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特開2024-50687マルチビーム画像生成装置およびマルチビーム画像生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050687
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】マルチビーム画像生成装置およびマルチビーム画像生成方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/28 20060101AFI20240403BHJP
   H01J 37/09 20060101ALI20240403BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20240403BHJP
   H01J 37/153 20060101ALI20240403BHJP
   H01J 37/21 20060101ALI20240403BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H01J37/28 B
H01J37/09 Z
H01J37/147 B
H01J37/153 B
H01J37/21 B
H01J37/22 502C
H01J37/22 502B
H01J37/22 502H
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024009326
(22)【出願日】2024-01-25
(62)【分割の表示】P 2020075915の分割
【原出願日】2020-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】591012668
【氏名又は名称】株式会社ホロン
(74)【代理人】
【識別番号】100089141
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 守弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 恵三
(57)【要約】      (修正有)
【課題】マルチビーム画像生成装置および画像生成方法に関し、複数の1次電子ビームをサンプルに照射しつつサンプルを移動させ、複数の2次電子ビームをビームスプリッタで分離して検出装置でそれぞれの画像を検出して1枚の画像に合成し、画像取得を高速に行うことを目的とする。
【解決手段】複数ビーム生成装置、ビームスプリッタ、対物レンズ、偏向系、投影レンズ、ステージ、干渉計を備え、複数の1次電子ビームをビームスプリッタで対物レンズの軸に入射し、対物レンズでサンプルに細く絞った1次電子ビームを照射すると共に偏向系により走査する。サンプルから放出された2次電子をビームスプリッタで投影レンズの軸に入射させ、投影レンズで検出器に結像して複数電子ビームの画像を出力する。画像情報および干渉計から出力されたサンプルのリアルタイムの移動方向の位置、直角方向の位置をもとにステージの移動量、回転量の補正を行うように構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の1次電子ビームをサンプルに走査して画像を生成するマルチビーム画像生成装置において、
複数の1次電子ビームを生成する複数ビーム生成装置と、
前記複数ビーム生成装置で生成された複数の1次電子ビームを対物レンズの軸に入射させると共に、サンプルから放出された2次電子ビームを投影レンズの軸に入射させるビームスプリッタと、
前記1次電子ビームを細く絞る対物レンズと、
前記対物レンズで細く絞られた1次電子ビームを偏向してサンプル上で走査する偏向系と、
前記ビームスプリッタで軸に入射された2次電子ビームを電子検出器に結像する投影レンズと、
サンプルを一定速度で少なくとも移動させるステージと、
サンプルの移動方向の位置、直角方向の位置をリアルタイム測定する干渉計と
を備え、
前記複数ビーム生成装置で生成された複数の1次電子ビームを前記ビームスプリッタで前記対物レンズの軸に入射し、該対物レンズで前記サンプルに細く絞った1次電子ビームを照射すると共に前記偏向系により走査し、サンプルから放出された2次電子を前記ビームスプリッタで前記投影レンズの軸に入射し、該投影レンズで電子検出器に結像して複数電子ビームの画像情報を出力し、
該出力された複数電子ビームの画像情報および前記干渉計から出力されたサンプルのリアルタイムの移動方向の位置、直角方向の位置をもとに前記ステージの移動量、回転量の補正を行う、あるいは前記ステージの移動量、回転量に対応する分だけ画像情報を移動、回転する補正を行う
ことを特徴とするマルチビーム画像生成装置。
【請求項2】
上記一定速度で少なくとも移動させるを、一定速度かつ一定方向に移動させるとしたことを特徴とする請求項1に記載のマルチビーム画像生成装置。
【請求項3】
前記出力された複数電子ビームの画像情報をもとに、1枚の画像に合成する合成手段を
備えたことを特徴とする請求項1から請求項2のいずれかに記載のマルチビーム画像生成装置。
【請求項4】
前記ステージの高さ方向の位置をリアルタイムに測定してこれをもとにステージの高さの補正を行い、あるいは電磁的に補正を行い、自動フォーカスすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のマルチビーム画像生成装置。
【請求項5】
前記複数ビーム生成装置は、1本の1次電子ビームを複数の穴の開いたアパチャーに照射して複数の1次電子ビームを生成したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のマルチビーム画像生成装置。
【請求項6】
前記ビームスプリッタは1次電子の入射側の第1段目を静電偏向器、第2段目を電磁偏向器とし、第2段目の電磁偏向器でサンプルから放出された2次電子ビームを1次電子ビームと逆方向に偏向して分離したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のマルチビーム画像生成装置。
【請求項7】
前記サンプルに負のリターディング電圧を印加し、該サンプルに照射して走査する1次電子ビームの高分解能を維持したままでエネルギーを低下させ、該サンプルのダメージを軽減したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のマルチビーム画像生成装置。
【請求項8】
前記投影レンズの前あるいは後に2次電子ビームの位置補正用の偏向系を設けたことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のマルチビーム画像生成装置。
【請求項9】
複数の1次電子ビームをサンプルに走査して画像を生成するマルチビーム画像生成方法において、
複数の1次電子ビームを生成する複数ビーム生成装置と、
前記複数ビーム生成装置で生成された複数の1次電子ビームを対物レンズの軸に入射させると共に、サンプルから放出された2次電子ビームを投影レンズの軸に入射させるビームスプリッタと、
前記1次電子ビームを細く絞る対物レンズと、
前記対物レンズで細く絞られた1次電子ビームを偏向してサンプル上で走査する偏向系と、
前記ビームスプリッタで軸に入射された2次電子ビームを電子検出器に結像する投影レンズと、
サンプルを一定速度で少なくとも移動させるステージと、
サンプルの移動方向の位置、直角方向の位置をリアルタイム測定する干渉計と
を設け、
前記複数ビーム生成装置で生成された複数の1次電子ビームを前記ビームスプリッタで前記対物レンズの軸に入射し、該対物レンズで前記サンプルに細く絞った1次電子ビームを照射すると共に前記偏向系により走査し、サンプルから放出された2次電子を前記ビームスプリッタで前記投影レンズの軸に入射し、該投影レンズで電子検出器に結像して複数電子ビームの画像情報を出力し、
該出力された複数電子ビームの画像情報および前記干渉計から出力されたサンプルのリアルタイムの移動方向の位置、直角方向の位置をもとに前記ステージの移動量、回転量の補正を行う、あるいは前記ステージの移動量、回転量に対応する分だけ画像情報を移動、回転する補正を行う
