(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050707
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】皮膚の処置方法
(51)【国際特許分類】
C07D 311/78 20060101AFI20240403BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240403BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240403BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20240403BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240403BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240403BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20240403BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240403BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240403BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C07D311/78 CSP
A61P17/00
A61P17/06
A61P17/16
A61Q19/08
A61Q17/04
A61Q19/02
A61K9/06
A61K8/49
A61K31/352
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024010776
(22)【出願日】2024-01-29
(62)【分割の表示】P 2019548888の分割
【原出願日】2018-03-08
(31)【優先権主張番号】1703734.2
(32)【優先日】2017-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1703768.0
(32)【優先日】2017-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】512018265
【氏名又は名称】アマゼンティス エスアー
【氏名又は名称原語表記】AMAZENTIS SA
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー リンシュ
(72)【発明者】
【氏名】ペネロペ アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】アヌラーグ シング
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象の皮膚状態の処置および/または予防における使用のための化合物、その使用、ならびに対象の皮膚漂白、および/または皮膚の色の明色化の方法を提供する。
【解決手段】局所的に投与される式(I)の化合物またはその塩を提供する。さらに、式(I)の化合物の局所組成物、および前記組成物の調製プロセスを提供する。
(式中、A、B、C、D、W、X、Y、およびZは、それぞれ独立して、HおよびOHから選択される)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の皮膚の状態の処置および/または予防における使用のための、式(I)
【化1】
(式中、A、B、C、D、W、X、Y、およびZは、それぞれ独立して、HおよびOHから選択される)
の化合物またはその塩であって、局所的に投与される式(I)の化合物またはその塩。
【請求項2】
前記皮膚の状態、疾患または障害が、肝斑、しみ、妊娠黒皮症、色素沈着過剰、皮膚老化、老人性色素斑、黒子、皮膚の炎症、皮膚刺激、皮膚感染、いぼ、乾癬、環境および/または治療によって引き起こされる損傷からの皮膚の保護、メラノーシス、皮膚炎、黒線、アディソンおよびクッシング症候群からなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記肝斑が、ストレスに関連した肝斑、妊娠に関係した肝斑、甲状腺機能低下症に関係した肝斑、有効成分の投与に関係した肝斑、日光および/または紫外線への曝露に関係した肝斑、および化学薬品への曝露に関係した肝斑からなる群から選択される、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
日光によって引き起こされる損傷から皮膚を保護するため、または放射線療法によって引き起こされる損傷から皮膚を保護するための、請求項2に記載の使用。
【請求項5】
対象の皮膚漂白、および/または皮膚の色の明色化、および/または皮膚の色合いの明色化の方法であって、
前記対象に、有効量の式(I)
【化2】
(式中、A、B、C、D、W、X、Y、およびZは、それぞれ独立して、HおよびOHから選択される)
の化合物またはその塩を局所投与することを含む方法。
【請求項6】
美容的な皮膚漂白、皮膚の色の明色化および/または皮膚の色合いの明色化のためのものである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記対象が、健常である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記式(I)の化合物が、ウロリチンAである、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用、または請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記式(I)の化合物またはその塩が、前記式(I)の化合物またはその塩、および局所投与に適した少なくとも1種の賦形剤を含む組成物の形態で投与される、請求項1~9のいずれかに記載の使用または方法。
【請求項10】
前記組成物が、0.0001%~1%の式(I)の化合物を含む、請求項9に記載の使用または方法。
【請求項11】
前記組成物が、以下の1つ以上を含む、請求項9または請求項10に記載の使用または方法:
(a)前記組成物は、前記式(I)の化合物またはその塩以外のポリフェノールを実質的に含まない;
(b)微粉化された式(I)の化合物
(c)有機溶媒;
(d)皮膚浸透促進剤;
(e)脂質;
(f)モノ、ジ、および/またはトリグリセリド;
(g)中鎖トリグリセリド;
(h)5%w/w未満の水;
(i)経口投与に適さない少なくとも1種の賦形剤;
(j)前記組成物が半固体である;
(k)前記組成物がクリーム、ペーストまたは軟膏である;
(l)前記組成物がスキンクリームである;
(m)前記組成物が日焼け止め組成物である;
(n)物理的および/または化学的な日焼け止めである物質;ならびに
(o)前記式(I)の化合物またはその塩が、前記組成物中に0.005~20%w/wの範囲の量で存在する。
【請求項12】
前記組成物が、
-微粉化された式(I)の化合物またはその塩を提供することと、
-前記微粉化された式(I)の化合物またはその塩と、局所投与に適した少なくとも1種の賦形剤を混和することとを含むプロセスにより得ることができる、請求項11に記載の使用または方法。
【請求項13】
前記微粉化された式(I)の化合物が、0.5~50μmの範囲内のD50および5~100μmの範囲内のD90を有する粒度分布を有する、請求項11または12に記載の使用または方法。
【請求項14】
前記微粉化された式(I)の化合物が、20μm以下のD50および30μm以下のD90を有する粒度分布を有する、請求項13に記載の使用または方法。
【請求項15】
a)式(I)
【化3】
(式中、A、B、C、D、W、X、Y、およびZは、それぞれ独立して、HおよびOHから選択される)
の化合物またはその塩、
ならびに
b)局所投与に適した少なくとも1種の賦形剤を含む、局所投与用組成物。
【請求項16】
前記式(I)の化合物が、微粉化されている、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記微粉化された式(I)の化合物が、0.5~50μmの範囲内のD50および5~100μmの範囲内のD90を有する粒度分布を有する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記微粉化された式(I)の化合物が、20μm以下のD50および30μm以下のD90を有する粒度分布を有する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記式(I)の化合物またはその塩以外のポリフェノールを実質的に含まない、請求項15~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
以下の1つ以上を含む、請求項15~19のいずれか一項に記載の組成物:
(a)有機溶媒;
(b)皮膚浸透促進剤;
(c)脂質;
(d)モノ、ジ、および/またはトリグリセリド;
(e)中鎖トリグリセリド;
(f)経口投与に適さない少なくとも1種の賦形剤;ならびに
(g)5%w/w未満の水を含む。
【請求項21】
a)半固体;
b)クリーム、ペーストもしくは軟膏;または
c)スキンクリームである、請求項15~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
日焼け止め組成物である、請求項15~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
