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特開2024-50697抗STEAP2抗体、抗体-薬物複合体、およびSTEAP2とCD3を結合する二重特異性抗原結合分子、ならびにそれらの使用
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  • 特開-抗STEAP2抗体、抗体-薬物複合体、およびSTEAP2とCD3を結合する二重特異性抗原結合分子、ならびにそれらの使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050697
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】抗STEAP2抗体、抗体-薬物複合体、およびSTEAP2とCD3を結合する二重特異性抗原結合分子、ならびにそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20240403BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240403BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
C07K16/30 ZNA
A61P35/00
A61K39/395 Y
A61K39/395 E
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024009901
(22)【出願日】2024-01-26
(62)【分割の表示】P 2022063698の分割
【原出願日】2017-09-22
(31)【優先権主張番号】62/399,256
(32)【優先日】2016-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ラッジ
(72)【発明者】
【氏名】フランク・デルフィーノ
(72)【発明者】
【氏名】ラウリック・ハーバー
(72)【発明者】
【氏名】エリック・スミス
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ・アール・カーシュナー
(72)【発明者】
【氏名】アリソン・クロフォード
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ニトリ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ヒトSTEAP2に結合する新規全長ヒトIgG抗体(単一特異性抗体)を提供する。
【解決手段】ヒト前立腺の6回膜貫通上皮抗原2(STEAP2)に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片であって:前記抗体または抗原結合断片が、特定の配列からなる群から選択される重鎖可変領域と軽鎖可変領域のアミノ酸配列対内に含まれている相補性決定領域(CDRs)を含む;上記単離された抗体またはその抗原結合断片を提供する。また、前記単離された抗体もしくはその抗原結合断片、および薬学的に許容される担体もしくは希釈剤、を含む、対象においてSTEAP2を発現する癌を治療する際に用いるための、医薬組成物を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗STEAP2抗体またはその抗原結合断片と細胞傷害性薬剤とを含む抗体-薬物複合体(ADC)であって、前記抗体または抗原結合断片および前記細胞傷害性薬剤がリンカーを介して共有結合する、抗体-薬物複合体。
【請求項2】
本明細書に記載のインビトロFACS結合アッセイにより測定した約50nM未満のEC50で、ヒト前立腺の6回膜貫通上皮抗原2(STEAP2)発現細胞に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
ヒトSTEAP2発現細胞によって内在化される、請求項2に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体が完全ヒト型である、請求項3に記載の単離された抗体。
【請求項5】
前記抗体またはその抗原結合断片が、ヒトSTEAP2への結合について、表1に記載のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と競合する、請求項2~4のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項6】
前記参照抗体が、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/58、74/58、82/58、90/58、98/58、106/114、122/130、138/146、154/162、170/178、186/194、202/210、218/226、234/242、250/258、266/274、282/290、298/306、314/322、330/338、346/354、362/370、および378/386からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、請求項5に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗体またはその抗原結合断片が、表1に記載のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と同じ、ヒトSTEAP2上のエピトープに結合する、請求項2~6のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/58、74/58、82/58、90/58、98/58、106/114、122/130、138/146、154/162、170/178、186/194、202/210、218/226、234/242、250/258、266/274、282/290、298/306、314/322、330/338、346/354、362/370、および378/386からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と同じ、ヒトSTEAP2上のエピトープに結合する、請求項7に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項9】
ヒトSTEAP2に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体または抗原結合断片が、(a)表1に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR)と、(b)表1に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)のCDRと、を含む、単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/58、74/58、82/58、90/58、98/58、106/114、122/130、138/146、154/162、170/178、186/194、202/210、218/226、234/242、250/258、266/274、282/290、298/306、314/322、330/338、346/354
、362/370、および378/386からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対の重鎖CDRおよび軽鎖CDRを含む、請求項9に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項11】
前記抗体または抗原結合断片が、それぞれ、配列番号4-6-8-12-14-16、20-22-24-28-30-32、36-38-40-44-46-48、52-54-56-60-62-64、68-70-72-60-62-64、76-78-80-60-62-64、84-86-88-60-62-64、92-94-96-60-62-64、100-102-104-60-62-64、108-110-112-116-118-120、124-126-128-132-134-136、140-142-144-148-150-152、156-158-160-164-166-168、172-174-176-180-182-184、188-190-192-196-198-200、204-206-208-212-214-216、220-222-224-228-230-232、236-238-240-244-246-248、252-254-256-260-262-264、268-270-272-276-278-280、284-286-288-292-294-296、300-302-304-308-310-312、316-318-320-324-326-328、332-334-336-340-342-344、348-350-352-356-358-360、364-366-368-372-374-376、および380-382-384-388-390-392からなる群から選択されるHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含む、請求項10に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項12】
ヒトSTEAP2に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体または抗原結合断片が、(a)配列番号2、18、34、50、66、74、82、90、98、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、282、298、314、330、346、362、および378からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)と、(b)配列番号10、26、42、58、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、290、306、322、338、354、370、および386からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)と、を含む、単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/58、74/58、82/58、90/58、98/58、106/114、122/130、138/146、154/162、170/178、186/194、202/210、218/226、234/242、250/258、266/274、282/290、298/306、314/322、330/338、346/354、362/370、および378/386からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、請求項12に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項14】
前記抗STEAP2抗体または抗原結合断片が、請求項2~13のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片である、請求項1に記載のADC。
【請求項15】
前記細胞傷害性薬剤が、アウリスタチン、メイタンシノイド、ツブリシン、トマイマイシン誘導体、またはドラスタチン誘導体から選択される、請求項1または14に記載のADC。
【請求項16】
前記細胞傷害性薬剤が、MMAEもしくはMMAFから選択されるアウリスタチン、またはDM1もしくはDM4から選択されるメイタンシノイドである、請求項1または14
に記載のADC。
【請求項17】
前記細胞傷害性薬剤が、式(I)または式(II)の構造を有するメイタンシノイドである、請求項1または14に記載のADC。
【請求項18】
前記メイタンシノイドが、
【化1】
である、請求項17に記載のADC。
【請求項19】
前記メイタンシノイドが、
【化2】
である、請求項17に記載のADC。
【請求項20】
抗STEAP2抗体またはその断片と次式とを含み、
【化3】
式中、
【化4】
が、前記抗STEAP2抗体またはその断片への結合である、請求項1または14に記載のADC。
【請求項21】
抗STEAP2抗体またはその断片と次式とを含み、
【化5】
式中、
【化6】
が、前記抗STEAP2抗体またはその断片への結合である、請求項1または14に記載のADC。
【請求項22】
抗STEAP2抗体またはその断片と次式とを含み、
【化7】
式中、
【化8】
が、前記抗STEAP2抗体またはその断片への結合である、請求項1または14に記載のADC。
【請求項23】
結合が、システイン残基の硫黄成分を介して前記抗体またはその断片と接触する、請求項20~22のいずれか一項に記載のADC。
【請求項24】
抗STEAP2抗体またはその断片と、
【化9】
それらの混合物と、を含み、
式中、
【化10】
が、前記抗STEAP2抗体またはその断片への結合である、請求項1または14に記載のADC。
【請求項25】
前記結合が、リジン残基の窒素成分を介して前記抗体またはその断片と接触する、請求項24記載のADC。
【請求項26】
前記ADCが、抗STEAP2抗体またはその断片につき1~4つの細胞傷害性薬剤を含む、請求項1または14~25のいずれか一項に記載のADC。
【請求項27】
請求項1または14~26のいずれか一項に記載の抗体-薬物複合体、および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む薬学的組成物。
【請求項28】
ヒトCD3に結合する第1の抗原結合ドメインおよびヒトSTEAP2に結合する第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗原結合分子であって、前記第2の抗原結合ドメインが、請求項2~13のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片に由来する、二重特異性抗原結合分子。
【請求項29】
ヒトCD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、ヒトSTEAP2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインと、を含む二重特異性抗原結合分子。
【請求項30】
前記第1の抗原結合ドメインが、ヒトCD3を発現するヒト細胞およびカニクイザルCD3を発現するカニクイザル細胞に結合する、請求項28または請求項29に記載の二重
特異性抗原結合分子。
【請求項31】
前記第2の抗原結合ドメインが、ヒトSTEAP2を発現するヒト細胞に結合する、請求項28または請求項29に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項32】
前記第1の抗原結合ドメインおよび前記第2の抗原結合ドメインのそれぞれが完全ヒト型である、請求項28~31のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項33】
前記抗原結合分子が、ヒトCD3とヒトSTEAP2の両方に結合し、STAP2発現細胞のT細胞媒介性細胞死滅を誘導する、請求項28または請求項29に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項34】
前記抗原結合分子が、ヒト前立腺癌異種移植片を保有する免疫無防備状態マウスにおける腫瘍増殖を阻害する、請求項28または請求項29に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項35】
二重特異性抗体またはその二重特異性抗原結合断片である、請求項28~34のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項36】
ヒトSTEAP2に特異的に結合する前記第2の抗原結合ドメインが、配列番号2、18、34、50、66、74、82、90、98、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、282、298、314、330、346、362、および378からなる群から選択される重鎖可変領域(HCVR)由来の重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、配列番号10、26、42、58、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、290、306、322、338、354、370、および386からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)由来の軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)と、を含む、請求項28~35のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項37】
ヒトSTEAP2に特異的に結合する前記第2の抗原結合ドメインが、3つの重鎖相補性決定領域(A2-HCDR1、A2-HCDR2、およびA2-HCDR3)と、3つの軽鎖相補性決定領域(A2-LCDR1、A2-LCDR2、およびA2-LCDR3)と、を含み、A2-HCDR1が、配列番号4、20、36、52、68、76、84、92、100、108、124、140、156、172、188、204、220、236、252、268、284、300、316、332、348、364、および380からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A2-HCDR2が配列番号6、22、38、54、70、78、86、94、102、110、126、142、158、174、190、206、222、238、254、270、286、302、318、334、350、366、および382からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A2-HCDR3が配列番号8、24、40、56、72、80、88、96、104、112、128、144、160、176、182、208、224、240、256、272、288、304、320、336、352、368、および384からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A2-LCDR1が配列番号12、28、44、60、116、132、148、164、180、196、212、228、244、260、276、292、308、324、340、356、372、および388からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A2-LCDR2が配列番号14、30、46、62、118、134、150、166、182、198、214、230、246、262、278、294、310、326、342、358、374、および390からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A2-LCDR3が配列番号16、32、48、64、120、136、152、168、184、200、216、232、248、2
64、280、296、312、328、344、360、376、および392からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項28~35のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項38】
ヒトSTEAP2に特異的に結合する前記第2の抗原結合ドメインが、配列番号250/258からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対の重鎖CDRおよび軽鎖CDRを含む、請求項28~35のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項39】
ヒトCD3に特異的に結合する前記第1の抗原結合ドメインが、表9、表11、または表15に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)由来の重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、表1、表9、表12、または表17に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)由来の軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)と、を含む、請求項28~35のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項40】
ヒトCD3に特異的に結合する前記第1の抗原結合ドメインが、配列番号1730、1762、および1866からなる群から選択される重鎖可変領域(HCVR)由来の重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、配列番号258のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)由来の軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)と、を含む、請求項28~35のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項41】
ヒトCD3に特異的に結合する前記第1の抗原結合ドメインが、3つの重鎖相補性決定領域(A1-HCDR1、A1-HCDR2、およびA1-HCDR3)と、3つの軽鎖相補性決定領域(A1-LCDR1、A1-LCDR2、およびA1-LCDR3)と、を含み、
A1-HCDR1は配列番号1732、1764、および1868からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A1-HCDR2は配列番号1734、1766、および1870からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A1-HCDR3は配列番号1736、1768、および1872からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A1-LCDR1は配列番号260のアミノ酸配列を含み、A1-LCDR2は配列番号262のアミノ酸配列を含み、A1-LCDR3は配列番号264のアミノ酸配列を含む、請求項28~35のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項42】
ヒトCD3に特異的に結合する前記第1の抗原結合ドメインが、配列番号1730/258、1762/258、および1866/258からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対の重鎖CDRおよび軽鎖CDRを含む、請求項28~35のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項43】
ヒトCD3に特異的に結合する前記第1の抗原結合ドメインが、3つの重鎖相補性決定領域(A1-HCDR1、A1-HCDR2、およびA1-HCDR3)と、3つの軽鎖相補性決定領域(A1-LCDR1、A1-LCDR2、およびA1-LCDR3)と、を含み、ヒトSTEAP2に特異的に結合する前記第2の抗原結合ドメインが、3つの重鎖相補性決定領域(A2-HCDR1、A2-HCDR2、およびA2-HCDR3)と、3つの軽鎖相補性決定領域(A2-LCDR1、A2-LCDR2、およびA2-LCDR3)と、を含み、
A1-HCDR1は配列番号1732、1764、および1868からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A1-HCDR2は配列番号1734、1766、および1870からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A1-HCDR3は配列番号17
36、1768、および1872からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A1-LCDR1は配列番号260のアミノ酸配列を含み、A1-LCDR2は配列番号262のアミノ酸配列を含み、A1-LCDR3は配列番号264のアミノ酸配列を含み、
A2-HCDR1は配列番号252のアミノ酸配列を含み、A2-HCDR2は配列番号254のアミノ酸配列を含み、A2-HCDR3は配列番号256のアミノ酸配列を含み、A2-LCDR1は配列番号260のアミノ酸配列を含み、A2-LCDR2は配列番号262のアミノ酸配列を含み、A2-LCDR3は配列番号264のアミノ酸配列を含む、請求項28~35のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項44】
ヒトCD3に特異的に結合する前記第1の抗原結合ドメインが、FR1(配列番号1903)、FR2(配列番号1904)、FR3(配列番号1905)、およびFR4(配列番号1906)から選択されるアミノ酸配列を有する可変ドメインフレームワーク領域を含む重鎖を含む、請求項28~35のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項45】
ヒトCD3に特異的に結合する前記第1の抗原結合ドメインが、配列番号1907-1908-19091のアミノ酸配列を有するHCDR1-HCDR2-HCDR3を含むHCVRを含む、請求項28~35のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項46】
前記第2の抗原結合ドメインが、ヒトSTEAP2への結合について、3つの重鎖相補性決定領域(A2-HCDR1、A2-HCDR2、およびA2-HCDR3)と、3つの軽鎖相補性決定領域(A2-LCDR1、A2-LCDR2、およびA2-LCDR3)と、を含む参照抗原結合タンパク質と競合し、A2-HCDR1は配列番号252のアミノ酸配列を含み、A2-HCDR2は配列番号254のアミノ酸配列を含み、A2-HCDR3は配列番号256のアミノ酸配列を含み、A2-LCDR1は配列番号260のアミノ酸配列を含み、A2-LCDR2は配列番号262のアミノ酸配列を含み、A2-LCDR3は配列番号264のアミノ酸配列を含む、請求項28~35のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項47】
前記第2の抗原結合ドメインが、ヒトSTEAP2への結合について、配列番号250のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)と、配列番号258のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)と、を含む参照抗原結合タンパク質と競合する、請求項28~35のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項48】
前記第1の抗原結合ドメインが、ヒトCD3への結合について、3つの重鎖相補性決定領域(A1-HCDR1、A1-HCDR2、およびA1-HCDR3)と、3つの軽鎖相補性決定領域(A1-LCDR1、A1-LCDR2、およびA1-LCDR3)と、を含む参照抗原結合タンパク質と競合し、A1-HCDR1は配列番号1732、1764、および1868からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A1-HCDR2は配列番号1734、1766、および1870からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A1-HCDR3は配列番号1736、1768、および1872からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A1-LCDR1は配列番号260のアミノ酸配列を含み、A1-LCDR2は配列番号262のアミノ酸配列を含み、A1-LCDR3は配列番号264のアミノ酸配列を含む、請求項28~35のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項49】
前記第1の抗原結合ドメインが、ヒトCD3への結合について、配列番号1730、1762、および1866からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)と、配列番号258のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)と、を含む参照抗原結合タンパク質と競合する、請求項28~35のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項50】
前記第1の抗原結合ドメインが、ヒトCD3への結合について、配列番号1730、1762、および1866からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)と、配列番号258のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)と、を含む参照抗原結合タンパク質と競合し、前記第2の抗原結合ドメインが、ヒトSTEAP2への結合について、配列番号250のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)と、配列番号258のアミノ酸を含む軽鎖可変領域(LCVR)と、を含む参照抗原結合タンパク質と競合する、請求項28~35のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項51】
請求項2~13のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、または請求項28から50のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子、および薬学的に許容される担体もしくは希釈剤、を含む薬学的組成物。
【請求項52】
対象において癌を治療する方法であって、前記対象に請求項51に記載の薬学的組成物を投与することを含む、方法。
【請求項53】
前記癌が、前立腺癌、膀胱癌、子宮頸癌、肺癌、結腸癌、腎臓癌、乳癌、膵臓癌、胃癌、子宮癌、および卵巣癌からなる群から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記癌が前立腺癌、任意選択で去勢抵抗性前立腺癌である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
STEAP2の発現に関連する疾患または障害の治療における、請求項27または請求項51に記載の薬学的組成物の使用。
【請求項56】
前記疾患または障害が癌である、請求項55に記載の使用。
【請求項57】
医療で使用するための、請求項2~13のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合断片、または請求項28~50のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子を含む化合物。
【請求項58】
前立腺癌の治療に使用するための化合物であって、請求項2~13のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合断片、または請求項28~50のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子を含む、化合物。
【請求項59】
癌の治療に使用するための薬剤の製造のための、請求項2~13のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合断片、または請求項28~50のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子の使用であって、任意選択で前記癌が前立腺癌である、使用。
【請求項60】
医療で使用するための請求項1または14~26のいずれか一項に記載のADCを含む化合物。
【請求項61】
前立腺癌の治療に使用するための化合物であって、請求項1または14~26のいずれか一項に記載のADCを含む、化合物。
【請求項62】
癌の治療に使用するための薬剤の製造のための、請求項1または14~26のいずれか一項に記載のADCの使用であって、任意選択で前記癌が前立腺癌である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照
この出願は、2017年9月22日に作成され、739,964バイトを含むファイル10296WO01-Sequence.txtとしてコンピュータ可読形式で提出された配列表を参照により組み入れる。
【0002】
本発明は、前立腺の6回膜貫通上皮抗原2(STEAP2)に特異的な抗体およびその抗原結合断片、ならびにそれらの使用方法に関する。本発明はまた、STEAP2およびCD3を結合する二重特異性抗原結合分子、ならびにそれらの使用方法に関する。本発明はさらに、抗STEAP2抗体またはその断片および治療薬(例えば細胞傷害性薬剤)を含む抗体-薬物複合体に関する。
【背景技術】
【0003】
STEAP-2、メタロレダクターゼSTEAP2、前立腺癌関連タンパク質1、転移性前立腺癌において上方制御されるタンパク質、6回膜貫通前立腺タンパク質1(STAMP1)、および098P4B6としても知られる前立腺の6回膜貫通上皮抗原2(STEAP2)は、正常および悪性の前立腺細胞において上方制御された内在性6回膜貫通のタンパク質である。ゴルジ複合体と原形質膜との間のシャトルとして機能するSTEAP2は、鉄および銅を還元して細胞へのそれらの移入を促進するメタロレダクターゼである。STEAP2は主に前立腺の上皮細胞に局在している。STEAP2はまた、正常な心臓、脳、膵臓、卵巣、骨格筋、乳腺、精巣、子宮、腎臓、肺、気管、結腸、および肝臓において発現される。STEAP2は、前立腺腫瘍、膀胱腫瘍、子宮頸腫瘍、肺腫瘍、結腸腫瘍、腎臓腫瘍、乳腫瘍、膵臓腫瘍、胃腫瘍、子宮腫瘍、および卵巣腫瘍を含む癌性組織において過剰発現される(非特許文献1、特許文献1、特許文献2)。
【0004】
CD3は、T細胞受容体複合体(TCR)と共にT細胞上に発現されるホモ二量体またはヘテロ二量体抗原であり、T細胞活性化に必要とされる。機能的CD3は、4つの異なる鎖:イプシロン、ゼータ、デルタ、およびガンマのうちの2つの二量体会合から形成される。CD3の二量体配置は、ガンマ/イプシロン、デルタ/イプシロン、およびゼータ/ゼータを含む。CD3に対する抗体はT細胞上でCD3をクラスター化し、それによってペプチド負荷MHC分子によるTCRの関与と同様の方法でT細胞活性化を引き起こすことが示されている。したがって、抗CD3抗体はT細胞の活性化を含む治療目的のために提案されている。さらに、CD3および標的抗原に結合することができる二重特異性抗体は、標的抗原を発現する組織および細胞に対するT細胞免疫応答を標的とすることを含む治療的使用のために提案されている。
【0005】