ことを特徴とするマルチビーム画像生成方法。
【請求項10】
上記一定速度で少なくとも移動させるを、一定速度かつ一定方向に移動させるとしたことを特徴とする請求項9に記載のマルチビーム画像生成方法。
【請求項11】
前記出力された複数電子ビームの画像情報をもとに、1枚の画像に合成する合成手段を
備えたことを特徴とする請求項9から請求項10のいずれかに記載のマルチビーム画像生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の1次電子ビームをサンプルに走査して画像を生成するマルチビーム画像生成装置およびマルチビーム画像生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体産業はムーアの法則で有名な微細加工技術の進展によりもたらされるデバイス性能向上およびコストメリットで経済が支えられているが、半導体デバイスの微細加工限界は露光技術によって決定される。半導体露光技術はパターンを作り出すためのフォトマスクと呼ばれる原版と露光装置およびパターンを形成するレジストから成っている。現在露光装置は4対1の縮小露光技術が使用されているため、半導体デバイスが実際に作られるシリコンウエハー上のパターン構造物の4倍の大きさのパターン構造がフォトマスク上に形成されている。
【0003】
半導体回路設計データに基づいてフォトマスク上に作られたパターンを如何に正確にウエハー表面のレジスト膜パターンへと転写できるかが露光技術最大の課題である。仮にフォトマスクに異常があればそれは露光装置によってウエハー表面に転写されウエハー上に不具合が生じる。
【0004】
露光不良を防止するためには少なくともフォトマスクを全面検査して正しい状態に修正し設計通りの完璧なパターン状態にすることが必要である。微細加工限界は露光に利用される光の波長に比例するので露光に利用される光の波長は時代とともに短波長化が進められている。
【0005】
20世紀終盤から露光光源には波長193nmのレーザー光源が使用されてきたため、長期にわたってフォトマスク上のパターンは193nm等のレーザー光線を照明光とする光学式マスクパターン検査装置を用いて検査が行われてきた。
【0006】
しかしながら、2019年より波長が13.5nmと短いEUV光を用いた露光技術が本格導入され露光できる微細加工限界がより小さくなった。フォトマスク上のパターンも従来の最小パターンサイズ100nm程度の大きさから50nm以下と小さくなり、従来の193nmの光では十分な検査が出来なくなってきた。
【0007】
一方、露光波長と同じ波長である13.5nmの波長を用いたいわゆるアクティニック検査装置もある。しかしながら、波長が13.5nmと短くなると空気によって殆ど吸収されてしまうため、検査装置内部の真空化が必要で、従来の大気中で実装されていた装置と比べて非常に複雑に成る。また、13.5nmの光を透過できる光学レンズが存在しないため、光学系は全て反射光学系で構成することが必要となり、これもまた複雑で効率の悪いものに成る。例えば、13.5nmの波長を利用するEUV露光装置では光源全出力の1%程度しか利用できないほど効率が悪い。
【0008】
光学装置の解像度は開口率NAに比例する性質がある。例えば、波長193nmを用いた光学系の場合、液浸や油浸などを利用することにより1を超える大きな開口率が実現できるため、193nmと長い波長であるにもかかわらず1回の露光で40nm程度のパターンを解像することが出来る。ダブルパターニングを用いれば20nm程度のパターンを作ることさえ可能である。
【0009】
一方、EUV光を用いた場合、反射光学系を用いるためMAが0.33など小さな開口率しか実現できない。光源波長が従来波長と比較して10分の1と短いにもかかわらず精々13nm程度の解像度しか得られず、波長が短く成った割には性能向上が小さい。また、例えば検出対象がパーティクルの場合、パーティクルサイズの6乗に比例して反射光が弱まり、波長の2乗で反射光が強くなる。つまり、パーティクルサイズが小さくなると信号強度は急激に弱くなるため欠陥検出感度は激減する。このように光学技術を用いたフォトマスク検査技術は技術的に限界を迎えている。また、従来光学原理を用いた装置は大気中で動作したため、装置製造や運用が容易であったが、波長が短くなると空気に吸収されてしまうため大きな真空チャンバーが必要となり電子ビーム装置に対する使い勝手の優位性が無くなる。
【0010】
一方、nmオーダーの高解像度を実現する技術としては電子顕微鏡がある。30年以上前から電子ビームを用いた電子ビーム式欠陥検査技術が開発されてきている。商品化は行われているがスループットが光学式と比較して極端に小さいため中々主たる検査装置としては実用化していないのが現状である。光学式では出来ない電気的な欠陥を見つけることが出来るので、新ウエハープロセス開発用途に徐々に普及してきている。
【0011】
レーザー光線と違い電子ビームにはレーザーのようにエネルギーの分散が小さくて輝度の高い電子ビーム源が無い。さらに電子はマイナス電荷を持つためレンズ等で小さなスポットに絞り込むと電子同士がお互いに静電反発する。そのため、高速検査に必要とされる大電流を流すと光学限界以上に最小ビームスポットサイズが大きくなってしまい、分解能が劣化する。つまり、1本の電子ビームを用いた場合、分解能と検査速度との間には非常にきついトレードオフの関係があるため、微細化が進むほど速度が遅く成るという原理的な欠陥を持っている。
【0012】
例えば、現在の所、1つの電子ビームを用いて実現できる最高検査速度は精々数百Mピクセル毎秒である。フォトマスクは凡そ10cm角の領域にパターンが書かれているため、その領域を全て検査することが必要である。例えば、最先端のフォトマスク上のパターンが十分に解像できる10nmの分解能で検査するためには、10の14乗ピクセルの画素を取得する必要がある。例えば100Mピクセル毎秒で画素取得すると10の6乗秒が必要である。言い直すと277時間つまり10日以上掛かる。また、検査に必要なSNR10以上の画像を得るために何度も走査することが必要である。従来の光学式フォトマスク検査装置は約2時間で1枚のフォトマスクを検査することが可能なので、電子ビーム式は100倍も遅すぎて実用上使えない。
【0013】
一方,電子ビーム検査装置の速度改善を行うためにマルチ電子ビーム検査装置と呼ばれる電子ビームを複数個同時に並列にサンプルに照射して高速検査を行う方法が研究されている。この方法では、100本以上の小さな電子ビームを同時に照射して走査を行うため1本に流す電流量を小さく抑えることが可能で、ビームの静電反発の影響を受けず高分解能を維持したままで検査速度を従来の1本の電子ビームを用いた場合と比較して高速に出来るとされている。
【0014】
しかしながら、従来から多くの会社によって色々な形式のマルチビーム検査装置が開発されており、次世代の高速検査装置として非常に有望視されているが、当初思ったほどの高速化や高分解能化が実現できておらず、未だに半導体用検査装置としては商品化されていない。
【0015】
半導体産業で使用する装置は工業用計測装置であり一種のミッションクリティカルな装置で24時間365日不具合を起こさずに稼働し続ける必要があるため、高いロバスト性が必須である。理科学機器装置のように大学の先生や生徒が偶に使って論文が書ける程度では全く実用上使えない。いろいろな測定条件や測定対象あるいは装置設置環境変化に耐えさらに長期にわたって性能が安定に保たれている必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来のシングルビーム方式の高速検査装置では連続ステージ方式が一般的であるが、2次元の画像取得を同時に行うマルチビーム方式では1回のスキャンで取得できる面積を出来るだけ多くして高速化するステップ&リピート方式が採用されてきたため、ステージ移動時間が支配的となり高速化が出来ないという問題があった。
【0017】
また、走査領域の境界には明確に感度差に基づくコントラスト差が生じ、検査画像としては使いにくいという問題もあった。
