体-薬物コンジュゲートの未精製物又は粗精製物」は、(iv)の工程で使用される緩衝液が適切なpHとなるよう、pH調整されたものであっても良い。かかるpH調整は、好適には酢酸水溶液を用いて行うことができ、より好適には10%酢酸水溶液を用いて行うことができる。
【0189】
本発明において「限外濾過」とは、約0.001μmから約0.05μmの範囲の細孔径をもつ膜(限外濾過膜)を通して濾過することにより、大きな溶質分子と小さい溶質分子とを、又は溶質分子と溶媒分子とを分別する精製方法を意味する。限外濾過膜は一般に1kDa~1000kDaの範囲の分子量のカットオフ(MWCO)を有する。MWCOは、一般にその膜により90%保持される球状の溶質の分子量として定義される。本発明の限外濾過は、好適にはMWCOが1kDa~100kDaの限外濾過膜を用いて行うことができ、より好適には30kDaの限外濾過膜を用いて行うことができる。また、限外濾過膜の材質としては、例えば、再生セルロース、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ナイロン、及びセラミックを挙げることができる。本発明の限外濾過は、好適には、再生セルロースを材質とする限外濾過膜を用いて行うことができるが、これに限定されない。本発明で用いる限外濾過膜の例としては、Pellicon(登録商標)XL Cassette Ultracel(登録商標)(メルク社製)、Pellicon(登録商標)2 Ultracel(登録商標)(メルク社製)、及びPellicon(登録商標)3 Ultracel(登録商標)(メルク社製)を挙げることができる。なお、限外濾過は、狭義では圧力操作又は遠心操作によって強制的に濾過する方法を意味する場合もあり、一方で、受動拡散によって濾過する方法は一般的に「透析濾過」と呼ばれる場合もあるが、限外濾過膜を使用する方法であれば、いずれの場合も本発明における「限外濾過」に含まれる。
【0190】
本発明において、「凝集体」とは、広範囲のpH及び電気伝導率の条件下で安定し得る、蛋白質分子の会合物とその他の任意の成分からなる微粒子のことを意味する。抗体-薬物コンジュゲート製剤における凝集体の形成は、該製剤の投与を受ける患者に免疫原性や静脈障害を与える要因になリ得る等、医療上、望ましくいない影響を及ぼし得る。従って、抗体-薬物コンジュゲートの製剤化にあたっては、凝集体の形成を抑制することが求められている。
【0191】
(i)の工程で使用される還元剤がトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩である場合、式(2)で表される化合物のマレイミジル基に(i)の工程で使用される還元剤が付加した化合物は、式(3)
【0192】
【化34】
【0193】
で表される化合物である。
【0194】
(iii)の工程で使用されるチオール基を有する試薬がN-アセチルシステインである場合、式(2)で表される化合物のマレイミジル基に(iii)の工程で使用されるチオール基を有する試薬が付加した化合物は、式(4)
【0195】
【化35】
【0196】
で表される化合物である。
【0197】
式(3)で表される化合物、及び、式(4)で表される化合物は、(iv)の工程を行うことにより、(iv)の工程を行う前と比較し、好適には、97%除去することができ、より好適には、98%除去することができ、更により好適には99%除去することができ、更により好適には100%除去することができる。
【0198】
(iv)の工程で使用される緩衝液のpHは、約5である。ここで、「約5」とは、好適には、4.7~5.3の範囲であり、より好適には、4.8~5.2の範囲であり、更により好適には、4.9~5.1の範囲であり、更により好適には5.0である。かかるpHで限外濾過を行なうことにより、凝集体の生成を抑制することができる。本工程後の凝集体量は、好適には4%以下であり、より好適には2%以下である。なお、凝集体は、原料の抗体自体にも一定程度含まれており、本工程における凝集体量は、それらも含めた合計量として検出される。
【0199】
(iv)の工程で使用される緩衝液は、例えば、強酸と強塩基からなる塩を含有するヒスチジン緩衝液、強酸と強塩基からなる塩を含有する酢酸緩衝液、又は強酸と強塩基からなる塩を含有するリン酸緩衝液を挙げることができ、好適には、強酸と強塩基からなる塩を含有するヒスチジン緩衝液を挙げることができる。
【0200】
強酸と強塩基からなる塩の濃度は、(iv)の工程で使用される緩衝液に対し、好適には、0.2~1重量%であり、より好適には、0.3~0.9重量%であり、更により好適には、0.3~0.8重量%であり、更により好適には、0.4~0.7重量%であり、更により好適には、約0.5重量%である。ここで、「約0.5重量%」とは、好適には、0.4~0.6重量%であり、更により好適には、0.5重量%である。
【0201】
(iv)の工程で使用される緩衝液に含まれる強酸と強塩基からなる塩は、本発明の効果を示す限りにおいて特に制限されないが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、及び硫酸カリウムからなる群より選択される少なくともいずれか一つの塩、又は二種類以上の組み合わせの塩であり、好適には、塩化ナトリウムである。
【0202】
本発明の製造方法は、好適には、(iv)の工程に次いで、(v)緩衝液を用いた限外濾過により、強酸と強塩基からなる塩を除去する工程、を含む。
【0203】
(v)の工程で使用される緩衝液のpHは、本発明の効果を示す限りにおいて特に制限されないが、例えば、4~6の範囲であり、好適には、約5である。ここで、「約5」とは、好適には、4.7~5.3の範囲であり、更により好適には、4.8~5.2の範囲であり、更により好適には、4.9~5.1の範囲であり、更により好適には5.0である。
【0204】
(v)の工程で使用される緩衝液としては、本発明の効果を示す限りにおいて特に制限されないが、好適には、ヒスチジン緩衝液を用いることができる。このヒスチジン緩衝液は、強酸と強塩基からなる塩を実質的に含有しない。
【0205】
以上の方法によれば、限外濾過によって、式(2)で表される化合物由来の副生成物を除去することができ、さらに、凝集体の生成も最小化できるため、クロマトグラフィー(例えば、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、及びアフィニティークロマトグラフィーからなる群より選択される少なくとも一つ)による精製が不要な工業的に優れた精製方法を提供することができる。
【0206】
6.抗体-薬物コンジュゲートの平均薬物結合数の算出
製造した抗体-薬物コンジュゲートの抗体一分子あたりの平均薬物結合数の算出は、例えば、280nm及び370nmの二波長における抗体-薬物コンジュゲートとそのコンジュゲーション前駆体のUV吸光度を測定することにより算出する方法(UV法)や、抗体-薬物コンジュゲートを還元剤で処理し得られた各フラグメントをHPLC測定により定量し算出する方法(HPLC法)により行うことができる。
【0207】
抗体-薬物コンジュゲートの抗体一分子あたりの平均薬物結合数の算出は、国際公開第2014/057687号、国際公開第2015/098099号、国際公開第2015/115091号、国際公開第2015/155998号、国際公開第2018/135501号、及び国際公開第2018/212136号等の記載を参考に実施することができる。
【0208】
HPLC法は、例えば、以下の方法により行うことができる。
(1)HPLC分析用サンプルの調製(抗体-薬物コンジュゲートの還元)