物理的および/または化学的な日焼け止めである物質を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記式(I)の化合物またはその塩が、0.005~20%w/wの範囲内の量で前記組成物中に存在する、請求項15~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
局所投与用組成物を得るためのプロセスであって、前記組成物は、
a)式(I)
【化4】
(式中、A、B、C、D、W、X、Y、およびZは、それぞれ独立して、HおよびOHから選択される)
の化合物またはその塩、
ならびに
b)局所投与に適した少なくとも1種の賦形剤を含み、
前記プロセスは、
-式(I)の化合物またはその塩を微粉化することと、
-前記微粉化された式(I)の化合物またはその塩、および局所投与に適した少なくとも1種の賦形剤を混和することとを含む方法。
【請求項26】
前記微粉化された式(I)の化合物が、
(a)0.5~50μmの範囲内のD50および5~100μmの範囲内のD90、ならびに
(b)20μm以下のD50および30μm以下のD90のうちの1つから選択される粒子分布を有する、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記微粉化された式(I)の化合物が、20μm以下のD50および30μm以下のD90を有する粒度分布を有する、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
対象の皮膚の状態、疾患、または障害の予防および/または処置の方法であって、
前記対象に、有効量の式(I)
【化5】
(式中、A、B、C、D、W、X、Y、およびZは、それぞれ独立して、HおよびOHから選択される)
の化合物またはその塩を局所投与することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウロリチンの局所投与を含む、肝斑等の皮膚の状態および障害を処置および予防するための方法に関する。本開示はまた、皮膚の明色化等の美容的な使用に関する。ウロリチンを含む局所組成物、および例えば微粉化ウロリチンの使用を含むそのような組成物の作製プロセスもまた提供される。
【背景技術】
【0002】
肝斑等の色素沈着過剰に関連する皮膚の状態は、多くの人々に影響を与える問題である。肝斑は、顔に茶色、黄褐色または灰色の斑点として現れる傾向があり、最も一般的には20~50歳の女性に影響を与えるが、男性でも発生する可能性がある。肝斑の可能性と重症度に寄与し得る要因には、日光/紫外線への曝露、妊娠、および避妊薬を含むホルモン薬への曝露が含まれる。肝斑は、しみおよび妊娠黒皮症とも呼ばれる。処置には、ハイドロキノンまたはコウジ酸等の皮膚明色化剤、皮膚剥離およびレーザー処置が含まれる。
【0003】
しかしながら、ハイドロキノンおよびコウジ酸を含む製品は、刺激、炎症、および/または接触性皮膚炎の原因となる可能性があり、場合によってはハイドロキノンは皮膚の黒ずみの増加を引き起こす可能性がある。皮膚刺激を軽減するために、ステロイド活性成分を皮膚明色化剤と併用することが必要となる場合がある。化学的剥離(例えばグリコール酸ベース)も使用され得るが、場合によっては瘢痕化および/または色素脱失が生じる可能性がある。その結果、肝斑や色素沈着過剰に関連する他の皮膚状態、例えば老人性色素斑/黒子を処置するための効果的な治療法の必要性が残されており、また日光および皮膚が曝露されるその他の環境条件の損傷効果から保護できるさらなる薬剤が依然として必要とされている。
【0004】
多くの人々は、美容的な理由で、例えば皮膚の色調を均一にするために、皮膚の明色化または皮膚の漂白を選択します。そのような処置のための改善されたまたは代替のアプローチを提供することもまた望ましい。
【0005】
ウロリチンは、例えば哺乳動物の結腸微生物叢によって産生されるエラジタンニンおよびエラグ酸由来の代謝産物の群である。ウロリチンは、長寿を促進するのに有用な化合物であるとして提案されてきた。例えば、Amazentis SAの名前でのWO2014/004902を参照されたい。ウロリチンの経口投与のための組成物が提案されており、例えば、WO2014/004092は、ウロリチンAが食物と混合された動物実験を記載している。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、対象の皮膚の状態、疾患または障害の予防および/または処置の方法であって、対象に、有効量の式(I)
【0007】
【0008】
(式中、A、B、C、D、W、X、Y、およびZは、それぞれ独立して、HおよびOHから選択される)
の化合物またその塩を局所投与することを含む方法を提供する。
【0009】
本開示はまた、対象の皮膚の状態の処置および/または予防における使用のための、式(I)
【0010】
【0011】
(式中、A、B、C、D、W、X、Y、およびZは、それぞれ独立して、HおよびOHから選択される)
の化合物またはその塩であって、局所的に投与される式(I)の化合物またはその塩を提供する。
【0012】
本開示はまた、対象の皮膚の状態の処置および/または予防用の医薬を製造するための、式(I)
【0013】
【0014】
(式中、A、B、C、D、W、X、Y、およびZは、それぞれ独立して、HおよびOHから選択される)
の化合物またはそれらの塩の使用であって、式(I)の化合物またはその塩が局所的に投与される使用を提供する。
【0015】
本開示はまた、対象の皮膚漂白、および/または皮膚の色の明色化、および/または皮膚の色合いの明色化の方法であって、対象に、有効量の式(I)
【0016】
【0017】
(式中、A、B、C、D、W、X、Y、およびZは、それぞれ独立して、HおよびOHから選択される)
の化合物またはその塩を局所投与することを含む方法を提供する。
【0018】
対象の皮膚漂白、および/または皮膚の色の明色化(皮膚の美白)、および/または皮膚の色合いの明色化の方法は、色素脱失を含む。
【0019】
本開示は、
a)式(I)の化合物またはその塩、
【0020】
【0021】
(式中、A、B、C、D、W、X、Y、およびZは、それぞれ独立して、HおよびOHから選択される)
ならびに
b)局所投与に適した少なくとも1種の賦形剤を含む、局所投与用組成物を提供する。
【0022】
本開示はまた、局所投与用組成物を得るためのプロセスであって、組成物は、
a)式(I)の化合物またはその塩、
【0023】
【0024】
(式中、A、B、C、D、W、X、Y、およびZは、それぞれ独立して、HおよびOHから選択される)
ならびに
b)局所投与に適した少なくとも1種の賦形剤を含み、
プロセスは、
-微粉化された式(I)の化合物またはその塩を提供することと、
-微粉化された式(I)の化合物またはその塩、および局所投与に適した少なくとも1種の賦形剤を混和することとを含む。
【0025】
本開示はまた、局所投与用組成物を得るためのプロセスを提供し、組成物は、
a)式(I)の化合物またはその塩、
【0026】
【0027】
(式中、A、B、C、D、W、X、Y、およびZは、それぞれ独立して、HおよびOHから選択される)
ならびに
b)局所投与に適した少なくとも1種の賦形剤を含み、
プロセスは、
-0.5~50μmの範囲内のD50および5~100μmの範囲内のD90を有する微粉化された式(I)の化合物またはその塩を提供することと、
-微粉化された式(I)の化合物またはその塩、および局所投与に適した少なくとも1種の賦形剤を混和することとを含む。
【0028】
本発明の別の実施形態において、本発明のプロセスにより得ることができる組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】25、50、100μMの水(NC)、DMSO0.5%、ウロリチンA(UA)で96時間処理した後のEpiDerm(商標)組織で行われた皮膚細胞生存率アッセイの結果を示す図である。破線は生存率の90%に相当し、この閾値を下回ると化合物は刺激性と見なされる。
【
図2】50μMおよび100μMの水、2%のコウジ酸、DMSO0.2%、およびウロリチンAで14日間処理した後のMelanoDerm(商標)組織の上面図である。
【
図3】50μMおよび100μMの水、コウジ酸2%、DMSO0.2%、および ウロリチンAで4、7、11、14日間処理した後のMelanoDerm(商標)組織から測定されたL値を示す図である。統計は、二元配置ANOVA試験を使用して計算された。**P<0.01;***P<0.001は、陰性対照群に対する各群の多重比較に関するHolm-Sidakの事後検定に対応する。
【
図4】50μMおよび100μMの水、コウジ酸2%、DMSO0.2%、およびウロリチンAで14日間処理した後のMelanoDerm(商標)組織から測定されたメラニン含有量を示す図である。統計的有意性は、一元配置ANOVAを使用して行われた。***P<0.001は、陰性対照に対する各群の多重比較に関するDunnett事後検定に対応する。コウジ酸2%およびウロリチンA100μM群を比較する追加のスチューデントt検定のP値も報告されている。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示は、式(I)の化合物、すなわちウロリチンの局所投与を含む、皮膚状態を処置および/または予防する方法を提供する。ウロリチンは経口投与されているが、多くの状況において、化合物のバイオアベイラビリティが制限されている。また、ウロリチン化合物は非常に非水溶性であることがわかっている。本発明者らは、上記の特性にも関わらず、ウロリチンが局所投与に適しており、色素沈着過剰皮膚状態肝斑のインビトロアッセイにおいて予想外に良好な結果を示すことを発見した。
【0031】
式(I)の化合物およびその塩