【0018】
また、シングルビーム方式の場合には、ビームが1本しかないため容易に照射位置補正が可能で所望の位置に電子ビーム照射することが出来る。しかし、マルチビーム方式の場合には、同時に複数の電子ビーム照射を行って2次元画像を取得するため、それぞれの電子ビーム照射位置を所望の位置に厳密に制御することは容易でないという問題があった。また、さらに高速化のために2次元の画像情報の取得中にステージ走行を行うと、走行中に起こるステージ回転、うねり、ステージ速度変動、高さ変動、振動などが2次元画像取得に影響し、画像の品質を低下させてしまうという問題があった。
【0019】
また、単に従来のシングルビームの場合と同じように画像を取得するだけでは画像が歪んだり飛んだりして正確な画像取得が出来ず、検査に利用できないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上述した課題を解決するために、複数の1次電子ビームを生成してこれらをサンプルに照射しつつサンプルを移動させ、そのときに放出された複数の2次電子ビームをビームスプリッタで分離して電子検出装置でそれぞれの画像情報を検出して1枚の画像に合成し、画像取得を高速に行うことを実現した。
【0021】
そのため、本発明は、複数の1次電子ビームをサンプルに走査して画像を生成するマルチビーム画像生成装置において、複数の1次電子ビームを生成する複数ビーム生成装置と、複数ビーム生成装置で生成された複数の1次電子ビームを2段偏向して対物レンズの軸に入射させると共に、サンプルから放出された2次電子ビームを前記1次電子ビームと反対方向に2段偏向して投影レンズの軸に入射させるビームスプリッタと、ビームスプリッタで2段偏向されて軸に入射された1次電子ビームを細く絞る対物レンズと、対物レンズで細く絞られた1次電子ビームを偏向してサンプル上で走査する偏向系と、ビームスプリッタで2段偏向されて軸に入射された2次電子ビームを電子検出器に結像する投影レンズと、サンプルを一定方向に少なくとも移動させるステージと、サンプルの移動方向の位置、直角方向の位置をリアルタイム測定する干渉計とを備え、複数ビーム生成装置で生成された複数の1次電子ビームをビームスプリッタで対レンズの軸に偏向し、対物レンズでサンプルに細く絞った1次電子ビームを照射すると共に偏向系により走査し、サンプルから放出された2次電子をビームスプリッタで投影レンズの軸に偏向し、投影レンズで電子検出器に結像して複数電子ビームの画像情報を出力するようにしている。
【0022】
この際、出力された複数電子ビームの画像情報をもとに、1枚の画像に合成する合成手段を備えるようにしている。
【0023】
また、出力された複数電子ビームの画像情報および干渉計から出力されたサンプルのリアルタイムの移動方向の位置、直角方向の位置をもとにステージの移動量、回転量の補正を行う、あるいはステージの移動量、回転量に対応する分だけ画像情報を移動、回転する補正を行うようにしている。
【0024】
また、ステージの高さ方向の位置をリアルタイムに測定してこれをもとにステージの高さの補正を行い、あるいは電磁的に補正を行い、自動フォーカスするようにしている。
【0025】
また、複数ビーム生成装置は、1本の1次電子ビームを複数の穴の開いたアパチャーに照射して複数の1次電子ビームを生成するようにしている。
【0026】
また、ビームスプリッタは1次電子の入射側の第1段目を静電偏向器、第2段目を電磁偏向器とし、第2段目の電磁偏向器でサンプルから放出された2次電子ビームを1次電子ビームと逆方向に偏向して分離するようにしている。
【0027】
また、サンプルに負のリターディング電圧を印加し、サンプルに照射して走査する1次電子ビームの高分解能を維持したままでエネルギーを低下させ、サンプルのダメージを軽減するようにしている。
【0028】
また、投影レンズの前あるいは後に2次電子ビームの位置補正用の偏向系を設けるようにしている。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、複数の1次電子ビームを生成してこれらをサンプルに照射しつつサンプルを移動させ、そのときに放出された複数の2次電子ビームをビームスプリッタで分離して電子検出装置でそれぞれの画像情報を検出して1枚の画像に合成し、画像取得を高速に行うことが可能となった。
【0030】
また、複数の1次電子ビームをサンプルに照射して検出した複数の2次電子ビームの画像をオーバーラップして検出し、1枚の画像に合成したときの境界のコントラスト差の発生を低減することができた。
【0031】
また、複数の1次電子ビームのサンプルへの照射位置を予め取得して登録することにより、2次電子ビームの画像の中心位置を補正し、精密な画像を合成することが可能となった。
【0032】
また、サンプルを搭載したステージの位置、回転をリアルタイムにレーザ干渉計で精密に実測して記録し、複数の2次電子ビームの画像の移動量、回転量をそれぞれ補正し、精密な画像情報を生成できるようになった。
【実施例0033】
図1は、本発明の1実施例構造図を示す。
【0034】
図1において、電子銃1は、電子線を発生させる公知のものであって、数百Vないし数十KVに加速された1次電子ビームを発生させるものである。電子銃はWやLaB6などの熱電子源やZrO等を用いたTFEやコールドフィールドエミッタあるいはフォトカソードが使用されており、電子銃室はイオンポンプやゲッターポンプ等を用いて10のマイナス8乗Pa以上の超高真空あるいは極高真空に保たれている。
【0035】
ブランキング装置2は、電子銃1から放出された1次電子ビームを高速にONあるいはOFFするものであって、電圧をONあるいはOFFして1次電子ビームを偏向して通過あるいは遮断するものである。
【0036】
照明レンズ3は、電子銃1で発生・加速された電子ビームを集束、ここで、後述する図4に示す所定のビームになるように集束するものである。
【0037】
マルチビームアパチャー3-1は、照射された1次電子ビームから複数の1次電子ビームに分割(例えば100分割)して生成するものである。
【0038】
対物アパチャー4は、複数の1次電子ビームのうちのそれぞれの中心部分を通過させ、該通過させた各1次電子ビームについて、後述する対物レンズ6によってサンプル8の表面上に細く絞ってそれぞれ照射するためのものである。
【0039】
ビームスプリッタ5は、1次電子と、反対方向に進む2次電子とを分離するものであって、上段が静電偏向器5ー1、下段が電磁偏向器5ー2から構成されるものである。1次電子ビームは静電偏向器5ー1により図1に示すように、右側に偏向され、電磁偏向器5ー2により左側に偏向され、対物レンズ6の軸上に振り戻され、該対物レンズ6によってサンプル8の上に細く絞られて結像される。サンプル8から放出された2次電子は電磁偏向器5ー2によって図1に示すように、右側に偏向され、静電偏向器5ー1により左側に偏向され、投影レンズ12に軸上に振り戻され、投影レンズ12によって電子検出装置14の上に複数の2次電子ビームが結像され、複数の2次電子画像(2次電子信号)を出力する。
【0040】
静電偏向器5ー1は、ビームスプリッタ5を構成する電子銃1に近い側の偏向器であって、ここでは、静電偏向器である。
【0041】
電磁偏向器5ー2は、ビームスプリッタ5を構成する電子銃1から離れた側の偏向器であって、ここでは、電磁偏向器である。
【0042】
対物レンズ6は、複数の1次電子ビームを細く絞ってサンプル8の上に照射するものである。
【0043】
偏向装置7は、複数の1次電子ビームをサンプル8で走査するものであって、通常はステージ9の一定方向に一定速度で移動させたときに、直角方向に繰り返し一定速度で走査するものである。尚、一定方向に走査(XあるいはYあるいは任意の方向に一定走査)するのみでなく、平面走査(XY走査)してもよい。
【0044】
サンプル8は、マスク、ウェハなどの複数画像を取得して1枚に合成する対象の試料である。
【0045】
ミラー8ー1は、レーザ干渉計で位置をリアルタイムに実測するための反射鏡である。
【0046】
ステージ(XYZθステージ)9は、サンプルを搭載してXYZ、更にθ(回転)が可能なステージであって、図示外の干渉計により、XYZ,θをリアルタイムに実測して記録可能な構成としたものである。