抗体-薬物コンジュゲート溶液(約1mg/mL、60μL)をジチオトレイトール(DTT)水溶液(100mM、15μL)と混合する。混合物を37℃で30分インキュベートすることで、抗体-薬物コンジュゲートの鎖間のジスルフィドを切断したサンプルを、HPLC分析に用いる。
(2)HPLC分析
HPLC分析は、各抗体の性質に応じた測定条件にて行うことができる。
【0209】
例えば、抗体が、抗HER2抗体(配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)、又は抗HER3抗体(配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)である場合、HPLC分析を、下記の測定条件にて行うことができる。
【0210】
HPLCシステム:Agilent 1290 HPLCシステム(Agilent Technologies)
検出器:紫外吸光度計(測定波長:280nm)
カラム:PLRP-S(2.1×50mm、8μm、1000Å;Agilent Technologies、P/N PL1912-1802)
カラム温度:80℃
移動相A:0.04%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液
移動相B:0.04%TFAを含むアセトニトリル溶液
グラジエントプログラム:29%-36%(0分-12.5分)、36%-42%(12.5-15分)、42%-29%(15分-15.1分)、29%-29%(15.1分-25分)
サンプル注入量:15μL
また、抗体が、抗GPR20抗体(配列番号5においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)、又は抗CDH6抗体(配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)である場合、HPLC分析を、下記の測定条件にて行うことができる。
【0211】
HPLCシステム:Agilent 1290 HPLCシステム(Agilent Technologies)
検出器:紫外吸光度計(測定波長:280nm)
カラム:ACQUITY UPLC BEH Phenyl(2.1×50mm、1.7μm、130Å;Waters、P/N 186002884)
カラム温度:80℃
移動相A:0.10%トリフルオロ酢酸(TFA)、15%2-プロパノールを含む水溶液
移動相B:0.075%TFA、15%2-プロパノールを含むアセトニトリル溶液
グラジエントプログラム:14%-36%(0分-15分)、36%-80%(15分-17分)、80%-14%(17分―17.01分)、14%(17.01分―25分)
サンプル注入量:10μL
(3)データ解析
薬物の結合していない抗体の軽鎖(L)および重鎖(H)に対して、薬物の結合した軽鎖(薬物が一つ結合した軽鎖:L)および重鎖(薬物が一つ結合した重鎖:H、薬物が二つ結合した重鎖:H、薬物が三つ結合した重鎖:H)は、結合した薬物の数に比例して疎水性が増し保持時間が大きくなることから、L、L、H、H、H、Hの順に溶出される。LおよびHとの保持時間比較により検出ピークをL、L、H、H、H、Hのいずれかに割り当てることができる。
【0212】
薬物リンカーにUV吸収があるため、薬物リンカーの結合数に応じて、軽鎖、重鎖および薬物リンカーのモル吸光係数を用いて下式に従ってピーク面積値の補正を行う。
【0213】
【数1】
【0214】
【数2】
【0215】
ここで、各抗体における軽鎖および重鎖のモル吸光係数(280nm)は、既知の計算方法(Protein Science, 1995, vol.4, 2411-2423)によって、各抗体の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列から推定される値を用いることができる。
【0216】
例えば、抗体が、抗HER2抗体(配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)である場合、軽鎖のモル吸光係数として26150を、重鎖のモル吸光係数として81290を推定値として用いることができる。
【0217】
また、抗体が、抗HER3抗体(配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)である場合、軽鎖のモル吸光係数として34690を、重鎖のモル吸光係数として95000を推定値として用いることができる。
【0218】
また、抗体が、抗GPR20抗体(配列番号5においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)である場合、軽鎖のモル吸光係数として26210を、重鎖のモル吸光係数として68990を推定値として用いることができる。
【0219】
また、抗体が、抗CDH6抗体(配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)である場合、軽鎖のモル吸光係数として31710を、重鎖のモル吸光係数として79990を推定値として用いることができる。
【0220】
薬物リンカーのモル吸光係数(280nm)は、各薬物リンカー中間体をメルカプトエタノールまたはN-アセチルシステインで反応させ、マレイミジル基をサクシニイミドチオエーテルに変換した化合物の実測のモル吸光係数(280nm)を用いることができる。
【0221】
ピーク面積補正値合計に対する各鎖ピーク面積比(%)を下式に従って計算する。
【0222】
【数3】
【0223】
抗体-薬物コンジュゲートにおける平均薬物結合数を、下式に従って計算する。
【0224】
平均薬物結合数=(Lピーク面積比×0+Lピーク面積比×1+Hピーク面積比×0+Hピーク面積比×1+Hピーク面積比×2+Hピーク面積比×3)/100×2
本発明において、「抗HER2抗体-薬物コンジュゲート」とは、本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗HER2抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0225】
抗HER2抗体は、好適には、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である。
【0226】
抗HER2抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数は、好適には7から8であり、更により好適には7.5から8であり、更により好適には約8である。
【0227】
本発明において、「抗HER3抗体-薬物コンジュゲート」とは、本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗HER3抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0228】
抗HER3抗体は、好適には、配列番号3においてアミノ酸番号26乃至35に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号3においてアミノ酸番号50乃至65に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号3においてアミノ酸番号98乃至106に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号4においてアミノ酸番号24乃至39に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号4においてアミノ酸番号56乃至62に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号4においてアミノ酸番号95乃至103に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖、を含む抗体であり、