ウロリチンは、エラジタンニンおよびエラグ酸に対する、ヒトを含む哺乳動物の腸内微生物叢の作用により生成される代謝産物である。エラジタンニンおよびエラグ酸は、ザクロ、ナッツおよびベリー等の食品に一般に見られる化合物である。エラジタンニンは、腸自体への吸収は最小限である。ウロリチンは、上記の代表的な構造(I)を有する化合物のクラスである。いくつかの特に一般的なウロリチンの構造は、構造(I)を参照して、以下の表1に記載される。
【0032】
【0033】
実際には、商業規模の製品の場合、ウロリチンを合成することが便利である。合成の経路は、例えば、WO2014/004902に記載されている。構造(I)による任意の構造のウロリチンは、本開示の方法に使用され得る。
【0034】
本開示の使用および方法の一態様において、適切な化合物は、A、C、DおよびZがHおよびOHから独立して選択され、B、W、XおよびYがすべてHである式(I)の化合物である。
【0035】
特に適切な化合物は、天然に存在するウロリチンである。したがって、Zは、好ましくはOHであり、W、XおよびYは、好ましくはすべてHである。W、XおよびYがすべてHであり、AおよびBが両方ともHであり、C、DおよびZがすべてOHである場合、化合物はウロリチンCである。W、X、YがすべてHであり、A、B、CおよびDがすべてHであり、ZがOHである場合、化合物はウロリチンBである。W、XおよびYがすべてHであり、A、BおよびCがすべてHであり、DおよびZが両方ともOHである場合、化合物はウロリチンAである。好ましくは、本開示の方法に使用されるウロリチンは、ウロリチンA、ウロリチンB、ウロリチンCまたはウロリチンDである。最も好ましくは、使用されるウロリチンは、ウロリチンAである。
【0036】
【0037】
本発明はまた、式(I)の化合物の適切な塩、例えば薬学的に許容される塩の使用も包含する。本発明による適切な塩は、有機または無機塩基を用いて形成されたものを含む。薬学的に許容される塩基塩には、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えばカリウムおよびナトリウムの塩、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウムおよびマグネシウムの塩、ならびに有機塩基との塩、例えばジシクロヘキシルアミン、N-メチル-D-グルコミン、モルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ-、ジ-もしくはトリ-低級アルキルアミン、例えばエチル-、tert-ブチル-、ジエチル-、ジイソプロピル-、トリエチル-、トリブチル-もしくはジメチル-プロピルアミン、またはモノ-、ジ-もしくはトリヒドロキシ低級アルキルアミン、例えばモノ-、ジ-もしくはトリエタノールアミンが含まれる。
【0038】
有機化学の当業者には、多くの有機化合物が、それらが反応するか、またはそれらから沈殿もしくは結晶化される溶媒と複合体を形成し得ることが理解されるであろう。これらの複合体は「溶媒和物」として知られる。本発明はまた、式(I)の化合物の溶媒和物、およびその塩の溶媒和物も包含することが、当業者には理解されるであろう。溶媒和物には、会合する溶媒が薬学的に許容されるものが含まれる。水和物(会合する溶媒が水である)は、溶媒和物の例である。
【0039】
組成物
本開示の方法は、式(I)の化合物またはその塩の局所投与を含む。したがって、本開示はまた、
a)式(I)の化合物またはその塩、
【0040】
【0041】
(式中、A、B、C、D、W、X、Y、およびZは、それぞれ独立して、HおよびOHから選択される)
ならびに
b)局所投与に適した少なくとも1種の賦形剤を含む、局所投与用組成物に関する。
【0042】
いくつかの好ましい実施形態において、組成物に使用される式(I)の化合物は、ウロリチンAである。
【0043】
いくつかの好ましい実施形態において、本開示の組成物を生成するために使用される式(I)の化合物またはその塩(例えばウロリチンA)は、微粉化されている。化合物の微粉化は良好な活性をもたらし、皮膚に容易に適用できる局所組成物をもたらす。
【0044】
微粉化された式(I)の化合物またはその塩が使用される場合、好ましくは、化合物または塩(例えばウロリチンA)は、100μm未満のD50サイズを有し、すなわち、質量で化合物または塩の50%が100μm未満の粒径を有する。より好ましくは、化合物または塩(例えばウロリチンA)は、75μm未満、例えば50μm未満、例えば25μm未満、例えば20μm未満、例えば10μm未満のD50サイズを有する。より好ましくは、化合物または塩(例えばウロリチンA)は、0.5~50μm、例えば0.5~20μm、例えば0.5~10μm、例えば1.0~10μm、例えば1.5~7.5μm、例えば2~7μm、例えば2.8~5.5μmの範囲内のD50を有する。いくつかの実施形態において、化合物または塩(例えばウロリチンA)は、約3.9μmのD50を有する。いくつかの実施形態において、化合物または塩(例えばウロリチンA)は、約7.1μmのD50を有する。好ましくは、化合物または塩(例えばウロリチンA)は、100μm未満のD90サイズを有する。より好ましくは、化合物またはその塩(例えばウロリチンA)は、75μm未満、例えば50μm未満、例えば25μm未満、例えば20μm未満、例えば15μm未満のD90サイズを有する。化合物または塩(例えばウロリチンA)は、好ましくは、5~100μm、例えば5~50μm、例えば5~20μm、例えば7.5~15μm、例えば8~20μm、例えば8.2~16.0μmの範囲内のD90を有する。いくつかの実施形態において、化合物または塩(例えばウロリチンA)は、約11.5μmのD90を有する。いくつかの実施形態において、化合物または塩(例えばウロリチンA)は、約13.5μmのD90を有する。好ましくは、化合物または塩(例えばウロリチンA)は、0.5~2μmの範囲内、または0.5~1.0μmの範囲内のD10を有する。好ましくは、化合物または塩(例えばウロリチンA)は、50μm未満のD10サイズを有する。より好ましくは、化合物またはその塩(例えばウロリチンA)は、25μm未満、例えば20μm未満、例えば15μm未満、例えば10μm未満、例えば5μm未満、例えば2μm未満のD10サイズを有する。化合物または塩(例えばウロリチンA)は、好ましくは、0.1~25μm、例えば0.1~10μm、例えば0.5~5μm、例えば0.5~2μm、例えば0.5~1.0μmの範囲内のD10を有する。いくつかの実施形態において、化合物または塩(例えばウロリチンA)は、約1.2μmのD10を有する。いくつかの実施形態において、化合物または塩(例えばウロリチンA)は、約0.7μmのD10を有する。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物またはその塩(例えばウロリチンA)は、0.5~50μmの範囲内のD50および5~100μmの範囲内のD90を有する。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物またはその塩(例えばウロリチンA)は、8~20μmの範囲内のD90、2~7μmの範囲内のD50および0.5~2μmの範囲内のD10を有する。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物またはその塩(例えばウロリチンA)は、8.2~16.0μmの範囲内のD90、2.8~5.5μmの範囲内のD50および0.5~1.0μmの範囲内のD10を有する。微粉化は、当技術分野で確立された方法によって達成することができ、例えば、圧縮力ミリング、ハンマーミリング、万能もしくはピンミリング、またはジェットミリング(例えば、スパイラルジェットミリングもしくは流動床ジェットミリング)を使用することができる。ジェットミリングが特に適している。粒子サイズを決定する方法は当技術分野において知られており、例えば、Beckman Counter L3 13 320またはMalvern Mastersizer2000等の機器を使用することができる。いくつかの実施形態において、粒子サイズ(例えばD10、D50、および/またはD90値)は、Malvern Mastersizer2000を使用して決定され得る。
【0045】
代替の実施形態において、化合物または塩(例えばウロリチンA)は、75μm以下、例えば50μm以下、例えば25μm以下、例えば20μm以下、例えば10μm以下のD50サイズを有する。
【0046】
代替の実施形態において、化合物または塩(例えばウロリチンA)は、75μm以下、例えば50μm以下、例えば30μm以下、例えば25μm以下、例えば20μm以下、例えば15μm以下のD90サイズを有する。
【0047】
代替の実施形態において、化合物または塩(例えばウロリチンA)は、25μm以下、例えば20μm以下、例えば15μm以下、例えば10μm以下、例えば5μm以下、例えば2μm以下のD10サイズを有する。
【0048】
したがって、いくつかの実施形態において、組成物は、
-例えば0.5~50μmの範囲内のD50、および5~100μmの範囲内のD90を有する、微粉化された式(I)の化合物またはその塩(例えばウロリチンA)を提供すること、ならびに
-微粉化された式(I)の化合物またはその塩、および局所投与に適した少なくとも1種の賦形剤を混和することとを含むプロセスにより得ることができる。
【0049】
したがって、局所投与用の組成物を得るためのプロセスもまた提供され、組成物は、
a)式(I)の化合物またはその塩、
【0050】
【0051】
(式中、A、B、C、D、W、X、Y、およびZは、それぞれ独立して、HおよびOHから選択される)
ならびに
b)局所投与に適した少なくとも1種の賦形剤を含み、
プロセスは、
式(I)の化合物またはその塩を微粉化することと、