抗体-薬物複合体を含むSTEAP2を標的とする抗原結合分子、ならびにSTEAP2およびCD3の両方に結合する二重特異性抗原結合分子は、STEAP2を発現する細胞を特異的に標的化しT細胞媒介的に死滅することが望まれる治療設定において有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】Challita-Eid-P.M.,et al.,2003,WO03/087306
【特許文献2】Emtage,P.C.R.,2005,WO2005/079490
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Gomes,I.M.et al.,2012,Mol.Cancer Res.10:573-587
【発明の概要】
【0008】
第1の態様において、本発明は、ヒトSTEAP2に結合する抗体およびその抗原結合断片を提供する。本発明のこの態様による抗体は、とりわけ、STEAP2を発現する細胞を標的とするのに有用である。本発明はまた、ヒトSTEAP2およびヒトCD3に結合する二重特異性抗体およびその抗原結合断片を提供する。本発明のこの態様による二重特異性抗体は、例えばSTEAP2を発現する細胞のT細胞媒介性死滅が有益または望ましい状況下で、とりわけ、CD3を発現するT細胞を標的とし、T細胞活性化を刺激するのに有用である。例えば、二重特異性抗体はCD3媒介性T細胞活性化を前立腺腫瘍細胞のような特異的STEAP2発現細胞に誘導することができる。
【0009】
本発明の例示的な抗STEAP2抗体を本明細書の表1および表2に列挙する。表1は、重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)のアミノ酸配列識別子、ならびに例示的な抗STEAP2抗体の重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)および軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を示す。表2は、例示的な抗STEAP2のHCVR、LCVR、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3をコードする核酸分子の配列識別子を示す。
【0010】
本発明は、表1に列挙されたHCVRアミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むHCVR、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0011】
本発明はまた、表1に列挙されたLCVRアミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むLCVR、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0012】
本発明はまた、表1に列挙されたLCVRアミノ酸配列のいずれかと対形成した、表1に列挙されたHCVRアミノ酸配列のいずれかを含む、HCVRおよびLCVRのアミノ酸配列対(HCVR/LCVR)を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。ある特定の実施形態によると、本発明は、表1に列挙された例示的な抗STEAP2抗体のいずれかに含有されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。特定の実施形態において、HCVR/LCVRアミノ酸配列対は、配列番号250/258(例えば、H2M11162N)からなる群から選択される。
【0013】
本発明はまた、表1に列挙されたHCDR1アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0014】
本発明はまた、表1に列挙されたHCDR2アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む重鎖CDR2(HC
DR2)を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0015】
本発明はまた、表1に列挙されたHCDR3アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む重鎖CDR3(HCDR3)を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0016】
本発明はまた、表1に列挙されたLCDR1アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1)を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0017】
本発明はまた、表1に列挙されたLCDR2アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2)を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0018】
本発明はまた、表1に列挙されたLCDR3アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0019】
本発明はまた、表1に列挙されたLCDR3アミノ酸配列のいずれかと対形成した表1に列挙されたHCDR3アミノ酸配列のいずれかを含むHCDR3およびLCDR3のアミノ酸配列対(HCDR3/LCDR3)を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。ある特定の実施形態によると、本発明は、表1に列挙された例示的な抗STEAP2抗体のいずれかに含有されるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。特定の実施形態において、HCDR3/LCDR3アミノ酸配列対は、配列番号256/264(例えば、H2M11162N)からなる群から選択される。
【0020】
本発明はまた、表1に列挙された例示的な抗STEAP2抗体のいずれかに含有される6つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。特定の実施形態において、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットは、配列番号252-254-256-260-262-264(例えば、H2M11162N)からなる群から選択される。
【0021】
関連する実施形態において、本発明は、表1に列挙された例示的な抗STEAP2抗体のいずれかによって定義されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対内に含有される6つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。例えば、本発明は、配列番号250/258(例えば、H2M11162N)からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対内に含有されるHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットを含む、抗体またはその抗原結合断片を含む。HCVRアミノ酸配列およびLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するための方法および技術は、当技術分野において周知であり、それらを使用して、本明細書に開示される特定のHCVRアミノ酸配列および/またはLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定することができる。CDRの境界を同定するために使用可能な例示的な規則には、例えば、Kabat定義、Chothia定義、およびAbM定義が含まれる。一般的
には、Kabat定義は配列の可変性に基づいており、Chothia定義は構造ループ領域の位置に基づいており、AbM定義はKabatのアプローチとChothiaのアプローチの間の折衷案である。例えば、Kabat,“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)、Al-Lazikani et al.,J.Mol.Biol.273:927-948(1997)、およびMartin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:9268-9272(1989)を参照されたい。抗体内のCDR配列を同定するために、公開データベースも利用可能である。
【0022】
本発明はまた、抗STEAP2抗体またはその一部をコードする核酸分子を提供する。例えば、本発明は、表1に列挙されたHCVRアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されたHCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0023】
本発明はまた、表1に列挙されたLCVRアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されたLCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0024】
本発明はまた、表1に列挙されたHCDR1アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されたHCDR1核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0025】
本発明はまた、表1に列挙されたHCDR2アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されたHCDR2核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0026】
本発明はまた、表1に列挙されたHCDR3アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されたHCDR3核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0027】
本発明はまた、表1に列挙されたLCDR1アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されたLCDR1核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0028】
本発明はまた、表1に列挙されたLCDR2アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されたLCDR2核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも90%、
少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0029】
本発明はまた、表1に列挙されたLCDR3アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されたLCDR3核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0030】
本発明はまた、HCVRが、3つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3)を含み、HCDR1-HCDR2-HCDR3アミノ酸配列セットが、表1に列挙された例示的な抗STEAP2抗体のいずれかによって定義されるとおりである、HCVRをコードする核酸分子を提供する。
【0031】
本発明は、LCVRが、3つのCDRのセット(すなわち、LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含み、LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットが、表1に列挙された例示的な抗STEAP2抗体のいずれかによって定義されるとおりである、LCVRをコードする核酸分子を提供する。
【0032】
本発明はまた、HCVRが表1に列挙されたHCVRアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含み、LCVRが表1に列挙されたLCVRアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含む、HCVRおよびLCVRの両方をコードする核酸分子を提供する。特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されたHCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、表2に列挙されたLCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、を含む。本発明のこの態様による特定の実施形態において、核酸分子は、HCVRおよびLCVRが両方とも、表1に列挙された同じ抗STEAP2抗体に由来する、HCVRおよびLCVRをコードする。
【0033】
本発明はまた、抗STEAP2抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域を含むポリペプチドを発現できる組換え発現ベクターを提供する。例えば、本発明は、上述の核酸分子、すなわち表1に記載のHCVR配列、LCVR配列、および/またはCDR配列のいずれかをコードする核酸分子のいずれかを含む組換え発現ベクターを含む。本発明の範囲内にはまた、このようなベクターが導入された宿主細胞、ならびに抗体または抗体断片の産生を可能にする条件下で宿主細胞を培養することによって抗体またはその一部を産生する方法と、そのように産生された抗体および抗体断片を回収する方法とが含まれる。
【0034】
本発明は、改変グリコシル化パターンを有する抗STEAP2抗体を含む。いくつかの実施形態において、望ましくないグリコシル化部位を除去するための修飾、または例えば抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)機能を増大させるためのフコース部分を欠失している抗体は有用であり得る(Shield et al.(2002)JBC 277:26733を参照)。他の応用において、ガラクトシル化の修飾は、補体依存性細胞障害作用(CDC)を修飾するために行うことができる。
【0035】
別の態様において、本発明は、STEAP2に特異的に結合する組換えヒト抗体またはその断片と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供する。別の関連する態様において、本発明は、抗STEAP2抗体と第2の治療薬との組み合わせである組成物を
特徴とする。一実施形態において、第2の治療薬は、抗STEAP2抗体と有利に組み合わされる任意の薬剤である。本発明の抗STEAP2抗体を包含する追加の併用療法および併用製剤は、本明細書の他の箇所に開示されている。
【0036】
別の態様において、本発明は、本発明の抗STEAP2抗体を用いてSTEAP2を発現する腫瘍細胞を標的化し/死滅させるための治療方法を提供し、その治療方法は本発明の抗STEAP2抗体を含む治療有効量の薬学的組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む。場合によっては、抗STEAP2抗体(またはその抗原結合断片)は、前立腺癌を治療するために使用することができ、またはADCCを増加させる改変Fcドメイン(例えば、Shield et al.(2002)JBC 277:26733を参照)、放射免疫療法、抗体-薬物複合体、または腫瘍切除の効率を高めるための他の方法を含むがこれらに限定されない方法で細胞障害性を高めるために修飾されてよい。
【0037】
本発明はまた、STEAP2発現細胞に関連またはSTEAP2発現細胞によって引き起こされる疾患または障害(例えば、癌)の治療のための薬剤の製造における本発明の抗STEAP2抗体の使用を含む。一態様において、本発明は、医療に使用するための、本明細書に開示されている抗STEAP2抗体もしくは抗原結合断片、またはSTEAP2×CD3二重特異性抗体を含む化合物に関する。一態様において、本発明は、医療に使用するための、本明細書に開示されている抗体-薬物複合体(ADC)を含む化合物に関する。
【0038】
さらに別の態様において、本発明は、例えばイメージング試薬などの診断用途のための単一特異性抗STEAP2抗体を提供する。
【0039】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の抗CD3抗体または抗体の抗原結合部分を使用してT細胞活性化を刺激するための治療方法を提供し、その治療方法は抗体を含む治療有効量の薬学的組成物を投与することを含む。
【0040】
別の態様において、本発明は、FACS分析により測定した50nM未満のEC50でSTEAP2発現C4-2細胞に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片を提供する。別の態様において、本発明は、STEAP2発現C4-2細胞に結合し、それによって内在化される単離された抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0041】
本発明はさらに、ヒトSTEAP2への結合について、表1に記載のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と競合する抗体または抗原結合断片を提供する。別の態様において、本発明は、ヒトSTEAP2への結合について、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/58、74/58、82/58、90/58、98/58、106/114、122/130、138/146、154/162、170/178、186/194、202/210、218/226、234/242、250/258、266/274、282/290、298/306、314/322、330/338、346/354、362/370、および378/386からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と競合する抗体または抗原結合断片を提供する。
【0042】
本発明はさらに、表1に記載のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体としてヒトSTEAP2上の同じエピトープに結合する抗体またはその抗原結合断片を提供する。別の態様において、抗体または抗原結合断片は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/58、74/58、82/58、90/58、98/58、106/114、122/130、138/146、154/162、170/178、186/194、202/210、218/226、234/242、250/258
、266/274、282/290、298/306、314/322、330/338、346/354、362/370、および378/386からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体としてヒトSTEAP2上の同じエピトープに結合する。
【0043】
本発明はさらに、ヒトSTEAP2に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片を提供し、抗体または抗原結合断片は、表1に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR)、および表1に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)のCDRを含む。別の態様において、単離された抗体または抗原結合断片は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/58、74/58、82/58、90/58、98/58、106/114、122/130、138/146、154/162、170/178、186/194、202/210、218/226、234/242、250/258、266/274、282/290、298/306、314/322、330/338、346/354、362/370、および378/386からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対の重鎖CDRおよび軽鎖CDRを含む。さらに別の態様において、単離された抗体または抗原結合断片は、それぞれ、配列番号4-6-8-12-14-16、20-22-24-28-30-32、36-38-40-44-46-48、52-54-56-60-62-64、68-70-72-60-62-64、76-78-80-60-62-64、84-86-88-60-62-64、92-94-96-60-62-64、100-102-104-60-62-64、108-110-112-116-118-120、124-126-128-132-134-136、140-142-144-148-150-152、156-158-160-164-166-168、172-174-176-180-182-184、188-190-192-196-198-200、204-206-208-212-214-216、220-222-224-228-230-232、236-238-240-244-246-248、252-254-256-260-262-264、268-270-272-276-278-280、284-286-288-292-294-296、300-302-304-308-310-312、316-318-320-324-326-328、332-334-336-340-342-344、348-350-352-356-358-360、364-366-368-372-374-376、および380-382-384-388-390-392からなる群から選択されるHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含む。
【0044】
別の態様において、本発明は、ヒトSTEAP2に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片を提供し、抗体または抗原結合断片は、(a)配列番号2、18、34、50、66、74、82、90、98、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、282、298、314、330、346、362、および378からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)と、(b)配列番号10、26、42、58114、130、146、162、178、194、210、226,242、258、274、290、306、322、338、354、370、および386からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)とを含む。さらなる態様において、単離された抗体または抗原結合断片は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/58、74/58、82/58、90/58、98/58、106/114、122/130、138/146、154/162、170/178、186/194、202/210、218/226、234/242、250/258、266/274、282/290、298/306、314/322、330/338、346/354、362/370、および378/386からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、請求項10に記載の単離された抗体または抗原結合断片。
【0045】
別の態様によると、本発明は、抗STEAP2抗体またはその抗原結合断片と治療薬(例えば細胞傷害性薬剤)とを含む抗体-薬物複合体を提供する。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合断片および細胞傷害性薬剤は、本明細書で論じるように、リンカーを介して共有結合している。様々な実施形態において、抗STEAP2抗体または抗原結合断片は、本明細書に記載の抗STEAP2抗体またはその断片のいずれかであり得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、細胞傷害性薬剤は、アウリスタチン、メイタンシノイド、ツブリシン、トマイマイシン誘導体、またはドラスタチン誘導体から選択される。場合によっては、細胞傷害性薬剤は、MMAEもしくはMMAFから選択されるアウリスタチン、またはDM1もしくはDM4から選択されるメイタンシノイドである。いくつかの実施形態において、細胞傷害性薬剤は、本明細書で論じるように、式(I)または式(II)の構造を有するメイタンシノイドである。
【0047】
いくつかの実施形態において、細胞傷害性薬剤は、以下の構造を有するメイタンシノイドである。
【化1】
【0048】
いくつかの実施形態において、細胞傷害性薬剤は、以下の構造を有するメイタンシノイドである。
【化2】
【0049】
いくつかの実施形態において、抗体-薬物複合体は抗STEAP2抗体またはその断片、および次式を含み、
【化3】
式中、
【化4】
は抗STEAP2抗体またはその断片への結合である。
【0050】
いくつかの実施形態において、抗体-薬物複合体は抗STEAP2抗体またはその断片、および次式を含み、
【化5】
式中、
【化6】
は抗STEAP2抗体またはその断片への結合である。
【0051】
いくつかの実施形態において、抗体-薬物複合体は抗STEAP2抗体またはその断片、および次式を含み、
【化7】
式中、
【化8】
は抗STEAP2抗体またはその断片への結合である。
【0052】
いくつかの実施形態において、結合は、システイン残基の硫黄成分を介して抗体またはその断片と接触する。
【0053】
いくつかの実施形態において、抗体-薬物複合体は抗STEAP2抗体またはその断片と、
【化9】
それらの混合物とを含み、
式中、
【化10】
が、抗STEAP2抗体またはその断片への結合である。
【0054】
いくつかの実施形態において、結合は、リジン残基の窒素成分を介して抗体またはその断片と接触する。
【0055】
上記または本明細書で論じられる抗体-薬物複合体の様々な実施形態のいずれかにおいて、抗体-薬物複合体は、抗STEAP2抗体またはその断片あたり1~4つの細胞傷害性薬剤を含むことができる。
【0056】
別の態様によると、本発明は、STEAP2およびCD3に結合する二重特異性抗原結合分子(例えば抗体)を提供する。そのような二重特異性抗原結合分子はまた、本明細書において「抗STEAP2/抗CD3二重特異性分子」、「抗CD3/抗STEAP2二
重特異性分子」、または「STEAP2×CD3bsAb」とも呼ばれる。抗STEAP2/抗CD3二重特異性分子はSTEAP2(例えば前立腺腫瘍)を発現する細胞(例えば腫瘍細胞)を標的化するのに有用であり、二重特異性分子の抗CD3部分はT細胞を活性化するのに有用である。腫瘍細胞上のSTEAP2およびT細胞上のCD3の同時結合は、活性化T細胞によって標的腫瘍細胞を直接死滅させる(細胞溶解)を促進する。したがって、本発明の抗STEAP2/抗CD3二重特異性分子は、とりわけ、STEAP2発現腫瘍(例えば、前立腺癌)に関連するかまたはそれによって引き起こされる疾患および障害を治療するために有用である。
【0057】
本発明のこの態様による二重特異性抗原結合分子は、ヒトCD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン、およびSTEAP2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む。本発明は、各抗原結合ドメインが軽鎖可変領域(LCVR)と対をなす重鎖可変領域(HCVR)を含む抗STEAP2/抗CD3二重特異性分子(例えば、二重特異性抗体)を含む。本発明の特定の例示的実施形態において、抗CD3抗原結合ドメインおよび抗STEAP2抗原結合ドメインがそれぞれ共通のLCVRと対をなす異なる別個のHCVRを含む。例えば、本明細書の実施例4に示すように、第1の抗原結合ドメインが抗STEAP2抗体(例えば、抗STEAP2抗原結合ドメインに含まれるものと同じLCVR)に由来するLCVRと対をなす抗CD3抗体に由来するHCVRを含む、CD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、第2の抗原結合ドメインが抗STEAP2抗体に由来するHCVR/LCVRを含む、STEAP2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインと、を含む、二重特異性抗体が構築された。言い換えれば、本明細書に開示される例示的な分子において、抗CD3抗体由来のHCVRと抗STEAP2抗体由来のLCVRとの対合は、CD3に特異的に結合する(しかしSTEAP2には結合しない)抗原結合ドメインを生成する。このような実施形態において、第1および第2の抗原結合ドメインは、異なる抗CD3および抗STEAP2のHCVRを含むが、共通の抗STEAP2のLCVRを共有する。他の実施形態において、二重特異性抗原結合分子は異なる抗CD3および抗STEAP2HCVRを含むが、共通のLCVRを共有する。このLCVRのアミノ酸配列は、例えば配列番号1890に示されており、対応するCDRのアミノ酸配列(すなわちLCDR1-LCDR2-LCDR3)は配列番号1892、1894、および1896にそれぞれ示される。遺伝子改変マウスを使用して、2つの異なるヒト軽鎖可変領域遺伝子セグメントのうちの1つに由来する可変ドメインを含む同一の軽鎖と会合する2つの異なる重鎖を含む完全ヒト型二重特異性抗原結合分子を産生することができる。あるいは、可変重鎖を1つの共通の軽鎖と対にし、宿主細胞中で組換えで発現させてもよい。このように、本発明の抗体は、単一の再編成された軽鎖と会合した免疫グロブリン重鎖を含み得る。いくつかの実施形態において、軽鎖は、ヒトVκ1-39遺伝子セグメントまたはVκ3-20遺伝子セグメントに由来する可変ドメインを含む。他の実施形態において、軽鎖は、ヒトJκ5またはヒトJκ1遺伝子セグメントと再編成されたヒトVκ1-39遺伝子セグメントに由来する可変ドメインを含む。
【0058】
本発明は、抗CD3/抗STEAP2二重特異性分子を提供し、CD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、2014年3月27日公開の米国特許公開第2014/0088295号および2016年7月29日出願のPCT/US2016/044732に記載のとおり、HCVRアミノ酸配列のいずれか、LCVRアミノ酸配列のいずれか、HCVR/LCVRアミノ酸配列対のいずれか、重鎖CDR1-CDR2-CDR3アミノ酸配列のいずれか、または軽鎖CDR1-CDR2-CDR3アミノ酸配列のいずれかを含む。
【0059】
さらに、本発明は、抗CD3/抗STEAP2二重特異性分子を提供し、CD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは本明細書の表9、11、および15に記載のHCVRアミノ酸配列のいずれかを含む。CD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン
はまた、本明細書の表1、9、12、および17に記載のLCVRアミノ酸配列のいずれかを含んでもよい。特定の実施形態によると、CD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、本明細書の表9、11、12、15、および17に記載のHCVR/LCVRアミノ酸配列対のいずれかを含む。本発明はまた、抗CD3/抗STEAP2二重特異性分子を提供し、CD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、本明細書の表9、11、および15に記載の重鎖CDR1-CDR2-CDR3アミノ酸配列のいずれか、および/または本明細書の表1、9、12、および17に記載の軽鎖CDR1-CDR2-CDR3アミノ酸配列のいずれかを含む。
【0060】
特定の実施形態によると、本発明は、抗CD3/抗STEAP2二重特異性分子を提供し、CD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、本明細書の表9、11、および15に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0061】
本発明はまた、抗CD3/抗STEAP2二重特異性分子を提供し、CD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、本明細書の表1、9、12、および17に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0062】
本発明はまた、抗CD3/抗STEAP2二重特異性分子を提供し、CD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、本明細書の表9、11、12、15、および17に記載のHCVRおよびLCVR(HCVR/LCVR)アミノ酸配列対を含む。
【0063】
本発明はまた、抗CD3/抗STEAP2二重特異性分子を提供し、CD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、本明細書の表9、11、および15に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3(HCDR3)ドメイン、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、本明細書の表1、9、12、および17に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3(LCDR3)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、を含む。
【0064】
特定の実施形態において、CD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、本明細書の表9、11、12、15、および17に記載のHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む。
【0065】
本発明はまた、抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子を提供し、CD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、本明細書の表9、11、および15に記載のアミノ酸を有する重鎖CDR1(HCDR1)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、表9、11、および15に記載のアミノ酸を有する重鎖CDR2(HCDR2)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、表9、11、および15に記載のアミノ酸を有する重鎖CDR3(HCDR3)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、本明細書の表1、9、12、および17に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1(LCDR1)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同