【0047】
真空チャンバー10は、サンプル8、ステージ9等を収納して真空排気可能な容器である。
【0048】
真空ポンプ10ー1は、真空チャンバー10の内部を真空排気するものであって、オイルフリーのポンプで排気するものである。
【0049】
アライメント11は、ビームスプリッタ5を構成する静電偏向器5ー1から投影レンズ12の軸上に偏向された複数の2次電子ビームの軸合わせを行うものである。
【0050】
投影レンズ12は、サンプル8から放出された複数の2次電子ビームを、電子検出装置14の検出面に結像するものである。
【0051】
振り戻し偏向器13は、複数の1次電子ビームをサンプル8上に細く絞って走査したときに放出された複数の2次電子ビームが、電子検出装置14の検出面上で所定領域内にとどまるように補正する(降り戻す)ものである。
【0052】
電子検出装置14は、サンプル8上から放出された複数の2次電子ビームをそれぞれ検出するものである。例えばアバランシェフォトダイオードやCCD、CMOSセンサーあるいはTDIカメラなどが使用できる。電子を一旦シンチレータに衝突させて光に変換したのちに前述のデバイスで検出しても良いし、電子を直接前述のデバイスに打ち込んで検出しても良い。いずれにしても、検出面の所定領域内にそれぞれ結像された複数の2次電子ビームをそれぞれ独立して検出できればよい。
【0053】
次に、図1の構造の動作を説明する。
(1) 電子銃1から放出された1次電子ビームはマルチビームアパチャー3ー1を照射して複数の1次電子ビームを生成する。複数の1次電子ビームの生成は、この方法に限らず、電子銃1のエミッタの表面に複数の電子放出源を設けたりしてこれに対応する複数の1次電子ビームを発生させてもよい。
(2)ビームアパチャー3ー1で分割されて生成された複数の1次電子ビームは、対物アパチャー4によりその中心部分をそれぞれ通過し、ビームスプリッタ5を構成する上段の静電偏向器5ー1で右側に偏向、電磁偏向器5ー2で左側に偏向して対物レンズ6の軸上に入射する。
(3)対物レンズ6の軸上に入射した複数の1次電子ビームは、該対物レンズ6によって細く絞られてサンプル8の表面を照射すると共に、該サンプル8は一定方向に一定速度で移動および偏向装置7によって該移動する方向と直角方向に静電偏向することを繰り返し、複数の1次電子ビームをサンプル8の上に短冊状に走査する。この結果、サンプル8の表面がステージ9の移動方向に対して静電偏向器5ー1で偏向された幅の領域(短冊状の領域)が複数の1次電子ビームで面走査されることとなる。この際、図示しないが、サンプル8に負のリターディング電圧を印加し、複数の1次電子ビームのエネルギーを例えば1KVにして照射(例として複数の1次電子ビームのエネルギー15KVに負のリターディング電圧14KVを印加して1KVの1次電子ビームにしてサンプル8を照射)するようにしている。
(4)(3)で短冊状に走査された複数の1次電子ビームの領域から2次電子、反射電子、光、X線等が放出される。
(5)(4)で放出された2次電子は、対物レンズ6の磁界により該対物レンズ6の軸上を逆方向に螺旋状に走行し、ビームスプリッタ5を構成する下段の電磁偏向器5ー2によりここでは、右方向に偏向(複数の1次電子ビームの偏向と逆方向に偏向)され、静電偏向器5ー1により左方向に偏向され、投影レンズ12の軸上に入射する。
(6)投影レンズ12の軸上に、必要に応じてアライメント11で補正した後、電子検出装置14に、サンプル8から放出された複数の2次電子ビームを結像し、該電子検出装置14の各複数の2次電子ビームの結像領域に照射する。結像領域からはみだす場合には、振り戻し偏向器13によって、サンプル8上の複数の1次電子ビームの走査(偏向)に同期し、該振り戻し偏向器13に電圧(あるいは電流)を供給して該結像領域内に収まるように補正する。そして、電子検出装置14から各複数の2次電子ビームを検出した2次電子画像(2次電子信号)をそれぞれ出力する。
【0054】
以上によって、複数の1次電子ビームを生成してこれらをビームスプリッタ5を介して対物レンズ6によって細く絞り、ステージ9でサンプル8を一定方向に移動しつつ直角の方向に複数の1次電子ビームで該サンプル8を走査することを繰り返して短冊状の領域を複数の1次電子ビームで走査する。そして、そのときに放出された複数の2次電子ビームをビームスプリッタ5を介して分離し、投影レンズ12によって複数の2次電子ビームを電子検出装置14のそれぞれの検出面に結像して、各複数の2次電子ビームの2次電子画像(2次電子信号)を出力することが可能となる。
【0055】
図2は、本発明のマルチビーム配列の種類例を示す。これは、既述した図1のマルチビームアパチャー3ー1の穴の配列の種類例を示す。尚、図2では穴は模式的に矩形としたが、実際は穴(円形の穴)が望ましい。
【0056】
図2の(a)は1段の例を示し、図2の(b)は2段の例を示し、図3の(c)は2段千鳥の例を示し、図3の(d)は9段千鳥の例を示す。
【0057】
図2の(a)は1段の例を示す。これは、図1のマルチビームアパチャー3ー1のアパチャーに、図示のような穴(実際は丸形状が良い)を1次電子ビームの走査方向と一致する方向に1段で設けた例を模式的に示す。例えば100個の穴を1段に設けると、100個の1次電子ビームを生成できる。
【0058】
図2の(b)は2段の例を示す。これは、図1のマルチビームアパチャー3ー1のアパチャーに、図示のような穴(実際は丸形状が良い)を1次電子ビームの走査方向と一致する方向に2段に設けた例を模式的に示す。例えば100個の穴を2段に設けると、1段目に続き該1段目と2段目との距離差に相当する距離(距離差を対物レンズ6の縮小率で割った距離)だけ遅れて2段目の走査が開始され、一回の全体走査で、2回分の2次電子画像を取得でき、信号強度を2倍した2次電子画像(2次電子信号)、あるいは信号強度を1倍にすれば2倍の速度で2次電子画像を取得でき、該2次電子画像の取得時間を半分に削減できることとなる。
【0059】
図2の(c)は2段千鳥の例を示す。これは、図1のマルチビームアパチャー3ー1のアパチャーに、図示のような穴(実際は丸形状が良い)を1次電子ビームの走査方向と一致する方向に2段かつ千鳥に設けた例を模式的に示す。例えば100個の穴を2段で千鳥に設けると、1段目に続き該1段目と2段目との距離差に相当する距離(距離差を対物レンズ6の縮小率で割った距離)だけ遅れて2段目の千鳥状の走査が開始され、一回の全体走査で、2回分の2次電子画像を取得でき、信号強度を2倍した2次電子画像、あるいは信号強度を1倍にすれば2倍の速度で2次電子画像を取得でき、該2次電子画像の取得時間を半分に削減できることとなる。
【0060】
図2の(d)は9段千鳥の例を示す。これは、図1のマルチビームアパチャー3ー1のアパチャーに、図示のような穴(実際は丸形状が良い)を1次電子ビームの走査方向と一致する方向に9段かつ千鳥に設けた例を模式的に示す。例えば図示のように9段で千鳥に設けると、各段の距離差に相当する距離(各距離差を対物レンズ6の縮小率で割った距離)だけ遅れて各段目の千鳥状の走査が開始され、一回の全体走査で、9回分の2次電子画像を取得できる。
【0061】
尚、図2の(a)から(d)の各マルチビームアパチャー3ー1はそれぞれの1次電子ビームを独立にON/OFFする機能を持たせ、物理的に異なった配列を持ったアパチャーを図示のように多数用意しなくても、全てのマルチビームの中で選択された任意の位置の電子ビームだけがサンプルに到達する様に制御できるようにして、作成してもよい。
【0062】
図3は、本発明のデータテーブル例を示す。本図3は、既述および後述するように、図1の構造のもとで、サンプル8(例えばマスク)を搭載したステージ9の位置XYZ、回転θ等をレーザ干渉計でリアルタイム測定し、該ステージ9を一定方向に走査したときにそのステージ位置に対応づけてステージずれ量、ステージ回転量、ステージ高さを記録したものである。
【0063】