-微粉化された式(I)の化合物またはその塩、および局所投与に適した少なくとも1種の賦形剤を混和することとを含む。いくつかの好ましい実施形態において、化合物は、ウロリチンAである。
【0052】
したがって、局所投与用の組成物を得るためのプロセスもまた提供され、組成物は、
a)式(I)の化合物またはその塩、
【0053】
【0054】
(式中、A、B、C、D、W、X、Y、およびZは、それぞれ独立して、HおよびOHから選択される)
ならびに
b)局所投与に適した少なくとも1種の賦形剤を含み、
プロセスは、
-式(I)の化合物またはその塩を微粉化し、それにより0.5~50μmの範囲内のD50、および5~100μmの範囲内のD90を有する微粉化された式(I)の化合物またはその塩を生成すること、ならびに
-微粉化された式(I)の化合物またはその塩、および局所投与に適した少なくとも1種の賦形剤を混和することを含む。いくつかの好ましい実施形態において、化合物は、ウロリチンAである。
【0055】
上述のように、式(I)の化合物は、エラジタンニンおよびエラグ酸に対する哺乳類の腸内微生物叢の作用により生成される代謝産物であり、ザクロ、ナッツおよびベリー等の食品中に一般的に見られるポリフェノール化合物である。典型的には、本開示の組成物、方法および使用に使用される式(I)の化合物またはその塩は、精製された形態であり、最も一般的には化学合成および精製により得られる。したがって、いくつかの実施形態において、組成物を生成するために使用される式(I)の化合物またはその塩は、少なくとも90重量%の純度、少なくとも95重量%の純度、少なくとも97重量%の純度、少なくとも98重量%の純度、少なくとも99重量%の純度、または少なくとも99.5%である。いくつかの実施形態において、組成物中に存在するポリフェノールの10重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、または1重量%未満が、式(I)の化合物またはその塩以外である。いくつかの実施形態において、組成物は、式(I)の化合物またはその塩以外のポリフェノールを実質的に含まない。
【0056】
本開示の組成物は、局所適用用であり、局所適用に適した、例えば活性化合物の作用部位への送達を促進し、活性化合物と適合し、良好な化学的および物理的安定性を提供し、また安全で刺激性がない、または刺激性が低い賦形剤を含む。最も一般的には、組成物は、半固体または液体の組成物である。いくつかの実施形態において、組成物は、液体である。他の実施形態において、組成物は、半固体である。いくつかの実施形態において、組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、ゲル、固体またはリポソーム製剤の形態である。
【0057】
典型的には、組成物(例えばクリーム)は、例えば、組成物の重量の50%~99.9995%、または60%~99.9995%、または70%~99.9995%、または80~%~99.9995%、または90%~99.9995%、または95%~99.9995%、50%~99.995%、または60%~99.995%、または70%~99.995%、または80%~99.995%、または90%~99.995%、または95%~99.995%、または70%~99.99%、または80%~99.99%、または90%~99.99%、または95%~99.99%または70%~99.9%、または80%~99.9%、または90%~99.9%、または95%~99.9%、または98%~99.9%、または80%~99%、または90%~99%、または95%~99%、または98%~99%を構成し得る局所的に許容される担体またはビヒクルを含有する。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物またはその塩は、0.0005重量%~50重量%、0.0005重量%~40重量%、0.0005重量%~30重量%、0.0005重量%~20重量%、0.0005重量%~10重量%、0.0005重量%~1重量%、0.005重量%~50重量%、0.005重量%~40重量%、0.005重量%~30重量%、0.005重量%~20重量%、0.005重量%~10重量%、0.005重量%~1重量%、0.01重量%~30重量%、0.01重量%~20重量%、0.01重量%~10重量%、0.01重量%~5重量%、0.1重量%~30重量%、0.1重量%~20重量%、0.1重量%~10重量%、0.1重量%~5重量%、0.1重量%~2重量%、1重量%~20重量%、1重量%~10重量%、1重量%~5重量%、または1重量%~2重量%の範囲内の量で組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物またはその塩は、1μM~2.5M、1μM~1M、1μM~100mM、1μM~10mM、1μM~100μM、10μM~2.5M、10μM~1M、10μM~100mM、10μM~10mM、10μM~5mM、10μM~1mM、10μM~500μM、10μM~250μM、25μM~2.5M、25μM~1M、25μM~100mM、25μM~10mM、25μM~5mM、25μM~1mM、25μM~500μM、25μM~250μM、100μM~2.5M、100μM~1M、100μM~100mM、100μM~10mM、100μM~1mM、500μM~2.5M、500μM~1M、500μM~100mM、500μM~10mM、または500μM~1mMの範囲の濃度で組成物中に存在する。例えば、異なる濃度の式(I)の化合物またはその塩を含有する組成物が使用されてもよい。例えば、美容用途の組成物、または重度の症状が少ない患者向けの市販の組成物は、より低濃度の活性薬剤を含有し得、処方箋が必要な組成物、例えば重度の症状の処置を意図するものは、より高濃度の活性剤を含有し得る。
【0058】
さらなる実施形態において、式(I)の化合物またはその塩は、0.01μM~100mM、0.01μM~10mM、0.01μM~1mM、0.01μM~100μM、0.1μM~500μM、0.1μM~100μM、または1μM~50μMの範囲内の濃度で組成物中に存在する。
【0059】
一実施形態において、本発明の局所組成物(クリーム等)は、0.0001%~5%、例えば0.0001%~1%、例えば0.0001%~0.1%、例えば0.0001%~0.01%の式(I)の化合物またはその塩を含む。さらなる実施形態において、本発明の局所組成物(クリーム等)は、0.001%~0.5%、例えば0.001%~0.1%、例えば0.01%~0.1%の式(I)の化合物またはその塩を含む。さらなる実施形態において、本発明の局所組成物(クリーム等)は、0.005%~0.05%、例えば0.001%~0.01%の式(I)の化合物またはその塩を含む。局所組成物の成分の例としては、油、グリセリド(トリ、ジおよび/またはモノグリセリドを含む)、有機溶媒(アルコール等)、水、ワックス、グリース、界面活性剤、皮膚軟化剤、保湿剤、スキンコンディショニング剤、増粘剤、乳化剤、ゲル化剤、発泡剤、酸化防止剤、緩衝剤、キレート剤、乳白剤、香味剤、着色剤、香料または香水、追加の治療活性剤、ならびに追加の美容活性剤が挙げられる。上記の混合物が使用されてもよい。
【0060】
いくつかの実施形態において、組成物は、油および/または脂質成分を含む。局所適用用の製剤に使用され得る油の例は当技術分野で周知であり、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、大豆油、鉱油、ゴマ油、および月見草油を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、組成物の最大90重量%、最大80重量%、最大70重量%、最大60重量%、最大50重量%、最大40重量%、最大30重量%、最大20重量%、最大10重量%、最大5重量%、1重量%~50重量%、1重量%~40重量%、1重量%~30重量%、1重量%~20重量%、1重量%~10重量%、5重量%~50重量%、5重量%~40重量%、5重量%~30重量%、5重量%~20重量%、5重量%~10重量%、10重量%~50重量%、10重量%~40重量%、10重量%~30重量%の量の油を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、組成物は、有機溶媒を含む。有機溶媒の例としては、アルコール溶媒(例えばエタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール)、ピロリドン(例えばN-メチルピロリジノン)およびDMSOが挙げられる。いくつかの実施形態において、組成物は、組成物の最大90重量%、最大80重量%、最大70重量%、最大60重量%、最大50重量%、最大40重量%、最大30重量%、最大20重量%、最大10重量%、最大5重量%、最大3重量%、最大2重量%、最大1重量%、0.1重量%~20重量%、0.1重量%~15重量%、0.1重量%~10重量%、0.1重量%~5重量%、0.1重量%~3重量%、0.1重量%~2重量%、0.1重量%~1重量%、1重量%~50重量%、1重量%~40重量%、1重量%~30重量%、1重量%~20重量%、1重量%~10重量%、5重量%~50重量%、5重量%~40重量%、5重量%~30重量%、5重量%~20重量%、5重量%~10重量%、10重量%~50重量%、10重量%~40重量%、10重量%~30重量%、10重量%~20重量%の量の有機溶媒を含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、組成物は中鎖トリグリセリドを含む。中鎖トリグリセリドは、式CH2(OR1)-CH(OR2)-CH2(OR3)の化合物であり、式中、R2およびR3は、一般に式-C(=O)(CH2)nCH3の中鎖脂肪酸基であり、式中、nは、4~10、例えば6~8の範囲内である。中鎖脂肪酸は、6~12個の炭素原子の脂肪族末端を有する脂肪酸である。脂肪族末端は、主に飽和している。特定の中鎖脂肪酸は、カプロン酸(ヘキサン酸、C6:0)、カプリル酸(オクタン酸、C8:0)、カプリン酸(デカン酸、C10:0)およびラウリン酸(ドデカン酸、C12:0)を含む。ミリスチン酸(テトラデカン酸、C14:0)もまた少量存在し得る。最も一般的に使用される中鎖トリグリセリドは、一般にカプリル酸およびカプリン酸のトリグリセリドの混合物を有し、95%以上の飽和脂肪酸を含有する。本発明の組成物中の中鎖トリグリセリド成分は、均質な単一の中鎖トリグリエリド化合物型からなってもよくより一般的には、本発明の組成物中の中鎖トリグリセリド成分は、2つ以上の異なる中鎖トリグリエリド化合物の混合物である。