一性を有するその実質的に類似の配列と、本明細書の表1、9、12、および17に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2(LCDR2)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、本明細書の表1、9、12、および17に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3(LCDR3)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、を含む。
【0066】
本発明の特定の非限定的で例示的な抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子は、本明細書の表9、11、12、15、および17に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有する、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含む、CD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインを含む。
【0067】
本発明はさらに、二重特異性抗原結合分子を提供し、ヒトCD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、表9、表11、または表15に記載のアミノ酸を含む重鎖可変領域(HCVR)由来の重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、表1、表9、表12、または表17に記載のアミノ酸配列配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)由来の軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)とを含む。
【0068】
別の態様において、本発明は、ヒトCD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、配列番号1730、1762、および1866からなる群から選択される重鎖可変領域(HCVR)由来の重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、配列番号258からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)由来の軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)とを含む、二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0069】
本発明はさらに、二重特異性抗原結合分子を提供し、ヒトCD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、3つの重鎖相補性決定領域(A1-HCDR1、A1-HCDR2、およびA1-HCDR3)と3つの軽鎖相補性決定領域(A1-LCDR1、A1-LCDR2、およびA1-LCDR3)とを含み、A1-HCDR1は配列番号1732、1764、および1868からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A1-HCDR2は配列番号1734、1766、および1870からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A1-HCDR3は配列番号1736、1768、および1872からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A1-LCDR1は配列番号260のアミノ酸配列を含み、A1-LCDR2は配列番号262のアミノ酸配列を含み、A1-LCDR3は配列番号264のアミノ酸配列を含む。
【0070】
さらなる態様において、本発明は、二重特異性抗原結合分子を提供し、ヒトCD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、配列番号1730/258、1762/258、および1866/258からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対の重鎖CDRおよび軽鎖CDRを含む。
【0071】
別の態様において、本発明は抗原結合分子を提供し、ヒトCD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、3つの重鎖相補性決定領域(A1-HCDR1、A1-HCDR2、およびA1-HCDR3)と3つの軽鎖相補性決定領域(A1-LCDR1、A1-LCDR2、およびA1-LCDR3)とを含み、ヒトSTEAP2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、3つの重鎖相補性決定領域(A2-HCDR1、A2-HCDR2、およびA2-HCDR3)と3つの軽鎖相補性決定領域(A2-LCDR1、A2-LCDR2、およびA2-LCDR3)とを含み、A1-HCDR1は、配列番号
1732、1764、および1868からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A1-HCDR2は、配列番号1734、1766、および1870からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A1-HCDR3は、配列番号1736、1768、および1872からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A1-LCDR1は配列番号260のアミノ酸配列を含み、A1-LCDR2は配列番号262のアミノ酸配列を含み、A1-LCDR3は配列番号264のアミノ酸配列を含み、A2-HCDR1は配列番号252のアミノ酸配列を含み、A2-HCDR2は配列番号254のアミノ酸配列を含み、A2-HCDR3は配列番号256のアミノ酸配列を含み、A2-LCDR1は配列番号260のアミノ酸配列を含み、A2-LCDR2は配列番号262のアミノ酸配列を含み、A2-LCDR3は配列番号264のアミノ酸配列を含む。
【0072】
本発明の特定の非限定的で例示的な抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子は、FR1(配列番号1903)、FR2(配列番号1904)、FR3(配列番号1905)、およびFR4(配列番号1906)から選択されるアミノ酸配列を有する可変ドメインフレームワーク領域を含む重鎖を含むCD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインを含む。
【0073】
さらなる実施形態において、本発明の例示的な抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子は、ヒトCD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが配列番号1907-1908-1909のアミノ酸配列を有するHCDR1-HCDR2-HCDR3を含むHCVRを含む、二重特異性抗原結合分子を含む。
【0074】
本発明はまた、抗CD3/抗STEAP2二重特異性分子を提供し、STEAP2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号2、18、34、50、66、74、82、90、98、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、282、298、314、330、346、362、および378からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0075】
本発明はまた、抗CD3/抗STEAP2二重特異性分子を提供し、STEAP2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号10、26、42、58、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、290、306、322、338、354、370、および386からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0076】
本発明はまた、抗CD3/抗STEAP2二重特異性分子を提供し、STEAP2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号250/258のHCVRおよびLCVR(HCVR/LCVR)のアミノ酸配列対を含む。
【0077】
本発明はまた、抗CD3/抗STEAP2二重特異性分子を提供し、STEAP2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号256のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3(HCDR3)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、配列番号264のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3(LCDR3)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列とを含む。
【0078】
特定の実施形態において、STEAP2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号256/264からなる群から選択されるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む。
【0079】
STEAP2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号4、20、36、52、68、76、84、92、100、108、124、140、156、172、188、204、220、236、252、268、284、300、316、332、348、364、および380からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR1(HCDR1)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、配列番号6、22、38、54、70、78、86、94、102、110、126、142、158、174、190、206、222、238、254、270、286、302、318、334、350、366、および382からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR2(HCDR2)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、配列番号8、24、40、56、72、80、88、96、104、112、128、144、160、176、182、208、224、240、256、272、288、304、320、336、352、368、および384からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR3(HCDR3)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、配列番号12、28、44、60、116、132、148、164、180、196、212、228、244、260、276、292、308、324、340、356、372、および388からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1(LCDR1)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、配列番号14、30、46、62、118、134、150、166、182、198、214、230、246、262、278、294、310、326、342、358、374、および390からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2(LCDR2)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、配列番号16、32、48、64、120、136、152、168、184、200、216、232、248、264、280、296、312、328、344、360、376、および392からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3(LCDR3)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、を含む。
【0080】
本発明の特定の非限定的で例示的な抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子は、配列番号252-254-256-260-262-264からなる群から選択されるアミノ酸配列をそれぞれ有する、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3を含む、STEAP2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む。
【0081】
関連する実施形態において、本発明は、STEAP2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、配列番号250/258からなる群から選択される重鎖および軽鎖可変領域(HCVR/LCVR)配列内に含有される重鎖および軽鎖CDRドメインを含む、抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子を含む。
【0082】
別の態様において、本発明は、ヒトCD3に結合する第1の抗原結合ドメインおよびヒトSTEAP2に結合する第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗原結合分子を提供
し、第2の抗原結合ドメインは、本発明の抗STEAP2抗体のいずれか1つの抗体または抗結合断片に由来する。さらなる態様において、本発明は、ヒトCD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン、およびヒトSTEAP2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0083】
本発明はさらに、ヒトCD3を発現するヒト細胞およびカニクイザルCD3を発現するカニクイザル細胞に結合する二重特異性抗原結合分子を提供する。別の態様において、二重特異性抗原結合分子は、ヒトSTEAP2を発現しているヒト細胞に結合する。
【0084】
別の態様において、本発明は、ヒト前立腺癌異種移植を保有する免疫無防備状態のマウスにおける腫瘍増殖を阻害する二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0085】
特定の実施形態において、本発明の抗CD3抗体、その抗体結合断片および二重特異性抗体は、生殖系列配列と親抗体配列との間の相違に基づいて段階的に親のアミノ酸残基を置き換えることによって作製された。
【0086】
いくつかの実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子を提供し、第2の抗原結合ドメインは、ヒトSTEAP2への結合について、3つの重鎖相補性決定領域(A2-HCDR1、A2-HCDR2、およびA2-HCDR3)と3つの軽鎖相補性決定領域(A2-LCDR1、A2-LCDR2、およびA2-LCDR3)とを含む参照抗原結合タンパク質と競合し、A2-HCDR1は配列番号252からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A2-HCDR2は配列番号254のアミノ酸配列を含み、A2-HCDR3は、配列番号256のアミノ酸配列を含み、A2-LCDR1は、配列番号260のアミノ酸配列を含み、A2-LCDR2は配列番号262のアミノ酸配列を含み、A2-LCDR3は配列番号264のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子を提供し、第2の抗原結合ドメインは、ヒトSTEAP2への結合について、配列番号250のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)と、配列番号258のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)とを含む参照抗原結合タンパク質と競合する。
【0087】
いくつかの実施形態において、本発明は二重特異性抗原結合分子を提供し、第1の抗原結合ドメインが、ヒトCD3への結合について、3つの重鎖相補性決定領域(A1-HCDR1、A1-HCDR2、およびA1-HCDR3)と3つの軽鎖相補性決定領域(A1-LCDR1、A1-LCDR2、およびA1-LCDR3)とを含む参照抗原結合タンパク質と競合し、A1-HCDR1は配列番号1732、1764、および1868からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A1-HCDR2は配列番号1734、1766、および1870からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A1-HCDR3は配列番号1736、1768、および1872からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、A1-LCDR1は配列番号260のアミノ酸配列を含み、A1-LCDR2は配列番号262のアミノ酸配列を含み、A1-LCDR3は、配列番号264のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、本発明は二重特異性抗原結合分子を提供し、第1の抗原結合ドメインは、ヒトCD3への結合について、配列番号1730、1762、および1866からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)と、配列番号258のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)とを含む参照抗原結合タンパク質と競合する。
【0088】
いくつかの実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子を提供し、第1の抗原結合ドメインが、ヒトCD3への結合について、配列番号1730、1762、および1866からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)と、配列番号258のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)とを含む参照抗原結合タン
パク質と競合し、第2の抗原結合ドメインは、ヒトSTEAP2への結合について、配列番号250のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)と、配列番号258のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)とを含む参照抗原結合タンパク質と競合する。
【0089】
一態様において、本発明は、抗STEAP2抗原結合分子または抗STEAP2/抗CD3二重特異性抗原結合分子および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む薬学的組成物を提供する。本発明はさらに、抗STEAP2抗原結合分子または抗STEAP2/抗CD3二重特異性抗原結合分子および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む薬学的組成物を対象に投与することを含む、対象における癌の治療方法を提供する。いくつかの態様において、癌は前立腺癌、膀胱癌、子宮頸癌、肺癌、結腸癌、腎臓癌、乳癌、膵臓癌、胃癌、子宮癌、および卵巣癌からなる群から選択れる。場合によっては、癌は前立腺癌である。場合によっては、前立腺癌は去勢抵抗性前立腺癌である。
【0090】
別の態様において、本発明は、本明細書に開示の抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子のHCVR、LCVRまたはCDR配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、本明細書の表2、10、13、14、16、および18に記載のポリヌクレオチド配列を含む核酸分子、ならびに表2、10、13、14、16、および18に記載のポリヌクレオチド配列のうちの2つ以上をその機能的組み合わせまたは配置のいずれかで含む核酸分子を包含する。本発明の核酸を保有する組換え発現ベクター、およびそのようなベクターが導入された宿主細胞もまた、抗体の産生を可能にする条件下で宿主細胞を培養することによって、および産生された抗体を回収することによって、抗体を産生する方法と同様に本発明に含まれる。
【0091】
本発明は、CD3とSTEAP2に結合する二重特異性抗原結合分子を形成するために、CD3に特異的に結合する前述の抗原結合ドメインのいずれかが、STEAP2に特異的に結合する前述の抗原結合ドメインのいずれかと組み合わされ、連結され、あるいは関連付けられる、抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子を含む。
【0092】
本発明は、改変グリコシル化パターンを有する抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子を含む。いくつかの用途において、望ましくないグリコシル化部位を除去するための修飾、または例えば抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)機能を増大させるためのフコース部分を欠失している抗体は有用であり得る(Shield et al.(2002)JBC 277:26733を参照)。他の応用において、ガラクトシル化の修飾は、補体依存性細胞障害作用(CDC)を修飾するために行うことができる。
【0093】
別の態様において、本発明は、本明細書に開示の抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供する。関連する態様において、本発明は、抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子と第2の治療薬との組み合わせである組成物を特徴とする。一実施形態において、第2の治療薬は、抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子と有利に組み合わされる任意の薬剤である。抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子と有利に組み合わせることができる例示的な薬剤は、本明細書の他所に詳細に論じられている。
【0094】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子を用いてSTEAP2を発現する腫瘍細胞を標的化し/死滅させるための治療方法を提供し、その治療方法は、本発明の抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子を含む治療有効量の薬学的組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む。
【0095】
本発明はまた、STEAP2発現細胞に関連するかまたはそれによって引き起こされる疾患または障害の治療のための薬剤の製造における本発明の抗CD3/抗STEAP2二
重特異性抗原結合分子の使用を含む。
【0096】
他の実施形態は、後述の詳細な説明の再検討から明らかとなることになっている。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1】移植後13日目に10mg/kg、20mg/kg、または40mg/kg用量でH1H7814N-7を投与したSTEAP2陽性前立腺癌異種移植モデル(C4-2細胞を移植したSCIDマウス)における、H1H7814N-7の有効性を示す。
図2】移植後14日目に20mg/kg用量でH1H7814N-7を投与したSTEAP2陽性前立腺癌異種移植モデル(C4-2細胞を移植したSCIDマウス)における、H1H7814N-7の有効性を示す。
図3】移植後17日目に150μg/kg用量でH1H7814N-7を投与したSTEAP2陽性前立腺癌異種移植モデル(C4-2細胞を移植したSCIDマウス)における、H1H7814N-7の有効性を示す。
図4】移植後29日目に2.5mg/kg用量で(DAR3.6TV)H1H7814N-60を投与したSTEAP2陽性前立腺癌異種移植モデル(C4-2細胞を移植したSCIDマウス)における、H1H7814N-60の有効性を示す。
図5】ジャーカット細胞に対するSTEAP2xCD3二重特異性抗体の結合を示す。
図6】STEAP2/1キメラ構築物を発現するように操作されたヒト前立腺癌細胞株(PC3)へのSTEAP2×CD3二重特異性抗体の結合を示す。
図7】カニクイザルT細胞に対するSTEAP2xCD3二重特異性抗体の結合を示す。
図8】カニクイザルT細胞に対するSTEAP2xCD3二重特異性抗体の結合を示す。
図9】STEAP2xCD3二重特異性抗体によるヒトPBMC増殖の誘導を示す。
図10】STEAP2×CD3二重特異性抗体によるカニクイザルPBMC増殖の誘導を示す。
図11】ヒトPBMCの存在下での代表的なSTEAP2×CD3二重特異性抗体による細胞傷害性アッセイにおけるC4-2細胞(STEAP2保有標的細胞)の枯渇を示す。
図12】代表的なSTEAP2×CD3二重特異性抗体によるヒトT細胞の活性化を示し、図11に示す観察された標的細胞溶解と相関する。
【発明を実施するための形態】
【0098】
本発明を説明する前に、本発明は、特定の方法および説明される実験条件が変わり得るので、このような方法および条件に制限されないことは理解されることになっている。本明細書で使用する用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるので、制限することを企図するものではないことも理解されることになっている。
【0099】
別段の定義がない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語は全て、本発明の属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、用語「約」は、特定の列挙された数値に関して使用されるとき、その値が列挙された値から1%以下だけ変動し得ることを意味する。例えば、本発明で使用する場合、表現「約100」は、99および101、ならびにその間の全値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0100】
本明細書に説明されるものと類似のまたは等価の任意の方法および材料を本発明の実施
または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料をこれから説明する。本明細書で言及される特許、出願、および非特許刊行物は全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0101】
定義
本明細書で用いられる「CD3」という表現は、多分子T細胞受容体(TCR)の一部としてT細胞上に発現され、4つの受容体鎖すなわちCD3-イプシロン、CD3-デルタ、CD3-ゼータ、CD3-ガンマのうち2つの会合から形成されるホモ二量体またはヘテロ二量体からなる抗原を指す。ヒトCD3-イプシロンは、配列番号1897に記載のアミノ酸配列を含み、ヒトCD3-デルタは、配列番号1898に記載のアミノ酸配列を含む。本明細書におけるタンパク質、ポリペプチド、およびタンパク質断片への全ての言及は、非ヒト種由来であると明確に特定されない限り、それぞれのタンパク質、ポリペプチド、またはタンパク質断片のヒト型を指すことを意図している。したがって、表現「CD3」は、非ヒト種、例えば「マウスCD3」、「サルCD3」などに由来するものとして特定されない限り、ヒトCD3を意味する。
【0102】
本明細書で使用される場合、「CD3に結合する抗体」または「抗CD3抗体」は、単一のCD3サブユニット(例えば、イプシロン、デルタ、ガンマ、またはゼータ)を特異的に認識する抗体およびその抗原結合断片、ならびに2つのCD3サブユニットの二量体複合体を特異的に認識する抗体およびその抗原結合断片(例えば、ガンマ/イプシロン、デルタ/イプシロン、およびゼータ/ゼータCD3二量体)を含む。本発明の抗体および抗原結合断片は、可溶性CD3および/または細胞表面発現CD3に結合することができる。可溶性CD3には、天然CD3タンパク質、ならびに膜貫通ドメインを欠くかまたは細胞膜と会合していない、例えば単量体および二量体CD3構築物などの組換えCD3タンパク質変異体が含まれる。
【0103】
本明細書で使用される場合、表現「細胞表面発現CD3」は、インビトロまたはインビボで細胞表面上に発現される1つ以上のCD3タンパク質(複数可)を意味し、CD3タンパク質の少なくとも一部は細胞膜の細胞外側に曝され、抗体の抗原結合部分に接近可能である。「細胞表面発現CD3」としては、細胞膜内の機能的T細胞受容体の中に含まれるCD3タンパク質が挙げられる。「細胞表面発現CD3」という表現は、細胞の表面上のホモ二量体またはヘテロ二量体の一部として発現されるCD3タンパク質(例えば、ガンマ/イプシロン、デルタ/イプシロン、およびゼータ/ゼータCD3二量体)を含む。「細胞表面発現CD3」という表現はまた、他のCD3鎖型なしで、細胞の表面上にそれ自体で発現するCD3鎖(例えば、CD3-イプシロン、CD3-デルタ、またはCD3-ガンマ)も含む。あるいは、「細胞表面発現CD3」は、通常その表面にヒトCD3を発現しないがその表面にCD3を発現するように人工的に操作されている細胞の表面上に発現されるCD3タンパク質を含むかまたはそれからなることができる。あるいは、「細胞表面発現CD3」は、通常その表面にヒトCD3を発現しないがその表面にCD3を発現するように人工的に操作されている細胞の表面上に発現されるCD3タンパク質を含むかまたはそれからなることができる。
【0104】
本明細書で使用される「STEAP2」という表現は、前立腺の6回膜貫通上皮抗原2を指す。STEAP2は、前立腺上皮細胞において高発現される、内在性6回膜貫通型タンパク質であり、前立腺癌の細胞表面マーカーである。例えば、STEAP2は、LNCaP前立腺細胞株において有意なレベルで発現することが見出された。(Porkka,et al.Lab Invest 2002,82:1573-1582)。STEAP2(UniProtKB/Swiss-Prot:Q8NFT2.3)は、ヒトの染色体領域7q21に位置するSTEAP2遺伝子によってコードされる490アミノ酸タンパク質である。例えば、配列番号1899に記載のヒトSTEAP2のアミノ酸配列を参
照のこと。
【0105】
本明細書で使用される場合、「STEAP2に結合する抗体」または「抗STEAP2抗体」は、STEAP2を特異的に認識する抗体およびその抗原結合断片を含む。
【0106】
用語「抗原結合分子」は、抗体および抗体の抗原結合断片を含み、例えば二重特異性抗体を含む。
【0107】
本発明で使用する場合、「抗体」という用語は、特定の抗原(例えばSTEAP2またはCD3)に特異的に結合するかまたはそれと相互作用する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む、任意の抗原結合分子または分子複合体を意味する。用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互連結された4本のポリペプチド鎖、2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにそれらの多量体(例えば、IgM)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVと略される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、C1、C2、およびC3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVと略される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つのドメイン(C1)を含む。V領域およびV領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が点在する相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域へとさらに細分することができる。各VおよびVは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置された3つのCDRおよび4つのFRからなる。本発明の異なる実施形態において、抗STEAP2抗体または抗CD3抗体(またはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であってもよく、または天然にもしくは人工的に修飾されていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの並列分析に基づいて定義され得る。
【0108】
本発明で使用する場合、「抗体」という用語は、完全抗体分子の抗原結合断片も含む。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」という用語、およびこれらに類するものは、本明細書で使用する場合、天然の、酵素処理で入手可能な、合成の、または遺伝子操作された、抗原を特異的に結合して複合体を形成するポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗体結合断片は、例えば、抗体可変ドメインおよび場合により定常ドメインをコードするDNAの操作および発現に関連するタンパク質消化技術または組換え遺伝子操作技術などの任意の適切な標準的技術を用いて、完全抗体分子から誘導され得る。このようなDNAは既知であり、および/または例えば市販の供給源、DNAライブラリー(例えばファージ-抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であるか、または合成することができる。DNAは、例えば、1つ以上の可変ドメインおよび/もしくは定常ドメインを適切な配置変更と配置し、またはコドンを導入し、システイン残基を生成し、アミノ酸を修飾、付加もしくは欠失などするために、化学的にまたは分子生物学技術を用いて配列決定および操作され得る。