より好適には、配列番号3においてアミノ酸番号1乃至117に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖、及び配列番号4においてアミノ酸番号1乃至113に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖、を含む抗体であり、
更により好適には、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である。
【0229】
抗HER3抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数は、好適には7から8であり、更により好適には7.5から8であり、更により好適には約8である。
【0230】
本発明において、「抗GPR20抗体-薬物コンジュゲート」とは、本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗GPR20抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0231】
抗GPR20抗体は、好適には、配列番号5においてアミノ酸番号45乃至54に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号5においてアミノ酸番号69乃至78に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号5においてアミノ酸番号118乃至131に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号6においてアミノ酸番号44乃至54に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号6においてアミノ酸番号70乃至76に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号6においてアミノ酸番号109乃至117に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖、を含む抗体であり、
より好適には、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至142に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖、及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至129に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖、を含む抗体であり、
更により好適には、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である。
【0232】
抗GPR20抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から8であり、更により好適には7から8であり、更により好適には7.5から8であり、更により好適には約8である。
【0233】
本発明において、「抗CDH6抗体-薬物コンジュゲート」とは、本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗CDH6抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0234】
抗CDH6抗体は、好適には、配列番号7においてアミノ酸番号45乃至54に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号7においてアミノ酸番号69乃至78に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列番号7においてアミノ酸番号118乃至130に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖、並びに、配列番号8においてアミノ酸番号44乃至54に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号8においてアミノ酸番号70乃至76に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列番号8においてアミノ酸番号109乃至116に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖、を含む抗体であり、
より好適には、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至141に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖、及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至128に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖、を含む抗体であり、
更により好適には、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である。
【0235】
抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から8であり、更により好適には7から8であり、更により好適には7.5から8であり、更により好適には約8である。
【0236】
7.医薬組成物の製造
本発明にかかる医薬組成物は、本発明にかかる抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、及び賦形剤を含む医薬組成物である。
【0237】
かかる医薬組成物は、上述の方法により製造(精製を含む)した、抗体-薬物コンジュゲートを、さらに、
(vi)抗体-薬物コンジュゲート含む溶液に緩衝液を添加する工程、
(vii)抗体-薬物コンジュゲート含む溶液を濃縮する工程、及び、
(viii)抗体-薬物コンジュゲート含む溶液を所定のpHに調整する工程、
からなる群より選択される少なくとも一つの工程、
並びに、
(ix)抗体-薬物コンジュゲート含む溶液に賦形剤を添加する工程、
を含む工程を施すことにより、製造することができる。
【0238】
(vi)の工程で添加される緩衝液は、好適には、(v)の工程で用いられる緩衝液と同一である。従って、(vi)の工程で用いられる緩衝液としては、好適には、ヒスチジン緩衝液を用いることができる。
【0239】
(viii)の工程で行われるpHの調整は、(vi)の工程で用いられる緩衝液がヒスチジン緩衝液である場合、好適には、ヒスチジン水溶液を用いて行うことができる。
【0240】
本発明において「賦形剤」とは、医薬品の成形、取扱い、及び服薬における利便性の向上等のために、一定の大きさや濃度にする目的で添加される物質を示す。このような賦形剤としては、本発明の効果を示す限りにおいて特に制限されないが、例えば、スクロース、トレハロース、ソルビトールを挙げることができる。