【0063】
欧州薬局方は、中鎖トリグリセリドを、Cocos nucifera L.(ココナッツ)の胚乳の硬く乾燥した画分またはElaeis guineenis Jacq.(アフリカのアブラヤシ)の乾燥胚乳から抽出された固定油として説明している。欧州薬局方およびUSPNFの両方において、ある特定の脂肪酸の存在を必要とする中鎖トリグリセリドの以下のような仕様がある。カプロン酸(C6)≦2.0%;カプリル酸(C8)50.0~80.0%;カプリン酸(C10)20.0~50.0%;ラウリン酸(C12)≦3.0%;およびミリスチン酸(C14)≦1%。
【0064】
特に、本発明の組成物に使用するための中鎖トリグリセリドは、以下の割合で存在するトリグリセリドと脂肪酸鎖との混合物を含む:C6≦5%;C8 50~70%;C10 30~50%;およびC12≦12%、例えばC6≦0.5%;C8 55~65%;C10 35~45%;およびC12≦1.5%。
【0065】
本発明の組成物に使用するための中鎖トリグリセリドは、任意の適切な供給源から得ることができる。いくつかの実施形態において、組成物は、組成物の最大90重量%、最大80重量%、最大70重量%、最大60重量%、最大50重量%、最大40重量%、最大30重量%、最大20重量%、最大10重量%、最大5重量%、1重量%~50重量%、1重量%~40重量%、1重量%~30重量%、1重量%~20重量%、1重量%~10重量%、5重量%~50重量%、5重量%~40重量%、5重量%~30重量%、5重量%~20重量%、5重量%~10重量%、10重量%~50重量%、10重量%~40重量%、10重量%~30重量%、10重量%~30重量%の量の中鎖トリグリセリドを含む。
【0066】
いくつかの実施形態において、組成物は、皮膚軟化剤を含み、皮膚軟化剤は、乾燥の予防および/または緩和に使用される材料である。皮膚軟化剤の例としては、植物油、鉱油、シリコーン油、脂肪酸エステル、および1-ヘキサデカノール等のアルコールが挙げられる。
【0067】
いくつかの実施形態において、組成物は、乳化剤を含む。乳化剤の例には、PPG-1-PEG-9ラウリルグリコールエーテル(商品名:Eumulgin L)、PEG-60硬化ヒマシ油(商品名:Cremophor CO60)、セチルアルコールおよびステアリン酸グリセリルおよびPEG-75ステアレートおよびセテス-20およびステアレス-20(商品名:Emulium Delta)、セテアリルアルコール(商品名:Nafoi1618)、ヒドロキシエチルアクリレート/ナトリウムアクリロイルジメチルタウレートコポリマーおよび水およびスクアランおよびポリソルベート60およびソルビタンイソステアレート(商品名:Simulgel NS)が含まれる。
【0068】
いくつかの実施形態において、組成物は、増粘剤を含む。増粘剤の例には、架橋アクリレート(例えばCarbopol982)、疎水性変性アクリレート(例えばCarbopol1382)、セルロース誘導体(ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等)および天然ゴム(例えばグアー、キサンタン、スクレロチウム、カラギーナン、ペクチン)が含まれる。使用される場合、典型的には、増粘剤は、組成物の最大5重量%、または最大1重量%の量で使用される。
【0069】
金属キレート剤または金属イオン封鎖剤の例は、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)の塩です。
【0070】
界面活性剤が使用される場合、典型的には、組成物の最大40重量%、または最大30重量%、または最大20重量%、または最大10重量%の量で使用される。
【0071】
いくつかの実施形態において、組成物は、式(I)の化合物またはその塩に加えて、さらなる活性剤を含む。例えば、組成物は、メリスマ等の皮膚状態を処置または予防するのに有用な追加の活性剤、例えばハイドロキノンまたはコウジ酸等を含有してもよい。
【0072】
適切な種類の組成物の例には、クリーム、ペースト、軟膏、溶液、ローション、フォーム、ムース、ゲル、スティック、スプレーが含まれる。適切な組成物のさらなる例には、クリーム、分散液、エマルジョン、ゲル、軟膏、ローション、ミルク、ムース、スプレー、またはトニックが含まれる。
【0073】
いくつかの実施形態において、組成物は、クリームまたはローション、例えばスキンクリームの形態である。クリームは、通常、水中油型(o/w)または油中水型(w/o)エマルジョンとして分類される、油および水のエマルジョンの形態をとる。いくつかの実施形態において、組成物は、水中油型エマルジョンであるクリームである。いくつかの実施形態において、組成物は、5%~50%の油(例えば皮膚軟化剤)、および45%~85%の水を含むクリームである。局所クリームは通常、乳化剤および/または増粘剤をさらに含有する。
【0074】
ローションは、典型的には、液体担体に懸濁または溶解した活性成分を含有する液体製剤を指す。ローションは、例えば、水性および/または有機溶媒(例えばアルコール)ベースの製剤であってもよい。
【0075】
いくつかの実施形態において、組成物は、軟膏の形態である。軟膏は通常、炭化水素(ワセリン、鉱油、パラフィン、合成炭化水素等)の半固体調製物であり、多くの場合、粘性および/またはグリース状である。多くの場合、軟膏は、水をほとんどまたはまったく含有しなくてもよい。いくつかの実施形態において、軟膏は、炭化水素/油基剤、皮膚軟化剤(例えば約2重量%~10重量%)、および増粘剤(例えば約1重量%~2重量%)を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、ゲルの形態である。ゲルは、典型的には、ゲル化剤(天然ゴム、アクリレートポリマー/コポリマーまたはセルロース誘導体等)および適切な液体成分(例えば、アルコール等の有機溶媒)を含有する。いくつかの実施形態において、組成物は、ペーストの形態である。ペーストは、典型的には、粉末および液体または半固体担体の混合物、例えば軟膏である。
【0076】
本開示は、例えば、環境によって引き起こされる損傷からの皮膚の保護、例えば、日光/UV放射によって引き起こされる損傷から保護するための栄養剤としての式(I)の化合物の使用に関する。したがって、いくつかの実施形態において、式(I)の化合物を含む局所組成物は、日焼け止め組成物、例えばクリーム、ローションまたはスプレーである。そのような組成物は、典型的には、式(I)の化合物またはその塩に加えて、UV遮断剤等の物理的および/または化学的日焼け止めを含有する。いくつかの実施形態において、日焼け止め組成物は、例えば二酸化チタンまたは酸化亜鉛等の物理的日焼け止めを含む。いくつかの実施形態において、日焼け止め組成物は、例えば、オキシベンゾン、アボベンゾン、オクチサレート、オクトクリレン、ホモサレートおよび/またはオクチノキサート等の化学的日焼け止めを含む。
【0077】
UV遮断剤は、290ナノメートル(nm)~400nmの1つ以上の波長でUV領域の光を吸収する有機化合物であってもよい。例えば、UV遮断剤は、290nm~400nmの範囲内の少なくとも1つの波長に対して、少なくとも10,000mol-1 Lcm-1(例えば、少なくとも25,000mol-1 Lcm-1、少なくとも50,000mol-1 Lcm-1、少なくとも75,000mol-1 Lcm-1、または少なくとも100,000mol-1 Lcm-1)のモル吸光係数を示してもよい。
【0078】
いくつかの実施形態において、UV遮断剤は、290nm~320nmの1つ以上の波長でUV-B領域の光を吸収する有機化合物(すなわち、UV-B遮断剤)であってもよい。例えば、UV遮断剤は、290nm~320nmの範囲内の少なくとも1つの波長に対して、少なくとも10,000mol-1 Lcm-1(例えば、少なくとも25,000mol-1 Lcm-1、少なくとも50,000mol-1 Lcm-1、少なくとも75,000mol-1 Lcm-1、または少なくとも100,000mol-1 Lcm-1)のモル吸光係数を示してもよい。場合によっては、UV遮断剤は、290nm~320nmの範囲内のすべての波長で少なくとも10,000mol-1 Lcm-1のモル吸光係数を示してもよい。
【0079】
いくつかの実施形態において、UV遮断剤は、320nm~400nmの1つ以上の波長でUV-A領域の光を吸収する有機化合物(すなわち、UV-A遮断剤)であってもよい。例えば、UV遮断剤は、320nm~400nmの範囲内の少なくとも1つの波長に対して、少なくとも10,000mol-1 Lcm-1(例えば、少なくとも25,000mol-1 Lcm-1、少なくとも50,000mol-1 Lcm-1、少なくとも75,000mol-1 Lcm-1、または少なくとも100,000mol-1 Lcm-1)のモル吸光係数を示してもよい。場合によっては、UV遮断剤は、320nm~400nmの範囲内のすべての波長で少なくとも10,000mol-1 Lcm-1のモル吸光係数を示してもよい。