図3において、ステージ位置は、図1のサンプル8を搭載したXYZθステージ(以下ステージ)9を一定方向に一定速度で走査したときの位置を示し、レーザ干渉計でリアルタイムに測定したものである(後述する)。ステージ位置は、例えば取得しようとする画像の画素間の距離に対応するステップ(間隔)でリアルタイム測定して記録する。例えば100μm矩形の領域について1000画素×1000画素の画像を取得しようとする場合には、0.1μm毎に1エントリの情報(ステージ位置、ステージずれ量、ステージ回転量、ステージ高さ)をリアルタイム測定して記録する。更に、10μm、1μm矩形の領域に対応する0.01μm毎。0.001μm毎等にリアルタイム測定して記録するようにしてもよい。尚、同じ値が連続する場合にはその差分を記録するようにしてもよい。
【0064】
ステージずれ量は、ステージ位置におけるずれ量(理想的な位置からのずれ量)であって、レーザ干渉計によりリアルタイム測定した値を記録したものである(後述する)。
【0065】
ステージ回転量は、ステージ位置における回転量(理想的な回転無からの回転量θ)であって、レーザ干渉計によりリアルタイム測定したステージの回転量を記録したものである(後述する)。
【0066】
ステージ高さは、ステージ位置における高さZ(理想的な高さからのZ方向のずれ量)であって、レーザ干渉計によりリアルタイム測定した高さのずれ量を記録したものである(後述する)。
【0067】
以上のように、図1のステージ9を一定方向に一定速度で走査(例えば既述した図2のステージ移動方向に走査)したときに当該ステージ9の理想的な値からのずれ量(ステージずれ量(X.Y))、ステージ回転量θ、ステージ高さZの各ずれ量)をそれぞれリアルタイムにレーザー干渉計により精密測定して記録することが可能となる。そして、記録した各ずれ量をもとにリアルタイムにステージ9の位置等を補正あるいは取得した画像を補正することにより、ステージ9の走査に伴う誤差を補正し、複数の1次電子ビームをサンプルに照射して取得した複数の2次電子ビームの各画像を合成して精密な1枚の画像た生成することが可能となる。以下順次詳細に説明する。
【0068】
図4は、本発明のマルチビーム作成例を示す。本図4は、既述した図1のマルチビームアパチャー3―1を用いたマルチビームの作成例を模式的に示したものである。
【0069】
図4において、電子銃1から放出された1次電子ビームは、照明レンズ3により図示のようにここではマルチビームアパチャー3ー1の複数の穴を丁度照射するように投影する。マルチビームアパチャー3ー1を通過して分割されて生成された複数の1次電子ビーム(マルチ電子ビーム3ー2)は、図4の図示外の図1の対物レンズ6によってサンプル8の表面に細く絞って照射される。ここでは、サンプル8がステージ移動に伴って一定方向(ここでは、紙面と垂直方向)に移動すると共に、マルチ電子ビーム3ー2(6本の1次電子ビーム)が紙面の左右方向に一元走査されるので、結果として、サンプル8の表面を短冊状にマルチ電子ビーム3ー2(6本の1次電子ビーム)で走査することとなる。そして、放出された6本の2次電子ビームを図1の電子検出装置14でそれぞれ検出して、6組の2次電子画像を取得し、1枚に合成(後述する)し、サンプル8の2次電子画像を生成することが可能となる。
【0070】
図5は、本発明のマルチビーム検出説明図を示す。これは、図1の投影レンズ12、振り戻し偏向器13、電子検出装置14の詳細説明図を示す。
【0071】
図5において、サンプル8から放出された複数の2次電子ビームがビームスプリッタ5を介して分離され、図4の上から下方向に入射すると、投影レンズ12によって電子検出装置14の検出面にそれぞれ結像される。このとき、複数の2次電子ビームが結像される結像領域は、自身の結像領域内のときは問題ないが、他の領域にはみだしてしまうと未検出となって2次画像の欠落となる。これを防止するために、振り戻し偏向器13によって、サンプル8への1次電子ビームの走査(偏向装置7による複数1の次電子ビームの偏向による走査)に同期し、所定の結像領域内に入るように補正偏向し、確実に自身の結像領域内に入るように補正する。
【0072】
以上によって、サンプル8から放出された各複数の2次電子ビームは、電子検出装置14の各結像領域内にそれぞれ結像し、確実に該複数の2次電子ビームの2次電子画像をそれぞれ検出し、出力することが可能となる。
【0073】
図6は、本発明のマルチビーム画像取得・合成説明図(1段)を示す。
【0074】
図6の(a)は、合成前の画像例を示す。これは、図2の(a)の1次電子ビームの数が1段(ステージ移動(走査)方向に直角方向に1段)の場合のものであって、図6の(a)は、4本の1段の1次電子ビームを用い、サンプル8をステージ9により一定方向に1定速度で移動(走査)しつつ、その直角方向に4本の1次電子ビームを走査することを繰り返し、そのときにサンプル8から放出された4本の2次電子ビームを図1の投影レンズ12により電子検出装置14にそれぞれ結像し、4つの2次電子画像を図示のスワス1、2、3、4の4つの短冊状の画像を生成した様子を模式的に表したものである。ここで、スワス1、2、3、4の4つの短冊状の2次電子画像は、後で合成するためにオーバーラップ1、2、3として図示したように一部、1次電子ビームを重複走査(例えば10%程度重複)するようにしている。これにより、走査漏れが無くなると同時に、隣接するスワスに共通画像が存在するようになるため、レーザー干渉計で得られる位置情報(図3参照)とパターンマッチング等を用いて、隣接するスワスの位置関係を補正し、1枚の大きな画像にすることが出来る(図6の(b)参照)。
【0075】
図6の(b)は、合成後の画像例を示す。これは、図6の(a)のスワス1、2、3、4の4枚の2次電子画像を1枚の画像に合成したものであって、図6の(b)ではオーバーラップ1、2、3(例えば10%程度)を用い、かつ既述した図3のステージ位置に対応する各種すれ量をもとに1枚の画像に合成する。ここで、オーバーラップ1、2、3の領域は2度走査しているので、画像加算効果により高いSNRを得ることが出来るので、より正確に位置合わせを実現できる。例えばスワス1,2,3,4の位置合わせを行い、画像合成することで4本の独立したスワス1,2,3,4から1つの大きな画像領域が形成される。このように処理した画像を合成後の画像として出力し、検査画像として利用する。検査対象の領域がそれぞれのスワス1、2、3、4を跨がずに形成されている場合には、そのうちの1つのスワスの領域を用いて検査が実現できるので、必ずしも1つの画像に合成する必要はない。
【0076】
以上によって、既述した図2の(a)の1段の1次電子ビームを用いてサンプル9を走査しつつ該サンプル9を直角方向にステージ9で一定速度で移動することを繰り返すことにより、スワス1、2、3、4に示す短冊状の2次電子画像(図6の(a))をそれぞれ生成し、これらを合成した1枚の2次電子画像(図6の(b))を生成することが可能となる。
【0077】
図7は、本発明のマルチビーム画像取得・合成説明図(2段)を示す。
【0078】
図7の(a)は、合成前の画像例を示す。これは、図2の(b)の1次電子ビームの数が2段(ステージ移動(走査)方向に直角方向に2段)の場合のものであって、図6の(a)は、4本の2段の1次電子ビームを用い、サンプル8をステージ9により一定方向に一定速度で移動(走査)しつつ、その直角方向に4本の2段の1次電子ビームを走査することを繰り返し、そのときにサンプル8から放出された4本の2段の2次電子ビームを図1の投影レンズ12により電子検出装置14にそれぞれ結像し、4つの2段の2次電子画像を図示のスワス1、2、3、4の4つの短冊状であって、走査開始点の左端から走査開始して1段目の2次電子画像を生成し、少し遅れて2段目の2次電子画像を重複加算する態様で生成した様子を模式的に表したものである。この2段の場合には、図2の(b)の1段目の1次電子ビーム(図7の(a)では4つの1次電子ビーム)で走査を開始し、次に、少し遅れて2段目の1次電子ビーム(図7の(a)では4つの1次電子ビーム)で走査を開始しているので、図示のように、2段目の2次電子ビームは重複加算した2次電子画像となり、高SNRを生成できる利点がある。ここで、スワス1、2、3、4の4つの短冊状の2次電子画像(重複加算した2次電子画像)は、後で合成するためにオーバーラップ1、2、3として図示したように一部、1次電子ビームを重複走査(例えば10%程度重複)するようにしている。これにより、走査漏れが無くなると同時に、隣接するスワスに共通画像が存在するようになるため、レーザー干渉計で得られる位置情報(図3参照)とパターンマッチング等を用いて、隣接するスワスの位置関係を補正し、1枚の大きな画像にすることが出来る(図7の(b)参照)。