【0241】
(ix)の工程で添加される賦形剤としては、好適には、スクロースを用いることができる。
【0242】
さらに、本発明にかかる医薬組成物は、好適には、さらに界面活性剤を含む。すなわち、本発明にかかる医薬組成物は、より好適には、抗体-薬物コンジュゲート、緩衝液、賦形剤、及び界面活性剤を含む医薬組成物である。
【0243】
かかる医薬組成物は、上述の(ix)の工程の後、さらに、(x)界面活性剤を添加する工程、を含む工程を施すことにより、製造することができる。
【0244】
(x)の工程で添加される界面活性剤としては、好適には、ポリソルベート80、又はポリソルベート20を用いることができる。
【0245】
医薬組成物における、緩衝液、賦形剤、界面活性剤、及び、抗体-薬物コンジュゲートの濃度、並びに、医薬組成物のpHは、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数、及び抗体の種類に応じて、適宜選択することができる。
【0246】
例えば、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗HER2抗体(好適には、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)である場合、医薬組成物における、緩衝液、賦形剤、及び界面活性剤としては、好適には、ヒスチジン緩衝液(好適には25mMヒスチジン緩衝液)、スクロース(好適には9%スクロース)、及びポリソルベート80(好適には0.03%ポリソルベート80)を用いることができ、医薬組成物における抗体-薬物コンジュゲートの濃度は、好適には、20mg/mLであり、医薬組成物のpHは、好適には、5.5である。
【0247】
また、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗HER3抗体(好適には、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体)である場合、医薬組成物における、緩衝液、賦形剤、及び界面活性剤としては、好適には、ヒスチジン緩衝液(好適には25mMヒスチジン緩衝液)、スクロース(好適には9%スクロース)、及びポリソルベート20(好適には0.03%ポリソルベート20)を用いることができ、医薬組成物における抗体-薬物コンジュゲートの濃度は、好適には、20mg/mLであり、医薬組成物のpHは、好適には、5.4である。
【0248】
また、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗GPR20抗体(好適には、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体)である場合、医薬組成物における、緩衝液、賦形剤、及び界面活性剤としては、好適には、ヒスチジン緩衝液(好適には10mMヒスチジン緩衝液)、スクロース(好適には9%スクロース)、及びポリソルベート80(好適には0.03%ポリソルベート80)を用いることができ、医薬組成物における抗体-薬物コンジュゲートの濃度は、好適には、20mg/mLであり、医薬組成物のpHは、好適には、5.4である。
【0249】
また、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗CDH6抗体(好適には、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体)である場合、医薬組成物における、緩衝液、賦形剤、及び界面活性剤としては、好適には、ヒスチジン緩衝液(好適には10mMヒスチジン緩衝液)、スクロース(好適には9%スクロース)、及びポリソルベート80(好適には0.03%ポリソルベート80)を用いることができ、医薬組成物における抗体-薬物コンジュゲートの濃度は、好適には、20mg/mLであり、医薬組成物のpHは、好適には、5.4である。
【0250】
8.医薬組成物の使用
本発明の医薬組成物は、患者に対しては全身療法として適用する他、がん組織に局所的に適用して治療効果を期待することができる。
【0251】
本発明の医薬組成物は、哺乳動物に対して好適に使用することができるが、より好適にはヒトに対して使用することができる。
【0252】
本発明の医薬組成物を投与するために使用され得る導入経路としては、例えば、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、及び腹腔内の経路を挙げることができるが、好適には、静脈内である。
【0253】
本発明の医薬組成物が水性注射剤である場合、好適には、適切な希釈液で希釈した後、静脈内に点滴投与することができる。希釈液としては、ブドウ糖溶液や、生理食塩液、等を挙げることができ、好適には、ブドウ糖溶液を挙げることができ、より好適には5%ブドウ糖溶液を挙げることができる。
【0254】
本発明の医薬組成物が凍結乾燥注射剤である場合、好適には、注射用水により溶解した後、必要量を適切な希釈液で希釈した後、静脈内に点滴投与することができる。希釈液としては、ブドウ糖溶液や、生理食塩液、等を挙げることができ、好適には、ブドウ糖溶液を挙げることができ、より好適には5%ブドウ糖溶液を挙げることができる。
【0255】
本発明の医薬組成物は、本発明の抗体-薬物コンジュゲートの抗原に対する親和性、すなわち、抗原に対する解離定数(Kd値)の点において、親和性が高い(Kd値が低い)ほど、少量の投与量であっても薬効を発揮させことができる。したがって、本発明の医薬組成物の投与量は、抗原との親和性の状況に基づいて設定することもできる。本発明の医薬組成物をヒトに対して投与する際には、例えば、抗体-薬物コンジュゲートとして、約0.001~100mg/kg(ここで、「mg/kg」とは、ヒトの体重1kgあたりの抗体-薬物コンジュゲートの投与量を意味する)を1回或は1~180日間に1回の間隔で複数回投与すればよいが、好適には、0.8mg/kg~8mg/kgを3週に1回投与する方法を挙げることができる。
【0256】
抗体-薬物コンジュゲートの投与量及び投与間隔は、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数、及び抗体の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗HER2抗体(好適には、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)である場合、好適には、0.8mg/kg、1.6mg/kg、3.2mg/kg、5.4mg/kg、6.4mg/kg、7.4mg/kg、又は8mg/kgの抗体-薬物コンジュゲートを3週に1回投与する方法を挙げることができ、より好適には、5.4mg/kg、6.4mg/kg、7.4mg/kg、又は8mg/kgの抗体-薬物コンジュゲートを3週に1回投与する方法を挙げることができ、更により好適には、5.4mg/kg、又は6.4mg/kgの抗体-薬物コンジュゲートを3週に1回投与する方法を挙げることができる。また、製造する抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲であり、抗体が、抗HER3抗体(好適には、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体)である場合、好適には、1.6mg/kg、3.2mg/kg、4.8mg/kg、5.6mg/kg、6.4mg/kg、8.0mg/kg、9.6mg/kg、又は12.8mg/kgの抗体-薬物コンジュゲートを3週に1回投与する方法を挙げることができ、より好適には、4.8mg/kg、5.6mg/kg、又は6.4mg/kgの抗体-薬物コンジュゲートを3週に1回投与する方法を挙げることができる。