【0080】
適切なUV遮断剤の例には、例えば、p-アミノ安息香酸、パジエートO、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、シノキセート、ジキソイベンゾン、オキシベンゾン、ホモサレート、アントラニル酸メンチル、オクトクリレン、メトキシケイ皮酸オクチル、サリチル酸オクチル、スリソベンゾン、サリチル酸トロラミン、エカムスル、4-メチルベンジリデンカンファー、ビスオクトリゾール、ベモトリジノール、ビスジスリゾール二ナトリウム、トリス-ビフェニルトリアジン、ドロメトリゾール、トリシロキサン、ベンゾフェノン-9、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、イスコトリジノール、ポリシリコーン-15、アミロキサート、およびそれらの組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、UV遮断剤は、p-アミノ安息香酸、パジエートO、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、シノキセート、ジキソイベンゾン、オキシベンゾン、ホモサレート、メンチルアントラニレート、オクトクリレン、オクチル15メトキシシンナメート、オクチルサリチレート、スリソベンゾン、サリチル酸トロラミン、エカムスル、またはその組み合わせであってもよい。ある特定の実施形態において、UV遮断剤は、アボベンゾン、オキシベンゾン、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0081】
日焼け止め剤は、組成物の総重量を基準として0.5重量%~10重量%の量で組成物中に存在し得る。組成物は、国際標準ISO24444:2010(E)を使用して測定した場合、少なくとも15(例えば少なくとも30)のSPFを示すように配合され得る。
【0082】
本開示はまた、例えば、美容的な皮膚の漂白および/または皮膚の明色化に関する。したがって、いくつかの実施形態において、式(I)の化合物を含む局所組成物は、メイクアップ組成物、例えばファンデーション組成物である。
【0083】
驚くべきことに、ウロリチンAは、親油性賦形剤、例えば油および/または中鎖トリグリセリドを含む局所クリーム組成物に特に可溶性であることが見出された。そのような組成物は、混和後に、固体ウロリチンAが認められない均質な外観を有し、皮膚上で滑らかな感触を有する。微粉化されたウロリチンAがスキンクリームと混合されると、色が濃い滑らかな混合物を形成したが、これはウロリチンがクリームの成分に溶解したか、またはクリームマトリックス中に懸濁したことを示している。
【0084】
したがって、いくつかの実施形態において、局所組成物は、局所投与に適した有機溶媒を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、油および/または脂質成分を含む。
【0085】
いくつかの実施形態において、局所組成物は、モノグリセリド、ジグリセリド、および/またはトリグリセリドを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、中鎖トリグリセリドを含む。
【0086】
いくつかの実施形態において、組成物の含水量は低く、例えば、組成物は、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、2重量%未満、または1重量%未満の水を含有してもよい。いくつかの実施形態において、組成物は、実質的に水を含まない。しかしながら、いくつかの他の実施形態において、例えば組成物が、例えば乳化剤と共に水および油または水および有機溶媒の混合物を含有する場合、組成物はかなりの割合の水を含有してもよい。
【0087】
本開示は、局所投与用の組成物に関する。式(I)の化合物は、以前は経口投与されてきた。活性物質の局所製剤に適したいくつかの賦形剤は経口投与に不適切であり、本開示は経口投与に不適切な1種または複数種の賦形剤を含む製剤を含むことが理解されよう。
【0088】
いくつかの実施形態において、組成物は、皮膚へのおよび/または皮膚を通しての活性成分の送達を補助するために、皮膚浸透促進剤を含む。皮膚浸透促進剤の例には、スルホキシド(DMSO等)、ピロリドン、テルペン、脂肪酸、アルコール、グリコール、グリコールエーテル、およびグリセリドが含まれる。
【0089】
いくつかの実施形態において、組成物(例えばクリーム)は、組成物(例えば、油および/または中鎖トリグリセリド等の親油性成分を含む局所クリーム組成物)の1ml分量中に最大100mgのレベルで、したがって最大100mg毎mlで式(I)の化合物またはその塩を含む。したがって、組成物は、例えば、式(I)の化合物またはその塩(例えばウロリチンA)を、0.001~100mg/ml、0.01~100mg/ml、0.05~100mg/ml、0.1~100mg/ml、5~100mg/ml、10~100mg/ml、0.01~50mg/ml、0.05~50mg/ml、0.1~50mg/ml、0.5~50mg/ml、1~50mg/ml、5~50mg/ml、0.001~0.1mg/ml、0.01~10mg/ml、0.05~10mg/ml、0.1~10mg/ml、0.5~10mg/ml、1~10mg/ml、0.01~5mg/ml、0.05~5mg/ml、0.1~5mg/ml、0.5~5mg/ml、1~5mg/ml、0.01~1mg/ml、0.05~1mg/ml、0.1~1mg/ml、0.5~1mg/ml、0.01~0.5mg/ml、または0.05~0.5mg/ml(組成物)の範囲内の量で含有してもよい。
【0090】
本発明の局所組成物の例には以下が含まれる。
【0091】
【0092】
使用
式(I)の化合物は、不十分なミトコンドリア機能に関連するさまざまな状態の処置薬として提案されている。ミトコンドリアは、細胞の生、すなわち呼吸鎖でエネルギーを生成すること、および死、すなわちアポトーシスを開始することの両方を駆動し得る中心的な細胞小器官である。より最近では、機能不全のミトコンドリアは、自食作用、つまりミトファジーと呼ばれているプロセスによる排除に特異的に標的化され得ることが示された。ミトファジーの増加(機能不全ミトコンドリアの除去)は、ミトコンドリアの若返りおよびミトコンドリア機能の改善につながることが理解されている。ウロリチンAは、げっ歯類のミトファジーを誘発し、寿命を延ばすことが判明している。Ryu et al,Nature Medicine,2016,22,p879-888を参照されたい。
【0093】
経口投与に焦点を当てた以前のアプローチとは異なり、皮膚試料と接触した場合、色素沈着過剰皮膚状態肝斑のインビトロアッセイにおいて、ウロリチンAは、予想外にも良好な結果を示すことが判明している。試験されたより高濃度、例えば100μMにおいて、ウロリチンは、皮膚の明色化効果をより速くもたらし、治療および美容的な皮膚の明色化に現在使用されている薬剤である2%コウジ酸の使用よりもメラニン含有量の大幅な減少をもたらした。
【0094】
したがって、本開示は、有効量の式(I)の化合物またはその塩(例えばウロリチンA)を対象に局所投与することを含む、対象の皮膚の状態、疾患または障害の予防および/または処置方法を提供する。本開示はまた、対象の皮膚の状態、疾患または障害を予防および/または処置する方法であって、a)式(I)の化合物またはその塩(例えばウロリチンA)、およびb)局所投与に適した少なくとも1種の賦形剤を含む組成物を対象に局所投与することを含む方法を含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、方法は、コウジ酸等の現在の治療法を用いた投与よりも皮膚色素沈着に対してより速い効果をもたらす。
【0096】
いくつかの実施形態において、皮膚の状態、疾患または障害は、色素沈着過剰に関連する皮膚の状態、疾患または障害である。いくつかの実施形態において、皮膚の状態、疾患または障害は、不十分なミトコンドリア活性に関連する皮膚の状態、疾患または障害である。
【0097】
いくつかの実施形態において、皮膚の疾患、障害または状態は、肝斑、しみ、妊娠黒皮症、色素沈着過剰、皮膚老化、老人性色素斑、黒子、皮膚の炎症、皮膚刺激、皮膚感染、いぼ、乾癬、ならびに環境および/または治療によって引き起こされる損傷からの皮膚の保護からなる群から選択される。皮膚の疾患、障害、または状態はまた、メラノーシス、皮膚炎、黒線、ならびにアディソンおよびクッシング症候群等の内分泌疾患から選択される。
【0098】
いくつかの実施形態において、皮膚の疾患、障害または状態は、肝斑である。肝斑は、しみおよび妊娠黒皮症とも呼ばれる。肝斑は、20~50歳の範囲の成人、特に女性によく見られる皮膚状態であり、主に顔に茶色、黄褐色または灰色の色素沈着が発生する。肝斑は、夏季にしばしば目立つようになり、冬季には目立たなくなる。肝斑を有する可能性およびその重篤度に寄与する要因はいくつかあり、日光および/または紫外線への曝露、ストレス、妊娠、甲状腺機能低下症、およびある特定の活性成分、特に経口避妊薬等のホルモン活性成分の投与を含む。寄与し得る他の要因には、ある特定の化粧品が含まれる。したがって、いくつかの実施形態において、皮膚状態、疾患または障害は、ストレス関連肝斑、妊娠関連肝斑、甲状腺機能低下症関連肝斑、有効成分の投与に関連する肝斑、日光および/または紫外線への曝露に関連する肝斑、ならびに化学物質への曝露に関連する肝斑からなる群から選択される肝斑である。
【0099】