【0079】
図7の(b)は、合成後の画像例を示す。これは、図7の(a)のスワス1、2、3、4の4枚の2次電子画像(重複加算画像)を1枚の画像に合成したものであって、図7の(b)ではオーバーラップ1、2、3(例えば10%程度)を用い、かつ既述した図3のステージ位置に対応する各種すれ量をもとに1枚の画像に合成する。ここで、オーバーラップ1、2、3の領域は2度走査しているので、画像加算効果により高いSNRを得ることが出来るので、より正確に位置合わせを実現できる。例えばスワス1,2,3,4の位置合わせを行い、画像合成することで4本、2段の独立したスワス1,2,3,4から1つの大きな画像領域が形成される。このように処理した画像を合成後の画像として出力し、検査画像として利用する。検査対象の領域がそれぞれのスワス1、2、3、4を跨がずに形成されている場合には、そのうちの1つのスワスの領域を用いて検査が実現できるので、必ずしも1つの画像に合成する必要はない。
【0080】
以上によって、既述した図2の(b)の2段の1次電子ビームを用いてサンプル9を走査しつつ該サンプル9を直角方向にステージ9で一定速度で移動することを繰り返すことにより、スワス1、2、3、4に示す短冊状の2次電子画像(図7の(a)、重複加算画像)をそれぞれ生成し、これらを合成した1枚の2次電子画像(図7の(b))を生成することが可能となる。
【0081】
図8は、本発明のマルチビーム画像取得・合成説明図(千鳥)を示す。
【0082】
図8の(a)は、合成前の画像例を示す。これは、図2の(c)の1次電子ビームの数が2段で千鳥に配置した場合のものであって、図8の(a)は、4本の千鳥(2段)の1次電子ビームを用い、サンプル8をステージ9により一定方向に一定速度で移動(走査)しつつ、その直角方向に4本の2段で千鳥の1次電子ビームを走査することを繰り返し、そのときにサンプル8から放出された4本の2段で千鳥の2次電子ビームを図1の投影レンズ12により電子検出装置14にそれぞれ結像する。そして、この結像した4つの2段で千鳥の2次電子画像を図示のスワス1、2、3、4の4つの短冊状の2段で千鳥であって、走査開始点の左端から走査開始して1段目の2次電子画像を生成し、少し遅れて2段目の千鳥分だけ図では下方向に2次電子画像を重複加算する態様で生成した様子を模式的に表したものである。この2段で千鳥の場合には、図2の(c)の1段目の1次電子ビーム(図8の(a)では4つの1次電子ビーム)で走査を開始し、次に、少し遅れて2段目の千鳥の1次電子ビーム(図8の(a)では4つの1次電子ビームで少し下の位置)で走査を開始しているので、図示のように、2段目の2次電子ビームは重複加算した2次電子画像となり、高SNRを生成できる利点がある。ここで、スワス1、2、3、4の4つの短冊状の2次電子画像(重複加算した2次電子画像)は、後で合成するためにオーバーラップ1、2、3として図示したように一部、1次電子ビームを重複走査(例えば10%程度重複)するようにしている。これにより、走査漏れが無くなると同時に、隣接するスワスに共通画像が存在するようになるため、レーザー干渉計で得られる位置情報(図3参照)とパターンマッチング等を用いて、隣接するスワスの位置関係を補正し、1枚の大きな画像にすることが出来る(図8の(b)参照)。
【0083】
図8の(b)は、合成後の画像例を示す。これは、図8の(a)のスワス1、2、3、4の4枚の2段の千鳥の2次電子画像(重複加算画像)を1枚の画像に合成したものであって、図8の(b)ではオーバーラップ1、2、3(例えば10%程度)を用い、かつ既述した図3のステージ位置に対応する各種すれ量をもとに1枚の画像に合成する。ここで、オーバーラップ1、2、3の領域は2度走査しているので、画像加算効果により高いSNRを得ることが出来るので、より正確に位置合わせを実現できる。例えばスワス1,2,3,4の位置合わせを行い、画像合成することで4本、2段の独立したスワス1,2,3,4から1つの大きな画像領域が形成される。このように処理した画像を合成後の画像として出力し、検査画像として利用する。検査対象の領域がそれぞれのスワス1、2、3、4を跨がずに形成されている場合には、そのうちの1つのスワスの領域を用いて検査が実現できるので、必ずしも1つの画像に合成する必要はない。
【0084】
以上によって、既述した図2の(c)の2段で千鳥の1次電子ビームを用いてサンプル9を走査しつつ該サンプル9を直角方向にステージ9で一定速度で移動することを繰り返すことにより、スワス1、2、3、4に示す2段の短冊状の2次電子画像(図8の(a);2段目は少し下に位置)をそれぞれ生成し、これらを合成した1枚の2次電子画像(図8の(b))を生成することが可能となる。
【0085】
尚、図8は1次電子ビームの配列を千鳥という任意の位置にした例を示したが、任意の位置(千鳥)に1次電子ビームを配置する場合においても最終的に1枚の画像を得るために複数のスワスのアライメントが必要なので、少なくとも隣接する1次電子ビームが作り出すスワスとオーバーラップする領域を設けることが必要である。オーバーラップ領域があれば、どのように配置していても、お互いの位置関係を精密に定めることが可能となり、1枚の画像に合成することが出来る。しかしながら、加算画像の処理が複雑になるなどデメリットも多いため、単純な列や千鳥配列など予め加算処理などがし易い配列にすることが望ましい。
【0086】
図9は、本発明の動作説明フローチャート(マルチビーム画像の中心座標取得)を示す。
【0087】
図9において、S1は、間隔寸法既知のパターンを用意する。これは、パターン間隔および形状寸法が精密に判明している基準サンプルを用意する。予め同じパターンを作り込んだ導電性を有するフォトマスクやシリコン基板が良い。パターンのサイズや配置間隔はCDSEMあるいは光学的な計測装置で予め測定しておく。測定を簡単にするために、予め電子ビーム偏向中心座標は設計値として判明しているので、後述する図10に示すように、設計上の偏向中心座標の場所にパターンを配置した基準サンプルを利用すると容易に校正できる。パターンサイズは任意であるが、プロセス変動が生じても中心位置が正確に出るように左右上下対称のパターンが望ましい。
【0088】
S2は、ステージ停止状態で画像を取得する。これは、図1のステージ9を停止した状態でS1で用意したパターンを持つ基板に対して複数の1次電子ビームの走査を行い、パターンの画像を取得する。
【0089】
S3は、取得された画像と間隔寸法位置のパターンを比較する。
【0090】
S4は、各電子ビーム走査の中心座標を算出する。これらS3,S4は、S2で取得した画像と、基準サンプル画像、あるいは設計データとをパターンマッチング等を用いて比較して中心位置のズレを算出する。位置ズレ量と基準サンプルの設計データから複数の各1次電子ビームの偏向中心座標を算出する。
【0091】
以上によって、複数の1次電子ビームが図1のサンプル8の表面を走査する該各1次電子ビームの走査中心座標(後述する図10参照)を実測することが可能となる。
【0092】
図10は、本発明の動作説明図(マルチビーム走査方向とステージ移動方向)を示す。
【0093】
図10において、電子ビーム走査方向は図1の複数の1次電子ビームがサンプル8の表面をここでは一次元走査する方向である。
【0094】
ステージ移動方向(一定速度)は、図1のサンプル8を搭載したステージ9が一定方向に一定速度で走査(移動)する方向である。
【0095】
1段目アパチャーは、既述した図2の(b)の2段の場合の第1段目のアパチャー(1次電子ビームに対応)である。
【0096】
2段目アパチャーは、既述した図2の(b)の2段の場合の第2段目のアパチャー(1次電子ビームに対応)である。
【0097】