【0109】
抗体結合断片の非限定例としては、(i)Fab断片、(ii)F(ab’)2断片、(iii)Fd断片、(iv)Fv断片、(v)一本鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAb断片、および(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))を模倣するアミノ酸残基、または拘束FR3-CDR3-FR4ペプチドからなる最小認識単位が挙げられる。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小型モジュール型免疫医薬品(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインなどの他の操作された分子も、本明細書で使用する「抗原結合断片」という表現に包含される。
【0110】
抗体の抗原結合断片は、典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含むことになっている。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成物であり得、概して、1つ以上のフレームワーク配列に隣接しているかまたは1つ以上のフレームワーク配列と共にインフレームである少なくとも1つのCDRを含む。Vドメインと結合したVドメインを有する抗体結合断片において、VドメインおよびVドメインは、任意の適切な配置で互いに対して配置され得る。例えば、可変領域は二量体であり、V-V、V-VまたはV-V二量体を含んでもよい。あるいは、抗体の抗原結合断片は、単量体のVドメインまたはVドメインを含有し得る。
【0111】
ある特定の実施形態において、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの定常ドメインへ共有結合した少なくとも1つの可変ドメインを含有し得る。本発明の抗体の抗原結合断片内に見出すことができる可変および定常ドメインの非限定的で例示的な構成としては、(i)VH-CH1、(ii)VH-CH2、(iii)VH-CH3、(iv)VH-CH1-CH2、(v)VH-CH1-CH2-CH3、(vi)VH-CH2-CH3、(vii)VH-CL、(viii)VL-CH1、(ix)VL-CH2、(x)VL-CH3、(xi)VL-CH1-CH2、(xii)VL-CH1-CH2-CH3、(xiii)VL-CH2-CH3、および(xiv)VL-CLが挙げられる。先に列挙した例示的な立体配置のいずれかを含む、可変ドメインおよび定常ドメインの任意の立体配置において、可変ドメインおよび定常ドメインは、互いに直接連結されていてもよく、または完全もしくは部分的ヒンジ領域もしくはリンカー領域によって連結されていてもよい。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子において隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメイン間の可撓性または半可撓性の結合をもたらす少なくとも2つの(例えば、5、10、15、20、40、60またはそれより多数の)アミノ酸からなり得る。そのうえ、本発明の抗体の抗原結合断片は、互いとのおよび/または1つ以上の単量体VドメインもしくはVドメインとの非共有結合において、先に列挙した可変ドメイン立体配置および定常ドメイン立体配置のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含み得る。
【0112】
完全抗体分子と同様に、抗体結合断片は、単一特異性または多重特異性(例えば、二重特異性)であり得る。抗体の多重特異性抗原結合断片は、典型的には、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含むことになっており、各可変ドメインは、別個の抗原へまたは同じ抗原上の異なるエピトープへ特異的に結合することができる。本明細書に開示される例示的な二重特異性抗体フォーマットを含む任意の多重特異性抗体フォーマットは、当該技術分野で利用可能な通例の技術を使用して、本発明の抗体の抗原結合断片との関連で使用に適合し得る。
【0113】
本発明の抗体は、補体依存性細胞傷害(CDC)または抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)を介して機能し得る。「補体依存性細胞傷害」(CDC)は、補体の存在下における本発明の抗体による抗原発現細胞の溶解を指す。「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」(ADCC)は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が標的細胞上の結合抗体を認識し、それによってそれによって標的細胞の溶解をもたらす、細胞媒介性反応を指す。CDCおよびADCCは、当技術分野において周知であり利用可能なアッセイを用いて測定することができる。(例えば、米国特許第5,500,362号および第5,821,337号、ならびにClynes et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:652-656を参照のこと)。抗体の定常領域は、補体を固定して細胞依存性細胞傷害性を媒介する抗体の能力において重要である。したがって、抗体のアイソタイプは、その抗体が細胞毒性を媒介することが望ましいかどうかに基づいて選択されてよい。
【0114】
特定の実施形態において、本発明の抗STEAP2単一特異性抗体または抗STEAP2/抗CD3二重特異性抗体はヒト抗体である。「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むよう企図される。本発明のヒト抗体は、例えば、CDR、特にCDR3における、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的変異誘発によってまたはインビボでの体細胞突変異によって導入された変異)によってコードされないアミノ酸残基を含み得る。しかしながら、「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、別の哺乳類種(例えば、マウス)の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列へと移植された抗体を含むことを意図するものではない。
【0115】
本発明の抗体は、いくつかの実施形態において、組換えヒト抗体であり得る。本明細書で使用される用語「組換えヒト抗体」は、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを用いて発現される抗体など組換え手段によって調製、発現、作成または単離される全てのヒト抗体(後述)、組換え型コンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(後述)、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えばマウス)から単離された抗体(例えば、Taylor et al.(1992)Nucl.Res.20:6287-6295)、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって調製、発現、生成、または単離された抗体を含むことを意図する。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する。特定の実施形態において、しかしながら、そのような組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発(または、ヒトIg配列についてトランスジェニック動物が使用される場合は、インビボ体細胞突然変異誘発)を受け、したがって、組換え抗体のVおよびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VおよびV配列に由来し関連してはいるが、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然には存在し得ない配列である。
【0116】
ヒト抗体は、ヒンジの不均一性に関連する2つの形態で存在することができる。一形態において、免疫グロブリン分子は、二量体が鎖間重鎖ジスルフィド結合によって一緒に保持されている約150~160kDaの安定な四本鎖構築物を含む。第2の形態において、二量体は鎖間ジスルフィド結合を介して連結されておらず、共有結合した軽鎖と重鎖からなる約75~80kDaの分子が形成される(半抗体)。これらの形態は、親和性精製後でさえも分離することが極めて困難であった。
【0117】
様々な無傷のIgGアイソタイプにおける第2の形態の出現頻度は、抗体のヒンジ領域アイソタイプに関連する構造上の相違によるが、それに限定されない。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一アミノ酸置換は、ヒトIgG1ヒンジを用いて典型的に観察されるレベルまで第2の形態の出現を有意に減少させることができる(Angal et
al.(1993)Molecular Immunology 30:105)。本発明は、ヒンジ、C2またはC3領域に1つ以上の変異を有する抗体を包含し、例えば産生において、所望の抗体形態の収率を改善するのに望ましい場合がある。
【0118】
本発明の抗体は単離された抗体であり得る。本明細書で使用される「単離された抗体」は、同定された抗体、およびその天然環境の少なくとも1つの成分から分離および/または回収された抗体を意味する。例えば、生物の少なくとも1つの成分から、または抗体が天然に存在するかもしくは天然に産生される組織または細胞から分離または除去された抗体は、本発明の目的のための「単離された抗体」である。単離された抗体はまた、組換え細胞内の原位置の抗体を含む。単離された抗体は、少なくとも1つの精製または単離工程を受けた抗体である。特定の実施形態によると、単離された抗体は他の細胞性物質および
/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0119】
本発明はまた、STEAP2に結合するワンアーム抗体も含む。本明細書中で使用される場合、「ワンアーム抗体」とは、単一の抗体重鎖および単一の抗体軽鎖を含む抗原結合分子を意味する。本発明のワンアーム抗体は、表1に記載のHCVR/LCVRまたはCDRアミノ酸配列のいずれかを含み得る。
【0120】
本明細書に開示する抗STEAP2または抗STEAP2/抗CD3抗体は、対応する生殖系列配列と比較して、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域および/またはCDR領域に1つ以上のアミノ酸置換、挿入および/または欠失を含み得る。このような変異は、本明細書中に開示するアミノ酸配列を、例えば公共の抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と比較することによって容易に確認することができる。本発明は、本明細書に開示するアミノ酸配列のいずれかに由来する抗体およびその抗原結合断片を含み、1つ以上のフレームワークおよび/またはCDR領域内の1つ以上のアミノ酸は、抗体が由来した生殖系列配列の対応する残基(複数可)へ、または別のヒト生殖系列配列の対応する残基(複数可)へ、または対応する生殖系列残基(複数可)の保存的アミノ酸置換へ変異する(このような配列変化はまとめて、「生殖系列変異」と本明細書で呼ばれる)。当業者は、本明細書に開示する重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列から出発して、1つ以上の個々の生殖系列変異またはこれらの組み合わせを含む多数の抗体および抗体結合断片を容易に産生することができる。ある特定の実施形態において、Vドメインおよび/またはVドメイン内のフレームワークおよび/またはCDR残基は全て、抗体が由来した元の生殖系列配列において認められる残基へと変異し戻される。他の実施形態において、ある特定の残基のみが元の生殖系列配列へと変異し戻され、例えば、変異した残基はFR1の最初の8個のアミノ酸内に、もしくは変異した残基はFR4の最後の8個のアミノ酸内に認められ、または変異した残基は、CDR1、CDR2もしくはCDR3内にのみ認められる。他の実施形態において、フレームワークおよび/またはCDR残基(複数可)の1つ以上は、異なる生殖系列配列(すなわち、抗体が本来由来した生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基(複数可)へ変異する。さらに、本発明の抗体は、フレームワークおよび/またはCDR領域内に2つ以上の生殖系列変異の任意の組み合わせを含有してもよく、例えば、ある特定の個々の残基は、特定の生殖系列配列の対応する残基へ変異するのに対し、元の生殖系列配列とは異なるある特定の他の残基は、維持され、または異なる生殖系列配列の対応する残基へ変異する。いったん得られれば、1つ以上の生殖系列変異を含有する抗体および抗体結合断片は、結合特異性の改善、結合親和性の増大、アンタゴニストまたはアゴニストの生物学的特性の改善または増強(場合によって)、免疫原性の低下などの1つ以上の所望の特性について容易に試験することができる。この一般的な方法で得られた抗体および抗体結合断片は、本発明の範囲内に包含される。
【0121】
本発明はまた、1つ以上の保存的置換を有する本明細書に開示するHCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかの変異体を含む抗STEAP2または抗STEAP2/抗CD3抗体を含む。例えば、本発明は、本明細書の表1に記載または本明細書の表9、11、12、15、および17に記載したように、例えば、HCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかに対して10個以下、8個以下、6個以下または4個以下などの保存的アミノ酸置換を有する、HCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、および/またはCDRアミノ酸配列を有する抗STEAP2または抗STEAP2/抗CD3抗体を含む。
【0122】
「エピトープ」という用語は、パラトープとして既知の抗体分子の可変領域における特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原は2つ以上のエピトープ
を有してもよい。したがって、異なる抗体は、抗原上の異なる領域へ結合し得、異なる生物学的効果を有し得る。エピトープは、立体配座または線状のいずれでもよい。立体配座エピトープは、直鎖状ポリペプチド鎖の異なるセグメントから空間的に並置されたアミノ酸によって産生される。直鎖状エピトープは、ポリペプチド鎖中の隣接するアミノ酸残基によって産生されるものである。特定の状況において、エピトープは、抗原上の糖類、ホスホリル基、またはスルホニル基の部分を含み得る。
【0123】
「実質的な同一性」または「実質的に同一である」という用語は、核酸またはその断片を指す場合、別の核酸(またはその相補鎖)との適切なヌクレオチド挿入または欠失と最適に整列した場合、以下に考察するように、FASTA、BLASTまたはGapなど、配列同一性の任意の周知のアルゴリズムによって測定される場合に、ヌクレオチド塩基の少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、または99%のヌクレオチド配列同一性があることを示す。参照核酸分子と実質的な同一性を有する核酸分子は、ある特定の場合において、参照核酸分子によってコードされるポリペプチドと同じまたは実質的に類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることができる。
【0124】
ポリペプチドへ適用される場合、「実質的な類似性」または「実質的に類似の」という用語は、2つのペプチド配列が、既定のギャップ重みを用いてプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適に整列した場合、少なくとも95%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%または99%の配列同一性を共有する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換だけ異なる。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を備えた側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されたものである。概して、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させないことになっている。2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換だけ互いに異なる場合、配列同一性の割合または類似性の程度は、置換の保存的性質を補正するために上向きに調整してもよい。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれるPearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307-331を参照されたい。類似の化学的特性を備えた側鎖を有するアミノ酸の基の例としては、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン、(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリンおよびトレオニン、(3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン、(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン、(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、およびヒスチジン、(6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸、ならびに(7)含硫側鎖:システインおよびメチオニンが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸およびアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的置換とは、参照により本明細書に組み込まれるGonnet et al.(1992)Science 256:1443-1445に開示されるPAM250対数尤度行列において正値を有する任意の変化である。「適度に保存的な」置換とは、PAM250対数尤度マトリックスにおいて負以外の値を有する任意の変化である。
【0125】
ポリペプチドに対する配列類似性は、配列同一性とも呼ばれ、典型的には配列分析ソフトウェアを用いて測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む種々の置換、欠失および他の修飾へ割り当てられた類似の測定値を用いて類似の配列と一致させる。例えば、GCGソフトウェアは、異なる種の生物由来の相同ポリペプチドのような密接に関連するポリペプチド間の、または野生型タンパク質とその変異タンパク質の間の配列相同性または配列同一性を決定するための既定パラメータと共に使用することができるGapおよびBestfitなどのプログラムを含有する。例えば、GCG第6
.1版を参照されたい。ポリペプチド配列は、GCG第6.1版におけるプログラムである、既定パラメータまたは推奨パラメータを備えたFASTAを使用して比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、問い合わせ配列と検索配列の間の最良重複の領域の整列およびパーセント配列同一性を提供する(Pearson(2000)上述)。本発明の配列を、異なる生物由来の多数の配列を含有するデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、既定パラメータを用いるコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、それぞれ参照により本明細書に組み入れられる、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410およびAltschul et
al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-402を参照のこと。
【0126】
生殖系列変異
本明細書に開示する抗CD3抗体は、対応する生殖系列配列と比較して、重鎖可変ドメインのフレームワーク領域および/またはCDR領域に1つ以上のアミノ酸置換、挿入および/または欠失を含む。
【0127】
本発明はまた、本明細書に開示するアミノ酸配列のいずれかに由来する抗体およびその抗原結合断片を含み、1つ以上のフレームワークおよび/またはCDR領域内の1つ以上のアミノ酸は、抗体が由来した生殖系列配列の対応する残基(複数可)へ、または別のヒト生殖系列配列の対応する残基(複数可)へ、または対応する生殖系列残基(複数可)の保存的アミノ酸置換へ変異し(このような配列変化はまとめて、「生殖系列変異」と本明細書で呼ばれる)、CD3抗原への検出可能な結合が弱いまたはない。CD3を認識するいくつかのそのような例示的抗体は、本明細書の表12および18に記載されている。
【0128】
さらに、本発明の抗体は、フレームワークおよび/またはCDR領域内に2つ以上の生殖系列変異の任意の組み合わせを含有してもよく、例えば、ある特定の個々の残基は、特定の生殖系列配列の対応する残基へ変異するのに対し、元の生殖系列配列とは異なるある特定の他の残基は、維持され、または異なる生殖系列配列の対応する残基へ変異する。いったん得られれば、1つ以上の生殖系列変異を含む抗体および抗体結合断片を、結合特異性の向上、結合親和性の弱さまたは低下、薬物動態学的特性の向上または増強、免疫原性の低下などの1つ以上の所望の特性に関して試験することができる。本開示の指針を考慮してこの一般的な方法で得られた抗体および抗原結合断片は、本発明の範囲内に包含される。
【0129】
本発明はまた、1つ以上の保存的置換を有する本明細書に開示するHCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかの変異体を含む抗CD3抗体を含む。例えば、本発明は、本明細書の表1、9、11、12、15、および17に記載のHCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかに対して、例えば10個以下、8個以下、6個以下または4個以下などの保存的アミノ酸置換を有するHCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、および/またはCDRアミノ酸配列を有する抗CD3抗体を含む。本発明の抗体および二重特異性抗原結合分子は、個々の抗原結合ドメインが由来した対応する生殖系列配列と比較して、重鎖および軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域に1つ以上のアミノ酸置換、挿入および/または欠失を含むが、CD3抗原への所望の弱から検出不可能な結合を維持または改善する。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を備えた側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されたものである。一般に、保存的アミノ酸置換はタンパク質の機能的特性を実質的に変化させない、すなわち、アミノ酸置換が、抗CD3結合分子の場合における所望の弱から検出不可能な結合親和性を維持または改善する。類似の化学的特性を
備えた側鎖を有するアミノ酸の基の例としては、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン、(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリンおよびトレオニン、(3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン、(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン、(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、およびヒスチジン、(6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸、ならびに(7)含硫側鎖:システインおよびメチオニンが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸およびアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的置換とは、参照により本明細書に組み込まれるGonnet et al.(1992)Science 256:1443-1445に開示されるPAM250対数尤度行列において正値を有する任意の変化である。「適度に保存的な」置換とは、PAM250対数尤度マトリックスにおいて負以外の値を有する任意の変化である。
【0130】
本発明はまた、本明細書に開示されるHCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列のいずれかと実質的に同一であるHCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列を有する抗原結合ドメインを含む抗原結合分子を含むが、CD3抗原への所望の弱い親和性を維持または改善する。アミノ酸配列意味する場合、「実質的な同一性」または「実質的に同一の」という用語は、2つのアミノ酸配列が、既定のギャップ重みを用いてプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適に整列した場合、少なくとも95%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%、または99%の配列同一性を共有する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換だけ異なる。2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換だけ互いに異なる場合、配列同一性の割合または類似性の程度は、置換の保存的性質を補正するために上向きに調整してもよい。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。例えば、Pearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307-331を参照のこと。
【0131】
ポリペプチドに対する配列類似性は、配列同一性とも呼ばれ、典型的には配列分析ソフトウェアを用いて測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む種々の置換、欠失および他の修飾へ割り当てられた類似の測定値を用いて類似の配列と一致させる。例えば、GCGソフトウェアは、異なる種の生物由来の相同ポリペプチドのような密接に関連するポリペプチド間の、または野生型タンパク質とその変異タンパク質の間の配列相同性または配列同一性を決定するための既定パラメータと共に使用することができるGapおよびBestfitなどのプログラムを含有する。例えば、GCG第6.1版を参照されたい。ポリペプチド配列は、GCG第6.1版におけるプログラムである、既定パラメータまたは推奨パラメータを備えたFASTAを使用して比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、問い合わせ配列と検索配列の間の最良重複の領域の整列およびパーセント配列同一性を提供する(Pearson(2000)上述)。本発明の配列を、異なる生物由来の多数の配列を含有するデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、既定パラメータを用いるコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410およびAltschul et al.(1997) Nucleic Acids Res.25:3389-402を参照のこと。
【0132】
いったん得られれば、1つ以上の生殖系列変異を含む抗原結合ドメインを、1つ以上のインビトロアッセイを利用して結合親和性の低下について試験した。特定の抗原を認識する抗体は、典型的には、抗原に対する高い(すなわち強い)結合親和性について試験することによってそれらの目的がスクリーニングされるが、本発明の抗体は弱い結合または検出不可能な結合を示す。この一般的な方法で得られた1つ以上の抗原結合ドメインを含む
二重特異性抗原結合分子もまた本発明の範囲内に含まれ、結合活性駆動腫瘍療法として有利であることが見出された。
【0133】
予想外の利益、例えば、改善された薬物動態特性および患者に対する低毒性が、本明細書に記載の方法から実現され得る。
【0134】
抗体の結合特性
本明細書で使用される場合、抗体、免疫グロブリン、抗体結合断片、またはFc含有タンパク質のいずれかが、例えば、細胞表面タンパク質またはその断片などの所定の抗原へ結合する文脈における用語「結合」は、典型的には、最低2つの実体または抗体-抗原相互作用などの分子構造間の相互作用または会合を指す。
【0135】
例えば、結合親和性は、リガンドとして抗原を、分析物(または抗リガンド)として抗体、Ig、抗体結合断片、またはFc含有タンパク質を使用して、例えば、BIAcore3000機器における表面プラズモン共鳴(SPR)技術により決定される場合、典型的には約10-7M以下、例えば約10-8M以下、例えば約10-9M以下のK値に対応する。蛍光活性化細胞選別(FACS)結合アッセイなどの細胞ベースの結合戦略もまた日常的に使用されており、FACSデータは放射性リガンド競合結合およびSPR(Benedict、CA、J Immunol Methods1997,201(2):223-31;Geuijen,CA,et al.J Immunol Methods.2005,302(1-2):68-77)などの他の方法とよく相関する。
【0136】
したがって、本発明の抗体または抗原結合タンパク質は、非特異的抗原(例:BSA、カゼイン)へ結合するその親和性よりも少なくとも10倍低いK値に対応する親和性を有する所定の抗原または細胞表面分子に結合する。本発明によると、非特異的抗原よりも10倍以下の低いK値に対応する抗体の親和性は、検出不可能な結合と見なすことができるが、そのような抗体は、本発明の二重特異性抗体を産生するための第2の抗原結合アームと対をなすことができる。
【0137】
用語「K」(M)は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数、または抗原に結合する抗体もしくは抗体結合断片の解離平衡定数を指す。Kと結合親和性との間には逆の関係があり、したがって、K値が小さいほど、親和性は高い、すなわちより強い。したがって、「より高い親和性」または「より強い親和性」という用語は、相互作用を形成するより高い能力、つまりより小さいK値に関し、逆に「より低い親和性」または「より弱い親和性」という用語は、相互作用を形するより低い能力、つまりより大きなK値に関する。状況によっては、他の相互作用パートナー分子(例えば抗原Y)に対する分子(例えば抗体)の結合親和性と比較して、その相互作用パートナー分子(例えば抗原X)に対する特定の分子(例えば抗体)のより高い結合親和性(またはK)は、より大きなK値(より低い、またはより弱い、親和性)をより小さなK(より高い、またはより強い、親和性)で割ることによって決定される結合比として表され、例えば、場合によって5倍または10倍高い結合親和性として表される。
【0138】
用語「k」(sec-1または1/s)は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数、または抗体もしくは抗体結合断片の解離速度定数を指す。その値はkoff値とも呼ばれる。
【0139】
用語「k」(M-1×sec-1または1/M)は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度定数、または抗体もしくは抗体結合断片の会合速度定数を指す。
【0140】
用語「K」(M-1または1/M)は、特定の抗体-抗原相互作用の会合平衡定数、
または抗体もしくは抗体結合断片の会合平衡定数を指す。会合平衡定数は、kをkで割ることによって得られる。
【0141】
「EC50」または「EC50」という用語は、最大半量の有効濃度を指し、特定の曝露時間後にベースラインと最大値との間の中間で応答を誘導する抗体の濃度を含む。EC50は本質的に、その最大効果の50%が観察される抗体の濃度を表す。特定の実施形態において、EC50値は、例えばFACS結合アッセイによって決定された場合に、CD3または腫瘍関連抗原を発現する細胞に最大半量の結合を与える本発明の抗体の濃度に等しい。したがって、低下したまたは弱い結合は、EC50の増加、または最大半量の有効濃度値で観察される。
【0142】
一実施形態において、結合の低下は、最大半量の標的細胞への結合を可能にするEC50抗体濃度の増加として定義することができる。
【0143】
別の実施形態において、EC50値は、T細胞細胞傷害活性による標的細胞の最大半量の枯渇を誘発する本発明の抗体の濃度を表す。したがって、細胞傷害活性の増加(例えば、T細胞媒介性腫瘍細胞死滅)は、EC50の低下、または最大有効濃度値の半分で観察される。
【0144】
二重特異性抗原結合分子
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性または多重特異性であり得る。多重特異性抗体は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であり得るか、または2つ以上の標的ポリペプチドに特異的な抗原結合ドメインを含有し得る。例えば、Tutt et al.,1991,J.Immunol.147:60-69、Kufer et al.,2004,Trends Biotechnol.22:238-244を参照されたい。本発明の抗STEAP2単一特異性抗体または抗STEAP2/抗CD3二重特異性抗体は、別の機能性分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質に連結するか、またはそれと同時発現させることができる。例えば、抗体またはその断片は、別の抗体または抗体断片などの1つ以上の他の分子実体に(例えば、化学結合、遺伝的融合、非共有結合性会合などにより)機能的に連結されて、第2のまたは追加の結合特異性を有する二重特異性または多重特異性抗体を生成することができる。
【0145】