皮膚明色化剤および皮膚暗色化剤の特定を決定付ける試験は、当技術分野で知られており、例えばUS2008/0249029およびUS2012/0128613を参照されたい。例えば、US2012/0128613に記載されているように、これらの種類の研究を実施するのに有用な表皮の同等システムの1つは、MatTek(Ashland、MA)から市販されているMelanoDerm(商標)システムである。このシステムは、正常なヒト由来表皮ケラチノサイトと共にヒトの正常なメラニン細胞を含み、これらは培養されてヒト表皮の多層の高度に分化したモデルを形成している。
【0100】
本開示の化合物および組成物は、色素沈着過剰、例えば皮膚の加齢性色素沈着過剰、または炎症後色素沈着過剰に関連する他の状態、疾患または障害の処置および/または予防にも用途が見出される。したがって、いくつかの実施形態において、皮膚の疾患、障害または状態は、皮膚の老化、老人性色素斑または黒ずみである。いくつかの実施形態において、方法は、環境によって引き起こされる損傷から、例えば日光/紫外線によって引き起こされる損傷から皮膚を保護するためのものである。いくつかの実施形態において、方法は、がん等の状態の医学的治療中を含む、放射線、例えばUV、ベータまたはガンマ放射線によって引き起こされる損傷から皮膚を保護するためのものである。
【0101】
本開示の化合物は、ミトファジーおよび/または自食作用の増強が有益な効果をもたらす皮膚状態の処置および/または予防にも用途が見出される。いくつかの実施形態において、方法は、皮膚の炎症、皮膚刺激、皮膚感染、いぼおよび乾癬からなる群から選択される疾患、障害または状態を処置および/または予防するためのものである。
【0102】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、医学的状態の処置および/または予防のためのものであり、すなわち、対象は病状または医学的状態または障害を有する個体である。本明細書において言及されるように、皮膚の疾患、状態または障害を有する対象は、医師により皮膚の疾患、障害または状態を有すると診断された症状を有する対象、または医師に診察された場合に皮膚の疾患、障害、または状態を有すると診断されるであろう対象である。
【0103】
しかしながら、他の実施形態において、式(I)の化合物またはその塩は、特定の疾患または障害に罹患していない対象に投与されることが想定される。例えば、対象は、健康な個体、すなわち、皮膚障害、疾患または状態を有さない個体であり、例えばより滑らかなおよび/またはより均一な皮膚の色合いまたは色を提供する等の美容上の理由のために、式(I)の化合物またはその塩を局所的に投与して皮膚を漂白するか、または皮膚の色および/または色合いを明色化することを望む個体である。したがって、いくつかの実施形態において、対象は健康であり、および/または式(I)の化合物またはその塩を局所投与する方法は、美容的な方法である。本明細書において言及されるように、健康な対象は、医師に診察された場合、皮膚の疾患、障害または状態を有すると診断されるであろう症状を有さない対象である。
【0104】
服用される式(I)の化合物もしくはその塩、または化合物を含有する組成物の有効量は、対象の投与方法、年齢、体重、および一般的な健康状態に応じて変動する。対象の病状、年齢、体重等の要因が重要となる可能性があり、最適な反応を提供するために投与計画を調整することができる。
【0105】
対象は、本発明による式(I)の化合物の局所投与から利益を得る任意の生物である。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物、例えばヒト以外の哺乳動物、例えばネコ、イヌ、ヤギ、ウマおよびウシであるが、より好ましくは、対象はヒトである。いくつかの実施形態において、対象は男性である。いくつかの実施形態において、対象は女性である。ある特定の実施形態において、対象は子供であってもよいが、他のより好ましい実施形態において、対象は成人である。いくつかの実施形態において、対象は、少なくとも20歳、少なくとも25歳、少なくとも30歳、少なくとも35歳、少なくとも40歳、少なくとも45歳、少なくとも50歳、少なくとも55歳、少なくとも60歳、少なくとも65歳、少なくとも70歳または少なくとも75歳であってもよい。他の実施形態において、対象は、例えば、18歳~50歳、18歳~40歳、または18歳~30歳の範囲であってもよい。
【0106】
典型的には、化合物を含有する組成物は、皮膚の患部に適用され、例えば、それは表面上に広げられ、および/または擦り込まれ得る。処置は、好ましくは一連の投与による。例えば、化合物の局所投与は、ある期間にわたって1日1回、2回、もしく3回、または必要な数だけ実施することができる。化合物の有効用量は、特定の処置の過程で増加または減少する可能性があることも理解されよう。上述のように、100μM濃度のウロリチンAを投与すると、光学分光光度法で決定される皮膚明色化効果が速くなり、2%コウジ酸よりもメラニン含有量が大幅に減少した。したがって、いくつかの実施形態において、方法は、コウジ酸等の現在の治療よりも少ない頻度の投薬を含む。例えば、いくつかの実施形態において、塗布は、2、3、もしくは4日ごとに1回、または例えば週に1回だけ必要となり得る。
【0107】
例えば、対象への式(I)の化合物またはその塩(例えばウロリチンA)の毎日の投与が行われる場合、量は、例えば1日当たり0.1mg~5g、例えば1日当たり1mg~5g、例えば1日当たり10mg~5g、例えば1日当たり20mg~2500mg、例えば1日当たり50mg~1500mg、例えば1日当たり100mg~1,500mg、例えば1日当たり150mg~1,500mg、例えば1日当たり200mg~1,500mg、例えば1日当たり250mg~1500mg、例えば1日当たり50mg~1000mg、例えば1日当たり250mg~1000mg、例えば1日当たり10mg~1000mg、例えば1日当たり10mg~750mg、例えば1日当たり20mg~500mg、例えば1日当たり50mg~500mg、例えば1日当たり50mg~250mgの範囲内であってもよい。いくつかの実施形態において、用量は250mg/日であり、別の実施形態において、用量は500mg/日であり、さらなる実施形態において、用量は750mg/日であり、さらなる実施形態において、用量は1000mg/日である。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物またはその塩(例えばウロリチンA)の用量は、例えば、0.01~100mg/kg/日の範囲内であってもよい。例えば、ウロリチンの用量は、0.1~100、0.2~100、0.2~50、0.2~40、0.2~25、0.2~10、0.2~7.5、0.2~5、0.25~100、0.25~25、0.25~25、0.25~10、0.25~7.5、0.25~5、0.5~50、0.5~40、0.5~30、0.5~25、0.5~20、0.5~15、0.5~10、0.5~7.5、0.5~5、0.75~50、0.75~25、0.75~20、0.75~15、0.75~10、0.75~7.5、0.75~5、1.0~50、1~40、1~25、1~20、1~15、1~10、1~7.5、1~5、2~50、2~25、2~20、2~15、2~10、2~7.5、または2~5mg/kg/日の範囲内であってもよい。
【0108】
式(I)の化合物またはその塩を含有する組成物は、典型的には、皮膚の患部に投与される。したがって、いくつかの実施形態において、各適用において(例えば毎日)、化合物は、処置される皮膚の0.001~100mg/cm2、例えば処置される皮膚表面の0.005~100、0.01~100、0.05~100、0.1~100、0.5~100、1~100、5~100、10~100、0.001~50、0.005~50、0.01~50、0.05~50、0.1~50、0.5~50、1~50、5~50、10~50、0.001~10、0.005~10、0.01~10、0.05~10、0.1~10、0.5~10、1~10、0.001~5、0.005~5、0.01~5、0.05~5、0.1~5、0.5~5、1~5、0.001~1、0.005~1、0.01~1、0.05~1、または0.1~1mg/cm2の範囲内の量で局所投与される。
【0109】
本開示は、式(I)の化合物またはその塩の投与を含む方法、医薬として使用するための式(I)の化合物またはその塩、対象の皮膚の状態、疾患または障害を処置するための医薬の製造のための式(I)の化合物またはその塩の使用、および式(I)の化合物またはその塩を含む組成物を提供する。上記の議論、およびそこに記載されている実施形態(例えば、式(I)の化合物の性質、投与計画、用途、および組成物に関する)は、主に本開示の方法および組成物を議論する文脈でなされた。この議論は、医薬として使用するための式(I)の化合物またはその塩、および対象の状態、疾患または障害を処置するための医薬の製造のための式(I)の化合物またはその塩の使用に関する態様を含む、本開示のすべての態様に等しく当てはまる。
【実施例0110】
以下の実施例は本発明を図示する。
実施例1:ウロリチンAの調製
ウロリチンA(4)は、2-ブロモ-5-メトキシ安息香酸1およびレゾルシノール2から開始する2つのステップで調製した。純粋な化合物が淡黄色の粉末として得られた。
【0111】
【0112】
ステップ1:
水(120mL)中の2-ブロモ-5-メトキシ安息香酸1(27.6g;119mmol;1.0当量)、レゾルシノール2(26.3g;239mmol;2.0当量)および水酸化ナトリウム(10.5g;263mmol;2.2当量)の混合物を、1時間還流加熱した。次いで、硫酸銅の5%水溶液(50mLの水中3.88gのCuSO4・5H2O;15.5mmol;0.1当量)を添加し、混合物をさらに30分間還流した。混合物を室温まで冷却し、固体をブフナーフィルタで濾過した。残留物を冷水で洗浄して淡赤色の固体を得、これを熱MeOHで磨砕した。懸濁液を4℃で一晩放置した。得られた沈殿物を濾過し、冷MeOHで洗浄して、表題化合物3を淡褐色固体として得た。