【0257】
本発明の医薬組成物は、がんの治療のために使用することができ、好適には、乳がん、胃がん(胃腺がんと呼ぶこともある)、大腸がん(結腸直腸がんと呼ぶこともあり、結腸がん及び直腸がんを含む)、肺がん(小細胞肺がん及び非小細胞肺がんを含む)、食道がん、頭頚部がん(唾液腺がん及び咽頭がんを含む)、胃食道接合部腺がん、胆道がん(胆管がんを含む)、ページェット病、膵臓がん、卵巣がん、子宮がん肉腫、尿路上皮がん、前立腺がん、膀胱がん、消化管間質腫瘍、子宮頸がん、扁平上皮がん、腹膜がん、肝臓がん、肝細胞がん、子宮体がん、腎臓がん、外陰部がん、甲状腺がん、陰茎がん、白血病、悪性リンパ腫、形質細胞腫、骨髄腫、多型神経膠芽腫、骨肉腫、及びメラノーマからなる群より選択される少なくとも一つのがんの治療のために使用することができる。
【0258】
本発明の医薬組成物は、がん治療の主要な治療法である薬物療法のための薬剤として選択して使用することができ、その結果として、がん細胞の成長を遅らせ、増殖を抑え、さらにはがん細胞を破壊することができる。これらの作用によって、がん患者において、がんによる症状からの解放や、QOLの改善を達成でき、がん患者の生命を保って治療効果が達成される。がん細胞の破壊には至らない場合であっても、がん細胞の増殖の抑制やコントロールによってがん患者においてより高いQOLを達成しつつより長期の生存を達成させることができる。
【0259】
このような薬物療法においての薬物単独での使用の他、本発明の医薬組成物は、アジュバント療法において他の療法と組み合わせて使用することもでき、外科手術や、放射線療法、ホルモン療法等と組み合わせることができる。さらにはネオアジュバント療法における薬物療法として使用することもできる。
【0260】
以上のような治療的使用の他、本発明の医薬組成物は、微細な転移がん細胞の増殖を押さえ、さらには破壊するといった予防効果も期待することができる。例えば、転移過程で体液中にあるがん細胞を抑制し破壊する効果や、いずれかの組織に着床した直後の微細ながん細胞に対する抑制、破壊等の効果が期待できる。したがって、特に外科的ながんの除去後においてのがん転移の抑制、予防効果が期待できる。
【0261】
本発明の医薬組成物は、他のがん治療剤と併用して投与することもでき、これによって抗腫瘍効果を増強させることができる。この様な目的で使用される他のがん治療剤は、本発明の医薬組成物と同時に、別々に、或は連続して個体に投与されてもよいし、それぞれの投与間隔を変えて投与されてもよい。この様ながん治療剤としては、抗腫瘍活性を有する薬剤であれば限定されることはないが、例えば、イリノテカン(Irinotecan、CPT-11)、シスプラチン(Cisplatin)、カルボプラチン(Carboplatin)、オキサリプラチン(Oxaliplatin)、フルオロウラシル(Fluorouracil、5-FU)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、カペシタビン(Capecitabine)、パクリタキセル(Paclitaxel)、ドセタキセル(Docetaxel)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、エピルビシン(Epirubicin)、シクロフォスファミド(Cyclophosphamide)、マイトマイシンC(Mitomycin C)、テガフール(Tegafur)・ギメラシル(Gimeracil)・オテラシル(Oteracil)配合剤、セツキシマブ(Cetuximab)、パニツムマブ(Panitumumab)、ベバシズマブ(Bevacizumab)、ラムシルマブ(Ramucirumab)、レゴラフェニブ(Regorafenib)、トリフルリジン(Trifluridine)・チピラシル(Tipiracil)配合剤、ゲフィチニブ(Gefitinib)、エルロチニブ(Erlotinib)、アファチニブ(Afatinib)、メトトレキサート(Methotrexate)、ペメトレキセド(Pemetrexed)、トラスツズマブエムタンシン(Trastuzumab emtansin)、トラスツズマブ(Trastuzumab)、ペルツズマブ(Pertuzumab)、タモキシフェン(Tamoxifen)、トレミフェン(Toremifene)、フルベストラント(Fulvestrant)、リュープロレリン(Leuprorelin)、ゴセレリン(Goserelin)、レトロゾール(Letrozole)、アナストロゾール(Anastrozole)、及びプロゲステロン製剤(Progesterone formulation)からなる群より選択される少なくとも一つを挙げることができる。
【実施例0262】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0263】
[実施例1]緩衝液の検討
抗HER2抗体(配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)を含む溶液を各種の緩衝液(10mM酢酸緩衝液、10mMリン酸緩衝液、又は20mM PIPES緩衝液)にて希釈し、0.5mol/LのEDTA水溶液を加えた後、各種の弱アルカリ性水溶液(0.3mol/Lのリン酸水素二ナトリウム水溶液(以下、「aq.NaHPO」とも呼ぶ)、飽和酢酸ナトリウム水溶液(以下、「aq.CHCOONa」とも呼ぶ)、又は0.5mol/Lの炭酸水素ナトリウム水溶液(以下、「aq.NaHCO」とも呼ぶ)を加え、pH7に調整した。37℃攪拌下で、抗体一分子に対し4.8当量又は4.9当量のトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(以下、「TCEP」とも呼ぶ)水溶液(1mg/mL)を加え攪拌し、抗体の鎖間ジスルフィドを還元した。
【0264】
得られた反応液を内温15℃又は25℃にて攪拌しながら、抗体に一分子に対して9.2当量又は9.8当量の式(2)
【0265】
【化36】
【0266】
で表される化合物(化合物(2)とも呼ぶ)を80%ジメチルスルホキシド水溶液に溶解させた状態で加え、抗体へ結合させた。次に、50mmol/LのN-アセチルシステイン水溶液を加え、余剰の化合物(2)をクエンチさせた。これにより、式
【0267】
【化37】
【0268】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗HER2抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗HER2抗体-薬物コンジュゲートを得た。
得られた抗HER2抗体-薬物コンジュゲートのDARをHPLC法にて測定した。また、凝集体の含有率をSECにて測定した。
【0269】
結果を表1に示す。
【0270】
【表1】
【0271】
表1の結果の中では、リン酸水素二ナトリウム水溶液でpH調整された酢酸緩衝液を用いた場合が、凝集体の含有率は最も低い値を示した。
【0272】
[実施例2]限外濾過工程の検討(1)
抗HER2抗体(配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)を含む溶液を10mM酢酸緩衝液(pH5.5)にて希釈し、0.5mol/LのEDTA水溶液(抗体一分子に対し5当量)を加えた後、0.3mol/Lのリン酸水素二ナトリウム水溶液を加え、pH7.4に調整した。