各ビームの偏向中心対応座標は、各アパチャー(各1次電子ビーム)に対応する中心位置座標を示し、図示のように、
・1段目アパチャー:(X1,Y1)、(X2,Y1)、(X3,Y1)、(X4,Y1)
・2段目アパチャー:(X1,Y2)、(X2,Y2)、(X3,Y2)、(X4,Y4)
と表記する。
【0098】
以上のように、図2の(b)の2段の2次電子ビームの場合であって、図10に示す、2段で各段が4つの場合には該図10に示すように、1段目アパチャー、2段目アパチャーによって生成される2段のそれぞれ4つの1次電子ビームの偏向中心座標を図示のように定義し、既述した図9のフローチャートに従い、間隔寸法既知パターンを作成し、これのパターンの画像をそれぞれ取得して比較することにより、2段の各4つの1次電子ビームの偏向中心座標を実測して記録することが可能となる。
【0099】
図11は、本発明の動作説明図(ステージ移動のずれ量および回転量の測定)を示す。
【0100】
図11の(a)はXY位置測定用のレーザ干渉計31の位置関係の例を示し、図11の(b)は回転測定用のレーザ干渉計31の位置関係の例を示す。
【0101】
図11の(a)において、干渉計X1は、ステージ9のX方向の位置の距離を精密測定できるように図示のように配置すると共にステージ側にミラーを配置する。
【0102】
干渉計Y1は、ステージ9のY方向の位置の距離を精密測定できるように図示のように配置すると共にステージ側にミラーを配置する。
【0103】
以上のように、干渉計X1,Y1を配置することにより、ステージ9のX方向、Y方向の距離(位置)をリアルタイムに精密に実測して記録することが可能となる(図3参照)。
【0104】
図11の(b)において、干渉計X1は、ステージ9のX方向の位置の距離を精密測定できるように図示のように配置すると共にステージ側にミラーをそれぞれ配置すると共にステージ側にミラーを配置する。
【0105】
干渉計Y1、Y2は、ステージ9のY方向の位置の距離を精密測定できるように図示のように、離れて回転角度が実測できるようにそれぞれ配置すると共にステージ側にミラーを配置する。
【0106】
以上のように、干渉計X1,Y1、Y2を配置することにより、ステージ9の回転をリアルタイムに精密に実測することが可能となる(図3参照)。
【0107】
図12は、本発明のステージの傾斜補正説明図を示す。これは、既述した図1のステージ9の例を示し、ステージZ1(円錐)、ステージZ2(円錐)、ステージZ3(平坦)の3点支持のステージの例を示す。3点支持する各ステージがピエゾ素子に電圧を印加することにより収縮して任意の距離に外部から任意に調整できる構造となっている。
【0108】
詳細に説明すれば、図12は独立した3つの同じ性能を持つピエゾアクチュエータで構成され、サンプル中心に対して3点支持が出来るように配置されている。
【0109】
3つのピエゾアクチュエータの1つの端部はXYステージの可動部表面に支持点を持ち、もう一端はサンプルを支えるホルダーに接続されている。接続部は3点支持が正確に行われるように成形されている。例としては滑らない様に表面加工したルビー球を用いたり、円錐状にした金属やプラスチックを利用したりできる。出来るだけ大きな摩擦係数になるように表面処理することが望ましい。3つの支持部のうち少なくとも1つはサンプルにバイアス電圧を印加するために必要な回路を形成するため導電性を有している。
【0110】
3つのピエゾアクチュエータを駆動するために3つの独立した制御回路を有し、高さセンサ151、152からの信号をPCで処理しその処理結果を用いてPC等からの指令することで所望の距離高さを変えることが出来る。それぞれのアクチュエータには容量センサ等の変位センサが内蔵されており、実際に生じた変位量をモニターしてフィードバックする仕組みとなっておりピエゾ素子の非線形性を補正できるようになっている。位置精度はnmオーダーまで得られる(後述する図190参照)。
【0111】
Z軸制御に必要なストロークは数ミクロンから1000ミクロン程度の範囲である。Z軸ステージで支持することによってサンプルが振動しないように高い剛性を併せ持つ必要がある。サンプルホルダーを含めた変位拡大機構付きピエゾアクチュエータを用いた支持系はmsの高い応答速度と大きな機械剛性を合わせもつため、数百Hz以上の高い共振周波数を有し不要な振動は避けられる仕組みに成っている。そのためフォトマスクのように1kg近くある重いサンプルでも瞬時に水平維持できる。
【0112】
図13は、本発明のステージの蛇行説明図を示す。
【0113】
図13の(a)は蛇行無のステージの様子を模式的に示し、図13の(b)は蛇行が左の場合の様子を模式的に示し、図13の(c)は蛇行が右の場合の様子を模式的に示す。ここで、縦方向はステージ移動方向を示し、横方向は電子ビーム走査方法を示す。
【0114】
図13の(a)において、ステージ9は、一定方向(縦方向)のステージ移動方向に対して蛇行がない様子を模式的に示し、補正は必要ない場合を示す。
【0115】
図13の(b)において、ステージ9は、一定方向(縦方向)のステージ移動方向に対して蛇行が左にある様子を模式的に示し、補正が必要ある場合を示す。この場合には、右に蛇行を補正する(図3のステージずれ量を参照)。
【0116】
図13の(c)において、ステージ9は、一定方向(縦方向)のステージ移動方向に対して蛇行が右にある様子を模式的に示し、補正が必要ある場合を示す。この場合には、左に蛇行を補正する(図3のステージずれ量を参照)。
【0117】
一般にXYステージは駆動力の大きなミクロン以上の移動を高速で行うためのダイレクトモータ、サーボモータ、ステッピングモーター、超音波モーター、リニアモーターなどとミクロン以下nmオーダーの微動が可能なピエゾアクチュエータやブレーキを組み合わせたものが多い。
【0118】
XYステージはお互いに独立したX軸移動機構、Y軸移動機構を組み合わせることによってXY方向に移動自由度を持ち指定された座標点に移動する機能を有している。例えば、XYステージに対してY軸に沿って移動するように移動命令を与えたとする。完璧なステージであればX方向には移動せずY軸方向にのみ移動するが、図13に示したように実際のステージではX方向にも移動が生じる。
【0119】
ステージの移動精度を規定するガイドレールはセラミックなどで出来ており、非常に高精度な機械加工が施されているがミクロン程度の機械精度誤差がある。ステージが例えばY軸に沿って(X1,Y1)から(X1,Y2)に向かって移動すると、ステージ移動途中でステージの中心座標はX軸方向に左右に蛇行運動する。マルチビーム法では予め2次元に各電子ビームの間隔が決められて配置された1次電子ビーム群を利用する。連続検査中にステージが蛇行すると、1次電子ビームが照射される場所が意図した場所とは異なり不均一に1次電子ビームが照射され検査に不具合が生じる。
【0120】
図14は、本発明のステージの蛇行補正説明図を示す。
【0121】
図14の(a)は補正前の画像の例を模式的に示し、図14の(b)は補正後の画像の例を模式的に示す。ここで、縦方向はステージ移動方向を表し、横方向は1次電子ビームの走査方向ヲ表す。
【0122】
図14の(a)において、各画像は、ステージの蛇行毎に図示の矩形領域の画像が左右に蛇行する様子を模式的に示したものである。
【0123】
図14の(b)において、各画像は、ステージの蛇行毎に図示の矩形領域の画像が補正された後の様子を模式的に示したものである。画像に蛇行はなく、ステージ移動方向に同じ幅で走査されている様子が分かる。
【0124】
以上のように、既述した図13で説明したように、ステージ9の蛇行(ステージ移動方向と直角方向のずれ量、更に、ステージ移動方向のずれ量)がある場合(検出された場合)には、これら蛇行分だけステージを移動(あるいは検出した画像を移動)する補正を行い、図14の(b)のように見かけ上、蛇行がないように補正することが可能となる。
【0125】
図15は、本発明のステージ回転説明図を示す。
【0126】
図15の(a)は水平回転が無の様子を模式的に示し、図15の(b)は水平回転が右の場合の様子を模式的に示し、図15の(c)は水平回転が左の場合の様子を模式的に示す。ここで、縦方向はステージ移動方向を示し、横方向は電子ビーム走査方法を示す。