本明細書の「抗CD3抗体」または「抗STEAP2抗体」という表現の使用は、単一特異性の抗CD3抗体または抗STEAP2抗体、ならびにCD3結合アームおよびSTEAP2結合アームを含む二重特異性抗体の両方を含むことを意図する。したがって、本発明は、免疫グロブリンの一方のアームがヒトCD3に結合し、免疫グロブリンの他方のアームがヒトSTEAP2に特異的である二重特異性抗体を含む。CD3結合アームは、本明細書の表1、9、11、12、15、および17に記載の、HCVR/LCVRまたはCDRアミノ酸配列のいずれかを含み得る。
【0146】
特定の実施形態において、CD3結合アームはヒトCD3に結合し、ヒトT細胞活性化を誘導する。特定の実施形態において、CD3結合アームはヒトCD3に弱く結合し、ヒトT細胞活性化を誘導する。他の実施形態において、CD3結合アームはヒトCD3に弱く結合し、二重特異性抗体または多重特異性抗体との関連で腫瘍関連抗原発現細胞死滅を誘導する。他の実施形態において、CD3結合アームはヒトおよびカニクイザル(サル)CD3と弱く結合または会合するが、それでも結合相互作用は当技術分野で既知のインビトロアッセイでは検出できない。STEAP2結合アームは、本明細書の表1に記載のHCVR/LCVRまたはCDRアミノ酸配列のいずれかを含み得る。
【0147】
特定の例示的な実施形態によると、本発明はCD3およびSTEAP2に特異的に結合
する二重特異性抗原結合分子を含む。そのような分子は、本明細書において、例えば、「抗CD3/抗STEAP2」、または「抗CD3×STEAP2」もしくは「CD3×STEAP2」二重特異性分子、または他の同様の用語(例えば、抗STEAP2/抗CD3)と称することができる。
【0148】
本発明で使用する場合、「STEAP2」という用語は、非ヒト種由来であると特定されない限り、ヒトSTEAP2タンパク質を指す(例えば、「マウスSTEAP2」、「サルSTEAP2」など)。ヒトSTEAP2タンパク質は、配列番号1899に示されるアミノ酸配列を有する。
【0149】
CD3およびSTEAP2に特異的に結合する前述の二重特異性抗原結合分子は、インビトロ親和性結合アッセイで測定される場合に、約40nM超のKを示す弱い結合親和性でCD3に結合する、抗CD3抗原結合分子を含むことができる。場合によっては、CD3結合アームは、約100nM超、約200nM超、約300nM超、約400nM超、約500nM超、または約1μM超のKまたはEC50で、CD3と結合する。(例えば、表面プラズモン共鳴アッセイにおける尺度として)。いくつかの場合において、第1の抗原結合ドメインはCD3に特異的に結合する(例えば、弱いまたは測定不可能な親和性でヒトCD3およびカニクイザルCD3のいずれかまたは両方)。
【0150】
本明細書で使用される場合、表現「抗原結合分子」は、単独で、または特定の抗原に特異的に結合する、1つ以上のさらなるCDRおよび/またはフレームワーク領域(FR)と組み合わせて少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むまたはそれからなるタンパク質、ポリペプチド、または分子複合体を意味する。特定の実施形態において、抗原結合分子は、それらの用語が本明細書の他所で定義されているように、抗体または抗体の断片である。
【0151】
本明細書で使用される場合、表現「二重特異性抗原結合分子」は、少なくとも第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインを含むタンパク質、ポリペプチドまたは分子複合体を意味する。二重特異性抗原結合分子内の各抗原結合ドメインは、単独で、または1つ以上の追加のCDRおよび/またはFRと組み合わせて、特定の抗原に特異的に結合する少なくとも1つのCDRを含む。本発明の文脈において、第1の抗原結合ドメインは第1の抗原(例えばCD3)に特異的に結合し、第2の抗原結合ドメインは第2の異なる抗原(例えばSTEAP2)に特異的に結合する。
【0152】
本発明の特定の例示的実施形態において、二重特異性抗原結合分子は二重特異性抗体である。二重特異性抗体の各抗原結合ドメインは、重鎖可変ドメイン(HCVR)および軽鎖可変ドメイン(LCVR)を含む。第1および第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗原結合分子(例えば、二重特異性抗体)の文脈において、第1の抗原結合ドメインのCDRは接頭辞「A1」を付けて指定され、第2の抗原結合ドメインのCDRは接頭辞「A2」を付けて指定され得る。したがって、第1の抗原結合ドメインのCDRは、本明細書においてA1-HCDR1、A1-HCDR2、およびA1-HCDR3と呼ばれてもよく、第2の抗原結合ドメインのCDRは、本明細書においてA2-HCDR1、A2-HCDR2、およびA2-HCDR3と呼ばれてもよい。
【0153】
第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインは、互いに直接的または間接的に結合して、本発明の二重特異性抗原結合分子を形成し得る。あるいは、第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインは、それぞれ別々の多量体化ドメインに連結されていてもよい。1つの多量体化ドメインと別の多量体化ドメインとの会合は、2つの抗原結合ドメイン間の会合を促進し、それによって二重特異性抗原結合分子を形成する。本明細書で使用される場合、「多量体化ドメイン」は、同一または類似の構造または構成の第
2の多量体化ドメインと会合する能力を有する任意の高分子、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、またはアミノ酸である。例えば、多量体化ドメインは、免疫グロブリンC3ドメインを含むポリペプチドであってもよい。多量体化成分の非限定的な例は、免疫グロブリンのFc部分(C2-C3ドメインを含む)、例えばアイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4から選択されるIgGのFcドメイン、ならびに各アイソタイプ群内のアロタイプである。
【0154】
本発明の二重特異性抗原結合分子は、典型的には2つの多量体化ドメイン、例えば、それぞれ別々の抗体重鎖の一部である2つのFcドメインを含む。第1および第2の多量体化ドメインは、例えば、IgG1/IgG1、IgG2/IgG2、IgG4/IgG4などの同じIgGアイソタイプであり得る。あるいは、第1および第2の多量体化ドメインは、例えば、IgG1/IgG2、IgG1/IgG4、IgG2/IgG4などの異なるIgGアイソタイプのものであり得る。
【0155】
特定の実施形態において、多量体化ドメインは、Fc断片または少なくとも1つのシステイン残基を含有する長さが1~約200アミノ酸のアミノ酸配列である。他の実施形態において、多量体化ドメインはシステイン残基、または短いシステイン含有ペプチドである。他の多量体化ドメインには、ロイシンジッパー、ヘリックスループヘリックス、またはコイルドコイルモチーフを含むかまたはそれらからなるペプチドまたはポリペプチドが含まれる。
【0156】
任意の二重特異性抗体フォーマットまたは技術を使用して、本発明の二重特異性抗原結合分子を作製することができる。例えば、第1の抗原結合特異性を有する抗体またはその断片は、第2の抗原結合性を有する他の抗体または抗体断片などの1つ以上の他の分子実体に(例えば、化学結合、遺伝的融合、非共有結合などにより)機能的に連結されて、二重特異性抗原結合分子を生成することができる。本発明の文脈において使用できる特定の例示的な二重特異性フォーマットには、例えば、scFv系フォーマットまたはダイアボディ二重特異性フォーマット、IgG-scFv融合、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、Quadroma、ノブズ-イントゥ-ホールズ(knobs-into-holes)、共通の軽鎖(例えば、ノブズ-イントゥ-ホールズを備えた共通の軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEED)ボディ、ロイシンジッパー、Duobody、IgG1/IgG2、二重作用型Fab(DAF)-IgG、およびMab二重特異性フォーマットが含まれるが、これらに限定されない(上述のフォーマットの総説については、例えば、Klein et al.2012,mAbs 4:6,1-11、およびそこに引用されている参考文献を参照されたい)。
【0157】
本発明の二重特異性抗原結合分子との関連で、多量体化ドメイン、例えば、Fcドメインは、野生型の、天然に存在するFcドメインと比較して、1つ以上のアミノ酸変化(例えば、挿入、欠失または置換)を含んでもよい。例えば、本発明は、FcとFcRnとの間の修飾された結合相互作用(例えば、増強または減少)を有する改変Fcドメインをもたらす、Fcドメイン中の1つ以上の修飾を含む二重特異性抗原結合分子を含む。一実施形態において、二重特異性抗原結合分子は、C2またはC3領域に修飾を含み、この修飾は酸性環境(例えば、pH範囲約5.5~約6.0のエンドソーム内)において、FcRnに対するFcドメインの親和性を高める。そのようなFc修飾の非限定的な例には、例えば、250位(例えば、EまたはQ)、250位および428位(例えば、LまたはF)、252位(例えば、L/Y/F/WまたはT)、254位(例えば、SまたはT)、および256位(例えば、S/R/Q/E/DまたはT)での修飾、または428位および/または433位(例えばL/R/S/P/QまたはK)および/または434位(例えばH/FまたはY)での修飾、あるいは250位および/または428位の修飾、あるいは307位もしくは308位(例えば、308F、V308F)、および434位
での修飾が含まれる。一実施形態において、修飾は428L(例えばM428L)および434S(例えばN434S)の修飾、428L、259I(例えば、V259I)、および308F(例えば、V308F)の修飾、433K(例えば、H433K)および434(例えば、434Y)の修飾、252、254、および256(例えば、252Y、254T、および256E)の修飾、250Qおよび428Lの修飾(例えば、T250QおよびM428L)、307および/または308の修飾(例えば、308Fまたは308P)を含む。
【0158】
本発明はまた、第1のC3ドメインおよび第2のIgC3ドメインを含む二重特異性抗原結合分子を含み、第1および第2のIgC3ドメインは、少なくとも1つのアミノ酸ほど互いに異なっており、少なくとも1つのアミノ酸の相違は、アミノ酸の相違を欠失する二重特異性抗体と比較して、プロテインAへの二重特異性抗体の結合を低減させる。一実施形態において、第1のIgC3ドメインはプロテインAを結合し、第2のIgC3ドメインはH95R修飾(IMGTエクソン番号付けによる、EU番号付けではH435R)などのプロテインA結合を低減または消失させる変異を含有する。第2のC3は、Y96F修飾(IMGTによるものであり、EUではY436F)をさらに含み得る。例えば、米国特許第8,586,713号を参照のこと。第2のC3内に認められ得るさらなる修飾には、IgG1抗体の場合、D16E、L18M、N44S、K52N、V57M、およびV82I(IMGTによるものであり、EUによるD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、およびV422I)、IgG2抗体の場合、N44S、K52N、およびV82I(IMGTであって、EUによるN384S、K392N、およびV422I)、ならびにIgG4抗体の場合、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、およびV82I(IMGTによるものであり、EUによるQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、およびV422I)が含まれる。
【0159】
特定の実施形態において、Fcドメインは、2つ以上の免疫グロブリンアイソタイプに由来するFc配列を組み合わせたキメラであり得る。例えば、キメラFcドメインは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4のC2領域に由来するC2配列の一部または全部、およびヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4に由来するC3配列の一部または全部を含むことができる。キメラFcドメインはまた、キメラヒンジ領域を含み得る。例えば、キメラヒンジは、ヒトIgG1ヒンジ領域、ヒトIgG2ヒンジ領域、またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「下部ヒンジ」配列と組み合わせた、ヒトIgG1ヒンジ領域、ヒトIgG2ヒンジ領域、またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「上部ヒンジ」配列を含むことができる。本明細書に記載の抗原結合分子のいずれかに含まれ得るキメラFcドメインの特定の例は、N末端からC末端に、[IgG4C1]-[IgG4上方ヒンジ]-[IgG2下方ヒンジ]-[IgG4CH2]-[IgG4CH3]を含む。本明細書に記載の抗原結合分子のいずれかに含まれ得るキメラFcドメインの別の例は、N末端からC末端に、[IgG1C1]-[IgG1上方ヒンジ]-[IgG2下方ヒンジ]-[IgG4CH2]-[IgG1CH3]を含む。本発明の抗原結合分子のいずれかに含まれ得るキメラFcドメインのこれらおよび他の例は、2014年8月28日に公開された米国特許公開第2014/0243504号に記載されており、その全体が本明細書に組み込まれる。これらの一般的な構造配置を有するキメラFcドメイン、およびその変異体は、Fc受容体結合を変えてしまうことができ、そのことがFcエフェクター機能に影響を及ぼす。
【0160】
特定の実施形態において、本発明は、重鎖定常領域(CH)領域が、配列番号1911、配列番号1912、配列番号1913、配列番号1914、配列番号1915、配列番号1916、配列番号1917、配列番号1918、配列番号1919、または配列番号1920のいずれか一つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少
なくとも98%、少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む抗体重鎖を提供する。いくつかの実施形態において、重鎖定常領域(CH)領域は、配列番号1911、配列番号1912、配列番号1913、配列番号1914、配列番号1915、配列番号1916、配列番号1917、配列番号1918、配列番号1919および配列番号1920からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0161】
他の実施形態において、本発明は、Fcドメインが、配列番号1921、配列番号1922、配列番号1923、配列番号1924、配列番号1925、配列番号1926、配列番号1927、配列番号1928、配列番号1929、または配列番号1930のいずれか1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む、抗体重鎖を提供する。いくつかの実施形態において、Fcドメインは、配列番号1921、配列番号1922、配列番号1923、配列番号1924、配列番号1925、配列番号1926、配列番号1927、配列番号1928、配列番号1929、および配列番号1930からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0162】
配列変異体
本明細書の抗体および二重特異性抗原結合分子は、個々の抗原結合ドメインが由来した対応する生殖系列配列と比較して、重鎖および軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域に1つ以上のアミノ酸置換、挿入および/または欠失を含み得る。このような変異は、本明細書中に開示するアミノ酸配列を、例えば公共の抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と比較することによって容易に確認することができる。本発明の抗原結合分子は、本明細書に開示する例示的なアミノ酸配列のいずれかに由来する抗原結合ドメインを含んでもよく、1つ以上のフレームワークおよび/またはCDR領域内の1つ以上のアミノ酸は、抗体が由来した生殖系列配列の対応する残基(複数可)へ、または別のヒト生殖系列配列の対応する残基(複数可)へ、または対応する生殖系列残基(複数可)の保存的アミノ酸置換へ変異する(このような配列変化はまとめて、「生殖系列変異」と本明細書で呼ばれる)。当業者は、本明細書に開示する重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列から出発して、1つ以上の個々の生殖系列変異またはこれらの組み合わせを含む多数の抗体および抗体結合断片を容易に産生することができる。特定の実施形態において、Vドメインおよび/またはVドメイン内のフレームワークおよび/またはCDR残基は全て、抗原結合ドメインが由来した元の生殖系列配列において認められる残基へと戻り変異する。他の実施形態において、ある特定の残基のみが元の生殖系列配列へと変異し戻され、例えば、変異した残基はFR1の最初の8個のアミノ酸内に、もしくは変異した残基はFR4の最後の8個のアミノ酸内に認められ、または変異した残基は、CDR1、CDR2もしくはCDR3内にのみ認められる。他の実施形態において、フレームワークおよび/またはCDR残基(複数可)の1つ以上は、異なる生殖系列配列(すなわち、抗原結合ドメインが本来由来した生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基(複数可)へ変異する。さらに、抗原結合ドメインは、フレームワークおよび/またはCDR領域内に2つ以上の生殖系列変異のいずれかの組み合わせを含有してもよく、例えば、特定の個々の残基は、特定の生殖系列配列の対応する残基へ変異するのに対し、元の生殖系列配列とは異なるある特定の他の残基は維持され、または異なる生殖系列配列の対応する残基へ変異する。いったん得られれば、1つ以上の生殖系列変異を含有する抗原結合ドメインは、結合特異性の改善、結合親和性の増大、アンタゴニストまたはアゴニストの生物学的特性の改善または増強(場合によって)、免疫原性の低下などの1つ以上の所望の特性について容易に試験することができる。この一般的な方法で得られた1つ以上の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗原結合分子は、本発明の範囲内に包含される。
【0163】
本発明はまた、一方または両方の抗原結合ドメインが、1つ以上の保存的置換を有する
本明細書に開示するHCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかの変異体を含む、抗原結合分子を含む。例えば、本発明は、本明細書に開示するHCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかに対して、例えば10個以下、8個以下、6個以下、または4個以下などの保存的アミノ酸置換を有するHCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、および/またはCDRアミノ酸配列を有する抗原結合ドメインを含む抗原結合分子を含む。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を備えた側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されたものである。概して、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させないことになっている。類似の化学的特性を備えた側鎖を有するアミノ酸の基の例としては、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン、(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリンおよびトレオニン、(3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン、(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン、(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、およびヒスチジン、(6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸、ならびに(7)含硫側鎖:システインおよびメチオニンが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸およびアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的置換とは、参照により本明細書に組み込まれるGonnet et al.(1992)Science 256:1443-1445に開示されるPAM250対数尤度行列において正値を有する任意の変化である。「適度に保存的な」置換とは、PAM250対数尤度マトリックスにおいて負以外の値を有する任意の変化である。
【0164】
本発明はまた、本明細書に開示するHCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかと実質的に同一であるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列を有する抗原結合ドメインを含む抗原結合分子を含む。アミノ酸配列意味する場合、「実質的な同一性」または「実質的に同一の」という用語は、2つのアミノ酸配列が、既定のギャップ重みを用いてプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適に整列した場合、少なくとも95%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%、または99%の配列同一性を共有する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換だけ異なる。2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換だけ互いに異なる場合、配列同一性の割合または類似性の程度は、置換の保存的性質を補正するために上向きに調整してもよい。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれるPearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307-331を参照されたい。
【0165】
ポリペプチドに対する配列類似性は、配列同一性とも呼ばれ、典型的には配列分析ソフトウェアを用いて測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む種々の置換、欠失および他の修飾へ割り当てられた類似の測定値を用いて類似の配列と一致させる。例えば、GCGソフトウェアは、異なる種の生物由来の相同ポリペプチドのような密接に関連するポリペプチド間の、または野生型タンパク質とその変異タンパク質の間の配列相同性または配列同一性を決定するための既定パラメータと共に使用することができるGapおよびBestfitなどのプログラムを含有する。例えば、GCG第6.1版を参照されたい。ポリペプチド配列は、GCG第6.1版におけるプログラムである、既定パラメータまたは推奨パラメータを備えたFASTAを使用して比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、問い合わせ配列と検索配列の間の最良重複の領域の整列およびパーセント配列同一性を提供する(Pearson(2000)上述)。本発明の配列を、異なる生物由来の多数の配列を含有するデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、既定パラメータを用いるコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば
、それぞれ参照により本明細書に組み入れられる、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410およびAltschul et
al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-402を参照のこと。
【0166】
pH依存的結合
本発明は、pH依存的の結合特性を有する抗STEAP2抗体、および抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子を含む。例えば、本発明の抗STEAP2抗体は、中性pHと比較して酸性pHでSTEAP2への結合の低下を示し得る。あるいは、本発明の抗STEAP2抗体は、中性pHと比較して酸性pHでSTEAP2への増強された結合を示し得る。「酸性pH」という表現は、約6.2未満、例えば、約6.0、5.95、5、9、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0以下のpH値を含む。本明細書で使用される場合、表現「中性pH」は、約7.0~約7.4のpHを意味する。「中性pH」という表現は、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、および7.4のpH値を含む。
【0167】
場合によっては、「中性pHと比較して、酸性pHで...結合の低下」は、中性pHでその抗原に結合する抗体のK値に対する酸性pHでその抗原に結合する抗体のK値の比に関して、表される。(またはその逆)。例えば、抗体またはその抗原結合断片が約3.0以上の酸性/中性K比を示す場合、本発明の目的のために、抗体またはその抗原結合断片は「中性pHと比較して酸性pHではSTEAP2への結合の低下」を示すと見なされ得る。特定の例示的実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片の酸性/中性K比は、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0以上であり得る。
【0168】
pH依存性結合特性を有する抗体は、例えば、中性pHと比較して酸性pHで特定の抗原への結合の低下(または増強)について抗体の集団をスクリーニングすることによって得ることができる。さらに、アミノ酸レベルでの抗原結合ドメインの修飾は、pH依存的特徴を有する抗体を産生し得る。例えば、抗原結合ドメイン(例えばCDR内)の1つ以上のアミノ酸をヒスチジン残基で置換することにより、中性pHに対して酸性pHで抗原結合が低下した抗体を得ることができる。
【0169】
Fc変異体を含む抗体
本発明の特定の実施形態によると、例えば、中性pHと比較して酸性pHで、FcRn受容体への抗体結合を増強または減少させる1つ以上の突然変異を含むFcドメインを含む、抗STEAP2抗体二重特異性抗原結合分子、および抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子が提供される。例えば、本発明は、FcドメインのC2またはC3領域に変異を含む抗体を含み、変異(複数可)は、酸性環境においてFcRnに対するFcドメインの親和性を増加させる(例えば、pHが約5.5~約6.0の範囲のエンドソームにおいて)。そのような突然変異は、動物に投与したときに抗体の血清半減期の増加をもたらし得る。そのようなFc修飾の非限定的な例には、例えば、250位(例えば、EまたはQ)、250位および428位(例えば、LまたはF)、252位(例えば、L/Y/F/WまたはT)、254位(例えば、SまたはT)、および256位(例えば、S/R/Q/E/DまたはT)での修飾、または428位および/または433位(例えばH/L/R/S/P/QまたはK)および/または434位(例えばH/FまたはY)での修飾、あるいは250位および/または428位の修飾、あるいは307位もしく
は308位(例えば、308F、V308F)、および434位での修飾が含まれる。一実施形態において、修飾は428L(例えばM428L)および434S(例えばN434S)の修飾、428L、259I(例えば、V259I)、および308F(例えば、V308F)の修飾、433K(例えば、H433K)および434(例えば、434Y)の修飾、252、254、および256(例えば、252Y、254T、および256E)の修飾、250Qおよび428Lの修飾(例えば、T250QおよびM428L)、307および/または308の修飾(例えば、308Fまたは308P)を含む。
【0170】
例えば、本発明は、250Qおよび248L(例えば、T250QおよびM248L)、252Y、254Tおよび256E(例えば、M252Y、S254TおよびT256E)、428Lのおよび434S(例えば、M428LおよびN434S)、ならびに433Kおよび434F(例えば、H433KおよびN434F)からなる群から選択される、1つ以上の変異対または変異群を含むFcドメインを含む、抗STEAP2抗体、および抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子を含む。前述のFcドメイン変異、および本明細書に開示される抗体可変ドメイン内の他の変異の全ての可能な組み合わせは、本発明の範囲内で企図される。
【0171】
抗体および二重特異性抗原結合分子の生物学的特性
本発明は、ヒトSTEAP2に高い親和性(例えば、ナノモル以下のK値)で結合する抗体およびその抗原結合断片を含む。
【0172】
本発明はまた、ヒト前立腺癌異種移植片を保有する免疫無防備状態マウスにおいて腫瘍増殖を阻害する抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子を含む。(例えば、実施例5参照のこと)。
【0173】
本発明は、ヒトCD3に高親和性で結合する抗体およびその抗原結合断片を含む。本発明はまた、治療状況および所望される特定の標的化特性に応じて、中程度または低い親和性でヒトCD3に結合する抗体およびその抗原結合断片を含む。例えば、一方のアームがCD3と結合し、別のアームが標的抗原(例えば、STEAP2)と結合する二重特異性抗原結合分子の状況下では、標的抗原結合アームが標的抗原に高い親和性で結合することが望ましいが、抗CD3アームは中程度または低い親和性でのみCD3に結合する。このようにして、標的抗原を発現する細胞への抗原結合分子の優先的標的化は、一般的/非標的化CD3結合およびそれに付随する結果として生じる有害な副作用を回避しながら達成され得る。
【0174】
本発明は、ヒトCD3およびヒトSTEAP2に同時に結合することができる二重特異性抗原結合分子(例えば、二重特異性抗体)を含む。CD3を発現する細胞と相互作用する結合アームは、適切なインビトロ結合アッセイで測定した場合に、弱から検出不可能な結合を有し得る。二重特異性抗原結合分子がCD3および/またはSTEAP2を発現する細胞と結合する程度は、蛍光活性化細胞選別(FACS)によって評価することができる。
【0175】
本発明はまた、実施例2に記載のFACS結合アッセイまたは実質的に類似のアッセイを用いて測定した場合に、約1nM~50nMのEC50値で、STEAP2発現細胞および細胞株(例えば、CA-2細胞)に結合する抗体、その抗原結合断片、およびその二重特異性抗体を含む。特定の実施形態において、実施例2に記載のFACS結合アッセイまたは実質的に類似のアッセイを用いて測定した場合に、抗体、その抗体結合断片、およびその二重特異性抗体は、約50nM、約40nM、約30nM、約20nMのEC50値で、約15nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、約2nM未満、約1nM未満のEC50値で、STEAP2発現細胞および細胞株(例え
ば、CA-2細胞)に結合する。
【0176】
本発明は、弱い(すなわち低い)親和性またはさらに検出不可能な親和性でヒトCD3に結合する抗体、その抗体結合断片、およびその二重特異性抗体を含む。特定の実施形態によると、本発明は、表面プラズモン共鳴による測定で約11nMを超えるKでヒトCD3に結合する(例えば37℃で)抗体および抗体の抗原結合断片を含む。特定の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、表面プラズモン共鳴(例えば、mAb捕捉または抗原捕捉フォーマット)または実質的に類似のアッセイにより測定して、約15nM超、約20nM超、約25nM超、約30nM超、約35超nM、約40nM超、約45nM超、約50nM超、約55nM超、約60nM超、約65nM超、約70nM超、約75nM超、少なくとも80nM、約90nM超、約100nM超、約110nM超、少なくとも120nM、約130nM超、約140nM超、約150nM超、少なくとも160nM、約170nM超、約180nM超、約190nM超、約200nM超、約250nM超、約300nM超、約400nM超、約500nM超、もしくは約1μM超のKDで、または検出可能な親和性なしでCD3に結合する。
【0177】
本発明は、弱い(すなわち低い)親和性またはさらに検出不可能な親和性でサル(すなわちカニクイザル)CD3に結合する抗体、その抗体結合断片、およびその二重特異性抗体を含む。
【0178】
本発明は、本明細書の実施例3または実質的に類似のアッセイにより規定されるアッセイ形式により測定される場合に、ヒトSTEAP2発現細胞(例えば、CA-2細胞)に結合し、それによって内在化される抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子を含む。本発明は、ヒトSTEAP2への結合に特異的な抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子を含む。特定の実施形態において、本発明の抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子は、本明細書の実施例3により定義されるアッセイ形式または実質的に類似のアッセイにより測定した場合、HEK293細胞において一過性に発現されるSTEAP-2に結合する。特定の実施形態において、本発明の抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子は、本明細書の実施例3によって定義されるアッセイ形式または実質的に類似のアッセイにより測定した場合に、HEK293細胞において一過性に発現されるヒトSTEAP1、ヒトSTEAP2、またはヒトSTEAP4に結合しない。
【0179】
本発明は、C4-2腫瘍増殖を阻害することができる抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子を含む(例えば、実施例5を参照のこと)。例えば、特定の実施形態によると、抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子が提供され、例えば、本明細書の実施例5に記載のとおり、腫瘍移植後46日目の測定で標準的なキャリパー測定方法を用いて対象において検出された場合、単回投与例えば、約0.1mg/kgまたは約0.01mg/kg用量)は、アイソタイプ対照二重特異性抗体を投与した動物と比較して、腫瘍サイズの減少をもたらす。