【0113】
ステップ2:
無水ジクロロメタン(100mL)中の3の懸濁液(10.0g、41mmol;1.0当量)に、無水ジクロロメタン中の三臭化ホウ素の1M溶液(110mLの無水ジクロロメタン中の11.93mLの純BBr3;124mmol;3.0当量)を0℃で滴下により添加した。混合物を0℃で1時間放置し、次いで室温まで温めた。溶液をその温度で17時間撹拌した。次いで、混合物に氷を十分に加えた。黄色い沈殿物を濾過し、冷水で洗浄して黄色の固体を得、これを酢酸中で3時間還流加熱した。熱い溶液を迅速に濾過し、沈殿物を酢酸で洗浄し、次いでジエチルエーテルで洗浄して、表題化合物4を黄色い固体として得た。1Hおよび13C NMRは4の構造に一致した。
【0114】
実施例2:ウロリチンAの微粉化
MC50 Spiral 20 Jetmill(Valortecs SAS、Blodelsheim、France)を使用して、濾過窒素を用い、240g/時間の供給速度、12バールのベンチュリ圧、および12バールのミル圧でウロリチンAを微粉化した。D90=9μm~15μmおよびD50=2~9μmの粒度分布を有するウロリチンAを得るようにウロリチンAを微粉化した。実際の粒度分布は、Malvern Mastersizer2000を使用して測定してD90=11.5μm、D50=3.9μm、D10=0.7μmであった。
【0115】
実施例3:ウロリチンAスキンクリーム組成物
150mgの微粉化ウロリチンAを、スプーン1杯(約5ml)の市販のスキンクリームと混合した。使用したスキンクリームは、Pierre Fabre SAから入手可能なAvene XeraCalm AD(商標)という名称で販売されているものであった。メーカーによると、クリームは、Avene温泉水(aveneアクア)、グリセリン、鉱油(流動性パラフィン)、セテアリルアルコール、メマツヨイグサ(月見草)油(メマツヨイグサ油)、カプリル/カプリントリグリセリド、セテアリルグルコシド、アクアフィラスドロミエエキス、アルギニン、カルボマー、月見草油/パーム油アミノプロパンジオールエステル、グリシン、水酸化ナトリウム、トコフェロールおよび水(アクア)を含有する。
【0116】
混合後、均質な混合物が得られた。組成物は、スキンクリーム出発製品よりもわずかに暗い色を有していた。組成物は滑らかで、均一な色を有していた。ウロリチンの存在は、スキンクリーム製品の質感に識別可能な影響を与えなかった。
【0117】
実施例4:EpiDerm(商標)培養における皮膚生存率に関するウロリチンAのインビトロ試験
スクリーニング前の処置条件:優れた皮膚明色化剤は、メラニン合成を阻害するが、組織に対する細胞毒性を引き起こさないべきである。皮膚細胞の生存率に対するウロリチンAの影響は、EpiDerm組織(EPI-200)を使用して行った。再構築されたヒト表皮モデルEpiDerm(商標)(EPI-200、MatTek、Ashland、USA)は、ヒト表皮の多層高分化モデルを形成するために培養された正常なヒト由来表皮ケラチノサイトからなる。
【0118】
組織を維持培地(MatTek Corporationから入手可能なEP1-100-LLMM)で増殖させた。処置は、側底で、すなわち、試験化合物を維持培地に溶解して、合計96時間継続した。条件ごとに2つのEpiDerm(商標)組織(n=2)を使用し、条件は、1)水、2)DMSO0.5%、3)ウロリチンA 25μM、4)ウロリチンA50μM、および5)ウロリチンA100μMであった。ウロリチンAまたはDMSOに添加される、またはされない維持培地は、48時間で新しくした。
【0119】
細胞生存率は、組織から抽出された後に定量的に測定される、細胞ミトコンドリア中に存在するMTT¥[(3-4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド]の青いホルマザン塩へのデヒドロゲナーゼ変換によって測定される。MTTアッセイは、MTT培地(1mg/ml)を含む24ウェルプレートに組織を移すことにより行った。3時間のMTTインキュベーション後、細胞のミトコンドリアによって形成された青いホルマザン塩を2.0ml/組織のイソプロパノール(抽出溶液、品番MTT-100-EXT)で抽出し、抽出されたホルマザンの光学密度を、分光光度計を使用して570nmで決定した。陰性対照組織の平均の%として、各組織の相対細胞生存率を計算した。
【0120】
図1は、EpiDerm(商標)組織で行われた生存率アッセイの結果を示す。生存率は、すべての条件で90%より高く、細胞毒性がないことを示した。これは、ウロリチンAが試験濃度で皮膚細胞の生存率を損なわないことを意味する。
【0121】
実施例5:MelanoDerm(商標)培養におけるメラニン形成に対するウロリチンAのインビトロ試験
MatTek Corporation(Ashland、Massachusetts、USA)のMelanoDerm(商標)培養液は、色素性3D生体皮膚等価モデルである。MEL-300組織は、メラニン細胞をケラチノサイトに播種することにより得られる。MEL-300-B培養液は、黒人ドナー組織に由来するメラニン細胞を含含有し、皮膚明色化の可能性の評価に使用される。MEL-300-Bを、長寿命維持培地(MatTek Corporationから入手可能なEP1-100-LLMM)中で調製し、合計14日間培養した。群ごとに合計4つの組織反復(n=4)を使用した。
【0122】
未処理の組織を陰性対照として使用した。維持媒体は、2日ごとに新しくした。
【0123】
DMSO中50mMの原液から調製した最終濃度50および100μMの維持培地に添加することにより、ウロリチンAを試料に適用した。ビヒクル対照は、維持培地中0.2%のDMSOを使用して調製した。ウロリチンAまたはDMSOに添加される維持培地は、2日ごとに新しくした。コウジ酸を、50:50のブチレングリコール:水に2%の陽性対照として使用し、局所的に(すなわち、MelanoDerm(商標)試料の表皮の最外層である角質層に)塗布した。コウジ酸は、メラノーマおよびメラノサイトのメラニン形成に関与する重要な酵素であるチロシナーゼの周知の阻害剤であり、化粧品中で色素沈着過剰、肝斑、およびしわの処置に使用される。2日ごとに、組織を滅菌PBSで濯いでコウジ酸を除去してから、50:50のブチレングリコール:水に2%のコウジ酸の新鮮な調製物を添加した。維持培地も同時に交換した。
【0124】
a.14日目に、Nikon Eclipse Ti顕微鏡を使用した色素沈着の巨視的分析のために、すべての組織を上面から撮影した。
図2は、得られた写真を示す。巨視的に見ると、50μMおよび100μMのウロリチンAで処理された組織は、陰性対照およびDMSO0.2%群よりも一貫して明るいことが明らかである。また、50μMおよび100μMのウロリチンAで処理された組織は、2%で局所的に適用された陽性対照コウジ酸で処理された組織と同程度に明るいことも確認され得る。
【0125】
b.試料の明度は、0、4、7、11、および14日目にコニカミノルタカラー分光光度計(CM-700d)を使用してL値を測定することで評価した。L値は、色がどの程度明るいかまたは暗いかを示し、黒はL=0に対応し、白はL=100に対応する。
図3は、異なるサンプルで測定されたL値を表す。L値は、4日目から14日目までの陰性対照群よりも、50μMおよび100μMのウロリチンAで処理された組織で有意に高い。
予想外にも、50μMまたは100μMのウロリチンAは、コウジ酸0.2%よりも速く組織を明色化する効果があった。これは、4日目と7日目に特に確認され得、ウロリチンAで処理された組織は、コウジ酸で処理された組織よりも高いL値を有する。処置の終わりに、ウロリチンAおよびコウジ酸で処理された組織のL値は同等であり、
図2において確認されることを裏付けている。50μMおよび100μMで有意な効果が観察されたが、これらの結果からの外挿は、本発明の別の実施形態において、1μM~50μMの範囲内のより低い濃度のウロリチンAを本発明の方法および組成物に使用できることを示している。
【0126】
c.メラニンの定量には、群ごとに3つの組織を使用した。組織を最初にPBSでインキュベートし、維持培地から残っているいかなるフェノールレッドも除去した。組織を、500μlのSolvable(商標)(Tissue and Gel Solubilizer 0.5 M-Packard BioScience Co.カタログ番号6NE9100)を有する1.7mlの微小遠心管内に設置し、メラニン標準と共に95℃で一晩インキュベートした。メラニン標準は、メラニン(Sigmaカタログ番号M8631)を1mg/mlのSolvable(商標)に溶解して原液を調製することにより調製した。原液を使用した標準曲線の希釈率を表1に示す。
【0127】
【0128】
一晩インキュベートした後、試料を13000rpmで5分間遠心分離して、不溶性材料をペレット化した。200μlの各試料を96ウェルプレートに移し、490nmで読み取った。
図4は、μgで表したメラニン含有量の結果を示す。統計的有意性を一元配置ANOVAを使用して行い、続いて、陰性対照に対する各群の多重比較についてDunnett事後検定を行った。50および100μMのウロリチンAは両方とも、陰性対照と比較して、メラニン含有量をそれぞれ65%および67%有意に減少させる。2%のコウジ酸もメラニン含量を62%大幅に減少させる。さらに、これらの2つの群を比較する追加のスチューデントt検定によると、100μMのウロリチンAで処理された後のメラニン含有量は、2%のコウジ酸を使用した場合よりも大幅に低い。これらの結果は、それぞれ
図2および
図3に示されている明度およびL値の視覚的評価と一致している。