【0273】
35~39℃攪拌下で、0.010mol/Lのトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩水溶液(抗体一分子に対し6当量)を加え内温35~39℃で2.5時間攪拌し、抗体の鎖間ジスルフィドを還元した。
【0274】
得られた反応液を内温13~17℃にて攪拌しながら、化合物(2)(抗体一分子対して12.5当量)を80%ジメチルスルホキシド水溶液に溶解させた状態で加え、抗体へ結合させた。次に、0.1mol/LのN-アセチルシステイン水溶液(抗体一分子に対して35当量)を加え、さらに同温度にて1時間撹拌し、余剰の化合物(2)をクエンチさせたのち、10%酢酸水溶液を用いて、反応液をpH5.0に調整した。これにより、式
【0275】
【化38】
【0276】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗HER2抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗HER2抗体-薬物コンジュゲートを含む反応液を得た。
【0277】
得られた反応液を、限外濾過膜であるPellicon(登録商標)XL Cassette Ultracel(登録商標)(メルク社製)を用い、ローラーポンプにて、26mMヒスチジン緩衝液(pH5.0)、又は0.5%塩化ナトリウム含有26mMヒスチジン緩衝液(pH5.0)を加えながら循環させ、限外濾過を行った。26mMヒスチジン緩衝液(pH5.0)、及び0.5%塩化ナトリウム含有26mMヒスチジン緩衝液(pH5.0)は、それぞれ、得られた反応液に対して、5倍、10倍、又は15倍の量を用い、限外濾過後の化合物(2)由来の副生成物の抗体-薬物コンジュゲートに対する含有率を測定した。また、比較として、限外濾過を行わない場合の、化合物(2)由来の副生成物の含有率を測定した(かかる場合、用いた緩衝液量を0として表した)。
【0278】
ここで、化合物(2)由来の副生成物としては、化合物(2)のマレイミジル基にトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンが付加した化合物、すなわち、
式(3)
【0279】
【化39】
【0280】
で表される化合物(化合物(3)とも呼ぶ。)、及び、化合物(2)のマレイミジル基にN-アセチルシステインが付加した化合物、すなわち、
式(4)
【0281】
【化40】
【0282】
で表される化合物(化合物(4)とも呼ぶ。)を挙げることができる。化合物(2)由来の副生成物の含有率の測定は、化合物(3)及び化合物(4)それぞれの抗体-薬物コンジュゲートに対する含有率をHPLC法にて測定することにより行った。結果を表2及び図1に示す。
【0283】
【表2】
【0284】
表2の結果では、同じ緩衝液量/反応液量で比較した場合、ヒスチジン緩衝液を用いた場合よりも、塩化ナトリウム含有ヒスチジン緩衝液を用いた場合のほうが、化合物(3)及び化合物(4)の含有率は低い値を示した。
【0285】
[実施例3]限外濾過工程の検討(2)
抗HER2抗体(配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)を含む溶液を10mM酢酸緩衝液にて希釈し、0.5mol/LのEDTA水溶液を加えた後、0.3mol/Lのリン酸水素二ナトリウム水溶液を加え、pH7.3に調整した。1mg/mLのトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩水溶液を加え攪拌し、抗体の鎖間ジスルフィドを還元した。
【0286】
得られた反応液に、化合物(2)を80%ジメチルスルホキシド水溶液に溶解させた状態で加え、抗体へ結合させた。次に、50mmol/LのN-アセチルシステイン水溶液を加え、余剰の化合物(2)をクエンチさせた。これにより、式
【0287】
【化41】
【0288】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗HER2抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗HER2抗体-薬物コンジュゲートを含む反応溶液を得た。
【0289】
得られた反応溶液を、Pellicon(登録商標)XL Cassette Ultracel(登録商標)(メルク社製)を用い、ローラーポンプにて、ヒスチジン緩衝液(pH5.0、若しくはpH5.8)、又は0.4%塩化ナトリウム含有ヒスチジン緩衝液(pH5.0、若しくはpH5.8)を加えながら循環させ、限外濾過を行った。なお、ヒスチジン緩衝液の濃度は、いずれも10.8mMのものを用いた。また、ヒスチジン緩衝液(pH5.0及びpH5.8)は、それぞれ、得られた反応溶液に対して、15倍の量を用いた。0.4%塩化ナトリウム含有ヒスチジン緩衝液(pH5.0及びpH5.8)は、それぞれ、得られた反応溶液に対して、10倍の量を用いた。限外濾過後の凝集体の含有率をSECにて測定した。また、比較として、限外濾過を行わない場合の、凝集体の含有率を測定した(かかる場合、用いた緩衝液量を0として表した)。結果を表3及び図2に示す。
【0290】
【表3】
【0291】
表3の結果では、pH5.8の緩衝液を用いて限外濾過を行った場合、ヒスチジン緩衝液を用いた場合よりも、塩化ナトリウム含有ヒスチジン緩衝液を用いた場合のほうが凝集体の含有率は高い値を示した。一方、pH5.0の緩衝液を用いて限外濾過を行った場合、ヒスチジン緩衝液を用いた場合であっても、塩化ナトリウム含有ヒスチジン緩衝液を用いた場合であっても、凝集体の含有率は同程度の値を示した。
【0292】
[実施例4]抗HER2抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物の製造(1)
抗HER2抗体(配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)を含む溶液(液重量5.4kg:抗体120g相当)をガラス反応容器に入れ、更に、0.01mol/L 酢酸緩衝液(4.3L、pH5.5)を加えた。本溶液に、0.5mol/L EDTA水溶液(8.3mL;抗体に対し5当量)を加えたのち、0.3mol/Lリン酸水素二ナトリウム水溶液を加えpH7.3に調整した。35~39℃攪拌下で、0.010mol/L トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩水溶液(390mL;抗体一分子に対して4.7当量)を加え、内温を35~39℃で2時間攪拌し、抗体の鎖間ジスルフィドを還元した。
【0293】
得られた反応液を冷却し、内温13~17℃にて、攪拌下、化合物(2)(8.2g;抗体に一分子対して9.7当量)を80%ジメチルスルホキシド水溶液(900mL)にて溶解させたものを20分かけて加え、同温度にて1時間撹拌し、抗体へ結合させた。次に、0.1mol/L N-アセチルシステイン水溶液(210mL;抗体一分子に対して25当量)を加え、さらに同温度にて1時間撹拌し、余剰の化合物(2)をクエンチさせたのち、10%酢酸水溶液を用いて、pH5.0に調整した。これにより、式
【0294】
【化42】
【0295】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗HER2抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗HER2抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液を得た。