【0180】
本発明はまた、インビボSTEAP2陽性前立腺癌異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を阻害する抗STEAP2抗体薬物複合体を含む(例えば、実施例7、または実質的に類似のアッセイを参照のこと)。特定の実施形態において、腫瘍移植後13日目に投与された10、20、または40mg/kgの単回投与がインビボSTEAP2陽性前立腺癌異種移植モデルにおけるC4-2腫瘍増殖を阻害する、化合物7との抗STEAP2抗体薬物複合体が提供される。特定の実施形態において、移植後14日目に投与される5mg/kgまたは20mg/kgの単回投与がインビボSTEAP2陽性前立腺癌異種移植モデルにおいてC4-2腫瘍増殖を阻害する、化合物7との抗STEAP2抗体薬物複合体が提供される。特定の実施形態において、移植後17日目に投与された150μg/kgの単
回投与がインビボSTEAP2陽性前立腺癌異種移植モデルにおいてC4-2腫瘍増殖を阻害する、化合物7との抗STEAP2抗体薬物複合体が提供される。他の実施形態において、移植後29日目に投与された少なくとも2.5mg/kgの単回投与がインビボSTEAP2陽性前立腺癌異種移植モデルにおいてC4-2腫瘍増殖を阻害する、化合物60との抗STEAP2抗体薬物複合体が提供される。
【0181】
エピトープマッピングおよび関連技術
本発明の抗原結合分子が抗体が結合するCD3および/またはSTEAP2上のエピトープは、3つ以上(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれより多数)のCD3またはSTEAP2タンパク質のアミノ酸の単一連続配列からなってもよい。あるいは、エピトープは、CD3またはSTEAP2の複数の非連続アミノ酸(またはアミノ酸配列)からなっていてもよい。本発明の抗体は、単一のCD3鎖内に含まれるアミノ酸(例えば、CD3-イプシロン、CD3-デルタ、またはCD3-ガンマ)と相互作用し得るか、または2つ以上の異なるCD3鎖上のアミノ酸と相互作用し得る。本発明で使用する場合、「エピトープ」という用語は、パラトープとして既知の抗体分子の可変領域における特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原は2つ以上のエピトープを有してもよい。したがって、異なる抗体は、抗原上の異なる領域へ結合し得、異なる生物学的効果を有し得る。エピトープは、立体配座または線状のいずれでもよい。立体配座エピトープは、直鎖状ポリペプチド鎖の異なるセグメントから空間的に並置されたアミノ酸によって産生される。直鎖状エピトープは、ポリペプチド鎖中の隣接するアミノ酸残基によって産生されるものである。特定の状況において、エピトープは、抗原上の糖類、ホスホリル基、またはスルホニル基の部分を含み得る。
【0182】
当業者に既知の種々の技術を用いて、抗体の抗原結合ドメインがポリペプチドまたはタンパク質内にある「1つ以上のアミノ酸と相互作用する」かどうかを判定することができる。例示的な技術としては、例えば、Antibodies,Harlow and Lane (Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harb.,NY)に記載されている日常的なクロスブロッキングアッセイ、アラニンスキャニング突然変異分析、ペプチドブロット分析(Reineke,2004,Methods Mol Biol 248:443-463)、およびペプチド切断分析が挙げられる。加えて、エピトープ切除、エピトープ抽出、および抗原の化学修飾などの方法を採用することができる(Tomer(2000)Prot.Sci.9:487-496)。抗体の抗原結合ドメインが相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するために用いることができる別の方法は、質量分析によって検出される水素/重水素交換である。一般的にいえば、水素/重水素交換法は、関心対象のタンパク質を重水素標識した後、抗体を重水素標識タンパク質へ結合させることを包含する。次に、タンパク質/抗体複合体を水に移して、抗体によって保護されている残基(重水素標識されたままである)を除く全ての残基で水素-重水素交換を生じさせる。抗体の解離後、標的タンパク質をプロテアーゼ切断および質量分析へ供し、それにより、抗体が相互作用する特異的アミノ酸に対応する重水素標識残基を明らかにする。例えば、Ehring(1999)Analytical Biochemistry 267(2):252-259、Engen and Smith(2001)Anal.Chem.73:256A-265Aを参照されたい。抗原/抗体複合体のX線結晶解析もまた、エピトープマッピング目的に使用してもよい。
【0183】
本発明はさらに、本明細書に記載の特定の例示的な抗体のいずれかと同じエピトープに結合する抗STEAP2抗体(本明細書の表1に記載のアミノ酸配列のいずれかを含む抗体)を含む。同様に、本発明はまた、STEAP2への結合について本明細書に記載の特定の例示的な抗体のいずれかと競合する抗STEAP2抗体(本明細書の表1に記載のア
ミノ酸配列のいずれかを含む抗体)を含む。
【0184】
本発明はまた、低いまたは検出可能な結合親和性でヒトCD3および/またはカニクイザルCD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、ヒトSTEAP2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗原結合分子を含み、第1の抗原結合ドメインは、本明細書に記載の特定の例示的なCD3特異的抗原結合ドメインのいずれかと同じCD3上のエピトープに結合し、および/または第2の抗原結合ドメインは、本明細書に記載の特定の例示的なSTEAP2特異的抗原結合ドメインのいずれかと同じSTEAP2上の同じエピトープに結合する。
【0185】
同様に、本発明はまた、ヒトCD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン、およびヒトSTEAP2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗原結合分子を含み、第1の抗原結合ドメインは、CD3への結合について、本明細書に記載の特定の例示的なCD3特異的抗原結合ドメインのいずれかと競合し、および/または第2の抗原結合ドメインは、STEAP2への結合について、本明細書に記載の特定の例示的なSTEAP2特異的抗原結合ドメインのいずれかと競合する。
【0186】
特定の抗原結合分子(例えば、抗体)またはその抗原結合ドメインが、本発明の参照抗原結合分子と同じエピトープに結合するか、または結合するために本発明の参照抗原結合分子と競合するかどうかは、当技術分野で既知の常法を用いて容易に判定できる。例えば、試験抗体が本発明の参照二重特異性抗原結合分子と同じSTEAP2(またはCD3)上のエピトープに結合するかどうかを決定するために、参照二重特異性分子は最初にSTEAP2タンパク質(またはCD3タンパク質)に結合させた。次に、STEAP2(またはCD3)分子へ結合する試験抗体の能力を評価する。試験抗体が参照二重特異性抗原結合分子と飽和結合後にSTEAP2(またはCD3)に結合することができる場合、試験抗体は参照二重特異性抗原とは異なるSTEAP2(またはCD3)のエピトープに結合すると結論付けることができる。その一方で、試験抗体が、参照二重特異性抗原結合分子に飽和結合後にSTEAP2(またはCD3)分子へ結合できない場合、試験抗体は、本発明の参照二重特異性抗原結合分子によって結合したエピトープと同じSTEAP2(またはCD3)のエピトープへ結合してもよい。次に、試験抗体の結合の観察された欠失が、実際に、参照二重特異性抗原結合分子と同じエピトープへの結合によるものであるか、それとも立体遮断(または別の現象)が、観察された結合の欠失の原因であるのかを確認するために、さらなる通例の実験(例えば、ペプチド変異および結合分析)を実施することができる。この種の実験は、ELISA、RIA、Biacore、フローサイトメトリー、または当該技術分野で利用可能な任意の他の定量的もしくは定性的な抗体結合アッセイを用いて行うことができる。本発明の特定の実施形態によると、例えば、1倍、5倍、10倍、20倍、または100倍過剰量の一方の抗原結合タンパク質が、競合結合アッセイでの測定で少なくとも50%、しかし、好ましくは75%、90%、またはさらに99%他方の結合を阻害する場合、2つの抗原結合タンパク質は、同一(または重複)エピトープに結合する。(例えば、Junghans et al.,Cancer Res.1990:50:1495-1502を参照のこと)あるいは、一方の抗原結合タンパク質の結合を低減または排除する抗原における本質的に全てのアミノ酸変異が、もう一方の結合を低減または排除する場合、2つの抗原結合タンパク質は同じエピトープと結合すると見なされる。一方の抗原結合タンパク質の結合を減少または排除するアミノ酸変異のサブセットのみが他方の結合を減少または排除する場合、2つの抗原結合タンパク質は「重複エピトープ」を有するとみなされる。
【0187】
抗体またはその抗原結合ドメインが、結合について、参照抗原結合分子と競合するかどうかを決定するために、上述の結合方法を2つの方向性で実施する。第1の方向性おいて、参照抗原結合分子を飽和条件下でSTEAP2タンパク質(またはCD3タンパク質)
へ結合させた後、STEAP2(またはCD3)分子への試験抗体の結合を評価する。第2の方向性において、試験抗体を飽和条件下でSTEAP2(またはCD3)分子に結合させた後、参照抗原結合分子のSTEAP2(またはCD3)分子への結合を評価する。両方向において、第1の(飽和)抗原結合分子のみがSTEAP2(またはCD3)分子に結合することができる場合、試験抗体および参照抗原結合分子は、STEAP2(またはCD3)への結合について、競合すると結論される。当業者によって認識されるように、参照抗原結合分子との結合について競合する抗体は、必ずしも参照抗体と同一のエピトープへ結合するわけではないが、重複しているまたは隣接しているエピトープに結合することによって、参照抗体の結合を立体的に遮断し得る。
【0188】
抗原結合ドメインの調製と二重特異性分子の構築
特定の抗原に特異的な抗原結合ドメインは、当技術分野で既知の任意の抗体産生技術によって調製することができる。いったん得られれば、2つの異なる抗原(例えばCD3およびSTEAP2)に特異的な2つの異なる抗原結合ドメインを互いに適切に配置して、常法を用いて本発明の二重特異性抗原結合分子を産生することができる。(本発明の二重特異性抗原結合分子を構築するために使用できる例示的な二重特異性抗体フォーマットの考察は、本明細書の他所に提供される)。特定の実施形態において、本発明の多重特異性抗原結合分子の1つ以上の個々の構成要素(例えば、重鎖および軽鎖)は、キメラ抗体、ヒト化抗体または完全ヒト型抗体に由来する。そのような抗体を作製するための方法は当技術分野において周知である。例えば、本発明の二重特異性抗原結合分子の1つ以上の重鎖および/または軽鎖は、VELOCIMMUNE(商標)技術を用いて調製することができる。VELOCIMMUNE(商標)技術(または任意の他のヒト抗体産生技術)を使用して、特定の抗原(例えば、CD3またはSTEAP2)に対する高親和性キメラ抗体が、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有して最初に単離される。抗体を、親和性、選択性、エピトープなどを含む望ましい特徴について特徴付けし選択する。マウス定常領域は、所望のヒト定常領域と置換されて、本発明の二重特異性抗原結合分子に組み込まれ得る完全ヒト型重鎖および/または軽鎖を産生する。
【0189】
遺伝子操作された動物は、ヒト二重特異性抗原結合分子を作製するために使用し得る。例えば、内因性マウス免疫グロブリン軽鎖可変配列を再編成および発現することができない、遺伝子改変マウスを使うことができ、マウスは、内在性マウスカッパ遺伝子座のマウスカッパ定常遺伝子に作動可能に連結されているヒト免疫グロブリン配列によってコードされる1つまたは2つのヒト軽鎖可変ドメインのみを発現する。そのような遺伝子改変マウスを使用して、2つの異なるヒト軽鎖可変領域遺伝子セグメントのうちの1つに由来する可変ドメインを含む同一の軽鎖と会合する2つの異なる重鎖を含む完全ヒト型二重特異性抗原結合分子を産生することできる。(例えば、US2011/0195454を参照のこと)。完全ヒト型とは、抗体またはその抗原結合断片もしくは免疫グロブリンドメインの各ポリペプチドの全長にわたるヒト配列に由来するDNAによってコードされるアミノ酸配列を含む、抗体、またはその抗原結合断片もしくは免疫グロブリンドメインを指す。いくつかの例において、完全ヒト型配列は、ヒトに対して内因性のタンパク質に由来する。他の例において、完全ヒト型タンパク質またはタンパク質配列は、各成分配列がヒト配列に由来するキメラ配列を含む。いずれの理論にも縛られないが、キメラタンパク質またはキメラ配列は、一般に、例えば任意の野生型ヒト免疫グロブリン領域またはドメインと比較して、成分配列の接合部における免疫原性エピトープの生成を最小にするように設計される。
【0190】
生物学的等価物
本発明は、本明細書に開示の例示的な分子のものとは異なるが、CD3および/またはSTEAP2に結合する能力を保持するアミノ酸配列を有する抗原結合分子を包含する。このような変異体抗体は、親配列と比較してアミノ酸の1つ以上の付加、欠失、または置
換を含むが、説明された二重特異性抗原結合分子の生物学的活性とは本質的に等価である生物学的活性を呈する。
【0191】
本発明は、本明細書に記載の例示的な抗原結合分子のいずれかと生物学的に等価な抗原結合分子を含む。2つの抗原結合タンパク質または抗体は、例えば、それらが類似の実験条件下で単回用量または複数回用量のいずれかで同じモル用量で投与された場合に、吸収速度および吸収の程度が有意差を示さない医薬的等価物または医薬的選択肢である場合、生物学的等価物とみなされる。これらの吸収の程度は等価であるが吸収速度は等価ではなく、吸収速度におけるこのような差が意図的、かつ標識に反映されているので生物学的に等価とみなされ得る場合、いくつかの抗原結合タンパク質は、等価物または薬学的選択肢とみなされることになっており、例えば長期使用に及ぼす有効な身体薬剤濃度の達成に必須ではなく、試験した特定の薬剤製品にとって医学的に有意ではないとみなされる。
【0192】
一実施形態において、2つの抗原結合タンパク質は、これらの安全性、純度、または効力において臨床的に有意性のある差がない場合、生物学的に等価である。
【0193】
一実施形態において、2つの抗原結合タンパク質は、免疫原性の臨床的に有意な変化または有効性の減退を含む有害作用のリスクの期待される上昇なしで参照製品と生物製品の間での切り替えなしで持続される療法と比較して、患者が1回以上切り替えられることができる場合、生物学的に等価である。
【0194】
一実施形態において、2つの抗原結合タンパク質は、これらが両方とも、条件または使用条件についての共通の機序または作用機序によって、このような機序が既知である程度まで作用する場合、生物学的に等価である。
【0195】
生物学的等価性は、インビボおよびインビトロの方法によって実証され得る。生物学的等価性測定法には、例えば、(a)抗体またはその代謝産物の濃度が血液、血漿、血清または他の生物学的流体中で時間の関数として測定される、ヒトまたは他の哺乳類におけるインビボでの試験、(b)ヒト生物学的利用能データと相関した、このデータを合理的に予測しているインビトロ試験、(c)抗体(またはその標的)の適切な急性薬理学的効果が時間の関数として測定されるヒトまたは他の哺乳類におけるインビボ試験、および(d)抗原結合タンパク質の安全性、効能、または生物学的利用能もしくは生物学的等価性を確立する、十分に管理された臨床試験が含まれる。
【0196】
本明細書に示す例示的な二重特異性抗原結合分子の生物学的に等価な変異体は、例えば、残基もしくは配列の種々の置換を生じること、または生物活性に必要とされない末端もしくは内部の残基もしくは配列を欠失することによって構築され得る。例えば、生物学的活性にとって必須ではないシステイン残基は、再生の際の不必要または不正確な分子内ジスルフィド架橋の形成を防止するために、欠失または他のアミノ酸で置換することができる。他の文脈において、生物学的等価な抗原結合タンパク質は、分子のグリコシル化特性を修飾するアミノ酸変化、例えばグリコシル化を排除または除去する変異を含む、本明細書に記載の例示的な二重特異性抗原結合分子の変異体を含み得る。
【0197】
種の選択性および種の交差反応性
本発明の特定の実施形態によると、ヒトCD3に結合するが他の種由来のCD3には結合しない抗原結合分子が提供される。ヒトSTEAP2に結合するが他種由来のSTEAP2には結合しない抗原結合分子もまた提供される。本発明はまた、ヒトCD3および1つ以上の非ヒト種由来のCD3に結合する抗原結合分子、および/またはヒトSTEAP2および1つ以上の非ヒト種由来のSTEAP2に結合する抗原結合分子を含む。
【0198】
本発明の特定の例示的な実施形態によると、ヒトCD3および/またはヒトSTEAP2に結合し、場合によってはマウス、ラット、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、カニクイザル、マーモセット、アカゲザルまたはチンパンジーCD3および/またはSTEAP2のうちの1つ以上に結合または結合しない抗原結合分子が提供される。例えば、本発明の特定の例示的な実施形態において、ヒトCD3およびカニクイザルCD3に結合する第1の抗原結合ドメインと、ヒトSTEAP2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0199】
抗体-薬物複合体(ADC)
本発明は、細胞傷害性薬剤、化学療法剤、免疫抑制剤または放射性同位元素などの治療用部分に複合体化した抗STEAP2抗体またはその抗原結合断片を含む抗体-薬物複合体(ADC)を提供する。一般論として、ADCは、A-[L-P]を含み、式中、Aは抗原結合分子、例えば抗STEAP2抗体、またはその断片(例えば、表1に列挙されたHCDR3アミノ酸配列のいずれかから選択される少なくとも1つのHCDR3を含む断片)であり、Lはリンカーであり、Pはペイロードまたは治療部分(例えば、細胞傷害性薬剤)であり、yは1~30の整数である。様々な実施形態において、ADCは、表1に記載の配列番号(例えば、配列番号2および10)のアミノ酸配列を有するHCVRおよびLCVRのCDR、または特異的HCVR/LCVR対(例えば、配列番号2/10)を含む抗STEAP2抗体またはその抗原結合断片を含む。場合によっては、抗STEAP2抗体または断片は、表1に記載の配列番号(例えば、配列番号4-6-8-12-14-16)のアミノ酸配列を有するCDRを含む。場合によっては、抗STEAP2抗体または断片は、表1に記載の配列番号(例えば、配列番号2および10)のアミノ酸配列、または特異的なアミノ酸配列対(例えば、配列番号2/10)を有するHCVRおよびLCVRを含む。
【0200】
細胞傷害性薬剤は、細胞の増殖、生存能力、または伝播に有害な任意の薬剤を含む。本発明の抗原結合分子または抗体は、本明細書で「ペイロード」と呼ばれるこれらの細胞傷害性薬剤を標的細胞に送達する。ADCを形成するための適切な細胞傷害性薬剤および化学療法剤の例は当技術分野において既知である。
【0201】
本発明のこの態様に従って、抗STEAP2抗体に結合されることができる適切な細胞傷害性薬剤および化学療法剤の例には、例えば、1-(2クロロエチル)-1,2-ジメタンスルホニルヒドラジド、1,8-ジヒドロキシ-ビシクロ[7.3.1]トリデカ-4,9-ジエン-2,6-ジイン-13-オン、1-デヒドロテストステロン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、9-アミノカンプトテシン、アクチノマイシンD、アマニチン、アミノプテリン、アングイジン、アントラサイクリン、アントラマイシン(AMC)、アウリスタチン(モノメチルアウリスタチンEまたはモノメチルアウリスタチンF)、ブレオマイシン、ブスルファン、酪酸、カリケアマイシン、カンプトテシン、カルミノマイシン、カルムスチン、セマドチン、シスプラチン、コルヒチン、コンブレタスタチン、シクロホスファミド、シタラビン、サイトカラシンB、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デカルバジン、ジアセトキシペンチルドキソルビシン、ジブロモマンニトール、ジヒドロキシアントラシンジオン、ジソラゾール、ドラスタチン、ドキソルビシン、デュオカルマイシン、エキノマイシン、エリューテロビン、エメチン、エポチロン、esperamicin、エストラムスチン、エチジウムブロミド、エトポシド、フルオロウラシル、ゲルダナマイシン、グラミシジンD、グルココルチコイド、イリノテカン、レプトマイシン、ロイロシン、リドカイン、ロムスチン(CCNU)、メイタンシノイド、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メソプテリン、メトトレキサート、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、N8-アセチルスペルミジン、ポドフィロトキシン、プロカイン、プロプラノロール、プテリジン、ピ
ューロマイシン、リゾキシン、ストレプトゾトシン、タリソマイシン、タキソール、テノポシド、テトラカイン、チオエパクロラムブシル、トマイマイシン、トポテカン、ツブリシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、上記いずれかの誘導体が含まれる。
【0202】
特定の実施形態によると、抗STEAP2抗体に結合される細胞傷害性薬剤は、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)またはモノメチルアウリスタチンF(MMAF)などのアウリスタチン、TUB-OHまたはTUB-OMOMなどのツブリシン、トマイマイシン誘導体、ドラスタチン誘導体、またはDM1もしくはDM4のようなメイタンシノイドである。いくつかの実施形態において、細胞傷害性薬剤は、式(I)の化合物の立体異性体を含む、式(I)の構造を有するメイタンシノイドである。
【化11】
式中、Aはアリーレンまたはヘテロアリーレンである。
【0203】
いくつかの実施形態において、Aは、置換されていてもよいベンゼン、ピリジン、ナフタレン、またはキノロンの二価の基である。
【0204】
いくつかの実施形態において、Aはアリーレンである。
【0205】
いくつかの実施形態において、Aは、
【化12】
であり、
式中、
は、各出現時に独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ハロ、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、
【化13】
またはアジドであり、
式中、Rはアルキルまたはヘテロアルキルであり、
nは0~4の整数であり、
mは0~3の整数であり、
pは0~6の整数であり、
qは0~5の整数である。
【0206】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、
【化14】
【化15】
【化16】
からなる群から選択される。
【0207】
一実施形態において、式(I)の化合物は、
【化17】
である。
【0208】
いくつかの実施形態において、式(I)のメイタンシノイドは、以下の式(IA)に示すように、リンカーを介して抗STEAP2抗体またはその抗原結合断片に結合される。
【化18】
式中、
Aは、式(I)に関連して上述したように、アリーレンまたはヘテロアリーレンであり、
Lはリンカーであり、
BAは抗STEAP2抗体またはその抗原結合断片であり、
kは1~30の整数である。
【0209】
様々な実施形態において、Lは、次式であり、
【化19】
式中、
SPはスペーサーであり、
【化20】
は、抗STEAP2抗体またはその断片への1つ以上の結合であり、
AAはアミノ酸であり、
AAはアミノ酸である。
【0210】
いくつかの実施形態において、AA-AAは、バリン-シトルリン、シトルリン-バリン、リジン-フェニルアラニン、フェニルアラニン-リジン、バリン-アスパラギン、アスパラギン-バリン、スレオニン-アスパラギン、アスパラギン-スレオニン、セリン-アスパラギン、アスパラギン-セリン、フェニルアラニン-アスパラギン、アスパラギン-フェニルアラニン、ロイシン-アスパラギン、アスパラギン-ロイシン、イソロイシン-アスパラギン、アスパラギン-イソロイシン、グリシン-アスパラギン、アスパラギン-グリシン、グルタミン酸-アスパラギン、アスパラギン-グルタミン酸、シトルリン-アスパラギン、アスパラギン-シトルリン、アラニン-アスパラギン、またはアスパラギン-アラニンである。
【0211】
いくつかの実施形態において、SPは、
【化21】
であり、
式中、
【化22】
は、抗STEAP2抗体またはその断片への結合であり、
bは2~8の整数である。
【0212】
他の実施形態において、Lは、
【化23】
であり、
式中、
【化24】
は、抗STEAP2抗体またはその断片への結合であり、
bは2~8の整数である。
【0213】
一実施形態において、抗STEAP2抗体またはその抗原結合断片に結合するリンカーを含む式(IA)の化合物は、次式であり、
【化25】
式中、
【化26】
は、抗STEAP2抗体またはその断片への結合である。場合によっては、この部分は「化合物10」と呼ばれる。
【0214】
一実施形態において、抗STEAP2抗体またはその抗原結合断片に結合するリンカーを含む式(IA)の化合物は、次式であり、
【化27】
式中、
【化28】
は、抗STEAP2抗体またはその断片への結合である。場合によっては、この部分は「化合物60」と呼ばれる。
【0215】
いくつかの実施形態において、細胞傷害性薬剤は、式(II)の化合物の立体異性体を含む、式(II)の構造を有するメイタンシノイドである。
【化29】
式中、
3aは、アミノ酸、2-20個のアミノ酸を有するペプチド、アルキル、アルキニル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、-CR-、-O-、-C(=O)-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-(CHx)p1-、-C(=O)-O-(CHx)p1-、-(CHx)p1-C(=O)-、-(CHx)p1-C(=O)-O-、-(O-(CHp2-)p3-、-((CHp2-O-)p3-、-C(=S)-、-C(=S)-S-、-C(=S)-NH-、-S-C(=S)-、-S-C(=S)-S-、-S-、-SO-、-SO-、-NR-、-N(R)-C(=O)-N(R)-、-N(R)-C(=O)O-、-N(R)-C(=O)-、-C(=O)-N(
)-、-C(=O)-N(R)-C(=O)-、または-O-C(=O)-NR-であり、アルキル、アルキニル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは置換されていてもよく、
p1、p2、およびp3は、それぞれ独立して0、または1~100の整数であり、
xは0、1または2であり、
、R、R、およびRは、それぞれ独立してH、または置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり、
4aは、置換または非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルである。
【0216】
いくつかの実施形態において、式(II)の化合物は、
【化30】
からなる群から選択される。
【0217】
一実施形態において、式(II)の化合物は、
【化31】
である。
【0218】
いくつかの実施形態において、式(II)のメイタンシノイドは、以下の式(IIA)に示すように、リンカーを介して抗STEAP2抗体またはその抗原結合断片に結合される。
【化32】
式中、
BAは抗STEAP2抗体またはその抗原結合断片であり、
aは1~30の整数であり、
は、以下の構造式-Z2A-Z2B-Z2C-Z2Dによって表され、式中、Z2A、Z2B、Z2C、およびZ2Dは、それぞれ独立して不在であるか、アミノ酸、2~20個のアミノ酸を有するペプチド、アルキル、アルキニル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、-CR-、-O-、-C(=O)-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-(CHp1、-C(=O)-O-(CHp1、-(CHp1-C(=O)-、-(CHp1-C(=O)-O-、-(O-(CHp2-)p3-、-((CHp2)-O-)p3-、-C(=S)-、-C(=S)-S-、-C(=S)-NH-、-S-C(=S)-、-S-C(=S)-S-、-S-、-SO-、-SO-、-NR-、-N(R)-C(=O)-N(R)-、-N(R)-C(=O)O-、-N(R)-C(=O)-、-C(=O)-N(R)-、-C(=O)-N(R)-C(=O)-、-O-C(=O)-N(R)、-O-C(=S)-N(R)-、-C(=S)-N(R)-、-N=C=S、-N=C=O、
【化33】
であり、
Aは天然もしくは非天然アミノ酸、または2~20個のアミノ酸を含むペプチドであり、
Wは、-O-、-S-、-CR-、-NR-であり、
Xはアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクリルであり、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、およびヘテロシクリルは置換されていてもよく、
式中、A、A、およびRは、それぞれ独立して、アミノ酸、2-20個のアミノ酸を有するペプチド、アルキル、アルキニル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、-CR-、-O-、-C(=O)-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-(CHp1-、-C(=O)-O-(CHp1-、-(CHp1-C(=O)-、-(CHp1-C(=O)-O-、-(O-(CHp2-)p3-、-((CHp2-O-)p3-、-C(=S)-、-C(=S)-S-、-S-C(=S)-、-C(=S)-NH-、-S-C(=S)-S-、-S-、-SO-、-SO-、-NR-、-N(R)-C(=O)-N(R)-、-N(R)-C(=O)O-、-N(R)-C(=O)-、-C(=O)-N(R)-、-C(=O)-N(R)-C(=O)-、または-O-C(=O)-NR-であり、アルキル、アルキニル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは置換されていてもよく、
17は、O、S、NR18、およびCRからなる群から選択され、
18は、H、アルキル、アルキニル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、およびアシルからなる群から選択され、アルキル、アルキニル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、およびアシルは置換されていてもよく、
、R、R、およびRは、それぞれ独立してH、または置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり、
4aは、置換または非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり、
p1、p2、およびp3は、それぞれ独立して0、または1~100の整数であり、
xは0、1または2である。
【0219】
式(IIA)のいくつかの実施形態において、Aは、バリン-シトルリン、シトルリン-バリン、リジン-フェニルアラニン、フェニルアラニン-リジン、バリン-アスパラギン、アスパラギン-バリン、スレオニン-アスパラギン、アスパラギン-スレオニン、セリン-アスパラギン、アスパラギン-セリン、フェニルアラニン-アスパラギン、アスパラギン-フェニルアラニン、ロイシン-アスパラギン、アスパラギン-ロイシン、イソロイシン-アスパラギン、アスパラギン-イソロイシン、グリシン-アスパラギン、アスパラギン-グリシン、グルタミン酸-アスパラギン、アスパラギン-グルタミン酸、シトルリン-アスパラギン、アスパラギン-シトルリン、アラニン-アスパラギン、およびアスパラギン-アラニンからなる群から選択されるペプチドである。
【0220】
一実施形態において、抗STEAP2抗体またはその抗原結合断片に結合する式(II
A)の化合物は、次式であり、
【化34】
式中、
【化35】
は、抗STEAP2抗体またはその断片への結合である。場合によっては、この部分は「化合物7」と呼ばれる。
【0221】
いくつかの実施形態において、抗STEAP2抗体またはその断片に結合される細胞傷害性薬剤は、DM1の純粋な、または実質的に純粋なジアステレオマーであり、
【化36】
yは1~0の整数である。
【0222】
別の実施形態において、ADCは「A-[L-P]」構造を含み、式中、Aは抗STEAP2抗体またはその抗原結合断片であり、[L-P]は、
【化37】
それらの混合物であり、
式中、yは1~30の整数であり、
【化38】
は、抗STEAP2抗体またはその断片への結合である。
【0223】
他のメイタンシノイド誘導体は、WO2014/145090、WO2016/160615、およびWO2015/031396に論じられており、それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0224】
いくつかの実施形態において、抗STEAP2抗体またはその断片に結合される細胞傷害性薬剤は、MMAEまたはMMAFである。
【0225】
当技術分野において既知の他の細胞傷害性薬剤が本発明の範囲内で企図され、例えば、リシン、C.ディフィシル毒素、シュードモナス外毒素、ジフテリア毒素、ボツリヌス毒素、ブリオジン、サポリン、ヤマゴボウ毒素(すなわち、フィトラカトキシンおよびフィトラクゲゲニン)、ならびにSapra et al.,Pharmacol.&Therapeutics,2013,138:452-469に記載のものなどのタンパク質毒素を含む。
【0226】
細胞傷害性薬剤(「ペイロード」)は、ペイロード化合物をタンパク質分子(すなわち抗体)に共有結合する化学リンカーを介して、本発明の抗STEAP2抗原結合分子または抗体につながれ得る。特異的リンカーの例示的な実施形態は上述した。より一般的には、本明細書で使用される場合、用語「リンカー」は、結合剤(例えば、抗体またはその抗原結合断片)を本明細書に記載のペイロード化合物と連結、接続、または結合する任意の二価基または部分を指す。一般に、本明細書に記載の抗体複合体に適した結合剤リンカー