【0127】
図15の(a)において、ステージ9は、一定方向(縦方向)のステージ移動方向に対して水平方向の回転がない様子を模式的に示し、補正は必要ない場合を示す。
【0128】
図15の(b)において、ステージ9は、一定方向(縦方向)のステージ移動方向に対して水平方向の回転が右にある様子を模式的に示し、補正が必要ある場合を示す。この場合には、左に水平方向の回転を補正する(図3のステージ回転量を参照)。
【0129】
図15の(c)において、ステージ9は、一定方向(縦方向)のステージ移動方向に対して水平方向の回転が左にある様子を模式的に示し、補正が必要ある場合を示す。この場合には、右に水平方向の回転を補正する(図3のステージ回転量を参照)。
【0130】
一般にステージ9は可動部を挟んで左右対称に2つのレールの上に載っている。左右のレールの特性は必ずしも同じではなく、摩擦も異なるため、レールに沿ってステージ9を移動した場合、左右のレールでは移動量が異なってくる。そのため、ステージ9の可動部はXY平面内で僅かに回転揺れを生じる。これを本発明では補正する。
【0131】
図16は、本発明のステージの回転補正説明図を示す。
【0132】
図16の(a)は補正前の画像の例を模式的に示し、図16の(b)は補正後の画像の例を模式的に示す。ここで、縦方向はステージ移動方向を表し、横方向は1次電子ビームの走査方向ヲ表す。
【0133】
図16の(a)において、各画像は、ステージの水平方向の回転毎に図示の矩形領域の画像が左回転あるいは右回転する様子を模式的に示したものである。
【0134】
図16の(b)において、各画像は、ステージの水平方向の回転毎に図示の矩形領域の画像が補正された後の様子を模式的に示したものである。画像の水平方向の回転はなく、ステージ移動方向に同じ向きで走査されている様子が分かる。
【0135】
以上のように、既述した図15で説明したように、ステージ9の水平方向の回転(ステージ移動方向に対する回転方向のずれ量)がある場合(検出された場合)には、これら水平方向の回転分だけステージを逆方向に回転(あるいは検出した画像を回転)する補正を行い、図16の(b)のように見かけ上、ステージの移動方向に対して水平方向の回転がないように補正することが可能となる。
【0136】
図17は、本発明のステージの傾き補正説明図(Zステージによる高さ制御および自動水平だし)を示す。
【0137】
図17の(a)は補正前の様子を模式的に示し、図17の(b)は補正後の様子を模式的に示す。ここで、横軸はステージの移動方向Y1からY2を表し、縦軸はそのときの高さZを表す。
【0138】
図17の(a)において、図示の凸状の曲線は、補正前の曲線の例を示し、ステージ9が座標Y1から座標Y2まで一定速度で移動したときの高さZの座標の変化の様子を模式的に示したものである。ここでは、凸状に高さZが変化していることが判明する(実測される(図3のステージた高さ参照))。
【0139】
図17の(b)において、図示の曲線は、補正後の曲線の例を示し、ステージ9の高さZを補正した後の様子を示す。これは、補正前の図17の(a)に示す凸状の曲線のように、ステージ9が座標Y1から座標Y2まで一定速度で移動したときの高さZの座標が変化した場合(図3のステージ高さ参照)、リアルタイム検出された高さZに対応して、当該高さZを自動補正する。
【0140】
以上のように、ステージ9が一定方向に一定速度で移動した場合にその高さZをリアルタイム検出してその高さ変化分だけステージの高さを自動補正することが可能となる(後述する図18参照)。
【0141】
尚、ステージ9のZ方向の移動に対して、上述した図17で説明したステージ9のZ方向の補正を行わずに、対物レンズ6(あるいは図示外の補助対物レンズ)を制御して自動フォーカスおよび自動倍率補正を行う方法を採用してもよい。
【0142】
図18は、本発明のステージの高さ補正説明図を示す。
【0143】
図18の(a)は補正無しの状態を模式的に示し、図18の(b)は補正有りの状態を模式的に示す。ここで、縦方向は電子ビーム走査方向であり、横方向はステージの移動方向である。
【0144】
図18の(a)において、図示の補正無しの場合の先端部、中央部、後端部の各画像は、ステージ9の移動(図17の座標Y1(先端部)から座標Y2(後端部)に伴い発生した高さZの変化に伴う画像のボケを模式的に表したものである。
【0145】
図18の(b)において、図示の補正有りの場合の先端部、中央部、後端部の各画像は、ステージ9の移動(図17の座標Y1(先端部)から座標Y2(後端部)に伴い発生した高さZの変化に伴う高さ補正を行った後の画像(ボケなし)を模式的に表したものである。
【0146】
以上のように、図18の(a)の補正無のボケた画像について、リアルタイムに高さZを検出してステージ9の高さを自動補正して図17の(b)の補正有りの画像に自動補正することが可能となる。
【0147】
図19は、本発明のサンプル高さおよび傾き補正説明図を示す。これは、既述した図1図17のステージを組み込んだ実施例構造図の例を示す。
【0148】
図19において、1次電子ビーム1-1は、複数の1次電子ビームを表す。
【0149】
2次電子ビーム1-2は、複数の1次電子ビーム1-1をサンプル51に照射したときに放出された複数の2次電子ビームを表す。
【0150】
高さセンサー151、152は、サンプル51の高さをリアルタイム測定して出力する装置であって、レーザ干渉計などである。
【0151】
サンプルホルダー52は、サンプル8を保持するものである。
【0152】
ピエゾ圧電素子(Z1)51、(Z2)52,(Z3)55は、既述した図12のステージZ1(円錐)、ステージZ2(円錐)、ステージZ3(平坦)に対応するものであって、3点支持でサンプルホルダー52を支持するものである。
【0153】
以上の構造のもとで、既述した図12で説明したように、サンプルホルダー52を3点支持するピエゾ圧電素子(Z1)51、(Z2)52,(Z3)55のいずれかに制御電圧を印加して所望の高さZにリアルタイムかつ超高速にサンプルホルダー52の高さ、傾きを自動補正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0154】
図1】本発明の1実施例構造図である。
図2】本発明のマルチビーム配列の種類例である。
図3】本発明のデータテーブル例である。
図4】本発明のマルチビーム作成例である。
図5】本発明のマルチビーム検出説明図である。
図6】本発明のマルチビーム画像取得・合成説明図(1段)である。
図7】本発明のマルチビーム画像取得・合成説明図(2段)である。
図8】本発明のマルチビーム画像取得・合成説明図(千鳥)である。
図9】本発明の動作説明フローチャート(マルチビーム画像の中心座標取得)である。
図10】本発明の動作説明図(マルチビーム走査方向とステージ移動方向)である。
図11】本発明の動作説明図(ステージ移動のずれ量および回転量の測定)である。
図12】本発明のステージの傾斜補正説明図である。
図13】本発明のステージの蛇行説明図である。
図14】本発明のステージの蛇行補正説明図である。
図15】本発明のステージの回転説明図である。
図16】本発明のステージの回転補正説明図である。
図17】本発明のステージの傾き補正説明図である。
図18】本発明のステージの高さ補正説明図である。
図19】本発明のサンプル高さおよび傾き補正説明図である。
【符号の説明】
【0155】
1:電子銃
2:ブランキング装置
3:照明レンズ
3-1:マルチビームアパチャー
3-2:マルチ電子ビーム
4:対物アパチャー
5:ビームスプリッタ
5-1:静電偏向器
5-2:電磁偏向器
6:対物レンズ
7:偏向装置
8:サンプル
8-1:ミラー
9:XYZθステージ(ステージ)
10:真空チャンバー
10-1:真空ポンプ
11:アライメント
12:投影レンズ
13:振り戻し偏向器
14:電子検出沿器
52:サンプルホルダー
53、54、55;ピエゾ圧電素子
151、152:高さセンサー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19