【0296】
得られた溶液を、Pellicon(登録商標)2 Mini Cassette Ultracel(登録商標)(メルク社製、0.1m)3枚を用い、ローラーポンプにて、0.5%塩化ナトリウム含有26mMヒスチジン緩衝液(pH5.0)を加えながら循環させることにより限外濾過を行い、化合物(2)由来の副生成物を除去した。さらに、26mMヒスチジン緩衝液(pH5.0)を加えながら循環させることに限外濾過を行い、塩化ナトリウムを除去した。次に、ヒスチジン水溶液にてpH5.5に調整し、さらに濃縮を行うことで、抗HER2抗体-薬物コンジュゲートを含有する溶液を約4L取得した。
【0297】
さらに、上記の溶液のうち3.86kg分に対し、スクロース364gを添加し溶解させた。さらに9%スクロース含有ヒスチジン緩衝液(pH5.5)を加え、タンパク質濃度を約20mg/mLに調整し、抗HER2抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物(5.7kg)を得た。得られた医薬組成物は、タンパク質濃度:20.4mg/mL、タンパク質収量:112g、抗体一分子あたりの平均薬物結合数(n):7.7であった。
【0298】
[実施例5]抗HER2抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物の製造(2)
抗HER2抗体(配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)を含む溶液(液重量89g:抗体2.0g相当)をガラス反応容器に入れ、更に、0.01mol/L 酢酸緩衝液(72mL、pH5.5)を加えた。本溶液に、0.5mol/L EDTA水溶液(0.14mL;抗体に対し5当量)を加えたのち、0.3mol/Lリン酸水素二ナトリウム水溶液を加えpH7.3に調整した。35~39℃攪拌下で、0.010mol/L トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩水溶液(6.3mL;抗体一分子に対して4.6当量)を加え、内温を35~39℃で2時間攪拌し、抗体の鎖間ジスルフィドを還元した。
【0299】
得られた反応液を冷却し、内温13~17℃にて攪拌下、化合物(2)(140mg;抗体に一分子対して9.6当量)を80%ジメチルスルホキシド水溶液(13mL)にて溶解させたものを添加し、同温度にて1時間撹拌し、抗体へ結合させた。次に、0.1mol/L N-アセチルシステイン水溶液(3.4mL;抗体一分子に対して25当量)を加え、さらに同温度にて40分撹拌し、余剰の化合物(2)をクエンチさせたのち、10%酢酸水溶液を用いて、pH5.0に調整した。これにより、式
【0300】
【化43】
【0301】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗HER2抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗HER2抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液を得た。
【0302】
得られた溶液に塩化ナトリウム1gを添加した後、Pellicon(登録商標)XL Ultracel(登録商標)(メルク社製、50cm)を用い、ローラーポンプにて、0.5%塩化ナトリウム含有26mMヒスチジン緩衝液(pH5.0)を加えながら循環させることにより限外濾過を行い、化合物(2)由来の副生成物を除去した。さらに、26mMヒスチジン緩衝液(pH5.0)を加えながら循環させることにより限外濾過を行い、塩化ナトリウムを除去した。次に、ヒスチジン水溶液にてpH5.5に調整しながら濃縮を行うことで、抗HER2抗体-薬物コンジュゲートを含有する溶液を約65g(64.5g、64.1mL、タンパク質濃度:28.5mg/mL、タンパク質収量:1.83g)取得した。
【0303】
さらに、上記の溶液のうち64g分に対し、スクロース7.7g含有ヒスチジン緩衝液(pH5.5)19mLを添加し、さらに9%スクロース含有ヒスチジン緩衝液(pH5.5)を加え、タンパク質濃度を約20mg/mLに調整し、抗HER2抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物(93g)を得た。得られた医薬組成物は、タンパク質濃度:20.3mg/mL、タンパク質収量:1.8g、抗体一分子あたりの平均薬物結合数(n):7.8であった。
【0304】
[実施例6]抗HER3抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物の製造
抗HER3抗体(配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)を含む溶液(液重量43.95kg:抗体3.00kg相当)を400Lシングルユースリアクターに入れ、更に、ポリソルベート20(60.0g)、0.5mol/L EDTA水溶液(224.5g;抗体に対し5当量)を含む0.01mol/L 酢酸緩衝液(pH5.5、255kg)を加えた。本溶液に、0.3mol/Lリン酸水素二ナトリウム水溶液を加えpH7.0に調整した。33~37℃攪拌下で、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(35.1g;抗体一分子に対して6.0当量)を含む水溶液(12.3kg)加え、内温を33~37℃で2.5時間攪拌し、抗体の鎖間ジスルフィドを還元した。
【0305】
得られた反応液を冷却し、内温12~17℃にて攪拌下、化合物(2)(200.5g;抗体に一分子対して9.5当量)を、10%酢酸水溶液(116.4g)を含む80%ジメチルスルホキシド水溶液(21.1kg)にて溶解させたものを50分かけて添加し、同温度にて0.5時間撹拌し、抗体へ結合させた。次に、0.1mol/L N-アセチルシステイン水溶液(3.11kg;抗体一分子に対して15当量)を加え、さらに同温度にて0.5時間撹拌し、余剰の化合物(2)をクエンチさせたのち、10%酢酸水溶液を用いて、pH5.0に調整した。これにより、式
【0306】
【化44】
【0307】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗HER3抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗HER3抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液を得た。
【0308】
得られた溶液を、Pellicon(登録商標)2 Ultracel(登録商標)(メルク社製、2.5m)を4枚用い、自動限外濾過装置にて、0.5%塩化ナトリウム含有26.5mMヒスチジン緩衝液(pH5.0)を加えながら循環させることにより限外濾過を行い、化合物(2)由来の副生成物を除去した。さらに、26.5mMヒスチジン緩衝液(pH5.0)を加えながら循環させることに限外濾過を行い、塩化ナトリウムを除去した。次に、26.5mMヒスチジン水溶液にてpH5.4に調整しながら濃縮を行うことで、抗HER3抗体-薬物コンジュゲートを含有する溶液を97.4kg(96.5L、タンパク質濃度:30.5mg/mL、タンパク質収量:2.94kg)取得した。
【0309】