は、抗体の循環半減期を利用するのに十分安定であり、同時に、抗原媒介による複合体の内在化後にそのペイロードを放出することができるものである。リンカーは切断可能または切断不可能であり得る。切断可能なリンカーは、内在化に続く細胞内代謝、例えば加水分解、還元、または酵素反応による切断によって切断されるリンカーである。切断不可能なリンカーは、内在化後の抗体のリソソーム分解を介して結合ペイロードを放出するリンカーである。適切なリンカーとしては、酸不安定リンカー、加水分解不安定リンカー、酵素的に切断可能なリンカー、還元不安定的リンカー、自己犠牲的リンカー、および非切断可能リンカーが挙げられるが、これらに限定されない。適切なリンカーとしては、ペプチド、グルクロニド、スクシンイミド-チオエーテル、ポリエチレングリコール(PEG)単位、ヒドラゾン、mal-カプロイル単位、ジペプチド単位、バリン-シトルリン単位、およびパラ-アミノベンジル(PAB)単位であるかまたはそれらを含むものも挙げられるが、それらに限定されない。場合によっては、リンカーは、リジン残基もしくはシステイン残基を介して(例えば、抗体もしくは断片のジスルフィド基の開裂を介して、または抗体もしくは断片に組み込まれたシステイン残基を介して)、抗体または抗原結合断片に結合することができる。場合によっては、リンカーは、トランスグルタミナーゼ媒介結合を介して誘導されるものを含む、グルタミン残基を介して抗体または断片に結合することができる。
【0227】
本発明の文脈において使用できる例示的なリンカーとしては、例えば、MC(6-マレイミドカプロイル)、MCC(マレイミドメチルシクロヘキサン-1-カルボキシレート)、MP(マレイミドプロパノイル)、val-cit(バリン-シトルリン)、val-ala(バリン-アラニン)、ala-phe(アラニン-フェニルアラニン)、phe-lys(フェニルアラニン-リジン)、プロテアーゼ切断可能なリンカーのジペプチド部位、PAB(p-アミノベンジルオキシカルボニル)、SPP(N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート)、SMCC(N-スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1カルボキシレート)、SIAB(N-スクシンイミジル(4-ヨード-アセチル)アミノベンゾエート)、ならびにそれらの変異体および組み合わせを含むまたはからなるリンカーが挙げられる。本発明の文脈において使用できるリンカーのさらなる例は、例えば、米国特許第7,754,681号およびDucry,Bioconjugate.Chem.,2010,21:5-13、およびそこに引用される参考文献に開示され、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。場合によっては、リンカーは、Jin,et al.,Bioorganic&Medicinal Chemistry,2012,20:3465-3469、およびWu,et al.,Bioorganic&Medicinal Chemistry,2016,24:2697-2706に記載されているような自己犠牲スペーサーであるかまたはそれを含む。
【0228】
ペイロードは、抗体または抗原結合分子内の特定のアミノ酸での結合を介して抗STEAP2抗体または抗原結合断片に連結され得る。本発明のこの態様の文脈において使用できる例示的なアミノ酸結合としては、例えば、リジン(例えば、米国特許第5,208,020号、US2010/0129314、Hollander et al.,Bioconjugate Chem.,2008,19:358-361、WO2005/089808、米国特許第5,714,586号、US2013/0101546、およびUS2012/0585592参照)、システイン(例えば、US2007/0258987、WO2013/055993、WO2013/055990、WO2013/053873、WO2013/053872、WO2011/130598、US2013/0101546、および米国特許第7,750,116号参照)、セレノシステイン(例えば、WO2008/122039、およびHofer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,2008,105:12451-12456参照)、ホルミルグリシン(例えば、Carrico et al.,Nat.Chem.Bi
ol.,2007,3:321-322;Agarwal et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,2013,110:46-51,およびRabuka et al.,Nat.Protocols,2012,10:1052-1067参照)、非天然アミノ酸(例えば、WO2013/068874、およびWO2012/166559)、ならびに酸性アミノ酸(例えば、WO2012/05982参照)が挙げられる。リンカーはまた、炭水化物への結合(例えば、US2008/0305497、およびRyan et al.,Food & Agriculture Immunol.,2001,13:127-130を参照のこと)およびジスルフィドリンカーを介して抗原結合タンパク質に結合されることもできる。(例えば、WO2013/085925、WO2010/010324、WO2011/018611、およびShaunak et al.,Nat.Chem.Biol.,2006,2:312-313を参照のこと)。
【0229】
薬物対抗体比(DAR)は、抗体または抗原結合断片に結合した薬物の平均数であり、ADCの有効性、効力、および薬物動態に重要な影響を及ぼす。様々な実施形態において、DARは、抗体1個あたり1、2、3、4、5、6、7、または8個の薬物分子である。いくつかの実施形態において、DARは1~4である。特定の実施形態において、DARは2~4である。場合によっては、DARは2~3である。場合によっては、DARは3~4である。いくつかの実施形態において、DARは1~10、1~20、または1~30(すなわち、抗体またはその抗原結合断片あたり1~30の薬物分子)である。
【0230】
治療用製剤および投与
本発明は、本発明の抗原結合分子を含む薬学的組成物を提供する。本発明の薬学的組成物は、適切な担体、賦形剤、および改善された移動、送達、耐性などをもたらす他の薬剤と共に製剤化される。多くの適切な製剤は、製薬化学者全員に既知の処方集:Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PAにおいて認めることができる。これらの製剤には、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、ベシクル(LIPOFECTIN(商標)、Life Technologies、Carlsbad、CAなど)を含有する脂質(カチオン性またはアニオン性)、DNA複合体、無水吸収ペースト、水中油エマルションおよび油中水エマルション、エマルションカーボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、ならびにカーボワックスを含有する半固体混合物が含まれる。Powell et al.”Compendium of excipients for parenteral formulations”PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238-311も参照されたい。
【0231】
患者に投与される抗原結合分子の用量は、患者の年齢および大きさ、標的疾患、病態、投与経路などに応じて変わり得る。好ましい用量は、典型的には体重または体表面積に従って計算される。本発明の二重特異性抗原結合分子が成人患者の治療目的に使用される場合、本発明の二重特異性抗原結合分子を通常約0.01~約20mg/kg体重の単回投与で、より好ましくは約0.02~約7、約0.03~約5、または約0.05~約3mg/kg体重の単回投与で静脈内投与することが有利であり得る。容態の重症度に応じて、治療の頻度および期間を調整することができる。二重特異性抗原結合分子を投与するための有効投与量およびスケジュールは経験的に決定され、例えば、患者の経過を定期的な評価によってモニターし、それに応じて用量を調整することができる。さらに、投与量の種間スケーリングは、当技術分野において周知の方法を用いて実施することができる(例えば、Mordenti et al.,1991,Pharmaceut.Res.8:1351)。
【0232】
種々の送達系は既知であり、本発明の薬学的組成物を投与するために使用することができ、例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルにおける封入、変異ウイルスを発現することのできる組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシスである(例えば、Wu et al.1987、J.Biol.Chem.262:4429-4432を参照されたい)。導入方法には、皮内経路、経皮経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、硬膜外経路および経口経路が含まれるが、これらに限定されない。組成物は、例えば、注入もしくはボーラス注射による、上皮もしくは粘膜皮膚の裏打ち(例えば、口腔粘膜、直腸および腸の粘膜など)を通じての吸収による任意の簡便な経路によって投与され得、他の生物学的に活性のある薬剤と共に投与され得る。投与は全身または局所であり得る。
【0233】
本発明の医薬組成物は、標準的な針および注射器を用いて皮下にまたは静脈内に送達することができる。加えて、皮下送達に関して、ペン送達装置は、本発明の医薬組成物を送達する上での適用を容易に有する。このようなペン送達装置は、再利用可能または使い捨て可能であり得る。再利用可能なペン送達装置は、概して、医薬組成物を含有する交換可能なカートリッジを使用する。いったん、カートリッジ内の薬学的組成物が全て投与され、カートリッジが空になると、この空のカートリッジは容易に廃棄することができ、薬学的組成物を含有する新しいカートリッジと容易に交換することができる。次に、ペン送達装置は再利用することができる。使い捨てのペン送達装置において、交換可能なカートリッジはない。むしろ、使い捨てペン送達装置は、この装置内の貯蔵器の中に保持された医薬組成物が事前に充填されている。いったん、貯蔵器が医薬組成物に関して空になると、装置全体が廃棄される。
【0234】
数多くの再利用可能なペン送達装置および自動注射送達装置は、本発明の医薬組成物の皮下送達における応用を有する。例としては、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.,Woodstock,UK)、DISETRONIC(商標)pen(Disetronic Medical Systems,Bergdorf,Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)pen、HUMALOG(商標)pen、HUMALIN 70/30(商標)pen(Eli Lilly and Co.,Indianapolis,IN)、NOVOPEN(商標)I,IIおよびIII (Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、 BD(商標)pen(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、およびOPTICLIK(商標)(sanofi-aventis,Frankfurt,Germany)が挙げられるが、これらに限定されず、ほんの数種類しか挙げていない。本発明の薬学的組成物の皮下送達での用途を有する使い捨てペン送達装置の例としては、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi-Aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo
Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)自動注射器(Amgen,Thousand Oaks,CA)、PENLET(商標)(Haselmeier,Stuttgart,Germany)、EPIPEN(Dey,L.P.)およびHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs,Abbott Park IL)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0235】
特定の状況において、薬学的組成物は徐放系で送達することができる。一実施形態において、ポンプを使用することができる(Langer,supra;Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照のこと。)他の実施形態において、ポリマー材料を使用することができる。Medical Applications of Controlled Release,Langer
and Wise (eds.),1974,CRC Pres.,Boca Raton,Floridaを参照されたい。さらに別の実施形態において、徐放系を組成物の標的の近傍に配置することができ、それによって全身用量のほんの一部のみが必要となる。(例えば、Goodson,1984,in Medical Applications of Controlled Release,supra,vol.2,pp.115-138を参照のこと)他の徐放系は、Langer,1990,Science249:1527-1533による総説で論じられている。
【0236】
注射可能な調製物には、静脈内注射、皮下注射、皮内注射および筋肉内注射、点滴注入などのための剤形が含まれ得る。これらの注射可能な調製物は、公的に既知の方法によって調製され得る。例えば、注射可能な調製物は、例えば、注射用に従来通り使用される滅菌水性媒体または油性媒体中に上述の抗体またはその塩を溶解、懸濁または乳化させることによって調製され得る。注射用水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコース含有等張液、および他の補助剤などがあり、これらは、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50モル)付加物)]などの適切な可溶化剤と組み合わせて使用してよい。油性媒体として、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが使用され、ベンジルベンゾエート、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と組み合わせて使用してよい。このように調製された注射は、好ましくは適切なアンプルに充填される。
【0237】
有利なことに、先に説明した経口または非経口での使用のための医薬組成物は、有効成分の用量に適合するのに適した単位用量の剤形へと調製される。このような単位用量の剤形には、例えば、錠剤、ピル、カプセル、注射(アンプル)、坐薬などが含まれる。前述の含有される抗体の量は概して、単位用量の剤形あたり約5~約500mgであり、特に注射の形態では、前述の抗体は、約5~約100mgで、他の剤形については約10~約250mgで含有されることが好ましい。
【0238】
抗原結合分子の治療的使用
本発明は、抗STEAP2抗体もしくはその抗原結合断片、またはCD3およびSTEAP2に特異的に結合する二重特異性抗原結合分子を含む治療用組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む方法を含む。治療用組成物は、本明細書に開示される抗体または二重特異性抗原結合分子のいずれかと薬学的に許容される担体または希釈剤とを含み得る。本明細書で使用される場合、「それを必要とする対象」という表現は、癌の1つ以上の症状または徴候を示すヒトまたは非ヒト動物(例えば、腫瘍を発現する対象または本明細書で後述される癌のいずれかを患う対象)、あるいは、そうでなければSTEAP2活性の阻害もしくは減少またはSTEAP2+細胞(例えば、前立腺癌細胞)の枯渇から利益を得る者を意味する。
【0239】
本発明の抗体および二重特異性抗原結合分子(およびそれを含む治療用組成物)は、とりわけ、免疫応答の刺激、活性化および/または標的化が有益である任意の疾患または障害の治療に有用である。特に、本発明の抗STEAP2抗体または抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子は、STEAP2発現または活性またはSTEAP2+細胞の増殖に関連するかまたはそれによって媒介される任意の疾患または障害の治療、予防および/または改善に使用され得る。本発明の治療方法が達成される作用機序は、エフェクター細胞の存在下で、例えばCDC、アポトーシス、ADCC、食作用、またはこれらメカニズムの2つ以上の組み合わせによるSTEAP2を発現する細胞の死滅を含む。本発明の二重特異性抗原結合分子を用いて阻害または死滅させることができるSTEAP2を発現する細胞には、例えば前立腺腫瘍細胞が含まれる。
【0240】
本発明の抗原結合分子は、例えば、前立腺、膀胱、子宮頸部、肺、結腸、腎臓、乳房、膵臓、胃、子宮、および/または卵巣に発生する原発性および/または転移性腫瘍を治療するために使用され得る。特定の実施形態において、本発明の二重特異性抗原結合分子は、前立腺癌、膀胱癌、子宮頸癌、肺癌、結腸癌、腎臓癌、乳癌、膵臓癌、胃癌、子宮癌、および卵巣癌のうちの1つ以上の癌の治療に使用される。本発明の特定の実施形態によると、抗STEAP2抗体または抗STEAP2/抗CD3二重特異性抗体は、去勢抵抗性前立腺癌に罹患している患者を治療するのに有用である。本発明の他の関連実施形態によると、本明細書に開示の抗STEAP2抗体または抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子を、去勢抵抗性前立腺癌に罹患している患者に投与することを含む方法が提供される。腫瘍スキャニングなどの当技術分野において既知の分析的/診断的方法を使用して、患者が去勢抵抗性の腫瘍を抱えているかどうかを確かめることができる。
【0241】
本発明はまた、対象における残存癌を治療するための方法も含む。本明細書で使用される場合、用語「残存癌」は、抗癌療法による治療後の対象における1つ以上の癌性細胞の存在または持続を意味する。
【0242】
特定の態様によると、本発明は、対象が前立腺癌(例えば、去勢抵抗性前立腺癌)であると判定された後、本明細書の他所に記載の抗STEAP2または二重特異性抗原結合分子のうちの1つ以上を対象に投与することを含む、STEAP2発現に関連する疾患または障害(例えば前立腺癌)の治療方法を提供する。例えば、本発明は、対象がホルモン療法(例えば、抗アンドロゲン療法)を受けた1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、または4週間、2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、8ヶ月、1年、またはそれ以上後に、抗STEAP2抗体または抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子を患者に投与することを含む前立腺癌の治療方法を含む。
【0243】
併用療法と製剤
本発明は、本明細書に記載の例示的な抗体および二重特異性抗原結合分子のいずれかを含む薬学的組成物を1つ以上の追加の治療薬と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。本発明の抗原結合分子と組み合わせてまたは併用投与することができる例示的な追加の治療薬には、例えば、EGFRアンタゴニスト(例えば、抗EGFR抗体[例えば、セツキシマブまたはパニツムマブ]またはEGFRの小分子阻害剤[例えば、ゲフィチ
ニブまたはエルロチニブ])、Her2/ErbB2、ErbB3、またはErbB4な
どの他のEGFRファミリーメンバーのアンタゴニスト(例えば抗ErbB2、抗ErbB3、もしくは抗ErbB4抗体、またはErbB2、ErbB3、またはErbB4活性の小分子阻害剤)、EGFRvIIIのアンタゴニスト(例えば、EGFRvIIIに特異的に結合する抗体)、cMETアンタゴニスト(例えば、抗cMET抗体)、IGF1Rアンタゴニスト(例えば、抗IGF1R抗体)、B-raf阻害剤(例えば、ベムラフェニブ、ソラフェニブ、GDC-0879、PLX-4720)、PDGFR-α阻害剤(例えば、抗PDGFR-α抗体)、PDGFR-β阻害剤(例えば、抗PDGFR-β抗体)、VEGFアンタゴニスト(例えばVEGFトラップ、例えばUS7,087,411(本明細書では「VEGF阻害融合タンパク質」とも呼ばれる)を参照のこと)、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)、VEGF受容体の小分子キナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、またはパゾパニブ))、DLL4アンタゴニスト(例えば、US2009/0142354に開示されている抗DLL4抗体、例えばREGN421)、Ang2アンタゴニスト(例えば、US2011/0027286に開示されている抗Ang2抗体、例えばH1H685P)、FOLH1(PSMA)アンタゴニスト、PRLRアンタゴニスト(例えば抗PRLR抗体)、STEAP1またはSTEAP2アンタゴニスト(例えば抗STEAP1抗体または抗STEAP2抗体)、TMPRSS2アンタゴニスト(例えば、抗TMPRSS2抗体)、MSLNアンタゴニスト(例えば、抗MSLN抗体)、CA9アンタゴニスト(例えば、抗CA9抗体)、ウロプラキン
アンタゴニスト(例えば、抗ウロプラキン抗体)など、が含まれる。本発明の抗原結合分子と組み合わせて有益に投与され得る他の薬剤は、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、IL-13、IL-17、IL-18などのサイトカイン、またはそれらの受容体それぞれに結合する、低分子サイトカイン阻害剤および抗体を含む、サイトカイン阻害剤を含む。本発明の薬学的組成物(例えば、本明細書に開示の抗CD3/抗STEAP2二重特異性抗原結合分子を含む薬学的組成物)はまた、「ICE」:イホスファミド(例えば、Ifex(登録商標))、カルボプラチン(例えば、Paraplatin(登録商標))、エトポシド(例えば、Etopophos(登録商標)、Toposar(登録商標)、VePesid(登録商標)、VP-16)、「DHAP」:デキサメタゾン(例えば、Decadron(登録商標))、シタラビン(例えば、Cytosar-U(登録商標)、シトシンアラビノシド、ara-C)、シスプラチン(例えば、Platinol(登録商標)-AQ)、および「ESHAP」:エトポシド(例えば、Etopofos(登録商標)、Toposar(登録商標)、VePesid(登録商標)、VP-16)、メチルプレドニゾロン(例えば、Medrol(登録商標))、高用量シタラビン、シスプラチン(例えば、Platinol(登録商標)-AQ)から選択される1つ以上の治療用組み合わせを含む治療計画の一部として投与され得る。
【0244】
本発明はまた、本明細書に記載の抗原結合分子のいずれか、およびVEGF、Ang2、DLL4、EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、EGFRvIII、cMet、IGF1R、B-raf、PDGFR-α、PDGFR-β、FOLH1(PSMA)、PRLR、STEAP1、STEAP2、TMPRSS2、MSLN、CA9、ウロプラキンのうちの1つ以上の阻害剤、または前述のサイトカインのいずれかを含む治療組合せを含み、その阻害剤は、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、siRNA、ペプチボディ、ナノボディもしくは抗体断片(例えば、Fab断片、F(ab')2断
片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、またはダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、および最小認識ユニット)である。本発明の抗原結合分子は、抗ウイルス薬、抗生物質、鎮痛薬、コルチコステロイドおよび/またはNSAIDと組み合わせて投与および/または同時製剤することもできる。本発明の抗原結合分子はまた、放射線治療および/または従来の化学療法も含む治療計画の一部として投与してもよい。
【0245】
追加の治療活性成分は(複数可)、本発明の抗原結合分子の投与の直前、同時に、または直後に投与してもよい。(本開示の目的のために、このような投与計画は、追加の治療活性成分と「組み合わせて」抗原結合分子を投与することと見なされる。
【0246】
本発明には、本発明の抗原結合分子が、本明細書の他所に記載の追加の治療活性成分(複数可)の1つ以上と同時製剤された薬学的組成物が含まれる。
【0247】
投与様式
本発明の特定の実施形態によると、複数用量の抗原結合分子(例えば、STEAP2およびCD3に特異的に結合する抗STEAP2抗体または二重特異性抗原結合分子)を所定の期間にわたって対象に投与することができる。本発明のこの態様による方法は、本発明の抗原結合分子の複数回用量を対象へ連続的に投与することを含む。本明細書で使用する場合、「連続的に投与すること」は、抗原結合分子の各用量が、異なる時点、例えば、所定の間隔(例えば、数時間、数日間、数週間または数か月間)によって分けられた異なる日に対象へ投与されることを意味する。本発明には、抗原結合分子の単回の初回用量と、それに続く抗原結合分子の1回以上の2次用量、次いで場合により抗原結合分子の1回以上の3次用量を患者へ連続的に投与することを含む方法が含まれる。
【0248】
「1次用量」、「2次用量」、および「3次用量」という用語は、本発明の抗原結合分子の投与の時系列を指す。したがって、「1次用量」とは、治療様式の開始時に投与される用量(「ベースライン用量」とも呼ばれる)であり、「2次用量」とは、1次用量後に投与される用量であり、「3次用量」とは、2次用量後に投与される用量である。1次用量、2次用量、および3次用量は全て、同じ量の抗原結合分子を含有し得るが、概して、投与頻度に関して互いに異なり得る。しかし、特定の実施形態において、1次用量、2次用量および/または3次用量に含有される抗原結合分子の量は、治療経過の間、互いに異なる(例えば、適宜上下に調整される)。ある特定の実施形態において、2回以上(例えば、2回、3回、4回、または5回)の用量が、「負荷用量」として治療様式の開始時に投与された後、その後の用量が、それより低い頻度ベースで投与される(例えば、維持用量」)。
【0249】
本発明のある例示的な実施形態において、各2次用量および/または3次用量は、直前の用量の1~26(例えば、1、1と1/2、2、2と1/2、3、3と1/2、4、4と1/2、5、5と1/2、6、6と1/2、7、7と1/2、8、8と1/2、9、9と1/2、10、10と1/2、11、11と1/2、12、12と1/2、13、13と1/2、14、14と1/2、15、15と1/2、16、16と1/2、17、17と1/2、18、18と1/2、19、19と1/2、20、20と1/2、21、21と1/2、22、22と1/2、23、23と1/2、24、24と1/2、25、25と1/2、26、26と1/2、またはそれ以上)週間後に投与される。「直前の用量」という句は、本明細書で使用する場合、一連の複数回投与において、抗原結合分子の用量を意味し、これは、介入用量のない直後の用量の投与の前に患者へ投与される。
【0250】
本発明のこの態様による方法は、抗原結合分子(例えば、STEAP2およびCD3に特異的に結合する抗STEAP2抗体または二重特異性抗原結合分子)の2次用量および/または3次用量の任意の回数を患者へ投与することを含んでよい。例えば、ある特定の実施形態において、単回の2次用量のみが患者へ投与される。他の実施形態において、2回以上(例えば、2,3、4、5、6、7、8回またはそれ以上)の2次用量が患者へ投与される。同様に、ある特定の実施形態において、単回の3次用量のみが患者へ投与される。他の実施形態において、2回以上(例えば、2,3、4、5、6、7、8またはそれより多数)の3次用量が患者へ投与される。
【0251】
複数の2次用量を含む実施形態において、各2次用量は他の2次用量と同じ頻度で投与されてもよい。例えば、各2次用量は、直前の用量の1~2週間後に患者に投与されてもよい。同様に、複数の3次用量を含む実施形態において、各3次用量は他の3次用量と同じ頻度で投与されてもよい。例えば、各3次用量は、直前の用量の2~4週間後に患者に投与されてもよい。あるいは、2次用量および/または3次用量が患者へ投与される頻度は、治療計画の経過にわたって変動し得る。投与頻度はまた、臨床検査後の個々の患者の必要性に応じて、医師によって治療過程の間に調整され得る。
【0252】
抗体の診断上の使用
本発明の抗STEAP2抗体はまた、例えば診断目的のために、サンプル中のSTEAP2、またはSTEAP2発現細胞を検出および/または測定するために使用してもよい。例えば、抗STEAP2抗体、またはその断片を使用して、STEAP2の異常な発現(例えば、過剰発現、過少発現、発現欠如など)を特徴とする病態または疾患を診断してよい。STEAP2についての例示的な診断アッセイは、例えば、患者から得られたサンプルを本発明の抗STEAP2抗体と接触させることを含んでよく、抗STEAP2抗体は検出可能な標識またはレポーター分子で標識されている。あるいは、標識されていない抗STEAP2抗体は、それ自体が検出可能に標識された2次抗体との組み合わせで診断用途に使用することができる。検出可能な標識またはレポーター分子は、H、14C、
32P、35Sもしくは125Iなどの放射性同位体、フルオレセインイソチオシアナートもしくはローダミンなどの蛍光部分もしくは化学発光部分、またはアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、もしくはルシフェラーゼなどの酵素であり得る。本発明の抗STEAP2抗体の別の例示的な診断用途は、89Zr-デスフェリオキサミン標識などの、対象において腫瘍細胞の非侵襲的識別および追跡の目的のための89Zr-標識抗体(例えば、ポジトロン放出断層撮影(PET)イメージング)を含む。(例えば、Tavare,R.et al.Cancer Res.2016 Jan 1;76(1):73-82、およびAzad,BB.et al.Oncotarget.2016 Mar 15;7(11):12344-58)サンプル中のSTEAP2を検出または測定するために使用することのできる特定の例示的アッセイには、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および蛍光標示式細胞分取器(FACS)が含まれる。
【0253】
本発明によるSTEAP2診断アッセイにおいて使用することのできるサンプルには、正常条件または病理学的条件下で、検出可能な量のSTEAP2タンパク質またはその断片を含有する、患者から得ることのできる任意の組織または体液サンプルが含まれる。一般に、健常な患者(例えば、異常なSTEAP2レベルまたは活性と関連した疾患または病態に罹患していない患者)から得られた特定のサンプル中のSTEAP2のレベルを測定し、STEAP2のベースラインレベルまたは標準レベルをまず確立する。次いで、このSTEAP2のベースラインレベルを、STEAP2に関連する疾患(例えば、STEAP2発現細胞を含む腫瘍)または病態を有することが疑われる個体から得られたサンプルにおいて測定されたSTEAP2のレベルと比較することができる。
【実施例0254】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物をどのように作製および使用するかに関する完全な開示および説明を当業者に提供するために提示されており、本発明者らが本発明とみなすことの範囲を制限するよう企図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力はしたが、いくつかの実験上の誤差および偏差が考慮されるべきである。別段の記載がない限り、部分は重量部分であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧またはそれに近い圧力である。
【0255】
実施例1:抗STEAP2抗体の産生
抗STEAP2抗体は、遺伝子改変マウスをヒトSTEAP2抗原で免疫することによって、またはヒト免疫グロブリン重鎖およびカッパ軽鎖可変領域をコードするDNAを含む遺伝子操作マウスをヒトSTEAP2抗原で免疫することによって得た。
【0256】
遺伝子改変マウスをhSTEAP2抗原(配列番号1899)で免疫した。免疫後、各マウスから脾細胞を採取して、(1)マウス骨髄腫細胞と融合してそれらの生存率を維持し、ハイブリドーマ細胞を形成してSTEP特異性についてスクリーニングし、または(2)反応性抗体(抗原陽性B細胞)に結合して同定する選別試薬としてヒトSTEAP2断片を用いて、B細胞を選別した(US2007/0280945A1に記載の通り)。
【0257】
ヒト可変領域およびマウス定常領域を有するSTEAP2に対するキメラ抗体が最初に単離された。抗体を、親和性、選択性などを含む望ましい特徴について特徴付けし選択する。必要ならば、マウス定常領域を所望のヒト定常領域、例えば野生型または改変IgG1またはIgG4定常領域と置き換えて、完全ヒト型抗STEAP2抗体を産生した。選択した定常領域は特異的用途に応じて変化し得るが、高親和性抗原結合特徴および標的特異性特徴は可変領域に存在する。H1H11243NおよびH1M7804Nなどの抗体名表示は、完全ヒト型抗体「H1H」またはキメラヒト可変/マウス定常領域抗体「H1
M」を表す。ハイブリドーマ法によって同定された抗体は、「N」または「N2」で終わる抗体ID番号で示され、B細胞選別法によって同定された抗体は、「P」または「P2」で終わる抗体ID番号で示される。
【0258】
本実施例の方法に従って産生された例示的な抗STEAP2抗体の特定の生物学的特性を、以下に示す実施例において詳細に説明する。
【0259】
抗STEAP2抗体の重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸配列および核酸配列
表1は、選択された本発明の抗STEAP2抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域ならびにCDRのアミノ酸配列識別子を示す。対応する核酸配列識別子を表2に示す。
【表1】
【表2】
【0260】
実施例2:抗ヒトSTEAP2抗体はFACSを介してSTEAP2発現細胞株に選択的に結合する。
抗STEAP2抗体がヒト前立腺の6回膜貫通上皮抗原2(STEAP2)を内因的に発現する細胞株に選択的に結合する能力を、FACS分析によって決定した。
【0261】
手短に言うと、1×10個の細胞を、抗体希釈緩衝液中、氷上で30分間、10μg/mlの抗STEAP2抗体、またはアイソタイプ対照抗体と共にインキュベートした。抗体希釈緩衝液で1回洗浄した後、細胞を10μg/mlのPE結合抗ヒトまたは抗マウスFc2次抗体と共に氷上で30分間インキュベートした。さらに1回洗浄した後、サンプルをCytofix(1%ホルムアルデヒド)と共に20分間インキュベートした。最後の1回の洗浄後、サンプルをPall96ウェル濾過ブロックを通して濾過し、Hyp