さらに、上記の溶液のうち48.6kg分に対し、スクロース6.29kgを含むヒスチジン緩衝液(pH5.4、24.3kg)を添加し、さらにポリソルベート20(7.6g)を含む9%スクロース含有ヒスチジン緩衝液(pH5.4、4.25kg)を加え、タンパク質濃度を約20mg/mLに調整し、抗HER3抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物(77.1kg)を得た。得られた医薬組成物は、タンパク質濃度:19.9mg/mL、タンパク質収量:1.49kg、抗体一分子あたりの平均薬物結合数(n):7.6であった。
【0310】
[実施例7]抗GPR20抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物の製造
抗GPR20抗体(配列番号5においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)を含む溶液(液重量24.2kg:抗体0.94kg相当)を200Lリアクターに入れ、更にポリソルベート80(14.4g)を含む26mMヒスチジン水溶液(57.6kg)を加えた。30℃に昇温し、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(9.06g;抗体一分子に対して4.9当量)を含む水溶液(3.17kg)加え、内温30℃で3時間攪拌し、抗体の鎖間ジスルフィドを還元した。
【0311】
得られた反応液を冷却し、内温15℃にて攪拌下、化合物(2)(63.5g;抗体一分子に対して9.0当量)を、酢酸(3.7g)を含む80%ジメチルスルホキシド水溶液(7.26kg)にて溶解させたものを55分かけて添加し、同温度にて0.5時間撹拌し、抗体へ結合させた。次に0.1M N-アセチルシステイン水溶液(1.00kg;抗体一分子に対して15当量)を加え、更に同温度にて0.5時間攪拌し、余剰の化合物(2)をクエンチさせたのち、10%酢酸水溶液を用いて、pH5.0に調整した。これにより、式
【0312】
【化45】
【0313】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗GPR20抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗GPR20抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液を得た。
【0314】
得られた溶液を、Pellicon(登録商標)2 Ultracel(登録商標)(メルク社製、2.5m)を2枚用い、限外濾過装置にて、0.5%塩化ナトリウム含有11mMヒスチジン緩衝液(pH5.0)を加えながら循環させることにより限外濾過を行い、化合物(2)由来の副生成物を除去した。更に11mMヒスチジン緩衝液(pH5.0)を加えながら循環させることにより限外濾過を行い、塩化ナトリウムを除去した。次に11mMヒスチジン水溶液にてpH5.4に調整しながら濃縮を行うことで、抗GPR20抗体-薬物コンジュゲートを含有する溶液(31.8kg、タンパク質濃度:29.9mg/mL、タンパク質収量:0.94kg)を取得した。
【0315】
更に上記の溶液に対し、スクロース4.00kgを含むヒスチジン緩衝液(pH5.4、14.9kg)を添加し、更にポリソルベート80(4.5g)を含む9%スクロース含有ヒスチジン緩衝液(pH5.4、3.00kg)を加え、タンパク質濃度を約20mg/mLに調整し、抗GPR20抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物(49.3kg)を得た。得られた医薬組成物は、タンパク質濃度:19.9mg/mL、タンパク質収量:0.94kg、抗体一分子あたりの平均薬物結合数(n):7.8であった。
【0316】
[実施例8]抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物の製造
抗CDH6抗体(配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)を含む溶液(液重量2.56kg:抗体100g相当)を14Lリアクターに入れ、更にポリソルベート80(1.50g)、0.5M EDTA水溶液(7.54g;抗体に対し5当量)を含む100mMヒスチジン水溶液(6.00kg)を加えた。30℃に昇温し、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(945mg;抗体一分子に対して4.8当量)を含む水溶液(330g)加え、内温30℃で3時間攪拌し、抗体の鎖間ジスルフィドを還元した。
【0317】
得られた反応液を冷却し、内温15℃にて攪拌下、化合物(2)(6.96g;抗体一分子に対して9.1当量)を、10%酢酸水溶液(3.89g)を含む80%ジメチルスルホキシド水溶液(687g)にて溶解させたものを41分かけて添加し、同温度にて0.4時間撹拌し、抗体へ結合させた。次に0.1M N-アセチルシステイン水溶液(103g;抗体一分子に対して15当量)を加え、更に同温度にて0.6時間攪拌し、余剰の化合物(2)をクエンチさせたのち、10%酢酸水溶液を用いて、pH5.0に調整した。これにより、式
【0318】
【化46】
【0319】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗CDH6抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートを含む溶液を得た。
【0320】
得られた溶液を、Pellicon(登録商標)2 Ultracel(登録商標)(メルク社製、0.5m)を1枚用い、限外濾過装置にて、0.5%塩化ナトリウム含有11mMヒスチジン緩衝液(pH5.0)を加えながら循環させることにより限外濾過を行い、化合物(2)由来の副生成物を除去した。更に11mMヒスチジン緩衝液(pH5.0)を加えながら循環させることにより限外濾過を行い、塩化ナトリウムを除去した。次に11mMヒスチジン水溶液にてpH5.4に調整しながら濃縮を行うことで、抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートを含有する溶液(2.97kg、タンパク質濃度:31.8mg/mL、タンパク質収量:93.7g)を取得した。
【0321】
更に上記の溶液に対し、スクロース(401g)を含むヒスチジン緩衝液(pH5.4、1.67kg)を添加し、更にポリソルベート80(437mg)を含む9%スクロース含有ヒスチジン緩衝液(pH5.4、276g)を加え、タンパク質濃度を約20mg/mLに調整し、抗CDH6抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物(4.81kg)を得た。得られた医薬組成物は、タンパク質濃度:20.2mg/mL、タンパク質収量:93.2g、抗体一分子あたりの平均薬物結合数(n):7.8であった。
【配列表フリーテキスト】
【0322】
配列番号1:抗HER2抗体重鎖のアミノ酸配列
配列番号2:抗HER2抗体軽鎖のアミノ酸配列
配列番号3:抗HER3抗体重鎖のアミノ酸配列
配列番号4:抗HER3抗体軽鎖のアミノ酸配列
配列番号5:抗GPR20抗体重鎖のアミノ酸配列
配列番号6:抗GPR20抗体軽鎖のアミノ酸配列
配列番号7:抗CDH6抗体重鎖のアミノ酸配列
配列番号8:抗CDH6抗体軽鎖のアミノ酸配列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2024050683000001.xml