ercyt(登録商標)サイトメーターで泳動し、ForeCyt(商標)(IntelliCyt、Albuquerque,NM)で分析した。平均蛍光強度(MFI)は、無染色レベル(バックグラウンド)を超える倍率変化として表した。100~300nMの抗体濃度でバックグラウンドを上回る平均倍率を決定した。細胞結合EC50決定に関して、mAb濃度は300nM~5pMの範囲であり、EC50値は12点応答曲線(GraphPad Prism)上の4パラメータロジスティック方程式から決定した。
【0262】
表3Aおよび3B:STEAP2発現細胞株およびSTEAP2陰性細胞株に対する抗STEAP2抗体のFACS結合特性
【表3】
【表4】
【0263】
表3Aおよび3Bの結果が示すように、いくつかの抗STEAP2抗体は、FACSによって、低nMのEC50で、バックグラウンドの50倍を超えるレベルで高STEAP2発現C4-2前立腺腺癌細胞株に特異的に結合した。いくつかの抗STEAP2抗体はまた、低STEAP2発現HEK293細胞に弱く結合した。無視できる結合は、STEAP2陰性FADU、SK-BR-3、およびRaji細胞上のほとんどの抗STEAP2抗体について観察された。本実施例は、本発明のいくつかの抗STEAP2抗体が高発現STEAP2細胞株に特異的かつ選択的に結合する能力を示す。
【0264】
実施例3:抗ヒトSTEAP2抗体は強力な内在化およびヒトSTEAP2に対する特異性を示す。
本発明の抗STEAP2抗体がSTEAP2発現細胞株に選択的に結合する能力は記載されている(実施例2-FACS結合参照)。次に、本発明の抗STEAP2抗体の内在化特性もまた評価した。
【0265】
手短に言うと、20,000個のC4-2細胞をPDL被覆96ウェルプレートに播種
した。翌日、細胞を抗ヒトSTEAP2抗体(10μg/ml)と共に氷上で30分間インキュベートした後、PBSで2回洗浄した。次いで細胞を、アレクサ488結合抗hFcFab2次抗体と共に氷上で30分間インキュベートし、続いてさらに2回PBS洗浄
した。抗体を、内在化緩衝液(PBS+2%FBS)中で、37℃で1時間内在化させるか、または4℃に維持した。細胞を4%ホルムアルデヒド中で固定し、核をDRAQ5(Cell signaling)で染色し、画像をImageXpressmicroXL(MolecularDevices)で取得した。
【0266】
総結合強度および小胞内に内在化した抗体の強度の定性的視覚評価を実施し、以下の基準に従って採点した。-(内在化または結合なし)、+(弱い内在化または結合)、++(中程度の内在化)、または+++(堅牢な内在化または結合)。
【0267】
表4の結果が示すように、いくつかの抗体は、C4-2細胞株に対して強力な内在化能力を示した。一般に、頑強な内在化は最高レベルの総結合強度と相関していた。
【0268】
次いで、選択されたSTEAP2抗体を他のヒト(h)STEAPファミリーメンバー(STEAP1、STEAP3、およびSTEAP4)への結合について試験した。抗STEAP2抗体特異性を評価するために、緑色蛍光タンパク質(GFP)に融合したhSTEAP1、hSTEAP2、hSTEAP3、またはhSTEAP4を発現するプラスミド構築物を方法論に基づくリポフェクタミン2000により一時的にHEK293細胞に導入した。48時間後、一過性にトランスフェクトした細胞を抗STEAP2抗体で染色し、内在化アッセイについて上記したように画像化した。抗STEAP2抗体を結合したGFP陽性細胞を含むウェルを陽性(+)と記録し、抗STEAP2抗体を結合しなかったウェルを陰性(-)と記録した。試験した全ての抗体は、hSTEAP2-GFP陽性細胞に結合したが、STEAP1-GFP、STEAP3-GFP、またはSTEAP4-GFP陽性細胞には結合せず、ヒトSTEAP2への結合の特異性を確認した。結果を表5に要約する。
【0269】
要約すると、本発明のいくつかの抗STEAP2抗体は強力な内在化能力を示し、ヒトSTEAP2に対する特異的な結合剤である。
【表5】
【表6】
【0270】
実施例4:STEAP2およびCD3に結合する二重特異性抗体の産生
本発明は、CD3およびSTEAP2に結合する二重特異性抗原結合分子を提供し、そのような二重特異性抗原結合分子はまた、本明細書において「抗STEAP2/抗CD3または抗STEAP2×CD3二重特異性分子」とも呼ばれる。抗STEAP2/抗CD3二重特異性分子の抗STEAP2部分は、前立腺の6回膜貫通上皮抗原2(STEAP2)(STEAP2)を発現する腫瘍細胞を標的とするのに有用であり、二重特異性分子の抗CD3部分は、T細胞の活性化に有用である。腫瘍細胞上のSTEAP2およびT細胞上のCD3の同時結合は、活性化T細胞によって標的腫瘍細胞を直接死滅させる(細胞
溶解)を促進する。
【0271】
抗STEAP2特異的結合ドメインおよび抗CD3特異的結合ドメインを含む二重特異性抗体を、標準的な分子クローニング方法論によって組換えで構築してCHO細胞中で発現させ、抗STEAP2特異的結合ドメインおよび抗CD3特異的結合ドメインがそれぞれ共通のLCVRと対をなす異なる別個のHCVRを含む。例示された二重特異性抗体では、抗CD3抗体由来の重鎖、抗STEAP2抗体由来の重鎖、および抗STEAP2抗体由来の共通軽鎖を利用して分子を構築し、CHO細胞中で発現させた。場合によっては、二重特異性抗体は、抗CD3抗体由来の重鎖、抗STEAP2抗体由来の重鎖、および抗CD3抗体由来の軽鎖、または無差別であり、あるいはVκ1-39JK5もしくはVκ3-20JK1など様々な重鎖アームと効果的に対をなすことが知られている抗体軽鎖を利用して構築され得る。
【0272】
以下の実施例に記載の二重特異性抗体は、ヒト可溶性ヘテロ二量体hCD3ε/δタン
パク質(本明細書の実施例12に記載)およびヒトSTEAP2(上記実施例1~2参照)への様々な結合親和性を有する抗CD3結合アームからなる。2014年8月28日に公開された米国特許出願公開US20140243504A1に記載の、改変(キメラ)IgG4Fcドメインを有する例示的な二重特異性抗体を製造した。
【0273】
構築した様々な抗STEAP2×CD3二重特異性抗体の抗原結合ドメインの構成部分の要約を表6に示す。
【表7】
【0274】
表6に挙げた軽鎖は、二重特異性抗体のCD3およびSTEAP2標的化アームの両方に共通していた。表1および2は、本実施例の二重特異性抗体を構築するための抗STEAP2アーム(すなわち、HCVRおよびLCVRはH2M11162Nに由来する)の様々な重鎖可変領域、およびそれらの対応するCDRについて、アミノ酸識別子および核酸配列識別子をそれぞれ示す。表15および16は、本実施例の二重特異性抗体の抗CD3アームの様々な重鎖可変領域、およびそれらの対応するCDRについて、アミノ酸識別子および核酸配列識別子をそれぞれ示す。
【0275】
実施例5:抗STEAP2/抗CD3二重特異性抗体はインビボで強力な抗腫瘍効果を示す。
インビボでの例示的な抗STEAP2/抗CD3二重特異性抗体の有効性を決定するために、前立腺癌異種移植片を保有する免疫無防備状態のマウスにおいて試験を行った。
【0276】
ヒト腫瘍異種移植片モデルにおける抗STEAP2/抗CD3二重特異性抗体の有効性
ヒト腫瘍異種移植片試験における抗STEAP2/抗CD3二重特異性のインビボでの有効性を評価するために、NODscidガンマ(NSG)マウス(Jackson Laboratories,Bar Harbor,Maine)に、内因的にSTEAP2を発現するヒト前立腺癌C4-2細胞(MD Anderson Cancer Ce
nter,Houston TX)と共に、ヒト末梢血単核球(PBMC、ReachBio LLC.,Seattle,WA)を同時移植した。
【0277】
手短に言うと、5.0×10個のC4-2細胞を、マトリゲルマトリックス(BD Biosciences,San Jose,CA)の50:50混合物中の1.25×10個のヒトPBMCと共に、雄性NSGマウスの右側副に皮下(s.c.)同時移植した。マウスを移植日(即時治療モデル)に抗STEAP2/抗CD3二重特異性BSSTEAP2/CD3-001、BSSTEAP2/CD3-002、またはBSSTEAP2/CD3-003、またはアイソタイプ対照を0.1または0.01mg/kgの投与量(N=5マウス/群)で腹腔内(i.p.)処置した。
【0278】
キャリパーを使用して腫瘍サイズを週2回測定し、腫瘍体積を体積=(長さ×幅)/2として計算した。データは、腫瘍移植後46日目の試験終点における腫瘍サイズ(mm)として示される(表7)。
【表8】
【0279】
表7の結果が示すように、腫瘍サイズを試験終点で測定した場合、BSSTEAP2/CD3-001、BSSTEAP2/CD3-002、およびBSSTEAP2/CD3-003は、アイソタイプ対照と比較して腫瘍増殖を有意に抑制した。重要なことに、抗STEAP2/抗CD3二重特異性抗体は、最低用量0.1mg/kgでさえもC4-2腫瘍増殖を阻害するのに有効であった。
【0280】
実施例6:複合体の調製および特徴付け
全てのモノクローナル抗体をCHO細胞中で発現させ、プロテインAにより精製した。アイソタイプ対照もまた同様にして調整した。非結合アイソタイプ対照抗体は、腫瘍学とは無関係の免疫学的抗原に由来した。
【0281】
50mMのHEPES、150mMのNaCl、pH7.5中の抗体(10mg/ml)を1mMジチオトレイトールで37℃で30分間処理した。ゲル濾過(G-25、pH4.5酢酸ナトリウム)後、DMSO(10mg/ml)中のマレイミドリンカーペイロード誘導体化合物7(1.2当量/SH基)を還元抗体に加え、混合物を1MHEPES(pH7.4)でpH7.0に調整した。化合物7、および化合物を製造する方法は、2014年9月18日に公開されたPCT公開番号WO2014/145090に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。1時間後、反応を過剰のN-エチルマレイミドでクエンチした。複合体をサイズ排除クロマトグラフィーにより精製し、滅菌濾過した。タンパク質およびリンカーのペイロード濃度は、UVスペクトル分析によって決定した。サイズ排除HPLCは、使用した全ての複合体が>95%の単量体である
ことを立証し、RP-HPLCは<0.5%の非結合リンカーペイロードがあることを立証した。収量は、タンパク質力価決定に基づいて表8に報告されている。Hamblett et al,Cancer Res 2004 10 7063に従って、リンカーペイロード負荷値について、全ての複合抗体をUVによって分析した。結果を表8に要約する。
【0282】
化合物60を含む複合体は、同様の方法を用いて調製することができる。化合物60、およびその化合物の製造方法は、2016年10月6日に公開されたPCT公開番号WO2016/160615(実施例20)に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。化合物60は、メイタンシン-N-メチル-L-アラニン-(3-メトキシ-4-アミノ)ベンズアミド-Cit-Val-Cap-Malである。
【表9】
【0283】
実施例7:抗STEAP2抗体薬物複合体(ADC)は、インビボSTEAP2陽性前立腺癌異種移植モデルにおける腫瘍増殖の強力な阻害剤である。
A.化合物7に結合した抗STEAP2抗体のインビボ有効性を決定するために、STEAP2陽性前立腺癌異種移植片を保有する免疫無防備状態のマウスにおいて研究を行った。
【0284】
これらの試験のために、雄性SCIDマウス(Taconic,Hudson NY)に、STEAP2を内因的に発現するC4-2細胞を移植した。腫瘍が200~250mmの平均体積に達したら(約13~17日目)、マウスを処置群に無作為化し、抗STEAP2結合抗体、非結合結合抗体、またはビヒクルのいずれかを投与した。これらのインビボ試験では、抗体を1回投与し、次いでビヒクル単独を投与したコホートにおいて約1500~2000mmの平均腫瘍サイズが達成されるまで(約40~50日)腫瘍をモニターした。有効性を示した処置群は、より長期間(80~110日)維持された。
【0285】
最初の試験において、化合物7に結合した例示的な抗STEAP2抗体を、C4-2腫瘍体積の減少における有効性について調べた。移植後13日目に、マウスに10、20、または40mg/kgの抗STEAP2および対照ADCを単回投与した。図1に要約されるように、H1H7841N-7(DAR2.92)は試験した全ての用量で腫瘍増殖
を強力に阻害した。最高用量(40mg/kg)では、H1H784N-7は腫瘍サイズを効率的に縮小させたが、非結合対照抗体(40mg/kg)も腫瘍体積に対して効果を示した。調べた全ての用量にわたって、H1H784N-7は、対照複合抗体よりも強力に腫瘍サイズを縮小させた。
【0286】
第2の試験では、移植後14日目にSTEAP2 ADCを5mg/kgおよび20mg/kgで、対照抗体を20mg/kgで投与した。図2に要約されるように、H1H7841N-7(DAR2.92)は、先の実験におけるように20mg/kgの用量で腫瘍増殖を強力に阻害したが、5mg/kgの用量では有効性の低下を示した。20mg/kg用量の対照抗体はビヒクル対照に対して差を示さなかった。
【0287】
さらなる試験において、H1H7841N-7(DAR2.7)および対照抗体を、ADC薬物:抗体比(「DAR」)に基づいて、薬物等価物μg/kgで投与した。移植後17日目に投与量は150μg/kgであった(図3)。H1H7841N-7は150μg/kgの用量で腫瘍増殖を強力に阻害し、移植後42日および注射後25日までに腫瘍退縮を示した。この時点で、腫瘍増殖は反発し始めました。この用量での対照抗体による腫瘍増殖はビヒクル対照と変わらなかった。
【0288】
B.類似の試験において、雄性SCIDマウス(Taconic,Hudson NY)に、STEAP2を内因的に発現するC4-2細胞を移植した。化合物60に結合した例示的な抗STEAP2(H1H7814N)抗体を、C4-2腫瘍退縮における有効性について調べた。移植後29日目に、マウスに抗STEAP2ADC、アイソタイプ対照ADC(無関係な抗原に結合する)、またはビヒクル(PBS)を2.5mg/kgで単回投与した。腫瘍体積および体重を、注射後0日目(注射日)、ならびに注射後4、6、8、12、14、および20日目に記録した。図4に要約されるように、H1H7814N-60(DAR3.6)は試験した用量で腫瘍増殖を強く阻害し、注射後20日まで(移植後49日)の腫瘍退縮を示した。試験ADCについての体重の変化率は、体重の変化率が、(H1H7814N-60の投与後)14日目までに-4.02%から-11.55%で観察された対照Ab-ADCで処置されたマウスと比較して、14日目までに-2.01%以下であった。
【0289】
実施例8:抗CD3抗体の産生
抗CD3抗体は、ヒト免疫グロブリン重鎖およびカッパ軽鎖可変領域をコードするDNAを含む遺伝子操作マウスを、CD3を発現する細胞またはCD3をコードするDNAで免疫することによって得た。抗体の免疫応答を、CD3特異的イムノアッセイによってモニターした。所望の免疫応答が達成されたとき、脾細胞を収集し、マウス骨髄腫細胞と融合させて、それらの生存率を維持し、ハイブリドーマ細胞株を形成した。ハイブリドーマ細胞株をスクリーニングおよび選択して、CD3特異的抗体を産生する細胞株を同定した。この技術を用いて、いくつかの抗CD3キメラ抗体(すなわち、ヒト可変ドメインとマウス定常ドメインとを有する抗体)を得た。さらに、US2007/0280945A1に記載されるように、いくつかの完全ヒト型抗CD3抗体を骨髄腫細胞に融合させることなく抗原陽性B細胞から直接単離した。
【0290】
本実施例の方法に従って産生された例示的な抗CD3抗体の特定の生物学的特性を、以下に示す実施例において詳細に説明する。
【0291】
実施例9:重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列および核酸配列
表9は、本発明の選択された抗CD3抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域ならびにCDRのアミノ酸配列識別子を示す。対応する核酸配列識別子を表10に示す。本明細書に開示の抗CD3抗体を作製する方法はまた、2014年3月27日に公開された米国特
許公開第2014/0088295号に見出すことができる。
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【0292】
抗体は、以下の命名法:Fc接頭辞(例えば、「H1H」、「H1M」、「H2M」など)、続いて数値識別子(例えば、表1に示すように、「2712」、「2692」など)、続いて「P」、「N」、または「B」の接尾辞により、本明細書で典型的に参照される。したがって、この命名法によれば、抗体は、本明細書では、例えば、「H1H2712N」、「H1M2692N」、「H2M2689N」などと言及され得る。本明細書に使用される抗体名のH1H、H1M、およびH2Mの接頭辞は、抗体の特定のFc領域アイソタイプを示す。例えば、「H1H」抗体はヒトIgG1Fcを有し、「H1M」抗体はマウスIgG1Fcを有し、「H2M」抗体はマウスIgG2Fcを有する(抗体名の最初の「H」によって示されるように全ての可変領域は完全ヒト型である)。当業者によって理解されているように、特定のFcアイソタイプを有する抗体は、異なるFcアイソタイプを有する抗体へ変換することができる(例えば、マウスIgG1 Fcを有する抗体は、ヒトIgG4を有する抗体へ変換することができる、など)が、いずれの事象においても、表1に示す数値識別子によって示される可変ドメイン(CDRを含む)は同じままであることになっており、結合特性はFcドメインの性質にかかわらず、同一または実質的に類似であると期待される。
【0293】
表11および12は、本発明の抗STEAP2×CD3二重特異性抗体に有用な追加の抗CD3HCVRおよびLCVRの重鎖可変領域(表13)および軽鎖可変領域(表14)のアミノ酸配列識別子、ならびにそれらの対応するCDRを示す。
【表16】
【表17】
【0294】
CD3-VH-FおよびCD3-VL-Fの重鎖および軽鎖可変領域は、WO2004/106380に記載の「L2K」と命名された抗CD3抗体に由来した。
【0295】
さらに、表13および14は、本発明の抗STEAP2×抗CD3二重特異性抗体に有用な追加の抗CD3HCVRおよびLCVRの重鎖可変領域(表13)および軽鎖可変領域(表14)をコードするヌクレオチド配列の配列識別子、ならびにそれらの対応するCDRを示す。
【表18】
【表19】
【0296】
以下の実施例にて使用される対照構築物
比較の目的で、種々の対照構築物(抗CD3抗体)を以下の実験に含めた。すなわち、カタログ番号CRL-8001でAmerican Type Culture Collection(ATCC)から入手可能なヒトT細胞表面抗原に対するマウスモノクローナル抗体「OKT-3」、およびヒトTリンパ球細胞上のT3複合体のイプシロン鎖に対して反応性である、例えば、Biolegend,San Diego,CA(Cat
.No.302914)またはBD Pharmagen,Cat.55052から入手可能な市販のマウスモノクローナル抗体「SP34」。
【0297】
実施例10:さらなる抗CD3抗体の産生
以下の手順は、抗原としてCD3(T細胞コレセプター)を特異的に認識する抗体を同定することを目的とした。
【0298】
抗CD3抗体のプールは、遺伝子改変マウスに由来した。手短に言うと、マウスをCD3抗原で免疫し、多様なレパートリーの高親和性抗原特異的抗体を発現させるために多様なヒトVH再編成を含むB細胞を産生した。表15~18に記載の抗体は、VK1-39JK5の同じ軽鎖配列(配列番号1890に記載のLCVR)を有する。
【0299】
産生された抗体を、インビトロ結合アッセイにおいてヒトおよびカニクイザルCD3抗原に対する親和性について試験し、他のいくつかの中でも特に、例えば、CD3-VH-P(配列番号1882に記載のHCVR)と命名された1つのCD3抗体が同定され、ジャーカット細胞およびカニクイザルT細胞のFACS滴定において決定されるように、1~40nMの親和性のEC50を有するヒトおよびカニクイザルCD3の両方にそれぞれ結合することが見出された。例えば、実施例12および2016年7月29日に出願されたPCT/US2016/044732に概説されているFACS結合実験を参照されたい。
【0300】
続いてCD3-VH-Pの生殖系列アミノ酸残基を同定し、「CD3-VH-G」と命名された抗体を生殖系列フレームワークのみを含むように操作した。生殖系列配列とCD3-VH-P配列との間の相違に基づいて段階的な方法でアミノ酸残基を置換するために、他の抗体誘導体を周知の分子クローニング技術によって操作した。各抗体誘導体は、「CD3-VH-G」番号表示を与えられる。表15を参照されたい。
【0301】
FACSアッセイで見られるように、CD3-VH-Gおよびいくつかの他の操作された抗体はそれらの結合親和性を保持したが、二重特異性フォーマットにおけるいくつかの抗CD3抗体は、100nM超のEC50などの弱から測定不可能な結合親和性で、ヒトまたはカニクイザルCD3にインビトロで結合する。続いて、例示的な抗CD3抗体を含む二重特異性抗体として、結合親和性、結合動態、ならびに毒性および薬物動態(pK)プロファイルを解明する他の生物学的特性をさらに調べ、本実施例の方法に従って産生した。
【0302】
実施例11:重鎖および軽鎖可変領域(CDRのアミノ酸配列および核酸配列)
表15は、選択された本発明の抗CD3抗体の重鎖可変領域およびCDRのアミノ酸配列識別子を示す。対応する核酸配列識別子を表16に示す。
【0303】
アミノ酸配列および核酸配列は、各抗体重鎖配列について決定された。生殖系列配列(配列番号1910)に由来する各抗体重鎖には、一貫した命名法のために「G」番号表示を割り当てた。表15は、操作された本発明の抗CD3抗体の重鎖可変領域およびCDRのアミノ酸配列識別子を示す。対応する核酸配列識別子を表16に示す。軽鎖可変領域およびCDRのアミノ酸識別子および核酸配列識別子もまた、それぞれ下記の表17および18に同定されている。
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【0304】
「CD3-L2K」と命名された対照1抗体は、既知の抗CD3抗体(すなわち、WO2004/106380に記載の抗CD3抗体「L2K」)に基づいて構築された。
【0305】
本明細書の実施例において言及されるアイソタイプ対照抗体は、無関係の抗原、すなわちFelD1抗原と相互作用するアイソタイプ適合(改変IgG4)抗体である。
【0306】
実施例12:ヒトモノクローナル抗CD3抗体に関するインビトロおよびインビボ試験
ヒトモノクローナル抗CD3抗体に関するインビボおよびインビトロ試験を、2014年3月27日に公開された米国特許公開第2014/0088295号および2016年7月29日に出願されたPCT/US2016/044732に記載のとおり実施した。
【0307】
本発明のいくつかのヒトモノクローナル抗CD3抗体は、抗体捕捉フォーマットまたは抗原捕捉フォーマットのいずれかで、高い親和性で可溶性ヘテロ二量体CD3タンパク質に結合する。可溶性ヘテロ二量体CD3タンパク質(hCD3-イプシロン/hCD3-デルタ;配列番号1900/1901)は、ヒトFcタグ(hFcΔAdp/hFc;配列番号1931/1932)またはマウスFcタグ(mFcΔAdp/mFc;配列番号1933/1934)のいずれかを用いて調製した。ヘテロ二量体CD3タンパク質は、Davisら(US2010/0331527)に記載の方法を用いて精製した。
【0308】
本発明のいくつかのヒトモノクローナル抗CD3抗体は、ヒトT細胞に結合し、T細胞増殖を誘導した。本発明のいくつかのヒトモノクローナル抗CD3抗体はCD2+CD4+サルT細胞に結合し、それらの増殖を誘導した。いくつかのヒトモノクローナル抗CD3抗体は、カルセインベースのU937死滅アッセイにおいて、Fc/FcR相互作用を介した再指向性のT細胞媒介性死滅を支持した。観察された死滅は、隣接するT細胞上のCD3のクラスター化をもたらすU937細胞上のFc受容体との抗体のFc結合に依存すると考えられ、非特異的ヒトIgGの添加によってスケルチされた(データは示さず)。
【0309】
実施例13:ヒトSTEAP2xCD3二重特異性抗体に関するインビトロ試験
ジャーカット細胞、PC3_STEAP2/1細胞、およびカニクイザルT細胞に対するFACS結合滴定:フローサイトメトリー分析を利用して、ジャーカットT細胞、PC3_STEAP2/1キメラT細胞、およびカニクイザルT細胞へのSTEAP2xCD3二重特異性抗体の結合を決定した後、フィコエリトリン(PE)標識した抗ヒト(IgG)抗体で検出した。手短に言うと、2×105細胞/ウェルを、66.6nM~0.001nMの範囲のSTEAP2×CD3二重特異性抗体または対照抗体(STEAP2またはヒトもしくはカニクイザルCD3に対して交差反応性を有さないネコ抗原に結合するヒトIgG1抗体)の段階希釈を用いて4℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を1%濾過FBSを含有する冷PBSで2回洗浄し、PE結合抗ヒト2次抗体を細胞に添加して、さらに30分間インキュベートした。抗体または2次抗体のみを含有しないウェルを対照として使用した。インキュベーション後、細胞を洗浄し、1%濾過したFBSを含有する200μLの冷PBSに再懸濁し、BD FACS Canto IIでフローサイトメトリーにより分析した。
【表24】
【0310】
ジャーカット細胞は、ヒトCD3を発現するT細胞リンパ芽球細胞株に由来する。試験した全ての二重特異性抗体(表19および図5)は、1.41E-08M~6.15E-10Mの範囲のEC50でジャーカット細胞に結合した。ヒト前立腺癌細胞系であるPC3細胞は、STEAP2/1キメラ構築物を発現するように操作された。いくつかの二重特異性抗体がPC3_STEAP2/1細胞に結合し、EC50は7.91E-08M~3.44E-09Mの範囲であった(表19および図6)。
【0311】
精製カニクイザルT細胞の表面へのSTEAP2×CD3二重特異性抗体の結合もまた試験した。いくつかの二重特異性抗体は、1.73E-08M~7.27E-09Mの範囲のEC50に結合した。対照抗体はいずれの細胞株にも結合しなかった。表19および図7および8を参照されたい。
【0312】
T細胞増殖アッセイ:解凍したヒトまたは新たに単離したサルのPBMC(50000細胞/ウェル)を、完全培地(10%FBS、100U/mのLペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、292μg/mLのL-グルタミンを補充したRPMI)の、STEAP2×CD3二重特異性またはアイソタイプ対照の3倍(ヒト、濃度範囲:5E-10M~2.82E-15M;カニクイザル、濃度範囲:1E-09M~4.57E-13M)の段階希釈、および固定濃度(ヒト:200ng/mL、カニクイザル:500ng/mL)の市販の抗CD28抗体(Biolegend、カタログ番号302914)を用いて、37℃で72時間、白色平底96ウェルプレートでインキュベートした。単離されたサルのPBMCは2人のドナーからのものであった(mk8781Mまたはmk9381Mとして同定される)。インキュベーション後、CellTiter Glo(登録商標)(Promega、カタログ番号7573)を添加し、細胞生存率の読み取り値としての発光を、VICTOR X5マルチラベルプレートリーダーを使用して測定した。細胞力価は、刺激細胞の発光を非刺激細胞のベースライン発光で割ることによって計算した。
【0313】
全てのαSTEAP2×αCD3二重特異性抗体は、共刺激性抗CD28抗体の存在下でヒトPBMC増殖を誘導する(表20および図9参照)。PBMCを、二重特異性抗体または対照抗体の段階希釈および固定濃度の抗CD28を用いて72時間インキュベートし、細胞生存率を発光アッセイにおいて測定して生細胞を検出した。増殖を、二重特異性抗体刺激細胞の発光を抗体なしの細胞と比較することによって測定した。EC50値(最大半量の増殖を生じさせるのに必要な抗体の濃度として定義される)は、3.68E-1
3M~1.60E-10Mの範囲であった。対照的に、対照抗体は同じ条件下で活性を示さなかった。
【表25】
【0314】
二重特異性抗体BSSTEAP2/CD3-0010およびBSSTEAP2/CD3-011もまた、それぞれ7E-13および3.6E-12のEC50を示すカニクイザルPBMC増殖(ドナーmk8781M)を誘導した。BSSTEAP2/CD3-004活性はドナー依存的であった。2つのさらなる二重特異性抗体、BSSTEAP2/CD3-001およびBSSTEAP2/CD3-006は、試験した全てのドナーにおいて頑強なカニクイザルPBMC増殖を誘導した。ドナーmk9381Mを用いたEC50値は、それぞれ4.6E-12Mおよび1.53E-11Mであった(表20および図10参照)。
【0315】
BSSTEAP2/CD3-007およびBSSTEAP2/CD3-008活性はドナー依存的であった。対照的に、BSSTEAP2/CD3-005、BSSTEAP2/CD3-009、およびアイソタイプ対照は活性を示さなかった。
【0316】
抗STEAP2×CD3二重特異性抗体およびヒトT細胞の存在下でC4-2細胞を標的とする細胞傷害性アッセイ:フローサイトメトリーによるSTEAP2保有標的細胞の特異的死滅をモニターするために、C4-2細胞を1μMの蛍光追跡色素Violet Cell Tracker(Life Technologiesキット、#C34557)で標識した。標識後、細胞を37℃で一晩播種した。別に、ヒトPBMCを1×10細胞/mLで補充RPMI培地に播種し、付着マクロファージ、樹状細胞、およびいくつかの単球を枯渇させることによってリンパ球を濃縮するために37℃で一晩インキュベートした。翌日、標的細胞を、接着性細胞除去ナイーブPBMC(エフェクター/標的細胞4:1の比率)、および段階希釈したSTEAP2×CD3二重特異性抗体またはIgG1対照抗体(STEAP2に結合しない)(濃度範囲:66.7nM~0.25ρM)と共に37℃で48時間インキュベートした。無酵素胞解離緩衝液を用いて細胞を細胞培養プレートから取り出し、FACSにより分析した。FACS分析のために、細胞を死/生の遠赤細胞トラッカー(Invitrogen)で染色した。FACS分析の直前に、
5×10個の計数ビーズを各ウェルに加えた。各サンプルにつき1×10個のビーズを集めた。殺傷の特異性を評価するために、細胞を生きたバイオレット標識集団にゲートした。生きている集団の割合を記録し、正規化された生存率の計算に使用した。
【0317】
T細胞活性化は、細胞をCD2およびCD69に直接結合した抗体と共にインキュベートし、全T細胞(CD2+)のうち活性化された(CD69+)T細胞の割合を報告することによって評価された。いくつかの抗STEAP2×CD3二重特異性抗体を、ナイーブT細胞を誘導してヒトSTEAP2を発現する標的細胞を殺滅するそれらの能力について試験した(表21および図11参照)。試験した全ての抗体は、ヒトT細胞にC4-2細胞(LnCap細胞由来のヒト前立腺腺癌サブライン)を枯渇させるよう活性化および誘導した。標的細胞の死滅は二重特異性抗体の存在下でのみ観察され、C4-2細胞はpM EC50で用量依存的に枯渇した。さらに、観察された標的細胞溶解は、pM EC50を有する、CD2+T細胞上のCD69細胞の上方制御と関連していた(表21および図12参照)。
【表26】
【0318】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではない。実際、本明細書に記載されたものに加えて本発明の様々な修飾は、前述の記載から当業者には明らかである。そのような修正は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
2024050697000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト前立腺の6回膜貫通上皮抗原2(STEAP2)に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片であって:
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/58、74/58、82/58、90/58、98/58、106/114、122/130、138/146、154/162、170/178、186/194、202/210、234/242、250/258、266/274、282/290、298/306、314/322、330/338、346/354、362/370、および378/386からなる群から選択される重鎖可変領域と軽鎖可変領域のアミノ酸配列対内に含まれている相補性決定領域(CDRs)を含む;
上記単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
ヒトSTEAP2発現細胞によって内在化される、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
完全ヒト型である、請求項2に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
それぞれ、配列番号4-6-8-12-14-16、20-22-24-28-30-32、36-38-40-44-46-48、52-54-56-60-62-64、68-70-72-60-62-64、76-78-80-60-62-64、84-86-88-60-62-64、92-94-96-60-62-64、100-102-104-60-62-64、108-110-112-116-118-120、124-126-128-132-134-136、140-142-144-148-150-152、156-158-160-164-166-168、172-174-176-180-182-184、188-190-192-196-198-200、204-206-208-212-214-216、236-238-240-244-246-248、252-254-256-260-262-264、268-270-272-276-278-280、284-286-288-292-294-296、300-302-304-308-310-312、316-318-320-324-326-
328、332-334-336-340-342-344、348-350-352-356-358-360、364-366-368-372-374-376、および380-382-384-388-390-392からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含む;
請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/58、74/58、82/58、90/58、98/58、106/114、122/130、138/146、154/162、170/178、186/194、202/210、234/242、250/258、266/274、282/290、298/306、314/322、330/338、346/354、362/370、および378/386からなる群から選択される重鎖可変領域と軽鎖可変領域のアミノ酸配列対を含む、
請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
請求項1に記載の単離された抗体もしくはその抗原結合断片、および薬学的に許容される担体もしくは希釈剤、を含む医薬組成物。
【請求項7】
対象においてSTEAP2を発現する癌を治療する際に用いるための、請求項6に記載の医薬組成物。